比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」前編

319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:42:32 ID:Ec7mjmAM

由比ケ浜「お、お世話になります……」

平塚「これ、チケットです」

天城「はい。 ペアチケットですね……あら?」

里中「どうしたの? 雪子?」

天城「いえ……その……」

天城「駅に着いた時に ご連絡頂けたら、送迎車を向かわせたんですけど……?」

由比ケ浜「…………」

平塚「…………」

比企谷「…………」

比企谷「おい……由比ケ浜……」

由比ケ浜「あ、あはは……」

由比ケ浜「ごめん! ヒッキー!」

引用元: 比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」

 

 
320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:43:37 ID:Ec7mjmAM

平塚「まあいいじゃないか、比企谷」

平塚「私たちの元気な姿をいち早く見れたんだから」

比企谷「荷物持たせといて、どの口が言うか……!」

平塚「それじゃ、チェックイン済ませるとするか」

由比ケ浜「そ、そうですね」

天城「はい、こちらへどうぞ……」


里中「あはは」

比企谷「何が可笑しい……里中」

里中「いや~何て言うの? やっぱり比企谷くんと顔を付き合わせるには」

里中「あれくらいじゃないと、いけないんだなって」

比企谷「止めてくれ……あれを真似するのは……」

321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:44:47 ID:Ec7mjmAM

天城「お待たせしました」

天城「それでは、お部屋へご案内いたします」

天城「雪ノ下さん、お願いしてもいいかな?」


比企谷「!?」

由比ケ浜「え!?」

平塚「…………」


雪ノ下「……わかりました、天城さん」

雪ノ下「お客様、どうぞこちらへ」

由比ケ浜「ちょ、ちょっと、ゆきのん! どうしてここに!?」

雪ノ下「……どうぞこちらへ」

322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:45:37 ID:Ec7mjmAM

平塚「由比ケ浜……部屋へ行こう」

由比ケ浜「え? で、でも、先生……」

平塚「いいから……ほら」

由比ケ浜「……はい」

     スタ スタ スタ…

比企谷「…………」

花村「……知り合いか? 比企谷?」

比企谷「…………」

里中「……雪子、今の女の子、どういう人なの?」

天城「え? う、うん」

天城「ウチの旅館が提携してる、観光会社の紹介で入った」

天城「私と同じ高校生の人だよ?」

323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:46:46 ID:Ec7mjmAM

里中「高校生? 何でそんな人が?」

天城「……その、『現役・女子高生女将』として」

天城「私が倒れている時に、代わりに頑張ってくれたんだ」

里中「そうなの? ……知らなかった」

天城「GWに入ってからだけどね……」

花村「つー事は、あれか?」

花村「旅館のイメージアップ、というか、宣伝、というか……」

天城「……うん」

天城「表向きは『女将修行に来た女子高校生』って事になってるけどね」

花村「そっか……」

324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:48:55 ID:Ec7mjmAM

天城「口数は少ないけど、とっても良く仕事をしてくれててね」

天城「私も随分助けられているんだ」

花村「しっかし、すげぇ美人だよな……」

花村「天城と同じで、黒髪のロングがよく似合ってるし」

花村「二人並ぶと、ものすごく絵になる感じだ」

天城「ありがとう、花村くん」

天城「それにもう一つ偶然があってね」

天城「雪ノ下さん、雪乃って名前なんだ」

里中「おおー、雪つながりだね」

天城「ふふふ、少し、親近感を持っちゃった」

325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:49:41 ID:Ec7mjmAM


??「あれー? 君たちは……」


比企谷「……!」

比企谷「足立さん……」

足立「どうしたの? こんな所で?」

比企谷「その……」

花村「いろいろあって、比企谷の友達の案内をしてたんです」


里中(花村……誰?) ヒソヒソ

花村(比企谷の保護者の刑事さん) ヒソヒソ

里中(ああ! 思い出した……山野アナの時にもどしてた……) ヒソヒソ


足立「そうなんだ。 それはご苦労さん」

比企谷「足立さんは?」

326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:51:26 ID:Ec7mjmAM

足立「最終的な事情聴取をしてたとこ」

足立「まあ、行方不明者は見つかってるから」

足立「ゆる~い感じだけどね」

比企谷「そうだったんですか」

足立「今日は久しぶりに定時で上がれそうだよ~」

比企谷「わかりました。 夕飯、準備しておきます」

     スタ スタ スタ

平塚「おーい、比企谷」

平塚「さっそくだが、この街の案内を……ん?」

足立「?」

平塚「比企谷、こちらは?」

327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:52:42 ID:Ec7mjmAM

比企谷「この街で保護者になってもらってる、刑事の足立さんです」

平塚「!!」


平塚(刑事……という事は、公務員!)

平塚(安定した職業……見た目、20代前半……!)

平塚(釣り合わない事は……ない!)


平塚「あの、足立さん、はじめまして!」

平塚「私、比企谷の前の学校で担任をしていました、平塚静、といいます!」

足立「は、はい?」

平塚「ところで、あなたは独身? 独身ですよね!?」

平塚「奇遇です! 私もそうなんですよ! あっはっはっ!」

足立「え? は? はい?」

328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:54:45 ID:Ec7mjmAM


里中(うわぁ……)

花村(黙ってりゃ美人なのに……)

比企谷(がっつきすぎだ……平塚)


平塚「そうだ! ぜひ、ここの案内をしてください!」

平塚「警察の方なら、詳しいですよね!?」

平塚「っていうか、困っている一般市民を助けてくれますよね!? ね!? ね!?」

足立「そ、それ……は?」

平塚「じゃ、行きましょう! 今すぐに! ゴートゥヘブン!!」

足立「わわわわ、わかりましたから、引っ張らないでぇぇぇっ!!」

     ドドドドドドドドド……

一同「…………」

329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:56:03 ID:Ec7mjmAM

由比ケ浜「ヒッキー、お待たせー」

由比ケ浜「ん? どうしたの?」

比企谷「……なんでもねえ」

由比ケ浜「そ、そう……」

比企谷「じゃ……俺は帰る」

由比ケ浜「あ……うん」

     スタ スタ スタ…

里中「……ホントに帰っちゃった」

花村「いいのかい? 由比ケ浜さん」

由比ケ浜「うん。 いいの」

由比ケ浜「それじゃ観光案内、お願いするね?」

330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:56:57 ID:Ec7mjmAM

比企谷「…………」

比企谷(……雪ノ下)

比企谷(変わってなかったな)

比企谷(和服も似合っていた)

比企谷(…………)

比企谷(期待すんなよ、俺……)

比企谷(どうせ陽乃さんあたりが、強引に押し付けたんだろうよ)

比企谷(でなきゃ、こんなところ来るわけがねえ……)

比企谷(…………)

331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:57:58 ID:Ec7mjmAM

由比ケ浜「――って感じで」

由比ケ浜「強引にお姉さんに頼まれたんだって……」

由比ケ浜「平塚先生は、ゆきのんがヒッキーみたいに」

由比ケ浜「来年の春まで転校する事を知ってたみたいだけど」

由比ケ浜「…………」

由比ケ浜「ただ……ここに誘った時に言ってくれなかったのは」

由比ケ浜「ちょっとショックだったかな……」


里中「…………」

花村「…………」


里中(……どー思う? 花村) ヒソヒソ

花村(……筋は通ってるけど) ヒソヒソ

花村(どうもしっくり来ねえ……) ヒソヒソ

332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 09:59:21 ID:Ec7mjmAM

里中「……由比ケ浜さん」

由比ケ浜「うん?」

里中「あんまり口出ししちゃいけないかもしんないけど……」

里中「なんか、比企谷くんと 雪ノ下さんって」

里中「妙な雰囲気だったよね?」

花村「なんつーか……二人共、壁を作ってるっていうか……」

由比ケ浜「……うん」

由比ケ浜「ホントはね」

由比ケ浜「二人共、よく憎まれ口を言い合っていたけど」

由比ケ浜「仲は良かったんだ」

333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 10:00:17 ID:Ec7mjmAM

由比ケ浜「いろいろあって、ゆきのんも ヒッキーも」

由比ケ浜「お互い信頼してたと思う」

里中「…………」

花村「…………」

由比ケ浜「……けど」

由比ケ浜「ヒッキーが、ここ……八十稲羽に一年間、転校する事になって」

由比ケ浜「みんなで集まって、送別会開いたりして……」

由比ケ浜「そして、いよいよ別れの日がやってきた」

里中「…………」

花村「…………」

由比ケ浜「……ゆきのん、今だに理由を話してくれないの」

由比ケ浜「あの日……ゆきのんは――」

334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 10:01:11 ID:Ec7mjmAM

比企谷「…………」

比企谷(期待はしてなかった)

比企谷(相変わらず腐った魚の目みたいね、とか)

比企谷(向こうでも勘違いするな、とか)

比企谷(おおよそ罵られると思ってた)

比企谷(……だが)

比企谷(…………)

比企谷(どうして……予想しなかったんだよ)

比企谷(……俺もまだまだって事なんだろうけど)

比企谷(…………)

335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/10(土) 10:02:02 ID:Ec7mjmAM






     あの日、雪ノ下は……俺を見送りに来なかった






344: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:19:43 ID:o6PGuI1M


―――――――――――


翌々日の朝

足立宅


比企谷「おはようございます、足立さん」

足立「……おはよう、比企谷くん」 ゲッソリ…

比企谷「……平塚の相手、大変だったでしょ?」

足立「まあね……って」

足立「今の無し。 無しだから……」

比企谷「いいですよ、今更」

比企谷「本人に悪気がない分、タチが悪いですし」

足立「あはは……」

345: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:21:12 ID:o6PGuI1M

比企谷「まあそれも今日までです」

比企谷「お疲れ様でした」

足立「……君も言うね。 ちょっと羨ましいよ」

比企谷「さ、トーストも焼き上がりましたし」

比企谷「朝メシにしましょう」

足立「その意見には賛成だね」

     イタダキマス

足立「そういえば比企谷くん」

比企谷「はい?」

足立「君、彼女居ない、みたいな事 言ってたけど」

足立「由比ヶ浜さんっていう、可愛いガールフレンドが居るじゃないか」

346: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:22:31 ID:o6PGuI1M

比企谷「……成り行きで人間関係が出来ただけですよ」

足立「…………」

足立「……ま、僕から口出しすべき事じゃないけど」

比企谷「これからもその方向でお願いします」

足立「そ、そう……」

足立「それにしても、ここのところ平和だね~」

比企谷(……おかげで足立さん、平塚に引きずり回される羽目になってるがな)

比企谷(俺の方も由比ヶ浜はもちろん)

比企谷(花村や里中にまで、何かと付き合わされてるし……)

比企谷(…………)

比企谷(ま、それも今日までだが)

347: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:23:21 ID:o6PGuI1M

     ピンポーン

比企谷「?」

足立「誰だろう? こんな朝に……はーい」

     ガチャ…

足立「」

比企谷「」

平塚「おはようございます! 足立さん!」

足立「ひ、平塚……先生……」

平塚「嫌だわ、足立さん。 昨日、静、と呼んでくださいって」

平塚「お願いしたじゃないですか♥」

比企谷(ハート付けるな……ハートを……)

比企谷(つーか、何で住所知ってんだよ……怖すぎだろ)

348: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:24:16 ID:o6PGuI1M

足立「い、いやその……ですね」

平塚「それじゃあ……今日はどこに行きますか?」

足立「そ、それが、僕の知ってるところは……だいたい見せちゃったんで……」

平塚「だったら! 昨日紹介してくれたジュネスで、デートしましょう! デート!」

平塚「きゃ♪ 私ったら、デート、だなんて!」

足立「…………」


比企谷(その辺にしてしておけ、平塚……)

比企谷(足立さん、盛大に引いてるぞ……)


足立(ひ、比企谷くん……!)

比企谷(無理です……俺に救いを求めても何とも出来ません) (首)フルフル

足立「」

349: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:25:05 ID:o6PGuI1M

平塚「それじゃあ、行きましょう! ジュネスへ!」

平塚「エブリディ、ヤングライフ、ジュ・ネ・ス♪」

足立「ひ、引っ張らないでぇぇぇぇ!!」

     パタン

比企谷「…………」

比企谷「足立さん」

比企谷「健闘を祈ります」

     ピピピ……ピピピ……

比企谷「ん?」

     ガチャ

比企谷「はい、もしもし」

350: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:26:20 ID:o6PGuI1M

比企谷「花村か……いったい何の用だ?」

比企谷「…………」

比企谷「昨日、さんざん付き合っただろ……」

比企谷「……は?」

比企谷「口実が欲しい?」

比企谷「…………」

比企谷「由比ヶ浜なら、そんなもん必要ないだr」

     ブッ……

比企谷「おい!?」

     ツー、ツー…

比企谷「切りやがった……ったく」

比企谷「…………」

比企谷「高台で待ち合わせ、ね……」

351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:27:15 ID:o6PGuI1M


―――――――――――


高台


     テク テク テク

比企谷「……よお、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「あ、ヒッキー」

比企谷「花村と里中は?」

由比ヶ浜「里中さんは、飲み物を忘れたから買ってくるって」

由比ヶ浜「花村くんは、知らない」

比企谷「そうか……取り敢えず、そこのベンチに座るか」

由比ヶ浜「うん!」

352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:28:19 ID:o6PGuI1M

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

     ピーヒョロロロー……

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……なんか、平和な街だね、ここって」

比企谷「ん?」

由比ヶ浜「だってさ、大きな事件が起きてたから」

由比ヶ浜「もっと物々しいのかな、って……」

比企谷「最初の頃は、そんなイメージだったな」

由比ヶ浜「ふふ、そうなんだ……」

353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:29:15 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「ところで、さ、ヒッキー」

比企谷「ん?」

由比ヶ浜「私を見て、何か気がつかない?」

比企谷「……?」

比企谷「どこから見ても、ただの由比ヶ浜だが?」

由比ヶ浜「『ただの』付けるなし!」

由比ヶ浜「全く……」

比企谷「何で俺は怒られているんだよ……」

由比ヶ浜「温泉」

比企谷「は?」

由比ヶ浜「一昨日から、天城屋自慢の『美人の湯』に入り続けてるの!」

由比ヶ浜「だから、結構綺麗になったでしょ?」

比企谷「…………」

354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:30:20 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「もー、黙んないでよ、ヒッキー」

比企谷「お世辞は言わない主義」

由比ヶ浜「ムキー! 平塚先生呼んじゃうぞ!」

比企谷「それだけはやめろ!」

由比ヶ浜「ふふ、やーいやーい」

比企谷「……ったく」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……昨日、ね」

由比ヶ浜「私、ゆきのんと話……したんだ」

比企谷「…………」

355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:31:10 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「肝心な事は聞けなかったけど……」

由比ヶ浜「八十稲羽に行く事、私に黙ってたの、謝ってくれた」

比企谷「…………」

比企谷「……そうか」

由比ヶ浜「でも……やっぱりちょっと元気がなかったかな」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「どうして……なんだろうね」

比企谷「……さあな」

由比ヶ浜「早く話してくれるといいんだけど」

比企谷「…………」

356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:32:25 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「それにしても……里中さん、遅いね?」

由比ヶ浜「花村くんも」

比企谷「そうだな……」


花村「…………」

里中「…………」

花村「里中さん里中さん、聞こえてますか? どうぞ」

里中「聞こえてますよ、どうぞ」

花村「こっちからはフツーに会話してる様にしか見えません、どうぞ」

里中「こっちもそう見えるじゃん、どうぞ」

花村「…………なあ」

里中「何ですか? どうぞ」

357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:33:29 ID:o6PGuI1M

花村「この会話、意味あんのか?」

里中「疑問に感じたら負けじゃん、どうぞ」

花村「いい加減にしろって! 俺ら、2mも離れてねーじゃねーか!」

里中「こういうのは気分が大事だし」

花村「傍から見たら、どう見ても間抜けだっつーの……」

里中「それを言ったら おしまいじゃん! どうぞ!」

花村「もういいから!」

花村「だいたい、あの2人を2人っきりにしたら、退散すればいいんじゃね?」

里中「だって……気になるじゃん?」

花村「わかるけど……ああ、腹も減ってきたし、何やってだ俺?感、すげー半端ない」

里中「それ言わないで……」

里中「昨日の由比ヶ浜さん見てたら、何かしてあげたくなったの」

359: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:35:23 ID:o6PGuI1M

花村「それもわかるけど……」

里中「あたしには、これっぽっちも理解できないけど」

里中「明らかに由比ヶ浜さん、比企谷くんにベタ惚れじゃん? 応援したいじゃん?」

里中「なのに比企谷くんときたら……」

花村「そうなんだよなぁ……蓼喰う虫も好きずき、を、地で行ってるからなぁ」

花村「あんな可愛い娘にキラキラした目で見られて、何とも思わねーのかよ……比企谷」

花村「俺ならソッコー落ちてるレベルだっての! 羨ましい!」

里中「花村は節操無いからねー」

花村「うっせーよ!?」


比企谷「……おい」

360: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:36:45 ID:o6PGuI1M

花村「」

里中「」

比企谷「納得のいく説明をしてもらおうか?」

花村「い、いや、これは、その……!」

里中「べべべべ 別に、ふ、2人きりにしてあげよう、とか、思ってないから!」

花村「バ、バカ! 里中!」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「あは、あはは……」///

由比ヶ浜「ええと、ちょっと早いけど……お昼にします?」

里中「さんせー!」

花村「全面的にさんせー!」

比企谷「……まあいいか」

361: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:37:36 ID:o6PGuI1M


―――――――――――


花村「あー旨かった。 さすが天城屋の弁当!」

里中「景色もいいし、最高だったね」

由比ヶ浜「うん! 私の街には、こんな景色のいいとこ無いから」

由比ヶ浜「本当に気持ちよかったよ~」

花村「いや~それ程でも~」///

里中「……なんで花村が照れてんのよ」

     アハハ……

由比ヶ浜「さて……そろそろ、帰る準備しないと」

里中「もうそんな時間?」

362: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:38:56 ID:o6PGuI1M

花村「名残惜しいなぁ……な、比企谷?」

比企谷「…………」

比企谷「……まあ、な」

里中「おお~比企谷くんがデレた!」

花村「明日は槍が降るな♪」

比企谷「……お前らなぁ」

由比ヶ浜「…………」 クス


由比ヶ浜(良かった……ヒッキー、いい人達と知り合えてて)

由比ヶ浜(ちょっと妬けちゃうけど……ふふっ)


由比ヶ浜「じゃあ、最後に……ジュネスでお土産買っていこうかな?」

363: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:39:50 ID:o6PGuI1M

ジュネス


     グスン グスン…

比企谷「……何してんだ平塚」

平塚「比企谷か……グスン」

平塚「透さん……ケータイが鳴って、仕事に行っちゃった」

比企谷「……いろいろツッコミたいが、こんな所で泣くなよ。 営業妨害だろ」

平塚「うわあああああんっ!」

由比ヶ浜「ひ、平塚先生、言いにくいんですけど……」

由比ヶ浜「そろそろ電車の時間が……」


花村(……すげぇキャラの先生だな)

里中(……ああは成りたくないなー)

364: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:41:03 ID:o6PGuI1M


―――――――――――


八十稲羽駅


由比ヶ浜「ヒッキー、今回はありがとうね」

比企谷「いや……まあ、楽しんだんなら、良かったな」

由比ヶ浜「ふふふ」///

花村(由比ヶ浜さん、マジ天使)///

里中(恋する乙女さんだねー)

由比ヶ浜「里中さんと 花村くんも いろいろありがとう」

由比ヶ浜「とっても楽しかったよ~」

花村「由比ヶ浜さんにそう言ってもらえると、本当に嬉しい!」

里中「お安い御用だよ。 またね、由比ヶ浜さん」

365: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:42:07 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「うん!」


???「……由比ヶ浜さん」


比企谷「……!」

由比ヶ浜「!!」

由比ヶ浜「ゆきのん!!」

雪ノ下「その……いろいろごめんなさい」

由比ヶ浜「ううん、もういいんだよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「見送りに来てくれて、ありがとう!」

雪ノ下「向こうでも元気でね……」

由比ヶ浜「うん!」

366: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:43:05 ID:o6PGuI1M

比企谷「…………」


花村(比企谷……あからさまに顔をそむけているな……)

里中(自分には見送りに来てくれなかった訳だしね……)


平塚「……そろそろ出発するぞ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「あ、はい、平塚先生」

由比ヶ浜「ヒッキー!」

比企谷「あん?」

由比ヶ浜「向こうのみんなに、ヒッキー、元気でやってるって伝えるから!」

比企谷「……おう」

由比ヶ浜「ゆきのんも元気でね!」

雪ノ下「うん、由比ヶ浜さん」

     ジリリリリリリリリリリンッ

367: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:44:06 ID:o6PGuI1M

由比ヶ浜「私……私、またここに来るk」

     プシュー バタン☆

     ガタンゴトン ガタンゴトン…

比企谷「…………」

花村「……行っちまったな」

比企谷「……ああ」

里中「また来るって。 良かったじゃん」

比企谷「平塚は、もうゴメンだがな」

花村「ははは……まあ、わかる」

里中「あの人……望み薄そうだよねー」


雪ノ下「…………」

368: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:45:06 ID:o6PGuI1M

雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「! ……おう」

雪ノ下「じゃ、これで……」

比企谷「……あ、ああ」

     スタ スタ スタ…

花村「…………」

里中「…………」

里中(……花村) ヒソヒソ

花村(おう……) ヒソヒソ

里中(いけない事かもしんないけど……ちょっとワクワクしてる。 あたし) ヒソヒソ

花村(気にすんな、里中) ヒソヒソ

花村(俺もだ♪) ヒソヒソ

369: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:46:16 ID:o6PGuI1M


―――――――――――




足立宅


テレビ『……それでは、次のニュースです』

テレビ『稲羽市で起きた、連続殺人事件ですが』

テレビ『現在も警察の捜査に進展はなく……依然として犯人の行方は分かっておりません』

比企谷「…………」

     タダイマー

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

比企谷「お疲れ様です」

足立「いや~……正直、助かった、とも思ったけどね」

370: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:47:27 ID:o6PGuI1M

比企谷「ケータイの番号、平塚に教えていないですよね?」

足立「これは警察の物だから……って、はぐらかしたよ……」

足立「バイタリティ豊か、とういうか、強引というか……」

足立「肉食系?って、ああいうのなのかなー」

比企谷「婚期を逃して焦ってるだけですよ」

足立「あ、あはは……」

比企谷「それじゃ晩御飯、用意しますね?」

足立「ああ、すまないね~。 本当に助かるよ」

比企谷「いえ……」

371: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:48:36 ID:o6PGuI1M

テレビ『八十稲羽に漂う不穏な空気……でも!』

テレビ『それを吹き飛ばす、明るい話題がやってきました!』

テレビ『それは、以前ご紹介した天城屋旅館!』

テレビ『そこの看板とも言える、現役・女子高生女将に頼もしい助っ人が現れたんです!』

比企谷「……!」

テレビ『なんと! その助っ人も現役・女子高生!』

テレビ『都会から、わざわざ女将修行の為に、ここ八十稲羽に来た、との事です!』

足立「ああ……あの娘ね」

足立「確かに綺麗な娘だったな。 ちょっと冷たい感じしたけど……」

テレビ『それでは、インタビュー映像をご覧下さい!』

372: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:50:02 ID:o6PGuI1M

テレビ『どうも、こんにちは。 ○○テレビです』

テレビ『あなたが、女将修行に来られた現役・女子高生の雪ノ下雪乃さんですか?』

テレビ『……そうです』

テレビ『八十稲羽を選んだ理由は、何でしょうか?』

テレビ『……親族に、知り合いが居まして』

テレビ『なる程~』

テレビ『やはり、夢は旅館の女将を?』

テレビ『……できれば、と、思っています』

テレビ『大きな夢ですね~。 では彼氏とかは、居るんですか?』

テレビ『!? ……あ、あの……』

テレビ『はい、そこまででお願いします~』

比企谷「」

比企谷(は、陽乃さん……!?)

373: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:51:06 ID:o6PGuI1M

テレビ『え? ちょ、ちょっと、あなたは誰……』

テレビ『雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃です』

テレビ『彼女の保護者として……』

比企谷(…………)

比企谷(陽乃さんまで、ここに来てるのか……)

足立「へえ~姉妹そろって綺麗だね~」

比企谷「…………」


比企谷(……ま)

比企谷(夢見せといてやるか……)

374: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:52:29 ID:o6PGuI1M

テレビ『それにしても、天城屋の現役・女子高生女将』

テレビ『天城雪子さんと並ぶと本当に絵になりますね』

テレビ『なお本日は、番組の内容を一部変更してお送りしました』


比企谷(……暴走する若者、ってのだな)

比企谷(どうでもいいけど)



―――――――――――



375: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:53:31 ID:o6PGuI1M

ゴールデンウィーク明け

学校


     ガヤ ガヤ

諸岡「貴様ら! 黙っていろ!」

諸岡「今から転校生を紹介する!」

諸岡「彼女は、貴様らと違って本物の上流階級者だ!」

諸岡「失礼の無い様にな!」

     ガラッ…

雪ノ下「……初めまして、みなさん」

雪ノ下「雪ノ下雪乃です。 どうぞ、よろしく」

376: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:54:47 ID:o6PGuI1M

     オオ―――――!!

     ダンシ ウルサイー

比企谷「…………」

里中「あの娘だ……すっごい偶然だね」

天城「ホントだね」

花村「美人な娘は大歓迎!」

里中「花村、うるさい」

比企谷(…………)

比企谷(……どうしてだ)

比企谷(陽乃さんが仕組んだと確信してやがる……俺)

比企谷(根拠は全くないが、100%偶然じゃねえと)

比企谷(俺の中の何かがそう伝えている……!)

377: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:55:32 ID:o6PGuI1M



     その後、転校生によくある質問攻めという名の羞恥xxxが雪ノ下を襲うが

     天城が色々と間に入って何かと助けていた。

     クラスに溶け込めたかどうかは微妙だが、ホッとしている様だった。



     そして、午後には告白する男子まで現れるが、そこは雪ノ下。

     徹底的に言葉で相手の心をえぐり、完膚なきまで叩き伏せていた。

     さすがである。



378: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:56:49 ID:o6PGuI1M



     ……そして、彼女に告白する事は、『雪ノ下くぐり』というプレイ名になり

     撃沈した時は『雪崩た!』、もしくは『崩落した!』という

     ゲームオーバー名までできていた。



     これは、天城の『天城越え』をならったみたいだが

     少しも洒落てないと思うのは、俺だけだろうか?



379: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:57:35 ID:o6PGuI1M



     ……ついでに

     俺は、雪の下と、まだまともに話していなかった。     



380: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:58:23 ID:o6PGuI1M

数日後




     サアアアア……

比企谷「…………」

比企谷(今日は久しぶりの雨……)

比企谷(…………)

比企谷(【マヨナカテレビ】……映るだろうか)

     ……ピウィ~……

比企谷「!」

比企谷(……映ったか)

比企谷(…………)

比企谷(……和服?)

381: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 20:59:25 ID:o6PGuI1M

比企谷(…………)

     ……ブツン

比企谷(……天城? また?)

     ピピピ……ピピピ…… ガチャ

比企谷「もしもし?」

花村『比企谷……見たか?』

比企谷「見た。 和服みたいだったな」

花村『…………』

比企谷「どうした? 花村?」

花村『比企谷……あれ、たぶん雪ノ下さんだと思う』

比企谷「!?」

382: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 21:00:19 ID:o6PGuI1M

比企谷「……根拠はあるのか?」

花村『天城屋で見た、彼女の着てた和服の柄と同じだった』

比企谷「それだけか?」

花村『確かに顔はわからなかったが……あれは天城じゃない』

花村『ボヤボヤだったけど、赤いヘアバンドしてなかったからな』

比企谷「……!」

花村『里中にも聞いてみるが……まあ、明日学校で話そう』

比企谷「……わかった」

花村『じゃあ明日』

比企谷「ああ」

     ブッ…… ツー ツー

383: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/16(金) 21:01:43 ID:o6PGuI1M

比企谷「…………」

比企谷(そうだ……当然、考えるべき可能性だ)

比企谷(…………)

比企谷「くそっ!」



     俺は、訳も分からず

     イライラした。



392: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:34:21 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


翌日の昼休み

学校の屋上


里中「うん……あたしも雪ノ下さんだと思う」

天城「着てた和服の柄、間違いなく雪ノ下さんの物だった……」

比企谷「…………」

花村「……決まりだな」

花村「さて、今後の方針だが」

花村「どうする? 比企谷」

比企谷「…………」

393: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:35:27 ID:1s6qqkUQ

比企谷「……囮にする」

一同「…………」

比企谷「と、言いたいが……」

比企谷「よくよく考えたら、いろいろ無理がある作戦だったな」

花村「……と言うと?」

比企谷「まず、24時間体制で見張る事ができない」

比企谷「今回の事例で言えば、天城が適任だろうが……」

比企谷「犯人がいつ来るか分からない状況では」

比企谷「前回の里中の様になるか、出し抜かれる可能性も多分にある」

花村「なる程」

里中(……素直じゃないねー。 まあ、らしいっちゃらしいけど)

394: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:36:31 ID:1s6qqkUQ

天城「前回って……私、囮にされてたの?」

花村「そういう意見が出たってだけだ、天城」

花村「まあ? 比企谷がそう言った瞬間、里中のビンタがキレーに決まったけどな♪」

里中「は、花村……」///

天城「千枝……ありがとう」

比企谷「……ともかく」

比企谷「警察を頼れないのと、俺たちの日常を鑑みて」

比企谷「一番の方策は……注意喚起が妥当だと思う」

花村「そうだな……」

里中「本人に”狙われてる”って伝えるだけでも、ずいぶん違うよね」

天城「そうだね……」

395: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:37:38 ID:1s6qqkUQ

天城「じゃあ、それを伝えるのは、比企谷くんの役だね」

比企谷「……え?」

花村(ナイス天城!)

花村「だな。 転校したてだし、知り合いがやるのが効果的だよな」

比企谷「い、いや……ちょっ」

里中「そうだよ、比企谷くん」

里中「この際だから、仲直りしちゃいなよ!」

比企谷(何……この超アウェーな空気……)


花村(由比ヶ浜さんには悪いけど……面白くなってきたぜ!)

里中(どうなるのかなぁ……ふふふ)

天城(良かった。 これで雪ノ下さん、話すきっかけができた)

天城(陽乃さんにお願いされてたから、役に立てて嬉しいな♪)

396: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:38:38 ID:1s6qqkUQ

放課後

教室


比企谷「…………」

比企谷「……雪ノ下」

雪ノ下「……!」

雪ノ下「何かしら? 比企谷くん」

比企谷「話がある」

比企谷「少し付き合ってくれないか?」

雪ノ下「!?」

     ザワ…… ザワ…… ナニナニー

     雪ノ下クグリカ…… 転校生……

397: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:39:30 ID:1s6qqkUQ

比企谷(……ちっ)

雪ノ下「……」///

雪ノ下「わ、わかったわ、比企谷くん」///

比企谷「……じゃ、来てくれ」

比企谷「帰りながら話す」

     テク テク テク…

花村「…………」

里中「…………」

天城「…………」

一同(気になる……)

398: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:40:38 ID:1s6qqkUQ

     テク テク テク…

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……そういえば」

雪ノ下「……!」

比企谷「雪ノ下は、今、どこに住んでいるんだ?」

雪ノ下(い、いきなり私の住処の話!?)

雪ノ下「……天城屋の一室を貸してもらってるわ」

比企谷「そうか……陽乃さんもか?」

雪ノ下「……姉さんも天城屋の別の一室を貸してもらってる」

比企谷(一人ずつ個室を専有か……セレブだな)

399: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:41:30 ID:1s6qqkUQ

比企谷(だが、ある意味では好都合)

比企谷「雪ノ下」

雪ノ下「何かしら」

比企谷「まず最初に言っておくが……」

比企谷「俺は気がふれた訳でもなく、気が狂った訳でもなく」

比企谷「正常で、極めて大真面目に。 だが、深刻に考えている事を話す」

雪ノ下「……何なの?」

―――――――――――

雪ノ下「…………」

雪ノ下「要するに」

雪ノ下「不審者が現れるかもしれないから、気をつけろ……と?」

比企谷「そうだ」

400: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:42:26 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「その死んだ魚の目みたいに変わっていないのかと思ってたけど」

雪ノ下「どうやら、思い違いだったみたいね」

比企谷「雪ノ下……」

雪ノ下「話はそれだけ?」

比企谷「……ああ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「そう」

雪ノ下「じゃあね、比企谷くん」

比企谷「…………」

     テク テク テク…

401: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:43:13 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「…………」

雪ノ下(何の話かと思ったら……)

雪ノ下(期待した私がバカだった)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(そもそも……あんな仕打ちをしておいて)

雪ノ下(期待する方がおかしいわ)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(私……こんな所に来てまで)

雪ノ下(何をしているんだろう……)

     テク テク テク…

402: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:44:19 ID:1s6qqkUQ

天城屋


陽乃「あ、雪乃ちゃん」

雪ノ下「……姉さん」

雪ノ下「何でしょう?」

陽乃「あなたにお客様よ」

雪ノ下「私に?」

??「初めまして、雪ノ下雪乃さん」

??「僕の名前は白鐘直斗といいます」

白鐘「少しお話を伺いたいのですが」

雪ノ下「はあ……」

403: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:45:24 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


ジュネス フードコート


比企谷「……という感じだ」

花村「……なんかビミョーだな」

比企谷「そもそも、だ」

比企谷「ペルソナや、あの世界の説明なしで説得するなんて」

比企谷「至難の業だろ……」

里中「そりゃ確かに」

天城「普通は信じられないよね……こんな話」

比企谷「…………」

比企谷「とは言え……他にいい手が思いつかない」

比企谷「後は祈るばかりだな」

404: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:46:24 ID:1s6qqkUQ

天城「それと、【マヨナカテレビ】を見ないとね」

花村「だな」

里中「何も映らないといいんだけど……」

比企谷「その意見には同感だな」

比企谷「……そうだ」

比企谷「里中、天城」

里中「ん?」

天城「何? 比企谷くん」

比企谷「ケータイの番号交換をしておかないか?」

比企谷「今後、連絡を取らないと困るかもしれないし」

405: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:47:24 ID:1s6qqkUQ

里中「そういやそうだね。 わかった」

天城「うん。 そういう事なら」

     ピピッ

花村(比企谷の奴……さりげなく天城の番号まで)

比企谷「よし」

比企谷「じゃあ今夜、【マヨナカテレビ】をチェックしよう」

比企谷「後はそれからだ」

花村「OK」

里中「うん」

天城「じゃあ、また明日」

比企谷「ああ」

比企谷「…………」


―――――――――――


406: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:48:59 ID:1s6qqkUQ

足立宅


     サアアアア……

比企谷(……天気予報通り、か)

比企谷(…………)

比企谷(…………)

     ……ピウィ~……

比企谷「……ちっ!」


テレビ『みなさん、今晩は』

テレビ『天城屋で絶賛☆売り出し中のスケープゴート』

テレビ『雪ノ下雪乃です』

比企谷「」

407: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:50:11 ID:1s6qqkUQ

テレビ『全く、迷惑な話』

テレビ『自分の意志でも無いのに、こんな ど田舎に転校して』

テレビ『ほとほと嫌気がさす』

比企谷「…………」

テレビ『っていうのは建前!』

テレビ『ホントは~……やりたい事、あるんだ! 私!』

テレビ『ふふふ……それは何か? だって?』

テレビ『ナ・イ・ショ・♥』

テレビ『今後の展開に、乞うご期待! キャハ!』

     ブツンッ

比企谷「…………」

408: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:51:05 ID:1s6qqkUQ

     ピピピ…… ピピピ…… ガチャ

比企谷「……もしもし」

花村『……見たか? 比企谷』

比企谷「ああ」

花村『俺……ふと思ったんだが』

花村『今回、鮮明な映像だったよな?』

比企谷「結論を言おうか? ……薄々は俺も思ってたが」

比企谷「【マヨナカテレビ】で鮮明な映像が流れた時」

比企谷「映ってた人物は……既にテレビの中に入れられてる」

花村『…………』

花村『……相変わらず冷静だな』

409: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:52:03 ID:1s6qqkUQ

比企谷「……何、やる事は決まっているからな」

比企谷「あの世界に行って雪ノ下を助ける」

比企谷「それだけだ」

花村『…………』

花村『……ああ、そうだな。 比企谷』

花村『じゃ、明日、学校で』

比企谷「じゃあな」

     ブッ…

比企谷「…………」

     ピピピ…… ピピピ…… ガチャ

比企谷「天城か?」

天城『! 比企谷くん……』

410: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:53:12 ID:1s6qqkUQ

天城『ごめんなさい……私、それなりに注意してたんだけど』

比企谷「謝るのはいい」

比企谷「状況を教えてくれ」

天城『…………』

天城『【マヨナカテレビ】を見た後』

天城『雪ノ下さんをすぐに確認してみたけど……居なかったわ』

比企谷「…………」

天城『雪ノ下さん……2時間くらい前に自分の部屋へ行くのを見たの』

天城『……あの後、すぐ休んだものだとばかり思ってた』

天城『お姉さんの陽乃さんには……まだ伝えてない』

比企谷「……そうか」

411: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:54:04 ID:1s6qqkUQ

天城『……本当にごめんなさい、比企谷くん』

比企谷「天城のせいじゃない」

天城『私、明日、あの世界で頑張るから』

比企谷「ああ……頼りにしてる」

天城『じゃ……』

     ブッ…

比企谷「…………」

     ガラッ

足立「…………」zzz

比企谷「…………」

     ガチャ……キィ……パタン

412: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:55:04 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


天城屋


     サアアアア……

比企谷「…………」

比企谷(……何やってんだよ、俺)

比企谷(こんな真夜中に天城屋に来たって……)

比企谷(開いてる訳ないだろ……)

比企谷(…………)

比企谷(……くそ)

比企谷(くそっ……くそっ!)

比企谷(くそったれがっ!!)

413: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:55:37 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


翌日

学校


比企谷「……おはよう」

花村「お、おう……?」

里中「おはよ……どうしたの?」

天城「目の下のクマ、凄いね……って」

天城「ぷふ……クマだって、あははは!」

天城「あっちの世界のクマくんの事じゃないからねっ、あははは!」

一同(いや……わかってますから)

414: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:57:09 ID:1s6qqkUQ

比企谷「それで天城」

比企谷「旅館の方はどうなんだ?」

天城「……うん」

天城「陽乃さん、取り乱してね……」

天城「普段のあの人からは想像できない落ち込み様だった」

比企谷「…………」

天城「一応、警察には通報して、でも、表面上は何でもない感じで営業してる」

天城「……事情聴取ですぐ一般客にバレると思うけど」

花村「そっか……天城屋、不幸続きだな」

里中「くっそー……犯人憎たらしい~」

比企谷「じゃあ放課後、ジュネスで」

415: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:57:50 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


テレビの中の世界


花村「お~い、クマ?」

里中「ん? どうしたの?」

天城「クマくん……?」

比企谷「…………」


クマ「…………」 ズーン……


花村「何一人で落ち込んでんだ?」

クマ「……みんなはいいクマね」

クマ「楽しそーにワイワイやってて……」

416: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 18:59:07 ID:1s6qqkUQ

花村「あん? ……そんな事よりもだな、クマ」

クマ「そんな事じゃないクマ!」

クマ「みんなやって来ないから、クマ、一人でずっと寂びしん坊で」

クマ「いろいろ考えて、悩みまくって……押しつぶされそうクマ!」

里中「あ~……そりゃごめん」

天城「そっか……クマくんは、ここにずっと一人なんだね」

比企谷「…………」

比企谷「クマ……悪いが、その話は後だ」

比企谷「また、人が放り込まれたと思う……力を貸してくれ」

比企谷「頼む」

クマ「セ、センセイ……」

417: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:00:00 ID:1s6qqkUQ

花村(……おいおい)

天城(こんな比企谷くん、初めて見た)

里中(由比ヶ浜さんには悪いけど……こりゃ望み薄かも?)

クマ「わかったクマ!」

クマ「センセイの頼みとあれば! 断る理由はないクマ!」

クマ「むむむむむむ~……燃えろクマの鼻センサー……!!」

比企谷「…………」

クマ「……!!」

クマ「キタ――! クマ!」

花村「……何で織○裕二、知ってるんだよ?」

クマ「こっちクマ!」

花村(やべ……こいつ殴りてぇ)

比企谷「よし、案内頼む!」

418: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:00:59 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


雪ノ下のマンション


花村「……何? この場違いなビル……」

里中「高そう……」

天城「100mくらいかな?」

里中「そういう意味じゃないんだけど……」

花村「比企谷、これは?」

比企谷「雪ノ下の自宅マンションだ」

花村「……都会の超高級マンション住まいかよ」

里中「セレブねぇ~」

天城「長周期地震動が怖そうだけどね」

比企谷「とにかく、行くぞ!」

419: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:01:40 ID:1s6qqkUQ

????


雪ノ下「…………」

雪ノ下「……う」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ここは……?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「それにしても、すごい霧ね……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(私……昨夜……)

雪ノ下(そうだ)

420: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:02:29 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下(ノートを切らして、コンビニに……)

雪ノ下(でも途中で、ここに詳しくないし引き返そうとして……)


     ――雪乃ちゃん――


雪ノ下「!?」

雪ノ下「姉さん!?」


     ――うん! やっぱり雪乃ちゃんは、その服が似合うと思う!――

     ――それにしちゃいなよ!――


雪ノ下「…………」


     ――そう! それがいいと思うな、私――


雪ノ下「……止めて」

421: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:03:13 ID:1s6qqkUQ


     ――どうしたの? 雪乃ちゃん?――

     ――お姉ちゃんが何でも相談に乗るよ?――


雪ノ下「止めて!!」


     どうして? あなたが選んだ結果でしょ?


雪ノ下「!? 誰!?」


影・雪乃『うふふ……』

影・雪乃『悲しいわよねぇ……優秀な姉を持つと』


雪ノ下「……!」

422: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:04:08 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「な……何を言ってるの?」


影・雪乃『あら? とぼけるんだ?』

影・雪乃『まあ、その方が面白いからいいけどね』


雪ノ下「…………」


影・雪乃『いいかげん、はっきりさせた方がいいと思うけど?』

影・雪乃『陽乃が邪魔で鬱陶しいってね!』


雪ノ下「ち、違う!」

423: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:07:08 ID:1s6qqkUQ


影・雪乃『否定しても無駄』

影・雪乃『いつもいつも偉そうに、常に上から目線で、私に何かと指図する』

影・雪乃『それが、どこまでも私を苦しめる』


雪ノ下「違う! そんな事、私は思っていない!」


影・雪乃『嘘ばっかり……本当は殺したいんでしょ?』

影・雪乃『あんな奴、居なくなって欲しいんでしょ?』


雪ノ下「違う!」


影・雪乃『うふふ……ああ、そうだった』

影・雪乃『だって、陽乃には利用価値があるものね』


雪ノ下「!!」

424: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:08:09 ID:1s6qqkUQ


     バァーン!


比企谷「雪ノ下!」

花村「!」

里中「まずいよ、もう【シャドウ】が出てる!」

天城「雪ノ下さん!」


雪ノ下「!!」

雪ノ下「比企谷……くん……」


影・雪乃『ふふふ……ギャラリーも来てくれたんだ?』

影・雪乃『最高のステージね♪』


雪ノ下「な、なにがよ! もう止めて!」

425: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:08:56 ID:1s6qqkUQ


影・雪乃『いいじゃない、別に』

影・雪乃『陽乃を利用してここに居るだけなんだし』


比企谷「!?」

雪ノ下「止めて!!」


影・雪乃『ああ……比企谷くん。 会いたかったわ』

影・雪乃『あなたのその死んだ魚の様な目、たまらなく好きなの』


花村(ゆ、雪ノ下さんって、そっち系?)

里中(……うわぁ)

天城(私も……あんな感じだったのかぁ)

426: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:10:09 ID:1s6qqkUQ


影・雪乃『……陽乃もそうだけど』

影・雪乃『どいつもこいつも、私を聖女か何かみたいに見てくる』

影・雪乃『そのくせ』

影・雪乃『私が何かすると遠ざかる……見た目やイメージと少し違うってだけでね!』


雪ノ下「止めて……もう止めてっ」


影・雪乃『その点、比企谷くんは違った』

影・雪乃『初めから何にも期待してない……そのくせ、一定の距離を保ってくれる』

影・雪乃『最高の『しゃべる玩具』だわ!』


雪ノ下「止めて! 何なの!? あなた!?」

427: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:11:21 ID:1s6qqkUQ


影・雪乃『私? ふふふ……とっくに気づいているんでしょ?』

影・雪乃『私はあなたよ。 雪ノ下雪乃』


雪ノ下「違う! ……あなたなんて」

比企谷「――そこまでだ、雪ノ下」

雪ノ下「むぐっ!?」


花村「おお……口を手で塞ぎやがった」

里中「必死ね」

天城「こういう時、映画ならキスで塞いじゃったりするよね」

クマ「およよ? キス?」

比企谷「……ギャラリー、少し黙ってろ」

428: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:13:07 ID:1s6qqkUQ

比企谷「いいか? 雪ノ下……」

比企谷「かいつまんで説明する」

雪ノ下「…………」

比企谷「あいつは……確かにお前だ」

比企谷「だが、雪ノ下の全てじゃない」

雪ノ下「……!」

比企谷「『しゃべる玩具』ってのは正直心外だが……」

比企谷「はたして、俺はお前をどう思っているんだろうな?」

雪ノ下「…………」

比企谷「そういうもんだ……人間ってのは」

比企谷「俺も、お前も、そして、そこに居るその他大勢もな」

429: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:14:09 ID:1s6qqkUQ

花村「……扱い酷くね?」

里中「まあ、我慢してやるじゃん?」

天城「後で何か奢ってもらえばいいと思う」

クマ「クマ!」


比企谷(聞こえる様に言いやがって)

比企谷「……じゃ、手を離すぞ、雪ノ下」

比企谷「どうするかは……お前に任せる」

     スッ……

雪ノ下「……っは」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「女性を後ろから羽交い絞めにするなんて……明らかにセクハラ行為よ、比企谷くん」

比企谷「……悪かった」

430: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:15:14 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「……珍しく素直ね」

比企谷「TPOくらいわきまえてるっての」

雪ノ下「ふふ……」

雪ノ下「…………」


影・雪乃『どうしたの? 私を否定するんでしょ?』


雪ノ下「……そうね」

雪ノ下「確かにあなたは私だわ」


影・雪乃『!?』


雪ノ下「私は……ずっと姉が鬱陶しい……いえ」

431: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:16:12 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「ある意味では、殺したいくらい憎んでた」

雪ノ下「優秀で、美人で、そして……眩しいくらい社交的」

雪ノ下「周りはいつも……私に対して『お姉ちゃんみたいになりなさい』だった」


影・雪乃『…………』


雪ノ下「……姉は、ほとんど間違いを犯さない」

雪ノ下「私は、いつか姉さんを見返してやるつもりだったけど」

雪ノ下「どんなに追いつこうとしても、追いつけない……」

雪ノ下「私のする判断は、大抵、姉とかぶる」

雪ノ下「たまに違った時は、いつも私の方が間違いだった……」


影・雪乃『…………』


雪ノ下「そして、いつしか……」

432: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:17:20 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「私は、自分の考えを姉に話さなくなった」

雪ノ下「それどころか、姉の判断を利用した」

雪ノ下「姉さんの判断が私の考えと同じだと、安心できたから」


影・雪乃『…………』


雪ノ下「今回もそう」

雪ノ下「姉に踊らされているとわかっていたけど……」

雪ノ下「『しゃべる玩具』で遊びたかったから」

比企谷「……おい」


影・雪乃『…………』


雪ノ下「そうね……確かにあなたは私で」

雪ノ下「私は……あなただわ」

433: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:18:17 ID:1s6qqkUQ


影・雪乃『…………』

影・雪乃『…………』 クスッ


     ヒィイイイイイインッ!


比企谷「……ふう」

花村「やったな、比企谷」

比企谷「何とかな」

天城「私たち、役に立たなかった……」

里中「そんな事無いよ、雪子」

里中「ここに来るまでのザコは、あたしらの活躍で排除できたじゃん?」

434: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:19:21 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「……?」

雪ノ下「何……これ?」

雪ノ下「ペルソナ……?」

雪ノ下「ペルソナ、『イザナミ』……」

雪ノ下「う……」 クラッ……

比企谷「大丈夫か?」

雪ノ下「……ええ、何とか」

クマ「ムホー! これまた可愛い女の子クマ!」

雪ノ下「……何? この着ぐるみは?」

比企谷「今説明する。 ペルソナも含めて、わかっている事全てな」

―――――――――――

雪ノ下「【マヨナカテレビ】……【シャドウ】……」

435: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:20:23 ID:1s6qqkUQ

比企谷「正直、まだまだ分からない事も多いがな」

花村「まあ、そんな訳でよろしく、雪ノ下さん!」

里中「よろしくー」

天城「改めてよろしくね、雪ノ下さん」

クマ「よろしくクマ!」

雪ノ下「ええ、よろしく」

雪ノ下「メガネもありがとう、クマくん」

クマ「ク、クマ~ん」///

比企谷「……で、だ。 雪ノ下」

比企谷「ここに入れられた時の記憶はあるか?」

雪ノ下「……ごめんなさい」

436: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:21:30 ID:1s6qqkUQ

雪ノ下「コンビニで買い物をしようと出かけて……」

雪ノ下「暗かったし、雨も強くなってきたから止めようと、引き返そうとして」

雪ノ下「そこからの記憶がないの……」

花村「そっか……」

比企谷「つーか夜遅く、雨の中、何を買いに出かけたんだよ」

里中「それにコンビニ無いしね、この街……」

雪ノ下「え? そうなの?」

花村「改めて田舎だって思わされるよなぁ……」

天城「そ、その内、できるよ……たぶん」

437: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:23:03 ID:1s6qqkUQ

比企谷「……とりあえず、戻ろう」

花村「そうだな」

里中「さんせー!」

里中「あたし、ビフテキがいい!」

天城「私、愛屋の肉丼かな」

里中「あ! やっぱあたしも肉丼にする!」

花村「俺はラーメンでいいぜ!」

比企谷「何この流れ……ついて行けないんですけど?」

雪ノ下「じゃあ私も、その肉丼?というのをお願いね、比企谷くん」

比企谷「乗っかるなよ!? 雪ノ下!」

     アハハハ……

クマ「…………」

438: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:24:10 ID:1s6qqkUQ



     ……結局、俺は商店街の飲食店『愛屋』で

     おのおのの食いたいモノをおごらされた……ちくしょう。



     騒ぎを大きくしない為に、雪ノ下は昨夜、買物しようと出かけ

     道に迷って山中をさまよっていた事にしてもらった。

     体中を泥で汚す偽装工作も施したし、まずバレないだろう。



439: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:25:07 ID:1s6qqkUQ



     しかし……犯人の特定にはつながらず、謎は深まるばかりだった。



440: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:25:47 ID:1s6qqkUQ



足立宅


     タダイマー

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

足立「ああ、比企谷くん」

比企谷「今日も少し遅かったですね?」

足立「うん……例の天城屋でね、また失踪騒ぎが……」

足立「おおっと……捜査上の事は言えないよ?」

比企谷「失踪……ですか」

足立「…………」

441: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:27:29 ID:1s6qqkUQ

足立「まあ、行方不明者は見つかったし、いっか……」

足立「ここだけの話……女将修行に来た、噂の女子高生なんだけどね」

足立「今日の朝、居なくなってたんだ」

比企谷「ああ……転校してきた娘ですね」

足立「そっか。 比企谷くん、同じ学校だったっけ」

足立「ところが……夕方くらいにひょっこり戻ってきたんだよ、その娘!」

比企谷「どうしてたんですか?」

足立「夜中にコンビニで買物しようと出かけて、道に迷って、山の中に入ったんだって」

足立「ここに来たばかりだし……蓋を開けてみれば、ってやつさ」

比企谷「そういう事だったんですか」

足立「ははは、ピリピリしてる時期だし、天城屋で失踪騒ぎがあったばかりだからね」

足立「言い方悪いけど……もう少し気を配って欲しいよね~」

比企谷「ですね」

442: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:28:16 ID:1s6qqkUQ


―――――――――――


比企谷(……どうやら、警察は上手くごまかせたみたいだな)

比企谷(…………)

比企谷(……それにしても)



雪ノ下「『しゃべる玩具』で遊びたかったから」



比企谷(ありゃどういう意味だ?)

比企谷(…………)

比企谷(……まさかな)

443: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/22(木) 19:29:10 ID:1s6qqkUQ



     もしかしたら、俺に――

     いやいや、と、俺は頭を振った。



449: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:24:11 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


数日後の放課後

学校の屋上


比企谷「林間学校?」

里中「うん」

里中「ああ、花村含めて、転校してきた3人は知らないんだっけ」

花村「林間学校って、どんな事をするんだ?」

天城「1、2年生合同でやるんだけど、一泊二日かけて行うんだよ?」

里中「午前中はキャンプ場のゴミ拾いして終わり。 午後にテント張って……」

里中「昼と夜は自炊して、翌日の午前中には解散すんの」

450: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:25:05 ID:hVPrjLxI

天城「夜は結構楽しいよ?」

天城「去年はトランプとか、ゲーム持ち込んでワイワイやったんだ」

花村「へえ! そいつは楽しみだな!」

花村「テントという密室の中……女の子と楽しくゲーム! むふふ」

雪ノ下「あなた、バカなの?」

雪ノ下「高校生の男女を一つのテントに押し込める訳ないわ」

雪ノ下「ここまで常識のない人だとはね」

花村「じょ、冗談ですとも、雪ノ下さん……」

里中(雪ノ下さんも、比企谷くんに負けじ劣らじねー)

天城(旅館での態度と全然違う……)

比企谷(ぼっちには苦行とも言えるイベントだな……)

451: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:25:49 ID:hVPrjLxI

比企谷「……まあ、それはさて置き」

比企谷「雪ノ下、事件について思い出した事って何だ?」

雪ノ下「そうだった……今、話すから」

雪ノ下「先日、比企谷くんに注意を受けて天城屋に帰ったら」

雪ノ下「白無垢 直江?……とかいう男の子が私と話がしたい、と、待ってたの」

花村「しろむく~?? ……変わった苗字だな」

里中「名前も女の子みたい」

雪ノ下「顔立ちもすっきりしてて、女装とか似合いそうだったわ」

比企谷「で? どんな話をしたんだ?」

雪ノ下「他愛のない話よ」

雪ノ下「身の回りにおかしな所はないか?とか」

雪ノ下「誰かに恨まれていないか?とか」

452: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:26:42 ID:hVPrjLxI

天城「……何だか、雪ノ下さんが被害者になるかも、と、思ってそうな言い方ね」

雪ノ下「まあ」

雪ノ下「その質問に、何故か比企谷くんの顔が真っ先に思いついたけど」

比企谷「……泣いていいか?」

雪ノ下「取り敢えず思いつかない事にして、そう言ったら」

雪ノ下「白無垢くんは帰って行ったわ」

里中「う~ん……怪しいっちゃ怪しいけど……」

花村「言動を聞いた限りじゃ、どうにも薄そうだな」

比企谷「…………」

453: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:27:28 ID:hVPrjLxI

比企谷(だが……少し引っかかる)

比企谷(俺たち同様、【マヨナカテレビ】の法則に気がついたのだろうか?)

比企谷(しかし、あれは俺たちの様に【ペルソナ】を使えないと、ただの怪現象)

比企谷(どうやって雪ノ下が『危ない』という『根拠』につながったんだ?)


雪ノ下「……比企谷くん、聞いてる?」

比企谷「! ……すまん」

雪ノ下「全く……」

里中「ともかく、しばらくは あの世界で修行かなー?」

里中「梅雨に入ったら忙しくなりそうだし」

454: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:28:14 ID:hVPrjLxI

花村「ああ……そういう心配もあるな」

天城「天気予報の長期予測では、今年はカラ梅雨になりそうだって言ってたけどね」

比企谷「まるまる一週間【マヨナカテレビ】をチェック、とかは勘弁して欲しいな……」

雪ノ下「それはお肌に悪そうね」

里中「うう~……ちょっと所じゃなく、嫌かも」

天城「録画とか出来たらいいのにね」

比企谷「……!」


比企谷(そういや、ためした事がなかったな……)

比企谷(今度、やってみよう)

455: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:29:09 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


天城屋


陽乃「お帰りなさい、雪乃ちゃん」

雪ノ下「ただいま、姉さん」

陽乃「…………」

陽乃「ねえ、雪乃ちゃん」

雪ノ下「何かしら?」

陽乃「本当にこの前の……道に迷ったの?」

雪ノ下「何度もそう言ってるでしょ?」

雪ノ下「だから……ここから帰らなくても大丈夫よ、姉さん」

陽乃「…………」

456: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:30:12 ID:hVPrjLxI

陽乃(……だけど)

陽乃(上手く言えないけど……)

陽乃(雪乃ちゃん、変わった気がする)

陽乃(…………)

陽乃(天城さんが、比企谷くんと話をする様になった、と言ってたけど……)

陽乃(そのせい……なのかしら?)

陽乃(…………)

457: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:32:22 ID:hVPrjLxI

八十稲羽 警察署


堂島「…………」

足立「堂島さん、例の資料、持ってきまし……」

足立「……また、この前の失踪事件、気になってるんですか?」

堂島「……まあな」

足立「行方不明者の証言に不審な点は見当たらないし……」

足立「第一、虚偽の証言をして、彼女に何の得があるんです?」

堂島「…………」

堂島「確かにその通りだ」

458: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:33:28 ID:hVPrjLxI

堂島「だが……疾走騒ぎ直後」

堂島「俺たち警察も山の中に入った可能性を考えたが……」

堂島「その形跡を少しも発見できなかった」

足立「事件が発覚する直前まで雨が降ってましたし……」

足立「そのせいで足跡や匂いが流されたと、結論づけられたじゃないですか」

堂島「……そうなんだかな」

足立「気にしすぎですよ、堂島さん」


堂島(……だが、どうにも腑に落ちない)

堂島(一番引っかかるのは……あの高校生……)

堂島(足立が世話をしている、比企谷、とかいう奴の名前を)

堂島(関係者欄で見たからだ)

堂島(…………)

堂島(偶然にしちゃ、出来すぎていないか?)

459: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:34:30 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


数日後 林間学校前日

ジュネス


里中「さてと! 明日の昼食と夕食」

里中「メニューは何にする?」

天城「一応、カレーか、ラーメンにしようか?」

天城「くらいまでは、突き詰めたんだけど……」

花村「はいはい! 俺カレー! カレーがいい! キャンプはカレー!」

里中「うっさいよ花村」

天城「比企谷くんは何がいい?」

460: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:35:24 ID:hVPrjLxI

比企谷「……俺もカレーでいい」

比企谷「昼食と夕食を一緒に作れるしな」

里中「続いちゃうけどいいの?」

比企谷「2食くらいなら、大丈夫だろ」

比企谷「食事を作る手間も省けるし、一石二鳥だ」

天城「合理的ね」

天城「雪ノ下さんもそれでいい?」

雪ノ下「構わないわ」

天城「じゃ、カレー2食分の予定で、材料を買う事で決定ね」

花村「……そういやよ」

花村「林間学校、翌日の午前中で解散、とか言ってたけど」

花村「ずいぶん早くね?」

461: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:36:22 ID:hVPrjLxI

里中「まあ、基本、すぐ帰る奴は居なかったよね」

天城「緩やかな渓流が近くにあって、そこで遊んで帰る子、多かったよ?」

花村「ゆるい渓流……」

花村「!」

花村「もしかして、泳げんの!?」

里中「ああ、そいや居たね。 泳いでるの」

天城「ちらほらだったけど」

花村「お、俺、急用思い出した!」

花村「悪いけど、買い物、任せたぜ!」

里中「ちょ!? 花村!?」

     ドドドドドドドドド……

天城「……行っちゃった」

462: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:36:56 ID:hVPrjLxI

比企谷「さて……悪いんだけど」

比企谷「少しの間、雪ノ下、借りてもいいか?」

雪ノ下「!?」

里中「え」

天城「どういう事?」

比企谷「ちょっとだけだ。 すぐ済む」

里中「……まあ、そういう事なら」

里中「行こ、雪子!」

天城「うん、千枝」

     テク テク テク…

雪ノ下「…………」

463: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:38:06 ID:hVPrjLxI

雪ノ下「……それで? 何かしら?」

比企谷「大した用じゃない……ケータイの番号交換と」

比企谷「陽乃さんについてだ」

雪ノ下「ああ……緊急用にって事ね。 じゃあ、ケータイから済ませておく?」

比企谷「そうだな」

     ピピッ

比企谷「よし」

比企谷「で? 陽乃さん、どんな様子だ?」

雪ノ下「……私が失踪から帰ってきてすぐ」

雪ノ下「八十稲羽を出ていこうって言ってたわ」

464: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:38:49 ID:hVPrjLxI

比企谷「……フツーそうだよな」

比企谷「何しろここは、殺人事件のあった街でもある」

雪ノ下「でも、私の不注意だし」

雪ノ下「天城さんにも迷惑かけるからって、押し通したけどね」

比企谷「不審に思われてないのか?」

雪ノ下「たぶん……としか、言い様がないかな」

比企谷「そうか……」


比企谷(鋭い人だし……今後、俺に対して)

比企谷(何かのアプローチがあるかもしれん)

比企谷(注意しておくに越した事はないな……)


比企谷「……旅館の仕事はどうだ?」

雪ノ下「そうね……」

465: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:39:37 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


比企谷「……って、随分話し込んじまったな」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(ちょっと、楽しかったけど)///

花村「おおーい、比企谷!」

比企谷「花村。 ……どうした? その荷物?」

比企谷「何か買ったのか?」

花村「へへっ! ま、後のお楽しみってやつだ!」

雪ノ下「……?」

花村「それよりも食材の方は どうなったんだ?」

466: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:40:12 ID:hVPrjLxI

比企谷「……里中と天城が買ってると思う」

比企谷「まあ、天城も居るし、心配はないだろう」

花村「だな!」

花村「旅館の弁当、旨かったし」

花村「旅館仕込みの天城のカレー、楽しみだぜ!」

雪ノ下「…………」

雪ノ下(何故かしら?)

雪ノ下(嫌な予感がするんだけど……)

467: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:42:07 ID:hVPrjLxI



足立宅


     タダイマー

比企谷「お帰りなさい、足立さん」

足立「ああ、比企谷くん」

比企谷「……? 何ですか? その荷物?」

足立「はは……これ、堂島さんにもらった水着なんだけど」

足立「僕には派手すぎて……比企谷くん、どうだい?」

比企谷「水着……ですか」

足立「若い方が似合うだろ……って渡されたんだ」

比企谷「……ハイカラですね」

足立「モノは言いようだね」

468: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:43:15 ID:hVPrjLxI

比企谷「堂島……って、足立さんの上司の方ですよね?」

足立「うん」

足立「なんか、普段のねぎらいを込めて……とか言ってたけど」

比企谷「正直……微妙ですね」

足立「あははは……」

足立「まあ僕はどの道、泳ぐ機会なんてないし」

足立「良かったら使ってやってよ」

比企谷「はあ……」

比企谷(水着、ねぇ……)

比企谷(…………)

469: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:44:16 ID:hVPrjLxI

林間学校 当日


     ガヤ ガヤ

比企谷「……?」

     アイツラカ…… カワイソウニ……

花村「……何だ? この空気?」

比企谷「心当たりあるか? 花村」

花村「いや……全くねえ」

比企谷「…………」

??「……ちぃース」

比企谷・花村「」

470: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:45:07 ID:hVPrjLxI

??「俺ァ、巽完二って一年だ」

比企谷・花村(でか!? どんな一年だよ!?)

完二「ここか? 俺の班ってのは?」

比企谷「あ、ああ……そう、なる、かな」

花村「き、気合、入ってる、ね……」

完二「舐められんの、嫌いなんで」

比企谷「…………」

花村「…………」

比企谷「よ、よろしく……」

花村「た、巽くん、で、いいか?」

完二「ウッス」

471: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:45:55 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


完二「……あーダリー」

比企谷(……だったら不良らしくバックレてろっての)

完二「ちっ……担任のヤロー……バックレたら留年させるっつーし」

花村(……そういう事ね)

完二「先輩もダリィっすよね?」

比企谷「ま、まあ……」

花村「い、今時、ゴミ拾いって、ねーよなぁ」

完二「っすよねー」

比企谷「…………」

花村「…………」

472: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:46:58 ID:hVPrjLxI




比企谷・花村「」 ズーン……

雪ノ下「……どうしたの?」

比企谷「何でもねえ……」

里中「そういや合同の一年生、どんなやつだったの?」

花村「……金髪に染めて、気合の入った、やたらガタイのいい巽完二って奴だった」

天城「え? 完二くん?」

里中「知ってるの? 雪子」

天城「うん。 巽屋っていう染物屋さんの息子さん」

天城「小さい頃は可愛かったんだよ?」

天城「今は……いい噂聞かないけど」

473: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:47:39 ID:hVPrjLxI

比企谷「……それは一目瞭然でわかった」

花村「んな事より! メシ! メシはどうなった!?」

里中「あ~うん」

天城「できてるよ」

雪ノ下「……今、よそうから」

花村「おう! 待ってるぜ!」

比企谷「…………」

比企谷(なんだ? 今の雪ノ下の『間』は……)

474: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:48:31 ID:hVPrjLxI

     ド ン !

里中「さ、召し上がれ!」

比企谷「…………」

花村「ひょー! 待ってましたぁ!」

比企谷「……おい、ちょっと待て、花m」

花村「いっただきまーす! あむ……」

     ……ブフォッ!! ドサッ

花村「」 チーン…

一同「…………」

比企谷「…………おい」

比企谷「どういう事なんだ……これは?」

里中「さ、さあ?」

天城「あまりに美味しくて、気絶したんじゃない?」

雪ノ下「その可能性が高いわね」

475: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:49:26 ID:hVPrjLxI

比企谷「さらっと嘘つくなよ!?」

比企谷「どう見ても、カレーに何らかの異常……」

雪ノ下「比企谷くん、あーん」

比企谷「んがっ!」

     ……ブフォッ!! ドサッ

比企谷「」 チーン…

―――――――――――

花村「……あんじゃこりゃー!!?」

比企谷「カレーで死にかけるとは思わなかった……」

里中「あは、あははは……」

476: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:50:23 ID:hVPrjLxI

比企谷「……味見はしたのかよ?」

里中「その勇気は無かった……」

天城「……美味しいと思ったんだけど」

花村「ベタベタで、ドロドロで、ジャリジャリで、えげつなく辛い割に、妙に甘いし……」

花村「要するに、くっせー上に、恐ろしくカレーじゃねーんだよ!!」

天城「なんか、上手く混ざらなくて……」

里中「いや~ははは……愛情はたっぷり入れたんだけどね」

花村「愛情って、いったい何突っ込んだんだよ!?」

雪ノ下「片栗粉、強力粉、唐辛子に黒胡椒……」

雪ノ下「コーヒー牛乳になまこ……」

花村「」

比企谷「」

477: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:51:10 ID:hVPrjLxI

比企谷「……雪ノ下、何で止めなかった?」

雪ノ下「私、飯ごうの担当だったの」

雪ノ下「あの食材、何に使うのかな? とは思ったんだけど」

雪ノ下「ふと見たら、その材料が消えてたの」

比企谷「…………」

花村「はあ……どーすんだよ、こんな物体X……夕食もこみなんだぜ?」

花村「俺ら明日までメシ抜きかよ……」

里中「……ごめんなさい」

天城「……反省してます」

雪ノ下「これ、私も謝らないとダメ?」

478: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:52:39 ID:hVPrjLxI

比企谷「……はあ」

比企谷「まあ、済んだ事はしょうがない」

比企谷「とりあえず、余った食材はあるか?」

雪ノ下「お米くらいかしら?」

雪ノ下「本来は夕食分の、だけど……」

比企谷「マジかよ……全部あの物体Xになっちまったのか」

花村「よし、俺、他の班に何か余ってないか聞いて回ってくる」

里中「あたしも女子に聞いてみる」

天城「千枝、私も行く」

雪ノ下「後は……切れっ端の野菜くらい?」

比企谷「調味料は大丈夫だな……食材さえあれば、何とかなりそうなんだが」

比企谷「物体Xも何かに……さすがに無理か」

比企谷「とりあえず、よそった無事なご飯部分は無事回収っと……」

479: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:54:00 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


比企谷「何とか、昼の分は確保した」

里中「おお、おにぎりじゃん!」

天城「これ……何のおひたし?」

雪ノ下「人参の葉っぱよ」

花村「……いただきます」

     イタダキマス

一同(……わびしい)

里中「はあ……結局、食材集まんなかったねー」

雪ノ下「仕方ないわよ……大抵、必要分しか持って来ない物だもの」

480: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:55:08 ID:hVPrjLxI

天城「夕飯は、天城屋に頼んで届けてもらう事にしたから……」

天城「それまで我慢だね」

雪ノ下「……物体Xはどうなったの?」

比企谷「後で土葬します」

雪ノ下「公害被害が出ないといいけど」

比企谷「出るわけ無いだろ。 ソースは俺と花村」

雪ノ下「冗談の通じない人って付き合いにくいわ」

比企谷「今、冗談に付き合う余裕がねえんだよ」

里中「ところで、花村。 なんか元気ないね?」

花村「! ……そ、そうか? そんな事ないぜ?」

里中「そう? ならいいんだけど」

花村「…………」

481: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:56:00 ID:hVPrjLxI

夕方


陽乃「はぁーい! お待たせー♥」

比企谷「」

雪ノ下「」

天城「陽乃さん? わざわざすみません……」

陽乃「いいのよ、これくらい。 可愛い妹の為でもあるしね」

里中「助かりました~」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……ありがとう、姉さん」

陽乃「……!」

陽乃「うん、雪乃ちゃん」

482: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:56:54 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


陽乃「……ちょっと隣、いいかな? 比企谷くん」

比企谷「断っても座るんでしょ?」

陽乃「ふふ」

     ストン

陽乃「……雪乃ちゃん」

陽乃「あの日……道に迷って帰ってきてから」

陽乃「何だか、変わっちゃってね……」

比企谷「悪い方に、ですか?」

陽乃「…………」

陽乃「私にとっては、かなー」

483: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:58:09 ID:hVPrjLxI

陽乃「あの日以降……あの娘は、私にはっきりと意見を言う様になったの」

比企谷「…………」

陽乃「たとえ合理的でなくても、理性的でなくても」

陽乃「自分はこうしたい、って、はっきり言って来る様になった」

比企谷「……いい事なんじゃないですか?」

陽乃「そうよね」 クス

陽乃「でも……何だか階段をいくつか駆け上がったみたいに」

陽乃「突然、大人になった気がするの……」

比企谷「…………」

陽乃「何だかねー。 置いてかれちゃったみたいな気になっちゃって……」

陽乃「姉失格よね……妹の成長を喜べないなんて」

484: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:58:56 ID:hVPrjLxI

比企谷「いつまでもガキのままの方が、よっぽど良くないですよ」

陽乃「ふふ、そうよね」

陽乃「で? どうやったの?」

比企谷「藪から棒になんです?」

陽乃「絶対、君が関わってるって思うからよ」

陽乃「雪乃ちゃんを大人にしてくれたんでしょ?」

比企谷「お願いしますから、その言い方止めてください。 割とマジで」

陽乃「んんー? どうしてかなぁー?」 クスクス

比企谷「わかっててやってるでしょ……」

陽乃「あはは……」

陽乃「ま……これからもよろしくね? 比企谷くん」

比企谷「へいへい」

485: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 17:59:45 ID:hVPrjLxI



男子・テント内


完二「……ウッス」

比企谷「」

花村「…………」


比企谷(おい……花村。 何でヤンキーがここに居る!?) ヒソヒソ

花村(食材集めの時に聞いた話じゃ、モロキン(諸岡:担任)が) ヒソヒソ

花村(問題児を一人、何とかしてくれって泣きつかれたらしい……) ヒソヒソ

比企谷(あの野郎……全部俺達に丸投げしやがったな……) ヒソヒソ

花村(それから、もう一つ……ヤな噂話があってよ) ヒソヒソ

486: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:00:33 ID:hVPrjLxI

完二「……さっきから何、こそこそ話してんだァ?」

比企谷「! い、いや……大した事じゃない」

花村「き、気にするな……」

完二「……ちっ」

完二「まあいいや……俺ぁもう寝るっスよ?」

比企谷「あ、ああ……」

花村「…………」

花村「……と、ところで、巽くん」

完二「……ああ?」

花村「君って……お、女の子が苦手って、聞くけど……」

比企谷「……!」

比企谷(……ま、まさか……こいつって!?)

487: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:01:24 ID:hVPrjLxI

完二「……ちっ。 くだんねー噂信じんなよ」

花村「だ、だよねー。 女の子が嫌いな男なんて、居ないもんなー」

完二「まあ……女なんてどうでもいいっスけど」

花村「…………」

比企谷「…………」

花村「えーと……巽くん」

花村「割と真面目に聞くんだけど……君って、そっち系?」

完二「ああ? そっち?」

比企谷「……はっきり言うと」

比企谷「俺たち、貞操の危機か?」

488: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:02:29 ID:hVPrjLxI

完二「んな!? ななななな、んな訳あるかぁ!?」

花村「どうして豪快にキョドるんだよ!?」

比企谷(認められたら認められたで、激しく嫌だが……)

完二「てめーら……人をおちょくるのもいいかげんにしろよ?」

完二「俺は普通だ! どっからどう見ても、普通の男だ!」

完二「女には興味がないってだけのなぁ!!」


花村(何で、そこを力説する!?)

比企谷(なおさら本物っぽいな……)


花村「わ、わかった、悪かった……謝るからもう寝ようぜ?」

完二「ったく……」

比企谷「…………」

489: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:03:13 ID:hVPrjLxI

女子・テント内


里中「」

天城「」

雪ノ下「」

花村「よ、よお……」

比企谷「今晩は……」

里中「あ、あ、あ、あんたら――」

花村「待て! 里中!」

花村「ボコるのは、とりあえず話を聞いてからにしてくれ!」

比企谷「頼む……」

490: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:04:03 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


花村「――って訳で」

花村「とにかく、あいつと密閉空間に居たくねえ……」

比企谷「手足を縛るとか、す巻き状態でも何でもいい……」

比企谷・花村「朝まででいい……ここに居させてくれ、頼む……」

里中「…………」

天城「…………」

雪ノ下「…………」


―――――――――――


里中「変な事したら、ただじゃ置かないからね?」

491: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:05:01 ID:hVPrjLxI

花村「わかってますとも……」

比企谷「大真面目に感謝する……」

雪ノ下「まったく……人騒がせな上に、犯罪スレスレの行為ね」

天城「まあまあ……雪ノ下さん」

天城「じゃ、明かりを消すよ?」

     パチン…

比企谷「…………」

花村「…………」

里中「…………」

天城「…………」

雪ノ下「…………」

492: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:05:38 ID:hVPrjLxI




全員(眠れない……)




     こうして……夜は更けていくわけで……




―――――――――――




493: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:06:22 ID:hVPrjLxI

翌日 午前中


比企谷「ふあ……やっと終わったな」

花村「あー ……疲れが取れてねぇ」

里中「それはこっちも同じじゃん……」

雪ノ下「全く……いい迷惑だわ」

天城「で? 完二くんはどうしたの?」

比企谷「朝、戻ったら、グースカ寝てた……」

里中「……ウチらんトコ、来る必要なかったんじゃない?」

花村「冗談じゃねえよ……精神的にもたねぇって……」

494: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:07:16 ID:hVPrjLxI

花村「さて。 それはもう忘れて、だ」

里中「なによ? 急に元気になって?」

花村「お前ら、これからどうすんだ?」

天城「特に予定はないけど……?」

花村「だったら……泳がね?」

雪ノ下「……泳ぐ?」

花村「そーだよ! せっかく来たんだし。 泳いで帰ろうぜ!」

里中「残念ねー花村。 あいにくと、水着とか持ってきてないの」

     ババーン!

花村「ジャジャーン! ジュネス・オリジナル新作水着!」

花村「初夏のうるおい、だ!」

女性陣「」

比企谷「それか……あの時の買い物は……」

495: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:08:03 ID:hVPrjLxI

里中「……バカバカしい。 付き合ってらんない」

天城「花村くん……それはさすがに」

雪ノ下「ただのケダモノね」

花村「ぐあっ! 三人からの視線が痛ぇ! 超痛ぇ!」

花村「比企谷からも何か言ってくれ! な、な!」

比企谷「無理強いは良くないだろ……でも、ま……」

比企谷「こんな事もあろうかと水着持ってきたし、俺は付き合ってやるがな」

花村「……それは嬉しいけど、嬉しくない」

比企谷「どっちなんだよ」

??「あらぁ? 比企谷くん、水着持ってきてたの?」

496: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:08:46 ID:hVPrjLxI

比企谷「! ……陽乃さん」

雪ノ下「姉さん……どうしてここに?」

陽乃「うふふ、実は~車中泊したんだ」

陽乃「まあ? せっかくキャンプ地に来たんだし」

陽乃「比企谷くんと思い出を作ろうかな? と、思ってね」

比企谷「……何で俺となんです?」

花村「そ、それはともかく、陽乃さん、泳いでくれるんですか!?」

陽乃「うん! こういうのは楽しまないとね♪ 花村くん♪」

花村「おっしゃー!!」

里中「……はあ。 付き合ってらんない」

陽乃「さあ、自信のない小娘たちは置いといて、楽しみましょ?」

比企谷(わざとだ……絶対わざとだ)

女性陣「……」 カッチーン

497: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:23:59 ID:hVPrjLxI

雪ノ下「……誰も泳がない、とは言ってないわ」 ゴゴゴ…

天城「そうよね……せっかくなんだし」 ゴゴゴ…

里中「楽しまないとね……」 ゴゴゴ…


比企谷・花村(怖い怖い怖い)

陽乃「うん! そうこなくっちゃ!」


―――――――――――


陽乃「お待たせー♪」

里中「あんましジロジロ見るなっ」///

天城「サイズ……どうしてピッタリなんだろう……」///

雪ノ下「後で小一時間程、問い詰めたいわね……」///

498: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:25:00 ID:hVPrjLxI

花村「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!」

比企谷「……喜びすぎだろ」

花村「おまっ! この状況を喜ばずにどうしろってんだよ!?」

花村「俺……俺……」

花村「生きてて良かった……!」 ウルウル…

比企谷「そこまで言う事か?」

花村「クラスメイトの女子3人に、陽乃さんの生水着姿まで拝めたんだぞ!?」

花村「逆にどうしてお前は、そこまで感動薄いのか聞きたいわ!」

比企谷「グラビアとかあるし」

花村「アホか! すぐそこ! すぐそこに! 手の届く所に!」

花村「水着姿の女の子がいるんだぞ!?」

比企谷「わかったわかった……」

499: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:26:02 ID:hVPrjLxI

花村「それにしても陽乃さん……群を抜いて素晴らしいプロポーションだ」///

花村「可愛らしいベビーフェイス……」///

花村「推定93はあろうか、豊 な美 ……」///

花村「くびれたウェストに、柔らかそうなヒップ……」///

花村「スラリと伸びた、長い脚……」///

花村「モデルで、充分やっていけるレベルだぞ!!」///

  ※画像でお見せ出来ないのが残念です

比企谷(腹は黒いけどな)

里中(花村ァ……)

天城(私達にはコメントすら無し……?)

雪ノ下(後でお仕置きが必要ね……)

500: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:27:09 ID:hVPrjLxI

比企谷「…………」

比企谷「……まあ、みんな似合っていると思うぞ」

比企谷「なんか、妙な事になったが……」

比企谷「そろそろ泳ぐか?」

里中「うん! もうこうなったら、とことん楽しむんだから!」

天城「そうだね、千枝」

雪ノ下「……足はつくわよね?」

比企谷「底が見えてるだろ? 安心しろ」

     ヒャッホー! ザブン!

     ツメテェェェ! コラー!

     キャハハハ……

501: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:28:14 ID:hVPrjLxI



     初夏……本格的な暑さは、まだまだこれからだが

     一足早い、水泳を楽しんだ。

     ……陽乃さん、ふざけて抱きつくの止めてください。 割とマジで。



     チラ見だが……雪ノ下の肌は白くて……日差しが少し心配になった。

     それだけだ。 それ以外、何も考えなかった。 うん。



502: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:29:14 ID:hVPrjLxI


―――――――――――




足立宅


比企谷「ただいまー」

足立「やあ、お帰り、比企谷くん」

比企谷「足立さん……今日は休みでしたか」

足立「ははは、毎週曜日通り、とはいかないけどね」

足立「林間学校は楽しかったかい?」

比企谷「ええ……まあ」

足立「そう! それは良かった」

足立「今日は僕が夕食を作るね? 君ほど上手くないけど」

比企谷「楽しみです」

503: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:30:00 ID:hVPrjLxI



     足立さんが作ってくれたのは、イタ飯だった。

     もちろんフツーに旨かった。



504: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/08/26(月) 18:30:42 ID:hVPrjLxI


―――――――――――


クマ「…………」

クマ「センセイ達……今日も来なかったクマ……」

クマ「…………」

クマ(……分かっているクマ)

クマ(センセイ達は、あっちの世界に住んでいるから)

クマ(どうしても、あっちの用事を優先してしまうって……)

クマ(…………)

クマ(クマは……どうして生まれたクマ?)

クマ(クマは、何であっちに生まれなかったクマ?)

クマ(この世界は……いったい何クマ?)

クマ(…………)

クマ(クマは……クマは………)

511: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:19:22 ID:6djIQZoo


―――――――――――


数日後

学校


比企谷「…………」

花村「なに難しい顔してんだよ、比企谷?」

比企谷「事件を振り返っているんだ」

比企谷「最初の山野アナ、小西早紀……そして、未遂に終わったが」

比企谷「天城・里中に雪ノ下」

花村「全員女性で、【マヨナカテレビ】に映ったよな」

比企谷「そうだ」

比企谷「だが……それ以外に何か……共通点はないか?」

花村「共通点……ねぇ」

512: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:20:13 ID:6djIQZoo

花村「年齢……は、山野アナが外れるし」

花村「同郷……というのは、雪ノ下さんが違うな」

花村「後は……『あの世界』を凶器にしている、か?」

比企谷「そうなんだ……」

比企谷「俺たちは、ペルソナ絡みで『あの世界』という『共通点』がある事を知っている」

花村「だな」

比企谷「じゃあ白無垢 直江?は、どうやって雪ノ下が危ないと気がついたんだ?」

花村「! ……確かにそうだな」

比企谷「何かあるはずなんだ……『あの世界』を知らない一般人にもわかる」

比企谷「被害者の『共通点』が……」

513: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:21:15 ID:6djIQZoo

花村「う~ん……」

花村「そう言われても、すぐには出てこねぇな……」

花村「犯人の目的もさっぱりわかんねぇし」

比企谷「……そうだな」

比企谷「強引に言えば、被害者は全員『若い女性』というカテゴリーに入るし」

比企谷「通り魔的な動機で行動している、とも言える」

花村「最近続報見ねぇけど……警察はどう見てるんだろう?」

比企谷「おそらく……最初の二件と、後の二件は」

比企谷「全く別の事件として扱われているだろうな」

比企谷「特に雪ノ下の時は、意図的にそうしたし……」

花村「……はあ、頭痛くなってきた」

比企谷「……俺もだ」

514: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:22:34 ID:6djIQZoo

花村「じゃ、話、がらっと変えるけど」

花村「最近話題の久慈川りせ、見に行ってみねぇ?」

比企谷「芸能活動、休業宣言したってやつか?」

花村「そう!」

花村「現役トップアイドル、突然の休業!で、騒がれてる、あの久慈川りせだよ!」

比企谷「この街にいるのか?」

花村「おう! 噂じゃ、商店街のマル久豆腐が実家らしいぜ?」

比企谷「ふーん」

花村「相変わらずそっけねぇな……」

比企谷「興味ねぇし」

花村「いいじゃねーかよ。 気分転換に行ってみようぜ!」

比企谷「…………」

515: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:23:28 ID:6djIQZoo

マル久豆腐店


     ガヤ ガヤ

花村「うはー」

比企谷「人がいっぱいだな……」

花村「こんな田舎じゃ、生芸能人なんて滅多に拝めないし」

花村「考える事は、皆同じって事か……」

比企谷「……俺は帰る」

花村「ちょ、ここまで来たんだから、もう少し待とうぜ?」

比企谷「俺は元々興味ない」

花村「比企谷ぁ……」

??「はぁーい! そこ! 押さないでねー!」

516: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:24:19 ID:6djIQZoo

比企谷「!」

比企谷「あの声は……」

花村「比企谷の保護者の足立、とかいう刑事さんか?」

比企谷「間違いないな」

比企谷「……足立さん」

足立「! 比企谷くん」

比企谷「何か事件ですか?」

足立「いや……無用の混乱を避けるために、警察が警備やる事になってね」

足立「本来は制服がやるべき事なのに……人手が足りないからって」

足立「僕にお鉢が回ってきたんだよ……はあ」

比企谷「……大変ですね」

足立「あはは……」

517: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:25:16 ID:6djIQZoo

足立「で? 君たちはまた野次馬かい?」

比企谷「ええ……でも、これじゃ無理そうですし」

比企谷「もう帰るところです」

足立「そうしてくれると助かる」

足立「正直、もう目が回りそうなんだよ……」

比企谷「だってさ、花村」

花村「ぐ……仕方ない、帰るか」

比企谷「それじゃ、足立さん」

足立「ああ、気を付けてね」

足立「あ、そこの人! 強引に入ろうとしないで!」


―――――――――――


518: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:26:03 ID:6djIQZoo

足立「ふう……やっと人が少なくなってきた」

堂島「おい、足立」

足立「あ、堂島さん」

堂島「ご苦労だった」

堂島「後は制服がやるから、もう引き上げていいぞ」

足立「そうですか! いや~助かりましたよ~」

堂島「何か変わった事は無かったか?」

足立「いえ? 特にありませんけど……」

足立「強いて言えば、比企谷くん達が来たくらいですかね。 あはは」

堂島「……そうか」

足立「いつも通り、野次馬で来たみたいですってば。 気にしすぎですよ~やだなぁ」

堂島「…………」

519: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:26:51 ID:6djIQZoo

足立宅


足立「……って訳でさ~」

足立「堂島さん、どうも君たちを疑ってるみたいなんだよね~」

比企谷「……そうですか」

足立「まあ、そんな事無いって説明しといたけど」

足立「あまり野次馬根性出すのも良くないと思うよ?」

比企谷「そうですね。 気をつけます」


比企谷(……と言われてもなぁ)

比企谷(どうしたものか、な……)

520: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:28:12 ID:6djIQZoo


―――――――――――

深夜


     サアアアア……

比企谷「…………」

比企谷(外は雨……そして)

比企谷(もうすぐ時間だな)

     ……ピウィ~……

比企谷(映ったか)

比企谷(…………)

比企谷(……女……水着?)

比企谷(だが、この前の雪ノ下達の物じゃない)

比企谷(髪の色も長さも該当しない……)

     ブツン……

521: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:29:07 ID:6djIQZoo

比企谷(…………)

比企谷(俺には全くわからないな……誰だろう?)

比企谷(とりあえず明日、花村たちと話をしてからだな)

比企谷(…………)

比企谷(……?)

比企谷(何か忘れてる気がする……)

比企谷(…………)

比企谷(あ)

比企谷(そうだ……録画できるかどうか、実験しようと思ってたんだっけ……)

比企谷(まあ……次だな)

522: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:30:21 ID:6djIQZoo

翌日の放課後

学校の屋上


花村「あれはりせちーだって!」

里中「そう? なんか感じ、違くなかった?」

花村「何言ってんだよ! あの胸! あの腰つき!」

花村「そして、あの無駄のない脚線美!」

花村「間違いなくりせちーだ!」

雪ノ下「だ、そうだけど? 比企谷くん」

比企谷「俺は芸能界に疎い。 全くわからん」

雪ノ下「健全な男子高校生としては、ちょっとどうかと思う発言ね」

比企谷「じゃあもっとス  になれと?」

雪ノ下「過大解釈しすぎよ、●●ガヤくん」

比企谷「うるせーぞ、シモノシタ」

523: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:32:05 ID:6djIQZoo

天城「ふ、二人共、その辺りで……」

天城「ともかく、久慈川りせ?という娘が、危ないって事だよね?」

花村「だな」

花村「しっかり注意喚起しないと!」

花村「そして、りせちーとお近づきに……むふふ」

雪ノ下「考え方が最低よ、●●村くん」

比企谷「全くだな、●●村」

天城「女性として、下心が見えちゃうとね……●●村くん」

里中「女性の敵ね、●●村」

花村「……すんません、マジで止めて、それ」

524: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:33:06 ID:6djIQZoo

比企谷「それじゃ、さっそく行くか」

里中「ああ、ごめん比企谷くん」

里中「あたし、ちょっと用事があって、これから職員室に行かないといけないの」

天城「千枝、そうなんだ……」

天城「実は私も、天城屋で団体客を迎える準備をしなくちゃいけなくて」

比企谷「……という事は」

雪ノ下「その通りよ、比企谷くん」

雪ノ下「必然的に私もね」

花村「そっか。 ま! 人数多すぎても何だし、ちょうどいいんじゃね?」

比企谷「それもそうか」

比企谷「じゃ、行くか、花村」

花村「おう!」

525: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:34:06 ID:6djIQZoo

商店街 マル久豆腐


     ガヤ ガヤ

比企谷「今日も人が多いな……」

花村「だけど今日は、絶対会わねーとな!」

比企谷「へいへい」

―――――――――――

花村「やっと俺たちの番だぜ……」

比企谷「長かったな……」

??「……いらっしゃい。 と言っても、豆腐は売り切れだから」

花村「あ~その、そうじゃなくて、久慈川りせさんに会いに……」

??「……そういうの、お断りしてるんだけど」

526: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:35:10 ID:6djIQZoo

比企谷「じゃあ、客なら文句無いだろ」

比企谷「そこのがんもどき、6つくれ」

花村(ナイス! 比企谷!)

??「まいどー」

     ゴソ ゴソ…

花村「でー ……久慈川りせ、さんは?」

比企谷「お前何言ってるんだ?」

比企谷「さっきから話してるのが久慈川りせじゃねーの?」

花村「はあ!?」

りせ「はい、がんもどき6つ。 630円ね」

花村(げっ、本当だ! 割烹着に地味な髪型してるからわからんかった……)

527: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:36:17 ID:6djIQZoo

りせ「で? あたしに何か用?」

花村「あ、ああ、そうなんだ!」

花村「その……もしかしたら君、危ないかもしれなくて」

りせ「危ない?」

比企谷「身の回りに気をつけておけって事だ」

りせ「……何の事か知らないけど」

りせ「ストーカーとかなら慣れてるし」

比企谷「ならいい。 邪魔したな」

花村「い!? お、おい、比企谷! もう帰んのかよ!?」

比企谷「もう用はないだろ。 行くぞ」

花村「比企谷~!!」

528: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:37:19 ID:6djIQZoo

??「……ちょっと邪魔するぞ」

りせ「いらっしゃいませ」

比企谷「……!」

堂島「……!」

堂島「君は……比企谷、とかいう」

比企谷「どうも」

比企谷「夕飯にがんもどきを買いに来ただけですので」

比企谷「じゃ……」

花村「はは……それじゃ」

     テク テク テク…

堂島「…………」

りせ「……あの?」

529: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:38:44 ID:6djIQZoo

堂島「ああ、すまない」

堂島「俺は警察のものだ。 堂島、という」 スチャ(警察証開示)

りせ「はあ……」

堂島「最近、この街で起こっている事件は知っているか?」

りせ「ええ」

堂島「残念ながら、まだ犯人は捕まっていない」

堂島「君は有名人でもあるし、注意しておいてくれ」

りせ「わかりました」

堂島「ならいい。 用事はそれだけだ」

堂島「……ところで」

りせ「はい?」

530: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:40:00 ID:6djIQZoo

堂島「さっきの高校生……彼らと、どんな話を?」

りせ「刑事さんと同じですよ」

りせ「身の回りに注意しろって……」

堂島「!?」


堂島(……どういう事だ?)

堂島(今回の殺しじゃ、まだ動機そのものすら分かっていない)

堂島(俺がここに来たのは、いわば”カン”にすぎん……)

堂島(なのに……ただの高校生が、なぜ……?)

堂島(…………)


堂島「そうですか……それじゃ、失礼します」

りせ「どうも」

531: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:40:58 ID:6djIQZoo


―――――――――――


堂島「…………」 ピッポッパッ

     プルルルルル……ガチャ

堂島「足立か? 今、どこにいる?」

堂島「…………」

堂島「そうか、ならいい」

堂島「お前の世話してる、比企谷という高校生」

堂島「あいつをそれとなく見張っておけ」

堂島「…………」

堂島「ああ、それは分かっている」

堂島「犯人として疑っているわけじゃない」

532: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:41:59 ID:6djIQZoo

堂島「だが……”何か”を隠している」

堂島「根拠? そんなものはない」

堂島「…………」

堂島「いい気持ちしないのもわかるがな」

堂島「今回のヤマは、まだ謎が多い。 少しでも情報が欲しいんだ」

堂島「お前だって、あの少年探偵とかいうのに、でかいツラされたくないだろう?」

堂島「…………」

堂島「自分は気にしないだと?……ったく」

堂島「とにかくだ、比企谷をそれとなく監視しておけ。 これは命令だ」

堂島「切るぞ」

     ブッ……ツーツー

堂島(これで何か分かればいいが……)

533: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:43:06 ID:6djIQZoo

数日後

休日の午前中


里中「さすがに落ち着いたみたいね」

花村「おう。 人もそんなに居なくなったな」

比企谷「そういや、なんで休業するって言い出したんだ?」

花村「さあ……だからこそ、突然の休業宣言として騒がれてんだけど」

比企谷「…………」

里中「ともかく、前の雪ノ下さんみたいに ならない様にしないとね!」

花村「ああ、確かにな」

花村「早く犯人捕まえねーと!」

534: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:44:31 ID:6djIQZoo

比企谷「…………」

比企谷「なあ……」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「さすがにこの人数で見張ると、目立つんじゃね?」

天城「大丈夫だよ。 通りすがりの人も気がついて ないみたいだし」

比企谷「……かかわり合いたくないと思って、見て見ぬふりしてるだけだろ」

花村「深く考えたら負けだ、比企谷」

比企谷「いや俺が言いたいのは、犯人にもモロバレじゃね?って事で……」

里中「……あ!」

里中「ほら、あそこ! 電柱の影!」

雪ノ下「怪しい……似合わないバンダナに、似合わないグローブつけて」

雪ノ下「いかにも引きこもりで、今回の犯罪を起こしそうなキモオタ風の男がいるわ」

比企谷「……外見で判断するなよ」

535: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:45:46 ID:6djIQZoo

天城「あ! りせちゃん、出てきた!」

花村「あいつには気がついて無いみたいだな」

里中「どうする? もう捕まえる?」

足立「う~ん……それはまずいんじゃないかな」

足立「容疑が固まっていない以上、別件逮捕するなら現行犯確保しかないからね~」

天城「なる程、疑わしきは罰せず、ですね」

足立「そうそう♪」

雪ノ下「ちょっと意味が違うような……」

比企谷「俺は明らかに違うと思う」

里中「む! 怪しい男がりせちゃんに駆け寄っていく!」

536: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:46:50 ID:6djIQZoo

花村「よし! 確保だ!」 ダッ!

里中「こらぁ~!!」


??「ふひぇ!?」

??「な、な、な、なんだぁ~!?」

     ドドドドドドドドド!

雪ノ下「念の為 比企谷くんは、久慈川りせを見てて!」

比企谷「おい!?」

     タッ タッ タッ…

比企谷「…………」

りせ「…………」

りせ「で? 何なの?」


―――――――――――


537: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:48:13 ID:6djIQZoo

りせ「ふうん……」

りせ「連続殺人事件の犯人、ね……」

比企谷「まだ本物かどうか、わからんけどな」

りせ「そう……」

りせ「あんたも暇ね。 わざわざ他人の為に体張って……」

りせ「……ああ、もしかして、あたしとお近づきになりたいとか?」

比企谷「芸能人に興味ねえよ……」

比企谷「俺としては……そうだな」

比企谷「…………」

比企谷「そう、何となく、なし崩し的に巻き込まれたんだ」

りせ「そうなの。 本当に暇人ね」

538: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:49:23 ID:6djIQZoo

比企谷「ほっとけ」

比企谷「だいたい、お前が芸能界休業とかしなけりゃこんな事に……」

りせ「あたしが悪いって言うの!?」

比企谷「公の影響力っての?」

比企谷「お前はそういう立場に居たって自覚がねーのかよ……」

りせ「うるさい!」

りせ「何も……あたしの事、何にも知らないくせに!!」

比企谷「ああそうさ。 知らねーし、知りたいとも思わねえ」

比企谷「だからチヤホヤされて、それが鬱陶しくなっただけだと思ってるんだよ」

りせ「……!!」

比企谷「それとも違うのか?」

りせ「……違う」

539: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:50:15 ID:6djIQZoo

比企谷「ふうん」

りせ「違う……あたしは……違う!」

比企谷「何が違うんだよ?」

りせ「……あんたなんかに言うつもりはない」

比企谷「さいですか」

     ピピピ……ピピピ……ガチャ

比企谷「……もしもし」

比企谷「……ん……そうか」

比企谷「わかった」 ピッ

比企谷「終わったってさ」

りせ「…………」

540: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:51:16 ID:6djIQZoo

比企谷「一応、帰るまで見送ってく」

りせ「いらない」

比企谷「社交辞令でボランティアだ」

比企谷「ありがたがる必要はない」

りせ「…………」

りせ「……そう、勝手にしたらいいわ」

比企谷「ああ、そうさせてもらう」

     テク テク テク…


―――――――――――


541: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:52:19 ID:6djIQZoo

ジュネス フードコート


比企谷「お疲れさん」

花村「……おう」

比企谷「……どうした? なんか納得してない顔だな?」

天城「うん……捕まえた犯人、何だか手応えがなくて」

里中「あっさりしすぎてね……」

雪ノ下「本人は違うって、言ってたけど」

花村「足立さんに引き渡して帰ってきた」

比企谷「足立さん? 何で足立さんが出てくるんだ?」

花村「いや、気がついたら一緒にいてさ」

花村「これで事件解決だね!って、意気揚々と引き上げてった」

542: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:53:24 ID:6djIQZoo

比企谷「そうか……」

天城「ま、まあ、一段落着いた……かな?」

雪ノ下「いいえ」

雪ノ下「【マヨナカテレビ】を見るまでは油断できないと思う」

比企谷「今日の夜、降るって予報だし」

比企谷「何もない事を祈るばかりだな」

里中「そうだね」

里中「じゃあ、今日はこれでお開き?」

花村「だな」

花村「じゃ、また明日!」


―――――――――――


543: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:54:31 ID:6djIQZoo



足立宅


     サアアアア……

比企谷「…………」

比企谷(降っているな)

比企谷(足立さん、遅いし)

比企谷(犯人だったのだろうか……)

比企谷(…………)

比企谷(そろそろ時間だ)

     ……ピウィ~……

比企谷(……映ったか)

比企谷(とりあえず録画、と……) (●REC)ピッ

比企谷(という事は、あいつは犯人じゃな……)

比企谷「」

544: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:55:28 ID:6djIQZoo



     そこに映し出された久慈川りせは

     黄色の水着姿だった。



     しかし……なんと言うか……胸とか強調したカメラアングルで

     どうにも●●っぽ……色っぽい。



545: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 19:56:30 ID:6djIQZoo

テレビ『はぁ~い♥ みんな大好き! りせちーだよ~♥』 ウフン♥

比企谷「」 (●REC)ピッ (●REC)ピッ (●REC)ピッ (●REC)ピッ…

テレビ『今日は~……みんなに~……大事なお知らせがあるんだ~♥』

テレビ『そ・れ・は~……ス~ト~リッ、プ♥』

     ジャジャーン!

     ドキッ! 現役女子高生アイドル! 生  リップショー!!

比企谷(ス、スト……!?)

テレビ『いや~ん♥ りせちー、困っちゃう♥』

テレビ『でもぉ……やるからには、大胆にしちゃうから!』

テレビ『お楽しみに♥』

     ブツン

 

548: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 20:00:17 ID:6djIQZoo

比企谷「…………」

     ピピピ……ピピピ……ガチャ

比企谷「……もしも」

花村『スト! 今、  リップって言ってたよな!?』

比企谷「ああ……どうやら今回も」

花村『マジっすか! もう楽しみでしょうがないんですけど!?』

比企谷「……いいから落ち着け」

花村『んあ?……お、おう……』

比企谷「ともかく、今回も防げなかった……」

比企谷「久慈川りせは、すでにテレビの中だ」

花村『ああ……確かにな』

549: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/02(月) 20:01:18 ID:6djIQZoo

花村『ともかく、俺は今回張り切るぜ!』

比企谷「……期待してるが少し抑えろ」

花村『ははは! じゃ、明日の放課後、ジュネスでな!』

比企谷「ああ」

     ブッ……ツーツー

比企谷「…………」

     ピッ(録画再生)

比企谷「…………」 ドキドキ

     ザザー……

比企谷「…………」

比企谷「……ですよね」


     テレビとDVDレコーダーの電源を切ると、俺はそのまま寝た……


558: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:13:24 ID:BEpyLWFE

翌日の放課後

ジュネス フードコート


花村「よし! それじゃテレビの中に行こうぜ!」 フンフン!

里中「……花村、鼻息荒すぎ」

雪ノ下「本能の赴くままに行動してるわね」

天城「今回は、比企谷くんと二人だけで頑張ればいいんじゃない?」

比企谷「俺とこいつを一緒にするなよ……」

花村「比企谷! お前だって見ただろ!? あのりせちーを!!」 フンフン!

花村「あれで何で、奮い立たねーんだよ!!」 フンフン!

比企谷(……お前は別のもん、おっ立ててるんじゃねーのか?)

559: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:14:51 ID:BEpyLWFE

比企谷「ともかく被害者だし、救出しないと」

比企谷「あの世界は今だに分かっていない事も多い」

比企谷「俺たちの常識は通じないからな……」

雪ノ下「そうね……」

比企谷「だから出来うる限り、望めるだけの戦力で行く」

比企谷「これが大事だ」

里中「わかってるよ。 ちょっとした冗談じゃん?」

天城「うん。 早く久慈川さん、助けてあげないとね」

花村「じゃ! レッツゴー!」 フンフン!

一同「…………」


―――――――――――


560: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:16:06 ID:BEpyLWFE

テレビの世界


花村「――到着、っと!」

里中「……あれ? クマくん?」

天城「どうしたの?」


クマ「…………」 ズーン…


比企谷「クマ?」

クマ「……みんなはいいクマねー」

クマ「こっちは、クマ一人だけだから寂しさ倍増で、卑屈してたクマー」

天城「ご、ごめん……クマくん」

里中「忘れてた訳じゃないのよ?」

561: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:17:15 ID:BEpyLWFE

花村「それよりもクマ! ここにまた人が落とされたみたいなんだ!」

雪ノ下「●●村くんは少し黙ってて」

花村「黙ってられるか! おい! クマ吉!」 フンフン!

花村「新しくここに落とされたのは、とびっきり可愛い女の子だ!」 フンフン!

花村「しかも水着姿で、ス、ス、ス、  リップをする! とか言ってるんだよ!」 フンフン!

クマ「すとりっぷって何クマ?」

花村「目に前で女の子が服をぬ――」

     ドカッ バキッ ゴスッ

里中「クマくんになんて事教えるのよ!」

花村「……おう」 ボロッ…

クマ「服をどうするクマ?」

562: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:18:05 ID:BEpyLWFE

雪ノ下「忘れなさい、クマくん。 いいから忘れなさい。 わかった?」

クマ「ク、クマ……」

比企谷「……はあ」

比企谷「で、だ、クマ」

比企谷「落とされた人間の場所……わかるか?」

クマ「ちょ、ちょっと待つクマ……」

クマ「う~ん……」

一同「…………」

クマ「…………」

クマ「駄目クマ……クマの鼻センサー、調子が悪いクマ」

花村「そ、そんな!」

563: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:19:05 ID:BEpyLWFE

花村「クマ吉! 頑張ってくれよ! なあ!」

クマ「そ、そんな事言われても……」

花村「くそぉ……りせちーの  リップ……見れねーのかよ」

里中「花村! いい加減そこから離れなさい!」

比企谷「…………」

比企谷「……クマ」

クマ「センセイ……何クマ?」

比企谷「ゴニョゴニョ……」

クマ「ほえ?」

クマ「…………」

クマ「!!」

クマ「そ、それは本当クマ!?」

比企谷「ああ」

564: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:20:11 ID:BEpyLWFE

クマ「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

クマ「何か……いきり立ってきたクマァァァァァァァ!!」


雪ノ下「……だいたい分かってるけど」

雪ノ下「何を耳打ちしたの?」

比企谷「ノーコメントです」


クマ「キタ―――! クマ!」

花村「おっしゃあ!」

クマ「  リップショーは、こっちクマ!」


天城「さいてー」

里中「男子の評価ダダ下がり中……」

雪ノ下「嫌悪感しかないわ」

比企谷「なんとでも言え。 行くぞ」

565: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:21:03 ID:BEpyLWFE


―――――――――――


比企谷「ここか……」

花村「こ、これって……よく温泉旅館とかにあるっていう」///

天城「ウ、ウチには無いからね!?」///

クマ「  リップ!   リップ!」

里中「……クマ。 ちょっと黙れ」

クマ「ク、クマ……」

花村「嫌が上にも盛り上がってきたぜ!」

雪ノ下「私たちは凍りつきそうなくらい盛り下がってるわ……」

比企谷「それくらいにしておけ……人の命がかかってる」

比企谷「入るぞ!」

566: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:22:11 ID:BEpyLWFE


―――――――――――

     バァーンッ!

里中「いた!」

比企谷「久慈川りせ……の【シャドウ】だな」

花村「本物はどこだ?」

天城「見当たらないね……」


影・りせ『レディース・エン・ジェントルメン!』

影・りせ『ようこそ! あたしのオンステージへ!』


雪ノ下「え? な、なに? 何が始まるの?」

クマ「  リップクマ!?」

567: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:23:30 ID:BEpyLWFE


影・りせ『うふふ……そんなに焦らないでお客様?』

影・りせ『ゆっくりと、本当のあたしをご覧あれ♪』


比企谷(……本当のあたし?)

花村「おおおおおおおおおっ!」

花村「あ、あれって! ポ、ポ、ポ、ポールダンスってやつ!?」///

クマ「ムホー!! りせちゃんが、あんな刺激的なポーズををををを!」///

里中「少し引っ込んでなさい!」

     バキッ! ゴインッ!

花村「」 チーン…

クマ「」 チーン…

568: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:24:36 ID:BEpyLWFE

雪ノ下「使えないケダモノは置いといて……」

雪ノ下「比企谷くん」

比企谷「ああ……」

比企谷「本人がどこにいるのか、さっぱりわからん」

雪ノ下「とか言いながら何故、【シャドウ】を凝視してるのかしら?」

里中「……さいてーね」

天城「……もう男の子が信じられないレベル」

比企谷「気のせいだ」

雪ノ下「あら……それなら微妙に前かがみになってるのはなぜ?」

比企谷「……キノセイダ」

里中「……ホントにさいてー」

天城「……こういうのムッツリって言うんだよね」

569: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:26:00 ID:BEpyLWFE


影・りせ『……んもう、なんかノリ悪~い』

影・りせ『じゃあ、ここで特別ゲスト!』

     ジャカジャカジャカジャカ……

     ジャン!!

影・りせ『久慈川りせちゃんで~す♥』


一同「!!」

りせ「う……うう……」

比企谷「ステージの奈落にいたのか……分からない訳だ」

雪ノ下「冷静に分析してないで助けないと!」


影・りせ『あん……邪魔は、な・し・よ♪』


     バッシャーン!


里中「きゃあ!?」

570: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:27:35 ID:BEpyLWFE

天城「な、何これ?」

花村「水? ……いや、ほんのり暖かいな?」

クマ「何クマ?」


影・りせ『うふふ♥ せっかくなのでぇ~』

影・りせ『お客さんも楽しんでね♥』


里中「楽しむ? いったいこれがなんだっ」

     ヌルンッ

里中「うひゃあ!?」

天城「! 千枝!」

     ズルルルンッ

571: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:28:28 ID:BEpyLWFE

里中・天城「ひゃああああっ!」

雪ノ下「ちょ!?」


     バシャン!


天城「い、痛たた……」

雪ノ下「……これ、ヌルヌルする」

里中「やだぁ……全身ベトベト……」


比企谷「」///

花村「」///

  ※画像でお見せ出来ないのが残念です。

572: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:29:48 ID:BEpyLWFE

花村「ひ、比企谷! なんか録画できるもん、持ってきてねーか!?」///

比企谷「くっ……ないっ!」///

里中「あんたら、いい加減にっ……うひゃ!?」/// バシャン!

天城「た、立てない……んっ」///

雪ノ下「どうしよう……着替えなんて持ってきてないし」///


影・りせ『あはは! 特製ローション、気に入ってくれた?』

影・りせ『さぁーて皆さんお待ちかね!』

影・りせ『いよいよ、りせちーのありのままの姿、見せちゃうよー!!』


りせ「や、やめて!」

573: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:30:57 ID:BEpyLWFE


影・りせ『どうして? 本当の自分、見つけたいんでしょ?』

影・りせ『だったら何もかもさらけ出さないとね!』


りせ「違う! あたしはそんな事、望んでない!」


影・りせ『はん! ずいぶんお高くとまって……ざけんじゃないわよ!』


りせ「!?」


影・りせ『マネージャーやプロデューサー』

影・りせ『そして得体の知れないファン共の要望に応え続け』

影・りせ『ありもしない『りせちー』を作り上げて嫌になっただけだって』

影・りせ『はっきり言いなよ!』


りせ「ち、違う!」

574: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:31:35 ID:BEpyLWFE


影・りせ『嘘つかないの』

影・りせ『内心うんざりしてたんでしょ?』

影・りせ『本音を聞いてくれる人も、わかってくれる人も』

影・りせ『誰ひとりとして居なかったもんね!』


りせ「止めて……もう止めてよ……」


影・りせ『あははは! 何言ってるの?』

影・りせ『あたしは、あんたなのよ?』

影・りせ『あたしがやりたい事は、あんたのやりたい事なんだから!!』


りせ「違う! こんな事……あたしは望んでない!」

りせ「あんたなんか……!」

575: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:32:45 ID:BEpyLWFE

一同「!!」

比企谷「止めろ! 久慈川りせ!」

花村「それ以上、言う……」

     ズルンッ

比企谷・花村「どわあああっ!」

     バッシャーン!




りせ「あんたなんか、あたしじゃない!!」




576: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:33:41 ID:BEpyLWFE


     ズウウウウウウウウウンッ……!


影・りせ『アハハハ……! 来た来た来たァ!!』



     ド   ン  !!



りせ「」 ドサッ…


影・りせ?『我は影……真なる我……』

影・りせ?『ああ……この力……たまんない♥』

影・りせ?『これで、あたしは自由に何でもできる!』


比企谷「ちっ……こうなったら仕方ない!」

577: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:34:31 ID:BEpyLWFE

比企谷「ペルソナ!」 イザナギ!

花村「ああ、やるしかねえな!」 ジライヤ!

里中「行くよ! トモエ!」

天城「コノハナサクヤ!」

雪ノ下「イザナミ!」

比企谷「クマ!」

クマ「ク、クマ?」

比企谷「久慈川りせを頼むぞ!」

クマ「わかったクマ!」


―――――――――――


578: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:35:39 ID:BEpyLWFE

     ドカッ!

比企谷「があああっ!!」

雪ノ下「比企谷くん!」

花村「くそっ……!」

里中「ど、どうして!? こっちの攻撃が全く当たらない!」

天城「はあ……はあ……」


影・りせ?『なあに? もう打ち止め?』

影・りせ?『じゃ、そろそろ止め、行っちゃうよー!』


     ババババババババッ!!


比企谷・花村「うわあああああっ!!」

里中・天城・雪ノ下「きゃあああああっ!!」

579: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:36:41 ID:BEpyLWFE

クマ「セ、センセイ――!」

比企谷(こ、こいつは……ヤバイ……)

比企谷「ちっ……立てるの……俺だけかよ……」 ヨロッ…

比企谷「…………」

比企谷「……クマ」

クマ「な、何クマ!?」

比企谷「久慈川りせを……頼む」

クマ「!?」

比企谷「ついでに……他の連中もな」

クマ「な、何言ってるクマ!?」

580: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:38:14 ID:BEpyLWFE

比企谷「時間稼ぎくらいなら、何とかできる……頼む」

雪ノ下「私も手伝うわ……比企谷くん……」 ヨロッ…

比企谷「アホか……立てるなら他の連中を……」

雪ノ下「回復役、居た方が……時間、稼げるもの」

比企谷「……!」

比企谷「…………」

比企谷「なるほど……合理的、だな」

雪ノ下「でしょ?」 クスッ

比企谷「何笑ってるんだよ」 クスッ

     ハハハ……

影・りせ?『なあに? いよいよ気でも狂れた?』

影・りせ?『それじゃ、もう一発ぅ!』

     ググッ…

581: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:39:48 ID:BEpyLWFE

比企谷「無駄話は、ここまでだ! 頼むぞ、クマ!」

雪ノ下「長くは持たない、急いで!」

クマ「ク、クマ……」


クマ(そんな……センセイ達が……)

クマ(センセイ達が、居なくなってしまうクマ!)

クマ(そんなの嫌クマ! 嫌クマよ!)

クマ(だ、だけど、クマは……クマには、何の力も無いクマ……でも)

クマ(でも!!)


影・りせ?『発射ー!!』 ドォン!!


比企谷「くっ……!」

雪ノ下「うっ……!」

582: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:40:51 ID:BEpyLWFE


     ババババババババッ!!


比企谷「……!!」

比企谷「…………」

比企谷「あれ? 痛くない……?」

比企谷「!!」

雪ノ下「クマくん!!」


クマ「おおおおおおおおおおおおっ!」

クマ「センセイは……センセイ達は、消させないクマァァッ!」


比企谷「嘘だろ……生身?で、あの攻撃受けてるそ……」

雪ノ下「クマくん……うっすら光ってる?」

583: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:41:35 ID:BEpyLWFE


影・りせ?『嘘!? 何なの!? こいつ!?』

影・りせ?『解析不能!!』


クマ「むあああああああああああっ! なんかわからんけど、力が溢れるクマァァァッ!」

クマ「今なら、何でも出来る気がするクマァァァッ!」

クマ「ちぇすとぉぉぉっ!!」


     キュムキュムキュム!


影・りせ?『く、来るなぁっ!』


     ズガァァァァァァァンッ!


584: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:42:47 ID:BEpyLWFE


―――――――――――


比企谷「――っという訳だ」

花村「俺らが気絶してる間にそんな事が……」

里中「そうだったの……」

天城「クマくん……ペラペラ」


クマ「あばば……みんな無事で、良かったクマ……」


比企谷「死にそうじゃないが……ったく、無茶しやがって……」

比企谷「けど、助かった。 ありがとう、クマ」

雪ノ下「うん……本当に命の恩人ね、クマくん」

585: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:44:10 ID:BEpyLWFE

クマ「クマ、センセイ達の役に立てて嬉しいクマ」

比企谷「今は、ゆっくり休んでいろ……後で運んでやるから」

クマ「出来れば女の子にお願いしたいクマ」

雪ノ下「……ま、この程度のわがままくらい聞いてあげるわ」

里中「まったく……ブレないわね」

天城「ホントだね」 クス


りせ「……う……ううん」

比企谷「気がついたか、久慈川りせ」

りせ「ここは……。 そうだ……確か……」

比企谷「落ち着け、手短に話すぞ?」

比企谷「さっき、お前が認めなかった存在……あれは確かにお前なんだ」

りせ「! ち、違……」

586: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:45:26 ID:BEpyLWFE

比企谷「だが、お前の全てじゃない。 あくまで一部分、一面に過ぎない」

りせ「……!」

比企谷「クマの話だと……どうも本人にとって認めたくないもの、抑圧した感情……」

比企谷「そういったものが、ここでは具現化してしまうらしい」

りせ「……本人にとって認めたくないもの……抑圧した感情……」

りせ「…………」

りせ「あたしは……どうしたらいいの?」

比企谷「わからん……だが」

比企谷「ここに居る俺以外の人間は、それらを受け入れてきた」

りせ「受け入れる……」

比企谷「言い方を変えれば、みんなお前と同じで」

比企谷「似たような嫌な部分があったって事だ」

りせ「…………」

587: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:46:44 ID:BEpyLWFE


影・りせ『…………』


りせ「そうだね……確かにあたしは自分を探してた」

りせ「もっと正確に言うなら、本当の自分のキャラを売り出して欲しかった」

りせ「テレビに映し出されるのは……キャラ付けされた偽りの自分ばかり」

りせ「本当の自分なんて、どこにも居ない。 居る訳がない」

クマ(本当の自分なんて……居ない……?) ビクンッ


影・りせ『…………』


りせ「そういった、『りせちー』も含めて……初めて」

りせ「あたしは……『あたし』だったんだ」

588: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:47:32 ID:BEpyLWFE


影・りせ『…………』


りせ「そうだね」

りせ「あんたの言うとおり、あんたはあたしで」

りせ「あたしは、あんただったんだね……」


影・りせ『…………』

影・りせ『…………』 クスッ


     ヒィイイイイイインッ!


りせ「……え? 何これ?」

589: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:48:14 ID:BEpyLWFE

比企谷「ペルソナだ」

りせ「ペルソナ……」

りせ「…………」

りせ「ふふ、ヒミコだって……」

りせ「う……」 クラッ…

花村「おおっと、大丈夫か?」

りせ「うん……何とか」

里中「これでとりあえず、ひと段落ね!」

天城「うん。 早く帰ろう? 私たちもボロボロだし……」

雪ノ下「そうね……体中ベトベトだし、早く着替えたい」

比企谷「よし、それじゃ帰るか」

比企谷「クマ、待たせ……」

比企谷「!?」

590: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:49:33 ID:BEpyLWFE



     本当の自分なんて……無い……

     探しても……無駄……



里中「……嘘でしょ」

天城「そ、そんな……!」

花村「まさか……クマにも!?」

クマ「……およ???」

クマ「みんな、何に驚いてるクマ?」

雪ノ下「クマくん……後ろ」

クマ「後ろ? ……なんじゃこりゃあああああ!?」

591: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:50:30 ID:BEpyLWFE


影・クマ『何もない……自分は……まさに……』

影・クマ『からっぽ……だ!!』


     ズウウウウウウウウウンッ……!


比企谷「……!?」


     ド   ン  !!


クマ「およよ―――!!」

花村「うわあああああっ!」

女性陣「きゃあああああっ!」

比企谷「ぐっ!!」

比企谷(今の違和感……いったい何だ!?)

592: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:51:34 ID:BEpyLWFE


影・クマ?『我は影……真なる我……』

影・クマ?『真実を追い求めるから……傷つく……』

影・クマ?『何も知らなければ……良かったと思える程に……』


クマ「な、何を言ってるクマ!?」


影・クマ?『どこまで行っても……無……』

影・クマ?『探しても……徒労……無駄な事だ……』


クマ「それでも……クマは、自分を探し続けるクマ!!」

クマ「絶対無駄じゃ無いクマ!!」

593: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:52:41 ID:BEpyLWFE


影・クマ?『……理解に苦しむ』

影・クマ?『困難や徒労が待っていると解っていながら……』

影・クマ?『それでもその道を行こうと言うのか……』


クマ「そうクマ!」


影・クマ?『ならば……ひとつだけ真実を教えてやろう……』

影・クマ?『お前達は……ここで死ぬ……!』


     グ  ワ  ァ !!


比企谷「くそっ! 来るぞ!」

りせ「ペルソナ!」 ヒミコ!

比企谷「! 止めろ! 久慈川りせ! 疲れてる状態じゃ――」

りせ「大丈夫! あたしのペルソナは、探索や探知に特化してるタイプ!」

594: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:53:44 ID:BEpyLWFE

比企谷「!」

りせ「戦いには参加できないけど……サポートなら任せて!」

花村「四の五の言ってる場合じゃねえ、比企谷!」

花村「使えるもんは何でも使わねえと……へばってる俺たちもやべえ!」

比企谷「……確かにな」

比企谷「よし! 頼むぞ、久慈川りせ!」

りせ「任せて!」

比企谷「イザナギ!」



―――――――――――



595: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:54:42 ID:BEpyLWFE

比企谷「はあ……はあ……」

花村「ぜえっ……ぜえっ……」

里中「く……はあ……はあ……」

天城「満身……創痍ね……」

雪ノ下「危なかった……久慈川さんのアナライズ無しだったら……」

雪ノ下「どうなっていた事か……」


影・クマ『…………』


里中「それにしても……クマくんにも抑えてたモノがあったなんて」

花村「ヘビー級に とんでもない【シャドウ】化したけどな」

天城「大丈夫? クマくん?」

クマ「大丈夫じゃ無いクマ! クマの自慢の毛並みがぁぁ……」

596: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:55:56 ID:BEpyLWFE

比企谷「……とりあえず、無事みたいだな」

雪ノ下「クマくんは、自分を探してるの?」

クマ「!」

クマ「…………」

クマ「クマは……自分がどうしてここに……この世界に居るのか」

クマ「全然覚えてないクマ」


影・クマ『…………』


クマ「探しても見つからないかもしれない……無駄かも知れない」

クマ「でも、諦めたら、そこで終わってしまうクマ」

597: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:57:16 ID:BEpyLWFE


影・クマ『…………』


クマ「クマは……ここに居るクマ」

クマ「生きて、考えて、笑ったり、泣いたり、楽しかったり、悲しかったりしてるクマ!」

クマ「だから……上手く言えないけど……」

クマ「『探し続ける事』は、絶対無駄にならないと思うクマ!」


影・クマ『…………』


     ヒィイイイイイインッ!


比企谷「ペルソナ……か」

クマ「クマにもペルソナが……!?」

里中「りせちゃんみたく、探索型?」

りせ「ううん……そのペルソナ、凄い力を持ってる」

598: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:58:12 ID:BEpyLWFE

比企谷「という事は戦闘型か……」

花村「良かったじゃねーか、クマ」

クマ「クマ! これでクマも役に立てるクマ!」

雪ノ下「ペラペラのままでも元気ね……クマくん」

比企谷「じゃ……そろそろ元の世界に戻るか」


―――――――――――


商店街 マル久豆腐店


りせ「ここでいいよ」

比企谷「……そうか」

599: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/06(金) 23:58:55 ID:BEpyLWFE

りせ「じゃ……」

比企谷「昨日」

りせ「え?」

比企谷「昨日……悪かったな」

りせ「何の事……あ」

りせ「ううん。 世間からしたら比企谷先輩の言う通りだと思うし」

りせ「あたしの【シャドウ】が言ってた事も、子供っぽい内容で」

りせ「ちょっと恥ずかしい……」///

比企谷「だとしても、だ」

比企谷「昨日は言いすぎた。 謝る」

りせ「はいはい……ていうか、そんな素直な比企谷先輩、気持ち悪い」

比企谷「……やっぱ止めときゃ良かった」

りせ「あはは!」

600: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:00:31 ID:t59Av/ws



     久慈川りせの失踪事件は、こうして幕を閉じた。

     りせの祖母が捜索願いを出すかどうか迷っていたところに

     本人が帰ってきた為、今回は警察に通報すらされていない。

     もっとも相当怒られた様だが。



     肝心の犯人像だが……俺が見送った後、買い物に出かけ

     トラックの影から何者かに羽交い絞めにされた様なのだが……

     一瞬で気を失ったので顔などは見ていない、との事だった。

     力や体格から、犯人は男だと思うと彼女は言っている。



601: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:01:30 ID:t59Av/ws



     ほんの少しだが……犯人に近づけたと

     この時の俺は思った。



602: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:02:16 ID:t59Av/ws


―――――――――――


数日後の夜中

足立宅


     サアアアア……

比企谷「今日で3日目連続雨……霧になってるな」

比企谷(だが、久慈川りせは助けた)

比企谷(これまでの法則通りなら、【マヨナカテレビ】には何も映らないはず)

比企谷(…………)

     ……カチッ(午前0時)

比企谷(…………)

比企谷(…………)

603: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:03:00 ID:t59Av/ws

比企谷(……よし)

比企谷(テレビは何も映さない)

比企谷(この瞬間が一番安心するな)

比企谷(……もう寝よう)


―――――――――――


     ピピピ……ピピピ……

比企谷「……ん?」

比企谷「誰だ? こんな朝から……」 ガチャ

比企谷「はい、もしもし?」

花村『比企谷! 大変だ!』

604: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:03:59 ID:t59Av/ws

比企谷「花村か……どうした?」

花村『とにかくテレビをつけろ! チャンネルはどこでもいい!』

比企谷「……?」 ピッ


テレビ『……ており、警察は一連の殺人事件との関連性を調べております』

テレビ『また、被害者の諸岡金四郎さんは、地元高校の教師をしており……』


比企谷「!!」

比企谷「……おい、花村。 これって……」

花村『ああ……遺体の状況が、今までと同じらしい』

比企谷「…………」

605: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/07(土) 00:04:44 ID:t59Av/ws



     どういう事なのか……寝起きの脳みそでは到底

     理解できなかった……。



611: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:36:53 ID:2w7kSf7w

警察署


堂島「…………」

足立「堂島さん、お待たせしました」

堂島「どうだった?」

足立「死亡推定時刻は、昨夜午後10時から日をまたいで午前2時の間だそうです」

堂島「……随分開きがあるな?」

足立「雨ざらしになっていたのと、死んでから移動させたのが原因で」

足立「はっきりした時間の特定は難しいそうです」

堂島「そうか……死因はどうだ?」

足立「背後から鈍器で頭部を殴られたのが、致命傷みたいですね」

堂島「! 本当か?」

足立「ええ。 これが鑑識の所見です」

612: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:37:46 ID:2w7kSf7w

堂島「…………」

堂島「……妙だな」

足立「何がですか?」

堂島「先の二件の殺しじゃ、死因の特定が出来なかった」

堂島「遺体の発見状況から他殺は間違いないが……」

堂島「今だにどうやって殺したのかが分からん」

足立「そうですよね」

堂島「だが今回は、はっきりとした死因が特定できた……どういう事だ?」

足立「確かに不可解ですね……」

堂島「ともかく……ガイ者の周辺を洗うぞ、足立」

足立「分かりました」

613: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:38:39 ID:2w7kSf7w


―――――――――――


数日後の放課後

ジュネス フードコート


花村「……どういう事なんだよ」

花村「モロキン、【マヨナカテレビ】に映ってねーのに……」

比企谷「現時点では全くわからん」

比企谷「模倣犯の可能性もあるしな……」

雪ノ下「確かにね……でも、一連の連続殺人犯の仕業だとしたら」

雪ノ下「何があったのかしら?」

天城「……もしかしたら」

里中「何か心当たりあるの? 雪子」

614: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:40:24 ID:2w7kSf7w

天城「うん……」

天城「犯人は、りせちゃんも入れると」

天城「連続4人も失敗してるんだよね?」

りせ「……あ」

りせ「テレビに入れても死なないから、業を煮やして」

りせ「自分の手で、って事?」

比企谷「なる程……ありえるな」

比企谷「だが、それだと生き残っている人間の方を」

比企谷「先に始末したいと考える方が自然じゃないか?」

里中「こ、怖い事、言わないでよ!」

615: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:41:20 ID:2w7kSf7w

比企谷「落ち着け、里中」

比企谷「俺が言いたいのは 里中たちが生きているという事は」

比企谷「天城の言う理由ではない可能性が高い、という事だ」

里中「ああ……そういう事」

花村「じゃあ……結局振り出しに戻るわけか」

花村「犯人の目的……それが全くわからねーと、手詰まりって事だな」

花村「はあ……」

     ズーン……

雪ノ下「で? どうするの?」

花村「は?」

雪ノ下「わからないから、と言って諦めるの?」

616: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:43:11 ID:2w7kSf7w

花村「!」

花村「……いや」

花村「元々、警察じゃ手に負えないと思って始めた事だし」

花村「それに、クマとも約束したしな。 必ず犯人捕まえるって」

雪ノ下「だ、そうよ? ヒキガエルくん」

比企谷「さらっと悪口言うな」

比企谷「まあ……俺も花村と同意見だ。 降りるつもりはない」

雪ノ下「そう。 あなたと意見が合うのは釈然としないけど」

雪ノ下「私も拉致られた報いを受けさせたいしね」

比企谷「発想が怖えーぞ……」

里中「それじゃ、これからどうすんの?」

比企谷「俺としては、まず、クマに会って今回の一件」

比企谷「あの世界と関係があるのかどうか、聞いてみたいと思う」

617: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:44:18 ID:2w7kSf7w


―――――――――――


ジュネス 家電売り場


     ガヤ ガヤ

天城「……なんだか店員の人、多いね?」

りせ「妙にざわついてるけど……何かあったのかな?」

花村「ちょっくら聞いてみるわ」


花村「ちぃーす! 何かあったんですか?」

従業員「ああ、陽介くん」

従業員「熊田って人が来てるんだけど……君、知ってるかい?」

花村「はあ? 熊田?」

618: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:45:16 ID:2w7kSf7w

クマ「およよよよよよよよよよ……これがマッサージ椅子クマねー」

里中「おわぁ!? 何で居るの!?」

天城「て言うか……こっちに来れるんだ」

クマ「そりゃあ来れるクマよ」

クマ「今まではそういう発想が無かったって、だけクマ!」

りせ「それにしても……もう怪我とかはいいの?」

クマ「りせちゃんは優しいクマ~。 もう問題ないクマ!」

比企谷「マジっすか……」

クマ「あっ! そうそう。 さっき名前聞かれたから”クマだ”って言っといたクマ!」

花村「はは……クマだ……ね」


―――――――――――


619: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:46:48 ID:2w7kSf7w

ジュネス フードコート


クマ「だから誰も来てないクマ!」

比企谷「ここのところ、ずっと調子悪かっただろう?」

クマ「だとしても『誰かが入れられた事』くらいは、分かるクマ!」

比企谷「という事は……今回の事件」

比企谷「一連の犯行とは全く異質なモノ、という事か」

里中「あーもう……全くわかんない」

天城「いったい何が起こっているのかしら……」

クマ「う~……それにしてもこっちは暑いクマね~」

クマ「取ろ」

     コス コス


620: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:47:45 ID:2w7kSf7w

花村「ちょ!? おま、こんな所で がらんどう見せるとかねーから!」

花村「見てる子供、トラウマレベルだっての!」

クマ「はなすクマ、ヨースケ!」

クマ「クマ、もう空っぽじゃ無いクマ!」

     スポン!

クマ「ふう~……いい風~」


一同「」


花村「おまっ……おまっ……ええっ!?」

里中「な、中身が……!?」

雪ノ下「ありえない……ありえないわ、こんな事……」

比企谷「ど……どど、どういう事……何だよ……!?」

621: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:49:01 ID:2w7kSf7w

クマ「いやぁ~こっちの世界に興味深々で」

クマ「その為には、センセイ達みたいな格好の方が都合がいいと思ったから」

クマ「クマ、頑張って生やしたクマ!」

天城「……生やしたいからって、生えるものなの?」

花村「俺らの常識は通じねえとは思ってたけど……」

花村「人間生やしたってのかよ……マジありえねえ」

雪ノ下「全くもってその通りよ。 常識はずれもいいところ」

雪ノ下「というか圏外よ、圏外。 信じられない、ありえない、おかしいし理解できない」

比企谷「落ち着け、雪ノ下」

クマ「ところで~、何か着るもの持ってないクマ?」

クマ「クマ、生まれたままの姿クマよ~」

622: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:50:17 ID:2w7kSf7w

天城「ちょ!?」///

里中「こ、こんなところで全開とか、絶対ダメだから!」///

雪ノ下「服売り場に急ぐわよ!」///

クマ「およ!? ひ、引っ張ると、ちょっと痛いクマ~!!」

     ドドドドドドド……

花村「…………」

比企谷「…………」

りせ「…………」

りせ「な、なんか……賑やかだね!」

比企谷「……まあその内慣れると思う」

りせ「あたしは楽しくていいと思うけど?」

花村「りせちーがそう言ってくれるなら、問題は無さそうだな」

623: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:51:09 ID:2w7kSf7w

??「……ちょっとすみません」

比企谷「……?」

??「そちらの……久慈川りせさんにお話があるのですが」

りせ「あたしに?」

??「はい。 僕の名前は白鐘直斗と言います」

比企谷「……!」

花村「……!」

りせ「それで? いったい何の用かしら?」

白鐘「単刀直入にいいます」

白鐘「ここ最近……おかしな事は無かったですか?」

624: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:52:24 ID:2w7kSf7w

りせ「……」 チラ

比企谷「…………」

りせ「……いいえ。 特にないけど?」

白鐘「…………」

白鐘「そうですか」

白鐘「あなたは有名人でもあります。 くれぐれも身の回りにはお気を付けて」

白鐘「では……」

     テク テク テク…

花村「……比企谷、今のって」

比企谷「ああ……たぶん雪ノ下を訪ねた『白無垢直江』だろうよ」

花村「白鐘直斗っていうのか……何者なんだろうな」

比企谷「わからん……が」

りせ「が?」

比企谷「敵じゃないかもしれないな」

625: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:53:17 ID:2w7kSf7w

りせ「じゃあ……本当の事、言うべきだった?」

比企谷「いや、あれはあれでいい」

比企谷「何者かわからないし、あくまで敵じゃないが『味方』であるかは微妙だしな」

花村「ま、あの世界の話は信じてくれないか……」

比企谷「そういう事だ」

りせ「それはともかく比企谷先輩、これからどうするの?」

比企谷「警察の立場なら、被害者の周辺を調べるところだな」

花村「聞き込みでもするか?」

比企谷「やりたいところだが、今目立つのはちょっとな……」

比企谷「例の……足立さんの上司に俺は目をつけられているみたいなんだ」

花村「うげ……あの無精ヒゲの怖い刑事さんか。 厄介だな」

626: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:54:31 ID:2w7kSf7w

里中「お待たせー」

花村「おう、里中。 ご苦労さん」

比企谷「……何で胸に赤いバラつけてるんだ、クマ」

クマ「ふぁっしょんクマ!」

比企谷「…………」

雪ノ下「そのくらいは許容しなさい。 いろいろ大変だったんだから」

天城「なんか……目に映るもの全部珍しいみたいでね」

天城「あれこれ質問攻めにあって……」

里中「ランジェリー売り場から、なかなか離れ様としないし……」

比企谷「……どうやら、しばらく『教育』が必要みたいだな」

クマ「クマ?」

     ハハハ……

627: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:55:24 ID:2w7kSf7w

白鐘「…………」

白鐘(あれは……この前、行方不明になった)

白鐘(雪ノ下雪乃……)

白鐘(そして里中千枝に天城雪子……か)

白鐘(…………)

白鐘(明らかに不自然な集まりだ)

白鐘(今回の殺人事件に関わりがあるのかは不明だけど……)

白鐘(これまでの件には関係している可能性が高い)

白鐘(少なくとも、何かを隠している)

白鐘(…………)

     テク テク テク…

628: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:56:15 ID:2w7kSf7w

翌日

教室


     ガヤ ガヤ

花村「今日からだっけ? 新しい担任が来るの」

里中「うん。 そう聞いてるじゃん?」

天城「誰なんだろうね?」

比企谷「モロキン以上の人材はなかなか居ないだろ」

雪ノ下「それもそうね」

     ガラッ

??「みっなさ~ん♥」

一同「!!?」

??「今日からぁ、亡くなられた諸岡先生に代わりまして」

??「このクラスのぉ担任になったぁ、柏木典子でぇす♥ んふっ♥」

629: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:57:06 ID:2w7kSf7w

比企谷「」

雪ノ下「」

花村「うげぇ……モロキンから柏木って、どんな強烈コンボだよ……」

比企谷(平塚に勝るとも劣らねえな……)


―――――――――――


放課後

屋上


花村「はあ……疲れた」

雪ノ下「あの先生、いちいち鬱陶しいわ」

比企谷「反論できないな」

630: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:58:38 ID:2w7kSf7w

天城「そういえば、もうすぐ期末試験だね」

里中「うひゃあ……すっかり忘れてたぁ」

花村「事件にかかりっきりで、試験勉強なんてまるっきりやってねえ……」

花村「比企谷はどうだ?」

比企谷「俺はそれなりに」

花村「マジかよ……良かったら勉強教えてくれねえか?」

比企谷「いいだろう」

比企谷「愛屋の肉丼で手を打つ」

花村「ぐ……ちゃっかりしやがって。 まあいい、頼むわ」

里中「ね、ね。 雪子、頼める?」

天城「うん。 いいよ、千枝」

花村「な!? 天城、俺も頼む!」

631: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 17:59:28 ID:2w7kSf7w

里中「だーめ、花村」

里中「あんた比企谷くんと契約したんでしょ?」

花村「そ、そりゃそうだけど……」

雪ノ下「…………」

比企谷「……雪ノ下はしてるのか? 試験勉強」

雪ノ下「! な、何を……してるに決まってるじゃない、比企谷くん」

里中「へえ! じゃあさ、雪ノ下さんも一緒にどう?」

雪ノ下「え……わ、私は……」

天城「迷惑なら、はっきりそう言ってね?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ううん。 そんな事ないわ」

632: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:01:09 ID:2w7kSf7w

里中「よし! 決まり!」

里中「ぬふふ~優秀な講師が二人も来てくれるとは、ツイてるじゃん!」

花村「ぬぐぐ……比企谷!」

花村「肉丼の分、しっかり働いてもらうからな!」

比企谷「もちろんだ」

比企谷「もらった報酬分の働きはしてみせるとも」

花村「その言葉、忘れんなよ!」

比企谷「…………」

比企谷「話を変えるが、クマの奴はどうしてる?」

花村「ああ、あいつならとりあえず俺ん家で面倒見てる」

花村「もちろん時々だがな。 大抵あっちの世界に帰っているし……」

花村「せっかくなんで、着ぐるみバージョンでジュネスでバイトさせてる」

比企谷「なる程……いい社会勉強させてるみたいだな」

633: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:01:54 ID:2w7kSf7w


―――――――――――


下校時

八十神高校 校門前


     ガヤ ガヤ

花村「はあ……気が重いなぁ」

比企谷「今からそんなでどうする」

花村「わかってる……わかってるけど」

花村「何が悲しくて、これからお前と二人っきりで勉強せにゃならんのか、と思うとなぁ……」

比企谷「止めろ……なんか気持ち悪くなってきた」

雪ノ下(……こういうのが好きな人、居たわよね)

634: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:02:48 ID:2w7kSf7w


??「雪子!」


天城「え?」

花村「……?」

雪ノ下「……誰?」

里中「さあ?」

     ガシッ!

??「さあ、僕と一緒に行こう、雪子!」

天城「ちょ……!? やだ!」

     バシッ!

??「うわっ!」

??「な、何するんだよ!?」

635: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:03:39 ID:2w7kSf7w

里中「それこっちのセリフ!」

里中「だいたいあんた誰なのよ!?」

比企谷「…………」

比企谷「……あ、思い出した」

比企谷「俺の転校初日、天城に声かけてきた痛い奴か」

??「なっ……」

里中「あー ……居たね、そんな奴」

雪ノ下「という事は……知り合いでも何でもないって事なの?」

天城「……ええと」

天城「ごめん。 誰だっけ?」

??「っ!?」

636: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:04:50 ID:2w7kSf7w

比企谷(うわぁ……)

里中(雪子、まったく覚えてないのね……)

花村(こりゃ本気で痛い奴だな……)

雪ノ下(逆に哀れになってきた)

りせ(なんだか知らないけど、こういう人多いよねー)


??「く……くそっ!」

??「お、お前ら! 覚えてろよっ!」

     タッ タッ タッ…


天城「…………」

天城「なんなの? あれ?」

比企谷「ま……暑くなってるし、ああいう奴も出てくるだろ」

637: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:05:59 ID:2w7kSf7w


―――――――――――


期末試験最終日の放課後

ジュネス フードコート


花村「は~……やっと試験、終わった」

里中「雪子、どうだった?」

天城「まあまあかな?」

里中「そっかぁ……あたしは理科と国語がヤバすぎ」

花村「俺は英語と国語がやべえ……」

りせ「先輩たちも大変みたいですね」

比企谷「久慈川はどうだった?」

りせ「……英語なんて必要ないもん。 通訳雇うし」

638: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:06:51 ID:2w7kSf7w

りせ「比企谷先輩はどうだったんですか?」

比企谷「簡単すぎてあくびが出た」

花村「俺もそんなセリフを言ってみてぇ……」

比企谷「ヤマは当たってたし、どうして出来なかったんだよ」

花村「そ、それは……まあ……」

花村「ゆ、雪ノ下さんはどうだった?」

雪ノ下「簡単に出来たけど?」

花村「……な、なんて言うか、頭の出来が違うのかな……」

里中「それ言ったら惨めなだけじゃん……」

天城「つ、次、頑張ろう? 千枝、花村くん」

639: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:08:07 ID:2w7kSf7w

里中「もうすぐ夏休みかぁ~」

花村「今年は何して遊ぶかな?」

クマ「なになに? 遊ぶって何で遊ぶクマ?」

花村「おわっ! いきなり出てくんなよ、クマ吉!」

クマ「クマは~是非ともストリッ」

     バキッ!

里中「…………」

クマ「な、何でもないクマ……イタタ」

花村「まあ? このメンツなら、フツーに合コンとかじゃね?」

里中「いきなり何言ってんのよ花村」

天城(合コンって何だろう?)

雪ノ下「冗談にしても笑えないわよ、●●村くん」

640: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:09:00 ID:2w7kSf7w

花村「何でだよ……比企谷はどうするつもりだ?」

比企谷「健全にゲームでもやって過ごすわ」

花村「どこが健全だよ!?」

雪ノ下「極めて不健全ね」

里中「太陽の下には出ようよ……」

天城「普通は読書とか言わない?」

りせ「らしいと言えば、らしいけどね」

クマ「センセイ~みんなと遊ぶクマよ~」

比企谷「……何で俺のやりたい事、非難されてるんだよ」

比企谷「別にいいだろ」

花村「はは……ま、お前はそういう奴だよな」

641: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:10:05 ID:2w7kSf7w

花村「けど」

花村「そんなだから、モロキンに『腐ったミカン』とか言われるんだぞ?」

比企谷「ほっとけ」

里中「…………」

里中「モロキン、か……」

里中「あたし……苦手だったなー」

天城「私も……」

比企谷「初対面からムカつく奴だと思ったな」

雪ノ下「小物臭が酷い人物だったわ」

花村「好きだった奴なんて多分いねーよ」

花村「けど……あんな死に方、ねーよな」

642: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:10:58 ID:2w7kSf7w

里中「うん……」

天城「少なくとも……死んでいい人じゃない」

比企谷「何かしら恨みは買ってそうだけどな」

雪ノ下「比企谷くん……死人に鞭打たない」

花村「犯人。 絶対俺らで捕まえようぜ!」

りせ「うん! あたしも頑張るね!」

クマ「クマ!」

     アハハハ



??「その必要は、もう無いですよ」



比企谷「!?」

643: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:13:26 ID:2w7kSf7w

比企谷「白鐘直斗……」

花村「……おい、必要ないってどういう意味だよ?」

白鐘「そのままの意味です」

白鐘「警察は犯人の目星を付けた様ですので」

一同「!」

白鐘「ですから、遊び半分で警察の真似事をしなくてもいいんですよ」

比企谷「…………」

花村「こっちは大事な人が殺されてんだ。 遊びなんかじゃねえよ」

白鐘「……関わった事は否定しないんですね」

花村「……!」

644: 以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/14(土) 18:14:55 ID:2w7kSf7w

りせ「ちょっと! 遊び遊び言ってるけど」

りせ「あんたこそ探偵気取りで、遊び半分でやってんじゃないの!?」

白鐘「…………」

白鐘「僕にそのつもりはありませんが……」

白鐘「みなさんから見たら、そう見えるのかもしれませんね」

比企谷「…………」

比企谷「で? お前は探偵なのか?」

白鐘「……世間では『少年探偵』などと呼ばれています」

白鐘「警察に助力を依頼されましたが、どうやらそれも終わりみたいです」

白鐘「いつもの事ですが……」

白鐘「必要な時にしか呼ばれないのは、時々虚しく感じてますよ」

白鐘「もう慣れましたけどね」

比企谷「…………」

白鐘「しかし――」