前回 上条「アイテムの正規メンバーですか」その1




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429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:20:03.57 ID:VbowmHbk0



~グループアジト~ 



上条「いよいよ初仕事ですかぁ」 

土御門「あぁ。っと、スピーカーにして…」 



電話の男「よお。俺がお前らグループの仕事を管理する男ってことになってる」 

上条「統括理事長の言ってた上司ってやつか」 

電話の男「そ。んで、お前らや俺は他の暗部組織や統括理事会の連中には顔バレしないような手引きはされてるんだけど」 

電話の男「まぁそれも怪しいところではある。でも最重要機密扱いには変わらないから、目立った行動は慎むように」 

土御門「それは仕事の内容の内容次第だろ」 

上条「俺らは仕事としていったい何すんのさ」 

電話の男「グループには基本的に行き過ぎた暗部組織の壊滅、侵入した魔術師の排除などのキツーイお仕事が主ですねぇ」 

上条「他の暗部組織の壊滅か……、魔術師の排除か……」 

土御門「簡単に言ってくれるが毎回毎回ただでは済まない内容になりそうだな……」 

電話の男「でも第一回目の今回は、楽な仕事だよ」 






電話の男「とある少女、初春飾利の拘束ですね」 


430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:21:59.94 ID:VbowmHbk0



上条「……」

土御門「……カミやん、こいつは」

上条「……あぁ」

電話の男「あれ? 二人とも知ってんの?」

上条「……わかってて言ってんだろ」

電話の男「まあねぇー。上条が垣根に辿り着くためにハッキングでアンチスキルのお世話になるようなことしてくれた子だよねぇー」

上条「……またハッキングやったのか?」

電話の男「そうなんだよ、まったく。ハッキングに研究資料の抹消にサイバー攻撃に……」

電話の男「学園都市の闇を知り、学園都市の計画を見事に潰してくれちゃったわけ」

土御門「確かにハッキングの腕は確かなようだが一人の少女にそんなことを学園都市は許したのか、情けないな」

電話の男「……守護神(ゴールキーパー)って聞いたことない?」

土御門「ッ!?」

上条「? なんだそれ?」

土御門「この子が守護神だと言うのか!?」

電話の男「そういうことー。彼女の作ったセキュリティシステムは学園都市十指に入るらしく、彼女の詰め所は学園都市全域の情報を管理する書庫より数段強固な防壁を築いている、と言われているんだよね」

電話の男「つまり、初春飾利は学園都市屈指の凄腕ハッカーってこと」

上条(そんなすごい奴だったのか……)

電話の男「その力を使って色々やってくれちゃったからお仕置きしないといけないんだよ」

土御門「……こいつがハッキングした内容は俺らには話せないのか?」

電話の男「まあ、無理だね」

上条(……)



上条「……拘束はいつまでだ」

電話の男「お前らならすぐだろ? ……まぁ、急いじゃいねえから明日の今頃、……今は11時だから、明日の昼11時までならいつでもどうぞ」

上条「……わかった。要件はこれで終わりか?」

電話の男「おう。それじゃあな」



pi



431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:23:27.70 ID:VbowmHbk0



土御門「初仕事がこれとは……、非情になれるのか?」

上条「……今回は俺一人でやらせてもらう」

土御門「……わかった」

上条「それじゃ、初春が学校終わる頃に接触してきますわ」

土御門「……カミやん!」

上条「……」



土御門「お前の大切なもの、俺の大切なものを背負っていることを忘れるなよ」



上条「……あぁ」



432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:25:30.24 ID:VbowmHbk0



~セブンスミスト~



御坂「今日は夏の新作の発売日だから少し混んでるわね」

佐天「常盤台は休日も制服が義務付けられてるのにお二人は服のチェックに余念がないですね」

白井「佐天さん、それは淑女の嗜みというものですのよ? わたくしもお姉様も流行というのには目を光らせていますの」

御坂「いや、五月に入ったことだし新しい夏物のパジャマや水着でも先取りして見ておこうかなって思っただかだから」

佐天「ははは、そうですか。……それにしても、初春の小学校からの友達がLevel5とLevel4だなんて最初はすごくビックリしましたよー」

御坂「もう佐天さんも私たちの友達よ?」

白井「そうですわ」

佐天「ありがとうごさいます!」

初春「……」

御坂「…初春さん? 顔色悪いけど大丈夫なの?」

初春「…え? あぁ、大丈夫です」

佐天「なんか最近急に具合悪くなったよね? 本当に大丈夫?」

初春「…ちょっとやることがあって寝れてないだけなんで大丈夫ですよ」

御坂「黒子、初春さんにジャッジメントの仕事押し付けてないでしょうね」

白井「んま、お姉様!? わたくしがそのようなことをするとお思いで!? そんなことしてませんの!」

初春「…白井さんには逆に手伝ってもらってるくらいですよ」

御坂「そうだったの。…疑ってごめんね」

白井「い、いえ。…お姉様に素直に謝られると何か起こりそうで怖いですの」

御坂「何よそれ! まるで私が素直に謝れない生意気な女みたいじゃない!」

白井(否定は出来ませんの)

佐天(否定は出来ませんね)

御坂「なにみんなして黙ってんのよ、何か言ってくれないと困るじゃない!」

佐天「まあまあ、お店の中ですし少しは落ち着きませんか?」

御坂「うっ、それもそうね」

白井「さあ、行きましょう行きましょう」

初春「……」


433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:26:56.79 ID:VbowmHbk0



上条(高校と中学の終わる時間が違ってたの忘れてた……。確か友達とセブンスミストに行くって言ってたみたいだけど、どこにいるかな)



上条(……拘束し引き渡したら、おそらく拷問され殺されるんだろうな)

上条(……)



上条(理由だけ、ハッキングとかした理由だけは聞こう)


上条(初春のためじゃなく、この押しつぶされそうな罪悪感を少しでも和らげるために)


上条(自分のために)



上条「……いた」

上条(他に三人いるのか……)

上条「まあ、怪しまれてもいいや」

上条(初春が死んだらあの三人に恨まれよう)



434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:29:14.62 ID:VbowmHbk0




上条「よう、初春」

初春「」ビクッ

御坂「……あっ! あの時のツンツン頭!!」

白井「お姉様、知り合いの殿方ですの?」

佐天「あれ? でも初春に声かけたよね……?」

上条「ん? 誰だっけお前」

御坂「はあ!? ふざけてんじゃないわよ! これで思い出させてあげようかしら?」ビリビリ

上条(電撃使い……)

上条「あー、思い出した! 第三位のミカサミミコ!」

御坂「み・さ・か・み・こ・と! 御坂美琴よ!!」ビリビリ

上条「おー、すまんすまん。思い出したからさ、電気抑えろよ。店の中で電気使うとかお前バカか?」

御坂「くっ、ちょっと表に出なさいよ! この前の決着つけようじゃないの! てかなんであんたが初春さんの名前知ってんのよ! まさかストーカー!?」

佐天「! 最近初春が元気ないのはあなたのせいなんですね!」

白井「初春、そうですの?」

初春「……上条さん」

御坂「ほら! 初春さんだってアンタのこと上条さんだって……、上条さん?」

佐天「あれ? 知り合い?」

上条「ちょっと話をしたいんだけど」

初春「……わかりました」


435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:30:45.30 ID:VbowmHbk0



御坂「待ちなさいよ! 初春さん、本当に知り合いなの?」

初春「はい」

御坂「……その話っていうの私たちも聞いちゃいけないわけ?」

初春「ダメです!」

御坂「」ビクッ

上条「ダメみたいだな」

御坂(初春さん……?)

御坂「……じゃあ、話が聞こえない位置から見張っててもいいかしら? 何かしたらすぐに飛びかかれるように」

上条「……まあ、友達がよくわからん男と二人きりになるのが心配なのはわかった。それなら良いよな?」

初春「……はい」

白井「お姉様、いくらなんでもそれはこの殿方に失礼なのでは? 心配なのは確かですが」

佐天「いえ、そうしましょう。もしかしたら初春に何かするかもしれませんから」

上条「じゃあ、あそこのファミリーレストランにでも行こうか」

御坂「……聞かれたくない話なのにファミリーレストランで良いの?」

上条「そういう話をするからファミリーレストランみたいな少し騒がしいところが良いんじゃないか」

御坂「……あっそ。それなら行きましょ」

初春「……」


436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:33:42.94 ID:VbowmHbk0




~ファミレス~


御坂「やっぱりここからじゃ聞こえないわね」

白井「お姉様はあの殿方を知ってるご様子でしたが……」

御坂「あー、ずいぶん前に話したでしょ。スキルアウトのアジトに乗り込んだ時に私を気絶させた男の話」

白井「ッ! あの殿方が……」

佐天「え? 御坂さんを? てか御坂さんがスキルアウトのアジトに乗り込んだ……?」

御坂「佐天さん、その話はこの後にでも話すから今はおいといて。」

御坂「それであのツンツン頭がその男なのよ。なんで初春さんと知り合いなのかしら……」

白井「……推測でしかありませんが、あの二人は昔からの知り合いで、初春がお姉様の身を案じてあの時、あの殿方にスキルアウトのアジトに向かうようお願いしたのでは?」

御坂「そんな感じではなかったような気がするけど、確かにあの時私を気絶させなきゃあのまま私は暴れていたのかもしれない……」

佐天「そんなにあの男の人強いんですか? 私服なんでどこの高校かわからないですが、そこまで強いとは正直思えないような……」

白井「お姉様に勝つほどですのよね……、どんな能力者かわかりませんか? いざという時のために対抗策を練らないといけませんの」

御坂「全部わかっているわけじゃないけど、アイツは私の電撃も砂鉄も無効にする能力を持ってて、超電磁砲も避けるほどの身体能力の持ち主よ」

白井「!?」

佐天「!?」

佐天「能力を無効にする能力者で」

白井「身体能力もズバ抜けてる」

御坂「けど相手の能力を無効にするのにはそれなりの演算が必要だったみたいだから、私と黒子で一斉にかかれば……」

佐天「でもあの男の人と私たちが会ってから結構時間経っちゃってますよ? もし能力を見なくても、…例えば相手のAIM拡散力場を感じとれて、それでもう演算が終了していたら……」

白井「お姉様もわたくしの能力もあの殿方には届かないということになりますわね」

御坂「……まだアイツの能力が決まったわけじゃないけど、真っ向勝負で勝てるような相手ではないのは確かね」

佐天「……初春のために、どうにか対抗出来るように作戦は立てましょうよ! あの二人もまだ時間がかかるようですし」

白井「……そうですわね。まだ勝てないと決まったわけではありませんの」

御坂「……そうね。友達、初春さんのためだもんね」


437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:35:39.62 ID:VbowmHbk0



上条「御坂美琴ね……」

初春「……どうかしました?」

上条「いや、なんでもない。ただ……」

上条(確か能力者狩りの時も友達のために、そして今回も初春のために行動してる……)



上条(そして、母さんを支えてくれている御坂家の娘……)



上条「良い友達を持ってて羨ましいと思っただけだよ」



初春「……はい、大切な友達です。彼女たちのためなら命を懸けることだって出来るくらいの」

上条「……」

初春「今日は私に何を……? 第一位のことですか……?」

上条「ッ!? 第一位…だと……?」

初春「えっ? 違うんですか!?」

上条「……第一位のことは後で話してもらう。俺が今日お前に会いにきたのは近頃のおいたをお仕置きするため……、と言えばわかるか?」

初春「ッ!?」

上条「……暗部の仕事ってやつだよ」

初春「そう、ですか」

上条「内容は初春、お前の拘束。上に引き渡したあとはわからないが、おそらくすぐに殺されるか、拷問されてから殺されるか、だな」

初春「……上条さんは垣根さんのために、私を拘束しますか?」

上条「……そこはまだ未確定ってとこだな。お前にはデカイ借りがある。無傷とまでは行かなくても、せめてこの日常には戻してやりたいとは思ってる」

初春「……」

上条「だから、ハッキングした理由とその内容を教えて欲しい。そこから解決策を練りたい」

初春「……わかりました。今回も助けてもらっちゃうことになりそうですね……」

上条「気にするな。さぁ、話してくれ」



438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:38:00.66 ID:VbowmHbk0


初春「……今回、私がハッキング、研究所の資料の削除、その関連機関へのサイバー攻撃をしたのは全て、御坂さんの日常を守るためです」

上条「御坂の日常を守るため……」

初春「きっかけはたまたまでした。御坂さんが一人で路地裏に行くのは見た時に違和感を覚えたんです。それを追いかけたら、なんか怪しい人に止められて先に進めませんでした」

上条「……」

初春「なのでジャッジメントの支部に戻り、監視カメラを操作してその付近を調べていたんです。そしたら血まみれの御坂さんと、白髪の男がいたんです。その男は後でわかるんですが、……第一位、一方通行でした」

上条「ッ!?」

初春「第一位は御坂さんをその後、……殺しました」

上条「……じゃあ、あそこにいる御坂は何者だ」

初春「あの御坂さんは本物です」

上条「本物……?」

初春「殺されたのは偽物……、御坂さんのクローンなんです」

上条「……」

初春「最初はそんなことわからなかったので、生きてて欲しい、そう思って御坂さんの携帯に電話しました。私の電話に出た御坂さんは、私の心配なんていらないような明るい声をしていました」

初春「安心は出来たんですが、どうしても監視カメラで見た光景が目から離れなくて、その不安をかき消したいがためにハッキングを仕掛けました」

初春「もしかしたら御坂さんに何か良くないことが起きようとしているんじゃないか、そう思ったら勝手に手が動いていたんです」

初春「そして『量産型能力者(レディオノイズ)計画』、『絶対能力進化(Level6シフト)』を知りました」

上条「……」



439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:40:28.25 ID:VbowmHbk0



初春「『量産型能力者計画』は、Level5である御坂さん、いや超電磁砲の量産を目的とした計画案だったんです」

上条「Level5のクローン……」

初春「けれども、超電磁砲のクローンは御坂さんの能力の1%にも満たない能力しかありませんでした」

上条「Level5のクローンなんてそうそう作れるわけじゃないってことか」

初春「そして、既に誕生してしまった複数の超電磁砲のクローン、通称『妹達(シスターズ)』は『絶対能力進化』の実験へと流用されることになったんです」

初春「その実験は、最強の超能力者…一方通行を絶対能力者に進化させる、というものなんです」

上条「……Level5の能力の1%にも満たない『妹達』を殺しただけで絶対能力者になれるってのか!? ありえねえだろ」

初春「はい。ただ殺すだけなら……」

上条「他に条件が?」

初春「20000通りの戦闘環境で量産能力者を20000回殺害する、これが第一位が絶対能力者に進化するための条件なんです」

上条「ッ!?」

初春「そして日夜、超電磁砲のクローンは殺され続けているんです」

上条「……」

初春「……このことを知った私は、ショックになるよりも先に、絶対に御坂さんに気付かれてはいけない、そう思いました」

上条「……なんでだ」

初春「……御坂さんは少し直情的で自分の考えはなかなか曲げてはくれない人ですが、友達のことを大切に思ってくれる優しい人なんです。だから、……このことを知ったら実験を潰すために多少、無茶なことでもやろうとすると思ったんです」

初春「第一位に挑んだり、実験に関わる研究所を壊して回ったり、と」

上条「……」

初春「でも、無理なんです。研究所なんてのは学園都市外にもあるし、第一位の能力、ベクトル操作はあらゆるベクトルを観測して触れただけで変換できる。そして普段、体の表面は反射の能力を設定しているので全ての攻撃が跳ね返ってくるんです」

初春「……どう考えたって御坂さんじゃ勝ち目がないんです」



440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:43:12.31 ID:VbowmHbk0


上条「だから初春が研究所の資料の削除やサイバー攻撃をした……」

初春「はい」

上条「……なんで御坂のためにそこまでするんだ? どう考えても学園都市に喧嘩を売って無事で済むわけがないだろ」

初春「……御坂さんは私やあそこにいる白井さんのために命を張って助けてくれたことがありました。そんなこと御坂さんは気にもしてないのかもしれませんが」

初春「それで、人のために動ける人、守る人のために命を張れる人に私は憧れると同時に、そういう人を守ってあげるのはいったい誰なんだと思いました」



初春「怖くなりました。今まで助けた大勢の人たちに助けてもらえずに一人で苦しむ御坂さんを想像したら」



初春「だから、御坂さんにそんな寂しい思いはさせたくない、私が守ってあげたい、そう私は決めたんです」

初春「私や白井さん、佐天さんが支えてあげなきゃ御坂さんはいつか壊れてしまう……、人のために動くことがこんなにも大変だったんだってやってみて初めて気付いたからわかるんです」

初春「だから……」



初春「私は守りたい人のためなら誰が邪魔しようと跳ね除けて守りきるんです」



初春「……学園都市に命を狙われようとも」



上条「……そうか」


441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:45:31.19 ID:VbowmHbk0


上条「……研究所の資料の削除はどのくらいやったんだ? 相当の所まで行かなきゃ暗部に命令が出るとは思えないんだが」

初春「『妹達』の元となった研究資料は全て削除しました。それによって学園都市外部の機関へその資料が渡るのを防いだ形になります。たぶんこれは私じゃなきゃ出来ませんでした」

初春「そして、これから『妹達』を保有している研究所を破壊して、『妹達』から新しい『妹達』を作らせなければ、一先ず終了って計画を立ててました」

上条「そりゃ拘束しろって仕事がくるわけだ」

初春「第一位が垣根さんの戦闘で戦線離脱していた機関があったおかげで『妹達』は『量産型能力者計画』で作られた100体のままで、今日の夜に100体目が戦闘するはずです。だから今日の実験が終わるまでに研究所の破壊をしておかなきゃいけないんですが……」

上条「どうしたもんかね」

初春「……」



上条(わざわざ俺がいる暗部組織にこの仕事がきたところをみると、何か裏がある気がしなくもない……)

上条(初春、そして第一位に関係している俺がいるんだ、大人しく仕事が完遂するとは考えにくいはず……)

上条(そして、俺らグループの仕事内容……、俺と土御門だけじゃ厳しい要求をしている……)

上条(……)


442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:48:36.92 ID:VbowmHbk0


上条「……よし」

初春「……」

上条「初春は今日一日何もするな。んで明日、俺がお前の寮に迎えに行く」

初春「……どういう意味ですか?」

上条「俺が今日一日で全て終わらせてきてやるよ」

初春「ッ!? ダメです! 危険過ぎます!」

上条「だから、初春にも危険を犯してもらう。俺が明日迎えに来なかったら、初春は別の暗部組織によって殺される」

初春「…っ」

上条「わかったか? 俺と初春はこの問題に対して一蓮托生になったわけだ」

初春「上条さんがそうする理由がわかりません。そんなに危険を犯す必要がありませんから」

上条「まず俺は第一位に恨みがある。そして、初春にも借りがある。んで御坂、いや御坂の両親に借りがあるんだ」



上条「一番響いたのは、初春の決意が俺の家族、垣根の信念に似ていたからかな」



上条「こんだけ命を張る理由がある」




上条「ならやるに決まってんだろ」

初春「……」



上条「だから初春は俺を信じて待ってろ」


443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:49:45.41 ID:VbowmHbk0


初春「……わかりました。頼りにしてます」

上条「あぁ。それじゃあ、破壊する研究所の位置と今日の実験場所を教えてくれ」

初春「……死なないでくださいね。私のため、御坂さんのため、そして何よりも」

初春「上条さんのために」

上条「わかった。約束だ」


444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:51:26.38 ID:QcBUkyJM0



佐天「あれ? 初春とあの男の人が近づいてくる」

白井「話は終わったようですわね」



上条「時間取らせちまって悪かったな」

御坂「長々と随分話し込んでたわね」

初春「すみません」

御坂「初春さんはいいの。で、話はついたわけ?」

上条「あぁ。それと御坂、この前は悪かったな。今度、初春と一緒に俺の家来いよ。ご馳走してやるからさ。あー、二人も良いぞ来てくれて」

「「「は?」」」

御坂「なんで私がアンタなんかの料理を食べなきゃなんないのよ」

初春「すごく美味しいですから、断らない方が良いですよ。私は行かせてもらいますし!」

佐天「えっ? なんで初春は美味しいって知ってるの!?」

初春「食べに行ったことありますし……」

白井「まさか、先日泊まりに行った殿方の家というのはこの方の所ですの!?」

御坂「はあー!? アンタ、初春さんに何かしてないでしょうね!!」

上条「してねーよ! 上条さんは大変紳士な心の持ち主ですので、何もしてませんのことよ!?」

初春「あっ、はい! 料理は美味しくいただきましたけど、私は美味しくいただかれてはいません!」

御坂「///」

白井「///」

佐天「///」

上条「お、お前は何を言ってんだ!///」


445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:52:32.05 ID:QcBUkyJM0



御坂「そこまで言うなら今度行くわよ。あくまでアンタが私の友達に手を出さないよう監視のためにね」

上条「わかった」

初春「……それじゃ、お願いしますね」

上条「あぁ。んじゃお先に」




白井「初春、何かされました?」

初春「いえ、心配かけてすみませんでした。上条さんはそんなことする人ではないので大丈夫ですよ」

御坂「そんなこと信じれないわよ。まだアイツの正体を掴んだわけじゃないんだから」

佐天(初春、少し顔色良くなってる……。そんなに悪い人じゃないのかな……)

初春「ちょっとお腹空いたのでここでパフェでも食べていきませんか?」

御坂「そうね。変に緊張しちゃったせいで少し疲れたわ。食べていきましょ」

白井「早くセブンスミストに戻らないとお店が閉まってしまいますわよ?」

佐天「まあまあ、少しくらいいいじゃないですか」


446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/11(金) 22:53:48.38 ID:QcBUkyJM0


上条「もしもし、浜面ー」

浜面「いよう、大将。どうした?」

上条「この後、暇か?」

浜面「あぁ、ちょうど用事も終わって暇になったとこだが」

上条「じゃあセブンスミスト前のコンビニに来てくれねえか? 足を貸して欲しいんだ」

浜面「訳ありってか、……わかった。そこなら20分くらいで着くから待っててくれ」

上条「おう。頼むぜ」


pi



上条「破壊する研究所が3つで、今日の実験が第十七学区の操車場に20時30分か……」


上条(今はだいたい16時30分……)


上条「ギリギリか……」


上条(命懸けの、人を守るための戦い……)


上条「似合わねえよな……、もっとカッコ悪いのが上条さんですよ」


512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 22:58:09.56 ID:kYOF9PJG0




~車内~



浜面「……いきなりよくわからねえ研究所に向かえって言われて、連れて行ってみれば大将はなんか拳銃ぶっ放しながら中入って行くしよ」


浜面「しかもまだ同じような研究所が二つあるって言うし……」




浜面「大将って何者……?」




513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:00:01.97 ID:kYOF9PJG0




上条「浜面、もう良いぞ。次のとこ行ってくれ」

浜面「おう……、って何だその子!? 裸じゃねえか! もしかして大将、ロリコン……ッ!?」

上条「ふざけたこと言ってんなよ。変な液体の中に閉じ込められてたから連れてきただけだ」




上条「それにこっちで保護しとかなきゃいけない奴みたいだしな」




浜面「そ、そうか……。大将ってさ、やっぱし危ないことやってんの……?」

上条「あー……、まあ言ってもいいか。暗部って奴だよ。人殺し過ぎたし、しょうがないんじゃねえかな」

浜面「ッ!? それって俺ら助けた時のも入ってるよな……。すまねえ」

上条「無関係じゃねえけどよ、もっと色んなことやったツケが回ってきただけだからさ、お前らが気にすることじゃねえよ」

浜面「……」

上条「まあ、知っといた方が良いと思うから駒場さんには言っといてくれよ」

浜面「わかった。……それじゃあ、今日のこれも仕事ってやつか?」

上条「まあな。わざわざ足貸してもらっちまって悪いな」

浜面「いや、そんなことは良いんだ。ただ……」




浜面「死んでくれるなよ、大将」




上条「……くくっ、俺よりお前の方が早く死にそうなくせして何言ってんだ」

浜面「ッ! なんだよ、人が心配してやってんのに!」

上条「まあまあ、怒るなよ」




上条「……ありがとな」




浜面「お、おう」

上条「じゃあ次はこの研究所な」

浜面「了解だ。ところでその子はどうするんだ?」

上条「んー、二つの研究所ぶっ潰した後、俺を送り届けたら病院連れて行ってくれねえか? 冥土帰しがいるとこね」

浜面「研究所ぶっ潰すだけじゃないのか?」

上条「研究所潰すのはあくまで前菜。メインディッシュはその後だよ」




514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:01:25.84 ID:kYOF9PJG0




~第十七学区 操車場~


20:25



浜面「ここで良いのか?」

上条「あぁ。入り口から入れるかわからねえからな。この金網登ってくよ」

浜面「まあ、大将が良いって言うなら良いんだけどさ……」

上条「それじゃ、その子を病院に頼んだぜ。俺の名前出せば冥土帰しなら悪いようにはしないはずだ」

浜面「了解。……また飯作りに来てくれよ」

上条「落ち着いたらな」

浜面「おう」

上条「それじゃ、その子送り届けたら帰ってくれて良いから。……今日はありがとな」

浜面「わかった。……それじゃ」

上条「あぁ」









上条「さぁ、決着つけようか」






516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:02:39.03 ID:kYOF9PJG0



20:30



ミサカ100号「……時間になりました。これから第100次『絶対能力進化』実験を行いますが準備はよろしいですか、とミサカは事務的に事を進めます」

一方通行「……」

ミサカ100号「どうかしましたか?」

一方通行「……なンでもねェ」

ミサカ100号「……待ってください。研究所と連絡が取れません」

一方通行「あァ? それはどォいうことだ……?」




「そりゃ研究所が潰されたからじゃねえの?」




一方通行「……誰だオマエ、関係者じゃねェだろ」

上条「あぁ」






上条「一方通行、お前を殺しに来ただけだ」





517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:03:56.60 ID:kYOF9PJG0





一方通行「俺を殺しに来た、ねェ……」




一方通行「オマエみたいな三下がいるからいけねェンだよ……。このままじゃ……」




ミサカ100号「これから実験があるので関係者以外は立ち退きしていただきたいのですが、とミサカは暗に邪魔だということを隠しながら丁寧な口調でお願いをします」

上条「いや、全然隠せてねえし」

ミサカ100号「はっ、実験を知られてしまった以上、生きて帰してはいけないのでは……、とミサカは重要なことに気付いたフリをして脅してみせます」

上条「そもそもさ、もうこんなことしなくても良いわけ」

一方通行「あァ? なァに勝手にほざいてンだか」

ミサカ100号「そうです、あなたは何を言っているのですか、とミサカは何も知らないはずのこの方に違和感を感じながらも反論してみせます」





上条「だってこの実験、俺の都合で潰させてもらうから」





一方通行「おィ三下ァ、オマエ頭イかれてンのか?」

上条「……なぁ、別におしゃべりしにわざわざ来たわけじゃないんだ。始めようぜ」




一方通行「かっ、この俺が誰だかわかってて言ってンのかよ。もしそうだとしたら哀れだなァ、抱きしめたくなっちまうほど哀れだッ!」




上条「お前が最強の座にずっといられると思ってんなら、まずはその幻想をぶち殺すッ!」




519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:05:09.33 ID:kYOF9PJG0



(まだ安定してねェんだ……、ここは遠くから……)


一方通行は近くにあった大量の鉄骨に手を伸ばす
鉄骨に手を触れベクトル操作を行い、一つ一つを上条に向けて投げ放った

上条は一方通行が自身の手でなく近くの物を放ってきたことに違和感を感じる

(なぜ反射を利用して接近戦で来ない……?)



何本もの鉄骨が連続で上条に迫り、地面に突き刺さっていく
一本一本避けるのはさほど難しくはなかったが、地面に刺さった鉄骨により逃げ道が限られてきてしまう

学園都市最強の頭脳の持ち主は頭の良さも学園都市最強である

一方通行の思う通りに追い込まれた上条へと一本の鉄骨が襲いかかる



ドオン、と音をたてて地面に突き刺さる鉄骨



「ンだァ? 思ってたよりもクソ弱ェじゃねェか」

一方通行は拍子抜けといった表情で鉄骨の塊を眺める


見えなくなるほとではないが土埃が舞っていて上条の姿を正確に捉えられない


そこに探していた人物の声が聞こえてきた


「勝手に終わらせるな、臆病者め」



鉄骨の塊の少し後ろに上条は立っている

とどめの一本が上条へと当たる前に上条は、飛び上がって後ろの鉄骨に体重をかけテコの原理を用いて鉄骨を曲げ、逃げ道を作り難を逃れたのであった



520: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:06:44.74 ID:kYOF9PJG0


「臆病者……? はっ、俺に言ってンのか? この学園都市第一位の俺にッ!」


「遠くから物を投げるだけの第一位なんて、臆病者以外の何者でもねえよ」


「くかかかか、言うじゃねェかッ! そンなにスクラップになりてェなら、遠慮なくそォしてやるよッ!」



一方通行は挑発だとわかっていたが、地面に接する足の裏のベクトルを操作し、上条に向かって常人では出せない速さで駆け出す


(もォ関係ねェ。血液を逆流してぶっ殺すッ)


一方通行の後ろでは砂埃が舞っている


「くたばれェェェェェェェェェェェッ!!」


一方通行は上条の身体に触れようと左手を伸ばす


しかし、上条にとってその速さは脅威にはならなかった


(垣根の未元物質の方がまだ速いぜ)


上条は迫ってくる一方通行を躱し、その時伸ばしてきていた一方通行の左手を右手で弾く

パキーン、と音がなり一方通行の反射が解ける


(……は? なンで反射がなくなったンだよ……、まさかコイツが……ッ!?)


左手が弾かれたことで一方通行の身体が前傾姿勢から上半身が浮いてしまっていた


一瞬惚けた一方通行の隙を上条は逃さない
左足を前に出し腰を捻りながら振りかぶった右手の拳を一方通行の顔面へと放った


バキッ、と上条の拳が一方通行の顔面を捉え数十メートル一方通行が吹っ飛ぶ
ズザザザザと音をたてて地面と一方通行の身体が擦れる
そしてさらに数メートル行ったところで一方通行はようやく止まる




そこらの学生では繰り出せない威力の一撃を命中させたにも関わらず、それをした上条の顔は晴れない


チッ、と上条は舌打ちをした




「さっさと起き上がれよ。手応えなかったぜ」






言葉が聞こえたのか聞こえなかったのかはわからないが、上条から遠く離れて倒れていた一方通行は静かに立ち上がった



522: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:09:34.10 ID:kYOF9PJG0


~side??ミサカ100号~




これはどういうことなのでしょうか




Level5のクローンとして生まれたが、その力までは受け継ぐことが出来ず、ただ殺されるだけの実験人形になったミサカ達

軍用クローンの名に違わぬ銃器の扱いに長け、それらを駆使しても傷一つつけられなかった学園都市第一位、一方通行

そんな彼を殺しに来たと言う少年

実験を私用で潰すと言い、研究所は潰れたと言った

そして一方通行の攻撃を避け、挑発し、過去の『ミサカ達』が一度も破ることの出来なかった絶対防御、反射を破り彼の顔へ拳を撃ち込んだ少年




おかしい




なぜだろう






――気分が高揚しているのがわかる






523: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:10:27.99 ID:kYOF9PJG0



これがなんという感情なのか、『学習装置(テスタメント)』にはなかった


わからない


教えてもらってないから


けどわかることもある






――ミサカは涙を流している






悲しいのでしょうか




涙……、悲しい時に流れるもの




でも悲しくない





わからない




でも、




――涙は止まらない




あの少年は何者なのでしょうか




どうして彼に攻撃が出来るのでしょう




わからない……






――ミサカはこの世界を知らなすぎる……





524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:12:22.02 ID:kYOF9PJG0


~side 一方通行~



『俺の目的のために死んでもらうぜ』



『俺の未元物質(ダークマター)に、常識は通用しねえ』





『お前は俺には勝てねえよ。そんなブレブレの信念じゃ生きる価値なんてねえ』



『自分が信じたことを曲げてまで生きる人生なんてクソだ』






『人に優しくして欲しいなら、人に優しくしろ』


『人の温もりが欲しいなら、自分から近づけ』


『人を傷つけたくないなら、自分が傷つく覚悟を決めろ』




『お前はただ逃げてるだけだろッ!』







『お前が一人なのは、お前自身のせいだろうがッ!』








『ゴフッ……、ははっ……気ぃ付けろよ、……俺よりも……強い奴が……、お前の……、前に…あら…わ……れ…る……から……よ…………っ………』








そォか、コイツか




お前と同じ目をしてる






――俺を認めない目だッッ!!




525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:14:57.82 ID:kYOF9PJG0


「風でも使って殴られる前に俺から少し距離を取ったみたいだな。そのせいで全然ダメージくらってないだろ」



上条の言葉に我に返る一方通行

まだ互いの距離はあるが声が辛うじて聞こえるのだろう


「なンで反射が効かねェ」





「お前の常識は、俺には通用しねえ」





「くかか、そォか……、やっぱりそォだ。……あの忌々しい第二位に似てやがる」


「……垣根の仇は取らせてもらうぜッ!」


上条は足に力をいれ一方通行との距離を詰めるために駆け出す
対する一方通行は足元にある小石をベクトル操作によって音速に近いスピードで蹴り放った


ヒュン??ヒュン??ヒュン


当たれば致命傷のただの小石
それを上条は無意識の内に避ける
理性によってではなく本能で避けていく



(かァ、とンでもねェなァ……。さて、どォする……)



考えに耽る時間など0.1秒にも満たないが、その一瞬一瞬が一方通行を死へと追いやる


――焦り


それは第二位、垣根帝督と戦った時にも感じた恐怖からくるもの



(気にいらねェ……。今回はなんとしてでも自分の力で勝つ……ッ!)



一方通行は足元から上条へと延びる線路を踏みベクトル操作で操る


突然うねり出した線路

上条は線路の動きに対応出来ず空中へと放り出される



それを狙ったかのように一方通行が勢いよく飛び上がってきた


「死ねェェェェェェェええええェェェェェェェェェェェェッッ!!」


「くっ……っ……!」


予想外に空中へと投げ出された上条は抵抗出来ず、一方通行の能力によって強化された右ストレートを左腕で庇うことしか出来なかった


526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:16:29.26 ID:kYOF9PJG0


殴られた上条は横にそびえ立つように並べられている倉庫の一ブロックに叩きつけられ、身体を強く打つ

「がはっ」

肺の中の空気が漏れ出す

そのまま重力に引っ張られ地面へと落ちていく

だが、上条は痛みに耐えながらも空中で体勢を立て直し両足をバネのようにして上手く着地し、片膝をついて息を整えようとする




上条の左腕は言うことを聞かないかのように、だらんとぶら下がっているだけ

――骨折

骨が砕けたかはわからないが、確実に骨にヒビは入っており上手く動かせないことを踏まえて骨折と考えるのが妥当であった
すなわちこの戦いでは上条の左腕は使い物にならなくなった


(まあもともと左は期待出来なかったが、……この痛みを感じながらの戦いかよ)


反射がある限り左手、両足の攻撃は一方通行には無効化され、逆にダメージをこちらがくらってしまう


しかし、右手で一方通行を捕まえれば反射を破れる可能性があったため、左手が使えなくなることは少なくともプラスではなかった

しかも痛みに耐えながら学園都市第一位と戦わなければならない状況に、多少の緊張が走る


「ははっ、これじゃ垣根ともまだ差があるのかもしれないな」


「……けど」






「今日だけは……、今回だけは……、背負ってるもんがある! 負けられねえっ!」






(垣根、初春、御坂、――御坂妹、――御坂末っ子……。負けちゃいられねえだろっ!)


上条は遠くからこちらへと向かってくる一方通行を睨む
その顔には邪悪な笑みを浮かべられている
上条はそれを睨みながら立ち上がった



527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:17:27.00 ID:kYOF9PJG0



(三下の左腕には俺の能力は効いた……。ン? 待てよ……、反射を破られたのも、殴られたのも、全て三下の右手……)


一方通行は上条を殴り飛ばした後、上条が飛んでいった方向を見ながら冷静に戦況を分析していた


「……もしや、アイツは右手で触れた能力を消す類の能力者」


学園都市第三位の御坂美琴と違い、上条が能力に対抗する際は右手しか使っていないことを見抜く

それが第一位と第三位の頭の違いなのか戦況の違いなのか、それとも冷静さを忘れずに戦況を分析することが出来ていたかどうかなのか、その原因は定かではないが、一方通行は上条の幻想殺しの真実に近づいたのは確かだった

そしてこの情報は、上条との戦いを続ける上でこれ以上価値のあるものはない

(もしこれが事実ならば、……悪ィがこっから先は一方通行だァ!)


顔に邪悪な笑みを浮かべ、こちらを睨みながら立ち上がる上条を見ながら、一方通行はその足を上条へと向けていた


528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:18:25.60 ID:kYOF9PJG0



「三下ァ、俺の能力は効かねェンじゃなかったのかァ?」


ニヤニヤと上条に近付きながら歩いてくる一方通行に、上条は悟った






――幻想殺しに気が付いたッ!






上条は右手を握り、額に汗を滲ませる


(どうする……、こうなったら迂闊に近付いてくることはしないだろう……。銃なんかぶっ放してもそっくりそのまま返ってくるのがオチ……、くっ……)




「オマエはこれから俺にいたぶられ続けるしか未来はねェッ!」


一方通行は足元の小石を先ほどと同じようにベクトル操作して蹴る

上条はそれを避けながら一方通行から離れるように走り出す

しかし、一方通行はそれを逃がさぬよう上条の逃げる先に鉄骨を突き刺し、追い詰めようとしていた

しかし、その鉄骨の微妙な傾きや高さの違いを利用して、上条は持ち前の身体能力を駆使し鉄骨の山を駆け上り、飛び越えて行った




「チッ、逃げやがったか」




一方通行はわかっている

上条の戦い方は近接格闘オンリーであるということに
そして、例え遠距離からの攻撃手段があったとしても自分には無意味だということを
垣根の未元物質のように遠近両方で一方通行に有効な攻撃を上条が持ってわけではないことを


(問題は、いつどのタイミングで仕掛けてくるか……)



529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:19:17.74 ID:kYOF9PJG0



さめざめとした何の音もなく静かに佇む第十七学区操車場


だがそこは、山積みになっていたはずの鉄骨が地面に無造作に突き刺さり、音速に近いスピードで空気を切り裂いた小石によって倉庫には無数の小さな穴が空けられ、うねりひん曲がった線路があった

そしてこの場所をこのような様にし、他者に有無を言わぬ近寄り難い雰囲気を醸し出していた二人は、お互いの息を感じようと耳を神経を張り詰めていた


夏はまだ遠い春の夜
さすがに肌寒くもあるが白い悪魔と黒い悪魔はそんなことを感じてはいなかった


延々とも感じる短い時間が流れ、空高くに位置する月に雲が差し掛かった頃


カンッ


一方通行の左方で音がなり、上条が現れた

一方通行は焦らず牽制として小石を蹴り出す


(さァ、どォ来る……)


一方通行は小石を避けた上条の行動を見て鉄骨を放り、体勢が崩れたところを不自由な上条の左側から切り崩そうと画策していた


「なッ!?」


しかし、小石は上条に全弾命中


上条は小石の勢いに負けてその後ろの倉庫へと叩きつけられる


ガコッ ガコッ ガコッ


そして、上条の倉庫に叩きつけられた音は不自然だった



530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:21:31.16 ID:kYOF9PJG0


一方通行がその音に違和感を覚えたその時、強烈な悪寒が一方通行を襲う


そして無意識に左腕で顔の左側を覆う


ドゴッ


一方通行は、殺人的な格闘を極めつつある上条の一発をくらい、その勢いを殺せずに吹き飛ぶ

数メートル飛ばされ、地面に落ちるかという時にまたしても嫌な雰囲気を感じ取る



そう思ってからの行動は早かった


右手を地面に突きベクトル操作で地面から身体を上空へと放ち、風を操って空中で体勢を整え、何層にも倉庫が重なっているてっぺんに降り立つ




そして、一方通行の右手の跡が残っている地面には、左腕をぶら下げた上条の姿があった




531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:22:52.71 ID:kYOF9PJG0



「これでまあ、イーブンってとこだな」


そう言い放った上条の視線の先にいるのは上条と同じく左腕をぶら下げている一方通行




「互いの能力の全容を知り、後はどちらか一方が動けなくなるまで、……いや、死ぬまで続くデスゲームがあるのみだッ!」






「互いの能力の全容を知り……? ぎゃは、ぎゃはぎゃはぎゃは、オマエが俺の何を知っているって言ってンだァ? あァ?」


「……なに?」


「第二位との戦いを経て、俺は進化したンだよ。今じゃ演算領域の限界すら見えねェ! こンなことも出来ンだぜェ」


そう言うと一方通行はおもむろに右手をぶら下がる左腕の負傷していると思われる部分へと重ねる


すると左腕がビクッと跳ね、上条の拳で砕かれる前の完全な状態へとなった


「ッ!?」


「体内の骨や成分、組織をベクトル操作し、元通りとまではいかなくても体内で使われていない部分を用いて再構築。左腕は復活ってわけだァ」


一方通行は、左手を握っては広げて感触を確かめながら、倉庫のてっぺんから飛び降りる
地面には例の如くベクトル操作によって衝撃を無効化し、ストンと何事もなかったかのように着地した


「本当の化物かッ!」

「オマエこそなンで俺の左側にいやがった……、ン? 上着はどォしたァ」

「……その上着とこの糸を使って罠を張っただけだ」


上条は自身のデニムのポケットから細い糸を取り出し一方通行に見せてみせた

上条の格好は先ほどの青のパーカーに黒の細いデニム姿ではなく、黒の細いデニムは変わらないが上半身は黒のタンクトップのみであった


「ほォ、ンなもン持ってるたァ驚いた」

「ふざけ、やがってッ!」


上条は言葉の端々からは感じないが、内心焦り、困惑していた


確実に意識を刈り取れるはずだった一撃を左腕でガードされ、しかもその左腕を元通りにされたことに

しかも一方通行の能力の底がしれないことに

そして、






――その能力で垣根を助けられるかもしれない、と感じてしまった自分に





534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:28:53.08 ID:kYOF9PJG0

(こいつを仲間にしようだなんて、無理だったんだ……。どうしても憎い……。それにこいつが他人の言うことを聞くとも思えない……)



――なのにッ!



――どうして仲間にして垣根の治療を頼みたいと考えるんだッ!





――なのにッ!



「……どうしてお前がそんな能力を使えるんだ」

「あァ? 言っただろ、第二位と戦った時になァ能力の新たな可能性に目覚めたンだよ」

「違うッ! どうして人を殺すことしかしないオマエが、そんな能力を使えるんだよッ! 使えて良いはずがねえだろッッ!!」

「……」

「人を助けられるような能力をオマエみたいなクズが使えちゃいけないだろうがッッ!!」

「……俺が殺してきたのは、俺を殺そうと挑んできた三下と、……そこの人形だけだ」


ビクッと物陰に隠れながらも白と黒の悪魔の戦いを見ていたミサカ100号の肩が跳ねる


(そうです、ミサカ達は作られた命……、人形……)


「……人形じゃねえだろ、御坂妹は。例え実験のために作られたとしても! この世で生きてる以上、人形じゃないッ!」

「はンッ! 俺に殺されるためにいるだけの存在で、クソみてェな研究員に命令されて何も言わずに聞くコイツらが人形じゃないだと? 笑わせるな三下ッ!」

「それはただこの世の中を知らないだけだろうがッ!」

「俺がどンなに煽っても、脅しても、実験だからだと言って殺されに来たコイツらをオマエはまだ人間だと言い張るのかッ!?」

「……お前、本当はこの実験やりたくなかったのか……?」

「「ッ!?」」

一方通行とミサカ100号が同時に目を見開く
その表情からは驚きと困惑が見て取れた


「……ンなわけねェだろうがッ!」

「じゃあなんでこんな実験に参加した!??答えろ、一方通行ッッ!!」

「絶対的な力が欲しいンだ! 最強じゃダメだ、無敵にならなきゃならねェ! こンなンじゃ俺に寄ってくるバカみてェな三下で、この世は溢れかえってンだよォォォォッ!!」

「……お前はやっぱり臆病者だ」

「なに!?」

「お前はただ逃げてるだけだろッ!」

「ッ!?」



『お前はただ逃げてるだけだろッ!』



「ふざけたことばっかり言ってンじゃねェぞこの三下がァァァァァァァあああああああァァァァァァッッ!!!」



「百何十人も殺してその事実から目を背けてんじゃねえよッ! お前も俺みたいなクズなんだから、もっとクズらしく生きろよ一方通行ぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」


535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:31:21.25 ID:kYOF9PJG0

上条が一方通行に向かって駆け出す
左腕を庇いながらもそれでも速く、速く駆けていく


一方通行も上条に向かって駆け出した
上条には近接格闘しかないとわかっていてなお近接格闘を望む
その答えは



『無敵』になるため




遠距離からでは上条は攻撃出来ない
しかしそれでは近距離は上条に分があると認めているようなものである
それが一方通行には許せなかった、認めることは出来なかった
強いとは認めても自分よりも強いとは認められなかった
『無敵』になるための障壁――上条当麻
奴を近距離で破ってこそ意味があるのだ



上条の攻撃範囲にもうすぐ一方通行が入るといくことで上条が動く
上条に真っ直ぐ向かってくる一方通行の左側の死角から右フックを狙っていた

その際上条の右側は完全なフリー
また左腕が満足に使えない今、上条の防御は限りなくゼロに近かった
しかも相手は学園都市第一位
自殺行為にしか見えないスタイルをとる上条



一方通行に迷いはなかった
上条の正面から上条の左側へと足の裏のベクトルを操作し凄まじい速さでの方向転換
徹底的に右手を避け、徹底的に上条の左側を攻める
上条の右手が早いか、一方通行が触れるのが早いか、などとギャンブルする気はなかった



それは上条への敬意



強い相手だと認めることが出来る
だからこそ弱点を突きそこを攻める



それは学園都市にいる全ての人を見下してきた一方通行が初めて認めた瞬間だった



垣根は格付けで下にいるためどうしても自分よりも下にしか見えなかった


喧嘩を吹っかけてくる不良も武器を持ち寄り人数をかけてやってくる
そんな奴を同等だなんて思うことは不可能だった


けど上条は違った
能力を無効化する右手を持つ理解不能な存在
自分とは違って人殺しをしてもそれを背負って生きているのが拳を交えて伝わってくる


――まさに『悪党』


学園都市最強に右手一本で立ち向かってくる上条を認められずにはいられなかった


いくら自分を否定しようとも、それでも強いと認められずにはいられなかった



だからこそ

一方通行は確実に完全な勝利を目指す

536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:32:25.87 ID:kYOF9PJG0


身体をノーガードにし一方通行を自分の正面へと向かってこさせようとした上条


それは一方通行を一発で狩るために上条が仕掛けた罠だった


上条の右手首には先の戦闘で使った糸が巻きついている
その延長線上にあるのは上条の口


一方通行が突っ込んできたところで右手を繰り出すのと同時に顔を左側へと思いっきり引く
そうすることで普段の右フックにさらにスピードを加え一気に一方通行を狩る算段であった


例え右手首に多大なダメージを負おうとも


しかし一方通行はその誘いには乗らずに上条の左側へと移動する


――やられた


左側は何もすることの出来ない左腕のみ
どんなに右手首を犠牲にしても間に合うスピードは出ない


――まさに絶体絶命




勝利を諦め死を覚悟した、その時


上条に神が舞いおりた


このコンマ一秒にも満たない緊迫した状況の中、戦闘に重きを置いた数年間の集大成とも言える上条の戦闘脳が活性化された




――自分の能力だけじゃなく相手の能力も使う




かつて師であった垣根がよく使っていた戦法

上条の幻想殺しの能力に頼らせた攻撃を仕掛け、その中に能力でない攻撃を混ぜる

幻想殺しを過信していた上条に壊滅的なダメージを与えていた戦法だ




それが今、ここで生きる


537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:33:19.18 ID:kYOF9PJG0


一方通行は確信していた
どう考えても右手は間に合わない


(これで綺麗さっぱり終わらせてやるぜェッ!)


一方通行は右手の拳を握りしめ能力を使い殺人的な右ストレートを放とうとする




その時


上条の左肩が一方通行の身体に当たった


攻撃を仕掛けて来たわけではない


ただただ当たったのだ




それは一方通行の絶体防御、反射によって跳ね返される




――一方通行が意図したものでなくても




それにより上条が一方通行と向き合った




(やるじゃねェか……)




勝負は一方通行の右ストレートが早いか、上条の右フックが早いか


結局のところそうなるのであった




そして……



538: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:35:22.24 ID:kYOF9PJG0



「はぁ、はぁ、はぁ」





立っていたのは






――上条当麻


しかしその身体は満身創痍


左腕はおそらく骨折し、右手首からは肉に糸が食い込み血が垂れている


一方通行の左頬は赤く腫れていた
真っ白な肌に浮かび上がる赤


しかし、無理矢理だった攻撃のため一方通行の意識はまだ辛うじて残っていた









「仲間に入れて欲しかった……」




「ただ、それだけだったのに……」








「こンな能力があったからいけなかったンだ……」




「人を傷付けることしか出来ないこの能力が……」




「だから、誰も近付かないよう無敵になる必要があった……」




「こンなところで諦められるかッ……」








「諦めてたまるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」



539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:38:08.42 ID:kYOF9PJG0

(こいつも……、一方通行も俺と同じだったのか……)


(もしも、俺に優しい両親がいなかったら……)


(もしも、俺に垣根がいなかったら……)




(一方通行の立場には、俺が立っていたのかもしれない……)




急に一方通行の様子がおかしくなる
半ば意識を失っているようにも見えた




「fwiz殺ptwr」




一方通行の背中からは噴射状に伸びる二本の黒い翼のようなもの
一方通行の声はノイズが混じっていて上条には聞き取れない
しかしただならぬ殺気を感じ、上条は数メートル空いていた距離をさらに空ける


そこで思い出す
垣根と一方通行が戦っていた場所に、垣根の未元物質で作られた白い羽と正体不明の黒い羽があったことを


「ッ!?」


パキーン



上条が頭上に『何か』を感じ右手を振り上げた

その正体は『何らかのエネルギー』であり『何らかの不可視の力』であった


「これで垣根がやられたのか……ッ!?」


ドゴオォォォォオオォォォォォォン


一方通行は空中にその身を置き、急に黒い翼が膨張し始めた
それは程なくして全長が100メートル以上の巨大な翼になる

その膨張により一方通行の近くにあった倉庫は跡形もなく消え去っており、先ほどの大きな音はそれらが一瞬で消滅させられた時に出た音であった


「なんなんだよ、これは……」


すると一方通行が上条に向かって黒い翼を周囲を薙ぎ払う形で撃ってくる


「くっ!」


それを上条はなんとか右手で耐えるも、先ほど右手首を痛め、さらに噴射状の黒い翼は幻想殺しによって消しても消しても再生されてしまうため、防戦一方を強いられる


「く…そ……がっ! ぐっ……!!」


しばらく経っても効果がないとわかったのか、今度はそれを100本以上に分裂させ、そこから黒い羽が何千本も生成される


「ははっ、こりゃ死ぬんじゃないか……、どうするよ……」

540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:40:05.96 ID:kYOF9PJG0



(これは能力の暴走か……?一方通行の様子もさっきとは全く違う……。それじゃあ、いつからあいつはおかしいんだ? もしかして今日の戦闘中も……?)


その通りであった
一方通行は数ヶ月前の垣根との戦闘でこの黒い翼を発現させて以来、演算領域が広がっただけでなく時々自身の能力に違和感を感じるようにもなっていた
それが今日の上条との戦闘で最初に距離を取って戦った理由であった
暴走した能力は自分でも止められない
それならば近距離で何度も演算を行う戦闘よりも遠距離から少ない数の演算で済む戦闘を行った方が都合が良かったのだ




上条は目の前の無数の黒い羽をどうするか解決しあぐねていた






そして決断する




「行くぜ最強、……真っ向勝負だこの野郎がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」




上条は一方通行に向かい駆け出す
先手必勝、何千本とある黒い羽を防ぐ策がない上条にとっての勝利条件は一方通行を戦闘不能にすること
よって一方通行への攻撃を行うしかない


そこに無数の黒い羽が襲いかかっていく






ドオォォォォオオオォォォォォンッ!!




騒々しい音と舞い上がり視界をゼロにする砂埃
第十七学区操車場は、昨日までの倉庫や鉄骨の山が置いてあった重々しい雰囲気が一変し、何もないあたり一体を見回せることが出来る更地へとその姿を変えていた



541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:41:17.32 ID:kYOF9PJG0

一方通行は砂埃により上条の姿を確認出来ずにいた
あれだけの黒い羽を逃れ防げるはずもなく、あとは瀕死の上条にトドメをさすだけだと考えている
それは上条を殺し、自分が一番だと認めさせること
自分が一番ではないと自身が壊れてしまうことからこの暴走は引き起こされていた
垣根も上条も一方通行の行動を、逃げている、と言い一方通行は自分を守るためにその能力を暴走させた
自分がやってきたことを否定されることで自分が嫌々歩いてきたこの数年間が全くの無駄になる
一方通行はそれに耐えられるだけの精神を持ち合わせてはいなかった




物心つく前に両親に学園都市へ捨てられ、能力開発を受ける研究所での日々、内気であった少年にも友達は少ないながらもいることにはいた
だが学園都市最強の能力に突如目覚め、周囲の人間からは化物だと罵られ、自分に触れることが出来る人間はいなくなった


幼い少年は人の温もりを、周囲からの温かい目を、自分と共に歩んでくれる友達を



――失った





他の誰よりも人からの愛情に飢え


他の誰よりも優しい心を持ち


他の誰よりも心が弱く




他の誰よりも人を愛したかった少年




――一方通行





彼は世界を拒絶した





自分に降りかかってくる火の粉を振り払い、自分の心情を表には出さず、誰とも親しくは接しない




悲しい悲しい白い悪魔の誕生であった





その暴走した一方通行は今、半ば意識を失いながらも唯一認めた好敵手――上条当麻を殺さんと空中の地面から二三メートルのところで、上条がいるであろう場所を見ていた


542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:42:16.12 ID:kYOF9PJG0



砂埃が段々と晴れていく


一方通行が『何らかの力』を使いその場に衝撃を与える


パキーン


音がしたと同時に砂埃の中から上条が一方通行目掛けて飛んできた



「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」



上条の渾身の一撃が一方通行を撃ち、この戦いに終止符を打った


543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:43:41.15 ID:kYOF9PJG0



上条「はぁ、はぁ、はぁ」

一方通行「」

上条「……ふぅー」





土御門「いやー、カミやん。よくやるなぁ」

上条「……んあ? なんでお前がここにいるんだよ」

土御門「そりゃ今日一日カミやんの跡をつけてきたに決まってるぜい」

上条「んだよ、全然気付かなかったわ」

土御門「それよりも、大丈夫か?」

上条「あぁ。左腕がたぶん骨折に右手首の肉が抉れたくらいだ」

土御門「あの黒い羽の攻撃は無傷かよ。あの衝撃波で俺は死ぬかと思ったぜよ」

上条「そのままくたばればよかったのに。……不思議なことに右手をどこに向けてどう動けば良いのかわかった気がした、っていうか教えられた気がしたんだ。まぁ、身体にはところどころ掠ってはいるんだがな」

土御門「かぁー、一方通行も化物だがカミやんも十分化物ぜよ」

上条「……そういや、ここら辺に御坂妹いなかったか?」

土御門「ん? あぁ、超電磁砲のクローンか。それなら確かあそこら辺で伸びてる。命には別状はないと思うぜい」

上条「じゃあ、土御門は御坂妹を病院に運んでくれるか?」

土御門「……カミやんの方が重症だと思うが」

上条「俺はこいつを病院に運ぶからよ」

土御門「……垣根帝督の仇だろ」

上条「……まだ良いんだ。俺らの仕事にはこいつは使える」


上条「それに……」






「助けてやりたい」







上条「柄にもなくそんなこと思っちまったからよ」

土御門「そうか」

上条「こいつの能力で垣根も助けられるかもしれない。……まあ、まだこいつにお願いなんて出来ねえけどな、こいつを否定した俺がして良いもんじゃねぇから」

土御門「……わかった。それじゃぁ行こうか」

544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:44:45.99 ID:kYOF9PJG0



~病院~



冥土帰し「おやおや、またエラく派手なことをやってるみたいだね」

上条「別にやりたくてやってるわけじゃ……」

冥土帰し「君の知り合いが送ってきた彼女ね、明日には目が覚めると思うよ。無理矢理睡眠状態にされてたみたいだから。……けどクローンだからね、適度なメンテナンスは必要になるね」

上条「……クローンだって知ってんのか」

冥土帰し「詳しい話は君と担いでる彼の治療の後にしようか。あー、金髪の君が担いでる彼女は見たところ怪我もないみたいだから、指定する病室に運ぶの手伝ってね」

土御門「了解だにゃー」

上条「……お願いします」


545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:46:08.93 ID:kYOF9PJG0



~翌日 初春の寮~



初春(全然寝れなかった……。上条さん大丈夫かな……)

初春「上条さん以外が来たら……」

初春「……」

初春「ううん、大丈夫。きっと……」




ピンポーン




初春「……来た」




ガチャ






上条「待たせたな、初春」




初春「かみ…じょ……う……さん……、その怪我……」

上条「ん? あぁ、左腕は骨折しただけだ。右手首も無茶なことしなきゃすぐに良くなるって」

初春「……もう、あの実験は終わったん、ですか……?」




上条「あぁ、大丈夫だ」




初春「うぅ……ひっぐ……よがっだぁ……良がっだよぉ……うぅ……」

上条「今まで一人でよく頑張った。後の始末は俺に任せとけ」

初春「がみじょ?ざんも無事で……本当に……良がっだでず……うぅ……」

上条「あぁ。……心配かけた」

初春「うぁぁぁぁぁん」

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546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:48:25.88 ID:kYOF9PJG0



~病院~


ガラガラ


上条「……まだ起きないか?」

土御門「あぁ」

初春「……あっ、一方通行……さん……」

上条「まあいいか。初春の方を先に片付けよう」

土御門「わかった」


pipipipipi


pi


電話の男「おう」

上条「……昨日、俺がやってたことは耳に入ってるよな?」

電話の男「あぁ。ったく、好き勝手やってくれちゃってよ」

上条「そこで折り入って頼みがあるんだ。……初春の罪を無しにしちゃくれねえか?」

初春「……」

電話の男「……それは無理だな」

初春「ッ!?」

上条「何が悪い!? 学園都市最強が学園都市最弱の無能力者に負けたんだぞ!? 絶対能力者になんかなる実験は頓挫されるはずだろうが!」

電話の男「それだよ、問題は」

上条「……なにがだ」

土御門「……実験の途中での強制終了による負債か」

電話の男「そうだ」

上条「ッ!? いくらだ」

電話の男「そこの嬢ちゃんが海外への資料も抹殺しちまったせいでな。諸々含めて8億円ってもんか」

「「「ッ!?」」」

初春「そんな額……払いきれない……」

上条「くっ……」

電話の男「まぁこちらとて身体も全部使って必ず返せ、なんて人権を無視したようなことは言いたくねえんだわ。そこで一つ提案がある」






電話の男「初春飾利を暗部組織グループの正規メンバーとすることで手を打とう」



547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:50:37.79 ID:kYOF9PJG0

上条「初春を……」

土御門「グループに、だと……」

初春「えっ!?」

電話の男「お前ら二人をサポートする役割を担ってもらう。それに初春のハッキング技術を使えば情報の隠蔽やすり替えなんかも余裕になり、グループはより機密の高い組織として機能出来る」

電話の男「それに監視カメラを使って初春の大事な人の危険にもいち早く対処出来るぜ?」

上条「ダメだッ! 初春に人殺しの手伝いをさせるわけにはいかないッ!」

電話の男「……じゃあ、どうやってこの問題を穏便に解決するよ? 何か良い案でもあるのか?」

上条「くっ……」






初春「……私、やりますッ!」




上条「ッ!?」

電話の男「……」

上条「ダメだッ!」

初春「いいえ、やらなきゃいけないんです。ここで引いたら、私がやった不始末を上条さんに尻拭いをさせることになるんです」

上条「そんなことは問題じゃない! お前はジャッジメントだろうがッ! ……人を守る正義の味方が、俺みたいなクズの手伝いをしちゃダメだろ」

初春「上条さんはクズじゃありません! 自分の信じた道を貫き通すすごい人です」

初春「そのせいで手を赤く染めた人殺しでも、それによって助けられた人もいるんです。……私はそれで救われた人なんです」






初春「それに、私の大事な人に上条さんも入ってますから」






初春「御坂さんや白井さん、佐天さんの危機を未然防ぐことだって出来るかもしれません。そのためだったらジャッジメントだって辞められます!」

上条「……」

電話の男「決まり、だな。……初春は明日からジャッジメントの特別班扱いになり、こちらが連絡した時だけ予め用意した部屋で他のメンバーに指示を出してもらう」

初春「……暗部に所属しているのに、ジャッジメントは辞められないんですか」

電話の男「あぁ」

上条「……罪悪感があるなら考え直せ」

初春「……いいえ、それも今回の騒動を起こした罰として受けます。上条さんだけに痛い思いさせちゃ悪いですから」

上条「初春……」

548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:54:24.14 ID:kYOF9PJG0

「なァに、人の病室でギャーギャー騒いでるンですかねェ。あァン、三下よォ」


上条「一方通行……、起きたか」

一方通行「クソがァ……、身体が全然動かねェ」

土御門「全身筋肉痛だそうだ」

一方通行「……ンだ、コイツは」

土御門「土御門元春だ。まぁ、本題はそこじゃないな」

上条「また後で掛け直す」

電話の男「ん? おぉ、わかった」

pi

上条「二人ともちょっと外で待っててくれないか?」

初春「……大丈夫なんですか?」

上条「あぁ」

土御門「それじゃ、頼むぜい」

ガラガラ


上条「……昨日は俺の勝ちだったな」

一方通行「ケッ、なンで殺してないンですかねェ」

上条「今は殺すつもりはない」

一方通行「……用件はなンだ」

上条「一方通行、お前に俺と一緒に暗部として活動してもらいたい」

一方通行「暗部だァ? なンで俺がそンなことしなくちゃいけないンですかァ?」

上条「……お前は何十人もの人と、99人のミサカを殺した」

一方通行「っ……、アレは人形だ」

上条「……お前がなんで無敵を目指したのかはなんとなくだが昨日の言葉で察しがついたよ」

一方通行「チッ、余計なこと言っちまったか」

上条「それを踏まえてお前は逃げちゃダメなんだッ!」

一方通行「俺は逃げてねェ!」

上条「お前がやってきたことを否定したいんじゃない!」

上条「成し遂げたい野望、貫き通さなきゃいけない信念をお前は持ってる。そして、それに向かってどんな犠牲を払ってでも進むことは、正しいとは言えないかもしれないけど、俺は認めてる」

一方通行「ッ!」

上条「ただ、自分がしてきたことから目を背けちゃいけないんだ! ……殺してきた奴らの関係者から恨まれ、憎まれ、命を狙われる覚悟を持って前に進まなきゃいけないんだ」

一方通行「……」

上条「お前はクズだ。……そして、俺もクズだ」




上条「お前の痛みは同じ道を歩んできた俺しかわかってやれないし、俺の痛みもお前しかわからないんだ」




上条「俺も小さい頃は疫病神だと言われ、いじめられ、蔑まれてきた。友達なんていなかった」

一方通行「……俺とオマエが同じ……?」

上条「あぁ」

549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:55:56.69 ID:kYOF9PJG0



上条「だから、お前は99人のミサカ達を、99人の人を殺してきたことから目を背けちゃいけない。……まだ二人だけ生き残りがいるんだ」

一方通行「20000人いるンじゃ……」

上条「いや、他のミサカを製造される前にデータを削除した奴が俺の仲間にいてな。だから後は二人だけなんだ」

一方通行「……」

上条「20000体のミサカを世界中で作るこの計画に何か違和感を感じないか?」

一方通行「……『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』での計算でそォなってただろうがァ」

上条「そこからおかしいんだ。……なんでLevel5のクローンを作るのに第三位の御坂美琴なんだ?」

一方通行「ッ!!」

上条「一方通行や垣根の方が有効なはずなんだ。Level5の軍隊を作るには」

一方通行「じゃァ、Level5のクローンは作れねェとわかってて第三位のクローンを作り、それを俺の実験へと流用させた……」

上条「それよりも、きっと本当の目的は世界中にミサカを存在させることだと思うんだ」

一方通行「ッ! ミサカネットワーク!」

上条「あぁ。だからこそ、残っている二人からデータを取って、学園都市はまた『妹達』を作り出す可能性が高い」

一方通行「ふざけ、やがって」

上条「だから、お前に二人の保護を頼みたい」

一方通行「ッ!?」

上条「これは償いだ。二人からは憎まれるかもしれない。けどな一方通行、お前はそれを乗り越えていかなきゃいけないんだ」

一方通行「……」

上条「自分が守ると決めた人は死んでも守らなきゃいけない。……俺はそれが垣根だった」

一方通行「……第二位」

上条「垣根はまだ生きてる」

一方通行「ッ!?」

上条「あいつを助けるために俺は暗部に身を置いてるんだ。そして一方通行、お前には俺を手助けしてもらいたい。お前が俺を助けてくれるならお前が背負わなきゃいけないものも一緒に背負っていける」






上条「一緒に生きていこう、この学園都市の底辺を」






550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:57:30.78 ID:kYOF9PJG0



一方通行「……言いてェことはわかった。けど、お前は納得してンのか? 第二位が勝手に俺に勝負を挑ンできたとは言え、俺が奴をボロボロにしたのは事実だ。……憎くはねェのか?」

上条「……憎しみが全くないとは言えない。でも、俺が垣根と出会っていなかったら俺もお前のようになっていたと思うんだ。お前はそういう人に出会えなかっただけなんだ。……だから憎くても放っておけないし、お前の苦しみも痛いほど理解出来る」




上条「それに、能力の有る無し関係なくお前の横にいれるのは俺だけだから」




一方通行「……そォか」


上条「一方通行、お前を殺すのは俺の役目だ。……そして、俺を殺すのはお前の役目だ」


一方通行「……ンな恥ずかしいセリフ真顔で言うな」


上条「ははっ、まぁ良いじゃねぇか」






上条「一方通行、お前自身が胸を張れる生き方を自分で選んでみろよ!」






一方通行「……ケッ! せいぜいクズ同士、仲良く『悪党』やろうじゃねェか」

上条「あぁ。よろしくな!」


551: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 23:59:35.97 ID:kYOF9PJG0

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上条「あぁ。それじゃ、仕事の時に」


pi


上条「んじゃまあ、一応自己紹介ってことで、改めまして上条当麻です。一応無能力者ってことになってる」

一方通行「あァ? 無能力者なわけねェだろうがッ!」

上条「いやいや、無能力者で判定出るんだよ。けど、右手にどんな異能の力でも打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を持ってる。能力者相手なら負けねェけど、拳銃とかはキツイかな。よろしくたのむ」

土御門「今更だけど、よろしくにゃー」

初春「よろしくお願いします!」

一方通行「よろしくゥ、三下ァ」

上条「三下呼びは変わんないのな」

一方通行「こっちの方が言いやすいしィ」

土御門「俺は土御門元春。能力は『肉体再生(オートリバース)』のLevel0だが、さっきの電話でも言ってた通り魔術関連ではかなり情報を持ってる」

一方通行「他の暗部組織の壊滅よりも、キツイのか? その侵入してきた魔術師の排除ってのは」

土御門「一方通行と初春は後で少し魔術の知識をつけてもらうが、慣れるまでは俺かカミやんがいないと厄介だろうな」

上条「俺もまだ戦ったことないんだけど」

土御門「カミやんの幻想殺しは魔術も打ち消せる」

一方通行「ンだよ、そのとンでも能力は」

上条「……すげえんだな、これ」

土御門「後は一方通行の反射が効くかどうかがカギになってくるだろうな」

一方通行「ふゥん」

土御門「まあ、俺からは以上だ」

初春「あっ、じゃあ私は、初春飾利です。能力は『定温保存(サーマルハンド)』のLevel1で、持っているものの温度を一定に保つことしか出来ないんですけど、ハッキングや情報管理、敵の能力や位置情報を教えることで皆さんの役に立ちたいと思いますっ!」

上条「……あぁ、よろしくな初春」

土御門「よろしくにゃー」

一方通行「よろしくゥ、花頭」

初春「ぶぅー、なんですか花頭って!!」

一方通行「ン? 見たまンまだが?」

初春「うぅー」

土御門「まあ、初春がグループの頭脳なんだ。仲良くな」

初春「……わかりましたよぉ」



552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/06(水) 00:00:56.68 ID:YSuq5JkE0


上条「それじゃあ、任務があるまでは各自自由行動ってことで」

初春「わかりました。それじゃあ、また」

上条「初春、……その悪かったな。結果的にお前の日常を変えちまって」

初春「いえ、変わってませんよ。私の大事な人を守る日常の範囲が少し広くなっただけですから」

上条「……ありがとう」

初春「上条さんは気にしないでください。私の方こそありがとうって言わなきゃいけないんですから! それじゃあ」

上条「あぁ」


ガラガラ


土御門「こうなっちまった以上、悔やんでも仕方ないぜカミやん」

上条「わかってるよ」

土御門「彼女に被害が及ばないように敵の取りこぼしをしないのが俺らのすべきことだ」

上条「あぁ」

土御門「それじゃ、舞夏の昼飯でも食べに帰るにゃー」


ガラガラ


一方通行「守ると決めた人は死ンでも守るンだろ? やり通せ」

上条「あぁ。サンキューな」

一方通行「ン」

上条「じゃあ、お前も乗り越えなきゃいけないもん乗り越えるか! 『妹達』の二人を連れてくるぞ?」

一方通行「……くっ、……あァ」


ガラガラ


628: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:47:16.02 ID:6qc8uf3N0
>>534の

「俺がどンなに煽っても、脅しても、実験だからだと言って殺されに来たコイツらをオマエはまだ人形だと言い張るのかッ!?」



「俺がどンなに煽っても、脅しても、実験だからだと言って殺されに来たコイツらをオマエはまだ人間だと言い張るのかッ!?」

でした。すみません

629: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:48:13.94 ID:6qc8uf3N0



一方通行(逃げたらダメなンだ……)


一方通行(殺してきた奴の関係者から恨まれ、憎まれ、命を狙われる覚悟を決めなきゃならねェ……)


一方通行(99人の『妹達』を殺してきた……)




一方通行(自分の都合で……)




一方通行(しかもその記憶は……、俺に殺された記憶は、今いる『妹達』には残ってる……)




一方通行(本当に……)






一方通行(本当に俺はその覚悟が決まっているのか……?)






一方通行(実験を計画した学園都市が……)


一方通行(実験の非人道的さに目をつむった研究者が……)




一方通行(DNAマップを提供した第三位が……)






一方通行(悪いと、心のどこかで思ってンじゃないのか……?)






一方通行(俺は仕方なく実験に参加させられただけなンじゃないのか……?)






一方通行(俺は悪くないンじゃないのか……?)






一方通行「そンな風に自分に都合の良いようにしてるンじゃないのか……?」


630: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:50:26.68 ID:6qc8uf3N0



違う、チガウ、違うチガウ違う違う違うっ!!



一方通行「ダメだッ!」



一方通行(そンなことないッ! そンなことはないンだッ!)



一方通行(俺がもっと強かったら……)

一方通行(肉体的にではなく……)



一方通行(精神的に……っ……)





一方通行(そォしたらこの実験は……、いや……)





一方通行(少なくとも、99人の『妹達』の殺されなきゃならねェ状況だけは防げたはずなンだ……)





一方通行「俺は学園都市の底辺で……」


一方通行「人殺しのクズとして……」



一方通行「アイツと一緒に」





一方通行「『悪党』になるンだろうがッ!」





一方通行(例え、殺さそうになっても……)

一方通行(拒絶されても……)



一方通行(『妹達』の二人は守り抜く……)





一方通行「それが俺の信念だから……」



一方通行「それが俺の選ぶ生き方だから……」


631: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:53:28.46 ID:6qc8uf3N0

上条「入るぞ」

ガラガラ

一方通行「っ……」

上条「えーとっ……」

ミサカ100号「……昨日ぶりですね」

一方通行「……あァ」

上条「……っと、まずは御坂末っ子、お前のこと話してくれ」

??「えっ? ミサカ? うん、ミサカの名前は打ち止め(ラストオーダー)って言って、検体番号は20001号だよ、ってミサカはミサカは自己紹介してみたり」

一方通行「検体番号20001号、だと……」

打ち止め「うん! ミサカは全てのミサカの上位個体にあたり、ミサカネットワークで直接命令が出来るんだよ、ってミサカはミサカは自慢してみたり」

ミサカ100号「ただのロリっ子上司です、とミサカは不快感を隠しながら補足説明します」

打ち止め「ロリっ子上司って生意気だぞー、ってミサカはミサカは」

上条「だぁー! とにかく、御坂末っ子が本当に他の『妹達』に指示出来るようにプログラムされてるなら、これ以上『妹達』は作らせちゃいけないんだよ!」

上条「この二人のためにも……」


上条「生まれてくる『妹達』のためにもだ」


一方通行「……そォだ、な」

ミサカ100号改め御坂妹「……ミサカはこの世の中を知らなすぎます」

御坂妹「『学習装置』ではカバーしきれていないこともたくさんあると思います」


御坂妹「……あなたを見ると身体が震えます」


一方通行「……」

御坂妹「これがどういう感情なのかは定かではありません。憶測でものを言えば、これは恐怖なのだと思います」

御坂妹「そして、ミサカと上位個体にはあなたに殺された99人のミサカの死ぬ直前までの記憶もあります」

一方通行「っ……」

打ち止め「で、でも……」

御坂妹「待ってください、ミサカはまだ言いたいことがあります、とミサカは上位個体にもう少し時間がほしいことを目で訴えます」

打ち止め「う、うん……」

御坂妹「……おそらくこれから色々なことを知ればあなたに対して良くない感情を持つと思います。そして、それは消えることもないと断言出来ます」

一方通行(わかってる……、わかってるンだそンなこと……)

御坂妹「だからそんなミサカ達を……、守ってください」

一方通行「ッ!?」

御坂妹「この方に人形じゃないと言ってもらえました。人間だと言ってもらえました」

上条「……」



御坂妹「ミサカは人間としてこの世の中を生きてみたいんです」



一方通行(おィおィ……、こンなの……、こンなの……)



一方通行(俺よりも人間らしいじゃねェか……ッ!)

632: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:55:04.61 ID:6qc8uf3N0


御坂妹「そのためには守ってもらう必要があることをこの方から聞きました」

御坂妹「だからあなたは、ミサカ達二人に恨まれながら、憎まれながら、ミサカ達二人を守ってください」

御坂妹「……ただ勘違いはしてほしくはないんです。あなたには感謝もしているんだということもわかってほしいんです」

御坂妹「あなたがいなければミサカはいなかったかもしれないんですから、とミサカは今の胸中を明らかにします」

一方通行「……」

打ち止め「ミサカは途中からあなたがミサカ達を殺したくないのかなって気付いてたんだ……」

一方通行「ッ!?」



打ち止め「でも、止められなかった」



御坂妹「……」

打ち止め「ミサカにはそんなこと出来る力はなかったし、殺したくないっていうのが本当かどうかなんて確かめられなかったから」

打ち止め「けど、今は違う」

打ち止め「あなたはミサカ達を殺したくなかったっていうのがわかったし……」




打ち止め「ミサカ達二人は誰かの都合でもう死んでやることなんてない」




打ち止め「病院で調整は必要だけど、人間として生きていきたい」

打ち止め「だからあなたに、ミサカ達を守ってほしいの」

打ち止め「ミサカ達があなたの苦しみになるのはわかってるよ。でも、それでも、ミサカ達を守ってほしいの」

一方通行「……」

上条「一方通行……」



一方通行「あァ、守ってやる……、いや……」




一方通行「守らせてくれ」


一方通行「そンで、すまなかった」





打ち止め「うん、ってミサカはミサカは笑顔をあなたに向けてみたり」

633: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:56:39.35 ID:6qc8uf3N0


上条「……じゃあ、ちょっと寄るところあるから先行くな」

御坂妹「えっ? もう行ってしまわれるのですか、とミサカは暗にまだいて欲しいということを隠しつつあなたに問います」

上条「悪いな。御坂妹も御坂末っ子もまだ調整あるし、早く病室戻れよ」

一方通行「……この病院の中は大丈夫なのか?」

上条「あぁ。冥土帰しが患者には手は出させないね、って言ってたからたぶん大丈夫だろ」

御坂妹「……ではまた明日も顔を出してください、とミサカはお願いをしてみます」

上条「おう。毎日来るようにするから安心しろ」

打ち止め「ミサカにも会いに来てね! ってミサカはミサカはお話相手になってくれると期待を込めた目であなたを見つめてみる」

上条「任せろ。それじゃあな」


ガラガラ


一方通行「おら、オマエらも病室に戻れ」

御坂妹「上位個体、ミサカ達も病室に戻りましょうか、とミサカは病室にあるリンゴの味が忘れられません」

打ち止め「あー、まだ食べかけだった! それじゃまた来るね、ってミサカはミサカはビューン」

一方通行「病院の中を走っちゃいけませン!!」


ガラガラ


一方通行「ったく」


一方通行「……あいつはどこに行ったンだろうなァ」


ガラガラ


冥土帰し「彼なら垣根君のところに行ったよ」

一方通行「……盗み聞きしてンじゃねェよ」

冥土帰し「彼は垣根君がこの病院に入院してるって知ってからほぼ毎朝来てるね」

一方通行「……」

冥土帰し「彼は垣根君を守りたい。君はあの子達を守りたい。彼が納得してるんだから君は今を生きていくんだね」

一方通行「ンなこと言われなくても……」

冥土帰し「いつか彼は君に力を貸してほしいと言うと思うよ。その時に彼の助けになれれば良いと僕は思うね」

一方通行「……あァ」

冥土帰し「後、君は能力に頼らなくても良いよう運動や筋トレをした方が良いね」

一方通行「うっ……、わかってンだよ!」

冥土帰し「それじゃあね」


ガラガラ

634: ◆Ks/3680U6o 2013/11/15(金) 23:58:38.61 ID:6qc8uf3N0



~数日後??上条宅~



上条(その後、退院した一方通行と、調整を終えた御坂妹、御坂末っ子は揃いも揃って俺の家の居候となった)

上条(なんでも一方通行の家は不良どもに知られていて荒れ放題、さらには御坂妹が一方通行と御坂末っ子と生活する条件として俺の同居を挙げたそうだ)

上条(俺の家に誰かが来る時はグループのアジトに行くみたいなんだが)

上条(……)



一方通行「だァ、第二位は碌な趣味してねェなァ」

御坂妹「あなたの服の方がセンスを疑いますけどね、とミサカは周知の事実とここぞとばかりに自覚を促します」

打ち止め「あー、ハンモックだー!ってミサカはミサカは今夜はこれで寝ようって思ってみたり」

一方通行「ダメに決まってンだろうがァ、クソガキがァ! 落ちたらどォすンだ、あァ!?」

御坂妹「うわー、過保護なロリコンかよ、とミサカは以前からの疑惑が確信に変わったことを吐露します」

打ち止め「そんなに子供じゃないよーだっ、ってミサカはミサカは反論してみたり」



上条(入院中にどんだけ打ち解けてんだよ!? 逆に俺の居場所がなくなったみたいなんですけど……)トントン

上条「ん?」

御坂妹「……あなたはミサカ達の命の恩人であると共に、ミサカ達に世の中のことを教える義務があります、とミサカはあなたがミサカ達と暮らす必要性を説きます」

上条「……へ?」

御坂妹「あなたは先日ミサカ達が人形のようなのは、世の中のことを知らないだけだと言いました、とミサカが言質を取っていることを報告します」

上条「……あー、言ったような……」




御坂妹「だから……、責任は取ってくださいね///」




上条「……ッ!?///」

一方通行「……おィ三下ァ、何時の間に手ェ出しやがった」

上条「へ? 一方通行さん……? 何をそんなに殺気をばら撒いているのでしょうか……!?」

一方通行「俺はなァ、コイツらを守らなきゃならねェンだ! ……害虫は、死にさらせェェェェェェェェェェェ!!」

上条「うおっ!? 家壊れるだろ! やめろっ! だぁー、不幸だぁあああああああああああああ!!!」




御坂妹「と、ミサカは病院のロビーで見かけた『意中の男性に結婚を迫るパターン全集』のパターン6を実行にうつしてみました」


635: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:00:03.65 ID:mTZNSLsj0



~廃墟~



初春『目標Aー21を通過。数は変わらず三人です』

「「「了解」」」




魔術師1「こんな餓鬼連れてくだけで本当に良いんだろうな!?」

魔術師2「あぁ、こう見えてこの餓鬼は学園都市の中じゃ階級で言うと上から二番目のLevel4だっていうじゃねえか。脳みそ弄れば科学を魔術に応用出来るかもしれねえ!」

魔術師3「ん? 追手だ」



パァン



魔術師1「くっ」

魔術師2「チッ、拳銃か」

魔術師3「今、結界を張った」

魔術師2「迎え撃つぞ」



初春『弾丸が一人に命中。しかし、軽傷の模様。音声から何らかの結界を展開、迎え撃つようです』

土御門「情報だと最近出来た小さな魔術結社のようだな。位置はわかってる。後は結界の強度が気がかりだ」

上条「結界は俺が打ち消す」

土御門「じゃあ、カミやんの正面突破で行きますか」

一方通行「あァン? 俺が全て跳ね返してやるよォ」

土御門「反射が効くかわからないぞ?」

一方通行「ンなもンやらなきゃわからねェだろうが」

土御門「……まあ、いい。カミやんは一方通行の援護」

上条「了解」

初春『目標の一人が床に術式と思われる物を展開。雷の龍が出現しました』


636: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:03:45.58 ID:mTZNSLsj0

魔術師2「かかって来い、おらぁっ!」

魔術師3「……敵は二人、二時の方向」

魔術師1「回復魔術をやっている。少しの間耐えてくれ」

魔術師2「耐えるも何も真っ黒にしてやらぁ」

スタスタ

一方通行「ずいぶんと威勢がいいじゃねェか。これから殺されるってェのによォ」

魔術師2「余裕ぶってんじゃねえぞ、行けっ!」

一方通行(どんな源流だろうと解析出来れば反射出来るッ!)


ビリビリビリビリ



一方通行「あばばばばばばばばばばばばばばばばば」

魔術師2「」
魔術師3「」
魔術師1「」

上条「」
土御門「」
初春『』



土御門「……はっ、今だ行けカミやん!」

上条「……っ、うおぉおおおおおお」


魔術師2「ま、また黒焦げにしてやらぁ! 行けっ!」

魔術師3「ッ!? 探知魔術であいつを感知出来ていない、だと!?」

パキーン

魔術師2「なっ!?」

上条「うおりゃっ!」

パキーン

魔術師3「け、結界まで!?」

土御門「ふっ」

バァン パァン パァン


初春『も、目標沈黙。攫われた少年は無傷です。しかし、……一方通行さんも負傷』

上条「な、なぁ……、一方通行生きてるよな……?」

土御門「た、たぶんにゃー」

上条「お、おーい……。一方通行ー?」

一方通行「は……、はや…く……、びょ……いん…に……」ガクッ

一方通行「」

上条「一方通行ぁぁぁあああああああああ」

土御門「大丈夫にゃー。生きてるぜい」

上条「そうか」

初春『じゃ、じゃあ少年と一方通行さんを病院に連れていって今回の仕事は終了です』

「「了解」」

638: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:05:48.16 ID:mTZNSLsj0


~病室~



土御門「いやー、助かって良かったにゃー」

初春「……上条さんに任せておけば良かったのに」ボソッ

一方通行「チッ!」

御坂妹「こんなに弱くてミサカ達を守れるのでしょうか、とミサカはこの白モヤシ本当に学園都市第一位かよ、という気持ちを隠しきれません」

一方通行「チッ!!」

打ち止め「だ、大丈夫だよー! きっと守ってくれるよー……、たぶん、ってミサカはミサカは必死にフォローしてみたり」

一方通行「……うゥ」

上条「ま、まぁ魔術には反射が効かないってわかっただけでも良かったじゃねーか! なっ?」

一方通行「……効かなかったンじゃねェよ」

上条「ん?」

一方通行「……反射は出来たンだ。……ただ逸らすことしか出来なくて、あの攻撃範囲だと俺に直接当たるンだよ」

土御門「つまり、魔術の攻撃自体にはそこそこの防御にはなるわけか……」

一方通行「あの魔術だかの、源流さえわかれば反射も余裕なンだがなァ」

土御門「魔術の源流なんざ、細かくわければいくつあるかなんてわからないぞ」

一方通行「まァ、反射に期待せずとも倒せるっちゃァ倒せるからなァ」

土御門「そういうことだ。カミやんが対魔術では完全無欠の防御壁になるならな、次からはカミやん先頭だ」

上条「……銃さえ持ってなきゃ良いよ」

土御門「反対に対科学では一方通行が先頭でバシバシ反射だな」

一方通行「オマエに言われたかねェよ。何もしねェじゃねェか」

土御門「俺は情報収集……」

初春「それは私の仕事ですね」

土御門「」

上条「えっ? 何、お前いらなくね?」

一方通行「かァ、とォとォいらない、とまで言われちまったかァ! ハハンッ!」

土御門「……対魔術の情報収集は俺が一番だにゃー! いらなくなんかないにゃー! 俺は優秀だにゃー!!」

上条「けど、初春の人工衛星のハッキングによる監視なら多少の魔術関係も……」

土御門「うるさい! うるさいうるさいうるさいにゃー!!!」

639: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:06:59.83 ID:mTZNSLsj0


御坂妹「この組織本当に強いんでしょうか、とミサカは純粋に疑問に思います」

打ち止め「た、たぶん強いんじゃないかなー、ってミサカはミサカは少し動揺を隠しきれなかったり」






上条「それじゃあ、早く治せよ」

土御門「早く治さないといらない認定するからにゃー!」

一方通行「うるせェ、クソメガネ」

初春「お大事にー」

一方通行「花頭もとっとと帰れ」

初春「……白モヤシ」ボソッ

一方通行「チッ!!!」

打ち止め「今日はすき焼きだー、ってミサカはミサカは楽しみぃぃぃぃーーー」

御坂妹「あなたの大好きな幼女はあなたよりも肉の方が好きなようですね、それではアデュー、とミサカは華麗な捨て台詞で病室を後にします」

上条「は、ははは……。そ、それじゃあな」


ガラガラ









一方通行「……肉ゥ」



640: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:08:38.47 ID:mTZNSLsj0


~数日後~



電話の男「なかなか良い仕事するじゃねーか」

上条「量を増やすんじゃねえぞ。ただでさえこっちは補習で忙しいって言うのに……」

土御門「それはカミやんだけだぜい」

電話の男「初春、情報操作の方は大丈夫か?」

初春「はい。残ってる暗部組織やその上役には、殲滅した暗部は簡単な仕事しかここ最近行っていないことになっています」

一方通行「力のある暗部で残ってるのは『ブロック』、『メンバー』、それに……、『アイテム』か」

電話の男「まあ、そんなもんか」

土御門「で、呼び出した理由はなんだ? 俺はあと数日でイギリスに行くことは話してあるはずだが?」

電話の男「まあ、今回は土御門、お前はいなくても大丈夫だろう」

上条「つーと、三人での仕事ってわけか?」

電話の男「まあ動くのは三人だが、実際は二人と一人だな」

一方通行「どォいうことだ」

電話の男「今回の仕事は学園都市で開発した銃器を無断で外に売り捌こうとする組織の壊滅、並びに『アイテム』の条件付き壊滅だ」

上条「なんで同時に行う必要があるんだよ」

電話の男「まず前者だが、その組織の連中が銃器の取り扱いに長けたスペシャリスト揃いだ。そんなわけで上条と土御門は使い辛い」

土御門「妥当だな」

電話の男「で後者について、アイテムの構成員に滝壺理后という一方通行の天敵になる可能性を持った能力者がいる」

一方通行「俺の天敵だァ? ンなもンここにいるじゃねェか」

上条「……あぁ、俺か」

電話の男「上条とは違って学園都市で開発された能力による一方通行、お前の天敵だよ」

初春「滝壺理后、能力は『能力追跡(AIMストーカー)』のLevel4。体晶を用いることで一度記憶したAIM拡散力場はたとえ太陽系の外に出ても検索、補足が可能、ですか……」

一方通行「どこに俺の天敵になる要素があるンだ?」

電話の男「それを応用してAIM拡散力場に干渉して能力者のパーソナルリアリティを乱すことで、攻撃への応用も可能なんだよ」

土御門「つまり、時間をかければ一方通行や第二位の垣根帝督さえも敵ではなくなる」

電話の男「そういうこと」

一方通行「体晶ねェ」

電話の男「まあ弱点は体晶が必要なことや時間がかかるということが挙げられるだろうな」

上条「なら奇襲を仕掛ければ……」

電話の男「そこは『アイテム』のチームワークがそう簡単にはいかせてくれない」

641: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:10:35.45 ID:mTZNSLsj0


初春「アイテムは四人それぞれの得意とするところで勝負を仕掛け、不得意な部分は互いに補って一つの完璧な形態を作っています」

電話の男「そうだ。それに滝壺理后の周辺には第四位が目を光らせている。アイテムの核たる滝壺理后を簡単にはノーマークにはしないだろうな」

土御門「いやー、なかなかやり辛いにゃー」

電話の男「そこで前者に一方通行と初春、後者に上条を向かわせる」

上条「はあ!? 俺一人かよ」

一方通行「コイツ一人で大丈夫かァ……? 明らかに雑魚組織とは違うだろ」

土御門「まあ、滝壺理后に無条件で対抗できるのは確かにカミやんだけだが……」

電話の男「一方通行と初春の方は地道にやっていけば難なく終わるとは思うが、上条の方にはさらに条件が加わる」

土御門「それが条件付き壊滅の条件……」

電話の男「あぁ。その条件だが……」






電話の男「第四位麦野沈利を瀕死の状態にし、その他の正規メンバーを抹殺すること」



642: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:12:24.19 ID:mTZNSLsj0


上条「……」

電話の男「これにより第四位は上条に復讐するために能力を向上しようとして研究所を訪れ、ここ数年滞ってる第四位の能力を用いた研究の促進を目指す」

初春「ダメです! 上条さんのその後の生活に危険が伴います!」

電話の男「……名前が公表されていないだけでお前ら四人に復讐しようと思う奴らはここには何百、何千といる。いつかそいつらもお前らに辿り着くんだぞ?」

初春「くっ……」

上条「それをするためには?」

土御門「カミやん! 本当にやるのか!? これはかなり危険だろ」

上条「……」

電話の男「この仕事が片付いたら垣根をもう一度普通の生活の出来る状態にしてやってもいいぞ?」

「「「「ッ!?」」」」

上条「それは本当か……?」

電話の男「あぁ」

上条「……」

初春「……上条さん」

土御門「……カミやん」

一方通行「……チッ」

上条「……やる! その代わり、その約束きちんと守れよッ!」

電話の男「ふっ、あぁ。もちろんだ」

上条「どうやってそういう状況に持っていくんだ」

電話の男「それだが、上条には明日からアイテムの正規メンバーになってもらう」




上条「アイテムの正規メンバーですか」




643: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:13:26.45 ID:mTZNSLsj0


電話の男「そうなってからアイテムの連中を油断させ、数日後にアイテムの仕事で駒場利得とその組織の幹部の暗殺命令を出す」

上条「ッ!?」

電話の男「その仕事中に滝壺理后、絹旗最愛、フレンダ・セイヴェルンの抹殺、並びに麦野沈利を瀕死の状態に追い込んでもらう」

上条「……なぜ、駒場さんを狙うように仕向ける」

電話の男「あの男は学園都市にとっての危険分子になりうる男だ。例え今回の暗殺命令で助かっても、次の暗部組織が命令を受けるだろうな」

上条「くっ……」

電話の男「潜入してからの連中との付き合い方は上条に任せる。そして決行日はこちらから連絡しよう」

上条「……わかった」

電話の男「詳しい場所と時間は後で各自にメールで連絡する。それじゃ」


pi


上条「……」



645: ◆Ks/3680U6o 2013/11/16(土) 00:14:24.28 ID:mTZNSLsj0



初春「……上条さん」

上条「大丈夫だ……」

一方通行「三下ァ、守ると決めた奴は死ンでも守ンだろうがッ! そのためなら誰に恨まれても信念突き通せ」

上条「そうだ、な……。ありがとな初春、一方通行」

土御門「がんばれよ、カミやん」

上条「あぁ」







――こうして上条当麻のアイテム正規メンバー入りが決まった



697: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:42:42.36 ID:tlBWYQhu0



――グループ上条当麻によるアイテムの条件付き壊滅の決行日の前日23:00



~アイテム アジト~



麦野「私はもう寝るけど、あんたたちどうすんの?」

フレンダ「麦野と一緒に寝たーい! ……けど、もうちょっと起きてよっかな」

絹旗「私もそうしようかと……」

滝壺「むぎのは先に寝ちゃってもいいよ?」

麦野「……上条でも待ってるの?」

絹旗「まぁ、アイテムの先輩として後輩の面倒をみるのは超当たり前ですから」

滝壺「かみじょうとはこれからも仲良くやっていきたい。ご飯も美味しいし」

フレンダ「結局、上条が帰って来た時に誰も起きてなくて、また泣かれたら嫌な訳よ」

麦野「ふふっ……、滝壺みたいにあんたたち二人ももう少し素直になりなさいよ」

フレンダ「そういうの麦野にだけは言われたくないわー」

絹旗「私たち四人の中で一番超捻くれてくのは麦野ですもん」

フレンダ「だいたい上条が泣いたのだって麦野がちょくちょく上条に意地悪してたからな訳よ!」

絹旗「そうですよ! 今日だって結果的に上条は私のこと助けてくれたのに、麦野が上条のことを超睨んだりなんかしちゃって!」

フレンダ「それにそれに!」

滝壺「二人とももうそろそろやめた方が……」

麦野「フーレンダぁー、きーぬはたぁー」



麦野「オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」



フレンダ「」

絹旗「」



滝壺「私は退散、退散っと」


698: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:44:26.18 ID:tlBWYQhu0



フレンダ「」プシュー

絹旗「」プシュー

麦野「それじゃ、私は寝るから」

滝壺「うん、おやすみ。むぎの」

麦野「おやすみー」


バタン


滝壺「……かみじょうどうしたんだろうなぁ」

フレンダ「け、結局上条も何かあるって訳よ」

滝壺「あっ、ふれんだ復活早いね」

絹旗「うぅ……、いたたたた。麦野ほどじゃないですけど、上条に対して少し思うところがあるのは確かですね」

滝壺「まあ、そうだよね」

フレンダ「いくら身体能力が高くてもLevel0でアイテムの正規メンバーに配属されるってのが少しね……」

絹旗「車を運転出来るわけでもなく、ただスキルアウトとの繋がりが強いってだけですからね」

滝壺「……けど私はかみじょうとは上手くやっていけると思うんだ」

フレンダ「滝壺がそういうこと言うのも少し珍しいね」

滝壺「……かみじょうが私たち四人にちゃんと笑ってくれたらきっと上手くやっていける」

絹旗「……そうですね」

フレンダ「……結局、上条は早く帰って来いって訳よ!」


699: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:45:39.11 ID:tlBWYQhu0



~病院からの帰り道~



上条「明日か……」

上条(思えば、必要以上にアイテムとは仲良くやっちまったのかもしれない……)

上条(本当は幻想殺しを隠しつつ、適度に距離を置いて接するつもりだったのに)

上条(今じゃ一緒に住んで、ご飯も作ってやってる……)

上条(なんでこんなことになったんだろ……)






上条「うらやましかったのかな……」






上条(殺し合いと隣り合わせの生活だったのに垣根と毎日楽しく過ごしてたあの頃が、アイテムの四人に見えたのかもしれない)

上条(あの生活に憧れて無意識に一緒にいれるよう行動していたのかもな……)

上条(明日……)






上条「……垣根のためだ」






700: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:47:37.21 ID:tlBWYQhu0



上条「あれ? 明かりが付いてる……」


ガチャ


上条「た、ただいまー」



フレンダ「上条ー!」タッタッタッ

上条「うおっ!?」ダキッ

フレンダ「むふふ、このフレンダ様の身体の感触はどうよ? どうよー?」

上条「あー、なんつーか、……これからだよな!」

フレンダ「はあ!? なんてこと言ってくれちゃってる訳ー!?」

絹旗「フレンダは超どいてください! 上条はフレンダの貧相な身体じゃダメなんですって!」

上条「いやー、絹旗も同じようなもんじゃないのか……?」

絹旗「……上条ォ、こっちが元気付けよォとしてる時に限って好き勝手言いたいこと言ってくれちゃってますねェ」

フレンダ「絹旗にも言いたいことはあるんだけどね、あるんだけどね! それよりもー、私は、私はー、上条にイラついてる訳よー!!」

滝壺「いくら本当のことでも言っちゃいけないこともあるんだよ? かみじょう?」

上条「は、ははは……。ほら絹旗、今日怪我した左手首まだ治ってないだろ? それにもう夜だしさ、フレンダは手に持ってる爆弾みたいなやつはしまおうな? な?」

絹旗「右手でなぐりますから超大丈夫ですよォ」

フレンダ「近所は花火でもやってると思うから、結局大丈夫な訳よ!」

滝壺「かみじょう、折角帰って来たのに逝ってしまうんだね」

上条「滝壺さん? 縁起でもないこと言わないでほしいんですのことよ!?」

絹旗「くらえェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

フレンダ「吹き飛べぇえええええええええええええええ!!」

上条「うぎゃーーーーーー」



701: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:49:43.82 ID:tlBWYQhu0


絹旗「超すっきりしました」

フレンダ「さっき麦野にやられたから少し張り切っちゃったわー」

上条「」

滝壺「かみじょう、こんなとこで寝ると風邪ひくよ?」

絹旗「ったく、こっちが少し気を使えば超調子にのりやがって……」

フレンダ「結局、上条の自業自得って訳よ」

上条「……はい、すみませんでした」

滝壺「かみじょうも意外と丈夫だよね」

絹旗「それで? もう大丈夫なんですか? その……」

上条「えっ?」

フレンダ「あれよ、あれ……」

上条「えーと、何が……?」

滝壺「今日の晩御飯の時にあったでしょ?」

上条「……あっ」

上条(俺を心配して……)

絹旗「それをもう大丈夫かと超聞いているんですよ!」

フレンダ「さっさと答える訳よ!」

滝壺「かみじょうもアイテムの一員なんだから、私たちを頼っても良いんだよ?」

上条(俺なんかを心配してくれてる……)

上条「……」

フレンダ「ん? 上条?」

絹旗「どうかしましたか上条?」

滝壺「……さっきのでどこか怪我したんじゃないの?」

上条(油断させるために仲良くしちまってる俺なんかをこいつらは……)

絹旗「ちょっ!? 滝壺さん、そんな目でこっちを超見ないでくださいよぉー」

フレンダ「私たちが上条の目を虚ろにしてしまった訳ー!?」

滝壺「大丈夫? かみじょう」

上条(……ダメだ! 違うッ! 割り切れッ!!)


702: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:51:36.32 ID:tlBWYQhu0


上条「ははっ、ごめんな。心配かけちゃったみたいでさ」

滝壺「……」

上条「もう大丈夫だからよ、今日は先に寝るな」

絹旗「……は、はい」

上条「こんな遅くまで待っててくれてありがとう。嬉しかったよ」

フレンダ「わ、わかれば良い訳よ……」

上条「風呂は明日の朝にシャワーでも浴びるから。それじゃ、おやすみな」


バタン


滝壺「……また、いつもの笑い方だった」

絹旗「今のは不自然な笑みだって超バレバレですよ……」

フレンダ「結局、私たちには心は開いてくれないって訳ね……」

滝壺「ううん、きっとわかってくれてるはずだよ。私たちがかみじょうのこと気にしてるんだよってことは」

絹旗「それならもうちょっと私たちには、超上辺だけの付き合いっていうのをやめてほしいものですね」

フレンダ「まあ、これからって訳よ」

滝壺「そうだね。……もう寝よっか、おやすみ」

絹旗「……そうですね。おやすみなさい」

フレンダ「……うん。おやすみー」


バタン バタン バタン


703: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:53:42.80 ID:tlBWYQhu0



~決行日(土曜日)~



麦野「ふぁ~、おはよー」

上条「おはよう。……麦野って朝眠そうなのに、服装はキチンとしてるのな」

麦野「そりゃ、あんたがいるんだから変な格好は出来ないでしょ。襲われたりしたらた~いへんじゃなぁい」

上条「返り討ちで跡形もなく消し去られそうだからしねーっつうの」

麦野「あっそう。……もう大丈夫なわけ?」

上条「……あー、昨日も三人に気を使われちまったよ。もう大丈夫だ。そんなの今日で終わりだからさ……」

麦野「ん? 今日なんかあったっけ?」

上条「いや、そうじゃなくて、まあ、今日で吹っ切れるってもんかな」

麦野「ふーん……、まあ、いっか。それより今日は朝出かけないんだね」

上条「あぁ。今日はみんなで朝御飯食べようかなって思ってな」

麦野「そう……。今日も朝からいい匂いさせてるじゃない」

上条「まぁ、俺の特技は料理くらいなもんだから」

麦野「上条が来るまでの生活が嘘のようだわ」

上条「……え? 朝とか食事ってどうしてたの……?」

麦野「私はほとんどシャケ弁ね。それ以外だと……、レストランとか出前とかかしら」

上条「よくそれで四人ともスタイル崩れてないよなぁ」

麦野「そこはキチンと計算してんのよ。いくら暗部で人として外れた道を歩んでても、女の道は捨てちゃいないわ」

上条「……そーかい」

麦野「あら? あらららら? 上条さんよぉ、私の身体意識し始めたら緊張してきちゃったのかしらー?」

上条「まあ、麦野もスタイルは良いと思うよ? ……ただね、もう少し足がほそk」

バシューン

上条「……麦野は足も細いよなー」

麦野「言葉の言い間違いには気を付けなよ。……誰かに殺されるか、私に殺されるかが決まるんだからね」

上条「は、はい」

上条(結局俺は殺されることは決定事項なんですねー)


704: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:55:37.99 ID:tlBWYQhu0



絹旗「ふぁ~あ、おはようございまぁす」

上条「おはよう」

絹旗「あれ? 上条、今日はいるんですね」

上条「おぉ。……絹旗はパジャマなんだな」

絹旗「へ? ……あー!! 上条!! いつもはもっとちゃんとした格好でリビングに来るんですからね!! 今日はたまたまなんですからね!!!」

上条「お、おう」

絹旗「うぅー、着替えて来るので朝御飯の用意ちゃっちゃとしてください!!!」


バタン


上条「な、なんだよ……いきなり」

麦野「あんたが朝いつもいないから気が抜けて前に戻ったみたいね。一昨日くらいまでは整えてから来てたわよ」

上条「なんか悪いことした気分……」

麦野「じゃあ、私は滝壺とフレンダ起こしてくるわね」

上条「別にまだ朝御飯出来る時間じゃないんだけど……」

麦野「滝壺は胸あるくせに薄着なのよ。で、フレンダは童貞坊やに見せたら発情しちゃうくらいの服装だから」

上条「なるほどね。って、どど童貞じゃないし!」

麦野「はいはぁい。童貞の上条君は朝御飯の用意頑張ってねぇー」

上条「どどどど童貞じゃないからな!!」


705: ◆Ks/3680U6o 2013/11/25(月) 23:57:59.69 ID:tlBWYQhu0


絹旗「あー、もう。朝いるなら昨日の夜言ってくれれば良かったじゃないですか!」

上条「ご、ごめんな。今日はみんなで食べたいなって思って」

絹旗「ふぅん、良いですけどね。それより朝御飯の用意超早くやってください! 手が止まってます!」

上条「味噌汁はかき混ぜるだけだし、後はご飯が炊けるのを待つだけだからね。だいたいは完成してるんだよ」

絹旗「玉子焼きにシャケの塩焼き、きんぴらごぼうって……超純和風も良いとこですね」

上条「こういうの良いだろ?」

絹旗「まあ、悪くはないですね」

フレンダ「ふむふむ。後はサバ缶があれば完璧って訳よ!」

麦野「この食事にサバ缶なんて邪道も良いとこだわ」

滝壺「むぎのはシャケがあるから問題ないよね」

上条「おはよう」

フレンダ「朝御飯に上条がいるなんて珍しいねー」

滝壺「うーん、初めて?」

麦野「そうね。いつもこいつどっかほっつき歩いてるから」

上条「そんな人を犬みたいな言い方しなくても……」

麦野「それよりも早く準備しなさい」

上条「何時の間にかこの家の家政婦になってる……」

絹旗「そんなのアイテムに入った時から超決まってましたよ」

フレンダ「結局、上条は私たち四人の世話係な訳よ!」

上条「へいへい、そうですかい」

滝壺「かみじょう、家政婦の給料は出ないけど頑張って」

麦野「そんなもんこっちが貰いたいくらいよ。世間一般で言うところの美人四人と一緒に暮らせてるんですからね」

上条「わかりましたよっと。ご飯も炊けたみたいだから、自分でご飯と味噌汁は用意してくれよー」


706: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:01:09.89 ID:sKI6F/d+0


フレンダ「プラスして私はサバ缶ー、サバ缶ー」

上条「……準備は出来たな」

麦野「それじゃ、いただきます」

イタダキマス

滝壺「……うん。味噌汁良い感じ」

麦野「あれー? シャケが美味しいよ? あれー?」

絹旗「……やっぱり玉子焼きは少し甘めが良いですよね。上条、超ナイスです!」

フレンダ「サバ缶美味しいぃぃぃぃぃーーーッ!」

上条「お口に合ってなによりで」

麦野「そういや今日あんたらなにすんの?」

絹旗「私は久しぶりに映画でも観に行こうかと」

滝壺「……ボーッとしたい」

フレンダ「私はどーしよーかなー」

麦野「上条は?」

上条「俺は用事があるからちょっと出ていくよ」

麦野「ふーん、それじゃ滝壺とフレンダは私と一緒にショッピングした後、ファミレスでも行きましょ。絹旗と上条は後から合流してくれれば良いわ」

フレンダ「麦野は何を見る訳ー?」

麦野「もう夏前でしょ? 最近また胸がキツくなったのよ。去年の水着じゃ怪しいのよね」

絹旗「それって嫌味ですか……?」

フレンダ「お、大きくなったなんて自分じゃ結局わからない訳よ! 私が触って揉んで摘まんで確認してあげるって訳よ!!」ハァハァ

麦野「あんた少しは自重しなさいよね。それに絹旗だってまだまだこれからじゃない」

滝壺「私も一緒に買おうかな……」

フレンダ「うはっ! 滝壺も胸が大きくなった訳ー!? なんで私のは大きくなってくれないのかしら……」

麦野「フレンダはそろそろ自己主張してくれないとまずいわよね……」

滝壺「男の人に揉んでもらうと大きくなるかもよ?」

フレンダ「きゃーっ! 上条が変な想像して顔赤くしてるって訳よーッ!!!」

上条「……そういう話は女だけの時にしろよな///」ボソッ

麦野「それは童貞坊やだからさ」

上条「麦野はさっきからそればっかりだな!!」


707: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:02:34.21 ID:sKI6F/d+0



~ファミレス~



滝壺「むー」

麦野「どうしたの、滝壺?」

滝壺「かみじょうの料理に慣れるとファミレスじゃ満足出来そうにないの」

麦野「まあ、それは否定出来ないわね。シャケ料理も美味しかったなぁ」

フレンダ「じゃあさ、じゃあさ、今日はサバ料理のフルコースに決まりぃぃぃぃーーッ!」

滝壺「……それは嫌かな」

フレンダ「なんでー!? 絶対美味しいって!!」

麦野「そもそもサバ料理がそんなに種類あるわけ? それも食べてても飽きないくらい」

フレンダ「そ、それは上条の腕の見せ所な訳よ!」

滝壺「最近重いものを食べてる気がするから今日は軽めのものが良いな」

麦野「そうね。最近って言えば焼肉にイタリアンか……。じゃあ、今日はヘルシー志向のメニューにしてもらいましょう」

フレンダ「えーっと、サバ料理ってヘルシー……?」

麦野「うーん、却下!」

フレンダ「なんで、なんで、なんでな訳ー!?」

麦野「純粋に食べたくないから」

滝壺「右に同じ」

フレンダ「うぅ……、二人揃って私を虐める……。うぅー」


708: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:04:27.91 ID:sKI6F/d+0


絹旗「いやー、あれはハズレでしたよ、まったく。……なんでフレンダはファミレスで泣くとかいう超意味わかんないことやってるんですか?」

麦野「まだまだ子供なのよ」

絹旗「あー、超納得です」

フレンダ「おこちゃま絹旗は黙ってろぉいっ!」

絹旗「年下にそんなこと言われてるようじゃ超ダメダメの超フレンダですね」

フレンダ「だーかーらー、私の名前を形容詞みたいに使わないでほしい訳よ! 本当、どういう意味なのよ……」



麦野「一気にうるさくなったわね」

滝壺「それも二人の良いところ」

麦野「あんたは時々電波ちゃんになるのが玉に瑕ね」

滝壺「……東南東から信号がきてる……」

麦野「別にわざとしなくて良いから」



フレンダ「結局、今日の晩御飯はサバ料理で決定な訳よ!」

絹旗「超イヤです! なんでサバ料理なんて晩御飯に食べなきゃいけないんですか! それよりも私はオムライスが良いです!」

フレンダ「オムライスなんてファミレスにあるんだからそれでも食べて大人しくしてなさいよ、おこちゃま絹旗ちゃん! ふふん」

絹旗「うがーっ! 怒りましたよ、超怒りましたよ! フレンダ、超潰す!!」

フレンダ「いやーっ! やめてーっ!」



pipipipipi


麦野「静かにしろ!」


709: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:05:50.32 ID:sKI6F/d+0


pi


麦野「もしもし」

電話の女「はぁい、麦野ー」

麦野「仕事?」

電話の女「そーよー。今回は、スキルアウトのお掃除ね」

麦野「はいはい、スキルアウトね。それはどこのクソ野郎どもなのさ」

電話の女「それがね、とうとう手を出しますか、ってとこよ」

麦野「……まさか」

電話の女「そーよー。駒場利得の組織」

麦野「ッ!?」

電話の女「仕事の内容は駒場利得、並びにその組織の幹部の浜面仕上、服部半蔵の抹殺」

麦野「お前だってそいつらと上条の関係知ってるだろ!? 上条がアイテムにいるんだからそいつらはアイテムの下にいるようなもんじゃねぇか!」

電話の女「上からの命令よ。……そもそもね、奴らがこっちに全面協力するわけじゃないの。戦力整えてからこっちに牙を向け、万が一にも暗部組織が潰されてみなさい、そうなったら他のスキルアウトの連中もこぞって調子づくでしょうが」

麦野「……」

電話の女「その最大勢力であり、スキルアウト最強と言われている駒場利得は存在するだけでこっちにとっては、百害あって一利無しなわけ」

麦野「……わかった」

電話の女「わかれば良いのよ。顔や場所はメールで確認して頂戴。時間は18:00よ」


pi



710: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:07:37.84 ID:sKI6F/d+0



絹旗「上条がどうかしたんですか?」

滝壺「……ふむふむ。かみじょうの繋がりのあるスキルアウトがこの人たちなんだね」

麦野「そうよ。絹旗、上条に連絡取りなさい。あいつにもキチンとやらせるから」

フレンダ「えっ? 上条がいない方がすんなりいくような気がするんだけど……」

麦野「あいつはアイテムの正規メンバーよ? あいつが誰と繋がっていようが私らにはなんの関係もないの」

フレンダ「……そうだね」

滝壺「車は17:30分にはここに来るよ」

絹旗「ダメです。上条と繋がりません」

麦野「上条はこの仕事にはまだ気付いていないはず……留守電でもメールでも良いから折り返すように残しておいて。内容は教えなくて良いわ」

フレンダ「ターゲットの三人以外はどうする訳?」

麦野「言われてないわね。……好きなようにってことじゃない? 邪魔するようなら容赦はしなくて良いわ」

滝壺「私はどうしよっか……。車で待機?」

絹旗「そうですね。相手がスキルアウトならわざわざ体晶なんて使わなくても大丈夫ですし」

麦野「そう、……」

滝壺「ん? どうしたの、むぎの?」

麦野(イヤな予感がするわね……)

麦野「滝壺も連れていくわ」

フレンダ「なんで?」

麦野「……なんとなくよ。滝壺は一応レディースガンとスタンガンでも常備しときなさい」



711: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:08:57.73 ID:sKI6F/d+0



~スキルアウト アジト 18:00~



麦野「フレンダ、一発かましてやんなさい」

フレンダ「りょーかいって訳よ!」



ドガーン




絹旗「さっさとターゲット殺って帰りましょう」

滝壺「かみじょうはどうしたんだろうね」

麦野「上条はオ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」

フレンダ「あれ? なんか武器持ってぞろぞろ来てる訳よ」

絹旗「銃は持ってないようですが、武器持ってるのは超面倒くさいですね」

麦野(奇襲にも関わらず対応が早すぎる……)

滝壺「むぎの、どうするの? ゴリ押し?」

麦野「……良いわ。こうなりゃ皆殺しよ!!」


712: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:10:23.12 ID:sKI6F/d+0



ドガーン



スキルアウト1「西の方から攻めてきました」

浜面「演習通りにやるようにみんなに伝えてくれ! 大将が言ってたのはこのことだな……」

駒場「……あの子は服部が車で数人と一緒に避難させろ」

服部「なぜだ!? 俺だって戦う!」

駒場「……たまたま遊びに来ていたあの子を戦いに巻き込みたくない」

浜面「どっか安心できそうなところに置いたらすぐに帰ってこい! 一人でも死ぬ人間を減らすために……」

服部「くっ……! わかったよ。……死ぬんじゃねぇぞ」


バタン


駒場「……俺らも戦場に赴こう」

浜面「あぁ。銃こそ用意できなかったが、色んな武器は調達できたんだ。能力者だろうと暗部だろうと何だってやってやる!」



713: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:11:49.91 ID:sKI6F/d+0



スキルアウト「ぐっ……!」


バシューン


麦野「ふぅ」


フレンダ「麦野ー、道空いたよー」

絹旗「ターゲットはまだですかね」

滝壺「……銃初めて使う」

麦野(他の三人は聞いてなかったようだが、妙なことを言う奴がいたな……)




『上条さんさえいればLevel5なんて敵じゃないのに』




麦野(上条当麻……)

麦野(今ここにいないこと)

麦野(仲の良いこいつらの準備が良かったこと)

麦野(Level5に匹敵すると思われてる未知数の実力)

麦野(書庫における情報は最重要機密扱い)


麦野「はぁー」

麦野(やはり、只者じゃないわねッ!)




滝壺「むぎの、どうする? このままずっと当てもなく歩き回る?」

麦野「あっ、そうね……スキルアウトが相手なら手分けして動いても良いんだけど……」

フレンダ「なら、そうしようよ。ターゲット見つけたら電話使うのもアリだと思う訳よ」

絹旗「そうですね。殺す命令の出てない奴を殺すのも別に超やりたいわけじゃないですし」

麦野「……なら私とあんたたち三人って別れましょ」

滝壺「……なんで?」

麦野「……別に。ただ今日は暴れようかなって思ったから一人が良いだけよ」

絹旗「じゃあ、そうしましょうか」

フレンダ「ほらほら、二人とも行っくよー!」



麦野(上条が狙うとしたら私だろう……。どの程度か見極めてやるわッ!)



714: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:12:57.29 ID:sKI6F/d+0



~サイド麦野~



麦野「なんだ、このビニールシートで空を覆った空間は……」

麦野(しかも、何が浮いてやがる……)




駒場「……能力者、何のようだ」

麦野「あら~、ターゲットに当たっちゃったわ」

駒場「……なぜ罪もない無能力者を襲う」

麦野「罪があろうとなかろうと私たちに楯突いた時点で、そいつらは私たちにとっての敵」

麦野「敵であれば殲滅させるのは当然よね」

麦野「そして、私たちが引いてあげる、そう…引いてあ・げ・る条件はターゲットの首を取ることのみよ」

駒場「……俺はまだ死ぬわけにはいかない」

麦野「そうこなくっちゃねぇ! せいぜい楽しませてみろや、クソホモゴリラがッ!!」


715: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:14:09.34 ID:sKI6F/d+0



~サイド絹旗・フレンダ・滝壺~




フレンダ「結構アジト広い訳よー」

絹旗「そんなことより早くターゲット出て来てくれないですかね」

滝壺「……むぎのがもう全員殺っちゃったかもよ」

フレンダ「結局、その可能性は否定できない訳よ」

絹旗「そうしたら晩御飯のメニューを考えないと」

滝壺「かみじょうはどうしてるのかな?」






「俺がどうしたって?」






滝壺「……かみじょう」

上条「あれ? 麦野は?」

フレンダ「麦野とは別行動って訳よ。今までどこほっつき歩いてたのよ」

上条「まあ、良いじゃねえか」

絹旗「……上条、貴方どうしてここにいるんですか」

上条「そりゃここが今日の仕事場だからだろ?」

絹旗「滝壺さん! フレンダ! 早く上条から離れてください!!」

フレンダ「ど、どうしt」

絹旗「いいから早く!!!」



716: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:15:22.67 ID:sKI6F/d+0


上条「酷いな、絹旗は。二人も俺とそんなに距離をとっちゃってさ」

絹旗「もう一度聞きますね、どうしてここにいるんですか」

上条「そりゃ、さっきも言った通り……」

絹旗「上条への連絡は私がすることになってます。そしてこの場所も仕事の内容も超教えてません」

滝壺「そう言えば……」

絹旗「どういうことか説明してくれるでしょうね、上条」

上条「……」

フレンダ「なんで答えないのよ、上条!」

絹旗「考えられる可能性は二つ。一つはここの連中と繋がっていたということ。そして、もう一つは……」




絹旗「私たちを消すために不意打ちを狙っていたということ、ですかね」




フレンダ「ッ!?」

滝壺「……」

絹旗「私は二人と違って超前衛の人間ですからね、殺気とかそういうのには結構超鋭いんですよ」

上条「絹旗、お前B級映画の見過ぎだって」

絹旗「いいえ、上条の演出はB級にも及ばない超C級です。……映画の最中で味方を裏切る奴は誰なのか私よく考えたりするんですよ」




絹旗「そしてそういう予想は私、超外したことないんですよね」




上条「そうか、なら話は早い。お前らにはここで死んでもらうッ!」



717: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:17:16.83 ID:sKI6F/d+0



~サイド一方通行~



一方通行「やっと終わったってェのによォ」




御坂妹「これは未だ嘗て見たことのないマシンガンじゃないですか……ウヘヘ、おっとそっちは最近学園都市で開発されたというボタン一つで半径五メートルに超電導刃が超回転するという超小型兵器ではないですか、とミサカは夢が膨らみます。ぐへへへへ」

打ち止め「楽しいところって言ったから付いてきたのにただ、ただ機会を弄くってるだけじゃん! ってミサカはミサカはヒドく落胆してみたりぃぃぃ」

御坂妹「おおっとこれはこれは……」




一方通行「あンな激しいミリオタだとは思わなかった……」

初春『一応仕事は終わりですね。……そういえば今日、上条さんの仕事が決行される日だと聞きましたよ』

一方通行「三下なら大丈夫だろ」

初春『まあ、そうだと思いますけど……』




御坂妹「……結構な数の人がこちらに向かってきています、とミサカは警告します」

打ち止め「なんか少しヤバイかも、ってミサカはミサカは少し不安になってみたり」

一方通行「ンあ? おィ花頭、どォなってる」

初春『えーと、……ッ!? ちょっとすいません! こっちが手を離せなくなりました! 少し通信切ります!!』


ブチッ


一方通行「あァン?」

御坂妹「来る」

一方通行「オマエら俺の後ろに付け」



一方通行(反射……)



ゴガシャン



一方通行(車ごと突っ込ンできやがった……。これは……猟犬部隊(ハウンドドッグ)ッ!?)

一方通行「つーことは……」




「いよー、一方通行。お人形遊びの次は、お人形さんを大事になんかしちゃって一体全体どうしちゃったんだー?」





一方通行「木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」




木原「さぁ、大人しくそこの人形を渡しやがれ小僧ッ!」


718: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:18:58.21 ID:sKI6F/d+0


一方通行(やはりコイツらが狙いかッ!)

御坂妹「援護します。幸い武器は十二分にありますので、とミサカはヤル気満々です」

打ち止め「ミサカもやれるよー、ビリビリ! ってミサカはミサカは気合を入れてみる!」

一方通行「やっても良いが俺からゼッテェ離れるンじゃねェぞ」




木原「おいおいおいおい、一方通行よ。育ての親のこと無視してんじゃねぇぞコラッ! さっさと人形渡せってんだよ」

一方通行「オマエにくれてやるもンなんざ塵一つねェンだよクッソ野郎がッ!」

木原「言うじゃねぇか! そんなに大事なもんならしっかりと守りきってみせろや! ……お前らもさっさと行けッ!」




一方通行「上等だァ! 俺の選ンだ生き方見せてやるよォ!!」


木原「カッコイーッ! 一皮剥けやがって、惚れちゃいそーだぜ一方通行!!」


御坂妹「スクラップの時間だぜぇ! とミサカは最新兵器の完全武装によるテンション高めでガガガガガ」




打ち止め「な、なんか急にみんなテンション上がってミサカはミサカは訳がわからなくなってみたり。あわわわわ」



719: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:19:59.18 ID:sKI6F/d+0



~サイド初春~



初春「これは……」

初春(『グループ』の機密事項やメンバーの詳細に対するハッキング……ッ!?)

初春「それも一つじゃない……」

初春(白モヤシさんにも何かあったみたいですし、今日は上条さんの決行日。そして、土御門さんはイギリス)

初春「何か作為的なものを感じますね」

初春(けど、そうだとしても……)




初春「『守護神(ゴールキーパー)』を舐めないでくださいよッ!」




初春「撃退するにあたって内部から無制限にデータを食い尽くすウイルスでも潜り込ませてやりますよ、ウヒヒヒヒ」

初春「私に楯突いたことの意味を、その身でもって思い知らせてやりますよッ!」


720: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:21:16.11 ID:sKI6F/d+0



~サイド土御門~



土御門「それで、わざわざ日にちを指定してまで俺を呼び出した理由はなんだ、最大主教(アークビショップ)」

ローラ「そうそう怒ることはなしよ、土御門」

土御門「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』についての報告は既にいっていると思うが?」

ローラ「それは来ているにけるよ」

土御門(まだこのしゃべり方のままかよ、ぷぷぷ)

ローラ「時に土御門よ、私の日本語は正しいのかしら?」

土御門「な、なんでそんなこと聞くのかにゃー?」

ローラ「時々、神裂火織やステイルから馬鹿な喋り方だと言われるにけるのよ、私に日本語を教えたのはそなたであろう!」

土御門「そ、そんなことないにゃー。立派な日本語だにゃー(一昔前のだが……、いやそれすらも怪しいかも)」

ローラ「むー、……まあよしにつきけれど。呼んだのは別の用事よ」

土御門「……」

ローラ「今年は禁書目録を特定の管理者を付けずに泳がせておるのは土御門も知っていると思うのだが?」

土御門「知っている」

土御門(それも今年からな。何を企んでいるのか……)

ローラ「それでこれが今の逃走ルートよ」

土御門「……ッ!? このまま行くと……」

ローラ「そう、学園都市に行き着くわね」



721: ◆Ks/3680U6o 2013/11/26(火) 00:23:58.33 ID:sKI6F/d+0


土御門「……それを俺に知らせて何をさせる気だ」

ローラ「まずは禁書目録、そしてそれを追うであろう神裂火織、ステイル・マグヌスを学園都市に入れるよう取り計らってほしいにありけるのよ」

土御門「『必要悪の協会(ネセサリウス)』の魔術師を学園都市に入れろと言うのか!?」

ローラ「そう。そして、『幻想殺し』の少年と接触するようにしてほしいのよ」

土御門「カミやんと!? そんなこと学園都市側が黙っちゃいないぞ!」

ローラ「その学園都市側からの要望だとしたら……?」

土御門「ッ!? まさか……」

ローラ「あの少年の経歴から予想するに、確実に禁書目録を助けようとするでしょ? ……親も、頼れる人も、僅かに幸せであったことの記憶すらもない禁書目録をあの少年は放っておけろうかしらー?」

土御門「それでカミやんを本格的に魔術サイドと絡ませる気か! そしてそれがアレイスター・クロウリーのプラン……」

ローラ「奴が何を考えているかなんて関係なしにつきけるのよ。ただただ『幻想殺し』をイギリス清教が手に入れることが重要になりけるのだから!」

土御門「俺はその橋渡しをしろと、そういうことだな?」

ローラ「それと禁書目録関連でこいつもおそらく学園都市に侵入すると思われとろうかしら」

土御門「ッ!? 狙いは禁書目録と『幻想殺し』を殺しての科学と魔術の戦争か……?」

ローラ「それに可能性としては『虚数学区の鍵』」

土御門「奴は不安定で存在すら危ういはずだが!?」

ローラ「『幻想殺し』によって自我が促され存在が強固なものになると聞きにけるよ?」

土御門「……はぁー、カミやんにまた迷惑かけるのかにゃー」

ローラ「それはしょうがないことにつきけるのだから」

土御門「まあいい。話はこれで終わりか?」

ローラ「そうよ。では土御門、よきにはからえー」

土御門「……簡単に言ってくれるぜい。『御使堕し(エンゼルフォール)』の時といい、俺には少し荷が重いぜよ」



780: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:22:24.41 ID:h801F48p0



~サイド絹旗・フレンダ・滝壺~



「滝壺さん、フレンダ! まずは私の後ろで迎撃の準備を整えてください!」


絹旗が未だ底の見えない上条の実力を図るため『窒素装甲』による防御で戦場の優位性を画策する
上条は絹旗の後ろへ移動するフレンダへ拳銃を向け、発砲した

カキン

絹旗の窒素を纏った右腕で銃弾は逸らされる


「ほ、本当に殺す気なんだ……、上条……」


フレンダは上条が彼女らを殺そうとしていることをまだ信じられずにいた

それもそうだろう
短い間だったとは言え、共に生活し食事の用意までしてもらい、仕事も一緒にこなした仲だったのだから
今日の夕飯を上条に頼みこんでサバ料理にしてもらおうと考えていた数分前には頭の片隅によぎることすらなかったことなのだ

何か話してくれないことが上条にはあるんだね、それを早く教えてもらいたいな
そう思っていたフレンダにとって上条からの殺意は、感じることは出来ても認めることが出来ずにいた

暗部の闇にのまれようとも純粋な心を持ち続けているフレンダという少女は、殺し殺される世界において『大人』である麦野、絹旗がいなければ今まで生き残ることが出来ないほど『お子ちゃま』であった

それが仕事における失敗に繋がることは多々あっても今生きながらえている理由であり
これから先の強敵との戦闘において、いや今回の戦闘において自らの命を危険に晒すことになるだろうことはまだ気付けずにいる


「上条はもう殺気を超隠そうとすらしてません。本気のようですね」


絹旗はアイテムの対戦闘において前衛や個人行動を頻繁に求められる
それは絹旗自身の能力が多いに関係してくるのだが、それゆえに高い危険察知能力と戦力分析能力を身につけていた
いや、身につけずにはいられなかったと言える
それでも自身の身体を守る鎧もなく平然と前衛で仕事をこなし続ける麦野には断然劣るのだが

だから上条のこの行動に驚きはしたものの状況にいち早く反応することが出来、今までの上条と今の上条を割り切って対応しようとしていた
それでも完全に割り切れたとはいかないようではあるが


「かみじょう……」


滝壺は考える
今までの上条の行動は私たちを油断させるためだけだったのか
本当に分かり合うことは出来ないのだろうか
だが彼女らの家族――フレンダに弾丸を放った時点で甘い認識を改める
麦野がアイテムという居場所に強くこだわるように、滝壺もこの場所を失いたくないのだ
絹旗もフレンダも既にアイテムという居場所がなければこの学園都市を生きてはいけない
アイテムに危険が及ぶならその危険因子はなんとしてでも排除しなければならない
私たちの家族に対する裏切りはそれだけで万死に値する、と滝壺は手に力を込めながら決意する

麦野から渡されたレディースガンを構える
自身の腕では満足に狙ったところへは銃弾を放つことは出来ない
無闇に撃ち絹旗やフレンダに致命傷を与えることだけは避けなければならない

チャンスを伺う

生き残るために
場所を守るために
家族を失わないために



782: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:24:15.53 ID:h801F48p0


(拳銃がある以上フレンダ、滝壺は俺の前には無闇矢鱈に出てこれないはずだ。そして唯一拳銃になんの抵抗もなく対抗出来るのは絹旗のみ)


上条は十数メートル離れて固まっている三人の少女に向けて再度弾丸を放つ

しかし、それは絹旗の『窒素装甲』によって捉えられた


(だが、あの窒素の鎧さえなければ恐るに足りない。それはあれが最大の防御であると共に最大の攻撃でもあることに起因している)


上条はアイテムの戦闘のパターンを思い返す
個々の能力を最大限に発揮した集団での戦い方

そして今、麦野がいないとはいえ三人による対上条の迎撃体系を構築している最中であろうことは察しがつく
無論アイテムの要である滝壺が上条に対しては無効であることが、上条に少しの余裕をもたらす

しかもその攻防の要である絹旗の完全無欠の能力が、上条は破ることが出来るのをまだ彼女らは知らない

だが、念には念を置く
フレンダ、滝壺の援護によって絹旗の攻撃が『幻想殺し』で防げない可能性があるからだ


(そうであるならば……)


「場が整う前に叩くッ!」


上条は左手に持つ銃を胸の右内ポケットにしまい、三人の少女の元へ駆け出す

自らの守るべき者のために、彼女らの絆を断つ

彼女らアイテムに対し、本来持つべきではない感情を抱いてしまったのは上条にとっては大きな誤算ではあったが、それを押し込めて任務を遂行するにはなんのも問題なかった

それが非情なことであろうと、血で汚れた上条の手足には少しの迷いもないのである


783: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:25:35.94 ID:h801F48p0



「フレンダは遊撃用の爆弾を上条に放ち、煙幕を。そして私が対応している間に二人は一先ず身を隠してください。上条の銃と自身の身体の間に障害物がないなんてことにはならないように!」


絹旗の指示が飛び、フレンダが動く
スカートの中に下から手を入れ数体の縫いぐるみと、数本のロケット花火のような物を取り出す


「行っけぇーーっ!」


フレンダの元からロケット花火型の爆弾が上条へと放たれた
そして上条と彼女らのちょうど中間地点に縫いぐるみを投げ込み地面についた途端、煙で視界が霞む
それを合図にフレンダと滝壺はそれぞれが身を隠し、次の迎撃に備える
絹旗は上条が向かってくるであろう直線上に少し大きめの石を窒素によって持ち上げ投げこむ


(上条がフレンダの爆弾でやられることも、あんな石でダメージを負うこともないのは超わかっています。上条の能力はわかりませんが、イヤな予感がしますね。私の能力を知った上で接近戦を持ち掛けるんですから……)


そろそろ煙も晴れて上条の姿が見えようかという時になると、絹旗の予想した位置よりも少し左にずれた煙の中から上条の姿が現れる
迫り来る上条に対して静かに戦闘体制をとる絹旗

上条の方が攻撃範囲の広いことも伴って上条の先制攻撃が始まる

上条が絹旗の小さな身体を数メートルは余裕で吹き飛ばすことの出来る右足のハイキックを彼女の顔面めがけて繰り出す
それを左腕で受け、窒素の鎧で衝撃を無効にする
そして絹旗が右足を踏み込み上条の顎へ右拳を振り上げる

しかし上条は地面に両手をつきバク転をし、両足が地面に再びついたところで勢いそのままに絹旗との距離を詰めた
だが、それを見越して上条の足下を狙った絹旗の右足払いが獲物を狙う
それをいとも簡単に避けられるのは上条の接近戦における経験値によるもの
そして、上条の右ストレートが絹旗に狙いを定めた

(……ッ……当たっちゃいけないッ!)

絹旗の戦闘本能がそれを必死に避けろと警告を鳴らす
左半身をどうにか後ろにずらすことで直撃を避けたは良いが、上条の右手はそのまま絹旗の左手首を掴み上げる

パキーン

乾いた無機質な音が響き、絹旗の『窒素装甲』を破る

「うぐっ……」

絹旗は昨日の念動力でやられ未だ完治していない左手首を強く握り締められ、『窒素装甲』を破られた驚きと痛みに耐える何とも言えない表情をする

上条は右手の力だけで絹旗を持ち上げた


784: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:27:55.39 ID:h801F48p0


「くっ……離せ……っ!」


絹旗は宙に浮きながらも上条の腹部に蹴りをかます
しかし、能力の使えない絹旗はただの幼い少女
その程度の攻撃では上条は気にもかけなかった
そして絹旗の腹部に左拳が突き刺さる


「ゴフッ…!」


普段、絶対防御によって守られていた華奢な身体に非情な打撃が加わる
いつもの可愛らしい年相応の笑顔をみせる幼い少女は、口から血反吐を吐き痛みで顔が歪む

「ぐっ……ガハッ……、うっ……ガッ……」

何度か上条の左を喰らい、絹旗の意識が朦朧とし始める
上条の顔は無表情
感情を殺すことでこの闇を生きてきた上条は今、数日を共に過ごした彼女の悲痛な表情に何の感慨も起こさない
その時、上条の左斜め後ろから銃声が聞こえた

幸か不幸かその銃弾は上条の足下に埋まった
上条は呻き声をあげ瀕死の状態の絹旗を壁に投げ捨てる
スキルアウトのアジトは廃墟で、壁は脆く、崩れやすくなっていた


ズドーン


壁が絹旗の身体の勢いに負け、崩れ落ち、砂埃が立ち込める
絹旗がどうなったかはまだわからないが、即座に反撃へと打って出ることはまず出来ないだろう

上条が危惧するのはアイテムの統率のとれた完璧な連携である
絹旗一人を重点的に攻め落とすのは造作もないことだが、その時にフレンダの爆弾などで援護されては勝てる勝負も勝てなくなる

絹旗という絶対的防御を失ったフレンダ、滝壺の両名はもはや上条の肉弾戦に対する対抗手段を失ったも同然なのだ

この隙に二人を始末することで安全に事を進めることが出来る
上条はそう考えフレンダ、もしくは滝壺が隠れているであろう廃車の影へと駆け出した


785: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:29:26.81 ID:h801F48p0



フレンダは思う
上条は私に銃を向け発砲し殺そうとした
上条は私や絹旗、滝壺に殺気を向けている
上条は絹旗を痛めつけ、まだ死んではいないと思うけど、重傷を負わせた
上条は……

今まで本当に私たちには良くしてくれたと思う
男が女にこき使われてプライドなんて気にもしてもらえないのにそれを受け入れてくれた
料理を作り、栄養が偏らないようにもしてくれていたと思う
私や絹旗のわがままもファミレスや家で笑いながら付き合ってくれた
別に好きとか恋愛感情を持っているわけじゃないと思うんだけど、……思うんだけど、結局それでもどこか一緒にいて嫌な気持ちにはならなかった訳よ

これからもそれが続くと思ってた
いつか私たちに心を開いてみんなで本当の家族みたいに振る舞えると思っていた
まあ、私は本当の家族なんて知らないんだけどね
けど……
それは私の傲慢な考えだったのかな
それは私の身勝手な考えだったのかな
それは私だけが考えていたことだったのかな

なんとか……
なんとか上条を拘束出来れば……
上条の闇に光を照らすことが出来れば……
そんなこと暗部の私が出来るかわかんないんだけど、それでも……


アイテムの四人でなら出来るはず


甘いって思う
上条は殺す気で私たちに襲いかかって来ているのに私は甘いって思う
絹旗をあんな状態にされて、それでもまだ上条を信じたい自分がいることに嫌気が差すほど、本当に甘いって思う
けど、それでも、私は結局、自分がしたいこと、自分が欲しいものは、諦めきれない訳よ!!



滝壺の元へと向かう上条にどうにかして足止めと動きを封じる手立てを考えないと……

絹旗はきっと大丈夫
上条に能力が効かなかったのはまだ原因がわからないけど、きっと大丈夫
今まで私のミスを取り返してくれていた絹旗だから
今回は私が頑張らなきゃいけないんだ

けど、滝壺じゃ上条と一対一で殺されない保証はない
やらなきゃ、私がやらなきゃいけないんだ

私たちが生き残るため
私がしたいことをするため
上条が生き残るため
上条が……また私たちと一緒に暮らせるようにするために!!


786: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:30:49.40 ID:h801F48p0



(来る……ッ!)


滝壺はレディースガンをこちらに駆けて来る上条へ向けて放つ


パァン パァン パァン


初弾は上条から大きく外れ擦りもしない
二弾は上条の右頬を擦り、一筋の細い赤い道を作った
三弾は上条の遥後方の壁に当たった音がした

ここで銃弾が切れた
ほぼ初めてと言っていいほど銃の扱いに慣れていなかった滝壺
それゆえ残りの弾丸の数など考えられることもなく、弾が尽きてしまった


(くっ……、少しやばいかも……)


銃弾のダメージなどほとんどなかった上条は滝壺が隠れている廃車へ飛び蹴りをかました
廃車はエンジンや多くの部品が抜かれて軽くなっていたためか簡単に横転し滝壺の上へと勢いよくのしかかる


ズドーン


急に廃車が爆発した
爆弾は廃墟の中で廃車の反対側の壁側に位置するソファーの上にいるフレンダから放たれたものだった
滝壺はというと爆風によって後転を繰り返すように転がっていた


(滝壺は弾がもう残ってないと見た……ならば、フレンダの爆弾が今一番の厄介物だ。先に狙うべきは……)


上条はすぐさまフレンダの方へ向き直し、左手で銃を取り出し構える


チャキ


「フレンダ、悪いな」

「ふ、ふれんだ……」

「滝壺!??伏せて!!!」


フレンダが叫ぶ
滝壺は転がっていた身体を止め、フレンダの方へ向く上条を一瞥した後、フレンダの声に従い両手で頭を抱え地面に伏せた


瞬間、上条の近くに何時の間にか置かれていた数体の縫いぐるみが爆発した


けたたましい連続した数発の爆発音と共に煙が立ち込める
滝壺はなんとか爆発からの被害を被らずに済んだようであり、急いでフレンダの方へ駆け出した



787: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:32:24.61 ID:h801F48p0


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「大丈夫だった?」

「うん。あれは……」

「リモコン式の爆弾と他の爆弾に誘発されて爆発する爆弾ね。威力は弱い分、連続して使うことで効果はあるはずだよ」

「何時の間に……」

「あの廃車に向かって爆弾を飛ばしたのと同時に上条の周りに拡散しといた訳よ。私だってやるときはやるんだから!」

「……そうだね。ありがと、ふれんだ」




「くっ……やっぱ一番の敵はフレンダみてぇだな」


煙が晴れ始め、爆煙の中から上条が姿を現す
上条は破れた上着を脱ぎ捨てタンクトップ姿になる
ダメージ自体はそれ程ないようでけろっとしていた


「そ、そんな……ほとんど無傷だなんて……」


フレンダが驚愕の表情を浮かべる
この爆撃で上条の機動力を多少削ぐ算段だったのだが、その目論見はおろかただ上条の目くらましに成功したくらいにしか効果がなかったことに顔が引きつる


その横では滝壺が意を決したような表情をしていた


「フレンダの爆弾は結構来るんだけどね、このくらいのダメージは俺にとっちゃ有って無いようなものだから」

「くっ……ど、どうすれば……」




「ふれんだ…」

「滝壺……?」

「少し時間を稼いで。私が体晶を使って上条の自分だけの現実を乱すから」

「えっ……? 上条からはAIM拡散力場が出てないんじゃ……?」

「本来出てないはずはないんだよ。だからきっとかみじょうにもあるはず。だからお願い……少しだけ時間を」

「……わかった。死なない程度にはやってやるってわけよ!」

「お願い。私は私の能力(ちから)で居場所を守り通してみせるからッ!」


788: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:41:07.18 ID:OEJ3UqDo0

滝壺はポケットから体晶を取り出し身体に取り入れるように舐める
すると目が見開かれ、すべてを見抜くような鋭い眼差しを上条へ向けた


(くっ……、こんなガスの充満したとこじゃ銃なんか気安くぶっ放せねぇな……)

フレンダの連続した爆弾攻撃により、ガスのようなものが充満し、上条の周りに立ち込めていた
それを知ってか知らずか、フレンダは時間稼ぎと称し、上条へと爆弾を積んだロケットのようなものを次々に発射させる

「効かないんだったら、少しくらい本気で行くわけよぉおおおおーーっ!!」

上条は足を止めず縦横無尽に動き回り、徐々にフレンダ、滝壺の元へ詰めていく
一直線に駆け抜けた方が早いのだが至る所にフレンダのリモコン型爆弾が設置されていて思うように近づけずにいたいた


(なんで……なんで……私には何も出来ないの……?)

フレンダの決死の迎撃も底を尽きつつある時、滝壺は困惑していた
今までに出会ったことのない能力者
いや、能力者と言って良いのかさえもわからない上条に抵抗する手段が何も思いつかないことに苦悶の表情を浮かべ、焦りを感じていた


「はぁ、はぁ、はぁ……。滝、壺……まだなわけ…?」

フレンダも動き回りながら様々な角度から上条への攻撃をしていたのだが、ストックの底が見え始めたことに苛つきを見せる
さらに極度の緊張から来る体力の消耗がフレンダの精神を蝕み追い込ませていた

「だめ……。かみじょうには私の能力が効かない……」

「なっ……!?」

フレンダの一筋の希望
爆弾も効かず肉弾戦では勝ちきれない非常識な上条に対する今打てる最後の手段
滝壺の『能力追跡』が効かなかった
これが意味するのは即ち自分たちの負け
そして、死

フレンダは滝壺の言葉に一瞬絶望を覚え、迎撃をやめてしまう
上条はそれを見逃さない
一瞬で距離を詰め、フレンダへ蹴りを喰らわす

「ぐはっ…!」

ズザザザッと音を立てフレンダは地面を転がりながら、腹部をおさえ悶絶していた


上条はすぐさま滝壺の方へ向く

「体晶使ったってお前の能力は俺には効かないんだよ。残念だったな」

「かみじょう……、まだ諦めないッ!」

滝壺は上条に向かって肉弾戦を仕掛ける
格闘訓練を受けた者と違い、攻撃一つ一つのモーションが大きく上条には擦りもしない
慣れないことをしたせいか足元が散漫になり石に躓く
上条は懐に入り込み滝壺の頭を右手で掴み握力を少しずつ加えようとした


パキーン


「あっ……あ……」

上条の『幻想殺し』が何かに反応し、滝壺の脳が衝撃を受けたように著しく滝壺の判断力の低下が見てとれた

「……なるほど、体晶で活性化した能力を一気に消すから、それに対応しきれず脳が麻痺するのか」

上条はそのまま滝壺の身体を持ち上げる
目が虚ろになり、口から涎が流れ出ている滝壺は、薄れゆく意識の中右手で何かを上条に押し当てる


バチィィィ


「かっ……!」

それは滝壺が常備している通常よりも強い電流の流れるスタンガンであった
その非合法な電流によって上条の動きが鈍る

789: ◆Ks/3680U6o 2013/12/11(水) 00:43:21.53 ID:OEJ3UqDo0



上条は『アイテム』の三人と対峙して初めて苦い表情をした
それを見た滝壺は少しばかり表情を緩める


「くっそ……がっ……」


痺れる身体を無理矢理動かそうとしたその時
上条に向かって何かがすごい勢いで迫っていった


「滝壺さンから離れろォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!」


何処かいつもと違う雰囲気を纏う絹旗が上条に迫り、渾身の右ストレートを上条の左頬へねじ込んだ


スドーン


上条の右手は既に力の入っておらず、絹旗の攻撃をノーガードで喰らい、滝壺を離して壁へと身体ごと突っ込んだ
壁は崩れ落ち、上条は瓦礫に埋もれている


「フレンダァ! 一時撤退ですッ! 早くッ!!」


絹旗は崩れた瓦礫に動きがないことを確認した後、滝壺を肩で担ぎ上げ、未だ床に転がっていたフレンダを叱咤する


「今戦い続けても勝てませン! 麦野と協力しないといけないンですッ!」

「うぅ……、絹旗……滝壺……」


フレンダはなんとか立ち上がり走り出した絹旗の後を追ってその場を後にした