比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」前編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」中編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」後編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 前編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 中編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 後編
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:30:48 ID:DloooeSQ
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」中編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」後編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 前編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 中編
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」2スレ目 後編
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:30:48 ID:DloooeSQ
―――――――――――
放課後
総武高校 奉仕部部室
コン コン ガラッ
川崎「よう、由比ヶ浜」
葉山「やあ」
由比ヶ浜「あ、二人共。 わざわざごめんね?」
葉山「別にいいよ。 それで、ヒキタニ君の事なんだけど……」
由比ヶ浜「うん」
引用元: ・比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:32:24 ID:DloooeSQ
葉山「僕としては、いつも通り、という印象の中に」
葉山「どことなく壁を感じたかな?」
葉山「まあ……久しぶりに会ったから」
葉山「いつもの彼を そう思っただけかもしれないけどね」
川崎「あたしはどうにもねぇ……」
川崎「なーんか昔の自分を見ているみたいでイライラしちゃったよ」
由比ヶ浜「昔の……?」
川崎「誰かに頼るのが、イヤでイヤでしょうがなかった時の、ね……」
由比ヶ浜「…………」
川崎「……心配かい?」
由比ヶ浜「え?」
川崎「そんなに気になるのなら、スキーに行けば良かったのに」
由比ヶ浜「……そうしたかったんだけどね」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:33:31 ID:DloooeSQ
由比ヶ浜「私のお父さんと、お母さんに」
由比ヶ浜「もう心配かけたくなくて……」
葉山「……なるほど」
川崎「……そういう事か。 悪かったね、余計な事を言って」
由比ヶ浜「ううん……」
由比ヶ浜「二人共ありがとう」
由比ヶ浜「向こうには、ゆきのんも花村くん達も居るし」
由比ヶ浜「何かあったら連絡くれると思うから……」
葉山「ああ……僕に何か出来る事があれば、遠慮なく言ってくれ」
葉山「じゃ、また明日」
川崎「あたしも出来るだけやってやるよ」
川崎「またな」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:34:33 ID:DloooeSQ
由比ヶ浜「うん。 本当にありがとう」
由比ヶ浜「またね!」
ガララッ…… パタン
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜(やっぱり……何かおかしいって思ってるんだね、ゆきのん)
由比ヶ浜(どうしたんだろう……ヒッキー)
由比ヶ浜(…………)
由比ヶ浜(でも……しばらくは我慢しないと)
由比ヶ浜(さいちゃんとかに勉強教えてもらっている身だし……)
由比ヶ浜(入院して遅れた分を早く取り戻さないと)
由比ヶ浜(…………)
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:35:35 ID:DloooeSQ
―――――――――――
夕方
ジュネス八十稲羽店 フードコート
花村「ったく、あいつら! 人の気も知らねーで!」
里中「そう言う噂、立てられる身にもなってみろじゃん!」
天城「…………」
雪ノ下「……1年生の方はどうだった?」
りせ「だいたい同じ……ううん、ある意味もっと酷いかも」
白鐘「僕のクラスは、なぜか巽くんが一括してくれて表面上は静かになりました」
雪ノ下「そう……」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:36:32 ID:DloooeSQ
比企谷「……まあ、気にするな」
比企谷「こうなる可能性は予測していた」
比企谷「俺は気にしていない」
一同「…………」
里中「そうは言うけどさ」
天城「気持ちは良くないよ……」
花村「ダチが悪く言われてんだぞ? 気分いい訳無いだろ、比企谷」
比企谷「人の噂も75日だ」
比企谷「もっとも……その頃に俺は、ここから居なくなるけどな」
一同「…………」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:37:45 ID:DloooeSQ
りせ「……比企谷先輩」
りせ「その言い方は良くないと思う」
比企谷「事実は事実だろ」
白鐘「その通りです。 けど……」
白鐘「ここで……八十稲羽で過ごした事を無駄だと言ってる様に聞こえます」
比企谷「……そんなつもりじゃなかったが」
比企谷「悪かった。 謝る」
白鐘「……いえ」
比企谷「さて、俺はそろそろ帰る」
一同「!?」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:38:44 ID:DloooeSQ
花村「おいおい……せっかく人が心配して集まってんのに」
比企谷「今のところ、有効な打開策は見いだせない」
比企谷「正直……俺と居るところを目撃されると、お前らも噂に巻き込まれるぞ?」
一同「…………」
比企谷「今は様子を見るしかない」
比企谷「それでいいだろ?」
一同「…………」
比企谷「……じゃあな」
スタ スタ スタ…
一同「…………」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:39:45 ID:DloooeSQ
里中「……なーんか、ヤな感じ」
天城「確かに比企谷くんの言う通りだけど……」
りせ「そりゃ……悪い噂、立てられたくはない……でも……」
雪ノ下「…………」
白鐘「……比企谷先輩なりの気遣いでしょう」
花村「やっぱ……そうだよな」
白鐘「それに……」
花村「ん? それに?」
白鐘「…………」
白鐘「もしかしたら、ストックホルム症候群かもしれません」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:40:46 ID:DloooeSQ
雪ノ下「!」
花村「ストックホルム?」
里中「何それ? 病気?」
雪ノ下「1973年にスエーデンの首都、ストックホルムで起こった」
雪ノ下「銀行強盗・立てこもり事件に起因する事から付けられた俗称よ」
天城「それで?」
白鐘「簡単に言いますと……」
白鐘「本来は被害者の立場なのに、長く犯人と接する事で情が移り」
白鐘「犯人と共に行動したり、犯人に有利な行為をしたりする事を指します」
りせ「……?」
りせ「それと比企谷先輩に何の関係があるの?」
白鐘「実は先日……」
白鐘「比企谷先輩が、警察署に入っていくのを目撃しました」
雪ノ下「…………」
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:42:06 ID:DloooeSQ
白鐘「僕は堂島さんを訪ねて、比企谷先輩が何をしているのか聞いたんです」
白鐘「彼は……足立さんの面会をしに来ていると答えてくれました」
一同「!?」
花村「いやいやいや! ちょっと待て!」
花村「何で比企谷が面会しに行くんだよ!?」
花村「フツー家族とかがやるんじゃねーのか!?」
白鐘「僕も詳しく聞いた訳じゃありませんので……」
白鐘「かと言って、比企谷先輩にもたずねにくいですし……」
一同「…………」
里中「……最近、忙しいってよく言ってたけど」
里中「これの事だったのかな?」
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:43:41 ID:DloooeSQ
天城「ストック…なんとかは置いておいても」
天城「比企谷くんにとって足立さんは親戚……本当の意味で身内なんだよね」
りせ「みんなと比べると、全然違う立場に居るんだ、比企谷先輩」
りせ「……あたし達、喜びすぎてたのかな?」
花村「そ、それは……どうなんだろうな……」
雪ノ下「…………」
白鐘「……皮肉ですね」
里中「え?」
白鐘「比企谷先輩に関しても彼の提案した対処策」
白鐘「『様子を見る事』くらいしか思いつけないなんて……」
一同「…………」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:44:32 ID:DloooeSQ
警察署 取調室
堂島「……今日はここまでだ」
足立「そうですか」
堂島「次は一応、3日後くらいを予定している」
堂島「まあ、ここのところ平和だし、余程の事が起こらない限り変更は無いだろう」
足立「…………」
堂島「…………」
堂島「……じゃあな、足立」
ガタタ…
足立「…………」
足立「堂島さん」
堂島「ん?」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:45:21 ID:DloooeSQ
足立「くだらない事を聞くんですけど」
足立「『大人になる』って、どういう事なんでしょうねぇ……?」
堂島「…………」
堂島「……はっきり『こうだ』と言える答えを」
堂島「俺は持っていないな……」
足立「…………」
堂島「だが……」
足立「……?」
堂島「俺の場合は、菜々子が生まれた時かもしれん」
足立「…………」
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:46:38 ID:DloooeSQ
堂島「人の親になって、家族が増えて、それを俺は養っている」
堂島「いや……養っていかなければならない」
堂島「そう自覚はしたな……」
足立「…………」
堂島「お前の求める答えでは無いかもしれんが」
堂島「そういう事ではないかと俺は思っている」
足立「…………」
足立「そうですか……」
堂島「……でもな」
足立「え?」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:48:23 ID:DloooeSQ
堂島「それが出来ていない奴を 俺は総じて『子供』だと思ってしまう」
堂島「どれほど金を稼いでいようが、どれほど有名人であろうが」
堂島「どれほど俺より年上の人物でもな」
足立「…………」
堂島「……役に立ったか?」
足立「……少しは」
堂島「そうか」
堂島「じゃ、またな。 足立」
パタン…
足立「…………」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:49:39 ID:DloooeSQ
―――――――――――
数日後
足立宅
比企谷「…………」
テレビ『……続いて、天気予報です』
テレビ『ここしばらく晴天が続きましたが、明日以降は』
テレビ『大陸からの低気圧の為、全国的に暴風雪となる見込みです』
テレビ『山間部は特に注意が必要で』
テレビ『暖房器具や食料の備蓄等、あらかじめ備えた方が良いかもしれません』
テレビ『今回の低気圧は非常に勢力が強く』
テレビ『平野部の積雪もかなりのものになると予想され……』
比企谷「…………」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:51:02 ID:DloooeSQ
ジュネス
花村「おう、比企谷」
クマ「センセイ、いらっしゃいませクマー!」
比企谷「よう」
比企谷「今日は盛況だな」
花村「ああ。 オヤジの言葉を借りると『防災特需』だとよ」
比企谷「不謹慎だが、的を射てるな」
花村「お前もか?」
比企谷「ああ。 使い捨てカイロとか、カートリッジ式ガスボンベとかをな」
花村「今日の売上トップツーだぜ、それ」
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:52:53 ID:DloooeSQ
比企谷「まだあるか?」
花村「あるけど、お一人様1パックまでって制限がかけられてる」
比企谷「そうか……心もとないが、しょうがないな」
花村「不安なら八高(八十神高校)の体育館が緊急の避難所になるそうだから」
花村「そっちに行ったらどうだ?」
花村「天城屋って手もあるぜ?」
比企谷「……今の状況じゃ八高は無いな」
比企谷「天城屋も迷惑だろうし」
花村「……下手したら命に関わるんだ。 なりふり構うなよ」
花村「そうだ! 俺んちでもいいぜ! クマも来るし!」
比企谷「ケータイもある。 いざとなったら公的機関に助けてもらうさ。 じゃあな」
花村「お、おい、比企谷……」
花村「…………」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:54:26 ID:DloooeSQ
―――――――――――
帰り道
比企谷(食料品は何とかなったな)
比企谷(電気ガス水道が止まらなければ、どうとでもできる)
比企谷(乾電池の備蓄はあったし、懐中電灯も手回し充電だから問題ない)
比企谷(…………)
ピピピ…… ピピピ……
比企谷「…………」 ガチャ
比企谷「もしもし」
比企谷「! ……雪ノ下か」
比企谷「何の用だ?」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:55:34 ID:DloooeSQ
雪ノ下「ご挨拶ね、比企谷くん」
雪ノ下「いくらあなたでも自然災害には敵わないでしょう?」
雪ノ下「今の内に天城屋に来るといいわ」
雪ノ下「自家発電装置も備えてあるし食料の備蓄も申し分ない」
雪ノ下「あなた一人くらい大丈夫よ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……その事は今は置いておきなさい」
雪ノ下「宿泊料の事は気にしなくていい。 それが嫌ならツケにしておくから」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「部屋は私の部屋を使えばいい。 私は姉さんの部屋に行く」
雪ノ下「…………」
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:56:20 ID:DloooeSQ
雪ノ下「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……そう」
雪ノ下「わかったわ。 でも困ったら、いつでも訪ねてきて」
雪ノ下「じゃ……」
ブッ… ツー ツー
雪ノ下「…………」
―――――――――――
比企谷(……ったく)
比企谷(花村も雪ノ下も心配しすぎだっての……)
比企谷(…………)
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:57:25 ID:DloooeSQ
ピピピ…… ピピピ……
比企谷「……またか」 ガチャ
比企谷「はい、もしもし……堂島さん?」
比企谷「…………」
比企谷「……ああ、その事なら心配しないでください」
比企谷「備えはしましたので」
比企谷「…………」
比企谷「いえ、お気持ちだけで結構です」
比企谷「…………」
比企谷「はい、その時はお世話になります」
比企谷「じゃ……」
ブッ…… ツー ツー
比企谷「…………」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 18:58:28 ID:DloooeSQ
ピピピ…… ピピピ……
比企谷「……おいおい」
―――――――――――
比企谷「はあ……」
比企谷「…………」
比企谷(白鐘に小町……由比ヶ浜や戸塚)
比企谷(里中や天城、久慈川まで……)
比企谷(…………)
比企谷(俺……そんなに危なっかしいと思われているのか)
比企谷「はあ……」
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:00:02 ID:DloooeSQ
―――――――――――
翌日
ビュオオオオオオオオオッ…
テレビ『お昼のニュースです』
テレビ『今日の天気は全国的な荒れ模様となっており』
テレビ『交通機関に大きな乱れが起こっています』
比企谷「…………」
テレビ『首都圏の空港・港は、ほとんどが欠航し』
テレビ『高速道路も現在、通行見合わせが続いております』
テレビ『鉄道網は、新幹線が始発から運行を見合わせており……』
比企谷「…………」
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:01:20 ID:DloooeSQ
コン コン…
比企谷「……!?」
比企谷(…………)
比企谷(気のせい……だよな?)
比企谷(警報で学校は休校だと連絡があったし)
比企谷(わざわざこんな状況で来る奴なんて……)
コン コン…
比企谷「……はーい」
比企谷「どちら様でしょうか?」
???「……私よ、比企谷くん」
比企谷「!?」
ガチャ…
比企谷「雪ノ下……」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:02:24 ID:DloooeSQ
厚手のダウンジャケットにニット帽、それに耳あて
ついでにゴーグルまでかけている雪ノ下がそこに居た。
はっきり言えば、この前のスキーの格好を思い出す姿である。
そして、スキーの時と決定的に違うのは
背中に少し大きめのリュックを背負っていた事だ。
知らない奴が見たら、どう見ても冬山登山に行く様にしか見えん。
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:03:24 ID:DloooeSQ
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……念の為に聞くが」
比企谷「何をしに来た?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「元気なら……それでいい」
雪ノ下「これ、差し入れだから」
比企谷「リュックサイズかよ……」
雪ノ下「あら? 足りないとでも言うつもり?」
比企谷「そうは言ってないだ……ん?」
雪ノ下「……ふ……くっ……」
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:04:25 ID:DloooeSQ
比企谷「どうした? 雪ノ下?」
雪ノ下「……何でもないわ。 ちょっと……手がかじかんでるだ…あ!」
ドササッ!
比企谷「お、おい……」
雪ノ下「……っ……少し手を滑らせただけよ」
比企谷「…………」
比企谷「ともかく中に入れ、雪ノ下」
雪ノ下「平気よ」
比企谷「いいから! とにかく入れ!」
雪ノ下「あ……」
パタン…
花村「…………」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:05:20 ID:DloooeSQ
花村(おいおい……えらいもん見ちまったぜ)
花村(にしても雪ノ下さんのあの荷物の量……どう見ても泊まり込むつもりだよな)
花村(…………)
花村(とうとう覚悟を決めたのか……って、待てよ?)
花村(そんな彼女を招き入れた比企谷は……)
花村(…………)
花村(……ふっ)
花村(しかたねぇ。 二人の静かな時間を邪魔できねぇよな)
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:05:59 ID:DloooeSQ
花村「よし」
花村「帰るぞ、クマ」
クマ「ええ!? どうしてクマ!?」
花村「いいから帰んの!」
花村「ここまで来てなんだが、比企谷も大丈夫だって言ってたし」
花村「必要になったら、俺らに連絡するだろ」
クマ「で、でも……」
花村「すまねえな、付き合わせちまって」
花村「帰ったら、何か暖かいもん作って食わせてやるからよ」
花村「それで我慢してくれねぇか?」
クマ「…………」
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:06:52 ID:DloooeSQ
クマ「しょうがないクマね。 ここはヨースケの顔を立ててやるクマ!」
花村「お前、どこでそんな……まあいいや」
花村「花村ワゴンはクールに去るぜ……」
クマ「何言ってるクマ?」
花村「ツッコミ入れんじゃねーよ! せっかくの気分が台無しだろーが!」///
クマ「ヨースケがわからないクマ……」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:07:44 ID:DloooeSQ
比企谷「雪ノ下、手を見せてみろ」
比企谷「ついでに足先もだ」
雪ノ下「…………」
スッ スッ… シュルッ…
比企谷「……少し腫れてるな」
比企谷「だが、この程度ならしもやけレベルだ」
比企谷「ちょっと待ってろ」
雪ノ下「…………」
―――――――――――
比企谷「風呂場にぬるま湯を用意した」
比企谷「しばらくそれに手足を浸しておけ」
雪ノ下「……わかったわ」
比企谷「10分ぐらいしたら、温度の高いのに変えるからな」
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:08:47 ID:DloooeSQ
比企谷「…………」 ピッ ピッ ピッ
ルルルルル……ルルルルル……ガチャ
比企谷「天城か?」
比企谷「ぶしつけだけどな、陽乃さん、近くに居ないか?」
比企谷「…………」
比企谷「そうか、居ないならいい」
比企谷「後で『荷物は届いた』とだけ、陽乃さんに伝えてくれ」
比企谷「それでわかると……は?」
比企谷「…………」
比企谷「『必要なものは全部入れた』……?」
比企谷「陽乃さんがそう言えと……ね」
41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:10:14 ID:DloooeSQ
比企谷「ともかく、頼んだぞ。 じゃあな……」
ブッ…… ツー ツー
比企谷「…………」
比企谷(……あの人、やっぱり絡んでるのかよ)
比企谷(嫌な予感しかしねぇな……)
―――――――――――
比企谷「どうだ? 雪ノ下」
雪ノ下「……平気よ」
比企谷「見せてみろ……」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「よし、お湯を変えるぞ」
42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:10:59 ID:DloooeSQ
チャプン…
比企谷「これでよし……」
比企谷「今、温かいコーヒー入れてやる」
雪ノ下「…………」
―――――――――――
比企谷「ほら、コーヒー」
雪ノ下「……ありがとう」
雪ノ下「…………」 ズズッ…
比企谷「痛くない様なら、軽く揉んでおけ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「詳しいのね」
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:11:47 ID:DloooeSQ
比企谷「……よく小町もなってたからな」
雪ノ下「そうだったの……」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……ところで、雪ノ下」
雪ノ下「何かしら?」
比企谷「持ってきた荷物、中身は何だ?」
雪ノ下「食料品と水と乾電池……それに固形燃料よ」
雪ノ下「それがどうかしたの?」
比企谷「……陽乃さんは何か入れてないのか?」
雪ノ下「姉さん? なぜ、姉さんが出てくるの?」
比企谷「いや……陽乃さんに出かける事を伝えたのかと思って」
雪ノ下「……帰るつもりだったから言ってないわ」
44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:12:37 ID:DloooeSQ
比企谷「そうか……」
比企谷「まあそれはいい」
雪ノ下「…………」
比企谷「……俺は大丈夫だって言っただろう?」
比企谷「らしくないぞ、雪ノ下」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……まあ」
比企谷「ありがとう……な」///
雪ノ下「……え」
比企谷「もう少ししたら、本格的に体を温めるからな」
雪ノ下「…………」
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:22:22 ID:DloooeSQ
―――――――――――
ビュオオオオオオオオオッ…
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:23:26 ID:DloooeSQ
テレビ『現在、各県に暴風雪波浪警報が勧告されており』
テレビ『気象庁の発表で、この状況は今日・明日いっぱい続く見込みで』
テレビ『各自治体は、可能なら避難所を利用するよう呼びかけています』
雪ノ下「…………」
比企谷「……どうだ? 手と足先は?」
雪ノ下「平気よ」
比企谷「正直に言っておけ。 こんなところで虚勢を張っても意味がない」
雪ノ下「……痒いわ」
比企谷「正常な反応だ。 けど、掻くなよ? 我慢しろ」
雪ノ下「……わかったわ」
比企谷「もうすぐ鍋焼きうどんができる」
比企谷「これ食って体を中から温めるんだ」
雪ノ下「…………」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:24:33 ID:DloooeSQ
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……本当に何をやっているんだか)
雪ノ下(無事なのを確認したかった。 それだけなのに)
雪ノ下(逆に心配をかけてどうするのよ……)
雪ノ下(…………)
比企谷「……どうした、雪ノ下?」
比企谷「熱いうちに食わないと意味がない」
雪ノ下「! ……ご、ごめんなさい」
雪ノ下「いただきます」
―――――――――――
カチャ カチャ…
比企谷「…………」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:25:37 ID:DloooeSQ
比企谷「こたつ、どうだ?」
雪ノ下「暖かいわ」
比企谷「テレビ、なんて言ってる?」
雪ノ下「ほとんど同じよ」
雪ノ下「それに首都圏の情報ばかりで、こっちの方は全く話題になっていない」
比企谷「……そうか」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「……なあ、雪ノ下」
雪ノ下「……何かしら」
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:26:45 ID:DloooeSQ
比企谷「これはな、決してやましい気持ちや下心とか、そういうのじゃなくて」
比企谷「外の吹雪は一向に弱まらないし、気温は氷点下で」
比企谷「冷静に雪ノ下の状況とかを考慮して、脳内シュミレーションの結果」
比企谷「最終的にこれが一番いいんじゃないか?という……その……」
比企谷「そう、一案として聞いて欲しい」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……わかったわ」
比企谷「よし」
比企谷「その、な……」///
雪ノ下「…………」
比企谷「きょ、今日……ここに泊まった方がいいんじゃないか?」///
雪ノ下「!」///
比企谷「だ、だから、一案だ! やましい気持ちはこれっぽっちもない!」///
雪ノ下「わ、わかっているからっ」///
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:27:52 ID:DloooeSQ
比企谷「な、なら、いいが……」///
雪ノ下「…………」///
比企谷「…………」///
比企谷「お、お茶を入れてくる」///
雪ノ下「わ、わかったわ……」///
スタ スタ スタ…
雪ノ下「……ふう」///
雪ノ下「…………」///
雪ノ下「……あ」
雪ノ下「姉さんに連絡しておかないと……」 ピッ…
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:28:59 ID:DloooeSQ
ルルルルル……ルルルルル……ガチャ
雪ノ下「……もしもし、姉さん?」
雪ノ下「その……」
雪ノ下「…………」///
雪ノ下「さ、最初から、こうなる事を望んだのではなくて」///
雪ノ下「結果的にこうなってしまった、というか、いろいろ考えが足りなかった、というか……」///
雪ノ下「…………」///
雪ノ下「け、結論を言うわ……」///
雪ノ下「ひ、比企谷くんのところに、と、泊まりますっ……」///
雪ノ下「ご、ごめんな……え?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「リュックのサイドポケット?」
雪ノ下「…………」
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:29:58 ID:DloooeSQ
雪ノ下「必要な物?……いったいどういう意味」
ブッ… ツー ツー
雪ノ下「……切れた」
雪ノ下「……?」
ゴソ ゴソ…
雪ノ下「」///
雪ノ下(あ、あの人っ! 何を考えてるのっ!?)///
雪ノ下(わ、私は、比企谷くんとそういう事をしたいわけじゃ……!)///
比企谷「雪ノ下?」
雪ノ下「!!!」///
雪ノ下「ひ、比企谷、くんっ……」///
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:30:58 ID:DloooeSQ
雪ノ下「こ、これは、ち、違うのっ」///
比企谷「それはなんだ?」
雪ノ下「……え?」
比企谷「箱のサイズから推測すると……チョコかなんか?」
雪ノ下「…………」
比企谷「……違うのか?」
雪ノ下「チョ、チョコじゃない、わ……」
雪ノ下「でも、当たらずとも遠からず、と、言うところね」
比企谷「そうか……」
比企谷「ほら、お茶。 入ったぞ」
雪ノ下「あ、ありがとう……」
雪ノ下(よ、良かった……比企谷くんは、こういうのに疎いのね……)
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:32:34 ID:DloooeSQ
比企谷(……やっぱり入れてやがったな、陽乃さん)
比企谷(こんな事もあろうかと、対処法を考えてて良かったぜ)
比企谷(秘技、しらばっくれ!!) ババーン!
比企谷(いつまでもあんたのマリオネットで いねぇからな……)
比企谷(ふふふふふふ……勝った)
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:34:01 ID:DloooeSQ
雪ノ下「……あら?」
比企谷「?」
比企谷「どうした、雪ノ下?」
雪ノ下「ポケットの奥に……まだ何か……」
ゴソ ゴソ…
雪ノ下「……何かしら? 軟膏(なんこう)みたいだけど……」
比企谷「! 見せてみろ」
雪ノ下「ええ……」
比企谷「…………」
比企谷「……しもやけに効く塗り薬だ」
雪ノ下「……え?」
比企谷(まったく。 一本取ったと思ったらこれだよ……)
雪ノ下「…………」
比企谷「雪ノ下、使っておけ。 これで痒みも止まると思う」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:34:49 ID:DloooeSQ
―――――――――――
ビュオオオオオオオオオッ…
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:35:47 ID:DloooeSQ
テレビ『引き続き、各地の暴風雪による被害状況をお伝えします』
テレビ『首都圏の交通網は完全に麻痺しており』
テレビ『帰省の足がほとんどない状況です』
テレビ『また、この大雪の被害で亡くなった方も5人となり……』
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
コン コン
比企谷「!?」
雪ノ下「……誰かしら?」
比企谷「わからん……ともかく、雪ノ下はここに居てくれ」
スタ スタ スタ…
雪ノ下「…………」
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:36:58 ID:DloooeSQ
―――――――――――
比企谷「大家だった。 雪下ろしを手伝ってくれだと」
雪ノ下「わかったわ」
比企谷「いや、雪ノ下はいい。 俺だけ出る」
雪ノ下「でも……」
比企谷「このアパートの住人総出だ。 俺一人というわけじゃない」
雪ノ下「…………」
比企谷「……雪ノ下はしもやけの事もある。 大人しくしていてくれ」
雪ノ下「……わかったわ」
比企谷「じゃ、行ってくる」
雪ノ下「…………」
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:37:57 ID:DloooeSQ
―――――――――――
2時間後
比企谷「ううっ……さぶさぶさぶっ」
比企谷「重労働の割に、全然暖まらなかったな……」
比企谷「…………」
比企谷「……ん?」
雪ノ下「お帰りなさい」
比企谷「…………」
雪ノ下「今、けんちん汁、温め直すわ」
比企谷「……晩飯、作ってくれたのか」
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:39:10 ID:DloooeSQ
雪ノ下「勘違いしないで」
雪ノ下「やる事なくて暇だったし……」
雪ノ下「あなたに貸しを作ったままなのも釈然としなかったから」
比企谷「……さいですか」
比企谷「つーか、手は大丈夫なのか?」
雪ノ下「お陰様でね」
比企谷「ならいい」
雪ノ下「比企谷くんこそ、しもやけは大丈夫?」
比企谷「男はなりにくいって俗説があってな」
比企谷「残念ながら、俺はその証明をしている一人だ」
雪ノ下「そう」 クスッ
61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:40:10 ID:DloooeSQ
―――――――――――
ビュオオオオオオオオオッ…
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:41:39 ID:DloooeSQ
比企谷「……さて」
比企谷「だいぶ夜も更けてきましたし、そろそろ寝るか」
雪ノ下「そ、そうね」
比企谷「しかしながら、大きな問題がひとつあります」
雪ノ下「……当ててみましょうか?」
雪ノ下「布団が一つしかない……とか」
比企谷「……プラス、俺の匂い付きです」
雪ノ下「その言い方、気持ち悪いから止めて」
比企谷「せっかくクイズ方式にして場を和ませようとしたのに……」
雪ノ下「事実は変えられないでしょう?」
63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:42:34 ID:DloooeSQ
比企谷「まあな」
比企谷「足立さんの使ってたものはすべて引き払った後だし……」
比企谷「だけど否応なく、雪ノ下さんには俺の布団を使っていただきます」
雪ノ下「丁寧な口調で言ってるけど最悪ね」
比企谷「我慢しろ……俺はこたつで寝るから」
雪ノ下「冗談はその腐った魚のような目だけにして」
雪ノ下「どう考えても押しかけて迷惑かけている私がこたつでしょ?」
比企谷「そんなに俺の匂いつきが嫌か」
雪ノ下「当たり前の事言わないでくれるかしら」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「……まあいい」
比企谷「そこまで言うのなら、そうしてもらおう」
雪ノ下「…………」
64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:44:17 ID:DloooeSQ
比企谷「ちょっと待ってろ」
雪ノ下「……え?」
―――――――――――
シュン シュン シュン…
雪ノ下「お湯を沸かしてどうするの?」
比企谷「湯たんぽ作ってるんだよ」
雪ノ下「!」
比企谷「おっと、勘違いするなよ?」
比企谷「どっちがどうなろうが、これは最初からやるつもりだったからな?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「手伝える事、あるかしら?」
比企谷「風呂場横のケースからバスタオルを2~3枚取ってきてくれ」
雪ノ下「わかったわ」
65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:45:21 ID:DloooeSQ
雪ノ下「これくらいでいいかしら?」
比企谷「おう」
雪ノ下「何に使うの?」
比企谷「熱湯を入れたペットボトルに巻きつける」
雪ノ下「なるほど……手製の湯たんぽ、というわけね」
比企谷「気をつけろよ、相当熱いからな」
雪ノ下「ええ」
―――――――――――
比企谷「……これでいい」
比企谷「こたつは片付けて、こたつ布団にくるまった方がいいだろ」
雪ノ下「そうね」
66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:46:24 ID:DloooeSQ
比企谷「下はタタミだが、ありったけの服を敷き詰めておいた」
比企谷「……正直、敷布団の代わりになるとは思えんがな」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……なあ、雪ノ下」
雪ノ下「何かしら?」
比企谷「…………」
比企谷「今日だけでいい」
比企谷「……いや、ただの一度だけでいい」
雪ノ下「…………」
比企谷「俺の言う通りにしてくれないか?」
67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:46:57 ID:DloooeSQ
雪ノ下「!」
雪ノ下「比企谷くん……」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……だったら」
比企谷「え?」
雪ノ下「私もわがままを言わせてもらえるかしら?」
比企谷「……何だよ?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「比企谷くんと、同じ部屋に居させて」
比企谷「…………」
比企谷「はあ!?」///
68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:47:37 ID:DloooeSQ
―――――――――――
ビュオオオオオオオオオッ…
69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:48:38 ID:DloooeSQ
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷(……雪ノ下の奴、何を考えているんだ?)
比企谷(まあ……布団に入ってくれただけ良しとすべきか)
比企谷(…………)
比企谷(……くそっ、落ち着かねぇし、吹雪うるさいし、眠れねぇ……)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(よくよく考えたら……)
雪ノ下(すごい事言ったのよね……私)///
雪ノ下(…………)
雪ノ下(でも……)
雪ノ下(…………)
70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:49:20 ID:DloooeSQ
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「ん?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「ごめんなさい」
比企谷「…………」
比企谷「もう気にしてない」
雪ノ下「違う。 今回の事じゃない」
比企谷「……は?」
71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:50:31 ID:DloooeSQ
雪ノ下「あなたを見送りに行かなくて……ごめんなさい」
比企谷「!」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……それも もう気にしていない」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……そう」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「……なあ」
雪ノ下「何かしら?」
72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:51:43 ID:DloooeSQ
比企谷「理由……聞いてもいいか?」
雪ノ下「!」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「バカバカしい理由よ」
雪ノ下「あきれるくらいにね……」
比企谷「それでもいい」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「私ね……比企谷くんに」
雪ノ下「『さよなら』を言いたくなかった」
比企谷「……ほう。 俺は『しゃべる玩具』なのにか?」
雪ノ下「……ええ」
73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:52:49 ID:DloooeSQ
雪ノ下「奉仕部に来た頃のあなたは、見た目からして近寄りたくない人物だったわ」
比企谷「……言っとくが、平塚に無理矢理入部させられたんだからな?」
雪ノ下「そうね」 クスッ
雪ノ下「そして、話をしてみて更に印象が悪くなった」
比企谷「……悪かったな」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「でも……由比ヶ浜さんも入部して、三人でいろいろやって」
雪ノ下「あなたとの掛け合いが……いつの間にか当たり前になっていた」
比企谷「…………」
雪ノ下「比企谷くんが私をどう思っているのか、わからないけど」
雪ノ下「一定の距離を取ってくれるあなたの存在が……心地よかった」
比企谷「…………」
74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:53:55 ID:DloooeSQ
雪ノ下「……なのに」
雪ノ下「突然、比企谷くんは転校する事になって」
雪ノ下「私は動揺した……」
比企谷「…………」
雪ノ下「一年後に帰ってくる。 これは一時的なもので、あなたは消えるわけじゃない」
雪ノ下「そうだとわかってても……比企谷くんに別れを告げたら」
雪ノ下「もう永遠に会えない気がして……嫌だった」
比企谷「…………」
雪ノ下「本当に子供みたいな、くだらない理由……」
比企谷「…………」
比企谷「……そうだな。 その通りだ」
雪ノ下「…………」
75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:54:51 ID:DloooeSQ
比企谷「けど」
雪ノ下「…………」
比企谷「話してくれて、俺はありがたかった」
比企谷「いろいろと根に持っていたし」
雪ノ下「……ごめんなさい」
比企谷「もういい」
比企谷「正直言うと、あの時……由比ヶ浜が死んでしまったと思ったあの夜」
比企谷「雪ノ下は充分、俺に貸しを返してくれたさ……」
雪ノ下「……!」
ガバッ!
雪ノ下「違う! 私は……私は!」
雪ノ下「そんなつもりで、ああいう事をしたわけじゃないっ!」
76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:55:49 ID:DloooeSQ
ムクリ…
比企谷「……落ち着け、雪ノ下」
比企谷「近所迷惑だぞ?」
雪ノ下「……っ」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「どうしたのよ……比企谷くん」
雪ノ下「いったい、あなたに何があったの?」
雪ノ下「なぜ、そんなに壁を作ろうとするの?」
比企谷「……俺はいつも通りだろ」
比企谷「らしくないのは、雪ノ下の方だ」
77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:56:46 ID:DloooeSQ
雪ノ下「私は――」
……ピウィ~……
雪ノ下「!?」
比企谷「!?」
78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:57:43 ID:DloooeSQ
テレビに電源は入っていなかった。
理屈を言えば、画像が映るわけがない。
ただ一つの理由を除いて……
そう……これは【マヨナカテレビ】
ここ、八十稲羽で起きた殺人事件において重要な役割を果たし
雨の日の夜0時に見られる、謎の怪現象……
もっとも、今回は雨ではなく雪だが。
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:58:36 ID:DloooeSQ
そして……いつも通り、というか、法則通り
不鮮明だが、人物像を映し出していく……
80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 19:59:55 ID:DloooeSQ
雪ノ下「!!!!!!」
比企谷「…………」
雪ノ下「……う…そ…」
比企谷「…………」
ブツンッ!
比企谷「…………」
雪ノ下「……どうして、こんな」
比企谷「アメノサギリ?が言ってただろ?」
比企谷「【マヨナカテレビ】に映るのは、大衆が『何か起これ』と望んだ人物になるって」
雪ノ下「……っ!」
81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:01:24 ID:DloooeSQ
雪ノ下「……なぜ、そんなに冷静で居られるの?」
雪ノ下「どうして、そんなに他人事に言えるの!?」
雪ノ下「どうしてっ……!」
比企谷「…………」
雪ノ下「わた、し……もう……あなたが……ぐっ……わからないっ」
雪ノ下「怖くないの……?……ひぐっ……恐ろしくないの?……ぐすっ……」
雪ノ下「わ、たし……うぐっ……怖いっ……ぐっ……くっ……ひっく……」
比企谷「…………」
ギュッ……
比企谷「……心配するな」
比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」
比企谷「だから、大丈夫だ。 安心しろ」
比企谷「雪ノ下」
82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:02:37 ID:DloooeSQ
私は……泣いていた。
怒りと悲しみと……得体の知れない恐怖感、全てが混ざり合った様な
形容しがたい感情から……
【マヨナカテレビ】は、比企谷くんを映していた。
それは……他のみんな、つまり大勢の人が、比企谷くんに『何か起これ』と
奇異の目で彼を見ている、という事。
比企谷くんは……泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。
ちょうど、あの時の私がそうした様に。 でも……
彼は、体温を感じるほど私の近くに居るのに
83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/19(水) 20:03:54 ID:DloooeSQ
比企谷くんは、どこか……遠くに居る様にしか思えなかった。
105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:19:35 ID:KEz185Qo
―――――――――――
????
マーガレット「ようこそ、ベルベット・ルームへ」
マーガレット「申し訳ございません。 ただいま、我が主イゴールは所用で……」
マーガレット「あら? お客様は?」
マーガレット「…………」
マーガレット「……そう」
マーガレット「この前と同じく、心当たりは無いのね」
マーガレット「…………」
マーガレット「ふふっ……そうなのかしら?」
マーガレット「なら……」
106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:20:34 ID:KEz185Qo
マーガレット「少し、ペルソナについての逸話でも話しましょうか?」
マーガレット「…………」
マーガレット「イザナギ? いいえ、違うわ」
マーガレット「ジャアクフロストというペルソナの事よ」
マーガレット「…………」
マーガレット「昔……1000年を一人で過ごした異形の者が居たわ」
マーガレット「それがジャアクフロスト」
マーガレット「彼はある日……ある望みを叶えたくて」
マーガレット「険しい道を乗り越え、辛い思いをしながらも」
マーガレット「神様の元へとたどり着いた」
マーガレット「そこでジャアクフロストは、神様にお願いする」
107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:22:21 ID:KEz185Qo
マーガレット「『僕に友達をください』と……」
マーガレット「…………」
マーガレット「神様は、その願いを聞き入れ」
マーガレット「一日だけジャアクフロストに友達を与えた」
マーガレット「ジャアクフロストは喜び、友達と一緒になって野を駆け回り」
マーガレット「いろんな事をして楽しい思い出を作った」
マーガレット「…………」
マーガレット「……でも」
マーガレット「約束の一日が終わると、友達は居なくなり」
マーガレット「数日経つと、彼は……激しく後悔した」
108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:23:19 ID:KEz185Qo
マーガレット「どうして自分は友達を望んだのだろう?」
マーガレット「こんなに寂しくて悲しくなるのなら」
マーガレット「最初から友達なんて望まなければ良かった……と」
マーガレット「…………」
マーガレット「ん? どうしてそんな話をするのか?ですって?」
マーガレット「ふふふ……どうしてでしょうね」
マーガレット「今のお客様をみたら、なぜか話したくなったの」
マーガレット「ただ……それだけよ」
マーガレット「…………」
マーガレット「あら? そろそろお目覚めの時刻見たいね」
マーガレット「また会えるか分かりませんが、いつでもお客様の御来房を歓迎いたします」
マーガレット「ふふふ……」
109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:24:31 ID:KEz185Qo
―――――――――――
数日後
天城屋 雪ノ下の部屋
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……あれから、数日が過ぎた)
雪ノ下(大吹雪の影響で、今週いっぱい学校は休みとなり)
雪ノ下(みんなと落ち着いて話す事が出来ていない)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(【マヨナカテレビ】の事……誰も気がついていないのかしら)
雪ノ下(…………)
110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:25:39 ID:KEz185Qo
雪ノ下(そもそも、私も何故ここに居る天城さんにすら話さないのだろう?)
雪ノ下(きっと、みんな力になってくれるはずなのに……)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(……でも)
雪ノ下(今の比企谷くんに何をしても)
雪ノ下(無駄な気がする)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(どうすれば……)
雪ノ下(…………)
111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:26:29 ID:KEz185Qo
―――――――――――
足立宅
比企谷「ふう……」
比企谷「雪下ろし、面倒くせぇ……」
比企谷「…………」
比企谷「……腹減ったな」
比企谷「何か作るか」
比企谷「…………」
比企谷「カップラーメンにするか」
112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:27:17 ID:KEz185Qo
―――――――――――
ズルズル……
比企谷「ふう……」
比企谷「ごちそうさま……っと」
比企谷「…………」
比企谷(……この後、どうすっかな)
比企谷(…………)
比企谷(ゲームでもするか?)
比企谷(…………)
比企谷(気分じゃないな……)
比企谷(…………)
比企谷(風呂でも沸かすか……)
比企谷(…………)
113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:27:57 ID:KEz185Qo
比企谷(らしくないよな……俺も雪ノ下も)
比企谷(あの日は結局、何事もなく次の日の朝を迎え)
比企谷(昼に吹雪が収まったから、雪ノ下はそのまま帰っていった)
比企谷(…………)
比企谷(お互い、気まずい時間を過ごした気がする)
比企谷(食事以外で、口を開く事はなかったからな……)
比企谷(…………)
比企谷(……でもまあ)
比企谷(結果オーライってところか)
比企谷(…………)
114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:29:01 ID:KEz185Qo
―――――――――――
更に数日後の昼休み
教室
ガヤガヤ…… ガヤガヤ……
里中「……学校の雰囲気、変わんないね」
天城「嫌な感じ……」
天城「比企谷くんも休み時間になったら、どこかに行ってしまうし……」
雪ノ下「…………」
花村「…………」
花村「……?」
花村「えーっと……雪ノ下さん」
雪ノ下「何かしら?」
115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:30:01 ID:KEz185Qo
花村「気のせいなら謝るけど……比企谷と何かあった?」
雪ノ下「……無いわ」
花村「……本当に?」
雪ノ下「くどいわね。 無いものは無い、としか言えないわ」
花村「そ、そう……」
花村「なら、いいんだけど……」
里中「…………」
天城「…………」
里中(どう見ても何かあったっぽいじゃん)
天城(あの大雪の日から、何となく沈んでる様に思ったけど)
天城(私にかかってきた比企谷くんの電話……関係してるのかな?)
花村(比企谷の奴、焦って どえらい失敗したんじゃねーだろうな……)
116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:31:16 ID:KEz185Qo
―――――――――――
放課後
ジュネス フードコート
里中「うう~っ! 寒い寒い!」
天城「いくら天気が良くても ここはまだまだ寒いね、千枝」
花村「悪いな。 他に集まれるとこ、あればいいんだけど……」
白鐘「いえ、構いません」
りせ「逆に考えれば誰も来ないだろうし、ちょうどいいんじゃない?」
花村「そう言ってもらえると助かるぜ」
花村「ほら、ホット缶コーヒー。 俺の奢りだ」
117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:32:59 ID:KEz185Qo
白鐘「それで……比企谷先輩は、どうなんですか?」
白鐘「雪ノ下先輩が居ないのと何か関係があるんでしょうか?」
里中「う~ん……それがねー」
里中「あたしらにもよく分かんなくて……」
天城「私が知っているのは、比企谷くんから妙な電話があったって事くらいかな?」
白鐘「電話……というと?」
天城「なんかね、陽乃さん近くに居るか?って聞かれて」
天城「居ないって答えると『荷物は届いた』って伝えてくれって言われたの」
りせ「荷物?」
天城「私には何の事だか……ただ」
天城「陽乃さんにね、比企谷くんから連絡があったら」
天城「『必要なものは全部入れた』って言っておいて欲しいと頼まれてもいたの」
118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:34:07 ID:KEz185Qo
一同「…………」
花村(うげ……陽乃さんが絡んでんのかよ)
花村(何となく読めてきたぜ……)
白鐘「……天城先輩。 つかぬ事を伺いますが」
天城「うん」
白鐘「その時、雪ノ下先輩はどこに居たか、わかりますか?」
天城「たぶん自室に居たと思うよ?」
天城「あの日は風邪気味で調子が悪いって、陽乃さんが言ってたし」
白鐘「…………」
花村(さすが白鐘……鋭いな)
119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:35:15 ID:KEz185Qo
花村「ところで、一年生の方はどうだ?」
花村「例の噂話」
りせ「あまり変わってない感じ……」
りせ「今回の大雪騒動で多少は無くなるかなって思ったんだけど……」
白鐘「僕のクラスも同様です」
花村「そうか……俺らのクラスも似た様なもんだ」
花村「もうすぐ2月だってのに よくもまあ飽きないもんだぜ」
里中「は? 2月に何かあったっけ?」
花村「おいおい里中……お前も一応女の子だろーが」
里中「一応は余計!」
花村「2月つったら、バレンタインデーに決まってるだろ?」
120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:36:34 ID:KEz185Qo
里中「ああ、花村には永遠に関係のない話の」
花村「うっせーよ!?」
天城「私は毎年、お父さんには必ずあげてるかな」 クスッ
りせ「そういやあったね、バレンタインデー」
りせ「義理で良ければあげるよ? 花村先輩」
花村「マジで!?」
里中「義理宣言されて そこまで喜ぶのはどーよ?」
花村「やかましい!」
花村「日本全国に居る一個だけが確定している連中より」
花村「いくらかはマシだっての!!」
天城「何の事かわからないけど……義理でいいなら私もあげようか? 花村くん」
花村「もちろん大歓迎だぜ、天城!」
アハハ……
121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:37:47 ID:KEz185Qo
―――――――――――
足立宅
ピピピ…… ピピピ……
比企谷「ん?」 ピッ
比企谷「はい、もしもし……花村か」
花村『よう、比企谷。 今一人か?』
比企谷「ああ。 それで、何か用か?」
花村『ああ』
花村『ちょっと学校とかじゃ聞きづらい内容なんでな』
比企谷「……いったい何だよ?」
花村『単刀直入に言うぜ?』
122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:38:36 ID:KEz185Qo
花村『お前……雪ノ下さんと何があった?』
比企谷「…………」
花村『悪いがな、比企谷』
花村『あの大雪の日、俺、お前の部屋に』
花村『大荷物背負った雪ノ下さんが入っていくの、見かけちまった』
比企谷「!」
花村『別に詳細に話せ、とは言わねぇよ』
花村『陽乃さんも絡んでるみたいだし、俺がどうこうするって事でもねえ』
花村『ただ……気になってな』
比企谷「…………」
123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:39:46 ID:KEz185Qo
比企谷「……結論を言えば、本当にやましい事は無かった」
比企谷「それだけだ」
花村『…………』
比企谷「状況を簡単に説明するがな」
比企谷「雪ノ下は、俺に差し入れを持ってきた。 が……」
比企谷「寒さで体調を崩してな……やむを得ず、俺の部屋に泊まらせたんだよ」
比企谷「あの天候で帰らせても悪化させるだけだからな」
花村『…………』
比企谷「本当だぞ?」
花村『……まず最初に言っとくけどな』
比企谷「は……?」
124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:41:10 ID:KEz185Qo
花村『お前、何、羨ましい事態に陥ってんだよ!!』
花村『俺も遭遇してーよ!!』
比企谷「…………」
花村『……コホン』
花村『まあ、それは置いといて、だ』
比企谷「……ああ」
花村『本当に何も無かったんだな?』
比企谷「もちろんだ。 やましい事は何もな」
花村『そうかよ……となると』
花村『逆に『何も無かった』のがショックだったのかな、雪ノ下さん』
比企谷「ない。 それは絶対ない」
花村『なんで言い切れるんだよ……』
125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:42:06 ID:KEz185Qo
花村『お前なぁ……女の子が一人暮らしの男の部屋を訪ねて』
花村『しかも部屋に泊まるのってさ……もうそりゃ覚悟を決めたって事じゃーねーのかよ?』
比企谷「…………」
花村『それでいて何も無かったってなると……』
花村『女としての魅力が~的な事になるんじゃねーの?』
比企谷「だからないって、マジで」
花村『ルパ○ダイヴくらいしてやりゃ良かったのに』
比企谷「いや、それやったら、いろんな意味で俺が終わるっての……」
花村『まあ、だいたいわかったわ』
比企谷「本当かよ……」
126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:43:09 ID:KEz185Qo
花村『……けどな』
花村『少しは察してやってもいいんじゃないのか?』
比企谷「…………」
花村『年頃の女の子が、好きでもない男の家に泊まろうなんて気』
花村『絶対に起きないと思うぜ?』
花村『お前もいろいろあるんだろうとは思うがな……』
比企谷「……状況がそうさせただけだっての」
花村『…………』
花村『オーケー。 それでいいのなら、もうこの話はおしまいにしとく』
花村『今の俺の気持ちは、夏に言った事とほとんど同じだしな』
比企谷「…………」
花村『後、この事は誰にも言わねーから。 じゃあな』
ブッ…… ツー ツー
比企谷「…………」
127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:44:15 ID:KEz185Qo
―――――――――――
数日後の放課後
通学路
ピピピ……ピピピ……
比企谷「ん?」 ピッ
比企谷「もしもし……ああ、白鐘か」
比企谷「…………」
比企谷「晩飯?」
比企谷「適当に済ませるつもりだが……」
比企谷「…………」
128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:45:18 ID:KEz185Qo
比企谷「愛屋で一緒にね……」
比企谷「……そういや、そんな約束してたな」
比企谷「わかった。 時間は何時にする?」
比企谷「…………」
比企谷「18時くらいに……了解だ」
比企谷「じゃ、その時に」 ピッ
ブッ…… ツー ツー
比企谷「…………」
129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:46:30 ID:KEz185Qo
―――――――――――
18時
大衆食堂 愛屋
ガララッ ラッシャイ
白鐘「比企谷先輩、ここです」
比企谷「おう、白鐘」
比企谷「もう注文したか?」
白鐘「いえ、まだです」
比企谷「そうか。 何を食うかな」
白鐘「僕は……肉丼セットにしようかな」
比企谷「そうだな。 晩飯だし、丼の方がいいか」
比企谷「俺もそれでいこう」
130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:47:24 ID:KEz185Qo
白鐘「では……すみません、肉丼セット2つお願いします」
アイヨー
比企谷「…………」
白鐘「…………」
白鐘「この前の大雪、大変でしたね」
比企谷「そうだな」
白鐘「僕も我が家の慣れない雪下ろしで骨が折れました」
比企谷「へえ……って」
比企谷「しもやけとか、大丈夫だったのか?」
白鐘「え? ああ、休み休みで、近所の方も手伝ってくれましたし……」
131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:48:09 ID:KEz185Qo
比企谷「そうか……女の子はなりやすいってイメージがあってな」
白鐘「え?」
比企谷「ん?」
比企谷「何か変なこと言ったか?」
白鐘「いえ……ただ」
比企谷「ただ?」
白鐘「僕の事……女の子だって認識してくれてるんだって思って……」///
比企谷「……別にフツーだろ」
白鐘「ところが今だにラブレター送ってくる女生徒の方が多くて」
白鐘「何となく勘違いされてると思うんですが……」
比企谷「あー……それは違うと思うが……確かに言い切れないな」
132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:48:47 ID:KEz185Qo
白鐘「やっぱり、こんな格好を続けているから、なんでしょうね」
比企谷「まあ否定はしない」
白鐘「ふふふ……」
比企谷「何笑ってんだよ」
白鐘「すみません。 やっぱり比企谷先輩だなって思って」
比企谷「…………」
オマチー
比企谷「おっ……来たか」
白鐘「美味しそうですね」
白鐘「いただきます」
比企谷「いただきます」
133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:49:40 ID:KEz185Qo
白鐘「うん、美味しいですね」
比企谷「ああ」
白鐘「…………」
白鐘「比企谷先輩」
比企谷「ん?」
白鐘「今、僕……料理を勉強しているんです」
比企谷「……ほう」
白鐘「今度、ご馳走したいんですが」
白鐘「構わないでしょうか?」
比企谷「…………」
比企谷「そうだな、近い内に食わせてくれ」
白鐘「ええ、ぜひ」
134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:50:42 ID:KEz185Qo
白鐘「……それから」
比企谷「……まだあるのか」
白鐘「…………」
白鐘「いつか……聞かせてください」
比企谷「…………」
比企谷「……告白の事なら、もう少し時k」
白鐘「それだけじゃないです」
比企谷「!」
白鐘「どんな事でもいいんです」
白鐘「いつだったか、妹さんの話をしてくれましたよね?」
白鐘「ささいな事でいいんです……好きな色とか、嫌いな食べ物とか」
白鐘「少しずつでもゆっくりでも構わない」
135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:51:41 ID:KEz185Qo
白鐘「僕は……あなたを知りたい」
比企谷「…………」
白鐘「だから――」 ホロリ……
白鐘「あ、あれ……」
比企谷「…………」
ポタ…… ポタ……
白鐘「す……すみません……っ」
白鐘「こんな……つも、り……なかった、ん、です……けど……」
白鐘「や、だな……と、とまら……うぐっ……ひっく……」
比企谷「……っ」
136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:52:35 ID:KEz185Qo
比企谷(……落ち着け)
比企谷(いまさら、こんな事で動揺するな)
比企谷(すべてが……水の泡になるんだぞ!)
比企谷「…………」
比企谷「……どうした、白鐘」
比企谷「薬味がキツかったのか?」
白鐘「うっ……ぐすっ……ひっく……」
比企谷「…………」
―――――――――――
白鐘「……すみません、取り乱してしまって」
比企谷「……いや」
137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:53:40 ID:KEz185Qo
マイドアリー
白鐘「今日は、ありがとうございました」
比企谷「礼を言う様な事じゃないだろ」
白鐘「…………」
白鐘「……言いにくい事なんでしょうけど」
白鐘「僕は、話してくれるのを待っています」
比企谷「……何の事だ」
白鐘「ふふっ。 それじゃ、僕はこれで……」
スタ スタ スタ…
比企谷「おい……」
比企谷「…………」
138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:54:37 ID:KEz185Qo
―――――――――――
2月初旬の朝
通学路
花村「ううっ……寒っ」
花村「今日も雪か……」
里中「シャキッとするじゃん、花村」
天城「でもここの所、よく降るよね」
雪ノ下「…………」
里中「そういやクマくん、元気にしてる?」
花村「ああ、元気も元気、無駄に元気すぎて」
花村「こっちが参ってるくらいだっての」
天城「そうなんだ」 クスッ
139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:55:55 ID:KEz185Qo
花村「おおよ」
花村「昨日なんて無理やり誘った比企谷と豆まきしたんだぜ?」
里中「へぇ~。 あの比企谷くんが」
花村「クマの奴、力加減を知らないから思い切りぶつけて来やがったんで」
花村「俺と比企谷で共同戦線はって、投げ返してやったら」
花村「降参クマ~!とか言ってさ」
天城「私も参加したかったな」
里中「あたしも手伝ったけど、天城屋は恵方巻きイベントだったもんね」
アハハ……
雪ノ下「…………」
140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:56:56 ID:KEz185Qo
雪ノ下(……結局)
雪ノ下(何の進展もないまま日々が過ぎていく)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(比企谷くんの酷い噂は やや収まってきたものの)
雪ノ下(それでも毎日、耳に入らない事はない)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(比企谷くんも相変わらずだし……)
雪ノ下(彼の思う通りに事が進んでいる気がする)
雪ノ下(真意もわからないまま……)
雪ノ下(…………)
141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:58:13 ID:KEz185Qo
タッ タッ タッ
りせ「先輩達っ!」
里中「ん? りせちゃん?」
天城「どうしたの? そんなに走ってきて」
りせ「はあっ……はあっ……」
りせ「……く、詳しい事は、お昼休み……ええと」
りせ「屋上で話します!」
りせ「必ず来てください! できれば、比企谷先輩も連れてきて!」
花村「はあ? 比企谷もか?」
りせ「お願いします! じゃ!」
タッ タッ タッ…
142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 13:59:18 ID:KEz185Qo
里中「…………」
天城「…………」
花村「…………」
雪ノ下「…………」
花村「……いったいどうしたんだ?」
里中「何か、あったっぽいね」
天城「比企谷くんまで呼ぶって事は、相当な事、なのかな……」
雪ノ下「…………」
里中(それにしても雪ノ下さん、どうしてこんなに静かなの?)
天城(最近の雪ノ下さん……最初の頃みたいな雰囲気だし)
花村(……やっぱ、無理にでも聞き出すべきだったか?)
143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:00:11 ID:KEz185Qo
昼休み
屋上
りせ「――という訳です」
花村「」
里中「」
天城「」
白鐘「」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:01:21 ID:KEz185Qo
花村「【マヨナカテレビ】に……比企谷が映っただと!?」
里中「ど、どういう事!?」
里中「事件はもう終わったんでしょ!?」
天城「何が……起きてるの……」
りせ「あたしもわかんない……昨日、偶然見ただけだし」
白鐘「…………」
白鐘「アメノサギリ?が言ってましたね」
白鐘「【マヨナカテレビ】は、大衆が望むものを見る為の窓、と……」
花村「!」
里中「あっ!」
天城「この噂話……つまり」
天城「みんな、比企谷くんに『何か起これ』と思っているという事!?」
白鐘「おそらくは……」
145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:01:59 ID:KEz185Qo
花村「なんてこった……」
里中「後でクマくんにも知らせとかないと」
天城「そうだね、千枝」
花村「それはそうと、大丈夫なのか? 比企谷」
比企谷「別に……何も問題ない」
花村「はあ?」
花村「いや、怖くないのか?つー意味で」
比企谷「冷静になれ」
比企谷「テレビの世界を悪用する奴はもう居ない」
比企谷「この怪現象はどうにも出来ないが、何か起こる事はもうねーよ」
花村「だからそうじゃねーって!」
146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:03:30 ID:KEz185Qo
花村「大勢の奴が、お前に対して悪く思っているって事なんだぞ!?」
里中「そうじゃん、比企谷くん」
天城「本音を言っていいんだよ?」
りせ「あたし達、話を聞くくらいなら出来るよ?」
比企谷「大丈夫だ」
比企谷「実を言うと……【マヨナカテレビ】の事はもう知っていた」
一同「!?」
雪ノ下「…………」
比企谷「知った日からずっと見てたが……あの映像しか映っていない」
比企谷「さっきも言ったが、もうあの世界を悪用する奴は居ないからな」
比企谷「それに……あんな噂立てられてる時点で」
比企谷「周りが俺に対して悪意ありまくりなのも自明の理だ」
147: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:04:16 ID:KEz185Qo
花村「おい……比企谷」
比企谷「隠してた訳じゃない」
比企谷「ただ……言ってどうなるって事でもないだろ?」
花村「……っ」
里中「…………」
天城「…………」
りせ「…………」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「話はついたし、俺はもう行く。 じゃあな」
白鐘「あ……」
白鐘「…………」
148: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:05:31 ID:KEz185Qo
花村「……クソッ」
花村「そりゃ……お前の言う通りだけどよ……けど……けどっ」
里中「…………」
里中「結局……比企谷くんにとって、あたしらって」
里中「どうでもいい存在だったのかな……」
天城「千枝。 それは言い過ぎだよ」
白鐘「そ、そうですよ……比企谷先輩には……きっと」
白鐘「きっと……何か、理由が……」
白鐘「…………」
りせ「……なんか……バラバラだね、あたし達」
りせ「ほんの少し前まで、仲良くパーティとかしてたのに……」
149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:06:40 ID:KEz185Qo
花村「……雪ノ下さんは、どう思ってるんだ?」
花村「比企谷をこのまま放っておいていいのか?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「本人がああ言ってる以上……どうしようも出来ないわ」
一同「!?」
里中「ちょっと……雪ノ下さん、それってどういう意味?」
天城「比企谷くんの事、どうでもいいの?」
白鐘「待ってください」
白鐘「冷静な態度だったので、少し気になっていたんですけど……雪ノ下先輩」
白鐘「もしかしたら【マヨナカテレビ】の事、知っていたんですか?」
雪ノ下「…………」
150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:07:21 ID:KEz185Qo
雪ノ下「ええ」
一同「!」
雪ノ下「みんなに黙っていた事は謝るわ」
雪ノ下「でも……」
雪ノ下「比企谷くんは、あんな感じで、何でもないって壁を作ってて」
雪ノ下「どう対処したらいいか、わからない」
雪ノ下「今までのやり方は、どれもダメだった」
りせ「で、でも」
雪ノ下「今の状況で比企谷くんに出来る事は、何もない」
雪ノ下「それとも、何かいい案はあるのかしら?」
りせ「そ、それは……」
151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:08:25 ID:KEz185Qo
里中「そんな言い方ないじゃん」
里中「この場にいるみんなが言いたい事は」
里中「あたしらへの信頼ってそんなに無かったの?って事で……」
雪ノ下「信頼だけでは、解決できない事もあるわ」
一同「…………」
里中「……そう」
里中「そういう事なら、もうこの話はおしまいね」
里中「行こ、雪子」
天城「……うん、千枝」
152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:09:22 ID:KEz185Qo
花村「お、おい、里中……はあ」
花村「…………」
花村「まあ……気持ちとしては、俺も同じか」
花村「正直、多少はいい感じになってるって思ってたんだけどな……」
花村「残念だぜ、雪ノ下さん。 じゃあな」
りせ「……バイバイ、雪ノ下先輩」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……あなたは行かないのかしら?」
白鐘「…………」
白鐘「いえ、もう行きます」
白鐘「また、今度」
雪ノ下「…………」
153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:10:19 ID:KEz185Qo
何かが……終わった気がした
154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:11:25 ID:KEz185Qo
―――――――――――
数日後
警察署 面会室
比企谷「どうも、足立さん」
足立「やあ、比企谷くん」
比企谷「…………」
足立「…………」
比企谷「何にしようか、迷ったんですけどね」
比企谷「これ……最後の差し入れのたい焼きです」
足立「ありがとう」
比企谷「…………」
足立「…………」
155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:12:08 ID:KEz185Qo
比企谷「突然の電話で驚きました」
足立「そうかい。 君にも驚く事があるんだね」
比企谷「いつの間にご両親とまた会っていたんですか?」
足立「会ったのは先週くらい」
足立「古典的だけど、手紙を出して連絡した」
足立「いつまでも学生の君に お世話になる訳にはいかないしね」
比企谷「…………」
足立「いつだったかの……サバの味噌煮」
足立「やっぱりね、旨くないんだよ」
比企谷「…………」
足立「でも……妙に懐かしくてさ」
156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:13:02 ID:KEz185Qo
足立「味付けといい、火の通り方といい、全然変わっていなかった」
比企谷「…………」
足立「そう思ったらさ、何だか悔しくなってね」
比企谷「悔しい?」
足立「ああ」
足立「何が僕と向き合う覚悟だよ」
足立「結局……何も変わっていないじゃないか、と思ってしまった」
比企谷「…………」
足立「……僕は」
足立「両親に洗いざらいぶちまけてやった」
足立「これで愛想を尽かすだろうと踏んでね」
比企谷「…………」
157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:13:55 ID:KEz185Qo
足立「だけど……予想外の事が起こった」
比企谷「というと?」
足立「怒られたんだよ。 今まで見た事もない怖い顔でね」
比企谷「…………」
足立「そこからはね……この透明な板を挟んで大ゲンカ」
足立「その時の担当警官も逃げ出したかっただろう。 ククク……」
比企谷「…………」
足立「…………」
足立「……しかしね」
足立「何かが変わった気がした」
比企谷「……そうですか」
158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:15:03 ID:KEz185Qo
足立「そんな訳で、もう君の面会は必要ない」
足立「後は僕の両親が電話した通り、面倒みてくれる」
足立「長い事お疲れ様」
比企谷「……いえ」
足立「…………」
足立「ふふふ……それにしても」
足立「どうして僕や君は、こんな力を持ってしまったんだろうね?」
足立「いまさらだけど……もし無かったらと、どうしても考えてしまうよ」
比企谷「…………」
比企谷「俺も不思議に思っています」
比企谷「ここに……八十稲羽に来るまで何とも無かった」
足立「僕と同じだね……何か、きっかけでもあったのかなぁ」
比企谷「…………」
159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:16:06 ID:KEz185Qo
比企谷(きっかけ……?)
比企谷「…………」
足立「…………」
比企谷「それじゃ……俺はこれで」
足立「ちょっと待ってくれ」
比企谷「はい?」
足立「今の僕は……君から見て、どう思う?」
比企谷「…………」
比企谷「正直に言っても?」
足立「ぜひ」
比企谷「そうですね……」
160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:17:08 ID:KEz185Qo
比企谷「ようやく一人で立ち上がって、スタートラインについたと思います」
足立「……相変わらずはっきり言うねぇ」
足立「本当に生意気だよ、君は」
比企谷「性分なので」
足立「ふふふ……見てろよ」
足立「必ず君よりハッピーになって見返してやるからな」
比企谷「前途は多難なようですが」
足立「何……ちょうどいいハンデさ」
比企谷「…………」
足立「…………」
ハハハ……
161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:18:19 ID:KEz185Qo
―――――――――――
比企谷「…………」 ピッピッピッ……
ルルルルル……ルルルルル……ガチャ
比企谷「もしもし……比企谷です」
比企谷「突然すみません、堂島さん。 今、いいですか?」
比企谷「…………」
比企谷「実は、無理なお願いだと思うんですが」
比企谷「頼みたい事があるんです」
比企谷「…………」
比企谷「はい……それは――」
162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:19:14 ID:KEz185Qo
―――――――――――
夜
天城屋
雪ノ下「…………」
雪ノ下「…………」 グッ
コン コン
陽乃「はーい。 誰かしら?」
雪ノ下「私です、姉さん」
陽乃「雪乃ちゃん?」
ガチャ…
陽乃「どうしたの?」
雪ノ下「…………」
163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:20:09 ID:KEz185Qo
雪ノ下「相談したい事があります」
雪ノ下「比企谷くんの事で」
陽乃「…………」
陽乃「いいわ。 入って」
雪ノ下「はい」
―――――――――――
陽乃「それで? 比企谷くんの事って?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「全てを話します。 でも……」
雪ノ下「口を挟まず最後まで聞いて欲しい」
陽乃「……わかったわ」
164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:21:26 ID:KEz185Qo
―――――――――――
雪ノ下「――という事なの」
陽乃「…………」
雪ノ下「信じられないでしょうね」
雪ノ下「今、テレビ画面に手を突っ込んで見せるわ」
陽乃「雪乃ちゃん」
雪ノ下「……はい」
陽乃「私もね……あなたに隠してた事があるの」
雪ノ下「え……」
陽乃「去年の夏くらいにね……比企谷くんと ある約束をしたのよ」
雪ノ下「!」
165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:22:31 ID:KEz185Qo
陽乃「雪乃ちゃんが事件に関わっている事は、薄々わかっていたわ」
陽乃「だけど私……何があっても雪乃ちゃんを守るよう」
陽乃「比企谷くんに約束させたの」
雪ノ下「!!」
陽乃「ふふっ……考えていたのとは随分違ったけど」
陽乃「彼、しっかりと約束を果たしてくれたみたいね」
雪ノ下「…………」
陽乃「それで? 私に相談したい事は何かしら?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「今……比企谷くんは、酷い噂の中に居るわ」
雪ノ下「でも、彼は、いつも以上に壁を作ってしまっている」
雪ノ下「私は……どうにかしたいけど、どうすればいいか、わからない」
166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:23:35 ID:KEz185Qo
陽乃「…………」
雪ノ下「教えて、姉さん」
雪ノ下「私はどうすればいいの?」
雪ノ下「どうしたら、比企谷くんを元に戻せるの?」
陽乃「…………」
陽乃「ねえ、雪乃ちゃん」
雪ノ下「はい」
陽乃「それってさ……聞く相手を間違っていないかしら?」
雪ノ下「え……」
陽乃「雪乃ちゃんはそれを知っていながら、私に質問してない?」
雪ノ下「……っ!」
167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:25:31 ID:KEz185Qo
やっぱり……私の姉は、一枚上手だった
168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:29:23 ID:KEz185Qo
―――――――――――
数日後 降雪の休日
ガソリンスンタンド
サクッ… サクッ… サクッ…
比企谷「…………」
比企谷「おい」
店員「ん?」
店員「どうしたんだい? もしかしてアルバイトの……」
比企谷「お前……誰だ?」
店員「え?」
比企谷「はっきり言って気にも留めていなかったがな……」
比企谷「このガソリンスタンドに バイトは一人も居ないそうだぞ?」
店員「…………」
169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:30:34 ID:KEz185Qo
比企谷「俺は改めて、ここ八十稲羽に来た時を思い返した」
比企谷「この街に来て、何かおかしな事はなかったか?」
比企谷「テレビの世界に入る前に、この妙な力を手に入れた連中に共通点はないか?」
比企谷「それらを考慮した結果……」
比企谷「ふと、お前の事を思い出した」
店員「…………」
比企谷「何気ない会話と握手をしたが……」
比企谷「俺はその後すぐ、体調を崩した事を覚えている」
店員「…………」
比企谷「あの時は油の匂いに当てられたと自己完結していたが」
比企谷「様々な事を知った『今』なら……怪しい出来事だ」
店員「…………」
170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:31:31 ID:KEz185Qo
比企谷「それに少し聞いて回ったが、お前の姿は」
比企谷「必ず雨の日に目撃され、名前を知っている奴は一人も居なかった」
店員「…………」
比企谷「もう一度言う」
比企谷「お前は……誰だ?」
店員「…………」
店員「……フ」
店員「フフフフフフ……ハハハハハハッ!」
比企谷「…………」
店員「よく気がついたね……褒めてあげるよ」
比企谷「そんなもんいらねぇ。 さっさと質問に答えろ」
店員「フフフ……我が名は――」
171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/29(土) 14:32:50 ID:KEz185Qo
――イザナミ――
178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:41:26 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
ジュネス フードコート
花村「…………」
花村「…っえっくしッ!!」
花村「……さぶっ」 ズビッ…
花村「…………」
??「……花村?」
花村「?」
花村「! ……里中」
里中「何してんの? こんな雪の中のフードコートで」
179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:42:22 ID:Wx7BF/yM
花村「お前こそ何しに来たんだよ?」
里中「あ、あたし? あたしは……」
里中「…………」
花村「…………」
花村「コーヒー、飲むか?」
里中「あたしはミルクティーがいいじゃん」
花村「へいへい」
―――――――――――
里中「ふう……」
花村「…………」
里中「…………」
180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:43:21 ID:Wx7BF/yM
花村「俺さ……」
里中「うん」
花村「無い知恵絞って今回の事、なんとかできねーか 考えてみた」
里中「…………」
里中「いいの浮かんだ?」
花村「浮かんだら こんなとこいねーよ」
里中「そっか……」
花村「少なくともよ……【マヨナカテレビ】を何とかしたい」
花村「けど、それはあの世界『そのもの』が問題になってくる」
花村「どうにかなんて出来る訳がねぇ……」
里中「……だね」
花村「かと言って噂をやめさせるなんて出来ねーし」
花村「くよくよ考えてたら、なぜかここに足が向いたんだ」
181: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:44:10 ID:Wx7BF/yM
里中「ふうん……」
花村「改めて聞くが、お前は何でここに来たんだ?」
里中「…………」
里中「あたしは、比企谷くんのこと考えてた」
花村「はあ? お前いまさら参戦すんの?」
里中「そういう意味じゃないっての!」
里中「由比ヶ浜さんが言ってたじゃん?」
里中「比企谷くんは、誰よりも心の痛みを知ってるから」
里中「ぶっきら棒な態度を取るんじゃないかって」
花村「…………」
里中「だったら」
182: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:46:01 ID:Wx7BF/yM
里中「あたしらにこんな思いまでさせて、自分から人を遠ざけようとするのは」
里中「どんな痛みからなんだろうって思ってさ……」
花村「痛み、ね……」
里中「…………」
里中「最初……転校して来たばかりの比企谷くん」
里中「緊張をほぐす意味も兼ねて、せっかく案内を買ってでたのに図星突かれてさー」
里中「あたし、何てひねくれた奴なんだろう!」
里中「って思ったの」
花村「ははは、俺も覚えてるぜ」
花村「お前が初対面でこんなに悪態つくなんて、どんな奴だよ?」
花村「って驚いたな」
里中「…………」
里中「でもさ」
183: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:47:29 ID:Wx7BF/yM
里中「あの時の比企谷くん……」
里中「雪ノ下さんが見送りに来なくて……きっと心に痛みを感じていた」
里中「だから……ああいう態度をとったのかなって」
里中「『今』は、思えるじゃん」
花村「……何でもないってフリして、か」
里中「…………」
花村「…………」
花村「……なあ、里中」
里中「うん」
花村「思えば、ここだったな。 あいつとの付き合いが始まったのって」
里中「そうだね……花村がささやかな歓迎会だって言って」
花村「ああ……」
184: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:48:15 ID:Wx7BF/yM
花村「…………」
里中「…………」
花村「やっぱり……比企谷と過ごした『これまで』を」
花村「ナシには出来ねーよな」
里中「うん。 そうじゃん」
里中「後……残り1ヶ月程度だけど」
里中「このままにしたくないじゃん!」
花村「だよな!」
ハハハハハハ……
花村「ふう……」
花村「……そういやよ」
里中「うん?」
185: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:49:10 ID:Wx7BF/yM
花村「結局、【マヨナカテレビ】って何だったんだろうな?」
里中「怪現象じゃん」
花村「あーいや、そうじゃなくてな」
花村「情報の出処?みたいな意味」
花村「俺も軽い噂話程度には知ってたけど、詳しくは……そうだ!」
花村「お前から聞いた気がするぜ?」
里中「あたし? そうだっけ?」
花村「お前は誰から聞いたんだ?」
里中「え~っと……あたしも他の女子が話してるのを聞いてって感じだったと思う」
花村「そうか……けど」
花村「そうなると誰が最初に流したんだ……?」
186: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:50:27 ID:Wx7BF/yM
里中「そりゃ偶然見かけた奴なんじゃん?」
花村「偶然……ね」
花村「…………」
里中「花村?」
花村「……なあ、里中」
里中「うん」
花村「【マヨナカテレビ】ってさ、初めて見た時、どう思った?」
里中「え? う~ん……」
里中「ちょっと不気味だな……って思ったじゃん」
花村「俺もだ。 特に俺は、小西先輩だと分かっちまったからな……」
花村「運命の人とかいう前置きがあっても嫌なイメージしか沸かなかった」
里中「ああ……そういや噂話は、運命の人が見えるって話だったね」
187: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:51:28 ID:Wx7BF/yM
花村「……おかしいと思わねぇか?」
里中「何が?」
花村「何の予備知識もナシであれ見て」
花村「運命の人、なんて明るいイメージ……沸くと思うか?」
里中「うーん……そりゃ確かに沸かないじゃん」
里中「けど世の中、いろんな人が居るし……てか、何が言いたいの?」
花村「……上手く言えねーけど」
花村「【マヨナカテレビ】を大勢の人間に見させる為に」
花村「『誰か』が、故意に噂話を流したと思えねーか?」
里中「……!」
188: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:52:47 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
白鐘宅
ピピピ…… ピピピ…… ガチャ
白鐘「はい、もしもし。 白鐘です」
白鐘「堂島さん? 珍しいですね、どうしました?」
白鐘「…………」
白鐘「え……」
白鐘「…………」
白鐘「比企谷先輩が……?」
白鐘「…………」
白鐘「いえ……僕に心あたりはありませんが」
白鐘「はい……はい……」
白鐘「それでは……」
189: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:53:51 ID:Wx7BF/yM
ブッ…… ツー ツー
白鐘「比企谷先輩があの人と面会……?」
白鐘「いまさら何故?」
白鐘「…………」
白鐘(事件自体はとっくに終わっている)
白鐘(何か知りたいとしても、どうしてそんな事を……)
白鐘(何の意味が……?)
白鐘(…………)
白鐘(皆目見当もつかないな……)
白鐘(どういう事なのだろう?)
190: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:54:40 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
天城屋 雪ノ下の部屋
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……そう)
雪ノ下(私は知っている)
雪ノ下(今の比企谷くんを元に戻せそうな方法を思いつける)
雪ノ下(きっかけなり情報なり、あるいはそのものを教えてくれそうな人を……)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(どうして……)
雪ノ下(どうして私は、連絡を取ろうとしないの)
雪ノ下(このケータイのボタン押すだけで済む話でしょ!?)
雪ノ下(……どう……して)
191: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:55:53 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下(…………)
ピピピ…… ピピピ……
雪ノ下「ひゃっ!?」
雪ノ下「…………」 ドキドキ
雪ノ下「び、びっくりした……」
ガチャ
雪ノ下「もしもし……白鐘くん?」
雪ノ下「どうしたのかしら?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「堂島さんから?」
雪ノ下「…………」
192: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:56:44 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「え?」
雪ノ下「どうしていまさら比企谷くんがあの人との面会を?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……思い当たる節(ふし)なんてないわ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「ごめんなさい、お役に立てなくて」
雪ノ下「じゃ……」
ブッ…… ツー ツー
雪ノ下「…………」
雪ノ下(何をしているのかしら……比企谷くん)
雪ノ下(…………)
193: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:57:58 ID:Wx7BF/yM
テレビの世界
クマ「…………」
クマ「……およ?」
クマ「この気配は……センセイクマ?」
クマ「…………」
クマ「どうして入ってきたクマ?」
クマ「それはともかく、お迎えに向かうク……」
クマ「!?」
クマ「…………」
クマ「……どういう事クマ?」
クマ「これは……この感じ方は……!!」
クマ「ともかく、ヨースケに知らせるクマ!!」
194: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 19:59:36 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
ジュネス フードコート
ルルルルル……ルルルルル……
里中「どう? 花村?」
花村「……ダメだな。 繋がらねぇ」 ピッ
花村「比企谷、電源切ってんのかもな……」
里中「そう……」
花村「どうすっかな……他の連中に声かけてみるか?」
里中「うん、そうだね」
里中「じゃ、あたし、雪子にかけてみる」
花村「おう。 んじゃ俺は……」
195: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:00:33 ID:Wx7BF/yM
ピピピ…… ピピピ……
花村「うおっと!?」
花村「あ~……ビビった」 ピッ
花村「はい、もしもし?」
花村「お、白鐘か。 ちょうどいい……ん?」
花村「…………」
花村「はあ? 比企谷が?」
花村「いや、初耳だな……つーか、何してるんだ? あいつ……」
花村「ともかく、心当たりなんぞ全くねーよ」
花村「…………」
花村「は? 何がちょうどいいのかって? ああそれはな……」
196: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:01:47 ID:Wx7BF/yM
花村「今、里中と話しててな……くだらねー妄想かもしれないが」
花村「【マヨナカテレビ】の噂を故意に流した奴が居るんじゃね?って」
花村「話になってな……」
花村「…………」
花村「ああ、もちろん根拠なんてねーよ」
花村「元々の噂話とあまりに掛け離れているんじゃね?ってだk」
??「ヨースケ!!」
花村「どわっ!? いきなり出てくんなよ! クマ吉!」
花村「それに人が電話してる最中に大声出すなっての!」
クマ「そ、それどころじゃないクマ!! 一大事クマよ!!」
197: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:02:59 ID:Wx7BF/yM
花村「あん? ……すまん白鐘、ちょっと待っててくれ」
花村「どうしたんだよ、クマ?」
里中「雪子ごめん、ちょっと待ってて」
里中「どうしたの? クマ?」
クマ「い、今、テレビの中にセンセイが居るクマ!!」
花村「……そりゃ確かに珍しいけど、俺も時々お前に会いに行ってたし」
花村「出入り口は出しっぱなしにしてたんだろ?」
花村「あいつ、元気だったか?」
クマ「そんなのんびりした話じゃないクマ!!」
クマ「センセイは……センセイは……!」
クマ「『あの世界』の『どこ』に居るのか、わからんクマよ!!」
花村・里中「……え?」
198: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:03:54 ID:Wx7BF/yM
花村「…………」
里中「…………」
クマ「…………」
花村「えーっと……つまり、それって?」
里中「今までの……被害者と同じ?」
クマ「そうクマ!!」
花村「」
里中「」
花村「たたたたた、大変だ!! お、おい! 白鐘!!」
里中「ゆゆゆゆゆ、雪子! お、おおお、お、落ち着いて聞いて!!」
199: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:04:47 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
天城屋 雪ノ下の部屋
雪ノ下「…………」
コン コン
雪ノ下「はい?」
??「雪ノ下さん、大変だよ!」
雪ノ下「天城さん? どうしたの?」
ガチャ
天城「い、今、千枝から電話があって……」
天城「比企谷くん、テレビの世界で行方不明になってるらしいの!」
雪ノ下「!?」
雪ノ下「どういう事なの!?」
200: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:06:07 ID:Wx7BF/yM
天城「私もついさっき聞いたばかりだから、よくわからない……」
天城「でも、花村くんが一度みんなで集まろうって」
天城「ジュネスのあの場所で待ってるって……」
雪ノ下「わかったわ、天城さん」
雪ノ下「すぐに出かける準備するから!」
天城「うん。 玄関ロビーで待ってるね」
天城「一緒に行こう!」
―――――――――――
201: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:07:08 ID:Wx7BF/yM
ジュネス フードコート
雪ノ下「ごめんなさい、遅くなって……」
花村「ああ、雪ノ下さん」
花村「白鐘達も今来たところだ。 気にしないでくれ」
雪ノ下「それで、比企谷くんは? 今、どうなってるの!?」
里中「雪ノ下さん、気持ちは分かるけど落ち着いて……」
りせ「とにかく比企谷先輩が行方不明なのは間違いないんでしょ?」
りせ「だったら早くあの世界に行かないと……」
花村「ちょっと待ってくれ」
花村「どうもいろいろ起こってるみたいでな……少し整理しようぜ」
白鐘「そうですね。 では、まず僕から話します」
白鐘「実は今朝、堂島さんから比企谷先輩についての電話があったんです」
りせ「堂島さんが?」
202: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:08:21 ID:Wx7BF/yM
白鐘「ええ」
白鐘「数日前の話だそうですが……ふと気になって僕にかけたみたいです」
りせ「いったい比企谷先輩は何をしたの?」
白鐘「それが……生田目との面会を頼んだそうです」
りせ「……え?」
りせ「いまさら……何で?」
白鐘「堂島さんも不思議に思ったそうで」
白鐘「彼、立会いのもとでなら、と、許可したそうです」
りせ「ふうん……それで?」
白鐘「堂島さんの話だと、事件に関する事なのかどうか微妙だそうですが」
白鐘「生田目がこの街に帰って来たばかりの頃の事を聞いていたとか……」
203: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:09:43 ID:Wx7BF/yM
白鐘「久慈川さんも心当たりはありませんか?」
りせ「う~ん……ないなぁ」
花村「俺らにも聞いてたが、白鐘は何でこんなに気にするんだ?」
白鐘「……わかりません。 ただ」
天城「ただ?」
白鐘「比企谷先輩は、無駄な事を嫌う人です」
白鐘「今回の僕たちの事も、この面会の件も」
白鐘「必ず何か、理由があるはずです」
雪ノ下「…………」
花村「よし、とりあえずそれは置いておいて」
花村「俺たちの話だがな……」
白鐘「【マヨナカテレビ】の噂話がどうとか言ってましたね?」
花村「ああ」
204: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:11:06 ID:Wx7BF/yM
花村「里中と話してて思ったんだが……【マヨナカテレビ】の噂話ってさ」
花村「『誰か』が、意図的に流したんじゃねーの?って思ってな」
白鐘「『誰か』が、意図的に……?」
りせ「けど、仮にその通りだとしても、そんな事して何の得になるの?」
天城「私もそう思う……いくらなんでも無理があるんじゃないかな?」
花村「まあ根拠なんてねぇよ」
花村「今回の比企谷の事を考えてたら、ふと、な……」
雪ノ下「…………」
白鐘「ともかく、これで一通りの情報は出ましたね?」
花村「ああ」
白鐘「なら、こうなった理由は分かりませんが……」
白鐘「比企谷先輩を救出に向かいましょう」
205: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:12:00 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
テレビの世界
りせ「…………」
りせ「……っ」
りせ「ダメ……居場所、わかんない」
一同「!?」
花村「ど、どうしてだ!?」
花村「比企谷の事なら、だいたいわかってんだろ!?」
りせ「あたしに言われても……けど、一言いうなら」
りせ「あたし達……まだまだ比企谷先輩の事、理解してないって事だよ」
206: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:12:52 ID:Wx7BF/yM
花村「くっ……!」
里中「そんな事、言われても……」
天城「ここにいる私たち以上に比企谷くんを知っている人なんて……」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……居るわ」
一同「え!?」
雪ノ下「一人だけ……私に心当たりがある」
雪ノ下「きっと、何とかしてくれるわ……」
一同「……?」
雪ノ下「とりあえず、外に出ましょう」
207: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:13:57 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
由比ヶ浜の部屋
ピピピ…… ピピピ……
由比ヶ浜「あ、ケータイ鳴ってる」 ガチャ
由比ヶ浜「もしもし?」
由比ヶ浜「! ゆきのん! 待ってたよ!」
由比ヶ浜「それで、ヒッキーは……え?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「!?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「そ、それって……かなりヤバイんじゃないの!?」
208: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:14:37 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「ええ……もう八方塞がりという状況よ」
雪ノ下「でね、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「今聞いた情報から、わかる範囲で構わない」
雪ノ下「比企谷くんについて、何かわからないかしら?」
雪ノ下「どんなささいな事でもいいの。 何か、気がつかなかった?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……そう」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「ううん……私の方こそ、ごめんなさい」
雪ノ下「必ず何とかしてみせ……え?」
209: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:15:34 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「私、そっちに行く!」
由比ヶ浜「ゆきのんの説明だけじゃ伝わらない事もあると思う」
由比ヶ浜「だから……そっちに行って直接見て、聞いて」
由比ヶ浜「答えを出すよ、私!」
由比ヶ浜「じゃ!」
ブッ…… ツー ツー
由比ヶ浜「急がなきゃ……!」
ダッ!
210: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:17:05 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「…………」
花村「どうだった? 雪ノ下さん」
雪ノ下「……私の説明だけじゃ良く分からないから」
雪ノ下「今からこっちに来るって……」
花村「そうか……ありがたいな」
白鐘「…………」
白鐘「みなさん、どうでしょう?」
白鐘「由比ヶ浜さんがここに来るのは、早くても夕方頃です」
白鐘「その間に出来るだけ情報を集めませんか?」
里中「というと?」
211: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:17:46 ID:Wx7BF/yM
白鐘「僕の意見としては2つあります」
白鐘「比企谷先輩の足取りと、何を調べていたのか」
白鐘「まず、堂島さんに連絡して何とか生田目に面会できないか聞いてみます」
白鐘「彼が比企谷先輩と何を話したのか、知りたい」
白鐘「それから比企谷先輩のここ数日の動きですね」
白鐘「推測ですが、この街で何かを調べていた可能性があります」
天城「具体的にはどうしたらいいかな?」
白鐘「簡単に言えば聞き込みですね」
白鐘「彼を誰かが見かけていないか、聞きいてまわるのが手っ取り早いでしょう」
りせ「うん、よくわかったよ、白鐘くん」
白鐘「それでは……そうですね」
白鐘「夕方の17:00くらいに一度ジュネスに集まりましょう」
クマ「了解クマー!!」
212: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:18:30 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
数時間後
213: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:19:32 ID:Wx7BF/yM
八十稲羽駅 駅前
由比ヶ浜「ゆきのん!」
雪ノ下「! 由比ヶ浜さん」
雪ノ下「わざわざごめんなさい……使った交通費は」
由比ヶ浜「そんな話は後でいいよ、ゆきのん」
由比ヶ浜「それよりも早く、みんなに会わせてくれる?」
雪ノ下「……ええ、わかったわ」
雪ノ下「そこにタクシーを待たせてあるから、それに乗って」
雪ノ下「ジュネスに向かうわよ」
由比ヶ浜「うん!」
214: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:20:27 ID:Wx7BF/yM
ブロロロロロ……
由比ヶ浜「……ところでゆきのん」
雪ノ下「何かしら?」
由比ヶ浜「ヒッキー、どんな風に……ううん、そうじゃない」
由比ヶ浜「私が帰った後、どんな様子だった?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……ひと言では言えないわ」
雪ノ下「最初は、小さな違和感だったけど……スキーに行ってから」
雪ノ下「いいえ……その前からも、人付き合いが悪くなっていった気がする」
由比ヶ浜「…………」
215: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:21:21 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「何かにつけて忙しいと言ってたけど、ちゃんと理由はあったの」
雪ノ下「足立さん……今回の事件の真犯人の足立さんに」
雪ノ下「よく面会しに行ってたらしいわ」
由比ヶ浜「え!?」
雪ノ下「驚くでしょうね……あなたも知っての通り」
雪ノ下「比企谷くんがここに来てからの保護者であり同居人。 彼が真犯人だったの」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「それを知ってから、私たちも比企谷くんに話しかけ辛くなった」
雪ノ下「酷い噂も無くならないし……」
由比ヶ浜「? 噂?」
216: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:21:59 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「……どこから漏れたのか」
雪ノ下「今学期が始まってから、比企谷くんが」
雪ノ下「足立さんと親戚である事がバレてしまってたの」
由比ヶ浜「!!」
由比ヶ浜「ヒッキー……」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「………っ」
雪ノ下「……私っ」
雪ノ下「どうする事も出来なかった……!」
雪ノ下「どうする事も……」
由比ヶ浜「ゆきのん……」
由比ヶ浜「…………」
217: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:22:59 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
ジュネス フードコート
花村「由比ヶ浜さん、久しぶり!」
由比ヶ浜「うん、花村くん。 それにみんなも!」
クマ「ユイちゃん、元気そうで何よりクマ!」
里中「こんな状況じゃ無かったら、もっと良かったんだけど……」
由比ヶ浜「そうだね……でも、今はくよくよ考えても仕方ないよ!」
由比ヶ浜「で、私に話したい事って何かな?」
白鐘「僕から話しましょう」
白鐘「ですがその前に、今の状況を説明しておきます」
218: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:23:45 ID:Wx7BF/yM
白鐘「――という訳で、比企谷先輩は」
白鐘「テレビの世界に居る事はわかっていますが、居場所がわかりません」
白鐘「そこで……」
由比ヶ浜「私に……ヒッキーの『何か』を教えて欲しいんだね」
由比ヶ浜「責任重大だぁ……」
天城「大丈夫だよ、由比ヶ浜さん。 肩の力、抜いていこう!」
由比ヶ浜(ううっ……余計プレッシャー)
白鐘「それでは、ここからが新たな情報ですが……」
白鐘「まず、生田目ですけど……堂島さんの言う通りでした」
りせ「なんか、八十稲羽に帰ってきた頃の話を聞いたっていう?」
白鐘「ええ」
219: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:25:27 ID:Wx7BF/yM
白鐘「この街に帰ってきて おかしな出来事は無かったか?とか」
白鐘「妙な奴に話しかけられなかったか?とか……」
花村「妙な奴だって?」
白鐘「ええ……ですが、生田目は特に思いつかず」
白鐘「この街に帰ってきた時、給油の為にガソリンスタンドに寄った事くらいしか」
白鐘「思い出せなかったそうです」
花村「え!?」
由比ヶ浜「どうしたの? 花村くん?」
花村「いや……それが」
花村「この街で最近の比企谷を見かけた奴が居ないか、聞き込みしてたんだけど」
花村「ほら、商店街近くにあるガソリンスタンド」
花村「あそこのバイトの事を聞いてったってのが何人か居たんだよ」
220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:26:49 ID:Wx7BF/yM
白鐘「バイト……ですか?」
里中「ああ、確かにそんな人いたね」
里中「時々見かけた気もするけど、ひょろっと背の高い男の人だったかな?」
花村「これも聞いた話だが……あそこでバイト雇ってたっけ?みたいなのや」
花村「よく雨の日に見かけるな、とか、そういや名前を知らない、とか」
花村「そんな話を聞いた」
白鐘「…………」
花村「俺は商店街には行きづらいんで、そんな奴まったく知らねーけど」
花村「念のため、スタンドを訪ねてみたんだが……やっぱりバイトは雇っていないそうだ」
りせ「なんか……怪しいね、そのバイトの人」
221: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:28:27 ID:Wx7BF/yM
白鐘「ふむ……」
白鐘「確証は持てませんが、比企谷先輩は」
白鐘「今回の事件に関する『何か』を見つけ出し、それを追求しようとして」
白鐘「今の事態におちいった……という事になるのでしょうか」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「どうかしら? 由比ヶ浜さん?」
雪ノ下「何か……答えを出せるかしら?」
由比ヶ浜「……ごめん、ゆきのん」
雪ノ下「そう……」
一同「…………」
白鐘「……こうなれば、その不可思議な人物を探す方が」
由比ヶ浜「あ、待って、白鐘くん」
白鐘「え?」
222: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:29:27 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「私が知りたい事は、そういう事じゃないの」
由比ヶ浜「みんなから見た『ヒッキーの事』を教えてくれないかな?」
一同「!」
白鐘「……そうでした」
白鐘「僕たちの今の目的は、比企谷先輩の『何か』を知る事」
花村「だな……ついつい推理の方に傾いちまってたぜ」
里中「そうだね……」
里中「じゃあ、あたしから言うじゃん?」
由比ヶ浜「うん!」
223: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:30:22 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
りせ「――って感じかな」
由比ヶ浜「…………」
花村(これで一通りの意見を聞いたけど……)
里中(みんな似たり寄ったりじゃん)
天城(参考になるのかな……)
クマ(センセイ……どうしたクマ?)
白鐘(みなさんも薄々変化に気づきながら、やがてそれに慣れていった)
白鐘(そんな印象を受けますね……)
由比ヶ浜(……でも、ヒッキーは、以前から壁を作る癖があった)
由比ヶ浜(だけど今回のは、それを段々と強めていった感じ……どうしてだろう?)
由比ヶ浜(ヒッキーをよく知ってるゆきのんが戸惑うくらいに……なぜ?)
224: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:31:21 ID:Wx7BF/yM
白鐘「……どうでしょう? 由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「…………」
一同「…………」
由比ヶ浜「……ね、白鐘くん」
白鐘「! は、はい」
由比ヶ浜「今から……足立さんに面会って出来る?」
一同「え!?」
白鐘「い、今からですか!?」
花村「もう19:00時過ぎてるぞ……面会時間、さすがに終わってるんじゃないのか?」
225: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:32:20 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「でも、どうしても会っておきたい」
由比ヶ浜「ゆきのんからも聞いたけど、どうして足立さんにそこまでこだわったのか」
由比ヶ浜「私、知りたい」
一同「…………」
白鐘「……わかりました」
白鐘「堂島さんに相談してみましょう」
白鐘「聞いてくれるかどうか、分かりませんが……」
由比ヶ浜「うん、お願い」
花村(さすが、というべきか……俺はそんなこと少しも考えなかったぜ)
里中(でも……親戚だから、仕方なくやってたっていう気もするし)
雪ノ下(…………)
226: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:33:36 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
八十稲羽警察署
面会室
堂島「……ったく」
堂島「こういう事は、これっきりにしてもらいたいな」
白鐘「何度もすみません……」
堂島「まあいい。 なんだかんだ言って世話にはなったし」
堂島「比企谷の保護者代理を引き受けてもいる」
堂島「多少の骨は折ってやるさ」
ガチャ……
足立「……!?」
227: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:35:35 ID:Wx7BF/yM
堂島「来たか、足立」
足立「……これはどういう事ですか? 堂島さん」
堂島「さあな……俺にもわからん」
堂島「ただ、ここに居る連中は、お前に聞きたい事があるそうだ」
足立「僕に……?」
堂島「事件の事じゃないらしい……ま、話を聞いてやってくれ」
足立「はあ……」
由比ヶ浜「こ、今晩は……足立さん」
足立「今晩は」
由比ヶ浜「覚えていますか? 私のこと……」
228: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:36:40 ID:Wx7BF/yM
足立「ええと……確か」
足立「そうだ、去年の夏くらいに比企谷くんがアパートに連れ込んだ娘だね?」
一同「!?」
花村「え!? あいつ、何しちゃってんの!?」
クマ「アダっちー、もっと詳しく言うクマ!」
由比ヶ浜「い、今は関係無いし、違うから!!」///
足立「相変わらず賑やかだねぇ……君たちは」 クスクス
由比ヶ浜「は、話を戻します!」
由比ヶ浜「それで、ですね……その」
由比ヶ浜「ヒッキー……比企谷くんとは、面会でどんな話をしたんですか?」
229: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:37:33 ID:Wx7BF/yM
足立「う~ん……特別な事は何もしてないと思うけど」
由比ヶ浜「それでも構いません。 話してください」
足立「…………」
足立「……時々差し入れや着替えを持ってきてくれてただけだよ」
足立「僕の両親の代わりにね」
由比ヶ浜「…………」
足立「彼とは別れ際に数言話すくらいだった」
由比ヶ浜「どんな話ですか?」
足立「……最初は鬱陶しかったんだけどね」
足立「ある面会の時、『あなたという人間を知る為』にここに来てるって言ってたよ」
由比ヶ浜「え……」
足立「そういやその時……自分は昔、学校をサボった事があるって言ってたっけ」
足立「話を聞く限りじゃ小学生くらいの時の事みたいだった」
230: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:38:33 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「他にもありますか?」
足立「そうだね……」
足立「…………」
足立「後は、いろいろ褒めてくれたかな」
由比ヶ浜「褒める?」
足立「僕の料理は旨かった、とか、刑事になるのは大変だったろう、とか……」
由比ヶ浜「…………」
足立「……シャクに障るんだけどね」
足立「けっこう嬉しかったんだよ、これが」
231: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:39:44 ID:Wx7BF/yM
足立「なんかね……上手く言えないけど」
足立「親を含めて、僕の周りにそんな事を褒めてくれる人は居なかった」
足立「いや……厳密にはそう思う事が出来なかったんだと思う」
由比ヶ浜「…………」
足立「なのにね……こんな立場になった僕に比企谷くんは」
足立「いいところもあるって、言うんだよ……」
足立「いや、もちろんはっきりそう言った訳じゃないけどね」
足立「けど僕は……そんな感じに受け取った」
由比ヶ浜「…………」
足立「…………」
足立「……そしたらさ」
足立「クソだと思ってた世の中が、少しだけ明るく見えた気がしたんだ」
足立「比企谷くんのおかげだと思うと、ちょっと腹も立つけどね」
由比ヶ浜「…………」
232: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:42:02 ID:Wx7BF/yM
花村(あいつ……こんな事してたのか)
里中(足立さんも……いろいろ抱えてたんだ)
天城(テレビの世界の足立さんは、あくまで一面……)
りせ(けど、あたし達は それが足立さんの全てだって、無意識に考えてた)
白鐘(比企谷先輩は一番間近に居て、それもあって)
白鐘(そうでない事を見抜き、一人、足立さんと向き合っていたのか……)
クマ(さっすがセンセイクマ!)
雪ノ下(…………)
足立「まあ……ついこの前、さすがにこのままじゃいけないと思って」
足立「両親に手紙を出して……ん?」
足立「君、どうしたんだい?」
233: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:42:53 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「……っ……ぐすっ……ひくっ……」
一同「」
里中「ど、どうしたの!? 由比ヶ浜さん……」
天城「お腹でも痛いの?」
由比ヶ浜「……ぐっ……違う……くっ……」
花村「…………」
由比ヶ浜「私……たぶん分かったと思う……ぐすっ……でも……」
由比ヶ浜「バカだよ……ヒッキー……大バカだよっ……!」
由比ヶ浜「ヒッキーは……ヒッキーはっ……!」
一同「…………」
234: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:43:59 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
????
比企谷「…………」
比企谷「……う」
比企谷「…………」
比企谷「……ここは?」
比企谷「…………」
比企谷(……霧がかかっている)
比企谷(という事は、テレビの世界か……)
235: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:45:08 ID:Wx7BF/yM
比企谷(…………) ゴソゴソ……スチャ(メガネ装備)
比企谷(鳥居? 初めて見る場所だな……)
比企谷(あの偽バイト……雪ノ下のペルソナと同じ”イザナミ”と名乗っていた)
比企谷(どういう事だろう……何か関係があるのだろうか)
比企谷(…………)
比企谷(ともかく、あいつが俺をここへ放り込んだのは間違いない)
比企谷(さて……どうしたもんかな)
――随分と冷静だね――
比企谷「!」
比企谷「イザナギ!」
ガキィンッ!
236: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:46:03 ID:Wx7BF/yM
イザナミ「おやおや……いきなり攻撃してくるとは」
イザナミ「何をそんなに怯えているんだ?」
比企谷「くっ……! イザナギ!」
ヒュバッ!
イザナミ「その力は少し邪魔だね」
ギュルルルルッ!
比企谷「ぐっ!?」
イザナミ「ふふふ……これでゆっくり話ができる」
比企谷「!? ……話、だと?」
237: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:47:21 ID:Wx7BF/yM
イザナミ「そうさ」
比企谷「いまさら何の話だ?」
イザナミ「ん? 君は疑問に思わないのか?」
イザナミ「なぜ私がこんな事をしているのか……」
比企谷「おおよそ想像はついている」
イザナミ「ほう?」
比企谷「お前もアメノサギリ?同様、嫉妬から行動している」
比企谷「おそらく、この街における人間たちの醜悪さを眺める為に」
比企谷「今回の騒動を巻き起こした」
イザナミ「なかなかの推測だね。 けど、惜しいが不正解だ」
比企谷「何?」
イザナミ「私は別に人間の『醜悪さ』を眺めたい訳じゃない」
238: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:48:09 ID:Wx7BF/yM
イザナミ「ただ……”力”を与えた人間が、何をするのか」
イザナミ「どう行動するのか」
イザナミ「退屈しのぎに眺めていただけだよ」
比企谷「…………」
イザナミ「まあ言ってしまえば……」
イザナミ「あの足立とかいう人間と同じだ」
イザナミ「私にはそれができる力が備わっていた。 だからやった」
イザナミ「予想もつかない展開でなかなか楽しかったよ」
比企谷「…………」
比企谷「……けんな」
イザナギ「ん?」
239: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:49:09 ID:Wx7BF/yM
比企谷「ふざけんなッ!!」
イザナギ「……ほう」
イザナギ「意外だな。 君はそんな感情的な人間だと思わなかったが」
比企谷「てめぇの下らない娯楽趣味のせいで」
比企谷「どれだけの人間が傷ついたと思ってやがる!?」
イザナギ「…………」
比企谷「てめぇは……てめぇだけは!」
比企谷「必ず俺がぶちのめしてやるッ!!」
イザナギ「ふふふ……いいぞ」
イザナギ「その憎しみ……実に心地よい」
イザナミ「もっと私を憎め……その心を怒りで満たせ……」
240: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:50:00 ID:Wx7BF/yM
イザナミ「そして……ここで永遠に私と暮らすのだ」
比企谷「!?」
比企谷「何を言ってやがる!?」
イザナミ「ふふふ……」
イザナミ「戯れに始めた事だったが、存外、面白い事ができそうなのでな」
イザナミ「その為にはまず……」
イザナミ「お前の【シャドウ】を出さねばならん」
比企谷「!?」
比企谷「なんだと!?」
イザナミ「お前はもう囚われの身」
イザナギ「抵抗は無意味だ」
241: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:51:30 ID:Wx7BF/yM
比企谷「…………」
比企谷「……やめろ」
比企谷「来るなっ……! 来るんじゃねぇ!!」
イザナミ「ふふふふふふふ……」
スッ…
比企谷「やめろ……やめろ……!」
比企谷「やめろ、やめろ、やめろっ!」
比企谷「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
242: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:52:15 ID:Wx7BF/yM
―――――――――――
テレビの世界
花村「さて……閉店ギリギリで危なかったけど」
花村「何とかここに来れたな」
里中「後は、比企谷くんを見つけるだけね」
天城「けど……由比ヶ浜さん」
天城「本当に危ないから、天城屋で待ってた方がいいと思うんだけど……」
雪ノ下「私もそうした方がいいと思う」
由比ヶ浜「…………」
白鐘「安心してください。 必ず連れて帰りますから」
由比ヶ浜「…………」
243: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:53:50 ID:Wx7BF/yM
雪ノ下「……どうしたの? 由比ヶ浜さん?」
クマ「ユイちゃん、もしかして気分でも悪いクマ?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……これって、もしかして?」
一同「?」
由比ヶ浜「…………」 グッ…!
由比ヶ浜「ペルソナッ!」
カッ!!
一同「!?」
244: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:55:10 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「出た!!」
由比ヶ浜「私にもペルソナがあった!!」
里中「ウソッ!?」
天城「由比ヶ浜さんにもペルソナが!?」
花村「……まあ状況的には、俺らと同じだしな」
花村「けど……」
雪ノ下「…………」
クマ(な、なんか……怖い顔してるペルソナクマ……)
白鐘(まるで般若のお面をつけているみたいな……)
白鐘「……ちなみに何という名前のペルソナですか?」
245: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:56:38 ID:Wx7BF/yM
由比ヶ浜「ダーキニーって言ってるよ?」
白鐘「ダーキニー……」
花村(白鐘、何か知ってるのか?)
白鐘(詳しくは無いのですが……)
白鐘(確か、鬼の女と書いて『鬼女』というたぐいの化物の名前だったかと)
花村(……あの外見 まんまだな)
里中(何となく分かる様な気も……)
天城(由比ヶ浜さんって、怒らせると怖いのかも……)
由比ヶ浜「これで私も付いてっていいよね?」
里中「う、うん。 とっても強そうじゃん?」
天城「た、頼りになりそうだね、千枝」
246: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:57:40 ID:Wx7BF/yM
りせ「……っ!!」
りせ「見つけた! 見つけたよ、比企谷先輩!」
一同「!」
花村「そうか……朗報だな」
里中(って事は……由比ヶ浜さんの意見、バッチリ合ってたって事じゃん)
天城(さすが由比ヶ浜さん)
クマ(およよ……これが愛の力、というやつクマね~)
白鐘(……僕も早く、あなたくらい比企谷先輩の事)
白鐘(理解できる様になりたい……)
雪ノ下(…………)
247: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:58:37 ID:Wx7BF/yM
ああ……そうか……
今……はっきりと分かった
どうして私は、由比ヶ浜さんに連絡を取ろうとしなかったのか
答えは、簡単だった……
248: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 20:59:28 ID:Wx7BF/yM
私は
比企谷くんを理解できている由比ヶ浜さんに嫉妬して
頼りたくなかったんだ……
249: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:00:21 ID:Wx7BF/yM
どうやっても彼女に勝てないんだ、という事を
認めたくなくて……
262: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 17:37:38 ID:rVSmZeYo
由比ヶ浜「ううー。 それにしても霧で見えにくいなぁ……」
里中「あ! そういえば由比ヶ浜さん、メガネかけてないじゃん」
由比ヶ浜「メガネ?」
由比ヶ浜「あ、今、気がついたけど、みんなしてるね?」
花村「よし! クマ、なんか可愛いの出してやれ!」
クマ「はいはい……って、ヨースケ、無茶ぶりクマよ~」
クマ「はい、ユイちゃん。 壊れた時にと思って作ったスペアクマ!」
由比ヶ浜「ありがとう、クマくん」
スチャ… (メガネ装備)
由比ヶ浜「わ! 見える様になった!」
由比ヶ浜「すごいね、これ。 どういう仕組みなの?」
クマ「クマのオメ目と同じレンズを使ってるクマ!」
花村「説明になってねーだろ、それ……」
263: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 17:38:14 ID:rVSmZeYo
花村「ま、それはともかく」
里中「うん! 早いとこ、比企谷くん、助けに行くじゃん!」
天城「いよいよだね……」
りせ「映画で言う、ラストバトルって感じ?」
白鐘「みなさん、気を引き締めていきましょう」
クマ「わかっているクマ!」
由比ヶ浜「待ってて、ヒッキー……!」
ゾロ ゾロ ゾロ…
雪ノ下「…………」
250: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:01:18 ID:Wx7BF/yM
――私の中の”何か”が――
251: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/06(日) 21:02:05 ID:Wx7BF/yM
――凍りついた気がした――
265: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:25:08 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
黄泉比良坂(よもつひらさか)
花村「お~……何かそれっぽい場所だな」
里中「鳥居? なんで鳥居?」
天城「確か、新しくできる場所って、入れられた人の影響が出るんだよね?」
白鐘「そういえば そうでした」
由比ヶ浜「って事は、ここはヒッキーにとって何か関係のある場所なの?」
クマ「そういう事になるクマね」
雪ノ下「…………」
里中「……ねえ、花村」
花村「ん?」
里中「比企谷くんの【シャドウ】ってどんなだったの?」
266: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:25:49 ID:rVSmZeYo
花村「いや。 あいつは【シャドウ】を出していない」
里中「え? そうなの?」
花村「言われるまで俺も忘れていたけど……確か」
花村「急に苦しみ出して、ハッ!っとした瞬間、ペルソナを出したんだ」
里中「へぇ~」
クマ「むふふ、センセイは特別クマ!」
天城「じゃあ……今回は見られるかも?」
一同「!?」
天城「え? な、何か、変な事、言った?」
267: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:26:32 ID:rVSmZeYo
白鐘「いえ……でも」
白鐘「あまり考えたくないですね……」
花村「比企谷の【シャドウ】か……確かにな」
里中「なんか……えげつないの出しそう」
天城「あ~……そういう事か」
クマ「だ、大丈夫クマよ~。 ……たぶん」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜(……でも、ヒッキーが抱えてる『何か』を知るのには)
由比ヶ浜(一番効果的かも……怖いけど)
由比ヶ浜(…………)
由比ヶ浜(ヒッキーが私たちに見せたくない心の一面……か)
りせ「……みんな」
268: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:27:37 ID:rVSmZeYo
白鐘「ああ、すみません。 久慈川さん」
花村「どうだ? 比企谷は元気にしてるか?」
りせ「…………」
りせ「比企谷先輩は大丈夫。 ちゃんと元気でいるわ」
りせ「だけど……」
里中「だけど?」
りせ「何て言うか……巨大で強力な力を持つ『何か』も居る……!」
一同「!?」
里中「【シャドウ】?」
りせ「反応は確かに似てる。 でも……『何か』が違う」
269: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:28:34 ID:rVSmZeYo
花村「なんか……すべての元凶っぽいな」
りせ「充分気をつけて。 ここ、雑魚の【シャドウ】もかなり強いよ」
白鐘「どうやら一筋縄では行かないようですね……」
里中「わかったよ、りせちゃん。 気をつけて行くじゃん!」
天城「うん。 そうだね千枝」
クマ「クマも頑張るクマ!」
由比ヶ浜「まずは、ヒッキーを助けないとね! ゆきのん!」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……?」
由比ヶ浜「ゆきのん?」
雪ノ下「……ごめんなさい、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「頑張りましょう」
由比ヶ浜「うん!」
270: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:29:32 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
里中「ふう……」
花村「だいぶ進んだと思うが……どうだ?」
りせ「…………」
りせ「うん! 比企谷先輩、近くにいるよ!」
天城「いよいよだね」
クマ「センセイ、お待たせクマー!」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「あ! あそこ! 誰かいるよ!」
白鐘「確かに人影が……行ってみましょう!」
タッ タッ タッ…
271: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:30:42 ID:rVSmZeYo
一同「!!」
花村「比企谷!?」
クマ「センセイ! 大丈夫クマ?」
???『……?』
???『ああ、花村達か』
里中「なんだ、元気そうじゃん」
里中「心配する事なかったみたいね」
???『ふふ、里中。 いつも気遣ってくれてありがとう』
天城「え……?」
???『みんなも来てくれたんだ。 とっても嬉しいよ』
白鐘「なにか……雰囲気が」
272: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:31:22 ID:rVSmZeYo
りせ「気をつけて、みんな……」
りせ「そいつ、【シャドウ】だよ!」
一同「!!?」
由比ヶ浜「って事は……まさか!?」
雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】……」
影・八幡『うん。 そうなるかな』
花村「……なんか、考えてたのとイメージ違うな」
里中「随分フレンドリーっていうか……」
影・八幡『ホント!? 嬉しいなぁ』
273: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:32:55 ID:rVSmZeYo
影・八幡『本当はね、僕……ずっと』
影・八幡『友達が欲しくて欲しくて、しょうがなかったんだ』
一同「!?」
影・八幡『ほら、小学校とかで歌った事ないかい?』
影・八幡『友達100人できるってやつ』
影・八幡『僕はね、あれをずっと『できる』って信じていた』
???「やめろっ!!」
一同「!?」
花村「お、あのふてぶてしい目つき。 本物の比企谷だな」
里中「そういうので分かるってのもアレだけど……」
天城「ま、まあ、ある意味トレードマークだし」
りせ「フォローになってないような……」
274: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:33:51 ID:rVSmZeYo
影・八幡『どうしてだよ? 僕は本音を言ってるだけじゃない?』
比企谷「だまれ……そんなもん言って欲しかねーんだよ!」
影・八幡『いいじゃない。 ここに居る人達は』
影・八幡『君が望んで望んで、欲しくてたまらなかった』
影・八幡『大切な人達じゃないか』
一同「」
比企谷「やめろっつってんだろっ!!」
花村(た、大切……ねえ……)
里中(面と向かって言われると、恥ずかしいじゃん……)///
275: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:34:59 ID:rVSmZeYo
影・八幡『きっと大丈夫だよ』
影・八幡『今までみたいな事は起きないって』
比企谷「!!!」
花村「今までみたいな事?」
天城「どういう意味なの?」
比企谷「聞くなっ! お前ら、聞くんじゃねーよ!」
影・八幡『いろいろあったよね……』
影・八幡『今でもどうしてか分からない』
影・八幡『自分は、ただ話しかけただけなのに何故か嫌われる』
白鐘「え……」
276: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:37:03 ID:rVSmZeYo
影・八幡『小学校の担任に『みんな比企谷くんの事、嫌いなのは分かるけど』とか言われたし』
影・八幡『それを察して大人しくしていたら、いつの間にかハブられるし』
影・八幡『そうそう……いつだったか、運動会での練習』
影・八幡『女子から誰とも相手にされなくて、延々とエア・オクラホマミキサーをやらされたっけ』
一同「」
比企谷「やめろって言ってんだろっ!」 ブンッ!
影・八幡『おっと、危ないなぁ』 クス クスッ
影・八幡『誕生会に呼ばれた時も自分のチキン『だけ』用意されていなかったり』
影・八幡『自己責任だけど、給食のカレーを鍋ごとひっくり返してしまった時』
影・八幡『誰も片付けを手伝ってくれなかったし、加齢臭なんてあだ名を付けられたりもした』
一同「…………」
277: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:38:03 ID:rVSmZeYo
比企谷「やめろっ……やめろって……言ってるだろっ……」
影・八幡『変わると思ってた中学も酷かった』
影・八幡『ここでもいろいろあだ名を付けられたね……』
影・八幡『オタガヤだの、引きこもりくんだの、一年生の比企谷さんのお兄さんだの……』
影・八幡『挙句が『比企谷菌』と、病原菌扱いだ』
花村(……おいおい)
里中(聞いててお腹がキューってなる……)
天城(壮絶すぎ……)
278: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:39:11 ID:rVSmZeYo
影・八幡『でも……僕は諦めなかった』
影・八幡『いつかは、きっと、と、愛想の本を読んだりして努力は怠らなかった』
影・八幡『そして……』
比企谷「……!!」
比企谷「ま……まさか!?」
影・八幡『そんな僕にも好きな女の子ができた』
一同「!」
比企谷「や、やめろ……てめぇ、マジやめろっ!!」
281: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:41:10 ID:rVSmZeYo
影・八幡『失敗する事も考えてたけど……僕は勇気を振り絞って告白した』
影・八幡『そしたら……』
比企谷「言うなっ! 頼むから、な!? お願いだっ!!」
比企谷「それだけは、それだけはっ!!」
影・八幡『『マジキモイ。 やめてくんない?』であえなく撃沈』
比企谷「もういいだろっ!? もう終われよっ!!」
花村(? まだなんかあるのか?)
里中(そうとうキツイ振られ方だけど……)
天城(これだけでも充分嫌だよね……)
りせ(でも、ちょっと知りたい……)
282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:43:03 ID:rVSmZeYo
影・八幡『そしてその翌日。 クラス全員、僕が振られた事を知っていた』
一同「」
比企谷「……っ」
影・八幡『ショックだったよね。 しかもその女の子が』
影・八幡『それを広めた張本人だったし』
一同「…………」
影・八幡『あ、そうそう。 このエピソードでナルガヤとかいうあだ名も……ん?』
283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:43:59 ID:rVSmZeYo
クマ「もうやめるクマ!」
由比ヶ浜「うん……もういいよ、ヒッキー」
雪ノ下「少し黙ってて」
白鐘「もう……そのあたりにしてあげてください」
影・八幡『…………』
影・八幡『ダメだよ。 僕にちゃんとわからせないといけない』
影・八幡『”違う”んだって事を』
花村「それなら俺たちがやる」
影・八幡『え?』
花村「俺たちに任せてくれ」
284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:45:42 ID:rVSmZeYo
影・八幡『…………』
影・八幡『……いや、君たちでは無理だよ』
花村「なんで言い切れるんだよ?」
影・八幡『久保美津雄の時……僕はね』
影・八幡『君たちが怖くなったからさ』
里中「怖い? あたしらが?」
影・八幡『久保美津雄は、まるで鏡を見ている様な錯覚を覚えるほど』
影・八幡『僕の影法師だったんだ』
影・八幡『そして君たちは、その久保美津雄をなんて言ってたか覚えているかい?』
一同「……!!」
285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:46:56 ID:rVSmZeYo
花村「そういう事か……」
里中「うわ……あたしらキモイとか言いまくってたじゃん……」
天城「じゃあ……どうしてあの時、感情的に攻撃したの?」
影・八幡『同属嫌悪ってやつだと思う』
影・八幡『僕は、久保美津雄の気持ちが痛いほど分かった』
影・八幡『彼もまた心に傷を持ち、居場所を求めていたのだと……』
影・八幡『でも、同時に誰かを傷つける行動を取ったあいつが許せなかった』
影・八幡『……いや』
影・八幡『まるで未来の自分を見せられてるようで、気に食わなかったのかもしれない』
一同「…………」
286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:48:10 ID:rVSmZeYo
花村「……なんつーか」
花村「想像以上にトラウマ抱えていたんだな、お前って」
影・八幡『まあね……』
影・八幡『さ、わかっただろう? 君たちでは無理だって』
花村「やかましい。 ちょっと黙ってろ」
影・八幡『え……』
花村「ったく……【シャドウ】でもしっかり比企谷してんな」
花村「何一人で自己完結してんだよ?」
花村「全部自分だけで解決しようとすんな」
影・八幡『…………』
287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:49:20 ID:rVSmZeYo
比企谷「…………」
花村「比企谷……」
花村「もう分かってんだろうけど【シャドウ】は、お前の一面だとしても」
花村「言ってる事は全部『本心』だ」
比企谷「…………」
花村「もう答えは出てる」
花村「いや、出してくれたんだ。 由比ヶ浜さんが」
比企谷「!」
里中「なんて言うかさ、あたしらも比企谷くんがおかしいって思ってはいたじゃん?」
天城「でもね……単純に私たちの事、どうでも良くなったのかな?って」
天城「それくらいにしか感じられなかった」
288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:50:33 ID:rVSmZeYo
りせ「今【シャドウ】が言ってくれたよね?」
りせ「あたし達の事、大切な人達だって……」
クマ「センセイ、もう秘密にしなくていいクマ」
白鐘「抱え込む事もありません」
雪ノ下「だから……もうそんなに自分を責めないで」
由比ヶ浜「ヒッキーは、何も悪くない」
比企谷「……っ」
影・八幡『…………』
影・八幡『ふふっ……やれやれ』
影・八幡『予想外だったね。 ここまで見抜かれているなんてさ』
289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:51:59 ID:rVSmZeYo
影・八幡『自分のせいで周りの人達を傷つけている、と思い込んでいるの』
影・八幡『バレているみたいだよ?』
比企谷「…………」
影・八幡『せっかく徐々に、少しずつ、距離をとって』
影・八幡『それとなく疎遠になって、ひっそり生きるつもりだったのにね』
比企谷「…………」
影・八幡『由比ヶ浜なんて生き返ったものの一度死なせてしまったし』
影・八幡『久保は本当に死んでしまった』
影・八幡『堂島さんも怪我をしてしまうし、生田目も殺しかけた』
影・八幡『足立さんですら、自分と関わらなければ、こんな事起こらなかったと思っている』
影・八幡『周りの人達が不幸になるのは、全て自分が悪いんだ、と……」
290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:53:07 ID:rVSmZeYo
一同「…………」
由比ヶ浜「ね、ヒッキー」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「私たちって……ヒッキーを傷つけてきた人達と同じかな?」
比企谷「……っ!」
由比ヶ浜「もし、違うって思ってるのなら……」
由比ヶ浜「証明して欲しい」
比企谷「……証…明?」
由比ヶ浜「うん!」
由比ヶ浜「あの【シャドウ】を……『自分』を認めてあげて? そして……」
由比ヶ浜「ヒッキーがずっと抱えてた事……思ってた事、言って欲しい」
291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:54:03 ID:rVSmZeYo
比企谷「い、言えるわけ……」
花村「おいおい。 そりゃねーだろ、比企谷」
花村「俺らもよ、【シャドウ】や見せたくない気持ちを お前に見られてきたんだぜ?」
比企谷「…………」
里中「そーいやさ」
里中「どっかの誰かさん、由比ヶ浜さんに信頼がーとかって言ってたじゃん?」
天城「うん。 確かに言ってたね、千枝」
比企谷「…………」
りせ「ほんの少しでいいんだよ、比企谷先輩」
クマ「勇気を出して欲しいクマ!」
比企谷「…………」
292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:55:22 ID:rVSmZeYo
白鐘「比企谷先輩」
白鐘「僕は、あなたから逃げません」
白鐘「だから、先輩も逃げないでください」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「ヒッキー」
由比ヶ浜「私たちと過ごした時間は……絶対無駄じゃない」
由比ヶ浜「あなたは、ずっと私の『特別』だよ?」
比企谷「…………」
雪ノ下「……私に何が出来るわけでもない。 でも」
雪ノ下「傍にいるくらいは、してあげられる」
雪ノ下「あなたは……もう一人じゃないわ」
比企谷「…………」
293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:56:25 ID:rVSmZeYo
影・八幡『……僕には分かるよ』
影・八幡『君が僕と向き合う事、どんなにか怖いのか……』
影・八幡『だって僕は、君だからね』 クスッ
比企谷「…………」
影・八幡『僕は……君のトラウマそのものと言っていい存在だ』
影・八幡『できるなら、消してしまいたいと思っているのも知ってる。 でもね……』
影・八幡『こんな形で対話できてるけど、僕はずっと君の中に居た』
比企谷「!」
影・八幡『だから、あえて言うよ?』
294: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:57:37 ID:rVSmZeYo
影・八幡『もう一度だけ、頑張ってみようよ?』
比企谷「…………」
一同「…………」
295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:58:54 ID:rVSmZeYo
比企谷「……っ」
比企谷「…………」
比企谷「……そうやって」
比企谷「俺は自分を奮い立たせてきたさ……何度も、何度も」
一同「…………」
比企谷「この方法はダメだった……」
比企谷「あれがいけなかったんだ……」
比企谷「だからみんな、あんな事を俺にするんだ……」
比企谷「じゃあ次は、ってな……」
影・八幡『…………』
296: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 19:59:56 ID:rVSmZeYo
そうして行く内に……失敗と反省を繰り返して行動すれば
いずれ誰かが俺を受け入れてくれる。
少しずつでも、あの歌の様に
友達と呼べる人間や、仲間、そして
彼女と呼べる存在に囲まれて笑って過ごせる時が、いつか来る。
297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:00:47 ID:rVSmZeYo
そう信じて
298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:01:58 ID:rVSmZeYo
でも返ってくるものはいつも侮蔑、嘲笑、軽蔑……
正直、気が狂いそうだった。
朝、学校に行ったら自分の机がベランダに放り出されてた事があった。
下駄箱にゴミを入れられてた事もあった。
ラブレターに喜んでたら、イタズラだった事なんて何度もあった。
300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:03:05 ID:rVSmZeYo
どれが「きっかけ」かなんて……もうわからない。
ある日、俺の心は折れた。
何やっても嫌われる。
どうやっても気持ち悪いって言われる。
自分を受け入れる人間なんて何処にも居ない。
301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:04:03 ID:rVSmZeYo
だったら
302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:05:03 ID:rVSmZeYo
最初から嫌われてやる。
俺に近寄ってくんな。
俺を傷つけるな。
どうせ馬鹿にしたいんだろ。
笑い者にしたいんだろ。
気持ち悪いんだろ。
304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:06:14 ID:rVSmZeYo
ぼっちは楽だった。
心は痛まないし、誰かを気遣う心配もない。
もう開き直って嫌われてもいいやって思ってるから
何かに動じる事もなくなった。
…………
けど
305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:07:22 ID:rVSmZeYo
世界は何も変わらない。
変化しない。
ただ、流れていく。
無機質に、無感情に、機械的に。
そこに求めていた”もの”は
『かつて』欲しかった”何か”は
当たり前だが、何もなかった。
306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:08:26 ID:rVSmZeYo
総武高校に通いだしてすぐ
俺は事故に会った。
後で知る事になるが、雪ノ下と由比ヶ浜が
ほんの少し関わっていた、あの事故。
俺は3週間、入院する事になった。
307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:09:24 ID:rVSmZeYo
当然だが……本当に当然なのだが
俺には家族と看護師、それに医者しか話しかけてくる人が居なかった。
他人からの見舞い、なんてものも当たり前にない。
6人部屋の角のベッドに俺は居た。
隣のおっさんには、職場の同僚と学生時代の友人らしき人が見舞いに来ていた。
向かいの小学生は、その隣の女の子と仲が良さそうだった。
別にどうでもいい。 俺には関係ない。
いまさら何に期待している。
俺は、自分にこれでいいんだ、と、言い続けた。
308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:10:40 ID:rVSmZeYo
比企谷「でもよ……」
比企谷「多少なりとも人付き合いが続くようになって」
比企谷「少しは変わるかも、とか思い出してた」
比企谷「だが、その矢先に今度は一年間の転校……」
比企谷「なんかさ……もう究極に意地の悪い神様が」
比企谷「とにかく俺をぼっちにしたいんだな、としか考えられなかった」
影・八幡『…………』
比企谷「だけど……ここに来てからの毎日」
比企谷「何て言うか、悪くなかった」
比企谷「もしかしたら、大丈夫なのかも……探していた”何か”かもと」
比企谷「少し考える様になっていた」
一同「…………」
309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:11:55 ID:rVSmZeYo
比企谷「だが、どうしても踏み出せなかった……」
比企谷「過去の経験が……裏切られた時のクソな痛みが、フラッシュバックしやがる」
影・八幡『…………』
比企谷「俺は……」
比企谷「それが……怖くて……ぐ……怖くて……くっ……」
比企谷「ただ……怖くて……うあっ……ぐっ……」
一同「…………」
310: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:13:03 ID:rVSmZeYo
比企谷「………ふ……ぐっ………く……」
比企谷「うっ………くっ……ひぎっ……」
比企谷「…………はっ……」
影・八幡『…………』
比企谷「…………」
比企谷「ああ……そうだとも」
比企谷「お前は、確かに俺だよ」
比企谷「俺は……ずっと友達と呼べる存在が欲しかった」
比企谷「大勢の人間に囲まれて、笑って過ごせる日常が欲しかった」
比企谷「誰からも好かれ、受け入れられる人間でありたいと……思っていた」
影・八幡『…………』
比企谷「……そうさ、本当は」
311: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:14:07 ID:rVSmZeYo
比企谷「ひとりでなんて……居たくなかった!」
312: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:15:27 ID:rVSmZeYo
シュウウウウウウウウ……!
一同「!!」
花村「【シャドウ】が……!」
里中「うん! 受け入れたんだね、比企谷くん」
天城「良かった……」
影・八幡『これでお別れ……ううん』
影・八幡『元通りだね』
比企谷「…………」
影・八幡『話せて良かったよ……けど』
影・八幡『もう一つ……いや、四つかな?』
影・八幡『けじめを付けないと いけない事があるね』
313: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:16:24 ID:rVSmZeYo
比企谷「……言われなくても分かってるっての」
影・八幡『そうだった』 クスッ
影・八幡『君は僕だものね』
比企谷「…………」
影・八幡『さよならは言わないよ?』
比企谷「ああ、それも分かってる」
比企谷「お前は俺で……俺は、お前だからな」
影・八幡『…………』 ニコッ
314: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:17:06 ID:rVSmZeYo
ヒィイイイイイインッ!
白鐘「ペルソナ、ですね……」
由比ヶ浜「うん……!」
雪ノ下「…………」
クマ「およよー……白いイザナギクマ!」
りせ「何だか、神々しいね」
りせ(強さは、あまり変わってない感じしたけど……)
比企谷「…………」
花村「大丈夫か? 比企谷」
比企谷「…………」///
花村「へへっ、なぁーに赤くなってんだよ!」
比企谷「……るせーよ」///
315: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:18:29 ID:rVSmZeYo
花村「まっ、これで俺らの気持ちがわかっただろ?」
花村「お前だけ恥ずかしい一面、見せてなかったもんな!」
里中「……そういやさ、花村」
花村「あん?」
里中「そー言うあんたの『恥ずかしい一面』をあたしは知らないじゃん?」
花村「!」
天城「確かにそうだね、千枝」
由比ヶ浜「……ねえ、みんな」
由比ヶ浜「それを言ったら、私なんてヒッキー以外、見てないんだけど……」
一同「!?」
比企谷「ふふふ……確かに不公平だな」
316: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:19:13 ID:rVSmZeYo
比企谷「安心しろ由比ヶ浜」
比企谷「俺がきっちりと教えてやる」
花村「いやいやいや! べ、別に、知らなくてもいいんじゃね!?」
花村「俺のなんて、面白くも何ともねーし!」
里中「花村! あんたのせいでヤブヘビになっちゃったじゃん!」
天城「そうだよ。 どうしてくれるの、花村くん!」
花村「お前ら!? 俺だけ悪者にしやがって! ずっりぃぞ!」
由比ヶ浜「うふふ~楽しみだなぁ♪」
りせ「き、聞く気、満々だね……由比ヶ浜さん」
白鐘「……勘弁してください」
雪ノ下「……同じく」
クマ「クマは喜んで話すクマ!」
317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:02 ID:rVSmZeYo
比企谷「……さて」
比企谷「落ち着いたところで、俺の知った情報と状況を教えておく」
白鐘「お願いします」
―――――――――――
白鐘「イザナミ……ですか」
雪ノ下「…………」
比企谷「まあ、雪ノ下のペルソナと関係があるのか、無いのかはわからん」
比企谷「ともかくあいつは、そう名乗り」
比企谷「俺みたいな才能持ちを能力者にした」
比企谷「先のわからない娯楽作品へ仕立て上げる為にな」
318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:43 ID:rVSmZeYo
里中「最っ低じゃん!」
花村「だな……理由があればいいわけじゃねーが」
花村「できれば聞きたくなかった動機だぜ……!」
りせ「とにかく、後は元凶のそいつを倒せばいいって事ね?」
比企谷「そうなるな」
由比ヶ浜「じゃあ話は簡単だね!」
由比ヶ浜「早くやっつけに行こう!」
クマ「クマ!」
雪ノ下「ちょっと待ってくれるかしら」
天城「どうしたの? 雪ノ下さん」
雪ノ下「その……犯人のイザナミは、どうして比企谷くんの【シャドウ】を呼び起こしたの?」
雪ノ下「もっとはっきり言うと、比企谷くんで『何』をしたかったの?」
比企谷「……はっきり言ってわからん」
319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:23:08 ID:rVSmZeYo
比企谷「あいつは俺の【シャドウ】を見た途端」
比企谷「大きく失望していた様に見えた」
雪ノ下「失望?」
比企谷「……そういや」
比企谷「おぞましいが、ここで永遠に暮らす為とか何とか言ってたと思う」
一同「!?」
りせ「暮らす? 比企谷先輩と?」
花村「モテモテだな、比企谷!」
比企谷「うれしくねーっての……」
320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:01 ID:rVSmZeYo
比企谷「とにかくだ」
比企谷「あいつが今回の騒動の元凶なのは間違いない」
比企谷「詳しくはあいつと対峙してから聞けばいいだろう」
比企谷「そして……叩きのめす!」
オオー!
由比ヶ浜「ヒッキー、ちょっとかっこいいね!」
比企谷「そんなつもりじゃない」
由比ヶ浜「あ、そうだ! 私のペルソナ見てよ!」
由比ヶ浜「えいっ!」
カッ!
比企谷「無駄にペルソナ出してん……!?」
由比ヶ浜「どう? かっこいいでしょ!」
比企谷「お、おう……」
321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:48 ID:rVSmZeYo
由比ヶ浜「ダーキニーって言うんだ」
由比ヶ浜「とっても強いんだよ?」
比企谷(ダーキニーって……鬼女……うわぁ)
白鐘(比企谷先輩……知っているみたいですね)
花村(まあ……驚くわな)
比企谷「……あ」
花村「? どうした? 比企谷?」
比企谷「…………」///
比企谷「……その、言うの忘れてたが」///
比企谷「助けに来てくれて」///
比企谷「ありがとう、な……」///
322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:25:35 ID:rVSmZeYo
一同「!」
花村「へへ、気にすんなよ!」
里中「当然の事じゃん!」
天城「どういたしまして」 クスッ
りせ「ふふふ、ちょっとくすぐったいね」
クマ「クマはセンセイの為なら頑張るクマ!」
白鐘「このくらい、当たり前ですよ」
由比ヶ浜「これくらい何でもないよ! ヒッキー!」
雪ノ下「お礼を言われる程の事じゃないわ」
アハハ……
323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:26:33 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
黄泉比良坂(よもつひらさか)最深部
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「……よお」
イザナミ「ん? ……ほう、君か」
イザナミ「【シャドウ】に食われなかった様だな」
比企谷「俺一人だと、やばかったと思う」
イザナミ「ふん……くだらぬな」
花村「はあ!? くだらねーだと!?」
花村「人の命がかかっているってのに、何言ってやがる!」
324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:27:41 ID:rVSmZeYo
イザナミ「失望しただけだよ……」
イザナミ「イザナギを持つ者にな」
比企谷「失望?」
イザナミ「そうだ」
イザナミ「表面上は恨み、妬み、嫉(そね)んでおきながら」
イザナミ「結局は誰かを求める矮小な存在であったのだから」
里中「それのどこがおかしいじゃん!?」
イザナミ「そうとも。 おかしくはない」
イザナミ「『普通の人間』としてね」
325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:28:34 ID:rVSmZeYo
天城「どういう意味?」
天城「じゃあ、あなたは『何』を求めているの!?」
イザナミ「ふふふ……」
イザナミ「それは、我と対等なる者」
イザナミ「絶対者なる我と同等の力を持つ者」
イザナミ「我と等しく、憎しみを抱き、恨む者」
一同「……!?」
りせ「何を言ってるの? 訳わかんないよ!」
326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:29:44 ID:rVSmZeYo
イザナミ「わからぬのも当然だ」
イザナミ「常人では届き得ぬ高みに我は居るのだからな」
クマ「ムキー! よくわからんけど、バカにするなクマ!」
白鐘「御託はたくさんです。 あなたの引き起こした事象により」
白鐘「人が傷つき、亡くなった方もいる」
白鐘「その償いは……必ずしてもらいます!」
イザナミ「ほう……言っておくが、我は『きっかけ』を与えただけに過ぎん」
イザナミ「『力』を得た者が勝手にやった事……それでも我に責任があるとでも?」
由比ヶ浜「当たり前でしょ!」
由比ヶ浜「あなたを野放しにしてたら、今回みたいな事がまた起こる!」
雪ノ下「必ず、ここで終わらせる!」
327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:30:23 ID:rVSmZeYo
ペ ル ソ ナ !!
328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:31:18 ID:rVSmZeYo
イザナミ「ふふふ……愚かな」
イザナミ「人の身でありながら、絶対的な力を持つ我に逆らうとは」
イザナミ「役者の分を超え真実を求めすぎた代償……たっぷりと払うがよい」
ゴウンッ……!!
比企谷「くっ……霧が」
雪ノ下「霧が一段と濃くなった……!」
花村「ちっ……!」
ふふふ……
りせ「!!」
りせ「み、みんな! あそこ!」
白鐘「……!」
白鐘「なんて……大きさだ!」
329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:32:31 ID:rVSmZeYo
イザナミは、それまでの中性的な人間形態?をやめ
濃い霧を出したかと思うと……巨大な化物へと変化していた。
その姿は
大きなスカート……いや、釣鐘状の白い物体に
包帯をぐるぐる巻きにした人間らしき形状の上半身が
それにちょこんと乗っかっている。
これまでに出会ってきた【シャドウ】のデザインに似た何かを感じるが
大きさが規格外に違っていた。
330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:33:41 ID:rVSmZeYo
クマ「あんなの、ただのコケおどしクマ!」
由比ヶ浜「そうよ! 怖くなんか……怖くなんか、ないんだからっ!」
さあ……かかって来るがよい
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
花村「ジライヤ!!」
天城「コノハナサクヤ!!」
里中「トモエ!!」
クマ「援護は任せるクマ!! キントキドウジ!!」
白鐘「スクナヒコナ!!」
雪ノ下「回復は任せて!! イザナミ!!」
りせ「しっかりアナライズするから!! ヒミコ!!」
331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:34:21 ID:rVSmZeYo
比企谷「イザナ――」
――我は汝――
――汝は我――
比企谷「ぐっ!?」
雪ノ下「!?」
雪ノ下「比企谷くん!?」
――汝、ついに真実の絆を得たり――
比企谷(こ、これは……!?)
332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:05 ID:rVSmZeYo
――真実の絆――
――それは即ち――
比企谷(間違いない、イザナギが……ペルソナが目覚めた時)
比企谷(あの時に聞こえた、謎の声!!)
――真実の目なり――
比企谷(…………)
――今こそ汝は見ゆるべし――
――様々な究極の力――
――汝のその内に宿せし事を――
比企谷(…………)
333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:57 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
イゴール「ほほう……これは」
イゴール「節目の年を超えられたお客様に」
イゴール「更なる”力”が目覚めた様でございますな……」
マーガレット「これが……”ワイルド”の真の力」
イゴール「誠に……希少なる存在」
イゴール「ふふふ……」
―――――――――――
334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:37:08 ID:rVSmZeYo
雪ノ下「大丈夫!? 比企谷くん!?」
比企谷「…………」
比企谷「……!」
比企谷「これは……この力は?」
雪ノ下「比企谷……くん?」
比企谷「……っ!」 グッ…!
比企谷「スカアハ!」
一同「!?」
花村「え!?」
里中「イザナギじゃないの!?」
335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:38:13 ID:rVSmZeYo
ガ ル ダ イ ン!
ヒュゴオオオオオオオッ!!
りせ「す、すごい力を持ってるよ! あのペルソナ!」
里中「なになに!? ここに来て比企谷くん、覚醒!?」
由比ヶ浜「ヒッキー、かっこいい!」
比企谷「コウリュウ!」
一同「!!?」
クマ「ま、また、知らないペルソナクマ!」
白鐘「い、いったい、何が!?」
天城「今はありがたいから、いいんじゃないかな?」
336: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:04 ID:rVSmZeYo
比企谷「フツヌシ!」
比企谷「マダ!」
比企谷「ロキ!」
比企谷「ルシフェル!」
比企谷「イシュタル!」
比企谷「ルシファー!」
花村「おいおいおい!? 何回チェンジしてんだよ!?」
雪ノ下「ここまで来るとバーゲンセールね……」
由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん。 的確だけど、ありがたみが全然無くなるからやめよう?」
クマ「さっすがセンセイクマ!」
337: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:57 ID:rVSmZeYo
ズゴゴゴゴゴ……
里中「まあ、それはともかく、これで決まったっぽいじゃん?」
天城「そうだよね」
天城「私たちのペルソナの攻撃も入ってるし」
白鐘「さすがに耐えられないでしょう……」
白鐘「……ん?」
りせ「…………」
白鐘「どうしました? 久慈川さん?」
りせ「なんで……どうしてなの……?」 カタ カタ カタ…
白鐘「久慈川さん?」
りせ「みんな、気をつけて! あいつ……」
338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:41:21 ID:rVSmZeYo
りせ「全然、弱ってないっ!」
一同「!?」
ふふふ……どうしたんだい?
まさか、そんな小さな力で我を倒す気でいたのかな?
一同「…………」
339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:14 ID:rVSmZeYo
我を消すなど不可能だ
なぜそれが分からない?
くくく……何も理解していない証拠だね
340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:52 ID:rVSmZeYo
愚か者め!
341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:43:48 ID:rVSmZeYo
里中「嘘でしょ……」
天城「あんなに攻撃を受けたのに……」
花村「へっ……いいじゃねーかよ」
花村「これこそラスボスって感じでな……!」
クマ「ク、クマ、まだ戦えるクマ!」
白鐘「……まだ、これからです!」
由比ヶ浜「た、倒せる……よね?」
雪ノ下「……と、当然よ、由比ヶ浜さん」
りせ「…………」
比企谷「………っ」
342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:44:48 ID:rVSmZeYo
この時――
その場にいる誰もが戦慄を覚えた。
351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:58:58 ID:.CuJq6kg
――――――――――
花村「うわああああああああっ!!」
里中「花村ぁっ!!」
里中「こんのぉ……! トモエ!」
白鐘「はあ……はあ……」
天城「待ってて、みんな! コノハナサクヤ!」
花村「……す、すまねぇ、天城」
クマ「ペルクマー!!」
352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:59:33 ID:.CuJq6kg
比企谷「くそっ! どうなってやがる!?」
比企谷「アメノサギリ?だって、2~3体は倒せてるくらいだろ!」
比企谷「ルシファー!!」
ドゴォォォォォンッ!!
雪ノ下「久慈川さん、どうなの!?」
りせ「ダメ……わかんないよ!」
りせ「あいつのパラメーターは、とっくに限界を超えたダメージを受けてる」
りせ「それなのに……それなのに!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
由比ヶ浜「もう! 手応えはあるのに、全然弱っている気がしない!」
由比ヶ浜「どこかに弱点とか無いの!?」
353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:00:33 ID:.CuJq6kg
俺たちは、全力でイザナミを攻撃していた。
しかし、まったくダメージになっている様子がない……
奴の反撃が大した事ないのが唯一の救いだが
終わりが見えてこない戦いというのは、正直、精神的にキツイ。
イザナミさん、早いとこ死んでくれませんか?
割とマジで
354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:01:29 ID:.CuJq6kg
花村「はあっ、はあっ……クソッ」
花村「ジライヤ!!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
比企谷「……!」
比企谷(ちっ……花村達、直接攻撃が多くなってる)
比企谷(MP的なのが切れかけてるみたいだな……)
比企谷(…………)
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「どうした? 雪ノ下?」
雪ノ下「私のペルソナも限界が近いわ……このままじゃジリ貧よ」
比企谷「……分かってる」
比企谷「真綿で首を締められてる気分だな」
雪ノ下「的確だけど、今、言わないでくれる?」
355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:02:36 ID:.CuJq6kg
白鐘「スクナヒコナ!」
クマ「いい加減、しつこいクマ!」
里中「トモエ!」
天城「はあ……はあ……」
比企谷(くそっ……!)
比企谷(どうする!?)
比企谷(どうすればいい!?)
花村「ち、畜生……」
花村「昔やった、ゲームを思い出すぜ……」
里中「はあ、はあ……ゲーム?」
356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:03:40 ID:.CuJq6kg
花村「なんつったかな……」
花村「ラスボスに有効なアイテム忘れて、無駄に攻撃してたってのがあんだよ」
里中「イザナミにもそういうのあれば……って事?」
花村「あるのなら、今からでも取ってく……うおっと!?」
花村「あ、あぶねぇ……」
里中「うかうか無駄話もしてらんないね……」
花村「そうだ、思い出した!」
花村「ひ○りの玉ってアイテムだ!」
比企谷「バーカ……あれはな、それ無しでも一応倒せんだよ」
花村「え? マジで?」
比企谷「確かにラスボス、めちゃくちゃ強いけどな……ん?」
比企谷「ひ○りの……『玉』?」
比企谷「!!」
357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:04:46 ID:.CuJq6kg
俺は、不意に上着のポケットをまさぐった。
手にガラス状の、ゴルフボール位の大きさの球体が触れる。
そうだ……いつ貰ったのか忘れていたが
誰かから嘘を暴き、真実を照らすとか何とか言われたと思う。
もうみんな限界が近い。
はっきり言って……はたから見たら痛い動作でしかないが
俺はそれを、謎の球体を自分の頭の上に掲げた……!
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