楽「ハニートラップ対策?」鶫「そうだ」
 

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:06:11.04 ID:n9Fpb99Wo
<千棘の場合>

鶫「お嬢、突然押しかけてしまい申し訳ございません」

千棘「気にしなくてもいいわよ。にしても楽まで一緒だなんて珍しいわね?」

楽「いや、まあ色々とな」アハハ…

千棘「?」

鶫「その、お嬢。お嬢と一条楽がボスと集英組の組長に頼まれて、恋人のフリをしているというのは本当なのですか?」

千棘「えっ!? なっ何言ってんのよそんなことあるわけないじゃない! 私たちもうすっごいラブラブなんだから! ねえダーリン!?」アセアセ

鶫「貴様、私を騙したのか?」チャキッ

楽「銃付きつけるのはやめてマジで! 千棘、俺から鶫に嘘だって話したんだよ!」

千棘「え? な、なんだそうなの。それなら先に言いなさいよ」フゥ

鶫「ということはお嬢。一条楽の言っていることは……」

千棘「ええ、本当よ。私たちはパパたちにビーハイブと集英組の抗争を止めるためにって頼まれて恋人のフリをしてるの」

鶫「そうでしたか」ホッ

引用元: 楽「ハニートラップ対策?」鶫「そうだ」

 

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72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:06:37.82 ID:n9Fpb99Wo
千棘「ごめんね隠してて。その、あんたクロードの部下だから……」

鶫「わかっております。気になさらないでください。私はクロード様の直属の部下ですから言えなくて当然です」

鶫「私自身、クロード様より2人が本当に恋人か調べるようクロード様から申し付けられておりましたから」

千棘「そうだったの。許してくれてありがとう鶫!」

鶫「許すも何も、お嬢の判断に間違いなどございません」

千棘「あれ? でもなんで私たちが偽物の恋人だって聞いたの? 偶然聞いちゃったとか?」

鶫「そ、それはその……」カアァァ

鶫「そ、そのですね。えーと……」モジモジ

楽「鶫、俺から言うよ」

鶫「う……す、すまない」

千棘「?」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:07:19.58 ID:n9Fpb99Wo
楽「俺と鶫が付き合うことになったんだよ。だから言ったんだ」

千棘「……え?」

鶫「きっ貴様そんなストレートに言うな! 恥ずかしいだろう!?」カアァァ

楽「んなこと言われたって他にどう言えばいいんだよ」

千棘「ちょ、ちょっと待って? その、付き合うってどこかに行くとかそういうこと?」

楽「なんだそのベタベタなボケ……付き合うってのはそのままの意味だよ」

千棘「そっそのままってことは……こ、恋人になったってこと?」

鶫「……」コクン

楽「そうだよ。……改めて言われると恥ずかしいな」ポリポリ

千棘「つっ鶫? このモヤシに脅されてとかじゃないわよね?」

鶫「ちっ違います。わっ私がその……こっこの男のことを好きになってしまって……」

楽「それで俺も鶫のこと好きになったんだよ。後は成り行きというか告白しあってというか……」

千棘「……」

鶫「お嬢? どうかなさいました?」

千棘「……」

楽「おい、千棘?」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:08:04.87 ID:n9Fpb99Wo
千棘「……はっ! な、なんだそうなの! もう水臭いわね! いつから付き合い始めたのよ?」

鶫「今日、というかつい1時間ほど前からです」

千棘「……そうなんだ。1時間前……」

楽「さっきからなんか変だぞ? 大丈夫か?」

千棘「なっなんでもないわよ! それで1時間前ってことは付き合い始めてすぐ私のところに来たわけね?」

鶫「はい。お嬢にはすぐにご報告しなければならないと思いまして」

楽「俺たち偽物の恋人やってるだろ? さすがに言っとかねえと」

千棘「うん、まあそれはそうよね」

鶫「それと、もし可能であればお知恵を拝借出来ればと思ったのです」

千棘「何のこと?」

楽「俺とお前の今後の関係をどうするかって話だよ」

千棘「ああ、偽物の恋人関係のことね」

楽「そう、一つはこのまま表向きはお前と恋人でいるってのだけど――」

千棘「嫌よ!!!!!」

楽・鶫「!?」ビクッ

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:08:36.67 ID:n9Fpb99Wo
千棘「……」ハッ

楽「びっくりした……お前叫ぶほど嫌がらなくたっていいだろ? 仮にも今やってんだからさ」ブツブツ

千棘「あ、当たり前でしょ!? 今のあんたには鶫っていう恋人がいるんだから、私と偽物の恋人なんてやってていいわけないじゃない!」

楽「う……やっぱそうだよな」

千棘「当然よ! 少しでも私との関係を続けようと考えたなんて信じられない!」

楽「そりゃ正しいとは思ってねえけど、だからって抗争起こさせるわけにもいかねえだろ?」

千棘「バカね。そもそもなんで私たちが恋人のフリをさせられたのか考えなさいよ」

楽「そりゃお互いのボスの子供だからだろ?」

千棘「私とあんたがお互いの組織にとって大切だからよ。そしてビーハイブで一番好戦的なのはクロードだけど、鶫はクロードにとって子供も同然」

千棘「つまり鶫も私と同じでクロードにとって大切なの。鶫が説得すればクロードもみんなも抗争始めたりしないわよ。そもそもパパたちが抗争したくないんだから」

楽「確かにそうだな! いやーさすが千棘。相談してよかったぜ」

千棘「まああんたとは頭の出来が違うのよ」フッ

楽「うるせー。まあありがとな」

千棘「どういたしまして」フフッ

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:09:25.73 ID:n9Fpb99Wo
鶫「……」

楽「鶫? 変な顔して嬉しくないのかよ」

鶫「嬉しくないわけが……」ゴニョゴニョ

楽「え?」

鶫「うるさい! そっそれより変な顔とはなんだ!」

楽「わりーわりー。なんか沈んでたからさ」

鶫「ああ……」

楽「?」

鶫(お嬢のあの反応。まさか……い、いや! そんなはずはない!)ブンブン

千棘「鶫」

鶫「はっはい!?」ビクッ

千棘「フリとはいえ付き合ってたから、こいつは貧弱なモヤシだけどまあそれなりにいいところもあるって知ってるわ」

千棘「だからまあ、幸せにね」

鶫「お嬢……ありがとうございます」

千棘「あ、でもなんか嫌なことされたらすぐ言いなさいよ。私が懲らしめてやるんだから」

楽「鶫が嫌がることなんてしないっての」

千棘「信用出来ないわね。あんた●●●なこととかしそうだもの」

楽「すっすすすすするわけねえだろ」アセアセ

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:10:13.42 ID:n9Fpb99Wo
千棘「……本当にされてない?」チラッ

鶫「さっされてません!!」カアァァ

千棘「……まあそうよね。それじゃクロードの説得頑張りなさい」

鶫「はい。ありがとうございます」

千棘「あ、クロードを説得する前にパパたちに話しときなさいよ?」

楽「わかってる。いきなりクロードってのはちょっとキツイしな……」アハハ

鶫「それでは行って参ります。突然押しかけたにも関わらず助けていただきなんとお礼していいか……」

千棘「気にしないの。ほら、今日中に行かないと明日イチャイチャ出来ないわよ?」

楽「イチャイチャなんかしねえよ! ほら、行こうぜ」

鶫「ああ。お嬢、それでは失礼致します」

千棘「行ってらっしゃい」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:10:41.32 ID:n9Fpb99Wo
千棘「……」

千棘「……行ったわね」

千棘「はぁ……全然気づかなかったなー。いったいつの間に……あーこの間動物園行ってたわね」

千棘「……はぁ」ウルッ

千棘「あ、あれ。なんで涙が……あいつは偽物の恋人だったのに」ポロポロ

千棘「……今日だけ。今日だけは――」ポロポロ

千棘「なんで、なんでよぅ。楽のばかぁ!」ポロポロ

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:11:32.69 ID:n9Fpb99Wo
<小咲の場合>

小咲「おはよう、一条くん、鶫ちゃん」

楽「おはよう、小野寺、宮本」

るり「おはよう。珍しいわね、2人が一緒に登校してるなんて」

鶫「おはようございます。そっそうですね。初めてです」

小咲「登校途中で友達に会うと嬉しいよね」

楽「だなー。まあ途中ってわけじゃないんだけど」

小咲「え?」

楽「鶫がウチまで来てくれたんだよ。いいって言ったんだけど」

鶫「ばっバカ! 恥ずかしいから言うな! というか切り出すにしてもおかしいだろう!?」カアァァ

楽「いいだろ別に。小野寺たちなら俺と千棘が恋人のフリしてたって知ってるしさ」

鶫「私はそのことを知らなかったんだが……」

楽「え? あ、そりゃそうか」

小咲「迎え……に?」

るり「あなたたちもしかして……」

楽「おう、付き合い始めたんだ」

鶫「……バカ」カアァァ

小咲「」ピシッ

81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:12:02.48 ID:n9Fpb99Wo
るり「……一応確認なのだけれど、それは千棘さんとみたいに家の事情で恋人のフリをしているというわけじゃなくて?」

楽「今度はちゃんと付き合ってる。よ。親父たちにも伝えたし」

鶫「クロード様にもご理解いただきました」

楽「鶫が女だってとこから説明したり、千棘と恋人のフリをしてたって理解させたり色々大変だったな……」アハハ…

るり「そう……」ゴゴゴ

楽(な、なんか怒ってる?)ビクビク

鶫(何か不快にさせてしまったのだろうか……)ビクビク

小咲「……そうなんだ。じゃあ2人は本当の恋人同士なんだね」

楽「お、おう」カアァァ

鶫「いっ一応そうです」カアァァ

楽「お前一応って……」

鶫「い、いいだろう別に」

るり「……こういうと失礼かもしれないけれど、正直意外だったわ」

鶫「意外ですか。確かに私の今までの態度からは意外だったと思いますが……」

るり「いえ、鶫さんが一条くんのこと好きなんだろうなというのはわかってたけど」

鶫「ええ!?」

鶫(そ、そんなにわかりやすかったのだろうか……)アワアワ

小咲(るりちゃん知ってたんだ!?)アワアワ

楽(ま、マジかよ!? 俺全然気づいてなかったのに!)アワアワ

るり「……この鈍感ども」ボソッ

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:12:45.39 ID:n9Fpb99Wo
るり「コホン……私が言っているのは一条くんのことよ。正直鶫さんのことが好きだとは思わなかったわ」

小咲「ちょっちょっとるりちゃん!」

楽「いや、まあ宮本の言うとおりだよ。鶫と……まあ色々あったんだけど、それまでは好きとか考えたことなかった」

楽「その、色々やってくうちにいつの間にか好きになってたっていうか……」

鶫「貴様はなぜそう恥ずかしいことを平気で言うのだ……!」カアァァ

小咲「……そっか」

小咲(2人ともいつの間にかこんなに仲良くなってたんだね)

小咲「一条くん、鶫ちゃん、2人ともおめでとう」

楽「ああ、ありがとう」

鶫「ありがとうございます」

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:13:22.45 ID:n9Fpb99Wo
るり「……おっとしまったー。家に忘れものをしてしまったー」

鶫「忘れものですか? よければ私が取ってきましょう」

るり「いや、今からならギリギリ間に合うと思うからいいわ。小咲、悪いんだけど付き合ってくれるかしら」

小咲「私? うん、いいよ」

鶫「そうですか。それでは申し訳ありませんが先に行かせていただきます」

るり「ええ。また学校でね」

楽「じゃあな。小野寺、宮本」

小咲「……うん、じゃあね」バイバイ

鶫(……? いつもと様子が違う)

楽「じゃあ先に行ってるか」

鶫「あ、ああ」

楽「ん? どうかしたか?」

鶫「え? うん……」

鶫(恋人になったからだろうか。こいつに対する女性の視線を妙に意識してしまう)

鶫(だからだろうか。今、小野寺様の視線が少し寂しそうに見えたような気がした)

鶫(……いや、自惚れだな。単なる贔屓目だろう。こいつがそんなに好かれているはずが……)

楽「ほんと、大丈夫か?」

鶫「……まあ、かっこいいとは思うが」ボソッ

楽「へ!? おっお前何いきなり?」カアァァ

鶫「なっなんでもない! 早く行かないと遅刻するぞ」スタスタスタ

楽「先行くなよ!」タッタッタッ

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:13:52.11 ID:n9Fpb99Wo
小咲「るりちゃん、ありがとね」

るり「何のこと? 私は忘れものをしたから付いてきてもらっただけよ」

小咲「じゃあ何を忘れたの?」

るり「英語の教科書よ」

小咲「ふふ、今日は英語ないよ」

るり「……」ピタッ

小咲「そもそもるりちゃんが教科書忘れるなんて今まで一度もなかったよ? それに嘘つくにしても今日授業のない英語の教科書なんて……」

小咲「……ありがとね。そんなに驚いてくれたんだ」

るり「当たり前でしょ。中学のときからずっと見てるんだから」

小咲「私の代わりに色々聞いてくれたのもありがとう。自分で聞けばよかったんだけど混乱しちゃって」エヘヘ

るり「……結果的に聞かなければよかったことばかりだったわね。ごめんなさい」

小咲「ううん、聞かなきゃいけないことだったから」

るり「……そう」

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:14:24.23 ID:n9Fpb99Wo
小咲「……鶫ちゃんいい子だよね。美人でスタイルがよくて、頭も良くて、運動も料理もなんでも出来て」

るり「ええ」

小咲「何よりすっごく真面目だよね。ちょっとしたことでも本当に真剣に考えてくれる。とっても純粋な子」

るり「そうね」

小咲「……だから、一条くんが好きになっちゃったのも当然だよね」

るり「……」

小咲「……」ポロポロ

小咲「あれ、なんでだろ。千棘ちゃんのときはこんな涙なんて出なかったのに……」ポロポロ

るり「あのときより仲良くなってるからかしらね。……小咲、こういうときは泣いてもいいと思うわ」

小咲「るりちゃん……」ポロポロ

るり「学校で目が腫れてるとか言われたら、私が適当に言い訳しといてあげるから」

小咲「るりちゃぁん……うわあぁぁぁん!」ポロポロ

るり「一条くんも酷いわね。中学校のときからずっと好きだった娘が近くにいるのに気づかなかったなんて」ポンポン

小咲「うぅ……」グスッ

るり「……」ポンポン

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:14:53.45 ID:n9Fpb99Wo
<万里花の場合>

鶫『昼休み体育館裏に来い』

楽「……」

鶫「む、来たか。遅かったではないか」

楽「果たし状かと思って来るの迷ったんだよ!」

鶫「そんなはずないだろう! なぜ私がそんなものを貴様に送るんだ!?」

楽「体育館裏ってのは告白かいじめか果たし合いくらいにしか使わないものなんだよ」

鶫「なんだそれは。意味がわからん」

楽「……まあそりゃそうか。でなんでこんなとこに呼び出したんだよ?」

鶫「人気のないところで思いついたのがここだったのだ。まあここに座れ」ポン

楽「こんなとこにも芝敷いてあるんだな。それで何するんだ?」

鶫「その……べっ弁当を作ってきたのだ。貴様がよければ、その、一緒に食べようかと……」

楽「えっマジで!? いやすっげえ嬉しい。いいに決まってるだろ?」

鶫「そ、そうか! では一緒に……」

万里花「ちょっと待ったー!」

楽・鶫「わっ!?」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:15:49.44 ID:n9Fpb99Wo
万里花「怪しいと思って付いてきてみれば手作り弁当などと……楽様! お弁当でしたら私のものを食べてください!」

鶫「橘万里花! 貴様何をしに来た!」

万里花「楽様と2人でお弁当を食べるなど許せませんわ! ……あら?」

万里花「そういえばなぜ鶫さんと2人なんですの? 千棘さんとならわかりますが」

楽「鶫と付き合い始めたんだよ。千棘とは……あれ、橘も知らないんだっけ?」

万里花「付き合い始め……? 鶫さん」

鶫「なんだ?」

万里花「親友でありご自分の組織のボスの一人娘でもある千棘さんから恋人を奪うというのは、さすがの私もちょっとどうかと思いますわよ」ススス

鶫「ごっ誤解だ! ええい一条楽! 貴様もちゃんと説明しろ!」

楽「お前には言ってなかったけど、俺と千棘は抗争を起こさないように恋人のフリをしてたんだよ。だから元々付き合ってなかったんだ。鶫が奪ったわけじゃねえよ」

万里花「あら、そうでしたの。まあ不自然だなとは思っておりましたわ」

鶫「そっそうなのか?」

万里花「ええまあ、普通に見ていれば……って鶫さん? 気づいておりませんでしたの? それでしたらやっぱり――」

鶫「ととととにかく! 私と一条楽は本当に付き合っているのだ! だから貴様も諦めろ!」

万里花「嫌ですわ」

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:16:31.52 ID:n9Fpb99Wo
鶫「な、なんだと!?」

万里花「私は楽様が千棘さんと恋人のフリをしていたときもアタックしておりましたわ」

鶫「だから今の私と一条楽は本物の恋人だと言っているだろう!」

万里花「私は楽様と千棘さんも本物の恋人と思っておりました。私から見て、楽様と千棘さんも、楽様と鶫さんも同じように本物の恋人です」

万里花「ですから、お二人が本物の恋人かどうかなどという些細な問題、私が諦める理由にはなりません!」

鶫「なっ! む、無茶苦茶だ!」

万里花「無茶苦茶でもなんでも構いませんわ! 楽様を諦めるかどうかなど私の勝手です」

鶫「ぐ、ぐぬぬ……」

楽「……橘。俺からもお願いだ。もう諦めて欲しい」

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:17:21.11 ID:n9Fpb99Wo
万里花「……楽様?」

楽「千棘のときは恋人のフリしてただけだったから、やめろって言ってなかった。けど今の俺にはちゃんとした恋人がいるんだ」

鶫「一条楽……」

楽「正直言うとお前に好きだって言われるのが嬉しくてちゃんと断れなかったんだ。……きっとお前に甘えてた」

楽「俺はもう鶫を選んだから、これ以上お前に甘えることは出来ない。……ごめん、橘。俺はお前と付き合えない」バッ

万里花「…………」

万里花「楽様、頭を上げてください」

楽「橘……」

万里花「楽様がそうおっしゃるのでしたら仕方ありませんわ」

楽「ありがとう、橘」

万里花「ええ、今は諦めることにします」

楽「ああ、今は諦め……え? 今?」

万里花「」チュッ

楽「!」

鶫「なっ!?」

91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:18:35.53 ID:n9Fpb99Wo
万里花「ふふふ。今は付き合ったばかりですから鶫さん以外に目が行かないのも仕方ありません。今は諦めましょう」

万里花「しかし人の気持ちは変わるもの。私を見てくれるまで諦めることなどありえませんわ!」

鶫「だからと言って頬にキスする必要があるのか!?」

万里花「それはほら、宣戦布告ですわ」

鶫「き~さ~ま~!」

楽(いっ今なんかほっぺに柔らかいものが……!)ドキドキ

鶫「一条楽! 貴様もデレデレするな!」

楽「しっしてねえよ!」

万里花「おほほほほ」

鶫(くっ、このままさせっぱなしでは……)ハッ

鶫「一条楽」

楽「なっなんだよ」ビクッ

鶫「ん」

楽「なんだよ目をつぶって」

万里花「何をして……」ハッ

鶫「ん!」

楽「だからなにを……」ハッ

楽「え? も、もしかして……」

万里花(鶫さん、まさかあなた……!)ザワザワ

92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:19:11.84 ID:n9Fpb99Wo
楽「つ、鶫? 他のにしないか? ほら、橘がいるしさ」

鶫「……」

楽「さすがに目の前ってのはさ」

鶫「私の目の前で橘万里花にされたのはいいのか」

楽「うっ……わかったよ」ハァ

万里花「ら、楽様?」ガタガタ

楽「……」チュッ

鶫「……額だけか?」

楽「さすがに色々と勘弁してくれ……」

万里花「……」プルプル

楽「橘。お前には悪いとは思うけど、やっぱり鶫がたいせ―ー」

93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:19:53.12 ID:n9Fpb99Wo
万里花「こ、こん程度で勝ったっち思わんけんでくれんね!」

万里花「うちはらっくんば誰よりも好いとーと! こん程度や諦めん!」

万里花「覚えてなさい!」タタタタッ

鶫「なんて諦めの悪いやつだ……」

楽「あははは……」

鶫(しかし、あいつはあんなに一条楽のことが好きなのだな。私なんかよりずっと前から……)

楽「鶫」ポン

鶫「?」

楽「橘は俺のことを好きでいてくれてるけど、俺が好きなのはお前だよ」

鶫「え? な、なんで……」

楽「そんな顔してりゃ何考えてるかなんとなくわかるよ。……ほら、弁当食おうぜ」

鶫「……ああ!」ニコッ

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:20:20.95 ID:n9Fpb99Wo
<千棘の場合その2>

千棘「……」ボー

鶫「お嬢、物憂げな顔をしてどうされました?」

千棘「……ああ、鶫、楽。ちょっとあんたたちのこと考えてたの」

楽「俺たちの?」

千棘「うん、まあなんか寂しいなーって」

楽「寂しい?」

千棘「あんたとか鶫と話すことが減ったから」

鶫「お嬢にそんな思いをさせてしまっていたとは……! お嬢、そのようなときはいつでも私をお呼びください。すぐに駆けつけます」

千棘「いつでもって、例えば楽とのデート中でも?」

鶫「もちろんです」

楽「えっ」

95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:23:00.63 ID:n9Fpb99Wo
千棘「そう? それじゃあ私と楽のどっちが大事?」

鶫「お嬢に決まってます」

楽「即答!?」

鶫「当たり前だ」フン

千棘「ふふ、ありがとう。じゃあ私と楽のどちらかしか助けられないとしたら?」

鶫「……お嬢を助けると思います」

楽「お、今度は迷ったな」

鶫「流石にどちらかしか助けられないとしたらな。もちろん、出来ることなら私の命に替えてでも2人を助けることを選ぶが」

楽「そうしたらお前のこと一生許さねえぞ」

鶫「……」

楽「なんだよ?」

鶫「いや、そのときには私は死んでしまっているから許されるも許されないもないのだが」

楽「そういう問題じゃねえよ」

鶫「わかってる。……嬉しい」ニコッ

楽「おっおう」ドキッ

千棘「ねえ、目の前で見せ付けないでくれないー?」

鶫「み、見せつけるなどそういうつもりでは……」

千棘「はいはい。でも私の事大切にしてくれてるみたいで嬉しいわ!」

鶫「もちろんです。お嬢は私にとって誰よりも大切な方ですから。私に出来ることでしたらなんでもいたします」

千棘「……ありがとう。じゃあこれで最後ね」

96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:23:41.32 ID:n9Fpb99Wo
千棘「楽を私に譲ってって言ったらどうする?」

鶫「……え?」

千棘「私の事誰よりも大切って言ってくれたじゃない。だから楽を譲って?」

鶫「そ、それは……」

楽「おい千棘」

千棘「黙ってて」

鶫「……」ソワソワ

千棘「……」

鶫「……」アワアワ

千棘「……」

鶫「……も、申し訳ありません! それだけは――」

千棘「なーんてね! 冗談よ!」

鶫「……じょ、冗談?」

千棘「もちろん、冗談に決まってるじゃない。なーんで私がこんなモヤシ譲って貰わなきゃいけないのよ?」

楽「お前ほんと失礼だな!? つーか冗談にしても考えろよ……」ハァ

97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:24:14.30 ID:n9Fpb99Wo
楽「鶫も真に受けすぎだって。こいつが俺を譲れなんて本気で言うわけないだろ? 恋人のフリしてたってだけで別に好きなわけでもないんだから」

千棘「……」フイッ

鶫「……! お、お嬢! やはりお嬢は――」

千棘「鶫、それ以上言ったら許さないから」

鶫「で、ですが! もしそうなら私に今のままでいる資格などありません! それなら私は――」

千棘「鶫。私はあんたと親友だと思ってるし、これからもそうだと思ってる」

千棘「でも、あんたが今考えてるようなことしたら二度と口聞かないから」

鶫「お嬢……」

千棘「ごめんね。私が変なこと言っちゃって。ちょっと確かめたかったっていうか……その、意地悪したかったの」

鶫「……」

千棘「あんたがどれくらいこいつのことが好きなのかよくわかったわ。……あんたは私と違うんだから、仲良くしなさいよ」

鶫「……はい!」

楽「悪い。話が見えねえんだけど」

千棘「あんたは知らなくていいの」

楽「すげー気になる。鶫は教えてくれ―ー」

鶫「一条楽。貴様には絶対に言わん」

楽「言い終わる前に!?」

98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:24:57.54 ID:n9Fpb99Wo
千棘「あはは。それじゃ私は帰るわね。あんたたちと話したら元気でたわ」

楽「ん、そうか。ならよかった」

鶫「お嬢、ありがとうございました」

千棘「それは私の台詞よ。……あ、そうだ」

楽「うん?」

千棘「あんたたちそろそろ名前で呼び合ってもいいんじゃない? 特に鶫。いつまで一条楽なんてフルネームで呼ぶつもりなの?」

鶫「えっ!? そっそれは」ドキッ

千棘「それじゃまた明日。じゃーねー」バイバイ

鶫「名前……」

楽「名前か……」

鶫「……」ポワンポワン

楽「……」ポワンポワン

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:26:52.43 ID:n9Fpb99Wo
楽「……と、とりあえず後で考えるか!」カアァァ

鶫「そ、そうだな!」カアァァ

楽「俺たちも帰ろうぜ。送ってくよ」

鶫「ああ」

楽「……」ピタッ

鶫「ん? どうした。帰らないのか?」

楽「いや、ちょっと」ギュッ

鶫「なっ!? 手、手を……!」ワタワタ

楽「初めてのときから全然してなかったから……い、嫌か?」カアァァ

鶫「嫌じゃ……ない……」カアァァ

楽「よし、じゃあこれで帰ろうぜ」

鶫「ああ」コクン

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:27:27.60 ID:n9Fpb99Wo
<そして鶫は>

楽「鶫の家ここだよな。それじゃまた明日」

鶫「ま、待った。その……よければ寄っていかないか?」

楽「寄っていくって……え? つ、鶫の家にか?」

鶫「あっああ。今日はポーラもいないから」

楽(それって余計まずくねえか!? いや、でも誘ってくれたわけだし)ドキドキ

鶫「大したもてなしが出来るわけではないが……」

楽「じゃ、じゃあ寄ってこうかな」

鶫「そ、そうか!」

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:28:23.42 ID:n9Fpb99Wo
楽「ここが鶫の部屋か……」キョロキョロ

鶫「あ、あまり部屋の中を見るな」

楽「わ、悪い」

鶫「茶を入れるから、おとなしく待っていろ」

楽「わかった」

楽(ここが鶫とポーラの部屋……結構殺風景だな。まあ2人ともあんまりインテリアとか気にしなさそうな感じだしな)

鶫「だからあまり見るなと……ほら茶だ」

楽「なるべく見ないようにと思ったんだけど無理だった。ありがとう」

鶫「まったく……」

楽「でもやっぱ2人で女の子の部屋に入るの緊張するな。全然慣れねえや」

鶫「そうだな。クロード様以外の男を部屋に入れるなど初めて……って待て。慣れないだと? ということは貴様こういった経験があるのか?」

楽「え、いや。まあ一応……」ダラダラ

鶫「そ、そうか。お嬢とフリとはいえ付き合っていたのだったな。まあそれならば仕方が……」

楽「いや、その小野寺となんだけど……」

鶫「小野寺様だと!?」ガタッ

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:28:55.52 ID:n9Fpb99Wo
楽「お、落ち着け! 小野寺の和菓子屋にバイトに行ったとき、台風で帰れなかったから入れてもらっただけだよ!」

鶫「むぅ……まあ付き合う前だからなんとも言えんが……」ムー

楽「そっそれよりなんで突然部屋に寄ってくかなんて言ったんだよ?」アセアセ

鶫「その、おっお嬢が言っていたことを試してみようと思ってだな」

楽「千棘が言ってたって……名前で呼んだらどうかってやつか?」

鶫「あ、ああ。その、あまり人に見られたくないからな」

楽「いきなり変えるとこ見られるのはちょっとやだよな」

鶫「うむ。……で、では行くぞ」

楽「おう」

鶫「……ら、楽。お茶の味はどうだった?」

楽「……!」ドキッ

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:29:49.95 ID:n9Fpb99Wo
鶫「なっなんだ。まずかったのか?」オロオロ

楽「い、いや。んなことねえよ。ただ名前で呼ばれたのが思ったよりドキッとした」

鶫「そうか。よかった……」ホッ

楽「ああ。お茶はうまかったよ。誠士郎」

鶫「……」

楽「あ、あれ? なんか不満?」

鶫「その誠士郎と呼ぶのはやめてくれ」

楽「え? じゃあなんて呼べばいいんだよ」

鶫「前に貴様が言ったやつがあっただろう? 誠でいい」

楽「わかった。でも誠士郎って名前嫌なのか?」

鶫「嫌なわけがないだろう! たとえ男と思っていたとしても、クロード様がつけてくださった大切な名前だ」

楽「ああ、だよな。でもじゃあなんでだ?」

鶫「……き」

楽「き?」

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:30:23.04 ID:n9Fpb99Wo
鶫「きっ貴様には、その……お、女の子らしい名前で呼んでもらいたいのだ」カアァァ

鶫「……それに誠というのも、クロード様と同じく大切な、お前がつけてくれた呼び名だからな」

楽「お、おう……わ、わかった」カアァァ

楽「んじゃ改めて……誠。お茶うまかったよ。ありがとう」

鶫「!」ズキューン

鶫(こっこれはダメだ! ダメになる! ああもう、ひどい顔をしているのが見なくてもわかる! 部屋でやっていてよかった……)ブンブン

楽「喜んでもらえてるみたいでよかったよ」ズズ…

鶫「し、しばらくの間、誠と呼ぶのは2人きりのときだけにしてくれ」カアァァ

楽「了解」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:31:57.12 ID:n9Fpb99Wo
楽「もう遅いしそろそろ帰るよ」

鶫「あ……もうそんな時間か」

楽「さすがに女の子の家にいつまでもいるわけにはいかねえしな。それにポーラが帰ってきたら殺されそうだ」

鶫「いや、あいつの場合は面白がって入らずに見ているな」

楽「ああ、それもありそうだな」アハハ

鶫「ふふ……」ジー

楽「ん? なんかついてる?」ゴシゴシ

鶫「いや、幸せだと思ってな……」

鶫(橘万里花はもちろん、お嬢も、もしかしたら小野寺様もこいつのことを思っていて、それでもこいつは私を選んでくれた)

鶫(きっと、こういう場合はなんでと思うより、素直に嬉しいと思ったほうといいのだろう。馬鹿な私だがようやくわかった)

鶫(お嬢や小野寺様が何も言わなかったのもおそらくそういうことなんだろう。橘万里花はまあ別だろうが)クスッ

106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/02(月) 21:32:38.41 ID:n9Fpb99Wo
楽「おっ」

鶫「なんだ変な声を出して」

楽「いや、最近のお前ってときどき考え込むことあるけど、そういうときって最後まで大体難しい顔してるんだよ」

鶫「そうなのか?」

楽「そうなんだよ。でも今は考え込んだ後笑ってたから、良かったなって思って」

鶫「そうか」

楽「俺も今すげー幸せだよ。お前のおかげだ。ありがとう、誠」

鶫「私もきさ……お前といられてすごく幸せだ。ありがとう、楽」

楽「……別に貴様でも言いやすければいいぞ?」

鶫「いや直す! いつまでも恋人に貴様というのはおかしいだろう?」

楽「そっか。まあ時間はこれから先いくらでもあるから、直すにしても焦らなくていいからな」

鶫「……そうだな。これから先もお前といられるんだな」

楽「ああ、お前が俺を振らなきゃだけど」

鶫「そんなことはありえん。私の方こそお前に捨てられないか心配だ」

楽「俺にはもったいないくらいの相手なのになんで俺が振るんだよ」

鶫「……ふふっ」

楽「……ははっ」

鶫「楽。これからもずっと一緒にいてくれ」

楽「ああ、もちろん。誠、大好きだ」

鶫「ああ、私も楽が大好きだ!」

終わり