海未「紙芝居屋さんです」 前編 

海未「紙芝居屋さんです」 後編 

海未「紙芝居屋さんです」2 前編

海未「紙芝居屋さんです」2 後編

2: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:16:48.32 ID:sIAXm8vl
【9日目】

~薔薇と謎のオブジェと二つのステージと海と大きな時計があって人が賑わう広い公園~

3: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:18:42.52 ID:sIAXm8vl
千歌「~♪」


千歌「今日も紙芝居屋さんはいるかなぁ~」


「ハァーイ!」


千歌「あっ、」

鞠莉「はろ~♪」

千歌「やっほー!元気?」

鞠莉「I'm fine!」

4: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:19:48.12 ID:sIAXm8vl
「クックックッ。今日も始まるのね」

「ちょっと、声大っきいから」


千歌「!」

鞠莉「オッオーゥ!」

善子「ようこそ。常闇の辻へ」

梨子「こんにちは」

千歌「こんちかー!」

梨子「……あれ?他の子たちは?」

鞠莉「もうすぐ来ると思うわ」

5: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:20:52.63 ID:sIAXm8vl
「しっかし、君たち似てないねぇ」

「喧しいですわ。」

「ぅゅ……」


千歌「あ、来たよ!」

果南「やぁやぁ。」

ダイヤ「ご機嫌よう」

ルビィ「こ、こんにちわ」

千歌「やぁやぁ~♪」

鞠莉「ハァーイ!」

6: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:22:02.88 ID:sIAXm8vl
果南「あれ?紙芝居屋さんは?」

梨子「それが、まだ居ないみたいなんです」

ダイヤ「あら、少し早かった様ですわね」

善子「いつもだと、この時間にはもう居るはずなんだけどね」

鞠莉「イェ~ス。この曜日のこの時間、寸分違わずに来るロボットでぇーす。」

梨子「言い方!」

鞠莉「オゥ、ソーリー」

7: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:23:34.43 ID:sIAXm8vl
千歌「……それにしても、いよいよ最後のお話だねぇ。」

梨子「短い様で長かったよね」

ダイヤ「えぇ。気付けばあっという間のお話でしたわ」

果南「光陰矢の如しって感じかな。」

善子「序でに色んな物も食べて来たわよねぇ」

鞠莉「でもぉ、一番はやっぱりあのおまんじゅうだった気がするなぁ」

ルビィ「うん。素朴だけど、懐かしい味がするよね」

8: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:24:29.56 ID:sIAXm8vl
「うんうん。」

「分かるな~」

ルビィ「だよねぇ。」

ルビィ「──ッ!!?」バッ

曜「伝統って奴だね。」

花丸「昔ながらの味ずら♪」

ルビィ「ぴっ、ピギイィィィッ!!?」ズザッ

ダイヤ「あ、貴方たちっ!?一体いつの間に……っ!」

鞠莉「オーゥ!クノイチ・ガールズ!」

10: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:31:57.14 ID:sIAXm8vl
>>9
/cVσ_VσV ごめんなさい。
     水飴はありませんが、
     美味しいおまんじゅうをどうぞ。

11: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:32:40.14 ID:sIAXm8vl
千歌「やっほー♪」

曜「やっほー!」

ルビィ「げ、元気だった?」

花丸「うん。まるは元気だよ~♪」

ダイヤ「コレで、いつもの面子は揃ったみたいですね」

果南「まぁ、大体この後も増えるんだけどね」

梨子「でも、お話はコレで一旦終わりですからね。次に来た子がちょっと可哀想かも……」

12: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:34:00.96 ID:sIAXm8vl
鞠莉「そしたら~、今度は私たちで紙芝居をしてあげるとか?」

果南「どうやってさ?」

鞠莉「それはもちろん、紙芝居屋さんのを借りてね♪」

ダイヤ「それだと紙芝居屋さんが困ってしまいますわ!」

千歌「なんかいい方法ないかなぁ」

曜「きっと、また同じお話してくれるから大丈夫だよ」

善子「……」

善子「──あっ、」

13: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:37:03.06 ID:sIAXm8vl
海未「……」




善子「……ねぇ、あそこにさ、」クイッ

千歌「!」

ダイヤ「まぁ、なぜあの様な人気のない所に?」

果南「なんか、ボーッとしてるね。」

曜「黄昏てるのかな?」

花丸「う~ん。」

梨子「と、とにかく行ってみよう!」


タッタッタッタッ……。

14: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:38:10.66 ID:sIAXm8vl
海未「……」




「紙芝居屋さん!」


海未「……え?」


千歌「こんにちわ!」


海未「あぁ、こんにちは。」

海未「皆さん、お元気でしたか?」

15: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:38:56.21 ID:sIAXm8vl
千歌「えへへ、元気だよ!」

鞠莉「ハロー!マイディアー!」

梨子「こんな所に居たんですね。」

海未「はい、すみませんでした。」

善子「リトルデーモンよ。召喚に応じぬとは何事か」

ダイヤ「紙芝居屋さんもお元気でしたか?」

海未「はい、元気ですよ。」

16: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:40:37.74 ID:sIAXm8vl
果南「やぁ、紙芝居屋さん。」

ルビィ「こ、こんにちわ。」

花丸「ずら~♪」

曜「やっほい!」

海未「はい、皆さんもお変わりなく」

千歌「今日は変な所に居るんですね」

海未「えぇ。人の多い場所が少し苦手でして……こんな辺鄙な場所になってしまいましたね」

17: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:42:02.02 ID:sIAXm8vl
鞠莉「ロボットでは無かった様デェース♪」

梨子「だからっ!」バッ

鞠莉「ごめんなさい!」

果南「今日も楽しみだねぇ」

ルビィ「う、うん。早く観たいなぁ」

海未「ふふっ。ありがとうございます」

善子「──さぁ、今宵の宴。そのメインディッシュを披露して貰いましょうか」

鞠莉「イッツ、ショータァ~イム!」

18: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:43:11.97 ID:sIAXm8vl
海未「……」

千歌「紙芝居屋さん?」

ダイヤ「?」

海未「……」

海未「……そうですね。」ニコッ

スッ

海未「皆さん、お待たせしました」


海未「楽しい紙芝居を、今日も始めましょう。」

19: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:44:14.42 ID:sIAXm8vl
海未「それでは先ず、いつもの様におまんじゅうを配りますね」


千歌「わーい♪」

鞠莉「これこれー!」

梨子「待ってました♪」

善子「クックッ。洗礼の儀を済ませましょうか」

ダイヤ「実家の様な安心感ですわね」

ルビィ「えへへ~♪」

果南「そうそう。先ずはコレだね。」

花丸「やっぱりふわふわで美味しいそ~」

曜「毎日でも食べられるよ~♪」

20: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:45:41.51 ID:sIAXm8vl
海未「そして、今日はコチラも用意しました」スッ


千歌「うわっ!?」

鞠莉「Wao!!!」

梨子「す、凄い……っ」

善子「これぞノアの箱舟……ククッ」

ダイヤ「ふ、舟盛りですわっ!!」

果南「おぉ。うちのといい勝負だよ」

ルビィ「美味しそう♪」

花丸「ご飯が欲しくなるずら~」

曜「こ、これは……っ」

21: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:48:35.21 ID:sIAXm8vl
海未「皆さん、行き渡りましたか?」

『はーい!!』

海未「それでは……っ」

海未「……」

千歌「どうしたの?」

海未「……」

海未「皆さん、」


海未「少し、私の前に来て貰えますか?」

22: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:49:54.98 ID:sIAXm8vl
千歌「え?」スッ

ダイヤ「こ、こうですか?」スッ

海未「……」

フワッ

千歌「わっ!」

ダイヤ「!」

海未「……ふふっ。」ナデナデ

ダイヤ「あ、あのっ///」

千歌「か、紙芝居屋さん!?」

23: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:52:45.71 ID:sIAXm8vl
海未「ほら、貴方たちも」

梨子「ぇえ!?」

果南「な、なんか恥ずかしいねっ///」

ルビィ「~っ」

バッ

果南「!」

ルビィ「き、来ました!」

海未「えぇ。いらっしゃい」ナデナデ

ルビィ「えへへ」

24: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:53:27.59 ID:sIAXm8vl
花丸「まるもなでて欲しいずら~」

曜「私もおねがぁ~い♪」

海未「はい。よしよし」ナデナデ

花丸「ふわ~♪」

曜「幸せ~♪」

果南「はは、」

善子「……っ」

梨子「///」

25: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 00:55:14.44 ID:sIAXm8vl
海未「おや、貴方たちは撫でられるのは嫌でしたか?」

梨子「そ、そうじゃないんですけど……」

果南「な、なんだか……ねぇ?」

海未「……では、」スッ

果南・梨子『!?』

海未「よしよし」ナデナデ

果南「うぅっ///」

梨子(うわ……すっごく優しい……っ///)

善子「~っ」

26: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 01:00:21.93 ID:sIAXm8vl
海未「さぁ、貴方もおいで下さい。」

善子「だ、堕天使が気安く人に触られるわけにはいかないのよっ!」

海未「そうですか。……では、私も堕天しましょうかね」

善子「!」

海未「そうすれば、貴方のこともきっと撫でてあげられますから」

善子「~ッッッ」

27: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 01:02:20.41 ID:sIAXm8vl
スッ

善子「んっ!」

海未「……本当に良い子ですね。」ナデナデ

善子「っ///」

海未「ふふふっ。」ナデナデ

海未「──さて、」スッ


海未「それでは、改めてお話を始めたいと思います。」


海未「皆さん、コレが最後になりますので、どうかお付き合い下さる様よろしくお願いします。」


パチパチパチパチパチパチパチッ!

28: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 01:03:15.23 ID:sIAXm8vl
【明日があるさ】

36: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 22:39:19.56 ID:X0hLqbnF
消える天界、下界、辺境

出会ってしまった絵里とツバサ

この、三界全てを巻き込んだ此度のお話。


──これより、少しばかり時は戻りまして


今からお話する物語は

変 魔女の希と、給仕の亜里沙

コチラの二人が、

まだ辺境へ来たばかりの頃のお話です。

37: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 22:44:05.86 ID:X0hLqbnF
「──ねぇ、アナタたち。」


あんじゅ「そろそろ特訓の時間よ?準備は……」


絵里「とぉ!ほぁ!」ピコピコ

凛「にゃ!にゃ!」ピコピコ

希「このっ!くぬぅ!」バッバッ

亜里沙「お?わ!わぁ!?」スンッ

絵里「うぁ!?ま、待って待って!」カチカチッ

希「待ちませぇ~ん♪」ピコッ

38: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 22:45:43.92 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「……ちょっと、」


絵里「あ!ハンマーゲットー♪」カチッ

亜里沙「お姉ちゃん!それずるいから!」ピコピコッ

希「爆弾ボーン!」バッ

凛「当たんないにゃ~♪」スンッ

亜里沙「あ、先っぽ取れた♪」ピコピコッ

絵里「嘘でしょーっ!!?」ガチャッ

39: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 22:47:22.13 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「……」


凛「○ァル○ンパァーンチッ!」

絵里「うぁああああっ!!?」

希「地雷設置完了♪」

亜里沙「聞こえてますからね」


『──疾霜氷結。』ヒュオッ


凛「!」バッ

亜里沙「むっ!」バッ

40: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 22:58:47.48 ID:X0hLqbnF
凛『焦熱火生!』ボゥッ!

ボジュウゥゥゥゥッッッ!!!!

亜里沙『雷光蒼檄!』バチィッ!

あんじゅ「!」

あんじゅ「っ」ビュオッ!

バチバチバチッパチパチッ……チリチリ……ッ

絵里「えっ、えっ!?」

希(今のうちに場外へ~♪)ピコピコ

亜里沙「!?」

41: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:01:19.64 ID:X0hLqbnF
亜里沙『ハイッ!!』ヒュオッ!

希「んぶぶぶぶっ!!?!?」ビュォオオオオッ!!!

ドテッ

あんじゅ「……」

凛「ふぃ~。」

亜里沙「まったくもぅ!」

希「」

あんじゅ「……アナタ達、詠唱短縮はもう完璧みたいね。」

42: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:08:16.17 ID:X0hLqbnF
凛「えっへん!」

あんじゅ「亜里沙に至っては、下級の完全詠唱破棄まで身に付けたのね。感心よ」

亜里沙「えへへ。まだ得意な属性だけですけど」

希「」

あんじゅ「で?肝心の師匠はこのザマ?」ゲシッ

希「んぇ!?」

絵里「あ、あはは……」

43: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:10:19.23 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「──さて、特訓の時間よ?みんな外に出てちょうだい」

亜里沙「はーい!」

絵里「は、は~い。」

凛「今日ってなにやるんだっけ?」

あんじゅ「あとで説明するわ。」

あんじゅ「それより、そこの敷物を持ってきてくれない?」

凛「しきもの?」

希「……」

凛「……あぁ、」

44: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:11:43.55 ID:X0hLqbnF
この辺境にて、のんびりと暮らしている

魔女と見習いの五人娘。

呪文の特訓とお勉強をする以外は、

大体いつもゲームばかりしています。

47: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:26:01.17 ID:X0hLqbnF
───



あんじゅ「みんな、準備はいいかしら?」


亜里沙「大丈夫です!」

絵里「えぇ。」

凛「はーい!」

希「……」

あんじゅ「いつまでブーたれてんのよ?」

希「……ウチのこと敷物扱いした。」

48: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:26:41.85 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「冗談だってば、そんなに怒んないで?」

希「ぶぅ~。」

亜里沙「子供みたいに拗ねないで下さい」

希「敷物って」

絵里(毎回引っ叩かれてるのはいいの?)

凛(基準が分かんない)

希「てゆーか、ウチも一応魔女の資格持ってるんやけど?あんじゅから習う必要なくない?」

49: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:27:42.32 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「アンタの場合ほぼ独学でしょ?この特訓はね、アンタの為の復習と確認でもあるの」

あんじゅ「それに、絵里だって資格は取ったけど、こうして付き合ってくれてるのよ?」

絵里「えへへ、」

希「……まぁ、別にええけど、」

亜里沙「あ、あの、」

あんじゅ「ん?なぁに?」

亜里沙「さっき、魔女の資格って言ってましたけど、試験内容ってどんなものなんですか?」

50: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:31:44.58 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「あぁ。まぁ、基本的には天界のと同じかんじなんだけど」

亜里沙「天界のと……」

あんじゅ「まず、資格所有者随伴のもと、卒業試験があってね」

あんじゅ「そのあと、暮れの廃城で一周期ごとに行われる魔女認定試験」

あんじゅ「コレは、実技と学科。そして要素試験の3種類があるんだけど、」

あんじゅ「それら全てに合格すれば、晴れて魔女として一人前になれるわね」

51: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:41:39.90 ID:X0hLqbnF
亜里沙「……えっと、度々すみません。また質問してもいいですか?」

あんじゅ「勿論よ。私はその為にいるんだから」

亜里沙「あ、ありがとうございます。あの、要素試験ってなんですか?」

あんじゅ「あぁ。要素試験って言うのは、試験官にオリジナル呪文を提示する試験の事よ」

亜里沙「お、オリジナル!?オリジナルなんてあるんですか!?」

あんじゅ「えぇ、そうよ。」

52: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:42:49.46 ID:X0hLqbnF
あんじゅ「私と絵里。それに、この変 も一応オリジナルが使えるわ」

希「~っ」

絵里「ちょ、ちょっとあんじゅ!」

凛「へ~。希ちゃんと絵里ちゃんのは知らなかったにゃ~」

亜里沙「見たい!見せて下さい!」

絵里「亜里沙?少し落ち着きなさい。」

亜里沙「お姉ちゃん!お願い!」

53: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/05(火) 23:56:30.01 ID:X0hLqbnF
絵里「んん……」

希「ま、減るもんじゃないし、別にええんやない?」

あんじゅ「そうね。いい機会かも知れないわ」

希「んじゃ、先ずはこの希お姉さんからご披露しましょうかね♪」

亜里沙「おーっ!」パチパチッ

凛「イェー♪」パチパチッ

絵里「希のは初めて見るわね」

あんじゅ「くっだらない呪文よ?聞いて損したくらいだわ」

希「……ほぉ。」

54: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 00:04:31.21 ID:bvxfjNR9
バババッ

絵里「!」

凛「お?」

亜里沙(……あれ?希さんのって、もしかして)


希『ユリの花咲く所に我はあり。ヤオイ門開く所に汝あり。』ヒィィイイイイイイッッッ

希『出でよ、乙女の楽園。』キュンッ


あんじゅ「アホみたいな呪文」

絵里「……あ~、」


希「……」ニヤッ

55: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 00:06:15.34 ID:bvxfjNR9
バッ!

あんじゅ「!?」


希『ユリ式上級呪禁術』


『オーディア☆ネイション!』ズバッ!


バビビビビビビッ!!!

あんじゅ「ちょっ──ッ!!?」ビビビッ

絵里「きゃあっ!!?」


ポンッ!

56: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 00:10:01.08 ID:bvxfjNR9
絵里「……ぅ、な、なに?」

亜里沙(や、やっぱりあの呪文だったっ)

凛「コホッ!コホッ、け、煙が凄いっ」

凛「──ん?」


シュウウウゥゥゥゥゥゥ…………




ここあ「?」

57: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 00:11:19.93 ID:bvxfjNR9
再び放たれた、変 魔女の変 呪禁術

そして、此度の犠牲者は


絵里「……あ、」

ここあ「あ!」


以前、城砦跡地で絵里と出会った

片足の不自由だった少女でした。

66: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:31:00.08 ID:bvxfjNR9
ここあ「天使のお姉ちゃん!!」モギュッ

絵里「え?ええ!?」

ここあ「久しぶりだねー!」ギュッ

絵里「ど、どう言うことなの!?」

希「ぬっふっふっふっ。今日も絶好調やんね」

凛「え!?し、師匠は!?あんちんは何処いったの!!?」

希「この子が居ったとこ」

亜里沙(……私もあんな感じだったんだ。)

67: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:34:35.96 ID:bvxfjNR9
亜里沙「てゆーか、お姉ちゃんこの子の事知ってるの?」

絵里「え、えぇ。前に下界に行った時にね」

凛「希ちゃん!アレってどーゆー術なの!?」

希「この呪禁術はな?狙った相手と、ウチの近くにいない、まだ見ぬ美少女とを強制的に入れ替える為の術なんや」

希「どぉ?凄いやろ?」

凛「すっごいにゃ!」

ここあ「んふふ~♪」スリスリ

絵里「あんじゅ……大丈夫かしら、」ナデナデ

68: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:36:24.07 ID:bvxfjNR9
ボフンッ!


「──っと待ってってばっ!!!」


にこママ「!!?」

虎太郎「あ~」


あんじゅ「…………へ?あれ?」


にこママ「あっ、貴方……だれ?」

虎太郎「まじょ~」

69: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:39:24.98 ID:bvxfjNR9
あんじゅ「……あの、ここって、」

にこママ「お、音ノ木村だけど、」

あんじゅ「音ノ木村!!?」

虎太郎「じゅも~ん」

あんじゅ「あっ、あのど変 ぃ~っ!!」

にこママ「……貴方、魔女よね?」

あんじゅ「え!?は、はい!」

70: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:41:11.11 ID:bvxfjNR9
にこママ「ここあはどこにやったの?」

あんじゅ「へ?こ、ここあ?」

にこママ「うちの娘よ、どこにやったの?」

虎太郎「いれかえっこ~」

あんじゅ「ぅ……え、えっと……それはぁ、」

にこママ「──ハッ!」

にこママ「も、もしかしてっ、」


にこママ「……誘拐?」

あんじゅ「ぇえっ!?」

71: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/06(水) 23:44:08.21 ID:bvxfjNR9
あんじゅ「あ、あのあのっ!違うんですっ!!別に誘拐なんかじゃ」

にこママ「なにが違うのよっ!!うちの娘はどこっ!!?」シャキンッ

あんじゅ「!!?」

あんじゅ『じゅ、呪禁術・懐郷翔転移!』キュインッ!

シュンッ……

にこママ「こらぁーっ!!待ちなさぁーいっ!!!」

虎太郎「ほうちょ~」



希のオリジナル呪文によって

あろう事か、
元中立者の娘と入れ替えっこされてしまった

不幸体質のドS魔女、あんじゅ

72: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:02:33.67 ID:QEkM8kmf
絵里「ね、ねぇ。あんじゅ大丈夫かな?」

希「大丈夫やって。今ごろこの子んちでお茶でも飲んでるんやない?」

亜里沙「……たぶん、ものすっごく怒ってると思いますよ」

ここあ「へぇ~。ここが魔女のお家なんだぁ~」キラキラッ

凛「ねぇ、呪文も見る?」

ここあ「うん!見る見る!」

73: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:03:54.04 ID:QEkM8kmf
シュンッ

絵里「あっ」

あんじゅ「ハァッ、ハァ……ッ」

亜里沙「あんじゅさん!?大丈夫ですか!?」

希「おや、大分お疲れみたいやんね」

あんじゅ「~ッッッ」

ここあ「ねぇねぇ、呪文は?」

凛「あー・・・たぶん、今からすんごいの見れるにゃ」

74: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:05:20.24 ID:QEkM8kmf
あんじゅ「…………このぉ、」

希「ん?」

『大バカどへんたぁああああああああああああいっ!!!!!!』ズボォッ!!!

希「──ッ!!?」ズザッ

ズゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオォオオオオッッッ!!!!!!

凛「うわぁ!!?」

亜里沙「ひぃ!!?」

ここあ「わぁ!」ワクワクッ

絵里「あ、あっちに避難しましょ!」

75: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:06:52.54 ID:QEkM8kmf
ボッ!ボボボオォォォォ…………ッ

メラメラッ……


希「……あ、あっぶなぁー!」

あんじゅ「避けんなっ!!!」

希「避けるに決まってるやん!当たったら消し炭やもん!」

あんじゅ「人の事勝手に飛ばしといてえらっそーにっ……っ!!」

希「……なんや?この間の決着でもつけたいん?」

76: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:08:33.81 ID:QEkM8kmf
あんじゅ「あれはアンタの負けだったでしょーがっ!!!」

希「違うからぁ!!聖天術なんて反則やもんっ!!あんなん勝ちやないっ!!」

あんじゅ「勝ちは勝ちでしょ!?アンタがすっとろかっただけよっ!!」

あんじゅ「このデ○ッ!!!」

希「」プチンッ

希『──ふんっ!!』バチバチィッ!!!

あんじゅ『ハァッ!!』ビュォオオッ!!!

77: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:30:07.89 ID:QEkM8kmf
亜里沙「……ねぇ、お姉ちゃん、」

絵里「え?」

亜里沙「さっきのアレ、炎の中級だよね?」

絵里「えぇ。しかも完全詠唱破棄だから、力を察知してないと避けるのは無理ね」

凛「中級の詠唱破棄とか……師匠ってやっぱすごいんだね~」

絵里「そうね。あの咄嗟でアレを避けた希も凄いけど」

ここあ「凛ちゃんもあんな事出来るの!?」

凛「え"っ、むりむり」

78: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:44:02.89 ID:QEkM8kmf
ズズウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ン。


あんじゅ「ハァッ!ハァッ、はぁ……っ」

希「フゥッ、ハァ……ッッ!」

あんじゅ「……いっ、いい加減喰らいなさいよっ……っ」

希「そっ、ゴホッ……そっちこそっ、しつこ過ぎなんよ……っ」

あんじゅ「アンタが……っ、一発食らえば済む話なんだけどっ……」

希「そ、そんなん食らうワケないやろっ……」

79: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:45:47.13 ID:QEkM8kmf
凛「……サッパリ決着付かないねぇ。」

亜里沙「うん。あんじゅさんは、術の速さと種類が凄いんだけど、」

亜里沙「それに対して、希さんは力の察知と逃げ足が異常に速いから、全然当たんないんだよね」

絵里「得意な属性が炎と雷だもの、下手したら一生決着が付かないかも」

亜里沙「じゃあ希さんなら、私でも勝てたりするかな?」

絵里「それは少し甘いわよ?なんて言っても経験年数が違うもの」

亜里沙「そーかなぁー。相関的には私の方が有利なんだけど」

80: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:47:57.02 ID:QEkM8kmf
絵里「それだけが全てじゃないのよ」

亜里沙「う~ん。」

亜里沙「あ、そう言えばお姉ちゃん、」

絵里「え?」

亜里沙「あの二人の事は前から知ってたんだよね?」

絵里「え、えぇ。そうね」

亜里沙「それじゃあさ、」


亜里沙「"天界にいた頃"も、あの二人ってあんな感じだったn」

81: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:52:10.22 ID:QEkM8kmf
ズォッ!!!

亜里沙「ひっ!?」

あんじゅ「──ッ!?」バッ

希「!!?」バッ


絵里「……」


亜里沙「……お、お姉……ちゃん?」

絵里「…………亜里沙、」

亜里沙「は、はいっ、」

絵里「その話はしないで」

82: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:53:54.55 ID:QEkM8kmf
亜里沙「ごっ……ごめんなさい……っ」

あんじゅ「え、絵里?」

希「なんや……?」

絵里「──貴方たちっ!!」

あんじゅ・希『!!!』

絵里「一体、いつまでそんな下らないお遊びをしてるつもりなの?」

あんじゅ「……は?」

希「……っ」

83: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 00:56:43.70 ID:QEkM8kmf
絵里「おバカ同士のつまんない争いを見せられる、こっちの身にもなって欲しいわ」

絵里「……なんなら、私が一気にケリを付けてあげてもいいけど」ヒョォオオッ


あんじゅ「……ケリを?アンタが?」

あんじゅ「今まで私に教わってたクセに、よくそんな事が言えるわね……」ボォオオッ


希「あぁ、ちょうどいいやん」

希「ここらで一発、この三人の誰が最強か分からせるのもええなぁ……」バチバチッ

84: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 01:02:26.20 ID:QEkM8kmf
亜里沙「えっ、う、うそ……」

ここあ「だ、大丈夫?大丈夫なの?」ギュッ

亜里沙「う、うん。大丈夫だから」スッ

凛「凛たちから離れちゃダメだよ?」ギュッ


絵里「……」

あんじゅ「……」

希「……」

85: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 01:03:35.41 ID:QEkM8kmf
姉の負の琴線に、そうとは知らず触れてしまった亜里沙

そして、行き場のない絵里のドス黒い怒りは

争いの渦中にいた、希とあんじゅに向けられ

二人もまた、それに応じてしまいました。

93: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 22:58:08.45 ID:QEkM8kmf
絵里『……響け。氷結の囀りよ。その姿たるや千の枸橘蔓。』ヒョォオオオオッ!


亜里沙「えっ!?お、お姉ちゃん!!?」


あんじゅ『来たれ。赤熱の業魔を宿し。灰塵へと帰す焔の苗床よ。』ヒィィイイイッ!


希『唸れ。雷鳴の産声と共に。天焦がす蒼奔の霹靂よ。』バチバチバチッ!


凛「ちょっと!?嘘でしょ!!?」

ここあ「~ッッッ」

94: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:13:34.46 ID:QEkM8kmf
『──呪禁術!』


ゴツンッ!

希「のんっ!!!」


ゴンッ!ゴンッ!

あんじゅ「ぃいっ!!?」

絵里「あぅっ!!」


──ザッ

95: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:14:15.64 ID:QEkM8kmf
亜里沙「!?」

凛「あっ」


「……貴方たち、」



真姫ママ「いい加減にしないと怒るわよ?」



一人前の魔女三人による、最大呪文の撃ち合い

その、地獄の様なシナリオを書き変えたのは

いつも気苦労の絶えない、この辺境の地の長でした。

96: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:15:30.19 ID:QEkM8kmf
あんじゅ「お、長ぁ!?」

絵里「いっ……たぁ……っ」

希「」

真姫ママ「もう、一体なにをやってるのよ」

真姫ママ「小さい子たちのお手本になるのが、貴方たちの役目でしょ?」

あんじゅ「……」

絵里「……っ」

真姫ママ「あんじゅちゃんと希ちゃんはともかく、どうして絵里ちゃんまで睨み合ってたの?」

97: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:16:50.28 ID:QEkM8kmf
絵里「……なんでもありません。」

あんじゅ「……」

真姫ママ「……」ハァ

真姫ママ「……ところで、」スッ

ここあ「!」

真姫ママ「貴方が、ここあちゃんね?」

ここあ「え、は、はいっ」

真姫ママ「ふふっ。怖がらないで。私は貴方のお母さんに頼まれて迎えに来たの」

98: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:18:25.81 ID:QEkM8kmf
ここあ「ぅえ?お母さん!?」

真姫ママ「うん。さっき貴方のお母さんから連絡が入ったのよ」

真姫ママ『……ウチの娘が魔女に攫われたって、』ジロッ

絵里「──ッ!!」

あんじゅ「!?」

真姫ママ「やったのは誰?」ニコニコ

あんじゅ「こっ、コイツですっ!!このど変 に入れ替えられたんですっ!!」

希「」

99: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:19:51.14 ID:QEkM8kmf
真姫ママ「……あぁ、なるほどねぇ。」

ここあ「あ、あのぅ」

真姫ママ「ん?なぁに?」

ここあ「わたし、お姉ちゃんたちに優しくして貰ったので……」

ここあ「このお姉ちゃんのこと、あんまり怒んないであげてくださいっ」

真姫ママ「……」

ここあ「~っ」

100: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:20:49.55 ID:QEkM8kmf
真姫ママ「……ふふふっ。」ナデナデ

ここあ「わっ!」

真姫ママ「大丈夫。ちょっと叱るだけだから♪」

ここあ「うん!」

真姫ママ「それじゃあ、私はこの子を送ってくるからね。」

真姫ママ「貴方たちも、ちゃんとごめんなさいしておくのよ?いい?」

あんじゅ「は、は~い。」

絵里「……」

101: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:45:37.14 ID:QEkM8kmf
ここあ「バイバーイ!」

真姫ママ『っ』グッ

シュンッ!

絵里「……」

あんじゅ「……ハァ、」

希「」

あんじゅ「このっ!」ゲシッ

希「んぉう!?」

102: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/07(木) 23:46:19.02 ID:QEkM8kmf
希「な、なに!?地震!?地震なん!?」

あんじゅ「……」

希「なべ!なべのふた!」

希「ねぇあんじゅ!なべのふた!」

あんじゅ「……長があとでお説教するって、」

希「!!?」

103: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:04:08.49 ID:F6I/nGEt
亜里沙「……あ、あの、お姉ちゃんっ」

絵里「なに」

亜里沙「うっ、さっきはそのっ、」

絵里「……ごめんね。」スッ

亜里沙「!」

絵里「私がどうかしてたわ。亜里沙は何も悪くないのよ」

亜里沙「で、でもっ」

絵里「ふふ、もう大丈夫。いつもの私だから」ナデナデ

亜里沙「あ……えへへ。」

104: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:06:47.50 ID:F6I/nGEt
凛「はぁ。一時はどうなるかと思ったよ」

あんじゅ「まぁ、私も悪かったわ。希とケンカしててつい気が立っちゃってね」

希「ウチもなぁ、この間あんじゅと決闘してから、なぁ~んかケンカっ早くなっててなぁ」

凛「け、決闘!?」

絵里「ぇええっ!!?あ、貴方たち何やってるのよ!?」

希「いやいや、あんじゅが勘違いしたのが全ての始まりだったんよ?ウチは悪くないんよ?」

あんじゅ「……その話はもういいから。」

105: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:08:52.99 ID:F6I/nGEt
凛「で?どっちが勝ったの?」

希「ウチっ!!」
あんじゅ「わたしっ!!」

亜里沙「……あの、どっちなんですか?」

希「ウチだからぁ!!」

あんじゅ「私だってばぁ!!」

希「ウ・チッ!!!」

あんじゅ「わ・た・しっ!!!」

絵里「ね、ねぇ。それより授業の続きしない?」

106: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:15:49.91 ID:F6I/nGEt
凛「そうにゃそうにゃ。早く教えてよぉ~」

あんじゅ「あ……そ、そうね。それじゃあ続きを始めましょうか」

希「あんな?実はあんじゅ反則技使ったんよ」コソコソ

亜里沙「は?反則?」

あんじゅ『フンッ!!』ボゥッ!!!

希「アッチイィィッ!!?」

あんじゅ「授業妨害よ。次やったらあたま丸焦げにするから」

107: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:16:24.80 ID:F6I/nGEt
希「り、凛ちゃん!お尻!お尻冷やして!」

凛「はいはい」ヒュォオオオッ

希「お、おおぉぉっ///……トレビア~ン♡」

あんじゅ「凛。始めるわよ」

凛「はいはいにゃー」

希「っ///ッッッ///」ビクビクッ

亜里沙(うわぁ……)

108: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:22:29.46 ID:F6I/nGEt
あんじゅ「えっと、どこまでやったんだっけ?」

絵里「アレよ。オリジナルの呪文」

あんじゅ「……あぁ。」

希「ヘヴンや……っ」♡

あんじゅ「んん、それじゃあ次は私のオリジナル呪文ね」

凛「あ、それなら凛も使えるよ!」

109: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:24:39.84 ID:F6I/nGEt
亜里沙「そ、そうなの!?」

凛「うん。よく下界で使ってるもん」

絵里「私も使えるわよ?」

亜里沙「!?」

あんじゅ「アナタたち、あんまり人前で使うんじゃないわよ?」

凛「大丈夫だよ。凛は海でしか使わないから」

亜里沙「海でしか?」

110: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:25:29.98 ID:F6I/nGEt
絵里「私はまず使う機会がないし」

あんじゅ「……まぁ、ちょうどいいわ。」

あんじゅ「それじゃあ凛、お願いね」

凛「任された!」

凛『……テク○クマ○コン、テク○クマ○コン』

絵里「へ?」

あんじゅ「ちょっとっ!!そんな呪文じゃないでしょ!!」

111: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:45:16.11 ID:F6I/nGEt
凛「えへへ~。」

あんじゅ「……もうっ」

絵里「駄目よ?凛。授業なんだからマジメにやらないと」

凛「は~い」

凛「……」スッ

『無形より落ちる民。今幼年期を超えて。新たなる目覚めを待つ』キユゥゥゥッ


『呪禁術・万象擬態』

112: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 00:45:55.57 ID:F6I/nGEt
ポンッ!

亜里沙「!」

シュウゥゥゥゥ……

絵里「……」

希「お~っ。」

『……』

あんじゅ「……なんで?」


あんじゅ『やぁ。』

118: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 22:37:51.67 ID:F6I/nGEt
辺境の長のお陰で、
なんとかいつも通りの調子を取り戻した

辺境の魔女っ子たち

そして、お次はあんじゅのオリジナル呪文

コチラの披露を、魔女見習いの凛が努めます。

119: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 22:39:25.33 ID:F6I/nGEt
あんじゅ『どぉ?完ぺきでしょ?』

絵里「え、えぇ。」

亜里沙「うわ……なんか変な感じ、」

あんじゅ「……」

「──違う。」

あんじゅ『へ?』

希「……」

絵里「ど、どこが?」

亜里沙「瓜二つだと思うんですけど」

120: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 22:41:19.83 ID:F6I/nGEt
希「……凛ちゃん。あんじゅの隣に立って」

あんじゅ『あ、うん。』スッ


あんじゅ『……』

あんじゅ「……」


希「……見てみぃ。全然違うやろ?」

絵里「???」

亜里沙「……ダメだ。分かんない。」

希「今まで何を勉強してきたんやっ!!!」

絵里「!?」ビクッ

亜里沙「ひっ!!」

121: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:22:38.47 ID:F6I/nGEt
希「基礎中の基礎やろ!?こんなんも分からんとかオバちゃん情けなくなってくるわっ!!」

絵里「えっ、だ、だって……」

亜里沙「う、うん……」

希「……ハァ~。」

希「二人とも天才やと思ってたけど、意外なとこで躓くんやね」

絵里「~っ」

絵里「み、見た目も雰囲気もっ!それに声だって!全部あんじゅそのものじゃないのよっ!」

122: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:23:17.91 ID:F6I/nGEt
あんじゅ「……」チラッ

あんじゅ『ふあ~ぁ。』

あんじゅ「……ちょっと、その顔でそう言うことするのやめなさい。」

あんじゅ『ん?そーゆーって?』

あんじゅ「あくび!ちゃんと手を当てて!」

あんじゅ『あ~、アハハ。ごめんごめん』

あんじゅ(人から見た私って、こんなんなんだ……)

123: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:24:01.35 ID:F6I/nGEt
絵里「誰が見たっておんなじだわ!違う!?」

希「フッ、こんなもんか」

絵里「ッ」イラッ

絵里「──あんじゅっ!!!」

あんじゅ「は、はい!?」

絵里「こっち来てっ!!」

あんじゅ「な、なに!?なんなの!?」

絵里「いいから早くっ!!」

124: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:25:16.83 ID:F6I/nGEt
スッ

あんじゅ「……来たけど、」

絵里「っ」グイッ

あんじゅ「うわ!?」グンッ

絵里「……」クンクンッ

あんじゅ「ちょっ、ちょっとぉ~っ///」

絵里「……うん。あんじゅの匂いだわ。いい匂いがする。」

あんじゅ「っ///」

125: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:25:56.74 ID:F6I/nGEt
絵里「……」スッ

あんじゅ「!?」

絵里「……」ペタペタ

あんじゅ「やっ///あ、あんまりベタベタ……っ!」

絵里「あんじゅの顔……」ペタペタ

あんじゅ「~っ///」

亜里沙「はわわっ///」

希「……」ニヤニヤ

あんじゅ『うわ~っ///』

126: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:26:27.43 ID:F6I/nGEt
絵里「──よしっ!」スッ

絵里「つぎっ!凛!」

あんじゅ『へ?は、はいっ!』

絵里「もっと近くにっ、ほら寄って!」

あんじゅ『うっ、うぅぅっ///』

絵里「……」クンクンッ

あんじゅ『~っ///』

絵里「……」ペタペタ

あんじゅ『うぅっ///』

127: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:26:49.43 ID:F6I/nGEt
希「どうや~?なんか分かった~?」ニヤニヤ

絵里「……えぇ。分かったわ。」

亜里沙「ほ、本当に!!?」

絵里「本当よ。凄く単純な事だった」

希「へぇ~。ほんじゃ聞かせてくれる?」

絵里「答えはね……」


絵里「匂いよっ!!!」

128: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:31:21.15 ID:F6I/nGEt
亜里沙「に、匂い!?」

絵里「そう。あんじゅの匂いは柔らかくて花っぽい感じがするの」

あんじゅ(は、恥ずかし過ぎっ///)

絵里「それに対して、凛は少し果物っぽい匂いが──」

ポフンッ!

凛「わーわーっ!!」

亜里沙「!」

129: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:31:49.72 ID:F6I/nGEt
凛「分かったからっ!もういいからぁ!!」

絵里「どう?当たりでs」

希「ハズレや。」

絵里「えっ!?」

希「大体、この距離で匂いなんて分かるわけないやん」

絵里「そ、それじゃあ何だって言うのよっ!!?」

亜里沙「ッ」

130: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:32:39.51 ID:F6I/nGEt
希「しょうがない姉妹やんなぁ。」

希「なら、希お姉さんが答えを教えてあげるよ」

あんじゅ「えらっそーに」

凛「……」

希「あんじゅと変身した凛ちゃんの違い、それはな、」

絵里「ッッッ」

亜里沙「~っ」


希「本物は今日、乙○の日や」

131: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:33:26.47 ID:F6I/nGEt
凛「そ、そーなの?///」

希「なんだ、やっぱり凛ちゃんも分からんかったんや」

希「まぁ、正直そこまで再現するのは、呪文でもなかなか難しいd」

絵里『はぁあああっ!!!』ヒュォオオオッ!!!

希「!!?」バッ

亜里沙『ハイッ!!!』ブワァアアアッ!!!

希「うわぁああっ!!?」ダダダッ

あんじゅ『○ねっ!!○になさいっ!!!』ズボォオオオッ!!!

132: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:34:51.54 ID:F6I/nGEt
シュンッ!

真姫ママ「……ふぅ。すっかり長話しちゃったわ。」

真姫ママ「でも、まさか彼女も来てたなんてね~」

ドゴオォォォォッ!!!

真姫ママ「!?」

ビュオォォォッ!! ボワアァァァァッ!!!

真姫ママ「な、なに!?」

真姫ママ「もしかして……あの子たちまだケンカしてるの!?」

133: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:36:07.76 ID:F6I/nGEt
ズシャァアアアッ!!!

希「ま、待って待って!!待ってったらぁ!!!」

絵里「待たないっ!!」カキカキィ-ンッ!

希「そんな怒らんでもええやんっ!?」

亜里沙「怒りますよっ!!当たり前でしょーっ!!」ビュォオオオッ!

希「乙女しかおらんのやから気にする事ないやんっ!!」

あんじゅ「二人ともっ!!手加減する事はないわっ!!!このウジムシは今ここで消し炭にしましょうっ!!!」メラメラッ!

134: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:37:32.92 ID:F6I/nGEt
ドゴオォォォォォ……。

凛「あ~あ」

シュンッ

凛「お?」

真姫ママ「……」

凛「おかえり~」

真姫ママ「……あの子たち、あれからずっとケンカしてたの?」

凛「んーん。ちゃんと仲直りしたよ?」

真姫ママ「……そうは見えないんだけど、」

凛「ん~。一回仲直りして、今度はいつもの奴かな?」

135: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:49:13.45 ID:F6I/nGEt
ドゴオォォォォッ!!!

希「あっ、当たるっ!!当たるからぁあああっ!!!」

あんじゅ「当たれっ!!!当たって燃えるのよっ!!!」ボジュウゥゥゥッ!!!

絵里「てゆーかなんで当たんないのよっ!!?三人がかりなのよっ!!?」カチカチカチッ!

亜里沙(信じらんない……全部避けちゃった。)

「はい、ストップ!」

136: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:50:43.17 ID:F6I/nGEt
絵里「──ッ!」

あんじゅ「お、長!?」

真姫ママ「なんでまだケンカしてるの!ちゃんとごめんなさいしなさいって言って──」

希「助けてーっ!」

真姫ママ「っ」ブンッ

希「にくっ!!」ゴンッ

ドサッ

真姫ママ「……はい。コレでおしまい。」

あんじゅ「チッ」

137: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:52:43.24 ID:F6I/nGEt
真姫ママ「まったくもう。前庭もこんなに滅茶苦茶にしちゃって……」

亜里沙「うっ、ごめんなさい……」

あんじゅ「この変 が悪いのよ!」

絵里「そうなんです!希がっ」

真姫ママ「いいえ。貴方たちも悪いの」

絵里「はぁ!?」

あんじゅ「違うからっ!コイツが私のっ……」

138: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/08(金) 23:54:09.36 ID:F6I/nGEt
真姫ママ「わたしの?」

あんじゅ「っ///」

絵里「そうよ!希があんじゅのおt」

あんじゅ「ふん!」

絵里「いったぁ!?」

あんじゅ「なんで言おうとしてるのよっ!!?」

絵里「うぅ……ごめぇ~ん……っ」

真姫ママ「とにかく、」

139: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 00:03:15.84 ID:e8VsFOYX
真姫ママ「先ずは、みんなで仲良くお庭を元どおりに戻すこと。」

真姫ママ「そして、ちゃんと授業の続きをしなさい。分かりましたね?」

絵里「……」

あんじゅ「……」

希「」

真姫ママ「……そう、なら仕方ないわね。」


真姫ママ「残念だけど、貴方たちには地獄へ行ってもらう事になりそうだわ……」……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ

140: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 00:06:27.72 ID:e8VsFOYX
絵里「あ、あんじゅ大好きーっ!」ギュッ

あんじゅ「え、絵里大好きーっ!」ギュッ

真姫ママ「……」プシュ…

真姫ママ「やっと分かってくれたみたいね。」

絵里「っ」

あんじゅ「た、助かったぁ……」

亜里沙「~ッッッ」

凛「ひいぃぃ……っ」

141: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 00:07:18.92 ID:e8VsFOYX
真姫ママ「はい。みんな片付けましょう」

絵里「は、はぁ~い」

あんじゅ「起きろこのっ!」ゲシッ

希「のっほ!?」

亜里沙「……はあ~ぁ。」

凛「凛はやんなくていいよね?」

真姫ママ「凛ちゃんもだよぉ」

凛「」

真姫ママ「──あ、それとね?」

真姫ママ「授業が終わったら、三人とも私のところに来てね?」

147: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:23:18.89 ID:e8VsFOYX
またまた一騒動をお越し、
辺境の長にお叱りを受けた五人娘

波乱の授業で滅茶苦茶にしたお庭を整備して

長の住むお屋敷へと歩を進めますは
騒ぎの主犯格、希、あんじゅ、絵里でした。

148: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:24:44.85 ID:e8VsFOYX
「──はぁ、」


あんじゅ「結局、庭の掃除で終わったじゃないのよ、もうっ」

希「あんじゅがあっちこっち燃やすからやん?」

あんじゅ「どの口が言ってんのよっ!!」

絵里「お願いだからもうケンカしないでっ。それでなくても肉体労働で疲れてるんだから……」

あんじゅ「オマケに長からの呼び出しまで……あ~あ。きっとコレ、さっきのヤツのお説教よ。絶対そう。」

149: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:27:39.65 ID:e8VsFOYX
希「……あんじゅが人攫いなんかするから、」ハァ

あんじゅ「○にたい?ねぇ、そんな○にたいの?」

希「やめてよ。いい匂いのするあんじゅさん。」

あんじゅ「それやめてっ!!」

希「分かったよ。スタイル抜群のあんじゅさん。」

あんじゅ「きいぃぃぃっ!!!」バシバシッ

絵里「……着きました。」

150: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:28:53.22 ID:e8VsFOYX
コンコンッ

「入ってー」

ガチャ

絵里「失礼します。」

真姫ママ「お疲れ様。お庭は綺麗になった?」

あんじゅ「えーえー。見違えるくらいピッカピカにしたわ」

希「ついでに、あっちこっち炭でできたオブジェも増えたけどな~」ケラケラ

あんじゅ「……」ボッ

151: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:33:51.96 ID:e8VsFOYX
真姫ママ「……あのね。今日は貴方たちに大事なお話があって呼んだの。だからケンカは無しよ?いい?」

あんじゅ「コイツとは別で呼んで欲しかったわ」

希「そんなん言わんといてよぉ~」

あんじゅ「ふん!」

絵里「……で、お話ってなんですか?」

真姫ママ「うん。少し付き合って欲しい場所があるの」

絵里「場所?」

152: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:34:51.35 ID:e8VsFOYX
真姫ママ「ここだとちょっと都合が良くないから、とある場所まで一緒に来てちょうだい?」

あんじゅ「都合が良くない?」

希「え~。ウチ、これからユ○姫買いに行きたいんやけどぉ?」

真姫ママ「希ちゃ~ん?」

希「ぁ……あはは、ゆっ、ユ○姫来週やったわ……」

真姫ママ「さて、それじゃあ私に捕まってね?」

153: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:35:37.65 ID:e8VsFOYX
あんじゅ「何が始まるの?」

真姫ママ「それは着いてのお楽しみ♪」

希「ウチの楽しみはさっき無くなったんや……」

真姫ママ「ん~?」

希「わ、わ~い。楽しみやんな~」

真姫ママ「さて、行くわね」

絵里「……」

真姫ママ『……っ』グッ

シュンッ!

154: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/09(土) 23:35:59.07 ID:e8VsFOYX
なにやら、物々しい雰囲気を醸しながら

三人を連れて飛び立った辺境の長

どうやら、大事な話があるとの事ですが……

155: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:22:32.84 ID:zzIoV9Mo
シュタッ


真姫ママ「着いたわ。」

絵里「っ」

あんじゅ「こ、ここは?」

希「なんや、随分と寂しい場所やねぇ」

真姫ママ「えぇ。見渡す限りの荒地よ」

希「そんな場所に連れて来て、しかもカイリキ君まで持って来てるって事は……」

あんじゅ「……」

156: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:23:17.69 ID:zzIoV9Mo
真姫ママ「三人はもう一人前の魔女だし、辺境のこれからを考えてくれてるみたいだから、」

真姫ママ「コレを話すのには、今日が丁度いいと思ったのよ」

絵里「これ?」

あんじゅ「……なんなの?」

希「……」

真姫ママ「まず一つ目。」


真姫ママ「"原生呪禁術"についてよ。」

157: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:24:28.33 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「げ、げんせい?」

希「……」

絵里「な、なんですか?それ、」

真姫ママ「……」

真姫ママ「全ての躍動となり、そして終わりともなる、原点にして頂点である術」

真姫ママ「辺境初代の長が、地獄の最下層で拾い上げて来た二つの業の塊……」

真姫ママ「私たちはそれを"原生呪禁術"と呼んでいるわ」

絵里「っ」

158: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:29:06.64 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「そ、それがなんなの?」

真姫ママ「貴方たちにも、コレらを何れ使えるようになって貰うつもりで言ったの」

希「……長は使えるん?」

真姫ママ「私は一つだけ。もう片割れは相関の都合で使えなかったの」

絵里「属性はなんなんですか?」

真姫ママ「炎と氷よ。だから、この二つが最も根源的な力になるの」

あんじゅ「……なるほどね。」

絵里「……」

159: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:35:54.93 ID:zzIoV9Mo
希「ウチは?」

真姫ママ「の、希ちゃんの雷は……」

真姫「まぁ、他のは大体この二つの派生系みたいな力なのよ」

希「ぇええ!!?自然現象なのにっ!!?」

真姫ママ「と、取り敢えずそこは置いておいてね?」

希「ウチ、来た意味あるんかなぁ……」

真姫ママ「大有りよ。この辺境の未来のお話なんだもの」

真姫ママ「──話が逸れちゃったわね。」

真姫ママ「この原生呪禁術、一番強力な術なだけあって使う力もとんでもない事になってるわ」

160: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:46:05.12 ID:zzIoV9Mo
絵里「ど、どのくらいなんですか?」

真姫ママ「……このカイリキ君一台で、大人百人分の力を貯められるのは知ってるわね?」

あんじゅ「そうね。キャリーケース五段重ねた様な大きさなんだもの。そのくらい無くちゃ困るわ」

希「……もしかして、」

真姫ママ「やっぱり察しのいい子ね。その通りよ」

あんじゅ「?」

161: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:48:32.62 ID:zzIoV9Mo
真姫ママ「上級三句が、大人約十人分の力を消費するのに対して」

真姫ママ「この原生呪禁術は、一回でカイリキ君一台を使い切ってしまうわ」

あんじゅ「いっ、一台丸々って……」

希「百人分だよ?一人で全力でやっても百日だよ?」

絵里「その二つは、どう言う形状なんですか?使者?それとも無形?」

真姫ママ「どちらも使者よ。ただし、規模が桁違いだけどね」

絵里「っ」

162: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 00:50:45.85 ID:zzIoV9Mo
真姫ママ「……奈落の最奥、無限に広がっている炎熱地獄、」

真姫ママ「そこで、朽ちる事なく罪を吸い続ける徴木、紅蓮の柱。」


真姫ママ『阿鼻獄ノ大炎朴(ボク)』


真姫ママ「そして、同じく最下層に位置する極寒地獄」

真姫ママ「そこに潜む、永遠の悪を絡めとる凍土の主、浅葱の鵠(クグイ)。」


真姫ママ『針特摩(ハトバ)ノ大寒鵠(コク)』

163: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:03:03.28 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「~っ」

希「ッ」

絵里「……それが、使者の名前なんですか?」

真姫ママ「そう。文言の最後の件だから、ちゃんと覚えててね?」

希「……ち、因みに、今から出すん?それ、」

真姫ママ「……」

真姫ママ「絵里ちゃん。」

164: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:03:56.79 ID:zzIoV9Mo
絵里「は、はい。」

真姫ママ「氷の使者を出してくれない?」

絵里「え?ど、どうして……」

真姫ママ「あの怪鳥が居ないと、みんな死んじゃうから」

絵里「!?」

希「ッ」

あんじゅ「はっ!?」

165: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:09:50.00 ID:zzIoV9Mo
真姫ママ「さぁみんな、空から見ていてちょうだい。絶対に使者のそばから離れたらダメよ?」

あんじゅ「~っ」

希「……えりち、お願い。」

絵里「……」


絵里『響け。氷結の囀りよ。その姿たるや千の枸橘蔓』ヒョォオオオオッ!


『呪禁術・凍星ノ怪鳥』

166: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:17:41.90 ID:zzIoV9Mo
ヒョォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ

ケェエエェエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!


絵里「──二人とも。私の後ろについて来て」

あんじゅ『……』スッ

希『っ』スッ

シュンッ!

167: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:19:26.58 ID:zzIoV9Mo
パキパキパキパキッ


絵里「……だいぶ離れたわね。」

あんじゅ「てゆーか、長がほとんど点にしか見えないわ」

希「ちょっと離れ過ぎたかなぁ」

絵里「用心するに越したことはないわよ。それに、相関的に私の使者は相性が悪いんだもの」

あんじゅ「……私の術と似てるのかしら、」

希「と言うより、あっちがオリジナルなんやろ?」

絵里「……っ!始まったわ!」

168: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 01:20:51.77 ID:zzIoV9Mo
真姫ママ『……』スッ


『混沌より来れ。始まりの熱を秘めたる神木よ。』ボゥッ

『芽吹く大地は永劫の焔を産み出し、大乗の火舎香炉にて灰となる。』ボッ ボゥッ


絵里「──ッ」

あんじゅ「~っ」

希「ッッッ」


メラメラメラッ

真姫ママ『……原生呪禁術、』スゥ



『阿鼻獄ノ大炎朴』

176: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:35:49.12 ID:zzIoV9Mo
…………ゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッ ゴッッゴッッッッ


絵里「うぁ……っ」

あんじゅ「な、なによっ、この地鳴り……っ」

希「~っ」


ビキッ


ビキビキ ビキ ビキ ビキ ビキ ビキ ビキ ビキ ビキッッッ!!!!!!!

177: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:37:04.40 ID:zzIoV9Mo
希「なっ!!?」

絵里「へ、ヘビっ!!?地面の下から大ヘビが何匹もっ!!!」

あんじゅ「……違うわ、根っこよ。」



ドゴオオオオォォォォォォォォォォォォォ…………



あんじゅ「!?」

希「なっ!こ、今度は大穴がっ……っ!」

絵里「あ、あれ……直径何百メートルあるのよっ」

178: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:38:50.02 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「あの根っこが四方に蔓延って、これから出てくる木を支えるんでしょうね、」

あんじゅ「……つまり、今まさに地獄の底から、その大炎朴とやらを引き摺り上げてるところなのよっ」

あんじゅ「あの穴は、その幹の太さをそのまま表してるんだわ」

絵里「そ、そのままって……幹の太さであれなんでしょ!?」

希「……あんじゅのでかい樹みたいに、枝葉が広がればあんなもんじゃ済まないって事か、」


ブゥワァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!

179: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:40:09.80 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「うっ!!?」

希「ギ──ッ!!」

絵里「~ッッッ」

絵里「──お、お願いっ!!!」


ケェエエェエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!


ヒョォォオオオオオオオオオオオオオオッッッ

180: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:41:41.14 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「ッ……ハァッ、ハァ、」

希「なっ、」

希「なんや今のっ!!?もの凄い熱波やったけどっ!?」

あんじゅ「……なるほどね。絵里の怪鳥が居なかったら、三人漏れなく炙り焼きになってたわ」

あんじゅ「中級程度じゃ、あんな熱量は防げないもの」

絵里「……っ」


ヒョォォオオオオオオオオオオオオオオッッッッ

181: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:44:14.17 ID:zzIoV9Mo
あんじゅ「……」

あんじゅ「アンタのタイリキ君、まだ持ちそうなの?」

絵里「……分からないわ。地上に降りて確かめてみないと。あんなの持って飛べないもの」

あんじゅ「でも、これじゃあ長に近くどころか、一歩も先に出られないわね」

希「……」スッ


『疾霜大寒把っ!!』


ビュォォオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

182: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:45:48.05 ID:zzIoV9Mo
絵里「!?」

あんじゅ「あ、アナタッ!!?」

希「まぁまぁ、少しでもトリやんに元気になって貰わないとね?」

あんじゅ「……そうね。」

あんじゅ『──フッ!!』ビュォォオオオオオオッッッ


ビキビキビキッ!!!

183: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:46:55.36 ID:zzIoV9Mo
絵里「……うわぁ、」

絵里「あ、アナタ……いつもより一回り近く大きくなったわねっ」


ケェエエェエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!!!


希「よっし!大分涼しくなってきた!」

あんじゅ「これならどうにか……」

あんじゅ「──ッ!!!」

184: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/10(日) 23:57:47.20 ID:zzIoV9Mo
…………ズッズッズッ


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ


あんじゅ「!!?!?」

希「が──ッ!!?」

絵里「…………なに……あれ、」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッ

185: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:09:17.30 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「あ……あんなの……大樹の何十倍あるのよっ……」

希「……はは……こっ……この世の終わりみたいな光景や……っ」

絵里「ッッッ」

絵里「──行きなさいっ!!!」

あんじゅ「はっ!?」

希「!!?」


ケェエエェエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!!!


バフォンッ!!!

186: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:10:17.61 ID:qXrQ5M9Y
バフォンッ!!!


あんじゅ「なっ、何考えてんのよアンタッ!!?」

希「えりちっ!!!」

絵里「~ッッッ」


ケェエエェエエエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!!!


ボジュウウゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!


グェエエエェエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェッッッ

187: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:11:26.05 ID:qXrQ5M9Y
絵里「くっ!!」

あんじゅ『言わんこっちゃないっ!!!」』ビュォオオオオッ!!!

希『疾霜大寒把っ!!』ビュォオオオオッ!!!


ジュワアァァァァ……ッ


あんじゅ「くそっ!!この熱じゃあ届きっこないわっ!!」

希「えりちっ!!トリやんをコッチに戻してっ!!」

絵里「うっ、うぅぅぅっ!!」ググッ

希「えりちぃっ!!!」

188: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:13:28.41 ID:qXrQ5M9Y
エエェエエエエェエエエエエェェェェェェェェェェッ…………


あんじゅ「やっ、ヤバいわよっ!!?使者が居なくなったらっ……っ!!」

希「えりちっ!!何やっとんっ!!?」

絵里「くっ……そぉおおぉおおおおおっっっ!!!!!!」


フッ──


あんじゅ「!?」

希「えっ!?」

絵里「ッ」

189: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:28:50.59 ID:qXrQ5M9Y
キュォオオォオオォォォォォンッ


あんじゅ「たっ……助かった……っ?」

希「……トリやんもギリギリのとこやったね。」

絵里「……」

あんじゅ「──アンタっ!!一体何やってんのよっ!!?」

絵里「っ」

あんじゅ「そんなに死にたかったわけ!?私らごと!?」

190: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:29:33.90 ID:qXrQ5M9Y
絵里「……ごめんなさい。」

あんじゅ「私はワケを聞いてるのよっ!!」

希「あんじゅ。」

あんじゅ「!」

希「その話は一旦置いとこう」

あんじゅ「はぁ!?なんでよ!」

希「……長が倒れとる。」

あんじゅ「──ッ!!?」

絵里「……」

191: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:30:15.21 ID:qXrQ5M9Y
辺境の長に呼び出され、

禁忌の技、原生呪禁術の威力を目の当たりにした

魔女の絵里、希、あんじゅの三人。

その途方も無い炎の坩堝は、

絵里の上級術など簡単に退けてしまう程に

凶悪な力を示したのでした。

192: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:39:03.91 ID:qXrQ5M9Y
シュンッ!


あんじゅ「長っ!」バッ

希「大丈夫!?」バッ

真姫ママ「~っ」

あんじゅ「……あぁ、良かった。怪我とかは無いようね。」

希「単純に力の使い過ぎだよ」

真姫ママ「……あ、あらっ、コレでもすっごくセーブしたんだけどね……っ」

絵里「……」

193: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:40:36.22 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「~っ」

あんじゅ「こんなになるんなら使うんじゃないわよっ!!」

真姫ママ「……ふふっ、だめよ、こればっかりは……ちゃんと見せないとっ」

希「もうええって。喋ったらだめ」

真姫ママ「……ふ、ふふっ。ありがとうね」ヨロッ

あんじゅ「ッッッ」


あんじゅ「待ってて!今治すから!」バッ

絵里「──ッ!」

194: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:56:14.31 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ『Может работать。』パァアアアッ


『聖天術・いたいのいたいの飛んでゆけ』


ポワワァ~

真姫ママ「あ、アナタっ、聖天術なんて……」

あんじゅ「……まぁ、使えるんだからそりゃ使うわよ」

希「困ってる人が居るんだったら特にね?」

真姫ママ「ふふふっ。……それも良いのかもね。」

絵里「……っ」ギリッ

195: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:56:51.89 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「ど、どう?まだ立てそうにない?」

真姫ママ「……」グッグッ

真姫ママ「……うん、もう大丈夫。」

あんじゅ「っ」ホッ

希「いやぁ~、良かった良かった。」

あんじゅ「てゆーか!なんで直ぐに引っ込めなかったのよ!?」

真姫ママ「へ?」

あんじゅ「使者よっ!使者っ!!危うく私らまで燃えそうになったのよ!?」

196: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:57:54.40 ID:qXrQ5M9Y
真姫ママ「おかしいわね?絵里ちゃんの使者が居れば、あのくらいなら耐えられると思ったんだけど、」

絵里「……」

あんじゅ「……ふんっ、」

希「まぁまぁ、きっと長はあの使者の力と、その全容を知って欲しかったんだと思うよ?」

真姫ママ「あら~、希ちゃんは偉いわねぇ」

希「お?ハグ?ハグしてくれるん?」

真姫ママ「やんないわよぉ~」

絵里「……」

197: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 00:59:47.55 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「……はぁ、」

あんじゅ「まぁいいわ。一応コレで終わりなんでしょ?」

真姫ママ「いいえ。まだもう一つあるのよ」

絵里「!」

あんじゅ「え"っ」

希「ま、まだあるん!?」

真姫ママ「えぇ。実は、こっちの方が本題なんだけどね」

真姫ママ「あ、でも大丈夫よ?コレは唱えたりしないから」

198: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 01:01:06.96 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「……はあぁぁぁ、」

希「良かったぁ、アレよりヤバいのなんてシャレにもならんわ」

真姫ママ「ヤバさで言ったら、今のですら比較にならないけどね。」

あんじゅ「──ッ!!?」

絵里「!?」

希「……はは、うっ、うそやろ?」

真姫ママ「……」

真姫ママ「呪禁術はね、原生も含めて力を供給する為の術者をどうにかすれば、全て中断する事が可能なの。それは分かるわね?

199: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 01:02:10.93 ID:qXrQ5M9Y
あんじゅ「う、うん。」

希「そうやね。」

絵里「……」

真姫ママ「……でも、この術だけは違う。」

真姫ママ「一度発動したら最後、術本来の役目を果たすまで、ソレは作動し続けるわ」

真姫ママ「そして、コレを使えさえすれば、この星に住んでる全ての生き物だけを消す事が可能よ」

あんじゅ「~ッッッ」

希「な、なんやそれ……っ」

200: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 01:10:09.18 ID:qXrQ5M9Y
真姫ママ「今から、その文言の一部分だけを教えるわ。」

真姫ママ「でも、文言の全ては教えない。と言うより、教えられない。」

絵里「えっ、ど、どうしてっ、」

真姫ママ「それはね、私と天使長で半分にして、それぞれで管理しているからよ」

絵里「……つまり、聖文と呪文が合わさった術って事なんですね。」

あんじゅ「……」

201: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/11(月) 01:12:49.95 ID:qXrQ5M9Y
真姫ママ「その通り。聖文と呪文、そして、中立者が持つ"最初の人の骨"を揃えて、初めてこの術は発動する。」

希「ほ、ほね?」

真姫ママ「……呪禁術でも聖天術でもない、コレは、」

真姫ママ「"甦生術(コウセイジュツ)"」

あんじゅ「こうせい……じゅつ。」

絵里「……」

真姫ママ「そして、この術の名前は──」

210: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:21:26.93 ID:tcVGyDrr
この世の終わりを示すかの様な、

果てしない熱量を秘めた巨大樹


しかし、その獄炎の巨木ですらが

前座でしかなかったと宣う辺境の長


甦生術という呪名と、その文言を聞かされ

複雑な心境のまま、帰路へと着く三人の魔女

211: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:29:05.23 ID:tcVGyDrr
絵里「……」

希「……」

あんじゅ「……」

あんじゅ「……ねぇ、」

絵里「……」

あんじゅ「アナタ、どうしてあの時怪鳥をけしかけたのよ。」

絵里「そ、それは……」

212: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:29:52.74 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「あんな真似しでかしたんだから、それ相応の理由があるんでしょう?」

希「……」

絵里「お、長が倒れるのが見えたから」

あんじゅ「つまんない嘘ね。」

あんじゅ「あんな距離で見えるわけないでしょ。何百メートル離れたと思ってんのよ?」

絵里「~っ」

213: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:31:17.75 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「それに、あのデカイ根っこと爆炎の中で、人が倒れる所なんて分かるわけないわ」

あんじゅ「現に、使者が消えたあとようやく希が気付いたくらいなのよ?」

絵里「……」

あんじゅ「あのタイミングで怪鳥に攻撃させるだなんて、正気の沙汰とは思えない」

あんじゅ「……アンタ、何が目的だったの?」

214: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:42:45.32 ID:tcVGyDrr
希「まぁまぁ、終わったんだしもうええやん?」

あんじゅ「アンタは黙っててよ。」

希「っ」

あんじゅ「さぁ、答えて。」

絵里「……」


絵里「……ごめんなさい。」

あんじゅ「ッ」ブチッ

215: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:43:17.09 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「……もういいわ。好きにすれば?」

絵里「……」

希「あ、あんじゅっ!」

あんじゅ「知らないわよ。こんなヤツ」

あんじゅ「自分はおろか、他の人まで巻き添えにしておいてコレだもの。知った事じゃないわ」

絵里「……」

216: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:43:55.29 ID:tcVGyDrr
希「え、えりちっ。」

絵里「……帰る。」

絵里『懐郷翔転移。』

シュンッ!

あんじゅ「……フンッ。」

希「はぁ、」

217: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:52:12.94 ID:tcVGyDrr
希「……あんじゅ。あんなに言うことないやろ?」

あんじゅ「なにかおかしな事言った?私は当たり前の事を伝えただけよ」

希「まぁ、あのえりちの行動はウチも良くわからんのやけど、」

希「たぶん、えりちも何か考えがあってやったんやと思うよ?」

あんじゅ「……それを言わないからムカつくのよ。」

希「……」

218: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 01:54:45.99 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「この一年間、本当に色々あの子の世話をして来たのに、まだ全然信用されてないってのがさ」

あんじゅ「ホント、友達ってなんなのかしらね……」

希「……」

希「えりちを見つけた時って、どんなんやったん?」

あんじゅ「……」

あんじゅ「……ここだけの話よ。」

希「え?」

219: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:12:27.34 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「もし誰かに言ったら、黒焦げにしたあと大樹の肥料になって貰うから」

希「い、言わない言わないっ。」

あんじゅ「……」

あんじゅ「……まだ、絵里を見つけて間もない時だったわ」

あんじゅ「あの頃の絵里は、本当に心が荒みきってて……私と顔を合わせるだけで、もの凄い形相を向けてきてたわ」

希「な、なんで?」

あんじゅ「……思い出すんでしょうね。」

220: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:13:25.69 ID:tcVGyDrr
希「……ツバサか、」

あんじゅ「そう。」

あんじゅ「とにかく、絵里の憎しみ方は尋常じゃなかった。」

あんじゅ「もし、まかり間違ってツバサの話題を出そうものなら……」

希「……今日のあのえりちは、もしかしてらそう言う事やったんかな、」

あんじゅ「恐らくね。」

希「……」

221: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:27:02.07 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「……とにかく、」

あんじゅ「今のあの子とツバサは、絶対に合わせたら駄目なの。」 

あんじゅ「天使と魔女の一騎討ちなんて、それこそ最終決戦の幕開けよ」

希「……ツバサは、」

あんじゅ「え?」

希「ツバサはきっと、戦わないと思う。」

222: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:28:52.49 ID:tcVGyDrr
希「だって、あの子は今も……この事で思い悩んでるだろうから……」

あんじゅ「……」

希「……ねぇ、」

希「二人のこと、どうにかしてあげられないかな」

あんじゅ「今さら、何をどうするのよ?」

希「……っ」

223: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:30:19.26 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「ま、コレばかりは時間をかけるしかないと思うわ」

あんじゅ「平和な日々の中で、ゆっくりと彼女の憎しみを薄めて行くしか出来ないのよ」

希「……ウチらって、」

あんじゅ「ストップ。」

希「!」

あんじゅ「自分を責め過ぎよ。それに、まだこれからなんだから」

224: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:31:52.54 ID:tcVGyDrr
希「……なんか、魔女になってから強くなったんと違う?」

あんじゅ「辺境では、実力ナンバーワンだからね」

希「そうじゃなくて、」

あんじゅ「まぁ、色々あったからね。」

希「……とうとう追い抜かれてもうたかなぁ、」

あんじゅ「あら、やっと負けを認めるの?」

225: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:33:13.41 ID:tcVGyDrr
希「あれはあんじゅの反則負けやで?」

あんじゅ「頭脳プレイの勝利よ。アンタはオツムでも負けたの」

希「……はいはい。」

あんじゅ「ふふっ。」

あんじゅ「まぁ、今の絵里はだいぶ落ち着いて来てるし、そう心配しなくても大丈夫よ。」

希「……」

226: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:34:34.50 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「それに、私と長で少しづつ世話をして来たお陰もあってか」

あんじゅ「今では、元に近いくらいの精神状態に戻ったって言えると思う。」

あんじゅ「長には内緒で、私が聖天術をかけ続けてたしね」

希「……確かに、そうなのかもね。」

あんじゅ「そうよ。」

あんじゅ「最近じゃ、天界に行かせても平気なくらいまで落ち着いてたくらいだし、」

227: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:49:33.44 ID:tcVGyDrr
希「て、天界に行かせたん!?」

あんじゅ「えぇ。伍号を取って来させる為にね?」

希「もしツバサに会ったらどうするつもりだったん!?」

あんじゅ「大丈夫よ。彼女が下界に降臨する日は知ってたもの」

希「……もしかして、堕天してからも理事長と繋がりがあったん?」

あんじゅ「まさか。絵里の事探そうともしない人なんて、頼るつもりはないわ」

228: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:50:50.74 ID:tcVGyDrr
希「……本当にそんなんやろうか。」

あんじゅ「現にそうだったでしょ?だから、私たちはこうして堕天したんじゃない」

希「……」

あんじゅ「なに?」

希「……そういや、なんで伍号なんて取りに行かせたんよ?」

あんじゅ「あぁ、」

229: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:51:44.04 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「アレを使えば、絵里の心理状態をいくらか操作出来るんじゃないかってね」

希「伍号って、そんな道具じゃなかったと思うんやけど」

あんじゅ「あら、アレって着ける位置によって相手に与える心象を変えられるのよ?」

希「……ホント、七つ道具ってなんでもアリやな」

あんじゅ「まぁ、結局手には入らなかったんだけど」

230: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/12(火) 02:58:16.88 ID:tcVGyDrr
あんじゅ「──さて、そろそろ私たちも帰りましょう。」

希「えりちの事はどうするん?」

あんじゅ「私も頭冷えてきたし、あの子が話したくないってゆーのなら、それで良いわ」

希「しばらく気まずいんやろうなぁ、嫌やなぁ~」

あんじゅ「今は亜里沙も、それに凛だって居るんだし、きっと大丈夫よ。」

希「だと良いんだけどねぇ」

あんじゅ「ほら、行くわよ?」

希「へいへい」スッ

あんじゅ『……懐郷翔転移。』

シュンッ!

237: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 00:52:10.01 ID:OKMGOElm
パッ

あんじゅ「──よいしょっと、」

希「やぁ~、着いた着いたぁ」


あんじゅ「もうすっかり暗くなったわねぇ。早く帰ってお夕飯の準備しなくちゃ」

希「今日はウチ、野菜炒めのモードになっとるんよ」

あんじゅ「……んじゃ、アンタ作りなさいよ。」

希「当番はあんじゅなんよ」

あんじゅ「~っ」

238: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 01:07:38.96 ID:OKMGOElm
希「ウチ、今日は野菜炒めn」

あんじゅ「分かったからっ!!作ればいいんでしょ!?作ればっ!!」

希「やった~♪」

あんじゅ「いいからとっとと入るわよ!」

希「やっさっい♪やっさっい♪」

希「ん!?」

あんじゅ「え?」

239: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 01:08:11.60 ID:OKMGOElm
希「もしかして、まだ間に合うんやないの!?」

あんじゅ「な、なにが?」

希「ユ○姫っ!!ちょっと買って来るっ!!」

シュンッ!

あんじゅ「……」

あんじゅ「……今日はカレーにしよう。」

240: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 01:12:54.20 ID:OKMGOElm
ガチャッ

あんじゅ「ただいまぁ」

凛「あ、おかえりにゃ~」

亜里沙「あんじゅさん、おかえりなさい。」

あんじゅ「えぇ、ただいま。」

あんじゅ「……あの、絵里は?」

亜里沙「お姉ちゃんなら、お台所でご飯を作ってますよ」

あんじゅ「そう。なら私も手伝ってくるわ」

241: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 01:13:27.60 ID:OKMGOElm
亜里沙「あ、私も行きm」

凛「待って待って!」

亜里沙「え?」

凛「亜里沙ちゃんもコレ手伝ってよ!」

亜里沙「……ゲームですか、」

あんじゅ「大丈夫。コッチは私と絵里で十分だから」

242: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 01:25:41.62 ID:OKMGOElm
亜里沙「うぅ、ごめんなさい。」

あんじゅ「気にしないで」

「ねぇねぇ!早く早く!」

「もう、どこの事を言ってたんですか?」

「ここ!ここが難しいんだにゃ!」

「簡単じゃないですか!ちょっと貸してください!」

あんじゅ「……」

あんじゅ「……さて、」グッ

247: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:15:51.11 ID:OKMGOElm
ガチャッ

絵里「あら?」


あんじゅ「……」


絵里「あんじゅ、お帰りなさい。」

あんじゅ「……あの、」

絵里「え?」

あんじゅ「さっきは、その……」

絵里「さっき?」

248: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:17:20.08 ID:OKMGOElm
あんじゅ「だからその……悪かったってゆーか……」

絵里「……」

絵里「あー!うぅん、気にしないで。」

あんじゅ「!」

絵里「私の方こそ悪かったわ。ごめんなさい。」

あんじゅ「……ぇ」

絵里「それより、早くお夕飯の支度しましょ?遅くなっちゃったもの」

249: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:20:09.17 ID:OKMGOElm
あんじゅ「あ……う、うん。」

絵里「亜里沙ー!凛ー!」スッ

ガチャッ

絵里「ねぇ、少し手伝ってちょうd──」

亜里沙「あーはいはい!」カチカチッ

凛「ちょっと待って!あと少しでナ○ニクがっ!」

絵里「…………それさ、」

絵里「もしかして、私のセーブデータじゃないわよね?」

凛「え?一番上にあったヤツだよ?」

250: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:21:19.81 ID:OKMGOElm
絵里「……」

凛「……あ、」

絵里「このぉおおおぉおおおっっっ!!!!!」バッ

凛「ごめぇえええええんっっ!!!!」

亜里沙「や、やった!ニ○キュウゲット!」


「ただぁいま~」ガチャッ

251: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:22:50.56 ID:OKMGOElm
希「いや~買えた買えた!間に合ったわ~」

凛「希ちゃんおかえり~」

希「まいだた~」

亜里沙「遅いですよー!希さんも早く手伝ってください!」カチカチッ

希「大丈夫~。ここで応援してるから~」

絵里「うわあぁぁぁ……こんなのまたやり直しじゃないのよぉ……」

252: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:26:22.95 ID:OKMGOElm
凛「大丈夫だよ。凛のとそんなに変わんなかったもん」

絵里「貴方まだ最初の方じゃない!私税務署長まで行ったのよ!?」

亜里沙「野生……野性の勘を取り戻さなくちゃ……」カチカチッ

希「エラい弱肉強食なゲームやんなぁ」

希「あ~。なんかコレ見てたらお腹すいたぁ~」

ガチャッ

253: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:27:36.52 ID:OKMGOElm
希「あんじゅ~。お腹空いたよ~」

あんじゅ「……」トントンッ

希「あんじゅ~。ポニー解いてエプロン取っていい~?」

あんじゅ「……」ジュワ~ッ

希「……」

希「……」ピトッ

あんじゅ「ひぃっ!!?」ビクッ

254: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:34:08.92 ID:OKMGOElm
希「おぉ。やっと気付いた」

あんじゅ「なっ……なんなのよアンタっ!?」

希「だって、呼んでも全然返事しないんやもん」

あんじゅ「え?あ、あぁ。ごめんなさい」

希「……良かったね。」

あんじゅ「え?」

希「いつも通りでさ。」

あんじゅ「……」

あんじゅ「…………そうね。」

255: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:35:18.44 ID:OKMGOElm
希「?」

あんじゅ「さぁ、そろそろ出来るからあの子たちも呼んできてちょうだい。」

希「は~……っ!?」

希「カレーっ!!?野菜炒めはっ!?」

あんじゅ「ちゃんと入ってるわよ?」

希「入ってる!?ちゃんと!?」

あんじゅ「炒めた野菜を入れて、それをカレーにしたの」

希「なぜっ!!?」

256: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:36:26.98 ID:OKMGOElm
あんじゅ「私が食べたかったから」

希「や……やさいやさいやさい……っ」

あんじゅ「いいからとっとと呼んできなさい」

希「うぅ……」ガチャ

バタンッ


あんじゅ「……」


あんじゅ「……絵里。」

257: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:39:07.80 ID:OKMGOElm
あんじゅ「アナタ、聖天術で私とケンカした記憶だけを消したのね」

あんじゅ「しらばっくれたって分かるのに……何年一緒に居たと思ってるのよ。」

あんじゅ「使ったと言う事実さえ知ることが出来れば、あとは前後の記憶から、その状況を理解する事はできる」

あんじゅ「……」


あんじゅ「……でも、」




あんじゅ「ツバサの記憶だけは、何も消さないのね。」

258: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:44:07.88 ID:OKMGOElm
いつも通りの光景


極々普通の、平和なやり取り

259: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:45:28.12 ID:OKMGOElm
凛「にゃー!亜里沙ちゃんにんじん残してるー!」

亜里沙「り、凛さんのために残してたんです!」

絵里「気にしなくていいのよ?亜里沙一人で全部食べて?」

亜里沙「うぅぅ……っ」

希「お子様やんなぁ~」モグモグ

亜里沙「希さんはピーマンがまだ残ってますから!」

希「嫌いじゃないも~ん♪」

260: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:46:27.50 ID:OKMGOElm
それは、初めから何事もなかったかの様に


全てが、泰平のまま過ごして来たかの様に

261: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:47:07.00 ID:OKMGOElm
絵里「ちょっと!?今わたしのお皿に入れたでしょ!?」

亜里沙「違うよぉ~。それお姉ちゃんのだよ~?」

希「~♪」

絵里「のぞみっ!!貴方もやめなさいっ!!」

凛「~♪」

絵里「なんでお肉は取っていくのよぉーっ!!」



只々、優しげに流れていく時間。

262: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:50:33.96 ID:OKMGOElm
あんじゅ「……」

あんじゅ(……平和ってこと、なのよね。)

あんじゅ(こうして呑気で幸せな毎日を過ごして行ければ……そうすれば、)

あんじゅ(いつかきっと、この子の心も昔の様に戻ってくれるって、そう信じているわ)

あんじゅ(だって、アナタは心優しい天使なんですもの)


絵里「もぉー!」

263: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:51:14.52 ID:OKMGOElm
あんじゅ(……きっと、)

あんじゅ(いつかまた、あの5人で笑い合える様に、)

あんじゅ(いつかまた、みんなで仲良く暮らして行ける様に……)

あんじゅ(その日まで、一緒に頑張って行きましょう)



絵里「あははは!」



あんじゅ(……ねぇ、絵里。)

264: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:55:23.10 ID:OKMGOElm
──しかし、


彼女の中で、絶えず燃え盛る復讐の炎は

決して消える事はありませんでした。

265: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/13(水) 12:57:01.01 ID:OKMGOElm
絵里『……』


ツバサ『……』




全てを裏切り、何もかもを置き去りにして

彼女は今、まさに復讐の鬼と化しています


この世界が終わるまで


もはや、一刻の猶予もないと言うのに。

274: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/14(木) 20:28:43.45 ID:tHTqbDxe
/cVσ_VσV 失礼ながらもう一つだけ
     お医者の真姫ちゃんとほのパパ
     この二人の発明品をご紹介します。


真姫の発明品

【フレキシブル・ケース】

第一段階:『医療用・荷電粒子砲』
演奏曲目:僕らのLIVE 君とのLIFE

第二段階:『医療用・フォトンレーザー[LXD多凸型]』
演奏曲目:Music S.T.A.R.T!!

第三段階:『医療用・◾︎◾︎◾︎◾︎[○○○○○ ○○○○○]』
:演奏曲目:♪♪♪♪♪♪♪~♪


真姫とほのパパの共同発明品

【遠距離通信機】

伝伝電


ほのパパの発明品

【パワー・プットマシン】

ションボリ君 子供用(消しゴムサイズ)
チュウリキ君 大人一人分(携帯サイズ)
タイリキ君  大人十人分(p○4サイズ)
カイリキ君  大人百人分(風呂桶サイズ)

【パワー・コネクトリング】

手を繋いで歩こう

287: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:25:04.65 ID:4vAOpLIB
──彼女は言いました。



「全ての人たちが幸せになれば良い」




288: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:27:30.39 ID:4vAOpLIB
彼女は言いました。



「今日からお友達だね」




289: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:29:41.26 ID:4vAOpLIB
彼女は戒めました。



「親友を傷付けてはいけない」




290: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:31:22.43 ID:4vAOpLIB
彼女は後悔しました。



「親友を傷付けてしまったのだ」








彼女は立ち上がりました。



「仲直りをする為の努力をすべきだ」




291: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:33:34.36 ID:4vAOpLIB
彼女は思いました。


「彼女の望んだ事をやれた。だから、もう大丈夫」






彼女は拒みました。


「コレは現実の事なのか?」






彼女は哀しみました。


「私の未来が奪われた」



292: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:35:04.83 ID:4vAOpLIB
彼女は叫びました。

「どうして私が?」




彼女は知りました。

「この世には、救えないものがある」




彼女は定めました。

「その時のために生きよう」


293: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:36:32.73 ID:4vAOpLIB
……そうして、






彼女は決めました。











「彼女が築く未来を消そう」










と、

294: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:39:52.10 ID:4vAOpLIB
『……響け。氷結の囀りよ。』



ツバサ『……』


絵里『その姿たるや、千の枸橘蔓。』ヒョォオオオオッ!




真姫「ッッッ」

にこ「ちょっ!?」

こころ「えっ?えっ!?」

亜里沙「お姉ちゃんっ!!!」

穂乃果「だ──ッ!」



絵里『呪禁術。』




『凍星ノ怪鳥』

295: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:42:44.81 ID:4vAOpLIB
バッ!


穂乃果「だめぇえええぇええええええっっっ!!!!!!!」ダッ


希「!」

あんじゅ「えっ!?」

英玲奈「おい!?」


……ダッダッダッダッ!!!


花陽「ひっ!?」

凛「ちょ、ちょっ──ッ!」

ドスンッ!!!

296: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:44:14.25 ID:4vAOpLIB
穂乃果「ぐえっ!?」ドンッ

凛「にゅっ!!?」バタッ

花陽「ひぎっ!!」ドスッ


プシュン……。


穂乃果「いっ……ててて……」

凛「ふにゃあぁぁ……っ」

花陽「っ……っっ」

297: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:45:52.36 ID:4vAOpLIB
こころ「うわぁ……」

英玲奈「……」

希「あっらぁ~」

あんじゅ「……ハァ、」


穂乃果「はたぁ~っ、ご、ごめんねぇ?二人とも大丈夫?」

凛「うにに……っ、たぶん……」ググッ

花陽「はわっ、はわぅぅ……メガネメガネ……っ」スッスッ

298: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:57:39.92 ID:4vAOpLIB
真姫「……」

にこ「……アンタたち、」

あんじゅ「ちょっと!連結切れちゃったじゃないのよ!?」

雪穂「お姉ちゃん!お願いだから少し落ち着いてったら!」

穂乃果「うぅ~っ、ごめぇーん。」

英玲奈「……まぁいい。取り敢えず、先ずは行動する事が先決だ。」

英玲奈「そうすれば、それなりの結果が後からついて来るだろう」

こころ(前向きなんだか投げやりなんだか、よく分からないセリフだ……)

299: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/16(土) 23:59:39.04 ID:4vAOpLIB
真姫「そうね。それじゃあ早速、あのボンクラ天使の居る浜辺に行きましょう」

真姫「ママ、移動をお願いしてもいい?」

真姫ママ「はいは~い♪」

英玲奈「ちょっと待て。」

真姫「!」

英玲奈「このまま大勢でぞろぞろ行っても、目立つ上に効率的じゃない。」

真姫「……目立ってなにか問題があるの?」

英玲奈「ツバサはともかく、絵里には見つかりたくないんだ。」

300: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:01:59.91 ID:prfD7Lwn
真姫「なんでよ?あの金髪魔女も見つけたいんだから丁度いいじゃない。」

英玲奈「今から約1時間後に、あの浜辺で対峙していると言うことは、アレより少し前に絵里はツバサを見つけていたという事だろう?」

真姫「……それがなんなのよ。」

英玲奈「つまり、復讐心に駆られて臨戦態勢に入ってしまった絵里を前に、戦えもしない者が遭遇してしまったら、それこそなにが起こるか分からない。」

英玲奈「だから、ある程度の状況に対処出来る様な組み合わせで、尚且つ、機動力を損なわない人数で行動した方が良い。と言うことだ。」

301: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:11:03.36 ID:prfD7Lwn
英玲奈「異論はあるか?」

真姫「……」

真姫「……貴方、前にあった時と随分印象が違うんだけど、」

英玲奈「そうか?」

真姫「……まぁいいわ。異論も無し。」

英玲奈「分かった。」

あんじゅ「ちょっと、アナタたちで勝手に話進めないでよ。」

ほのママ「もうちょーっとだけ、分かりやすく説明して貰えたりする?」

雪穂「お母さん……」

302: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:12:43.26 ID:prfD7Lwn
英玲奈「つまりだ。移動手段を持つ者をリーダーに据えて、これからチームを作るんだ」

英玲奈「まず、移動呪文、または聖文を使える者は一歩前に出てくれ。」

ことり「はぁ~い」スッ

理事長「はぁ~い♪」スッ

真姫ママ「はい」スッ

あんじゅ「……」スッ

希「はいはーい!」ダッ

303: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:25:55.12 ID:prfD7Lwn
英玲奈「……よし。私を含めたこの六人が、各チームのリーダーだ。」

英玲奈「残りは何人いる?」

亜里沙「え?あ、はい!えっと……」

雪穂「13人です。」

亜里沙「っ」

希「……」

英玲奈「13か……なるほど。」

真姫「ちょっと待って。」

英玲奈「ん?」

304: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:35:06.28 ID:prfD7Lwn
真姫「花陽は本当にただの人間よ。彼女まで巻き込む事はないでしょう?」

英玲奈「む、そうか。」

花陽「あ、あの、」

英玲奈「?」

花陽「わたしも……ツバサさんを捜しに行かせて下さい。」

真姫「花陽!?」

花陽「わ、わたし……あの監督さんを……ツバサさんを助けたいんです。」

花陽「だから、少しでも力になれるのなら……私も手伝いたいっ」

305: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:42:49.86 ID:prfD7Lwn
英玲奈「アイツらの仲裁に間に合わない。または失敗した場合、恐らく怪我では済まないが……」

花陽「~ッッッ」ジッ

英玲奈「…………分かった。」

花陽「!」

英玲奈「だが、お前は聖天術も呪禁術も使えないんだ。それだけは、努々忘れるんじゃないぞ?」

花陽「は、はいぃ……」

凛「え?かよちん使えr」ガバッ

凛「もごっ!?」

306: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:44:31.76 ID:prfD7Lwn
英玲奈「ん?なんだ?」

真姫「いえ、なんでもないわ。」グッ

英玲奈「……そうか。」

凛「もがーがっ!」バタバタッ

真姫「余計な事は言わなくていいの」

真姫「それとも、あの子も戦わせるつもり?」

凛「!」ピタッ

凛「……ごめん。」

真姫「良い子ね。」ナデナデ

307: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:46:03.94 ID:prfD7Lwn
英玲奈「では、1チームだけ三人。他は二人の全13人になる。振り分けを始めよう。」

あんじゅ「何を基準にするの?」

英玲奈「……そうだな。」

英玲奈「まぁここは、下手に混成チームを作るよりかは、普段から組んでいる者同士で集まった方が効率がいいだろう」

ことり「だとすると……」

あんじゅ「う~ん。」

「よし!」

あんじゅ「え?」

308: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:50:03.45 ID:prfD7Lwn
希「のんたんチーム発表します!」

希「先ずは亜里沙ちゃん、君に決めた!」

亜里沙「!」

あんじゅ「……あぁ。確かにそれが良いでしょうね」

希「ウチのパートナーやからね!」

英玲奈「で、もう一人はどうする?」

希「んふふ。それはねぇ」

309: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:51:21.23 ID:prfD7Lwn
希「──雪穂ちゃん!」

雪穂「えっ!?」

あんじゅ「アナタ、あの子と初対面でしょ?どうしてなの?」

希「いやいや、コレでもちゃんと考えてるんよ?」

希「と言うわけで、ウチのチームは亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんで決定!」

雪穂「あ、あはは。よろしくお願いします。」

亜里沙「……」

310: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:52:02.08 ID:prfD7Lwn
英玲奈「ふむ。では、次に決まってる奴はいるか?」

穂乃果「はいはいはーい!」

英玲奈「ねぼ助。お前はリーダーじゃないだろう」

穂乃果「穂乃果とこころちゃんは、ことりちゃんチームに入ります!」

こころ「はぁ!?」

ことり「!」

英玲奈「……だ、そうだが?」

311: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:52:51.67 ID:prfD7Lwn
ことり「う、うん。ことりも異議なし。です♪」

穂乃果「えへへ~。よろしくねぇ」

こころ「ハァ、しょうがないですねぇ」

にこ(嬉しそうな顔しちゃって)クスッ

英玲奈「……お前たち3人は、絵里と遭遇しても絶対に近づくなよ?」

穂乃果「へ?なんで?」

312: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:53:59.10 ID:prfD7Lwn
英玲奈「お前たちの中で、攻撃手段を持っている者が居ないからだ」

ことり「そ、そうですねぇ」

英玲奈「だから、もし偶然出会ってしまった場合は、迷わず天界に戻れ。いいな?」

穂乃果「穂乃果っ、パンチとキックくらいなら出来るよ!?」

英玲奈「……」

こころ「逃げます!影を置いてけぼりにする勢いで!」

英玲奈「……あぁ、是非そうしてくれ。」

313: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:55:22.36 ID:prfD7Lwn
英玲奈「あと4チーム。次は?」

真姫ママ「は~い」

英玲奈「ん、アンタか。誰と組む?」

真姫ママ「私は凛ちゃんと花陽ちゃんと組みまーす。」

花陽「!」

凛「わぁーい!かよちんと一緒だにゃー!」

真姫ママ「よろしくね?」

凛「はーい!」

花陽「よ、よろしくお願いしますっ」

314: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:56:58.60 ID:prfD7Lwn
英玲奈「……ご夫妻。」

ほのママ「へ?」

ほのパパ「?」

英玲奈「申し訳ないが、私と組んでくれないか?」

ほのママ「い、いいけど、どうして私たちなの?」

英玲奈「あぁ。このチームを、他のチームとの橋渡し的な役割にしたいんだ。」

英玲奈「だから、どうか頼む。」ペコッ

315: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 00:58:42.82 ID:prfD7Lwn
ほのママ「あはは、そんなに畏まらなくてもいいのよ?」

ほのママ「なんてったって、貴方は私の娘の先生なんだから」

ほのパパ「……」

英玲奈「申し訳ない。宜しく頼みます。」

ほのママ「よろしくねぇー!」

ほのパパ「☆」

英玲奈「……では次、誰かいるか?」

316: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 01:02:19.33 ID:prfD7Lwn
理事長「はいはぁ~い」

英玲奈「おぉ、理事長か」

理事長「わたしはぁ~、漆号ちゃんズの三人と組むわぁ~」

ヒデコ「!?」

フミコ「!」

ミカ「い、いいんですか!?」

理事長「もちろんよぉ~。」

理事長「それにぃ~、コレからあなた達の力が必要になってくるしねぇ~?」

317: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 01:03:32.88 ID:prfD7Lwn
英玲奈「ふむ。だと……」

あんじゅ「あ!」

真姫「うわっ」

英玲奈「残りはお前たちか」

にこ「はあぁぁぁ……」

真姫ママ「あらら」

理事長「うふふふ~♪」

希「やってしまったねぇ~」

318: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 01:04:46.22 ID:prfD7Lwn
あんじゅ「うわあぁぁっ……凛たち誘うの忘れてたぁ……っ」

真姫「あーもぅっ!」

真姫「こんなのなら、ママの時にでも抗議しておくんだったわ!」

あんじゅ「コッチの台詞よっ!!アンタと組まされるくらいなら、ミジンコと一緒にいた方がずっとマシだからっ!!」

真姫「はぁあああっ!!?ゾウリムシの分際でよく言えたもんだわっ!!なに!?仲間意識芽生えちゃった!!?」

にこ「……」

319: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 01:06:02.52 ID:prfD7Lwn
あんじゅ「お願い誰か代わってっ!!!このヤブ医者以外なら誰でもいいからぁ!!」

真姫「みんな気を付けなさいっ!!!コイツに関わるとイボイボの呪いに罹るから!!」

あんじゅ「そんっなに燃え尽きたいのねッッッ!!!!!」ズボゥッ!!!

真姫「その前に悲鳴を上げさせてやるわッッッ!!!!!」ビシィッ!!!

シャキィーーーンッッッ!!!!!

真姫・あんじゅ『!!?!?』


「──悪いけど、」


にこ「今後ケンカがしたいのなら、私の射程距離外でやる事ね。」

320: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/17(日) 01:09:59.84 ID:prfD7Lwn
あんじゅ「かっ、髪っ……前髪がっ……っ!?」

真姫「しゃ……っ、シャギー入った……っ!?」

にこ「次は、あんたらの眉毛全剃りしてやるわよ?」

にこ「それが嫌なら、私の前では大人しくしておく事ね。」

真姫「っ……っっ!」

あんじゅ「す、すみませんでした……っ」

326: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:27:24.13 ID:NhWXjJg3
亜里沙「……ねぇ、こころちゃん。」

こころ「出ましたっ!!お母さん直伝、伝家の包丁・二つ研ぎバージョンッ!!」

希「お、お母さん直伝なん?」

こころ「はい!料理スキルを極め過ぎて、遂に出されたもの全てを刻める様になったんです!」

亜里沙「は、はは……」

希(……もうからかうのやめよ。)

327: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:33:13.41 ID:NhWXjJg3
英玲奈「にこ助。その辺にしておけ、話が進まない」

にこ「だぁれがにこ助よっ!!!」

真姫「はぁ……」

あんじゅ「3年くらい寿命が縮まったわ……」

英玲奈「取り敢えず、これで6チーム全ての構成が決まったワケだ」

英玲奈「では、これから各チームごとに移動を──」

穂乃果「ねぇねぇ!」

328: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:35:00.54 ID:NhWXjJg3
英玲奈「ん?なんだ。」

穂乃果「せっかくだからさ!チーム名決めようよ!」

あんじゅ「はぁ?」

真姫「そんなのいいから、とっとと行きましょうよ」

穂乃果「ダメだよ!みんなツバきゅん達とこの世界を守る為に集まったんだよ!?ちゃんと気持ちを一つにしなくちゃ!!」

にこ「……気持ちだけにしときなさいよ。」

329: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:36:22.33 ID:NhWXjJg3
希「いやいやぁ、名前があるのと無いのとじゃ、かな~り気合いの入り方が違うからねぇ」

穂乃果「でしょ!?」

ことり「ことりも賛成かもぉ♪」

理事長「わたしもぉ~♪」

ミカ「はいはーい!私もー!」

フミコ「宜しくね?穂乃果ちゃん。」

真姫ママ「いい名前にしてね?」

330: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:37:07.46 ID:NhWXjJg3
あんじゅ「~っ」

真姫「……好きにして、」

ほのママ「ご、ごめんねぇ?家の子が勝手なこと言っちゃってぇ……」

こころ「いえいえ。名前って結構大事ですから」

英玲奈「で?どうするんだ?」

穂乃果「ふふふのふ。実はもう決まってるんだ~」

331: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:38:04.68 ID:NhWXjJg3
ヒデコ「へ?決まってたの?」

穂乃果「うん!」

ヒデコ(……ムーンティア○アクショ○ズが良かったのに)

亜里沙「なんて名前なんですか?」

穂乃果「えへへ。それはね……」


穂乃果「チーム"ポン・デ・リング"!!」

332: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:39:23.42 ID:NhWXjJg3
こころ「……」

亜里沙「……」

理事長「賛成~♪」

穂乃果「やった!」

真姫「……」

あんじゅ「……」

ことり「可愛くて良かったねぇ♪」

にこ「……そうね。」

333: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:40:54.56 ID:NhWXjJg3
英玲奈「では、これから各チームに分かれて海岸沿いを捜索する。」

英玲奈「それと、リーダーの5人には伝伝電を渡しておくから、アイツらを見つけたら直ぐ報せる様に。いいな?」

穂乃果「よぉーっし!!行くぞぉーっ!!れ」

ことり「おー!」

こころ(……この豪華メンバーで、わたし役に立てるのかなぁ)

希「いやぁ~。ずっと篭りっきりだったからさぁ、早く外出たいわぁ~」

理事長「わたしもぉ~」

雪穂(呑気過ぎない?)

334: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:43:49.49 ID:NhWXjJg3
あんじゅ「会ったら先ず2、3発は引っ叩いてやらなきゃ」

真姫「そんなの生温いわ。涙も枯れるまで鞭打ちの刑よ」

亜里沙「あ、どのくらい迷惑掛けたかを文章にして、みんなの前で朗読して貰うとかどうですかね?」

にこ(……このドSども、)

真姫ママ「絵里ちゃん、買ったゲームそのまま持ってったのかしら?」

ミカ「えっ、そっちの心配ですか!?」

凛「その心配はしなくていいと思うにゃ~」

花陽「はわっ……た、闘う……のかなっ、」

フミコ「大丈夫だよ。みんな付いてるから」

335: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:47:08.35 ID:NhWXjJg3
英玲奈「みんな。あのデコとポンコツの仲裁をして、序でに世界も救いに行こう。」

英玲奈「──じゃあ行くぞ!」バッ


英玲奈「チームッ!!ポン・デ・リングッ!!!」


『ォオーーーーッッッ!!!!!!!!!』


こころ「えいえいーっ!」

亜里沙「だから逆だってば!」

ヒデコ(ビュー○ィーセ○イン・ア○ーズでも良かったなぁ……)

336: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 01:59:18.80 ID:NhWXjJg3
あんじゅ「じゃ、私たち先に行くわね」

真姫「……」ガシッ

あんじゅ「ちょっと!?頭掴まないでよっ!!」

真姫「うるっさいわねぇ!!とっとと行きなさいよっ!!」

あんじゅ「なに!?海のど真ん中に落とされたいの!?」

真姫「やってみなさいよっ!!アンタも道連れにしてやるからっ!!」

にこ「……」チャキッ

あんじゅ「あっ……い、いってきまぁ~すっ」

真姫「にっ、にこちゃん!?ソレ首に当たってるからぁ!!」


シュン!

337: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 02:00:43.67 ID:NhWXjJg3
希「……あ~、」

希「そんじゃあ、ウチらも行こうかねぇ?」

亜里沙「あ、分かりました。」

雪穂「お願いします」スッ

希「……雪穂ちゃん。もうちょいちゃんと捕まって」

雪穂「え?う、腕じゃ駄目でしたか?」

希「移動の時にね?空間的なアレがアレやから、身体は密着させてないとダメなんよ」

亜里沙「大ウソだから」

338: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 02:02:14.54 ID:NhWXjJg3
雪穂「ぇ……え?」

希「亜里沙ちゃん!真面目な話してるんよ!?邪魔したらダメ!」

亜里沙「長と一緒に行こうかなぁ~」

希「ごめぇーん!!真面目にやるからぁ!」

雪穂「……」

亜里沙「……ハァ。じゃあ、私たちも行きますね。」

雪穂「お母さん。お父さんの事よろしくね?」

希「あ~あ。」


シュン!

339: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 02:10:18.14 ID:NhWXjJg3
ほのママ「いってらっしゃーい!」

ほのパパ「……」

英玲奈「お二方、私たちも行こう。」

ほのママ「えぇ。分かった。」

穂乃果「お母さん、お父さんの事頼んだからね!」

ほのママ「大丈夫。ちゃんとそばに居るから!」

こころ(この家族って、色々逆なんだなぁ)

ほのパパ「……」

シュン!

347: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:02:26.93 ID:NhWXjJg3
穂乃果「頑張れー!」

こころ「いやいや、私たちも行くんですって」

ことり「……」カキカキ

理事長「あらぁ~、流石ねぇ~」

ことり「えへへ、そうでしょ?」

理事長「可愛いものはちゃんとメモしておかないとねぇ~♪」

ことり「ねぇ~♪」

348: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:03:05.07 ID:NhWXjJg3
ミカ「あ、あのっ、」

フミコ「急がないと時間が……」

理事長「あららぁ~、そう言えばそうねぇ~」

ことり「私たちも急がなくっちゃ」

理事長「いそげいそげ~♪」

ことり「ぱっぱっぱ~♪」

ヒデコ(なんだろう。この親子といると全てのやる気が削がれて行く……)

349: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:05:26.07 ID:NhWXjJg3
真姫ママ「──あら?」

凛「ん?」

真姫ママ「ん?あれぇ?」パッパッ

凛「どうしたの?」

真姫ママ「変ねぇ……私のバッグがない。」

凛「バッグなんて持って来てたっけ?」

真姫ママ「うん。色々と要り用になると思って持って来てたんだけど……おかしいわねぇ」

350: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:07:02.98 ID:NhWXjJg3
理事長「バッグってぇ~、前から持ってた~あの可愛くないヤツ~?」

真姫ママ「……別に可愛いのは目指してないんだけど、」

理事長「ダメだよぉ~?女の子なんだもん、ちゃんと可愛いを目指さなくちゃ~」

真姫ママ「…………トシカンガエナサイヨ……」ボソッ

理事長「……」

真姫ママ「あ"っ!」

真姫ママ「ちがっ……っ!今のは違うからね!?」

理事長「……」

351: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:07:53.28 ID:NhWXjJg3
真姫ママ「そ、そう!都市カンガルー祭!都市カンガルー祭って言ったの!!」

こころ(なんですかソレ)

真姫ママ「ホントよ!?ホントだからっ!!」

理事長「……」

真姫ママ「ッッッ」

理事長「……面白そうなお祭りだねぇ~♪」

真姫ママ「そ、そうよねぇ~っ」


理事長「あと2回だよ~」

真姫ママ「」

352: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:10:14.13 ID:NhWXjJg3
真姫ママ「り、凛ちゃん……っ、花陽ちゃんっ。もう行きましょう……っ!」ビクビクッ

花陽「へ?」

凛「?」

ヒデコ「あと2回ってなんですか!?」

真姫ママ「い、いや……あの……っ」

ミカ「あと2回何かしたらどうなるんですか!?」

真姫ママ「どうなるってゆーか……どうにかなるってゆーか……」

353: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:10:58.17 ID:NhWXjJg3
理事長「ん~?」

真姫ママ「ひぃっ!?」ビクッ

真姫ママ「り、凛ちゃん!花陽ちゃん!行きましょう!!」バッ

花陽「え!?は、はい!」

凛「退散にゃ~」

シュン!

理事長「あらぁ~」

354: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:11:51.63 ID:NhWXjJg3
こころ「(……あ、あの、)」ヒソ

ミカ「え?」

こころ「(2回って、なんのことなんですか?)」ヒソヒソ

ミカ「(そ、それが、私たちにもよく分かんないんだよぉ)」ヒソヒソ

フミコ「(理事長とはもう数十年の付き合いだけど、未だによく分かんない所が多いんだよね……)」ヒソヒソ

ヒデコ「(昔からあんな感じだったよねぇ)」ヒソヒソ

こころ「~っ」

355: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:13:26.02 ID:NhWXjJg3
こころ「(こ、ことりさん!)」

ことり「へ?」

こころ「(理事長のアレって、なんの事なんですか!?)」

ことり「ん~、簡単に言うとねぇ」

こころ「っ」

ことり「煮詰めて濾す。って言うのが、一番近い感じかなぁ?」

こころ「……は?」

356: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:14:09.22 ID:NhWXjJg3
穂乃果「ねぇ、なんの話してるの?」

理事長「なんでもないわよ~♪」

理事長「それじゃあ三人とも~、そろそろ行きましょ~」

ヒデコ「!」

ミカ「あ、はいはい!」

フミコ「オッケーです。」

理事長「はぁ~い、ぴよぴよ号発進しまぁ~す♪」

シュン!

357: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:23:37.64 ID:NhWXjJg3
こころ「……」

ことり「あはは、最後になっちゃったねぇ」

こころ「──はっ!そ、そうだ!」パッ

こころ「早く追いかけましょう!あの二人が遭遇する前に止めないといけませんから!」

ことり「……でも、あんな事された後なのに、私たちが説得したくらいで仲直りなんて、させられるのかなぁ……」

こころ「そ、それはっ、」

「大丈夫っ!!」

こころ・ことり『!!?』

358: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:25:41.53 ID:NhWXjJg3
穂乃果「あんな事があっとしても、やっぱりあの二人は友達だったんだもん。」

穂乃果「それに、亜里沙ちゃんのお姉さんにしたってそうだよ。」

穂乃果「嫌ってるって言うことは、それだけ相手の事を意識してるって事なんだから」

穂乃果「だから、私たちが協力すれば、絶対に仲直り出来るんだよ!」

穂乃果「うぅん、させて見せる!」

ことり「穂乃果ちゃん……」

こころ「……そうですね。その為の私たちですもんね。」

359: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:26:51.72 ID:NhWXjJg3
穂乃果「よぉーし!頑張って行こーっ!!」

ことり「おーっ!」

こころ「えいえ……おーっ!」

穂乃果「ことりちゃん、お願い!」

ことり「うん。任せて♪」


ことり『……Забота о детях. играть. под. Мамеичи пляж』


『聖天術・ひくいひくい』キュィイイッ


シュンッ!




















ポンッ



「……」

360: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:29:39.09 ID:NhWXjJg3
一人の天使、一人の魔女

そして、一つの世界を救う為に立ち上がった

チーム【ポン・デ・リング】


しかしながら、その立ち上がりはなんだか緩く、

まるで、海岸沿いをお散歩にでも出掛けるかの様な

なんとも言えない雰囲気を醸し出しながら、

それぞれ、決戦の地へと赴きました。


その水面下を這いずり回る

不穏な影があるとも知らずに……。

361: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:38:09.53 ID:NhWXjJg3
ザザァ--ン…………


「うわぁ~、」


穂乃果「相変わらず広いねぇ~」

雪穂「私はもう見飽きたかなぁ」

ほのママ「あら、いつ見てもいい景色じゃない」

ほのパパ「……」

ほのママ「──さてっと、それじゃあそろそろ、お夕飯の準備でもしよっかな」

穂乃果「あ!穂乃果オムカレーがいい!」

雪穂「私はハヤシライス」

ほのパパ「♪」

362: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:40:24.03 ID:NhWXjJg3
ほのママ「よし。じゃあ、間を取って──」

「おい」

ほのママ「!」

英玲奈「……」

ほのママ「あ、あはは……冗談で~す。」

英玲奈「頼むから一家全員でコントしないでくれ。夕飯の相談もだ。」

雪穂「ご、ごめんなさい。つい……」

穂乃果「だってお腹すいたんだも~ん」

363: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:43:40.40 ID:NhWXjJg3
英玲奈「私だって眠気を押してここに居るんだ。我慢出来ないならコレでも食ってろ」ゴソゴソッ

穂乃果「え!?なんかあるの!?」

英玲奈「……ほれ。」スッ

穂乃果「ぉお!"サンディー"!」

穂乃果「先生も食べるんだね!」

英玲奈「貰い物だよ」

穂乃果「それじゃあ、いただきまぁーんっ!」パクッ

364: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:44:50.81 ID:NhWXjJg3
穂乃果「……」モムモム

英玲奈「……なに味だ?」

穂乃果「も"ぇっ!!」

穂乃果「これピーマンじゃんっ!!」

英玲奈「お、野菜シリーズだな。」

穂乃果「うぃ~っ……最悪ぅ~っ、」

英玲奈「ハッハッハッ」

雪穂「……アレって、本当に飴なんですか?」

希「あぁ、えっとね、」

365: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:49:34.09 ID:NhWXjJg3
希「アレは"サイオーキャンディー"って言って……まぁ、天界ではポピュラーなアメちゃんやね。」

亜里沙「さいおー???」

希「うん。作った人ですら、食べるまで何味か分かんないアメちゃんなんよ」

雪穂「え"っ、そ、そんなのがポピュラーなんですか!?」

希「今のとこ確認されてる味はねぇ、レモン。いちご。りんご。バナナ。オレンジ。メープル……」

雪穂(あ、なんだ。割と普通の飴っp)

366: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/18(月) 23:50:38.27 ID:NhWXjJg3
希「輪ゴム。画用紙。オイル。非常口……」

雪穂「!!?」

亜里沙「ひ、非常口の味ってなんですか!!?」

希「さぁ~、それはウチも当たった事ないからなぁ~」

雪穂(……絶対食べない様にしよう。)

あんじゅ「はいはい、少し静かにしなさい。」

真姫「で、これからどうするの?」

367: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 00:01:40.20 ID:VDu8NepM
英玲奈「よし。それでは、これからチーム毎に分かれて捜索するぞ」

英玲奈「先ずは、この場所を起点に左右に分散して探そうと思う」

真姫「……ふむ。」

英玲奈「辺境の長。アンタは、海を正面にして右手の遠方、ここから1キロ先を探してくれ」

英玲奈「そして理事長。アンタは海を正面に、左手の遠方1キロ先を頼む」

理事長「はぁ~い」

真姫ママ「了解でーす」

368: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 00:02:35.70 ID:VDu8NepM
英玲奈「次に、希は右手側。あんじゅは左手側。ここと遠方組みの中間距離を捜索してくれ」

希「はいよ~」

あんじゅ「了解。」

英玲奈「最後にトサカチーム、お前たちはここで待機だ。」

ことり「た、待機?」

英玲奈「あぁ。もしかしたら、術でこの場所に移動してくるかも知れないだろ?」

英玲奈「それに、目視しながら距離を取る為の目印役でもあるんだ。頼んだぞ?」

369: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 00:03:52.28 ID:VDu8NepM
こころ「な、なるほどっ」

ことり「分かりました。」

英玲奈「私たちは、海とは反対側。つまり音ノ木村方向を探してみる」

英玲奈「以上。ここまでで何か質問はあるか?」

希「せんせ~おしっこ~」

英玲奈「……あんじゅ、」

あんじゅ「ほっ!」ドスッ

希「ぷにゅん!!」ガクッ

370: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 00:04:58.07 ID:VDu8NepM
英玲奈「お互い、それぞれを点として視認できる程度の距離で移動して欲しい」

穂乃果「どーゆーこと?」

にこ「あんたは動かないんだから気にしなくていいの」

こころ「そうです。ジッと待ってなきゃダメなんですよ?」

穂乃果「おすわりかぁ~、苦手なんだよなぁ~」

ことり(お、おすわりしてる穂乃果ちゃん……っ!)メモメモ

英玲奈「──ではみんな、頼んだぞ!」


『オォーッ!!!!!』

376: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:19:08.75 ID:VDu8NepM
「大体ここら辺で良いんじゃないんですかね?」


理事長「そぉねぇ~。なんとなぁ~く希ちゃんたちも見えるしぃ~」

ヒデコ「と言っても、周りにはだぁーれも居ませんけどね」

ミカ「はぁ~……」

ミカ「見渡す限りの海、砂浜、そして木。文明の利器は何一つないね」

フミコ「んー、」

ミカ「どうしたの?」

377: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:20:22.91 ID:VDu8NepM
フミコ「……どちらかと言うと、これは捜索と言うより待ち伏せになるかも知れないね。」

ミカ「待ち伏せかぁ」

ヒデコ「ねぇ、誰か時計持って来てる?」

ミカ「私は無い」

フミコ「私も」

ヒデコ「……あー。」

ヒデコ「理事長、時計持って来てないですk」

「えへへへぇ~♪」

378: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:21:12.53 ID:VDu8NepM
理事長「このカニ可愛いぃ~♡おまんじゅうみたぁ~い♪」ツンツン

ヒデコ「……」

ミカ「もぉーっ!理事長!」

フミコ「ほら、立って下さい!」

理事長「えへへ~♪」ツンツン

ヒデコ「ねぇ理事長、時計持ってます?」

理事長「持ってなぁ~い」

ヒデコ「……4人もいて、なんで誰も時計持ってないの」

379: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:22:45.26 ID:VDu8NepM
理事長「あ、見て見てぇ~!」

ヒデコ「へ?」

理事長「イルカだよぉ~♪かわいい~♪」

「……」

ミカ「ホントだ……」

ヒデコ「わぁ~」

フミコ「……可愛い。」

理事長「ねぇ~。可愛いよねぇ~♪」

380: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:23:30.53 ID:VDu8NepM
「キュイ」

理事長「?」

「……」プイッ

理事長「!!?」

スッ

理事長「よ、呼ばれてるぅ!行かなきゃ!」ダッ

ヒデコ「は!?」

ミカ「ちょ!理事長!?」

フミコ「ッ」ガシッ

381: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:27:16.95 ID:VDu8NepM
理事長「離して~っ」ググッ

フミコ「ダメですっ!!そっち行ったら離れ過ぎですからぁ!!」ガシッ

「キュイ」

理事長「お家だよねぇ!?お家に招待してくれるんだよねぇ~!?」グイッ

フミコ「理事長ぉーっ!!」ググッ

ヒデコ「……」

ミカ「……はは、」

「キュイ-!」

チャプンッ……。

382: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:28:49.75 ID:VDu8NepM
「──ふむ。」


英玲奈「ここら辺で少し待ってみるか」

ほのママ「そうねぇ。もしかしたら村の方から来るかもだし」

英玲奈「しかし、この辺りはかなり植生が濃いな。沿岸なんて、植物は大して生えないと思っていたんだが」

ほのママ「そんな事ないわよ?」

ほのママ「海浜植物ってゆーのがあるらしくてね、それは花とか蔦とか、あとは食べられる草なんかもあるみたい」

383: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:33:27.14 ID:VDu8NepM
英玲奈「……地元の人間はやっぱり強いな。」

ほのママ「あはは。まぁ、大体親とかご近所さんからの受け売りなんだけどね?」

英玲奈「いや、地元人の知識は正直助かる。」

ほのママ「なんで?」

英玲奈「何かあった時、地形を把握しているのといないのとじゃ、初動に雲泥の差が出て来るからな」

ほのママ(……穂乃果、こんな軍人かぶれみたいな人から教わってるのね。)

384: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:35:31.56 ID:VDu8NepM
クイッ

ほのママ「へ?」

ほのパパ「……」

ほのママ「?」

ほのパパ「っ///」

ほのママ「……ぁ」

英玲奈「は?」

ほのパパ「~っ///」

ほのママ「っ///」

英玲奈「なんだ?なんで突然黙りこくるんだ?」

385: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:36:11.64 ID:VDu8NepM
ほのパパ「///」

ほのママ「うぅ……っ///」

英玲奈「おい、一体なんなんだ。重要な事なら言って欲しいんだが」

ほのママ「あ、あのっ」コソッ

英玲奈「?」

ほのママ「~っ」コソコソッ

英玲奈「……」


英玲奈「…………そう言う話は帰ってからにしてくれっ///」

386: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:40:59.15 ID:VDu8NepM
「いやぁ~。いい景色だねぇ~」


希「ね?そう思わん?」

亜里沙「……」

雪穂「……」

希「ねぇねぇ、思わん?」

亜里沙「……そうですね。」

雪穂「……私は見飽きました。」

希「なんやもう連れないなぁ~、ここはもっと明るく行こうよ~」

387: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:41:48.76 ID:VDu8NepM
亜里沙「……」

希「ん?ん?」

亜里沙「……あのさぁ、」

雪穂「……」

亜里沙「なんで、さっきからコッチ見てくるの」

雪穂「……そっちが先に見てきたんでしょ、」

希「あ、あれ?」

388: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:44:12.85 ID:VDu8NepM
亜里沙「私じゃないし。そっちだから、」

雪穂「覚えてられないんだ。可哀想にね」

亜里沙「……いいの?痛いことするよ?」

雪穂「出来ないよ。だって、貴方じゃ当てられないもん」

ザッ

亜里沙「……」

雪穂「……」

希「ちょっ!ちょい待ちっ!!」

389: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:46:29.39 ID:VDu8NepM
亜里沙「……私が術を使ったら、君なんかあっという間に飛んでっちゃうんだよ?」

雪穂「だから、術なんか使えないよ。その前に倒しちゃうんだもん」

亜里沙「ふぅ~ん。」

希「いやいや!君たt」

亜里沙『ハイッ!!!』バッ

ビュォオオオオオオォオオオオオッッッ!!!!!!!

雪穂「──ッ!」

ダンッ

390: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:49:56.92 ID:VDu8NepM
亜里沙「!?」

雪穂「……当たんないね。」

希「いやだから!ちょっと待っt」

亜里沙『焦熱火生!』ボゥッ!!!

雪穂「ハァッッッ!!!!!」ドゴッ!!!

バシャァアアアアアアッッッ!!!!!!

亜里沙「──ッ!!?」

雪穂「……火だって分かれば、こうする事も出来るんだよ?」

希「……」ビショ

391: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:52:29.39 ID:VDu8NepM
亜里沙「~ッッッ」

亜里沙『荒れ狂う迅雷。夜半(ヨワ)の静寂を破る咆哮……』バチバチバチッ!

雪穂「!」

雪穂「そっちがその気なら……」ググッ

希「……」

亜里沙『呪禁術っ!』バッ

雪穂「ッ」ザッ

モ モ ッ

亜里沙「うわぁああっ!!?」

モ モ ッ

雪穂「きゃぁああっ!!?」

392: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:53:33.42 ID:VDu8NepM
ドサッ

「……いい加減にしぃよ?」

希「ウチがその気になったら、君ら二人とも5分でノックアウト出来るからね」

亜里沙「~ッッッ」

雪穂「っ……っっ!」

希「まったくもう!」

希「明日世界が無くなるかも知れないんよ?真面目にやらなきゃダm」

393: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:54:05.71 ID:VDu8NepM
亜里沙『ハイッ!!!』ビュォオオオッ!!!

希「ふぼぼぼぼっ!!!」

雪穂「ハァッ!!!」ズドッ!!!

希「ぬふんっ!!?」

ドサッ

亜里沙「この変 っ!!!」

雪穂「……そのまま砂に埋れてて下さい。」

希「」

394: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:57:07.46 ID:VDu8NepM
ザザァ--ン…………


穂乃果「……」

こころ「……」

ことり「……」


穂乃果「……綺麗だねぇ。」

こころ「そうですねぇ」

ことり「夕陽が真っ赤になってるねぇ~」

395: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 22:59:11.07 ID:VDu8NepM
穂乃果「この海、数年ぶりに見たなぁ~、」

こころ「下界……久しぶりだなぁ……」

ことり「わぁ~……ゆらゆらしてるぅ~」


穂乃果「……」

こころ「……」

ことり「……」

396: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:02:11.24 ID:VDu8NepM
こころ「……それにしても、誰も来ませんねぇ」

ことり「こないねぇ~」

穂乃果「おっかしいなぁー、ここら辺だと思ったんだけど」

こころ「ホントに今から来るんでしょうか」

穂乃果「ねぇ、二人とも時計持ってる?」

ことり「ごめぇ~ん。忘れちゃったんだぁ」

こころ「あ、私持ってます。」

397: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:04:16.67 ID:VDu8NepM
穂乃果「!」

ことり「さすがだねぇ」

こころ「……」ゴソゴソ

こころ「あった。」

穂乃果「あと何分くらいあるの?」

こころ「そうですねぇ、あの映像を見てから30分は経ったみたいです。」

穂乃果「あー、30分かぁ」

ことり「ちょっと早かったのかなぁ」

こころ「まぁ、待ってても問題はないですから」

398: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:04:47.80 ID:VDu8NepM
穂乃果「じゃあ、もうちょっとのんびり出来るねぇ」

ことり「そうだねぇ」

こころ「他にやる事ないですしねぇ」


穂乃果「……」

こころ「……」

ことり「……」


ザザァ--ン…………。

399: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:08:54.20 ID:VDu8NepM
あんじゅ「……」


「どうしたの?」


あんじゅ「……」

にこ「……ねぇ、」

あんじゅ「へ?なに?」

にこ「さっきからボォーっとしてるけど、何か見つけたの?」

あんじゅ「……いえ、なんでもないわ。」

にこ「?」

400: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:14:49.38 ID:VDu8NepM
あんじゅ(……亜里沙?なんで呪禁術なんて使ってたのかしら、)

あんじゅ(あの感じだと下級……それに、撃ち掛けの中級ってとこね。)

真姫「ほっときなさい。にこちゃんにまでイボイボの呪いが罹るわよ?」

にこ「……あんた、結構ねちっこい性格よね。」

あんじゅ(風?雷?……もしかして、一緒にいたあの子に?)

あんじゅ(いやいや、どーせまた希のヤツが何かしたんでしょうけど……っ)

401: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:17:10.81 ID:VDu8NepM
あんじゅ「──ヒックシュ!」

真姫「ちょっ、きったないわねぇ!あの世に行ってやりなさいよっ!」

あんじゅ「はぁあああっ!!?そんなに言うならアンタが行きなさいよっ!!このヤブ医者っ!!!」

にこ「ちょっと!?あんたr」

真姫「あーらあらあらっ!!その鼻の下に付いてるゴミ箱からゴミが吹き出してるわねぇ!!!」

あんじゅ「まぁー大変っ!生ゴミの臭いが漂って来たわっ!!きっと目の前に大っきいのがあるからよっ!!」

402: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:17:56.83 ID:VDu8NepM
にこ「……」

真姫「このゴミおんなぁああああああっっっ!!!!!」ビシィッ!!!

あんじゅ「ゴミはアンタでしょーがぁああああああっっっ!!!!!」ズボゥッ!!!

チャキッ!

真姫「うっ!?」

あんじゅ「!」

にこ「……いいの?世界の前にあんた達が終わるわよ?」

403: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:19:40.27 ID:VDu8NepM
真姫「にっ、にこちゃ……っ」

あんじゅ「あーもぅっ!」

バヒュッ

にこ「!?」

真姫「!」

あんじゅ「私は上から探すから!アナタ達は下から探しなさいっ!!」

ヒュン!

にこ「……あらま、」

真姫「ふん!勝手にすればいいんだわ!」

404: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/19(火) 23:21:36.95 ID:VDu8NepM
特に何事もなく、

チーム、ポン・デ・リングによる二人の捜索は、
停滞の様子を醸し出していました。

果たして、

本当にこれから、この場所で絵里とツバサは
邂逅するのでしょうか。

409: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:09:44.62 ID:smQm1Ouv
「う~ん、」


真姫ママ「見当たらないわねぇ」

花陽「ひ、広い海岸ですから、見つけるのは中々難しいかも……です。」

凛「~♪」

凛「あ!みてみてかよちん!」ザッ

花陽「え?」

凛「じゃーん!ヒトデ☆」

410: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:34:23.45 ID:smQm1Ouv
花陽「わぁ……お、大っきいねぇ、」

真姫ママ「あらホント。こんな大っきいの初めてみたわ」

凛「ほらかよちん!触ってみて?」

花陽「ひっ……そ、それはやめておこうかな……?」

凛「えー、つまんなぁ~い」

花陽「そ、それより、真ん中で待ってる人たちが見えなくなっちゃったよ?」

411: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:34:53.20 ID:smQm1Ouv
凛「?」

真姫ママ「そうねぇ。もうちょっと戻ってみる?」

凛「真ん中ってどっちだっけ?」

真姫ママ「海を見て右手側よ?ほら、アッチにヤシの木がある方」

花陽「……た、たぶんアレ、ヤシじゃないかも知れない……ですっ。

真姫ママ「え~、南国風の木って全部一緒に見えるんだもん」

412: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:35:59.97 ID:smQm1Ouv
凛「あー、それ分かるかも、」

真姫ママ「だよねぇ?」

凛「……あれ?」

凛「ねぇねぇ。なんか師匠だけこっち側に来てるよ?」

真姫ママ「あら、よく分かったわねぇ。」

花陽「え?み、見えないけど……」

凛「最近ねぇ、なんとなーく雰囲気で何処に誰がいるのか分かる様になって来たんだにゃ」

花陽「す、すごいっ」

413: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:36:58.00 ID:smQm1Ouv
真姫ママ「ふふ。成長したわねぇ」ナデナデ

花陽「頑張ったね、凛ちゃん」ナデナデ

凛「にゃ~♪」

凛「あ!」

花陽「え?」

凛「アッチにも人が居るっぽいよ!」

花陽「ど、どこ……?」

真姫ママ「ん~?そんな感じしないけど?」

凛「おっかしいなぁ。」

414: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:41:22.01 ID:smQm1Ouv
凛「なんかな~、あっちの方にそれっぽい感じがしたんだけどな~」

花陽「むむむ~っ」ジィ-ッ

真姫ママ「林の奥は鬱蒼としてるわねぇ。何かが住んでてもおかしくはないと思う」

凛「ヤシの木もいっぱいあるしね」

花陽(……緑しか見えないっ、)

凛「でもさぁ、なんかこうやって探しても、全然見つかる気がしないにゃ~」

真姫ママ「そうねぇ。……もう少し移動してみる?」

415: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:42:36.58 ID:smQm1Ouv
凛「よし、移動しよー!」

花陽「むむ~っ」

凛「ほら、かよちん行くよ?」

真姫ママ「それじゃあ、もう少しあんじゅちゃん達の方に行ってみましょうか」

花陽「わ、分かりました!」

凛「~♪」

凛「あ!またヒトデみっけ!」バッ

花陽「?」スッ

ドサッ

416: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:44:50.73 ID:smQm1Ouv
凛「ほらほらかよちん!意外とゴツゴツする☆」

花陽「ひぃ……っ」

凛「怖くないよぉ?ちょっとウニウニもするけど」

花陽「う、ウニ?ヒトデなのにっ?」

凛「大丈夫だよ。ほら、向こうのヤツは小ちゃいよ?」

花陽「う、うん……っ」スッ

花陽「~ッッッ」ピトッ

ドサッ

417: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:46:41.29 ID:smQm1Ouv
花陽「……あ、触れた。」

花陽「ほ、ホントにうにうにするっ!」ウニウニ

花陽「わはっ♪な、なんかコレ可愛いねぇ」

花陽「えへへ~♪」ウニウニ

花陽「──ねぇ凛ちゃん、ヒトデって」クルッ


花陽「!!?!?」


「残念だけど、凛はしばらく話さないわ。」

418: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:55:31.36 ID:smQm1Ouv
花陽「…ぁ……ぇ…………っ」


「あら、そんなに怯えなくても良いのよ?」




絵里「眠っているだけですもの。」クスッ




沿岸左方を捜索していた、辺境の長率いる三人組

のんびり遠足気分で歩いていた、この三人の前に

突如として現れたのは、件の魔女、絵里。

419: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 22:57:00.93 ID:smQm1Ouv
花陽「ッッッ」

花陽「りっ……りん……ちゃんっ……?」


凛「」


花陽「~ッ」

花陽「お、長……さん……っ」


真姫ママ「」


花陽「……ぁ……ぁぁ……っ」



絵里の不意打ちを喰らってしまい

昏倒した長と、魔女見習いの凛を目にして

ただ、怯える事しか出来ない村娘の花陽。

420: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:01:38.02 ID:smQm1Ouv
絵里「ふふ、大丈夫。貴方には何も恨みはないから」

絵里「それに、凛や長だってそう。だから、手荒なマネをするつもりは無いからね?」ザッ

花陽「ひっ……ぃ……っ!」

絵里「……」

絵里「……私はね、欲しい物とやりたい事。この二つの願いさえ叶えられればいいの。あとは感知する気もないわ」

花陽「……っ、ほ、欲しい……もの……っ?」

絵里「えぇそう、欲しい物があるのよ。」

絵里「だから、それが叶うまでどうか邪魔せずに、ゆっくりと眠っていて?」

花陽「~ッッッ」

421: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:03:22.33 ID:smQm1Ouv
絵里「次に目覚める時は、また何事もない日常に戻れるから……」


花陽「いっ……ぃぃ……っ、」


「……だから。さぁ、」


花陽「ハァッ…ハァッ……ッ!!!」


「お今はただ、お休みなさい。」


花陽「だ──っ」



「誰かたすけてぇええええええええええっっっ!!!!!!!」

422: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:06:04.33 ID:smQm1Ouv
『にゃぁあああああっっっ!!!!!』


ズドォオオォオオオオオオオッッッ!!!!!!!


絵里「!!?」バッ

ズドッ!!!ズドッ!ズドッ!

絵里「くっ!」ズザッ


花陽「…………へ?」



凛「ハァッ、ハァ……ッ」



最早これまで。

そう思われた花陽の窮地を救ったのは

彼女の声により昏倒からいち早く復帰した

魔女見習いにして、親友の凛でした。

423: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:09:31.26 ID:smQm1Ouv
凛「で……出来た……っ!」


凛「コレが、詠唱破棄……?」

「貴方、」

凛「!」

絵里「思ったより早く目覚めたのね、感心だわ」

凛「絵里ちゃん……っ」

凛「なんで?どうしてこんな事するの?」

絵里「……」

424: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:10:22.43 ID:smQm1Ouv
凛「っ」

絵里「……面倒だからもう説明したくないわ。」

凛「~ッ」

絵里「でも……まぁ、起きちゃったのはついてなかったわね?」

凛「えっ」

絵里「……だって、」

絵里『次は、あんまり手加減出来そうにないもの』スッ

凛「──ッ!」バッ

バチバチイィィィッッッ!!!!!

425: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:20:17.69 ID:smQm1Ouv
絵里「……」

凛「ふぅーっ、ふぅーっ!」

絵里「……避けるんだ。」

凛「~ッッッ」

凛(こっ、これがっ……希ちゃんがやってたヤツなんだっ!)

絵里「これは、先手が取り辛くなったのかなぁ」

凛(……でも、こんなの何回も出来ないよっ)

凛(次のはたぶん無理……っ、その前にっ!)

426: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:21:40.20 ID:smQm1Ouv
絵里「……」スッ

凛「!?」

凛「か、かよちんっ!!」バッ

花陽「!?」

凛「飛ぶから捕まって!!」

花陽「え?え!?」

ガシッ!

花陽「!」

凛『空の静寂(シジマ)に落ちる影、』キイィィィンッ

凛『呪禁術・浮動國境!』

427: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:23:16.50 ID:smQm1Ouv
花陽「ひぃ!?」グンッ

バヒュンッ!

絵里「……」

絵里「……あぁ、なるほどね。」

絵里「人目につく所まで飛んで逃げる気なんだ」


ヒュウウゥゥゥゥッ!


凛「ごめん……っ、ごめんね長っ!すぐみんなと助けに来るからっ!!」

花陽「~ッ」

428: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:24:48.55 ID:smQm1Ouv
絵里「貴方、普段もそのくらい頭が回れば、もっと早く魔女になれたのに」

絵里「属性と言い、かなり優秀な部類に入ると思うわよ?」

絵里「…………でも、まぁ、」


絵里「もう関係ないけどね。」


ガドンッ!!!


凛「ぐぎっ!!?」ガクッ

花陽「うぁっ!!!」ドガッ

429: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:26:58.70 ID:smQm1Ouv
キィ--ンッ…………


凛「うぁ……っ……な、なにっ……」クラクラッ

花陽「はぅっ……か、かべ……っ?」ヨロッ


「ごめんねー、言うの忘れてたわー」


凛「……っ」

花陽「ッ」


絵里「ねぇー」

絵里「……はぁ、声届かなくなるまで離れないでよ、もぅ、」ザッザッ

430: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:34:01.30 ID:smQm1Ouv
絵里「おーい、聞こえるー?」


凛「!」

花陽「なっ……なにか言ってるよ……っ」


絵里「貴方が起きる前にねー、私、天界道具を使ったのよー」

絵里「物体と力を遮蔽出来るってゆー便利な物なんだけどねー」


凛「て、天界道具……?遮蔽って……?」

花陽「ぅ……うぅ……っ」

431: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:34:52.52 ID:smQm1Ouv
絵里「それとねー、貴方の判断はとても正しかったと思うけどー」

絵里「なるべく早くコッチに戻って来た方がいいわよー」

絵里「じゃないとわたしー」


絵里「長のこと殺すからー」


凛「!!?」

花陽「ひいぃぃっっ!!!」


絵里「……10。9。8。7。」

432: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:45:43.06 ID:smQm1Ouv
花陽「り、凛ちゃんっ……っ!」

凛(どうしよう……どうしたら……っ)

凛(飛んで逃げるのはもう無理っ……でも、長を起こす事も出来ない……っ)

凛(でもっ、凛が絵里ちゃんになんて勝てるわけないっ、違い過ぎるもんっ!)

花陽「凛ちゃんっ……凛ちゃん……っ!」ギュッ

凛(……ハハッ。こんなんなら、もっと真面目に特訓してれば良かったなぁ。)

凛(そうすれば、こんな状況もどうにか出来たかも知れないのにっ)

433: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:46:59.50 ID:smQm1Ouv
ギュゥッ

凛「!」

花陽「っ……っっ」ビクビクッ

凛「ッ」

凛「……かよちん。」

花陽「なっ、なにっ?」

凛「……」


凛「かよちんは、今度こそ凛が守るからね?」

花陽「えっ」

434: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:54:36.08 ID:smQm1Ouv
絵里「6。5。4。3……」


凛「今から、凛のすっごい技を出すから」

凛「だから、しっかり捕まってて」

花陽「で、でもっ、長さんが……」

凛「ちょこっと操作して、長の前に大っきな壁を作るから、だから大丈夫。」

花陽「~っ」

凛「えへへ、凛にお任せだよ?」

花陽「……」

花陽「う、うん。分かったっ」

凛「……」ニコッ

435: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/20(水) 23:59:52.90 ID:smQm1Ouv
バッ!


『慄け。地を這いずる者よ。』


絵里「──ッ!!?」


凛『崩れ逝くは秩序と安寧の礎……』ゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴッッッ


絵里「凛……」


凛『……』

凛『……ごめんね、絵里ちゃん。』


バババッ!


凛『呪禁術、』



『黄泉ノ溝帯』

437: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 00:48:53.75 ID:S5ids+g2
/cVσ_VσV 何度もしつこく申し訳ありません
     下記に呪禁術の相関と、
     辺境5人娘の今現在の実力を
     載せさせて頂きます。



:属性と相関(優位性)

      炎
   ↗︎     ↘︎
  水       氷
  ↑ ↓
  雷       土
   ↖︎     ↙︎
      風

:対相関(互いに相性の良い属性)

炎ー風
水ー土
氷ー雷

438: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 00:50:39.59 ID:S5ids+g2
【魔女たちの実力】


:魔女の条件

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
全ての中、下級呪禁術の使用が可能。

対相関を成す属性同士の混唱が可能。

下級一句、中級二句の詠唱短縮、及び
下級一句の完全詠唱破棄の使用が可能。

独自による呪禁術の開発。


あんじゅ(魔女)(炎)

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
全ての中、下級呪禁術の使用が可能。
下級一句、中級二句の詠唱短縮、及び
下級一句の完全詠唱破棄の使用が可能。
対相関を成す属性同士の混唱が可能。
全ての中、下級呪禁術の追加詠唱の使用が可能。
独自による呪禁術の開発に成功。


希(魔女)(雷)

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
全ての中、下級呪禁術の使用が可能。
下級一句、中級二句の詠唱短縮、及び
下級一句の完全詠唱破棄の使用が可能。
対相関を成す属性同士の混唱が可能。
独自による呪禁術の開発に成功。


絵里(魔女)(氷)

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
全ての中、下級呪禁術の使用が可能。
下級一句、中級二句の詠唱短縮、及び
下級一句の完全詠唱破棄の使用が可能。
対相関を成す属性同士の混唱が可能。
独自による呪禁術の開発に成功。


亜里沙(魔女見習い)(風)

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
一部を除いた中、下級呪禁術の使用が可能。
下級一句の詠唱短縮の使用が可能。
自身の属性の完全詠唱破棄の使用が可能。


凛(魔女見習い)(土)

自身の持つ属性の上級呪禁術、及び
全ての中、下級呪禁術の使用が可能。
下級一句の詠唱短縮の使用が可能。

自身の属性の完全詠唱破棄の使用が可能。←New!

444: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:21:26.81 ID:S5ids+g2
……グラグラグラグラグラ グ ラ グ ラッ グ ラッ グ ラッ グ ラッッッッ!!!!!!!!



──それは、

まるで地殻変動を目の当たりにしているかの様な

尋常では無い大地の隆起と、奈落へ続く巨大な地割れ



花陽「──ッ!?──ッ!!?」


ズッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッ

445: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:22:29.58 ID:S5ids+g2
先刻、絵里の使用した天界道具により

その影響範囲は、断絶された空間内にのみ留まってはいますが、

その様は正しく、

全てを黄泉の彼方へと誘う果てしない闇の溝帯。

446: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:23:52.96 ID:S5ids+g2
花陽「し、死んじゃうっ!!あんなの死んじゃうよぉ!!!」

凛「大丈夫っ!!!途中で止めるからっ!!!」

凛「大丈夫……っ!」グッ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッ


絵里「……」


絵里「……巨壁に土流、地震。挙句は地割れ。」

447: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:25:25.32 ID:S5ids+g2
絵里「地を這いずる者にとって、コレらは紛れもなく脅威よね。」

絵里「もちろん、飛んで回避する事は出来るわ。でも、」

絵里「水、雷、炎、風。……恐らく、どの属性の最大攻撃を仕掛けようとも、術者の貴方に届く事は無いでしょう。」

絵里「貴方の性質は、こと全てに於いて万能だと思うわ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッ

448: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:27:19.71 ID:S5ids+g2
絵里「でもね、どんな物にでも必ず弱所は存在する。」

絵里「つまり、私は貴方にとっての天敵となるのよ」スッ

絵里『……荒れ狂う迅雷。紮止。永久に咲く沈丁花』ヒュォオオオッ


『呪禁術・疾霜大霹稟(ヘキリン)』


ズカァアアアァアアアアアアアアアンッッッ!!!!!!!


凛「!!?」

449: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:29:27.62 ID:S5ids+g2
凛「か、雷で穴空けたくらいじゃ、凛の技は止まんないかr」


……パキパキパキッパキッパキッパキッパキッパキッパキッパキッッッ!!!!!


凛「!!?!?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………。


凛「えっ……う、うそっ!!?」

凛「なんでっ!!?どうして止まるのっ!!?」

「当然よ。」

450: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:35:31.10 ID:S5ids+g2
凛「!?」

絵里「……」

花陽「ひっ!ひいぃぃぃっ!!!」ギュウッ

凛「い、いつの間に……っ!?」

絵里「ダメよ?自分の術にばっかり集中してたら」

絵里「規模が大きい術なら尚更。対象を見失う可能性がとても高くなるからね」

凛「~ッ」

絵里「……あぁ、ごめんなさい。さっきの質問に答えるわね」

451: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:37:14.34 ID:S5ids+g2
絵里「アレは、雷で地表に亀裂を入れて、そこに氷の属性呪文を吹き込んだのよ」

凛「っ」

絵里「大地を揺らす程の動きを呼び起こすのが、貴方の性質」

絵里「そして、全ての動きを停止させるのが私の性質」

絵里「相関的に私が有利だと言うのなら、隙さえ突ければ直ぐにでも止める事が出来る。これは自明の理だわ」

花陽「ッ……ッッ」ガタガタッ

452: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:39:02.67 ID:S5ids+g2
絵里「それに貴方の呪文、もう少し経てばとんでもない規模の術になるんでしょうけど」

絵里「使者を介するタイプとは違って、無形は最大威力を発揮するまでに、多少時間が掛かる」

絵里「いくら上級三句と言っても、その出だしを挫かれてしまったら、それはたかが知れた威力になってしまうわ」

絵里「使い慣れておくべきだったわね。」

凛「うっ……うぅ……」

絵里『……』スッ

453: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:40:21.46 ID:S5ids+g2
バチィッ!!!

凛「がっ!!?」

ドサッ

花陽「りっ、りんちゃ──ッ!!?」

ガクッ

花陽「ひっ!?おっ、落ち……っ!!」

ヒュウゥゥゥゥゥ……

ズンッ!

花陽「うぅっ!!!」ドゴッ

454: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:45:29.22 ID:S5ids+g2
ストッ

絵里「ほら、やっぱりそう。さっきは躱せたのに」

花陽「……ぅ……りっ、りん……ちゃん……っ」ズリ…ズリ…

凛「」

絵里「……」スッ

バチィッ!!!

凛「」ビクンッ

花陽「お願いっ!!お願いもうやめてぇえええっ!!!」

455: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:47:25.75 ID:S5ids+g2
絵里「……念には念を入れないとね。また直ぐ起きられたら困るから」

花陽「うっ、うぅぅ……っ」

絵里「さぁ、あとは貴方だけよ」

花陽「っ……っっ」

絵里「動かなければ、この一発だけで済むわ。だから煩わせないでちょうだい」

花陽「ッッッ」グッ

ザッ

絵里「え?」

456: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:53:48.16 ID:S5ids+g2
花陽「……」

絵里「……なに?」

花陽「……」

絵里「もしかして殴るつもり?ならやめた方がいいわ。」

絵里「この距離じゃ、どう考えても私の方が有利だし。なにより貴方、格闘家って訳でもないでしょ?」

花陽「……っ」

絵里「出来るのはただ、そうして私を睨み付けることだけ」

457: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 22:58:52.81 ID:S5ids+g2
花陽「……」

花陽(……長さん。)


真姫ママ「」


花陽(……凛ちゃんっ。)


凛「」


絵里「もう時間がないの。それに、貴方で手間を喰う気もない」

花陽「っ」

458: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 23:00:30.41 ID:S5ids+g2
花陽(わたし……っ!)


絵里「……諦めなさい。」


花陽(わたし──ッ!!!)


絵里『……』スッ


『霜疾氷結』


ヒョォオオオオオオオッッッ!!!!!


花陽「もうっ!!!」

459: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 23:03:06.92 ID:S5ids+g2
花陽『──ッ!!』バッ


絵里「!」


『うぁあああぁあああぁぁあぁぁぁあああああっっっ!!!!!!!』シュルルルッ!


ザバァアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!


絵里「なっ!!?」


ザアアアァァァァァァァァァァァァ…………。

460: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 23:09:02.49 ID:S5ids+g2
花陽「~ッッッ」


花陽「……っ!」



昔取った杵柄。

以前、天界病を患ったお事で得た力

それを今、彼女は親友たちを守る為に

自らの意思で操る事が出来ました。

461: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 23:09:56.10 ID:S5ids+g2
花陽「やっ、やった……っ」


花陽「出せたっ!また出せたっ!!出来たよ凛ちゃんっ!!」



……しかし、



『аплодисменты. ходить. старается』


花陽「これで凛ちゃんの事も守れるっ!私だって何か出来るんだ!」

花陽「待っててね!今すぐ二人のこと助けてっ」

バチィッ!!!

462: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/21(木) 23:11:16.28 ID:S5ids+g2
花陽「見せっ……る……から…………っ」


花陽「──ッ」フラッ


ドサッ


絵里「……」



絵里「それは、アナタの本質では無いわ。」



この時、

絵里は、本当の意味で堕天してしまいました。

469: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:31:30.56 ID:mK4J8eAT
そして、

その少し先には──


ザッザッ


にこ「はぁ~、」

真姫「……」



肝心のチームリーダーを欠いた

魔女のあんじゅ率いる左方近辺組。

470: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:32:29.13 ID:mK4J8eAT
にこ「……ねぇ、」

真姫「……」

にこ「あの子、なんて言ったかしら」

真姫「……」

にこ「あ、そうそう。あんじゅよ、あんじゅ。」

にこ「割と珍しい名前よねぇ。真姫ちゃんもそう思わない?」

真姫「……別に、」

にこ「あらそう、」

471: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:35:39.23 ID:mK4J8eAT
ザッザッ

真姫「……」

にこ「……」

にこ「……あの子、」

にこ「パッと見冷静そうに見えたけど、実はかなり情に脆い所があるっぽいわよね」

真姫「……」

にこ「それに、素っ気ない事ばっかり言って冷たい奴だって勘違いされがちだけど、ホントはそんな自分が大っ嫌い」

472: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:37:20.04 ID:mK4J8eAT
真姫「……っ」

にこ「そして、誰よりも友達想い。」

にこ「あら?なんだか私、似た様な人のこと知ってる様な」

ダンッ!

にこ「わぉ。」

真姫「……なに?言いたい事があるならハッキリ言って、」

にこ「いやいや、だからさ?」


にこ「類は友を呼ぶ。ってね。」

真姫「……は?」

473: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:38:56.92 ID:mK4J8eAT
にこ「だからぁ、類は友を」

真姫「聞こえてたからっ!!誰が誰のこと呼んでるのかって言ってんの!!」

にこ「……」

真姫「……まさか、」

にこ「……」ニヤッ

真姫「有り得ないから」プイッ

にこ「ぇえーっ!結構似た者同士だと思うけどなぁ~」

真姫「どこが。あんな性悪と一緒にしないでくれるかしら?」

474: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:42:32.92 ID:mK4J8eAT
にこ「性根はかなり良い子だと思うわよ?たぁーだ素直じゃないけど」

真姫「……」

にこ「そっくりよねぇ~♪」

ザッ

真姫「……にこちゃん、」

にこ「へ?」

ビシィッ!

真姫「お尻出しなさい。」

にこ「……」

475: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:44:04.85 ID:mK4J8eAT
ダッ

真姫「あっ!」

にこ「ホントにそう思っただけだもぉーん!だから言うことなんて聞かなぁーい!」タタタッ

真姫「まちなさぁーいっ!!!」ザッ

にこ「待ちませぇ~ん♪」

真姫「フンッ!!!」ヒュンッ!

にこ「おっとぉ!」サッ

ビシイィィッ!!!

真姫「……チッ、木が邪魔で鞭が振るえない。この為に林の方へ行ったのね……ホント洒落臭い性格してるわっ。」

476: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:49:48.57 ID:mK4J8eAT
「にぃーっこにっこにー!」

真姫「!」

にこ「残念でしたぁ~♪」

真姫「」ブチッ

ガチャッ

にこ「!?」

真姫「……」パカッ

~♪♬♪♪♫

にこ「こっ、この曲……っ!」

477: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:53:53.97 ID:mK4J8eAT
真姫「……」♪♪♫

にこ「ま、まきちゃん?」

真姫「……にこちゃんは偉いわ。」♬♫♪

にこ「っ」

真姫「いつも私の交友関係を心配してくれて、しかも、自分の事も決して疎かにはしない」♬♪♪

真姫「ホント、尊敬してるわ」♪♬♬♫♪

にこ「え?そ、そんなことっ///」

真姫「それに炊事、洗濯、お医者のお勉強。私のサポートまで……毎日大変でしょうに、」♫♫♪

478: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:56:01.53 ID:mK4J8eAT
にこ「な、何言ってるのよっ///私はあんたのパートナーなんだから、そんなの当たり前d」

ジャ-ンッ♪

にこ「あ"っ」

ガションッ!!!ガション!ガション!

にこ「!!?」

真姫「……にこちゃん、」



真姫「えっ」ビクッ

479: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 22:57:01.87 ID:mK4J8eAT
「……」


真姫「にこちゃんどいてっ!!!」

にこ「へ?」

真姫『第一段階、医療用荷電粒子砲ッ!!!』ガチッ!

……ヒィィイイイイイイイイイイイッッッ

にこ「ひいぃぃぃ!!?」ダッ


──チュンッ


ズドォオオォオオオオォオオオオオオオオォオオオオンッッッ!!!!!!!!!

480: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:03:18.94 ID:mK4J8eAT
メキメキメキッ!

真姫「あっ!」

真姫「に、にこちゃんうしろっ!!木がっ!!」

にこ「──ッ!」バッ

『にこにこ☆千丁捌きっ!!!』シュンッ

スパスパスパスパスパスパスパスパッ!!!!!!!

にこ「……」

ドサドサドサッ

にこ「……ふふん。どうよ?にこの包丁捌きはね、一振り100万$の価値があるんだから」

481: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:04:59.65 ID:mK4J8eAT
真姫「……っ」キョロキョロ

にこ「てゆーか真姫っ!!あんたいきなりどうしt」

ビリビリィッ!!!

にこ「がぁっ!!?」

真姫「えっ!?」

ドサッ

にこ「」

真姫「に、にこちゃん!!!」

「はぁ~、危ない危ない。」

真姫「!」

482: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:07:09.57 ID:mK4J8eAT
「貴方、とんでもないケースを持ってるのね?」

ザッ

絵里「もうちょっとで、お腹に風穴が開くところだったわ」


真姫「……アンタッ、にこちゃんに何をしたの。」

絵里「大丈夫、ただ眠って貰ってるだけよ?」

絵里「私はね、貴方に用があるの。」

真姫「……私はないけどね、」

絵里「あ、そうそう。」

483: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:09:36.18 ID:mK4J8eAT
絵里「ついでに言うと、辺境の長たちも眠らせて来たわ」

真姫「──ッ!!?」

絵里「あとは、魔女見習いの子。それと……」

絵里「気弱な下界人の子もね」

真姫「ッッッ」ギリッ

絵里「あ、大丈夫よ?凛と長はあっさりと気絶したから」

絵里「でも、下界の子は少し可哀想だったかもねぇ。」

484: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:12:10.98 ID:mK4J8eAT
真姫「は、花陽に何をしたのよっ!!?」

絵里「……ん~、」

絵里「変に抵抗されると不味いから、気絶させたあと念には念を入れて──」

絵里「凍らせちゃったわ。」

真姫「──ッ!!!」ザワッ

絵里「まぁ、波で少しづつ溶けるんじゃないかしら?」

真姫「ッッッ」ダッ

485: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:12:58.47 ID:mK4J8eAT
絵里「いいの?」スッ

にこ「」

真姫「ぐぅっ……っ!!」グッ

絵里「さぁ、お喋りはここまで。本題に入らせて貰うわね」

真姫「っ……っっ」

絵里「私が貴方に要求する事はただ一つ」


絵里「……最初の人の骨を渡しなさい。」

真姫「!!?」

486: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:16:06.94 ID:mK4J8eAT
絵里「知ってるのよ。現中立者の貴方がそれを持っているって事は」

真姫「……っ」

絵里「さぁ、渡しなさい。」

真姫「……」

真姫「……なんでアンタが、甦生術の事を知ってんのよ。」

絵里「もう言わない。渡しなさい。」グッ

にこ「」

真姫「ッ」

真姫「……ふっ、ふふっ。」

487: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:17:02.46 ID:mK4J8eAT
絵里「……」

真姫「そっか……それしか無いものね、」

真姫「ママ。なんでこんなイカレポンチに教えちゃうのよ……」

スッ

絵里「!」

真姫「こんな犬用のオヤツ、欲しけりゃくれてやるわ」

絵里「……」

真姫「でもね。どうせ聖文の方を知らなければ、コレはただ、使用者の能力を補佐する為のバッファーでしかない。」

488: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:17:43.74 ID:mK4J8eAT
真姫「それでも、一対一ならもしかしたら無敵になれるのかも知れないけど、多対一じゃ呪文の威力よりも経験が物を言うわ」

絵里「……」

真姫「魔女になってまだ一年弱のアンタが、あの変 魔女とムカつく女を相手にして勝てるとはとても思えない」

真姫「それでなくても、コッチにはまだ天使長もいる」

真姫「零号の事は知ってる?アレの前では、ちょっと強化された程度の呪文なんてなんの意味もn──」

ズドォッ!!!

真姫「がぅっ!!!」

489: 名無しで叶える物語(浮動国境) 2021/01/22(金) 23:18:49.05 ID:mK4J8eAT
ドサッ

絵里「……」ザッザッ

ドスッ!

真姫「うふっ!!?」

絵里「気は済んだ?なら、早く渡してちょうだい」

真姫「っ……っっ」ググッ

絵里「それと、頼みの綱の理事長なら、しばらく来ないと思うわよ?」

真姫「なっ、なにを根拠に……っ」