1: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:44:00.92 ID:eHhZcCQv0
※ホラー要素は一切ありません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1500108240

引用元: 菜々「はっ! ここは……つきのみや駅?」 


2: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:44:48.76 ID:eHhZcCQv0
菜々「……お仕事終わりの電車って少し寂しいですね、プロデューサーさん」

モバP「そうだな」

モバP「……さっきまでがすごい賑やかだったから、余計にそう感じるんだろう」

菜々「そうですね」

菜々「……えへへ、みなさんもいっぱい楽しんでくれてたみたいでよかったです」

モバP「最高のステージだったよ、菜々」

菜々「そうですね……ナナもそう思います」

菜々「本っ当に楽しかった……」

モバP「……ははっ」

菜々「えへへっ」

菜々「……ふわぁ」

菜々「と、ととっ!」

モバP「大きなあくびだな」

菜々「うぅ……」

菜々「……プロデューサーさん、ちょっと寝てもいいですか?」

モバP「ああ、もちろん」

モバP「今日はお疲れ様」

菜々「はい……」

菜々「……肩借りちゃったらごめんなさい」

モバP「いいよ、そのくらい」

菜々「えへへ、ありがとうございます」

菜々「それじゃあ、おやすみなさい……」

モバP「ああ、お休み」

菜々「……」

菜々「……すぅ」

モバP(……寝るの早いな)

モバP(まあ、頑張ってたからな……疲れてたんだろう)

モバP(……)

モバP(……俺も寝るか)

モバP(……)

モバP(……)

3: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:45:35.19 ID:eHhZcCQv0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


モバP(……)

モバP(……ん)

モバP「くぁ……」

モバP(目が覚めちゃったな……)

モバP(……今どの辺だ?)

モバP「ん……?」

モバP(……摩天楼が見えるが)

モバP(ふむ……)

モバP(……)

モバP(……ダメだ、景色だけじゃどこかわからないな)

モバP(アナウンスは……)

モバP(……)

モバP(……ないか)

モバP(まあいいか。そのうちどこかにつくだろ)

モバP(そのときに確認すればいいか)

4: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:46:40.25 ID:eHhZcCQv0
モバP(……しかし、静かだな)

モバP(みんな寝てるのか……?)

菜々「へへ……うぇへへ……」

菜々「プロデューサーさん……♪」

モバP「だらしない笑顔して……どんな夢見てるんだか」

モバP「ったく……」

モバP「……お疲れ様」ナデナデ

菜々「……♪」

モバP「……」

モバP(……ん?)

モバP(減速してるな……止まるのか?)

モバP(特に何もアナウンスはなかったが……)

モバP(……あ、駅についた)

モバP(アナウンスし忘れてたのか……?)

モバP(……まあ、いいか)

モバP(ええっと……駅名は)

モバP(……)

モバP(……つきのみや駅?)

5: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:47:18.14 ID:eHhZcCQv0
モバP(つきのみや駅って……あの、つきのみや駅か?)

モバP(都市伝説は聞いたことがあるが……いや、まさかな……)

モバP(……)

モバP(ホームは……)

「……」ノソノソ

モバP(……2mくらいの影が歩いてる)

モバP(聞いた話と同じだ)

「……」ヌッ

モバP「」ビクッ

モバP(隣の通路にも影が歩いてた)

モバP(これも、聞いた話と同じだ)

モバP(……マジでつきのみや駅に来たのか)

モバP「……」ゴクッ

モバP(ふぅ……落ち着こう)

モバP(そう、落ち着くんだ……慌てない)

モバP(こういう場合は、動かないのが正解……降りたらダメだと聞いたことがある)

モバP(なんでも異次元に行ってしまうからだとかなんとか……)

モバP(……まあ、理由なんてなんでもいいか)

モバP(無事に帰れればいいんだから……動くまで、じっと……)

モバP「……」

6: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:48:24.57 ID:eHhZcCQv0
菜々「……ふわぁ」

モバP「菜々……起きたのか……!」

菜々「はえ……ぷろりゅーはーはん?」

菜々「……ん、んんっ!」

菜々「どうしたんですか、そんな青ざめて」

菜々「はっ! もしかして乗り過ごしちゃったとか……?」

モバP「いや……」

モバP「……驚かないで聞いてくれ」

菜々「はい?」

モバP「……今、この電車が止まっている駅な」

モバP「つきのみや駅みたいなんだ」

菜々「……つきのみや?」

モバP「ああ」

菜々「え」

菜々「えええぇぇっ!?」

モバP「しっ!」

菜々「あ……ごめんなさい」

菜々「……え、本当にここ、つきのみや駅なんですか?」

モバP「ほら、外に書いてるだろ?」

菜々「えーっと……あ、本当だ」

菜々「それに、確かにこのホーム……見覚えありますね」

モバP「ああ……」

モバP「……ん、見覚え?」

7: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:49:19.77 ID:eHhZcCQv0
菜々「……ちょっとお母さんに連絡取ってみようかな」

モバP「な、菜々……?」

菜々「……」ピンッ

モバP「」ビクッ

モバP(な、なんだ……!?)

モバP(菜々の頭からウサミミが……!?)

菜々「……あ、もしもし、お母さん?」

モバP(……かと思ったら、今度はウサミミをおさえてなにかボソボソと喋ってる)

モバP(聞こえてる内容からして……母親と交信してるのか……?)

菜々「今、つきのみや駅にいるんだけどね……うん、うん」

菜々「……あっ、やっぱりお母さんの仕業!?」

菜々「もーっ! やめてよ……え、何……?」

菜々「ちっ、ちが、プロデューサーさんはそういうのじゃなくて……」

菜々「……えぇっ!?」

菜々「もう、そんな理由で呼ばないでよ、お母さん!」

菜々「プロデューサーさんも困って……えぇ……」

菜々「……うん、うん」

菜々「……わかった。一目見たら返してくれるのね」

菜々「いい、約束してよ、約束!」

菜々「ぜーっったいだからね!」

菜々「……うん、わかった。今から帰るね」

菜々「じゃ、また後で」

菜々「……ふぅ」

菜々「そういうわけでプロデューサーさんさ……あっ」

モバP「……」

8: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:49:46.84 ID:eHhZcCQv0
菜々「あ、あははっ、どうしたんですかっ、そんな、じーっと菜々を見て」

モバP「……もはや何から聞けばいいかわからないんだけどさ」

モバP「とりあえずは……その耳、なんだ?」

菜々「こっ、これは……その……」

菜々「……おもちゃです!」

モバP「おもちゃが頭から生えてくるのか……?」

菜々「はっ、はいっ! 最近は文明も進んでるんですよ!」

菜々「すごいですよね! 頭の中に埋め込むことで、擬似的に獣耳をつけるなんて!」

モバP「あー、なるほどなー」

モバP「そっか、最近のおもちゃ事情には疎いからなー」

菜々「もう、ちゃんと流行はおさえないとですよ!」

モバP「そうだな、はははっ!」

菜々「あははっ!」

モバP「……さて」

モバP「で、本当は?」

菜々「騙されてくれませんよねー」

モバP「騙されるわけないだろ」

9: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:50:23.17 ID:eHhZcCQv0
菜々「まあ……今のを見られたら隠せないですよね」

モバP「今のこれが夢でもない限りな」

菜々「夢です!」

モバP「いや、無理だからな」

菜々「ですよねー」

菜々「はぁ……えーっと、どこから話そうかな」

菜々「とりあえず、私はウサミン星人なんですけど――」

モバP「――ちょっと待って」

菜々「?」

モバP「……え、何。ウサミン星人ってマジなの?」

菜々「はい」

菜々「……あー、そこから信じてませんでしたか」

モバP「ああ」

モバP「……そりゃあ、毎回変なボロが出てたしな」

菜々「あー、それに引っかかってくれてたんですねー」

菜々「ふふっ、頑張ったかいがあったかもしれません」

モバP「……?」

菜々「あ、えーっと……つまりですね」

菜々「ナナはウサミン星人なんですけど、地球ではウサミン星人の真似をする普通の人って設定を通してたんです」

モバP「……は?」

菜々「んーっと、詳しく話すと時間かかりますし……とりあえずついてきてください」

モバP「外にでて大丈夫なのか?」

菜々「大丈夫ですっ!」

菜々「……というか、プロデューサーさんに来てもらわないとナナたち帰れないので……」

モバP「……?」

菜々「その辺に関しても後で説明しますので、とりあえずついてきてくれませんか?」

モバP「……わかった」

10: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:51:07.77 ID:eHhZcCQv0
モバP(……降りてしまった、つきのみや駅に)

菜々「迷っちゃうと二度と帰れないと思うので、ちゃんとついてきてくださいね」

モバP「お、おう……」

モバP「……」キョロキョロ

モバP(……しかし、不思議なところだな)

モバP(普段の世界より、ほんの少しずれたような気持ち悪さは感じるが……)

モバP(だけど同時に、懐かしさも感じるようで……)

モバP(周りを歩く影たちにも恐怖を感じない……)

モバP(……そうだ、怖くないんだ)

モバP(それは、もしかしたら菜々がいてくれるからかもしれないが……)

菜々「ふふ、おのぼりさんみたいですね、プロデューサーさん」

モバP「!」

菜々「ナナも初めて地球に行ったときはそんな感じでしたよ」

菜々「見るものすべてが目新しくって……すっごくキラキラ輝いて見えてて……!」

モバP「……なあ」

モバP「ここは、いったい……なんなんだ?」

菜々「ここは、つきのみや駅……月と地球を結ぶ駅です」

モバP「月と地球を……」

菜々「はい……それ以外にもたくさんつながっていますけどね」

菜々「人気の場所だと……黄泉の国ですかね」

モバP「黄泉の国……って死後の世界だよな」

菜々「はい。なのできさらぎ駅やかたす駅なんかにはあっちの路線からいけますし」

菜々「あとは他の惑星とか……あっ、たまに彗星への臨時列車も出てますね」

菜々「……っと、そんな感じでいろいろな場所への中継駅なんです、ここは」

モバP「へぇ……」

モバP「スケールの大きな話だなぁ……」

菜々「ふふっ」

11: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:52:02.57 ID:eHhZcCQv0
菜々「……なので、迷って変な列車に乗っちゃうと大変なことになっちゃうんです」

菜々「変なところにいっちゃいますから……だから離れないでくださいね?」

モバP「ああ、わかった」

菜々「……一応、手をつないでおきますか?」

モバP「いや、そこまではいいよ」

菜々「えー……」

モバP「……何で残念そうなんだ」

菜々「プロデューサーさんはウサミン心がわかってませんねぇ……」

モバP「そりゃあ、ウサミン星人についてぜんぜん知らないからな」

菜々「……それじゃあ仕方ないですね!」

モバP(それでいいのか……)

菜々「あ、次こっちです」

モバP「ん」

菜々「で、今は月……ウサミン星人の住む星へ向かおうとしています」

モバP「ウサミン星人って月に住んでるのか?」

菜々「そうですねー」

菜々「ずっと昔に、ナナのずっとずーっとご先祖様が月に移住したんだそうです」

菜々「ウサミン星は隕石がぶつかって粉々になっちゃったみたいで……」

モバP「……大変だったんだな」

菜々「そうだったみたいですねー」

菜々「ナナが生まれた時には月が母星でしたから、そんなに寂しくなることもありませんけどね」

12: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:53:23.31 ID:eHhZcCQv0
菜々「あ、見えましたね」

菜々「あれが私たちが次に乗る電車です」

モバP「ふむ……」

モバP「……見た目は地球の電車と変わらないな」

菜々「ウサミン星では地球の文化が人気ですからねー」

モバP「なるほどなぁ……」

モバP「……さっきから聞いてて思ったんだけど、この駅ってウサミン星人が管理してるのか?」

菜々「はい」

菜々「これもまたずっと昔の話なんですけど、ナナのご先祖様がたくさんの人が地球に行けるように作ったそうですよ」

モバP「ウサミン星人はみんな地球が好きなんだな」

菜々「はいっ!」

菜々「その後、いろんな人たちからこっちにも線を通してくれー……って言われて」

菜々「今ではいっぱい路線があるんですよね」

菜々「……あ、ここ穴がありますから気をつけてくださいね」

モバP「……そこも地球と同じなんだな」

13: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:54:08.59 ID:eHhZcCQv0
モバP「……あんまり人はいないな」

菜々「そうですねー、これ臨時急行みたいなものですから」

菜々「……なので、適当なところに座りましょうか」

モバP「ああ」

菜々「ふぃー……」

モバP「よいしょ……」

モバP「……」

モバP「……いつもの座り心地と変わらないな」

菜々「ぜーんぶ地球の文化を参考にして作ったものですからね」

菜々「いくつかのものは、地球で使われなくなったものをちょーっと拝借してたりしますし」

モバP「ふーん……だからなのかもな」

モバP「あんまり怖いなって感じないのは」

菜々「ナナが起きたときは顔面真っ青でしたけどね」

モバP「それは……」

モバP「……否定できないけどさ」

菜々「ふふっ♪」

14: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:54:56.11 ID:eHhZcCQv0
菜々「あ、発車しますね」

モバP「ここから月まではどれくらいなんだ?」

菜々「んーっと……まあ、そんなに長くはないはずです」

菜々「ちょっと話してればすぐだと思いますよ」

モバP「ん、そうか」

モバP「じゃあ……まだいろいろ聞いてみてもいいか?」

菜々「はい、どうぞ」

モバP「その耳は……ウサミン星人の特徴ってことか?」

菜々「そうですねー」

菜々「逆にこっちはつけ耳ですよ?」

モバP「こっち……普通の耳のほうか?」

菜々「私たちにとってはこっちは普通じゃないんですけどね」

菜々「ほら、取り外せますよ?」

モバP「うわっ!?」

菜々「……びっくりしすぎじゃないですか?」

モバP「いや、そりゃびっくりするって……うわぁ……」

モバP「……触ってみてもいいか?」

菜々「はい、どうぞ」

菜々「つけてみてもいいですよ?」

モバP「それは遠慮する……うわぁ、手触りも本物みたいだ……」

菜々「……よければひとつあげましょうか?」

モバP「いや、それも遠慮する……へぇー……すごいな、穴に指入れても同じ感じの感触……」

菜々「……興味あるのかないのかどっちなんですか」

15: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:55:37.22 ID:eHhZcCQv0
モバP「……ふぅ」

モバP「ありがとな」

菜々「いえいえっ!」

菜々「んー……地球に帰るまではとりあえずはずしておこっかな」

モバP「……」

菜々「……ん? どうしたんですか、プロデューサーさん?」

モバP「いや……あまり気にしてなかったけど、耳が無いって違和感あるなって思ってな」

菜々「ウサミン的にはこっちの方が普通なんですけどねー」

モバP「……他にウサミン星人と地球人の違いって何かあるのか?」

菜々「んー……特には無いと思いますけど……」

菜々「あ、でもみんな体力は少ないかもしれないですね」

モバP「そうなのか?」

菜々「はい」

菜々「地球だと体が重くって重くって……もう本当に大変です」

モバP「ああ……重力の影響ってことか?」

菜々「きっとそうだと思います」

菜々「月だとぴょんぴょん飛び跳ねられるんですけど……」

菜々「……地球だと体力はそれこそ一時間くらいしか持たなくって……」

モバP「だから、いっつも肩で息してたんだな」

菜々「そういうことです」

菜々「……向こうでの生活やレッスンのおかげで、ちょっとずつ体力はついてると思うんですけどねー」

モバP「……」

菜々「……あっ、今疑ってますね!」

菜々「本当なんですからね、もうっ!」

16: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 17:59:27.13 ID:eHhZcCQv0
モバP「ところでさ、菜々」

菜々「はい?」

モバP「さっき……つきのみや駅についたときにいた影もウサミン星人なのか?」

菜々「あー、あれはまた別です」

モバP「そうなのか?」

菜々「はい……ウサミミもついてなかったでしょう?」

モバP「……確かにそうだな」

モバP「2mのウサミミのついた影か……」

菜々「ちょっとしたホラーですね」

モバP「今だって、ちょっとしたホラー体験してるけどな」

菜々「そうですか?」

菜々「ほら、外を見てくださいよ。プロデューサーさん」

モバP「外?」

モバP「……おぉ」

菜々「ほら、綺麗でしょう? お月様」

モバP「……あぁ」

モバP「地上で見るより、ずっと綺麗だな」

モバP「月も、空も……」

菜々「そして地球も、ですっ!」

モバP「あぁ……本当だ……」

モバP「……あんなに青いんだな」

菜々「はい……」

菜々「これでもまだホラー体験だと思いますか?」

モバP「……いや」

モバP「そりゃ、奇妙だって思うところもあるけど……」

モバP「それ以上に……感動するな……」

菜々「……ふふっ」

菜々「月に着くまでもう少しかかりますから……好きなだけ、宇宙の景色を堪能していてくださいね♪」

17: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:00:49.58 ID:eHhZcCQv0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『まもなくー、ウサミン駅-、ウサミン駅』

菜々「あっ、もうそろそろ着くみたいですね!」

モバP「……ウサミン駅が、目的の駅……なんだよな」

菜々「そうですねー」

菜々「つきのみや駅から一駅です!」

モバP「……まあ、途中に駅を建てられそうなところもないからなー」

菜々「そうですねー」

菜々「地球の皆さんにナナたちのことが知られちゃったら宇宙ステーションにでも建つかもしれませんけどね」

菜々「……ととっ、そろそろ降りますよ、プロデューサーさん!」

モバP「わかった」

モバP「忘れ物のないようにな?」

菜々「もうっ、ナナは子供じゃないんですから、そんな心配しないでください!」

菜々「むしろ、プロデューサーさんよりは年上なんですからねっ!」

モバP「あ」

菜々「え……あっ」

菜々「えーっと……そ、そう!」

菜々「これはウサミン暦での話なので……地球暦だとプロデューサーさんの方が年上なんですよ!」

モバP「いや、暦ってそういうのじゃないだろ」

モバP「……」

モバP「なあ……聞いていいのかわからないけど――」

菜々「――女性に年齢の話をするのはノウッ!」

菜々「ダメ、絶対!」

モバP「……」

菜々「ほら、ついたみたいですし降りますよ、プロデューサーさん!」

モバP「……まあいいか」

18: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:01:59.67 ID:eHhZcCQv0
菜々「んー! 久しぶりの月!」

菜々「やっぱり空気が違うなぁ……」

モバP「……ぜんぜん気にしなかったけど、空気通ってるんだな」

菜々「そうですねー、こっちの方はウサミン科学力で開拓されてますから」

モバP「こっちの方?」

菜々「はい……地球から見ていうと……月の裏側ですね!」

モバP「裏側……へぇ……」

菜々「表側のほうはぜんぜん開拓されて無くって……」

モバP「ふーん……」

モバP「……じゃあ、いつか表側も開拓されるかもってことか」

菜々「あー……んー、それはどうでしょう……」

モバP「……?」

菜々「まあ、ウサミンにもいろいろあるんです」

菜々「さて……それじゃあいきましょっか!」

モバP「……どこに向かうんだ?」

菜々「あ、言ってませんでしたね」

菜々「ナナの家です!」

モバP「菜々の家?」

菜々「はいっ!」

菜々「とりあえず、いきましょう!」

モバP「お、おう……」

19: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:02:45.33 ID:eHhZcCQv0
モバP「しかし、ここが月なんだな……」

モバP「……」

モバP「……結構近代的な建物が建ってるんだな」

菜々「そりゃあ、電車も通ってるくらいですし」

モバP「ああ、それもそうか」

菜々「裏側に関してはちゃんと開拓してますからねー」

菜々「地球の技術を参考に」

モバP「……だからか」

モバP「なんとなく見覚えはある感じがしてるんだよな」

モバP「ここの景色も……つきのみや駅も……」

菜々「もしかしたら、プロデューサーさんの知ってる町を参考にしたのかもしれませんね」

菜々「えーっと、このあたりが参考にしてたのはどの町だったっけ……」

菜々「んー――」

「あ、ナナ王女様!」

菜々「――へ?」

モバP「……王女様?」

20: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:03:16.48 ID:eHhZcCQv0
菜々「……ひ、人違いですよー?」

「いや、ごまかせませんよ……ばっちり顔出てますし」

菜々「う……」

「いつ帰ってきたんですか?」

菜々「えーっと……ついさっきですね」

「ついさっき……じゃあ、みんなまだ知らないよね!」

「はやくみんなにしらせなくっちゃ!」

菜々「ちょ、ちょ、ちょーっと待って!」

「?」

菜々「えっとね……その……そうっ!」

菜々「ナナ、今日はお忍びで帰ってきたんです!」

菜々「なので……その、秘密にしてもらえませんか?」

「秘密……お忍び……」

「……」チラッ

モバP「……?」

「……あぁ、なるほど!」

「なるほどなるほど、わかりました! そういうことですね!」

菜々「は、はい……」

「わかりました、秘密にしておきます!}

「……ふふっ、皆さんに報告される日を楽しみにしてますね!」

菜々「……へ?」

「ふふっ、それでは!」

モバP「……言ってしまったな」

菜々「えぇ……なんか、変な誤解されてるような……?」

菜々「んー……まあ、秘密にしてくれるみたいですし、いいかな……」

21: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:03:48.62 ID:eHhZcCQv0
モバP「さて、菜々」

菜々「あ、ちょっと待ってください……一応変装するので」

菜々「帽子かぶってめがねつけて……よし!」

菜々「で、なんでしょうプロデューサーさん?」

モバP「……王女ってなんだ?」

菜々「あー、やっぱりそれ聞いちゃいますよね」

モバP「そりゃあなあ」

菜々「……といっても本当に言葉通りなんですけどね」

モバP「言葉通りってことは……」

モバP「……ここの王女ってことなのか?」

菜々「はい。月の王女なんです」

菜々「ブイッ!」

モバP「……なんだそれ」

菜々「いや、ポーズとっておこうかなって……」

菜々「……プロデューサーさんぜんぜん驚きませんね」

モバP「今までが驚きの連続だったからな……」

モバP「間違いなく感覚が壊れてる」

菜々「あー……」

菜々「……確かに、初めてのことばかりですもんね、今日は」

菜々「ナナも説明通しでそろそろ疲れてきちゃいました」

モバP「はは、悪いな」

菜々「いえいえ」

22: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:06:18.72 ID:eHhZcCQv0
モバP「……ああ」

モバP「ナナが王女ってことは今からお城に向かうのか」

菜々「そうですね」

菜々「……どうもお母さん……女王様がナナたちのことを呼んだみたいで」

モバP「そうなのか?」

菜々「はい……さっき確認も取りましたし」

菜々「まったく……いくらなんでもやりすぎなんですよ」

菜々「プロデューサーさんに一度会ってみたいからって……無理やりつきのみやまでつれてきたり、臨時列車まで用意したり……」

菜々「おまけに会ってくれないと帰さないなんて脅してきて……もうっ!」

モバP「……そんなこともできるのか?」

菜々「つきのみやはウサミンの管轄ですからね」

菜々「特に女王ともなれば列車を止めるだとか、動かすだとかは簡単にできちゃうので……」

菜々「……ごめんなさい、プロデューサーさん」

モバP「いや、菜々が謝ることじゃないよ」

菜々「でも、身内のことですし……」

菜々「もー……あったら絶対怒ってやるんですから!」

23: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:07:02.64 ID:eHhZcCQv0
菜々「おっと、見えてきましたね」

モバP「おぉ……」

モバP「想像してたのと違って和風な城だな」

菜々「西洋系だと思ってましたか?」

モバP「ああ……なんとなくだけどな」

菜々「ふふ」

菜々「実はウサミン。地球の中でも日本が一番好きなんですよ?」

菜々「このお城も、昔々の人が日本で見た城に憧れたものを真似たんだそうです」

モバP「へぇ……」

モバP「……しかし、こんな景色に囲まれた中に和の城ってのもすごいな」

菜々「そうですか?」

菜々「日本もそういう場所いっぱいあると思いますけど……」

モバP「……言われてみれば」

菜々「見慣れちゃうと完全に溶け込んじゃいますからねー」

菜々「それに、さすがにお城ともなると簡単に立て替えるわけにもいきませんから」

モバP「あぁ……」

菜々「さ、入りましょう?」

24: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:07:36.15 ID:eHhZcCQv0
『お帰りなさいませ、ナナ王女様』

モバP「」ビクッ

菜々「わっ、みなさん出迎えてくれたんですか?」

「女王様からお帰りになられると聞いていたので」

「さあ、あちらで女王様がお待ちしております」

菜々「はーいっ」

菜々「さ、いきますよ」

モバP「あ、ああ」

モバP「……本当に王女だったんだな」

菜々「やっと驚きましたね」

モバP「聞くよりは実際に見た方が、な?」

菜々「ふふっ」

モバP「……で、この先には女王がいるのか」

モバP「……」ゴクッ

菜々「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

モバP「とはいってもなぁ……」

菜々「ナナもいますから、大丈夫」

菜々「変なことをしてきたらナナがおしりペンペンしてやるんですから!」

モバP「……女王にか?」

菜々「女王にもですっ!」

モバP「……ははっ。ありがとう、菜々」

菜々「いえいえ!」

25: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:09:33.10 ID:eHhZcCQv0
菜々「よい……しょっと!」

菜々「ふぅ……ただいま、お母さん」

「お帰りなさい、菜々」

モバP(……あれが菜々の母親か)

「それに、プロデューサーさんも。ようこそいらっしゃいました」

モバP「あ、はい……」

モバP「……俺のこと知ってるんですか?」

「ええ、いつも見ていましたから」

モバP「いつも……?」

菜々「……ナナのことを、ですよね?」

「もちろん」

モバP「……地球にいても見れるのか」

菜々「ウサミン科学力なら、できますね」

「心配だったんですからね」

菜々「ナナだってもう大人なんだから……」

「それでも心配なのよ、母親にとってはね」

モバP「……」

菜々「……あっ、菜々は17歳ですけどね!」

菜々「それでも、大人なんです、はい!」

モバP「あー、うん、わかってるからもうその辺のフォローはもういいよ」

菜々「……信じてくれてるんですよね」

モバP「信じてる信じてる」

菜々「おざなり!」

26: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:11:14.65 ID:eHhZcCQv0
>>25 訂正


菜々「よい……しょっと!」

菜々「ふぅ……ただいま、お母さん」

「お帰りなさい、ナナ」

モバP(……あれが菜々の母親か)

「それに、プロデューサーさんも。ようこそいらっしゃいました」

モバP「あ、はい……」

モバP「……俺のこと知ってるんですか?」

「ええ、いつも見ていましたから」

モバP「いつも……?」

菜々「……ナナのことを、ですよね?」

「もちろん」

モバP「地球にいても見れるのか」

菜々「ウサミン科学力なら、できますね」

モバP「……ウサミン科学力ってすごいんだな」

「だって、心配だったんですもの」

菜々「ナナだってもう大人なんだから……」

「それでも心配なんですよ、母親にとっては」

モバP「……」

菜々「……あっ、菜々は17歳ですけどね!」

菜々「それでも、大人なんです、はい!」

モバP「あー、うん、わかってるからもうその辺のフォローはもういいよ」

菜々「……信じてくれてるんですよね」

モバP「信じてる信じてる」

菜々「おざなり!」

27: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:12:03.61 ID:eHhZcCQv0
「……ふふっ」

菜々「……で、お母さん」

菜々「ナナはともかく、どうしてプロデューサーさんまで呼んだの?」

「ナナとずいぶん仲がよかったみたいなので……一度会ってみたいと思ってたんですよ」

菜々「それは聞いたけど……もう! ナナもプロデューサーさんもびっくりだよ!」

「ふふ、ごめんなさいね」

「お詫びといってはなんですけど……こちらをどうぞ」

モバP「……これは?」

「ウサミン特製のお菓子です」

「とっても美味しいので――」

菜々「――ちょっと!」

モバP「」ビクッ

菜々「プロデューサーさん、それ食べちゃ駄目ですからね!」

モバP「お、おう……」

菜々「もう、お母さん! なんてもの渡してるの!」

「あら、客人はもてなすものでしょう?」

菜々「そりゃそうだけど……」

菜々「でも、プロデューサーさんは地球の人なんだから!」

菜々「そんなの渡しちゃだめじゃないですか!」

「いいじゃないですか」

「そしたら、こっちでずっと一緒に暮らせますし」

菜々「確かにそうなんだけど!」

「ナナも嬉しいでしょう?」

菜々「それもそうだけど!」

モバP「……?」

28: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:14:15.96 ID:eHhZcCQv0
菜々「ナナは! 地球で! プロデューサーさんと過ごしたいの!」

菜々「だから、それはダメ! ノウッ!」

モバP「……なあ、話についていけないんだけど」

菜々「あー……っと、そうですねぇ……んー」

菜々「あとで説明しますねっ!」

モバP「お、おう……」

菜々「……なんか今日説明してばっかりですね、ナナ」

菜々「とと……それより」

菜々「もうお母さんの用は終わったでしょ?」

菜々「ナナたちを地球に帰して」

「あら、もう帰っちゃうんですか?」

「一泊くらいしていってもいいのに……」

菜々「こっちと向こうは時間の流れが違うんだから、そんな滞在できるわけないでしょ!」

菜々「ナナたちは、明日も明後日もアイドルするんだから……」

「……しょうがないですねぇ」

「まあ、プロデューサーさんも一目見れましたし……今日のところはこれで満足しましょうか」

菜々「……もう呼ばないでね?」

「……」

菜々「ちょっと!」

「ふふ……大丈夫、そこのプロデューサーさんがナナに変なことをしない限りはもう呼びませんよ」

菜々「……じゃあ、大丈夫ですね」

菜々「プロデューサーさんが変なことするわけありませんしね」

「あら、信頼してるんですね」

菜々「もちろんっ!」

菜々「ねっ、プロデューサーさん!」

モバP「ああ、当然だ」

菜々「えへへっ!」

29: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:17:35.16 ID:eHhZcCQv0
「……ふふ、なら安心ですね」

「それに、私もちゃんと、ここから見てますから」

菜々「だから、大丈夫だってば……」

菜々「……それじゃ、ナナたちはもう行くね」

「ええ」

「ちょっとでも会えて嬉しかったですよ、ナナ」

菜々「……ナナだってそれは嬉しかったけど……」

菜々「今度は休みの日にちゃんと帰って来るから」

菜々「今日みたいに突然呼んだり、関係ない人を巻き込んだりしないでね」

「あら、ナナにとってプロデューサーさんは関係のない人なの?」

菜々「そういうことじゃなくって! もーっ!」

「ふふ、ごめんなさい。ついからかっちゃった」

「わかってるわ。今度はちゃんと連絡してから呼ぶわね」

菜々「まあ、それなら……」

「ふふ……」

「プロデューサーさんさんも、ナナのことよろしくお願いしますね」

モバP「はい。任せてください」

「あら、頼もしい」

「……ナナのそばにいる限り、あなたのこともちゃんと見ていますからね」

モバP「……」ゴクッ

菜々「だから、大丈夫だってば! 何度言わせるの!」

「ふふ……」

30: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:20:46.35 ID:eHhZcCQv0
「帰りの電車も呼んでおきます」

「きっとあなたたちが駅につく頃にはもう着いてると思いますよ」

菜々「うん、わかった。ありがとう」

菜々「さて……それじゃあね、お母さん」

「ええ、また今度」

モバP「……」ペコリ

菜々「……」

モバP「……」

モバP「……ふぅ」

菜々「……緊張してたんですか?」

モバP「そりゃあなぁ」

モバP「女王だし、菜々の母親だし」

モバP「……でも菜々に似てたな」

菜々「まあ、お母さんですからねぇ」

モバP「ああ」

モバP「髪色も似てたし……菜々が髪を伸ばしたらあんな感じなのかもな」

菜々「……プロデューサーさんはそっちの方が好きですか?」

モバP「いや、今の菜々の方が好きだな」

菜々「そうですか……えへへ」

モバP「あと、若かったな」

菜々「……年齢はいいませんよ?」

モバP「わかってるよ」

31: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:21:49.29 ID:eHhZcCQv0
モバP「……そうだ」

モバP「さっきもらったこのお菓子さ……なんで食べたらいけなかったんだ?」

菜々「あー、それはですねー」

菜々「ウサミンのお菓子って地球の人には合わないんですよ」

モバP「合わない……まずいのか」

菜々「いえ、そんなことはないと思います」

菜々「ただ食べると影になっちゃうんです」

モバP「……影に?」

菜々「はい……」

菜々「……プロデューサーさんさんも、見ましたよね?」

モバP「ああ、あのつきのみや駅の……!」

菜々「そうです……彼らはみんな、ウサミンの食べ物を食べて影になっちゃった人たちです」

モバP「……」

菜々「月にいる間は元の姿のまますごせるんですけど、月から離れると、影になってしまうんです」

菜々「だから、地球の人がウサミンの食べ物を食べちゃったらずっと月で過ごすか……」

菜々「それでもあきらめきれず、地球で影として過ごすかなんです」

菜々「ナナたちにとっては本当に美味しいお菓子なんですけどね」

モバP「なるほどな……」

モバP「……じゃあ、これはナナにあげるな」

菜々「はい、ありがとうございます」

32: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:23:14.44 ID:eHhZcCQv0
菜々「……みんな地球は好きなんですけどね」

菜々「ウサミンって地球の人にとっては害みたいなんです」

菜々「……今みたいなお菓子もそうなんですけど……そもそもウサミン自体が」

モバP「……」

菜々「……その昔、一人の女の子が地球……日本に行ったことがあったんですけど」

菜々「そのときは、会う人みーんなを虜にしちゃって」

菜々「ほとんどの人が女の子のために動くようになっちゃって……取り合うようになっちゃって」

菜々「嫉妬が渦巻いたり、争いが生まれたり……なんかもあって」

菜々「結局、女の子は月に帰るんですけど……」

菜々「帰った後も、この世界にいないのならって死んじゃう人もいて……」

モバP「……」

菜々「だから、ナナたちは地球を見て、憧れるだけにとどめて……」

菜々「できる限りかかわらないように……ってしてたんです」

菜々「だから、月の表側はそのままにしたり……」

菜々「つきのみや駅にも、ナナたちから呼び込む以外に行く方法はないようにしたり……」

モバP「……」

モバP「……それでも、菜々は地球に来たんだな」

菜々「はい……行っちゃったんです」

菜々「……」

菜々「……あの、プロデューサーさん」

菜々「すぐ帰るってさっきは言いましたけど……ちょっとだけ寄り道してもいいですか?」

モバP「ん?」

33: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:29:42.22 ID:eHhZcCQv0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


菜々「目的地はここの上です」

モバP「ここは……展望台か?」

菜々「はい」

菜々「……このあたりって、月の裏側でも、表側に限りなく近い場所なんですよ」

モバP「そうなのか」

菜々「だから、少し歩いたり……少し高い場所に上れば……」

菜々「……ほら、見てください」

モバP「……?」

モバP(……あ)

モバP「青い星……」

菜々「はい、地球です……ここは地球が見える展望台なんです」

菜々「全体像とは行きませんけどね」

モバP「ああ……それでも……」

菜々「……綺麗ですよね」

モバP「……」コクリ

菜々「ここ、ナナのお気に入りの場所なんです」

菜々「嬉しかったことがあったら、自分へのご褒美みたいな感じで地球を見て」

菜々「つらいことがあったら、綺麗なものを見て忘れようって地球を見て」

菜々「ナナは、ずーっとあれを見て育ってきたんです」

菜々「宝石みたいに綺麗な、あの星を……」

モバP「……」

菜々「そんなのをずっと見ちゃったら……見ちゃったらね」

菜々「憧れないわけないじゃないですか……」

モバP「……」

菜々「……みんなには止められました」

菜々「お母さんにだって……賛成してくれる人はほとんどいませんでした」

菜々「さっきも言ったとおり、ウサミンは地球に悪い影響を与えちゃうから……って」

モバP「……」

菜々「でも……それでも……それでも、行きたかったんです」

菜々「ナナも、あの星に……」

モバP「……」

菜々「……もちろん、過去に行った人を参考に……絶対にウサミンだってばれないようにしてですけどね」

菜々「地球人の付け耳とか……あとは尻尾も隠してますし」

モバP「あ、尻尾も生えてるのか……」

菜々「……そ、それを見せるのはちょっと恥ずかしいですね……」

モバP「いや、別にいいよ見せなくても」

34: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:30:29.70 ID:eHhZcCQv0
菜々「あとは、この設定もですね」

モバP「自分から設定って……ああいや、そういやさっき言ってたな」

モバP「……ちょっと前のことなのにずいぶん前のことみたいだ」

菜々「あはは、プロデューサーさんにとっては密度の高すぎる時間だったでしょうしねー」

モバP「ああ……」

モバP「……結局、ウサミンって言うのは設定じゃなく本当なんだよな?」

菜々「ここまできて疑いますか?」

モバP「いや……そういうわけじゃないんだけどさ」

モバP「……その割りに、ウサミンウサミン言ってたなと思ってさ」

菜々「それなんですけどね」

菜々「下手に隠すよりはむしろ出してった方が怪しまれないんですよ」

菜々「変なこと言ってる……って電波に思われますから」

モバP「ああ……」

菜々「それに、別の付け入る隙も用意しましたからね」

菜々「あえて、少し古い知識とか言葉をつかって……」

モバP「……年齢の方に目を向けさせたわけか」

菜々「はい」

菜々「ナナは17歳ですけど! あえて……あ! え! て! もっと上の年齢っぽく見せてたんです!」

モバP(17歳は素なんだな)

菜々「そうすれば、まさかナナが地球外の生物だなんて誰も思わないと思ったんです」

菜々「……プロデューサーさんを見ると成功だったみたいですね」

モバP「思いもよらなかったな」

菜々「ふふっ」

35: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:37:30.87 ID:eHhZcCQv0
菜々「……今日一日で、ナナの秘密、いっぱい話しちゃいましたね」

モバP「ああ」

モバP「……そういう意味では、お母さんに呼んでもらえてよかったかもな」

菜々「……そうですか?」

菜々「ナナ的にはもっと隠してたかったんですけど……」

モバP「そうなのか?」

菜々「そうですよ……だって……」

菜々「……」

菜々「……あの、プロデューサーさん」

モバP「ん?」

菜々「プロデューサーさんは、ナナの本当の姿を知っても好きで――」

菜々「――ううん、プロデュースしてくれますか?」

モバP「当たり前だろ」

菜々「!」

モバP「ナナが地球人でも、宇宙人でも、菜々は菜々だ」

モバP「……最初に約束しただろ、トップアイドルにするって」

モバP「だから、どんな菜々だってプロデュースするよ」

菜々「……ほんとですか?」

モバP「もちろん」

菜々「ナナ、自分の願い事をかなえるためだけに、もしかしたら地球に悪影響を及ぼしているかもしれないのに……それでもですか?」

モバP「……今日のお仕事を思い返してみな」

菜々「今日の……」

モバP「みんな、どんな表情をしてた?」

菜々「……すっごく楽しそうでした」

モバP「それが答えだよ」

菜々「!」

モバP「大丈夫だ」

モバP「……たとえ、ウサミンが地球に悪影響を及ぼすのかもしれなくても」

モバP「地球へ来た理由が、自分の願いのためだけだったとしても」

モバP「菜々は、地球に笑顔を広げてるんだ。楽しさを振りまいているんだ」

モバP「俺はそんな菜々が好きだし、プロデュースして手助けしたいって思ってるんだよ」

菜々「……そうですか」

菜々「そうですか……へへっ、えへへっ!」

菜々「やっぱり隠す必要はなかったかもしれませんねっ! えへへっ!」

モバP「まあ、地球でこんな話されてたらちょっと考えたかもしれないけどな」

菜々「ちょっと!」

モバP「冗談だよ、冗談。ははっ」

菜々「もう……」

菜々「……へへ」

菜々「もう、どうしてくれるんですか、プロデューサーさん……にやけ顔がとまりません……!」

菜々「へへ……プロデューサーさんがプロデューサーさんでよかった……♪」

モバP「ははっ、そういってくれると俺もプロデューサー冥利に尽きるよ」

36: ◆6QdCQg5S.DlH 2017/07/15(土) 18:42:37.24 ID:eHhZcCQv0
モバP「……ところで、菜々」

菜々「へへ……嬉しい……♪」

モバP「……菜々」

菜々「あっ、はい! なんでしょうか!」

モバP「……菜々が地球に来た理由はわかったけどさ」

モバP「どうして、アイドルになろうと思ったんだ?」

菜々「……それはもう」

菜々「目を奪われるくらい素敵なアイドルを見ちゃったからですよ」

菜々「あんなにも綺麗な星で、こんなにも輝けるんだ……って思っちゃって」

菜々「それからです。ナナがアイドルを目指したのは」

モバP「へぇ……」

菜々「……ふふ、帰り道もまだまだありますし」

菜々「歩きながら、ナナの昔話でもしましょうか!」

モバP「ん、わかった」

モバP「……」チラッ

菜々「……どうしました?」

モバP「いや、最後にあの星を目に焼き付けておこうと思ってな」

菜々「大丈夫、電車の中でもまだまだ見れますよ」

モバP「ああ、それもそうか」

菜々「ふふっ」

モバP「……じゃあ、いくか」

菜々「はいっ!」

菜々「……さて。じゃあ、どこから話そうかな……」

菜々「えーっと……あれはナナが地球についてすぐの頃だったんですけどね――」








おしまい