穂乃果「時の旅人」 3


571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:05:10.22 ID:tBzZ27J8o

―― 洗面所 


ジャー 


絵里「……落ちないわね」 

ゴシゴシ 

穂乃果「どうするのこれ! 絶対に笑われるよ!」 

絵里「ちょっと、動かないで」 

穂乃果「って、近いよ」 

絵里「こうしないと落ちないでしょ?」 

穂乃果「もぉ……」 

絵里「……」 

ゴシゴシ 

穂乃果「い、いたいっ」 

絵里「あ、ごめん……」 

ゴシゴシ 

穂乃果「……」 

絵里「……諦めましょう」 

穂乃果「もぉー!!」 

絵里「ほら、早くしないと、ジョギングに行けなくなるわよ」 

穂乃果「これを落とすほうが先だよ!」 

絵里「帰ってきてからでいいじゃない。今日から2年生。学校に遅刻はできないわよ?」 

穂乃果「絵里ちゃんのせいでしょ!」 

絵里「ほーら、怒ると可愛い顔が台無――」 

穂乃果「誤魔化さないでよ」 

絵里「……最近、この手が通じなくなってきたわね」 


…… 

… 

                                            引用元: 穂乃果「時の旅人」 
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572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:06:19.88 ID:tBzZ27J8o

―― 学校 


上級生「おはよう、絢瀬さん」 

絵里「おはよう」 

穂乃果「おはようございまーす」 

上級生「高坂さんはそんな髪型だった? 前髪揃えてたかな……?」 

穂乃果「これは、その……」 

上級生「進級したから雰囲気を変えてみたのね」 

穂乃果「そういうわけじゃないんですけど。……じぃー」 

絵里「……」 

上級生「?」 

絵里「ほら、クラスを確認してこないと」 

穂乃果「すぐ話題を変えるんだから。……絵里ちゃんは?」 

絵里「春休み中に確認してあるのよ」 

穂乃果「そうなんだ。……えっと、一緒に帰れるの?」 

絵里「えぇ、今日は平気よ。終わったら迎えに行くわね」 

穂乃果「わかった。それじゃあね」 

絵里「最初が肝心よ、穂乃果。……しっかりね」 

穂乃果「はーい」 

スタスタ 


上級生「可愛い妹って雰囲気ね」 

絵里「つい、そういう風に接してしまうのよね……」 


…… 

… 
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:08:03.75 ID:tBzZ27J8o

―― 放課後:2年生教室 


「高坂さん、高坂さん!」 

穂乃果「な、なにかな?」 

「絢瀬先輩と一つ屋根の下で暮らしてるって本当なの!?」 

穂乃果「えっと……あなたは……」 

「自己紹介は後でするから、どうなの!?」 

穂乃果「そうだよ」 

「えぇー!?」 

穂乃果「そんな驚くこと?」 

「いや、確かに今のリアクションは大袈裟だったけどさ。 
 失礼なこと聞くかもだけど……」 

穂乃果「?」 

「複雑な家庭環境ってヤツ……?」 

穂乃果「そうだねぇ……絵里ちゃんは、ちょっと複雑かも」 

「……そっか」 

穂乃果「絵里ちゃんの家族は、ロシアに住んでて……絵里ちゃん一人だけ日本にいるから」 

「あ、意外と単純だった。それっていつからなの?」 

穂乃果「小学校……4年生……あれ、5年生だったかな?」 

「ふぅん……」 

穂乃果「考えてみたら、そんなに経ってないんだよね。……感覚的にはもっと長く居るものだと思ってた」 

「高坂さんって面白いね。友達になろうよ」 

穂乃果「うん。私は高坂穂乃果、よろしくね」 

友人「私の名は――」 

穂乃果「あ……」 

友人「?」 

穂乃果「迎えに来たみたい」 

友人「おぉ、噂をすれば。……まぁいいや、明日ね」 

穂乃果「うん、明日ね~」 

テッテッテ 


友人「ふむふむ……ようやく友達になれたぞ」 
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:09:31.45 ID:tBzZ27J8o

―― 廊下 


穂乃果「お待たせ!」 

絵里「話をしていたみたいだけど、よかったの?」 

穂乃果「平気だよ」 

絵里「真っ直ぐ帰る? それとも、寄り道する?」 

穂乃果「じゃあ、近くの公園で――」 

絵里「あ、お店の手伝いしないとね」 

穂乃果「選択肢ないじゃん!」 



…… 

… 


―― 下校中 


穂乃果「ねぇ、絵里ちゃん」 

絵里「?」 

穂乃果「その……家族に会いたいって思う?」 

絵里「どうしたの、急に……」 

穂乃果「さっきね、その話してて……どうなのかなって、気になっちゃって」 

絵里「そうね、今の私の状況って、特殊だものね」 

穂乃果「……寂しくない?」 

絵里「寂しくない、って言ったら嘘になるけど……」 


絵里「おばさまやおじさまは穂乃果と別け隔てなく接してくれるし、 
    間違ったら叱ってくれて、家での役割も与えてくれる」 


絵里「……穂乃果も居るから、両親に会いたいっていう寂しさは、そんなにないかな」 

穂乃果「そっか……」 

絵里「でも、そろそろ身の振り方を考えないとね」 

穂乃果「え――……」 


…… 

… 

575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:10:38.65 ID:tBzZ27J8o

―― 高坂邸 


ガラガラ 


絵里「ただいま戻りました」 

穂乃果「ただいま……」 


「あら、お帰り」 


絵里「店番、代わります」 

「助かるわ。……穂乃果は店前の掃除を……どうしたの?」 

穂乃果「……えっと、お母さんに話があるんだけど」 

母「いいけど、今すぐ?」 

穂乃果「……うん」 

母「それじゃ、居間で待ってて。……絵里は鞄を置いたらお願いね」 

絵里「は、はい」 


絵里「……話?」 



…… 

… 
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:12:21.55 ID:tBzZ27J8o

―― 夜:穂乃果の部屋 


コンコン 

「私だけど」 


穂乃果「どうぞー」 


絵里「話があるんだけど、いい?」 

穂乃果「うん、いいよー」 

絵里「勉強していたのね」 

穂乃果「ちょっと、予習をしとこうかと思って。話ってなに?」 

絵里「そこに座って」 

穂乃果「う、うん……真面目な話なんだね」 


絵里「おばさまに相談したそうね」 

穂乃果「あ……うん」 

絵里「怒られちゃったわ。――まだ子供なのに何を遠慮しているのかって」 

穂乃果「……」 

絵里「本当言うとね、来年には出ていかなくちゃいけないって思ってたの」 

穂乃果「来年……」 

絵里「いつまでも迷惑かけているのは悪いな、って」 

穂乃果「……」 

絵里「他人の家に転がり込んでいる私は早く出て行かないと、って考えてた」 


穂乃果「…………」 


絵里「だけど、言ってくれたわ。――私たち家族でしょ、って」 


穂乃果「……!」 


絵里「だから、もう少し。……自立出来るその日まで、居させてもらうことにしたの」 


穂乃果「絵里ちゃん……!」 


絵里「そういうことだから、これからもよろしくね、穂乃果」 


穂乃果「うん……、うん! よろしくね絵里ちゃん!」 


絵里「ふふ、そんなに喜んでくれるの?」 

穂乃果「もちろんだよ!」 

絵里「なんだか、照れるわね」 

穂乃果「そうだ、コレを機会に呼び方変えてみようかな」 

絵里「え?」 

穂乃果「絵里姉ちゃん。絵里お姉ちゃん。絵里ねぇ。絵里姉さま」 

絵里「今までどおりでいいわよ」 
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/13(日) 12:14:44.74 ID:tBzZ27J8o

…… 

… 


―― 翌日:学校 


友人「おはよー、穂乃果」 

穂乃果「おはよう。……って、あなたの名前、なんだっけ?」 

友人「私の名前は――」 


「高坂さーん、お客さん~」 


穂乃果「え……、あ、絵里ちゃんだ」 

テッテッテ 


穂乃果「どうしたの?」 

絵里「ごめん、お弁当渡すの忘れてて。……はい」 

穂乃果「あ、こっちこそごめんね。持たせたままだった」 

絵里「それくらいいいわよ。それじゃあね」 

穂乃果「お昼、一緒に食べようよ」 

絵里「……友達と一緒に食べたほうがいいんじゃない?」 

穂乃果「……そうかもしれないけど、絵里ちゃんと一緒に食べたい」 

絵里「やっぱりダメよ。学級を優先して。……それじゃ」 

穂乃果「わかった。ありがとね~」 


友人「弁当?」 

穂乃果「そうだよ。お父さんが作ってくれたんだ」 

友人「へぇ……、羨ましいなぁ」 

穂乃果「いいでしょー」 

友人「お父さんって、なにしてる人?」 

穂乃果「和菓子作ってるよ」 

友人「それじゃ、弁当の中身も和菓子……とか」 

穂乃果「そんなわけないよ。日本食だから」 

友人「いいなぁ」 

穂乃果「いつも二人分作ってくれるんだよ。感謝しないとね」 

友人「出来た娘だね。穂乃果って姉妹はいるの?」 

穂乃果「ううん、私も絵里ちゃんも一人っ子だよ」 


…… 

… 
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/13(日) 22:24:03.16 ID:3uLULHsJ0
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/14(月) 03:26:15.31 ID:Je86v9E40
続きがめっちゃ気になる
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:07:33.51 ID:svCzqJmho

―― 梅雨:穂乃果の部屋 


コンコン 


穂乃果「どうぞー」 


スーッ 

絵里「穂乃果、お風呂の掃除当番なんだけど、交代してくれないかしら」 

穂乃果「いいけど、どうしたの?」 

絵里「おばあさまから連絡があって、調べ物しなくちゃいけないのよ」 

穂乃果「ロシアから、わざわざ調べてくれって?」 

絵里「……そう。悪いけどよろしくね。次は私が掃除するから」 

穂乃果「あ、どこ行くの?」 

絵里「都立図書館よ。夕方には戻ると思うから」 

穂乃果「わかった。気をつけてね~」 


…… 

… 


―― お風呂 


穂乃果「数星霜のストーリー 忘れてるだけ~♪」 

ゴシゴシ 


母「穂乃果、電話よ」 

穂乃果「後でかけ直すから、放っておいていいよ~」 

ゴシゴシ 

母「携帯電話じゃなくて……ほら、子機持ってきたから、出て」 

穂乃果「だれ?」 

母「おばあちゃん」 


穂乃果「もしもし……どうしたの、お祖母ちゃん?」 


…… 

… 
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:09:25.35 ID:svCzqJmho

―― 夜:絵里の部屋 


コンコン 

「絵里ちゃーん」 


絵里「どうぞ」 


スーッ 

穂乃果「昼に調べたことってなんだったの?」 

絵里「大したことじゃないから、気にしないで」 

穂乃果「お祖母ちゃんが、ロシアのおばあちゃんに連絡したんでしょ?」 

絵里「……どうしてそう思うの?」 

穂乃果「電話があったんだよ。偶然とは思えなくて」 

絵里「……鋭いわね」 

穂乃果「言えないことなの?」 

絵里「というより、伝える必要のないことだから。 
    時期が来たら教えてあげる」 

穂乃果「わかった。……それでね、お祖母ちゃんと話をして思い出したことがあるんだ」 

絵里「?」 

穂乃果「一緒に押入れで探しもの手伝って欲しいんだけど、いいかな」 

絵里「いいけど、なにを探すの?」 

穂乃果「将棋盤。小さいころ教えてもらったよね」 

絵里「……そうね。……久しぶりに指しましょうか」 

穂乃果「やったっ!」 


…… 

… 

―― 翌朝 


穂乃果「行ってきまーす」 

絵里「行ってきます」 


母「行ってらっしゃーい」 


穂乃果「……やっぱり悔しい」 

絵里「まだ言ってるの?」 

穂乃果「だって、駒を触ってないのって同じくらいでしょ?」 

絵里「そうよ」 

穂乃果「それなのに、全然敵わなかったんだもん」 

絵里「穂乃果に負けるわけにはいかないものね」 

穂乃果「むぅ……」 


…… 

… 
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:11:08.09 ID:svCzqJmho

―― 夏休み前日:2年生の教室 


友人「ねぇ穂乃果、夏休みって予定あったりする?」 

穂乃果「うーん、……そうだなぁ……これといってないかも」 

友人「それならさ、たまにでいいから私と遊ぼうよ」 

穂乃果「いいよ」 

友人「あっさりオーケーしたけど……穂乃果って、夏休みどう過ごしてるの?」 

穂乃果「どうして?」 

友人「だってさ、学校で話す人はたくさんいるのに、誰かと遊んだりしてないでしょ?」 

穂乃果「あ……うん、そうだね」 

友人「他に遊ぶ人とか、約束は?」 

穂乃果「……無い、ね」 

友人「じゃあ、私が誘わなかったら、この夏休みどうするつもりだったの?」 

穂乃果「うーん……絵里ちゃんとどこか行ったり、してたと思う」 

友人「それだ」 

穂乃果「どれ?」 

友人「穂乃果と絢瀬先輩、ほとんど一緒に居るでしょ」 

穂乃果「……うん」 

友人「だから、他のみんなが遠慮しちゃうんだよ」 

穂乃果「えぇー、なにそれ?」 

友人「例えばさ、私にこの学校の彼氏が居たとするよ。 
    そして、毎日一緒に登下校してたら……穂乃果は私と下校しようって、誘える?」 

穂乃果「難しいよね」 

友人「そういうこと。……あ、別に一緒にいるのが悪いってわけじゃないからね」 

穂乃果「……うん」 

友人「多分だけど、私以外にも、穂乃果と一緒に遊びたい人はいると思うよ」 

穂乃果「そ、そうかな?」 

友人「さぁ、どうでしょ」 

穂乃果「もぅ……適当言って!」 

友人「あはは、ごめんごめん」 

穂乃果「そういうあなたこそ、遊びに行く友達とか居ないの?」 

友人「私の事、色眼鏡なしに見てくれるのって、穂乃果くらいだから」 

穂乃果「……」 

友人「まぁ、そういうことなんで、電話番号、教えてよ」 

穂乃果「うん」 


…… 

… 
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:12:47.73 ID:svCzqJmho

―― 夏休み:高坂邸 


絵里「王手」パチ 

穂乃果「う……!」 

絵里「……」 

穂乃果「……ま、待った」 

絵里「それはダメよ」 

穂乃果「うぅ……」 

絵里「……ここを」 

穂乃果「それもダメ!」 

絵里「わかったわ。じっくり考えて」 

穂乃果「むぅぅ……」 


絵里「……」 


…… 

… 


穂乃果「参りました」 

絵里「はい、お疲れさまでした」 


穂乃果「あぁーもぅー! 勝てないー!」ジタバタ 

絵里「ちょっと、子供みたいにしないの」 

穂乃果「プロ棋士の人生、諦めるよ」 

絵里「目指していたのね」 

穂乃果「うぅー、あぁー! 悔しい~!」 

絵里「穂乃果の指し方、結構好きよ?」 

穂乃果「……?」 

絵里「私は、ほら……守りを重視してしまうでしょ」 

穂乃果「うん、とても固い守りだよ」 

絵里「でもね、穂乃果は……自由っていうのかな、自在に駒が動いていくの」 

穂乃果「……」 

絵里「そういうの、私にはできないことだから」 

穂乃果「隙だらけってことだよね」 

絵里「そうじゃなくて……、常識を覆すってニュアンスね」 

穂乃果「勝てなきゃ意味ないよ」 

絵里「そんなに勝ちたい?」 

穂乃果「うん!」 

絵里「たとえ、セオリー通りの知識を持って、私に勝ったとしてもね、 
   それはもったいないことだと思うのよ」 

穂乃果「……」 

絵里「これは、穂乃果の強みだと思うから」 
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:14:18.05 ID:svCzqJmho

穂乃果「でも、勝たないと……」 

絵里「穂乃果は穂乃果の強さを持ってて欲しい」 

穂乃果「……」 

絵里「これは、私のわがままになるけどね」 

穂乃果「……もう一回」 

絵里「えぇ、いいわよ」 


穂乃果「……」 

パチ 

絵里「……」 

パチ 


穂乃果「強いって、なにかな」 

絵里「それは……」 

穂乃果「……」 

絵里「そうね、偉そうに言ってみたけど、 
    私にもよく解ってないのかもしれない」 

穂乃果「……」 

絵里「私と一緒に、探してみましょ」 

穂乃果「……うん」 


…… 

… 


穂乃果「……」 

パチ 

絵里「……」 

パチ 

穂乃果「絵里ちゃん、進路どうするの?」 

絵里「あれ、言ってなかった?」 

穂乃果「聞いてないよ?」 

絵里「おかしいわね、てっきり知ってるものだと思ってたわ」 
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 08:15:30.53 ID:svCzqJmho

穂乃果「よしっ、ここで!」 

パチッ 

絵里「……」 

パチ 

穂乃果「あ……」 

絵里「攻める時こそ、周りをよく見ないとね」 

穂乃果「あぁ……、チャンスだと思ったのに」 

絵里「ちょっと待ってて、学校の資料取ってくるから」 

穂乃果「……うーん」 


穂乃果「香車を横に移動しておけば……なんて、香車は横に動けない――」 


穂乃果「……」 


穂乃果「……あれ、今の……デジャヴ?」 


絵里「ほら、ここへ受験するのよ」 


穂乃果「えっと……――音ノ木坂学院?」 


絵里「そう、おばあさま達が通った学校」 


…… 

… 
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:02:51.42 ID:svCzqJmho

―― 新学期:2年生の教室 


友人「いやぁ、夏休みは楽しかったねぇ~」 

穂乃果「うん……」 

友人「なに、悩みごとでもあるの?」 

穂乃果「あなたって、進路決めてる?」 

友人「ううん、全然。まだ早いでしょ」 

穂乃果「そんなことないよ」 

友人「穂乃果はいいよね、選択肢が広くて。あの進学校でも余裕じゃない?」 

穂乃果「うん……そうだね」 

友人「嫌味だったんだけど」 

穂乃果「よしっ、先生に相談してこよう!」ガタッ 

友人「えぇ、今から!?」 

穂乃果「善は急げ!」 

タッタッタ 


友人「……」 

女生徒「ねぇ、あなた」 

友人「……なに?」 

女生徒「夏休みに、高坂さんと一緒に居るところ見たけど……」 

友人「それがどうしたってのよ?」 

女生徒「あまり、高坂さんに悪影響を与えるようなことしないでね」 

友人「……どういう意味?」 

女生徒「自分がどういう風に見られているのか、知らないわけじゃないでしょ」 

友人「……」 

女生徒「来年には高校受験なんだから、変なことにならないようにしてってこと」 

友人「…………」 


…… 

… 
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:09:06.44 ID:svCzqJmho

―― 夜:絵里の部屋 


穂乃果「私も音ノ木坂学院に受験するよ!」 

絵里「……」 

穂乃果「あれ、喜んでくれてない……?」 

絵里「穂乃果、その進路を決めたのは私に影響されたからじゃないわよね」 

穂乃果「えっと……」 

絵里「やっぱり……。あのね、穂乃果……」 

穂乃果「絵里ちゃんと一緒に通いたいんだもん」 

絵里「先生に相談した?」 

穂乃果「したよ」 

絵里「なんて言ってたの?」 

穂乃果「……高坂なら、他の学校でも通用するとかなんとか」 

絵里「そうでしょうね。……それを聞いてどう思った?」 

穂乃果「絵里ちゃん、私が同じ学校に通うの嫌なの?」 

絵里「いいから、答えて」 

穂乃果「そうなんだ。って、思ったけど……よくわからないよ」 

絵里「高校を決めるということは、将来を決めるということでもあるのよ?」 

穂乃果「……」 

絵里「それなのに、私の――」 

穂乃果「一緒に同じ学校に通いたいって思うのはいけないこと?」 

絵里「……」 

穂乃果「小学校、中学校も一緒だったから、高校も一緒に居たいって……」 

絵里「ほのか……」 

穂乃果「そう、思ったんだよ」 

絵里「できれば、自分の意志で決めて欲しい。 
    人に左右されないで、穂乃果自身で決めて欲しい」 

穂乃果「……」 


絵里「取ってつけた理由で決めたりしてない?」 

穂乃果「してない。一緒に通いたいって思うのは本当だから」 


絵里「後悔しない?」 

穂乃果「しない」 

絵里「……」 

穂乃果「やっぱり、いや……かな?」 

絵里「そんなことないわ。……本音を言うとね」 

穂乃果「?」 

絵里「穂乃果が、そう言ってくれて……とっても嬉しい」 

穂乃果「――!」 

絵里「ありがとう、ほのか」 

穂乃果「絵里ちゃん!」 
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:10:13.43 ID:svCzqJmho

…… 

… 


―― 翌日:学校 


「おはよー」 

「おはよう~。今日も暑いね~!」 


穂乃果「進路を決めたはいいけど、これからどうすればいいのかな」 

絵里「とりあえず、今までどおりね。特に変化は要らないわよ、穂乃果の場合」 

穂乃果「うーん……決めてしまったから、なんか、落ち着かない」 

絵里「?」 

穂乃果「ジッとしていられないっていうか……なんだろう、この気持ち」 

絵里「自分でもわかってないのね。……今は中学校生活を楽しみなさい」 

穂乃果「そうだね」 


友人「……」 


穂乃果「あ、それじゃあね、絵里ちゃん」 

絵里「今日は一緒に帰れないから、先に帰ってて」 

穂乃果「わかった~」 

テッテッテ 


穂乃果「おーはよう~」 

友人「あぁ、穂乃果か……」 

穂乃果「どうしたの?」 

友人「……べつにぃ?」 

穂乃果「元気ないよね」 

友人「朝だからテンション低いだけ」 

穂乃果「ふぅん……」 


絵里「……」 
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:11:58.05 ID:svCzqJmho

上級生「おはよう、絢瀬さん」 

絵里「おはよう」 

上級生「穂乃果さん、あの子とよく一緒にいるわよね」 

絵里「……そうね。仲がいいみたい」 

上級生「……あの子の噂話って知ってる?」 

絵里「えぇ、聞いてるわ」 

上級生「いいの?」 

絵里「なにを心配しているの?」 

上級生「その……良い噂じゃないから。 
     穂乃果さんも先生方に目をつけられるんじゃないかって」 

絵里「そんなこと気にする子じゃないわ」 

上級生「……」 

絵里「行きましょ」 


…… 

… 



―― 秋:絵里の部屋 


コンコン 


絵里「どうぞ」 


穂乃果「もう寝ちゃう?」 

絵里「まだ起きてるわよ。話でもあるの?」 

穂乃果「……うん。友達のことで」 

絵里「そう……。そこ座って」 

穂乃果「うん。……くしゅっ」 


絵里「またそんな格好して……」 

穂乃果「えへへ、暑くなったりするから、つい」 

絵里「風邪ひいたら大変よ、これを着て」 

穂乃果「ありがとー。……絵里ちゃんの匂いがする」 

絵里「何言ってるのよ。……それで?」 

穂乃果「うん……。2年に上がってから友達になった人がいるんだけど、 
     最近、登校してもすぐ帰っちゃって……」 

絵里「……」 

穂乃果「理由をクラスのみんなに聞いても知らないって。……どうしよ?」 

絵里「穂乃果は、その子が周りからなんて呼ばれてるか、知ってる?」 

穂乃果「不良だって、みんなが言ってた」 

絵里「……」 
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:13:04.00 ID:svCzqJmho

穂乃果「でも、不良って……なんて言うんだろ、悪いってイメージがあるでしょ?」 

絵里「……そうね」 

穂乃果「その人は、そんなイメージじゃないから」 

絵里「穂乃果はどうしたい?」 

穂乃果「学校に居て欲しい。また、一緒に遊んだりしたい」 

絵里「それじゃ、それを伝える方が先ね」 

穂乃果「……でも、そんなこと言われて迷惑かも」 

絵里「そこで遠慮してはダメよ」 

穂乃果「……うん」 

絵里「私と最初に出会った日のこと覚えてる?」 

穂乃果「絵里ちゃんと……?」 

絵里「穂乃果ったら、おばさまの後ろにずっと隠れていたのよ」 

穂乃果「あ……そうだっけぇ?」 

絵里「ふふ、私が怖かったのね」 

穂乃果「そうだったかなぁ……」 

絵里「でも、私に……声をかけてくれた」 

穂乃果「……」 

絵里「子供だったから、とても勇気がいると思うわ」 

穂乃果「……」 

絵里「今必要なのはそれじゃないかしら」 

穂乃果「いいのかな……?」 

絵里「穂乃果は穂乃果でいて。それが一番よ」 

穂乃果「……うん、わかった」 


…… 

… 
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:14:39.33 ID:svCzqJmho

―― 翌朝:台所 


絵里「おはようございます、おばさま」 


母「おはよう、絵里。弁当箱出してくれる?」 

絵里「はい。……いつも用意してくださいますけど、大変ではありませんか?」 

母「夜のうちに大体は準備してあるから、それほどでもないわよ」 

絵里「そうですか……。私も料理を始めたほうがいいかな……」 

母「それはいいけど、受験生なんだから支障がない程度にしてね」 

絵里「はい、わかっています」 

母「……こうやって、台所で二人、料理をしてるのって楽しいのよ」 

絵里「あ――……、はい、私も」 


母「そうそう、懐かしい夢をみたのよ」 


絵里「……?」 

母「絵里と穂乃果、二人が初めて会った日のこと」 

絵里「……昨日も、穂乃果とその話をしていました」 

母「あら、偶然ね」 

絵里「あの頃の私、無愛想だったから……穂乃果を怖がらせてしまって」 

母「……怖がってないわよ?」 

絵里「え……?」 

母「あの時の穂乃果は、恥ずかしがってたんだから」 

絵里「……そう、でした?」 

母「えぇ、嬉しそうにして、でも恥ずかしくて、どうしようって」 

絵里「嬉しそう……」 

母「新しい友だちが出来るってことじゃないかな……、 
  でも、恥ずかしいって、もぞもぞさせて」 

絵里「……」 

母「その本人はまだ寝てるのね」 

絵里「……はい」 

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:15:59.09 ID:svCzqJmho

―― 穂乃果の部屋 


コンコン 

「穂乃果、入るわよ?」 


スーッ 

絵里「10分経ってるけど――」 


穂乃果「えり…ちゃん……」 


絵里「どうしたの?」 

穂乃果「からだ……おもい」 

絵里「……」スッ 

穂乃果「かぜかな……」 

絵里「熱があるから、風邪ね」 

穂乃果「……んん」 

絵里「なにしてるの?」 

穂乃果「きがえ……」 

絵里「今日は休んで、安静にしてなさい」 

穂乃果「……」 

絵里「どうしたの?」 

穂乃果「また、あした……って、言った」 

絵里「昨日の友達の話?」 

穂乃果「……うん」 

絵里「私から言っておくから……、ほら、早く横になって」 

穂乃果「……」 

絵里「言うこと聞きなさい」 

穂乃果「…………うん」 


…… 

… 
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:18:00.51 ID:svCzqJmho

―― 学校 


友人「あれ、穂乃果は一緒じゃ……?」 

絵里「風邪をひいてしまって、今日は休みよ」 

友人「……あ、そうですか」 

絵里「あなたのこと気にして、登校しようとしてたのよ」 

友人「え……?」 

絵里「この意味、わかるわよね」 

友人「……」 

絵里「今日も学校をサボった、なんてこと、穂乃果に報告させないでね」 

友人「…………」 


…… 

… 


―― 夕方:高坂邸 


絵里「…………ただいま」 


穂乃果「おかえり~。今日は早かったね」 


絵里「……なにをしてるの?」 

穂乃果「病院行って、薬飲んだら治っちゃった」 

絵里「……」 

穂乃果「本当だよ? ほら……体温計みて」 

絵里「37度2分……まだ微熱じゃないの」 

穂乃果「大丈夫だよ、体は軽――」 

絵里「いいから来なさい」グイッ 

穂乃果「あう……」 

594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:19:21.17 ID:svCzqJmho

―― 穂乃果の部屋 


穂乃果「大丈夫なのに」 

絵里「薬を飲んで、熱が一時ひいてるだけかもしれないでしょ」 

穂乃果「だって、今日一日暇で」 

絵里「だってじゃないわよ、まったく……おばさまの目を盗んでテレビ見るなんて」 

穂乃果「盗んでないよぉ、人聞きの悪い。……ちょっと隙を狙っただけ」 

絵里「はいはい」 

穂乃果「流さないでよっ」 

絵里「いいから、大人しくしてなさい」 

穂乃果「はぁい」 

絵里「それと、これ」 

穂乃果「……漫画? 買ってきてくれたの?」 

絵里「違うわよ。あの子が見舞いにって」 

穂乃果「学校……来てたんだ」 

絵里「えぇ、一日ずっといたわ。 
   学校に持ち込んでいることは一応、注意したけど」 

穂乃果「あはは……そっか」 

絵里「この本、穂乃果が読みたがっていたって」 

穂乃果「うん、ちょっと読んでみたら面白くて」 

絵里「……そう。……あまり字を追い過ぎると気分を悪くするから、ほどほどにね」 

穂乃果「うん、わかった」 

絵里「安静にしてるのよ?」 

穂乃果「わかってるって」 

絵里「……本当に?」 

穂乃果「もぉ、信じてよぉ」 

絵里「さっき、テレビを見ていたのは誰だったかしら」 

穂乃果「……私です」 

絵里「またあとで、様子を見に来るからね」 

穂乃果「はぁい」 


…… 

… 
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:20:44.50 ID:svCzqJmho

―― 冬 


友人「ふぅ……さぶっ」 


穂乃果「それーぃ」 

パシッ 


友人「こんな日でも元気だよね、穂乃果って」 

パシッ 


穂乃果「体動かしてたら温まるって~」 

パシッ 

友人「バトミントンってそんな動かないでしょ」 

パシッ 

穂乃果「じゃあ――」スッ 

パシッッ 

友人「うわっと!?」 

パシッ 

穂乃果「もう一丁!」 

パシッッ 

友人「くっ……!」 

パシッ 

穂乃果「これなら――どうだ!」 

パシッッ 

友人「……っ!」 

スカッ 


トントン 


穂乃果「ふふん、私の勝ち~」 

友人「はぁ~ぁ、体育で本気出しちゃって~」 

穂乃果「本気出さないで負けたらつまらないでしょ」 

友人「……嫌味も通じない」 

穂乃果「ほら、もう一回勝負」 

友人「穂乃果ってさ、どうして運動部に入んないの?」 

穂乃果「え?」 

友人「運動神経良いんだから、活躍できるよ、きっと」 

穂乃果「……これと言って、やりたいものもなくて」 

友人「なんか、もったいない気がする」 

パシッ 
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:22:19.01 ID:svCzqJmho

穂乃果「……そっちこそ、部に入らないの?」 

パシッ 

友人「私が? いやぁ、邪魔でしょ」 

パシッ 

穂乃果「邪魔って……」 


トントン 


友人「勝ち~」 

穂乃果「どうして自分のことそういう風に言うの?」 

友人「え?」 

穂乃果「寂しいよ」 

友人「……」 

穂乃果「ねぇ……学校サボって、どこ行ってたの?」 

友人「それ聞くかな、普通」 

穂乃果「聞くよ。友達だから」 

友人「穂乃果と私はさ、育った環境が違うんだよ」 

穂乃果「え……?」 

友人「きっと、両親や絢瀬先輩に大切に育てられたんだ。見ていたら分かる」 

穂乃果「……」 

友人「こんな私でも、普通に接してくれる。貴重な人物だよ」 

穂乃果「……?」 

友人「きっと、世界が認めてる。 
    高坂穂乃果を中心に世界が回ってる、みたいな」 

穂乃果「……意味がわからないよ?」 

友人「逆に私は、居てもいなくても同じ。世界の隅で振り回される人物」 

穂乃果「哲学?」 

友人「かもね」 

穂乃果「それで、学校をサボってどこに行ってたの?」 

友人「いや、今の話しでわかってよ。どうでもいいことなんだって」 

穂乃果「私にとってはどうでもいいことじゃないよ」 

友人「私の噂話、聞いてるでしょ?」 

穂乃果「……うん」 

友人「黒い話も色々あったよね」 

穂乃果「……」 

友人「本当の事を言って、距離を取られるのが嫌なの。だから言わないの」 

穂乃果「……」 

友人「誰にでも分け隔てなく接して、楽しそうにしてる穂乃果を見て、和んでいたりしてね」 

穂乃果「……でも」 

友人「?」 

穂乃果「……でもね、私――」 
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:24:36.66 ID:svCzqJmho

穂乃果「絵里ちゃん以外に……深く付き合えている友達っていないんだよ」 


友人「……」 


穂乃果「絵里ちゃんは、友達っていうか、お姉ちゃんっていうか……」 

友人「……」 

穂乃果「同学年で、親しくしてくれる人っていない」 

友人「……そっか」 

穂乃果「……」 


キーンコーン 

 カーンコーン 


穂乃果「着替えに戻ろ」 

友人「そだね」 


穂乃果「……」 

友人「写真、撮ってた」 

穂乃果「?」 

友人「風景とか、人とか、建物とか、動物とか、色んなの」 

穂乃果「学校休んでまで?」 

友人「面白くてしょうがないんだよね。……それが理由で補導されたこともある」 

穂乃果「呆れた……、土日に行けばいいのに」 

友人「その日がいい天候になるとは限らないでしょ。思い立ったが吉日っていうじゃん」 

穂乃果「絵里ちゃんに相談しよ」 

友人「……なにを?」 

穂乃果「友達が写真撮るために学校サボってるって」 

友人「やめて?」 


…… 

… 

―― 夜:絵里の部屋 


絵里「困った子ね」 

穂乃果「本当だよね~」 

絵里「……」 

穂乃果「あ、今度見せてもらおう、そうしよう」 

絵里「嬉しそうね」 

穂乃果「そうかな……?」 

絵里「噂が外れたから?」 

穂乃果「……ううん、違う。……ちゃんと話してくれたから」 

絵里「……そう。良かったわね」 

穂乃果「……うん」 
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:25:43.08 ID:svCzqJmho

…… 

… 


―― 3日後:学校 


女生徒A「……無い」 

女生徒B「なにが?」 

女生徒A「腕時計が無くなってる」 

女生徒B「どこかに置き忘れたんじゃないの?」 

女生徒A「ちゃんと、ここに置いたよ……」 

女生徒B「しょうがない、ほら、探しに行くよ」 

女生徒A「……きっと、アイツだ」 


…… 

… 


―― 教室 


女生徒A「ほら、もう居ない!」 

女生徒B「……」 

女生徒A「先生に言ってくる」 

女生徒B「ちょっと待って」 

女生徒A「え、なに?」 

女生徒B「本当にやったっていう証拠がないよ?」 

女生徒A「じゃあ、どうして居ないのよ」 

女生徒B「それは……知らないけど」 


穂乃果「もぉ……またサボってるし」 


女生徒B「あ、穂乃果さん」 

穂乃果「?」 

女生徒B「最近、あの人と仲いいよね」 

穂乃果「あの人って?」 

女生徒A「あの不良よ!」 

穂乃果「……」 

女生徒B「ちょっと、落ち着いて。それでね、今どこに居るのか知らないかな?」 

穂乃果「知らないけど、何かあったの?」 

女生徒A「私の腕時計が無くなってるのよ!」 

穂乃果「……ちゃんと探した?」 

女生徒A「当たり前でしょ! 大事なものなんだから!」 

女生徒B「だから、落ち着きなさいって!」 

女生徒A「っ!」ビクッ 
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:26:55.94 ID:svCzqJmho

女生徒B「大切な時計失くして焦るのはわかるけど……ちゃんと判断しないと」 

女生徒A「……」 

穂乃果「ちょっと待ってて、電話してみるから」 

女生徒B「……お願い」 

女生徒A「アイツが盗ったに決まってる」 

女生徒B「私は……そうは思えない……」 

女生徒A「どうしてよ?」 

女生徒B「穂乃果さんと一緒のところを見てると……どうしてもね……」 

女生徒A「…………」 


穂乃果「あ……出た」 

『えっと、今日は線路を撮りに行こうかなぁなんて』 

穂乃果「それはいいから、今どこ?」 

『……バスの中だけど?』 

穂乃果「戻ってきて。大事な話があるから」 

『話し……?』 

穂乃果「……うん」 

『……』 

穂乃果「ちゃんと戻ってきてよ?」 

『なにがあったの?』 

穂乃果「それは……」 

女生徒B「貸して」 

穂乃果「……」 

女生徒B「私の友達が腕時計を失くしたんだって」 

『……なるほどね、わかった』 

女生徒B「急いでね」 

『はいはい』 


穂乃果「……」 


…… 

… 
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:29:11.92 ID:svCzqJmho

―― 昼休み:2年生の教室 


絵里「えっと、穂乃果は……」 

クラスメイト「あっ、絢瀬先輩っ」 

絵里「見当たらないんだけど……どこに行ったか知らない?」 

クラスメイト「高坂ですかっ、し、知らないです」 

絵里「……そう。ありがと」 

スタスタ 


クラスメイト「あ…絢瀬先輩と話が出来た……」 

女生徒「なに鼻の下伸ばしてんのよ」 

クラスメイト「この学校の有名人だぞ……嬉しいに決まってる」 

ハンサム男子「キミには高値の花だよ」 

女生徒「あんたもね」 


…… 

… 


―― 中庭 


絵里「あら?」 



女生徒A「ほら、言ったとおりじゃない!」 

友人「……」 

穂乃果「どうして……」 

女生徒B「どうして盗ったりなんか……」 

友人「さぁね」 

女生徒A「信じられない……。謝るどころかこの態度……」 


絵里「穂乃果」 

穂乃果「あ……」 

絵里「なにがあったの?」 

穂乃果「……」 


友人「これで停学かな?」 

女生徒B「あなたね、今自分がどういう立場にあるか分かってるの!?」 

友人「……」 

女生徒A「もういいよ! 先生に言ってくるから!」 

友人「……」 


絵里「ちょっと待って」 

601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:30:43.14 ID:svCzqJmho

女生徒A「な、なんですか?」 

絵里「一つ聞きたいことがあって。先生に報告するのはその後でいいわよね」 

女生徒A「え……」 


絵里「ねぇ、あなた」 

友人「……はい?」 

絵里「どうして戻ってきたりしたの?」 

友人「え……?」 

絵里「反省したのなら、ちゃんと謝るはずよね」 

友人「……」 


女生徒A「泥棒なんだから、常識なんて持っていないんですよ!」 


絵里「滅多なこと口にしないで」 


女生徒A「――!」 

穂乃果「……」 


絵里「穂乃果から話を聞いただけだけど、あなたの行動がおかしいわ」 

友人「……」 

絵里「魔が差したのなら……物は処分してくるはず」 

友人「……そ、それは」 

絵里「本当はあなた、盗ってないんじゃない?」 


女生徒A「なにを言っているんですか!」 

女生徒B「本人が持ってたんですよ……?」 


絵里「私はその本人に聞いてるの」 


女生徒A「……」 


絵里「答えて?」 

友人「……」 

絵里「それじゃ、質問を変えるわね。……その腕時計、どこにあったの?」 

友人「……水飲み場です」 


女生徒A「は――?」 

女生徒B「どういうこと?」 

穂乃果「……」 
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:32:25.06 ID:svCzqJmho

友人「いつも、体育の時間……顔を洗ってるの見てたから」 

絵里「そこに置いてあるだろうって思ったわけね」 

友人「……」 


女生徒B「ちょっと!?」 

女生徒A「えっと……」 

穂乃果「なぁんだ」 


絵里「――どうして、本当のことを言わなかったの?」 

友人「……えっと」 

絵里「あなた――……穂乃果を試したわね」 

友人「っ!」ビクッ 


絵里「――ッ!」 

パァン 

友人「――っ」 


女生徒A.B「「 っ!? 」」 

穂乃果「絵里ちゃん!?」 


絵里「……」 

穂乃果「どうして叩くの!?」 

絵里「どいて、穂乃果」 

穂乃果「いやだよ!」 

絵里「……」 

友人「どいて」 

穂乃果「え……」 

友人「絢瀬先輩の言うとおり……私が停学になったら……穂乃果はどうするんだろうって思ってた」 

絵里「……」 

友人「友達でいてくれるのかなって……」 

絵里「あなたがどういう境遇に居るのかは知らないけど――」 


絵里「穂乃果の信頼を裏切るようなことだけは、絶対に許さないわよ」 


友人「――はい、すいませんでした」 


絵里「謝るのは私じゃないわよね」 


友人「……ごめん、穂乃果」 

穂乃果「い、いいよ別に。……というか、どうして私が謝られないといけないの」 

友人「いや、だって……」 

穂乃果「気にしてないから、ね?」 
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:33:38.52 ID:svCzqJmho

絵里「あなた達も、この子に謝りなさい」 


女生徒B「は、はい……」 

女生徒A「いえ、謝るのは私です。……ごめんなさい。泥棒扱いして」 

友人「……」 


絵里「……これで、一件落着かしら」 

穂乃果「……じぃー」 

絵里「な、なに?」 

穂乃果「叩かなくてもいいよね」 

絵里「つい、ね」 

穂乃果「……」 


…… 

… 
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:34:26.29 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋 


コンコン 

「ほのか」 


穂乃果「……」 


「ちょっと、居るんでしょ? 返事して?」 


穂乃果「穂乃果はもう寝ました」 


「やっぱりまだ怒ってるのね」 


穂乃果「叩かなくてもよかったよ」 


「それは……、感情的になってしまって」 


穂乃果「そうですか、わかりました」 


「どうして敬語なのよ……」 


穂乃果「おやすみ」 


「あ、ちょっと、開けるわよ?」 


穂乃果「ダメ」 


「……どうしてそこまで怒るの」 


穂乃果「謝ってないよね」 


「あそこで私が謝るのは違うでしょ」 


穂乃果「でも、フォローは出来たはずだよ?」 


「それは、そうだけど……」 


穂乃果「おやすみ」 


「あぁ、穂乃果ってば……」 


「なにしてるの、あなた達……」 


「お、おばさま……」 


穂乃果「……」 



…… 

… 
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:36:04.26 ID:svCzqJmho

―― 居間 


母「――それで引っ叩いてしまったと」 

絵里「……はい」 

母「気にすることないわよ。放っておけばそのうち出てくるでしょ」 

絵里「でも……」 

母「絵里が怒っているところをみて、ちょっと驚いているだけだから」 

絵里「……」 

母「これを機に、お互い距離を置いたほうがいいのかもね」 

絵里「……そうですね」 


…… 

… 


―― 翌日:2年生の教室 


友人「お、おはよう」 

穂乃果「……おはよう」 

友人「その……昨日はごめんね?」 

穂乃果「いいよ、別に」 

友人「あ……怒るよね、それはもちろん」 

穂乃果「ねぇ、どうして写真に拘るの?」 

友人「え……?」 

穂乃果「だって、学校をサボってまですることなんでしょ?」 

友人「まぁ……うん」 

穂乃果「理由を聞かせてよ」 

友人「えっと……」 

穂乃果「言いにくいかもしれないけど、昨日の今日だから。 
     これからはサボれないんだよ?」 

友人「……そうだよね」 

穂乃果「……」 

友人「私の家、色々と複雑でさ……。家族とあまり、話をしてないんだよね」 

穂乃果「…………」 

友人「だから、気を紛らわす為に……色んなとこに行ったりしてた」 

穂乃果「色んなとこって?」 

友人「そこは、穂乃果が知らなくていいとこ。 
    ……まぁ、常識はずれのことはしてないから」 

穂乃果「……うん」 

友人「それでも、私の年齢の子が居るような場所じゃなくて… 
   注意されたりするんだよね」 

穂乃果「……」 
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:38:36.46 ID:svCzqJmho

友人「そこでさ、私が持ってる……その、写真を……見られてしまって」 

穂乃果「……うん」 

友人「いい写真だって、褒められた」 

穂乃果「……」 

友人「初めて他人に……自分の……なんだろ、趣味……実力……能力?」 

穂乃果「特技?」 

友人「そう、それ。……自分の持ってるモノを褒められたから嬉しくて」 


友人「写真を撮っては、そこへ持って行ったりしてた」 


友人「だけど、もう来るなって言われて。 
   その写真を撮ることで、人生やり直せーみたいなこと言われて」 

穂乃果「……」 

友人「行くことをやめても……見せられる人が居ないから、撮るだけしかなくて」 

穂乃果「……」 

友人「どんな写真なら、人に認められるのかなって考えたら……ちょっと楽しくて」 


友人「色んな写真撮ってみたくて……、だから……サボって行ってました」 

穂乃果「そっか」 

友人「昨日、絢瀬先輩に怒られて……ちょっと、嬉しかったりして……あはは」 

穂乃果「すぐ素直になったよね」 

友人「先生や人に怒鳴られることはしょっちゅうあるけど、みんな、所詮は他人事なんだよね」 

穂乃果「……」 

友人「だから、何のために怒っているんだろって……一歩引いて見ちゃって」 


友人「誰のために怒っているんだろ、って冷めちゃう」 


友人「だけど、絢瀬先輩は……穂乃果の為に怒ってたから……怖かった」 

穂乃果「……」 

友人「そういう怒りって、わかるでしょ?」 

穂乃果「うん」 

友人「……」 

穂乃果「そっか……そういうことだったんだ」 

友人「呆れた?」 

穂乃果「ううん、そんなことないよ」 

友人「そっか……」 

穂乃果「一つ気になるんだけど、どうして写真を撮ってること隠してたの?」 

友人「そ、それは……その……」 

穂乃果「いつから撮ってるの?」 

友人「えっとぉ……中学に……入ってから、かなぁ」 

穂乃果「大体2年位まえだよね。 
     その持ってる写真って、今でも持ってる?」 

友人「……見せないよ?」 
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:40:11.42 ID:svCzqJmho

穂乃果「どうして? 褒められるくらい良い写真なんでしょ、見せてよ」 

友人「いやぁ……穂乃果には見せらんないわ」 

穂乃果「どういう意味?」 

友人「友達でいられなくなるかも……」 

穂乃果「……?」 

友人「でも……本人に、承諾を得ないとダメだよね……」 

穂乃果「???」 


友人「……ごめん、穂乃果。これなんだ!」 

スッ 


穂乃果「……」 


穂乃果「いつ撮ったの?」 


友人「入学して、少し経った頃。 
   二人、楽しそうだったから……パシャッって」 

穂乃果「…………」 


女生徒B「穂乃果さんと、絢瀬先輩……か」 

女生徒A「……隠し撮り?」 

友人「ちがっ、くないけど……!」 


穂乃果「そっかそっか……」 


友人「ほ、穂乃果……?」 


穂乃果「写真……撮られてて……知らないトコで褒められてたんだ……びっくりだねぇ」 


友人「あの、距離を取らないでくれるかな……」 

女生徒B「普通は引くよね」 

女生徒A「……うん」 

友人「だから見せたくなかったのに……!」 


穂乃果「えっと、次の授業は……」 

友人「ごめんって、これあげるから!」 

穂乃果「他にも撮ってたりしないよね」 

友人「まぁ、その……すいません」 

穂乃果「……」スッ 

友人「目をそらさないで……、今、結構キツイ!」 

女生徒A「……良い写真だよね」 

女生徒B「そうだね。……二人並んで、笑顔で」 

穂乃果「そう言われると……ちょっと恥ずかしい」 

友人「……」 
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:41:18.50 ID:svCzqJmho

穂乃果「……どうして言ってくれないの?」 

友人「?」 

穂乃果「言ってくれたら……よかったのに」 

友人「穂乃果と絢瀬先輩ってさ、二人一緒に居る時が……自然っていうか、 
   良い空気を出しているんだよね」 

女生徒B「それは……わかるかも」 

女生徒A「二人でいる時のほうが笑ってるって気がする」 

穂乃果「……そうかな?」 

友人「そうなんだよ。……その空気を壊したくなかったからさ」 

穂乃果「ふぅん……」 

友人「ほんと、ごめん! 穂乃果!」 

穂乃果「わたし達、芸能人じゃないんだからね」 

友人「はい、そうですね」 

穂乃果「絵里ちゃんにも、ちゃんと自分で話ししてよ?」 

友人「――え!?」 

穂乃果「当たり前のことだよ?」 

友人「ま、マジで……?」 

女生徒A「昨日の絢瀬先輩……怖かったからね」 

穂乃果「いつもはあんな風じゃないから、平気だよ」 

友人「いやいや、穂乃果だからでしょ」 

穂乃果「いいから、ちゃんと話ししてね」 

友人「……わかった」 


女生徒A「それから、私からも。本当にごめんなさい」 

女生徒B「私も……ごめん」 

友人「……いいって。……そういう、疑われるようなことしてたんだから」 

穂乃果「これからは、ちゃんと授業に出ないとダメだよ?」 

友人「……そうだね」 


…… 

… 
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 09:42:32.93 ID:svCzqJmho

―― 冬休み前 


友人「穂乃果って、もう進路を決めてるんでしょ?」 

穂乃果「うん。――音ノ木坂学院」 

友人「そこってどんなとこ?」 

穂乃果「資料でしか見たことないから……上手く説明できない」 

友人「資料ってどこにあるの?」 

穂乃果「進路室。興味あるなら先生に相談してみたら?」 

友人「そうしてみる」 


…… 

… 


友人「渋い顔された」 

穂乃果「……そっか」 


…… 

… 


―― 高坂邸 


穂乃果「ねぇ、お母さん……絵里ちゃんは?」 

母「図書館に行ったわよ」 

穂乃果「勉強?」 

母「そうだと思うけど」 

穂乃果「私も行ってこようかな……」 

母「せっかくの冬休みなんだから、手伝って」 

穂乃果「……帰ってからでいい?」 

母「受験生の邪魔をしないの」 


…… 

… 

610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:29:18.89 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋 


穂乃果「……」 


コンコン 

「私だけど、ちょっといい?」 


穂乃果「どうぞー」 

絵里「……勉強してるのかと思ったら、漫画読んでるのね」 

穂乃果「さっきまでしてたんだよ」 

絵里「それなら、別にいいんだけど」 

穂乃果「……なにか用?」 

絵里「なんだかトゲがあるような気がするんだけど、気のせいかしら」 

穂乃果「最近……置いていくよね」 

絵里「なにを?」 

穂乃果「私を」 

絵里「拗ねてるの?」 

穂乃果「拗ねてなんかないよー」 

絵里「一人でゆっくり勉強したかったのよ。気分転換にもなるから」 

穂乃果「ふぅん、穂乃果がいると邪魔なんだ」 

絵里「そうは言ってないでしょ」 

穂乃果「そう言ってるように聞こえた」 

絵里「なんだか虫の居所が悪いみたい。……邪魔したわね」 


スーッ 

 パタン 


穂乃果「……」 


…… 

… 
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:33:54.60 ID:svCzqJmho

―― 絵里の部屋 


絵里「……やっぱり、おばあさまの危惧していた通りなのかしら」 


絵里「このままだと、穂乃果が入学する頃には……」 


絵里「私一人じゃ、どうにもならないけど……」 


コンコン 


絵里「はい」 


「……」 


絵里「……穂乃果?」 


「えっと……」 


絵里「……」 


「あのね……」 


絵里「ふぅ……まったく」 


「開けていい……?」 


絵里「今日は機嫌が悪いみたいだから、話なんてできないわね」 


「そんなことない……よ」 


絵里「今、勉強中なのよ」 


「邪魔……しないから」 


絵里「もぅ……しょうがないわね。入っていいわよ」 


スーッ 

穂乃果「ごめんね……?」 

絵里「どうして謝るの?」 

穂乃果「なんか、態度……悪かったよね」 

絵里「……」 

穂乃果「……嫌な気分にさせたよね」 

絵里「はぁ……、私も、まだまだダメね」 

穂乃果「?」 

絵里「そこ座って。久しぶりに話しをしましょ」 

穂乃果「勉強は……?」 

絵里「今日はお終い。ついでに明日……、一日中ってわけにもいかないけど」 

穂乃果「……?」 
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:34:43.03 ID:svCzqJmho

絵里「明日のお昼、どこか出かけましょうか」 

穂乃果「いいの?」 

絵里「えぇ。穂乃果の言う通り、最近は一緒に居る時間が少なかったから」 

穂乃果「……!」 

絵里「どこ行きたい?」 

穂乃果「あ…明日って、クリスマスイヴだよ? 本当にいいの?」 

絵里「変な気を遣わないで。そんなこと言ってると、行くの止めるわよ?」 

穂乃果「じゃ、じゃあ商店街に行こうよ! イルミネーションが綺麗だって」 

絵里「お昼って言ったでしょ」 

穂乃果「あ……そっか」 

絵里「わかったわ、夕方に変更しましょうか」 

穂乃果「――うん!」 


…… 

… 
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:35:58.56 ID:svCzqJmho

―― クリスマス・イブ 


穂乃果「うわっ、綺麗……!」 

絵里「……――。」 

穂乃果「凄いね、光が溢れてる!」 

絵里「えぇ、本当に綺麗……」 

穂乃果「ついでに雪も降ればいいのにねぇ~」 

絵里「それは贅沢よ」 

穂乃果「あはは、そうだよね……」 


絵里「……」 

穂乃果「……」 


絵里「あと、何回……こうして、穂乃果と一緒にイルミネーションを見られるのかしら」 

穂乃果「?」 

絵里「少なくとも、私が高校を卒業するまでの……3回よね」 

穂乃果「……そう考えたら、少ない気がするね」 

絵里「あ、でも……穂乃果に素敵な人が現れるかもしれない」 

穂乃果「えぇ~?」 

絵里「そうなったら、これが最後かも?」 

穂乃果「もぅ~、変なこといわないでよ~」 

絵里「ふふっ」 


…… 

… 


絵里「寒くない?」 

穂乃果「だいじょうぶ~、暖かいよ~」 

絵里「なんだか、急に冷え込んできたわね……」 

穂乃果「そうかな? マフラー借りる?」 

絵里「まだ平気よ」 

穂乃果「我慢しなくていいからね?」 

絵里「してないわよ。……穂乃果こそ、私に貸して風邪ひいちゃいそうじゃない」 

穂乃果「そんなことないよ!」 

絵里「ふふっ」 

穂乃果「……今日の絵里ちゃん、よく笑うね」 

絵里「え、そう?」 

穂乃果「うん。だから、暖かい」 

絵里「もぅ、なんだか恥ずかしいじゃない……」 

穂乃果「えへへ」 
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:36:56.15 ID:svCzqJmho

絵里「あ――……」 


穂乃果「?」 


絵里「雪よ、穂乃果……」 


穂乃果「あ、本当だ……」 


絵里「…………」 


穂乃果「ホワイト・クリスマスだ」 


絵里「…………」 


穂乃果「ラッキーだね」 


絵里「ねぇ、穂乃果」 


穂乃果「?」 


絵里「どこか、遠くにね……、綺麗なオーロラの見える場所があるんだって」 


穂乃果「オーロラ……」 


絵里「おばあさまが生まれた、ロシアでも見られるそうよ」 


穂乃果「絵里ちゃん、見たことあるの?」 


絵里「ううん、まだ見たことないわ」 


穂乃果「そっかぁ……見てみたいね」 


絵里「そうね……」 


穂乃果「見てみたい、じゃなくて……見に行こうよ」 


絵里「……オーロラを?」 


穂乃果「オーロラを!」 


絵里「そうね……穂乃果と一緒に……、オーロラを見られたら、素敵ね」 


穂乃果「うん! きっと、宝物になるよ!」 


絵里「えぇ、きっとね――」 


…… 

… 
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:38:00.51 ID:svCzqJmho

―― 大晦日 


絵里「穂乃果、そっち持って」 

穂乃果「はーい」 

絵里「いい? せーので、持ち上げるのよ?」 

穂乃果「わかった」 


絵里穂乃果「「 せーの 」」 


絵里「よいしょ」 

穂乃果「よいしょー」 


絵里「後ろ気をつけて」 

穂乃果「大丈夫だよー」 


母「あ、こっちに持ってきて」 


絵里穂乃果「「 はーい 」」 


母「ゆっくり、ゆっくりね」 


絵里「だいじょうぶ、穂乃果?」 

穂乃果「余裕余裕~」 


母「はい、ストップ」 


絵里「それじゃ、ゆっくり降ろすわよ」 

穂乃果「うん」 


母「気をつけてよ、二人とも」 


絵里「よいしょ、っと」 

穂乃果「……ふぅ」 


母「箒でちゃんと掃いてね」 

絵里「わかりました」 

穂乃果「箒ってどこ?」 

絵里「廊下の隅よ」 

穂乃果「わかった、取ってくる!」 

テッテッテ 

母「蕎麦を用意してるから、掃除が終わったら食べましょ」 

絵里「はい」 


絵里「今年も、もう終わりなんですね……」 


…… 

… 
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:40:05.88 ID:svCzqJmho

―― 節分 


穂乃果「鬼はーうちー」 

パラパラ 


絵里「ちょっと、穂乃果! 私は鬼じゃないわよ?」 


母「なんで豆まきなんかしてるの、片付け大変なのよ」 

穂乃果「季節を体験」 

母「子供じゃないんだから、――って、この豆、小豆じゃないの!」 

穂乃果「ちゃんと洗って返すから」 

母「商売品なんだから……もう使えないじゃない……」 

絵里「だから言ったのに」 

穂乃果「じゃあじゃあ、おやつに作ってもらおう、そうしよう~」 

母「反省の色、ゼロね……。希望通り、飽きるまでまんじゅうを食べさせてあげる」 

穂乃果「やった! 好きなモノは飽きることはないよ」 

絵里「それはどうかしらね」 


絵里「あ、おばさま。先日話した件ですけど」 

母「あぁ、うん。どうだった?」 

絵里「出席してくれるそうです。入学式も」 

母「そう、よかったじゃない」 

絵里「……――はい」 

穂乃果「絵里ちゃんのおばあちゃんとお母さんが来てくれるんだ!」 

母「穂乃果、おばあちゃんに連絡しておいてね」 

穂乃果「わかった!」 


…… 

… 
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:41:37.32 ID:svCzqJmho

―― 高校入試当日:学校 


友人「絢瀬先輩、大丈夫かな?」 

穂乃果「大丈夫だよ、絵里ちゃんなら余裕余裕~」 

友人「穂乃果がそう言うんなら、そうなんだろうけどさ」 

穂乃果「やっと試験が終わる……ということは」 

友人「……ということは?」 

穂乃果「いっぱい遊べる!」 

友人「本当、穂乃果って絢瀬っ子だよね」 

穂乃果「……なにそれ?」 

友人「さぁ……? 言った自分でも分からん」 


男生徒「こ、高坂っ! こ、これをっ」 

穂乃果「手紙……?」 

友人「もしかして、ラブレター……?」 


「おぉー! アイツ本当にやりやがった!」 

「すげー」 


穂乃果「え?」 

男生徒「あ、違くて……その、絢瀬先輩に……」 

友人「渡せって?」 

男生徒「女子高に受験してるんだろ、来年にはもう会えないから……た、頼むっ」 

穂乃果「…………」 

友人「いやぁ、わざわざ穂乃果を中継しないで自分で渡しなよ」 

男生徒「これに場所を書いてあるから……!」 

穂乃果「うーん……」 

友人「下駄箱にでも入れておけばいいんじゃないの?」 


女生徒B「似たような手紙が零れ落ちたの見たことある」 

女生徒A「え、本当に……?」 

女生徒B「うん、凄い人気だよね」 

女生徒A「……へぇ」 


友人「そういうこと?」 

男生徒「……あぁ」 

穂乃果「……」 

友人「まぁ、決めるのは絢瀬先輩だよね」 

男生徒「恥をしのんで頼む、高坂!」 

穂乃果「多分ね――……」 


…… 

… 
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:42:35.66 ID:svCzqJmho

―― 夜:穂乃果の部屋 


絵里「悪いんだけど、返しておいてくれる?」 

穂乃果「……そういうと思って、受け取ってないよ」 

絵里「あら、そう……」 

穂乃果「下駄箱にも手紙が入ってるって、本当?」 

絵里「……誰から聞いたの?」 

穂乃果「クラスの友達から」 

絵里「……」 

穂乃果「それで、どうなの?」 

絵里「あのね、穂乃果……」 

穂乃果「?」 

絵里「私、明日も試験なのよ」 

穂乃果「そだね」 

絵里「わざわざ呼び出して、それなの?」 

穂乃果「うん」 

絵里「…………部屋に戻るわね」 

穂乃果「リラックスする為にも話し聞かせてよ!」ガシッ 

絵里「あ、ちょっと! 余計なストレス感じるわよ!」 

穂乃果「本当なんだ!?」 

絵里「……まぁね」 

穂乃果「ふぅん……」 

絵里「でもね、私はそういう手段、どうなのかと思うのよ」 

穂乃果「直接渡せってこと?」 

絵里「そうよ。気持ちを伝えるなら直接がいいと思うわ」 

穂乃果「……なるほど」 

絵里「でも、今はそんなこと考えられないんだけど」 

穂乃果「どうして?」 

絵里「やりたいことがあるからよ」 


…… 

… 
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 11:43:26.05 ID:svCzqJmho

―― 中学卒業式 


穂乃果「はい、どうぞ」 

絵里「ありがとう」 

穂乃果「ついに卒業だね」 

絵里「えぇ。……コサージュを付けると、いよいよって気がしてくる」 

穂乃果「……」 

絵里「?」 

穂乃果「……?」 

絵里「どうしたの、首なんか傾げて……」 

穂乃果「ううん、なんでもない」 

絵里「……?」 


穂乃果「あ、お母さんたちだ」 

絵里「あ……来てくださったのね」 


穂乃果「先に言っておくね」 

絵里「?」 


穂乃果「卒業おめでとう、絵里ちゃん」 

絵里「……――ありがとう」 


…… 

… 
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:14:14.71 ID:svCzqJmho

―― 春休み 


友人「お邪魔します」 


絵里「あら、いらっしゃい」 

友人「……」 

絵里「どうしたの?」 

友人「普段着の絢瀬先輩を見るのって初めてだから、なんか、変な感じです」 

絵里「…………」 

友人「?」 

絵里「隠し撮りはもうやめてね?」 


友人「…………」 

ガクッ 


友人「」 


穂乃果「あれ、どうして膝をついてるの……?」 

絵里「ちょっと苛め過ぎたみたい」 


…… 

… 


絵里「あなたも音ノ木坂学院に?」 

友人「……はい」 

絵里「なんだか、元気が無いわね」 

穂乃果「会うたびに隠し撮りの話しされたら、それは落ち込むよ」 

友人「」 

絵里「隠し撮りって、表現は悪いけど……割りと正面からの画が多いのよね」 

穂乃果「うん……私たちが気づかないのも変だよね」 

友人「二人って、意外と周りを見てないんですよね。話に夢中って感じで」 

絵里「……そう?」 

穂乃果「そうなのかな?」 

友人「……そうだよ」 


…… 

… 
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:15:11.42 ID:svCzqJmho

絵里「それじゃ、勉強頑張ってね。私は出かけてくるから」 

穂乃果「どこ行くの?」 

絵里「友達と遊びに行くのよ」 

穂乃果「そっか……気をつけてね」 

絵里「帰るのは夕方になるから、おばさまに伝えておいて」 

穂乃果「うん、行ってらっしゃい」 

絵里「行ってきます」 

スタスタ 


友人「家族って感じだね」 

穂乃果「……家族だよ?」 

友人「いやぁ、血が繋がってないのに、より家族らしいって意味」 

穂乃果「そんな風に見えるんだ……」 

友人「よし、それじゃ、穂乃果先生……よろしくお願いします」 

穂乃果「うん、任せて。……と言いたいけど、今日は少しだけにしよう」 

友人「え、なんで?」 

穂乃果「まだ勉強を初めてそんなに経ってないでしょ。少しずつだよ」 

友人「……わかった」 


…… 

… 
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:16:39.21 ID:svCzqJmho

―― 高校入学式当日 


絵里「どうかしら?」 

穂乃果「凄い似合ってる! 胸元のリボンがカワイイよ!」 

絵里「ふふ、私も気に入ってるのよね」 

穂乃果「……うん、私も頑張るよ!」 

絵里「ほら、早く行かないと、学校に遅刻するわよ」 

穂乃果「あ……そうだった。絵里ちゃんと登校できないんだよね」 

絵里「何を今更……」 

穂乃果「はぁ~あ、早く1年過ぎないかなぁ」 

絵里「油断してると、取り返しの付かないことになるわよ」 

穂乃果「脅かさないでよ~」 

絵里「本当のことよ。これからの1年、穂乃果にとって大事な時期なんだから」 

穂乃果「はぁい」 

絵里「見送ってあげるから、外に出ましょ」 

穂乃果「おばぁちゃんたちは?」 

絵里「後から来るって。今日中に帰るから、ちゃんと挨拶してね?」 

穂乃果「わかってるよぉ。……帰っちゃうんだよね」 

絵里「えぇ、残念だけど」 

穂乃果「おばぁちゃん達、数年ぶりのはずなのに……なんだか、変わらないって雰囲気だった」 

絵里「……そうね、ずっと変わらない、友達の関係」 

穂乃果「その二人の孫が、こうして一緒に居るって、不思議だよね」 

絵里「本当にね。……不思議で済ませていいことなのかなって思うけど」 

穂乃果「……?」 

絵里「運命、っていうのかしら」 

穂乃果「おぉ、絵里ちゃんからそんな言葉が聞けるとは」 

絵里「もぅ、茶化すなんて……置いていくからね」 

スタスタ 

穂乃果「あ、待って!」 


…… 

… 
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:17:38.16 ID:svCzqJmho

―― 初夏 


友人「どうよ?」 

穂乃果「結構間違えてる」 

友人「くはっ……もうダメだ」 

穂乃果「少しずつだけど、確実に点数上がってるよ」 

友人「ほんと?」 

穂乃果「うん」 

友人「……よし、頑張ろ」 

穂乃果「私も頑張らないと」 



…… 

… 



―― 初秋 


女生徒A「ねぇ、来週の日曜日、遊びに行かない?」 

穂乃果「先週もそう言ってたよね」 

女生徒A「息抜きも大事」 

穂乃果「それも言ってた」 

女生徒A「穂乃果は余裕でしょ?」 

穂乃果「油断大敵だけど……どうしよっかな」 

友人「私は気にしなくていいから、遊んできてよ」 

穂乃果「……やっぱり止めとく」 

女生徒A「あぁ、もう……あんたも来てよ」 

友人「私は余裕がないの。2年間のツケを払ってるところだから」 

女生徒A「はぁ……わかったよ。……じゃあ、来月には行こうね」 

穂乃果「うん……来月なら、いいよ」 


…… 

… 
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:18:16.51 ID:svCzqJmho

―― 初冬 


穂乃果「今日は寒いねぇ~」 

友人「うわっ、もうこんな季節!?」 

穂乃果「そんな驚くこと?」 

友人「この間まで暑いって言ってたのに……」 

穂乃果「そうだね、あっという間だった」 

友人「あぁー、なんか焦ってきた……」 

穂乃果「じゃあ、寄り道しようよ」 

友人「いいけど……どこに行くのさ?」 

穂乃果「ここからだとちょっと距離あるけど、神社があって」 

友人「神社ねぇ……。……知り合いでもいんの?」 

穂乃果「そうじゃないけど。……あ、巫女さんとは顔見知り」 

友人「やっぱりか。……穂乃果って顔広いよね」 

穂乃果「色んなとこ行くから、たまたまだよ」 

友人「あ、そこでさ、バイト募集とかしてないかな? 高校入ったらバイト始めたいから」 

穂乃果「バイトしてどうするの?」 

友人「カメラ買う」 

穂乃果「……カメラなら、部に入ればいいんじゃないかな」 

友人「あぁ、それはいい考え!」 

穂乃果「それに、巫女のバイトは、高校生不可だって」 

友人「なぁんだ……結局ダメなんじゃん」 

穂乃果「……うん」 

友人「どうかした?」 

穂乃果「ううん、なんでもない」 


…… 

… 
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:19:31.64 ID:svCzqJmho

―― 高校入試:当日 


友人「オープンキャンパスでも来たけど……やっぱり緊張する」 

穂乃果「……」 

友人「集中してるね……」 

穂乃果「…………」 


友人「……?」 


友人「穂乃果?」 

穂乃果「……?」 

友人「どこか痛いの?」 

穂乃果「どうして?」 

友人「顔色悪いっていうか……」 

穂乃果「緊張してるみたい……あはは」 

友人「穂乃果なら大丈夫だって、今までの時間を信じなよ」 

穂乃果「……うん、ありがと」 

友人「二人で合格するよ」 

穂乃果「――うん」 


…… 

… 


―― 合格発表 


穂乃果「……っ」 

友人「あのさ、穂乃果……」 

穂乃果「な、なに?」 

友人「緊張しすぎじゃない……?」 

穂乃果「緊張するよっ……だってっ、だって!」 

友人「落ち着いて、深呼吸」 

穂乃果「すぅぅ……はぁぁ」 

友人「先に見てこようか?」 

穂乃果「う、ううんっ、一緒に、一緒にっ!」 

友人「……うん」 

穂乃果「~~っ!」 

友人「…………」 


穂乃果「どうか、どうかっ!」 


穂乃果「合格していますように――」 


…… 

… 
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:23:24.90 ID:svCzqJmho


―― 高坂穂乃果 高校1年生 ―― 



絵里「それじゃ、改めて」 



絵里「入学おめでとう、穂乃果」 

穂乃果「――うん」 


絵里「あら、意外と普通ね」 

穂乃果「今を忘れないようにしようと思って」 


絵里「じゃあ、忘れられない風景を見せてあげる」 

穂乃果「……?」 

絵里「振り返ってみて」 

穂乃果「うん……」 


ザァァァ 


穂乃果「……うわ」 

絵里「…………」 


穂乃果「桜が綺麗……」 

絵里「――願いが一つ、叶った」 


穂乃果「……願い?」 

絵里「穂乃果と一緒に、此処――音ノ木坂学院を二人で並ぶという私の願い」 


穂乃果「…………」 

絵里「私のおばあさまと、穂乃果のお祖母様、二人がこの学校の設立に貢献したの」 


穂乃果「……」 

絵里「そして、私たちが……此処へ通い、おばあさま達と同じ高校生活を送る」 


穂乃果「~~っ」 

絵里「時を超えて、世代を越えて、私たちがいま、此処に居る」 




絵里「音ノ木坂学院へようこそ、穂乃果――」 


627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/14(月) 12:24:18.91 ID:svCzqJmho

穂乃果「絵里ちゃん!」 

ガバッ 

絵里「うわっ」 


穂乃果「嬉しいよっ」 

ギュウウ 

絵里「……うん、私も」 


穂乃果「……っ」 

絵里「でも、ここからなのよ、穂乃果」 


穂乃果「?」 

絵里「穂乃果が入学して、ようやくスタートなの」 

穂乃果「学校生活が?」 

絵里「そう、楽しい学校生活が」 


穂乃果「うん……そうだね!」 

絵里「わかったら、離してくれる? 他にも入学生が居て、少し恥ずかしいのよ」 

穂乃果「もうちょっと!」 

ギュウウ 

絵里「もぅっ、穂乃果ったら!」 


友人「喜び合う先輩後輩。……よし」 


パシャッ 

629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 09:05:29.86 ID:vgeC8z48o

…… 

… 


―― 1年生の教室 


キーンコーン 
  
 カーンコーン 


穂乃果「……ここからの景色、夢で見たような?」 


友人「穂乃果ぁ~」 


穂乃果「?」 

友人「どうして穂乃果と別のクラスなわけ~?」 

穂乃果「神のみぞ知っている」 

友人「あんなに勉強したんだからさ、おまけで一緒のクラスにしてもよくない?」 

穂乃果「あはは、そうだねぇ」 

友人「2分の1で外れるって、そりゃないよ」 

穂乃果「そっちはどう?」 

友人「……まぁ、ボチボチって感じ」 

穂乃果「そっか……」 

友人「これからどうすんの?」 

穂乃果「絵里ちゃんに学校を案内してもらう!」 

友人「出たな、絢瀬っ子」 

穂乃果「今日を楽しみにしてたんだから~♪」 

友人「まぁ、いいや。それじゃ、明日ね」 

穂乃果「一緒に行かないの?」 

友人「ちょっと用があるからさ。バイバイ」 

穂乃果「ばいば~い」 


…… 

… 
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 09:07:33.43 ID:vgeC8z48o

穂乃果「校庭に戻ってきたね」 

絵里「こんなものね」 

穂乃果「うん、ありがとう、絵里ちゃん」 

絵里「これくらい、礼を言われるまでもないから、気にしないで」 

穂乃果「えへへ」 

絵里「どうしたの?」 

穂乃果「楽しい」 

絵里「……そう」 

穂乃果「そういえば、絵里ちゃんは部活に入ってるの?」 

絵里「入ってないわよ」 

穂乃果「でも、帰ってくるの、遅いよね」 

絵里「生徒会に入ってるから」 

穂乃果「そっか、……生徒会に……――生徒会? 1年生の時から!?」 

絵里「そうよ。書記にしてくれって頼んだの」 

穂乃果「ほ、ほほぅ」 

絵里「なによ、そのリアクションは……」 

穂乃果「エリートですね」 

絵里「あのね……。いえ……それはいいかも。……そうね、うん」 

穂乃果「一人で納得してる?」 

絵里「穂乃果、あなたも……――生徒会に入りましょう」 

穂乃果「ゑ!?」 


…… 

… 
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 09:14:59.20 ID:vgeC8z48o

―― 翌週:生徒会室 


絵里「彼女を生徒会の書記に推薦します」 

穂乃果「…………」ボケー 


先生「なんだか、心ここにあらず、って顔してるけど」 


絵里「彼女は成績、人柄、判断力、どれを取っても遜色ないと思います」 


先生「絢瀬さんがそういうのなら、問題はないのだけれど」 

絵里「……」 

先生「わかったわ。理事長にも私から伝えておくから」 

絵里「お願いします」 



…… 

… 


―― 夜:高坂邸 


母「ごほっ」 

穂乃果「お母さん、味噌汁吹き出すなんて……!」 

母「絵里が変なこと言うから……っ……ごほごほっ」 

絵里「変ですか?」 

母「なんで穂乃果なんかを推薦したのよ」 

穂乃果「なんか、って……ひどいっ」 

絵里「素質は充分にあると思いますけど」 

母「あのねぇ……いつも絵里の傍に居たがるような甘えん坊さんに務まるわけ無いでしょ?」 

穂乃果「重ね重ね、ひどいっ」 


…… 

… 


―― 翌日:音ノ木坂学院 


絵里「昨日の夜、言ったこと、ちゃんと覚えているわよね?」 

穂乃果「わかってるよぉ」 

絵里「本当かしら」 

穂乃果「信じてよっ」 

絵里「じゃあ、私のこと、呼んでみて」 

穂乃果「絵里先輩」 

絵里「……ちゃんと続けるのよ?」 

穂乃果「わかってるよ、絵里ちゃん」 

絵里「穂乃果?」 

穂乃果「じょ、冗談だよっ」 
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 09:16:34.92 ID:vgeC8z48o

…… 

… 

―― 1年生の教室 


友人「生徒会!?」 

穂乃果「そうだよ」 

友人「絵里先輩も思い切ったことしたねぇ」 

穂乃果「……それについては、同感だけど」 

友人「まぁ、学校生活を楽しくしてくれそうだし、私も応援するよ」 

穂乃果「うん、やるからには頑張る」 

友人「……」 

穂乃果「……どうしたの、人の顔ジッと見て……?」 

友人「ううん、なんでもない」 

穂乃果「写真部に入ったの?」 

友人「うん。ほら、見て、貸してもらったカメラ」 

穂乃果「……凄いね」 

友人「一眼レフなんだよね~」 

穂乃果「ふぅん」 

友人「リアクション薄……。あのね、画像素子も今までとは全然違――」 


キーンコーン 

 カーンコーン 


穂乃果「チャイム鳴ったよ」 

友人「いいよ、そんなの。分かってないから教えるけど。 
    ピント合わせをAFで行わないし、AE無しだから自分で露出調整しなきゃいけないんだよ!」 

穂乃果「……」 

友人「撮りたい瞬間を見逃さない技術をこのカメラに合わせなきゃいけないの!」 
    
穂乃果「……うん」 

友人「これからもっと勉強しないとだけど、今まで以上の写真が撮れちゃうんだから!」 

穂乃果「……そうだね」 

友人「ちょっと、わかろうとしてないでしょ! シャッタースピードも――」 


先生「いつまで続けるつもり?」 


友人「じゃあね、穂乃果」 

穂乃果「……うん」 

先生「変わり身早いのね」 


…… 

… 
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 09:17:57.94 ID:vgeC8z48o

―― 放課後 


絵里「穂乃果、ちょっといいかしら」 


穂乃果「あ、絵里ちゃ――先輩」 

絵里「理事長から話があるの」 

穂乃果「……私も?」 

絵里「そうよ」 

穂乃果「???」 

絵里「待たせているから、話は途中でね」 


…… 

… 


絵里「去年からこの学校の理事長に就任された方なのよ」 

穂乃果「……そうなんだ」 

絵里「私も、この方が居たから……色々と連携が取れてるのよね」 

穂乃果「ふぅん……。連携……?」 



絵里「ここが理事長室」 

穂乃果「……」 

絵里「緊張してる?」 

穂乃果「ううん」 

絵里「……」 


コンコン 


「どうぞ」 


絵里「失礼します」 

ガチャ 


理事長「高坂穂乃果、だな」 

穂乃果「は、はい」 

理事長「急に呼び出してすまない。早めに話をしておきたくてな」 

穂乃果「?」 

絵里「……」 


理事長「とある理由で、現在の生徒会長を絢瀬に頼んである」 

絵里「……」 

穂乃果「生徒会――……長!?」 

理事長「話していなかったのか?」 

絵里「決定だとは思いませんでしたから」 
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:27:25.56 ID:vgeC8z48o

理事長「こっちも色々と立て込んでいてな。 
     連絡が遅れたが、そういうことになった」 

絵里「はい、わかりました」 

穂乃果「あっさり引き受けた……!?」 


理事長「さっそくだが、本題に入る」 


穂乃果「あ、……はい」 

絵里「……」 


理事長「この学校は代々、神北家の一族が支えていたのだが」 


穂乃果「かみきた……」 


理事長「事情があって、この学校の経営から一時離れることになり、 
     家柄の都合で私が就任することになった」 

穂乃果「……」 

理事長「名を神凪という」 

穂乃果「……かんなぎ……神繋がりですか?」 

理事長「そうだ。……先にキミの疑問に答えておこう」 

穂乃果「?」 

理事長「私は現在二十歳で、一昨年までは学生でありながら学園の理事長をしていた」 

穂乃果「え……!?」 

理事長「今は相棒に任せているが、時々は様子を見に向こうへ戻るだろう」 

穂乃果「通りで若いと……あれ? でも、入学式の時……」 

理事長「あぁ、君たち、新入生を迎え入れたのは私の秘書にあたる人物だ」 

穂乃果「……えっと、どうしてこんなことに?」 

理事長「表向きは彼女が理事長だが、裏事情では私が理事長を勤めることになる」 

穂乃果「理由を答えていません……」 

理事長「話には順序がある、少しずつ話そう」 

穂乃果「は、はい」 

絵里「……」 

理事長「このことを知るのはこの場にいる三人と、私の秘書、計四人になる」 

穂乃果「……」 

理事長「教師たちに伝えていないのは、面倒を増やさないためだ。 
     二十歳の私が理事長に就くというのはやはり異例だろう。 
     反発を避けるという理由もある」 

絵里「……」 

理事長「実際、去年でも面倒があったからな」 

絵里「……はい」 

穂乃果「……」 

理事長「そして、この事実を公にしたくない理由がもう一つ」 

穂乃果「……?」 

理事長「余計な話題を集めたくない」 
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:29:18.09 ID:vgeC8z48o

穂乃果「話題を……? 注目を集めることに問題があるんですか?」 

理事長「……そうだ。予定では来年で此処を去り自分の学園へ戻るつもりだからな」 

穂乃果「……」 

理事長「話題性が無くなったその時、この学校の入学希――」 

絵里「理事長」 

理事長「……?」 

絵里「その話は今、必要ありません」 

理事長「……ふむ」 

穂乃果「?」 

理事長「生徒の自主性に任せる意味も込めて、私は君たちにこの学校を支えて欲しいと思っている」 

穂乃果「……」 

理事長「高坂穂乃果、キミにこの話をしたのは信用に足る人物だと絢瀬に聞いたからだ」 

穂乃果「……」 

理事長「他に、質問があれば聞くとしよう」 

穂乃果「この事実を私に話す理由が信用だと言いましたけど、それだけでは納得できません」 

理事長「……なぜそう思う?」 

穂乃果「他の生徒と同じように、私にも秘密にしておけばよかったのではないかと思って」 

理事長「なるほど、そういう考えにたどり着くか……」チラ 

絵里「……」コクリ 

理事長「その質問には時期が来たら答えよう。今は絢瀬に従っていてくれ」 

穂乃果「……」 


コンコン 


理事長「……」 


ガチャ 


「失礼します」 

理事長「今はおまえが理事長なのだから、この部屋にノックするのはおかしいだろ」 

「あ……、はい。すいません」 

理事長「生徒に見られていないだろうな」 

「はい。それは平気かと」 
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:30:39.80 ID:vgeC8z48o

穂乃果「あ……入学式の……」 

理事長「そうだ、彼女が表向きの理事長ということになる」 

「秘書の夕月と申します」ペコリ 

穂乃果「は、はい……」 

理事長「おい、理事長が丁寧に挨拶をしてどうする」 

夕月「しかし、莉都様の前ではこうなってしまいます」 

理事長「それなら、せめてこの部屋だけにしてくれ」 

夕月「はい、かしこまりました」 


穂乃果「なんだか面白い人達だね」ヒソヒソ 

絵里「……そんなこと言っては失礼よ」 


…… 

… 


穂乃果「それでは失礼します」 

絵里「それでは」 


理事長「絢瀬は少し残っていてくれ、話がある」 

絵里「はい」 


穂乃果「そ、それでは」 


バタン 


夕月「やはり、スーツは着なれません」 

理事長「1年もこの状況なのにまだ慣れないのか、……困ったものだな」 

夕月「そうみたいです……困りました」 

絵里「……」 

理事長「なぜ高坂に伝えていない?」 

絵里「彼女には彼女の高校生活があります。この問題に触れてほしくはありません」 

理事長「このままだと来年には全校生徒に伝えなくてはならない」 

絵里「……」 


理事長「はっきり言っておくが、私はこの学校への愛着を微塵も感じていない」 

絵里「――!」 


理事長「所詮、私たち二人は外部の者」 

絵里「……ッ」 


理事長「守りたかったら自分たちで守れ。話は以上だ」 

絵里「……失礼します」 
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:32:32.16 ID:vgeC8z48o

バタン 


夕月「そうお思いになられるのなら、就任を拒否すればよかったのでは」 

理事長「私が居て邪魔にならないようにはする」 

夕月「……1年居たのに、沸きませんか?」 

理事長「さぁな。……この件に関して、私たちが手を貸すと碌な事にならないだろう」 

夕月「傍観なさるおつもりですか」 

理事長「……なにかと突いてくるな」 

夕月「あの方――絢瀬さんは莉都様のこと、少しは信用なさっていたようです」 

理事長「この学校の運命はもう決まりつつある。 
     それを生徒たち自身で変えなくては意味が無い」 

夕月「なるほど」 

理事長「なにを理解した」 

夕月「縁とは不思議なものですね」 

理事長「まぁいい。私は明日からの2週間、留守にする」 

夕月「来週の歓迎会は欠席ということですね」 

理事長「あぁ、あとは任せる」 

夕月「歓迎会にて、高坂さんの実力を知ることができそうですが」 

理事長「……どういうことだ」 

夕月「先日、絢瀬さんから生徒会を通して企画書を提出していただきました」 

理事長「なぜそれを早く言わない」 

夕月「私が理事長ですから。それとも……愛着が?」 

理事長「……うるさい」 



…… 

… 


―― 廊下 


絵里「心強い人だと思っていたけれど……」 

638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:34:33.18 ID:vgeC8z48o

―― 生徒会室 


穂乃果「理事長の話しってなんだったの?」 

絵里「生徒会長として正式な話をしただけよ」 

穂乃果「そうなんだ」 

絵里「……」 

穂乃果「どうしたの?」 

絵里「ちょと考え事をね」 

穂乃果「何を考えているの?」 

絵里「これからのこと」 

穂乃果「一緒に考えようよ」 

絵里「……」 

穂乃果「絵里ちゃんがなにを考えているのか、聞かせて」 

絵里「わかったわ。それと先輩を忘れずに」 

穂乃果「わ、わかった」 


…… 

… 


―― 廊下 


絵里「――学校を知ること、ね」 

穂乃果「うん、学校のみんなが楽しんでもらえるよう企画するのは、それが最初だよ」 

絵里「穂乃果らしい発想ね」 

穂乃果「そうかな?」 

絵里「えぇ、私には思いつかないわ」 

穂乃果「そんなことないと思うけど」 


絵里「今からだと、部活の勧誘してるから、そこへ行ってみましょうか」 

穂乃果「うん!」 


…… 

… 
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:38:58.37 ID:vgeC8z48o

―― 玄関先 


「吹奏楽部でーす!」 

「サッカー部に入りませんかー!」 


穂乃果「賑わってるね」 

絵里「どこも部員を増やそうと一生懸命ね」 


「手芸部でーす」 


穂乃果「……」 

絵里「手芸部に興味あるの?」 

穂乃果「ちょっとだけ」 

絵里「……」 


「あ、入部してくれるの?」 

穂乃果「あ……えっと」 

絵里「残念だけど、この子は生徒会役員なのよ」 

「掛け持ちすれば大丈夫」 

穂乃果「……掛け持ちかぁ、それはいいかも」 


「手芸部ってこういう時、アピール出来るものがなくて地味なんですよねー」 

穂乃果「そ、そうなんですかぁ」 

絵里「掛け持ち……ね」 

穂乃果「どうしようかな……」 

絵里「とりあえず、他の部も見てみましょ」 

穂乃果「そうだね」 

「興味があったらいつでも来てね~」 


…… 

… 


絵里「大体こんなものね」 

穂乃果「……」 

絵里「気になる部でもあった?」 

穂乃果「演劇部、合唱部、茶道部、料理部……?」 

絵里「多いわね。意外と文化系……?」 

穂乃果「陸上部と弓道部が……気になる。……あと、剣道部」 

絵里「剣道部?」 

穂乃果「ねぇ、絵里ちゃ――先輩……剣道部ってどこかな?」 

絵里「それはやっぱり……道場でしょうね」 

穂乃果「見学していい?」 

絵里「それは構わないけど……」 
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:40:26.22 ID:vgeC8z48o

―― 道場 


穂乃果「あれ、人が居ない」 

絵里「この時間だからね」 


上級生「あら、絢瀬さん……何か用?」 


絵里「用というほどじゃないけど、見学をさせてもらおうと思って」 

上級生「残念だけど、今日は部活ないのよ」 

絵里「また機会を改めることにするわ」 

上級生「えぇ、そうしてちょうだい」 


穂乃果「…………」 


上級生「そっちは、入部希望者?」 

穂乃果「あ、えっと……少し……興味があって」 

上級生「それなら、参考になるかわからないけど、 
     今から試合をするから、よかったら見ていって」 

絵里「試合?」 

上級生「そう。……不満があるらしくてね」 


「始めるぞ」 


上級生「そういうことだから」 

絵里「こっちのことは気にしないでね」 

穂乃果「……」 


…… 

… 


バシィィンン 


上級生「……っ」 

「もういい、お疲れ。付き合ってもらって悪かったな」 

上級生「まだよ……今度は私の気が収まらない」 

「手は抜かないからな」 

上級生「そんなことしたら、辞めてやるわ」 

「……」 


絵里「力の差は歴然ね」 

穂乃果「…………」 


…… 

… 
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:42:03.30 ID:vgeC8z48o

上級生「……はぁっ、はぁっ」 

「そう熱くなるな。冷静に相手を見ろ」 

上級生「……ッ」 

「それがおまえの持ち――」 

上級生「ふぅ――……」 

「お……?」 

上級生「……」 

「……」 


穂乃果「今度は動かないね……」 

絵里「考えがあるのかしら」 


「小手――」スッ 

上級生「……っ!」バッ 

「遅い――!」 

バシィィン 

上級生「……くっ」 

「小手抜き面か……応じ技が出来るほどの技術はまだまだ備わってないな」 


穂乃果「……」 


「今日はもうお終いだ」 


絵里「厳しいのね、主将さんは」 

主将「嫌味かよ。……というか、どうしてそれを」 

絵里「部長会で報告を受けているわ」 

主将「あぁ、そうか……絢瀬は生徒会だったな」 

絵里「主将という役に不満があるの?」 

主将「当たり前だ。中学の肩書だけで主将にされたんだぞ。 
    この学校に入ってなんの成績も残してないのに」 

絵里「それじゃ、全国を目指してみない?」 

主将「……無理だな、戦力が足りない」 

絵里「そう……」 


穂乃果「団体戦じゃないとダメなんですか……?」 


主将「剣道に興味あるのか?」 

穂乃果「えっと……どうでしょ」 

主将「はっきりしないな……。個人戦は限界が見えてる」 

絵里「見かけによらず、自分を過小評価するのね」 

主将「気持ちが盛り上がらなかったのは事実だからな」 

絵里「確か、全国2位だったわね」 

主将「よく知ってるな……」 

絵里「一応、生徒会長だから」
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:43:17.56 ID:vgeC8z48o

穂乃果「ここが……道場……」 


絵里「あ、穂乃果! 勝手に上がってはダメよ!」 

主将「いや、いいって。今日はもう使わないから」 


上級生「ふぅ……」 

穂乃果「お疲れ様です」 

上級生「え、えぇ……」 

穂乃果「お面をかぶると、視界が狭くなりそう……」 

上級生「相手だけを見て集中できるから、それがメリットね」 

穂乃果「ふむふむ」 

上級生「被ってみる?」 

穂乃果「いいんですか?」 

上級生「実際見てみたほうが早いからね。ちょっと待ってて、手ぬぐい持ってくるから」 

スタスタ 


…… 

… 


上級生「どう?」 

穂乃果「わぁ……凄い……景色が変わった」 


主将「景色……か」 

絵里「穂乃果ったら……結局全部着ちゃって……」 


穂乃果「見て絵里ちゃん! 私の剣道着姿!」 


絵里「またそんな呼び方して……」 

上級生「二人は……どういう関係?」 

絵里「幼馴染というか、親友というか……家族というか」 

上級生「絢瀬さんと高坂さん……ね。思い出した」 

絵里「?」 

上級生「二人の噂話を聞いてるから」 

絵里「噂って……穂乃果が悪いこと言われてたり……?」 

上級生「ううん、逆よ。とても仲の良い二人ってね」 

絵里「……そう、良かった」 

上級生「……噂通りね」 


主将「高坂、ちょっと構えてみろ」 

穂乃果「……こう、ですか?」 

主将「おまえ、剣道の経験があるのか?」 

穂乃果「まったくありません」 

主将「結構、様になってるな……」 
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:45:17.96 ID:vgeC8z48o

上級生「そうね……素人には見えないわ」 

絵里「あの子、運動神経がいいから」 


主将「よし、稽古をつけてやる」 

穂乃果「え……?」 


絵里「あ、ちょっと!」 


主将「勝負は、高坂から五本を取るまでに、あたしから一本でも取れば勝ちだ」 

穂乃果「よぉっし!」 


絵里「素人が試合なんてしてはいけないわ!」 


穂乃果「楽しそうだから、やる!」 


絵里「穂乃果!」 

上級生「怪我をさせることはないから」 

絵里「……本当でしょうね?」 

上級生「えぇ、あの人はそれくらい弁えているわ」 

絵里「……」 



主将「絢瀬に守られてるんだな」 

穂乃果「そうだよ」 

主将「闘争心を煽ったんだが……無駄なのか?」 

穂乃果「よろしくお願いします」 

主将「いつでも来い」 


穂乃果「……――」 

スッ 


主将「――!」 


穂乃果「やぁぁあああ!!!」 

バシッ 

主将「なっ……!?」 


穂乃果「一本?」 


上級生「いえ、素人相手に厳しいようだけど……有効打突ではないから」 


穂乃果「そっか……」 


絵里「気をつけてよ……」ハラハラ 
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:48:02.71 ID:vgeC8z48o

主将「……」 

穂乃果「――えいっ!」バッ 

主将「――!」スッ 

バシィン 

穂乃果「あうっ」 


上級生「一本」 


穂乃果「まだまだぁ……」 


バシイッ 

穂乃果「くぅ……」 


バシィィンン 

穂乃果「……っ」 


バシィィッ 

穂乃果「……ッ」 



穂乃果「はぁ……はぁっ」 

主将「あと一本だぞ……」 

穂乃果「むぅ……!」 


上級生「……」 

絵里「……」ハラハラ 



友人「絵里先輩がいるってことは……あれは……穂乃果?」 



穂乃果「すぅ……はぁ……」 

主将「……」 

穂乃果「すぅぅ……」 

主将「……」 

穂乃果「……」スッ 

主将「――ッ!?」 


絵里「あれは……?」 

上級生「上段の構え……!?」 


穂乃果「面――ッ!」バッ 

主将「――!」 

ガッ 

主将「胴――!」バッ 

バシィィンン 
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:49:46.44 ID:vgeC8z48o

穂乃果「……っ」 

ガクッ 


絵里「穂乃果!」 

タッタッタ 


穂乃果「うぅ……」 

絵里「大丈夫!?」 

穂乃果「だ、大丈夫……びっくりしただけだから」 

絵里「痛みは?」 

穂乃果「そんなにないよ……」 


上級生「あなたねぇ……」 

主将「……あり得ない。まるで経験者のような……気迫だった」 


絵里「……無茶しすぎよ?」 

穂乃果「ちょっと、楽しくなってきて」 

絵里「まったく……」 


主将「おい、高坂」 

穂乃果「?」 

主将「本当に未経験なのか?」 

穂乃果「は、はい……そうです」 


絵里「痛むの……?」 


穂乃果「うん?」 


絵里「右手首……抑えているけど……」 


穂乃果「え――……?」 


絵里「ちょっとあなた、なんてことを!」 

主将「いや、マジか!? すまん!」 

上級生「胴だけだと思ってたけど……」 


穂乃果「い、痛くないよ、絵里ちゃん!」 

絵里「でも……」 

穂乃果「顔……洗ってくるね……」 

絵里「穂乃果……?」 

穂乃果「あはは……負けちゃったぁ……っ」 

タッタッタ 


絵里「…………」 
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:50:34.10 ID:vgeC8z48o

―― 水洗い場 


穂乃果「主将だもんね……強いの……当たり前……だよね」 


穂乃果「悔しいのかな……」 


穂乃果「……はは」ホロリ 


穂乃果「あれ、なんで……っ」ボロボロ 


穂乃果「なんで……っ……涙が……?」ボロボロ 


穂乃果「うぅっ……ぅぅっ」ボロボロ 


穂乃果「どうして……右手が……いたいの……?」ボロボロ 


…… 

… 
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:52:21.97 ID:vgeC8z48o

―― 道場 


絵里「遅いわね……」 


上級生「あなた……」 

主将「わかった。怪我が残るようなら責任を取るよ」 


友人「絵里先輩……」 

絵里「あら、どうしたの?」 

友人「その……えっと……」 

絵里「?」 

友人「穂乃果の変化に気付いて――」 


穂乃果「お待たせ~って、どうしてカメラ持って此処に!?」 


友人「……」 

穂乃果「ん?」 

絵里「穂乃果、手は大丈夫?」 

穂乃果「うん、大丈夫だよ。ほら、自由自在」 

上級生「はぁ……よかった」 

主将「悪かったな、高坂」 

穂乃果「いえいえ、本当に怪我なんてないですから~」 

絵里「いつまでお面を被っているつもり?」 

穂乃果「あはは……そうだねぇ」 


穂乃果「ふぅ……」 


絵里「……」 


穂乃果「ねぇ、写真撮ったの?」 

友人「……あ、うん。主将と対決してる写真を」 

穂乃果「良く撮れた?」 

友人「現像してみないことには……」 

穂乃果「そっか……」 

友人「目、赤いよ」 

穂乃果「う……」 


絵里「…………」 


…… 

… 
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 10:53:23.51 ID:vgeC8z48o

―― 下校中 


絵里「悔しかったの?」 

穂乃果「な、何の話?」 

絵里「初心者なんだから、気にすることないのに」 

穂乃果「……うん。なんだかね、気持ちが……昂ぶっちゃって」 

絵里「……そう」 

穂乃果「……変だよね」 

絵里「穂乃果のその負けず嫌いは……私のせいかもしれないわね」 

穂乃果「どうして……?」 

絵里「手を抜くことをしなかったからよ」 

穂乃果「……違うよ」 

絵里「?」 

穂乃果「絵里ちゃんが手を抜いて、私が勝っても……絶対につまらないよ」 

絵里「……」 

穂乃果「勝負ってそういうことだよね」 

絵里「そうね……、穂乃果が正しい」 

穂乃果「だから、これからも遠慮しないでね」 

絵里「えぇ、そうさせてもらう」 

穂乃果「じゃあ、今度の休み、一局勝負しようよ」 

絵里「いいわよ」 


穂乃果「よぉし、今度こそ~!」 

絵里「もぅ、心配したんだから」 

穂乃果「あ……うん、ごめんね、無謀なことして」 

絵里「ううん……、私に心配をかけても、大きな怪我が無ければそれでいいのよ」 

穂乃果「えぇー……それって、なんかやだよ」 

絵里「あら、嫌なの?」 

穂乃果「いつまでも絵里ちゃんに守られてるのは嫌だ」 

絵里「じゃあ、私を守れるくらいになってくれないと」 

穂乃果「もちろん!」 

絵里「ふふ」 

穂乃果「えへへ」 


…… 

… 
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:10:47.73 ID:vgeC8z48o

―― 新入生歓迎球技大会:体育館 


『高坂選手のシュート!』 


パサッ 

 オォーー! 


『歓声が沸きます! 絶好調の高坂選手、すでに13点目!』 



絵里「さすがね……、頑張って、穂乃果」 



―― コート 



穂乃果「へへーっ!」ブイッ 



―― ギャラリー 


絵里「あ……私に気付いていたのね」 


友人「目立ってますね、穂乃果」 

絵里「あなたは試合に出ないの?」 

友人「私はコレの仕事がありますんで」 

絵里「写真? 1年生のする仕事じゃないでしょ」 

友人「前に撮った、主将との試合画像が新聞部に評価されちゃって」 

絵里「写真部に依頼されたのね」 

友人「そういうことです。……私も写真好きだから、役に立てて嬉しいですよ」 

絵里「ダメよ、今日は新入生のための球技大会なんだから」 

友人「う……」 

絵里「カメラは私が預かるから」ヒョイ 

友人「あぁ……っ」 

絵里「ほら、あなたも参加する」 

友人「……でも」 

絵里「新聞部には言っておくわね」 

友人「……はぁい」 

スタスタ 


絵里「困ったものね、新聞部の部長は……」 


『おっとぉ! パスカット! そしてそのまま駆け出したー!』 


絵里「……」 
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:13:15.54 ID:vgeC8z48o

夕月「スリーポイントも決めましたね」 

絵里「え、……あ……夕月さん」 

夕月「この運動能力の高さ……生徒会だけではもったいない気がします」 

絵里「……そうですね。……もう一度、本人に意志を聞かないと」 


理事長「高坂を生徒会に入れた理由を聞いてもいいか?」 


絵里「……私たちの祖母二人がこの学校の創立に携わっています」 


理事長「――守るのはその孫の二人、という思想か」 


絵里「そうです」 


理事長「二人で守れるほど容易ではない」 


絵里「…………」 


理事長「彼女の――……高坂の特質をちゃんと見ていろ」 


絵里「穂乃果の特質……?」 


『ナイスアシストです、高坂選手ー!』 


絵里「……」 


理事長「まさかとは思うが、傍においておきたいからではあるまいな」 


絵里「……!」 


夕月「莉都様」 

理事長「……」 


絵里「失礼します」 

スタスタ 


夕月「相手は16歳の女の子です。もう少し発言には気をつけてください」 

理事長「……わかっている」 

夕月「わかっていません。先日から、絢瀬さんに対する言葉の数々、少しは――」 

理事長「私はこれから学園に戻る。後は任せたぞ」 

スタスタ 

夕月「まだ話は終わっていません……!」 


「生徒たちがいる場所で私に敬語を使うな」 


夕月「もぅ……」 
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:13:54.97 ID:vgeC8z48o

―― コート 


仲間「ナイス、穂乃果!」スッ 

穂乃果「いえーい!」スッ 

パァン 

「はやく守備に戻ってー!」 

仲間「行くよ!」 

タッタッタ 

穂乃果「あれ、絵里ちゃんがいない……?」 


…… 

… 
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:15:06.79 ID:vgeC8z48o

―― 翌週:写真部 


絵里「へぇ、綺麗に撮れてるじゃない」 

友人「ふふん」 

穂乃果「ふぅん……」 

友人「あのさ、穂乃果……私はこの一眼レフで、この一眼レフで撮ったんだよ!」 

穂乃果「うん、凄いね」 

友人「私の腕はともかく、このカメラの性能を知らないだろうから教えてあげるけど――」 

穂乃果「えぇ……またぁ?」 

友人「反射鏡が跳ね上がってしまって、ファインダーから像が消えてしまうから――」 


絵里「これが、新聞部に評価されたという……?」 

写真部長「そうよ。少しピントがブレてるけど。 
       でも、この一枚で彼女はより一層、写真に対する情熱は上がったのよね」 

絵里「変わったわね……」 

写真部長「え?」 

絵里「なんでもないわ」 

写真部長「最初は苦戦していたけど、ここへ来ては教えてくれって聞かなくて」 

絵里「好きこそものの上手なれ、ね」 

写真部長「えぇ。今では自分のカメラを持ちたいって毎日言ってる」 


…… 

… 
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:18:03.66 ID:vgeC8z48o

―― 演劇部 


「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」 


穂乃果「……」 

絵里「練習、頑張っているみたいね」 

演劇部長「はい。全国コンクールに向けて、鍛錬の日々です」 


穂乃果「……なんだか、あのジュリエット……気持ちが入ってないみたい」 

絵里「え?」 

演劇部長「そうなのよね。他の演目をやりたいって……。よくわかったわね」 

穂乃果「……なんとなく」 

演劇部長「素質あるかもね、どう?」 

絵里「ダメよ、穂乃果は生徒会役員なんだから」 

演劇部長「興味あったらいつでも歓迎するわ」 

絵里「穂乃果の気持ち次第だけど」 

穂乃果「……」 


演劇部長「はい、ストップ! ジュリエット! 
       気持ちを切り替えないと役を変えるわよ!?」 

ジュリエット「は、はい……すいません」 


穂乃果「…………」 

絵里「行きましょ、穂乃果」 

穂乃果「……うん」 


…… 

… 
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:19:29.52 ID:vgeC8z48o

―― 生徒会室 


穂乃果「あのポニーテールの人、もっと大袈裟に動いてもいいよねぇ……」 

絵里「何の話?」 

穂乃果「さっきの演技の練習だよ」 

絵里「あの静かな演技もいいと思うけど」 

穂乃果「……そうだね」 

絵里「ねぇ、穂乃果」 

穂乃果「なに?」 

絵里「他にもやってみたいことがあったら、遠慮しないでいいのよ?」 

穂乃果「うん?」 

絵里「生徒会だけじゃなくて、他の部に入ってもいいってこと」 

穂乃果「絵里ちゃんは?」 

絵里「私は生徒会長だから、難しいわね」 

穂乃果「じゃあ、私も生徒会で頑張る」 

絵里「あのね、穂乃果……」 

穂乃果「?」 

絵里「今の話の流れだと、私が居るから生徒会以外に入らないって意味になるわよ?」 

穂乃果「そうだよ?」 

絵里「だから……その……ね?」 

穂乃果「ん?」 

絵里「うーん……」 

穂乃果「そんなに悩むこと?」 

絵里「穂乃果の能力をもっと活かせる気がするのよ」 

穂乃果「そんなことないよ。私はそんなに能力ないよ」 

絵里「過小評価しすぎ。もっと自信を持って」 

穂乃果「絵里ちゃんも入るなら入るよ」 

絵里「私に左右されてちゃ意味無いでしょ?」 

穂乃果「どこでもやっていく自信あるよ。絵里ちゃんと一緒なら」 

絵里「うぅん……」 

穂乃果「また何か企画しようよ~。文化祭とか、レクリエーションとか」 

絵里「それは会議で決めることよ。案があれば聞くけど」 

穂乃果「よぉし」 


絵里「私が穂乃果に甘えているのかしら……?」 


…… 

… 
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:22:18.18 ID:vgeC8z48o

―― 梅雨:絵里の部屋 


絵里「ん……うん……」 


カチ カチ 

 カチ カチ 


絵里「2時……変な時間に目が覚めたわ……」 



―― 居間 


絵里「……あら?」 


『さぁ、今日紹介するのはこれ! 人生ふんだり蹴ったりボクササイズ!』 

『人生ふんだり蹴ったり? そんなので痩せるわけないじゃないのトニー』 

『いいかい、エリザベス。人生は山あり谷ありっていうんだ。 
 それが人の精神を強くも弱くもする。それがどういうことか分かるはずだね?』 

『ボクササイズもふんだり蹴ったりしていけば……?』 

『そうさ! 僕のようにスリムになること間違いなし!』 

『まぁトニー! なんて魅力的な商品なのかしら!』 


穂乃果「すごい……まるで嘘のようだ……」 

絵里「過剰に言ってるだけよ。言ってることも無茶苦茶」 

穂乃果「うわっ!?」 

絵里「驚くほど集中してたのね……。 
   通販番組なんて、穂乃果らしくないじゃない」 

穂乃果「あはは……眠れなくて……。絵里ちゃんは?」 

絵里「喉が渇いたから、台所へ。……穂乃果もなにか飲む?」 

穂乃果「あ、じゃあ……ココアを。ホットで」 

絵里「わかったわ。温めるから時間かかるけど」 

穂乃果「いいよー、まだ眠くないから」 

絵里「明日もちゃんと走るわよ?」 

穂乃果「雨降ってるよ」 

絵里「……あ、そうだった」 

穂乃果「明日休みだし、映画見ようか?」 

絵里「それもいいわね。ちょっと待ってて」 

穂乃果「はぁ~い」 
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:24:46.74 ID:vgeC8z48o

『そして、なんと! 今日は特別に、DVDセットのおまけとして、更に!』 

『ワクワクしちゃう!』 

『人生ふんだり蹴ったりゲームもつけよう!』 

『まぁ! ゲームをしながらボクササイズができちゃうの!? なんてお得!』 


穂乃果「誰が買うんだろ……」 


『さぁ、今すぐお電話を!』 

『深夜だから、番号のおかけ間違いに気をつけて。エリザベスからのお願いよ』 


穂乃果「通販……かぁ……」 


穂乃果「……なんだろ……胸が……痛い」 


…… 

… 


『それでは今日のお天気です。えー、今日は、珍しいところから中継です』 

『おはようございまーす! 私は今、海の上にいます! ごらんください太平洋~!』 


絵里「すぅ……すぅ……」 

穂乃果「すぅ……う……み……」 


母「……どうしてこんなところで寝てるの?」 


絵里「……ん……んん?」 

母「おはよう」 

絵里「ハッ……!」 

母「たまにはいいわよね」 

スタスタ 


絵里「そのまま寝てしまったのね……」 

穂乃果「ん……ぅん……」 

絵里「穂乃果、ほら起きて」 

穂乃果「……ん」 

絵里「映画も途中から覚えてない……」 

穂乃果「見なおせばいいよ……ね」 

ギュウ 

絵里「あ、ちょっと?」 

穂乃果「なんか、いい夢みてたよ。……あと5分…」 

絵里「……それより穂乃果、離して?」 

穂乃果「……すぅ」 

絵里「あ、こら……!」 

657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:26:04.20 ID:vgeC8z48o

…… 

… 


―― 翌週:生徒会室 


穂乃果「ボランティア部?」 

絵里「そうよ。一昨年で廃部になってしまったけどね」 

穂乃果「ふぅん……」 

絵里「部が設立されたのは、なんでも部、という名称だったみたい」 

穂乃果「……なんでも部」 

絵里「おばあさま達、二人が設立したのよ」 

穂乃果「私たちもやろうよ!」 

絵里「ふふ、そう言うと思ったわ」 


…… 

… 


―― 放課後:1年生の教室 


穂乃果「ね、いいでしょ?」 

友人「悪いけど、写真部があるから……他の人誘ってよ」 

穂乃果「誰も入ってくれないんだよね」 

友人「何をする部なの?」 

穂乃果「学校で困った人や部を助けるという部」 

友人「ふぅん……じゃあね」 

穂乃果「あ、ちょっと待って! 話を聞いたら興味沸くから!」 

友人「急がないと天気が崩れる……」 

穂乃果「いつもカメラの話し聞いてるから、私の話も聞いてよ!」 

友人「聞き流してるでしょ?」 

穂乃果「そ、ソンナコトナイヨ!?」 

友人「うわ……声が上ずった……。ちょっとショック」 

穂乃果「えっと……スピードシャッターが3秒で降りるんだっけ?」 

友人「シャッタースピードね。それが3秒もかかるってどんな機材よ!」 

穂乃果「うわ、怒った!」 


…… 

… 
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:28:11.22 ID:vgeC8z48o

―― ボランティア部 


穂乃果「みんな興味ないって……」 

絵里「張り紙をしてきたから、それで集まるのを待ちましょう」 

穂乃果「さすが絵里ちゃん!」 

絵里「先輩、でしょ?」 

穂乃果「他に人が居ないからいいよー」 

絵里「そういう問題じゃ――」 


コンコン 


穂乃果「来た!」ガタッ 

絵里「どうぞ」 


ガラガラ 


主将「張り紙を見たんだが」 

穂乃果「なぁんだ、主将かぁ……」ガッカリ 

主将「なんだ、そのガッカリは」 

絵里「もしかして、依頼?」 

主将「そうだ。剣道部に入れ、高坂」 

穂乃果「それ依頼じゃないよね!?」 

絵里「勧誘ね」 


…… 

… 


―― 道場 


穂乃果「やぁぁああ!!」 

バシッ 

部員「くっ……!」 


絵里「あなたが副主将になっているなんて」 

副主将「あの人に指名されてね」 

絵里「穂乃果は週に3回だけの参加よ?」 

副主将「えぇ、それで充分――」 


穂乃果「えぇっ、3日も!?」 


絵里「相手に集中しなさい」 


穂乃果「は、はい!」 
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:29:02.88 ID:vgeC8z48o

副主将「厳しいわね」 

絵里「相手に失礼でしょ。やるからには真剣にやらないと」 

主将「体力あるよな」 

絵里「朝のランニングは欠かさないようにしてるから」 

主将「どうしてだ?」 

絵里「……こういう時の為、ね」 


…… 

… 


―― 帰宅時間:ボランティア部 


絵里「わかりました。それでは、明日」 

「お願いします」 


ガラガラ 


穂乃果「おっと」 

「失礼」 

スタスタ 


穂乃果「……今の人は?」 

絵里「将棋部の部長よ。相談されてたの」 

穂乃果「ふぅん……って、絵里ちゃん!」 

絵里「先輩」 

穂乃果「先に戻るなんてひどいよー!」 

絵里「仕方がないでしょ、私が道場にいてもすることがないんだから」 

穂乃果「それならそれでなにか言ってよ!」 

絵里「副主将に伝えてあったでしょ」 

穂乃果「それはそうだけど……」 

絵里「生徒会にも用があったから。……私たちも帰りましょ」 

穂乃果「……うん」 


…… 

… 
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:31:42.08 ID:vgeC8z48o

―― 翌日・放課後:将棋部 


将棋部長「天狗……というのかな」 

絵里「強さゆえ、周りを見ない。と言うことですか?」 

将棋部長「そうなのよ。部長である私より強いから、何も言えなくてね」 

穂乃果「どれくらいの強さなんだろ?」 


ガラガラ 


「こんにちはー……、ん?」 


将棋部長「彼女がそうよ」 

穂乃果「おぉ、ツインテール」 

「なんですか、この人」 

将棋部長「同じ1年生よ」 

絵里「あなたが瑞芽さん?」 

瑞芽「そうですけど」 

穂乃果「私と勝負しようよ」 

瑞芽「部長……?」 

将棋部長「私ではあなたの相手にならないでしょ。 
       二人は強いって聞いてるから」 

瑞芽「そうですか……」 

穂乃果「私なんて強いとは言えないけどね」 

瑞芽「……」 


穂乃果「はい、座って座って」 

瑞芽「……棋譜を並べていた方が有意義かも」 


絵里「穂乃果」 

穂乃果「?」 

絵里「一昨年の夏、私が言ったこと思い出して」 

穂乃果「うん、わかった」 

瑞芽「……?」 

穂乃果「それじゃ、よろしくお願いします」 

瑞芽「……よろしく」 


…… 

… 
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:32:34.67 ID:vgeC8z48o

絵里「勝負あったみたいね」 


穂乃果「……お疲れ様でした」 

瑞芽「……っ」 

穂乃果「いやぁ、強いね~。 
     他の人と指したことあまりないから新鮮だったよ」 

瑞芽「負けたのに、悔しくないの?」 

穂乃果「悔しいよ」 

瑞芽「それなのにどうして、笑って……」 

穂乃果「楽しかったから」 

瑞芽「……!」 

穂乃果「楽しかったけど悔しいって、変だね」 

瑞芽「何度も勝てるチャンスはあったのに……どうして?」 

穂乃果「……それは気づかなかった。それが私の実力なんだよ」 

瑞芽「…………」 

穂乃果「絵里ちゃんは私より強いよ?」 

瑞芽「……」 


…… 

… 


―― ボランティア部 


将棋部長「いい刺激になったみたいで」 

絵里「そうですか。……それはよかった、と言ってもいいのかどうか」 

将棋部長「あとは私の役目ね。……いつか、絢瀬さんとも指したいと言っているわ」 

絵里「時間が合えば、いつでも――」 


…… 

… 
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:33:29.71 ID:vgeC8z48o

―― 初夏:廊下 


瑞芽「絵里先輩っ、いつ私と指してくれるんですか!」 

絵里「悪いんだけど、最近忙しくてね」 

瑞芽「時間を作って欲しいです!」 

穂乃果「瑞芽ちゃん……昨日、私に負けたよね」 

瑞芽「……だから、なに?」 

穂乃果「私といい勝負なのに絵里ちゃんと一局なんてダメだよ!」 

瑞芽「勝てないからって勝負を避けることはしたくない」 

穂乃果「格好良いこと言ってるけど、ダメなものはダメだよ!」 

瑞芽「幼馴染だからって、絵里先輩の行動を縛らないでくれる?」 

穂乃果「縛ってないでしょ! 幼馴染じゃないよ! 家族!」 

瑞芽「フッ」 

穂乃果「鼻で笑った!?」 


絵里「二人でケンカしていなさい……」 

スタスタ 


瑞芽「一緒に住んでるだけで家族なんて……呼べる……!」 

穂乃果「ふふん」 

瑞芽「いつでも指せるの?」 

穂乃果「もちのロン」 

瑞芽「……いいな」 

穂乃果「絵里ちゃんに勝てたことないけどね~」 

瑞芽「じゃあ、私が指してもいい?」 

穂乃果「しょうがないなぁ。一局だ――……なんでそうなるの!?」 

瑞芽「一局勝負して、勝ったほうが絵里先輩と勝負できるってことで」 

穂乃果「いいよ。今日は他の部に行ってくるから明日になるけど」 

瑞芽「それまで絵里先輩と一局でも指したらズルだから」 

穂乃果「わかった。それでいいよね、絵里ちゃん――って」 

瑞芽「いない!?」 


…… 

… 
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:35:33.24 ID:vgeC8z48o

―― 休日:居間 


絵里「そういえば、勝負はどうなったの?」 

パチ 

穂乃果「私の勝ち~」 

パチ 

絵里「それ以外にも幾つか指してるでしょ?」 

パチ 

穂乃果「あぅ……痛いとこ攻められた。そうだよ」 

パチ 

絵里「仲いいわね」 

パチ 

穂乃果「あぁっ」 

絵里「……」 

穂乃果「ちょいとお待ちを」 

絵里「えぇ。じっくり考えて」 

穂乃果「むむ……」 

絵里「結局、誰も部に入って来なかったわね」 

穂乃果「そだね……。お祖母ちゃん達も二人だったのかな?」 

絵里「そう聞いているわ」 

穂乃果「……どうして、なんでも部を作ったんだろ?」 

絵里「部を設立した当時は、戦後ということもあって、自由のきかない時代だったの」 

穂乃果「それでも、規律が厳しいってことはない……よね?」 

絵里「そんなことないわよ。 
    今の私たちからじゃ想像もつかないようなことがたくさんあったに違いないわ」 

穂乃果「……ピンとこないよ」 

絵里「そうね、例えば……穂乃果が毎朝言う、あと5分、だって怒られるようなことだったのよ」 

穂乃果「う……それは嫌だなぁ……」 

絵里「今のはちょっと極端だけど。 
    この将棋だって、危険思想があるという理由で禁止行為にされるところだったんだから」 

穂乃果「もしかしたら、お祖母ちゃんたちはこうやって遊ぶことが出来なかったかもしれないんだね」 

絵里「そう。だからこそ、自由な部を作って学生生活を楽しもうとしていたんだと思う」 

穂乃果「そっか……。お祖母ちゃん達の気持ち、分かる気がする」 

絵里「……私も。学校という場所をとても大切に想っていたからこその、なんでも部なのよね」 

穂乃果「……うん、ありません」 

絵里「はい、お疲れ様でした」 

穂乃果「絵里ちゃんが入学式の時に言った言葉の意味がわかったよ」 

絵里「ふふ、それなら嬉しいわ」 
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:37:42.00 ID:vgeC8z48o

穂乃果「紅茶淹れるね」 

絵里「イチゴジャムも忘れないでね」 

穂乃果「はーい」 

スタスタ 


絵里「……今のうちに……」ガサゴソ 


絵里「……」 

ピロリン♪ 


穂乃果「絵里ちゃん、イチゴの――……なにしてるの?」 


絵里「えっ!?」 

穂乃果「……どうして、ケータイで写真を?」 

絵里「な、なんでもないのよ?」サッ 

穂乃果「なんで隠すの?」 

絵里「それより、なぁに?」 

穂乃果「イチゴのジャムが切れてて……」 

絵里「ハチミツがあったでしょ? それでお願い」 

穂乃果「……」 

絵里「ちょっと穂乃果……台所は向こうよ?」 

穂乃果「うん……」 

絵里「ど、どうしてこっちに来るのよ?」 

穂乃果「動揺してるねぇ」 

絵里「してない」 

穂乃果「どっちでもいいんだけど」ズイッ 

絵里「ち、近いわよ、穂乃果」 

穂乃果「後ろに隠したケータイ……見せて!」スッ 

絵里「だ、ダメでしょ人のモノを……!」サッ 

穂乃果「将棋盤を写して……どうするの!」スッ 

絵里「どうもしないわよ!」サッ 

穂乃果「いつも片付けてくれるから……変だとは思ってたけどっ!」スッ 

絵里「……」サッ 

穂乃果「他にも撮ってたんだ……?」スッ 

絵里「いい加減にしないと……ね?」サッ 

穂乃果「一人で検討してたんだね」 

絵里「……」シラー 

穂乃果「目を逸らした! そういうことだったんだ!?」 

絵里「ふぅ……、別に悪いことじゃないでしょ?」 

穂乃果「悪いよ! 研究されていたなんて!」 

絵里「勝つためなら手段を選ばないわ」 

穂乃果「なに悪役みたいなこと言ってるの! ずるいよ!」
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:38:45.29 ID:vgeC8z48o

…… 

… 


―― 夏:ボランティア部 


絵里「ありません」 

瑞芽「……あれっ!?」 

絵里「私は……穂乃果にだけ強いみたいね」 

瑞芽「あ、……そうなんですか」 

将棋部長「力関係がおかしいわね……」 


ガラガラ 


穂乃果「ふぅ、今日も暑い~……あ、将棋部の……」 


瑞芽「……」ササッ 

絵里「?」 


穂乃果「ふぅん、一局指してたんだ?」 


瑞芽「うん、今終わったところ」 

穂乃果「瑞芽ちゃん、負けたんだね」 

瑞芽「まぁね……。ありがとうございました」 

絵里「こちらこそ」 


将棋部長「向きを変えて、絢瀬さんの面子を保ったのね」 


穂乃果「絵里ちゃん、私と勝負しようよ」 

絵里「合唱部の手伝いはいいの?」 

穂乃果「終わったよ。剣道部の練習まで時間あるから」 

絵里「それじゃ、急ぎましょうか」 

穂乃果「うん!」 


将棋部長「私は戻るけど」 

瑞芽「少し見ていきます」 


…… 

… 
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:39:21.92 ID:vgeC8z48o

穂乃果「参りました」 

絵里「はい、お疲れ様でした」 


瑞芽「私の時より駒の動きがぜんぜん違う……どうして?」 

絵里「負ける訳にはいかないから、意地なのよ」 

瑞芽「……」 

穂乃果「イジ?」 

絵里「こっちの話」 


瑞芽「……失礼します」 

スタスタ 


穂乃果「……なんか、怒ってない?」 

絵里「手を抜いたつもりはないんだけどね」 

穂乃果「?」 

絵里「さっきの勝負ね、負けたの私なのよ」 

穂乃果「え!?」 

絵里「あの子が気を利かせてくれたの」 

穂乃果「……そうなんだ」 


…… 

… 
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:41:30.70 ID:vgeC8z48o

―― 理事長室 


理事長「将棋部、演劇部、合唱部、陸上部……そして剣道部が全国出場か」 

夕月「吹奏楽部は惜しかったと聞いています」 

理事長「何が足りなかった?」 

夕月「部長は団結力だと」 

理事長「全国出場を果たした部はなにが後押しとなったのか、分かるか」 

夕月「そこまでは。……部員の士気が高かったのでは?」 

理事長「腑に落ちん」 

夕月「そうですね、一昨年まではそれほど活発化していませんでしたら」 

理事長「ふむ……、学園に戻っている場合じゃなかったな」 

夕月「これはただの推測ですが」 

理事長「?」 

夕月「去年、絢瀬さんが生徒会へ書記として入りました」 

理事長「……」 

夕月「そして、今年……高坂さんが入学し、二人はボランティア部を設立しています」 

理事長「そのボランティア部の活動内容は?」 

夕月「他の部へ助っ人として参加されているようです。主に、今挙げた部を中心に」 


理事長「絢瀬が蒔いた種を、高坂が芽を出させた。……と言いたいのか」 

夕月「そうです」 

理事長「絢瀬と話がしたい」 

夕月「少々お待ちを」 


コンコン 


夕月「どうぞ」 


絵里「失礼します」 


理事長「……」 

夕月「先にお呼びしていました」 

理事長「……優秀だな」 

夕月「長年、秘書をしていますから」 

絵里「?」 

夕月「理事長から訊きたいことがあるそうです」 

絵里「はい、なんでしょう」 

理事長「全国出場を果たした、5つの部に共通する点はなんだ?」 

絵里「穂乃果が出入りしている部です」 

理事長「文化部はある程度理解できる。だが、陸上部で何をしている?」 

絵里「特に何もしていません」 

理事長「?」 
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:42:57.81 ID:vgeC8z48o

夕月「足を運ぶ理由はなんですか?」 

絵里「練習風景を眺めているだけです。あと、部員たちとの会話を少し」 

理事長「部員の菊地との仲は?」 

絵里「話をする程度で、それ以上でもそれ以下でもありません」 

理事長「ふむ……」 

夕月「では、私からも質問を」 

絵里「……はい」 

夕月「剣道部の布陣に高坂さんが入っていないようですが」 

絵里「正式な部員ではありませんから」 

夕月「私も練習風景を見ていますが、 
    高坂さんが入れば全国制覇に近付けるのではないでしょうか?」 

絵里「あの、この質問はなんでしょうか?」 

理事長「理由は後で話す。答えてくれ」 

絵里「……確かに、全国制覇の可能性は高くなるかもしれません。 
    贔屓目なしに見ても、穂乃果の能力は必要だと思います」 

夕月「ではなぜ?」 

絵里「穂乃果はあくまで、刺激を与える存在です」 


理事長「…………」 


絵里「本人も、自ら出場したいとは考えていないようですから」 

夕月「わかりました」 

絵里「……」 


理事長「絢瀬、どこまで見ている?」 

絵里「え……?」 

理事長「私は去年就任してから、 
     大体半年くらいでこの学校の存在が危ぶまれていることに気付いたわけだが」 

絵里「……」 

理事長「おまえは入学してすぐ、生徒会に入ったな」 

絵里「はい」 

理事長「知っていたのか」 

絵里「……はい。祖母から連絡を受けていましたから」 

理事長「なるほど。……それでは、高坂を生徒会に入れた理由を聞こう」 

絵里「質問の意図がわかりません」 

理事長「高坂の立ち位置はまるで――」 


理事長「――この学校を救うかのような存在になっている。僅か4ヶ月で」 


理事長「そこが私には腑に落ちない」 


絵里「……」 
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:45:16.25 ID:vgeC8z48o

夕月「今年の春までは、生徒会との――……いえ、絢瀬さんとの連携がありました」 


夕月「絢瀬さんが積極的だった理由が今なら理解出来ます」 


夕月「ですが、高坂さんを生徒会に入るよう提案したと聞きます」 


絵里「はい」 


夕月「去年まで成績が今一つな学校が、 
    今年に入って全国へ出場する部が5つも出てきました」 


夕月「その理由を莉都様は知りたいのです」 

理事長「……」 


絵里「私は、10の頃から穂乃果と一緒です」 


絵里「その一番近い場所で、穂乃果を見ていて気付いたこと」 


絵里「運動能力の高さ、素直で明るい性格から繋がる友人関係、 
    努力して学ぼうとする勤勉さと簡単に諦めない精神」 


絵里「これは恐らく――……人を惹きつける力、憧れだと思います」 

理事長「……」 

夕月「……」 

絵里「一つの部に入り、そこで活躍できると確信していましたが、 
   他の部にも影響を与えるとは思ってもみませんでした」 

理事長「……」 

絵里「ですから、お二人の期待に添える答えは持っていません」 

理事長「そうか、わかった」 

夕月「……」 

理事長「私の悪い癖で、物事の本質が見えないと気が済まなくてな」 

絵里「……」 

理事長「自己満足のために付き合わせて悪かった」 

絵里「……いえ」 


夕月「莉都様」 

理事長「あぁ、そうだな」 

絵里「?」 


理事長「絢瀬の祖母は、いつからこの学校のことに気がついていた?」 

絵里「私が中学3年生の梅雨時になります」 

夕月「生徒数の著しい変化が表れたのが、ちょうどその年ですね」 

理事長「いや、違う。もう少し前からだ」 

絵里「おばあさまもそう言っています。このままでは――」 


絵里「――廃校の危険性が出てくると」 

670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:47:00.91 ID:vgeC8z48o

夕月「この僅かな変化で、ですか? 時代の流れと判断されてもおかしくないのに」 

理事長「いや、もう追求するのはよそう。今考えるのは学校の存続のみだ」 

夕月「……はい」 

絵里「……」 

理事長「来年の春にはこの学校の運命が決まる」 

絵里「――!」 

理事長「その運命を変えられるのは、秋までだと思ってくれ」 

絵里「……はい」 

理事長「最低限の協力はしよう。だが、表立って動くことはしない」 

絵里「分かっています。外から来た人にこの学校を救ってもらっても、意味がありませんから」 

理事長「……」 

絵里「生徒である私たちが変えなければ、また同じ問題が起こります」 

夕月「……」 

絵里「話が終わりなら失礼してもよろしいでしょうか」 

理事長「最後に一つ」 

絵里「……」 

理事長「絢瀬、おまえの学校生活を捨ててまでするべきことなのか?」 

絵里「……!」 

理事長「臨時とはいえ、理事長である私が協力的じゃないんだ」 


理事長「高校生活という、大切な時間を学校存続のために費やしてもいいのか?」 


絵里「――はい」 


理事長「全てがうまくいくとも限らない」 


絵里「……――それが私の役割だから、です」 


理事長「学校の運命に翻弄されてはいないか」 

絵里「いえ、これは私の意志です」 

理事長「……そうか」 

絵里「それに――」 

理事長「……それに?」 


絵里「学校生活を捨てたつもりはありません」 


夕月「……」 


絵里「それでは、失礼します」 

スタスタ 

 バタン 


理事長「……捨てたつもりはない、か」 

夕月「それが彼女なりの青春、なのかもしれませんね」 
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:49:18.15 ID:vgeC8z48o

―― 廊下 


絵里「…………」 


穂乃果「あ、絵里ちゃん」 


絵里「穂乃果……、こんなところで待っていたの?」 

穂乃果「うん。話ってなんだったの?」 

絵里「退屈な話よ」 

穂乃果「理事長との話を退屈だなんて……!」 


絵里「ねぇ、穂乃果――」 


穂乃果「うん?」 


絵里「学校、楽しい?」 


穂乃果「もちろん」 


絵里「……そう」 


穂乃果「こうやって、夏休みに登校するくらい、楽しいよ」 


絵里「その楽しいが……みんなに伝わっているのかもしれないわね」 


穂乃果「?」 

絵里「なんでもないわ」 


穂乃果「まだお昼だけど、どうしよっか」 

絵里「穂乃果はどうしたい?」 


穂乃果「そうだな~……、えっと……」 

絵里「ふふ、そんなに悩むこと?」 


穂乃果「やりたいこと、いっぱいあるから」 

絵里「そうね、沢山……ある」 


穂乃果「とりあえず、部室に行こうよ」 

絵里「えぇ……そうしましょ」 


穂乃果「いつも、誰かがいる場所だけど、今は誰も居ないね」 

絵里「生徒は私たち二人だけよ」 

穂乃果「なんだか、不思議な気分だね」 

絵里「……そうね。ノスタルジアを感じる」 


穂乃果「あ、そうだ……今からでも剣道部の応援に行けるよね」 

絵里「名古屋まで行くの?」 

穂乃果「やっぱり、遠いよね」 
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 11:52:14.96 ID:vgeC8z48o

絵里「ねぇ、穂乃果」 

穂乃果「今度はなに?」 


絵里「手を、繋ぎましょうか」 


穂乃果「えぇ~? 汗ばんじゃうよ」 

絵里「いいから」 

ギュ 


穂乃果「……どうしたの?」 

絵里「変?」 

穂乃果「……いつもと違う」 

絵里「たまにはいいでしょ?」 

穂乃果「……うん」 

絵里「どうして警戒してるのよ」 

穂乃果「なにもない?」 

絵里「ないから、安心して」 

穂乃果「えへへ、そっか」 

絵里「こうやって歩くの、久しぶりよね」 

穂乃果「小学校以来だよね」 

絵里「そんなに前だった?」 

穂乃果「そうだよ~」 

絵里「穂乃果と出会って、結構経つのね」 

穂乃果「……」 


絵里「なんだか、遠い昔のような気がする」 


穂乃果「絵里ちゃん……?」 

絵里「なに?」 

穂乃果「どこか、遠くに行っちゃう……とかじゃないよね」 

絵里「ふふ、なによそれ」 

穂乃果「……じゃないよね?」 

絵里「そんなわけないでしょ。学校はどうするの?」 

穂乃果「……」 

絵里「……?」 

穂乃果「…………」 

ギュッ 

絵里「少なくとも、あと半分。……高校生活の半分は、穂乃果と一緒よ」 

穂乃果「……うん、そうだね」 

絵里「時間はたくさんあるから――」 


…… 

675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:35:36.93 ID:vgeC8z48o

―― 立秋:写真部 


友人「あれ、無くなってる」 


友人「部長、こっちにあった写真って……」 


写真部長「理事長が見せてくれっていうから、貸したよ」 

友人「理事長が? ……もしかして、全部ですか?」 

写真部長「うん、そうだけど……まずかった?」 

友人「見られてまずいものは無いんですけど……」 

写真部長「急がないと、ホームルーム始まるよ」 

友人「はい……」 


友人「あの入学式の写真……使わないよね、まさか」 



―― 理事長室 


理事長「ふむ……」 


夕月「どうでしょう」 

理事長「いい写真が撮れてる。厳選のしがいがあるな」 

夕月「やはり、入学案内のパンフレットですから……」 

理事長「校外の画像は使えないな」 


夕月「……これは」 


理事長「?」 

夕月「莉都様、これはいかがでしょう」 

理事長「あぁ、それは私も気に入っている」 


夕月「桜と、喜びあう、先輩と、後輩」 


理事長「いい一枚だ」 


夕月「はい。……二人、互いに想いが通じるように――」 



…… 

… 
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:37:30.77 ID:vgeC8z48o

―― 1年生の教室 


友人「見て穂乃果! 学校新聞!」 

穂乃果「主将だ!」 

友人「……じゃなくて、この写真ね、私が撮ったんだよ」 

穂乃果「え、名古屋まで行ったの?」 

友人「うん、新聞部のお供として~」 

穂乃果「いいなぁ……」 

友人「……じゃなくて、この写真の出来をみてよ」 

穂乃果「出来って言われても……私、素人ダヨ」 

友人「なんで外国人風に喋るのさ」 


…… 

… 


―― 放課後:グラウンド 


菊地「なぁ、走ろうよ、穂乃果」 

穂乃果「これから演劇部に行かないといけないんだよ」 

菊地「……穂乃果が演技を?」 

穂乃果「そうじゃないよ。見学させてもらってるだけ」 

菊地「面白いの?」 

穂乃果「観客が居たほうが真剣になれるって、言ってた。 
     見てるのも楽しいよ」 

菊地「そっか。……それでさ、走ろうよ」 


「穂乃果ー」 


穂乃果「全国4位に勝てるわけないよ。絵里ちゃんが呼んでるから、じゃあね~」 

菊地「あ、ちょっと! 授業で負けた借りをまだ返してないんだけど!」 


…… 

… 
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:38:42.74 ID:vgeC8z48o

―― 白露:生徒会室 


穂乃果「絵里ちゃーん」 

絵里「先輩、でしょ」 

穂乃果「絵里ちゃん先輩」 

絵里「あのねぇ」 

穂乃果「理事長が渡してくれって」 

絵里「なにかしら?」 

穂乃果「大きな包だね」 


副会長「会長、よろしいでしょうか」 


絵里「はい、なんでしょう」 

副会長「先日行われたオープンキャンパスの内容です」 

絵里「ありがとう」 


穂乃果「開けちゃおうかな」 

絵里「ダメよ、穂乃果。そこに置いておいてね」 


副会長「二人はホント、仲がいいよね」 


…… 

… 
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:40:22.91 ID:vgeC8z48o

―― 秋分:生徒会室 


絵里「私たちの記事を?」 

新聞部長「そうだよ。穂乃果ちゃんと絢瀬ちゃんって、 
       この学校の有名人だから」 

絵里「穂乃果一人でも充分な内容になりそうだけど」 

新聞部長「メインは絢瀬ちゃんね」 

絵里「メインって……言われてもね」 

新聞部長「入学案内の二人だから、これからも有名になるよ」 

絵里「……何の話?」 

新聞部長「あれ、知らないの?」 

絵里「入学案内……もしかして、前に届いた包かしら」 


絵里「……えっと、確かここに」ガサゴソ 


絵里「あった……」 

新聞部長「会長は意外とうっかり屋さんである、と」メモメモ 

絵里「言葉が出ないわね……」 


絵里「これは――……」 

新聞部長「いい写真だよね」 

絵里「いつの間にこんな写真を……――あぁ、あの子ね」 


ガチャ 

穂乃果「過ごしやすい時期だねぇ……あれ?」 

新聞部長「お邪魔してま~す」 

絵里「見て、穂乃果」 

穂乃果「パンフレット?」 

絵里「そうよ」 


穂乃果「あ――……」 

絵里「入学式の時、撮られていたみたい」 


穂乃果「絵里ちゃんと私……」 

絵里「ちょっと照れるわね」 


新聞部長「桜を背景に抱きしめあって喜び合う二人……うんうん、いい記事が書けそうだよ」 

絵里「もう過ぎた話でしょ」 

新聞部長「入学時を想い返すって内容でいいよね」 


穂乃果「…………」 


新聞部長「穂乃果ちゃんは感動してるね」 
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:43:06.49 ID:vgeC8z48o

絵里「さて……仕事をするから、遠慮して欲しいんだけど」 

穂乃果「あ、……どうして新聞部の部長が?」 

新聞部長「取材だよ、取材~」 

絵里「困った人ね……」 

新聞部長「ほら~、あの有名な進学校の生徒会長知ってるでしょ?」 

絵里「えぇ、京都の方ね。会って話をしたことあるけど」 

穂乃果「……」 

新聞部長「彼女といい勝負が出来るのは絢瀬ちゃんだけなのだ」 

絵里「知らないわよ、そんなこと……」 

穂乃果「その学校の副会長って、どんな人?」 

新聞部長「え?」 

絵里「?」 

穂乃果「気になっちゃって」 

新聞部長「えっとねぇ、……地元、東京の人だって」 

穂乃果「関西弁……じゃないの?」 

新聞部長「そんな話聞いたことないけど、どこからの情報?」 

穂乃果「なんとな~く、どこかで聞いたことがあったような」 

新聞部長「ふぅん……。でも、あたしの情報だと、副会長で、 
       そんな独特なしゃべり方の人はこの近辺の学校には居ないよ」 

穂乃果「じゃあ、気のせいだね」 

絵里「ほら、仕事の邪魔しないで?」 

新聞部長「しょうがない。今日のところは身を引くけど、明日はちゃんと取材を受けてもらうからね」 

絵里「あのねぇ……」 

新聞部長「あははっ、そいじゃあね~」 

テッテッテ 

ガチャ 

 バタン 

絵里「もぅ、勝手なんだから。……でも、なぜか憎めないのよね」 

穂乃果「ここの書類、まとめちゃうね」 

絵里「あ、5つに分けて――」 

穂乃果「ホッチキスでとめるんだね」 

絵里「そうよ。お願いね」 

穂乃果「任せて」 

絵里「……さっきの」 

穂乃果「?」 

絵里「副会長がどうとかって」 

穂乃果「よく分かんないんだけど……引っかかっちゃって」 

絵里「そう……。話に出た京都の方ね、のんびりしてて、和むような雰囲気だったわ」 

穂乃果「……そうですか、それは良かったですね」 

絵里「……なんで敬語になるのよ」 
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:45:24.40 ID:vgeC8z48o

…… 

… 

―― 寒露:ボランティア部 


瑞芽「絵里先輩っ、一局お願いします!」 

絵里「私じゃ相手にならないでしょ?」 

瑞芽「真剣勝負じゃなくて、勉強したいんです!」 

絵里「それなら穂乃果と指したほうがいいわよ」 

瑞芽「……穂乃果は」 


ガラガラ 

穂乃果「だんだん寒くなって――って! また来てる!」 


瑞芽「いいでしょ、ここはボランティア部なんだから」 

絵里「そうね、出入りは誰でも自由よ」 

穂乃果「じゃあ、来週の定例清掃、参加してよ?」 

瑞芽「さ、絵里先輩、準備できましたよ」 

穂乃果「無視しないでよ、瑞芽ちゃん」ムニー 

瑞芽「ふぁにふるの!」ムニー 

穂乃果「むひふるふぁられふぉ!」 


絵里「仲が良いんだか悪いんだか……」 


ガラガラ 

友人「失礼しまーす」 

絵里「あら、いらっしゃい」 

友人「この間、取材受けましたよね。その新聞が出来たので持ってきました」 

絵里「新聞部でも無いのに……悪いわね」 


瑞芽「ふぁなひて」ムニー 

穂乃果「ふぉっちふぉそ」ムニー 


友人「なにしてんの、この二人……」 

絵里「冬休みの予定を考えないといけないんだけど」 

友人「なにかあるんですか?」 

絵里「自治会の清掃と、クリスマス会ね。他にも小さい件がいくつか」 

友人「予定がぎっしりですねぇ」 

絵里「あなたも参加する?」 

友人「面白そうだから乗ります。日にち次第ですけど」 

絵里「予定はね――」 


コンコン 


絵里「どうぞ」 
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:47:27.78 ID:vgeC8z48o

ガラガラ 


主将「高坂もここにいたのか。……なにしてんだ」 


穂乃果「ほぉぇ?」 

瑞芽「ほ?」 


絵里「どうしたの?」 

主将「ちょっと相談事があってな」 

絵里「珍しいわね。なにかしら」 

主将「高坂を正式な部員にしたくてな」 


穂乃果「本人、こっち!」 

友人「なんで瑞芽がここにいんの?」 

瑞芽「絵里先輩に一局受けてもらおうと思ってたんだけど……」 


主将「全国に行ったはいいけど、初戦敗退だろ。 
    高坂が入ればもっと上を目指せそうなんだよ」 

絵里「こればっかりは本人の意志だから。……どうなの、穂乃果?」 

穂乃果「…………」 

絵里「……?」 

主将「部員達も、初心者だった高坂に影響されてるんだよ。 
    だけど、今年の全国進出は運の要素が大きくてな」 


友人「……」 

瑞芽「どうしたの?」 

友人「穂乃果の表情、なんか変」 

瑞芽「……?」 


主将「高坂、本気でやってみないか?」 

穂乃果「……」 

主将「素質は充分にある」 

穂乃果「でも……」 

主将「?」 

穂乃果「そう言ってくれるのは嬉しいですけど――……」 

絵里「……」 


穂乃果「物足りなくて」 


主将「……」 

絵里「どういうこと……?」 


穂乃果「主将に稽古をつけてもらって、みんなで、練習してるのは楽しいです。 
     だけど、……それだけじゃ……満足できないっていうか」 
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:50:18.09 ID:vgeC8z48o

主将「大会に出て、試合に勝てば変わる」 

穂乃果「多分、そうじゃなくて……」 

主将「……」 

絵里「穂乃果自身も、その足りないものに気付いてないの?」 

穂乃果「……うん」 


友人「……」 

瑞芽「……どうしたの、さっきまでの雰囲気……穂乃果の雰囲気じゃないよ」 

友人「だよね……」 


主将「競い合う仲間が居ない、ってことか」 

穂乃果「……はい」 

主将「……そうか」 

絵里「……」 

友人「横から口出して悪いんですけど。 
    穂乃果と同じレベルか、それ以上の1年生って居ないんですか?」 

主将「居ないな。経験者はいるが、高坂を引き上げるような存在にはなってないのか」 

絵里「……」 

主将「うん、わかった。……まぁ、一緒に全国を目指そうとは言わないが、 
    今までの部活動が楽しいと思ったのなら、これからも参加してくれると助かる」 

穂乃果「それは、もちろん」 

瑞芽「え、そんな……諦めていいんですか? 全国制覇がかかっているんですよ?」 

主将「高坂の目的がそれじゃないんだから、しょうがない。……邪魔したな」 

絵里「……えぇ」 

瑞芽「主将さんが穂乃果を引き上げることはできないんですか?」 

主将「その役はあたしじゃないっていう話だな」 

スタスタ 


ガラガラ 

 ピシャ 


穂乃果「……主将に悪いことしたかな?」 

絵里「穂乃果が本気になれないって、ちゃんと理解していたわ」 

穂乃果「……」 

絵里「残念に思っているだろうけど、しょうがないわよ」 

穂乃果「でも……こんな中途半端な気持ちで剣道部に参加しても……迷惑だよね」 

絵里「楽しいと思えるのなら、大丈夫よ。これから、試合に出たいって思えるかもしれないでしょ」 

穂乃果「……うん、そうだね」 


友人「…………」 


…… 

… 
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:52:37.48 ID:vgeC8z48o

―― 霜降:ボランティア部 


友人「……失礼します」 


絵里「いらっしゃい。……穂乃果は剣道部にいるわよ?」 

友人「はい、知ってます。今日は絵里先輩に相談を」 

絵里「えぇ、いいわよ。お茶、ロシアンティー、紅茶、色々あるけど」 

友人「お構いなく。話が済んだら部に戻らないといけないんで」 

絵里「あら、そう」 


友人「……」 

絵里「穂乃果に聞かせたくない話し?」 

友人「はい……。というか、穂乃果のことで」 

絵里「?」 

友人「えっと……なにから話せばいいのか」 

絵里「時間の許すかぎりじっくり聞くから」 

友人「ありがとうございます。……じゃあ、写真のことから」 

絵里「……」 


友人「あの……入学案内のパンフレットの件ですけど」 

絵里「撮られていたのはびっくりだけど、気にしていないから」 

友人「勝手に撮ってすいません……。いつか渡そうと思っていたんですけど」 

絵里「あなたも気にしないの。いい一枚だと思う」 

友人「そう、思いますか?」 

絵里「えぇ、――最高の一枚ね」 

友人「最高の……。それって、穂乃果もいい写真だと思っていますかね……?」 

絵里「それはどうかしら。……それについてコメントしてなかったのよね」 

友人「……やっぱり」 

絵里「?」 


友人「穂乃果って、私の写真……褒めてくれないんですよ」 

絵里「…………」 

友人「その一枚だって、結構自信があったから…… 
    私の写真を認めてくれるようになった、その時に見てもらおうと思ってて」 

絵里「……」 

友人「部長や、絵里先輩が褒めてくれた画でも、穂乃果はあまりリアクションしてくれなくて」 

絵里「……」 

友人「ひょっとして……嫌われてるんじゃないか――」 

絵里「それは無いわ」 

友人「……」 

絵里「家でも、あなたのこと話すし、一緒にいて楽しそうなのも知ってる」 

友人「……」 
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:54:16.94 ID:vgeC8z48o

絵里「あなたが写真を撮りだしたきっかけってなにかしら」 

友人「……えっと、……写真を褒めてもらって……色んな場所へ行くようになって」 

絵里「それは穂乃果と出会った中学の頃の話よね。その前は?」 

友人「……まえ?」 

絵里「その褒めてもらえた写真――……私と穂乃果の写真を撮った時、カメラを持っていたわけでしょ?」 

友人「……はい」 

絵里「どうしてその時も、カメラを持っていたのか、気になっていたのよ」 

友人「……」 

絵里「中学生の女子がカメラを持って歩くなんて、少し違和感があったのね」 

友人「……」 

絵里「その理由があるんじゃない?」 

友人「それと、穂乃果が褒めてくれないことと、関係があるんですか?」 

絵里「あるかもしれないし、ないかもしれない。 
    少なくとも、私は穂乃果ほどにあなたを知らない」 

友人「……そうですね」 

絵里「……」 


友人「父の趣味が……写真を撮ることだったんです」 

絵里「……」 


友人「お世辞にも、いい写真とは言えないほどの腕前なんですけど」 

絵里「……」 


友人「それで、私が小さい頃に……一枚だけ撮らされたことがあって」 


友人「父と私の二人が撮った写真……、それを母がえらく褒めてくれたんですよね」 
   被写体がなんだったのか、忘れてしまったけど……」 


友人「うまく撮れてる。って、笑ってくれて」 

絵里「……」 

友人「……小学校高学年までは、普通の家族だったんです」 

絵里「……」 

友人「だけど、ある日……両親がケンカを始めてしまって 
   次の日も、その次の日も、ケンカをするようになってて」 


友人「それで、……父のカメラが床に叩きつけられたんです」 

絵里「……どうして?」 

友人「わかりません。その場に居なかったからどっちがやったのかも知らない」 

絵里「……」 

友人「言えるのは、二人の仲が冷え切ったこと。 
    父は趣味を捨てて、家では喋ることがなくなりました。 
    母も同じ雰囲気で……、同じ家に他人が住んでるって感じになって」 


絵里「……」 
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:56:11.18 ID:vgeC8z48o

友人「それが嫌で、外に出て、色んなところを歩いてて……」 

絵里「カメラを持った理由は……」 

友人「……家族で話す、きっかけになればいいなって」 

絵里「……」 
   
友人「ただ、それだけです」 

絵里「そう……」 

友人「私のためかどうかは知らないけど、……戸籍の上ではまだ家族です」 

絵里「…………」 

友人「って、余計なことまで……」 

絵里「あなたは、ご両親のことどう思っているの?」 

友人「どうなんでしょう、……よくわかりません」 

絵里「ちゃんと考えてみて」 

友人「あの、私のことじゃなくて、穂乃果のことを……」 

絵里「穂乃果はあなたの家族のこと、どれだけ知ってるの?」 

友人「関係が良くないってくらいです。詳しくは話してないので」 

絵里「……少し、私の話になるけど、いいかしら」 

友人「はい。……?」 

絵里「今、私は穂乃果の家にお世話になっているんだけど」 

友人「……」 


絵里「私が10歳の頃から……だから、もう7年になるわ」 

友人「7年……」 

絵里「結構な年月よね」 

友人「……」 

絵里「穂乃果とおばさま、おじさまの3人家族。 
    他人の私が高坂家に転がり込んでいるのね」 

友人「……」 

絵里「繋がりといえば、私たちの祖母が友人だったというだけ」 

友人「……」 

絵里「私と穂乃果が最初に出会ったのが、その2年前。その間は交流がなかったのよ」 

友人「ということは……、8歳の時と、10歳の……2回で……?」 

絵里「そうよ。たった2回の対面なのに、私と一緒に暮らしていこうって決めてくれたの」 

友人「その2回目……10歳の頃に、……なにがあったんですか?」 

絵里「気になる?」 

友人「もちろんです。数奇な運命じゃないですか」 

絵里「そうね、滅多にあることじゃない。特別な人生なのかもね」 

友人「ご両親はロシアで暮らしているんですよね」 

絵里「えぇ、おばあさまと一緒に。本当は私もロシアへ移住することになってたのよ」 

友人「……!」 
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 18:58:24.55 ID:vgeC8z48o

絵里「最初は私、その引越に納得がいかなくて、ずっと機嫌が悪かったのよ。 
    久しぶりに逢う穂乃果にも、態度を悪くしてた」 

友人「……」 

絵里「穂乃果はそんな私の機嫌を直そうと、あの手この手を使ってね」 


絵里「お気に入りのオルゴールや、大好きな饅頭、 
    手作りのトロフィー、ネコのぬいぐるみ、カラオケマイク」 


絵里「一つ一つ持ってきたけど、笑うことすらしない私に肩を落としては、次の手を考えてた」 

友人「……」 

絵里「可笑しな話しでね、自分のご飯茶碗を持ってきたりして……」 

友人「はは」 

絵里「物が無くなったら、今度は歌をうたって。 
    それでも無愛想な私を見て、おばあさまが言ったの」 


絵里「――そんなに嫌なの? って」 


絵里「当たり前よね。友達と離れなきゃいけなくて。海外なんて不安も大きいんだから」 

友人「……」 

絵里「そう、言ったの。ありのままの気持ちをおばあさまにぶつけた」 


絵里「おばあさまと両親は黙って聞いてたけど……」 


絵里「穂乃果が泣いちゃって」 


友人「びっくりした……んですか?」 


絵里「私も最初はそう思った」 


絵里「大声で怒りをぶつけたんだから、怖がらせてしまったって」 


絵里「だけどね、私の手を取って言ったの」 


絵里「離れちゃいやだって」 


絵里「泣きじゃくる一つ年下の子に……私はどうすることもできなかった」 


友人「……」 


絵里「そして、おばあさまがもう一度訊いたの」 


絵里「――そんなに嫌?」 


絵里「私が応えるより先に穂乃果が答えたわ」 


絵里「――いやだ、って」 


絵里「まるで、大切なモノを守るかのように」 


絵里「私の手を、ぎゅっと握りしめてくれたの」 
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:00:44.67 ID:vgeC8z48o

絵里「その様子を、穂乃果のお祖母様と私のおばあさまが微笑んで見守ってくれていた」 

友人「……」 

絵里「それが分岐点となって、私は一人、日本に残ることになったのよ」 

友人「……」 

絵里「血の繋がっていない私でも家族として迎え入れてくれた」 

友人「…………」 


絵里「家族をとても大切にする子なの」 

友人「…………」 

絵里「これは、ただの予想なんだけどね」  

友人「……はい」 

絵里「見たい一枚があるんじゃないかしら」  

友人「もしかして……家族の?」 

絵里「えぇ、そうよ。あなたの事情を知ってるから、 
    はっきりとは言えないんでしょうね」 

友人「無理……ですよ」 

絵里「無理と思うなら無理よ。だけど、認められたいなら努力しないと」 

友人「……」 

絵里「あなたが両親をどう思っているかが重要なのよ」 

友人「私が……」 

絵里「勝手な言い方をしたけど、これは、あなたの分岐点なんだと思う」 

友人「……」 

絵里「穂乃果と出会って、この学校に入学して、認めてほしいと思った今が選択の時」 

友人「……選択の」 

絵里「私は、日本に居たい……私のために泣いている穂乃果と一緒に居たいって思ったから、此処にいるの」 

友人「……!」 

絵里「ゆっくりでいいから考えてみて。自分がどうしたいのか――」 


…… 

… 


―― 中庭 


友人「……」 


友人「…………」 


友人「あ、私のことばっかりで、穂乃果のこと言いそびれた……」 


…… 

… 
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:02:29.30 ID:vgeC8z48o

― 歳末:高坂邸 


穂乃果「うわ、すごい雪だよ、絵里ちゃん」 

絵里「本当……。こんな日に限って登校しなくちゃいけないのよね」 

穂乃果「でも、いつもと違った風景だよ」 

絵里「穂乃果も付き合うことないのに」 

穂乃果「ううん、行きたいから行くよ」 

絵里「それじゃ、風邪をひかないように暖かくして行きましょ」 



― 登校途中 


ザクザク 

穂乃果「よっ、はっ」  

ピョンピョン 

絵里「そんなに跳ねたりしたら危ないわよ」 

穂乃果「だいじょーぶ~!」 

絵里「ほら、ちゃんと傘をさして」 

穂乃果「はぁい~」  

絵里「楽しいのはわかるけど、危ないから少し落ち着きなさい」 

穂乃果「でも嬉しくて~」  

絵里「ふふ、しょうがないわね」 

穂乃果「見て、絵里ちゃん、私たちの足跡しかないよ」  

絵里「二人だけの軌跡ね」 

穂乃果「綺麗なこと言った!」 

絵里「私たち二人は、どこまでいけるのかしらね」 

穂乃果「もちろん、ずっとだよ」  

絵里「ずっと、ね」 


ブオオン 


穂乃果「どのくらい積もるかなぁ」 

絵里「のんびりしてないで、はやく用事を済ませて帰るわよ」 

穂乃果「雪合戦しようよ」 

絵里「話聞いてる?」 
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:03:31.11 ID:vgeC8z48o

ブオオオオン 


穂乃果「あ、絵里ちゃん危ない!」 

バシャァッ  

絵里「――っ!?」 

穂乃果「ふぅ、危ない。でも傘があってよかった」 

絵里「水たまりが出来てたのね……穂乃果がいなかったらずぶ濡れになってたわ 

穂乃果「こういう事故もあるんだね」 

絵里「ありがとう、穂乃果。助かったわ」 

穂乃果「どういたしまして~」 



―― 学校・生徒会室 


絵里「穂乃果、そっちにマジックペンがあるでしょ?」 


絵里「あら、穂乃果……?」 


絵里「どこに行ったのかしら」 




―― ボランティア部 


絵里「ここにもいない……」 




―― 1年生の教室 


絵里「……ここでもない」 




―― 廊下 


絵里「誰も居ない学校に独りで居るのって、ちょっと……」 


「――里ちゃ~ん」 


絵里「あ、どこに行ってたの?」 

穂乃果「屋上だよ。面白いから来てよ!」 

絵里「探したのよ?」 

穂乃果「ごめ~ん」 

691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:05:17.61 ID:vgeC8z48o

―― 屋上 


「一面真っ白――……」 


「すごいよね~」 

 ザクザクザクッ 

「穂乃果! 転ぶわよ!」 

「転んでも平気~! だって雪だもん!」 

「それでも危ないんだから、気をつけて……」 

「雪だ、雪だ~!」 


「でも、本当に素敵……」 

「絵里ちゃん」 

「?」 

「隙あり!」 

 ガバッ 

「きゃぁっ!?」 

「おっとっとぉ!?」 

 バフッ 

「もぅ、穂乃果……はしゃぎすぎよ」 

「だって、楽しいんだもん」 

「まったくもう……ほら、降りて?」 

「もうちょっと――」 

ぎゅう 

「――こうしてていい?」 

「……」 

「背中、冷たい?」 

「はしゃいだり、甘えたり……、一体どうしたの?」 

「どうもしない――」 

ぎゅうう 

「――――あったかい」 

「……」 

「白い世界に、たった二人きりだよ」 

「……」 

「絵里ちゃんは? 暖かいでしょ?」 

「……背中が冷たくなってきたわ」 

「じゃあ、交代しよっか」 

「起き上がるという発想はないのね……」 

「こうしていたい」 

「……なにか良いことでもあった?」 

「うん」 
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:07:38.75 ID:vgeC8z48o

「なにがあったの?」 

「クリスマス会が楽しかった」 

「自治会の催し物なのに、みんな来てくれたわね」 

「主将たちも、瑞芽ちゃんも、部長さんたちも」 

「……」 

「楽しかった、って……言ってくれた」 

「他の人たちもそう言ってくれてたわよ」 

「ほんと?」 

「自治会長さんたちも、保育園の園長さんも、子供たちもね」 

「そっか……」 

「……」 

「写真をね、見せてくれたよ。家族の写真」 

「……そう」 

「バツの悪い顔してた」 

「……それはそうでしょうね」 

「あ、背中冷たいよね」 

「さ、起こして?」 

「よいしょっ」 

「早く中に入りましょ。もう少しで終わるから」 

「……」 

「止みそうにないわね、この雪――」 

「……絵里ちゃん」 

ぎゅっ 

「……今日の穂乃果は、甘えん坊さんね」 

「……えへへ」 

「離れてくれる?」 

「あ、……うん。ちょっと鬱陶しかったよね」 

「そうじゃなくて、私が穂乃果を抱きしめられないでしょ?」 

ぎゅうう 

「あ……」 

「まだなにかあるのね」 

「背中を温めようと思っただけだよ」 

「あら、それじゃ……穂乃果の心遣いを無にしちゃったわね」 

「じゃあ、背中向けてよ」 

「このままがいいわ」 

「……」 

「私に話したいことがあるんでしょ?」 

「うん」 
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:08:59.97 ID:vgeC8z48o

「言ってみて」 

「あのね――……絵里ちゃん」 

「なぁに?」 


「ありがとう」 


「?」 


「いつもいつも、ありがとう」 

ぎゅううう 


「……」 


「絵里ちゃんが居てくれてよかったよ」 


「穂乃果……」 


「……よか…った」 


「泣いてるの?」 


「どうして?」 


「声が震えてる」 


「泣いてないよ――……」 


「……」 


「ごめんね、もう少しだけ――……」 


「ねぇ、穂乃果」 


「ん……?」 


「初めて会った日のこと、覚えてる?」 


「……うん」 


「あの頃の私は、いつも母から言われてたの。愛想のない子ねって」 


「……」 


「単に人見知りしていただけなんだけど」 


「絵里ちゃんは一度気を許すと、誰にでも優しくなるのにね」 


「余計なこと言わないの」 


「えへへ」 
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:10:41.36 ID:vgeC8z48o

「それで、私が8歳、穂乃果が7歳の時。おばあさまに連れられて、遊びに行った日のこと」 


「……」 


「おばさまが言ってたわ。穂乃果は恥ずかしがっていたって」 


「……」 


「今までずっと怖がらせていたと思っていたんだけど、 
 どうして恥ずかしかったの?」 


「……忘れちゃった」 


「それは、嘘ね」 


「……」 


「穂乃果」 


「……ん?」 


「この話になると、いつも誤魔化すのはどうして?」 


「……」 


「そして、黙ってしまうのよね」 

ぎゅうう 


「……うぅ、苦しい」 


「理由を聞くまで離さないわよ?」 


「いいよ、それで」 


「……」 


「日が暮れるまで、時間があるから」 


「……」 


「太陽出ていないのに、日が暮れるって変だよね」 


「……じゃあ、これでお終い」 

スッ 


「あ――……」 


「警備員の人にも迷惑かけるから、早く仕事を終わらせ――」 


「……っ」 

ガバッ 
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:11:52.64 ID:vgeC8z48o

「…………」 


「今日だけ、この時だけでいいから――……」 


「……」 


「お願い、絵里ちゃん……、もう少しだけ――……」 

ぎゅうう 


「……」 


「私……、小さい頃から本当の友達って出来なかった」 


「……おばさまから聞いてる」 


「なんかね、知らないうちに距離を取ってしまうの」 


「……」 


「近付いて来られると、怖くなる。だから、深く付き合えない」 


「……」 


「誕生日会に誘われても断って、遊びに行くのも……断って……っ」 


「穂乃果……」 


「いつか……離れていくんだ……と思ったら……――とても怖くなるんだよ」 


「……」 


「どうしてか……分からないけど……っ……怖くて……仕方がなかったっ」グスッ 


「……ほのか」 

ぎゅうう 


「でもっ……あの時……っ……絵里ちゃんと出会ったあの時っ」グスッ 


「……」 


「とっても嬉しかったから……っ」 


「……だから、恥ずかしかった?」 


「う…うん……っ」 


「私は離れてなんかいかない」 


「……うんっ」 

696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:12:46.14 ID:vgeC8z48o

「私は一緒に居たいわ。――穂乃果が許す、その時まで」 

ぎゅううう 


「じゃあ……じゃあ、ずっとだよ?」 


「えぇ。私たちのおばあさまのように、ずっとね」 


「……うん、ずっとだよ」 


「ほら、泣かないで」 


「ぐすっ」 


「穂乃果には笑っていて欲しいから」 


「……うんっ」 


「拭いてあげるから、じっとしててね」 


「本当に、甘えてばっかりだね」 


「いいわよ、もっと甘えても」 


「ううん、もっと……強くならなきゃ」 


「……」 


「……すぅぅ、はぁ」 


「そろそろ戻りましょうか」 


「……」 


「それとも、もう少しこのままでいる?」 


「もう少し!」 

ガバッ 


「泣いてた子がもう笑ってる」 


「それを言わないでよ~」 


「ふふ」 

697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/15(火) 19:13:22.29 ID:vgeC8z48o


「……――怯えるのはこれでおしまいだから」 



「自分にも、これからのことにも負けないから――」 



…… 

… 

698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 22:59:15.00 ID:MLnaYSmo0
ほのえりいいね
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 23:58:34.08 ID:p85u3RUmO
今更だけどカラオケマイクって知ってる人いるのかな
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:06:49.82 ID:xFAr71sto

―― 元旦:神社 


絵里「あけましておめでとう」 

友人「おめでとうございます」 

母「似合ってるわよ、巫女服姿」 

友人「ありがとうございます~」 

絵里「すごい人の数だけど、やっていけてる?」 

友人「はい、なんとか。バイトなんてやったことないから右往左往してます~」 

母「偉いのね」 

友人「今年から高校生はオッケーだったんで、運がいいですよ~。 
    あ、穂乃果なら向こうに居ますよ」 
   
母「こっちではおみくじ引けないの?」 

友人「引けますけど、どうせなら穂乃果のところで引いた方がご利益あるんじゃないかと」 

絵里「また、適当なこと言って」 

友人「あはは」 

客「すいませ~ん」 

友人「あ、はーい! それでは~」 

タッタッタ 

母「頑張ってるみたいね」 

絵里「……はい。欲しいものを買うためにバイトを始めたそうです」 

母「穂乃果はその付き合いなのね」 

絵里「それだけじゃないみたいで。巫女のバイトに興味があったと聞きました」 

母「小さいころから、変なことに興味を持つのよね、穂乃果は」 

絵里「変なこと……?」 

母「ほら、絵里の機嫌を取ろうとトロフィーを渡したでしょ?」 

絵里「はい……」 

母「私とお父さんと穂乃果で作ったんだけど、意図がはっきりしてないのよね」 

絵里「……そうなんですか」 

母「あとは、占いなんてできないのに、タロットカードを買ったり」 

絵里「……不思議なことするんですね」 

母「そうなのよね。その本人はどこかしら」 

絵里「あ、居ました」 


穂乃果「いらっしゃ~い」 


母「迷惑かけてないでしょうね」 

穂乃果「自分の娘なのに失礼しちゃうよ!」 

母「自分の娘、だからよ」 

絵里「……」 
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:07:49.47 ID:xFAr71sto

穂乃果「お父さんは?」 

母「人ごみは苦手だから」 

穂乃果「せっかくなんだから初詣くらい我慢したらいいのにね」 

絵里「……」 

穂乃果「おみくじだよね、絵里ちゃん?」 

絵里「えぇ、おねがい」 


…… 

… 


絵里「それじゃ、バイト頑張ってね」 

穂乃果「うん、それじゃあね~」 

母「このまま帰るのも味気ないから、なにか甘いものを食べに行きましょ」 

絵里「はい」 

母「何が食べたい?」 

絵里「そうですね……、あんみつとか」 

母「いいわね。もちろん穂乃果には内緒ね」 

絵里「ふふ」 


穂乃果「聞こえてるよ!」 



…… 

… 
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:08:57.63 ID:xFAr71sto


―― 啓蟄:理事長室 


理事長「入学者数は変わらず、か……」 

夕月「学院の知名度は上がっている、との認識でよろしいのでしょうか」 

理事長「楽観視はできないが、そう捉えてもいいだろう」 

夕月「では、全校生徒への発表はいかがなさいましょう」 

理事長「伝えないことにする」 

夕月「時間をおくと、生徒たちの衝撃も大きくなるかと思いますが」 

理事長「だが、廃校の運命を生徒たちが変えようとしている。 
     それに余計な水を差したくない」 

夕月「かしこまりました」 


…… 

… 

703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:10:26.05 ID:xFAr71sto

―― 新学期:校庭 


友人「また別のクラスって……ありえない……」 

瑞芽「私は一緒だ……」 

穂乃果「2年連続で生徒会長なんてすごいね」 

絵里「あなたのお祖母さんは3年連続なのよ?」 

穂乃果「知らなかった!」 


ワイワイ 

 ガヤガヤ 


絵里「なんだか、注目を集めてるみたい……」 

穂乃果「注目……?」 

友人「パンフレットの二人でもあるから……、ちょっとした有名人だね」 

瑞芽「ねぇ、持ってきた?」 

友人「あのさ、しつこいよ。撮ってないんだから持ってこれるわけないでしょ」 

穂乃果「何の話?」 

瑞芽「穂乃果には関係の無いことだから」 

穂乃果「ふぅん……」 

友人「絵里先輩の写真を持って来いってうるさいんだよね」 

瑞芽「ちょっ」 

絵里「なんで私なんかの……」 

穂乃果「自分で撮ればいいのに」 

瑞芽「あれ……意外な反応……」 

友人「……うん。もっと騒ぐかと思ってたのに」 

穂乃果「騒ぐって……。私たち、もう2年生なんだから~」 

友人瑞芽「「 …… 」」 


絵里「ほら、早く教室に行きなさい。1年生に示しがつかないわよ」 

穂乃果「わかった。それじゃ、また放課後ね、絵里先輩」 

絵里「えぇ、それじゃ」 

スタスタ 


瑞芽「……呼び方も変わったまま」 

友人「けじめ、なんだって」 


穂乃果「今日もポカポカしてていい日だ!」 

友人「あんたさ、私と変わってよ」 

瑞芽「できるならするけど?」 


「高坂穂乃果、ですか……」 


…… 

704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:12:34.07 ID:xFAr71sto

―― 穀雨:生徒会室 


絵里「穂乃果、そろそろ時間よ。行きましょ」 

穂乃果「あ、うん……」ガタ 


書記「会長と副会長、なにか予定でもあるんですか?」 


絵里「えぇ、理事長室に」 

穂乃果「修学旅行の件でね~」 

書記「あぁ、あの企画書ですか」 


…… 

… 



―― 立夏:道場 


主将「よし、これから練習試合を行う。 
    結果によっては布陣の変更もあるから気合入れてけよ!」 


部員「「 はい! 」」 


穂乃果「よぉし!」グッ 


新聞部長「ちょぉっと取材いいですか~?」 

副主将「本当にちょっとだけならいいわよ」 

新聞部長「もぅ、クールなんだからぁ。……えっとねぇ、穂乃果ちゃんのことで」 

副主将「まぁ、そうでしょうね。……それで?」 

新聞部長「生徒会の副会長でありながら、今年から本格的に剣道部への活動を行っていますが、 
       多忙な学校生活の中でうまく時間のやりくりはできているのでしょうか」 

副主将「それは、高坂さんの剣道部員としての実力を訊いているの?」 

新聞部長「率直に言えば」 

副主将「元々素質があったから。本気で打ち込めば剣士としての能力は更に伸びるでしょうね」 

友人「メンバーの構成に、穂乃果は……?」 

副主将「あなたも取材?」 

友人「付き合わされてて」 

副主将「苦労するわね、あなたも。……高坂さんは、先鋒よ」 

友人「決定ですか?」 

副主将「それを決めるのが、この練習試合ね」 

友人「……」 

新聞部長「話題に欠かない存在だから、新聞部としてはありがたいよ~」 
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:13:49.73 ID:xFAr71sto

主将「高坂、一応聞くが、希望はあるか?」 

穂乃果「大将を」 

主将「……!」 


部員「え……!」 

部員「大将!?」 

ザワザワ 


主将「理由は?」 

穂乃果「強くなりたいからです」 

主将「ふむ……」 



新聞部長「おぉ、いいねいいね! 面白い展開!」 

副主将「驚いた……。あんな事言うなて」 

友人「穂乃果の練習内容って、副主将からみてどうなんですか?」 

副主将「……そうね、去年とは違って、真剣味が増していたわ」 

友人「……去年とは違う…」 


「待ってください!」 


穂乃果「?」 

主将「どうした?」 



「主将をおいて、穂乃果が大将の座につくなんて納得がいきません!」 

穂乃果「うん、そうだね」 

主将「じゃあ、あたしは中堅やるわ」 

「な……!?」 

主将「高坂を大将と認めたくないなら、試合をして結果を見せろ」 

「……わかりました」 

穂乃果「……」 


部員「どうなるんだろ」 

部員「穂乃果さんの実力って、未知数だよね」 

ザワザワ 


友人「穂乃果の相手は……?」 

副主将「去年の全国大会、三位の実力者よ」 

新聞部長「ふむふむ」メモメモ 
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:15:25.96 ID:xFAr71sto

「いつか、あなたと試合をしたいと思っていました」 

穂乃果「……」 

「あなたの実力は聞いています。稽古をしている姿も見ています」 

穂乃果「……」 

「剣道を始めたのが去年だと聞きます。 
 そんなあなたが大将を務めるなんて、私には許せません」 

穂乃果「……すぅ、ふぅ」 

「剣道を舐めないでください」 

穂乃果「確かにそうかもしれない。 
     私の言動って、経験者を侮辱しているのかもしれない」 

「……やっと気付いたのですか」 

穂乃果「だけどね――」 

「……?」 


穂乃果「強くなるって決めたから」 


穂乃果「だから、負けない」 


「…………」 


主将「じゃあ、始め!」 


…… 

… 


穂乃果「はぁ……っ……はぁっ」 

「……っ」 


主将「はい、そこまで」 


穂乃果「ふぅ……」 

「そ、そんな……私が……小さい頃から剣道を続けていた私が……!」 


次鋒「引き分けかぁ、凄いなぁ」 

副主将「あなた、他人事じゃないのよ?」 


主将「高坂、まだやれるな?」 

穂乃果「は、はい……」 

主将「じゃあ、五人掛けでもするか」 

穂乃果「……?」 



友人「なにを……?」 

次鋒「五人続けて試合をするんだよ」 

新聞部長「ふむふむふむふむ」メモメモメモメモ 

副主将「絢瀬さんに怒られるわね……」 
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:16:36.76 ID:xFAr71sto

主将「それくらいの実力がなきゃ大将は任せられん。いいな?」 

穂乃果「はい!」 



主将「おまえ、一人目な」 

部員「は、はい」 

主将「二人目だ」 

次鋒「わ、私も……?」 

主将「三人目」 

副主将「……わかったわ」 

主将「四人目があたしだ」 


友人「うわ……」 


「五人目、もう一度私にさせてください」 

主将「まぁ、いいだろう」 


穂乃果「――ふぅ」 


主将「準備はいいか?」 


穂乃果「はい――……いつでも」 


主将「よし、それじゃあ、一人目!」 


…… 

… 



穂乃果「……はぁ……はぁっ……ッ」 

ガクッ 

副主将「……」 


主将「二人に勝っただけ上出来だが、そう甘くはないな」 


穂乃果「次……お願いします……ッ」 

副主将「私から一本取らないと、次はないわよ」 

穂乃果「……わかりました」 

副主将「……」スッ 

穂乃果「すぅ……はぁぁ……」 


穂乃果「やぁぁあああ!」 

708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:17:37.42 ID:xFAr71sto

―― ボランティア部 


絵里「編み物って結構難しいのね」チクチク 


コンコン 


絵里「どうぞ」 


ガラガラ 

友人「失礼します」 

絵里「もう剣道部の取材は終わったの?」 

友人「いえ……、それより――」 



―― 道場 


バシィンン 


副主将「……――!?」 

穂乃果「……っ」 


主将「一本」 


穂乃果「はぁ……っ……はぁ……やった」 


主将「油断したか?」 

副主将「するわけないでしょ」 

主将「ふむ……」 


穂乃果「すぅぅ、はぁ……すぅぅ」 

主将「緊張の連続で疲れたか?」 

穂乃果「まだ平気です」 

主将「よし。それじゃ、勝負だ」 

穂乃果「お願いします!」 

主将「……気迫は衰えてないな」 


「穂乃果!」 


穂乃果「あ――……」 


絵里「なにやってるのよ! こんな無謀なことして!」 


穂乃果「絵里先輩――」 

絵里「あなた達! たった1年の経験者になんてことさせてるの!」 


主将「……」 

副主将「……」 
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:19:18.72 ID:xFAr71sto

穂乃果「――どいて、絵里ちゃん」 

絵里「え――……?」 

穂乃果「負けたくないから」 

絵里「負けず嫌いもいいけど、 
    自分の実力を測り損ねて勝負を仕掛けるなんて間違ってるわよ」 

穂乃果「自分に負けたくない」 

絵里「……」 

穂乃果「絵里ちゃんに頼っていたら、この――……右手の痛みも取れないよ」 

絵里「痛み……?」 

穂乃果「此処にいると、どうしてか痛くなる。そして、胸が苦しくなる……っ」 

絵里「穂乃果……」 

穂乃果「多分、それは私の弱さだから」 

絵里「……」 

穂乃果「五人目のあの子に勝たないと、強さが遠のいていく気がするから」 


「…………」 


穂乃果「だから、試合をさせてよ、絵里ちゃん」 

絵里「……」 

穂乃果「お願い」 

絵里「…………いつの間にか、呼び方が戻ってるのね」 

穂乃果「自分を変えるためにも……絵里先輩って呼んでたけど……」 

絵里「……」 

穂乃果「やっぱり、こっちがいい」 

絵里「……それが穂乃果らしさなのかもね」 

穂乃果「ごめんね……いつも、心配ばっかりかけて」 

絵里「……いいわよ、それが私の役目でもあるんだから」 

穂乃果「……ありがと」 

絵里「やるからには、中途半端な結果はダメよ?」 

穂乃果「……うん」 


主将「あたしも、いつかは高坂と試合がしてみたかったんだ」 

穂乃果「……!」 

主将「それは、まだ先の話だと思ってたんだがな」 

穂乃果「……」 


副主将「始め」 


主将「……」 

穂乃果「……」スッ 

主将「その構えに特別な意味でも込められてるのか?」 

穂乃果「たぶん」 
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:20:58.47 ID:xFAr71sto

主将「期待した答えじゃないのが残念だ」 

穂乃果「……――!」ザッ 


主将「……!」 

穂乃果「面――ッ!」 

バシッ 


主将「……ッ」 

穂乃果「胴――ッ!!」 

バシッッ 


主将「この……ッ!」 

穂乃果「面――ッッ!」ブンッ 

ガシッ 


次鋒「圧されてる……」 

部員「私の時と全然違う……」 


絵里「……」 

友人「……」 


主将「小手ぇぇええッ!」 

バシィィン 

穂乃果「――ッ!?」 


副主将「一本」 


主将「そんなに自分を越えたいか?」 

穂乃果「違います」 

主将「……?」 

穂乃果「弱い自分、臆病な自分、全ての私を受け入れないと強くなれない」 

主将「……」 

穂乃果「そんな気がするだけです」 

主将「その先に何がある」 

穂乃果「分からないけど。どうしてこんな気分になるのか全然分からないけど」 


穂乃果「そうしなきゃいけない。『今までの時間』を無駄にしないためにも!」 

ダッ 


絵里「……」 
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:22:22.47 ID:xFAr71sto

穂乃果「めぇぇえんん――ッ!」 


主将「――!」 


バシィィンン 


副主将「一本」 


穂乃果「……ッ!」スッ 

主将「高坂、おまえは何の為に剣道をしている」スッ 

穂乃果「……」 

主将「他の部でも活躍できるだろう。なぜ剣道を選んだ?」 

穂乃果「……」 

主将「なんだ、目的はないのか?」 

穂乃果「……」 

主将「それとも言えないのか?」 

穂乃果「誰かを――……」 

主将「?」 

穂乃果「誰かを探しているのかもしれません」 


主将「……」 


穂乃果「……」 


主将「行くぞ」 


穂乃果「……!」グッ 


主将「胴――!」 

バシィィン 


穂乃果「――!」 


副主将「一本。そこまで」 


穂乃果「負け…た……」 


主将「言っていることが漠然としすぎだな。 
    そんなんで強くなれるわけがない」 

穂乃果「~~ッ!」 

主将「この勝負、高坂に預ける」 

穂乃果「え……?」 

主将「剣道の頂点に立てば何か分かるかもしれないな」 

穂乃果「……全国制覇?」 

主将「あぁ。目的を持てば強くなれる。頂点に立てば視野も広がる」 

穂乃果「……」 
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:23:25.09 ID:xFAr71sto

主将「個人戦にでも、出るか?」 

穂乃果「……団体戦がいいです」 

主将「そうか。……制覇したその後にまた、試合を受けてくれ」 

穂乃果「は、はい」 


絵里「…………」 


主将「まぁ、次に勝てればの話なんだが」 

穂乃果「……」 

「みなさん、甘いですね」 

次鋒「そうでもないけどね。負けた私が言うのもなんだけど」 

副主将「……高坂さん、用意はいい?」 

穂乃果「はい」 

「私は認めませんよ。そんな理由で剣道を志すなど」 


穂乃果「……」 

「……」 


主将「始め」 


…… 

… 


バシィィン 

主将「一本。そこまで」 


穂乃果「……――ふぅ」フラリ 


絵里「穂乃果!」 


穂乃果「はぁ……疲れたぁ……」 

絵里「……おつかれさま」 

副主将「風に当たったほうがいいわね」 

絵里「ほら、立てる?」 

穂乃果「ん……」フルフル 

友人「手を貸すから、しっかりしてよ」 

穂乃果「ありがと~」 


「……ッ!」ダッ 

タッタッタ 


次鋒「あ……」 

主将「プライドがズタズタだな」 

副主将「油断はなかったけど、ね」 

主将「フォローしてくるか」 
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:24:40.03 ID:xFAr71sto

…… 

… 


ソヨソヨ 


穂乃果「ふぅ~、いい風~」 

絵里「凄い汗よ」フキフキ 

穂乃果「ありがとう~」 

友人「ほら、水」 

穂乃果「ありがと~……ごくごく」 


「あの……穂乃果……先輩」 


穂乃果「ごくごく?」 


「色々と……すいませんでした」 


穂乃果「どうして謝るの?」 

「失礼な態度……でしたから」 

穂乃果「剣道好きなんだよね?」 

「……はい」 

穂乃果「大切なモノを守りたいってことだから。私にもわかるよ」 

「でも、年下なのに……呼び捨てまでしてしまって」 

穂乃果「そんなの関係ないよ」 

「……」 


絵里「……」 


穂乃果「それじゃ、これからもよろしくね。やまちゃん」 

「私の名は、摩耶です」 

友人「え、なんでそこで間違える?」 

穂乃果「間違えてないよ。わざと呼んでるだけだから」 

友人「あ、そう」 

摩耶「……さっきまでの空気が無くなったしまいました」 

絵里「こういう子だからね」 


…… 

… 
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:26:21.48 ID:xFAr71sto

―― 夏至:ボランティア部 


ガラガラ 

摩耶「こんにちは……」 


友人「ん?」 

摩耶「穂乃果先輩は……ここに居ないのですね」 

友人「穂乃果なら、グラウンドにいるよ」 

摩耶「なぜです?」 

友人「練習風景を眺めてるだけ。……理由は分からないけど」 

摩耶「……そうですか。困りましたね」 

友人「いや、困るくらいならグランドに行きなよ」 

摩耶「それもそうですね。失礼しました」 


ガラガラ 

 ピシャ 


友人「よく分からない子だなぁ」 


ガラガラ 


瑞芽「絵里先輩は?」 

友人「今度はあんたか……。生徒会だけど」 

瑞芽「待ってようかな……」 

友人「今日は来られないって言ってたよ」 

瑞芽「そうなんだ。……それじゃあ、帰ろうっと」 

友人「ばいばーい」 

瑞芽「じゃあね」 

ガラガラ 

 ピシャ 


友人「まぁ、嘘なんだけど」 


ガラガラ 

絵里「あら、あなた一人なの?」 

友人「客が二人来ましたけど、依頼はないみたいで」 

絵里「悪いわね、留守番みたいなことさせちゃって」 

友人「いいですよ、時間を持て余してたんで。それじゃ、私も部に行きます」 

絵里「えぇ、ありがと」 

友人「……絵里先輩、変なこと聞きますけど」 

絵里「?」 

友人「穂乃果が色んな部へ顔を出してる理由ってなんですか?」 

絵里「興味があるって、そう言ってたわ」 
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:28:12.62 ID:xFAr71sto

友人「……興味はあっても、軽く部に参加してる程度ですよね」 

絵里「私もたまに参加させてもらってるわよ」 

友人「穂乃果、最近……変わりましたよね」 

絵里「……そうね。今までとは、変わってきてる」 

友人「多分、私の言ってることと、絵里先輩が言ってること……違うと思う」 

絵里「?」 

友人「絵里先輩の前だと、普通なんですけど……普通というか、楽しそうなんですけど」 

絵里「……」 


友人「絵里先輩の居ないところでは、心に穴が空いたような顔をするんですよ」 


絵里「え……、どういうこと?」 


友人「この前の、摩耶との練習試合をした時、やっぱり変だと思ったんです」 

絵里「やっぱり、ってことは……前からあったのね」 

友人「はい……」 

絵里「いつからなのか……詳しく教えて」 

友人「中学校の頃は、あまり……というか、全然そんな気配は無かったです」 

絵里「……」 

友人「高校入試の時から、かもしれない」 

絵里「入試……?」 

友人「プレッシャーなんだと思ってたけど、意気込みが尋常じゃなかったんですよ」 

絵里「…………」 

友人「この学校に入らないと人生が終わる、かのような。追い詰められたような顔をして」 

絵里「……そう」 

友人「早く伝えたかったんですけど、機会が無くて――」 


ガラガラ 


穂乃果「あつい……あついよ絵里ちゃん!」 

絵里「……」 

友人「……」 

穂乃果「あ、あれ……?」 

友人「後はお願いします」 

絵里「えぇ、わかったわ」 


スタスタ 

 ピシャ 


穂乃果「……大事な話の途中だった?」 

絵里「そうよ。とっても大事な話」 

穂乃果「そっか……。邪魔しちゃってごめんね?」 

絵里「謝るほどじゃないわ」 
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:29:25.82 ID:xFAr71sto

…… 

… 


―― 夜:高坂邸 


穂乃果「う~ん、今日の焼き魚もうまいっ」 

絵里「……」ジー 

穂乃果「もぐもぐ?」 

絵里「……」サッ 

穂乃果「なんで目を逸らすの?」 

絵里「なんでも ない。焼き魚 おいしい」 

穂乃果「なんで片言?」 

母「お父さん、醤油をどうぞ」 

父「……」コクリ 


…… 

… 


―― 台所 


ガチャガチャ 

母「えっと、後は……」 


絵里「おばさま、少し話がしたいのですが」 

母「いいわよ。なぁに?」 

絵里「穂乃果のことで」 

母「それじゃ、居間に行きましょ」 

717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:32:20.10 ID:xFAr71sto

―― 居間 


母「話しって?」 

絵里「小さいころの穂乃果って、変なところありませんでしたか?」 

母「変なところ?」 

絵里「急に気分が沈んだりとか……泣きそうな顔になったりとか」 

母「あ――……そうよ、あるわ」 


絵里「……!」 


母「ちょっと待ってて。アルバム持ってくるから」 


…… 

… 


母「これ見て」 

絵里「……」 


母「穂乃果がおばぁちゃんっ子だったのは知ってるでしょ」 

絵里「……はい」 

母「この写真のように、おばぁちゃんと一緒なら笑ってるのよ。 
  だけど――」 

ペラ 

絵里「……これは」 

母「たまたま穂乃果が写ったんだけどね」 

絵里「穂乃果……っ」 

母「親戚の子たちが遊んでいるそばで……穂乃果一人だけ、膝を抱えて俯いてるでしょ……」 

絵里「……っ」 

母「最初、この写真を見た時はつまらないから、こうしてるんだと思ってたけど……」 


母「8歳の頃まで、夜中に泣き出したりしてたのよ」 


絵里「え……」 


母「怖い夢をみたからって、私の部屋に来てね」 

絵里「…………」 

母「ひどい時は、1週間くらい塞ぎこんでたりして」 

絵里「そんなに……」 

母「私とお父さんにも心当たりがなくて。 
   お母さん……おばぁちゃんのところへ連れて行ったりしたのよ」 

絵里「……」 

母「今の穂乃果とは考えられないでしょ」 

絵里「……はい」 

母「それがきっかけかもしれない。絵里と出会えたのが」 

絵里「…………」 
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:34:23.88 ID:xFAr71sto

―― 穂乃果の部屋 


穂乃果「……」カリカリ 


コンコン 

「穂乃果、入っていい?」 


穂乃果「いいよー」 


スーッ 

絵里「勉強してるの?」 

穂乃果「うん……予習をね~」カリカリ 

絵里「今日はもうおしまいにしたら? 部活で疲れてるでしょ?」 

穂乃果「うん~、そだね~」カリカリ 

絵里「……」 

穂乃果「えっと……ここの数式は……確か、ここら辺に」ペラペラ 


穂乃果「あったあった……。……――あ、絵里ちゃん」 

絵里「私の存在を忘れそうになってたわね」 

穂乃果「あはは……ごめ~ん」 

絵里「今日はもうおしまい」 

パタン 

穂乃果「あぁっ、もうちょっとで解けそうだったのに!」 

絵里「ねぇ、ほのか……」 

穂乃果「……?」 

絵里「どうしてそんなに勉強熱心なの?」 

穂乃果「ん?」 

絵里「なにか、目的でもある? 国立大学に入る……とか。学校の先生になりたい、とか」 

穂乃果「えっと……うーん……」 

絵里「悩むってことは、それほど強い意志があるわけじゃないのね」 

穂乃果「……うん」 

絵里「それなのに、どうして熱心になれるの?」 

穂乃果「勉強してると……落ち着くというか……」 

絵里「おばさまは、穂乃果に勉強しなさいって言ったことがないそうね」 

穂乃果「……うん、無い」 

絵里「どうしてか知ってる?」 

穂乃果「自発的にするから!」 

絵里「偉そうにしないの。……いえ、それは偉いんだけど。 
    そういうことじゃなくて」 

穂乃果「どうしたの? なんか変だよ」 

絵里「おばさまが穂乃果を自由にさせてるのは、手のかからない子だからって言ってた」 

穂乃果「なんか、照れるね」 
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:35:55.28 ID:xFAr71sto

絵里「ほのか……おばさまがどういう表情でそう言ってたのか、分かる?」 

穂乃果「え……?」 

絵里「少しだけ、寂しそうにしてたわ」 

穂乃果「……」 

絵里「手のかからないってことは、 
    それだけ触れている時間が少なくなるってことでもあるから」 

穂乃果「……そう、だったんだ」 

絵里「あぁ、ごめんなさい。親子の関係に口を挟むつもりはなかったのに……」 

穂乃果「ううん、言いたいことわかってるから」 

絵里「……そう?」 

穂乃果「別にね、いい子でいようとは思ってないんだよ」 

絵里「……」 

穂乃果「ただ……ね。……勉強していないと、落ち着かないから」 

絵里「……その理由が知りたいのよ」 

穂乃果「自分でもわからないよ……」 

絵里「ほのか……」 

穂乃果「なにかに、一生懸命になってなくちゃいけない気がして」 

絵里「……」 

穂乃果「なにかに、打ち込んでいないと……焦ってきちゃって」 


絵里「ねぇ、ほのか」 

ぎゅうう 

穂乃果「――!」 


絵里「今は私が居るから」 

穂乃果「絵里……ちゃん……?」 


絵里「私だけじゃない。 
    学校には友だちがいる。 
    部活で頼りになる先輩、頼ってくれる後輩がいる」 

穂乃果「……」 


絵里「自治会の人たちだって、街の人達だって、穂乃果のことを知ってる」 

穂乃果「……」 


絵里「ひとりじゃないから」 

ぎゅうう 

穂乃果「――うん」 


絵里「ゆっくり、行きましょう」 

穂乃果「うん、そうだね」 

絵里「焦る必要はないから」 

穂乃果「うん、わかった」 
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:36:54.20 ID:xFAr71sto

絵里「ほんとに?」 

穂乃果「……どうして疑うの?」 

絵里「たまに、我慢するでしょ」 

穂乃果「……じゃあ、今日は一緒に寝ようよ」 

絵里「……」 

穂乃果「言ってみただけです」 

絵里「私、真面目に話してるんだけど」 

穂乃果「ちょっとふざけ過ぎたね。ごめんなさい」 

絵里「まったく、もう!」 

ワシャワシャ 

穂乃果「あぁっ、絵里ちゃんっ、髪がっ!」 

絵里「心配してるのに、おふざけなんて許せないわ!」 

穂乃果「じゃあ、久しぶりに甘えるよっ」 

絵里「じゃあって何よ――」 

ガバッ 

絵里「きゃぁっ!?」 

ドサッ 

穂乃果「ね、いいよね?」 

絵里「……降りなさい」 

穂乃果「いいじゃん、小さい頃はいつも一緒に寝てたんだから」 

絵里「小さいころの話でしょ。私はいま、怒っているのよ?」 

穂乃果「だから、機嫌を取ろうとして~」 

絵里「……どきなさい」 

穂乃果「怒らないでよ~」スリスリ 

絵里「ちょ、ちょっと穂乃果っ」 
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:37:27.37 ID:xFAr71sto

―― 居間 


母「確かに最近は……あんな表情しなくなってた……」 


母「ううん……絵里が来てから、ね」 


ドタドタ 

 バタバタ 


「ちょと――、いい加減に――」 

「あぁっ――反撃する――」 


母「……」 


ドタドタ 

 バタバタ 


「私に勝てると思って――」 

「――剣道で鍛えて――だから」 


母「こらー! 今何時だと思ってるの!」 


「……」 

「……」 


シ ー ン 


「「 ごめんなさーい 」」 


母「まったく……。って、私も大声出しちゃった」 


…… 

… 
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:38:32.20 ID:xFAr71sto

―― 翌朝:絵里の部屋 


絵里「すぅ……すぅ……」 


穂乃果「しつれいしまーす」 


絵里「……すぅ……すぅ」 


穂乃果「えっと……あった」 


穂乃果「よし、油性ペンだ」ウヒヒ 


絵里「ん……んん……」 


穂乃果「!」 


絵里「すぅ……すぅ……」 


穂乃果「ふぅ……びっくりした」 


穂乃果「自分の持ち物には自分の名前だよね? 絵里ちゃん」 


絵里「すぅ……」 


穂乃果「ほのか、のほ~」スッ 


ガシッ 

穂乃果「ひやっ!?」 


絵里「何してるの?」 

穂乃果「お、起きてたの!?」 

絵里「えぇ、あなたがこの部屋に入った時からね」 

穂乃果「エスパーどころじゃないよ、特殊な訓練を受けたスパイだよ!」 

絵里「朝早いんだから、静かにしなさい」 

穂乃果「ほ、穂乃果は……絵里ちゃんを起こしに来ただけだもん!」 

絵里「何を可愛く言ってるの。そのペンはなに?」 

穂乃果「これは……サインの練習を……」 

絵里「どこに書くつもりだったの? 私の前髪を上げてたけど?」 

穂乃果「起きていたのに、そこまでさせるなんて……!」 

絵里「昨日といい、今といい……穂乃果は少し、私を見くびっているみたいね」 

穂乃果「そんなことないよ?」 

絵里「…………」 

穂乃果「む、無言の圧力……!」 


…… 

… 
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:40:01.11 ID:xFAr71sto

―― 音ノ木坂学院 


上級生「おはよ~」 

絵里「おはよう」 

後輩「おはようございます、絢瀬先輩!」 

絵里「えぇ、おはよう」 

穂乃果「おはようございます、生徒会長!」 

絵里「……」 

スタスタ 

穂乃果「無視された!?」 


友人「今日はテンション高いなぁ」 

穂乃果「あ、おはよう」 

友人「おはよう。なにか良いことでもあった?」 

穂乃果「――うん!」 


絵里「おはよう」 

瑞芽「あ! おはようございます、絵里ちゃん先輩! 鞄持ちます!」 

絵里「それはいいから」 


友人「瑞芽のやつ……、付き人っぽいことしてる」 

穂乃果「あはは」 


…… 

… 


―― 3年生の教室 


絵里「おはよう」 

副主将「おはよう――……朝からご機嫌ね」 

絵里「え?」 

副主将「楽しいことがあった……もしくは、 
     これから楽しいことがあるって顔してる」 

絵里「私が?」 

副主将「そう、あなたが」 

絵里「そ、そんな顔してたのね……」 

主将「どうせ、駅前の喫茶店に美味しいパフェがあるから高坂と行くとか、そんなんだろ」 

絵里「……」 

主将「当たりか」 

副主将「あなたはもうちょっと、空気を読んでね」 


…… 

… 
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:41:32.79 ID:xFAr71sto

―― 七夕:校庭 


穂乃果「よーし、こんなものかなぁ?」 

友人「笹なんて、よく手に入ったね」 

穂乃果「清掃ボランティアで知り合った人が居て、一本だけ分けてもらったんだよ」 

友人「あ、もしかして……あの人?」 

穂乃果「そうだよ。……なんか、ファーストフードの店長代理まで貰ってたけど」 

友人「顔広いな」 

瑞芽「というか、どうして私まで……」 

友人「いつもボランティア部に出入りしてるんだから、これくらい手伝いなよ」 

瑞芽「絵里ちゃん先輩、居ないし」ブー 

友人「絢瀬っ子というより、ただのおっかけだな、コヤツ……」 

穂乃果「それじゃあ、短冊を飾ろう~」 

友人「短冊って言っても、私たち3人分じゃあねぇ」 


穂乃果「よいしょっ」 

瑞芽「穂乃果の願いってなんなの?」 

穂乃果「素敵な学校になりますようにって」 

ピカー! 


瑞芽「爽やかすぎて……ま、眩しい……っ」 

友人「そういう瑞芽は……なになに、絵里先輩とデートがしたい? バカか?」 

瑞芽「バカっていうな! というか勝手に読まないで!」 


ビュウウウ 


穂乃果「うわっ、風がっ」 


ヒラヒラ 

瑞芽「あぁっ、短冊がっ」 

タッタッタ 


「待ってー!」 


友人「……」 


―― うさぎ小屋 


瑞芽「えっと……この辺りに……あった」 


うさぎ「モシャモシャ」 


瑞芽「食べないでー!」 
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:44:42.48 ID:xFAr71sto

友人「あれはもう、コントだな」 


穂乃果「遊んでないでちゃんとやってよー!」 

友人「あれはあれで真剣なんだからさ」 


摩耶「……こんなところで何をしているのですか?」 

穂乃果「あぁ、いいところに。やまちゃんも短冊に願いごと書いてよ」 

摩耶「願い事……ですか」 

友人「私はもう、願いは達成できたからいいんだけどね~」 

穂乃果「凄いね」 

友人「ちょっと! 私がこのカメラ手に入れるのにどれだけ頑張ったか知ってるでしょ!」 

穂乃果「だから、凄いって……言ったのに」 

友人「いつも思うんだけど、軽いんだよ、穂乃果の言う、凄いね、って!」 

摩耶「……」カキカキ 

穂乃果「全国制覇……うん! やまちゃんらしいね!」 

摩耶「か、勝手に読まないでください」 


菊地「穂乃果じゃないか、こんな所で何をしてるの?」 

穂乃果「七夕だから、願い事を書いてもらってるの」 

菊地「へぇ~、いいね、こういうの! 
    織姫と彦星が年に一度出会う日……くぅ、ロマンチックぅ~」 

友人「夏の大三角形だよね。たしか……アルタイルと、デネブと……なんだっけ」 

穂乃果「ベガ」 

友人「そうそう、ベガ」 

穂乃果「……」 

菊地「よぉし、ボクも素敵な王子様に出会えるようにお願いしちゃおうっと」 

瑞芽「夏の海で絵里先輩と素敵なひと時を過ごせるように」カキカキ 

摩耶「ここでいいのでしょうか」 

友人「うん、好きなトコでいいよ」 

次鋒「宝くじが当たりますように」カキカキ 

副主将「私利私欲に走ると碌な事にならないわよ?」 

主将「合宿、どこでするかな……」 

副主将「あなたもせっかくだから書いてみたらいいのに」 

穂乃果「海! うみがいいです、主将!」 

主将「それはいいな」 

瑞芽「!」キラン 

友人「なんか、センサーに引っかかったような顔してる」 

主将「……だけど、経費がな」 

穂乃果「うぅん……せっかくの全国出場なのにぃ」 

主将「というか、高坂は副会長なんだから、そこら辺なんとかしろよ」 

穂乃果「おぉ、その手があった!」ポン 

副主将「あなたたちねぇ……」
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:46:04.13 ID:xFAr71sto

―― 理事長室 


夕月「賑わっていますね」 

理事長「ふむ……」 


絵里「以前、理事長が仰っていた、穂乃果の特質ですね」 


理事長「そうだ。ああいう人物は貴重だ」 

夕月「……」 


理事長「呼び出したのは他でもない。先日提出された件についてだが」 

絵里「はい」 

理事長「結論から言うと、認めることになった」 

夕月「全学年で、7クラスの修学旅行になります」 

絵里「……!」 

理事長「あとは、行き先だな。3日以内に――」 

絵里「北海道か、京都・奈良へ希望します」 

理事長「第一候補が北海道なのか?」 

絵里「はい。生徒会の会議でその二つに絞りました」 

理事長「わかった。検討しよう」 

絵里「よろしくお願いします」 


…… 

… 


―― 校庭 


絵里「穂乃果」オイデオイデ 


穂乃果「どうしたの?」 

絵里「前に、理事長へ提出した件だけどね」 

穂乃果「修学旅行だよね。どうだった?」 

絵里「いい方向に話は進んでるわ」 

穂乃果「本当!? やった!」 

絵里「ふふ」 

穂乃果「あ、でも……よく通ったよね」 

絵里「理事長はかなりのやり手だから」 

穂乃果「そうだよね。学生でありながら理事長もしていたんだよね~」 

絵里「分析力も長けてるそうよ」 
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:47:02.45 ID:xFAr71sto

主将「生徒会長がいいところに」 

絵里「?」 

穂乃果「絵里ちゃん~、じゃなくて、生徒会長~」スリスリ 

絵里「ダメよ、穂乃果」 

穂乃果「まだ何も言ってないよ!?」 

絵里「なにか、自分たちだけ特別扱いして欲しいってことでしょ?」 

穂乃果「見透かされてる!」 

主将「ちっ、甘かったか」 

副主将「ふぅ……この二人は……」 


瑞芽「絵里ちゃん先輩~!」 

友人「絵里先輩も短冊をどうぞ」 

瑞芽「私が渡そうと思ってたのに!」 

絵里「願い事ね。みんなは書いたの?」 

穂乃果「もちロン!」 

絵里「へぇ……どれどれ」 

穂乃果「あ、駄目だよ、人の見ちゃ」 

絵里「そうね。……それじゃ、……穂乃果のだけ」 


瑞芽「あ、なんか悔しい」 

友人「自分のも見せたらいいよ」 

瑞芽「引かれるかもしれない……」 

友人「そういうのは分かるんだ」 


…… 

… 
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:47:52.18 ID:xFAr71sto

―― 夏休み:東京駅前 


主将「……なんの集まりだ、これは」 

副主将「……さぁ?」 


瑞芽「なんであなたがここにいるの?」 

友人「その台詞、そっくりそのまま返すよ」 

菊地「よっし、頑張るぞ!」 

摩耶「場を乱さないでください。しっかりしてもらわないと困りますよ」 


穂乃果「全国大会出場組だよね」 

絵里「そうよ。まとめて合宿にしてしまおうって、理事長の案ね」 

次鋒「まとまりがないんだけど、大丈夫かな」 

絵里「ちゃんとマネージャーもいるし、各々でトレーニングもできるでしょう」 


主将「高坂、まとめ役頼むぞ」 

穂乃果「えぇっ、どうして?」 

主将「剣道部以外の面子は、どうまとめたらいいのか分からん」 

穂乃果「分からんって……。絵里ちゃんが」 

瑞芽「そうです。絵里ちゃん先輩がいいと思います!」 

絵里「穂乃果が適任よ」 

瑞芽「ほら、早くしてよ」 

穂乃果「コロコロ態度を変えないでよ!」 


友人「それじゃあ、出発前に一枚撮りますよ~!」 


…… 

… 
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:49:00.97 ID:xFAr71sto

―― 海 


ザザァーン 


友人「合同合宿。砂浜を走る生徒たち。うん、いい被写体だ」 

パシャ 

 パシャッ 



主将「はっ、はっ」 

次鋒「ふっ、ふっ」 

副主将「……」 


ザッザッザ 


穂乃果「やまちゃん、手を貸そうか?」 

摩耶「私を侮らないでください」 


瑞芽「うぅ……私は文化系なのにっ」 


友人「アホが居る」 

パシャッ 


瑞芽「ぜぇっ、ぜぇっ」 

絵里「手を貸しましょうか?」 

瑞芽「お願いします!」 

菊地「よいしょー!」グイッ 

瑞芽「あなたじゃないから!」 


…… 

… 


―― 夜:民宿 


一同「「「 ごちそうさまでした 」」」 


菊地「はぁ~、美味しかった」 

瑞芽「え、穂乃果が作ったの?」 

友人「うん、あんたがへばって寝てる間にね」 

瑞芽「うそ……穂乃果って完璧人間なの?」 

友人「そうなんだよね。手芸部でも編み物してたし」 


摩耶「洗い物しておきます」 

穂乃果「待った!」 

摩耶「?」 
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:50:13.77 ID:xFAr71sto

穂乃果「こういうのは平等にしなきゃだめだよ」 

絵里「そうね。……だけど、どうやって決めるの?」 

穂乃果「じゃん、くじ引き~!」 

絵里「列車の中で作ってたのはそれだったのね」 

穂乃果「そうだよ! さぁ、みんな引いて~!」 


主将「こういうのは強いんだよな、あたし」スッ 

副主将「任せっきりだったから、私がやりたいんだけど」スッ 

次鋒「……嫌な予感」スッ 

摩耶「……」スッ 


瑞芽「……」スッ 

菊地「じゃあ、これ!」スッ 

友人「洗い物終わったらどうすんの?」スッ 

穂乃果「それぞれに別れてミーティングだね」 

絵里「穂乃果、私にも一本ちょうだい」 

穂乃果「どうぞ」 

絵里「……」スッ 

穂乃果「みんな。まだ見ちゃ駄目だよ~」 

マネジャ「全員、引きました」 

穂乃果「それでは、確認!」 


次鋒「やっぱりか!」 

絵里「あら」 

菊地「しょうがないか」 


穂乃果「それじゃ、三人は洗い物よろしく~!」 


…… 

… 


―― 台所 


瑞芽「手伝いますね」 

絵里「こっちはいいから、棋譜でも並べていなさい。 
    空いた時間を有効に使ったほうがいいわ」 

瑞芽「いえ~、せっかくの合同合宿ですから。代わりますよ」 

次鋒「え、こっち? 絢瀬さんと代わるんじゃないのね」 

菊地「早く終わらせて遊びましょう」 

ジャブジャブ 

 ガチャガチャ 
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:51:47.96 ID:xFAr71sto

絵里「遊ぶのはまだ早いわよ。ミーティングがあるんだから」 

菊地「はぁ~い」 

瑞芽「いいですね、こうやって並んで台所に立つって」ルンルン 

絵里「そうね。いつもは穂乃果と家事をしてるから、 
   こうやって他の子と作業をするのは新鮮でいいわ」 

瑞芽「……」シーン 


友人「なんか、ショック受けてる。絵里先輩、代わります」 

瑞芽「ちょっと! なんでいつも邪魔するの!?」 

絵里「……どうしたの?」 

友人「穂乃果が見当たらなくて――」 



―― 海辺 


ザザーン 

 ザザァーン 


穂乃果「…………」 


「こんな所に居たのね」 


穂乃果「あ……絵里ちゃん」 

絵里「どうしたの? みんなと一緒に居るのが好きなはずでしょ」 

穂乃果「うん……そうだよ」 

絵里「……」 

穂乃果「月が……蒼く光って綺麗だったから」 

絵里「……本当……綺麗」 

穂乃果「波の音と、星の光と、潮の香り……」 

絵里「ロマンチックね」 

穂乃果「よくここに居るってわかったね」 

絵里「なんとなくね。私も座っていい?」 

穂乃果「もちろん」 


ソヨソヨ 

絵里「……いい風」 

穂乃果「海から渡って来る風が、少し冷たくていいよね」 

絵里「いいわね、こういう時間を楽しむのも」 

穂乃果「……うん」 

絵里「あのね、穂乃果」 

穂乃果「?」 

絵里「穂乃果に隠してることがあるの」 

穂乃果「……」 

絵里「今はまだ言えないんだけど……その内にきっと――」 
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 11:59:01.14 ID:xFAr71sto

穂乃果「学校のことだよね?」 

絵里「え――?」 


穂乃果「絵里ちゃんが学校のために頑張ってるって、傍で見ていたら分かるよ」 

絵里「…………」 


穂乃果「詳しいことは分からないけど……。 
    多分、ロシアのおばぁちゃんからの電話が始まり……だと思う」 

絵里「それだけで判断するのは足りないでしょ?」 


穂乃果「理事長の話しと、絵里ちゃんの話し。絶対繋がってるよね」 

絵里「参ったわね……そこまで鋭いなんて」 


穂乃果「ずっと一緒にいるんだから」 

絵里「……そうね。……そうだったわね」 


穂乃果「思い当たる節はあったんだけど……、 
     今年の1年生が2クラスになって……予想が外れたんだ」 

絵里「そこまで……」 

穂乃果「?」 

絵里「ううん、なんでもないわ」 

穂乃果「……ねぇ、絵里ちゃん」 

絵里「なに?」 

穂乃果「無理してない?」 

絵里「……」 

穂乃果「学校のことで……頑張ってるのは分かるけど――」 

絵里「無理なんてしてないわよ」 

穂乃果「……本当に?」 

絵里「本人がそう言ってるのに、疑うの?」 

穂乃果「絵里ちゃんはたまに無理するから」 

絵里「人のこと言えないでしょ、あなたは」 

穂乃果「あはは……」 

絵里「でも、本当に……無理なんてしてない」 

穂乃果「……」 

絵里「それだけはハッキリと言える」 

穂乃果「……そっか。……よかった」 

絵里「優しいのね、穂乃果は」 

穂乃果「ううん、絵里ちゃんの方が優しいんだよ」 

絵里「……」 

穂乃果「……あ、照れた?」 

絵里「やっぱり私を軽く見てるのね、穂乃果は」 

穂乃果「えぇっ、なんでそうなるの!?」 
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:09:00.30 ID:xFAr71sto

絵里「姉をからかうなんて、10年早いわよ!」 

ガバッ 

穂乃果「うわっ!?」 


絵里「ちゃんと年上を敬いなさい」 


穂乃果「絵里ちゃんっ、髪に砂が! お風呂入った後なんだよ!?」 


絵里「……――。」 


穂乃果「え、なに?」 


絵里「……あともう少しで、私の願いは届くから」 


穂乃果「願い……?」 


絵里「……」 


穂乃果「ねぇ、絵里ちゃ――」 


絵里「ほら、起きて」 

ぎゅっ 


穂乃果「ねぇ、さっきのどういう意味?」 


絵里「だから、その内に話すことになるって言ってるでしょ」グイッ 


穂乃果「わっ、ちょっと引っ張らないでよっ」 


絵里「みんなが待ってるわよ。ミーティングして、明日のために早く寝ないと」 


穂乃果「もぅ~、いっつもそうやって話を有耶無耶にするんだから~」 


絵里「ふふっ、穂乃果は穂乃果のままで楽しんでいて。それが一番なんだから――」 



ザザァーン 

 ザザーン 


…… 

… 
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:13:05.64 ID:xFAr71sto

―― 処暑:ボランティア部 


穂乃果「……」 

パチ 

絵里「……」 

パチ 

穂乃果「瑞芽ちゃん、どんな試合してるのかな」 

パチ 

絵里「今までと変わらなさそうだけどね。あの子」 

パチ 

穂乃果「応援に行けなくて残念……」 

絵里「その場に居なくても、応援は出来るわよ」 

穂乃果「それはそうだけど。勝ったらすぐにおめでとうって言いたい」 

絵里「結果を待って、ちゃんと伝えればいいのよ」 

穂乃果「そうだね」 


ガラガラ 


友人「こんにちはー」 

絵里「あら、夏休みに登校なんて、珍しいわね」 

友人「全国大会の写真を理事長に頼まれているんで」 

穂乃果「届けてきたの?」 

友人「うん。もう渡してきた」 

絵里「……」 


…… 

… 


―― 理事長室 


理事長「……ふむ」 

夕月「躍動感がありますね」 

理事長「オープンキャンパスの状況も問題はなかった」 

夕月「はい」 

理事長「そして、剣道部の全国制覇に続いて他の部も好成績を残している」 

夕月「それでは……」 


理事長「まだ不安要素は残るが――……」 


理事長「生徒数の減少を止めることが出来たと見なしていいだろう」 


…… 

… 
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:13:52.45 ID:xFAr71sto

―― 9月1日:音ノ木坂学院 


キーンコーン 

 カーンコーン 


穂乃果「お昼だおっひる~♪」 

瑞芽「どこ行くの?」 

穂乃果「ちょっと、野暮用で」 

瑞芽「絵里ちゃん先輩のところ? 私も行くよ」ガタッ 

穂乃果「えっと、その……駄目だよ?」 

瑞芽「どうして?」 

穂乃果「だ、大事な話があるんだって」 

瑞芽「……」 

穂乃果「ごめんね?」 

瑞芽「迷惑かけないから」 

穂乃果「うぅん……どうしよ」 


友人「……」グイッ 

瑞芽「わっ!?」 


友人「ほら、行ってきなよ」 

穂乃果「う、うん!」 

タッタッタ 


「ちょっと! 穂乃果ーッ!」 

「大事な話に首を突っ込むなっての」 


穂乃果「申し訳ない!」 

タッタッタ 

738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:15:20.86 ID:xFAr71sto

―― 屋上 


ガチャ 

穂乃果「えっとぉ……絵里ちゃんは……」 


「……」 


穂乃果「あ、居た」 


絵里「…………」 


穂乃果「絵里ちゃん」 

絵里「あ、穂乃果……」 

穂乃果「何を見てるの?」 

絵里「学校よ」 

穂乃果「……」 

絵里「屋上から眺めると、こんな風に見えるのね」 

穂乃果「……あまり屋上に来ないから、知らなかったね」 

絵里「うん……知らなかった風景」 

穂乃果「話ってなに?」 

絵里「最初から話すわね」 

穂乃果「……うん」 


絵里「合宿の海辺で話したこと、覚えているわよね」 

穂乃果「絵里ちゃんの願い……だよね……」 


絵里「そう……私の、願い――」 


絵里「それは――……この学校を守ること」 


穂乃果「……守る?」 


絵里「音ノ木坂学院は、廃校の危機に直面していたの」 


穂乃果「え――!?」 


絵里「原因は生徒数の減少になるわ」 

穂乃果「で、でも……!」 

絵里「そう、今年の1年生は2クラス。2年生と同じ人数だから、減少はしていないわね」 

穂乃果「……」 

絵里「それでも楽観視は出来なかった。ここ数年の入学者数を比べれば分かることだから」 

穂乃果「それって……」 

絵里「そうよ。中学3年生の時、おばあさまが調べてくれって頼んだこと。 
    それを知った私は……看過できなかった」 

穂乃果「……」 
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:17:57.22 ID:xFAr71sto

絵里「この学校へ入学して、生徒数を増やすための提案を理事長に提出していたの」 

穂乃果「……」 

絵里「書記の私が直接、理事長に提出するなんて認められることじゃなかった」 

穂乃果「……」 

絵里「だけど、理事長は受け取ってくれた。私は彼女を信用することができたわ」 

穂乃果「……」 

絵里「そして、穂乃果が入学して……この学校の運命が大きく変わった」 

穂乃果「――!」 


絵里「穂乃果は布陣に入っていなかったけど、剣道部が全国出場を果たした」 


絵里「その効果で、摩耶が入学した。 
    そして、穂乃果が大将を務めた剣道部団体戦で全国制覇を成し遂げた」 


絵里「それだけじゃない。瑞芽にも刺激を与えて、視界を広げたわ」 

穂乃果「視界……?」 

絵里「将棋部の部長が仰っていたの。より先を見られるようになったって」 

穂乃果「……」 

絵里「瑞芽だけじゃない。陸上部、演劇部、合唱部……それぞれの部が穂乃果に刺激を受けた」 

穂乃果「……」 

絵里「その部活動が、音ノ木坂学院に感心を集めたのよ」 

穂乃果「……」 

絵里「それと、大切なことが一つ」 


絵里「パンフレットの写真」 


穂乃果「あの写真……?」 


絵里「あの子が撮った写真。その幾つかが入学を希望する生徒の心を掴んだの」 


穂乃果「…………」 


絵里「ごめんなさい、前置きが長くなったわね」 

穂乃果「……」 


絵里「ほのか!」 

ガバッ 

穂乃果「――!」 


絵里「音ノ木坂学院は存続が決定したの!」 

ぎゅううう 


穂乃果「存続……」 

絵里「えぇ、そうよ! 廃校の危機は回避されたわ!」 


穂乃果「廃校を――……阻止――……できた……」ホロリ 
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:19:11.08 ID:xFAr71sto

絵里「全てあなたが居たから。穂乃果無しでは、成し得なかった」 

ぎゅうう 

穂乃果「あ……あぁぁ……っ」ボロボロ 

絵里「ありがとう、穂乃果」 

穂乃果「あぁぁ……ぁぁあああっ……」ボロボロ 

絵里「ほの……か……?」 

穂乃果「えりちゃんっ……涙が……っ……止まらないっ……」ボロボロ 

絵里「嬉しいの……?」 

穂乃果「わかんないっ……だけどっ……胸が…苦しい……っ」ボロボロ 

絵里「ほのか……」 


穂乃果「なんでっ……なんでこんなに苦しいのっ」ボロボロ 


…… 

… 


絵里「……」 

穂乃果「ぐすっ……」 

絵里「ごめんね、穂乃果」 

穂乃果「っ……?」 

絵里「いろんな事を一気に伝えたから、頭が混乱しちゃったのかもしれない」 

穂乃果「……うん」 

絵里「穂乃果はこの学校、大好きだからね」 

穂乃果「うん……」 

絵里「さぁ、立って穂乃果!」グイッ 

穂乃果「なに……?」グスッ 


絵里「来月の修学旅行が待っているわ。そのまとめをしないと」 

穂乃果「うん……そうだね」 

絵里「私の卒業式のその日まで、楽しみましょ」 

穂乃果「……うん!」 


絵里「やっぱり、穂乃果には笑顔が似合ってる」 

穂乃果「もぅ、恥ずかしいよ~」 

絵里「ふふ」 

穂乃果「えへへ」 


絵里「穂乃果の希望だった北海道、叶わなくて残念ね」 

穂乃果「ううん、学校のみんなで修学旅行出来るんだもん、文句はないよ!」 

絵里「どうして、北海道なの?」 

穂乃果「クリスマス・イヴの約束、覚えてる?」 

絵里「えぇ、もちろん」 
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:19:48.27 ID:xFAr71sto

穂乃果「北海道でもね、オーロラの見える場所があるんだって」 

絵里「……でも、それってかなりの確率じゃない?」 

穂乃果「そうなんだけど、まずはその土地に行かないと見られないでしょ?」 

絵里「それはそうだけど……」 

穂乃果「だから、北海道!」 

絵里「約束のために、その場所を選んだのね」 

穂乃果「食べ物も美味しいって聞いたからね~!」 

絵里「もぅ、ちょっと嬉しかったのに」 

穂乃果「あはは、ごめんごめん」 


絵里「京都――、楽しみね」 


…… 

… 
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/16(水) 12:21:06.17 ID:xFAr71sto

―― 10月:京都 


穂乃果「紅葉はまだ早かったね」 

絵里「見頃は11月中旬だそうだから」 


穂乃果「清水寺かぁ」 

絵里「写真で見たことは何度かあるけど、実際に見るのとでは違うわね」 

穂乃果「うん……いい景色~」 

絵里「もうすっかり秋ね」 


摩耶「また二人一緒にいますね……」 

友人「……」 

瑞芽「絵里ちゃ――」 

友人「ちょっとまって」 


瑞芽「な、なに?」 

友人「あんたさ、どうしてこの学校に入ったの?」 

瑞芽「……家から歩いて通える距離だから」 

友人「あ、物凄い単純だった」 

瑞芽「それと、お母さんがこの学校の出身だからってのもあるけど」 

友人「へぇ、そうなんだ」 

瑞芽「将棋部がそこそこ強かったって聞いてて。理由はそれだけ」 

友人「絵里先輩のおっかけしてるけど、実際には穂乃果との勝負が多いよね」 

瑞芽「おっかけって、人聞きの悪い。……それがどうしたの?」 

友人「あんたが全国5位になったのって、穂乃果のおかげだよね」 

瑞芽「……」 

友人「否定しないんだ?」 

瑞芽「去年卒業した部長が、穂乃果と絵里ちゃん先輩を部室に連れてきたんだけど」 

友人「うん」 

瑞芽「こうなることを予想してたのかなって」 

友人「ん?」 

瑞芽「ひょっとして……あの人、私にわざと負けてた……?」 

友人「……どういうこと?」 

瑞芽「違和感なくすんなり負けるって簡単にできない」 

摩耶「強いってことですか」 

瑞芽「確認してくる!」 

タッタッタ  
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:23:03.20 ID:xFAr71sto

絵里「穂乃果、下に降りてみましょ」 

穂乃果「あの水って飲めるの?」 

絵里「どうかしら」 

瑞芽「絵里ちゃん先輩!」 

絵里「?」 

瑞芽「生八ツ橋、一緒に食べませんか?」 

穂乃果「もうお土産買っちゃったの? というか、今食べるの!?」 


摩耶「目的を忘れていますね」 

友人「あんたは?」 

摩耶「なにがですか?」 

友人「オトノキに入った理由」 

摩耶「……」 

友人「私は穂乃果が居たから入学したわけさ。そして、瑞芽も穂乃果に影響を受けてる。 
    摩耶は1年生なのに自由行動を共にしてるってことは、 
    少なからず影響を受けているんじゃないかと思って」 

摩耶「本人に言わないでくださいね」 

友人「うん」 

摩耶「オープンキャンパスで、私は剣道部の見学をしたんです。 
    その時、穂乃果先輩が稽古を受けていたわけですが、他の部員よりひときわ目立ってて、 
    この人は強いと思っていました」 

友人「……そういうのわかるんだ?」 

摩耶「小さいころから剣道に携わっていましたから。 
    ですが、他校との練習試合、穂乃果先輩は居ませんでした」 

友人「……」 

摩耶「公式な試合にも出場していなかったので、何か事情があるんだと思っていたのです」 

友人「……」 

摩耶「ところが、オトノキへ入学して、剣道部へ入部すると、穂乃果先輩はまだ1年の経験しかなくて、 
   それでも問題はないわけですが……、練習試合にすら出ない理由を知った時、ガッカリしたんです」 

友人「理由?」 

摩耶「本気じゃなかったんです。剣道に対して」 

友人「……なるほど。それは、摩耶の気持ち分かるわ」 

摩耶「更に、今年になって大将を努めたいと言い出して」 

友人「認めたくなかった、と。なるほどねぇ」 

摩耶「いい加減な気持ちだと思っていたのです」 

友人「摩耶ってさ、穂乃果のファンだよね」 

摩耶「はっ?!」 

友人「憧れてたわけでしょ?」 

摩耶「なにを言っているのですか! そんなわけありません!」 

友人「好きなミュージシャンが音楽性を変えてしまって、それで人気が爆発しちゃったのと同じさ」 

摩耶「意味がわからないのですが」 

友人「裏切られた~、って思っても、結局はミュージシャン自身が好きなことをして売れたわけだから、無関心にはなれなくてね」 

摩耶「……」 
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:24:36.52 ID:xFAr71sto

友人「穂乃果だって、いい加減なことしてたわけじゃないから、全国制覇を果たしたんでしょ?」 

摩耶「……はい」 

友人「修学旅行の自由行動でも一緒にいるから、本当は――」 

摩耶「私は穂乃果先輩に憧れていたのですか……そうですか」スタスタ 

友人「……あれ?」 


瑞芽「絵里ちゃん先輩、次はどこへ行くんですか?」 

絵里「祇園へ行ってみるわ」 

摩耶「その後は?」 

穂乃果「金閣と銀閣、両方に行きたいんだけど、どっちかにしか行けないみたい」 

絵里「穂乃果はどっちに行きたい?」 

穂乃果「やっぱり金閣寺かな?」 

絵里「じゃあ、そうしま――」 

摩耶「一緒に行きましょう」 

穂乃果「う、うん……?」 


瑞芽「絵里ちゃん先輩は私と一緒に銀閣寺へ」 

絵里「え……?」 


摩耶「私たちは金閣寺ですね。さぁ、行きますよ」グイッ 

穂乃果「あ、ちょっと待ってっ」 


瑞芽「行きましょう、行きましょう」グイグイ 

絵里「ま、待って、穂乃果と一緒に」 


穂乃果「え、絵里ちゃんっ」 


絵里「穂乃果……!」 



友人「引き裂かれたか……」 


友人「……」 


友人「やっぱり、穂乃果を中心に世界は回ってたんだ」 


「おーい、こっちの写真も撮って~」 


友人「はいよー」 


…… 

… 

745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:25:42.64 ID:xFAr71sto

―― 11月:ボランティア部 


穂乃果「はい、絵里ちゃん!」 

絵里「今度は手袋を編んでくれたのね」 

穂乃果「自分で言うのもなんだけど、上手く出来たと思うんだ~」 

絵里「えぇ、網目も綺麗でとっても上手よ。ありがとう」 

穂乃果「えへへ、どういたしまして~。ちょっと早いけどね」 

絵里「お返しになにか欲しいものはない?」 

穂乃果「う~ん、特にないからいいよ」 

絵里「そんなこと言わないで。……一応私も編んではいたんだけど」 

穂乃果「なにを?」 

絵里「ううん、なんでもない。それで、欲しいものは?」 

穂乃果「ずっと一緒に居てくれれば、それでいいから」 

絵里「……それは当たり前のことでしょ?」 

穂乃果「うん……! あ、でも……当たり前のことするのって難しいんだよ?」 

絵里「……そうね。難しいことだけど、二人なら――」 


主将「絢瀬は、なんか雰囲気が変わったな」 

副主将「あ、ちょっと」 


絵里「――はっ!?」 

穂乃果「いつからそこに?」 

主将「手袋渡したところからな」 

副主将「ほ、ほら、邪魔しちゃ悪いから行くわよ」 

絵里「ゆ、ユックリシテイッタラ?」 

主将「動揺してんな」 

副主将「ちょっと顔を出しただけだから、それじゃあね」 

主将「おいっ、引っ張るな――」 

副主将「いいから」 


ガラガラ 

 ピシャッ 


絵里「あ、あぁ……見られてたなんて……」 

穂乃果「気にすること?」 

絵里「気にするわよ……」 


…… 

… 
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:27:46.94 ID:xFAr71sto

―― 12月:2年生の教室 


友人「このアングルがいいかな……」 


友人「もうちょっと、こっちかな」 


穂乃果「……何してるの?」 


友人「放課後の教室、ってテーマで撮ってみようと思ってさ」 

穂乃果「ふぅん……」 

友人「あえて、黒板は写さないほうがいいかな……」 

穂乃果「冬の夕焼けって綺麗だよね」 

友人「そう、だから急いでるんだけど、中々決まらない」 

穂乃果「とりあえず撮ってみればいいのに」 

友人「渾身の一枚を撮りたいからさ、とりあえずってのは嫌なんだよ」 

穂乃果「こだわりだね」 

友人「そういうこと」 

穂乃果「その一枚が撮れたら見せてよ」 

友人「…………」 

穂乃果「?」 

友人「私って、穂乃果一人だけを撮ったことない」 

穂乃果「……そうだっけ?」 

友人「いつも、絵里先輩が一緒で……他には部活動の光景だから」 

穂乃果「……」 

友人「穂乃果、窓際に立ってくれない?」 

穂乃果「えぇ~、恥ずかしいよ~」 


友人「お願い、穂乃果」 


穂乃果「う、うん……」 


友人「……好きなポーズでいいよ」 


穂乃果「好きなって言われても……」 


友人「穂乃果って結構写真うつりいいんだよね」 


穂乃果「照れるってば」 


友人「……」 


穂乃果「撮らないの?」 


友人「その時を待ってる」 
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:28:27.92 ID:xFAr71sto

穂乃果「カメラ構えられてると、なんか落ち着かないよ」 


友人「いいから、自然でいてよ」 


穂乃果「自然って言われても困るよ」 


友人「……」 


穂乃果「写真のことになると本当に真面目になるんだから……」 


「穂乃果ー!」 


穂乃果「あ、絵里ちゃん」 


「そこで何をしてるの?」 


穂乃果「何もしてないよ~!」 


友人「やっぱそうなるか、穂乃果は……」 

パシャッ 


「そろそろ日が暮れるわよ。帰りましょう」 


穂乃果「分かった!」 


「ここで待ってるわね」 


穂乃果「はいよー!」 

友人「じゃあ、帰ろうか」 

穂乃果「あれ、写真は?」 

友人「もう撮ったよ」 
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:29:12.99 ID:xFAr71sto

―― 玄関 


穂乃果「今日は温かいけど、明日から寒くなるんだって」 

友人「もうすっかり冬だなぁ、早いなぁ」 

穂乃果「本当、あっという間だよね」 

友人「……」 

穂乃果「もっと時間があればいいのに」 

友人「……」 

穂乃果「そうすれば、もっともっと楽しいことが――」 

友人「ありがとね、穂乃果」 

穂乃果「え?」 

友人「この学校に入ってよかった」 

穂乃果「うん……どうしたの、急に?」 

友人「前から言いたかったことだからさ」 

穂乃果「……そっか」 

友人「穂乃果と友達になれて、よかった」 

穂乃果「うん、私も」 

友人「……うん。……それじゃ」 

穂乃果「一緒に帰らないの?」 

友人「今の気持ちを写真に収めたいから、色んなとこ行ってみる」 

穂乃果「すぐ暗くなるから、気をつけてよ?」 

友人「うん。……それじゃ、また明日」 

穂乃果「また明日ね」 


…… 

… 
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:29:46.18 ID:xFAr71sto

―― 1月:神社 


絵里「恋愛運はどう?」 

穂乃果「えっと……待ち人、まだまだ来ず」 

絵里「去年より遠ざかってるわね……」 

穂乃果「遠ざかってるよね」 


…… 

… 

750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:30:49.23 ID:xFAr71sto

―― 2月1日:生徒会室 


穂乃果「あぁっ、あと1ヶ月しかないっ!!」 

絵里「……なにが?」 

穂乃果「卒業までだよ!」 

絵里「そうだったわね。もう2月……早いものね」 

穂乃果「そんな悠長な……!」 

絵里「そんなことより、仕事の続きをしないと」 

穂乃果「いやだ!」 

絵里「そう、その意気――……え?」 

穂乃果「この仕事が終わったら絵里ちゃんが卒業しちゃうからいやだよ!」 

絵里「久しぶりに聞いたわね、その駄々っ子のような……」 

穂乃果「絵里ちゃんが来年も生徒会長やってよ! 私には無理だよ!」 

絵里「私に留年しろと言ってるのね?」 

穂乃果「オフコース!」 

絵里「そうね、穂乃果ともう1年だけ音ノ木坂学院に通えるのは、魅力的――」 

穂乃果「だよね!」 

絵里「と、言うとでも思った?」 

穂乃果「言ったよ! この学校の先生でも可!」 

絵里「可! じゃないわよ。色々と時間を無視してるじゃないの」 

穂乃果「ヤダヤダ!」 

絵里「はぁ……私の手に負えないわ」 


…… 

… 


穂乃果「あ、これ……理事長のサインが無い」 

絵里「よく気付いたわね。要領は掴めたみたい」 

穂乃果「――……ハッ!? 生徒会長の仕事を教わってる!」 

絵里「今日はこんなものね、帰りましょ」 


…… 

… 
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:31:59.42 ID:xFAr71sto

―― 下校中 


穂乃果「むぅ……」 

絵里「まだ膨れてるの?」 

穂乃果「生徒会長は、絵里ちゃんがいいよ」 

絵里「あのねぇ……」 

穂乃果「この時間の早さに、穂乃果は納得がいかない」 

絵里「時間は誰にでも平等でしょ」 

穂乃果「そんなことないよ。楽しい時こそゆっくり流れるべきなのに」 

絵里「それは人の感覚がそうさせるのよ。相対性理論ね」 

穂乃果「難しい言葉使わないで」 

絵里「ほら、膨れていると、可愛い顔が台無しよ?」 

穂乃果「もぅ~」 

絵里「ふふ」 

穂乃果「でも、本当にあっという間だったね」 

絵里「えぇ。穂乃果が入学してきてから……本当に」 

穂乃果「ずっと、――この時が続けばいいのになぁ」 


チクッ 

絵里「……っ」 


穂乃果「……どうしたの?」 

絵里「ちょっと頭痛が……」 

穂乃果「大変だ! ほら、私のマフラー使ってよ!」 

絵里「大丈夫よ。穂乃果が作ってくれたマフラーと手袋があるから、風邪じゃないわ」 

穂乃果「ほんとに?」 

絵里「えぇ、ちょっと刺激があっただけだから」 

穂乃果「それならいいけど。……続くようだったらちゃんと言ってね?」 

絵里「うん、わかってる」 

穂乃果「本当に?」 

絵里「疑うのなら、私を温めて」 

ギュッ 

穂乃果「お安いご用だ」 

絵里「……」 

穂乃果「どう?」 

絵里「温かい」 

穂乃果「手を握っただけだよ? 腕を組んだほうがいいよね?」 

絵里「穂乃果がそうしたいだけでしょ」 

穂乃果「バレたか」 

絵里「ふふ」 

穂乃果「えへへ」 
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:32:53.24 ID:xFAr71sto

絵里「……――ねぇ、穂乃果」 

穂乃果「うん?」 


絵里「これからはあなたが音ノ木坂学院を守っていくのよ」 

穂乃果「――うん」 


絵里「そうやって、受け継がれていくの。 
    学校を好きだという想いが、学校を守りたいという意志が、 
    次へ、次へと……渡されていくの」 

穂乃果「……」 

絵里「おばあさま達からのそのバトンが途切れそうになったけど…… 
    それでも、ちゃんと次へ――穂乃果へと渡された」 

穂乃果「……うん」 

絵里「私はそれがとても誇りに思えるわ」 

穂乃果「……」 

絵里「ありがとう、穂乃果」 

穂乃果「ううん、こっちがありがとう、だよ」 

絵里「……そうね、お互いがあってこそよね」 

穂乃果「うん!」 


…… 

… 
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:33:27.86 ID:xFAr71sto



―――― 卒業まで、あと14日 ―――― 




…… 

… 
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:34:23.85 ID:xFAr71sto

―― 生徒会室 


絵里「えっと……これは……理事長へ。……これは」 


絵里「……ふぅ」 


絵里「穂乃果と一緒に処理するつもりだったのに、 
    それが仇になってしまったわ」 


絵里「ぼやいていても仕方がないわね……」ガタッ 

スタスタ 


ガラッ 


絵里「……」 

ソヨソヨ 


絵里「気持ちのいい風……」 


絵里「……春はすぐそこね」 


ソヨソヨ 


絵里「穂乃果……主将に勝てるのかしら」 


絵里「ちょっと見学に――……あら?」 


絵里「あれは――」 




―― 校庭 


「……」 




―― 生徒会室 


絵里「……――ネコ?」 


絵里「どうして学校に……」 


絵里「なんだか、足がおぼつかないわね……」 

755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/16(水) 12:35:15.63 ID:xFAr71sto



―― 校庭 


猫「……」 





―― 生徒会室 


絵里「……こっちを見てる?」 




…… 

… 

758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:37:46.82 ID:6pX6I8jco

―― 夜:高坂邸 


穂乃果「ねぇ、お母さん……絵里ちゃん、まだ帰ってないよね?」 

母「そうだけど……。連絡はないの?」 

穂乃果「うん……無い」 

母「珍しいわね……」 


ガラガラ 


「ただいま戻りました」 


母「噂をすればなんとやら」 


穂乃果「おかえり。寄り道してたの?」 

絵里「……えぇ。公園で話しを、ね」 

穂乃果「ふぅん……相手は誰?」 

絵里「穂乃果をよく知る……人物よ」 

穂乃果「絵里ちゃん……顔色悪い」 

絵里「……そうね、……ちょっと疲れちゃった」 

穂乃果「お風呂、沸かしておくから」 

絵里「うん……お願い……」 

スタスタ 


穂乃果「……」 


「ねぇ、穂乃果」 


穂乃果「な、なに?」 


「主将と勝負をして、あなたが探しているモノを見つけることが出来た?」 


穂乃果「……ううん、全然」 


「……そう」 


穂乃果「……気のせいだったんだよ」 


「……そんなことはないわ」 


穂乃果「……?」 

母「……様子が変ね」 


…… 

… 
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:38:59.39 ID:6pX6I8jco

―― 絵里の部屋 


チクッ 

絵里「……っ」 


絵里「この頭痛は……そういうことだったのね……」 


絵里「……」 



絵里「此処に、私が居たこと」 


絵里「其処に、あなたが居たこと」 


絵里「当然のことが、当然ではなかった」 



「絵里ちゃ~ん、お風呂沸いたよ~」 



絵里「……」 


絵里「そこに、私が居なかったこと――」 


…… 

… 
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:42:44.00 ID:6pX6I8jco

―――― 卒業式まで、あと7日 ―――― 


…… 

… 


―― 理事長室 


理事長「式の段取りはこんなものだな」 

夕月「はい」 

理事長「改めて。3年間ご苦労だったな、絢瀬絵里」 


絵里「……いえ」 


理事長「来年度からは神北家の者が引き継ぐことになっている。 
     私と小夜璃は学園へ戻る」 

夕月「……」 


絵里「……」 


理事長「この3年間は、何か大きな力が働いていたように思えてならない」 


絵里「……そうですね」 


理事長「なにか知っているのか?」 


絵里「……いえ」 


夕月「先日も思いましたが、顔色が悪いようです。体調不良ですか?」 


絵里「平気です。話の続きを」 


夕月「この学院での業務は私と莉都様にとって貴重な時間になりました」 

絵里「そう言っていただけると、こちらとしても嬉しい限りです」 


理事長「それではな」 

夕月「莉都様、何も言っていないではないですか」 

理事長「いいではないか、これが最後というわけでもあるまい」 

夕月「申し訳ありません、絢瀬さん」 


絵里「こちらこそ、お二人の力添えがあったからこそです」 


理事長「……」 

夕月「……」 


絵里「ありがとうございました」 


…… 

… 
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:43:49.02 ID:6pX6I8jco

―― ボランティア部 


絵里「話は終わったわよ。行きましょうか」 

穂乃果「うん……」 

絵里「どうしたの、みんな待っているんでしょ?」 

穂乃果「そうだね。パーッと騒ごう!」 

絵里「……」 

穂乃果「絵里ちゃんもだよ?」 

絵里「……えぇ、そうね」 

穂乃果「これがみんなで遊べる最後なんだから!」 

絵里「分かってる」 

穂乃果「最近、笑ってないよ?」 

絵里「……そう?」 

穂乃果「そう……だよ!」 

コチョコチョ 


絵里「ちょっと、止めなさい穂乃果!」 


穂乃果「笑うまで止めないよ!」 

コチョコチョ 


絵里「穂乃果ってば!」 


…… 

… 
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:46:21.78 ID:6pX6I8jco


―――― 卒業式まで、あと2日 ―――― 


…… 

… 


―― 高坂邸 


穂乃果「――聞いてない」 


絵里「……」 

母「絵里自身が決めたことよ」 


穂乃果「そんな話、一言も聞いてないよ! なんでっ、なんで一人で決めたのッ!?」 

絵里「一人で決めたかったからよ」 

穂乃果「そんな大事なこと……!」 

母「二人でちゃんと話し合って」 

絵里「……はい」 


穂乃果「お母さん、前から知ってたんだ……」 

絵里「本当は、もっと早くに相談するつもりだったけど」 

穂乃果「いつ……決めたの?」 

絵里「考えていたのは半年くらい前。 
    そうしようと決めたのは……1週間前ね」 

穂乃果「……お母さんは、なんて」 

絵里「背中を押してくれたわ」 

穂乃果「……っ」 

絵里「もう決めたことよ」 

穂乃果「なんでっ、こんな急にッ!」 

絵里「急じゃないわ。……遅すぎたくらいなんだから」 

穂乃果「だからッ! なんで何も言ってくれなかったの!?」 

絵里「……堂々巡りね」 

穂乃果「少なくとも、あと1年……私が卒業するまでは一緒に居るって言ってたのに!」 

絵里「もう自立できる歳よ、私も」 

穂乃果「ちゃんと答えてよ!」 

絵里「……」 

穂乃果「この家を出て行くのは、一緒だって話してたのにッ!」 

絵里「……」 

穂乃果「いつか離れる日が来るのは分かってるけど、こんな急じゃなかったよ!」 

絵里「もう、決めたことだから」 

穂乃果「~~ッ!」 
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:47:31.88 ID:6pX6I8jco


絵里「私は……卒業式の日に、この家を出て行くから」 

穂乃果「――ッ!」 


絵里「こんな形で伝えることに――」 

穂乃果「そんなこと聞きたくないよッ! 馬鹿!」 

タッタッタ 


絵里「…………」 


…… 

… 

765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:49:06.58 ID:6pX6I8jco

―― 穂乃果の部屋 


絵里「……」 


コンコン 


「……」 


絵里「穂乃果、聞いて」 


「うるさい」 


絵里「……」 


「……」 


絵里「私は……今までずっと、穂乃果に甘えていたの」 


「……」 


絵里「生徒会長に立候補しても、ちゃんとやっていけるか不安だったから、 
    だから穂乃果を書記に推薦したりして」 


「……」 


絵里「穂乃果が傍にいてくれれば、それだけで心強かった」 


「……」 


絵里「私、しっかりしてる様に振る舞ってるけど……臆病だから」 


「……」 


絵里「失敗することだってある。変化を生み出すことに、恐怖を感じたりもする」 


「……」 


絵里「だけどね、穂乃果の前では――……、妹の前では、格好つけたいじゃない」 


「……っ」 


絵里「将棋で負けるわけにもいかないから、一人で検討したりして」 


絵里「編み物もやってみたけど、出来が悪いから隠したままで……」 


絵里「勉強だって、なんだって……」 


絵里「ずっと……穂乃果に頼られていたいから」 


絵里「支えている様に見えて、実は支えられていたのよ」 
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:50:50.02 ID:6pX6I8jco

スーッ 


穂乃果「なんで、そんな話するの」 


絵里「伝えておきたいことだから」 


穂乃果「聞きたくない」 


絵里「何れはこうなること」 


穂乃果「だから! なんで隠していたのかって聞いてるのに!」 


絵里「客観的に考えてもみて。他人の家の子が――」 


穂乃果「なにその、取ってつけた理由」 


絵里「そんな言い方しないで」 


穂乃果「自分に嘘ついてる」 


絵里「え――?」 


穂乃果「私にも嘘ついて、自分にも嘘ついて、なにがしたいの?」 


絵里「……穂乃果」 


穂乃果「お母さんが言ってたでしょ、家族だって。 
     絵里ちゃんも含めた、私たちは家族だって」 


絵里「……」 


穂乃果「それなのに、どうして今更、他人の子なんて言葉が出てくるの」 


絵里「その時が来たから」 


穂乃果「言ってることが滅茶苦茶だよ。もう聞きたくない」 

スッ 


絵里「……どこに行くの?」 


穂乃果「関係ないでしょ」 

スタスタ 


絵里「ま、待って穂乃果!」 

ガシッ 


穂乃果「離して!」バッ 


絵里「――!」 

767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:51:36.72 ID:6pX6I8jco

穂乃果「いつかは一緒に居られなくなるって、分かってたよ!」 


絵里「……」 


穂乃果「たとえ、その時が来たとしても――……今じゃないはずだよ」 


絵里「ほのか……」 


穂乃果「2週間前に、何があったの」 


絵里「…………」 


穂乃果「言えないんならいいよ。 

     学校の時みたいに、 

     一人で抱えていればいいよ」 


絵里「……ッ」 


穂乃果「……」 


絵里「――……」 


穂乃果「どうして、叱ってくれないの?」 


絵里「……わたし……は……」 


穂乃果「……もういい、知らない」 

タッタッタ 


絵里「あ――……」 


…… 

… 
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:52:26.30 ID:6pX6I8jco

―― 神社 


絵里「……悪かったわね、こんな時間に」 


絵里「……ううん、大丈夫だから、気にしないで」 


絵里「うん……それじゃ」 


プツッ 


絵里「……あとは」 


pipipipipipi 


絵里「もしもし」 


絵里「……はい。……まだ」 


絵里「いえ、私が見つけ出しますから。……はい」 


絵里「見つけたら連絡します。……はい。……すいません」 


プツッ 


絵里「……」 



…… 

… 



―― 音ノ木坂学院 



絵里「…………」 



769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:53:38.19 ID:6pX6I8jco

―― ボランティア部 


ガラガラ...... 


絵里「……」 


「……」 


絵里「この場所がそんなに好き?」 


「……」 


絵里「それとも、他に理由があるのかしら」 


「どうでもいいよ」 


絵里「どうでも良くない。大切なことよ」 


「……」 


絵里「ねぇ、穂乃果」 


穂乃果「……」 


絵里「素敵な話があるの」 


穂乃果「……?」 


絵里「遠い遠い昔のお話。この世界が生まれる前のお話」 


穂乃果「……」 


絵里「とある場所に、とある時間の中で、とても素敵な人達が居たというお話よ」 


穂乃果「……」 


絵里「その素敵な人達が、素敵な時間を過ごして――」 


穂乃果「聞きたくない」 


絵里「……」 


穂乃果「もういいよ」 


絵里「……」 


穂乃果「結局……離れていくんだから」 


絵里「……」 


穂乃果「寂しいだけだよ」 

770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:54:55.21 ID:6pX6I8jco

絵里「私は――……穂乃果と出会えてよかった」 


穂乃果「……」 


絵里「色んな時を過ごせてよかった」 


穂乃果「……」 


絵里「隣に、座ってもいい?」 


穂乃果「ダメ」 


絵里「じゃあ、座るわね」 


穂乃果「……」 


絵里「私も、ずっと続けばいいって思ってた」 


穂乃果「じゃあ、ずっと続けようよ」 


絵里「……」 


穂乃果「楽しいのなら、それがいいでしょ?」 


絵里「穂乃果は本当にそれでいいって思うの?」 


穂乃果「……」 


絵里「音ノ木坂学院で、たくさんの人に出逢えた。 

    その意味を、穂乃果はもう気付いているはず」 


穂乃果「何を言っているのかわからないよ」 


絵里「今度は穂乃果が自分に嘘をついてる」 


穂乃果「……」 


絵里「私が穂乃果に、廃校のことを伝えなかったのは……」 


穂乃果「……知ってるよ」 


絵里「?」 


穂乃果「私に、学校生活を楽しんで欲しかったからでしょ」 


絵里「……正解」 
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:56:01.97 ID:6pX6I8jco

穂乃果「生徒たちが自然と楽しいと思える学校なら、学校存続も不可能じゃないから」 


絵里「正解」 


穂乃果「本当は、言って欲しかった。絵里ちゃんと一緒に、その問題を抱えたかった」 


絵里「うん、そう言うと思ってた」 


穂乃果「……」 


絵里「ありがとう」 


穂乃果「なんでお礼なんて……」 


絵里「解ってくれているのが嬉しいから」 


穂乃果「わからないよ。絵里ちゃんが何を考えているのか」 


絵里「穂乃果は強いから、大丈夫よ」 


穂乃果「そんなことない」 


絵里「そんなことある」 


穂乃果「……」 


絵里「一人では無理なことでも、きっと乗り越えていけるわ」 


穂乃果「そんなに強くない」 


絵里「だって、私の自慢の妹だから――」 


…… 

… 


穂乃果「すぅ……すぅ……」 

絵里「泣き疲れたのね……」 


穂乃果「……すぅ……すぅ」 

絵里「ごめんね、穂乃果……」 


穂乃果「すぅ……」 

絵里「――До свидания.」 



…… 

… 
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:57:00.07 ID:6pX6I8jco


―― 翌日:高坂邸 


母「穂乃果は?」 

絵里「まだ、口を聞いてくれなくて……」 

母「はぁ、しょうがない子ね……」 

絵里「……」 

母「でも、それだけのことだから」 

絵里「……はい」 


父「……」 

母「……」 


絵里「おじさま、おばさま――」 


絵里「日本に残りたいという、私のわがままを、家族という形で受け入れたこと、 

    それから、穂乃果と別け隔てなく育ててくれたこと、 

    とても感謝しています」 


父「……」 

母「……うん」 


絵里「本当に――……ありがとうございました」 


…… 

… 
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:58:10.80 ID:6pX6I8jco


―― 卒業式 ―― 



絵里「穂乃果、これをお願い」 


穂乃果「……」 


絵里「まだ、怒ってるの?」 


穂乃果「怒ってないよ。……寂しいだけだよ」 


絵里「穂乃果には、たくさんの仲間がいるじゃない」 


穂乃果「……」 


絵里「ほーら、そんな膨れた顔してるとぉ」 

コチョコチョ 


穂乃果「ちょ、ちょっと絵里ちゃんっ」 


絵里「笑うまで止めないわよ~?」 

コチョコチョ 


穂乃果「も、もうっ、やめへっ」 


絵里「ほらほら」 

コチョコチョ 


穂乃果「ふへ……ふっ……はははっ」 


絵里「穂乃果の弱点くらい、私にはお見通しよ」 


穂乃果「もう!」 


絵里「ふふ」 


穂乃果「……やっと笑った」 


絵里「……それはあなたでしょ」 


穂乃果「そうだね」 


絵里「ほら、コサージュを付けてくれる?」 


穂乃果「うん」 


絵里「……」 


穂乃果「……出来たよ」 


絵里「ありがとう」 
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 19:59:40.46 ID:6pX6I8jco

穂乃果「……」 


絵里「ありがとう、穂乃果」 


穂乃果「……お礼を言いすぎだよ」 


絵里「……――あ」 


穂乃果「?」 



猫「……」 



絵里「時間、なのね」 


猫「にゃ」 


穂乃果「ネコ?」 


猫「……」 


穂乃果「どうしてこんな所に……?」 


絵里「せめて、穂乃果の送辞を――……」 


猫「…………」 


絵里「…………」 


穂乃果「?」 


絵里「穂乃果、こっちに来て」 


穂乃果「う、うん……?」 


絵里「……――ありがとう」 

ぎゅうう 


穂乃果「……絵里、ちゃん?」 


絵里「ずっと、幸せだった」 


穂乃果「……」 


絵里「あなたがいる毎日は……とても輝いていた」 


穂乃果「…………」 


絵里「わ…私は……っ」ホロリ 


穂乃果「えりちゃん……?」 
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:01:30.45 ID:6pX6I8jco

絵里「忘れたくない……っ、穂乃果と過ごした日々を……っ」 


穂乃果「ど、どうしたの?」 


絵里「将棋で負けても、楽しそうにしていてくれるあなたを……っ」 


絵里「一緒に買物に行った時のこと、その帰りに夕陽をみたことをっ」 


絵里「朝の空気に包まれながら走ったこと…… 

    一緒に歩いた季節をっ……全部全部忘れたく……ないっ」グスッ 

ぎゅううう 


穂乃果「……絵里ちゃんっ」 


絵里「オーロラを見に行くって約束もっ」ボロボロ 


絵里「忘れたくないっ……ずっと、一緒に居たいのに……ッ」ボロボロ 


穂乃果「絵里ちゃんッ」 


絵里「ぐすっ」 


穂乃果「なにがあったの!?」 


絵里「ごめん、最後は……笑って別れたかったのに……っ」 


穂乃果「え――」 


絵里「これ以上、私はわがままを言えない。 

    私じゃないの、あのお家に居るべきなのは」 


穂乃果「な、なにを――」 


絵里「穂乃果、笑って?」 


穂乃果「え、……え?」 


絵里「あなたの笑顔が好きだから」 


穂乃果「え、な、なに?」 


絵里「ほら、笑ってよ」 


穂乃果「わ、わけが分からない」 


絵里「頭の中がいっぱいで……自分でも何を言ってるのか――」 


猫「……」 
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:03:16.82 ID:6pX6I8jco

絵里「あなたの深い寂しさは、私では埋められないのよ――……」ホロリ 


穂乃果「……」 


絵里「ううん、埋めてはいけないの――」ボロボロ 


穂乃果「…………」 


絵里「あぁ、もぅっ、こんな情けない姿、穂乃果には見せたくな――」ボロボロ 


穂乃果「絵里ちゃん」 

ぎゅうう 


絵里「っ!」 


穂乃果「きっと、大丈夫だから」 


絵里「……」 


穂乃果「絵里ちゃんの中にある不安も、 
     全部……私が……なんとかしてあげるから」 

ぎゅうううう 


絵里「……うんっ」 


穂乃果「ね、絵里ちゃんこそ、笑ってよ」 


絵里「……ありがとう、穂乃果」 


穂乃果「えへへ」 


絵里「たとえ、何が起こっているのか分からないとしても――」 


絵里「そう言ってくれたのが嬉しい」 


穂乃果「……」 


絵里「穂乃果――、――」 


穂乃果「?」 

777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:05:07.06 ID:6pX6I8jco

絵里「――、――。」 


穂乃果「え、絵里ちゃん?」 


「――――」 


穂乃果「絵里ちゃん!?」 


「だ――い――」 


穂乃果「絵里ちゃんッ!」 



――― 

―― 

― 



―― 大好きよ、穂乃果。 



――― 

―― 

― 


穂乃果「え…絵里…ちゃん……」 


「――」 


穂乃果「ねぇ、どうしたの?」 


「――」 


穂乃果「絵里ちゃん……」 


「――」 



猫「今、この時をもって、全ての時間は停止しました」 


穂乃果「え――?」 


猫「高坂穂乃果、私の願いを叶えてもらいます」 


穂乃果「ネコが喋った!?」 


猫「目を閉じて――」 


穂乃果「ん――?」 


―― 

― 
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:06:32.06 ID:6pX6I8jco

―― 時の狭間 


「あれ……」 


「……」 


「夜……?」 


「光が必要ですが、ここにはまだ届きません」 


「目を開いているのか、閉じているのか……わからないよ」 


「そのまま……3歩進んでください……」 


「ねぇ、その声は……さっきの猫ちゃん……?」 


「……そう……です」 


「どうして喋っているの?」 


「歩いて……」 


「う、うん……」 


「あと、2歩」 


「時間が停止したって……猫ちゃんがやったの?」 


「あと、1歩」 


「答えてよ! 絵里ちゃんはどうなるの!?」 


「右手を……かざしてください……」 


「答えるまでやらないから」 


「……もう……力……が」 


「早く答えてよ!」 


「……」 


「あれ、どこに居るの?」 


「――」 


「あ、あれ? 置いてかれた……!?」 


「――」 
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:08:47.45 ID:6pX6I8jco

「もぅっ、悪いことは起こらないって信用してたのに! 酷いよー!!」 


「――」 


「猫ちゃーん!! 戻ってきてー!!」 


「――」 


「……」 


「――」 


「嘘……でしょ」 


「――」 


「そんなっ、こんなところ……って、どこか分からないけど、怖くなってきた」 


「――」 


「はやく絵里ちゃんの所に戻してよ!」 


「――」 


「辛そうにしてたんだから、寂しそうにしてたんだから!!」 


「――」 


「お願いだから、猫ちゃん!!」 


「――」 


「……お願い……」 


「――」 


「…………」 



「――」 


「えっと……右手……」スッ 


「――」 


「……なにこれ、ガラス……?」 

ナデナデ 

780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:11:57.74 ID:6pX6I8jco

パリィン! 


「うわっ!?」 


カランカラン 


「わ、割れた……?」 


「――解かれたようですね」 


「だ、誰!?」 


「光が必要でしたね。えっと、これくらい?」 


パァァアアア 


穂乃果「うぅっ、眩しいッ」 


「あら、ごめんなさい。もうちょっと抑えないと」 


穂乃果「……うぅ、……だ、誰?」 


「Hora――と」 


穂乃果「ほーら?」 

「時を司る者よ。そして此処は、時の回廊とも呼ばれる場所」 

穂乃果「……」 

Hora「あら、無反応」 

穂乃果「どこかで逢ったような……」 

Hora「この姿は、貴女の記憶から無意識的に反映されているの」 

穂乃果「……」 

Hora「貴女の力で私は封印から解かれたのよ」 

穂乃果「……」 

Hora「……?」 

穂乃果「あ――」 


猫「」 


穂乃果「ちょっと、猫ちゃん! はやく戻してよ!!」 


猫「」 


穂乃果「起きてよ、ねぇってば!」 


猫「」 

781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:13:45.32 ID:6pX6I8jco

Hora「その仔は、力を使いはたした為に眠っているのよ」 

穂乃果「えぇっ!?」 

Hora「心配しないで。私がちゃんと元の時間へ戻してあげるから」 

穂乃果「……本当?」 

Hora「一応、恩人ですから当然よ」 

穂乃果「じゃあ、お願い」 

Hora「確認だけど、『今の時間』へ戻るということでいいのね」 

穂乃果「?」 

Hora「ごめんなさい。ちょっとお節介だったわね」 

穂乃果「……どういう意味?」 

Hora「気にしないで。……さぁ、もう一度目を閉じて」 

穂乃果「……待って」 

Hora「どうしたの?」 

穂乃果「最後に、猫ちゃんと話がしたい……」 

Hora「どうして?」 

穂乃果「全部、この猫ちゃんが関わっているんだよね」 

Hora「なぜそう思うの?」 

穂乃果「此処に連れてきたの猫ちゃんだから」 

Hora「話をしてどうするの?」 

穂乃果「話をしてから考える。質問が多いよ、はやくしてっ」 

Hora「ごめんなさい、貴方に興味があってね。 
    私とこの仔は同じ存在……分身とも言えるわ」 

穂乃果「……」 

Hora「だから、私に聞いて」 

穂乃果「……」 

Hora「どうしたの?」 

穂乃果「時間が停止したって言ってたけど、どういうこと?」 

Hora「時を司る私が封印されていたから、時間そのものが止まってしまったの」 

穂乃果「『元の時間』って、絵里ちゃんが止まった時間の続きってことだよね」 

Hora「そうよ」 

穂乃果「『前の時間』って、存在するの?」 

Hora「どうしてそんなことに疑問を持つの?」 

穂乃果「聞いてるのはこっちだよ。いいから答えて」 

Hora「存在した」 

穂乃果「遠い昔とか、そんなことじゃないよね」 

Hora「その通り。貴女の居る宇宙には秘密があってね――」 


Hora「人の生命に始まりと終りがあるように、 
    
    貴女の居た宇宙にも始まりと終わりがあるの」 


穂乃果「……」 
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:21:43.93 ID:6pX6I8jco

Hora「終わりがあれば始まりがあるように、その時間は幾度と無く繰り返されてきた。 

    その中で、人や植物、動物、ありとあらゆる生命は、 

    繰り返される宇宙の時間の中で生まれては死んでいった」 

穂乃果「……」 

Hora「それは宇宙も例外じゃなくてね。この過程は正確に、僅かなズレもなく再生されてきたのよ」 

穂乃果「再生……?」 

Hora「緻密に再現される事柄は、正しいことも間違ったことも全てが繰り返されているの」 

穂乃果「……」 

Hora「貴女とこの仔が出会う前まではね」 


穂乃果「……」 


猫「」 


Hora「人は誰でも、気付いたその時にやり直すことができる」 


穂乃果「……」 

Hora「そして、貴女はこの仔が関わったことで、たくさんのモノを得た」 

穂乃果「……それって」 


Hora「一つは、音ノ木坂学院の存続」 


穂乃果「…………」 


Hora「そして、――絢瀬絵里」 


穂乃果「…………」 


Hora「もう伝えることはないけど、まだ訊きたいことがあるなら言ってみて」 

穂乃果「あなたが言っていることは本当だと思う。信じることもできる」 


Hora「……」 


穂乃果「だけど、全部伝えてない。話に穴が多すぎるよ」 

Hora「そうよ。伝えてはいない。伝える必要がないもの」 

穂乃果「どうして?」 

Hora「貴女はきっと後悔するから」 

穂乃果「…………」 

Hora「貴女の願いは叶ったでしょ?」 

穂乃果「……音ノ木坂学院を守ること」 

Hora「少しづつ思い出しているみたいね」 

穂乃果「……」 

Hora「どれだけの時間が流れても、 
    学校を守りたいという貴女の願いは失われることがなかった」 

穂乃果「……」 
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:23:40.71 ID:6pX6I8jco

Hora「私は、この仔の目を通して見ている。 
    貴女が願いを信じて進んで来た時間を」 

穂乃果「願いを……信じて……」 

Hora「願いの叶った時間が待ってるわ。――絢瀬絵里と共に」 

穂乃果「絵里ちゃんと……」 

Hora「さぁ、振り返って進みなさい。貴女が今までそうしてきたように、まっすぐに」 

穂乃果「……」 

Hora「私がいるから、もう時間のズレを起こすことにはならない。 
    貴女が大切にしたいと思う時間を守ってみせるから」 

穂乃果「……本当に?」 

Hora「もちろんよ。この仔の願いを叶えてくれたんだもの。それくらいはしてあげられる」 

穂乃果「……絵里ちゃんと一緒に」 

Hora「そう――、二人でずっと一緒に過ごしていける――」 


穂乃果「……」 


Hora「……」 


穂乃果「私は……」 


Hora「……?」 


穂乃果「――私はそんなに強くないよ」 


Hora「それはどういう意味?」 

穂乃果「絵里ちゃんと出会う前の時間のことが聞きたい」 

Hora「言ったでしょ、――後悔するって」 

穂乃果「じゃあ、あなたには聞かないから。猫ちゃんを今すぐ起こしてよ」 

Hora「わかったわ」 



穂乃果「……私一人で、此処まで来られるわけがない」 


穂乃果「絵里ちゃんの言ってた言葉――……深い寂しさの意味が知りたい」 



Hora「起きなさい、クロノス」 


猫「……」 


Hora「この先を、あなたはどうするつもりなの?」 

猫「最後の選択をしてもらいます」 

784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:25:11.68 ID:6pX6I8jco

穂乃果「『前の時間』って、なに?」 

猫「絢瀬絵里と出会う前、貴女には大切な仲間がいました」 

穂乃果「仲間……?」 

猫「そうです。貴女と共に過ごした大切な仲間が」 

穂乃果「……私たちの写真を」 

猫「いえ、写真を撮る人物はいません」 

穂乃果「……将棋の」 

猫「いいえ、貴女に勝てる人物はいません」 

穂乃果「……剣道部の」 

猫「……」 

穂乃果「……陸上部の」 

猫「……」 

穂乃果「……演劇部」 

猫「……」 

穂乃果「合唱部……手芸部……生徒会……――ボランティア部」 

猫「そうです」 

穂乃果「な、名前……を……教えてよ……」 


猫「――南ことり 

  ――園田海未 

  ――西木野真姫 

  ――星空凛 

  ――小泉花陽 

  ――矢澤にこ 

  ――東條希 」 


穂乃果「ち、違う……だれ、誰なの……その人達……ッ」 


猫「貴女の仲間です」 


穂乃果「知らないっ、知らないよッ!  

     だって、名前を聞いても顔が浮かばないんだからッッ!」 


猫「それは仕方のない事です。 

   存在が消えてしまったのですから」 


穂乃果「――え――――」 


猫「その存在が認識できるのは、私と女神様だけになります」 


穂乃果「消え――た――?」 

785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:27:47.47 ID:6pX6I8jco

Hora「緻密に再現される時間の中で、 
    貴女と彼女たちが起こす時間の変化が大きすぎた為に、 
    時間という生き物が整合性をとろうとしたの」 


Hora「起きてしまった変化を元に戻そうとする反動で彼女たちの存在を消してしまった」 


穂乃果「存在を――」 


猫「そして、もう一人」 


穂乃果「や――だ――いや――聞きたくない――」 


猫「貴女には、妹がいたのです」 


穂乃果「え――り――ちゃんが――言ってた――」 

     あのお家に居るべきなのは――って」 


猫「そうです、その妹になります」 


穂乃果「猫ちゃん――伝えたんだ――?」 


猫「はい。絢瀬絵里に全て伝えました」 


穂乃果「だから――急にお別れをしたんだ――」 

猫「……」 


穂乃果「そっか――やっと――わかった――絵里ちゃんの行動の意味――」 


猫「……」 

Hora「精神的に危険な状態よ。心が壊れてしまうわ」 

猫「いえ――」 


穂乃果「やだ……ヤダ……嫌ダ――」 


穂乃果「ドウシタラ、取リ戻セルノ?」 


猫「『今の時間』では不可能です」 


穂乃果「アァ……アァァァ……ッ」 


Hora「一度、記憶を消すわよ」 


猫「それはいけません」 

Hora「もう二度と立ち直れない。そんな状態で『元の時間』へ戻せないでしょ」 


穂乃果「ヤダヤダヤダヤダ」 


穂乃果「イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダヨ」 


Hora「もう取り戻せないのに、それを伝えた理由は?」 

猫「彼女の想いの強さが必要だからです」 
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:29:57.15 ID:6pX6I8jco

穂乃果「嫌だよこんなのッッ!」 


猫「!」 


穂乃果「名前を聞いただけだけどッ! 顔も思い出せないけどッッ!!」 


穂乃果「想い出なんて、無いけど――ッ!」 


穂乃果「消えてしまったなんて嫌だッッ!!」 


猫「……」 


穂乃果「元に戻してよ!」 

猫「私には不可能です」 


穂乃果「……!」 


Hora「私にも、それは不可能。だけど、同じ時を繰り返すことはできる。 

    貴女と絢瀬絵里と、願いの叶った世界の時間を繰り返すことができる」 


穂乃果「その……人たちが居ないのなら意味が無い……!」 


Hora「緻密に繰り返される時間の中で、失われた物は決っして取り戻すことはできない」 


穂乃果「そんな……本当なの……?」 


猫「はい。『今の時間』へ戻れば、二度と彼女たちには逢えないでしょう」 


穂乃果「な、なんでっ」 


Hora「一度動き出した時間は、止まらないから」 


穂乃果「……――」 


Hora「この仔に出会ったからこうなってしまったのよ」 


猫「……」 


Hora「聞いたこと、後悔してる?」 


穂乃果「……」 


Hora「彼女たちの存在を知ったことに、後悔してる?」 


穂乃果「しない。私の願いが届いたのは、みんなのおかげだから」 


猫「やはり、貴女には可能性を感じます」 


Hora「可能性という言葉を――」 



穂乃果「どうすればいいの、猫ちゃん」 
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:31:06.85 ID:6pX6I8jco

猫「私を信じるのですか?」 


穂乃果「さっき、選択がどうとかって言ったよ」 


Hora「……」 


猫「二つの選択があります」 


穂乃果「……」 


猫「一つは、振り返って、『今の時間』へ戻ること」 


穂乃果「もうひとつは?」 


猫「『全ての時間を無かったことにする』こと」 


穂乃果「それはどうなるの?」 


猫「貴女方が培ってきた時間の全てが無に還します。 

   貴女が音ノ木坂学院を救った全ての能力も消えます」 


穂乃果「そうじゃなくて」 


猫「『今の時間』へ戻ると、絢瀬絵里との時間は守れますが、 

   彼女たちの存在は未来永劫消え去ります」 


穂乃果「――ッ」 


猫「『全ての時間を無かったことにする』と、 

   絢瀬絵里との時間が消える代わりに――」 


穂乃果「みんなに逢えるの?」 


猫「可能性はあります」 


穂乃果「それが一番だよ。お願いします」 


猫「私にはその力がありません」 


穂乃果「じゃあ、どうするの?」 


猫「女神様の御力をお借りします」 


穂乃果「お願い」 


Hora「クロノス、あなたはまた全てのことを伝えないのね」 


猫「伝える必要がありません」 

788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:33:00.78 ID:6pX6I8jco

Hora「可能性という言葉を無限定に使ってはいけないわ。 

    彼女たちに逢えるという確証があるわけじゃない。    

    絢瀬絵里と過ごした時間を捨ててまで、賭けをするには代償が大きすぎるでしょ」 


穂乃果「賭け……なの?」 


猫「いいえ。私は確率に賭けているわけではありません」 


Hora「あなたの考えを説明してちょうだい」 


猫「音ノ木坂学院が消失した時間の中で、貴女と7人の仲間はあの場所へ集まりました」 


穂乃果「……」 


猫「私は彼女たちの運命を信じます」 


Hora「絢瀬絵里はどうなるの? 8人ということは彼女は居なかったということでしょ」 


猫「9人が揃った時、それは運命ではなく奇跡と呼べるでしょう」 


穂乃果「……」 


Hora「妹のことは?」 


猫「絢瀬絵里と同じです」 


Hora「その自信の表れが私には理解できないのだけれど」 


猫「想いが強いのは高坂穂乃果、彼女だけではありません。 

  彼女たちもお互いを想い合う気持ちが相応にあります」 


穂乃果「……っ」 


Hora「そこまで言うのなら私も信じましょう」 


猫「お願いします」 


Hora「本当にいいのね?」 


穂乃果「~~っ!」 


Hora「躊躇っているの?」 


穂乃果「だって……っ」 


Hora「失ったものは大きいけれど、これから失うものも大きい」 


穂乃果「『今までの時間』を覚えているわけじゃないけどっ、胸が苦しい……っ」 


Hora「過酷な選択になるわね」 
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:40:32.41 ID:6pX6I8jco

穂乃果「私一人じゃ……絶対に辿りつけなかったっ……絶対に!」 



猫「そうです」 


猫「彼女たち、一人ひとりに出逢った意味がありました」 


猫「彼女に支えられ、彼女に勇気をもらい、彼女に慕われ――」 



穂乃果「うぅぅぅっ」ボロボロ 



猫「彼女の陽気さに楽しさを貰い、彼女に勇気を与え、彼女に救われました」 


猫「そして、彼女に運命を導かれ」 


猫「――絢瀬絵里とめぐり逢えました」 



穂乃果「うあああぁああっ!」ボロボロ 



猫「彼女がいなければ、貴女はここまで進んでこられなかったでしょう」 



穂乃果「ああぁぁっ、ぁああああ!!!」ボロボロ 



猫「私は力が無くなったので動くことができませんでした」 


猫「彼女たちを失った世界では、 
   私の願いを叶えることは不可能だと一度は諦めました」 


猫「ですが、絢瀬絵里が、高坂穂乃果をこの場所へと誘ったのです」 


猫「それだけ、貴女の想いは強くなったのです」 


Hora「…………」 



穂乃果「あぁぁっ……苦しい……っ……苦しいよぉっ」ボロボロ 


猫「進みましょう、高坂穂乃果」 


穂乃果「うぅぅっっ――」ボロボロ 


猫「みらいで、彼女たちが貴女に逢えるのを、待っています」 


穂乃果「――ッ!」 

790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:42:10.89 ID:6pX6I8jco

穂乃果「うんっ、泣いてる……場合じゃない……っ」 


猫「……」 


穂乃果「進まなくちゃ……っ」 


穂乃果「私も――……みんなに早く逢いたい!」 


猫「女神様、お願いします」 


Hora「――……」 


穂乃果「待ってて、みんな――……、絵里ちゃんっ」 


Hora「全ての時間をリセットしたわ。もう後戻りは出来ないわよ」 


穂乃果「するつもりもない!」 


Hora「……」 


穂乃果「二人とも、今までありがとう」 


Hora「どうしてお礼を言うの? ……貴女は巻き込まれたのよ?」 


穂乃果「また、一から……じゃないよね、ゼロから始められる」 


穂乃果「出逢える喜びを知ることが出来る」 


Hora「……」 


猫「それでは、行きましょう」 


穂乃果「付いてきてくれるの?」 


猫「見届ける義務がありますから」 


穂乃果「そっか……。って、どこに行けばいいのかな」 


猫「まっすぐにある、光が見えるでしょうか」 


穂乃果「ん~?」 


猫「そのまま進んでください」 


穂乃果「わかった!」 

791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:49:07.22 ID:6pX6I8jco

猫「それでは、女神様」 


Hora「分かっているわね?」 


猫「はい。これからは時間への干渉ができないでしょう」 


Hora「強制的に人の意識や考えを変えることが、時間にとってどれだけ危険なのか」 


猫「はい、学習しました」 


Hora「うん、それじゃ、私は此処であなたの帰りを待つことにします」 


猫「……」 


穂乃果「それじゃ、行くよ、猫ちゃん!」 


猫「実際には、貴女一人で進むことになるのですが」 


穂乃果「もぅ、そんな言い方しないでよ~」 


猫「……」 


穂乃果「楽しみだな~。さっき聞いた名前を忘れちゃったけど、楽しい時間だったんだよね」 


猫「私が見る限りでは」 


穂乃果「そっか、よぉっし!」 


猫「もう一つ、教えておくことがあります」 


穂乃果「なに?」 


猫「『リセットされた時間』の中で、音ノ木坂学院へ集まった生徒達が居ますが、 
  その彼女たちは他校へ分散することになるでしょう」 


穂乃果「…………」 


猫「ですが、存在が消えるわけではありません」 


穂乃果「道ですれ違ったり……するのかな」 


猫「はい。その可能性は高いです」 


穂乃果「高いの?」 


猫「一度は繋がった縁ですから」 


穂乃果「そっかぁ……、それなら、嬉しいかな。縁まで消えちゃったら寂しいよ」 


猫「…………彼女たちもまた、自らの運命を開いていけるでしょう」 
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:50:45.08 ID:6pX6I8jco

穂乃果「よぉし、思う存分楽しむよ~」 


猫「一つ聞いてもいいですか?」 


穂乃果「なに?」 


猫「妹の名を、知りたくはないのでしょうか。一度も訊ねないのが不思議で……」 


穂乃果「だって、消えてしまった8人の中で一番最初に逢えるんだもん」 


猫「……」 


穂乃果「早く……逢いたいよ」 


猫「……」 


穂乃果「振り返らないって言ったけど……ね……やっぱり……心残りがある」 


猫「それは?」 


穂乃果「絵里ちゃんにお別れ言えてない……、酷い言葉かけて謝ってもいない」グスッ 


猫「少しだけ、休みますか?」 


穂乃果「ううんっ、進む! 今すぐ歩くよ!」グスッ 


猫「……」 


穂乃果「だけどっ、絵里ちゃんの優しさが、苦しいよっ」ボロボロ 


穂乃果「突き放してっ……私がこの選択をしやすいようにってっ」ボロボロ 


穂乃果「ほんと……不器用なんだからっ」ボロボロ 


猫「……」 


穂乃果「そしてっ……沢山の約束も消えてしまった――」ボロボロ 


猫「彼女の言葉を思い出して」 


穂乃果「――ッ!」 


猫「……」 


穂乃果「うんっ、もう泣かないからっ」ゴシゴシ 


猫「……」 


穂乃果「あはは、結局私は……何も変わってないんだね」グスッ 


猫「……」 
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:51:44.06 ID:6pX6I8jco

穂乃果「音ノ木坂学院を守ったの、私じゃなくて絵里ちゃんなんだもん」グスッ 


猫「ここで一度、足を止めてくれますか」 


穂乃果「……?」 


猫「ここから先は、貴女一人で進んでください」 


穂乃果「うん、わかった」 


猫「私のことは忘れてしまうでしょうから、ここでお別れをしておきましょう」 


穂乃果「……わかった」 


猫「幸運を祈ります」 


穂乃果「――ありがとう、クロちゃん」 


猫「……お礼を言ってくれるのですか」 


穂乃果「どうして?」 


猫「結論から言えば、貴女の願いは叶っていないも同然なのです」 


穂乃果「でも、猫ちゃんが居たから、みんなと出逢えたんでしょ?」 


猫「……」 


穂乃果「感謝することはあっても、恨んだりすることは絶対にないよ」 


猫「……」 


穂乃果「それに……」 



穂乃果「私は夢に願いを乗せて、進んでいくんだから」 



穂乃果「これからなんだよ! 全部!」 



猫「……そうですね、貴女は、最初から何も変わっていません」 
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:53:06.82 ID:6pX6I8jco

穂乃果「すぅぅぅ、はぁぁぁ」 


猫「?」 


穂乃果「すぅぅぅぅ!」 



穂乃果「みんな待っててねぇぇええーーーー!!!!」 



穂乃果「すぐ逢えるからぁぁあーーーー!!!!」 



猫「!」 



穂乃果「絵里ちゃんに、みんなと出逢って欲しいから!」 



穂乃果「――今度は9人で一緒になにか始めるよ!」 



穂乃果「それじゃ、行ってくる!」 


ピョン 



シュウウウウウウウ...... 





猫「また、その名で呼んでくれるとは思いませんでした」 


ピョン 


シュウウウウウウウ...... 

795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:53:37.67 ID:6pX6I8jco


Hora「……」 


Hora「これで、彼女の物語は終りを迎え、始まりを告げた」 


Hora「興味深いわね、人の想いとは」 





End 

796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:54:06.52 ID:6pX6I8jco


… 

…… 

……… 

………… 

…………… 

……………… 

………………… 

…………………… 

………………… 

……………… 

………… 

…… 

… 

…… 

… 

 …… 

  ……… 

   ………… 
  
    …………… 

     ……………… 

      ………………… 

       …………………… 

      ………………… 
  
     ……………… 
  
    …………… 

   ………… 

  ……… 
  
 …… 

… 

797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:54:41.25 ID:6pX6I8jco


―― 保健室 


キーンコーン 

 カーンコーン 



ガバッ 


穂乃果「――ハッ」 



穂乃果「夢!?」 



穂乃果「なぁんだ~」 



…… 

… 

798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:55:32.00 ID:6pX6I8jco

―― 廊下 



穂乃果「らんらんらら~ん♪」 

スキップ 

 スキップ 


穂乃果「おはよう~♪」 


生徒「……」 

生徒「……」 


穂乃果「ヒデコ、フミコ、ミカ、おっはよう~♪」 


「あ……」 

「……?」 

「……」 


穂乃果「今日もいい天気~♪」 

スキップ 

 スキップ 


「ついにおかしくなっちゃったのかな?」 

「穂乃果ちゃん、元気一杯なのはいいけど」 

「なんか、勘違いしてるよね……」 




穂乃果「そりゃそうだよね、いきなり廃校なんて――」 

スキップ 

 スキップ 


『廃校』 『廃校』 『廃校』 


穂乃果「いくらなんでも、そんな急に決まるわけが――」 


『      
   廃 校 
         』 


穂乃果「ああぁぁぁあああーーー!?」 

799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:56:35.25 ID:6pX6I8jco

―― 2年生の教室 


ガラガラガラ 


穂乃果「…………」 


「あ……」 

「……」 


スタスタスタ 


穂乃果「……」ズドーン 


「ほ、穂乃果ちゃん……大丈夫?」 


穂乃果「うん……」 


ガチャ 


穂乃果「学校が失くなる……学校が失くなる……」ブツブツ 


穂乃果「うぅぅ……」 


「穂乃果ちゃん、すごい落ち込んでる……」 

「……」 

「そんなに学校が好きだったなんて……」 

「違います。あれは多分、勘違いしているんです」 

「かんちがい?」 


穂乃果「うぅ!」ガタッ 


「!」 

「!」 


穂乃果「どぉしよぉ~! 全然勉強してないよぉ~~! うぅ~!」 


「え?」 


穂乃果「だって、学校失くなったら別の学校に入らなきゃいけないんでしょ!?」 


穂乃果「受験勉強とか! 編入試験とか!」 


「やはり……」 

「穂乃果ちゃん、落ち着いて――」 
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:57:05.01 ID:6pX6I8jco

穂乃果「ことりちゃんとうみちゃんはいいよー! 
     そこそこ成績いいし、でも私は~!」 


「だから、落ち着きなさい」 


穂乃果「うぅ、うぅ~」シクシク 


「私たちが卒業するまで、学校は失くなりません」 


穂乃果「え……?」 


…… 

… 
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:58:06.73 ID:6pX6I8jco

―― 中庭 


穂乃果「はむっ」 

「学校が失くなるにしても、今いる生徒が卒業してからだから」 

穂乃果「もぐもぐ」  

「早くても3年後だよ」 

穂乃果「よかったぁ~、いやぁ~、今日もパンが美味い! はむっ」 

「太りますよ」 


「でも、正式に決まったら、次から生徒は入ってこなくなって、 
 来年は2年と3年だけ」 

「今の1年生は後輩がずっと居ないことになるのですね」 

穂乃果「……そっか…」 


スタスタスタ 


「ねぇ」 


穂乃果「?」 


「ちょっといい?」 

「……」 


穂乃果「「「 は、はい 」」」 


穂乃果「だ、だれ?」ヒソヒソ 

「生徒会長ですよ」 


「南さん」 

「はいっ」 

「あなた確か、理事長の娘よね」 

「は、はい」 

「理事長、なにか言ってなかった?」 

「いえ、私も今日知ったので……」 

「そう……ありがとう」 

「……ほなぁ」 

スタスタ 
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:58:34.42 ID:6pX6I8jco

穂乃果「あの!」 

「……?」 

穂乃果「本当に学校、失くなっちゃうんですか?」 

「あなた達が気にすることじゃないわ」 

スタスタスタ 


穂乃果「……」 

「……」 

「……」 


…… 

… 
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 20:59:27.19 ID:6pX6I8jco

―― 2年生の教室 


穂乃果「歴史がある!」 

「あぁ……! 他には?」 

穂乃果「他に!? えっと……伝統がある!」 

「それは同じです」 

穂乃果「えぇっ、じゃあじゃあ……えぇ~? ことりちゃ~ん!」 

「強いて言えば……古くからあるってことかなぁ?」 

穂乃果「……」ジー 

「ことり、はなし聞いていましたか?」 

「あ、でもさっき調べて、部活動では少しいいとこみつけたよ」 

穂乃果「本当!?」 

「と言っても、あんまり目立つようなものはなかったんだぁ。 
 うちの高校の部活で最近一番目立った活動というとぉ……」 


「珠算関東大会6位!」 

穂乃果「うへぇ……微妙すぎ……」 

「合唱部地区予選、奨励賞」 

「もう一声欲しいですね」 

「最後は……ロボット部、書類審査で失格」 

穂乃果「だぁめだぁ~!」 

「考えてみれば、目立つ所があるなら、生徒ももう少し集まっているはずですよね」 

「そうだね……」 

穂乃果「……」 

「家に帰ったら、お母さんに聞いて、もう少し調べてみるよ」 

穂乃果「私――……この学校好きなんだけどなぁ」 

「……私も好きだよ」 

「私も……」 

穂乃果「…………」 


…… 

… 
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:00:41.77 ID:6pX6I8jco

―― 高坂邸 


「……お姉ちゃんお帰り~」 

穂乃果「ただいま……」 

「……?」 

穂乃果「はぁ……」 

「……チョコいる?」 

穂乃果「いる……」 

「あんこ入りだけど……」 

穂乃果「ありがと」カサカサ 

「……え」 

穂乃果「もぐもぐも……んぐっ!? これあんこ入ってんじゃん!」 

「言ったよ!?」 

穂乃果「あぁ~ん! あんこもう飽きた~!」ジタバタ 

「白餡もあるよぉ?」 

穂乃果「もっと飽きた~!」ジタバタ 


ガラガラ 


「穂乃果!」 


「和菓子屋の娘が餡こ飽きたとか言わないの! お店に聞こえるじゃない」 


「うしし……」 

穂乃果「ごめんなさ~い……」 


穂乃果「はぁ……」 


穂乃果「……ん?」 


穂乃果「雪穂……それ……」 

「あぁ……UTX? 私、来年受けるんだぁ」 

穂乃果「ふぅん……」 

ペラペラ 

穂乃果「……こんなことやってんだ」 

「知らないのぉ?」 

穂乃果「……?」 

「いま、一番人気のある学校で……どんどん生徒を集めているんだよ?」 

穂乃果「はぁ……すごいなぁ……」 


穂乃果「……ん?」 


穂乃果「――って!」 

805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:01:36.94 ID:6pX6I8jco

穂乃果「雪穂!」 

ガタッ 

「ひぃっ!?」 

穂乃果「あんた、音ノ木坂受けないの!?」 

「時間差すぎだよ!」 


ガラガラ 

穂乃果「お母さん、お母さん~!!」 


「なぁに~?」 


穂乃果「雪穂、音ノ木坂受けないって言ってるよ~!」 

「聞いてる」 

穂乃果「そんなっ、ウチはお祖母ちゃんもお母さんも音ノ木坂でしょー!?」 


「っていうかさ」 


穂乃果「……?」 


「音ノ木坂、失くなっちゃうんでしょ」 


穂乃果「え、もう噂が!?」 


「みんな言ってるよ、そんな学校受けてもしょうがないって」 

穂乃果「……しょうがないって――」 

「だってそうでしょ、お姉ちゃんの学年なんて、2クラスしかないんだよ?」 

穂乃果「でも、3年生は3クラスあるし……!」 

「1年生は?」 

穂乃果「1クラス……」 

「ほら、来年はもう0ってことじゃない!」 

穂乃果「そんなことない! ことりちゃんとうみちゃんで失くならないように考えてるもん!」 


穂乃果「だから失くならない!」 


「頑固なんだから……」 

穂乃果「……」 

「でも、どう考えても、お姉ちゃんがどうにかできる問題じゃないよ」 

穂乃果「……っ」 


…… 

… 
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:02:08.29 ID:6pX6I8jco

―― 翌朝 


ガラガラ 


穂乃果「行ってきま~す!」 


「ふぁぁ……」 


穂乃果「雪穂ー!」 


「……?」 


穂乃果「これ、借りてくね~!」 


「うぇ!?」 


「……」 


「お姉ちゃんがあんな早起きなんて!」 


「遠足の時以来ね……」 



…… 

… 
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:03:00.09 ID:6pX6I8jco

―― UTX 


穂乃果「す、すごいっ!」 


キャーキャー 

 キャーキャー 


穂乃果「お?」 


穂乃果「おっ、ほっ、ほ?」 


『 UTX高校にようこそー! 』 


穂乃果「あ……」 

ペラペラ 

穂乃果「この人達だぁ……」 

スッ 

「…………」 

穂乃果「?」 

「……」 

穂乃果「うぃ!?」 

「……」ジー 

穂乃果「あ、あのぉ」 

「なに?」 

穂乃果「ひっ」 

「今忙しいんだけど!」 

穂乃果「あ、あの……質問なんですけど」 

「……」 

穂乃果「あの人達って芸能人とかなんですか?」 

「はぁっ!?」 

穂乃果「ひぃっ!?」 

「あんた、そんなことも知らないの!?」 

穂乃果「ひぃぃっ」ビクビク 

「そのパンフレットにも書いてあるわよ。どこ見てんの」 

穂乃果「す、すびばせぇ~ん!」 

「A-RISEよ、A-RISE」 

穂乃果「あらいず……?」 

「スクールアイドル」 

穂乃果「……あいどる…」 
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:04:08.51 ID:6pX6I8jco

ズンズン♪ 


「そ、学校で結成されたアイドル。聞いたことないの?」 

穂乃果「へぇ……」 



穂乃果「……?」 

......タッタッタ 

「かよちんっ、遅刻しちゃうよ~」 

「ちょっとだけ待ってっ」 


「はぁっ、はぁっ」 

「はぁっはぁ」 



穂乃果「……」 



『 そう、行っちゃうの?  

  追いかけないけど  

  基本だね 群れるのキライよ』 


『 孤独の切なさ 分かる人だけど―― 』 


キャーキャー 

 キャーキャー 


穂乃果「……」 


「……」 

「わぁぁ……!」キラキラ 

「ぐぐぐぐ……ぐぐぐぐ……」 

穂乃果「はぁ……」 


パサッ 

 パサッ 

  パサッ 


穂乃果「……」ヨロヨロヨロ 


―― この時、私の中で最高のアイディアが閃いた! 


穂乃果「これだ……!」ワナワナ 


穂乃果「――見つけた!」 



…… 

… 
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:04:53.86 ID:6pX6I8jco

―― 2年生の教室 


穂乃果「見てみてみて~!」 

「?」 

「?」 



穂乃果「アイドルだよ、アイドル!」 


穂乃果「こっちは、大阪の高校で! これは福岡のスクールアイドルなんだって!」 


「……」 

「……」 


穂乃果「スクールアイドルって、最近どんどん増えているらしくて、 
     人気の子がいる高校は入学希望者も増えているんだって!」 


穂乃果「それで私、考えたんだ――」 


「……」 


穂乃果「……あれ?」 


―― 廊下 


「……」 

スタスタ 


穂乃果「うみちゃん!」 

「っ!」ビクッ 

穂乃果「まだ話終わってないよ~!」 

「あはは……」 

「わ、私はちょっと用事が……」 

穂乃果「いい方法が思いついたんだから、聞いてよ~!」モジモジ 

「……――ハァ」 


「私たちでスクールアイドルをやるとか言い出すつもりでしょ?」 


ガタッ 

穂乃果「ハッ? うみちゃんエスパー!?」 

「誰だって想像付きます!」 

穂乃果「だったら話は早いね~」スリスリ 

「……」 

穂乃果「今から先生のところへ行って、アイドル部を――!」 

「お断りします」 

穂乃果「なぁんで?」 
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:05:57.37 ID:6pX6I8jco

―― 理事長室 


「思いつきで行動しても、簡単に状況は変わりません。 

 生徒会は、今いる生徒の学院生活をよりよくすることを考えるべきです」 


「……」 

「……」 



―― 廊下 



穂乃果「だって、こんなに可愛いんだよ!? 
     こぉんなにキラキラしてるんだよ!?」 

「……」 

穂乃果「こんな衣装、普通じゃ絶対に着れないよ!?」 

「そんなことで本当に生徒が集まると思いますか!?」 

穂乃果「……そ、それは……人気が出なきゃだけど」 

「その雑誌に出てるスクールアイドルたちはプロと同じくらい努力し、 
 真剣にやってきた人たちです。 
 穂乃果みたいに好奇心だけで始めても上手く行くはずないでしょ!」 



―― 理事長室 


「でもッ! このままなにもしないわけには!」 

「エリち……!」 

「……っ!」 


「ありがとう、絢瀬さん。 
 その気持だけ、ありがたく受け取っておきます」 


「……っ」 
  


―― 廊下 


「ハッキリ、言います」 


穂乃果「……」 


「――アイドルは、無しです!」 


穂乃果「…………」 


…… 

… 
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:06:45.79 ID:6pX6I8jco

―― 屋上 


穂乃果「……」 



「……」ソォー 



穂乃果「はぁ~ぁ、いい考えだと思うんだけどなぁ……」 



「~♪」 


穂乃果「……ん?」 



…… 

… 


―― 音楽室 


「――育て~♪」 


穂乃果「……」 


「さぁ、大好きだ、ばんざーい 負けない勇気  

 私たちの今を 楽しもう 

 大好きだ ばんざーい 頑張れるから」 

  
穂乃果「……」 


「昨日に手を振って、ほら、前向いて――」 


「……ふぅ」 


パチパチパチパチ 


「……?」 


穂乃果「……」パチパチパチパチ 


「ぅぇぇぇ!?」 


ガラッ 


穂乃果「すごいすごいすごい! 感動しちゃったよー!」 


「べ、べつに……」 


穂乃果「歌上手だね! ピアノも上手だね!」 


「…………」 
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:07:18.67 ID:6pX6I8jco

穂乃果「それにっ、アイドルみたいに、可愛い!」 


「……!」カァァ 


ガタッ 


穂乃果「あ……」 


「……」 

スタスタスタ 



穂乃果「あ、あの……」 


「……」 


穂乃果「いきなりなんだけど……、あなた、アイドルやってみたいと思わない!?」 


「……なにそれ、意味わかんない!」 

スタスタ 



穂乃果「だよね……あははは……はぁ」 


…… 

… 
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:08:17.65 ID:6pX6I8jco

―― 弓道場 


「……」ググググ 


「…………」 


『みんなのハート、撃ち抜くぞぉ~! ばぁーん!』 

 『ばぁーん』 

  『ばぁーん』 


ザクッ 


「なにを考えているのです……私は……!」フルフル 

「外したの!? 珍しい!」 

「あ、いえ、たまたまです!」 


「……」ググググ 


『ラブアローシュート!』 


ザク ザク ザクッ 


「あぁっ」ヘナリ 


「いけませんっ、余計なことを考えてはっ」 


「海未ちゃ~ん……ちょっと来てぇ~」 


…… 

… 


『『 えぇっ!? 』』 

『登ってみようよ!』 

『無理ですぅ、こんな大きな樹ぃ!』 

『……えいっ』 

ガシッ 


「私たちが尻込みしちゃうところをいつも引っ張ってくれて――」 


『『 うぇ~ん、うぇ~ん 』』 


「そのせいで散々な目に何度も遭ったじゃないですか」 


バキバキッ 

『『 きゃぁ~!! 』』 


「……そうだったね」 

「穂乃果はいつも強引すぎます」 
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:09:04.02 ID:6pX6I8jco

「でも、海未ちゃん……後悔したこと、ある?」 

「………え…」 


『ふぇ~ん、怖いよぉ~!』 

『わぁ……!』 

『……――!』 


「……――!」 


穂乃果「はっ!」 


「……みて」 

「……」 


穂乃果「……!」 

ザッザッ 


「……!」 

「ふふ♪」 


穂乃果「よっ、はっ」 

ザッザッ 

クルッ 

穂乃果「わっ……」 

ドサッ 

穂乃果「あいたぁ~いっ」 


穂乃果「はぁ、本当に難しいや……はは、みんなよく出来るなぁ」 


穂乃果「よし、もう一回……!」 


穂乃果「せーの!」 


「ねぇ、海未ちゃん」 

「……?」 

「私、やってみようかな」 

「……!」 

「海未ちゃんはどうする?」 

「…………」 
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:09:30.53 ID:6pX6I8jco

穂乃果「うわっ!」 

ドテッ 


穂乃果「あいたたたた……くぅ~」 


スッ 

穂乃果「うみちゃん……?」 

「一人で練習しても意味がありませんよ。 

 やるなら、三人でやらないと」 


穂乃果「うみちゃん……!」 


…… 

… 

816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:10:28.85 ID:6pX6I8jco

―― 生徒会室 


「……これは?」 

穂乃果「アイドル部、設立の申請書です!」 

「それは見れば分かります」 

穂乃果「では、認めていただけますね!」 

「いいえ」 

「「 え……? 」」 

「部活は同好会でも最低五人は必要なの」 

穂乃果「えっ?」 

「ですが、校内には部員が五人以下のところもたくさんあるって聞いてます」 

「設立した時は、みんな五人以上居たはずよ」 

「――あと、二人やね」 

穂乃果「あと二人……。分かりました。……行こ」 


ガタッ 

「待ちなさい」 

穂乃果「……?」 

「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの? 
 あなたたち、二年生でしょ」 

穂乃果「廃校をなんとか阻止したくて…… 
     スクールアイドルって、いま凄い人気があるんですよ。 
     だから……!」 

「……だったら、例え五人集めてきても、認めるわけにはいかないわね」 

穂乃果「えっ、どうして……!」 

「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない」 

「……」 

「思いつきで行動した所で、状況は変えられないわ」 


穂乃果「……」 

「……」 

「……」 


「変なこと考えていないで、残り2年、 
 自分のためになにをするべきかよく考えるべきよ」 


…… 

… 

817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:11:52.82 ID:6pX6I8jco


――  音ノ木坂学院  ―― 



穂乃果「……」 


「がっかりしないで、穂乃果ちゃんが悪いわけじゃないんだから」 

「生徒会長だって、気持ちは分かってくれているはずです」 



― 


「さっきの、誰かさんに聞かせたい台詞やったなぁ」 

「いちいち一言多いのよ……希は」 

「うふっ、それが副会長の仕事やし」 

「……」 


― 


「でも、部活として認められなければ、講堂は借りられないし、 
 部室もありません。なにもしようがないです」 

「そうだよね……」 


ザァァァ 

 ザァァァ 



「あぁ、これから一体、どうすれば……」 

「どうすれば……!」 



「「 どうすればいいの……? 」」 



818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:12:28.79 ID:6pX6I8jco


穂乃果「だって、可能性感じたんだ、そうだ…ススメ!」 



穂乃果「後悔したくない 目の前に僕らの道がある……」 



前向こう 上を向こう 何かを待たないで 

 今行こう 早く行こう どこでもいいから 

太陽きらめいて 未来を招いてる 

 さあ行こう 君も行こう ススメ→トゥモロウ 


819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:13:41.32 ID:6pX6I8jco


「……」 


「わしっ」 

「にゃ!?」 

「隙だらけやんなぁ」 

「東條希!? 迂闊でした! 早く離れなくては!!」 

「なんてね、私よ私」 

「……? 私の声が聴こえる……?」 

「奇跡は起こったみたいね」 

「女神様ですか……?」 

「そうよ」 

「……」 

「あの人に頼んで、人間にしてもらったの」 

「は……は……?」 

「ふふ、あなたの今の精神状態、面白いわね」 

「な、なにを考えているのですか……?」 

「私も退屈してたの」 

「それだけの理由で……地上に降りたのですか……?」 

「悪い?」 

「そんなことだから全知全能の父であるあの御方の怒りに触れ、 
 封印されてしまうのですよ!」 

「うるさいわね。女の子を陰で覗いてたくせに」 

「……」 

「言い過ぎたわね、ごめんなさい」 

「あなたの身に何かが起これば、彼女たちが……」 

「力はそのままだから大丈夫。時間を戻して危険を避けるから平気よ」 

「……」 

「創作話が実話となり神話となったのね。 
 私の封印を解いたのだから当然といえば当然なのだけれど」 

「…………」 

「9人の女神。自らその名を受け継ぐみたい……とても面白いわ」 
820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:15:49.67 ID:6pX6I8jco

「どうするおつもりですか?」 

「あなたは私の守護者でしょ」 

「……はい」 

「私に付いてきなさい」 

「……?」 

「先ずはこの星を歩いて見ようと思っているの」 

「……」 


「――彼女たちはもう大丈夫だから」 

「……そうですか」 


「饅頭を持って、はらしょーって言う子もいる」 

「……?」 

「絢瀬絵里の妹よ」 

「……」 

「……どうしたの?」 

「私の役目はもう、終わっていたのですね」 


「ちゃんと、彼女との約束も守れている」 

「……」 


「だから、これからは、私と旅をしましょう」 

「旅……?」 

「あなたの仲間、シロと呼ばれた仔が、そう言っていたの」 

「……」 

「その仔は、人の心に魅了されて、すでに旅を終えてしまっているけれど」 

「わかりました。お供します」 

「いままで、本当によくやってくれたわ」 

「当たり前のことです。あなたが居なければ、時間は存在しないのですから」 

「じゃあ、行きましょうか」 

「はい」 

「最後にお別れは?」 

「もう済ませています」 

「……そう」 

「彼女たちのみらいは、彼女たちだけのものです」 
821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:16:55.89 ID:6pX6I8jco

「……あなたも人間にしてもらって、あの子とラブロマンスを体験してみたら?」 

「私にその感情はないこと、知っているはずですが」 

「言ってみただけよ」 

「それに、彼女には特定の人がいますから。 
 女神様、その表現は今の流行りではありませんよ」 

「私たちに流行り廃りなんてものないでしょ」 

「ムキにならないでください。それよりどこへ行くのか、決まっていますか?」 

「そうねぇ、エジプトへ行きましょう。そして、次はオーロラを見に」 

「わかりました」 

「あのスフィンクスはあなたがモデルなの?」 

「そうみたいです。少し、知恵を貸しただけなのですが」 

「祀り建てられたのね」 

「ネコという種族は、古来より人と深い関わりがあり――」 

「この体、お腹が空くから……ちょっと不便なのよね」 

「聞いていませんね。……一つお願いしてもいいですか、女神様」 


「なんでも言って。なんでも叶えてあげる」 


「シシャモを食してみたいのです――」 

822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/17(木) 21:17:56.91 ID:6pX6I8jco



Let's go 変わんない世界じゃない 

Do! I DO! I live! 

Let's go 可能性あるかぎり 

まだまだあきらめない 

Let's go 自然な笑顔なら 

Do! I DO! I live!(Hi hi hi!) 

Let's go 可能性みえてきた 

元気に耀ける 僕らの場所がある 


Let's go! Do! I DO! I live! 

Yes. DO! I do! I live! 

Let's go! Let's go! Hi!! 






穂乃果「私、やっぱりやる、やるったらやる!」 






終わり