1: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:12:42.29 ID:Zk/0RPWk0
昼近くになってからの登校。
毎日のように遅刻。
二年になってからも、それは変わらなかった。
人通りの少ない道を、一人歩く。
―――――――――――――――――――――
岡崎(はぁ…)
校門まで伸びる長い坂道が、俺の目の前でどっしりと構えていた。
ここを越えなければ、学校までたどりつけない。
その構造が、余計に登校する気を失くさせる。
岡崎「ふぁ…」
まだ眠気が抜けきっていなかった。
それでも、仕方なく坂を登り始める。
―――――――――――――――――――――
教室へつくと、もう昼休みに入っていた。
室内が騒がしい。
そんな中を抜け、自分の席へ。
岡崎(あいつはまだ来てないのか)
荷を降ろし、隣の席を見てみると、鞄がなかった。
俺はそれを確認すると、そのまま学食に向かった。
―――――――――――――――――――――
毎日のように遅刻。
二年になってからも、それは変わらなかった。
人通りの少ない道を、一人歩く。
―――――――――――――――――――――
岡崎(はぁ…)
校門まで伸びる長い坂道が、俺の目の前でどっしりと構えていた。
ここを越えなければ、学校までたどりつけない。
その構造が、余計に登校する気を失くさせる。
岡崎「ふぁ…」
まだ眠気が抜けきっていなかった。
それでも、仕方なく坂を登り始める。
―――――――――――――――――――――
教室へつくと、もう昼休みに入っていた。
室内が騒がしい。
そんな中を抜け、自分の席へ。
岡崎(あいつはまだ来てないのか)
荷を降ろし、隣の席を見てみると、鞄がなかった。
俺はそれを確認すると、そのまま学食に向かった。
―――――――――――――――――――――
引用元: ・憂「クラナドは人生」
けいおん! 平沢 憂 (1/8スケール PVC塗装済完成品)
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2: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:13:26.51 ID:Zk/0RPWk0
学食についてみれば、すでに昼食を摂る生徒達でテーブルが埋まっていた。
その混雑具合から、場所を変え、パン食で済ますことに決めた。
岡崎(ん? なんだあいつ…?)
パン売り場に足を向けると、一人の女生徒が目に入った。
あたりを見回し、キョロキョロとしている。
女の子「………」
岡崎(ああ、なるほど)
校章の色で俺より一つ下であることがわかる。
つまり一年生。新入生だった。
きっと買い方がわからないのだろう。
岡崎(適当に誰かに聞けばいいのにな…)
そう思いながら、その子の横を通過した…
女の子「あのっ…」
…かったが、俺が話しかけられてしまった。
岡崎「…なんだよ」
女の子「私、初めて学食を利用するので、購買のシステムがよくわからなくて…えっと…」
岡崎「定食系はあっちで食券を買う。パン系は直接金を払う。それだけ」
その混雑具合から、場所を変え、パン食で済ますことに決めた。
岡崎(ん? なんだあいつ…?)
パン売り場に足を向けると、一人の女生徒が目に入った。
あたりを見回し、キョロキョロとしている。
女の子「………」
岡崎(ああ、なるほど)
校章の色で俺より一つ下であることがわかる。
つまり一年生。新入生だった。
きっと買い方がわからないのだろう。
岡崎(適当に誰かに聞けばいいのにな…)
そう思いながら、その子の横を通過した…
女の子「あのっ…」
…かったが、俺が話しかけられてしまった。
岡崎「…なんだよ」
女の子「私、初めて学食を利用するので、購買のシステムがよくわからなくて…えっと…」
岡崎「定食系はあっちで食券を買う。パン系は直接金を払う。それだけ」
3: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:14:09.11 ID:Zk/0RPWk0
言い終えてから、俺はすぐに歩き出した。
その子が何かを言う前に。
―――――――――――――――――――――
パンの購入を済ませ、それを手に、屋上へ。
屋上は出入りが禁止されていて、通常は入ることができない。
俺が出入りすることができたのは、ある非合法筋から入手した合鍵のおかげだった。
俺は屋外へ出ると、壁に背をつけて座り、パンを食べ始めた。
カツ… カツ… カツ…
そこへ、だれかが階段を上ってくるような音。
岡崎(教師か…?)
警戒して少し身構える。
ぎぃぃ
女の子「あのぅ…」
扉を開けて現れたのは、さっきの女の子だった。
教師ではなかったことに安堵し、緊張が解けて弛緩する。
岡崎(でも、なんでこいつが…?)
女の子「あの…ここに来るのが見えたので…」
岡崎「…なんか用か」
その子が何かを言う前に。
―――――――――――――――――――――
パンの購入を済ませ、それを手に、屋上へ。
屋上は出入りが禁止されていて、通常は入ることができない。
俺が出入りすることができたのは、ある非合法筋から入手した合鍵のおかげだった。
俺は屋外へ出ると、壁に背をつけて座り、パンを食べ始めた。
カツ… カツ… カツ…
そこへ、だれかが階段を上ってくるような音。
岡崎(教師か…?)
警戒して少し身構える。
ぎぃぃ
女の子「あのぅ…」
扉を開けて現れたのは、さっきの女の子だった。
教師ではなかったことに安堵し、緊張が解けて弛緩する。
岡崎(でも、なんでこいつが…?)
女の子「あの…ここに来るのが見えたので…」
岡崎「…なんか用か」
4: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:14:52.82 ID:Zk/0RPWk0
女の子「あ、はい。さっきはどうもありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げる。
岡崎「…それだけ?」
女の子「はい、そうです」
にこりと笑って言う。
岡崎(なんともまぁ…)
律儀な子だな、とそう思った。
女の子「あ…うわぁ…空が近い」
空を仰ぐと、いきなりひとりごとを言い出した。
女の子「それにここ、なんだかぽかぽかする…」
完全に自分の世界に入っている。
女の子「あのっ! 私もここで食べてもいいですか?」
勢いよく俺を見据え、そう言い放った。
…悪い子ではなさそうだ。
とくに断る理由はみつからない。
岡崎「…好きにしろよ」
ぺこり、と頭を下げる。
岡崎「…それだけ?」
女の子「はい、そうです」
にこりと笑って言う。
岡崎(なんともまぁ…)
律儀な子だな、とそう思った。
女の子「あ…うわぁ…空が近い」
空を仰ぐと、いきなりひとりごとを言い出した。
女の子「それにここ、なんだかぽかぽかする…」
完全に自分の世界に入っている。
女の子「あのっ! 私もここで食べてもいいですか?」
勢いよく俺を見据え、そう言い放った。
…悪い子ではなさそうだ。
とくに断る理由はみつからない。
岡崎「…好きにしろよ」
5: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:15:33.52 ID:Zk/0RPWk0
―――――――――――――――――――――
なぜか隣り合って座り、パンを食べる。
女の子「私、1年A組の平沢憂です」
勝手に自己紹介を始めていた。
岡崎「ああ、そう」
憂「あの…」
悲しげな表情で見つめてくる。
俺もやらないといけないのか…。
岡崎「2年D組。岡崎」
憂「2年D組…ってことは、もしかして、あの…」
俺の悪い噂でも、校内で流れているんだろうか。
そうだったとしても、無理はない。
こんな進学校でなら、素行の悪い生徒は、嫌でも目立つだろうから。
憂「お姉ちゃんの話によくでてきます。岡崎さんのこと」
岡崎「お姉ちゃん?」
憂「はい。平沢唯って、同じクラスにいませんか?」
平沢唯。そいつのことは知っていた。
なぜか隣り合って座り、パンを食べる。
女の子「私、1年A組の平沢憂です」
勝手に自己紹介を始めていた。
岡崎「ああ、そう」
憂「あの…」
悲しげな表情で見つめてくる。
俺もやらないといけないのか…。
岡崎「2年D組。岡崎」
憂「2年D組…ってことは、もしかして、あの…」
俺の悪い噂でも、校内で流れているんだろうか。
そうだったとしても、無理はない。
こんな進学校でなら、素行の悪い生徒は、嫌でも目立つだろうから。
憂「お姉ちゃんの話によくでてきます。岡崎さんのこと」
岡崎「お姉ちゃん?」
憂「はい。平沢唯って、同じクラスにいませんか?」
平沢唯。そいつのことは知っていた。
6: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:16:16.12 ID:Zk/0RPWk0
周りから不良とみなされている俺や春原に、平気で話しかけてくる、数少ない奴らの内の一人だった。
岡崎「ああ、いるけど…あんた、妹だったのか」
憂「はい、そうです」
そういえば顔立ちが似ている気がする。
俺はさらに観察するため、じっと見つめた。
憂「え、えっと…私の顔、なにかついてますか…?」
少し無遠慮に見すぎたかもしれない。
困惑の表情を浮かべていた。
岡崎「あ、ああ、いや。なんでもない」
憂「そ、そうですか…」
しばらく流れる沈黙。
それを埋めるようにして、またパンをかじり出す二人。
…なんで、こんなに気疲れしているんだろう。
俺はただ、静かに食べたかっただけなのに。
憂「あの、岡崎さんはいつもここで食べてるんですか?」
食べ終わると、平沢妹が口を開いた。
岡崎「まぁ、たまに」
憂「私、今度からここで食べたいです」
岡崎「ああ、いるけど…あんた、妹だったのか」
憂「はい、そうです」
そういえば顔立ちが似ている気がする。
俺はさらに観察するため、じっと見つめた。
憂「え、えっと…私の顔、なにかついてますか…?」
少し無遠慮に見すぎたかもしれない。
困惑の表情を浮かべていた。
岡崎「あ、ああ、いや。なんでもない」
憂「そ、そうですか…」
しばらく流れる沈黙。
それを埋めるようにして、またパンをかじり出す二人。
…なんで、こんなに気疲れしているんだろう。
俺はただ、静かに食べたかっただけなのに。
憂「あの、岡崎さんはいつもここで食べてるんですか?」
食べ終わると、平沢妹が口を開いた。
岡崎「まぁ、たまに」
憂「私、今度からここで食べたいです」
8: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:16:58.42 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「え?」
憂「だめですか…?」
岡崎「だめって事は、ないけどさ…」
憂「それじゃ、これから、よろしくお願いしますね」
何をもってこんなところで食べたいと思ったのだろう。
このよくわからなさは、平沢姉と通じるところがあるかもしれない。
―――――――――――――――――――――
律「あ、岡崎。やっと学校来たのか。相変わらず不良だな!」
唯「岡崎くん、だめだよ。遅刻せずにこなきゃ~」
紬「こんちにちは、岡崎くん」
廊下、教室前で、うちのクラスの軽音部三人がたむろしていた。
唯「朝のHRで先生が怒ってたよ。また岡崎と春原か~、って」
岡崎「ふーん、そうなのか」
唯「ふーんじゃないよ! 起きられないなら、私が毎朝迎えに行ってあげようか?」
岡崎「ああ、じゃあ、昼ごろにキックボードで迎えに来てくれよ」
唯「それじゃ意味ないよ! しかもキックボードって! 坂登れないよ! 下ってくよ!」
憂「だめですか…?」
岡崎「だめって事は、ないけどさ…」
憂「それじゃ、これから、よろしくお願いしますね」
何をもってこんなところで食べたいと思ったのだろう。
このよくわからなさは、平沢姉と通じるところがあるかもしれない。
―――――――――――――――――――――
律「あ、岡崎。やっと学校来たのか。相変わらず不良だな!」
唯「岡崎くん、だめだよ。遅刻せずにこなきゃ~」
紬「こんちにちは、岡崎くん」
廊下、教室前で、うちのクラスの軽音部三人がたむろしていた。
唯「朝のHRで先生が怒ってたよ。また岡崎と春原か~、って」
岡崎「ふーん、そうなのか」
唯「ふーんじゃないよ! 起きられないなら、私が毎朝迎えに行ってあげようか?」
岡崎「ああ、じゃあ、昼ごろにキックボードで迎えに来てくれよ」
唯「それじゃ意味ないよ! しかもキックボードって! 坂登れないよ! 下ってくよ!」
9: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:17:41.54 ID:Zk/0RPWk0
律「つーか唯、あんたも結構ぎりぎりだから迎えに行く余裕ないだろ」
唯「じゃあ岡崎くんが迎えに来てよ!」
紬「唯ちゃん、話がこじれてきてることに気づいて」
琴吹の冷静なツッコミが入る。
そうだね、と平沢が返すと、三人とも笑っていた。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
五時間目が終わると、春原が登校してきた。
春原「やぁ、おはよう!」
岡崎「そんな時間じゃないからな」
春原「この業界じゃ挨拶はどんな時間帯でもおはようなんだよっ」
おまえ誰だよ。
岡崎「つーか、あと一限しかないのによく来たな」
春原「そりゃ、例のアレがあるからねぇ」
唯「じゃあ岡崎くんが迎えに来てよ!」
紬「唯ちゃん、話がこじれてきてることに気づいて」
琴吹の冷静なツッコミが入る。
そうだね、と平沢が返すと、三人とも笑っていた。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
五時間目が終わると、春原が登校してきた。
春原「やぁ、おはよう!」
岡崎「そんな時間じゃないからな」
春原「この業界じゃ挨拶はどんな時間帯でもおはようなんだよっ」
おまえ誰だよ。
岡崎「つーか、あと一限しかないのによく来たな」
春原「そりゃ、例のアレがあるからねぇ」
11: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:18:32.02 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「今日もいくのか」
春原「もちろん。だってお菓子ただ食いだぜ? 行かないわけがない」
春原「おまえも来るだろ?」
岡崎「まぁ…行くけどさ」
春原「へへっ、今日はなにが食べられるんだろうね」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。俺たちは軽音部の部室に来ていた。
春原「このようかん、うまいね!」
紬「もらいものなんだけどね。まだ欲しかったらいってね」
紬「岡崎くんも」
岡崎「ああ、悪いな」
春原「もちろん。だってお菓子ただ食いだぜ? 行かないわけがない」
春原「おまえも来るだろ?」
岡崎「まぁ…行くけどさ」
春原「へへっ、今日はなにが食べられるんだろうね」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。俺たちは軽音部の部室に来ていた。
春原「このようかん、うまいね!」
紬「もらいものなんだけどね。まだ欲しかったらいってね」
紬「岡崎くんも」
岡崎「ああ、悪いな」
12: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:19:13.55 ID:Zk/0RPWk0
話半分に聞いて、ばくばくと食べ続ける。
律「あんたら、ちょっとは遠慮しろよな。部員でもないのに」
そう、俺たちは部員ではなかった。
勧誘はされたが、断ったのだ。
春原「ムギちゃんがいいって言ってるんだから、いいじゃん」
律「いや、でもなぁ…」
春原「それに、おまえ自身も、来ていいって言ってたし」
律「そうだけど…あれはただお菓子で釣ろうと思っただけだよ」
律「唯はそれで入部したようなもんだからな」
唯「ち、違うよっ!みんなの演奏をみて楽しそうだと思ったからだよ!」
岡崎「つーか、そもそもなんで俺達を勧誘したんだ?」
それは俺が気になっていたことだった。
不良なんて、周囲からマイナスに見られるだけだ。
そんな奴らが入れば、部の評判が悪くなるのではないか。
律「春原が金髪だったから、なんか音楽とかやってるのかと思ったんだよ」
岡崎「金髪と音楽と、どういう関係があるんだよ」
律「いやさ、バンドとかやってる人ってそういうの多いじゃん」
律「あんたら、ちょっとは遠慮しろよな。部員でもないのに」
そう、俺たちは部員ではなかった。
勧誘はされたが、断ったのだ。
春原「ムギちゃんがいいって言ってるんだから、いいじゃん」
律「いや、でもなぁ…」
春原「それに、おまえ自身も、来ていいって言ってたし」
律「そうだけど…あれはただお菓子で釣ろうと思っただけだよ」
律「唯はそれで入部したようなもんだからな」
唯「ち、違うよっ!みんなの演奏をみて楽しそうだと思ったからだよ!」
岡崎「つーか、そもそもなんで俺達を勧誘したんだ?」
それは俺が気になっていたことだった。
不良なんて、周囲からマイナスに見られるだけだ。
そんな奴らが入れば、部の評判が悪くなるのではないか。
律「春原が金髪だったから、なんか音楽とかやってるのかと思ったんだよ」
岡崎「金髪と音楽と、どういう関係があるんだよ」
律「いやさ、バンドとかやってる人ってそういうの多いじゃん」
13: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:19:55.55 ID:Zk/0RPWk0
つまり、こいつは見た目で判断したというわけだ。
俺達の素行も考えずに。
安易なやつだった。
律「でも、実際はなんにもやってなかったし、毎日お菓子食べに来るだけだし…」
律「ちょっとは罪悪感から『自分も入部して楽器できるようになろう!』 とか思わないの?」
春原「おまえらだってあんまり練習してないくせに、そんなこといえんのかよ」
律「う…それは…そうだけど…」
岡崎「でもさ、こいつも一つだけできるようになった技があるんだ」
岡崎「ほら、あれ見せてやれよ。壊れたヒューマンビートボックス」
春原「できねぇよ、そんなもん! しかも、壊れてんのかよっ!」
岡崎「ああ、主に骨を折ったときの音とか、おっさんがえづいた時の音が出る」
春原「それ、ただ僕が骨折したり、体調悪くなって音出してるだけだろ! 僕自身が壊れんのかよ!」
律「うーん、そういうのができるなら、今度のライブに出してもいいかもな」
紬「センターに配置しましょう」
唯「それ、おもしろうそうだね」
春原「勝手に話を進めないでくれますかねぇ!」
俺達の素行も考えずに。
安易なやつだった。
律「でも、実際はなんにもやってなかったし、毎日お菓子食べに来るだけだし…」
律「ちょっとは罪悪感から『自分も入部して楽器できるようになろう!』 とか思わないの?」
春原「おまえらだってあんまり練習してないくせに、そんなこといえんのかよ」
律「う…それは…そうだけど…」
岡崎「でもさ、こいつも一つだけできるようになった技があるんだ」
岡崎「ほら、あれ見せてやれよ。壊れたヒューマンビートボックス」
春原「できねぇよ、そんなもん! しかも、壊れてんのかよっ!」
岡崎「ああ、主に骨を折ったときの音とか、おっさんがえづいた時の音が出る」
春原「それ、ただ僕が骨折したり、体調悪くなって音出してるだけだろ! 僕自身が壊れんのかよ!」
律「うーん、そういうのができるなら、今度のライブに出してもいいかもな」
紬「センターに配置しましょう」
唯「それ、おもしろうそうだね」
春原「勝手に話を進めないでくれますかねぇ!」
14: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:20:38.18 ID:Zk/0RPWk0
がちゃり
ドアが開かれ、二人の女の子が入ってくる。
澪「ごめん、ちょっと遅れた」
梓「すみません、私もです」
律「おおー、きたかー澪、梓」
春原「よう、澪ちゃん、あずにゃん」
梓「春原先輩…その呼び方はやめてくださいです…」
岡崎「キモイってよ。できれば死んでほしいらしい」
春原「そこまで言ってないだろっ!」
澪「今日も来たんだね、ふたりとも」
岡崎「ああ。菓子をもらいにだけど」
澪「あはは、そっか」
入ってきてすぐ秋山と中野は荷物を所定の位置に置いた。
そして、なにやら機材をセットし始める。
律「澪、梓、あんたたちからもこいつらに言ってくれよ。そろそろ正式に入部しろって」
澪「無理強いはよくないだろ」
ドアが開かれ、二人の女の子が入ってくる。
澪「ごめん、ちょっと遅れた」
梓「すみません、私もです」
律「おおー、きたかー澪、梓」
春原「よう、澪ちゃん、あずにゃん」
梓「春原先輩…その呼び方はやめてくださいです…」
岡崎「キモイってよ。できれば死んでほしいらしい」
春原「そこまで言ってないだろっ!」
澪「今日も来たんだね、ふたりとも」
岡崎「ああ。菓子をもらいにだけど」
澪「あはは、そっか」
入ってきてすぐ秋山と中野は荷物を所定の位置に置いた。
そして、なにやら機材をセットし始める。
律「澪、梓、あんたたちからもこいつらに言ってくれよ。そろそろ正式に入部しろって」
澪「無理強いはよくないだろ」
15: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:21:20.41 ID:Zk/0RPWk0
梓「そうですよ。その気になったらでいいじゃないですか」
機材をいじりながらこたえる二人。
律「ちぇ、ほんと岡崎に甘いよな、澪と梓は」
澪「そ、そんなことないだろ。それに岡崎くんにだけってわけじゃいだろ、今のは」
梓「そ、そうですよ。春原先輩も含まれてましたよ。右半身だけですけど」
律「ああそうだったな。そういうことにしとくよ」
春原「つーか、半分だけって、そんなバファリンみたく言わないでくれるかなっ!?」
澪「とにかく! 練習始めるから、律たちも早く準備して!」
律「はいはい。じゃあやりますか」
唯「今日も頑張ろうね」
紬「今日は、かもしれないけどね」
唯「かもね~、あははは~」
田井中たちも練習の準備を始めた。
その間もぐだぐだとしていて、秋山と中野の二人に叱咤されている。
こんなのでいいのだろうか、とも思う。
でも、こういう奴らだからこそ…なのかもしれなかった。
俺や春原みたいな人間でもなじむことができたのは。
俺たちは本来、何かに打ち込んでいるような奴らとは、対極の位置にいるのだから…。
機材をいじりながらこたえる二人。
律「ちぇ、ほんと岡崎に甘いよな、澪と梓は」
澪「そ、そんなことないだろ。それに岡崎くんにだけってわけじゃいだろ、今のは」
梓「そ、そうですよ。春原先輩も含まれてましたよ。右半身だけですけど」
律「ああそうだったな。そういうことにしとくよ」
春原「つーか、半分だけって、そんなバファリンみたく言わないでくれるかなっ!?」
澪「とにかく! 練習始めるから、律たちも早く準備して!」
律「はいはい。じゃあやりますか」
唯「今日も頑張ろうね」
紬「今日は、かもしれないけどね」
唯「かもね~、あははは~」
田井中たちも練習の準備を始めた。
その間もぐだぐだとしていて、秋山と中野の二人に叱咤されている。
こんなのでいいのだろうか、とも思う。
でも、こういう奴らだからこそ…なのかもしれなかった。
俺や春原みたいな人間でもなじむことができたのは。
俺たちは本来、何かに打ち込んでいるような奴らとは、対極の位置にいるのだから…。
16: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:22:04.17 ID:Zk/0RPWk0
―――――――――――――――――――――
春原「おい、岡崎」
岡崎「あん?」
練習風景をぼーっと眺めていたら、春原がどこからかカスタネットを持ってきていた。
春原「うんたん♪うんたん♪」
気持ちの悪い振り付けをして、カタカタと音をたてる。
岡崎「…で?」
春原「ちっ、ノリ悪ぃな。せっかく平沢のマネしてやったのによ」
岡崎「そんなもんにどう返せっていうんだよ」
春原「なんかあるだろ、例えば…デコたん♪デコたん♪とか…」
どかっ
春原「がゃっ!!」
シンバルが気円斬のように飛んできて、春原のスネに直撃していた。
律「あんまり調子に乗るなよ、春原」
春原「…すみませんでした…」
春原「おい、岡崎」
岡崎「あん?」
練習風景をぼーっと眺めていたら、春原がどこからかカスタネットを持ってきていた。
春原「うんたん♪うんたん♪」
気持ちの悪い振り付けをして、カタカタと音をたてる。
岡崎「…で?」
春原「ちっ、ノリ悪ぃな。せっかく平沢のマネしてやったのによ」
岡崎「そんなもんにどう返せっていうんだよ」
春原「なんかあるだろ、例えば…デコたん♪デコたん♪とか…」
どかっ
春原「がゃっ!!」
シンバルが気円斬のように飛んできて、春原のスネに直撃していた。
律「あんまり調子に乗るなよ、春原」
春原「…すみませんでした…」
17: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:22:45.40 ID:Zk/0RPWk0
律「みんなごめん、あのアホのせいで中断しちゃって」
唯「いいよ、気にしないで。私も、うんたん♪ には、はらわたが煮えくり返ってたところだから」
紬「うん。私も、春原くんと話すとき、いつも眉毛に着目されて不快だったから…」
澪「私も…胸ばっかりみられて…その…だったから、ちょっとすっきりした」
梓「あずにゃんって呼ばれた私が一番かわいそうです」
岡崎「はっはっは、散々な評価だな、おまえ!」
春原「友達なら、こういう時なぐさめてくれませんかねぇ…」
岡崎「そうだったな、俺たち友達(天敵)同士だもんな。まぁ、元気出せよ」
春原「そんなふりがなつけるなよっ!意味が360度変わるだろっ!」
一周してもとに戻っていた。
―――――――――――――――――――――
軽音部の活動が終わる前、俺と春原は一足先に学校を出た。
俺は一度家に帰り、着替えを済ませると、春原の部屋に向かった。
途中、夕飯となる弁当を買い求め、スーパーに寄った。
岡崎(あれ…? あいつは…)
店の中から、昼に会った平沢の妹が出てきた。
買い物袋を重そうにして抱えている。
唯「いいよ、気にしないで。私も、うんたん♪ には、はらわたが煮えくり返ってたところだから」
紬「うん。私も、春原くんと話すとき、いつも眉毛に着目されて不快だったから…」
澪「私も…胸ばっかりみられて…その…だったから、ちょっとすっきりした」
梓「あずにゃんって呼ばれた私が一番かわいそうです」
岡崎「はっはっは、散々な評価だな、おまえ!」
春原「友達なら、こういう時なぐさめてくれませんかねぇ…」
岡崎「そうだったな、俺たち友達(天敵)同士だもんな。まぁ、元気出せよ」
春原「そんなふりがなつけるなよっ!意味が360度変わるだろっ!」
一周してもとに戻っていた。
―――――――――――――――――――――
軽音部の活動が終わる前、俺と春原は一足先に学校を出た。
俺は一度家に帰り、着替えを済ませると、春原の部屋に向かった。
途中、夕飯となる弁当を買い求め、スーパーに寄った。
岡崎(あれ…? あいつは…)
店の中から、昼に会った平沢の妹が出てきた。
買い物袋を重そうにして抱えている。
18: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:23:27.47 ID:Zk/0RPWk0
憂「あ! 岡崎さん」
その様子を見ていたら、むこうも俺に気づいたようで、こちらによってきた。
憂「こんばんは。岡崎さんも夕飯のお買い物ですか?」
岡崎「まぁ、そんなところだ」
憂「お母さんからおつかいを頼まれたとかですか?」
岡崎「いや、うちは……」
少し言いよどむ。
会ったばかりのやつに、家庭の事情をやすやすと話すことにためらいがあったのだ。
だが、嘘をついてごまかすような必死さがあるわけでもなかったので、結局、素直に話すことにした。
岡崎「…父子家庭なんだよ。母親とかは、いないんだ」
岡崎「だから、ここへは自分の弁当を買いに来ただけだ。夕飯のな」
憂「あ…すみません、私…」
気まずそうに俺から視線を外す。
聞いてはいけなかったとでも思っているのだろうか。
岡崎「気にするな。俺は別に、なんとも思ってねぇからさ」
そうつけ加えておく。一応、フォローしたつもりだ。
憂「はい…」
その様子を見ていたら、むこうも俺に気づいたようで、こちらによってきた。
憂「こんばんは。岡崎さんも夕飯のお買い物ですか?」
岡崎「まぁ、そんなところだ」
憂「お母さんからおつかいを頼まれたとかですか?」
岡崎「いや、うちは……」
少し言いよどむ。
会ったばかりのやつに、家庭の事情をやすやすと話すことにためらいがあったのだ。
だが、嘘をついてごまかすような必死さがあるわけでもなかったので、結局、素直に話すことにした。
岡崎「…父子家庭なんだよ。母親とかは、いないんだ」
岡崎「だから、ここへは自分の弁当を買いに来ただけだ。夕飯のな」
憂「あ…すみません、私…」
気まずそうに俺から視線を外す。
聞いてはいけなかったとでも思っているのだろうか。
岡崎「気にするな。俺は別に、なんとも思ってねぇからさ」
そうつけ加えておく。一応、フォローしたつもりだ。
憂「はい…」
19: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:24:09.36 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「それより、それ重くないのか?」
この微妙な空気のまま、はい、さよなら、というのも気がひけた。
なので、俺は話題を変えようと、なんの気なしにそう聞いてみた。
憂「そうですね…結構重いです」
岡崎「ならさ、ここまでどうやって来たか知らないけど…」
岡崎「もし歩きで来たんなら、それ、俺が平沢の家まで持ってもいいぞ」
知り合いの妹だ。手伝っておくのも悪くないだろう。
憂「え? いいんですか?」
岡崎「ああ」
憂「それなら、お願いしようかな」
岡崎「なら、貸せよ」
憂「はい、お願いします」
平沢妹から袋を受け取る。
俺が持っても、それなりに重く感じた。
手伝う意味はあったようだ。
岡崎「行くぞ」
憂「はい」
この微妙な空気のまま、はい、さよなら、というのも気がひけた。
なので、俺は話題を変えようと、なんの気なしにそう聞いてみた。
憂「そうですね…結構重いです」
岡崎「ならさ、ここまでどうやって来たか知らないけど…」
岡崎「もし歩きで来たんなら、それ、俺が平沢の家まで持ってもいいぞ」
知り合いの妹だ。手伝っておくのも悪くないだろう。
憂「え? いいんですか?」
岡崎「ああ」
憂「それなら、お願いしようかな」
岡崎「なら、貸せよ」
憂「はい、お願いします」
平沢妹から袋を受け取る。
俺が持っても、それなりに重く感じた。
手伝う意味はあったようだ。
岡崎「行くぞ」
憂「はい」
20: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:24:50.98 ID:Zk/0RPWk0
―――――――――――――――――――――
それからは、平沢妹について歩いた。
その間もなにかと話しかけてくる。
俺もそれにつられ、いろいろと喋ってしまっていた。
憂「え? 岡崎さんが不良、ですか?」
岡崎「ああ。毎日のように遅刻してるし、授業もフケたりする」
憂「でも、そんな風には見えませんよ。現に今こうして荷物をもってくれてるし」
岡崎「それはおまえが知り合いの妹だから…なんとなくだよ」
憂「それでも…やっぱり岡崎さんはいい人なんだと思います」
憂「私は、そう思えます」
まだ会って間もないというのに、そう断言していた。
岡崎「そうだといいな」
憂「そうですよ。私にはわかります」
そんな風に言われたのは初めてだった。
それに俺は少しだけ…心地よさを感じていた。
―――――――――――――――――――――
それからは、平沢妹について歩いた。
その間もなにかと話しかけてくる。
俺もそれにつられ、いろいろと喋ってしまっていた。
憂「え? 岡崎さんが不良、ですか?」
岡崎「ああ。毎日のように遅刻してるし、授業もフケたりする」
憂「でも、そんな風には見えませんよ。現に今こうして荷物をもってくれてるし」
岡崎「それはおまえが知り合いの妹だから…なんとなくだよ」
憂「それでも…やっぱり岡崎さんはいい人なんだと思います」
憂「私は、そう思えます」
まだ会って間もないというのに、そう断言していた。
岡崎「そうだといいな」
憂「そうですよ。私にはわかります」
そんな風に言われたのは初めてだった。
それに俺は少しだけ…心地よさを感じていた。
―――――――――――――――――――――
21: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:25:32.38 ID:Zk/0RPWk0
平沢家の前までやってくると、ここでお別れだった。
憂「ありがとうございました」
岡崎「ああ。それじゃな」
憂「はい」
買い物袋を渡し、別れの挨拶を終える。
俺は平沢妹に背を向け、もと来た道を引き返し始めた。
憂「あ、あの!」
背後から彼女の声がした。
振り返る。
岡崎「なんだ」
憂「また、明日。お昼に会いましょう」
岡崎「…ああ。また明日」
そうこたえ、踵を返し、再び歩き出した。
…明日また、平沢妹に会える。
それは、ほんのわずかだったが、俺の心を躍らせた。
―――――――――――――――――――――
憂「ありがとうございました」
岡崎「ああ。それじゃな」
憂「はい」
買い物袋を渡し、別れの挨拶を終える。
俺は平沢妹に背を向け、もと来た道を引き返し始めた。
憂「あ、あの!」
背後から彼女の声がした。
振り返る。
岡崎「なんだ」
憂「また、明日。お昼に会いましょう」
岡崎「…ああ。また明日」
そうこたえ、踵を返し、再び歩き出した。
…明日また、平沢妹に会える。
それは、ほんのわずかだったが、俺の心を躍らせた。
―――――――――――――――――――――
22: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:26:14.48 ID:Zk/0RPWk0
3時間目の授業が始まる少し前、教室に到着した。
席につくと、少しもしない内に教師がやってきて、授業が始まった。
―――――――――――――――――――――
授業中、俺は頬杖をつき、教師の声を聞き流して過ごした。
―――――――――――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、3時間目が終わる。
唯「岡崎くんっ」
終わったと思ったら、すぐに平沢がやってきた。
岡崎「なんだよ」
唯「岡崎くん、昨日憂から聞いたよ。買い物手伝ってくれたんだって?」
岡崎「荷物運んだってだけだぞ」
唯「十分だよぉ。ありがとね」
岡崎「いや、別に」
平沢妹は昨日の昼のことも話したのだろうか。
それが少し気になった。
あんな場所で女の子と二人きり…なんて、あまり知られたくはない。
席につくと、少しもしない内に教師がやってきて、授業が始まった。
―――――――――――――――――――――
授業中、俺は頬杖をつき、教師の声を聞き流して過ごした。
―――――――――――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、3時間目が終わる。
唯「岡崎くんっ」
終わったと思ったら、すぐに平沢がやってきた。
岡崎「なんだよ」
唯「岡崎くん、昨日憂から聞いたよ。買い物手伝ってくれたんだって?」
岡崎「荷物運んだってだけだぞ」
唯「十分だよぉ。ありがとね」
岡崎「いや、別に」
平沢妹は昨日の昼のことも話したのだろうか。
それが少し気になった。
あんな場所で女の子と二人きり…なんて、あまり知られたくはない。
23: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:26:55.57 ID:Zk/0RPWk0
唯「でもさぁ…もしかして、私に会いたかったから手伝ってくれたの?」
岡崎「はぁ? なんで、そうなるんだよ」
唯「だって、うちにくれば私に会えるでしょ」
岡崎「そんなんで手伝うわけねぇだろ。ただの気まぐれだよ」
唯「照れなくてもいいのに~このこの」
肘でつついてくる。
岡崎「本音トークだっての」
唯「本当に? じゃあ、今は本音しか言わないんだね?」
岡崎「ああ」
唯「それじゃあ…好きな女の子のタイプは?」
岡崎「ピー で ピー な奴かな」
唯「ちょっと!? なんで自主規制入れてるの!? それただのピートークだよ!」
岡崎「ピー で ピー なんだから ピーだろ」
唯「会話にならないよ! 一体なにを規制してるの!? すごく気になる!」
岡崎「それは俺の口からは言えない。だから伏せてるんだ」
岡崎「はぁ? なんで、そうなるんだよ」
唯「だって、うちにくれば私に会えるでしょ」
岡崎「そんなんで手伝うわけねぇだろ。ただの気まぐれだよ」
唯「照れなくてもいいのに~このこの」
肘でつついてくる。
岡崎「本音トークだっての」
唯「本当に? じゃあ、今は本音しか言わないんだね?」
岡崎「ああ」
唯「それじゃあ…好きな女の子のタイプは?」
岡崎「ピー で ピー な奴かな」
唯「ちょっと!? なんで自主規制入れてるの!? それただのピートークだよ!」
岡崎「ピー で ピー なんだから ピーだろ」
唯「会話にならないよ! 一体なにを規制してるの!? すごく気になる!」
岡崎「それは俺の口からは言えない。だから伏せてるんだ」
25: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:27:36.92 ID:Zk/0RPWk0
唯「ていうか、そんなワードで表される女の子が好みなの!?」
春原「よぅ、岡崎、平沢。なに話してんの」
突然やってきて、どかっ、とイスに腰掛けた。
唯「あ、おはよぉ」
岡崎「よお、ピー原」
春原「あ? なんだよそれ」
岡崎「いや、自主規制だけど?」
春原「さもそれが当然のように言うなっ! 僕が規制対象とでも言いたいのか、おまえはっ!」
岡崎「いや、そうだろ? 明日から目のとこに黒線入れて登校してこいよ」
春原「そんな処理できねぇよっ! つーか、僕は犯罪者じゃねーぞっ!」
唯「そうだよ、そんなこと言ったら ピー くんがかわいそうだよ、岡崎くん」
春原「おまえ、まったく哀れんでねぇだろっ! なんだよ、そのワクワクした顔はっ!」
岡崎「出所してきたら、カツ丼くらいおごってやるからな」
唯「塀の向こうでも元気でね、春原くん」
春原「よぅ、岡崎、平沢。なに話してんの」
突然やってきて、どかっ、とイスに腰掛けた。
唯「あ、おはよぉ」
岡崎「よお、ピー原」
春原「あ? なんだよそれ」
岡崎「いや、自主規制だけど?」
春原「さもそれが当然のように言うなっ! 僕が規制対象とでも言いたいのか、おまえはっ!」
岡崎「いや、そうだろ? 明日から目のとこに黒線入れて登校してこいよ」
春原「そんな処理できねぇよっ! つーか、僕は犯罪者じゃねーぞっ!」
唯「そうだよ、そんなこと言ったら ピー くんがかわいそうだよ、岡崎くん」
春原「おまえ、まったく哀れんでねぇだろっ! なんだよ、そのワクワクした顔はっ!」
岡崎「出所してきたら、カツ丼くらいおごってやるからな」
唯「塀の向こうでも元気でね、春原くん」
26: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:28:18.47 ID:Zk/0RPWk0
春原「なんで僕がパクられたていで話してんだよ!」
岡崎「そりゃ、警察が本気で動き出したら逃げ切れないからだろ」
唯「うんうん、すぐに取り締まられちゃうよ」
春原「うぅ…くっそーっ! 僕を薬物みたいに言いやがって! おまえら本気で死んでくれよぉっ!」
泣きながら机にうつ伏せてしまった。
唯「ちょっとやりすぎちゃったかな…?」
岡崎「そんなことはないだろ」
唯「それもそうだね! それじゃ、私戻るね」
岡崎「ああ」
とことこと自分の席に戻っていった。
春原の方に向き直ってみる。
春原「………」
泣いていたと思ったら、そのまま寝入ってしまっていた。
岡崎(泣き疲れて眠るって、ガキかよ…)
―――――――――――――――――――――
授業中も春原は眠っていた。
岡崎「そりゃ、警察が本気で動き出したら逃げ切れないからだろ」
唯「うんうん、すぐに取り締まられちゃうよ」
春原「うぅ…くっそーっ! 僕を薬物みたいに言いやがって! おまえら本気で死んでくれよぉっ!」
泣きながら机にうつ伏せてしまった。
唯「ちょっとやりすぎちゃったかな…?」
岡崎「そんなことはないだろ」
唯「それもそうだね! それじゃ、私戻るね」
岡崎「ああ」
とことこと自分の席に戻っていった。
春原の方に向き直ってみる。
春原「………」
泣いていたと思ったら、そのまま寝入ってしまっていた。
岡崎(泣き疲れて眠るって、ガキかよ…)
―――――――――――――――――――――
授業中も春原は眠っていた。
27: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:29:00.28 ID:Zk/0RPWk0
岡崎(暇だな…)
春原「う~ん…ふふ…」
どんな夢を見ているんだろうか。
少し悪戯してみることにした。
岡崎「段差…段差…段差…」
快眠中の春原に、そう囁き続けて暗示をかける。
春原「う…うぅ…おわっ!?」
びくっ、と体が跳ねて、机とイスを吹き飛ばしながら立ち上がった。
授業が中断され、クラス中の視線が集まる。
春原「あ、あれ? 無事に着地できたのか…?」
岡崎「残念だが春原、おまえは着地に失敗して死んだ」
岡崎「おまえは今、走馬灯を見ているんだ」
春原「へ!? そうなの?」
岡崎「ああ、そうだ。ここは現実じゃないんだ。つまり、やりたい放題できる」
春原「マジかよ!?」
教師「おい、春原。いい加減にしろ」
春原「う~ん…ふふ…」
どんな夢を見ているんだろうか。
少し悪戯してみることにした。
岡崎「段差…段差…段差…」
快眠中の春原に、そう囁き続けて暗示をかける。
春原「う…うぅ…おわっ!?」
びくっ、と体が跳ねて、机とイスを吹き飛ばしながら立ち上がった。
授業が中断され、クラス中の視線が集まる。
春原「あ、あれ? 無事に着地できたのか…?」
岡崎「残念だが春原、おまえは着地に失敗して死んだ」
岡崎「おまえは今、走馬灯を見ているんだ」
春原「へ!? そうなの?」
岡崎「ああ、そうだ。ここは現実じゃないんだ。つまり、やりたい放題できる」
春原「マジかよ!?」
教師「おい、春原。いい加減にしろ」
28: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:29:43.99 ID:Zk/0RPWk0
教師が怒りをあらわに注意してくる。
岡崎「春原、手から気を放ってやつを撃退しろ」
春原「よ、よーし…」
春原は深呼吸して腰を落とし、両手を合わせて構えを取った。
春原「波ぁあああああっ!」
そして勢いよく両手を前に突き出し、奇声を上げた。
教師「…この授業が終わったら一緒に職員室に来い」
春原「…へ?」
岡崎「空砲だったな」
春原「てめぇ、岡崎っ! ここ、現実じゃねーか!」
生徒1「アニメの見すぎだろ」
生徒2「つーか、髪だけ意識しすぎだろ」
生徒3「ああ、それで金髪なのか。超春原人3か」
春原「ああ!? てめーらっ…」
教師「春原! まだわからんのか!?」
岡崎「春原、手から気を放ってやつを撃退しろ」
春原「よ、よーし…」
春原は深呼吸して腰を落とし、両手を合わせて構えを取った。
春原「波ぁあああああっ!」
そして勢いよく両手を前に突き出し、奇声を上げた。
教師「…この授業が終わったら一緒に職員室に来い」
春原「…へ?」
岡崎「空砲だったな」
春原「てめぇ、岡崎っ! ここ、現実じゃねーか!」
生徒1「アニメの見すぎだろ」
生徒2「つーか、髪だけ意識しすぎだろ」
生徒3「ああ、それで金髪なのか。超春原人3か」
春原「ああ!? てめーらっ…」
教師「春原! まだわからんのか!?」
29: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:31:33.20 ID:Zk/0RPWk0
春原「うぅ…ちくしょー…覚えてろよ、岡崎…」
散っていた机とイスをもとに戻すと、しおしおと萎れながら着席した。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
4時間目が終わり、昼休みに入った。
岡崎(行くか…)
俺はひとり学食へ向かった。
―――――――――――――――――――――
パンを買い、その足で屋上へ向かう。
―――――――――――――――――――――
階段を上がっていき、最上階までやってくる。
憂「…あ、岡崎さん」
そこには、階段に座り、手持ちぶさたにしている平沢妹がいた。
岡崎「もう来てたのか」
散っていた机とイスをもとに戻すと、しおしおと萎れながら着席した。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
4時間目が終わり、昼休みに入った。
岡崎(行くか…)
俺はひとり学食へ向かった。
―――――――――――――――――――――
パンを買い、その足で屋上へ向かう。
―――――――――――――――――――――
階段を上がっていき、最上階までやってくる。
憂「…あ、岡崎さん」
そこには、階段に座り、手持ちぶさたにしている平沢妹がいた。
岡崎「もう来てたのか」
30: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:32:15.03 ID:Zk/0RPWk0
憂「はい…でも、ドアが開いてなくて…」
岡崎「知らなかったのか? ここ、本当は出入り禁止なんだぞ」
俺は鍵をポケットから取り出し、扉の施錠を外した。
憂「え? 岡崎さん、なんで鍵を…?」
岡崎「この学校も長いと、いろいろあるんだよ。ほら、いくぞ」
憂「あ、はいっ」
―――――――――――――――――――――
昨日同様、並んで昼を食べる。
岡崎「今日は弁当なんだな」
憂「はい。というか、本当はいつもお弁当なんです」
憂「昨日はちょっと寝坊しちゃって…それで」
岡崎「そっか」
憂「お姉ちゃんのお弁当も私が作ってるんですよ」
岡崎「へぇ…偉いな」
憂「そんなことないです。私が好きでやってることですから」
岡崎「知らなかったのか? ここ、本当は出入り禁止なんだぞ」
俺は鍵をポケットから取り出し、扉の施錠を外した。
憂「え? 岡崎さん、なんで鍵を…?」
岡崎「この学校も長いと、いろいろあるんだよ。ほら、いくぞ」
憂「あ、はいっ」
―――――――――――――――――――――
昨日同様、並んで昼を食べる。
岡崎「今日は弁当なんだな」
憂「はい。というか、本当はいつもお弁当なんです」
憂「昨日はちょっと寝坊しちゃって…それで」
岡崎「そっか」
憂「お姉ちゃんのお弁当も私が作ってるんですよ」
岡崎「へぇ…偉いな」
憂「そんなことないです。私が好きでやってることですから」
31: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:32:57.70 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「そうなのか」
憂「はい。お姉ちゃんが喜んでくれるとくれしいですから」
そう言った平沢妹の表情は穏やかで…
そこから姉妹仲がいいだろうことが窺えた。
俺はまたパンを食べ始める。
憂「もし、よければですけど…」
はしを止め、そう呟いた。
憂「これからは岡崎さんの分も私が作ってきましょうか…?」
岡崎「弁当?」
憂「はい」
岡崎「いや、それは…悪いだろ、さすがに」
憂「いえ、全然構わないです。昨日のお礼もかねてですから」
岡崎「それじゃ釣りあわないだろ。明らかに俺が得してる」
憂「…いらないですか?私のお弁当…」
岡崎(う……)
残念そうにうなだれてしまった。
実際、弁当がタダでもらえるならそのほうがよかった。
憂「はい。お姉ちゃんが喜んでくれるとくれしいですから」
そう言った平沢妹の表情は穏やかで…
そこから姉妹仲がいいだろうことが窺えた。
俺はまたパンを食べ始める。
憂「もし、よければですけど…」
はしを止め、そう呟いた。
憂「これからは岡崎さんの分も私が作ってきましょうか…?」
岡崎「弁当?」
憂「はい」
岡崎「いや、それは…悪いだろ、さすがに」
憂「いえ、全然構わないです。昨日のお礼もかねてですから」
岡崎「それじゃ釣りあわないだろ。明らかに俺が得してる」
憂「…いらないですか?私のお弁当…」
岡崎(う……)
残念そうにうなだれてしまった。
実際、弁当がタダでもらえるならそのほうがよかった。
32: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:33:39.84 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「じゃあ…よろしく」
せっかくの申し出だ。ありがたく受けておくことにした。
憂「はいっ。楽しみにしててくださいね」
なぜそこでうれしそうにするのだろうか。
ただ負担が増えただけじゃないのか。
岡崎(顔は似てるのにな…)
姉とは違う性格。
見た感じ、しっかりしているようだし…
はっきりいって、いい子だ。
憂「あ、岡崎さん、あの雲ピースサインしてる手に見えませんかっ?」
岡崎(いや…こういう意味不明さは似てるのかな)
俺は平沢妹が指さした雲を見上げてみる。
岡崎「あれは中指立ててるだろ。ファックユー!ってさ」
憂「そ、そんなふうには見えないです!」
陽の光が温かく、気持ちのいい空間。
その居心地のよさから、昼休み終了間際まで喋っていた。
―――――――――――――――――――――
せっかくの申し出だ。ありがたく受けておくことにした。
憂「はいっ。楽しみにしててくださいね」
なぜそこでうれしそうにするのだろうか。
ただ負担が増えただけじゃないのか。
岡崎(顔は似てるのにな…)
姉とは違う性格。
見た感じ、しっかりしているようだし…
はっきりいって、いい子だ。
憂「あ、岡崎さん、あの雲ピースサインしてる手に見えませんかっ?」
岡崎(いや…こういう意味不明さは似てるのかな)
俺は平沢妹が指さした雲を見上げてみる。
岡崎「あれは中指立ててるだろ。ファックユー!ってさ」
憂「そ、そんなふうには見えないです!」
陽の光が温かく、気持ちのいい空間。
その居心地のよさから、昼休み終了間際まで喋っていた。
―――――――――――――――――――――
33: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:35:22.48 ID:Zk/0RPWk0
………。
―――――――――――――――――――――
授業が全て終わり、放課となった。
そして、俺と春原は、今日もまた軽音部部室へ訪れていた。
澪「ど、どうかな…?」
律「いや…なんていうか……やっぱ独特だよな…」
唯「私は好きだけどな~、澪ちゃんの歌詞」
紬「私もいいと思う」
梓「…わ、私もい、いいと思うますよ…」
秋山が新曲の歌詞を書いてきたというので、みんなでそれを見てみることになり、歌詞カードを回し読みしていた。
俺も一通り目を通してみたが…
岡崎(これは…どうコメントすればいいんだよ…)
よくわからない比喩表現に、ちりばめられた♥ マークや☆マーク…
岡崎(正直…恥ずかしい…よな)
隣を見てみる。
春原「………」
―――――――――――――――――――――
授業が全て終わり、放課となった。
そして、俺と春原は、今日もまた軽音部部室へ訪れていた。
澪「ど、どうかな…?」
律「いや…なんていうか……やっぱ独特だよな…」
唯「私は好きだけどな~、澪ちゃんの歌詞」
紬「私もいいと思う」
梓「…わ、私もい、いいと思うますよ…」
秋山が新曲の歌詞を書いてきたというので、みんなでそれを見てみることになり、歌詞カードを回し読みしていた。
俺も一通り目を通してみたが…
岡崎(これは…どうコメントすればいいんだよ…)
よくわからない比喩表現に、ちりばめられた♥ マークや☆マーク…
岡崎(正直…恥ずかしい…よな)
隣を見てみる。
春原「………」
34: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:36:05.00 ID:Zk/0RPWk0
どうやら春原も俺と同じ心境のようだった。
律「あ、あんたらもなんか言えよな…」
田井中が、だんまりを決め込んでいる俺と春原に振ってきた。
岡崎(余計なことを…)
澪「………」
秋山が恥ずかしそうに伏せながらもこちらを窺ってくる。
春原「…僕は、やっぱボンバヘッ!がいいかな」
直接的な回答を避け、茶を濁していた。
俺もそれに乗っかることにする。
岡崎「それ、すっげーダサいからな」
春原「あ? おまえ、ボンバヘッ!馬鹿にすんのかよっ!」
岡崎「いや、聴いてる奴のことをいっただけだ」
春原「ならいいけどさ…ってそれ僕のことだろっ! ちっともよくねぇよっ!」
岡崎「だってよ、今ボンバヘッ!なんて聴いてるのおまえくらいのもんだぞ」
春原「んなことねーよ! ファンは僕以外にもいるっての」
岡崎「そうだとしてもそれは少数だ。マイノリティなんだ。時代は秋山みたいなセンスを求めてるんだ」
律「あ、あんたらもなんか言えよな…」
田井中が、だんまりを決め込んでいる俺と春原に振ってきた。
岡崎(余計なことを…)
澪「………」
秋山が恥ずかしそうに伏せながらもこちらを窺ってくる。
春原「…僕は、やっぱボンバヘッ!がいいかな」
直接的な回答を避け、茶を濁していた。
俺もそれに乗っかることにする。
岡崎「それ、すっげーダサいからな」
春原「あ? おまえ、ボンバヘッ!馬鹿にすんのかよっ!」
岡崎「いや、聴いてる奴のことをいっただけだ」
春原「ならいいけどさ…ってそれ僕のことだろっ! ちっともよくねぇよっ!」
岡崎「だってよ、今ボンバヘッ!なんて聴いてるのおまえくらいのもんだぞ」
春原「んなことねーよ! ファンは僕以外にもいるっての」
岡崎「そうだとしてもそれは少数だ。マイノリティなんだ。時代は秋山みたいなセンスを求めてるんだ」
35: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:36:46.77 ID:Zk/0RPWk0
澪「え…そ、そうかな…」
岡崎「そうだ。だからさ、こいつを題材にしてなにか作詞してみてくれよ」
春原「え? 僕? なんでよ?」
岡崎「見た目かっこいいし、生き方クールじゃん。歌詞にしやすいんだって」
春原「そ、そうかな? へへっ」
澪「春原くんか…うーん…」
春原を利用し、秋山を褒めつつ話題を変えることに成功した。
俺はひそかにほくそ笑んだ。
春原「澪ちゃん、感じたままを言葉にすればいいんだよ」
春原「例えば、美しいとか、素晴らしいとか…」
岡崎「目障りだとか、うざってーとか…」
律「キモイとか、臭いとか…」
唯「殺意湧くとか、殴りたいとか…」
紬「ヘッドバッドしたいとか、腕へし折りたいとか…」
梓「消えてなくなれとかもいいです」
春原「ちょっと待てよ! 僕を題材にしてその言葉が出るっておかしいだろっ!」
岡崎「そうだ。だからさ、こいつを題材にしてなにか作詞してみてくれよ」
春原「え? 僕? なんでよ?」
岡崎「見た目かっこいいし、生き方クールじゃん。歌詞にしやすいんだって」
春原「そ、そうかな? へへっ」
澪「春原くんか…うーん…」
春原を利用し、秋山を褒めつつ話題を変えることに成功した。
俺はひそかにほくそ笑んだ。
春原「澪ちゃん、感じたままを言葉にすればいいんだよ」
春原「例えば、美しいとか、素晴らしいとか…」
岡崎「目障りだとか、うざってーとか…」
律「キモイとか、臭いとか…」
唯「殺意湧くとか、殴りたいとか…」
紬「ヘッドバッドしたいとか、腕へし折りたいとか…」
梓「消えてなくなれとかもいいです」
春原「ちょっと待てよ! 僕を題材にしてその言葉が出るっておかしいだろっ!」
36: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:37:28.92 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「まぁ、これがみんなの本音だってことだ」
春原「おまえ、僕のことかっこいいって言ってたじゃないかよっ!」
岡崎「いや、あれさ、おまえの瞳に映った俺に言ってたんだけど」
春原「あんた、めちゃくちゃナルシストっすね!」
紬「はらわたぶちまけたいとか、顔面にカカト落とししたいとか…」
春原「まだ言ってるよ、この子っ! それに、なんかセリフが禍々しいんですけどっ!」
―――――――――――――――――――――
琴吹が持ってきたお菓子もとっくに食べ終わり、陽も落ち始めていた。
律「おし、そろそろ帰るかぁ」
澪「明日は練習するからな」
律「へいへい」
唯「まったりいこうよ~」
梓「そうも言ってられないです。来月には創立者際があるんですから」
唯「あずにゃんは真面目だね~よしよし」
梓「はぅう…」
春原「おまえ、僕のことかっこいいって言ってたじゃないかよっ!」
岡崎「いや、あれさ、おまえの瞳に映った俺に言ってたんだけど」
春原「あんた、めちゃくちゃナルシストっすね!」
紬「はらわたぶちまけたいとか、顔面にカカト落とししたいとか…」
春原「まだ言ってるよ、この子っ! それに、なんかセリフが禍々しいんですけどっ!」
―――――――――――――――――――――
琴吹が持ってきたお菓子もとっくに食べ終わり、陽も落ち始めていた。
律「おし、そろそろ帰るかぁ」
澪「明日は練習するからな」
律「へいへい」
唯「まったりいこうよ~」
梓「そうも言ってられないです。来月には創立者際があるんですから」
唯「あずにゃんは真面目だね~よしよし」
梓「はぅう…」
37: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:38:11.25 ID:Zk/0RPWk0
平沢に抱きつかれ、頭をなでられる中野。
紬「はぁはぁ…」
それを見ていた琴吹の様子が少しおかしかった。
春原「おい、平沢。次は僕にあずにゃんに抱きつかせてく…」
がし、っと春原の肩が琴吹によって掴まれる。
紬「空気を読んだほうが、長生きできると思うの」
春原「ひぃっ!?」
―――――――――――――――――――――
一緒に帰るなんて気はなかったが、なりゆきで軽音部の連中と下校した。
そして、坂下までやってくると、ここから寮へ向かう春原は、一人別れることになった。
春原「じゃあね」
律「じゃな~」
唯「ばいば~い」
紬「それじゃあね」
梓「それではです」
―――――――――――――――――――――
紬「はぁはぁ…」
それを見ていた琴吹の様子が少しおかしかった。
春原「おい、平沢。次は僕にあずにゃんに抱きつかせてく…」
がし、っと春原の肩が琴吹によって掴まれる。
紬「空気を読んだほうが、長生きできると思うの」
春原「ひぃっ!?」
―――――――――――――――――――――
一緒に帰るなんて気はなかったが、なりゆきで軽音部の連中と下校した。
そして、坂下までやってくると、ここから寮へ向かう春原は、一人別れることになった。
春原「じゃあね」
律「じゃな~」
唯「ばいば~い」
紬「それじゃあね」
梓「それではです」
―――――――――――――――――――――
38: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:38:53.98 ID:Zk/0RPWk0
電車通学の琴吹や、俺とは帰る方角が途中で分岐する中野、平沢、田井中たちとも別れた。
あとは、帰り道の共通する部分が一番多い秋山だけが残った。つまり、二人きりだ。
大勢の時は、女同士で喋ってくれるから、まだよかった。
だが、こうなると、必然的に話し相手は俺だけになってしまう。
女の子とふたり、わきあいあいと下校、なんて、ぞっとしない話だ。
自然、距離をとって歩くことになる。
澪「あのっ…」
秋山が足を止め、後方にいる俺に振り返った。
岡崎「なんだっ」
澪「遠くないっ…?」
岡崎「そうかっ?」
澪「うんっ…だって、6歩以上離れてるっ…」
岡崎「何歩ならいいんだよっ」
澪「せっかくだからっ…と、となりを歩いたほうがいいと思うよっ…?」
岡崎「いや…遠慮しとくっ」
澪「…そうだよね…となりとか、嫌だよね…うん…ごめんっ…」
岡崎「いや、おまえが嫌いとか、そんなんじゃなくてなっ…」
澪「…いいんだっ。全部いわなくてもわかってるよ…そりゃ、誰だって嫌だよ…だって私だもん…」
あとは、帰り道の共通する部分が一番多い秋山だけが残った。つまり、二人きりだ。
大勢の時は、女同士で喋ってくれるから、まだよかった。
だが、こうなると、必然的に話し相手は俺だけになってしまう。
女の子とふたり、わきあいあいと下校、なんて、ぞっとしない話だ。
自然、距離をとって歩くことになる。
澪「あのっ…」
秋山が足を止め、後方にいる俺に振り返った。
岡崎「なんだっ」
澪「遠くないっ…?」
岡崎「そうかっ?」
澪「うんっ…だって、6歩以上離れてるっ…」
岡崎「何歩ならいいんだよっ」
澪「せっかくだからっ…と、となりを歩いたほうがいいと思うよっ…?」
岡崎「いや…遠慮しとくっ」
澪「…そうだよね…となりとか、嫌だよね…うん…ごめんっ…」
岡崎「いや、おまえが嫌いとか、そんなんじゃなくてなっ…」
澪「…いいんだっ。全部いわなくてもわかってるよ…そりゃ、誰だって嫌だよ…だって私だもん…」
39: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:39:36.65 ID:Zk/0RPWk0
勝手に絶望の深みにハマっていき、自虐的になっていた。
岡崎(違うっていってんのに…はぁ…)
俺は歩を進め、となりに並んだ。
岡崎「ほら、いくぞ」
そう声をかけ、すぐに歩き出し、秋山の前をいく。
澪「あ…うんっ」
後ろから小走りで追いついてきた。
その顔に陰りはない。
落ち込むのが早ければ、立ち直るのも一瞬なやつだった。
―――――――――――――――――――――
澪「あのさ…」
岡崎「ああ、なんだ」
今も並んで歩いている。俺はもう、半ばヤケなテンションだった。
澪「岡崎くんも春原くんも、いつも部活終わる前に帰っちゃうけど…」
澪「今日みたいに最後までいて…一緒に帰ってくれたら…うれしいかな」
岡崎「俺とあいつがいたらうるさいだろ。迷惑じゃないのか」
岡崎(違うっていってんのに…はぁ…)
俺は歩を進め、となりに並んだ。
岡崎「ほら、いくぞ」
そう声をかけ、すぐに歩き出し、秋山の前をいく。
澪「あ…うんっ」
後ろから小走りで追いついてきた。
その顔に陰りはない。
落ち込むのが早ければ、立ち直るのも一瞬なやつだった。
―――――――――――――――――――――
澪「あのさ…」
岡崎「ああ、なんだ」
今も並んで歩いている。俺はもう、半ばヤケなテンションだった。
澪「岡崎くんも春原くんも、いつも部活終わる前に帰っちゃうけど…」
澪「今日みたいに最後までいて…一緒に帰ってくれたら…うれしいかな」
岡崎「俺とあいつがいたらうるさいだろ。迷惑じゃないのか」
40: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:40:19.54 ID:Zk/0RPWk0
澪「そんなことないよ…賑やかで楽しい」
岡崎「そっか。そりゃ、部外者冥利につきるな」
澪「あはは。なに、それ」
岡崎「俺もあいつも、部員じゃないからな。そういうこと」
澪「じゃあ、入部すればいいのに」
岡崎「悪いけど、音楽には興味ない」
澪「そっかぁ…残念」
言葉とは反対に、微笑みながら言う。
澪「…岡崎くん、今から少し時間あるかな」
岡崎「とくに用はないけど」
澪「じゃあ…今からちょっと付き合ってくれない?」
岡崎「ああ、いいよ」
―――――――――――――――――――――
秋山に案内されたのは公園だった。
誰も人はいない。無人だ。
澪「岡崎くん、去年のこと覚えてる? 私と一緒のクラスだった時のこと」
岡崎「そっか。そりゃ、部外者冥利につきるな」
澪「あはは。なに、それ」
岡崎「俺もあいつも、部員じゃないからな。そういうこと」
澪「じゃあ、入部すればいいのに」
岡崎「悪いけど、音楽には興味ない」
澪「そっかぁ…残念」
言葉とは反対に、微笑みながら言う。
澪「…岡崎くん、今から少し時間あるかな」
岡崎「とくに用はないけど」
澪「じゃあ…今からちょっと付き合ってくれない?」
岡崎「ああ、いいよ」
―――――――――――――――――――――
秋山に案内されたのは公園だった。
誰も人はいない。無人だ。
澪「岡崎くん、去年のこと覚えてる? 私と一緒のクラスだった時のこと」
41: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:41:01.80 ID:Zk/0RPWk0
ベンチに腰を下ろすと、秋山が話し始めた。
澪「私が日直でHRの司会してた時、クラスの子たちが話全然聞いてくれなくてさ…」
澪「それで私オロオロしちゃって…そんな時、岡崎君が、うるせぇぞっ!って一喝して…」
澪「みんな静かになって。それでやっとみんな私の話を聞いてくれたんだよ」
岡崎「ああ…そういえば、あった気がするな」
秋山に言われて思い出してみる。
確か…俺はあの時機嫌が悪くて…
それで、ただ周りのうるささにイラついただけじゃなかったか。
別に、正義感から出た行動ではなかったはずだ。
澪「その後もさ、私がライブで…こけちゃって…それで…」
直接見たわけではないが、噂は聞いたことがある。
去年の学園祭ライブで秋山は公衆の面前でスカートが翻ってしまったらしい。
おそらく、言いよどんでいるのはそのことだろう。
澪「その時のことを男の子にからかわれてた時にまた助けてくれたんだよ」
澪「いい加減にしとけよ、おまえら、って。そう言ってくれて」
その時も同じような理由からだったように思う。
騒ぐ連中が癇に障った、とかそんなこと。
岡崎「そう…だっけな」
澪「私が日直でHRの司会してた時、クラスの子たちが話全然聞いてくれなくてさ…」
澪「それで私オロオロしちゃって…そんな時、岡崎君が、うるせぇぞっ!って一喝して…」
澪「みんな静かになって。それでやっとみんな私の話を聞いてくれたんだよ」
岡崎「ああ…そういえば、あった気がするな」
秋山に言われて思い出してみる。
確か…俺はあの時機嫌が悪くて…
それで、ただ周りのうるささにイラついただけじゃなかったか。
別に、正義感から出た行動ではなかったはずだ。
澪「その後もさ、私がライブで…こけちゃって…それで…」
直接見たわけではないが、噂は聞いたことがある。
去年の学園祭ライブで秋山は公衆の面前でスカートが翻ってしまったらしい。
おそらく、言いよどんでいるのはそのことだろう。
澪「その時のことを男の子にからかわれてた時にまた助けてくれたんだよ」
澪「いい加減にしとけよ、おまえら、って。そう言ってくれて」
その時も同じような理由からだったように思う。
騒ぐ連中が癇に障った、とかそんなこと。
岡崎「そう…だっけな」
42: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:41:45.44 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「…でも、失望させるようで悪いんだけどさ…」
岡崎「多分俺、秋山のためにとか、そんな事考えてなかったと思う」
岡崎「きっと、虫の居所が悪くて、ただ誰かに当たりたかっただけなんだよ」
澪「それでもいいんだ。私はうれしかったから」
岡崎「…そっかよ」
澪「うん。それでね、お礼を言いたかったんだけど、あの時は言えなかった」
澪「助けてもらっといてあれだけど、ちょっと恐かったんだ、岡崎くんが」
澪「それで言おう言おうと思ってて、結局いえないまま2年生になっちゃって、クラスも変わって…」
澪「諦めかけてたら、律が岡崎くんと春原くんを軽音部につれてくるんだもん。びっくりしたよ」
澪「で、今度こそ言おうって思って岡崎くんを見てた。そうしたら、すごく面白い人だってわかって…」
澪「全然恐い人なんかじゃなかったんだって。だから…かなり遅れたけど、今言うね」
澪「あの時は…ありがとう」
俺を真っ直ぐに見据え、そう言った。
例え、意図しない俺の行動だったとしても、それに対する真摯な感謝だ。
なら、俺もそれに応える必要がある。
岡崎「ああ。どういたしまして」
岡崎「多分俺、秋山のためにとか、そんな事考えてなかったと思う」
岡崎「きっと、虫の居所が悪くて、ただ誰かに当たりたかっただけなんだよ」
澪「それでもいいんだ。私はうれしかったから」
岡崎「…そっかよ」
澪「うん。それでね、お礼を言いたかったんだけど、あの時は言えなかった」
澪「助けてもらっといてあれだけど、ちょっと恐かったんだ、岡崎くんが」
澪「それで言おう言おうと思ってて、結局いえないまま2年生になっちゃって、クラスも変わって…」
澪「諦めかけてたら、律が岡崎くんと春原くんを軽音部につれてくるんだもん。びっくりしたよ」
澪「で、今度こそ言おうって思って岡崎くんを見てた。そうしたら、すごく面白い人だってわかって…」
澪「全然恐い人なんかじゃなかったんだって。だから…かなり遅れたけど、今言うね」
澪「あの時は…ありがとう」
俺を真っ直ぐに見据え、そう言った。
例え、意図しない俺の行動だったとしても、それに対する真摯な感謝だ。
なら、俺もそれに応える必要がある。
岡崎「ああ。どういたしまして」
43: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:42:26.81 ID:Zk/0RPWk0
はぐらかすことなく、秋山の顔を見てそう返した。
澪「…あ、そ、それじゃ…私帰るね。バイバイ!」
あわただしく立ち上がったと思うと、そそくさと立ち去って行った。
一人残される俺。
岡崎(俺も帰るか…)
ベンチから立ち上がり、公園を後にした。
―――――――――――――――――――――
澪「…あ、そ、それじゃ…私帰るね。バイバイ!」
あわただしく立ち上がったと思うと、そそくさと立ち去って行った。
一人残される俺。
岡崎(俺も帰るか…)
ベンチから立ち上がり、公園を後にした。
―――――――――――――――――――――
44: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:43:09.28 ID:Zk/0RPWk0
朝。おそらく二時間目あたりであろう時間。
俺は下駄箱にいた。つまりは今日も遅刻だった。
靴をしまって上履きに履き替える。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、授業が終わったことを知る。
間もなくして、ざわめきたつ声がここまで響いてきた。
教室移動をしているらしい生徒も廊下を行き交いだしている。
梓「岡崎先輩…?」
その中で立ち止まり、俺に声をかけてくる女生徒が一人。
中野だった。
岡崎「よお」
梓「おはようございます…って鞄…」
近づいてきて、俺が持っているものに気づく。
梓「もしかして、遅刻ですか?」
岡崎「そうだけど」
梓「ダメですよ! 学校にはちゃんと来なきゃ」
岡崎「まぁ、今更だよな」
梓「だからこそです! 今からでも更正しないといけません!」
俺は下駄箱にいた。つまりは今日も遅刻だった。
靴をしまって上履きに履き替える。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、授業が終わったことを知る。
間もなくして、ざわめきたつ声がここまで響いてきた。
教室移動をしているらしい生徒も廊下を行き交いだしている。
梓「岡崎先輩…?」
その中で立ち止まり、俺に声をかけてくる女生徒が一人。
中野だった。
岡崎「よお」
梓「おはようございます…って鞄…」
近づいてきて、俺が持っているものに気づく。
梓「もしかして、遅刻ですか?」
岡崎「そうだけど」
梓「ダメですよ! 学校にはちゃんと来なきゃ」
岡崎「まぁ、今更だよな」
梓「だからこそです! 今からでも更正しないといけません!」
45: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:43:52.60 ID:Zk/0RPWk0
梓「明日からは遅刻せずにきてください!」
岡崎「気が向いたらな」
梓「もう! だから…」
女生徒1「あれ、梓、その人誰?」
女生徒2「え、え、かっこよくない?え、彼氏?」
女生徒1「え、マジ?」
梓「違うよ! ちがう! ほら、さっさと教室戻ろう!」
女生徒1「名前とか教えてよっ」
女生徒2「彼氏じゃないなら、紹介してくれない?」
梓「わかったから! 教室に帰ってから!」
梓「それじゃ、岡崎先輩、失礼します!」
二人を引っ張るようにして奥へと消えていった。
岡崎(なんか、騒がしかったな…)
―――――――――――――――――――――
………。
岡崎「気が向いたらな」
梓「もう! だから…」
女生徒1「あれ、梓、その人誰?」
女生徒2「え、え、かっこよくない?え、彼氏?」
女生徒1「え、マジ?」
梓「違うよ! ちがう! ほら、さっさと教室戻ろう!」
女生徒1「名前とか教えてよっ」
女生徒2「彼氏じゃないなら、紹介してくれない?」
梓「わかったから! 教室に帰ってから!」
梓「それじゃ、岡崎先輩、失礼します!」
二人を引っ張るようにして奥へと消えていった。
岡崎(なんか、騒がしかったな…)
―――――――――――――――――――――
………。
46: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:44:35.05 ID:Zk/0RPWk0
―――――――――――――――――――――
春原「よう、岡崎。飯食いにいこうぜ」
昼休みに入ると同時にやってきて、開口一番にそう口にした。
岡崎「学食か?」
春原「そうだけど、なに? どっか他に行きたいとこあんの?」
岡崎「いや…」
平沢妹の手作り弁当が待っていると言ったら、どうなるだろう。
こいつもついてきて、自分の分も弁当を用意しろ、と要求しだすかもしれない。
そうなれば、あの子は断りづらいはずだった。
これ以上余計な負担をかけることはしたくない。
岡崎(こいつをどこかに追っ払おう…)
春原「なんだよ? ないなら、もういこうぜ」
岡崎「おまえ、外で食ってこいよ。このクーポンやるから」
春原「お、いいの? センキュー! って、おまえはどうすんだよ?」
岡崎「俺はおまえと一緒に食うぐらいなら餓死を選ぶ」
春原「ああ!? なんで急にそんこと言い出すんだよっ!? 今までだって一緒に食ってたじゃん!」
岡崎「なんでもいいだろ。ほら、もういけ」
春原「よう、岡崎。飯食いにいこうぜ」
昼休みに入ると同時にやってきて、開口一番にそう口にした。
岡崎「学食か?」
春原「そうだけど、なに? どっか他に行きたいとこあんの?」
岡崎「いや…」
平沢妹の手作り弁当が待っていると言ったら、どうなるだろう。
こいつもついてきて、自分の分も弁当を用意しろ、と要求しだすかもしれない。
そうなれば、あの子は断りづらいはずだった。
これ以上余計な負担をかけることはしたくない。
岡崎(こいつをどこかに追っ払おう…)
春原「なんだよ? ないなら、もういこうぜ」
岡崎「おまえ、外で食ってこいよ。このクーポンやるから」
春原「お、いいの? センキュー! って、おまえはどうすんだよ?」
岡崎「俺はおまえと一緒に食うぐらいなら餓死を選ぶ」
春原「ああ!? なんで急にそんこと言い出すんだよっ!? 今までだって一緒に食ってたじゃん!」
岡崎「なんでもいいだろ。ほら、もういけ」
47: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:45:17.77 ID:Zk/0RPWk0
春原「わけわかんねーよ…」
腑に落ちないようだったが、俺に促され歩き出した。
岡崎「あ、それとな。注文するときにIm' loving youって言えよ。さらに割引してくれるから」
春原「アムラ~ブニュッ? どういう意味?」
岡崎「言えばわかるって」
春原「…まぁいいや。じゃ、いってくるよ」
岡崎「ああ、いってこい」
言われるままに教室を出て行った。
岡崎(ふぅ…やっと消えたか。今度から、昼になったらすぐ教室を出よう)
―――――――――――――――――――――
岡崎「うん…うまい」
憂「本当ですか?よかったぁ」
平沢妹の手作り弁当はお世辞抜きにうまかった。
学食の定食やパンよりもずっと。
岡崎「料理、上手いんだな」
憂「ありがとうございます。えへへ」
腑に落ちないようだったが、俺に促され歩き出した。
岡崎「あ、それとな。注文するときにIm' loving youって言えよ。さらに割引してくれるから」
春原「アムラ~ブニュッ? どういう意味?」
岡崎「言えばわかるって」
春原「…まぁいいや。じゃ、いってくるよ」
岡崎「ああ、いってこい」
言われるままに教室を出て行った。
岡崎(ふぅ…やっと消えたか。今度から、昼になったらすぐ教室を出よう)
―――――――――――――――――――――
岡崎「うん…うまい」
憂「本当ですか?よかったぁ」
平沢妹の手作り弁当はお世辞抜きにうまかった。
学食の定食やパンよりもずっと。
岡崎「料理、上手いんだな」
憂「ありがとうございます。えへへ」
48: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:45:59.98 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「いい嫁になれるんじゃないか」
憂「お嫁さんかぁ…私、なれるかなぁ」
岡崎「平沢なら、貰い手はたくさんいるだろ」
岡崎「しっかりしてるし、料理は上手いし、それに、可愛いしな」
岡崎「だから、楽勝だって」
憂「あ、ありがとうございます…」
憂「で、でも岡崎さんだっていいお婿さんになれますよ」
憂「優しいし、背が高いし、かっこいいですから」
岡崎「そっか。なら、俺たちいい夫婦になれそうだな」
憂「はい…ってえぇ!?」
岡崎「結婚しよう。平沢」
憂「あ、その、えっと、まだ私たちはその年齢がああ…」
岡崎「馬鹿。冗談だよ」
憂「あ、あはは、そ、そうですよね。からかわないでくださいよぉ」
岡崎「これくらい軽く乗れると思ったんだよ。仮にもあの平沢の妹だからな」
憂「お嫁さんかぁ…私、なれるかなぁ」
岡崎「平沢なら、貰い手はたくさんいるだろ」
岡崎「しっかりしてるし、料理は上手いし、それに、可愛いしな」
岡崎「だから、楽勝だって」
憂「あ、ありがとうございます…」
憂「で、でも岡崎さんだっていいお婿さんになれますよ」
憂「優しいし、背が高いし、かっこいいですから」
岡崎「そっか。なら、俺たちいい夫婦になれそうだな」
憂「はい…ってえぇ!?」
岡崎「結婚しよう。平沢」
憂「あ、その、えっと、まだ私たちはその年齢がああ…」
岡崎「馬鹿。冗談だよ」
憂「あ、あはは、そ、そうですよね。からかわないでくださいよぉ」
岡崎「これくらい軽く乗れると思ったんだよ。仮にもあの平沢の妹だからな」
49: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:46:42.51 ID:Zk/0RPWk0
憂「お姉ちゃんは天然なんですよ。そこがかわいいところなんです!」
岡崎「じゃあ、おまえは計算なのか。結構、腹黒いんだな」
憂「そんなんじゃないですっ!」
拗ねてそっぽを向いてしまった。
岡崎「悪かったよ。ちょっと意地悪がすぎた」
憂「…岡崎さんは優しいのか意地悪なのかわからなくなりました」
岡崎「俺は優しいぞ」
憂「自分で言うと、すごくうさんくさいですよ」
岡崎「じゃあ、おまえが言ってくれよ」
憂「岡崎さんは、いい人の皮を被った殺人鬼です」
岡崎「おまえな…」
憂「あはは、仕返しですよ」
くだらない会話だったけど、この子とならそれなりに楽しいと思えた。
今日も陽の光が暖かかく、それが心地いい。
時間は穏やかに過ぎていった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「じゃあ、おまえは計算なのか。結構、腹黒いんだな」
憂「そんなんじゃないですっ!」
拗ねてそっぽを向いてしまった。
岡崎「悪かったよ。ちょっと意地悪がすぎた」
憂「…岡崎さんは優しいのか意地悪なのかわからなくなりました」
岡崎「俺は優しいぞ」
憂「自分で言うと、すごくうさんくさいですよ」
岡崎「じゃあ、おまえが言ってくれよ」
憂「岡崎さんは、いい人の皮を被った殺人鬼です」
岡崎「おまえな…」
憂「あはは、仕返しですよ」
くだらない会話だったけど、この子とならそれなりに楽しいと思えた。
今日も陽の光が暖かかく、それが心地いい。
時間は穏やかに過ぎていった。
―――――――――――――――――――――
50: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:47:26.07 ID:Zk/0RPWk0
春原「岡崎ゃゃああああ!!」
教室に戻ってくると、いきなり春原が俺に詰め寄ってきた。
岡崎「うおっ!?」
ドカッ
春原「ぐぇっ!」
俺はとっさに前蹴りを出して牽制した。
そして、その足は、キレイにみぞへ突き刺さっていた。
春原「うぐぇぇえ…」
岡崎「わ、わりぃ、つい気持ち悪くてやっちまった…」
春原「く…てめぇ…あんなことしておいて、さらに追い討ちかけんのかよ…」
岡崎「俺、なんかしたっけ?」
春原「とぼけるな! クーポンの期限切れてたじゃねぇかっ! 結局定価で買ったんだぞ!」
岡崎「そっか。すまん、ケアレスミスだ」
春原「それだけじゃねーぞっ! アムラ~ブニュッって全然通じねーじゃん!」
春原「聞き返されて三回言ったんだぞ!」
岡崎「頑張ったな。偉いぞ」
教室に戻ってくると、いきなり春原が俺に詰め寄ってきた。
岡崎「うおっ!?」
ドカッ
春原「ぐぇっ!」
俺はとっさに前蹴りを出して牽制した。
そして、その足は、キレイにみぞへ突き刺さっていた。
春原「うぐぇぇえ…」
岡崎「わ、わりぃ、つい気持ち悪くてやっちまった…」
春原「く…てめぇ…あんなことしておいて、さらに追い討ちかけんのかよ…」
岡崎「俺、なんかしたっけ?」
春原「とぼけるな! クーポンの期限切れてたじゃねぇかっ! 結局定価で買ったんだぞ!」
岡崎「そっか。すまん、ケアレスミスだ」
春原「それだけじゃねーぞっ! アムラ~ブニュッって全然通じねーじゃん!」
春原「聞き返されて三回言ったんだぞ!」
岡崎「頑張ったな。偉いぞ」
51: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:48:08.05 ID:Zk/0RPWk0
春原「ほめられてうれしいわけないだろっ!」
春原「それに、アムラ~ブニュッって、僕、店員に告ってるじゃないかよぉっ!」
岡崎「言う前に気づけよ…」
春原「同一人物に三回告って三回振られてるみたいになったんだぞっ!」
岡崎「いつか気持ちは届くって。諦めなければ、大丈夫さ!」
春原「おまえそんなキャラじゃねーだろっ! 違和感ありすぎだよっ!」
春原「謝れよっ! 正式に謝罪しろっ!」
岡崎「はいはい俺が悪かったよ、やんのかコラ、バーカ!」
春原「こいつ、開き直りながら同時に逆ギレしやがったよっ! すっげー腹立つんですけど!」
キーンコーンカーンコーン
岡崎「お、チャイムだな。まぁ、昼休みも終わったし、全て水に流そうぜ」
春原「勝手に区切りをつけるなっ! おまえが謝るまで許さねーからな!」
岡崎「すまん、悪かったよ、バーカ」
春原「あんた、すっげーひねくれものっスね!」
授業中も、春原は俺を睨み続けてきた。
その視線がいい加減不快だったので、平謝りしたら、しぶしぶだが許してくれた。
春原「それに、アムラ~ブニュッって、僕、店員に告ってるじゃないかよぉっ!」
岡崎「言う前に気づけよ…」
春原「同一人物に三回告って三回振られてるみたいになったんだぞっ!」
岡崎「いつか気持ちは届くって。諦めなければ、大丈夫さ!」
春原「おまえそんなキャラじゃねーだろっ! 違和感ありすぎだよっ!」
春原「謝れよっ! 正式に謝罪しろっ!」
岡崎「はいはい俺が悪かったよ、やんのかコラ、バーカ!」
春原「こいつ、開き直りながら同時に逆ギレしやがったよっ! すっげー腹立つんですけど!」
キーンコーンカーンコーン
岡崎「お、チャイムだな。まぁ、昼休みも終わったし、全て水に流そうぜ」
春原「勝手に区切りをつけるなっ! おまえが謝るまで許さねーからな!」
岡崎「すまん、悪かったよ、バーカ」
春原「あんた、すっげーひねくれものっスね!」
授業中も、春原は俺を睨み続けてきた。
その視線がいい加減不快だったので、平謝りしたら、しぶしぶだが許してくれた。
52: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:48:50.92 ID:Zk/0RPWk0
―――――――――――――――――――――
放課後。軽音部部室へ向かう。
がちゃり
春原「おー、今日もきてやったぞ」
唯「おいすー」
律「まぁたきたよ、こいつらは」
さわ子「あら、岡崎に春原じゃない」
春原「お、よぅ、さわちゃん!」
岡崎「ちっす」
さわ子「春原、その、さわちゃんっていうのやめなさい」
軽音部の連中に混じってお茶をしているこの女性、名前を山中さわ子という。
この人こそ、軽音部顧問だった。そして、一年のときの俺の担任でもあった。
だからなのかは知らないが、今でも俺や春原になにかと気をかけてくれている。
俺たちが2年に無事進級できたのも、この人と、幸村という老教師の計らいがあったからだった。
春原「田井中とか平沢もそう呼んでるんだから、いいじゃん」
さわ子「はぁ…言っても無駄か…」
さわ子「まぁそれはいいとして、あんたたち、結局入部はしたの?」
放課後。軽音部部室へ向かう。
がちゃり
春原「おー、今日もきてやったぞ」
唯「おいすー」
律「まぁたきたよ、こいつらは」
さわ子「あら、岡崎に春原じゃない」
春原「お、よぅ、さわちゃん!」
岡崎「ちっす」
さわ子「春原、その、さわちゃんっていうのやめなさい」
軽音部の連中に混じってお茶をしているこの女性、名前を山中さわ子という。
この人こそ、軽音部顧問だった。そして、一年のときの俺の担任でもあった。
だからなのかは知らないが、今でも俺や春原になにかと気をかけてくれている。
俺たちが2年に無事進級できたのも、この人と、幸村という老教師の計らいがあったからだった。
春原「田井中とか平沢もそう呼んでるんだから、いいじゃん」
さわ子「はぁ…言っても無駄か…」
さわ子「まぁそれはいいとして、あんたたち、結局入部はしたの?」
53: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:49:33.34 ID:Zk/0RPWk0
律「あー、してないしてない。おやつ目的できてるだけだよ、こいつらは」
岡崎「おい、田井中。俺をこいつと一緒にするな」
春原「なんでだよ、おまえも僕と同じだろ」
岡崎「俺は入部こそしてないが、ちゃんと活動はしてる」
春原「嘘つけよっ。何もしてないだろっ」
岡崎「馬鹿野郎! 俺がその場にいるだけでどれだけの癒し効果があると思ってんだ!?」
岡崎「そんなこともわかんねーのか、あ!? 殺すぞ!? 癒されすぎて死ね! このカス野郎!」
春原「ってどこが癒しだよっ! そんな暴言はく癒しキャラみたことねーよっ!」
さわ子「まったく、この二人は…」
律「うるせーのなんのって」
唯「でも、みてて面白いよね」
紬「そうね」
さわ子「あんなんでいいの? あんたたちは」
澪「私はいいと思います」
岡崎「おい、田井中。俺をこいつと一緒にするな」
春原「なんでだよ、おまえも僕と同じだろ」
岡崎「俺は入部こそしてないが、ちゃんと活動はしてる」
春原「嘘つけよっ。何もしてないだろっ」
岡崎「馬鹿野郎! 俺がその場にいるだけでどれだけの癒し効果があると思ってんだ!?」
岡崎「そんなこともわかんねーのか、あ!? 殺すぞ!? 癒されすぎて死ね! このカス野郎!」
春原「ってどこが癒しだよっ! そんな暴言はく癒しキャラみたことねーよっ!」
さわ子「まったく、この二人は…」
律「うるせーのなんのって」
唯「でも、みてて面白いよね」
紬「そうね」
さわ子「あんなんでいいの? あんたたちは」
澪「私はいいと思います」
54: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:50:16.12 ID:Zk/0RPWk0
梓「私もです」
さわ子「あれ、かばうんだ? もしかして…あの二人のどっちかに気があったりするの?」
澪「ち、ちがいますよ!」
梓「それだけでなんて、早計すぎます!」
さわ子「…まぁいいけど。それにしてもやられ放題はよくないわね」
さわ子「なにかペナルティのようなものを与えましょう」
律「なに? 去勢でもさせるの?」
さわ子「そこまでしないわよ。でもある意味それに近いかもね」
唯「去勢に近いってことは…わかったぁ! 金的だぁ!」
さわ子「いや、ダメージの差異でなくて。コスプレさせるのよ」
澪「それって…先生が持ってきたメイド服とかですか?」
さわ子「そうよ。それに、金髪と黒髪のエクステもあるし」
律「妙に準備がいいな…」
紬「春原くんは女の子顔だから、案外似合うかも」
さわ子「あれ、かばうんだ? もしかして…あの二人のどっちかに気があったりするの?」
澪「ち、ちがいますよ!」
梓「それだけでなんて、早計すぎます!」
さわ子「…まぁいいけど。それにしてもやられ放題はよくないわね」
さわ子「なにかペナルティのようなものを与えましょう」
律「なに? 去勢でもさせるの?」
さわ子「そこまでしないわよ。でもある意味それに近いかもね」
唯「去勢に近いってことは…わかったぁ! 金的だぁ!」
さわ子「いや、ダメージの差異でなくて。コスプレさせるのよ」
澪「それって…先生が持ってきたメイド服とかですか?」
さわ子「そうよ。それに、金髪と黒髪のエクステもあるし」
律「妙に準備がいいな…」
紬「春原くんは女の子顔だから、案外似合うかも」
55: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:50:58.28 ID:Zk/0RPWk0
さわ子「ちょっと、あんたたち」
俺と春原が言い合いを続けていると、突然中に割って入ってきた。
岡崎「なんすか」
さわ子「これを着なさい」
その手に掲げているのは、メイド服。
岡崎「いや、意味がわからないっす」
さわ子「好き放題してられると思ったら大間違いよ」
さわ子「私が来たときは用意した衣装に着替えてもらうからね」
じりじりとこちらににじり寄ってくる。
岡崎「おい、春原。そろそろ帰ろうか」
春原「そうだね」
俺たちは同時に背を向けた。
さわ子「待てコラ」
肩をがっしりとつかまれる。
どうやら逃げ損ねたようだ。
―――――――――――――――――――――
俺と春原が言い合いを続けていると、突然中に割って入ってきた。
岡崎「なんすか」
さわ子「これを着なさい」
その手に掲げているのは、メイド服。
岡崎「いや、意味がわからないっす」
さわ子「好き放題してられると思ったら大間違いよ」
さわ子「私が来たときは用意した衣装に着替えてもらうからね」
じりじりとこちらににじり寄ってくる。
岡崎「おい、春原。そろそろ帰ろうか」
春原「そうだね」
俺たちは同時に背を向けた。
さわ子「待てコラ」
肩をがっしりとつかまれる。
どうやら逃げ損ねたようだ。
―――――――――――――――――――――
56: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:51:41.83 ID:Zk/0RPWk0
律「か…」
律「かわいい…」
唯「かわいい…」
紬「かわいい…」
澪「かわいい…」
梓「かわいい…」
春原「ははは…なにやってるんだろうね、僕たち…」
岡崎「似合ってるぞ……陽子ちゃん」
春原「おまえこそ……朋美ちゃん」
岡崎「はぁ…」
春原「はぁ…」
唯「ふたりともすっごく可愛いよ!」
律「なんかムカツクなぁ…」
澪「春原くんは可愛い系で、岡崎くんは綺麗系って感じ…」
梓「おどろきました…」
さわ子「私の目に狂いはなかったようね」
紬「………っ」
律「ん?どうしたんだ?ムギ」
律「かわいい…」
唯「かわいい…」
紬「かわいい…」
澪「かわいい…」
梓「かわいい…」
春原「ははは…なにやってるんだろうね、僕たち…」
岡崎「似合ってるぞ……陽子ちゃん」
春原「おまえこそ……朋美ちゃん」
岡崎「はぁ…」
春原「はぁ…」
唯「ふたりともすっごく可愛いよ!」
律「なんかムカツクなぁ…」
澪「春原くんは可愛い系で、岡崎くんは綺麗系って感じ…」
梓「おどろきました…」
さわ子「私の目に狂いはなかったようね」
紬「………っ」
律「ん?どうしたんだ?ムギ」
57: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:52:24.07 ID:Zk/0RPWk0
見れば、琴吹がわなわなと震えていた。
紬「二人とも! その汚らわしいものを切り落として完全体になりましょう!」
くわっ、と顔をあげたと思うと、どこからかハサミを取り出し、チョキチョキさせている。
春原「き、切り落とすって…ムギちゃんなに言ってん…」
紬「ファウっ!」
ひゅばぁ
春原「ひぃっ!?」
琴吹は春原のアレめがけて飛びかかり、ハサミを振り下ろした。
それを間一髪かわす春原。
紬「ファウ!ファウ!fau!FAU!」
シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!
春原「ひぃっ!ひぃっ!ひぃっ!ひぃっ!」
琴吹の追撃が春原に降りかかる。
かわすたびにひぃひぃとうるさい。
おそらく琴吹は本懐を遂げるまで攻撃し続けるだろう。
春原「って、誰か止めろよ!」
―――――――――――――――――――――
紬「二人とも! その汚らわしいものを切り落として完全体になりましょう!」
くわっ、と顔をあげたと思うと、どこからかハサミを取り出し、チョキチョキさせている。
春原「き、切り落とすって…ムギちゃんなに言ってん…」
紬「ファウっ!」
ひゅばぁ
春原「ひぃっ!?」
琴吹は春原のアレめがけて飛びかかり、ハサミを振り下ろした。
それを間一髪かわす春原。
紬「ファウ!ファウ!fau!FAU!」
シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!
春原「ひぃっ!ひぃっ!ひぃっ!ひぃっ!」
琴吹の追撃が春原に降りかかる。
かわすたびにひぃひぃとうるさい。
おそらく琴吹は本懐を遂げるまで攻撃し続けるだろう。
春原「って、誰か止めろよ!」
―――――――――――――――――――――
60: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 20:53:06.37 ID:Zk/0RPWk0
活動を終え、下校する。
俺たちは、列を成して坂を下っていた。
春原「………」
紬「ごめんね、春原くん。つい興奮しちゃって」
あの後、春原が自力でメイド服を脱ぎ捨て、エクステを外したことにより、琴吹が正気を取り戻した。
だが、襲われたのがトラウマになっているらしく、春原は今も沈んでいた。
春原「いや…いいよ…でも、もうしないでね…」
紬「ごめんなさい…気をつけるね…」
春原「うん…頼むよ…」
律「元気出せよな、陽子ちゃん!」
唯「陽子ちゃ~ん」
春原「てめぇら、その名前で呼ぶんじゃねぇっ!」
唯「あ、だめだよぉ。女の子がそんな言葉遣いしちゃ」
律「そうだぞ。もっと可愛くなきゃな」
春原「もうそのネタで引っ張るなよっ! こっちは飽きてんだよっ!」
唯「でも本当に可愛かったんだよぉ」
俺たちは、列を成して坂を下っていた。
春原「………」
紬「ごめんね、春原くん。つい興奮しちゃって」
あの後、春原が自力でメイド服を脱ぎ捨て、エクステを外したことにより、琴吹が正気を取り戻した。
だが、襲われたのがトラウマになっているらしく、春原は今も沈んでいた。
春原「いや…いいよ…でも、もうしないでね…」
紬「ごめんなさい…気をつけるね…」
春原「うん…頼むよ…」
律「元気出せよな、陽子ちゃん!」
唯「陽子ちゃ~ん」
春原「てめぇら、その名前で呼ぶんじゃねぇっ!」
唯「あ、だめだよぉ。女の子がそんな言葉遣いしちゃ」
律「そうだぞ。もっと可愛くなきゃな」
春原「もうそのネタで引っ張るなよっ! こっちは飽きてんだよっ!」
唯「でも本当に可愛かったんだよぉ」
62: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:01:59.45 ID:Zk/0RPWk0
律「そうだな。あれで可愛い言動とかしたら、女の子にキャーキャー言われるのにな」
春原「え、ほ、ほんとに?」
律「そうだと思うよ。可愛い系ってチヤホヤされるしね」
唯「うんうん。だから一回やってみてくれないかな~?」
春原「なんていえばいいんだよ」
唯「う~んと…」
岡崎「あれでいいんじゃないか? 萌え萌え~キュン☆で」
律「お、いいね。じゃそれでいってみようか! 3、2、1どうぞ!」
春原「萌え萌え~キュン☆」
岡崎「グロ!」
唯「キモ!」
律「ウザ!」
春原「なんでだよっ!? さっきまでの評価はどうしたんだよっ!?」
岡崎「おえおえ~ビチャッ★だったな」
春原「おまえが発案しといて、食ったもん戻すなっ!」
―――――――――――――――――――――
春原「え、ほ、ほんとに?」
律「そうだと思うよ。可愛い系ってチヤホヤされるしね」
唯「うんうん。だから一回やってみてくれないかな~?」
春原「なんていえばいいんだよ」
唯「う~んと…」
岡崎「あれでいいんじゃないか? 萌え萌え~キュン☆で」
律「お、いいね。じゃそれでいってみようか! 3、2、1どうぞ!」
春原「萌え萌え~キュン☆」
岡崎「グロ!」
唯「キモ!」
律「ウザ!」
春原「なんでだよっ!? さっきまでの評価はどうしたんだよっ!?」
岡崎「おえおえ~ビチャッ★だったな」
春原「おまえが発案しといて、食ったもん戻すなっ!」
―――――――――――――――――――――
63: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:02:41.47 ID:Zk/0RPWk0
みんなと別れ、秋山と二人になった。
夕暮れ時、こどもがはしゃいで遊んでいるのをチラホラと見かける。
澪「岡崎くん、女装似合ってたね」
岡崎「それは褒めてるのか? けなしてるのか?」
澪「褒めてるんだよ。男の子なのに綺麗な顔してるって」
岡崎「そりゃ、どうも」
澪「だからさ、けっこう女の子の中に岡崎くんの隠れファン多いんだよ。知ってた?」
岡崎「いや…隠れてるんだったら、知りようがないだろ」
澪「あはは、それもそうだね」
澪「…えっとね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
岡崎「なに」
澪「これは隠れファンの子に聞いてって言われたから、聞くだけだからね…?」
岡崎「ああ。で?」
澪「岡崎くんって、今、か、彼女とかいる…?」
岡崎「いや。いないけど」
少なくともあの学校じゃ俺のような不良生徒では、彼女なんて望むべくもないだろう。
夕暮れ時、こどもがはしゃいで遊んでいるのをチラホラと見かける。
澪「岡崎くん、女装似合ってたね」
岡崎「それは褒めてるのか? けなしてるのか?」
澪「褒めてるんだよ。男の子なのに綺麗な顔してるって」
岡崎「そりゃ、どうも」
澪「だからさ、けっこう女の子の中に岡崎くんの隠れファン多いんだよ。知ってた?」
岡崎「いや…隠れてるんだったら、知りようがないだろ」
澪「あはは、それもそうだね」
澪「…えっとね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
岡崎「なに」
澪「これは隠れファンの子に聞いてって言われたから、聞くだけだからね…?」
岡崎「ああ。で?」
澪「岡崎くんって、今、か、彼女とかいる…?」
岡崎「いや。いないけど」
少なくともあの学校じゃ俺のような不良生徒では、彼女なんて望むべくもないだろう。
64: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:03:24.33 ID:Zk/0RPWk0
教師や真面目な連中からどう思われるかわかったもんじゃない。
澪「そ、そうなんだ…」
澪「じゃあ、好きな人は…?」
岡崎「それも、いない」
澪「そっか……うん、わかった。ありがとう」
岡崎(にしても…隠れファンねぇ…)
岡崎「あのさ、その隠れファンって奴らに、俺のグッズ売ったらどれくらいの利益が見込めそうかわかるか?」
澪「って、ええ!? そ、そんなことするの!?」
岡崎「いや、一応参考までに」
澪「そ、そうだなー…一個5百円として…いやでも…」
澪「アレも売ってくれるとしたら…う、うわぁ…そんなものまで…」
澪「だとしたら…保存用、実用、観賞用で最低三つは…」
一人で盛り上がり始めてしまった。
興奮気味で、時おり顔を赤らめたりしている。
岡崎「い、いや…やっぱ、もういいよ。そんなにマジに考えられてもさ…」
澪「え、なんで!? 売ってくれるって言ったじゃん!」
澪「そ、そうなんだ…」
澪「じゃあ、好きな人は…?」
岡崎「それも、いない」
澪「そっか……うん、わかった。ありがとう」
岡崎(にしても…隠れファンねぇ…)
岡崎「あのさ、その隠れファンって奴らに、俺のグッズ売ったらどれくらいの利益が見込めそうかわかるか?」
澪「って、ええ!? そ、そんなことするの!?」
岡崎「いや、一応参考までに」
澪「そ、そうだなー…一個5百円として…いやでも…」
澪「アレも売ってくれるとしたら…う、うわぁ…そんなものまで…」
澪「だとしたら…保存用、実用、観賞用で最低三つは…」
一人で盛り上がり始めてしまった。
興奮気味で、時おり顔を赤らめたりしている。
岡崎「い、いや…やっぱ、もういいよ。そんなにマジに考えられてもさ…」
澪「え、なんで!? 売ってくれるって言ったじゃん!」
66: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:04:06.41 ID:Zk/0RPWk0
がばっ、とこちらに勢いよく振り向き声を上げた。
岡崎「うぉっ…いや、冗談だって…マジなわけないだろ…」
その迫力に一瞬たじろいでしまう。
澪「そ、そうだよね…冗談だよね…はは」
岡崎「………」
こいつのことが少しよくわからなくなった。
―――――――――――――――――――――
歩くうち、ついに岐路までさしかかった。
ここからは別々の道を行くことになる。
澪「じゃあね」
岡崎「ああ。それじゃ」
秋山は俺に背を向け歩き出した。
そして、俺も自宅へ向かった。
帰って着替えれば、今日もまた春原の部屋だ。
一日の終わりはいつもあそこだ。
それが俺の日常だった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「うぉっ…いや、冗談だって…マジなわけないだろ…」
その迫力に一瞬たじろいでしまう。
澪「そ、そうだよね…冗談だよね…はは」
岡崎「………」
こいつのことが少しよくわからなくなった。
―――――――――――――――――――――
歩くうち、ついに岐路までさしかかった。
ここからは別々の道を行くことになる。
澪「じゃあね」
岡崎「ああ。それじゃ」
秋山は俺に背を向け歩き出した。
そして、俺も自宅へ向かった。
帰って着替えれば、今日もまた春原の部屋だ。
一日の終わりはいつもあそこだ。
それが俺の日常だった。
―――――――――――――――――――――
67: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:04:48.70 ID:Zk/0RPWk0
学校までやってくると、すでに廊下が騒がしかった。
授業が終わって休憩時間に入っているのだろう。
俺は上履きに履き替え、自分の教室へ向かった。
―――――――――――――――――――――
梓「岡崎先輩…またですか」
下駄箱を抜けると、中野がいた。
岡崎「見ての通りだ」
梓「はぁ…そんなんじゃ留年しちゃいますよ」
岡崎「そうなったら、俺たち同級生だな。そん時はよろしくな、あずにゃん」
梓「あ、あずにゃんて呼ばないでくださいです…」
岡崎「じゃな」
すぐにその場を去ろうとする。
梓「あ、待ってください!」
腕をつかまれてしまった。
小さい体で一生懸命にしがみついてくる。
岡崎「おい…」
梓「明日からちゃんと登校するって約束してください!」
授業が終わって休憩時間に入っているのだろう。
俺は上履きに履き替え、自分の教室へ向かった。
―――――――――――――――――――――
梓「岡崎先輩…またですか」
下駄箱を抜けると、中野がいた。
岡崎「見ての通りだ」
梓「はぁ…そんなんじゃ留年しちゃいますよ」
岡崎「そうなったら、俺たち同級生だな。そん時はよろしくな、あずにゃん」
梓「あ、あずにゃんて呼ばないでくださいです…」
岡崎「じゃな」
すぐにその場を去ろうとする。
梓「あ、待ってください!」
腕をつかまれてしまった。
小さい体で一生懸命にしがみついてくる。
岡崎「おい…」
梓「明日からちゃんと登校するって約束してください!」
69: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:06:25.50 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「なんで、そんなことしなきゃならねぇんだ。関係ないだろ」
梓「ありますよ! 知り合いの先輩が同級生なんて、やっぱり気まずいです!」
俺が頷くまで離す気はないようだ。
そのくらいの剣幕だった。
岡崎(つーか、留年なんかするくらいなら、学校辞めるっての)
そう思ったが、それを言ってしまえば、次にこいつはなにを言い出すかわからない。
だから俺は、この場だけの返事をすることにした。
岡崎「わかったよ。明日からちゃんとくる」
梓「本当ですか? なら、私チェックしますから」
岡崎「どうやって」
梓「朝、先輩が来るまでここで待ってます」
岡崎「面倒だろ、やめとけよ」
梓「やります」
頑なに譲ろうとしない。
梓「もし来なかった場合はこの朋美ちゃんの写メをばらまきます」
岡崎「ぐあ…」
梓「ありますよ! 知り合いの先輩が同級生なんて、やっぱり気まずいです!」
俺が頷くまで離す気はないようだ。
そのくらいの剣幕だった。
岡崎(つーか、留年なんかするくらいなら、学校辞めるっての)
そう思ったが、それを言ってしまえば、次にこいつはなにを言い出すかわからない。
だから俺は、この場だけの返事をすることにした。
岡崎「わかったよ。明日からちゃんとくる」
梓「本当ですか? なら、私チェックしますから」
岡崎「どうやって」
梓「朝、先輩が来るまでここで待ってます」
岡崎「面倒だろ、やめとけよ」
梓「やります」
頑なに譲ろうとしない。
梓「もし来なかった場合はこの朋美ちゃんの写メをばらまきます」
岡崎「ぐあ…」
70: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:07:08.15 ID:Zk/0RPWk0
携帯に俺のコスプレ画像を表示させ、それを見せてきた。
岡崎(いつの間に…)
梓「嫌なら、ちゃんとくることですね」
岡崎「消せ」
携帯に手を伸ばす。
梓「おっと」
かわされた。
岡崎「動くな」
梓「だ、だめです! 消しません!」
俺が手を出すと、ひょいひょいとかわされてしまう。
岡崎(くそ…ちょこまかと動きやがって…)
岡崎(しょうがない…ちとセクハラチックだが、ホールドして動きを止めよう)
岡崎「おらっ」
がし
背を向けて逃げようとした中野を後ろから羽交い絞めにする。
岡崎(いつの間に…)
梓「嫌なら、ちゃんとくることですね」
岡崎「消せ」
携帯に手を伸ばす。
梓「おっと」
かわされた。
岡崎「動くな」
梓「だ、だめです! 消しません!」
俺が手を出すと、ひょいひょいとかわされてしまう。
岡崎(くそ…ちょこまかと動きやがって…)
岡崎(しょうがない…ちとセクハラチックだが、ホールドして動きを止めよう)
岡崎「おらっ」
がし
背を向けて逃げようとした中野を後ろから羽交い絞めにする。
71: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:07:50.23 ID:Zk/0RPWk0
梓「うわっ…あの、岡崎先輩…や、やめてください…犯罪ですよ…」
岡崎「馬鹿。勘違いするな。画像消したら離すっての」
梓「いやですー! 消しません!」
岡崎「消せ!」
梓「いやです!」
腕を振ってばたばたと暴れる。
岡崎(この野郎…)
俺は腕一本で中野を抑え、もう片方の腕でくすぐりだした。
梓「あひゃはは! ちょ、岡崎せんぱっ、どこ触って、ひーっひっひ!」
岡崎「消すよな?」
梓「け、消しませ、ひゃひゃひゃ!」
くすぐり続けても、なかなか折れようとしなかった。
岡崎(つーか、こいつ笑い声不気味だな…)
男子生徒「おー梓、なにやってんの?」
一人の男子生徒がやってきて、俺の動きが止まる。
岡崎「馬鹿。勘違いするな。画像消したら離すっての」
梓「いやですー! 消しません!」
岡崎「消せ!」
梓「いやです!」
腕を振ってばたばたと暴れる。
岡崎(この野郎…)
俺は腕一本で中野を抑え、もう片方の腕でくすぐりだした。
梓「あひゃはは! ちょ、岡崎せんぱっ、どこ触って、ひーっひっひ!」
岡崎「消すよな?」
梓「け、消しませ、ひゃひゃひゃ!」
くすぐり続けても、なかなか折れようとしなかった。
岡崎(つーか、こいつ笑い声不気味だな…)
男子生徒「おー梓、なにやってんの?」
一人の男子生徒がやってきて、俺の動きが止まる。
72: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 21:08:32.60 ID:Zk/0RPWk0
中野も笑い止んで、そいつのほうを見ていた。
梓「あ…いや…」
男子生徒「そっちの人は?」
梓「先輩だよ…お世話になってる」
男子生徒「ふーん…」
俺を品定めするように見てくる。
男子生徒「うちの梓がいつもお世話になってます」
と思ったら、愛想よく挨拶してきた。
岡崎「…ああ」
よくわからなかったが、俺もそう返した。
男子生徒「じゃまたあとでな、梓」
そう言うと、すぐに去っていった。
梓「………」
中野は固まっていた。
どうしたのかと見てみれば、浮かない顔をしている。
岡崎「なんだ? 彼氏だったか? だったら、悪いことしちまったな」
梓「あ…いや…」
男子生徒「そっちの人は?」
梓「先輩だよ…お世話になってる」
男子生徒「ふーん…」
俺を品定めするように見てくる。
男子生徒「うちの梓がいつもお世話になってます」
と思ったら、愛想よく挨拶してきた。
岡崎「…ああ」
よくわからなかったが、俺もそう返した。
男子生徒「じゃまたあとでな、梓」
そう言うと、すぐに去っていった。
梓「………」
中野は固まっていた。
どうしたのかと見てみれば、浮かない顔をしている。
岡崎「なんだ? 彼氏だったか? だったら、悪いことしちまったな」
79: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:03:13.48 ID:Zk/0RPWk0
自分の彼女にべたべたと触られれば、誰だっていい気はしない。
これがもとで喧嘩に発展することだってありうる。
梓「違います…あの人は…むしろその逆っていうか」
岡崎「逆?」
梓「はい。なんていうか…悪い人じゃないんですけど…」
梓「付き合ってもないのに、私を…その…彼女みたいに扱ってくるところがあって…」
さっきあいつが言っていたことを思い出してみる。
確かに、『うちの』梓、と言っていた。
梓「よくしてくれるのはうれしいんですけど…そういうところがちょっと苦手なんです」
岡崎(まぁ、好意をよせられていれば、無下にはできないだろうな)
岡崎「じゃあ、俺が言ってやろうか? もう中野に関わるなってさ」
梓「そんな…それは言いすぎです…根はいい人だと思いますから」
岡崎「そっか…」
なら、他に好きな人がいるから、とでも言えばいいと思ったが、すぐにそれはダメだと気づいた。
もし言ったとして、それは暗に『あんた、私の事好きなんでしょ?』と言っているからだ。
そんなおごり高ぶったこと、誰だって言いたくないに決まってる。
岡崎(こいつも、けっこう苦労してるんだな…)
これがもとで喧嘩に発展することだってありうる。
梓「違います…あの人は…むしろその逆っていうか」
岡崎「逆?」
梓「はい。なんていうか…悪い人じゃないんですけど…」
梓「付き合ってもないのに、私を…その…彼女みたいに扱ってくるところがあって…」
さっきあいつが言っていたことを思い出してみる。
確かに、『うちの』梓、と言っていた。
梓「よくしてくれるのはうれしいんですけど…そういうところがちょっと苦手なんです」
岡崎(まぁ、好意をよせられていれば、無下にはできないだろうな)
岡崎「じゃあ、俺が言ってやろうか? もう中野に関わるなってさ」
梓「そんな…それは言いすぎです…根はいい人だと思いますから」
岡崎「そっか…」
なら、他に好きな人がいるから、とでも言えばいいと思ったが、すぐにそれはダメだと気づいた。
もし言ったとして、それは暗に『あんた、私の事好きなんでしょ?』と言っているからだ。
そんなおごり高ぶったこと、誰だって言いたくないに決まってる。
岡崎(こいつも、けっこう苦労してるんだな…)
80: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:04:39.00 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「ま、頑張れよ。俺からは、それくらいしか言えねぇな。そんじゃ」
写メは消しとけよ、と最後に付け加え、歩き出す。
梓「あの…岡崎先輩」
呼ばれ、振り返ってみると、中野は伏し目がちにしてうつむいていた。
梓「岡崎先輩…よければ…彼氏のフリをしてくれませんか?」
岡崎「はぁ? フリっておま…んなマンガみたいな…」
梓「マンガでもいいじゃないですか。彼氏がいるってことになったら普通に接してくれると思うんです」
岡崎「そういうのは春原の奴にでも頼んでくれ。きっと、大喜びで引き受けると思うぞ」
梓「う…だって、春原先輩は過剰に演技しそうじゃないですか」
…そうかもしれない。
あいつが変態行為をせまる場面がリアルに目に浮かぶ。
岡崎「だったらさ、おまえ好きな奴とかいないの? いるんなら、そいつに頼め」
岡崎「つーか、告れ」
梓「それは…そうできたら、一番ですけど。でも、今は、その…そ、そういう人は…いない…です」
梓「だから…岡崎先輩、お願いできませんか?」
ここまで食い下がるということは、本当にどうにかしたいと思っているんだろう。
写メは消しとけよ、と最後に付け加え、歩き出す。
梓「あの…岡崎先輩」
呼ばれ、振り返ってみると、中野は伏し目がちにしてうつむいていた。
梓「岡崎先輩…よければ…彼氏のフリをしてくれませんか?」
岡崎「はぁ? フリっておま…んなマンガみたいな…」
梓「マンガでもいいじゃないですか。彼氏がいるってことになったら普通に接してくれると思うんです」
岡崎「そういうのは春原の奴にでも頼んでくれ。きっと、大喜びで引き受けると思うぞ」
梓「う…だって、春原先輩は過剰に演技しそうじゃないですか」
…そうかもしれない。
あいつが変態行為をせまる場面がリアルに目に浮かぶ。
岡崎「だったらさ、おまえ好きな奴とかいないの? いるんなら、そいつに頼め」
岡崎「つーか、告れ」
梓「それは…そうできたら、一番ですけど。でも、今は、その…そ、そういう人は…いない…です」
梓「だから…岡崎先輩、お願いできませんか?」
ここまで食い下がるということは、本当にどうにかしたいと思っているんだろう。
81: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:06:45.44 ID:Zk/0RPWk0
普段、軽音部には世話になっているわけだし…。
ここは協力してやったほうがいいのかもしれない。
岡崎「…わかったよ。俺でいいなら、やるよ」
梓「ありがとうございます!」
岡崎「で、具体的にはどうすればいいんだ。いちゃいちゃを見せつけに行けばいいのか」
梓「うーん…それはわざとらしいですから…」
梓「そうだ! 明日の朝、私がここで待ってたらきっと話しかけてくると思うんです」
梓「だから、岡崎先輩がきたら、その時に演技を開始してください」
梓「これなら自然だし、岡崎先輩の遅刻チェックもできて一石二鳥です!」
岡崎「ああ、わかったよ」
梓「それじゃ、よろしくおねがいしますね!」
うれしそうにぱたぱたと駆けていった。
岡崎(明日からまともに登校しなきゃならんのか…)
岡崎「はぁ…」
一つ大きくため息をつき、足取り重く、二階へと続く階段を登りはじめた。
―――――――――――――――――――――
ここは協力してやったほうがいいのかもしれない。
岡崎「…わかったよ。俺でいいなら、やるよ」
梓「ありがとうございます!」
岡崎「で、具体的にはどうすればいいんだ。いちゃいちゃを見せつけに行けばいいのか」
梓「うーん…それはわざとらしいですから…」
梓「そうだ! 明日の朝、私がここで待ってたらきっと話しかけてくると思うんです」
梓「だから、岡崎先輩がきたら、その時に演技を開始してください」
梓「これなら自然だし、岡崎先輩の遅刻チェックもできて一石二鳥です!」
岡崎「ああ、わかったよ」
梓「それじゃ、よろしくおねがいしますね!」
うれしそうにぱたぱたと駆けていった。
岡崎(明日からまともに登校しなきゃならんのか…)
岡崎「はぁ…」
一つ大きくため息をつき、足取り重く、二階へと続く階段を登りはじめた。
―――――――――――――――――――――
82: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:09:05.31 ID:Zk/0RPWk0
………。
―――――――――――――――――――――
昼。屋上で弁当を食べる。
憂「ここ、本当にあったかくて気持ちいいですよね」
岡崎「ああ。でも梅雨の時期とか、真夏とか冬とかは最悪だぞ」
岡崎「だから、今と秋だけだ。ここで食えるのは」
憂「そっか…そうですよね」
岡崎「でも、平沢が、ここがいいっていうなら、いつでも付き合うけど」
憂「え、本当ですか?」
岡崎「ああ。台風が到来したときでも、インフルエンザで全校の1/3が休んだときでもだ」
憂「そ、それはもう休校になるレベルじゃないですか」
岡崎「まぁ、そのくらい付き合うってことだよ」
憂「あはは、ありがとうございます」
屈託なく笑う。
どうしてだろう、ここが心地いいのは。
気候のせいだけじゃないのは確かだった。
俺の面白くもない冗談に、逐一笑ってくれるからか。
―――――――――――――――――――――
昼。屋上で弁当を食べる。
憂「ここ、本当にあったかくて気持ちいいですよね」
岡崎「ああ。でも梅雨の時期とか、真夏とか冬とかは最悪だぞ」
岡崎「だから、今と秋だけだ。ここで食えるのは」
憂「そっか…そうですよね」
岡崎「でも、平沢が、ここがいいっていうなら、いつでも付き合うけど」
憂「え、本当ですか?」
岡崎「ああ。台風が到来したときでも、インフルエンザで全校の1/3が休んだときでもだ」
憂「そ、それはもう休校になるレベルじゃないですか」
岡崎「まぁ、そのくらい付き合うってことだよ」
憂「あはは、ありがとうございます」
屈託なく笑う。
どうしてだろう、ここが心地いいのは。
気候のせいだけじゃないのは確かだった。
俺の面白くもない冗談に、逐一笑ってくれるからか。
83: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:11:35.28 ID:Zk/0RPWk0
そういうのも含めた彼女の優しさに触れているからなのか。
不思議だった。
憂「あ、岡崎さん、ほっぺにご飯粒がついてます」
そう言って俺からご飯粒を取ると、それを自分の口へと運んだ。
岡崎「あ…」
憂「? どうかしました?」
岡崎「いや…」
こいつは、今ので何も思うところがないのだろうか。
岡崎「なんでもない」
憂「? そうですか」
だとしたら、やっぱりこの子も天然なのだろう。
血は争えないものだ。
―――――――――――――――――――――
春原「よぅ、どこいってたんだよ。昼一緒に食おうと思ってたのによ」
岡崎「どこだっていいだろ」
春原「なんだよ、教えてくれたっていいじゃん」
不思議だった。
憂「あ、岡崎さん、ほっぺにご飯粒がついてます」
そう言って俺からご飯粒を取ると、それを自分の口へと運んだ。
岡崎「あ…」
憂「? どうかしました?」
岡崎「いや…」
こいつは、今ので何も思うところがないのだろうか。
岡崎「なんでもない」
憂「? そうですか」
だとしたら、やっぱりこの子も天然なのだろう。
血は争えないものだ。
―――――――――――――――――――――
春原「よぅ、どこいってたんだよ。昼一緒に食おうと思ってたのによ」
岡崎「どこだっていいだろ」
春原「なんだよ、教えてくれたっていいじゃん」
84: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:13:21.20 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「うるせぇな、絡んでくるな」
春原「あんだよ、冷てーな…まさか、コレ関係じゃないだろうな」
そう言って小指を立ててくる。
岡崎「違うっつの。ただ単におまえを避けてただけだって」
春原「なんでだよっ!? 僕、なんかしましたか!?」
岡崎「おまえを避けるのに理由がいるかい?」
春原「普通にいるよっ! んなしたり顔でいうなっ!」
岡崎「なんだ、せっかく名言っぽくいってやったのに。大人しく納得しとけよ。つか、もうゴールしろ」
春原「ゴールってなんだよ、意味わかんねぇよ…つーか、そんな辛辣な名言があってたまるかっ! むしろ暴言に近いわっ!」
岡崎「めんどくせー奴だな。そんなに俺と一緒がいいのか」
春原「そうだよっ。だからさ、またお互いほっぺたについたご飯粒とか取ってあげたりしながら食おうぜっ」
タイムリーすぎてとても気持ち悪かった。
岡崎「そんなこと、一度もしたことないからな。気持ちの悪いことを言うな」
春原「なんだよ、なんだよ…もう、はい、あーんして、ってやってあげないぞっ!」
生徒1「おい、岡崎と春原ってさ…」
春原「あんだよ、冷てーな…まさか、コレ関係じゃないだろうな」
そう言って小指を立ててくる。
岡崎「違うっつの。ただ単におまえを避けてただけだって」
春原「なんでだよっ!? 僕、なんかしましたか!?」
岡崎「おまえを避けるのに理由がいるかい?」
春原「普通にいるよっ! んなしたり顔でいうなっ!」
岡崎「なんだ、せっかく名言っぽくいってやったのに。大人しく納得しとけよ。つか、もうゴールしろ」
春原「ゴールってなんだよ、意味わかんねぇよ…つーか、そんな辛辣な名言があってたまるかっ! むしろ暴言に近いわっ!」
岡崎「めんどくせー奴だな。そんなに俺と一緒がいいのか」
春原「そうだよっ。だからさ、またお互いほっぺたについたご飯粒とか取ってあげたりしながら食おうぜっ」
タイムリーすぎてとても気持ち悪かった。
岡崎「そんなこと、一度もしたことないからな。気持ちの悪いことを言うな」
春原「なんだよ、なんだよ…もう、はい、あーんして、ってやってあげないぞっ!」
生徒1「おい、岡崎と春原ってさ…」
85: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:14:17.84 ID:Zk/0RPWk0
生徒2「ああ。仲がいいとは思ってたけどな…」
生徒3「本物がこんなに身近にいたなんて…」
腐女生徒「岡崎×春原…はぁはぁ…」
岡崎(おいおい…冗談じゃねぇぞ…)
あらぬ誤解をされ始めているようだった。
岡崎「この、おしゃべりクソ野郎が!」
げしっ!
春原「てぇな! あにすんだよっ! つーか、誰が品○さんだよ!」
岡崎「おまえのせいで、俺たちがデキてると思われはじめちまったじゃねぇか!」
春原「別にいいじゃん。言いたい奴には言わせとけばさ、へへっ」
げしっ!
春原「ぐぇっ」
岡崎「うれしそうな顔をするな! キモいんだよ!」
岡崎「これからは誤解を解くために、顔を合わせるたび顔面なぐるからなっ」
春原「…やめてください…」
生徒3「本物がこんなに身近にいたなんて…」
腐女生徒「岡崎×春原…はぁはぁ…」
岡崎(おいおい…冗談じゃねぇぞ…)
あらぬ誤解をされ始めているようだった。
岡崎「この、おしゃべりクソ野郎が!」
げしっ!
春原「てぇな! あにすんだよっ! つーか、誰が品○さんだよ!」
岡崎「おまえのせいで、俺たちがデキてると思われはじめちまったじゃねぇか!」
春原「別にいいじゃん。言いたい奴には言わせとけばさ、へへっ」
げしっ!
春原「ぐぇっ」
岡崎「うれしそうな顔をするな! キモいんだよ!」
岡崎「これからは誤解を解くために、顔を合わせるたび顔面なぐるからなっ」
春原「…やめてください…」
86: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:15:03.97 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「なら、やめてやってもいいけど、昼は別々に食うぞ」
春原「うぅ…わかったよ…」
春原「ちくしょー! 便所の個室で、一人で食ってやるぅっ!」
食ってそのまま出すんだろうか。
それとも、出しながら食べるんだろうか。
どっちにしても汚いことには変わりなかった。
岡崎(しっかし、こいつ…ほんと、俺以外に友達いねぇんだな…)
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後。軽音部部室。
唯「木曜日ってなんか面倒だよね」
律「だな。金曜日は次の日が土曜だから少しは気が楽だけど、木曜日はね…」
唯「週末っぽい名前のくせに、次の日、平日かよ!ってなるよね」
春原「それ、よくわかるよ。特に、僕のようにハードな生活を送っているツワモノは消耗が激しいからね」
春原「だから、週休5日くらいは欲しいっていつも思ってるよ」
春原「うぅ…わかったよ…」
春原「ちくしょー! 便所の個室で、一人で食ってやるぅっ!」
食ってそのまま出すんだろうか。
それとも、出しながら食べるんだろうか。
どっちにしても汚いことには変わりなかった。
岡崎(しっかし、こいつ…ほんと、俺以外に友達いねぇんだな…)
―――――――――――――――――――――
………。
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放課後。軽音部部室。
唯「木曜日ってなんか面倒だよね」
律「だな。金曜日は次の日が土曜だから少しは気が楽だけど、木曜日はね…」
唯「週末っぽい名前のくせに、次の日、平日かよ!ってなるよね」
春原「それ、よくわかるよ。特に、僕のようにハードな生活を送っているツワモノは消耗が激しいからね」
春原「だから、週休5日くらいは欲しいっていつも思ってるよ」
87: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 22:15:49.22 ID:Zk/0RPWk0
律「よくいうよ。いつも遅刻してきてお気楽な生活してるくせに」
唯「授業中も眠ってて、先生に注意されてるしね~」
紬「ツワモノっていうか、ナマケモノっぽいよね」
春原「まぁ、僕が本気を出すのは学校が終わってからだからね」
春原「学校にいる間は、怠けてるように見られても仕方ないけどさっ」
紬「あ、ごめんなさい。私は顔のこと言ったの」
春原「顔ですかっ!? って、それどんなだよっ!?」
岡崎「でも、消耗が激しいっていうのは言い得て妙だよな」
岡崎「なんかおまえ、すり減っていってるもん。このまま順調にいくと、いつか消滅するんじゃないか」
春原「しねぇよっ! つーか、順調ってなんだよっ!? 消えて欲しいとでも思ってんのかよ!?」
岡崎「まぁ、そうなってくれるにこしたことはないけど、別にどうでもいいよ」
春原「もっと興味持てよっ! 親友が消えるかどうかの問題なんだぞっ!」
岡崎「え、親友? 俺、おまえの顔と預金残高しか知らないんだけど」
春原「なんで名前も知らないのにそんなこと知ってるんだよっ!? 明らかに僕をカモるつもりだろ、それ!?」
岡崎「つーか、さっきから息継ぎ無しにツッコミしてるけど、肺のほうは大丈夫か」
唯「授業中も眠ってて、先生に注意されてるしね~」
紬「ツワモノっていうか、ナマケモノっぽいよね」
春原「まぁ、僕が本気を出すのは学校が終わってからだからね」
春原「学校にいる間は、怠けてるように見られても仕方ないけどさっ」
紬「あ、ごめんなさい。私は顔のこと言ったの」
春原「顔ですかっ!? って、それどんなだよっ!?」
岡崎「でも、消耗が激しいっていうのは言い得て妙だよな」
岡崎「なんかおまえ、すり減っていってるもん。このまま順調にいくと、いつか消滅するんじゃないか」
春原「しねぇよっ! つーか、順調ってなんだよっ!? 消えて欲しいとでも思ってんのかよ!?」
岡崎「まぁ、そうなってくれるにこしたことはないけど、別にどうでもいいよ」
春原「もっと興味持てよっ! 親友が消えるかどうかの問題なんだぞっ!」
岡崎「え、親友? 俺、おまえの顔と預金残高しか知らないんだけど」
春原「なんで名前も知らないのにそんなこと知ってるんだよっ!? 明らかに僕をカモるつもりだろ、それ!?」
岡崎「つーか、さっきから息継ぎ無しにツッコミしてるけど、肺のほうは大丈夫か」
96: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:04:01.41 ID:Zk/0RPWk0
春原「おまえがボケ…る…かっ…ら…だ…」
どうやら限界を迎えたようで、必死に呼吸し始めた。
春原「ぜぇはぁ…ひぃはぁ…」
澪「大丈夫? 春原くん…」
春原「澪ちゃん…僕…もうだめかもしれない…」
春原「だからさ…人工呼吸…してくれないかな…」
澪「ええ!? そ、それは…」
律「どさくさに紛れてなんてこと言ってんだ、あんたは!」
ぼぎゃ!
春原「ぎゃああああああ!」
田井中の投げ放ったドラムスティックが春原のスネを捉えていた。
春原「うぅ…痛いよ…あずにゃん…膝枕して…」
片足を引きずりながら中野に寄っていく。
梓「ひっ…ち、近づかないでくださいっ!」
春原「うへへ…あずにゃーん」
どうやら限界を迎えたようで、必死に呼吸し始めた。
春原「ぜぇはぁ…ひぃはぁ…」
澪「大丈夫? 春原くん…」
春原「澪ちゃん…僕…もうだめかもしれない…」
春原「だからさ…人工呼吸…してくれないかな…」
澪「ええ!? そ、それは…」
律「どさくさに紛れてなんてこと言ってんだ、あんたは!」
ぼぎゃ!
春原「ぎゃああああああ!」
田井中の投げ放ったドラムスティックが春原のスネを捉えていた。
春原「うぅ…痛いよ…あずにゃん…膝枕して…」
片足を引きずりながら中野に寄っていく。
梓「ひっ…ち、近づかないでくださいっ!」
春原「うへへ…あずにゃーん」
97: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:06:37.69 ID:Zk/0RPWk0
律「いい加減にせいっ!」
ぼぎゃっ!
春原「ぎゃああああああああああ!」
もう片方の足のスネにもヒットし、床に倒れこんでピクピクと痙攣し始めた。
律「アホな上に変態とか、どうしようもないな、こいつは」
岡崎「ストレス解消にはなるじゃん。こうやってマトにして遊べばさ」
律「ま、それもそっか。わはは」
春原「…そんなことで意気投合しないでくれますかねぇ…」
―――――――――――――――――――――
澪「岡崎くんって、血液型は何型?」
帰り道、秋山と二人になると、そう聞いてきた。
岡崎「A型だけど」
澪「え、そうなんだ。私もA型なんだよ」
岡崎「おまえは、なんかそんな感じするよな」
岡崎「真面目で几帳面ってさ、ぴったりじゃん」
ぼぎゃっ!
春原「ぎゃああああああああああ!」
もう片方の足のスネにもヒットし、床に倒れこんでピクピクと痙攣し始めた。
律「アホな上に変態とか、どうしようもないな、こいつは」
岡崎「ストレス解消にはなるじゃん。こうやってマトにして遊べばさ」
律「ま、それもそっか。わはは」
春原「…そんなことで意気投合しないでくれますかねぇ…」
―――――――――――――――――――――
澪「岡崎くんって、血液型は何型?」
帰り道、秋山と二人になると、そう聞いてきた。
岡崎「A型だけど」
澪「え、そうなんだ。私もA型なんだよ」
岡崎「おまえは、なんかそんな感じするよな」
岡崎「真面目で几帳面ってさ、ぴったりじゃん」
98: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:08:15.52 ID:Zk/0RPWk0
実際、血液型で性格が決まるとは思っていない。
でも、その傾向を身近な人物に当てはめてみると、これが意外と面白い。
話の種としてはわりと好きなほうだった。
澪「そうかな?」
岡崎「ああ。それに比べると、俺なんか全然当たってないけどな」
岡崎「不真面目で自堕落ってさ」
澪「でも、筋の通らないことしなかったり、自分の考えを持ってるっていうのは合ってると思うな」
岡崎「そんな傾向初めて聞いたな」
澪「他にもあるよ。それに、男女でも違ったりするんだって」
岡崎「詳しいな」
澪「うん。私、けっこう好きなんだ。血液型別性格診断」
岡崎「女の子って、そういう奴多いよな」
澪「そうだね。私もそのうちの一人ってことだね」
岡崎「まぁ、俺も嫌いじゃないよ」
澪「ほんとに?じゃあさ、律たちの血液型当ててみて」
岡崎「田井中たちの?そうだな…」
でも、その傾向を身近な人物に当てはめてみると、これが意外と面白い。
話の種としてはわりと好きなほうだった。
澪「そうかな?」
岡崎「ああ。それに比べると、俺なんか全然当たってないけどな」
岡崎「不真面目で自堕落ってさ」
澪「でも、筋の通らないことしなかったり、自分の考えを持ってるっていうのは合ってると思うな」
岡崎「そんな傾向初めて聞いたな」
澪「他にもあるよ。それに、男女でも違ったりするんだって」
岡崎「詳しいな」
澪「うん。私、けっこう好きなんだ。血液型別性格診断」
岡崎「女の子って、そういう奴多いよな」
澪「そうだね。私もそのうちの一人ってことだね」
岡崎「まぁ、俺も嫌いじゃないよ」
澪「ほんとに?じゃあさ、律たちの血液型当ててみて」
岡崎「田井中たちの?そうだな…」
100: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:10:05.61 ID:Zk/0RPWk0
田井中は、あのわが道をいくというか、自由奔放さはB型のそれっぽいよな。
というか、見た感じB以外ありえない。それくらい当てはまってる。
平沢もぽーっとしているところはあるけど、田井中に近い感じがする。
よって、あいつもBだ。
琴吹はおっとりしていて、よく周囲に気を配ってるな。
これは、どうなんだろう。おおらかなのはO型と聞くが…。
まぁ、Oということにしておこう。
そして、中野。あいつは秋山に近い印象だ。
よく一緒になって練習を催促している。真面目なんだろう。
ということで、A型だな。
岡崎「田井中B、平沢B、琴吹O、中野A…で、どうだ」
澪「あー、唯と梓がちがうなー。正解は、唯がO、梓がABでした」
岡崎「平沢はOだったか…そんで、中野はABねぇ…」
澪「でも、けっこう的中してるよ」
岡崎「だな。そんなに捨てたもんじゃないかもな、血液型診断も」
澪「そうだね。ちなみに、春原くんは何型か知ってたりする?」
岡崎「確か、前にABだとか言ってやがった気がするけど…」
澪「AB? へぇ、意外だなぁ」
岡崎「まぁ、天才タイプだって思われたいがためについた嘘かもしれないけどな」
岡崎「ほら、AB同士って仲いいっていうじゃん。でも、あいつ、中野からは嫌がられてるみたいだし」
というか、見た感じB以外ありえない。それくらい当てはまってる。
平沢もぽーっとしているところはあるけど、田井中に近い感じがする。
よって、あいつもBだ。
琴吹はおっとりしていて、よく周囲に気を配ってるな。
これは、どうなんだろう。おおらかなのはO型と聞くが…。
まぁ、Oということにしておこう。
そして、中野。あいつは秋山に近い印象だ。
よく一緒になって練習を催促している。真面目なんだろう。
ということで、A型だな。
岡崎「田井中B、平沢B、琴吹O、中野A…で、どうだ」
澪「あー、唯と梓がちがうなー。正解は、唯がO、梓がABでした」
岡崎「平沢はOだったか…そんで、中野はABねぇ…」
澪「でも、けっこう的中してるよ」
岡崎「だな。そんなに捨てたもんじゃないかもな、血液型診断も」
澪「そうだね。ちなみに、春原くんは何型か知ってたりする?」
岡崎「確か、前にABだとか言ってやがった気がするけど…」
澪「AB? へぇ、意外だなぁ」
岡崎「まぁ、天才タイプだって思われたいがためについた嘘かもしれないけどな」
岡崎「ほら、AB同士って仲いいっていうじゃん。でも、あいつ、中野からは嫌がられてるみたいだし」
101: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:12:05.63 ID:Zk/0RPWk0
それは、あいつの変態さがそうさせているのかもしれなかったが。
澪「でも、春原くんが梓を気に入ったのは、AB同士で惹かれてるからかもしれないよ?」
澪「それに、梓だって本気で嫌がってるわけじゃないだろうし」
岡崎「いや、本気だって。あいつを忌避するのは、血液型とかを越えた、生物としての本能だからな」
澪「ひ、ひどいなぁ…」
―――――――――――――――――――――
話しながら歩いていると、いつの間にか帰路の分岐地点までやってきていた。
岡崎「じゃな」
澪「うん、それじゃあね」
進路を分かち、それぞれの道を行く。
秋山にはきっと、その先にまともな家庭が待っているのだろう。
俺にはただ、そこに壊れた親子関係があるだけだった。
それを思うと気分が重い。
早く春原の部屋に向かおう。
あんなところでも、行けば多少は気が紛れる。
―――――――――――――――――――――
澪「でも、春原くんが梓を気に入ったのは、AB同士で惹かれてるからかもしれないよ?」
澪「それに、梓だって本気で嫌がってるわけじゃないだろうし」
岡崎「いや、本気だって。あいつを忌避するのは、血液型とかを越えた、生物としての本能だからな」
澪「ひ、ひどいなぁ…」
―――――――――――――――――――――
話しながら歩いていると、いつの間にか帰路の分岐地点までやってきていた。
岡崎「じゃな」
澪「うん、それじゃあね」
進路を分かち、それぞれの道を行く。
秋山にはきっと、その先にまともな家庭が待っているのだろう。
俺にはただ、そこに壊れた親子関係があるだけだった。
それを思うと気分が重い。
早く春原の部屋に向かおう。
あんなところでも、行けば多少は気が紛れる。
―――――――――――――――――――――
103: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:14:06.85 ID:Zk/0RPWk0
岡崎「………ねむ…」
中野にいわれたとおり、まともな時間に登校してきた。
本来ならまだ寝ているはずの時間。
怠惰な生活に慣れきった俺の体には堪える。
岡崎(眠すぎる…)
重い体を引きずり、学校を目指す。
―――――――――――――――――――――
男子生徒「……からさぁ…それで…」
梓「……うん…」
昇降口までやってくると、中野と、昨日の男子生徒が居た。
なにやら会話をしているようだ。
俺は昨日の打ち合わせどおり、演技を開始することにした。
岡崎「よお、梓」
梓「あ、岡崎先輩! おはようございます」
男子生徒「…どうもです」
岡崎「今日帰りどっか寄ってかね? 楽器みたいなら、付き合ってもいいし」
男子生徒を無視し、中野にのみとりあう。
中野にいわれたとおり、まともな時間に登校してきた。
本来ならまだ寝ているはずの時間。
怠惰な生活に慣れきった俺の体には堪える。
岡崎(眠すぎる…)
重い体を引きずり、学校を目指す。
―――――――――――――――――――――
男子生徒「……からさぁ…それで…」
梓「……うん…」
昇降口までやってくると、中野と、昨日の男子生徒が居た。
なにやら会話をしているようだ。
俺は昨日の打ち合わせどおり、演技を開始することにした。
岡崎「よお、梓」
梓「あ、岡崎先輩! おはようございます」
男子生徒「…どうもです」
岡崎「今日帰りどっか寄ってかね? 楽器みたいなら、付き合ってもいいし」
男子生徒を無視し、中野にのみとりあう。
104: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:16:06.93 ID:Zk/0RPWk0
男子生徒「………」
どうやら俺の態度を不快に思っているようだ。
表情がマジだった。
梓「あ、いいんですか? なら、楽器店でお願いします」
岡崎「じゃあ、きまりだな」
中野の頭をぽむぽむと軽くなでる。
梓「はぅ…」
男子生徒「………」
岡崎「あ、そうだ、おまえ」
少し睨みを効かせながら言う。
男子生徒「え? ああ、はい」
岡崎「おまえさ、昨日うちの梓とか言ってたけど、ああいうのやめろ」
男子生徒「え、いや、な…」
岡崎「いや、じゃなくてさ。こいつ、俺の彼女だからさ。イラつくんだよ、そういうの」
わざとらしく中野の腰に手を回してみせる。
梓(わわ……せ、先輩…)
どうやら俺の態度を不快に思っているようだ。
表情がマジだった。
梓「あ、いいんですか? なら、楽器店でお願いします」
岡崎「じゃあ、きまりだな」
中野の頭をぽむぽむと軽くなでる。
梓「はぅ…」
男子生徒「………」
岡崎「あ、そうだ、おまえ」
少し睨みを効かせながら言う。
男子生徒「え? ああ、はい」
岡崎「おまえさ、昨日うちの梓とか言ってたけど、ああいうのやめろ」
男子生徒「え、いや、な…」
岡崎「いや、じゃなくてさ。こいつ、俺の彼女だからさ。イラつくんだよ、そういうの」
わざとらしく中野の腰に手を回してみせる。
梓(わわ……せ、先輩…)
106: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:18:05.78 ID:Zk/0RPWk0
岡崎(ちょっと我慢してろ)
梓(は、はい…)
男子生徒「はい? え…マジ? 梓…」
梓「う、うん。付き合ってるよ」
男子生徒「…あ、マジだ? おおー…」
口元こそ笑っているが、目が笑っていなかった。
岡崎「わかったか? もういいだろ。おら、どこへなりともいけ。しっしっ」
男子生徒「…はは…」
恨めしそうに俺を見ながらも、しぶしぶ去っていった。
とりあえず、作戦は成功したようだ。
もう演技を続ける意味もない。
俺は中野に回していた手を放した。
岡崎「…こんなんでよかったか?」
梓「あ、はい。ありがとうございました。でも、最後のはちょっとひどかったですけど」
岡崎「なんだよ、せっかく早起きまでしてきてやったのに。今だってかなり眠いんだからな」
梓「早起きって、別にそんな早くはないですよ。普通の時間です」
梓「岡崎先輩の時間感覚は常人のそれとかけ離れすぎなんです。これから元に戻していってください」
梓(は、はい…)
男子生徒「はい? え…マジ? 梓…」
梓「う、うん。付き合ってるよ」
男子生徒「…あ、マジだ? おおー…」
口元こそ笑っているが、目が笑っていなかった。
岡崎「わかったか? もういいだろ。おら、どこへなりともいけ。しっしっ」
男子生徒「…はは…」
恨めしそうに俺を見ながらも、しぶしぶ去っていった。
とりあえず、作戦は成功したようだ。
もう演技を続ける意味もない。
俺は中野に回していた手を放した。
岡崎「…こんなんでよかったか?」
梓「あ、はい。ありがとうございました。でも、最後のはちょっとひどかったですけど」
岡崎「なんだよ、せっかく早起きまでしてきてやったのに。今だってかなり眠いんだからな」
梓「早起きって、別にそんな早くはないですよ。普通の時間です」
梓「岡崎先輩の時間感覚は常人のそれとかけ離れすぎなんです。これから元に戻していってください」
108: 名無し ◆ 2010/02/26(金) 23:20:04.71 ID:Zk/0RPWk0
協力してやったのに、説教をくらうとは思っていなかった。
そのことにつっこみを入れたい衝動に駆られたが、やめておこう。
今は一刻も早く教室に行って眠りたい。
岡崎「…はぁ。わかったよ。できるだけやってみるな」
梓「それでいいです。頑張ってくださいね」
岡崎「ああ」
覇気なくこたえ、のそのそ歩きだす。
岡崎(しっかし、昨日の今日で不自然に思わなかったのかね、あの男は…)
それだけ動揺が大きかったということなのか。
岡崎(なんか、悪い気がしてきたぞ……)
………。
岡崎(……まぁ、いいか、別に)
―――――――――――――――――――――
律「うわぁっ! お、岡崎が朝からきてる!」
唯「うぇあっ! ほ、ほんとだっ!」
紬「珍しい…というより、初めてじゃない? この時間にきたの」
そのことにつっこみを入れたい衝動に駆られたが、やめておこう。
今は一刻も早く教室に行って眠りたい。
岡崎「…はぁ。わかったよ。できるだけやってみるな」
梓「それでいいです。頑張ってくださいね」
岡崎「ああ」
覇気なくこたえ、のそのそ歩きだす。
岡崎(しっかし、昨日の今日で不自然に思わなかったのかね、あの男は…)
それだけ動揺が大きかったということなのか。
岡崎(なんか、悪い気がしてきたぞ……)
………。
岡崎(……まぁ、いいか、別に)
―――――――――――――――――――――
律「うわぁっ! お、岡崎が朝からきてる!」
唯「うぇあっ! ほ、ほんとだっ!」
紬「珍しい…というより、初めてじゃない? この時間にきたの」
112: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:00:07.34 ID:zeFzKtTs0
岡崎「………」
ノーリアクションで通り過ぎる。
早く眠りたい…あとちょっとだ…。
律「いや、なんか言えよ」
岡崎「…あー…うん…いいと思うよ…」
適当に返し、席につくなりすぐさま机に突っ伏した。
律「なんだあいつ…」
唯「寝ちゃってるね…」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
結局、俺は昼休みまでぶっ通しで眠っていた。
そのせいで、眠気はおおかた消えたが、体がだるい。
岡崎「……んぁ」
体をほぐすため、伸びをする。
憂「………」
ノーリアクションで通り過ぎる。
早く眠りたい…あとちょっとだ…。
律「いや、なんか言えよ」
岡崎「…あー…うん…いいと思うよ…」
適当に返し、席につくなりすぐさま机に突っ伏した。
律「なんだあいつ…」
唯「寝ちゃってるね…」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
結局、俺は昼休みまでぶっ通しで眠っていた。
そのせいで、眠気はおおかた消えたが、体がだるい。
岡崎「……んぁ」
体をほぐすため、伸びをする。
憂「………」
114: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:01:39.83 ID:zeFzKtTs0
岡崎(……うん?)
心なしか、平沢妹の元気がないような…。
岡崎「どうした? おまえも眠いのか?」
憂「…いえ…」
岡崎「………?」
憂「あの…岡崎さん…梓ちゃんと付き合ってるんですね…」
岡崎「あん?」
いきなり予想外のことを言われ、素っ頓狂な声をあげてしまう。
憂「クラスの子たちと話してたら、そのときに聞いたんです…梓ちゃんに彼氏ができたって…」
ということは、今朝、あの現場を見られていたのか…。
憂「それで…梓ちゃんに聞いてみたら…岡崎さんだって…」
憂「…もう、私、お弁当とか作ってこないほうがいいですよね…」
岡崎「おい、まて。違うぞ。あれはな…」
俺はざっと事情を説明した。
憂「ええ…そうだったんですか。なんか漫画みたいですね」
心なしか、平沢妹の元気がないような…。
岡崎「どうした? おまえも眠いのか?」
憂「…いえ…」
岡崎「………?」
憂「あの…岡崎さん…梓ちゃんと付き合ってるんですね…」
岡崎「あん?」
いきなり予想外のことを言われ、素っ頓狂な声をあげてしまう。
憂「クラスの子たちと話してたら、そのときに聞いたんです…梓ちゃんに彼氏ができたって…」
ということは、今朝、あの現場を見られていたのか…。
憂「それで…梓ちゃんに聞いてみたら…岡崎さんだって…」
憂「…もう、私、お弁当とか作ってこないほうがいいですよね…」
岡崎「おい、まて。違うぞ。あれはな…」
俺はざっと事情を説明した。
憂「ええ…そうだったんですか。なんか漫画みたいですね」
115: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:02:23.37 ID:zeFzKtTs0
岡崎「俺もそう思った」
憂「でも…そういうことなら、また一緒にここで食べられますね」
岡崎「ああ…だな」
憂「えへへ」
うれしそうに表情をほころばせる。
それはつまり、俺と共に昼を過ごしたいということで…。
勘違いしてもいいんだろうか。俺に好意を持ってくれている、と。
少なくとも、俺はこの子が…気に入っている。
はっきりとそう思う。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後、いつものように軽音部へ。
用意された菓子と茶をむさぼる。
春原「僕、思うんだけどさ、この部室には足りないものがある気がするんだよね」
律「はぁ? 部員でもないくせに、なにその不満」
春原「いや、客観的に見て足りないものがあるってことだよ」
律「なにが足りないっていうんだよ」
憂「でも…そういうことなら、また一緒にここで食べられますね」
岡崎「ああ…だな」
憂「えへへ」
うれしそうに表情をほころばせる。
それはつまり、俺と共に昼を過ごしたいということで…。
勘違いしてもいいんだろうか。俺に好意を持ってくれている、と。
少なくとも、俺はこの子が…気に入っている。
はっきりとそう思う。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
放課後、いつものように軽音部へ。
用意された菓子と茶をむさぼる。
春原「僕、思うんだけどさ、この部室には足りないものがある気がするんだよね」
律「はぁ? 部員でもないくせに、なにその不満」
春原「いや、客観的に見て足りないものがあるってことだよ」
律「なにが足りないっていうんだよ」
116: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:03:13.57 ID:zeFzKtTs0
春原「わからない? 茶も菓子もそろってる…ならあとはもうあれしかないだろ?」
岡崎「ああ…確かにアレの対策してないな。部屋の隅とかにGホイホイ置いとかないとな」
春原「いや…それもあるだろうけど、今はいいんだよ。ほかにもっとあるだろ?」
岡崎「よくねーよ。ほっといたらおまえの部屋みたいにGの巣窟になっちゃうじゃん」
春原「巣窟ってほどじゃないだろっ! たまにでるけどさぁ」
岡崎「いや、巣窟だって。だって俺、いつもポテチとか床にこぼしまくってエサ与えてるもん」
岡崎「きっと、かなり繁殖してると思うぞ」
春原「人の部屋で、んなもん飼うなよっ!」
律「春原、あんたもうここにはくるな。Gが沸いたらことだからな」
春原「僕がGを引き連れてくるとでもいいたいんですかねぇ!?」
律「そのとおりだよ。ちゃんと伝わってたか」
春原「ざけろよ、てめぇっ! 僕自身は清潔だっての!」
唯「でも、今の話聞いちゃったらもう春原くん=ゴキブリってイメージが定着しちゃうよね…」
紬「そうね。視界に入られると食が進まないっていうかね…」
春原「…おお…岡崎っ! おまえが変な話するから僕の高貴なイメージ像が揺らぎ始めたじゃないかよぉ!」
岡崎「ああ…確かにアレの対策してないな。部屋の隅とかにGホイホイ置いとかないとな」
春原「いや…それもあるだろうけど、今はいいんだよ。ほかにもっとあるだろ?」
岡崎「よくねーよ。ほっといたらおまえの部屋みたいにGの巣窟になっちゃうじゃん」
春原「巣窟ってほどじゃないだろっ! たまにでるけどさぁ」
岡崎「いや、巣窟だって。だって俺、いつもポテチとか床にこぼしまくってエサ与えてるもん」
岡崎「きっと、かなり繁殖してると思うぞ」
春原「人の部屋で、んなもん飼うなよっ!」
律「春原、あんたもうここにはくるな。Gが沸いたらことだからな」
春原「僕がGを引き連れてくるとでもいいたいんですかねぇ!?」
律「そのとおりだよ。ちゃんと伝わってたか」
春原「ざけろよ、てめぇっ! 僕自身は清潔だっての!」
唯「でも、今の話聞いちゃったらもう春原くん=ゴキブリってイメージが定着しちゃうよね…」
紬「そうね。視界に入られると食が進まないっていうかね…」
春原「…おお…岡崎っ! おまえが変な話するから僕の高貴なイメージ像が揺らぎ始めたじゃないかよぉ!」
117: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:04:36.33 ID:zeFzKtTs0
岡崎「揺らぐも何も最初からそんなイメージないからな」
岡崎「おまえがGっぽいっていう土壌はあったけど、俺が決定打を与えて固まったってだけじゃん」
春原「僕、おまえのことすっげー嫌いになりそうだよっ!!」
律「で、結局足りないものってなんなの?」
春原「ああ…テレビだよ、テレビ。なんかここ、茶の間って感じだからさ、あとはテレビがあれば完璧だなって思ったんだよ」
律「ほぅ…テレビねぇ」
唯「確かにほしいよ、テレビ!」
紬「そう? なら今度持って…」
澪「ちょ、ちょっと待って! ここ一応学校だから! さすがにそんな物持ってきちゃダメだって!」
梓「ていうか、その前にここは軽音部です…いい加減練習しましょうよ…」
―――――――――――――――――――――
澪「はぁ…結局今日も練習できなかったな…」
岡崎「再来週だっけ? 創立者際って」
澪「うん、そうだよ。だからもう本格的に始めてないといけないんだけどね…」
岡崎「なら…やっぱ、俺とあいつがいると邪魔だよな。しばらく顔出すのやめとくか」
岡崎「おまえがGっぽいっていう土壌はあったけど、俺が決定打を与えて固まったってだけじゃん」
春原「僕、おまえのことすっげー嫌いになりそうだよっ!!」
律「で、結局足りないものってなんなの?」
春原「ああ…テレビだよ、テレビ。なんかここ、茶の間って感じだからさ、あとはテレビがあれば完璧だなって思ったんだよ」
律「ほぅ…テレビねぇ」
唯「確かにほしいよ、テレビ!」
紬「そう? なら今度持って…」
澪「ちょ、ちょっと待って! ここ一応学校だから! さすがにそんな物持ってきちゃダメだって!」
梓「ていうか、その前にここは軽音部です…いい加減練習しましょうよ…」
―――――――――――――――――――――
澪「はぁ…結局今日も練習できなかったな…」
岡崎「再来週だっけ? 創立者際って」
澪「うん、そうだよ。だからもう本格的に始めてないといけないんだけどね…」
岡崎「なら…やっぱ、俺とあいつがいると邪魔だよな。しばらく顔出すのやめとくか」
118: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:05:22.23 ID:Zk/0RPWk0
澪「い、いや、きてもらって全然かまわないよ! 私たちが練習すればいいだけの話だから!」
岡崎「そっか?」
澪「うん。それに、見てる人がいたほうが練習にも気合が入るし!」
そうはいうものの、俺と春原の存在が雑談を長引かせることに滑車をかけているはずだった。
期日までの時間的余裕もないわけだし、やっぱり、遠慮しておくべきなんだろう。
俺は明日、その旨を春原に伝えることに決めた。
―――――――――――――――――――――
岡崎「そっか?」
澪「うん。それに、見てる人がいたほうが練習にも気合が入るし!」
そうはいうものの、俺と春原の存在が雑談を長引かせることに滑車をかけているはずだった。
期日までの時間的余裕もないわけだし、やっぱり、遠慮しておくべきなんだろう。
俺は明日、その旨を春原に伝えることに決めた。
―――――――――――――――――――――
119: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:06:08.16 ID:zeFzKtTs0
声「岡崎先輩…」
階段に足をかけた時、背後から聞き覚えのある声。
ゆっくりと振り返る。
岡崎「よぉ、おはよう中野」
梓「おはようございます。で、それ以外に何かいうことはありませんか?」
岡崎「いや、ねぇよ。じゃな」
梓「じゃな、じゃないです! 今何時だと思ってるんですか!」
岡崎「二時間目が終わったあたりだろ。じゃな」
梓「もう! また遅刻じゃないですか! 私、朝ずっと待ってたんですよ! 一人で!」
上着をつかまれてしまい、足が止まる。
岡崎「そっか。偉いな。よしよし」
頭を軽くなでる俺。とくに意味はない。
梓「あぅ…」
…固まってしまった。こういうのに弱いんだろうか、こいつは。
なんでもいい。俺はこれを好機とばかりに、中野から離れた。
梓「あ! いいんですか、例の写メばらまきますよぉー!」
階段に足をかけた時、背後から聞き覚えのある声。
ゆっくりと振り返る。
岡崎「よぉ、おはよう中野」
梓「おはようございます。で、それ以外に何かいうことはありませんか?」
岡崎「いや、ねぇよ。じゃな」
梓「じゃな、じゃないです! 今何時だと思ってるんですか!」
岡崎「二時間目が終わったあたりだろ。じゃな」
梓「もう! また遅刻じゃないですか! 私、朝ずっと待ってたんですよ! 一人で!」
上着をつかまれてしまい、足が止まる。
岡崎「そっか。偉いな。よしよし」
頭を軽くなでる俺。とくに意味はない。
梓「あぅ…」
…固まってしまった。こういうのに弱いんだろうか、こいつは。
なんでもいい。俺はこれを好機とばかりに、中野から離れた。
梓「あ! いいんですか、例の写メばらまきますよぉー!」
120: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:07:32.69 ID:zeFzKtTs0
我に返ったらしく、階下から脅してくる。
岡崎「好きにしてくれ…」
そう呟き、階段を上っていく。
正直、早起きの辛さに比べれば一時だけ恥をさらしたほうがマシだった。
というか、昨日は協力してやったわけだし、そんなことはしないだろうという公算があった。
どちらにせよ、もとの怠惰な生活に戻ったのだ。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
三時間目が終わった。
岡崎(あと一限か…)
この後の授業さえしのげば、平沢妹の弁当にありつける。
それを思うと、退屈な授業もそれなりにやりすごせる気がした。
春原「よぅ、おはよう」
そんなことをぼんやり考えていると、春原がやっと登校してきた。
岡崎「おまえ、ほんと今更感ありすぎだよな。あと一限しかねぇってのに」
岡崎「好きにしてくれ…」
そう呟き、階段を上っていく。
正直、早起きの辛さに比べれば一時だけ恥をさらしたほうがマシだった。
というか、昨日は協力してやったわけだし、そんなことはしないだろうという公算があった。
どちらにせよ、もとの怠惰な生活に戻ったのだ。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
キーンコーンカーンコーン
三時間目が終わった。
岡崎(あと一限か…)
この後の授業さえしのげば、平沢妹の弁当にありつける。
それを思うと、退屈な授業もそれなりにやりすごせる気がした。
春原「よぅ、おはよう」
そんなことをぼんやり考えていると、春原がやっと登校してきた。
岡崎「おまえ、ほんと今更感ありすぎだよな。あと一限しかねぇってのに」
121: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:08:55.79 ID:zeFzKtTs0
春原「軽音部に入り浸るためにきてるって、前にもいったじゃん」
春原「それに、今日は土曜だし、次で終わるだろ? だからさ、昼飯も兼ねようって思ったんだよ」
セコすぎる考えのもと動く奴だった。
岡崎「あー、そのことだけどな、しばらく軽音部に顔出すな」
春原「ああ? なんで?」
岡崎「あいつら創立者際のライブ練習しなきゃなんないだろ」
岡崎「だから、俺たちがいると邪魔になるんだって」
春原「邪魔になんかならねーよ。むしろ、もう僕らなしじゃ始まらない感じじゃない?」
岡崎「自意識過剰な野郎だな。恥ずかしくねぇのかよ」
岡崎「おまえは黙っていつもどおりコンビニ5~6件ハシゴして土曜を満喫してればいいんだよ」
春原「そんな楽しみ方したことねぇよっ!」
岡崎「とにかく、ライブ終わるまで遠慮しとけ。いつも世話になってんだ、こんな時くらい気を遣え」
春原「ちっ…わかったよ。菓子食ったらすぐ帰ればいいんだろっ」
どこまでもセコイ男だった。
本当はそれもやめたほうがいいのだが、いくら言ったところで聞かないだろう。
岡崎(まぁ、俺がいなきゃ、こいつがいうように、すぐ帰るだろうし、いいか)
春原「それに、今日は土曜だし、次で終わるだろ? だからさ、昼飯も兼ねようって思ったんだよ」
セコすぎる考えのもと動く奴だった。
岡崎「あー、そのことだけどな、しばらく軽音部に顔出すな」
春原「ああ? なんで?」
岡崎「あいつら創立者際のライブ練習しなきゃなんないだろ」
岡崎「だから、俺たちがいると邪魔になるんだって」
春原「邪魔になんかならねーよ。むしろ、もう僕らなしじゃ始まらない感じじゃない?」
岡崎「自意識過剰な野郎だな。恥ずかしくねぇのかよ」
岡崎「おまえは黙っていつもどおりコンビニ5~6件ハシゴして土曜を満喫してればいいんだよ」
春原「そんな楽しみ方したことねぇよっ!」
岡崎「とにかく、ライブ終わるまで遠慮しとけ。いつも世話になってんだ、こんな時くらい気を遣え」
春原「ちっ…わかったよ。菓子食ったらすぐ帰ればいいんだろっ」
どこまでもセコイ男だった。
本当はそれもやめたほうがいいのだが、いくら言ったところで聞かないだろう。
岡崎(まぁ、俺がいなきゃ、こいつがいうように、すぐ帰るだろうし、いいか)
122: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 00:10:25.20 ID:zeFzKtTs0
そう自己完結しておいた。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼になると、部活をやっていない生徒の大半は学校を去る。
校内に残るのは、部活生か、学食を利用する奴ぐらいのものだろう。
俺はそのどちらでもなかったが、今現在、屋上を目指して廊下を歩いていた。
―――――――――――――――――――――
最上階で平沢妹とおちあい、屋外へ出る。
そして、壁に背をつけ、並んで食べ始めた。
―――――――――――――――――――――
岡崎(…聞いてみようかな…)
このあと何があるわけでもなく、今は軽音部にもいけない。
そうなると、春原の部屋に直行するしかなかった。
…いつもなら。
だが、今は…あんなところにいくよりも、この子と遊んでみたいと思う。
岡崎(よし…)
俺は意を決して聞いてみることにした。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
昼になると、部活をやっていない生徒の大半は学校を去る。
校内に残るのは、部活生か、学食を利用する奴ぐらいのものだろう。
俺はそのどちらでもなかったが、今現在、屋上を目指して廊下を歩いていた。
―――――――――――――――――――――
最上階で平沢妹とおちあい、屋外へ出る。
そして、壁に背をつけ、並んで食べ始めた。
―――――――――――――――――――――
岡崎(…聞いてみようかな…)
このあと何があるわけでもなく、今は軽音部にもいけない。
そうなると、春原の部屋に直行するしかなかった。
…いつもなら。
だが、今は…あんなところにいくよりも、この子と遊んでみたいと思う。
岡崎(よし…)
俺は意を決して聞いてみることにした。
133: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:01:38.31 ID:zeFzKtTs0
岡崎「なぁ…平沢。今日、これから暇か?」
憂「え? そうですね…とくに予定はないですけど…」
岡崎「だったらさ、遊びにいこう。俺と」
憂「え、ええ!? で、でも岡崎さん、軽音部にはいかなくていいんですか? いつもいってるんですよね?」
岡崎「しばらくはいかないことにしたんだ」
岡崎「ほら、創立者際も近いだろ? 練習の邪魔になると悪いからな」
岡崎「それに、俺はもともと春原…あー、春原ってわかるか?」
憂「あ、はい。お姉ちゃんからよく聞きます。岡崎さんのお友達ですよね」
岡崎「友達っていうか、他人っていうか…そんな感じなんだけどな」
憂「そ、そうなんですか…両極端ですね…」
岡崎「まぁ、あいつについていってただけみたいなところがあるから、いいんだよ」
憂「はぁ…」
岡崎「で、どうなんだ。いやか?」
憂「いえ、そんなことないです! 私でいいなら、一緒に遊びましょう」
岡崎「よし。なら、食い終わったらすぐ出るぞ」
憂「え? そうですね…とくに予定はないですけど…」
岡崎「だったらさ、遊びにいこう。俺と」
憂「え、ええ!? で、でも岡崎さん、軽音部にはいかなくていいんですか? いつもいってるんですよね?」
岡崎「しばらくはいかないことにしたんだ」
岡崎「ほら、創立者際も近いだろ? 練習の邪魔になると悪いからな」
岡崎「それに、俺はもともと春原…あー、春原ってわかるか?」
憂「あ、はい。お姉ちゃんからよく聞きます。岡崎さんのお友達ですよね」
岡崎「友達っていうか、他人っていうか…そんな感じなんだけどな」
憂「そ、そうなんですか…両極端ですね…」
岡崎「まぁ、あいつについていってただけみたいなところがあるから、いいんだよ」
憂「はぁ…」
岡崎「で、どうなんだ。いやか?」
憂「いえ、そんなことないです! 私でいいなら、一緒に遊びましょう」
岡崎「よし。なら、食い終わったらすぐ出るぞ」
134: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:03:10.36 ID:zeFzKtTs0
憂「はい!」
―――――――――――――――――――――
岡崎(とは言ったものの、どうするかな…)
勢い込んで出てきたはいいが、そもそもそんなに金を持っていない。
それに、女の子と遊んだ経験がなかったから、勝手もわからなかった。
憂「あの、これからどこにいくんですか?」
岡崎「あ、ああ、そうだな…えーと…」
…完全にノープランだった。
岡崎「やっぱ、やめとこう」
憂「ええ!? い、いきなり…なんでですか!?」
岡崎「いや、今あんま持ち合わせないし、ロクなことできなさそうだからさ…」
憂「そんなぁ…ひどいです…期待させておいて、なんて…」
岡崎(期待してたのか…)
岡崎「なら、地味にグダグダうろつくくらいしかできないだろうけど、それでもいいか」
憂「私は、それでかまわないです。いろいろとみてまわるだけでも、楽しいと思います」
岡崎「そっか。じゃあ、冷やかしてまわろう。適当な飯屋で、水だけ飲んで帰ろう」
―――――――――――――――――――――
岡崎(とは言ったものの、どうするかな…)
勢い込んで出てきたはいいが、そもそもそんなに金を持っていない。
それに、女の子と遊んだ経験がなかったから、勝手もわからなかった。
憂「あの、これからどこにいくんですか?」
岡崎「あ、ああ、そうだな…えーと…」
…完全にノープランだった。
岡崎「やっぱ、やめとこう」
憂「ええ!? い、いきなり…なんでですか!?」
岡崎「いや、今あんま持ち合わせないし、ロクなことできなさそうだからさ…」
憂「そんなぁ…ひどいです…期待させておいて、なんて…」
岡崎(期待してたのか…)
岡崎「なら、地味にグダグダうろつくくらいしかできないだろうけど、それでもいいか」
憂「私は、それでかまわないです。いろいろとみてまわるだけでも、楽しいと思います」
岡崎「そっか。じゃあ、冷やかしてまわろう。適当な飯屋で、水だけ飲んで帰ろう」
135: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:04:27.02 ID:zeFzKtTs0
憂「あはは、なんですか、それ。そんなことしませんよぉ」
そんなに考えすぎることもなかったようだ。
ふたりなら、昼に過ごしているような、そんな時間の延長だったとしても、それで十分なのかもしれない。
―――――――――――――――――――――
街なかまで出てきた俺たちは、雑貨屋に入り、パーティー用品のコーナーにいた。
憂「岡崎さん、ネコミミですよ、ネコミミ」
手にとった商品を装着し、俺に向き直る。
岡崎「ああ、みればわかるよ」
憂「…反応が冷たいです…似合いませんか? 私…」
岡崎「いや、似合ってるって。次はこっちのつけてみてくれ」
俺は平沢妹からネコミミを外し、さっきみつけたかぶりものと取り替えた。
憂「なんです? これ」
岡崎「そこに鏡があるから、確認してみろよ」
憂「えーっと…」
備え付けられた鏡を覗き込む。
憂「って、これエナジーボンボンじゃないですか!」
そんなに考えすぎることもなかったようだ。
ふたりなら、昼に過ごしているような、そんな時間の延長だったとしても、それで十分なのかもしれない。
―――――――――――――――――――――
街なかまで出てきた俺たちは、雑貨屋に入り、パーティー用品のコーナーにいた。
憂「岡崎さん、ネコミミですよ、ネコミミ」
手にとった商品を装着し、俺に向き直る。
岡崎「ああ、みればわかるよ」
憂「…反応が冷たいです…似合いませんか? 私…」
岡崎「いや、似合ってるって。次はこっちのつけてみてくれ」
俺は平沢妹からネコミミを外し、さっきみつけたかぶりものと取り替えた。
憂「なんです? これ」
岡崎「そこに鏡があるから、確認してみろよ」
憂「えーっと…」
備え付けられた鏡を覗き込む。
憂「って、これエナジーボンボンじゃないですか!」
136: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:06:08.92 ID:zeFzKtTs0
岡崎「かなり似合ってるぞ」
憂「まったくうれしくないです!」
岡崎「なんでだよ。よろこべ」
憂「もぉ…じゃあ、岡崎さんはこれをつけてください!」
すぽっ、となにかを被せられた。
岡崎(なんだ…?)
鏡を見てみる。
岡崎(げ…)
俺の頭上にハエがたかっていた。
装着部分から針金のようなものが伸びていて、その先に作り物のハエがくっついているのだ。
しかし…
岡崎「…これ、俺、ただのウンコじゃん」
憂「すごく似合ってますよ」
岡崎「うれしくないんだけど」
憂「ですよね。あははっ」
岡崎「おまえ、けっこうエグい仕返しするのな」
憂「まったくうれしくないです!」
岡崎「なんでだよ。よろこべ」
憂「もぉ…じゃあ、岡崎さんはこれをつけてください!」
すぽっ、となにかを被せられた。
岡崎(なんだ…?)
鏡を見てみる。
岡崎(げ…)
俺の頭上にハエがたかっていた。
装着部分から針金のようなものが伸びていて、その先に作り物のハエがくっついているのだ。
しかし…
岡崎「…これ、俺、ただのウンコじゃん」
憂「すごく似合ってますよ」
岡崎「うれしくないんだけど」
憂「ですよね。あははっ」
岡崎「おまえ、けっこうエグい仕返しするのな」
137: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:08:06.49 ID:zeFzKtTs0
憂「私をそこまで追い込んだ岡崎さんが悪いんですよ」
岡崎「あ、そうなの」
憂「そうなんです」
言って、また商品を眺めだした。
俺もそれにならい、再び商品棚を物色し始めた。
―――――――――――――――――――――
店内も一通り見回り、飽きてきた頃、店を後にした。
―――――――――――――――――――――
しばらく歩いた後、コンビニに立ち寄り、それぞれ欲しいものを買い終えた。
憂「岡崎さんは、何を買ったんですか?」
岡崎「チュッパチャップスだよ。ひとつやる」
俺が買ったのはチュッパチャップス二つ。
コーラ味と、コーヒー味だ。そして、平沢妹に渡したのは後者。
憂「あ、どうもありがと…うござ…います…」
岡崎(予想通りの反応だな)
人からもらったお菓子で、それがコーヒー味だった時、絶望するのはあまりにも有名な話だ。
俺はその、ちょっと残念そうな表情がおかしくて、笑ってしまった。
岡崎「あ、そうなの」
憂「そうなんです」
言って、また商品を眺めだした。
俺もそれにならい、再び商品棚を物色し始めた。
―――――――――――――――――――――
店内も一通り見回り、飽きてきた頃、店を後にした。
―――――――――――――――――――――
しばらく歩いた後、コンビニに立ち寄り、それぞれ欲しいものを買い終えた。
憂「岡崎さんは、何を買ったんですか?」
岡崎「チュッパチャップスだよ。ひとつやる」
俺が買ったのはチュッパチャップス二つ。
コーラ味と、コーヒー味だ。そして、平沢妹に渡したのは後者。
憂「あ、どうもありがと…うござ…います…」
岡崎(予想通りの反応だな)
人からもらったお菓子で、それがコーヒー味だった時、絶望するのはあまりにも有名な話だ。
俺はその、ちょっと残念そうな表情がおかしくて、笑ってしまった。
140: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:11:45.49 ID:zeFzKtTs0
憂「あ~、なんで笑うんですか」
岡崎「いや、コーヒー味って、顔してたからさ」
憂「確信犯だったんですか…。お金ないって言ってたのに、こんな悪戯しないでくださいよぅ」
岡崎「悪い。次から気をつけるよ」
憂「もぉ…」
岡崎「次は、商店街のほうに行ってみるか」
憂「いいですね。行ってみましょう」
―――――――――――――――――――――
商店街は、土曜日とあって、人の行き交いが多かった。
そんな人混みの中を縫うようにして、ペットショップに入った。
―――――――――――――――――――――
憂「うわ~、かわいい~」
猫「にゃ~」
憂「にゃ~」
平沢妹はケージの中の猫に夢中だ。
岡崎「まぁ、かわいいけどさ、もし売れ残ったらどうなるのかな」
岡崎「いや、コーヒー味って、顔してたからさ」
憂「確信犯だったんですか…。お金ないって言ってたのに、こんな悪戯しないでくださいよぅ」
岡崎「悪い。次から気をつけるよ」
憂「もぉ…」
岡崎「次は、商店街のほうに行ってみるか」
憂「いいですね。行ってみましょう」
―――――――――――――――――――――
商店街は、土曜日とあって、人の行き交いが多かった。
そんな人混みの中を縫うようにして、ペットショップに入った。
―――――――――――――――――――――
憂「うわ~、かわいい~」
猫「にゃ~」
憂「にゃ~」
平沢妹はケージの中の猫に夢中だ。
岡崎「まぁ、かわいいけどさ、もし売れ残ったらどうなるのかな」
141: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:12:56.37 ID:zeFzKtTs0
憂「え?」
岡崎「きっと、捨てられたり、実験用動物として引き渡されるんだろうな」
憂「あ、あわわ…」
岡崎「生まれた時からこんなところに閉じこめられて、売れなきゃポイって、残酷だよな」
店員「………」
憂「…ハッ!」
憂「お、岡崎さん、出ますよ!」
手を引かれ、退店した。
―――――――――――――――――――――
憂「はぁ…すっごく後味の悪いお店の出かたですよ…」
岡崎「俺、社会派だっただろ?」
憂「そんな誇らしげな顔しないでください! 店員さんに睨まれただけじゃないですか!」
岡崎「思い当たる節があるから、焦ってたんじゃねーの」
憂「誰だって自分のホームでネガキャンされれば怒ります!」
岡崎「そっか。まぁ、いいじゃん。次いこうぜ」
岡崎「きっと、捨てられたり、実験用動物として引き渡されるんだろうな」
憂「あ、あわわ…」
岡崎「生まれた時からこんなところに閉じこめられて、売れなきゃポイって、残酷だよな」
店員「………」
憂「…ハッ!」
憂「お、岡崎さん、出ますよ!」
手を引かれ、退店した。
―――――――――――――――――――――
憂「はぁ…すっごく後味の悪いお店の出かたですよ…」
岡崎「俺、社会派だっただろ?」
憂「そんな誇らしげな顔しないでください! 店員さんに睨まれただけじゃないですか!」
岡崎「思い当たる節があるから、焦ってたんじゃねーの」
憂「誰だって自分のホームでネガキャンされれば怒ります!」
岡崎「そっか。まぁ、いいじゃん。次いこうぜ」
142: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:14:12.29 ID:zeFzKtTs0
憂「岡崎さんって、やっぱり、けっこうアレな人なのかもって思っちゃいますよ…」
―――――――――――――――――――――
やってきたのは、服屋。
俺は別段、服に関心があるわけではなかったが、平沢妹に連れられてきたのだ。
やはり女の子といったところか、もう結構な時間、見てまわっている。
俺はその隣で、終始無言だった。
正直、女物の売り場で、俺のような男は居辛かった。
店員「何かお探しですか?」
憂「あ、ええと…」
店員と話し始めてしまった。
俺は余計、手持ち無沙汰になってしまう。
と、どうやら試着してみることになったらしい。
とりあえずは、俺もそれに付き添うことにした。
―――――――――――――――――――――
シャー
カーテンが開け放たれ、平沢妹が姿を現した。
憂「…あは、どうですかね」
店員「よく似合ってますよー」
岡崎「………」
―――――――――――――――――――――
やってきたのは、服屋。
俺は別段、服に関心があるわけではなかったが、平沢妹に連れられてきたのだ。
やはり女の子といったところか、もう結構な時間、見てまわっている。
俺はその隣で、終始無言だった。
正直、女物の売り場で、俺のような男は居辛かった。
店員「何かお探しですか?」
憂「あ、ええと…」
店員と話し始めてしまった。
俺は余計、手持ち無沙汰になってしまう。
と、どうやら試着してみることになったらしい。
とりあえずは、俺もそれに付き添うことにした。
―――――――――――――――――――――
シャー
カーテンが開け放たれ、平沢妹が姿を現した。
憂「…あは、どうですかね」
店員「よく似合ってますよー」
岡崎「………」
143: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 01:16:39.59 ID:zeFzKtTs0
言葉が出ない…。
はっきりいって……可愛いぞ!平沢妹!
店員「彼氏くんは、どう? 似合ってると思うよね?」
岡崎「え? あ…」
彼氏って、俺のことかよ…。
岡崎「はは…そっすね」
一応、彼氏という部分には否定せず、同意だけしておいた。
憂「か、彼氏…」
店員「良かったねー。彼氏くんも似合ってるって」
憂「あ…あはは」
店員の言葉に、照れながらも笑っていた。
岡崎(…彼氏、ね…)
デートしてるようにでもみえたのだろうか。
…でも、そうだったといえなくもない…のかもしれない。
まだ付き合っては、いなかったが。
岡崎(って、なにが『まだ』だよ…。時間の問題とか、無意識に思ってんのかね、俺は…はぁ…)
―――――――――――――――――――――
はっきりいって……可愛いぞ!平沢妹!
店員「彼氏くんは、どう? 似合ってると思うよね?」
岡崎「え? あ…」
彼氏って、俺のことかよ…。
岡崎「はは…そっすね」
一応、彼氏という部分には否定せず、同意だけしておいた。
憂「か、彼氏…」
店員「良かったねー。彼氏くんも似合ってるって」
憂「あ…あはは」
店員の言葉に、照れながらも笑っていた。
岡崎(…彼氏、ね…)
デートしてるようにでもみえたのだろうか。
…でも、そうだったといえなくもない…のかもしれない。
まだ付き合っては、いなかったが。
岡崎(って、なにが『まだ』だよ…。時間の問題とか、無意識に思ってんのかね、俺は…はぁ…)
―――――――――――――――――――――
147: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:03:19.04 ID:zeFzKtTs0
店を出ると、空がオレンジ色に染まっていた。
間もなくすれば、陽も完全に落ちきって、外灯が灯りだすだろう。
岡崎「………」
憂「………」
岡崎「あのさ…」
憂「あの…」
岡崎「先に言えよ」
憂「はい…」
あの店員の彼氏くん発言以来、なんとなくお互い意識してしまって、気まずい感じが続いていた。
憂「私、そろそろ帰ってご飯作らないといけないです」
岡崎「そっか。じゃあ、今日はこれでお開きだな」
岡崎「家まで送ってくよ。もう、けっこういい時間だからな」
憂「あ、はい。ありがとうございます」
―――――――――――――――――――――
気恥ずかしさからか、道中、あまり話さなかった。
お互い、いつもより口数が減っていた。
憂「今日はありがとうございました」
間もなくすれば、陽も完全に落ちきって、外灯が灯りだすだろう。
岡崎「………」
憂「………」
岡崎「あのさ…」
憂「あの…」
岡崎「先に言えよ」
憂「はい…」
あの店員の彼氏くん発言以来、なんとなくお互い意識してしまって、気まずい感じが続いていた。
憂「私、そろそろ帰ってご飯作らないといけないです」
岡崎「そっか。じゃあ、今日はこれでお開きだな」
岡崎「家まで送ってくよ。もう、けっこういい時間だからな」
憂「あ、はい。ありがとうございます」
―――――――――――――――――――――
気恥ずかしさからか、道中、あまり話さなかった。
お互い、いつもより口数が減っていた。
憂「今日はありがとうございました」
149: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:05:08.63 ID:zeFzKtTs0
岡崎「いや、こっちこそ。俺なんかに付き合わせちまって」
憂「そんな、ぜんぜん…最後なんか、私ばっかり楽しんじゃって…」
岡崎「まぁ、確かに、俺の存在を忘れてて、下着売り場に連れて行かれそうになった時は、焦ったけどな」
憂「あはは…すみませんでした」
岡崎「楽しかったんなら、いいよ。そんじゃな」
憂「はい。それでは」
平沢家の玄関先で別れ、俺は自宅に向かった。
―――――――――――――――――――――
家まで帰り着き、玄関の鍵を開けようとした。
が、その感触に違和感を覚える。
岡崎(あれ? 親父の奴、戸締りし忘れたのか)
鍵はかかっていなかった。
扉を開け、中に入る。
―――――――――――――――――――――
親父「ああ、おかえり」
ちょうど台所から、親父が出てきたところに出くわした。
親父は、戸締りし忘れたのではなく、帰ってきていたのだ。
憂「そんな、ぜんぜん…最後なんか、私ばっかり楽しんじゃって…」
岡崎「まぁ、確かに、俺の存在を忘れてて、下着売り場に連れて行かれそうになった時は、焦ったけどな」
憂「あはは…すみませんでした」
岡崎「楽しかったんなら、いいよ。そんじゃな」
憂「はい。それでは」
平沢家の玄関先で別れ、俺は自宅に向かった。
―――――――――――――――――――――
家まで帰り着き、玄関の鍵を開けようとした。
が、その感触に違和感を覚える。
岡崎(あれ? 親父の奴、戸締りし忘れたのか)
鍵はかかっていなかった。
扉を開け、中に入る。
―――――――――――――――――――――
親父「ああ、おかえり」
ちょうど台所から、親父が出てきたところに出くわした。
親父は、戸締りし忘れたのではなく、帰ってきていたのだ。
150: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:05:56.61 ID:zeFzKtTs0
うかつだった。浮かれていて、気づかなかったんだ。
この時間に重ならないよう、いつもすぐに家を出ていたのに。
いつも…そうしていたのに。
岡崎「…ああ」
親父「これから、夕飯にしようと思っていたところなんだよ。といっても、コンビニ弁当だけどね」
親父「朋也くんも、一緒にどうだい。話し相手がいれば、食事も楽しくなるよ」
岡崎「………っ」
俺は鞄をその場に放り、外へ駆けていた。
―――――――――――――――――――――
俺はどこに向かっているんだろう。
自分でもわからなかった。
ただ、なぜか無性に…あの子に会いたかった。
会って、どうしたいわけでもなかったが。
―――――――――――――――――――――
岡崎「はぁ…はっ…」
息は切れ、足も疲れて、これ以上走ることができない。
俺は壁に背をついて、うずくまってしまった。
声「岡崎さん…?」
この時間に重ならないよう、いつもすぐに家を出ていたのに。
いつも…そうしていたのに。
岡崎「…ああ」
親父「これから、夕飯にしようと思っていたところなんだよ。といっても、コンビニ弁当だけどね」
親父「朋也くんも、一緒にどうだい。話し相手がいれば、食事も楽しくなるよ」
岡崎「………っ」
俺は鞄をその場に放り、外へ駆けていた。
―――――――――――――――――――――
俺はどこに向かっているんだろう。
自分でもわからなかった。
ただ、なぜか無性に…あの子に会いたかった。
会って、どうしたいわけでもなかったが。
―――――――――――――――――――――
岡崎「はぁ…はっ…」
息は切れ、足も疲れて、これ以上走ることができない。
俺は壁に背をついて、うずくまってしまった。
声「岡崎さん…?」
151: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:06:40.05 ID:zeFzKtTs0
うなだれていると、声をかけられた。
顔を上げる。
岡崎「…よぉ」
憂「どうしたんですか、こんなところで」
岡崎「別に…そっちこそ、どうしたんだよ」
言いながら、立ち上がる。
憂「私は、コンビニにアイスを買いに来てたんです。買い溜めが切れてましたから。ほら、これです」
手に持ったレジ袋を、俺に見えるように掲げた。
その中には、ドライアイスと、パック売りされているタイプのアイスが見えた。
岡崎「そっか…」
憂「…岡崎さん…なんか、つらそうな顔してます」
岡崎「疲れてるからだよ。ちょっと走ったからさ…」
俺は一度、流れる汗を袖で拭った。
いつの間にか、平沢家までの道のりを走っていて、近くまでやってきて…
そして、偶然にも平沢妹に会えて、少し落ち着きを取り戻せた。
もう、大丈夫なはずだ。これで、十分だ。
憂「本当に…それだけですか?」
なかなか鋭い。
顔を上げる。
岡崎「…よぉ」
憂「どうしたんですか、こんなところで」
岡崎「別に…そっちこそ、どうしたんだよ」
言いながら、立ち上がる。
憂「私は、コンビニにアイスを買いに来てたんです。買い溜めが切れてましたから。ほら、これです」
手に持ったレジ袋を、俺に見えるように掲げた。
その中には、ドライアイスと、パック売りされているタイプのアイスが見えた。
岡崎「そっか…」
憂「…岡崎さん…なんか、つらそうな顔してます」
岡崎「疲れてるからだよ。ちょっと走ったからさ…」
俺は一度、流れる汗を袖で拭った。
いつの間にか、平沢家までの道のりを走っていて、近くまでやってきて…
そして、偶然にも平沢妹に会えて、少し落ち着きを取り戻せた。
もう、大丈夫なはずだ。これで、十分だ。
憂「本当に…それだけですか?」
なかなか鋭い。
152: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:07:27.75 ID:zeFzKtTs0
俺の表情から、何かあったと、そう読み取っているのだろうか。
俺がここにいることや、帰宅したのに制服を着替えていないこと、走った理由などを詳しく聞いてこないのもそのためか。
岡崎「ああ…そうだよ」
憂「そうですか…。あの、疲れてるんなら、うちで休んでいきませんか? お茶、用意しますよ」
そういえば、喉が乾いている。
でも、家に上がるということは、やっぱり、彼女の親とも会うことになるのだろう。
それは、できれば遠慮願いたかった。
岡崎「いや、いいよ。男なんか連れて帰ってきたら、親御さんもビックリするだろ」
岡崎「なにより、俺が気まずいからな」
憂「それは気にしなくて大丈夫です。うちは両親ともども海外出張に出てますから」
岡崎「海外…」
なんの仕事をしているんだろう。
海外なんて聞くと、エリートのイメージしかない。
憂「遠慮せずに、どうぞ。お姉ちゃんもいますから、きてくださいよ」
岡崎「いや、いい。もう、帰るから」
背を向ける。
憂「あ…ちょっと」
俺がここにいることや、帰宅したのに制服を着替えていないこと、走った理由などを詳しく聞いてこないのもそのためか。
岡崎「ああ…そうだよ」
憂「そうですか…。あの、疲れてるんなら、うちで休んでいきませんか? お茶、用意しますよ」
そういえば、喉が乾いている。
でも、家に上がるということは、やっぱり、彼女の親とも会うことになるのだろう。
それは、できれば遠慮願いたかった。
岡崎「いや、いいよ。男なんか連れて帰ってきたら、親御さんもビックリするだろ」
岡崎「なにより、俺が気まずいからな」
憂「それは気にしなくて大丈夫です。うちは両親ともども海外出張に出てますから」
岡崎「海外…」
なんの仕事をしているんだろう。
海外なんて聞くと、エリートのイメージしかない。
憂「遠慮せずに、どうぞ。お姉ちゃんもいますから、きてくださいよ」
岡崎「いや、いい。もう、帰るから」
背を向ける。
憂「あ…ちょっと」
153: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:08:10.20 ID:zeFzKtTs0
すると、小走りで俺の前に回り込んできた。
憂「寄ってってくださいよぅ。よいしょ…よいしょ」
そして、俺を押しながら前進し始めた。
岡崎「あー、わかった、わかったから、押すな。自分で歩くよ」
憂「ふぅ…そうしてくれると助かります」
岡崎(なんでこんなに…)
俺は、そこまで深刻そうな顔をしていたのか。
だとしたら、今の俺は、励まさなきゃ死んでしまう小動物のようにでも思われているのかもしれない…。
―――――――――――――――――――――
憂「ただいまー」
唯「おかえりー。アイス買ってきてく…ってええ!?岡崎くん!?」
唯「なな、なんで!? え、なに!? どういう感じですか!?」
憂「お姉ちゃん、落ち着いて。パニクらないで」
平沢妹は、俺がここに来ることに至った経緯を簡単に説明した。
唯「ほえー、走ってここまできたんだー、へー」
唯「岡崎くんって、深夜徘徊の趣味があるの?」
憂「寄ってってくださいよぅ。よいしょ…よいしょ」
そして、俺を押しながら前進し始めた。
岡崎「あー、わかった、わかったから、押すな。自分で歩くよ」
憂「ふぅ…そうしてくれると助かります」
岡崎(なんでこんなに…)
俺は、そこまで深刻そうな顔をしていたのか。
だとしたら、今の俺は、励まさなきゃ死んでしまう小動物のようにでも思われているのかもしれない…。
―――――――――――――――――――――
憂「ただいまー」
唯「おかえりー。アイス買ってきてく…ってええ!?岡崎くん!?」
唯「なな、なんで!? え、なに!? どういう感じですか!?」
憂「お姉ちゃん、落ち着いて。パニクらないで」
平沢妹は、俺がここに来ることに至った経緯を簡単に説明した。
唯「ほえー、走ってここまできたんだー、へー」
唯「岡崎くんって、深夜徘徊の趣味があるの?」
154: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:08:54.03 ID:zeFzKtTs0
岡崎「そんな激しく徘徊してまわる奴なんかいねーよ。それに、まだ深夜って時間でもない」
唯「そっかー…なら、やっぱり、私を求めてここまでやってきてしまったんだね」
岡崎「………あ?」
唯「今日部活に来てくれなかったばっかりに、私成分が足りなくて、禁断症状を起こしちゃったんだよね…」
唯「でも、もう大丈夫だよ、岡崎くん。思う存分、私を抱きしめて、いいんだよ…?」
切なげな顔をして、両手を胸の前で交差させた。
岡崎「……お茶、くれるんだよな。頼むよ」
憂「今用意してきますね」
唯「…無視されちゃった…」
―――――――――――――――――――――
平沢妹は、すぐにお茶を用意してくれた。
床に腰を下ろし、三人でテーブルを囲み、茶をすする。
岡崎(端からみたら、どう映るんだろうな、この光景…)
女の子の家に上がりこんで、茶を要求する無愛想な男。
さぞ異様に見えるに違いない。
唯「ねぇ、憂。そろそろ煮込みハンバーグ、できたんじゃない?」
唯「そっかー…なら、やっぱり、私を求めてここまでやってきてしまったんだね」
岡崎「………あ?」
唯「今日部活に来てくれなかったばっかりに、私成分が足りなくて、禁断症状を起こしちゃったんだよね…」
唯「でも、もう大丈夫だよ、岡崎くん。思う存分、私を抱きしめて、いいんだよ…?」
切なげな顔をして、両手を胸の前で交差させた。
岡崎「……お茶、くれるんだよな。頼むよ」
憂「今用意してきますね」
唯「…無視されちゃった…」
―――――――――――――――――――――
平沢妹は、すぐにお茶を用意してくれた。
床に腰を下ろし、三人でテーブルを囲み、茶をすする。
岡崎(端からみたら、どう映るんだろうな、この光景…)
女の子の家に上がりこんで、茶を要求する無愛想な男。
さぞ異様に見えるに違いない。
唯「ねぇ、憂。そろそろ煮込みハンバーグ、できたんじゃない?」
155: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:09:36.45 ID:zeFzKtTs0
憂「そうだね。そろそろいいかも」
唯「じゃあ、食べようっ、食べようっ」
憂「わかった、もってくるね。そうだ、岡崎さんもよければどうですか?」
憂「お夕飯に差し支えなければ、食べていってください」
差し支えるも何も、家に帰れば飯が用意されている、というわけでもない。
前に家庭環境のことは話したが、親父と不仲であることは言っていない。
だからきっと、俺がいつも、親父と一緒に食卓を囲んでいると、そう思っているんだろう。
それを配慮しての言葉だった。
岡崎「いいのか」
唯「いいよいいよっ。岡崎くんも食べてってよっ。すごくおいしいよっ」
岡崎「え、おまえも作ったのか?」
唯「ううん、憂単独だよ」
岡崎「なら、自分も関わってるような言い方するなよ…」
憂「あはは。じゃ、私、盛り付けてきますね」
そう言って、台所へ向かっていった。
岡崎「聞いたんだけどさ、両親が海外出張なんだろ?」
唯「じゃあ、食べようっ、食べようっ」
憂「わかった、もってくるね。そうだ、岡崎さんもよければどうですか?」
憂「お夕飯に差し支えなければ、食べていってください」
差し支えるも何も、家に帰れば飯が用意されている、というわけでもない。
前に家庭環境のことは話したが、親父と不仲であることは言っていない。
だからきっと、俺がいつも、親父と一緒に食卓を囲んでいると、そう思っているんだろう。
それを配慮しての言葉だった。
岡崎「いいのか」
唯「いいよいいよっ。岡崎くんも食べてってよっ。すごくおいしいよっ」
岡崎「え、おまえも作ったのか?」
唯「ううん、憂単独だよ」
岡崎「なら、自分も関わってるような言い方するなよ…」
憂「あはは。じゃ、私、盛り付けてきますね」
そう言って、台所へ向かっていった。
岡崎「聞いたんだけどさ、両親が海外出張なんだろ?」
156: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:10:39.47 ID:zeFzKtTs0
岡崎「その間の家事とか、おまえ、妹に全部やってもらってるんじゃないだろうな」
唯「うーんとねー、それはねー… ぐひゃっひゃひゃ!」
岡崎「キモい引き笑いで強引にごまかすなよ…」
―――――――――――――――――――――
ハンバーグは、当たり前だが、もともと二人分しか作られていなかったので、ふたりから半分づつもらった。
俺だけがちゃんとした一人前のハンバーグになり、悪い気がしたが、ダイエットがてらに丁度いい、とフォローをもらった。
平沢は『もっとも、私の場合、いくら食べても太らないんだけどねっ』などと豪語していたが。
憂「おいしいですか?」
岡崎「ああ、すっげーうまい」
一口噛むたびに味が口の中に広がる。
そして、なぜか両頬がしびれたように少し痛かった。
これが俗に言うほっぺたが落ちるという感覚なんだろう。
憂「よかったです、えへへ」
いつもの弁当があれだけの出来なんだ。
もともと味に不安はなかったが、予想を超えるうまさだった。
唯「岡崎くんは、お料理できる女の子の方が好き?」
岡崎「まぁ、どっちかといえばな」
唯「うーんとねー、それはねー… ぐひゃっひゃひゃ!」
岡崎「キモい引き笑いで強引にごまかすなよ…」
―――――――――――――――――――――
ハンバーグは、当たり前だが、もともと二人分しか作られていなかったので、ふたりから半分づつもらった。
俺だけがちゃんとした一人前のハンバーグになり、悪い気がしたが、ダイエットがてらに丁度いい、とフォローをもらった。
平沢は『もっとも、私の場合、いくら食べても太らないんだけどねっ』などと豪語していたが。
憂「おいしいですか?」
岡崎「ああ、すっげーうまい」
一口噛むたびに味が口の中に広がる。
そして、なぜか両頬がしびれたように少し痛かった。
これが俗に言うほっぺたが落ちるという感覚なんだろう。
憂「よかったです、えへへ」
いつもの弁当があれだけの出来なんだ。
もともと味に不安はなかったが、予想を超えるうまさだった。
唯「岡崎くんは、お料理できる女の子の方が好き?」
岡崎「まぁ、どっちかといえばな」
167: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:25:24.61 ID:zeFzKtTs0
唯「そっか…そうなんだ…ふむふむ」
岡崎「………?」
岡崎「あ、そうだ。平沢…ってどっちも平沢か…」
唯「私の事は、唯ちゃん、って呼んでいいよっ」
岡崎「アホか。おまえは名字で呼ぶっての。妹のほうは…まぁ…憂ちゃん…で」
憂「はぅ…」
唯「なんで憂だけ名前にちゃん付けなのぉー? 私にもそうしてよぉ」
岡崎「後輩だから許されるんだよ。タメにそれだと、いろいろと誤解されるだろ」
唯「いいじゃん別にぃ…」
岡崎「よくないからな」
唯「ぷぅ…」
岡崎「まぁ、それでだ、平沢。春原の奴が昼に部室行ったと思うんだけど、あいつ長居してなかったか?」
唯「春原くん? ううん、おやつ食べた後すぐ帰っちゃったよ」
どうやらちゃんと有言実行していたらしい。
あの件が少し気がかりだったのだが、俺の杞憂に終わったようだ。
唯「ていうか、春原くんに早く帰るようにいったのって、岡崎くんなんだよね? 聞いたよ」
岡崎「………?」
岡崎「あ、そうだ。平沢…ってどっちも平沢か…」
唯「私の事は、唯ちゃん、って呼んでいいよっ」
岡崎「アホか。おまえは名字で呼ぶっての。妹のほうは…まぁ…憂ちゃん…で」
憂「はぅ…」
唯「なんで憂だけ名前にちゃん付けなのぉー? 私にもそうしてよぉ」
岡崎「後輩だから許されるんだよ。タメにそれだと、いろいろと誤解されるだろ」
唯「いいじゃん別にぃ…」
岡崎「よくないからな」
唯「ぷぅ…」
岡崎「まぁ、それでだ、平沢。春原の奴が昼に部室行ったと思うんだけど、あいつ長居してなかったか?」
唯「春原くん? ううん、おやつ食べた後すぐ帰っちゃったよ」
どうやらちゃんと有言実行していたらしい。
あの件が少し気がかりだったのだが、俺の杞憂に終わったようだ。
唯「ていうか、春原くんに早く帰るようにいったのって、岡崎くんなんだよね? 聞いたよ」
170: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:28:50.82 ID:zeFzKtTs0
唯「私たちに気を遣ってしばらくこないようにするって…」
唯「でも、そんなの嫌だよ。遊びにきてよ。じゃないと、なんかさびしいんだもん…」
岡崎「………」
そこまで言われると、少し揺らいでしまう。
岡崎「そう言ってもらえると、こっちとしては、顔出す時、気が楽なんだけどな」
岡崎「でも、やめとくよ。全部終わったら、また行くようになると思うからさ、そん時はよろしく頼む」
唯「ちぇー…」
―――――――――――――――――――――
岡崎「夕飯までご馳走になっちまって、なんか悪かったな」
憂「いえ、私が無理に連れてきたようなものですから、気にしないでください」
唯「なんだったら、今日泊まっていく? 私の添い寝つきだよぉ?」
岡崎「アホ。もう帰るよ」
憂「それでは、また」
唯「ばいばーい。またいつでも来てねー」
ふたりに見送られ、平沢家を後にした。
来る時とは、全く違う心情で出られたことを、あの二人に感謝しなければいけない。
唯「でも、そんなの嫌だよ。遊びにきてよ。じゃないと、なんかさびしいんだもん…」
岡崎「………」
そこまで言われると、少し揺らいでしまう。
岡崎「そう言ってもらえると、こっちとしては、顔出す時、気が楽なんだけどな」
岡崎「でも、やめとくよ。全部終わったら、また行くようになると思うからさ、そん時はよろしく頼む」
唯「ちぇー…」
―――――――――――――――――――――
岡崎「夕飯までご馳走になっちまって、なんか悪かったな」
憂「いえ、私が無理に連れてきたようなものですから、気にしないでください」
唯「なんだったら、今日泊まっていく? 私の添い寝つきだよぉ?」
岡崎「アホ。もう帰るよ」
憂「それでは、また」
唯「ばいばーい。またいつでも来てねー」
ふたりに見送られ、平沢家を後にした。
来る時とは、全く違う心情で出られたことを、あの二人に感謝しなければいけない。
171: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:29:35.28 ID:zeFzKtTs0
―――――――――――――――――――――
日曜日。平日より、少し遅い時間に目覚める。
時刻は、昼をちょっとすぎたあたり。
朝食を(といっても、もう昼だが)買いに出ようと、財布を確認する。
すると、一食分を買えるだけの金額に達していなかった。
それもそのはず。
昨日はなんだかんだで、憂ちゃんと遊んでいる時に、散財してしまったのだ。
そのことを思い出し、俺はATMで貯金を下ろすため、町へ出ることにした。
―――――――――――――――――――――
最低限の支度を終え、家を出る。
すでに親父はどこかに出払っていたようなので、戸締りをしていった。
―――――――――――――――――――――
ガー…
手続きを済ませ、郵便局を出た。
岡崎(そろそろヤバイかな…)
俺の口座には、もうあまり残高がなかった。
岡崎(また短期で何かバイトやるか…)
岡崎「あ…」
律「あ…」
日曜日。平日より、少し遅い時間に目覚める。
時刻は、昼をちょっとすぎたあたり。
朝食を(といっても、もう昼だが)買いに出ようと、財布を確認する。
すると、一食分を買えるだけの金額に達していなかった。
それもそのはず。
昨日はなんだかんだで、憂ちゃんと遊んでいる時に、散財してしまったのだ。
そのことを思い出し、俺はATMで貯金を下ろすため、町へ出ることにした。
―――――――――――――――――――――
最低限の支度を終え、家を出る。
すでに親父はどこかに出払っていたようなので、戸締りをしていった。
―――――――――――――――――――――
ガー…
手続きを済ませ、郵便局を出た。
岡崎(そろそろヤバイかな…)
俺の口座には、もうあまり残高がなかった。
岡崎(また短期で何かバイトやるか…)
岡崎「あ…」
律「あ…」
172: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:30:15.38 ID:zeFzKtTs0
ほぼ同時に声を上げた。
向かいから歩いてきたのは、田井中だった。
律「おーっす、岡崎。偶然だな~」
岡崎「よぉ、田井中…と…」
そのとなりに、男の子を連れている。
中学生くらいだろうか。
律「ああ、こっちは弟の聡」
聡「ちわす」
岡崎「うす」
律「ところで、あんた、こんなとこで一人でなにしてんの?」
岡崎「飯食いに出てきたんだよ」
律「一人で? さっびしいねぇ~」
岡崎「ほっとけ」
律「う~ん…そうだ。聡、ここで解散な。あとは各自自由行動すること」
聡「わかった。んじゃな、姉ちゃん」
俺に軽く会釈し、人ごみの中へ消えて行った。
向かいから歩いてきたのは、田井中だった。
律「おーっす、岡崎。偶然だな~」
岡崎「よぉ、田井中…と…」
そのとなりに、男の子を連れている。
中学生くらいだろうか。
律「ああ、こっちは弟の聡」
聡「ちわす」
岡崎「うす」
律「ところで、あんた、こんなとこで一人でなにしてんの?」
岡崎「飯食いに出てきたんだよ」
律「一人で? さっびしいねぇ~」
岡崎「ほっとけ」
律「う~ん…そうだ。聡、ここで解散な。あとは各自自由行動すること」
聡「わかった。んじゃな、姉ちゃん」
俺に軽く会釈し、人ごみの中へ消えて行った。
173: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:30:58.41 ID:zeFzKtTs0
律「さてと…んじゃ、どこいく?」
岡崎「あん? どこって、なにが」
律「だぁかぁらぁ、ご飯食べるんでしょ? 私も一緒にいくって言ってんの」
岡崎「マジ?」
律「マジだよ。こんな美少女と一緒に食事できるんだから、光栄に思えよな~」
岡崎「なにいってんだよ。ひとりでビーフジャーキーでも食ってろ」
律「はいぃ? なんかいった、今?? 日頃からお世話になってる恩人に、すごく失礼なこと、いった気がするんだけど?」
律「もしいってたんなら、今までのお菓子代とか、全部払ってもらうことになるかもな~?」
岡崎「…いえ、なにもいってません」
律「だよなー! んじゃ、いこか」
そう言いって、俺の前を歩き出した。
岡崎「…ったく」
俺もその後を追った。
―――――――――――――――――――――
適当なファミレスに入り、一息つく。
しばらくして、注文した品も全て運ばれてきた。
岡崎「あん? どこって、なにが」
律「だぁかぁらぁ、ご飯食べるんでしょ? 私も一緒にいくって言ってんの」
岡崎「マジ?」
律「マジだよ。こんな美少女と一緒に食事できるんだから、光栄に思えよな~」
岡崎「なにいってんだよ。ひとりでビーフジャーキーでも食ってろ」
律「はいぃ? なんかいった、今?? 日頃からお世話になってる恩人に、すごく失礼なこと、いった気がするんだけど?」
律「もしいってたんなら、今までのお菓子代とか、全部払ってもらうことになるかもな~?」
岡崎「…いえ、なにもいってません」
律「だよなー! んじゃ、いこか」
そう言いって、俺の前を歩き出した。
岡崎「…ったく」
俺もその後を追った。
―――――――――――――――――――――
適当なファミレスに入り、一息つく。
しばらくして、注文した品も全て運ばれてきた。
174: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:31:41.29 ID:zeFzKtTs0
律「うーん、おいしーこの肉ー」
岡崎「おまえ、ゴツイの食ってんのな。女なら、もっとパフェとか、サラダとか、パスタとかあるだろ普通」
律「いーの。私なら何を食べてても絵になるから」
一体どこからその自信がわいてくるのか。
律「ところでさ、あんた、私たちの邪魔にならないように、部活くるの遠慮してるんだって?」
岡崎「ああ、そうだよ」
律「らしくないことするねー。キャラじゃないよ」
岡崎「そんじゃ、行ってもいいのか」
律「まぁ…ね。あんたらがいないと、ちょっと張り合いないっていうかね…」
岡崎「なんだよ、来てほしいんなら、そういえ」
律「な、そ、そういうわけじゃ…でもまぁ、来たいなら、来ていいよって、そういう話だよ…」
岡崎「………」
普段からあれだけ『また来たのかー…』なんて言っていたのに。
もしかして、俺が気を遣いすぎているだけなのか。
俺と春原がいても、こいつらは、ちゃんと練習するのかも…。
―――――――――――――――――――――
岡崎「おまえ、ゴツイの食ってんのな。女なら、もっとパフェとか、サラダとか、パスタとかあるだろ普通」
律「いーの。私なら何を食べてても絵になるから」
一体どこからその自信がわいてくるのか。
律「ところでさ、あんた、私たちの邪魔にならないように、部活くるの遠慮してるんだって?」
岡崎「ああ、そうだよ」
律「らしくないことするねー。キャラじゃないよ」
岡崎「そんじゃ、行ってもいいのか」
律「まぁ…ね。あんたらがいないと、ちょっと張り合いないっていうかね…」
岡崎「なんだよ、来てほしいんなら、そういえ」
律「な、そ、そういうわけじゃ…でもまぁ、来たいなら、来ていいよって、そういう話だよ…」
岡崎「………」
普段からあれだけ『また来たのかー…』なんて言っていたのに。
もしかして、俺が気を遣いすぎているだけなのか。
俺と春原がいても、こいつらは、ちゃんと練習するのかも…。
―――――――――――――――――――――
175: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:32:23.73 ID:zeFzKtTs0
律「はー、食った食ったぁ~。で、あんた、これからどうするの?」
岡崎「別に。何もしねぇよ」
律「まさか、家に帰ってゴロゴロするとか、言わないよね?」
岡崎「それに近いかな」
律「近いって、なに? ボカさずにはっきり言えよなー」
岡崎「…春原んとこにいくんだよ。そこで暇つぶしだ」
律「春原のとこって…あの寮だよね? 坂下にある」
岡崎「ああ」
律「私もいくー」
岡崎「はぁ? いくって、おまえ…」
律「いいから、いいから。レッツゴー」
岡崎「あ、おい…」
―――――――――――――――――――――
がちゃり
律「よーっす、春原、私が来てやったぞー」
岡崎「別に。何もしねぇよ」
律「まさか、家に帰ってゴロゴロするとか、言わないよね?」
岡崎「それに近いかな」
律「近いって、なに? ボカさずにはっきり言えよなー」
岡崎「…春原んとこにいくんだよ。そこで暇つぶしだ」
律「春原のとこって…あの寮だよね? 坂下にある」
岡崎「ああ」
律「私もいくー」
岡崎「はぁ? いくって、おまえ…」
律「いいから、いいから。レッツゴー」
岡崎「あ、おい…」
―――――――――――――――――――――
がちゃり
律「よーっす、春原、私が来てやったぞー」
176: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:33:07.11 ID:zeFzKtTs0
田井中はノックもなしにドアを開けていた。
岡崎「よぉ、いまだに生きてるか」
見れば、春原は、布団にくるまり、幸せそうに寝息を立てていた。
律「まーだ寝てるのか、こいつは…」
岡崎「おい、田井中。これを濡らしてきてくれ」
俺はその辺に落ちていた用途不明の布キレを田井中に差し出した。
律「うん? いいけど」
田井中は、洗面所に向かい、言われたとおり布を濡らしてきた。
律「ほい。それ、どうすんの?」
湿った布を受け取る。
岡崎「こうするんだよ」
俺は春原の顔にそっと被せた。
春原「…んむぅ……んむぅ…」
呼吸口がふさがれ、苦しみだす。
春原「うんむ…ぱぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
岡崎「よぉ、いまだに生きてるか」
見れば、春原は、布団にくるまり、幸せそうに寝息を立てていた。
律「まーだ寝てるのか、こいつは…」
岡崎「おい、田井中。これを濡らしてきてくれ」
俺はその辺に落ちていた用途不明の布キレを田井中に差し出した。
律「うん? いいけど」
田井中は、洗面所に向かい、言われたとおり布を濡らしてきた。
律「ほい。それ、どうすんの?」
湿った布を受け取る。
岡崎「こうするんだよ」
俺は春原の顔にそっと被せた。
春原「…んむぅ……んむぅ…」
呼吸口がふさがれ、苦しみだす。
春原「うんむ…ぱぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
177: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:33:50.39 ID:zeFzKtTs0
ついに限界を迎えたのか、上体を反らせて跳ね起きた。
春原「はぁ…はぁ…」
岡崎「おはよう」
律「おそよう」
春原「…あ?」
いまいち状況が飲み込めていないようだ。
岡崎「もう昼もとっくにすぎてるんだぞ。いい加減起きろ」
律「そうだそうだー」
春原「…いや、岡崎はいつものことだから、わかるとして…なんで田井中までいるんだよ…」
岡崎「外で偶然会ったんだよ。したら、勝手についてきたんだ」
律「女の子が来てやったんだから、よろこべよなー。しかもこんな可愛い子がさー」
春原「意味わかんねぇよ…。僕、まだ眠いから、おまえら、帰れよ」
岡崎「なんだと。寝たら、またこの布、顔面にかけちゃうぞ」
春原「って、それ、ぞうきんだよっ! おまえ、んな起こし方したのかよっ!」
岡崎「今のお前、すっげークサメンだぜ!」
春原「はぁ…はぁ…」
岡崎「おはよう」
律「おそよう」
春原「…あ?」
いまいち状況が飲み込めていないようだ。
岡崎「もう昼もとっくにすぎてるんだぞ。いい加減起きろ」
律「そうだそうだー」
春原「…いや、岡崎はいつものことだから、わかるとして…なんで田井中までいるんだよ…」
岡崎「外で偶然会ったんだよ。したら、勝手についてきたんだ」
律「女の子が来てやったんだから、よろこべよなー。しかもこんな可愛い子がさー」
春原「意味わかんねぇよ…。僕、まだ眠いから、おまえら、帰れよ」
岡崎「なんだと。寝たら、またこの布、顔面にかけちゃうぞ」
春原「って、それ、ぞうきんだよっ! おまえ、んな起こし方したのかよっ!」
岡崎「今のお前、すっげークサメンだぜ!」
186: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:50:39.03 ID:zeFzKtTs0
春原「『臭い顔面』を、『イケメン』っぽく略すなっ!」
律「わははは!」
―――――――――――――――――――――
律「うわー、なにこのラジカセ、ふっるー」
律「おーっと、あのマンガ発見~。表紙だけ変えても、不自然さでバレバレだよ。やっぱ、変態だね~」
春原「…岡崎、ここに来るなとは言わない。でもな、妙なもんまで連れてくるな」
ズルズルとカップラーメンをすすりながら、俺に言う。
田井中はさっきから、部屋中を物色して回っていた。
岡崎「だから、勝手についてきたんだって」
春原「撒けよっ!」
岡崎「撒いても、おまえのとこ行くって言っちゃったから、意味なかったんだよ」
岡崎「おまえが寮生だってこと、あいつも知ってるしな」
春原「ぐ…だからってなぁ、他にもっと…」
律「ん? なんだこれ? セルフ交換ノート…?」
春原「わ、馬鹿! 見るな!」
だっ、とコタツから飛び出し、田井中が手にもつノートへ飛び掛る。
律「わははは!」
―――――――――――――――――――――
律「うわー、なにこのラジカセ、ふっるー」
律「おーっと、あのマンガ発見~。表紙だけ変えても、不自然さでバレバレだよ。やっぱ、変態だね~」
春原「…岡崎、ここに来るなとは言わない。でもな、妙なもんまで連れてくるな」
ズルズルとカップラーメンをすすりながら、俺に言う。
田井中はさっきから、部屋中を物色して回っていた。
岡崎「だから、勝手についてきたんだって」
春原「撒けよっ!」
岡崎「撒いても、おまえのとこ行くって言っちゃったから、意味なかったんだよ」
岡崎「おまえが寮生だってこと、あいつも知ってるしな」
春原「ぐ…だからってなぁ、他にもっと…」
律「ん? なんだこれ? セルフ交換ノート…?」
春原「わ、馬鹿! 見るな!」
だっ、とコタツから飛び出し、田井中が手にもつノートへ飛び掛る。
188: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:51:21.51 ID:zeFzKtTs0
律「おおっとー、あぶないなー。そう必死だと、中身が気になるな~」
律「まぁ、タイトルで大体内容の想像つくけど~」
春原「返せよっ!」
律「おほっほほ~」
ひょうひょうとかわしながら、ドアへ向かう。
がちゃっ…バンッ
声「ってーな…」
律「あ…」
春原「ひぃっ!?」
声「なに、暴れてんの? つか、ふざけんなよマジ」
律「あ…ご、ごめんなさ…」
なにかトラブっているようだ。
俺もコタツから出て、その様子を窺ってみる。
どうやら、ドアを開けた先に人がいたようだ。
勢いよくあけた分、痛かったのだろう。
相当怒っている。
春原「やべーよ…」
律「まぁ、タイトルで大体内容の想像つくけど~」
春原「返せよっ!」
律「おほっほほ~」
ひょうひょうとかわしながら、ドアへ向かう。
がちゃっ…バンッ
声「ってーな…」
律「あ…」
春原「ひぃっ!?」
声「なに、暴れてんの? つか、ふざけんなよマジ」
律「あ…ご、ごめんなさ…」
なにかトラブっているようだ。
俺もコタツから出て、その様子を窺ってみる。
どうやら、ドアを開けた先に人がいたようだ。
勢いよくあけた分、痛かったのだろう。
相当怒っている。
春原「やべーよ…」
189: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:52:03.02 ID:zeFzKtTs0
しかも、ぶつけたのは、乱暴なことで知られている、3年のラグビー部員だった。
春原とも、たびたびモメている奴だ。
最悪だった。
ラグビー部員「おまえ、春原の彼女?」
春原「い、いえ、そいつと僕は何も関係ないっす!」
ラグビー部員「じゃあ、岡崎。おまえか?」
岡崎「いや…」
律「………」
田井中は、怯えていた。
いつもの元気な姿からは想像できないくらいに萎縮していた。
それもそうだ。こいつだって、一応女だ。こんなゴツいのに絡まれれば、怖いに決まってる。
岡崎「…ああ、そうだよ。悪かったな。俺からも謝るよ」
律「え…岡崎…」
春原「おい…」
ラグビー部員「謝るよ、じゃねーんだよ。敬語も使えねーのかおまえは」
ぐっと、胸ぐらを掴まれる。
岡崎「…悪かった」
春原とも、たびたびモメている奴だ。
最悪だった。
ラグビー部員「おまえ、春原の彼女?」
春原「い、いえ、そいつと僕は何も関係ないっす!」
ラグビー部員「じゃあ、岡崎。おまえか?」
岡崎「いや…」
律「………」
田井中は、怯えていた。
いつもの元気な姿からは想像できないくらいに萎縮していた。
それもそうだ。こいつだって、一応女だ。こんなゴツいのに絡まれれば、怖いに決まってる。
岡崎「…ああ、そうだよ。悪かったな。俺からも謝るよ」
律「え…岡崎…」
春原「おい…」
ラグビー部員「謝るよ、じゃねーんだよ。敬語も使えねーのかおまえは」
ぐっと、胸ぐらを掴まれる。
岡崎「…悪かった」
190: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:52:46.05 ID:zeFzKtTs0
俺もその手を掴み返し、睨みつけながら言う。
敬語を使う気は、サラサラない。
ラグビー部員「…っ…ちっ。あんまり調子に乗るなよ」
手を放し、そう吐き捨てていった。
岡崎「……ふぅ」
春原「かぁー、無茶なことするね、おまえ。まさに一触即発って奴だったね」
岡崎「ああ…俺も、かなりきたよ、今のは」
春原「でもま、喧嘩になれば、僕も助太刀してたから、勝てはしただろうけどね」
岡崎「いや、そうなれば、お前が殺されてる隙に、茶を二杯ほど飲んで逃げるけどな」
春原「軽く一服してくなよっ!」
律「岡崎…あの、ありがとう…」
岡崎「ああ、まぁ、いつも世話になってる礼だ。でも、もう大人しくしとけ」
律「うん…」
春原「ったく、デコのくせにいきがってるから、んなことになるんだよ」
律「黙れ、ヘタレ!」
げしっ
敬語を使う気は、サラサラない。
ラグビー部員「…っ…ちっ。あんまり調子に乗るなよ」
手を放し、そう吐き捨てていった。
岡崎「……ふぅ」
春原「かぁー、無茶なことするね、おまえ。まさに一触即発って奴だったね」
岡崎「ああ…俺も、かなりきたよ、今のは」
春原「でもま、喧嘩になれば、僕も助太刀してたから、勝てはしただろうけどね」
岡崎「いや、そうなれば、お前が殺されてる隙に、茶を二杯ほど飲んで逃げるけどな」
春原「軽く一服してくなよっ!」
律「岡崎…あの、ありがとう…」
岡崎「ああ、まぁ、いつも世話になってる礼だ。でも、もう大人しくしとけ」
律「うん…」
春原「ったく、デコのくせにいきがってるから、んなことになるんだよ」
律「黙れ、ヘタレ!」
げしっ
191: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:53:30.63 ID:zeFzKtTs0
春原「ぐぇっ!てめぇ、やりやがったな! 生え際後退させるぞ、コラ!」
律「死ね、アホヘタレ!」
言ったそばから、もう騒ぎ出していた。
―――――――――――――――――――――
律「さってとー、そろそろ帰ろっかなー」
春原「おー、帰れ帰れ。長居しやがって」
律「あー?こんな暗い中、か弱い乙女が一人帰るっていうのに、『送ってくよ』くらい言えないの?」
春原「暗くても、おまえのデコで月明かりを反射しながら帰ればいいじゃ…」
バキッ
春原「がゃっ!」
その顔に雑誌が叩きつけられた。
律「デコデコ言うなっつーの。あんたはいいよ、もう。でも、岡崎は違うよね?」
岡崎「なにが」
律「あんたは送ってくれるでしょ?」
岡崎「やだよ、めんどくさい」
律「死ね、アホヘタレ!」
言ったそばから、もう騒ぎ出していた。
―――――――――――――――――――――
律「さってとー、そろそろ帰ろっかなー」
春原「おー、帰れ帰れ。長居しやがって」
律「あー?こんな暗い中、か弱い乙女が一人帰るっていうのに、『送ってくよ』くらい言えないの?」
春原「暗くても、おまえのデコで月明かりを反射しながら帰ればいいじゃ…」
バキッ
春原「がゃっ!」
その顔に雑誌が叩きつけられた。
律「デコデコ言うなっつーの。あんたはいいよ、もう。でも、岡崎は違うよね?」
岡崎「なにが」
律「あんたは送ってくれるでしょ?」
岡崎「やだよ、めんどくさい」
192: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:54:30.44 ID:zeFzKtTs0
律「なんで~? だって、私の彼氏なんでしょ~?」
岡崎「ああいっとけば、矛先が俺に向くから、いっただけだろ。真に受けんなよ」
律「む…お菓子代、払ってもらおうかな…私、傷ついちゃったし…お金で癒してもらおうかな…」
岡崎「…送らせていただきます」
律「うむ、よろしい」
―――――――――――――――――――――
律「…岡崎」
玄関を出たところで、足を止めた。
律「今日は、助けてくれてありがとね。あんたカッコよかったよ」
岡崎「そりゃ、どうも」
律「…澪の言ってたことが、ちょっとわかった気がする」
岡崎「秋山が、なんだって?」
律「ううん、なんでもない。送ってくれなんていったけど、ここまででいいよ。そんじゃ、バイビー!」
元気よく言い放ち、坂を登っていった。
俺は、せめて、その姿が見えなくなるまでと、その場から見送っていた。
―――――――――――――――――――――
岡崎「ああいっとけば、矛先が俺に向くから、いっただけだろ。真に受けんなよ」
律「む…お菓子代、払ってもらおうかな…私、傷ついちゃったし…お金で癒してもらおうかな…」
岡崎「…送らせていただきます」
律「うむ、よろしい」
―――――――――――――――――――――
律「…岡崎」
玄関を出たところで、足を止めた。
律「今日は、助けてくれてありがとね。あんたカッコよかったよ」
岡崎「そりゃ、どうも」
律「…澪の言ってたことが、ちょっとわかった気がする」
岡崎「秋山が、なんだって?」
律「ううん、なんでもない。送ってくれなんていったけど、ここまででいいよ。そんじゃ、バイビー!」
元気よく言い放ち、坂を登っていった。
俺は、せめて、その姿が見えなくなるまでと、その場から見送っていた。
―――――――――――――――――――――
193: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:55:13.30 ID:zeFzKtTs0
そして、時は流れ、創立者際も目前に差し迫った頃、問題が起きた。
律「唯は、今日も休みか…」
澪「…梓、今日からリードの練習もしておいてくれないか?」
梓「え? でも…」
澪「あくまで万が一に備えてだから」
梓「………はい」
平沢が熱を出し、学校を休んでいるのだ。
それは、この追い込みをかけようとしている時期に、手痛いことだった。
特に、平沢は秋山と一緒にボーカルもつとめていて、核となる存在だったから、なおさらのこと。
―――――――――――――――――――――
岡崎「平沢の調子はどうだ、憂ちゃん」
憂「…あの調子だと、まだかかりそうです…」
岡崎「そうか…」
憂ちゃんは、見てすぐわかるくらいに、落ち込んでいた。
看病疲れもあるのかもしれない。
でも、一番の理由は、そうじゃないはずだ。
大事な姉が、今まで仲間と一緒に頑張って、当面の目標としていた舞台に立てなくなるかもしれないこと…
それが、悲しいんだろう。
律「唯は、今日も休みか…」
澪「…梓、今日からリードの練習もしておいてくれないか?」
梓「え? でも…」
澪「あくまで万が一に備えてだから」
梓「………はい」
平沢が熱を出し、学校を休んでいるのだ。
それは、この追い込みをかけようとしている時期に、手痛いことだった。
特に、平沢は秋山と一緒にボーカルもつとめていて、核となる存在だったから、なおさらのこと。
―――――――――――――――――――――
岡崎「平沢の調子はどうだ、憂ちゃん」
憂「…あの調子だと、まだかかりそうです…」
岡崎「そうか…」
憂ちゃんは、見てすぐわかるくらいに、落ち込んでいた。
看病疲れもあるのかもしれない。
でも、一番の理由は、そうじゃないはずだ。
大事な姉が、今まで仲間と一緒に頑張って、当面の目標としていた舞台に立てなくなるかもしれないこと…
それが、悲しいんだろう。
194: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:55:57.04 ID:zeFzKtTs0
岡崎「俺、今日、学校終わったら見舞いにいくよ」
なにか、俺にできることがあれば、してあげたかった。
少しでも、この子の負担を減らせるなら、なんだってやるつもりだ。
憂「でも、軽音部には…」
岡崎「もう、この時期になれば、俺や春原がいようが、いまいが関係ないよ。だろ?」
憂「…そう、ですかね…」
岡崎「ああ。本当は、軽音部の連中も見舞いに行きたいんだろうけど、練習があるからな」
岡崎「サボッて見舞いに来られても、平沢だって気まずいだろうし。だから、その分、俺が見舞ってやるよ」
憂「…そうですね。きっと、岡崎さんがお見舞いにきてくれたら、お姉ちゃんもよろこぶと思います」
―――――――――――――――――――――
そして、放課後。
憂ちゃんと一緒に平沢家に向かった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「平沢、体調はどうだ」
唯「えへへ~、だいじょーぶ、だい…へっくしゅ」
岡崎「…まだ、だめみたいだな。ひたいも、こんなに熱いし」
なにか、俺にできることがあれば、してあげたかった。
少しでも、この子の負担を減らせるなら、なんだってやるつもりだ。
憂「でも、軽音部には…」
岡崎「もう、この時期になれば、俺や春原がいようが、いまいが関係ないよ。だろ?」
憂「…そう、ですかね…」
岡崎「ああ。本当は、軽音部の連中も見舞いに行きたいんだろうけど、練習があるからな」
岡崎「サボッて見舞いに来られても、平沢だって気まずいだろうし。だから、その分、俺が見舞ってやるよ」
憂「…そうですね。きっと、岡崎さんがお見舞いにきてくれたら、お姉ちゃんもよろこぶと思います」
―――――――――――――――――――――
そして、放課後。
憂ちゃんと一緒に平沢家に向かった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「平沢、体調はどうだ」
唯「えへへ~、だいじょーぶ、だい…へっくしゅ」
岡崎「…まだ、だめみたいだな。ひたいも、こんなに熱いし」
195: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:56:41.44 ID:zeFzKtTs0
俺は平沢のひたいに手を当て、大体の体温を計った。
唯「う~…岡崎くん、くるんなら、さきに言ってほしかったな。そしたら、髪も、ちゃんと整えたのに…」
唯「それに、私、汗かいてて、においも気になるし、鼻かんだティッシュだって、そこらじゅうにあるし…」
唯「恥ずかしいよ…」
岡崎「馬鹿。病人なんだから、仕方ないだろ。そんなこと、気にするな。おまえは十分かわいいよ」
唯「あ、ありがと…」
―――――――――――――――――――――
俺は憂ちゃんに手伝いを申し出て、夕飯の材料の買出しにでた。
その折、自腹で平沢の好物であるアイスも買ってきた。
憂「どうも、すみません、ここまでしてもらっちゃって…」
岡崎「いや、いいよ。俺が好きでやってることだからさ」
憂「あの…もしよければ、夕飯を食べていってください。私、作ります」
岡崎「大丈夫か。憂ちゃん、疲れてないか」
憂「いえ、私は大丈夫です」
岡崎「………」
本当に、そうだろうか。
唯「う~…岡崎くん、くるんなら、さきに言ってほしかったな。そしたら、髪も、ちゃんと整えたのに…」
唯「それに、私、汗かいてて、においも気になるし、鼻かんだティッシュだって、そこらじゅうにあるし…」
唯「恥ずかしいよ…」
岡崎「馬鹿。病人なんだから、仕方ないだろ。そんなこと、気にするな。おまえは十分かわいいよ」
唯「あ、ありがと…」
―――――――――――――――――――――
俺は憂ちゃんに手伝いを申し出て、夕飯の材料の買出しにでた。
その折、自腹で平沢の好物であるアイスも買ってきた。
憂「どうも、すみません、ここまでしてもらっちゃって…」
岡崎「いや、いいよ。俺が好きでやってることだからさ」
憂「あの…もしよければ、夕飯を食べていってください。私、作ります」
岡崎「大丈夫か。憂ちゃん、疲れてないか」
憂「いえ、私は大丈夫です」
岡崎「………」
本当に、そうだろうか。
196: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 02:57:24.96 ID:zeFzKtTs0
俺には、少し弱っているように見えるが…。
岡崎「無理するな。憂ちゃんまで倒れたら、平沢死んじまうぞ。世話する奴がいなくなってな」
憂「本当に、大丈夫ですよ」
岡崎「…そうか」
憂「ええ。だから、遠慮せずにどうぞ。岡崎さんは、いつも遠慮しすぎなんですよ」
岡崎「…じゃあ、頼むよ」
憂「はいっ」
―――――――――――――――――――――
岡崎「うん、うまかった」
憂「ありがとうございます」
岡崎「食器は、俺が洗うよ。憂ちゃんは休んでろ」
憂「え、そんな、悪いです…」
岡崎「いいから」
俺はしぶる憂ちゃんを抑え、食器を台所まで運んだ。
岡崎「スポンジは、これと、洗浄剤は、これ…で、タオルはこっちのでいいか?」
岡崎「無理するな。憂ちゃんまで倒れたら、平沢死んじまうぞ。世話する奴がいなくなってな」
憂「本当に、大丈夫ですよ」
岡崎「…そうか」
憂「ええ。だから、遠慮せずにどうぞ。岡崎さんは、いつも遠慮しすぎなんですよ」
岡崎「…じゃあ、頼むよ」
憂「はいっ」
―――――――――――――――――――――
岡崎「うん、うまかった」
憂「ありがとうございます」
岡崎「食器は、俺が洗うよ。憂ちゃんは休んでろ」
憂「え、そんな、悪いです…」
岡崎「いいから」
俺はしぶる憂ちゃんを抑え、食器を台所まで運んだ。
岡崎「スポンジは、これと、洗浄剤は、これ…で、タオルはこっちのでいいか?」
199: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:00:50.13 ID:zeFzKtTs0
憂「あ、はい…」
岡崎「よし、わかった」
確認を終え、食器を洗い出した。
―――――――――――――――――――――
岡崎(よし、これくらいでいいかな)
片付けも全て終わり、台所を離れた。
岡崎「憂ちゃん、俺、そろそろ帰…」
憂「……ぅぅん…」
憂ちゃんはソファーに腰かけ、寝息を立てていた。
岡崎(やっぱ、疲れてたんじゃないか)
俺は、眠る憂ちゃんの頭を軽くなでた。
憂「ぅうん…岡崎さん?」
岡崎(あ…やべ)
起こしてしまった…。
岡崎「あ、あー、俺、そろそろ帰るから」
岡崎「よし、わかった」
確認を終え、食器を洗い出した。
―――――――――――――――――――――
岡崎(よし、これくらいでいいかな)
片付けも全て終わり、台所を離れた。
岡崎「憂ちゃん、俺、そろそろ帰…」
憂「……ぅぅん…」
憂ちゃんはソファーに腰かけ、寝息を立てていた。
岡崎(やっぱ、疲れてたんじゃないか)
俺は、眠る憂ちゃんの頭を軽くなでた。
憂「ぅうん…岡崎さん?」
岡崎(あ…やべ)
起こしてしまった…。
岡崎「あ、あー、俺、そろそろ帰るから」
201: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:01:33.81 ID:zeFzKtTs0
微妙に焦りながらも体裁を取り繕おうとする俺。
憂「…そうですか」
岡崎「あ、ああ。それじゃ」
背を向ける。
憂「…岡崎さん」
岡崎「ん? なんだ」
振り返ると、憂ちゃんは目に涙を溜めていた。
憂「お…お姉ちゃん…大丈夫かな…間に合うかな…」
それは、今まで堪えていた涙だったのか。
もう、目からあふれ出していた。
大事な家族が大変な時に、親も不在で、一人頑張りつづけていた。
不安だったんだろう。普段ならいざしらず、大事を前にして、こんなことになってしまって。
俺は…なんのためにここにきたのか。
この子の不安、負担を、軽くしてやりたかったんじゃないのか。
………。
憂「…岡崎さん」
俺はその隣に座り、肩を抱き寄せていた。
岡崎「大丈夫だろ。だって、あの平沢だぜ? きっと、当日にはケロっとしてる」
憂「…そうですか」
岡崎「あ、ああ。それじゃ」
背を向ける。
憂「…岡崎さん」
岡崎「ん? なんだ」
振り返ると、憂ちゃんは目に涙を溜めていた。
憂「お…お姉ちゃん…大丈夫かな…間に合うかな…」
それは、今まで堪えていた涙だったのか。
もう、目からあふれ出していた。
大事な家族が大変な時に、親も不在で、一人頑張りつづけていた。
不安だったんだろう。普段ならいざしらず、大事を前にして、こんなことになってしまって。
俺は…なんのためにここにきたのか。
この子の不安、負担を、軽くしてやりたかったんじゃないのか。
………。
憂「…岡崎さん」
俺はその隣に座り、肩を抱き寄せていた。
岡崎「大丈夫だろ。だって、あの平沢だぜ? きっと、当日にはケロっとしてる」
204: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:02:17.43 ID:zeFzKtTs0
憂「…そうでしょうか」
岡崎「ああ。そうだ」
憂「…岡崎さんが、そう言いきると、本当にそうなる気がします」
岡崎「なるよ」
憂「あは…また言いきってる。…岡崎さん…少し、このままでいてください」
岡崎「ああ。憂ちゃんの気がすむまで、いつまでだって、やってるよ」
しばらくの間、その状態でいた。
テレビの中で、芸人がギャグを飛ばし、笑いが起こる。
今の俺たちの空気とのギャップが滑稽だった。
がちゃり
唯「あ…」
憂「お姉ちゃん…」
岡崎「わ、平沢…」
俺と憂ちゃんは、急いで離れた。
唯「…あはは、ふたりとも、ラブラブだね~」
憂「あ、わわ、ち、違うの…」
岡崎「ああ。そうだ」
憂「…岡崎さんが、そう言いきると、本当にそうなる気がします」
岡崎「なるよ」
憂「あは…また言いきってる。…岡崎さん…少し、このままでいてください」
岡崎「ああ。憂ちゃんの気がすむまで、いつまでだって、やってるよ」
しばらくの間、その状態でいた。
テレビの中で、芸人がギャグを飛ばし、笑いが起こる。
今の俺たちの空気とのギャップが滑稽だった。
がちゃり
唯「あ…」
憂「お姉ちゃん…」
岡崎「わ、平沢…」
俺と憂ちゃんは、急いで離れた。
唯「…あはは、ふたりとも、ラブラブだね~」
憂「あ、わわ、ち、違うの…」
206: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:03:01.00 ID:zeFzKtTs0
岡崎「ご、誤解するなよ、これは別に…」
唯「…必死になるところが、怪しいね~」
岡崎「い、いや、だから…」
唯「…岡崎くん、アイスありがとう。それだけいいにきたんだ。それじゃ、おやすみ」
バタン
岡崎「………」
妙な勘違いをされていなければいいが…。
―――――――――――――――――――――
岡崎「疲れた時はすぐに呼んでくれよ。駆けつけるからさ」
憂「ありがとうございます、岡崎さん。私、今日はすごく安心できました」
岡崎「そりゃ、よかった。じゃあ、また」
憂「はい、また学校で」
―――――――――――――――――――――
それからも、俺は見舞いに行き続けた。
平沢の熱はまださがらない。
そして、とうとう当日を迎えてしまった。
唯「…必死になるところが、怪しいね~」
岡崎「い、いや、だから…」
唯「…岡崎くん、アイスありがとう。それだけいいにきたんだ。それじゃ、おやすみ」
バタン
岡崎「………」
妙な勘違いをされていなければいいが…。
―――――――――――――――――――――
岡崎「疲れた時はすぐに呼んでくれよ。駆けつけるからさ」
憂「ありがとうございます、岡崎さん。私、今日はすごく安心できました」
岡崎「そりゃ、よかった。じゃあ、また」
憂「はい、また学校で」
―――――――――――――――――――――
それからも、俺は見舞いに行き続けた。
平沢の熱はまださがらない。
そして、とうとう当日を迎えてしまった。
207: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:03:45.50 ID:zeFzKtTs0
―――――――――――――――――――――
春原「平沢が抜けた穴はさ、僕が埋めてやってもいいよ」
春原「ほら、このカスタネットのカス太でさ、うんたん♪うんたん♪って…」
律「………」
紬「………」
澪「………」
梓「………」
岡崎「春原、空気よめ」
春原「…ははっ、冗談だよ」
岡崎「それと、カスはおまえだ」
春原「そういう意味のカス太じゃねぇよっ! 平沢のギー太にたいしてのパロディだよっ!」
当日になっても、平沢の熱はやっぱり下がらなくて…。
部内には諦めのムードが漂っていた。
がちゃり
唯「やっほー、みんな!」
律「唯!」
梓「先輩!」
春原「平沢が抜けた穴はさ、僕が埋めてやってもいいよ」
春原「ほら、このカスタネットのカス太でさ、うんたん♪うんたん♪って…」
律「………」
紬「………」
澪「………」
梓「………」
岡崎「春原、空気よめ」
春原「…ははっ、冗談だよ」
岡崎「それと、カスはおまえだ」
春原「そういう意味のカス太じゃねぇよっ! 平沢のギー太にたいしてのパロディだよっ!」
当日になっても、平沢の熱はやっぱり下がらなくて…。
部内には諦めのムードが漂っていた。
がちゃり
唯「やっほー、みんな!」
律「唯!」
梓「先輩!」
208: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:04:28.57 ID:zeFzKtTs0
紬「唯ちゃん…」
澪「もう、大丈夫なのか?」
唯「ばっちりだよ~、ブイ!」
さわ子「本当に、大丈夫? これで熱、計ってみなさい」
唯「う…いや、必要ないよ~、私、元気だし!」
さわ子「唯ちゃん」
唯「う…はい…」
―――――――――――――――――――――
さわ子「…7度3分か…」
唯「…うぅ」
律「唯…まだやっぱり熱が…」
唯「………」
さわ子「教師としては、止めるべきなんでしょうけど…」
さわ子「昔、同じ音楽をやっていた者同士として…見逃しましょう。やりたいんでしょ、唯ちゃん」
唯「うんっ、もちろんだよっ」
澪「もう、大丈夫なのか?」
唯「ばっちりだよ~、ブイ!」
さわ子「本当に、大丈夫? これで熱、計ってみなさい」
唯「う…いや、必要ないよ~、私、元気だし!」
さわ子「唯ちゃん」
唯「う…はい…」
―――――――――――――――――――――
さわ子「…7度3分か…」
唯「…うぅ」
律「唯…まだやっぱり熱が…」
唯「………」
さわ子「教師としては、止めるべきなんでしょうけど…」
さわ子「昔、同じ音楽をやっていた者同士として…見逃しましょう。やりたいんでしょ、唯ちゃん」
唯「うんっ、もちろんだよっ」
209: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:05:11.76 ID:zeFzKtTs0
さわ子「そう。なら、おもいっきりやりなさい」
唯「さわちゃ~ん、あんたはぁ、い~い先生だぁねぁ~。わしゃ感動したよぉ」
律「なんのキャラだよ、ったく。とりあえず、あとちょっと時間あるから、最後に合わせてみようぜー」
唯「そうだね!…て、アレ? あ…あああ!?」
澪「ど、どうしたんだ、唯?」
唯「ギー太…忘れちゃった…」
律「えぇー!?」
紬「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
律「なんでそんな、一番大事なものを…」
唯「くることに精一杯で…うぅ…どうしよう」
岡崎「平沢、お前ん家のカギ、かせ。俺が取ってきてやる」
春原「おまえ、平沢ん家、知ってんの?」
岡崎「ああ、まぁな」
春原「なんで? そんな実家に通うほど、仲良かったの?」
澪「…そ、そうなの、岡崎くん?」
唯「さわちゃ~ん、あんたはぁ、い~い先生だぁねぁ~。わしゃ感動したよぉ」
律「なんのキャラだよ、ったく。とりあえず、あとちょっと時間あるから、最後に合わせてみようぜー」
唯「そうだね!…て、アレ? あ…あああ!?」
澪「ど、どうしたんだ、唯?」
唯「ギー太…忘れちゃった…」
律「えぇー!?」
紬「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
律「なんでそんな、一番大事なものを…」
唯「くることに精一杯で…うぅ…どうしよう」
岡崎「平沢、お前ん家のカギ、かせ。俺が取ってきてやる」
春原「おまえ、平沢ん家、知ってんの?」
岡崎「ああ、まぁな」
春原「なんで? そんな実家に通うほど、仲良かったの?」
澪「…そ、そうなの、岡崎くん?」
210: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:05:56.99 ID:zeFzKtTs0
岡崎「後で詳しく話してやるよ。でも今は、ほら、平沢、貸せよ」
唯「う、うん…」
鍵を受け取ると、すぐに俺は駆け出した。
―――――――――――――――――――――
岡崎(あった!)
それは、平沢の自室に立てかけてあった。
俺は、急ぎながらも、傷つけないように、慎重に担いだ。
かなり、重い。
岡崎(いつも、こんなもん持ってんのか、あいつは…)
急ぎ、家を出る。
―――――――――――――――――――――
岡崎「はぁっ…はっ、はぁ…」
岡崎(これを担ぎながらの坂は、だいぶこたえるぞ…)
汗だくになりながら、坂を駆け上がる。
―――――――――――――――――――――
講堂に着くと、なぜか壇上に春原が一人立っていた。
ドラムやマイク、その他機材のセッティングは全て済んでいるのにだ。
唯「う、うん…」
鍵を受け取ると、すぐに俺は駆け出した。
―――――――――――――――――――――
岡崎(あった!)
それは、平沢の自室に立てかけてあった。
俺は、急ぎながらも、傷つけないように、慎重に担いだ。
かなり、重い。
岡崎(いつも、こんなもん持ってんのか、あいつは…)
急ぎ、家を出る。
―――――――――――――――――――――
岡崎「はぁっ…はっ、はぁ…」
岡崎(これを担ぎながらの坂は、だいぶこたえるぞ…)
汗だくになりながら、坂を駆け上がる。
―――――――――――――――――――――
講堂に着くと、なぜか壇上に春原が一人立っていた。
ドラムやマイク、その他機材のセッティングは全て済んでいるのにだ。
211: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:06:40.38 ID:zeFzKtTs0
岡崎(なにやってんだ、あいつは)
春原「んー…はぁぁああっ!」
春原「うわぁあ!指が!離れた!千切れたぁあ!?これ、種も仕掛けもないよ!!すごいよ!」
春原は、あの有名な、誰もが知っている、親指が千切れたように見えるマジックをやっていた。
でも、あいつのキャラでは、マジックではなく、ただのスベリ芸に見えたのも事実だ。
観客「消えろー!」
観客2「今すぐ消滅しろー!」
観客3「軽音部の女の子出せよー!」
観客席からは、ブーイングの嵐。
と、その時、春原と目が合った。
春原「………っ!」
首を舞台袖のほうに振り、何かを伝えようとしている。
多分、急げ、といいたいのだろう。
岡崎(時間稼ぎしてたのか、あいつは)
その信号を受け取り、舞台袖に向かった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「すまん、遅くなった」
春原「んー…はぁぁああっ!」
春原「うわぁあ!指が!離れた!千切れたぁあ!?これ、種も仕掛けもないよ!!すごいよ!」
春原は、あの有名な、誰もが知っている、親指が千切れたように見えるマジックをやっていた。
でも、あいつのキャラでは、マジックではなく、ただのスベリ芸に見えたのも事実だ。
観客「消えろー!」
観客2「今すぐ消滅しろー!」
観客3「軽音部の女の子出せよー!」
観客席からは、ブーイングの嵐。
と、その時、春原と目が合った。
春原「………っ!」
首を舞台袖のほうに振り、何かを伝えようとしている。
多分、急げ、といいたいのだろう。
岡崎(時間稼ぎしてたのか、あいつは)
その信号を受け取り、舞台袖に向かった。
―――――――――――――――――――――
岡崎「すまん、遅くなった」
212: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:07:24.54 ID:zeFzKtTs0
唯「岡崎くんっ」
律「いや、まだギリセーフだよ。あいつが舞台に立ったばっかりだからさ。前座みたいな感じになってると思う」
澪「みんな、いこう!」
梓「はい!」
紬「うん、がんばろう!」
田井中は、春原に戻るよう指示を出し、それと入れ代わるように出て行った。
秋山たちも、それに続く。
岡崎「ほら、平沢。おまえもいってこい」
ギターを渡す。
唯「ありがとう岡崎くん。こんな時になんだけど、私ね…」
岡崎「なんだ」
唯「…ううん、やっぱり、なんでもない。全部終わってから…いうよ。それまでのお楽しみ」
言って、平沢も舞台に出て行った。
春原「…おまえ、遅すぎ」
岡崎「これでも、頑張ったほうなんだ」
春原「おまえが、もっと頑張れば、僕は…うぅ…怒りのぶつけどころふぁ…」
律「いや、まだギリセーフだよ。あいつが舞台に立ったばっかりだからさ。前座みたいな感じになってると思う」
澪「みんな、いこう!」
梓「はい!」
紬「うん、がんばろう!」
田井中は、春原に戻るよう指示を出し、それと入れ代わるように出て行った。
秋山たちも、それに続く。
岡崎「ほら、平沢。おまえもいってこい」
ギターを渡す。
唯「ありがとう岡崎くん。こんな時になんだけど、私ね…」
岡崎「なんだ」
唯「…ううん、やっぱり、なんでもない。全部終わってから…いうよ。それまでのお楽しみ」
言って、平沢も舞台に出て行った。
春原「…おまえ、遅すぎ」
岡崎「これでも、頑張ったほうなんだ」
春原「おまえが、もっと頑張れば、僕は…うぅ…怒りのぶつけどころふぁ…」
220: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:28:14.46 ID:zeFzKtTs0
怒りとも悲しみともつかない表情で、泣き始めてしまった。
岡崎(まぁ、あれはどうみても大惨事だったからな…)
岡崎「カツ丼おごってやるから、元気出せよ」
春原「絶対だぞぉ…うぅ…」
わっ、と観客席から沸いた歓声が、ここまで聞こえてきた。
どうやらライブが始まったようだ。
岡崎「おい、俺たちも正面から見るぞ」
春原「うぅ…」
―――――――――――――――――――――
適当な空席を見つけ、腰を下ろす。
舞台を見上げると、平沢がMCをしていた。
唯『どうも、放課後ティータイムです! ちょっとトラブルがあって、お見苦しい前座を見せてしまい、すみませんでした…』
どっ、と笑いが起こる。
春原「…の野郎ぉ…おまえがやれって、いったんだろーが…」
唯『それでは一曲目、きいてくださいっ、ふわふわ時間!』
演奏が始まる。
俺や春原も含め、その場にいた全員が真剣に聴き入っていたと思う。
岡崎(まぁ、あれはどうみても大惨事だったからな…)
岡崎「カツ丼おごってやるから、元気出せよ」
春原「絶対だぞぉ…うぅ…」
わっ、と観客席から沸いた歓声が、ここまで聞こえてきた。
どうやらライブが始まったようだ。
岡崎「おい、俺たちも正面から見るぞ」
春原「うぅ…」
―――――――――――――――――――――
適当な空席を見つけ、腰を下ろす。
舞台を見上げると、平沢がMCをしていた。
唯『どうも、放課後ティータイムです! ちょっとトラブルがあって、お見苦しい前座を見せてしまい、すみませんでした…』
どっ、と笑いが起こる。
春原「…の野郎ぉ…おまえがやれって、いったんだろーが…」
唯『それでは一曲目、きいてくださいっ、ふわふわ時間!』
演奏が始まる。
俺や春原も含め、その場にいた全員が真剣に聴き入っていたと思う。
222: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:32:11.61 ID:zeFzKtTs0
それほどまでに、あいつらの演奏は胸を打つものだった。
―――――――――――――――――――――
アンコールにも応え、数曲こなすと、終わりの時も近づいてきた。
―――――――――――――――――――――
唯『みんなありがとう!じゃあ、最後に一曲。これは、私のアカペラです。演奏は、ないよ』
予定外の行動なのか、軽音部メンバーが、呆気に取られた表情で、平沢を見ていた。
唯『聴いてください。時を刻む唄』
一度深呼吸した後、マイクも使わず、歌いだした。
館内全ての注目を集めて。
さっきまでの熱気が、静まっていた。
みんな、ただ静かに、平沢の声を聞いていた。
そして、ついには歌いきり…
唯「…ふぅ。ありがとうございました!」
そう締めくくった。
少しの静寂の後…
皆、一様に、惜しみない拍手を送っていた。
ステージの上では、田井中たちも平沢に拍手を送っていた。
そして、客席からの拍手がおさまらない中、中央に集まり、整列と礼をして、幕は閉じられた。
ライブは、成功に終わったのだ。
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
アンコールにも応え、数曲こなすと、終わりの時も近づいてきた。
―――――――――――――――――――――
唯『みんなありがとう!じゃあ、最後に一曲。これは、私のアカペラです。演奏は、ないよ』
予定外の行動なのか、軽音部メンバーが、呆気に取られた表情で、平沢を見ていた。
唯『聴いてください。時を刻む唄』
一度深呼吸した後、マイクも使わず、歌いだした。
館内全ての注目を集めて。
さっきまでの熱気が、静まっていた。
みんな、ただ静かに、平沢の声を聞いていた。
そして、ついには歌いきり…
唯「…ふぅ。ありがとうございました!」
そう締めくくった。
少しの静寂の後…
皆、一様に、惜しみない拍手を送っていた。
ステージの上では、田井中たちも平沢に拍手を送っていた。
そして、客席からの拍手がおさまらない中、中央に集まり、整列と礼をして、幕は閉じられた。
ライブは、成功に終わったのだ。
―――――――――――――――――――――
226: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:35:49.84 ID:zeFzKtTs0
創立者際も、つつがなく終了し、軽音部一行は平沢家で打ち上げをすることとあいなった。
春原「カンパーイ!」
律「カンパーイ!」
カンッ
律「いやーしかし、大成功に終わって、よかったなー!春原は大怪我したけど」
春原「感謝しろよ、てめー。僕の犠牲の上に成り立ってること、忘れるなよ」
律「あんな糞にも満たないウンコ芸に感謝できるかっつーの」
律「もっとマシな前座だったら、本命である私たちのとき、さらに盛り上がってたかもしれないのに」
春原「ざけんな、デコ!」
律「デコいうな、ヘタレ!」
澪「お、落ち着いて、ふたりとも…」
さわ子「にしても、唯ちゃんがあんな歌用意してたなんてねー。びっくりだったわ」
梓「私もです。いい歌でしたよね」
紬「君だけが過ぎ去った坂の途中は~ってね。私も、好き」
律「澪、お株奪われちゃったな~」
澪「う、うるさいな…。でも私もいい歌だと思ったよ」
春原「カンパーイ!」
律「カンパーイ!」
カンッ
律「いやーしかし、大成功に終わって、よかったなー!春原は大怪我したけど」
春原「感謝しろよ、てめー。僕の犠牲の上に成り立ってること、忘れるなよ」
律「あんな糞にも満たないウンコ芸に感謝できるかっつーの」
律「もっとマシな前座だったら、本命である私たちのとき、さらに盛り上がってたかもしれないのに」
春原「ざけんな、デコ!」
律「デコいうな、ヘタレ!」
澪「お、落ち着いて、ふたりとも…」
さわ子「にしても、唯ちゃんがあんな歌用意してたなんてねー。びっくりだったわ」
梓「私もです。いい歌でしたよね」
紬「君だけが過ぎ去った坂の途中は~ってね。私も、好き」
律「澪、お株奪われちゃったな~」
澪「う、うるさいな…。でも私もいい歌だと思ったよ」
228: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:36:47.91 ID:zeFzKtTs0
澪「唯が、君だけを好きでいたよ、なんて歌詞、意外だと思ったけど」
さわ子「唯ちゃん恋でもしたの?」
唯「えへへ~、えーっとねぇ…そうだよ」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「まぁ…」
律「だ、誰だ! 相手は、誰だぁー!?ちゃんと、人間だろうな!? ギー太とかいわないよな!?」
唯「失礼だなー、ちゃんと人間だよぉ」
律「マジカヨ…そいつ、私の知ってる奴?」
唯「うん、よく知ってるよ」
律「だ、誰…? 私にだけでも、ひっそり教えてよ」
唯「ん? えっとね、岡崎くん」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「あら…」
春原「ぶふぅううっ!!」
さわ子「唯ちゃん恋でもしたの?」
唯「えへへ~、えーっとねぇ…そうだよ」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「まぁ…」
律「だ、誰だ! 相手は、誰だぁー!?ちゃんと、人間だろうな!? ギー太とかいわないよな!?」
唯「失礼だなー、ちゃんと人間だよぉ」
律「マジカヨ…そいつ、私の知ってる奴?」
唯「うん、よく知ってるよ」
律「だ、誰…? 私にだけでも、ひっそり教えてよ」
唯「ん? えっとね、岡崎くん」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「あら…」
春原「ぶふぅううっ!!」
229: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:37:32.86 ID:zeFzKtTs0
春原は、俺の隣でジュースを噴き出していた。
岡崎「……へ?」
律「じゃあ、岡崎によくじゃれてたのって、あれ、そういう意味だったの…?」
さわ子「これは…私も気づかなかったわ…」
澪「あ…はわわわ」
梓「…えぇえー…」
紬「あらあら…」
律「で、岡崎くんよぉ…返事のほどは…?」
岡崎「いや…返事って、いわれてもな…」
いきなりのことで、俺も動揺していた。
憂「………」
俺は、なぜかその時、憂ちゃんを目で追っていた。
端のほうで、ちょこんと座っている。
律「唯のために、走ってギー太取りにいってたし…脈アリ?」
岡崎「いや…」
唯「岡崎くんは…違うよね」
岡崎「……へ?」
律「じゃあ、岡崎によくじゃれてたのって、あれ、そういう意味だったの…?」
さわ子「これは…私も気づかなかったわ…」
澪「あ…はわわわ」
梓「…えぇえー…」
紬「あらあら…」
律「で、岡崎くんよぉ…返事のほどは…?」
岡崎「いや…返事って、いわれてもな…」
いきなりのことで、俺も動揺していた。
憂「………」
俺は、なぜかその時、憂ちゃんを目で追っていた。
端のほうで、ちょこんと座っている。
律「唯のために、走ってギー太取りにいってたし…脈アリ?」
岡崎「いや…」
唯「岡崎くんは…違うよね」
230: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:38:14.77 ID:zeFzKtTs0
律「唯…?」
唯「岡崎くんはもう、好きな人がいるんだよね…そう、だよね」
律「?? なんか、ふたりとも、わけありなのかな…? あははー…」
岡崎「…俺は…」
憂ちゃんが…
唯「あれ? もしかして、私の勘違いだったかな? だったら、ちゅーしちゃおーっと」
立ち上がり、俺のほうに歩いてくる。
憂「お姉ちゃん、待って!」
それを、控えめにだが、腕を掴んで、憂ちゃんが止めていた。
憂「あ…」
律「う、憂ちゃんがなぜ…?」
澪「まさか…憂ちゃんも…」
梓「いや、憂は唯先輩のこと大好きだから、取られたくなくて…ってことだよね…?」
憂「うぅ…私は…」
唯「そうなの? もぉ、お姉ちゃんっこだなぁ、憂は」
唯「岡崎くんはもう、好きな人がいるんだよね…そう、だよね」
律「?? なんか、ふたりとも、わけありなのかな…? あははー…」
岡崎「…俺は…」
憂ちゃんが…
唯「あれ? もしかして、私の勘違いだったかな? だったら、ちゅーしちゃおーっと」
立ち上がり、俺のほうに歩いてくる。
憂「お姉ちゃん、待って!」
それを、控えめにだが、腕を掴んで、憂ちゃんが止めていた。
憂「あ…」
律「う、憂ちゃんがなぜ…?」
澪「まさか…憂ちゃんも…」
梓「いや、憂は唯先輩のこと大好きだから、取られたくなくて…ってことだよね…?」
憂「うぅ…私は…」
唯「そうなの? もぉ、お姉ちゃんっこだなぁ、憂は」
231: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:38:59.42 ID:zeFzKtTs0
唯「大丈夫。岡崎くんと同じくらい、憂のことも好きだよ。だから、離して?」
憂「違うの…好きなの…私、岡崎さんが…好きなのっ!」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「あらあらまぁまぁ…」
春原「どうなってんだ…どうなってんだ…」
呪文のように呟く春原。
唯「そうなの? 岡崎くんは、どう? 憂のこと、好き?」
岡崎「………」
憂ちゃんと目が合う。
俺をじっと、みつめている。
答えを、待っているんだ。
だったら…
岡崎「…ああ。好きだ」
憂「うぅ…岡崎さん…」
唯「…はぁ~、やっぱりね。憂、岡崎くんのとなり、座りなよ」
憂「うん…」
憂「違うの…好きなの…私、岡崎さんが…好きなのっ!」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「あらあらまぁまぁ…」
春原「どうなってんだ…どうなってんだ…」
呪文のように呟く春原。
唯「そうなの? 岡崎くんは、どう? 憂のこと、好き?」
岡崎「………」
憂ちゃんと目が合う。
俺をじっと、みつめている。
答えを、待っているんだ。
だったら…
岡崎「…ああ。好きだ」
憂「うぅ…岡崎さん…」
唯「…はぁ~、やっぱりね。憂、岡崎くんのとなり、座りなよ」
憂「うん…」
232: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:39:43.05 ID:zeFzKtTs0
恥ずかしそうにやってきて、俺の隣に座る。
俺も、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
何も、こんな大勢の前で告らなくても、よかったんじゃ…
律「え…」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「まぁまぁあらあら…」
律「なんで…? ていうか、あんた、いつ憂ちゃんとそこまでの仲に…?」
岡崎「まぁ、いろいろあったんだよ」
律「ひー、こりゃー、とんだダークホースがいたもんだわ…」
澪「う…うぅ…うぇーん…」
梓「澪先輩…泣か…泣かないでくださ…よ…くすん」
律「泣かせるねぇ、岡崎…。あんた、罪な奴だよ、まったく…ふっ」
澪「うぅ…岡崎くんっ…前に隠れファンがいるっていったよね…あれ、私のことだよ…」
岡崎「そ、そうか…ありがとう…」
澪「私も好きだったんだよ…うひゃぁああんっ」
俺も、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
何も、こんな大勢の前で告らなくても、よかったんじゃ…
律「え…」
律「えぇー!?」
梓「えぇー!?」
澪「えぇー!?」
さわ子「えぇー!?」
紬「まぁまぁあらあら…」
律「なんで…? ていうか、あんた、いつ憂ちゃんとそこまでの仲に…?」
岡崎「まぁ、いろいろあったんだよ」
律「ひー、こりゃー、とんだダークホースがいたもんだわ…」
澪「う…うぅ…うぇーん…」
梓「澪先輩…泣か…泣かないでくださ…よ…くすん」
律「泣かせるねぇ、岡崎…。あんた、罪な奴だよ、まったく…ふっ」
澪「うぅ…岡崎くんっ…前に隠れファンがいるっていったよね…あれ、私のことだよ…」
岡崎「そ、そうか…ありがとう…」
澪「私も好きだったんだよ…うひゃぁああんっ」
234: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:40:34.11 ID:zeFzKtTs0
岡崎「いや、俺は憂ちゃんが…」
澪「知ってるぅ…それ、知ってるよぉ…うぇえええええん!!」
梓「憂、岡崎先輩に、遅刻せず登校するようにいってね。私が何度いってもだめだったけど…」
梓「でも、憂ならきっと…くすん…素直に聞いてくれると思うから…」
憂「う、うん…」
さわ子「岡崎、あんた、すごいもて方してるわね…」
岡崎「はは…」
さわ子「まぁ、こんな可愛い彼女もできたことだし、これからは真面目に生きなさいよ」
さわ子「今のだらけた生活続けてると、すぐに愛想つかされちゃうわよ」
岡崎「まぁ…そうならないよう、頑張るよ」
春原「…岡崎」
今まで黙っていた春原が、俺の両肩を掴み、迫ってくる。
春原「おまえ…おまえ…おまえ岡崎ぃいいいいいいい!!」
岡崎「ああ、そうだよ。俺は岡崎だ」
春原「おまえ、おまえ…おまえザキオカーーーーーーーーー!!」
澪「知ってるぅ…それ、知ってるよぉ…うぇえええええん!!」
梓「憂、岡崎先輩に、遅刻せず登校するようにいってね。私が何度いってもだめだったけど…」
梓「でも、憂ならきっと…くすん…素直に聞いてくれると思うから…」
憂「う、うん…」
さわ子「岡崎、あんた、すごいもて方してるわね…」
岡崎「はは…」
さわ子「まぁ、こんな可愛い彼女もできたことだし、これからは真面目に生きなさいよ」
さわ子「今のだらけた生活続けてると、すぐに愛想つかされちゃうわよ」
岡崎「まぁ…そうならないよう、頑張るよ」
春原「…岡崎」
今まで黙っていた春原が、俺の両肩を掴み、迫ってくる。
春原「おまえ…おまえ…おまえ岡崎ぃいいいいいいい!!」
岡崎「ああ、そうだよ。俺は岡崎だ」
春原「おまえ、おまえ…おまえザキオカーーーーーーーーー!!」
235: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:41:18.47 ID:zeFzKtTs0
岡崎「ザキヤマみたくいうな…用件をいえ…」
春原「お゛ぉ゛がぁ゛ざぁ゛ぎぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」
岡崎(うぜぇ…)
春原は完全に壊れてしまった。
―――――――――――――――――――――
岡崎(…今、何時だ)
目覚ましのアラームで起きたのは、いつぶりだろうか。
まだ、まともにバスケをやれていた頃、朝錬に間に合うように、いつも早起きしていた。
それが最後の記憶だ。
岡崎(ということは、中学以来か…)
俺は寝ぼけ眼で時間を確認する。
まだ、7時になったばかりだった。
岡崎(…ああ、そうか。今日から、そうしようって、昨日決めたもんな…)
あの阿鼻叫喚の宴の中、俺は憂ちゃんとある約束をした。
生活をまともに送る、という恋人同士らしからぬものだ。
それは、憂ちゃんと付き合うなら、そうしろ、と周りにさせられたようなものだったが。
岡崎「おし…」
俺は自分自身に活をいれ、心地よい布団の誘惑を断ち切った。
春原「お゛ぉ゛がぁ゛ざぁ゛ぎぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」
岡崎(うぜぇ…)
春原は完全に壊れてしまった。
―――――――――――――――――――――
岡崎(…今、何時だ)
目覚ましのアラームで起きたのは、いつぶりだろうか。
まだ、まともにバスケをやれていた頃、朝錬に間に合うように、いつも早起きしていた。
それが最後の記憶だ。
岡崎(ということは、中学以来か…)
俺は寝ぼけ眼で時間を確認する。
まだ、7時になったばかりだった。
岡崎(…ああ、そうか。今日から、そうしようって、昨日決めたもんな…)
あの阿鼻叫喚の宴の中、俺は憂ちゃんとある約束をした。
生活をまともに送る、という恋人同士らしからぬものだ。
それは、憂ちゃんと付き合うなら、そうしろ、と周りにさせられたようなものだったが。
岡崎「おし…」
俺は自分自身に活をいれ、心地よい布団の誘惑を断ち切った。
241: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:50:38.49 ID:zeFzKtTs0
―――――――――――――――――――――
用意を済ませ、下に降りると、親父が居間で寝ていた。
寝る前まで酒を飲んでいたのだろう。
瓶が周囲に転がっていた。
岡崎「………」
俺は、黙ってその瓶と、テーブルの上にある食器を片づけた。
いつもなら、そんなことはしない。
だが、今は…。
親父「う…ん…」
親父が、起きだした。
俺の立てた物音で目覚めたのだろう。
親父「…すまないね、片づけてもらって」
岡崎「…ああ」
親父「今から学校かい? 朋也くん」
岡崎「…っ、ああ…」
そう短く返事をし、早足でその場を去った。
―――――――――――――――――――――
変わりたいと、思ったが…そう、うまくはいかないようだ。
用意を済ませ、下に降りると、親父が居間で寝ていた。
寝る前まで酒を飲んでいたのだろう。
瓶が周囲に転がっていた。
岡崎「………」
俺は、黙ってその瓶と、テーブルの上にある食器を片づけた。
いつもなら、そんなことはしない。
だが、今は…。
親父「う…ん…」
親父が、起きだした。
俺の立てた物音で目覚めたのだろう。
親父「…すまないね、片づけてもらって」
岡崎「…ああ」
親父「今から学校かい? 朋也くん」
岡崎「…っ、ああ…」
そう短く返事をし、早足でその場を去った。
―――――――――――――――――――――
変わりたいと、思ったが…そう、うまくはいかないようだ。
243: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 03:53:36.01 ID:zeFzKtTs0
―――――――――――――――――――――
坂の下までやってくる。
そこに、いた。
朝日の中に。
その姿を見て、さっきまでの、陰鬱とした気分が、少しやわらいでいくの感じる。
岡崎「おはよう」
俺は声をかけた。
憂「あ、おはようございます、岡崎さん」
俺は、ふと、過ぎ去っていく周りの連中を見てみた。
みんな、それがあたりまえだと、そんな顔をして坂を登っていく。
俺にとって、それは異質なことなのに…。
もしかしたら、と考えてしまう。
憂ちゃんにとっては、俺という存在が異質で、もっと他に相応しい人間がいるんじゃないだろうか。
こんな、家庭や、生活態度に問題を抱えているような奴じゃなく、もっとまともな。
そう、まさに、こんなまともな時間、まともな世界で生きるような奴が。
だとしたら、俺は…
憂「どうしました? 岡崎さん」
岡崎「いや…別に」
表情に出てしまっていたらしい。
せっかく、付き合うようになって、初めて一緒に登校する時なのに…。
坂の下までやってくる。
そこに、いた。
朝日の中に。
その姿を見て、さっきまでの、陰鬱とした気分が、少しやわらいでいくの感じる。
岡崎「おはよう」
俺は声をかけた。
憂「あ、おはようございます、岡崎さん」
俺は、ふと、過ぎ去っていく周りの連中を見てみた。
みんな、それがあたりまえだと、そんな顔をして坂を登っていく。
俺にとって、それは異質なことなのに…。
もしかしたら、と考えてしまう。
憂ちゃんにとっては、俺という存在が異質で、もっと他に相応しい人間がいるんじゃないだろうか。
こんな、家庭や、生活態度に問題を抱えているような奴じゃなく、もっとまともな。
そう、まさに、こんなまともな時間、まともな世界で生きるような奴が。
だとしたら、俺は…
憂「どうしました? 岡崎さん」
岡崎「いや…別に」
表情に出てしまっていたらしい。
せっかく、付き合うようになって、初めて一緒に登校する時なのに…。
245: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 04:01:12.15 ID:zeFzKtTs0
憂「早起きは、まだ辛いですか?」
岡崎「ああ…まぁな」
憂「そうですか…。でも、焦ることはないです。ゆっくりでも、できるようになっていきましょう」
憂「私も、側にいて、応援しますから。きっと、どんなことだって、ふたりでならできちゃいます」
ああ…そうか…
岡崎「…そっか。ありがとな」
こんなふうに慕ってくれる存在が、側にいるだけで、こんなにも救われるのか。
俺が、今、この子に相応しくないのなら、相応しくなるように、変えていけばいいだけの話だ。
憂ちゃんのいうように、たとえ、ゆっくりだったとしても。
憂「いえ、当然のことです。私、岡崎さんの…彼女ですから」
岡崎「ああ、だな」
憂「はい…」
この子となら、きっと、支えあいながら、進んでいける。
それは、お互いがお互いを必要とする限り、続いていくのだろう。
そして、いつかは…親父とのことも、越えていけるのだろうか。
岡崎(いけるよな…ふたりなら)
そんなふうにさえ、今は思うことができていた。
岡崎「ああ…まぁな」
憂「そうですか…。でも、焦ることはないです。ゆっくりでも、できるようになっていきましょう」
憂「私も、側にいて、応援しますから。きっと、どんなことだって、ふたりでならできちゃいます」
ああ…そうか…
岡崎「…そっか。ありがとな」
こんなふうに慕ってくれる存在が、側にいるだけで、こんなにも救われるのか。
俺が、今、この子に相応しくないのなら、相応しくなるように、変えていけばいいだけの話だ。
憂ちゃんのいうように、たとえ、ゆっくりだったとしても。
憂「いえ、当然のことです。私、岡崎さんの…彼女ですから」
岡崎「ああ、だな」
憂「はい…」
この子となら、きっと、支えあいながら、進んでいける。
それは、お互いがお互いを必要とする限り、続いていくのだろう。
そして、いつかは…親父とのことも、越えていけるのだろうか。
岡崎(いけるよな…ふたりなら)
そんなふうにさえ、今は思うことができていた。
246: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 04:01:54.86 ID:zeFzKtTs0
岡崎「じゃあ、いこうか」
憂「はいっ」
俺たちは登りはじめる。
長い、長い坂道を。
憂「はいっ」
俺たちは登りはじめる。
長い、長い坂道を。
247: 名無し ◆ 2010/02/27(土) 04:03:02.23 ID:zeFzKtTs0
ここまで読んでくれた人、支援くれた人、付き合ってくれた人ありがとー。
全部貼れたよ。満足だ。おやすみ。
このスレの住人に幸あれっ
全部貼れたよ。満足だ。おやすみ。
このスレの住人に幸あれっ
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