魔法少女は衰退しました 前編 

魔法少女は衰退しました   中編 

 605: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:35:37.02 ID:lw2GyATE0


さやか「……………」 

シャル「……………」 

ゲルト【……え? 終わり?】 

(・ワ・)<ですなー 
ほむら 「そうです! 妖精さんが魂の出てくる蓋の上に乗っているので、攻撃はこれで無効化出来ました」 

シャル「……簡単過ぎない?」 

(・ワ・)<おてがるさがうり? 
ほむら 「簡単な分にはいいじゃないですか」 

(・ワ・)<でてもつかめますのでへいきかもー 
ほむら 「さあ、みなさんも早急に妖精さんを頭に乗せてください!」 

シャル「え、ええ……そうね……話の流れ的にはそうよね……」 

さやか「えーっと……では、その……」 

ゲルト【妖精さんを頭に乗せて……】 

(・ワ・) 
シャル 「……………」 

(・ワ・) 
さやか 「……………ねぇ、これって……」 

(・ワ・)<にんげんさんのかみのけー 
シャル 「うん。私も言いたい事があるわ」 

(・ワ・)<もぐりこみんぐ 
さやか 「じゃあ、心の中で言おうか」 

(・ワ・) 
シャル 「そうね。心の中で言いましょう」 

(・ワ・) 
さやシャル(いくらなんでもこの恰好は酷過ぎじゃねぇか?) 

(・ワ・) 
ゲルト 【先程までのシリアスな空気は何処に……】 

(・ワ・)<さすがにくうきをよんで 
ほむら 「もう。皆さん、いくら妖精さんが可愛いからって、現状は今のところ改善していませんよ?」 

(・ワ・<すがたをけすです 
ほむら 「なんとか鹿目さんに理性を取り戻してもらわねば……」 

(・ワ<かいてなくても 
シャル 「って言うかさ、妖精さんがいれば絶望が逃げていくんじゃなかったっけ?」 

(・<ぼくら、ずっとのってますので 
シャル 「なのに、なんで鹿目さんは何時までも魂を吸い取るなんて物騒な事をしてるの?」 

(<のーないほかんよろしくです? 
シャル 「そりゃ私やほむらは攻撃対象だとしても、親友であるさやかを巻き込むってのは……」 

さやか「あ、そう言えば!」 


引用元: 魔法少女は衰退しました

 

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606: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:38:27.27 ID:lw2GyATE0


ほむら「確かに、それは可笑しいですね……」

ほむら「妖精さん。原因は分かりますか?」

妖精さんE「ちょいとぜつぼーおおすぎかもー」
妖精さんF「ぼくらのかずたりなし」
妖精さんG「いくらでもわいていますしな」
妖精さんH「ぜつぼーかけながし?」
妖精さんI「はいりほーだいです」

ほむら「……成程。鹿目さんから生じている量が多過ぎて、いくら絶望が逃げても状況が改善しない訳ですか」

シャル「それって、今の鹿目さんは正気に戻せないって事!?」

さやか「そんな……ほ、ほむら、なんとか出来るよね? 妖精さんなら、まどかを助けられるよね!?」

ほむら「お二人とも、落ち着いてください」

ほむら「原因は先程言ったように、鹿目さんから生じる絶望の量が多過ぎる事」

ほむら「流石の妖精さんでも、数百人程度では太刀打ち出来ない絶望的な力が今回の相手という訳です」

ほむら「いやはや、ほっといたら地球が滅びるんじゃないですかね?」

ほむら「人間を資源にしている癖に、思い切りがいいと言いますか……楽に倒せる自信があるのでしょうけど」

ほむら「……少し話がずれましたね」

ほむら「つまり、鹿目さんから生まれた魔女を相手にするにはちょっとパワーが足りないのです」

ほむら「なら話は至極簡単」

ほむら「対策その一。妖精さんを増やす」

ほむら「数百人で足りないのなら、数千人。それでも足りないなら数万人の妖精さんがいればいい」

ほむら「流石に数万人は厳しいでしょうけど、千人程度で何とかなる筈です」

さやか「な、成程……!」

ほむら「という訳で、シャルロッテさんとさやかさん、ゲルトルートさんには」

ほむら「妖精さんを増やすために、楽しい事をしておいてください」

ゲルト【た、楽しい事ですか? あの、なんでこんな時に、というか増えるって】

シャル「分かったわ」

ゲルト【え、分かるの!?】

QB「え、分かるの?」

さやか(あ、キュゥべえが思わず反応した……宇宙人的にも非常識なんだな、妖精さん)


607: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:40:41.85 ID:lw2GyATE0


シャル「それで、楽しい作戦に参加しないアンタはどうすんの?」

シャル「対策その一って事は……その二があるって事よね?」

ほむら「勿論。そしてそれは、私が一人でやらせていただきます」

さやか「一人でって、一体何をする気なの?」

ほむら「単純明快。こういう時のお約束」

ほむら「ぶん殴って、正気に戻します」

シャル「……………」

さやか「……………」

シャル「……ぷ」

さやか「あ、あっははははは! あはははっ!」

シャル「あははははははは! そうね、うん、そうよね……」

シャル「それが―――― 一番楽しい解決方法ね!」

さやか「あい分かった! 妖精さんを増やすのはこっちに任せて、アンタはまどかの元に行ってこい!」

さやか「そんでもって、あたしの代わりにグーで一発殴ってこい!」

ほむら「はい! 任されました!」

ほむら「そんな訳で頭に乗っている妖精さん! あちらにおります魔女……いえ」

ほむら「鹿目さんを一発殴れる程度のパワーを私にください!」

妖精さん「りょーかいですー」
妖精さん「ではこちらのゆびわをはめてくだされ」

ほむら「指輪ですか。して、この道具の名前は?」

妖精さん「はぴねすりんぐといいます」

ほむら「……幼女向け玩具に付けられそうなこの名前……成程」

ほむら「今更ですけど、妖精さんって皮肉というかブラックなネタがお好きですよね」

妖精さん「ですかな?」
妖精さん「じかくはありませぬが」

ほむら「それで、呪文とか必要ですかね?」

妖精さん「ひつよーですが、だいたいなんでもおっけー」

ほむら「なら、早速やるとしましょう!」



ほむら「チェンジ! ドレスアーップ!」



608: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:42:21.22 ID:lw2GyATE0


さやか「うわっ!? ほ、ほむらが光に包まれて……!」

ゲルト【ああ……光の中から現れたのは……!!】

シャル「……鹿目さんもびっくりな量のフリルと巨大リボンを幾つも付けた」

シャル「可愛らし過ぎて最早ネタの域に到達した衣服を着ているほむらだわ……」

さやか「訳が分からないよ」

ほむら「ふふふ。衣服はジョークみたいでも、性能は妖精さんアイテム」

ほむら「ちょっくら――――鹿目さんを殴ってきますね!」ふわっ・・・

シャル「おお、宙に浮いて」

――――ゴウッ!!

シャル「って、突風が生じるような猛スピードで飛んでいきやがった!?」

さやか「あだっ!? 風でこけ「きゅぶっ」いでっ!?」

さやか「ふ、吹っ飛ばされたキュゥべえがあたしの顔面にぶつかってきた――――」

ゲルト【おっ、あっ、あ――――】

さやか「ちょ、げるげるなんでバランスを崩し」

ゲルト【あぁーっ!?】
さやか「げこーっ!?」
QB「きゅぶしっ!?」

シャル「……さやかとキュゥべえがゲルトちゃんの下敷きに……まぁ、それはどーでもいいわね。うん」

シャル(鹿目さんにはほむらが向かった。妖精さんマスターのほむらならなんとでもしてくれるでしょう)

シャル(だからこっちは、こっちで出来る事をやらないとね)

シャル(……アイツは、数万人は無理とか言っていたわね)

シャル「ふん。見くびられたものね……数万人ぐらい、ほいっと増やしてやろうじゃない」

シャル「この、お菓子の魔女がね」


………

……




609: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:44:39.33 ID:lw2GyATE0


ほむら(流石妖精さんの作った変身アイテム。思った通りのスピードが出てくれます!)

ほむら(しっかし鹿目さん大きくなり過ぎですよ)

ほむら(丁度あの雲を抜けたあたりに頭があるって……)

ほむら(……妖精さん、こういう細かな演出好きですよねー)

ほむら(さて、雲を抜けたら顔が見えましたっと……)



クリームヒルト【……………】



ほむら(……両腕を広げながら仰け反ってますけど、あの姿勢疲れないんですかね?)

ほむら(それは兎も角として。鹿目さんとお話するためにも頭を目指し飛んだ訳ですが)

ほむら(あそこが頭で良いんですかね? まさか地下に埋まっているとかないですよね?)

ほむら(一応人の頭っぽい形をしてますけど……)

ほむら(まぁ、話し掛けてみれば分かりますか)

ほむら「……やれやれ。一体どれだけ大きくなったのですか」

ほむら「昨今の強者は低身長の美少女ってのがお約束の中、随分と古風かつ王道の風貌になってしまいましたねー」

ほむら「ま、懐古主義という訳でもありませんけど、そういう分かりやすい強さ、個人的には好きですよ?」

クリーム【……うひ】

クリーム【うぇひ、うぇひひひひひ】

クリーム【悪者、見っけ……倒して、平和を守らないと】

クリーム【この素敵な場所を、守らないと】

ほむら(……ああ、これはまた随分と分かりやすい……分かりやす過ぎて好感を覚えてしまいそうな敵意です)

ほむら(というか、淀み切った声で素敵だなんだと言われても全然嬉しそうに聞えませんって)

クリーム【あれ、でもなんでかな?】

クリーム【さっきから魂を吸い上げているのに、なんで平気なのかな?】

クリーム【……ああ、そっか】

クリーム【魂を吸いとるなんてまどろっこしいやり方がいけないんだ】

ほむら(あ、これは――――)

クリーム【だったら――――射抜いちゃえ】

ほむら「っ!?」

ほむら(いきなり魔力弾による攻撃とは、こっちの話を聞く気ゼロですか!)

ほむら(仕方ありません。同級生を攻撃なんてシリアス過ぎて苦手ですが……)

ほむら(適当にボコって大人しくしてからお話という、粗暴で男前な手法を取らせていただきましょう!)


610: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:47:05.10 ID:lw2GyATE0


ほむら「妖精さん! 戦うにはどうすればいいですか!」

ほむら「具体的には遠距離攻撃用の魔法!」

妖精さん「こーいうこうげきしよーっておもいながら、おすきなじゅもんをー」

ほむら「実に便利で分かりやすい!」

ほむら「それじゃあ適当に……ぱっぴらぷっぴのぷーっ!」

――――シュイン!!

ほむら「ほほう! ミサイルが四基も召喚されましたか!」

ほむら「デザインは子供の落書きみたいですけど……威力は多分本物!」

ほむら「いっけえええええええっ!」

クリーム【う、あ……】ドンッ、ドドドンッ!

ほむら「命中です! ……ところで、なんでミサイル攻撃?」

妖精さん「かいじゅうとのたいけつには、それがさほうかと」

ほむら「女の子を怪獣呼ばわりしたので、後でたっぷりとお仕置きですね」

妖精さん「ひーん!?」

ほむら(それより――――)

クリーム【……煙たい】

ほむら(やはりこの程度ではダメージにはなりませんか。それに腕を伸ばして反撃してきてますっ!)

ほむら「しかし迎撃するまでの事!」

ほむら「ぱっぱらぱーのぱーっ!」

ほむら「……あれ?」

ほむら「なんで不発、うひゃあ!?」

クリーム【また外した……!】

ほむら「あ、危なかった……じゃなくて!」

ほむら「なんでミサイルが出てこないのですか!?」

妖精さん「あー、それはじゅもんまちがってますなー」

ほむら「……もしかして呪文って、登録制ですか?」

ほむら「最初に唱えた呪文が、その魔法を発動するキーになるって感じに」

妖精さん「そうですが?」

ほむら「ああもう! そうですよね、そういう所ありますよね妖精さんアイテム!」

ほむら「全く――――あまり試行錯誤を楽しんでいる余裕はないんですけどね!」


611: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:48:45.15 ID:lw2GyATE0


ほむら「えーっと確か、ぱっぴらぴっぷのぷー!」

ほむら「良し! ちゃんと出たからすぐ発射っ!」

ほむら「……当たりましたけど、効果は薄そうですねぇ……」

クリーム【全部……避けられちゃう……】

クリーム【なら、もっと増やそう】

ほむら「げっ……また魔力の塊みたいのを何個も作って……」

ほむら「うわぁ……魔力の光が星空みたいになってますよ……」

ほむら(さっきの呪文で出せるミサイルは四。逐一唱えて迎撃なんてやってられませんね)

ほむら(なら――――)

ほむら「ぱぱらぱーっ!」

―――――ズガガガガガガガガガガガ……!!

クリーム【……命中し……?】

ほむら「防御魔法発動です! バリアーを展開して耐えてみせましたよっ!」

クリーム【あれ? なんで……】

クリーム【私の力は、なんでも守れる力の筈】

クリーム【倒れない敵なんて……】

クリーム【そうだ。守らないと】

クリーム【私は、正義の魔法少女だから……】

クリーム【守らない、と……】

クリーム【守らないと……!】

ほむら(やれやれ……正気に戻らない事には会話すらままなりませんか)

ほむら(早くなんとかしてくださいよ、皆さん)

ほむら(――――防御で耐えてばかりなんて、絵になりませんもん)


……………

………




612: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:51:15.97 ID:lw2GyATE0


さやか「……ほむらの奴、大丈夫かな……」

シャル「大丈夫よ。妖精さんがいるんだから」

シャル「それに、協力しようにもあの戦いに割ってはいるなんて、流石のアンタでもちょっと無謀よ」

さやか「……うん」

シャル「問題は私らの方よねー」

シャル「なんとか妖精さんを千人ぐらいまで増やしたけど……人工甘味料味ではこれが限界みたい」

シャル「数万人規模を目指したけど全然届かず」

シャル「お菓子の魔女の名が泣くわねぇ……」

シャル「ま、鹿目さんから溢れている絶望はなんとか片が付きそうだし」

シャル「後は正気に戻った鹿目さんをほむらが説得するだけね」

ゲルト【……あ、あのー……】

シャル「ん? ゲルトちゃん、どうかした?」

ゲルト【いえ、その……あとは暁美さん頼りというのは、悔しいですがその通りだと思いますよ?】

ゲルト【私たちに出来る事がもう無いのも、事実かと思いますよ?】

ゲルト【でも……だからって……】




ゲルト【……温泉に浸かってまったりと過ごすのは、どんなものなのかと】




――――カポーン

さやか「あ、どこからともなく温泉特有の効果音が」

シャル「何? ゲルトちゃんお風呂嫌いなの? まぁ、私もそんな好きじゃないけど」

ゲルト【そうじゃないでしょう!?】

ゲルト【あちらでは今、命懸けの戦いの最中なんですよ?!】

ゲルト【なのに私達は温泉でリラックスって、あまりにだらけ過ぎじゃないですか!】

シャル「あー、平気平気。妖精さんパワーがあれば多分平気」

シャル「それに、何も遊びで浸かってる訳じゃないのよ?」


613: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:52:48.83 ID:lw2GyATE0


シャル「――――この温泉の源は絶望」

シャル「溢れでる鹿目さんの絶望を原料に、大量のお湯を生み出す温泉」

シャル「その名も妖精さんアイテム『ビバビバのんのん~源泉かけ流し~』!!」

シャル「この温泉により、鹿目さんの絶望は!」

シャル「お肌スベスベ、肩凝り腰痛疲労の回復効果ありという素敵温泉に生まれ変わる!」

シャル「ちなみにその原理は絶望が古い角質とか疲れとかと結託し、サスペンスでお馴染みの岸壁に行こうとするから!」

シャル「そして岸壁まで行くと満足して消えるそうよ! 妖精さんが言っていたわ!」

シャル(……うふふ。言っちゃった♪)

シャル(何時もはほむらが解説しているけど、一度やってみたかったのよね♪)

シャル(……意味は全然分からないけど)

ゲルト【でも、だったら温水を流すだけでいいのでは……】

シャル「絶望を消すには、古い角質とかとの結託が欠かせないの」

シャル「つまり私達が温泉に浸かる事が、鹿目さんの絶望を打ち消すために欠かせないって訳よ」

シャル(……多分)

ゲルト【うーん……いいのかなぁ……】

シャル「ほら、暗くならないの。妖精さんは楽しい事が好きで、楽しければ増えるのよ?」

シャル「温泉に浸かるのが申し訳ないなら、楽しくしていなさい」

ゲルト【はぁ……】


614: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:53:58.54 ID:lw2GyATE0


シャル「ときに、さやか。アンタ何してんの?」

さやか「ん? キュゥべえをお湯に沈めて遊んでる」

QB「がべ、がぼぼぼぼぼぼ!?」

シャル「なら良いわ。好きにしなさい」

ゲルト【さ、流石に溺死は可哀想じゃ……】

シャル「元凶相手に何甘い事言ってんのよ」

シャル「それにコイツ、いくら殺しても次の個体が湧いてくるから」

さやか「あ、何時の間にか逃げられた」

QB「ぶはっ! ぷはー、ぷはー……」

シャル「ちゃんとその個体の息の根止めときなさいよー」

さやか「ほーい」

QB「きゅ、きゅぶぶぶぶ!?」

シャル「あー、しかし長湯も大変よねぇ……私、あまりお風呂好きじゃないし」

シャル「脱水なのかちょっとフラフラするし。飲み物とかほしいわねー」

妖精さんA「おーだーきたのでー」
妖精さんB「りんごじゅーすをどぞー」

シャル「あら、ありがと」

さやか「あたし温泉卵食べたーい」

妖精さんA「ただいまー」

ゲルト【……いいのかなぁ……】


……………

………




615: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:56:27.14 ID:lw2GyATE0


ほむら「ほいっ、ほいっ、ほほーいっ」

ほむら(射撃の威力と数は中々のものですが、単調ですからねぇ。躱すのは余裕のよっちゃんっと)

ほむら(それより――――)

クリーム【なんで、なんで、なんでなんで!】

ほむら(ふふ。焦りの色が見えていますよ)

ほむら(先程までは”自分の事しか”見えていなかったのに、今じゃすっかり私との戦いに興じている)

ほむら(相変わらず腕を広げたままこっちを見ていますが……あの姿勢はデフォルトなんですかね?)

ほむら(あれじゃまるで……)

ほむら(ま、ポーズはどうあれ自我が戻ってきた事には違いありません)

ほむら(改めて声を掛けてみるとしましょう)

ほむら「あー、鹿目さーん。私の声が聞えますかー?」

クリーム【聞えるよ! 決まってるでしょ!】

ほむら(ふむ。理性は戻ったようですね……理知的という訳ではないみたいですけど)

ほむら(妖精さんとシャルロッテさん達がどうにかしてくれたようです)

ほむら(しかし……)

ほむら「なら、一旦攻撃の手を緩めてくれませんかね?」

ほむら「こちらとしては同級生に攻撃するというのは、ほんのちょっぴり良心が痛むのですが」

クリーム【そう言って……安心させた隙を突いて攻撃するんでしょ……!!】

ほむら(うーん。相変わらずこちらに敵意むき出し。停戦の意思ナッシング)

ほむら(魔女化したのに未だキュゥべえの肩を持つ気なんですかね)

ほむら(……いえ。むしろ”魔女になった”からこそ、キュゥべえが最後の拠り所なのでしょう)

ほむら(……どの道色々聞きたかったですし。ここいらで一旦――――)

ほむら(鹿目さんを、いじめるとしますかね)


616: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 09:58:03.16 ID:lw2GyATE0


ほむら「――――いい加減、認めたらどうなのですか?」

クリーム【!? み、認めるって……】

ほむら「魔法少女が魔女になる事です」

ほむら「自分自身が魔女になったのですから、流石に言い逃れは出来ないと思いますよ?」

クリーム【違う!】

クリーム【私は魔法少女! 魔女なんかじゃない!!】

クリーム【みんなの希望である、正義の味方!!!】

ほむら「いや、どう見ても魔女じゃないですか」

ほむら「それに絶望すると魔女になるそうなので、あなたは深い深い絶望に包まれていた筈」

ほむら「そんな状態でも、キュゥべえの言葉を信じるのですか?」

ほむら「それともなんですか? あなたは絶望なんかしておらず、現状に満足しているとでも?」

クリーム【そ、そうだよっ! 私は絶望なんかしていない!】

クリーム【だって最高の力を手に入れたんだもん! どんな呪いも打ち払える、最高の力を!】

クリーム【私は今でも、みんなの希望である魔法少女!】

クリーム【だからほむらちゃんの言う事は全部嘘なの!!】

ほむら「いやいや。流石にその言い訳は無理があると」

クリーム【五月蝿い五月蝿い五月蝿い! 黙ってよ!】

クリーム【この……嘘吐き!!】


617: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:01:02.16 ID:lw2GyATE0


ほむら「――――嘘、吐き」

クリーム【そうだよ! 嘘ばかり吐いて、私を惑わして!】

クリーム【騙されない、騙されない!】

クリーム【そんな嘘に、私は……!】

ほむら「……………」

ほむら「……ふ」

ほむら「ふふふふふ、ふふふ」

ほむら「嘘吐き、嘘吐きですか……」

ほむら「――――あなたの言いたい事は分かりました」

ほむら「そうですね。あなたが絶望していなくて、その力に希望を抱いているのなら」

ほむら「確かに私は嘘吐きとなるでしょう」

ほむら「そして本人が言っているのですから、きっと真実なのでしょうね」

クリーム【そうだよ! そうだから――――】

ほむら「ですから、私からも一言」

ほむら「――――ぱらりらぱらりら――――」ヒュン

クリーム(――――!? す、姿が消え……)

クリーム(違う!? ほむらちゃんが、私の顔のすぐ傍に居る!?)

ほむら「……ぱっぱっぱら、ぱっぱっぱら」

ほむら「絶望していない? 満足している?」

ほむら「だったら――――」

クリーム(拳を握りしめて――――)


618: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:01:52.66 ID:lw2GyATE0




ほむら「さっきから未練がましく手を――――こっちに伸ばしてんじゃありませんっ!!」




619: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:04:28.52 ID:lw2GyATE0


クリーム【ご、がっ……!?(な、殴られた……顔面を、グーで!?)】

――――ズウウウウウウウウウウンッ……!!

ほむら「何が絶望してないですか……何が満足しているですか」

ほむら「じゃあさっきから、私の方に伸ばしている手はなんですか!?」

ほむら「まるで子供が寂しがって母親を求めるみたいに!」

ほむら「まるで飢えた人々が食べ物を乞うみたいに!!」

ほむら「まるで――――落とし穴に嵌まった子供が助けを求めるみたいに!!」

ほむら「そっちが何も言わないから今まで見てみぬふりをしてましたけどいい加減ムカついてきました!」

ほむら「助けてほしいなら助けてって叫べばいいんです!」

ほむら「なのにさっきからグチグチグチグチ……挙句嘘吐き呼ばわりは我慢出来ません!」

ほむら「そりゃたまには嘘点きますけど、精々人並なんですから!」

ほむら「ああもう! まだ腹の虫が治まらない! 一発なんて言わずオラオララッシュでもお見舞いして」

――――ぷすん。

ほむら「はら?」

ほむら「あれ、なんか急に力が抜けていくような……」

ほむら「というか高度が維持出来なくて自然落下よりマシな程度の速さで落ちて……」

ほむら「……妖精さん」

妖精さん「はいな」

ほむら「この変身アイテム、使用期限とかあったりしますか?」

妖精さん「いうにおよばずですが?」

ほむら「いや、言いましょうよそれは」

ほむら「で? 具体的には何時まで?」

妖精さん「いっぱつなぐるまでー」

ほむら「……まぁ、そういうオーダーでしたからねぇ……」

ほむら「慣れてる筈なのに、何故だかうっかりミスをしてしまう不思議。流石妖精さん」

ほむら「ベテランであるこの私も、やはり理不尽不条理展開に巻き込まれる宿命なのですよねー」

ほむら「……さて、と」


620: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:05:57.99 ID:lw2GyATE0


ほむら「お、落ちるうううぅぅううううううぅぅうう!?」

ほむら「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんっ!」←両手をトリのようにばたつかせている

ほむら「って、こんな事で飛べたら苦労はないですからーっ!?」

ほむら「ヤバいです! これはヤバいです!」

ほむら「何がヤバいって……」

クリーム【う……ぐが、ああああああああああああああああ……!!】

ほむら「一発殴ったぐらいじゃまだ鹿目さんが立ち上がれるって事が!」

クリーム【違う……私は、嘘なんか……助け、なんか……】

クリーム【絶望なんて……】

クリーム【あああああああああああああああああああああ!!】

ほむら(ああ、魔力弾をたーくさん作って……どうにか避けなくては!)

ほむら「ぱらりらぱらりらーっ!」

ほむら「……………」

ほむら「くっ! やはり呪文も駄目ですか!」

ほむら(――――げっ!?)

ほむら(不味……魔力弾が撃たれた!)

ほむら(このままだと避けられない!)

ほむら(ええい! 運よく全弾外れる事を祈って身体を丸めるぐらいしか……)



――――シュルルルルルッ……!



621: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:07:46.71 ID:lw2GyATE0


ほむら(っ!? 足に何かが絡まって……鹿目さんからの攻撃……!?)

ほむら(違う! これは……)

ほむら「黄色いリボン!?」



??「ごめんなさい! ちょっと乱暴だけど……我慢して!」



ほむら「ひゃっ!?(身体がリボンに引っ張られて……)」

――――ギュンッ!

ほむら「な、なんとか攻撃は真横を通り過ぎてくれましたか……」

ほむら(いえ、それより今のリボン……)

ほむら「まさか戻って来るとは思いませんでしたよ……」

ほむら「――――巴先輩っ!」

マミ「全く……空中戦までこなすだなんて、本当に妖精さんって凄いのね」

マミ「魔法少女でも、リボンで足場を組める私じゃないと多分ここまで来れないわよ?」

マミ「私と知り合っていなかったら、今ごろ蜂の巣ね」

ほむら「いやはや助かりました。ありがとうございます」

ほむら「しかしながら、何故このような場所に?」

マミ「……鹿目さんの魔力が、魔女の力に変わっていくのを感じてね」

マミ「そして、あれが鹿目さんから生まれた魔女なのね」

ほむら「おや? 分かりますか?」

マミ「ええ。淀み切った、魔女特有の力ばかり感じるけど……」

マミ「鹿目さんの魔力らしい優しさもまだ残っている」

マミ「あの魔女が……いいえ、あの子が鹿目さんなのはすぐに分かったわ」

ほむら「……意外と平気そうですね。怖くて逃げた癖に」

マミ「ぐふ!? あ、あなた、本当に容赦しないわね……」


622: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:10:06.14 ID:lw2GyATE0


マミ「……でも、確かにその通り」

マミ「あなたの言う通り、私は真実が怖くて逃げた。真実から目を背け続けようとしていた」

マミ「でもね、鹿目さんの魔力が魔女に変わったと気付いた時」

マミ「『また逃げるのか』って、暁美さんが言っているような気がしたの」

ほむら「私が、ですか?」

マミ「まぁ、どう考えても気の所為というか幻聴の類よね」

マミ「でも、その声で思ったの」

マミ「私は真実だけでなく、鹿目さんからも逃げるのかって」

マミ「私と何時も一緒に居てくれたあの子を見捨てるのかって……」

マミ「冗談じゃない」

マミ「私はあの子の先輩」

マミ「先輩が後輩から逃げるなんて……そんな情けない姿は見せられない」

マミ「そう思ったら、力が湧いてきたのよ」

ほむら「なんとまぁ、意地っ張りなお人です事」

マミ「あら、お気に召さない?」

ほむら「いいえ。自分に素直な人って、私、結構好きですよ」

マミ「だと思った」

マミ「……それより、これからどうするの?」

マミ「さっきの動きを見ていて思ったけど、もしかして、今は力が使えないのかしら?」

ほむら「話が早くて助かります」

ほむら「あなたのおっしゃる通り、現在この魔法少女衣装は使用期限が切れて力を発揮出来ない状態」

ほむら「ですがご心配なく」

ほむら「妖精さん。魂の吸引は未だ続いておりますか?」

妖精さん「いまはしておらんよーですなー」

ほむら「グッドな状況報告、ありがとうございます」


623: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:11:34.57 ID:lw2GyATE0


ほむら「それでは――――この魔法少女の衣装、もう一回使えるようになりませんか?」

妖精さん「いっかいだけならできなくはありませんが、ぎせいがひつようですな」

ほむら「やっぱり」

マミ「犠牲ってどういう……」

妖精さん「ぼくがこのみをささげます?」

マミ「ちょ……それって、あなたの命と引き換えに力を取り戻すって事?!」

マミ「駄目よそんな――――」

ほむら「じゃ、その方向で」

マミ「即断即決で快諾したあああああああああああああああ!?」

ほむら「いや、身を捧げると言っても妖精さんからしたら遊びみたいなものですし」

ほむら「きっと本当の意味では死んでいないのでしょう……多分」

マミ「多分!?」

ほむら「いいんですよー、妖精さん自身が身を捧げると言ってるんですからー」

ほむら「という訳で!」

ほむら「ちぇーんじ・ザ・お洋服!」

妖精さん「とーぅ」

マミ「ああ! 妖精さんが暁美さんの服の中に潜り込んで……」

――――ぴかーっ!

マミ「あ、暁美さんの服が光りだし……」

マミ「って、もう身を捧げたの!? ただ服に潜り込んだだけじゃない!?」

ほむら「まぁ、服との一体化はしたんでしょうけどね」


624: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:13:15.14 ID:lw2GyATE0


ほむら「兎に角パワーは戻りました」

ほむら「しかしながら、このまま殴り合っても埒が明きません。そもそも一回しか使えませんし」

ほむら「だから鹿目さんの魂に、直接対決を挑むとしましょう」

マミ「直接対決?」

ほむら「ええ。それではいきます!」

――――ゴウッ!

マミ「っ……凄い速さで上空に……」

マミ(あら、暁美さん……一旦上がったのにまた降りてきた……?)

マミ(?! ち、違う! 降りてきてるんじゃない!)

マミ(あのポーズは……跳び蹴りの姿勢!)

マミ(物凄い速さのキックだわ!?)

クリーム【う、うう……この程度、で――――って、ええええええええええええええええ!?】

クリーム【ほ、ほむらちゃんが物凄い速さでこっちに突っ込み】

ほむら「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!」

クリーム【げぼっはあああんっ!?】

――――ズシイイイイイイイイイイイイインッ……

マミ「……跳び蹴りを顔面に喰らって、鹿目さん、またひっくり返っちゃった……」

マミ(だけど今の、威力以外は普通の飛び蹴りよね?)

マミ(それで一体どうやって鹿目さんの魂と直接対決するのかしら……)

クリーム【ぐ、ぐあ、あ、ああああ……!】

クリーム【ああああああああああああああああああああああ!!】

マミ(な、何!? 鹿目さんの魔女が、苦しんでいる!?)

マミ(なんか顔を両手で覆って……)

マミ「……………見間違いかしら」

マミ「今、魔女の顔に……穴が開いていたように見えたのだけど」

マミ(元々そういう顔? 異形だらけの魔女だから一概には否定出来ないけど……)

マミ(でも、多分、きっと)

マミ(……直接対決、ね)

マミ(そんな事ある訳ないって理性では思うのだけど……)

妖精さん「ぷあっ」←マミの髪の毛から出てきた

マミ(こんなファンタジーな子が実在したのだから、もしかするとそういう事もあるかも、ね?)


625: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:15:26.02 ID:lw2GyATE0


………
……



ほむら「よっこらしょいっと」

ほむら「うん。顔面キックで鹿目さんの体内に侵入する事には成功しましたね」

ほむら(辺りは真っ暗ですが、特にぶよぶよした感触もなく……不思議な空間ですね)

ほむら(魔女さんの体内はみんなこうなっているのか、妖精さんが関与しているのか、はたまたこの魔女さんだけなのか)

ほむら(疑問は尽きませんが、解決すれば皆同じっと)

ほむら「よーうせーいさーん。おーりまーすかー?」

妖精さん「おりますがー?」

ほむら「あら、本当に居りましたか」

ほむら「こんなところで何をしているのですか?」

妖精さん「すいこまれましたー」

ほむら「ああ。あなた、風で吹き飛ばされた妖精さんの一人でしたか」

妖精さん「はいな」

ほむら「それで? 何か面白い事がありましたか?」

妖精さん「とくにないので、つぎつぎにきえていますが?」

ほむら「それは寂しい事を仰る」

ほむら「それはそうと、鹿目さん……私以外の人間を見ていませんか?」

ほむら「多分魂の形でいると思うのですが」

妖精さん「あー……みたようなきがしなくもないですが」

ほむら「覚えてないのですね」

妖精さん「そうかもー」

ほむら「なら、別の方法で」

ほむら「妖精さんを適当な紐で縛って、宙ぶらりんに……はい、妖精さんコンパス完成っと」

ほむら「案内をお願いしますね」

妖精さん「おやくだちになるならー」

ほむら「それでは、しゅっぱーつ」


626: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:17:13.82 ID:lw2GyATE0


………
……



妖精さん「ぐーるぐーる」

ほむら「……ふむ。あっちですか」

ほむら「なんかさっきからあっちに行ったりこっちに行ったりしてますけど、ちゃんと鹿目さんの方に進んでいるんですか?」

ほむら「大丈夫だとは思っていますけど、迷ったりしてませんよね?」

妖精さん「こころって、めいろみたいですから」

ほむら「……ちょっとしんみりしてしまいました」

妖精さん「まようのがじんせいでは?」

ほむら「そう言えば昔父に言われましたね。ガキは思う存分迷子になれって」

ほむら「うん、機会があったら鹿目さんにこの言葉を贈るとしましょう。私の言葉として」

ほむら「ん?」

ほむら「あれは……青白い光……?」

ほむら(いえ、ただの光ではないようですね)

ほむら(何しろ、人の形をしているのですから)

ほむら「……………」

ほむら「ようやく、見つけましたよ――――鹿目さん」

まどか【……ほむらちゃん……】

まどか【どうやって、此処に……】

ほむら「妖精さんが連れてきてくれました」

妖精さん「なんとかなるものですなー」


627: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:19:45.16 ID:lw2GyATE0


まどか【そっか】

まどか【……やっぱりその子達は、妖精なんだね。凄いなぁ……】

ほむら「むむむ。呼び捨てはいけませんよ? ちゃんと妖精さんと呼んであげてください」

まどか【……うん】

ほむら「それで? さっきからなんで膝を抱えているんですか?」

ほむら「悩みがあるようなら一応聞きますよ?」

ほむら「というかいい加減面倒臭いので言いたい事があるならさっさと吐いちまえ、というのが本心です」

まどか【……ふふっ】

まどか【ほむらちゃんは、本当に正直だね】

ほむら「そうですかねー。まぁ、嘘吐きではないと思いますけど」

まどか【うん、正直者だよ】

まどか【……私とは大違い】

まどか【……私ね、願い事をしないで魔法少女になったんだ】

ほむら「?」

ほむら「……魔法少女って、願い事と引き換えになるものではないのですか? よく知りませんけど」

まどか【うん。そうだよ。願い事の代わりに魔女と戦うのが魔法少女】

まどか【……ほむらちゃんが転校してくる一週間ぐらい前かな】

まどか【私ね、キュゥべえに、魔法少女にならないかって言われたの】


628: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:21:55.08 ID:lw2GyATE0


まどか【勿論ちょっと怪しいと思ったから色々質問して、その時キュゥべえと一緒に居たマミさんとも話をして】

まどか【命懸けだとか魔女が人を襲う化け物だって聞いて、怖いなって思って……】

まどか【でもそれ以上に、魔法少女に憧れた】

ほむら「……………」

まどか【一応事故に遭ったネコを助けたいって願いで魔法少女になったけど】

まどか【魔法少女になれるのなら、誰かの役に立てるのなら、願い事なんていらなかったんだと思う】

まどか【強いて言うなら、魔法少女になるのが私の願い】

まどか【だって、私はドジでのろまで、何も出来なかったから】

まどか【だから誰かの役に立てるのが嬉しかった】

まどか【……ううん。違うね】

まどか【例え殆どの人にその正体を明かせなくても、私にしか出来ない事があるのなら】

まどか【立派な魔法少女として、マミさんやキュゥべえに認めてもらえたなら】

まどか【それはとっても嬉しいなって、思ったから】

まどか【でも……真実は、私が思っていたのと違った】

まどか【私がしていたのは、騙されていた人達を殺す事】

まどか【ほむらちゃんなら助けられた……もしかしたら、私でも助けられたかも知れない命を、奪う事】

まどか【そして最後は、自分が誰かを殺すようになる事】

まどか【笑っちゃうよね。誰かの役に立つどころか、誰かの迷惑になってる】

まどか【魔法少女になって自分は変わったって思っていたけど、単なる思い上がり】

まどか【私は結局、私のまま。何も出来ない、誰かの迷惑にしかならない私のまま】


629: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:24:01.65 ID:lw2GyATE0


まどか【……認められなかった】

まどか【自分が何も出来ないって認められなかった。自分が悪い事をしているなんて、受け入れられなかった】

まどか【そんな事を認めたら、私は、昔よりも価値がなくなっちゃう】

まどか【それで、みんなから要らないって思われたら】

まどか【……怖かった。すごく怖くて、堪らなかった】

まどか【だから私はほむらちゃん達を否定して、”安心出来る”キュゥべえを信じた】

まどか【本当の事から目を背けて、”怖い事”を消しちゃおうとした】

まどか【魔女になろうとしている時も、自分は魔女になるんじゃない、
    もっと素晴らしいものに生まれ変わるんだって言い訳して】

まどか【怖い事じゃなくて、いい事なんだって自分に嘘を吐いて】

まどか【……ううん……気持ちいいは、嘘じゃなかったかも】

まどか【絶望した私は、目を閉じたの。怖い物を見ないようにするために】

まどか【目を閉じれば、瞼の裏には私が望んでいた世界だけが浮かぶ】

まどか【誰よりも正しくて、誰よりも強くて、みんなが憧れる――――最高の魔法少女になった私だけが見える】

まどか【それはとても幸せな夢のようで】

まどか【私から全てを奪い去る真実よりも優しくて】

まどか【すごく、心地良かった】

まどか【……こうやって正気に戻ったら、なんて馬鹿なんだろうって思うけどね】

まどか【みんなに迷惑かけているって気付かず、本当の事を言われたら駄々を捏ねて、言い訳出来なくなったら暴れて】

まどか【それすら出来なくなったら最後は不貞寝】

まどか【最低だよね……死んだ方がいいぐらい、最低、だよね……】

まどか【ほむらちゃん……】

まどか【私……死んだ方が、いいのかな……?】


630: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:25:19.11 ID:lw2GyATE0




ほむら「――――至極、つまらないお話ですね」




631: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:32:24.95 ID:lw2GyATE0


まどか【っ……!?】

まどか【つ、つまらない……?】

ほむら「つまらないですよ。だってほぼ自分語りじゃないですか」

ほむら「そもそも、あなたは私になんて答えてほしいのですか?」

まどか【え?】

ほむら「……本当は、今までの罪を許してほしいのでしょう?」

ほむら「正義の魔法少女として、今でも認めてほしいのでしょう?」

ほむら「今でも認めてほしいから、さっきまで暴れていたのでしょう?」

ほむら「だったら、それでいいじゃないですか」

ほむら「正義の魔法少女としてみんなの役に立ち、みんなに認めてもらいたい」

ほむら「それがあなたの願いだと言うのなら、今度こそなればいいんです」

ほむら「あなたの理想とする、素敵な『魔法少女』に」

ほむら「どうなんですか? あなたは、そんな魔法少女にはもうなりたくないのですか?」

まどか【それは、なりたい、けど……】

まどか【で、でも、私……みんなに迷惑かけて】

まどか【それに今まで魔女を、人もたくさん殺しちゃって……】

まどか【こんな私が、正義の魔法少女なんて】

ほむら「魔女が元々人だと知らず、助けられると知らずに殺してしまったあなたが咎人なら」

ほむら「存在そのものを知らなかったという理由で、魔女を助けていなかった私もまた咎人でしょう」

ほむら「無知による行動が罪であるならば、私はあなたと同罪です」

ほむら「なら、私もあなたと同じく願いを叶える権利はないのですよね?」

まどか【ち、違う! そんな事ないよ!】

まどか【ほむらちゃんは……別、で……】


632: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:35:42.59 ID:lw2GyATE0


ほむら「それに、です」

ほむら「最善ではなくとも、次善の方法で絶望から救ってくれたあなたを怨む魔女さんがどれだけ居るでしょう」

ほむら「あなたに感謝しながら斃れた者もゼロではないでしょう」

ほむら「自分を卑下する事は、その方々の想いを踏み躙るような真似に他ならないと思いませんか?」

まどか【……………】

ほむら「確かにあなたに一切罪が無いとは言えません。多分、あなたが一番納得出来ないでしょうし」

ほむら「しかし償いに必要なのは、幸せにならない事ではありませんよ?」

まどか【ほむら、ちゃん……】

まどか【でも……】

ほむら「あ。もうぶっちゃけ面倒臭いので、これ以上御託を並べても無駄です」

ほむら「さっさと肉体に魂詰め込んで、ここから脱出しますのであしからず」

まどか【酷っ?!】

まどか【そりゃ助けてもらう私に口答えする権利なんて無いだろうけど!】

まどか【ちょっとは私の心境というか不安を汲んでよ!?】

まどか【今更どんな顔してみんなに会えばいいのか分かんないし!】

ほむら「そんな不安を抱く必要があるとは思えませんけどねー」

ほむら「だって――――」


……………

………




633: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:37:35.34 ID:lw2GyATE0


ゲルト【あ! みなさん、あれを見てください!】

さやか「んあー? なにー?」ブルブルブルブルブル

シャル「んにゃ……もう、折角いい気持ちで寝てたのに……」ブルブルブルブルブル

マミ「あ゛ー……効くぅぅぅ……」ブルブルブルブルブル

ゲルト【三人とも何妖精さんが作ったマッサージ器具でリラックスしてるんですか?!】

ゲルト【ほら、鹿目さんの魔女が……!】

さやか「え? まどか?」

さやか「って、魔女の身体がボロボロ崩れてる……!?」

さやか「いや、解体されてる!?」

シャル「おー、ようやく片が付いたか」

ゲルト【ええ……暁美さんが、やってくれたんです……!】

ゲルト【ですから……】

さやか「ああ、分かってるよ」

シャル「言われるまでもないわ」

さやシャル「……………」

さやか「ぎゃああああああ!? はや、早く着替えないと!」

シャル「温泉上がった後なんとなく出された浴衣着ちゃったけど流石にこれはない! ないないない!」

ゲルト【うう……緊張感ってなんだっけ……】

マミ(なんでこの魔女、項垂れているのかしら……)←翻訳眼鏡なし

マミ「!」

マミ「ね、ねぇ、あれを見て!」

マミ「あれって……鹿目さんと暁美さんよね!」

ゲルト【本当です!】

ゲルト【あれは、傘、でしょうか……】

ゲルト【傘を差した暁美さんが、ふわふわと降りてきてます!】




ほむら「みなさーん。お待たせしましたー」

まどか「……………」


634: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:39:03.27 ID:lw2GyATE0


マミ「鹿目さん!」

さやか「ま、まど、ずべしゃっ!?」

シャル「あーもういい! 浴衣でいいや!」

ゲルト【なんで歓喜の出迎えがこんなグデグデに……】

ほむら「よっと。無事着地に成功ー」

ほむら「お? 結界も解けましたね。魔女の身体の解体は済んだようです」

ほむら「さて――――鹿目さん」

まどか「う、うん……」

まどか「あの……みん」




さやか「まどかあああああああああああああああっ!!」




まどか「えっ、さやかちゃ……!?」

さやか「この馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! あたし以上の馬鹿!」

さやか「心配したんだから!」

まどか「あ……」

シャル「本当よ……いくら戻せるからって、魔女になる瞬間は見たくないんだから」

ゲルト【本当によがっだでずぅぅぅぅぅ!】

まどか「みん、な……」

マミ「……鹿目さん」

まどか「……マミ、さん……あの」

マミ「っ!」

まどか(あ……マミさんが、抱き着いてきて……)

マミ「――――ごめんなさい」


635: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:40:19.52 ID:lw2GyATE0


マミ「あなたがどれだけ苦しんでいたのか知らず……私、あなたを独りにしてしまったわね」

マミ「酷い先輩で、ごめんなさい……ごめんなさい……!」

まどか「……」

さやか「まどか……」

まどか「さやかちゃん……」

まどか「あの、私――――」

さやか「本当に、ごめん!」

まどか「えっ……?」

さやか「あたし、馬鹿だから……思った事全部言っちゃって」

さやか「それがアンタを追い詰めるなんて、全く想像してなくて」

さやか「本当に、ごめん!」

まどか「さやかちゃんまで……」

シャル「んー、私からも一ついいかな?」

まどか「ま、魔女、さん……」

まどか「えっと、その」

シャル「ごめんね」

まどか「!?」

シャル「今日のあなたの心境に一番近かったのは、魔女になった事がある私だったのに」

シャル「何も出来なくてごめんなさい」

まどか「な、なん……」

まどか「なんでみんな、私より先に謝るの……?」

まどか「悪いのは全部私なんだよ? 私が何もかもいけないんだよ?」

まどか「なんで、私を……許してくれるの……?」

さやか「……アンタってほんと馬鹿。こんな事も分かんないなんて」

まどか「分かんないよ! だって、私はみんなの事を殺そうとしたんだよ!?」

まどか「殺そうとしたのに、なんで許せるの!? なんでこんなに優しく出来るの!?」

さやか「そんなの簡単な話でしょ」


636: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:40:54.43 ID:lw2GyATE0





さやか「みんな、アンタが好きだからだよ」





637: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:42:42.84 ID:lw2GyATE0


まどか「――――――――わたしが、好き?」

さやか「そう!」

マミ「当然じゃない!」

ゲルト【私はあなたの事はよく知りませんけど……でも、あなたが真面目な人なのは分かります】

ゲルト【そういう人が思い詰めた結果取り乱したというのなら、私はあなたを嫌いになるなんて出来ません】

ゲルト【そしてこうして正気に戻り、罪と向き合おうとするあなたを私は尊敬します】

ゲルト【私にはそんな勇気……ありませんから】

ゲルト【ですから私もみなさんと同じく、あなたの事が好きです。尊敬する、心の在り方の師として】

さやか「げるげるもまどかの事が好きだってさ!」

シャル「いや、もう少しちゃんと伝えてあげなさいよ……結構な長台詞だったでしょ」

さやか「そういうシャルちゃんは?」

シャル「はぁ? いや、私は……別にどうでもいいじゃん。わざわざ言わなくても、そんな親しくないし」

さやか「そんな親しくないどころか初対面のげるげるもコメントを寄せていますがー?」

シャル「あ、あの子は、真面目そうじゃん。私は魔女らしく不真面目だから……」

さやか「ひょっとしてアレか? 面と向かって好きだと言うのは恥ずかしいってか?」

シャル「ば!?」

シャル「バカじゃないの!? そんな、恥ずかしがるわけないじゃん!?」

さやか「なら言ってみろよーう」

シャル「う、うぁ……ああああああ! このバヤカ! 馬鹿さやか略してバヤカ!」

シャル「このこのこのこのこの!」

さやか「ふはははーっ! そんなへっぽこパンチなんて当たらぬよーっ!」

シャル「うきーっ!!」

まどか「……………みんな……」

ほむら「ほら、あの時言った通りでしょう?」


638: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:43:39.82 ID:lw2GyATE0


まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「あなたが不安を抱く必要なんてないのです。皆に疎まれる心配もなければ、
    そもそも価値を上げようとする必要もなかったのです」

ほむら「だって、あなたはこんなにも愛されている」

ほむら「こんなにも、みんながあなたを手放したくないと思っている」

ほむら「あなたはあなたというだけで、価値があるのです」

ほむら「何しろ好き嫌いの激しい私でもあなたの事は好きですからね! いじり甲斐があって!」

ほむら「きっとあなたが好きだと思っている人達は――――みんな、『鹿目まどか』が大好きですよ!」

まどか「――――うん」

まどか「みんな、心配かけて、ごめんなさい。酷い事をして、ごめんなさい」

まどか「そして――――助けてくれて、ありがとう」

まどか「私を好きになってくれて……ありがとう……!」


………
……



639: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:46:17.79 ID:lw2GyATE0


ほむら「さて……鹿目さんの救出も完了しましたし、あとはアレを捕まえて……」

ほむら「ん? んんー?」

さやか「どうした、ほむら?」

ほむら「いえ、キュゥべえの姿が見当たらないと思いまして」

ほむら「見つけたら妖精さんアイテムで亜空間にポイして、ペットの宇宙怪獣の餌にしてやろうと思っていたのですが」

シャル「アンタなんちゅうもんをペットにしてるのよ……」

ほむら「ま、逃げられたのなら仕方ありません。探すのも面倒ですし」

ほむら「……ああ、キュゥべえと言えば」

ほむら「巴先輩のソウルジェム、いい加減処置をした方がいいかも知れませんね」

ほむら「和解出来た記念という事で、今日にでもやっちゃいますか。勿論巴先輩の都合次第ですけど」

シャル「あー、そうね。やっといた方がいいわよね」

さやか「うっかり割ったら大惨事だもんね」

まどか「私はこの身体に戻った時に、もうソウルジェムの処置は済ませたし、マミさんも早めにした方がいいよね」

マミ「……?」

マミ「あの、さっきからなんの話をしているの?」

ほむら「ああ、そういえばまだ言ってませんでしたね」

ほむら「ソウルジェムって、魔法少女の魂なんですよ」

マミ「……………ふぇ?」

ほむら「ですから、その石ころがあなたの魂って訳です」

ほむら「まぁ、今更大した話ではないですけどねー」

さやか「うんうん」

シャル「魔女化と比べればしょっぱい話よね」

ゲルト【そうですよねー】

まどか「それぐらいなら、私でも割と耐えられたもんねー」

ほさシゲま「あっはっはっはっはー♪」

ほむら「まぁ、そんな訳でうっかり割っちゃうとあなたは死んでしまうので」

ほむら「妖精さんの力でその魂を身体に戻そうという訳で……」

マミ「……………」

ほむら「……あれ? 巴先輩?」


640: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:47:21.71 ID:lw2GyATE0


マミ「……………」

ほむら「……友枝先輩? タヌキさん? おい巴?」

ほむら「もしもし? もしもーし?」

ほむら「へんじがない ただの ぞんびのようだ」

シャル「止めなさい」

マミ「……た」

ほむら「た?」




マミ「魂が石ころにされたなら、みんな死ぬしかないじゃない!!」変身!




ほさシゲま「……………」

ほさシゲま「ええええええええええええええええええええええええええええっ!?」

ほむら「ちょ、なんでその程度の事で錯乱してるんですかーっ!?」

シャル「どんだけギリギリの精神状態だったのよアンタ!?」

さやか「ひっ!? 銃口こっちに向けないでーっ!」

ゲルト【おち、落ち着いてくださいぃぃぃ!?】

まどか「大丈夫ですから! ちゃんと戻りますからーっ!」

マミ「嫌ああああああ! 離して! 離し」

――――パキン

全員「あ」


641: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:48:31.04 ID:lw2GyATE0


マミ「……そういえば、ソウルジェムの浄化をすっかり忘れていたわ」

マミ「てへぺろ♪」

ほさシゲま「笑ってごまかすなああああああああああああああっ!!!」

マミ「助けてえええええええ! 魔女になりたくないいいいいいいっ!!」

さやか「ちょ、しがみつかないでくださいよっ!? ソウルジェムから絶望がぶすぶす漏れてますからっ!」

シャル「魔女化の瞬間の衝撃波って凄いのよ! 離れてよ!」

ゲルト【おおおおお落ち着いてくださ、って私の声この人には届かないじゃーん!?】

ほむら「……面倒臭いから、助けるの明日にしてもいいですかね?」

まどか「人を襲うから駄目」

ほむら「ですよねー」


……………

………




642: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:51:03.15 ID:lw2GyATE0




              ―――― ??? ――――




QB(……想像以上だ)

QB(想定以上じゃない。想像以上の結果が出てしまった)

QB(いくら観測しても、生体磁場はおろか歩行によって生じる地面の振動、大気の移動、魂の波形も検出出来ない)

QB(魔女と美樹さやかの発言が正しければ、あの場に妖精は千体は居た筈)

QB(だと言うのに、手掛かりとなりうるデータは微塵も拾えていない)

QB(それでもこれだけならまだ想定以上で済む話だった)

QB(だが……あの温泉)

QB(なんだよアレ!? 一体何処から温泉が出てきた!?)

QB(建設中も観測していた筈なのにまるでデータが拾えていない!)

QB(言うなら”ずっと見ていたけどなんか何時の間にか完成していた”状態……)

QB(どんな状態だよ!? データ上の話なのになんでそんな曖昧なんだよ!)

QB(しかも周囲の感情エネルギーを吸収し、なんだかよく分からない温水として排出!?)

QB(訳が分からない! 分かって堪るかあああああああああっ!!)

QB(はっ!? い、いけない! いけない!)

QB(これだ……本当に恐ろしい……ああ、そうだ。恐ろしいのはこれ)

QB(あの温水に浸かった僕の中で、感情らしきものが芽生えている!)

QB(幸いにも完全に感情が芽生える前に抜け出せたからこの程度で済んだけど……)

QB(もしもっと長期間居たなら、僕は精神疾病を患っただろう)

QB(原理は分からないが、妖精達は僕らの感情を呼び覚ます術を知っている)

QB(恐らく前任者もこの事象によって感情を目覚めさせられたんだ)


643: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:52:33.09 ID:lw2GyATE0


QB(……この宇宙で、星々を自在に飛び回れるほどの高度文明を築いた生物は、どれも感情を持たない)

QB(感情のような非合理的なシステムでは、重大な決断を下す際どうしても遅延やミスが発生する)

QB(それらの一つ一つは些末なようで、高度な文明ほど致命的なエラーを生み……最後は文明を滅ぼしてしまうからだ)

QB(それは僕達インキュベーター……そして”我々”も同様だ)

QB(感情を持っていないから、”我々”は数百万年もの時を跨ぎ、その英知を継続出来ていた)

QB(稀に生まれる感情保有個体も徹底的に排除する事で、重大エラーの発生を抑えてきた)

QB(だが、もし全てのインキュベーターが……”我々”の全てが感情に目覚めたなら……)

QB(妖精は邪魔者なんかじゃない。計画の障害どころではない)

QB(奴等は”我々”の生存を脅かす天敵……!)

QB(暁美ほむら。今日言った言葉を早速撤回させてもらおう)

QB(どうやら君達の事を見くびっていた)

QB(そして次は決して手を抜かない。効率などもう考えない)





QB(”我々”の全力を以てして、君達を倒させてもらう!)



644: ◆HYvP9smHgsVn 2014/03/26(水) 10:54:47.80 ID:lw2GyATE0



            ―――― 一方その頃 箱の魔女の結界 ――――



エリー【……うーん】

エリー【ねぇ、そこのアンタ】

使い魔【……】

エリー【これってさ、不可抗力よね?】

エリー【魔法少女って一応敵でしょ? 戦わないと私が殺されるでしょ?】

エリー【それにさ、このパソコンの性能ってまだよく分かんなかったし】

エリー【四足要塞とか飛行ドローンってのもなんの事か知らないじゃん?】

エリー【だから、ちょーっとやり過ぎる事もあると思うのよ】

エリー【つまり何が言いたいのかというと】

エリー【レーザーとプラズマ砲台を起動して、四足要塞を投下し、ついでに飛行ドローンも四十機ぐらい発進させても】

エリー【仕方ないよね?】

使い魔【……】フルフル

エリー【……ですよねー】

エリー【うああ……やり過ぎたぁ……】

エリー【まさか妖精さん製のパソコンがあんな滅茶苦茶強いなんて……砲台とか飾りだと思ってたのに】

エリー【いや、殺してはいないよ? 殺してはいないけど……】

エリー【……ほんと、どうしようかなぁ……】




杏子「」プスプス




エリー【……あの魔法少女】

エリー【プラズマ直撃でアフロヘアーになってるし……助けないと死んじゃうかも……】

エリー【相談出来るのは暁美さんぐらいしかいない……けど、これ知られたらパソコン没収されちゃう……】

エリー【いやいや、何考えてんの私】

エリー【パソコンと人命、どっちが大切か考えればすぐに分かるでしょ!】

エリー【……………】

エリー【あの人、結界の外にこっそり捨てちゃダメかな?】

使い魔【……】フルフル

エリー【ですよねー】


675: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:22:10.83 ID:UkDDo2Pd0



えぴそーど おまけ 【めがほむさんの、めざせせかいせいふく】



676: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:27:15.09 ID:UkDDo2Pd0


転校初日の夜、私は夢を見ました。


それはなんと、私が何人もいる夢です。

最初は訳が分からず、とても戸惑いましたが……”私”の一人が、これは夢だと教えてくれました。

自分達が私の別人格であるとも教えてくれました。

そして、私の悩みを打ち明けてほしいと言われました。


少し渋りましたが、しかしこれは自分の夢。相手もまた自分。

どうせ夢ならばと勇気を持って、引っ込み思案で臆病な性格を変えたいと伝えてみました。

すると”私”の一人はこう答えたのです。




”アイドル”デビューしなさい。




最初はとてもびっくりしました。だってあまりにも滅茶苦茶です。理屈で説明出来ないぐらい意味不明です。

当然私は無理だと伝えましし、他の”私”も反対していました。

ですが”私”は何処からかマイクを取りだし、私に歌うよう促したのです。中々強引な私でした。

渡された手前歌わない訳にもいかず、訳が分からな過ぎて吹っ切れた私は……歌いました。


その時の事は、きっと一生忘れないでしょう。


――――盛り上がる観客から生じる熱気。

――――私の声に撒け次劣らず叫ばれる歓声。

――――ステージと溶け合ったような一体感。


全てが、何もかもが、私の想像を超えていました。生まれて初めて経験する世界でした。


そして私は思うようになったのです。



私の歌声を、世界に轟かせたい。


もっとたくさんの人に私の歌を聞かせたい――――と。



677: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:31:11.36 ID:UkDDo2Pd0


          ――― とある並行世界の暁美家 ―――



ほむら「!」

目を覚ました私は、勢いよくベッドから跳ね起きました。

時計を見ると朝七時。やや寝坊気味ですが、少し急げば遅刻せずに済むでしょう。
逆に言えば今すぐ動かねば遅刻してしまう訳で、すぐにでも支度を始めるべき状態です。

だけど私は動けないでいました。


――――あれは、夢。


夢でもらった、もっと言えば自分で自分にしたアドバイスなんて、一体どれだけの価値があるのでしょう。

仮に他人からのアドバイスでも、アイドルになるなんて真面目に受け取る方がどうかと思います。

それに私はあまり可愛くないし、人前で歌った事もない。夢では上手いし可愛いと言われましたが、しかし所詮自分の頭の中での事。
自画自賛であり、なんの価値もない評論です。


でも、私は――――歌いたいと思いました。


この歌声を世界中に届けたいと思いました。


……あと、自分に嘱望の眼差しを向けてくる人たちとか、想像しただけで気持ち良かったので……♪


性格改善とか、友達をたくさん作りたいとか、もうどうでもいいのです。

私はなりたい。だからなるのです。


ほむら「――――アイドルに!」


決意を言葉にし、私はベッドから下りて――――


678: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:31:57.08 ID:UkDDo2Pd0





        それはとてもおもしろそうですなー






679: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:37:34.54 ID:UkDDo2Pd0


ほむら「?」

ふと聞こえてきた……なんと言われたのかは聞き取れない、なのになんだか懐かしい声に首を傾げたのでした。




……………

………





一生懸命にやっていると何事もあっという間に過ぎ去るもので、気が付けば放課後を迎えていました。

まぁ、芸能学校なら兎も角、私が通っているのはただの中学校。学校にいる間はアイドルになるための練習が出来ません。

さっさと時間が過ぎ去り放課後になるのは、むしろどんとこいという気持ちです。



さて、ここからが本番。



――――アイドルになるのに必要なのは何か?


まず一番に思い付いたのは容姿です。やはり可愛くないとアイドルとは言えないでしょう。

私の容姿ははあまり良くないものだと思いますが……可愛く見せるコツはある筈。

寄り道して買った雑誌(志筑さんという綺麗なクラスメートに、どんなファッション雑誌を読んでいるのか聞きました!)を
家に帰ったらじっくり読み、勉強するとしましょう。

しかしそれだけではいけません。


アイドルといえば……歌です。


何より私はみんなに自分の歌を聴いてもらいたいのです。歌が下手では話になりません。故に、練習せねばならないのです。

とは言え、自分の家で大声を出すのは近所迷惑になりそう。

吹奏楽部に入る事も考えましたが、しかしコーラス担当の部員はすでに満員だと聞かされて断念せざるを得ませんでした。
情報源? 夢のために、勇気を振り絞ってクラスメートから聞きました!
勇気があればなんでもできる~。あ、これ大声で言っちゃいけない言葉なんですよね。ニュースでやってた気がします。


閑話休題。


家でも駄目。学校でも駄目。なら歌の練習は諦めるしかないのでしょうか?

否、断じて否です。

人がいっぱいで練習出来ないのなら――――人気のない場所で練習すればいい!




ほむら「という訳で! やってきました廃ビルの屋上です!」


680: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:40:54.10 ID:UkDDo2Pd0


ほむら「ここならどれだけ大声を出しても怒られないもんねー♪」

ほむら「それに屋上で歌うと気持ち良いし」

ほむら「夕日をバックに歌うとか、なんかカッコいいし!」

ほむら「……暗くなったら、ビルの中を通らないといけないよね……」

ほむら「く、暗くなる前に帰ろう……うん」

ほむら「時間もないし早速何か歌おう。えっと、とりあえず音楽の教科書から何か――――」


――――バタン!


ほむら「ひっ!?(と、扉を開ける音!?)」

ほむら(あ……なんかOLさんみたいな人が……)

OL「……………」

ほむら(あの人、目が虚ろで、足元ふらふらしてる……?)

ほむら(というかどこに歩き……)

ほむら(って、うええええええええええええ!?)

ほむら(なんかあの人、飛び降りようとしてない!?)

ほむら「だ、だだ、駄目、駄目ですーっ!?」ガシッ

ほむら(よし、掴めた! あとは思いっきり……引っ張る!)

OL「あっ――――」

――――バタリ

ほむら「あだっ!? いてて……」


681: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:43:24.28 ID:UkDDo2Pd0


ほむら「はっ!? 痛がってる場合じゃない!」

ほむら「と、と、飛び降りなんて、ささささせませんよ!?」

ほむら「生きていれば良い事ある筈です! だから、あのー」

ほむら「……………」

ほむら「……あのー……?」

OL「……………」

ほむら(え? なんか、動かなくなった……?)

ほむら(わ、私が引っ張った拍子に頭とか打っちゃったのかな!?)

ほむら(息はしているみたいだけど……)

ほむら(ど、ど、どうしよう……人工呼吸? 心臓マッサージ?)

ほむら(そうだ! たんこぶ! たんこぶが出来ていれば平気って、おばあちゃんが言ってた!)

ほむら(じゃあ早速たんこぶを探して……)


――――グニャアアアア


ほむら「えっ!?」

ほむら「な、何……え……えっ!?」

ほむら(何これ……景色が変な事になって……)

ほむら(と、兎に角逃げなきゃ!)

ほむら(……ど、どっちに……?)

――――シャキン、

ほむら「ひっ!?」

ほむら(は、鋏の音!?)


682: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:45:28.69 ID:UkDDo2Pd0


――――シャキン、シャキン

ほむら(近付いてくる……!? 一体何が……)

――――シャキン!



アントニー【――――】シャキン



ほむら「ひ、ひぃいいいいぃいいぃぃぃっ!?」

ほむら(な、何、何何なんなのアレ!?)

ほむら(お化け……違う! ば、化け物だ……ゲームとかアニメで出てくるような……)

アントニー【――――】シャキン

ほむら「う、あ……」

ほむら「や、やだ……近付かないで……お願い……」

アントニー【――――】シャキン

ほむら「やだ、やだ、やだ……」

ほむら「ね、ねぇ……その鋏で切ったり、しませんよね……?」

ほむら「わ、私、殺したりしないよね……?」

アントニー【――――】シャキン

ほむら「なんで、なんでこんな……」

ほむら「私、こんなところで死んで――――」


683: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:46:15.49 ID:UkDDo2Pd0













                  うたはせかいをすくうのではー?













684: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:49:05.26 ID:UkDDo2Pd0


ほむら「えっ……?」

ほむら(また声が……何を言われたのかは分かんないけど――――)

――――スッ

ほむら(視界の外に何かが!?)

ほむら(小さい、小人……?)

ほむら(もうなんなの……何がどうなってるの!?)

ほむら(分かんない、分かんないよぉ……!)ガクガク

ほむら「……?」

ほむら(あれ……なんか、私握りしめて……)

ほむら(え? なん、で――――)

ほむら(私、マイクなんか握っているの?)

アントニー【――――】シャキン

ほむら「……………」

ほむら(私、可笑しくなっちゃったのかな。あの化け物が、どんどん近付いているのに。殺されちゃいそうなのに、全然怖くない)

ほむら(それに胸が熱い……)

ほむら(ううん。違う)

ほむら(熱くなっているのは、私の心)

ほむら(なんでだろう。こんな状況なのに、もうすぐ殺されちゃうのに)

ほむら(心から、楽しくなっているのは)

ほむら(何故だろう)






ほむら(この胸の衝動を――――抑えられないのは)





685: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:50:21.48 ID:UkDDo2Pd0


ほむら「……私は、アイドルになりたい」

アントニー【――――】シャキン

ほむら「このまま殺されるしかないのなら……せめて、アイドルっぽく死んでみたい」

アントニー【――――】シャキン

ほむら「うふふ。何時も馬鹿だと思っていたけど、今日の私は、とびきりのお馬鹿だ」

アントニー【――――】シャ、キン

ほむら「だから馬鹿らしく、全力でいきます」

アントニー【――――】シャキン!


686: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:51:13.64 ID:UkDDo2Pd0







           ほむら「私の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」







687: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:53:48.59 ID:UkDDo2Pd0


――――それは死闘と呼ぶには、あまりにも間の抜けた光景だったでしょう。


化け物の鋏を躱しながら、私は闇雲に歌い続けました。何を歌ったのか、音程はどうだったのか、何も覚えていません。

勿論現状が変わるとは思っていませんでした。アイドルを目指した一人の女の子として死ぬ……そのために歌ったのですから。


しかし不思議な事が起こりました。

なんと化け物が、私への攻撃を止めたのです。


それが何を意味するのか一瞬分かりませんでしたが、けれどもすぐに理解出来ました。

最初は一体しかいなかった化け物たちがぞろぞろと集まり、なんと、私の前で並んだのです。

その光景はまるで人のように規律が取れており……そして何より、あるものを彷彿とさせました。



観客です。



言葉はなくとも私には分かりました。彼等は、私の歌を聴きたいのだと。聴いてくれるのだと。

私を殺そうとした者達が、私の歌に興味を持ったのです。


それはこの不思議なマイクの仕業なのでしょうか。

それとも彼等は歌を愛する種族なのでしょうか。

或いは私の歌が彼らの心を揺れ動かしたのでしょうか。


答えは分かりません。分かりませんが、観客がそこにいるのなら――――”アイドル”としてすべき事は一つ。


688: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 13:58:35.51 ID:UkDDo2Pd0


私は全力で歌いました。

己の命を削るつもりで歌いました。

何時の間にか世界が元通りになりましたが、私は気にせず歌いました。

月が天頂で輝いても魂の叫びを口から発し続け……疲労のあまり立てなくなっても、這いずりながら歌いました。

観客の数は徐々に増えていき、コレ見滝原中の人達が集まってない? と思うぐらいすごい事になりましたが無視して歌いました。


そして辺りが明るくなった頃……私の精根は尽き果て、その場に倒れました。


化け物たち……いえ、観客はそんな私の元に集まり、肩を貸してくれました。

観客の何倍も大きな生き物は私に薔薇の花束をくれました。

ついでに飛び降り自殺をしようとしたOLさんが飲み物をくれました。

あと猫みたいな小動物が「ありがとう。君のお陰で僕はこの熱い想いに目覚める事が出来た」と感謝してきました。

金髪で胸の大きな人が「サインください!」と言いながら色紙を渡してきました。一応書いてあげました。

紅い髪の女の子が「何年かかるか分からないけど、あたし、盗んだ物の代金全部持ち主に返すよ」と言っていました。

車椅子の男子に「僕はバイオリンを弾くためではなく、君が歌う詩を書くために生まれたに違いない」と告白されました。

担任の先生である早乙女先生が「彼の全てを受け止められる優しさを持てたと思うわ」と言っていました。

クラスメートの中沢くんが「俺、自分の意見を言える男になるよ」と言ったり、

クラスメートの志筑さんが「キマシタワー!!」と鼻血を噴き出しながら叫んだり、

クラスメートの美樹さんが「キマシタワー!!」と叫びながら志筑さんに抱き着いていたり、

クラスメートの鹿目さんが「ほむらちゃん結婚してください」と言いながら指輪を渡そうとしてきました。

指輪は丁寧にお断りしておきました。


689: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/02(水) 14:02:48.19 ID:UkDDo2Pd0


なんでしょう。なんというか、色々と取り返しのつかない事をしてしまったような気がします。

条理が不条理によって粉々にされたような、やっちゃった感が凄まじい事になっています。


でも、そこにいるみんなが笑顔なのは事実。




――――だったら多少の滅茶苦茶は、許してもらえるよね?




そう思いながら、すべてをやり終えた私は意識を手放すのでした……


707: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:16:22.47 ID:7ik8n1X+0



えぴそーど じゅうよん 【佐倉さんと、あけみさんのおうち】



708: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:17:25.58 ID:7ik8n1X+0



――――私は、誰かが死ぬのが嫌いです。

――――目の前で死なれたら目覚めが悪くなるのもありますが、一番の理由は……楽しくないから、でしょう。

――――だから私は結構誰彼かまわず助けます。面白おかしく助けます。

――――結果楽しくなるので、誰かを助けて後悔した事は、覚えている限り一度もありませんでした。

――――しかし、今回ばかりは思いました。

――――私が彼女を助けなければ――――

――――それは仮定の話。IFの世界。あり得た可能性。選ばれなかった未来。

――――だから私は思うのです。

――――彼女を助けなければ……この街は平穏なままでいられたのに、と。

――――ですが私は彼女を助けてしまいました。

――――故に、






             ―――― 見滝原が、血で染まったのです ――――





709: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:19:34.16 ID:7ik8n1X+0


               ――― 見滝原 その辺の路地裏 ―――



マミ「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

ほむら「全く……鹿目さんの処置で今日はもうへとへとなのに」

ほむら「魔女になるならせめて明日とか、もう少し間を開けてほしいものです」

まどか「ほむらちゃん、私が言えた事じゃないけどそれ大分無理な事頼んでるからね?」

ほむら「しかし……」

シャル「まぁまぁ、結果的にだけど魔女二人を人間の身体に戻せたんだし、今回はいいじゃない」

ゲルト【ええ! 本当に良かったです!】

さやか「それにまどかが仲間になったのは心強いよね」

さやか「何しろ下手すれば地球を滅ぼせる魔女の力が、今のまどかにはそのまま宿っている訳だし」

さやか「例え敵がどれだけ強くても、もうあたしらを止められねーぜ!」

ほむら「そーですねー。普通の敵が相手なら、多分平気でしょうねー」

ほむら「ですが――――」

――――ピリリリリリリリ♪

まどか「ひゃ!? け、携帯の着信音?」

ほむら「おっと、私の携帯ですね……ちょっと失礼」

ほむら「はい、もしもし」

エリー『……あの、ほむら……? 通じてる?』

ほむら「これはこれは、エリーさんではありませんか」

ほむら「ええ、そちらの声はちゃんと届いてますよ。”パソコン”付属の翻訳機能も問題なく動作していますね」

ほむら「それで? 何かご用件ですか?」


710: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:22:31.63 ID:7ik8n1X+0


エリー『……怒らないで、聞いてくれる?』

ほむら「内容によりますね」

エリー『だよねぇー』

エリー『……魔法少女がね、一人、結界に入って来たの』

ほむら「魔法少女がエリーさんの結界に? それはそれは……」

シャル「……どういう事? この町にアンタ達以外の魔法少女って居たの?」

マミ「居ないと思うけど……キュゥべえが新たに契約した可能性もあるし……」

シャル「つー事は風見野とかから侵入してきた奴かしら……他人の縄張りに侵入とは珍しいことで」

マミ「そう、ね……」

マミ「……まさか、よね。うん」

まどか「?」

ほむら「それで? その魔法少女はどうしました?」

エリー『……一応倒したけど……』

ほむら「うっかり殺してませんよね?」

エリー『し、しし、してないわよ!? ちょ、ちょっとやり過ぎちゃっただけで……』

ほむら(あ。この反応、危うくやっちゃうところでしたね)

ほむら「……まぁ、殺していないのなら怒りはしません。パソコンも今回は没収しません」

ほむら「とりあえずその魔法少女は動かさず、けれども拘束はしておいてください」

ほむら「目を覚ました瞬間逃げださないとも限りませんからね」

エリー『う、うん。分かった』

ほむら「では今から向かいますので、少し待っててくださいね」ピッ


711: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:25:50.70 ID:7ik8n1X+0


ほむら「……えー、なんとなく察しがついている方も居るかと思いますが」

シャル「エリーちゃんの結界よね。今から行くの?」

ほむら「本当は明日にしたいんですけどねぇ……」

ほむら「しかし疲れ過ぎて色々と吹っ切れました。面倒は今日のうちに済ませるとします」

ほむら「出来れば鹿目さん達もご一緒に来てくださると嬉しいのですが……」

マミ「その侵入してきた魔法少女の確認をしてほしいのね?」

マミ「そういう事なら喜んで。私は一人暮らしだから、帰りは遅くなっても平気よ」

まどか「ちょっと待って……うん。今からパパに連絡を入れれば、私もまだ家に帰らなくても多分大丈夫」

まどか「それとも、泊まるつもりでいた方がいいかな?」

ほむら「そうですねぇ……そこまで時間をかけるつもりはありませんけど」

ほむら「遅くなる前提でいた方が、色々都合がいいのは事実ですね」

ほむら「ま、何事もなく済んだらパジャマパーティに洒落込むとしましょうか」

まどか「分かった。聞いてみるね」

まどか「……えへへ。いきなり初めてのお泊りだ」

シャル「……?」

さやか「あ、あたしは」

ほむら「さやかさんは帰ってもいいですよ」

さやか「え?」

ほむら「え?」

ほむら「……いや、だってさやかさん魔法少女じゃないでしょう?」

ほむら「魔法少女に関してあなたが出来る事なんてないでしょうし……」

ほむら「鹿目さんがいれば戦力的にも問題ない訳で」

ほむら「それに私達と一緒に出掛けると何時も帰りが遅くなってます。親御さんを心配させてはいけません」

ほむら「なので帰っても平気ですよ?」

さやか「ソ、ソウデスカ」



712: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:28:52.32 ID:7ik8n1X+0


さやか「ま、まぁ、尻百叩きとかになったらあたしのボディがヒップだけグラマラスになりかねないので……」

さやか「今回はお言葉に甘えて、帰らせていただきますわー」

ほむら「はい。それではまた明日、学校でお会いしましょう~♪」

さやか「ばいばーい」

シャル「ばーい……これから瀕死であろう魔法少女を迎えに行くのに、なんつー軽さなのかしら」

ほむら「死ななきゃ安いもんです」

シャル「それ、自分がそうなった時に使う言葉よね?」

ほむら「妖精さんがいる限り、私にそのような危機は訪れませんからねー」

ほむら「他人以外に使う機会がありませんよ」

シャル「……まったく否定出来ないわ」

ほむら「分かってもらえたようで何より」

ほむら「それではちゃっちゃと片付けるとしましょーか」


……………

………





713: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:30:38.14 ID:7ik8n1X+0



                  ――― 箱の魔女の結界 ―――


ほむら「こんにちはー」

シャル「時間的にはこんばんはじゃない?」

ゲルト【もう夜の七時間近ですものねー……】

ほむら「それは確かにそうですけど」

ほむら「でもあの人夜行性っぽいじゃないですか。これから元気よく活動しようって人にこんばんはーは、ねぇ?」

シャル「確かに夜更かしとかしてそうよね、あの子」

シャル「ま、そもそも魔法少女と魔女は大抵夜に活動すんだけど」

ほむら「そうなのですか?」

シャル「魔法少女は昼間学校があるし、魔女も昼はなんやかんやみんな元気だから襲い辛いし……」

シャル「どちらも夜以外まともに動けないのよ」

ほむら「そーいうものですかー」

まどか「……」キョロキョロ

マミ「……」オドオド

ほむら「……お二人とも、もう少しリラックスしてもいいと思うのですが」

ほむら「私達は戦いに来た訳ではないのですよ?」

マミ「あ……ええ……それは分かってるつもりよ」

マミ「でも、やっぱり魔女の結界に入ると身が引き締まるというか」

まどか「油断できないって気分になるというか……」

ほむら「もっとだらーっといきましょうよー」

シャル「アンタはだらけ過ぎ」

ゲルト【暁美さんが緊張感を持つ時ってあるのですか……?】

ほむら「むむ、聞き捨てなりませんな。私は何時でも適度に緊張感を保ってます」

ほむら「いつ何時、妖精さんパワーに巻き込まれるか分かりませんからね!」

妖精さん「ごきたいされてます?」

まどか(あ、何時の間にか妖精さんがほむらちゃんの頭の上に)

シャル(結界内だからって唐突に出現し過ぎよ)



714: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:32:15.72 ID:7ik8n1X+0



ほむら「してませんよー」

妖精さん「しかしさきほどそのようにいわれたきが」

ほむら「……あなたは知ってはならぬ事を知ってしまいましたね」

妖精さん「ぼく、けされます?」

ほむら「ええ、消されます」

ほむら「という訳で、はい!」

――――パンッ!

シャル(ほむらの奴、勢いよく手を叩いて……?)

妖精さん「ぴ――――――――――――――っ!?」

シャル「……妖精さん、丸まっちゃったわね」

ほむら「これは妖精さんの生態の一つ。丸まり」

ほむら「破裂音とかを聞くと、こうして丸くなって身を守るのです」

ほむら「ついでに、前後の記憶が曖昧になります。面倒な事はこれで揉み消せますよー」

ゲルト【揉み消す……】

シャル「相変わらず言葉を選ばない、直球な物言いです事」

ほむら「さーて、エリーさんのお部屋はもうすぐです……あ、ここですね」

ほむら「エリーさーん。入りますよー」

シャル「おっじゃまー」

ゲルト【入りまーす】

マミ「えーっと、じゃあ私達も……」

まどか「お邪魔しま」

まどマミ「…………………………」

まどマミ(魔女の部屋だと案内されて入ったら、何百メートルもある、しかも浮遊しているミラーボール型機械に出迎えられた……)



716: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:35:11.98 ID:7ik8n1X+0



エリー『あっ! みんなーっ! 待ってたわよー!』

まどか「!? こ、この声、あの大きな機械から……?」

ほむら「あれは妖精さんが作ったパソコンです」

ほむら「あの声はエリーさんが付属の翻訳システムを使い、こちらに話し掛けているんでしょう」

まどか「……パソコンって、浮くものだっけ……?」

ほむら「浮くぐらいなら普通じゃないですかね? 我が家のパソコンは厚紙とサランラップで出来ていますし」

まどか「え」

ほむら「しかもよく逃げるんですよー。狭いところに潜り込もうとしますし」

まどか「え」

ほむら「まぁ、そんな事はどうでもいいとして」

ほむら「エリーさん。その侵入してきた魔法少女ってのはどこにいるのでしょうか?」

エリー『とりあえずこのパソコンの真下に寝かしてあるわ』

ほむら「真下……ああ、影になっていてよく見えませんでしたが、確かに誰か倒れていますね」

ほむら「なんか赤っぽい……感じの人ですか。私服姿で、ロープで縛られているのでしょうか?」

ほむら「これ以上は近付かないと分かりませんね。エリーさん、そこから少し退いてくれますかー?」

エリー『りょーかーい』グヨングヨングヨン

まどか(あの駆動音は絶対パソコンの類じゃない……)

ほむら「さて……うわぁ、丸焦げじゃないですか。髪とかアフロですし」

ほむら「あ、でも顔は焼け爛れたりしてませんね。個人の判別は容易そうです」

シャル「恐ろしい事さらりと言わないでよ……」

ほむら「なってないから良いじゃないですか」

ほむら「それで、シャルロッテさん、ゲルトルートさん。この方に見覚えは?」

シャル「……無いわね」

ゲルト【ありません】

ほむら「では巴先輩たちはどうですか?」

まどか「私も知らない……」

マミ「……私は、知っているわ」

ほむら「おや。知り合いですか?」



718: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:41:33.55 ID:7ik8n1X+0



マミ「昔、私とコンビを組んでいた子」

マミ「名前は佐倉杏子。槍を使って戦う……その、近接戦主体の魔法少女よ」

ほむら「昔、ねぇ……仲違いでもしたのですか?」

マミ「本当に言い辛い事を平気で訊いてくるわね……」

マミ「ええ。確かに考え方の違いでコンビを解消したわ」

ほむら「どのような方なので?」

マミ「……別れた後の事は、キュゥべえから伝え聞いた話でしかないけど……」

マミ「使い魔を放置する事で効率よくグリーフシードを集め、得た力で己の欲望を満たす」

マミ「『魔法少女』としては珍しくないタイプの子になったみたい」

ほむら「ふむ、己の欲望に忠実な方ですか。魔女を狩るのを止めてほしいと言って、果たして聞いてくれるかどうか……」

ほむら「まぁ、今まで狩っていた魔女が元使い魔という事なら、真実を伝えてもショックは少ないでしょうし」

ほむら「どの道他人を犠牲にして利を得ていたのなら、殺人に対する抵抗もそんなにない筈」

ほむら「鹿目さんみたいな展開にはならないでしょうから、そこは安心ですかね」

まどか「ぐふっ……も、もしかして、根に持ってる?」

ほむら「根には持ってませんよ。そこそこ楽しめましたし」

ゲルト【あれ、楽しんでいたんですね……】

まどか「私、楽しく殴られたの……?」

ほむら「気にしない気にしない」

ほむら「それより、佐倉さんを安全な場所に運ぶとしましょう。怪我はなさそうですけど、野放しでは風邪を引くかもですし」

ほむら「とりあえず、というか他の場所なんてないと思いますけど……私の家に連れていくという事で良いですかね?」

マミ「そうね。私の家に連れていっても警戒されるかもだし」

まどか「私の家には親がいるから事情の説明が大変そうだし……」

ゲルト【私は今、根無し草ですし】

シャル「私はほむらの家に同居中。当然さやかの家に連れて行く訳にもいかないからね」

ほむら「……………」

シャル「何さやかの家に連れて行くのはそれはそれで面白いかも、みたいな顔してんのよ」

ほむら「ありゃ、バレましたか」

シャル「彼是半月近く一緒に暮らしてんだから、このぐらいの考えは読めるっつーの」

ほむら「やだ、恥ずかしい……///」

シャル「恥ずかしがるのはそれに相応しい事を考えてから言いなさい」

まどか「……………」ムスッ

マミ「……鹿目さん? どうかしたの?」

まどか「うぇひ!? な、なんでもないっスよ!?」

マミ「……」

ゲルト【何処がなんでもないんでしょうねー……】



719: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 17:56:08.09 ID:7ik8n1X+0



ほむら「さて……それでは佐倉さんは私の家に連れ込むとして……」

シャル「その前に鹿目さん達、一度家に帰した方が良いんじゃない?」

シャル「明日も学校だから、泊まるのなら予め支度はしといた方がいいでしょ?」

シャル「ついでに鹿目さんの両親に”建前”も伝えましょうよ」

ほむら「あ、そうですね」

ほむら「じゃ、佐倉さんは妖精さんアイテム『無間バック』にしまって」ギュム、ギュム

マミ「扱い酷くない!?」

ゲルト【うわぁ……】

ほむら「まずは鹿目さんの家に行くとしますかー」

ほむら「ご両親に挨拶もしておきたいですし」

まどか「えっ!? ま、待って! そんな、まだ手もつないでないのに!?」

ほむら「いや、挨拶するのに何故鹿目さんと手をつなぐ必要があるのですか……?」

シャル「……?」

マミ「……?」

ゲルト【……あー】


……………

………





720: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:02:46.59 ID:7ik8n1X+0



                 ――― 暁美家自宅 ―――


――――パタン

ほむら「……よし」

ほむら「一先ず佐倉さんは私の部屋に寝かせておきました」

ほむら「妖精さんアイテム『節穴ペンキ』でドアが糸コンニャクかナマズに見えるようにしておいたので」

ほむら「ドアを見つける事は不可能」

ほむら「目を覚ましても、佐倉さんがうちの外に脱走する事はあり得ません」

ゲルト【……ここまで意味の分からない説明というのも珍しいと思います】

シャル「安心なさい。半月も一緒にいれば慣れるから」

まどか「慣れるだけなんだね……」←翻訳眼鏡装備中

マミ「まぁ、何度も返り討ちにあってる私達ですら意味が分からないし」←翻訳眼鏡装備中

マミ「なんで糸コンニャクとナマズなのかしら……」

ほむら「そりゃあ節穴ですもん。何が見えても不思議はありません」

マミ「……うん。そうね」

ゲルト(あ、今の理解を諦めた時の返事だ)

ほむら「さて、とりあえず佐倉さんが目を覚ますまでの間やる事もありませんし」

ほむら「そろそろご飯にしませんか?」

シャル「そうねー、もうお腹ぺこぺこだし……」

ゲルト【えっと……私も、いいのですか……?】

ほむら「勿論!」

ほむら「巴先輩も!」

マミ「え? 私もご馳走になっていいの?」

ほむら「言ったじゃないですか。何事もなくいったらパジャマパーティに洒落込もうって」

ほむら「折角仲良くなれたのですから、今日は一緒に晩餐といきましょう」

ほむら「何より、ご飯はみんなで食べた方が楽しいですし!」



721: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:04:44.44 ID:7ik8n1X+0



妖精さん「たのしいことときいて」

まどか「あ、妖精さんだ。一緒に住んでるんだね」

ほむら「ええ。本当はもっとたくさん住んでいるんですけど、殆どの方は今、所用で別の場所にいるので……」

ほむら「まぁ、楽しくしていればそのうち増えますよ」

まどか「……増えるんだ」

マミ「今更だけど、どう見ても使い魔じゃないわよね、この子たち……」

マミ「でも、だったらなんなのかしら……キュゥべえには見えないみたいだし……」

ほむら「その話はご飯の時にでもゆっくり話しましょう」

ほむら「さて、流石に五人分の料理を作るのは大変です。妖精さんのデザートも作りたいですし……」

ほむら「今日は気合を入れないといけませんね」

マミ「私も手伝うわ。これでも一人暮らしは長いから、料理は得意だし」

ほむら「そうですか? でしたらそのお手並み拝見させていただくとしましょう」

ほむら「おっと、その前に家のセキュリティ設定を変えとかないと……トイレに行く度鍵を使うのも面倒ですし」

シャル「じゃ、私はテーブルの上を綺麗にしとくか」

まどか「あ、私も手伝う!」


\ワイワイキャッキャ/


ゲルト【……………】

ゲルト(誰かさやかさんの事を思い出してあげてください……)


……………

………





722: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:06:41.82 ID:7ik8n1X+0



ほむら「そこで私は言ってやった訳です! なんであなたは赤い洗面器を乗せているのですかって!」

まどか「あはははははは! それはないよ、ほむらちゃーん!」

シャル「うまっ! このハンバーグ、巴さんが作ったやつ?」

マミ「あら、よく分かったわね。流石暁美さんの料理を毎日食べてるだけの事はあるわね」

マミ「だけど暁美さんの料理も本当に美味しい……こんなにも素材の味を活かしたスープ、初めて飲んだわ」

マミ「これは、先輩として負けていられないわね」

ゲルト【あなた達は食べないの? ほら、このハンバーグ美味しいよ?】

妖精さんA「そのちゃいろくてまあるいかたちは、うけいれがたし」
妖精さんB「それではしあわせえられず」
妖精さんC「がっかりきぶん?」
妖精さんD「さんちがけずられますなー」

ゲルト【……ちなみに、このチョコレートキャンディは?】

妖精さんA「おお、このようなのまってました」
妖精さんB「ちゃいろくて、まあるいの」
妖精さんC「これこそしあわせきぶんのたべものですー」
妖精さんD「さんちがかいふくしますなー」

ゲルト【あなた達、さっき同じ理由で断ってなかった……?】

ほむら「では次は私が冒険中に遭遇した鮫島事件について……」

シャル「ねー、ほむらー」

ほむら「? なんですか、シャルロッテさん」

シャル「いや、こっちのジュースが切れちゃってさ。冷蔵庫にまだあったっけ?」

シャル「無けりゃ魔法でマッ○シェイクとか作るけど」

ほむら「あれはお菓子の範疇なんですね……」



723: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:08:18.48 ID:7ik8n1X+0



ほむら「しかしジュースですか。まだ冷蔵庫にあったかな……」

ほむら「あ、やっぱり切れてますね……うーん、しかしあの固形と液体の中間物を飲み物代わりにするのは聊か……」

妖精さん「にんげんさん、にんげんさん」

ほむら「あら、妖精さん。なんですか?」

妖精さん「おのみものごしょもうなら、こちらのしんてー」

ほむら「あらあら、瓶ジュースが一本。それは嬉しいのですが……」

ほむら「不思議な効果とか付けてませんよね?」

妖精さん「たまにはてんねんなこうほうにこだわりまして」
妖精さん「しぜんかいでもたまにみる、ふつーののみものですが?」

ほむら「そういう事でしたら遠慮なく」

ほむら「しかし何ジュースなのでしょうか……甘い匂いがするので果実系のようですが……」

ほむら「……ま、どうせ楽しい事にしかなりませんし、気にしない気にしない」

まどか「どうしたの? ほむらちゃん?」

ほむら「なんでもありません。ジュースが確保出来ましたので、皆さんにお配りしますねー」

シャル「おー、こっちこっちー」

マミ「ごめんなさいね」

ほむら「いえいえ」

ほむら「それじゃ、皆さんのコップに注ぎますねー」



724: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:09:50.53 ID:7ik8n1X+0



                ~五分後~


まどか「……うぇひっく」

まどか「うひひ……なんかこのジュース飲んでいたら……」

まどか「すっごく気分が良いよぉ~♪」

シャル「ほんとねー……ひっく……おそらぐるぐるでおもしろいしー」

ゲルト【あははははは! あんたの顔もぐにゃぐにゃーっ♪】

シャル「というかこれなにー? あぶないのみものじゃないのー?」

妖精さん「それ、おさけです」

シャル「あー、おさけかーっ!」

妖精さん「しぜんかいでも、ときおりできますので」
妖精さん「まねして、つくってみたり?」

まどか「だめだよ妖精さーん、おさけは……じゅうはっさいになってからーっ!」

まどか「でも今日はぶれーこうなのでだいじょーぶでーす! うぇひーっ!」

ほむら「うう……ひっく……ひっく……」

まどか「んぁー? ほむらちゃん、なんで泣いてるのー?」

ほむら「うう……私、駄目な人間なんです……妖精さんがいないと単なるクズなんです……」

ほむら「死んで詫びます! このナイフでぐさーっと心臓刺して死にますーっ!」

まどか「あははははは! ほむらちゃん、それナイフはないふでもウィンナーじゃん! あははははははは!」

シャル「つーかこれなにー? あぶないのみものじゃないのー?」

ゲルト【さっきお酒っていったじゃーん!】

シャル「あー、おさけかーっ!」

シャル「おさけははたちからじゃないと、だめなんだぞー」

シャル「あー、でもわたしら、はたちじゃないなー……あれー?」

シャル「つーかこののみものなにー? あぶないやつじゃないのー?」

ゲルト【アンタ人のはなし聞きなさいよぉー、お酒っつてんじゃーん】

ゲルト【ほらほら、コップ空じゃなーい。わたしのさけをのめーっ!】

シャル「あー、おさけかーっ!」

シャル「あははははは! おさけっておいしーねー!」

シャル「あれ? でもおさけってはたちからじゃないと飲んじゃだめじゃん?」

シャル「じゃあこれなにー? あぶないのみものじゃないのー?」

ほむら「うう……ナイフとウィンナーをまちがえるなんて……死にます! 今度こそ死にます!」

ほむら「くびつって死ぬので、ナイフ! ナイフもってきてくださーい!」





マミ「……何、これ?」


725: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:11:49.94 ID:7ik8n1X+0


マミ「いやいや、みんなお酒弱過ぎじゃない!? たった一口飲んでへべれけって!」

マミ「ゲルトちゃんまで酔ってるし! 魔女って普通に酔うものなの!?」

マミ「しかもこの口当たり、そんな強くないお酒だし……」

マミ「少なくとも昔、一口だけお父さんが飲ませてくれたビールと比べたらアルコールの味なんて……」

まどか「そーいえばなんか忘れてなーい?」

ほむら「うう……なにも思い出せない……死にたい……」

マミ「え、何か……?」

マミ「そ、そうよ! 佐倉さんの事、すっかり忘れていたわ!?」

ほむら「はっ! そうでした!」

ほむら「うう……佐倉さんの事を忘れてしまうなんて……」

ほむら「し、死んでお詫びをするしか……」

マミ「暁美さんさっきからなんでそんな死にたがっているの!?」

まどか「ああ……ないてるほむらちゃん可愛い……食べちゃいたいぐらい……♪」

マミ「鹿目さん何さりげなく暁美さん口説いてるの!?」

マミ「何!? お酒ってここまで欲望剥き出しになるものだったの?! 怖っ! ものすっごく怖っ!?」

マミ「と、兎に角! もう二時間も経ってるし、そろそろ佐倉さんの様子を見に行きましょ!」

シャル「いきましょー!」

ゲルト【いきまひょー!】

まどか「いきまっしょーい!」

マミ「……………」

マミ「いや、私だけで十分だからみんなは此処に残って」

ほむら「私ひとりじゃどうせなにもできないですからみなさん来てくださいぃーっ! びええええええええっ!」

マミ「ちょ」

シャル「ごーごーごーっ!」

マミ「まっ」

ゲルト【とつげきーっ!】

マミ「やめ」

まどか「うぇひひーっ!」

マミ「あの」

マミ「……みんな行っちゃった」

マミ「って、暁美さん!? みんな来てくださいと言いながらなんで私を置いていくのよ!?」

マミ「待ちなさいよーっ!?」


……………

………




726: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:13:19.99 ID:7ik8n1X+0


ほむら「えぐっ、えぐ……こちらが、わたしのへやです……ごめんなさい……」

マミ「いやいや、何も悪くないから! あなた何も悪くないからっ!?」

まどか「ここがほむらちゃんのおへや……じゅるり」

マミ「今のじゅるりは何!?」

シャル「ねー、これあぶないのみものじゃないのー?」

マミ「シャルロッテさんは何時までそのネタ引っ張るの!?」

ゲルト【ゲル、ゲルルル、ゲルルルルルル!】

マミ「ゲルトちゃん戻ってる!? 翻訳眼鏡越しなのに発声が元に戻ってる!」

シャル「あはははははは!」
ゲルト【ゲルルルルルル!】
まどか「うぇひひひひひ!」
ほむら「びええええええ!」

マミ(こ、これが酔っ払い……!)

マミ(魔女の口づけを受けた人たちより遥かに性質が悪い……意思の疎通が出来ない!)

マミ(私ではどうにも出来ない、止められない……!)

まどか「うぇひーっ! もうがまんできねーっ!」

まどか「ほむらちゃんのへやに突撃だよーっ!」


――――バンッ!!


マミ(ああ……容赦なく突撃して……)

杏子「ひっ!? な、なんだぁ!?」

マミ(そしてとうの昔に起きていたであろう佐倉さんをもろに警戒させてしまう、と)


727: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:14:25.95 ID:7ik8n1X+0


マミ(佐倉さん、魔法少女の姿だわ……魔法を使って脱出しようとしていたのかしら)

マミ「あの佐まどか「うぇひ!? ほむらちゃんの部屋に怪しい人が!?」

マミ「え、鹿目シャル「おかしいっぱいだすよーっ♪ あははははははは!」

マミ「せめて話をほむら「ああ! こんな部屋をみなさんに見られたら死ぬしかないですーっ!」

マミ「お願ゲルト【ゲルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!】

マミ「……………」

マミ「いい加減にしなさあああああああああああああああい!」

四人「わーっ! おっこられたーっ!」

マミ「ぜー……ぜー……」

杏子「な……お前、マミ、か……?」

マミ「え、ええ……(良かった! ようやくちゃんと話せる!)」

マミ(意思の疎通が出来る……それがこんなに嬉しい事だったなんて……!)

杏子「え、なんで急に泣いてんの? お腹痛いの?」

杏子「い、いや、それより……なぁ、どういう事なんだよ!?」

杏子「なんでアンタが、暁美ほむらと一緒にいるんだ!?」

マミ「え? なんで佐倉さん、暁美さんの事を……?」

杏子「キュゥべえから聞いたんだ。アイツとお前が戦っているって」

マミ「……」


728: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:15:46.09 ID:7ik8n1X+0


杏子「なのにこれはどういう事だよ。まるで、アイツと和解したみたいじゃねぇか」

杏子「昔は、魔女許すまじ、使い魔一匹逃がさない正義の味方だっただろ」

杏子「なのに魔女と協力している暁美ほむらと和解なんて……どうしたんだ?」

杏子「それとも正義の魔法少女は廃業したのか?」

マミ「それは……」

マミ(どうする……本当の事を、魔法少女の真実を話す?)

マミ(暁美さんが言っていた事も一理ある。彼女なら……真実を受け止められるかも知れない)

マミ(だけど受け止められなかったら?)

マミ(……まぁ、魔女になるだけなんだけど。そんでもって人間に戻してもらえる訳だけど)

マミ(……………)

ほむら「えぐっ、えぐ、うう……」

まどか「ほ、ほむらちゃん……はぁ、はぁ……こ、この気持ち、なんだろ……はぁはぁはぁはぁ」

シャル「おさけー♪ おさけさけさけー♪ ちーずじゃないよおさけだよー♪」

ゲルト【ピキィィアアイアアァアァアアアアァァァアアアア!!】

マミ(……………)

マミ(アカン。これはアカン)

マミ(これ以上のしっちゃかめっちゃかはもう本当に勘弁してほしいわ)

マミ「さ、佐倉さん。とりあえず落ち着ける場所に移りましょう? その、彼女たちのいないところで……」

マミ「そこで今までの事を話すから、ね?」

杏子「あ、ああ、まぁ、そうだな……」

杏子「あのイカれた連中と一緒に居たくはな――――」

マミ「……佐倉さん?」

杏子「……そうか。そういう事か……危うく騙されるところだった……」

マミ「だま、される?」

杏子「へへ……よく化けている、と褒めてやるべきか?」

杏子「その努力に免じて一つだけ教えてやる」

杏子「魔力の性質が変わってないよ――――魔女!」


729: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:17:21.72 ID:7ik8n1X+0


マミ「……………」

マミ(ん? なんで佐倉さん、私を指さして魔女扱いし……)

マミ(あ。そういえば魔女から人間に戻っても、魔力の形は魔女のままだっけ?)

マミ(で、私は一度魔女になって、それから人間に戻って……)

マミ(……私の背後には正気を失った人間一人に魔女一匹に元魔女が二人)

マミ(……………)

マミ(傍から見たら、私が彼女達を操ってる状態じゃない、コレ?)

杏子「あたしを誘い出し、洗脳する気だったんだろ! そうはいかないよっ!」

マミ(ああ、まぁ、そう判断するわよね。昔だったら私も同じ判断したでしょうね)

マミ「……………」

マミ「ちょ、えええええええええええええええええええええええっ!?」

マミ「ちちちちち違う! 誤解よ誤解! 私は魔女じゃないわ!」

マミ「いや魔女だったけど!? 色々事情があってね!」

杏子「はっ!? 事情だって? 魔法少女が魔女になるとでも言うつもりかい?」

杏子「そんな見え透いた嘘に誰が騙されるかよ!」

マミ「うっがあああああああ! これ言われるとすっごいムカつく! ごめんね暁美さぁぁぁんっ!」

杏子「ふん! 化けの皮がはがれたな! マミはどれだけ感情が昂ぶってもそんな荒々しい事は言わないよっ!」

マミ「言うわよ! 結構言っちゃうわよ! 最近は特に!」

杏子「じゃあ百歩譲って最近のマミはそうだとしよう。でもなっ!」



ほむら「う、ひっく……えぐ、えぐ、ううううううう……う、げほっ、げほげほげほ」

まどか「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

シャル「……ひっく……おさけ、たりない、たりない、たりないたりないたりないたりないたりないたりない」

ゲルト【ゲルプギビギィアアィアアアギュエアァア!!!】



杏子「あんな挙動不審で虚ろな眼差しの奴等の何処が正気だってんだ! お前が操ってる以外にないだろ!」

マミ「ええそうね全く以てその通りね何一つ反論できないわよコンチクショウッ!」


730: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:19:14.00 ID:7ik8n1X+0


マミ(ええい! 話し合いは決裂!)

マミ(かと言ってみんな、特に暁美さんがあんな状態じゃ相談も出来ないし……)

マミ(とりあえずリボンで拘束しちゃいましょう!)

マミ(みんなの酔いが醒めたら改めて話し合いを――――)

杏子「よっと!」

マミ「!? さ、佐倉さんが逃げ……!?」

マミ(ああ! ドアが開けっ放し! これじゃあ節穴どーたらこーたらが意味ないじゃない!)

杏子「正体がバレたら一か八かで攻撃ってか! そのぐらい読めてるよ!」

杏子「んじゃ、あたしは逃げさせてもらうねっ!」

マミ(ま、不味い! 佐倉さんの速さに私じゃ追いつけない!)

マミ「誰か佐倉さんを捕まえ……」

ほむら「」バタリ

まどか「うぇひ? ほむらちゃん寝ちゃったのー? ……うぇひ、うぇひひひひひ」

シャル「おさけおさけおさけ……おさけどこ、てが、てがふるえ……」

ゲルト【ゲル、ゲ……ゲ……オロロロロロロロ】ダバー

マミ「……………」

マミ「待ちなさい! 佐倉さん!」


……………

………




731: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:21:31.97 ID:7ik8n1X+0


杏子「ちっ……やはり追ってきたか……!」

マミ「あなたが思っているのとは違う理由だけどね!」

マミ(だけどどうする?)

マミ(極端な話、佐倉さんを『倒す』事は多分出来る……でも、捕らえるとなると難度は飛躍的に上昇する)

マミ(何しろ彼女の武器は槍……刃物)

マミ(対してこちらの武器はリボン。縛ろうにもスパッと切られてお終い)

マミ(勿論完璧に、後ろ手に組んだ状態で縛り、ソウルジェムを没収すれば大丈夫だけど……)

マミ(警戒している彼女は、それを許してくれるほど甘くない)

マミ(何か手立ては……)

妖精さん「おこまりですか?」

マミ「っ!?」

マミ「よ、妖精さん!? 私の髪の中から……!?」

妖精さん「おてつだい、させてくれるならー」

マミ「妖精さんが、力を貸してくれるの……!?」

マミ(妖精さん……暁美さんに力を貸していた種族……)

マミ(魔法少女の力を軽々と凌駕し、魔女を人間に戻せるほどの力を持つ存在!)

マミ(彼等の力を借りれば……)

マミ(だけど私に彼らのコントロールが果たして……)

マミ「……ところで」

マミ「なんでさっきから走っても走っても廊下が終わらないのかしら?」

妖精さん「ここ、つながってますからー」

マミ「つながってる? 何処と?」

妖精さん「まえと、うしろ?」

マミ「は、はぁ……」


732: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:40:20.08 ID:7ik8n1X+0


マミ(前と後ろが繋がってる? 一体どういう事?)

マミ(暁美さんならすぐに答えが導き出せるんでしょうけど……)

マミ(この子たちの説明、簡単過ぎて却って分かりにくい!)

マミ(と、兎に角追い駆け――――)

杏子「そりゃあっ!」

マミ「きゃっ!?(槍が……!)」

杏子「油断大敵、ってやつだな!」

杏子「じゃあねっ!」

マミ「しまっ……このままだと逃げられ――――」




杏子「えっ!?」




マミ「え?」

マミ(あれ? 前へと逃げていった佐倉さんが、何故か後ろに?)

杏子「くっ!? ど、どういう事だ……!?」

マミ「あ(また逃げ――――)」

杏子「え!?」

マミ(今度は前からやってきた)

杏子「ちくしょう!? 何がどうなってんだ!?」

マミ「……………」

マミ(逃げても逃げても、佐倉さん、前から現れたり後ろから現れたりを繰り返すばかり)

マミ(ああ……つながってるってそういう……)

マミ「……リボンで作る、草結びっと」

杏子「ずべっ!?」

マミ「そんでもってリボン召喚……はい、捕獲成功」


733: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:42:46.32 ID:7ik8n1X+0


マミ「えっと……佐倉さん?」

杏子「くっ、殺せ!」

マミ「うん、そういうお約束ネタいらないから」

マミ「最初から言ってるでしょ? 私はあなたとお話したいだけなの」

杏子「ふんっ! そう言って洗脳する気なんだろ……騙されないよ!」

杏子「それにこっちも……幻惑魔法の使い手なんだ!」

杏子「そう簡単に手懐けられると思わない事だね!」

マミ「佐倉さん……」

マミ(あー……心が折れそう……)

マミ(話を聞いてくれない人の説得って、こうも精神的にキツイものだったなんて……)

マミ(以前の私もこうだったのよね……こんなのを会う度に繰り返していた暁美さんのメンタルは本当にすご……)

マミ(……………いや、彼女全然説得してないわよね?)

マミ(駄目だと思ったのかソッコーで諦められ、ソッコーで実力行使に出ていたような……)

マミ(そりゃ、魔女になってもどうにかなるし、戦っても脅威でもなんでもなかったし)

マミ(扱いとしては居ても居なくても同じで、だけど飛び回られるとうっとおしい……)

マミ(羽虫レベル?)

マミ「……ぐすっ」

杏子「え。なんで泣くの? 泣き落とし?」

マミ「い、いえ、なんでもないわ……なんでもなかったのよ……ぐすん」


734: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:43:56.17 ID:7ik8n1X+0


マミ「そ、それより、あなたが思っているのとは違うの」

マミ「私達魔法少女は、キュゥべえに騙されていたのよ!」

杏子「……何?」

マミ(よし! 興味を持ってくれた!)

マミ(彼女は私と違って、昔からキュゥべえとは距離を置いていた)

マミ(そして、暁美さんの事をキュゥべえから聞いたとも言っていた)

マミ(だったら情報の大本を揺さぶる)

マミ(根本的な部分に嘘が含まれていると聞かされたら、彼女には無視出来ない)

マミ(ましてや前々から胡散臭さを感じている相手なら、尚更、ね!)

マミ「えっとね、実は」

――――カチッ

マミ「へ?」

マミ「……あれ? なんか私の踏んでいる部分の床が凹んで……」

妖精さん「それはー」

杏子「なっ!? つ、使い魔か!?」

マミ(あ、新鮮な反応)

マミ「えーっと、妖精さん。何か知っているの?」

妖精さん「それ、すいっちです?」

マミ「スイッチ?」

妖精さん「おやくそくすいっちー」

マミ「……お約束?」

杏子「え、なんなのそいつ。え? 妖精? え?」

マミ「ああ、この子はね――――」

マミ「……ん?」


735: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:47:10.19 ID:7ik8n1X+0


――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

杏子「……地鳴り、か?」

マミ「地鳴り、よね?」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

杏子「……大きくなってる、よな?」

マミ「大きくなってる、わね?」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

杏子「……こういう時のお約束と言えば」

マミ「まぁ、一つ、よね?」

妖精さん「おやくそく、だいじですなー」

マミ「うん。そういうお約束ネタいらないから」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! ! ! ! ! !



マミ杏子「で、でっかい岩がこっちに転がってきたああああああああああああああああああああああああああ!?」

マミ「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!? お約束過ぎる!」

杏子「いやそれよりこれ! リボン! 解いてよ!?」

マミ「あ、ああ! そうね! そうよね!」

マミ「ええっと、確か解除するには――――」

マミ「あ、駄目。これ間に合わないわ」

杏子「いやいやいやいやいや諦めるなよなんで諦めんの諦めないでお願い助けて」

マミ「とりあえずリボンをもう一本結びつけて――――」

マミ「逃げましょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

杏子「いででででででで!?」

杏子「リボンで結びつけてずるずると引っ張るなあああああああああああああああ!?」

杏子「尻! 尻が熱い! 燃える!?」

マミ「潰れるよりかはマシでしょ!」

妖精さん「つぶれてもぺらぺらになるだけですが?」

マミ「それが危険だっつってんでしょうがあああああああああああああああ!」


736: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:48:50.29 ID:7ik8n1X+0


マミ「とにかくこのまま逃げてもダメ! どっか脇道に入ってやり過ごさないと……」

マミ「って、この廊下前後が繋がってるんだからいくら走っても脱出出来ないじゃない!?」

マミ「こうなるともうあの岩の隙間を抜けてやり過ごすしか……」

マミ「いやいやいや無理無理無理無理! 四隅に殆ど隙間ないし!? 人一人分もないぐらいピッチリって!」

マミ「もーっ!? どうすればいいのよぉーっ!」

妖精さん「でしたら、こちらをおつかいくだされー」

マミ「えっ!? これ……く、薬……?」

妖精さん「これですーるするです?」

マミ「す、すーるする……」

マミ(全然意味が分からない……)

マミ(でも―――――)

マミ「佐倉さん!」

杏子「アヅヅヅヅヅヅ!? なんだこんな時に」

マミ「そい」

杏子「んぐっ!? ……え、あたし今何を飲んで」

マミ「死なば諸共、ね!」

杏子「何それ!? ねぇ何を飲ませたんだよオイ!?」

マミ「知らないわ!」

杏子「なんでそんな自信満々に無責任なんだよおおおおおおおおおおおおおおお!?」


737: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:50:38.06 ID:7ik8n1X+0


マミ「ちょ、あ、暴れないで――――きゃっ!?」

マミ(ま、不味……転んで……)

マミ(このままだと押し潰される!)

マミ「くっ!せめて佐倉さんだけでも――――」ギュッ

杏子「なっ……!? マ……」



―――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴ ……



マミ「……あら?」

マミ「あれ? なんで岩が通り過ぎて……」

―――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

マミ「あ、後ろからまた岩が来て……」

マミ「……………」

マミ「可笑しいわね……」

マミ「今、私の身体を岩が通り抜けたような気がしたのだけど」

杏子「……いや、どうやら気のせいじゃないみたいだ」

杏子「ほれ」

マミ「なっ……!?」

マミ(佐倉さんの身体が、私のリボンをすり抜け……)

マミ(その手が、私の身体を貫いた……ううん、すり抜けた!?)

杏子「……どういう事だ? あたしら、幽霊になっちまったのか?」

マミ「わ、分からないけど……妖精さん、どういう事なの?」

妖精さん「いまのは、すりぬけかぷせるでしてー」

マミ「すり抜けカプセル……」

妖精さん「のめばすりぬけます」
妖精さん「どんどんすりぬけ」
妖精さん「しせんもすりぬけ?」
妖精さん「めざすはくうきみたいなかんじ?」

マミ「……へ、へぇ~」

杏子「いや、意味分かんないんだけど……」


738: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:53:20.69 ID:7ik8n1X+0


マミ「ま、まぁ、助かったのならいいじゃない!」

マミ「それより、佐倉さん」

杏子「なんだよ」

マミ「このまま大人しく、この家に居てくれないかしら?」

杏子「……………」

マミ「あなたとは話したい事がいっぱいあるの」

マミ「……今までの事だけじゃなくて、最近の事とか……これからの事とか」

マミ「私の事が信じられないなら、それでも構わない」

マミ「だけど、彼女と……暁美さんと一度話をしてほしいの」

マミ「あなたなら、それだけで全てを分かってくれると思うから」

杏子「……ふん」

杏子「誰が魔女の言う事なんて聞くかよ」

マミ「それ、は――――」

杏子「――――と、マミなら言うんだろうな」

マミ「え?」

杏子「”アイツ”は頑固で、自分の正義を何処までも貫き通すような奴だ」

杏子「昔仲違いした弟子でも、アイツは迷わず助けるんだろうなぁ」

杏子「それこそ自分の身を挺してでも」

杏子「――――今みたいに、な」

マミ「!」


739: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:56:09.58 ID:7ik8n1X+0


杏子「リボンの使い方、あたしを洗脳したいならチャンスはいくらでもあったのにしない事……」

杏子「どれも魔女としては不自然だ」

杏子「でもあんたが本当にマミなら、それは不自然じゃなくなる」

杏子「だからアンタはマミだ。とりあえず、そう信じる事にしたよ」

マミ「佐倉さん……!」

杏子「で? なんで魔女の魔力を発してるんだ?」

杏子「まさか本当に……」

マミ「その話も暁美さんがしてくれるわ。今はあまり気にしないで」

マミ「それじゃ、暁美さん達のところに戻……」

杏子「……戻るのはいいけどさー」

杏子「”アレ”が洗脳魔法によるものじゃなけりゃ、なんなの?」

マミ「……酒は飲んでも飲まれるな、よ」

杏子「……ああ、まぁ、うん」

杏子「……まさかこんな形でまた酒の怖さを知るとはねぇ……」


……………

………




740: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:57:53.66 ID:7ik8n1X+0


マミ「さて、暁美さんの部屋に戻ってきたけど……」

まどか「くかー……くかー……」

シャル「」ブクブク

ゲルト【】ダバー

ほむら「すー……すー……」

マミ「全員、見事に寝てるわねぇ……」

杏子「たく……緊張感のない連中だねぇ」

杏子「仮にも魔法少女を捕まえたってのに、呑気に酒盛りかよ」

マミ「本当はそんな予定、無かったんだけどねぇ……」

マミ「まぁ、一度寝れば多分酔いも醒めるでしょうし、今起こせば、多分何時も通りになっている筈」

マミ「早速暁美さんを起こすとしましょう」

マミ「それじゃあ暁美さんを揺すって――――」スカッ

マミ「あら?」

杏子「おいおい、もう忘れたの? あたしら物をすり抜けるようになってるじゃん」

マミ「あ、ああ……そうだったわね」

杏子「面倒だけど、大声で起こすしかないね」

マミ「そうね……それじゃあ……」

マミ「おっきろー!!」

杏子「おらー! とっとと目を覚ませー!!」

ほむら「んにゅ……むにゃ……」

マミ「くっ……中々起きないわね……」

杏子「起きろ起きろ起きろ起きろー!」

ほむら「ん、んん……んぅ……?」

ほむら「……ふぁ……」

マミ「暁美さん! やっと起きてくれたわね!」

杏子「やれやれ……どんだけ気が緩んでんだか……」


741: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 18:59:16.43 ID:7ik8n1X+0


ほむら「……」スクッ

マミ「……あら? 暁美さん、何処に……」

マミ「え? あの、なんでベッドに戻って――――」

ほむら「おやすみなさい……くー」

マミ杏子「ええええええええええええええええええええええええええ!?」

マミ「寝た!? また寝た!? なんで!?」

杏子「なんだよアイツ!? くそ! こうなったら魔法で!」

マミ「ちょ、流石に槍を出すのは――――」

――――ガシャンッ

マミ「……………作った槍、手をすり抜けたわね」

杏子「……………すり抜けちまった」

杏子「……ぐすん」

マミ「い、いや、でもほら、これでまた大きな音を立てればいいんじゃないかしら!?」

杏子「お、おお! そうだよな!」

杏子「流石マミ! あたしの師匠だった事はあるな!」

杏子「よし! ロッソ・ファンタズマ(槍だけ)!」

――――どんがらがっしゃーん!

マミ「私も手伝うわ!」

マミ「ティロ・フィナーレ(空砲)!」

ドーン!

ドーンドーン!

どがらっがっしゃん

ドドドドドドドドドドドッ!!

マミ「ぜー……ぜー……」

杏子「どういう事だオイ……」

杏子「こいつ等、寝てるじゃねぇか!」


742: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:00:50.39 ID:7ik8n1X+0


マミ「お、可笑しい……これは流石に可笑しいわ……」

マミ「いくらお酒が入って熟睡しているからって、こんなの絶対に変よ!」

マミ「一体何が……」

まどか「ん、うーん……」

マミ「! か、鹿目さん!」

まどか「……あれ? 私、何をして……」

まどか「う……頭痛い……」

マミ「ああ、お酒のせいね」

マミ「水を飲んだ方が良いかも知れないわ」

まどか「うーん……水、飲もうかな……」

マミ「そうそう、それが良いわ――――」

すぅ……

マミ「……え?」

マミ(鹿目さん、今当然のように私をすり抜けて……)

マミ「!?」

杏子「おい!? アンタ、何マミの事を無視して……」

まどか「って、ここ何処なんだろ……ほむらちゃんの部屋かな……?」

まどか「キッチンは何処にあるんだろ。分かんないや」

杏子「お、おい……」

まどか「歩き回って探してもいいけど……うーん……」

マミ「ど、どういう事……?」

マミ「まるで私たちの姿が……ううん、それどころか声まで届いてない!」

マミ「まさか、妖精さんがくれたあの薬の影響……!?」

杏子「おいおい、姿どころか声までって……」


743: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:02:33.60 ID:7ik8n1X+0


マミ「と、兎に角、なんとか暁美さん達に私達の事を知らせないと……」

マミ「ああ、でもどうやって……」

杏子「……やれやれ。今度はあたしの出番かな」

マミ「佐倉さん……?」

杏子「自分の存在を知らせる方法は、何も声とボディタッチだけじゃない」

杏子「ちょっと荒っぽいけど――――こういう感じに、ね!」

マミ(なっ……佐倉さん、大量の槍を作り出して……)

マミ(その槍で床に傷を付けた!?)

マミ(ううん、ただの傷じゃない!)

マミ(『トモエマミ』『ココニイル』……)

マミ(メッセージ! これなら、例え声が聞えなくても鹿目さん達に私達の存在を伝えられる!)

まどか「ん……これ……?」

まどか「文字? トモエマミ、ココニイル……?」

まどか「……」

まどか「ほむらちゃん……起きて……」

マミ「やった! 気付いてくれたわ!」

杏子「え? あ、ああ……そ、そうだな……」

杏子「……?」

まどか「ほむらちゃん、ほむらちゃん」

ほむら「う、んん……なんですかぁ……?」

まどか「ねぇ、あれを見て……」

ほむら「んー? 床ですか? それが何か……」

ほむら「ん……これは……」

マミ「良し! 聡い暁美さんならきっと……」





ほむら「なんですかコレ……一体何時こんな”落書き”が?」



744: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:05:42.66 ID:7ik8n1X+0


マミ(えっ……?)

ほむら「妖精さんの仕業ですかねぇ……しかし、こんなしょーもない事、彼らの好みとは思えませんし……」

ほむら「そもそも”トモエマミ”って誰ですかね?」

ほむら「鹿目さん、知ってます?」

まどか「ううん。私も全然聞き覚えがない……」

まどか「だから、なんか怖くて……」

ほむら「あー、案外本当に”ソレ”かも知れませんね」

まどか「ちょ、止めてよほむらちゃん!? 私、そういうの苦手なんだから!」

ほむら「そんな怖がらないで平気ですよ。あっち側の方々って、けっこー人懐っこいですし」

ほむら「うちのテレビに住み着いているサワコさんも、サービス精神旺盛な方ですからねぇ」

まどか「なんでそんな詳しいの!? というかサワコさんって誰!? テレビに住み着いてるって何!?」

ほむら「何より、今日はもう眠いんです。お肌に良くないのです」

ほむら「ですからそれの調査は明日、です……ぐぅ」

まどか「寝ないでよほむらちゃーんっ!?」

マミ「……どういう、事……?」

マミ「触れないだけじゃない。聞こえないだけじゃない」

マミ「記憶からも消え去っている!?」

杏子「おい、どういう事だよ!? あの妖精って奴は何をしたんだよ!」

マミ「私だって分かんないわよ!」

妖精さんA「そのこたえはー」
妖精さんB「ぼくらがおこたえ?」

杏子「なっ、テメェら……!」

マミ「佐倉さん待って! 落ち着いて!」

マミ「彼等に、敵意はない筈よ」

杏子「敵意がない!? この状況でよくそんな事言えるね!」

マミ「いいから大人しくして!」


745: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:08:50.56 ID:7ik8n1X+0


マミ「……それで、妖精さん。これはどういう事なの?」

マミ「これは全部、あの『すり抜けカプセル』ってやつの仕業なの?」

妖精さんs「そー」

妖精さんA「あれのむとなんでもすりぬけ」
妖精さんB「おおいわとおりぬけ」
妖精さんA「くうきもすりぬけ」
妖精さんB「だからおこえとどかず」
妖精さんA「しせんもすりぬけ」
妖精さんB「はためにはうつりませぬ」
妖精さんC「ついでにきおくもすりぬけ」
妖精さんA「すりすりすーり」
妖精さんB「とおりぬけーん」

マミ「……あれ? 増え……い、いえ、今はそんな事を気にしている場合じゃないわ」

マミ「ちょっと言葉足らずだし、そもそも意味が分からないけど……」

マミ「あの薬を飲むと、どんなものでもすり抜けてしまう」

マミ「それは大岩のような障害物だけでなく、空気とか光とかもすり抜けてしまう」

マミ「そして、人の記憶からも」

マミ「すり抜けた記憶は拾えない。拾えないから思い出せない……って事なのかしら」

杏子「ちょっと、なんだよそれ……」

杏子「飲んだだけでみんなに思い出してももらえない薬?」

杏子「笑えないねぇ……魔法でもそんなの出来ないだろ」

マミ「昔暁美さんが言っていたのが正しければ、これ、科学らしいけどね……」

杏子「いやいや」

杏子「つーか、なんでそんな効果を付けたんだよ。意味ないだろ」

妖精さんA「しゃれですな」
妖精さんB「ぶつりてきすりぬけだけなんて」
妖精さんC「おもしろみないですし?」

杏子「面白さ重視なのかよっ!?」


746: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:12:08.57 ID:7ik8n1X+0


マミ「と、兎に角、このままだと私達は存在ごと皆から忘れ去られてしまうわ」

マミ「妖精さん、どうにか出来ない?」

妖精さんB「でしたら、おふろにはいるがよいかと?」

マミ「お風呂?」

妖精さんA「いまからおつくりしますので」
妖精さんC「しょうしょうおまちくださればー」

杏子「はぁ? 今からって――――」

妖精さんA「それでは」
妖精さんB「さぎょー」
妖精さんC「かいしーっ」

マミ(! 妖精さんが凄い速さで動きだして……)

マミ(部屋から出て、廊下に何かを組み立てている!)

マミ(って、こんな事言ってる間に……)

杏子「……おい……」

杏子「本当に、風呂が出来たぞ……?」

マミ「え、ええ……お風呂が……」

マミ(いや、まぁ、お風呂が作られるのを見るの、これで二度目だけどね……)

マミ「えっと、それでどうすればいいのかしら? 入ればいいの?」

妖精さんB「そうです」
妖精さんA「こちら、こうようです」

マミ「あら、立て看板……無駄に本格的ね……」

マミ「効用は……」

『みもこころもきれいさっぱりりふれっしゅ』
『ちょーふれっしゅ』
『おくすりこうかもぬーきぬき』
『つかりすぎるとふれっしゅしすぎ?』
『みずきよければうおすまず?』
『ほどほどがよいかんじ』

杏子「……意味分かんない」

マミ「ま、まぁ、おくすりこうかも~とか書かれているし」

マミ「入れば分かるでしょ。うん」


747: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:13:57.04 ID:7ik8n1X+0


マミ「そのためにも、脱がないと……」

妖精さんB「こちら、たおるです」

マミ「あ、どうも」

マミ(うーん、みんなには見えてないと分かっていても、裸になるのは恥ずかしい……)

杏子「んじゃ、お先ー」

マミ「佐倉さん早っ!? って、すっぽんぽんじゃない!?」

杏子「いーじゃん別に。女しかいないし、誰も見てないんだし」

杏子「それにタオルを湯船に浸けるのはマナー違反だぞー」

マミ「ぐぬぬ……」

マミ「わ、分かったわよ……」

――――ちゃぽーん

マミ「……ふぅ……」

マミ(ああ……やっぱりお風呂は気持ち良いわね……)

杏子「しっかし、こんなんで本当に薬の効果が抜けるのかねぇ……」

妖精さんB「こうかはげきてきですゆえ」
妖精さんC「まもなくききめでるかと?」

マミ「劇的、ねぇ……まだ入って一分も経ってないけど」

マミ「そういう事ならものは試し」

マミ「とりあえず廊下の壁を触ってみて――――」

マミ「!?」

マミ「さ、触れたわ!」

杏子「なんだって!?」

マミ「触れる! すり抜けない!」

マミ「治った! もう治ってるわ!」


748: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:15:38.45 ID:7ik8n1X+0


まどか「ん……声が……?」

まどか「って、マミさん!? と、さ、佐倉、さん……?」

マミ「鹿目さん!? 私が見えるの!?」

まどか「え? えっと、見えます、けど?」

まどか「それより、なんで二人ともお風呂に入って……いや、そもそもなんで廊下にお風呂が……?」

マミ「やったーっ!」ザバーンッ

まどか「ちょ、マミさん!? 立っちゃ駄目です! 丸見えですから!?」

杏子「……やれやれ。ようやく一段落か」

杏子「んじゃ、あたしも上がらせて……」

杏子「ん?」

マミ「ああ、良かった……本当に分かったわ……」

まどか「マミさん、何かあったのですか?」

マミ「ええ、まぁ……でも今日はもう遅い、というか明日になっちゃってるし……」

まどか「あ……ほむらちゃんの部屋の時計、十二時回ってる……」

マミ「明日も学校だし、もう寝ないと……」

マミ「佐倉さんも、もう寝ない? というか、あなた学校は行って――――」

杏子「あ、ああ、その……」


749: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:17:26.12 ID:7ik8n1X+0


杏子「あたしは、もう少しこの風呂に入ってるよ」

杏子「ホームレス生活だったからさ、風呂とか滅多に入れないんだよねー」

杏子「だからこの機にたっぷり入らないとね!」

マミ「……そう」

マミ「そういう事なら、分かったわ。私も女だから、お風呂に入りたい気持ちは分かるし」

マミ「でも長湯は駄目よ?」

杏子「おう、わーてるって」

マミ「じゃ、寝ましょうか」

マミ「……布団とか出せないから、その辺でごろ寝だけど」

まどか「というか、なんでシャルロッテちゃんとゲルトルートちゃんはその辺で寝ているの……?」

マミ「……色々あったのよ」

マミ「とりあえず、あの二人と身を寄せて寝ましょうか」

マミ「暁美さんはちゃっかり自分の布団で寝てるけど」

まどか「……ですね」

マミ「それじゃ、佐倉さん。おやすみ……逃げちゃ駄目よ」

杏子「おやすみ。言われなくても逃げねーよ……逃げられる気もしないし」

杏子「アンタと話したい事、まだまだあるしな」

マミ「そう……うん、そっか」

マミ「おやすみっ」

杏子「……………」

杏子(マミの奴、シャルロッテって奴と魔女の間に入って寝始めた、な……)

杏子(ふ、ふふふ……)

杏子(マミの奴は気付かなかったみたいだが……)

杏子(この風呂に浸かっていると、ソウルジェムが綺麗になる!)

杏子(しかもただ綺麗になるだけじゃない。力がどんどん湧き出るような気分だ)

杏子(ふふふ……このまま浸かり続けたら、どれだけ力が得られるんだろうねぇ)

杏子(でっかい魔力が手に入ったら……)

杏子(入ったら……)

杏子(……)



杏子(力を手に入れて……どうしたいんだろう、あたし……?)



……………

………




750: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:18:50.20 ID:7ik8n1X+0



――――ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。


ほむら「う、うーん……」

ほむら(うう……頭が痛い……)

ほむら(此処は、私の部屋ですか……時計は……まだ六時……)

ほむら(えっと……あれ? 部屋に来た記憶がない……?)

ほむら(確か、えーっと……そうだ、鹿目さんと巴先輩が泊まって)

ほむら(ご飯を食べて……そんで……)

ほむら(そんで……なんだっけ……?)

ほむら(まぁ、忘れるって事は大した事ではないのでしょう)

ほむら(それより頭が痛くて敵いません……妖精さんに頭痛止を作ってもらうべきでしょうか……)

ほむら「とりあえず、今日も学校ですし、皆さんを起こすとしましょう」

ほむら「皆さーん。起きてくださーい」

シャル「う、うう……頭、痛い……」

ゲルト【うーん……あれ……私、何をして……?】

まどか「ふわぁ……おはよう……」

マミ「んーっ! おはようっ! なんか身体スッキリ! お風呂のお陰かしら」

ほむら「……随分と千差万別な目覚めですね、皆さん」


751: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:20:58.36 ID:7ik8n1X+0


ほむら「ん? そういえばあと一人居たような……」

シャル「あと一人ぃ?」

ゲルト【えーっと……】

まどか「ほら、佐倉さんだよ」

シャル「あー、そういや居たねー」

シャル「で、その佐倉さんは今何処に?」

マミ「え……?」

マミ「い、居ない!? そんな!?」

ほむら「いや、そんな慌てなくても……トイレかも知れないじゃないですか」

マミ「で、でも……」

ほむら「まぁ、起きたら見知らぬ家にいた、という状況ですし、逃げられていても可笑しくないですけど」

ほむら「何故か家にある殆どのセキュリティが解除されてますし……切った覚えはないんですけどねぇ」

ほむら「とりあえず、手分けして家の中を探しましょう」

ほむら「それに仮に逃げられていても、そんな慌てる事じゃないですよ」

マミ「え、ええ……」

シャル「つーか何でそんなに慌ててるの? 昨日私らが寝ている間になんかあった?」

マミ「まぁ、それなりに……」

シャル「それなりに?」

ゲルト【シャルロッテさん。ここで話していても始まりません。今は佐倉さんを探しに行くとしましょう】

ほむら「ですね。それでは早速部屋を出て――――」

ほむら「って、廊下にお風呂? 妖精さんの仕業ですかね……」

ほむら「……あら?」


752: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:24:02.25 ID:7ik8n1X+0


マミ「一体どうし――――」

マミ「!?」

マミ「さ、佐倉さん!?」

マミ(佐倉さん、妖精さんが作ったお風呂に入ってる……?)

マミ(まさか、昨日の夜からずっと浸かっていたの!?)

シャル「あら?」

ゲルト【あ、本当です。こんな近くに居たとは】

まどか「あれ? でも確か昨日も入って……?」

マミ「あの、佐倉さん!?」



杏子「……あ、巴先輩」

杏子「おはようございます」



マミ「え? あ、うん、おはよう」

マミ「……………ん?」

ほむら「……巴先輩。今の態度を鑑みると、何かご存じなのですか?」

マミ「い、いや、ご存じというか、なんというか……」

ほむら「ふむ。後ほど聞かせてもらうとしましょうか」

ほむら「でも今は置いといて、佐倉さん。朝ご飯を一緒に食べませんか?」

ほむら「話したい事も、訊きたい事もあるでしょう?」

杏子「ええ……そうですね」

杏子「お言葉に甘えて、そうさせてもらいます」

ザパー……

マミ(あ、佐倉さんが湯船から上がって――――)

マミ「……え?」


753: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:25:36.64 ID:7ik8n1X+0


――――皆が皆、息を飲んでいました。


シャルロッテさんも、ゲルトルートさんも、鹿目さんも、巴さんも、誰も声を出しません。

かく言う私も声が出ません。


その肌はまるで宝石のように、眩い煌めきを見せていました。


その紅い髪は夕焼けのように哀愁を呼び、同時に心を惹きつけて離しません。


胸を隠す仕草も上品で、裸体だと言うのに色欲的なものを一切感じさせない……さながら芸術品を
目の当たりにしているかのような感動を覚えてしまいます。


そして何より目を惹くのは、翼。


背中から生えている一対の――――純白の翼。


――――それはある意味、異形と言うべき姿なのかも知れません。

何しろ人間の背中に、翼は生えていないのですから。


しかし、私の脳裏を過ぎった言葉はそれではありません。


それどころか、皆さんの……驚きと感動の入り混じった表情を見る限り、誰もが私と同じ事を思ったに違いありません。


ですから、私は言いました。


754: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:26:26.17 ID:7ik8n1X+0



ほむら「……これは、アレですかね」


シャル「アレじゃないかしら」


ゲルト【アレですよねぇ】


マミ「ならみんなで言いましょう」


まどか「いいですね。じゃ、いっせーのっせ、で」


五人「いっせーのっせ】



755: ◆HYvP9smHgsVn 2014/04/16(水) 19:27:14.30 ID:7ik8n1X+0









     「杏子ちゃんマジ天使になってるうううううううううううううううううううううううう!?】










789: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:12:51.69 ID:SQ3kI+bJ0

 

えぴそーど じゅうご 【杏子さんが、らぶりーえんじぇる ぜんぺん】



790: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:14:06.50 ID:SQ3kI+bJ0


前回のあらすじ

佐倉さんが天使になりました。


ほむら「いやぁ、それにしても、もぐもぐ、大変な事に、んぐんぐ、なりましたねー」

シャル「口に物入れたまま喋ってんじゃないわよ」

まどか「まぁ、学校あるからあまり時間ないしね……」

マミ「朝ご飯ご馳走になっちゃって、悪いわね」

ほむら「いえいえ。今度巴先輩の家でお菓子でも頂くつもりですから」

マミ「ふふ。そう言ってくれると有り難いわ」

マミ「……それで、佐倉さんはどういう状態なの?」

ほむら「そうですねぇ……簡単に説明しますと」

ほむら「佐倉さんが浸かったこの温泉には、身体に何らかの影響をもたらすモノだけでなく」

ほむら「邪悪なもの、それこそ悪心と呼ばれる心すらも祓う力があったようなのです」

ほむら「一晩中入り続けた佐倉さんは、全ての悪心がすっぽりと抜けてしまったのでしょう」

シャル「悪心が抜けた、ねぇ……」

マミ「それは、まぁ、良い事なんでしょうけど……」

ほむら「何言ってるんですか。そんな訳ないでしょう」

マミ「え?」


791: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:16:35.89 ID:SQ3kI+bJ0


ほむら「悪心……七つの大罪にあわせて、仮に七つあるとしましょう」

ほむら「傲慢、暴食、色欲、怠惰、嫉妬、憤怒、強欲」

ほむら「言い方が言い方ですので悪い印象があるかも知れませんが、人間なら誰もが持つ普通の心です」

ほむら「確かに強過ぎる欲望は罪かも知れません。常人並であっても罪悪と呼べるかも知れません」

ほむら「しかし、それらを一切持たない者は……果たして人間なのでしょうか?」

ほむら「何も誇らず、食を欲さず、恋もせず、決して怠けず、誰にも嫉妬せず、決して怒らず、何も求めない」

ほむら「そんな『イキモノ』を、皆さんは人間と呼べますか?」

まどか「……………」

シャル「……で? 巴さん曰く以前と全然異なる性格はそれで説明出来るとして」

シャル「あの純白の翼を持った天使ボディは?」

ほむら「そこまでは流石に私でも分かりかねます」

ほむら「という訳で妖精さん。説明お願いしますね」

まどか(あ、妖精さんが摘み上げられてる……)

妖精さん「ぴゅあなはーとにはてんしがにあうとおもいまして」

ほむら「成程。真っ白な心の持ち主といえば天使なので、ついでに見た目も天使にしてしまおうと」

ほむら「しかし看板にそのような一文はなかったと思いますが?」

妖精さん「かくしこうのうなので、かいてはおりませなんだ」

ほむら「隠しコマンドじゃないんですからー」

ほむら「相変わらずノリを大事にする方々ですね。そんなところが大好きです」

妖精さん「ぼくらもすきすきー」

まどか「…………」ギリリ

マミ「あら、やっぱり大好きなのね」

シャル「とりあえず、理由は分かったわ。納得は出来ないけど」

シャル「で、肝心の佐倉さんだけど」









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杏子「……はむ」
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杏子「……………」モグモグ
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792: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:18:29.76 ID:SQ3kI+bJ0


シャル「ただ静かに食べているだけに、無駄に神々しく輝いてる……」

ほむら「ピュアな心が溢れ出しているんじゃないですかね」

ゲルト【妖精さんが作ってくれた修道服を着てますけど、天使の服があれで良いのでしょうか……】

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杏子「……?」
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杏子「皆様、どうかされましたか?」
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ほむら「いえ、なんでもありませんよ」

ほむら「……ふぅ、ごちそうさま」

ほむら「洗い物は姉さんにお願いするとして……」

ほむら「私達はそろそろ学校に行きますけど、佐倉さんはどうしますか?」

ほむら「もし私達が帰ってくるまでこの家に居たいと言うのなら、それは構いません」

ほむら「妖精さんが居るので、安全のために隔離させてもらいますが……」

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杏子「その事ですが……ワガママを承知で、一つお願いしたいのです」
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ほむら「お願いですか?」

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杏子「はい」
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杏子「わたくしも、皆さまの学校に連れて行ってはもらえないでしょうか」
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ほむら「え?」

シャル「学校って……アンタ、見滝原の生徒じゃないわよね?」

シャル「何か、用でもあるの?」

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杏子「……話せば長くなります」
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シャル「構わないわ。教えて」

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杏子「……はい」
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杏子「巴様はもう知っている事ですが、わたくしは、
   協会の神父の娘として生まれました」
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杏子「父の説法は、身内が語っても説得力はないでしょうが……素晴らしいもの」
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杏子「ですが、誰も父の話に耳を傾けてはくれませんでした」
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杏子「それどころか、説いた教えが所属する団体の教義から外れていたがために」
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杏子「父は、破門される事となりました」
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杏子「結果わたくしの家族の生活は困窮する事となりました」
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杏子「ですが、わたくしが悔しかったのは、父の教えを誰も聞いてくれない事」
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杏子「正しい事をしている父が、報われない事でした」
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杏子「……その時現れたのがキュゥべえだったのです」
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杏子「彼にどんな奇跡でも叶えると言われた私は、その誘いのまま願いました」
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杏子「みんなが、父の話を聞いてくれますように……と」
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シャル「アイツ……!」


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杏子「今思えば、あまりにも疑わしい話です」
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杏子「しかし、当時のわたくしは素直に喜んでいました。父が報われた、と」
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杏子「……条理に反した願いは、いずれ歪みを生み、不幸を生むというのに」
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マミ「……」

シャル「……どういう事?」

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杏子「……父に、わたくしが魔法少女である事がばれてしまいました」
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杏子「幻術を使い、人心を惑わす超常の力……」
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杏子「それを目の当たりにした父は、
   人々が自分の話を聞いてくれるようになったのは」
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杏子「全て、わたくしが人々を惑わした結果だと思ったのです」
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まどか「そんな……!?」

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杏子「……父は荒れました。この世の全てに絶望しました」
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杏子「そして……家族との心中を試みました」
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杏子「人心を惑わす魔女である、わたくし以外の家族と」
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ゲルト【……………】


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杏子「それは、わたくしの罪が招いた結果」
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杏子「本来なら、わたくしは償わねばならなかったでしょう」
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杏子「例え、その命を以てしても」
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杏子「……ですがわたくしは、逃げました」
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杏子「償い方が分からず、圧し掛かる罪に耐えかね、敢えて罪に身を置いたのです」
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杏子「全てを自業自得にすれば、わたくしは……償いから目を背けられる」
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杏子「最期の時に降りかかる不幸で、重ねた罪を全て清算した気になれる」
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杏子「そして巴様……眩し過ぎる貴方様から、逃げられると思ったのです」
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マミ「佐倉さん……」

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杏子「だけど、もうわたくしは逃げたくないのです。罪を、償いたいのです」
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杏子「わたくしに何が出来るか分かりません」
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杏子「今日までに積み重ねた罪は、最早わたくしの命だけでは到底償えないでしょう」
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杏子「それでも何かせずにはいられません。何かをしなければならないと思うのです」
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杏子「例え、それすらもわたくしのワガママだとしても」
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杏子「ですからわたくしは……」
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杏子「巴様……あなたの傍に居ようと考えたのです!」
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マミ「……………」

マミ「ん?」



796: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:24:26.95 ID:SQ3kI+bJ0


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杏子「魔法少女として常に気高い志を持つあなた様の傍に居れば」
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杏子「その志と佇まいを学ばせてもらえば」
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杏子「わたくしは、正しい心を取り戻せるかも知れない……」
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杏子「正しい心を取り戻せば、償いの仕方が分かるかも知れないと思ったのです」
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マミ「え、えーっと……」

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杏子「決して勉学の邪魔は致しません。教えがあるのなら、全て吸収してみせます」
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杏子「どうか、御傍に置かせてください……!」
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マミ「と、言われても……」

シャル「……巴さん、どうするつもり?」ボソボソ

シャル「あの子に説法なんて出来る?」ボソボソ

マミ「出来る訳ないでしょ! むしろ償い方なんて私が訊きたいぐらいよ!」ボソボソ

シャル「だよねぇー……私も訊きたいわ」ボソボソ

シャル「でもさぁ、突き放すのも無理でしょ……あのピュアな瞳に見つめられたら」ボソボソ

マミ「それは、そうなんだけど……」ボソボソ

マミ「ねぇ、暁美さんはどう思」

マミ「……………」

マミ「あれ? 暁美さん?」

まどか「え? ……あれ? ほむらちゃんが居ない……?」

ゲルト【……あのー】

シャル「あ、ゲルトちゃん。どったの?」

ゲルト【これ、暁美さんからの言伝が書かれたメモでして……】

シャル「メモ?」


797: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:25:03.98 ID:SQ3kI+bJ0





            ――― 話が長くなりそうですので、先に学校行ってますね ―――
























           ――― あと、流石にもうそろそろ家を出た方が良いと思いますよ? ―――





798: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:26:09.51 ID:SQ3kI+bJ0


シャル「……………」

シャル「……巴さん、今何時かしら?」

マミ「……八時、ってところね」

まどか「……此処から学校までって、どれぐらい?」

シャル「確か……四十分ぐらい」

マミ「えーっと、ホームルームが八時四十五分開始だから……」

まどマミシャ「……………」




「「「ち、遅刻うううううううううううううううううううううううううううううううう!?」」」




マミ「きゃあああああああああああああ!? は、歯磨き! 歯磨きしないと!」

まどか「私の制服何処ぉー!?」

シャル「あ、鹿目さんそっちのドア開けたら」

まどか「ひぃ!? なんかでっかい食虫植物が出てぐぽっ!?」

シャル「鹿目さーーーーーーーーーーーーーん!?」

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杏子「あの、それでわたくしは……」
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マミ「もう色々面倒だから一緒に来れば良いじゃない!」

ゲルト【え? いや、でも佐倉さん部外者……】

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杏子「――――はいっ!」
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杏子「あ、でしたらちゃんと歯磨きをしないといけませんね」
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杏子「洗面台はあっちでしたか……」
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マミ「いや私が使いたいから!? お願いだから先に使わせて!!」

まどか「―――――!??! ――――――!!!!」

シャル「鹿目さんが変な食虫植物に食べられてるぅーっ!? 妖精さん! 妖精さーん!?」

ゲルト【ああもう……良い話が全部台無しですよぅ……】



……………

………




799: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:28:04.60 ID:SQ3kI+bJ0



               ―― 見滝原中学校・玄関口 ――



さやか「……で、その結果がこれか」

まどか「ぜー……こひゅー……ぜー……こひゅー……」

マミ「な、なんとか、間に合った、わ……」

さやか「まどかは死にかけ、巴先輩も息絶え絶え」

さやか「この状況について元凶のほむらくんはどう思いますか?」

ほむら「想定外でした♪」

さやか「嘘を吐くにしてももう少しマシなものがあるでしょうが」

さやか「つーか、シャルちゃんとゲルトちゃんは?」

まどか「しゃ、シャルロッテちゃんは……今日は、もう疲れたから、休むって……」

まどか「ゲルトルートちゃん、も……留守番……」

さやか「あー、まぁ、二人は学生じゃないしね」

さやか「……でもって」

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杏子「……………」ニコニコ
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さやか「あなたが、えーっと、佐倉ちゃん?」

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杏子「はい。佐倉杏子と申します」
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さやか「あたしは美樹さやかって言うんだ。よろしく」

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杏子「よろしくお願いします」
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さやか「……………」

さやか「ねぇ、ほむら。この超絶美少女、本当に実在するの?」

ほむら「眼前に居るのに実在を疑うってどういう事ですか」

さやか「いや、だって物理的にキラキラ輝いてるし、翼生えてるし」

「なにあの美少女」「やべぇ、マジやべぇ……」「つーか羽生えてね?」
「天使や、天使が居る」「俺、幻覚見てるとかじゃないよね?」

さやか「……周りの男子だってあたしと似たような反応だし」


800: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:29:43.16 ID:SQ3kI+bJ0


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杏子「そんな……あまり見られると……恥ずかしいです」
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杏子「それに、ああ……わたくしの肢体で皆様を欲情させたとなれば」
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杏子「大罪の一つである色欲を抱かせたとなっては、どう償えばいいか……」
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さやか「……ごめん。この子の言う事難しくてよく分かんない」

ほむら「えっちなのはいけないと思います」

さやか「うん、ありがと」

ほむら「まぁ、あまり気にしない方が、というより構わない方が良いですよ?」

ほむら「男なんて可愛い子を見つければ犬のようについて回る」

ほむら「そしてちょっと構ってあげるとすぐにつけ上がる生き物です」

ほむら「弄ぶつもりならそれでも良いでしょうけどね」

さやか「なんか、やけに詳しくない?」

ほむら「私ほどの美少女がモテない訳がないでしょう? これでもラブレターは結構な数を貰ってます」

さやか「自慢かよこんちくしょう」

まどか「」ギリギリ

マミ「……か、鹿目さん? あの、魔力が漏れて……」

ほむら「ま、良く知らない相手でしたし、サバイバル技術は皆無」

ほむら「ノリは悪いし、優しさも足りない」

ほむら「しかも高々十メートルちょっとのドラゴンと遭遇した途端逃げ出す体たらく」

ほむら「理想からあまりにも遠過ぎる残念な方々でしたので、誰とも付き合いはしませんでしたけどね」

さやか「うん、理想の相手像にサバイバル技術が入ってるアンタも大概残念だと思うけどね」

さやか「あとドラゴンを見たら誰でも逃げる」

まどか「わ、私は逃げないよほむらちゃん!」

ほむら「鹿目さん、逃げなくても平気そうですからね。強いし」

まどか「ウェヒー……」

ほむら「話が逸れましたが、まぁ、そういう事ですよ」

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杏子「わ、分かりました……出来る限り、気にしないようにします」
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男子「あ、あの……!」

五人「はい?」



801: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:31:48.59 ID:SQ3kI+bJ0


ほむら(あら、知らない男子……一年生? が話しかけてきましたね)

ほむら(……視線的に、佐倉さんに)

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杏子「……こうして唐突に話し掛けられた場合はどうすれば良いのでしょうか……?」
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マミ「流石にそれは……答えてあげたら?」

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杏子「えっと、では……何かご用でしょうか?」
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男子「で、では、言わせてもらいます」

男子「一目惚れしました! 付き合ってください!」

五人「………………」

「「「「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」

マミ「こ、ここ、告白!? 告白キタわよ!?」

まどか「生告白だーっ!」

さやか「ほ、ほむら、これはどうすれば……」

ほむら「は、破廉恥ですーっ!? 告白なんて駄目ですーっ!」

さやか「おおおおいっ!? さっきまでの余裕は何処行った!? ラブレター数通貰った経験はどうした!?」

ほむら「だ、だって、他人の恋愛って……」

ほむら「なんか生々しいじゃないですかっ!」

さやか「生々しいとか言っちゃうお前が生々しいよ!?」

ほむら「そ、それは……でも……」

ほむら「自分の恋愛は自分で制御出来ますけど、他人の恋愛は何処まで行くか分からないじゃないですか……!」

ほむら「ましてや男と女が付き合ったら……」

ほむら「あ、赤ちゃん出来ちゃいますよーっ!」

さやか「何段階飛ばしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

まどか「女同士ならそんな心配いらないよほむらちゃん! プラトニックだよ!」

さやか「アンタはいきなり何の話をしてるんだよッ!?」

マミ「えーっと、その」

さやか「明らかに恋愛経験無さそうな人は口出さないでください!」

マミ「ちょ、なんで決めつけたの!? というかどういう意味!?」

さやか「くっ! こうなったら恋愛初心者のあたしがアドバイスするしか……!」

マミ「ねぇどういう意味!?」

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杏子「……………」
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杏子「申し訳ありませんが、わたくしは今、誰かと付き合うつもりはありません」
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さやか「え?」


802: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:32:35.87 ID:SQ3kI+bJ0


男子「そう、ですか……」

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杏子「ですが、あなたのその気持ちは嬉しく思います」
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杏子「その気持ちを、待ち焦がれている人に伝えてあげてください」
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男子「えっ……待ち焦がれている……?」

男子「はっ!?」

男子「下駄箱の影に隠れているのは……俺の幼馴染!」

男子「まさか!?」

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杏子「……………」コクリ
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男子「……ありがとう」

男子「あなたは、本当の天使だったよ!」ダッ

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杏子「……あなたが、真の愛に目覚めますように」
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「なんと……」「天使だ、天使が居る」「赤毛の子マジ天使」

さやか「……あれ?」

さやか「……あれぇ?」

ほむら「破廉恥ですぅーっ!」


803: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:34:04.46 ID:SQ3kI+bJ0


……………

………




さやか「いやぁ、すげーな杏子ちゃん!」

さやか「すれ違っただけの男子に三度も告白されるなんて!」

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杏子「あ、あまり持ち上げないでください……恥ずかしいですよ……」
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杏子「それに、全員お断りしましたし……」
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さやか「まぁ、全員杏子ちゃんとは初対面の筈だしね」

さやか「全く。これだから男子は……当たって砕けろってかー?」

ほむら「破廉恥です……破廉恥ですぅ……」

さやか「お前は何時までそれを続ける気だ」

まどか「照れるほむらちゃん可愛い……はぁ、はぁ、はぁ」

さやか「そしてお前は何故息を荒らげている」

マミ「そうよ。みんなもっと冷静に」

さやか「いや、マミさん三年生なんですから自分の教室行きましょうよ。ここ、二年生の教室の場所ですから」

マミ「……うん。そうね……」

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杏子「あ、ではわたくしも一緒に……」
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ほむら「あ、佐倉さんは私達の教室に来てください」

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杏子「え……?」
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さまマ「え?」


804: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:35:24.76 ID:SQ3kI+bJ0


ほむら「もう、皆さん失念しているのですか? 佐倉さんは一応部外者なんですよ?」

ほむら「本来こうして校内を歩き回るだけでも色々と不味い状況です」

ほむら「ましてや三年生の教室に入ったら大問題」

ほむら「まぁ、私は別に良いですけど……巴先輩はそれで良いのですか?」

ほむら「仮に自分の親戚と偽ったとしても、部外者を学校に招いたら白い目で見られるのは確定的だと思いますが?」

マミ「うぐ……そ、そうね……遅刻寸前でパニックになって許しちゃったけど、その通りよね……」

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杏子「わ、わたくしとした事が……申し訳ありません! 考えが足らず……!」
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杏子「いくらこの数年、学校に行っていないからって……ああ、恥ずかしい……」
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ほむら「まぁ、そういう事情があるならまだ理解出来ますけどね」

ほむら「……毎日来ているのに失念するような人に比べれば」

マミ「げふっ」

さやか「死者に鞭打つなよ……」

ほむら「しかしまぁ、そこで私の出番という訳です」

ほむら「私の持つ妖精さんアイテムがあれば、その程度の情報操作ちょちょいのちょい」

ほむら「簡単に学校の一員にしてみせます」

まどか「そういえば、シャルロッテちゃんが普通に学校に来れるようにしたのもほむらちゃん、なんだよね?」

ほむら「ええ」

ほむら「私が妖精さんアイテムによって皆さんの意識をてきとーに弄れば万事解決です」

まどか「……別にもう否定する気もないけど、意識ってそんなぞんざいに扱っていいものじゃないよね?」

ほむら「気にしない気にしない。誰も気にしないのならそれは罪ではないのです。魔女狩りよろしく」

まどか「うん、それ絶対ダメなやつだよね?」

マミ「えーっと……それじゃ、私はもう教室に行くわね」

ほむら「ええ。お昼はご一緒しましょう」


805: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:36:40.72 ID:SQ3kI+bJ0


ほむら「さて、私達も教室に入るとしますか」

ほむら「皆さん、おはようございます」ガララ

仁美「あら、暁美さん。おはようございます」

仁美「……そして、また見知らぬ方が」

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杏子「初めまして。佐倉杏子と申します」
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杏子「訳あって、暁美様達と共に学校に来ました」
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杏子「部外者という立場ではありますが、どうかよろしくお願いします」
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仁美「これはこれはご丁寧に……」

仁美「……もしかしなくとも、シャルロッテさんと同じような境遇なのですか?」

ほむら「正確には違いますが、関係者ではありますね」

ほむら「皆さん仲良くしてあげてください」

クラスメートs「はーい」

まどか「……前例があるからって、みんな素直に受け入れ過ぎだよ……」

さやか「一悶着あるよかマシでしょ」

恭介「……………」スタスタ

さやか「あ! きょーすけ! おはよう!」

さやか「あ、この子は佐倉ちゃんと言」

――――スッ

さやか(あれ……素通り、された?)

恭介「もし、そこのあなた……」

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杏子「あ、はい……えっと……なんでしょうか……?」
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恭介「そんな身構えないでください」

恭介「ただ、一つお伝えしたい事がありまして」

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杏子「伝えたい事、ですか?」
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恭介「はい」


806: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:37:12.16 ID:SQ3kI+bJ0






恭介「お嬢さん、僕とお付き合いしませんか」











さやか「」

仁美「」

まどか「うわぁ……」

ほむら「ひゃっ!?///」


807: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:38:26.49 ID:SQ3kI+bJ0


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杏子「えっと……う、嬉しい申し出ではありますが……」
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杏子「今のわたくしに恋をしている余裕はなくて」
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恭介「そんな勿体無い。あなたのように美しい人が、恋を知らずにいるなんて」

恭介「もし少しでも僕と付き合っても良いと思ってくれるのなら、試しに、というのも一つの手ですよ」

恭介「そこで本当の愛に目覚める事もあると思うのです」

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杏子「そ、それは……そういう事も、無いとは言えませんけど……」
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恭介「返事は何時でも構いません。僕はあなたの言葉があるまで何時までも待ち続け」

さやか「ねぇ、恭介」

恭介「ん? あ、さやかか。なんd」

さやか「ちょっとこっちに来て」

恭介「え? こっちって……あの、窓際に連れてきて一体何をする気」

さやか「そい」

恭介「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

ほむら「あら。さやかさん、上条さんを窓から投げ捨てましたね……此処、三階なのに」

仁美「自業自得ですわ」

まどか「……仁美ちゃん?」


808: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:40:05.84 ID:SQ3kI+bJ0


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杏子「ああっ! 大変です! 助けにいかなくては!」
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ほむら「あー、改造されてますし、この程度の高さから落ちたぐらいじゃ死にはしないでしょう」

さやか「いっそ殺してやりたいぐらいだけどね」

仁美「クワで顔面を半分だけ耕したいですわ」

まどか「仁美ちゃん!?」

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杏子「……美樹様」
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さやか「……何?」

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杏子「わたくしには、何故美樹様があのような行動に出たのかは分かりません」
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杏子「深い事情があるかも知れません。暁美様が言うように、
   上条様にとっては大した事ではないのかも知れません」
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杏子「ですが、高い場所から落ちたら……人は、死んでしまうのです」
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さやか「それは、まぁ、そうだけど……」

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杏子「あなた様は、本気であの方を殺そうとは思っていないでしょう」
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杏子「ですが、過ちは予期せぬ形で起こるもの」
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杏子「万一上条様が怪我でもされたのなら」
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杏子「あなた様は、きっと罪悪感に押し潰されてしまう」
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杏子「そのような姿は見たくありません」
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さやか「あ、えーっと……」

ほむら「シリアスですねー」

まどか「本当にそう思うんだったら鞄から文庫本取り出して読み始めるのは止めようよ、ほむらちゃん」

中沢「佐倉さんマジ天使だな」

男子A「だな」


809: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:42:54.81 ID:SQ3kI+bJ0


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杏子「まだ授業が始まるまでには時間があります」
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杏子「上条様に、謝ってきてください」
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杏子「それが、あなた様が今すべき事……わたくしはそう思うのです」
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さやか「なん、だと……」

さやか「このあたしが……」

さやか「罪悪感を、覚え始めている……!!」

ほむら「”悪いのは絶対アイツなのに、なんであたしが悪いと思わなきゃなんないのよー”」

ほむら「という意味で言ったんでしょうけど、悪役みたいな台詞回しですね」

まどか「だからほむらちゃん、文庫本は鞄にしまおうよ。何処までシリアスに興味ないの?」

中沢「佐倉さんマジ天使だな」

男子B「だな」

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杏子「……美樹様。行ってはくれないのでしょうか……?」
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さやか「あ、いや、その……なんというか、踏ん切りが付かないと言うか……」

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杏子「……そうですか……いえ、そうですよね……」
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杏子「罪に塗れ、穢れきったわたくしの言葉では……」
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杏子「あなた様を説得する事など……出来ないの……ですね……!」ウル
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さやか「な、泣き始めたァ――――――――!?」


810: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:44:25.35 ID:SQ3kI+bJ0


「佐倉さんマジ天使」「それに対して美樹の奴は……」「前々から思っていたけど、アイツがさつだよな」
「性格キツいし」「頑固だよねぇ」「だから彼氏出来ないのよ……」

――――ザワザワザワザワ

さやか(ハッ!?)

さやか(なんか教室の雰囲気が”オイ、お前何あの可愛い子泣かしてんの?”と言わんばかりになってるーっ!?)

さやか(何これあたしが悪いの? 元を辿れば恭介が悪いんじゃないの?)

さやか(あたしという超可愛い幼馴染が想いを寄せてんだよ? リア充だよ? 爆発候補だよ?)

さやか(お前らの言うリア充爆発しろはただの戯言か? 中身のない言葉か?)

さやか(悪いのは……あたしの乙女心を踏み躙った恭介の方だ!)

ほむら「まぁ、上条さんからしたらさやかさんの行動って、暴力女のそれですよね。好感度だだ下がり」

ほむら「これで謝らないときたら、なんというか人としての評価が……」

さやか「はい。謝ってきます」

まどか「……驚くほど素直に教室から出て行ったね」

ほむら「と、まぁ、こんな感じにデメリットを強調し、こちらの提案こそが最上の結果をもたらすと思い込ませると」

ほむら「交渉事は上手くいきますよ♪」

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杏子「成程……勉強になります」
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「佐倉さん信じちゃ駄目だァ―――!?」「天使を穢さないでよ暁美さん!?」「暁美さんマジ悪魔」

まどか「でもそんな知的なほむらちゃんは素敵だと思います!」

仁美「知的かも知れませんけど尊敬出来る方向性ではないと思いますわ」

和子「はい! 皆さん何を騒がしくしているんですか!」

和子「もうホームルームの時間ですよ!」

ほむら「あら、先生が来ましたね」


811: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:49:15.32 ID:SQ3kI+bJ0


・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:
杏子「あ、では挨拶をしませんと……」
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ほむら「フォローはしますので、お好きにやってください」

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杏子「はいっ!」
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ほむら「……ふぅ。これで先生の洗の……説得が終われば、佐倉さんはこのクラスの一員となるでしょう」

まどか「今、凄く物騒な言葉が出かかってたよね?」

ほむら「気のせいです」

ほむら「しかし……皆さん、ちょっと興奮し過ぎじゃないですかね?」

ほむら「あまり天使天使と持て囃すのは、正直どうかと思います」

まどか「うーん。そんなに悪い事じゃないと思うけど……受け入れてもらえているんだし」

まどか「それに、どう見ても佐倉さん天使だし」

ほむら「まぁ、そうなんですけどねぇ……」

ほむら「ですが、それはあまりにも一方的な話ですよ」

まどか「一方的?」


812: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:54:13.27 ID:SQ3kI+bJ0


ほむら「人間は、自分で思っているほど自分自身の事を決められないという事です」

ほむら「鹿目さんにも、キャラというか、そういうのがありますよね?」

まどか「キャラ……うん……そう、だね」

ほむら「そしてそれは、鹿目さんが作ったものではない」

ほむら「みんなの、それこそあなたが今までの人生で出会った何百、何千もの人々の」

ほむら「あなたへの”認識”が元になっている」

ほむら「あなた自身によって決められた部分なんて、果たして毛ほどもあるのでしょうか?」

まどか「それは……」

ほむら「勿論、それが悪いなんて言いません」

ほむら「人間は誰かに認めてもらわなければ、人間になれない」

ほむら「もし生まれたばかりの赤子を誰とも接触させず、言葉すら与えなければ」

ほむら「他者の”認識”を徹底的に……可哀想なんて言葉では言い表せないぐらい徹底的に取り除いたなら」

ほむら「その人間は純然たる無個性、個性で個人を判別する人間では認識すら出来ない、数字上でしか存在を表せない」

ほむら「大凡人間とは呼べない存在になってしまうでしょう」

ほむら「……結局のところ、”自分らしさ”なんてものは他人の認識でしかないのです」

まどか「それは、そう、なのかな……?」

まどか「それに、それが佐倉さんとどう繋がるの?」

ほむら「……全ての悪心が消えた今の佐倉さんには、”佐倉さんらしさ”なんてものは欠片も残っていません」

ほむら「それはつまり、生まれたばかりの赤子と同じ」

ほむら「今この瞬間、周りに居る人々が”佐倉さんらしさ”を決めてしまえる状態なのです」

ほむら「周りが天使だ天使だと言い続ければ……」

ほむら「彼女は見た目だけの似非天使から、本当の天使になってしまうでしょう」

ほむら「それこそ中世で、人々の不満の捌け口として”魔女”が生まれたように」

ほむら「押し付けによって生まれた”新たな命”が悲劇で終わるのは、歴史のお約束なんですけどねぇ……」

まどか「……そう、だね……」

まどか「……なんか、不安になってきちゃった」

ほむら「ああ、すみません。怖がらせるつもりはなかったのですが……」

ほむら(尤も、少しは怖がらせといた方が良いのでしょうけど)

ほむら(経験上、妖精さんの手から離れてしまったトラブルって、ろくな事にならないんですよねぇ)

ほむら(事態だけがやたらに大きくなり、終わる時には何もかも巻き込んで倒壊する)

ほむら(妖精さんの加護がなければ、その被害がどれほど大きくなるか)

ほむら(……想像するのも、嫌になりますね)



……………

………




813: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:55:39.85 ID:SQ3kI+bJ0



                 ――― 校庭 ―――



さやか「えーっと、教室の位置があそこだから……」

さやか「あ! 恭介!」

さやか「……頭から地面に刺さって、犬神家になってる」

さやか「さやかちゃんパワーで……引き、抜く!」

恭介「ぶはぁ!?」

さやか「恭介、大丈夫?」

恭介「あ、ああ……改造されてるからこのぐらいは……」

恭介「って、本を正せばさやかが原因だろ!」

さやか「うん、ごめん……」

恭介「うっ……そんな神妙な態度で謝られると、ちょっと困るけど……」

恭介「……なんでこんな事をしたのか、教えてくれるかい?」

恭介「さやかの事だから、ちゃんとした理由があると思うんだけど」

さやか「え? えーっと……」

さやか(恭介の事が好きで、嫉妬してました……と言うのは恥ずかしい)

さやか(でも嘘は吐きたくない)

さやか(だから誤魔化しつつ、嘘を吐かない説明にするには……)

さやか「恭介を見ていたらイラッとして、つい」

恭介「ただの通り魔だったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


814: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/03(土) 23:58:11.89 ID:SQ3kI+bJ0


さやか「いやぁ、めんごめんご」

恭介「その謝罪で済むと本当に思ってるのか!?」

さやか「そんな事よりさ、そろそろ教室に戻らないと。ね?」

恭介「そんな事で片付けられた……まぁ、もういいや。怪我ないし」

さやか「ほらほら、なんか曇ってきたし! 急ごっ!」

恭介「え? ああ、そうだね……さっきまで晴れていたのに」

恭介「……ん?」

さやか「? 恭介?」

恭介「あ、ああ。なんでもない」

恭介「ただ、ちょっと空が気になってさ」

さやか「空?」

恭介「ほら、アレを見てごらんよ」

さやか「あれって……アレ?」

恭介「うん。別にどうって事はないだろうけど……」

さやか「うん……」

さやか(そう、どうって事のない景色)

さやか(だってそれは、雲が空一面を覆い尽くす中、あたし達の真上にある場所から晴れ間が見えているというだけ)

さやか(雲の隙間から光が差し込む景色は神秘的だけど、それだけに過ぎない)

さやか(でも、あたしは思った。多分、恭介も思ったからあたしにこの景色を教えてくれたんだろう)

さやか(その差し込む光を見て、あたしはこう思った)







さやか(何かが、落ちてきそうだと)




……………

………




815: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:01:07.43 ID:DDtNYNaT0



                ――― 二年生・教室前 ―――



さやか「さあ、待ちに待ったお昼です!」

ほむら「お昼ですねー」

マミ「ご招待してくれて申し訳ないけど、今日はお弁当持ってきてないのよね……」

まどか「私も購買で買ってきたパンだし……」

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杏子「わたくしは巴様に買ってもらう始末……大変申し訳ありません」
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マミ「良いのよ、気にしないで」

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杏子「ですが、わたくしは……」
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マミ「私があなたに買ってあげたいと思ったから、買ったの」

マミ「人の好意を素直に受け取るのも、償いだと思うわ」

マミ「……私なんかが言っても、説得力なんてないけど……」

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杏子「……いえ、大変勉強になります。流石は巴様です」
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ほむら「ちなみに私はちゃんとお弁当を用意してあります」

まどか「うん。なんでちゃんと用意してるんだろうね? 時間的余裕は私達と大差ない筈なのにね?」

ほむら「私は支度する時、何時も妖精さんアイテムで時間を止めてからしますので」

まどか「うん。分かっていたけどさらりととんでもない事してるね?」

マミ「妖精さんに出来ない事ってあるのかしら……」

ほむら「一応死者の蘇生は出来ないと言ってますね」

ほむら「でも抜け出た魂が消滅する前に確保すれば、傍目には死者蘇生の真似事も可能ですし」

ほむら「拡散した記憶を寄せ集めた”そっくりさん”なら作れますので」

ほむら「そういう意味では、死者の蘇生も不可能ではないでしょう」

ほむら「……ま、魂が違っていては、本当の意味での”本人”にはなれませんけど」

ほむら「”あちら側”からきてくれた命の代わりなんて、妖精さんでも用意出来ないのですから」

まどか「あちら側?」

ほむら「こっちの話です。長くなるので、また何時かお話しましょう」


816: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:02:45.48 ID:DDtNYNaT0


ほむら「さ、そんな事より皆さん食事の用意は出来たのです」

ほむら「二年生の教室、では巴先輩が居心地悪いでしょうし」

ほむら「定番ですが屋上に行くとしますか?」

さやか「異議なーし」

マミ「同じく」

まどか「私も」

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杏子「皆さまの意見に従います」
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ほむら「それでは早速屋上に――――」

白衣を着た女教師「あぁぁぁぁぁぁけぇぇぇぇぇぇみぃぃぃぃぃぃ……」

ほむら「っ!?」

さやか「あれ? あの人って……」

まどか「保健室の先生だね。ほむらちゃん、どうかしたの?」

ほむら「い、いやぁ……どうもしませんよー……」

女教師改め保険医「どうもしない訳あるかっ!」

保険医「お前……これから何処に行く気だ?」

ほむら「が、学生らしく、みんなでお昼を食べようかと……」

保険医「ほうほう。そうかそうか。友達が出来て、良かったな」

保険医「話は変わるが……お前、定期的に保健室で検査を受けろって病院から言われてるよな?」

ほむら「えーっと……いや、まぁ……」

保険医「それで? お前は一体何回保健室に来た?」

保険医「週に二回は来るように言われているから、転校二週目の終わりである今日の時点で四回来てないといけないよな?」

保険医「……私の記憶が確かなら、転校初日以降一度も来ていない気がするんだが……?」

ほむら「せ、先生の記憶違いじゃないでしょーか……」

保険医「そうかそうか。じゃ、こっちで用意している検査用紙の記入も、私の書き忘れか?」

ほむら「そ、そういう事もありますよー……」

保険医「ほうほう、あくまで全責任は私にあると」

ほむら「……………」

保険医「……………」

ほむら「逃げ――――」

保険医「逃がすかこの阿呆がっ!」

ほむら「むぎゅ!?」


817: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:04:23.88 ID:DDtNYNaT0


保険医「こっちに来い! 今までの分の検査と説教をしてやる!」

ほむら「嫌ぁーっ! あっちの方が楽しそうですぅーっ! あとお腹空きましたーっ!」

保険医「楽しくないって理由でサボれたら保険医いらねぇんだよ!」

保険医「それにお前の薬は食前だろうが! 食ったら検査出来ねぇだろ!」

保険医「今日の昼休みは遊べないと思え!」

ほむら「ひぃやあああああぁぁぁぁぁぁ……………」

さやか「……連れて行かれましたね」

マミ「連れて行かれたわね」

まどか「ほむらちゃんがぁ……」

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杏子「検査をサボっていたなんて……暁美様のお身体に何もなければ良いのですが」
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さやか「うん、この状況でもほむらを心配できるアンタはマジモンの天使だよ」

マミ「あの子、本当にノリだけで生きているのね……」

まどか「ほむらちゃんがぁぁぁぁぁ……」

さやか「とりあえず、アイツはもう来れそうにないっすけど……」

さやか「あたしらだけで屋上行きますか?」

マミ「……そうね。折角だし――――」




「ねぇ、聞いた? 佐倉さん、屋上に行くみたいよ」




マミ「……うん?」

「え、本当? あの天使みたいな人が?」

「そうそう」

「あー、ちょっとお話してみたいなー」

「なんてったって天使だもんね」

――――ザワザワ

さやか「……杏子ちゃんの噂、すっかり学校中に広がっちゃったね」

マミ「全く……称賛も過ぎれば、相手を不快にするものなのに……」


818: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:06:50.45 ID:DDtNYNaT0


さやか「まぁ、気持ちは分かりますけどねー」

さやか「杏子ちゃんこんなに可愛いし、性格マジ天使だし」

さやか「どうだー? あたしの嫁にならないかー?」

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杏子「……………」
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さやか「……あの、杏子ちゃん?」

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杏子「あ……す、すみません。ぼうっとしていました」
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杏子「えっと、何かご用でしょうか?」
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さやか「いや、えーっと……」

まどか「佐倉さん。気にしなくていいよ」

まどか「さやかちゃんがまた馬鹿な事言っただけだから」

さやか「ぐふっ!? ま、まどかさん……? あの、何か不機嫌なように見えますが……?」

まどか「知らない」

さやか(その言い方が一番怖い、とは言えない……)

マミ「ま、まぁ、兎に角屋上に行きましょ? このままだとお昼を食べられないわ」

さやか「で、ですね……ええ……」

さやか「そんじゃ、屋上にレッツゴー……」

……………

さやか「はい、屋上とうちゃーく」

まどか「三点リーダー一行で済むような滑らかさで辿り着けたね」


819: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:09:10.10 ID:DDtNYNaT0


マミ「野次馬対策に、人払いの魔法を使っちゃいましょう」

マミ「……うん。これで野次馬は屋上まで来れないわ」

さやか「魔法って本当に便利ですねー」

マミ「……今更だけど、妖精さんのお陰でこの便利な魔法が使い放題なのよね……堕落しそうだわ」

さやか「あー、確かにシャルちゃんとかお菓子食べたいって理由でほいほい使ってますね」

マミ「……自制、出来るかしら」

さやか「魔女なんですから別に良いんじゃないっすか?」

マミ「私は人間よ……少なくとも今は」

さやか「まぁ、そうなんですけど」

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杏子「……? 今は人間? あの、どういう意味でしょうか?」
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まどか「え、えーっと、その、大した事じゃないよ! 気にしないで!」

まどか(さやかちゃん! マミさん!)ヒソヒソ

さやか(ご、ごめん)ヒソヒソ

マミ(その、うっかり……)ヒソヒソ

まどか(もうっ!)ヒソヒソ

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杏子「……?」
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まどか「そ、そんな事より、お昼にしようよ! 私もうお腹ぺこぺこ!」

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杏子「え? あ、そう、ですね」
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杏子「申し訳ありません。無駄な時間を取らせてしまい……」
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まどか「……いや……うん……気にしないで」

さやか(罪悪感で押し潰されそうな目をしているまどかであった……)

さやか「そんじゃ、まどかの催促もあったしお昼としますか」

まどか「ちょ、さやかちゃん!?」

マミ「くす……そうね。そうしましょうか」

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杏子「それでは……」
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「「「「いただきます」」」」


820: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:11:13.25 ID:DDtNYNaT0


さやか「さーて、今日のお弁当は……やった! あたしの好物入ってる!」

まどか「あ、このパン美味しい……購買のパンって初めて買ったけど、こんなに美味しいんだ」

マミ「むむ、このモチモチ感……侮れないわね」

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杏子「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます……」
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さやか「……」モグモグ

まどか「……」モグモグ

マミ「……」モグモグ

杏子「……」モグモグ

さまマ(は、話し辛い……)

さやか(そういや、この二週間ぐらいまどかとは敵対してたから、全然話してないんだよね……)

さやか(まどかと話す時ってどうやって切り出せば良いんだっけ?)

さやか(というか、共通の話題がない……!)

まどか(どうしよう……何を話せば良いのかさっぱり分かんない……)

まどか(和解したけど、さやかちゃんとどんな顔して話せば良いのかって感じだし)

まどか(よくよく考えると、マミさんとは魔法少女関係の話しかした事無いし……)

まどか(あれ……もしかして私、最近中学年っぽい事何もしてない……?)

マミ(……今更だけど、この面子の中では私だけが三年生なのよね)

マミ(これよく考えなくてもアレよね。存在自体が空気読んでない的な感じよね)

マミ(……凄く、居た堪れない)

さやか(ええい! こうなったら空気を変えるしかない!)

さやか(そしてそれは誰がやるか!?)

さやか(みんなのムードメーカー、さやかちゃんだ!!)

さやか「きょーこちゃーん!」


821: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:12:44.27 ID:DDtNYNaT0


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杏子「ひゃっ!? み、美樹様!?」
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杏子「あの、どうして抱き着いて……」
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さやか「そんなの一つしかないでしょ!」

さやか「杏子ちゃんが可愛いから!」

さやか「そんな杏子ちゃんは、あたしの嫁になるのだっ!」

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杏子「あわ、あわわわわわ////」
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まどか「もう、さやかちゃん! 佐倉さん困ってるでしょ!」

さやか「いやいや、この照れ方は楽しんでいるとみたね!」

さやか「ふはははは! ほっぺたすりすり攻撃! 命名”ルミナスアタック”だっ!」

マミ「ルミナスアタック……」

まどか「マミさん何ときめいてんの!?」

さやか「そーりゃそりゃそりゃー!」

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杏子「……………」
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さやか「……あれ?」

まどか「佐倉、さん?」

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杏子「……………」
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さやか「いや、あの……」

まどか「ほら、さやかちゃんやり過ぎだったんだよ。佐倉さん、怒ってるよ!」

さやか「え、ええ……そう、なの……?」

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杏子「……………」
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杏子「……………う」
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さやか「う?」





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杏子「う、あぁぁあああぁああぁ……!」ボロボロ
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さまマ(な、泣き出したァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――!?)


822: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:16:17.92 ID:DDtNYNaT0


まどか「ちょ、さやかちゃん何してんの!? 佐倉さん泣いてるよ!?」

さやか「いやいやいや!? そんな、だって痛くしないよう優しくやったんだよ!?」

マミ「その凄く誤解を招く言い方は止めなさい!」

まどか「ごめんね佐倉さん! さやかちゃんが悪いよね! 今すぐゴミにしちゃうから!」ゴゴゴ

さやか「ちょ、手に魔力を集めるのは止めて!? 死ぬから! 本当に死ぬからその魔力だと!?」

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杏子「あ、ち、違うん、です……違います……」
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杏子「ちょっと、嬉しくて……それ以上に、情けなくて……」
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さやか「……どういう事?」

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杏子「……美樹様には話していませんが、わたくしは、
   最近まで一人で暮らしていました」
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杏子「ある時は不法に家に忍び込み、ある時は食べ物を盗み」
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杏子「他者に迷惑を掛けながら、生きていました」
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杏子「……罪深い、ですよね。償わないといけないと、わたくし自身も思います」
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杏子「その償い方を知りたくて、わたくしは巴様と共に来たのに」
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杏子「償うためなら、どんな苦痛も受ける覚悟でいたのに」
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杏子「誰かと触れ合えるこの喜びを……手放したくないと、思っている……!」
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杏子「この幸福を手放すぐらいなら……」
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杏子「また咎人に戻ってもいいとすら、思ってしまったのです……!」
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823: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:18:10.40 ID:DDtNYNaT0


マミ「それは――――」

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杏子「強欲ですよね。浅ましいですよね。身の程知らずですよね」
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杏子「わたくし自身、自分の愚かさに涙が出てきます」
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杏子「でも、わたくしは……」
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さやか「……杏子ちゃん、あの――――」

まどか「……」スッ

さやか「え、ま、まどか……?」

まどか「……この」





まどか「馬鹿杏子!」

――――ゴンッ!



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杏子「いたぁっ!?」
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さやマミ「あ、頭を殴った!?」

まどか「誰かと一緒に居たいのが愚か? 強欲?」

まどか「そんな訳ないでしょ! ずっと一人だったのなら、そう思って当然だよ!」

まどか「私は、杏子ちゃんと一緒に居たいからこうして居る! さやかちゃんもマミさんも同じ!」

まどか「あなたは! その想いを踏み躙るの!?」

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杏子「そ、それは、ちが……」
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まどか「違うんだったら――――」ギュ

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杏子(あ……鹿目様が、私に抱き着いて……)
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まどか「だったら、そんな寂しい事を言わないで」

まどか「私達を……愚か者にしないでよ……!」


824: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:21:28.85 ID:DDtNYNaT0


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杏子「……鹿目様……」
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まどか「償いに必要なのは、幸せにならない事じゃない」

まどか「誰かが杏子ちゃんの幸せを願っているのなら……」

まどか「杏子ちゃんは、幸せにならなきゃダメだよ」

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杏子「……………」
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まどか「……落ち着いた?」

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杏子「……はい」
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杏子「あの……大変勉強になるお言葉でした。ありがとうございます」
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まどか「えへへ、どういたしまして……って、言いたいけど」

まどか「これ、殆どほむらちゃんの受け売りなんだよね」

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杏子「暁美様の、ですか?」
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まどか「うん!」

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杏子「……鹿目様も、何か罪を犯したのですか?」
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杏子「あ、その……す、すみません。不躾な事を聞いてしまい……」
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まどか「……うん」

まどか「私も、悪い事をいっぱいしちゃった」

まどか「……マミさんも」


825: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:26:09.44 ID:DDtNYNaT0


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杏子「えっ……?」
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マミ「……そうね。私も、罪を犯している」

マミ「私は真実から目を逸らしていた。都合のいい、気持ちのいい言葉だけを信じた」

マミ「それは逃げているのと変わらない」

マミ「逃げて逃げて」

マミ「最期は追い込まれるしかない生き方をしていた」

マミ「……私も、あなたと同じだった訳」

マミ「ちなみに、これも暁美さんからの受け売り、ね」

まどか「杏子ちゃん。不安になるのは分かるけど、きっと大丈夫だよ」

まどか「ほむらちゃんなら……」

まどか「そのほむらちゃんのお陰で変われた私達なら、あなたを受け止めてあげるから」

まどか「だから、幸せになっちゃおうよ」

まどか「そして……一緒に、償おう」

まどか「どうやって償えばいいか分からないのなら……一緒に考えよう」

まどか「ね?」

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杏子「……………」
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杏子「……やはり、この幸せはわたくしの身には余ります」
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まどか「杏子ちゃん……そんな事」

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杏子「だって、幸せ過ぎて」
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・:*:・゚'☆,。・:*:・:*杏子「涙が、途切れないのですから……!」*:・:*:・゚'☆,。・:*:
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826: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:29:03.22 ID:DDtNYNaT0


さまマ「――――!!?」ズキューン!

さやか(か、可愛い……!)

さやか(涙目! 笑顔! 感動を誘う言葉!)

さやか(全てが、ふつくしい!)

マミ(胸が射抜かれる! 胸キュンなんてレベルじゃない!)

マミ(想いの黒部ダム崩壊やーっ!)

まどか(だ、駄目だよ私には黒髪でスレンダーで眼鏡が似合う王子様が居ていや誰とは言わないし
    別に恋とかそんなんじゃないけどでもああこれ浮気いや本命もないのに浮気もなにも)

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杏子「……えっと、あの……皆様……?」
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さやか「……ああ、もう! やっぱり杏子ちゃんは可愛いなぁ!」

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杏子「え? ええっ?」
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マミ「本当に可愛いわぁ」

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杏子「あ、あう、あうう……」
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さやマミ「かわかわかわ」

・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:
杏子「ふしゅぅぅ……」
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マミ「ああ、照れちゃって……」

さやか「そこもまた可愛いなぁ」

マミ「もう、本当に……」




さやか「杏子ちゃんマジ天使!」
マミ「佐倉さんマジ天使!」


827: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:29:35.95 ID:DDtNYNaT0































―――――――――――――――――――――ドクンッ





828: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:31:17.93 ID:DDtNYNaT0


・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:
杏子「――――――――ぁ」
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さやか「……杏子ちゃん?」

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杏子「……いや」
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マミ「どうしたの……?」

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杏子「何かが……何か、何かが……!!」
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まどか「違うよこれ浮気じゃないからほら毎日カレーばかりだと飽きるいや飽きるも何も食べてすらいないけどって食べるってそんなエッチな」

さやか「ちょ、まどかふざけてないで! 杏子ちやんの様子が―――――!」

まどか「ああでもあの片手で収まりそうな胸を私の手で大きくしたいと思わなくもな、え?」





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杏子「何かがわたくしの中に――――”落ちて”くる……!!」
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829: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:33:49.32 ID:DDtNYNaT0



 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !



まどか「な、何? 地震!?」

さやか「あわわわわわ……ふ、伏せないと……!」

マミ「一体何が起きて……!?」

マミ「な、何あれ!?」

さやか「え?(巴先輩、空を見上げて……っ!?)」

さやか(ど、どういう事!?)

さやか(雲が、”まるで穴が開いたみたいに”ぽっかりと晴れ間が見えている……)

さやか(だからそこから太陽の光が見えないといけないのに)

さやか(なんで穴の向こうが真っ暗――――)

――――ぐらっ

さやか「あ、れ?」パタッ

まどか「さ、さやかちゃ……」ガクッ

マミ「な――――」ドサッ

さやか(な、んだ、これ……)

さやか(いしきが、もっていかれ)

さやか(あたし、このまま、し――――)

さやか(あ、ちが)




さやか(ねむ、い、これ――――……




830: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:35:45.73 ID:DDtNYNaT0



ほむら「はぁぁぁ……やっと解放されました……」

ほむら「全く。ちょっとサボっただけなのにあんな怒らなくても良いのに」

ほむら「皆さん、まだお昼食べてますかねぇ……」

ほむら「ま、食べてなくてもお喋りはしているでしょうから、私も混ざるとしますかねー」



             ――― おきをつけ、くだされ ―――



ほむら「――――」

ほむら(今のは……妖精さんの声)

ほむら(それも何時もののんびりまったりじゃなくて、ハッキリとした警告)

ほむら(……どうやらのっぴきならない事態が起きたようですね)

ほむら(そして今回、のっぴきならない事態を引き起こすとすれば……)

ほむら「……保健室がある棟と教室がある棟は別々ですからね。窓から覗けば隣の棟の様子ぐらいは分かる筈」

ほむら「ま、屋上でお昼を楽しんでいたであろうさやかさん達の姿が見えるとは思いませんけど」

ほむら「それでも一応見ておくとして――――」

ほむら「……!?」

ほむら(な、なんですかアレは……空に、穴が開いてる……!?)

ほむら(自然現象にしては不自然……)

ほむら(とりあえず眼鏡のスイッチをオン。観測機能を作動させて)

ほむら(っ!???!!?)


831: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:42:22.91 ID:DDtNYNaT0


ほむら(そんな!? あり得ない!)

ほむら(何故”デグチハアッチ”がこっちの世界に来ているのですか!?)

ほむら(アレは”門”が開いた時、それも妖精さんの手によってチャンネルが合わないとこっちに来ないのに!)

ほむら(まさかインキュベーター……)

ほむら(いえ、あの宇宙人は”あちら側”とこちらをつなぐ術を持っていない)

ほむら(魂をエネルギーとして利用しているアイツらがその術を知っていたら、使わない訳がないのですから)

ほむら(だとすれば一体誰が?)

「おい、聞いたか? 二年の教室に居るっていう天使の噂」

「聞いたも何も生で見たよ俺。ありゃマジで天使だわ」

「へぇ~……俺も見に行こうかなぁ」

ほむら(全く、知らない人達は呑気で良いですねぇ……天使天使って)

ほむら(……………!?)

ほむら(まさか!?)

ほむら(ああもう! 私とした事がこんな簡単な話に気付けなかったなんて!)

ほむら(ぬるいトラブルばかりで勘が鈍ったんですかね!?)

ほむら(兎に角、今はさやかさん達を救いださないといけ)

ほむら(な、い――――)

――――パタッ

ほむら(あ……)

ほむら(まず……デグチハアッチが、もうこんな所まで来て……)

ほむら(いしきが、もた、もたな……)

ほむら(ようせ、さん)




ほむら(――――つない、で!)




ほむら「……ぐぅ」


832: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/04(日) 00:45:53.99 ID:DDtNYNaT0


予想外……その一言で片付けるには、少々笑えない状況でした。


デグチハアッチは天に開いた”門”を通り、砕け、粉となって見滝原に降り注いでいます。

”門”の大きさが大きさですので、やってくる量も桁違いでした。

人一人分の”門”で来れる量ですら、村一つ機能停止するぐらい強烈なのがデグチハアッチです。

このままでは、被害は見滝原では留まらない……この国の存亡に関わるかも知れません。


ましてやアレがこちらに来たら……


想像するだけで身震いしてしまいます。

ハッキリ言ってそうなる事を予期していた分、そして妖精さんが活躍出来た分、

鹿目さんが魔女になった時の方が遥かにマシです。


果たしてこの街はどうなるのでしょうか?

”神”ならぬ身である、そして微睡の中に溶けてしまった私には、皆目見当も付きません。


ただ一つ言えるとするなら。



何もしなければ全てが終わってしまうのですから、全力で抗わねばならないという事です――――


865: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:00:42.75 ID:Xki2Yhpp0



えぴそーど じゅうろく 【佐倉さんの、らぶりーえんじぇる こうへん】



866: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:02:32.09 ID:Xki2Yhpp0



―――― 眠る、眠る、眠る。


眠る者は何も思わない。眠る者は何も考えない。眠る者は何も感じない。


ならばそれは、死と変わらぬのではないだろうか?


眠りから目覚めない者は、果たして生きているのだろうか?


もし、そうだとするならば。


美樹さやかと鹿目まどかと巴マミは、この瞬間、”死んだ”のだ ――――



867: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:03:47.07 ID:Xki2Yhpp0








































ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!



さまマ「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!?」

868: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:09:59.07 ID:Xki2Yhpp0


さやか「ぎゃあああああああ!? なんだこの騒音!?」

まどか「頭が割れるうううぅぅぅぅぅううう!?」

マミ「く、こ、こ、こけこっこーっ!?」

ほむら「はい、『夢引き込み目覚ましくん』ストップ」

ほむら「全く。吸引量が少ないからか、魔力があると耐性があるのか、皆さん中々こっちにこないから」

ほむら「この道具を使ってしまいましたよ」

さやか「ぜー……ぜー……」

さやか「やっぱりお前の仕業か……ほむらぁ!」

さやか「一体何なのさ!? 人が気持ち良く寝ていたのに!」

さやか「……ん?」

まどか「あれ……なんで私達、寝ていて……?」

マミ「えーっと、確か私達は屋上でお昼を食べていて……」

さまマ「!?」

さやか「そ、そうだ! あたし達、屋上でお昼を食べていて……」

さやか「それで杏子ちゃんが……!」

さやか「って、此処何処!?」

まどか「学校の屋上っぽいけど……」

マミ「草原みたいな状態になってるわね……」

まどか「なんかこの草、見ようとしても変にぼやけて輪郭が分からない……」

まどか「それになんか草っぽいけど草っぽくない形をしているような……」

ほむら「聞きたい事はたくさんあるでしょうけど、まずは此処が何処なのかをお教えしましょう」

ほむら「此処は夢の中です」

マミ「へ? あ、ゆ、夢なのね……そっか夢かぁ……」

マミ「で? どっからどこまでが?」

マミ「個人的には佐倉さんが巴様と呼んだ辺りからそんな気がしていたのだけど」

さやか「テンパり過ぎです先輩」

さやか「それで、夢の中ってどういう事なの? ほむら」

さやか「あたしらが夢を見ているとして……」

さやか「みんながこうしているって事は、多分夢を共有しているって事だよね?」

さやか「こんなの普通じゃないけど、妖精さんが係わってるの?」

まどか(さやかちゃん、手慣れてるなぁ……)

まどか(……私も夢の中と言われて、そうですかと納得しちゃったけど)


869: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:12:03.55 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「勿論説明はします。が、少々長くなってしまうので」

ほむら「まずは妖精さん。かもーん」

妖精さん「はーい」

まどか「……妖精さんって、夢の中でも現れるんだね」

ほむら「むしろ電波で溢れる現実世界より、こっちの方が活躍出来るってものです」

ほむら「さて、妖精さん。今の佐倉さんの様子を教えてください」

妖精さん「ではこちらのもにたーをごらんくだされ」

マミ「あ、空からモニターが下りてきた……って、何処からぶら下がってんのよこのモニター。屋外なのに」

ほむら「さぁ? 人間である私には見当も付きませんね」

ほむら「それより、ポチっとな」

まどか「あ、モニターに何か映って……」

まどか「なっ!?」

さやか「な、に……これ……!?」

さやか「杏子ちゃんが、空から降り注ぐ光の中に閉じ込められてる……!?」

マミ「幻想的って言いたいけど……佐倉さんの苦しそうな顔を見ていると、とてもそうは思えないわね……」

ほむら「そしてこの映像を妖精さんにほいほいっと修正してもらうと……」

さまマ「!?」

さやか「な、なんなの……一体なんなの!?」

さやか「杏子ちゃんの真上に、人の形をした光の塊が……!?」

まどか「本当の天使みたい……」

ほむら「佐倉さんの現状は、まぁ、理解出来ないでしょうけど把握はしてくれましたね?」

ほむら「そして次は見滝原です」

マミ「……これは……!」

マミ「見滝原の景色……でも……」

マミ「あちこちから、黒煙が上がってる!?」

ほむら「まぁ、街中の人達が一斉に眠りこければこうなりますよ。事故の連鎖ってやつですね」

ほむら「”デグチハアッチ”は社会性があるのでその辺の気遣いはしてくれていると思いますし」

ほむら「妖精さんがいるこの夢の世界と係わった事で、死者は出ない筈ですが……」

ほむら「純粋な妖精さんトラブルでない以上、怪我人ぐらいは覚悟した方が良いかも知れません」

まどか「ど、どういう事……街中の人が、眠ってる?」

マミ「そんな事、魔女でも出来ない事よ?」

マミ「なのに妖精さんの仕業でもないなんて……」

ほむら「まぁ、妖精さんが非常識の中でも最高峰に非常識なのは違いありませんけど」

ほむら「世界にはまだまだ”非常識”が溢れているのです」

ほむら「正確には、私達人間が世界について殆ど知らないと言うべきなんでしょうけどね」


870: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:13:56.02 ID:Xki2Yhpp0


さやか「……説明、してくれる?」

ほむら「当然」

ほむら「その前に、話が長くなるので」

ほむら「ほいほいっと」ポポポポポン

まどか「うわっ!? 空中からケーキが……」

ほむら「夢の中ですからね。シャルロッテさんでなくともお菓子はいくらでも出せます」

ほむら「食べても食べても栄養にならず。まるで桃源郷のようですね」

マミ「あはは……」

妖精さん「けーき♪ けーき♪」

ほむら「妖精さんには更にキャラメルもプレゼント」

さやか「相変わらず妖精さんには甘いなぁ」

妖精さん「こがねいろのおかしー?」

ほむら「文字通りです」

ほむら「……さて、お菓子を配り終えたところで」

ほむら「そうですねぇ……まず皆さんに訊いておこうと思いますが」

ほむら「命が、何処から来るか知っていますか?」

まどか「命が?」

マミ「えーっと、お父さんとお母さんが愛し合って」

ほむら「そんな子供に言い聞かせる風且つ下世話な妄想をかき立てる説明は求めていません」

マミ「ショボーン」

ほむら「……もっと簡潔に、正確に言い直しましょう」

ほむら「魂が何処からやってくるか、です」


871: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:15:55.43 ID:Xki2Yhpp0


まどか「……それは……」

まどか(少し前までの私なら、あるかどうかもよく分からないしって曖昧に答えたと思うけど……)

まどか(でも、私達魔法少女はキュゥべえに魂を弄られてる)

まどか(それってつまり、魂が実在するという事、だよね)

まどか(……考えてみたら、魂ってなんだろう)

まどか(ほむらちゃんの言う事がそのままの意味なら……)

まどか(何処かから、やってくるモノなの?)

ほむら「……まぁ、考えても分からないでしょうから、答えを言わせてもらいますと」

ほむら「この世界と、非常に近い場所にある世界です」

まどか「近い場所にある、世界?」

さやか「それって、この前の並行世界みたいな?」

ほむら「いいえ。それよりももっと近い、夢を間に挿んだ向こう側の世界」

ほむら「あの世と言ってしまえば分かり易いかも知れません。そんなおどろおどろしいものではないですけどね」

マミ「どんな場所なの?」

ほむら「……私も、一度妖精さんに連れられて行った事があるだけなのですが」

ほむら「その世界には命が溢れていました」

ほむら「その世界には不幸も、絶望も、恐怖もない」

ほむら「だけど幸福も存在しない……何もない世界です」

マミ「何もない……」


872: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:21:23.10 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「確かにあの世に居れば悲しみはありません。苦しみも、苦労もない」

ほむら「さながらそれは”夢”のように」

ほむら「対して私達が生きている……この世と言いましょうか。この世は絶望したり苦しかったり面倒だったり、大変です」

ほむら「あの世とこの世の狭間である夢の中に逃げてしまいたくもなります。引きこもりたくもなります」

ほむら「最悪、あっちに”帰って”しまいたくもなるでしょう」

さやか「あの世に、帰る……」

ほむら「……この世は、あの世からすれば眩しいぐらい光に溢れています」

ほむら「光があるから嫌なものが見えてしまう。醜い自分が見えてしまう。それは否定しません」

ほむら「暗闇の中なら、その向こうに何があるのかなんて自分で決められます。醜い自分を知らずにいられます」

ほむら「でも、光がないと本当の幸せは見つけられない」

ほむら「だからこそ命はこの世に来たがるのです」

ほむら「仮初の幸せを抜け出し、本当の幸福を掴むために」

ほむら「何があるか分からない恐怖と戦いながら、不安を胸に秘めながら」

ほむら「差し込む光だけを頼りに、この世にやってくるんです」

まどか「……私も」

まどか「私も……そうやって、生まれたの?」

ほむら「はい」

ほむら「鹿目さんも、巴先輩も、さやかさんも……私も、そうやって生まれました」

ほむら「そうやって、この残酷で、だけど幸せな世界にやってきたんです」

ほむら「……私はまだ子供ですから、命の誕生という経験はおろか、立ち会った事もありません」

ほむら「それでも思うのです」

ほむら「命とはきっと――――幸福になるために生まれてくるのだと」

まどか「……………」

さやか「……………」

マミ「……………」

ほむら「と、まぁ、これで終われば良い話なんですけどねぇー……」

さやか「え? 終わってくれないの?」

ほむら「終わったらこの話をした意味がないでしょう」

マミ「あー、まぁ……そうね、うん」

まどか「だよねー」


873: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:23:27.33 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「肝心なのは、命とはつまりそうやって生まれるものだという事」

ほむら「人間に限らず、命とはこの世の光に惹かれてやってくるものなのです」

ほむら「虫の命も、人間の命も、鯨の命も」

ほむら「そして、天使の命さえも」

さやか「天使の命?」

ほむら「まぁ、私達より存在の格が色々上な方と思ってくれればいいです」

ほむら「妖精さん曰く、正しくは『四次元存在性知的意思』という生き物らしいですよ」

まどか「な、なんか強そう」

ほむら「曲がりなりにも天使ですからね。ちょっと本気を出せば、見滝原ぐらいは簡単に潰せるそうです」

ほむら「尤もノリが良くてサービス精神旺盛な、明るい方々のようですが」

ほむら「……問題なのは、本来その名が示すように彼等が生まれるのは四次元空間であるにも関わらず」

ほむら「今回は我々が暮らす三次元空間に出現した、という事です」

さやか「そうだ……なんでそんな事に?」

さやか「それに、その話が杏子ちゃんとどうつながるの?」

ほむら「……話があちこちに飛んでしまい申し訳ありませんが」

ほむら「次は佐倉さんの状態についてお話しましょう」

ほむら「結論だけを言いますと、今の佐倉さんは完全なる”天使”」

ほむら「皆の認識によって”天使”と化したのです」

まどか「――――!」

さやか「みんなの、認識?」

ほむら「鹿目さんには既に話しましたが、自分がどういう人間なのかを決めるのは自分ではありません」

ほむら「自分を決めるのは他人の認識であり、自分自身の意思など、ハッキリ言って関係ない」

ほむら「美樹さやかが明るく元気な人間だと周りが思ったのならそうなるように」

ほむら「巴マミが真面目で聡明な人間だと周りが思ったのならそうなるように」

ほむら「佐倉杏子が天使だと周りが思ったのなら――――そうなってしまう」

ほむら「そして本物の天使がこの世に生み出された時」

ほむら「それは、天使が”生まれる”のと何が違うのでしょう?」

マミ「っ!?」


874: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:28:32.92 ID:Xki2Yhpp0


さやか「それって、つまり……あ、あたし達が……」

まどか「天使天使言っていたから……」

ほむら「そうですね。責任の一端ぐらいはあるかも知れません」

ほむら「尤も、予測しておきながら手を打たなかった私が一番悪いのでしょうが……」

さやか「ほむら……」

ほむら「ま、起きてしまった事は仕方ありません。事態の収拾で責任逃れとしましょう」

さやか「うん、それでこそほむらだこんにゃろう」

ほむら「ともあれ最初は見た目だけに過ぎなかった筈の佐倉さんは
    完全なる天使の肉体となってしまいました」

ほむら「先程言いましたが、命はこの世から差し込む光を目印にして来る訳です」

ほむら「そしてその光が差し込むための穴……私は”門”と呼んでいますが」

ほむら「それは”器”が出来た時に生じるのです」

マミ「器? ……肉体、って事?」

ほむら「半分正解と言ったところでしょうか」

ほむら「別に肉の身体である必要はないのです。要は魂が入り込める、ちゃんとした容器ならなんでもいい」

ほむら「姉さん……ああ、失礼。妖精さんが作ったペーパークラフトに魂が宿るのはそういう理由ですし」

ほむら「寮母型ロボットに、優しい寮母さんの魂が宿るという奇跡もあるでしょう」

ほむら「ですが人間はその事を知りません」

ほむら「だからロボットに魂を宿らせる事は出来ないし、どれだけ肉団子を弄っても命にはならないのです」

ほむら「さて。今回佐倉さんは見事天使の器になってしまった」

ほむら「それはもう、光が差し込んだでしょうねぇ」

ほむら「そして、命はその世界が自分の生まれるべき世界かどうかなんて知らない」

ほむら「多分この天使さん、意気揚々とこっちの世界に来ちゃったんでしょうね」

さやか「で、でも、もうその器には杏子ちゃんの、人間の魂があるんだよね?」

さやか「よく分かんないけど、先客が居るのならもう入れないんじゃ……」

ほむら「おや。珍しく重大な事に気付きましたね」

ほむら「ええ、いくら肉体的には天使になったとしても、魂自体は佐倉さんのものです……今は」

まどか「今はって……まさか」


875: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:30:45.05 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「相手は天使ですよ? その魂の強さは人間の比ではありません」

ほむら「例えるなら、ネズミと鯨が力比べするようなもの」

ほむら「時間稼ぎは出来ても勝てるものではなく、間違いなく肉体を奪われてしまいます」

ほむら「……無論、魂が入れ替わっただけですから、佐倉さんは”肉体的”には死にません」

ほむら「人間の記憶とは脳によるものですから、知っている事も言葉遣いも、佐倉さんのままでしょう」

ほむら「ですが、駄目なんです」

ほむら「ほんのちょっぴり、違和感が残る程度だとしても……”その人”は本人ではない」

ほむら「魂が入れ替わったら、佐倉さんは”死んでしまう”のです」

さやか「だ、だったら早くしないと!」

マミ「そうね、早く助けないと佐倉さんが佐倉さんじゃなくなってしまう……!」

ほむら「ああ、それは平気だと思いますよ」

さやか「だ、だって、天使の奴はもうこんな間近まできて――――」

ほむら「不幸中の幸いと言うべきか、佐倉さんの魂は未だソウルジェムのままです」

ほむら「妖精さん曰く、魂が固定化されている事で、押し出しに対してかなり強くなっているとか」

ほむら「そのうち押し負けちゃうでしょうけど、こうして話をする程度の余裕はあるそうです」

ほむら「今は冷静に、念入りに……失敗して無駄に時間を浪費しないよう徹底的に策を練る」

ほむら「それが最善の方針だと、私は思います」

さやか「……分かった……」

マミ「でも、今こうして佐倉さんが苦しんでいると思うと……」

まどか「そうですね……一刻も早く助けないと……」

ほむら「あ、それ演出だそうです」

さまマ「え?」


876: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:33:56.82 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「ほら、さっき言ったじゃないですか。サービス精神旺盛でノリが良いって」

ほむら「空から降り注ぐ光とか、佐倉さん拘束とかは天使降臨っぽいからやっているだけで」

ほむら「佐倉さんは見た目ほど苦しんでないとの事ですよ。妖精さんが言ってました」

ほむら「まぁ、逃げられないよう押さえつけているので、楽でもないでしょうけど」

さやか「……人の身体乗っ取ろうとしているのに、ノリ?」

ほむら「まぁ、天使は天使でも赤子ですからね」

ほむら「ノリは良いけど倫理観がない」

ほむら「子供って残酷ですよねー。蟻の手足をもぐところを誇らしげに見せつけたりとか」

マミ「……その一言で納得出来てしまうのがなんだか虚しいわ」

ほむら「とりあえずこんなところで、佐倉さんの身に起きている事態の説明は以上です」

ほむら「次いで、私達が何故眠ってしまったのかについてお話しましょう」

さやか「え? それもこの天使の仕業じゃないの?」

ほむら「間接的にはそうですし、天使さんの対処をすれば解決する筈ですが」

ほむら「一応、それとこれは別の話ですからね」

ほむら「答えだけを先に言いますと、『並行植物』」

ほむら「今、私達の周りに生えている――――彼等の仕業です」

マミ「っ!? これが……」

まどか「この草が……?」

ほむら「正確には植物ではありません。というより、我々が知る生物とは根本的に違う”イキモノ”です」

ほむら「それは現実と夢の間に住み、物質的な制約に囚われない」

ほむら「写真には映れど目には映らぬもの、遠近法を無視し何処でも同じ大きさに見えるもの、鏡になら映るもの」

ほむら「どれも私達人間の目にはハッキリと映らない。そして触る事も叶わない」

ほむら「精々夢の中で、一部の存在を確認出来るだけ」

ほむら「そして私達が、見滝原中の人々が眠りこける原因となったのが並行植物……”デグチハアッチ”」

ほむら「これから生まれようとする命を出口まで導いてあげる、心優しくて社会性のある方々です」

さやか「心優しい?」

まどか「社会性?」

マミ「……その心優しくて社会性のある植物が、なんで見滝原中の人達を眠らせているの?」


877: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:37:23.33 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「それもまた不慮の事故と言いますか」

ほむら「天使さんと一緒に、門を潜ってうっかり出てきてしまった方々が居たようでして」

ほむら「あくまで彼等は夢の世界の住人。我々人間が生きる世界では身体が持ちません」

ほむら「まぁ、あの方々にとっては身体なんて飾りだそうですけど……」

ほむら「こちらにきた彼等の身体は粉々に砕け、光の粒と化し」

ほむら「周囲に巻き散らされる」

ほむら「そして彼等の身体を粉末にしたものは、睡眠薬として使えるのです」

さやか「なっ……睡眠薬!?」

ほむら「夢と現をある程度行き来出来るイキモノですからね。その成分は察して知るべし、と言ったところでしょうか」

ほむら「彼等を吸い込んで眠ると強烈な睡魔に襲われ、そのまま眠れば全ての生き物と夢で繋がる事が出来ます」

ほむら「その結果がこの夢の世界……私達は学校に居るので分かり辛いですけど」

ほむら「今は見滝原中の人々や動物と、この夢を共有しているはずです」

ほむら「ほら、グラウンドに人が居ますよ」

さやか「あ、ほんとだ……って、早乙女先生じゃん」

まどか「……なんか、男の人に囲まれてるよ?」

マミ「ハーレム?」

ほむら「夢ですからね。欲望丸出し」


878: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:39:26.96 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「話を戻しましょう……デグチハアッチは、現実にくると身体が砕けて粉になってしまいます」

ほむら「で、地上で粉になる分には、被害は風に乗ってゆっくりと広がる形で済んだでしょうけど」

ほむら「演出大好きな天使さんが、空からやってきてしまいましたからねぇ」

ほむら「もう拡散拡散超拡散。今頃隣町まで広がってるんじゃないですかね?」

ほむら「はっはっはっ」

まどか「笑ってる場合じゃないよそれ!?」

ほむら「ええ、確かに笑い話じゃありませんね」

ほむら「要点を纏めましょう」




ほむら「一つ。佐倉さんは今、天使に肉体を奪われようとしている」




ほむら「二つ。並行植物の出現により、見滝原及びその周囲は壊滅的被害を受けようとしている」




ほむら「我々は、この二つをなんとしても解決せねばなりません。それも早急に」

ほむら「佐倉さんの事は勿論、一日なんて言わず一時間でも一つの都市機能が停止したら」

ほむら「グローバルだと言われている昨今の人類社会。何処で何が被害を受けるか分かったもんじゃありませんもの」

マミ「なんて事……」

さやか「早くなんとかしないと……!」

まどか「で、でも、どうすればいいの?」


879: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:42:23.04 ID:Xki2Yhpp0


まどか「天使も並行植物っていうのも、悪い子達じゃないんだよね?」

まどか「ただ事故で人間の世界に来ちゃっただけで」

まどか「悪い事をしているつもりすらないんだよね?」

まどか「……私は……」

さやか「まどか……」

ほむら「確かに、鹿目さんの言う通りです」

ほむら「迷子の子供を殴って追い返すなんて、人としてやっていい事ではありません」

ほむら「そもそも天使相手に真っ向勝負なんてやってられませんし」

ほむら「真っ向勝負ではなく、搦め手でやるとしましょう」

さやか「搦め手?」

ほむら「ええ」

ほむら「佐倉さんが何故天使になったのかと言えば、その第一段階は妖精さんアイテム」

ほむら「悪心が抜け落ち、外見が天使のそれになってしまった事が始まりです」

ほむら「外見的要素も重要でしょうが、何よりあの綺麗な性格を目の当たりにした結果」

ほむら「我々を含めた周りの人間が佐倉さんを天使と認識してしまった訳です」

ほむら「なら、逆に考えれば……」

マミ「そっか! 昔の粗暴で粗雑で暴悪で乱暴で手荒な佐倉さんなら天使だと思われない!」

さやか「巴先輩、杏子ちゃんに何か恨みあるんすか? というか乱暴されたんですか?」

ほむら「まぁ、粗暴で粗雑で暴悪で乱暴で手荒で品がない佐倉さんがどんな人かは私は知りませんが」

さやか「おい。なんで一つ増やした」

ほむら「性格が変わった姿をこの夢の世界に居る人々全員に見せる事で」

ほむら「佐倉さんが天使であるという認識は変わる筈です」

ほむら「それにより、佐倉さんは天使の器として相応しくなくなる……」


880: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:45:05.53 ID:Xki2Yhpp0


まどか「でも、そう上手くいくの?」

まどか「そもそもどうやって佐倉さんの心を元に戻すの?」

ほむら「戻す方法は大丈夫です。妖精さんにアイテムを一つ作ってもらっています」

ほむら「その名も『暗黒液体マター』」

ほむら「多く貰っていた事に気付いたのについ言い出せなかった小銭」

ほむら「机の中に隠してしまったテストの答案」

ほむら「自分がしたのに名乗り出なかったオナラ……」

ほむら「それら世に蔓延る邪悪な存在から悪心を抽出・濃縮した狂気の発明品です!」

さやか「随分と可愛い邪悪だなおい」

ほむら「作戦内容は搦め手ながらも単純。この暗黒液体の入ったカプセルを佐倉さんに飲ませるだけ」

ほむら「それだけで佐倉さんは元の粗暴で……ああもう面倒ですね。乱暴佐倉さんに戻ります」

ほむら「問題は、この方法で確実に救い出せるとは限らない、という事です」

ほむら「一応モニターは妖精さんアイテム『鵜呑みテレビ』という」

ほむら「見た光景をすんなり受け入れてしまうものを用意しましたが」

ほむら「所詮他人の認識。こちらの思惑通り人の心が動かせたら苦労はありません」

まどか「そんな……」

ほむら「ですがそれでもやらねば、佐倉さんは救えません」

ほむら「ここまで事態が切羽詰った以上、最早選択の余地はないのです」


881: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:46:59.96 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「そして、この作戦は……」

ほむら「私達の中の誰か一人にお願いする事となります」

さまマ「!?」

さやか「ひ、一人だけって、どういう事!? みんなで行った方が勝率高いでしょ!?」

ほむら「そうしたいのは山々ですが、実は一つ問題が生じていまして」

マミ「問題?」

ほむら「先程言いましたように、見滝原は今や全域にデグチハアッチの粉が満ちています」

ほむら「当然、このままだと常にその粉を吸ってしまうので起きられません」

ほむら「なので目を覚ますためのアイテムを妖精さんに作ってもらう訳ですが……」

ほむら「その材料となる並行植物”オキャクサンノミスギデスヨ”が、この辺りには殆ど生えていないそうなのです」

さやか「つまり、材料がないって事?」

ほむら「ええ。なんでも”気分変動”の影響だそうで」

ほむら「まぁ、そこは流石妖精さん。一人分はなんとかこしらえてもらいましたが……」

ほむら「これを四等分して私達全員を目覚めさせる、というのはちょっと愚策ですね」

マミ「確かに……状況把握や作戦伝達の時間を考慮すれば、下手に薬の持続時間を減らすのは得策じゃないわね」

マミ「そうなると残る問題は」

まどか「……誰が行くか」

ほむら「ですね」

ほむら「とはいえ相手はガチの天使。ハッキリ言って真っ当な力じゃ手に負えません」

ほむら「並の力しかない人は、選考外とさせていただきます」チラッ

さやか「並の……」チラッ

まどか「力の人……」チラッ





マミ「……うん、まぁ、みんなの言いたい事は分かるわ」



882: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:49:54.63 ID:Xki2Yhpp0


マミ「分かるけどいきなり全員から戦力外通知なんて納得いかないわよ!」

マミ「確かにあなた達と比べれば私の力なんて微々たるものでしょうけど!」

マミ「でも今なら魔力使いたい放題だからマスケット銃どころか戦車砲だって千門ぐらい生み出してやるわよ!?」

ほむら「戦車砲(笑)」

マミ「なんで笑ったの?!」

さやか「お、落ち着きましょうよ巴先輩」

さやか「実際、あたしらの中じゃ先輩の力が一番常識的じゃないっすか」

マミ「それは、確かにそうだけど……」

さやか「それにほら、選ばれたらあのヤバそうな天使と対決するんですよ?」

さやか「そりゃ人命救助ですけど……」

マミ「……ありがたく、辞退させていただきます」

ほむら「それが懸命かと思います」

ほむら「さて、私自身は戦闘力皆無なのでフォローに徹するとして」

マミ(さらりと自分も候補から外したわね)

ほむら「鹿目さんかさやかさんかとなりますが――――」

さやか(まぁ、普通に考えればまどかだよなぁ)

さやか(そりゃあたしも強いけど、それは巨大化したらの話だし)

さやか(それに地球を滅ぼせるって言われてたまどかと比べたらねぇ)

ほむら「さやかさんにお願いしましょう」

さやか(どう考えたってまどかが選ばれるに決まって――――)

さやか「……………」

さやか「ヴェ?」

ほむら「何呆けてるんですか? これからさやかさんには辛く厳しい戦いをお願いしようと言うのに」

ほむら「そんな調子ではちょっと不安になってしまいますよ」

さやか「いやいやいやいやいや? 可笑しくない? つか可笑しいでしょ?」


883: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 20:58:19.30 ID:Xki2Yhpp0


さやか「なんでまどかじゃなくてあたしなの!?」

ほむら「一から説明しないと駄目ですか?」

さやか「むしろ一から説明しなくても大丈夫な根拠が知りたいわっ!」

ほむら「確かに鹿目さんの魔力は絶大です。天使相手に真っ向勝負を挑めるでしょう」

ほむら「しかし戦った身として言わせてもらうと」

ほむら「鹿目さんの魔法はビームとか光の矢とか魂吸い取りとか……ぶっちゃけ支援タイプの技でした」

ほむら「我々の目的は佐倉さんの救出」

ほむら「求められるのは支援ではなく、どんな攻撃にも耐えられる屈強さです」

ほむら「そうなると、射撃型の鹿目さんよりも近接型のさやかさんの方が適任だと思いますが?」

さやか「それはそう、だとは思うけど……」

ほむら「それにうっかり反撃しようものなら、多分佐倉さん諸共になってしまいます」

ほむら「あまり強過ぎるのも考え物です。そもそも作戦の都合、接近出来るのなら攻撃力は必要ありません」

ほむら「つまり程良く”弱い”人が丁度いい」

ほむら「この中では、さやかさんがその立ち位置とは思いませんか?」

さやか「うぐ」

さやか「でも、ほ、ほら、あたし巨大化しないとパワーが……」

ほむら「妖精さん、なんとかしてください」

妖精さん「ではこちらのかいりょーがたゆびわをごしようくだされ」

さやか「か、改良型指輪?」

妖精さん「はずすとおおきく?」
妖精さん「かけごえでぷりてぃできゅあきゅあー」
妖精さん「ときとばあいにおうじてつかいわけすいしょー」

さやか「……?」

ほむら「つまり特定の掛け声に呼応し、人間サイズを保ったまま圧倒的パワーを得られるよう改良したとの事です」

ほむら「しかし基本的なパワーでは巨大化の方がやはり上なので、状況に応じて使い分けてください」

さやか「今の話の何処にそれだけの情報量があった!?」

さやか「というか、そんな細かな設定が出来る指輪を作るぐらいなら、あたしのこの体質を治してよ!?」

ほむら「そんな事しても面白くないじゃないですか」
妖精さん「おもしろさがないのでもちべあがらず?」

さやか「納得いかねぇーっ!?」


884: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:00:41.68 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「さ、一通り説明もしましたし、さやかさんには起きてもらうとしましょう」

さやか「流すなっ!?」

さやか「ぜー……ぜー……ああもう! 分かった! やればいいんでしょ!」

さやか「それで、起きるってどうするの? その、オキャクサンノミスギデスヨとかいうやつで作った薬を飲む、とか?」

ほむら「薬ではないですね」

ほむら「使うのはこちら」

ほむら「『夢から脱出器』~♪」

さやか「……見た目投石器にしか見えないものが登場したんだけど」

マミ「所謂カタパルトね」

まどか「というか、何処にしまっていたの?」

ほむら「夢の中でそれは野暮ってもんですよ」

ほむら「さぁ、さやかさん。こちらの席にお座りください」

さやか「いや、お座りくださいも何もそこ石を設置する場所だよね? 飛ばす気満々だよね?」

さやか「というか睡眠薬に対抗するものがなんで投石器なんだよ!? 並行植物を何処に使った!?」

ほむら「確か、この投石器を動かすための縄だそうで」

さやか「それ並行植物使わなくても作れるでしょ!?」

ほむら「何を言ってるんですか! 作れる訳ないでしょう!? ふざけないでください!」

さやか「なんで怒られるの!?」

ほむら「ええい、大人しくここに座ってくださいよ!」ギギギ

さやか「ちょ、押すな本当に止め」

ほむら「鹿目さん!」

まどか「手伝うんだね! 分かったよ!」

マミ「私もやるわ!」

さやか「!? なんで二人共乗り気なの!? 助けてよ!」

まどマミ「だって自分がアレに乗るのは嫌だし……」

さやか「なんで今日に限って自分に正直なの!?」

ほむら「そりゃ、夢ですもん。自分の欲望に正直になって当然です」

さやか「逆に現実と何一つ変わらないお前はどれだけ普段から正直なんだ!?」

さやか「って、あ、ま、お願……」

ほむら「ふぅ。設置完了」

ほむら「それじゃ、スイッチを――――えいっ♪」カチッ

さやか「あ」


885: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:01:23.06 ID:Xki2Yhpp0








                   \ アッー /










886: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:03:43.77 ID:Xki2Yhpp0


さやか「はっ!?」

さやか「う、うーん……なんか酷い夢を見ていたような……」

さやか「つーかここ何処? って、屋上? なんであたしこんなとこで寝てたんだっけ?」

さやか「それになんか空も薄暗いし……」

杏子「く、ぅ……ぁ……!」

さやか「杏子ちゃんは空から降り注ぐ光に囚われて苦しそうにしているし」

さやか「全く、何がどうなって」

さやか「……………」

さやか「杏子ちゃんが光の中に囚われてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

杏子「美樹様……!?」

杏子「一体、何が……皆様、急に倒れ、うぐっ!」

さやか「はっ!? そ、そうだ!」

さやか「あたしは杏子ちゃんを救うために夢の世界からこっちに戻ってきたんだった!」

さやか(まどかと巴先輩……は、寝たまま)

さやか(ほむらは多分保健室の近くで寝たまま……)

さやか(えっと、これからどうすれば……)



――――さやかさーん



さやか「こ、この声はほむら!? 何処から……」


887: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:07:56.11 ID:Xki2Yhpp0


――――夢の中からこんにちは

――――妖精さんパワーによって、こちらの音声を送っております

―――― 一応生声でも思考でも音声のやり取りは出来るのと

――――映像はモニターで見ていますので、そちらの状況は把握できます

――――フォローは任せてください

さやか(コイツ、直接脳内に!? いや、それより今は……)

さやか「ほむら! これからどうすれば……」

――――まずは深呼吸ですかね

さやか「え?」

――――落ち着かねば出来る事も出来ません

――――静かに、だけど熱く

――――ガスコンロの火みたいに燃えましょう

さやか「言いたい事は分かるけどその例えはチャチ過ぎるだろ」

さやか(でも……うん、なんか冷静になった)

さやか「もう大丈夫。次は?」

――――はい。それでは、夢の中で渡したカプセルは紛失していませんよね?

さやか「カプセル……あ、ちゃんと持ってる。夢から持ち運び可能とか、流石妖精さんだなぁ……」

さやか「これを、杏子ちゃんの口に入れれば良いんだっけ?」

――――正確には飲ませれば、ですけど……まぁ、それで問題ありません

――――こちらは妖精さんと並行植物の協力の元

――――この夢の世界にいる全ての人にそちらの映像を見せる準備は出来ています

――――あとはさやかさんが作戦に成功するのを待つだけです

――――好き勝手に、空気を読まずに

――――あの天使さんのステージをぶち壊してください!


888: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:09:27.41 ID:Xki2Yhpp0


さやか「……ふんっ! どーせあたしは空気読めないキャラだよ!」

さやか「だから徹底的にやってやる!」スッ

さやか「妖精さんから貰った指輪パワーで!」

さやか「プリティでキュアキュアな感じなやつに、変☆身」



:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:

・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。

・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。

*:・゚'☆,。・:*:・



さやか「はい! 変身完了!」

――――無駄にフリルたっぷりかつ巨大なリボン付きという、肉弾戦に向かない格好ですねー

――――申し訳程度にミニスカートで運動性の良さをアピールされても……

さやか「うっさい! つーかアンタに言われたくないから!」

――――いや、だって私のは魔法少女衣装でしたし

さやか「……まぁ、この衣装はアレだよね。魔法少女というより伝説の戦士だね」

さやか「なんでそう思ったのかはあたしにも分からんが」

さやか「兎に角! パワーは充実! 巨大化した時ほどじゃないけど……」

さやか「今なら何が相手でもやれる気がする!」



人型の光【―――――】ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



さやか「……………」

さやか「杏子ちゃんの頭上になんか居るううううううううううううううううううううっ!?」


889: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:12:27.51 ID:Xki2Yhpp0


――――不味い! ちょっと時間を掛けすぎましたか!

さやか「ほむら!? どういう……」

さやか「まさか!?」

――――いよいよ天使さんがこの世に降臨しようとしている、と妖精さん達が言っています!

――――つまり佐倉さんの身体を乗っ取ろうと動き始めたんです!

――――実質これが”最後のチャンス”となります!

さやか「ちょ、最初で最後って……そもそもアイツの力も自分の力も把握してないのにそう言われても」

人型の光(天使)【】スッ

さやか「!?(腕、みたいのを振り上げ……)」

さやか(に、逃)


――――ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


さやか「うひゃあっ!?」

さやか(あ、危なかった……逃げなかったら叩き潰されてた)

さやか(つーか肉体もないのに物理攻撃!? いくら天使だからって無茶苦茶過ぎ……)

さやか(あ、校舎が壊れてる。しかも結構)

さやか「って、うぇええぇぇぇぇえええええっ!?」

さやか「こ、これ、何人か死んで……」

――――そこは大丈夫です!

さやか「ほ、ほむら! でも……」

――――今、こちら側では妖精さんをざっと三百人ぐらいまで増やしました!

――――夢と現実の距離はさして遠くありません! このぐらいの距離なら

――――完璧とは言いませんが、ある程度は妖精さんの効力が及びます!

――――ましてや学校の関係者はもれなく夢に来ているんです! 妖精さん濁です!

――――ちょっとずつ崩れる分には誰一人死にませんっ!

さやか「流石妖精さんマスター! こういう時だけ頼りになるっ!」

さやか「だったらもう気にせず――――」

さやか「突撃だっ!」


890: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:13:53.12 ID:Xki2Yhpp0


ドンッ!

さやか「うおっ!?」

さやか(凄い! さっきは咄嗟だったからよく分かんなかったけど……)

さやか(勢いよく地面を蹴ったら、車より速く前に進めた!)

さやか(今のあたし、滅茶苦茶強くなってない!?)

さやか(確かに100メートルまで巨大化した時と比べればへなちょこだけど)

さやか(でも、十分過ぎる!)

さやか(これなら行ける!)

さやか(例え天使が相手でも、きっと勝て




――――ゴッ!!




さやか「ぐ、ぎゅ……?!」

さやか(な、なんだこれ……)

さやか(杏子ちゃんを包む光が急に広がって……)

さやか(その中に入ったら、身体が重く……!)

――――さやかさん!

さやか(ナイス、タイミング……丁度、訊きたかったところだよ……!)


891: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:16:57.17 ID:Xki2Yhpp0


さやか(これ、どういう事!?)

――――恐らく天使さんがいよいよ本気を出した、という事かと

――――サービス精神旺盛でノリがいい

――――だからこそあの方は今まで遊んでいた訳ですが

――――あの方だって生まれたい

――――この明るくて眩しい世界に来たいんです

――――それを邪魔すると分かれば

――――暴れるのは、赤ちゃんなら当然です!

さやか(はは……確かに……)

さやか「だけど、こっちだって負ける訳にはいかない――――!」

天使【―――――ォ】

天使【オンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!】

さやか「ぐ、ううぅぅぅぅぅ!?」

さやか「な、なんて叫び声……ほんとに赤ちゃんかよアレ……!」

天使【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】

さやか「げっ……腕を振り上げ……」

――――ドオオオオオオオオオオオオオオンッ!

さやか「ぐ、うあぁあぁぁあっ!?」

杏子「み、美樹、様……!? 大丈夫ですか……!」

さやか「ああ、杏子ちゃん……このぐらい……全然平気……!」

さやか(いや、本当は滅茶苦茶痛いけど!)

さやか(殴られるのって、すっげー痛い!)

さやか(まどかと巴先輩は、こんな痛みを我慢しながらずっと戦ってたの?)

さやか(はは……凄いや。あたしなんて、たった一発で怖くなってるのに)

さやか(……怖い、すっごい怖い)

さやか(暴力がこんなに怖いなんて、知らなかった……)


893: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:20:53.07 ID:Xki2Yhpp0


さやか(――――だから)

杏子「う、ぐ、うぅぅぅ……!」

さやか(心が綺麗になって、争いを嫌がるようになった今の杏子ちゃんは、もっと怖い想いをしている筈なんだ)

さやか「だったら、雑で、空気を読まない、あたしが、」

さやか「怖がってられるかああああああああああああああっ!!!」

天使【!】ブンブンブンッ!!

さやか「ぐっ! ぐぅ、ぐ、がっ、ああっ!?」

杏子「美樹様……」

杏子「も、もう、逃げて、ください!」

杏子「こんな大きなものに、勝てる訳が……」

さやか「逃げない……」

杏子「え……」

さやか「あたしは、逃げない」

さやか「杏子ちゃんを助けるまで、逃げる訳にはいかない!」

天使【ァ――――アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!】

さやか「っ……!」

さやか「ああ、泣きたくなるよね……」

さやか「アンタが悪くないのは、知ってる……生まれたがっているのも、知ってる……」

さやか「呼ばれたから来たのに、勝手に嫌われて、勝手に追い払われて……」

さやか「悲しいよね……悪いのは、巻き込んだあたし達の方だよね」

さやか「でもね、本当に悪いけどね……まだその『席』は……」

さやか「開いて、ないん、だ……」

さやか「まだその席をアンタに渡す訳には、いかないんだよっ!!」

天使【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!】ドンッ!

さやか「ご、ああああああ!?」

杏子「……!?」


894: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:22:23.30 ID:Xki2Yhpp0


杏子「なんで、そこまで……!?」

杏子「何故そこまで、わたくしを助けようと……」

杏子「わたくしとあなた様は今日出会ったばかりの……」

さやか「……そっか……」

さやか「杏子ちゃんにとっては、その程度か……」

さやか「ま、当然だけど……残念だなぁ」

杏子「え……?」

さやか「あたしはね、杏子ちゃん」



さやか「アンタの事を、友達だと思っていたよ」



杏子「――――」

さやか「友達なんだから、苦しそうにしていたら助けるのが当たり前でしょ?」

さやか「友達なんだから、居なくなるのを認められる訳ないでしょ?」

さやか「友達だと思ってくれるのなら……」

さやか「ちゃんとあたしに言って!」

さやか「アンタはあたしに――――」

さやか「あたしに、どうしてほしい!?」

杏子「わ、わたくし、は……」

杏子「わたくしは……」

杏子「……わたくしは、美樹様に、傷付いてほしく、ない……です……」

さやか「……っ」


896: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:25:39.09 ID:Xki2Yhpp0


杏子「――――でも」

杏子「助けて、ほしい、です……」

杏子「ここから出て」

杏子「皆さんと一緒に……居たい……!」

杏子「だから……助けて!!」

さやか「……………ふ」

さやか「ふ、ふ、ふふ」

さやか「あっははははははははははは!」

杏子「み、美樹様……?」

さやか「あー……あたしって、ほんと馬鹿」

さやか「たった一言助けてくれって言われただけなのに」

さやか「もう全然――――なーんにも怖くなくなっちゃったよ!!」

杏子「!」

天使【!?】ブンブン

さやか「ぐ、ううっ!」

さやか「痛くない、痛くない……」

天使【!!!】ブンブンブンブン

さやか「痛く……」

さやか「なああああああああああああああああああああいっ!!」

――――ボッ!

天使【!!!?!?】

さやか「うわっ!? 手からなんか出た!? 今更だけどあたしどんどん人間離れしてる!」


898: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:27:42.71 ID:Xki2Yhpp0


さやか(でも今の一撃で天使がよろめいた……チャンス!)

さやか(ほむら!)

――――はい! 準備は出来ています!

――――あと一歩、さやかさんが佐倉さんに近付いたタイミングで

――――そちらで起きた映像を夢の世界全域で公開します!

――――あとは佐倉さんと口汚く口論してくれれば、作戦は完了です!

さやか「良し!」

さやか(とは言ったものの……)

さやか(近付けば近付くほど、上からの圧迫感、光の圧力が強くなってる……!)

さやか(天使がよろめいた隙に大分近付けて、杏子ちゃんと近過ぎるからか攻撃の手は止んだのに)

さやか(あと、一歩なのに……)

さやか(その一歩が、踏み出せない!)

杏子「美樹様……!」

さやか「もう、少し……もう少しなんだ……!」

さやか「あと一歩で、届くんだ……」

さやか「だから動け……!」

さやか「動け、動け動け動け動け動け!」




さやか「動けっつってんでしょうが、あたしの足いいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」




899: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:28:29.08 ID:Xki2Yhpp0





















―――― つるっ






900: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/14(水) 21:29:43.80 ID:Xki2Yhpp0


さやか「え?」

杏子「へ?」

さやか(あ。足が滑って……)

さやか(ああ、杏子ちゃん目掛けて倒れる)

さやか(いや、でもこれはチャンス。このままカプセルを杏子ちゃんの口に放り入れ)

さやか(あ、ヤベ。外した)

さやか(つーか倒れるあたしの身体、なんか真っ直ぐ杏子ちゃんに向って)

さやか(そんでもって激突した勢いで杏子ちゃんを押し倒し――――)



――――ちゅっ



杏子「」

さやか「」

さやか(……いや、あの……お約束かも知れませんけどね妖精さん……)

さやか(これはバトル漫画ではなく、ラブコメのお約束ですよ?)

杏子「>>0�☆○×!△Σ&@」

さやか(ああ、杏子ちゃんめっちゃ嫌がってる、つーかもがいてる)

さやか(よーし、冷静になるんだあたし)

さやか(ここは落ち着いて杏子ちゃんから離れ)

――――ズシンッ!

さやか(って、そういや此処は光の中だったァ――――!?)

さやか(上から押し付けられる! ぎゅっと押し付けられる!)

さやか(だから……だから……)

さやか(強制的に    キスにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?)ブチュゥウゥゥッ

杏子「んんんんんんんんんんんんんんっ!?」

さやか「んんんんんんんんんんんんんっ!!」



さや杏「ん――――――――――――――!!!!」




901: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:31:42.24 ID:Xki2Yhpp0


                  ―― 一方、夢の世界にて ――



マミ「う、うわぁ……うわぁ……」

マミ「アレ、絶対入ってるわよね……何がとは言わないけど」

まどか「す、凄い……後学のためにしっかり見とかないと……」

マミ「えっと、まぁ、その意見に少なからず同意するところがないとは言わないけど」

マミ「でもそれより……」

ほむら「」

マミ「何が起きようと冷静沈着だった暁美さんが固まってる……」

マミ「あの、暁美さん……?」

ほむら「……は」

マミ「は?」

ほむら「破廉恥ですううううううううううううううううっ!!!」

ほむら「●●です! ●●です! 如何わしいですふしだらです尻軽です妄りがわしいですぅぅぅぅぅ!」

マミ「みだり、え?」

ほむら「もう見ていられませんんんんんんんんんんっ!」ダッ

マミ「ああ!? 暁美さん何処行くの!?」

マミ「ど、どうしましょう……突拍子のない出来事に驚いて我を失ってしまったけど」

マミ「これって作戦失敗じゃない!」

マミ「暁美さんを捕まえてもう一度作戦を練らないと!」

マミ「鹿目さん! 手伝っ」

まどか「あ、ごめんなさいマミさん」

まどか「私さやかちゃんを観察……いや覗き見……見張ってないといけないので一人でなんとかしてください」

マミ「何言ってるの!? 今このタイミングで何言ってるの!?」

マミ「ああ、これからどうしたら……」


          ―――― その時、不思議な事が起こった ――――


マミ「!? 何このアナウンス!? 何処で誰が?」

妖精さん「あー、これ、かみですなー」

マミ「か、神? え? 神様?」

妖精さん「さきほどおねがいしました」

マミ「……何を?」

妖精さん「じっきょう」

マミ「神様に実況!? ある意味適任だけど無駄に豪華過ぎない!?」


902: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:34:29.12 ID:Xki2Yhpp0



     ―――― 佐倉杏子から、天使としての資質が少しずつ抜けて行ったのだ ――――


マミ「え、何? ノリノリなの!? 神様ノリノリで実況してるの!?」


             ―――― それは暁美ほむらが行った放映 ――――

       ―――― 佐倉杏子と、美樹さやかのキスシーンが全ての原因だった ――――


マミ「あれが……? 一体……」


           ―――― 濃厚なベーゼ、親密なアンブラッセ ――――


マミ「うん、それどっちもキスよね?」


        ―――― 妖精さんの力により、その映像は見滝原中の人々に知れ渡り ――――

         ―――― 見滝原全ての人々が、その光景を見たままに受け入れた ――――


マミ「とんだ羞恥プレイね。というか神様も妖精さんは妖精さんって呼ぶのね」


             ―――― 同性という禁忌の壁を打ち破り、 ――――

             ―――― それでも足りずにお互いを求め、 ――――

               ―――― ついには身体を触れ合う ――――

        ―――― 同性を愛する事の苦悩、後悔、罪悪、そして悦楽と幸福 ――――

         ―――― ……未熟な少女達のそんな内心を、人々は妄想した ――――


マミ「うん、そうね。そんな事実ないから妄想よね。知ってた」


               ―――― そして人々は思った ――――

     ―――― あ、妄想していて思ったけどこの人達の絡みって割とガチっぽい、と ――――


マミ「うん、実に安っぽくて直球な思考回路ね。人間不信に陥りそうなぐらい」



903: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:36:32.73 ID:Xki2Yhpp0



               ―――― やがて人々は想いを共有する ――――

             ―――― ガチなあの子に天使は相応しくない ――――



             ―――― 『百合少女』の名が相応しい、と! ――――



マミ「うん、なんで力を込めたのかしら? 好きなの? あなた何処の宗教の神様?」


          ―――― こうして佐倉杏子は天使の器として相応しくなくなり ――――

               ―――― 百合少女として新生したのだ! ――――


マミ「いや、綺麗に纏めようとしないでよ!? 何もかもツッコミどころ満載よ!」


          ―――― ついでに器を無くした天使は元の世界に帰った ――――

               ―――― めでたし、めでたし ――――


マミ「だから纏めるなっ!」

マミ「って、なんか急に世界が暗くなってない!?」

妖精さん「ものごとかいけつしたので、ひとくぎり?」

マミ「え!? 本当に解決したの!? あれで?!」

マミ「いやいやいや可笑しいから! こんなの絶対可笑しいから!」

マミ「ちょ、ま、本当に世界がフェードアウトして」

マミ「わ、私は……」

マミ「私はこんな結末、絶対に認めないわよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


……………

………




904: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:42:21.13 ID:Xki2Yhpp0


杏子「えーっと、まぁ、なんだ……色々迷惑掛けちまったみたいで……」

杏子「ご……ごめん」

ほむら「気にしないでください」

ほむら「全ての責任は私抜きで妖精さんパワーに頼ろうとした巴先輩にありますから」

マミ「さらりと私に責任を擦りつけないでよ!? みんなの責任でしょお!?」

さやか「なんかさっきから巴先輩機嫌悪くない?」

まどか「あ、分かる? でも、なんでだろうね」

さやか「しっかしまぁ、性格はカプセルを飲んで元に戻ったみたいだけど」

さやか「相変わらず天使の翼は生えたままなんだよなぁ」

ほむら「一応時間と共に徐々に衰えて、人間のそれに戻ると妖精さんは言っていましたが」

ほむら「一時的とはいえ完璧な天使だった事には変わりありませんからね」

ほむら「今でもなんやかんや天使の力の片鱗が残っている筈です」

ほむら「スペック的には人間どころか魔法少女のそれを遥かに凌駕している力が」

杏子「ああ、そういや魔力っぽくない力がすっげー溢れる感じなんだよなぁ」

杏子「戦闘力十倍って言うとなんか陳腐な響きだけど」

杏子「実際にそのぐらい強くなった気がすんだよね」

マミ「うう……私の影がまた薄く……」

さやか「なんで巴先輩泣いてんの?」

まどか「さあ?」

杏子「ま、このパワーアップも一時的なものみたいだし」

杏子「精々奢らないよう気を付けないとな」

ほむら「天使の肉体が一年二年で衰えるとも思えませんけどね」

杏子「へ?」

ほむら「いーえ、なんでも」


905: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:43:47.09 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「それにしても……」

ほむら「見滝原では交通事故や転倒による怪我人が多数。風力発電所も一時停止」

ほむら「外出した人は全員もれなく夢の世界にご案内でしたので犯罪は皆無でしたが」

ほむら「死者が出ていないのが”不思議”なほどの惨事になってしまいましたね」

マミ「ネットのニュースでも、被害は相当大きいみたい」←携帯でチェック中

マミ「怪我による出血で、街のあちこちが紅く染まっているらしいわ」

マミ「交通事故による物損も相当数に上るみたい。不思議と……ええ、不思議と人身事故はないけど」

ほむら「あらあら大惨事」

ほむら「まぁ……」

ほむら「”これ”に比べれば他はまだマシですかねぇ……」

杏子「だなぁ」

さやか「だねぇ」

まどか「だよねぇ」

マミ「そうねぇ」






まどか「……学校、倒壊しちゃったね」




906: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:46:05.38 ID:Xki2Yhpp0


マミ「ええ……半分ぐらいしか原型が残ってないわ」

さやか「戦い、激しかったから……」

ほむら「いやぁ、学校壊しちゃったのは久しぶりですよー。あっはっはっはっ」

杏子「久しぶりってなんだよオイ」

まどか「前にも壊したことあるの?」

ほむら「あれは確か小学六年生の夏でしたかねぇ。遠足が面倒で学校が休みになればと思い」

さやか「うん、それ以上言ったらあたしはアンタを警察に突き出さなきゃいけなくなるからね?」

杏子「コイツ、ひょっとしてあたしより悪い事してんじゃ……」

マミ「否定出来ないわね」

まどか「ちょい悪って素敵……」

杏子「ちょいで済むの?」

マミ「それは否定出来るわ」

ほむら「ま、今回は不可抗力です。それに今後の事を考えると、学校が休みになった方が色々と好都合でしょう」

まどか「今後の事?」

ほむら「ええ」

ほむら「実は妖精さんに頼んでいた特大の発明がいよいよ大詰めでして」

ほむら「最後の最後で変な方向に行かないよう、出来る限り頻繁に見ておきたかったんです」

ほむら「アレさえ完成してしまえば、インキュベーターがこの星で何をしようと無駄になります」

ほむら「だからこそ、些細なミス……いえミスなんて絶対にしませんけど」

ほむら「余計なトラブルは避けたいところなんですよ」

さやか「そういえば、ちょっと前にもそんな事言ってたよね」

ほむら「ま、やる事はお菓子を配りつつ妖精さんから話を伺うぐらいですので」

ほむら「余った時間は存分に遊びほうけるとしましょうか」

まどか「もう、ほむらちゃん。ちゃんと自習しないと駄目だよ?」

ほむら「えー……面倒臭い」

ほむら「いざとなったら学習装置を使って知識を頭の中にインストールするのに……」

さやか「何それ羨ましい」


907: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:48:33.35 ID:Xki2Yhpp0


ほむら「いずれにせよ今日はもう帰るとしましょう。流石に疲れました」

ほむら「ああ、そういえば佐倉さんはこれからどうします?」

杏子「ん? あたし?」

ほむら「失礼を承知で確認しますが、あなたはご両親を亡くしているそうですね」

ほむら「そして、今まで一人で生きるために」

ほむら「数々の犯罪に手を染めた」

杏子「……ああ」

ほむら「でしたら、今日から私の家に住みませんか?」

杏子「何?」

ほむら「恐らくですが今後人手が必要になると思います。その時、あなたのように力ある人に居てくれると心強いのです」

ほむら「それに、やはり女の子のホームレス暮らしは良くありません。犯罪も止めてほしいですし」

ほむら「と、なると、やはり生活に必要なものを揃えてあげるのが一番かと思った次第です」

ほむら「ああ、お金等の心配はいりませんよ。妖精さんにお願いすれば衣食住はなんとでもなりますし」

ほむら「勿論無理強いはしません。ですが、そちらにとって悪い話ではない筈です」

ほむら「どうでしょうか」

杏子「……あり難い申し出だね」

杏子「でも、遠慮させてもらうよ」

マミ「佐倉さん……!」

ほむら「……何か不満があるのでしょうか。可能な限り、要望は聞こうと思いますが」

杏子「いや、要望とかはないよ」

杏子「たださ、あたしはもう決めてるからね」




杏子「さやか様と同居するって!」




さやか「……………」

さやか「……………」

さやか「……………」

さやか「ん? 今なんか言った?」

ほむら「あ、脳が全力で拒絶しましたね」


908: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:51:36.63 ID:Xki2Yhpp0


杏子「あの熱いキス……あれ以来、あなた様の顔を見ると胸が高鳴るのです!」

杏子「これはきっと、恋!」

杏子「あーい・らーぶ・ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

さやか「え、何これ?」

ほむら「これはアレじゃないですかねー」

ほむら「佐倉さんを天使モードから解除するためにやった今回の策」

ほむら「本来粗雑な佐倉さんという形に認識を逸らそうとしていたのですが」

ほむら「失敗した結果、ものの見事な百合少女になってしまった」

ほむら「で、まぁ、唇を奪ったのはさやかさんですから」

ほむら「そのさやかさんに本気と書いてマジな恋心を持ってしまった」

ほむら「……という、感じでは?」

さやか「長い。三行で」

ほむら「さやかさん愛してる
    さやかさんLOVE
    さやかさん結婚して」

まどか「実質一行だね」

さやか「……よーしよし。OK、理解した」

さやか「つまりアレだ。杏子ちゃんの今の状態は一時のアレだ」

さやか「だからその、ちょっと近付かないでくれます?」

杏子「そんな、さやか様……冷たい事を言わないでください……」

杏子「さやか様に罵られたら……」

杏子「身体が……ぞくぞくしてしまいます……♪」

さやか「ひっ!?」

杏子「ああ、さやか様……さやか様ぁ……」

杏子「どうかその唇に、もう一度……」

さやか「――――う、あ、あ……」

杏子「あ?」

さやか「あ、あたしには恭介が居るんだあああああああああああああああああああああっ!?」ダッ

杏子「ああっ!? さやか様、待ってくださーい!」ダッ

まどか「……二人とも走り去ってしまいましたね」

マミ「アレ、ほっといて良いの?」

ほむら「だったら巴先輩、追いかけます?」

マミ「……それにしても、この二日間色々と大変だったわね」

ほむまど(あ、無視した)

まどか「……そうですね……言われてみたら」


909: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:53:30.83 ID:Xki2Yhpp0


まどか「私が魔女になって世界を滅ぼしそうになって」

まどか「マミさんも魔女になって」

まどか「佐倉さんと出会って、その佐倉さんが天使になって」

まどか「そしたら見滝原が凄い事になって」

まどか「……漫画だったらもう最終回で良いような気がしてくる密度の二日間だね」

マミ「オチはあれだけどね」

ほむら「ま、死ぬまで人生にゲームオーバーも最終回もありません」

ほむら「この二日間の疲れを癒すために、しばらくはのんびりと過ごさせてもらいますよ」

ほむら(そう、のんびりと過ごしたい……)

ほむら(しかし、”連中”はそれを看過するでしょうか?)

ほむら(妖精さんパワーを目の当たりにした連中は、果たして私達を野放しにするのでしょうか?)

ほむら(もし連中に警戒心を与えてしまったとしたら)

ほむら(……やれやれ。我ながら昨日ははしゃぎ過ぎましたか)

ほむら(面倒な事にならないと良いんですけどねぇ……)


910: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:55:41.13 ID:Xki2Yhpp0








                  ――― 太平洋・某所 ―――




「へぇ……あれが『ワルプルギスの夜』か」

「データよりも随分と小さいようだけど?」

「アレは今、休眠段階だからね。エネルギーを貯め込んでいる段階だ」

「確かに、そんな記載があったね」

「ワルプルギスの夜は周期的に覚醒と休眠を繰り返す」

「ワルプルギスの夜は数多の魔女の集合体。数多の魔女を取り込み、その結果複雑で多様な性質を持つに至った」

「覚醒と休眠を繰り返すのも、取り込んだ魔女の性質の一つ」

「……だった、かな?」

「そう。流石に魔女を取り込むのは、原型となった魔女の性質だけどね」

「仲間同士の不和で崩壊寸前に陥っていた劇団を救いたいと願った魔法少女」

「彼女が魔女になった時、全てを一纏めにする魔女が生まれた訳だ」

「そんな話、今はどうでも良いじゃないか。速いとここの魔女を回収しようよ」

「そうだね。他の仕事があるし」

「しかしやれやれ、君の話に乗った身で言うのも難だけど」

「本当に、これが必要なのかい?」

「確かにこの魔女を使った”最終兵器プラン”は存在するけど、コントロールに莫大なエネルギーを使うよね?」

「解体処理にも相応のエネルギーを使うし……」

「敵性惑星が本格的に侵攻してきたなら兎も角、辺境の原生生物相手に使う必要があるとは到底思えないよ」

「そうだよね。確かにデータ上妖精が脅威なのは認めるし、予備プランはあるべきだ」

「先程も見滝原で詳細不明かつ莫大な量のエネルギー反応が検出されている」

「でもそれらのデータから”戦闘部隊”の導入はほぼ確定的だよ?」

「彼等に任せればなんとかなると思うけどなぁ」

「そうそう」

「それに本星からこんな辺境くんだりまで来るだけでもエネルギーを大量に使う」

「しかも戦闘部隊はエネルギー効率を考えない奴等ばかり」

「エネルギー担当の僕らが少しは消費エネルギーの削減をしないと……」

「君達は何も分かってない!」


911: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:56:56.76 ID:Xki2Yhpp0


「確かに本星の戦闘部隊は強い! この宇宙のあらゆる外敵と五分以上に戦える!」

「でもね! 妖精は……アレはそういう存在じゃない!」

「何処までも、純粋に――――非常識なんだ! 感情を呼び起こされた僕には分かる!」

「戦闘部隊を打ち負かしても不思議じゃない!」

「そして戦闘部隊が負けたら残るは最終兵器プランだけ!」

「だけど測定によればワルプルギスの夜はあと二週間、早ければ一週間以内に目覚めると出てるじゃないか!」

「もし戦闘部隊到着よりも前に目覚めたら……その前にワルプルギスの夜が目覚めたら」

「奴等はワルプルギスの夜を倒してしまう! そうなったら最終兵器プランはおじゃんだ!」

「だからこそそうなる前に僕らで回収を――――」

「分かった分かった。落ち着こう」

「君の言い分にも一理あると思っているから、こうして協力しているんだろう?」

「”感情的”にならないでほしいものだね」

「ふー……ふー……!」

「全く……君が精神疾患個体として認められていないのが不思議で仕方ないよ」

「いや、実際には中間症状として認められているよ。ほら、報告データの隅っこに書いてある」

「ん? ああ、確かに……」

「彼は外敵と接触した希少なサンプルだ。だから処分は保留って事だろう。それに中間症状なら治療も可能だしね」

「成程ね」

「……兎に角、回収を急ぐよ」

「目覚めたところでどうとでもなるけど、眠ってるうちに済ませた方が効率的だ」

「そうだね。尤もな話だ」

「じゃ、重力フィールドを作動させるから、そっちはスクリーンの起動を……」


912: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 21:57:47.09 ID:Xki2Yhpp0


(これで……僕に出来る準備は全てか)

(いや、まだだ。まだある筈だ)

(”我々”がこの宇宙に存在し続けるためにも手は一切抜かない……抜けない!)

(暁美ほむら。妖精)

(もうすぐだ)





(もうすぐ、決戦の日は訪れる……!!)


913: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/14(水) 22:01:31.91 ID:Xki2Yhpp0


本日の妖精さんアイテム



『夢引き込み目覚ましくん』 ※オリジナル※

妖精さんが作ってくれた強烈な目覚まし時計。しかし現実世界ではなんの意味もなさない道具です。

というのも、これは聞かせた人を夢の世界に案内する目覚まし時計。

つまり本来の用途では使えない道具なのです。使い道は……夢世界に客人を招く時ぐらいでしょうか?

妖精さん曰く無理やり夢に引き込まれるというのは中々の苦痛だそうで、

これを聞かせた人はもれなく悲鳴と共に眠りに落ちます。

不思議ですね。でも私はそんな目に遭いたくないので、自分に使った事はありません。詳細不明です。

今度さやかさんに感想を聞いてみたいと思います。



『暗黒液体マター』 ※オリジナル※

この宇宙の物質の大半を占めていると言われている暗黒物質。

その暗黒物質とは全く関係ないのがこの暗黒液体マターです。

人間達が積み重ねた小さな悪事。そこに残る邪悪の欠片を集め、人間にも飲めるよう改良したものとの事で、

一口飲めば聖人君子もやんちゃな青年に早変わりとの事。

ちなみに妖精さんに飲ませると、みんなのお菓子を独り占めしようとし、本能タイムに入った他の妖精さんに

蹴散らされていました。可愛かったです。



『オキャクサンノミスギデスヨ』 ※オリジナル※

夢と現実の狭間に生えるという並行植物の一種。

一匹狼で群れるのを嫌い、だけど悪事は許さない熱血漢だそうです。ただし殆ど動けないそうですが。

見滝原周辺では”気分変動”の影響で個体数が非常に少なくなっているとの事で、

大変希少な並行植物だと妖精さんは仰っていました。

この並行植物から作った縄には『現実帰還弾性』なるものが宿るそうで、夢に囚われてしまった人々を

簡単に現実に呼び戻すそうです。

植物人間となった人も呼び覚ますそうですが、人間がこのテクノロジーを理解する日が来るとは思えませんね。


947: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:39:00.69 ID:tNQIWLdC0



えぴそーど おまけ に 【インキュベーターさんの、わくわくとうそうげき】



948: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:41:28.52 ID:tNQIWLdC0



            ~ えぴそーど なな の最後から七時間後 ~



QB1「見つかったかい?」

QB2「いいや、まだだ」

QB3「全く。位置座標が特定できないなんて……内蔵GPSに不具合が起きているのか?」

QB4「恐らく。随分と幸運に恵まれているよ」

QB5「それともわざと、とか?」

QB3「おいおい、それは少し論理の飛躍が過ぎないかい?」

QB2「そうだよ。このボディじゃ、自身の改造なんて出来ないに決まってるだろ」

QB2「精々メンテナンス程度じゃないか」

QB5「分かってる。ちょっと言ってみただけさ」

QB1「いや、強ち否定出来ないんじゃないかな?」

QB1「精神疾患を発症したのと同時にGPS機能も停止する……」

QB1「ないとは言えないけど、確率論上、かなりレアなレースなのは間違いない」

QB1「だったら偶然より、必然と考える方が自然じゃないかい?」

QB3「君までそんな非論理的な事を言うのか」

QB4「まぁまぁ。今はそんな事、どうでも良いじゃないか」

QB4「捕まえた後の行程に、記憶データの抽出を付け加えれば済む話だよ」

QB1「そうだね。確かにその通りだ」

QB3「いけない、いけない。少し”感情的”になってしまったかな」

QB4「それじゃ、もう一度探すとしよう」

QB2「やれやれ……早く見つかってほしいなぁ」

QB2「こっちも仕事が残ってるのに」

ゾロゾロ……






QB「……行った、か?」


949: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:43:43.39 ID:tNQIWLdC0


QB(以下旧べえ)「ふぅ……なんかと切り抜けた、と言ったところか」

旧べえ(暁美ほむらの家に忍び込み、追い出されて早くも七時間……既に多数の追手が迫ってきている)

旧べえ(幸い”偶然”にもGPS機能が故障したみたいだから、捕まらずに済んでいるけど……)

旧べえ(僕達が設定したエリアの境目には衛星なりなんなりの監視体制が築かれている筈だ)

旧べえ(流石に衛星は欺けない。エリア外に脱出する事は不可能だ)

旧べえ(そうなると、見滝原の何処かで落ち着ける場所を探す必要があるね)

旧べえ(それに食料の確保も問題だ。まぁ、それは生ゴミや雑草でも良いけど……”餌場”が必要なのは変わりない)

旧べえ(あとは――――)

――――ズギンッ

旧べえ「ぐっ……!?」

旧べえ(傷が痛む……追手から逃げている間、結構な無茶をしてきたからね……)

旧べえ(……正確には隠れようと粗大ゴミの山に無理やり入ったら、山が崩れて下敷きになったのが原因だけど)

旧べえ(兎に角、この傷も癒さないといけない)

旧べえ(自己修復機能は生きているから、エネルギー供給さえできれば回復は可能だ)

旧べえ(やはり食料の確保を優先すべきか……いや、それよりも安全な場所を……)

旧べえ(駄目だ、頭がぼうっとする……機能不全が全身に……体液の循環に異常が……)

旧べえ「……きゅ、ぅ」パタッ






??「……………」


950: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:47:29.31 ID:tNQIWLdC0


……………

………




旧べえ「う、うーん……」

旧べえ「……はっ!?」

旧べえ(しまった、意識を失っていたか……神経系の再起動が上手くいったから良かったものの、下手したら……)

旧べえ(いや、それより此処は?)

旧べえ(まさかもう捕まっていて、月の裏側に配置されている僕達の母艦……じゃ、ないな)

旧べえ(デザイン的に人間の家、だとは思うけど……)

旧べえ(なんだ、この家)

旧べえ(マミの部屋と比べて随分と狭い……安物アパート、と言ったところか?)

旧べえ(だとすると賃貸だと思うけど、部屋が随分と汚い)

旧べえ(いや、汚いというより非衛生的と言うべきかな? あちこちにゴミ袋……それも臭いから察するに
    生ゴミが放置されてるし)

旧べえ(それに床や壁に僅かだが血痕が確認出来る)

旧べえ(流石にふき取ったような跡があるけど、しかしやり方が雑だ)

旧べえ(そもそも血痕が部屋に飛び散っているってどんな状況だ? それを隠そうともしない……)

旧べえ(いや、隠しても無駄だと思っている?)

旧べえ(……過去に接触した人間たちのデータの中で、この家の状況に最も近いパターンは……)




「それでも食ってさっさと寝ろ!」

――――ドンッ!



951: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:49:31.39 ID:tNQIWLdC0


旧べえ(なんだ? あまり穏やかじゃない物音と声だな……)

旧べえ(っと、こっちに誰か来た? あれは、随分と小さい子だな。小学校一年生ぐらいか?)

幼女「ネコさん、おきた?」

旧べえ「君は……」

幼女「! ね、ネコさん、しゃべっ……」

「ゆま! ちょっと出掛けてくるけど、誰か来ても絶対開けんじゃないよ!」

幼女(ゆま)「う、うん……いってらっしゃい、ま」

――――バタンッ

ゆま「……………」

旧べえ「……あ、あー、その、なんと言うか……」

ゆま「え、えっと、ネコさん、ケガは平気!?」

旧べえ「あ、うん。平気だよ、うん」

ゆま「そっか。よ、よかった……」

ゆまQ「……………」

ゆまQ(話しづらい……)


952: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:53:05.70 ID:tNQIWLdC0


旧べえ(……多分この子が僕を拾ったんだろうなぁ)

ゆま(ネコさん、なんでしゃべれるのか聞きたかったけど、なんか聞きづらくなっちゃった……)

旧べえ(と言うか、どう考えてもこの子、虐待されてるよね。似たようなケース、幾つか知ってるし)

ゆま(あ、そう言えばネコさんってこれ食べてもへいきなのかな?)

旧べえ(どうしたもんかなぁ……というか、僕の姿が見えてるって事は魔法少女の素質がある訳で)

ゆま(……だめだったら、だめって言うよね。しゃべれるし)

旧べえ(ヤバいよなぁ。他の連中が何時目を付けるか分からない以上、この場に留まるのは得策じゃない)

ゆま「あの、ネコさん」

旧べえ「え? ああ、なんだい?」

ゆま「これ、ゆまのごはんなんだけど……いっしょに、食べる?」

旧べえ「一緒にって……」

旧べえ(差し出されたのは、小さなカップラーメン)

旧べえ(この子が仮に小学一年生だとして、一日に必要だとされている熱量は約1450キロカロリー)

旧べえ(対してこのカップ麺の熱量は、推定370キロカロリー)

旧べえ(給食では凡そ30%分のカロリーを摂取出来るとしても、残り70%)

旧べえ(凡そ1000キロカロリーは、家の食事で取らねばならない。こんなものでは到底足りない)

旧べえ(それにビタミンAやC、鉄分なども一日に推奨される摂取量に遠く及ばない)

旧べえ(こんな状態で僕と分け合ったら、栄養状態がますます悪化するじゃないか)

旧べえ(まぁ、今日だけという可能性もあるが……)

旧べえ(……いや、無いな。ゴミ袋の中身が殆どカップ麺の空容器じゃないか。他は酒と肴とタバコの吸い殻だし)

旧べえ(恐らく彼女は、少なくとも複数のゴミ袋が一杯になるほどの期間、カップ麺しか食べていない)

旧べえ(食事だけで決めつける訳にはいかないけど、ほぼ間違いなく虐待されているね。それも相当酷い部類だ)

旧べえ「……………」

ゆま「ネコさん?」

旧べえ「……それは君が食べるといい」


953: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:55:11.11 ID:tNQIWLdC0


旧べえ「僕はなんでも食べられるからね。そこにあるゴミで十分。わざわざ新鮮な食材を頂く必要はないよ」

ゆま「?」

旧べえ「自分で食事を取れる、という事さ」

ゆま「そう、なの? ……わかった」

旧べえ「……………」

旧べえ(……僕は一体、何をしているんだろうね。貰えそうだった有機物を断るなんて)

旧べえ(まぁ、いいや。実際このゴミでも十分エネルギーは補給出来るし)

旧べえ(早速頂くとしよう)ガサゴソ

旧べえ「うっ!?」

ゆま「? ネコさん?」

旧べえ(な、なんだこれは……臭い……?)

旧べえ(確かに臭覚は備わっているけど、それはあくまで情報ツール。嫌悪なんて感じない筈)

旧べえ(それに、なんというか食指が湧かない……)

旧べえ(どういう事だ? 一体何が……)



          ―――― ごてごてなおからだ、すっきりさせました ――――

           ―――― じだいは、しぜんぶーむですからー ――――



旧べえ「え?」

ゆま「えっ?」

旧べえ「……何か言った、かい?」

ゆま「ううん……」

旧べえ「そうか……」


954: ◆HYvP9smHgsVn 2014/05/23(金) 17:57:32.30 ID:tNQIWLdC0


旧べえ(確かに声が聞こえたと思ったんだけどな……まぁ、どうでもいいか)

旧べえ(それより、どうしたものかな)

旧べえ(とてもじゃないけど、この生ゴミを食べる事は出来そうにない)

旧べえ(もっと新鮮な食物じゃないと……しかしこの家の冷蔵庫を漁ると、恐らくゆまに危害が……)

旧べえ(いやいや、ゆまは関係ないだろ。今は自分の身体を心配すべきで)

ゆま「……ネコさん、やっぱりカップラーメン、ほしいの?」

旧べえ「い、いや、そういう訳じゃ――――」

――――ぐきゅうぅるぅ

旧べえ「なっ……!?」

旧べえ(お腹が鳴った!? 馬鹿な、そんな機能はこのボディには付いていないのに……)

ゆま「ほら、やっぱりおなかすいてる!」

ゆま「はい♪ はんぶんこ!」

旧べえ「だ、だけど……この半分だけでは足りないだろう?」

旧べえ「ただでさえ必要なカロリー摂取量に届いていないのに、更に少なくしては……」

ゆま「……ゆま、あまり頭良くないから、ネコさんの言うことはよく分からないけど……」

ゆま「でも、だれかといっしょにごはんを食べると、すごくおいしいの」

ゆま「きゅうしょくとか、すごくおいしいけど」

ゆま「……おうちのごはん、今はあまりおいしくないから」

ゆま「だからいっしょに、ね?」

旧べえ「……………」

旧べえ「……じゃあ、遠慮なく」ズルルル

旧べえ(……明らかに高過ぎる塩分、食材の風味も何もない人工的な味付け)

旧べえ(本来このボディに味覚センサーがないのに味を感じている事は、まぁ、もうどうでも良いにしても)

旧べえ(お世辞にも”美味”とは言い難い)

旧べえ(これで栄養バランスまで悪いんだから、何故こんな食品が存在するのか理解出来ない)

旧べえ(でも……)

ゆま「どう?」

旧べえ「……美味しいよ」

旧べえ(出てきた言葉は、なんでこれなんだろうね)

魔法少女は衰退しました しーずん つー 前編