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放課後

総武高校 奉仕部部室


     コン コン ガラッ

川崎「よう、由比ヶ浜」

葉山「やあ」

由比ヶ浜「あ、二人共。 わざわざごめんね?」

葉山「別にいいよ。 それで、ヒキタニ君の事なんだけど……」

由比ヶ浜「うん」

引用元: 比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目 

 

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:32:24 ID:DloooeSQ

葉山「僕としては、いつも通り、という印象の中に」

葉山「どことなく壁を感じたかな?」

葉山「まあ……久しぶりに会ったから」

葉山「いつもの彼を そう思っただけかもしれないけどね」

川崎「あたしはどうにもねぇ……」

川崎「なーんか昔の自分を見ているみたいでイライラしちゃったよ」

由比ヶ浜「昔の……?」

川崎「誰かに頼るのが、イヤでイヤでしょうがなかった時の、ね……」

由比ヶ浜「…………」

川崎「……心配かい?」

由比ヶ浜「え?」

川崎「そんなに気になるのなら、スキーに行けば良かったのに」

由比ヶ浜「……そうしたかったんだけどね」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:33:31 ID:DloooeSQ

由比ヶ浜「私のお父さんと、お母さんに」

由比ヶ浜「もう心配かけたくなくて……」

葉山「……なるほど」

川崎「……そういう事か。 悪かったね、余計な事を言って」

由比ヶ浜「ううん……」

由比ヶ浜「二人共ありがとう」

由比ヶ浜「向こうには、ゆきのんも花村くん達も居るし」

由比ヶ浜「何かあったら連絡くれると思うから……」

葉山「ああ……僕に何か出来る事があれば、遠慮なく言ってくれ」

葉山「じゃ、また明日」

川崎「あたしも出来るだけやってやるよ」

川崎「またな」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:34:33 ID:DloooeSQ

由比ヶ浜「うん。 本当にありがとう」

由比ヶ浜「またね!」

     ガララッ…… パタン

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜(やっぱり……何かおかしいって思ってるんだね、ゆきのん)

由比ヶ浜(どうしたんだろう……ヒッキー)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(でも……しばらくは我慢しないと)

由比ヶ浜(さいちゃんとかに勉強教えてもらっている身だし……)

由比ヶ浜(入院して遅れた分を早く取り戻さないと)

由比ヶ浜(…………)

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:35:35 ID:DloooeSQ


―――――――――――


夕方

ジュネス八十稲羽店 フードコート


花村「ったく、あいつら! 人の気も知らねーで!」

里中「そう言う噂、立てられる身にもなってみろじゃん!」

天城「…………」

雪ノ下「……1年生の方はどうだった?」

りせ「だいたい同じ……ううん、ある意味もっと酷いかも」

白鐘「僕のクラスは、なぜか巽くんが一括してくれて表面上は静かになりました」

雪ノ下「そう……」

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:36:32 ID:DloooeSQ

比企谷「……まあ、気にするな」

比企谷「こうなる可能性は予測していた」

比企谷「俺は気にしていない」


一同「…………」


里中「そうは言うけどさ」

天城「気持ちは良くないよ……」

花村「ダチが悪く言われてんだぞ? 気分いい訳無いだろ、比企谷」

比企谷「人の噂も75日だ」

比企谷「もっとも……その頃に俺は、ここから居なくなるけどな」


一同「…………」


13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:37:45 ID:DloooeSQ

りせ「……比企谷先輩」

りせ「その言い方は良くないと思う」

比企谷「事実は事実だろ」

白鐘「その通りです。 けど……」

白鐘「ここで……八十稲羽で過ごした事を無駄だと言ってる様に聞こえます」

比企谷「……そんなつもりじゃなかったが」

比企谷「悪かった。 謝る」

白鐘「……いえ」

比企谷「さて、俺はそろそろ帰る」


一同「!?」


14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:38:44 ID:DloooeSQ

花村「おいおい……せっかく人が心配して集まってんのに」

比企谷「今のところ、有効な打開策は見いだせない」

比企谷「正直……俺と居るところを目撃されると、お前らも噂に巻き込まれるぞ?」


一同「…………」


比企谷「今は様子を見るしかない」

比企谷「それでいいだろ?」


一同「…………」


比企谷「……じゃあな」

     スタ スタ スタ…


一同「…………」


15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:39:45 ID:DloooeSQ

里中「……なーんか、ヤな感じ」

天城「確かに比企谷くんの言う通りだけど……」

りせ「そりゃ……悪い噂、立てられたくはない……でも……」

雪ノ下「…………」

白鐘「……比企谷先輩なりの気遣いでしょう」

花村「やっぱ……そうだよな」

白鐘「それに……」

花村「ん? それに?」

白鐘「…………」

白鐘「もしかしたら、ストックホルム症候群かもしれません」

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:40:46 ID:DloooeSQ

雪ノ下「!」

花村「ストックホルム?」

里中「何それ? 病気?」

雪ノ下「1973年にスエーデンの首都、ストックホルムで起こった」

雪ノ下「銀行強盗・立てこもり事件に起因する事から付けられた俗称よ」

天城「それで?」

白鐘「簡単に言いますと……」

白鐘「本来は被害者の立場なのに、長く犯人と接する事で情が移り」

白鐘「犯人と共に行動したり、犯人に有利な行為をしたりする事を指します」

りせ「……?」

りせ「それと比企谷先輩に何の関係があるの?」

白鐘「実は先日……」

白鐘「比企谷先輩が、警察署に入っていくのを目撃しました」

雪ノ下「…………」

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:42:06 ID:DloooeSQ

白鐘「僕は堂島さんを訪ねて、比企谷先輩が何をしているのか聞いたんです」

白鐘「彼は……足立さんの面会をしに来ていると答えてくれました」


一同「!?」


花村「いやいやいや! ちょっと待て!」

花村「何で比企谷が面会しに行くんだよ!?」

花村「フツー家族とかがやるんじゃねーのか!?」

白鐘「僕も詳しく聞いた訳じゃありませんので……」

白鐘「かと言って、比企谷先輩にもたずねにくいですし……」


一同「…………」


里中「……最近、忙しいってよく言ってたけど」

里中「これの事だったのかな?」

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:43:41 ID:DloooeSQ

天城「ストック…なんとかは置いておいても」

天城「比企谷くんにとって足立さんは親戚……本当の意味で身内なんだよね」

りせ「みんなと比べると、全然違う立場に居るんだ、比企谷先輩」

りせ「……あたし達、喜びすぎてたのかな?」

花村「そ、それは……どうなんだろうな……」

雪ノ下「…………」

白鐘「……皮肉ですね」

里中「え?」

白鐘「比企谷先輩に関しても彼の提案した対処策」

白鐘「『様子を見る事』くらいしか思いつけないなんて……」


一同「…………」


19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:44:32 ID:DloooeSQ

警察署 取調室


堂島「……今日はここまでだ」

足立「そうですか」

堂島「次は一応、3日後くらいを予定している」

堂島「まあ、ここのところ平和だし、余程の事が起こらない限り変更は無いだろう」

足立「…………」

堂島「…………」

堂島「……じゃあな、足立」

     ガタタ…

足立「…………」

足立「堂島さん」

堂島「ん?」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:45:21 ID:DloooeSQ

足立「くだらない事を聞くんですけど」

足立「『大人になる』って、どういう事なんでしょうねぇ……?」

堂島「…………」

堂島「……はっきり『こうだ』と言える答えを」

堂島「俺は持っていないな……」

足立「…………」

堂島「だが……」

足立「……?」

堂島「俺の場合は、菜々子が生まれた時かもしれん」

足立「…………」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:46:38 ID:DloooeSQ

堂島「人の親になって、家族が増えて、それを俺は養っている」

堂島「いや……養っていかなければならない」

堂島「そう自覚はしたな……」

足立「…………」

堂島「お前の求める答えでは無いかもしれんが」

堂島「そういう事ではないかと俺は思っている」

足立「…………」

足立「そうですか……」

堂島「……でもな」

足立「え?」

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:48:23 ID:DloooeSQ

堂島「それが出来ていない奴を 俺は総じて『子供』だと思ってしまう」

堂島「どれほど金を稼いでいようが、どれほど有名人であろうが」

堂島「どれほど俺より年上の人物でもな」

足立「…………」

堂島「……役に立ったか?」

足立「……少しは」

堂島「そうか」

堂島「じゃ、またな。 足立」

     パタン…

足立「…………」

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:49:39 ID:DloooeSQ


―――――――――――


数日後

足立宅


比企谷「…………」


テレビ『……続いて、天気予報です』

テレビ『ここしばらく晴天が続きましたが、明日以降は』

テレビ『大陸からの低気圧の為、全国的に暴風雪となる見込みです』

テレビ『山間部は特に注意が必要で』

テレビ『暖房器具や食料の備蓄等、あらかじめ備えた方が良いかもしれません』

テレビ『今回の低気圧は非常に勢力が強く』

テレビ『平野部の積雪もかなりのものになると予想され……』


比企谷「…………」

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:51:02 ID:DloooeSQ

ジュネス


花村「おう、比企谷」

クマ「センセイ、いらっしゃいませクマー!」

比企谷「よう」

比企谷「今日は盛況だな」

花村「ああ。 オヤジの言葉を借りると『防災特需』だとよ」

比企谷「不謹慎だが、的を射てるな」

花村「お前もか?」

比企谷「ああ。 使い捨てカイロとか、カートリッジ式ガスボンベとかをな」

花村「今日の売上トップツーだぜ、それ」

25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:52:53 ID:DloooeSQ

比企谷「まだあるか?」

花村「あるけど、お一人様1パックまでって制限がかけられてる」

比企谷「そうか……心もとないが、しょうがないな」

花村「不安なら八高(八十神高校)の体育館が緊急の避難所になるそうだから」

花村「そっちに行ったらどうだ?」

花村「天城屋って手もあるぜ?」

比企谷「……今の状況じゃ八高は無いな」

比企谷「天城屋も迷惑だろうし」

花村「……下手したら命に関わるんだ。 なりふり構うなよ」

花村「そうだ! 俺んちでもいいぜ! クマも来るし!」

比企谷「ケータイもある。 いざとなったら公的機関に助けてもらうさ。 じゃあな」

花村「お、おい、比企谷……」

花村「…………」

26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:54:26 ID:DloooeSQ


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帰り道


比企谷(食料品は何とかなったな)

比企谷(電気ガス水道が止まらなければ、どうとでもできる)

比企谷(乾電池の備蓄はあったし、懐中電灯も手回し充電だから問題ない)

比企谷(…………)

     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「…………」 ガチャ

比企谷「もしもし」

比企谷「! ……雪ノ下か」

比企谷「何の用だ?」

27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:55:34 ID:DloooeSQ

雪ノ下「ご挨拶ね、比企谷くん」

雪ノ下「いくらあなたでも自然災害には敵わないでしょう?」

雪ノ下「今の内に天城屋に来るといいわ」

雪ノ下「自家発電装置も備えてあるし食料の備蓄も申し分ない」

雪ノ下「あなた一人くらい大丈夫よ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……その事は今は置いておきなさい」

雪ノ下「宿泊料の事は気にしなくていい。 それが嫌ならツケにしておくから」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「部屋は私の部屋を使えばいい。 私は姉さんの部屋に行く」

雪ノ下「…………」

28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:56:20 ID:DloooeSQ

雪ノ下「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「わかったわ。 でも困ったら、いつでも訪ねてきて」

雪ノ下「じゃ……」

     ブッ… ツー ツー

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷(……ったく)

比企谷(花村も雪ノ下も心配しすぎだっての……)

比企谷(…………)

29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:57:25 ID:DloooeSQ

     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「……またか」 ガチャ

比企谷「はい、もしもし……堂島さん?」

比企谷「…………」

比企谷「……ああ、その事なら心配しないでください」

比企谷「備えはしましたので」

比企谷「…………」

比企谷「いえ、お気持ちだけで結構です」

比企谷「…………」

比企谷「はい、その時はお世話になります」

比企谷「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:58:28 ID:DloooeSQ

     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「……おいおい」


―――――――――――


比企谷「はあ……」

比企谷「…………」

比企谷(白鐘に小町……由比ヶ浜や戸塚)

比企谷(里中や天城、久慈川まで……)

比企谷(…………)

比企谷(俺……そんなに危なっかしいと思われているのか)

比企谷「はあ……」

31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:00:02 ID:DloooeSQ


―――――――――――


翌日


     ビュオオオオオオオオオッ…


テレビ『お昼のニュースです』

テレビ『今日の天気は全国的な荒れ模様となっており』

テレビ『交通機関に大きな乱れが起こっています』

比企谷「…………」

テレビ『首都圏の空港・港は、ほとんどが欠航し』

テレビ『高速道路も現在、通行見合わせが続いております』

テレビ『鉄道網は、新幹線が始発から運行を見合わせており……』

比企谷「…………」

32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:01:20 ID:DloooeSQ

     コン コン…

比企谷「……!?」

比企谷(…………)

比企谷(気のせい……だよな?)

比企谷(警報で学校は休校だと連絡があったし)

比企谷(わざわざこんな状況で来る奴なんて……)

     コン コン…

比企谷「……はーい」

比企谷「どちら様でしょうか?」

???「……私よ、比企谷くん」

比企谷「!?」

     ガチャ…

比企谷「雪ノ下……」

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:02:24 ID:DloooeSQ



     厚手のダウンジャケットにニット帽、それに耳あて

     ついでにゴーグルまでかけている雪ノ下がそこに居た。

     はっきり言えば、この前のスキーの格好を思い出す姿である。



     そして、スキーの時と決定的に違うのは

     背中に少し大きめのリュックを背負っていた事だ。

     知らない奴が見たら、どう見ても冬山登山に行く様にしか見えん。



34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:03:24 ID:DloooeSQ

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……念の為に聞くが」

比企谷「何をしに来た?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「元気なら……それでいい」

雪ノ下「これ、差し入れだから」

比企谷「リュックサイズかよ……」

雪ノ下「あら? 足りないとでも言うつもり?」

比企谷「そうは言ってないだ……ん?」

雪ノ下「……ふ……くっ……」

35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:04:25 ID:DloooeSQ

比企谷「どうした? 雪ノ下?」

雪ノ下「……何でもないわ。 ちょっと……手がかじかんでるだ…あ!」

     ドササッ!

比企谷「お、おい……」

雪ノ下「……っ……少し手を滑らせただけよ」

比企谷「…………」

比企谷「ともかく中に入れ、雪ノ下」

雪ノ下「平気よ」

比企谷「いいから! とにかく入れ!」

雪ノ下「あ……」

     パタン…


花村「…………」

36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:05:20 ID:DloooeSQ

花村(おいおい……えらいもん見ちまったぜ)

花村(にしても雪ノ下さんのあの荷物の量……どう見ても泊まり込むつもりだよな)

花村(…………)

花村(とうとう覚悟を決めたのか……って、待てよ?)

花村(そんな彼女を招き入れた比企谷は……)

花村(…………)

花村(……ふっ)

花村(しかたねぇ。 二人の静かな時間を邪魔できねぇよな)

37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:05:59 ID:DloooeSQ

花村「よし」

花村「帰るぞ、クマ」

クマ「ええ!? どうしてクマ!?」

花村「いいから帰んの!」

花村「ここまで来てなんだが、比企谷も大丈夫だって言ってたし」

花村「必要になったら、俺らに連絡するだろ」

クマ「で、でも……」

花村「すまねえな、付き合わせちまって」

花村「帰ったら、何か暖かいもん作って食わせてやるからよ」

花村「それで我慢してくれねぇか?」

クマ「…………」

38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:06:52 ID:DloooeSQ

クマ「しょうがないクマね。 ここはヨースケの顔を立ててやるクマ!」

花村「お前、どこでそんな……まあいいや」

花村「花村ワゴンはクールに去るぜ……」

クマ「何言ってるクマ?」

花村「ツッコミ入れんじゃねーよ! せっかくの気分が台無しだろーが!」///

クマ「ヨースケがわからないクマ……」

39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:07:44 ID:DloooeSQ

比企谷「雪ノ下、手を見せてみろ」

比企谷「ついでに足先もだ」

雪ノ下「…………」

     スッ スッ… シュルッ…

比企谷「……少し腫れてるな」

比企谷「だが、この程度ならしもやけレベルだ」

比企谷「ちょっと待ってろ」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「風呂場にぬるま湯を用意した」

比企谷「しばらくそれに手足を浸しておけ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「10分ぐらいしたら、温度の高いのに変えるからな」

40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:08:47 ID:DloooeSQ

比企谷「…………」 ピッ ピッ ピッ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「天城か?」

比企谷「ぶしつけだけどな、陽乃さん、近くに居ないか?」

比企谷「…………」

比企谷「そうか、居ないならいい」

比企谷「後で『荷物は届いた』とだけ、陽乃さんに伝えてくれ」

比企谷「それでわかると……は?」

比企谷「…………」

比企谷「『必要なものは全部入れた』……?」

比企谷「陽乃さんがそう言えと……ね」

41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:10:14 ID:DloooeSQ

比企谷「ともかく、頼んだぞ。 じゃあな……」

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

比企谷(……あの人、やっぱり絡んでるのかよ)

比企谷(嫌な予感しかしねぇな……)

―――――――――――

比企谷「どうだ? 雪ノ下」

雪ノ下「……平気よ」

比企谷「見せてみろ……」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「よし、お湯を変えるぞ」

42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:10:59 ID:DloooeSQ

     チャプン…

比企谷「これでよし……」

比企谷「今、温かいコーヒー入れてやる」

雪ノ下「…………」

―――――――――――

比企谷「ほら、コーヒー」

雪ノ下「……ありがとう」

雪ノ下「…………」 ズズッ…

比企谷「痛くない様なら、軽く揉んでおけ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「詳しいのね」

43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:11:47 ID:DloooeSQ

比企谷「……よく小町もなってたからな」

雪ノ下「そうだったの……」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……ところで、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「持ってきた荷物、中身は何だ?」

雪ノ下「食料品と水と乾電池……それに固形燃料よ」

雪ノ下「それがどうかしたの?」

比企谷「……陽乃さんは何か入れてないのか?」

雪ノ下「姉さん? なぜ、姉さんが出てくるの?」

比企谷「いや……陽乃さんに出かける事を伝えたのかと思って」

雪ノ下「……帰るつもりだったから言ってないわ」

44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:12:37 ID:DloooeSQ

比企谷「そうか……」

比企谷「まあそれはいい」

雪ノ下「…………」

比企谷「……俺は大丈夫だって言っただろう?」

比企谷「らしくないぞ、雪ノ下」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……まあ」

比企谷「ありがとう……な」///

雪ノ下「……え」

比企谷「もう少ししたら、本格的に体を温めるからな」

雪ノ下「…………」

45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:22:22 ID:DloooeSQ



―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…











46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:23:26 ID:DloooeSQ

テレビ『現在、各県に暴風雪波浪警報が勧告されており』

テレビ『気象庁の発表で、この状況は今日・明日いっぱい続く見込みで』

テレビ『各自治体は、可能なら避難所を利用するよう呼びかけています』


雪ノ下「…………」

比企谷「……どうだ? 手と足先は?」

雪ノ下「平気よ」

比企谷「正直に言っておけ。 こんなところで虚勢を張っても意味がない」

雪ノ下「……痒いわ」

比企谷「正常な反応だ。 けど、掻くなよ? 我慢しろ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「もうすぐ鍋焼きうどんができる」

比企谷「これ食って体を中から温めるんだ」

雪ノ下「…………」

47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:24:33 ID:DloooeSQ

雪ノ下「…………」


雪ノ下(……本当に何をやっているんだか)

雪ノ下(無事なのを確認したかった。 それだけなのに)

雪ノ下(逆に心配をかけてどうするのよ……)

雪ノ下(…………)


比企谷「……どうした、雪ノ下?」

比企谷「熱いうちに食わないと意味がない」

雪ノ下「! ……ご、ごめんなさい」

雪ノ下「いただきます」

―――――――――――

     カチャ カチャ…

比企谷「…………」

48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:25:37 ID:DloooeSQ

比企谷「こたつ、どうだ?」

雪ノ下「暖かいわ」

比企谷「テレビ、なんて言ってる?」

雪ノ下「ほとんど同じよ」

雪ノ下「それに首都圏の情報ばかりで、こっちの方は全く話題になっていない」

比企谷「……そうか」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……なあ、雪ノ下」

雪ノ下「……何かしら」

49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:26:45 ID:DloooeSQ

比企谷「これはな、決してやましい気持ちや下心とか、そういうのじゃなくて」

比企谷「外の吹雪は一向に弱まらないし、気温は氷点下で」

比企谷「冷静に雪ノ下の状況とかを考慮して、脳内シュミレーションの結果」

比企谷「最終的にこれが一番いいんじゃないか?という……その……」

比企谷「そう、一案として聞いて欲しい」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「よし」

比企谷「その、な……」///

雪ノ下「…………」

比企谷「きょ、今日……ここに泊まった方がいいんじゃないか?」///

雪ノ下「!」///

比企谷「だ、だから、一案だ! やましい気持ちはこれっぽっちもない!」///

雪ノ下「わ、わかっているからっ」///

50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:27:52 ID:DloooeSQ

比企谷「な、なら、いいが……」///

雪ノ下「…………」///

比企谷「…………」///

比企谷「お、お茶を入れてくる」///

雪ノ下「わ、わかったわ……」///

     スタ スタ スタ…

雪ノ下「……ふう」///

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「……あ」

雪ノ下「姉さんに連絡しておかないと……」 ピッ…

51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:28:59 ID:DloooeSQ

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

雪ノ下「……もしもし、姉さん?」

雪ノ下「その……」

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「さ、最初から、こうなる事を望んだのではなくて」///

雪ノ下「結果的にこうなってしまった、というか、いろいろ考えが足りなかった、というか……」///

雪ノ下「…………」///

雪ノ下「け、結論を言うわ……」///

雪ノ下「ひ、比企谷くんのところに、と、泊まりますっ……」///

雪ノ下「ご、ごめんな……え?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「リュックのサイドポケット?」

雪ノ下「…………」

52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:29:58 ID:DloooeSQ

雪ノ下「必要な物?……いったいどういう意味」

     ブッ… ツー ツー

雪ノ下「……切れた」

雪ノ下「……?」

     ゴソ ゴソ…

雪ノ下「」///

雪ノ下(あ、あの人っ! 何を考えてるのっ!?)///

雪ノ下(わ、私は、比企谷くんとそういう事をしたいわけじゃ……!)///

比企谷「雪ノ下?」

雪ノ下「!!!」///

雪ノ下「ひ、比企谷、くんっ……」///

53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:30:58 ID:DloooeSQ

雪ノ下「こ、これは、ち、違うのっ」///

比企谷「それはなんだ?」

雪ノ下「……え?」

比企谷「箱のサイズから推測すると……チョコかなんか?」

雪ノ下「…………」

比企谷「……違うのか?」

雪ノ下「チョ、チョコじゃない、わ……」

雪ノ下「でも、当たらずとも遠からず、と、言うところね」

比企谷「そうか……」

比企谷「ほら、お茶。 入ったぞ」

雪ノ下「あ、ありがとう……」


雪ノ下(よ、良かった……比企谷くんは、こういうのに疎いのね……)

54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:32:34 ID:DloooeSQ

比企谷(……やっぱり入れてやがったな、陽乃さん)

比企谷(こんな事もあろうかと、対処法を考えてて良かったぜ)



比企谷(秘技、しらばっくれ!!) ババーン!



比企谷(いつまでもあんたのマリオネットで いねぇからな……)

比企谷(ふふふふふふ……勝った)

55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:34:01 ID:DloooeSQ

雪ノ下「……あら?」

比企谷「?」

比企谷「どうした、雪ノ下?」

雪ノ下「ポケットの奥に……まだ何か……」

     ゴソ ゴソ…

雪ノ下「……何かしら? 軟膏(なんこう)みたいだけど……」

比企谷「! 見せてみろ」

雪ノ下「ええ……」

比企谷「…………」

比企谷「……しもやけに効く塗り薬だ」

雪ノ下「……え?」

比企谷(まったく。 一本取ったと思ったらこれだよ……)

雪ノ下「…………」

比企谷「雪ノ下、使っておけ。 これで痒みも止まると思う」

56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:34:49 ID:DloooeSQ



―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:35:47 ID:DloooeSQ

テレビ『引き続き、各地の暴風雪による被害状況をお伝えします』

テレビ『首都圏の交通網は完全に麻痺しており』

テレビ『帰省の足がほとんどない状況です』

テレビ『また、この大雪の被害で亡くなった方も5人となり……』


雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

     コン コン

比企谷「!?」

雪ノ下「……誰かしら?」

比企谷「わからん……ともかく、雪ノ下はここに居てくれ」

     スタ スタ スタ…

雪ノ下「…………」

58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:36:58 ID:DloooeSQ


―――――――――――


比企谷「大家だった。 雪下ろしを手伝ってくれだと」

雪ノ下「わかったわ」

比企谷「いや、雪ノ下はいい。 俺だけ出る」

雪ノ下「でも……」

比企谷「このアパートの住人総出だ。 俺一人というわけじゃない」

雪ノ下「…………」

比企谷「……雪ノ下はしもやけの事もある。 大人しくしていてくれ」

雪ノ下「……わかったわ」

比企谷「じゃ、行ってくる」

雪ノ下「…………」

59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:37:57 ID:DloooeSQ


―――――――――――


2時間後


比企谷「ううっ……さぶさぶさぶっ」

比企谷「重労働の割に、全然暖まらなかったな……」

比企谷「…………」

比企谷「……ん?」

雪ノ下「お帰りなさい」

比企谷「…………」

雪ノ下「今、けんちん汁、温め直すわ」

比企谷「……晩飯、作ってくれたのか」

60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:39:10 ID:DloooeSQ

雪ノ下「勘違いしないで」

雪ノ下「やる事なくて暇だったし……」

雪ノ下「あなたに貸しを作ったままなのも釈然としなかったから」

比企谷「……さいですか」

比企谷「つーか、手は大丈夫なのか?」

雪ノ下「お陰様でね」

比企谷「ならいい」

雪ノ下「比企谷くんこそ、しもやけは大丈夫?」

比企谷「男はなりにくいって俗説があってな」

比企谷「残念ながら、俺はその証明をしている一人だ」

雪ノ下「そう」 クスッ

61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:40:10 ID:DloooeSQ



―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:41:39 ID:DloooeSQ

比企谷「……さて」

比企谷「だいぶ夜も更けてきましたし、そろそろ寝るか」

雪ノ下「そ、そうね」

比企谷「しかしながら、大きな問題がひとつあります」

雪ノ下「……当ててみましょうか?」

雪ノ下「布団が一つしかない……とか」

比企谷「……プラス、俺の匂い付きです」

雪ノ下「その言い方、気持ち悪いから止めて」

比企谷「せっかくクイズ方式にして場を和ませようとしたのに……」

雪ノ下「事実は変えられないでしょう?」

63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:42:34 ID:DloooeSQ

比企谷「まあな」

比企谷「足立さんの使ってたものはすべて引き払った後だし……」

比企谷「だけど否応なく、雪ノ下さんには俺の布団を使っていただきます」

雪ノ下「丁寧な口調で言ってるけど最悪ね」

比企谷「我慢しろ……俺はこたつで寝るから」

雪ノ下「冗談はその腐った魚のような目だけにして」

雪ノ下「どう考えても押しかけて迷惑かけている私がこたつでしょ?」

比企谷「そんなに俺の匂いつきが嫌か」

雪ノ下「当たり前の事言わないでくれるかしら」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……まあいい」

比企谷「そこまで言うのなら、そうしてもらおう」

雪ノ下「…………」

64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:44:17 ID:DloooeSQ

比企谷「ちょっと待ってろ」

雪ノ下「……え?」

―――――――――――

     シュン シュン シュン…

雪ノ下「お湯を沸かしてどうするの?」

比企谷「湯たんぽ作ってるんだよ」

雪ノ下「!」

比企谷「おっと、勘違いするなよ?」

比企谷「どっちがどうなろうが、これは最初からやるつもりだったからな?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「手伝える事、あるかしら?」

比企谷「風呂場横のケースからバスタオルを2~3枚取ってきてくれ」

雪ノ下「わかったわ」

65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:45:21 ID:DloooeSQ

雪ノ下「これくらいでいいかしら?」

比企谷「おう」

雪ノ下「何に使うの?」

比企谷「熱湯を入れたペットボトルに巻きつける」

雪ノ下「なるほど……手製の湯たんぽ、というわけね」

比企谷「気をつけろよ、相当熱いからな」

雪ノ下「ええ」

―――――――――――

比企谷「……これでいい」

比企谷「こたつは片付けて、こたつ布団にくるまった方がいいだろ」

雪ノ下「そうね」

66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:46:24 ID:DloooeSQ

比企谷「下はタタミだが、ありったけの服を敷き詰めておいた」

比企谷「……正直、敷布団の代わりになるとは思えんがな」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……なあ、雪ノ下」

雪ノ下「何かしら?」

比企谷「…………」

比企谷「今日だけでいい」

比企谷「……いや、ただの一度だけでいい」

雪ノ下「…………」

比企谷「俺の言う通りにしてくれないか?」

67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:46:57 ID:DloooeSQ

雪ノ下「!」

雪ノ下「比企谷くん……」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……だったら」

比企谷「え?」

雪ノ下「私もわがままを言わせてもらえるかしら?」

比企谷「……何だよ?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「比企谷くんと、同じ部屋に居させて」

比企谷「…………」

比企谷「はあ!?」///

68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:47:37 ID:DloooeSQ



―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオッ…









69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:48:38 ID:DloooeSQ

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」


比企谷(……雪ノ下の奴、何を考えているんだ?)

比企谷(まあ……布団に入ってくれただけ良しとすべきか)

比企谷(…………)

比企谷(……くそっ、落ち着かねぇし、吹雪うるさいし、眠れねぇ……)


雪ノ下(…………)

雪ノ下(よくよく考えたら……)

雪ノ下(すごい事言ったのよね……私)///

雪ノ下(…………)

雪ノ下(でも……)

雪ノ下(…………)

70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:49:20 ID:DloooeSQ

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「ん?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ごめんなさい」

比企谷「…………」

比企谷「もう気にしてない」

雪ノ下「違う。 今回の事じゃない」

比企谷「……は?」

71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:50:31 ID:DloooeSQ



雪ノ下「あなたを見送りに行かなくて……ごめんなさい」



比企谷「!」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「……それも もう気にしていない」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

雪ノ下「……そう」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「……なあ」

雪ノ下「何かしら?」

72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:51:43 ID:DloooeSQ

比企谷「理由……聞いてもいいか?」

雪ノ下「!」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「バカバカしい理由よ」

雪ノ下「あきれるくらいにね……」

比企谷「それでもいい」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「私ね……比企谷くんに」

雪ノ下「『さよなら』を言いたくなかった」

比企谷「……ほう。 俺は『しゃべる玩具』なのにか?」

雪ノ下「……ええ」

73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:52:49 ID:DloooeSQ

雪ノ下「奉仕部に来た頃のあなたは、見た目からして近寄りたくない人物だったわ」

比企谷「……言っとくが、平塚に無理矢理入部させられたんだからな?」

雪ノ下「そうね」 クスッ

雪ノ下「そして、話をしてみて更に印象が悪くなった」

比企谷「……悪かったな」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「でも……由比ヶ浜さんも入部して、三人でいろいろやって」

雪ノ下「あなたとの掛け合いが……いつの間にか当たり前になっていた」

比企谷「…………」

雪ノ下「比企谷くんが私をどう思っているのか、わからないけど」

雪ノ下「一定の距離を取ってくれるあなたの存在が……心地よかった」

比企谷「…………」

74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:53:55 ID:DloooeSQ

雪ノ下「……なのに」

雪ノ下「突然、比企谷くんは転校する事になって」

雪ノ下「私は動揺した……」

比企谷「…………」

雪ノ下「一年後に帰ってくる。 これは一時的なもので、あなたは消えるわけじゃない」

雪ノ下「そうだとわかってても……比企谷くんに別れを告げたら」

雪ノ下「もう永遠に会えない気がして……嫌だった」

比企谷「…………」

雪ノ下「本当に子供みたいな、くだらない理由……」

比企谷「…………」

比企谷「……そうだな。 その通りだ」

雪ノ下「…………」

75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:54:51 ID:DloooeSQ

比企谷「けど」

雪ノ下「…………」

比企谷「話してくれて、俺はありがたかった」

比企谷「いろいろと根に持っていたし」

雪ノ下「……ごめんなさい」

比企谷「もういい」

比企谷「正直言うと、あの時……由比ヶ浜が死んでしまったと思ったあの夜」

比企谷「雪ノ下は充分、俺に貸しを返してくれたさ……」

雪ノ下「……!」

     ガバッ!

雪ノ下「違う! 私は……私は!」

雪ノ下「そんなつもりで、ああいう事をしたわけじゃないっ!」

76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:55:49 ID:DloooeSQ

     ムクリ…

比企谷「……落ち着け、雪ノ下」

比企谷「近所迷惑だぞ?」

雪ノ下「……っ」

比企谷「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「どうしたのよ……比企谷くん」

雪ノ下「いったい、あなたに何があったの?」

雪ノ下「なぜ、そんなに壁を作ろうとするの?」

比企谷「……俺はいつも通りだろ」

比企谷「らしくないのは、雪ノ下の方だ」

77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:56:46 ID:DloooeSQ

雪ノ下「私は――」







     ……ピウィ~……







雪ノ下「!?」

比企谷「!?」

78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:57:43 ID:DloooeSQ



     テレビに電源は入っていなかった。

     理屈を言えば、画像が映るわけがない。

     ただ一つの理由を除いて……



     そう……これは【マヨナカテレビ】

     ここ、八十稲羽で起きた殺人事件において重要な役割を果たし

     雨の日の夜0時に見られる、謎の怪現象……

     もっとも、今回は雨ではなく雪だが。



79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:58:36 ID:DloooeSQ






     そして……いつも通り、というか、法則通り

     不鮮明だが、人物像を映し出していく……






80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:59:55 ID:DloooeSQ

雪ノ下「!!!!!!」

比企谷「…………」

雪ノ下「……う…そ…」

比企谷「…………」


     ブツンッ!


比企谷「…………」

雪ノ下「……どうして、こんな」

比企谷「アメノサギリ?が言ってただろ?」

比企谷「【マヨナカテレビ】に映るのは、大衆が『何か起これ』と望んだ人物になるって」

雪ノ下「……っ!」

81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:01:24 ID:DloooeSQ

雪ノ下「……なぜ、そんなに冷静で居られるの?」

雪ノ下「どうして、そんなに他人事に言えるの!?」

雪ノ下「どうしてっ……!」

比企谷「…………」

雪ノ下「わた、し……もう……あなたが……ぐっ……わからないっ」

雪ノ下「怖くないの……?……ひぐっ……恐ろしくないの?……ぐすっ……」

雪ノ下「わ、たし……うぐっ……怖いっ……ぐっ……くっ……ひっく……」

比企谷「…………」

     ギュッ……

比企谷「……心配するな」

比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」

比企谷「だから、大丈夫だ。 安心しろ」

比企谷「雪ノ下」

82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:02:37 ID:DloooeSQ



     私は……泣いていた。

     怒りと悲しみと……得体の知れない恐怖感、全てが混ざり合った様な

     形容しがたい感情から……



     【マヨナカテレビ】は、比企谷くんを映していた。

     それは……他のみんな、つまり大勢の人が、比企谷くんに『何か起これ』と

     奇異の目で彼を見ている、という事。



     比企谷くんは……泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。

     ちょうど、あの時の私がそうした様に。 でも……

     彼は、体温を感じるほど私の近くに居るのに



83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:03:54 ID:DloooeSQ








     比企谷くんは、どこか……遠くに居る様にしか思えなかった。








105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:19:35 ID:KEz185Qo


―――――――――――


????


マーガレット「ようこそ、ベルベット・ルームへ」

マーガレット「申し訳ございません。 ただいま、我が主イゴールは所用で……」

マーガレット「あら? お客様は?」

マーガレット「…………」

マーガレット「……そう」

マーガレット「この前と同じく、心当たりは無いのね」

マーガレット「…………」

マーガレット「ふふっ……そうなのかしら?」

マーガレット「なら……」

106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:20:34 ID:KEz185Qo

マーガレット「少し、ペルソナについての逸話でも話しましょうか?」

マーガレット「…………」

マーガレット「イザナギ? いいえ、違うわ」

マーガレット「ジャアクフロストというペルソナの事よ」

マーガレット「…………」

マーガレット「昔……1000年を一人で過ごした異形の者が居たわ」

マーガレット「それがジャアクフロスト」

マーガレット「彼はある日……ある望みを叶えたくて」

マーガレット「険しい道を乗り越え、辛い思いをしながらも」

マーガレット「神様の元へとたどり着いた」

マーガレット「そこでジャアクフロストは、神様にお願いする」

107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:22:21 ID:KEz185Qo



マーガレット「『僕に友達をください』と……」



マーガレット「…………」

マーガレット「神様は、その願いを聞き入れ」

マーガレット「一日だけジャアクフロストに友達を与えた」

マーガレット「ジャアクフロストは喜び、友達と一緒になって野を駆け回り」

マーガレット「いろんな事をして楽しい思い出を作った」

マーガレット「…………」

マーガレット「……でも」

マーガレット「約束の一日が終わると、友達は居なくなり」

マーガレット「数日経つと、彼は……激しく後悔した」

108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:23:19 ID:KEz185Qo

マーガレット「どうして自分は友達を望んだのだろう?」

マーガレット「こんなに寂しくて悲しくなるのなら」

マーガレット「最初から友達なんて望まなければ良かった……と」

マーガレット「…………」

マーガレット「ん? どうしてそんな話をするのか?ですって?」

マーガレット「ふふふ……どうしてでしょうね」

マーガレット「今のお客様をみたら、なぜか話したくなったの」

マーガレット「ただ……それだけよ」

マーガレット「…………」

マーガレット「あら? そろそろお目覚めの時刻見たいね」

マーガレット「また会えるか分かりませんが、いつでもお客様の御来房を歓迎いたします」

マーガレット「ふふふ……」

109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:24:31 ID:KEz185Qo


―――――――――――


数日後

天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下(……あれから、数日が過ぎた)

雪ノ下(大吹雪の影響で、今週いっぱい学校は休みとなり)

雪ノ下(みんなと落ち着いて話す事が出来ていない)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(【マヨナカテレビ】の事……誰も気がついていないのかしら)

雪ノ下(…………)

110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:25:39 ID:KEz185Qo

雪ノ下(そもそも、私も何故ここに居る天城さんにすら話さないのだろう?)

雪ノ下(きっと、みんな力になってくれるはずなのに……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(……でも)

雪ノ下(今の比企谷くんに何をしても)

雪ノ下(無駄な気がする)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうすれば……)

雪ノ下(…………)

111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:26:29 ID:KEz185Qo


―――――――――――


足立宅


比企谷「ふう……」

比企谷「雪下ろし、面倒くせぇ……」

比企谷「…………」

比企谷「……腹減ったな」

比企谷「何か作るか」

比企谷「…………」

比企谷「カップラーメンにするか」

112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:27:17 ID:KEz185Qo


―――――――――――


     ズルズル……

比企谷「ふう……」

比企谷「ごちそうさま……っと」

比企谷「…………」

比企谷(……この後、どうすっかな)

比企谷(…………)

比企谷(ゲームでもするか?)

比企谷(…………)

比企谷(気分じゃないな……)

比企谷(…………)

比企谷(風呂でも沸かすか……)

比企谷(…………)

113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:27:57 ID:KEz185Qo

比企谷(らしくないよな……俺も雪ノ下も)

比企谷(あの日は結局、何事もなく次の日の朝を迎え)

比企谷(昼に吹雪が収まったから、雪ノ下はそのまま帰っていった)

比企谷(…………)

比企谷(お互い、気まずい時間を過ごした気がする)

比企谷(食事以外で、口を開く事はなかったからな……)

比企谷(…………)

比企谷(……でもまあ)

比企谷(結果オーライってところか)

比企谷(…………)

114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:29:01 ID:KEz185Qo


―――――――――――


更に数日後の昼休み

教室


     ガヤガヤ…… ガヤガヤ……

里中「……学校の雰囲気、変わんないね」

天城「嫌な感じ……」

天城「比企谷くんも休み時間になったら、どこかに行ってしまうし……」

雪ノ下「…………」

花村「…………」

花村「……?」

花村「えーっと……雪ノ下さん」

雪ノ下「何かしら?」

115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:30:01 ID:KEz185Qo

花村「気のせいなら謝るけど……比企谷と何かあった?」

雪ノ下「……無いわ」

花村「……本当に?」

雪ノ下「くどいわね。 無いものは無い、としか言えないわ」

花村「そ、そう……」

花村「なら、いいんだけど……」

里中「…………」

天城「…………」


里中(どう見ても何かあったっぽいじゃん)

天城(あの大雪の日から、何となく沈んでる様に思ったけど)

天城(私にかかってきた比企谷くんの電話……関係してるのかな?)

花村(比企谷の奴、焦って どえらい失敗したんじゃねーだろうな……)

116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:31:16 ID:KEz185Qo


―――――――――――


放課後

ジュネス フードコート


里中「うう~っ! 寒い寒い!」

天城「いくら天気が良くても ここはまだまだ寒いね、千枝」

花村「悪いな。 他に集まれるとこ、あればいいんだけど……」

白鐘「いえ、構いません」

りせ「逆に考えれば誰も来ないだろうし、ちょうどいいんじゃない?」

花村「そう言ってもらえると助かるぜ」

花村「ほら、ホット缶コーヒー。 俺の奢りだ」

117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:32:59 ID:KEz185Qo

白鐘「それで……比企谷先輩は、どうなんですか?」

白鐘「雪ノ下先輩が居ないのと何か関係があるんでしょうか?」

里中「う~ん……それがねー」

里中「あたしらにもよく分かんなくて……」

天城「私が知っているのは、比企谷くんから妙な電話があったって事くらいかな?」

白鐘「電話……というと?」

天城「なんかね、陽乃さん近くに居るか?って聞かれて」

天城「居ないって答えると『荷物は届いた』って伝えてくれって言われたの」

りせ「荷物?」

天城「私には何の事だか……ただ」

天城「陽乃さんにね、比企谷くんから連絡があったら」

天城「『必要なものは全部入れた』って言っておいて欲しいと頼まれてもいたの」

118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:34:07 ID:KEz185Qo


一同「…………」


花村(うげ……陽乃さんが絡んでんのかよ)

花村(何となく読めてきたぜ……)


白鐘「……天城先輩。 つかぬ事を伺いますが」

天城「うん」

白鐘「その時、雪ノ下先輩はどこに居たか、わかりますか?」

天城「たぶん自室に居たと思うよ?」

天城「あの日は風邪気味で調子が悪いって、陽乃さんが言ってたし」

白鐘「…………」


花村(さすが白鐘……鋭いな)

119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:35:15 ID:KEz185Qo

花村「ところで、一年生の方はどうだ?」

花村「例の噂話」

りせ「あまり変わってない感じ……」

りせ「今回の大雪騒動で多少は無くなるかなって思ったんだけど……」

白鐘「僕のクラスも同様です」

花村「そうか……俺らのクラスも似た様なもんだ」

花村「もうすぐ2月だってのに よくもまあ飽きないもんだぜ」

里中「は? 2月に何かあったっけ?」

花村「おいおい里中……お前も一応女の子だろーが」

里中「一応は余計!」

花村「2月つったら、バレンタインデーに決まってるだろ?」

120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:36:34 ID:KEz185Qo

里中「ああ、花村には永遠に関係のない話の」

花村「うっせーよ!?」

天城「私は毎年、お父さんには必ずあげてるかな」 クスッ

りせ「そういやあったね、バレンタインデー」

りせ「義理で良ければあげるよ? 花村先輩」

花村「マジで!?」

里中「義理宣言されて そこまで喜ぶのはどーよ?」

花村「やかましい!」

花村「日本全国に居る一個だけが確定している連中より」

花村「いくらかはマシだっての!!」

天城「何の事かわからないけど……義理でいいなら私もあげようか? 花村くん」

花村「もちろん大歓迎だぜ、天城!」

     アハハ……

121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:37:47 ID:KEz185Qo


―――――――――――


足立宅


     ピピピ…… ピピピ……

比企谷「ん?」 ピッ

比企谷「はい、もしもし……花村か」

花村『よう、比企谷。 今一人か?』

比企谷「ああ。 それで、何か用か?」

花村『ああ』

花村『ちょっと学校とかじゃ聞きづらい内容なんでな』

比企谷「……いったい何だよ?」

花村『単刀直入に言うぜ?』

122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:38:36 ID:KEz185Qo


花村『お前……雪ノ下さんと何があった?』


比企谷「…………」

花村『悪いがな、比企谷』

花村『あの大雪の日、俺、お前の部屋に』

花村『大荷物背負った雪ノ下さんが入っていくの、見かけちまった』

比企谷「!」

花村『別に詳細に話せ、とは言わねぇよ』

花村『陽乃さんも絡んでるみたいだし、俺がどうこうするって事でもねえ』

花村『ただ……気になってな』

比企谷「…………」

123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:39:46 ID:KEz185Qo

比企谷「……結論を言えば、本当にやましい事は無かった」

比企谷「それだけだ」

花村『…………』

比企谷「状況を簡単に説明するがな」

比企谷「雪ノ下は、俺に差し入れを持ってきた。 が……」

比企谷「寒さで体調を崩してな……やむを得ず、俺の部屋に泊まらせたんだよ」

比企谷「あの天候で帰らせても悪化させるだけだからな」

花村『…………』

比企谷「本当だぞ?」

花村『……まず最初に言っとくけどな』

比企谷「は……?」

124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:41:10 ID:KEz185Qo

花村『お前、何、羨ましい事態に陥ってんだよ!!』

花村『俺も遭遇してーよ!!』

比企谷「…………」

花村『……コホン』

花村『まあ、それは置いといて、だ』

比企谷「……ああ」

花村『本当に何も無かったんだな?』

比企谷「もちろんだ。 やましい事は何もな」

花村『そうかよ……となると』

花村『逆に『何も無かった』のがショックだったのかな、雪ノ下さん』

比企谷「ない。 それは絶対ない」

花村『なんで言い切れるんだよ……』

125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:42:06 ID:KEz185Qo

花村『お前なぁ……女の子が一人暮らしの男の部屋を訪ねて』

花村『しかも部屋に泊まるのってさ……もうそりゃ覚悟を決めたって事じゃーねーのかよ?』

比企谷「…………」

花村『それでいて何も無かったってなると……』

花村『女としての魅力が~的な事になるんじゃねーの?』

比企谷「だからないって、マジで」

花村『ルパ○ダイヴくらいしてやりゃ良かったのに』

比企谷「いや、それやったら、いろんな意味で俺が終わるっての……」

花村『まあ、だいたいわかったわ』

比企谷「本当かよ……」

126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:43:09 ID:KEz185Qo

花村『……けどな』

花村『少しは察してやってもいいんじゃないのか?』

比企谷「…………」

花村『年頃の女の子が、好きでもない男の家に泊まろうなんて気』

花村『絶対に起きないと思うぜ?』

花村『お前もいろいろあるんだろうとは思うがな……』

比企谷「……状況がそうさせただけだっての」

花村『…………』

花村『オーケー。 それでいいのなら、もうこの話はおしまいにしとく』

花村『今の俺の気持ちは、夏に言った事とほとんど同じだしな』

比企谷「…………」

花村『後、この事は誰にも言わねーから。 じゃあな』

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:44:15 ID:KEz185Qo


―――――――――――


数日後の放課後

通学路


     ピピピ……ピピピ……

比企谷「ん?」 ピッ

比企谷「もしもし……ああ、白鐘か」

比企谷「…………」

比企谷「晩飯?」

比企谷「適当に済ませるつもりだが……」

比企谷「…………」

128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:45:18 ID:KEz185Qo

比企谷「愛屋で一緒にね……」

比企谷「……そういや、そんな約束してたな」

比企谷「わかった。 時間は何時にする?」

比企谷「…………」

比企谷「18時くらいに……了解だ」

比企谷「じゃ、その時に」 ピッ

     ブッ…… ツー ツー

比企谷「…………」

129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:46:30 ID:KEz185Qo


―――――――――――


18時

大衆食堂 愛屋


     ガララッ ラッシャイ

白鐘「比企谷先輩、ここです」

比企谷「おう、白鐘」

比企谷「もう注文したか?」

白鐘「いえ、まだです」

比企谷「そうか。 何を食うかな」

白鐘「僕は……肉丼セットにしようかな」

比企谷「そうだな。 晩飯だし、丼の方がいいか」

比企谷「俺もそれでいこう」

130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:47:24 ID:KEz185Qo

白鐘「では……すみません、肉丼セット2つお願いします」

     アイヨー

比企谷「…………」

白鐘「…………」

白鐘「この前の大雪、大変でしたね」

比企谷「そうだな」

白鐘「僕も我が家の慣れない雪下ろしで骨が折れました」

比企谷「へえ……って」

比企谷「しもやけとか、大丈夫だったのか?」

白鐘「え? ああ、休み休みで、近所の方も手伝ってくれましたし……」

131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:48:09 ID:KEz185Qo

比企谷「そうか……女の子はなりやすいってイメージがあってな」

白鐘「え?」

比企谷「ん?」

比企谷「何か変なこと言ったか?」

白鐘「いえ……ただ」

比企谷「ただ?」

白鐘「僕の事……女の子だって認識してくれてるんだって思って……」///

比企谷「……別にフツーだろ」

白鐘「ところが今だにラブレター送ってくる女生徒の方が多くて」

白鐘「何となく勘違いされてると思うんですが……」

比企谷「あー……それは違うと思うが……確かに言い切れないな」

132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:48:47 ID:KEz185Qo

白鐘「やっぱり、こんな格好を続けているから、なんでしょうね」

比企谷「まあ否定はしない」

白鐘「ふふふ……」

比企谷「何笑ってんだよ」

白鐘「すみません。 やっぱり比企谷先輩だなって思って」

比企谷「…………」

     オマチー

比企谷「おっ……来たか」

白鐘「美味しそうですね」

白鐘「いただきます」

比企谷「いただきます」

133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:49:40 ID:KEz185Qo

白鐘「うん、美味しいですね」

比企谷「ああ」

白鐘「…………」

白鐘「比企谷先輩」

比企谷「ん?」

白鐘「今、僕……料理を勉強しているんです」

比企谷「……ほう」

白鐘「今度、ご馳走したいんですが」

白鐘「構わないでしょうか?」

比企谷「…………」

比企谷「そうだな、近い内に食わせてくれ」

白鐘「ええ、ぜひ」

134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:50:42 ID:KEz185Qo

白鐘「……それから」

比企谷「……まだあるのか」

白鐘「…………」

白鐘「いつか……聞かせてください」

比企谷「…………」

比企谷「……告白の事なら、もう少し時k」

白鐘「それだけじゃないです」

比企谷「!」

白鐘「どんな事でもいいんです」

白鐘「いつだったか、妹さんの話をしてくれましたよね?」

白鐘「ささいな事でいいんです……好きな色とか、嫌いな食べ物とか」

白鐘「少しずつでもゆっくりでも構わない」

135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:51:41 ID:KEz185Qo



白鐘「僕は……あなたを知りたい」



比企谷「…………」

白鐘「だから――」 ホロリ……

白鐘「あ、あれ……」

比企谷「…………」

     ポタ…… ポタ……

白鐘「す……すみません……っ」

白鐘「こんな……つも、り……なかった、ん、です……けど……」

白鐘「や、だな……と、とまら……うぐっ……ひっく……」

比企谷「……っ」

136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:52:35 ID:KEz185Qo


比企谷(……落ち着け)

比企谷(いまさら、こんな事で動揺するな)

比企谷(すべてが……水の泡になるんだぞ!)


比企谷「…………」

比企谷「……どうした、白鐘」

比企谷「薬味がキツかったのか?」

白鐘「うっ……ぐすっ……ひっく……」

比企谷「…………」

―――――――――――

白鐘「……すみません、取り乱してしまって」

比企谷「……いや」

137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:53:40 ID:KEz185Qo

     マイドアリー

白鐘「今日は、ありがとうございました」

比企谷「礼を言う様な事じゃないだろ」

白鐘「…………」

白鐘「……言いにくい事なんでしょうけど」

白鐘「僕は、話してくれるのを待っています」

比企谷「……何の事だ」

白鐘「ふふっ。 それじゃ、僕はこれで……」

     スタ スタ スタ…

比企谷「おい……」

比企谷「…………」

138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:54:37 ID:KEz185Qo


―――――――――――


2月初旬の朝

通学路


花村「ううっ……寒っ」

花村「今日も雪か……」

里中「シャキッとするじゃん、花村」

天城「でもここの所、よく降るよね」

雪ノ下「…………」

里中「そういやクマくん、元気にしてる?」

花村「ああ、元気も元気、無駄に元気すぎて」

花村「こっちが参ってるくらいだっての」

天城「そうなんだ」 クスッ

139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:55:55 ID:KEz185Qo

花村「おおよ」

花村「昨日なんて無理やり誘った比企谷と豆まきしたんだぜ?」

里中「へぇ~。 あの比企谷くんが」

花村「クマの奴、力加減を知らないから思い切りぶつけて来やがったんで」

花村「俺と比企谷で共同戦線はって、投げ返してやったら」

花村「降参クマ~!とか言ってさ」

天城「私も参加したかったな」

里中「あたしも手伝ったけど、天城屋は恵方巻きイベントだったもんね」

     アハハ……

雪ノ下「…………」

140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:56:56 ID:KEz185Qo

雪ノ下(……結局)

雪ノ下(何の進展もないまま日々が過ぎていく)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(比企谷くんの酷い噂は やや収まってきたものの)

雪ノ下(それでも毎日、耳に入らない事はない)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(比企谷くんも相変わらずだし……)

雪ノ下(彼の思う通りに事が進んでいる気がする)

雪ノ下(真意もわからないまま……)

雪ノ下(…………)

141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:58:13 ID:KEz185Qo

     タッ タッ タッ

りせ「先輩達っ!」

里中「ん? りせちゃん?」

天城「どうしたの? そんなに走ってきて」

りせ「はあっ……はあっ……」

りせ「……く、詳しい事は、お昼休み……ええと」

りせ「屋上で話します!」

りせ「必ず来てください! できれば、比企谷先輩も連れてきて!」

花村「はあ? 比企谷もか?」

りせ「お願いします! じゃ!」

     タッ タッ タッ…

142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:59:18 ID:KEz185Qo

里中「…………」

天城「…………」

花村「…………」

雪ノ下「…………」

花村「……いったいどうしたんだ?」

里中「何か、あったっぽいね」

天城「比企谷くんまで呼ぶって事は、相当な事、なのかな……」

雪ノ下「…………」


里中(それにしても雪ノ下さん、どうしてこんなに静かなの?)

天城(最近の雪ノ下さん……最初の頃みたいな雰囲気だし)

花村(……やっぱ、無理にでも聞き出すべきだったか?)

143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:00:11 ID:KEz185Qo

昼休み

屋上


りせ「――という訳です」

花村「」

里中「」

天城「」

白鐘「」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:01:21 ID:KEz185Qo

花村「【マヨナカテレビ】に……比企谷が映っただと!?」

里中「ど、どういう事!?」

里中「事件はもう終わったんでしょ!?」

天城「何が……起きてるの……」

りせ「あたしもわかんない……昨日、偶然見ただけだし」

白鐘「…………」

白鐘「アメノサギリ?が言ってましたね」

白鐘「【マヨナカテレビ】は、大衆が望むものを見る為の窓、と……」

花村「!」

里中「あっ!」

天城「この噂話……つまり」

天城「みんな、比企谷くんに『何か起これ』と思っているという事!?」

白鐘「おそらくは……」

145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:01:59 ID:KEz185Qo

花村「なんてこった……」

里中「後でクマくんにも知らせとかないと」

天城「そうだね、千枝」

花村「それはそうと、大丈夫なのか? 比企谷」

比企谷「別に……何も問題ない」

花村「はあ?」

花村「いや、怖くないのか?つー意味で」

比企谷「冷静になれ」

比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」

比企谷「この怪現象はどうにも出来ないが、何か起こる事はもうねーよ」

花村「だからそうじゃねーって!」

146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:03:30 ID:KEz185Qo

花村「大勢の奴が、お前に対して悪く思っているって事なんだぞ!?」

里中「そうじゃん、比企谷くん」

天城「本音を言っていいんだよ?」

りせ「あたし達、話を聞くくらいなら出来るよ?」

比企谷「大丈夫だ」

比企谷「実を言うと……【マヨナカテレビ】の事はもう知っていた」


一同「!?」


雪ノ下「…………」

比企谷「知った日からずっと見てたが……あの映像しか映っていない」

比企谷「さっきも言ったが、もうあの世界を悪用する奴は居ないからな」

比企谷「それに……あんな噂立てられてる時点で」

比企谷「周りが俺に対して悪意ありまくりなのも自明の理だ」

147: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:04:16 ID:KEz185Qo

花村「おい……比企谷」

比企谷「隠してた訳じゃない」

比企谷「ただ……言ってどうなるって事でもないだろ?」

花村「……っ」

里中「…………」

天城「…………」

りせ「…………」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

比企谷「…………」

比企谷「話はついたし、俺はもう行く。 じゃあな」

白鐘「あ……」

白鐘「…………」

148: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:05:31 ID:KEz185Qo

花村「……クソッ」

花村「そりゃ……お前の言う通りだけどよ……けど……けどっ」

里中「…………」

里中「結局……比企谷くんにとって、あたしらって」

里中「どうでもいい存在だったのかな……」

天城「千枝。 それは言い過ぎだよ」

白鐘「そ、そうですよ……比企谷先輩には……きっと」

白鐘「きっと……何か、理由が……」

白鐘「…………」

りせ「……なんか……バラバラだね、あたし達」

りせ「ほんの少し前まで、仲良くパーティとかしてたのに……」

149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:06:40 ID:KEz185Qo

花村「……雪ノ下さんは、どう思ってるんだ?」

花村「比企谷をこのまま放っておいていいのか?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「本人がああ言ってる以上……どうしようも出来ないわ」


一同「!?」


里中「ちょっと……雪ノ下さん、それってどういう意味?」

天城「比企谷くんの事、どうでもいいの?」

白鐘「待ってください」

白鐘「冷静な態度だったので、少し気になっていたんですけど……雪ノ下先輩」

白鐘「もしかしたら【マヨナカテレビ】の事、知っていたんですか?」

雪ノ下「…………」

150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:07:21 ID:KEz185Qo

雪ノ下「ええ」


一同「!」


雪ノ下「みんなに黙っていた事は謝るわ」

雪ノ下「でも……」

雪ノ下「比企谷くんは、あんな感じで、何でもないって壁を作ってて」

雪ノ下「どう対処したらいいか、わからない」

雪ノ下「今までのやり方は、どれもダメだった」

りせ「で、でも」

雪ノ下「今の状況で比企谷くんに出来る事は、何もない」

雪ノ下「それとも、何かいい案はあるのかしら?」

りせ「そ、それは……」

151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:08:25 ID:KEz185Qo

里中「そんな言い方ないじゃん」

里中「この場にいるみんなが言いたい事は」

里中「あたしらへの信頼ってそんなに無かったの?って事で……」

雪ノ下「信頼だけでは、解決できない事もあるわ」


一同「…………」


里中「……そう」

里中「そういう事なら、もうこの話はおしまいね」

里中「行こ、雪子」

天城「……うん、千枝」

152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:09:22 ID:KEz185Qo

花村「お、おい、里中……はあ」

花村「…………」

花村「まあ……気持ちとしては、俺も同じか」

花村「正直、多少はいい感じになってるって思ってたんだけどな……」

花村「残念だぜ、雪ノ下さん。 じゃあな」

りせ「……バイバイ、雪ノ下先輩」

白鐘「…………」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……あなたは行かないのかしら?」

白鐘「…………」

白鐘「いえ、もう行きます」

白鐘「また、今度」

雪ノ下「…………」

153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:10:19 ID:KEz185Qo







     何かが……終わった気がした







154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:11:25 ID:KEz185Qo


―――――――――――


数日後

警察署 面会室


比企谷「どうも、足立さん」

足立「やあ、比企谷くん」

比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「何にしようか、迷ったんですけどね」

比企谷「これ……最後の差し入れのたい焼きです」

足立「ありがとう」

比企谷「…………」

足立「…………」

155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:12:08 ID:KEz185Qo

比企谷「突然の電話で驚きました」

足立「そうかい。 君にも驚く事があるんだね」

比企谷「いつの間にご両親とまた会っていたんですか?」

足立「会ったのは先週くらい」

足立「古典的だけど、手紙を出して連絡した」

足立「いつまでも学生の君に お世話になる訳にはいかないしね」

比企谷「…………」

足立「いつだったかの……サバの味噌煮」

足立「やっぱりね、旨くないんだよ」

比企谷「…………」

足立「でも……妙に懐かしくてさ」

156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:13:02 ID:KEz185Qo

足立「味付けといい、火の通り方といい、全然変わっていなかった」

比企谷「…………」

足立「そう思ったらさ、何だか悔しくなってね」

比企谷「悔しい?」

足立「ああ」

足立「何が僕と向き合う覚悟だよ」

足立「結局……何も変わっていないじゃないか、と思ってしまった」

比企谷「…………」

足立「……僕は」

足立「両親に洗いざらいぶちまけてやった」

足立「これで愛想を尽かすだろうと踏んでね」

比企谷「…………」

157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:13:55 ID:KEz185Qo

足立「だけど……予想外の事が起こった」

比企谷「というと?」

足立「怒られたんだよ。 今まで見た事もない怖い顔でね」

比企谷「…………」

足立「そこからはね……この透明な板を挟んで大ゲンカ」

足立「その時の担当警官も逃げ出したかっただろう。 ククク……」

比企谷「…………」

足立「…………」

足立「……しかしね」

足立「何かが変わった気がした」

比企谷「……そうですか」

158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:15:03 ID:KEz185Qo

足立「そんな訳で、もう君の面会は必要ない」

足立「後は僕の両親が電話した通り、面倒みてくれる」

足立「長い事お疲れ様」

比企谷「……いえ」

足立「…………」

足立「ふふふ……それにしても」

足立「どうして僕や君は、こんな力を持ってしまったんだろうね?」

足立「いまさらだけど……もし無かったらと、どうしても考えてしまうよ」

比企谷「…………」

比企谷「俺も不思議に思っています」

比企谷「ここに……八十稲羽に来るまで何とも無かった」

足立「僕と同じだね……何か、きっかけでもあったのかなぁ」

比企谷「…………」

159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:16:06 ID:KEz185Qo


比企谷(きっかけ……?)


比企谷「…………」

足立「…………」

比企谷「それじゃ……俺はこれで」

足立「ちょっと待ってくれ」

比企谷「はい?」

足立「今の僕は……君から見て、どう思う?」

比企谷「…………」

比企谷「正直に言っても?」

足立「ぜひ」

比企谷「そうですね……」

160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:17:08 ID:KEz185Qo

比企谷「ようやく一人で立ち上がって、スタートラインについたと思います」

足立「……相変わらずはっきり言うねぇ」

足立「本当に生意気だよ、君は」

比企谷「性分なので」

足立「ふふふ……見てろよ」

足立「必ず君よりハッピーになって見返してやるからな」

比企谷「前途は多難なようですが」

足立「何……ちょうどいいハンデさ」

比企谷「…………」

足立「…………」

     ハハハ……

161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:18:19 ID:KEz185Qo


―――――――――――


比企谷「…………」 ピッピッピッ……

     ルルルルル……ルルルルル……ガチャ

比企谷「もしもし……比企谷です」

比企谷「突然すみません、堂島さん。 今、いいですか?」

比企谷「…………」

比企谷「実は、無理なお願いだと思うんですが」

比企谷「頼みたい事があるんです」

比企谷「…………」

比企谷「はい……それは――」

162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:19:14 ID:KEz185Qo


―――――――――――




天城屋


雪ノ下「…………」

雪ノ下「…………」 グッ

     コン コン

陽乃「はーい。 誰かしら?」

雪ノ下「私です、姉さん」

陽乃「雪乃ちゃん?」

     ガチャ…

陽乃「どうしたの?」

雪ノ下「…………」

163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:20:09 ID:KEz185Qo

雪ノ下「相談したい事があります」

雪ノ下「比企谷くんの事で」

陽乃「…………」

陽乃「いいわ。 入って」

雪ノ下「はい」

―――――――――――

陽乃「それで? 比企谷くんの事って?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「全てを話します。 でも……」

雪ノ下「口を挟まず最後まで聞いて欲しい」

陽乃「……わかったわ」

164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:21:26 ID:KEz185Qo


―――――――――――


雪ノ下「――という事なの」

陽乃「…………」

雪ノ下「信じられないでしょうね」

雪ノ下「今、テレビ画面に手を突っ込んで見せるわ」

陽乃「雪乃ちゃん」

雪ノ下「……はい」

陽乃「私もね……あなたに隠してた事があるの」

雪ノ下「え……」

陽乃「去年の夏くらいにね……比企谷くんと ある約束をしたのよ」

雪ノ下「!」

165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:22:31 ID:KEz185Qo

陽乃「雪乃ちゃんが事件に関わっている事は、薄々わかっていたわ」

陽乃「だけど私……何があっても雪乃ちゃんを守るよう」

陽乃「比企谷くんに約束させたの」

雪ノ下「!!」

陽乃「ふふっ……考えていたのとは随分違ったけど」

陽乃「彼、しっかりと約束を果たしてくれたみたいね」

雪ノ下「…………」

陽乃「それで? 私に相談したい事は何かしら?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「今……比企谷くんは、酷い噂の中に居るわ」

雪ノ下「でも、彼は、いつも以上に壁を作ってしまっている」

雪ノ下「私は……どうにかしたいけど、どうすればいいか、わからない」

166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:23:35 ID:KEz185Qo

陽乃「…………」

雪ノ下「教えて、姉さん」

雪ノ下「私はどうすればいいの?」

雪ノ下「どうしたら、比企谷くんを元に戻せるの?」

陽乃「…………」

陽乃「ねえ、雪乃ちゃん」

雪ノ下「はい」

陽乃「それってさ……聞く相手を間違っていないかしら?」

雪ノ下「え……」

陽乃「雪乃ちゃんはそれを知っていながら、私に質問してない?」

雪ノ下「……っ!」

167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:25:31 ID:KEz185Qo







     やっぱり……私の姉は、一枚上手だった







168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:29:23 ID:KEz185Qo


―――――――――――


数日後 降雪の休日

ガソリンスンタンド


     サクッ… サクッ… サクッ…

比企谷「…………」

比企谷「おい」

店員「ん?」

店員「どうしたんだい? もしかしてアルバイトの……」

比企谷「お前……誰だ?」

店員「え?」

比企谷「はっきり言って気にも留めていなかったがな……」

比企谷「このガソリンスタンドに バイトは一人も居ないそうだぞ?」

店員「…………」

169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:30:34 ID:KEz185Qo

比企谷「俺は改めて、ここ八十稲羽に来た時を思い返した」

比企谷「この街に来て、何かおかしな事はなかったか?」

比企谷「テレビの世界に入る前に、この妙な力を手に入れた連中に共通点はないか?」

比企谷「それらを考慮した結果……」

比企谷「ふと、お前の事を思い出した」

店員「…………」

比企谷「何気ない会話と握手をしたが……」

比企谷「俺はその後すぐ、体調を崩した事を覚えている」

店員「…………」

比企谷「あの時は油の匂いに当てられたと自己完結していたが」

比企谷「様々な事を知った『今』なら……怪しい出来事だ」

店員「…………」

170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:31:31 ID:KEz185Qo

比企谷「それに少し聞いて回ったが、お前の姿は」

比企谷「必ず雨の日に目撃され、名前を知っている奴は一人も居なかった」

店員「…………」

比企谷「もう一度言う」

比企谷「お前は……誰だ?」

店員「…………」

店員「……フ」

店員「フフフフフフ……ハハハハハハッ!」

比企谷「…………」

店員「よく気がついたね……褒めてあげるよ」

比企谷「そんなもんいらねぇ。 さっさと質問に答えろ」

店員「フフフ……我が名は――」

171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:32:50 ID:KEz185Qo







     ――イザナミ――







178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:41:26 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


ジュネス フードコート


花村「…………」

花村「…っえっくしッ!!」

花村「……さぶっ」 ズビッ…

花村「…………」


??「……花村?」


花村「?」

花村「! ……里中」

里中「何してんの? こんな雪の中のフードコートで」

179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:42:22 ID:Wx7BF/yM

花村「お前こそ何しに来たんだよ?」

里中「あ、あたし? あたしは……」

里中「…………」

花村「…………」

花村「コーヒー、飲むか?」

里中「あたしはミルクティーがいいじゃん」

花村「へいへい」

―――――――――――

里中「ふう……」

花村「…………」

里中「…………」

180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:43:21 ID:Wx7BF/yM

花村「俺さ……」

里中「うん」

花村「無い知恵絞って今回の事、なんとかできねーか 考えてみた」

里中「…………」

里中「いいの浮かんだ?」

花村「浮かんだら こんなとこいねーよ」

里中「そっか……」

花村「少なくともよ……【マヨナカテレビ】を何とかしたい」

花村「けど、それはあの世界『そのもの』が問題になってくる」

花村「どうにかなんて出来る訳がねぇ……」

里中「……だね」

花村「かと言って噂をやめさせるなんて出来ねーし」

花村「くよくよ考えてたら、なぜかここに足が向いたんだ」

181: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:44:10 ID:Wx7BF/yM

里中「ふうん……」

花村「改めて聞くが、お前は何でここに来たんだ?」

里中「…………」

里中「あたしは、比企谷くんのこと考えてた」

花村「はあ? お前いまさら参戦すんの?」

里中「そういう意味じゃないっての!」

里中「由比ヶ浜さんが言ってたじゃん?」

里中「比企谷くんは、誰よりも心の痛みを知ってるから」

里中「ぶっきら棒な態度を取るんじゃないかって」

花村「…………」

里中「だったら」

182: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:46:01 ID:Wx7BF/yM

里中「あたしらにこんな思いまでさせて、自分から人を遠ざけようとするのは」

里中「どんな痛みからなんだろうって思ってさ……」

花村「痛み、ね……」

里中「…………」

里中「最初……転校して来たばかりの比企谷くん」

里中「緊張をほぐす意味も兼ねて、せっかく案内を買ってでたのに図星突かれてさー」

里中「あたし、何てひねくれた奴なんだろう!」

里中「って思ったの」

花村「ははは、俺も覚えてるぜ」

花村「お前が初対面でこんなに悪態つくなんて、どんな奴だよ?」

花村「って驚いたな」

里中「…………」

里中「でもさ」

183: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:47:29 ID:Wx7BF/yM

里中「あの時の比企谷くん……」

里中「雪ノ下さんが見送りに来なくて……きっと心に痛みを感じていた」

里中「だから……ああいう態度をとったのかなって」

里中「『今』は、思えるじゃん」

花村「……何でもないってフリして、か」

里中「…………」

花村「…………」

花村「……なあ、里中」

里中「うん」

花村「思えば、ここだったな。 あいつとの付き合いが始まったのって」

里中「そうだね……花村がささやかな歓迎会だって言って」

花村「ああ……」

184: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:48:15 ID:Wx7BF/yM

花村「…………」

里中「…………」

花村「やっぱり……比企谷と過ごした『これまで』を」

花村「ナシには出来ねーよな」

里中「うん。 そうじゃん」

里中「後……残り1ヶ月程度だけど」

里中「このままにしたくないじゃん!」

花村「だよな!」

     ハハハハハハ……

花村「ふう……」

花村「……そういやよ」

里中「うん?」

185: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:49:10 ID:Wx7BF/yM

花村「結局、【マヨナカテレビ】って何だったんだろうな?」

里中「怪現象じゃん」

花村「あーいや、そうじゃなくてな」

花村「情報の出処?みたいな意味」

花村「俺も軽い噂話程度には知ってたけど、詳しくは……そうだ!」

花村「お前から聞いた気がするぜ?」

里中「あたし? そうだっけ?」

花村「お前は誰から聞いたんだ?」

里中「え~っと……あたしも他の女子が話してるのを聞いてって感じだったと思う」

花村「そうか……けど」

花村「そうなると誰が最初に流したんだ……?」

186: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:50:27 ID:Wx7BF/yM

里中「そりゃ偶然見かけた奴なんじゃん?」

花村「偶然……ね」

花村「…………」

里中「花村?」

花村「……なあ、里中」

里中「うん」

花村「【マヨナカテレビ】ってさ、初めて見た時、どう思った?」

里中「え? う~ん……」

里中「ちょっと不気味だな……って思ったじゃん」

花村「俺もだ。 特に俺は、小西先輩だと分かっちまったからな……」

花村「運命の人とかいう前置きがあっても嫌なイメージしか沸かなかった」

里中「ああ……そういや噂話は、運命の人が見えるって話だったね」

187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:51:28 ID:Wx7BF/yM

花村「……おかしいと思わねぇか?」

里中「何が?」

花村「何の予備知識もナシであれ見て」

花村「運命の人、なんて明るいイメージ……沸くと思うか?」

里中「うーん……そりゃ確かに沸かないじゃん」

里中「けど世の中、いろんな人が居るし……てか、何が言いたいの?」

花村「……上手く言えねーけど」

花村「【マヨナカテレビ】を大勢の人間に見させる為に」

花村「『誰か』が、故意に噂話を流したと思えねーか?」

里中「……!」

188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:52:47 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


白鐘宅


     ピピピ…… ピピピ…… ガチャ

白鐘「はい、もしもし。 白鐘です」

白鐘「堂島さん? 珍しいですね、どうしました?」

白鐘「…………」

白鐘「え……」

白鐘「…………」

白鐘「比企谷先輩が……?」

白鐘「…………」

白鐘「いえ……僕に心あたりはありませんが」

白鐘「はい……はい……」

白鐘「それでは……」

189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:53:51 ID:Wx7BF/yM

     ブッ…… ツー ツー

白鐘「比企谷先輩があの人と面会……?」

白鐘「いまさら何故?」

白鐘「…………」


白鐘(事件自体はとっくに終わっている)

白鐘(何か知りたいとしても、どうしてそんな事を……)

白鐘(何の意味が……?)

白鐘(…………)

白鐘(皆目見当もつかないな……)

白鐘(どういう事なのだろう?)

190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:54:40 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」


雪ノ下(……そう)

雪ノ下(私は知っている)

雪ノ下(今の比企谷くんを元に戻せそうな方法を思いつける)

雪ノ下(きっかけなり情報なり、あるいはそのものを教えてくれそうな人を……)

雪ノ下(…………)

雪ノ下(どうして……)

雪ノ下(どうして私は、連絡を取ろうとしないの)

雪ノ下(このケータイのボタン押すだけで済む話でしょ!?)

雪ノ下(……どう……して)

191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:55:53 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下(…………)


     ピピピ…… ピピピ……


雪ノ下「ひゃっ!?」

雪ノ下「…………」 ドキドキ

雪ノ下「び、びっくりした……」

     ガチャ

雪ノ下「もしもし……白鐘くん?」

雪ノ下「どうしたのかしら?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「堂島さんから?」

雪ノ下「…………」

192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:56:44 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「え?」

雪ノ下「どうしていまさら比企谷くんがあの人との面会を?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……思い当たる節(ふし)なんてないわ」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ごめんなさい、お役に立てなくて」

雪ノ下「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

雪ノ下「…………」


雪ノ下(何をしているのかしら……比企谷くん)

雪ノ下(…………)

193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:57:58 ID:Wx7BF/yM

テレビの世界


クマ「…………」

クマ「……およ?」

クマ「この気配は……センセイクマ?」

クマ「…………」

クマ「どうして入ってきたクマ?」

クマ「それはともかく、お迎えに向かうク……」

クマ「!?」

クマ「…………」

クマ「……どういう事クマ?」

クマ「これは……この感じ方は……!!」

クマ「ともかく、ヨースケに知らせるクマ!!」

194: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:59:36 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


ジュネス フードコート


     ルルルルル……ルルルルル……

里中「どう? 花村?」

花村「……ダメだな。 繋がらねぇ」 ピッ

花村「比企谷、電源切ってんのかもな……」

里中「そう……」

花村「どうすっかな……他の連中に声かけてみるか?」

里中「うん、そうだね」

里中「じゃ、あたし、雪子にかけてみる」

花村「おう。 んじゃ俺は……」

195: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:00:33 ID:Wx7BF/yM

     ピピピ…… ピピピ……

花村「うおっと!?」

花村「あ~……ビビった」 ピッ

花村「はい、もしもし?」

花村「お、白鐘か。 ちょうどいい……ん?」

花村「…………」

花村「はあ? 比企谷が?」

花村「いや、初耳だな……つーか、何してるんだ? あいつ……」

花村「ともかく、心当たりなんぞ全くねーよ」

花村「…………」

花村「は? 何がちょうどいいのかって? ああそれはな……」

196: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:01:47 ID:Wx7BF/yM

花村「今、里中と話しててな……くだらねー妄想かもしれないが」

花村「【マヨナカテレビ】の噂を故意に流した奴が居るんじゃね?って」

花村「話になってな……」

花村「…………」

花村「ああ、もちろん根拠なんてねーよ」

花村「元々の噂話とあまりに掛け離れているんじゃね?ってだk」


??「ヨースケ!!」


花村「どわっ!? いきなり出てくんなよ! クマ吉!」

花村「それに人が電話してる最中に大声出すなっての!」

クマ「そ、それどころじゃないクマ!! 一大事クマよ!!」

197: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:02:59 ID:Wx7BF/yM

花村「あん? ……すまん白鐘、ちょっと待っててくれ」

花村「どうしたんだよ、クマ?」

里中「雪子ごめん、ちょっと待ってて」

里中「どうしたの? クマ?」

クマ「い、今、テレビの中にセンセイが居るクマ!!」

花村「……そりゃ確かに珍しいけど、俺も時々お前に会いに行ってたし」

花村「出入り口は出しっぱなしにしてたんだろ?」

花村「あいつ、元気だったか?」

クマ「そんなのんびりした話じゃないクマ!!」

クマ「センセイは……センセイは……!」

クマ「『あの世界』の『どこ』に居るのか、わからんクマよ!!」

花村・里中「……え?」

198: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:03:54 ID:Wx7BF/yM

花村「…………」

里中「…………」

クマ「…………」

花村「えーっと……つまり、それって?」

里中「今までの……被害者と同じ?」

クマ「そうクマ!!」

花村「」

里中「」

花村「たたたたた、大変だ!! お、おい! 白鐘!!」

里中「ゆゆゆゆゆ、雪子! お、おおお、お、落ち着いて聞いて!!」

199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:04:47 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


天城屋 雪ノ下の部屋


雪ノ下「…………」

     コン コン

雪ノ下「はい?」

??「雪ノ下さん、大変だよ!」

雪ノ下「天城さん? どうしたの?」

     ガチャ

天城「い、今、千枝から電話があって……」

天城「比企谷くん、テレビの世界で行方不明になってるらしいの!」

雪ノ下「!?」

雪ノ下「どういう事なの!?」

200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:06:07 ID:Wx7BF/yM

天城「私もついさっき聞いたばかりだから、よくわからない……」

天城「でも、花村くんが一度みんなで集まろうって」

天城「ジュネスのあの場所で待ってるって……」

雪ノ下「わかったわ、天城さん」

雪ノ下「すぐに出かける準備するから!」

天城「うん。 玄関ロビーで待ってるね」

天城「一緒に行こう!」


―――――――――――


201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:07:08 ID:Wx7BF/yM

ジュネス フードコート


雪ノ下「ごめんなさい、遅くなって……」

花村「ああ、雪ノ下さん」

花村「白鐘達も今来たところだ。 気にしないでくれ」

雪ノ下「それで、比企谷くんは? 今、どうなってるの!?」

里中「雪ノ下さん、気持ちは分かるけど落ち着いて……」

りせ「とにかく比企谷先輩が行方不明なのは間違いないんでしょ?」

りせ「だったら早くあの世界に行かないと……」

花村「ちょっと待ってくれ」

花村「どうもいろいろ起こってるみたいでな……少し整理しようぜ」

白鐘「そうですね。 では、まず僕から話します」

白鐘「実は今朝、堂島さんから比企谷先輩についての電話があったんです」

りせ「堂島さんが?」

202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:08:21 ID:Wx7BF/yM

白鐘「ええ」

白鐘「数日前の話だそうですが……ふと気になって僕にかけたみたいです」

りせ「いったい比企谷先輩は何をしたの?」

白鐘「それが……生田目との面会を頼んだそうです」

りせ「……え?」

りせ「いまさら……何で?」

白鐘「堂島さんも不思議に思ったそうで」

白鐘「彼、立会いのもとでなら、と、許可したそうです」

りせ「ふうん……それで?」

白鐘「堂島さんの話だと、事件に関する事なのかどうか微妙だそうですが」

白鐘「生田目がこの街に帰って来たばかりの頃の事を聞いていたとか……」

203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:09:43 ID:Wx7BF/yM

白鐘「久慈川さんも心当たりはありませんか?」

りせ「う~ん……ないなぁ」

花村「俺らにも聞いてたが、白鐘は何でこんなに気にするんだ?」

白鐘「……わかりません。 ただ」

天城「ただ?」

白鐘「比企谷先輩は、無駄な事を嫌う人です」

白鐘「今回の僕たちの事も、この面会の件も」

白鐘「必ず何か、理由があるはずです」

雪ノ下「…………」

花村「よし、とりあえずそれは置いておいて」

花村「俺たちの話だがな……」

白鐘「【マヨナカテレビ】の噂話がどうとか言ってましたね?」

花村「ああ」

204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:11:06 ID:Wx7BF/yM

花村「里中と話してて思ったんだが……【マヨナカテレビ】の噂話ってさ」

花村「『誰か』が、意図的に流したんじゃねーの?って思ってな」

白鐘「『誰か』が、意図的に……?」

りせ「けど、仮にその通りだとしても、そんな事して何の得になるの?」

天城「私もそう思う……いくらなんでも無理があるんじゃないかな?」

花村「まあ根拠なんてねぇよ」

花村「今回の比企谷の事を考えてたら、ふと、な……」

雪ノ下「…………」

白鐘「ともかく、これで一通りの情報は出ましたね?」

花村「ああ」

白鐘「なら、こうなった理由は分かりませんが……」

白鐘「比企谷先輩を救出に向かいましょう」

205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:12:00 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


テレビの世界


りせ「…………」

りせ「……っ」

りせ「ダメ……居場所、わかんない」


一同「!?」


花村「ど、どうしてだ!?」

花村「比企谷の事なら、だいたいわかってんだろ!?」

りせ「あたしに言われても……けど、一言いうなら」

りせ「あたし達……まだまだ比企谷先輩の事、理解してないって事だよ」

206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:12:52 ID:Wx7BF/yM

花村「くっ……!」

里中「そんな事、言われても……」

天城「ここにいる私たち以上に比企谷くんを知っている人なんて……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……居るわ」


一同「え!?」


雪ノ下「一人だけ……私に心当たりがある」

雪ノ下「きっと、何とかしてくれるわ……」


一同「……?」


雪ノ下「とりあえず、外に出ましょう」

207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:13:57 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


由比ヶ浜の部屋


     ピピピ…… ピピピ……

由比ヶ浜「あ、ケータイ鳴ってる」 ガチャ

由比ヶ浜「もしもし?」

由比ヶ浜「! ゆきのん! 待ってたよ!」

由比ヶ浜「それで、ヒッキーは……え?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「!?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「そ、それって……かなりヤバイんじゃないの!?」

208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:14:37 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「ええ……もう八方塞がりという状況よ」

雪ノ下「でね、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「今聞いた情報から、わかる範囲で構わない」

雪ノ下「比企谷くんについて、何かわからないかしら?」

雪ノ下「どんなささいな事でもいいの。 何か、気がつかなかった?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……そう」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「ううん……私の方こそ、ごめんなさい」

雪ノ下「必ず何とかしてみせ……え?」

209: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:15:34 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「私、そっちに行く!」

由比ヶ浜「ゆきのんの説明だけじゃ伝わらない事もあると思う」

由比ヶ浜「だから……そっちに行って直接見て、聞いて」

由比ヶ浜「答えを出すよ、私!」

由比ヶ浜「じゃ!」

     ブッ…… ツー ツー

由比ヶ浜「急がなきゃ……!」

     ダッ!

210: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:17:05 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「…………」

花村「どうだった? 雪ノ下さん」

雪ノ下「……私の説明だけじゃ良く分からないから」

雪ノ下「今からこっちに来るって……」

花村「そうか……ありがたいな」

白鐘「…………」

白鐘「みなさん、どうでしょう?」

白鐘「由比ヶ浜さんがここに来るのは、早くても夕方頃です」

白鐘「その間に出来るだけ情報を集めませんか?」

里中「というと?」

211: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:17:46 ID:Wx7BF/yM

白鐘「僕の意見としては2つあります」

白鐘「比企谷先輩の足取りと、何を調べていたのか」

白鐘「まず、堂島さんに連絡して何とか生田目に面会できないか聞いてみます」

白鐘「彼が比企谷先輩と何を話したのか、知りたい」

白鐘「それから比企谷先輩のここ数日の動きですね」

白鐘「推測ですが、この街で何かを調べていた可能性があります」

天城「具体的にはどうしたらいいかな?」

白鐘「簡単に言えば聞き込みですね」

白鐘「彼を誰かが見かけていないか、聞きいてまわるのが手っ取り早いでしょう」

りせ「うん、よくわかったよ、白鐘くん」

白鐘「それでは……そうですね」

白鐘「夕方の17:00くらいに一度ジュネスに集まりましょう」

クマ「了解クマー!!」

212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:18:30 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――







     数時間後








213: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:19:32 ID:Wx7BF/yM

八十稲羽駅 駅前


由比ヶ浜「ゆきのん!」

雪ノ下「! 由比ヶ浜さん」

雪ノ下「わざわざごめんなさい……使った交通費は」

由比ヶ浜「そんな話は後でいいよ、ゆきのん」

由比ヶ浜「それよりも早く、みんなに会わせてくれる?」

雪ノ下「……ええ、わかったわ」

雪ノ下「そこにタクシーを待たせてあるから、それに乗って」

雪ノ下「ジュネスに向かうわよ」

由比ヶ浜「うん!」

214: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:20:27 ID:Wx7BF/yM

     ブロロロロロ……

由比ヶ浜「……ところでゆきのん」

雪ノ下「何かしら?」

由比ヶ浜「ヒッキー、どんな風に……ううん、そうじゃない」

由比ヶ浜「私が帰った後、どんな様子だった?」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「……ひと言では言えないわ」

雪ノ下「最初は、小さな違和感だったけど……スキーに行ってから」

雪ノ下「いいえ……その前からも、人付き合いが悪くなっていった気がする」

由比ヶ浜「…………」

215: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:21:21 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「何かにつけて忙しいと言ってたけど、ちゃんと理由はあったの」

雪ノ下「足立さん……今回の事件の真犯人の足立さんに」

雪ノ下「よく面会しに行ってたらしいわ」

由比ヶ浜「え!?」

雪ノ下「驚くでしょうね……あなたも知っての通り」

雪ノ下「比企谷くんがここに来てからの保護者であり同居人。 彼が真犯人だったの」

由比ヶ浜「…………」

雪ノ下「それを知ってから、私たちも比企谷くんに話しかけ辛くなった」

雪ノ下「酷い噂も無くならないし……」

由比ヶ浜「? 噂?」

216: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:21:59 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「……どこから漏れたのか」

雪ノ下「今学期が始まってから、比企谷くんが」

雪ノ下「足立さんと親戚である事がバレてしまってたの」

由比ヶ浜「!!」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「………っ」

雪ノ下「……私っ」

雪ノ下「どうする事も出来なかった……!」

雪ノ下「どうする事も……」

由比ヶ浜「ゆきのん……」

由比ヶ浜「…………」

217: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:22:59 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


ジュネス フードコート


花村「由比ヶ浜さん、久しぶり!」

由比ヶ浜「うん、花村くん。 それにみんなも!」

クマ「ユイちゃん、元気そうで何よりクマ!」

里中「こんな状況じゃ無かったら、もっと良かったんだけど……」

由比ヶ浜「そうだね……でも、今はくよくよ考えても仕方ないよ!」

由比ヶ浜「で、私に話したい事って何かな?」

白鐘「僕から話しましょう」

白鐘「ですがその前に、今の状況を説明しておきます」

218: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:23:45 ID:Wx7BF/yM

白鐘「――という訳で、比企谷先輩は」

白鐘「テレビの世界に居る事はわかっていますが、居場所がわかりません」

白鐘「そこで……」

由比ヶ浜「私に……ヒッキーの『何か』を教えて欲しいんだね」

由比ヶ浜「責任重大だぁ……」

天城「大丈夫だよ、由比ヶ浜さん。 肩の力、抜いていこう!」

由比ヶ浜(ううっ……余計プレッシャー)

白鐘「それでは、ここからが新たな情報ですが……」

白鐘「まず、生田目ですけど……堂島さんの言う通りでした」

りせ「なんか、八十稲羽に帰ってきた頃の話を聞いたっていう?」

白鐘「ええ」

219: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:25:27 ID:Wx7BF/yM

白鐘「この街に帰ってきて おかしな出来事は無かったか?とか」

白鐘「妙な奴に話しかけられなかったか?とか……」

花村「妙な奴だって?」

白鐘「ええ……ですが、生田目は特に思いつかず」

白鐘「この街に帰ってきた時、給油の為にガソリンスタンドに寄った事くらいしか」

白鐘「思い出せなかったそうです」

花村「え!?」

由比ヶ浜「どうしたの? 花村くん?」

花村「いや……それが」

花村「この街で最近の比企谷を見かけた奴が居ないか、聞き込みしてたんだけど」

花村「ほら、商店街近くにあるガソリンスタンド」

花村「あそこのバイトの事を聞いてったってのが何人か居たんだよ」

220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:26:49 ID:Wx7BF/yM

白鐘「バイト……ですか?」

里中「ああ、確かにそんな人いたね」

里中「時々見かけた気もするけど、ひょろっと背の高い男の人だったかな?」

花村「これも聞いた話だが……あそこでバイト雇ってたっけ?みたいなのや」

花村「よく雨の日に見かけるな、とか、そういや名前を知らない、とか」

花村「そんな話を聞いた」

白鐘「…………」

花村「俺は商店街には行きづらいんで、そんな奴まったく知らねーけど」

花村「念のため、スタンドを訪ねてみたんだが……やっぱりバイトは雇っていないそうだ」

りせ「なんか……怪しいね、そのバイトの人」

221: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:28:27 ID:Wx7BF/yM

白鐘「ふむ……」

白鐘「確証は持てませんが、比企谷先輩は」

白鐘「今回の事件に関する『何か』を見つけ出し、それを追求しようとして」

白鐘「今の事態におちいった……という事になるのでしょうか」

雪ノ下「…………」

雪ノ下「どうかしら? 由比ヶ浜さん?」

雪ノ下「何か……答えを出せるかしら?」

由比ヶ浜「……ごめん、ゆきのん」

雪ノ下「そう……」


一同「…………」


白鐘「……こうなれば、その不可思議な人物を探す方が」

由比ヶ浜「あ、待って、白鐘くん」

白鐘「え?」

222: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:29:27 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「私が知りたい事は、そういう事じゃないの」

由比ヶ浜「みんなから見た『ヒッキーの事』を教えてくれないかな?」


一同「!」


白鐘「……そうでした」

白鐘「僕たちの今の目的は、比企谷先輩の『何か』を知る事」

花村「だな……ついつい推理の方に傾いちまってたぜ」

里中「そうだね……」

里中「じゃあ、あたしから言うじゃん?」

由比ヶ浜「うん!」

223: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:30:22 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


りせ「――って感じかな」

由比ヶ浜「…………」


花村(これで一通りの意見を聞いたけど……)

里中(みんな似たり寄ったりじゃん)

天城(参考になるのかな……)

クマ(センセイ……どうしたクマ?)

白鐘(みなさんも薄々変化に気づきながら、やがてそれに慣れていった)

白鐘(そんな印象を受けますね……)


由比ヶ浜(……でも、ヒッキーは、以前から壁を作る癖があった)

由比ヶ浜(だけど今回のは、それを段々と強めていった感じ……どうしてだろう?)

由比ヶ浜(ヒッキーをよく知ってるゆきのんが戸惑うくらいに……なぜ?)

224: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:31:21 ID:Wx7BF/yM

白鐘「……どうでしょう? 由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「…………」


一同「…………」


由比ヶ浜「……ね、白鐘くん」

白鐘「! は、はい」

由比ヶ浜「今から……足立さんに面会って出来る?」


一同「え!?」


白鐘「い、今からですか!?」

花村「もう19:00時過ぎてるぞ……面会時間、さすがに終わってるんじゃないのか?」

225: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:32:20 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「でも、どうしても会っておきたい」

由比ヶ浜「ゆきのんからも聞いたけど、どうして足立さんにそこまでこだわったのか」

由比ヶ浜「私、知りたい」


一同「…………」


白鐘「……わかりました」

白鐘「堂島さんに相談してみましょう」

白鐘「聞いてくれるかどうか、分かりませんが……」

由比ヶ浜「うん、お願い」


花村(さすが、というべきか……俺はそんなこと少しも考えなかったぜ)

里中(でも……親戚だから、仕方なくやってたっていう気もするし)

雪ノ下(…………)

226: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:33:36 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


八十稲羽警察署

面会室


堂島「……ったく」

堂島「こういう事は、これっきりにしてもらいたいな」

白鐘「何度もすみません……」

堂島「まあいい。 なんだかんだ言って世話にはなったし」

堂島「比企谷の保護者代理を引き受けてもいる」

堂島「多少の骨は折ってやるさ」

     ガチャ……

足立「……!?」

227: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:35:35 ID:Wx7BF/yM

堂島「来たか、足立」

足立「……これはどういう事ですか? 堂島さん」

堂島「さあな……俺にもわからん」

堂島「ただ、ここに居る連中は、お前に聞きたい事があるそうだ」

足立「僕に……?」

堂島「事件の事じゃないらしい……ま、話を聞いてやってくれ」

足立「はあ……」


由比ヶ浜「こ、今晩は……足立さん」

足立「今晩は」

由比ヶ浜「覚えていますか? 私のこと……」

228: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:36:40 ID:Wx7BF/yM

足立「ええと……確か」

足立「そうだ、去年の夏くらいに比企谷くんがアパートに連れ込んだ娘だね?」


一同「!?」


花村「え!? あいつ、何しちゃってんの!?」

クマ「アダっちー、もっと詳しく言うクマ!」

由比ヶ浜「い、今は関係無いし、違うから!!」///

足立「相変わらず賑やかだねぇ……君たちは」 クスクス

由比ヶ浜「は、話を戻します!」

由比ヶ浜「それで、ですね……その」

由比ヶ浜「ヒッキー……比企谷くんとは、面会でどんな話をしたんですか?」

229: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:37:33 ID:Wx7BF/yM

足立「う~ん……特別な事は何もしてないと思うけど」

由比ヶ浜「それでも構いません。 話してください」

足立「…………」

足立「……時々差し入れや着替えを持ってきてくれてただけだよ」

足立「僕の両親の代わりにね」

由比ヶ浜「…………」

足立「彼とは別れ際に数言話すくらいだった」

由比ヶ浜「どんな話ですか?」

足立「……最初は鬱陶しかったんだけどね」

足立「ある面会の時、『あなたという人間を知る為』にここに来てるって言ってたよ」

由比ヶ浜「え……」

足立「そういやその時……自分は昔、学校をサボった事があるって言ってたっけ」

足立「話を聞く限りじゃ小学生くらいの時の事みたいだった」

230: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:38:33 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「他にもありますか?」

足立「そうだね……」

足立「…………」

足立「後は、いろいろ褒めてくれたかな」

由比ヶ浜「褒める?」

足立「僕の料理は旨かった、とか、刑事になるのは大変だったろう、とか……」

由比ヶ浜「…………」

足立「……シャクに障るんだけどね」

足立「けっこう嬉しかったんだよ、これが」

231: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:39:44 ID:Wx7BF/yM

足立「なんかね……上手く言えないけど」

足立「親を含めて、僕の周りにそんな事を褒めてくれる人は居なかった」

足立「いや……厳密にはそう思う事が出来なかったんだと思う」

由比ヶ浜「…………」

足立「なのにね……こんな立場になった僕に比企谷くんは」

足立「いいところもあるって、言うんだよ……」

足立「いや、もちろんはっきりそう言った訳じゃないけどね」

足立「けど僕は……そんな感じに受け取った」

由比ヶ浜「…………」

足立「…………」

足立「……そしたらさ」

足立「クソだと思ってた世の中が、少しだけ明るく見えた気がしたんだ」

足立「比企谷くんのおかげだと思うと、ちょっと腹も立つけどね」

由比ヶ浜「…………」

232: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:42:02 ID:Wx7BF/yM

花村(あいつ……こんな事してたのか)

里中(足立さんも……いろいろ抱えてたんだ)

天城(テレビの世界の足立さんは、あくまで一面……)

りせ(けど、あたし達は それが足立さんの全てだって、無意識に考えてた)

白鐘(比企谷先輩は一番間近に居て、それもあって)

白鐘(そうでない事を見抜き、一人、足立さんと向き合っていたのか……)

クマ(さっすがセンセイクマ!)

雪ノ下(…………)


足立「まあ……ついこの前、さすがにこのままじゃいけないと思って」

足立「両親に手紙を出して……ん?」

足立「君、どうしたんだい?」

233: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:42:53 ID:Wx7BF/yM



由比ヶ浜「……っ……ぐすっ……ひくっ……」



一同「」


里中「ど、どうしたの!? 由比ヶ浜さん……」

天城「お腹でも痛いの?」

由比ヶ浜「……ぐっ……違う……くっ……」

花村「…………」

由比ヶ浜「私……たぶん分かったと思う……ぐすっ……でも……」

由比ヶ浜「バカだよ……ヒッキー……大バカだよっ……!」

由比ヶ浜「ヒッキーは……ヒッキーはっ……!」


一同「…………」

234: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:43:59 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


????


比企谷「…………」

比企谷「……う」

比企谷「…………」

比企谷「……ここは?」

比企谷「…………」


比企谷(……霧がかかっている)

比企谷(という事は、テレビの世界か……)

235: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:45:08 ID:Wx7BF/yM

比企谷(…………) ゴソゴソ……スチャ(メガネ装備)

比企谷(鳥居? 初めて見る場所だな……)

比企谷(あの偽バイト……雪ノ下のペルソナと同じ”イザナミ”と名乗っていた)

比企谷(どういう事だろう……何か関係があるのだろうか)

比企谷(…………)

比企谷(ともかく、あいつが俺をここへ放り込んだのは間違いない)

比企谷(さて……どうしたもんかな)


     ――随分と冷静だね――


比企谷「!」

比企谷「イザナギ!」


     ガキィンッ!


236: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:46:03 ID:Wx7BF/yM

イザナミ「おやおや……いきなり攻撃してくるとは」

イザナミ「何をそんなに怯えているんだ?」

比企谷「くっ……! イザナギ!」


     ヒュバッ!


イザナミ「その力は少し邪魔だね」


     ギュルルルルッ!


比企谷「ぐっ!?」

イザナミ「ふふふ……これでゆっくり話ができる」

比企谷「!? ……話、だと?」

237: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:47:21 ID:Wx7BF/yM

イザナミ「そうさ」

比企谷「いまさら何の話だ?」

イザナミ「ん? 君は疑問に思わないのか?」

イザナミ「なぜ私がこんな事をしているのか……」

比企谷「おおよそ想像はついている」

イザナミ「ほう?」

比企谷「お前もアメノサギリ?同様、嫉妬から行動している」

比企谷「おそらく、この街における人間たちの醜悪さを眺める為に」

比企谷「今回の騒動を巻き起こした」

イザナミ「なかなかの推測だね。 けど、惜しいが不正解だ」

比企谷「何?」

イザナミ「私は別に人間の『醜悪さ』を眺めたい訳じゃない」

238: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:48:09 ID:Wx7BF/yM

イザナミ「ただ……”力”を与えた人間が、何をするのか」

イザナミ「どう行動するのか」

イザナミ「退屈しのぎに眺めていただけだよ」

比企谷「…………」

イザナミ「まあ言ってしまえば……」

イザナミ「あの足立とかいう人間と同じだ」

イザナミ「私にはそれができる力が備わっていた。 だからやった」

イザナミ「予想もつかない展開でなかなか楽しかったよ」

比企谷「…………」

比企谷「……けんな」

イザナギ「ん?」

239: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:49:09 ID:Wx7BF/yM



比企谷「ふざけんなッ!!」



イザナギ「……ほう」

イザナギ「意外だな。 君はそんな感情的な人間だと思わなかったが」

比企谷「てめぇの下らない娯楽趣味のせいで」

比企谷「どれだけの人間が傷ついたと思ってやがる!?」

イザナギ「…………」

比企谷「てめぇは……てめぇだけは!」

比企谷「必ず俺がぶちのめしてやるッ!!」

イザナギ「ふふふ……いいぞ」

イザナギ「その憎しみ……実に心地よい」

イザナミ「もっと私を憎め……その心を怒りで満たせ……」

240: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:50:00 ID:Wx7BF/yM

イザナミ「そして……ここで永遠に私と暮らすのだ」

比企谷「!?」

比企谷「何を言ってやがる!?」

イザナミ「ふふふ……」

イザナミ「戯れに始めた事だったが、存外、面白い事ができそうなのでな」

イザナミ「その為にはまず……」

イザナミ「お前の【シャドウ】を出さねばならん」

比企谷「!?」

比企谷「なんだと!?」

イザナミ「お前はもう囚われの身」

イザナギ「抵抗は無意味だ」

241: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:51:30 ID:Wx7BF/yM

比企谷「…………」

比企谷「……やめろ」

比企谷「来るなっ……! 来るんじゃねぇ!!」

イザナミ「ふふふふふふふ……」

     スッ…

比企谷「やめろ……やめろ……!」

比企谷「やめろ、やめろ、やめろっ!」





比企谷「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」






242: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:52:15 ID:Wx7BF/yM


―――――――――――


テレビの世界


花村「さて……閉店ギリギリで危なかったけど」

花村「何とかここに来れたな」

里中「後は、比企谷くんを見つけるだけね」

天城「けど……由比ヶ浜さん」

天城「本当に危ないから、天城屋で待ってた方がいいと思うんだけど……」

雪ノ下「私もそうした方がいいと思う」

由比ヶ浜「…………」

白鐘「安心してください。 必ず連れて帰りますから」

由比ヶ浜「…………」

243: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:53:50 ID:Wx7BF/yM

雪ノ下「……どうしたの? 由比ヶ浜さん?」

クマ「ユイちゃん、もしかして気分でも悪いクマ?」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……これって、もしかして?」


一同「?」


由比ヶ浜「…………」 グッ…!

由比ヶ浜「ペルソナッ!」


     カッ!!


一同「!?」


244: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:55:10 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「出た!!」

由比ヶ浜「私にもペルソナがあった!!」


里中「ウソッ!?」

天城「由比ヶ浜さんにもペルソナが!?」

花村「……まあ状況的には、俺らと同じだしな」

花村「けど……」

雪ノ下「…………」

クマ(な、なんか……怖い顔してるペルソナクマ……)

白鐘(まるで般若のお面をつけているみたいな……)


白鐘「……ちなみに何という名前のペルソナですか?」

245: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:56:38 ID:Wx7BF/yM

由比ヶ浜「ダーキニーって言ってるよ?」

白鐘「ダーキニー……」


花村(白鐘、何か知ってるのか?)

白鐘(詳しくは無いのですが……)

白鐘(確か、鬼の女と書いて『鬼女』というたぐいの化物の名前だったかと)

花村(……あの外見 まんまだな)

里中(何となく分かる様な気も……)

天城(由比ヶ浜さんって、怒らせると怖いのかも……)


由比ヶ浜「これで私も付いてっていいよね?」

里中「う、うん。 とっても強そうじゃん?」

天城「た、頼りになりそうだね、千枝」

246: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:57:40 ID:Wx7BF/yM

りせ「……っ!!」

りせ「見つけた! 見つけたよ、比企谷先輩!」


一同「!」


花村「そうか……朗報だな」

里中(って事は……由比ヶ浜さんの意見、バッチリ合ってたって事じゃん)

天城(さすが由比ヶ浜さん)

クマ(およよ……これが愛の力、というやつクマね~)

白鐘(……僕も早く、あなたくらい比企谷先輩の事)

白鐘(理解できる様になりたい……)

雪ノ下(…………)

247: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:58:37 ID:Wx7BF/yM






     ああ……そうか……

     今……はっきりと分かった






     どうして私は、由比ヶ浜さんに連絡を取ろうとしなかったのか

     答えは、簡単だった……






248: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:59:28 ID:Wx7BF/yM







     私は

     比企谷くんを理解できている由比ヶ浜さんに嫉妬して

     頼りたくなかったんだ……







249: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:00:21 ID:Wx7BF/yM







     どうやっても彼女に勝てないんだ、という事を

     認めたくなくて……







262: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 17:37:38 ID:rVSmZeYo

由比ヶ浜「ううー。 それにしても霧で見えにくいなぁ……」

里中「あ! そういえば由比ヶ浜さん、メガネかけてないじゃん」

由比ヶ浜「メガネ?」

由比ヶ浜「あ、今、気がついたけど、みんなしてるね?」

花村「よし! クマ、なんか可愛いの出してやれ!」

クマ「はいはい……って、ヨースケ、無茶ぶりクマよ~」

クマ「はい、ユイちゃん。 壊れた時にと思って作ったスペアクマ!」

由比ヶ浜「ありがとう、クマくん」

     スチャ… (メガネ装備)

由比ヶ浜「わ! 見える様になった!」

由比ヶ浜「すごいね、これ。 どういう仕組みなの?」

クマ「クマのオメ目と同じレンズを使ってるクマ!」

花村「説明になってねーだろ、それ……」

263: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 17:38:14 ID:rVSmZeYo

花村「ま、それはともかく」

里中「うん! 早いとこ、比企谷くん、助けに行くじゃん!」

天城「いよいよだね……」

りせ「映画で言う、ラストバトルって感じ?」

白鐘「みなさん、気を引き締めていきましょう」

クマ「わかっているクマ!」

由比ヶ浜「待ってて、ヒッキー……!」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

雪ノ下「…………」

250: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:01:18 ID:Wx7BF/yM








     ――私の中の”何か”が――








251: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:02:05 ID:Wx7BF/yM







     ――凍りついた気がした――







265: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:25:08 ID:rVSmZeYo


―――――――――――


黄泉比良坂(よもつひらさか)


花村「お~……何かそれっぽい場所だな」

里中「鳥居? なんで鳥居?」

天城「確か、新しくできる場所って、入れられた人の影響が出るんだよね?」

白鐘「そういえば そうでした」

由比ヶ浜「って事は、ここはヒッキーにとって何か関係のある場所なの?」

クマ「そういう事になるクマね」

雪ノ下「…………」

里中「……ねえ、花村」

花村「ん?」

里中「比企谷くんの【シャドウ】ってどんなだったの?」

266: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:25:49 ID:rVSmZeYo

花村「いや。 あいつは【シャドウ】を出していない」

里中「え? そうなの?」

花村「言われるまで俺も忘れていたけど……確か」

花村「急に苦しみ出して、ハッ!っとした瞬間、ペルソナを出したんだ」

里中「へぇ~」

クマ「むふふ、センセイは特別クマ!」

天城「じゃあ……今回は見られるかも?」


一同「!?」


天城「え? な、何か、変な事、言った?」

267: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:26:32 ID:rVSmZeYo

白鐘「いえ……でも」

白鐘「あまり考えたくないですね……」

花村「比企谷の【シャドウ】か……確かにな」

里中「なんか……えげつないの出しそう」

天城「あ~……そういう事か」

クマ「だ、大丈夫クマよ~。 ……たぶん」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜(……でも、ヒッキーが抱えてる『何か』を知るのには)

由比ヶ浜(一番効果的かも……怖いけど)

由比ヶ浜(…………)

由比ヶ浜(ヒッキーが私たちに見せたくない心の一面……か)


りせ「……みんな」

268: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:27:37 ID:rVSmZeYo

白鐘「ああ、すみません。 久慈川さん」

花村「どうだ? 比企谷は元気にしてるか?」

りせ「…………」

りせ「比企谷先輩は大丈夫。 ちゃんと元気でいるわ」

りせ「だけど……」

里中「だけど?」

りせ「何て言うか……巨大で強力な力を持つ『何か』も居る……!」


一同「!?」


里中「【シャドウ】?」

りせ「反応は確かに似てる。 でも……『何か』が違う」

269: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:28:34 ID:rVSmZeYo

花村「なんか……すべての元凶っぽいな」

りせ「充分気をつけて。 ここ、雑魚の【シャドウ】もかなり強いよ」

白鐘「どうやら一筋縄では行かないようですね……」

里中「わかったよ、りせちゃん。 気をつけて行くじゃん!」

天城「うん。 そうだね千枝」

クマ「クマも頑張るクマ!」

由比ヶ浜「まずは、ヒッキーを助けないとね! ゆきのん!」

雪ノ下「…………」

由比ヶ浜「……?」

由比ヶ浜「ゆきのん?」

雪ノ下「……ごめんなさい、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「頑張りましょう」

由比ヶ浜「うん!」

270: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:29:32 ID:rVSmZeYo


―――――――――――


里中「ふう……」

花村「だいぶ進んだと思うが……どうだ?」

りせ「…………」

りせ「うん! 比企谷先輩、近くにいるよ!」

天城「いよいよだね」

クマ「センセイ、お待たせクマー!」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「あ! あそこ! 誰かいるよ!」

白鐘「確かに人影が……行ってみましょう!」

     タッ タッ タッ…

271: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:30:42 ID:rVSmZeYo


一同「!!」


花村「比企谷!?」

クマ「センセイ! 大丈夫クマ?」

???『……?』

???『ああ、花村達か』

里中「なんだ、元気そうじゃん」

里中「心配する事なかったみたいね」

???『ふふ、里中。 いつも気遣ってくれてありがとう』

天城「え……?」

???『みんなも来てくれたんだ。 とっても嬉しいよ』

白鐘「なにか……雰囲気が」

272: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:31:22 ID:rVSmZeYo

りせ「気をつけて、みんな……」

りせ「そいつ、【シャドウ】だよ!」


一同「!!?」


由比ヶ浜「って事は……まさか!?」

雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】……」

影・八幡『うん。 そうなるかな』

花村「……なんか、考えてたのとイメージ違うな」

里中「随分フレンドリーっていうか……」

影・八幡『ホント!? 嬉しいなぁ』

273: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:32:55 ID:rVSmZeYo

影・八幡『本当はね、僕……ずっと』

影・八幡『友達が欲しくて欲しくて、しょうがなかったんだ』


一同「!?」


影・八幡『ほら、小学校とかで歌った事ないかい?』

影・八幡『友達100人できるってやつ』

影・八幡『僕はね、あれをずっと『できる』って信じていた』


???「やめろっ!!」

一同「!?」


花村「お、あのふてぶてしい目つき。 本物の比企谷だな」

里中「そういうので分かるってのもアレだけど……」

天城「ま、まあ、ある意味トレードマークだし」

りせ「フォローになってないような……」

274: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:33:51 ID:rVSmZeYo


影・八幡『どうしてだよ? 僕は本音を言ってるだけじゃない?』


比企谷「だまれ……そんなもん言って欲しかねーんだよ!」


影・八幡『いいじゃない。 ここに居る人達は』

影・八幡『君が望んで望んで、欲しくてたまらなかった』

影・八幡『大切な人達じゃないか』


一同「」

比企谷「やめろっつってんだろっ!!」


花村(た、大切……ねえ……)

里中(面と向かって言われると、恥ずかしいじゃん……)///

275: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:34:59 ID:rVSmZeYo


影・八幡『きっと大丈夫だよ』

影・八幡『今までみたいな事は起きないって』


比企谷「!!!」


花村「今までみたいな事?」

天城「どういう意味なの?」


比企谷「聞くなっ! お前ら、聞くんじゃねーよ!」


影・八幡『いろいろあったよね……』

影・八幡『今でもどうしてか分からない』

影・八幡『自分は、ただ話しかけただけなのに何故か嫌われる』


白鐘「え……」

276: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:37:03 ID:rVSmZeYo


影・八幡『小学校の担任に『みんな比企谷くんの事、嫌いなのは分かるけど』とか言われたし』

影・八幡『それを察して大人しくしていたら、いつの間にかハブられるし』

影・八幡『そうそう……いつだったか、運動会での練習』

影・八幡『女子から誰とも相手にされなくて、延々とエア・オクラホマミキサーをやらされたっけ』


一同「」


比企谷「やめろって言ってんだろっ!」 ブンッ!


影・八幡『おっと、危ないなぁ』 クス クスッ

影・八幡『誕生会に呼ばれた時も自分のチキン『だけ』用意されていなかったり』

影・八幡『自己責任だけど、給食のカレーを鍋ごとひっくり返してしまった時』

影・八幡『誰も片付けを手伝ってくれなかったし、加齢臭なんてあだ名を付けられたりもした』


一同「…………」

277: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:38:03 ID:rVSmZeYo

比企谷「やめろっ……やめろって……言ってるだろっ……」


影・八幡『変わると思ってた中学も酷かった』

影・八幡『ここでもいろいろあだ名を付けられたね……』

影・八幡『オタガヤだの、引きこもりくんだの、一年生の比企谷さんのお兄さんだの……』

影・八幡『挙句が『比企谷菌』と、病原菌扱いだ』


花村(……おいおい)

里中(聞いててお腹がキューってなる……)

天城(壮絶すぎ……)

278: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:39:11 ID:rVSmZeYo


影・八幡『でも……僕は諦めなかった』

影・八幡『いつかは、きっと、と、愛想の本を読んだりして努力は怠らなかった』

影・八幡『そして……』


比企谷「……!!」

比企谷「ま……まさか!?」


影・八幡『そんな僕にも好きな女の子ができた』


一同「!」


比企谷「や、やめろ……てめぇ、マジやめろっ!!」

281: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:41:10 ID:rVSmZeYo


影・八幡『失敗する事も考えてたけど……僕は勇気を振り絞って告白した』

影・八幡『そしたら……』


比企谷「言うなっ! 頼むから、な!? お願いだっ!!」

比企谷「それだけは、それだけはっ!!」


影・八幡『『マジキモイ。 やめてくんない?』であえなく撃沈』


比企谷「もういいだろっ!? もう終われよっ!!」


花村(? まだなんかあるのか?)

里中(そうとうキツイ振られ方だけど……)

天城(これだけでも充分嫌だよね……)

りせ(でも、ちょっと知りたい……)

282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:43:03 ID:rVSmZeYo



影・八幡『そしてその翌日。 クラス全員、僕が振られた事を知っていた』



一同「」


比企谷「……っ」


影・八幡『ショックだったよね。 しかもその女の子が』

影・八幡『それを広めた張本人だったし』


一同「…………」


影・八幡『あ、そうそう。 このエピソードでナルガヤとかいうあだ名も……ん?』


283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:43:59 ID:rVSmZeYo

クマ「もうやめるクマ!」

由比ヶ浜「うん……もういいよ、ヒッキー」

雪ノ下「少し黙ってて」

白鐘「もう……そのあたりにしてあげてください」


影・八幡『…………』

影・八幡『ダメだよ。 僕にちゃんとわからせないといけない』

影・八幡『”違う”んだって事を』


花村「それなら俺たちがやる」


影・八幡『え?』


花村「俺たちに任せてくれ」

284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:45:42 ID:rVSmZeYo


影・八幡『…………』

影・八幡『……いや、君たちでは無理だよ』


花村「なんで言い切れるんだよ?」


影・八幡『久保美津雄の時……僕はね』

影・八幡『君たちが怖くなったからさ』


里中「怖い? あたしらが?」


影・八幡『久保美津雄は、まるで鏡を見ている様な錯覚を覚えるほど』

影・八幡『僕の影法師だったんだ』

影・八幡『そして君たちは、その久保美津雄をなんて言ってたか覚えているかい?』


一同「……!!」

285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:46:56 ID:rVSmZeYo

花村「そういう事か……」

里中「うわ……あたしらキモイとか言いまくってたじゃん……」

天城「じゃあ……どうしてあの時、感情的に攻撃したの?」


影・八幡『同属嫌悪ってやつだと思う』

影・八幡『僕は、久保美津雄の気持ちが痛いほど分かった』

影・八幡『彼もまた心に傷を持ち、居場所を求めていたのだと……』

影・八幡『でも、同時に誰かを傷つける行動を取ったあいつが許せなかった』

影・八幡『……いや』

影・八幡『まるで未来の自分を見せられてるようで、気に食わなかったのかもしれない』


一同「…………」

286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:48:10 ID:rVSmZeYo

花村「……なんつーか」

花村「想像以上にトラウマ抱えていたんだな、お前って」


影・八幡『まあね……』

影・八幡『さ、わかっただろう? 君たちでは無理だって』


花村「やかましい。 ちょっと黙ってろ」


影・八幡『え……』


花村「ったく……【シャドウ】でもしっかり比企谷してんな」

花村「何一人で自己完結してんだよ?」

花村「全部自分だけで解決しようとすんな」


影・八幡『…………』

287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:49:20 ID:rVSmZeYo

比企谷「…………」

花村「比企谷……」

花村「もう分かってんだろうけど【シャドウ】は、お前の一面だとしても」

花村「言ってる事は全部『本心』だ」

比企谷「…………」

花村「もう答えは出てる」

花村「いや、出してくれたんだ。 由比ヶ浜さんが」

比企谷「!」

里中「なんて言うかさ、あたしらも比企谷くんがおかしいって思ってはいたじゃん?」

天城「でもね……単純に私たちの事、どうでも良くなったのかな?って」

天城「それくらいにしか感じられなかった」

288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:50:33 ID:rVSmZeYo

りせ「今【シャドウ】が言ってくれたよね?」

りせ「あたし達の事、大切な人達だって……」

クマ「センセイ、もう秘密にしなくていいクマ」

白鐘「抱え込む事もありません」

雪ノ下「だから……もうそんなに自分を責めないで」

由比ヶ浜「ヒッキーは、何も悪くない」


比企谷「……っ」


影・八幡『…………』

影・八幡『ふふっ……やれやれ』

影・八幡『予想外だったね。 ここまで見抜かれているなんてさ』

289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:51:59 ID:rVSmZeYo

影・八幡『自分のせいで周りの人達を傷つけている、と思い込んでいるの』

影・八幡『バレているみたいだよ?』


比企谷「…………」


影・八幡『せっかく徐々に、少しずつ、距離をとって』

影・八幡『それとなく疎遠になって、ひっそり生きるつもりだったのにね』


比企谷「…………」


影・八幡『由比ヶ浜なんて生き返ったものの一度死なせてしまったし』

影・八幡『久保は本当に死んでしまった』

影・八幡『堂島さんも怪我をしてしまうし、生田目も殺しかけた』

影・八幡『足立さんですら、自分と関わらなければ、こんな事起こらなかったと思っている』

影・八幡『周りの人達が不幸になるのは、全て自分が悪いんだ、と……」

290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:53:07 ID:rVSmZeYo


一同「…………」


由比ヶ浜「ね、ヒッキー」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「私たちって……ヒッキーを傷つけてきた人達と同じかな?」

比企谷「……っ!」

由比ヶ浜「もし、違うって思ってるのなら……」

由比ヶ浜「証明して欲しい」

比企谷「……証…明?」

由比ヶ浜「うん!」

由比ヶ浜「あの【シャドウ】を……『自分』を認めてあげて? そして……」

由比ヶ浜「ヒッキーがずっと抱えてた事……思ってた事、言って欲しい」

291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:54:03 ID:rVSmZeYo

比企谷「い、言えるわけ……」

花村「おいおい。 そりゃねーだろ、比企谷」

花村「俺らもよ、【シャドウ】や見せたくない気持ちを お前に見られてきたんだぜ?」

比企谷「…………」

里中「そーいやさ」

里中「どっかの誰かさん、由比ヶ浜さんに信頼がーとかって言ってたじゃん?」

天城「うん。 確かに言ってたね、千枝」

比企谷「…………」

りせ「ほんの少しでいいんだよ、比企谷先輩」

クマ「勇気を出して欲しいクマ!」

比企谷「…………」

292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:55:22 ID:rVSmZeYo

白鐘「比企谷先輩」

白鐘「僕は、あなたから逃げません」

白鐘「だから、先輩も逃げないでください」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ヒッキー」

由比ヶ浜「私たちと過ごした時間は……絶対無駄じゃない」

由比ヶ浜「あなたは、ずっと私の『特別』だよ?」

比企谷「…………」

雪ノ下「……私に何が出来るわけでもない。 でも」

雪ノ下「傍にいるくらいは、してあげられる」

雪ノ下「あなたは……もう一人じゃないわ」

比企谷「…………」

293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:56:25 ID:rVSmZeYo


影・八幡『……僕には分かるよ』

影・八幡『君が僕と向き合う事、どんなにか怖いのか……』

影・八幡『だって僕は、君だからね』 クスッ


比企谷「…………」


影・八幡『僕は……君のトラウマそのものと言っていい存在だ』

影・八幡『できるなら、消してしまいたいと思っているのも知ってる。 でもね……』

影・八幡『こんな形で対話できてるけど、僕はずっと君の中に居た』


比企谷「!」


影・八幡『だから、あえて言うよ?』

294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:57:37 ID:rVSmZeYo





影・八幡『もう一度だけ、頑張ってみようよ?』





比企谷「…………」





一同「…………」





295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:58:54 ID:rVSmZeYo

比企谷「……っ」

比企谷「…………」

比企谷「……そうやって」

比企谷「俺は自分を奮い立たせてきたさ……何度も、何度も」


一同「…………」


比企谷「この方法はダメだった……」

比企谷「あれがいけなかったんだ……」

比企谷「だからみんな、あんな事を俺にするんだ……」

比企谷「じゃあ次は、ってな……」


影・八幡『…………』

296: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:59:56 ID:rVSmZeYo



     そうして行く内に……失敗と反省を繰り返して行動すれば

     いずれ誰かが俺を受け入れてくれる。



     少しずつでも、あの歌の様に

     友達と呼べる人間や、仲間、そして

     彼女と呼べる存在に囲まれて笑って過ごせる時が、いつか来る。



297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:00:47 ID:rVSmZeYo







     そう信じて







298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:01:58 ID:rVSmZeYo



     でも返ってくるものはいつも侮蔑、嘲笑、軽蔑……

     正直、気が狂いそうだった。



     朝、学校に行ったら自分の机がベランダに放り出されてた事があった。

     下駄箱にゴミを入れられてた事もあった。

     ラブレターに喜んでたら、イタズラだった事なんて何度もあった。



300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:03:05 ID:rVSmZeYo



     どれが「きっかけ」かなんて……もうわからない。

     ある日、俺の心は折れた。



     何やっても嫌われる。

     どうやっても気持ち悪いって言われる。

     自分を受け入れる人間なんて何処にも居ない。



301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:04:03 ID:rVSmZeYo






     だったら






302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:05:03 ID:rVSmZeYo



     最初から嫌われてやる。

     俺に近寄ってくんな。

     俺を傷つけるな。



     どうせ馬鹿にしたいんだろ。

     笑い者にしたいんだろ。

     気持ち悪いんだろ。

     

304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:06:14 ID:rVSmZeYo



     ぼっちは楽だった。

     心は痛まないし、誰かを気遣う心配もない。

     もう開き直って嫌われてもいいやって思ってるから

     何かに動じる事もなくなった。



     …………



     けど



305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:07:22 ID:rVSmZeYo



     世界は何も変わらない。

     変化しない。

     ただ、流れていく。



     無機質に、無感情に、機械的に。



     そこに求めていた”もの”は

     『かつて』欲しかった”何か”は

     当たり前だが、何もなかった。



306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:08:26 ID:rVSmZeYo



     総武高校に通いだしてすぐ

     俺は事故に会った。



     後で知る事になるが、雪ノ下と由比ヶ浜が

     ほんの少し関わっていた、あの事故。

     俺は3週間、入院する事になった。



307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:09:24 ID:rVSmZeYo



     当然だが……本当に当然なのだが

     俺には家族と看護師、それに医者しか話しかけてくる人が居なかった。

     他人からの見舞い、なんてものも当たり前にない。



     6人部屋の角のベッドに俺は居た。

     隣のおっさんには、職場の同僚と学生時代の友人らしき人が見舞いに来ていた。

     向かいの小学生は、その隣の女の子と仲が良さそうだった。



     別にどうでもいい。 俺には関係ない。

     いまさら何に期待している。

     俺は、自分にこれでいいんだ、と、言い続けた。



308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:10:40 ID:rVSmZeYo

比企谷「でもよ……」

比企谷「多少なりとも人付き合いが続くようになって」

比企谷「少しは変わるかも、とか思い出してた」

比企谷「だが、その矢先に今度は一年間の転校……」

比企谷「なんかさ……もう究極に意地の悪い神様が」

比企谷「とにかく俺をぼっちにしたいんだな、としか考えられなかった」


影・八幡『…………』


比企谷「だけど……ここに来てからの毎日」

比企谷「何て言うか、悪くなかった」

比企谷「もしかしたら、大丈夫なのかも……探していた”何か”かもと」

比企谷「少し考える様になっていた」


一同「…………」

309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:11:55 ID:rVSmZeYo

比企谷「だが、どうしても踏み出せなかった……」

比企谷「過去の経験が……裏切られた時のクソな痛みが、フラッシュバックしやがる」


影・八幡『…………』


比企谷「俺は……」

比企谷「それが……怖くて……ぐ……怖くて……くっ……」

比企谷「ただ……怖くて……うあっ……ぐっ……」


一同「…………」

310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:13:03 ID:rVSmZeYo

比企谷「………ふ……ぐっ………く……」

比企谷「うっ………くっ……ひぎっ……」

比企谷「…………はっ……」


影・八幡『…………』


比企谷「…………」

比企谷「ああ……そうだとも」

比企谷「お前は、確かに俺だよ」

比企谷「俺は……ずっと友達と呼べる存在が欲しかった」

比企谷「大勢の人間に囲まれて、笑って過ごせる日常が欲しかった」

比企谷「誰からも好かれ、受け入れられる人間でありたいと……思っていた」


影・八幡『…………』


比企谷「……そうさ、本当は」

311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:14:07 ID:rVSmZeYo








比企谷「ひとりでなんて……居たくなかった!」








312: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:15:27 ID:rVSmZeYo


     シュウウウウウウウウ……!


一同「!!」


花村「【シャドウ】が……!」

里中「うん! 受け入れたんだね、比企谷くん」

天城「良かった……」


影・八幡『これでお別れ……ううん』

影・八幡『元通りだね』


比企谷「…………」


影・八幡『話せて良かったよ……けど』

影・八幡『もう一つ……いや、四つかな?』

影・八幡『けじめを付けないと いけない事があるね』

313: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:16:24 ID:rVSmZeYo

比企谷「……言われなくても分かってるっての」


影・八幡『そうだった』 クスッ

影・八幡『君は僕だものね』


比企谷「…………」


影・八幡『さよならは言わないよ?』


比企谷「ああ、それも分かってる」

比企谷「お前は俺で……俺は、お前だからな」


影・八幡『…………』 ニコッ

314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:17:06 ID:rVSmZeYo


     ヒィイイイイイインッ!


白鐘「ペルソナ、ですね……」

由比ヶ浜「うん……!」

雪ノ下「…………」

クマ「およよー……白いイザナギクマ!」

りせ「何だか、神々しいね」

りせ(強さは、あまり変わってない感じしたけど……)

比企谷「…………」

花村「大丈夫か? 比企谷」

比企谷「…………」///

花村「へへっ、なぁーに赤くなってんだよ!」

比企谷「……るせーよ」///

315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:18:29 ID:rVSmZeYo

花村「まっ、これで俺らの気持ちがわかっただろ?」

花村「お前だけ恥ずかしい一面、見せてなかったもんな!」

里中「……そういやさ、花村」

花村「あん?」

里中「そー言うあんたの『恥ずかしい一面』をあたしは知らないじゃん?」

花村「!」

天城「確かにそうだね、千枝」

由比ヶ浜「……ねえ、みんな」

由比ヶ浜「それを言ったら、私なんてヒッキー以外、見てないんだけど……」


一同「!?」


比企谷「ふふふ……確かに不公平だな」

316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:19:13 ID:rVSmZeYo

比企谷「安心しろ由比ヶ浜」

比企谷「俺がきっちりと教えてやる」

花村「いやいやいや! べ、別に、知らなくてもいいんじゃね!?」

花村「俺のなんて、面白くも何ともねーし!」

里中「花村! あんたのせいでヤブヘビになっちゃったじゃん!」

天城「そうだよ。 どうしてくれるの、花村くん!」

花村「お前ら!? 俺だけ悪者にしやがって! ずっりぃぞ!」

由比ヶ浜「うふふ~楽しみだなぁ♪」

りせ「き、聞く気、満々だね……由比ヶ浜さん」

白鐘「……勘弁してください」

雪ノ下「……同じく」

クマ「クマは喜んで話すクマ!」

317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:02 ID:rVSmZeYo

比企谷「……さて」

比企谷「落ち着いたところで、俺の知った情報と状況を教えておく」

白鐘「お願いします」

―――――――――――

白鐘「イザナミ……ですか」

雪ノ下「…………」

比企谷「まあ、雪ノ下のペルソナと関係があるのか、無いのかはわからん」

比企谷「ともかくあいつは、そう名乗り」

比企谷「俺みたいな才能持ちを能力者にした」

比企谷「先のわからない娯楽作品へ仕立て上げる為にな」

318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:43 ID:rVSmZeYo

里中「最っ低じゃん!」

花村「だな……理由があればいいわけじゃねーが」

花村「できれば聞きたくなかった動機だぜ……!」

りせ「とにかく、後は元凶のそいつを倒せばいいって事ね?」

比企谷「そうなるな」

由比ヶ浜「じゃあ話は簡単だね!」

由比ヶ浜「早くやっつけに行こう!」

クマ「クマ!」

雪ノ下「ちょっと待ってくれるかしら」

天城「どうしたの? 雪ノ下さん」

雪ノ下「その……犯人のイザナミは、どうして比企谷くんの【シャドウ】を呼び起こしたの?」

雪ノ下「もっとはっきり言うと、比企谷くんで『何』をしたかったの?」

比企谷「……はっきり言ってわからん」

319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:23:08 ID:rVSmZeYo

比企谷「あいつは俺の【シャドウ】を見た途端」

比企谷「大きく失望していた様に見えた」

雪ノ下「失望?」

比企谷「……そういや」

比企谷「おぞましいが、ここで永遠に暮らす為とか何とか言ってたと思う」


一同「!?」


りせ「暮らす? 比企谷先輩と?」

花村「モテモテだな、比企谷!」

比企谷「うれしくねーっての……」

320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:01 ID:rVSmZeYo

比企谷「とにかくだ」

比企谷「あいつが今回の騒動の元凶なのは間違いない」

比企谷「詳しくはあいつと対峙してから聞けばいいだろう」

比企谷「そして……叩きのめす!」

     オオー!

由比ヶ浜「ヒッキー、ちょっとかっこいいね!」

比企谷「そんなつもりじゃない」

由比ヶ浜「あ、そうだ! 私のペルソナ見てよ!」

由比ヶ浜「えいっ!」

     カッ!

比企谷「無駄にペルソナ出してん……!?」

由比ヶ浜「どう? かっこいいでしょ!」

比企谷「お、おう……」

321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:48 ID:rVSmZeYo

由比ヶ浜「ダーキニーって言うんだ」

由比ヶ浜「とっても強いんだよ?」


比企谷(ダーキニーって……鬼女……うわぁ)

白鐘(比企谷先輩……知っているみたいですね)

花村(まあ……驚くわな)


比企谷「……あ」

花村「? どうした? 比企谷?」

比企谷「…………」///

比企谷「……その、言うの忘れてたが」///

比企谷「助けに来てくれて」///

比企谷「ありがとう、な……」///

322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:25:35 ID:rVSmZeYo


一同「!」


花村「へへ、気にすんなよ!」

里中「当然の事じゃん!」

天城「どういたしまして」 クスッ

りせ「ふふふ、ちょっとくすぐったいね」

クマ「クマはセンセイの為なら頑張るクマ!」

白鐘「このくらい、当たり前ですよ」

由比ヶ浜「これくらい何でもないよ! ヒッキー!」

雪ノ下「お礼を言われる程の事じゃないわ」


     アハハ……


323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:26:33 ID:rVSmZeYo


―――――――――――


黄泉比良坂(よもつひらさか)最深部


     ゾロ ゾロ ゾロ…

比企谷「……よお」

イザナミ「ん? ……ほう、君か」

イザナミ「【シャドウ】に食われなかった様だな」

比企谷「俺一人だと、やばかったと思う」

イザナミ「ふん……くだらぬな」

花村「はあ!? くだらねーだと!?」

花村「人の命がかかっているってのに、何言ってやがる!」

324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:27:41 ID:rVSmZeYo


イザナミ「失望しただけだよ……」

イザナミ「イザナギを持つ者にな」


比企谷「失望?」


イザナミ「そうだ」

イザナミ「表面上は恨み、妬み、嫉(そね)んでおきながら」

イザナミ「結局は誰かを求める矮小な存在であったのだから」


里中「それのどこがおかしいじゃん!?」


イザナミ「そうとも。 おかしくはない」

イザナミ「『普通の人間』としてね」

325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:28:34 ID:rVSmZeYo

天城「どういう意味?」

天城「じゃあ、あなたは『何』を求めているの!?」


イザナミ「ふふふ……」

イザナミ「それは、我と対等なる者」

イザナミ「絶対者なる我と同等の力を持つ者」

イザナミ「我と等しく、憎しみを抱き、恨む者」


一同「……!?」


りせ「何を言ってるの? 訳わかんないよ!」

326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:29:44 ID:rVSmZeYo


イザナミ「わからぬのも当然だ」

イザナミ「常人では届き得ぬ高みに我は居るのだからな」


クマ「ムキー! よくわからんけど、バカにするなクマ!」

白鐘「御託はたくさんです。 あなたの引き起こした事象により」

白鐘「人が傷つき、亡くなった方もいる」

白鐘「その償いは……必ずしてもらいます!」


イザナミ「ほう……言っておくが、我は『きっかけ』を与えただけに過ぎん」

イザナミ「『力』を得た者が勝手にやった事……それでも我に責任があるとでも?」


由比ヶ浜「当たり前でしょ!」

由比ヶ浜「あなたを野放しにしてたら、今回みたいな事がまた起こる!」

雪ノ下「必ず、ここで終わらせる!」

327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:30:23 ID:rVSmZeYo








     ペ   ル   ソ   ナ  !!








328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:31:18 ID:rVSmZeYo


イザナミ「ふふふ……愚かな」

イザナミ「人の身でありながら、絶対的な力を持つ我に逆らうとは」

イザナミ「役者の分を超え真実を求めすぎた代償……たっぷりと払うがよい」


     ゴウンッ……!!


比企谷「くっ……霧が」

雪ノ下「霧が一段と濃くなった……!」

花村「ちっ……!」


     ふふふ……


りせ「!!」

りせ「み、みんな! あそこ!」

白鐘「……!」

白鐘「なんて……大きさだ!」

329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:32:31 ID:rVSmZeYo



     イザナミは、それまでの中性的な人間形態?をやめ

     濃い霧を出したかと思うと……巨大な化物へと変化していた。



     その姿は

     大きなスカート……いや、釣鐘状の白い物体に

     包帯をぐるぐる巻きにした人間らしき形状の上半身が

     それにちょこんと乗っかっている。



     これまでに出会ってきた【シャドウ】のデザインに似た何かを感じるが

     大きさが規格外に違っていた。



330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:33:41 ID:rVSmZeYo

クマ「あんなの、ただのコケおどしクマ!」

由比ヶ浜「そうよ! 怖くなんか……怖くなんか、ないんだからっ!」


     さあ……かかって来るがよい


由比ヶ浜「ダーキニー!!」

花村「ジライヤ!!」

天城「コノハナサクヤ!!」

里中「トモエ!!」

クマ「援護は任せるクマ!! キントキドウジ!!」

白鐘「スクナヒコナ!!」

雪ノ下「回復は任せて!! イザナミ!!」

りせ「しっかりアナライズするから!! ヒミコ!!」

331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:34:21 ID:rVSmZeYo

比企谷「イザナ――」


     ――我は汝――

     ――汝は我――


比企谷「ぐっ!?」


雪ノ下「!?」

雪ノ下「比企谷くん!?」


     ――汝、ついに真実の絆を得たり――


比企谷(こ、これは……!?)

332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:05 ID:rVSmZeYo


     ――真実の絆――

     ――それは即ち――


比企谷(間違いない、イザナギが……ペルソナが目覚めた時)

比企谷(あの時に聞こえた、謎の声!!)


     ――真実の目なり――


比企谷(…………)


     ――今こそ汝は見ゆるべし――

     ――様々な究極の力――

     ――汝のその内に宿せし事を――


比企谷(…………)

333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:57 ID:rVSmZeYo

―――――――――――

イゴール「ほほう……これは」

イゴール「節目の年を超えられたお客様に」

イゴール「更なる”力”が目覚めた様でございますな……」

マーガレット「これが……”ワイルド”の真の力」

イゴール「誠に……希少なる存在」

イゴール「ふふふ……」

―――――――――――

334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:37:08 ID:rVSmZeYo

雪ノ下「大丈夫!? 比企谷くん!?」

比企谷「…………」

比企谷「……!」

比企谷「これは……この力は?」

雪ノ下「比企谷……くん?」

比企谷「……っ!」 グッ…!


比企谷「スカアハ!」


一同「!?」


花村「え!?」

里中「イザナギじゃないの!?」

335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:38:13 ID:rVSmZeYo


     ガ ル ダ イ ン!

     ヒュゴオオオオオオオッ!!


りせ「す、すごい力を持ってるよ! あのペルソナ!」

里中「なになに!? ここに来て比企谷くん、覚醒!?」

由比ヶ浜「ヒッキー、かっこいい!」


比企谷「コウリュウ!」


一同「!!?」


クマ「ま、また、知らないペルソナクマ!」

白鐘「い、いったい、何が!?」

天城「今はありがたいから、いいんじゃないかな?」

336: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:04 ID:rVSmZeYo

比企谷「フツヌシ!」

比企谷「マダ!」

比企谷「ロキ!」

比企谷「ルシフェル!」

比企谷「イシュタル!」

比企谷「ルシファー!」


花村「おいおいおい!? 何回チェンジしてんだよ!?」

雪ノ下「ここまで来るとバーゲンセールね……」

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん。 的確だけど、ありがたみが全然無くなるからやめよう?」

クマ「さっすがセンセイクマ!」

337: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:57 ID:rVSmZeYo


     ズゴゴゴゴゴ……


里中「まあ、それはともかく、これで決まったっぽいじゃん?」

天城「そうだよね」

天城「私たちのペルソナの攻撃も入ってるし」

白鐘「さすがに耐えられないでしょう……」

白鐘「……ん?」

りせ「…………」

白鐘「どうしました? 久慈川さん?」

りせ「なんで……どうしてなの……?」 カタ カタ カタ…

白鐘「久慈川さん?」


りせ「みんな、気をつけて! あいつ……」

338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:41:21 ID:rVSmZeYo






りせ「全然、弱ってないっ!」






一同「!?」


     ふふふ……どうしたんだい?

     まさか、そんな小さな力で我を倒す気でいたのかな?


一同「…………」

339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:14 ID:rVSmZeYo






     我を消すなど不可能だ

     なぜそれが分からない?

     くくく……何も理解していない証拠だね






340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:52 ID:rVSmZeYo








     愚か者め!








341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:43:48 ID:rVSmZeYo

里中「嘘でしょ……」

天城「あんなに攻撃を受けたのに……」

花村「へっ……いいじゃねーかよ」

花村「これこそラスボスって感じでな……!」

クマ「ク、クマ、まだ戦えるクマ!」

白鐘「……まだ、これからです!」

由比ヶ浜「た、倒せる……よね?」

雪ノ下「……と、当然よ、由比ヶ浜さん」

りせ「…………」

比企谷「………っ」

342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:44:48 ID:rVSmZeYo






     この時――

     その場にいる誰もが戦慄を覚えた。







351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:58:58 ID:.CuJq6kg


――――――――――


花村「うわああああああああっ!!」

里中「花村ぁっ!!」

里中「こんのぉ……! トモエ!」


白鐘「はあ……はあ……」

天城「待ってて、みんな! コノハナサクヤ!」


花村「……す、すまねぇ、天城」

クマ「ペルクマー!!」

352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:59:33 ID:.CuJq6kg

比企谷「くそっ! どうなってやがる!?」

比企谷「アメノサギリ?だって、2~3体は倒せてるくらいだろ!」

比企谷「ルシファー!!」


     ドゴォォォォォンッ!!


雪ノ下「久慈川さん、どうなの!?」

りせ「ダメ……わかんないよ!」

りせ「あいつのパラメーターは、とっくに限界を超えたダメージを受けてる」

りせ「それなのに……それなのに!」

由比ヶ浜「ダーキニー!!」

由比ヶ浜「もう! 手応えはあるのに、全然弱っている気がしない!」

由比ヶ浜「どこかに弱点とか無いの!?」

353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:00:33 ID:.CuJq6kg



     俺たちは、全力でイザナミを攻撃していた。

     しかし、まったくダメージになっている様子がない……

     奴の反撃が大した事ないのが唯一の救いだが

     終わりが見えてこない戦いというのは、正直、精神的にキツイ。



     イザナミさん、早いとこ死んでくれませんか?

     割とマジで



354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:01:29 ID:.CuJq6kg

花村「はあっ、はあっ……クソッ」

花村「ジライヤ!!」

由比ヶ浜「ダーキニー!!」


比企谷「……!」

比企谷(ちっ……花村達、直接攻撃が多くなってる)

比企谷(MP的なのが切れかけてるみたいだな……)

比企谷(…………)


雪ノ下「……比企谷くん」

比企谷「どうした? 雪ノ下?」

雪ノ下「私のペルソナも限界が近いわ……このままじゃジリ貧よ」

比企谷「……分かってる」

比企谷「真綿で首を締められてる気分だな」

雪ノ下「的確だけど、今、言わないでくれる?」

355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:02:36 ID:.CuJq6kg

白鐘「スクナヒコナ!」

クマ「いい加減、しつこいクマ!」

里中「トモエ!」

天城「はあ……はあ……」


比企谷(くそっ……!)

比企谷(どうする!?)

比企谷(どうすればいい!?)


花村「ち、畜生……」

花村「昔やった、ゲームを思い出すぜ……」

里中「はあ、はあ……ゲーム?」

356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:03:40 ID:.CuJq6kg

花村「なんつったかな……」

花村「ラスボスに有効なアイテム忘れて、無駄に攻撃してたってのがあんだよ」

里中「イザナミにもそういうのあれば……って事?」

花村「あるのなら、今からでも取ってく……うおっと!?」

花村「あ、あぶねぇ……」

里中「うかうか無駄話もしてらんないね……」

花村「そうだ、思い出した!」

花村「ひ○りの玉ってアイテムだ!」

比企谷「バーカ……あれはな、それ無しでも一応倒せんだよ」

花村「え? マジで?」

比企谷「確かにラスボス、めちゃくちゃ強いけどな……ん?」

比企谷「ひ○りの……『玉』?」

比企谷「!!」

357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:04:46 ID:.CuJq6kg



     俺は、不意に上着のポケットをまさぐった。

     手にガラス状の、ゴルフボール位の大きさの球体が触れる。

     そうだ……いつ貰ったのか忘れていたが

     誰かから嘘を暴き、真実を照らすとか何とか言われたと思う。



     もうみんな限界が近い。

     はっきり言って……はたから見たら痛い動作でしかないが

     俺はそれを、謎の球体を自分の頭の上に掲げた……!




次回 比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目 後編