1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 20:26:27.39 ID:j8S957Dd0
奉仕部

ガチャ

八幡「うっす」

雪ノ下「こんにちは、引きニート君。相変わらず目が腐ってるわね」

八幡「お前は相変わらずの罵倒だな……ほら、この前お前に借りた本返す」

雪ノ下「あら?もう読んだのね」

八幡「お前が他人に勧めるだけあるな。良かったよ」

雪ノ下「詳しい感想は紅茶でも飲みながらしましょうか。待ってて、いま淹れるわ」

八幡「ああ、悪いな」

雪ノ下(比企谷君が奉仕部に入部して半年、か……)

雪ノ下(彼と過ごす時間が、こんなにも自分を満たしてくれるなんて、最初は全く思いもしなかったわね)


 
 
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 20:45:06.77 ID:j8S957Dd0
雪ノ下(私と同じように独りで、群れるのを拒み、嘘を嫌う。似ているようで……でも全く違う。それが比企谷君)

雪ノ下(彼が入部して以来、いくつもの依頼が奉仕部に寄せられた。その中には私では解決出来なかった依頼もあった)

雪ノ下(でも彼は、比企谷君は私には出来ない方法で、それらの依頼を解決していった)

雪ノ下(決して誉められた方法ではなないものも、中にはあった……でも、だからこそ、彼は解決できた)

雪ノ下(私に似ているのに、私にはないものを持ってて……それでいて、私を理解してくれる)

雪ノ下「……比企谷君」

八幡「あっ? どうかしたか?」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 20:56:59.32 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「いえ……ただ呼んでみただけよ」

八幡「なんだそりゃ……」

雪ノ下「それより……紅茶淹れたわよ。はい、どうぞ」

八幡「おっ、サンキュー」

雪ノ下(最初は互いに離れていた定位置も、今では隣り合わせね)

八幡「ふぅ、相変わらずお前の淹れた紅茶は旨いな」

雪ノ下「そう……ふふっ」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 21:16:39.66 ID:j8S957Dd0
――――
――

雪ノ下「今日はそろそろ終わりにしましょうか」

八幡「今日も依頼こなかったな。まあ、その方がいいがな」

雪ノ下(ええ、だって比企谷君とずっと二人きりで居れるもの)

八幡「ふぁあ、ねみぃ……」

雪ノ下「あら? 寝不足かしら?」

八幡「お前に借りた本ずっと読んでたからなあ……帰ったら、寝るわ」ウトウト

雪ノ下「……ねぇ、比企谷君」

八幡「なんだ?」

雪ノ下「その……そんなに眠いのなら、少し寝ていったらどうかしら」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 21:30:10.52 ID:j8S957Dd0
八幡「寝ていくって……ここでか?」

雪ノ下「他にどこがあるのかしら」

八幡「寝る場所がねえだろ……硬い机に伏して寝るなら帰ってふかふかのベッドで寝るわ」

雪ノ下「……硬くなければ、いいのかしら?」

八幡「言っておくが鞄を枕に、ってのはなしだぞ? あれ結構かてえんだよなあ……」

雪ノ下「あ、安心しなさい……硬くはないわ」

八幡「鞄じゃないなら何を……」

雪ノ下「……」ポンポン

八幡「えっ……」

雪ノ下「膝枕じゃ……だめ、かしら」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 21:50:08.33 ID:j8S957Dd0
八幡「いや、だが……」

雪ノ下「嫌、なのかしら」

八幡「ち、ちげえよ……別に嫌では……」

雪ノ下「なら、問題ないわ」

八幡「……いい、のか?」

雪ノ下「何度も言わせないで。ほら、早く」ポンポン

八幡「あ、ああ……なら、少し、膝借りるぞ」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 21:58:58.97 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「んっ……少し、チクチクするわ」

八幡「わ、悪い……」

雪ノ下「気にしないで、あなたは眠りなさい」ナデナデ

八幡「お、おい! なんのつもりだ?」

雪ノ下「こうすれば、眠りやすいと思ったのだけど……」

八幡「ガキじゃねえっつうの……ったく」ウトウト

雪ノ下(そう言いながらも、今にも寝そうじゃない。素直じゃないわね)ナデナデ

八幡「……Zzz」

雪ノ下「おやすみなさい、比企谷君」ナデナデ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 22:10:57.60 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「……比企谷君」ナデナデ

八幡「……Zzz」

雪ノ下(普段は腐っている目のせいで気付きにくいけど、改めて見るとやはり整った顔立ちをしてるわね)

雪ノ下(もし……目が腐っていなければ、見た目だけであなたに好意を寄せる人も、いたのかもしれない)

雪ノ下「……良かったわ、比企谷君の目が腐っていて」

雪ノ下(比企谷君を本当に理解していない人なんかに、渡したくないもの)

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 22:24:22.93 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「……あなたの側にいるのは、あなたを理解している人だけでいい」ナデナデ

雪ノ下「ねえ、比企谷君。前にあなたが私に友達になろうと言った時、何故私がそれを断ったか、分かるかしら?」

八幡「……Zzz」

雪ノ下「私もあなたも、群れるのを拒み、嘘を嫌う……だから、友達だなんて、そんな曖昧な関係にはなれない」

雪ノ下「……いえ、違う」

雪ノ下「私は……あなたとそんな曖昧な関係になりたくない」

八幡「……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 22:36:35.65 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「私にとって、あなたは特別なの……初めてなのよ、私をこんなにも理解してくれる人は」

雪ノ下「だから、友達なんて関係じゃ不安なの。足りないの……もっと、深く、絶対で、壊れない関係を……」

八幡「……」

雪ノ下「ねえ、比企谷君。あなたは私をどう思っているの?」

雪ノ下「私とあなたは似ているけど、違う」

雪ノ下「でも、独りで、群れるのを拒む私たちが、こうして今日まで一緒に過ごしてこれたのは……共通する想いがあるからだと、私は思う」

雪ノ下「もし、もしも、私のあなたに対する想いが共通するものなら……私は」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 22:49:18.03 ID:j8S957Dd0
八幡「……共通する想い、だなんてものこそ、お前の嫌う曖昧な関係と同じだろ」

雪ノ下「 ひ、比企谷君!? あ、あなた、起きて……」

八幡「頭撫でながら独り言、言われ続けて寝れる訳ないだろ」

雪ノ下「ご、ごめんなさい……睡眠を邪魔してしまったわね」

八幡「別に気にしてねえよ。寝心地は良かったし……」

雪ノ下「そ、そう……」

八幡「……」

雪ノ下「……」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 22:57:38.79 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「その、比企谷君……」

八幡「なんだ」

雪ノ下「さっきの言葉は、どういう、意味かしら」

八幡「どうもこうもないだろ。そのままの意味だ。互いに認識していない想いなんて曖昧だろ」

雪ノ下「……っ!」

雪ノ下(そんな、比企谷君……あなたは……)

八幡「その、だからなんだ……曖昧だから、言葉にして、はっきりさした方がいいだろ」

雪ノ下「!?」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 23:12:08.47 ID:j8S957Dd0
八幡「……雪ノ下」

雪ノ下「……な、なにかしら」ビク

八幡「俺は……その、お前が、す、好き、だ」

雪ノ下「……っ」

八幡「こ、これで、その、はっきりしたな」

雪ノ下「……まだよ」

八幡「なに?」

雪ノ下「まだ、私があなたの想いを言葉にしていない。これでは曖昧なままよ」

八幡「も、もういいだろ。こっちは言ったばかりで恥ずかしいんだよ、いま言われたら……」

雪ノ下「そ、そんなの、私だって同じよ。だから、あなたは黙って聞きなさい!」

八幡「ぐっ……」

雪ノ下「比企谷君、私も、あなたが――――」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 23:22:27.86 ID:j8S957Dd0
――――
――

八幡「な、なあ、雪ノ下」

雪ノ下「なにかしら、比企谷君」

八幡「お前なんで俺の膝の上に座ってんの?」

雪ノ下「いいじゃない。この前は私があなたに膝を貸したのだから」

八幡「そういう問題じゃねえだろ……」

雪ノ下「でも嫌じゃないでしょ?」

八幡「……うっせ」

雪ノ下「素直じゃないのね」

八幡「お前が積極的すぎんだよ……接し方変わりすぎだろ」

雪ノ下「はっきりとした方がいいと言ったのはあなたでしょ?」

八幡「まあ、そう、だが……」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 23:34:12.71 ID:j8S957Dd0
雪ノ下「ねえ、比企谷君」

八幡「んだよ」

雪ノ下「好きよ」

八幡「だ、だから積極的すぎるだろ!


雪ノ下「あなたは?」

八幡「…………俺も好きだよ」

雪ノ下「ふふっ、なら問題ないじゃない」

八幡「ぐっ……やっぱお前には敵わねえな」

雪ノ下(さらに一歩踏み出した私と彼とのこの関係は、この奉仕部があったからだと思う)

雪ノ下(私と彼が二人きりで過ごし、互いに認識し、理解できたからこそ、築けた唯一無二の関係)

雪ノ下(そこに第三者はいない。私と彼だけ。それだけで十分な関係、それだけで成り立つ関係)

雪ノ下(他者から見れば、特異な関係かも知れない。二人だけしか許容できず、他の介入を許さないこの関係は間違っているかも知れない。でも……これが私と彼の青春なのだから仕方ないじゃない)

雪ノ下(だから、私と彼の青春は間違っていない)

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/29(水) 23:35:04.52 ID:j8S957Dd0
終わりです