1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:12:14.13 ID:KBCPrGpyi
幼女「ふえぇぇん……」

オーガ「どうした。どこかいたいか」

幼女「ふえぇぇん……」

オーガ「はらがへったのか」

幼女「ふえぇぇん……」

オーガ「なかま、はぐれたか」

幼女「パパぁ……ママぁ……」

オーガ「かぞく、はぐれたか」

幼女「グスン……グスン……」

オーガ「よし、おれ、おまえ、かぞく、ところ、つれてく」

幼女「おじちゃん、だあれ?」

オーガ「おれ、オーガ」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:13:15.07 ID:NiiAFZXkP
オーガ「まず、どうする」

オーガ「このちかく、オーク、住んでる。オーク、どうするか、きく」

オーガ「おまえ、おれ、ついてくる」

幼女「……うん」

……

オーガ「オーク!」

オーク「なんだ、騒がしい」

オーガ「ここだ」

オーク「オーガか。ちょっと待ってくれ。俺はお前と違って夜目が効かないんだよ……」

オーガ「オーク。おれ、こいつ、みつけた」

オーク「だから暗くて見えないと言ってるだろう。どれどれ……」

幼女「あの……」

オーク「おいオーガ、どうしたんだこの女の子は。まさかさらって来たんじゃないだろうな?」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:14:04.59 ID:NiiAFZXkP
オーガ「こいつ、かぞく、はぐれた」

オーク「……そういうことか。それにしても驚いたな。人間の子供がこんなところまで来るとは」

オーガ「?」

オーク「この辺りは、人間はまず足を踏み入れないようなところだ。そんなところに来るのは珍しいと言っているんだ」

オーガ「オーク、ものしり、オークのくせに」

オーク「減らず口は意外に気の利いたことを言えるんだなお前は。とにかくお嬢ちゃん、君は何処から来たんだい?」

幼女「おひさまがのぼってくる方にある、おおきな木のある村からきたの」

オーク「東の……ああ、確かこの谷を抜けて、川を越えた先に村があったな。木はどうか知らないが」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:16:12.65 ID:NiiAFZXkP
オーク「とにかく、東の……向こうの方に行けばいい。谷を抜けてしばらくは、月の出ている方に真っ直ぐ行けばいい。そうしたら川があるから、そこを渡れば村はすぐだ」

オーガ「オーク、ありがとう」

オーク「お前だけで大丈夫か?俺も一緒に行こうか?」

オーガ「オーク、狩り、する。いそがしい。たすけ、いらない」

オーク「そうか。じゃあ気をつけて行くんだぞ。お嬢ちゃん、こいつが方向を間違えそうになったら注意してやってくれ」

幼女「うん」

オーガ「オジョウチャン、行く。手、つかまれ」

幼女「うん」

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:16:59.44 ID:NiiAFZXkP
オーガ「オジョウチャン、みち、くらい。おれ、オジョウチャン、おぶる」

幼女「……いいの?」

オーガ「おれ、おおきい。オジョウチャンちいさい。だから、へいき」

幼女「……うん!」ピョコン

オーガ「もうすぐ、谷、抜ける」

幼女「うん」

オーガ「オジョウチャン、かぞく、いいひとか?」

幼女「パパとママのこと?とっても優しいよ」

オーガ「やさしい、とても、いいこと」

幼女「おじちゃんもやさしいね!」

オーガ「おれ、やさしい?」

幼女「そうだよ」

オーガ「うれしい。オジョウチャンも、やさしい。おれのこと、やさしい、いった」

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:19:19.65 ID:NiiAFZXkP
……

オーガ「谷、ぬけた。ここから、どっち、いく、だったか」

幼女「おつきさまのある方だって、オークのおじちゃんが言ってたよ」

オーガ「つきのひかりで、まわり、あかるくなった」

幼女「さっきまで暗くてみえなかったけど、おじちゃんっておっきいんだね」

オーガ「おれ、おおきい」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:20:43.00 ID:NiiAFZXkP
オーガ「川、ついた」

幼女「すごいいきおいで流れてるね……」

オーガ「おれでも、ながされそう」

幼女「わたるのは、無理そうだね……」

オーガ「なにか、方法、ある」

ゴブリン「あれ、オーガじゃん。こんなとこでなにしてんの?」

オーガ「オジョウチャン、家まで、とどける」

ゴブリン「この子を?東の村まで?ははぁ、それでこの川を渡ろうとしてるってわけか。じゃあボクに任せて!」

幼女「どうするの?」

ゴブリン「ボクはシャーマンだから、キミたちが水の上を歩けるようにしてあげる」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:22:02.72 ID:NiiAFZXkP
ゴブリン「はい、これで二人とも水の上を歩けるようになったよ」

オーガ「はい、いわれても……」

ゴブリン「ボクのことが信用できないの?ほら、このとおり大丈夫だって」ヒョイヒョイ

オーガ「ほんとうだ」

幼女「すごい!」

オーガ「ありがとう」

幼女「ありがとー」

ゴブリン「お安い御用さ、気をつけてね」

……

幼女「みんなやさしいね」

オーガ「オークも、ゴブリンも、みんな、やさしい」

幼女「そうだね!」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:23:14.57 ID:NiiAFZXkP
オーガ「もうすぐ、オジョウチャンの、いえ、つく」

幼女「おじちゃん、ありがとう。たすけてくれて」

オーガ「こまってるやつ、いたら、たすける、あたりまえ」

幼女「やっぱりおじちゃんはやさしいんだね!」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:25:15.58 ID:NiiAFZXkP
オーガ「村、ついた、けど、門、しまってる」

幼女「呼べばいいんだよ。パパー!ママー!」

守衛「ん?幼女ちゃん!?」

幼女「そうだよー!」

守衛「おーいみんなー!幼女ちゃんが帰って来たぞー!」

ワイワイガヤガヤ

守衛「ん?幼女ちゃんを誰かが連れて来てくれたのか……?……!!」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:27:16.69 ID:NiiAFZXkP
守衛「オーガだ!オーガが出たぞおぉぉ!!」

ワーキャー!

オーガ「どうした、みんな」

守衛「そこのオーガ!その子をこちらへ渡せ!」

オーガ「?オジョウチャンをそっちにいかせれば、いいか?」

守衛「そうだ!おとなしく渡せ!」

オーガ「オジョウチャン、おれ、ムラのなか、はいれない。だから、ここで、おわかれ」

幼女「ありがとう!やさしいおじちゃん!」

オーガ「また、あそびにくる、いい」

幼女「うん!やくそくする!」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:28:55.43 ID:NiiAFZXkP
幼女「おじちゃん、バイバイ!」

オーガ「オジョウチャン、ばいばい」

幼女「パパー!ママー!」

父&母「幼女!!!」

幼女「パパ、ママ、しんぱいさせて、ごめんなさい。でも、やさしいおじちゃんがたすけて……」

守衛「今だ!矢を放てえぇぇ!!」

幼女「……え?」



30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:29:37.22 ID:NiiAFZXkP
……

オーク「……矢ガモみたいになって帰って来たと思ったら、そういうことだったのか」

オーガ「いたい」

オーク「我慢しろ。回復力は異常なほど高いんだから、すぐ良くなるさ」

オーガ「よくなったら、オジョウチャン、あいにいきたい」

オーク「諦めろ。向こうからここにやって来なければダメだ。お前が向こうに行けば、また針山みたいになるぞ」

オーガ「おれ、まつ。オジョウチャンのこと、まつ」

オーク「まぁ向こうからやってくる保証は無いがな」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:31:46.07 ID:NiiAFZXkP
……

オーガ「オーク」

オーク「なんだ」

オーガ「おれ、オジョウチャン、ずっとまってる、けど、来ない」

オーク「ああ、そういえばいたな、お前が助けた人間の女の子が」

オーガ「来ない」

オーク「もう十年も経ってるんだぞ。お前が覚えていたって、向こうが忘れてるかもしれんぞ」

オーガ「でも、おれ、まつ」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:32:32.79 ID:NiiAFZXkP
ゴブリン「やあ」

オーク「ゴブリンじゃないか、珍しいな」

ゴブリン「オーガはいるかい?」

オーク「ここはあいつの家じゃなくて俺の家なんだぞ。まぁ確かに遊びに来ているよ」

ゴブリン「呼んできてくれる?」

オーク「いいとも、おい、オーガ!」

オーガ「ゴブリン、ひさしぶり」

ゴブリン「やあオーガ。お届け物……というか、お届け人だよ」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:33:21.36 ID:NiiAFZXkP
?「ゴブリンさん、ありがとう!」

ゴブリン「いやいやお安い御用さ」

オーガ「?」

少女「おじさん!」

オーガ「?……オジョウチャン、か?」

少女「うん!」

オーガ「おれ、オジョウチャン、まってた」

少女「おじさん、あの時は親切にしてくれたのに、村の皆が酷いことをして、本当にごめんなさい!」

オーガ「おれ、あのくらい、へいき。だいじょうぶ」

少女「それでね、今日、私がおじさんを連れて無事に帰って来たら、村の皆にはおじさんに謝ってもらうって約束して来たの。だからおじさん、もう一度、私を村まで連れて行ってよ!」

オーガ「わかった。おれ、オジョウチャン、つれてく」

少女「オークさんやゴブリンさんも、一緒に来てよ!歓迎するよ」

オーク「そうか、じゃあ俺も着いて行こうかな」

ゴブリン「ボクも行く!」

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/11/28(木) 20:34:03.01 ID:NiiAFZXkP
少女「そうと決まったら、早速出発しようよ!おじちゃん、こっちこっち!」

オーガ「よし、いこう」

その夜、三匹の怪物たちは、村人から厚い歓迎を受け、大層楽しんで帰って行ったそうです。

その後、村は心優しいオーガやオーク、ゴブリンが遊びにやって来る村として、人々に知られるようになりました。