1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:22:55.37 ID:fkIS0Oih0
一週間フレンズの後日SSです。
本編から10年後みたいな感じの内容です
長谷の性格が社会にもまれたことが原因でだいぶ変わってますがご了承ください

以前書いていたのですが新居へ引越しや就職のために未完だったので書かせていただきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1478161375

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:23:23.04 ID:fkIS0Oih0
後輩「先輩、書類のほう出来上がりました」

祐樹「ああ、悪いな。いつも急がせちまって」

後輩「いえいえ、先輩の仕事のペースが速すぎて追いつくのがやっとですが・・・」

祐樹「何言ってんだ。お前も入社したころに比べりゃ別人だよ、良くやってくれてる」

後輩「あ、ありがとうございます。今日は早めに帰れそうなんで娘たちと遊んでやれそうです」

祐樹「そういや結婚してるんだもんな。嫁さんや娘の時間も大事にしないとな」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:23:57.28 ID:fkIS0Oih0
祐樹「んじゃま、今日はこれで解散だなっ」

部下1「長谷さんっ」

祐樹「ん?どうした?またなんか仕事でミスったか?」

部下1「も~長谷さんのいじわるっ!ってそーじゃなくて、これから私たちと飲みに行きませんか?」

祐樹「あー、悪いな。先約があるんだ」

部下2「なんだー長谷さんがこないと盛り上がらない~」

祐樹「いつから俺はそんな役回りになったんだっつーの…まあともかく悪いなそれはまた次回のお楽しみにとっとくよ」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:24:37.82 ID:fkIS0Oih0
後輩「先輩って彼女とか作らないのかな…」

部下1「素敵だよね・・・ぜったい付き合ってる人とか居るし」

部下2「えー、だったら私ショックーーー」

社長「長谷君はもう帰ったのかね…?」

後輩「あ、社長!」

社長「なんだ…長谷君と飯でも食いにいこうとしたのに…」シュン

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:25:33.08 ID:fkIS0Oih0
もう27歳か…だいぶ時間がたったもんだ。

大学を卒業して就職して、一人暮らしを始めて気づけばもうこんな立ち位置だった。

ロードワークに追われ、社会に揉まれ
大人になってたくさんの出来事があった。
そして気づけば俺は部下を持つ上司となっていた。
高校生あたりのへたれていた自分が黒歴史に見えるほど自分自身でも変わったと思う。

祐樹「本当なよなよして情けねーのなんの…思い出すだけで恥ずかしくなるわな」

自分のことなのに不思議と笑いが出てしまう。

昔を思い出すきっかけとなったのは先日懐かしいやつから来た電話だ。

先日、アパートにて

将吾「よう、久しぶりだな。元気でやってるか?」

祐樹「ん…誰だっけか?ひょっとして今流行の成りすまし詐欺ってやつか?」

将吾「しばらく話さないうちにずいぶんと酷い事をいう奴になったなお前・・・」

祐樹「冗談だよ。久しぶりだな将吾、元気にやってるか?」 

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:26:13.00 ID:fkIS0Oih0
 
将吾「まあな。お前もその態度から見るとうまくやってるみてーだな」

祐樹「まあな、お前に皮肉を言える位には成長したと思うぜ」

将吾「声もだいぶ低くなって驚いたぞ。でもまあ元気そうで何よりだ」

祐樹「どうしたんだ?いきなり電話してきて、なんかあったか?」

将吾「なあ、久々に飲まねーか?いろいろと話したいこともあるしな」

祐樹「いいぜ。そういうお誘いなら喜んでってな」

将吾「お前本当に祐樹かよ…だいぶノリが変わったな」

祐樹「まあ社会にあれだけ揉まれりゃ…な?

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:26:59.75 ID:fkIS0Oih0
そう言えば将吾から下の名前で呼ばれたのっていつだったけか?
大学頃だったよな・・・

祐樹「まあいいや、とりあえず待ち合わせの居酒屋はっと…」

店に入り店員に案内されるがままに移動する。
予約席にはすでに将吾が居た。

将吾「よう、久しぶり。ずいぶん色男になったな」

祐樹「お前もな」

将吾の顔を見るのも久々だ
高校~大学の頃より髪が伸びている
そして指には婚約指輪がはめられている。
そう、将吾は大学を卒業してから就職し、しばらくして山岸さんと結婚したんだったな…
俺が海外出張の真っ最中で式に参加できなかったんだ。
土産と祝儀を両方送ったが互いに忙しくなかなか会えなかった

将吾「ったく、あの時のみやげ、不味かったぞ」

祐樹「しょうがねーだろ。味なんて誰もわかんないしな、祝儀たくさん包んだんだし大目に見てくれって、それに今幸せなんだろ?」

将吾「ま、まあな…///俺がお前に言い負かされる日が来るなんてマジに思わなかったわ」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:27:48.67 ID:fkIS0Oih0
祐樹「乾杯」

将吾「乾杯…」

カチャン

祐樹「はぁ…仕事あがりのビールはやっぱ格別だなっ!」

将吾「言いたいことはわかるが、おっさんくせーぞ」

祐樹「もうおっさんみたいな年齢だろうよ俺たちは」グビグビ

将吾「まっ、それもそうだな…ぷは」グビグビ

祐樹「そっちはどうだ?仕事の方」

将吾「お前ほどじゃないけど毎日忙しいよ。うるさい上司が居るからな」

祐樹「うるさく言ってくれる上司ってのも良いもんだ、もしただのパワハラなら上層部にチクれば万事解決だしな」

将吾「お前こんなに合理的だったっけ…」

祐樹「誰も助けてくれないぶん自分で逃げ道やら勝ち道やらを作らないとだからな」グビグビ

将吾「へへっ、俺なんかより余程でかくなってんじゃねーか…」ぼそ

祐樹「なんか言ったか?」

将吾「なんでもねーよ、久々だしどんどん飲もうぜ」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:30:30.27 ID:fkIS0Oih0
将吾「なあ、祐樹」

祐樹「なんだ?急にかしこまって。まあ何か言いたいことがあったから俺を呼んだんだろうけどさ」

将吾「大学から社会人になって、俺以外との友達づきあいはどうだ?」

祐樹「んー、あぁ、そういや前に九条とあったな。一緒に飯食ったよ」

将吾「聞いたよ。本当にあいつ長谷かよ・・・俺よりモテそうな奴になってたぞ…って目を丸くしてたぜ?」

祐樹「喫茶店経営してるんだよなたしか夫婦で」

将吾「九条の嫁、誰だかわかるか?」

祐樹「別に聞かなかったな、まああいつはあいつで頑張ってんだ。それだけ聞ければ満足だよ」

将吾「昔のお前なら、え!?誰…?それってまさか!とか言って取り乱してたろ?」ニヤ

祐樹「ったくお前酒弱いのな…んー、あ、わかった。藤宮さんか?」

将吾「お前な…なんの躊躇もなしに…」

祐樹「別にいいだろ?九条の周りで親しい女は過去に沢山居たけど、俺が驚きそうな女なんて藤宮さんくらいしかしらねーしな」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:31:49.73 ID:fkIS0Oih0
将吾「でも残念ながらはずれだ。お前の取り乱す姿を久々に見たくてついな」

祐樹「ったく、どんだけ悪趣味なんだっつーの。で、そのモテモテ九条君のお嫁さんは俺の知ってる人かなんかで?」

将吾「芹澤舞子だよ。ほら、クラス一緒だった」

祐樹「へえ、そっちのが驚きだな。接点あったっけあの二人?」

将吾「なんでも大学のサークルが一緒だったとかでそれがきっかけで付き合うようになったみたいだな」

祐樹「ほぉ…どこもおあついね。クーラーがほしくなる」

将吾「気にならないのか?藤宮のこと」

祐樹「いまさらなんだよ?正直名前忘れかけてたくらいだぞ?」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:36:53.47 ID:fkIS0Oih0
将吾「あれ程べた惚れだった癖に…」

祐樹「つい酔っちまってな。毒吐いちまって悪い」

将吾「高校卒業した後も二人で遊んだり仲良かったんじゃないのか?」

祐樹「まあな。だったが…やっぱり互いに進路別で離れちまうと疎遠になりがちになってな。むこうも新しい友達やらで引っ張りダコだったしな」

将吾「気づけば自然消滅ってやつか?」

祐樹「まっ、んな所だな。あの子が楽しくやってるならそれでいいやって考えるようになってからはだいぶ気も楽になったもんだよ」

将吾「自分の感情を殺してるわけでもなく、本気でそう考えてるんならお前も立派になったもんだよ」

祐樹「最初は寂しかったりガキみたいにヤキモチ妬いた事もあったさ、でもこっちだって色々友達は出来たしバイトやサークルで忙しくなってな…」

将吾「色んな出会いで揉まれて相手の事を上手に考えてやれるようになったわけか」

祐樹「まあそんなんか?人は変わってくもんだからな」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:39:19.92 ID:fkIS0Oih0
祐樹「俺は友達という形での関係を結果的に望むことにした。で、なんだかんだで彼女と道が違えて、今の俺がここに居るわけだ。んな昔のこと気にしてたら人間生きていけないしな」

将吾「そこまで言うか…つーかお前、彼女とかいんの?」

祐樹「生憎激務でな。そんな暇はないよ」

将吾「お前、昔と比べると容姿も中身も人並み以上だからな、告白されたことだってあったろうに」

祐樹「ったく、余計なお世話だっつーの。とりあえず仕事責めで付き合ったとしても相手に悪いからな。断ってるよ」

祐樹「なんか乗れないんだよ。今の生活で満足し切ってるって言うかさ」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:40:19.68 ID:fkIS0Oih0
将吾「いやさ、お前に伝えたかったのはな…藤宮が今何してるのか知りたくないかってことだ」

祐樹「んー、あれだけ良い性格してて可愛いんだし、今頃結婚してんだろ?」

将吾「頼むから少しは焦ってくれ。なんか今のお前レベル上がりすぎて太刀打ちできないわ」

祐樹「別にいまさら何を言われたって動じないよ。みっともない・・・」

将吾「嫁が心配しててな、今の藤宮を救えるのはやっぱりお前しかいないって言うわけだ」

祐樹「すまんわかりやすく1から説明してくれ。意図がまったく飲み込めん」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:41:06.85 ID:fkIS0Oih0
将吾「藤宮は今引きこもりになってる」

祐樹「は?まさか、ニートってやつですか?」

将吾「何でも大学卒業前からだそうだ…中退したらしい」

祐樹「マジか…何があったんだ」

将吾「理由がまったくわからん。九条も嫁も…そして俺もだ」

祐樹「疎遠になってからも毎日楽しく友達グループと見かけたりしたんだがな…」

将吾「何かあったのかもな」

祐樹「まあ、以前みたいに一週間経って記憶がリセットされるよりはマシかもだが…今でも引きこもりはちょっとやばいな」

将吾「お前、一度はあれほど好きになった相手だろ?」

祐樹「だからっていきなりんなこと言われてもな」

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:43:10.44 ID:fkIS0Oih0
将吾「会ってやれねーか?一度くらい」

祐樹「逆にいまさら俺と会ってどうにかなるって言われたら…な?」

将吾「う…まあ…そうかもだけどな」

祐樹「でも、明日から連休だし、会うくらいなら別にいいよ。ただ救えるか救えないかは別だ。俺も部下の生活を支えてる身なんでな…昔と違って好きな子だけを守れば良いって訳じゃないからな」

将吾「いいや、会ってくれるってだけでも十分だよ。ありがとう、祐樹」

祐樹「お前に面と向かって例を言われるのってなんか不気味だな」

将吾「酔っ払ってる時限定だ…それよりも、せっかくの飲みだ、最後まで付き合えよ」

祐樹「ったく、お前は丸くなったな。いいよ、たくさん飲みますか、今日は」

結局将吾は泥酔いしてしまった。
俺は将吾を抱えながら自宅まで送ることとなった。

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:44:15.33 ID:fkIS0Oih0
沙希「おお、うわさどおりイケメンになりましたな長谷君・・・!」

祐樹「よっ、そういう山岸さんは綺麗になったな。将吾にもったいないくらいだ」

酔って寝ている将吾をベッドに寝かせ、久々に再開した山岸さんと雑談を交わしていた。

学生時代は一緒に居るだけであまり会話という会話はしたことが無かったが…
いざこうやって話しているととても楽しい子だというのがわかる。
将吾とお似合いだな。

祐樹「まあ会うだけ会っては見るよ。解決できなかったときは悪いが」

沙希「そっか…ありがとうね長谷君」

祐樹「礼なら藤宮さんが無事社会復帰できたときに言ってくれ、割とプレッシャーかかるんだよこう言うの」

沙希「そういう所はいつもの長谷君だよね」ニコ

祐樹「まあなにはともあれ、将吾と仲良くな」

沙希「ありがと、もしよかったらまた遊びにきなよ?」

祐樹「ありがとさん、それじゃあな」


沙希「長谷君…きっと…香織ちゃんは今でも…」


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 17:46:25.01 ID:fkIS0Oih0
書き溜めたのは此処まででした。
ここからはゆっくり更新になります。
話しの構図は出来上がってますので今日中に終わるかと思います。
少し男梅サワーと晩飯のたこ焼き持ってきますのでしばしお待ちをw

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 18:01:04.19 ID:fkIS0Oih0
祐樹「藤宮さんか…」

本当久々に思い出したな。
1週間経てば記憶が消える。そんな病に近い精神疾患を持った心を閉ざした女の子だった。
俺は単純に彼女が可愛いと思い下心ありで友達になる事を望んだ。
色々あった。
忘れないために一週間日記をつけさせたり…九条の事でくだらない嫉妬をしたり…。

大学に入ってからか…彼女と疎遠になったのは1週間に1度は遊ぶ約束もしたりした。
しかし互いにサークルに入って俺の場合は遊ぶ金ほしさにバイトにも没頭。
向こうも友達に弁当作ってあげたり生活のやり取りをラインやらメールでやり取りしていたが…
気づけば連絡の数は互いに減っていき、1ヶ月に1度連絡が来るかこないかになった。

そして距離はどんどん離れ互いに連絡をすることは殆どなくなっていたのだ。

大学時代

街中で男女含めて楽しそうに歩いている笑顔の藤宮さんを見た際、なぜかほっとしたんだよな。

祐樹「上手くいってるな、藤宮さん…」

不思議と微笑ましく思えた

友達「祐樹くーん!こっちだよー!早く私達とコンパいこー!」

祐樹「うん、すぐいく!」

幸せそうな藤宮さんを見たのはあれで最後

俺は携帯の機種変更をしたあと藤宮さんにメールアドレスを変更した事を伝えなかった。
正確にはもう伝える必要が無いと思った。実は過疎になり伝えるのを忘れただけ、と言うのが本音だが…
もう既に何か困った事あれば泣きつく相手もたくさんいるだろう。



22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 18:14:22.89 ID:fkIS0Oih0
祐樹「んー、飲みたりねーな…今日は…」

生憎俺はそこそこ酒が強い。
健康診断も毎年数値は良好だ。

祐樹「まあ、連休中に藤宮さん家に連絡して言ってみるか。とりあえずコンビニに酔ってもう少し酒買って買えるか」

【コンビニ】

店員「合計1400円です。今キャンペーン中でクジをやってます。良ければ2枚引いてください。どうぞ」

祐樹「どうも」ガサゴソ

店員「おめでとうございます。2枚とも当たりです。アイスとカップ麺の無料券ですが今交換しましょうか?」

祐樹「いえ、後ろ人が並んでるんでまた今度変えてもらいます」

店員「かしこまりました。ありがとうございましたー」

俺もコンビニでバイトしていたから良くわかる。クジ引きフェアと言う一定の金額になると引けるイベントがあってこの期間は店員が地獄を見る。
商品が当たれば店員は当たった賞品を取りに行くために店を走り回り、その間に客が並んで店は混んで大変な事になるのだ。
当たった2枚の当たりクジ…会社の誰かにでもくれてやるさ…

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 18:51:03.02 ID:fkIS0Oih0
祐樹「さあ、家で晩酌だな、もう少し飲むかっと…」

と、その時

ドン

??「きゃっ」

自分より小柄な女性とぶつかってしまった。
女性はコンビニの駐車場で転倒してしまい買い物袋が散乱してしまった。

祐樹「すいません、怪我はないですか?」

すぐさま転がった商品を袋に戻し彼女に手渡す

??「ごめんなさい…私がぼーっとしてて…あれ…」

フードで顔がわかりにくい女性はぼーっと俺の顔を見つめてくる。

祐樹「ん…ひょっとして商品傷つきましたか…すいません、弁償させてください」

他人とのトラブルは極力避けたい。余程相手に落ち度が無い場合はこちら側から折れて大人しく謝罪するのがベストだ。
それで喰らいついてくるのなら上等だが…

??「長谷…くん?」

祐樹「ん…俺の苗字をしってる…知り合いか?」

偶然とは都合の悪い時にやってくるものだ
まさかのまさか…

祐樹「まさか…藤宮さんか?」

香織「え…あ…そのはぃ…そうです」

以前の明るい笑顔ではなく明らかに他人とのコミュニケーションからかけ離れた口調…
しかし一発で分かった。
こいつはかつての同級生で俺の友達、藤宮香織だと

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 18:59:10.87 ID:fkIS0Oih0
香織「ありがとね…私が余所見してたから…でもお菓子と飲み物だから弁償は別にいいよ…そ、そのごめんね?」

祐樹「いや、悪いな、こっちも少しダチと酒飲んでてさ、仕事帰りだよ」

香織「久しぶりだよね…」

祐樹「あぁ、そうだな藤宮さん。元気にしてたか?なんて聞くつもりはないが、偶然にも会えて嬉しいぞ」

香織「う、うん…私も…凄く大人びたね…かっこよくなっててびっくり…」

祐樹「ねーよ。毎日のように仕事に追われて休日はだらだら過ごして、しっかり社畜様になっちまったよ」

香織「あはは、私とは大違いだ…」

祐樹「藤宮さんは夜食の買出しか?」

香織「う…うん。夜じゃないと…人目を気にしちゃって…」

祐樹「さっき買い物してクジ2枚当たったけど要るか?アイスとカップ麺の交換券だ」

香織「え!?長谷君ってそんなにコンビニでお金使うの!?」

祐樹「サラリーマンってのはな…仕事に疲れるとスーパーで品物を選ぶ気力ってもんが無くなるんだよ…ついコンビニに頼りがちになっちまう。まぁ悪い癖なのは分かってるんだがやめられないってやつだな」

香織「そっか…働いてるんだもんね…当然だよね」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 19:14:17.50 ID:fkIS0Oih0
祐樹「いいよ。互いの素性なんて。どうだ、久々だし話しでもすっか?」

香織「え…私なんかと…いいの?」


公園にて


祐樹「まあその…疎遠になっちまったのは仕方が無い、俺も藤宮さんも互いに連絡しあわなくなったからな、アドレス変更して連絡するの忘れちまったのは本気で謝る。ごめんな」

香織「そっかぁ…私長谷君に嫌われてなかったんだね…」

祐樹「嫌いになるどころか、大学生時代友達に囲まれて幸せそうだったし逆に俺は安心したけどなっ」

香織「あはは、私、長谷君に嫌われたと思って凄いショックだったよ…」

祐樹「おいおいマジかよ…」

香織「でも…こっちも色々サークルや友達づきあいが大変で連絡できなかったのはごめんね?」

祐樹「いや、謝るのはこっちだ…すまん。友達に囲まれて笑顔のお前を見てつい安心しちまってな。もう俺はこれ以上必要ないだろって思っちまってな…」

香織「泣きつける唯一の友達が長谷君だったから…私も色々あっちゃって…メールした時つながらなくて真っ青になっちゃって」

祐樹「おいおい…お前…まさかそれが原因で…」

香織「あ、沙希ちゃんや桐生君から今の私の状況聞いちゃった?」

祐樹「でなけりゃここまで気にかけねーよ…そこまで可愛いし性格も良けりゃ結婚でもして幸せな人生歩んでんだろくらい思ってたよ」

香織「幸せじゃないんだなぁこれがー」

藤宮さんは一瞬にこっと笑うと長袖をめくり素肌を俺の前に見せた

何本もの傷跡…言うまでも無いリスカである

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 19:22:49.68 ID:fkIS0Oih0
祐樹「話したくないなら金輪際聞かないつもりだが…何があったんだよ」

香織「私…大学時代ね、友達も出来て長谷君と遊んだり連絡取り合ったり中々できなかった…」

祐樹「気にしてねーよ。もうそんなの。お前自身が楽しく大学で友達と毎日を楽しんでるのを見れただけで俺は嬉しかったよ」

香織「うん…楽しいだけじゃなかったんだ…」

祐樹「そりゃそーだ、学生生活も人間関係の良し悪しはあるからな。そこでなんかあったのか?」

香織「告白されたの…3年生のとき…」

祐樹「そりゃそれだけ可愛けりゃ告白なんて何度もされるだろうな」

香織「その際にね、私断ったの」

祐樹「相性もあるしな、合わないと思ったんならその答えは正しいと思うぞ」

香織「長谷君に面向かって可愛いなんて始めて言われちゃった」

祐樹「事実だからそう言っただけだよ。それでその後どうしたんだ?」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 19:31:21.57 ID:fkIS0Oih0
香織「コンパの後にねカラオケで告白してきた彼に押し倒されたの」

祐樹「…」

香織「必死に叫んだよ…暴れたよ…」

祐樹「その友達どもは止めなかったのか?」

香織「みんなお酒入ってて…」

祐樹「おいおい…」

香織「私相手を突き飛ばしてそのまま逃げたの」

祐樹「友達の癖してそれを止めないとか頭おかしいんじゃねーのかそれ…」

香織「その時に助けて、長谷君ってメールしたんだ…」

祐樹「!?」

香織「都合がいい女だよね…でも…それでも」

香織「メールがつながらなくて…公園で一人で大泣きして…次の日から何故か私が大学の同級生から無視されるようになって…」

祐樹「中学生かっての…善悪の判断がつかず友達を標的にするって…お前の友達達がおかしいぞ…」

香織「あはは、その人と私は友達の仲ではベストカップルみたいな扱いに勝手にされちゃっててて」

祐樹「高校の頃の俺より上位職だな…まあそこは深く追求しないが…」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 19:40:04.44 ID:fkIS0Oih0
香織「それから皆に無視されるようになって私ね、大学やめちゃったの」

祐樹「大変だったな…」

香織「ううん、今働いてる長谷君の方が大変だよ…私なんかが触れられるような相手じゃないよもう」

祐樹「藤宮さん。いや藤宮。お前、何も悪くないからな。引きこもった理由も全部そいつらのせいだろう、制裁はしたのか?」

香織「うん…私を襲った人やそれを見てた人たちは停学になっちゃって…結局友達が居なくなっちゃった…」

祐樹「なるほどな…」

香織「長谷君にも見捨てられたって思っちゃって友達も居なくなって…私他人が怖くなって結局引きこもりになっちゃった」

祐樹「藤宮。また連絡先交換し合おうか」

香織「え!?長谷君とまた…こんな引きこもりの私なんかと!?」

祐樹「あぁ、いいぞ。俺が居れば食い扶持に困らないぞ。腹が減ったら飯くらい奢ってやる」


31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 19:48:11.16 ID:fkIS0Oih0
祐樹「高校時代に告白して藤宮と付き合ってりゃ俺の人生もっと薔薇色だったかもな」

香織「あはは、それはどうだろ」

祐樹「振られたら振られたで別にかまわねーよ。それだけ俺に魅力が無かっただけだからな」

香織「私ならはじめ君じゃなくて長谷君を選んでました。」

祐樹「…」

祐樹「あはは…」

香織「お互い意気地なしだね」

祐樹「まあ仕方がねーって」

香織「今の私の立場、ドン引きしたでしょ?」

祐樹「驚いたけど別にドン引きしてねーよ」

 

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/03(木) 20:04:44.17 ID:fkIS0Oih0
香織「私、連絡してない間も長谷君が気になっちゃって…ツイッター探したりフェイスブック検索したりしてたんだ」

祐樹「そりゃありがとな…だが両方とも俺はSNSに手を付けてないから」

香織「うぅ…」

祐樹「時間あるなら家のアパート寄るか?話し沢山聞くぞ」

香織「え…いいの?」


今日はここまで
酒の周りがやばすぎて更新できなさそうです

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 13:10:05.66 ID:05WVGrhv0
祐樹「と言いたいが、いくら友達とは言え仮にも女性を夜な夜なアパートに招くのもな…今日はとりあえず帰って明日休みだしアパートにでも来るか?」

香織「え…その私、気にしてないよ…?今だって親に黙って買い物に来たしたぶん親も寝てるし…それにまた長谷君とこうやって会えたから今アパート行きたいな」

祐樹「まぁ実家でも良いんだけどな、いま親戚が仕事の関係で居候してるから俺の部屋が使えないんだよ。だから社員寮でのアパート暮らしってわけだ」

香織「そうなんだ…長谷君…お話しよ…?お部屋で」

祐樹「まあ、藤宮がそれでいいなら…それとちょっと気になることが…」

俺は無言で藤宮の元へ近寄る…

香織「ひゃ…」

顔を赤らめて藤宮はささっと後退した

祐樹「くんくん…藤宮。お前風呂入ったのいつだ?」

香織「え!?あ…その…臭い…?」

祐樹「はっきり言ってほしいなら遠慮なく…」

香織「二週間に1回…それ以外は基本ずっと部屋に篭りっきりで…」

街頭に照らされて見てみると確かに可愛い藤宮なのだが、ぼさぼさで手入れされていないふけだらけ髪の毛、かさかさの肌
そして唇はかさかさ…不健全な生活のそれが見事に現れていた。
そして何より、押入れに何日も放置したようなカビた布団のような臭い…

祐樹「俺ん家来る前に銭湯寄るぞ。体べたべたしてるし綺麗にしてからにしようぜ」

香織「他人が沢山居るお風呂ってなんか怖くて無理かも…長谷君のアパートのお風呂借りていい…?」

祐樹「はぁ…ったく仕方がない」

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 13:25:32.67 ID:05WVGrhv0
―アパート―

香織「わぁ…凄く綺麗なアパートだね!」

祐樹「基本社員寮に近いから家賃は半分会社が負担してくれてんだよ。それよりほれ」

俺はタオルと新しい歯ブラシに歯磨き粉、そして彼女にはちょっと大きいが購入してまだ使ってないパジャマを渡した

祐樹「とりあえずそれでさっぱりして来い、風呂は自動で沸かすから数分で入れるよ。」

香織「う、うん…迷惑かけてごめんね」

不健康なくらい真っ白な肌だ本当に何年も家に篭っていたのだろう…
引きこもった事情を将吾に話したとしてもおそらく彼女に対して厳しい意見しか言わないだろう。

将吾「都合のいい時だけあいつ(祐樹)に助けを求めるんだな」と…

とは言え人間にはそれぞれ事情や都合がある。
大学時代連絡が過疎になったとは言え彼女は俺という存在を心の中に残しておいてくれた。
しかし俺は彼女と言う存在そのものの心が消えかけていた。

あの時、気分で変更した電話番号やアドレスを彼女に伝えていれば…

と考えていても仕方が無いもうなってしまったものは後戻りもできない。

多少なりとも責任を感じてしまう自分がここに居てしまう。

20分くらいした後に…

香織「上がったよ~」

祐樹「早いなおい…」

普通女の風呂って30~1時間くらいなもんだと思っていた

香織「体洗って歯も磨いて髪の毛もボディソープで洗ったからもう大丈夫!これでも急いだんだよ!」

祐樹「ボディソープで洗うな!せめてシャンプー使えっての…」

香織「えへへ…」

風呂上りで綺麗になった藤宮を見て改めて思う。
やっぱ高校~大学の時と変わらず可愛いと。

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 13:33:50.04 ID:05WVGrhv0
祐樹「なんか飲むか?酒とか」

香織「私、カクテルとかなら飲めるよ」

祐樹「たしか冷蔵庫に先月部長から貰ったチューハイが何缶か…」

冷蔵庫を漁り酒を取り出す。

香織「長谷君は何飲むの?」

祐樹「俺はビールかな最近はずっとビールばっかだ」

香織「苦くない…?」

祐樹「飲みなれると普通に美味しいって感じるぞ、へルシア緑茶みたいに慣れってやつかもな」

香織「えぇ…私へルシア苦くて無理~」

祐樹「はは、お子様だな藤宮はっ」

香織「むーいじわるっ!」

祐樹「なんだよ。引きこもってるって聞いたから心配もしたが普通に元気そうじゃんか」

香織「えっとね…でも医者には通ってるよ毎週」

祐樹「そうか…」

香織「もう…人が怖くて昼間外に出れないの…」

祐樹「家族や山岸さんはどうなんだ?」

香織「電話で話すなら二人は平気…桐生君は割りと厳しいけど…」

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 13:48:34.80 ID:05WVGrhv0
香織「長谷君も平気…」

祐樹「俺は正直会うのを戸惑ったぞ。今更あって俺に何かしてやれる事なんてないだろうしってさ」

香織「ううん、こうしてまた話せただけで元気が少し出たよ、ごくごく」

美味しそうにチューハイを飲む藤宮、酒は慣れているみたいだ。

祐樹「大体事情は分かったけど、襲われそうになった時俺以外にも助けを求められそうな奴は居たはずだろ、九条とか将吾とか」

香織「うん…でも最初に長谷君に無意識に連絡しようとしちゃって、だってそうしないと長谷君やきもち妬いちゃうじゃない?なんで俺に連絡くれなかったの?って」

祐樹「高校生の頃とかなら間違いなくなっ、だけどんな事考えてる余裕なんぞねーだろ。誰でもいいからとにかく助けを求めてりゃ良かったんだよ」

香織「電話してもつながらないしアドレスも変更されてるし…その地点で更に真っ青になって…誰にも連絡する気力が無くなっちゃってたよ…」

祐樹「その…すまなかった。連絡先を教えなかったのは俺の落ち度だ…」

香織「ううん、仕方が無かった事だもん。お互いに連絡できない事が多くなっちゃった訳だし…」

祐樹「しっかしカラオケで女の子を押し倒すとか…20歳超えた大学生が公共の場でみっともないって言うか…」

香織「あの時私も何が起きたか解らなかったよ…」

香織「告白された際にね、私、他に好きな人が居るって断ったの、そしたら顔色変えていきなりがばって」

祐樹「なるほどな…ってそれなら尚更俺より連絡しなきゃいけない相手が居ただろうが」

香織「…」

祐樹「どうしてその「好きな人」に連絡しないで友達である俺に真っ先に連絡したんだっつーの…」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 14:04:36.33 ID:05WVGrhv0
祐樹「好きな人が居るって口実を作って上手に断ったとかか?」

香織「…」

藤宮は下を俯きながら俺に向かって指をさした。

香織「長谷君が好きだったから…断ったの…」

祐樹「はい???」

一瞬何がなんだかわからなくなった。

香織「お互い忙しくなって連絡が取れなくなって半年…?ううん4ヶ月くらいかな…私も勿論友達づきあいとかサークルで忙しかったけど…」

香織「だからこのままじゃいけないって…長谷君に近々連絡をちゃんと取って話し合わなきゃって思って」

祐樹「んー…色々とすまん…」

香織「ううん、謝らなくて良いんだよ!長谷君が悪いんじゃない、意気地なしだったから…私は」

祐樹「意気地なしはこっちだよ。高校の時勝手に惚れて…お前の記憶が回復してから勝手に安心して…大学に入ってからしばらくして、本当に俺はお前の存在そのものが薄れかけてた」

香織「…」

祐樹「勿論入学したばかりの頃は寂しさはあったさ…けど何度も言うが俺は藤宮が幸せになれる切っ掛けになれたのならもうそれだけで満足できるようn」

香織「まだ好き…」

祐樹「藤宮…?」

香織「きっと高校の頃から…私…どんなに離れててもどこかしらで長谷君と繋がってると思い続けてきた…表面上は『友達』として…」

香織「ただの友達じゃないの…親友とかとも違う…私だけの友達…私だけの長谷君だから…連絡がなくてもどこかで絶対繋がってるって」

祐樹「おいおい、飲みすぎだ。でもまあこう言う機会じゃないと吐き出せないもんもあるからな。何でも聞いてやるから話してくれ」




41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 14:18:05.68 ID:05WVGrhv0
香織「私の記憶を取り戻してくれた大切な長谷君…私はね、本音で言うと長谷君と何時だって恋人になれるし長谷君はどこにもいかないって思い込んでたの」

祐樹「想像力豊かだな。でも人間ってのは変わってくもんだよ。俺だって変わったと思うし藤宮だって変わった…そうだろ?ずっとそのまま、永遠なんて絶対無いんだよ。世の中そんな都合の良いように世界は作られてないよ。俺は27年間生きてきてそれが十分に解る」

香織「私は…変われるのかなこれからの人生…」

祐樹「それは藤宮自信だな…って言いたいけど今日だけは久々に再開したわけだし甘やかして言うが、人間20歳後半あたりになると性格とか生活スタイルとか中々直らなくなって変わるのが凄く大変だぞ…?」

香織「うん…私ももう自信なんて何も」

祐樹「俺が手伝ってやるよ、藤宮の人生」

香織「え…」

祐樹「携帯の番号とアドレス交換しようぜ、ほれ、携帯」

香織「いいの…?こんな私なんかと」

祐樹「また二人で遊んだりすっか。前みたいに毎週は無理だが、仕事帰りとか買い物に付き合ったりここで喋ったり」

香織「私凄く歪んじゃってるけどいいの…?もしかして勝手に長谷君の携帯みたりするかもしれないよ?」

祐樹「あぁ、見たけりゃ勝手にどうぞ。やましいもんは何もないけどなっ仕事の事とかで頭が痛くなるような文章ばかりだぞー?」

香織「引きこもってから、勝手に長谷君が結婚したり恋人が出来たんじゃないかって妄想してその女の人を嫉妬してたくらいだよ?」

祐樹「生憎仕事が忙しくて今でも独身だよ、九条や将吾に先を越されてこんな生活だ」

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 14:29:11.43 ID:05WVGrhv0
祐樹「その…まあ…今まで何も気づいてやれなくて、助けてやれなくてごめんな」なでなで…

香織「長谷君…長谷君…ひぐ…ぐす…」

藤宮は大粒の涙を流しながら俺に抱きついてきた。

祐樹「少しずつ生活スタイル、直していこうな?」

香織「ぐす…うん…」

祐樹「とりあえずジャンクフードばかりは禁止」

香織「ぅ…は…はい…」

祐樹「あとボディソープで頭洗うの禁止」

香織「はい…」

祐樹「ってお前まだ髪の毛少しぬるぬるしてんぞ…1回しか髪洗ってないだろ…それにまだ少しフケ臭い…」

わしゃわしゃと藤宮の髪の毛を手でかき回す

香織「ひゃあ」

恥ずかしがって俺の胸に顔をうずめる藤宮。

祐樹「もっかい風呂はいるぞ、すぐ上がったから怪しいって思ったが」

香織「え…は、長谷君とお風呂!?そんな…わ、私・・・・まだ心の準備が!」

祐樹「はいはい、背中流してやるからちゃんと清潔にしようなっと」

香織「えええええええ!!!」

藤宮を抱えてそのまま風呂場へ強制連行した。

………

……


43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 14:34:33.30 ID:05WVGrhv0
祐樹「さっぱりしたろ?」

香織「ふぁい…」

顔を真っ赤にしながら下を俯いてうなづく藤宮
俺に裸を見られたのが死ぬほど恥ずかしかったらしく
風呂場では終始固まっていた。

しかし何年も引きこもって生活スタイルが欠落している藤宮を少しでも元に戻すためには
ある程度強行手段に出ることも必要だった。

香織「私以外の女の人と…こんな事しちゃだめだよ」

祐樹「ねーよ、藤宮だけだっての」

はぁ、とため息をついてビールを口に運ぶ。

脇の毛とすね毛の処理くらいはちゃんとしようなと突っ込みたかったがそこはおいおい言うとして…


再び俺と藤宮香織との付き合いは始まった。

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 14:48:14.14 ID:05WVGrhv0
仕事が忙しくメールの返信が遅れるとぷんすかしたり仕事終わりに迎えに来ることも増えたりし、ひやひやする事も多くなったが
それはそれで楽しいと思えるようにもなった。

祐樹「あれ、立場が昔と逆になってね?」

部下「どうしたんすか先輩…?」

祐樹「いんや、なんでもないよ」カチャカチャ

部下「それより昨日迎えに来てくれた人って彼女さんすか?すごい美人でしたね」

祐樹「ん?あぁ、想像に任せるよ。変な噂流したら減給なっ」

部下「ひぃ、それだけはご勘弁を!」

会社でもそれを突っ込んでくる上司やら部下。

弁当がゲタ箱に入ってる事もあった。

祐樹「…まっず…あいつ久々に料理したのか…」

高校の頃作ってくれた卵焼きの味ではない。
どれだけ砂糖使ってんだよってくらいの甘くて真っ黒な卵焼き

祐樹「メール…っと美味しかったよ…イカ墨卵焼き(笑)っと」

すると彼女からぷんすかしたメールが帰ってきて可愛らしい。

久々に藤宮の家に招かれた事もあった。

おばさんは相変わらず美人だった。高校の頃から見た目が殆ど変わってない…なんか若返りの薬でも飲んでいるのだろうか…
藤宮の父親とも始めて話した。

俺の勤めてる会社と偶然取引があったりして話が盛り上がった。とても気さくで優しい人だった。

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 16:19:45.52 ID:05WVGrhv0
二人で遊びに行く際は向こうから積極的に手を繋いできたりした。

同僚や部下の女とたまたま鉢合わせた時はふくれっ面になったり一緒に居て退屈しない。

帰りが遅い日はアパートの入り口でずっと待っていたりする事も多くなったから合鍵を渡したりもした。


46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/04(金) 23:44:40.50 ID:05WVGrhv0
ここからが分岐点です…

ネタバレをすると優しいENDですが分岐点からヤンデレルートもご希望ならお書きしますがいかがしましょうか?

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:12:20.30 ID:UL8lWuon0
九条の経営する喫茶店

九条「よういらっしゃい」

祐樹「よう、相変わらず繁盛してるな」

九条「人手が足りないくらいだよ。良かったらバイトでもすっか?」

祐樹「わりーな、今丁度取引先とのやり取りが終わって3時の休憩だよ。激務で掛け持ちしてる余裕なんてないよ」

九条「さすがは高収入だ、やるねぇ長谷は」

祐樹「自営業のお前に比べりゃまだまだだよ。コーヒーとフレンチトースト頼む」

九条「はいよ」

祐樹「女性客多いな」

九条「当然だろ、俺、結婚しててももてるから」

祐樹「嫁さん居るのに女が擦り寄ってきてもんなもん鬱陶しいだけだろっての」

九条「お前、昔と違ってもてるだろ」

祐樹「あぁ、沢山仕事を押し付けられて上司だけには気に入られてるよ。そっちのけはないんだがなっ」

九条「はは、今のお前大好きだわ俺」

舞子「あー長谷君だ~いらっしゃい~!」

祐樹「おっ芹澤さん、今九条の奴が女にもてます自慢を俺にしてたぞ」

舞子「はじめ…?(にこ」

九条「いや!その冗談だってば!俺にとっては舞子以外眼中にないっての!」

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:20:21.48 ID:UL8lWuon0
祐樹「仲良し夫婦だな、それに芹澤さんの腹…」

九条「ああ…もう少ししたら店休んで貰うよ、体壊して流産されたらたまったもんじゃないしな」

舞子「名前まだ決まってないけど…赤ちゃんが居るんだ。私のお腹」

九条「だから尚更バイトが欲しい」

祐樹「お前ら二人とも優しそうだからな、バイト募集の張り紙すれば寄って来るんじゃねえか?」

九条「接客業って中々人が来ないんだよ。だからは今は大変だぞ」

祐樹「派遣社員の求人登録出しておいてやろうか?」

舞子&九条「まじ!?」

祐樹「いいよ。うちの会社そう言うのもやってるから。1ヶ月くらい何人か面接にくるんじゃないか?」

九条「頭があがらんな…」

舞子「でも結構手数料かかるんでしょ?」

祐樹「社長にコネといてやるよ、特別だ」

九条「長谷に此処まで施しを受けるとは…」

祐樹「その代わり代償は高くつくぞ…元気な赤ちゃん生めよっそれが代償なっ」

舞子「う、うん!」

九条「長谷…ぺペロンチーノ食ってけ、俺のおごりだ!」

祐樹「駄目だ!この後また取引先に行かないとだからにんにく系の食べ物は避けたい…!けど美味いんだよな…お前のパスタは…」

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:25:42.52 ID:UL8lWuon0
祐樹「こんど藤宮と二人で来るとするよ」

九条「お前…香織とあったのか…」

祐樹「あぁ、色々と大変だけど今彼女とまた付き合い始めてるよ」

九条「そっか…ごめんな、何も出来なくて」

祐樹「出来なくて当然だ、芹澤さんと中の赤ちゃんと店を守るのがお前の仕事だろーが」

九条「藤宮って呼び捨てになってるってことは仲が深まったのか?」

祐樹「会社の癖でつい同僚や部下を呼び捨てで呼んでしまう癖がついてな。ただ前一緒に風呂に入る仲くらいにはなったよ」

九条&舞子「えぇ!?」

九条「結婚式はいつだ?」

舞子「やっぱ長谷君には藤宮さんがお似合いだよ!」

祐樹「待て待て、早すぎだ…あの子はもう少し日の光を沢山浴びる必要がある。そう言うのはもう少し先でもいい筈だよ」


50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:31:41.00 ID:UL8lWuon0
―アパート―

祐樹「今日もくたくただ…ってあれ。鍵が開いてる、藤宮の奴きてるのか」

ガチャ

祐樹「ただいま」

香織「お帰り長谷君!」

祐樹「よう、今日は1日なにしてたんだ?」

香織「えっとね、長谷君のために晩御飯作ってたよ!」

祐樹「はは、くたくただし正直助かるかも…」

香織「長谷君…私以外の女の人と会った?香水の臭いがする…」

祐樹「あぁ、九条の喫茶店に寄ったんだよ、嫁の芹澤さんも妊娠してて幸せそうだったぞ」

香織「え?あ、そうだったんだ…」

祐樹「勘繰んなって、藤宮に黙って勝手な事しねーよ」

香織「…」

祐樹「はぁ…なぁ藤宮さん」

香織「…」プイ

祐樹「藤宮…」

香織「何…?(むす」

祐樹「ふう、もう遠慮なく呼ぶけどいいよな。ご飯作ってくれててありがとな、香織っ」

香織「…!!!!うん!!!!」<ぱぁ!

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:34:41.51 ID:UL8lWuon0
香織「私も祐樹君って呼びたい…」

祐樹「君はいらねーよ」

香織「祐樹ちゃんは?」

祐樹「恥ずかしいから却下。祐樹でいいよ。」

香織「うん…おかえりなさい祐樹」

祐樹「ただいま香織…、グリル焦げ臭いぞ…」

香織「わ!秋刀魚がこげちゃってるー!」

祐樹「ったく、俺も手伝うから一緒に作っちまおうぜ」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:39:42.32 ID:UL8lWuon0
数分後

香織「」ドヨーン

祐樹「一人暮らししてりゃ嫌でも自炊能力は身につくもんだ…気にすんなって…人間は失敗から学ぶもんだからな」

香織「祐樹のご飯作り失敗しちゃった」

祐樹「真っ黒な秋刀魚…でもな、ポン酢をたらして…ほれ食ってみろ」

黒焦げになった秋刀魚を箸でほぐし香織口に運ぶ

香織「ぱく…わ…美味しい」

祐樹「だろ?秋刀魚は皮がぱりぱりのが美味しいんだよ。香織はもともと料理のセンスがあるから失敗しても美味いもんは美味いんだよ」

香織「ありがとう…そんな風に褒められると毎日でも来たくなっちゃうかな」

祐樹「俺は別に構わないぞ?香織一人養うくらい造作も無いくらいだからな」

香織「私達夫婦みたいになってない?」

祐樹「肯定すっ飛ばしすぎてるけどな…」

53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:44:50.18 ID:UL8lWuon0
祐樹「工程すっ飛ばしすぎてるけどな…」(修正)

香織「偶然かもだけど…私は嬉しい」

祐樹「そうだな。俺も昔を思い出して嬉しいよ」

香織「また祐樹と一緒に居られて…」

祐樹「あぁ、俺もまさかこんな形で香織なんて呼べる日が来るなんてな」

香織「祐樹…くん」

祐樹「香織?」

香織「私が社会復帰できたら…友達以上の関係になってくれますか?」

祐樹「とっくになってんだろ。でなけりゃ合鍵なんて渡さないっての」

香織「う…うん…ぐす」

祐樹「できればこのまま香織が俺の嫁になってくれりゃ嬉しいんだけどなっ」

香織「…よろこんで…」

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:51:23.61 ID:UL8lWuon0
休日は香織と二人で出かける事が多くなり


将吾夫婦や九条夫婦にも目撃されたり会社のメンツにも目撃されたりで
香織との関係を隠す事がもはや出来なくなっていた。

気づけば香織と同棲することなり夫婦のような生活が半年以上続いた。

久々に山岸さんに再会した香織は大粒の涙をこぼし互いを解り合い…


そして俺と香織は結婚した。

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/11/05(土) 00:53:54.72 ID:UL8lWuon0
そして…

香織「んー祐樹君、私短期でパートしよっか?」

祐樹「いいよ、香織は家を守ってくれりゃそれで…」

香織「えっとね…日当払いのすごい会社があって…仕事もきつくなくて給料も凄くいい場所で…」

祐樹「どこだよそこ…」

香織「桐生君が最近立ち上げた会社で鉄華団っていうんだけど…」

祐樹「やめとけ!」



引用元: 長谷祐樹(27歳)「もうこんな年齢になっちまったんだな」