1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 22:51:49.69 ID:TNnnOefj0.net[1/22]
 この世の中の学生にとって、いや、世間一般人にとって最も憂鬱な瞬間とはなんであろう。

 言わずもがな、月曜日の朝である。

 土日という至福の休日の後にやってくるそいつは、誰にとっても平等に訪れる。
時間の流れはある意味残酷で、そんな残酷さをもって月曜日という憂鬱を加速させていく。

 とにかく、何が言いたいのかというと、憂鬱だってことだ。

 どこぞの団長様にとってみれば、退屈でなければそれで構わないのだろうが、生憎俺は平凡な一般人である。
日曜日の夕方6時頃になると、既に憂鬱である。
別に、そう感じるのは俺だけではなく、多くの人がそう感じているだろう。

 夏真っ盛りの今日この頃。朝からセミは働きもので、休むことなく鳴き続けている。少しはその元気さを分けてもらいたいものだ。
まぁ、どこぞの団長様には静かさを学んで欲しいとこではあるが。

2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 22:54:15.96 ID:TNnnOefj0.net[2/22]
「相変わらずそうだね、キョン」

 これから長い坂道を登らなければならないことに対して、さらに憂鬱を感じていたところに後ろから声をかけられた。
このくそ暑さを感じさせない清涼感さえも感じるけど声。

「そうそう変わらねぇよ」

「そうかい?それは重畳だ」

 くつくつと喉を鳴らす。

 そっちこそ相変わらずだな。

「しかし、珍しいね。月曜日の朝から、キョンに出会えるなんて」

「そのセリフをそのまま返すぞ、佐々木」

 振り返ると、中学生の頃からの親友、佐々木が微笑みを浮かべていた。

4 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 22:58:34.95 ID:TNnnOefj0.net[3/22]
 こっちは月曜日ってだけで憂鬱で気が重いというのに、佐々木からは微塵もそういった雰囲気を感じられない。
どういう思考回路を持てばそうなれるのだろうか。是非ともご教授を願いたいところである。

「僕だって月曜日が憂鬱だと感じるよ」

「そうなのか?」

「そうだよ」

 佐々木が笑う。

「まぁ、今日は朝からちょっと良いことがあったからそう見えるだけだよ」

 月曜日の朝から良いことか。俺ならば台風でも来て学校が休みになってくれたりしたら最高なのだが
。残念ながら、空は雲ひとつない快晴である。

 思わず溜息が零れそうなくらい、な。

6 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:02:19.24 ID:TNnnOefj0.net[4/22]
「で、その良いことってなんだ?」

 ふとした疑問。

「なに、キョンに会えたことだよ」

 佐々木の答えに目を丸くする。おそらく、俺は間抜けな表情になってるんだろうね。

「なかなか、キョンと会う機会が減ったからね。こうして月曜日の朝からキョンに会えるなんてラッキーだよ」

 今日は良いことがありそうだと、佐々木が再び喉を鳴らす。

 なんと言っていいか、恥ずかしくて思わず目をそらす。
親友と豪語しているが、そう正面切ってそんなことを言われると、どうしていいかわからない。

「やっぱりキョンはからかい甲斐があるね」

 そこでようやくからかわれていることに気づく。肩を竦めて遺憾の意を示す。

8 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:04:50.71 ID:TNnnOefj0.net[5/22]
「冗談だよ、キョン。どうも今日の僕は少し舞い上がってるようだ」

 普段の佐々木と、あんまり変わらないような気がするのは俺だけであろうか。

「じゃあ、キョン。良い1週間を」

 そう言い残して佐々木はさっさと行ってしまった。その後ろ姿は、確かに楽しさを漂わせているようである。

 佐々木が振り返る。目と目が合う。そして、涼しげな笑みを浮かべ、小さく手を振った。

 軽く手を挙げ、学校への道程を考える。いつの間にやら憂鬱さは消え去っていた。

 なんとなく、今日は良い日になりそうだ。
 
9 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:06:11.25 ID:TNnnOefj0.net[6/22]
終わり

11 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:10:13.00 ID:TNnnOefj0.net[7/22]
 不思議探索午後の部。俺は長門とペアを組むこととなった。
長門とペアになった際は、図書館で本を読むというのが恒例であった。

 そんなわけで、今日も図書館へとやってきたわけである。

 窓際の陽当りの良い席に陣取り、読書を開始する。
普段は本を読まない俺ではあるが、こうして長門図書館に来るとオススメを紹介してもらい本を読む。
長門にオススメさせる本はジャンルは様々で、今日は恋愛小説を勧められた。

 こんなものも読むんだなと、少しばかり驚いた。

「……」

「……」

 対面に座る長門。そんな長門を見て、ふと頭に浮かんだことがある。
 
12 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:12:23.88 ID:TNnnOefj0.net[8/22]
「……どうかした?」

 俺の視線に気がついたのか、本を読む手を止め俺の顔をじっと見る。なんと言えばいいかわからず、視線を外してしまう。

「いや、まぁ、何でもない」

 結局言えずじまい。

「そう」

 長門は読書に戻るかと思いきや、それでも俺の顔をじっと見つめてくる。それが気恥ずかしくて、落ち着かない。

 出会った頃に比べ、ずっと感情豊かになった。これも、そのおかげと言うわけか。

「……気になる」

 たっぷり1分は見つめ合っただろうか。長門がぽつりとそう零した。
 
13 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:15:32.04 ID:TNnnOefj0.net[9/22]
「あー、その、なんだ。ちょっと笑ってみてくれないか?」

「……」

 沈黙が痛い。そりゃそうだろ。急に笑ってくれないかと言われたらそうなる。誰だってそうなる。俺だってそうなる。

「すまん、忘れてくれ」

 どこかであの世界の長門にしてもらったことを、この世界の長門に求めてしまっていた。先程も言ったように、まったくの別物ってわけではないのだろうが、少し浅はかであった。

「悪かった。気にしないでくれ」

 ふるふると長門が首を振る。気を遣わせてしまっているみたいで、申し訳ない。

「……こう?」

 少しはぎこち無い長門の微笑み。それでも、いつぞや見た長門の微笑みと重なる。
 
14 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:17:19.72 ID:TNnnOefj0.net[10/22]
「……変だった?」

 何も言わない俺に、心配になったのか長門がそう尋ねる。

「いや、そんなことはない」

 辛うじてそれだけが絞り出せた。

「そう。良かった」

 それだけを言って読書に戻ると長門。

 そんな長門を、俺は眺め続けるのであった。
15 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:17:50.83 ID:TNnnOefj0.net[11/22]
終わり

17 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:20:44.98 ID:TNnnOefj0.net[12/22]
 とある休日のことである。普段ならSOS団の探索活動にあてがわれるのだが、本日はハルヒの都合により休みと相成った。

 せっかくの休みである。家でのんびりと過ごすのも1つの案としてはあったのだが、なんとなく街に出ることにしてみた。
いつもは誰かと一緒にぶらぶらするのだが、たまには一人ってのもいいだろう。

 さて、そんな風に目的もなく街をぶらついていたわけだが、なんの偶然か天使に出会った。
我らがSOS団の天使こと朝比奈さんである。手には小さな紙袋を携えており、そんな何気ないことでも朝比奈さんを修飾するには十分過ぎる程であった。

「あ、キョンくん!偶然ですね~」

 朝比奈さんが俺に気が付き、にっこりと微笑まれた。

 もうその笑顔だけで目的もなく街を彷徨い歩いた成果が得られた乗ようなものである。
 
18 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:23:43.31 ID:TNnnOefj0.net[13/22]
「こんにちは。お買い物ですか?」

「はい。ちょうど部室のお茶っ葉を切らしちゃって」

 休みの日までSOS団のことを考えておられるなんて、本当にこの人は天使なのではないだろうか。

「私が好きでやってることですから」

 にっこりと朝比奈さん。

 ああ、もう。可愛すぎる。君をさらっていく風になりたいというのは誰の歌だったか。
もし許されるのであったらこのまま朝比奈さんをお持ち帰りしたいものである。

 いや、まぁ、絶対にそんなことはしないのだが。
 
19 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:25:13.13 ID:TNnnOefj0.net[14/22]
「良かったらお茶でも飲みませんか?」

 俺にできるのはこうしてお茶に誘うくらいである。

「いいですねー。この近くに良いお店があるんですよ」

 そんなわけで春の陽気が降り注ぐカフェにやってきた。SOS団の面子ではまず来ることはないであろう落ち着いた雰囲気の店である。
ハルヒがいたら絶対に落ち着いてコーヒーを飲むことなんてできやしない。

「そんなことないですよ。涼宮さんだってキョンくんとなら大丈夫です」

「そんなもんですか?」

「そんなもんです。私が保証しますよ」

 パチっとウインクする朝比奈さんに思わず見惚れてしまう。出会った当初は少し頼りないように思われたが、そんなことはなかった。
実際の年齢は禁則事項とやらで教えてはもらえないのだが、SOS団の中ではお姉さん的な存在である。
いつもハルヒの動向だけでなく、全員のことを温かく見守ってくれている。

 ずずっとコーヒーを啜る。コーヒーの味なんぞわからないが、インスタントなんかより遥かに美味い。

 まぁ、1番の美味いのは朝比奈さんの淹れてくれるお茶であるのは間違いがないのだが。

21 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:27:20.72 ID:TNnnOefj0.net[15/22]
「温かくなりましたねー」

「そうですね」

 暦も5月に差し掛かり、一層陽気が高まったように思える。少し暑いくらいだ。

「こう温かいとついついのんびり日向ぼっこしたいですね」

 貴女とならいつまででも一緒にいられますよ。

「キョンくんたら冗談が上手いんだから。お姉さんをからかっちゃ、めっですよ」

 朝比奈さんに笑われてしまった。からかったつもりはまったくないのだが。

 会話が止まる。少しだけ温くなったコーヒーを啜る。普段よりも時間がゆるゆると流れていく。
沈黙に気まずさはなく、この時間の流れが心地良い。

 流石、朝比奈さんといったところか。こんな朝比奈さんだからこそ、ハルヒもついつい甘えてしまうのだろう。
それはハルヒだけでないのだが。

「キョンくんはこの後予定とかありますか?」
 
「いえ、特にないです」

 たとえあったとしても、そんなものは即キャンセルである。 
 
22 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:29:07.75 ID:TNnnOefj0.net[16/22]
「じゃあ、デートしませんか?」

「……は?」

 突然の申し出に思考が停止する。

「じゃあ、行こっか」

 朝比奈さんが俺の手をとって立ち上がる。小さくて柔からな掌を実感しても思考回路はまったく働いてくれない。
本当に役に立たない脳みそである。

 会計を済ませて店の外へ。春の陽気に少し目を細める。

 隣には朝比奈さん。春の日差しをめいいっぱい身に受けキラキラと輝いているようにみえる。

「楽しませてくださいね?」

 悪戯っぽい、それでいて大変魅力的な微笑み。またまた見惚れてしまう。

 手は繋いだまま、俺たちは歩き出す。

 そんなある日の出来事。
 
23 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:31:23.53 ID:TNnnOefj0.net[17/22]
終わり

26 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:48:17.49 ID:TNnnOefj0.net[18/22]
 どうも、古泉です。只今不思議探索の真っ最中なのですが、少々困ったことになっています。

 大袈裟に言うわけではありませんが、世界が危険に晒されている状況だったりします。
何のことはありません、涼宮さんがご機嫌斜めだということです。その原因についてですが、痴話喧嘩です。
涼宮さんの機嫌が悪くなる原因の9割は彼との痴話喧嘩に因るものですから。
痴話喧嘩なんて言ったりすると、二人ともきっと必死で否定するでしょうが、端から見ている第三者からすると痴話喧嘩以外の何ものでもないのです。

「…ったく、ハルヒのやつはいちいち細かいんだよ。別に待ち合わせ時間に遅れたわけじゃないってのに――」

くじ引きによる班分けで、彼と僕がペアになったわけですが、先程からこの調子で涼宮さんに対する文句を呟き続けています。
今日の喧嘩の原因は、彼が涼宮さんより集合が遅かったということです。

 そのことを涼宮さんがいつものように注意したところ、極稀なことですが彼が反論しました。そこから二人の痴話喧嘩が始まったわけです。
かなり微笑ましいモノを感じますが、当人にしてみればそうでもなさそうです。

 彼の真似をするわけではありませんが、やれやれと肩を竦めたいところです。毎回毎回お二人の仲を取り持つ役割は僕に回ってくるわけで、気苦労は絶えません。
彼は常々損な役回りをさせられているとこぼしていますが、はてさて僕と彼ではどちらが損をしていることやら。

 まぁ、そんな思考はひとまず置いておきましょう。

28 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:51:37.41 ID:TNnnOefj0.net[19/22]
「涼宮さんはあなたにもう少しキチンとしてほしいから、ああやって小言を仰るのですよ」

「ふん、余計なお世話だ」

 涼宮さんの感情の変化を敏感に読み取った結果を素直に述べたところ、彼に一蹴されました。
まったく、二人とも人の話を聞かないと言いますか、自分に絶対的な自信とプライドをお持ちのようで。
さらに、そのプライドがことさら発揮されるのが二人が一緒にいる時ですから、これも悩みの種となっています。

「そもそも、どうして俺がハルヒにキチンとしろと注意されなくてはならんのだ。どうせSOS団の面子に関わるだとかなんとか言うんだろうけどよ…」

 僕はあからさまにため息を吐きます。本当に鈍感なのもいいところでしょう。彼はもう少し夢を見てもいいのではと思います。
全てを頭から否定し、自分の都合の言い様に解釈するのが彼の悪い癖であり、長所でもあります。

 客観的意見は時として意味を為さないモノだということを彼に学んでもらいたいものです。

「だいたいだな、やることなすことアイツはいつも無茶苦茶なんだよ。もっと計画性を重んじろ言ってやりたいね」

 それでも何だかんだで彼は涼宮さんの後を追い掛けます。無茶苦茶なら無茶苦茶な割に道を踏み外さないように手綱を握ってやる。
文字通りじゃじゃ馬を乗りこなすと言ったところでしょう。そう伝えると、彼はまさかという表情をして全力で否定の意を唱え始めました。

 本人も無自覚というわけで無い証拠です。
 
29 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:54:31.17 ID:TNnnOefj0.net[20/22]
「まったく、憶測で物事を言うのはやめろ」

「憶測、というわけではありませんよ。お二人の御様子をつぶさに観察した結果を基に意見を述べているだけですが。お気に召しませんでしたか?」

「ああ、召さないね。大いに気分を害されたよ」

 どうしてこうも素直になれないんでしょうか。先程も言いましたように、やはりプライドが邪魔をしているからなのでしょうか。
ここはそのプライドを刺激しつつ涼宮さんの方へ仕向けてやるしかないでしょう。

「では、話を変えましょう。例えば涼宮さんが誰かに告白されたとしましょう。あなたは涼宮さんがどうすると思いますか?」

彼はわけが判らないといった顔をしましたが、しばらく迷った挙げ句こう答えました。

「俺はハルヒの思考回路を理解できるわけじゃないが、きっとアイツは断るだろうよ。そんじょそこらの連中にアイツを満足させることなんか土台無理な話だからな」

 あまりに的確過ぎる回答に、僕は思わず笑ってしまいました。彼が如何に涼宮さんのことを気に掛けており、如何に観察しているかがよくわかります。
そして、同じような質問を涼宮さんにすると、きっと彼なんかを好きになるやつなんていないと答えるでしょう。

 お互いに信頼しあっているという証拠です。
 
30 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:56:50.62 ID:TNnnOefj0.net[21/22]
「で、今の質問の意図は?」

「特にありませんよ。単なる好奇心から来るものといっておきましょうか」

「くだらん」

 照れ隠しからか彼はそう吐き捨てて、さっさと先へ行ってしまいます。本当に分かりやすい性格をしています。
おっと、朝比奈さんからメールです。

『涼宮さんは一応機嫌が良くなりつつあります』

 それは何よりです。きっと朝比奈さんが色々と気を遣ってくれたに違いありません。
後は、本人たちに任せておけば大丈夫でしょう。

『了解です。長門さんに、午後は彼と涼宮さんをペアにしてもらえるように頼んでおいてくれませんか?』

 これで良し、送信。

 しつこいようですが、お二人がもっと素直になってもらうしか解決方法はありません。
我々はそれを手助けするだけ。

 やれやれ。まったくもって損な役回りです。
 
31 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/08/18(月) 23:57:43.97 ID:TNnnOefj0.net[22/22]