キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」 泣いた赤鬼編 

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」マッチ売りの少女編 

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」 桃太郎編 

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キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」 人魚姫編 前編 

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キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」かぐや姫とオズの魔法使い編 前編 

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キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」『作者』編 前編 

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」『作者』編 中編 

キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」『作者』編 後編

1 :◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 00:42:08 ID:lx6主 
今からずっとずっと昔
現実世界 紀元前 古代ギリシャ とある富豪の屋敷

ワイワイ ガヤガヤ

奴隷「──そこで北風は太陽にこう言ったんだ『それならば俺と力比べをしよう、そうすればどちらが優れているかハッキリするだろう』ってな」

奴隷仲間1「おぉ!まさかのバトル展開か!北風と太陽のバトルとか胸熱!」ワクワク

奴隷仲間2「お前、話の腰を折るなよ。で、どうなるんだ?続きを聞かせてくれ」

奴隷「北風はこう続けたんだ『あそこに旅人が居るだろう、奴の上着を脱がせた方が勝者というのはどうだ?』ってな。そして太陽はそれに応じたんだ」

奴隷仲間3「ちょっと待て!なもん上着を吹き飛ばせばいいんだから北風の勝ち確じゃねぇか!」

奴隷仲間4「そう考えると卑怯な気もするな…太陽は風をおこせないわけだし、結果が見えてる勝負だぞ」

奴隷「ところがそう簡単にはいかないんだなー。北風にとっちゃプライドを賭けた戦いだ、気合い入れて旅人に風を吹き掛けたんだが…上着を吹き飛ばす事は出来なかった」

奴隷仲間1「マジか!何でだ?」ワクワク

奴隷「寒い風が吹けば当然旅人は上着が飛ばされないよう押さえ込むだろ?北風はそれを計算に入れていなかったんだ」

奴隷仲間3「おー、なるほどな。じゃあ勝負は引き分けか?北風に吹き飛ばせなかったもんを太陽が吹き飛ばせる訳ないしなぁ…で、どうなんだ?」

奴隷「太陽は悔しがる北風をよそに『ならば次は私が』と告げるとただサンサンと旅人を照らし続けた。すると辺りは次第に暖かくなって…ついに上着なんか着ていられない陽気になったんだ」

奴隷仲間4「おぉー!じゃあ太陽は気温を上げることで…」

奴隷「あぁ、太陽は旅人を照らすことで彼自らに上着を脱がせた訳だな」

奴隷仲間1「うぉー!すげぇな!俺には考え付かない方法だぜー!」

奴隷仲間2「だな。しかも北風の方法よりずっとスマートだ」

奴隷「そして見事、太陽は力比べに勝つことが出来た。めでたしめでたし、というところで終わりだ」

奴隷仲間4「いやー、今日も面白い話だったぞ!ところでこのおとぎ話は何ていうタイトルなんだ?」

奴隷「あー、話を考えるのは得意なんだがタイトル決めるのはどうも苦手でなー…適当に【北風と太陽】とかでいいんじゃないか?」


これまでのあらすじ
我輩は現実世界に住むキモオタでござるwww
ある日、妖精のティンカーベル殿と出会い、おとぎ話の消滅を防ぐために様々なおとぎ話の世界を旅してるのですぞwww
とはいえ旅ももう佳境www詳しくは過去スレを読んで頂きたいwww

3: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 00:53:24 ID:lx6主 
奴隷仲間1「ははっ!お前そのまんまじゃねぇか!もっと捻れよ!」バシバシ

奴隷「いいんだよ、タイトルなんか何だって。重要なのはそのおとぎ話の内容だ。どうだ?今回の話は面白かったか?」

奴隷仲間2「あぁ、楽しませてもらったよ。毎度の事ながらお前の話は聞いてて飽きない、学の無い俺達にもわかりやすいしな」

奴隷仲間4「そうとも、こんな生活してるからお前の話が唯一の娯楽だけど…それを差し引いてもお前のおとぎ話はいつも面白いぜ」

奴隷仲間3「うんうん、それにタメになるし!俺も荷物運びの仕事、強引に無理矢理たくさん運ぼうとしてるけど…やり方変えりゃ太陽みたくスマートにできるかもな」

奴隷仲間4「それがいい、お前の仕事は強引な所あるからな。うまい具合に小分けして運んだ方がずっと効率的だ」ガハハ

奴隷仲間2「タメになるって言えば俺はこの間話してくれた【アリとキリギリス】が勉強になったな、最後アリがキリギリスに対して辛辣なのもいい。厳しいもんだしな現実は」

奴隷「あぁ、あの話か。あれは他の連中も喜んで聞いてくれたな、割と人気があるんだよ」

奴隷仲間2「あれは名作だ。あの話で前準備や支度の大切さがわかったからな、おかげで仕事も少し楽になった気がするよ。他の連中もそう言ってた」

奴隷仲間1「俺もそう思うぞ!ずっと奴隷してっから知らないこと多かったけど、お前のおとぎ話のおかげでいろいろ知れたし!感謝してるぜ!」

奴隷「そうか。俺は自分のおとぎ話を聞いてお前たちが楽しんでくれればそれで十分なんだがなぁ…」

奴隷「でもお前たちが生きていく上で俺のおとぎ話が何かしらの助けになってるなら、それは喜ばしい事だな。嬉しく思う」ニッ

奴隷仲間1「へへっ、嬉しいのは俺達の方だぜー!お前みたいな良い奴が来てくれたし、お前が来てからこの奴隷生活にもちょっとした楽しみg」

主人「なにやら騒がしいと思ったら…お前らー!何をこんなところでサボってるんだ!まだ仕事は残ってるんだぞ!持ち場へ戻れー!」ドンッ
4: 名無し:16/10/31(月) 00:53:59 ID:xBo 
ティンカーベル殿!!!
5: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 00:56:18 ID:lx6主 
「うおっ!すんませんご主人!すぐ戻るんで!」ドタドタ
「ほら急げ!メシ抜きにされちゃかなわねぇ!」バタバタ
「そんじゃな!また休憩の時にでも話聞かせてくれよ?」ヒソヒソ

主人「まったく…あいつら少し目を放したらサボりよってからに…」

奴隷「ははは…それじゃ俺も仕事に戻るんでー…」コソコソ

主人「待て!お前には話がある。今、騒いでいたのはなんだ?お前が中心になっていたようだが?」ガシッ

奴隷「あー、いえ…俺が考えたおとぎ話を聞いてもらってただけです。大したことは何にもしてないですよ」

主人「おとぎ話…そうか、近頃奴隷共の間で噂になっていたのはお前だったのか」

奴隷「噂…ですか?俺が?」

主人「あぁ、なんだか奴隷共が以前よりもイキイキしていてな。話を聞いてみると面白い話をする奴隷が入ってきたとかで、そいつの話を聞くのが何よりの楽しみなんだと」

奴隷「へぇ…そんな噂が。なんていうか、そう言われるのは嬉しいですね」

主人「喜んでいる場合か!あいつらがサボる原因になっているだろうが!お前の話ひとつで奴隷共のやる気がでるというなら咎めはしないが…仕事中はやめろ。次見つけた時は完全に禁止にするぞ」

奴隷「楽しみにしてくれてる奴もいるから禁止は困るな…わかりました、休憩中だけにするように皆には言っておきます」

主人「わかればいい。で…だな、そこでお前にひとつ仕事を与える」

奴隷「今やっている荷物運び以外の仕事ですか?」

主人「あぁ、そうだ。お前には私の娘の為におとぎ話を作ってもらう」
6: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 00:59:06 ID:lx6主 
奴隷「お嬢さんの為…?確か聞いた話だと病で床に伏せているとか、なんでも重い病だと」

主人「…あぁ、娘は重い病気を患っていた。だが良い医者を付けて良く効く薬を取り寄せたおかげで病気自体はもう完治している」

主人「だが何年も部屋に籠りきりになっていたせいか…身体は治っても心が前を向けないようだ。珍しい鳥を見せても豪華な洋服を与えても美味しい料理でも娘を笑顔にはできなかった」

奴隷「そこで噂になってる俺のおとぎ話でなんとかできないか、と?」

主人「奴隷に託すなどまったくもって情けない事だが…方々を回り私に出来ることは全て試した、他にはもうアテが無いのだ」

主人「それに伝え聞いたお前のおとぎ話はまぁ悪くない、十分聞けるものだった。ということだ、娘を前向きにするようなおとぎ話…出来るな?」

奴隷「そうですね…ご主人の命令とあらばやらせてもらいます、でもお嬢さんがどのような方かわからないとどんな話を喜んでくださるのかわかりません」

主人「いいだろう、娘と話す機会を作れば良いな?」

奴隷「はい、それとなるべく早くおとぎ話を完成させる為に荷物運びは休ませて欲しいのですが」

主人「やむを得ん、いいだろう」

奴隷「あとお嬢さんの笑顔を取り戻したあかつきには奴隷達を少しだけ優遇して欲しいのですが」

主人「あまり調子に乗るんじゃあない!お前は奴隷なのだから主人の私に何か要求できる立場では無いのだぞ!」

奴隷「ははは…ですね。すんません、ご主人」

主人「だが…いいだろう、この仕事は特別だ。成功させれば奴隷共の食事の増量を約束してやる、お前の処遇も見直す。その代わり失敗は許さんぞ!」

奴隷「おぉ、ありがとうございます!お任せください、素晴らしい物語を考えてみせますよ」

・・・
7: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:02:36 ID:lx6主 
それから半月程…

奴隷仲間1「最近つまらんー!人生に喜びがないー!」ブーブー

奴隷仲間2「なんだよ急に、というか奴隷の人生にそんなもんないよ」モグモグ

奴隷仲間1「そうだけども!俺はアイツの面白おとぎ話をもっと聞きたいんだよ!お嬢さんがアイツを独り占めしてるせいでアイツの話聞くのが週一ペースになっちまった!なぁお前も残念だろ!?」

奴隷仲間3「まぁそりゃ残念だけどアイツにとっちゃ今の状況は好機だぜ、お嬢さんに気に入られれば奴隷解放も夢じゃない。お嬢さんは元気を取り戻しつつあるらしいし俺達の飯も増えてみんな幸せだろ」モグモグ

奴隷仲間1「そこはまあ、いいことだけども…でもさー」ブーブー

奴隷仲間2「仲間が充実した生活を送ってるんだ、何の不満があるんだよ。嬉しいことだろ?」

奴隷仲間1「まぁ…そうだよな。アイツが認められるのは嬉しいし、ここは我慢するかー」モグモグ

ドタバタドタバタ

奴隷仲間4「お、おいお前ら!すげぇ事になっちまってる!」ゼハーゼハー

奴隷仲間2「ホコリをたてるなよ、飯食ってんだぞ。で、どうしたんだ?」

奴隷仲間4「国王!国王だってよ!」ゼェゼェ

奴隷仲間3「いやわかんねーよ!国王がどうしたってんっだよ」モグモグ

奴隷仲間4「アイツがおとぎ話でお嬢さんの笑顔を取り戻したって話!あれがどうやら国王の耳に入ったらしくて、アイツにメッチャ興味持ったんだってよ!」

奴隷仲間1「そりゃあんな面白い話できる奴隷なんかいねぇからなぁ…ん?おい、それじゃあまさか!?」

奴隷仲間4「そのまさかだよ!アイツ、国王に謁見する事になっちまったんだとよ!国王の御前でおとぎ話を話す為に!」
8: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:04:59 ID:lx6主 
さらに数日後 城 謁見の間

奴隷「あの、ご主人。俺、なんでこんなところにいるんですかね…」

主人「仕方がないだろう、国王様がお前の噂を耳にして是非おとぎ話を聞きたいと仰るのだから。まったくどこから漏れたんだか…噂というのは怖い」

奴隷「興味を持っていただけるのは嬉しいんですけどこんな大舞台初めてですよ、当然ですけど」

主人「……そうか」

奴隷「だって俺、しがない奴隷ですよ?それがなんで国王様に呼ばれて城なんかに…評価してくれるのは嬉しいですけど」

奴隷「正直、結構緊張してるんですよね…ご主人?聞いてます?」

主人「少し黙っていろ…!私も国王様直々の呼び出しに緊張しているのだ、話しかけるな今は…!」

奴隷「もしも俺のおとぎ話が受けなかったら俺とご主人殺されますかね…なんちゃって」ハハハ

主人「やめろ縁起でもない…!いいか、絶対に失敗をするなよ…絶対に王を満足させろ!そうだ!娘を笑顔にさせた時のおとぎ話だ、あれを話せ!ネズミがライオンを助ける奴だ!」

奴隷「いや…国王様相手に百獣の王が失態を晒す話はどうなんですかね。大丈夫です、考えてきたおとぎ話には自信ありますから」

主人「そ、そうだな。これがうまくいけば私の評価もあがる、お前の望みもある程度は叶えてやるからしっかりな!受け答えも練習したようにやるように」

奴隷「はい、まぁまだ死にたくないですしね…おっと、いらしたようです」バッ
9: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:09:01 ID:lx6主 
国王「ふむ。長旅ご苦労、突然呼び出して済まなかったな」

主人「とんでもございません!国王様がお呼びとあらば直ぐ様馳せ参じます」ペコリ

国王「よい心掛けだ。お主は奴隷の主人だな、では隣のお主が例の奴隷か」

奴隷「はっ、左様でございます」ペコリ

国王「二人とも楽にせよ、とって食おうという訳ではないのだ。さて…奴隷よ」

奴隷「はいっ、何でございましょう」

国王「私は見ての通り随分と歳老いた…若い頃はあちこちを旅したものだが今ではもうそれも構わん。城の中でつまらぬ毎日を過ごすのみ…故に欲しているのだ、胸踊るような物語を。この気持ちがわかるか?」

奴隷「はい、お気持ちお察しいたします」

国王「お前の話は噂で聞いている。なんでも病で笑顔を失った娘に再び微笑みを取り戻したとか」

奴隷「はい、その通りでございます。しかし私はただお嬢様に自作のおとぎ話をお話しただけですので…大したことは」

国王「謙遜をするでない。お前たちを呼んだのは他でもない、私もお前のおとぎ話を聞いてみたいからだ。奴隷が語る物語などたかが知れていると言う家臣も居たが…私はお前に期待している」

国王「奴隷よ、話してみせよ。この私を満足させられる物語を、心踊る物語を…聞かせてもらおうか」

奴隷「はい、では僭越ながら…私が国王様の為に生み出したおとぎ話を幾つか」

国王「うむ、楽しみだ」フォッフォッフォ

主人(頼むぞ…!)
10: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:14:47 ID:lx6主 
・・・

奴隷「──そして愚かな木こりは神に嘘を見抜かれ、金の斧を手に入れるどころか自らの鉄の斧さえ失ってしまったのです」

奴隷「正直に生きるものには祝福が与えられますが不誠実な者には罰が与えられる…というおとぎ話にございます」ペコリ

国王「……」

主人「あ、あの、国王様?」ドキドキ

国王「奴隷よ、これらの物語は本当にお前が考え出したのだな?」

奴隷「はい、国王様にお話したいくつかのおとぎ話は全て私が生み出したものです。何かおかしな部分でも…?」

国王「いいや、あまりの素晴らしさに疑いをかけてしまった。お前のおとぎ話は本当に素晴らしい、久々に愉快な気持ちになれた。とても奴隷が生み出したものには見えない」

国王「奴隷よ、これだけの才能を持ちながらなぜ奴隷などに身を置く?お前ならば作家を志せるだろう」

奴隷「えっと…何故かと申されましても…。ご主人、なんて答えます?」ヒソヒソ

主人「わ、私に降るんじゃあない!」ヒソヒソ

国王「ならば主人に聞こう。お前は娘を助けられここまでの才能を持つこいつを何故いつまでも奴隷として扱っている?」

主人「えっと、あの、そのー…」シドロモドロ

主人「じ、実はこの謁見が終わったら彼を奴隷から解放しようと思ってまして!うん、そうなんですよ!そうだろ?そう言っていたよな私は?」アハハ…

奴隷「えっ」
11: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:28:36 ID:lx6主 
国王「そうか、ならばお前は自由の身だな。今後は存分に作家として作品を産み出していくとよい」

奴隷「は、はい。……いいんですか、ご主人?」

主人「あの状況じゃお前…ああ言うしかないだろう。その場しのぎだ」ヒソヒソ

国王「んっ?今なにやら聞こえたが?その場しのぎがどうのこうの…」

主人「と、とんでもございません!彼はもはや私の奴隷ではないので!そ、そうだな?」アセアセ

奴隷「は、はぁ…」

国王「なんだ、嬉しそうではないな?今後は誰かの所有物ではなく自由な生活を送れるのだぞ?」

奴隷「はい、それは嬉しいのですがなんと言いますか…ピンと来ないといいますか…」

国王「フォッフォッ、奴隷から解放されるとなれば普通はもっと喜ぶものだがな。深く考えずともお前がやりたいことをすればいい、何かないのか?」

奴隷「私がやりたいこと…ですか」

国王「うむ、聞かせてみよ。お前は自由の身、さぁ何を望むのだ?」

奴隷「そうですね…それなら私はこの国中を旅してまわりたいです」

奴隷「そして私のおとぎ話を行く先々で披露し、様々な人に知って欲しいのです」
12: 名無し:16/10/31(月) 01:30:49 ID:xBo 
ティンカーベル殿!
13: 名無し:16/10/31(月) 01:45:33 ID:72K 
殿
14: ◆oBwZbn5S8kKC:16/10/31(月) 01:45:58 ID:lx6主 
奴隷「無礼は承知なのですが、国王様は私のおとぎ話を楽しんでいただけたのですよね?」

国王「うむ、予想以上だ。是非とも別の話も聞きたいくらいだ」

奴隷「仲間の奴隷達もお嬢さんも喜んでくれました。自分のおとぎ話を楽しんで貰えること、私にとってはそれが何よりの幸せなのです」

奴隷「そして私がおとぎ話のおかげで幸せに、そして奴隷から解放されえたように…おとぎ話の力で人々を幸せにしたいのです」

国王「ほう、おとぎ話の力で?」

奴隷「おとぎ話には他人に思いを伝える力、未来に思いを残す力、そして世界を変える力があると私は信じています。ですから旅をしてたくさんの人におとぎ話を楽しんで欲しいのです」

奴隷「そうすればいずれ…世界中は平和で幸せになれます。私はそれを実現させたいのです」

国王「フォッフォッ、私にはとんだ夢物語に聞こえるな。そうそう世界を変えるのは容易くない……だが」

国王「志の大きな奴は好きだ、気に入った!その夢成し遂げてみよ!僅かばかりだが協力はしよう、旅の装備と資金はこちらで用意しよう。それと…奴隷だったお前には名前が無いのだったな、それでは不便だろう」

奴隷「よろしければ、国王様が名付けてはくれませんか?私がいずれ夢を実現させることの約束代わりとして」

国王「うむ、構わぬ。そうだな……よし、決めたぞお前の新たな名!」


国王「アイソーポス…!それがお前の名だ、その名を国中に轟かせ未来へ残せるよう精進し旅を続けよ!」


アイソーポス「はいっ!このアイソーポス、必ずやおとぎ話の力で未来を幸福なものに導いて見せましょう!」

28: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/02(水) 00:19:04 ID:Fx5 
ヘングレが好きすぎて本編そっちのけで書いた単発番外編
『グレーテルの好感度』

グレーテル「フフフ…この食べきれないほどのお菓子が全部私のもの…今の私はおかしセレブだよ…」ドッサリ

ヘンゼル「ハロウィンでたくさんお菓子貰ったからね、でも一度に食べちゃダメだよ?」

グレーテル「大丈夫…それに一人で食べたりしないでみんなにも分けてあげようと思ってる…。みんなで食べた方が美味しい…だからお兄ちゃんにも、はい…スニッカーズ」スッ

ヘンゼル「僕はいいよ。だってそれはグレーテルが一番好きな奴じゃないか」

グレーテル「スニッカーズはおいしい…一番好き。だからお兄ちゃんにも食べてほしいの…それにこれならひとつでおなかいっぱいになるからもうおなかすいて辛い思いしなくて大丈夫だよ…」

ヘンゼル(僕達兄妹は空腹の辛さを知ってる。だから僕がお腹を空かせないようにって思ってくれてるのか…)

ヘンゼル「君みたいな優しい妹をもって僕は誇らしいよ」ナデナデ

グレーテル「えへへ…優しいなんて、そんなことないよ…。たくさん食べ物を持ってる人がみんなに分けてあげれば、みんな幸せになれるもんね…」

グレーテル「スニッカーズはまだあるから…女王様とカイお兄ちゃん、お千代ちゃんとキモオタお兄ちゃん達にもあげるよ…あとラプお姉ちゃんにもスニッカーズ…」

グレーテル「裸王様はチョコレート食べなさそうだからビスケットをあげよう…赤ずきんちゃんにはチョコクッキー…。桃太郎さんとか赤鬼さんとか他のみんなにはキャンディをあげるの…」

ヘンゼル(特別好きな人には大好きなお菓子を、普通に好きな人にはそこそこ好きなお菓子を分けるのか。グレーテルらしいな)

グレーテル「ドロシーちゃんにはこの茎ワカメをあげよう…」

ヘンゼル「なんだか一気にランク下がったけど……ドロシーの事嫌いなの?」

グレーテル「そんなことないよ……特別にお千代ちゃんが前にお土産で貰ったおいしくないキャラメルもあげよう…」スッ

ヘンゼル(理由は知らないけど、ドロシーの事嫌いなんだな…)

34: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/07(月) 00:19:04 ID:pwy 
ヤボ用で今日はちょい時間アレなので定期更新はお休みします、申し訳ない
本編最新話の更新は明日します!もうちょいお待ちを!
本編更新しろとツッコミ入れられる事を覚悟した番外編『気を抜かないスタイル』

吸血鬼ヘンゼル「まったく…僕達は遊んでいる場合じゃないのになんでハロウィンの仮装なんかしなきゃならないんだ…まぁお千代が準備したから着るけど」

赤鬼「がははっ、こいつぁ西洋の祭りなんだろう?祭りなら楽しめりゃそれでいいじゃねぇか」ガハハ

吸血鬼ヘンゼル「そもそも番外編だからって今更ハロウィンネタを掘り下げるとか…もう少し季節感を考えるべきだよ」

赤鬼「お、お前そういうのは言わないもんだぞ…まだギリギリだろ、ギリギリ。それより俺も仮装用意したぞ!」ゴソゴソ

獅子舞「どうだっ!?わざわざ木ぃ彫って作った自信作だぞ!」パカパカ

吸血鬼ヘンゼル「いや、それはハロウィンじゃないよ」

獅子舞「なにっ!?違うのか!?」ガーン

猫耳グレーテル「あっ…赤鬼さんの仮装は獅子舞いなんだね…かっこいいよ…」トコトコ

獅子舞「おぉ、嬉しい事言ってくれるなぁ!グレーテルの化け猫も可愛らしいぞ!」

猫耳グレーテル「ありがとう…でも化け猫じゃなくて黒猫だよ…」

吸血鬼ヘンゼル「マズイな、思った以上に可愛すぎる。これじゃ黒猫の仮装なのか天使の仮装なのかわからない…」ブツブツ

狼のきぐるみ「あら、まるでどこかの子煩悩魔女のような口振りね」クスクス

獅子舞「なぁ、赤ずきんお前その仮装…」

狼のきぐるみ「良くできているでしょう?ラプンツェルに頼んだら喜んで作ってくれたわ。ああ見えて裁縫得意だなんて意外よね。触ってみる?見た目以上にもっふもふよ」モフモフ

獅子舞「いや、出来がどうこうじゃなくてだな…なんでお前がよりによって狼の着ぐるみなんだよ。言っちゃ悪いがお前のその格好…」

猫耳グレーテル「そのきぐるみ…まるで赤ずきんちゃんが狼さんに食べられてるみたいに見えるね…」

吸血鬼ヘンゼル「そうだね、狼には痛い目に遭わされたのに君は随分とメンタル強いんだね」

獅子舞「おぉ…それ言っちまうのか…子供ってすげぇな…」

狼のきぐるみ「これは戒めなのよ、もう狼に利用されないようにね。お祭りと言えどハメをはずさないようにこうして自分を律するの」

吸血鬼ヘンゼル「あぁ、だから敢えて狼の仮装なんだね。僕も戒めとして常に小石を持つようにしてるから君の考えはよく解るよ」
猫耳グレーテル「なっとくしたよ…私も今からでも魔女の仮装に着替えようかな…いましめ、大事だもんね」

獅子舞「戒め戒めってお前ら…祭りぐらい素直に楽しめばいいんじゃねぇか?」

狼のきぐるみ「甘いわね赤鬼。そうやって油断をしていると狼に目を付けられて……一口でガブリよ?」キリッ

獅子舞「お、おう…」(本人は真面目なんだろうが…赤ずきんはちょいちょいズレてるときあるんだよなぁ…)

37: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 00:48:51 ID:IbV 
アイソーポスが旅立ってから十数年の時が流れ…
古代ギリシャ アイソーポスが奴隷時代に暮らしていた街

ザッザッ

アイソーポス「おぉ、ようやく見覚えのある風景が見えて来た。この街に戻って来るのも随分と久し振りだが…案外覚えているものだな、実に懐かしい」フフッ

アイソーポス「幸福な未来を紡ぐ為におとぎ話を伝えていくというこの旅…まだまだ道半ばだが、時にはこうして原点に帰るのも悪くないものだ」

アイソーポス「旅を始めた頃は色々と苦労したものだが…様々な人々の助けもあって今日までやってこれた。ありがたいことに私の名を知らない者はもうこのギリシャには存在しないだろう」

アイソーポス「名声に興味はないが私の名が広まることは私のおとぎ話が広まっているということ。それは非常に喜ばしいことだ、おとぎ話のおかげで私が奴隷から解放されたように私のおとぎ話もまた人々を幸福に……」

アイソーポス「……と、また独り言を長々と呟いてしまった。やれやれ、これはもう私の悪いくせだな。長い間一人で旅をしてきた弊害か」クックック

使用人っぽい男「ん…?この聞き覚えのある声はもしかして…!なぁあんた!ちょっといいか!?」バッ

アイソーポス「おっと、ビックリするじゃあないか突然大きな声を出されては。私に何か用事かい?」

使用人っぽい男「やっぱり!お前あれだろ!?ずっと昔、俺達におとぎ話を話してくれた奴だよな?ほら、覚えてねーかな…俺、お前とよく一緒に仕事してた奴隷だぜ!」

アイソーポス「……おぉ!思い出した!君は確か当時の奴隷仲間の!すまない、随分と小綺麗でさっぱりした服装だったから気が付かなかった」

使用人っぽい男「へへっ、お前が旅立った後に俺もお前みたいに奴隷生活から解放されてさー。おっと、こんなところで立ち話もなんだしご主人の屋敷に行こうぜ!俺、未だにあそこで働いてんだ。正規雇用だぜ正規雇用!」

アイソーポス「いや、確かに挨拶でもと思ってはいたが、突然押し掛けても悪いだろう」

使用人「何を言ってんだよ!ご主人もきっと喜ぶって、っていうか俺達にまたあの時みたいに旅の話でも聞かせてくれよ。ほらほら行くぞー」ヘラヘラ
38: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 00:52:29 ID:IbV 
ご主人の屋敷

・・・

ご主人「おぉ、突然の来客だというから誰かと思えばアイソーポスじゃないか!いや、実に懐かしい…!」

アイソーポス「お久し振りですご主人、お元気そうでなにより。突然の訪問お許しください」ペコリ

ご主人「はっはっ、堅苦しい挨拶はよせ。長旅で疲れているだろう、楽にしなさい。お前はもう私が所有する奴隷ではないんだから」

アイソーポス「はい、ではお言葉に甘えて」スッ

ご主人「それで、今日はどのような用件で私の元へ来たんだ?」

アイソーポス「いえ、実は用件という程の事は無いのですが…旅の途中この地に帰ってきたものですからご主人にもご挨拶をと思いまして」

ご主人「そうかそうか、歓迎するぞ。なんなら滞在中は私の屋敷に泊まっていきなさい、大したもてなしはできないがそこらの宿舎よりは快適だろう」

アイソーポス「いえ、お気持ちだけ頂戴します。その様に甘えるわけにもいきませんので」

ご主人「なに、遠慮する事はない。と言うよりだな…お前にはここに滞在して貰わなければ私が困る」

アイソーポス「…と、言いますと?」

ご主人「お前をここに連れてきた奴もそうだが…お前のおとぎ話を聞きたくて使用人達が皆ソワソワしていてな」

ご主人「このままでは仕事にならん、夜にでも彼等におとぎ話を聞かせてやってくれんか?それを宿代替わりとすればお前も気を使わず済むだろう?」

アイソーポス「フフッ、わかりました。そう言うことでしたらお言葉に甘えさせていただきます
39: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:04:24 ID:IbV 
十数年ぶりに戻った屋敷に奴隷は一人も居なかった

なんでも私が旅立ってしばらくしてからご主人は奴隷達を解放して正式な使用人として雇い直したらしい

ご主人は私のおとぎ話を聞いて思うところがあったから彼等を解放したと言っていた、それは私にとってなによりの誉め言葉だった

私のおとぎ話が誰かの心を動かし、誰かを救った

小さな一歩だがこれを繰り返せば必ず幸福な未来への道は出来ていく

旅先で目にした戦争、確執、嘘や嫉妬、暴力といった現実

それらもいつかは消せるのだと信じていた

そして私は希望を胸に旅を続けていたのだ



だがそれは一部の人間にとっては目障りなものだったのだろう

私はこの数年後
奴隷から一変して有名な童話作家にのしあがったという境遇に嫉妬した市民に……



殺されたのだ
40: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:06:34 ID:IbV 
現在
不思議の国のアリスの世界 ハートの女王の城 宝物庫

・・・

チェシャ猫(奴隷だった私が自由を手にし、アイソーポスの名を与えられたあの日からもう二千年以上経つ…)

チェシャ猫(おとぎ話を伝え世界を平和にする旅か…我ながら愚かしい。不可能で馬鹿馬鹿しい試みだと気がつかぬままその夢物語に生涯を捧げたのだから)

チェシャ猫(結局と言うべきか当然と言うべきか私の願いは叶えられなかった。世界を平和にする事も未来を幸福なものに変えることも出来なかったのだ)

チェシャ猫(事実、現実世界の有り様を見ればわかる。くだらない嫉妬や見栄、欲望に満ち溢れ無益な争いを繰り返す。意味の無い戦争が各地で行われ、無駄に命を散らせている)

チェシャ猫(二千年以上経っていながらやっていることは同じ、人間は何一つ学習していないのだ)

チェシャ猫(実に愚かで、滑稽なものだ。幸福や平和を願っていながらやっていることは正反対…。もうあの世界は変わりようがない、腐りきっている。もはや存在する価値の無い世界だ)

チェシャ猫(…だがもうじきあの醜い世界を見ることも無くなるだろう。私とアリスの願いがようやく叶う時が来たのだ)

チェシャ猫(ルイスが残した理想の世界、この【不思議の国のアリス】の世界を残し、他全ての世界は消え去る。これでようやく、ようやく…)

チェシャ猫(私達は平和で幸せな世界を手にすることができるのだ)

アリス「考え事かい?チェシャ猫」スッ

チェシャ猫「アリスか…考え事と言うほど大層なことじゃない。少し昔の事を思い出していただけだ」

アリス「へぇ、昔の事をねぇ…」
41: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:09:46 ID:IbV 
アリス「でも珍しいね、君が他人の気配に気づかないなんて。ボクが宝物庫に入ってきたのにも気づかなかったみたいだし」

チェシャ猫「私は特別気配の察知が得意な訳じゃあない。ただ気配を消すのは誰よりも上手の自信はあるがな」

アリス「気配と言うより存在そのものを消してるじゃないか君の場合は」クスクス

アリス「自らの姿を消すも現すも自由自在、それがルイスが生み出したチェシャ猫というキャラクター。そして君の『器』なんだから」

チェシャ猫「まぁそうだが、姿を消すのも気配を消すのも同じようなものだ」

アリス「まぁどっちでもいいけどさ。で、昔の事を思い出してたって言ってたけど…それはまだルイスが生きていた頃の話かい?それとも…」

アリス「君がまだ『器』を手にする前、霊体としてアンデルセンの側を浮遊していた頃の話かい?」

チェシャ猫「どちらでもないな。それよりもずっと昔、私がお前のように生きた人間だった頃の話さ」

アリス「あぁ、君が幸福な未来を祈っておとぎ話を伝えるために各地を旅した頃の話か…ふふっ、ゴメン思わず笑ってしまったよ」クスクス

チェシャ猫「構わん。あぁ、今思えば馬鹿馬鹿しい事をしたものだ」

アリス「ねぇ……まさかとは思うけれど昔を思い出して考えが変わったなんて、今更言わないよね?」

チェシャ猫「言うわけないだろう、私の憎しみは思い出に浸って弱まるようなもんじゃない」

チェシャ猫「むしろ過去を思い出して憎しみが更に強くなったくらいだ。この世界を残して他の雑多な世界は全て抹消する、その決意は揺らがないさ」
42: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:12:37 ID:IbV 
アリス「それならいいんだ。もしも君が今更怖じ気づいて『やっぱり他の世界を全て消すなんてやめよう』なんて言い出したらボクは困ってしまうからね」

アリス「そんなことを言い出したら、君を消さなければならなくなる。それはボクとしても避けたい」

チェシャ猫「安心しろ、そんな事は絶対にない。それに怖じ気づこうにももう手遅れだ」

チェシャ猫「私もお前も数えきれない程あらゆる世界を滅茶苦茶にしてきたんだ、もう後には引けない。尤も引くつもりもないがな」

アリス「まぁね、ここまで来たら前に進むしか道はない。逃げ道も帰り道もボクたちの未来には存在しないから」

アリス「でもそんなものは必要ない。ここにある数多の魔法具…それはボクたちの行く先を照らす光。そしてその光は遂にあの忌々しい結界をうち壊せるほどに強さを増すことが出来たんだ」

チェシャ猫「ほう、それじゃあ遂に【アラジンと魔法のランプ】の世界に張られた結界を打ち消すだけの魔力が集まったのか?」

アリス「ようやくね。ボクがついさっき奪ってきた魔法のコールタール…この魔力を使えばおそらくは必要な魔力に届く」

チェシャ猫「と言うことは…【ホレおばさん】の世界へ行っていたのか?」

アリス「あぁ。ボクたちがすべき事は魔法具や魔力を集めることだけじゃないからね」

アリス「ボクたちの計画を最終段階へ進める前に、計画を脅かしかねない危険な存在は排除しなければいけない。因果応報の魔女…ホレおばさんは確かに優秀な魔女だったけれど、それももう過去の話だ」

アリス「彼女はもう存在しない。彼女が住んでいた世界ごと、消滅したからね」
43: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:16:24 ID:IbV 
チェシャ猫「消滅したんじゃない、消滅させた、だろう?」

アリス「まぁ、そうとも言うね。ドロシーから奪った魔法の靴は随分と使い勝手が良くてね。因果応報の魔女は相当強い魔女だと聞いていたから拍子抜けしたよ」

チェシャ猫「もう他人を消すことになんの躊躇もないんだな。どうせ脅迫のような手を使ったんだろう?えげつない娘だお前は」クックック

アリス「自分が生み出したおとぎ話を自ら消すような作者には言われたくないな。君も大概えげつないよ」クスクス

チェシャ猫「フンッ、まぁそれはどうだっていい。それで他には誰が残っているんだ?」

チェシャ猫「私達が始末しなければならない人物はまだ他にもいるんだろう?」

アリス「いいや、もう危険な存在はほとんど消し終わったからね」

アリス「おとぎ話の世界で一番の身体能力を誇る【西遊記】の悟空は玉龍と共に身動きが取れない状態だ。月人特有の特殊な能力を有したかぐや姫も覚めない眠りについている」

アリス「魔女や魔法使いの類いも粗方始末がついているからね。ただ一人、女王の名を冠する魔女を除いて…ね」

チェシャ猫「雪の女王か…奴はあの豚の味方をしているようだし、奴を始末しなければ私達の計画は失敗するだろうな」

アリス「彼女は魔女のなかでも屈指の魔力を誇るからね。無視しては先に進めない。だけど……ボクたちは長い時間をかけてあらゆる世界の魔法具を集めた。炎を操る魔法具も持っている」

アリス「彼女を溶かしてしまうのは簡単さ、今のボクたちならね」
44: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:20:09 ID:IbV 
チェシャ猫「自信があるのは良いことだがあまり慢心しないことだな」

アリス「なんだい、妙に弱気だね?」

チェシャ猫「魔女や魔法使いの類は本名を明かさない。故に二つ名を用いるのが普通だ。だがそれらは自分で決めて名乗るものじゃない」

チェシャ猫「その魔女の得意分野や特性を元に周囲が呼ぶ名、それが魔女の二つ名だ。万物の変化に長けた魔女が千変万化の二つ名を与えられるように」

チェシャ猫「魔法植物の扱いに長けた魔女が芽吹きの二つ名を与えられるようにな」

アリス「ん?そう考えると雪の女王は例外的だね、普通なら二つ名は○○の魔女という形式になるんじゃないのかい?」

チェシャ猫「そうだ、だが雪の魔女ではなく奴は雪の女王…つまり奴の持つ『雪』『氷結』という特性は……魔法の範疇を逸脱しているという周囲の評価が伺い知れる。もはや王、女王だとな」

チェシャ猫「奴を持ち上げる訳ではないが……雪の女王を消滅させるという事は、冬を夏に変える程の覚悟と力が必要な……おい、聞いているのか?」

アリス「いいや、あまり興味なかったから聞いてなかったよ」ゴソゴソ

チェシャ猫「お前は…確かに私達の力は圧倒的かもしれないがあの魔女は警戒すべき存在だと私は言っているんだ」

アリス「雪の女王が強かろうが弱かろうが私たちはあいつを殺さなければいけないんだ。だったら困難だろうとなんだろうと殺すだけ、そうだろう?」

チェシャ猫「それはそうだが…」

アリス「だったらここで二人で作戦会議したって仕方ないよ、三月ウサギの庭に行こうか。きっとみんな待ってる」

アリス「作戦会議をするならみんなと一緒にやろう。雪の女王を殺す作戦の他にも話さなきゃならない事もあるしね、ボクたちの作戦も仕上げの段階に入るわけだしそれに…」

アリス「あの気持ちの悪い豚をどう料理するか、相談しないとね」クスクス
45: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/08(火) 01:27:07 ID:IbV 
不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭

三月ウサギ「おっしゃぁぁぁ!スペードのAを出してアガリだオラァ!イッチバァァーン!」パシーン

帽子屋「あらやだ、先を越されちゃったわねぇ~でもまだ勝負はこれからよ。はい、私はこのカードを出すわね。次はアシェンちゃんの番よ」ブホホ

アシェンプテル「悪いな、私もアガリだ」スッ

白ウサギ「おぉー、二人とも強いですねぇ…じゃ私はこのカードを」ペチッ

ハートの女王「チッ……」イライライラ

帽子屋「次、女王様の番よぉ?早くカードを出してちょうだぁい」クネクネ

ハートの女王「……パスだ」

三月ウサギ「ふぅーっ!女王サマァー!これで三回目のパスデスヨォー!?またもや女王脱落ー!」フウゥーッ

アシェンプテル「また女王の最下位が確定した訳か……弱いな、7並べ」フフッ

白ウサギ「ま、まぁこんな日もありますって…所詮はゲームですから!女王様、おきになさらず!」アセアセ

ハートの女王「えぇい!毎度毎度パス3で脱落になるのは何故だ…!白ウサギ!帽子屋!ハートのJを止めていたのはどちらだ!?名乗り出よ!」バンッ

帽子屋「ア・タ・シよぉ~ブホホ!女王様すーぐ顔に出るから手札バレバレなのよ~」

ハートの女王「貴様…悪びれもせずによくも…!私を誰だと思っている!ハートの女王なのだぞ!敬い、崇め、ひれ伏せ!」

帽子屋「ブホホ、イヤぁよ。接待トランプなんて御免よ~、脱落者はせいぜい喚いてなさいな」ブホホ

ハートの女王「貴様アァァ!今すぐに首をはねてやる!」ガタッ

白ウサギ「あわわわ…!ちょ、喧嘩はやめましょうって!二人も止めてくださいよぉ!」

三月ウサギ「おいプテル、カップ空じゃねぇか。勝って気分がいいから茶入れてやるよ」

アシェンプテル「あぁ、頼もうか」

白ウサギ「もー!飲んでる場合じゃないですってー!」

ギャーギャー

56: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:21:16 ID:XQv 

白ウサギ「まぁまぁ…お二人共落ち着いてください!ゲームの勝ち負けで喧嘩なんて馬鹿馬鹿しいですって、ただのお遊びなんですから穏便にいきましょうよ!」アワアワ

帽子屋「そうよねぇ?トランプでボロ負けして機嫌損ねるなんて馬鹿のすることよ。つまりハートの女王はクソ馬鹿だって白ウサギちゃんは言いたいのよねぇ?その通りだと思うわぁ~」ブホホ

白ウサギ「えっ、私は何もそこまで言ってn」

ハートの女王「獣風情がこの私を愚弄するか…!この私がクイーン・オブ・馬鹿だと…貴様はそう言いたいのだな!?」ゴゴゴゴゴ

白ウサギ「えぇぇー!?違います違います!誤解ですよぉー!」

ギャーギャー ギャーギャー

アシェンプテル「君の友人達はいつも賑やかで楽しそうだな」フッ

三月ウサギ「そーかぁ?賑やかなんて生易しいもんじゃねぇからなーコイツら、ただウルセェだけだぜぇー?」カチャカチャ

三月ウサギ「まっ、俺も騒ぐのは好きだしよぉ。茶会の席が埋まってるのもたまには悪かねぇけどなー…っと、ヘイお待ち!」スッ

アシェンプテル「ありがとう。…うん、良い香りだ。これは随分と高級な茶葉を使っているんじゃないか?」

三月ウサギ「おっ、嬉しいねぇー、やっぱり解る奴には解るか!メッチャ高級品なんだぜその茶葉、俺のとっておきだからなー!つっても元王妃ならこんくらい飲み慣れてるんじゃねーの?」

アシェンプテル「いや、城で飲む茶はどこか堅苦しかったからな。こんなに美味しい紅茶は久し振りだよ。君のおかげだな」

三月ウサギ「おいおーい!んな誉めたらテレるだろーがー!おしっ、んじゃあこのスーパーとっておきの最高級バターも入れてやろうか?」

アシェンプテル「フフッ、私は遠慮しておくよ。女王のカップにでも入れておいたらどうだ?」フッ
57: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:24:13 ID:XQv 

三月ウサギ「ん?バターは苦手か?まーそれなら無理には勧めねーけども…んじゃあマカロンはどーだ?これメッチャうめぇから食ってみろって、な?」コトッ

アシェンプテル「甘いものを食べる気分でもないのだけど…そこまで勧めてくれるのならひとつ貰おうか」スッ

三月ウサギ「おう、食え食え!で、どうだどうだ?メッチャうめぇだろ?」ワクワク

アシェンプテル「…驚いたな、こんなに美味しいマカロンは初めて食べた。城で出たどんなお菓子よりも美味しい、これは君が作ったのか?」

三月ウサギ「いやいやー、俺は茶を淹れるのは得意なんだが料理はそれほどでもなくてよー。そりゃあ帽子屋が作って来てくれたんだぜ」

アシェンプテル「このマカロンを帽子屋が?控え目に言ってもプロの味だぞこれは」

三月ウサギ「あいつ帽子屋が本職のくせに菓子作りの方が圧倒的に向いてんだよなー。テーブルに並んでる菓子は全部あいつが作ったんだぜ」

アシェンプテル「そこのクッキーもスコーンも全て…?驚いた、人は見かけによらないとは言うが、まさにその通りだな」

三月ウサギ「外見はやべぇオカマだがよぉ、菓子作りは一級品だろ?」ヘラヘラ

アシェンプテル「そうだな、まさに一級品…うん、やはり美味しい」サクサク

三月ウサギ「ヘヘッ、まだまだ山ほどあるからドンドン食ってくれよー?茶もガンガン淹れてやっから言ってくれよー?」ヘラヘラ

アシェンプテル「そう言ってくれるのは嬉しいが、満腹だと戦いの場で動きが鈍ってしまうから…ほどほどにしておくよ」フフッ

三月ウサギ「それもそーだな!なんだか知らねぇけどプテルの顔見てると、無性に茶を淹れて菓子を出してやりたくなっちまうんだよなー」ヘラヘラ
58: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:29:03 ID:XQv 

アシェンプテル「そうなのか?あぁ、そういえば君に初めて会った時もやたらと茶と菓子を勧めてくれたな」

三月ウサギ「そうそう。それとよぉ、何故だかわかんねぇけどお前の顔見てると…なーんか誰かを思い出すっていうか、そんな気がすんだよなぁー」

アシェンプテル「へぇ、誰かを…?」

三月ウサギ「そーなんだよ。つっても俺自身にも誰だかわかんねぇんだけどなー」ヘラヘラ

アシェンプテル「私に似ている知り合いがいるんじゃないか?」

三月ウサギ「俺の知り合いにお前みてぇな綺麗な女はいねぇよ、オカマか獣かトランプがほとんどだしな!」

三月ウサギ「まぁ、なんてことない単なる気のせいだとは思うんだけどよ。ただ、妙なことを言っちまうけどよ…」

アシェンプテル「……?」

三月ウサギ「俺はお前のために…いや、そのお前に似てる誰かの為にこの茶会を開いてるような、そーんな気がするんだよなぁー…おかしい話だけどよ」

アシェンプテル「君がこの茶会を自分の意思で…誰かのために?」

三月ウサギ「ハハッ!いやいや、悪い!今のは忘れてくれ!ありえねぇよな、この茶会が誰かのために開かれたなんて、んなことあるわけねぇんだからよぉ」ヘラヘラ

三月ウサギ「この茶会は【不思議の国のアリス】の筋書きに必要だから催されてる。ルイスがそう決めたから俺はここで茶会をしてるんだ、そこのオカマと一緒にな」

三月ウサギ「作者が決めたからそうなってるだけだ。俺が誰かのために茶会を開いてるなんて、そんなはずねぇよなぁ!ハハハッ」ケラケラ
59: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:36:03 ID:XQv 

アシェンプテル「あり得ないと一蹴するのは簡単だが…そう言われると、なんだか気になるな」フム…

三月ウサギ「おいおい、いいっていいって、んな真面目に考えることじゃねぇって。俺の単なる気のせいなんだからよぉ、戯言だと思ってスルーしろってスルー」

アシェンプテル「そうか?まぁ、君がいいならいいんだが…」

帽子屋「そうよぉ?アシェンちゃん。三月ウサギちゃんは頭おかしいんだから、妄言にいちいち付き合ってちゃダメよ?」ブホホ

三月ウサギ「急に湧いてきやがって…お前にだけは頭おかしいとか言われたくねぇんだよ!ホモは黙ってろ!」ベチッ

帽子屋「ホモじゃないわよ!アタシはゲイよ!そこのところデリケートな違いあんだから気をつけなさいよ!」バンッ

三月ウサギ「違いわかんねぇよ!どうでもいいんだよんなこたぁよぉ!」ガターン

ハートの女王「おい帽子屋!貴様、私との争いをうやむやにするつもりか!?貴様がキチンと謝罪をするまで私は許さんぞ!」

帽子屋「トランプを統べる癖に七並べが絶望的に弱いアンタに謝罪なんかするわけないでしょうー?ぶほほっ、悔しかったらアタシに勝ってみなさいな」ブホホ

ハートの女王「クッ…!三月ウサギィ!トランプをきれ!もう一度、もう一度七並べをするのだ!」

三月ウサギ「しねぇよ!俺ぁ今プテルと茶ぁ飲んでんだからテメェ等だけでやってろ!」

帽子屋「あら三月ウサギちゃん、あなたクソ雑魚の女王命令に背くつもり!?死罪よ死罪!」

ハートの女王「うむ、私の命令に背くものは残らず死罪に……って、クソ雑魚女王だと!?えぇい!今日こそ貴様の首をはねてやるぞ帽子屋ァァ!!」

ギャーギャー
60: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:39:42 ID:XQv 

ハートの女王「我が下僕よ我が兵よ、今こそ真の姿を示せ。主、ハートの女王が命じる。そこの無礼なオカマを切り裂け!」パラパラッ

トランプ兵達「Yes my lord」ワラワラ

帽子屋「ちょっとぉ!トランプ兵召喚するのはずるいわよっ!?多勢に無勢じゃなぁい!」パリーン

三月ウサギ「ぬああぁぁ!秘蔵のティーポットが…!帽子屋ァ!テメェ死んだぞオラァ!」ドゴォ

ギャーギャー ドスン バタン ガシャーン

白ウサギ「う、うわぁー…ど、どうしようこれ…!」

アシェンプテル「フフッ、収拾がつかなくなったな。まぁ喧嘩するほど仲が良いとよく言うから特に気にすることもないんじゃないか」クスクス

白ウサギ「なんで悠長に構えてるんですかアシェンプテルさん!あなたちょっとこの世界に慣れるの早いですよ、私なんかいまだにこれなのに…」

アシェンプテル「フフッ、ほらほら…何とかしないとアリス陣営自滅っていう最悪のシナリオが生まれる事になりかねない」クスクス

白ウサギ「うぅ、それだけは避けないと…。こうなったら仕方無いです……皆さん!いい加減に喧嘩を止めてくれないと――」スゥゥゥ

ギャーギャー ギャーギャー

白ウサギ「皆さんが喧嘩してるって事、アリスさんに言いつけますよぉ!!」バンッ

…シーン

白ウサギ「それでもいいんですか!?僕ならこの懐中時計ですぐにでもアリスさんのとこへ行けます、今すぐにですよ!今すぐ言いつけに行けるんですよ!それでもいいんですか!」

帽子屋「…ちょっと白ウサギちゃん、それズルくないかしら?やめてちょうだい、アリスちゃんには余計な心配かけたくないもの」

三月ウサギ「そうだぞお前、言いつけたりしたらアリスが一番悲しむだろうが…!マジでやめろ!」

ハートの女王「同感だ、私達の争いは私達でけりをつければいい。あいつを巻き込むのは…女王である私でも避けたい事だ」

アシェンプテル(…アリスの名前が出た途端争いが止んだ。ここにいる仲間たちは金銭や脅迫でアリスに味方しているんじゃない、という事か…)
61: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:42:54 ID:XQv 

白ウサギ「みなさんはアリスさんの願いを、目的を忘れちゃったんですか!?皆さんが喧嘩してることをアリスさんが知ったら…きっと悲しみますよ!」

一同「……」

白ウサギ「アリスさんはこの世界を愛してるんです。皆さんが平和に暮らして仲良くしていることがアリスさんの願いの一つであると知っていながら…どうして仲直りできないんですか!アリスさんのこと嫌いなんですか!?」

三月ウサギ「そ、そんなわけねぇだろ!俺たちはあいつが一番なんだ、なぁそうだろ?」

帽子屋「えぇ、そうよ…アリスちゃんを悲しませるなんてしたくは無いわ…。だって私達仲間ですもの」

ハートの女王「そうだな、あいつが率先して動いているのは私達の為でもある…その行為をないがしろにするほど、私は落ちておらん」

白ウサギ「それなら…もう喧嘩はやめましょう。もうじきアリスさんはここに来ます。それまでにキチンと仲直りしてください!」

三月ウサギ「そうだな…。すまん…ちょっとばかし熱くなっちまった」

帽子屋「そ、そうねぇ…悪かったわ女王、言いすぎちゃったかもね。許してちょうだい」

ハートの女王「素直に謝るのならば…許そう。私も少々大人げなかったようだ」

ワイワイ ガヤガヤ

白ウサギ「……ふぅ、これで一安心です。なんとか喧嘩を止めることができました」ホッ

アシェンプテル「どうやら、なんとかなったみたいだな」

白ウサギ「もう…喧嘩になっちゃうのは仕方ないにしてもですよ?結局はアリスさんの名前出さないと仲直りしてくれないんですから、困ったものですよぉ…」

白ウサギ「そしていっつも仲裁は私なんですから。勘弁してほしいですよぉ…」
62: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 00:45:38 ID:XQv 
アシェンプテル「私はここにきて日が浅いからよくわからないが…君もなかなか大変そうだな」

白ウサギ「そうなんですよぉ…皆さん、根はいい方なんですけどね?なにしろ自己主張の塊みたいな人ばっかりなんで、喧嘩が絶えないんですよー…」

白ウサギ「まぁなんだかんだ大事にはならずに済んでますけど、もっと穏便にしてほしいんですよ。私は」

アシェンプテル「それにしても皆、アリスのことが好きなんだな。あいつの名前が出た途端、争いがピタッと止まった」

白ウサギ「そうですね、この世界に住んでいる人は皆アリスさんの事、大好きですから」

白ウサギ「それにアリスさんは今、大きな目的の為に頑張っています。余計な心配をかけたくはないという気持ちは…皆さん持っているみたいですね」

アシェンプテル「仲間に愛されているんだな、アリスは」

白ウサギ「そうですよ。よその世界じゃアリスさんを恨んだり憎しみの言葉を吐く人もいるみたいですけどね…」

白ウサギ「確かにアリスさんの行為は、他の人にとっては迷惑だと思います。それは否定しません。でもですね、それでも私達にとってアリスさんは…大切な仲間なんです」

白ウサギ「だから私たちはアリスさんを応援します。誰に何と言われようとそれは曲げられません。たとえそれが悪と呼ばれる行為だとしても…私はアリスさんにずっと付きしたがう覚悟できて」

アシェンプテル「いいんじゃないか、今の私は君たちを止めるつもりも咎めるつもりもないから」

白ウサギ「エヘヘッ、でも今のはなんだか恥ずかしいんでアリスさんには内緒ですよー?」
63: ◆oBwZbn5S8kKC:16/11/14(月) 01:51:06 ID:XQv 
白ウサギ「ええぇぇ!アリスさん!?ちょっとこっそりしないでくださいよ、恥ずかしいんですからー!」

アリス「こっそり聞くつもりなんか無かったんだけどね、耳に入ってきたんだ」クスクス

チェシャ猫「よくもそんな嘘を…お前、さっき『白ウサギとアシェンプテルが何か話してるね、面白そうだから盗み聞きしようか』なんて言っていただろう」

アリス「あれ、そうだったかな…?そんなことよりアシェンプテル、口調変えたんだね。そっちのほうが今の君に似合ってるよ」

アシェンプテル「そうか、それならしばらくはこれでいこうかな。もう丁寧な口調を強いられることもないからな」フフッ

チェシャ猫「アリスのやつ当然のようにごまかしやがった…」

帽子屋「あらあらあら~?アリスちゃんいつの間に戻ってきてたのよぉ~!待ってたのよ私達~!掛けてよ一言ぉ~」クネクネ

三月ウサギ「まったくだぜー、今茶を入れるからちょっとだけ待てよー?」

ハートの女王「まったく…いつまで待たせるつもりだ!さっさと席に就けアリス」

アリス「言われなくたってそうするよ。さてと……みんな少しだけいいかな?早速で悪いんだけど作戦会議を始めようか」

72: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:09:46 ID:Snx 

不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭

・・・

アリス「よし、みんな揃っているようだね。それじゃあ作戦会議を始めようか」

白ウサギ「えっと…ちょっといいですかアリスさん?作戦会議はいいんですが……今回は一体何について話をするつもりなんでしょう?」

帽子屋「それ、私も気になるわねぇ~…だって作戦会議なんて、ぶっちゃけ今更って感じよぉ?無駄じゃなぁい?」ブホホ

アリス「フフッ、帽子屋は会議がお気に召さないのかな?僕はこうして皆とお茶しながらあーだこーだと話すのは大好きなんだけどな」

帽子屋「あらやだ!別にアタシは会議するのが嫌ってわけじゃないのよ?みんなとお茶するのはアタシも大好きよぉ~!」ブホホ

帽子屋「アタシが言いたいのは会議してる時間あるならドンドン別世界に渡って魔法具かっぱらっちゃった方が速くない?って事よぉ~」クネクネ

三月ウサギ「まぁ…一理あるな。今の俺達がすべきことは魔法具や魔力の収拾だ。それをとにかくたくさん集めて【アラジンと魔法のランプ】の世界の結界をブチ壊す…ってのがとりあえずの目標だからな」

三月ウサギ「その目標を達成するのに手段なんざ問わねぇんだ。となると強力な魔法具を持って行ってよぉ、多少無理やりでもいいからゴリ押しで強奪した方が早いちゃ早いよな」

帽子屋「そうそう!それが言いたかったのよぉ~!さすが三月ウサギちゃんは話がわかるわねっ!ブホホ!」

ハートの女王「フンッ、いかにもケダモノが考えそうな単純な策だ。いいや、策と呼べるほど知的なものではないな」

三月ウサギ「んだとオラァ!テメェみたいな七並べクソ弱ババァに言われたかねぇんだよ!」バンッ

ハートの女王「七並べクソ弱ババァ…!?な、なんという無礼な奴!貴様、覚悟はできておろうな!」ダンッ

白ウサギ「お、お二人とも落ち着いてください!なんでそんなに血の気が多いんですか…!」

ハートの女王「チッ……」

アリス「なんだか今日、女王は特に機嫌が悪そうだね。何かあったのかな?」
73: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:16:18 ID:Snx 
三月ウサギ「聞いてくれよアリスー!実はさっきみんなで七並べしてたんだけどよ、ハートの女王クッソ弱くてさぁー!ほぼ全敗してやんの!笑っちまうよなー!」ゲラゲラ

ハートの女王「ええい黙れ黙れ!あんなものは単なる余興に過ぎん、無効だ無効!」

チェシャ猫「呆れたな…トランプで負けて機嫌を損ねるとか子供じゃあないか。実にくだらない」

ハートの女王「やかましい!チェシャ猫、貴様まで私を愚弄するか…!即刻その首を刎ねてやる!」ギロリ

チェシャ猫「やれるものならやってるといい。もっとも、首が無い者の首を刎ねることができるのなら、だがな?」スゥゥ

ハートの女王「こやつまた透明化を…!卑怯者めが!姿を現せ!」バンッ

アリス「ほらほら、チェシャ猫。女王をおちょくるのはそろそろやめてあげたらどうだい?」フフッ

チェシャ猫「フンッ…いいだろう。こいつをおちょくっていても話が進まんからな」スゥゥ

ハートの女王「女王たる私にその不遜な態度…!いずれ必ず報いを与えてやる、覚悟しておくことだ!」

チェシャ猫「……」フイッ

アリス「フフッ…ボクは女王の気持ちわかるよ。ゲームといえどトランプで負けるのは案外悔しいものだからね。イライラするのも仕方ない」

ハートの女王「…言っておくがな、私は何もトランプで負けたから機嫌を損ねているわけでは――」

アリス「ねぇハートの女王。どうせならそのストレス…思い切りぶつけてみるっていうのはどうだい?」



アリス「例えば、ボク達にとって目障りな敵……雪の女王なんかにさ」クスクス
74: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:19:01 ID:Snx 

白ウサギ「なっ、何言ってるんですかアリスさんんんん!!ジョークにしては性質が悪いですって!」ワタワタ

アリス「ジョーク?そんなものを言った覚えはないけれど」

白ウサギ「アリスさんだってわかってるはずでしょう!?雪の女王と言えばおとぎ話の世界でも屈指の魔力を誇る魔女なんですよ!?ハートの女王様が挑んだところで一瞬で返り討ちですよ!無駄死にですよ!?」

ハートの女王「……言いたいことはそれだけか?白ウサギ」ギロリ

白ウサギ「あっ、いや違くて…えっと…お美しくてお強い女王様といえど絶対に一筋縄じゃあいきませんよ!?雪の女王を倒すという事はさながら冬を夏に変えるような――」

アリス「ふふふっ、それと同じことをチェシャ猫が言っていたよ、なんだい流行っているのかい?それ」クスクス

白ウサギ「なぁに笑ってんですか!だいたいですよ!?ずいぶん前の会議で決めたじゃないですか!雪の女王を相手にするのは必要な魔法具がすべて集まってからにしようって!」

白ウサギ「それほどの準備が必要だって結論になったじゃないですかあの会議で!だからまだ早いです!魔法具を集めきったわけでもないのに雪の女王に挑むなんて――」

アリス「フフッ、みんなの反応が面白くて黙っていたけどそろそろ勿体ぶるのはおしまいにしようかな」クスクス スッ

コトン

アシェンプテル「なんなんだその小瓶は…?」

帽子屋「なんだか黒い液体っぽいの入ってるわねぇ…あら、もしかしてこれタールかしらぁ?」

アリス「ご名答だよ帽子屋。これは僕がさっき手に入れた魔法具、ホレおばさんのコールタールだ」

アリス「この魔法具を含めて遂に、僕たちは【アラジンと魔法のランプ】の結界を打ち消すために必要なだけの魔力を手にすることができたんだよ」
75: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:30:22 ID:Snx 

白ウサギ「なんと…そうだったんですね!長い道のりでしたけど遂にこの日が来たんですね!」パァアァア

帽子屋「なんだか感慨深いわねぇ…!ようやくこれで魔法のランプを手に入れる目処が立ったわけねぇ…ブホホ!嬉しくなっちゃうわぁ~!」

ハートの女王「始めは無理ではないかと思ったものだ。時間はかかったが…これでようやく我々の、そしてアリスやルイスの願いを叶えることができるという訳か」

三月ウサギ「うおぉー!なんかテンション上がってきたぜぇー!ワイン開けようぜワイン!」ウキウキ

アリス「確かに喜ばしいことだけど、盛大なお祝いはすべてが終わってからにしよう。というか…ワインなんか持ってないだろう?君は」クスクス

三月ウサギ「まぁ持ってねぇんだけどさ!でもそれくらい嬉しいってことよ!いやぁ…ようやくかぁ!否が応でもテンション上がるぜー」

アシェンプテル「なんだか皆嬉しそうだな。そんなに喜ばしいことなのか?」

三月ウサギ「そりゃそうだぜー、アリスの目的を達成するには魔法のランプが必要なんだが結界が邪魔だったんだ。それを壊せるだけの力を得たってことは…だ」

三月ウサギ「そりゃもう、ほとんどアリスの願いを叶えることができたって事だ。そりゃみんな喜ぶって」

アリス「そうなんだよアシェンプテル。君は最近ここに来たから知らないだろうけど…」

アリス「僕たちはね、ずっとずっと昔からこの日を待ちわびてきたんだ。魔法のランプを手にするため、結界を破壊するため…さまざまな世界へ移り飛んで強奪や窃盗を繰り返した」

帽子屋「ウフフッ、そして今ようやくその苦労が報われるんだから嬉しくもなるわよねぇ~」ブホホ

アリス「だがその苦労ももう過去の話。魔法具が揃った今、僕たちは次のステップに進む必要がある」


アリス「それが最後の邪魔者…雪の女王の始末だ」
76: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:38:53 ID:Snx 
アリス「ボクたちは今までに数々の邪魔者を始末してきた。そして最後に残ったのが雪の女王…彼女を始末せずに先には進めないよ」

帽子屋「確かに雪の女王はなんとかしなくちゃ、私達の障害になりうるものねぇ」

ハートの女王「だが逆にいえば最も警戒すべき相手である雪の女王を倒しさえすれば私達の動きも円滑で目的を果たすこともたやすくなるだろう」

白ウサギ「そうですよね…ランプを手に入れる前に雪の女王は始末しておきたいところですね」

アリス「……と、いうわけだハートの女王。雪の女王の始末、手伝ってくれるかい?」

ハートの女王「いいだろう、ちょうど退屈していたところだ。アリスが女王たるこの私の力を借りたいというのならば…それに応えてやろうではないか!」

ハートの女王「アリスよ、そしてお前達。大船に乗ったつもりでいるがよい!雪の女王を始末するのはこの私…クイーン・オブ・ハーt」キリッ

三月ウサギ「ところでよぉ、アリスは前に【雪の女王】の世界行っただろ?女王にはかなわなくても主人公のゲルダとかカイとか殺しちまえばあの世界も消えて女王も巻き添えで殺せたんじゃね?」

アリス「あの時の目的はあくまで鏡の破片だったからね。まぁ殺せればラッキーとは思っていたけど女王は別世界へ出向いていたからね」

アリス「あの時、【雪の女王】を消したとして女王を殺すことはできなかったのさ。だが…今回は違う」

アリス「女王はきっと、前回のボク達の侵入で防衛を強化している。つまり女王はあの世界にとどまっているはずだ。それなら今度は…世界を消すことで女王も巻き添えで始末できる」

三月ウサギ「おぉー、なるほどな!ようやく理解できたわー」

ハートの女王「というか貴様、私の台詞に被せてくるなど…私を何だと思っているのだ……!」ギロリ

アリス「ほらほら、その怒りは雪の女王にぶつけるために取っておこうよ。今はどんな方法で雪の女王を始末するか相談しよう。他に決めたいこともあるしね」

アリス「キチンと話し合って計画して、そしてボク達の夢をつかみとろうじゃないか」フフッ

・・・
77: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:40:47 ID:Snx 

雪の女王の世界 深夜 キモオタ達が休む客間

・・・

白鳥「失礼するよキモオタ君!ティンクちゃん!大変な事が起きてしまった…!」バターン!

グーグー グースカピー

親指姫「この非常事態にこいつらはグーグーと…おい貴様ら!寝ている場合ではない、起きろ!」ゲシゲシ

キモオタ「ムニャムニャ…ドゥフフwww遂に我輩の自宅前にマックとケンタッキーとストロベリーコーンズが同時出店ですぞwwwなんというユートピアwww…ムニャムニャ」グーグー

ティンカーベル「スヤスヤ……うへへへっ、遂に私とピーターパンのフィギュアがチョコエッグのオマケになったよーみんな買ってね……スヤスヤ」スースー

親指姫「…寝ても覚めても貴様は食い物の事ばかりか!起きろ愚か者!」ブスリッ

キモオタ「痛ブヒィッ!?な、なんでござるか一体!?…ややっ、白鳥殿と親指姫殿?どうしてここに?」

ティンカーベル「もぉ…うるさいなぁ……あれっ?チョコエッグは……?」ポケー

親指姫「寝ぼけるな羽虫!貴様のフィギュアに需要など無い!さっさと目を覚ませ馬鹿者が!」フンッ

ティンカーベル「は、はぁー!?勝手に部屋に入ってきて人の寝言聞くとか趣味悪いんじゃないですかぁー!」イラァ

キモオタ「ちょ、ティンカーベル殿落ち着くでござる。まだ日も昇らぬうちに我々を訪ねるという事は、何かあったのですな白鳥殿?」

白鳥「そうなんだ、二人ともすぐに支度をしてエントランスに集まってほしい。これは女王からの伝言だよ」

ティンカーベル「えっ、今から!?ねぇ白鳥、一体何が起きてるっていうの?」

白鳥「何者かがこの【雪の女王】の世界に侵入したんだ。それも強い魔力の反応があるらしい、だから侵入者はおそらく…」

キモオタ「アリス殿の一派…である可能性もありますな。すぐに支度をするでござるよ、ティンカーベル殿!」

ティンカーベル「だねっ!わかったよ!」
78: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/20(日) 01:43:23 ID:Snx 

雪の女王の宮殿 エントランス

・・・

キモオタ「女王殿ー!お待たせしてしまって申し訳ない!」ドスドス

ティンカーベル「詳しく聞いてないけど大変なことになってるんだよね?」ピュー

雪の女王「ああ、叩き起してしまってすまないが…緊急事態だ。君達にも侵入者の排除に協力して欲しい」

ティンカーベル「任せて!なんでも手伝うから言ってね!」

キモオタ「そうですぞ!して…侵入者というのはやはりアリス殿の一派でござろうか?」

雪の女王「はっきりとはわからない。そう考えるのが妥当だが、別世界の協力者が訪ねて来ただとか偶然この世界に迷い込んだといった可能性もある。だが…」

雪の女王「妙な胸騒ぎを感じる…この世界が危険にさらされているようなそんな不安が胸を覆っているんだ」

ティンカーベル「まぁわかんないよね…でもさ、とりあえずアリス達が何かしてきたって考えて行動したほうがいいんじゃない?警戒するにこしたことはないもんね」

キモオタ「そうですな。思い過ごしならそれはそれで構わんわけでござるし、ここは侵入者を迎え撃つ方向で動くべきですな」

雪の女王「あぁ、私もそう思って君達を起こしたんだ。だが…この宮殿の近くに魔力は感じない。侵入者は少なくとも今のところこの宮殿を標的にしていないということだ」

キモオタ「アリス殿の一派がこの世界を襲いに来たと仮定すれば一番に狙うは女王殿のはず…しかしこの宮殿が襲撃される様子がないという事は…」

ティンカーベル「女王以外の誰かを襲おうとしてるってことだよね?そう考えると危険なのはこのおとぎ話で重要な役割を持ってる人、例えば……」

スッ

カイ「このおとぎ話【雪の女王】の主人公、ゲルダ。女王と俺以外でまず標的にされるとすりゃあ…間違いなくあいつだろうな」

83: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:34:49 ID:xUS 

雪の女王「カイ…。起こしてしまったか、状況が状況だけに君には黙っておくつもりだったんだがな…」

カイ「寝室の前を豚が駆け抜けていったんだ、そりゃあ目ぇ覚めちまうだろ」

キモオタ「ちょwww吾輩のせいだったwww」コポォ

カイ「というかなぁ…ヤベェ状況だってんならなおさら俺に黙ってるのはおかしいだろ。普段は『家族は協力すべき』とか言ってるくせに…なぁ女王?」

雪の女王「…そうだな、すまなかった。君にも声を掛けるべきだった」

カイ「当然だろ。この世界が襲撃されたって事は俺も心臓を握られてるようなもんだからな。他人事じゃねぇんだ」

ティンカーベル「うんうん、それにお友達のゲルダが危ない目にあってるかも知れないっていうのに寝てなんかいられないよね」

カイ「……別にゲルダが殺されようがどうなろうが俺の知ったこっちゃねぇけどな」フイッ

ティンカーベル「はぁー?ちょっと、そんな言い方無いじゃん!ゲルダはカイが心配で旅してんのに!」プンスカ

カイ「それはあいつ自身が決めたことだ。女の一人旅が危険だとわかった上での決断、どんな目に合おうと自己責任だ。たとえそれが俺のためであってもな」

キモオタ「カイ殿…」

カイ「だがよぉ、この世界に関係ねぇ余所者に狙われてるってなら話は別だ」

カイ「女王、俺にできる事だったらなんでもする。だからあいつの覚悟と決断に水を差すような馬鹿共を返り討ちにしてやろうぜ、後悔しちまうほどにな」

雪の女王「あぁ…当然そのつもりだ。相手が誰であろうとこのおとぎ話に、この世界に、この世界の人々に危害を加えるつもりならば……」スッ

パキパキパキ…

雪の女王「相応の歓迎をしてやらなければな」

キモティン「……」ゾクッ
84: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:37:10 ID:xUS 
ティンカーベル「ね、ねぇキモオタ…今、女王なんかメッチャ怖い感じしなかった…?」ヒソヒソ

キモオタ「た、確かに…ぱっと見普段と変わらない表情でござるけど内心相当怒っているのでは…」ヒソヒソ

ティンカーベル「そりゃそうだよね…アンデルセンが作ってくれた大切なおとぎ話を壊そうとしてる奴が来てんならそりゃ頭にくるよね」ヒソヒソ

キモオタ「普段は優しいアンド親切でござるから忘れてたでござるけど、ヘンゼル殿もグレーテル殿もそして司書殿も口をそろえて言ってましたな……『女王は怒ると怖い』と」ヒソヒソ

ティンカーベル「言ってたね…子供好きの優しいおねぇさんにしか見えないけど、ホントはすごい魔女だもんねぇ…」ヒソヒソ

親指姫「女王様、私は一つ疑問に思う事があります」

雪の女王「なんだい、親指姫?」

親指姫「話を聞いていると…襲撃されたのが主人公のゲルダだと言う方向で話が進んでいます、しかし本当にそうでしょうか?」

親指姫「確かにゲルダが標的にされる可能性は極めて高いです。ですが物語において重要な役割を持つ者は他にも存在します。ですので…決めつけてかかるのは危険ではないでしょうか?」

雪の女王「確かに君の考えも的を射ている。だが…相手がアリスの一派ならば今回の標的は間違いなくゲルダだよ」

親指姫「何故、その確信が持てるのです?」

雪の女王「アリスの目的はこの世界の消滅ではないからだよ、親指姫」

雪の女王「彼女の目的はこの私、雪の女王の殺害…あるいは無力化だ」
85: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:42:12 ID:xUS 

ティンカーベル「あれ…?でもそれならわざわざ他の誰かを襲うよりも直接女王を襲ったほうが早いんじゃない?アリス的にはさ」

親指姫「馬鹿か貴様は。何故、今この世界が襲撃を受けているのかわからないのか?」

ティンカーベル「馬鹿とはなんだバーカバーカ!それくらいわかるし!今言おうと思ってたし!」

親指姫「それならば言ってみろ。襲撃者がアリスだと仮定して、何故『今』だ?」

ティンカーベル「えっ」

親指姫「アリスにとってキモオタに協力しているうえに強力な魔力を持つ女王様は目障りでしかない。それなのに何故今まで女王様に手を出さなかったのか?」

ティンカーベル「そんなの決まってるじゃん!あれだよ、ほら…キモオタ!説明してやってよそこのチビっ子にさ!」

キモオタ「ちょwwwマル投げされてもwww」

カイ「アリス側にとっても女王は強敵だって事だ。目障りな存在ですぐにでも消したい、だが…確実に倒せる保証が無かった。だから手を出せないでいたんだろ」

雪の女王「だからこそ機会を窺っていたんだ。私が実力を発揮しにくい状況を見計らっていたんだな、何しろ今は私達にとって一番襲撃されたくない時だ」

雪の女王「君達の特訓相手で私も多少疲労を感じている。そして君達が【不思議の国のアリス】に向かう前日の夜中、意識が明日に向いている状態への不意打ち…今ならばこの私も万全な状態とは言えないからな」

ティンカーベル「そーいうことだよ!わかったかチビっこ……って、ちょっとまってよ!それじゃあ私たちが特訓してもらってることも明日が作戦の日だってことも…!」

キモオタ「我々の計画というか作戦がアリス殿には筒抜けだったという事でござるか…!?」

女王「そう考えたほうがいいだろう、偶然にしては…あまりにタイミングが良すぎる」
86: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:45:27 ID:xUS 
ティンカーベル「なっ、なんで!?なんでアリスにばれちゃってるの!?やばくない!?」ワタワタ

親指姫「今気がついたのか?このタイミングで奇襲があった時点で予想は出来ただろう」

キモオタ「…青い鳥殿のスパイの他にも我々の動きを知る方法があるという事でござろう。悔やんでも仕方ないでござるが我々、少々甘かったようでござる」

カイ「その上、ゲルダを襲う事で女王の退路を断とうとしてるんだろうな」

カイ「直接女王を狙った場合、女王を劣勢に追い込んでも別世界に逃げられる可能性もある。だがゲルダを襲う事で『【雪の女王】の世界の消滅』を匂わせておけばこの世界から逃げるなんてできねぇからな」

キモオタ「ということは女王殿のこの世界に対する思いまでアリス殿は知っていると…!」

白鳥「そうでなくともゲルダさんを…子供を見殺しにするなんてできない性格だってことも筒抜けなんだろうね」

雪の女王「それにこの物語で重要な役割を持つ私達や他の人物と違って、ゲルダには常に出番がある」

雪の女王「例えば私やカイがここで死んだとしてもすぐには世界は消滅しない。私達の物語での出番は終盤だからな、だがゲルダは違う」

雪の女王「ゲルダが死ねばその時点で物語は立ち行かなくなる、消滅するしかない。だからこそゲルダを狙われてしまえば私は彼女を救いつつ自らの身を守り、なおかつこの世界も守らなければいけない」

親指姫「そうか…世界の消滅を匂わせるならゲルダを狙う必要があるという事か」

雪の女王「つまり、この状況は私を確実に殺すためにアリスが仕向けたものといえる。確かに不利な状況だ、あれもこれも守りつつ戦うのは厳しいだろう。とはいえ……」



雪の女王「この世界を差しだすつもりも、この命を投げ出すつもりも私にはありはしないがな」
87: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:47:57 ID:xUS 
ティンカーベル「っていうことは…ゲルダがやばいじゃん!悠長に状況分析とかしてる場合じゃないんじゃない!?」

キモオタ「確かにそうですな!女王殿、今すぐに皆でゲルダ殿の元に向かうでござるよ!」

雪の女王「ここで焦っては相手の思うつぼだ。危機的状況な時ほど、冷静にならなければならない」

キモオタ「それはそうでござるけど…」

雪の女王「焦って穴だらけの作戦にしがみついてはいけないからな。では今の話を踏まえてみんなには私の言うように動いてもらいたい」

白鳥「お任せください!この白鳥…戦いぶりでもイケメンだという事をお見せしましょう!」

親指姫「女王様の命令ならば信用できます。この世界、女王様やゲルダの命を守るため…なんでも申しつけてください」スッ

雪の女王「頼もしい返事だ。まず私だが、今からゲルダの元へ向かう。有事に備えてゲルダが通るルートは目星をつけてあるから到着までにそう時間はかからないだろう」

雪の女王「親指姫と白鳥は私に同行してくれ。機動力のある白鳥と相手の虚をつける親指姫は私にできない仕事をこなしてくれるだろうから」

白鳥親指姫「わかりました!」「お任せください!」

雪の女王「そしてキモオタとティンカーベル、そしてカイだが…」

ティンカーベル「まかせて!私も女王と一緒に行ってアリス達のことボッコボコにしてあげるから!」フンス

キモオタ「女王殿に比べたら我々の戦力などチョイ足しみたいなもんでござろうがwwwしかし助力いたしますぞwww」

雪の女王「いいや、君達とカイにはこの宮殿に残ってもらう」

キモティン「えっ!?」
88: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:50:10 ID:xUS 
ティンカーベル「なんでなんで!?アリス達がゲルダ狙ってるならみんなで行ったほうがいいじゃん!」

キモオタ「ぶっちゃけ、女王殿の特訓のおかげで我々も足を引っ張らない程度には戦えると思うのでござるが…」

ティンカーベル「そうだよ!戦力は多いにこしたことないって!カイだってそう思うよn」

カイ「わかった。俺は宮殿に残る、侵入者共は女王に任せた」

ティンカーベル「えぇーっ!?ここはゲルダを助けに行くところじゃん!意地張らないでいこうよ!」

カイ「あのなぁ…お前らちったぁ考えろよ。アリス側だって失敗はできねぇ戦いなんだぜ?もしもここまでやっても女王に敵わなかったって場合の策も考えてあるだろ」

キモオタ「確かに…よく考えればゲルダ殿を餌に女王殿をおびき寄せて女王殿と誰かが戦っている間に別の誰かがこの宮殿を襲撃するパターンも考えられますな」

カイ「相手に女王の事が色々と筒抜けになってるって考えた場合よぉ…この宮殿を捨てられないってこともバレてるだろうからな」

ティンカーベル「えーっ?この宮殿ってそんなに大切なもんなの?もし壊されても女王だったらパパッと治せるんじゃないの?」

キモオタ「いや…直せるとか直せないとかの問題ではないのでござろう。この宮殿はただの氷で出来た建造物ではないのでござるから」

ティンカーベル「えっ?なになにどーいうこと?」

キモオタ「この宮殿は女王殿にとっては家族との思い出の詰まった家でござるよ?元々一人で孤独に暮らしていた女王殿のところにカイ殿が来て、ヘンゼル殿グレーテル殿と暮らし、司書殿を加えて…長い間暮らした団欒の場所でござる」

キモオタ「その上、ヘンゼル殿達には…もう帰る場所はここしかないのでござる。女王殿の性格を考えると、そう容易く手放せはしないでござるよ」
89: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:53:39 ID:xUS 

雪の女王「そういうことだよティンカーベル。昔この宮殿は私にとってただの住処だったが…今ではかけがえのないものだ」

雪の女王「だから君達にはそれを守って欲しい。頼めるね?」

ティンカーベル「そういうことなら…わかったよ!でもホントに女王と白鳥とチビっ子コスプレイヤーだけで大丈夫?」

親指姫「誰がチビっ子コスプレイヤーだ!貴様のような虫よりは剣の腕は確かだ!」

雪の女王「大丈夫だよティンカーベル。私を誰だと思っているんだ?私が女王と称される所以、見せつけてきてやるさ」クスクス

ティンカーベル「わかった、そこまで言うなら私はこっちに残って宮殿とカイを守るよ!」

カイ「宮殿の事は何があろうと守ってみせっからよぉ、そっちは任せたぜ、雪の女王」

雪の女王「あぁ、それじゃあよろしく頼むよカイ。あの子たちが帰ってくる場所、きっと守り抜いてくれ」

カイ「任せろ。ここが無くなっちまったらシスコンと甘党と童話マニアが行く場所なんざねぇからな。兄代わりとしてそんくらいはしてやるか」

雪の女王「それじゃあ私達はそろそろ向かおう。あぁ、それとキモオタ…君にはひとつ言っておかないとな」

キモオタ「ほうwwwなんでござるかな?www」

雪の女王「私はアリス達に負けるつもりなどさらさらない、必ず侵入者を追い払って帰ってくる。だが仮に、仮に私に何かあった時は…私の家族を頼むよ」

キモオタ「ちょwww女王殿wwwそういうのは現実世界では死亡フラグと言って、口にすると死ぬ奴なんでござるよwww」

雪の女王「ふふっ、そうなのか?それは困るな」クスクス

キモオタ「故にその頼みは聞けないでござるwww絶対に戻ってきていただき、女王殿自らの手で家族を守ってもらいたいwww」

雪の女王「確かにそれが道理だな、私とした事が少し弱気な発言だったかな」フフッ
90: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:56:26 ID:xUS 

雪の女王「さぁ、では向かうとしようか親指姫、白鳥。私達の世界を脅かす侵入者の元へ!」

ガチャッ バッ

ティンカーベル「……行っちゃったね。でも女王なら大丈夫だよね!私達は約束通りこの宮殿をバッチリ守ろう」

キモオタ「しっかしwwwカイ殿はクールというか物分かりがいいというかwwwヘンゼル殿ならさっきの場面で絶対に食い下がっておりますぞwww」

カイ「あのシスコンと一緒にするんじゃねぇよ。どーでもいいがあいつはグレーテルを人質に取られたら躊躇なくアリス側に着くぞ、多分な」

キモオタ「ちょwwwそんなわけないでござると擁護したいのは山々でござるがwww反論できないwww」

ティンカーベル「でも親指姫と白鳥がいるっていってもほとんど女王一人みたいなもんじゃん?大丈夫だとは思うけどやっぱりちょーっと心配だなぁ…」

カイ「大丈夫だろ。むしろあいつは一人の時が一番強い」

キモオタ「んっ?それってどういう事でござるか?」

カイ「俺たちと接してる時やお前達との特訓の時の女王の能力なんざほんの一部だ。普段は相当抑えてるんだぜ、あれ」

ティンカーベル「えーっ!?っていう事は力のセーブが必要無い本気の戦いになったら女王はもっと強いって事?」

カイ「そうだな、つーかそんな驚く事かよ。当然と言えば当然だろ?」



カイ「あいつは冬を司る魔女…『雪の女王』なんだからよ」
91: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 00:59:06 ID:xUS 

雪の女王の世界 雪原

パカラッパカラッ

トナカイ「ゲルダさん!後ろはどうですか!?まだ連中は追って来ていますか!?」パカラッパカラッ

ゲルダ「ううん、大丈夫。もう姿は見えないわ、どうやら私達なんとか逃げ切れたみたい」

トナカイ「そうですか、まずは一安心…と言ったところでしょう」

ゲルダ「そうね。でも…何だったのかなあのトランプの化け物達…」

トナカイ「突然の襲撃で逃げるのが精いっぱいでしたからね、考えている余裕ありませんでした。確かに連中は一体何者なんでしょうね」

ゲルダ「あんなのが出没するならきっと噂になってるはずだけど、前の村でもそんな話聞かなかったし…それにあんなのが出るなら山賊ちゃんが教えてくれただろうし」

トナカイ「私もそんな話は聞いていませんからね…そもそもあれは獣にも人間にも見えませんでしたよ」

ゲルダ「だよね…きっと魔法の力で生み出された存在とかだと思うけれど」

トナカイ「おそらくそうでしょう。トランプの姿をしていた以上、自然発生した精霊や魔獣の類とは考えられません」

ゲルダ「じゃあ魔女や魔法使いに生み出されたって事になるけど、そしたら私達を襲ったのもその人の命令って事になるよね。一体、誰がそんなこと…」

トナカイ「……まさか、とは思うのですが。例の、カイさんを連れ去ったという魔女では?」

ゲルダ「雪の女王…」
92: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/21(月) 01:03:21 ID:xUS 
トナカイ「私達は女王の宮殿へ向かっている。まだまだ道程は長いですが着実に近づいてはいます」

トナカイ「カイさんの奪還を阻止するべく、ゲルダさんに刺客を差し向けたという事も…」

ゲルダ「…その可能性もあると思う、でも本気で私を諦めさせたいならいくらでも私を殺したり遭難させる手段を雪の女王は持っているもの」

ゲルダ「あんな怪物を造って足止めするなんて回りくどいこと…それに今まで何もされなかったのに急にそんなことするかな?」

トナカイ「うーむ…謎は深まるばかりですね。……っ!」ザッ

ゲルダ「トナカイさん?どうかした?」

トナカイ「前方に生き物の気配を感じます。…いや、徐々にこちらに近づいていますからもうゲルダさんにも見えるでしょう」

ゲルダ「……さっきのトランプの化け物と同じ姿!それにさっきよりも数が多い…!」

トナカイ「迎え撃つにもあの数だと私の角では倒しきれません、かといって来た道を戻れば挟み撃ちにされる可能性も……クッ、進むも危険引くも危険。どうすればいいのだ…!」

ゲルダ「……引くわけにはいかないもの、ここは覚悟を決めて敵の群れを突っ切ろう、トナカイさん」

トナカイ「し、しかし…どう足掻いても全員を倒しきることは不可能。むしろ背中に乗っているゲルダさんを危険にさらすことになります」

ゲルダ「大丈夫、私に考えがあるの。それに退いても何の解決にならない、私は前に進まなきゃいけないんだから…怖がってなんかいられない!」

ゲルダ「カイ君を取り戻すためには後ろなんか向いてちゃいけない、下を向いて泣いててもダメなの、覚悟を決めて前を向かなきゃ…私の親友を取り戻せない!」

トナカイ「……わかりました。ゲルダさんを信じて従いましょう、しっかりつかまっていてくださいよ!」

106: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:13:48 ID:SaL 
パカラッパカラッパカラッ


トナカイ「敵の群れはもう目の前です!何をするつもりか知りませんが…準備はよろしいですね、ゲルダさん!」パカラパカラッ

ゲルダ「うん、いつでも大丈夫!きっと、きっとうまくいく!トナカイさんはとにかく出来るだけ早く走り抜けて!」ギュッ

トナカイ「そう仰るのならそう致しましょう!このまま私に出せる最高速度で奴等のに突っ込みますよ!」パカラパカラッ

ザッザッザッザッザッ

トランプ兵1「…EnemyDiscovery」ウィーン

トランプ兵2「Target Lock-on Rewdy…。……!?」

トナカイ「おおおおぉぉぉっ!死にたくなければ去るが良い!立ちはだかるならば覚悟せよ!」パカラッパカラッパカラッ

トランプ兵達「Emergency! Warning! Warning!」ザワザワ

トナカイ「私はこの方を雪の女王の宮殿へと導くのだ!私達の障害となるのならばこのまま踏みつぶす…!」ドドドドッ

ドゴォ!

トランプ兵達「「「…error」」」ドサドサッ
107: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:15:39 ID:SaL 

ゲルダ「すごい…!たった一度の突撃で化物の群れを蹴散らすなんて…」

トナカイ「油断なされぬよう!今の一撃で全ての化物を倒せたとは思えません!十分に警戒を――」

トランプ兵3「Discovery…Gerda」ガチャッ

トランプ兵4「Target Lock-on…!」ババッ

トナカイ「くっ、やはり倒し損ねた敵がゲルダさんを狙って…!御注意を!」

ゲルダ「大丈夫…私はこんなところで負けない!今までどんな苦境も逆境も乗り越えてきたんだもの――」スチャッ

トランプ兵5「Attack staeted…!」ババッ

ゲルダ「絶対に私は…カイ君を取り戻す!そのためだったら何だってするんだから!」ブンッ

ビチャー

トランプ兵「……?」グッショリ

トナカイ「トランプの化け物に何かの液体を…いや、この匂いは酒…!アルコールですか!」

トランプ兵「……!! Emergency! Emergency!」ザワザワ

ゲルダ「あなた達がその姿の通り『トランプ』だっていうのなら…動いていようと大きかろうと結局はただの紙切れよ!だったら炎は何よりも怖いでしょう!?」シュッ

トランプ兵3「Gyaaaaaa!!!」ボボッ!メラメラメラ!!

ゲルダ「彼の後を追いたくないなら道を開けて!それでも消し墨になることを望むならかかってきなさい!」キッ
108: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:17:11 ID:SaL 

トランプ兵3「Guwaaaaaaaa!!!」メラメラ

「Emergency!Emergency!」ザワザワ
「HI WA YABAI MAJI DE YABAI!!」ドヨドヨ
「GERDA MAJI KOEEEEEEE!!!」ドタバタ

ゲルダ「トナカイさん!トランプの化け物が慌ててる今のうちに突っ切っちゃって!」

トナカイ「承知しました!振り落とされないようにご注意ください!」

パカラッパカラッ

トナカイ「……これくらい距離をとれば大丈夫でしょう。どうです?奴等は追ってきますか?」パカパカ

ゲルダ「ううん、全然見えない。きっとそれどころじゃないと思う、すごく慌ててたから。余程炎が怖いのね」

トナカイ「そのようですね。まずは一安心ですが…このまま次の村を目指しましょう、道中にとどまるのは危険です」

ゲルダ「ごめんね、トナカイさん昨日も歩き続けて疲れてるのに」

トナカイ「いえいえ、私はこう見えてスタミナには自信あるんでね。ゲルダさんこそ私の背中で眠ってもらって構いませんよ」

ゲルダ「ううん、起きてる。またトランプの化け物が襲ってくるかもしれないし」

トナカイ「それもそうですね…。しかし先ほどは驚きましたよ!ゲルダさん見かけによらず勇敢ですよね、それにお酒なんかどこで手に入れたのですか?」

ゲルダ「えーっとね……実は前に山賊ちゃんのお世話になった時にね?その……親分さんの秘蔵のお酒を一本……その、えっと、借りちゃったの」エヘヘ

トナカイ「……それ、無断でですよね?」

ゲルダ「えへへ、うん。無断で借りちゃった」エヘヘ
109: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:19:05 ID:SaL 

トナカイ「ゲルダさんって、可愛い顔して実は相当強かですよね」

ゲルダ「強かじゃないと女の子は一人旅なんかできないよ、それに一応山賊ちゃんには許可もらってるよ?」

トナカイ「あの方に許可もらったところで…。確かに女性の一人旅は危険ですから強くならなければならないという部分には同意ですけれど」

ゲルダ「そうだよ。カイ君の両親も他の友達もみんな諦めたけど…私はカイ君を絶対に連れて帰るって決めたから、あの頃みたいに村で平和に暮らしたいから」

ゲルダ「だから私は強くならなきゃいけないんだ、どんな時でも泣かないし強敵にも立ち向かう。だから相手が雪の女王でも私は…怯まずに立ち向かう覚悟だよ」

トナカイ「ゲルダさん、それはやめておきましょう。雪の女王には敵いませんから」

ゲルダ「そんなの、やってみないとわからないわ。私、山賊ちゃんにちょっぴりだけどナイフの扱いも教わったし…」

トナカイ「あの方に貰ったそんなちっぽけなナイフで叶う相手じゃありませんよ。雪の女王は冬の支配者…人間が喧嘩を売っていい相手ではないのです」

トナカイ「あなたの目的はカイ君の奪還ただ一つ、決して女王を倒すことが目的ではないのです。そこを履き違えてはいけません」

ゲルダ「……」

トナカイ「ゲルダさんは雪の女王が憎いですか?」

ゲルダ「…憎いよ。私の一番の友達を連れ去ったんだもん、憎いに決まってるよ」

トナカイ「そうですか。でもカイ君を取り戻すために何でもするというのなら、まずはその感情を抑え込みましょう」

トナカイ「その憎悪はカイ君を取り戻すためには不要なものですから」
110: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:20:40 ID:SaL 

トナカイ「女王の宮殿に忍び込み、気づかれないようにカイ君を奪還する。これがあなたが取るべき行動です、戦闘は絶対に避けるべきです」

ゲルダ「……うん、そうだよね。仕返しをすることが目的じゃないんだもんね…わかってるよ、わかってる…」

トナカイ(頭では解っていても憎しみは抑えられないといったところでしょうか…。まだ若い彼女が感情を抑えきれないのは仕方ないのかもしれません)

トナカイ(そもそも何の準備も無く村を飛び出すような子ですからね、なにをするかわかりません。行動を共にしている私がキチンと気を配ってあげなければ…)

トナカイ「ゲルダさんはやはり少し眠っておいてください。まだ次の村までは少し距離がありますから、何かあればすぐに声を掛けますよ」

ゲルダ「私だけ休むなんてできないよ、トナカイさんに無理させているのに」

トナカイ「私はともかくあなたが倒れたら誰がカイ君を取り戻すのですか?彼を助け出したいなら体力を温存しておいてください」

ゲルダ「…でも」

トナカイ「私も山賊のお嬢さんも…あなたに手を貸した王族の方々も。皆があなたの旅の成功を祈っているのです」

トナカイ「皆さんの祈りを無駄にしないように、休める間に休んでおきましょう」

ゲルダ「…そうだね、休めるときに休んでおくことも大切かもしれないね」

トナカイ「そうですとも。ささ、私の背中はモフッモフですしから寝心地はそこそこのハズですよ」

ゲルダ「……っ!」

トナカイ「ゲルダさん?どうかしましたか?」

ゲルダ「残念だけど休む余裕なんか無いみたい…!トナカイさん!上よ、空の上…!何かが降りてくる…!」
111: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:22:39 ID:SaL 

トナカイ「なんと…!まさか空の上から襲いかかってくるような敵が…!?ゲルダさん飛ばしますよ!とにかく距離をとりましょう!」バッ

ゲルダ「わかった!しがみ付いてるから出来るだけ速く走って!」

バッサバッサ

ハートの女王「フン、意外と早く気付きおったな。強襲を掛けるのも面白いと思ったが…まぁよい。手を変えるぞグリフォン、追え」

グリフォン「グリフォオオォォォォォ!!」バッサバッサ

パカラッパカラッ

ゲルダ「なんなのあの化物…!あんな生き物見たことが無い…!」

トナカイ「信じられません…!まさかあの伝説の怪物が実在するとは…!」パカラッパカラッ

ゲルダ「あの怪物の正体を知っているの?トナカイさん!」

トナカイ「はい…!あれはグリフォンと呼ばれる怪物!御覧のように鷲の上半身と翼、そして下半身はライオンという異形の獣!」

ゲルダ「グリフォン…!なんでそんな生き物が私達のところに…」

トナカイ「伝説上の獣が実在するという事にも驚きですが…おそらくグリフォンを操っているのは背に乗っている女!」

トナカイ「グリフォンを操る術を持つなんてあれは只者ではありませんよ!何者かまでは私にはわかりませんが…」

ゲルダ「私はあの人の正体もグリフォンのこともわからないけれど、けれど一つだけ確かな事があるわ」

トナカイ「そうですね…奴等は私達を襲おうとしている!ゲルダさん、今回ばかりは逃げの一手ですよ!あれはトランプの化物とは訳が違う!」
112: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:24:08 ID:SaL 
パカラッパカラッ

ハートの女王「我がしもべ共を焼き払った娘だ、何かしらの応戦を試みて私を楽しませると思ったが…逃走を選択するか」

ハートの女王「えぇいつまらん!小娘を追いかけまわす程度では、私のストレスは収まらん!グリフォン、奴等の前方へ回り込め!」

グリフォン「グリフォオオオオォォォォ!!」ビュバッ

キキーッ

トナカイ「クッ…!一瞬で回り込まれるとは…なんという素早さだ!」

ハートの女王「こやつは我がしもべの中でも最速を誇るのでな、トナカイなんぞに後れをとるわけ無かろう。お前たちはもう逃げられぬ」

ゲルダ「教えて、あなたは一体何者なの?どうして私達を襲うの?さっきのトランプの化物もあなたがけしかけたの?」

ハートの女王「許可も得ずに私に質問攻めをするか、小娘。女王たるこの私に対して無礼な奴…首を刎ねてやろうか!」ギロリ

ゲルダ「女王…!?もしかしてあなたが、雪の女王なの!?」バッ

ハートの女王「私をあのような魔女と間違えるとは…!不愉快だ!予定とは少々異なるがここでお前を多少いたぶっても何の問題もあるまい。さぁ、出番だ我がしもべよ」スッ

ゲルダ「トランプ…!という事は、やっぱりさっきの化け物達は…!」

ハートの女王「小娘、寛大な私が貴様の質問に一つだけ答えてやる」

ハートの女王「貴様の想像通り、トランプ兵をけしかけたのは私だ。だがあれらは我がしもべのほんの一部に過ぎん」

バラバラバラ

ハートの女王「見せてやろう、真の王族が所有する軍事力というものを。さぁ立ち上がれ、そしてあの小娘を捕えよ!命を取らねば多少傷つけても構わぬ!」
113: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:26:13 ID:SaL 
ザッザッザッザッ

トナカイ「トランプの束がさっきの化物に…!しかもざっと見積もって数倍…いいやそれ以上です!」

ゲルダ「もうお酒も残っていないのに…!トナカイさん、追手が居るかもしれないけどここは引き返しt」

ハートの女王「させぬ!退路を塞げ、我がしもべよ!」バラバラバラ

ザッザッザッザッ

トランプ兵達「「「Yes My lord」」」

ゲルダ「そんな…!これじゃあ引き返すことも、進むこともできない…!」

トナカイ「まずいですね…この数に囲まれては強引に突っ切ることも難しい…」

ハートの女王「フハハハッ!八方ふさがりとはこの事だな小娘、いいや…ゲルダよ!諦めて運命に身を任せよ!」

ゲルダ「私の名を…!どうして、どうして私の名前を知っているの!?」

ハートの女王「フン、お前を捕えた後に教えてやる。もっとも…意識を保っていられればの話だがな」

ゲルダ「……っ!」

ハートの女王「攻撃開始だ我がしもべ達よ!その身を、その魂を私の為に燃やしつくせ!」

トランプ兵達「「「Yes My lord」」」

ザッザッザッザッ

トナカイ「クッ、突破口も逃げ道も無し…万事休すですか…!」

ゲルダ「そんな…ここまで来れたのに…!こんなところで、こんなところで……!」

ハートの女王「さぁ攻め込み、追いつめよ!そして武を持って私への無礼を悔い改めさせよ!」

ゲルダ「このままじゃ…やられる!私を助けて…!カイ君…!」ギュッ

ヒュッ

トナカイ(何だ…?今、冷たい風が首元を過ぎたようn)





ビュオォォォ…ペキペキペキバキバキバキバキバキバキッ!!!

トランプ兵達「」カキーン
114: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:30:19 ID:SaL 

トナカイ「トランプの兵隊が一人残らず凍りついている…!この大軍勢が一瞬で…!しかも私達は無傷…!」

ゲルダ「なっ、何…!?何が起こったの!?」

ハートの女王「チッ、見計らったようなタイミングで現れたな…だが女王たるこの私の邪魔をした事、万死に値する!その覚悟はできているだろうな……雪の女王よ!」

ビュオオオォォォォ…

雪の女王「……」

ゲルダ「……!あの人が雪の女王…!」

トナカイ「なんと神秘的で美しい女性だ…!あの方がこの軍勢を一瞬で無力化したというのか!」

雪の女王「……雪降りし地は等しく我が領土。人間如きが生み出した『トランプ』等という不格好な人工物など――」スッ

パリーン!!

雪の女王「私の領土には必要ない」

ハートの女王「凍りついた我がしもべ共を一瞬で…!フン、どうやら魔力だけは有り余っているようd」

雪の女王「……」フッ

パキパキパキッ…!

グリフォン「グ、グリフォフォォ!?」カキーン

ハートの女王「なんだと…!?このだけ距離をとっているにもかかわらず凍らせることができるだと…!?」カキーン

ハートの女王「クッ、身動きがとれぬ…!貴様!今すぐにこの氷を溶かすのだ!魔女風情が女王たる私にこのような無礼を働いて許されると思っt」

雪の女王「……そこの女」



雪の女王「貴様、一体誰の許可を得て口を開いている?」
115: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:31:56 ID:SaL 

ハートの女王「……っ!」ビクッ

ハートの女王(あっ、ありえぬ!この私が…女王たるこの私が魔女如きに…恐怖しているだと!?)

トナカイ「な、なんという魔力…!これが雪の女王の力だというのか!」

雪の女王「……そこのトナカイよ」ツカツカ

トナカイ「は、はいっ!」ビクッ

雪の女王「今回は不問にしてやる。そこの小娘を連れ、早々に立ち去れ」

トナカイ「しょ、承知いたしました。ゲルダさん、行きましょ…ってなんで降りちゃうんですか!?早く私の背中n」

ゲルダ「……あなたが雪の女王、なの?」

雪の女王「……小娘、会話を許可した覚えはないぞ」

ゲルダ「……っ!」ビクッ

トナカイ「ゲルダさんダメですって!ほら、早く行きますよ!」グイグイ

ゲルダ「放してトナカイさん!ねぇ、あなた雪の女王なんでしょう!?だって否定しないもの、そうなんでしょう!」

ゲルダ「私はゲルダという名よ!あなたがさらってしまった男の子は私の親友なの!だから、返して!私の大切なカイ君を…返して!」
116: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:34:23 ID:SaL 

雪の女王「そうか、貴様はカイの友人だった娘か」

ゲルダ「だった、なんて過去のことのように言わないで!今だって私はカイ君の親友だもの!」

雪の女王「……貴様が感じている友情は今や一方的なものだ。カイはもはや貴様の事など忘れているだろう」

ゲルダ「……っ!」

雪の女王「カイは私の宮殿で幸せに暮らしている。以前の家族や友人、当然貴様の事も忘れ…大好きな本に囲まれ寝食の心配無く充実した暮らしをしている」

雪の女王「今更、田舎での退屈な生活には戻れぬ。貴様も私のカイの事は忘れ、早々に故郷へ引き返せ」

ゲルダ「カイ君はあなたの所有物ではないわ!そんな風に、自分のモノみたいに言わないで!」ギッ

雪の女王「……喧しい小娘だ」スッ

ゲルダ「っ!?いつの間に背後に…!」

雪の女王「……我に建てつく人間など初めてだ。喜べ、称えてやろう」サワッ

スゥゥッ…

ゲルダ「な、何…?突然ひどい寒気が……あなたの仕業ね……?わ、わ私に何をしたの…!?」ブルブル

雪の女王「体内に冷気を送り込んでやったのだ、どのような毛皮を纏おうとも抗えない」

ゲルダ「だ、ダメ…立っていられない…!カイ君をさらった犯人が目の前にいるって言うのに…!」ブルブル

雪の女王「無様だな、小娘。力無き者が不相応に友を取り戻そうなどと思いあがるからそうなるのだ」

雪の女王「だが安心せよ、貴様の友人……いいや、私のカイは今この上ない幸せを感じているのだからな」

ゲルダ「……っ!」ガタガタブルブル
117: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:36:17 ID:SaL 
ゲルダ「……」キッ

雪の女王「なんだその目は、言いたい事があるのならば言え、許可してやる。もっとも…冷気が全身を駆け廻り、口を開く事も出来まい」

雪の女王「この程度の冷気で音を上げるようでは我が宮殿にたどり着くなど夢のまた夢……ましてカイを取り返そうなど不可能だ」

ゲルダ「わ、わわ、わたし…は……っ!」ゼェゼェ

雪の女王「……」

ゲルダ「わたしは……かならず、カイ君を取り返す……!あなたには、わたさない……ぜったいに……!」ブルブル

雪の女王「……いつまで呆けている、トナカイ。この不愉快な娘を私の視界から消せ」

トナカイ「は、はい!ほ、ほらゲルダさん今度こそ行きますよ!」グイッ

ゲルダ「……まってなさい、ぜったい、ぜったい……」ガタガタ

雪の女王「中々強い意志を持つ小娘だな……いいだろう、一つ助言をしてやる」

雪の女王「貴様の体内を駆け廻る冷気は魔力でも何でもない、単なる冷気。早急に体を温めれば事無きを得るだろう」

ゲルダ「な、なんで……そんなことを……」

雪の女王「……」



雪の女王「ただの気まぐれだ、私の気が変わらぬうちに失せよ」
118: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/11/28(月) 01:38:50 ID:SaL 

トナカイ「も、もうゲルダさんは喋らないでください!で、では私達はこれで失礼します!」

パカラッパカラッパカラッ

雪の女王「……こんなものでいいだろう」ボソッ

ヒュッ

雪の女王「……そんな図体で不意打ちされてもな。次は足元だけでは済まさんぞ」パキパキパキッ

グリフォン「グ、グリフォォォ!!?」バキバキバキ

雪の女王「存在すること自体は許してやる、そこで黙っていろ」スッ

グリフォン「」カキーン

ハートの女王「貴様…またも我がしもべを…!許さぬぞ!」

雪の女王「……」

ハートの女王「あの程度の氷で私を足止めできると思っていたのか?私のしもべ、グリフォンのくちばしは鋭利なのでな!あの程度の氷を砕かせるなど容易い!」

ハートの女王「ゲルダは殺すなと言われていたが貴様の命は自由にしていいとアリスに言われている、受けた屈辱は死をもって償ってもらう!随分と調子に乗っていたようだが数々の無礼、決して許さぬぞ!」

雪の女王「……許さないと言いたいのはこちらだ、ハートの女王」

ヒュッ

雪の女王「普段は子供達の手前、手本となるように……と考えているがここではその様な事を気にする必要もないのでな、貴様の敗因の一つはそれだ」

ハートの女王「なっ、早い…!」

雪の女王「調子に乗っている、というのもこちらのセリフだ。貴様は自分の城の中でのみ威張り散らしていればよかったのだ」パキパキパキ…

ハートの女王「」カキーン

雪の女王「女王であろうと所詮貴様はトランプのカードなのだからな」

130: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/03(土) 00:23:27 ID:zh2 

ローソンでアリスのカレンダー売ってるの見て「これティンカーベルが見たらブチ切れそう」とか想像してる>>1の番外編 『ゴマスリ』

ティンカーベル「もうすぐクリスマスだね!クリスマスは友達や恋人と一緒にディズニーランドに行こう!」

ティンカーベル「それと年末年始は意外とテレビ見る奴無いからTUTAYAでディズニー映画を借りてこようね!ゲオでもいいよ!」

ティンカーベル「お母さんはもうおせち料理の予約は済ませたかな?もちろん今年もディズニーのおせちで決まりだよ!」

キモオタ「……あの、ティンカーベル殿?お主は一体何をしているのでござるかな…?」

ティンカーベル「えっ?いや、本編もすっかり佳境でしょ?つまりさ、私が【ピーターパン】の世界を取り戻すのももうすぐって事じゃん!」

ティンカーベル「だからさ、そろそろディズニーに媚売っておこうと思ってこうやってアピールしてんの!」

キモオタ「ちょwww直球wwwいきなり何を言い出すでござるかwwwティンカーベル殿www」コポォ

ティンカーベル「笑い事じゃないよ!アリスの企みを阻止して【ピーターパン】の世界を復活させたとしてもそれでおしまいじゃないんだよ?」

ティンカーベル「せっかく復活させても現実世界の人たちに忘れられちゃったら結局は消えちゃうんだから!ちゃんと知名度を上げる努力しなきゃ!」

キモオタ「なるほどwwwそれで【ピーターパン】のディズニー映画化を狙っているのでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「そゆこと!【シンデレラ】とか【ラプンツェル】とかディズニー映画化したおとぎ話は圧倒的な知名度があるじゃん!私もそれにあやかろうと思って!」

キモオタ「しかしこうも下心が見え見えのゴマスリは逆効果ではwwwいくらなんでもお行儀が悪く見えますぞwww」コポォ

ティンカーベル「お行儀が悪くてもいいから私は【ピーターパン】を映画化してほしいしあわよくば私のスピンオフ出してほしい、そしてグッズ展開してほしい」

キモオタ「お主www以前から思っていたでござるがそのグッズ化への執着は何なんでござるかwww別にグッズ化されなくとも知名度は確保できるでござろうwww」

ティンカーベル「いーや、私はスマホカバーになりたいし私オンリーのガチャガチャを出してほしい、全五種類+シークレット一種類で」

キモオタ「妙に細かい希望でござるなwww」

ティンカーベル「ていうかもう本音ぶっちゃけるけど…アリスグッズ化されすぎなんだよ!カレンダーになりーのヤクルトや菓子パンのパッケージになりーの一番くじになりーの…!ずるくない?ずるい!ずるいんだよぉぉぉぉ!!」

ティンカーベル「…というわけで、【ピーターパン】が復活したら映画化お願いします!」キリッ

キモオタ「【ピーターパン】の知名度うんぬんより完全に自分グッズが主目的でござるなwww」コポォ

133: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 00:59:17 ID:jq7 
雪の女王の世界 雪原

ビュオオオォォ……

グリフォン「」カチーン
ハートの女王「」コチーン


雪の女王「……」ザッザッ

雪の女王「無尽蔵に湧き出るトランプ兵、強靭な爪と飛行力を兼ね備えたグリフォン…戦いの場においては確かに驚異的な存在だ」

雪の女王「しかし、私と戦うことを想定した戦略も準備も不足している。吹雪と氷結を操る私に人海戦術などという力技が通じる訳がないだろう」

雪の女王「……アリス、君はそう思わないか?」

スッ

アリス「…姿を消すなんて小細工、雪の女王相手には通用しないか。まぁ、想定してたけどさ」ファサッ

アリス「ボクも相応の準備をしたほうがいいと言ったんだよ?でもハートの女王が聞き入れてくれなかったんだ」

アリス「『女王たる私が魔女ごときに後れなどとらぬ!私の圧倒的な兵力に敵う者などおらぬのだ、アリスといえど私の戦いに口出しはさせぬわ!』…ってね、困ったものだよ」ハァ…

雪の女王「全ての世界を巻き込んでやりたい放題している君達のほうが余程『困ったもの』だと思うが?」

アリス「ハハッ、そうだね。でもボクからすれば君も大概だよ?せっかくボクが魔法具で姿を消しているのに簡単に見抜いてしまうんだからさ。流石はおとぎ話の世界屈指の魔女様、困ったものだ」クスクス

雪の女王「私が魔力を有している見抜けたわけじゃあないだろう」

雪の女王「そんな風にむき出しの殺意を纏っていれば誰だってその存在に気づくさ」
134: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:03:56 ID:jq7 

アリス「フフッ、そう言われればそうかも知れないな」クスクス

アリス「だけど君がさっき女王に向けていた殺意だって相当なものだったよ?とても子供好きの優しい女王様とは思えない姿だったからね、意外だったよ」

雪の女王「私は神でも仏でも無い、ただの魔女だ。腹立たしい事があれば怒りもする、不当な扱いを受ければ不満だってもつ、そして大切なものを壊そうとする輩が現れたなら――」

雪の女王「どんな手を使ってでも守り切る、たとえ相手の命を奪う結果になってもだ」

アリス「そうか。でも少し思いあがりが過ぎるんじゃないか?ボク達がこうして君の前に現れたという事は勝算があるって事だ」

アリス「それなのに君はキモオタ達を宮殿に残してきた、あんな豚でも何かの足しにはなるだろうに。それにこの場に連れてきたはずの白鳥と親指姫の姿が見えないな?」

雪の女王「……」

アリス「まぁ…大方、ゲルダを護衛するように命じているんだろう?彼女が安全に次の村へ進めるように、空からね」

雪の女王「君達がこの世界から手を引いてくれれば、彼女に護衛をつける必要も無いんだがな」

アリス「心配しなくてもボクはゲルダを襲ったりしないよ。そんな事をするメリットが無いからね」

アリス「どちらにしろ君は戦いになる事を覚悟していながらこの場に一人で出向いた。それはとんでもない思いあがりだとボクは思うけどね」

雪の女王「思いあがってなんかいないさ。私は元々一人でなければ能力を十分に発揮できない、魔法の性質上どうしても味方を巻き込んでしまうからね。まぁ、それ以前に――」スッ

パキパキパキパキ……

雪の女王「我儘し放題の子供を叱るために大勢連れ立つ必要などないのだから」スッ

136: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:07:18 ID:jq7 
パキパキ…バキバキバキッ!

アリス「…あぁ、これが噂に聞く君の十八番か。なるほど、足を凍りつけられただけだけど身動きが取れないというのは厄介だな」

雪の女王「動きを封じさせてもらう。君に暴れられては困るのでな」

アリス「それで?身動きが取れなくなったボクを氷柱で串刺しにでもするかい?それとも女王のように全身氷漬けにでもするか?」

雪の女王「そんな事をするつもりはないさ。私は君を殺したいわけではないのだから」

アリス「へぇ、それじゃあどうするつもりだい?」

雪の女王「アリス、君は自分の願いを叶える為に数え切れないほどの人々と世界を犠牲にしてきた。そして多くの恨みを買った」

雪の女王「おとぎ話の世界の多くはアリスという存在を危険視すると同時に敵視している。君はそうされても仕方が無い事をさんざん繰り返してきた」

雪の女王「悔いる権利は誰にでもあり、償えない罪は無いと私は思うが…それでも君の罪はそうそう許されるものでも償えるものでもない。自体はそれほど深刻なものだ」

アリス「……」

雪の女王「君が今ここで全ての計画を諦めて今までの行いを悔いると言っても、おとぎ話の世界の住人は誰ひとり納得しない。そのすべてが君を糾弾するだろう」

雪の女王「だが、君に少しでも後悔や反省の想いがあるのならば…改心して欲しい。それを約束できるなら私は君の償いに協力をする、君が許されるよう人々を説得して周る」

アリス「何を言うかと思えば…」

雪の女王「アリス、よく考えてみるんだ。君は確かに大いなる力を手にしたかもしれないが、私やキモオタ、多くの協力者だってそれは同じだ。力ずくで望みを叶えるなんてできはしない」

雪の女王「だからもう諦め、そして反省と償いをすべきだ。そう誓ってくれるのならば君の居場所は私が作ると約束する、だから…」

雪の女王「もうこれ以上罪を重ねるのはやめるんだ、アリス」
137: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:10:12 ID:jq7 

アリス「……」

雪の女王「君が改心を約束するならハートの女王も開放する。彼女は君にとっては大切な仲間なんだろう?」

雪の女王「これは君の為でも、君の仲間達の為でもある。だから――」

アリス「……呆れてものも言えないよ、雪の女王。優しい女王サマもここまでくると不愉快だ」スッ

アリス「反省?改心?償い?するわけがないだろう。それにあんたに説得されたくらいで諦めるほどボク達が求めているものは安っぽくない」

雪の女王「アリス…!」

アリス「どうしてボクがあんたの氷結を防ぎもせず避けもしなかったか、わからないのか?」カチッカチッ

ボボゥゥッ!!メラメラメラ…!!

アリス「必要が無いからさ。こんな氷、溶かしてしまえば枷でもなんでもない。当然、ハートの女王を助ける手段だって手配してある」

雪の女王「火炎を放つ魔法具……!」

アリス「驚くことかい?ボクはあんたを殺すためにこの世界に来た。そしてハートの女王とは違って油断もしない、あんたを見下しもしない。それならこれは当然の対策だろう」

アリス「弱点さえ突ければあんたもその魔法も驚異じゃない。炎や熱にさらされて溶けない雪や氷が存在しないように、実のところあんたはとても脆く儚い」

雪の女王「アリス、何故わからない…。何が君をそうさせるんだ、何故…」

アリス「答える義理は無いよ。そもそもこの期に及んでボクを説得で止められるだろうなんていう考えが思いあがりなんだよ」

アリス「ボクはあんたのところの優等生共とは違う。自分ならば改心させられるだろうなんて傲慢すぎるよ、雪の女王」
138: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:12:30 ID:jq7 

アリス「チェシャ猫」

チェシャ猫「あぁ、あの足手まといは任せろ」スゥッ…

アリス「頼むよ。きっと後で帽子屋や三月ウサギに大笑いされるだろうけど、こればかりはね。たまにはいい薬になるさ」

チェシャ猫「まったく、何故私が奴を送り届けなければならんのか甚だ疑問だが…しかたあるまい」スゥッ…

雪の女王「やらせはしないよ」バッ

アリス「そうか、ならば力づくで止めて見せるか?」スタッ

雪の女王「ハートの女王の元へ瞬間移動を…。例の時間停止能力か…」

アリス「さぁどうする?女王やチェシャ猫を攻撃すればボクを確実に巻き込む。宣言しておくけど、ボクは避けないし防御魔法がかかってるわけでもない…最悪死んでしまうかもね?」

アリス「死んでしまったら君が望む改心も償いも、できないけど?」

雪の女王「…あまり私を甘く見ない事だ、君意外をピンポイントに凍らせる事くらいは容易い」スッ パキパキ…

アリス「へぇ…撃ってくるんだ、思った以上に思い切りが良いね。だけど忘れてもらっちゃ困るな」カチカチッ

ボボゥ メラメラ

雪の女王「……っ!」ジュワッ

アリス「今や君の氷結魔法は何の意味も持たないってことをね」
139: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:17:08 ID:jq7 
スタッ

チェシャ猫「さて、準備は整った。俺はこいつ連れて【不思議の国のアリス】の世界に戻る、あとは一人で十分だな?」

アリス「もちろん。早く彼女を連れて行ってあげて欲しい、目を覚ましたらボクが心配していたと伝えてくれ。それと反省もしてくれ、ってね」

チェシャ猫「あぁ、あとは任せたぞ。アリス」ヒュンッ

雪の女王「取り逃がしたか…厄介だな、君の時間停止は」

アリス「そうでもないさ、色々と制約が多い。そんなことより…覚悟はいいかい雪の女王」カチカチッ

ボボゥッ! メラメラメラ

アリス「ハートの女王も逃がした、ボクの目的はただ一つ。あんたを殺す事だ、そして望みを叶えるための障害を一つ取り除く」カチャッ

雪の女王「どうやら君を説得することは難しいようだな」

アリス「難しいという表現はおかしいだろう、こういう場合は不可能っていうんだ」

雪の女王「だが難しいからといって、子供の過ちを放置することは大人のする事じゃない。私はどんなに時間がかかっても君を改心させる」

雪の女王「その為には…少々手荒な真似をする事になるが、説得に応じないというのならそれは覚悟して貰う。君の行動が過ちだと気付くために」スッ

アリス「……ボクを殺そうと思えばさほど難しい事でもないだろうに、あくまで改心させようって考えか」ギリッ

アリス「ボクの考えは間違っている、自分達は正しい。一般的にボク達の選択は悪で自分達は善、そうやってあんたも決めつけてかかる…」



アリス「あいつらがボクやルイスに…ボクの友達にそうしたように…ボク達が誤っていると決めつける。気に入らない…気に入らないな雪の女王」
140: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:21:50 ID:jq7 

雪の女王「あいつら…?君の過去に一体何が――」

アリス「もういい、あんたと話をするつもりは無い」

スッ

雪の女王「瞬間移動…だが君の行動は予想できる。…私の背後だ」バッ

アリス「当然気がつくか。まぁ、そもそもこの魔法具は憎い相手の背中を焼き焦がす為のモノだ。予想ができないほうがどうかしてる」カチカチッ

アリス「もっとも、予想できたところであんたの氷の盾は溶けるだけ、この火炎を避ける方法なんか無い」メラメラメラッ

雪の女王「確かに私の弱点は熱、そして炎、それは認める。だがなアリス、君は一つ勘違いしている」

パキパキパキ…バキバキバキベキベキベキベキッ!!

アリス「……っ」

アリス(氷塊で炎の勢いを弱めた…?いや、それ以前にこの威力は…規模こそ小さいが先ほどの攻撃とは段違いだ)

アリス「魔力を用いた威力の底上げ…まだ底を見せてなかったって訳か」

雪の女王「そんなところだ。雪は熱で溶ける。氷は炎に弱い。それは自然の理、子供でも知っている当然の摂理だ。だが…」

雪の女王「マッチの火では氷山を溶かせないように、圧倒的な力の差を生み出せるのならば……その理はひっくり返す事ができる」

アリス「……どうやらボクもあんたを少し甘く見ていたようだよ」

雪の女王「私を倒すために炎を扱うのは正しい選択だ、だが…私は雪の魔女でも氷の魔女でもない。雪の女王だ」



雪の女王「自然の理を崩し、道理を覆す力を持っているからこそ、私は『女王』なのだ。覚えておく事だな、アリス」
141: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:26:45 ID:jq7 

アリス「覚える必要なんかない、ボクはもう今後あんたと戦うことはおろか会う事すらない。死人と対話する趣味は無いからね」ババッ

アリス「あんたが魔力で威力を底上げするのならばボクもそうするまでだ」カツンカツン

雪の女王「かかとを打ち付ける動作…それが君がドロシーから奪ったという魔法の靴か」

アリス「あいつは結局役には立たなかったけれどこの置き土産は非常に有用だ、靴の持つ魔力を魔法具に移せば効力を倍加させられる」バッ

アリス「この火打石の威力も当然底上げされる。今度こそあんたを焼き払うだけの火力を出せるって事だ」カチカチッ

ブォォッ!ゴゴォッ!!

アリス「これでも足りないというのならいくらでも魔力を食わせてやる、さぁ焼き払え!目障りな氷塊を溶かしてしまえ!」

雪の女王「アリス、私は先ほど言ったはずだ。大いなる力を手に入れたとしても、それは君だけが持っているものじゃないと。力づくで願いを叶えるなんてことは出来ないと」スッ

パキパキパキ…ザンザンザンッ!!

アリス「氷の檻…!」

雪の女王「いくら君が時を止めたところでその氷の檻から出られなければ同じ事だ。前もって言っておくが…その氷は君が持つ火打石じゃあ歯が立たないよ、いくら魔力を上乗せしようとね」

アリス「化物め…!」ギリッ

雪の女王「なんとでも言うといい、どうあっても君の行動は間違っている。これでわかっただろう、今こそ間違いを正す時だ」

アリス「……」

雪の女王「アリス、聞いているのか?」

アリス「どいつもこいつもボク達が間違っている間違っているなんて好き勝手ばかり…!」



アリス「……間違ってない。ボクは正しい、ボクは…ボク達は何一つ間違っていない!」ギリッ
142: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/05(月) 01:31:15 ID:jq7 

『アリス、あなたは女の子なのだからその様な口調で話すのはおやめなさい』

どうして?ボクは言いたい事を言っちゃいけないの?

『女の子が自分の事をボクだなんて呼ぶのは恥ずかしい事よ、今後はきちんと私と呼びなさい』

どうして?ボクはそうしたいからしているだけなのに、なんで自分の呼び方を自分で決めちゃだめなの?

『女の子はおしとやかにしているものよ、男の子のような服装で駆け回るのはもうやめなさい』

どうして?スカートは好きじゃないのに、ボクは好きな格好をすることも許されないの?

『お父様はお許しになっているけれど、あの男と会うのはもうやめなさい』

どうして?ルイスはとても優しい人なのに、なぜそんな事をいうの?

『あの男は変質者だからよ。幼い少女しか愛する事が出来ないの、あなたには理解できないかもしれないけれどそれはとても罪なことなの。許されない事よ』

『あなたもあんな男と一緒にいるからそんな風になってしまったのよ。もっと常識的な、普通な女の子になってちょうだい』

どうして?ボクもルイスも何もおかしい事をしていないのに、悪いように言われなければいけないの?

周りの人と違うというだけで、なんで間違っているなんて言われなきゃいけないの?常識から外れている事が、そんなに悪い事なの?



どうしてボク達は、他人と違うだけでこうも悪く言われなければいけないんだ



アリス「……ボクは証明してみせる、ボク達が間違っていない事を!一切の落ち度なんか無い事を証明してみせる!」

雪の女王「アリス、君は何を言って――」

アリス「あんたが何かをゴチャゴチャ言おうと、結局は勝ったものが正義だ、最後に立っている奴の主張が絶対だ」



アリス「奥の手、見せてやるよ雪の女王。冬の化身のあんたじゃ絶対敵わない相手をこっちは従わせてるんだ」

パチンッ

153: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:28:19 ID:zru 
そのころ…
雪の女王の世界 女王の宮殿 エントランス

シーン…

ティンカーベル「ねぇキモオタ…きっと今こうしている間にも女王はアリスと戦ってるわけでしょ?」

キモオタ「侵入者がアリス殿ならばおそらくそうでござろうなwww」コポォ

ティンカーベル「でさ、私達はもしあいつらがこの宮殿に来た時返り討ちにするために待機してるわけじゃん?」

キモオタ「そうでござるなwww故にこうして外の様子をうかがっているわけでござるしなwww我々はwww」ドゥフ

ティンカーベル「とはいってもさ…なんの動きも無いし、正直やる事が無いって言うのはわかるんだよ。だとしても今が緊急時で非常時だってことには変わりないんだよ、それなのに…」チラッ


カイ「……」ペラペラ


ティンカーベル「カイ、こんな時だっていうのにのんきに読書なんか始めちゃったよ!?いいのあれ!?ちょっと空気読めてなくない!?」

キモオタ「ドゥフフwww確かにwwwとはいえ我々も基本的には空気読めてないでござるから人の事をとやかく言えた立場ではないですぞwww」コポォ

ティンカーベル「女王の事信頼してんのかもしれないけどさ…さすがに酷くない!?女王が戦う理由の一つには『カイを守るため』っていうのもあるはずだよ?それなのに薄情すぎるよカイは!」プンスコ

キモオタ「落ち着くでござるよティンカーベル殿wwwとはいえ我々も時間を持て余しているというのも事実www」

キモオタ「ここはひとつ退屈しのぎにひとつカマを掛けてみて、カイ殿が本当に薄情かどうか試してみるというのはどうですかなwww」コポォ

ティンカーベル「…?」

キモオタ「まぁ見ているでござるよwww」コポォ
154: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:29:02 ID:zru 

キモオタ「ドゥフフwwwカイ殿www今、ちょっといいですかなwww」

カイ「あぁ…?何の用事だ?見ての通り俺は読書で忙しいんだ、くだらない用事なら出直せ」

キモオタ「いやいやwwwお時間は取らせませんぞwww少し告げ口をしようかと思いましてなwww」コポォ

キモオタ「実はでござるな、先ほど『カイはこの緊急時に読書とかしてて全然空気読めてない』とかティンカーベル殿が陰口叩いていたでござるwww」コポォ

カイ「ほぉ…」チラッ

ティンカーベル「ちょ…!なんでチクるのさバカ!最悪だよもぉー!」ペシペシ

キモオタ「ドゥフフwww口止めされていたわけではないでござるしwww」

ティンカーベル「んもぉー!一番空気読めてないのはキモオタだよ!まったく!」

カイ「好きに言え、俺は気になんかしねぇさ。だが俺の時間をどう使おうと俺の勝手だ、お前らに口出しされる筋合いはないぜ」

カイ「そもそも外の様子はお前らが見ていただろ?それにあいつ…女王は強力な魔力を持ってる、アリスなんざに負けねぇよ。心配なんざするだけ時間の無駄だ」

キモオタ「ほうwwwカイ殿は女王殿の事を一切心配していないとwww」

カイ「当たり前だろうが、あいつは魔力に関しちゃ化物だ。そもそもなんで俺があいつの心配なんざしてやらなきゃなんねぇんだ」

キモオタ「ほうwwwとか言いながらお主が読んでいる本、サカサマでござるよwww」コポォ

カイ「なっ…!?そんなはずが……!?」バッ

ハッ

カイ「逆さになんかなってねぇじゃねぇか…!騙しやがったな…!」
155: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:29:42 ID:zru 
キモオタ「ドゥフフwwwおかしいでござるなぁwww先ほどまで読んでいた本が逆でないことなどわかって当たり前のハズでござるがwww」

キモオタ「それなのに慌てたという事は…wwwどうやらカイ殿、女王の事が心配で本の内容が頭に入っていなかったようでござるなぁwww」コポォ

カイ「……っ」クッ

ティンカーベル「なるほどねー!そっかそっか!なんだかんだ言ってカイも女王の事が心配なんだね!うんうん、わかるよ!女王がいくら強くても心配なものは心配だよね!」

キモオタ「おそらく気を紛らわせるために読書を始めたものの…女王殿が気になってそれどころではなかったのでござろうなwwwドゥフフwww……って、あれ?カイ殿何故こっちに来るのでごz」

ゲシッ ゴシャァ

キモオタ「おうふっ!ぬぅぅ…戦闘前に無駄なダメージを負ってしまったでござる…」ヨロヨロ

ティンカーベル「うわぁ…てっきりインドア派かと思ってたけどすごいキレのある蹴りが炸裂したよ…」

カイ「暇人が。こんなくだらないことしている暇があったら外見張ってろ、豚が」チッ

ティンカーベル「う、うわぁ…なんかメッチャ怒ってるよ?からかいすぎたかな?」

キモオタ「大丈夫でござるよwwwカイ殿はツンデレ気質がありますからなwww本音を突かれると気恥かしくて怒ってしまうのでござるよwww」

カイ「……」ツカツカ

キモオタ「ちょ、まっ…わ、吾輩が悪かったでござるから無言で近寄るのはやめていただきt…ぬぅぅっ!」ゲシッ
156: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:34:06 ID:zru 
・・・

キモオタ「さ、流石はヘンゼル殿グレーテル殿の兄貴分…まったく容赦が無いですぞ…」ヤムチャ

ティンカーベル「今のキモオタ見て思い出したけどさ、イベリコ豚は生でも食べられるから豚肉のタタキに出来るんだって」

キモオタ「なんで披露したのでござるかその豚知識www」コポォ

カイ「ったく…無駄な体力使わせるんじゃねぇよ」

キモオタ「ドゥフフwww申し訳ないwww」コポォ

ティンカーベル「でも私はカイも少しは素直になればいいのにって思うけどね!心配なら心配だって言えばいいのにー…意地っ張りだなー」

カイ「まだ言うかお前。まったく懲りない奴等だな、黙って見張ってろよ……俺はもう知らねぇ好きにしろ」ハァ…

ティンカーベル「……」ジーッ

カイ「なんだよ、何か言いたい事があるならはっきり言えよティンカーベル」

ティンカーベル「いや、ちょっと思ったんだけどね。カイってさ…結構暴言吐くし、暴力振るうし、目つき悪いし、柄も悪いし、ぶっちゃけチンピラ予備軍なわけじゃん?でも実はいい子だよね?」

キモオタ「ブッフォwww前半ディスり過ぎでござろうwww」

カイ「俺が良い子?ハッ、面白い冗談だなティンカーベル」

カイ「良い子ってのはな、千代みたいな真面目で品行方正な奴の事だ。そもそもだ、俺には性格を捻じ曲げちまう『悪魔の鏡の破片』が突き刺さってんだぜ?忘れちまったか?」

ティンカーベル「それそれ、私が気になってるのはそれだよ!」
157: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:36:43 ID:zru 

カイ「あぁ?何が言いてぇんだお前?」

キモオタ「我輩にもさっぱりですなwww」コポォ

ティンカーベル「悪魔の鏡は突き刺さった人の心を捻じ曲げる。だから元々は優しくて良い子だったカイはすんごい悪い子になっちゃった……ってのがこのおとぎ話の始まりでしょ?」

カイ「まぁそうなるな。実際俺は親友だったゲルダに暴言を吐くわ冷たく当たるわで良い子なんて言葉とはかけ離れたことしてたじゃねぇか。このおとぎ話読んだなら知ってんだろ?」

カイ「挙句家族も友人もほったらかして知識を求めてここに居座ってる。ゲルダが厳しい旅を強いられてるのなんざ気にも留めずにな……これのどこが良い子だティンカーベル?」

キモオタ「ははぁんwww吾輩にはなんとなく言いたい事がわかりますぞwww」

ティンカーベル「カイは悪魔の鏡のせいで悪い子になったっていうのにさ、なんで律儀にこの宮殿を守ろうとしたり私達にご飯作ってくれたのかなーって気になってさ」

カイ「……あぁ、そういうことか」

ティンカーベル「だってさ、魔法具の影響で悪い子になっちゃったんなら…女王の事なんか気にも留めないだろうし私達なんかほったらかすはずだよ?」

キモオタ「そういえば以前、ヘンゼル殿が帰って来た時も気を使っておりましたしなwww」

ティンカーベル「でしょー?今だってなんだかんだ話し相手してくれてるし、魔法具で悪い子になっちゃったってワリにはさ、カイはちょいちょい優しい所あるとおもうんだよねー」

キモオタ「確かにそう言われるとそうでござるなwww現実世界のアレな方々と比較すればだいぶマトモでござるしwww」
158: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:39:11 ID:zru 
カイ「なんなんだよお前は…俺がマトモな事しちゃ何か問題あんのかよ?」

ティンカーベル「んー…そういう事じゃないけどさ、ちょっと気になってさ!気になったことは空気読まずに聞いちゃうのが私達のスタンスだし!」

キモオタ「ちょwwwそんな聞いたことないスタンスに我輩をセットにしないでいただきたいwww」

カイ「暇なのはわかるけどよ、んなどうでもいいこと気にしてんじゃねぇよ……」

ティンカーベル「まぁまぁ、ちょっとした話題だと思って付き合ってよ。ぶっちゃけ暇だし」ヘラヘラ

カイ「ったく、緊急時に空気が読めてねぇのはどっちだって話だよ…」

カイ「まぁ…考えられる可能性としちゃ、俺の中の魔法の鏡の破片が少し溶けちまってるのかもな。俺がこの宮殿に来た当初はもっと尖ってた気がするしよ」

キモオタ「今でも大概尖ってる気がしますがなwww」ヒソヒソ

カイ「聞こえてんぞ。とにかく…悪魔の鏡の破片はな、溶けることで消滅すんだよ。【雪の女王】の結末は宮殿にたどり着いたゲルダの涙で俺の中の破片が溶かされるわけだしな」

ティンカーベル「再会を喜ぶ涙で魔法が溶けるとかなかなかロマンチックな結末だよね!私そういうの大好き、王子様のキスで目覚めるとか…いいよね?」

キモオタ「それをメンズの我々に聞かれてもwwwとはいえゲルダ殿はまだ宮殿にたどりつけてないというのに…鏡の破片が溶ける要素なんかあるでござるか?」

カイ「そうだな……強いて言うなら、ヘンゼルとグレーテル…千代がこの宮殿で暮らすようになったからかもな」

カイ「女王と二人の時はよ、まぁ女王こそ今とそんなに変わりはしなかったが…静かに落ち着いて読書する時間なんざいくらでもとれたもんだ」

カイ「だが、あいつら三人が来てからは毎日騒がしくてよぉ。やれグリム童話教えろだ、魔法書探してだ…女王も子供好きだからいっしょに騒ぐしで、俺の読書時間はがくんと減っちまった」

カイ「でもまぁ…今思えばあいつらとの生活の中で俺の中の悪魔の鏡の破片は…少しずつ溶けだしちまったのかもしれねぇな」
159: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:41:01 ID:zru 

キモオタ「……ナンカカイドノガ」

ティンカーベル「……ポエミーナコトイッテル」

カイ「……。おい、今のは忘れろ。柄にもない事口走っちまった」フイッ

ティンカーベル「もーっ!照れなくったっていいよー!カイってば言動はチンピラだけど家族想いなんだね!うんうん!ちょっと素直に慣れたじゃーん!」ペチペチ

カイ「おい、やめろ。からかわれるのは一番嫌いなんだ。俺は家族想いなんかじゃn」

キモオタ「ふぅーっ!wwwさっきのはなかなか名言でしたぞwwwカイ殿wwwお主なかなかポエミーといいますか詩的でロマンチストですなぁwwwドゥフフf」

ヒュッ ゴシャア

キモオタ「ぶひいいいいぃぃっ!?」ドシャー

カイ「次、口走ったら養豚所にぶち込む」

キモオタ「ぶふぉ…カイ殿にはジョークが通じませんなwwwこの調子ではいくらライフがあっても足りませんぞwww」

ティンカーベル「さっきのでそんなのわかってるんだからもうからかわなきゃいいのに……」

カイ「……おい、キモオタ!ティンカーベル!」バッ

キモオタ「ぶひっ!?我輩まだ何も言ってないでござるよ!?」ビクゥ

カイ「そうじゃねぇよ!窓の外…!見てみろ!どうやら馬鹿話してる時間は終わりみてぇだぜ…」
160: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:44:42 ID:zru 

キモオタ「窓の外…!敵の襲撃ですかな!?」バッ

カイ「そうじゃねぇ。あっち見てみろ、東の空だ。少しばかり明るいの、見えるな?」

ティンカーベル「えっ…?ちょっと待って…!これ…おかしくない!?」

パアァァァァ!!

キモオタ「東の空がほんのり色づいていると思いきや…あっという間に太陽が天高く昇ったでござる…!明らかに異常な速度でござるよ…!」

ティンカーベル「おかしいじゃん!だってまだ太陽が昇るには早い時間だよ!?それなのにこんなにサンサンと照ってるって…おかしくない!?」

カイ「あぁ、おかしいんだよ…!そもそもここは年中雪と氷に包まれた極寒の地、あんなサンサンと輝く太陽なんざどう考えても異常だ…!」

キモオタ「ま、まさか…まさかとは思うでござるがあの太陽…アリス殿が意図的に出現させたものでは!?」

ティンカーベル「そんなことありえないよ!だって…いくらなんでも太陽を意のままに操る魔法具なんかないでしょ!?」

カイ「……キモオタ、お前確かそのサイリウムとかいう魔法具で高速移動ができるんだったな?俺とティンカーベルを担いで女王のところへ走れ」スッ

キモオタ「それは構わぬでござるが…。しかし、それでは……!」

ティンカーベル「そんなことしたらこの宮殿がガラ空きだよ!?この宮殿を守るって女王と約束したのに…破れないよ!」

カイ「何を悠長なこといってやがる…!雪も氷も太陽の前では無力、そんなもん当然だろうが!もう宮殿を守るとか守らねぇとかの話じゃねぇんだこれは…!いくらこの場所を守り切っても女王が死んじまったら無意味だってんだ!」

ティンカーベル「そ、そうだけど…」

カイ「そうときまれば急ぐぞキモオタ!女王を倒されでもすりゃあ…アリス共に勢いをつけさせちまう事になる!それは阻止しなきゃならねぇ」

カイ「それに俺は宮殿に住んでた連中のなかで唯一この世界に居る。何もできずに女王を倒されちまったりしたら弟妹に合わせる顔がねぇんだよ…!」バッ
161: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:47:24 ID:zru 
同じころ
ゲルダが襲われた地点から最も近い村

ザワザワ ガヤガヤ

「な、なんじゃあ…!まだ陽が昇るには早い時間だってのにどうしてこんなに太陽が照っておるんじゃあ!?」
「こんな現象…村に伝わる古い文献にも載っていない!異常気象というやつか…!?」
「天変地異の前触れか…どこぞの魔女の仕業か…。ん…?あれは…一匹のトナカイ?」

パカラッパカラッパカラッ

ゲルダ「……」ガタガタブルブル

トナカイ「雪の女王から逃げおおせたと思えば今度は異常気象…一体何が?しかしご安心を、村に到着しましたよゲルダさん!」パカラパカラッ

村人1「おぉい、そこのトナカイぃ!そんなに急いでどうかしたのかぁ!」

トナカイ「おぉ、この村の方ですね!突然で申し訳ありませんが私のご主人に暖を貸しては頂けませんか!?」

村人2「なんと…!こんな若い娘が一人であの雪原を越えてきたのか…!」

村人3「酷い凍傷だわね…もう大丈夫だお譲ちゃん、あたしに任せな。トナカイさんや、この子はうちで面倒みよう」

トナカイ「おぉ…!ありがとうございます!なんとお礼を言えばいいのか!」

村人1「ところであんたら、あの雪原を越えてきたんだろう?なにか変わった事は無かったのか?この異常な太陽に関係する情報…何か知らないか…?」

・・・

白鳥「よし…ゲルダさんは無事に村の人たちに保護された。これで一安心だ」

親指姫「……」
162: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:50:40 ID:zru 
白鳥「あの太陽のおかげ…という言い方はアレだけど、そのせいで村人たちは警戒ムードだ。トナカイさんが事実を話せばゲルダの事もちゃんと守ってくれるだろうよ」

親指姫「白鳥」

白鳥「…なんだい?」

親指姫「お前は…!あの太陽を見てなんとも思わないのか!?この極寒の地に真夏のような日差しを向けているあの太陽!」

親指姫「あれは明らかにアリスの仕業だ!どうやってこんな無茶な芸当を実現させたかは知らんが…氷雪が太陽に弱いなど周知の理!女王の身が危険だ!」

白鳥「……だから今すぐに君を乗せて女王様の元へ戻れっていうのかい?」

親指姫「言われなくてもわかるだろう!アリスはおそらく炎や熱を扱って女王様を攻撃するだろうとは思っていたが……完全に予想外の規模だ!早急に援護しなければ!」

白鳥「断るよ。僕は女王様のところへは向かわない」

親指姫「貴様…!こんな時に冗談はよせ!早くしなければ手遅れに…」

白鳥「冗談なんかじゃないよ、親指姫。女王様を窮地に立たせられるほどの強敵じゃ僕らがいってもどうにもならないし、僕たちがいってどうにかなる程度の敵ならハナから女王一人で余裕だよ」

白鳥「僕たちが戻って行ってもかえって邪魔になるくらいだ」

親指姫「そんな事を言っている場合か!たとえ邪魔になったとしても私は女王様をお守りしたいのだ!」

白鳥「…忘れたのかい?女王様が僕達に与えた命令はゲルダさんの保護だ。今はそれに注力すべきだよ」
163: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:52:54 ID:zru 
親指姫「馬鹿な…!融通が利かないのかお前は!?こんな真夏のような日差しを浴びさせられていては女王様は……苦しんでおられるはず!」

親指姫「それを!女王様のピンチを!貴様は見捨てるというのか!?」

白鳥「じゃあお前は女王様の命令を無視しろっていうのかい?」

親指姫「そ、それはだな…!臨機応変と言うだろう!」

白鳥「僕たちがこの場を去って、それでゲルダさんが殺されでもすればこの世界は消滅する」

白鳥「敵が他の目的がこの世界の消滅ではない以上、その可能性は低い…でもゼロではない。だからこそ女王様は僕たちを同行させた、その意味はわかるだろう?」

親指姫「わかるさ…女王様にとってこの世界は、ご自分の命よりも大切な存在だ」

親指姫「だが…!ならば私に女王様の危機を見過ごせというのか!?そんなこと…騎士たる私にはできない!」

白鳥「気持ちはわかるけど、僕たちが今すべきことは女王様の護衛じゃなくゲルダさんの護衛だよ」

白鳥「女王様は僕とお前を信用して、この任務を任せてくれたんだ。心配する気持ちはわかるけど、今はこの任務に集中しよう」

親指姫「……女王様に何かあった時はお前に八つ当たりするからな、それでもいいんだな」

白鳥「それでお前がいう事を聞いてくれるなら安いもんだよ」

親指姫「……わかった、女王様の命令を最優先する」

白鳥「そんなに心配しなくてもい大丈夫さ、僕たちの女王様は誰より気高く優しい。少々の不利なんかに屈したりはしないよ」
164: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 01:56:11 ID:zru 
雪の女王とアリスが対峙する雪原

パァァァァッ!!

雪の女王「太陽…と来たか」

雪の女王「アリス、君は随分と思い切った手を使ってくるんだな。私が知る限り太陽を操るような魔法具は知らないが…どんな手を使った?」

アリス「知りたいかい?教えてあげてもいい、だが…こんな氷の檻の中じゃ話をする気にはなれないな」

雪の女王「私がそんなことで君を解放するとでも思うのか?」

アリス「しないだろうね、ボクだってしない。言ってみただけさ、そもそも……自力で出ようと思えば出られる、今ならね。さぁトランプ兵、手伝え」スチャッ

トランプ兵達「「「Yes my l……!?」」」ベチャッ

雪の女王(氷の檻を囲むトランプ兵達に黒い液体を…。この独特な匂い、コールタール…!)

アリス「気付いたかい?真夏の日差し+魔法の紙製兵士+魔法のコールタープ+魔法の火打石の炎+魔法の靴での効果底上げ…これだけの魔力を上乗せすれば、強固な檻だって溶かせる」カチカチッ

ボボゥ!!メラメラメラ!!!

トランプ兵「GYAAAAAA…!!」ブズブズブズ…

雪の女王「なにをやっているんだ…!そんな炎に包まれては檻の中に居る君だって一溜りもない…!」

ザッ

アリス「敵であるボクの事を心配するなんて呆れる優しさだね、女王。まぁ安心しなよ」

アリス「『火鼠の皮衣』…知ってるだろう?ボクには火炎も炎熱も通用しないのさ」クスクス
165: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/12(月) 02:00:48 ID:zru 
リス「おっと…檻から出たんだし、約束通り教えてあげるよ。この太陽をどうやって使役しているのかをね」

雪の女王「…あぁ、教えてもらおうかな。折角だから」

アリス「僕たちの頭上に輝いている彼は【北風と太陽】の住人でね、脅したのさ。僕に協力しなければお前の世界を消滅させるとね」

雪の女王「…たしかその世界は随分前に完結していたはずだが?結末まで物語が展開したもおとぎ話を消すことなど、現実世界において忘れられるか…あるいは作者の手によって消されるかでなければ不可能だ」

アリス「だからそうしたのさ、作者に頼んで太陽を脅した。それだけの話さ」

雪の女王「…信じられないな【北風と太陽】の作者はもう何千年も前に死んでいる。存在しているはずが無い」

アリス「信じる信じないはあんたに任せるけどさ、一つだけはっきりしてる事があるんじゃない?」

アリス「……汗、かくんだね?女王サマでもさ」クスクス

雪の女王「……」

アリス「さぁさぁ、せっかくだから本気を出して見せてよ女王?ボクを改心させようなんて考えがクソ甘い事、もうわかっただろう?諦めて僕を殺すつもりで足掻きなよ」

雪の女王「おかしなことを言うんだな、アリス」

アリス「…何が?」

雪の女王「私は言ったはずだ、君を改心させると」

雪の女王「それに、子供相手に本気を出す大人なんか…見苦しいだけだろう?たとえ苦手な熱気にあてられようと、私は君相手に力ずくで頭を押さえつけるような真似はしない。」

アリス「そうかい、せいぜい強がって見苦しい死にざまをさらして見せなよ」バッ

176: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/18(日) 22:34:18 ID:DiB 
サンタさんへの手紙

ラプンツェル「あっ、いたいた!おーい、ヘンゼルー!ヘンゼルはプレゼント何をお願いするのー?」ニコニコ

ヘンゼル「なんなの突然。プレゼントって、なんの話?」

ラプンツェル「この時期にプレゼントって言ったらクリスマスに決まってるよー!サンタさんにお願いするプレゼントの話!」

ヘンゼル「君の世界にもあるんだねその風習。というか君、サンタクロースにプレゼント貰うような歳じゃないでしょ…」

ラプンツェル「えー?でも去年もサンタさん来たよー?ちゃんと良い子にしててサンタさんに欲しいものをお手紙でお願いしたら来てくれるってママが言ってた!」

ヘンゼル「まぁゴーテルさんはそう言うでしょ…君が欲しいモノ知りたいだろうし」

ラプンツェル「でね、今からサンタさんにお手紙書くんだけどね。どーせなら他の子供たちが欲しいモノも一緒に伝えておこうと思って!ナイスアイディアでしょ!だからヘンゼルが欲しいモノ教えて!」フンス

ヘンゼル「あのさ、ラプンツェル。夢を壊すようで悪いけどサンタクロースなんて……」

グレーテル「……サンタさんのプレゼント、楽しみだねお兄ちゃん」ヒョコッ

ヘンゼル「本当だね。グレーテルは良い子にしてたから絶対プレゼント貰えるよ」

グレーテル「そうだといいなぁ…。私はね、スニッカーズとブラックサンダーを一ダースずつお願いするの……あとキットカット」

ラプンツェル「チョコ美味しいよね!私がお願いするプレゼントはねー…新しい手鏡とシュシュ!着けてるだけで魔力が強くなる感じの奴くださいって書いといた!」

ヘンゼル「無茶ぶりでしょそんなの。いや、君のサンタさんならできそうだけど…」

ラプンツェル「欲しいモノはなんでもいいから書いたらいいんだよー。あとねー、ドロシーと赤ずきんにも聞いて来たんだけどねー」

ラプンツェル「ドロシーは『強い心』赤ずきんは『マスケットの命中精度が上昇する魔法具。あるいは連射性能を向上させる魔法具』だって!」

ヘンゼル「ドロシーは物ですらないし赤ずきんに至っては誰に手紙が届くか想定してるじゃないかそれ」

ラプンツェル「まーまー、他の子はいいからさ!ヘンゼルが欲しいモノを教えてよ、一緒に書いとくから!」ニコニコ

ヘンゼル「それじゃあ……『グレーテルをありとあらゆる危険から守る魔法具』ってゴーt…サンタさんに伝えておいてくれる?」

ラプンツェル「りょーかい!ちゃんとサンタさんに伝えとく!」ニコニコ



後日、魔法使いの書庫で倒れているゴーテルが発見された

184: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/20(火) 01:24:43 ID:7rp 

雪の女王「そんな風に私を煽って何が目的だい?」

アリス「別に、目的なんか無いさ。ただ…あんたはボクを攻撃しないんじゃなくて『攻撃できない』んじゃないの?今となってはさ」

アリス「あんたがどんなに強がろうと余裕気な表情を見せようと…それが虚勢だってこと、ボクは知ってるんだよ。あんたはもう限界のハズだ」

アリス「改心させる、なんて言ってるけどさ…あんたにはもうボクを改心させるどころか捕まえることも殺すことだってできない。違う?」

雪の女王「…確かに強い日差しに加えてこの熱気、私にとっては厳しい状況だという事は認めるよ」

雪の女王「でもそれは、君を改心させる事を諦める理由にはならない」

パキパキ…ザンザンザンッ!

アリス「…また氷の檻か。ボクに二度も同じ手は通用しないよ」ヒラリッ

雪の女王「ならば通用するまで打ち続けるまでだ。君を捕えるまで何度でも」ババッ パキパキパキ…ザンザンザンッ

アリス「…鬱陶しいな、無駄だっていうのが理解できないのか?目に見えて魔法の効力が落ちてるじゃないか」ヒラッ

アリス「まぁいいさ…何度でも何度でもボクを捕えようとするってあんたが言うなら、ボクはその前にあんたを殺すまでだ」カチカチッ

メラメラッ ボボゥッ!

アリス「あんたが何を口走ろうと喚こうと、ボクの方が有利だって事に変わりは無いんだ。さぁ…消し墨になる覚悟は出来てるな?雪の女王」

雪の女王「あいにくだがそんな覚悟していないな、私は雪の女王…多少力を奪われていようと子供一人捕まえるなど容易い」
185: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/20(火) 01:28:10 ID:7rp 

アリス「その虚勢がいつまで続くか見物だよ。それに容易いって言うんならさ…さっさと捕まえて見せなよ。まぁ無理だろうけど…さっ!」カチカチッ

ボボゥッ!!

雪の女王「実に厄介だな、その魔法具は…だが防げないわけじゃない」パキパキパキ…

アリス「そんな氷の盾が今更通用するわけないだろう。火打ち石よ、靴の魔力を喰ってその力を高めろ!」カツンカツンッ

ゴゴォ!メラメラッ!!

雪の女王「やはり分が悪いか。だが、防ぎきれないというなら、こうだ」ババッ

パキパキパキ…ザンザンッ

アリス「懲りずにあの氷の檻か…でも無駄だ、通用しないって言ったのに諦めが悪すぎるんじゃないか?雪の女王」カチカチ ボボゥッ!!

雪の女王「なんとでも言うといい……諦めるわけがないだろう」

雪の女王「私が、私がここで君の改心を諦めたら…君はどうなる?」

アリス「どうなるって…決まってる、ボクは仲間達と共に願いを叶える事が出来るんだ。そして僕たちはようやく幸福になれる、ただそれだけさ」

雪の女王「いいや…幸福になんかなれない。そんな風に無理やりかなえた夢は…長くは続かない。どこかで綻びが生まれる」

アリス「ボクはそうは思わないな、犠牲が出ようがなんだろうが夢を叶える事が出来たらボク達は幸せ、僕達の勝ちだ。手段なんかどうだっていいのさ」

雪の女王「いいや、違う。そんな考えは間違っている」

雪の女王「誰かを犠牲にしてなりふり構わず手に入れた夢なんか、雪の結晶よりも脆いものだ。結局は幸せになんかなれない」
186: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/20(火) 01:30:18 ID:7rp 

アリス「雪の女王…あんたは今更そんな言葉でボクを止められるとでも思っているのか?」

雪の女王「止められるとは思っていないさ、でも私の言葉を聞いてほしいとは思う」

雪の女王「君が私を殺し、キモオタと仲間達を退けて…望みをかなえたと仮定しよう。君や仲間達の心は満たされる、それは確かに幸せかもしれない」

雪の女王「だが…君が重ねてきた数々の罪は消えることなく君ののしかかる。それはいつの日か、必ず君を苦しめる」

アリス「バカバカしい、ボクが将来的に後悔するとでも?」

雪の女王「するさ。それになりふり構わず手に入れたモノは、他人のなりふり構わぬ行動で容易く奪われたり壊される」

雪の女王「結局、最後に残るのは後悔と苦しみだけだ」

アリス「……」

雪の女王「だから…わたしはあきらめない、私がここで諦めれば君はいつか必ず苦しむ日が来る。私が諦めるという事は、君を見捨てることを意味する」

雪の女王「子供は過ちを犯すものだ、それは仕方ない事ともいえる。だからこそ周囲の大人がその過ちを正す必要があるんだ、その子の将来の為に」

雪の女王「全ての大人は子供を幸せに導く義務がある。過ちを犯した子供を憎むのではなく、正しい道へ導く事、それが大切だと私は考える」

雪の女王「そして…アリスの過ちを正し幸せへと導けるのは、今一番近くに居る私だ。だから私は…諦めない」

雪の女王「全ての子供を幸せにすると…私は、誓ったからな。だから私は…君を見捨てない」
187: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/20(火) 01:35:46 ID:7rp 
アリス「あんたは実に優しい魔女なんだな、今の言葉を聞いて改めてそう思う」

アリス「でもね女王、ボクに言わせれば…あんたは甘いよ、甘すぎる」

雪の女王「確かに君の行動を考えれば救いの手を差し出す私の行動は甘く見えるかもしれない。でも罪を憎んで人を憎まずだよ、アリス」

アリス「甘い、甘いな。あんたの主張は道理が通ってるように聞こえるけどさ、結局それは『幸せな世界』での主張だ」

アリス「ヘンゼルとグレーテル、千代やカイと平和な生活を送っているあんただからこそあんなことが言えるんだ、平和ボケした奴の幻想だよ」

雪の女王「そんなことはない、私は…」

アリス「本当につらい日々を送ってきた奴に、そんな綺麗事は通用しないんだよ女王」

アリス「辛くて辛くて、願いを叶えることに必死の奴をあんたは知らない。結局、幸せな生活を送ってきたあんたが何を言おうと…綺麗事でしかない」

雪の女王「アリス…!」

アリス「もういいだろう、あんたの主張は十分聞いてやった。もう、これ以上は本当に話す事が無い」カチカチッ

ゴゴゴゴゴッ

雪の女王「……っ!なんて…火力だ!」

アリス「流石にこれは防げないだろう、正真正銘ボクの全力だ」ビュッ

雪の女王「クッ、出来る限りの高出力で氷柱を出して防ぐしか……!」ババッ

シーン……

雪の女王「……!」

雪の女王(氷結魔法が…発動しない……!?)

アリス「体力と魔力が奪われていくこの状況で長々と講釈をたれるからだよ。随分と手間取ってしまったが……さよならだ、雪の女王」

ドゴシャアアァァァ

193: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/21(水) 01:26:34 ID:rPH 
ドゴシャアアァァ

雪の女王「……っ!……ぐあぁっ!」ズシャッ

メラメラメラ…!!

アリス「……ボクが言うのもなんだが、この【カチカチ山】の火打石は恐ろしい魔法具だ」

アリス「火炎を生み出して操るというシンプルな魔法具だが、数分前まで雪原だったこの場所をすっかり火の海に変えてしまった」

アリス「いくら魔力を喰わせて強化したとはいえ…凄まじい火力だ。ボクが持つ数多くの魔法具の中でも群を抜くレベルだよ、火力に関してはね」

ザッ

アリス「だからあんたを確実に殺せたと思っていたんだけどね、まだ息があるとは驚きだ。流石は雪の女王、その名は伊達じゃないってことか」

雪の女王「アリス……っ」ゼェゼェ

アリス「さぁ、どうする?無様な事にあんたはもう虫の息…そのうえ熱気にあてられて氷結魔法を使う事も叶わない」

アリス「今のあんたは『雪の女王』どころか魔女とも呼べない、ただの女だ。それでもボクを改心させるだなんてのたまうか?」

雪の女王「……決まっているじゃあないか、そんな事は」ゼェゼェ

アリス「そうだよね、流石のあんたも不死じゃない、命は大事だ。ボクを改心させるなんて幻想、当然諦めt」

雪の女王「……言ったはずだ。私は諦めないとな」ゼェゼェ

アリス「……正気?強がるのはいいけどさ、死ぬよ?」ギロッ

雪の女王「死ぬのは…困るな。私が死ねば悲しむ人間が少なくとも四人は居る、それも一番悲しませたくない子供たちがな。彼らが悲しむ…それは嫌だな、私は」ゼェゼェ

雪の女王「だがなアリス…私にとっては君を見捨てるという事も同じくらいに嫌な事なんだよ。確かに君は許されざる罪を重ねてきたが…」

雪の女王「だからと言って見捨てては『全て』の子供たちが幸せでいられる世界を、私は…私達は作る事が出来ない」
194: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/21(水) 01:30:31 ID:rPH 
アリス「その言葉は遺言として受け取っておくよ、雪の女王」カチャッ

雪の女王「……」ゼェゼェ

アリス「あんたを殺せばボクを止められる者はもういない、夢を叶える上での障害は何一つなくなるんだ。あんたが死ねば、あんたが望んだ改心とやらも…絶対に不可能だ」

雪の女王「……それはどうかな。君を改心させられるかもしれない人間を…君を救う事が出来るかもしれない人間を一人、私は知っている」

アリス「……」

雪の女王「少々頼りなさはあるが…彼は誰よりも優しい心を持っている。きっと君の事も…倒すのではなく改心させたいと思っているはずだ。彼ならば――」

アリス「黙れ。それ以上口を開く事は許さない」

アリス「私は決して考えを変えない、想いを曲げない!誰かに何か言われた程度で…ルイスや仲間達との絆を捨てたりはしない!」

アリス「最後まで鬱陶しい女だったが…今度こそ終わりだ。火炎に抱かれて死ね…!雪の女王…!!」カチカチッ

メラメラッ ボボウッ!!

雪の女王「……っ」クッ

雪の女王(……ヘンゼル、グレーテル、カイ、千代…すまない、私はどうやら…ここまでのようだ)

雪の女王(アナスン…私達の願い、叶える事が出来なかった。…すまない)

ゴゴウッ メラメラメラーッ





「ぶひいいいいいいぃぃぃぃぃっ!!雪の女王殿おおおぉぉぉ!!助太刀いたしますぞおおおぉぉぉぉ!!!」
195: ↓◆oBwZbn5S8kKC:16/12/21(水) 01:34:46 ID:rPH 

雪の女王「この声は…キモオタか!」

アリス「……」ギロッ

カイ「チッ…!あいつ何してやがんだ…ボロボロじゃねぇかクソッ…おい!もっとスピード出せ豚ァ!」

ティンカーベル「落ち着いてよカイ!今はとにかく消火!早く火消さないと女王がヤバイよ!」

キモオタ「とはいえあのレベルの炎を消せるほどの水は無いでござる…!ならばここは…かき消すしか方法は無いでござろう!」フリフリ バババッ

おはなしサイリウム『コード認識完了『孫悟空』 武器モード『如意棒』への形状変化を実行』

キモオタ「ぶひいいぃ!悟空殿の如意棒で…燃え盛る火炎ごと吹き飛ばして見せますぞぉぉ!」

ビュンビュンビュン ブオオォッ

ティンカーベル「やった!とりあえずあの炎は打ち消せたよ!」

キモオタ「ぶっひぃ~……間一髪でござった…!」

アリス「もう一歩ってところで出てくるなんてね。タイミングが良すぎて腹が立つよ、キモオタ」

キモオタ「…久しいでござるな、アリス殿」

ティンカーベル「女王の大切なこの世界をこんなに滅茶苦茶にして…私絶対に許さないからね!」

アリス「許さないならどうするっていうんだ?ボクとやる気だって言うならどこからでもかかってきなよ」

アリス「ボクにとっちゃその方が好都合だ、お前たちもそろそろ始末してしまいたいしね」

213: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/02(月) 00:50:58 ID:7di 
桃太郎「赤鬼よ、頼まれていた臼と杵はこの辺りに置けば良いか?」ゴトッ

赤鬼「おう、ごくろうさん。そこで大丈夫だ。そんじゃあ、もち米も蒸しあがったしそろそろ始めるか!」ホカホカ

桃太郎「うむ。時に赤鬼、出来あがったモチを拙者の家来と両親にもいくつか分けて欲しいのだが構わぬか?」

赤鬼「もちろんいいぞ!西洋のおとぎ話の連中にも配ろうと思って多めに蒸してるからな。モチなんざ珍しいだろうから喜んでくれるだろうな!」

赤ずきん「で……一体、何が始まるのかしら?」

赤鬼「赤ずきんは初めてか。こいつはもちつきと言ってな、今からあの臼と杵でもち米をついてモチを作ろうってわけだ」

桃太郎「もちつきは我々の故郷である日ノ本では正月の風物詩、今回せっかくだから一緒に作ろうと赤鬼が声を掛けてくれたのだ」

赤ずきん「そうなのね、作るところを見るのは初めてだけれどおモチは【わらしべ長者】の世界で食べた事があるわ、独特の触感がして私は好きよ」

桃太郎「ならば今日は楽しみにしておく事だ、つきたてのモチというのは格別に美味だからな」

赤鬼「そうだな!今回はきなこに砂糖醤油、海苔やあんこも用意したから色々と試してみると良いぞ!」

赤ずきん「あら、それは楽しみね」ウフフ

赤鬼「そんじゃあ早速始めるとするか!まずはオイラがモチをついていくから桃太郎は合いの手をいれてモチをこねてくれ。赤ずきんは完成したモチを小さくちぎって丸めてくれるか?」

桃太郎「うむ、任せよ」

赤ずきん「えぇ、それくらいの手伝いなら私にもできそうね」

赤鬼「よぉし、そんじゃあいくぞぉー!」



鬼神『……』ゴゴゴゴゴ
214: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/02(月) 00:54:10 ID:7di 
・・・

赤鬼「よいしょー!」ペターン

桃太郎「うむっ」コネッ

赤鬼「よいしょー!」ペターン

桃太郎「うむっ。……そろそろいいのではないか?」コネッ

赤鬼「おう、こんなもんだな!それじゃあこれをちぎって丸めて…そっちに並べてくれるか。熱いから気をつけてな」ドサッ

赤ずきん「えぇ、任せなさい。それにしても確かにつきたてのおモチは柔らかくてもちもちでおいしそうね」マルメマルメ

赤鬼「そうだろうそうだろう!あらかたつけたら休憩がてらオイラ達も食べるとしよう。さぁ、次のモチをつこうか桃太郎」

桃太郎「うむ、既に次のもち米は準備万端だ。いつでも始められるぞ」

赤鬼「よぉし、そんじゃあ早速第二弾をつき始めて…」

鬼神『ヌルい、ヌルいわ青二才が…!口を出すつもりはなかったが、誇り高き種族である鬼でありながらこのような軟弱な有様…無様過ぎて見ておれん』

赤鬼「なんだよいきなり…オイラのもちつきに何かおかしい所があるってのか?」

鬼神『フン、当然だ。どれ…この鬼神がもちつきのなんたるかを見せてやる、その身体をしばし貸せ』

赤鬼「いや、お前……貸せねぇってそんな理由で。そんなことしてお前に身体乗っ取られちまったら大変っていうか馬鹿みてぇだろ…」

鬼神『チッ…ならば誓ってやる、今回は必ず貴様に身体を返す。これならば構わんだろう、我にもちつきをさせろ』

赤鬼「……なぁ、お前もしかしてただもちつきがしたいだけなんじゃn」

鬼神『ゴチャゴチャと喧しい青二才め!もたもたしていてはもち米が冷めてしまうだろう!こうなれば力づくでも貴様の身体を借り受ける!』ゴゴゴゴゴ
215: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/02(月) 00:57:44 ID:7di 
桃太郎「なぁ、赤ずきん…赤鬼がなんかいきなり独り言始めたぞ…大丈夫なのかあれ?」

赤ずきん「あれは独り言じゃあないわよ。まぁ…大丈夫かと言えば微妙なところだけれど」

桃太郎「えっ?それってどういう事なn」

ゴゴゴゴゴ

鬼神赤鬼『ウオオオオオォォォォォ!!どうやら上手く事は運んだようだ、しかし外に出るのは久方ぶりだな』

赤ずきん「鬼神…!戦いの最中でもないのにどうしてあなたが…!」バッ

桃太郎「うぇぇっ!?なんか赤鬼雰囲気変わってない?っていうか肌の色も変わってるし何アレ!?ナニアレ!?」ワタワタ

赤ずきん「……もしかして、あなた桃太郎に何か危害を加えるつもり?あなた達からすれば桃太郎は同族を倒した宿敵ですものね、殺したいほど憎んでいるのでしょう?」

桃太郎「ちょ、ちょっと待って!?なんか今拙者の命がヤバイみたいな話してない!?」

鬼神赤鬼『鬼殺しの侍の抹殺か、それも悪くは無い。だが小娘今回だけは安心させてやる。我はこの不甲斐ない青二才に真のもちつきを見せるために身体を借り受けた』

赤ずきん「……信じられないわ、何を企んでいるの?」

鬼神赤鬼『何も企んでなどいないが、人間である貴様の信用を得ようとも思わん。我は自身の目的を遂行するのみ、おい鬼殺しの…杵を寄こせ』

桃太郎「あ、あのっ…杵渡すのはいいんですけど、本当にもちつきの為ですよね?渡したとたんに襲いかかってくるとか…ないですよね?ハハハ…」

鬼神赤鬼『望むというのなら貴様の頭を杵で叩き潰しても我は構わんのだぞ…?』ギロリ

桃太郎「ひえっ!望んでないです!すいませんでした!」ドゲザー
216: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/02(月) 01:00:43 ID:7di 
鬼神赤鬼『ならば始めるとするか。時間も無い』ググッ

桃太郎「な、なぁ赤ずきん…あれが話に聞く赤鬼の中に住んでるって言う凶悪な鬼なんでしょ?なんでもちつきしに出てきてんの…?」

赤ずきん「知らないわよ。でもあいつは亡くなった鬼の無念や恨みから生まれたっていうから、あいつを構成している思念の中にもちつき好きな鬼でも居たんじゃないかしら」

桃太郎「えー…なんなのその考察、真面目な奴?なんにしろ怖いから早く元の赤鬼に戻って欲しいんだけど…」

赤ずきん「あいつの気が済むか少し時間がたてば元に戻るでしょう。まぁ…どうやら今回は本当に悪さをするつもりが無いみたいだし、私はおモチを丸めながら待っている事にするわ」

桃太郎「えぇー!?いいのそれで!?そんな事言っている場合じゃないd」

鬼神赤鬼『鬼殺しの…貴様、なにをもたもたしている!素早く配置につけ』ギロ

桃太郎「は、配置って…?」

鬼神赤鬼『貴様はモチをこねる役目を任されているのだろうが…!』ギロリ

桃太郎「わ、わかりました!」

鬼神赤鬼「ならば開始だ。誇り高き鬼の真のもちつき、その目に刻むがいい!ウオオオォォォ……フゥン!!!!」ビュッ


ドパァァァン!!!ドパァァン!!ドッパァァァン!!


桃太郎「熱っ!ちょ、全部飛び散ってる飛び散ってる!」ビチャー
赤ずきん「……」ベッター
217: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/02(月) 01:02:49 ID:7di 

鬼神赤鬼『鬼殺しの…貴様なぜ合いの手をいれんのだ。まさかとは思うが…貴様ももちつきをなめているのではないだろうな?』ギロリ

桃太郎「い、いやいや!なめてませんよ!でもそんな凄い勢いでつかれたらこねるの無理ですって!怖いですって!」

赤ずきん「少しでもタイミングがずれたら死んでしまうわね…」

桃太郎「ひえっ…!もちつきに命なんか掛けられませんって!だからもう諦めてくだs」

鬼神赤鬼『そうか、モチをこねられぬ貴様に用は無い。臼の中に頭を突っ込め、鬼殺しの。モチをこねるか死ぬか、二つに一つだ。選べ』

桃太郎「も、モチをこねさせていただきます!」

鬼神赤鬼『懸命だ。ならば新たなもち米を入れて……再開だ。先ほどは力が入り過ぎていたようだ、ならば…フンッ!』ドパァン!!

桃太郎「ひいいいぃぃぃっ!」コネッ

鬼神赤鬼『ぜぇい!』ドパァン!!

桃太郎『うわあぁぁぁ!!赤ずきん!マジ助けて!これいずれ死ぬって拙者!』


人魚姫の声『おモチって初めて見たけど美味しそうだねー!あーっ、でも今は何も食べられないからなーあたし、ちょーっと悔しいんですけどー?』

赤ずきん「そうぼやかないの。あとで魔法使いのところにも持っていくでしょうから、何か方法が無いか聞いてあげるわよ」マルメマルメ

人魚姫の声『マジッ!?サンキュー!魔法でなんとかしてくれっかなー、楽しみー』ワクワク 


桃太郎「ちょ、拙者の事心配して赤ずきんー!」

鬼神赤鬼『何を余所見している…!命が惜しいのならば、モチだけを見ていろ…!』ドパァン!!

桃太郎「うわぁぁぁ!!!もういやだぁぁぁぁ!!!」コネッ

222: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:41:31 ID:vL8 

ティンカーベル「ふんだっ、そうやって調子に乗ってると良いよ!簡単にやられる私たちじゃないんだから!あんたの知らないところで私達はすんごい特訓してんだからね!」

アリス「知ってるさ、お前たちは数日前から雪の女王に稽古をつけてもらっているんだろう?こっちには筒抜けだ、そんな情報」

キモオタ「むむむっ…やはりバレバレでござったか…」

アリス「うちには優秀なスパイがいるからね。しかし女王には同情するよ、君たちみたいな出来そこないの相手をさせられるなんてね」

ティンカーベル「キィィーッ!あいつムカツク…!キモオタ!パワーアップした私達の力であいつを蹴散らそうよ!」プンスカ

キモオタ「落ち着くでござるよティンカーベル殿、挑発に応じると痛い目をみるというのは挑発使いの我々もよく知るところでござろう」

キモオタ「それに我々の行動が筒抜けになっている以上…特訓で得た新たな戦術や必殺の手の内、それらもバレバレの可能性アリでござる。迂闊に動くのは危険ですぞ!」

ティンカーベル「ぐぬぬ…そうかも…」

アリス「相変わらず冷静な豚だね。迂闊に突っ込んできたら返り討ちにしてやろうと思っていたんだけどね」

キモオタ「我々としてもお主に屈するわけにはいかぬのでwwwそりゃ慎重にもなりますぞwww」コポォ

アリス「冷静に分析しようが慎重に策を練ろうが、どっちにしろ君達に勝ち目はないけどね」

アリス「ボクが把握してるのは君達二人の行動だけじゃない。赤ずきん達が誰に特訓をつけてもらってるか、桃太郎がどんな受難にあってるか、ラプンツェルが新たな協力者を得ただとか、裸王やヘンゼルがどんな鍛錬を積んでるかとか…そういうことだって知ってる」

アリス「君達は手札をさらした状態でボクにトランプ勝負を挑んでいるようなものだ。絶対に勝ち目はない」
223: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:44:06 ID:vL8 
アリス「君達はそれくらい分が悪い勝負に出てるって事だ。それでも足掻くっていうのならどこからでもかかって――」

カイ「さっきから聞いてりゃあゴチャゴチャゴチャゴチャ……うるせえぇぇ!!」ビュバッ

ドゴォッ バシィッ

アリス「ボクが話している最中だというのに…礼儀を知らないんだな、カイ」ザザッ

雪の女王「カイ…!」フラフラ

キモオタ「カイ殿!?突然何を…!」

カイ「黙って聞いてりゃ勝ち誇った顔で好き勝手言いやがって…。俺はな、そういう輩を見てると虫唾が走んだよ…!」ヒュバッ

アリス「……今退くなら見逃してやる。ボクには君と戦う意味も理由もないからな」スッ

カイ「お前に無くても俺にはあんだよ。うちの女王をこんなにボロボロにしやがって…ただで済むと思ってねぇだろうな?」

カイ「聞いた話だとうちの弟妹もお前には随分と世話になったみてぇじゃねぇか。だったらよぉ、身内としてキッチリ礼をしなきゃなんねぇなぁ!」ダダッ

ヒュバッ スッ

カイ「チッ、この距離で避けやがるか…!」

アリス「そんな素人の蹴り、食らうわけないだろう」

カイ「あぁ…?ナメてんのかぁ!」ザッ

アリス「事実だろう。お前にはヘンゼルのような魔力も魔法具も、グレーテルのような魔術の適正も、千代のような知識もない。武器と言えばその蹴りと悪態くらいのものだ」

アリス「お呼びじゃあないんだよ、お前はこの戦いの舞台に上がる資格すらない」

カイ「言ってくれるじゃねぇか…!なんなら試してみようぜ、本当に俺じゃあお前の相手にならねぇのかどうかをなぁ!」ギロリ
224: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:48:04 ID:vL8 
キモオタ「ちょ、ちょちょちょ!ストップ・ザ・カイ殿!」ガシッ

カイ「何すんだ…!このっ…!放せ豚ァ!」ジタバタ

雪の女王「カイ…!悔しい気持ちは理解できるが…退くべきだ、君が戦って敵う相手じゃあない…!」

ティンカーベル「そうだよ!あいつは私達に任せてカイは女王に肩貸してあげて!立ってるのもやっとっぽいし…ね?」

カイ「そうもいかねぇんだよ!女王やあいつらは必死で戦ってんだ、俺だけ安全な場所で高みの見物なんざ…できるわけねぇだろうが!」

キモオタ「アリス殿はお主の蹴りを二度もかわしたのですぞ!聡明なカイ殿なら…力の差に気づいているはずでござろう!?しかもアリス殿はまだ全然全力ではないのでござるよ?」

カイ「……」グッ

キモオタ「ここは耐える時でござるカイ殿。アリス殿の相手は我々に任せ、お主は女王殿の傍にいてあげて欲しいでござるよ」

ティンカーベル「大丈夫だよカイ、私達に任せてよ!私とキモオタの友情パワーでボッコボコにしてやるからさ、あんな奴!」

アリス「出来ない事を口にするもんじゃないよティンカーベル。非力な妖精の君が戦いに身を投じたところで何の足しにもならない、足手まといだ」

ティンカーベル「はぁんっ!?そんなことないし!ていうか出来るから言ってるんだよバーッカ!覚悟しろバーカ!!」

キモオタ「だから挑発に乗るなというのにwwwしかし我々が厳しい特訓を乗り越えたことは事実wwwあまり我々を見くびらない事ですなアリス殿www」コポォ

アリス「毎度毎度、口だけは達者な奴らだ」チャキッ

キモオタ「それが我々のスタイル故wwwさて…ティンカーベル殿!特訓の成果をアリス殿にぶつけますぞ!」

ティンカーベル「オッケー!あいつをボッコボコのベッコンベッコンにしてやろう!」フンスッ
225: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:52:18 ID:vL8 

アリス「それじゃあ見せてもらおうか、君達の特訓の成果とやらをね」ヒュバッ

ティンカーベル「距離詰めてきたよ!武器はナイフ…魔法具とかじゃなくて普通の奴っぽい!でも一気に近づいてなんか魔法具使う気かも!」

キモオタ「ほうwww要注意ですなwwwなんにせよ接近戦を御所望とあらば応じますぞ!」フリフリ

おはなしサイリウム『コード認識完了『裸王』魔法発現状態へ移行……モード『muscle』』

アリス「裸王の身体能力を宿すか。だが怪力を得たところでボクの攻撃を避けられるわけじゃない」ズバッ

キモオタ「ドゥフフwwwこの魔法で得られるのは怪力だけではないですぞwww」ヒラリッ

アリス「ボクのナイフをかわすか。なるほど、腕力を増すだけじゃないのかその魔法は」

キモオタ「ドゥフフwww全身のあらゆる筋力を増強させるのがこの魔法の真骨頂www故にこの距離ならばマッチョマンの瞬発力を纏う事で……お主を捕えることも可能なのでござるよ、アリス殿!」ガシッ

カイ「おぉ…!キモオタの奴、接近してきた事を逆手にとってアリスを捕まえやがった!」

アリス「流石は裸王の腕力、力づくでは逃げられそうにないな。ならばコイツだ、この汚い手を放してもらおう」ジャキッ

キモオタ「ファッ!?拳銃ですと!?それガチでヤバイ奴でござr」バッ

アリス「筋肉ごと弾けろ、キモオタ」グッ

ティンカーベル「させるかぁー!てぇい!」ピュー ゲシッ

カシャーン

アリス「……っ!」

ティンカーベル「へへーん!まさかピストルを蹴飛ばされるとは思わなかったでしょ!油断してるからだよバーカ!」

アリス「役に立たない妖精だと思っていたけど、前よりもずっと鬱陶しくなったじゃないかティンカーベル」

ティンカーベル「フフンッ、褒め言葉として受け取ってあげるよ!こっから一気にいくよー!」
226: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:56:29 ID:vL8 
アリス「不意打ちが成功したくらいで調子に乗らない事だね。近距離戦はボクの領分だ、もう奇襲は通用しない」ズバッ

ティンカーベル「おわっ、危なっ!これじゃスリングショット構えられないじゃん!」ピューッ

キモオタ「ティンカーベル殿!ここはひとまず距離をとるでござるよ!」

ティンカーベル「そだね、でも私は攻撃の手を緩めるつもりは無いよ!キモオタ、なんかいい感じの援護して!」

キモオタ「ちょwww無茶ぶりwwwとはいえ何とかやってみるでござるかなwww」フリフリ

おはなしサイリウム『コード認識完了『シンデレラ』 魔法発現状態へ移行……モード『step』』

キモオタ「さぁアリス殿、見えざる豚の一撃をどう防ぎますかなwww」シュン

アリス「消えたか。だがその魔法は知っている、消えたように見せかけて素早く動いているだけだ。それなら次の一手は不意打ちの蹴り、返り討ちにするのは簡単だ」ジャキッ

キモオタ「ドゥフフwww残念ながらハズレでござるwww吾輩が選んだ一手はこれですぞ!必殺www超高速www泥飛ばしwww」ヒュヒュヒュッ

ザバザバッ

アリス「魔法具を使ってこんなくだらない事を…。泥を蹴りあげて目潰しでもしようって魂胆かい?そう上手くいくわけないだろう」バッ

ティンカーベル「いいんだよそれで!あんたが泥に気を取られればこっちの勝ちなんだから!」ヒュンッ

アリス「ティンカーベル…あぁ、泥掛けはお前が私に接近するための策か」

ティンカーベル「こんだけ近づけば避けらんないし痛いでしょ!くらえ必殺!当たるとすんごく痛い弾!」ギギッ

パピュン!!



バチーン!!
227: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 00:58:44 ID:vL8 

ドサッ

ティンカーベル「手ごたえあり!やったか!?」ピューッ

ハリネズミ「ふしゅぅ……」グッタリ

ティンカーベル「ああっ、変わり身の術…!ってことはアリスは!?」バッ

キモオタ「ティンカーベル殿、あっちですぞ!」

ザッ

アリス「まったく…泥掛けからの奇襲なんて姑息過ぎないか?でもまぁ、前よりは戦えるようになったと思うよ。多少はね」

アリス「だが戦略が大味すぎる。近距離からスリングショットを放てば時間停止も間に合わないと考えたんだろうが、甘い。ボクに気付かれた時点でその攻撃は失敗なんだよ」

キモオタ「むぅ、ワンチャンあるかと思ったでござるがやはり避けられてしまったでござるな」

ティンカーベル「もう!あれだけ近づいてもダメとか時止めズル過ぎるよ!チートだよあんなの!」バンッ

アリス「これはボクが元から使える能力、どう扱おうと僕の勝手だ。それにズルイのはおとぎ話の世界にありもしない魔法具を作らせたお前達の方じゃないのか?」

ティンカーベル「ぐぬぬ…!そんなことないし!」

キモオタ「ドゥフフwwwこれは一本取られましたなぁwww確かにティンカーベル殿のスリングショットも吾輩のおはなしサイリウムもオーダーメイドの魔法具でござるからなぁwww」

ティンカーベル「はぁっ!?なんであいつの言う事に納得しちゃってんのさ!」

キモオタ「しかしでござるよ?強力な魔法具を有しているのはお互いさまのはず、アリス殿も使えば戦況を一変できるほどの魔法具を有しているはずでござるが――」



キモオタ「何故、今回はそれを使わないのでござるかなwww」コポォ
228: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:00:40 ID:vL8 

アリス「そんな事を気にしている余裕が、お前たちにあるの?」

キモオタ「我輩は気になった事をそのままにしておけない性質でしてなwww」

ティンカーベル「でも言われてみればそうかも…さっきもピストルとかナイフとか使って、全然魔法具使ってきてない!」

キモオタ「で、ござろう?そして我輩の推理が正しければ…アリス殿は今、魔法具を使う事が出来ないのでござる!」キリッ

ティンカーベル「なんでなんで!?どーいうこと?」

キモオタ「思い出すでござるよ、アリス殿が魔法具を集めていたのは【アラジンと魔法のランプ】の結界を崩すため。そして遂にその時がやってきた、という事は…」

キモオタ「今、アリス殿が所有している魔法具は結界を崩すために使われているのでござる!故に、アリス殿は戦うための魔法具を所有していないのですぞ!」キリッ

ティンカーベル「ほんとだ…!名推理じゃんキモオタ!あいつが今魔法具持ってないっていうなら時止めさえなんとかすれば勝てるかm」

カイ「……だったらさっきの炎の海はどうやって説明すんだよ」

キモオタ「ファッ!?」

雪の女王「残念だがその推理は間違いだ。彼女は私との戦いでいくつもの魔法具を使っている…君も見たはずだ」ゼェゼェ

雪の女王「戦闘に必要な魔法具は確保したうえで…結界を破る魔力も手にしたと考えるのが妥当だ…」ゼェゼェ

キモオタ「……どうやら推理ミスのようでござるなwwwドゥフフwww」

ティンカーベル「感心して損したよ!なんだったの今のくだり!」
229: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:03:03 ID:vL8 

アリス「自分たちに有利な可能性にすがりたいのはわかるが、あまりに雑な推理だ。ボクがろくな準備もなく戦いの場に赴く訳ないだろう」

キモオタ「確かにそうですなwwwしかし我輩の目の付けどころは悪くなかったのではないですかな…アリス殿?」

アリス「何の根拠があってそんな自信を持ってるのやら」

ティンカーベル「いつまでその話引っ張るのさキモオタ!アリスは何個か魔法具持ってるって女王が言ってたじゃん!」

キモオタ「そのようでござるな。ならばなおの事、何故それらの魔法具を使わないのですかな?」

ティンカーベル「えっ?えーっと…あれ?なんでだろ…」

キモオタ「今思えば我々が接近した時にあの火炎を出す魔法具を使えばこちらは相当な痛手…。なのにそれを使わなかった理由とは、なんでござろうな…?」

キモオタ「アリス殿は魔法具を持っている、そしてそれを使う事もできるでござる。それなのに我々相手にそれを使わなかった…その理由、我輩は気になりますなwww」

アリス「深い理由なんか無いさ、お前たちが魔法具を使う価値すらない雑魚だというだけだ」

キモオタ「ほうwww果たしてそれは本当にアリス殿の本心でござるかなwww」コポォ

アリス「またお得意の煽りやら挑発やらで場を掻き乱そうって考えかい?」

キモオタ「そう思いたければご自由にどうぞでござるwww我輩は我輩の考えを述べるだけでござるよwww」

ティンカーベル「アリスが私達に魔法具使わない理由、キモオタには心当たりがあるの?」

キモオタ「モチのロンですぞwww我輩が考えるに、ああ見えてアリス殿は我々を警戒しているのでござるよwww」コポォ

キモオタ「直球な物言いをするのなら、我々にビビって魔法具を出し渋っているとでも言いましょうかなwww」
230: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:04:17 ID:vL8 

アリス「キモオタ、あんたにしては随分と大雑把な挑発だ。そんな挑発に乗るとでも思っているのか?」

キモオタ「ほうwwwならば何故我々に魔法具を使わないのかwww」

アリス「何度も言わせるな、君たちが魔法具を使うに値しない雑魚だからと言っただろう」

キモオタ「その主張はおかしいですなぁwwwお主が持つ魔法具が一度限りの使い捨て方式だというならともかく、何度でも使える強力な魔法具をお主は複数所持しているはずwww」

キモオタ「本来ならば出し惜しみをする必要などありませんぞwwwむしろ圧倒的な魔法の力で我々をさっさと塵にするのが道理というものwww」

ティンカーベル「確かに!ドロシーから奪ったあの靴にだって前に使ったって聞いた笛とかあの火打石だって何度も使える魔法具だもんね!」

アリス「まぁ、そういう考えもできるか。だからなんだっていうんだ?」

キモオタ「アリス殿、お主のやっている事は派手で目立つでござるよね。数々の世界を容赦なく消し、多くの人々を躊躇なく傷つけてきたでござる」

キモオタ「その思い切りの良さや大胆な行動に隠れがちでござるけどお主…実は結構慎重派でござろう?」

アリス「さぁ、どうだろうね」

キモオタ「スパイを活用して情報を十分に収集し、キッチリ相手の弱点をつける状態にしてから作戦を実行に移すあたりがまさに慎重派と言えると思うでござるけどね」

アリス「……それで?結局お前は何が言いたいんだ?」

キモオタ「アリス殿、お主はスパイを使ってもなお、我々の手の内を完全に把握しているわけではないのでござろうな」

キモオタ「故に…あえて手を抜き、我々に手の内を完全に晒させようという魂胆なのでござろう?」


キモオタ「アリス殿…お主、実は我々の事…相当警戒しているのでは?」
231: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:08:18 ID:vL8 

アリス「フフッ、ハハッ…!なるほど、なるほどな…!悟られないだろうと思っていたけれど、そこに気づくか…!」クスクスクス

アリス「やはりお前は侮れない豚だよ、キモオタ」

キモオタ「我輩の説が正しいと…認めるのでござるな?」

アリス「あぁ、認めてやる。本音で話してやるよ。ボクはこう見えて実はお前たちの事を警戒している、雪の女王が役立たずになった今、ボクにはもはや障害らしい障害は無い。ただ一つその可能性があるとすれば…」

アリス「キモオタ…本来このおとぎ話の世界に存在するはずの無い、お前だ」

ティンカーベル「えっ…どゆこと?アリスは私達の事、雑魚だって見下してたじゃん?いつでも倒せるって思ってるんじゃないの…?」

アリス「いつでも倒せるさ。お前を…【ピーターパン】の世界の妖精を消す方法をボクは知ってる。赤ずきんが守りたいモノを脅かす手段、鬼を無効化する策、桃太郎を戦えなくする戦術、裸王を動けなくする作戦…」

アリス「ラプンツェルを涙に溺れさせる行為、ヘンゼルを寝返らせる言葉…それらをボクは用意している。もちろん、そこの豚の戦意を喪失させる方法もね」

キモオタ「お主はそれだけの根回し&下準備を万全にしているにも関わらず我々の手の内を全て知ろうとしている…そうでござるな?」

アリス「そうだ、ボクには確かにお前とその仲間を這いつくばらせる策がある。でもそれじゃあ不十分だ、キモオタと言うイレギュラーな存在を相手にするには…足りない」

アリス「スパイを使っても知りえなかったお前の戦略、手の内の底の底までボクは知っておきたい。それほどまでにお前は何をしでかすかわからない予想不可能な存在だからだ」

アリス「なぜならお前は取るに足らない男に見えて…数多くのおとぎ話の主人公を味方につける謎の力を持っている。ボクの目的を確実に叶えるため、何をしでかすかわからないお前を警戒するのは当然だろう」

キモオタ「どんな形であれ我輩を評価してくれた事には感謝しますがなwwwその様に我輩を手の内を探っている間に取り返しのつかない事にならないように気をつけた方が良いでござr」

アリス「ひとつ忠告しよう。ボクは確かにお前を警戒している、それは本心だ」スッ

アリス「だがそれでも、お前達よりもボク達が圧倒的に有利だということになんの変わりもないんだぞ?」

ヒュンッ

アリス「その気になればお前をどうにでもできるってこともね」
232: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:10:28 ID:vL8 
キモオタ「アリス殿が消えましたぞ…!ティンカーベル殿!御注意を!」バッ

ティンカーベル「キモオタ!後ろ!アリスはキモオタの後ろにいるよ!」

キモオタ「ファッ!?なんですt」

ゲシッ

キモオタ「ぶひぃぃぃっ!」ドシャー

ティンカーベル「キモオタ!ぐぬぬ…アリスの奴、また瞬間移動して攻撃を…!」

アリス「ボクがお前を警戒してるって事、気がついた事は褒めてやるよ。でもそれで優位に立ったつもりになられちゃ困るな」

アリス「お前に、お前たちにボクを倒す策があるっていうのか?【不思議の国のアリス】の世界に襲撃を掛けるって言っても、具体的な作戦があるわけじゃないんだろう?」

キモオタ「それでも、我々はやらねばならんのでござるよ…。シンデレラ殿を救い、お主の企みを止めるためにも…」ヨロッ

ヒュンッ ゲシッ

キモオタ「おぶっ!」ドズシャー!

ティンカーベル「キモオタ…!アリスの奴また…!いい加減にしろバカー!」ググッ パチーン

スカッ

アリス「がむしゃらにそんなもの放って当たるわけないだろう。そもそも無策でボクに敵うわけがない。実際、こうやってボクが能力を使うだけでお前たちは手も足も出ない」

アリス「ボクの企みを止めるなんて言っている割に…お前たちにはその準備も努力も根回しも、何もかも不足しているんだよ」

アリス「その程度ではボクの想いは止められない、ボクの願いを阻止するなんて絶対にできない」
233: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:13:52 ID:vL8 

キモオタ「例えそうだとしても…我輩は立ち向かうでござる。お主は…おとぎ話の世界だけでなく現実世界も消すつもりなのでござろう…?」ヨロッ

アリス「そうだ、あんなくだらない世界。残しておく必要ないだろう」

キモオタ「それは聞き捨てなりませんな。あの世界は我輩が住む世界、消滅させるわけにはいかないのですぞ!」

アリス「おかしなことを言うんだなキモオタ。お前は本当にあの世界が必要か?」

キモオタ「どういう意味でござるかな…?現実世界に住む我輩が現実世界を守ろうとするのは至極当然の…」

アリス「少し調べさせてもらった、お前のような『キモオタ』と呼ばれる人種はあの世界ではあまり…いや、相当やっかい者扱いされているそうじゃないか」

キモオタ「……」

アリス「世間ではお前たちをまるで犯罪者予備軍のように言う連中もいるんだと聞いたな。白い目で見られ、後ろ指を指されるような事も多いらしいじゃないか」

ティンカーベル「うるさい!キモオタはいい奴だし!オタクの人だってほとんどはちゃんとしてる人だし!たいして知らないくせに適当な事言うなバーカ!」

アリス「だろうな。…まぁ、その点に関しては同情するさ」

ティンカーベル「…?」

アリス「だとしても、あの世界は…あの世界の多くの人間はお前をやっかい者扱いし、そして虐げてきたはずだ」

アリス「キモオタ、それでもお前にはあの現実世界を守ろうなんて思えるのか?」
234: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:15:37 ID:vL8 
キモオタ「確かにお主が言うように、我々オタクに良い印象を持っていない者は多いでござる。故に隠れオタが多いわけでござるしな…」

キモオタ「我輩もまぁ散々苦汁をなめさせられましたぞ。しかし、あの世界が無くなっていいかどうかというのはまた別問題なのでござるよ」

アリス「何故そんな風に思える…?」

キモオタ「あの世界には【マッチ売りの少女】を聞いて涙した子供たちがいるでござる、夢に向かって頑張る司書殿がいるでござるし…多くの作者殿が残したおとぎ話があるでござる」

キモオタ「それらを守る事が出来る現実世界の住人が我輩だけだというのなら、やるしかないでござろう。いや、我輩がやるときめたのですぞ!」

アリス「……」

キモオタ「それにあの世界もさほど捨てたもんではないですぞwww電話一本でピザが届くでありますし、ティンカーベル殿のようにオタに理解のある人物も結構いるでござるしなwww」

ティンカーベル「そうだそうだ!現実世界はあんたが思ってるほど悪いもんじゃないし!深夜アニメとか面白いし!」

キモオタ「ちょwwwお主www我輩があえて言わなかったのにwwwそれ言うでござるかwww」コポォ

アリス「…くだらない、くだらないな。そんな些細な娯楽や僅かな理解者の為に、お前は自分が受けた理不尽な苦しみを忘れるって言うのか?」

ヒュッ ゲシッ

キモオタ「ぶひぃぃっ!」ズシャーッ

アリス「少しはお前に同情もしたが…それは間違いだったみたいだ、やはりお前はボク達とは違う」

アリス「ボクは…ボク達はお前のようにヘラヘラ笑って誤魔化したりしない。かつて虐げられた恨みは、嘲笑われた憎しみは決して忘れない」

アリス「ボク達をまるで犯罪者のように扱った連中を、世間を、世界をボクは許さない。そんなくだらない世界は必ず…消してやる」
235: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:19:16 ID:vL8 

キモオタ「お主…何故そこまで現実世界を恨むのでござるか…?」

ティンカーベル「そうだよ、だってあんたは【不思議の国のアリス】の住人でしょ?今のいい方じゃ、現実世界でひどい目にあったみたいな言い方じゃん!」

キモオタ「教えてほしいでござる、お主と現実世界との間に…一体何があったのでござるか?」

アリス「そんな事を聞いて、お前はどうするつもりだい?」

キモオタ「決まってるでござろう、お主と現実世界との間に何らかの確執があったのなら…現実世界に住む我輩ならそれを何とか出来るかもしれないでござる!」

キモオタ「そしてその確執がお主の行動の原動力だというのなら、それを解決することでお主を止める事が出来るかもしれないでござろう」

アリス「無駄だよ、今更誰かにボクを止めることなんかできない」

キモオタ「アリス殿…!」

ティンカーベル「ダメだよキモオタ…諦めよう。そりゃ争わずに解決すれば一番いいけど、あいつにその気が無いんじゃ無理だよ!」

キモオタ「しかし…アリス殿が何故現実世界を憎悪しているかはわからんでござるが、現実世界もそれほど悪いもんではないと思うのでござる。故になにかの誤解や勘違いの可能性も…」

アリス「…今のは聞き捨てならないなキモオタ。ボクのこの現実世界への憎悪が誤解や勘違いだって?そんな訳ないだろう」

アリス「ボク達が受けた苦しみは誤解なんかじゃない、この怒りは勘違いなんかじゃない。何も知らないくせに適当な事を抜かすな」

キモオタ「……」

アリス「いいだろう、話すつもりはなかったけれど…ボク達の憎悪が本物だという証明だ、少しだけ昔話をしてやるよ」
236: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:20:54 ID:vL8 
アリス「現実世界の時間の流れで言えば百年以上も昔の事になる、イギリスのとある都市に一人の数学者が居た」

アリス「彼はとても優秀な学者だったけれど、全ての人間が彼を称賛したわけじゃなかった。もちろん彼を称賛する人間もいたけれど、それと同時に彼を変人扱いする人間もいた」

キモオタ「それは、何故ですかな…?」

アリス「彼は周囲と少し違っていたからだ。率直に言うのなら、彼は職を持つ立派な成人男性だったが幼い少女を何よりも愛していた」

キモオタ「ほう…今でいう  コンと言うやつですかな」

アリス「その呼び名は適切じゃないな。彼流に言うのなら  コンではなく、健全な  コンだ」

雪の女王「待ってくれるかい、アリス。その呼び名…私は聞きおぼえがある」

アリス「そうだろうな、雪の女王。あんたはここまでこの事実を知らず、気がつかなかったようだけど。彼はあんたのよく知る人物だ」

雪の女王「アリス、その人物の名はもしかして…」

アリス「想像の通りだ、かつてあんたが現実世界でアンデルセンと共に生活していた頃、弟子として共に生活していた男こそがこの数学者だ」

アリス「チャールズ・ラドヴィッジ・ドジソン…それが本名だったな」

雪の女王「なんという偶然だ…チャールズは君と面識があったというのか?」

アリス「面識があった…なんてものじゃないよ、ボクは彼とはとても親しい友人だったんだ。そしてそれと同時に彼は【不思議の国のアリス】の作者でもある」

雪の女王「馬鹿な…!【不思議の国のアリス】の作者はルイス・キャロル。チャールズでは……」

アリス「ペンネームだよ。まぁ君と親しいアンデルセンやグリム兄弟は本名で作品を世に出していたから、まさかルイスこそが君の後輩だなんて気がつかなかっただろうね」
237: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:23:04 ID:vL8 

雪の女王「まさか…まさかチャールズが【不思議の国のアリス】の作者だったとは…」

アリス「まぁ知らないのも無理は無いと思うけど、とにかく今は話を戻そう」

アリス「ルイスは周囲から危険な  コンだと思われていたし、ボクもその危険人物と行動を共にするおかしな子供のレッテルを張られた。女のくせにこんな喋り方をしてるからって理由でね」

キモオタ「我輩にしてみればただボクっ娘という認識でござったが、百年以上も昔だと理解されにくかったのでござろうな…」

ティンカーベル「ちょ、ちょっとまってよ!アリスはさ、さっきからまるでルイスと一緒に現実世界で暮らしていたような喋り方してるけど…あんたはおとぎ話の主人公でしょ!?」

ティンカーベル「作者がまだ生きてるような時代に【不思議の国のアリス】の世界が結末を迎えてるとは思えないし、なんで現実世界にとどまる事が出来たのさ!」

アリス「あぁ、その事か…。なんとなく想像できないか?」

ティンカーベル「わかるわけないじゃんそんなのヒントもないのに!ねっ、キモオタ!?」

キモオタ「そうですな…。主人公であるアリス殿には雪の女王殿のような待機期間があったわけでもないでござろうし…」

アリス「難しい話じゃない、ボクは【不思議の国のアリス】の主人公でありながら、主人公ではないからだ」

アリス「ボクはアリスであってアリスじゃない、それだけの事さ」

ティンカーベル「はぁ?なにそれ!もっとわかりやすく説明してよ!」

キモオタ「……」

アリス「ここまで話せばわかりそうなものだけど。…どうやら君の相棒は察しがついたようだしね」
238: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/05(木) 01:26:47 ID:vL8 
ティンカーベル「そうなの!?じゃあ私にも教えてよキモオタ!」

キモオタ「いや、確信があるわけではないのでござるけど…。アリス殿、お主もしかして元々は【不思議の国のアリス】の主人公ではなく、現実世界の住人なのでは……?」

ティンカーベル「はぁっ!?いくらなんでもそんな事があるわけ…」

アリス「そもそも【不思議の国のアリス】は他の雑多なおとぎ話のように大勢の人間の為に執筆されたおとぎ話じゃない」

アリス「ルイスは一人の親しい少女をモデルに、その少女の為だけにそのおとぎ話を執筆した」

キモオタ「その少女と言うのが…お主、アリス殿と言うわけでござるな?」

アリス「そうだ。【不思議の国のアリス】は元々現実世界でルイスがボクの為に書いてくれたおとぎ話だ」

ティンカーベル「待ってよ!あんたが現実世界の住人だって言うなら、おとぎ話の主人公の方のアリスはどこにいるってのさ!」

アリス「わからない奴だな君は、目の前にいるじゃないか。主人公のアリスがさ」

ティンカーベル「ちょ、ちょっと待って!全然理解が追い付かないよ…キモオタァ!説明!」

キモオタ「つまりアリス殿は元々、我輩と同じ現実世界の住人。そして…おそらく何らかの理由で【不思議の国のアリス】の主人公の代役を担ったわけでござろう、つまり……」

アリス「ボクはアリスであってアリスではない。そしてアリスではないけれど…アリスだ。折角だ、あらためて名乗らせて貰おうか」

アリス「ボクの名前はアリス、【不思議の国のアリス】の主人公…。そして……」




アリス「アリスのモデルとなった現実世界の住人…アリス・プレザンス・リデルだ」

245: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:26:52 ID:gL5 

ティンカーベル「そ、そんな話信じられるわけないじゃん!だって…突拍子が無さ過ぎるもん!」

ティンカーベル「あんたはアリスだけど本当は主人公の『アリス』じゃなくて代役なんだとか、元々は現実世界の住人で『アリス』のモデルだとか…そんなの言われたって信じられないよ!」

アリス「信じようと信じまいとこれは本当の話だ。元々ボクは『アリス』のモデルだ、そしてある事情で『アリス』はもう居ない…だからボクがアリスを務めている」

キモオタ「にわかには信じがたいでござるが…おそらく、アリス殿の言葉は偽りではないのでござろうな」

ティンカーベル「でも、やっぱ簡単には信じられないって…。ねぇ、実はこれ全部あいつのデマカセでさ、私達を混乱させる作戦って可能性は……」

キモオタ「無いでござろう。ただ我々を混乱させたいのならもっと現実味のある虚言を用意するはずですからな、例えばシンデレラ殿の安否を偽るとか…いくらでも方法はありますぞ」

ティンカーベル「確かにそうかも知んないけど…、でも…」

アリス「ティンカーベル、君がどう思おうがこれは真実だ」

アリス「ボクが現実世界のイギリスで生まれ育った事も、父の友人だったルイスに出会い親しくなった事、【不思議の国のアリス】のモデルになった事、これらは全て真実」

アリス「そしてボクやルイスがマイノリティだからという理由で差別され迫害され…後ろ指を指されてきたという事も。当然、真実だ」

ティンカーベル「……」

アリス「これでもまだ理解ができないというなら、君にもわかるように端的に言おう。ボクは現実世界の人間、そしてボク自身も大切な人もあの世界でひどい差別や迫害を受けた」



アリス「その復讐の為、あの忌々しくて最悪な世界を…現実世界を、ボクは消滅させる」
246: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:29:41 ID:gL5 
キモオタ「ふむ…なんといいますかな、アリス殿の言葉が真実ならば、現実世界を消滅させたいという考えも理解できますな…」

ティンカーベル「キモオタ!そりゃ差別や迫害を受けたって言うのが本当なら可哀そうだよ?でも、だからってあいつのやってる事は…!」

アリス「あの世界に住んでいるお前なら理解できるだろうね、これは正当な復讐だ。ボク達を虐げてきた連中に対する当然の報復だ」

キモオタ「しかし、理解は出来ても納得はできませんぞアリス殿。我輩には先ほど言ったように現実世界を守りたい理由があるでござるからね」

アリス「別に納得してもらおうなんて思っていないさ。過去の話をしたのは納得してもらうためでもなければ同情してもらうためでもない」

アリス「ボクの正当性を証明するためだ。どっちにしろボクは現実世界を消す、誰にも文句は言わせない」

キモオタ「ほうwwwならば我輩がお主の思惑を阻止することに関してもwww文句は言わせませんぞwww」コポォ

アリス「好きにしなよ。ボク達の行動は正しい、正義に基づいている。誰にもボク達を止めるなんて出来ないからさ」

キモオタ「ドゥフフwww復讐とは何の関係もないおとぎ話の世界まで消滅させているお主が正義を口にするなどwwwちゃんちゃらおかしいですなwww」コポォ

アリス「関係無くはないさ。お前たちが知らないだけでおとぎ話の世界には現実世界の平和と秩序を何より大切にする酔狂な輩がいるのさ、そういう連中をボクは知っている」

アリス「奴等はもう始末したけどさ、同じような輩が別の世界にもいるかもしれない。そうなれば邪魔されるのは目に見えている、だから先手を打ったまでさ」

キモオタ「ほうwwwそんな者たちがいるのですかなwwwちなみにどこの世界に居たのですかなwww」ドゥフ

アリス「そんなことまでお前に教えてやる義理はないよ。大方、上手く聞き出して何かに利用しようって魂胆だろう?」

キモオタ「ドゥフフwwwバレバレでしたなwww」
247: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:31:54 ID:gL5 

アリス「知ったところでどうにかできるもんじゃないけどね。あの世界にはもう何もないんだから、主人公も居ないし物語の要になる人物も居ない」

アリス「あるものと言えば朽ち果てた海底の城くらいのものだ。まぁ…当然の末路さ、現実世界なんかに入れ込むからああなる」

キモオタ「ほう…」

アリス「まぁ、そういう酔狂な連中が居なかったとしてもボクは最初からおとぎ話の世界を全て消すつもりだったけどね」

アリス「そもそもこの世にいくつもの世界が存在している事が間違っている。世界はたった一つ…【不思議の国のアリス】の世界があればそれでいい。それ以外は消えても構わない」

ティンカーベル「そんなのあんたが決める事じゃ無いじゃん!私は断然、世界はいっぱいあった方が良いと思うもん!」

アリス「どうしてそう思うんだ?ボクには理解できない」

ティンカーベル「決まってんでしょ!そっちの方が楽しいからだよ!」

ティンカーベル「キモオタと深夜アニメ見ながらピザ食べるのも、シンデレラやラプンツェルと恋バナするのも、赤ずきんや赤鬼とお茶飲むのも、裸王の筋トレ見るのも桃太郎からかうのも、ヘンゼルの一緒にいるドロシー見てニヤニヤするのも…私は全部好きなんだよ!」

ティンカーベル「別の世界の事否定しちゃったら、そういう友達との楽しい思い出も否定することになっちゃうでしょ!だから世界はいっぱいあっていいんだよ!」

キモオタ「ちょwww後半ちょっとアレな気もしますがなwwwとはいえ我輩も激しく同意ですぞwwwというか現実世界しか存在しなければ我輩ボッチでござるしwww」

アリス「お前たちは何も分かっていないな。都合のいいところしか見ていない」

ティンカーベル「はぁ!?そんなこと無いし!」

アリス「様々な世界が存在するという事がどういう事か、お前たちは理解していない。世界が違うということは当然文化も環境も違う、それぞれが持つ『常識』の形が違うのさ」

アリス「そして…人間というのは自分の中の『常識』とかけ離れている事をする相手を受け入れることは出来ない。そういう相手に直面した時、とる行動は決まっている」



アリス「差別、迫害、そして自分の常識に沿わせるための攻撃…果ては戦争だ」
248: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:34:06 ID:gL5 
ティンカーベル「そんなことないよ!いくら文化や環境が違うからってそんなこと…」

アリス「わかりやすい例が身近にいてそんな事をいうのか?それなら聞くけど、お前の主張が正しいなら何故…【泣いた赤鬼】の世界では人間と鬼がわかりあえていない?」

アリス「赤鬼が心優しい鬼だという事はお前も知っての通りだ。なのに赤鬼はどうして村の人間に受け入れられなかった?」

ティンカーベル「そ、それは…。やっぱり、種族が違うから…小さな誤解がアレして…」

アリス「鬼と人間に限った事じゃない。お前たちはヘンゼルとグレーテルが【キジも鳴かずば】の世界に迷い込んだ時の話を覚えているか?」

キモオタ「そんなことまでリサーチ済みでござったか…」

ティンカーベル「ヘンゼル達がその世界に迷い込んだ時…?えっと、確か……あっ!」

キモオタ「ヘンゼル殿とグレーテル殿は…髪の色と瞳の色が日本人のそれとは違うという理由で薄毛のおっさんに迫害されたのでござったな…」

アリス「例をあげればキリが無い。桃太郎はその数奇な生まれのせいで家族ごと迫害を受けたらしいじゃないか、それならば魔力を持って生まれたラプンツェルも…ゴーテルが引き取らなかったらどうなっていたか、考えるまでもない」

アリス「必ず家族ごと迫害される、桃太郎の一家のように。ゴーテルはその事も懸念して彼女を引き取ったんだろう」

ティンカーベル「そ、そうだとしても…そんなのたまたまだよ、まれにそういう場合もあるって事で…」

アリス「本当にそう思っているのか?お前たちの仲間内だけでもこのありさまだ、もっと広い視点で見ればどうなっているか…想像できないはずないだろう?」

ティンカーベル「うぅ…」

アリス「お前の仲間達が証明しているじゃないか。人間は、自分と違う相手を決して受け入れない」
249: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:37:03 ID:gL5 
アリス「違う国の人間を受け入れない、特別な力を持つ人間を受け入れない、種族の違う相手を受け入れない」

アリス「そんな状態で、複数の国や世界が一つになる事など絶対に不可能。その問題を解決するにはもう、方法は一つしかない」

キモオタ「一つの世界だけ残し、他の世界は全て消す…でござるな」

アリス「そうだ、そしてたった一つだけ残すのならば一番ふさわしいのは【不思議の国のアリス】の世界だ」

キモオタ「ほう…。しかし我々が出会った帽子屋殿も大概でござったし…そうは思えませんがな」

ティンカーベル「そうだよ!あんたは自分のとこのおとぎ話だからってひいきしてるだけだよ!」

アリス「そんなことないさ。まぁ個性的な連中だし、みんな自分勝手だからね…冗談交じりに仲間を馬鹿にしたりすることは確かにある」

アリス「それでも絶対に一線を越える事は無い。決して同じ世界に住む仲間を迫害したりしない」

キモオタ「言いきれるほどの自信があるのですな?」

アリス「あぁ、ボクは仲間の事を信頼している。それに…全員が迫害される苦しみと差別される苦痛を知っている」

アリス「だから仲間内でそんな愚かで無意味な事、するはずがない」

キモオタ「全員…?おとぎ話の登場人物、全員がでござるか?」

ティンカーベル「それって脇役とか持って事だよね…どういうことだろう?」

アリス「言っただろう、【不思議の国のアリス】は他の雑多なおとぎ話とは訳が違うと」

アリス「ボクの仲間は全員が同じ願いを持っている。差別も迫害もない平和な世界を手に入れるという願いだ」
250: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:40:56 ID:gL5 
アリス「そしてボクは仲間たち全員の願いを…ルイスの想いを背負っている。だから負けない、負けられるはずが無い」ヒュッ

ティンカーベル「アリスの奴また消えたよ!キモオタ!今度は気をつけて!」

キモオタ「ガッテン承知!先ほどのようにはいきませんぞ!」

ヒュッ

アリス「学習能力があるんだか無いんだかわからない奴だなお前は…」ピトッ

ティンカーベル「あぁっ、キモオター!」

キモオタ「ぬぅっ!?一瞬で背後に回ってナイフを首筋に…!」

アリス「ボクはお前を殺せないんじゃない、万が一に備えてお前たちの手の内を探っていただけだ…忘れたのか?」

アリス「だからその気になればお前のような豚を殺すのは容易い」

キモオタ「ドゥフフwwwそれはやめた方が良いかとwww我々、とんでもない奥の手を隠し持っている故www」

アリス「へぇ、見せてもらおうかな。その奥の手とか言うやつを。どうせ、得意のブラフだろう?」ピトッ

キモオタ「……それはどうですかなwww」

アリス「本当に奥の手なんてものがあるのなら、これだけ長々と時間を与えてやったにもかかわらず何もしないハズが無い」

ティンカーベル「ぐぅ…!私達にいろいろ話したのも、奥の手があるかどうか探るためだったなんて…!」

アリス「つまり…お前たちも雪の女王も私を退ける手段を持っていない、完全に手詰まりって訳だ。それさえわかれば…」

アリス「心おきなく、お前たちを始末できる」
251: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:43:11 ID:gL5 

アリス「今まで散々邪魔をしてくれたけど、それももう終わりだ」チャキ

キモオタ「ぬぅ、万事休すでござるか…!」ブヒッ

ティンカーベル「くぅっ!間に合えぇー!」ピューッ

アリス「無駄だ、間に合ったところでお前の力じゃあボクを止めることは出来ない」ググッ

ヒュッ

ガッ カシャーン

キモティン「……っ!!」

雪の女王「カイ…!」

アリス「……何のつもりだ?ボクは言ったはずだ、お前はお呼びじゃあないと」ギロリ

カイ「フンッ、その割にはナイフ蹴り飛ばされてんじゃねぇか。情けねぇ奴だな」クックッ

アリス「ボクがお前に手を出さなかったのはその必要が無かったからだ。でも本気でボクの邪魔をするっていうなら話は別だ」ヒュッ

ズバッ

カイ「ぐあ…っ!」ブシュッ

雪の女王「クッ…だから危険だとあれほど…!」

キモオタ「ぬぅ、カイ殿!」

ティンカーベル「カイー!」

アリス「言っておくが今更後悔しても遅い。もうボクにはお前を殺すだけの理由がある、望み通り相手をしてやるよ。カイ」
252: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:47:11 ID:gL5 

カイ「フンッ…こんな攻撃でデカイ口叩かれてもなぁ?これなら昔ヘンゼルと喧嘩して殴られた時の方がずっと効いたぜ」ボタボタ

アリス「へぇ、ヘンゼルの拳は腕一本動かなくするほど鋭いのか?」ヒュッ

ズバッ

カイ「…っとぉ、そう何度も喰らってやれるほど俺は優しかねぇぜ」ビュバッ

アリス「そうかい、でもボクには次の攻撃なんか必要無さそうに見えるけど?」

キモオタ「そうですぞカイ殿!その出血量、明らかにヤバイ奴でござる…すぐに逃げるでござrぶひぃいいぃっ!」ベシッ

カイ「テメェがあいつに殺されそうだったから俺が出ざるをえなかったんだろうがブタァ!」ギロッ

キモオタ「申し訳ない……」

カイ「女王も俺もあいつを止められそうにねぇんだぞ!テメェ等が死んだら誰があいつを止めんだ!おいティンカーベルテメェもだぞ!」

ティンカーベル「ご、ごめん…」

カイ「ったく、なんで俺がテメェらの尻拭いを…。……ぐあっ!」ザシュッ

アリス「威勢よく出てきた割には大した事が出来ずにやられるだけ、まさに無駄死にだ。だからボクは言っただろう」

ドサッ

アリス「お前はお呼びじゃあないんだよ、カイ」
253: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:49:16 ID:gL5 
雪の女王「カイ…!アリス、君は…なんと言う事を、なんと言う事を…!」ワナワナ

キモオタ「女王殿!まだ…まだですぞ!カイ殿、まだ息があるでござる!すぐに治療を施せば…今すぐに安全な場所へ移動させますぞ!」ソッ

ヒュッ

アリス「そんな余裕は無いはずだ、不意な割り込みがあったとはいえ…お前を殺す事は決定事項だ」ズバッ

キモオタ「ぬおおぉぉぉっ!我々に託してくださったカイ殿の心意気無駄にはしませんぞぉぉ!!」スカッ

アリス「よく避けたな…だが二度目は無い。お前がどこに走ろうと、ボクは一瞬で背後にまわれる」

ヒュッ

ティンカーベル「だったらキモオタの後ろ飛んでればあんたは勝手に近づいて来てくれるってことでしょ!」ギギギッ…パピュンパピュン

アリス「……っ」スッ

ティンカーベル「ぐぬぬ、避けられた…!って、うわぁー!」ギュッ

アリス「ちょこまかと鬱陶しい。近づけばスリングショットの威力は高くなるだろうが、こんな風にとらえられる事を想定しなかったのか?」

ティンカーベル「くっそぉー!放せバカー!」ジタバタ

キモオタ「ティンカーベル殿…!今すぐに救出したいでござるがカイ殿を放置するわけにも…」クッ…

アリス「さぁ、どうする?カイを助けるかティンカーベルを助けるか…ボクはどっちでも構わない、どちらにしろお前の心を折る事は出来そうだ」
254: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:51:13 ID:gL5 

キモオタ「ぐぬぬ…」

カイ「……おい、ブタテメェ…何悩む事、あんだよ…」ボタボタ…

キモオタ「カイ殿…!喋っては傷口が広がりますぞ!」

カイ「甘っちょろいのも大概にしろ…そもそもオメェがアリスをさっさと殺さねぇからこうなんだぞ……敵に情けなんざかけんじゃねぇ…」

キモオタ「……」

カイ「だがよぉ…うちの女王も似たようなもんだから否定はしねぇ…。でもな、今回ばっかりは…俺とティンカーベルのどっちを優先すべきかわかんだろ…」

カイ「お前らがあいつをなんとかしてくれねぇと…うちの弟妹共にも被害が及ぶんだよ、んな事になってみろ……俺は死んでもお前を殺しに戻ってくるぜ…」ゼェゼェ

キモオタ「……わかりましたぞ」

カイ「よし、だったらいい……って、おい…なんで俺を背負い直す?俺の事は地べたに置いてでもティンカーベルを…」

キモオタ「我輩の選択はお主を背負いつつティンカーベル殿を救う事ですぞ!それだけ喋れるのならしばし我輩の背に捕まる事くらいできるでござろう?」

カイ「馬鹿か…お前何もわかってねぇ…。ここは俺の事見切ってでもあいつを…」

キモオタ「あいにく我輩、強欲でござるからなwwwピザもいつも二種類以上の味を同時に頼むでござるしwww」コポォ

アリス「……」

キモオタ「さぁ行くでござるよアリス殿!手負いと侮らない事ですぞぉ!!」ドスドスドス
255: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:54:35 ID:gL5 
アリス「侮ったりしないさ。ただお前を見ているとこっちが真面目に戦略立てているのがバカバカしくなってくる」ブンッ

ベチン

ティンカーベル「ぐえっ!ちょ、地面に叩きつけるとかありえないし…!あっ、でも逃げられた!キモオター!」ピューッ

キモオタ「何はともあれ無事なら良かったでござる!さぁ女王殿を連れてひとまず撤退を…」

アリス「させるわけが無いだろう」カチカチッ ボボゥッ

ティンカーベル「あっ…!炎で逃げ道が防がれた…!」

キモオタ「むむっ…これでは女王殿と合流する事ができませんぞ…!」

雪の女王「キモオタ。ティンカーベル!私の事は構わずに別の世界へ渡って体勢を立て直すんだ、これ以上続けても…今は勝ち目が無い」

キモオタ「何を言い出すでござるか女王殿…!お主を放置して逃げるなどできませんぞ!」

カイ「自己犠牲とか…かっこつけてんじゃねぇぞ…」ボタボタ

ティンカーベル「そうだよ!女王も一緒に逃げる方法が絶対にあるって!だからなんとかそれを探そう!」

キモオタ「ですぞですぞ!散々世話になった女王殿を見捨てるとかナシですぞ!」

雪の女王「君たちは…どこまで…!」クッ
256: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 00:58:40 ID:gL5 
アリス「呆れるほど現実が見えていないな、この炎の壁を抜けるなんて不可能だ。女王を犠牲にするかまとめて死ぬか、二つに一つだキモオタ」

キモオタ「ならば三つ目の選択肢を作るまでですぞ!おはなしサイリウムを使ってこの炎の壁をぶちぬきますぞ!」

ティンカーベル「……どうやって?」ヒソッ

キモオタ「……それを今から考えるでござる」ヒソッ

カイ「聞こえてんだよ…バカ共……」

雪の女王「キモオタ、その魔法具は君が絆を紡いだ相手の能力が宿るんだったな…?」

キモオタ「そうですぞ!しかしあいにく、我輩の友人にこのレベルの炎をなんとかできる者は…」

雪の女王「私は炎には弱いが…私が魔法を使えばこの炎の壁はなんとかできるかもしれない」

キモオタ「おぉ…!しかし女王殿はもう魔法を使う事は…」

雪の女王「私は雪の女王…暑さにやられている状態では魔法を使えない。だが身体を冷やす方法があれば…話は別だ」

キモオタ「ファッ!?しかし…」

雪の女王「キモオタ…君は私の家族の為に全力で行動してくれた、身を危険にさらしてまでだ。そんな君の事を…」

コォォォォ

雪の女王「私が友だと思わないはずが無いだろう」

キモオタ「こ、これは…!我輩の魔法リストに雪の女王殿の能力が…!」
257: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 01:07:11 ID:gL5 
雪の女王「君と私が紡いだ絆、それは間違いなく…氷結の能力。それを私に向けて放つんだ、声で大方の場所はわかるだろう」

キモオタ「なるほど…!我輩が氷結能力を女王殿に放てば、女王殿は魔法が使えるまでに回復できるのですな!?」

雪の女王「あぁ、そういうことだ。できるな?」

アリス「この期に及んでそんな小細工を…!」バッ

ティンカーベル「おおっと!させないよ!キモオタ、今のうちに急いで!!」ペチペチ

キモオタ「うおおぉぉぉ!渾身のオタ芸いきますぞぉぉぉ!」フリフリフリ

おはなしサイリウム『コード認識完了『雪の女王』 魔法発現状態へ移行……モード『Frozen』』

キモオタ「おぉぉ…!なんだか冷たい力が全身を駆け廻りますぞぉ!」パキパキパキ…

アリス「チッ、面倒な事を…!」

雪の女王「よし、その氷結魔法を私へ放て!」

キモオタ「承知!行きますぞおおぉォォ!!炎の壁を飛び越えるように…いっけぇぇぇでござるうぅぅぅ!!」パキパキパキ…
258: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/10(火) 01:11:13 ID:gL5 
パキパキパキパキ

キモオタ「ぬぅ…上手くいったと思うでござるが炎の壁で向こう側が見えないでござる…!」

ティンカーベル「女王!聞こえる!?どうなった!?」

雪の女王「あぁ、成功だ。君の氷結魔法を受けたおかげでもう一度魔法を放てる程度には回復したよ」

カイ「ったく、無茶しやがって…」

キモオタ「おぉ!成功して何よりですぞ!では女王殿の魔法で一気にこの炎をかき消してくだされ!」

ティンカーベル「うんうん!そんで女王の魔法でアリスを捕まえよう」

アリス「……」スッ

雪の女王「よし、準備は整った。それじゃあ…さよならだ」スッ

ブォンッ

カイ「…おい、なんだこりゃ。あいつは吹雪で炎の壁を消すんじゃねぇのか!?なんで俺やお前らに魔法が…」コォォ

ティンカーベル「ちょ、ちょっと待ってよ女王!これ…世界移動の魔法でしょ!?もしかして、私達だけ別の世界へ飛ばそうって訳!?」コォォ

キモオタ「は、話が違いますぞ女王殿!?」コォォ

雪の女王「君たちには悪いが少し嘘をつかせて貰った。私の魔力が回復したところで…この炎の壁を完全に取り除くことはさすがに難しい」

雪の女王「だが君たちの居場所さえ分かれば、見えなくても別の世界へ飛ばすことは可能だ」

キモオタ「女王殿…お主、お主一人だけここに残るつもりでござるな!?」

雪の女王「余計な事は考えなくていい。君たちは一度退いて、アリスにどう対抗すべきか考えるんだそして彼女を必ず止めてくれ」

雪の女王「私にできる事は、もうこの程度だ」

キモオタ「女王殿…!!」

雪の女王「私の大切な家族、君に任せるぞ。キモオタ」

シュンッ

265: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:16:31 ID:hSS 

雪の女王の世界 雪原…だった場所、炎燃え盛る荒野

メラメラメラ…

雪の女王「三人の気配が消えた…。どうやら無事にこの世界から抜け出す事ができたみたいだな…」ヨロッ

雪の女王「最後に騙すような真似をしてキモオタ達には悪い事をしてしまったな…。だが、これでいい」

雪の女王「あのまま足掻いていても、君を止める事はおそらく出来なかっただろう。…そうだろう、アリス?」

ヒュン

アリス「あぁ、そうだね…。あのまま戦っていたならボクは邪魔者の首を四つ手土産にすることが出来たんだけどな」

アリス「でもあんたの悪足掻きのせいで、それもフイになった。あいつらをここで始末できなかったのは少し面倒だ、余計な事をしてくれたな雪の女王」ジロリ

雪の女王「そう睨まないでくれ、私だってこの選択は…本意じゃない」

雪の女王「きっと今頃カイは私に対して怒り狂っているだろうし、この事を知ればヘンゼルも君に対して憎しみを燃やすだろう。あぁ…でも一番心配なのはグレーテルだな、実は感情が昂ると一番手に負えないのは彼女だから」

雪の女王「なんにせよ、あの子達は感情的になりやすいうえにそうなると身体が先に動く、なだめ役の千代には随分と苦労させてしまいそうだ」

アリス「この期に及んで子供達の心配か。今のあんたにそんな余裕は無いはずだけどね」

アリス「もはやろくに戦う事も出来ないあんたがこの場に一人きりで残る事…それがどういう事かわかっているだろうに」

雪の女王「あぁ、わかっているさ。だからこそ私は子供達の事を心配しているんだ、でもそれは当然だろう」



雪の女王「死を覚悟した者が、残される家族を心配するのはどの世界でも同じなんだから」
266: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:18:34 ID:hSS 

アリス「確かにそれは道理だ、でもその心配は無意味だと思うけどね」

アリス「もうじき世界は変わる、ボクが望むように【不思議の国のアリス】の世界ただ一つになる。そしてそこに君の家族の居場所は無いよ」

アリス「彼等が命乞いをしてボクに従うというのなら別だけどね。でも…君の家族は決してそんな選択はしないだろう」

雪の女王「…そうだろうな。例え私が彼等にそうするように言ったとしても聞き入れてくれないだろう」

アリス「当然と言えば当然だ。大好きな女王様を殺した相手に命乞いなんか出来ないだろう」

雪の女王「…いや、それは少し違うな」

アリス「違う…?他に何の理由があるというんだ?」

雪の女王「先にも言ったが彼等は感情的になりやすい、時には選択を間違える事もあるだろう。それでも彼等はきちんと善悪の区別ができる子だ、少なくとも私はそう教えてきた」

アリス「…どういう意味だ、雪の女王」

雪の女王「私の家族は自分の命可愛さに『間違った事をしている人間に従ったりはしない』という事だよ」

ジャキッ

アリス「魔女といえど首を切られれば死ぬ。そしてそれはこのナイフを引くだけで事足りる」

雪の女王「……」

アリス「炎と熱によって封じられたあんたの魔力はあの豚の氷結魔法のおかげでいくらか回復できたようだけど、それもたかが知れている」

アリス「あいつらを逃がすのが精いっぱい、ボクに抗うだけの魔力はもうない。それにどうやら…身体を冷やしたところで受けたダメージや疲労は回復できないんだろう?」

アリス「あんたはここで死ぬ。そうなればもうボクが魔法のランプを手にする事を止められない、あの豚が体制を整えてボクの元に来たとしても…間に合いはしないだろう」



アリス「この戦いの勝者はボクだ。敗者であるあんた達に間違っているなんて言える資格なんかない」
267: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:22:31 ID:hSS 
雪の女王「フフッ…それは違うよ、アリス」フフッ

アリス「何がおかしい?まだ私に対抗する策でも隠し持っているのか?」

雪の女王「いいや、残念だけど私に出来る事はもう無い。君の予想通り、彼に身体を冷やして貰って回復した魔力も使いきった」

雪の女王「身体を冷やしたところで傷は癒えない、魔力の完全な回復にも時間がかかる。私はもはやちょっと魔力がある程度の一般人と言ったところだ」

アリス「それなら何故、死を前にしてそんな風に笑っていられる?お前はもう死を待つだけの敗者だ」

雪の女王「確かに私は君に敗北した。残念だが私の力不足のせいで君を説得することは出来なかった、それはとても無念だ」

雪の女王「でも負けたのは私だけだ、『私達』はまだ負けていない。私が死んでも君を止めようという想いを継いでくれる仲間はまだいるのだからな」

アリス「バカバカしい、あの豚に何を期待している?」

アリス「あいつをどこに逃がしたかは知らないけどさ、あいつが誰かに頼ってボクと再び戦う態勢が整ったとしても…その頃にはもう世界は【不思議の国のアリス】だけになっているだろう」

アリス「ボク一人にすら勝てなかった豚が、ボクの仲間やルイスの想いを相手にして何かできると本当に思っているのか?」

雪の女王「思っているさ、私は信じているからな。キモオタは自分に殺意を向けるヘンゼルや君相手でも決して諦めない、強く優しい心を持っている。信じるに値する人物だ」

雪の女王「そして、私のかつての後輩であり君の物語の作者であるチャールズの事も私は信頼している」

アリス「……」

雪の女王「だから信じている…いいや、もはや確信しているよ。彼等なら必ず、君を改心させる事ができると」
268: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:25:46 ID:hSS 

アリス「…どうしてそこでルイスの名前が出てくる?ボクの大切な人の名前を出せば、ボクが油断するとでも?」

雪の女王「そんなことで油断をするような君じゃないだろう?」

アリス「当然だ。その程度でなにか変わるほど、ボクの憎しみは浅くは無い」

雪の女王「でも君は知っているだろう、かつて私が現実世界に居た頃…アンデルセンの助手を務めていた頃、彼と交流があった事を」

アリス「あぁ、ルイスからアンデルセンの弟子をしていた事は聞いていた。当然、助手のあんたが雪の女王だってことは知らなかったようだけど」

雪の女王「だから私は知っている、チャールズがどんな人間だったのか」

雪の女王「彼は確かにいつもロリロリ言っていたし他にも…いや、ほとんどその事しか考えていないような男だったけど。それだけじゃない事を私は知っている」

雪の女王「優しい心と真っすぐで強い意志を持っていた。物語を書き記すことへの情熱と、愛する者を守りたいという決意に溢れていた」

アリス「そんな事、今更あんたに言われなくてもボクは知ってる」

雪の女王「そうだろうな、でもチャールズの事を知っている私だからこそわかる」

雪の女王「彼は人を見る目がある男だ。君が少女だったからだとか外見を気に入ったなんて理由で一緒に居たわけじゃない、君の内面に惹かれるものがあったからだろう」

雪の女王「そして彼と共に過ごし、彼の為に世界中を敵にまわすことさえ厭わない程彼を思う君ならば…きっと受け継いでいるはずだ。彼が持っている優しい心と真っすぐな思いを」

アリス「……」

雪の女王「それならば…君が過ちに気付けないはずがない」
269: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:29:16 ID:hSS 

アリス「…通用しないよ、そんな手は」

雪の女王「通用も何も私は打算や策略で口にしているわけじゃない」

雪の女王「君が私の後輩と…チャールズと親しいと聞いたから、思っている事を言ったまでだよ」

アリス「ルイスはボクが出会った中で最も魅力的な人物だった。人としても学者としても作家としてもだ、ボクは彼を尊敬していた」

アリス「そしてルイスはアンデルセンとグリム兄弟、そして弟子時代に生活を共にした先輩…あんたのことを尊敬していた」

雪の女王「そうか、それは光栄だな」

アリス「厳しいけれど優しい女性だと言っていた。他の作家共々、いずれ恩を返したいと言っていた。それは叶う事は無かったけどね」

アリス「ボクも最初はあんたがその助手だって知らなかった。でもあんたを調べるうちにその事実にたどり着いた」

雪の女王「……」

アリス「雪の女王はルイスの恩人、そして彼が尊敬する人間の一人。本来ならば丁重に扱うべき相手だ」

アリス「それでもボクはあんたを殺す事を選択した。この選択に関してだけは…ルイスも反対するかもしれない。彼が生きていればボクを叱るかもしれないな」

雪の女王「それだけじゃないだろう。彼が生きていれば…君がしてきた全ての行為を叱責するはずだ、いいや必ず叱責する。彼は自分の為に他人を犠牲にする事を良しとなんかしない」

アリス「……」

雪の女王「なぁ、アリス…君は……」

アリス「そうだとしても、ボクは引き下がるつもりはない。生半可な覚悟で別世界を消してきたわけでもない」

アリス「ボクに出来るルイスへの弔いはただ一つ、ボク達のようなマイノリティが幸福に暮らせる世界を生み出す事だけだ」
270: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:33:35 ID:hSS 

雪の女王(…私とアンデルセンは、初対面のチャールズを不審者だと思った)

雪の女王(当然、今ではそんな風には思わない。彼は幼女少女をだれより愛しているがそれを性につなげる事は決してない、健全な  コンという自称にも大いに頷ける)

雪の女王(だがそれは彼と生活しその人柄を知っているからだ。何も知らない他人が傍から見れば……やはりチャールズは  コン、不審者に見えるかもしれない)

雪の女王(当時まだ青年だったチャールズでさえそれだ。ならば年齢を重ねたチャールズ…ルイスは周囲にどのように見られていたのか、想像するは容易い)

雪の女王(……)

雪の女王(チャールズが故郷へ戻った後も私はアンデルセンが亡くなるまであの街に居た。けれど、チャールズがその頃どうなったかは知らなかった)

雪の女王(てっきり学者にでもなって、作家の職につかなかったのだろう。それもまた彼の人生だと思っていたけれど……もしかしたら、そうではなく)

雪の女王(彼は周囲の酷い差別によって…私達に手紙を書くことすら、ままならなかったのだとしたら……?)

雪の女王(もちろんこれは私の推測にすぎない。あの明るい性格のチャールズがそうなるとは思えない…だが、しかし……)

アリス「…駄目だなボクは、あんたの策略にまんまと乗って話し過ぎてしまった。でもボクは…考えを曲げない」ググッ

雪の女王「なぁ、アリス…もう一度私ときちんと話を――」ヒュッ

帽子屋「駄目ねぇ、前ばっかり見てちゃ。命を狙われてるんだもの、背後にこそ注意しなくちゃ…死んじゃうわよぉ?」ブホホ

ドスッ

雪の女王「ぐっ…!いつのまに背後に…!」ドサッ

帽子屋「それにねぇ、悪いけどウチのアリスちゃんは女王様とお話しする事なんかもうこれ以上はひとっつも無いのよぉ」ブホホ
271: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/16(月) 01:38:40 ID:hSS 

帽子屋「ほらっ、トランプ兵ちゃん!雪の女王の事、厳重に縛っちゃって!抜かりないように頼むわよっ!」ポイポイッ

トランプ兵達『Yes my lord』

グルグル ギュッギュッ

アリス「帽子屋…。なんだ、君もこの世界に来たのか」

帽子屋「なんだじゃないわよぉ!いくら魔力を失ってるって言っても相手は雪の女王なのよぉ?さっさと始末しちゃわないと何が起きるかわからないじゃないのぉ~…んもう、アリスちゃんらしくないわねぇ」

アリス「悪かったよ。少し…ルイスの事を話されてね」

帽子屋「アラ…アリスちゃんルイスちゃんの話題にだけは弱いものねぇ…。聞くまでもないけれど、大丈夫よねぇ?気持揺らいじゃったりしないでしょう?」ブホホ

アリス「大丈夫だよ。今更気持ちが揺らいだりなんかしない」

帽子屋「言ってみただけよっ。まぁそれに関してはぜんっぜん心配してないけど、ねぇ……」ジーッ

アリス「なんだい?」

帽子屋「アタシは【アラジンと魔法のランプ】諸々の襲撃準備ができたからアリスちゃんを呼びに来たんだけど。このままじゃちょっとねぇ…?」ブホホ

アリス「何を言ってるんだい、ボクはなんともないよ。準備ができてるならさっさと魔法のランプを奪いに――」

帽子屋「雪の女王からルイスちゃんの事聞いちゃって、彼の事思いだしちゃって…ちょっぴりセンチメンタルかしらぁ?アリスちゃんってば強がってるけどさみしがり屋だものねぇ」ブホホ

アリス「あのねぇ帽子屋、茶化さないでくれ。そんな場合じゃ…」

帽子屋「大丈夫よアリスちゃん、アナタは正しい。ルイスちゃんもアナタを叱ったりしないわよ。ルイスちゃんだって私達が幸せに暮らせる世界を望んでる」

帽子屋「アナタは間違ってなんかいないわ、アタシはそう信じてるもの。白ウサギちゃんも三月ウサギもハートの女王もチェシャ猫も…他のみんなだってそうよぉ?」

帽子屋「だからホラ、ここにはアタシとアリスちゃんしかいないんだし。強がらずに思ってる事あるなら吐きだしちゃいなさいなっ、弱音でも愚痴でもゲロでもうけとめたげるわよっ!」ブホホ

アリス「心配しないよう言っておくけど…決意は全く揺らいでないよ、それは大丈夫だ。でもルイスの名前を出されてふと…今のボクを見て、彼がどう思うか考え込んでしまった。雪の女王がおかしなことを言うからだな…まったく」

アリス「でも、そんなこと考え込む必要無かったよ。雪の女王がなんと言おうと…ボク達は正しいんだ。ありがとう、帽子屋」

帽子屋「いーえっ、どういたしましてっ!さぁ、元気出たらさっさと【アラジンと魔法のランプ】の世界を襲撃しちゃいましょ!」ブホホ

・・・

279: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/20(金) 23:22:03 ID:9m1 
ヘングレ大好きな>>1による番外編
『子供組徹底討論!女子力が一番高いのは誰だ!?』


ヘンゼル「僕はお千代だと思うよ。司書の仕事忙しいみたいなのに絶対に料理や家事の手を抜いたりしないしさ、勉強家だし自分磨きも怠らないし…僕としては不本意だけどそこそこモテるらしいしね」

ドロシー「お千代さん綺麗だもんね。知的だし優しいし手先も器用で…前に私の髪の毛結ってくれた時、すごく手際良かったです」

グレーテル「いつも私の髪の毛結ってくれてるからね…。確かにお千代ちゃんは女子力高いよ…。でも、私は一番じゃないと思う……二番くらいだよ……」

ヘンゼル「それじゃあグレーテルは誰が一番だと思うの?」

グレーテル「ラプお姉ちゃん…。いつも元気いっぱいだし…とてもかわいいと思うの…それによくお菓子くれるし」

ヘンゼル「いや…お菓子くれる人=女子力高いじゃないからね」

グレーテル「他にもちゃんと理由あるよ…。ラプお姉ちゃん、ずっと塔でお掃除とかお洗濯とかお料理一人でしてたから、きっと一番得意だよ…そうは見えないけど…」

グレーテル「お裁縫も得意だし…髪の毛すっごく可愛くしてくれるし…ラプお姉ちゃんはとってもオシャレ…ちょっと憧れる…」

ドロシー「で、でもこの間外で見かけた時、明らかに部屋着だったけど…」

グレーテル「部屋着を余所行きみたいに着こなせるセンスの持ち主……それがラプお姉ちゃん……」

ヘンゼル「確かにそういう面ではラプンツェルに分があるかな」

グレーテル「ドロシーちゃんは、誰が一番だと思うの…?一緒に居たかぐやさんは…女子力、高くないの…?」

ドロシー「あの、えっと…かぐやさん、箱入り娘だから……」

グレーテル「そうなんだ…それじゃあラプお姉ちゃんの勝ちだね…。フフッ、私のお姉ちゃんの方が女子力高い…」ドヤァ…

ヘンゼル「僕、ラプンツェルを姉にした覚えは無いんだけど」
280: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/20(金) 23:27:55 ID:9m1 
グレーテル「でも私達もラプお姉ちゃんも…おんなじ作者、だから私達は姉妹だって…ラプお姉ちゃんが言ってた……」

ヘンゼル「その理屈だと赤ずきんとも姉妹になるんだけど…」

グレーテル「細かい事気にしちゃダメだってラプお姉ちゃんが言ってた…。とにかく…ドロシーちゃんが誰も推薦しないなら……女子力一番はラプお姉ちゃんかお千代ちゃんのどっちかって事で……いいかな……」

ドロシー「ちょ、ちょっと待って…!確かにかぐやさん家事とかは……だけど、でもとても素敵な人です!優しいし、強いし…私を励ましてくれたし、それにそれに……」アワアワ

ヘンゼル「そんなに慌てて良い所探さなくてもさ、五人もの権力者に求婚されてる時点で女性としての魅力は十分あるって解釈でいいんじゃない?」

ドロシー「そ、そう!そうだよねっ!だから私はかぐやさんを一番に推しますっ!」

グレーテル「今、お兄ちゃんドロシーちゃんの味方した……」ムッ

ヘンゼル「いや、味方とか敵とかじゃなくてね。誰の女子力が一番なのかを決めるのが今回の趣旨なんだからさ、この三人の候補の中から決めようか。ここは多数決かな…」

赤ずきん「あら、三人揃って楽しそうね。何の相談かしら?」

グレーテル「赤ずきんちゃん…。今ね、誰の女子力が一番高いのかなってお話……してたとこ」

ドロシー「そうなの、今候補に挙がってるのがお千代さん、ラプンツェルさん、かぐやさんで…今から多数決で一番を決めようって話をしてて…」

赤ずきん「…物好きなことしてるのね、あなた達」

ヘンゼル「折角だ、君の意見も聴かせてくれないかな赤ずきん?」

赤ずきん「私の意見?私だったら誰を一番に推すかって話?」

ヘンゼル「あぁ、君が今まで出会った人の中で一番女子力が高いと思うのは…だれだい?」
281: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/20(金) 23:33:00 ID:9m1 

赤ずきん「女子力ねぇ…そもそも何を持ってして女子力が高いって言えるのかしら?私にはよくわからないのだけど」

ドロシー「えっと…家事や料理が得意だとか、オシャレだとか男性に好かれるかどうかとか…?」

グレーテル「気配りができたり…優しいとか…かしこいとか…こだわりがあるとか…お菓子くれるとかも重要……」

赤ずきん「なるほどね。家事に料理、身だしなみ等々…あなた達の話を総合すると……」


『おう赤ずきん、お前の頭巾だが端がほつれてたから直しといたぞ!ついでに取れかかってた洋服のボタンも付けなおしといたからな』

『今日の茶菓子はシンデレラに習ったシフォンケーキとかいうやつだ!なかなかうまく出来たから遠慮せず食ってくれ!』

『町中に鬼が出たとなると騒ぎになるからな外套を羽織らねぇとな。何?似合ってる?ガハハ、世辞はよせよせ!』ガハハ

『まったく…鬼神の奴、昨日は遅くまで身体を寄こせ寄こせってうるさくてなぁ。寝られやしなかったぜ』

『なぁ赤ずきん、お前あんまり飯食ってねぇけど具合でも悪いのか?少しばかり休んでもかまわねぇぞ?』

『おっ、この草とこの木の根は薬になるぞ。おおっと、そっちの草はかぶれちまうから触らないほうが良いぞっ』

『よし、そんじゃあつきたての餅配ってくるとするか!折角だからきな粉やら小豆も一緒に持っていってやるか!』

『ツノは鬼の命だからな、いつもピカピカに磨かねぇとなぁ~』キュッキュッ


赤ずきん「……」

ヘンゼル「考えがまとまったみたいだね、それじゃあ聞かせてもらおうか。君が一番女子力が高いと思うのは誰だい?」

赤ずきん「…赤鬼かしらね」

ヘンゼルドロシー「えっ」



おしまい(本編は後日!)

286: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:19:04 ID:DXW 
ルイス・キャロル著 不思議の国のアリス 六章より

・・・

「チェシャ猫さん、私はこれからどっちの道に進めばいいのか教えてくれる?」とアリスは聞きました

「どっちでも君の好きな方に進めばいいさ」とチェシャ猫が答えたのでアリスは質問を変えることにしました

「それじゃあこの辺りには何があるのかしら?そしてどんな人が住んでいるの?」

アリスの質問にチェシャ猫はニヤニヤしながら答えました

「あっちの方角に進めば帽子屋の家にたどり着くだろうね。そしてこっち側の方角には三月ウサギの家がある」

「どっちでも好きな方を訪ねると良いよ。まぁどっちともxxxxだけどね」

ニヤニヤと話すチェシャ猫にアリスは言いました

「でも私はxxxxのところになんか行きたくはないわ」

「そりゃ無理な相談だ、この世界じゃみんなxxxxなんだから。帽子屋も三月ウサギもxxxx、僕もxxxx、君もxxxxだ」

「まぁ、どうして私がxxxxなの?私はxxxxなんかじゃあないわ」

怒るアリスにチェシャ猫はニヤニヤしたまま答えました

「いいや、君は絶対にxxxxだよ。そうじゃなければ――この世界には居ない」



「だってこの世界にはxxxxしかいやしないんだから」

・・・
287: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:20:57 ID:DXW 

不思議の国のアリスの世界 三月ウサギの庭

カチャカチャッ

三月ウサギ「ったくよぉ…あいつらときたら菓子のカスをボロッボロこぼしやがって、掃除が大変だぜ」サッサッ

三月ウサギ「さて、掃除が終わったら茶葉のストック確認して…砂糖とミルクも見ておかねぇと。菓子も特別なもんが欲しいな、あとで帽子屋に相談するか」

三月ウサギ「折角だから特別なティーセット出しとくかな。テーブルクロスもとっておきの奴引っ張り出して、花もとびきり綺麗な奴を――」

スッ

帽子屋「ンフフッ、お茶会の支度してる時のアナタはいつだってご機嫌ねぇ。でも祝勝会の準備はちょーっと気が早いんじゃないかしらぁ?」ブホホッ

三月ウサギ「なんだ帽子屋、お前【雪の女王】の世界に向かったんじゃなかったのか?アリスの帰りが遅いってんで迎えに行くって話だったろ?」

帽子屋「そうよぉ、でももう済ませたわっ。雪の女王とキモオタちゃん相手にちょーっぴり手間取ってたみたいだけど、雪の女王は始末したしアリスちゃんは別に怪我とかしてないから大丈夫よっ」

三月ウサギ「そりゃあ何よりだ。で、一緒じゃねぇみたいだけどアリスは何してんだ?」

帽子屋「アリスちゃんなら今頃、鬱陶しい結界を破って【アラジンと魔法のランプ】の世界に居るでしょうね。何をするために向かったのか…なんてことは言わなくたって当然わかるわよねぇ?」ブホホ

三月ウサギ「当たり前だろが。あらゆる願いを叶える魔法のランプ、そいつを奪いに行ったんだろ?そんなもんクイズにもなりゃしねぇよ」

帽子屋「ぶほほっ、大正解!まぁアタシ達はその為に魔法具集めてたんだしねぇ~、魔法具集めには結構苦労したけれどようやく報われるって感じねぇ」

三月ウサギ「まぁそうだけどよ、んなことより護衛は誰がついてるんだ?まさかアリスを一人で向かわせたって訳じゃねぇだろうな?」

帽子屋「当然よっ、護衛にはアシェンちゃんがついてるわ。あの娘の強さは折紙付きだから大丈夫でしょっ。そんなことよりもアタシ喉渇いちゃってるのよぉ…ねぇお茶を一杯もらえなぁい?」

三月ウサギ「あいにく準備中でな。おらっ、水でも飲んでろ」コトッ

帽子屋「んもうっ!ワタシはこれでもグルメなのよ!?今更ただの水なんて出されても満足できないわよっ!まったく……カァーッ!潤うわぁっ!」ゴクゴクゴク プハーッ

三月ウサギ「にしちゃあお前、随分といい飲みっぷりじゃねぇか…」
288: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:22:33 ID:DXW 

三月ウサギ「で、結局何しに来たんだ?まさか茶を飲む為だけに来たってわけじゃあねぇんだろ?」カチャカチャ

帽子屋「もちろんよぉ~。アリスちゃんが『ボクが魔法のランプを奪いにいっている間、帽子屋は休んでくれて構わないよ。留守番を兼ねてね』なんていうもんだからお言葉に甘えてんのよっ」

三月ウサギ「そりゃいい御身分なこって、まぁ俺も待機だから人の事言えねぇけどよ」フキフキ

帽子屋「でっ、時間も出来た事だし三月ウサギちゃんには話しておきたい事もあったからお邪魔したってワケよぉ~」クネクネ

三月ウサギ「俺に話す事だ?あんまり…つぅか微塵もいい予感はしねぇがよぉ、まぁ言ってみろ。俺に話したい事ってなんだよ?」

帽子屋「始めに言っておくけど…コレすんごくマジメな話よぉ?」

三月ウサギ「あぁ、わーったわーった。お前がそうやって話を切り出して真面目だった試しがねぇんだよ、どうせまたくだらないジョークかハートの女王へのイタズラでも思いついたんだろ?」

三月ウサギ「お前はいつだってそうだ、マジメな顔して興味を引いておきながら口を開けば答えのないナゾナゾだのくだらない替え歌だのを披露してよぉ…もう俺は騙されねぇんd」

帽子屋「アタシね、実は雪の女王殺してないのよ」

三月ウサギ「はっ?」ガタッ

帽子屋「だからぁ…始末したって言ったけど彼女まだ生きてるの、生け捕りって言うやつよぉ。城の敷地の時計塔あるでしょ、あそこに幽閉してるわ。あそこはとても頑丈な造りだし陽の光もよく当たるからねぇ」ブホホ

三月ウサギ「待て待てお前…!生け捕り!?そりゃなんの冗談だ!?先に言ってやるが笑えねぇからなそのジョーク!」バンッ

帽子屋「んもうっ…だからマジメな話だって言ったでしょぉ?冗談なんかじゃないわ、本当の話よ」

三月ウサギ「おいおい…マジかお前…。あの雪の女王だぞ!?殺さず生かしておくなんざ何を考えてるんだテメェはよぉ!」バンッ
289: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:26:32 ID:DXW 
帽子屋「何を…って、そんなの決まってるじゃないのぉ。アナタと同じよ、アタシはアリスちゃんとアリスちゃんの願いのことだけしか考えちゃいないわ」

三月ウサギ「だったらどうして女王を殺さなかった!?こないだの話し合いで雪の女王は殺すべきだって結論になっただろうが!何を独断で勝手な事をしてんだ!」

三月ウサギ「確かに生け捕りにしてその魔力を利用するって案も出たがよ、雪の女王の魔力はあまりにもデカ過ぎる!生かして損はあっても利は無ぇ…だったら殺すべきだってアリスが決めたじゃねぇか!」

帽子屋「大丈夫よっ、彼女は随分衰弱しているし暑さのせいで魔力も枯渇してるわっ。あの様子じゃ自由に動けないし、仮にキモオタちゃん達が奪還に来てもあの塔をこじ開けるのは一筋縄じゃいかないわっ」

帽子屋「それに万が一女王を奪い返されたってあの女には何もできないわよっ。魔力を失ってんだからもう一般人とたいして変わらないものねぇ」ブホホ

三月ウサギ「例えそうだとしてもだ…帽子屋、お前少し楽観的すぎやしねぇか?」

帽子屋「あらそぉ?」ブホホッ

三月ウサギ「俺達がやってる事は余所の連中にとっちゃ許しがたい悪行だ。そりゃあ確かに今のところ俺達が圧倒的有利で、もはやアリスを止められる奴なんざいねぇように思えるが…」

三月ウサギ「仮にアリスが倒され、俺達の計画を阻止されちまったら…俺達やアリスがどうなるかわかってんだろ?」

帽子屋「わかってるわよ。アタシ達は今まで散々やりたい放題してきたんだもの、もしもアタシ達が敗者になったとしたら……世界中はアタシ達を、アリスちゃんを決して許さない」

帽子屋「【不思議の国のアリス】はもちろん現実世界にも別のおとぎ話の世界にも居場所なんかなくなっちゃうわね。そもそも、敗北した時点でアタシ達は捕えられて殺されるでしょうね」

三月ウサギ「あぁそうだ!いろんなもんを犠牲にしてきた事を今更とやかく言わねぇがな、ここまでやった以上アリスの願いを叶える以外に俺達に未来はねぇんだ!絶対に失敗は許されない戦いなんだよこれは!」バンッ

帽子屋「んもぅ…そんなに怒鳴らなくてもわかってるわよ」

三月ウサギ「わかってるってんならなんでこんな事してんだお前は!しくじれない以上、どんなに小さな可能性でも不安要素は潰すべきだろうが!」

帽子屋「確かにアナタの言ってる事は正論よ。アタシ達の役目はアリスちゃんを勝利に導く事、どんな些細な障害でも取り除くべきだってアタシも思うわ」

三月ウサギ「だったらよぉ…!」

帽子屋「それでもね、今のアタシは…雪の女王は殺すべきじゃないと思うのよね。他ならないアリスちゃんの為にもねっ」
290: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:30:36 ID:DXW 

三月ウサギ「アリスにとって雪の女王は障害にしかならねぇだろ!こっちに引き入れるにしてもどう口説こうが脅そうが俺達に味方するとは思えねぇしよぉ…」

三月ウサギ「まったく、わっかんねぇな…どうして雪の女王を生かしておく事がアリスの為になるってんだよ!?」

帽子屋「簡単な話よ。ルイスちゃんが昔、雪の女王にお世話になった事があるってお話…とうぜん覚えてるでしょぉ?」

三月ウサギ「あぁ、チェシャ猫が仕入れてきた情報だろ?ルイスがアンデルセンの弟子してたとき雪の女王が助手してたっていう話――」ンッ?

三月ウサギ「おいおい…まさか雪の女王がルイスの恩人だからって生かしてたってのか!?」

帽子屋「その通りよぉ、大正解ね三月ウサギちゃん」ブホホッ

三月ウサギ「お前馬鹿か!そんな百年以上も昔の…しかもアリスが直接関係してるわけでもねぇ奴に恩義なんざ感じる必要ねぇだろ!」

帽子屋「確かにアリスちゃんには直接関係ある話じゃないわね、もちろんアタシ達にとっても」

帽子屋「でもルイスちゃんは感謝してると思うわよぉ?師匠のアンデルセンにも先輩の雪の女王に対してもねっ。ルイスちゃん、情に厚いからねぇ」ブホホ

三月ウサギ「そりゃあルイスは感謝してるかもしれねぇけどなぁ!それとこれとは話が違うだろうが!」

三月ウサギ「ルイスの恩人はルイスの恩人!アリスの敵はアリスの敵!その相手がたとえ同一人物だとしても関係なんざねぇだろ!?」

帽子屋「そうね、アタシ個人としてもルイスちゃんが受けた恩義はアリスちゃんにとってはなんの関係もないと思うわよ?」

帽子屋「でも…当の本人、アリスちゃんはどう思うのかしらねぇ?」
291: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:34:52 ID:DXW 

三月ウサギ「どうもクソも…関係無いと思ってんじゃねぇのか?つーか雪の女王とルイスの関連性を知った上で殺すって決断出したのは他でもないアリスだぜ?」

帽子屋「そうねっ、でもそれがアリスちゃんの心からの言葉かどうかはわからないわよっ?」

三月ウサギ「なぁ、お前はさ…こう言いたいのか?実はアリスは雪の女王を殺す事を躊躇していた。ってよぉ」

帽子屋「んー…細かいところまでいうとちょっと違うんだけどねぇ。まぁ、ザックリ言えばそんなところかしらっ」

三月ウサギ「俺にはそんな風には見えなかったぜ?チェシャ猫からこの一件聞いた後も相変わらずアリスは目的を達成するためには容赦が無かったしよぉ」

三月ウサギ「容赦なく別世界を消して、躊躇なく殺しに手を染めてたぜ。いくら大好きなルイスの恩人だからって…アリスが女王に情なんかもつかぁ?」

帽子屋「まぁ少なくとも情は持ってないわねっ、アリスちゃんが気にして居るのだとすればおそらく…理由はただひとつね」

帽子屋「『ボクが雪の女王を殺したと知ったらルイスはどんな顔をするだろう』って事だけよ、例えとっくに亡くなってても大好きなルイスちゃんには嫌われたくないでしょうしねぇ」

三月ウサギ「お前さ、そこまで言うからには何か根拠っつぅか思い当たる節があるんだよな?まさか推測だけで話してるわけじゃねぇだろ?」

帽子屋「ンフフッ、もちろん根拠ならあるわよっ。それはねぇ…アタシの鋭いオンナの勘ってやつかしらn」

三月ウサギ「張っ倒すぞお前」

帽子屋「冗談よ。ほらァ、アタシ客商売長いじゃない?だから表情とか雰囲気でなんとなーく本音っていうか考えてる事わかっちゃうのよぉ、そゆとこ目ざといのよ」

帽子屋「チェシャ猫ちゃんがルイスちゃんと女王の関係話した時、アリスちゃんは特に表情変えずに冷静な風に見えたけど……」

帽子屋「きっと、内心動揺していたはずよ。少なくとも私にはそう見えたわ」
292: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:38:23 ID:DXW 

三月ウサギ「つってもなぁ……」

帽子屋「まぁアリスちゃんのことですもの、無理やりにでも自分の中で折り合いをつけて結局は雪の女王を殺すことにしたんでしょ。リーダーである自分が悩んでちゃ示しがつかないなんて思ったのかもねぇ」

帽子屋「でも…結局殺す事はできなかったわね。気持ちの上ではきっと殺す気でその感情に嘘は無かったんでしょうけど、雪の女王にルイスちゃんの名前出されたことでどこかで心がセーブしちゃったみたいねぇ」

三月ウサギ「……」

帽子屋「三月ウサギちゃん、なんだか納得いかないって顔ねぇ?」

三月ウサギ「お前の言ってる事、とりあえず筋が通っているようにも聞こえる。確かにアリスはルイスの想いを大切にしてる、責任感が強いってのもそうだ、お前が言うようなこともあるかもしれねぇ…。でも結局その根拠も説も推測の域を出ないレベルだぜ」

帽子屋「それは否定しないわねっ。まぁ…アタシの妄想だといえばそれまでだしねぇ、商人の勘って事以外に根拠があるわけじゃないし」

帽子屋「でもね、もしこの推測が事実だとしたら…雪の女王を殺してしまえばアリスちゃんには決して外せない枷が食い込むわ、ルイスちゃんに対する罪悪感と言う名のね」

帽子屋「そしてその枷は…きっと重要な局面でアリスちゃんを動けなくする。そしてそれは…作戦の失敗につながる、それだけは絶対に避けなきゃならない」

三月ウサギ「だから大事をとって雪の女王を生け捕りにしたってか?」

帽子屋「そうよ、それに彼女を生け捕りにした事はアリスちゃんも知ってるけど、殺せなんて命令私にしなかったわよ?まぁ生かせとも言わなかったけどね」

三月ウサギ「ふーむ…理屈はわかったぜ。言いたい事がねぇわけじゃないが、アリスが黙認してるってんなら俺がやいやい言う必要もねぇ。ただ…」

三月ウサギ「アリスは今までに何度もヤバイ修羅場をくぐりぬけてきたんだ、罪悪感に押しつぶされるほど弱くはねぇと俺は思うぜ」

帽子屋「あらっ、それは誤解よ。三月ウサギちゃん?」
293: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:42:02 ID:DXW 

帽子屋「あの子は…アリスちゃんは強くなんかないわ。むしろ弱い女の子よ、アタシ達が守ってあげなきゃならないほどにね」

三月ウサギ「まぁあいつは元々は現実世界の人間だしな、時間停止以外に特別な力があるってわけでも魔法が使えるわけでもねぇ」

三月ウサギ「でも俺は強いと思うぜ?あれくらいの年齢の女が世界を敵に回す決断をしたんだ、強くなけりゃそんな覚悟もてねぇだろ」

帽子屋「ンフフッ、わかってないわねぇ~…三月ウサギちゃんはっ」

三月ウサギ「なんだよ…だってそうだろ?心が強くなけりゃ世界消して人殺して平気な顔でいられねぇだろ、普通」

帽子屋「そりゃあ覚悟はしてるでしょうけどね、それでも結局アリスちゃんは…まだまだ少女、女の子なのよっ」

帽子屋「どんなに覚悟して修羅場を抜けてきても、大好きな人の名前を出されて少し心が揺れてしまうような…まだまだ子供の女の子」

帽子屋「別の世界に向かうとね、余所の世界の連中はアリスちゃんをまるで悪魔のように言うのよ…恐れるべき悪人のように。まぁ実際やってる事はそうかもしれないけど」

帽子屋「でもね…いくらおとぎ話の世界を消そうともその住人を滅ぼそうとも、冷酷な殺人鬼だの悪逆非道な悪魔だの呼ばれてもね…結局アリスちゃんはただの女の子なのよ、アタシにとっては」

三月ウサギ「まぁ、な…」

帽子屋「自分自身を蔑ろにされて、大切な人を蔑まれて…人々を恨んで世間を恨んで、世界に絶望してそしておとぎ話の世界を恨んで…」

帽子屋「やっている事の規模は大きいけれど、アリスちゃんの心の根っこにある感情は結局大人や社会に対する反抗、不満よ」

帽子屋「普通の女の子が持つ感情と、それはそんなに違うものでもないでしょうに。特別あの子が強いってわけじゃないわよ」

三月ウサギ「確かにな、そう考えりゃ…結局はあいつもただの少女ってわけか」

帽子屋「えぇ、ワタシはそう思うわね。まぁなんにしても…アタシ達がすべきことは今までと変わらずたった一つだけ、アリスちゃんの幸せを願うことのみ」

三月ウサギ「そりゃあ俺もお前も、あいつらも同じだろうよ」

帽子屋「そうよねっ、でも悲しい事にこの世界は誰かを幸せにすれば他の誰かを不幸にしなきゃならない仕組みになっている」

帽子屋「【不思議の国のアリス】でのアナタのお茶会と一緒ね、自分のティーカップが汚いのなら席を一つずれて…それを他人に押し付けるしかないのよ。そうすれば自分は綺麗なティーカップを使える、結局は誰かが汚れたカップを我慢して使わなきゃならない」




帽子屋「でもそれはアリスちゃんの役目じゃないわ。アリスちゃんには綺麗なカップで楽しいお茶会を過ごしてほしいものね」ブホホッ

・・・
294: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:46:34 ID:DXW 
時間は前後し…
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 裏の森

キィィィィィン

キモオタ「ぶひいいいぃぃっ!」ドッサァー

ティンカーベル「ここは…見覚えがある!シンデレラのとこの魔法使いの家だ!ほらあそこ裸王とヘンゼルが倒した木があるしっ!」

キモオタ「確かにそのようですな…つまり雪の女王殿は、我々の事を考えてこの世界に……って、カイ殿ぉぉぉぉぉっ!」キャッチ ズサーッ

カイ「……」ゼェゼェ

キモオタ「ぶっふぅ…カイ殿満身創痍ですからな、その状態では着地も出来ないでござろうし。我輩のキャッチが間に合ってよかったでごるよ」

ティンカーベル「うんうん、そうだよねっ。ここでまたカイに大怪我なんてさせたら雪の女王に合わせる顔がないm…むぐっ!ちょっとカイ!いきなり身体掴まないでよ!」ガシッ

カイ「……おい、ティンカーベル」ギロリ

キモオタ「か、カイ殿…?なんかすごい顔をしておりますな…いや心中お察しするでござるが、ひとまずここh」

カイ「ティンカーベルッ!お前、確か世界移動の魔法使えるんだよな?」

ティンカーベル「うん、できるよ。でも…」

カイ「だったら何をモタモタしてんだ!こうしている間にも女王はアリスに攻撃されてる間もしれねぇんだぞ!?時間がねぇんだ!」

カイ「さっさと【雪の女王】の世界へ戻れ!あいつ何を考えて俺達を逃がしたんだかしらねぇが…馬鹿な真似しやがって!」

カイ「今すぐに戻って加勢するぞ!そしてこんな馬鹿げた真似をしている連中に文句を言ってやらねぇと俺の気が収まらねぇんだよ!」
295: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:50:04 ID:DXW 

ティンカーベル「……」

カイ「おいティンカーベル!何をチンタラしてやがる!一刻を争うって事がわからねぇか!?さっさあの世界へのゲートを…」

ティンカーベル「……駄目だよ、あの世界には戻れない」

キモオタ「……」

カイ「はぁ!?テメェ何を言ってんだ!戻らねぇって…あいつを見殺しにしようって言うのか!?」

ティンカーベル「そんなつもりはないよ、でも駄目。絶対に私は世界移動…しないよ」

カイ「ふざけてんじゃねぇぞテメェ…!そんなに自分の命が惜しいのか!?あぁ!?アリスにやられっぱなしで悔しかねぇのか!?」

ティンカーベル「悔しいよ!悔しいに決まってるじゃん!特訓頑張ったけど歯が立たなくて…何も出来なくて、すんごく悔しいし今すぐにでもアリスに仕返ししたいよ!」

カイ「だったら早く世界移動しろ!んなところでウダウダ話してても埒があかねぇだろうが!」

ティンカーベル「じゃあ聞くけどさ、戻ってどうするつもりなの!?説明してよ!さっき私達は大したこと出来ずにボロボロにされてんだよ!?今から帰って何かできるとは思えないよ!」

カイ「…それでもだ!勝機があろうとなかろうと、あいつを見殺しにするなんざ俺にはできねぇ!」

ティンカーベル「じゃあ女王が心配だからって何もできない私達がもっかい戻ってさ、そんでアリスと戦ってなんになるの!?勝ちなんかこれっぽっちも見えないんだよ!?」

ティンカーベル「だったらここは女王の想いを無駄にしないためにも体制を整える場面じゃん!しっかり対策しなおしてアリスを倒す事、それが私達が女王にとって出来る最後の――」

カイ「テメェ…最後ってどういう意味だ言ってみろクソ妖精が…!」
296: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/23(月) 01:54:31 ID:DXW 
キモオタ「落ち着くでござるよカイ殿!お主まだ血を流しているというのにその様に暴れては…」

カイ「うるせぇ豚ァ!おいティンカーベル、テメェ等がこないってんなら好きにしろ。だが俺一人だけは元の世界へと連れ戻せ!」

ティンカーベル「…それも駄目、カイ一人で戻っても…悪いけど何にも出来ないよ。それに…もう傍から見たっ女王は限界じゃん!女王が心配なのはわかるけど、でも……」

カイ「…じゃあなんだ、頭を下げりゃいいのか!?土下座でもすりゃあお前は満足して俺を元の世界に返してくれんのか!?」

ティンカーベル「そうじゃないよ!私はただ…!」

カイ「……頼む、お前にしかできねぇんだ。俺には、俺にはあいつを見殺しにするなんか、できn」フラッ

ドザッ

キモオタ「カイ殿ォ!?いわんこっちゃない!お主相当に血を失っているでござるからあまり無茶をしては…!」

ティンカーベル「カイ…!」

カイ「頼む…頼むティンカーベル…俺を、俺をあのせかいへ……」ゼェゼェ

キモオタ「……」

魔法使い「裏庭が騒がしいから着て見れば……予想以上にひどい有様だな」

キモオタ「魔法使い殿…!丁度よかったのでござる、実は大変な事が起こってしまい…助言をしていただきたいでござるがいいですかな!?」

魔法使い「こちらは元よりそのつもりだ。どうやら…アリスを倒すどころか力の差を見せつけられたようだな…」



魔法使い「今はとにかく部屋入りなさい。立ち話をしているわけにもいくまいし…その少年の手当ても必要そうだ」

304: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:21:40 ID:w7G 
ずっとずっと昔
雪の女王の世界 書庫

・・・

カイ「……」ペラッ

カイ(俺がこの宮殿で暮らす事になってもう一週間か…)ペラッ

カイ(行方不明になった俺の捜索もいい加減に打ち切られただろ、家族も村の連中も俺の生存は絶望的だと諦める頃だ。まぁ、ゲルダの奴は俺が死んだなんて絶対に認めないだろうがな…)

カイ(心配してくれている連中には悪いが、ここでの生活は俺にとってかなり快適なもんだ、何しろこの膨大な数の本に囲まれて過ごせるんだからな)

カイ(親父の仕事や家事の手伝いをする必要なんざねぇ。一日中、気が済むまで本を読んで思索にふける事が出来るなんてのはまさに天国だ)ペラッ

カイ(寝床にも飯にも不自由しねぇ快適な生活。ただ、一つだけ不満があるとすれば……)ペラッ

スタスタスタ

雪の女王「カーイっ!おはよう、今日も早起きだな君は。なんにせよ勉強熱心なのはいいことだ、偉いぞ」ムギュッ

カイ「……」ペラッ

雪の女王「そうはいっても何か食べなければ頭も働かないぞ。さぁ私と一緒に朝食を取ろうじゃあないか」ギューッ

カイ「……俺はいい。抱きしめるな、ページがめくれねぇだろうが」

雪の女王「フフッ、なんだなんだ。照れているのか?かわいい奴め」フフッ

カイ「……」

カイ(快適な生活の中で感じる唯一の不満、それがこいつ…この宮殿の主にして強大な魔力の持ち主…雪の女王だ)
305: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:24:30 ID:w7G 
カイ「俺に構うな。メシなら一人で食えばいいだろ、俺は読書を優先する」

雪の女王「そんなつれない事を言うなよカイ。君の朝食用にと思って普段は食べない卵やベーコンなんかを揃えたんだぞ?」

カイ「知った事じゃねぇな。捨てちまうのがもったいねぇってならお前が食えばいいだろ」

雪の女王「それは出来ない。私は火を使った調理はできないんだ、だから君が食べてくれなければ困る」フフッ

カイ「勝手な事を言いやがる…。つぅか調理するの俺じゃねぇか、面倒くせぇ…」

雪の女王「そうはいっても料理することにも慣れておかないとな。そうしなければ君はこの先、温かいものは一切口にできないぞ?」

カイ「メシにこだわりはねぇ、水とパンがありゃあ十分だ」

雪の女王「そういう訳にもいかないだろう?これから長い間君と私は生活を共にするわけだが、私も時には数日間宮殿を空ける事がある」

雪の女王「いつ、何が起きるかわからないからな。君もある程度の生活力を身につけていかないといざという時に困るぞ?」

カイ「…だったら俺は後で適当に作って食う。別にお前と飯を食う必要性は無いだろ」

雪の女王「魔法具の影響とはいえ君は随分とドライだな、確かに必要性は無いかも知れないが意味はあるぞ?」

雪の女王「誰かと食事をするのは単純に楽しい時間だ。それに食卓を囲めば相手の好みや人間性も見えてくる。これは経験則だが、親密な関係を築く上でこれはとても大切な事だぞ」

カイ「…だからそれが無意味だって言ってんだよ。俺はお前と慣れ合うつもりなんかねぇんだからな」



カイ「所詮、俺とお前の関係は【雪の女王】の作者が作りだした単なる『設定』だ。親密になる必要も親睦を深める意味もありゃしねぇんだよ」
306: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:28:08 ID:w7G 

カイ「確かに…悪魔の鏡の破片のせいで俺は変わった。性格の豹変した俺があのまま村に居てもロクな事にならなかったのは目に見えてる」

カイ「そういう意味では俺をここに連れて来たお前に一応感謝はしてるぜ。だがそれも結局は作者が生み出したおとぎ話の筋書きに過ぎねぇんだ」

カイ「俺達に求められている事は慣れ合って生活する事じゃねぇ。ゲルダがここに来て俺にかけられた魔法を解くまでの間、俺達は適当に時間をつぶしてりゃあそれでいい」

雪の女王「……」

カイ「まぁ、俺もこの世界が消えちまったら困るんでな。存続の為にもすべきことはしてやる、だが必要以上にお前と慣れ合うつもりはねぇんだ」

雪の女王「なるほどな、君の考えも一理ある」

カイ「そうだろ?お互いに干渉するのは最小限にしようぜ、その方が面倒くさくなくていいだろ」

雪の女王「だがそれは…少々枯れた考え方だな。結末や運命が決まっているからその流れに身を任せて何もしないなんていうのは、幸福になる事を放棄しているだけだ」

カイ「あぁ…?何言ってんだお前、俺もお前もおとぎ話の世界の住人だ。どう足掻こうと運命には逆らえねぇ、何をしたところで結果がかわらねぇならそりゃ無駄な足掻きだろうが」

雪の女王「そんな事は無いさ、アナスンは…作者は【雪の女王】の原稿に中で私と君の生活について詳細は記していないんだから」

雪の女王「確かに私達の運命や結末は決まっている。だが本に記されていない部分…言わばページとページの間の空白の時間、それをどう使おうと私達の勝手というわけだ」

雪の女王「そしてその時間をどう過ごしたか、それは必ず結末の先の未来を変えるだろう。おとぎ話の住人である私達にも変えられる事はある、私はかつて共に暮らした男からそれを学んだ」

カイ「……」

雪の女王「だから私達は出来る限り幸福になる努力をしないとな」フフッ

雪の女王「私達の人生は物語を締めくくる『めでたしめでたし』の後も、ずっと続くのだから」
307: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:32:59 ID:w7G 

雪の女王「君の人生はゲルダに助けられておしまい…じゃあないんだ、その先どうするか決めるのは作者じゃない。君だよ」

カイ「……まぁ、興味深い説だとは思うぜ。それが事実かどうかは別としてな」

雪の女王「私はその考えに則って、君との生活をお互いにとって豊かで幸福なものにしたいと考えている。ゲルダがここを訪れるのはまだまだ先、それならばその間の時間も楽しんでいたいと思うんだよ」

カイ「理屈はわかるけどよ、だからって出会ったばかりのお前を手放しで信用しろって言うのか?それはあまりに都合がよすぎるぜ」

カイ「確かにお前に感謝してるとは言ったがよ、それはお前の事を信用してるかどうかってのとは別問題だ。逆に聞くがお前は俺を信用できるのか?出会って数日、名前以外ろくに何も知らないガキの事をよ」

雪の女王「出来ると言えばそれは嘘になる。正直に言えば、君の全てを信用しているというわけじゃあないよ、今はまだね」

カイ「そうだろうよ、だったらよぉ…」

雪の女王「でも君と親しくなりたいとは思う、君の事をもっと知りたいともね。だから君を食事に誘った」

カイ「……」

雪の女王「信用するとかしないとか、そういうのはお互いをもう少し知ってからだよカイ。何が好きとか、どんな癖があるとかこういうところが鬱陶しいとか知ってから、その先だ」

雪の女王「君が好きな本だって装丁からじゃ全てわからないだろう?手にとって、その内容に目を通して初めてどんな本かわかる。人間も一緒だよ」

カイ「……いいぜ、そこまで言うならメシくらいは付き合ってやる。読みもせず本の内容にグダグダ文句つける奴は俺も嫌いだからな」スッ

カイ「だが、俺がお前を信用するかどうかはまた別問題だぜ。お前の事を多少知ってそれでもお前に付き合いきれねぇと思ったら俺は好きにする、いいな?」

雪の女王「フフッ、それで構わないよ。だけど私はなんとなく、君とはいい家族になれるんじゃないかって思っているよ」

カイ「流石にそりゃあ無いな。仮にお前が信用に足る奴だったとして、俺はお前にそこまで肩入れするつもりはないぜ。家族とかねぇよ、ありえねぇ」

雪の女王「それじゃあ勝負するかい?いつか君と私は離ればなれになる時が来る、その時に君が涙を流すかどうか賭けようじゃないか」クスクス

カイ「馬鹿かお前、んな事で俺が泣く訳ねぇだろうが」

雪の女王「へぇ、それじゃあ賭けに君が負けたらどうする?」

カイ「賭けにもならねぇ馬鹿馬鹿しい勝負だが、仮に俺が負けるようになりゃあ何だってしてやるぜ」


カイ「お前の命令だろうと願いだろうと何でも聞いてやる。それがどんなもんだろうとお前の望み通りにしてやるよ」

・・・
308: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:35:11 ID:w7G 
キモオタ達がここに来てしばらく後…
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷

・・・

ゴーテル「さてと、止血と応急処置はこんなもんじゃろ。あとは包帯を巻いて…ありゃ、どこにやったかの…おお、これじゃこれ」ゴソゴソ

カイ「……」

ゴーテル「よしよし、これでいいじゃろ。しかしこれはあくまで応急処置、あとでキチンと医者に診てもらう事じゃ。よいな?」

カイ「……」

ゴーテル「こりゃぁ!気落ちなんざ好きにしとりゃあええが返事ぐらいせんかい!」ベシッ

カイ「……っ!痛ぇだろうがババァ!傷口叩いてんじゃねぇよ、こちとら怪我人だぞ!?」ズキズキ

ゴーテル「ほう、自分が怪我人だという自覚はあるようじゃな。じゃったらもう少し怪我人らしくすることじゃ!こんな状態で戦いの場に戻ろうとするなど自殺行為じゃぞ!まったく…」

カイ「……わぁったよ。あと、悪かったな。応急処置してもらってよ」

ゴーテル「感謝するんならアンタんとこの女王にすることじゃ。もう少し処置が遅れたらお主、アリスの目の前で倒れていたところじゃったろうからな」

カイ「…そうだろうがよ、あいつには感謝なんざできねぇよ。自分を犠牲にするような真似しやがって、残された方がどう思うか考えろってんだよ」

ゴーテル「ふむ…お主の言う事は尤もじゃな、命が失われて本当に苦しい思いをするのは残された方じゃからな」

ゴーテル「じゃがあまり責めんでやって欲しいのぉ、女王の気持ちも痛いほどわかるでな。ワシも娘が危機にさらされておればこの身を犠牲にしてでも助けるわい」

カイ「そりゃあ、あんたんとこは親子だから当然だろ?」

ゴーテル「親子だとか血の繋がりなんざは関係無いわい。女王はあやつらやお前さんはどうしても生きていて欲しいと願った、そうでなけりゃ命など投げ出さんわ」

ゴーテル「女王がそれだけの覚悟をした以上…お前さんがすべき事は気落ちすることなんかじゃありゃせん。そうじゃろ?」
309: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:39:15 ID:w7G 

カイ「あぁ…そうだな。あいつはキモオタに言っていた、アリスを止める方法をもう一度考えろってな」

カイ「戦ってみてわかったが…あいつの時間停止は思った以上に厄介だ。あれをなんとかしねぇと…あいつを止めるなんざできねぇ」

ゴーテル「ほう…じゃが本の虫であるお前さんなら、アリスの時間停止を阻止する方法を知っておるのではないかの?」

カイ「……そりゃあ、心当たりはあるけどよ。そう言うなら女王だって千代だって知ってたはずだ、それで止められなかったってことはそういう事だろ」

カイ「つぅか【不思議の国のアリス】を読んだことある奴なら知ってるはずだろ、どうすりゃ時間を操れなくなるのかなんかよぉ」

カイ「こんな事に首突っ込んでんだ、キモオタ達だって【不思議の国のアリス】くらい読んでんだろ。俺が今更話す事なんかあるとは思えねぇぜ」

ゴーテル「じゃがな…あやつら結構いい加減じゃぞ?それにあやつらが読んだ本が原書の翻訳とは限らんぞ?あのおとぎ話ほどの知名度ならばそれこそ星の数ほど本があるじゃろうし」

ゴーテル「キモオタの事じゃ、手に取りやすい薄手の本…内容が簡略化された子供向けの本を読んでおるかもしれんしのぅ」

カイ「そういや千代が言ってたな…現実世界のおとぎ話の本にはわかりやすく読みやすくされたもんも多いってな」

ゴーテル「なんにせよあやつらは時間停止を阻止する方法を知らん。そしてお前は心当たりがある、ならば協力しない理由はあるまい?」

カイ「まぁ、そうだがよ…」

ゴーテル「それにあやつら、お前さんの事を心配しておったぞ。そうじゃろティンカーベル、いつまで扉の向こうに居るつもりじゃ?こっちへ来たらいいじゃろ」

キィッ

ティンカーベル「……いや、なんかさ、気まずくて。あのさ、カイ、大丈夫?怪我…」

カイ「見ての通りだ、大丈夫じゃねぇよ」

ティンカーベル「だよねぇ…。あのさ、さっきの事なんだけど…」

カイ「なんつうか…悪かったな。あの時は感情を抑えきれなくてよ、お前にも言いすぎちまった。許してくれ」スッ
310: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:41:04 ID:w7G 
ティンカーベル「ううん、気にしてないよ。私もなんていうか…力になれなくてごめん、でもやっぱりあそこで戻っちゃいけないって思ったから…女王の覚悟無駄にしたくないし…」

ティンカーベル「だからカイのお願いは聞けなかった。それだけはわかって欲しいなって…思うんだけど」チラッ

カイ「あぁ、今はもう大分落ち着いた、もう無茶は言わねぇよ」

カイ「あいつの行動を認めるってのは難しいが…俺がやらなきゃなんねぇ事はあいつに文句を言ってやる事じゃあねぇしな。お前じゃねぇがあいつの覚悟を無駄にするってのも嫌だしな」

ティンカーベル「そっか…!そうだよねそうだよねっ!折角女王が時間作ってくれたんだもん、一緒にアリスをぶっ飛ばす方法考えよう!ねっ!」

カイ「なんだお前テンション高ぇな…」

ゴーテル「こやつ、お前さんの処置しとる間ずーっとこっちをチラチラ見ておったからのぉ。お前さんと仲直り…というかわかりあえて嬉しいんじゃろ」ホッホッ

ティンカーベル「い、いいんだよそんな余計な事言わなくても!っていうか喧嘩してたままじゃなんか嫌なの当たり前じゃん!」

カイ「別に喧嘩じゃねぇだろありゃ、ところであいつはどうしたんだよ?」

ティンカーベル「あっ、キモオタは今みんなに連絡してる。アリスにこっちの作戦バレバレだったし、みんなに手を出さないとも限らないし注意してって言っとかないとね」

カイ「あぁ、あの時計で他の連中と連絡が取れるんだったか」

ティンカーベル「そうそう。それにアリスはもう【アラジンと魔法のランプ】の結界破る準備ができてるっぽい事言ってたからね…」

ティンカーベル「だから【アラビアンナイト】のシェヘラザードにも連絡するって言ってた。多分もうそろそろ戻ってくると思うんだけど――」

ドタバタドタバタ…バターンッ!

キモオタ「ブヒイイイィィッ!」ゴロゴロゴロ ガシャーン
311: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:43:32 ID:w7G 

ティンカーベル「噂してたら肉団子が転がってきた…」

ゴーテル「こりゃあ!キモオタ!人の家であんまり暴れるんじゃないわい、迷惑じゃろうが!」

カイ「つぅかなんで転がってきたんだよ歩いてこいよ、豚界でのトレンドかなんかかよ…」

キモオタ「ドゥフwww辛辣ですなwww我輩、カイ殿の声が聞こえた故ダッシュで戻ってきたというのにwww」コポォ

キモオタ「しかし慌て過ぎてつまづいてしまいましてなwwwそのままゴロゴロと思いっきりこけてしまったわけでござるwww時にゴーテル殿、我輩、腕をすりむいてしまった故に手当てをお願いしt」

ティンカーベル「そんなことどーでもいいからさ、みんな何って言ってた?それ報告してよ」

キモオタ「ちょwww少しは心配して欲しいwww」コポォ

キモオタ「まぁそれはさておきwww皆の者に連絡してきたでござるよwww赤ずきん殿、桃太郎殿、裸王殿、ラプンツェル殿…共に居る者たちにも伝言頼んだでござるwww」

カイ「で、どうするんだよ?アリスにバレちまっている以上、作戦は続行できねぇだろ?」

キモオタ「でござるな、かといって今、個々で動くのも危険でござるし十分に警戒しつつ待機してもらう事にしたでござる。そしてもしも各々の世界が消えそうならば十分に注意して【不思議の国のアリス】に移動してほしいと伝えましたぞ」

ティンカーベル「アリスが全部の世界を消しちゃったらどこに行っても危ないし、絶対消えない保証があるのそこだけだもんね…」

キモオタ「ぶっちゃけ敵地でござるし危険度で言えばヤバイのでござるが、こうなればやむを得んでござる。ここに今一度集まる事も考えたでござるが…」

ゴーテル「一網打尽にされる可能性もある、一か所に集まるのは危険に思えるのぉ」

キモオタ「我輩もそう思うでござる、故に今回はそれを避けたのでござるが…それよりも一つ気になる事があるのですぞ」
312: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:45:09 ID:w7G 

ティンカーベル「えっ、気になる事って何?もしかして誰かが危ない目にあってたとか…!」

ゴーテル「ワシの娘は無事じゃろうな!」ガタッ

キモオタ「ラプンツェル殿は無事でござるから座っていただきたいwwwなんか親衛隊が出来たとか言ってましたぞwww」コポォ

ゴーテル「どんな状況じゃいそれ。まぁラプンツェルの可愛さならば遅いくらいじゃがな」

カイ「おい、話を進めてくれ」

キモオタ「そうでござったwww実はでござるな…シェヘラザード殿に連絡がつかないのでござる」

ティンカーベル「えっ…なんで?」

キモオタ「それがわかれば苦労はしないでござる。おはなしウォッチは正常に機能してるのでござるが、連絡に応じてくれないのでござるよ」

ゴーテル「ふむ、シェヘラザードは【アラジンと魔法のランプ】の作者。連絡がつかないとは嫌な予感がするのぅ…」

ティンカーベル「でもさ、ラプンツェルってシェヘラザードのとこにいるんじゃなかった?」

キモオタ「それが親衛隊と別の世界で修業しているとかで同じ世界には居ないらしいのでござる。ラプンツェル殿からはシェヘラザード殿に連絡する手段もないとかで…」

ティンカーベル「だったらさ!私がひとっ飛びして【アラビアンナイト】に行って来るよ!」

カイ「でもよ、その世界には結界があるんじゃあなかったのか?」

ティンカーベル「そこでゴーテルだよ!ゴーテルの魔力なら結界破って世界移動できるじゃん!」
313: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:48:39 ID:w7G 
ゴーテル「……」

キモオタ「おおwwwそういえばそうでしたなwwwではゴーテル殿、頼みましたぞwww」

ゴーテル「それは無理な相談じゃ」

ティンカーベル「えぇっ!?なんで?前は出来たじゃん!」

ゴーテル「…今のワシにはそれだけの魔力は残っとりゃあせんのじゃ。あの結界を破る事は、もうできん」

キモオタ「以前よりも魔力が減っているという事ですかな?それはどういう……」

ガチャッ

魔法使い「ふむ、どうやら皆揃っておるようじゃな。カイとやら、傷は一先ず大丈夫じゃな?お主にもこの場に居て欲しい」

カイ「あぁ、問題ないけどよ…なんだ?なにをしようっていうんだ?」

魔法使い「お前たちはアリスを今度こそ止めるための策を練るためにここに飛ばされたのだろう?ならばすべきは奴の時間操作能力を防ぐ事。その件について少し話をしようと思ってな。お主なら【不思議の国のアリス】についても詳しいだろう、カイよ」

カイ「まぁ…何度も読んだからな。ゴーテルばぁさんにも言ったが時間停止を防ぐ方法にも心当たりがある」

キモオタ「おぉ…!それは心強いですな!」

魔法使い「うむ。実はワシとゴーテルも思うところがあってな…アリスの時間停止に対抗する方法を考えておった。そしてとある魔法具を作っておったのじゃよ」

ティンカーベル「あっ、もしかして前にちらっと言ってた奴?二人もなんか策があるって言ってたもんね!」

ゴーテル「そうじゃ、ワシと魔法使いの魔力を駆使して作ったアリスに対する対抗策」

魔法使い「さぁ、キモオタ。この魔法具を受け取るのじゃ、必ずやお主等の役に立つ」

コトッ

キモオタ「これはおはなしウォッチ…!?まさかこれは…我輩の持つおはなしウォッチの改良版でござるか?」

魔法使い「うむ、その通り。新たな機能を搭載したおはなしウォッチ…」

キモオタ「名付けて『おはなしウォッチドリーム』…というわけでござるな!?」キラーン
314: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/01/30(月) 01:52:58 ID:w7G 
その頃…
現実世界 本屋


店員「えーっと…この本はこっちの棚で、あの本はあっちの棚で…うーん忙しい!」ドタバタ

店員「そんでえーっと…次はおとぎ話か、このジャンルは数多くないから楽勝だな…よいしょっと!」ドサッ

店員「さてと、リストと照らし合わせて五十音順に並べていって……んっ?」

スゥゥゥッ

店員「あれ、おかしいな…リストにはあるのに本が無いぞ?さっきまであったのに…」ガサゴソ

先輩「おーい、どうした?無い本でもあったのか?」

店員「あっ、先輩。おかしいんですよ、ほらこれ。リストにはちゃんとあるのに本が無いんですよ、ミスですかね?」

先輩「マジで?なんて本?」

店員「【アラビアンナイト】です。ほら、リストにはあるんですけど…」

先輩「おいおい!お前目の前にあるじゃん【アラビアンナイト】!ほらこれ!」スッ

店員「えぇっ!?ホントだ!おかしいな…さっきは絶対無かったのに…」

先輩「もーっ、頼むよほんとにー!店長に怒られるの俺だぞー?じゃあ俺自分の仕事に戻るからなー」

店員「すんませーん…おかしいなぁ…さっきは確かに無かったのに……ん?」

スゥッ

店員「あれっ!?また無い!?えぇっ!?先輩ー!ちょっといいですかー!やっぱり無いんですけど…」

先輩「あのなぁ、お前も見ただろ?さっきちゃんと……ほらあるだろうがバカ!ちゃんと見なさい!」プンスカ

店員「えぇぇ…ホントだ。どうなってんのこれ……」

321: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:08:02 ID:TiB 
魔法使い「相変わらずお前のネーミングセンスは理解できんな…、どこから来たというのだその『ドリーム』は…」

キモオタ「ドゥフフwww現実世界のキッズ達に人気のアイテムから名を借りているのでござるよwwwっと、それはさておきwww早速でござるがこの魔法具の説明をしt」コポォ

ティンカーベル「ねぇねぇ魔法使い、おはなしウォッチの新しい機能ってなんなの?二人がアリスに対抗するために作ったって事は…やっぱり時間停止に対抗する力?」

キモオタ「ちょwww我輩のセリフがwww」コポォ

魔法使い「ふむ、長くなるのでその説明は後々するとして…。実はその新型おはなしウォッチ、まだ完成しておらんのだ。最後の仕上げが残っておる」

ティンカーベル「最後の仕上げ?なにそれ?」

ゴーテル「おはなしウォッチは使用者が他者との間に紡いだ絆を感知して会話を可能にしておるじゃろ?つまりキモオタが使って来たおはなしウォッチには様々な絆やこれまでの旅の記憶が込められておるというわけじゃな」

ゴーテル「その情報を新しいウォッチに移動させる必要があるんじゃよ。そうしなければ折角新型を手にしても今までと同じように使う事ができんのでな」

キモオタ「なるほどwwwつまり携帯の機種変みたいなもんでござるなwwwドゥフフwwwファンタジー機種変キタコレwww」コポォ

ゴーテル「機種変が何かは知らんが…前のウォッチから魔力を取り出して新ウォッチに流し込むだけの簡単な作業じゃ。では以前使っていたウォッチを貰おうかの」

キモオタ「了解でござるwwwではこのおはなしウォッチはゴーテル殿へ…ではよろしく頼みますぞwww」スッ

ゴーテル「うむ確かに。さてキモオタよ、今からこの旧ウォッチの魔力をその新型の方に転移させるでな…新ウォッチを腕に巻き、そのまま高く掲げよ」

キモオタ「ほうwww腕を高く掲げるとはまたベタベタな少年漫画的ポーズでござるなwwwさて、こんなもんでよいでござるかなwww」シュタッ

ゴーテル「腕を掲げるだけでいいんじゃ、ポーズまでとる必要はないのじゃが…まぁよかろう、そのままじっとしておれ」

ポオオォォ

キモオタ「おおおwwwおはなしウォッチが光に包まれていきますぞwwwこれはなんともふつくしいwww」コポォ

ティンカーベル(どうでもいいけど決めポーズが絶望的にダサい)
322: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:11:12 ID:TiB 

ゴーテル「…よし、もう手を下ろしても構わんぞ。これでその新たなおはなしウォッチも今までと同じように使えるでな」

キモオタ「ありがたいでござるwwwしっかし以前のおはなしウォッチとさほど見た目は変わりませんな」

ティンカーベル「うんうん、言えてる!どうせパワーアップすんなら見た目もかっこよくすればよかったのにねー」

魔法使い「そんなものは必要あるまい、魔法具のデザインを競っているわけではないのだからな」

キモオタ「確かにそうでござるけどwww」コポォ

魔法使い「安心するといい、外見の変化は少ないが魔法具としてはより優れたものへと変化を遂げておる。一回りも二回りもな」

キモオタ「ほうwwwプロである魔法使い殿がそう仰るのならば間違いは無いでござろうwwwしっかし旧タイプのおはなしウォッチも相当便利な魔法具だったでござるが…」

キモオタ「この新型はそれを凌駕するというのでござるから驚きでござるよwwwバージョンうpしたおはなしウォッチの新たな機能に今からココロオドリますなwww」コポォ

ティンカーベル「でさ、結局…このおはなしウォッチは何ができるようになったの?やっぱり時間停止には時間停止で対抗する感じなの?」

魔法使い「まぁ、簡単に言えばそういう事になる」

ゴーテル「アリスが時間を止めている間、停止した時間の中を自由に行動できるのはアリスだけじゃ。それに対抗するにはアリスの能力自体を無効化するか、こちらも時間を止めて同じ舞台に立つ必要があるでな」

魔法使い「アリスが魔法や魔法具を使って時を止めているのならば話は早かったのだが…アリスの能力は少々特殊。こちらも時間停止の能力を得たほうがよいと判断した」

カイ「マジかよ、女王ですら出来なかったってのに【シンデレラ】と【ラプンツェル】の魔女が手を組めば時間を操る魔法すら可能ってのか…すげぇな」

キモオタ「ほうwwwまさか我輩が時間操作系の能力者になる日が来るとはwww凄まじいパワーアップでござるぞこれwww」コポォ

ティンカーベル「だよね。実際アリスが強いのも時間停止が厄介だからってのが大きいし、アニメや漫画でも時間操作できるキャラは強いし人気あるもんね」

キモオタ「ジョジョのDIO様とかラスボスでござるしなwwwちなみに時間停止キャラなら我輩の推しは断然、まどマギのほむほむですなwww」コポォ
323: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:15:01 ID:TiB 
カイ「つーかよぉ、言っちゃ悪いがそんな便利なもん作れるならもっと早く作ってくれって話なんだが…」

魔女s「……」

ティンカーベル「ちょ、そんな言い方しちゃ悪いよ!」

カイ「だから悪ぃって前置きしただろ。でも実際よぉ、こっちにも時間停止の能力がありゃあアリスにあそこまで苦戦する事も無かったって事だろ?」

キモオタ「むむっ…確かにそうかもしれんでござるが…」

カイ「考えても見ろよ、もっと早くにこの能力もってりゃあきっと数え切れないほどの世界を救えたはずだぜ。それ以上の命だって守れたはずだ」

ティンカーベル「そ、そーだけどさ…なんか理由があるんだって…」

カイ「だとしてもだ。ばーさん達を責めるつもりなんかねぇけど、こういう便利なもんがあるならもっと早く――」

ガタッ

ゴーテル「たわけ!容易くできるもんならワシらもとっくにやっとるわい!考えてモノを言わんか馬鹿者!」ビュン

ゴスッ

カイ「痛ぇ…!殴るこたぁねぇだろばーさん!」ギッ

ゴーテル「お主の言いたい事ぐらいわかるわい!確かにもっと早くこの能力があれば雪の女王を失わずに済んだはずじゃ。お前さんはそこが気に食わんのじゃろ?」

カイ「……」チッ

ゴーテル「雪の女王を失ったお主の辛さは理解しとるつもりじゃ。じゃがな、大事なもん失っておるのが自分だけじゃと思わん事じゃ!」

キモオタ(魔法使い殿はシンデレラ殿を我が子のように思っていたでござる。魔法使い殿もまた、アリス殿の手によって大切な人を失った独りでござったな…)

魔法使い「もうよい、ゴーテル。相手は子供でしかも怪我人だ、それに気持ちはわかる…そこまでだ」
324: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:16:57 ID:TiB 

ゴーテル「しかしじゃな魔法使い…」

魔法使い「もうよいと言っているだろう。それにワシも少々後悔しているのでな、確かにもっと早く時を止める魔法具を作っていればシンデレラを守れたかもしれぬ」

カイ「聞いた話じゃあシンデレラは確か…」

キモオタ「詳細は不明な点が多いでござるが、とりあえず今は…アリス殿のところに捕われているようでござる」

ゴーテル「言ったじゃろカイ、大事なもんを失っておるのはお前さんだけじゃないとな」

カイ「そうだったのか…。悪かった、俺はあんたの気持ちも知らないで言いすぎちまった。許してくれ」

魔法使い「気にするでない。感情的になった子供に責められて落ち込むほど純粋じゃありゃあせんよワシは」

カイ「あんたも俺と同じでアリスに家族を奪われちまってたんだな……」

魔法使い「ワシらは家族などという間柄ではありゃせんよ、シンデレラはこの国の王妃じゃがワシはただの魔法使い……いいや」

魔法使い「今のワシはただの老婆に過ぎん。魔法も使えぬただの老婆だ」

ティンカーベル「えっ?それってどういう事?魔法使えないって…?」

カイ「おい、あんたまさか…」

キモオタ「魔法使い殿!お主…もしかしてこの時間停止機能付きの魔法具を作るために魔力を……!?」ガタッ

魔法使い「……」

ゴーテル「数日前、ここでワシ等がシンデレラを捜索した話をした際、二人とも不思議に思っておったじゃろ?」

ゴーテル「魔法使いは世界移動をすると魔力が制御できなくなる体質じゃ、それなのに何故問題無く【美女と野獣】の世界へ行く事が出来たのか…」

ティンカーベル「そうそう!それ不思議に思ってたんだよね…でももしかして、その時にはもう…!」

ゴーテル「そうじゃ、その時点で魔法使いは完全に魔力を失っておった。いいや、自ら捧げたと言った方が正しいじゃろう」



ゴーテル「シンデレラを救いだすため、アリスを止めるため…魔法使いはその身に宿す魔力を全て投げ出したのじゃ」
325: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:21:22 ID:TiB 
ティンカーベル「完全に魔力を失ったって…。で、でも魔法の知識はあるわけだしなんとか魔法使う事も…!」

カイ「できねぇだろうな…グレーテルと似たようなもんだ。本人に魔法の知識があったとしても魔力が無けりゃ独りじゃ魔法は使えねぇ」

キモオタ「すまんでござる…その様な覚悟が込められた魔法具とは知らず、我輩はただただ浮かれてしまい…」

魔法使い「えぇい、何をしんみりしておる!まったく…ゴーテルが仰々しく語るからこやつらが責任を感じておるだろうが」

ゴーテル「そうは言うが大切な事じゃろう、こやつらに悪気が無い事くらいはわかるが…少々物事を軽く見過ぎじゃ」

ゴーテル「時間の流れは絶対、そして一方通行じゃ。そして空も海も大地も、そこに住む様々な生物もその流れに従って生まれそして死んでいく。何者にも干渉することは許されない、それが例え魔法使いや魔女でもじゃ」

キモオタ「むむ…我々、魔法使い殿やゴーテル殿に助けられてきたせいか、魔法さえ使えば何でもできると思い込んでいたようでござるな…」

ティンカーベル「うん…私もだ、しかもちょちょいのぱっぱでお手軽にできるって思ってた…」

魔法使い「それは大きな間違いじゃな。魔法とて万能ではない、確かに魔法は不可能を可能にする、理を覆す事が出来る、時に干渉するという事も…それ自体は不可能ではない」

魔法使い「だが何事にも代償は必要だ。紙切れを宙に浮かす魔法と時を止める魔法、同じ魔法でもその代償が同じというわけではないのだ。強力で影響力の高い魔法ほどその代償は大きい」

魔法使い「ワシの持つ魔力全てとゴーテルの魔力半分以上、それに数種類の希少な魔法植物と鉱物…それが時を止める為に必要な代償じゃ」

キモオタ「ゴーテル殿も魔力を…!」

ゴーテル「大丈夫じゃ、ワシはそもそも魔法植物の栽培がメインじゃしな。だが先に言ったように【アラビアンナイト】の結界を破る事は出来ん」

ゴーテル「ワシも魔法使いも…魔力を手放した事を後悔などしておらん。その事を恩着せがましくするつもりもありゃあせん」

ゴーテル「ただ、時間に干渉するという事は本来…それほどの代償と覚悟が必要と言う事じゃ」
326: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:24:27 ID:TiB 

ティンカーベル「…ずるい!ずるいじゃんアリスの奴!」バンッ

ティンカーベル「魔法使いとゴーテルが魔力を失ってようやく時間に干渉出来るんだよ?でもアリスは何回も何回も時間を止めて…ずるい!」

カイ「ズルイも何も…アリスの能力は魔法じゃねぇんだ。魔力を必要とするわけじゃねぇから比較にならねぇだろ」

キモオタ「アリス殿の時間停止…そのメカニズムについては以前司書殿が教えてくれたでござる」

カイ「あぁ、あいつに聞いてたかそれなら話は早い」

ティンカーベル「うん、教えてくれたよね。えっと確か…」

キモオタ「【不思議の国のアリス】の主人公であるアリス殿は『時間』そのものとの対話ができるのでござる。そして親しいが故に時間はアリス殿の頼みを聞いて時間を止めたりできる…のでござったな?」

魔法使い「その通りじゃな」

ゴーテル「キモオタにしてはよく覚えておったのぅ。忘れておると思ってカイに説明させようと思っておったんじゃが」

キモオタ「流石に覚えておるでござるよwww重要ポイントでござるからなwww」

ティンカーベル「うーん…でもそれ聞くとなおさらずるいよ!なんなの時間と話せるって!時間と仲良しって何!?意味わかんないし!」

カイ「そんな事言い出したらお前が住んでたネバーランドも大概意味わかんねぇよ、あそこに居ると歳をとらないんだろ?なんでだよ」

ティンカーベル「それはそういうもんなの!なんでもクソもないんだよ!」

キモオタ「ちょwww暴論wwwとはいえ確かに時間と対話できるというのはハチャメチャというか…なんとも不思議な話でござるな」

魔法使い「それはそうだろう、アリスが住む世界に理屈だとか常識だとかそういった類の者は通用しないだろう」

魔法使い「なにしろあそこは『不思議の国』なのだからな」
327: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:26:37 ID:TiB 
ゴーテル「とにかくじゃ…状況をまとめるとこうなるのぅ。魔法使いはもう魔法は使えん、ワシも多少ならともかく大がかりなものは無理じゃ。よいな?」

ティンカーベル「うん、わかった!二人の覚悟を無駄にしないために頑張る!」フンス

ゴーテル「頼もしい事じゃな。そしてキモオタのおはなしウォッチは時間停止できる機能が備わっている。まぁ、条件はあるんじゃがな…」

キモオタ「ここまで代償を払ってさらに条件があるとは時間への干渉厳しすぎワロエナイ…」

ゴーテル「そしてアリスは自在に時を止められる。その方法は時間との対話…ここまではよいな?」

ティンカーベル「オッケー!……んっ?ねぇねぇ、ちょっと気がついたんだけどさ。おはなしウォッチで出来るのは時間停止だよね?」

魔法使い「そうだ、時を止める事だ。それも条件付きでな」

キモオタ「なるほど…ティンカーベル殿はこう言いたいのでござろう?」

キモオタ「おはなしウォッチで時を止め、停止した時のなかでアリス殿と対面したとして…どうやってアリス殿の時間停止能力を無効化するのか?という」

ティンカーベル「そうそう!こっちも時間を止めたからってそれで終わりじゃないでしょ?」

キモオタ「そうでござるな、時を止めて対等な舞台に立ったうえでアリス殿を無効化しなければ…」

魔法使い「それについては考えがある。そうじゃろ、ゴーテル?」

ゴーテル「うむ、お主等は知らぬかもしれんが…アリスの時間停止も万能ではない、弱点が存在する。そこを突けば無効化できるのじゃよ」

キモオタ「おぉ…!そんな方法が!一体どうすればよいのですかな!?」

ゴーテル「それに関してはワシらが説明するよりも、実際に【不思議の国のアリス】を何度も読んでおるカイの方が適任じゃろ。あとは任せたぞカイ

カイ「あぁ、俺に出来る事なんざもうこれくれぇだからな。何度も説明するのは面倒だから一度で理解しろよ?」
328: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:29:19 ID:TiB 

カイ「アリスは時間と対話して親しくなることで時間を操っている訳だが…そもそもこの能力はアリスじゃなく帽子屋のもんだ」

ティンカーベル「帽子屋って…確か、あの沸点低いオカマの?」

キモオタ「そうでござるな、あの思いの外強敵だった割にあっさり煽りに釣られたオカマでござる」

カイ「オカマなのかよ帽子屋…。いやそれはどうだっていいんだが、【不思議の国のアリス】の三月ウサギの茶会の場面でも出てくる有名な話なんだがな」

カイ「元々、帽子屋は時間と対話ができた。その上仲良くしてたもんだからいつだって時間は帽子屋の味方だったんだが……ある日、帽子屋はその能力を失った」

ティンカーベル「失ったって…どうして?」

カイ「帽子屋はな、時間と喧嘩しちまったのさ」

キモオタ「喧嘩…でござるか?」

カイ「おう、喧嘩だ。帽子屋はハートの女王に呼ばれて城の演奏会で歌を披露したんだ、それがまぁ適当な替え歌だったんだが…それが女王の気に障ったんだろうな」

カイ「折角の演奏会でくだらない歌を歌って時間を浪費してるってんで、女王は怒鳴ったんだよ『こやつは時間を殺しておる!首を刎ねよ!』ってな」

ティンカーベル「うわー、すんごい物騒な女王じゃん。なんていうかめっちゃ短気だし」

キモオタ「まるでティンカーベル殿の様な短気っぷりですなwww」

ティンカーベル「ちょっと!私は短気じゃないし!言いがかりはやめてよね!!」バンッ

カイ「……続けるぞ」
329: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:31:17 ID:TiB 

カイ「女王の言葉を時間は真に受けちまったんだ。それ以来、時間は帽子屋の頼みごとを何一つ聞かなくなった」

ティンカーベル「なるほど…だからお茶会の時間は止まったまんまなんだね」

キモオタ「つまり、アリス殿と時間殿を喧嘩というか仲違いさせればおとぎ話のなかでの帽子屋殿同様に時間停止能力を奪えるということですな?」

カイ「あぁ、あいつが時間と親しくして時を止めている以上、仲違いさせりゃ当然時間はアリスの頼みごとなんざ聞きやしない」

カイ「あいつは時間を止められなくなるってわけだ」

ティンカーベル「でも…どうやって?ぶっちゃけさ、カイが知ってるってことは女王も知ってただろうし…他にも知ってる人いたと思うんだよ。なのになんでやらなかったの?」

キモオタ「今まで誰ひとりとしてそれを試さなかったとは考えにくいでござる。ならば何かアリス殿側にもその弱点を補う何かがあるのでは…」

カイ「まぁあるだろうな。お前らは無知だったから知らなかっただろうがこの話は【不思議の国のアリス】をきちんと読んでりゃわかる話だ」

カイ「なんにも対策せずに使ってりゃあたちまち封じられるような脆い力でもあるからな」

ティンカーベル「って、向こうが対策してるんだったら手の打ちようが無いじゃん!」

カイ「そうでもねぇよ。考えてみろ、時間を止められるなんてのはほとんど反則なんだぜ?」

カイ「それなのに何故、アリスはお前らを殺さないんだ?時間を止めている間にお前らをメッタ刺しにでもなんでもすりゃ時を動かしたとたんに殺せるんだぜ?」
330: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:34:34 ID:TiB 
ティンカーベル「あー…確かにジョジョでもDIOがやってたね。時間止めてる間にナイフ投げまくる奴、で時間動いたらめっちゃ刺さる奴」

キモオタ「確かに、時を止められるアリス殿にとって我々を殺す事などたやすいでござるな…」

カイ「それなのにやらなかった。さっきはお前らを殺そうとしてたのにだ、だったら理由は一つだけだろうな」

キモオタ「時間を止めている間に我々を殺す、あるいは傷つける行為はアリス殿にとって不利益…ということですな!」

ティンカーベル「っていうことは…もしかしたらだけど、時間は優しい人(?)で誰かを傷つけたりすることに直接協力させられるのを嫌がってる…とか?」

カイ「いい線いってるんじゃないか?なんにしろ『時間停止中に人を殺せば時間に見限られる』だからアリスは時間停止中には襲ってこない」

キモオタ「なるほど、だから時間停止中はあくまで移動に専念し、時を動かしている間に攻撃をしている…でござるな」

ティンカーベル「これ決定的な弱点じゃん!ここを突けばアリスを倒せる!時間停止を封じられる!」

カイ「問題はそれをどうやって実行するかなんだがな…」

ティンカーベル「そんなの簡単だよ!アリスにあった時におはなしウォッチで時間止めてー、そんで時間にアリス悪い奴ですよーって言えばいいんだよ!」

キモオタ「また大雑把なwww理屈ではそうなのでござるが、果たして面と向かったアリス殿が…しかも時間停止のなか動ける我輩をスルーしますかな?」

カイ「そもそも対話できるのかってとこも怪しいが対話出来たとして…キモオタの話を時間がそうそう信じるかってところも微妙だぜ?」

カイ「知りもしない他人に『お前の友達は悪い奴だ』って言われてそうですかってなるか?」

ティンカーベル「もーっ!そんなのやる前からウダウダ言ってたって仕方無いじゃん!やるしかないんだよ!」プンスカ
331: ↓◆oBwZbn5S8kKC:17/02/06(月) 01:37:01 ID:TiB 
カイ「どっちにしろ、アリスの時間停止を防ぐ方法は『時間との仲違い』これだけだ」

カイ「お前が言うように無理だろうがなんだろうがこれをやらねぇ事にはあいつはまた時を止める。それじゃあこっちの勝ち目は限りなく薄い」

ティンカーベル「だよ!キモオタ、聞いてたでしょ!?何が何でもアリスから時間停止の能力奪ってさ、シンデレラも助けてアリスも捕まえてもうぜーんぶなにもかも終わらせよう!」

キモオタ「…そうですな!今まで無理っぽい事は多々あったでござるが結局なんとかなっておりますしな、今回もなんとかするしかありませんなwww」

カイ「そうだぜ、あいつは…雪の女王はお前たちにならそれができるって信じてくれてんだ。あいつの弔いの為にも、その信頼に応えてやってくれ」

ティンカーベル「わかった!大丈夫、さっきは逃げるしかなかったけど次こそはなんとかする!任せて!ねっ、キモオタも!」

キモオタ「ドゥフフwwwお任せあれwwwしかし…先ほどこのおはなしウォッチで時を止めるのには条件があると言っておりましたな?」

ゴーテル「そうじゃな。人によっては大したこと無い条件じゃが、まぁこればっかりはキモオタ次第という感じかの」

キモオタ「我輩次第ですと?なにやら嫌な予感がするのでござるが、最悪条件が満たせなくて時を止められないという事も…?」

魔法使い「十分にあり得る。おまえの普段の行いがモノを言う条件…むしろ試練か」

ティンカーベル「うわー!駄目だー!キモオタの普段の行いなんか最悪そのものなのにー!」

ティンカーベル「プリキュアの映画見に行った時子供限定の特典欲しいって店員さんに無理いったり、スーパーでお総菜買う時醤油の小袋たくさん貰うし、吉野家でねぎだく頼んで店員さんにマークされたりしてんだよ!?…おわったー!詰んだー!」ジタバタ

キモオタ「それ全部お主もノリノリで賛同してるでござろうがwwwそれにまだ駄目と決まったわけでは……ゴーテル殿、ちなみにその条件ってハードル下げるとかでk」

ゴーテル「できるわけないじゃろ。覚悟を決めんか!では時間停止の条件と方法を説明するでな、時間もないんじゃからしっかりと聞くようにの」

ティンカーベル「とにかく今からでも徳を積んでよ!ほら真面目にゴーテルの話聞いて!」

キモオタ「ぶひぃぃ…こんなことなら普段から真面目にしておけばよかったですぞぉー!」

カイ(なぁ、女王…大丈夫なんだよな?こいつら信じていいのか…?)

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