注意 :
このSSは今のところ未完です。あくまで管理人の主観ですが、再開は厳しい気がします。
しかし、今までまとめさせてもらってきましたので、更新されている分だけまとめました。
その点だけどうぞご了承お願い致します。
上条「アイテムの正規メンバーですか」その1
上条「アイテムの正規メンバーですか」その2
上条「アイテムの正規メンバーですか」その3
引用元: ・上条「アイテムの正規メンバーですか」絹旗「超2です」
「……それだよ、それ」
四人の少女に冷たく突き刺さるような声が届く
「なんでそうなるかなぁ」
その声には彼の様々な感情が乗せられているようで、正確にその真意を読み取ることは出来ない
「あぁ、そうだ……」
爆発による砂埃は、それにより視界を阻害することもないほどに晴れ晴れとしていた
「理不尽過ぎるよ……」
彼の声が四人の少女の作り出していた甘い雰囲気を一変させ、ひどく重いものにする
「……壊す」
彼の言葉にある感情のみが増大された
――悲しみ
「壊さなきゃいけないんだ……」
麦野「……絹旗、さっき『私たちを信用してもいい』って言ったよな。どういうことだ」
絹旗「そうです。わかったんですよ! 上条の能力の秘密と勝つ方法が!」
麦野「ッ!? 本当か!?」
絹旗「はい、それはですね――」
フレンダ「来るッ!」
四人の少女へ上条が駆け出した
その表情は何を思い何を考えているかはわからない、無表情なものに戻っていた
フレンダ「絹旗の方法ならイケるかもしれない! けど、それを確実にするには人数が必要だから! 早く説明を受けて! それまでは私が防ぐッ!」
フレンダがスカートの中へ手を入れ数々の爆発物を取り出す
人形の形をしたもの
ミサイルのような形をしたもの
それらを両手一杯に持ち、麦野、絹旗、滝壺の前へ出て構える
フレンダ「結局、私は前座程度なら力不足にはならない訳よ!!」
そしてミサイル型の爆弾を上条に向け発射させ、上条の避けた先を何箇所か予想しそこに人形型の爆弾を放った
フレンダの能力は『空間移動』の一種である『アポート』のLevel3
それは『離れた物体を手元に引き寄せる能力』であり、基準としては自分の重量以上を移動できる能力者はLevel4と認定される
しかし、フレンダの場合は『ある場所』に『ストック』として管理されている物体しか手元に引き寄せることが出来ず、また、一度に十キログラムまでの重量が限界であった
であるが故、学園都市の中でも希少な『空間移動』の能力者でありながら、フレンダに当てられる研究は少なく、彼女の懐に入るお金はLevel3の奨学金と暗部の給料のみで、アイテムの四人の中では断トツで低かった
それに拍車をかけるように彼女の『ストック』の半分は暗部の資金で支払われるものの、半分が自腹である
その理由は言わずもがな、彼女の仕事での失態が響いているのではあるのだが
だからこそ彼女はアイテムの他の三人で生活を供にしているとお金がすぐに底をつき、一般のLevel3の学生よりはお金を持っているのだが自身をひどく貧乏だと思っている
彼女が今回手元に引き寄せた爆発物
それは上条を確実に捉えていた
今回、上条が最優先で警戒しなければいけないものは麦野の原子崩し
それに気を取られフレンダの爆弾に当たり、上条の進行は止まってしまう
追い打ちを避けるようにして彼は彼女らと少し距離をとる
同時に彼女らも彼と距離をとり、相手の出方を伺いつつ、作戦会議を開く
その中でフレンダ一人が上条に全神経を集中させ、その動きに対応する
上条が距離をとったと言っても彼女らへの接近を決してやめたわけではないのだから
麦野「絹旗、言って」
絹旗「はい。まず上条の能力の秘密についてですが、それは『右手で触れた能力を消す』というものです」
麦野「はあ? それは違うだろ。私の『拡散支援半導体』の広範囲攻撃を受けても無傷だったんだぞ!? 右手だけなんてありえない!」
絹旗「それはおそらく先ほど見せた能力を『掴み取りその軌道を逸らす』のを超応用したんでしょう」
フレンダ「おりゃおりゃおりゃ~っ! まだまだ行くって訳よ!」
絹旗「そもそも、上条の身体能力はズバ抜けたものがあります。『掴み取りその軌道を逸らす』ことさえ出来れば無傷なのも超不思議ではありません」
麦野「……」
滝壺「ふれんだ。その調子」
絹旗「それに加えて昨日、上条が右手で触れたときに『窒素装甲』が消えましたが、その後『窒素装甲』で超軽く殴った時に能力は消えませんでした」
麦野「ッ! なんでそのこと昨日の内に言わなかったッ!」
フレンダ「キタキタキタ~ッ! 結局、日頃の行いな訳よ!」
絹旗「超気のせいかと思いまして……。それに今日、私の能力を消すのは必ず右手でしたし、それ以外の身体の部分への攻撃は避ける傾向を見せました」
麦野「まぁ、いいわ。それじゃ『右手で触れた能力を消す』ってことで話を進めて」
絹旗「はい。そうしたら上条に勝つ方法も右手が超重要になってくるんです」
滝壺「日頃の行いならふれんだはもう少し悪い結果になってもおかしくはないよね……?」
絹旗「まず麦野が上条に接近戦を仕掛けます。そして攻撃の端々に能力を混ぜてください」
麦野「格闘術を組み合わせながら原子崩しを撃てと……」
絹旗「それで決まれば良いのですが、もし決まらなかったらの策として私とフレンダで考えたのが、麦野が上条の右手を抑えてそこを私の『窒素装甲』で叩くものです。おそらく麦野は上条の右手に触れられると原子崩しを撃てなくなると思います」
麦野「……」
絹旗「麦野が言いたいこともわかります。……そう簡単に行くのか、と」
麦野「……まあ、そのための陽動としてのフレンダと」
絹旗「上条が麦野の原子崩しを『掴み取りその軌道を逸ら』してきたときの保険として滝壺さんです」
麦野「……上条の右手はどこからどこがその範囲に入る……?」
絹旗「……予想の域は出ませんが、おそらくは右手の部分……広くても肘から先だとは思いますが……ッ!? まさか、麦野……」
麦野「……そう。一か八か上条の右肩を消し去ることが出来れば……或いは……」
絹旗「……それは無理に狙わない方が……」
麦野「あぁん? 上条に情でもわいてんのか!?」
絹旗「いえ、そうではなくて……そこをピンポイントで狙えるならもっと狙い目はあるはずです。頭、心臓、足……どれか一つでも消し去れればそれで終わりですから。それなら右肩よりもそっちのどれかを散らしながら狙った方が超合理的かと」
麦野「良いわ。それで行きましょう」
絹旗「フレンダも滝壺さんも作戦は伝えてあります」
麦野「わかった。……三人に背中は任せるわ」
絹旗「はいっ!」
麦野「フレンダ、滝壺。任せたわよ」
フレンダ「任せてっ!」
滝壺「むぎの、頼むね」
麦野「さぁ、アイテム始動よ」
フレンダが『アポート』によって引き寄せたものは今回ばかりはデカかった
「コイツをお見舞いしてやるって訳よ!」
それは俗に言うバズーカ砲
それは全長一メートルは軽く超える黒い筒のような形をしていて、ロケット弾を発射させる口径は八十ミリはあった
フレンダは上条に狙いを定め、カチッとそれを発射させる
ヒュン
上条に向かってロケット弾が風を切り、宙を走る
ドゴォオオオン
爆発する
巻き上がる砂埃で上条の姿は確認出来ない
そこへ間髪いれずに麦野が原子崩しを次々と放っていく
それは上条がいるであろう位置を計算して放っているため無駄撃ちにはならない
パシュゥウン
そのうち数発は軌道を変え、フレンダの元へ向かっていく
「させないよ」
フレンダへと向かってくる原子崩しを滝壺は、自身の能力『能力追跡』に体晶を用いることで、捻じ曲げる
他にも検討外れな方へ飛んでいく原子崩しを再び上条へ向け直すことで、新たに放たれる原子崩しと合わせて上条を襲っていく
「麦野、超現れました!」
原子崩しの嵐を避けさらには右手で消しながら砂埃の中から現れた上条に、麦野が自身の身体の周りに青白い光を保ったまま走って向かっていく
その数メートル後ろで絹旗が麦野の後を追う
上条が麦野を迎え撃つ準備を整えることはさせまいと、フレンダは上条へこまめにミサイル型の爆弾を放っていた
「いくぞ、おらァ!」
麦野が上条に近づき原子崩しを放つ
それは今までとは違い至近距離であったがため、上条はそれを『掴み取りその軌道を逸らす』ことは出来ない
出来るのは無理な体勢でも避けきれる分は避け、それでも対応出来ない分は右手で防ぐことだけだった
上条は上体は反らされ身体の重心がズレてしまう
その無防備な上条の背面を麦野は見逃さない
そこへ麦野の渾身の蹴りが炸裂した
「ぐはッ」
上条の顔が苦痛で歪み、その身体が宙に浮く
そこを麦野は原子崩しで射抜く
しかし瞬時に空中で大勢を整えた上条が右手でそれを消す
そして右足を地面につき、上半身を右に捻ることで左拳が麦野の顔面を襲う
だが麦野はそれに反応し両手でガードする
その衝撃に麦野は顔を歪めるも演算を止めない
新たな原子崩しが上条を襲う
上条の顔面と右足を狙った原子崩し
当たれば即死かその後の戦いにおいて致命傷となる攻撃
上条は顔面へのそれを最小限の動きで躱し、左足と右足の軸足を変えることで右足を自由にしそれを避ける
そして大股開きになって姿勢を低くし右ストレートを麦野のガラ空きの腹部へと放った
「がはッ!」
ここで初めて麦野の演算が痛みで止まる
追い討ちをかけるように上条は麦野へ右アッパーを繰り出そうとした
しかしそれを麦野は上体を少し反らすことで回避し、さらに上条の右腕を両方の腕と身体全体で抱き込むようにして抑え込む
「くそっ!??離れろッ!」
上条は右手にしがみつく麦野を離そうとするが離れない
「……テメェの負けだ、上条」
そう言って口角を密かに上げた麦野の表情は確かに苦痛で歪んでいた
しかし、その表情とは裏腹に勝利を確信する
「くだばれ、上条ォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
その状態の上条に麦野の後ろから絹旗が現れた
そして上条の顔面に『窒素装甲』で重い右ストレートを放ち、次々と上条へ連打を重ねる
「ぐっ……この、やろ……っ」
上条は絹旗から数発攻撃を受けたところで右腕を無理矢理振り回し絹旗に麦野をぶつける
そして絹旗の連打のうち一発が麦野の背中へ入る
「がッ!」
骨が軋むような痛みに麦野の上条の右腕を拘束する力が弱まる
それを上条は逃さず、右腕をかち上げることで麦野の両腕を上げさせ、ノーガードの麦野を右足で蹴飛ばす
さらに拘束のとれた右腕で絹旗を殴り飛ばした
麦野、絹旗が同様に数メートルほどその身体をバウンドさせながら飛ばされる
ズザザザッと音を立て地面に彼女らの身体が摩擦する
「麦野! 絹旗!」
「むぎの! きぬはた!」
離れた位置にいたフレンダ、滝壺の両名が二人に駆け寄る
「っ……糞がぁっ!」
「うっ……」
衝撃を受けた二人は痛みで立ち上がれない
麦野は殺気の籠った声を上げその顔は見るものを殺さんとする鬼のようであり、一方の絹旗は声を出すことすら困難なようであった
「大丈夫な訳!?」
「二人ともしっかりして!」
フレンダ、滝壺の二人は立ち上がれない二人に寄り添うように膝を地面につき声をかける
そして滝壺が立ち上がり、倒れている二人を庇うようにして手を大きく広げて上条を睨む
「かみじょう! ゆるさ、な…い……よ……」
しかし、彼女の言葉は最後まで殺気で満たされることはなかった
言い切ることは出来たが何とも歯切れの悪いものとなる
それを不思議に思ったフレンダは滝壺へ視線向け、次に上条へそれを向ける
「どうしたの滝つ、ぼ……」
滝壺、フレンダの二人が見た上条の表情は、絹旗によって殴られた頬が青紫色になっていたが、眉間にシワを寄せ口を何かに堪えるように閉ざし目からは涙が流れていた
「なんで……なんでなんだよ!」
上条が叫ぶ
両方の拳をギュッと握り締め肩を強張らせ叫ぶ
「俺は……、俺は……ッ!」
何かを言おうとするが最後まで言葉が続かない
麦野、絹旗を気にしながらもその様子を伺う滝壺とフレンダ
「結局、何が何な訳よ……」
「わかんないよ。どうしてそんな顔で私たちを見るの……」
「上条は私たちの敵じゃないの……」
「かみじょう……」
二人は困惑する
今まで自分たちアイテムをほぼ一方的に圧倒してきた上条が苦しんでいた
それに先程までと違う目線を向けてくる
それが指す意味は――
――憧憬
憧れるような、そしてどこか羨んでいるような
そんな目で私たちを見てくる
二人が困惑している間も上条は一人苦しむ
「なんで……、俺が……俺がッ……この手でやらなきゃいけないんだッ! なんで……っ……」
その様子を見ていた滝壺、フレンダの近くで獲物を刈り取るような冷酷な声が響く
「何で俺が…、だとォ? テメェ、まさか私たちを憐れんでんじゃねェだろォなあ!? あぁん!?」
麦野沈利
彼女は既に肉体的ダメージが絹旗でないにしろかなり溜まっていた
しかし、上条の態度に彼女はキレて、その精神が肉体を凌駕する
その傍らではフレンダがその雰囲気に圧されて震え、滝壺は麦野の様子の変化に振り返る
「テメェにそんな目で見られるほど私らは落ちぶれちゃいねぇんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
麦野が構え原子崩しを発射させる
それは滝壺のすぐ横を通り抜け上条へと一直線に空間を切っていった
「ッ!」
パキィイン
幻想殺しによって原子崩しが消される
「何があってテメェがそこで苦しんでんのかなんて知らねえが、私らはテメェにそんな目で目られるほど弱くねぇんだよおおお!! ふざけてんじゃねぇぞクソガキがあああああああああああああああああああ!!!」
続けて原子崩しを放ちながら、麦野は上条へ走っていく
彼女が今、動けているのは自身のプライドのため
麦野沈利は人一倍他人からの評価を気にしている能力者だ
過去において自分の周りからの評価が一転二転してきたのを経験する彼女は確固たる何かを必要とした
それが彼女、麦野沈利を表す絶対的な価値観となるようなものを
だからこそLevel5になってからは、急に自分の序列を越えていった年下の、しかも中学生のLevel5超電磁砲の御坂美琴には並々ならぬ敵対心を持ち、自分を見定めるような研究者たちを嫌ってきた
そして、上条の目
自分の方が強いくせに私たちに憧れ、それがまた上からの目線のように思えるその目で見てくる上条は、彼女にとって殺したいほどに感情を昂らせる麻薬となった
上条は先程までとは明らかに動きのキレが違っていた
それは麦野の原子崩しが上条を的確に捉えてくるからではない
――『アイテム』という一つの括りの中に上条が憧れる『それ』を見たから
上条は酷く注意力が散漫となっていた
そして、不意に接近してきた麦野の一撃を喰らう
「喰らえええええええええええええええええ!!」
大きく振りかぶり身体を捻らせた麦野の右拳が上条へぶち込まれた
上条は十数メートルをその身体をバウンドさせながら飛んでいった
麦野自身、身体に限界が来ていたこともあってか上条を殴るとその場に倒れる
「むぎの!」
滝壺が麦野の側へと駆け寄る
彼女もまた体晶の強制終了とその状態での新たな体晶の服用により身体は満身創痍
ヨロヨロと身体を揺らしながらも麦野の元へ辿り着く
「滝壺、アイツは……?」
「かみじょうは……、っ……立ちあがった……」
「くっ……」
上条当麻は立ちあがった
しかし彼もまたその身体が、垣根とのほぼ殺し合い同然の修練の日々を彷彿とさせる状態へと追い込まれていた
「テメェはなんでそんな目で私らを見るんだ!! アイテムを壊滅させるのが目的ならそんな目で見てんじゃねぇよ!!」
「俺は……」
麦野の目線は上条を捉えて離さない
薄汚れたスキルアウトのアジトである廃墟の床でその高価な服を汚しながらも麦野は言う
「私らだってな、こんな学園都市の闇の中で生きてんだよ!! そんな憐れむようにして死ぬなんて真っ平なんだよ!!」
「俺は……」
Level5の第四位でありながら地にその身体を伏すその姿は普段からは想像も出来ない
しかしそのような想定外の状況で追い込まれているにもかかわらず、彼女の目はまだ諦めていない
自分が戦うことで守るものがあるから
自分が戦うことで得るものがあるから
「そんなヤツに私らが負けるかよ!!!」
麦野が声を荒げる
しかし、その勢いは続かない
上条が麦野や滝壺、奥で様子を伺っているフレンダ、倒れている絹旗を見て叫ぶ
「俺はお前らが羨ましかったんだよ!!!!!」
「っ……」
麦野の声が詰まる
上条はどこか高揚としていて取り乱しながらも必至に自我を保っているようだった
「俺はお前らが羨ましかったんだ!!」
「お前らが人殺しのクズで、しかも暗部の仲間なんて平気で捨てるようなクソみたいなことやってる連中だったら殺すのなんか躊躇うことなんてない!!」
「でも……でもよ、お前らは俺が憧れていた関係そのものだったんだよ……」
「俺が学園都市に来て面倒見てくれたたった一人の家族、ソイツとの生活はソイツを狙う奴らとの殺し合いの日々ばかりが浮かんでくるけどよ……」
「けどよ……」
「楽しかったんだよ。どうしようもなく」
「俺が頼りないばかりにソイツに助けてもらうことばかりだったけどよ、ソイツの背中を少しでも任せてもらったことは嬉しくて、そして充実もしてた」
「お前らが四人で連携して、その力を信頼し合って敵に向かってくるなんて……」
「そんな……」
「そんな俺の大切な思い出に重なったお前らを殺せるかよ……」
「けどな、お前らを殺さなきゃ俺はソイツを助けられねぇんだよ……」
「どうすればいいんだよ……」
「わかんねぇよ……」
「俺にもよ、『グループ』の仲間はいるよ?」
「でもな……」
――父親を殺した多角スパイ
――自分の守りたい者を守り続けている風紀委員
――俺の学園都市での家族を、垣根を瀕死の状態まで追い込んだ学園都市最強
「違うんだよ……」
「お前らを見てたらな、アイツらには嫉妬しか感じなかった」
「アイツらは俺のこと良く思ってくれてるかもしれねえ。もしかしたら罪悪感からの脆い関係かもしれねえ」
「でも、俺はアイツらにもう対等だなんて思えなくなっちまったんだよ!!」
「俺の守りたい奴は守れなかったのに、アイツらはアイツら自身の守りたい奴を守り続けているんだよ!!」
「そんなの……、そんなの……」
「どうしようもなく一人に感じちまうじゃねぇか……」
「テメェはまるで私の昔みたいだな……」
「麦野……?」
「昔の私みたいに、ガキだ」
「ッ!」
「周りを敵だらけだと思って誰も信用出来なくなり孤立していく……。上条、お前はどうしたらいいと聞いたな」
「……」
「そんなの決まってんだろ……、私らを殺せばいい」
「っ……」
「むぎの……」
「でもね、私らは私らの守りたい者……守りたい『居場所』のために戦うよ」
「あぁ」
「だからなのかな……、私は悲しかった……」
「……」
「何かを隠していても、上条のことを……」
「――『家族』の一員として認めた後だったから」
このSSは今のところ未完です。あくまで管理人の主観ですが、再開は厳しい気がします。
しかし、今までまとめさせてもらってきましたので、更新されている分だけまとめました。
その点だけどうぞご了承お願い致します。
上条「アイテムの正規メンバーですか」その1
上条「アイテムの正規メンバーですか」その2
上条「アイテムの正規メンバーですか」その3
引用元: ・上条「アイテムの正規メンバーですか」絹旗「超2です」
アニくじ とある科学の超電磁砲S D賞:ラバーストラップ 【絹旗 最愛】
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2: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:09:06.99 ID:dRyCym8z0
「……それだよ、それ」
四人の少女に冷たく突き刺さるような声が届く
「なんでそうなるかなぁ」
その声には彼の様々な感情が乗せられているようで、正確にその真意を読み取ることは出来ない
「あぁ、そうだ……」
爆発による砂埃は、それにより視界を阻害することもないほどに晴れ晴れとしていた
「理不尽過ぎるよ……」
彼の声が四人の少女の作り出していた甘い雰囲気を一変させ、ひどく重いものにする
「……壊す」
彼の言葉にある感情のみが増大された
――悲しみ
「壊さなきゃいけないんだ……」
3: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:10:23.82 ID:dRyCym8z0
麦野「……絹旗、さっき『私たちを信用してもいい』って言ったよな。どういうことだ」
絹旗「そうです。わかったんですよ! 上条の能力の秘密と勝つ方法が!」
麦野「ッ!? 本当か!?」
絹旗「はい、それはですね――」
フレンダ「来るッ!」
四人の少女へ上条が駆け出した
その表情は何を思い何を考えているかはわからない、無表情なものに戻っていた
フレンダ「絹旗の方法ならイケるかもしれない! けど、それを確実にするには人数が必要だから! 早く説明を受けて! それまでは私が防ぐッ!」
フレンダがスカートの中へ手を入れ数々の爆発物を取り出す
人形の形をしたもの
ミサイルのような形をしたもの
それらを両手一杯に持ち、麦野、絹旗、滝壺の前へ出て構える
フレンダ「結局、私は前座程度なら力不足にはならない訳よ!!」
そしてミサイル型の爆弾を上条に向け発射させ、上条の避けた先を何箇所か予想しそこに人形型の爆弾を放った
4: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:11:14.55 ID:dRyCym8z0
フレンダの能力は『空間移動』の一種である『アポート』のLevel3
それは『離れた物体を手元に引き寄せる能力』であり、基準としては自分の重量以上を移動できる能力者はLevel4と認定される
しかし、フレンダの場合は『ある場所』に『ストック』として管理されている物体しか手元に引き寄せることが出来ず、また、一度に十キログラムまでの重量が限界であった
であるが故、学園都市の中でも希少な『空間移動』の能力者でありながら、フレンダに当てられる研究は少なく、彼女の懐に入るお金はLevel3の奨学金と暗部の給料のみで、アイテムの四人の中では断トツで低かった
それに拍車をかけるように彼女の『ストック』の半分は暗部の資金で支払われるものの、半分が自腹である
その理由は言わずもがな、彼女の仕事での失態が響いているのではあるのだが
だからこそ彼女はアイテムの他の三人で生活を供にしているとお金がすぐに底をつき、一般のLevel3の学生よりはお金を持っているのだが自身をひどく貧乏だと思っている
彼女が今回手元に引き寄せた爆発物
それは上条を確実に捉えていた
今回、上条が最優先で警戒しなければいけないものは麦野の原子崩し
それに気を取られフレンダの爆弾に当たり、上条の進行は止まってしまう
追い打ちを避けるようにして彼は彼女らと少し距離をとる
同時に彼女らも彼と距離をとり、相手の出方を伺いつつ、作戦会議を開く
その中でフレンダ一人が上条に全神経を集中させ、その動きに対応する
上条が距離をとったと言っても彼女らへの接近を決してやめたわけではないのだから
5: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:12:39.15 ID:dRyCym8z0
麦野「絹旗、言って」
絹旗「はい。まず上条の能力の秘密についてですが、それは『右手で触れた能力を消す』というものです」
麦野「はあ? それは違うだろ。私の『拡散支援半導体』の広範囲攻撃を受けても無傷だったんだぞ!? 右手だけなんてありえない!」
絹旗「それはおそらく先ほど見せた能力を『掴み取りその軌道を逸らす』のを超応用したんでしょう」
フレンダ「おりゃおりゃおりゃ~っ! まだまだ行くって訳よ!」
絹旗「そもそも、上条の身体能力はズバ抜けたものがあります。『掴み取りその軌道を逸らす』ことさえ出来れば無傷なのも超不思議ではありません」
麦野「……」
滝壺「ふれんだ。その調子」
絹旗「それに加えて昨日、上条が右手で触れたときに『窒素装甲』が消えましたが、その後『窒素装甲』で超軽く殴った時に能力は消えませんでした」
麦野「ッ! なんでそのこと昨日の内に言わなかったッ!」
フレンダ「キタキタキタ~ッ! 結局、日頃の行いな訳よ!」
絹旗「超気のせいかと思いまして……。それに今日、私の能力を消すのは必ず右手でしたし、それ以外の身体の部分への攻撃は避ける傾向を見せました」
麦野「まぁ、いいわ。それじゃ『右手で触れた能力を消す』ってことで話を進めて」
絹旗「はい。そうしたら上条に勝つ方法も右手が超重要になってくるんです」
滝壺「日頃の行いならふれんだはもう少し悪い結果になってもおかしくはないよね……?」
6: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:13:54.41 ID:dRyCym8z0
絹旗「まず麦野が上条に接近戦を仕掛けます。そして攻撃の端々に能力を混ぜてください」
麦野「格闘術を組み合わせながら原子崩しを撃てと……」
絹旗「それで決まれば良いのですが、もし決まらなかったらの策として私とフレンダで考えたのが、麦野が上条の右手を抑えてそこを私の『窒素装甲』で叩くものです。おそらく麦野は上条の右手に触れられると原子崩しを撃てなくなると思います」
麦野「……」
絹旗「麦野が言いたいこともわかります。……そう簡単に行くのか、と」
麦野「……まあ、そのための陽動としてのフレンダと」
絹旗「上条が麦野の原子崩しを『掴み取りその軌道を逸ら』してきたときの保険として滝壺さんです」
麦野「……上条の右手はどこからどこがその範囲に入る……?」
絹旗「……予想の域は出ませんが、おそらくは右手の部分……広くても肘から先だとは思いますが……ッ!? まさか、麦野……」
麦野「……そう。一か八か上条の右肩を消し去ることが出来れば……或いは……」
絹旗「……それは無理に狙わない方が……」
麦野「あぁん? 上条に情でもわいてんのか!?」
絹旗「いえ、そうではなくて……そこをピンポイントで狙えるならもっと狙い目はあるはずです。頭、心臓、足……どれか一つでも消し去れればそれで終わりですから。それなら右肩よりもそっちのどれかを散らしながら狙った方が超合理的かと」
麦野「良いわ。それで行きましょう」
絹旗「フレンダも滝壺さんも作戦は伝えてあります」
麦野「わかった。……三人に背中は任せるわ」
絹旗「はいっ!」
7: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:14:48.57 ID:dRyCym8z0
麦野「フレンダ、滝壺。任せたわよ」
フレンダ「任せてっ!」
滝壺「むぎの、頼むね」
麦野「さぁ、アイテム始動よ」
8: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:16:17.97 ID:dRyCym8z0
フレンダが『アポート』によって引き寄せたものは今回ばかりはデカかった
「コイツをお見舞いしてやるって訳よ!」
それは俗に言うバズーカ砲
それは全長一メートルは軽く超える黒い筒のような形をしていて、ロケット弾を発射させる口径は八十ミリはあった
フレンダは上条に狙いを定め、カチッとそれを発射させる
ヒュン
上条に向かってロケット弾が風を切り、宙を走る
ドゴォオオオン
爆発する
巻き上がる砂埃で上条の姿は確認出来ない
そこへ間髪いれずに麦野が原子崩しを次々と放っていく
それは上条がいるであろう位置を計算して放っているため無駄撃ちにはならない
パシュゥウン
そのうち数発は軌道を変え、フレンダの元へ向かっていく
「させないよ」
フレンダへと向かってくる原子崩しを滝壺は、自身の能力『能力追跡』に体晶を用いることで、捻じ曲げる
他にも検討外れな方へ飛んでいく原子崩しを再び上条へ向け直すことで、新たに放たれる原子崩しと合わせて上条を襲っていく
「麦野、超現れました!」
原子崩しの嵐を避けさらには右手で消しながら砂埃の中から現れた上条に、麦野が自身の身体の周りに青白い光を保ったまま走って向かっていく
その数メートル後ろで絹旗が麦野の後を追う
上条が麦野を迎え撃つ準備を整えることはさせまいと、フレンダは上条へこまめにミサイル型の爆弾を放っていた
「いくぞ、おらァ!」
麦野が上条に近づき原子崩しを放つ
それは今までとは違い至近距離であったがため、上条はそれを『掴み取りその軌道を逸らす』ことは出来ない
出来るのは無理な体勢でも避けきれる分は避け、それでも対応出来ない分は右手で防ぐことだけだった
上条は上体は反らされ身体の重心がズレてしまう
その無防備な上条の背面を麦野は見逃さない
そこへ麦野の渾身の蹴りが炸裂した
9: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:17:20.16 ID:dRyCym8z0
「ぐはッ」
上条の顔が苦痛で歪み、その身体が宙に浮く
そこを麦野は原子崩しで射抜く
しかし瞬時に空中で大勢を整えた上条が右手でそれを消す
そして右足を地面につき、上半身を右に捻ることで左拳が麦野の顔面を襲う
だが麦野はそれに反応し両手でガードする
その衝撃に麦野は顔を歪めるも演算を止めない
新たな原子崩しが上条を襲う
上条の顔面と右足を狙った原子崩し
当たれば即死かその後の戦いにおいて致命傷となる攻撃
上条は顔面へのそれを最小限の動きで躱し、左足と右足の軸足を変えることで右足を自由にしそれを避ける
そして大股開きになって姿勢を低くし右ストレートを麦野のガラ空きの腹部へと放った
「がはッ!」
ここで初めて麦野の演算が痛みで止まる
追い討ちをかけるように上条は麦野へ右アッパーを繰り出そうとした
しかしそれを麦野は上体を少し反らすことで回避し、さらに上条の右腕を両方の腕と身体全体で抱き込むようにして抑え込む
「くそっ!??離れろッ!」
上条は右手にしがみつく麦野を離そうとするが離れない
「……テメェの負けだ、上条」
そう言って口角を密かに上げた麦野の表情は確かに苦痛で歪んでいた
しかし、その表情とは裏腹に勝利を確信する
「くだばれ、上条ォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
その状態の上条に麦野の後ろから絹旗が現れた
そして上条の顔面に『窒素装甲』で重い右ストレートを放ち、次々と上条へ連打を重ねる
10: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:18:35.50 ID:dRyCym8z0
「ぐっ……この、やろ……っ」
上条は絹旗から数発攻撃を受けたところで右腕を無理矢理振り回し絹旗に麦野をぶつける
そして絹旗の連打のうち一発が麦野の背中へ入る
「がッ!」
骨が軋むような痛みに麦野の上条の右腕を拘束する力が弱まる
それを上条は逃さず、右腕をかち上げることで麦野の両腕を上げさせ、ノーガードの麦野を右足で蹴飛ばす
さらに拘束のとれた右腕で絹旗を殴り飛ばした
麦野、絹旗が同様に数メートルほどその身体をバウンドさせながら飛ばされる
ズザザザッと音を立て地面に彼女らの身体が摩擦する
「麦野! 絹旗!」
「むぎの! きぬはた!」
離れた位置にいたフレンダ、滝壺の両名が二人に駆け寄る
「っ……糞がぁっ!」
「うっ……」
衝撃を受けた二人は痛みで立ち上がれない
麦野は殺気の籠った声を上げその顔は見るものを殺さんとする鬼のようであり、一方の絹旗は声を出すことすら困難なようであった
「大丈夫な訳!?」
「二人ともしっかりして!」
フレンダ、滝壺の二人は立ち上がれない二人に寄り添うように膝を地面につき声をかける
そして滝壺が立ち上がり、倒れている二人を庇うようにして手を大きく広げて上条を睨む
「かみじょう! ゆるさ、な…い……よ……」
しかし、彼女の言葉は最後まで殺気で満たされることはなかった
言い切ることは出来たが何とも歯切れの悪いものとなる
それを不思議に思ったフレンダは滝壺へ視線向け、次に上条へそれを向ける
「どうしたの滝つ、ぼ……」
滝壺、フレンダの二人が見た上条の表情は、絹旗によって殴られた頬が青紫色になっていたが、眉間にシワを寄せ口を何かに堪えるように閉ざし目からは涙が流れていた
11: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:19:26.59 ID:dRyCym8z0
「なんで……なんでなんだよ!」
上条が叫ぶ
両方の拳をギュッと握り締め肩を強張らせ叫ぶ
「俺は……、俺は……ッ!」
何かを言おうとするが最後まで言葉が続かない
麦野、絹旗を気にしながらもその様子を伺う滝壺とフレンダ
「結局、何が何な訳よ……」
「わかんないよ。どうしてそんな顔で私たちを見るの……」
「上条は私たちの敵じゃないの……」
「かみじょう……」
二人は困惑する
今まで自分たちアイテムをほぼ一方的に圧倒してきた上条が苦しんでいた
それに先程までと違う目線を向けてくる
それが指す意味は――
12: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:20:06.12 ID:dRyCym8z0
――憧憬
13: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:20:59.50 ID:dRyCym8z0
憧れるような、そしてどこか羨んでいるような
そんな目で私たちを見てくる
二人が困惑している間も上条は一人苦しむ
「なんで……、俺が……俺がッ……この手でやらなきゃいけないんだッ! なんで……っ……」
その様子を見ていた滝壺、フレンダの近くで獲物を刈り取るような冷酷な声が響く
「何で俺が…、だとォ? テメェ、まさか私たちを憐れんでんじゃねェだろォなあ!? あぁん!?」
麦野沈利
彼女は既に肉体的ダメージが絹旗でないにしろかなり溜まっていた
しかし、上条の態度に彼女はキレて、その精神が肉体を凌駕する
その傍らではフレンダがその雰囲気に圧されて震え、滝壺は麦野の様子の変化に振り返る
「テメェにそんな目で見られるほど私らは落ちぶれちゃいねぇんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
麦野が構え原子崩しを発射させる
それは滝壺のすぐ横を通り抜け上条へと一直線に空間を切っていった
14: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:22:30.20 ID:dRyCym8z0
「ッ!」
パキィイン
幻想殺しによって原子崩しが消される
「何があってテメェがそこで苦しんでんのかなんて知らねえが、私らはテメェにそんな目で目られるほど弱くねぇんだよおおお!! ふざけてんじゃねぇぞクソガキがあああああああああああああああああああ!!!」
続けて原子崩しを放ちながら、麦野は上条へ走っていく
彼女が今、動けているのは自身のプライドのため
麦野沈利は人一倍他人からの評価を気にしている能力者だ
過去において自分の周りからの評価が一転二転してきたのを経験する彼女は確固たる何かを必要とした
それが彼女、麦野沈利を表す絶対的な価値観となるようなものを
だからこそLevel5になってからは、急に自分の序列を越えていった年下の、しかも中学生のLevel5超電磁砲の御坂美琴には並々ならぬ敵対心を持ち、自分を見定めるような研究者たちを嫌ってきた
そして、上条の目
自分の方が強いくせに私たちに憧れ、それがまた上からの目線のように思えるその目で見てくる上条は、彼女にとって殺したいほどに感情を昂らせる麻薬となった
上条は先程までとは明らかに動きのキレが違っていた
それは麦野の原子崩しが上条を的確に捉えてくるからではない
――『アイテム』という一つの括りの中に上条が憧れる『それ』を見たから
上条は酷く注意力が散漫となっていた
そして、不意に接近してきた麦野の一撃を喰らう
「喰らえええええええええええええええええ!!」
大きく振りかぶり身体を捻らせた麦野の右拳が上条へぶち込まれた
15: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:24:12.35 ID:dRyCym8z0
上条は十数メートルをその身体をバウンドさせながら飛んでいった
麦野自身、身体に限界が来ていたこともあってか上条を殴るとその場に倒れる
「むぎの!」
滝壺が麦野の側へと駆け寄る
彼女もまた体晶の強制終了とその状態での新たな体晶の服用により身体は満身創痍
ヨロヨロと身体を揺らしながらも麦野の元へ辿り着く
「滝壺、アイツは……?」
「かみじょうは……、っ……立ちあがった……」
「くっ……」
上条当麻は立ちあがった
しかし彼もまたその身体が、垣根とのほぼ殺し合い同然の修練の日々を彷彿とさせる状態へと追い込まれていた
「テメェはなんでそんな目で私らを見るんだ!! アイテムを壊滅させるのが目的ならそんな目で見てんじゃねぇよ!!」
「俺は……」
麦野の目線は上条を捉えて離さない
薄汚れたスキルアウトのアジトである廃墟の床でその高価な服を汚しながらも麦野は言う
「私らだってな、こんな学園都市の闇の中で生きてんだよ!! そんな憐れむようにして死ぬなんて真っ平なんだよ!!」
「俺は……」
Level5の第四位でありながら地にその身体を伏すその姿は普段からは想像も出来ない
しかしそのような想定外の状況で追い込まれているにもかかわらず、彼女の目はまだ諦めていない
自分が戦うことで守るものがあるから
自分が戦うことで得るものがあるから
「そんなヤツに私らが負けるかよ!!!」
麦野が声を荒げる
しかし、その勢いは続かない
上条が麦野や滝壺、奥で様子を伺っているフレンダ、倒れている絹旗を見て叫ぶ
「俺はお前らが羨ましかったんだよ!!!!!」
「っ……」
麦野の声が詰まる
上条はどこか高揚としていて取り乱しながらも必至に自我を保っているようだった
16: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:25:26.96 ID:dRyCym8z0
「俺はお前らが羨ましかったんだ!!」
「お前らが人殺しのクズで、しかも暗部の仲間なんて平気で捨てるようなクソみたいなことやってる連中だったら殺すのなんか躊躇うことなんてない!!」
「でも……でもよ、お前らは俺が憧れていた関係そのものだったんだよ……」
「俺が学園都市に来て面倒見てくれたたった一人の家族、ソイツとの生活はソイツを狙う奴らとの殺し合いの日々ばかりが浮かんでくるけどよ……」
「けどよ……」
「楽しかったんだよ。どうしようもなく」
「俺が頼りないばかりにソイツに助けてもらうことばかりだったけどよ、ソイツの背中を少しでも任せてもらったことは嬉しくて、そして充実もしてた」
「お前らが四人で連携して、その力を信頼し合って敵に向かってくるなんて……」
「そんな……」
「そんな俺の大切な思い出に重なったお前らを殺せるかよ……」
「けどな、お前らを殺さなきゃ俺はソイツを助けられねぇんだよ……」
「どうすればいいんだよ……」
「わかんねぇよ……」
17: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:26:41.36 ID:dRyCym8z0
「俺にもよ、『グループ』の仲間はいるよ?」
「でもな……」
――父親を殺した多角スパイ
――自分の守りたい者を守り続けている風紀委員
――俺の学園都市での家族を、垣根を瀕死の状態まで追い込んだ学園都市最強
「違うんだよ……」
「お前らを見てたらな、アイツらには嫉妬しか感じなかった」
「アイツらは俺のこと良く思ってくれてるかもしれねえ。もしかしたら罪悪感からの脆い関係かもしれねえ」
「でも、俺はアイツらにもう対等だなんて思えなくなっちまったんだよ!!」
「俺の守りたい奴は守れなかったのに、アイツらはアイツら自身の守りたい奴を守り続けているんだよ!!」
「そんなの……、そんなの……」
「どうしようもなく一人に感じちまうじゃねぇか……」
18: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:27:40.47 ID:dRyCym8z0
「テメェはまるで私の昔みたいだな……」
「麦野……?」
「昔の私みたいに、ガキだ」
「ッ!」
「周りを敵だらけだと思って誰も信用出来なくなり孤立していく……。上条、お前はどうしたらいいと聞いたな」
「……」
「そんなの決まってんだろ……、私らを殺せばいい」
「っ……」
「むぎの……」
「でもね、私らは私らの守りたい者……守りたい『居場所』のために戦うよ」
「あぁ」
「だからなのかな……、私は悲しかった……」
「……」
「何かを隠していても、上条のことを……」
19: ◆Ks/3680U6o 2014/02/05(水) 22:28:17.10 ID:dRyCym8z0
「――『家族』の一員として認めた後だったから」
コメント
コメント一覧 (31)
続き待ってる
再開しても荒らされるから望み薄だな
このss作者の実力は本物
マジで戻ってきてほしい
待ってるぞ
アンチによる荒らしがひどすぎる
荒らし撲滅を徹底して行ってほしい
でもどうしても応援する声はけなし蔑む声よりも多くならない
それが金銭によってやり取りされる物にならない限り
全ての読者から好かれる作品なんてこの世には無いからな…
失踪したのは残念だがインパクトはすごかったのは間違いない(インパクトが無いとアンチも湧かん)
頭大丈夫?
医者紹介しようか?
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