1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:07:32.13 ID:n9uN3brW0
勇者「……はは、十年後ここで会おうだなんて」

勇者「覚えている訳ねーよなぁ……なにを期待しちまったんだろ」

勇者「これから魔王を倒しに旅立たなきゃいけねーってのに」ボリボリ

「……まさか、本当に……ゆーちゃん?」

勇者「っ!!」バッ

勇者「あ、ああ……」

「十年ぶりだね……ゆーちゃん」

勇者「ああ……ああ……久しぶりだな、まー君」

魔王「ゆうちゃん!」ガバッ

勇者「まー君!」ヒシッ




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:10:08.43 ID:n9uN3brW0
魔王「こんなに立派になっちゃって……この剣なんて勇者しか抜く事ができない聖剣じゃないか」

勇者「まー君だってあの時は髪に隠れていた角も立派になって……格好いいじゃねーか!」

魔王「変わったね……お互い」

勇者「中身はちっとも変わってねーがな」

魔王「あははははっ」

勇者「はははははっ」

勇魔「「はああぁぁぁぁぁ?!」」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:12:14.80 ID:n9uN3brW0
勇者「何だよ! どういう事だよ! 立派じゃねーかその黒マントぉ!」

魔王「そういう君だって王家の紋章をあしらえた鎧を着ているじゃないか!!」

勇者「うわーマジかよーまー君マジ魔王かよー」

魔王「私だってびっくりだよ。まさかゆーちゃんが勇者だなんてさ」

勇者「お、流石にもう僕じゃないんだな」

魔王「そういった所は徹底的に叩き込まれたよ」フー

勇者「家柄が厳しいってそういう事だったんだなー」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:15:08.44 ID:n9uN3brW0
魔王「……まあ何にせよ」

魔王「約束、覚えていてくれて嬉しいよ」

勇者「それはこっちの台詞だ。だいたい俺は地元なんだし来て当たり前だろ」

魔王「はは、そうだね」

勇者「まさか本当に会えるとはなぁ……いや少しは期待してたけどもよぉ」

魔王「私も期待半分諦め半分だったからなぁ。そうだあそこの喫茶店ってまだやっているのかい?」

勇者「ああ、おっさんの? そうだな、積もる話もあるしあそこで落ち着くか」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:18:07.48 ID:n9uN3brW0
勇者「どもー」カランカラン

魔王「うわぁ……懐かしいなぁ」シミジミ

店主「おう、ゆー坊……角? おい、そいつは」ギロ

勇者「……」ニヤニヤ

魔王「はは……そう、だよね」

店主「……」ボリボリ

店主「十年ぶりだな、まー坊。ゆっくりしていけ、今日はてめーらに貸切だ」

魔王「……マスター!」

店主「懐かしいねぇそれ。この街で俺をそう呼ぶのはお前だけだったな」ニヤ

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:21:07.70 ID:n9uN3brW0
店主「にしてもまー坊はその格好で着たのか? 馬鹿か?」

勇者「え? 流石に魔法かなんかで変装ぐらいして入ってきたんだよな?」

魔王「……」フィ

勇者「どうやってあそこまで来たんだよ……」

魔王「ほら……北側にさ。いつも二人で行った駄菓子屋があるじゃないか」

魔王「あそこで……まあ人に叫ばれて兵士が集まったりしたんだけど」

魔王「駄菓子屋のおばさんが私に気づいてくれてさ。そしたら周りも私の事を知っている人が多くて、大事にならずに済んだんだ」

勇者「平和ボケって怖い」

店主「なんだ? お前ら殺り合ったのか?」コポポポ

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:24:30.56 ID:n9uN3brW0
勇者「馬鹿言わないでくれ! こいつに真剣を向ける事なんて……そ、想像しただけで寒気が」ブルブル

魔王「私も無理だね……ゆうちゃんに魔法? 一瞬で口の中が乾いて舌も回らなくなるよ」

勇者「え、なに? お前、今も全く剣が使えないの?」

魔王「はは……残念ながら近接格闘はもう」

勇者「なんだよそれー。 再開したら一本くらい試合したかったのによぉ」

魔王「むむむ無理無理無理! 何を考えているんだ! あの頃だって君に稽古をつけてもらうくらいの格差だったろうに!」

勇者「だから十年の歳月で期待してたんだよー!」

店主「お前ら十年ぶりに会うのに本当に仲がいいな」カタカチャ

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:27:19.32 ID:n9uN3brW0
勇者「当たり前だろ!」ガッシ

魔王「当然の事さ!」ガッシ

店主「お前ら……そっちの気があるんじゃないだろうな」

勇者「はああぁぁぁ!? 俺達の魂の絆を侮辱するんじゃねぇ!」

魔王「ゆうちゃんの言う通りだ。私達は何者にも破れない絆で結ばれているのだ」

店主「いや、だからな……そういうのがな」

勇者「がああああ! それはねーよ! 女の子大好きだよ!」

魔王「全くだ。私も違うぞ!」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:30:18.55 ID:n9uN3brW0
店主「それならいいがよ」

魔王「他の皆ってまだこの街にいたりするのかい?」

勇者「えーと、まー君が知っている友達は……全員いるかな?」

勇者「会いに行くのはいいが、せめて変装してくれよ」ズズゥ

魔王「あー……気をつけるよ」スス

店主「えらく立派な格好だが、やっぱりまー坊は魔王なのか?」

魔王「はい、と言ってもまだまだ勉強中の力不足ではありますが」

勇者「そういえばまー君は何でこんな所で暮らしていたんだ? 親父さんこそ当時は魔王って事だよな?」

魔王「人間社会を学ぶ為って話だったよ。まあ、私の社会勉強の一環なんだとは思うが、いささか幼すぎではとも思うが……」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:33:30.36 ID:n9uN3brW0
勇者「そりゃそうだよなぁ……って今はまー君が現役魔王だよな? 親父さんはどうしたんだ?」

魔王「ああ、それが……父は臥せってしまっていてね」

店主「おいおい……本当かよ」

勇者「あの見るからに戦士肌の親父さんがか? 何があったんだ」

魔王「酷い病に侵されてしまってね……」

店主「一体どんな病なんだ」ゴクリ

魔王「ここで食べた食材を酷く気に入ったようでね」

魔王「向こうに帰ってからも……牡蠣を食べていたら酷い嘔吐下痢と発熱を患ってしまって」

店主「……そりゃお前」

勇者「加熱不十分、ダメ。ザッタイ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:36:08.71 ID:n9uN3brW0
勇者「て、おいそれでもおかしいだろ。お前が即位したの昨日の今日の話じゃないんだろ?」

魔王「え? ああ、私達の国側の海は瘴気が溜まっていてね……色々と下ごしらえをしてみたのだが」

魔王「どうやら瘴気によって変質してしまっているようなんだ」

魔王「今でも下痢や嘔吐でまともに動けない状態なのだよ」

勇者「……牡蠣って要はウィルスが原因の食中毒だろ? 症状出たの何時だよ」

魔王「もう彼是三年も……」シンミリ

勇者「魔族側の牡蠣やべぇ」

店主「ノロウィルスで世界が滅ぶとかねーわ」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:39:28.07 ID:n9uN3brW0
魔王「ああ……その分、感染力は非常に低いみたいなんだ」

勇者「ちょっとだけ安心した」

店主「つっても厄介には変わりねーんだろうがな」

勇者「こっち側の人間だったら、一旦殺してみて神官達に蘇生させてみる、とかあるんだけどもなぁ」

店主「損傷が酷くなければ、死後一時間以内なら蘇生できるもんな」

魔王「君達は私達を何だと思って……ああ、そうか。根本的に認識が違うのだったな」

魔王「私は確かに魔王だが、我々とて魔物の被害を受けているのだ。魔物は完全に我々の外で活動している存在だ」

勇者「マジか?!」

店主「おいおい……それ、衝撃の事実だぞ」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:42:21.84 ID:n9uN3brW0
魔王「でなければ社会見学と言えど、人間側の国で暮らす事などありえないだろう」

店主「あー……じゃあなんだ? 魔王を筆頭とする魔族は俺達人間と変わらない生活と立場をしているって事か」

魔王「流石マスターですね。正にその通りです」

勇者「じゃあ俺、まー君と戦わなくていいのか! やったぁ!!」

魔王「ふふ、そういう事だ。因みに、我が国でも崇拝する神もいるし神官もいる。蘇生術も同じものなのだろうな」

勇者「じゃあ試してみたのか?」

魔王「ああ、ドラゴンも一滴で息絶える毒を1ガロンほど飲んで頂いた」

店主「ガロンかよ……」

魔王「緊張のあまり、神官達が解毒せずに蘇生を行い文字通り二度死なれてしまったが、症状は治まらなかったよ」

勇者「死に損だなぁおい」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:45:29.77 ID:n9uN3brW0
魔族「魔族側にある方法はいくらでも試したが……秘術でも見つからないものだろうか」ハァ

勇者「もしかしてここに来たのって、こっち側の手法を探しにか?」

魔族「正確にはその名目で抜け出してきた、かな。まだまだ私では国を回す礎にもなれないから問題はないのだが……」

店主「だったら南の山にでも登ってきたらどうだ」

店主「ウィルス相手じゃアレだが、あそこに湧く温泉は毒消しにも使われるそうだからな」

勇者「マジか? 初めて聞いた」

店主「てめーが食あたりか何かで大騒ぎした時に飲んだやつだ」

勇者「おお! 万能水か!!」

魔王「万能水?」

勇者「腹が千切れるほどの腹痛を起こした時に飲んだ水だ。一瞬で治まったぞ」

魔王「おお! それは期待ができそうだな。明日にでも連れて行ってもらえるだろうか?」

勇者「おう、任せろ!」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:48:21.76 ID:n9uN3brW0
店主「うん? ……あ、おい! お前ら隠れろ!」ガチャガチャ

勇者「え? ハッ、まー君こっち」グイ

魔王「うわわ?」

魔王(一体どうしたと言うのだい?)ヒソ

勇者(お前にも絶望を味合わせてやろう)

「こんにちは~。今日お休みなんですか?」

店主「ああ、ちょっとあってな。まあ君なら構わんさ」

魔王(聞き覚えがある声……)

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:51:26.34 ID:n9uN3brW0
店主「今淹れるから掛けていてくれ」

「あら? 私以外にも誰か来ていたのかしら?」スンスン

店主「ああ、ちょいとな。まあ、そいつらは帰っちまったところだがよ」

「へえ~。今日のお休みはその人達への貸切だったのかしら?」

店主「ま、そんなところだな」

魔王(やっぱりこの声……僧侶お姉ちゃん!)ヒソ

勇者(もう……僧侶じゃない……けどな)ハハ..

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:54:36.52 ID:n9uN3brW0
「そういえば……北の城門で何かあったらしいのですが、何か聞いていますか?」

店主「あー俺も何かがあってちょいと騒ぎがあった、ぐらいにしか知らねぇんだよな」

「うーん気になるなぁ……」

店主「散歩がてら城門まで行って聞き込みでもしたらどうだ?」ケラケラ

「野次馬根性がありありで嫌ですねぇ」

店主「まあ、あんま無理はするんじゃねーよ」

「ふふ、分かっていますよ。お腹のこの子に負担になるような事は控えていますので」サスサス

魔王()ビクンビクン

勇者()ビクビクン

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 00:57:43.14 ID:n9uN3brW0
魔王(憧れだった僧侶お姉ちゃんが……)

勇者(時の流れと現実は厳しいのだ……)

魔王(今日、来なければ良かったよ)

勇者(いやいや来て良かっただろ。お前だけ無傷とか納得いかねー)

魔王(君は本当に意地が悪いなぁ。もう少し成長したらどうだ)

勇者(うっせ)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:00:27.35 ID:n9uN3brW0
……のろけ中

「それじゃあ失礼しますね」

店主「おう、旦那さんによろしく伝えておいてくれ」

「はい♪」カラン

店主「……おい、行ったぞ」

勇魔「」ドンヨリ

店主「あー……」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:03:07.38 ID:n9uN3brW0
勇者「ふ、ふふ……だが今日はまー君にもこの絶望を与えてやれた」

魔王「くそ……酷い。現実とは酷い」

店主「お前らさっきからテンション高いな」

勇者「全くまー君はxxx属性があるんだからー」

魔王「無い! そんなもの、断じて無いぞ!」

店主「テンションたけーなー」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:06:12.41 ID:n9uN3brW0
魔王「そうだ、そろそろ他の皆の……」カランカラン

女衛兵「休みとは珍しいな、何かあったのか?」

女剣士「お、勇者いんじゃん。何やってんの?」

女槍兵「あれ……隣に居る人って」

女魔法使い「まー君? うそっ! マジで!?」

勇者「うがあぁ向こうからきやがった」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:09:26.76 ID:n9uN3brW0
女衛兵「おお……一段と美青年になって」

女剣士「うわぁっ! すっごい角! まー君ってやっぱ魔族だったんだ!」

女槍兵「で、でも魔族でも……その、まー君は大好きだよ?」

女魔法「というか余裕でいけるよね。まー君、あたしと付き合わないっ?」

魔王「え、ええ、と……み、皆も変わりないようで何よりだよ」

勇者「」シーン

店主「そう腐るな腐るな」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:12:17.22 ID:n9uN3brW0
店主「お前らもそういうのはいいが、どんどん勇者の心が離れていくぞ」

女剣士「別に構わないしー」

女槍兵「あ、あたしなんかより素敵な人ができると……」ゴニョゴニョ

女魔法「勇者とかどうでもいいしー☆」

勇者「」シーン

魔王「ゆ、ゆーちゃん……なんて逆風の最中に」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:15:21.77 ID:n9uN3brW0
女衛兵「うーん、私はまあ好きだから嫌われるのは嫌だな」

勇者「でもお前彼氏いんじゃん……」

女衛兵「は? 何を言っているんだ。今まで出来た試しがないのだぞ」

勇者「だってよく年下っぽい子と手繋いでるじゃんか!」

女衛兵「年下……ああ、それは弟だ」

勇者「……。え?! チャンスあったって事か!? くそっ!」

魔王「え? 喜ばないのかい?」

店主「そういやお前、隣町の子と上手くいきそうだったんだっけか?」

剣槍魔「」ガタッ

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:18:23.52 ID:n9uN3brW0
店主「全く、お前らも幼馴染だからって悠長にし過ぎなんだよ」

勇者「何言ってんだおっさん、少なくともそっちの三人はフラグが存在していないぞ」

店主「いやいやぁ、こいつ等以外とそうでもないんだぞ」ニタニタ

女剣士「は、はん、おっさんもとうとうボケ始めたかねぇ」

女槍兵「あ、あたし達は別にそんな事、無いし……」

女魔法「ゆ、勇者とか眼中にないしー」

魔王「なんだ、モテモテじゃないか」

勇者「いやだってこいつ等からチョコ貰った事無いし。くれって言ったら、何でお前にって暴言吐かれて唾吐きかけられたぞ」

魔王「あれー?」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:21:12.56 ID:n9uN3brW0
勇者「なんだろう俺、疑心暗鬼に陥りそう」

魔王「ゆーちゃん落ち着いて!」

勇者「女怖い……もう魔族側に渡ってまー君ちで暮らす」ガタガタ

男剣士「よー! こっちに勇者がいるって聞いて駆けつけたぜ!」バーン

女剣士「空気読めないのが来た……」

女魔法「マジ帰れよ」

男剣士「大所帯だな! まあいいや! 勇者! 隣町の例の子、普通に彼氏いたぜ! ラブラブな所見ちまったよ!」

勇者「」

女衛兵「火に油をっ」

店主「大延焼だな、こりゃ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:24:19.10 ID:n9uN3brW0
勇者「もう何も信じられない」ガタガタ

女衛兵「私もか? 私は今まで好意的に接してきたのだがなぁ」

女衛兵「そうかぁ……私では君に応えられなかったぁ」

勇者「女衛兵、毎日俺に味噌汁作ってくれ」キリッ

女衛兵「私も仕事を続けたいからそれはできないが、まずは付き合うところからでよければ」ニコリ

勇者「女衛兵!」ヒシッ

女衛兵「ふふ、嬉しいよ勇者。……っふ」チラッニタッ

剣槍魔「」ガタッ

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:27:13.14 ID:n9uN3brW0
女剣士「勇者ー、そいつ結構腹黒なんだぞー」ダラダラ

女槍兵「勇者君……可哀想……」ダラダラ

女魔法「あーあー……ババ引いちゃったー」ダラダラ

勇者「……」

勇者(脳内発言力  女衛兵(信頼)>>>女槍兵(普通)>>||>>剣、魔(サディズム))

勇者「女衛兵っ」ヒシ

女衛兵(彼の事が好きなのに、なんであの子ら普段からあんな態度を取るんだろうか)アマノジャク?

魔王(蚊帳の外だけどゆー君に救いがあるようだしいいか)

男剣士(なんかこの面子の前で暴露しちゃいけなかった気がするがまあいいか! 幸せにな、勇者!)シュタッ

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:30:16.78 ID:n9uN3brW0
女衛兵「ところで勇者。君と結ばれたのは非常に嬉しいが、まー君の状況を教えて欲しいのだが」マオウ?

勇者「おっと、悪かったな。まー君とは十年前に何時も遊んでいた場所でまた会おうって約束してこれこれしかじか」

魔王「かくかくうまうまという訳で、今こうしてここにいるのだよ」

女衛兵「何とも気の毒な話だな」

店主「まー治って欲しいが、こっち側でそう有効手段が見つかるかねー」

勇者「ま、とにかく山に行ってみてだよな」

魔王「だね」

女剣士(あ、あたし達の入るスペースがない!)

女槍兵(ど、どうしよう、会話に入れない……)

女魔法(おのれぇ女衛兵、一人抜け駆けなんて)グヌヌ

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:33:22.44 ID:n9uN3brW0
勇者「にしても皆が揃った所為で時間が空いたな」

魔王「あっ、剣のお師匠様の所に挨拶に行きたいな」

勇者「残念、あの人は王都の兵士に剣術指南で一年前からいないんだ」

魔王「本当に残念だなぁ……」

勇者「というかさ、俺はこれからどうしたらいい訳?」

魔王「ゆーちゃんはどうしたいんだい?」

勇者「俺はー……どうしたいんかなー」

女陣営(完全に二人の世界だっ)

店主「まーガキん頃の様子を考えりゃあこうなるわな。お前らももう帰れよ」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:36:19.93 ID:n9uN3brW0
二時間後
勇者「じゃあ俺はその線で王様に謁見してみるわ」

魔王「こっちもそちらと協力して魔物駆逐に乗り出せる準備をしておこう」

店主「お前ら随分本格的な話をしているな」

勇者「そりゃあな。相手がまー君なら戦うとかねーし。かと言って、それじゃあ俺が無職になっちまうし」

魔王「こちらとしても、人間と手を組んで魔物の駆逐が行えるなら越した事はないからね」

店主「つーかあいつらってどうやって増えてんだ? 俺らは魔王の魔力でぽこぽこ増えているもんだと思っていたが」

魔王「正確には地中にある瘴気溜りが原因ですね。それが地上に漏れ出した際、周囲の動植物が魔物化するのです」

勇者「え、なに? じゃあどうあっても魔物そのものが消滅する事はないのか?」

魔王「瘴気そのものを消し去る手段を見つけないことにはね」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:39:26.29 ID:n9uN3brW0
勇者「あー懐かしいなぁ」

魔王「昔はよくこうして二人で布団並べたねー」ハハ

勇者「で一階から俺の親父とまー君の親父さんが酒盛りする声が聞こえるんだよなー」

魔王「そういえばゆーちゃんのご家族は?」

勇者「師匠と一緒に王都行っちまった。あの熊みたいな親父が王様の親衛隊だってよ。笑っちまうぜ」

勇者「母さんはその付き添い。全くよー勇者の使命を全部俺に放り投げたんだぜー信じられねーよ」

魔王「はは、らしいと言えばらしいじゃないか」

魔王「まあ……うちも似たようなものか」ハハ

勇者「そうなのか?」

魔王「母上はずっと父上の看病をしているからな」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:42:21.97 ID:n9uN3brW0
翌日
勇者「……」ザックザック

魔王「……ふう……ふう」ザックザック

魔王「ちょっと、休憩にしないかい?」ザックザック

勇者「何言っているんだ? 温泉で一泊でもしていきたいのか?」

勇者「親父さんが苦しんでいるんだろ? とっとと行くぞ」

勇者「というかまー君、体力……」

魔王「わ、私は魔法型なんだ! 君みたいな肉体派じゃないんだぞ!」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:45:20.69 ID:n9uN3brW0
カポーン
勇者「ふう……」

魔王「身に沁みる……」

勇者「良い所だろう」

魔王「初めて来るなぁ。私がいた頃にもあったのだろうか?」

勇者「あの時は廃れていたからなぁ。7,8年前くらいに温泉が話題になってさ」

勇者「観光資源としてここを整備したんだってさ」

魔王「なら道も整備してほしいのだけどなぁ……」

勇者「あれくらい、女魔法使いですら登ってこれるぞ」

魔王「え……」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:48:26.95 ID:n9uN3brW0
勇者「いやー良い湯だったなぁ」ザックザック

魔王「そうだね。それに疲れもバッチリ取れたよ」ザックザック

勇者「……」ザックザック

魔王「……」ザックザック

勇者「……」ピタ

魔王「……」ピタ

勇者「お、温泉!」ダダ

魔王「汲み忘れた!」ダダ

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:51:15.54 ID:n9uN3brW0
……数ヵ月後
店主「~♪ ~♪」フキフキ

勇者「おっちゃんただいま!」バン

店主「お、帰ってきたなゆー坊。国王との謁見はどうだった?」

勇者「ちょうどまー君とこの使者も来ててすんなりいった!」

店主「おお、そりゃ良かったな」

勇者「手紙! 手紙! 手紙! 俺の所に来た手紙預かってるって聞いた! まー君のだろー!!」バンバンバン

店主「カウンターを叩くんじゃねえようるせぇなぁ。手紙なんぞ逃げてきゃしねーよ」ゴソゴソ

店主「ほらよ、俺も中見てないから見せろよ」スッ

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/29(月) 01:54:24.10 ID:n9uN3brW0
勇者「お、おお! 親父さん治ったってよ!!」

店主「おお?! お、マジだな! 良かったじゃねーか」

勇者「いやー流石万能水だぜ」

店主「瘴気ノロを撃退か。あっちの国にでも輸出したら売れたりしてなー」

勇者「というかあの話じゃ向こうは海産物食わないっしょ。お、追記?」

P.S. レア風味ハンバーグなるものを食した後、食中毒と思しき症状が発症。
   未だ治らず、感染力も非常に低いが父上の腹痛と血便が止まらない。助けて。

店勇「だから加熱しろーー!!」


      勇者「今日で丁度十年か……」 完

引用元: 勇者「今日で丁度十年か……」