キーン コーン カーン コーン
千冬「それでは、授業はここまでとする」
千冬「各自、復習しておくように」
ハーイ
千冬「…………」 チラッ
セシリア「一夏さん、今日のお昼、わたくしと一緒に……」
ラウラ「当然、夫婦が優先されるよな?」
シャル「そんなの理由にならないよ、ラウラ」
箒「はっきりしろ、一夏」
箒「私と行くつもりだ、と」
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:46:59.81 ID:2GO5iura0
ガラガラッ
鈴「一夏! お昼、行くわよー!」
セシリア「ちょっと鈴さん! いきなり横から顔を出さないでください!」
鈴「うっさいわねー、あんた達は一夏と同じクラスなんだから、少しは遠慮しなさいよ!」
シャル「それなら2組の鈴は、部外者でしょ?」
ラウラ「そうだ。 2組に帰れ」
鈴「ムカ! そんなの関係無いわ!」
鈴「一夏! あたしと……あれ?」
ラウラ「む……?」
セシリア「一夏さんと……箒さんが、いつの間にか居ませんわ!?」
シャル「……しまった!」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:48:02.07 ID:2GO5iura0
セシリア「箒さん! 抜け駆けしましたわね!」 ダッ!
ラウラ「食堂に向かったのなら、こっちだな!」 ダッ!
シャル「ボクは、購買の方を当たってみる!」 ダッ!
鈴「シャルロット! あたしも行くわ!」 ダッ!
ドドドドドドドド……
千冬「…………」
千冬(やれやれ……)
千冬(これだからガキは……) フウッ…
千冬(…………)
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:49:20.49 ID:2GO5iura0
……少し、気分転換をしようと思った。
学園の屋上でも良かったのだが、あそこは生徒に開放されてもいる。
そこで私は学園裏にある、雑木林を抜けた先にある丘を目指した。
そして……私はアレを見つけてしまう。
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:50:40.05 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
千冬「……何だこれは」
千冬(電話ボックスだが……明らかに古めかしいデザイン)
千冬(そして、こんな所に公衆電話など作っても意味はない)
千冬(…………)
千冬(束か……?)
千冬(……いや、あいつなら、こんなデザインにはしないだろう)
千冬(人参にしろ何にしろ、あから様に束の仕業とわかる物にする)
千冬(そういう奴だ……)
千冬(…………)
千冬(そういえば子供の頃、一夏と一緒に見たアニメに、こんな道具があったな……)
千冬(一夏は、テレビに釘付けになって食い入るように見ていた)
千冬(…………) クスッ
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:51:36.11 ID:2GO5iura0
この時の私は……正直どうかしていた。
一夏の周りには、いつも誰かしら居る。 その事に不満はない。
ただ……それに加われない自分が……少し、嫌だった。
それだけだった。
私は、その電話ボックスに入ると受話器を取り
アニメと同様に使用した。
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:52:16.27 ID:2GO5iura0
千冬「もしも一夏が、私にぞっこんだったら!」
千冬「…………」
千冬「……何をバk」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!
千冬「!?」
千冬「くっ……!」
ガチャ キィ……バタンッ!
千冬「…………」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:53:03.08 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
千冬「……いたずら、か?」
千冬「…………」
千冬(だが、人の気配はしない)
千冬(監視カメラの様な物も、その他、電子機器が動いている気配も感じない)
千冬(…………)
千冬「……やれやれ」
千冬「誰の仕業か知らんが、この電話ボックスは不法投棄扱いで」
千冬「後で処分しておこう……」
テク テク テク…
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:53:45.66 ID:2GO5iura0
――IS学園・中庭付近――
テク テク テク
一夏「織斑先生」
千冬「む? ……織斑か」
千冬「どうした?」
一夏「いえ……明日の約束の事なんですが」
千冬「明日? 何の事だ?」
一夏「……やっぱり忘れてたか」
千冬「何をだ」
一夏「2週間くらい前に、家のカーテンを買い換えようって、約束してただろ?」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:54:28.30 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
千冬(……真面目にそんな記憶はない……が)
千冬(カーテンが古くなってて、そろそろ換えなければ、と思っていたのも事実だ)
千冬(ここのところ忙しかったし……失念していたかもしれん)
千冬「そうだったか……済まない、織斑」
一夏「いや、いいんだよ」
一夏「そういうところも……」
千冬「?」
一夏「ううん、何でも無い」
一夏「それじゃ明日、朝の8時くらいに迎えに行くから」
千冬「わかった」
一夏「失礼します、織斑先生」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:55:15.75 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
千冬(……おかしい)
千冬(今、何か違和感を感じたが……)
千冬(…………)
千冬(強いて言えば、私をちゃんと『織斑先生』と呼んでいた事くらい)
千冬(…………)
千冬(いかんな……、一夏がやっとケジメをつけられる様になったというのに)
千冬(それをいぶかしる様では、教育者として失格だ)
千冬(…………)
千冬(少し、疲れているのかな……私は) フウッ…
テク テク テク…
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:55:50.02 ID:2GO5iura0
――翌日の休日――
――IS学園寮・宿直室前――
コン コン
一夏「織斑先生、迎えに来ましたよー?」
ガチャ…
千冬「時間ぴったりだな」
一夏「そりゃどうも」
千冬「では、行こうか」
一夏「ああ」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:56:38.68 ID:2GO5iura0
千冬「ところで、どこで買うつもりだ?」
一夏「○○町のデパート」
千冬「○○町? ずいぶん遠出するんだな?」
一夏「まあね」
一夏「せっかく外出するんだし……たまにはいいかと思って」
一夏「嫌なら、いつものショッピングモールにしようか?」
千冬「いや……それでいい」
千冬「気分を変えるのは、いい事だな」 クス
一夏「じゃ、決まりだな」 ニコ
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:57:24.54 ID:2GO5iura0
一夏「…………」
一夏「ところで、さ」
千冬「ん?」
一夏「学園から出たら、千冬姉って呼んでもいいかな?」
千冬「何を言っている、一夏」
一夏「!」
千冬「私は、公私混同をするな、と言っている」
千冬「今日は休日だ。 姉弟に戻っても問題はない」
一夏「……そうだな、そうだよな」
一夏「千冬姉」
千冬「ああ」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:57:57.13 ID:2GO5iura0
――○○町・デパート――
ガヤ ガヤ
一夏「結構な人混みだな」
千冬「休日だし、このくらいは想定の範囲内だ」
一夏「へへ……さてと、カーテン売り場はどこかな?」
千冬「衣類……もしくは、家具売り場の階あたりだろう」
一夏「なるほど」
一夏「えーっと、衣類、衣類……」
一夏「衣類は4階で、家具は5階か」
千冬「じゃあ、のんびり4階から見ていくか」
一夏「よし、まずは4階だな」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:58:28.66 ID:2GO5iura0
一夏「この階か。 ほとんど婦人服売り場だな」
千冬「メンズ売り場は……別の階か?」
一夏「みたいだ」
一夏「お、この服……千冬姉に合いそうだな」
千冬「そうか?」
一夏「いつもはスーツばかりだけど、こういうトレーナーやシャツも似合うと思うな」
千冬「ふむ……」
千冬「少し見ていっていいか?」
一夏「ああ、構わないぜ!」
千冬「ふふ……♪」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:59:15.72 ID:2GO5iura0
千冬「つい衝動買いをしてしまった……」
一夏「たまにはいいじゃないか、千冬姉」
一夏「自分で稼いだお金なんだし……問題ないよ」
千冬「……まあそうなんだが」
一夏「弟としても、姉が綺麗でいてくれるのは嬉しいぜ?」
千冬「……!?」 ドキ
千冬「…………」
千冬「馬鹿者……大人をからかうな」
一夏「お? 少し照れてる?」
千冬「ほら、目的の物を見に行くぞ」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:59:53.53 ID:2GO5iura0
一夏「あったあった、カーテン売り場」
千冬「さて……何色にするかな」
一夏「色はともかく、柄物にはしないのか?」
千冬「特にこだわりはないが……」
千冬「一夏は、柄物にしたいのか?」
一夏「滅多にないけど、汚れた時、柄物の方が目立たないからな」
千冬「なる程……そんな利点があるのか」
千冬「じゃあ、今回は柄物にするか」
一夏「いいと思うぜ」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:00:34.53 ID:2GO5iura0
―――――――――――
一夏「発送手続き、終わったよ、千冬姉」
千冬「うむ。 すまないな、一夏」
一夏「なぁーに、これくらい大した事はないさ」 ニコ
千冬「そうか」 クスッ
千冬「そういえば、そろそろ昼時だな……」
千冬「昼にするか? 一夏」
一夏「待ってました! さっきから腹がグウグウなってたんだよ……」
千冬「全然聞こえなかった」
一夏「人混みがすごいからなー」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:01:14.24 ID:2GO5iura0
イラッシャイマセー
一夏「ふう……やっと座れた」
千冬「家族連れが多いからな……仕方ない」
一夏「それじゃあ千冬姉、何食べる?」
千冬「…………」 ウーム…
千冬「ふむ……この天ぷら定食にするかな」
一夏「じゃあ俺は、ハンバーグセットで」
千冬「決めるのが早いな?」
一夏「ハンバーグは、割とハズレが少ないから」
千冬「そうなのか?」
一夏「まあ、俺個人の勝手な経験則だけど」
一夏「すみませーん! 注文、お願いしまーす!」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:02:03.72 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
一夏「…………」
一夏「……そういえばさ」
千冬「む?」
一夏「千冬姉はふだん、昼はどこで食べているんだ?」
千冬「職員室だ」
千冬「特にそういう取り決めがあるわけじゃないが……」
千冬「教員は誰も食堂を利用しないな」
一夏「職員室って事は、購買で何か買って?」
千冬「そうだ」
千冬「私はよく幕の内弁当を購入している」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:02:51.79 ID:2GO5iura0
一夏「…………」
一夏「なあ、千冬姉」
千冬「うん?」
一夏「よかったら、俺が弁当を作ろうか?」
千冬「ほう……それはありがたいな」
千冬「だが、お前の本分は学業だろう?」
千冬「私の弁当を作ってくれるのは嬉しいが……それが成績に影響を与えるかもしれん」
千冬「だから、気持ちだけ受け取っておく、一夏」
一夏「もう少し信用してくれよ……」
千冬「ふふふ…」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:03:23.86 ID:2GO5iura0
千冬「それに」
一夏「?」
千冬「あの5人はどうなる?」
一夏「5人って……箒たちの事か?」
千冬「……まあ、あまり強くは言えないが」
千冬「いい加減にしないと、お前、後ろから刺されるかもしれないぞ?」
一夏「俺とあいつらは、そんな関係じゃないって」
一夏「本当にただの友達だよ」
千冬(……こいつ、本当に刺されるまで気がつきそうにないな)
千冬(我が弟ながら……まったく) ハア…
一夏「?」
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:04:13.25 ID:2GO5iura0
アリガトウゴザイマシター
千冬「さて、帰るとするか」
一夏「え? もう?」
千冬「目的の物は購入したし、余計な物も既に買ってしまった」
千冬「……ああ、一夏、何か欲しいものがあるのか?」
一夏「そういうわけじゃないけど……せっかく遠出したんだし」
一夏「天気もいいから散歩がてら、ぶらぶら回りたいかなって」
千冬「私と、か?」
一夏「ダメか?」
千冬「…………」
千冬「……いや」
千冬「たまには、それもいいかもしれないな」 クスッ
一夏「じゃあ、決まり」 クスッ
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:05:18.63 ID:2GO5iura0
――どこかの公園――
一夏「う――んッ……」 セノビー
一夏「ふう、気持ちいいな」
千冬「そうだな」 クスッ
一夏「やっぱり、家族連れが多いな、今日」
千冬「ああ……」
テン テン テン…
子供「すみませーん、ボール、取ってもらえますかー?」
一夏「おう、ほらよ」 ポーン
子供「お兄さん、ありがとう!」
タッ タッ タッ…
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:06:09.39 ID:2GO5iura0
千冬「…………」
千冬(一夏にも、あんな頃があったな)
千冬(私は……早く独立したくて、遊びとかで構ってやれなかった)
千冬(一夏のためを思って、甘やかさないつもりで接していたが……)
千冬(寂しい思いをさせたかもしれない)
千冬(…………)
一夏「千冬姉?」
千冬「……ん?」
一夏「どうしたんだ? 考え事か?」
千冬「いや……大した事じゃない」
千冬「一夏にもあんな頃があったな、と懐かしく思っていただけだ」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:07:10.62 ID:2GO5iura0
一夏「そりゃそうだよ」
一夏「千冬姉だって、そんな頃もあったさ」
一夏「孤児院の先生が、千冬姉の武勇伝を聞かせてくれたぜ?」
千冬「え?」
一夏「近くのガキ大将を再起不能にしたりとか」
一夏「花屋のお兄さんに告白した事とか」
千冬「…!!」 ///
千冬「わ、忘れろ! 今すぐに忘れるんだ!」 ///
一夏「ハハハ……」
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:07:45.61 ID:2GO5iura0
―――――――――――
一夏「そろそろ夕方か……」
千冬「ずいぶん歩いたな」
一夏「疲れたか? 千冬姉」
千冬「私を誰だと思っている?」
一夏「へいへい。 そうでしたね」
千冬「そろそろ帰るか」
一夏「そうだな」
一夏「…………」
一夏「なあ、千冬姉」
千冬「ん?」
一夏「最後に……行きたい所があるんだ」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:08:21.22 ID:2GO5iura0
――どこかの神社――
千冬「ここなのか?」
一夏「うん」
千冬「……何の為に来たんだ?」
一夏「深い意味は特にないよ」
一夏「ただ……静かな場所だったから」
一夏「それだけ」
千冬「……?」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:09:21.48 ID:2GO5iura0
一夏「…………」
一夏「なあ、千冬姉」
千冬「む?」
一夏「俺たち……姉弟だよな」
千冬「ああ」
一夏「そして、唯一の家族だよな」
千冬「そうだ」
一夏「……でも、さ」
一夏「俺……あの時……臨海学校の時」
一夏「はっきりと分かった事がある」
千冬「…………」
一夏「……俺」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:10:03.71 ID:2GO5iura0
一夏「千冬姉の事が好きだ」
千冬「……」
千冬「は?」
一夏「……真面目に言ってるんだぜ、千冬姉」
千冬「ちょ、ちょっと待て……」
千冬「それは、姉として、なn」
一夏「違う」
千冬「!」 ドキッ
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:10:53.96 ID:2GO5iura0
一夏「そうやって……そう考えて、ごまかしてきてた」
一夏「これは尊敬の、羨望の気持ちだ、と」
一夏「でも」
一夏「はっきりとわかったんだ」
千冬「…………」
一夏「あの時、千冬姉の眩しい水着姿を見て……俺は……」
一夏「千冬姉に『女』を見ているって」
千冬「!?」 ドキッ///
一夏「俺は、ひとりの男として」
一夏「千冬姉を……いや、『千冬』の事が」
一夏「好きだ」
千冬「……」 ゾクッ…
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:11:46.45 ID:2GO5iura0
私は
真剣な眼差しの一夏に……『男』に魅入られた。
体の奥が、芯の部分が、熱くなってゆく……
だが
同時に、恐怖と嫌悪感も感じていた
矛盾しているが、心地よくもおぞましい……
そんな感情だった。
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:12:34.49 ID:2GO5iura0
千冬「い、一夏……! 落ち着け」
一夏「落ち着いている」
ズイッ
千冬「く、来るな……!」
トンッ…
千冬「!!」
千冬(いつの間にか、か、壁際に!)
一夏「千冬……」
一夏「俺のモノに」
一夏「なれ」
千冬「…っ」 ゾクゾクッ!
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:13:18.90 ID:2GO5iura0
私は……言い知れない嫌悪感と恍惚の中
一夏に唇を奪われた……
周りに人けのない夕暮れの神社で……
こんなのはおかしい
どうして私は抵抗しない?
その気になれば、一夏を投げ飛ばす事など
容易く出来るはずだ
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:14:14.75 ID:2GO5iura0
……どうしてだ?
望んでいるのか? 私は?
世の中の理(ことわり)や摂理
世間の常識や倫理に反して
血の繋がった 実の姉弟でありながら
男女の契(ちぎり)を交わす事を!!
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:15:18.46 ID:2GO5iura0
ドンッ!
一夏「ぐっ!」
千冬「はあっはあっはあっ……」
ダッ!
一夏「あ……!」
一夏「千冬!」
タッ タッ タッ…
一夏「…………」
一夏「…………」
一夏「千冬……姉……」
一夏「…………」
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:15:58.08 ID:2GO5iura0
―――――――――――
千冬「はあっはあっはあっ」
千冬「はあっ…はあっ…」
千冬「はあっ……はあっ……」
千冬「はあっ……」
千冬「ふー……」
千冬「…………」
千冬「…………」
千冬(雑木林に……あそこに行かなくては)
千冬(他に思いつく原因が無い!)
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:16:51.88 ID:2GO5iura0
――IS学園裏の雑木林――
テク テク テク…
千冬「…………」
千冬「……!」
千冬「あった!」
ガチャ……キィ……パタン
チンッ☆(受話器を取った)
千冬「元に戻れ!」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!
千冬「…………」
千冬(これで……いい……これで……)
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:17:52.10 ID:2GO5iura0
私は
今まで味わった事のない極度の疲労を感じた。
も○もボックスを破壊しておかなければ、と思っていたが
もうそんな気力は無く……自室に戻るので精一杯だった。
ベッドにそのままの格好で倒れこむ。
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:18:55.95 ID:2GO5iura0
そして、翌日の早朝に処分を行おうとしたが
もし○ボックスは跡形もなく……私は、本当に夢でも見ていたのだろうか?
と、自分を疑ってしまう程だ。
恐る恐る、だが、それを気取られない様に
一夏に私と買い物をしたのか訪ねてみた。
答えは、『ノー』だった。
だが、数日後。
あの世界で購入した服やカーテンが自宅に届けられ
夢などではなかった事が証明されてしまう。
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:19:43.54 ID:2GO5iura0
私は……
ただただ困惑した。
困惑しか、できなかった……。
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:20:48.36 ID:2GO5iura0
――更に数日後の夜――
――バー・ボウガット イヅル――
山田「お待たせしました、織斑先生」
千冬「山田先生」
山田「マスター、フェリチータ(カクテル)を」
カシコマリマシタ
山田「ふう……」
千冬「すまない、急に付き合わせてしまって」
山田「いえ」
山田「ここのカクテルは絶品ですし、私も少し飲みたい気分でしたから」
千冬「そうですか……」
千冬「…………」
山田「…………」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:21:41.99 ID:2GO5iura0
千冬「山田先生」
山田「はい」
千冬「私は……たぶん酔っている」
千冬「だから、くだらないたわ言を言うだろう」
山田「……はい」
千冬「話半分でいいし、冗談だと思ってもらっても構わない」
千冬「……でも、聞いてくれ」
山田「ええ、いいですよ?」 クスッ
千冬「済まないな」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:22:50.26 ID:2GO5iura0
千冬「――夢を」
千冬「そう……夢を見た」
山田「…………」
千冬「その夢の中で、私は」
千冬「一夏に……実の弟に告白された」
山田「……!?」
千冬「…………」
山田「…………」
千冬「……マスター、マティーニを」
カシコマリマシタ
千冬「……夢の中で、だが」
千冬「私は、ただ困惑した」
千冬「不覚にも……このまま一夏の気持ちを受け入れたい」
千冬「そんな事も考えてしまった」
山田「…………」
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:24:06.92 ID:2GO5iura0
千冬「軽蔑しただろうな……」
山田「…………」
山田「……いえ」
山田「そんな事はありませんよ」
フェリチータ、オマタセシマシタ
山田「マスター、ありがとう」
千冬「…………」
山田「織斑くんは、素敵な男の子ですし」
山田「将来は有望そうですし」
山田「女の子なら、放っておきませんよ」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:25:34.51 ID:2GO5iura0
千冬「山田先生、私は――」
山田「いいじゃないですか。 姉弟の禁断の恋」
山田「そういうの、少し憧れがありますよ? 私」 クス
千冬「…………」
マティーニ、オマタセシマシタ
千冬「ありがとう、マスター」
千冬「…………」 グイッ
千冬「ふう……」
山田「……たとえ」
千冬「ん?」
山田「姉弟であっても、親であっても、どれだけ年を取っても」
山田「女って……”女”を捨てられないものですよ、きっと」
千冬「……!」
千冬「…………」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:26:25.52 ID:2GO5iura0
山田「それに」
山田「過去の歴史上、兄妹、姉弟の間柄で結婚した事例も記録として残っています」
山田「エジプト古代文明は有名ですね」
千冬「…………」
山田「……」 グイッ
山田「ふう……」
山田「もちろん、オススメはしませんけど」 クスッ
千冬「当然です」
山田「あははは」
山田「…………」
山田「今日は、とことん付き合いますよ、私」 スッ…
千冬「…………」
千冬「ありがとう、山田先生」 スッ…
……チンッ☆
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:27:16.55 ID:2GO5iura0
――数日後――
――1組教室――
セシリア「一夏さん、今日のお昼なのですが」
シャル「ボクはお弁当を作ってきたんだけど」
ラウラ「嫁よ! 秘密裏に日本国自衛隊の『海軍カレー』パックを購入した!」
箒「もちろん、私と食堂で……」
ガララ…
鈴「一夏! 久しぶりに酢豚作ったの!」
鈴「会心の出来なんだから、食べなさいよね!」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:28:04.63 ID:2GO5iura0
ワー キャー ワー キャー
千冬「お前達」
セシリア「! お、織斑先生」
シャル「さ、騒がしかったですか?」
千冬「いや」
ラウラ「それでは……何か御用でしょうか?」
千冬「……そうだな」
千冬「…………」
千冬「たまには、生徒との交流も必要だろう」
千冬「私も昼食を一緒に取りたいのだが」
千冬「構わないか?」
一同「」
一同(ええ――!?)
一夏「あのー、俺の意見は……」
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:29:13.04 ID:2GO5iura0
――屋上――
シーン……
千冬「どうした? いつものバカ騒ぎは?」
セシリア「え、えと……その」
ラウラ(き、緊張してしまうな……)
シャル「……そ、そうだ、織斑先生は」
シャル「どんな学生時代を過ごされたんですか?」
千冬「私の、か……」
シャル「きっとモテたんでしょう?」
一夏(……モテたなんて話、聞いた事無いけど)
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:30:23.83 ID:2GO5iura0
千冬「まあ、正直言うと」
千冬「そんな事に構っていられなかったな」
千冬「金銭的に一番余裕のなかった時期だったし……」
千冬「私に言い寄ってくる男など、いなかった」
一夏「でもあの時から綺麗なのは確かだぜ?」
ヒロインズ「」
千冬「……」 ///
一夏「千冬姉はモテないって言うより」
一夏「近寄りがたい、って感じだったと思う」
千冬「そ、その辺にしておけ、一夏」 ///
鈴(……この姉弟、本当に怪しい気がしてきた)
箒(幼い頃も一応知っているが……見ていて気が気ではない)
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:33:03.02 ID:2GO5iura0
一夏「おっ? もしかして照れてる?」
千冬「馬鹿者。 そんなわけがあるか」
千冬「それよりも一夏」
千冬「お前こそ周りに気をつけておけ」
千冬「背中から刺されないようにな」
一夏「何でそんな事になるんだよ?」
一夏「俺は、誰からも恨みを買うような事はしていない」
ヒロインズ「…………」
千冬「…………」 ハア…
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:34:30.97 ID:2GO5iura0
千冬「……なんと言うか、すまないな、みんな」
セシリア「いえ」
ラウラ「教官のせいではありません」
シャル「気にしないでください」
鈴「慣れています」
箒「幼い頃からこんな感じでした」
一夏「……?」
千冬「…………」
千冬「…………」 クスッ
私は久しぶりに、楽しい食事をしたと思った。
おしまい
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