1: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 18:54:04.22 ID:IP2wMsuPO
雪乃「………………」ペラ

雪乃「………………」ペラ




雪乃「………………」パタン

雪乃「……もう、6時なのね」

雪乃「……今日も比企谷くんは部室に来なかったわね」

雪乃「……嫌だ、私ったら心配してしまっているのかしら。比企谷くん程度の生物相手に」

雪乃「……それに、由比ヶ浜さんも来なかったわね」

雪乃「……………………」

雪乃「……帰りましょ。」スッ


 

 
7: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 19:05:22.23 ID:IP2wMsuPO
・・・・・・・
翌日

雪乃「………………」ペラ

雪乃「………………」ペラ

雪乃「………………」チラ

雪乃「…………5時」

雪乃「……今日も比企谷くんは来ないのかしら」

雪乃「………………」

キュルッ

雪乃「!!」

雪乃「(ドアノブが………もしかして………!」

ギイッ…

平塚「やあ、雪ノ下」

雪乃「………ややこしいので、ノックをしてから入ってください」

平塚「ああ、すまない」

雪乃「(……私、一瞬期待してしまったわね)」

8: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 19:12:15.78 ID:IP2wMsuPO
雪乃「ところで、何か用件があって部室を訪れたんですよね?」

平塚「おお、察しがいいな」

雪乃「なんでしょうか?」

平塚「比企谷のことについてだ」

雪乃「…………」

28: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 20:37:52.54 ID:IP2wMsuPO
雪乃「……別に、特別興味はありませんね」

平塚「まあまあ、そう言わずに聞いてほしい」

雪乃「……どうぞ」

平塚「比企谷だがな、アイツには奉仕部から抜けてもらった」

雪乃「……え?」

平塚「つまり、私が比企谷を追放したということだ」

雪乃「どうしてですか……?」

32: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 20:47:38.98 ID:IP2wMsuPO
平塚「私のミスだ」

雪乃「ミス?」

平塚「私は、比企谷のあまりにも捻くれた性格、陰鬱で曲がった考え、腐った目を叩き直したかったんだ」

平塚「だから、彼には奉仕部に入ってもらった」

平塚「人助けを行い、悩み人とのふれあいを通すことにより、真っ当な人間に更正するのでは、と考えたからだ」

雪乃「それなら、彼はまだ部に残るべきなのでは?」

35: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:02:56.90 ID:IP2wMsuPO
平塚「私も最近までそう思っていたさ」

平塚「だが、気づいたんだ」

雪乃「?」

平塚「比企谷は、奉仕部に入ってから更に捻くれてしまっている」

平塚「他人とふれあうにつれ、彼自身の持つ歪んだ考えこそがやはり正当なんだ、変える必要なんて無いんだ、と」

平塚「そう決めつけるようになってしまい、私たちの手の負えないところまで辿り着いてしまったのではないかと」

雪乃「……そうでしょうか」

平塚「そう思わないか?」

雪乃「……彼の行う、依頼人からの仕事ぶりは確かです」

雪乃「私だけでは手に負えない案件も、彼の捻くれた思考のおかげで、解決へ導けたこともありました」

39: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:17:28.24 ID:IP2wMsuPO
雪乃「たとえ、彼が救いようのない駄目人間であり、これから更に歪んでいこうも」

雪乃「彼は、人助けにおいて、この奉仕部に必要な人材なのです」

平塚「……そうか」

雪乃「はい」

平塚「……ただそれでは、私にとって望まない方向へ進むだけなんだが」

雪乃「……意味が解りません」

平塚「私は、散々問題とされている比企谷の腐った思考を快方に向かわせようとして、奉仕部に送還したんだぞ?」

平塚「人助けを忠実に行い、依頼人に感謝され、喜ばれたところで」

平塚「比企谷が更正しない限り、私にとってはちっとも喜ばしくないんだ」

40: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:24:08.60 ID:IP2wMsuPO
雪乃「………………」

平塚「私の言っている意味が分からないか?」

雪乃「いえ、意味は理解しました」

雪乃「つまり、人助けを行ったところで、比企谷くんの捻くれた性格が直らない限り、奉仕部に入れた意味は無いと?」

平塚「そうだ、だから辞めてもらった」

雪乃「…………そんな」

平塚「話はそれだけだ。比企谷が抜けたことによって、部員は雪ノ下と由比ヶ浜の二人だけになるな」

平塚「由比ヶ浜は自主入部だから、来ない日が続けばそのうち首を切るぞ」

雪乃「……!?」

平塚「それじゃ、遅くならないうちに帰れよ」ガチャ

44: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:30:58.52 ID:IP2wMsuPO
雪乃「………………」ポツン…

雪乃「……納得ができないわ」

雪乃「(奉仕部の活動内容から考えれば、彼が退部させられるような点はどこにも見当たらないわ)」

雪乃「(それなのに、比企谷くんの性格が曲がったままだから辞めてもらった……)」

雪乃「(……人助けに、性格を問う必要があるの?)」

雪乃「(依頼人の納得する答えを出すことができれば、それだけで十分でしょ?)」

雪乃「(……彼の個性のおかげで、解決できたこともあったのに……)」

46: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:36:01.74 ID:IP2wMsuPO
雪乃「由比ヶ浜さんに関しては、何も分からない……」

雪乃「(以前にも来ない期間があったから、最初の内は何も不思議に思わなかったけれど……)」

雪乃「(…………今さら、孤独に戻るのは……)」

雪乃「(……こんなことする性格ではないから、気が進まないけれど)」

雪乃「(明日、二人を部室に呼び出すわ)」

47: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:41:52.90 ID:IP2wMsuPO
・・・・・・・
翌日

ガヤガヤ ワイワイ

雪乃「(……比企谷くんたちの教室前まで来たのはいいものの……)」

雪乃「(じ、自分から声をかけた試しなんて無いから、萎縮してしまうというか……)」

雪乃「(それに、しばらく会話もしてないし……)」

雪乃「(……逃げては駄目よ。声をかけない限り、前には進めないもの)」

雪乃「っ…………!」

雪乃「ひ、ひきゅがやくんに、ゆいはがまさん、は、いるかしら?」

八幡「ん?」

結衣「ゆ、ゆきのん……」

48: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:45:19.00 ID:IP2wMsuPO
雪乃「あ………」

雪乃「(な、何を戸惑っているのよ……やるって決めたんだから……!)」

雪乃「二人とも、廊下に来てくれるかしら」

八幡「……おう」ガタッ

結衣「わ、わかったー…」
雪乃「……早くして」

雪乃「(……焦っちゃダメ。関係を壊さないためにも……)」

50: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:48:47.56 ID:IP2wMsuPO
・・・・・・・

結衣「えーと……、どうしたの、かな?」

雪乃「え、えぇ。あの……まず、比企谷くん」

八幡「あ?」

雪乃「……奉仕部を、辞めたのは本当かしら?」

八幡「……ああ」

雪乃「……そう。本当だったのね」

結衣「…………」

雪乃「(由比ヶ浜さんが驚かないということは、この件については既に知っていたのね)」

53: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:53:23.29 ID:IP2wMsuPO
雪乃「っ……戻る気は、無いのかしら?」

八幡「あ?戻るっつったって、俺はリストラされたんだぞ?」

雪乃「……そ、そうね」

雪乃「でも、少しでも気があるならば、部室を訪れて活動しても……構わないのよ?私が責任を負うわ」

八幡「……行かねぇよ」

雪乃「っ………そう。」

雪乃「(……少し、傷付いたわ……)」

54: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 21:57:21.18 ID:IP2wMsuPO
雪乃「……もう、奉仕部へ来ることも、無くなるの?」

八幡「そうなるよな」

雪乃「……わかったわ。」

雪乃「(……どうしたの?私ったら、ショックでも受けてしまったの?)」

雪乃「(……悲しい気持ちになってしまったわ…)」

雪乃「……じゃあ、次は由比ヶ浜さんね」

結衣「う、うん」

雪乃「どうして、部活に来ないの?」

結衣「あー…やっぱり訊いてくるよね、そのこと」

58: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:02:33.16 ID:IP2wMsuPO
雪乃「何か、事情でもあるの?」

結衣「事情というか……その……」

雪乃「……?」

結衣「ヒ、ヒッキーが奉仕部を辞めたって聞いたから、私も行かなくなったというかわ……」

雪乃「……え?」

結衣「そ、それだけのことだよっ……」

結衣「つまり……あなたも今後、部活動には参加しない……そういうことかしら?」

結衣「え……いや、そう言われると、何だかなぁ~って」

雪乃「はっきりと答えて」

結衣「…………はい」

雪乃「……そう」

61: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:07:52.35 ID:IP2wMsuPO
キーンコーンカーンコ

結衣「あっ、チ、チャイム鳴っちゃったね!授業始まっちゃう!」

雪乃「そ、そう……だけれど、」

結衣「じ、じゃあまたねっ!ほら、ヒッキーも早く教室入ろっ!」

八幡「え?……あぁ」

雪乃「比企谷くん……」

八幡「……じゃあな」

雪乃「っ……!」

雪乃「(私にはその挨拶が、とても重く感じた)」

雪乃「(もう、二度と会うことはない……、そんなつもりで発されたように感じてしまった)」

63: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:14:09.80 ID:IP2wMsuPO
・・・・・・・

雪乃「………………」ペラ

雪乃「………………」ペラ

雪乃「(……こうして本のページを捲っても、頭には何も入ってこない)」

雪乃「(孤独の空間へと戻ってしまった、もう二人はここへ来ない)」

雪乃「(脳裏に浮かぶのは、その二点だけ)」

雪乃「……ぐすっ………………」ペラ

雪乃「(そしたら不思議なことに、両頬を涙が伝った)」

雪乃「……うぅっ………ひっく……」ペラ

雪乃「(ページを捲ったところで、文字を追ったところで、視界は涙でぼやけて読書ができない)」

67: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:24:57.58 ID:IP2wMsuPO
雪乃「うぅ……ひくっ……ぐすっ……」

雪乃「(次々と溢れ出る涙は、私の眼を潤すには充分だった)」

雪乃「(……むしろ、眼を擦りすぎてしまい、痛みが走る)」

雪乃「……どう、してっ……ひくっ………涙がっ………!」グシグシ

雪乃「(本当は解っているのに、口では無知さを主張した)」

雪乃「(素直でない、自分に正直でないのが、私の個性なのだから)」

69: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:30:07.57 ID:IP2wMsuPO
雪乃「(……でも)」

雪乃「うくっ……ううっ……!」グシグシ

雪乃「(この空間には私しかいない)」

雪乃「(第三者のいない、誰にも見られないのであれば、私自身の気持ちに正直になっても構わないと思う)」

雪乃「(……つまり)」


雪乃「ぐすっ……寂しい、よぉ……っ、ひくっ……見捨てないでよぉ……っ!!」

雪乃「(自分が自分でないようだった)」

雪乃「(こんなにも恥ずかしいことを、口に出す日が来るとは思ってもみなかった)」

71: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:35:28.97 ID:IP2wMsuPO
雪乃「(比企谷くんは、奉仕部に戻るつもりがてんで無く)」

雪乃「(由比ヶ浜さんは、その比企谷くんに合わせ、行動を共にしていた)」

雪乃「(……二人は、交際しているのだろうか)」

雪乃「(兼ねてから、由比ヶ浜さんが彼に気があるのではないかと、薄々勘づいてはいた)」

雪乃「(だから、二人がそのような関係になることだって、可能性としてはあった)」

雪乃「(それが現実になったのだと、いま私は決めつけた)」

75: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:43:15.39 ID:IP2wMsuPO
雪乃「(その刹那、私の胸がキュッと締め付けられたような感覚が走った)」

雪乃「(由比ヶ浜さんが比企谷くんと肩を並べて歩く姿)」

雪乃「(比企谷くんが呆れながらも、由比ヶ浜さんに向かって微笑む姿)」

雪乃「(二人の、幸せそうな後ろ姿)」

雪乃「(苦しくなって、更に涙が溢れ出す)」

雪乃「(これは、悔しいのかしら?)」

雪乃「(比企谷くんが、由比ヶ浜さんに取られた……)」

雪乃「(……だから、悔しいの?)」

雪乃「(……これが、失恋というものなの?)」

雪乃「(……私は、ただ一人、こう呟いた)」


雪乃「……もう恋なんてしない………………絶対……っ」

雪乃「(喉の奥からか細く出た声を聴き、一層哀しみを強くした)」

81: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:50:35.68 ID:IP2wMsuPO
・・・・・・・
数日後

雪乃「………………」ペラ

雪乃「………………」ペラ

コンコン

雪乃「?……どうぞ」パタン

ガチャ

雪乃「…………!?」

八幡「…………うっす」バタン

雪乃「……どう、して……?」フルフル

八幡「……あんなこと言って、結局来てしまうのも気が引けるんだけどな」

雪乃「…………何か用?」

八幡「おう、今回は依頼人役として来た」

雪乃「依頼人……として?」

85: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 22:58:19.56 ID:IP2wMsuPO
八幡「少し、困ったことがあってな」

雪乃「……何かしら?」

八幡「由比ヶ浜が部活に来ない原因についてだ」

雪乃「……どういうこと?」

八幡「お前が教室に来たあと、俺が由比ヶ浜に訊いたんだ」

八幡「……どうして、俺に合わせて部活に行かないようにしたのか」

雪乃「………………」

八幡「……やっぱり、あいつはバカだよ」


結衣『三人一緒じゃなきゃ、奉仕部なんかじゃないっ!』

結衣『私と、ゆきのんと、ヒッキー……この三人がいて、今の奉仕部の空間があるんだよ?』

結衣『だから……ヒッキーのいない奉仕部なんて……そんなの、奉仕部じゃないというか……』

結衣『……三人が揃わないと、イヤなの……』

87: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 23:02:46.25 ID:IP2wMsuPO
雪乃「………………」

八幡「それ聞いて、俺はすぐさまこう返してやった」

八幡『何ぬかしたこと言ってんだよ。雪ノ下は、お前がいないと寂しがるだろ』

八幡「そしたら、」

結衣『……じゃあ、奉仕部に戻ってきてよ……』

八幡「って、言い返してきた……」

雪乃「……それで?」


八幡「……俺が奉仕部に戻るには、どうしたらいいんだ?」


雪乃「……え……?」

90: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 23:08:21.27 ID:IP2wMsuPO
八幡「俺がここに戻らない限り、由比ヶ浜もここへは来なくなる」

八幡「だから……戻りたいんだ。この奉仕部に」

雪乃「…………それは、由比ヶ浜さんだけのために?」

八幡「は?」

雪乃「……それ以外に、理由は無いの?」

八幡「……そうだな。無いな」

雪乃「(……ずいぶんと、彼女想いなのね)」

八幡「まあ、これは理由になるのか微妙なところだが」


八幡「……お前と過ごす空間を、失くしたくないんだよな……」

113: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/01(土) 23:57:42.44 ID:IP2wMsuPO
雪乃「…………なんですって?」

八幡「言い方がおかしかったか」

八幡「俺の発言にお前が咬みつく、お前の発言にも俺が咬みつく」

八幡「こんなことが当たり前だった」

八幡「でもな、部を抜けてからの数日間……お前との咬み合いが無くて……その……」

八幡「……生きている心地がしなかったんだ」

133: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 00:26:47.53 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……何よ、急に変なこと言って……」

八幡「俺もそう思う。こんな恥ずかしいこと、普通は言えたもんじゃない」

八幡「でもな、俺が極力素直にならない限り、お前は協力してくれないだろう、と思ってな」

八幡「……これが正直な気持ちなんだ」

雪乃「っ………」

八幡「……頼む。俺だって、この空間を、この関係を壊したくはないんだ」

八幡「お前だって、少なくともそう思っているだろ?」

雪乃「…………そうね。私も嫌いではないから」

135: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 00:31:42.40 ID:f7GXEx9lO
八幡「じゃあ………」

雪乃「ただ、」

八幡「?」

雪乃「………私は、お邪魔じゃないのかしら?」

八幡「は……邪魔?」

雪乃「……いいえ、なんでもない」

雪乃「わかった、あなたに協力するわ」

八幡「……ありがとな、雪ノ下」

雪乃「(……まあ細かいことは、後々考えればいいでしょう)」

雪乃「(比企谷くん、由比ヶ浜さんが戻ってきてくれるのなら、私はそれで……)」

136: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 00:35:59.02 ID:f7GXEx9lO
八幡「そしたらまず、手始めに何をしたらいいのだろうか」

雪乃「そうね……そもそも、リストラ後の職場復帰なんて、聞いたことないけど」

八幡「だよな……難しいところだ」

雪乃「……そもそも、あなたは何と言われて退部させられたの?」

八幡「あ?あぁ、そういえば言ってなかったか」

138: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 00:43:53.28 ID:f7GXEx9lO
八幡『何ですか、か弱い男子生徒をこんな時間に職員室へ呼び出して』

平塚『お前のどこにか弱さがあるんだ。むしろ屈強だろう』

八幡『そっすね。精神面がバリバリ鍛え上がったのは、何を隠そう、ぼっちとして過ごしつづけたという所にありますね。おいコラ』

平塚『長い上につまらん』

八幡『前言撤回。いまの一言で心に深く傷が付きました』

平塚『能書きはもういい。お前を呼び出したのには理由がある』

八幡『何ですか』

平塚『大事な話だ』

八幡『(なぜだ、なぜ目付きが鋭く……俺を駆逐するつもりか!)』

平塚『お前には奉仕部から抜けてもらう』

八幡『なんだ、そんなこと…………はっ!?』

140: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 00:51:01.59 ID:f7GXEx9lO
平塚『解りづらいか?お前には奉仕部の部員を辞めてもらうんだ』

八幡『……あのですね、唐突にそんなこと言われてもですね』

平塚『お前、好きな人がいるだろう』

八幡『さりげなく聞くのはやめてください』

平塚『しかも、奉仕部内の部員に』

八幡『……何を持ってそう言い切れるんですか』

平塚『私だってな、昔は恋をしたものだ』

八幡『え゛っ』

平塚『話のあとに10発殴るからな』

145: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 01:23:38.75 ID:f7GXEx9lO
平塚『恋をするとな、活き活きとするんだ』

平塚『しかもそれは、言われてみないと自分ではちっとも気づかないものでな』

八幡『はあ』

平塚『奉仕部に入部してからのお前は、実に充実しているように見える』

平塚『特に、部内で雪ノ下や由比ヶ浜と会話をしているときのお前はすごく活き活きしている』

八幡『っ……………』

平塚『ほらな?図星なもんだから何も言い返せないだろう?』

150: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 01:34:59.77 ID:f7GXEx9lO
平塚『恋は良いぞ。若者は恋をしてこそ成長するものだ』

八幡『ずいぶんと達者な口ぶりで……』

平塚『当たり前だろ。私は幾度となく恋をしてきたからな』

八幡『それなのに結』

平塚『10発追加するぞ』

八幡『聞き捨ててください』

平塚『……まぁなんだ、比企谷の恋は応援してやりたいつもりだ』

平塚『……だがな、お前の恋路を発展させるために、奉仕部に残ってもらっては困る』

154: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 01:45:25.85 ID:f7GXEx9lO
八幡『はい……?』

平塚『ここはな、高校なんだ。特に県下有数の進学校でもある』

平塚『その校内の部活動で、特に神聖なのが奉仕部だ』

平塚『その空間に恋愛絡みの事情を連れ込まれたら、活動場所が不純になってしまう』

八幡『……いや、それなら、部活動内では色恋沙汰を持ち込まないようにする。そう定めれば良いだけでは?』

平塚『はぁ、甘いな。甘いよ、比企谷』

八幡『何がですか』

平塚『……雪ノ下も由比ヶ浜も、お前に気がある』

八幡『………………えっ』

155: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 01:50:06.81 ID:f7GXEx9lO
八幡『……何を根拠に?』

平塚『お前と同じ理由だよ。二人とも、部活動内で活き活きしている。以上』

八幡『いや、それは先生が単純にそう見えるだけかもしれないし!』

平塚『ああ、確かに確証は無いな』

八幡『なら……』

平塚『だがな、少なくともお前はどちらかに恋をしているのは事実だ』

平塚『そんな奴は、奉仕部には置けない』

八幡『………………』

156: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 01:56:59.63 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

八幡「とまあ、そう言われてその日は終わったな」

雪乃「……よくも包み隠さず、正直に話すことができたわね」

八幡「ああ。解決へ導くためには、確かな情報を出来るだけ伝える必要があるからな」

雪乃「(……にしても、平塚先生も読みが鋭いわね)」

雪乃「(確かに私も、比企谷くんとの会話を心から楽しみ、喜びを感じていたわ)」

雪乃「(その感情が表に盛れていたのかしら……)」

167: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:17:45.36 ID:f7GXEx9lO
八幡「どうだ、何か参考になったか?」

雪乃「……比企谷くんが、由比ヶ浜さんか私のどちらかに行為を抱いているのは分かったわ」

八幡「あ………まぁ、そうだな。事実だ……」

雪乃「そう……」

八幡「おう……」

雪乃「……由比ヶ浜さんかしら?」

八幡「っ!……それは言えねぇに決まってんだろ」

雪乃「あら、そう」

雪乃「(わかってるんだから……既に由比ヶ浜さんとはそういう関係だってこと……)」

雪乃「(……知らないふりして、聞きたくないことを訊いて、こんなにも惨めなことはないわ……)」

168: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:25:36.71 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……ただ、解決の糸口に繋がるような情報は掴めなかったわね」

八幡「そうか……雪ノ下なら何か思い付くかと思ったが」

雪乃「……この奉仕部としての活動を重きに置きつつ、三人が散らばらないようにする方法……」

雪乃「散らばらない……」

雪乃「………!」

八幡「うーん……俺のいつもの創造力はどこへやら……」

雪乃「……比企谷くん」

八幡「お前は創造じゃなくて、想像の方だろってな。はぁつまらん」

雪乃「比企谷くん!」

八幡「うお、何だどうした」

雪乃「……閃いたわ」

八幡「ひらめいた?何がだ」

雪乃「……職員室へ行くわよ」

八幡「職員室?またなんで急に」

雪乃「いいから!私に任せなさい」

170: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:33:54.13 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

平塚「ほう、新しい部を創りたいのか」

雪乃「ええ」

平塚「それならほら、これが創部届だ」

雪乃「それと、先生」

平塚「ん?」

雪乃「……私は今日を持って、奉仕部から退部致します」

平塚「……そうきたか」

雪乃「……察されましたか?」

平塚「ああ、お前のやろうとしていることが解る」

雪乃「止めないのですか?」

平塚「可愛い生徒のお願いだ。ひとまずは目を瞑っておく」

雪乃「そうですか」

171: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:37:23.40 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……そして、由比ヶ浜さんは比企谷くんが部を抜けたため、今後は顔を出さないつもりだそうです」

平塚「そうか、なら奉仕部の部員はゼロとなるな」

雪乃「ということは……」

平塚「ああ、廃部だ」

雪乃「っ……わかりました。それでは」

平塚「雪ノ下」

雪乃「なんでしょう」

平塚「……いいや、何でもない。創部した後に話すよ」

172: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:41:22.93 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

雪乃「お待たせ、比企谷くん」

八幡「俺って職員室へ来る必要無かっただろ?」

雪乃「そんなことないわ」

八幡「…?まあいい、行くぞ」

雪乃「そうね」

八幡「………………」

雪乃「………………」

八幡「……行かないのか?」

雪乃「あなたから歩いてほしいの」

八幡「そ、そうか……」トボトボ

ピタッ

雪乃「…………」テクテク

174: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:46:34.89 ID:f7GXEx9lO
八幡「……なぁ」トボトボ

雪乃「何かしら」ピトピト

八幡「……隣、近すぎだろ」

雪乃「そうかしら?」

八幡「お前の頭には距離という言葉が無いのか」

雪乃「無いはずないでしょう。国語一位を嘗めないでちょうだい」

八幡「国語一位って余計だろ」

雪乃「何よ、三位の分際で」

八幡「お前っ『三位の分際』って言ったな!」

雪乃「あら、何かおかしかったかしら?」

八幡「一位とビリなら差は歴然だが、一位と三位なんてそんなに差が無いだろ。それなのに分際呼ばわりするのはどうなんだ」

176: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:50:33.00 ID:f7GXEx9lO
雪乃「あなたが相手だから、そう言っただけのことよ」

八幡「それじゃ、ビリの奴には分際とは言わないのかよ」

雪乃「当たり前じゃない。あなたは特別なのよ」

八幡「あっそ…………あ?」

雪乃「いちいち立ち止まらないで欲しいのだけど」

八幡「いま、お前……」

雪乃「何か気に障ることでも言ったかしら?」

八幡「いや、お前と出逢った頃から気に障られっぱなしだよ」

雪乃「……ふふっ」

八幡「笑うなよ」

雪乃「……愉快だったから」

八幡「……そうだな」

178: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 02:54:41.67 ID:f7GXEx9lO
八幡「……俺、いまって依頼人だったか?」

雪乃「そうよ」

八幡「じゃあ、正直に言うかな」

八幡「……俺も楽しいよ」

雪乃「……良かったわ」

八幡「……ところで、お前が持っているそのプリント」

雪乃「これ?創部届よ」

八幡「は?」

雪乃「後で解るわよ」

180: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:00:29.23 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

八幡「……本当にお前、発想が柔軟だな」

雪乃「褒めてるの?」

八幡「これはもう人生最高に褒めてる。頭撫でてやりたいくらいだ」

雪乃「そう、じゃあお願い」

八幡「俺に何をお願いしたのか詳しく」

雪乃「……頭撫でてくれるんでしょう?」

八幡「えっ」

雪乃「……お願い」コクッ

八幡「……ゆ、雪ノ下さん。あなたの頭が私の肩に寄りかかって……」

雪乃「この方が撫でやすいでしょう?」

八幡「雰囲気的に撫でづらいわ」

188: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:06:58.79 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……ほら」

八幡「あぁ……うぅ……」

雪乃「……私だって、恥ずかしい思いして頼んでいるんだから……。気持ち汲みなさいよ……」

八幡「……あぁ、わかった」

雪乃「っ…………」

……ナデナデ

雪乃「あ………」

八幡「………………//」ナデナデ

雪乃「……心地良いわね……」

八幡「そ、そうか……」ナデナデ

雪乃「…………彼女にも、たまにはこうしてあげなさいよ?」

八幡「あ?か、彼女……?」

191: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:10:40.12 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……あら、まだ彼女にはなってないのかしら?」

八幡「あぁ、近いうちには気持ち伝えようおうと思っていたが……」ナデナデ

雪乃「何よそれ、度胸無いのね」

八幡「そらお前……、一世一代の大勝負だしな」ナデナデ

雪乃「まったく……早く伝えなさいよ」

八幡「しゃーねーな……」ナデナデ



八幡「…………好きだ」

193: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:15:40.02 ID:f7GXEx9lO
雪乃「………………」

八幡「………………」チラッ

雪乃「……なに、私で練習してるのよ」

八幡「えっ」

雪乃「私なら、そんな照れたようにもごもごと気持ち伝えられても、嬉しくないわ」

八幡「」

雪乃「真剣な眼差しで相手の目を見て、気持ちが届くように声を張って伝えなさい」

八幡「…………」

雪乃「……もういいわ、撫でてくれてありがとう」

八幡「え?……あぁ……」

雪乃「それじゃあ、この創部届を提出してくるわね」ガタッ

八幡「おう…………」

バタンッ

196: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:21:10.58 ID:f7GXEx9lO
雪乃「………………」スタスタ

雪乃「(……私ったら、奉仕部を離れたからといって、比企谷くんに甘えてしまったわ)」

雪乃「(……けれど、このタイミングでしか、比企谷くんとは近い距離になれなかったしね)」

雪乃「(この創部届を提出した瞬間、私は比企谷くんから距離を置くわ)」

雪乃「(これまでのように、活動内容を尊重するために)」

雪乃「(それに、比企谷くんから完全に手を退くためにも……)」

雪乃「……もう恋なんてしない、絶対」

198: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:25:46.03 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

平塚「……書類に不備は無いな?」

雪乃「はい」

平塚「……良いのか?この、

『部長以外の異性交遊のみ認める』

……という、謎めいた新たな部の規則を作ってしまって」

雪乃「はい、二言はありません」

平塚「そうか、わかった。書類は預かるぞ」

雪乃「お願いします」

平塚「……というわけで、」



平塚「新生・奉仕部へようこそ、雪ノ下」

203: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:33:12.79 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

ガチャッ

八幡「……どうだったんだ?」

雪乃「……再びようこそ、奉仕部へ」

八幡「……おう、お世話になるぞ」

雪乃「……あなたも、これで晴れて青春期の恋愛を謳歌できるわ。良かったわね」

八幡「そうか……それは好都合だ」

雪乃「それでは、お幸せにね」ペラ

八幡「……何をそんな他人事のように」

206: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:39:08.20 ID:f7GXEx9lO
雪乃「あら、語弊があったかしら」ペラ

八幡「語弊以前に、お前の言っていることの意味が解せぬ」

雪乃「意味を解せないあなたのことが解せないわ」ペラ

八幡「……もしかしてお前、勘違いしてないか……?」

雪乃「何がかしら?」ペラ

八幡「俺が好きなのは………っ!」

八幡「……おい、雪ノ下」

雪乃「何よ、読書中なの」ペラ

八幡「雪ノ下!!」

雪乃「っ!」ピクッ

雪乃「……どうしたの、私の目を見つめて……」

八幡「…………っ、俺は……」



八幡「俺は、雪ノ下のことが好きだ!!」

209: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:44:25.32 ID:f7GXEx9lO
雪乃「っ………!!」

八幡「……もう一度、言った方がいいか?」

雪乃「…………いえ、けっこ

八幡「雪ノ下」

雪乃「!」チラッ

八幡「俺は、雪ノ下雪乃のことが好きだ……」

雪乃「っ………本当に……?」

八幡「本気じゃないと、お前の要望通りに気持ち伝えないだろうが……」

雪乃「(……だから、私の目を見て……)」

雪乃「(……声を張り上げて……)」

211: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:51:27.56 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……ぁ……あっ………//」カアァッ

八幡「…………もう一度、言うか?」

雪乃「も、もういいって言ってるじゃ

八幡「雪ノ下!!」

雪乃「ひゃいっ!」チラッ

八幡「好きだっ!俺は、雪ノ下のことが、大好きなんだ!!」

雪乃「比企谷くん!」

八幡「!?」

雪乃「私も……」


雪乃「私だって、比企谷くんのことが大好きよ!」

八幡「……雪ノ下………」

雪乃「……愛の告白ってね、伝える方もそうだけど、伝えられた側はもっと恥ずかしいのよ……?」

214: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:56:33.95 ID:f7GXEx9lO
八幡「……そうだな、雪ノ下が俺の目を見て、俺に気持ち伝わるように大きな声で……//」

雪乃「………………//」

八幡「……でもこれって、恥ずかしいというよりは……」

八幡「嬉しさのあまり、照れるって言った方が……」

雪乃「……そうね。その方が正しいわ」

雪乃「私も……その…………嬉しかったわ……//」

雪乃「私の好きな人から伝えられて、嬉しくない方がおかしいわ……//」

215: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 03:59:55.35 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……でもね」

八幡「……?」

雪乃「……あなたと、交際することは出来ないわ」

八幡「え……」

雪乃「……せっかく、元の部員を再集結させて、元通りの空間を改めて築いていこうとしたというのに……」

雪乃「……私は、由比ヶ浜さんを裏切るようなことはできないの」

216: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:06:30.97 ID:f7GXEx9lO
八幡「……そうだな」

八幡「俺は由比ヶ浜の為を思って、奉仕部に復帰したいと依頼したんだもんな」

八幡「それなのに、肝心の由比ヶ浜を蚊帳の外にすることなんて出来ないよな」

雪乃「……けれど、私は比企谷くんのことが好き」

八幡「俺も……雪ノ下のことが大好きだ」

雪乃「……これからも、今まで通り、奉仕部間の、喧嘩ばかりする、相性の悪い部員同士として」

八幡「……ああ、よろしくな」

218: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:12:23.23 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……別に、私はあなたがそばにいないと何もできない人間じゃないのよ?」

雪乃「……でもね、あなたのいない数日間、とても虚無感を味わっていたわ」

雪乃「……そのせいかしら」

雪乃「紅茶を飲もうと思ってやかんに火をかけたけど、茶葉の在りかが分からないことがあったわ」



♪君がいないと何にも できないわけじゃないと
ヤカンを火にかけたけど 紅茶のありかがわからない

219: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:16:52.28 ID:f7GXEx9lO
雪乃「私、一人暮らしでしょう?」

雪乃「毎朝自分で朝食を作るのだけど、あまり美味しくなかったわ」

雪乃「日常だったはずの、いつものあなたへの罵倒をすることができなかったからかしら?」




♪ほら 朝食も作れたもんね だけどあまりおいしくない
 君が作ったのなら文句も 思いきり言えたのに

222: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:24:20.02 ID:f7GXEx9lO
雪乃「正直、あなたが空気の読めない発言をしたときや」

雪乃「あなたのしつこい突っかかりには、たまに腹が立って、窮屈に感じたこともあったわ」

雪乃「……けれど、あなたが部を離れて初めて気づいたの」

雪乃「あなたが同じ空間に……目で確認できる距離にいて、下らない会話をする」

雪乃「……私にとって、これらが全て幸せだったということ」



♪一緒にいるときは きゅうくつに思えるけど
 やっと自由を手に入れた ぼくはもっと淋しくなった

224: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:31:15.49 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……そして、あなたが部を辞めさせられたことを、平塚先生に初めて聞いたとき、あなたを奉仕部に連れ戻そうと思ったわ」

雪乃「…でも、心なしか態度の冷たいあなたが教室から現れて、戸惑ったわ」

雪乃「……授業の始まりを告げるチャイムが鳴って、あなたが教室に戻るときに言った『じゃあな』の一言が、とても重く感じたわ」

雪乃「……このまま、奉仕部に戻るつもりはない。そんな意思を表したのかと思って、深く傷付き、悲しんだわ……」



♪さよならと言った君の 気持ちはわからないけど
いつもよりながめがいい 左に少し とまどってるよ

226: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:41:18.87 ID:f7GXEx9lO
雪乃「……好きな人にそう言われ、深い悲しみに覆われて、部室で情けなく涙を流したわ」

雪乃「こんなに辛い思いになるのなら、私はもう恋なんてしない。そう誓ったわ」

雪乃「……でも、あなたは戻ってきてくれた」

雪乃「それが私にとって、どんなに嬉しかったことか、気づいてないでしょう?」

雪乃「そして、あなたは私に愛の告白をしてくれた。嬉しくて、嬉しくて、思わず顔が綻んでしまいそうだったわ」

雪乃「……友達を裏切ることは出来ないから、交際はできないけれど」

雪乃「……あなたと想いが通じ合っていたことが分かったから、そんな大好きなあなたに、今から言う私の言葉を、聴いてほしいの」


もし君に1つだけ 強がりを言えるのなら



雪乃「……もう恋なんてしないなんて、言わないわ……絶対」

228: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 04:49:37.84 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

ガチャッ

結衣「やっはろー♪ゆきのーん!ヒッキー!」

八幡「おう」

雪乃「あら、遅かったわね、由比ヶ浜さん」

結衣「ごめんねー!日番だったからさ、学級日誌付けて先生に渡そうと思ったのに、どこにいるのか見当たらなくて!」

結衣「学校一周した後に、教室に帰ったらさ、先生ったらトイレに行ってただけで、私が探しに行った10秒後に戻ってきてたって……」

雪乃「由比ヶ浜さんらしいわね」

八幡「間が悪い、というかな」

結衣「ちょっとー、二人してひどいよっ!」

雪乃「ふふっ、ごめんなさい」

231: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 05:07:11.29 ID:f7GXEx9lO
・・・・・・・

雪乃「(あの一件から数日経って、由比ヶ浜さんも再び部を訪れるようになり、今までの心地良い空間に戻ってきた)」

雪乃「(友達が私に元気いっぱいの笑顔で話しかけてくる姿)」

雪乃「(読書をしつつ、会話の受け応えをすること)」

雪乃「(……そして、私の好きな人と、)」

雪乃「比企谷くん、間の悪さで言ったらあなたの方が酷いわよ。空気の読めない発言ばかりじゃないの」

八幡「何言ってるんだお前は。俺はな、ギスギスした雰囲気を良くするために『狙って』そうしているだけで」

雪乃「あなたは『良くする』ではなくて、ぶち壊してばかりじゃない……」


雪乃「(……好きな人との咬みつき合いをすること)」

雪乃「(部室内での為すこと全てが幸せだと、改めて実感する……)」

234: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 05:12:30.16 ID:f7GXEx9lO
結衣「ゆきのん!聞いてる?」

雪乃「えっ?あ、ごめんなさい……」

結衣「もう、どこか一点をボーッと見続けてたもんだから、ちょっと心配しちゃったよ……」

雪乃「な、何てこと無いわよ?」

雪乃「(……比企谷くんをジッと見つめていただなんて、口が裂けても言えないわね……)」

結衣「……ん?何か聞こえない?」

雪乃「え?……そうかしら?」

フシュルルルーーー…

結衣「何だろう、嫌な予感しかしないよ……?」

235: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 05:23:57.03 ID:f7GXEx9lO
八幡「まさか……」

ガチャッ

材木座「八幡!もとい永久の相棒よ!貴様を探したぞ!」

八幡「相棒じゃないし……貴様とか言うなし……」

材木座「突然だが八幡、我と一緒に旅に出ようぞ!」

八幡「めんどくせぇよ」

材木座「東京は世田谷区に、八幡山という名の地があるそうだ!」

八幡「はちまんやま……へぇ……」

結衣「(はちまんやま……はちまんやま……はちまん……//)」

236: ◆UYOMNZkX3A 2014/03/02(日) 05:26:24.35 ID:f7GXEx9lO
材木座「どうだ八幡、八幡山近辺を八万歩かけて散策し、八幡山で蜂の巣つついて共に冷や汗を流さないか!八幡!」

雪乃「ちょっとあなた」

材木座「ぬぅぅ!?」

雪乃「はちまんはちまんうるさいわよ、大声は外で出してちょうだい」

材木座「すいません」

雪乃「(……生意気に、私ですら一回も無いのに、何度も八幡って下の名前で呼んで……)」

雪乃「(……あの時、私もちゃっかり比企谷くんのことを、八幡と呼んでおけばよかったわ……)」

雪乃「(……まあ、高校を卒業した後なら呼ぶこともできるから………)」

雪乃「…………ね、八幡……?//)」



おわり