1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 22:16:41.73 ID:nOj7ZV2fP
西村「夏目って麻雀できるか?」

夏目「麻雀かぁ……やったことないな」

北本「まぁやりそうなタイプには見えないな」

西村「最近将棋とかばっかりだったからさ、田沼も呼んで麻雀やらないか?」

夏目「いいけど、難しいんじゃないのか? ルールを覚えられる自信ないぞ?」

西村「大丈夫、慣れるまで複雑なルール抜きでやるから。それに基本を押さえれば結構簡単に覚えられるぞ」

夏目「そういうことなら、まぁ」

北本「じゃあ俺田沼に声かけてくるわ」

西村「おう、頼んだ」

夏目(麻雀かぁ……そういえばテレビでよく中継してるけど、ちゃんと見たことないな)

夏目(仲間とやるゲームって、縁がなかったし……)


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 22:26:13.13 ID:nOj7ZV2fP
北本「おーい、田沼の家、自動卓あるってよ」

西村「お、マジ!?」

田沼「あぁ、親父が麻雀好きでな、たまに檀家の人と打ってるぞ」

西村「よし、じゃあ今日は田沼の家に集合だな!」

夏目「いいのか?」

田沼「問題ないよ、親父も喜ぶと思うぜ? 相手が増えるからな」

夏目「そういうもんなのか……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


西村「ツモ! 1000・2000!」

北本「あっぶねー、振り込むところだった」

田沼「ほれ、2000」チャラ

夏目「えーっと、はい」チャラ

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 22:32:57.19 ID:nOj7ZV2fP
西村「いやぁ、今日はついてるぜ! この調子なら役満も出せるかもな」

北本「もうお前に運はこねえよ……ここからは俺の独壇場だ」

西村「おもしれぇ、やってみろ!」

夏目「これがこう……」

田沼(理牌のクセが丸分かりだけど、まあいいか)

夏目(表を見ながらだからなんとかやれてるけど、やっぱり難しいなコレ)

夏目(…………ん?)

「…………」ジー

夏目(妖が西村の手を覗いてる……)

「ん?」

夏目(やば、目が合った)

北本「どうかしたか、夏目?」

夏目「いや、なんでも」

「おい、こいつ二索待ちのスッタンだぞ」

夏目(りゃんそう? すったん? なんだそれ)

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 22:40:02.05 ID:nOj7ZV2fP
「まぁ気をつけるこったな」

夏目(どっかいった……それにしても何だったんだ)

夏目(りゃんそうって確かこの竹みたいなヤツが二つ書いてあるのだよな? これで西村が和了れるってことか?)

夏目(……じゃあこっちを捨てるか)コト

北本「……」コト

夏目(あ、あれ二索じゃ……)

西村「くっ……くくく」

北本「……おい、マジかよ」

西村「ああそうだ、ロン! ひざまづけ!」パタン

北本「っ! ぐあああああああああ! うそだろおおおおおお!?」

田沼「おいおい、本当にすごいな今日は」

夏目「そんなにすごい役なのか?」

田沼「まぁ役満は滅多にお目にかかれないからな、特にこれは四暗刻単騎だし」

夏目(すーあんこーたんき…………だからスッタンなのか)

西村「ダブルはアリでいいんだったよなぁ? 親のダブルはきっついぜ?」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 22:52:28.76 ID:nOj7ZV2fP
北本「トんだどころの話じゃねえだろコレ……」

西村「いやぁ稼いだ稼いだ! あれ、北本くんの箱に何も入ってないように見えるのは気のせいかな?」

北本「お前覚えてろよ」

田沼「そういえば夏目はGWはどうする予定なんだ?」

夏目「ああ、実は藤原さんたちと鹿児島へ旅行へ行ことになってさ」

北本「え、マジ?」

西村「おいおい、俺なんて鹿児島どころか市外へ出る予定もないっていうのに」

田沼「そうか……藤原さんたちと一緒に旅行に行くのは初めてじゃないか?」

夏目「そうだな……滋さんと陶芸の人の所へ遠出したのだけだった」

田沼「良かったな」

夏目「…………うん」

西村「あ、俺のお土産黒豚一匹で!」

北本「アホかお前は」

田沼「鹿児島といえば練り物が有名だよな」

夏目「そうか、薩摩揚げって鹿児島だもんな」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 23:01:26.49 ID:nOj7ZV2fP
田沼「ニャンニャン先生が喜びそうだな……あれ、先生はどうするんだ?」

夏目「家においてはいけないからって、滋さんがペット可のところを予約してくれたんだ」

田沼「飲み過ぎないように言っておいたほうがいいんじゃないか?」

夏目「確かに」ハハハ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


滋「済まない、貴志」

夏目「いえ、仕事なら仕方ないですよ」

塔子「貴志くんがいいのなら、ひとりで鹿児島へ行ってきても良いんじゃないかしら」

夏目「そんな、二人がいけないのに俺だけなんて……」

滋「いや、もうすでに予約してしまっているからね、私と塔子さんの分は仕方ないが、貴志の分まで無駄にすることはないと思うんだ」

塔子「鹿児島は行ったことがないんでしょう? いいところだから、一人で羽を伸ばしてくるのも悪くないわよ」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 23:12:37.32 ID:nOj7ZV2fP
夏目「そうですか……ならお言葉に甘えて、行かせてもらいます」

塔子「よかった、若いうちに色々な場所へ行っておくのは、いい経験になると思うの」

滋「社会人になると、そう簡単に遠出ができなくなってしまうからな」

夏目「ありがとうございます」

滋「そういえば、鹿児島でまた新しい遺跡が発掘されたそうだ」

夏目「そういえば、ニュースでちょっと見ました」

滋「ポンペイ遺跡のように、火山灰で埋もれてしまった場所だったようだ。直接入って見ることはできないだろうが、遠目に眺めてくるのも良いかもしれないな」

塔子「何年かしたら、整備されて観光名所になるのかしらね」

滋「そうだな、今のうちに見ておいて、観光地化されてから行くとまた面白いかもしれない」

夏目「じゃあその時は一緒に行きましょう」

塔子「ふふ、そうね、楽しみだわ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先生「つまり私と夏目の二人旅というわけか」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 23:21:03.14 ID:nOj7ZV2fP
夏目「一人と一匹な」

先生「にゃにおう!?」

夏目「先生、移動時間は長くないけど、大人しくしてるんだぞ」

先生「私が今まで大人しくしていなかったことがあったというのか?」

夏目「両手で数えられないくらいは」

先生「ふん! まぁせいぜい向こうで上手い練り物を私に捧げることだな」

夏目「酔っ払って問題起こすんじゃないぞ、馴染みのある土地じゃないんだから」

先生「なぁに、旅の恥は掻き捨てと言うだろう」

夏目「……連れて行かないぞ」

先生「というのは冗談でだな」

夏目「はぁ、今から心配だ……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「じゃあ行ってきます」

塔子「あ、貴志くん、ちょっと待ってね」


19 :ケツが焼けるように熱い……:2013/07/19(金) 23:45:00.22 ID:nOj7ZV2fP
夏目「え?」

塔子「はいこれ、お土産代」

夏目「え……こんなにたくさんって、何人分買ってくればいいんですか?」

塔子「もう、これはね、お土産代っていう名前のお小遣いだから」

夏目「そんな、こんなに頂けませんよ」

塔子「旅行先では結構お金を使う場面があるから、とにかく持っていくだけでも、ね?」

夏目「……ありがとうございます、お土産たくさん買ってきます!」

塔子「ふふ、気をつけて行ってらっしゃい」



夏目「お土産か……何を買っていけばいいんだろう」

先生「酒だ酒! 鹿児島と言ったら芋焼酎だろう!」

夏目「俺は未成年だぞ、先生」

先生「なら私が化けて買ってやる、だから金をよこせ」

夏目「あ、電車きたぞ」

先生「こらー! 聞いてるのか夏目ー!」

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/19(金) 23:57:38.21 ID:nOj7ZV2fP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「さてと……宿には無事についたけど……」

夏目(一人旅なんてしたことないから、何をすればいいのかわからないな……)

夏目「なぁ先生、旅行って普通何をするものなんだ?」

先生「昔は半分命懸けというのもあったからな、『可愛い子には旅をさせよ』というのは、まぁ修行みたいな意味合いもあったというようにな」

先生「しかし現在は手軽に旅行できるようになったからな、観光名所を回ったり、うまいものを食べたりするくらいじゃないのか?」

夏目「なるほど……じゃあとりあえず、今日は適当にうまいものを探して、そのへんを歩いてみようか」

先生「途中で薩摩揚げを買うのだ!」

夏目「気が向いたらな」

先生「なんだとー!?」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:04:37.81 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん……あれほど携帯とお財布を持っておくように言い聞かせたのに……」

巴「姫様は霧島市からほとんど出たことがないですからね……」

霞「とにかく探しましょう、霧島にいる娘たちも呼んで、なんとしても見つけなきゃ!」

巴「はい!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔(どうしましょう……迷ってしまいました)

小蒔(せっかく分家のみんなが集まる日だから、美味しいものを買おうと思っていたのに……)

小蒔(疲れた……それに……お腹が減りました……)グゥー

小蒔「うぅ……霞ちゃん……」グスッ



夏目「あの……大丈夫ですか?」

小蒔「……え?」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:14:22.44 ID:R3Gq+wPPP
夏目「何かお手伝いできることがあれば……」

小蒔「あ、あの……えっと……」

夏目「もしかして、道に迷ってたり?」

小蒔「あ、はい」

夏目「僕も旅行できてるから、そんなに詳しくはないんですけど、地図ならありますから案内しましょうか?」

小蒔(えっと……これはどうしたら良いんでしょう)

小蒔(知らない人について言ったら行けないって、霞ちゃんに言われているし……あ)

小蒔「あの……よろしければ携帯電話を貸していただけないでしょうか」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「はい……はい、お願いします」

小蒔「ふぅ……ありがとうございます」

夏目「いえ、お役にたてて良かったです」

小蒔「ここまで迎えに来てくれるそうなので、もう大丈夫です。本当に助かりました」



26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:23:01.85 ID:R3Gq+wPPP
夏目「そうですか……どこからいらっしゃったんですか?」

小蒔「いえ、その……生まれも育ちも鹿児島なんですけど……霧島からあまり出たことがなくて……」

夏目「そうだったんですか」

小蒔(あ、あの袋は……つけ揚げの……)ゴクリ

小蒔「……」ジー

夏目(なんだろう、袋にものすごい視線を感じる)

ギュルル

小蒔「あっ」

夏目「……」

小蒔「……///」

夏目「あの、食べますか?」

小蒔「え?」

先生(にゃんだとおおおおお!?)

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:38:02.97 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「……」ハムハム

夏目「神代小蒔さんですか」

小蒔「……んぐ、はい、高校2年生です」

夏目「あ、僕も高校2年生なんです」

小蒔「夏目さんも……じゃあ私たちおんなじなんですね」

夏目「そうみたいですね」

先生「おい夏目! 私のさつま揚げをホイホイ行きずりの女に貢ぐんじゃない!」ヒソヒソ

夏目「貢ってなんだ」ヒソヒソ

小蒔「その猫ちゃんも一緒に連れてきたんですか?」

夏目「ええ、まぁ……着いて行くって聞かなくて」

小蒔「ふふふ、可愛い猫ちゃんですね」

夏目(かわいい……?)チラ

先生「何か文句があるのか」ヒソヒソ


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:44:37.41 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「あの……これも、いいですか?」

夏目「ああ、どうぞどうぞ」

先生「なっ! あのチーズ入りだけは渡してはならん!」ヒソヒソ

夏目「うるさいなぁ、またあとで買えばいいだろ!」ヒソヒソ

先生「夏目貴様、私の楽しみをなんだと思っているー!」ヒソヒソ

夏目「うわっ、やめっ!」ジタバタ

ドサッ

小蒔「ふぇ?」モキュモキュ

小蒔(何かカバンから落ちて……)

小蒔「友人帳?」

夏目「!? そ、それはっ」

小蒔「あ、すみません……つい手にとってしまって……」

夏目「い、いえ、ありがとうございます」サッ

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 00:53:59.14 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「お友達の連絡先とかが書いてあるんですか?」

夏目「まぁそんなところです……はは」

夏目「おっと、もうこんな時間か……もう旅館の方で夕食の時間なので失礼します」

小蒔「あ、このお代は……」

夏目「ああ、気にしないでください、大丈夫ですから」

小蒔「でも、そういうわけには……」

夏目「じゃあ、もしもまた会えたら、おいしいお店を紹介してください、じゃあさよならっ」

小蒔「あっ……行っちゃいました」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「まったく……先生がわがまま言って暴れるから、友人帳を関係ない人に見せちゃったじゃないか」

先生「ふん! あれは全面的にお前が悪い!」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:00:42.67 ID:R3Gq+wPPP
夏目「はぁ……まぁ普通の人だったから助かったけど」

先生「……それはどうかな」

夏目「え?」

先生「あの小娘、常人とは比べ物にならないほどの力を持っていたぞ」

夏目「神代さんが?」

先生「霧島から来たと言っていたな……あそこには霧島神宮がある。そこの巫女なのかもしれんな」

夏目「霧島神宮?」

先生「ニニギを祀っている由緒ある神宮だ、めちゃくちゃ大物だぞ」

夏目「そうなのか? 全然知らなかった」

先生「だが一応神として存在しているからな、信仰が弱くなった今はかつて程の力を持ってはいないだろう」

夏目「前から気になってたんだけど、先生とかは別に信仰されているわけじゃないけど力があるんだよな? どうして神様は信仰が関係してくるんだ?」

先生「そうだな……神や妖には様々な形態があるため、キッチリ分類するのは難しいのだが、強いて言うなら神は人が作り出したものだからだ」

夏目「人が?」

先生「正確には人が肉付けしたと言うべきか……ニニギなどの神は、元を正せば巨大なエネルギーのようなものなのだ」

先生「そこで人間が、何か大いなるものとしてそのエネルギーを崇め奉る。その際に人間のイメージがエネルギーに形を与えるのだ」


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:09:20.84 ID:R3Gq+wPPP
先生「それゆえ、信仰する人間がいなくなった神は、形を失ってもとのエネルギーに戻ってしまうのだ」

夏目「へぇ……そうだったのか」

先生「まぁ零落して妖になったりするのもいるし、逆に妖が信仰を得て神になることもあるから、一概には言えないがな」

先生「それより明日こそはちゃんとさつま揚げを買って食べるんだぞ?」

夏目「そうだな、今の話を聞いてたら霧島神宮に行きたくなってきたな……明日行ってみよう」

先生「おいぃ!? それよりも薩摩揚げのほうが大切だろう!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「……ということなんです」

霞「あらあら、そうだったの」

巴「その夏目という方に、きちんとお礼をしないといけませんね」

小蒔「はい、でも連絡先を知らなくて……」

巴「神宮の方の着信履歴を見れば、電話番号はわかると思いますけど」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:17:21.32 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「あ、そうですね!」

霞「じゃあ、明日になったらこちらからお電話を差し上げて、正式に……あら? おばあ様から電話だわ」

巴「あぁ、姫様のことで大分心配をかけてしまいましたからね」

小蒔「すみません……」

霞「ちょっと失礼しますね……もしもし、はい、何事もなく…………え?」

霞「はい……わかりました、もうすぐそちらにつきますので、はい……」

巴「……どうかしたんですか?」

霞「……大変なことになったわ」

小蒔「え?」

霞「運転手さん、すみませんがもう少し急いでいただけますか? なるべく早く大鳥居の向こう側まで」



37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:29:46.70 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「随分山奥まで来たな……」

先生「まさに秘境というかんじでいいではないか」

夏目「っていうか先生、途中に鳥居があったけど大丈夫だったのか?」

先生「私ほどになると……と言いたいところだが、やはりいささか応えたな、まぁこの姿だから通り抜けられたが」

夏目「へぇ……やっぱりすごい所なんだな」

先生「まぁなんとかなるだろう、さっさと見て回って、別の店で薩摩揚げを食うのだ!」

夏目「さっきあれだけ食べただろ……まったく」

「おや、こんなところで会うとは……奇遇ですね」

夏目「え? ……あっ!?」

的場「お久しぶりです、夏目貴志くん」

夏目「な、なんで的場さんがここに……」

的場「仕事ですよ、昨日の夜早急に来て欲しいと頼まれまして、文字通り飛んできたのですが」

夏目「仕事……このあたりで妖が?」



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:37:24.75 ID:R3Gq+wPPP
的場「ふむ、本来なら部外者の君に教えることはできないのですが……まぁいいでしょう」

的場「霧島神宮に使える巫女が、昨夜何者かに襲われて、意識不明の状態だそうです」

夏目「なっ……」

的場「随分やっかいな相手だということで、私が来ることになったのですが……ひょっとして夏目くんが連れてきた妖の仕業ですか?」

夏目「っ! そんなことはしません!」

的場「冗談ですよ、怒らないでください……とにかくそういうことで、しばらくはここで仕事をすることになりそうですね」

夏目「そうなんですか……」

的場「夏目くんも手伝いますか?」

夏目「遠慮しておきます」

的場「そうですか、残念ですね」

夏目「……あの、その襲われたひとの名前、わかりますか?」

的場「どうしました? もしかして知り合いがいるのですか?」

夏目「いえ、その……」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 01:59:29.80 ID:R3Gq+wPPP
的場「……襲われたのは、明星という娘だそうです」

夏目(神代さんじゃないのか……良かった、というべきなのかな?)

的場「知り合いがいるなら、なおさらその力を使うべきではないですか?」

夏目「……」

先生「おい夏目、こんないかがわしいヤツの戯言に耳を傾けるな」

夏目「先生……」

的場「酷い言われようですねぇ」

先生「ふん、そもそもこのような霊験あらたかな場所に貴様のような払い屋がいれば、この青瓢箪の力など必要なかろう」

的場「さぁ、それはどうでしょうね」

先生「もういい、夏目、帰るぞ」トコトコ

夏目「あ、先生……」

的場「気が変わったらいつでもここに来てくださいね」

夏目「……」タッタッタ



46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:09:35.67 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん、着いてきてはいけないと言ったでしょう!」

小蒔「で、でも私たちのために来てくださった人をお迎えするのは、当然のことだと……」

霞「それで小蒔ちゃんが危険な目にあったら、元もこもないでしょう!」

巴「まぁまぁ、落ち着いてください」

初美「いざという時は私たちがなんとかして、姫様を逃がすのですよー」

霞「そんなのは当たり前です!」

春「もう少し気を楽に……」

初美「そんなにシワを寄せたら老けちゃうのですよー、ただでさえ……」

霞「」ギロ

初美「ひっ」

巴「あ、ほら! あの人たちじゃないですか?」

初美「あれが……」

春「的場一門の長……」ポリポリ

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:18:46.96 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「あれ……あの人……」

霞「小蒔ちゃん?」

小蒔「……っ夏目さん!」ダッ

巴「ちょっ!?」

初美「ひめさまー!?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「夏目さん!」

夏目「え……あれ、神代さん!?」

先生「……っ、いかん夏目! なにかヤバイのが来るぞ!」

夏目「えっ」

ズオォオ

小蒔「ひっ!」

霞「小蒔ちゃん!」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:23:32.82 ID:R3Gq+wPPP
夏目「くっ!」ダッ

小蒔「いやぁ!」

初美「姫様がっ!」

夏目「離せぇ!!」ブン

バキッ

グオオオオオオオオオオオオ

夏目(っ!)ズキッ

夏目(い、今のは……)

小蒔「ぁ……」ドサ

夏目「! 神代さんっ」

霞「小蒔ちゃん!」

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:33:57.34 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「本当にありがとうございました」ペコリ

夏目「いえ、僕を追いかけてきてしまったからあんな目に……」

初美「あの人ただのグーパンでアレを撃退しちゃいましたよー」

春「異常……」ポリポリ

巴「一体なんなのかしら、あの人」

霞「それと、昨日も小蒔ちゃ……姫様がお世話になったそうで」

夏目「気にしないでください、本当に大したことはしてないですから」

霞「今すぐに正式な形でお礼を、と申し上げたいところなのですが、あいにく、この状態でありまして……」

夏目「……神代さんは?」

霞「少し当てられてしまっただけのようですすので、奥で寝かせております」

夏目「そうですか、良かった……」

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:39:07.02 ID:R3Gq+wPPP
霞「……あの、夏目さんは的場一門の方なのでしょうか?」

夏目「え? いえ、僕は……」

的場「夏目くん、ちょっといいですか」

夏目「……はい、今行きます」



的場「どうやら、あのお姫様と知り合いだったようですね」

夏目「まぁ、そうですけど」

的場「さて、夏目くんはこれからどうするのですか?」

的場「知り合いの女性が標的にされているこの状況で、鹿児島観光を続けるのか」

夏目「……」

的場「それとも……」

夏目「分かりました、協力します」

的場「そう言ってくれると信じてましたよ」ニコ

夏目「あの、一ついいですか」

的場「なんでしょう?」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:47:14.05 ID:R3Gq+wPPP
夏目「ここはとても由緒ある、力のある神を祀っていると聞いているんですけど、ここの人たちだけで祓うことはできなかったんですか?」

的場「ふむ……なるほど」

的場「確かにここに使えている方々は、皆高い妖力……霊力と言ったほうがいいかもしれませんが、そういう力を持っています」

的場「そして彼女らが降ろす神もまた、非常に力がある。それは事実です」

的場「しかし、実際に妖との戦闘をする際に使えるか、と言われたら、そうではない」

夏目「……どういうことですか?」

的場「いくら力があっても、戦うためのノウハウがなければ役に立たないということです」

的場「例えるなら、大量の鉄や火薬を持っていて、フライパンや花火を作るのが得意だからといって、刀や銃が作れるわけではない、ということです」

的場「ましてやその武器を実際に使うことなど、訓練抜きでは到底成し得ません」

夏目「で、でも俺はいつも殴るだけで……」

的場「それが私にもよくわからないんですよ、夏目くんが規格外すぎて原理が不明なんです」

夏目「そう、なんですか……」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 02:55:01.72 ID:R3Gq+wPPP
的場「……もともと江戸以前には、朝廷や将軍付きの払い屋集団が存在していました」

的場「神社などは、問題ごとが起こるとそういった組織に頼んで解決してもらっていたそうです」

的場「明治政府設立時にも、一応は同じような部署が設けられていたそうですが、時代の流れの中力を持つ者が減ってしまい、GHQの下で完全に

解体されてしまったと聞いています」

的場「神や妖の中には、自らを信仰する者がいなくなると衰える、というモノもいるようですが、人間もそういったものを信じなくなることで、

力を失ってしまったのかもしれませんね」

的場「そういうわけで、民間で払い屋を続けていたウチに依頼が来た……これで納得していただけましたか?」

夏目「はい、大体は……」

的場「一応君はウチの一員ということにしておきます。そのほうが素性をいちいち説明しなくてもいいでしょう」

夏目「……はい」

的場「では私は色々と準備があるので一旦失礼します。夏目くんの役割が決まり次第連絡をしますので」

夏目「わかりました」



夏目(ここに泊まり込むことになるのかな)

夏目(旅館の方、どうしようか……)

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 22:32:07.60 ID:R3Gq+wPPP
夏目(……そういえば先生は? ここにきたときは確かにいたはずだけど)

夏目「……先生?」

ツルフカシテマスヨー

夏目「!?」



春「黒糖……食べる?」

先生「にゃー」ポリポリ

巴「ちょっと……猫にそれは……猫?」

霞「……」ジー

先生「……」チラッ

霞「……」ジー

先生「……」ニヤリ

霞(笑った!?)ビク

夏目「先生!」

初美「え、先生?」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 22:42:45.19 ID:R3Gq+wPPP
夏目「あ、やっぱりここに……」

巴「この猫? ちゃんは夏目さんの?」

夏目「はい、すみません、ご迷惑をおかけして」

初美「先生っていうのですか?」

夏目(なんだろうこの娘……すごい格好してるな)

夏目「ニャンコ先生、って呼んでるんだ」

初美(なんで私だけタメ語なんですかー……)

初美「変わった名前なのですよー」

「そちらが姫様を助けてくださった、的場の方ですか?」

霞「おばあ様……はい、そうです」

祖母「この度は私どもの姫様をお救いいただき、誠にありがとうございました」ペコ

夏目「い、いえ……本当に気にしないでください……」

祖母「どうか、姫様のことをよろしくお願いいたします」

夏目「……はい、絶対に守ってみせます」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 22:53:20.95 ID:R3Gq+wPPP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目(とはいっても、特にやることがないんだよなぁ)

春「つるふか……」フニフニ

先生「に゛や゛あ゛あ゛あ゛」

巴(絶対アレは猫じゃない……)

初美「かるかん食べますかー?」

霞「……」ジー

夏目(的場さんはこのあたりの血界を固める作業中だし、そもそも特に作戦とか聞かされてないし)

初美「なんだか暇ですねー」

春「祓い屋の人たちが全てやってくれてるから、仕方ない」ポリポリ

巴「かと言って、この社の中ではできることが限られていますしね」


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 22:59:48.52 ID:R3Gq+wPPP
トットット

小蒔「あ、皆さん……」

霞「小蒔ちゃん!?」

初美「姫様!」

霞「小蒔ちゃん! 大丈夫なの!?」

小蒔「あ、はい、特になんともないです」

巴「よかった……」

小蒔「あ、夏目さん?」

夏目「どうも……」

小蒔「先程は助けていただいてありがとうございました」ペコリ

夏目(やたらと感謝される日だな……そろそろ気疲れしてきた……)

夏目「神代さんが無事でよかったです」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 23:09:07.98 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「あの、夏目さんは何かの術をお使いになられるんですか?」

夏目「えっと……特にそういうのは」

巴「え? 的場一門の方なのに、ですか?」

夏目(そういえばそんな設定だったな)

小蒔「夏目さんって、的場一門の方だったんですか!?」

夏目「そうなんですが、実はまだ入りたてでして、特別なことができるわけではないんです」

春「でもさっき、アレをパンチで追い払ってた……」ポリポリ

夏目「あれはその、生まれつき出来たというか……」

初美「あれを生まれつき?」

小蒔「すごいです……」

霞「かなりの力を持った家系の方のようですね」

夏目「祖母は力があったみたいですが、家系がいいかどうかはよくわからないです」

小蒔「……ということは、夏目さんもここにしばらく滞在していかれるんですか」

夏目「ええ、そういうことになりそうです」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 23:19:59.45 ID:R3Gq+wPPP
小蒔「そうなんですか……よかったです」

初美「どういうことですかー? まさか姫様」ニヤニヤ

小蒔「いえ! その、この間のお礼ができるなぁと……あ、もちろんさっきのお礼も兼ねてですけど」

巴「しかし、お礼といっても今できることは……」

夏目「気にしないでください。今はとにかく神代さんたちを守ることが第一ですから」

巴「“たち”……そうですね、何も襲われるのが姫様だけとは限りませんから」

春「私たちも、一応危険」ポリポリ

夏目「……そういえば、襲われた女の子は無事なんですか?」

霞「明星ちゃんのことでしたら、少し衰弱してはいますが、呪術的なものをかけられた痕跡はなく、今は眠っているところです」

夏目「そうですか……」

初美「でも、アレは一体何が目的なんですかねー」

春「……捕食?」

巴「ゾッとするわね……」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 23:29:22.49 ID:R3Gq+wPPP
霞「でも、それなら明星ちゃんが無事なことの説明がつかないわ。それに霧島神宮の巫女が狙われていることにも」

春「目的も正体も不明……」

初美「気味が悪いのですよー……」

夏目(アレを殴った時に感じた違和感……あれは一体何だったんだ?)

夏目(あとで先生に相談してみよう)

小蒔「あの……」

霞「なに、小蒔ちゃん?」

小蒔「今はとにかく待つしかすることがないわけですし、せっかく分家のみんなが集まったのですから、麻雀をやりませんか?」

夏目「……は?」

巴「姫様、いくらなんでもこの空気でそれは……」

初美「流石に厳しい気がしますよー」

夏目「え、なんで麻雀?」

春「私たちは巫女の修行のために、麻雀を使って力を制御する術を学んでいる」ポリポリ

巴「外部の人には、ちょっと想像がつかないかもしれないですが」

夏目(うん、本当に何を言ってるのかよくわからない)


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 23:39:08.52 ID:R3Gq+wPPP
霞「……いいかもしれないわね」

巴「え?」

霞「小蒔ちゃんがうまく九面を下ろすことができたら、この状況を解決する方法につながるかもしれないわ」

初美「えー」

霞「もちろん的場さんの意見を伺ってからになるけれども」

夏目「えっと……とにかく神代さんが何かをしてくれるってことですか?」

巴「そういうことになりますが……」

夏目「じゃあ、的場さんを呼んできたほうがいいですよね? 行ってきますよ」

霞「すみません、お願いしてもよろしいでしょうか」

夏目「任せてください。行くぞ先生」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先生「九面だと? 全く……とんでもないことになりそうだな」

夏目「九面って何なんだ?」

先生「天照がニニギのお付きとして遣わした神々だ……そんなものをあの小娘が降ろすというのか……」

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/20(土) 23:52:43.11 ID:R3Gq+wPPP
夏目「なぁ、神を降ろすって大変なのか?」

先生「大変どころの話ではないさ、失敗すれば最悪命に関わる場合もあるし、成功しても様々な力を削られる……文字通り命懸けだな」

先生「それゆえ寄り代となる人間には、相応の素質と修行が必要となる。九面を下ろして御するというのであればなおさらだ」

夏目「そうか、神代さんってすごいんだな」

先生「聞くところによると、これだけの格を持つ神社の跡取り娘のようだからな。日本中探してもそうはいない人材だぞ」

夏目「はぁ……次元の違いを感じる」

先生「お前も相当だがな」

夏目「あ、いた……的場さん!」

的場「おや? どうかしましたか、夏目くん」

夏目「実は……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「では、これよりはじめさせていただきます」

小蒔「よろしくお願いします」

巴・春「「よろしくお願いします」」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:04:27.17 ID:7TsepW2PP
夏目(始まった……)

タン タン タン タン

的場「夏目くんは麻雀、できるんですか?」

夏目「いえ、役すら全然覚えてないです」

的場「そうですか、それは残念」

夏目「もしかして、的場さんは?」

的場「ええ、政治屋などはこの手のゲームが好きな人間が多いので、嗜む程度には」

巴「ロン、3900です」

夏目「もしかして、もう特別なことが始まってるんですか?」

的場「さぁ……今はただ普通に麻雀を打っているようにしか見えませんね」

タン タン タン タン

夏目「…………っ!?」ゾク

夏目「先生っ」ヒソヒソ

先生「あぁ……これは」ヒソヒソ

ゴオッ

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:20:03.87 ID:7TsepW2PP
小蒔「……」スッ

小蒔「……ツモ、2000・4000」

的場「ほぅ……」

夏目(神代さんの体に、金色のキラキラしたものが……)

先生「あれが神だ……それも一級のな」ヒソヒソ

夏目「あれが……」ブルッ

夏目(……あれ、これって)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


初美「結局何もわかりませんでしたねー」

小蒔「すみません……」

霞「小蒔ちゃんが気に病むことはないわよ」ナデナデ

夏目「でも、すごいプレッシャーでしたね……ああいうことを毎回やっているんですか?」

小蒔「はい、そうですね」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:30:58.86 ID:7TsepW2PP
夏目「体の方は大丈夫なんですか?」

霞「小蒔ちゃんは、神降ろしが得意な体質なんです」

巴「すごいんですよ、私たちの姫様は」

小蒔「そ、そんな……」

祖母「姫様、お疲れ様でした」

小蒔「いえ、こちらこそ無理を言ってしまって……」

夏目「麻雀のことはよくわからないですけど、神代さんがすごい人だっていうのはよくわかりました」

小蒔「あ、あんまりそういうことを言われると……///」

祖母「そういえば……夏目様は夏目レイコという方をご存知ですか?」

夏目「! 祖母をご存知なんですか!?」

祖母「やはり……彼女の血を引く方でしたか」

夏目「俺は祖母のことをよく知らないんです……なにか分かることがあれば教えていただけませんか?」

祖母「私も多くを知っているわけではありません、ただ肥後の国に、希に見る力のある女性が居た、ということくらいしか」

夏目「そうですか……」

祖母「その逸話があまりにも突拍子のないものなので、ただの噂話だと思っていましたが……どうやら夏目様の力を見る限り、本当のことだったようですね」

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:42:22.08 ID:7TsepW2PP
夏目「お話を聞かせていただいて、ありがとうございます」

祖母「大したことのない話で申し訳ありません」

初美「なるほどー、夏目さんは相当イイ血筋の人っていうことになるんですねー」ムニムニ

春「サラブレッド……」モミモミ

夏目「いえ、別にそういうわけでは……っていうか先生……」

先生「にゃ~」

巴(なんであの二人は、あの生き物が平気なの?)

小蒔「……」ウズウズ

夏目「ん?」

小蒔「あの……私も触っていいですか?」

夏目「え……ああ、ニャンコ先生ですか? どうぞどうぞ」

先生(こらー! 何を勝手に許可を出している!)フガフガ

夏目「頑張れ先生」

小蒔「うわぁ……すっごく気持ちいいです……」ナデナデ



22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:56:19.31 ID:7TsepW2PP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


空が迫ってくる。


内蔵を直接揺さぶるような、重く深く響く振動。


赤く火を噴く地平。


ここは……


ここ、は……


##########


夏目「あっ!?」ガバッ

先生「ん~、白くま~……」ゴロッ

夏目「夢……か?」

夏目(なんであんな夢を……)

夏目「…………ちょっと散歩をしてこよう」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 00:59:18.82 ID:7TsepW2PP
夏目(夜の神社って、なんだか新鮮だな……)

夏目(向こうで動いてる光は的場の人か、大変だな)

的場「夏目くんではないですか、何をしているのです? こんな時間に」

夏目「的場さん……」

的場「まさか……巫女のいる部屋に  いを?」

夏目「…………的場さんがそういう冗談を言う人だとは思いませんでした」

的場「ふふ、失敬、君が同じ年代の女の子達と戯れているのが、やけに新鮮な光景だったので」

夏目「それは……まぁ……」

夏目(ここは神社の中だから妖はいないけど、きっと外へ出て俺が妖を見ても、あの娘達は驚いたりしないんだろうな……)

夏目「そう考えると、確かに新鮮かもしれませんね」

的場「それに、  いを警戒しなくてはいけないのは、夏目くんの方でしょうからね」

夏目「はい?」

的場「昼間も話したように、力のある人間の数は減少傾向にあります」

的場「それはここのような神宮でも同じ……後継者不足は大きな問題なんですよ」

的場「そこにちょうどいい年頃で、規格外の力を持った青年が現れる。それも容姿は非常に優れている」


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:06:38.34 ID:7TsepW2PP
夏目「……」

的場「どうです? 注意したほうがいいという気持ちになってきたでしょう」

夏目「……いえ、全く」

的場「まぁ欲しいのは子供ですから、責任をとれ、といったようなことを言われる心配はない分、気は楽でしょうが」

夏目「楽しいですか?」

的場「意外と」クスクス

夏目「……もう休みます」

的場「おやすみなさい、夏目くん」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目(全く……何を考えてるんだか)

スッ スッ

夏目(誰かきた……見回りの人かな?)

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:14:23.63 ID:7TsepW2PP
スッ……

夏目(止まった? 俺に何か用なのかな?)

スー

小蒔「……」

夏目「え……神代さん?」

的場『夏目くんの方でしょうからね』

夏目(いやいやいやいや)

夏目「ど、どうしたんですか? こんな夜更けに」

小蒔「…………」ペタペタ

夏目(っ! あの金色のキラキラが憑いてる! ってことは今は神様が入ってるってことか!)

夏目「あの、九面の方ですよね……なんの御用でしょうか」

小蒔「……わかるのか、さすがだな」

夏目「はぁ……」

小蒔「頼む、アレを……救ってやってくれ」

夏目「……え?」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:27:52.56 ID:7TsepW2PP
小蒔「…………」スト コテン

夏目「わ! ちょ!?」

夏目(むむむ胸が!? っていうかこの状況はっ……)

ヒメサマガイナクナッタノデスヨー
マタ!?

夏目(ヤバイヤバイヤバイヤバイ)

ヒライテル?
デモアソコハナツメサンノヘヤジャ

霞「失礼します、夏目さ…………え」

巴「ひ……め、さ……」

初美「うわー」

春「…………」ポリポリ

小蒔「……」スー スー

夏目(終わった)

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:34:42.10 ID:7TsepW2PP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


春「昨夜はお楽しみでしたね……」ポリポリ

小蒔「…………///」

夏目「いえいえ、本当に何もありませんでしたから」

霞「それにしても、アレとは一体……」

巴「姫様のことでしょうか」

春「でもそれで“アレ”はおかしい……」ポリポリ

先生「女を連れ込むとはやるじゃないか夏目、え?」ヒソヒソ

夏目「もう勘弁してくれ……」ヒソヒソ

的場「おはようございます、夏目くん」

夏目「的場さん……おはようございます」

的場「巫女のみなさんも、おはようございます。早速ですが、今日勝負をかけようと思います」

霞「え?」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:40:16.92 ID:7TsepW2PP
小蒔「勝負ってことは……」

夏目「参段がついたんですか?」

的場「ええ、そしてそれには夏目くんの協力が必要です」

夏目「……わかりました、話を聞かせてください」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先生「なるほど、あの姫の髪を使って術を施し、夏目を姫に偽装するということだな」

夏目「いくらなんでもこの格好をする必要はないと思うんだけど……」

先生「なぁに、にあってるさ。プププ」

夏目「……それにしても、本当にここに来るのかな」

先生「まぁここなら結界も薄いほうだし、破ろうと思えば簡単に破れるだろう」

夏目「…………なぁ先生、実は」

ガサガサガサ

夏目「っ!」バッ

先生「来たか……」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:49:13.34 ID:7TsepW2PP
ゴオオオオオオオ

夏目「くっ!」

妖「オオオオオオオオオ」

夏目(やっぱりだ……やっぱりこの妖は……)

夏目「的場さ……」

シュルルルルッ
ビシッ

妖「!?」

的場「夏目くん、危険です。下がっていてください」ギリリ

夏目「ま、待ってください!」

ピュ ドスッ

妖「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

的場「地に眠り、錠を持つ者来られたし」

的場「岩間を荒らすは彼、人なら……」

夏目「だめだ! 的場さん!」グッ



32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 01:54:42.89 ID:7TsepW2PP
ズボッ

的場「!?」

妖「オオオオオオオオオオオ!」ギュオオオオオ

的場「矢を抜くなど……正気ですか!?」

夏目「待ってください! 俺の話を……」

キャアアアアア!!

夏目「っ!」

的場「くっ!」ダッ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん……小蒔ちゃああああああん!!」

巴「ひ、姫様が……」

夏目「石戸さん! 神代さんは!?」

霞「あ……アレが連れ去って……」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:00:39.59 ID:7TsepW2PP
夏目「ちっ……先生!」

先生「全く……お前はもう少し後先考えて行動しろ」

春「!? しゃべった……」

初美「えぇえええ!?」

ボフン

斑「乗れ、夏目!」

夏目「あぁ!」ガシッ

巴「え!? えええ!?」

霞「これは……一体……」

ビュオオオオオオ

的場「夏目くん……一体何を考えているのですか」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:02:54.97 ID:7TsepW2PP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


斑「いたぞ、あそこだ」

夏目「頼む、先生!」

斑「あぁ」

シャアアア

夏目「神代さん!」

小蒔「うっ……」

妖「グルルルル」

夏目「分かってる……大丈夫だから……」

小蒔「ここ……は……ひっ!」

夏目「神代さん、大丈夫だから落ち着いて」

小蒔「こ、この大きいの、は……」カタカタ

夏目「コイツに神代さんを傷つける意志はないと思う……ただ」

小蒔「え?」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:09:04.41 ID:7TsepW2PP
夏目「多分だけど……神代さんに自分を降ろして欲しいんだ」

小蒔「降ろす……って」

夏目「コイツは、神様なんだ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん!!」

巴「はぁはぁ……これは……」

的場「もうすでに、儀式は始まっているようですね」

夏目「ええ、大丈夫です。見ていてください」

的場「……どういうことか説明してもらえますね」

夏目「はい……今神代さんに取り憑いているのは、多分この間発見された遺跡から出てきた神の類なんだと思います」

的場「……遺跡からの、神?」

斑「神道が成立する以前の原始宗教のようなものだろう……今とは違う信仰体型で形を成した神ということだ」

霞「それが、なぜ小蒔ちゃんに?」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:15:19.66 ID:7TsepW2PP
夏目「彼は、自分を降ろすことのできる人間を探していたんだと思います。初めは明星さんに憑こうとしたんでしょう、だけど……」

的場「なるほど、器が足りずに、衰弱させるだけで終わってしまった、と」

夏目「そしてもっと自分を降ろすのに相応しい人として、神代さんを選んだ……こういう経緯だったんでしょう」

巴「でも、そこまでして一体何をしようとしていたんです?」

春「姫様が今やっていることと、関係が?」

夏目「今行われている舞……これは、火山の噴火を抑えるための儀式です」

初美「ええ!?」

霞「なっ……」

的場「……続けてください」

夏目「昨日あの神を殴った時に、一瞬だけ何かが見えたんです。そして夜に見た夢、さらにさっき交わした会話からわかりました」

夏目「あの神が火山をなだめるための神として信仰されてたことが」

霞「では……今現在、ここは火山噴火の危機にあるということですか?」

夏目「はい、それを治めるための儀式を行うことができる、つまり自分を降ろして知識を受け取れるだけの人を探していたんだと思います」

巴「なんで、そんな……」

夏目「救えなかったから……だと思います。ずっと昔に、自分を祭り上げていた人々を」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:21:30.52 ID:7TsepW2PP
春「どういうこと?」

夏目「彼は火山を治める神として奉じられていた。でも何らかの原因で、噴火した時に人々を守れなかった」

的場「それがあの遺跡と言うことですか」

夏目「そうです。そしてそのことを長い間悔やんでいたんだと思います」

夏目「最も、力を失わないように眠りについていたようですから、意識はなかったかもしれませんが」

夏目「そしてその負の感情に近いものが、あそこまで醜悪な姿に自らを変えてしまった……」

夏目「ですが“人を救うために火山を治める”という目的は、執念のような形で残っていたんでしょう」

夏目「今度こそ役目を果たすために……今回のような事件を引き起こしてしまったんだと思います」

的場「なるほど……わかりました」

霞「小蒔ちゃん……」

初美「そんなに大変なことが……」

斑「この場所は、ちょうど火山への力の流れ、龍脈の上に位置している」

斑「ここでしか儀式を行えんから、わざわざ連れてきたんだろう」

斑「……もうじき儀式が佳境に入るぞ」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:31:00.84 ID:7TsepW2PP
ポゥ

夏目「光の玉……地面から?」

ポ ポポ ポ ポ ポポポ

霞「あぁ……」

巴「綺麗……」

初美「すごいのですよー」

春「……」ポリポリ

斑「噴火寸前のエネルギーを、変換して放出しているのだろう」

夏目「きれいだ……本当に」

小蒔「…………終わりました」

霞「小蒔ちゃん……降ろしているのに意識が?」

小蒔「はい、不思議な気分です……ふわふわしてて、私の感覚がどこまでも広がっていく様な……」

夏目(神の見た目が光に変わってる、いや、戻ったってことかな)

小蒔「ありがとうございます……おかげでたくさんの人を救うことができました」

フワァアア

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:33:58.48 ID:7TsepW2PP
小蒔「…………え? ま、待ってください、そんな!」

霞「小蒔ちゃん?」

小蒔「このひとが……消えてしまう、って!」

斑「当然だ、信仰する者など、とうの昔に絶えたのだからな。むしろ今までもったことが奇跡のようなものだ」

夏目(あぁ……そうか、神様だもんな……)

小蒔「だ、ダメです! せっかくみんなを救ってくれたのに……ここで消えてしまうなんて!」

小蒔「そ、そうです! 私が信仰すれば、私の力でこのひとを!」

斑「無理だ……真名を知らぬものに信仰することはできない」

小蒔「真名を……待って! じゃあ真名を教えてください!」

小蒔「そんな……そうだ、夏目さん! 夏目さんならわかるはずです! このひとの記憶と繋がったなら!」

夏目「…………ごめん」

小蒔「そんな……そんなことって……」

夏目(あぁ……光が、もう……)

小蒔「うっ……ううう……」ポロポロ

霞「小蒔ちゃん……」ギュ

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:36:51.40 ID:7TsepW2PP
小蒔「あぁ……う、せっかく、せっかく……うぁああ」ポロポロ

夏目「っ……」

斑「夏目……」

的場「……これにて一件落着、ですか……さぁ、帰りましょう」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目(結局神社にもう一泊してしまった……というか疲れすぎて帰れなかったんだけど)

夏目(それにしても、もうこんな時間か……早くお暇して、お土産買いに行かないと……)

夏目「…………先生?」



レイコ「ロン」

巴「つ、強い……」

初美「そんな……あんまりですよー……」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:41:20.63 ID:7TsepW2PP
レイコ「ふん、小娘ごときに遅れは取らん」

春「……」ポリポリ

夏目「先生……なにしてるんだ」

レイコ「ん? 夏目か。見て分からんのか、麻雀だ麻雀」

巴「すっごく強いんですけど、この人……人?」

夏目「先生、そろそろ帰らないとマズイぞ」

レイコ「む……まぁ散々毟ったしな、このへんで勘弁しておいてやるか」ボフン

先生「精進しろよ、小娘ども」

初美「こんなにつるふかしてて可愛いのに……とんだ雀鬼でしたよー……」

巴「もうそんな時間でしたか……本当ににありがとうございました」

夏目「いえ、二日間もお世話になってしまって……こちらこそありがとうございました」

夏目「……そういえば、神代さんは?」

巴「姫様は昨日のことが相当ショックだったようでして、今も床に臥せっています。霞さんはその付き添いで」

夏目「そうですか……ではよろしく伝えておいてください」

巴「はい、確かに」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:46:07.77 ID:7TsepW2PP
春「これ……」

夏目「え、黒糖?」

春「……」ニコ

夏目「あ、ありがとうございます……」

初美「今度はこっちからリベンジしに行ってやるのですよー!」

先生「ふん、いつでもかかってこい」

夏目「先生と遊んでくれてありがとう」

初美「まぁ、私も楽しかったですから……うわわ、なんで撫でるんですかー!?」

夏目「あはは」

初美「もう、私はあなたよりお姉さんなんですからね!」

夏目「はは………は、え?」

巴「確かにそうですね……信じられないかもしれませんが」

夏目「え……え、えー!?」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:49:04.15 ID:7TsepW2PP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ガタン ゴトン


夏目「……なあ先生」

先生「なんだ」

夏目「やっぱり、真名を教えてあげたほうが良かったのかな」

先生「今更何を言ってるんだ、お前は」

先生「あいつの気持ちと同調して、考えた上での結果だったはずだろう」

夏目「うん、そうなんだけどさ……」

先生「ならいつまでもウジウジ悩んでるんじゃない、このアホウめ」

夏目「うん……」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/07/21(日) 02:53:27.92 ID:7TsepW2PP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


西村「夏目ー! こっちだぞー!」

夏目「なんでこんなに暑いのに、あんなに元気なんだ……」ゼーゼー

田沼「はは、まあ西村らしいじゃんか」

北本「そんなに長く居れないぞ? お客さんが夕飯食べる時間にはもう向こうで準備が終わってないと」

西村「わかってるよ!

田沼「なんだか、俺たちって宿をやってる親戚が多いよな」

夏目「確かに……」

ドン

「あっ、すみません!」

夏目「いえ、こっちこそすみませ……あ」

小蒔「え?」



おわり