1: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 21:52:19.47 ID:uKXHVC380
P「というわけでお前ら、事前に言っておいた通り、ちゃんとテニスの練習はしてきたか?」

春香「はい! もちろんですよプロデューサーさん!」

千早「まあ、一応は。春香に誘われて、オフの日はほぼ毎日テニスをしてました」

律子「それでプロデューサー、そろそろ詳しい説明の方をお願いできますか?」

伊織「『この日に全員参加の催し物があるから出来る限りテニスの練習をしとけ』……これくらいしか聞かされてないものね」

P「そうだな。別に隠す必要もなかったかもしれんが、サプライズは多い方がいい」

響「サプライズって?」

P「まぁ落ち着け。まずはこの社長からのメッセージを読むから」

P「『ウォッホン。えーアイドル諸君、我が765プロも君たちのおかげで随分と成長できた。本当にありがとう』」

P「『そこで、感謝と労いの意を込め、テニス大会を開催することにした。何故テニスかというと、ティンときたからだ』」

亜美「ティンときたならちかたないね」

真「まあ……社長だしね」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394110339

引用元: P「アイドルテニス大会」 

 

アイドルマスター2 The world is all one !! (5) (電撃コミックス)
祐佑
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014-04-26)
4: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 21:55:46.99 ID:uKXHVC380
P「『試合はダブルスのトーナメント形式で行い、優勝したペアにはささやかなプレゼントを贈ろうと思う』」

亜美「さっすが社長~!」

あずさ「あらあら、何が貰えるのかしら~」

貴音(らぁめん! らぁめん!)

P「『そのプレゼントとは、賞金100万円!』」

響「おおーっ! 燃えてきたぞー!」

やよい「ひゃっ……! っ……! っ……!」

伊織(100万円か……これまた微妙な金額ね)

P「『それと副賞として、プロデューサー君との一日デート権! ははは、これはまあおまけみたいなもので、あくまで権利だから嫌なら拒否しても』」

P「って、何書いてるんだあの社長は。とにかく、優勝したら100万だからな! あの社長がポケットマネーからこんなに出すなんて、驚いたろ?」

皆「「…………」」

P「声も出ないか。社長のサプライズ、すごいな」

伊織「ま、まあ、副賞はどうでもいいんだけど……ちょうど100万円欲しかったところだし、本気出そうかしらね!」

雪歩「いやいや、伊織ちゃんお金持ちだよね? 私今お金なくって……だから勝ち、譲ってくれないかな? なんて」

春香「さて、プロ100万円のために、がんばるぞーっと!」

美希「あはっ、美希は今覚醒したの」

亜美「ねぇ真美、100万円取ったらどーする? PS4とか買ってもいいよね!」

真美「……え、あ、うん、そだね! 100万円……だもんね、うん」

P(みんな目の色変えてすごいやる気だなぁ。美希なんか髪の色まで変わったような気もするし)

P(まったく、金の亡者ばかりだ)ハハハ

5: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 21:58:42.46 ID:uKXHVC380
律子「それで、ペアはどうやって決めるんですか? この人数だと一人余るような」

亜美「ん?余るって……りっちゃんもやるの?」

律子「ええ、多分。プロデューサー、私にもテニスの練習しとけって言いましたよね?」

P「ああ、律子も参加な。プロデュース業に事務業、そして時々アイドル業もやってる律子には社長も感謝してるらしいからな」

千早「でもそれなら、やはり余りが……」

P「その心配はない。少しでも公平にするため、トーナメント表に偏りが出ないよう……参加者は16人、つまりペアは8組ということになってるからな」

あずさ「16人? プロデューサーさんたちも参加するんでしょうか?」

P「違う。あくまでアイドルたちに競ってもらうということで……765プロと友好な関係にある事務所の、この子たちをゲストに呼んである」

P「というわけで、876プロの三人だ。さぁ、出てきてくれ!」

愛「よろしくお願いしまーす!」
絵理「よろしくお願いします?」
涼「よ、よろしくお願いします」

律子「ええっ!? ちょっと、聞いてないわよ涼!」

涼「だって言っちゃダメって言われてたし……」

P「これもまたサプライズの一貫だからな」

貴音「そのさぷらいずとは、それほどまでに大切なものなのでしょうか」

真「プロデューサーが反応を楽しみたいだけだよ、多分」

6: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:00:41.22 ID:uKXHVC380
P「さて、ペア決めについてだが……こっちで用意したくじ引きで決めてもらう。これもまた公平にするためだ」

雪歩(あうう、真ちゃんと組もうと思ってたのに)

伊織「公平とは言うけど、どう考えても運動神経のいい真や響が有利じゃない?」

P「んー、そりゃまあそうだな。でもテニスってのは単純な運動神経だけの勝負じゃない。俺はお前ら全員に優勝の目はあると思っている」

P「読み合いによる駆け引き、練習で得た技術、そしてアイドルとして身に付けたオーラ……」

P「それら全てが、しっかりと100万円につながってくる! 誰が優勝してもおかしくはない!」

亜美「おー!!」

律子(他はともかくオーラって)

響「自分完璧だから、誰と組んでも優勝しちゃうぞー!」

春香「練習量なら真たちにだって負けてないはず……うん、大丈夫!」

P「それじゃ順番にくじを引いてってくれ」

雪歩(真ちゃんと組めますように真ちゃんと……)

やよい「ひゃくまんえん……」ボー

7: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:02:43.87 ID:uKXHVC380
P「決まったようだな……」



P「チームA! 如月千早・双海亜美!!」

亜美「Aだって! AランクのA! 亜美のA! なんかメッチャいい感じっぽいね千早お姉ちゃん!」

千早「……あまりAA言わないで欲しいのだけれど」

亜美「えー」



P「チームB! 三浦あずさ・秋月涼!」

あずさ「うふふ、よろしくね、涼ちゃん」

涼「はい、よろしくお願いします」

涼(僕なんかがあずささんと組むなんて……夢子ちゃんが見てたらなんて思うかなぁ)



P「チームC! 水瀬伊織・秋月律子!」

伊織「アンタは敵に回すと厄介だと思ってたけど……これは優勝も狙えるわね、にひひっ」

律子「私もそう思ってたところよ。よろしく、伊織」

伊織(まぁほんとはやよいが良かったんだけど、ハズレではないわね)

8: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:05:04.92 ID:uKXHVC380
P「チームD! 双海真美・我那覇響!」

響「がんばろうね真美! 自分完璧だし、きっとなんくるないさー!」

真美「おおっ、自信満々なひびきんマジなんくるねぇ! これは期待せざるをえませんな~」

響「えへへ、真美にも期待してるぞ。なんだかんだで運動神経いいもんな」



P「チームE! 天海春香・高槻やよい!」

やよい「春香さんっ! 私……勝ちたいです! 絶対!」

春香「うん、私もだよ。優勝しよう、やよい!」

春香(100万円はやよいに全部あげて、私は謙虚に副賞の方を頂く……なんて完璧なプランなんだろう)



P「チームF! 四条貴音・星井美希!」

美希「ねぇ貴音、優勝したらおにぎりもラーメンもハニーも全部いただけるんだよ? だから絶対負けられないの!」

貴音「ふふ、貴女がペアとは……真、面白くなりそうです」

9: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:07:53.31 ID:uKXHVC380
P「チームG! 菊地真・日高愛!!」

真「へへっ、よろしく。このペアだと、ややこしい戦略とかは無しでいいよね?」

愛「はいっ! 全力で、がんばりましょーーー!!!」



P「チームH! 萩原雪歩・水谷絵理!!」

雪歩「あっ……えと、よろしくね?」

絵理「はい……よろしく、お願いします?」



P「以上だ! 試合形式は今大会オリジナルルールとして、三ゲーム先取の一セットマッチにした。タイブレークはない。要は先に三ゲーム取った方が勝ちってことだ」

P「それと対戦の組み合わせだが、この後代表者によるくじ引きで決めることにする」

律子「うーん、この中だと特に注意すべきは美希・貴音チーム辺りかしらね」

伊織「誰が相手でも負けないわよ。この伊織ちゃんがいるんだから!」

雪歩(うう、どのチームも強そう……絵理ちゃんには悪いけど、やっぱり真ちゃんと組めなかったのが残念だなぁ)

絵理(ひうぅ、雪歩さんには悪いけど……勝てる気がしない)




そしてトーナメントの組み合わせが決まった!

10: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:09:41.81 ID:uKXHVC380
P「ふむ……こういう組み合わせになったか」

やよい「あうう、春香さん……」

春香「大丈夫……いっぱい練習したんだもん」

千早「春香……」

春香「あっ、千早ちゃん」

千早「そっち、いきなり強敵みたいね」

春香「うん……」

千早「もし勝ち抜けたとしても、次は恐らく彼女のチーム。決勝まで勝ち上がるのは難しいかもしれない」

千早「それでも、だからこそ……これだけは伝えておきたいの」


千早「決勝で会いましょう、春香」

春香「千早ちゃん……」


春香「お願いだからフラグやめて!」

千早「えっ?」


美希「じゃ……行こっか、貴音」

貴音「……ええ、精神統一は済ませました」

美希(ハニーのために)

貴音(らぁめんのために)

美希&貴音「「目指すは……優勝!」」


一回戦第一試合




チームE(天海春香・高槻やよい) VS チームF(星井美希・四条貴音)

19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:42:45.82 ID:uKXHVC380
チームE 【前衛】春香 【後衛】やよい
チームF  【前衛】貴音 【後衛】美希
最初のサービス権……春香

P「それじゃ、始めるぞ」

P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! 春香、サービスプレイ!」

春香「いきます」スッ

春香「よっ!」スパコォンッ

P(おお、普通に良いサーブ)

貴音「はっ!」パコォンッ

やよい「えいっ!」パコォンッ

美希「よーし……」スッ

美希「いけーー!」ブンッ

美希「……あれ?」

P「イン!」

春香「か、空振った……?」

やよい「いぇい! 先制点でーす!」

春香(美希、もしかして……)

20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:45:28.66 ID:uKXHVC380
美希「んー、失敗しちゃったの。意外と難しいね、これ」

貴音「…………美希、失礼ですが練習は……」

美希「してないよ? ラケット持つのも初めて。こんなすごい賞品のある大会だと思ってなかったし……あっでも、ルールは覚えたから!」

貴音「なんと」

美希「ごめんね貴音。でも大丈夫」

美希「……すぐに慣れるから」

春香(これは……いける!)

P「15-0」

春香「よーし……」スッ

春香「よいしょっ!」スパコォンッ

春香(この春香さんサーブ、初心者に打てるようなサーブではないはず! 二点目は貰った!)

美希「んー……それっ!」パコッ

春香「!」

美希「あはっ、当たった」

春香「え、うそ」

やよい「でも……チャンスボールですっ!」パコォンッ

ドゥンッ

P「イン!」

21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:47:03.12 ID:uKXHVC380
春香「ナ、ナイスやよい!」

やよい「はい、でも……」

春香「うん……早目に勝負決めないと、あの成長速度はまずいかもね」

美希「むー、当たったのにダメだったの。でもなんとなくつかめてきたかな?」

貴音「美希、フォームがまるでなっていません。適当にやっても、今のように相手にちゃんすぼぉるを与えるだけですよ」

美希「そうなの?」

貴音「はい、ですから……まずは私の打ち方を良く見て、真似してみてください」

美希「うん、分かった!」

P「30-0!」

春香「やあっ!」スパコォンッ

貴音「それでは……少し本気を出しましょう」スッ

春香「!」

春香(貴音さんの纏ってる空気が―――変わった?)




貴音「『手打ち麺・やわらかめ』」




パコォンッ

22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:48:55.10 ID:uKXHVC380
ドゥーーーーン



P「……イン!」

春香「なっ……!」

やよい「あうぅ……追いつけませんでした」

春香(何今の、打球の伸び……)

美希「貴音、すごいの! イッパツで決めるなんて」

貴音「ええ、今のは必殺技です。それより美希……」

貴音「ちゃんと、見ていましたか?」

美希「……あはっ」

美希「もちろん。ばっちり見て……覚えたよ?」

春香(なんか必殺技って聞こえた。これテニスだよね?)

やよい「もっと速く……速く動かないと……」

伊織「……」

P「リターンエースなんてやるなぁ貴音。30-15!」

24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:52:02.55 ID:uKXHVC380
春香(必殺技とかよくわかんないけど、少なくとも美希はそんなのできないよね)

春香(よーし、今度こそサービスエース!)

春香「よいしょっ……ええいっ!!」スパコォンッ

美希「貴音みたいに……こうして……」

美希「こう?」パコォンッ

春香「!!」

春香(打たれた!しかも……)

ドゥーーーン

春香(あの打球の伸び……あれは貴音さんの技じゃ……)

やよい「今度は、追い付きますー!」ダッ

トッ

春香「や、やよいナイス! なんとか返せ……」

貴音「よく、返せましたね。しかし……少々、甘いです」スッ

春香(前衛の貴音さんの……目の前……)


貴音「『湯切り落とし』」


パコォンッ


P「イン!」

26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:56:23.00 ID:uKXHVC380
春香「サイドラインギリギリに打ち込む鮮やかなボレー……今のも必殺技、なの……?」

やよい「うう、チャンスボールあげちゃいました~」

美希「うーん、それっぽいの打てたけど……貴音ほどはうまく出来なかったの」

貴音「ふふっ、一度見ただけであれだけ出来れば十分すごいですよ」

美希「そう?」

貴音「やはり美希、貴女には才能があります。見た動きをほぼ完全に模倣する才が」

貴音「この様子ならば、練習をしていないことすらも武器となり得るやもしれません。自分のフォームが出来てしまっていては、模倣の際に妨げとなります故」

美希「んー、よくわかんないけど、貴音の真似をし続ければいいんだね」

貴音「いえ、それではいけません。美希、貴女は……」

貴音「私だけでなく、これから先戦う全ての相手の模倣をするのです。それぞれの良いプレーを、どんどん、増し増しで学習してゆくのです」

美希「へえ……なんだか面白そうなの」


律子「……ほんと、厄介だわ」

伊織「そうね、トーナメントの組み合わせ……私たちがあのチームと当たるとしたら、決勝になる」

律子(決勝まで上がってきたら、その時の美希は……どんな美希で、何が出来るのかしらね)

27: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:58:06.38 ID:uKXHVC380
P「30-30」


春香(次は貴音さん……あのよく伸びる打球には気を付けないと)スッ

春香「えい!」スパコォンッ

貴音「美希を成長させるためには……出し惜しみなど、していられませんね」スッ

貴音「『手打ち麺・粉落とし』」

トッ―――

春香(いきなりドロップショット!?)

やよい(伸びる打球を警戒してちょっと下がってたから、追いつかない!)

貴音「一つお教えしましょう、私の必殺技は、種類、硬さ、トッピング諸々込みで―――」

貴音「108種あります」

春香「なっ……」

美希(また、新しい技……うん、覚えた。この調子で、どんどん、どんどん……)

そして、次もみきたかチームが点を取り―――




P「ゲーム! チームF! 1-0!!」

28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 22:59:22.13 ID:uKXHVC380
春香「強い……」

やよい「春香さん、まだ1ゲームです! がんばりましょう!」

春香「……うん」

P「次は、えー……貴音、サービスプレイ!」

貴音「……」スッ

春香「!」

春香(なんてトスの高さ……)

貴音「『縮れ麺・月見』」タンッ

春香(ジャンプサーブ!?)

ダンッ ギュワァァン

春香「!! 跳ねた後、ぐわんぐわんに曲がって……こんなのやよい、打てな……」

やよい「えいっ!」


パコォンッ


ドゥンッ

30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:01:17.36 ID:uKXHVC380
貴音「なっ……」

春香「打て……た? しかも、リターンエース?」

やよい「うっうー! いぇい!やりましたー!」

春香「やよい、今のどうやって……」

やよい「えっと、集中して……しっかり見て、打ちましたっ!」

春香「なっ……え?」


伊織「……ふふっ」

伊織「やーっと本領発揮ってとこね、やよい」

律子「あら、何か知ってるの?」

伊織「まあ、知ってるってほどでもないんだけど……」

伊織「やよいはね、激安スーパーのタイムセールの荒波に揉まれて生きてきたのよ」

伊織「商品の値段と質を一瞬で見極める目、そしてそれを即座に掴み取る反射神経……やよいのそれは常人を超えているわ」

伊織「普段はあまりその力は出ていないようだけど、お金が絡むとこうなるってわけ」

律子「なるほど、こうなるわけね」

律子「……詳しいわね、やよいに」

伊織「……普通よ、普通」


貴音「……失礼。どうやら貴女を、少々見くびっていたようです」

P「0-15!」

32: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:03:07.46 ID:uKXHVC380
律子「で……問題は、こっちよね」

伊織「ええ……そうなのよね」

春香(やよいが打てたんだもん。私にだって……)

春香「よーし……こいっ!」

貴音「……」スッ

貴音「『縮れ麺・月見』」

ドゥワンッ

春香「……」

春香「え?」

P「15-15!」

律子「……やっぱり」

やよい「うう、春香さん、ドンマイですっ。 次、がんばりましょー!」

春香「あ……うん」

春香(何、あれ。横から見ててもすごいのは伝わったけど……実際に受けてみると、段違い)

春香(ボールが地面に着いて跳ねた後、縦横無尽に曲がりくねって……気付けば目の前から消えてるなんて)

春香(やよいはあんなの、どうやって打ったの? 私には、打てそうにないよ……)

伊織「……」

貴音「さぁ……次、打ちますよ」

美希(すごいサーブ……ミキも早く打ちたいの)

33: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:04:24.48 ID:uKXHVC380
貴音「ほっ」タンッ

貴音「『縮れ麺・月見』」ダンッ

やよい(またあのサーブ……でも、なんとか見える!)

やよい「えいっ!」パコォンッ

春香(すごい……やっぱりやよい、ちゃんと見て打って)

やよい「……! 春香さん! 来ます!」

春香「!」

貴音「はぁぁぁぁあああああああああ」

貴音「『極太麺・バリカタ』」バゴォン

春香(両手打ち!? 前衛の私の真正面に……)

春香「うっ、ぐっ……お、もぉっ……」グググ

春香「わぁっ!」ポンッ

愛「わっ、春香さん、なんとか弾き返しました!」

真「いや……」

トンッ―――

P「アウツ!」

真「弾かされた……かな」

春香「はぁ、はぁ……」ビリビリ

春香(レベルが―――違う)

P「30-15!」

34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:08:03.86 ID:uKXHVC380
律子「……ダメね。心が折れかかってるわ、あの子」

春香「……」

律子「このゲームは、もう……決まったわね。やよいがどれだけ頑張っても、春香がまともにレシーブ出来なければ意味がないもの」

ドゥンッ

春香(うう……)

P「40-15!」

やよい「えいっ!!」パコォンッ

P「40-30!」

ギュイインッ

春香「あっ……」

P「ゲーム!チームF!2-0!」


律子「やっぱりね。さて、こうなるとこの試合、春香たちの勝率は……」カタカタカタカタ

ッターン

律子「20%……ってとこかしら」クイッ

亜美(あ、意外と高い)

伊織(この戦況でもゼロと言い切らないあたりは律子らしいけど……厳しい状況には違いないわね)

伊織(せめて一ゲームくらい取ってみせなさいよ、アンタ達……!)

35: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:11:25.67 ID:uKXHVC380
春香「……」

やよい「春香さん……」

春香「ごめんねやよい、手も足も、出なかった」

やよい「……」

やよい(春香さん、やっぱり気にしてるのかな……あうう、私、どうしたら……)

春香「やよい」

やよい「! はいっ」

春香「私のほっぺ、叩いてくれる?」

やよい「……へ? で、でも」

春香「お願い」

やよい「……」

春香「……」

やよい(春香さん……)グッ

やよい「えいっ!!」

ぺちんっ

春香「っ……」

千早(うらやましい!)ガタッ

やよい「あっ……ご、ごめんなさい春香さん、大丈夫ですかっ?」

春香「ありがとう、やよい。うん……大丈夫、目が覚めた」

春香「天海春香は、もう大丈夫だから」ニコッ

やよい「……?」

37: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:13:40.70 ID:uKXHVC380
春香(ふうー……危ない危ない、あやうく全部諦めちゃうところだったよ)

春香(弱気になってどうするわた春香! 必殺技がなんだ。力の差がなんだ。そんなの……関係ないもん)

春香(私はやっぱり、諦めたくない!)

春香(たとえ勝てなくっても、最後まで頑張らないときっと後悔するから……)

春香(頑張って練習した分、全部出し切らないと、もったいないから……)

春香(そして何より―――――)



 春香『ち~は~や~ちゃん!テニスの練習しよ?』

 千早『また? 春香、確かにプロデューサーは練習しておけと言っていたけれど、少しし過ぎじゃないかしら』

 千早『暇さえあればテニスというのは、その、別に悪いとは言わないけれど……そんな毎日で、春香はいいの?』

 春香『……? いいに決まってるよ。だって――――――』



春香(私は―――)







春香(テニスが好きだから!!)

39: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:15:26.15 ID:uKXHVC380
P「そんじゃ次はやよいサーブだな。やよい、準備いいか?」

やよい「は、はいっ! 頑張ります!」

美希(あはっ、やよいはどんなサーブ見せてくれるのかな)

貴音(丁寧に返すこと、まずはそれを優先しなければ……)

やよい「……」ポーン ポーン

パシッ

やよい(……春香さん……なんだか分からないけど、もう大丈夫って顔してた)

やよい(だとしたらこの一球、すーっごく大事な気がする)

やよい(このあんまり良くない流れを変えられるのは、春香さんしかいないもん。だったら私は)

やよい(力いっぱい、お手伝いしなきゃ!!)

やよい「うっうーー!!!」シュッ

やよい「『はい、ターーーーッチ』!!!」


ドゴォンッ


貴音「! なんと力強い球……」

貴音「ぐっ……」ガッ

貴音「これしき!」パコォッ

春香(基本に忠実に、来たボールに確実に合わせて……)ザッ

春香(空いてるところを狙って……打つ!)ブンッ

パコォンッ

貴音「ッ……」

美希「あっ」

貴音(私も美希も、ちょうど僅かに届かない絶妙な位置に……)

美希「うーん、ジミに普通にいいとこ打たれたの」


春香「やった……」グッ

春香「やっぱりテニスって……楽しい!」


P「15-0!」

40: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:17:22.86 ID:uKXHVC380
やよい「春香さんっ!」

春香「! やよい……」

やよい「えへへ……」スッ

春香「あっ」

春香「……うん」スッ


やよい「はい、たーっち!」パンッ

春香「いえいっ!」パンッ


春香(ありがとう、やよい……私を、信じてくれて)


美希「……向こう、ミョーに盛り上がってるね。たった一点取っただけで、大げさって思うな」

貴音「油断はなりませんよ、美希。負の流れを断ち切る今の一点の重みは、先ほどまでとは違うでしょうから」

美希「そう? んー、だからなのかな」

貴音「……何か?」

美希「あのね、さっき春香が打つとき……ほんのちょっぴりだけど、キラキラしてたの」

貴音「きらきら……ですか」

 P『読み合いによる駆け引き、練習で得た技術、そして―――』

貴音「……」

貴音「もしや……」


春香(もっと続けたい。個性なんてなくたって……もっともっと、楽しみたい!)




―――トクンッ

42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:20:08.27 ID:uKXHVC380
P「やよい、サーブ」

やよい「あっ、はい!」

やよい「よーっし……」シュッ

やよい「『はい、ターーーーッチ』!!」


ドゴォンッ


美希「んー……あれとあれをこう……えいっ!」ドッ

美希「!! って、重っ……」

パカァンッ

P「アウト!」

美希「うえー、思った通りに飛ばなかったの」


律子「……あのサーブも、普通に厄介よね。やよいは本来パワープレイヤーなのかしら」

伊織「サーブに関しては、そうね。一番高い打点から全身を使って振り下ろせるように……なんだかんだで、サーブを一番特訓してたから」

伊織「もっとも、コンスタントに色んな体勢からあんなパワー出せるほど器用じゃないし、あくまでサーブ限定だけどね」

伊織「サーブは力強く、それ以外は持ち前の動体視力と反射神経で確実に捉えて返す。それがやよいのプレイスタイルよ」

律子「……やっぱり詳しいわね」

伊織「……普通よ、普通」


貴音「美希、今の打ち方は……」

美希「あっ、ごめん貴音、素直に貴音の技使っとけば良かったの」

貴音「いえ、私の技は理想的な状況とフォーム、双方揃って初めて形になるもの。故に相手の打球に合わせて、ある程度技を使い分ける必要があります」

貴音「まだ美希は私の技をそれほど多くは覚えていないでしょうし、あのやよいに対抗できるかどうかと考えると……仕方がなかったのかもしれません」

貴音「それより美希、貴女は今……何をしようとしていたのですか?」

美希「……あはっ、バレた?」

美希「実はね―――――」

44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:21:48.53 ID:uKXHVC380
やよい「どんどん、いきまーす!」シュッ


ドゴォン


貴音「……」

貴音(やはり美希、貴女はもっと上に行くべき才の持ち主)

貴音(ならばこの試合……私が全力を持って、勝利へと導きましょう!)


貴音「『奥義―――』」

やよい「!!」





貴音「『らぁめんふぇすてぃばる』」




カッ―――








貴音「……?」

45: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:23:37.42 ID:uKXHVC380
春香「やあっ!」パコォンッ


P「イン!40-0!」


美希「あーっ、また微妙に届かないとこ!」

貴音「な……」

貴音「なんと……このようなことが……」

美希「? どしたの?」


律子「貴音の今の打球……奥義とか言ってたわりには普通だったわね。失敗かしら」

真「……律子、本当にそう思ってるの?」

律子「……」

律子「その可能性が一番現実的だと思った。それ以上でもそれ以下でもないわ」

真「認めたくない……ってわけか。律子らしいや」

愛「あのっ、どういうことです?」

真「えっと、つまりね」




真「―――覚醒したんだよ。春香の、オーラが」




春香(個性なんて……いらない!)ゴォォォォォォ

47: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:25:52.20 ID:uKXHVC380
ドゴォン

P「ゲーム! チームE! 1-2!」

春香&やよい「「いぇい!」」パンッ


美希「……結局やよいのサーブ、返せなかったの」

貴音「仕方ありません。それより次は貴女のさーぶですが、どうしますか?」

美希「一応、春香には貴音の曲がるサーブ、やよいにはやよいの強いサーブを使ってみるつもり。なんとなく覚えたから、多分出来るって思うな」

貴音「……そうですね、では、それで」


P「プレイ!」


美希「よーっし……」シュッ

美希「くらえなの、やよい!」


ドゴォン


やよい(! あれって、私の……)

春香「……」カッ

やよい「……あれ?」


パコォンッ


美希「あっ普通に返された」

貴音「……」

貴音(今の春香には、打たせるべきではない……ですね)

貴音(ならば……)


貴音「『あっさりらぁめん・湯気通し』」


ギュンッ



48: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:28:26.88 ID:uKXHVC380
貴音(この打球は急上昇し前衛の遙か上を通過し、その後急降下する……)

貴音(はず……なのですが……)


春香「はっ!」


バシィッ


P「インッ!」


春香「よーし……また決まった!」グッ

美希「前衛の真正面……どしたの貴音、調子悪い?」

貴音「いえ、私は大丈夫です、が……」

貴音「今ので確信しました。春香は『おーら』を纏っているのです」

美希「オーラ?」

貴音「ええ、彼女のおーらは近付く打球を無個性にするおーら……それによって、どのような変化であろうと、どれほどの威力であろうと、全て無に帰してしまうのです」

美希「えっなにそれずるいの。どうするの?」

貴音「現状、どうすることもできません。が……恐らく体力の消費はかなりのもののはず」

貴音「春香の体力が尽きるまで、粘るしかありません」

美希「むー……」



そして―――――――――――――――


P「ゲーム! チームE! 2-2!」

49: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:29:31.10 ID:uKXHVC380
やよい「うっうー!! 春香さん、追いつきましたー!」

春香「はぁ……はぁ……」

やよい「春香……さん?」

やよい「!!」

やよい(すごい汗……)

P「さぁ、泣いても笑ってもこれが最後のゲームだ。春香、サービスプレイ!」

春香「……」

P「おーい春香、サーブ」

春香「……! あっ、はい」スッ


スパコォンッ


貴音「はぁっ!」


パコォンッ
パコォンッ
パコォンッ


美希「あっ」


ドゥンッ


P「15-0!」

51: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:31:00.22 ID:uKXHVC380
貴音(やはり『普通のテニス』ということであれば、初心者である美希はどうしても不利)

貴音(ですが……そろそろ、ですね)


パコォンッ
パコォンッ

ドゥンッ


P「30-0!」


ブゥンッ


P「30-15!」


バファッ


P「30-30!」


ズキュウウウウウン


P「40-30!」



やよい「よーっし、マッチポイントですよ、春香さ……!!!」

春香「……」



クラッ




ドサッ……

52: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:32:46.94 ID:uKXHVC380
やよい貴音美希「「「!!!!」」」


やよい「春香さん!」

美希「春香……倒れちゃった」

貴音「どうやら、終わりのようですね。真、見事な戦いぶりでした」

春香「……はぁ……っは…………」

P「……出しっ放し、だったからな。オーラによる体力消費、尋常じゃなかったんだろう」

P(本当に惜しかった。後ちょっとで……でも)

P(もう……ここまでだな)


やよい「春香さん! 大丈夫ですか!?」

春香「…………ょぃ……」

やよい「春香さん……」

春香「…………」ボソボソ

やよい「……!!」


P「えー、春香ダウンのため、この試合……」



やよい「待ってください!!」


P「っ!?」



やよい「このまま……」




やよい「続けさせてください!!」

53: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:34:49.47 ID:uKXHVC380
P「なっ……やよい、春香はもう限界なんだ。いくらなんでもそれは……」

「まだ……」

P「!」



春香「はぁ……はぁ……っ」ヨロッ


春香「やれま、す…………!」フラフラ


貴音(立ち上がった……!)

やよい「ごめんなさい、本当は止めなきゃなのかもですけど……」

やよい「春香さん、まだやる気なんです! だから……」

やよい「続けさせてください!」


美希「……あはっ」

美希「それでこそ……ミキのライバルなの」


P「……仕方ないな」

P「これが最後だ。このポイントを取ったチームが勝ち。それでいいな?」

やよい「はいっ!!」


貴音「……美希、春香のオーラはもう消えています。つまり、必殺技も使い放題です」

美希「うん、任せて。この試合で得たミキの全部で、ズバーって華麗に勝っちゃうの」

春香(あと少し……あと少しなら……)

やよい(私が全部打つくらいの気持ちで、がんばらなきゃ!)



P(しかし一試合が妙に長い気がする。恐らく次からはもう少しテンポ良くなるだろう)

55: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:38:34.20 ID:uKXHVC380
春香(まずは、サーブ……入れない、と……)スッ

春香「え、いっ!」スパコッ

春香(ダメだ、弱い……けど、なんとか)

春香(入った……よ、ね……)

春香(あとは、前に出なきゃ……)ヨロヨロ

春香(前衛、だもん……)ヨロヨロ


ヒューーーー


美希「……」

美希(あれとあれと……あと、あれをこうして……)

美希「……うんっ」

美希「こうなの!!」


パコォンッ


やよい「!!」


貴音「……お見事です、美希」


 美希『あはっ、ばれた?』

 美希『実はね……今まで覚えた技のいいとこ取りしてうまいことアレンジして、すっごく強い自分の必殺技、作っちゃおっかなーって』

 貴音『なんと……そんなことが、出来るのですか?』

 美希『多分、出来るって思うな。あともうちょっとで……』

 貴音『……』


貴音「まさか本当に……しかもこの試合中に完成させてしまうとは」


美希「名付けて、『必殺―――』」



美希「『おにぎり波!』」

57: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:40:42.50 ID:uKXHVC380
やよい「なに、あのボール……!」


ドギュウウウウウウ


美希「この打球はね、ツナのように甘く!」

美希「明太子のように辛く!」

美希「梅干しのようにすっぱく!」

美希「おかかのように力強く!」

美希「昆布のように曲がるの!」


P(……言ってることはともかく、えげつないコースだ。威力も変化もすごい。さぁ、どうなる?)



やよい(あうう、よく意味が分かんないけど、つまり……)


やよい「いっぱい入ってて、お得ってことですね!!」



やよい「うっうー!!」


ダダダダ タッ


やよい「ふんぬっ!」パコォンッ


やよい「あうっ」ズザーー


伊織「飛び付いて、返した! やるじゃないやよい!」

律子(飛んでからインパクトの瞬間まで、一瞬もボールから目を離さなかった。地面が迫ってきても、全く恐れずに)

律子「……大した度胸だわ、まったく」

58: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:42:09.29 ID:uKXHVC380
美希「へぇ、あれを返すなんて、ちょっとびっくりなの。それより……」

ダダダダダ

美希「今の打ち方、かっこいいね」

タッ


美希「ミキもやるの!」パコォンッ


やよい「!」

やよい(しまった、春香さんの方に―――)


春香(……ダメだ、もう……疲れて、前がよく見えないや)

春香(ラケットを前に構えるので精一杯。せめて……ボールがここに、当たりますように)



美希「……あっ」

美希(春香のラケットの、真正面……)



ドッ



美希(当たった! ボールは……?)



貴音「……」スッ


美希(貴音の方に!)

59: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:45:43.18 ID:uKXHVC380
貴音「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


やよい(両手持ち!まさか……)


貴音(今のやよいの方へ打っても、返されるかもしれない。勝利をより確実にするためには……)

貴音(あの弱々しく握られた剥き出しのラケットに当てて、弾き飛ばす!)


貴音「『極太麺・バリカタ』!!」


ドゴォンッ


やよい(あんなの、今の春香さんに受け切れな……!)

貴音(……!)


春香「……」


やよい(春香さん、倒れて……ボールを、スルー……)



ドゥンッ


やよい「あ……」



貴音「……終わり、ですね」

美希「……うん」



貴音「最後の一球。これが必ず劇的な結果になるとは、限りません」

美希「……」

貴音「スマッシュやボレーのように華々しく終わることよりも……こういった結末の方が、実際にはよくあることなのです」

貴音「片方のミスで、普通に終わる。このような結末の方が……」

美希「……ううっ」

貴音「申し訳ございません、美希。少し……力みすぎてしまいました」

美希(もっとテニス、したかったなぁ……こんなに楽しいなんて、知らなかったの)

貴音「春香、やよい……おめでとうございます」



貴音「貴女たちの…………勝利です」




P「アウト!! ゲームアンドマッチ!! ウォンバイ……」


P「チームE!!!」

61: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/06(木) 23:48:43.40 ID:uKXHVC380
 



「―――さんっ」

「―――るかさん!」

春香「ん……あれ? ここは……! 試合はっ!?」

やよい「えへへ、いぇい! やりましたっ! 私たち、勝ったんです!」

春香「へっ……ほんと?」

美希「ほんとだよ。あーあ、これでハニーとのデート、なくなっちゃったの」

春香「えと、あんまり覚えてないんだけど……特に最後」

やよい「それより、しっかり休んでくださいね! 次の試合まで、まだ時間あるしっ!」

春香「え、あ、うん……」

貴音「万全な状態で挑むことです。次の相手は、私たち以上の強敵かもしれないのですよ?」

春香「あっ……そうか、次の試合……」

やよい「はい、勝った方が私たちの相手です!」

美希「で、その試合ね、今やってるの。ちょうど一ゲーム終わったとこ」

春香「えっ」クルッ



P「ゲーム! チームG! 1-0!」


真「へへっ、やーりぃ!」

雪歩「うう……真ちゃんかっこよ強いよぅ」


美希「ミキ的に優勝候補ナンバーワンチーム。真クンのGチームが、春香たちの次の相手って思うな」

貴音「もし雪歩らが勝ち上がったとしても、そうなればあの真たち以上に強き相手ということになります。強敵には違いありませんね」

春香(これは……大変だぁ)



一回戦第二試合




チームG(菊地真・日高愛) VS チームH(萩原雪歩・水谷絵理)

85: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:08:27.46 ID:1rfprxxi0
チームG 【前衛】真 【後衛】愛
チームH  【前衛】雪歩 【後衛】絵理
最初のサービス権……愛
現在のゲームカウント チームG 1-0 チームH


愛「サーブしたよー!!!」

真「ナイッサーだったよ、愛! ほとんどサービスエースだったね!」

雪歩「愛ちゃんのサーブ、すっごく強かったね……」

絵理「はい……手も足も、出なかった?」

雪歩「えと、次、どっちサーブ打とうか?」

絵理「やっぱり、サーブが得意な方?」

雪歩「じゃあ私はダメかな……」

絵理「私も……」

雪歩「……」

絵理「……」

雪歩「あっ、じゃあ、私が……」

絵理「あ、はい、お願いします?」

絵理&雪歩(ダメだこれ……)

絵理(この勝負……現状で把握出来る実力から私たちが勝てる確率を脳内コンピュータによって算出すると……)カタカタカタカタ

ッターン

絵理(0%……なるほど)

86: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:10:03.66 ID:1rfprxxi0
P「雪歩のサーブだな? そんじゃ、プレイ!」

雪歩(力の差は歴然……だけど)

雪歩「……がんばらなきゃ!」

真「さぁ、来なよ、雪歩!」

雪歩「んっ……えいっ!」スパコォンッ

真「……!」

真(イレギュラーバウンド!?)

真「っと、たっ」

トッ

雪歩「あれ、真ちゃんもたついた?」

絵理「……チャンスボール?」

絵理(あそこ……空いてる……)

パコォンッ

愛「わー!! 追いつかないよー!!」


ドゥンッ


絵理「初得点、ぐっじょぶ……?」

雪歩「やったぁ! 絵理ちゃん、ナイス!」

絵理「雪歩さんこそ。 あのイレギュラーバウンド、狙ってやれたらすごいのに……なんて」

雪歩「へ?」


真「ミスった、ごめんね愛」

愛「いいです全然! あれは仕方ないです!」

真「まぁそうなのかなぁ。一球目からイレギュラーバウンドなんて、ついてないや」



雪歩(うーん……変な方に飛んじゃうの、私がダメダメだからだと思ってたけど……いいのかな?)


雪歩(私……いつもあんな感じなんだけど)

87: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:11:16.94 ID:1rfprxxi0
P「15-0」

雪歩「よーし……えいっ!」スパコォンッ

愛「……!!」

バインッ

愛「ええっ!? また!?」

愛「わーーーーーーーーっ!!!」

P「インッ!」

雪歩「やたっ、今度はサービスエース!」

絵理「またイレギュラーバウンド……ひょっとして」

絵理「雪歩さん、本当に、イレギュラーバウンドを……狙って打ってる?」

雪歩「ううん、そうじゃないんだけど……でも、なんかそうなっちゃうっていうか……」

雪歩「だから次も多分、イレギュラーバウンドかな? えへへ……」



真「……」

真「あっ、そういうことか」


P「30-0!」

88: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:12:28.19 ID:1rfprxxi0
雪歩「んっ……えいっ!」スパコォンッ


真「……」

真(雪歩は穴掘りのスペシャリスト。意識してるかは分からないけど、地面の特徴を本能で理解している)

真(その本能がボールに伝わり、地面の特殊なポイントを見つけ出し、イレギュラーバウンドを起こしているってわけだ)

真(だったらあのイレギュラーバウンドは偶然じゃない。次も、その次も……イレギュラーバウンドはきっと起こる)

真(普通に跳ねないと初めから分かってるんなら、いっそ先読みを捨ててしまえばいい)

真(どの方向に跳ねてもある程度対応出来る、そんな風に構えてれば、反射神経でどうとでもなる!)

バイッ

真「おっと、こっちか!」ダッ

雪歩「!」

真「よっと!」パコォンッ

雪歩(返された!)

絵理「っ……えいっ」パコォンッ

愛「たあーっ!」

ドゴォンッ

P「インッ!」


雪歩「うう……ダメだったよぅ」

絵理「雪歩さんのサーブ、イレギュラーバウンドしてたのに、あんなに簡単に対応するなんて……真さん、すごい?」

89: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:13:30.91 ID:1rfprxxi0
愛「真さん、すごいです!」

真「ありがとう! 愛も、よく決めたよ」

愛「そですか? えへへ」

真「それで、あのサーブの対策は、ボールが跳ねてからフットワークで対応って感じだけど……愛、出来そう?」

愛「無理ですっ!!」

真「そ、そっか。清々しいや。それじゃあ……どうする?」

愛「……あたしには、これしかないから」

愛「元気いっぱいがんばって、なんとかしますっ!!」

真「……うん?」


P「30-15!」


雪歩(真ちゃんにはもう、私のサーブ、通用しないのかなぁ……)

雪歩(でも、愛ちゃんになら!)

雪歩「ええいっ!」スパコォンッ


愛「よーし……」


愛「ええーーい!!!!!」ビュンッ



雪歩(ええっ!? 振るの早っ)



ブオンッ

90: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:14:43.88 ID:1rfprxxi0
P「……フォルト!!」


雪歩「えっ」


雪歩(フォルトくらい、私ダメダメだからそんなに珍しくはないけど……)

雪歩(今のコース、確実に入ってるはずだった)

雪歩(何が……起きたの?)

真「……」

真「思ってたより、とんでもない子だったみたいだね、愛」

愛「えっへへ、跳ねてからどうこうなんてあたしには出来ません。だから……」

愛「跳ねる前になんとかすれば良いんです!!」ドン


絵理「今……愛ちゃん……」



絵理「ラケットを振ったその風圧で、ボールを逸らした?」


雪歩「ありえない……そんなの……」

雪歩「えいっ!」スパコォンッ


愛「カーブしよーー!!!!」ブンッ


ブォオオオンッ


ヒュウウウウッ


ドッ



P「フォルト! ダブルフォルト!!」



雪歩「そんな……」

91: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:16:02.75 ID:1rfprxxi0
真「すごいなぁ、あのパワフルさ。血は争えない……ってやつなのかな?」


愛(よーっし、うまくいった!)グッ

愛(認めたくないけど、ママの特訓のおかげ……だよね)


 愛『えーーーーーーい!!!!』ブンッ

 舞『甘いわよ、愛! そんな軽いスイング、ちっとも怖くないわ!』

 愛『そ、そんなぁ……はぁ、はぁ』

 舞『もっと強く全力で振って、ボールをビビらせてやりなさい! そうすればボールの方から勝手に避けてくれるんだから!』

 舞『人が鬼に近づかないように、圧倒的な力には得てして侵入不可の領域が出来るもんなのよ』

 舞『何一つ寄せ付けない領域(ゾーン)……完成させるまで、おやつ抜きね』

 愛『うそっ!?』


愛「通用してるよ、ママ。あたしの……」

愛「『日高ゾーン』!」


雪歩「プ、プロデューサぁ~……あんなの、アリなんですか?」

P「ルール的にはなんの問題もない」

雪歩「そう……ですけど~……」


真「よし、次はボクの番だ」

真「さあ、来なよ!」

92: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:17:25.72 ID:1rfprxxi0
P「30-30」

雪歩「……えいっ!」スパコォンッ

バインッ

真「おっと、今度はこっちか!」

パコォンッ

雪歩(うう、やっぱり通用しない)

絵理「……」

絵理(隙がない……!)

絵理「んっ……」パコォンッ

絵理(二人の間。これでお見合いしてくれれば、なんとか?)

真「ボクが打つ!」

愛「お願いします!」

真「でぇぇぇい!!」

パコォンッ


ドゥンッ!!


絵理(……ですよねー)


P「30-40!」

93: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:20:58.99 ID:1rfprxxi0
雪歩「……うう」

雪歩(また……ダメだった)


P「―――――ダブルフォルト!! ゲーム!チームG! 2-0!」


真「ナイス、愛!」

愛「やりましたっ!」

真「さて、次のゲームで終わりだけど」

真(そう簡単には……終わらないよね?)


絵理「ひぅ……あと一ゲーム」

雪歩「もうすぐ終わっちゃう……早すぎるよぅ」


絵理(これは、やっぱり……勝てない?)

雪歩(このまま負けるなんて……嫌だなぁ)



絵理(今のままの自分じゃ、これが限界)

雪歩(弱いままの私じゃ、もう通用しない)




絵理(だったら……)

雪歩(強くなるためには……)






絵理(過去の強い自分に、なればいい!)

雪歩(過去の弱い自分を、捨てればいい!)





ゴォッ――――――――

94: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:22:52.54 ID:1rfprxxi0
真「……愛、見て」

愛「へ? ……あっ」

真「オーラだ。二人とも……覚醒したんだ」




絵理(私はEllie。誰にも負けない、ネットアイドルで―――)

絵理(オンラインテニスゲームの、全国王者!)ゴォッ


雪歩(ダメダメな自分とは、もう、さよならしなきゃ)

雪歩(狭い穴から広い宇宙へ、思い切って飛び出さなきゃ!)ゴォッ



愛「おーっ、どうします?」

真「うん。とりあえずこのままやってみよっか」

愛「わかりました!」

95: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:24:14.67 ID:1rfprxxi0
P「真、サービスプレイ!」

真「まずは小手調べだよ……絵理!」スパコォンッ


絵理「……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々)

絵理(……インプット完了。そして……アウトプット)

絵理(腕の角度、力加減、ここをこうして、ここをこう?)


パコォンッ


真(! 低い、いや……)

ガッ

ポトッ

真「!?」


トンッ トン……

真(コードボール―――?)

P「0-15!」

愛「わーっ! ネットに当たってこっち側に落ちました! あんなの、届かないよー!!」

真「……偶然じゃ、なさそうだね」

96: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:26:08.46 ID:1rfprxxi0
P「真、サービスプレイ!」

真「まずは小手調べだよ……絵理!」スパコォンッ


絵理「……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々)

絵理(……インプット完了。そして……アウトプット)

絵理(腕の角度、力加減、ここをこうして、ここをこう?)


パコォンッ


真(! 低い、いや……)

ガッ

ポトッ

真「!?」


トンッ トン……

真(コードボール―――?)

P「0-15!」

愛「わーっ! ネットに当たってこっち側に落ちました! あんなの、届かないよー!!」

真「……偶然じゃ、なさそうだね」

97: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:28:37.14 ID:1rfprxxi0
律子「……やれやれ」

律子「またオーラ、か。認めたくないけど、春香の時みたく、あれも本物みたいね」

伊織「どんなに非科学的でも、目に見える以上認めないわけにはいかないわね。それにしても、なんてコントロールなの? コードボールを明らかに狙って打ってたわ」

律子「……聞いたことがあるわ。かつてオンラインテニスゲーム界を騒がせた天才プレイヤーがいるって」

伊織「それ、関係あるの?」

律子「ええ。そのプレイヤーには、目に映る全てのものがデジタルとして頭に入り、自らの動きまでもデジタルでコントロール出来るとかなんとか」

伊織「……へ?」

律子「私にも意味が分からないけど……確かなのは、とにかく圧倒的な実力だったってこと」

律子「プレイヤー名は―――Ellie。聞き覚え、あるわよね?」

伊織「! それって絵理の……まさか」

律子「噂は本当だったのね。どうやらその能力は、ゲームだけでなく、現実でも発揮されるみたい」

律子「アイドルになってからは封印してた力が……この土壇場で引きずり出されたってとこかしら」

律子(まったく……データの取り甲斐があるわ)クイッ


絵理(私はEllie、Ellieは負けない)

絵理(全てを掌握して……試合に勝つ?)

98: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:29:46.98 ID:1rfprxxi0
愛「あれが絵理さんのオーラ……ですか」

真「あのオーラの内部、なんか入りたくないなぁ。なんとなくだけど、数字だらけで頭痛くなりそうだよ」

愛「あっ、あたしもそう思います! なんとなくですけど」

真「ま、入らなければいいや。さて、次は雪歩だけど……ん?」


雪歩「……」


真「……あのさぁ」

真「なに、その構え」


雪歩(今までの常識を全部捨てなきゃ……真ちゃんには、勝てない!)


愛「あ、あれで打つ気なんですかね?」

真「どうもそうらしいね。大した度胸だよ、雪歩」


真「―――グリップじゃなく、両手でフレームの部分を持つなんて、さ」


雪歩(考えてみたら、真ちゃんとこうして真っ向からぶつかるなんて、初めてかも……)

雪歩(だからこそ……中途半端には終われない!)

雪歩「勝負だよ、真ちゃんっ!」

99: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:31:20.24 ID:1rfprxxi0
真「……そんな構えで何が出来るのか、まったく分かんないけど」

真「それが雪歩の本気だって言うなら……」スッ

真「見せてもらうよっ!!」

スパコォンッ

涼「良いサーブ! あの構えで、どう……!!」


雪歩「はぁぁぁぁぁああっ!!!」


涼(ええっ!? グリップの底のとこ……そんなとこで打つの!?)

律子「……!」

律子「あのオーラ……回転している……?」


雪歩「『ドリラー』!!」


ギュルイイイイイイイインッ


真「!」


亜美「あんなヘンテコな構えで、返した!」

律子(ただ返しただけじゃない。ラケットをドリルに見立て、オーラによってラケットを高速回転させてる)

律子(あの威力……まともに受けたら、やばい!)

100: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:34:04.40 ID:1rfprxxi0
愛「返すよーーーーーー!!!!」

真「! 受けるな!愛っ!!」

愛「へ? もう遅……!!」

ドッ

愛「ぬっ……ぬぐぐ……っ!」

ギュルルルルルルルルル

愛「あれ、前に……飛ばな……っ」


ズキューーーーン


愛「……」

愛「へ?」


愛(ガットを……貫通した?)


P「0-30!」


春香「すごい……」

春香(あれが……雪歩のオーラの、威力……)

やよい「うう~、ラケット、もったいないかも~」


雪歩「はぁ、はぁ……真ちゃん!!」

真「……ん?」

雪歩「私、強くなったよ! だから……」

雪歩「だから……」



雪歩「本気で! 勝負して!!」

101: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:36:39.34 ID:1rfprxxi0
真「……へぇ」

真「気付いてたんだ、雪歩」


絵理「ど……どういうことですか?」

雪歩「分かるの、私。真ちゃん、全然本気出してない」

雪歩「だって真ちゃん、さっきから汗一つかいてないもん」

絵理「……えっ?」


真「……雪歩たちのためを思ってそうしてたんだけどなぁ……でもまあ、仕方ないか」

真「本気でいくしか、ないみたいだね」

愛「いいんですか?」

真「うん、雪歩も絵理も、本当に強くなった。これ以上オーラ無しで戦っても勝てそうにないし、予備のラケットも無くなっちゃうよ」

愛「そう……ですよね。さっきの、すごかったですし!」

真「でしょ? それじゃ、いっちょやろっかな」

真「雪歩!」


雪歩「! な、何!? 真ちゃん!」


真「望み通り、本気で戦うよ。けど……」

真「どっちか……怪我させちゃったら、ごめんね?」

雪歩「え?」

真「だって解放したら―――加減、出来ないから」



ゴ オ ッ !!

102: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:39:21.49 ID:1rfprxxi0
美希「……あはっ、流石、真クンなの」

貴音「何たるオーラの大きさ、そして密度……」

貴音(あのオーラから繰り出されるさーぶ……いったい、どれほどの……?)

春香「な……なんなのあれ……おかしいよ……」



真「ふう……流石にこの状態は疲れるなぁ。早めに、終わらせないとね」ゴゴゴ

真「さぁ……いくよっ!!」スッ


真「『まっこ』」ダッ



真「『まっこ』……」タッ




真「『りーーーーんっ』!!!!」


ドゴォォォォンッ!!!!



絵理「ッ……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々、インプット完了。フォルトの可能性は無いため返球モードに移行)

絵理(続いて自身の身体能力から、これに対抗できる腕の角度、振る速度、腰の高さ、足幅等を算出……!?)

絵理(エラー!? 威力が大きすぎて……対抗策が見つからない!? そ、そんなわけ)

絵理(再計算! ああっ、ボールがすぐそこに……早く再計算! 早く! ボールがもう…………!!)


絵理(あ)



ドカァァァァァァァン!!!

103: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:41:31.22 ID:1rfprxxi0
シュウウウウウウウウウウ


P「な、なんて威力だ……手榴弾でも打ったのかと思った」

真「ふう……絵理、大丈夫かなぁ」


絵理「……」


真「あ、よかった、無事みたいだ」ホッ


絵理「……ッ」ガクガク

雪歩「え、絵理ちゃん……大丈夫?」

絵理「か、回避しなかったら……危なかった?」

雪歩「……うん、すごい威力だったね」

絵理「雪歩さん、棄権しましょう? あんなの……打てない?」

雪歩「……」

雪歩(オーラ、消えてる……よっぽど怖かったんだ。確かにすごい威力だったもんね…………でも)

雪歩「ごめんね絵理ちゃん、もう少しだけ、やらせてほしいの」

絵理「! む、無理です……どう考えても、勝てない?」

雪歩「勝てなくてもいいんだ。なんなら絵理ちゃんは隠れててもいい」

雪歩「一球でもいい。本気の真ちゃんと、勝負したいの」

雪歩「だから……お願い」

絵理「雪歩さん……」

絵理(こんなに、真剣な目で…………)

絵理(こんなの、止められるわけがない?)

絵理「……気を付けてください、雪歩さん」

雪歩「うんっ!」




P「続行……するんだな」

P「15-30!」



真「さぁ……いくよっ! 雪歩!!」

雪歩「絶対、全力でね! 真ちゃん!!」

104: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:42:31.80 ID:1rfprxxi0
真「『まっこまっこりーーーーーん』!!!」


ドゴォォォォォォン!!!


雪歩「……」

雪歩(真ちゃんは……かっこよくて、強くて、前向きで……私の憧れだった)

雪歩(そんな真ちゃんみたいに私もなりたいってよく思ったけど、ダメダメな私なんかじゃ無理無理って、いつもすぐ諦めてた)

雪歩(私は、どうしても自分に自信が持てなかった)

雪歩(……ねぇ、真ちゃん。私の大好きな真ちゃん)

雪歩(もし、あなたの全部に、私の全部が通用したら……)

雪歩(あなたと対等に戦えるって、示せたら……)

雪歩(私は…………)

雪歩(自分を好きに、なれるかな?)


雪歩(自信を持って、生きられるかな――――――)スッ



真「!!」

真(さっきより、さらに変な構え……)


亜美「あ、あの構えは!」

真美「知っているのか亜美」

亜美「なんか……」


亜美「たけのこニョッキっぽい!!」

105: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:44:37.09 ID:1rfprxxi0
雪歩「はぁあっ!」


ギュルルルルルイイイイイイ


律子「! ラ、ラケットを含む全身が……雪歩自身が、ドリルとなって回転してる!」

伊織「あれもオーラで!?」

律子「あれもオーラ!」


雪歩「真ちゃん……受け止めて!!」


雪歩「『ミスミスミスタードリドリラー』!!!」



ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



律子(とはいえ真のサーブも相当な威力……返せるの、雪歩!?)



雪歩「ッ……あぁあああ……」

雪歩「あぁああああああああああああぁぁあああああぁああああぁああああああああっ!!!!!」



ギュウウウウウウン



律子「返した!」



真「……初めてだよ、ボクのこのサーブを返したのは」

愛「さっきよりすごい回転……真さん、避けた方が!」

真「ごめん愛、こればっかりは……引けないね!」

真「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

106: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:45:38.91 ID:1rfprxxi0
グルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルン

律子「! 真がすごい勢いで縦回転を……」


真(ガットが耐え切れないなら、フレームで打つまで!)


亜美「なるほど~! 目には目を、埴輪にはニーハオ!」

真美「回転には、回転を! ってことですかな?」



真「『自転車』!!」



バギュワァァァァァアアアアン!!!!!


絵理「ひぅっ……すごい、力と力の、ぶつかり合い?」

愛「近くにいるだけで、吹っ飛ばされそうだよー!!」



真「だぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」



ドゥグゥウウウウウウウウウン





P「……い」




P「インッ!!」




絵理(あれでも……返されるなんて)

雪歩「え……へへ……」

雪歩「やっぱ、り……真ちゃん……」

雪歩「強い……や……」クラッ


バタッ

107: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:47:20.85 ID:1rfprxxi0
ーーーーーーーーーーーーーーー


P「……ま、そうなるよな」

絵理「はい」コクッ

P「チームH、棄権により……勝者」

P「Gチーム!!」


愛「勝ったよーーーーーー!!!!」

真「ふぅ。雪歩、気絶しちゃったか」

真(本当にあの一球に全てを込めてたんだね、雪歩……すごかったよ)

真「……」ジーー

真「またラケット、無駄にしちゃったなぁ」

真(まさかフレームにヒビが入るなんて……本当にすごい威力だった)

真(本当に……)スゥゥ


真「楽しかったよ!!またテニスしようね、雪歩!」


雪歩「……」


真(って、聞こえないか。起きたらまた言おう)

真(アイドルとしてもテニスでも……雪歩とは良いライバルになれそうだ)

108: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:49:11.46 ID:1rfprxxi0
春香「勝ったのは真チーム……か」

やよい「ど、どうします? あんなサーブ、私打てないかも……」

春香「……真のオーラサーブは、私がなんとか無力化してみる。体力、持つかわかんないけどね」エヘヘ

やよい「春香さん……」

やよい(私も……頑張らないと!)

千早「調子はどう? ……春香」

春香「! 千早ちゃん」

千早「まずは一回戦突破、おめでとう。でもやっぱり次は強敵のようね」

春香「うん……でも、負けないよ! 私、絶対決勝に行くから!」

千早「……ふふっ、そうね、楽しみにしてるわ」

千早「それじゃあ私、試合行ってくるわね。次は決勝で会いましょう」クルッ

春香「千早ちゃん……だからそれフラグだよ」

春香(それにしても千早ちゃん、なんで私との決勝にあんなにこだわってるんだろう?)



千早「……」

千早(また、高槻さんに話しかけられなかった……私のバカ)シュン

千早(頭の中でどれだけ会話をシミュレーションしても、いざ、ってなるとつい話しかけやすい春香の方に……くっ)

千早(私はただ高槻さんと喋りたいだけのに……どうしてこうなるのかしら)

亜美「千早お姉ちゃんっ! はるるんとの話、終わった?」

千早「え、ええ、もういいわ」

109: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/12(水) 20:52:34.22 ID:1rfprxxi0
亜美「それじゃ、行こっか!」

千早「ええ、私も……頑張るわ」



真美「ひびきん、や~っと真美たちの番だね!」

響「うん、さっきから試合見てたら、早くしたくってたまらなかったぞ!」

真美「相手は亜美と千早お姉ちゃん。運動能力的にこっちのがダンゼン有利っぽいよね~」

響「亜美と真美が同じくらいだとして、自分が千早に勝てば良いのか。そういえば自分、千早と何か勝負したのってゲロゲロキッチン以来かも」

真美「……フラッグで競り負けたんだっけ?」

響「ゆっ、油断してただけだぞ! 今やったら負けないからね!」

真美「それじゃ、あの時のセツジョク、晴らしちゃおっか!」

響「もちろんさー!」


亜美「亜美、真美といっぱい練習してたから、真美のことはよ~く分かってっかんね! ジョーホー量ではこっちが有利と見た!」

千早「……それ、向こうにも同じことが言えるんじゃ」

亜美「……あっ」

千早(成り行きとはいえ決勝を約束した以上……ここはなんとか通過したいわね)

千早(私の……音楽テニスで!)



一回戦第三試合




チームA(如月千早・双海亜美) VS チームD(双海真美・我那覇響)


123: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:32:09.24 ID:g7cz36810
チームA 【前衛】千早 【後衛】亜美
チームD 【前衛】響 【後衛】真美
最初のサービス権……亜美


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ!! 亜美、サービスプレイ!」

亜美「んっふっふ~、亜美のチョーメチャイケサーブ、お見舞いしてやっかんね、真美!」

真美「だったら真美は、ハイパーミラクルレシーブで対抗してやるもんね!」

亜美「やれるもんなら……」ギュッ

亜美「やってみろぉい!!」スッ


亜美「『you往my進アターック』!!」


スパコォンッ


ドギュウンッ


響「! なんだあの跳ね方……真美の方に向かって!」

亜美「このサーブは地面に着いた後、相手の方へ一直線に進むのだ! まいったか真美!!」

タッ

亜美「!」

響「おおっ、反応した! ……っていうか」

響(分かってた……って感じの動きだな、今の)

真美「そのサーブ……」

真美「見飽きたよっ!」パコォンッ


亜美「ぐっ……そういえばそうだね」タタタッ

亜美(とりあえずひびきんは避けて……)

亜美「えいっ!」パコォンッ


響「よっと、もらったさー!」

亜美「! あれ、ひびきんそっちにいたはずじゃ……」

125: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:34:17.97 ID:g7cz36810
響「でりゃっ、ボレー!」

ビシィッ

亜美「う、やられた……」

P「0-15!」

亜美(おかしいなぁ、確かにあっちにひびきんいたと思……あれ、いる)

亜美「……えっ」


亜美「ひびきんが……二人ぃ!?」


千早「……鮮やかなステップね、我那覇さん」

響「ふふん、自分、ダンスやってるからな!」タタッ


貴音「出たようですね、沖縄県民ならば誰にでも使えるという……」

貴音「『なんくるステップ』!」ドン

美希「ふぅん、やるね響。残像が見えるほど高速で反復横跳びしてるって感じ?」


亜美「ぐぬぬ……まさか亜美が真美と二人でやっと使える分身の術を一人でやってのけるとは、やるのうひびきん」

亜美「でも、まだまだこれからだかんね!」

126: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:35:36.41 ID:g7cz36810
亜美「でりゃりゃー! 『you往my進アトゥアーーック』!!」

スパコーーン!!


響「ふふん、その技は効かないぞ!」タタッ

響(『なんくるステップ』!)


亜美「うっ、ひびきんまた二人に」


ドゥウッ


千早(片方の我那覇さんにボールは向かう……けれど)


亜美「あ! 消えた! ずっこい!」

響「こっちの自分は、なんくるないさー!」

パコォンッ


亜美「むぅ~……でも、追いつけるよっ!」タタタ

パコォンッ


響(お、速いな)


真美「真美だって!」タタタ

パコォンッ

127: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:40:06.43 ID:g7cz36810
律子「……あの双子、速いわね」

伊織「まぁ、あれだけ毎日走り回ってれば、速くもなるわよ」

律子「足が速いのはもちろん、反応速度に関しては今のところ随一といっても良さそう」

伊織「どちらかは確実に次に進む。スピード対策は必須ね」

律子「ええ、そうね。響も分身出来るほどの速さだし、この試合はスピード対決ってとこかしら」

律子「ネット際で大人しくしている、一人を除いて……ね」

律子(千早……あなたはどんなテニスをするのかしら?)


タタタッ

パコォンッ

ダッ

パコォンッ

千早(うん……うん……)


真美「ぬぇい!!」


ドゥンッ


亜美「ぐっ……」


P「0-30!」

真美「んっふっふ~、この東のスピ→ドスタ→こと真美こそが真のスピ→ドスタ→なのだよ!」

亜美「なんやて! この西のスピ→ドスタ→、亜美も負けてへんでんがな!」

響(二人とも、同じくらい速いな……でも多分自分ほどじゃないはずだぞ)

千早「……」

128: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:41:20.58 ID:g7cz36810
亜美「次、いくよん!」サッ

真美「こいっ!」

亜美「『you往my進アターック』!」

スパコォンッ

響「ふふんっ、そのサーブならさっき真美、ちゃーんと返して……!」

ドゥンッ

響「普通のサーブ!?」

響(同じモーションから、打ち分けたのか!? あのサーブ対策で動いてたら、打てないかも……!)


亜美「これで……」


パコォンッ


亜美「!」


真美「……そうくるのも、分かってたよ」

真美「だって真美ならそうしたから。考えること、そっくりみたいだね!」

亜美「むむむ~っ!」



パコォンッ
パコォンッ

129: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:45:55.23 ID:g7cz36810
パコォンッ

パコォンッ


伊織「……見たところ、亜美と真美はほぼ互角ね。千早があまり動かない分、差ができつつあるけど」

律子「ええ……」

律子(これって……)


ドゥンッ


P「ゲーム!チームD! 1-0!」


真美「ふぅ、なんとか一ゲーム取れたぁー!」

響「このままあと二ゲーム! がんばろうね真美!」


亜美「うあうあ~、一ゲーム取られちゃったよ~!」

千早「ごめんね亜美、私、あまり動かなかったから」

亜美「ホントだよ~、次からはジャコジャコ打ってってよ!」

千早「ええ、もう大丈夫」

千早「リズムは……掴んだから」

亜美「? な~んかよく分かんないけど、メッチャ頼りになるっぽいねぇ千早お姉ちゃん」

千早「ふふ、任せて亜美。次のゲームからが本番よ」


千早(さあ―――――PLAY START MUSIC!)

130: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:48:04.33 ID:g7cz36810
P「響、サービスプレイ!」

響「よーし、いっくぞー!」スッ

響「『ハム蔵サーブ』!!」

スッパァンッ


亜美「んっふっふー、どんなサーブでも、この亜美にかかれば……!」


ヂュイッ


亜美「!?」

亜美(ちょっとこれ……跳ねなさすぎっしょ!)


春香「な、なにあの低い弾道!」

やよい「あれって、ハム蔵が狭いスキマとかに潜り込むのに、似てるかもです!」

美希「なんか、打ちにくそー」


亜美「ぬぁんのっ!」


パカァンッ


愛「返しました!!!」

絵理「反応速度……すごすぎ?」

涼「でも、打ち上げちゃったね。あれじゃ……」


響「でりゃーー!!!」ダダダ

タッ

亜美「! すごい跳んだ!」



響「『ウサ江スマッシュ』!!」

131: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:48:53.89 ID:g7cz36810
響「でやぁぁぁ!!!」


ドキュウウウン


真美「やったか!?」


パコォンッ

ドゥンッ


真美「……」

響「……」


響「えっ?」


P「……イン!」


響「じ、自分のスマッシュを……」

響「平然と、返した……?」


真美「うあうあ~、眠り姫が目覚めたっぽいよ~!」

真美「今のどうやったのさ? ……千早お姉ちゃん!!」



千早「……どれだけ速い球でも、リズムを掴めば捉えられる」

千早「そう、テニスは音楽。ボールが奏でる音を聞けば、いつどこにそのボールが来るかは自ずと分かるのよ」



P「0-15!」

132: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 18:49:39.06 ID:g7cz36810
響「何言ってるのかよく分かんないけど……きっとマグレに決まってるぞ!!」

響「『ハム蔵サーブ』!」スパコォンッ


ヂュイッ


千早(地を這うリズム……これはクレッシェンドを意識しつつベンマルカートでファ♯ね)

千早「はっ!」


パコォンッ


響「!! ふ、普通に返した!」

真美「任せて!」ダッ


真美「たぁー!」パコォンッ


千早(返した後はラピダメンテで前へ……その際リズムを見極め……)ダッ


真美「げえっ! 読まれてる!?」


千早(アタッカ!!)


ビシィッ


P「インッ!」

134: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:21:07.93 ID:g7cz36810
響「これが千早の、音楽テニス……」

真美「付け入るスキ、なさそー……」

亜美「千早お姉ちゃん、やるぅ~!」

千早「ふふ、あなたのおかげよ。一ゲーム目、一人であそこまで粘ってくれなかったら私もリズムを掴むのに専念出来なかったわ」

亜美「そ、そう? えっへへ……」ポリポリ


そして……


パコォンッ
パコォンッ
スパカァンッ トゥッ


P「―――――ゲーム! チームA! 1-1!」


亜美「よっしゃあ!! やったね千早お姉ちゃん!」

千早「ええ、これで同点ね!」

千早「……このコートはもう、私の楽譜の上よ」


響「なんか全部読まれてる気がするぞ……音って、そんなに大事なのか?」

真美「……!」

真美「そ~~うだっ」ニッ

135: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:23:12.92 ID:g7cz36810
P「千早、サービスプレイ!」

響「頑張れ真美、千早がどんなサーブしてきても、なんとか対応するんだぞ!」

真美「……んー」

真美「な~んか、やる気出ないなぁ」

響「えっ!?」



亜美「……真美、何考えてるんだろ」

千早「気にしたらダメよ、亜美。今のあなたのパートナーは私なんだから」

千早「やる気が出てないならありがたいわ。こちらの勝つ確率が上がるんだから」

亜美「そーだけどさ……嫌な予感」

亜美「今の真美、いつもイタズラする時と同じ顔してる」

千早「……?」


響「やる気出ないって、どういうことだ!? 頑張らなきゃ、負けちゃ……」

真美「だってさ、やっぱこーゆー試合って応援とかないと盛り上がらないっしょ?」

真美「こんなに静かだと真美のモチモチベーコン落ちっぱなしだよ~」

響「モチベーション、のことか?」

真美「そうそう、だからさ……あいぽーん!!」


愛「……へ?」



真美「応援、頼むねー! もちろん真美たちだけじゃ不公平だから……どっちのチームも、全力で!」

136: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:25:03.83 ID:g7cz36810
千早「なっ……」

愛「応援ですか? んー、わかりましたっ」

千早「待って日高さん、それは……」


愛「フレーーーーッ!!! フレーーーーッ!!!」

雪歩「!」ビクッ

絵理「あ、起きた?」

雪歩「な、なになに!? 真ちゃんは!?」

愛「どっちも、頑張ってくださーーーーーい!!!! わーーーーーーーっ!!!」

涼(愛ちゃんうるさい)


千早「くっ……これでは」

真美「ほらほら千早お姉ちゃん、早くサーブ打って!」

千早「……」

千早(落ち着いて……集中すれば、きっと……)

千早「はぁっ!」スパコォンッ


真美「おっ、サーブは普通っぽいね」パコォンッ

パコォンッ
パコォンッ


愛「わーーーーーーーっ!!! 頑張れーーーーーー!!!!!」


千早(……やはりこれでは、ボールの音がよく聞こえない)


響「『ネコ吉ビーム』!!」


ドゥンッ


P「インッ!」

137: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:27:08.26 ID:g7cz36810
P「0-15!」


千早「……真美、やってくれたわね……!」

愛「わーーー!!! 響さんすごいです!! 千早さんたちも、もっと頑張れー!!!」

真美「ん~? なぁに千早お姉ちゃん、聞こえないよ?」

響「はは……まさか外野を使うなんて、すごいこと思いついたな」

真美「ルール的には何の問題もないもんね。そんじゃ、あいぽんが応援続けてくれてるうちに、畳み掛けますか!」

響「だなっ!」


亜美「千早お姉ちゃん……大丈夫?」

千早「ええ、大丈夫よ」

千早(慣れれば良い、それだけのこと。雑音も全部含めた、このステージに)

千早(それにはまだ少し時間がかかりそうだけれど……間に合わせてみせる!)


パコォンッ
パコォンッ

P「0-30!」

パコォンッ

P「15-30」

パコォンッ

P「15-40!」

千早(……よしっ)

パコォンッ


P「30-40!」


千早「……だいぶ、慣れてきた」

真美(あいぽん効果も、この辺まで……かな)

138: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:28:46.69 ID:g7cz36810
響「なんか千早、また動き良くなったな。でもあと一本決めればゲームカウント2-1! すごく有利になるし……このまま逃げ切るぞ!」

真美「うん! リョーカイだよ、ひびきん!」

千早(ここは確実に一点、取っておきたいところ。次に繋げるために、絶対……)

千早「亜美、ここが正念場よ。死ぬ気で一点、返しましょう」

亜美「おっけー! 簡単には終わらせないよっ!」

亜美「亜美今、楽しいんだ。真美とも、ひびきんとも、千早お姉ちゃんとも……最近忙しくてあんまし遊べないし」

千早「……亜美」

亜美「だからこうやって一緒にテニス出来る時間、ギリギリまで全力全開で楽しまないと損っしょ!」

亜美(真美……見したげるよ! 今亜美の中にある、ホワホワしたなんかを……)


亜美(亜美の新しい力を!!)


千早「ふふ……いくわよ!!」スッ


スパコォンッ



響「決めてやるさー!!」


響「『ブタ太ストレート』!!」


ブヒョーン!!

139: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:30:17.31 ID:g7cz36810
千早「!」

千早(猪突猛進って感じの単純な打球だけど、速い! ここに来てこんな技を出してくるなんて……追いつけるかしら)

千早「行ったわよ!亜……!!」クルッ

亜美「おっけー!」

亜美(どんなボールも、拾いまくってやっかんね!)

千早「あ……あれは……」

千早(亜美の足元に……星型のオーラ!?)



亜美(亜美のこの……『スケ→トスタ→』で!)



スイーーーッ



響「速っ!! 人間の移動速度じゃないぞ!!」

P(なるほど、オーラをそう使うか)

春香「カービィのワープスターみたい……オーラにはあんな使い方もあるんだ!」


亜美「それっ!」パコォンッ


亜美(これならどこにボールが来ても拾える! 拾い続ければ、負けない!!)

140: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:34:40.63 ID:g7cz36810
響「厄介だな……真美、そっち行っ……!!」


真美「……」トクン


響(なんだあれ? オーラとは別の……何かを、纏ってる?)


涼「……あれって」

律子「ええ、普通はペア間で起こるものなんだけどね……」

律子「流石は双子ってやつか。まさか敵同士で……」


律子「同調(シンクロ)、するなんてね」


真美(亜美の全部が、真美には分かる。ありがと、亜美っ)

亜美(ずっこいよ真美~、そんな方法で……)

真美(んっふっふ~、勝てばよかろうだもんね~)



真美(今の真美には、分かる。オーラの出し方も、使い方も)



真美(真美は亜美と一緒に……成長する!!)



スイーーーッ

141: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:36:07.53 ID:g7cz36810
千早「! 真美まで、亜美と同じ……」

亜美「大丈夫だよ千早お姉ちゃん! 亜美が拾い続ければ、負けないから!」


真美「それは……」


真美「どうかなっ!!」ビュンッ


パコォンッ


亜美「! 高速で前に進みながら……」

真美「亜美の時はひびきんの速い球だったし、拾うので精一杯だったっしょ?」

真美「これが『スピード』の本来の使い方! 重さを乗せて力を込める!」


真美「スピードこそ!! パワーなのだ!!」



亜美「拾わなきゃ……っぐ……」


亜美「っぎゃぁぁぁぁっ!」バシィンッ


千早(弾かれた!!)



P「ゲーム! チームD! 2-1!」


真美「亜美の良いとこ、全部貰って……」

真美「真美は! 亜美を超える!!」

142: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:37:00.42 ID:g7cz36810
千早(次のゲームを取られたら……負ける)

亜美「千早お姉ちゃん、ごめんね」

千早「亜美は悪くないわ。オーラ、出せるようになったのね。おめでとう」

亜美「うん……」

千早(……)

千早(でも……このままじゃ……)


響「真美、サーブ、頼んだぞ!」

真美「うんっ、このゲームで決めちゃお、ひびきん!」


P「プレイ!」


真美「いっくよー!!」スッ



パコォンッ


パコォンッ

パコォンッ
パコォンッ

143: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:38:03.34 ID:g7cz36810
真美「とりゃー!!」

P「15-0!」


亜美「なんのっ!!」

P「15-15!」


響「えぇいっ!!」

P「30-15!」


亜美「っだぁぁあ!!」

P「30-30!」


響「これで……どうだ!」

響「『ネコ吉バズーカ』!!」

千早「くっ……返す!」

バキュウウウウン


千早(あっ……)


カランッ

P「40-30!!」


響「っしゃああああ!!」

真美「あと一点!!」


千早「くっ」

千早(やっと……この音楽に慣れたのに……)

千早(リズムを分かっていても……体がついていかないなんて……)

144: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:42:13.19 ID:g7cz36810
亜美「うう……もう後がないよ」

千早(さっきと同じ点差……ただ違うのは、今回の場合)

千早(あと一点取られたら、負けるということ)

千早(もう、策は尽きた。私の音楽テニスにも、限界が見えた。これで終わり……なのかしら)


千早(……)


 『私、絶対決勝に行くから!』
 『次は決勝で会いましょう』


千早(…………)



千早(……ッ)





千早(終われない!!)カッ



ゴォッ



真美「これで終わりだよっ!」スッ

真美「ミラクルサーブ!!」スパコォンッ






ゴンッ

145: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:44:27.84 ID:g7cz36810
P「……フォルト!」


千早「……」


真美「なっ……」

真美「なに、その壁……」


響「ネットの上に、光る壁が……まるでネットそのものが5mくらい高くなったみたいだぞ」

響「あれ……オーラなのか?」


律子「千早まで、オーラを……」

伊織「はぁ……まるでオーラのバーゲンセールね」


千早「体がついていけないなら……いっそ動かなければいい」

千早「そっちのボールがこっちに来なければ、私が動く必要はないもの」

真美「な、なにそれ!?」

千早「負けたくない。負けられない。そう思ったら、途端に力が私の中に湧いてきたわ」

千早「『約束の壁』……破れるものなら、破ってみなさい!」


真美「うっ……」

真美(オーラで作った、ボールを弾き返す壁……あんなの、どうすればいいのさ!?)

146: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:46:14.80 ID:g7cz36810
亜美「すごいよ千早お姉ちゃん! これならいけるっぽいよ!」

千早「ええ……っ」


真美(とにかく、ここでダブルフォルトはダメ。流れがサイアクになっちゃう)

真美「だったら……」スッ

律子(アンダーサーブ!)


真美「無理にでも壁、超えるしかないっしょ!!」


パカァンッ


響「超えたっ!」グッ


亜美「……ま、それしかないよねぇ、真美」

真美「……」

千早「絶好のチャンスボールをありがとう、真美」


真美「……うう」


千早「そんなサーブを打たせただけでも、壁を作った価値はあったわ。これだけ余裕があれば……最高の球を打てる!」


千早(一見レガートに見える我那覇さんと真美の動きだけれど、要所要所ではメノ・ヴィヴオ)

千早(息継ぎの無いオーケストラなんて、ない。流れを見極めれば、隙は見えてくる)

千早(アンダンテ・カンタービレ……ここに打てば、確実!)


千早「アタッカ!!」


バコォンッ

147: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:48:20.61 ID:g7cz36810
響「!」

真美「絶妙な位置に……お願いっ、届け!!」ダッ


響「ぐっ……」ダッ

響(この位置、真美は間に合わないな。自分はギリ間に合うか?)タタタ

響(でも……)タタタ


千早「……ふふっ」ニッ


響(オーラの壁、作り直してる……なんて切り換えの速さだ)タタタ

響(あの位置からじゃ、角度的に壁を超えるのは難しい……どうする?)タタタ


響(……決まってる)タタタ


響「これしかない!」タッ


真美「! ボールに飛び付いて……」



響「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」バッ


パコォンッ


響「『ブーメランヘビ香』!!」ズザーー



シャーーーーッ


千早「! 壁を避け、審判台の下を通って……こんな技まで!」

亜美「任せて! 亜美が拾う!!」

148: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:49:20.91 ID:g7cz36810
亜美「てりゃああああああっ!!!」

パコォンッ


響「う、やっぱ追いつかれるか……って、なぁっ!?」


ビュンッ


律子「! 一瞬で響の横を……あれは」

響(ほ、ほとんど見えなかった……なんて速さだ)

伊織「亜美ったら、やるじゃないの。さっきまで自分を乗せて移動に使ってた星みたいなオーラに……」

伊織「今度は……ボールを乗せて、攻撃に使うなんてね」


亜美「はぁ、はぁ……」

亜美「いっけー!! 『ストレ→トスタ→』!!」


響「ッ……真美! 頼む!!」



真美「……任せて!」


スイーッ

149: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:50:41.09 ID:g7cz36810
やよい「あっ、真美も星オーラで……追いついた!」

真美「でぇぇぇぇええええええいっ!!!」


亜美「追い付くのは、分かってたよ。シンクロしてるもん。でも……」


千早「……」スッ


響「! 千早、また壁を……」

響(あの壁、ただ出しとくだけじゃなく、自分たちの打つ時には消してるんだよな。当たり前だけど、ちょくちょく消したり出したりってけっこう大変そうだぞ)


亜美「真美が教えてくれたんだよ! スピードはパワー!! この亜美のフルパワーアタックを返すのもメッチャキツいし……」

亜美「ただ返すだけじゃなくって、千早お姉ちゃんの壁まで越えなきゃならないなんて、真美には無理ゲーっしょ!!」


真美「ぬうう……おも……!!!」


ギュルルルルルルル


響「がんばれ……」


響「がんばれ、真美ーー!!!!」

150: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 19:53:36.27 ID:g7cz36810
真美「がぁあっ!!」

ピカッ―――――


伊織「うっ、眩し……」

律子「力みすぎてオーラが漏れたのかしら。あれはかなり体力を消耗したでしょうね」

律子「でも……」


パカァンッ


千早「……!」

亜美「千早お姉ちゃん! 上!!」

千早「驚いたわ……本当に亜美のあれほどの威力の打球を、壁を越えるほど打ち上げてみせるなんてね」スッ


真美「……っはぁ、はぁ」

真美(もう……限界かも……)


響「! 千早、壁を解除したぞ……?」


千早「こっちも絶え間ないオーラの移動で疲れたわ。後一ゲーム戦う体力も無い。だったら……」

千早(『arcadia』!!)


律子「オーラを足に集中させて……飛んだ!!」


千早「悪いけれど……KOさせてもらうわ」


貴音「今度は腕におーらを! 流れるように、まるで音楽を奏でるようなおーら移動術……なんと美しきものでしょう」

美希「千早さん……すごいの」


千早「全て燃えて、灰になれ!!」




千早「『inferno』!!!!」

152: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 20:10:19.79 ID:g7cz36810
響(まずい、あのオーラ……自分たちを狙って……)






―――――――スカッ





千早「……」

千早「?」

千早(ボールが……消えた?)


真美「……たしかに」

真美「亜美の球、すっごく強かった。あんなの、とてもじゃないけど打ち上げるなんて無理ゲーだったよ」

真美「だから……普通に、そんなヘボヘボの球を返すので、精一杯だった」スッ


亜美「!!」


コロッ……

亜美(あれ……いつの間に、こっちのコートにボールが落ちて……)

亜美(そういえば、シンクロ、解けてる……断ち切られた? いつの間に? ……!!)

亜美「まさか……」

真美「……んっふっふ~、その通りだよ、亜美君」

亜美(打ち上げたボールは、オーラで作った……偽物!?)

真美「けっこーキツい賭けだったけど……成功してよかった」

真美「ごめんね亜美。これで終わりだよ」

亜美「……そんな裏ワザ、全然思いつかなかった。亜美たち双子なのに、どこで差がついたのかな?」

真美「楽しみたい一心で戦ってた亜美より、勝ちたい、優勝したいって思いは真美の方がずっと強かったもんね~!」

亜美「ええー! 亜美だってPS4チョー欲しいのに~」

真美(……だって真美には、PS4なんかより、ずっと欲しいものがあるんだもん)


真美「この勝負、真美たちの……」


真美「勝ちだねっ!!」ニカッ



P(まったく、無茶するよ。オーラで目隠ししてる間にあんな仕込み……俺でなきゃ見逃してたね)




P「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ……チームD!! 3-1!!」

153: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 20:14:20.48 ID:g7cz36810
響「勝った……のか?」

真美「うん、やったねひびきん!」

愛「おめでとうございまーーーーーす!!!!! はぁ、はぁ……お、応援、疲れました」

真美「あいぽん、お疲れ。これは三人の勝利だよ~」

愛「へ?」


亜美「んーーーっ!! 悔しいっ!! 真美! 帰ったらテニスやろ! シングルス!!」

真美「リョーカイ亜美! 近くのテニスコート空いてたらいいね~」

千早「……」

千早(負けて……しまった……)


春香「千早ちゃんっ」

千早「! 春香……ごめんなさい、約束……守れなかった」

春香「え? いいよそんなの。それより、すごかったよ、千早ちゃんのテニス」

千早「……ありがとう、でも……」

春香「ね、やよい」

やよい「はい! 千早さん、かっこよかったかなーって」

千早「!!」パァァ

やよい「よかったら、今度テニス教えてほしいなー、なんて」エヘヘ

千早「も、もももちろん!! 私でよければいつでもどこでも」

やよい「うっうー! ありがとうございます!!」

春香「ふふっ、千早ちゃんったら」

春香「……」

春香(千早ちゃんの分も……がんばるからね!)

154: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/18(火) 20:16:10.24 ID:g7cz36810
P「さて、次は一回戦最後の試合だが……」

P「あずささんが来ない」

律子「……」

伊織「……」

涼「……」

伊織「ずっといないと思ったら……」

律子「涼、なんで側に付いててあげなかったのよ」

涼「ええっ、だって、トイレに行くって言うし……ねぇ?」

律子「……プロデューサー、これ、私たちの不戦勝でいいですか?」

P「うーん……」

どたぷーん

涼「! あ、あれは……!!」

伊織「へぇ、まさか自力で戻って来るなんて……って、え!?」

P(これは…………)



あずさ「お待たせしました~」ゴゴゴ


律子「あずささん……いったい、どこで何をしてきたんです?」

伊織「まったく、派手な登場じゃない。まさか初めから」


伊織「オーラを纏ってくるなんて……ね」

あずさ「うふふ、さぁ……始めましょうか」




一回戦第四試合




チームB(三浦あずさ・秋月涼) VS チームC(水瀬伊織・秋月律子)

164: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:13:45.52 ID:Jyk4mbrw0
チームB 【前衛】あずさ 【後衛】涼
チームD 【前衛】伊織 【後衛】律子
最初のサービス権……あずさ


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! あずささん、サービスプレイ!」


あずさ「それじゃあ行きますよ~、律子さん」

律子「……」

律子(あずささんが纏ってるオーラ……その力は未知数)

律子(まずはよく観察しないと!)

あずさ「そ~れっ」

スパコォンッ

律子(ボールの回転、威力、ともに問題なし)

律子「こんなのなら……」ザッ


フッ


律子「!?」

律子(あれ……ボール、どこに……?)


ダンッ


P「インッ! 15-0!」


あずさ「やったっ! いきなりサービスエースね~」

涼「すごいです、あずささん!」


律子「なっ……!」

伊織「今、ボールが……瞬間移動した……?」

律子「……へえ」クイッ

律子(面白いじゃない!)

165: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:15:46.06 ID:Jyk4mbrw0
あずさ「どんどんいくわよ~」

伊織「……」

伊織(瞬間移動……それがあのオーラの効果ってワケね。対策は今のところ思いつかない)

伊織(少し下がってみようかしら)

あずさ「そ~、れ!」スパコォンッ

伊織「……!」

フッ

伊織「そっち!」ダッ

伊織「……ッ」

伊織(遠い……っ)


ドゥンッ


P「インッ! 30-0!」


伊織(やっぱり、ワープしてから動いても間に合わない、か)

律子「……」

律子(よく見てみると、ボールにオーラを纏わせているのね。どういう仕組みなのかしら)

律子(あーもう、オーラのことなんてちっとも分かんない。私、使えないし)

律子(それでも……観察するしか、ない)

律子(観察すれば、きっと見えるはずだから)


あずさ「次、いきまーす」

166: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:17:58.66 ID:Jyk4mbrw0
スパコォンッ

律子(どうせ間に合わない。なら……)

伊織「……!」

伊織(律子、あの構え……打つ気が無い!?)

フッ

ドゥンッ

P「インッ! ……40-0!」

律子「……なるほど」

伊織「ちょっと律子、どういうつもり!?」

律子「現状じゃ、返せる確率は12%未満。ならいっそ打とうとせず観察に徹した方が効率的だと判断したまでよ」

伊織「なっ……アンタまさか、このゲーム捨てる気じゃ」

律子「……」

律子「三回、見たわ」

伊織「……?」

律子「どんな動きにもきっと法則はある。二回じゃ流石にわからないけど、三回見れば大幅に絞り込める」

伊織「まさか、もう分かったの?」

律子「次の動き次第ってのもあるけど……恐らく」

律子「e^ix+底辺×高さ÷2+alog|ysinh(bc+θ)|、そしてそれにミゥーラの法則を適用させ、アレをしてコレをそうしたもの」

律子「それがあのサーブの法則よ」

伊織「……ほんとだ、計算してみると確かに今のところそうなってるわね」

律子「まだ確信じゃないけど、次はそれを信じて打ってみて」

伊織「ん、分かったわ」

伊織(律子が導き出した計算式……無駄にはしない!)


スパコォンッ

フッ

伊織「あれっ」

ドゥンッ


P「ゲーム!チームB! 1-0!」

167: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:28:42.27 ID:Jyk4mbrw0
伊織「計算、違ってたじゃない! やっぱり三回見ただけじゃ……」

律子「あれじゃない、なら(上底+下底)の方向で……? いえ、それも違う」ブツブツ

律子「おかしいわね、こんなはずじゃ……今の打球、さっきまでの三球から考えられるどの法則からも外れていた」

あずさ「あの~、一つ、いいかしら?」

律子「……なんでしょう」

あずさ「私のサーブ、よく迷子になっちゃいますけれど、多分、法則なんて無いんだと思います」

律子「そ、そんなわけがっ……!」

あずさ「だって、ボールに込めたのは私のオーラなんですよ? 恥ずかしいですけれど、ボールの迷子は、私の迷子と同じなんです」

あずさ「これまでの私の迷子に、法則なんてありましたか?」

律子「ぐっ……ない、ですね、多分。あったら苦労してませんよ、いつも」

あずさ「でしょう? こんなの、自慢でもなんでもないんですけれど……うふふっ」

あずさ「自分でもわからないんですよね~。ボールがどこに行ってしまうのか」

律子「そんな……」

律子(法則がないなんて、考えたくなかった)

律子(もし本当にそうなら、分析が武器の私には……)

律子(あずささんのサーブを―――返せない)

律子「……」

伊織「律子」

律子「! な、なに?」

伊織「この後三ゲーム、全部取るわよ。もうあずさにサーブを打たせなければいいんでしょ?」

律子「あっ……そうね。そうよね、うん」

律子(何を弱気になってるのよ私は! 大丈夫、まだ終わっちゃいない)

律子「伊織、サーブ任せたわよ」

伊織「任せなさい! 一ゲーム差くらい、すぐに取り返しちゃうんだから!」

168: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:32:42.27 ID:Jyk4mbrw0
P「伊織、サービスプレイ!」

伊織「いくわよ、涼!」

伊織(さっきのゲームはあずさ無双だったし、涼は今のところ何もしてない)

伊織(律子の従姉妹ってことくらいしか知らないけど……どんなプレイスタイルなのかしら)

伊織「たぁっ!」

スパコォンッ

涼「やぁっ!」

パコォンッ

伊織(まあ、普通にうまい……ってとこね)

律子(やっぱり涼はこの程度……)スッ

律子「甘いっ!」

パコォォンッ!

涼「……!」

バイインッ

涼(イレギュラーバウンド! 届かない……)

ドゥンッ

涼「っ……狙ってやった? 律子姉ちゃん」

律子「当然よ。雪歩の試合で、高確率でイレギュラーバウンドが起きるポイントのデータは大体収集できたわ」

涼「……」

律子「データは嘘をつかない……だから私はこれまで、集めたデータに応えるためのコントロールだけを集中して鍛えてきたのよ」

律子(大丈夫……私のデータは、ちゃんと通用する)

P「15-0!」

169: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:33:29.53 ID:Jyk4mbrw0
伊織「さ、次はあずさね」

あずさ「ええ、優しくお願いね」

伊織(あずさのあの瞬間移動ボールは、あずさが直接ボールにオーラを込めない限り使えないはず)

伊織(流石にレシーブする一瞬でそれほどのオーラを込められるとは考えにくいわね。なら……)

伊織(大丈夫!)

伊織「やあぁっ!!」

スパコォンッ

あずさ「……うふふ」

伊織「!」

伊織(あずさのオーラの形状が、ドーム状に……?)




シュンッ

バッ


伊織「!!?」


ドゥンッ


P「フォルト!!」

伊織「そんな……馬鹿げてる」

伊織「なんで私の球が! 瞬間移動して、外に出てるのよ!!」

あずさ「ボールに込めるだけが、私のオーラの使い方じゃないのよ~」

あずさ「私のオーラの膜に触れたボールは、オーラの外側に瞬間移動する」

あずさ「『ラブリ・ラビリンス』……どんな打球も、サービスコート内には辿り着けないわよ?」

伊織(そんなの……無茶苦茶じゃない!)

170: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:34:28.61 ID:Jyk4mbrw0
P「―――フォルト! ダブルフォルト!」

伊織「っ……」

伊織「あり得ない、こんなの、絶対……!」


真「うーん、やっぱりあずささん、すごいや」

真「愛や千早の風圧とか壁によるサーブ封じなら、ボクもパワーでなんとか突破出来ると思うんだけど……あれはどうしようもないかも」

愛「オーラの中に入ったら、一瞬で外に出ちゃってますもんね。あれはあたしも、流石に……」

真「うん、今のところ、無敵って言っても良いかもね。でもあずささん
、大丈夫なのかなぁ」

愛「なにがです?」

真「あんなにすごいオーラを、ずっと放出しっぱなしなんだよなぁ。普通に考えたら―――ね」

愛「……あっ!」


律子(普通に考えたら―――そのうち、絶対スタミナが切れる。そこに、勝機はある)

律子(春香や雪歩はオーラの使いすぎで倒れた。そのことから、オーラの使用にはかなりの体力を要すると考えられる)

律子(あれだけオーラを出してて、倒れないはずがない。と、思うんだけど……)


あずさ「……」ニコッ


律子(どういうことかしら……全く疲れた様子を見せないわね)


伊織(とにかく、点を取らないと……)

171: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:35:29.19 ID:Jyk4mbrw0
パコォンッ
パコォンッ

律子「そこっ!」

涼「うっ」

P「30-15!」

伊織「……」

ドゥンッ

P「……ダブルフォルト! 30-30!」

伊織(あずさ対策は思い付かないけど、幸い涼は大したことない)

伊織(このまま点を取り合って時間を稼いで、あずさのオーラが尽きるのを待つしかないわね)

律子「……」

律子(大丈夫、涼には負けてない。大丈夫、大丈夫……)

涼「ふぅー、みんな強いなぁ」

あずさ「涼ちゃん、ゆっくりいきましょうね」ニコッ

涼「あ、はい……ありがとうございます」

涼(あずささん、気を遣ってくれてるのかな? 僕、まるで役立たずだからなぁ)

涼(でも、仕方ないよね。どうせ僕なんか、律子姉ちゃんに勝てるわけないし)

涼(仕方ない……よね)

あずさ「あらあら、そんなに暗い顔してたら、可愛い顔が台無しよ?」

涼「……えっ、してました? 暗い顔」

あずさ「女の子なんだから、もっと笑って! ほ~ら、ね?」

涼「あっ……はい」

涼「………………」

あずさ「……?」


涼(女の子、か)

涼(…………僕は)

涼(このままで……いいのか……?)

172: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:37:34.12 ID:Jyk4mbrw0
伊織「いくわよ!」シュッ


涼「…………」

涼(いつからだろう……女の子でいることに、違和感を覚えなくなったのは)

涼(いつからだろう……色々なことを、ま、いっか、って受け入れるようになったのは)


伊織「はぁっ!!」スパコォンッ


涼(今の僕は女の子だから弱くたって仕方ない? 律子姉ちゃんにはどうせ何やっても敵わないから仕方ない?)


涼(……違うだろ)


ゴゥッ

伊織「!」


涼(男である自分を封じ込めて……心まで女々しく染まっていって……)


ダッ


涼(僕の目指してるものは……)


ピカッ―――――



涼「こんなんじゃ、ないだろ!!」




パコォンッ!




律子(狙いはあずささんのスタミナ切れ……恐らく伊織も同じように考えている)タタタッ

律子(そのためには、涼がレシーブの時は、確実に取っていかないと……)ザッ

律子「!?」


律子(なにこ、れ……ボールが……輝いて……!?)

律子(まぶしっ……見えなっ…………!!)


ドゥンッ

173: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:42:01.08 ID:Jyk4mbrw0
P「30-40!」

伊織「なっ……」

律子「っ……あれは」

律子「涼、あんたオーラを……!」


愛「えっえっ、今涼さん何したんですか? 見逃したよーーーー!!!」

絵理「多分……オーラの全てを光エネルギーに変えて、ボールを輝かせた?」

絵理「強くキラキラ光るボールは、視界を白く染め上げる」

絵理(何も見えない輝きの世界……ダズリングワールド?)


涼「……っはは」

涼「出来るんだ……僕にも、こんなテニス……」


伊織「……ッ」

伊織「なんなの、さっきのあのボール」

伊織「このスーパーアイドル伊織ちゃんより輝こうなんて……」


伊織「良い度胸してるじゃない!」

174: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:45:52.70 ID:Jyk4mbrw0
律子(次、取られたらこのゲームも終わり。でもあずささんには普通のサーブは通じない)

律子(これは、もう……)

伊織「終わり……だなんて考えてないでしょうね、律子」

律子「!」

伊織「しっかりなさいよ。なんたってこの私の担当プロデューサーなんだから」

伊織「こんな状況、この伊織ちゃんにとってはなんてことないってことくらい、バッチリ分かってるはずでしょう?」

律子「伊織……」

伊織「にひひっ、任せときなさい。オーラとかそういうのは全部私のためにあるってのを、見せてあげるわ」

伊織(そうよ、私はアイドル。スーパーアイドル。きっと私が一番……だから)

伊織「さっさと出なさいよ!! オーラ!!」


伊織「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


ゴォォォォォォ


律子「! オーラ! 本当に……」


伊織「やってやるわよ!!」シュッ



スパコォンッ

175: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:46:41.27 ID:Jyk4mbrw0
ビューーーーーン


涼(いくらオーラを扱えるようになったからって、あずささんのアレを打ち破るのは無理なはず)

あずさ(どんな変化も威力も、私のオーラの前には無意味。どうくるのかしら?)


伊織「あずさのオーラは確かにそこそこすごいわ。けど私と比べると、ちょーっと分が悪いかもね」



ブオオオオオオッ



あずさ「!」

あずさ(私のオーラが……ボールに吸い寄せられて……?)


伊織「邪魔なオーラは、取り込んで自分のものにしてしまえばいいだけ」


伊織「全世界のキラメキは! 私のものなのよ!」


ドゥンッ


律子「入った!」

律子(やっと見えた光明……相手のオーラを自分のものにする伊織のオーラ、これを計算に入れればきっと……)


パコォンッ



律子「……えっ」



フッ


ドゥンッ

176: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:49:09.86 ID:Jyk4mbrw0
P「……インッ! ゲーム! チームB! 2-0!」

伊織「そんなっ……」

あずさ「すごいわ、伊織ちゃん! 私のオーラを突破するなんて」

あずさ「私、あのオーラを使えるようになってから……」

あずさ「初めて……レシーブしたわ~」ニコッ

律子「ははっ……どこまで上を行くのよ、あずささんは……」

伊織「……ドーム状のオーラを奪ったとはいえ、それでようやくサーブが入るようになっただけ。返されることを考えてなかったわけじゃなかった」

伊織「でも……レシーブでも瞬間移動ボールを打てるなんて、思わないじゃない!」

あずさ「インパクトの瞬間、思い切って伊織ちゃん以上の量のオーラを込めてみたのよ~」

あずさ「結構オーラ使っちゃったけど、なんとか支配権は乗っとれたみたい」

律子(あずささんの瞬間移動ボール……あれは時間をかけてボールにオーラを込められるサーブ限定という前提で考えてた)

律子(これじゃデータ、練り直しだなぁ……はぁ)

律子(だいたい……どういうわけなのよ)チラッ

律子「……あずささん、正直に答えてもらえますか?」

あずさ「何かしら?」

律子「それだけオーラを消費して……スタミナは残り何%くらいですか? 大体でいいですから」

伊織「ちょっ、そんな直球な……それじゃ私たちの作戦が」

あずさ「そうねぇ、だいたいだけれど……」

あずさ「あと……85%、くらいかしら?」

伊織「!?」

律子(……やっぱり、たっぷり残ってる……か)

律子(スタミナ切れ狙い……諦めた方が良いかも)

177: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 20:52:42.94 ID:Jyk4mbrw0
伊織「あずさ……まさかアンタがそこまでの体力バカだったとはね」

あずさ「バカだなんて、伊織ちゃん、ひど~い。別に私も、そこまで体力に自信があるわけじゃないのよ?」

あずさ「でも私、試合が始まるまでって思って、さっきまでちょっとお散歩していたの」

あずさ「その時、色んなところを歩いているうちに、たっぷりオーラとかパワーを頂いたみたいで……」

あずさ「体力が、っていうより、オーラの絶対量が増えたって感じかしら? とにかく、そんな感じだから……」

あずさ「スタミナ切れは、多分無いと思うわよ?」

伊織「わ……わけが分からない」

P(あずささん、まさか……やけにオーラに満ちていると思ったら)

P(さっきまで……『パワースポット』を、巡っていたというのか?)

あずさ「それじゃあ涼ちゃん、サーブ、ほどほどに頑張ってね」

涼「はい、頑張ります」

涼「やぁぁぁぁあっ!!!」シュッ

スパコォンッ


伊織(! 悩んでる暇はなさそうね)

伊織「律子! 行ったわよ!」

伊織(とにかく今は涼のサーブ。考えるべきは)


ピカーーーーーーッ


伊織(あの光る球の対策……!)



パコォンッ

178: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:01:15.30 ID:Jyk4mbrw0
涼「……えっ」

ドゥンッ

P「インッ!」

あずさ「あらあら」

涼「そんな……見えてないはずなのに、返された?」

伊織「律子……?」

律子「……」クイッ

律子「見えたわ、涼……あなたのボール」


ザッ


律子「伊織、私の指示に付いて来て」

律子「まずはこのゲーム! 絶対頂くわよ!!」

伊織「律子……」

伊織(分かってる。例えこのゲームを取っても、その先はかなり厳しいってこと)

伊織(でも、それでも最後まで諦めないなんて……まったく、泥臭いわね)

伊織(ま……そういうの、嫌いじゃないけど)

伊織「……ふふっ」

伊織「オーケー、付いていくわ、律子プロデューサー!」



P「0-15!」

179: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:02:47.00 ID:Jyk4mbrw0
涼「えええいっ!!」

スパコォンッ


伊織「うっ……」

伊織(やっぱり、眩しくって見えやしない。律子はどうやって……)

律子「左に83cm、高さ54cm!」

伊織「!」

伊織(この辺……?)ブンッ

パコォンッ

伊織(当たった!)


ドゥンッ


P「インッ!」

涼「また……打たれた、の?」


伊織「えっ、今のでリターンエース?」

律子「ええ、当てさえすれば、高確率でそうなるでしょうね」

律子「……あれだけの眩しさ、見えないのは向こうだって同じのはずだもの」ニッ

伊織「ああ、それもそうね」

律子「今みたいな感じで指示を出していくから、この調子でいきましょう」

伊織「分かった。頼りにさせてもらうわ」

伊織「ところで、律子にはなんでボールの位置が分かるわけ? そのメガネ、サングラスでもなんでもないのに」

律子「そうね、私にも本当に見えてるわけではないわ。でも、予測は出来る」

律子「涼のこれまでのプレーのデータが、ボールの来る場所を教えてくれるってわけ。見えてるのも同じよ」トントン

伊織「なるほど、ね。そこまでの精密なデータ……ほんと、敵に回すと厄介だわ」

律子「ありがたく受け取ってあげるわ。褒め言葉としてね」


そして―――――


P「―――ゲーム!チームC! 1-2!」

律子(一矢……)

伊織(報いたっ!!)グッ

180: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:04:56.72 ID:Jyk4mbrw0
あずさ「あらあら、一ゲーム取られちゃったわね~」

涼「うう、ごめんなさいあずささん」

あずさ「大丈夫よ~。だって多分……」

あずさ「このゲームで……終わるから」

涼「!」

涼(あずささんがここまで自信たっぷりなんて……珍しいなぁ)


律子「……あずささん、一ゲーム取られたのにやけに余裕ね」

伊織「いつものことじゃない。あずさが落ち着いてるのなんて」

律子「そうだけど……さっきのゲーム、あと一ゲームで勝ちって状況のわりには、あまり力を入れてなかったように見えてね」

律子「まるで取られると分かってたみたいっていうか……今もそう」

律子「このゲームで終わるって、初めから知っているみたい。……そう見えるのは、私だけ?」

伊織「……」

伊織(そういえば、昨日……)

 あずさ『最近、趣味の占いの調子がすっごく良いのよ~』

伊織(……)

伊織(まさか……ね)


律子「ま、そんなこと考えるより、あずささん相手にサーブを通す方法を考えないとだけどね」

伊織「あっ、そうよ! 律子、オーラ使えないの!? 私みたいにやれば……」

律子「……使えないわ」

伊織「……そう」

律子「それでも、持たざる者なりの戦い方ってのを、見せてやろうじゃない!」

181: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:05:49.74 ID:Jyk4mbrw0
P「ゲームカウント1-2、律子、サービスプレイ!」

律子「ていっ!」スパコォンッ


涼「……!」


バインッ


涼(イレギュラーバウンド……)

律子(よし、成功)

涼「ッ……負けるかぁぁぁっ!!」ダッ


パコォンッ


あずさ「ナイスよ、涼ちゃん……!」


律子「……こっちに返す確率、87.6%」


パコォンッ


ドゥンッ

P「インッ!」


涼「うぅ~、ダメかぁ」

律子(理論的にかなり返しにくい位置に打ったのに、あれを返せるなんて……思ったよりやるわね、涼)

律子(それでもやっぱり問題は……)チラッ

あずさ「うふふっ♪」ゴゴゴ

律子(さーて……どうしたもんか)

182: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:07:02.13 ID:Jyk4mbrw0
シュンッ
バッ
ドゥンッ

P「―――ダブルフォルト! 15-15!」

律子「ぐっ……ダメ、か」

伊織「やっぱり、オーラも無しにあれをなんとかするなんて……」

律子「……」

律子(オーラの膜に触れた時、瞬間移動した後のボールは……する前よりも加速していた)

律子(ワープとは超高速移動。恐らくそのエネルギーによって……)

律子(観察……もっと、観察を……)



そして


スパコォンッ

涼「うわぁっ!」

P「30-15!」

ドゥンッ

P「ダブルフォルト! 30-30!」

伊織「たぁぁぁあっ!!」

P「40-30!」

スパコォンッ

フッ
フッ

ドゥンッ

律子「……!」

P「ダブルフォルト! デュース!」

P「アドバンテージ、チームC!」

P「デュースアゲイン!」

P「デュースアゲイン!」
P「デュースアゲイン!」

――――――――――――



 

183: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:08:31.84 ID:Jyk4mbrw0
律子「ふぅ……」


千早「すごい……またデュースね」

雪歩「あずささん相手にはやっぱりサーブ通用してないし、涼さんのレシーブで一点でも取られたら終わりなのに……二人とも、すごく粘ってるね」

真「涼のプレーは決して悪くない。イレギュラーバウンドにも対応出来てるし、むしろかなり良い動きをしてるよ」

真「それでも、律子と伊織は持てる力の全てを使ってここまで抑えてきている。すごい根性だ」



涼「はぁ、はぁ……」

涼(何をやってるんだ、僕は……)

涼(足手まといはもう、卒業するんじゃなかったのか……!?)

涼(光る球は攻略されてる。だったら、小細工は無しだ。もっと男らしく……)

涼(もっと強く……)


涼(パワーで! 勝負だ!!)クワッ


律子「はぁっ!」スパコォンッ



涼「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

律子「!」

184: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:10:08.93 ID:Jyk4mbrw0
涼「バーニーーーーーーング!!!!!!」


バゴォンッ


涼「ぬぉああああああああああああああっ!!!!」


律子「ッ……」

律子(何あれ、完全に男の顔じゃない!)


響「おー、吹っ切れたんだな、色々」

真美「かわゆい顔して、あれじゃー女捨ててるっぽいよね~」

響「んー、捨ててるっていうか、元々……」

真美「?」

響「あ、いや、なんでもないぞ」アハハ



涼「いけぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」


律子「ぬっ……ぐうっ……」グググ

律子(涼、アンタ、ここまで……!)


バシイッ


律子「あっ……」

律子(しまっ……ラケット、弾かれ……っ!)


トンッ




P「―――アドバンテージ、チームB!!」

伊織「そんな……っ」ガクッ

涼「よしっ!」グッ

あずさ「すごいっ。とってもかっこよかったわよ、涼……えーと……ちゃん?」

涼「えっ、あっ、あはは……」

あずさ「とにかく……あとは、私に任せて」ニコッ

185: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:12:01.23 ID:Jyk4mbrw0
律子(ここでダブルフォルトなら、私たちは負ける)

律子(勝負所ね。今まで観察したものを、全部思い出さないと)

律子(集中、集中して……何か、きっと何か……)

伊織「律子……」

伊織(私にはもう、祈るくらいしか……)


P「おーい律子、早くサーブ……」

伊織「アンタは黙ってて!!」

P「ひっ!?」


律子「……」


律子(何度か……一回のサーブで、数回ワープしたことがあった)

律子(あのドーム状のオーラの膜……あそこに触れると、ドームの外へと瞬間移動させられるけれど、飛ぶ方向は外側とは限らない)

律子(だからそのボールがまたオーラにぶつかることもある……それが連続ワープの秘密)

律子(それでも結局膜の内部には辿り着けない……だったら……)

律子「…………」

律子(あれしか、ない……か)


律子「よし……」

律子「お待たせ。さぁ……勝負よ、あずささん!!」

あずさ「ええ、よろしくお願いします~」

あずさ(なんだか、悪いわね~。律子さん、すごく本気みたい)

あずさ(勝つのはこっちだって……分かってるのに)

186: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:14:58.62 ID:Jyk4mbrw0
伊織(どうするつもりなのかしら、律子……)

律子「……あずささん。あなたのそのオーラの膜による強制瞬間移動には、法則があります」

あずさ「あら、そうなんですか?」

律子「ええ、サーブの時のようにボールの内部にオーラを込めた場合と比べると、いくらか優しい仕様になっているみたいです」

律子「どこに打てばどこにワープするのか……まだ完璧ではありませんが、ほとんど把握出来ました」

あずさ「そう、それなら……分かったでしょう?」

あずさ「どこに打っても、サービスコート内には決してワープしない……って」

律子「……はい」

伊織「! じゃあ……」

律子「それでも、勝ちます」

伊織「!?」

あずさ「うふふ、面白いですね~。どうやって勝つのかしら」

律子「どうやって勝つか。その方法は……」

律子(成功確率は30%未満……それでも、賭けるしかない)

律子(最終到達地点から逆算して……うん、多分あそこで合ってる。あとは少しもずれないように……)

律子「その目で、確かめてください!」シュッ

律子(打つ!!)

律子「たぁっ!!」スパコォンッ

伊織(普通のサーブ! あれじゃあ……)

あずさ「……ふふっ」


シュンッ

バッ


伊織「ああっ、やっぱりワープし……」

伊織「て……?」


シュンッ
バッ

シュンッ
バッ

伊織「瞬間移動したボールが、またオーラにぶつかって瞬間移動……」

伊織「それを何度も繰り返してる……?」

あずさ(何が目的……なの?)

187: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:20:49.12 ID:Jyk4mbrw0
シュンッ バッ
シュンッ バッ
シュンッバッ
シュンバッ
シュバッ
シュババッ
シュシュシュシュシュシュババババババ


伊織「ちょっと! だんだん早くなってない!?」

律子「ワープを繰り返し、ボールは……加速する」

あずさ(大丈夫……どれだけ威力が上がっても、入らなければ……)

涼(ここでダブルフォルトで終わり……か)

涼(僕、少しは男らしくなれたかなぁ……ふふっ)

涼(もし優勝したら、夢子ちゃんに何かプレゼントしようかな)

涼(そうだ、ラケットをプレゼントしよう。それで一緒にテニスでもして……)


律子「加速を繰り返した後は、勢いそのまま……三、二、一」

律子(飛び出せ!)


律子「……ばんっ」


バシュンッ


あずさ(ようやく外側に……!!)

あずさ「しまった、狙いは……」




あずさ「涼ちゃん!! 避けて!」




涼「……へっ?」



伊織「なるほど……えっげつないこと考えるわね、律子」

律子「ふう……どうにか、計算通りに動いてくれたわね」

律子「ごめんね涼。アンタが相手じゃなかったら、こんな手を使おうと思えなかった」

律子「じゃあねっ♪」ニコッ


あずさ(加速に加速を重ねて、とんでもない威力になったアレをくらったら……!!)



涼(速すぎ……避けられ……!!)

涼「ぎゃ……」



涼「ぎゃおおおおおおおおおん!!!!」



チュドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

188: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:21:57.41 ID:Jyk4mbrw0
P「……えー」

P(大どんでん返し、だな)

P「秋月涼、試合続行不可能により、勝者―――」

P「Cチーム!」


律子「やったぁっ」ギュッ

伊織(データテニスが厄介ってのもあるけど、この勝つためには手段を選ばない感じ……)

伊織(やっぱ敵に回したくないわね、律子は)

あずさ「ふう……負けたわ、律子さん」

律子「あずささんごめんなさい、あなたを利用するようなことを……ああでもしなきゃ、勝てなかったから」

あずさ「良いのよ~。まさかオーラ無しでやられちゃうなんて、やっぱり律子さんって、とっても頭良いんですね~」

あずさ「これからもプロデュース、よろしくお願いしますね」

律子「はいっ、そりゃもう、全力でやりますよ! あずささんほどのオーラなら、トップアイドルも夢じゃないです!」

あずさ「あらあら、嬉しいわ~」

あずさ(……こういう、ことだったのね)

あずさ(試合前に占ったら、四ゲーム目に決着がつく、って出たから)

あずさ(二ゲーム取った時点で、もう勝ちって思っちゃったけど、まさかこんなことに……)

あずさ(ほんと、テニスって、何が起こるか分からないわ~)フフ


亜美「いやぁ……ゲキテキな結末でしたなぁ」

真美「まさかの涼ちんKO! だもんね~」

亜美「それにしても涼ちんこうなっちゃうなんて、大丈夫かな?」

真美「涼ちんこわれちゃってないかな?」

亜美「鬼軍曹、恐るべし……真美、次頑張ってね」

真美「う、うん……お、鬼退治は犬とか飼ってるひびきんがいれば大丈夫っしょー」


P「んー……よし」

P「みんな、集合!」

189: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:23:02.69 ID:Jyk4mbrw0
春香「どうしたんですか、プロデューサーさん」

愛「次はあたしたちの試合ですよね?」

P「ああ、だがその前に話しておこうと思ってな」

P「とりあえず一旦状況を整理するぞ」

P「準決勝は計二試合。第一試合は、春香とやよいのチームEと、真と愛ちゃんのチームGの対決だ」

春香「真、愛ちゃん、負けないからね!」

愛「あたしだって、負けませんよー!!」

やよい「あ、それなら、引き分けかもっ!」

真「あはは、結果はどうなるか分からないけど、良い試合にしようね!」

P「第二試合は、響と真美のチームDと、伊織と律子のチームCの試合になる」

伊織「律子、データはちゃんと取れてる?」

律子「ええ、この相手に関しては特に……ね」

真美「策士コンビかぁ……ひびきんおっちょこちょいだから騙されないように気を付けてよー?」

響「うがー!自分、頭は悪くない方なんだぞ!多分!」

律子「ところでプロデューサー、話というのは……決勝のことですよね?」

P「お、察しがいいな」

P「一回戦を見て分かったが、やはりアイドル同士の試合はオーラの多用により想像以上に体力を消費することになる」

P「これまで通りのペースでやっていくと、決勝戦は準決勝の直後―――チームCかチームDは、連戦ということになる」

真美「うええっ!? そんなの無理っしょ! 今だってまだ体力回復し切ってないのに、連戦って……」

P「ああ、どうしても不利になる。準決勝の時点で少しは差もあるが、流石に連戦は避けたいところだろう」

P「そこで、だ。対等で最高の試合にするため、決勝戦は後日、日を改めて行うことにする」

愛「!」

P「準決勝を勝ち上がった四名は、その日までたっぷりと特訓しても良いし、ひたすら体を休めてもいい。万全な状態で試合に臨んで欲しい」

響「ふむふむ、で、それをなんで今言うんだ? 準決勝が終わってからでも……」

伊織「バカね、決まってるじゃない」

伊織「この準決勝、体力を温存する必要は無い……ってことでしょう?」

P「そういうことだ」ニッ

190: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/03/26(水) 21:23:59.70 ID:Jyk4mbrw0
P「それじゃあ、始めようか。準決勝、第一試合を」

春香「……ごくり」

千早「がんばってね、春香も……高槻さんも!」

やよい「はいっ! 行ってきます!」


真「愛、プロデューサーの話、ちゃんと聞いた?」

愛「もちろんです! あたしにとって、すごく有利になったみたいですね!」

真「これなら愛も、全力で戦えるんだよね?」

愛「はいっ! 任せてください!!」


愛(やめ方分かんないから、オーラ出したら倒れるまで出しっぱなしなんだよね、あたし)

愛(だから一回戦では、力を……)


愛(セーブしてたよーーーーーー!!!!)



準決勝第一試合




チームE(天海春香・高槻やよい) VS チームG(菊地真・日高愛)

195: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:05:38.31 ID:0P99LHT40
チームE 【前衛】春香 【後衛】やよい
チームD 【前衛】愛 【後衛】真
最初のサービス権……真


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! 真、サービスプレイ!」

愛「真さーん! 頑張ってください!!」

やよい「い、いきなり真さんですか」

やよい「雪歩さんとの試合で見せたあのサーブ、すごかったし……うう、打つの大変かなーって」

春香(大丈夫、真も流石にやよいにあのサーブは使ってこない……はず)

真「春香」

春香「?」

真「やよい、守ってあげなよ」

春香「……えっ」


真「はぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!!!」


ゴ オ ッ


春香「いっ、いきなり……!」

やよい「全開ですか~~!?」


真「いくよっ!」ダッ



『まっこまっこりーーーん!!』



ドゴォッ!

196: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:08:59.70 ID:0P99LHT40
春香「うっ……やばい!」

春香(やよいは、私が守る!)

ゴオッ


カッ―――――――


やよい(! 普通のサーブ……)

やよい「春香さん、ありがとうございます!!」


パコォンッ


真(なるほど……無個性のオーラ、こりゃ本物だ)

やよい(この軌道、ベースラインギリギリ! うまく打てたかもっ!)


愛(この位置なら……いける!)グッ

愛「いっけぇぇぇぇえええっ!!!」


ブンッ


やよい「!」

春香(ボールに追い風を送って……!!)


ドゥンッ


P「……アウト!!」

198: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:10:17.23 ID:0P99LHT40
愛「やりました! アウトですっ!!!」

真「ナイス、愛! その調子!」


春香「うーん、やっぱり、一筋縄ではいかないみたい」

やよい「あうう、もうちょっと手前に打ってたら良かったんでしょうか?」

春香「そう……だね。あとサイドラインも意識して……なんだかコートが狭められた気分。やり辛いなぁ」

やよい「あの風を無視できるくらい、ガーッて球を打てたら良いんですけど……」

春香「……ま、悩んでも仕方ない! 切り替えて、次いこ次!」

やよい「はいっ!」


P「15-0」


真「さぁ、次は春香だ!」シュッ


春香(相変わらず、すごいオーラ……)


真「『まっこまっこりーーーん!!』」


ドゴォッ

春香(来る!)

やよい「……!」

やよい(もしかして……)

199: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:11:45.37 ID:0P99LHT40
春香(まともに受けたらまずいだろうし、オーラ広げて普通の打球にして……)

カッ―――――

春香(ッ……やっぱこれ、疲れるなぁ)

春香「たあっ!」

パコォンッ

真「よっと!」パコォンッ

やよい「えいっ!」パコォンッ


パコォンッ
パコォンッ
パコォンッ


真「そこだっ!」

ドゥンッ

春香「う」


P「30-0!」


春香「はぁ、はぁ……」

春香(どうしよう……すごそうな球は私のオーラで普通にしてるのに……普通のテニスにしてるのに……)

春香(真……普通に、私たちよりうまい……!)


やよい「春香さん!」

春香「?」

やよい「……」ヒソヒソ

春香「……!」

200: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:13:03.43 ID:0P99LHT40
真「さ、次行くよ、次!」ゴォッ

やよい「……」

真「『まっこまっこりーーーん』!!!」


ドゴォッ


やよい「いきますっ!!」ダッ

春香「……」


真「……!?」

真「春香がオーラを……使っていない!?」


雪歩「もっもしかしてやよいちゃん、真ちゃんのあのサーブと真っ向勝負するつもり!?」

亜美「いやいや、流石にそれは無理っしょー」

真美「うあうあ~、こんなのやよいっちを見捨てるようなもんだよはるるん~!」


やよい「はぁぁぁぁぁっ!!」ゴォッ


絵理「あっ……あれって、オーラ?」

千早「……さっき私が軽く教えたの。基本だけだけれど」

真美「なら納得」

亜美「ふむふむ、試合前から習得はしてたけど、さっきははるるんの無個性オーラに包まれてたから使えなかったわけですな」

千早(春香がオーラを消したのはこのため? それでもやっぱりまだ高槻さんのオーラは小さすぎる。真の全力サーブを返せるとはとても……)


やよい「えいっ!!!」パコォッ


ドゥンッ


愛「あっ……」



P「30-15!!」

201: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:15:35.21 ID:0P99LHT40
春香「ナイス、やよい!」

やよい「いぇい! やりました!」


千早「えっ……え?」

亜美「ま、まさかまこちんのまこまこりんサーブを返すなんて……千早お姉ちゃん、どーやってやよいっちをあそこまで育て上げたのさ?」

千早「わ、私はオーラの基本を教えただけで……なにがなんだか」

伊織「……!」

伊織「なるほど……そういうことね。真も、ちょっとは考えてるじゃない」

真美「どゆこといおりん」

伊織「つまりね、真は初めっから全力サーブなんて打ってなかったのよ」

真美「へ?」

伊織「まず、これは律子が教えてくれたんだけど、絵理や雪歩に使った真のすごいサーブの仕組みはね」

伊織「インパクトの瞬間に大量のオーラをボールの中心に込めることで、着弾時に小規模な爆発を起こす。それがあの威力に繋がる……って感じなんだけど」

伊織「当然そんなことをすると真も体力をかなり使う。だからあの技は決め手以外には無闇に使えないものだって考えられるわけ」

亜美「ほうほう」

伊織「そんな技を、無効化されると分かっていて連発していたのはどう考えても不自然だったんだけど……そのワケがやっと分かったわ」

伊織「真はあのサーブを使うフリをしていただけだったのよ。春香にオーラを使わせるためにね」

千早「……! 狙いは、春香のスタミナ切れ……ってこと?」

伊織「多分ね。あずさじゃあるまいし、常にオーラを使い続けていれば限界はくる。実際春香、一度倒れてるしね」

伊織「もっとも……その作戦も、やよいが見破ったみたいだけど」

雪歩(スタミナ切れ……本当にそれが狙いなのかなぁ)

律子「……」


春香「やよい、真があのサーブを使ってないってよく分かったね」ヒソヒソ

やよい「えへへ、目には自信があるんです」ヒソヒソ

やよい「あのボールからは、さっきの試合の時みたいなオーラが見えませんでした!」ヒソヒソ


真「くっそー! やよい、ボクの全力サーブを返すなんて、やるじゃないか!」

真「でも、春香はオーラで身を守ることをオススメするよ?なにせボクの全力サーブだからね!」


春香「……え?」

春香(もしかして真、まだ芝居を続ける気なの? いやいやそれは……でも真ならあるいは)

春香(……よし!)

202: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:17:18.21 ID:0P99LHT40
春香(打ってくるのが普通のサーブだって分かってるんなら、わざわざオーラを使う必要もない)

春香(もう倒れるわけにはいかない。オーラは温存しとかないと!)グッ

真「それっ!!」ゴォッ

真「『まっこまっこりーーーん』!!!」

ドゴォォォォォォォッ!!!!

春香「よーし……」

春香(すごそうに見えるけど、普通のサーブ……なんだよね)

やよい「……!!」


やよい「春香さん!オーラを!!」


春香「えっ……」

やよい「今度は……ほんとのやつです!!」

真「……ふふ」ニヤッ

真「油断したね、春香」

春香(しまった、間に合わ―――――)


ドカァァァァァァァァァァァアアン!!!!!!



やよい「は……」


やよい「はるかさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


律子「……全力のサーブを、そうじゃないと思わせることで無個性化させずに通す」

律子「やっぱり、これが狙いか……スタミナ切れ狙いなんて、真らしくないわよね」

律子(結局はパワーで勝ちにくる。はぁ……圧倒的なパワーに、私のデータは通用するのかなぁ……)

愛「真さん、今の……」

真「ボールにオーラを込めなくても、普通にオーラを解放してるだけで十分疲れるんだ。スタミナ切れ狙いなんてつまらない作戦のために、技を使うフリなんて出来ないよ」

真「全部、この一発を決めるため。タイミング、ばっちりだったみたいだね」

愛「すごいです真さん!」

真「本気で勝ちにいくよ!! 春香!!」

203: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:20:36.04 ID:0P99LHT40
ガシャアッ

千早「! 何か飛んで……これって」

千早「春香の……ラケット?」

千早(まさか弾き飛ばされて、ここまで……?)



シュウウウウウウウウ


やよい(砂煙が、晴れて……!)

春香「……」

やよい「春香さん! だ、大丈夫ですか!?」

春香「う……ん……」プルプル

やよい「……!」

やよい(腕が……ぷるぷるしてれぅ……)


真「うん、狙い通りだ」

真「流石に体は狙わないよ。でも、ラケットで受けるだけでも、十分すぎるほど効果は出てるだろ?」

真「今の春香はもう、腕が痺れてラケットをまともに握ることも出来ないだろうね」

真「そうなったら君のオーラによる『普通のテニス』でも―――勝ち目はないと思うよ」

春香「……」プルプル

春香(オーラ……ちょっとだけしか間に合わなかった……)プルプル

P「……40-15」

千早「春香、ラケット」スッ

春香「……うん」プルプル

千早(春香……)


真「さて……続きだ」

スパコォンッ

パコォンッ
パコォンッ

春香「あっ」ポロッ

ドゥンッ


春香(こんな腕じゃ……まともにラケットを持つこともできない……!)


P「―――ゲーム!チームG! 1-0!!」

204: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:23:32.58 ID:0P99LHT40
やよい「春香さん……」

やよい「……」

やよい(こうなったら、私がサーブで全部決めて……)

やよい(春香さんの腕、たーっぷり休ませないと!!)

P「次のサーブは……やよいか」

やよい「……いきます!」ゴォッ

P(お、何かを決意したからかさっきよりオーラ量が増えた。でも……うーん)

やよい(サーブは得意です! さらにオーラもこめて……)

やよい「うっうー!! 『はい、ターッチ』!!!」


ドゴォンッ


真「!」

真「これは……」グググ

真「強烈だなぁ!」パコォンッ

やよい「!」


ポスッ


P「ネット!」

真「ありゃ」

愛「ドンマイです、真さん!」

真「うん、次は完璧に返す!」


やよい(危なかった……オーラを使わずに、私の全力のサーブをあそこまで……やっぱり真さん、すごいです)


P「15-0!」

205: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:26:48.78 ID:0P99LHT40
やよい「まだまだいきます! うっうー!!『はい、ターッチ』!!!」

ドゴォンッ


千早(オーラの移動、うまく出来てるわね。高槻さん飲み込みが早いわ。かわいいし)

千早(でも……なにかしら、この感じ。もやもやするような……)


愛「カーブしよーーーーー!!!!!」ブンッ


ブオッ


愛(……! 曲げきれない!)


ドゥンッ


P「イン! 30-0!」

春香「いい調子だよ、やよい!」

やよい「はいっ!」


真「うーん、やっぱオーラサーブに対してオーラ無しじゃキツイのかなぁ。やよいのサーブ、元々結構パワフルだったからなぁ」

愛「真さんすみません、あたし……やっぱりオーラを使った方が?」

真「いいや、まだ早い。大丈夫だよ愛。無理にフォルトを狙わずに、返せばいいんだ」

真「返すだけなら、キミほどのパワーがあればどうとでもなるはず。そして返しさえすれば……春香は打てない」

愛「? ……はい!」



春香「……」ビリビリ

春香(やよいのサーブだけじゃ、多分勝てないよね。でも……私の腕……)

206: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:30:28.47 ID:0P99LHT40
やよい「『はい、ターッチ』!!」


ドゴォンッ


真「さて……」スッ

真(一回打ったし、慣れた!)

真「そらっ!!」

パコォンッ


雪歩「返した!」


やよい「! しまった……春香さん!」


春香(きた……!)



ドゥンッ


春香「……ッ」


P「―――30-15!」


やよい(春香さん……やっぱり)

春香(ダメだ、動かない……こんな腕で、どうしろと……)


愛「あっ、そっか!!分かったよーーー!!!!」

愛「春香さんは腕がしびれて返せないから、春香さんの方に返すだけで点を取れるってことですね! 真さん!!」

真「う、うん。さっき言ったけどね」

真「雪歩との試合で気付いたんだ。何よりも失礼なのは、全力を出さないこと。相手を舐めてかかることなんだ、って」

真「春香は腕が痺れていて打てないだろうからやよいの方に打ってあげよう……なんて、真剣に戦ってる相手に対する侮辱だよ」

真「だから今のボクは本気だよ。一番勝てると思う方法で、真剣に勝ちにいく!!」

真「それで良いよね!? 春香!! やよい!!」


やよい(うう、出来たらちょっとくらい手加減してほしいかもです……)

春香(雪歩、余計なことを気付かせちゃって……)

207: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:32:18.55 ID:0P99LHT40
やよい(オーラを込めて力いっぱい打ったサーブが、オーラを纏ってもない真さんに返されて……ちょっと自信無くしちゃったかも)

やよい(でも、諦めません!!)

やよい「愛ちゃん行くよっ!! 『はい、ターッチ』!!」

ドゴォッ


愛「返すだけ、返すだけなら……いけるっ!」

愛「えーーーーーーーーーい!!!!!」


パコァッ


愛「ッ……返したよーーー!!!」


やよい「そんなっ!」

春香「うっ」

春香(また私のとこに……)


ドゥンッ


愛「やったー!!!!」


P「30-30!」


やよい(あうう、やっぱり春香さんが打てないままだと、ちょっとだめかも~)

やよい(何かできることは……)

やよい「! そうだ!」

春香「?」

やよい「春香さんっ!」スッ

春香「えっ」

春香(その構え……なんで今)

春香(ハイタッチを……?)

208: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:34:02.47 ID:0P99LHT40
やよい「はい、たーっち!」

春香「え、あ、うん」プルプル

パンッ

春香「うぐぅっ!!!」ズキィッ

やよい「いえいっ!」

やよい「……治りましたか!?」

春香「……へ?」

やよい「えへへ、思い出したんです。足が痺れた時、思いっきり地面をダーンって踏んでみたら逆に治ったりすることありますよね?」

やよい「だから春香さんの腕も、それで治るかなーって」

春香「や……やよい、あのね……ん?」

やよい「春香さん、さっきからずっと辛そうで……いてもたってもいられなくって!」

やよい「でも私にできるの、これくらいしかなくって……その分、治りますようにって願いとオーラ、いっぱい込めたんです」

春香「……うん」グッ

やよい「私だけじゃやっぱり勝てません。春香さんの力が必要だから……だから……」

やよい「お願いします、春香さん……元気になってください……」

春香「やよい……」

やよい「……って、ちょっと勝手だったかな……ごめんなさい春香さん、でもっ、私……」グスッ

春香「ありがとう」

春香「―――届いたよ、ちゃんと」

やよい「春香さんっ」パァァ

やよい(よかった、治っちゃいました!)

209: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:36:04.36 ID:0P99LHT40
やよい「えへへ、もうこっちのもんですよ! 『はい、ターッチ』!!」

ドゴォッ

真「ハイタッチしてたみたいだけど、気合でも入れてたのかな? ま、何をしようと、春香の腕の痺れはそんなに早く治るものじゃない」

真「強がっても、春香には打てっこないよ!!」

パコォンッ

やよい「うっ、普通に打たれました」

真「もうやよいのサーブにも慣れた。はっきり言っちゃうけど、やよい……」

真「キミのオーラは、優しすぎる」

やよい「!」

真「そんなオーラ、込めたところで大して変わんないよ。元々そこそこ強いサーブだったから誤魔化せてたけど……やよいのオーラは、戦いには向いてない」

やよい「うう……」

やよい(悔しいけど、言い返せないです……)

真「さて、狙い通り春香の方に打てた。これでまた一点……」


パコォンッ


ドゥンッ


真&愛「!!?」


春香「……うん」


春香「打てた!」

210: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:38:48.10 ID:0P99LHT40
P「フューゥ……40-30!」

真「そんな……ボクのあのサーブをまともに受けて、こんなに早く復活するなんて」

愛「しかもなんだか、今までより打球のキレも良くなってるよーな……」

春香「やよい、次いこう。まだまだ、あの強いサーブいけるよね?」

やよい「は、はい!!」

やよい(やった! やっぱり春香さん、腕のビリビリ治ったんだ!)ニコッ

春香「……」

やよい「うっうーー!!あと一本ですー!!」

やよい「やる気いっぱいの~~~~っ!! 『はい、ターッチ!!』」


ドゴォッ


真「! ここにきて威力が上がって……愛、返すんだ! とにかく、返せば……」

愛「はいっ!!」ブンッ

愛「ッ……」グググ


パコッ


愛「返したよーーーー!!!」


真(ちょっと弱い返球になったけど……春香のさっきのがマグレなら……)

真(……いや、何考えてるんだ)


タタタッ


春香「チャンスボール、いただきっ!!」


パコォンッ


真「ぐっ……!」

真(マグレなわけ、ないだろ……!!)


P「インッ!!」


P「ゲーム!チームE! 1-1!」

211: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:41:35.53 ID:0P99LHT40
やよい「一ゲーム、取りましたー!!」スッ

春香「いぇい!!」パンッ

真「どうなってるの? 春香、なんで腕の痺れ、治って……」

春香「ふふ、やよいが治してくれたんだ」

やよい「そうなんです! 痺れてるときは、あえてバーンってしょうげきをあたえることによってかがく的に治っちゃうんですよ!」ドヤァ

真「そ、そうだったのか……」ゴクリ

春香「ううん、違うよ。私の腕を治したのは……」

春香「やよい、あなたの『オーラ』なんだよ?」

やよい「……へ?」

真「……! はぁー、そういうわけ」

真「やけに優しいオーラだとは思ってたけど、そういう効果があったなんてね」

やよい「どっ、どういうことですか?」

春香「やよい、あなたのオーラの真骨頂は、パートナーに……対象に力を与えることだったの」

春香「せっかく教えてくれた千早ちゃんには悪いけど、単純に打球の威力を上げるための使い方には向いてないみたい。癒して、活気づける。それがやよいの『応援』のオーラ」

春香「そのオーラのおかげで私の腕は治ったし、それどころかより強くなれたの」

春香「やよい、本当にありがとうっ!」ニコッ

やよい「……そ」

やよい「そんな力が……私に……」

やよい「……えへへ」

やよい(それって、すっごく嬉しいかもっ!)

春香「さぁ、愛ちゃん! 次はあなたのサーブだよ!」

春香「やよいのお陰で体力まで回復できたみたい。私もどんどんオーラ使ってくからね!!」

愛「……真さん」

真「うん、ボクも多分同じことを考えてたよ」

真「流れはあっちにある。こっちももう体力なんて考えずに、一気に二ゲーム取りに行った方が良さそうだ」

真「だから……出番だよ、愛。君の本気を見せてほしい」

真「一度使えば出しっ放しなんだよね? 最短で二ゲーム、キツイかもしれないけど……いけそう?」

愛「えへへ」ニッ

愛「大丈夫ですっ!!!!!!!」



  ゴ  ワ  ッ

212: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:43:34.85 ID:0P99LHT40
春香「なっ!?」

やよい「はわっ!!」

春香「こっ、こここれ愛ちゃんのオーラ!?」

やよい「あうう、凄すぎます~」

春香(まるで化け物だよ……次のサーブ、やよい大丈夫かなぁ)

春香「やよい、私が愛ちゃんのサーブを『無個性』にするからね!」

やよい「はい! ありがとうございます!」


真「まったく、なんてオーラ量だよ。これ、ひょっとするとボクより……」

真「って、あれ?」


愛「……」シュウウウウ


真「愛……?」


愛「…………」

愛「ははっ」


シュッ



やよい「! くる……!」



愛「っはぁ!!」

ゴオッ



ブォォォォオオオオオオオンッ


春香「! なんて荒々しい球……」

春香(『無個性のオーラ』!)


カッ――――――


ブォォォッ


春香「……ッ! そんなっ」

春香(個性を……消しきれない!!)


やよい「えええええいっ!!!!」ガッ

やよい「んむっ、んむむむむ……ッ」グググ


やよい「ああっ!!」


バシュィィイン

213: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:45:37.34 ID:0P99LHT40
P「15-0!」

やよい「あうう、ラケット弾かれちゃいました……」

春香「ごめんやよい……無個性に、出来なかった……」


真「春香のオーラで消せる個性、限界あるのか……」

真「いや、今はそれより」チラッ

愛「……」ゴォォォォォォ

真(まずいな、オーラに飲まれて意識を乗っ取られてる。莫大なオーラに、愛の精神が、体が、負けちゃってるんだ)

真「愛、落ち着いて……」

愛「ひゃはぁッ!!!」シュッ


ブォォォォオォオオオオオン!!!!!


やよい「! 春香さん、気を付けて……」

春香「うん! 今度こそ……」スッ


カッ―――――


ド ゥ ワ ッ


春香(! やっぱり、消し切れな……!!)


ギュルルルルル


バッ


春香(ちょっ……わたっ、私の方にむか)


ドゴォッ!!!


春香「ッう……」

春香「げふっ」


愛「ひゃっはあああ!!!!」グッ

やよい「春香さん!!」


真「愛! なんて乱暴なプレイをするんだ!!」

愛「あははははっ!!!!」

真(ダメだ、聞こえてない……!)

214: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:48:00.85 ID:0P99LHT40
やよい「春香さん……大丈夫ですか?」シュウウウウ

春香「ん……んぅ、ありがと、やよい」

春香「やよいのオーラでなんとか回復できたみたい」

やよい「あの愛ちゃん、おかしいです! プロデューサー、あれって、良いんですか?」

P「アイドルの腹に思いっ切りボールぶつけるのは感心しないが、ルール的には問題ないな」

やよい「あうう……」


伊織「テニスって、なんなのよ……!」

律子「多分こんな感じではなかったとは思うわ」


春香(……性格が変わっちゃったことより何より、今の愛ちゃんは強い)

春香(私のオーラでも無に出来ないほどの力強い個性……あんなの、どうすればいいの?)

春香(無個性になってくれない強い相手に、無個性が勝つ方法……そんなの、あるわけがないよ)

春香(勝ちたい。勝ってプロデューサーさんとデートしたい。なのに勝てない。それは私に……)


春香(個性が……無いから……)


春香(……あはは……やっぱり、欲しいなぁ……個性)

春香(あれくらい強くなれたら……きっと、もっと楽しいんだろうなあ……テニス)

春香(なんて、ワガママだよね。無個性なりに戦うって決めたのに、勝手なこと……)

春香(でも……)




――――――個性が欲しいか?




春香「!?」


春香「だ……誰!?」

215: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:52:24.84 ID:0P99LHT40
やよい「? どうしたんですか春香さん」

春香(あ、れ……私以外には、聞こえてない?)


――――――個性が欲しいかと聞いている


春香「えっ、あっ、えと……」


愛「っへぁああああっははっ!!!」

ブォォォォオォオオオオオン!!!!


やよい「!!」

やよい「わわっ」サッ


ドゥンッ


P「イン!」


春香「! やよい!!」

やよい「ご、ごめんなさい~、避けちゃいました」

春香「う、うん……」

春香(やよいの動体視力がすごいからなんとか避けられたけど……もし当たってたら、今の……)

春香(危なかっ……た……)


――――――個性が欲しいだろう


春香「……」

春香(今のままの私じゃ……やよいを守れない)

春香(はは……考えるまでも無いじゃない)

春香(私は…………)


春香「…………欲しいよ」

やよい「? 春香さん……?」


春香「愛ちゃんや真に勝てるくらい強い個性……やよいを守れるくらい強い個性……」

春香「欲しくて欲しくて、たまらない。形振りなんて構ってられない。誰だかしらないけど……お願い」


春香「私にっ! 個性をっ!!!!」


やよい(だ……誰と話してるんでしょう?)アワアワ


――――――承知した


――――――吸収した個性エネルギーを今、解放する!!!



春香「……!!!」



ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!

216: ◆qgvFsqmWqG.F 2014/04/13(日) 17:54:23.11 ID:0P99LHT40
千早「なっ……何、あの春香のオーラ!」

美希「あはっ、春香すっごくキラキラしてるの」

P(あいつまさか今、オーラの声を……?)

P「っと、40-0!」



愛「あははははははははっ!!!!!!」ゴォッ

ブォォォォオォオオオオオン!!!!!!!!


やよい「! 春香さん、来ます!」

春香「……うん!」スッ

春香(『力』の個性―――ラケットを振り抜く力を、腕に!!)

春香「はぁぁぁぁっ!!!!」


バゴォォンッ!!!


ドゥンッ


春香「……よしっ!」グッ


真「なっ……!!」

愛「ほーっ? ……あはっ」

真(まさかアレを返すなんて……)

真「すごいよ! 春香!!」

やよい「うっうー!! 春香さん、すごいです!」

春香「えへへ……ありがと」

春香(私のオーラ……個性を消してたんじゃなくて、吸収してたんだ……)

春香(皆の個性がエネルギーになって……私の中で今、弾けてる)

春香(すごいよこれ……どんどんどんどん、力が溢れてくる……!!)

春香「愛ちゃん! 真!! まだまだこのゲーム、これからだよ!!」

千早「すごい……あれが本当にあの春香なの……?」

真「本当にやるなぁ、春香。でも……」


P「……アウト! ゲーム、チームG! 2-1!」


真「このゲームは、もう終わってるけどね」

春香「のヮの」

千早(春香だった)