???「ククク……、」 御坂妹「」 一方通行「」 上条「」前編
258: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/12(火) 05:20:06.16 ID:VQ/UCIXf0
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一方通行「ならお前の右手で触れればいいだろォが」
目の前の女がタタリなら消滅して、そうでなければ本物と言うことになる。
だが、それは風斬氷華が普通の人間であればの話だ。
上条「それはできない。風斬はAIM拡散力場で身体ができてて」
一方通行「はァ? 言ってる意味がわかんねェよ、それは人間か?」
上条「説明が難しいんだよ、とにかく俺が触って確かめるってことはできないんだ」
風斬「……」
上条「そういうわけだから、風斬が本物か判別できる方法が思いつかないんだ。
悪いけど今はこの場から離れてくれないか?」
風斬「そうですか。なら仕方ないですね」
そう言って困ったような笑顔を浮かべて苦笑いを返す風斬。
上条「……すまん」
居た堪れなくなった上条は思わず謝罪の言葉を口にする。
風斬「どうして謝るんですか?」
上条がなぜ謝る必要があるのだろうか。
風斬「だって私」
彼女は。
風斬「吸血鬼ですよ?」
今夜のタタリだったのだから。
258: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/12(火) 05:20:06.16 ID:VQ/UCIXf0
土御門の激励を受け、一度電話を切った後アドレス帳からつい最近登録した一方通行の名前を探す。
小萌「今の電話、土御門ちゃんだったのですか?」
上条「え、えぇ、あいつもびっくりして電話かけてきたみたいで」
タタリのことを説明するわけにもいかず、咄嗟に適当な対応をする。
♪マヨラー、そ♪
まだ一方通行の名前を探している最中だった携帯が、再び着信音を鳴らす。
ほぼ条件反射で通話ボタンを押してしまったが、
今は一方通行と連絡を取るのが先決である。
通話相手には悪いが一言謝って電話を切ろうと、携帯を律儀に耳に当てようとした時、
一方通行『おィ、三下ァ、テメェ今どこにいる』
上条「一方通行か? 俺は今病院に姫神の見舞いに来てる、そっちはどこだ?」
元より電話をかけようとしていた相手に若干面喰ってしまったが、努めて冷静な対応で返す。
一方通行『そりゃァ都合が良い、俺もまだ病院だ。玄関で待ってるから早くきやがれ。
どういう理屈か知らねェが、“今夜”は“今夜”だろ。糞野郎と決着つけるぞ』
上条「わかった、すぐ行く」
用件のみの通話を終えて携帯をしまう。
上条「姫神、ちょっくら吸血鬼退治に行ってくるぜ。
小萌先生は危ないんでここにいて下さい。じゃ!」
上条は捲し立てて喋ると、一目散に病室の外へ駆け出していく。
小萌先生が何か叫んでいた気がしたが、追いかけてくる様子はないようなので気にせず玄関へと急ぐことにした。
小萌「今の電話、土御門ちゃんだったのですか?」
上条「え、えぇ、あいつもびっくりして電話かけてきたみたいで」
タタリのことを説明するわけにもいかず、咄嗟に適当な対応をする。
♪マヨラー、そ♪
まだ一方通行の名前を探している最中だった携帯が、再び着信音を鳴らす。
ほぼ条件反射で通話ボタンを押してしまったが、
今は一方通行と連絡を取るのが先決である。
通話相手には悪いが一言謝って電話を切ろうと、携帯を律儀に耳に当てようとした時、
一方通行『おィ、三下ァ、テメェ今どこにいる』
上条「一方通行か? 俺は今病院に姫神の見舞いに来てる、そっちはどこだ?」
元より電話をかけようとしていた相手に若干面喰ってしまったが、努めて冷静な対応で返す。
一方通行『そりゃァ都合が良い、俺もまだ病院だ。玄関で待ってるから早くきやがれ。
どういう理屈か知らねェが、“今夜”は“今夜”だろ。糞野郎と決着つけるぞ』
上条「わかった、すぐ行く」
用件のみの通話を終えて携帯をしまう。
上条「姫神、ちょっくら吸血鬼退治に行ってくるぜ。
小萌先生は危ないんでここにいて下さい。じゃ!」
上条は捲し立てて喋ると、一目散に病室の外へ駆け出していく。
小萌先生が何か叫んでいた気がしたが、追いかけてくる様子はないようなので気にせず玄関へと急ぐことにした。
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259: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/13(水) 03:12:31.26 ID:zEOP6Yde0
――――――――
上条「一方通行!」
病院の廊下を走っているところを看護師に咎められたりしつつも、
上条はほどなくして病院の玄関前へと辿りつき、白髪の少年に声をかける。
一方通行「おせェ。……ったく、一応テメェの右手だけがジョーカーなンだからしっかりしやがれ」
上条「これでも全速力だったんですが……」
開口一番に叱責を受け、上条はぼやきを口にする。
一方通行「で、これからどうすンだ? この異常な事態でも脚使って探すンか?」
上条「確証はないんだが一応の目星はついてる。それは」
「こんばんは」
上条の言葉を遮るように、上条にとっては聞き覚えのある声が聞こえた。
だから、続きを口にすることよりも、その声のした方へと視界を向ける。
「しばらくぶりですね、上条さん」
上条「かざ、きり?」
風斬「はい」
満面の笑みを浮かべそこに立っていたのは、上条が約2週間前に知り合った少女、風斬氷華だった。
上条「一方通行!」
病院の廊下を走っているところを看護師に咎められたりしつつも、
上条はほどなくして病院の玄関前へと辿りつき、白髪の少年に声をかける。
一方通行「おせェ。……ったく、一応テメェの右手だけがジョーカーなンだからしっかりしやがれ」
上条「これでも全速力だったんですが……」
開口一番に叱責を受け、上条はぼやきを口にする。
一方通行「で、これからどうすンだ? この異常な事態でも脚使って探すンか?」
上条「確証はないんだが一応の目星はついてる。それは」
「こんばんは」
上条の言葉を遮るように、上条にとっては聞き覚えのある声が聞こえた。
だから、続きを口にすることよりも、その声のした方へと視界を向ける。
「しばらくぶりですね、上条さん」
上条「かざ、きり?」
風斬「はい」
満面の笑みを浮かべそこに立っていたのは、上条が約2週間前に知り合った少女、風斬氷華だった。
260: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/13(水) 03:55:53.41 ID:zEOP6Yde0
一方通行「誰だァ、こいつ?」
切羽詰まった状況であるこんな時に、突然現れた人物に一方通行は眉をひそめる。
上条「えっと、風斬氷華って言って――」
風斬氷華。
上条が彼女と知り合ったのは2週間前のこと。
上条の学校の転校生として現れた彼女だったが、その正体はAIM拡散力場が集合して意思を持ってしまった少女。
またの名を虚数学区の鍵。
なのだが、今この場で説明するのはいささか時間がないうえに、説明そのものが難しい。
よってこの場は、
上条「――俺の友だちだよ」
もっとも簡素な説明で済ますことにした。
風斬「初めまして、風斬氷華です」
一方通行ににこやかな笑顔を向け、風斬は軽くお辞儀をするが、
一方通行は返事をするでもなくじっと見つめ、風斬のことを観察している。
上条「久しぶりに会えたのは嬉しいんだけど、今はちょっとごたついててさ」
一方通行の態度は気になったが、やはり今はのんびりと会話できるような状況ではない。
風斬「もしかして、また事件に巻き込まれてるんですか?」
風斬には悪いが今すぐにでもこの場から離れてもらいたい。
上条「またって言い方は気になるが、実際その通りだから返す言葉もないんだが」
そんな上条の心情を知ってか知らずか、風斬はゆったりとした口調で会話を続ける。
風斬「私、お手伝いできませんか?」
確かに、風斬の身体は人間とは異なっているため、肉体強化系の能力者に似た力を振うことができる。
上条「気持ちは嬉しいけど、今回のは結構シャレにならない相手だから」
上条の信条としてもそれは認められない。
風斬「でも、」
♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪
風斬の言葉を遮って、この場に似つかわしくない曲が流れる。
切羽詰まった状況であるこんな時に、突然現れた人物に一方通行は眉をひそめる。
上条「えっと、風斬氷華って言って――」
風斬氷華。
上条が彼女と知り合ったのは2週間前のこと。
上条の学校の転校生として現れた彼女だったが、その正体はAIM拡散力場が集合して意思を持ってしまった少女。
またの名を虚数学区の鍵。
なのだが、今この場で説明するのはいささか時間がないうえに、説明そのものが難しい。
よってこの場は、
上条「――俺の友だちだよ」
もっとも簡素な説明で済ますことにした。
風斬「初めまして、風斬氷華です」
一方通行ににこやかな笑顔を向け、風斬は軽くお辞儀をするが、
一方通行は返事をするでもなくじっと見つめ、風斬のことを観察している。
上条「久しぶりに会えたのは嬉しいんだけど、今はちょっとごたついててさ」
一方通行の態度は気になったが、やはり今はのんびりと会話できるような状況ではない。
風斬「もしかして、また事件に巻き込まれてるんですか?」
風斬には悪いが今すぐにでもこの場から離れてもらいたい。
上条「またって言い方は気になるが、実際その通りだから返す言葉もないんだが」
そんな上条の心情を知ってか知らずか、風斬はゆったりとした口調で会話を続ける。
風斬「私、お手伝いできませんか?」
確かに、風斬の身体は人間とは異なっているため、肉体強化系の能力者に似た力を振うことができる。
上条「気持ちは嬉しいけど、今回のは結構シャレにならない相手だから」
上条の信条としてもそれは認められない。
風斬「でも、」
♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪
風斬の言葉を遮って、この場に似つかわしくない曲が流れる。
261: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/13(水) 04:11:27.53 ID:zEOP6Yde0
上条「俺の携帯……、メールか」
上条は反射的に携帯を取り出し、外部液晶を確認する。
内容までを確認するつもりはなかったのだが、液晶に表示されたメールの送信者の名前を見てその顔は驚愕に変わる。
風斬「メールですか?」
風斬は首をかしげ、上条の様子を窺うように足を一歩前に踏み出す。
上条は風斬の言葉を無視し携帯を開くと、慌てた様子でメールの本文を確認する。
風斬「上条さん?」
風斬は一歩、また一歩と上条の元へ歩を進める。が、
上条「“止まれ”」
上条のきつい口調に、身体をびくんと震わせて脚を止める風斬。
風斬「どうか、したんですか?」
不安そうな声を出す風斬に、上条は携帯に落としていた顔をあげ風斬をまっすぐと見据える。
上条『お前、本当に風斬氷華か?』
風斬「ど、どういう意味ですか?」
上条「今送られてきたメール……、“風斬氷華からのメール”だったんだよ」
一方通行「あン?」
風斬「え?」
上条の口にした言葉に、風斬だけでなくさっきまでイライラした様子で二人を睨んでいた一方通行も疑問の声をあげる。
上条「メールの本文には“その人は私じゃない”、そう書いてあった。
今、俺たちが戦ってる相手って言うのは、他人の姿を真似られる奴なんだ。
このメールが正しいのか、お前が正しいのかはわからない。
だから、今は風斬にはこの場から立ち去ってほしい」
上条は反射的に携帯を取り出し、外部液晶を確認する。
内容までを確認するつもりはなかったのだが、液晶に表示されたメールの送信者の名前を見てその顔は驚愕に変わる。
風斬「メールですか?」
風斬は首をかしげ、上条の様子を窺うように足を一歩前に踏み出す。
上条は風斬の言葉を無視し携帯を開くと、慌てた様子でメールの本文を確認する。
風斬「上条さん?」
風斬は一歩、また一歩と上条の元へ歩を進める。が、
上条「“止まれ”」
上条のきつい口調に、身体をびくんと震わせて脚を止める風斬。
風斬「どうか、したんですか?」
不安そうな声を出す風斬に、上条は携帯に落としていた顔をあげ風斬をまっすぐと見据える。
上条『お前、本当に風斬氷華か?』
風斬「ど、どういう意味ですか?」
上条「今送られてきたメール……、“風斬氷華からのメール”だったんだよ」
一方通行「あン?」
風斬「え?」
上条の口にした言葉に、風斬だけでなくさっきまでイライラした様子で二人を睨んでいた一方通行も疑問の声をあげる。
上条「メールの本文には“その人は私じゃない”、そう書いてあった。
今、俺たちが戦ってる相手って言うのは、他人の姿を真似られる奴なんだ。
このメールが正しいのか、お前が正しいのかはわからない。
だから、今は風斬にはこの場から立ち去ってほしい」
264: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/13(水) 04:37:04.92 ID:zEOP6Yde0
一方通行「ならお前の右手で触れればいいだろォが」
目の前の女がタタリなら消滅して、そうでなければ本物と言うことになる。
だが、それは風斬氷華が普通の人間であればの話だ。
上条「それはできない。風斬はAIM拡散力場で身体ができてて」
一方通行「はァ? 言ってる意味がわかんねェよ、それは人間か?」
上条「説明が難しいんだよ、とにかく俺が触って確かめるってことはできないんだ」
風斬「……」
上条「そういうわけだから、風斬が本物か判別できる方法が思いつかないんだ。
悪いけど今はこの場から離れてくれないか?」
風斬「そうですか。なら仕方ないですね」
そう言って困ったような笑顔を浮かべて苦笑いを返す風斬。
上条「……すまん」
居た堪れなくなった上条は思わず謝罪の言葉を口にする。
風斬「どうして謝るんですか?」
上条がなぜ謝る必要があるのだろうか。
風斬「だって私」
彼女は。
風斬「吸血鬼ですよ?」
今夜のタタリだったのだから。
265: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/13(水) 23:34:04.10 ID:zEOP6Yde0
上条「なっ!?」
風斬の形をした別の何かは、口の端を歪めニタリと笑うと身を屈め上条に肉薄しようと疾走する。
衝撃的な告白に息も止まるような思いだが、目の前の敵は止まってはくれない。
一方通行「ぼさっとしてンじゃねェ!」
咄嗟のことで反応が遅れている上条の前に、一方通行が怒号を飛ばし立ちふさがる。
すでに演算補助装置のスイッチは能力使用モードへと切り替えられており、まだ手にしていた杖はその場で横合いへと投げ捨てる。
風斬「邪魔、しないで貰えますか?」
しかし、敵は臆することなく直進し続け、見るからに貧弱そうな細腕を振り上げる。
一方通行もまた構えを取ろうとするわけでもなく、ただ直立不動であり続ける。
絶対的な自信。風斬氷華がどんな能力者かは知らないがベクトル変換で反射してしまえばいい。
そして邂逅。低い体勢から振り下ろされた拳は一方通行の胸の中心に叩きこまれる。
ばきっ!ぐしゃっ!
……どさっ。
直後、とても嫌な音が響き渡り攻撃を仕掛けたはずの風斬氷華が逆に宙を舞い5mほど吹っ飛ばされ地面に叩きつけられていた。
一方通行「ごほっ、げほっ……!?」
わずかに遅れて、反射の膜によって攻撃を跳ね返したはずの一方通行が咳き込み膝を突いていた。
上条「一方通行!? 大丈夫か!」
一方通行「騒ぐなァ、ただちょっと“反射しきれなかった”だけだァ」
上条「反射しきれなかった、ってどういうことだ?」
一方通行「“反射”自体はきちンと機能してた。だが、ワケのわからねェベクトルが混じってやがって完全に反射しきれなかった。
タタリってのは元となった人間とその噂に影響されンだろう? 三下ァ、あいつは一体なンなンだ?」
風斬の形をした別の何かは、口の端を歪めニタリと笑うと身を屈め上条に肉薄しようと疾走する。
衝撃的な告白に息も止まるような思いだが、目の前の敵は止まってはくれない。
一方通行「ぼさっとしてンじゃねェ!」
咄嗟のことで反応が遅れている上条の前に、一方通行が怒号を飛ばし立ちふさがる。
すでに演算補助装置のスイッチは能力使用モードへと切り替えられており、まだ手にしていた杖はその場で横合いへと投げ捨てる。
風斬「邪魔、しないで貰えますか?」
しかし、敵は臆することなく直進し続け、見るからに貧弱そうな細腕を振り上げる。
一方通行もまた構えを取ろうとするわけでもなく、ただ直立不動であり続ける。
絶対的な自信。風斬氷華がどんな能力者かは知らないがベクトル変換で反射してしまえばいい。
そして邂逅。低い体勢から振り下ろされた拳は一方通行の胸の中心に叩きこまれる。
ばきっ!ぐしゃっ!
……どさっ。
直後、とても嫌な音が響き渡り攻撃を仕掛けたはずの風斬氷華が逆に宙を舞い5mほど吹っ飛ばされ地面に叩きつけられていた。
一方通行「ごほっ、げほっ……!?」
わずかに遅れて、反射の膜によって攻撃を跳ね返したはずの一方通行が咳き込み膝を突いていた。
上条「一方通行!? 大丈夫か!」
一方通行「騒ぐなァ、ただちょっと“反射しきれなかった”だけだァ」
上条「反射しきれなかった、ってどういうことだ?」
一方通行「“反射”自体はきちンと機能してた。だが、ワケのわからねェベクトルが混じってやがって完全に反射しきれなかった。
タタリってのは元となった人間とその噂に影響されンだろう? 三下ァ、あいつは一体なンなンだ?」
266: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/14(木) 01:57:18.78 ID:4HB74Xmd0
上条「AIM拡散力場って知ってるか?」
一方通行「そンくらい能力開発受けてる奴なら常識だろォ、能力者が無意識に発する力のフィールドで、」
のんびりと話をしているように見えるかもしれないが、二人は警戒を解いていない。
上条「そう、その無自覚で垂れ流されてる能力の一端で、体温は発火能力、生体電気は電撃能力……、
って具合でより集まって出来たのが風斬氷華なんだ」
一方通行「はぁ? じゃあアレは人間じゃなく」
風斬「人間ですよ」
一方通行の言葉を遮るように発せられたその声に二人はハッとなり声の方を見やる。
視線の先では先ほどまで倒れ伏していた風斬氷華が何事もなかったかのように起き上がるところだった。
ただ、一方通行に叩きつけたその右腕だけはあらぬ方向へねじ曲がってしまっている。
風斬「私は、“人間”なんです。そうですよね、上条さん?」
風斬氷華はどこかおかしそうに笑い、ねじ曲がった右腕を左腕で元に戻しながら上条に語りかける。
それは上条が以前、風斬に言った言葉。
それを否定することもできず肯定することもできず、苦虫を噛み潰したような顔をする上条を、
風斬氷華はどうして何も答えてくれないのかと問いかけるように首をかしげている。
その間にも、気付けば風斬氷華の右腕はいつの間にか怪我ひとつない細腕へと戻っていた。
一方通行「そンくらい能力開発受けてる奴なら常識だろォ、能力者が無意識に発する力のフィールドで、」
のんびりと話をしているように見えるかもしれないが、二人は警戒を解いていない。
上条「そう、その無自覚で垂れ流されてる能力の一端で、体温は発火能力、生体電気は電撃能力……、
って具合でより集まって出来たのが風斬氷華なんだ」
一方通行「はぁ? じゃあアレは人間じゃなく」
風斬「人間ですよ」
一方通行の言葉を遮るように発せられたその声に二人はハッとなり声の方を見やる。
視線の先では先ほどまで倒れ伏していた風斬氷華が何事もなかったかのように起き上がるところだった。
ただ、一方通行に叩きつけたその右腕だけはあらぬ方向へねじ曲がってしまっている。
風斬「私は、“人間”なんです。そうですよね、上条さん?」
風斬氷華はどこかおかしそうに笑い、ねじ曲がった右腕を左腕で元に戻しながら上条に語りかける。
それは上条が以前、風斬に言った言葉。
それを否定することもできず肯定することもできず、苦虫を噛み潰したような顔をする上条を、
風斬氷華はどうして何も答えてくれないのかと問いかけるように首をかしげている。
その間にも、気付けば風斬氷華の右腕はいつの間にか怪我ひとつない細腕へと戻っていた。
268: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/14(木) 05:18:07.82 ID:4HB74Xmd0
一方通行「この際、化物か人間かなンてことァどうでもいい。
結局テメェは自分が暴れるのに邪魔な奴を消しに来ただけなンだろォ?」
そう、忘れてはならない現実。
目の前の風斬氷華の形をした敵は吸血鬼『タタリ』。
いかに殴りにくい相手であろうと野放しにすることはできないのだ。
一方通行「昨晩、仕留め損なった獲物がどうあっても殺してェみたいだが、
そんなに目障りなのかァ? 吸血鬼にとって“吸血殺し”って奴は」
風斬「そうでもありませんよ? 吸血鬼の私が言うのもなんですけど生理的に受け付けないんですよ。
視界に入らなければどうってことはありませんが、視界に入ったからには死んで頂きたい、そんな感じですね」
タタリがここに現れたのは偶然でも何でもない。
主賓扱いとされる上条や共に戦う一方通行が狙ってきたわけでもない。
標的は吸血殺し、姫神秋沙ただ一人なのだ。
風斬「最終的にはこの街の人間全ての血を飲み干すわけですから、別に気にするほどのことでもないんですけど」
私嫌いなものから先に食べるタイプなんです、とでも言わんばかりの悪意なんてこれっぽっちもない笑顔で、
さっきまで気押され気味だった男に、ようやく火が点る。
上条「ふざけんじゃねえぞ、偽物野郎! 絶対に姫神は傷つけさせやしねえ!
姫神だけじゃない、この街の人間誰一人だって傷つけさせやしねえぞ!!」
結局テメェは自分が暴れるのに邪魔な奴を消しに来ただけなンだろォ?」
そう、忘れてはならない現実。
目の前の風斬氷華の形をした敵は吸血鬼『タタリ』。
いかに殴りにくい相手であろうと野放しにすることはできないのだ。
一方通行「昨晩、仕留め損なった獲物がどうあっても殺してェみたいだが、
そんなに目障りなのかァ? 吸血鬼にとって“吸血殺し”って奴は」
風斬「そうでもありませんよ? 吸血鬼の私が言うのもなんですけど生理的に受け付けないんですよ。
視界に入らなければどうってことはありませんが、視界に入ったからには死んで頂きたい、そんな感じですね」
タタリがここに現れたのは偶然でも何でもない。
主賓扱いとされる上条や共に戦う一方通行が狙ってきたわけでもない。
標的は吸血殺し、姫神秋沙ただ一人なのだ。
風斬「最終的にはこの街の人間全ての血を飲み干すわけですから、別に気にするほどのことでもないんですけど」
私嫌いなものから先に食べるタイプなんです、とでも言わんばかりの悪意なんてこれっぽっちもない笑顔で、
さっきまで気押され気味だった男に、ようやく火が点る。
上条「ふざけんじゃねえぞ、偽物野郎! 絶対に姫神は傷つけさせやしねえ!
姫神だけじゃない、この街の人間誰一人だって傷つけさせやしねえぞ!!」
271: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/15(金) 01:49:53.14 ID:xz9qAYYc0
風斬「でしたら教えてあげましょうか。
人間の身でありながら、吸血鬼に歯向かうことがいかに愚かなことであるか」
『さぁ、虚言の夜を始めましょう』
風斬氷華は公演の開幕宣言のような一言から、わずか1秒後には6,7メートルほどの高さまで跳躍すると、
スカートを翻し右脚を真上に伸ばしそこから一方通行と上条との間へと踵落としを叩き込む。
その衝撃は凄まじくコンクリートの地面を砕き破片と粉煙を巻き上げる。
上条「ッう!」
上条は飛散する破片に思わず目を閉じる。
風斬氷華の落下位置との距離は約2メートル弱、攻撃を恐れ咄嗟にタタリにとって脅威である右腕を前に突きだす。
しかし、風斬氷華が狙ったのは一方通行。
一方通行は上条とは違い、破片は反射してしまえば問題ないため目を閉じることはない。
そんな一方通行の目に飛び込んできたのは、裂けたように曲がった右脚での回し蹴りだった。
戸惑いのない攻撃にさすがにぎょっとする一方通行だが、冷静にすぐさま攻撃を手の平で受け止める。
バチン!
乾いた音が響き、一方通行の手が弾かれる。
一方で風斬氷華は攻撃した反動とは思えない勢いで宙を舞っていた。
一方通行「ぐッ……、9割ってとこかァ?」
現状、一方通行が反射することができるのは全体の『攻撃エネルギー』の9割程度。
つまり、あらかじめ設定した肉体に害となるベクトルと異なるベクトルが、
あの攻撃に1割ほど含まれているということになる。
だが、ここで『たかが一割』と侮ってはならない。
たった今、風斬氷華は9割のエネルギーを自身に受けながらも
空中で体勢を立て直して華麗に着地を決め、なおかつ見るも無残だった右脚はすでに再生が終わっていた。
反動による肉体への負担を度外視で攻撃され続ければ例え1割と言えど積み重なればどうなるかは明白だろう。
人間の身でありながら、吸血鬼に歯向かうことがいかに愚かなことであるか」
『さぁ、虚言の夜を始めましょう』
風斬氷華は公演の開幕宣言のような一言から、わずか1秒後には6,7メートルほどの高さまで跳躍すると、
スカートを翻し右脚を真上に伸ばしそこから一方通行と上条との間へと踵落としを叩き込む。
その衝撃は凄まじくコンクリートの地面を砕き破片と粉煙を巻き上げる。
上条「ッう!」
上条は飛散する破片に思わず目を閉じる。
風斬氷華の落下位置との距離は約2メートル弱、攻撃を恐れ咄嗟にタタリにとって脅威である右腕を前に突きだす。
しかし、風斬氷華が狙ったのは一方通行。
一方通行は上条とは違い、破片は反射してしまえば問題ないため目を閉じることはない。
そんな一方通行の目に飛び込んできたのは、裂けたように曲がった右脚での回し蹴りだった。
戸惑いのない攻撃にさすがにぎょっとする一方通行だが、冷静にすぐさま攻撃を手の平で受け止める。
バチン!
乾いた音が響き、一方通行の手が弾かれる。
一方で風斬氷華は攻撃した反動とは思えない勢いで宙を舞っていた。
一方通行「ぐッ……、9割ってとこかァ?」
現状、一方通行が反射することができるのは全体の『攻撃エネルギー』の9割程度。
つまり、あらかじめ設定した肉体に害となるベクトルと異なるベクトルが、
あの攻撃に1割ほど含まれているということになる。
だが、ここで『たかが一割』と侮ってはならない。
たった今、風斬氷華は9割のエネルギーを自身に受けながらも
空中で体勢を立て直して華麗に着地を決め、なおかつ見るも無残だった右脚はすでに再生が終わっていた。
反動による肉体への負担を度外視で攻撃され続ければ例え1割と言えど積み重なればどうなるかは明白だろう。
273: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/15(金) 04:46:34.89 ID:xz9qAYYc0
一方通行「おい、三下ァ! あの女に“コア”みてェなもンはねェのか?」
上条「こ、コア!? 突然そんなこと言われても……ぺっぺっ、まだ口ん中に砂利が」
巻き上げられたコンクリートの細かい欠片を吐き出しながら必死に記憶を探る。
そもそも、風斬と会ったのは一度きりだし、AIM拡散力場とかよくわからないしと
そう考えると上条は自分が風斬のことを何も知らないのだとようやく気付く。
一方通行「まさか、何も知らねェのか? おィおィおィ、テメェの友だちなンじゃねェのかよ!?」
上条「友だちだからって何でも知ってるわけじゃないんですのことよ!?」
風斬「ほらほら、おしゃべりしてないで私と遊んで下さいよ」
上条と一方通行が役に立たない作戦会議を開いているが、
風斬氷華に会議が収束するのを待つ義理などありはしない。
風斬氷華は右手で左手首を掴むと、バキリバキリ異様な音を立てて自身の左手を肘の先から力付くで引きちぎると、
満面の笑みで右手をぐるぐる回して遠心力を付ける。
断面は肉や骨が詰まっているわけではなく、空洞になっているのがちらりと見えたが
異様すぎる光景の前にはそんなことは霞んでしまっている。
風斬「音速の三倍ってのは無理ですけど、時速200キロぐらいならいけるかなー」
そして振りかぶって投擲された左手は一直線に上条の元へと向かう。
空洞の腕だとしてもAIM拡散力場によって一般的な腕と同じ質量を持つため、
それが推定時速200キロで直撃しようものならとんでもないことになる。
上条「無茶苦茶にもほどがあるだろ!!」
美琴の超電磁砲で慣れていたおかげで、反射的に右腕を前に出して飛来した左手を受け止める。
受け止めると言っても、触れた瞬間に幻想殺しによって霧散したため衝撃は皆無である。
一方通行「弱点がないンなら、テメェが何とかするしかねェぞ。わかってンのか?」
上条「始めからそのつもりだ! こんなふざけた幻想、すぐにでもぶち殺してやるよ!」
上条「こ、コア!? 突然そんなこと言われても……ぺっぺっ、まだ口ん中に砂利が」
巻き上げられたコンクリートの細かい欠片を吐き出しながら必死に記憶を探る。
そもそも、風斬と会ったのは一度きりだし、AIM拡散力場とかよくわからないしと
そう考えると上条は自分が風斬のことを何も知らないのだとようやく気付く。
一方通行「まさか、何も知らねェのか? おィおィおィ、テメェの友だちなンじゃねェのかよ!?」
上条「友だちだからって何でも知ってるわけじゃないんですのことよ!?」
風斬「ほらほら、おしゃべりしてないで私と遊んで下さいよ」
上条と一方通行が役に立たない作戦会議を開いているが、
風斬氷華に会議が収束するのを待つ義理などありはしない。
風斬氷華は右手で左手首を掴むと、バキリバキリ異様な音を立てて自身の左手を肘の先から力付くで引きちぎると、
満面の笑みで右手をぐるぐる回して遠心力を付ける。
断面は肉や骨が詰まっているわけではなく、空洞になっているのがちらりと見えたが
異様すぎる光景の前にはそんなことは霞んでしまっている。
風斬「音速の三倍ってのは無理ですけど、時速200キロぐらいならいけるかなー」
そして振りかぶって投擲された左手は一直線に上条の元へと向かう。
空洞の腕だとしてもAIM拡散力場によって一般的な腕と同じ質量を持つため、
それが推定時速200キロで直撃しようものならとんでもないことになる。
上条「無茶苦茶にもほどがあるだろ!!」
美琴の超電磁砲で慣れていたおかげで、反射的に右腕を前に出して飛来した左手を受け止める。
受け止めると言っても、触れた瞬間に幻想殺しによって霧散したため衝撃は皆無である。
一方通行「弱点がないンなら、テメェが何とかするしかねェぞ。わかってンのか?」
上条「始めからそのつもりだ! こんなふざけた幻想、すぐにでもぶち殺してやるよ!」
275: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/15(金) 17:55:43.47 ID:xz9qAYYc0
風斬「ふざけた幻想だなんて、現実逃避も甚だしいですね」
自身を鼓舞し意気込む上条を見て、風斬氷華はクスクスと笑う。
自ら引き千切った左手は、空気中から欠片が集まるように象られていき、
今まさに元通りになった左手を開いたり閉じたりして調子を確かめている。
風斬「もしも、簡単にぶち殺せるって言うのなら、それこそ“そんなふざけた幻想はぶち殺して”あげましょう」
風斬氷華は上条の決め台詞をさらった奪った後、軽やかなステップでゆっくりと上条との距離を詰める。
上条はその右腕で触れるだけで風斬氷華を消し去ることができる。
ならば、この不意な接近で逆に距離を取る必要はなく、相討ちであろうと必ず触れてみせると考えていた。
一方通行もそれを理解しているのか、下手に上条の前に出るよりも
風斬氷華の上条への攻撃を叩き落とせるように注意深く警戒している。
風斬「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?」
そんな上条たちの様子を見て風斬氷華は、上条の三歩手前で立ち止まり己が両手を広げる。
風斬「大好きな上条さんには大サービスで一回だけ殴らせてあげちゃいます。
顔が良いですか? それともお腹? やっぱり男の子ですから胸とかかな?」
上条「は?」
一方通行「何言ってンだこいつ!?」
敵からの突然の申し出はまさに意表を突くものだった。
幻想殺しで触れることが勝利条件のこの戦いで、それは負けを認めたのと同義となる。
一方通行「どう考えても罠だろうがァ」
上条「願ってもないチャンス、見逃す必要がねぇ!」
無抵抗の相手に上条は勝利条件を必要以上に振りかぶり、風斬氷華に接近する。
一方通行も風斬氷華の不穏な動きに備えて背後へと回り抑え込む体勢へと入る。
しかし、風斬氷華は微動だにせず、二人を嘲笑うようにクスクスと笑い続けている。
上条「消えろ、この偽物野郎!!」
上条の渾身の一撃が今宵のタタリ風斬氷華の顔面へと突き刺さる!
自身を鼓舞し意気込む上条を見て、風斬氷華はクスクスと笑う。
自ら引き千切った左手は、空気中から欠片が集まるように象られていき、
今まさに元通りになった左手を開いたり閉じたりして調子を確かめている。
風斬「もしも、簡単にぶち殺せるって言うのなら、それこそ“そんなふざけた幻想はぶち殺して”あげましょう」
風斬氷華は上条の決め台詞をさらった奪った後、軽やかなステップでゆっくりと上条との距離を詰める。
上条はその右腕で触れるだけで風斬氷華を消し去ることができる。
ならば、この不意な接近で逆に距離を取る必要はなく、相討ちであろうと必ず触れてみせると考えていた。
一方通行もそれを理解しているのか、下手に上条の前に出るよりも
風斬氷華の上条への攻撃を叩き落とせるように注意深く警戒している。
風斬「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?」
そんな上条たちの様子を見て風斬氷華は、上条の三歩手前で立ち止まり己が両手を広げる。
風斬「大好きな上条さんには大サービスで一回だけ殴らせてあげちゃいます。
顔が良いですか? それともお腹? やっぱり男の子ですから胸とかかな?」
上条「は?」
一方通行「何言ってンだこいつ!?」
敵からの突然の申し出はまさに意表を突くものだった。
幻想殺しで触れることが勝利条件のこの戦いで、それは負けを認めたのと同義となる。
一方通行「どう考えても罠だろうがァ」
上条「願ってもないチャンス、見逃す必要がねぇ!」
無抵抗の相手に上条は勝利条件を必要以上に振りかぶり、風斬氷華に接近する。
一方通行も風斬氷華の不穏な動きに備えて背後へと回り抑え込む体勢へと入る。
しかし、風斬氷華は微動だにせず、二人を嘲笑うようにクスクスと笑い続けている。
上条「消えろ、この偽物野郎!!」
上条の渾身の一撃が今宵のタタリ風斬氷華の顔面へと突き刺さる!
276: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/16(土) 06:33:49.61 ID:rnrtmm6u0
上条の放った右ストレートは奇麗に決まり、幻想殺しがタタリという存在を完膚なきまでにぶち殺す。
風斬氷華は瞬間的に霧散し、辺りは静寂に包まれていた。
上条「勝った、のか……?」
あまりのあっけなさに上条は口をぽかんと開け間抜け顔を晒してしまっている。
一方通行「攻撃は確かに当たった……」
一方通行は注意深く周囲を警戒しつつ、演算補助装置を通常モードへと操作する。
今上条たちが感じている不安は達成感の問題だろう。
ゲームのラスボスがバグか何かで勝手にやられて突然スタッフロールが流れ出したような
周りから難しいと予め宣言されていたのに簡単にクリアできてしまった、そんな感覚。
血反吐を吐くような死闘の末に掴んだ勝利であれば何の疑いもなく受け入れていたことだろう。
上条「俺たち勝ったんだよな? 学園都市を守れたんだよな?」
一方通行「俺に聞くンじゃねェよ、トドメ刺したのはテメェだろォが。手応えはあったのかァ?」
上条「手応えは、あった。確かに幻想殺しがタタリを殺した感触はあった」
一方通行「なら、勝ったンじゃねェか? ケッ、弱すぎて話にならなかったなァ」
二人は気付けばどちらからともなく、フフフ、クククと笑いだしていた。
達成感はなかったが五日間の苦労はようやく報われ、二人は確かな充足感を感じていた。
だが、
♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪
一方通行「クカカカ……、あン?」
上条「ふふふふ……、ん? またメールだ」
興奮冷めやらぬ様子ではあるが、上条は携帯を取り出して内容に目を通す。
瞬間、風呂上がりに冷水をぶっかけられた揚句に心臓を鷲掴みにされたような倒錯した錯覚に襲われる。
送信者は一つ前に送られてきたメールと同じ。
本文には一言、
『まだ、終わっていません』
風斬氷華は瞬間的に霧散し、辺りは静寂に包まれていた。
上条「勝った、のか……?」
あまりのあっけなさに上条は口をぽかんと開け間抜け顔を晒してしまっている。
一方通行「攻撃は確かに当たった……」
一方通行は注意深く周囲を警戒しつつ、演算補助装置を通常モードへと操作する。
今上条たちが感じている不安は達成感の問題だろう。
ゲームのラスボスがバグか何かで勝手にやられて突然スタッフロールが流れ出したような
周りから難しいと予め宣言されていたのに簡単にクリアできてしまった、そんな感覚。
血反吐を吐くような死闘の末に掴んだ勝利であれば何の疑いもなく受け入れていたことだろう。
上条「俺たち勝ったんだよな? 学園都市を守れたんだよな?」
一方通行「俺に聞くンじゃねェよ、トドメ刺したのはテメェだろォが。手応えはあったのかァ?」
上条「手応えは、あった。確かに幻想殺しがタタリを殺した感触はあった」
一方通行「なら、勝ったンじゃねェか? ケッ、弱すぎて話にならなかったなァ」
二人は気付けばどちらからともなく、フフフ、クククと笑いだしていた。
達成感はなかったが五日間の苦労はようやく報われ、二人は確かな充足感を感じていた。
だが、
♪コノ場所モ悪クナイ アノ空ハ高クナイ♪
一方通行「クカカカ……、あン?」
上条「ふふふふ……、ん? またメールだ」
興奮冷めやらぬ様子ではあるが、上条は携帯を取り出して内容に目を通す。
瞬間、風呂上がりに冷水をぶっかけられた揚句に心臓を鷲掴みにされたような倒錯した錯覚に襲われる。
送信者は一つ前に送られてきたメールと同じ。
本文には一言、
『まだ、終わっていません』
277: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/17(日) 04:53:09.21 ID:UDbF7V520
一方通行「おい、どうかしたかァ?」
上条「メール、風斬から……。まだ、終わってないって」
上条は凍りついた表情で送られてきたメールをそのまま一方通行へと見せる。
一方通行「終わってないだァ? さっきの奴は消えちまったじゃねェか」
何度も言うが、上条の幻想殺しは間違いなく当たり、タタリを消し去った。
上条「ああ。でもこのメールは」
「メールがどうかしたんですか?」
背後から声をかけられる。
その声には聞き覚えがあるとかないとかそういう話じゃなく、さっきまで聞いていた――。
上条「風、斬……」
一方通行「ッテメェ!」
上条はゆっくりと振り向き愕然とする。
また、一方通行は歯を噛みしめギリリと音を鳴らす。
風斬「劇はまだ始まったばかりですよ? 幕引きにはまだ早い、そう思いませんか?」
今宵のタタリは、終わらない。
上条「メール、風斬から……。まだ、終わってないって」
上条は凍りついた表情で送られてきたメールをそのまま一方通行へと見せる。
一方通行「終わってないだァ? さっきの奴は消えちまったじゃねェか」
何度も言うが、上条の幻想殺しは間違いなく当たり、タタリを消し去った。
上条「ああ。でもこのメールは」
「メールがどうかしたんですか?」
背後から声をかけられる。
その声には聞き覚えがあるとかないとかそういう話じゃなく、さっきまで聞いていた――。
上条「風、斬……」
一方通行「ッテメェ!」
上条はゆっくりと振り向き愕然とする。
また、一方通行は歯を噛みしめギリリと音を鳴らす。
風斬「劇はまだ始まったばかりですよ? 幕引きにはまだ早い、そう思いませんか?」
今宵のタタリは、終わらない。
278: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/17(日) 05:20:35.51 ID:UDbF7V520
上条「ぅ、うわあああああああ!!?」
上条は反射的に右腕を降り回し、もはやパンチとは呼べない攻撃を繰り出す。
それでも、風斬氷華は現れた場所から動かずにいたおかげで、難なく当たり再びタタリは霧散する。
上条「はぁ……はぁ……」
一方通行「やった、のか?」
上条「当たった……、確かに当たった! この手で、幻想殺しで殺した!!」
泣き叫ばんが勢いで発せられた言葉は、一方通行に対して応えたわけではない。
そう自分に言い聞かせようと、恐怖に彩られ始めた現実を都合のいい幻想で塗り固めるが行為。
一方通行「落ちつけ! テメェの呼吸を意識してみろ、過呼吸寸前だぞ!」
上条「ァ!?」
上条は一瞬驚いたような顔をしてから、手の平を胸に置き一度息を止めてから大きく深呼吸をする。
息を整えたことでいかに自分が取り乱していたかをようやく把握する。
上条「す、すまん、一方通行」
一方通行「ケッ。……だが、さっきのォ」
再び現れ、再び幻想殺しによって霧散したタタリ風斬氷華。
タタリは幻想殺しさえ当たれば倒せるのではなかったのか。
頭の中で自問自答を繰り返し、状況把握に努めるが納得のいく答えは出てこない。
上条は反射的に右腕を降り回し、もはやパンチとは呼べない攻撃を繰り出す。
それでも、風斬氷華は現れた場所から動かずにいたおかげで、難なく当たり再びタタリは霧散する。
上条「はぁ……はぁ……」
一方通行「やった、のか?」
上条「当たった……、確かに当たった! この手で、幻想殺しで殺した!!」
泣き叫ばんが勢いで発せられた言葉は、一方通行に対して応えたわけではない。
そう自分に言い聞かせようと、恐怖に彩られ始めた現実を都合のいい幻想で塗り固めるが行為。
一方通行「落ちつけ! テメェの呼吸を意識してみろ、過呼吸寸前だぞ!」
上条「ァ!?」
上条は一瞬驚いたような顔をしてから、手の平を胸に置き一度息を止めてから大きく深呼吸をする。
息を整えたことでいかに自分が取り乱していたかをようやく把握する。
上条「す、すまん、一方通行」
一方通行「ケッ。……だが、さっきのォ」
再び現れ、再び幻想殺しによって霧散したタタリ風斬氷華。
タタリは幻想殺しさえ当たれば倒せるのではなかったのか。
頭の中で自問自答を繰り返し、状況把握に努めるが納得のいく答えは出てこない。
279: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/17(日) 05:53:05.86 ID:UDbF7V520
風斬「一回だけって言ったのに、二回も殴るなんてずるいですよ上条さん」
またしても二人の背後から聞こえてきた声は、振り向かなくてもわかる。
風斬氷華は、タタリは、倒せてなどいないのだと。
風斬「上条さんはご自分の右手をどう解釈してるのか知りませんけど、幻想殺しは吸血殺しとは本質が異なります。
だから、完成したタタリの前では何の意味もなさないんですよ」
親が聞き分けのない子どもを諭すように、風斬氷華はゆっくりと説明する。
どんなにあがいても貴様らの命運はここで尽きるのだと。
一方通行「クッソタレがあァァァ!!」
一方通行は演算補助装置を操作し、風斬氷華までの距離約10メートルを一息で跳躍する。
空中でありながらベクトル操作によって加速したミサイルのような蹴りをダイレクトに見舞う。
ドン! バゴン!
ノーバウンドで十数メートル吹き飛んだ風斬氷華は、重力に引かれ地面に落ちる前に分厚い塀にぶつかり塀を人型に凹ませていた。
人間であれば、内臓が破裂し骨が砕け確実に即死している衝撃である。
だというのに、風斬氷華は何事もなかったかのように五体満足で地を歩いているのはどういうことなのか。
風斬「気は済みましたか? 物理攻撃なんて効きませんよ」
一方通行の前まで戻ってきた風斬氷華は、そのまま一方通行の横を素通りする。
風斬「もう諦めてくれましたか?」
上条の前で立ち止まり、風斬氷華は笑顔で上条に尋ねる。
上条「…………」
沈黙を回答として捉えたのか、風斬氷華は満足げに頷いて上条の横を通り抜ける。
風斬氷華の進む先には病院の入り口がある。
だが、上条も一方通行も釘で打ちつけられたかのようにその場から動けずにいた。
またしても二人の背後から聞こえてきた声は、振り向かなくてもわかる。
風斬氷華は、タタリは、倒せてなどいないのだと。
風斬「上条さんはご自分の右手をどう解釈してるのか知りませんけど、幻想殺しは吸血殺しとは本質が異なります。
だから、完成したタタリの前では何の意味もなさないんですよ」
親が聞き分けのない子どもを諭すように、風斬氷華はゆっくりと説明する。
どんなにあがいても貴様らの命運はここで尽きるのだと。
一方通行「クッソタレがあァァァ!!」
一方通行は演算補助装置を操作し、風斬氷華までの距離約10メートルを一息で跳躍する。
空中でありながらベクトル操作によって加速したミサイルのような蹴りをダイレクトに見舞う。
ドン! バゴン!
ノーバウンドで十数メートル吹き飛んだ風斬氷華は、重力に引かれ地面に落ちる前に分厚い塀にぶつかり塀を人型に凹ませていた。
人間であれば、内臓が破裂し骨が砕け確実に即死している衝撃である。
だというのに、風斬氷華は何事もなかったかのように五体満足で地を歩いているのはどういうことなのか。
風斬「気は済みましたか? 物理攻撃なんて効きませんよ」
一方通行の前まで戻ってきた風斬氷華は、そのまま一方通行の横を素通りする。
風斬「もう諦めてくれましたか?」
上条の前で立ち止まり、風斬氷華は笑顔で上条に尋ねる。
上条「…………」
沈黙を回答として捉えたのか、風斬氷華は満足げに頷いて上条の横を通り抜ける。
風斬氷華の進む先には病院の入り口がある。
だが、上条も一方通行も釘で打ちつけられたかのようにその場から動けずにいた。
280: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/17(日) 05:57:28.94 ID:UDbF7V520
どうしようか・・・?
タタリ強すぎて勝ち目ないんだけどwwww
しかも俺の頭の中ではまだ変身を一回残してるんだぜ、厨二病自重しろよ
早く終わらせたいんだけど、なかなか終わらないしもうこのままBADENDにしてやろうかしら
ニア 諦める
諦めない
タタリ強すぎて勝ち目ないんだけどwwww
しかも俺の頭の中ではまだ変身を一回残してるんだぜ、厨二病自重しろよ
早く終わらせたいんだけど、なかなか終わらないしもうこのままBADENDにしてやろうかしら
ニア 諦める
諦めない
287: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/23(土) 06:47:00.61 ID:17gym0DS0
「止まりなさい」
その声は上から聞こえてきた。
その場にいた全員が一斉に声の方へと視線を送る。
視線の先は暗闇でも明かりが点らず役目を果たしていない街灯、
その上に立つ黒衣に身を包んだ……人間?
月明かりに照らされたその姿は女性であることが確認できた。
上条が呆気にとられていると、その黒衣の女性はどこからともなく数本の剣を取り出し投擲する。
投擲された剣は風斬氷華に向け一直線に飛来し一瞬のうちに両腕両足に突き刺さっていた。
風斬「“また”、貴様か」
さっきまでの飄々とした感じと打って変わって、突き刺さった剣には目もくれずに
風斬氷華は黒衣の女性を心底目障りだと忌々しげな瞳で睨みつける。
「それはこちらの台詞です、タタリ」
女性は街灯の上から音もなく華麗な着地を決めて、タタリを一瞥する。
「そっちの白髪の君と、ウニみたいな頭した君たち、この場から立ち去りなさい」
一方通行「なンだとォ!? 突然現れたどこの誰とも知れねェババァが何言ってやがッ」
ガツン!
一方通行が宙を舞った。
一寸遅れて女性が投擲した黒い剣の柄の部分が額を直撃したのだとわかる。
「次にババァなんて言いやがりましたら、タタリより先にあなた方を斬り伏せますよ?」
顔は笑っていたが、もしNGワードを口にしようものなら本気で叩き斬られる、上条はそう感じた。
その声は上から聞こえてきた。
その場にいた全員が一斉に声の方へと視線を送る。
視線の先は暗闇でも明かりが点らず役目を果たしていない街灯、
その上に立つ黒衣に身を包んだ……人間?
月明かりに照らされたその姿は女性であることが確認できた。
上条が呆気にとられていると、その黒衣の女性はどこからともなく数本の剣を取り出し投擲する。
投擲された剣は風斬氷華に向け一直線に飛来し一瞬のうちに両腕両足に突き刺さっていた。
風斬「“また”、貴様か」
さっきまでの飄々とした感じと打って変わって、突き刺さった剣には目もくれずに
風斬氷華は黒衣の女性を心底目障りだと忌々しげな瞳で睨みつける。
「それはこちらの台詞です、タタリ」
女性は街灯の上から音もなく華麗な着地を決めて、タタリを一瞥する。
「そっちの白髪の君と、ウニみたいな頭した君たち、この場から立ち去りなさい」
一方通行「なンだとォ!? 突然現れたどこの誰とも知れねェババァが何言ってやがッ」
ガツン!
一方通行が宙を舞った。
一寸遅れて女性が投擲した黒い剣の柄の部分が額を直撃したのだとわかる。
「次にババァなんて言いやがりましたら、タタリより先にあなた方を斬り伏せますよ?」
顔は笑っていたが、もしNGワードを口にしようものなら本気で叩き斬られる、上条はそう感じた。
288: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/23(土) 10:12:39.81 ID:17gym0DS0
風斬「埋葬機関の第七位様にこんな短期間で二度も会うことになるなんてね」
風斬氷華は空洞の肉体に刺さった剣――黒鍵――を引きぬきながら黒衣の女性に語りかける。
「それもこちらの台詞です。ただ数年を短期間と言うのは同意しかねますが」
風斬「すみません、私が具現化するのは一夜限りなもので。私にとっては数日前の出来事でしかありませんから」
風斬氷華と女性は、向かい合い一言二言会話を交わす。
しかし、それきり互いに口を開かず対峙したまま緊迫した空気が流れる。
そして次の瞬間、何がきっかけだったのかわからないが二人は一瞬で加速する。
女性はどこからともなく黒鍵を何本も取り出し連続で投擲する。
一方、風斬氷華はその攻撃をかわすこともせず全て真正面から受け止め、
それらを一切意に介さずに突き進み拳を振り抜く。
轟ッと空気を切り振り抜かれた拳を、女性はこともなげに黒鍵で肘の上あたりをバッサリと切り落とす。
腕を失ったにも関わらず風斬氷華は逆手で掌底を狙う。
しかし、女性はそれも一瞬のうちに切り落としてしまう。
残ったのは脚だけだが、それも風斬氷華が蹴りを放つ前に同様の動作で切断し、風斬氷華は完全な達磨状態と化す。
女性は風斬氷華の真上に、生身の人間とは思えないような信じられない高さまで飛びあがり自身の黒衣に手をかける。
そのままなぜか女性はまとっていた黒衣を脱ぎ捨ててしまったが、その黒衣の下から現れたのは非常にごつい銃器のようなもの。
その銃器のような物の先端には太く尖った釘のような突き出た何かがあった。
「いきますよ、セブン!」
女性は四肢を失い身動きの取れない風斬氷華に向かって先端のとがった部分を突き立てると、その先端をゼロ距離で射出する。
それで風斬氷華は完全に消滅した。
だが、上条も一方通行も喜ぼうとは思わない。否、件の女性ですら気を抜く様子は見られない。
風斬氷華は空洞の肉体に刺さった剣――黒鍵――を引きぬきながら黒衣の女性に語りかける。
「それもこちらの台詞です。ただ数年を短期間と言うのは同意しかねますが」
風斬「すみません、私が具現化するのは一夜限りなもので。私にとっては数日前の出来事でしかありませんから」
風斬氷華と女性は、向かい合い一言二言会話を交わす。
しかし、それきり互いに口を開かず対峙したまま緊迫した空気が流れる。
そして次の瞬間、何がきっかけだったのかわからないが二人は一瞬で加速する。
女性はどこからともなく黒鍵を何本も取り出し連続で投擲する。
一方、風斬氷華はその攻撃をかわすこともせず全て真正面から受け止め、
それらを一切意に介さずに突き進み拳を振り抜く。
轟ッと空気を切り振り抜かれた拳を、女性はこともなげに黒鍵で肘の上あたりをバッサリと切り落とす。
腕を失ったにも関わらず風斬氷華は逆手で掌底を狙う。
しかし、女性はそれも一瞬のうちに切り落としてしまう。
残ったのは脚だけだが、それも風斬氷華が蹴りを放つ前に同様の動作で切断し、風斬氷華は完全な達磨状態と化す。
女性は風斬氷華の真上に、生身の人間とは思えないような信じられない高さまで飛びあがり自身の黒衣に手をかける。
そのままなぜか女性はまとっていた黒衣を脱ぎ捨ててしまったが、その黒衣の下から現れたのは非常にごつい銃器のようなもの。
その銃器のような物の先端には太く尖った釘のような突き出た何かがあった。
「いきますよ、セブン!」
女性は四肢を失い身動きの取れない風斬氷華に向かって先端のとがった部分を突き立てると、その先端をゼロ距離で射出する。
それで風斬氷華は完全に消滅した。
だが、上条も一方通行も喜ぼうとは思わない。否、件の女性ですら気を抜く様子は見られない。
289: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/23(土) 22:09:08.71 ID:17gym0DS0
風斬「だから無駄だって何度も言ってるじゃないですか。ってあなたに言うのは初めてか」
先ほどの女性を真似てか、風斬氷華が五体満足で街灯の上に現れる。
風斬「この身体はタタリと同じ現象そのもの。例え第七聖典でも滅することはできませんよ」
「ですが、力そのものは大したことありません。どういった噂を具現化したのか知りませんが、
ポテンシャルで私を下回っている以上、今宵のタタリもただ消え去るのみ」
無駄と言い放つ風斬氷華に対し、女性が怯む様子は全くない。
再び戦いの火ぶたが切って落とされ、人外の攻防戦が開始される。
投擲された黒鍵が風斬氷華に次々に突き刺さるが、やはりそれを意に介す様子はない。
ただ、今度は自身に突き刺さった黒鍵を2本抜き出すと、それを武器として振り下ろす。
ガキンガキンと金属がぶつかり合う音が響き渡り凄まじい速さの剣戟が繰り広げられる。
一方通行「おィ、あのば……、女は誰なンだよ」
杖を拾い上条の元まで戻ってきていた一方通行が語りかけてくる。
上条「上条さんが知るわけないじゃ……」
そこまで口にして、そういえばと思いだしたことがあった。
上条「魔術師……」
一方通行「あン?」
上条「昨日話しただろ、吸血鬼退治が専門の魔術師が来るって。それが」
ガキン!ガゴン!バキッ!
一方通行「あの白兵戦やってる女だってのかァ? 魔術師ってのはあンな肉体派なのかよ」
上条「……魔術師にもタイプがあるんだと思う。超能力者に炎を使う奴がいれば肉体を強化する奴がいるみたいに」
わずかに記憶を辿り、イギリス聖教の知人を思い浮かべて答える上条。
一方通行「まァ、あの女が投げた剣を反射しきれなかったのは事実だ。
魔術か……、この世に俺が干渉できねェベクトルがあるとはなァ」
先ほどの女性を真似てか、風斬氷華が五体満足で街灯の上に現れる。
風斬「この身体はタタリと同じ現象そのもの。例え第七聖典でも滅することはできませんよ」
「ですが、力そのものは大したことありません。どういった噂を具現化したのか知りませんが、
ポテンシャルで私を下回っている以上、今宵のタタリもただ消え去るのみ」
無駄と言い放つ風斬氷華に対し、女性が怯む様子は全くない。
再び戦いの火ぶたが切って落とされ、人外の攻防戦が開始される。
投擲された黒鍵が風斬氷華に次々に突き刺さるが、やはりそれを意に介す様子はない。
ただ、今度は自身に突き刺さった黒鍵を2本抜き出すと、それを武器として振り下ろす。
ガキンガキンと金属がぶつかり合う音が響き渡り凄まじい速さの剣戟が繰り広げられる。
一方通行「おィ、あのば……、女は誰なンだよ」
杖を拾い上条の元まで戻ってきていた一方通行が語りかけてくる。
上条「上条さんが知るわけないじゃ……」
そこまで口にして、そういえばと思いだしたことがあった。
上条「魔術師……」
一方通行「あン?」
上条「昨日話しただろ、吸血鬼退治が専門の魔術師が来るって。それが」
ガキン!ガゴン!バキッ!
一方通行「あの白兵戦やってる女だってのかァ? 魔術師ってのはあンな肉体派なのかよ」
上条「……魔術師にもタイプがあるんだと思う。超能力者に炎を使う奴がいれば肉体を強化する奴がいるみたいに」
わずかに記憶を辿り、イギリス聖教の知人を思い浮かべて答える上条。
一方通行「まァ、あの女が投げた剣を反射しきれなかったのは事実だ。
魔術か……、この世に俺が干渉できねェベクトルがあるとはなァ」
291: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/24(日) 01:06:51.41 ID:IFXOAnmG0
ガゴンッ!
地響きとともに聞こえてきたその音は、さっき風斬氷華を貫いたパイルバンカーが
再び風斬氷華を撃ち抜き貫通して地面にも穴を開けた音だった。
上条の幻想殺しも含めれば4度目となる消滅だが、風斬氷華はまたしてもどこからともなく現れる。
風斬「肉体のポテンシャルで上回られてはどうしようもありませんね。
代行者相手ではこの身体のままでは勝ち目は薄そうです」
小さくお手上げのポーズを取る風斬氷華だが、その顔にはどことなく余裕が感じられる。
「まるでまだ奥の手を隠しているような口ぶりですね。ですが一度確定したタタリが姿を変えることはない。
朝まで何度だって消滅させてあげますよ。ネロ・カオスになどと比べれば楽なものです」
女性は指と指の間に一本ずつ黒鍵を挟み、両手に六本の得物を構え不敵に笑う。
「そこの二人との戦いも拝見させて頂きましたが、今宵のタタリはずいぶんと脆弱。
ちょっと強い力を持った人間すら殺せず“つまらない脅し”で押し通ろうとするなんて、鼻で笑っちゃいますよ」
その言葉で上条と一方通行は唯一の光明に気付く。
風斬氷華はわざと上条に殴らせ、何度でも復活できることを見せつけ無駄だと言っていたが、それは無駄でも何でもない。
敵は吸血鬼、ただひたすらに朝がくるまで戦い続ければいいだけのこと。
口で言うほど簡単なことではないが、それでも勝ち筋は見つかったのだ。
今は一人でも十分強いこの女性もいる。
絶望するにはまだ早すぎる!
地響きとともに聞こえてきたその音は、さっき風斬氷華を貫いたパイルバンカーが
再び風斬氷華を撃ち抜き貫通して地面にも穴を開けた音だった。
上条の幻想殺しも含めれば4度目となる消滅だが、風斬氷華はまたしてもどこからともなく現れる。
風斬「肉体のポテンシャルで上回られてはどうしようもありませんね。
代行者相手ではこの身体のままでは勝ち目は薄そうです」
小さくお手上げのポーズを取る風斬氷華だが、その顔にはどことなく余裕が感じられる。
「まるでまだ奥の手を隠しているような口ぶりですね。ですが一度確定したタタリが姿を変えることはない。
朝まで何度だって消滅させてあげますよ。ネロ・カオスになどと比べれば楽なものです」
女性は指と指の間に一本ずつ黒鍵を挟み、両手に六本の得物を構え不敵に笑う。
「そこの二人との戦いも拝見させて頂きましたが、今宵のタタリはずいぶんと脆弱。
ちょっと強い力を持った人間すら殺せず“つまらない脅し”で押し通ろうとするなんて、鼻で笑っちゃいますよ」
その言葉で上条と一方通行は唯一の光明に気付く。
風斬氷華はわざと上条に殴らせ、何度でも復活できることを見せつけ無駄だと言っていたが、それは無駄でも何でもない。
敵は吸血鬼、ただひたすらに朝がくるまで戦い続ければいいだけのこと。
口で言うほど簡単なことではないが、それでも勝ち筋は見つかったのだ。
今は一人でも十分強いこの女性もいる。
絶望するにはまだ早すぎる!
293: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/24(日) 23:26:59.41 ID:IFXOAnmG0
風斬「じゃあ、お見せしましょうか。私の奥の手」
「ハッタリですか、虚言の王とはよく言ったものですね」
風斬「否。今宵のタタリは“風斬氷華”に非ず、この姿は力の一端です。
選択肢があったから好んでこの姿をとっているだけに過ぎません」
「なん、ですって?」
風斬「その二人は私の眷属にするため、生かしておきたかったのですが
代行者まで出てきたのではそうも言ってられませんね」
風斬氷華は今度こそ心の底から残念そうな顔をして微笑む。
その口ぶりは虚言か真か。
風斬「今宵のタタリの真の姿、それはAIM拡散力場そのもの。
劇はまだまだ終わりません、第二幕の始まりです!」
風斬氷華は両手を広げると、片手で指を弾く。
パチンという音が辺りに響き渡る。
全員が息を呑み見守る中、風斬氷華の身体にジジジとノイズが混じり始める。
ノイズは徐々に拡がり全身を覆っていく。
そして次に起こった変化は、風斬氷華にではなく街そのものにだった。
~♪
それは不協和音のようで何かの曲のような、気持ちの悪い音。
それが学園都市が設置した放送用スピーカーから飲食店の有線放送、
テレビに果ては携帯までとあらゆる音声出力機器から流れ始めたのだ。
「ハッタリですか、虚言の王とはよく言ったものですね」
風斬「否。今宵のタタリは“風斬氷華”に非ず、この姿は力の一端です。
選択肢があったから好んでこの姿をとっているだけに過ぎません」
「なん、ですって?」
風斬「その二人は私の眷属にするため、生かしておきたかったのですが
代行者まで出てきたのではそうも言ってられませんね」
風斬氷華は今度こそ心の底から残念そうな顔をして微笑む。
その口ぶりは虚言か真か。
風斬「今宵のタタリの真の姿、それはAIM拡散力場そのもの。
劇はまだまだ終わりません、第二幕の始まりです!」
風斬氷華は両手を広げると、片手で指を弾く。
パチンという音が辺りに響き渡る。
全員が息を呑み見守る中、風斬氷華の身体にジジジとノイズが混じり始める。
ノイズは徐々に拡がり全身を覆っていく。
そして次に起こった変化は、風斬氷華にではなく街そのものにだった。
~♪
それは不協和音のようで何かの曲のような、気持ちの悪い音。
それが学園都市が設置した放送用スピーカーから飲食店の有線放送、
テレビに果ては携帯までとあらゆる音声出力機器から流れ始めたのだ。
294: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/24(日) 23:31:55.86 ID:IFXOAnmG0
上条「なんなんだこの音は……」
不快な音に思わず耳をふさぐ上条。
一方通行「騒音攻撃だァ? ずいぶんチャチな……あン?」
上条「どうかしたのか、一方通行」
一方通行「どうかしたっつうか、なンつうか……」
怪訝な声を上げた一方通行は、首を回したり片足を上げてみたりと
まるで身体の調子を確かめるような挙動をとる。
一方通行「演算補助装置も通常モード……、よくわかンねえが能力が戻ったみてェだ」
一方通行はそう言って手に持っていた杖を投げ捨て、地面を踏みつけるような動作をする。
するとバキリと音がなり、コンクリートの地面に罅が入りベクトル操作を行ったらしいことがわかった。
一方通行「クカカカ、どォいう理屈かはわかンねえがこれならいくらでも戦えるぜェ!」
奇妙な笑い声を上げ、ニタニタと悪魔のように笑う一方通行。
だがしかし、
一方通行「いくぞ三下ァ、何ならあのよくわかンねえ女も一緒にやっち……ァ?」
ノイズの混じる風斬氷華と対峙する女性に向かって足を踏み出した次の瞬間、
一方通行の身体がぐらりと揺れ転倒してしまったのだ。
不快な音に思わず耳をふさぐ上条。
一方通行「騒音攻撃だァ? ずいぶんチャチな……あン?」
上条「どうかしたのか、一方通行」
一方通行「どうかしたっつうか、なンつうか……」
怪訝な声を上げた一方通行は、首を回したり片足を上げてみたりと
まるで身体の調子を確かめるような挙動をとる。
一方通行「演算補助装置も通常モード……、よくわかンねえが能力が戻ったみてェだ」
一方通行はそう言って手に持っていた杖を投げ捨て、地面を踏みつけるような動作をする。
するとバキリと音がなり、コンクリートの地面に罅が入りベクトル操作を行ったらしいことがわかった。
一方通行「クカカカ、どォいう理屈かはわかンねえがこれならいくらでも戦えるぜェ!」
奇妙な笑い声を上げ、ニタニタと悪魔のように笑う一方通行。
だがしかし、
一方通行「いくぞ三下ァ、何ならあのよくわかンねえ女も一緒にやっち……ァ?」
ノイズの混じる風斬氷華と対峙する女性に向かって足を踏み出した次の瞬間、
一方通行の身体がぐらりと揺れ転倒してしまったのだ。
295: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/25(月) 00:43:00.15 ID:HBlm1Ng50
上条「おい、どうした! 一方通行!」
地面に横たわる一方通行の元へ駆け寄る上条。
揺すっても反応はなく意識を失っているらしい。
転倒して頭を打ち意識を失ったというより意識を失ったことで転倒した、そんな印象を受けた。
♪~…、
耳障りな音が消えた。
上条はそれを何かの予兆と捉え一方通行に寄り添った位置から風斬氷華へと視線を向ける。
しかしその視線にいたのは風斬氷華ではなかった。
そこにいたのは巨大な胎児。
全長は上条たちよりもはるかに大きく4~5メートルぐらいある。
だがその姿は赤ん坊にすらなりえていない未成熟な胎児のもの。
「一体何が……!?」
さっきまで人型だったものがこんな化物に姿を変える、
女性にとってはそれほど見慣れない光景と言うわけでもないが
実際目の当たりにすれば思わず後ずさる。
アァアアアアアアァァァ……。
泣き声と言うより呻き声、そう表現した方がイメージとしては近い。
「くっ……、これでも食らいなさい!」
投擲される6本の黒鍵。
胎児に向け一直線に飛んだそれは、胎児に当たりそして『はじかれた』。
地面に横たわる一方通行の元へ駆け寄る上条。
揺すっても反応はなく意識を失っているらしい。
転倒して頭を打ち意識を失ったというより意識を失ったことで転倒した、そんな印象を受けた。
♪~…、
耳障りな音が消えた。
上条はそれを何かの予兆と捉え一方通行に寄り添った位置から風斬氷華へと視線を向ける。
しかしその視線にいたのは風斬氷華ではなかった。
そこにいたのは巨大な胎児。
全長は上条たちよりもはるかに大きく4~5メートルぐらいある。
だがその姿は赤ん坊にすらなりえていない未成熟な胎児のもの。
「一体何が……!?」
さっきまで人型だったものがこんな化物に姿を変える、
女性にとってはそれほど見慣れない光景と言うわけでもないが
実際目の当たりにすれば思わず後ずさる。
アァアアアアアアァァァ……。
泣き声と言うより呻き声、そう表現した方がイメージとしては近い。
「くっ……、これでも食らいなさい!」
投擲される6本の黒鍵。
胎児に向け一直線に飛んだそれは、胎児に当たりそして『はじかれた』。
296: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/25(月) 01:26:34.80 ID:HBlm1Ng50
「そんなっ! それならば……、セブン!」
そう言って女性が構えたのはあの無茶苦茶ごついパイルバンカー。
距離は離れているが構わずに狙いを定め射出する。
投擲槍の様に飛んでいったそれだが、黒鍵同様にはじかれてしまう。
わずかには衝撃があったのか胎児は若干だが仰け反っていた。
「馬鹿な、第七聖典まで!」
上条はその動きに見覚えがあった。
胎児の表面がどんな状態なのか、女性の武器がどういったものかはわからない。
だが、物理法則として異様だったその光景。
上条「まさか、……ベクトル操作、“反射”なのか……?」
唖然とする上条だが、胎児の力はそれだけではなかった。
胎児の顔前でキラリと何かが光り、次の瞬間に上条にめがけ光線が発射される。
ピキューン!
咄嗟に前に出した右手が幻想を打ち砕く。
上条「超電磁砲……いや、少し違うか」
冷や汗をかきながら攻撃の正体を見極めようとする上条。
先の光線の正体、それは原子崩し。
学園都市の誇るレベル5、第四位の超能力である。
そう言って女性が構えたのはあの無茶苦茶ごついパイルバンカー。
距離は離れているが構わずに狙いを定め射出する。
投擲槍の様に飛んでいったそれだが、黒鍵同様にはじかれてしまう。
わずかには衝撃があったのか胎児は若干だが仰け反っていた。
「馬鹿な、第七聖典まで!」
上条はその動きに見覚えがあった。
胎児の表面がどんな状態なのか、女性の武器がどういったものかはわからない。
だが、物理法則として異様だったその光景。
上条「まさか、……ベクトル操作、“反射”なのか……?」
唖然とする上条だが、胎児の力はそれだけではなかった。
胎児の顔前でキラリと何かが光り、次の瞬間に上条にめがけ光線が発射される。
ピキューン!
咄嗟に前に出した右手が幻想を打ち砕く。
上条「超電磁砲……いや、少し違うか」
冷や汗をかきながら攻撃の正体を見極めようとする上条。
先の光線の正体、それは原子崩し。
学園都市の誇るレベル5、第四位の超能力である。
297: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/25(月) 01:43:00.40 ID:HBlm1Ng50
アアァアァ……
またしても呻き声を上げる胎児の前に立つ女性は、
パイルバンカーを構えたまま胎児へと疾走する。
ゼロ距離で放つつもりなのだろうがきっとそれもまたはじかれる。
女性の武器の詳細は分からないが、物理的な衝撃は全て反射される。
魔術的な要素がどの程度含まれているかは分からないが、
上条にはそれが決定打になるとは到底思えなかった。
それ以前に、その胎児は女性の攻撃を待つよりも先に姿を『消して』しまったのだ。
「一体どこへ!?」
あの巨体が一瞬で姿を消すなんてことは考えにくい。
どこへ行ったのかと周囲を見回す女性だが、
胎児は女性の背後へと突如として現れる。
上条「後ろだ!」
「!?」
上条の声で背後に現れた胎児に気付くと前方への回避行動をとる。
僅かに遅れて、先ほどまで女性のいた場所へと胎児の腕が振り下ろされる。
ドゴン!!
腕はコンクリートを割り地面を陥没させる凄まじい破壊力を見せつける。
上条「さっきのはテレポート……、じゃあ今のも身体強化系の超能力か!?」
女性の背後へと現れた超能力、それは死角移動という移動系能力。
そして攻撃の破壊力は、窒素装甲という大気系の超能力である。
またしても呻き声を上げる胎児の前に立つ女性は、
パイルバンカーを構えたまま胎児へと疾走する。
ゼロ距離で放つつもりなのだろうがきっとそれもまたはじかれる。
女性の武器の詳細は分からないが、物理的な衝撃は全て反射される。
魔術的な要素がどの程度含まれているかは分からないが、
上条にはそれが決定打になるとは到底思えなかった。
それ以前に、その胎児は女性の攻撃を待つよりも先に姿を『消して』しまったのだ。
「一体どこへ!?」
あの巨体が一瞬で姿を消すなんてことは考えにくい。
どこへ行ったのかと周囲を見回す女性だが、
胎児は女性の背後へと突如として現れる。
上条「後ろだ!」
「!?」
上条の声で背後に現れた胎児に気付くと前方への回避行動をとる。
僅かに遅れて、先ほどまで女性のいた場所へと胎児の腕が振り下ろされる。
ドゴン!!
腕はコンクリートを割り地面を陥没させる凄まじい破壊力を見せつける。
上条「さっきのはテレポート……、じゃあ今のも身体強化系の超能力か!?」
女性の背後へと現れた超能力、それは死角移動という移動系能力。
そして攻撃の破壊力は、窒素装甲という大気系の超能力である。
298: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/25(月) 02:04:11.32 ID:HBlm1Ng50
今上条たちの目の前で起こっているのは学園都市で一度起きた事件、幻想御手事件に由来する。
使うだけで能力が上がる道具レベルアッパー、
まず先ほど学園都市中に流れた音声の正体がこれである。
この音声を聞くと実際に能力レベルが上昇するものの、
他人の脳波を強要されているため最終的に使用者は
脳波のネットワークに取りこまれ意識不明に陥るという副作用がある。
そしてこの副作用の状態が今の一方通行の状態となる。
さらにそのレベルアッパーのネットワークが暴走により現れたAIM拡散力場でできた化物――幻想猛獣、
その姿は胎児のような姿をしており、若干の差異は見られるが上条たちの前にいるものがそれである。
最後に幻想猛獣が使う様々な超能力、それは多才能力と呼ばれるもので
意識を失った能力者の能力を行使するものとなる。
今、学園都市で能力開発を受けた者のほとんどが意識を失っている。
それは学園都市中に流された音声を聞いたせいであり
つまりは、今意識を失っている超能力者全てが敵にまわったのと同義である。
そしてその中にはレベル5も含まれていることを忘れてはならない。
使うだけで能力が上がる道具レベルアッパー、
まず先ほど学園都市中に流れた音声の正体がこれである。
この音声を聞くと実際に能力レベルが上昇するものの、
他人の脳波を強要されているため最終的に使用者は
脳波のネットワークに取りこまれ意識不明に陥るという副作用がある。
そしてこの副作用の状態が今の一方通行の状態となる。
さらにそのレベルアッパーのネットワークが暴走により現れたAIM拡散力場でできた化物――幻想猛獣、
その姿は胎児のような姿をしており、若干の差異は見られるが上条たちの前にいるものがそれである。
最後に幻想猛獣が使う様々な超能力、それは多才能力と呼ばれるもので
意識を失った能力者の能力を行使するものとなる。
今、学園都市で能力開発を受けた者のほとんどが意識を失っている。
それは学園都市中に流された音声を聞いたせいであり
つまりは、今意識を失っている超能力者全てが敵にまわったのと同義である。
そしてその中にはレベル5も含まれていることを忘れてはならない。
299: ◆tVP11EVtkPKg 2011/04/25(月) 02:07:44.50 ID:HBlm1Ng50
これどうすんだよ・・・無理ゲー過ぎんだろ
誰かフィアンマ呼んでこいよほんとに
誰かフィアンマ呼んでこいよほんとに
312: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/01(日) 03:45:27.95 ID:eoiWJ4Em0
素早い動きで幻想猛獣と距離をとった女性は、
魔術師と言うよりマジシャンのようにどこからともなく黒鍵を取り出し、
何度目かになる投擲攻撃を仕掛ける。
しかし、その黒鍵は第一位の能力によって反射され無効化されてしまう。
女性とてそうなることは百も承知で、相手の能力を把握するための牽制の攻撃なのだが、
その実態は彼女の使う魔術とは対称の科学であるため非常に困難な道と言えよう。
「そこの黒髪の君! タタリが噂を具現化する吸血鬼ということは知っていますね?」
上条「へ? 俺、ですか?」
ほとんど茫然としていた上条は、突然投げかけられた言葉に思わず敬語で返事をする。
「知っていますね?」
上条「あぁ、知ってるけど」
「では、これがどんな噂を具現化したものかわかりますか?」
どこか事務的な口調は、御使堕しの時に居合わせたミーシャ=クロイツェフを彷彿とさせる。
上条「……わからない」
二日前、都市伝説について携帯で調べていた上条当麻だったが、
目の前で起きている現象と符合するようなものはなかったと記憶している。
上条「けど憶測なら」
「構いません」
即答。
先ほど立ち去るよう促した相手に情報を求めるほど、
今と言う状況が切迫しているということのあらわれなのだ。
上条「たぶんだが、そいつは学園都市の超能力者の能力をそのまま使ってるんだ」
「つまりこの学園にこの怪物の元となった人間がいると?」
上条「違う。いや、もしかしたら……」
「どっちですか!?」
上条「わかんねーよ! けど!」
魔術師と言うよりマジシャンのようにどこからともなく黒鍵を取り出し、
何度目かになる投擲攻撃を仕掛ける。
しかし、その黒鍵は第一位の能力によって反射され無効化されてしまう。
女性とてそうなることは百も承知で、相手の能力を把握するための牽制の攻撃なのだが、
その実態は彼女の使う魔術とは対称の科学であるため非常に困難な道と言えよう。
「そこの黒髪の君! タタリが噂を具現化する吸血鬼ということは知っていますね?」
上条「へ? 俺、ですか?」
ほとんど茫然としていた上条は、突然投げかけられた言葉に思わず敬語で返事をする。
「知っていますね?」
上条「あぁ、知ってるけど」
「では、これがどんな噂を具現化したものかわかりますか?」
どこか事務的な口調は、御使堕しの時に居合わせたミーシャ=クロイツェフを彷彿とさせる。
上条「……わからない」
二日前、都市伝説について携帯で調べていた上条当麻だったが、
目の前で起きている現象と符合するようなものはなかったと記憶している。
上条「けど憶測なら」
「構いません」
即答。
先ほど立ち去るよう促した相手に情報を求めるほど、
今と言う状況が切迫しているということのあらわれなのだ。
上条「たぶんだが、そいつは学園都市の超能力者の能力をそのまま使ってるんだ」
「つまりこの学園にこの怪物の元となった人間がいると?」
上条「違う。いや、もしかしたら……」
「どっちですか!?」
上条「わかんねーよ! けど!」
313: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/01(日) 03:49:12.07 ID:eoiWJ4Em0
怒鳴りあうような会話を続ける二人だが、
決して幻想猛獣が停止しているわけではない。
女性は、新たに炎を現出させたり、電気を放出したりと攻撃の手数を増やす幻想猛獣を
今も黒鍵で牽制して戦いながら会話をしている。
上条「あんたが投げてる剣が弾かれてるのは、この白髪の超能力者『一方通行』のベクトル変換だ。
さっき突然背中に現れたのも空間移動系の超能力、
あの破壊力は肉体強化、炎は発火能力、電気は電撃使いの超能力だ」
幻想猛獣は再び虚空へと姿を消すと、女性の背後から現れる。
しかし、その超能力は二度目、前方へ疾走し背後からくるであろう攻撃を回避する。
上条「つまりそいつは、学園都市の超能力者の超能力を自由に使える、
そういう存在なんだと思う」
幻想猛獣の使う発火能力により炎が現れ女性に向けて降り注ぐ。
女性は黒鍵を使って一薙ぎでかき消すとともにその武器を投擲するが、
やはりそれもベクトル変換によって弾かれてしまう。
「……今倒れている白髪の彼、私の攻撃が弾かれるのは彼の超能力でしたか。
でしたら、そちらの彼が気を失っていることとこの怪物の能力との関係性、
もっと言えば、彼が目を覚ませば奴がその超能力を失う可能性は?」
まさに冷静沈着。
今もまた、幻想猛獣の電撃を黒鍵を地面に突き刺し避雷針にみたてて回避しているというのに、
上条の憶測から即座に現状を打破する可能性を見出す女性は圧巻と言わざるを得ない。
決して幻想猛獣が停止しているわけではない。
女性は、新たに炎を現出させたり、電気を放出したりと攻撃の手数を増やす幻想猛獣を
今も黒鍵で牽制して戦いながら会話をしている。
上条「あんたが投げてる剣が弾かれてるのは、この白髪の超能力者『一方通行』のベクトル変換だ。
さっき突然背中に現れたのも空間移動系の超能力、
あの破壊力は肉体強化、炎は発火能力、電気は電撃使いの超能力だ」
幻想猛獣は再び虚空へと姿を消すと、女性の背後から現れる。
しかし、その超能力は二度目、前方へ疾走し背後からくるであろう攻撃を回避する。
上条「つまりそいつは、学園都市の超能力者の超能力を自由に使える、
そういう存在なんだと思う」
幻想猛獣の使う発火能力により炎が現れ女性に向けて降り注ぐ。
女性は黒鍵を使って一薙ぎでかき消すとともにその武器を投擲するが、
やはりそれもベクトル変換によって弾かれてしまう。
「……今倒れている白髪の彼、私の攻撃が弾かれるのは彼の超能力でしたか。
でしたら、そちらの彼が気を失っていることとこの怪物の能力との関係性、
もっと言えば、彼が目を覚ませば奴がその超能力を失う可能性は?」
まさに冷静沈着。
今もまた、幻想猛獣の電撃を黒鍵を地面に突き刺し避雷針にみたてて回避しているというのに、
上条の憶測から即座に現状を打破する可能性を見出す女性は圧巻と言わざるを得ない。
314: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/01(日) 04:17:50.92 ID:eoiWJ4Em0
上条「可能性は、あるかもしれない」
「このままですと、この都市の人間全てが吸血鬼の餌になります。
それを防ぐためとあらば、私はそちらの彼を躊躇なく、……殺します」
味方ではないと教えられていたが、
敵でもないと思っていた相手に突如として向けられたギラギラとした殺意。
思わず息をのみ上条の首筋を冷や汗が伝う。
「ですが、犠牲者は少ないに限ります。ですので」
それは暗に脅しだった。
お前が起こさなければ、私が二度と覚めぬ眠りに突き落としてやろうと。
今はこの怪物の相手で精一杯だが隙を見つけて殺してやると。
その言葉に上条が返す言葉はなく、ただ今やるべきことをやるしかない。
上条は冷たい地面に横たわる一方通行の両肩を掴むと大声で叫ぶ。
上条「起きろおおおぉおおおおおぉぉおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」
がくがくと揺さぶりながら叫び続ける。
がんがんと後頭部を地面にぶつけているが一方通行が目を覚ます様子はない。
「このままですと、この都市の人間全てが吸血鬼の餌になります。
それを防ぐためとあらば、私はそちらの彼を躊躇なく、……殺します」
味方ではないと教えられていたが、
敵でもないと思っていた相手に突如として向けられたギラギラとした殺意。
思わず息をのみ上条の首筋を冷や汗が伝う。
「ですが、犠牲者は少ないに限ります。ですので」
それは暗に脅しだった。
お前が起こさなければ、私が二度と覚めぬ眠りに突き落としてやろうと。
今はこの怪物の相手で精一杯だが隙を見つけて殺してやると。
その言葉に上条が返す言葉はなく、ただ今やるべきことをやるしかない。
上条は冷たい地面に横たわる一方通行の両肩を掴むと大声で叫ぶ。
上条「起きろおおおぉおおおおおぉぉおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!」
がくがくと揺さぶりながら叫び続ける。
がんがんと後頭部を地面にぶつけているが一方通行が目を覚ます様子はない。
315: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/01(日) 04:18:27.43 ID:eoiWJ4Em0
上条「くそっ、こんだけやりゃあ普通目を覚ますだろ……。
ってことは魔術による外的要因ってことか……?」
しばらく続けても目を覚まさなかったため肩から手を離し次の手を考える。
がんっ!とさっきより強い音が聞こえたがやはり目を覚ます様子はない。
上条「それなら」
上条は右手を僅かに見つめ、次にそれを一方通行の胸に押し当てる。
そこから上下にぺたぺたと右手を押しつけていく。
心臓、腹、首、顔。
股間に拳を叩きこんでやろうかと一瞬考えたが、先に頭に触れる。
瞬間、上条は何かが壊れる音と幻想殺しの確かな手応えを感じた。
一方通行「ァ……ン?」
一方通行の瞼がゆっくりと開かれ、赤い瞳で上条をぼーっと見つめ、
上条「よっしゃあ、目を覚ま、」
一方通行「っっってえええェェェェ!?」
後頭部を押さえて飛び起きた。
ってことは魔術による外的要因ってことか……?」
しばらく続けても目を覚まさなかったため肩から手を離し次の手を考える。
がんっ!とさっきより強い音が聞こえたがやはり目を覚ます様子はない。
上条「それなら」
上条は右手を僅かに見つめ、次にそれを一方通行の胸に押し当てる。
そこから上下にぺたぺたと右手を押しつけていく。
心臓、腹、首、顔。
股間に拳を叩きこんでやろうかと一瞬考えたが、先に頭に触れる。
瞬間、上条は何かが壊れる音と幻想殺しの確かな手応えを感じた。
一方通行「ァ……ン?」
一方通行の瞼がゆっくりと開かれ、赤い瞳で上条をぼーっと見つめ、
上条「よっしゃあ、目を覚ま、」
一方通行「っっってえええェェェェ!?」
後頭部を押さえて飛び起きた。
316: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/02(月) 02:32:21.63 ID:IviHI1lN0
一方通行の叫び声を聞いてからの、その女性の反応は早かった。
黒鍵を取り出し三本、六本、十二本と連続投擲、
一点には集中せず5メートルの巨体を等間隔に攻める。
うち八本が幻想猛獣の目の前で何かにぶつかったように阻まれ、三本が空中で溶断され弾け飛ぶ。
さっきまでは体表のどこを狙っても触れた瞬間に弾かれていたことを踏まえると、
それが一方通行のベクトル変換という超能力であり、それが今は失われたのだと知る。
「セブン、いきますよ!」
十二本中、到達しなかった数は十一本。
残りの一本、それは幻想猛獣へと深々と突き刺さっていた。
そこにめがけパイルバンカーを構えた女性は、
まるでその武器に意志でもあるかのように語りかけ引き金を引く。
ドン!という大きな音と、続けてバン!という何かがはじけた音。
アアアァァアアァァァア!!
次いで聞こえてきたのは幻想猛獣のあげた悲鳴のような声だった。
「直撃したというのにこの程度ですか……」
パイルバンカーから放たれた杭は狙い通りの場所に命中すると、
その瞬間に幻想猛獣の命中した部位が文字通り爆ぜたのだ。
しかし、全体として見れば1割にも満たない程度で
自身の武器に絶対的な自信を持っていたらしい女性は思わず落胆の声を上げる。
「これは帰ったらまた改造が必要ですね」
黒鍵を取り出し三本、六本、十二本と連続投擲、
一点には集中せず5メートルの巨体を等間隔に攻める。
うち八本が幻想猛獣の目の前で何かにぶつかったように阻まれ、三本が空中で溶断され弾け飛ぶ。
さっきまでは体表のどこを狙っても触れた瞬間に弾かれていたことを踏まえると、
それが一方通行のベクトル変換という超能力であり、それが今は失われたのだと知る。
「セブン、いきますよ!」
十二本中、到達しなかった数は十一本。
残りの一本、それは幻想猛獣へと深々と突き刺さっていた。
そこにめがけパイルバンカーを構えた女性は、
まるでその武器に意志でもあるかのように語りかけ引き金を引く。
ドン!という大きな音と、続けてバン!という何かがはじけた音。
アアアァァアアァァァア!!
次いで聞こえてきたのは幻想猛獣のあげた悲鳴のような声だった。
「直撃したというのにこの程度ですか……」
パイルバンカーから放たれた杭は狙い通りの場所に命中すると、
その瞬間に幻想猛獣の命中した部位が文字通り爆ぜたのだ。
しかし、全体として見れば1割にも満たない程度で
自身の武器に絶対的な自信を持っていたらしい女性は思わず落胆の声を上げる。
「これは帰ったらまた改造が必要ですね」
317: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/02(月) 02:57:22.42 ID:IviHI1lN0
一方通行「おィおィ、一体どうなってんだ三下ァ!?」
意識を失う前に見た光景とはまったく異なる今の状況に
一方通行は竜宮城へ行った浦島太郎の気分なのだろう。
一方通行「なンか頭痛ェし、また能力使えなくなってるしィ、
つうか俺の杖どこ行ったンだよ。後ついでにアレはなンだくそったれがァ」
上条「一番重要そうなのがついでかよ!? と・に・か・く、アレがタタリで
杖は能力が戻って調子に乗ったお前が向こうに投げただろ。
能力が使えないのは上条さんにはわかりませんのことよ!」
とりあえず、今必要そうなことを早口でまくしたてる。
一方通行「あの化けもンがタタリだァ? 何がどうなったってンだよ。あと頭痛ェのは、」
上条「俺にもわかんねぇよ。今わかってるのは
お前が倒れた後にアレが現れて、アレは学園都市の超能力者の能力が丸々使えるらしい。
お前が気を失ってた間は反射の超能力も使ってた。
頭が痛いのもきっとそのせいだ」
若干の嘘が交じっているが気にしてはいけない。
上条「とりあえず、杖は俺がとってきてやるからちょっと待ってろ」
そう言って上条は駆け出して行く。
杖は一方通行から10メートルぐらい離れた位置に打ち捨てられている。
普通に投げるだけではここまでの飛距離は出まい。
能力が戻ったのがよほど嬉しかったのか、それだけ調子に乗っていたということだろう。
上条「ったく、思いっきり投げ飛ばしたやがって」
杖を拾おうと屈んだ上条の背後で幻想猛獣が姿を消していた。
目の前から敵が消えた女性は咄嗟に後ろを振り向き幻想猛獣の出現に備える。
しかし、幻想猛獣は現れない。
意識を失う前に見た光景とはまったく異なる今の状況に
一方通行は竜宮城へ行った浦島太郎の気分なのだろう。
一方通行「なンか頭痛ェし、また能力使えなくなってるしィ、
つうか俺の杖どこ行ったンだよ。後ついでにアレはなンだくそったれがァ」
上条「一番重要そうなのがついでかよ!? と・に・か・く、アレがタタリで
杖は能力が戻って調子に乗ったお前が向こうに投げただろ。
能力が使えないのは上条さんにはわかりませんのことよ!」
とりあえず、今必要そうなことを早口でまくしたてる。
一方通行「あの化けもンがタタリだァ? 何がどうなったってンだよ。あと頭痛ェのは、」
上条「俺にもわかんねぇよ。今わかってるのは
お前が倒れた後にアレが現れて、アレは学園都市の超能力者の能力が丸々使えるらしい。
お前が気を失ってた間は反射の超能力も使ってた。
頭が痛いのもきっとそのせいだ」
若干の嘘が交じっているが気にしてはいけない。
上条「とりあえず、杖は俺がとってきてやるからちょっと待ってろ」
そう言って上条は駆け出して行く。
杖は一方通行から10メートルぐらい離れた位置に打ち捨てられている。
普通に投げるだけではここまでの飛距離は出まい。
能力が戻ったのがよほど嬉しかったのか、それだけ調子に乗っていたということだろう。
上条「ったく、思いっきり投げ飛ばしたやがって」
杖を拾おうと屈んだ上条の背後で幻想猛獣が姿を消していた。
目の前から敵が消えた女性は咄嗟に後ろを振り向き幻想猛獣の出現に備える。
しかし、幻想猛獣は現れない。
319: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/02(月) 21:59:26.78 ID:IviHI1lN0
一方通行「三下ァッ! 後ろだァッ!」
上条「え?」
それは油断以外の何物でもなかった。
幻想猛獣はずっと女性と戦っていた。
一度だけ飛来した原子崩しによる攻撃も、
女性を狙ったもののはずれてしまい延直線上にいたがゆえのもの。
勝手な思い込みとはいえ、自分たちは標的から外れている、上条はそう思い込んでいた。
アアァアァァ……
上条が振り向いた時、視界に飛び込んできたのは幻想猛獣だった。
上条「んなっ!?」
手を伸ばせば届く距離だが、今上条の態勢は非常に不安定。
超能力者の塊みたいなものだというのなら幻想殺しは必勝の一手。
しかし、上条は咄嗟に殴りかかれるような状態ではなかった。
上条が幻想猛獣の存在に気付き対応を思考するその僅かな時間に、
上条の右前方で空気が燃焼し空中を炎が踊り始める。
さらに同時に左前方ではバチバチと青い光が弾け、電撃の兆しを感じ取る。
上条(挟み撃ちっっ!)
一方通行は演算補助装置を操作して飛翔する。
だが、演算補助装置を操作する、その時間が致命的。
女性も黒鍵を投擲するが窒素装甲に阻まれてしまう。
上条「え?」
それは油断以外の何物でもなかった。
幻想猛獣はずっと女性と戦っていた。
一度だけ飛来した原子崩しによる攻撃も、
女性を狙ったもののはずれてしまい延直線上にいたがゆえのもの。
勝手な思い込みとはいえ、自分たちは標的から外れている、上条はそう思い込んでいた。
アアァアァァ……
上条が振り向いた時、視界に飛び込んできたのは幻想猛獣だった。
上条「んなっ!?」
手を伸ばせば届く距離だが、今上条の態勢は非常に不安定。
超能力者の塊みたいなものだというのなら幻想殺しは必勝の一手。
しかし、上条は咄嗟に殴りかかれるような状態ではなかった。
上条が幻想猛獣の存在に気付き対応を思考するその僅かな時間に、
上条の右前方で空気が燃焼し空中を炎が踊り始める。
さらに同時に左前方ではバチバチと青い光が弾け、電撃の兆しを感じ取る。
上条(挟み撃ちっっ!)
一方通行は演算補助装置を操作して飛翔する。
だが、演算補助装置を操作する、その時間が致命的。
女性も黒鍵を投擲するが窒素装甲に阻まれてしまう。
320: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/02(月) 22:20:22.75 ID:IviHI1lN0
残された手立ては皆無と思われたが、
上条に電撃と火炎が同時に襲いかかろうとした次の瞬間、
上条は自ら炎の中へと飛び込んだのだ。
上条「あつっ! あっちぃっ!」
上条が元いた場所に電撃が飛び、それは回避することはできたが
上条は炎に包まれてしまっている。
が、それも右手ではたき落とすように触れると幻想殺しによって消えてしまう。
一方通行「オラァァッ!!」
直後、幻想猛獣を襲ったのは一方通行の飛び蹴りだった。
しかし、その蹴りも幻想猛獣を目前にしてブレーキがかかる。
一方通行(コイツは窒素かァ? 窒素を固めて壁にしてるってことか……、なら!)
一方通行の蹴りは完全に停止したと思われたのだが、
どういうわけか幻想猛獣には凄まじい衝撃が襲いかかる。
アァアァアアアアァァ……
その衝撃は幻想猛獣の肉体の強度を上回り、どてっぱらにサッカーボールぐらいの風穴が開いていた。
今起こった謎の現象の正体は、一方通行が行った窒素のベクトル操作。
幻想猛獣が固めた窒素の壁をそのまま自転ベクトルを真逆に操作して『発射』したのだ。
上条に電撃と火炎が同時に襲いかかろうとした次の瞬間、
上条は自ら炎の中へと飛び込んだのだ。
上条「あつっ! あっちぃっ!」
上条が元いた場所に電撃が飛び、それは回避することはできたが
上条は炎に包まれてしまっている。
が、それも右手ではたき落とすように触れると幻想殺しによって消えてしまう。
一方通行「オラァァッ!!」
直後、幻想猛獣を襲ったのは一方通行の飛び蹴りだった。
しかし、その蹴りも幻想猛獣を目前にしてブレーキがかかる。
一方通行(コイツは窒素かァ? 窒素を固めて壁にしてるってことか……、なら!)
一方通行の蹴りは完全に停止したと思われたのだが、
どういうわけか幻想猛獣には凄まじい衝撃が襲いかかる。
アァアァアアアアァァ……
その衝撃は幻想猛獣の肉体の強度を上回り、どてっぱらにサッカーボールぐらいの風穴が開いていた。
今起こった謎の現象の正体は、一方通行が行った窒素のベクトル操作。
幻想猛獣が固めた窒素の壁をそのまま自転ベクトルを真逆に操作して『発射』したのだ。
321: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/02(月) 23:41:03.67 ID:IviHI1lN0
一方通行「油断してんじゃねェぞ三下ァ、ちゃんと生きてンのかァ?」
幻想猛獣が怯んだ隙に上条の首根っこを掴んで、
ベクトルを操作したジャンプで一気に距離をとる。
何気にしっかりと自分の杖も拾っていたりする。
上条「どうにかな。どの超能力者か知らねえけどレベル3ぐらいだな、おかげで助かったぜ。
電撃使いにはレベル5のおっかない超能力者がいるからな」
上条が炎に自ら飛び込んだ理由、それは単に電撃が怖かったからに他ならない。
学園都市にいる七人の超能力者のうちの一人、電撃姫こと御坂美琴を
上条は知っている。
しかし、炎を使う超能力者を上条は知らなかった。
たったそれだけのことで、上条は死中に活路を見出し今に至るのだ。
それでも、自慢のウニの様な髪はちぢれて、皮膚も赤くなってしまっている。
アアアアァアァァ……
一方で一方通行が幻想猛獣に空けた風穴はすでに塞がりつつあった。
また、一方通行が攻撃する前に、女性が攻撃し爆ぜた箇所はすでに完全に元通りとなっている。
吸血鬼タタリとしての性質か、肉体を再生させる超能力かはわからない。
ただ、生半可な攻撃では効果が認められないのは確実と言える。
幻想猛獣が怯んだ隙に上条の首根っこを掴んで、
ベクトルを操作したジャンプで一気に距離をとる。
何気にしっかりと自分の杖も拾っていたりする。
上条「どうにかな。どの超能力者か知らねえけどレベル3ぐらいだな、おかげで助かったぜ。
電撃使いにはレベル5のおっかない超能力者がいるからな」
上条が炎に自ら飛び込んだ理由、それは単に電撃が怖かったからに他ならない。
学園都市にいる七人の超能力者のうちの一人、電撃姫こと御坂美琴を
上条は知っている。
しかし、炎を使う超能力者を上条は知らなかった。
たったそれだけのことで、上条は死中に活路を見出し今に至るのだ。
それでも、自慢のウニの様な髪はちぢれて、皮膚も赤くなってしまっている。
アアアアァアァァ……
一方で一方通行が幻想猛獣に空けた風穴はすでに塞がりつつあった。
また、一方通行が攻撃する前に、女性が攻撃し爆ぜた箇所はすでに完全に元通りとなっている。
吸血鬼タタリとしての性質か、肉体を再生させる超能力かはわからない。
ただ、生半可な攻撃では効果が認められないのは確実と言える。
323: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/05(木) 10:00:21.28 ID:n7nE7RgY0
一方通行「三下。あの化物が、俺が気を失ってる間に使ってた超能力を教えろ」
上条「は? なんでそんなこと……、それより追撃した方が」
一方通行「どうせ無駄だ、お前がぶン殴ったところですぐ戻ってきちまう。
ンなことより、今すぐ俺の質問に答えやがれ」
女性の方も一方通行と同じ判断なのだろう。
黒鍵を構えたまま動かずに相手の出方を窺っているようだ。
上条「確か、一方通行の反射にテレポート、身体強化系の何か……ぶん殴ってコンクリートを砕いてた、
それとよくわかんねー光線? 幻想殺しで壊したから当たるとどうなるかはわからない。
あとは炎と電撃だ。けど、それがどうかしたのか?」
一方通行(それに加えて空気中の窒素を固める能力か。なンかおかしくねェか……?
学園都市中の超能力者の超能力が使えるってことは無茶苦茶な量の演算をしてることになる。
しかもさっきは炎と電撃、異なる超能力を使ってたってことは理論上脳が二つねェと無理だ。
そう考えりゃァあれは超能力者と同じ演算をしてるンじゃなく、
超能力者に演算させてると考えた方が納得がいく。だが、それならそれで)
アアアアァァアァアァ!
「二人とも! きますよ!」
一方通行「チィッ、まだ考えてる途中だってのに……」
上条「は? なんでそんなこと……、それより追撃した方が」
一方通行「どうせ無駄だ、お前がぶン殴ったところですぐ戻ってきちまう。
ンなことより、今すぐ俺の質問に答えやがれ」
女性の方も一方通行と同じ判断なのだろう。
黒鍵を構えたまま動かずに相手の出方を窺っているようだ。
上条「確か、一方通行の反射にテレポート、身体強化系の何か……ぶん殴ってコンクリートを砕いてた、
それとよくわかんねー光線? 幻想殺しで壊したから当たるとどうなるかはわからない。
あとは炎と電撃だ。けど、それがどうかしたのか?」
一方通行(それに加えて空気中の窒素を固める能力か。なンかおかしくねェか……?
学園都市中の超能力者の超能力が使えるってことは無茶苦茶な量の演算をしてることになる。
しかもさっきは炎と電撃、異なる超能力を使ってたってことは理論上脳が二つねェと無理だ。
そう考えりゃァあれは超能力者と同じ演算をしてるンじゃなく、
超能力者に演算させてると考えた方が納得がいく。だが、それならそれで)
アアアアァァアァアァ!
「二人とも! きますよ!」
一方通行「チィッ、まだ考えてる途中だってのに……」
324: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/05(木) 10:05:05.97 ID:n7nE7RgY0
たっぷり30秒ほどかけて完全に回復した幻想猛獣に臨戦態勢へと戻る。
「やっ! はぁっ!」
女性はすぐさまに用意していた黒鍵を投げつける。
しかし、幻想猛獣に向け一直線に飛んでいった黒鍵は空を斬る。
テレポートだ。
姿を消すと同時に上条と女性は自身の背後を警戒する。
そして今回現れたのは女性の背後、出現と同時に炎が放たれる。
予め警戒していたこともあり、女性は素早い動きで攻撃を回避する。
二度のバックステップから幻想猛獣の右側へと回り込むダッシュ。
だが、そこへまるでそれを見越していたかのように上条が幻想殺しで壊した光線が飛来する。
上条たちは思わず息をのむが、女性は光線を黒鍵で受け止める。
当然、原子崩しを受け止めることなど不可能であり、1秒とかからず黒鍵は焼き切られてしまったが、
その時にはすでに女性は身をよじり光線の射線上から回避済み。
一方通行「ありゃァ粒機波形高速砲みたいなもンか……、
確かレベル5に電子を操る超能力者がいたはずだ」
一方通行は延々と思考し続ける。
吸血鬼だとかそんなことは知ったことではない。
あれは学園都市で発生した学園都市に依存した存在、
敵の特性、その存在原理、全てを学園都市を基準で考えて考察する。
「やっ! はぁっ!」
女性はすぐさまに用意していた黒鍵を投げつける。
しかし、幻想猛獣に向け一直線に飛んでいった黒鍵は空を斬る。
テレポートだ。
姿を消すと同時に上条と女性は自身の背後を警戒する。
そして今回現れたのは女性の背後、出現と同時に炎が放たれる。
予め警戒していたこともあり、女性は素早い動きで攻撃を回避する。
二度のバックステップから幻想猛獣の右側へと回り込むダッシュ。
だが、そこへまるでそれを見越していたかのように上条が幻想殺しで壊した光線が飛来する。
上条たちは思わず息をのむが、女性は光線を黒鍵で受け止める。
当然、原子崩しを受け止めることなど不可能であり、1秒とかからず黒鍵は焼き切られてしまったが、
その時にはすでに女性は身をよじり光線の射線上から回避済み。
一方通行「ありゃァ粒機波形高速砲みたいなもンか……、
確かレベル5に電子を操る超能力者がいたはずだ」
一方通行は延々と思考し続ける。
吸血鬼だとかそんなことは知ったことではない。
あれは学園都市で発生した学園都市に依存した存在、
敵の特性、その存在原理、全てを学園都市を基準で考えて考察する。
325: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/05(木) 10:11:27.10 ID:n7nE7RgY0
上条「この野郎!」
丸焼きにされかけたばかりでそれなりにフラストレーションの溜まっていた上条は
女性と交戦中の幻想猛獣に目掛け駆けていく。
アアァアアアァアァァア!!
上条「ぐぁっ!?」
しかしその勢いも上条自身とともに、5メートルほど手前で叩き伏せられてしまう。
第三者の視点から見れば転んだだけのように見えるかもしれないが、
上条は地面に這いつくばっている今も、まるで空気に押しつぶされるような重圧を受けている。
一方通行「念動力(テレキネシス)だ、右手を上に上げろォ」
上条「こ、こうか……?」
上条が一方通行の声に従い、右手を背中の上にかざすとようやく重圧から解放される。
上条「一方通行、助かったぜ!」
一方通行「お前は邪魔だァ、こっちに戻ってこい」
上条「けど!」
一方通行「いいから従いやがれ、お前にはやってもらうことがあるンだよ」
上条「やってもらうこと?」
丸焼きにされかけたばかりでそれなりにフラストレーションの溜まっていた上条は
女性と交戦中の幻想猛獣に目掛け駆けていく。
アアァアアアァアァァア!!
上条「ぐぁっ!?」
しかしその勢いも上条自身とともに、5メートルほど手前で叩き伏せられてしまう。
第三者の視点から見れば転んだだけのように見えるかもしれないが、
上条は地面に這いつくばっている今も、まるで空気に押しつぶされるような重圧を受けている。
一方通行「念動力(テレキネシス)だ、右手を上に上げろォ」
上条「こ、こうか……?」
上条が一方通行の声に従い、右手を背中の上にかざすとようやく重圧から解放される。
上条「一方通行、助かったぜ!」
一方通行「お前は邪魔だァ、こっちに戻ってこい」
上条「けど!」
一方通行「いいから従いやがれ、お前にはやってもらうことがあるンだよ」
上条「やってもらうこと?」
326: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/05(木) 10:21:31.29 ID:n7nE7RgY0
――――――――
上条「って思いっきりパシリだな、それ」
一方通行「けどお前にしかできねェンだ。わかったらとっとと行きやがれ」
上条「じゃあ、その間頼んだぜ」
一方通行「急げよ、あの女も一人じゃもう限界のはずだァ。
だからと言って俺が能力を使える時間も残り6分程度、
豆に切り替えるとしても最悪10分で考えとけ」
上条「短っ!? あーもう、とにかく行ってくる!」
会話を切り上げて、上条は病院の中へと駆けていく。
一方通行は上条がちゃんと院内へ入れたことを見届けてから幻想猛獣と女性に向き直る。
一方通行「絶対に通さねェぞ、こっから先は一方通行だからなァ」
上条「って思いっきりパシリだな、それ」
一方通行「けどお前にしかできねェンだ。わかったらとっとと行きやがれ」
上条「じゃあ、その間頼んだぜ」
一方通行「急げよ、あの女も一人じゃもう限界のはずだァ。
だからと言って俺が能力を使える時間も残り6分程度、
豆に切り替えるとしても最悪10分で考えとけ」
上条「短っ!? あーもう、とにかく行ってくる!」
会話を切り上げて、上条は病院の中へと駆けていく。
一方通行は上条がちゃんと院内へ入れたことを見届けてから幻想猛獣と女性に向き直る。
一方通行「絶対に通さねェぞ、こっから先は一方通行だからなァ」
330: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/06(金) 20:25:36.90 ID:H50ZXCXk0
女性は焦っていた。
攻撃はまったく効かず、こちらの動きもだんだんと先読みされるようになってきて、
相手の攻撃のバリエーションはだんだんと増えてきているのだ。
固めた窒素で殴りかかってくるのは、その愚鈍さから何の問題もない。
炎や電撃などは視覚で捉えることができるため回避には困らない。
その回避を先読みされたうえでの高速高威力の原子崩しもまだ反応できる。
さらにそのうえで目に見えない念動力も迫ってくる風圧で感知し避けることができる。
いまだ幻想猛獣の攻撃を貰うようなこともなく、体力的にもまだまだ余裕がある。
ただ、問題点を上げるとすれば、以上の攻撃に反応するべく擦り減らされていく精神の方だ。
(今はまだ問題ありませんが、避けきれなくなったら火ダルマぐらいは覚悟しましょう。
電撃は筋肉が麻痺するため絶対に回避、あの光線も喰らえば四肢が飛ぶでしょうね)
また新たな攻撃パターンが増える可能性も忘れてはいけない。
それに同時に襲いくる攻撃の数も増えてきている。
先ほどは、炎と念動力と原子崩しが全て別方向から同時に飛んできていた。
(次は水か氷でしょうか……できればこれ以上増えては欲しくないのですが。
最悪今までの攻撃全てが全方向からくることも想定しておかないと。
……さすがに不老不死だった頃に戻りたいとは思いませんけど)
幻想猛獣の攻撃をただ避け続けるだけでもいけない。
幻想猛獣はこちらが敵意を、攻撃の意思を見せているから反撃してきているのだ。
例え無駄だとわかっていても攻撃の手を止めることもできない。
(どうやらどうしても先に殺しておきたい入院患者がいるみたいですね)
攻撃はまったく効かず、こちらの動きもだんだんと先読みされるようになってきて、
相手の攻撃のバリエーションはだんだんと増えてきているのだ。
固めた窒素で殴りかかってくるのは、その愚鈍さから何の問題もない。
炎や電撃などは視覚で捉えることができるため回避には困らない。
その回避を先読みされたうえでの高速高威力の原子崩しもまだ反応できる。
さらにそのうえで目に見えない念動力も迫ってくる風圧で感知し避けることができる。
いまだ幻想猛獣の攻撃を貰うようなこともなく、体力的にもまだまだ余裕がある。
ただ、問題点を上げるとすれば、以上の攻撃に反応するべく擦り減らされていく精神の方だ。
(今はまだ問題ありませんが、避けきれなくなったら火ダルマぐらいは覚悟しましょう。
電撃は筋肉が麻痺するため絶対に回避、あの光線も喰らえば四肢が飛ぶでしょうね)
また新たな攻撃パターンが増える可能性も忘れてはいけない。
それに同時に襲いくる攻撃の数も増えてきている。
先ほどは、炎と念動力と原子崩しが全て別方向から同時に飛んできていた。
(次は水か氷でしょうか……できればこれ以上増えては欲しくないのですが。
最悪今までの攻撃全てが全方向からくることも想定しておかないと。
……さすがに不老不死だった頃に戻りたいとは思いませんけど)
幻想猛獣の攻撃をただ避け続けるだけでもいけない。
幻想猛獣はこちらが敵意を、攻撃の意思を見せているから反撃してきているのだ。
例え無駄だとわかっていても攻撃の手を止めることもできない。
(どうやらどうしても先に殺しておきたい入院患者がいるみたいですね)
331: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/06(金) 20:29:04.55 ID:H50ZXCXk0
炎を黒鍵で斬り捨て、電撃を突き立てた黒鍵で防ぎ、隙を見て黒鍵を投擲する。
背後への空間転移に合わせ黒鍵を投擲し、カウンターで飛来する原子崩しを寸でで避ける。
そこへ、まるで避ける方向が分かっていたかのように念動力を合わせてくる。
しかしそれも飛び越えるようにしてかわして攻撃のための黒鍵を用意する。
さらなる攻撃パターンの増加に備えつつも、着地と同時に投擲してバックステップで距離をとる、
――予定だった。
ぐちゃり、と地面に足が埋まる感触。
「なっ!?」
表層融解(フラックスコート)――。
それはアスファルトの粘度を自在にコントロールすることができる超能力。
「っく、液状化ってこういうの言うんでしたっけー!?」
などと冗談めかしたことを言っているが正真正銘の危機的状況に他ならない。
右足を上げるために左足で踏ん張れば、左足がその分に沈んでいき逆もまたしかり、
そして今、一撃必殺の威力を持つ原子崩しが女性向けて放たれようとしている。
(魔力を練って抜け出す暇はありませんか。
あの光線をまともに食らうと流石に死んじゃいますかね~。
……左手一本の犠牲で直撃を免れられれば、御の字と言ったところでしょうね。
最悪の場合、両手を捨てることも……)
バシュゥッ!
輝く星が流れ星になるように、点が線になり光線は女性へと襲いかかる。
背後への空間転移に合わせ黒鍵を投擲し、カウンターで飛来する原子崩しを寸でで避ける。
そこへ、まるで避ける方向が分かっていたかのように念動力を合わせてくる。
しかしそれも飛び越えるようにしてかわして攻撃のための黒鍵を用意する。
さらなる攻撃パターンの増加に備えつつも、着地と同時に投擲してバックステップで距離をとる、
――予定だった。
ぐちゃり、と地面に足が埋まる感触。
「なっ!?」
表層融解(フラックスコート)――。
それはアスファルトの粘度を自在にコントロールすることができる超能力。
「っく、液状化ってこういうの言うんでしたっけー!?」
などと冗談めかしたことを言っているが正真正銘の危機的状況に他ならない。
右足を上げるために左足で踏ん張れば、左足がその分に沈んでいき逆もまたしかり、
そして今、一撃必殺の威力を持つ原子崩しが女性向けて放たれようとしている。
(魔力を練って抜け出す暇はありませんか。
あの光線をまともに食らうと流石に死んじゃいますかね~。
……左手一本の犠牲で直撃を免れられれば、御の字と言ったところでしょうね。
最悪の場合、両手を捨てることも……)
バシュゥッ!
輝く星が流れ星になるように、点が線になり光線は女性へと襲いかかる。
332: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/06(金) 22:35:36.54 ID:H50ZXCXk0
女性は目の眩むような光を前にしても目を閉じようとはしなかった。
軌道をみきり、最小限の犠牲で済むように目を背けるわけにはいかなかった。
だから、原子崩しと自身の間に割って入る人影をしかと目にし驚きに目をむいた。
一方通行「反射ァ!」
そう、原子崩しは一方通行が口にした通り、真逆の方向へと反射されてしまった。
反射された原子崩しは、それを放射した幻想猛獣に向かい
窒素装甲の壁もろとも幻想猛獣自身も貫いていった。
アアアァァァァアァ……
幻想猛獣は原子崩しに貫かれ悲鳴のような声を上げるが身動ぎ一つせずに停止している。
一方通行「しっかり掴んでろよ」
「え、あ、はい」
突然のことにやや呆然気味の女性は、素直に一方通行の言うこと聞いてその腕を握る。
よっ、という掛け声とともに飛び上がると、一方通行は空中で粘度の変えられていないアスファルトへと女性を放り投げる。
さらに自身も風に流されるように女性の隣へと着地を果たすと、杖に身を預け演算補助装置を通常モードに操作する。
軌道をみきり、最小限の犠牲で済むように目を背けるわけにはいかなかった。
だから、原子崩しと自身の間に割って入る人影をしかと目にし驚きに目をむいた。
一方通行「反射ァ!」
そう、原子崩しは一方通行が口にした通り、真逆の方向へと反射されてしまった。
反射された原子崩しは、それを放射した幻想猛獣に向かい
窒素装甲の壁もろとも幻想猛獣自身も貫いていった。
アアアァァァァアァ……
幻想猛獣は原子崩しに貫かれ悲鳴のような声を上げるが身動ぎ一つせずに停止している。
一方通行「しっかり掴んでろよ」
「え、あ、はい」
突然のことにやや呆然気味の女性は、素直に一方通行の言うこと聞いてその腕を握る。
よっ、という掛け声とともに飛び上がると、一方通行は空中で粘度の変えられていないアスファルトへと女性を放り投げる。
さらに自身も風に流されるように女性の隣へと着地を果たすと、杖に身を預け演算補助装置を通常モードに操作する。
333: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/06(金) 22:52:41.47 ID:H50ZXCXk0
一方通行「3分半、割りと持った方じゃねェか。ここからは俺が相手してやっからアンタは休んでな」
「助けていただいてありがとうございます。ですが、そういうわけにはまいりません。
吸血鬼退治は私たち機関の仕事、一般の人間に関わらせるわけにはいきません」
一方通行「クカカカカ、……なら選ばせてやるよ、あれ一匹を相手にすンのと、
あれと俺の二匹の化物を相手にするのと、好きな方を選びやがれェ」
「はぁ!? 君は一体何を……」
一方通行「くるぞォ!」
「ッ!!」
一方通行と女性が僅かばかりの会話をしている間に、幻想猛獣の肉体再生は終わっていた。
すぐさま演算補助装置を能力使用モードへと操作し攻撃の姿勢に移る。
女性は少々戸惑いを見せていたが仕方ないといった諦めの表情で黒鍵を握り幻想猛獣に向かい立つ。
「共闘に同意しましょう。ですが、死ぬようなことは勘弁して下さい。
寝覚めが悪い上に、報告書の手間が増えますので」
一方通行「誰に向かって口聞いてンだ女ァ、俺は学園都市最強のレベル5……、
アクセラレーター様だァ!!」
宣言とともに駆けだした一方通行は15メートルの距離を1秒足らずで幻想猛獣に肉薄し
勢いもそのままに蹴りを見舞う。
「私も女、女と呼ばれるのは不快です。
シエルと、呼び捨てにされるのもどうかと思いますし、
『シエルさん』もしくは『シエル先輩』とお呼び下さい」
シエルと名乗ったその女性も、一方通行の後を追って疾走する。
魔術師と超能力者の明確な共同戦線が開始された。
「助けていただいてありがとうございます。ですが、そういうわけにはまいりません。
吸血鬼退治は私たち機関の仕事、一般の人間に関わらせるわけにはいきません」
一方通行「クカカカカ、……なら選ばせてやるよ、あれ一匹を相手にすンのと、
あれと俺の二匹の化物を相手にするのと、好きな方を選びやがれェ」
「はぁ!? 君は一体何を……」
一方通行「くるぞォ!」
「ッ!!」
一方通行と女性が僅かばかりの会話をしている間に、幻想猛獣の肉体再生は終わっていた。
すぐさま演算補助装置を能力使用モードへと操作し攻撃の姿勢に移る。
女性は少々戸惑いを見せていたが仕方ないといった諦めの表情で黒鍵を握り幻想猛獣に向かい立つ。
「共闘に同意しましょう。ですが、死ぬようなことは勘弁して下さい。
寝覚めが悪い上に、報告書の手間が増えますので」
一方通行「誰に向かって口聞いてンだ女ァ、俺は学園都市最強のレベル5……、
アクセラレーター様だァ!!」
宣言とともに駆けだした一方通行は15メートルの距離を1秒足らずで幻想猛獣に肉薄し
勢いもそのままに蹴りを見舞う。
「私も女、女と呼ばれるのは不快です。
シエルと、呼び捨てにされるのもどうかと思いますし、
『シエルさん』もしくは『シエル先輩』とお呼び下さい」
シエルと名乗ったその女性も、一方通行の後を追って疾走する。
魔術師と超能力者の明確な共同戦線が開始された。
335: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/07(土) 03:57:18.11 ID:pxPZ2GUn0
――――――――
アアァアァァァァアァァ……
これで何度目だろうか。
巨大な胎児の姿をした幻想猛獣は身体を千切られいくつもの穴を空けられ爆ぜて、
見るも無残な状態と化している。
しかし、それらは1分ほどで完全に再生してしまう。
だからと言って一定以上に細切れにしてしまえばそのまま消滅するものの、
数秒後に突然背後に空間移動で現れて不意打ちを食らう。
結果として、今の様な中途半端なダメージを与え回復させて時間を稼ぐのが最も効率がいいのだ。
一方通行「吸血鬼なンてもンがどういう存在かは知らねェ。
けどこの化物の性質みたいなもンは大体見えてきた」
シエル「お聞きしましょう」
一方通行「恐らくだがァ、こいつは学園都市中のほとんどの超能力者の能力が使えるはずだ。
発火能力、発電能力、空間移動、念動力と種類も強度も様々だ。
なら、能力者の数だけ超能力が飛んできてもおかしくねェンだ。けどそれをしねェ」
シエル「学園都市の超能力者の数は何十万単位でしたか……、
されたらされたで非常に困るわけですが」
一方通行「俺は全部反射できるけどなァ」
シエル「そうですか。で、それをしないのはどういうわけなんですか」
一方通行「理由まではわからねェよ。ただ原則として同じタイプの能力は一種類のみ。
発火能力者なんてのは結構数がいるはずだがレベル3程度の炎を一つしか使わねェ。
それがあいつの制限か何かなンだろうよ」
シエル「……では、今使ってきてる超能力がどのようなものかはわかりますか」
一方通行「念動力レベル3、発火能力レベル3、電撃使いレベル3、原子崩しレベル5、
窒素装甲レベル4、空間移動……いやアレは死角移動レベル3だ、人の背後にしか現れねェし。
空間移動ならもっと自在に移動できる上に物質を移動させたり、
移動場所に対象を重ねればブッた斬ることも可能なはずだからなァ」
シエル「……」
一方通行「後は表層融解レベル3にレベルはわかンねェが予知能力も備えてるみたいだな。
どういう法則で脳みそ使われてる能力者が選ばれてるかもさっぱりだが、
レベル5が一人ってのは結構運がいいンじゃねェのか?
この学園都市には俺を除けば6人のレベル5がいるンだからよォ」
シエル「なら系統が異なる、新たに行使される可能性がある超能力はどうですか」
一方通行「俺だって全て把握してるわけじゃねェからな。
思い付く限りだと、念動力に近い水流操作や空力使い、透視能力や光学操作なんてのもある。
だが、厄介なのは精神系の能力だ。洗脳能力や心理掌握なんて使われたらたまンねェぞ」
シエル「はぁ、まだまだ増える可能性は十分にあるということですか」
アアァアァァァア!
一方通行「ちっ、もう再生しやがったか」
シエル「あらら? もう疲れて動けませんか?」
一方通行「ンなわけねェだろ。無駄口叩いてねェでもっかいミンチにすンぞ!」
シエル「そうですね、いきますよセブン」
アアァアァァァァアァァ……
これで何度目だろうか。
巨大な胎児の姿をした幻想猛獣は身体を千切られいくつもの穴を空けられ爆ぜて、
見るも無残な状態と化している。
しかし、それらは1分ほどで完全に再生してしまう。
だからと言って一定以上に細切れにしてしまえばそのまま消滅するものの、
数秒後に突然背後に空間移動で現れて不意打ちを食らう。
結果として、今の様な中途半端なダメージを与え回復させて時間を稼ぐのが最も効率がいいのだ。
一方通行「吸血鬼なンてもンがどういう存在かは知らねェ。
けどこの化物の性質みたいなもンは大体見えてきた」
シエル「お聞きしましょう」
一方通行「恐らくだがァ、こいつは学園都市中のほとんどの超能力者の能力が使えるはずだ。
発火能力、発電能力、空間移動、念動力と種類も強度も様々だ。
なら、能力者の数だけ超能力が飛んできてもおかしくねェンだ。けどそれをしねェ」
シエル「学園都市の超能力者の数は何十万単位でしたか……、
されたらされたで非常に困るわけですが」
一方通行「俺は全部反射できるけどなァ」
シエル「そうですか。で、それをしないのはどういうわけなんですか」
一方通行「理由まではわからねェよ。ただ原則として同じタイプの能力は一種類のみ。
発火能力者なんてのは結構数がいるはずだがレベル3程度の炎を一つしか使わねェ。
それがあいつの制限か何かなンだろうよ」
シエル「……では、今使ってきてる超能力がどのようなものかはわかりますか」
一方通行「念動力レベル3、発火能力レベル3、電撃使いレベル3、原子崩しレベル5、
窒素装甲レベル4、空間移動……いやアレは死角移動レベル3だ、人の背後にしか現れねェし。
空間移動ならもっと自在に移動できる上に物質を移動させたり、
移動場所に対象を重ねればブッた斬ることも可能なはずだからなァ」
シエル「……」
一方通行「後は表層融解レベル3にレベルはわかンねェが予知能力も備えてるみたいだな。
どういう法則で脳みそ使われてる能力者が選ばれてるかもさっぱりだが、
レベル5が一人ってのは結構運がいいンじゃねェのか?
この学園都市には俺を除けば6人のレベル5がいるンだからよォ」
シエル「なら系統が異なる、新たに行使される可能性がある超能力はどうですか」
一方通行「俺だって全て把握してるわけじゃねェからな。
思い付く限りだと、念動力に近い水流操作や空力使い、透視能力や光学操作なんてのもある。
だが、厄介なのは精神系の能力だ。洗脳能力や心理掌握なんて使われたらたまンねェぞ」
シエル「はぁ、まだまだ増える可能性は十分にあるということですか」
アアァアァァァア!
一方通行「ちっ、もう再生しやがったか」
シエル「あらら? もう疲れて動けませんか?」
一方通行「ンなわけねェだろ。無駄口叩いてねェでもっかいミンチにすンぞ!」
シエル「そうですね、いきますよセブン」
337: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/08(日) 05:16:20.62 ID:niit4uHh0
一方通行(とは言ったものの……、バッテリーの残りがやべェな。
三下はまだ戻ってこねェし、そろそろ20分ぐらい経ってンだろォが)
上条が病院の中へ駆けだして行ってから正確には18分42秒。
必勝かどうかはわからないが事態を好転させるために動いているはずなのだが、
上条が戻ってくる気配は全くない。
一方通行「もォ一度死ンでろ、クソったれがァ!」
一方通行は幻想猛獣へ渾身の蹴りを叩きこむ。
当然、窒素装甲によって阻まれてしまうのだが、それもすぐさまベクトル変換で
自転エネルギーを乗せた窒素の銃弾に変えぶち込んでやる。
アアァアァアァァアァ!
シエル「もう一発!」
身体に風穴を空けられ怯んだ隙にシエルがパイルバンカーを突き立てる。
ガゴン!という音の後に幻想猛獣の半身が弾け飛ぶ。
シエル「これでまた少し休憩できますね」
所要時間約20秒。これでまた一息つけると僅かに気を許す。
が、それがまずかった。
アァアァアァァアァァァアァアアア!!
幻想猛獣が一際大きな叫び声をあげたかと思うと、
幻想猛獣の真上から空に向けて光の柱が立ち昇って行ったのだ。
刹那、「なんだ?」という声を発する暇もなく立ち昇った光が落下してくる。
落下地点には当然一方通行とシエルがいる。
三下はまだ戻ってこねェし、そろそろ20分ぐらい経ってンだろォが)
上条が病院の中へ駆けだして行ってから正確には18分42秒。
必勝かどうかはわからないが事態を好転させるために動いているはずなのだが、
上条が戻ってくる気配は全くない。
一方通行「もォ一度死ンでろ、クソったれがァ!」
一方通行は幻想猛獣へ渾身の蹴りを叩きこむ。
当然、窒素装甲によって阻まれてしまうのだが、それもすぐさまベクトル変換で
自転エネルギーを乗せた窒素の銃弾に変えぶち込んでやる。
アアァアァアァァアァ!
シエル「もう一発!」
身体に風穴を空けられ怯んだ隙にシエルがパイルバンカーを突き立てる。
ガゴン!という音の後に幻想猛獣の半身が弾け飛ぶ。
シエル「これでまた少し休憩できますね」
所要時間約20秒。これでまた一息つけると僅かに気を許す。
が、それがまずかった。
アァアァアァァアァァァアァアアア!!
幻想猛獣が一際大きな叫び声をあげたかと思うと、
幻想猛獣の真上から空に向けて光の柱が立ち昇って行ったのだ。
刹那、「なんだ?」という声を発する暇もなく立ち昇った光が落下してくる。
落下地点には当然一方通行とシエルがいる。
338: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/08(日) 05:53:31.22 ID:niit4uHh0
シエル「このっ!」
まさに紙一重といったタイミングで、シエルは持ち前の身体能力の高さから光の柱を回避することに成功する。
しかし、一方通行は動こうとさえしなかった。
自分の能力ならどんな『超能力』もベクトル変換することができるのだから、
動く必要なんてあるはずがないという、第一位故の驕り。
一方通行「なンなンだこれはッ!! 解析できねェし、超能力じゃないってのかァっ!?」
その結果として、光の柱をまともに受けた一方通行は膝を突き身動きできず、
今もなお降り続く光の柱に押しつぶされるような形となってしまっている。
シエル「これはまさか魔術ッッ!?」
それは赤ノ式と呼ばれる陰陽道に属した魔術。
幻想猛獣は超能力を使う化物なのではなかったのか?
一方通行を押し潰さんとする魔術赤ノ式だが、
完全ではないものの能力による反射が効いているのか一方通行は膝立ちで耐えている。
しかし、
一方通行「冗談じゃねェぞ、バッテリーはあと10秒持たねェッッ!!」
反射を失えばどうなるかは明白。
シエル「すぐに第七聖典で奴を!」
そう言ってシエルはパイルバンカーを持ち出し幻想猛獣を狙うが、
パン!
まだパイルバンカーから杭は発射されていない。
なのに幻想猛獣は破裂し散り散りの肉片となってしまったのだ。
それでもまだ光の柱は消えていなかった。
一方通行(5……、4……、3……、ここまでだってのかァ……)
まさに紙一重といったタイミングで、シエルは持ち前の身体能力の高さから光の柱を回避することに成功する。
しかし、一方通行は動こうとさえしなかった。
自分の能力ならどんな『超能力』もベクトル変換することができるのだから、
動く必要なんてあるはずがないという、第一位故の驕り。
一方通行「なンなンだこれはッ!! 解析できねェし、超能力じゃないってのかァっ!?」
その結果として、光の柱をまともに受けた一方通行は膝を突き身動きできず、
今もなお降り続く光の柱に押しつぶされるような形となってしまっている。
シエル「これはまさか魔術ッッ!?」
それは赤ノ式と呼ばれる陰陽道に属した魔術。
幻想猛獣は超能力を使う化物なのではなかったのか?
一方通行を押し潰さんとする魔術赤ノ式だが、
完全ではないものの能力による反射が効いているのか一方通行は膝立ちで耐えている。
しかし、
一方通行「冗談じゃねェぞ、バッテリーはあと10秒持たねェッッ!!」
反射を失えばどうなるかは明白。
シエル「すぐに第七聖典で奴を!」
そう言ってシエルはパイルバンカーを持ち出し幻想猛獣を狙うが、
パン!
まだパイルバンカーから杭は発射されていない。
なのに幻想猛獣は破裂し散り散りの肉片となってしまったのだ。
それでもまだ光の柱は消えていなかった。
一方通行(5……、4……、3……、ここまでだってのかァ……)
339: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/08(日) 08:29:27.43 ID:niit4uHh0
パッキーン!
まるでガラスが砕けた時のような音が響きわたる。
それで一方通行は光の柱から解放され、ほぼ同時にバッテリー残量が0になり倒れこむ。
上条「悪い、遅くなった!」
颯爽と現れたのは我らが幻想殺し上条当麻、
到着と同時に光の柱を右手の一振りで完全でかき消したのだ。
一方通行「bfけhkふぁj;あklskd!」
上条「うぉっ、バッテリーが切れたのか。ほんとにギリギリだったんだな」
一方通行が何を言おうとしているのかは分からないが、
とりあえずすごい剣幕で怒鳴っている。
上条「10039号、一方通行を頼む」
10039「わかりました、とミサカはコンセントに繋いだ延長コードと充電器を用意します」
現れたのは上条だけではない。
妹達、上条が呼んだのは検体番号10039号という個体だ。
さらにその隣に二つの同じ顔が並んでいる。
同じく妹達の13577号と19090号である。
まるでガラスが砕けた時のような音が響きわたる。
それで一方通行は光の柱から解放され、ほぼ同時にバッテリー残量が0になり倒れこむ。
上条「悪い、遅くなった!」
颯爽と現れたのは我らが幻想殺し上条当麻、
到着と同時に光の柱を右手の一振りで完全でかき消したのだ。
一方通行「bfけhkふぁj;あklskd!」
上条「うぉっ、バッテリーが切れたのか。ほんとにギリギリだったんだな」
一方通行が何を言おうとしているのかは分からないが、
とりあえずすごい剣幕で怒鳴っている。
上条「10039号、一方通行を頼む」
10039「わかりました、とミサカはコンセントに繋いだ延長コードと充電器を用意します」
現れたのは上条だけではない。
妹達、上条が呼んだのは検体番号10039号という個体だ。
さらにその隣に二つの同じ顔が並んでいる。
同じく妹達の13577号と19090号である。
342: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/08(日) 23:58:18.23 ID:niit4uHh0
シエル「戻ってきたんですか。……それにあの後ろの三つ子は一体」
上条「心強い後方支援組ってことで。っていうかさっきのは魔術じゃ……赤ノ式って言ったっけか」
シエル「赤ノ式、陰陽道に属する火属性の魔術ですが」
上条「あれもタタリが使ったのかよ、超能力者が魔術を使えば身体が崩壊するってのに
なんでもありってことかよ。……ってあの化物はどこへ?」
シエル「あの化物なら魔術を使った後破裂しました。あれにはそういうわけがあったと……。
ですが、すぐに戻ってくるでしょう。空間転移で現れるのは必ず背後です、警戒しておいてください」
上条「了解、……もう手を引けって言わないんだな」
シエル「言っても無駄でしょうし、好き勝手動かれて邪魔されるぐらいなら
素直に手を借りる方を選びますよ」
上条「手を借りるって、俺らの街なわけだしどっちかと言えばこっちが借りてるような」
――――――――
13577「コンセントに挿してきました、とミサカは10039号に報告します」
10039「演算補助装置に充電器を接続して、と。
聞こえてますか、一方通行、とミサカは一方通行に語りかけます」
一方通行「あァ、ちゃンと機能してる。……お前らは三下からどの程度話を聞いたンだ?」
19090「どの程度、というか、むちゃくちゃ強い敵が攻めてきたから加勢して欲しい、と
ミサカはあの人に聞いたままを一方通行に伝えます」
一方通行「(三下の野郎、またずいぶんと適当な説明しやがって……)。
加勢まで頼んだ覚えはねェよ……。お前らは中に入ってろォ」
10039「呼びつけるだけ呼びつけて追い払うってどういうことですか、と
ミサカはミサカたちの扱いの雑さに憤慨します」
一方通行「お前らはもう死にたくねェンだろ。なら俺の言うことを聞け」
13577「それは言うことを聞かなければ殺すという脅しですか、と
ミサカは一方通行の言葉の意図を探ります」
一方通行「……さァな」
上条「心強い後方支援組ってことで。っていうかさっきのは魔術じゃ……赤ノ式って言ったっけか」
シエル「赤ノ式、陰陽道に属する火属性の魔術ですが」
上条「あれもタタリが使ったのかよ、超能力者が魔術を使えば身体が崩壊するってのに
なんでもありってことかよ。……ってあの化物はどこへ?」
シエル「あの化物なら魔術を使った後破裂しました。あれにはそういうわけがあったと……。
ですが、すぐに戻ってくるでしょう。空間転移で現れるのは必ず背後です、警戒しておいてください」
上条「了解、……もう手を引けって言わないんだな」
シエル「言っても無駄でしょうし、好き勝手動かれて邪魔されるぐらいなら
素直に手を借りる方を選びますよ」
上条「手を借りるって、俺らの街なわけだしどっちかと言えばこっちが借りてるような」
――――――――
13577「コンセントに挿してきました、とミサカは10039号に報告します」
10039「演算補助装置に充電器を接続して、と。
聞こえてますか、一方通行、とミサカは一方通行に語りかけます」
一方通行「あァ、ちゃンと機能してる。……お前らは三下からどの程度話を聞いたンだ?」
19090「どの程度、というか、むちゃくちゃ強い敵が攻めてきたから加勢して欲しい、と
ミサカはあの人に聞いたままを一方通行に伝えます」
一方通行「(三下の野郎、またずいぶんと適当な説明しやがって……)。
加勢まで頼んだ覚えはねェよ……。お前らは中に入ってろォ」
10039「呼びつけるだけ呼びつけて追い払うってどういうことですか、と
ミサカはミサカたちの扱いの雑さに憤慨します」
一方通行「お前らはもう死にたくねェンだろ。なら俺の言うことを聞け」
13577「それは言うことを聞かなければ殺すという脅しですか、と
ミサカは一方通行の言葉の意図を探ります」
一方通行「……さァな」
348: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/09(月) 01:23:05.31 ID:/NuMUdvC0
一方通行「三下ァ、なンで妹達連れてきてンだァ」
上条「かえる先生のとこに行ったら丁度先生が倒れた妹達を診察してたんだよ。
で、俺の幻想殺しで起こして加勢にきてもらったんだが」
一方通行「俺がなンて言ったか覚えてないンですかァ?
俺がお前に頼んだのはバッテリーの充電機とコンセントの延長コード、
それと病院内に高位の能力者がいたら起こして連れてこいつっただろォ。
妹達はレベル2~3だぞ、知ってンだろクソが」
上条「ぇー、レベル0の上条さんからすれば2~3は十分高位なのですが」
一方通行「そもそもテメェがレベル0ってのが意味わかンねェンだよッ!」
シエル「ちょっと落ちついて下さい、いつタタリが襲ってくるかわからないのに
もう少し緊張感を持って下さいよ」
一方通行「デカ尻女は黙ってろォ!」
シエル「なっ!? 今のは聞き捨てなりませんよ!!
っていうか、なんなんですかその首から下げてるケーブルは!
まるで電化製品みたいじゃないですか?」
一方通行「なンだとクソババァ!?」
シエル「ッ! うふふふ、私、次は斬り伏せるって言いましたよね?」
上条「ちょちょちょ、二人とも落ちつけって!」
一方通行「テメェはッ!」
シエル「君はッ!」
「「黙って……!」」
アァアァァアァァアァァァァァ!!
上条「出たあああああああああ!!!」
上条「かえる先生のとこに行ったら丁度先生が倒れた妹達を診察してたんだよ。
で、俺の幻想殺しで起こして加勢にきてもらったんだが」
一方通行「俺がなンて言ったか覚えてないンですかァ?
俺がお前に頼んだのはバッテリーの充電機とコンセントの延長コード、
それと病院内に高位の能力者がいたら起こして連れてこいつっただろォ。
妹達はレベル2~3だぞ、知ってンだろクソが」
上条「ぇー、レベル0の上条さんからすれば2~3は十分高位なのですが」
一方通行「そもそもテメェがレベル0ってのが意味わかンねェンだよッ!」
シエル「ちょっと落ちついて下さい、いつタタリが襲ってくるかわからないのに
もう少し緊張感を持って下さいよ」
一方通行「デカ尻女は黙ってろォ!」
シエル「なっ!? 今のは聞き捨てなりませんよ!!
っていうか、なんなんですかその首から下げてるケーブルは!
まるで電化製品みたいじゃないですか?」
一方通行「なンだとクソババァ!?」
シエル「ッ! うふふふ、私、次は斬り伏せるって言いましたよね?」
上条「ちょちょちょ、二人とも落ちつけって!」
一方通行「テメェはッ!」
シエル「君はッ!」
「「黙って……!」」
アァアァァアァァアァァァァァ!!
上条「出たあああああああああ!!!」
349: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/09(月) 02:17:11.61 ID:/NuMUdvC0
19090「で、ミサカたちはもう用済みと言うことでいいのでしょうか」
10039「突然あり得ない早さで日が暮れたり、病院中の超能力者が意識を失ったり、
何かが起こっているのは間違いないでしょう」
13577「確か10032号が祟りにあったとかなんとか言ってましたね」
10039「科学の街で祟りですか? なんとも胡散臭い話ですね」
19090「ところで喧嘩してるみたいですよ、あの人たち」
13577「っていうか、見知らぬ女の人がいますね」
19090「あの人に助けられたとかそういう感じでしょうか」
アァアァァアァァアァァァァァ!!
上条『出たあああああああああ!!!』
10039「……」
13577「……」
19090「……」
(((た、祟り神だあああああああああ!!?)))
10039「突然あり得ない早さで日が暮れたり、病院中の超能力者が意識を失ったり、
何かが起こっているのは間違いないでしょう」
13577「確か10032号が祟りにあったとかなんとか言ってましたね」
10039「科学の街で祟りですか? なんとも胡散臭い話ですね」
19090「ところで喧嘩してるみたいですよ、あの人たち」
13577「っていうか、見知らぬ女の人がいますね」
19090「あの人に助けられたとかそういう感じでしょうか」
アァアァァアァァアァァァァァ!!
上条『出たあああああああああ!!!』
10039「……」
13577「……」
19090「……」
(((た、祟り神だあああああああああ!!?)))
352: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/10(火) 04:13:01.66 ID:CK1kRgJF0
三人が顔を突き合わせた状態で、幻想猛獣が現れたのはシエルの後ろだった。
一人叫び声をあげる上条をよそに後の二人は超反応を見せていた。
シエル「ほらほら、こっちですよ」
一方通行「クカカキコカコキコ、死ねええええ!」
もはやパターンと化した動きとなりつつあるシエルが囮となり
一方通行が接近して窒素装甲をベクトル操作で銃弾と化す動き。
裏を言えばシエルでは窒素装甲を破ることができないため
そればかりは一方通行がなんとかするしかないというのが実情でもある。
また、幻想猛獣が執拗にシエルを狙うのも超能力による攻撃では
全ての超能力者の頂点に立つ第一位一方通行に傷一つ負わすことができないためであると予測される。
アアァアァアアァァ!
ベクトルを操作された窒素装甲を受け10mは軽く吹き飛ぶ幻想猛獣。
一方通行「ちっ、この向きじゃ自転エネルギーが活かし切れてねェ。
おィ三下ァ、いつまでも呆けてねェであいつぶン殴ってきやがれ」
上条「なんかもう上条さんいらなくないですか?」
一方通行「延長コードが届かねェンだよ、クソッ」
上条「……了解」
微妙に情けないな、とか頭をよぎったが口には出さない上条だった。
一人叫び声をあげる上条をよそに後の二人は超反応を見せていた。
シエル「ほらほら、こっちですよ」
一方通行「クカカキコカコキコ、死ねええええ!」
もはやパターンと化した動きとなりつつあるシエルが囮となり
一方通行が接近して窒素装甲をベクトル操作で銃弾と化す動き。
裏を言えばシエルでは窒素装甲を破ることができないため
そればかりは一方通行がなんとかするしかないというのが実情でもある。
また、幻想猛獣が執拗にシエルを狙うのも超能力による攻撃では
全ての超能力者の頂点に立つ第一位一方通行に傷一つ負わすことができないためであると予測される。
アアァアァアアァァ!
ベクトルを操作された窒素装甲を受け10mは軽く吹き飛ぶ幻想猛獣。
一方通行「ちっ、この向きじゃ自転エネルギーが活かし切れてねェ。
おィ三下ァ、いつまでも呆けてねェであいつぶン殴ってきやがれ」
上条「なんかもう上条さんいらなくないですか?」
一方通行「延長コードが届かねェンだよ、クソッ」
上条「……了解」
微妙に情けないな、とか頭をよぎったが口には出さない上条だった。
353: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/10(火) 04:13:33.05 ID:CK1kRgJF0
吹き飛んだ幻想猛獣を追いシエルとともに駆けていく上条。
一方通行(幻想殺しで触れた場合どうなるかはわかってねェ。
もし直接触れた瞬間に完全消滅しちまうなら半殺しにするよか効率が悪ィが)
シエルは起き上がろうとする幻想猛獣へと黒鍵を投げつけ
未熟児の腕を虫の標本のように地面に縫い付ける。
シエル「今のうちに!」
幻想殺しを握りしめ倒れたままの幻想猛獣に肉薄する上条。
上条「おりゃあああ!」
幻想猛獣に振りかぶられた拳が直撃すると、全身が一瞬で霧の様に吹き飛んでしまう。
上条「いっちょあがりぃっ!」
一方通行「三下ァ、お前あれに直接攻撃すンの禁止だァ」
上条「へ!? なんでだよ?」
シエル「君が触れると完全に倒してしまうからですよ。
完全消滅すると10秒と経たずに空間転移で戻ってきてしまいます。
ですから、手足を千切って穴ぼこだらけにするぐらいで再生を待った方が効率がいいんです」
一方通行「倒せねェ以上、朝まで続くンだからなァ。張り切って速効ばてンじゃねェぞ」
上条「マジですか……?」
シエル「後ろ! 次きましたよ!」
アァァァアアァアア!
上条「んまっ、ちょぎ!?」
一方通行(幻想殺しで触れた場合どうなるかはわかってねェ。
もし直接触れた瞬間に完全消滅しちまうなら半殺しにするよか効率が悪ィが)
シエルは起き上がろうとする幻想猛獣へと黒鍵を投げつけ
未熟児の腕を虫の標本のように地面に縫い付ける。
シエル「今のうちに!」
幻想殺しを握りしめ倒れたままの幻想猛獣に肉薄する上条。
上条「おりゃあああ!」
幻想猛獣に振りかぶられた拳が直撃すると、全身が一瞬で霧の様に吹き飛んでしまう。
上条「いっちょあがりぃっ!」
一方通行「三下ァ、お前あれに直接攻撃すンの禁止だァ」
上条「へ!? なんでだよ?」
シエル「君が触れると完全に倒してしまうからですよ。
完全消滅すると10秒と経たずに空間転移で戻ってきてしまいます。
ですから、手足を千切って穴ぼこだらけにするぐらいで再生を待った方が効率がいいんです」
一方通行「倒せねェ以上、朝まで続くンだからなァ。張り切って速効ばてンじゃねェぞ」
上条「マジですか……?」
シエル「後ろ! 次きましたよ!」
アァァァアアァアア!
上条「んまっ、ちょぎ!?」
354: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/10(火) 04:35:10.26 ID:CK1kRgJF0
19090「一体あれはなんなんでしょうか」
10039「巨大な赤ん坊、ですね」
13577「見たままじゃないですか。それに赤ん坊よりも胎児の方が正確でしょう」
19090「4メートル30センチぐらいですか」
13577「それを軽々と蹴り飛ばす学園都市第一位」
10039「あの女性の身のこなし、ただものではないですね」
13577「あ。あの人が殴ったら消えましたね」
19090「ただの見かけ倒しですか」
アァァァアアァアア!
ビクッ!
(((!?)))
10039「……復活しましたね」
19090「加勢に向かうべきでしょうか」
10039「武器は持ってきていますし元々そのつもりでしたし」
13577「恩人が戦っているのを指を咥えて見ているわけにもいきません」
こくり。
10039「巨大な赤ん坊、ですね」
13577「見たままじゃないですか。それに赤ん坊よりも胎児の方が正確でしょう」
19090「4メートル30センチぐらいですか」
13577「それを軽々と蹴り飛ばす学園都市第一位」
10039「あの女性の身のこなし、ただものではないですね」
13577「あ。あの人が殴ったら消えましたね」
19090「ただの見かけ倒しですか」
アァァァアアァアア!
ビクッ!
(((!?)))
10039「……復活しましたね」
19090「加勢に向かうべきでしょうか」
10039「武器は持ってきていますし元々そのつもりでしたし」
13577「恩人が戦っているのを指を咥えて見ているわけにもいきません」
こくり。
355: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/10(火) 07:58:01.73 ID:CK1kRgJF0
ブゥン!
上条「どわっぶねぇっ! 攻撃パターン増えてるのかよ!」
シエル「電撃と炎は私が何とかします。君は原子崩しとか言う光線と、
念動力による見えない攻撃と、窒素装甲とか言うバリアを何とかして下さい。
それと地面を泥沼の様にしてくることがあるので気をつけて下さい」
上条「上条さんの右腕は一本しかないんですよ!?」
――――――――
一方通行「ちっ、もっと長ェコード持って来いってンだ……」
10039「一方通行、ミサカたちも加勢します。とミサカはこの戦闘に参加することを宣言します」
一方通行「なっ!? お前らは帰れつっただろォがァッ!!」
13577「ミサカたちもそれなりの訓練を積んでいます。
ミサカには一方通行が激昂している理由がわかりません。とミサカは疑問を投げかけます」
一方通行「見てわかンねェのか! 邪魔にしかなンねェって言ってッッッ!」
上条「どわっぶねぇっ! 攻撃パターン増えてるのかよ!」
シエル「電撃と炎は私が何とかします。君は原子崩しとか言う光線と、
念動力による見えない攻撃と、窒素装甲とか言うバリアを何とかして下さい。
それと地面を泥沼の様にしてくることがあるので気をつけて下さい」
上条「上条さんの右腕は一本しかないんですよ!?」
――――――――
一方通行「ちっ、もっと長ェコード持って来いってンだ……」
10039「一方通行、ミサカたちも加勢します。とミサカはこの戦闘に参加することを宣言します」
一方通行「なっ!? お前らは帰れつっただろォがァッ!!」
13577「ミサカたちもそれなりの訓練を積んでいます。
ミサカには一方通行が激昂している理由がわかりません。とミサカは疑問を投げかけます」
一方通行「見てわかンねェのか! 邪魔にしかなンねェって言ってッッッ!」
356: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/10(火) 09:05:54.29 ID:CK1kRgJF0
恐らくは間が、もしくは運が悪かったのだろう。
上条「げっ、またテレポートか! 後ろに……、いない?」
あるいは彼女がそういう運命だったのか。
一方通行「あン? また消えた見てェだが……。どこ行きやがった」
気付けば奴はそこにいて、
10039「消えましたね、とミサカは見てそのままのことを改めて口にします」
彼女は気付いていなかっただけのこと。
アアァアアァアァァアアァ!!
その叫び声が妹達の後ろからしたものだと、気付いた時には遅すぎたのだ。
上条「げっ、またテレポートか! 後ろに……、いない?」
あるいは彼女がそういう運命だったのか。
一方通行「あン? また消えた見てェだが……。どこ行きやがった」
気付けば奴はそこにいて、
10039「消えましたね、とミサカは見てそのままのことを改めて口にします」
彼女は気付いていなかっただけのこと。
アアァアアァアァァアアァ!!
その叫び声が妹達の後ろからしたものだと、気付いた時には遅すぎたのだ。
358: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:04:26.45 ID:nKTV5vFb0
一方通行「とっとと逃げろォッ!」
13577「ッ!?」
一方通行の声で瞬間的に銃を構え振り向いた妹達だが、
幻想猛獣の巨体に思わず立ちすくみそうになる。
それでも元は軍用クローン、その戦術に逃走はなく即座に銃を構え引き金を引く。
ダダダダダダッ……
学園都市製のマシンガンが火を噴き、あらん限りの銃弾が排出されていく。
しかし、その無数の銃弾は一発すら幻想猛獣に届くことはなく
窒素装甲の壁に阻まれ辺りへ散らばるのみ。
また幻想猛獣もただ銃弾を受け続けるだけではない。
幻想猛獣の顔前中央に光源が発生し輝きを示す。
原子崩しの兆し――。
一方通行(第三位(レールガン)ならァともかく、あいつらじゃ……!!)
それを見て、一方通行はベクトルを操作してありえない加速で疾走する。
幻想猛獣までの距離10メートルを1秒とかからず肉薄し殴り飛ばせるだろう。
だが、原子崩しが発射されるのはそれよりもはるかに早く、
一方通行よりも遠くにいるシエル上条は言わずもがな――。
一方通行(あの化物を殴る必要なんかねェ、妹達まででいいンだ!)
妹達と幻想猛獣との間に指一本でも挟めれば反射することは可能なのだ。
全力で駆け抜け、全力で腕を、指を伸ばすッ……!
ビジュゥッ!
13577「ッ!?」
一方通行の声で瞬間的に銃を構え振り向いた妹達だが、
幻想猛獣の巨体に思わず立ちすくみそうになる。
それでも元は軍用クローン、その戦術に逃走はなく即座に銃を構え引き金を引く。
ダダダダダダッ……
学園都市製のマシンガンが火を噴き、あらん限りの銃弾が排出されていく。
しかし、その無数の銃弾は一発すら幻想猛獣に届くことはなく
窒素装甲の壁に阻まれ辺りへ散らばるのみ。
また幻想猛獣もただ銃弾を受け続けるだけではない。
幻想猛獣の顔前中央に光源が発生し輝きを示す。
原子崩しの兆し――。
一方通行(第三位(レールガン)ならァともかく、あいつらじゃ……!!)
それを見て、一方通行はベクトルを操作してありえない加速で疾走する。
幻想猛獣までの距離10メートルを1秒とかからず肉薄し殴り飛ばせるだろう。
だが、原子崩しが発射されるのはそれよりもはるかに早く、
一方通行よりも遠くにいるシエル上条は言わずもがな――。
一方通行(あの化物を殴る必要なんかねェ、妹達まででいいンだ!)
妹達と幻想猛獣との間に指一本でも挟めれば反射することは可能なのだ。
全力で駆け抜け、全力で腕を、指を伸ばすッ……!
ビジュゥッ!
359: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:11:44.60 ID:nKTV5vFb0
13577「ごほっ……!」
零れる血液。
原子崩しを腹部に受けた13577号が血を吐いて膝をつく。
10039「13577号!」
一方通行「ふざけてンじゃねェぞクソッたれがアアアァ!!!」
すぐさま10039号が駆けより、一方通行は倒れ伏した13577号と幻想猛獣の間に割って入る。
一方通行「ガアアアァァァァァッッ!!」
細腕を振り上げ力一杯に振り抜く。
一方通行は窒素装甲を無視してその拳を幻想猛獣にザクリと突き刺す。
一方通行「圧縮ゥゥゥゥゥ! 圧縮圧縮圧縮圧縮ゥッッ!!」
ミシミシリとまるでベニヤ板がへし割れる時にするような音がしたかと思うと
次の瞬間には幻想猛獣がその姿形を内側にへこませるように変型させていた。
変型は留まることを知らず、バキバキとより大きな音を立て押し潰されていく。
そしてほんの数秒で幻想猛獣だったものはサッカーボール大の球体と化していた。
一方通行「三下ァッ! こいつら今すぐ冥土帰しンとこ連れて行きやがれィ!」
上条「わ、わかった!」
19090「待って下さい。13577号はミサカたちで連れて行きま、」
一方通行「うるせェ! テメェは原子崩しが脚にかすっただろォが!
足引きずってる奴がどうやって人間運ぶってンだァッ!」
19090「……っ!」
幻想猛獣の放った原子崩しは三本。
10039号はかろうじて回避することができたが、
13577号は腹部を貫かれ、19090号は直撃は避けたものの足に傷を負っていた。
零れる血液。
原子崩しを腹部に受けた13577号が血を吐いて膝をつく。
10039「13577号!」
一方通行「ふざけてンじゃねェぞクソッたれがアアアァ!!!」
すぐさま10039号が駆けより、一方通行は倒れ伏した13577号と幻想猛獣の間に割って入る。
一方通行「ガアアアァァァァァッッ!!」
細腕を振り上げ力一杯に振り抜く。
一方通行は窒素装甲を無視してその拳を幻想猛獣にザクリと突き刺す。
一方通行「圧縮ゥゥゥゥゥ! 圧縮圧縮圧縮圧縮ゥッッ!!」
ミシミシリとまるでベニヤ板がへし割れる時にするような音がしたかと思うと
次の瞬間には幻想猛獣がその姿形を内側にへこませるように変型させていた。
変型は留まることを知らず、バキバキとより大きな音を立て押し潰されていく。
そしてほんの数秒で幻想猛獣だったものはサッカーボール大の球体と化していた。
一方通行「三下ァッ! こいつら今すぐ冥土帰しンとこ連れて行きやがれィ!」
上条「わ、わかった!」
19090「待って下さい。13577号はミサカたちで連れて行きま、」
一方通行「うるせェ! テメェは原子崩しが脚にかすっただろォが!
足引きずってる奴がどうやって人間運ぶってンだァッ!」
19090「……っ!」
幻想猛獣の放った原子崩しは三本。
10039号はかろうじて回避することができたが、
13577号は腹部を貫かれ、19090号は直撃は避けたものの足に傷を負っていた。
360: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:15:03.05 ID:nKTV5vFb0
上条「少しだけ我慢してくれよ……っと」
すでに意識をなくしてしまっている13577号を上条が背負う。
10039「あなたの忠告に従うべきでした。すみませんでした、と
ミサカは足手まといになってしまったことを一方通行に詫びます」
一言だけ残して10039号も19090号に肩を借して歩き出す。
一方通行は口を開かず、全員が病院内に入っていくのを見届けてから
手にしていた幻想猛獣だった球体を宙へ投げ捨てる。
どういうベクトル操作をしたのか球体は発火しそのまま塵となって消えてしまう。
シエル「……」
一方通行「出で来やがれタタリ、一方的な凌辱って奴を味あわせてやる」
直後、一方通行は自身の背後へと現れた幻想猛獣へと単騎で飛びかかっていく。
すでに意識をなくしてしまっている13577号を上条が背負う。
10039「あなたの忠告に従うべきでした。すみませんでした、と
ミサカは足手まといになってしまったことを一方通行に詫びます」
一言だけ残して10039号も19090号に肩を借して歩き出す。
一方通行は口を開かず、全員が病院内に入っていくのを見届けてから
手にしていた幻想猛獣だった球体を宙へ投げ捨てる。
どういうベクトル操作をしたのか球体は発火しそのまま塵となって消えてしまう。
シエル「……」
一方通行「出で来やがれタタリ、一方的な凌辱って奴を味あわせてやる」
直後、一方通行は自身の背後へと現れた幻想猛獣へと単騎で飛びかかっていく。
361: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:24:21.60 ID:nKTV5vFb0
上条は病院内を13577号に極力負担がかからないようゆっくりと、かつ急ぎ歩いていた。
上条「俺がお前らに頼んだばっかりに……」
10039「あなたが負い目に感じる必要はありません。ミサカたちはミサカたちの意思で戦いました。
それよりも何の役にも立てなかったことが不甲斐なくて仕方ありません、とミサカは項垂れて話します」
上条(もう誰も傷つけさせないってそう誓ったのに……。まただ、また守れなかった)
――――――――
処置室前――。
上条「先生! 妹達が怪我を……、腹をレーザーみたいので貫かれて!」
上条たちが処置室に入ると、見知った顔が診察台に寝かされており冥土帰しは彼の診察をしていたようだった。
上条「……土御門」
土御門に意識はないらしく、レベルは低くとも超能力者の彼にもタタリの影響が出ているのだろう。
冥土帰し「どれ、見せてごらん?」
上条は背負っていた13577号を空いていた診察台へと下ろす。
冥土帰しは血の滲んでいる部分の服をめくり上げ患部の付近に触れたりライトを目に当て瞳孔反応などを見ている。
冥土帰し「背中にも孔があるね、貫通してしまっているのか。
焼かれているため大量出血は免れているがこの位置だと内臓が損傷してる恐れがあるね。
そっちの子は足を怪我したのかい?」
19090「ミサカのはかすり傷程度です、ミサカよりも13577号をお願いします」
冥土帰し「そうだね、君の怪我は別の先生に任せよう、隣の処置室に行って若槻先生に診てもらっておくれ。
僕は今からこの子の緊急手術を行わなければならないからね」
19090「わかりました。とミサカは頷きます」
10039「では、行きましょう。とミサカは再び19090号に肩を貸します」
上条「俺がお前らに頼んだばっかりに……」
10039「あなたが負い目に感じる必要はありません。ミサカたちはミサカたちの意思で戦いました。
それよりも何の役にも立てなかったことが不甲斐なくて仕方ありません、とミサカは項垂れて話します」
上条(もう誰も傷つけさせないってそう誓ったのに……。まただ、また守れなかった)
――――――――
処置室前――。
上条「先生! 妹達が怪我を……、腹をレーザーみたいので貫かれて!」
上条たちが処置室に入ると、見知った顔が診察台に寝かされており冥土帰しは彼の診察をしていたようだった。
上条「……土御門」
土御門に意識はないらしく、レベルは低くとも超能力者の彼にもタタリの影響が出ているのだろう。
冥土帰し「どれ、見せてごらん?」
上条は背負っていた13577号を空いていた診察台へと下ろす。
冥土帰しは血の滲んでいる部分の服をめくり上げ患部の付近に触れたりライトを目に当て瞳孔反応などを見ている。
冥土帰し「背中にも孔があるね、貫通してしまっているのか。
焼かれているため大量出血は免れているがこの位置だと内臓が損傷してる恐れがあるね。
そっちの子は足を怪我したのかい?」
19090「ミサカのはかすり傷程度です、ミサカよりも13577号をお願いします」
冥土帰し「そうだね、君の怪我は別の先生に任せよう、隣の処置室に行って若槻先生に診てもらっておくれ。
僕は今からこの子の緊急手術を行わなければならないからね」
19090「わかりました。とミサカは頷きます」
10039「では、行きましょう。とミサカは再び19090号に肩を貸します」
362: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:29:20.06 ID:nKTV5vFb0
冥土帰しと妹達がそれぞれ出て行った後、上条はまだ処置室にいた。
上条は右手を土御門の額へ押し当てる。
すると、何かが壊れるような音が幻想殺しが機能したことを感じ取る。
土御門「……ぅにゃー」
上条「土御門、身体は平気か?」
土御門「にゃ? なんでカミやんがここに……、ってかここはどこだ」
上条「ここは処置室だ、土御門。お前はタタリが流した変な音楽のせいで気を失ったんだよ」
土御門「そうだ! タタリはどうなったんだカミやん! っ……!」
声を荒げたかもと思うと土御門は小さな呻き声を上げて腹部を押さえた。
昨晩、上条を助けるために使った魔術の後遺症で負った傷に響いたのだろう。
上条「安静にしてろって。……それで、タタリはまだ倒せてない。というか倒せないんだ」
土御門「どういうことだ」
上条「正直わからない。俺の幻想殺しで触れても一時的に消滅するだけですぐに復活しちまう。
その上、学園都市中でお前みたいに意識を失ったやつがいるらしくって、そいつらの超能力が使えるんだ。
挙句、さっきはお前の魔術まで使ってきやがった」
土御門「なんだと!? まさか、幻想猛獣か」
上条「AIMばー……なんだって?」
土御門「AIMバースト、一言で言えばAIM拡散力場でできた化け物だ。
数ヶ月前に実際に起こった事件なんだがよりにもよって……、いやそんなことはどうでもいい」
上条は右手を土御門の額へ押し当てる。
すると、何かが壊れるような音が幻想殺しが機能したことを感じ取る。
土御門「……ぅにゃー」
上条「土御門、身体は平気か?」
土御門「にゃ? なんでカミやんがここに……、ってかここはどこだ」
上条「ここは処置室だ、土御門。お前はタタリが流した変な音楽のせいで気を失ったんだよ」
土御門「そうだ! タタリはどうなったんだカミやん! っ……!」
声を荒げたかもと思うと土御門は小さな呻き声を上げて腹部を押さえた。
昨晩、上条を助けるために使った魔術の後遺症で負った傷に響いたのだろう。
上条「安静にしてろって。……それで、タタリはまだ倒せてない。というか倒せないんだ」
土御門「どういうことだ」
上条「正直わからない。俺の幻想殺しで触れても一時的に消滅するだけですぐに復活しちまう。
その上、学園都市中でお前みたいに意識を失ったやつがいるらしくって、そいつらの超能力が使えるんだ。
挙句、さっきはお前の魔術まで使ってきやがった」
土御門「なんだと!? まさか、幻想猛獣か」
上条「AIMばー……なんだって?」
土御門「AIMバースト、一言で言えばAIM拡散力場でできた化け物だ。
数ヶ月前に実際に起こった事件なんだがよりにもよって……、いやそんなことはどうでもいい」
363: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:32:52.32 ID:nKTV5vFb0
土御門「おそらくは、タタリが復活する原因は姫神の怪我にあるだろう。
本来、吸血殺しが万全の状態であればAIM拡散力場に影響して容易に倒せていたはずだ」
上条「今は一方通行と吸血鬼殺しの専門化とかいう外部の魔術師が戦ってる」
土御門「吸血鬼殺しの専門家、埋葬機関か。一緒に戦ってくれてるのなら問題ない。
それより一方通行、あいつは能力を15分しか使えなかったはずだ、大丈夫なのか」
上条「一回バッテリー切れを起こしたが、今は延長コードで直接コンセントに繋いで戦ってる」
土御門「そうか、まずは一安心だが……。第一位といえど人間だ。演算は脳を使う、いつかは限界が来るはずだ。
……なぁ、カミやん。どうやってその化物を攻略するつもりでいるんだ?」
上条「ただひたすら戦い続ける……。吸血鬼ってのは太陽の光に弱いんだろ?
だから朝日が昇るまでの間、」
土御門「ずっと戦い続けるってわけか。今の時刻は……時計はあてにならないか。
カミやん、タタリが現れてからどれくらい経ってる?」
上条「正確な時間はわからないけど、1時間も経ってないと思う」
土御門「なら3時間以上ってわけか。埋葬機関の人間がどんな奴かは知らんが
不死身となった幻想猛獣を相手にそんな長時間戦い続けるのは不可能だ」
上条「ぐっ……」
土御門「……こうなったら」
上条「!? 何か手があるのか、土御門!」
土御門「手がないわけじゃない。だが……」
本来、吸血殺しが万全の状態であればAIM拡散力場に影響して容易に倒せていたはずだ」
上条「今は一方通行と吸血鬼殺しの専門化とかいう外部の魔術師が戦ってる」
土御門「吸血鬼殺しの専門家、埋葬機関か。一緒に戦ってくれてるのなら問題ない。
それより一方通行、あいつは能力を15分しか使えなかったはずだ、大丈夫なのか」
上条「一回バッテリー切れを起こしたが、今は延長コードで直接コンセントに繋いで戦ってる」
土御門「そうか、まずは一安心だが……。第一位といえど人間だ。演算は脳を使う、いつかは限界が来るはずだ。
……なぁ、カミやん。どうやってその化物を攻略するつもりでいるんだ?」
上条「ただひたすら戦い続ける……。吸血鬼ってのは太陽の光に弱いんだろ?
だから朝日が昇るまでの間、」
土御門「ずっと戦い続けるってわけか。今の時刻は……時計はあてにならないか。
カミやん、タタリが現れてからどれくらい経ってる?」
上条「正確な時間はわからないけど、1時間も経ってないと思う」
土御門「なら3時間以上ってわけか。埋葬機関の人間がどんな奴かは知らんが
不死身となった幻想猛獣を相手にそんな長時間戦い続けるのは不可能だ」
上条「ぐっ……」
土御門「……こうなったら」
上条「!? 何か手があるのか、土御門!」
土御門「手がないわけじゃない。だが……」
365: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 03:38:55.46 ID:nKTV5vFb0
――――――――
アァアァァァアァァァアア!!
幻想猛獣の悲鳴があたりにこだまする。
圧縮した空気によるプラズマで全身を焼き尽くされた幻想猛獣は瞬時に灰となり消え去っていく。
一方通行「ギヒャヒャヒャ、次はどンな殺され方が好みだよ、言ってみな叶えてやるからよォ?」
上条たちが去った後、一方通行の戦い方はずっとこんな調子だ。
全身を細切れにしたり、今みたいに一瞬で灰にしたりと朝まで耐えることを目的とした効率のいい戦いには程遠い、
速さでも競っているのかという勢いで幻想猛獣に復活と消滅を繰り返させている。
シエル「いい加減にしなさい、一度頭を冷やし冷静になってください」
無茶苦茶な戦い方を披露する一方通行に業を煮やしたシエルが苦言を呈する。
一方通行「楽させてもらっといて文句言ってンじゃねェよ。っていうか、もォお前要らないわ」
シエル「……は?」
一方通行「こンなもンに繋がれちゃいるがこれで能力の使用は無制限、
こうなりゃもォお前の手を借りる必要もねェ、邪魔になンねェように隅の方へ引っ込ンでろ」
延長コードを手に持ち忌々しげな視線を向けた後、一方通行はシエルに対しシッシッと犬を追い払うような動作を取る。
シエル「……」
それを見たシエルは何も発せず諦めたような表情で一方通行から距離をとる。
シエル(今は何を言っても無駄ですか。摩擦を増やして逆上させるより冷静になるまで待つべきですね。
ですが、超能力というのは緻密な計算によって成り立つと聞いている。
あのコードがどういう意味を持つのかは知りませんが、いくら能力が無制限でも脳の疲労はどうにもならないはず)
それならば、とシエルは自身は体力と魔力の回復に努めて、
一方通行がピンチに陥ったときに万全の状態で助けに入れるようにしておくべきだと判断した。
アァアァァァアァァァアア!!
幻想猛獣の悲鳴があたりにこだまする。
圧縮した空気によるプラズマで全身を焼き尽くされた幻想猛獣は瞬時に灰となり消え去っていく。
一方通行「ギヒャヒャヒャ、次はどンな殺され方が好みだよ、言ってみな叶えてやるからよォ?」
上条たちが去った後、一方通行の戦い方はずっとこんな調子だ。
全身を細切れにしたり、今みたいに一瞬で灰にしたりと朝まで耐えることを目的とした効率のいい戦いには程遠い、
速さでも競っているのかという勢いで幻想猛獣に復活と消滅を繰り返させている。
シエル「いい加減にしなさい、一度頭を冷やし冷静になってください」
無茶苦茶な戦い方を披露する一方通行に業を煮やしたシエルが苦言を呈する。
一方通行「楽させてもらっといて文句言ってンじゃねェよ。っていうか、もォお前要らないわ」
シエル「……は?」
一方通行「こンなもンに繋がれちゃいるがこれで能力の使用は無制限、
こうなりゃもォお前の手を借りる必要もねェ、邪魔になンねェように隅の方へ引っ込ンでろ」
延長コードを手に持ち忌々しげな視線を向けた後、一方通行はシエルに対しシッシッと犬を追い払うような動作を取る。
シエル「……」
それを見たシエルは何も発せず諦めたような表情で一方通行から距離をとる。
シエル(今は何を言っても無駄ですか。摩擦を増やして逆上させるより冷静になるまで待つべきですね。
ですが、超能力というのは緻密な計算によって成り立つと聞いている。
あのコードがどういう意味を持つのかは知りませんが、いくら能力が無制限でも脳の疲労はどうにもならないはず)
それならば、とシエルは自身は体力と魔力の回復に努めて、
一方通行がピンチに陥ったときに万全の状態で助けに入れるようにしておくべきだと判断した。
366: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:51:14.03 ID:nKTV5vFb0
10回、15回と次々に何度も何度も殺していく。
幻想猛獣は殺すたびに現れまた殺されていく。
一方通行自身も殺すたびに精神を高揚させ甲高い笑い声を上げて一方的な陵辱を続けていく。
傍から見ていればどちらが悪かもわからぬ状況で、一方通行の動きに衰えはまったく感じられず
本当に一人で朝まで戦い続けられるのではないだろうかと思えるほどだった。
しかしそれはあくまで比喩の話。
現実はそのように甘くなく、疲労は確実に溜まり続けていた。
一方通行「ヒャハハハハ、まだ殺されたりねェのかよ、生粋のマゾ野郎だなタタリって奴はよォ!」
17回目、今度は自転エネルギーより遥かに強い公転ベクトルを操作して空気摩擦によって一瞬にして塵
へと帰していく。
傍観に徹してからここまで幻想猛獣はシエルの背後には現れていない。
警戒は怠っていなかったが、やはり明確な敵意を見せたり不穏な動きを見せなければ襲ってこないらしい。
シエル(そろそろ疲れが見え始めましたね)
威勢は衰えてはいないものの、一方通行は肩で息をするようになり呼吸が荒くなってきていた。
アアァァァァアアァァアァ!
一方通行「今回はどうやって殺してやろうかァ? またプラズマで焼いとくかなァ、キヒッ」
悪魔のような笑顔を張り付かせ片手を掲げ空気を圧縮し始める。
だが、
一方通行「あン……?」
不安定に揺らめく光はそれ以上大きくなりそうにない。
疲労からの演算ミス。
計算が正しくなければ、正しい答えが導けないのは道理、
ここまで無茶な演算を繰り返し疲労しきった状態では膨大なベクトルを演算しなければならないプラズマの生成は困難。
幻想猛獣は殺すたびに現れまた殺されていく。
一方通行自身も殺すたびに精神を高揚させ甲高い笑い声を上げて一方的な陵辱を続けていく。
傍から見ていればどちらが悪かもわからぬ状況で、一方通行の動きに衰えはまったく感じられず
本当に一人で朝まで戦い続けられるのではないだろうかと思えるほどだった。
しかしそれはあくまで比喩の話。
現実はそのように甘くなく、疲労は確実に溜まり続けていた。
一方通行「ヒャハハハハ、まだ殺されたりねェのかよ、生粋のマゾ野郎だなタタリって奴はよォ!」
17回目、今度は自転エネルギーより遥かに強い公転ベクトルを操作して空気摩擦によって一瞬にして塵
へと帰していく。
傍観に徹してからここまで幻想猛獣はシエルの背後には現れていない。
警戒は怠っていなかったが、やはり明確な敵意を見せたり不穏な動きを見せなければ襲ってこないらしい。
シエル(そろそろ疲れが見え始めましたね)
威勢は衰えてはいないものの、一方通行は肩で息をするようになり呼吸が荒くなってきていた。
アアァァァァアアァァアァ!
一方通行「今回はどうやって殺してやろうかァ? またプラズマで焼いとくかなァ、キヒッ」
悪魔のような笑顔を張り付かせ片手を掲げ空気を圧縮し始める。
だが、
一方通行「あン……?」
不安定に揺らめく光はそれ以上大きくなりそうにない。
疲労からの演算ミス。
計算が正しくなければ、正しい答えが導けないのは道理、
ここまで無茶な演算を繰り返し疲労しきった状態では膨大なベクトルを演算しなければならないプラズマの生成は困難。
367: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:53:01.72 ID:nKTV5vFb0
一方通行「もォ一度ォッ!」
プラズマの再演算を行おうとした一方通行だったが幻想猛獣も黙って待っているわけではない。
念動力を真正面から一方通行にぶつけていく。
だがたかが念動力ごとき、一方通行の反射を前に髪の毛一本揺らすことはできはしない。
しかしそれも万全であればの話。
ドゴォッ!
一方通行「ガァアッ!?」
すでに疲労は限界にきていたのだ。
真正面から受けた念動力によって一方通行は盛大に弾き飛ばされてしまう。
幸運だったのは弾き飛ばされたのは病院側だったこと、
逆であれば演算補助装置を繋ぐ延長コードが伸びきり引き千切れていただろう。
シエル「ほら言わんこっちゃない、とっとと起きて下さい。攻撃がきますよ」
ようやく出番かとシエルは億劫そうに一方通行の前に立ち、牽制の黒鍵を投げつける。
黒鍵は窒素装甲を前に容易に弾かれる。
こんなことで稼げる時間は1秒や2秒程度のわずかな時間、
それでも今までの動きから一方通行なら簡単に起き上がってくるとシエルは考えていた。
一方通行「ァア?」
若干焦点の合っていない赤い目で頭を傾けたままで、一方通行は起き上がってはこない。
おそらくは当たり所が悪く脳を揺らされ身体が言うことをきかないのだろう。
一方通行の運動能力のほとんどはベクトル操作に依存している。
シエルは一方通行がこんなにも打たれ弱いとは考えていなかったのだ。
プラズマの再演算を行おうとした一方通行だったが幻想猛獣も黙って待っているわけではない。
念動力を真正面から一方通行にぶつけていく。
だがたかが念動力ごとき、一方通行の反射を前に髪の毛一本揺らすことはできはしない。
しかしそれも万全であればの話。
ドゴォッ!
一方通行「ガァアッ!?」
すでに疲労は限界にきていたのだ。
真正面から受けた念動力によって一方通行は盛大に弾き飛ばされてしまう。
幸運だったのは弾き飛ばされたのは病院側だったこと、
逆であれば演算補助装置を繋ぐ延長コードが伸びきり引き千切れていただろう。
シエル「ほら言わんこっちゃない、とっとと起きて下さい。攻撃がきますよ」
ようやく出番かとシエルは億劫そうに一方通行の前に立ち、牽制の黒鍵を投げつける。
黒鍵は窒素装甲を前に容易に弾かれる。
こんなことで稼げる時間は1秒や2秒程度のわずかな時間、
それでも今までの動きから一方通行なら簡単に起き上がってくるとシエルは考えていた。
一方通行「ァア?」
若干焦点の合っていない赤い目で頭を傾けたままで、一方通行は起き上がってはこない。
おそらくは当たり所が悪く脳を揺らされ身体が言うことをきかないのだろう。
一方通行の運動能力のほとんどはベクトル操作に依存している。
シエルは一方通行がこんなにも打たれ弱いとは考えていなかったのだ。
368: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:53:55.14 ID:nKTV5vFb0
シエル「え? ちょ、ちょっと、早く起き上がらないと攻撃が、」
シエルが言い終わるより早く、二人を目掛け炎が振りかかってくる。
シエル「クぅっ!」
とっさの判断で黒鍵で炎を切り払う。
だが攻撃がそれでやむはずもなく次に控えるのは妹達を貫いた原子崩し。
一方通行が立ちあがれないのだとようやく気づいたシエルは急いで一方通行を抱きかかえると
横っ飛びで原子崩しをかわす。
シエル「いくらなんでも打たれ弱す、」
かわした先へと今度は電撃が襲いかかりシエルは文句一つ言い終わる暇がない。
黒鍵を突き立て避雷針にした後、一方通行を抱えたままその場からすぐに飛びのく。
シエル「こんのっ!」
タイミングはぎりぎり、またしても滑るような動きで攻撃を回避する。
しかし、華麗な回避もここまで。
シエルが足を踏み入れたのは異常なまでに柔らかいアスファルト。
フラックスコート。
ずぶりと足が埋まりすぐには抜け出せそうにない。
シエル「しまった……!」
身動きの取れない二人を狙うのは幻想猛獣の原子崩し。
一方通行の頭はまだぐるぐると回っている状態で意識もはっきりとしていない。
絶体絶命の中、放たれた原子崩しが二人を襲う。
シエルが言い終わるより早く、二人を目掛け炎が振りかかってくる。
シエル「クぅっ!」
とっさの判断で黒鍵で炎を切り払う。
だが攻撃がそれでやむはずもなく次に控えるのは妹達を貫いた原子崩し。
一方通行が立ちあがれないのだとようやく気づいたシエルは急いで一方通行を抱きかかえると
横っ飛びで原子崩しをかわす。
シエル「いくらなんでも打たれ弱す、」
かわした先へと今度は電撃が襲いかかりシエルは文句一つ言い終わる暇がない。
黒鍵を突き立て避雷針にした後、一方通行を抱えたままその場からすぐに飛びのく。
シエル「こんのっ!」
タイミングはぎりぎり、またしても滑るような動きで攻撃を回避する。
しかし、華麗な回避もここまで。
シエルが足を踏み入れたのは異常なまでに柔らかいアスファルト。
フラックスコート。
ずぶりと足が埋まりすぐには抜け出せそうにない。
シエル「しまった……!」
身動きの取れない二人を狙うのは幻想猛獣の原子崩し。
一方通行の頭はまだぐるぐると回っている状態で意識もはっきりとしていない。
絶体絶命の中、放たれた原子崩しが二人を襲う。
369: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:55:59.83 ID:nKTV5vFb0
上条「どっせえーい!!」
パッキーン!
万事休すのその場面に飛び込んできたのは幻想殺し上条当麻。
粘度を変えられたアスファルトに埋まりながらも右手を突き出して原子崩しを殺す。
上条「ま、間に合った……」
ほっと胸を撫で下ろすような動作の後、すぐに沼のようなアスファルトに右手で触れ元の普通のアスファルトに戻す。
上条「一方通行! まさかどこか怪我でも……」
シエル「脳を揺らされただけです。少し意識が混濁しているだけで十数秒で頭もはっきりしてくるはずです」
上条「そうか、よかった。……なら、その時間は俺が!」
三人に襲い掛かろうとしていた電撃を幻想殺しで受け止める。
続けざまに炎の塊が振りかかってくる。
上条はそれも幻想殺しで受け止めようと手を差し出そうとする。
シエル「炎は私に任せてください。君はその右手を右前方に突き出してください」
言うが早いかシエルは黒鍵を振り下ろし炎をなぎ払っていく。
シエルの指示の理由はわからないが無意味な指示であるとも思えず、上条は指示に従い右前方へと右手を突き出す。
パッキーン!
幻想殺しが何かを壊す音。
目に見えない何か、おそらくは念動力だったのだろう。
パッキーン!
万事休すのその場面に飛び込んできたのは幻想殺し上条当麻。
粘度を変えられたアスファルトに埋まりながらも右手を突き出して原子崩しを殺す。
上条「ま、間に合った……」
ほっと胸を撫で下ろすような動作の後、すぐに沼のようなアスファルトに右手で触れ元の普通のアスファルトに戻す。
上条「一方通行! まさかどこか怪我でも……」
シエル「脳を揺らされただけです。少し意識が混濁しているだけで十数秒で頭もはっきりしてくるはずです」
上条「そうか、よかった。……なら、その時間は俺が!」
三人に襲い掛かろうとしていた電撃を幻想殺しで受け止める。
続けざまに炎の塊が振りかかってくる。
上条はそれも幻想殺しで受け止めようと手を差し出そうとする。
シエル「炎は私に任せてください。君はその右手を右前方に突き出してください」
言うが早いかシエルは黒鍵を振り下ろし炎をなぎ払っていく。
シエルの指示の理由はわからないが無意味な指示であるとも思えず、上条は指示に従い右前方へと右手を突き出す。
パッキーン!
幻想殺しが何かを壊す音。
目に見えない何か、おそらくは念動力だったのだろう。
370: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:56:46.47 ID:nKTV5vFb0
一方通行「もォいいぞ」
はっきりとした声の後、突如として暴風が吹き荒れる。
暴風は炎も電撃も念動力さえもまとめて、挙句に巨体の幻想猛獣すらも吹き飛ばし空中へと巻き上げていく。
シエル「もういいんですか?」
一方通行「ちょっと油断しただけだ、次はねェよ」
ずしんっ!
空中に巻き上げられていた幻想猛獣は真っ逆さまに落下しアスファルトの地面に激しく叩きつけられる。
上条「やっぱりアレと朝まで戦い続けるってのは無理だと思う」
一方通行「チッ、じゃなにか? 諦めて死ねってのかァ? 冗談じゃねェぞ」
上条「倒すしかない」
一方通行「ハァ? ンな簡単に倒せりゃ苦労は、」
シエル「あるんですね、倒す方法が」
上条「ああ」
上条はシエルの問いに一言うなずいて、左のポケットからゴム栓で蓋をされた大きめの試験管を取り出す。
中に入っているは赤い液体。
上条「姫神の、吸血殺しの血液だ」
はっきりとした声の後、突如として暴風が吹き荒れる。
暴風は炎も電撃も念動力さえもまとめて、挙句に巨体の幻想猛獣すらも吹き飛ばし空中へと巻き上げていく。
シエル「もういいんですか?」
一方通行「ちょっと油断しただけだ、次はねェよ」
ずしんっ!
空中に巻き上げられていた幻想猛獣は真っ逆さまに落下しアスファルトの地面に激しく叩きつけられる。
上条「やっぱりアレと朝まで戦い続けるってのは無理だと思う」
一方通行「チッ、じゃなにか? 諦めて死ねってのかァ? 冗談じゃねェぞ」
上条「倒すしかない」
一方通行「ハァ? ンな簡単に倒せりゃ苦労は、」
シエル「あるんですね、倒す方法が」
上条「ああ」
上条はシエルの問いに一言うなずいて、左のポケットからゴム栓で蓋をされた大きめの試験管を取り出す。
中に入っているは赤い液体。
上条「姫神の、吸血殺しの血液だ」
371: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:57:16.80 ID:nKTV5vFb0
――――――――
土御門「吸血殺しの吸血鬼を殺す効果は血液にある。
血液自体がAIM拡散力場に干渉していると言って問題ない」
上条「まさか」
土御門「吸血殺しの血液を直接浴びせる。そうすれば復活することはなくなるはずだ」
上条「無理だ! 姫神は昨日大量の血を失ってるんだぞ。
さらに血を抜けば命に関わる。……1滴や2適ってわけじゃないんだろ?」
土御門「200ml、最低でもそのぐらいは必要だ」
ギリッ……
上条はもう何も言わない。
何を言っても無駄だ、無理なものは無理なのだから。
上条はそのまま部屋を出て行こうとする。
そこへ――。
姫神「上条くん」
土御門「ッ!?」
上条「ひめが、み……」
土御門「吸血殺しの吸血鬼を殺す効果は血液にある。
血液自体がAIM拡散力場に干渉していると言って問題ない」
上条「まさか」
土御門「吸血殺しの血液を直接浴びせる。そうすれば復活することはなくなるはずだ」
上条「無理だ! 姫神は昨日大量の血を失ってるんだぞ。
さらに血を抜けば命に関わる。……1滴や2適ってわけじゃないんだろ?」
土御門「200ml、最低でもそのぐらいは必要だ」
ギリッ……
上条はもう何も言わない。
何を言っても無駄だ、無理なものは無理なのだから。
上条はそのまま部屋を出て行こうとする。
そこへ――。
姫神「上条くん」
土御門「ッ!?」
上条「ひめが、み……」
372: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:58:51.38 ID:nKTV5vFb0
上条「お前、今の話……」
姫神「この耳で。しっかり聞いた」
上条「……心配するな、お前の血の力を借りなくても俺が何とか」
姫神「土御門くん。献血ってできる?」
上条「姫神ッ!」
土御門「……」
姫神「まだ私は戦える。戦いたい」
土御門「本気なんだな?」
上条「土御門、やめろ!」
土御門「カミやん、これは姫神の意思だ。それを俺らに止める術はない」
姫神「私はまだ死にたくない。だから上条くんに私の力を託す。
心配しなくても。こんなことじゃ私は死なないから」
上条「土御門……、姫神……」
姫神「やるなら急いで。仲間が待ってるんでしょ」
姫神「この耳で。しっかり聞いた」
上条「……心配するな、お前の血の力を借りなくても俺が何とか」
姫神「土御門くん。献血ってできる?」
上条「姫神ッ!」
土御門「……」
姫神「まだ私は戦える。戦いたい」
土御門「本気なんだな?」
上条「土御門、やめろ!」
土御門「カミやん、これは姫神の意思だ。それを俺らに止める術はない」
姫神「私はまだ死にたくない。だから上条くんに私の力を託す。
心配しなくても。こんなことじゃ私は死なないから」
上条「土御門……、姫神……」
姫神「やるなら急いで。仲間が待ってるんでしょ」
373: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/14(土) 04:59:30.37 ID:nKTV5vFb0
――――――――
一方通行「その量、……あの女生きてンのか?」
上条「なんとか。けどかなり無理してた」
一方通行「……」
シエル「その、ディープブラッドというのは?」
一方通行「一言で言えば吸血鬼の天敵の超能力だ」
シエル「それを奴にかけることができれば」
上条「倒せる、はずだ。復活もしない」
シエル「非常に興味深いですね。というより眉唾と言った方が正直な感想ですが」
上条「一度だけ信じてくれ。頼む」
シエルに向かって上条は深々と頭を下げる。
シエル「構いませんよ。あんなのと朝までなんて勘弁して欲しかったところですから。
吸血殺し、その力を信じましょう。っていうか他に選択肢がないんですけどね」
一方通行「話もまとまったところでェ、奴さンも再生終わったみてェだぞ」
一方通行の声で幻想猛獣に視線を移す。
アァアアァアアァァ!
上条「これ、頼む」
そう言ってシエルに上条が差し出したのは姫神の血が入った試験管。
上条「身体能力は俺のが劣ってるし、幻想殺しは俺の意思でコントロールできるわけじゃないから」
シエル「わかりました。この役目必ず果たします」
一方通行「その量、……あの女生きてンのか?」
上条「なんとか。けどかなり無理してた」
一方通行「……」
シエル「その、ディープブラッドというのは?」
一方通行「一言で言えば吸血鬼の天敵の超能力だ」
シエル「それを奴にかけることができれば」
上条「倒せる、はずだ。復活もしない」
シエル「非常に興味深いですね。というより眉唾と言った方が正直な感想ですが」
上条「一度だけ信じてくれ。頼む」
シエルに向かって上条は深々と頭を下げる。
シエル「構いませんよ。あんなのと朝までなんて勘弁して欲しかったところですから。
吸血殺し、その力を信じましょう。っていうか他に選択肢がないんですけどね」
一方通行「話もまとまったところでェ、奴さンも再生終わったみてェだぞ」
一方通行の声で幻想猛獣に視線を移す。
アァアアァアアァァ!
上条「これ、頼む」
そう言ってシエルに上条が差し出したのは姫神の血が入った試験管。
上条「身体能力は俺のが劣ってるし、幻想殺しは俺の意思でコントロールできるわけじゃないから」
シエル「わかりました。この役目必ず果たします」
375: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 07:49:42.94 ID:7Jg0a9BT0
一方通行「クカカカ、要は抵抗できねェよォに叩き潰せばいいってこったろォ?」
言うが早いか、真っ先に飛び出して行ったのは一方通行。
一時的にでもただの会話で脳を休ませることができたため、
今では反射の膜も万全、プラズマのような複雑な演算さえしなければ演算ミスもそうそうありはしない。
一方通行「遠いな。なら」
一方通行は右手を大きく振り、空中を斬るような動作をする。
すると、一方通行の目の前に小規模な竜巻が発生し幻想猛獣へと向かっていく。
炎や電撃は容易にかき消され竜巻を受けた幻想猛獣は巻き上げられ空中へと投げだされる。
そしてその落下地点には当然のように一方通行が立っている。
一方通行「一丁上がりってなァ!」
一方通行は延長コードが伸び切らないように軽く飛び上がると拳を真上に突き出す。
しかし、白い細腕から繰り出されるベクトルを操作された重い拳はあえなく空を切る。
死角移動――。
一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」
言うが早いか、真っ先に飛び出して行ったのは一方通行。
一時的にでもただの会話で脳を休ませることができたため、
今では反射の膜も万全、プラズマのような複雑な演算さえしなければ演算ミスもそうそうありはしない。
一方通行「遠いな。なら」
一方通行は右手を大きく振り、空中を斬るような動作をする。
すると、一方通行の目の前に小規模な竜巻が発生し幻想猛獣へと向かっていく。
炎や電撃は容易にかき消され竜巻を受けた幻想猛獣は巻き上げられ空中へと投げだされる。
そしてその落下地点には当然のように一方通行が立っている。
一方通行「一丁上がりってなァ!」
一方通行は延長コードが伸び切らないように軽く飛び上がると拳を真上に突き出す。
しかし、白い細腕から繰り出されるベクトルを操作された重い拳はあえなく空を切る。
死角移動――。
一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」
376: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 07:51:43.99 ID:7Jg0a9BT0
上条「よしっ、あの攻撃が決まれば!」
宙を舞う幻想猛獣目掛け一方通行が拳を振り上げるのを見て声をあげる上条。
だが、その攻撃は空を切ったためただのぬか喜びでしかなかった。
一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」
シエル「空間転移……、そこっ!」
上条の背後へと出現した幻想猛獣へと黒鍵を投げつける。
幻想猛獣が死角移動で現れる『背後』と言うのはある程度の幅がある。
手の届くような至近距離と言うこともあれば、今回のように5メートルほど離れた場所ということもだ。
シエル「やはりあの空気の壁が邪魔ですね。あれをその右手でなんとかできますか?」
黒鍵というのは魔術的にはそれなりに威力のあるものなのだが、
それを容易く弾かれてしまう様を恨めしそうに見つめている。
上条「ああ、そのぐらいはなんとかしてみせる」
宙を舞う幻想猛獣目掛け一方通行が拳を振り上げるのを見て声をあげる上条。
だが、その攻撃は空を切ったためただのぬか喜びでしかなかった。
一方通行「チッ、そっち行ったぞォ!」
シエル「空間転移……、そこっ!」
上条の背後へと出現した幻想猛獣へと黒鍵を投げつける。
幻想猛獣が死角移動で現れる『背後』と言うのはある程度の幅がある。
手の届くような至近距離と言うこともあれば、今回のように5メートルほど離れた場所ということもだ。
シエル「やはりあの空気の壁が邪魔ですね。あれをその右手でなんとかできますか?」
黒鍵というのは魔術的にはそれなりに威力のあるものなのだが、
それを容易く弾かれてしまう様を恨めしそうに見つめている。
上条「ああ、そのぐらいはなんとかしてみせる」
377: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 07:55:06.26 ID:7Jg0a9BT0
たった5メートル。
普通なら一息で駆け抜けられる距離だが、向こうもそう簡単には近づかせてくれそうにない。
上条が一歩目を踏み出そうとした目先へ、足元めがけての原子崩しが発射される。
幻想殺しの効果範囲は右腕の肘から先で触れたもののみ。
到底、足元をカバーできるような能力ではないのだ。
上条はつんのめりそうになるのを抑えて咄嗟に右前方へと進路を変更する。
上条「くっ、こっちの作戦に気付いてるのか?」
今までは幻想猛獣からどこか余裕の様なものを感じられていたが
今回は上条に本気で近づいて欲しくないらしい。
真正面からの電撃に加え、左から炎が上条に襲いかかる。
電撃は右手で受け止め炎は一気に踏み込んでかわそうとするが
今まで何度も死線をくぐってきたことで磨かれてきた上条の第六感がそれを踏みとどまらせる。
次の瞬間、踏み込もうとしたその先を強い風が吹き抜けていく。
恐らくは視覚できない念動力の類だろう。
上条(炎は食らっても即死するわけじゃない。
けど電撃はしびれて動けなくなっちまう……)
電撃は右手で受けて、炎は死ぬ気で耐える。
二度目となる苦肉の策だ。
電撃と同時に迫りくる炎に焼かれるために身構える。
普通なら一息で駆け抜けられる距離だが、向こうもそう簡単には近づかせてくれそうにない。
上条が一歩目を踏み出そうとした目先へ、足元めがけての原子崩しが発射される。
幻想殺しの効果範囲は右腕の肘から先で触れたもののみ。
到底、足元をカバーできるような能力ではないのだ。
上条はつんのめりそうになるのを抑えて咄嗟に右前方へと進路を変更する。
上条「くっ、こっちの作戦に気付いてるのか?」
今までは幻想猛獣からどこか余裕の様なものを感じられていたが
今回は上条に本気で近づいて欲しくないらしい。
真正面からの電撃に加え、左から炎が上条に襲いかかる。
電撃は右手で受け止め炎は一気に踏み込んでかわそうとするが
今まで何度も死線をくぐってきたことで磨かれてきた上条の第六感がそれを踏みとどまらせる。
次の瞬間、踏み込もうとしたその先を強い風が吹き抜けていく。
恐らくは視覚できない念動力の類だろう。
上条(炎は食らっても即死するわけじゃない。
けど電撃はしびれて動けなくなっちまう……)
電撃は右手で受けて、炎は死ぬ気で耐える。
二度目となる苦肉の策だ。
電撃と同時に迫りくる炎に焼かれるために身構える。
378: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 07:59:32.26 ID:7Jg0a9BT0
パッキーン!
幻想殺しが電撃を打ち消す。
その直前、上条に迫る炎を一本の黒い剣が引き裂いてゆく。
シエルが投擲した黒鍵だ。
シエル「炎だけは何とかしてあげますよ」
上条「サンキュー!」
全ての攻撃をかわしきったことで安全に走りこめる空間が出来上がる。
幻想猛獣は飛来した黒鍵に気を取られてシエルに目掛け原子崩しを発射している。
シエルは原子崩しと身体の間に黒鍵を差し込みコンマ数秒の盾にすると
半身だけ身体をずらし射線上を回避する。
その隙にと上条は一気に加速して幻想猛獣との距離を詰める。
再び電撃が放たれるが上条は条件反射の様に右手を突き出して受け止めさらに近付く。
しかし、その僅か50センチ先の足場、そこのアスファルトは表層融解によって粘度が変えられている。
上条があと一歩を踏み出せば脚は沈み、確実に転倒してしまう。
そしてその次の一歩で上条は、
上条「そうはいきませんのことよー!」
跳躍した。
幻想猛獣までの距離約3メートルを一気に飛び越えたのだ。
正確には2メートル60センチ、空中で窒素装甲を殴りつけると幻想猛獣を眼前にブレーキをかける。
上条が直接殴れば幻想猛獣は消えてしまうからだ。
上条「今だ!」
幻想殺しが電撃を打ち消す。
その直前、上条に迫る炎を一本の黒い剣が引き裂いてゆく。
シエルが投擲した黒鍵だ。
シエル「炎だけは何とかしてあげますよ」
上条「サンキュー!」
全ての攻撃をかわしきったことで安全に走りこめる空間が出来上がる。
幻想猛獣は飛来した黒鍵に気を取られてシエルに目掛け原子崩しを発射している。
シエルは原子崩しと身体の間に黒鍵を差し込みコンマ数秒の盾にすると
半身だけ身体をずらし射線上を回避する。
その隙にと上条は一気に加速して幻想猛獣との距離を詰める。
再び電撃が放たれるが上条は条件反射の様に右手を突き出して受け止めさらに近付く。
しかし、その僅か50センチ先の足場、そこのアスファルトは表層融解によって粘度が変えられている。
上条があと一歩を踏み出せば脚は沈み、確実に転倒してしまう。
そしてその次の一歩で上条は、
上条「そうはいきませんのことよー!」
跳躍した。
幻想猛獣までの距離約3メートルを一気に飛び越えたのだ。
正確には2メートル60センチ、空中で窒素装甲を殴りつけると幻想猛獣を眼前にブレーキをかける。
上条が直接殴れば幻想猛獣は消えてしまうからだ。
上条「今だ!」
379: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:05:48.12 ID:7Jg0a9BT0
上条「今だ!」
上条の合図でシエルは神速のスピードで幻想猛獣に接近する。
二歩目から先は宙を駆け表層融解など何の意味も成しはしない。
シエル「これで幕引きです!」
姫神の血の入った試験管を投げつけ、さらに黒鍵で試験管を縦に一刀両断する。
中の血液全てが幻想猛獣に向かって飛び散る。
これで勝利は確定したのだと、
皆がそう思った。
だが――。
飛び散った血液は幻想猛獣にかかってはいなかった。
空中で円を作るように回転して幻想猛獣の目の前で停滞している。
シエル「なっ!?」
上条「水流、操作……!?」
水流操作(ハイドロハンド)のレベル4――。
上条の合図でシエルは神速のスピードで幻想猛獣に接近する。
二歩目から先は宙を駆け表層融解など何の意味も成しはしない。
シエル「これで幕引きです!」
姫神の血の入った試験管を投げつけ、さらに黒鍵で試験管を縦に一刀両断する。
中の血液全てが幻想猛獣に向かって飛び散る。
これで勝利は確定したのだと、
皆がそう思った。
だが――。
飛び散った血液は幻想猛獣にかかってはいなかった。
空中で円を作るように回転して幻想猛獣の目の前で停滞している。
シエル「なっ!?」
上条「水流、操作……!?」
水流操作(ハイドロハンド)のレベル4――。
380: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:13:11.70 ID:7Jg0a9BT0
一方通行「格下が調子に乗ってンじゃねェぞ!?」
次の瞬間、突風が吹き荒れ水流操作によって停滞していた血液を根こそぎかっさらっていく。
突風に飛ばされた血液はきれいな弧を描いて上空に巻き上げられていく。
一方通行「結局はどの能力も俺の足元にもおよ場ねェゴミばっか……」
上条「一方通行!」
一方通行「もォいい加減うんざりなンだよォ。これで終わっとけクソ野郎がああああ!!」
一方通行が掲げた手を真下に下ろすと再び突風が吹き荒れ
血液は風に乗って幻想猛獣へと降り注ぐ。
幻想猛獣は水流操作をより強い力で抑え込まれ、全ての血液をその身に浴びていく。
アァアアァァァアアァァァアアアア!!
幻想猛獣は今までで最も大きな叫び声をあげる。
アアァ、ァアアァ……、アァアアアァアア……
その声もやがて枯れ果てるように弱まっていきその容姿全体に霞がかかりはじめる。
上条「やった、やったんだ……」
シエル「悪夢の終わりですね」
一方通行「ったく、手間かけさせやがって」
次の瞬間、突風が吹き荒れ水流操作によって停滞していた血液を根こそぎかっさらっていく。
突風に飛ばされた血液はきれいな弧を描いて上空に巻き上げられていく。
一方通行「結局はどの能力も俺の足元にもおよ場ねェゴミばっか……」
上条「一方通行!」
一方通行「もォいい加減うんざりなンだよォ。これで終わっとけクソ野郎がああああ!!」
一方通行が掲げた手を真下に下ろすと再び突風が吹き荒れ
血液は風に乗って幻想猛獣へと降り注ぐ。
幻想猛獣は水流操作をより強い力で抑え込まれ、全ての血液をその身に浴びていく。
アァアアァァァアアァァァアアアア!!
幻想猛獣は今までで最も大きな叫び声をあげる。
アアァ、ァアアァ……、アァアアアァアア……
その声もやがて枯れ果てるように弱まっていきその容姿全体に霞がかかりはじめる。
上条「やった、やったんだ……」
シエル「悪夢の終わりですね」
一方通行「ったく、手間かけさせやがって」
381: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:47:36.33 ID:7Jg0a9BT0
「こうもあっさりと負けてしまうなんて……。ほんとに規格外な街でしたね、ここは」
上条「っ!?」
その声は目の前の、今にも消えかかっている幻想猛獣の方から聞こえてきたものだ。
「邪魔です」
パチン。
恐らくは指を弾いた音だろう。
音の直後に幻想猛獣の巨体はばらばらに飛び散りそのまま空気に溶けていったかと思えば、
幻想猛獣のいた中心には風斬氷華が悠然と立っていた。
一方通行「テメェ……、マジで不死身かよ」
再び現れた風斬氷華を前に怯むことなど殺意を剥きだしで語りかける一方通行。
風斬「そうでもありません。もうこの身体も数分と経たずに消滅するでしょう」
シエル「では……」
風斬「あなた方の勝ちですよ、代行者」
上条「っ!?」
その声は目の前の、今にも消えかかっている幻想猛獣の方から聞こえてきたものだ。
「邪魔です」
パチン。
恐らくは指を弾いた音だろう。
音の直後に幻想猛獣の巨体はばらばらに飛び散りそのまま空気に溶けていったかと思えば、
幻想猛獣のいた中心には風斬氷華が悠然と立っていた。
一方通行「テメェ……、マジで不死身かよ」
再び現れた風斬氷華を前に怯むことなど殺意を剥きだしで語りかける一方通行。
風斬「そうでもありません。もうこの身体も数分と経たずに消滅するでしょう」
シエル「では……」
風斬「あなた方の勝ちですよ、代行者」
382: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:48:26.31 ID:7Jg0a9BT0
風斬「せっかく超能力者の街で具現化出来たんですから、
何人かは配下にしておきたかったんですけどね……。
吸血殺し、忌々しい能力です」
敗北宣言の後、誰に語りかけるでもなくタタリは淡々と独り言のように喋り続ける。
風斬「成り立ての死徒ごときでは、吸血殺しの甘い香りに誘われ吸血行為に走ってしまう。
ですから、どうしても先に殺しておきたかったんですけど……、残念です」
ハァと溜息をつきいかにも残念そうな顔をする。
上条「なぁ、お前ら吸血鬼ってのはなんなんだ。なんで血を吸おうとする?」
シエル「君っ!」
風斬「止めるな代行者。エンドロールぐらい好きにやらせて下さいよ……。
なぜ血を吸うか、でしたね。上条さん」
上条は無言でうなずく。
何人かは配下にしておきたかったんですけどね……。
吸血殺し、忌々しい能力です」
敗北宣言の後、誰に語りかけるでもなくタタリは淡々と独り言のように喋り続ける。
風斬「成り立ての死徒ごときでは、吸血殺しの甘い香りに誘われ吸血行為に走ってしまう。
ですから、どうしても先に殺しておきたかったんですけど……、残念です」
ハァと溜息をつきいかにも残念そうな顔をする。
上条「なぁ、お前ら吸血鬼ってのはなんなんだ。なんで血を吸おうとする?」
シエル「君っ!」
風斬「止めるな代行者。エンドロールぐらい好きにやらせて下さいよ……。
なぜ血を吸うか、でしたね。上条さん」
上条は無言でうなずく。
383: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:49:22.76 ID:7Jg0a9BT0
風斬「私たち吸血鬼の吸血行為には大きく分けて三つの意味があります。
一つ目は食事として。上条さんだってお腹すきますよね?
単純に肉や草をかじるよりよっぽど効率的なんですから」
風斬「ふふっ、少し話がそれましたね。
次に二つ目、快楽です。吸血行為って言うのはとっても気持ちがいいんです。
人間のセックスなんて目じゃないくらい、気持ちよすぎて中毒になるくらいに」
風斬「三つ目、配下を作る。血を吸うことでその意志をコントロールできるんですよ。
完全に吸血鬼になるわけじゃないので昼間でも平気だったりいいこともあります。
親の意思を逃れてそのまま成長を続けると完全な吸血鬼になります。
まぁ、そうなる前にお腹がすいた時にでも残りの血も吸っちゃうんですけどね、くすくす」
風斬「と、こんな感じです」
上条「じゃあ、お前も元は人間で他の吸血鬼に血を吸われて……」
そう考えればタタリという吸血鬼もまた吸血鬼の犠牲者である。
そう思うと上条は同情を禁じ得ない様子だった。
一つ目は食事として。上条さんだってお腹すきますよね?
単純に肉や草をかじるよりよっぽど効率的なんですから」
風斬「ふふっ、少し話がそれましたね。
次に二つ目、快楽です。吸血行為って言うのはとっても気持ちがいいんです。
人間のセックスなんて目じゃないくらい、気持ちよすぎて中毒になるくらいに」
風斬「三つ目、配下を作る。血を吸うことでその意志をコントロールできるんですよ。
完全に吸血鬼になるわけじゃないので昼間でも平気だったりいいこともあります。
親の意思を逃れてそのまま成長を続けると完全な吸血鬼になります。
まぁ、そうなる前にお腹がすいた時にでも残りの血も吸っちゃうんですけどね、くすくす」
風斬「と、こんな感じです」
上条「じゃあ、お前も元は人間で他の吸血鬼に血を吸われて……」
そう考えればタタリという吸血鬼もまた吸血鬼の犠牲者である。
そう思うと上条は同情を禁じ得ない様子だった。
384: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 08:49:58.91 ID:7Jg0a9BT0
風斬「あはははは、違いますよ上条さん。
私は望んで、自ら吸血鬼になることを選んだんですから」
上条「え?」
一方通行「あン?」
シエル「……」
風斬「私の目的――大六法って言うんですけど――、
それのためには人間の人生じゃ短すぎたんです。
吸血鬼になれば血を吸い続ける限り永劫の時を生きられます。
だから私は魔術を極め、その果てに吸血鬼となることを選んだ、それだけのことです」
風斬「私の身の上話はこんなところで。もう聞きたいことはないですか?
後一分もしないうちに消えちゃいますよ、私」
上条「……もう、十分だ」
風斬「そうですか。
じゃあ、もしまたどこかで出遭う機会があったら
今度こそ血を吸ってあげますから、期待してて下さいね。
上条さんならきっと強い死徒になれますよ。
そっちのあなたもレベル6だって目じゃないくらいに」
一方通行「けっ、あいにくともォその気はねェよ」
上条「また遭ったとしても何度でも身勝手なその幻想をぶち殺してやるよ」
風斬「フラれちゃいましたか、残念です。一応人類のためなのですが……、くすくす。
そろそろエンドロールもお終いの様です。
それでは人間の皆さま、あなた方のますますの繁栄を願っていますよ――」
タタリはスカートの裾を僅かに摘みあげると、一礼をしてそのまま姿を消してしまった。
私は望んで、自ら吸血鬼になることを選んだんですから」
上条「え?」
一方通行「あン?」
シエル「……」
風斬「私の目的――大六法って言うんですけど――、
それのためには人間の人生じゃ短すぎたんです。
吸血鬼になれば血を吸い続ける限り永劫の時を生きられます。
だから私は魔術を極め、その果てに吸血鬼となることを選んだ、それだけのことです」
風斬「私の身の上話はこんなところで。もう聞きたいことはないですか?
後一分もしないうちに消えちゃいますよ、私」
上条「……もう、十分だ」
風斬「そうですか。
じゃあ、もしまたどこかで出遭う機会があったら
今度こそ血を吸ってあげますから、期待してて下さいね。
上条さんならきっと強い死徒になれますよ。
そっちのあなたもレベル6だって目じゃないくらいに」
一方通行「けっ、あいにくともォその気はねェよ」
上条「また遭ったとしても何度でも身勝手なその幻想をぶち殺してやるよ」
風斬「フラれちゃいましたか、残念です。一応人類のためなのですが……、くすくす。
そろそろエンドロールもお終いの様です。
それでは人間の皆さま、あなた方のますますの繁栄を願っていますよ――」
タタリはスカートの裾を僅かに摘みあげると、一礼をしてそのまま姿を消してしまった。
385: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 09:28:13.73 ID:7Jg0a9BT0
上条「今度こそ、終わったんだな……」
シエル「はい。……今回はお手伝いさせちゃってすみません。
本来、私一人で片付けるべきなのに」
上条「そもそも俺らの街なわけで、上条さんは自分の守りたいものを守っただけのことですよ」
シエル「ふーん(この子、どこか昔の遠野君に似てますね)」
一方通行「終わったンなら俺は帰るぞォ。じゃァなァ」
上条「お、おい、一方通行」
一方通行「それと俺の携帯には今後一切かけてくンじゃねェ、わかったな」
最後にそう言い残すと、一方通行は延長コードを取り外して
そのまま能力を使用して真夜中の学園都市を飛び去っていく。
上条「ったく、行っちまいやがった」
シエル「はい。……今回はお手伝いさせちゃってすみません。
本来、私一人で片付けるべきなのに」
上条「そもそも俺らの街なわけで、上条さんは自分の守りたいものを守っただけのことですよ」
シエル「ふーん(この子、どこか昔の遠野君に似てますね)」
一方通行「終わったンなら俺は帰るぞォ。じゃァなァ」
上条「お、おい、一方通行」
一方通行「それと俺の携帯には今後一切かけてくンじゃねェ、わかったな」
最後にそう言い残すと、一方通行は延長コードを取り外して
そのまま能力を使用して真夜中の学園都市を飛び去っていく。
上条「ったく、行っちまいやがった」
386: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 09:28:40.00 ID:7Jg0a9BT0
シエル「では、私もそろそろ帰るとします」
上条「そうか。お礼の一つもしたいとこだけど、
上条さん、まだ火傷の治療を受けてないもので……イチチ」
シエル「構いませんよ。自分の怪我の方を優先して下さい」
上条「あぁそうだ。カレー好きって聞いたんだけどほんとか?」
シエル「え……、えぇ、まぁ。っていうか誰に聞いたんですか?」
上条「ちょっと知り合いの魔術師に。
それならこの病院の裏手にある公園の自販機でカレーフェスタとかいうのやってたから
よかったら行ってみてくれ。学園都市限定だから」
シエル「あ、ありがとうございます。行ってみますよ、それでは」
上条「あぁ、こっちこそ」
上条「そうか。お礼の一つもしたいとこだけど、
上条さん、まだ火傷の治療を受けてないもので……イチチ」
シエル「構いませんよ。自分の怪我の方を優先して下さい」
上条「あぁそうだ。カレー好きって聞いたんだけどほんとか?」
シエル「え……、えぇ、まぁ。っていうか誰に聞いたんですか?」
上条「ちょっと知り合いの魔術師に。
それならこの病院の裏手にある公園の自販機でカレーフェスタとかいうのやってたから
よかったら行ってみてくれ。学園都市限定だから」
シエル「あ、ありがとうございます。行ってみますよ、それでは」
上条「あぁ、こっちこそ」
387: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 09:30:40.28 ID:7Jg0a9BT0
夜が明けて――。
学園都市にはいくつかの新たな都市伝説が誕生していた。
曰く、学園都市全土で起きた昏睡事件。
曰く、朝起きたら学園都市全ての時計が狂っていた謎。
曰く、全ては新たに誕生したレベル5が原因である。
などなど。
上条たちの頑張りとは無縁と思われることばかり。
こうして、九月十一日に始まった吸血鬼事件に誰知ることもなく終止符がうたれたのだった。
――――――――
アレイスター「ククク、ズェピアのおかげで大幅なプラン短縮を行うことができた」
アレイスター「今日この時、奴が現れることもあらかじめわかっていたこと。
唯一の想定外は姫神秋沙の生存のみ。幻想猛獣の姿を取ることも予想通りだったな」
アレイスター「未現物質は予め隔離しておいたのだから、あれが未現物質を使うことはなかった。
ならば、死ぬこともなくもう少し成長が見込めるかと考えていたがそうそううまくはいかぬものだな」
学園都市にはいくつかの新たな都市伝説が誕生していた。
曰く、学園都市全土で起きた昏睡事件。
曰く、朝起きたら学園都市全ての時計が狂っていた謎。
曰く、全ては新たに誕生したレベル5が原因である。
などなど。
上条たちの頑張りとは無縁と思われることばかり。
こうして、九月十一日に始まった吸血鬼事件に誰知ることもなく終止符がうたれたのだった。
――――――――
アレイスター「ククク、ズェピアのおかげで大幅なプラン短縮を行うことができた」
アレイスター「今日この時、奴が現れることもあらかじめわかっていたこと。
唯一の想定外は姫神秋沙の生存のみ。幻想猛獣の姿を取ることも予想通りだったな」
アレイスター「未現物質は予め隔離しておいたのだから、あれが未現物質を使うことはなかった。
ならば、死ぬこともなくもう少し成長が見込めるかと考えていたがそうそううまくはいかぬものだな」
388: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 09:41:09.50 ID:7Jg0a9BT0
病院裏手の公園、自販機前――。
シエル「カレーおでん、ブラックカレージュース、カレー具沢山、カレーゼリー、
カレーコーヒー微糖、彼のカレー(お米の粒々入り)、炭酸カレーサワー……。
沢山ありますが、なんというかカレーに対する冒とく以外の何物でもありませんねこれは……」
シエル「まぁ、なんだかんだ言って全部2本ずつ買うんですけど」
シエル「っ! 五月蠅いですよセブン! 大体今回のことはあなたの力不足が否めません。
帰ったらたっぷり改造してあげますから覚悟していなさい」
シエル「さて、お金を入れてと、……あれ? ランプが点きませんね。とりあえず一度返却を……」
シエル「!? あれ? で、出てきませんよ!? どういうことですか!?!?!? 私の一万円札!!」
シエル「ふふ、うふふふふふ……、セブン! やりなさい!」
数分後、警備員が駆け付けるとぐちゃぐちゃに壊された自販機が発見される。
犯人は未だ捕まってはいない。
とある魔術のタタリの夜に――、これにて閉幕です。
シエル「カレーおでん、ブラックカレージュース、カレー具沢山、カレーゼリー、
カレーコーヒー微糖、彼のカレー(お米の粒々入り)、炭酸カレーサワー……。
沢山ありますが、なんというかカレーに対する冒とく以外の何物でもありませんねこれは……」
シエル「まぁ、なんだかんだ言って全部2本ずつ買うんですけど」
シエル「っ! 五月蠅いですよセブン! 大体今回のことはあなたの力不足が否めません。
帰ったらたっぷり改造してあげますから覚悟していなさい」
シエル「さて、お金を入れてと、……あれ? ランプが点きませんね。とりあえず一度返却を……」
シエル「!? あれ? で、出てきませんよ!? どういうことですか!?!?!? 私の一万円札!!」
シエル「ふふ、うふふふふふ……、セブン! やりなさい!」
数分後、警備員が駆け付けるとぐちゃぐちゃに壊された自販機が発見される。
犯人は未だ捕まってはいない。
とある魔術のタタリの夜に――、これにて閉幕です。
394: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 19:59:33.06 ID:7Jg0a9BT0
Extra1:
ゴゴゴゴゴゴ……
「な、なんだ! 何が起こっている……」
月の光に世界が赤く染められていく。
上条「月が……赤い?」
シエル「見てください、タタリの姿が……」
「ぐっ、どういうことだ……、この姿はまさか」
タタリは姿を変え、新たなその姿は金髪にマントを羽織った優男のようだった。
「この姿はズェピア・エルトナム・オベローンそのもの……。
そうだ、あの赤い月……あれは遥か二千年後のものではないか!?」
一方通行「なンだ? 様子が変だぞ」
まるで望んでその姿を具現化したのではないと、そういう風にも取れる。
ズェピア「そもそも突然時が流れ夜が更けたことといい、どうなっているこの街は……。
認めない……、このようなことは認めない……。
カット、カット、カットカットカットカットカットカットカットカットカットーーー!!」
――――――――
シエル先輩がいるとはいえガチの吸血鬼相手はまじきついっす
メルブラ本編より何年か経過してる設定ですので先輩も年齢的にきついんです
あくまで存在が不確かであるワラキアの夜が相手だったから勝てた、と
相性的に良かったものと考えてください、少なくとも筆者脳内じゃ無理ゲーだと思ってる
ゴゴゴゴゴゴ……
「な、なんだ! 何が起こっている……」
月の光に世界が赤く染められていく。
上条「月が……赤い?」
シエル「見てください、タタリの姿が……」
「ぐっ、どういうことだ……、この姿はまさか」
タタリは姿を変え、新たなその姿は金髪にマントを羽織った優男のようだった。
「この姿はズェピア・エルトナム・オベローンそのもの……。
そうだ、あの赤い月……あれは遥か二千年後のものではないか!?」
一方通行「なンだ? 様子が変だぞ」
まるで望んでその姿を具現化したのではないと、そういう風にも取れる。
ズェピア「そもそも突然時が流れ夜が更けたことといい、どうなっているこの街は……。
認めない……、このようなことは認めない……。
カット、カット、カットカットカットカットカットカットカットカットカットーーー!!」
――――――――
シエル先輩がいるとはいえガチの吸血鬼相手はまじきついっす
メルブラ本編より何年か経過してる設定ですので先輩も年齢的にきついんです
あくまで存在が不確かであるワラキアの夜が相手だったから勝てた、と
相性的に良かったものと考えてください、少なくとも筆者脳内じゃ無理ゲーだと思ってる
395: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/15(日) 20:00:13.88 ID:7Jg0a9BT0
Extra2:
風斬「このままでは、どうやっても勝てそうにありませんね。仕方ありません」
上条(あの魔術師強い……、一方的に押してる。これなら勝てる!)
風斬「えいっ、静脈に秘密注射です♪」
シエル「な――――、え……?」
風斬「あぁ……、熱い、身体が熱いですぅ、上条さぁん……」
一方通行「お前、一体何を……」
熱を帯びた吐息を吐く風斬氷華から怪しい音が聞こえてきて――。
上条「なっ!?」
シエル「はい?」
一方通行「はあァァァ?」
三者三様に疑問の声をあげるのも無理はない。
なぜなら風斬氷華が目の前で巨大化してしまったのだから。
G風斬「あはははははは、みーんな踏み潰しちゃいますよ~!」
――――――――
全長約70メートル、今宵の幻想ここに極まれり
無理です、真祖の姫君相手にするぐらい無理です
幻想殺しで触れれば一時的に消えますけど、家屋と掴んで叩きつけられたらどうしようもない
一方通行以外がマジで空気(最悪肉片)になるし、コンセントとか手当たり次第にぶっ壊されます
風斬「このままでは、どうやっても勝てそうにありませんね。仕方ありません」
上条(あの魔術師強い……、一方的に押してる。これなら勝てる!)
風斬「えいっ、静脈に秘密注射です♪」
シエル「な――――、え……?」
風斬「あぁ……、熱い、身体が熱いですぅ、上条さぁん……」
一方通行「お前、一体何を……」
熱を帯びた吐息を吐く風斬氷華から怪しい音が聞こえてきて――。
上条「なっ!?」
シエル「はい?」
一方通行「はあァァァ?」
三者三様に疑問の声をあげるのも無理はない。
なぜなら風斬氷華が目の前で巨大化してしまったのだから。
G風斬「あはははははは、みーんな踏み潰しちゃいますよ~!」
――――――――
全長約70メートル、今宵の幻想ここに極まれり
無理です、真祖の姫君相手にするぐらい無理です
幻想殺しで触れれば一時的に消えますけど、家屋と掴んで叩きつけられたらどうしようもない
一方通行以外がマジで空気(最悪肉片)になるし、コンセントとか手当たり次第にぶっ壊されます
414: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/19(木) 21:27:56.24 ID:8VYCcX/J0
おやおや、皆さんもうお帰りですか?
劇はもうしばらく続きます。
裏方たちの繰り広げる喜劇の物語、
第二幕、とある科学のタタリの昼に、開幕です。
劇はもうしばらく続きます。
裏方たちの繰り広げる喜劇の物語、
第二幕、とある科学のタタリの昼に、開幕です。
415: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/19(木) 22:23:15.35 ID:8VYCcX/J0
九月十四日夕刻――。
とあるランジェリーショップの前で少女が空を眺めている。
少女の目線の先にはモニターが取り付けられた飛行船が浮かんでいた。
そのモニターはとあるニュース番組を映しているようだ。
TOPICS:米スペースシャトル打ち上げ成功
白井「お姉さま?」
店内から下着を手にしたまま出てきたのは少女の後輩だ。
白井はお姉さまと声をかけた人物、御坂の視線を追って同じく飛行船へと目を移す。
白井「……最近多いですわよね、確かフランスとロシア、スペインも打ち上げましたし」
宇宙に埋蔵金でも埋まってるんでしょうか、なんて茶化した言い方をする。
御坂「さぁね。それより、あんたは早く買い物済ませなさいよ。あんたの趣味に付き合うの結構恥ずかしいんだから」
白井「この際お姉さまも常盤台のエースとしてもっと大人びた下着を」
もう何度したかもわからない会話を繰り返そうとしたその時、
白井の携帯がピロピロと着信音を鳴らした。
白井「お姉さまと憩いの時間を邪魔するなんて、一体どこのどなたですの?」
心底めんどくさそうに携帯を取り出し通話ボタンを押す。
白井「もしもし? あぁ、初春ですの。……強盗? そんなものは警備員(アンチスキル)に任せておけば……。
第二十三学区? あの航空宇宙関連の……」
とあるランジェリーショップの前で少女が空を眺めている。
少女の目線の先にはモニターが取り付けられた飛行船が浮かんでいた。
そのモニターはとあるニュース番組を映しているようだ。
TOPICS:米スペースシャトル打ち上げ成功
白井「お姉さま?」
店内から下着を手にしたまま出てきたのは少女の後輩だ。
白井はお姉さまと声をかけた人物、御坂の視線を追って同じく飛行船へと目を移す。
白井「……最近多いですわよね、確かフランスとロシア、スペインも打ち上げましたし」
宇宙に埋蔵金でも埋まってるんでしょうか、なんて茶化した言い方をする。
御坂「さぁね。それより、あんたは早く買い物済ませなさいよ。あんたの趣味に付き合うの結構恥ずかしいんだから」
白井「この際お姉さまも常盤台のエースとしてもっと大人びた下着を」
もう何度したかもわからない会話を繰り返そうとしたその時、
白井の携帯がピロピロと着信音を鳴らした。
白井「お姉さまと憩いの時間を邪魔するなんて、一体どこのどなたですの?」
心底めんどくさそうに携帯を取り出し通話ボタンを押す。
白井「もしもし? あぁ、初春ですの。……強盗? そんなものは警備員(アンチスキル)に任せておけば……。
第二十三学区? あの航空宇宙関連の……」
416: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/19(木) 22:24:39.25 ID:8VYCcX/J0
しばらくして電話を切った黒子は見るからに沈んで見えた。
白井は御坂に二、三度頭を下げた後、店内に戻り手に持っていた下着を元の場所に戻すとまた慌しく店から出てくる。
白井「申し訳ありません、お姉さま。折角付き合っていただいたのに」
御坂「もういいわよ。それより今日は早めに帰ってきなさい。夜になったら天気が崩れる“かも”知れないから」
白井「はい、ですの……」
白井はその何気ない言葉のやり取りにどこか違和感を覚えていた。
その違和感の正体はわからないままだったが、二人は別れ黒子は風紀委員(ジャッジメント)の詰所へと足を向ける。
――――――――
――――
――
白井が風紀委員の詰所に到着すると、同僚の初春が出迎えてくれた。
若干の無駄話を挟み、状況の確認。
強盗犯が奪っていったのは機密性が高く宇宙の苛酷な環境にも耐えられるアタッシュケースらしい。
いろいろと推測を巡らせてみたが、最終的に白井が初春のナビで強盗犯を追い取り返してみればいいということで落ち着いた。
途中、なぜか信号機のトラブルが発生するという、白井たちにとっては幸運な出来事により
ほどなくして強盗犯グループを発見した白井が路地裏に入ったところで奇襲を仕掛ける。
白井「どっせーい!!」
黒服A「うわ、なんだ!?」
白井は脚を折りたたんだ状態で空中にテレポートすると
アタッシュケースを持って一番後ろを走っていた黒服の男にドロップキックを放つ。
当然、そんなものを受けた男は勢い余って転倒してしまう。
黒服B「何ッ!?」
男の叫び声を聞き、他数名の黒服たちが一斉に振り返る。
だが、彼らが目視したときには白井の指はアタッシュケースに触れており、
次の瞬間にはアタッシュケースを持ったままテレポートで振り向いた黒服たちのそのまた後ろへと移動する。
黒服C「くそっ、テレポートか!」
白井「こっちですわよ」
白井の姿を見失った黒服たちに、白井は挑発するように声をかける。
黒服D「こいつ!」
何の躊躇もなく懐から拳銃を取り出した黒服たちは銃口を白井へと狙いを定めようとする。
しかし、テレポーター相手にそれでは遅すぎた。
黒服たちが狙いをつけるより早く、またしても空中へとテレポートし二度目のドロップキックを放つ。
二人ほどまとめて転倒させると、すかさず服の端へとテレポートさせた鉄心で地面へと縫い付けてしまう。
続けて、もう一人同様にして地面に縫い付けるが残った二人はその場から逃走してしまう。
その場に打ち捨てられた拳銃を見れば、その古臭さから外部の人間だろうということが推測できた。
白井は御坂に二、三度頭を下げた後、店内に戻り手に持っていた下着を元の場所に戻すとまた慌しく店から出てくる。
白井「申し訳ありません、お姉さま。折角付き合っていただいたのに」
御坂「もういいわよ。それより今日は早めに帰ってきなさい。夜になったら天気が崩れる“かも”知れないから」
白井「はい、ですの……」
白井はその何気ない言葉のやり取りにどこか違和感を覚えていた。
その違和感の正体はわからないままだったが、二人は別れ黒子は風紀委員(ジャッジメント)の詰所へと足を向ける。
――――――――
――――
――
白井が風紀委員の詰所に到着すると、同僚の初春が出迎えてくれた。
若干の無駄話を挟み、状況の確認。
強盗犯が奪っていったのは機密性が高く宇宙の苛酷な環境にも耐えられるアタッシュケースらしい。
いろいろと推測を巡らせてみたが、最終的に白井が初春のナビで強盗犯を追い取り返してみればいいということで落ち着いた。
途中、なぜか信号機のトラブルが発生するという、白井たちにとっては幸運な出来事により
ほどなくして強盗犯グループを発見した白井が路地裏に入ったところで奇襲を仕掛ける。
白井「どっせーい!!」
黒服A「うわ、なんだ!?」
白井は脚を折りたたんだ状態で空中にテレポートすると
アタッシュケースを持って一番後ろを走っていた黒服の男にドロップキックを放つ。
当然、そんなものを受けた男は勢い余って転倒してしまう。
黒服B「何ッ!?」
男の叫び声を聞き、他数名の黒服たちが一斉に振り返る。
だが、彼らが目視したときには白井の指はアタッシュケースに触れており、
次の瞬間にはアタッシュケースを持ったままテレポートで振り向いた黒服たちのそのまた後ろへと移動する。
黒服C「くそっ、テレポートか!」
白井「こっちですわよ」
白井の姿を見失った黒服たちに、白井は挑発するように声をかける。
黒服D「こいつ!」
何の躊躇もなく懐から拳銃を取り出した黒服たちは銃口を白井へと狙いを定めようとする。
しかし、テレポーター相手にそれでは遅すぎた。
黒服たちが狙いをつけるより早く、またしても空中へとテレポートし二度目のドロップキックを放つ。
二人ほどまとめて転倒させると、すかさず服の端へとテレポートさせた鉄心で地面へと縫い付けてしまう。
続けて、もう一人同様にして地面に縫い付けるが残った二人はその場から逃走してしまう。
その場に打ち捨てられた拳銃を見れば、その古臭さから外部の人間だろうということが推測できた。
417: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/19(木) 22:27:31.88 ID:8VYCcX/J0
黒子はハァ、と一つ溜め息をついてアタッシュケースへと腰掛ける。
とりあえず強盗犯の捕縛と奪われたものを取り返したことを初春に連絡しようと携帯を取り出す。
丁度その時、タイミングよくピロピロと着信音が鳴り響く。
そのタイミングのよさから初春が監視カメラでこちらの様子でも伺っていたのかと思い通話ボタンを押し携帯を耳に当てる。
白井「もしもし、初春ですの?」
御坂『あぁ、黒子? ちょっと頼みがあるんだけど』
白井「お姉さま? えーとそれが」
御坂『まだ仕事中だった? ごめんごめん、邪魔しちゃったわね』
白井「いえ、それで頼みごとというのは?」
御坂『なんか部屋の抜き打ち検査があるって後輩に聞いてさ、私の私物隠しといてくれないかなーって』
白井「……お姉さまもまだ外に?」
御坂『まぁいいわ、他の子にあたってみるから。
あんたも早く帰ってきなさいよ、今夜から明日いっぱい雨“かも”って話だから。じゃあね』
白井「お、お姉さま!?」
心配するだけして電話は切られてしまった。
最後の問いかけには答えてもらえず、ランジェリーショップの前で分かれる時にした違和感をまたしても感じていた。
魚の骨がのどにつっかえたような気分の悪さだが、今はそんなことよりも――。
白井「キィーッ! お姉さまが私以外の子に頼みごとなんて許せませんのー!」
至極私的なことで悶え声を荒げる白井だったが、次の瞬間に突如として浮遊感を味わうことになる。
そしてその浮遊感の原因が腰掛けていたアタッシュケースが“消えた”ことによるものだと気付いたのは、
地面に倒れこんで硬く冷たいアスファルトで頭をぶつけた後だった。
とりあえず強盗犯の捕縛と奪われたものを取り返したことを初春に連絡しようと携帯を取り出す。
丁度その時、タイミングよくピロピロと着信音が鳴り響く。
そのタイミングのよさから初春が監視カメラでこちらの様子でも伺っていたのかと思い通話ボタンを押し携帯を耳に当てる。
白井「もしもし、初春ですの?」
御坂『あぁ、黒子? ちょっと頼みがあるんだけど』
白井「お姉さま? えーとそれが」
御坂『まだ仕事中だった? ごめんごめん、邪魔しちゃったわね』
白井「いえ、それで頼みごとというのは?」
御坂『なんか部屋の抜き打ち検査があるって後輩に聞いてさ、私の私物隠しといてくれないかなーって』
白井「……お姉さまもまだ外に?」
御坂『まぁいいわ、他の子にあたってみるから。
あんたも早く帰ってきなさいよ、今夜から明日いっぱい雨“かも”って話だから。じゃあね』
白井「お、お姉さま!?」
心配するだけして電話は切られてしまった。
最後の問いかけには答えてもらえず、ランジェリーショップの前で分かれる時にした違和感をまたしても感じていた。
魚の骨がのどにつっかえたような気分の悪さだが、今はそんなことよりも――。
白井「キィーッ! お姉さまが私以外の子に頼みごとなんて許せませんのー!」
至極私的なことで悶え声を荒げる白井だったが、次の瞬間に突如として浮遊感を味わうことになる。
そしてその浮遊感の原因が腰掛けていたアタッシュケースが“消えた”ことによるものだと気付いたのは、
地面に倒れこんで硬く冷たいアスファルトで頭をぶつけた後だった。
418: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/19(木) 22:28:37.75 ID:8VYCcX/J0
白井「イタタ……、一体何が。ッツ!?」
鈍い痛みを覚えた頭を片手で擦ろうと手を頭の上にやろうとした直後、
頭の鈍痛をはるかに上回る痛みが右肩を襲う。
肩に目をやれば痛みの原因が、いつの間にか突き刺さったコルク抜きの鉄部分だと言うことがわかる。
原因を確認したところでゆっくりと身を起こし、先ほどまではいなかったその人物へとしっかり目を据える。
白井「何者、ですの」
白井の前に立っていたのは『さらし』を巻いただけの上半身とその上からブレザーを羽織っただけという異様な格好をした少女だった。
その少女は、白井の問いには答えずただクスリと笑うだけ。
たったそれだけのことで直感的に彼女がどういった人物なのか思い当たる。
白井「テレポーター、ですのね」
「あら、もうお気付き? さすが同系統の能力者は理解が早いわね。
私の能力は座標移動(ムーブポイント)、不出来な空間移動(アナタ)と違って物体に触れる必要がないのよ。
どう? 素晴らしいでしょう、風紀委員活動第一七七支部の白井黒子さん」
まさに優越感に浸ってますといった感じの少女は、またクスリと笑って空中に腰を下ろす。
少女が腰を下ろそうとした場所には何もない。
であれば、当然のことながら後ろに倒れ先ほどの白井と同様に後頭部を打ち付けることになる。
「っっったあああ!?」
よほど想定外のことだったのか、少女は頭を抑え跳ねるように飛び起きる。
そして、自分が腰を下ろそうとした場所に目を向け何もないことを確認するとキョロキョロと辺りを見回し始める。
わけのわからない行動に白井はどう動いたものかと困惑気味だ。
そんな白井に少女は声をかける。
「ちょっとあんた! 残骸(レムナント)をどこへやったのよ!」
白井「は? れむ……なんですのそれは?」
聞き覚えのない単語に肩を抑えたまま可愛らしく頭を傾ける。
「とぼけてんじゃないわよ! さっきのアタッシュケースのことよ!」
どうやらレムナントとはさっきのアタッシュケースのことらしい。
しかし、どちらにしろ身に覚えのない話に白井は今度は逆側へと頭を傾ける。
白井「もしかして、転移座標を間違えたんですの?」
「!?!?!?」
白井の言葉に少女は目に見えてうろたえてみせる。
その様子に見ていて飽きが来ないな、などと思ってみたり。
しばらく目を閉じ熟考していたかと思うとカッと両の目を見開き、一言。
「覚えてらっしゃい!!」
そう言い残すと、手に持っていた軍用警棒を一度振り黒服たちをどこかへ座標移動させ、
もう一度軍用警棒を振り今度は少女自身が座標移動してそこには白井だけが残されることになる。
白井「いったいなんなんですの……」
鈍い痛みを覚えた頭を片手で擦ろうと手を頭の上にやろうとした直後、
頭の鈍痛をはるかに上回る痛みが右肩を襲う。
肩に目をやれば痛みの原因が、いつの間にか突き刺さったコルク抜きの鉄部分だと言うことがわかる。
原因を確認したところでゆっくりと身を起こし、先ほどまではいなかったその人物へとしっかり目を据える。
白井「何者、ですの」
白井の前に立っていたのは『さらし』を巻いただけの上半身とその上からブレザーを羽織っただけという異様な格好をした少女だった。
その少女は、白井の問いには答えずただクスリと笑うだけ。
たったそれだけのことで直感的に彼女がどういった人物なのか思い当たる。
白井「テレポーター、ですのね」
「あら、もうお気付き? さすが同系統の能力者は理解が早いわね。
私の能力は座標移動(ムーブポイント)、不出来な空間移動(アナタ)と違って物体に触れる必要がないのよ。
どう? 素晴らしいでしょう、風紀委員活動第一七七支部の白井黒子さん」
まさに優越感に浸ってますといった感じの少女は、またクスリと笑って空中に腰を下ろす。
少女が腰を下ろそうとした場所には何もない。
であれば、当然のことながら後ろに倒れ先ほどの白井と同様に後頭部を打ち付けることになる。
「っっったあああ!?」
よほど想定外のことだったのか、少女は頭を抑え跳ねるように飛び起きる。
そして、自分が腰を下ろそうとした場所に目を向け何もないことを確認するとキョロキョロと辺りを見回し始める。
わけのわからない行動に白井はどう動いたものかと困惑気味だ。
そんな白井に少女は声をかける。
「ちょっとあんた! 残骸(レムナント)をどこへやったのよ!」
白井「は? れむ……なんですのそれは?」
聞き覚えのない単語に肩を抑えたまま可愛らしく頭を傾ける。
「とぼけてんじゃないわよ! さっきのアタッシュケースのことよ!」
どうやらレムナントとはさっきのアタッシュケースのことらしい。
しかし、どちらにしろ身に覚えのない話に白井は今度は逆側へと頭を傾ける。
白井「もしかして、転移座標を間違えたんですの?」
「!?!?!?」
白井の言葉に少女は目に見えてうろたえてみせる。
その様子に見ていて飽きが来ないな、などと思ってみたり。
しばらく目を閉じ熟考していたかと思うとカッと両の目を見開き、一言。
「覚えてらっしゃい!!」
そう言い残すと、手に持っていた軍用警棒を一度振り黒服たちをどこかへ座標移動させ、
もう一度軍用警棒を振り今度は少女自身が座標移動してそこには白井だけが残されることになる。
白井「いったいなんなんですの……」
421: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 10:56:44.52 ID:4acUqOqH0
私、佐天涙子は本日絶好調である。
朝のテレビの占いに始まり、授業で当てられた時もちゃんと答えられたし、
ジュースを買えば当たりが出てでもう一本。
身体検査(システムスキャン)ではなんと能力が発現!
結構珍しい能力らしくって学校が終わった後木山先生のところで詳しく調べてもらって、今はその帰りなのだ。
佐天「しかもなんとレベル5! 私もびっくりしたなー」アハハ
レベルはまだわかってなかったけど、能力が発現したってことで初春が「お祝いしましょう!」って言いだして、
これから初春の寮でお泊りパーティ。
佐天「今日はほんと運がいいっていうかなんていうか。私を中心に世界が回ってるんじゃないか、って疑いたくなるよ。
今なら私は世界の王にすらなれる!なんてねー」
これでもう一つ何かいいことでもあれば本気で世界征服考えちゃおっかなぁ。
ヒュン!
佐天「ん? なんか変な音が、」
ゴン!ゴトン!
佐天「ぃったあああ!?!? 何なのよもう……、ってアタッシュケース? これが落ちてきたの?」
見上げてみるが周囲に高い建物などは一切ない。
遥か上空からなら私の首が折れてるだろうし、一体どこから?
佐天「とりあえず、落し物ってことでいいのかな。蓋は……鍵が閉まってるのか。
風紀委員にでも持ってくべきなんだろうけど、今日はもう遅いしなぁ。ってそうだ!」
そうそう、私ってば丁度風紀委員のところに向かってるところじゃない。
佐天「初春に渡しとけばいいよね。……でも、これ何が入ってるのかなぁ」
――――――――
――――
――
朝のテレビの占いに始まり、授業で当てられた時もちゃんと答えられたし、
ジュースを買えば当たりが出てでもう一本。
身体検査(システムスキャン)ではなんと能力が発現!
結構珍しい能力らしくって学校が終わった後木山先生のところで詳しく調べてもらって、今はその帰りなのだ。
佐天「しかもなんとレベル5! 私もびっくりしたなー」アハハ
レベルはまだわかってなかったけど、能力が発現したってことで初春が「お祝いしましょう!」って言いだして、
これから初春の寮でお泊りパーティ。
佐天「今日はほんと運がいいっていうかなんていうか。私を中心に世界が回ってるんじゃないか、って疑いたくなるよ。
今なら私は世界の王にすらなれる!なんてねー」
これでもう一つ何かいいことでもあれば本気で世界征服考えちゃおっかなぁ。
ヒュン!
佐天「ん? なんか変な音が、」
ゴン!ゴトン!
佐天「ぃったあああ!?!? 何なのよもう……、ってアタッシュケース? これが落ちてきたの?」
見上げてみるが周囲に高い建物などは一切ない。
遥か上空からなら私の首が折れてるだろうし、一体どこから?
佐天「とりあえず、落し物ってことでいいのかな。蓋は……鍵が閉まってるのか。
風紀委員にでも持ってくべきなんだろうけど、今日はもう遅いしなぁ。ってそうだ!」
そうそう、私ってば丁度風紀委員のところに向かってるところじゃない。
佐天「初春に渡しとけばいいよね。……でも、これ何が入ってるのかなぁ」
――――――――
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――
422: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 10:58:23.78 ID:4acUqOqH0
佐天「初春ー、いるー?」ガチャリ
初春「はい、そうです。恐らくそっちかその隣の学区が怪しいでしょう――」
佐天「ありゃ? 電話中かぁ。とりあえず、玄関で待ってるとしますか」
相手は白井さんみたいだけど、風紀委員関係の電話かな?
家に帰っても仕事だなんて熱心だね初春は。
初春「――わかりました、絶対に生きて帰ってきて下さいね……」
佐天「初春ー? 電話終わったー?」オーイ
初春「ふぇ!? さ、佐天さんいつの間に……」
佐天「ついさっきだよ。さっきの電話って風紀委員の? 大変だね」
初春「はい。白井さんが無茶しなきゃいいんですけど……、とりあえず上がって下さい」スリッパドウゾ
佐天「白井さんが? なんか面倒な事件でも起きたの?」スリッパアリガト
ゴロゴロゴロ……
初春「機密情報なんで詳しくは言えませんけど、かなり危ないと思います」
佐天「そっかぁ、白井さんってば正義感強いからなぁ」
ゴロゴロゴロ……
初春「……」
初春「はい、そうです。恐らくそっちかその隣の学区が怪しいでしょう――」
佐天「ありゃ? 電話中かぁ。とりあえず、玄関で待ってるとしますか」
相手は白井さんみたいだけど、風紀委員関係の電話かな?
家に帰っても仕事だなんて熱心だね初春は。
初春「――わかりました、絶対に生きて帰ってきて下さいね……」
佐天「初春ー? 電話終わったー?」オーイ
初春「ふぇ!? さ、佐天さんいつの間に……」
佐天「ついさっきだよ。さっきの電話って風紀委員の? 大変だね」
初春「はい。白井さんが無茶しなきゃいいんですけど……、とりあえず上がって下さい」スリッパドウゾ
佐天「白井さんが? なんか面倒な事件でも起きたの?」スリッパアリガト
ゴロゴロゴロ……
初春「機密情報なんで詳しくは言えませんけど、かなり危ないと思います」
佐天「そっかぁ、白井さんってば正義感強いからなぁ」
ゴロゴロゴロ……
初春「……」
423: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 10:59:38.50 ID:4acUqOqH0
初春「あの、佐天さん?」
佐天「何? 初春」
ゴロゴロ、ピタ。
初春「その大きな荷物は何ですか?」
佐天「へ? あ、これ? なんか上から突然落ちてきてさぁ。頭の上にゴンって。痛かったんだよー」
初春「あ、頭の上に!? 落し物ってことですか?」
佐天「わからない、周りには建物なんてなかったし、人もいなかったし。
とりあえず、風紀委員の初春のところに持ってこうって思って」
初春「へー、不思議な話ですねぇ……、ってあれ!? これってもしかして?!」ガバッ
佐天「ど、どうしたの初春!?」ビクッ
初春「」ジー…
佐天「」ゴクリ
初春「二十三学区のエンブレム、やっぱり……」ボソッ
佐天「何かわかった?」
初春「はい、お手柄ですよ、佐天さん! とりあえず白井さんに連絡しないと!」カチャ
佐天「おー、なんか知らないけど、お手柄らしいぞ私!」ヤッタネ
:
:
:
初春「うーん……出ませんねぇ、電源切ってるみたいです。留守伝にメッセージだけ残しときましょう」ア、ウイハルデス…
佐天「何? 初春」
ゴロゴロ、ピタ。
初春「その大きな荷物は何ですか?」
佐天「へ? あ、これ? なんか上から突然落ちてきてさぁ。頭の上にゴンって。痛かったんだよー」
初春「あ、頭の上に!? 落し物ってことですか?」
佐天「わからない、周りには建物なんてなかったし、人もいなかったし。
とりあえず、風紀委員の初春のところに持ってこうって思って」
初春「へー、不思議な話ですねぇ……、ってあれ!? これってもしかして?!」ガバッ
佐天「ど、どうしたの初春!?」ビクッ
初春「」ジー…
佐天「」ゴクリ
初春「二十三学区のエンブレム、やっぱり……」ボソッ
佐天「何かわかった?」
初春「はい、お手柄ですよ、佐天さん! とりあえず白井さんに連絡しないと!」カチャ
佐天「おー、なんか知らないけど、お手柄らしいぞ私!」ヤッタネ
:
:
:
初春「うーん……出ませんねぇ、電源切ってるみたいです。留守伝にメッセージだけ残しときましょう」ア、ウイハルデス…
424: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 11:00:34.95 ID:4acUqOqH0
佐天「ねぇ、初春……。これって何が入ってるの?」
初春「えーと、それはちょっと……」
佐天「えー、いいじゃーん。私が拾ってきたんだから教えてよー」
初春「駄目ですよー、とてもじゃないですが口外出来ないことなんですから」
佐天「むー、初春の意地悪ー。いいもん、勝手に開けちゃうんだから」
初春「無理です。専用の鍵が必要ですし加えて10数桁のパスワードもあります。
その上、宇宙でも耐えられるようなケースですからとっても頑丈で壊すこともできませんよ」
佐天「絶対?」
初春「絶対です!」
佐天「言ったなー。今日の私はとっても運がいいんだから、今日の私にできないことなんてない!」
初春は知らないんだ、私がレベル5になったこと。
今の私はレベル5、私の超能力を持ってすればこんなケースは……。
佐天「この鍵の部分に手を当てて~」ムムムム…
初春「無理ですって、もう。……そういえば、佐天さん。
木山先生のところで詳しい検査してもらったんですよね? 佐天さんの能力って、」
バキリッ!
初春「えっ!?」
佐天「ふぅ、こんなもんかなぁ」ガチャリ
初春「あ、開いてる……、いったいどうやって……」ポカーン
佐天「どうよ初春。これが私の能力、時間加速(タイムアクセル)の力だ!」チナミニレベル5ダヨ
初春「えぇええええええええええええぇぇぇ!?!?!?!?!」
初春「えーと、それはちょっと……」
佐天「えー、いいじゃーん。私が拾ってきたんだから教えてよー」
初春「駄目ですよー、とてもじゃないですが口外出来ないことなんですから」
佐天「むー、初春の意地悪ー。いいもん、勝手に開けちゃうんだから」
初春「無理です。専用の鍵が必要ですし加えて10数桁のパスワードもあります。
その上、宇宙でも耐えられるようなケースですからとっても頑丈で壊すこともできませんよ」
佐天「絶対?」
初春「絶対です!」
佐天「言ったなー。今日の私はとっても運がいいんだから、今日の私にできないことなんてない!」
初春は知らないんだ、私がレベル5になったこと。
今の私はレベル5、私の超能力を持ってすればこんなケースは……。
佐天「この鍵の部分に手を当てて~」ムムムム…
初春「無理ですって、もう。……そういえば、佐天さん。
木山先生のところで詳しい検査してもらったんですよね? 佐天さんの能力って、」
バキリッ!
初春「えっ!?」
佐天「ふぅ、こんなもんかなぁ」ガチャリ
初春「あ、開いてる……、いったいどうやって……」ポカーン
佐天「どうよ初春。これが私の能力、時間加速(タイムアクセル)の力だ!」チナミニレベル5ダヨ
初春「えぇええええええええええええぇぇぇ!?!?!?!?!」
425: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 11:01:20.54 ID:4acUqOqH0
――――――――
初春「つまり物の時間を進める力ですか、しかもレベル5の……。なんかもうどこから驚いていいやら……」
佐天「ちょっとこの鍵の部分の時間を100億倍ぐらい加速させて見ました」
初春「100億って簡単に言いますけど、一瞬で何世紀も経ってますよ!?」ソリャコワレル
佐天「で、この機械の部品っぽいのなんなの? 初春」
初春「今日の佐天さん、とことん自由ですね。わかりました、教えますよ」
佐天「やったー、初春愛してるー♪」
初春「調子いいんだから……。これはですね、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の中枢です」
佐天「へ? それってあのすんごいコンピューターだっけ? 人工衛星と一緒に打ち上げられた」
初春「そうです。けどそれがここにある、おかしいと思いません?」
佐天「そうだよね、宇宙にあるものが何でこんなところに。もしかしてまた新しい奴作ったってこと?」
初春「いいえ、違います。これは本来宇宙にあるはずのもの」
佐天「それってまさか」
初春「壊されていたんです。7月28日に何ものかに地上から迎撃されて」
佐天「いやいや、もしほんとならニュースにでもなってるはずでしょ!?」
初春「逆ですよ、こんなこと公表できるわけありません」
佐天「ぐっ、確かに」
初春「それに最近、天気予報がはずれることってよくあると思いませんか?」
佐天「うーん、そういえばこの前も雨って言ってたのに降らなかったことあったよね」
初春「樹形図の設計者は表向きは完全な天気予報を行うものです。それがはずれるなんてありえませんよ」
佐天「ってことはこれ、本物なんだ……」
初春「だからそう言ってるじゃないですか」
初春「つまり物の時間を進める力ですか、しかもレベル5の……。なんかもうどこから驚いていいやら……」
佐天「ちょっとこの鍵の部分の時間を100億倍ぐらい加速させて見ました」
初春「100億って簡単に言いますけど、一瞬で何世紀も経ってますよ!?」ソリャコワレル
佐天「で、この機械の部品っぽいのなんなの? 初春」
初春「今日の佐天さん、とことん自由ですね。わかりました、教えますよ」
佐天「やったー、初春愛してるー♪」
初春「調子いいんだから……。これはですね、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の中枢です」
佐天「へ? それってあのすんごいコンピューターだっけ? 人工衛星と一緒に打ち上げられた」
初春「そうです。けどそれがここにある、おかしいと思いません?」
佐天「そうだよね、宇宙にあるものが何でこんなところに。もしかしてまた新しい奴作ったってこと?」
初春「いいえ、違います。これは本来宇宙にあるはずのもの」
佐天「それってまさか」
初春「壊されていたんです。7月28日に何ものかに地上から迎撃されて」
佐天「いやいや、もしほんとならニュースにでもなってるはずでしょ!?」
初春「逆ですよ、こんなこと公表できるわけありません」
佐天「ぐっ、確かに」
初春「それに最近、天気予報がはずれることってよくあると思いませんか?」
佐天「うーん、そういえばこの前も雨って言ってたのに降らなかったことあったよね」
初春「樹形図の設計者は表向きは完全な天気予報を行うものです。それがはずれるなんてありえませんよ」
佐天「ってことはこれ、本物なんだ……」
初春「だからそう言ってるじゃないですか」
426: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 11:02:37.30 ID:4acUqOqH0
初春「正直、こんなの知ってるってだけで裏の世界の人に狙われてもおかしくありませんよ」
佐天「そんな、裏の世界って厨二病くさいことを……」マダチュウイチダケド
初春「……」ムゴン
佐天「え、まじで?」
初春「……」コクリ
佐天「よ、よーし。聞かなかったことにしよう! そして初春も言わなかったことにしよう!」ネ?
初春「蓋開けちゃったじゃないですか……」
佐天「うわぁ、そうだよ、開けちゃったよ~。どうすんのよ私~!」アタマカカエ
初春「佐天さんはいつもいつも後先考えなさ過ぎなんですよ」
佐天「そんなこと今更言われたってー! あーもう、こうなったー!!」
初春「こうなったら?」
佐天「……してやる」ボソリ
初春「はい?」
佐天「学園都市を 征 服 してやるー!!!」ドーン!
初春「はい~~~!?」
佐天「そんな、裏の世界って厨二病くさいことを……」マダチュウイチダケド
初春「……」ムゴン
佐天「え、まじで?」
初春「……」コクリ
佐天「よ、よーし。聞かなかったことにしよう! そして初春も言わなかったことにしよう!」ネ?
初春「蓋開けちゃったじゃないですか……」
佐天「うわぁ、そうだよ、開けちゃったよ~。どうすんのよ私~!」アタマカカエ
初春「佐天さんはいつもいつも後先考えなさ過ぎなんですよ」
佐天「そんなこと今更言われたってー! あーもう、こうなったー!!」
初春「こうなったら?」
佐天「……してやる」ボソリ
初春「はい?」
佐天「学園都市を 征 服 してやるー!!!」ドーン!
初春「はい~~~!?」
427: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/21(土) 11:03:06.83 ID:4acUqOqH0
初春「佐天さん、落ち着いて下さい! そんな無茶苦茶なこと」
佐天「今日の私はとっても調子がいいのよ! 何だってできる! きっと学園都市の征服ぐらい簡単に!」
初春「できるわけありませんって! いくらレベル5になったからって一人でそんなこと!」
佐天「一人じゃないもん!」
初春「えっ?」
佐天「初春も共犯だもん! 私と一緒に征服するのよ!」
初春「状況的に共犯と言われても仕方ないですけど、私そんなこと」
佐天「いいの? 私言っちゃうよ? 初春が秘密にしてること」
初春「ちょちょ、ちょっと、一体なんのことですか!?」
佐天「木山先生に聞いちゃったんだからね、初春のこと」
初春「木山先生……まさか」
佐天「初春って巷じゃ守護神(ゲートキーパー)って呼ばれてるんだよね?」
初春「そ、そうですね、知られちゃいましたかー、困ったなー(棒読み)」
佐天「けどそれさえも仮の姿、本当は」
初春「」ゴクリ
佐天「――――なんだよね」ヒソヒソ
初春「ッ!!」
佐天「手伝ってくれるよね? 初春」
初春「……はい」
ああ、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
佐天さんと一緒に学園都市を征服することになるなんて……。
佐天「今日の私はとっても調子がいいのよ! 何だってできる! きっと学園都市の征服ぐらい簡単に!」
初春「できるわけありませんって! いくらレベル5になったからって一人でそんなこと!」
佐天「一人じゃないもん!」
初春「えっ?」
佐天「初春も共犯だもん! 私と一緒に征服するのよ!」
初春「状況的に共犯と言われても仕方ないですけど、私そんなこと」
佐天「いいの? 私言っちゃうよ? 初春が秘密にしてること」
初春「ちょちょ、ちょっと、一体なんのことですか!?」
佐天「木山先生に聞いちゃったんだからね、初春のこと」
初春「木山先生……まさか」
佐天「初春って巷じゃ守護神(ゲートキーパー)って呼ばれてるんだよね?」
初春「そ、そうですね、知られちゃいましたかー、困ったなー(棒読み)」
佐天「けどそれさえも仮の姿、本当は」
初春「」ゴクリ
佐天「――――なんだよね」ヒソヒソ
初春「ッ!!」
佐天「手伝ってくれるよね? 初春」
初春「……はい」
ああ、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
佐天さんと一緒に学園都市を征服することになるなんて……。
431: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:24:02.49 ID:cHGjgLc00
とある工事現場――。
御坂「出てきなさい、卑怯者!」
爆発音を聞きつけてそこへやってきた白井は、
どこにいるかわからない相手に、辺りに響く大きめの声で語りかけている御坂の姿を見つける。
結標「今日はずいぶんと焦っているようね。そんなに残骸を組みなおされるのが怖い?
それとも実験を再開される方、かしらね」
御坂の呼びかけに応え、姿を現したのはレベル4の空間転移能力者、結標淡希こと座標移動。
このとき白井は、彼女のことを初春に調べさせ名前をはじめとしていくつかの情報を得ていた。
結標「あんなの放っておけばいいじゃない、元々そのために作られたんだし」
御坂「あんた、本気で言ってんの!?」
結標の物言いに怒りをあらわにする御坂は、八つ当たりのように空気中へ電撃を放出している。
結標「ただ、今私があなたに追われる理由はないと思うわ。だって私は残骸を持っていないもの」
御坂「そんな見え透いた嘘、誰が信じるものですか!」
結標「本当のことなんだけどねぇ。あなた、人の話を聞かないってよく言われるでしょ?」
御坂「黙りなさい!」
結標を一喝する声に呼応して、御坂から再び電撃が放出される。
御坂「私はムカついてる。頭の血管がブチ切れそうなくらいムカついてるわ!
あの馬鹿、私が気づかないとでも思ったのかしら、ドア越しの声を聞いただけでもあんなに……、あんなにひどい」
白井(お姉さま……)
御坂は気づいていたのだ。
一度、怪我の応急処置をするために寮に戻ったとき、ドア越しに交わした会話。
たったそれだけのことで、白井の痛み、苦しみを察していた。
御坂「出てきなさい、卑怯者!」
爆発音を聞きつけてそこへやってきた白井は、
どこにいるかわからない相手に、辺りに響く大きめの声で語りかけている御坂の姿を見つける。
結標「今日はずいぶんと焦っているようね。そんなに残骸を組みなおされるのが怖い?
それとも実験を再開される方、かしらね」
御坂の呼びかけに応え、姿を現したのはレベル4の空間転移能力者、結標淡希こと座標移動。
このとき白井は、彼女のことを初春に調べさせ名前をはじめとしていくつかの情報を得ていた。
結標「あんなの放っておけばいいじゃない、元々そのために作られたんだし」
御坂「あんた、本気で言ってんの!?」
結標の物言いに怒りをあらわにする御坂は、八つ当たりのように空気中へ電撃を放出している。
結標「ただ、今私があなたに追われる理由はないと思うわ。だって私は残骸を持っていないもの」
御坂「そんな見え透いた嘘、誰が信じるものですか!」
結標「本当のことなんだけどねぇ。あなた、人の話を聞かないってよく言われるでしょ?」
御坂「黙りなさい!」
結標を一喝する声に呼応して、御坂から再び電撃が放出される。
御坂「私はムカついてる。頭の血管がブチ切れそうなくらいムカついてるわ!
あの馬鹿、私が気づかないとでも思ったのかしら、ドア越しの声を聞いただけでもあんなに……、あんなにひどい」
白井(お姉さま……)
御坂は気づいていたのだ。
一度、怪我の応急処置をするために寮に戻ったとき、ドア越しに交わした会話。
たったそれだけのことで、白井の痛み、苦しみを察していた。
432: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:25:21.94 ID:cHGjgLc00
御坂「ええ、私はムカついてるわよ。完璧すぎて馬鹿馬鹿しい後輩と、目の前のクズと。
何よりこの状況を作り出した私自身にねー!!」
結標「甘ったるいほどに優しいのね。自分も被害者だって嘆いていれば戦わないでも済んだのに。
なんにせよ私はここで捕まるわけにはいかない。どんな手を使ってもでもね」
御坂「逃げ切れると思う。あんたの手の内は、もうお見通しなのよ!」
御坂は狙いをつけやすいよう右手を振り上げて電撃を放つ体勢をとる。
当たれば一瞬で意識を刈り取れるように調整されたその電撃だが、
それが放たれる前に結標は軍用警防を軽く振ると目の前に何人かの人間を座標移動させる。
御坂「そんなスッカスカな盾で!」
結標「さて、問題。この中に関係ない一般人は何人混じっているでしょうか?」
御坂「ッ!」
直前まで座標移動で現れた人間もまとめて電撃を叩き込むつもりだったが、
『関係ない一般人』が混じっている、そう可能性を示唆されただけで手が止まってしまう。
どさり、と壁にされた人間たちが地面に落ちる。
その時には結標はすでに自身を座標移動して姿をくらました後だった。
残されたのは、悔しそうに歯噛みする御坂美琴ただ一人だった。
何よりこの状況を作り出した私自身にねー!!」
結標「甘ったるいほどに優しいのね。自分も被害者だって嘆いていれば戦わないでも済んだのに。
なんにせよ私はここで捕まるわけにはいかない。どんな手を使ってもでもね」
御坂「逃げ切れると思う。あんたの手の内は、もうお見通しなのよ!」
御坂は狙いをつけやすいよう右手を振り上げて電撃を放つ体勢をとる。
当たれば一瞬で意識を刈り取れるように調整されたその電撃だが、
それが放たれる前に結標は軍用警防を軽く振ると目の前に何人かの人間を座標移動させる。
御坂「そんなスッカスカな盾で!」
結標「さて、問題。この中に関係ない一般人は何人混じっているでしょうか?」
御坂「ッ!」
直前まで座標移動で現れた人間もまとめて電撃を叩き込むつもりだったが、
『関係ない一般人』が混じっている、そう可能性を示唆されただけで手が止まってしまう。
どさり、と壁にされた人間たちが地面に落ちる。
その時には結標はすでに自身を座標移動して姿をくらました後だった。
残されたのは、悔しそうに歯噛みする御坂美琴ただ一人だった。
433: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:25:48.61 ID:cHGjgLc00
白井(どうやらここから先は私の出番のようです)
テレポーターを追えるのはテレポーターだけ。
能力が似通っているということは自分だけの現実(パーソナルリアリティ)、果ては思考パターンも似通っているということ。
もし自分が同じ立場であればどこへ移動するのか。
白井(さぁいきますわよ白井黒子。必ず帰ってくるために。戦場の一番奥へと)
おおよその当たりをつけそこへ移動するための演算を開始する。
ゆっくりと立ち上がり、今一度、自分を思ってくれる優しい姉の姿を目に焼き付けようとそっと覗き込む。
カランカラン。
白井「あら?」
その音は足元にあった空き缶が転がった音。
どうやら足をぶつけてしまったのが原因らしい。
御坂「そこかあああアアアァァ!!!」
空き缶の音に過敏に反応した御坂は振り向きざまに電撃を放つ。
白井「ぇ……」
白井が隠れていたのは薄い鉄製の壁一枚のみ。
鉄は電気を通すため……。
白井「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、お゙お゙お゙ね゙え゙さ ま゙あ゙あ゙あ゙!!」
見事通電。
御坂「ちょ、その声はまさか……、黒子おおぉ!?」
テレポーターを追えるのはテレポーターだけ。
能力が似通っているということは自分だけの現実(パーソナルリアリティ)、果ては思考パターンも似通っているということ。
もし自分が同じ立場であればどこへ移動するのか。
白井(さぁいきますわよ白井黒子。必ず帰ってくるために。戦場の一番奥へと)
おおよその当たりをつけそこへ移動するための演算を開始する。
ゆっくりと立ち上がり、今一度、自分を思ってくれる優しい姉の姿を目に焼き付けようとそっと覗き込む。
カランカラン。
白井「あら?」
その音は足元にあった空き缶が転がった音。
どうやら足をぶつけてしまったのが原因らしい。
御坂「そこかあああアアアァァ!!!」
空き缶の音に過敏に反応した御坂は振り向きざまに電撃を放つ。
白井「ぇ……」
白井が隠れていたのは薄い鉄製の壁一枚のみ。
鉄は電気を通すため……。
白井「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、お゙お゙お゙ね゙え゙さ ま゙あ゙あ゙あ゙!!」
見事通電。
御坂「ちょ、その声はまさか……、黒子おおぉ!?」
434: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:27:09.05 ID:cHGjgLc00
デパートのレストランの窓から向かいの道路を覗き込む一つの影。
結標「どうやら見当違いの方へ向かったようね」
結標は座標移動で逃げ込んだその場所から、そっと周囲を伺っていたが御坂の姿は見当たらない。
結標「私自身はテレポートしないと考えてたみたいだけど、残念だったわね」
結標は二年前にカリキュラムにおいて演算ミスから大怪我を負ったことがある。
そのことがトラウマとなり今でも自分自身に能力を使うことを躊躇う傾向があった。
軍用警棒を振っているのも自分だけの現実をより強固なものにし、補うためなのだ。
しかしながら、自身を座標移動することができないわけではないため、このように逃げることも不可能ではない。
ただ、その弊害として軽い吐き気を覚え連続で使用すれば確実に嘔吐する自信があると、結標本人は自負している。
結標「とにもかくにも、残骸を見つけ出さないとね……」
結標は外部の協力者に対し、こう報告していた。
『私の存在に気づいた風紀委員のテレポーターが、私に能力で奪われる前にあらぬ所へ飛ばしてしまった』、と。
悪いのは元々残骸を運んでいた奴らで自身には非はないという言い訳に、協力者は若干訝しんでいたが
下っ端連中を使いどうにか見つけるからそれまでは身体を休めておけとの指示が受けていた。
結標はその指示に従い適当な仮宿を探して徒歩での移動を開始する。
結標「どうやら見当違いの方へ向かったようね」
結標は座標移動で逃げ込んだその場所から、そっと周囲を伺っていたが御坂の姿は見当たらない。
結標「私自身はテレポートしないと考えてたみたいだけど、残念だったわね」
結標は二年前にカリキュラムにおいて演算ミスから大怪我を負ったことがある。
そのことがトラウマとなり今でも自分自身に能力を使うことを躊躇う傾向があった。
軍用警棒を振っているのも自分だけの現実をより強固なものにし、補うためなのだ。
しかしながら、自身を座標移動することができないわけではないため、このように逃げることも不可能ではない。
ただ、その弊害として軽い吐き気を覚え連続で使用すれば確実に嘔吐する自信があると、結標本人は自負している。
結標「とにもかくにも、残骸を見つけ出さないとね……」
結標は外部の協力者に対し、こう報告していた。
『私の存在に気づいた風紀委員のテレポーターが、私に能力で奪われる前にあらぬ所へ飛ばしてしまった』、と。
悪いのは元々残骸を運んでいた奴らで自身には非はないという言い訳に、協力者は若干訝しんでいたが
下っ端連中を使いどうにか見つけるからそれまでは身体を休めておけとの指示が受けていた。
結標はその指示に従い適当な仮宿を探して徒歩での移動を開始する。
435: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:28:19.60 ID:cHGjgLc00
翌日、昼――。
初春と佐天の二人は、二人の通う中学校の屋上で昼食を食べていた。
初春「佐天さん、本気でやるんですか?」
佐天「もち!」
初春「うーん、やっぱりやめた方……」
佐天「だって、向こうはもう動き出してるんでしょ?」
初春「うっ、えぇ……はい」ショボン
佐天「昨日の今日だって言うのに見つかるの早すぎでしょ」ハァ
初春「猟犬部隊(ハウンドドッグ)とかいうのがすでに動いてるらしくて、今日の放課後にでも襲ってくるかと」
佐天「そう考えると、暢気に学校なんかきてていいのかなぁ、なんて思うよね」
初春「この日常も今日で終わりなんですねぇ」シミジミ
佐天「隙アリ! 初春のクリームパン一口もーらい」パクッ
初春「あー、一口って半分くらいなくなってるじゃないですかー、ひどいですよ佐天さーん」
佐天「お詫びと言っては何だけど、世界を征服した暁には世界の半分をくれてやろう」
初春「世界!? 学園都市で終わりじゃないんですか?!」エッ!?
佐天「やだなぁ、冗談じゃん初春。でも、学園都市の次は世界ってのも面白そうだよね」ウフフ
初春「そういうのなんていうか知ってますか? 取らぬ狸の皮算用って言うんですよ」シラー
キーンコーンカーン……
佐天「お昼も終わりかぁ。残り半日の学生生活、満喫するとしますかー」ヨッシ
初春「やっぱり不安ですー」
初春と佐天の二人は、二人の通う中学校の屋上で昼食を食べていた。
初春「佐天さん、本気でやるんですか?」
佐天「もち!」
初春「うーん、やっぱりやめた方……」
佐天「だって、向こうはもう動き出してるんでしょ?」
初春「うっ、えぇ……はい」ショボン
佐天「昨日の今日だって言うのに見つかるの早すぎでしょ」ハァ
初春「猟犬部隊(ハウンドドッグ)とかいうのがすでに動いてるらしくて、今日の放課後にでも襲ってくるかと」
佐天「そう考えると、暢気に学校なんかきてていいのかなぁ、なんて思うよね」
初春「この日常も今日で終わりなんですねぇ」シミジミ
佐天「隙アリ! 初春のクリームパン一口もーらい」パクッ
初春「あー、一口って半分くらいなくなってるじゃないですかー、ひどいですよ佐天さーん」
佐天「お詫びと言っては何だけど、世界を征服した暁には世界の半分をくれてやろう」
初春「世界!? 学園都市で終わりじゃないんですか?!」エッ!?
佐天「やだなぁ、冗談じゃん初春。でも、学園都市の次は世界ってのも面白そうだよね」ウフフ
初春「そういうのなんていうか知ってますか? 取らぬ狸の皮算用って言うんですよ」シラー
キーンコーンカーン……
佐天「お昼も終わりかぁ。残り半日の学生生活、満喫するとしますかー」ヨッシ
初春「やっぱり不安ですー」
436: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/23(月) 06:29:01.61 ID:cHGjgLc00
さてさて、昨晩とんでもない宣言をした佐天さんでしたが、
冗談でもなんでもなく本気で学園都市の征服を行うつもりみたいです。
かくいう私も共犯者として、すでにいろいろと準備をさせられて……、とほほ。
ただ、準備と言っても樹形図の設計者の残骸をパソコンと接続して、徹夜でプログラムを組んだだけ。
確かに佐天さんの言う方法なら学園都市を征服することも不可能じゃないと思います。
でも、都市征服って……厨二病は想像の中だから楽しいのであって現実でやるのはさすがに怖いです。
できるものなら残骸なんて郵送(代引き)で学園都市上層部に送りつけてなかったことにしたいんですが、
猟犬部隊さんは襲ってくるんでしょうねー、しくしく。
Dead or Conquer.
死ぬか、征服するかだなんて……、私ってば不幸ですうぅぅ。
冗談でもなんでもなく本気で学園都市の征服を行うつもりみたいです。
かくいう私も共犯者として、すでにいろいろと準備をさせられて……、とほほ。
ただ、準備と言っても樹形図の設計者の残骸をパソコンと接続して、徹夜でプログラムを組んだだけ。
確かに佐天さんの言う方法なら学園都市を征服することも不可能じゃないと思います。
でも、都市征服って……厨二病は想像の中だから楽しいのであって現実でやるのはさすがに怖いです。
できるものなら残骸なんて郵送(代引き)で学園都市上層部に送りつけてなかったことにしたいんですが、
猟犬部隊さんは襲ってくるんでしょうねー、しくしく。
Dead or Conquer.
死ぬか、征服するかだなんて……、私ってば不幸ですうぅぅ。
441: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/25(水) 01:03:32.15 ID:ywbmnuto0
放課後、校門――。
佐天「この校門を出た瞬間から私たちの非日常が始まるのね……」ウフフ
初春「うー、佐天さん楽しんでませんか? 捕まったら殺されるかもしれないんですよ?」ワカッテマス?
佐天「うーん、確かにそうなんだけどさー。なんていうかまるでアニメや漫画の主人公みたいじゃない?」
初春「捕まったら物語冒頭に出てくるようなただの都市伝説の一説で終わっちゃいますよぅ」メソメソ
佐天「初春はネガティブだなぁ、もう後戻りできないんだし諦めてポジティブにいこうよ!」
初春「せめてもう少し緊張感持って下さいよ……」
佐天「わかったわかった、さぁ行くよ初春ー」テクテク
初春「ぜんぜんわかってないじゃないですかー」トテテ
ゴロゴロゴロ……
――――――――
デニス「こちらデニス、対象が校門を出た。残骸を持って風紀委員の詰所へ向かっている模様」
ナンシー『こちらナンシー、追跡して人通りの少ないA地点で路地裏へ追い込め』
デニス「了解」
佐天「この校門を出た瞬間から私たちの非日常が始まるのね……」ウフフ
初春「うー、佐天さん楽しんでませんか? 捕まったら殺されるかもしれないんですよ?」ワカッテマス?
佐天「うーん、確かにそうなんだけどさー。なんていうかまるでアニメや漫画の主人公みたいじゃない?」
初春「捕まったら物語冒頭に出てくるようなただの都市伝説の一説で終わっちゃいますよぅ」メソメソ
佐天「初春はネガティブだなぁ、もう後戻りできないんだし諦めてポジティブにいこうよ!」
初春「せめてもう少し緊張感持って下さいよ……」
佐天「わかったわかった、さぁ行くよ初春ー」テクテク
初春「ぜんぜんわかってないじゃないですかー」トテテ
ゴロゴロゴロ……
――――――――
デニス「こちらデニス、対象が校門を出た。残骸を持って風紀委員の詰所へ向かっている模様」
ナンシー『こちらナンシー、追跡して人通りの少ないA地点で路地裏へ追い込め』
デニス「了解」
442: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/25(水) 01:04:47.93 ID:ywbmnuto0
ゴロゴロゴロ……
初春「……」カチャカチャ
佐天「……」カチャカチャ
――――――――
デニス「なぁマイク、あいつらずっと携帯いじっててまったく会話しねぇんだ」
マイク「今時の中学生なんてそんなもんじゃないのか。それよりもうすぐポイントに到達するぞ」
デニス「あぁ、わかってる」
――――――――
from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: 絶対振り向かないで下さいね
追手が二人います。恐らく猟犬部隊です。
from: 佐天涙子
to: 初春飾利
sub: Re:絶対振り向かないで下さいね
んじゃそこの路地裏にでもはいろっか。
P.S.サブタイトルって前振り?
from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: Re:Re:絶対振り向かないで下さいね
わかりました(/-T)シクシク
あと振りじゃありませんからね!
初春「……」カチャカチャ
佐天「……」カチャカチャ
――――――――
デニス「なぁマイク、あいつらずっと携帯いじっててまったく会話しねぇんだ」
マイク「今時の中学生なんてそんなもんじゃないのか。それよりもうすぐポイントに到達するぞ」
デニス「あぁ、わかってる」
――――――――
from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: 絶対振り向かないで下さいね
追手が二人います。恐らく猟犬部隊です。
from: 佐天涙子
to: 初春飾利
sub: Re:絶対振り向かないで下さいね
んじゃそこの路地裏にでもはいろっか。
P.S.サブタイトルって前振り?
from: 初春飾利
to: 佐天涙子
sub: Re:Re:絶対振り向かないで下さいね
わかりました(/-T)シクシク
あと振りじゃありませんからね!
443: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/25(水) 01:06:54.58 ID:ywbmnuto0
マイク「なっ!? こちらマイク、対象がA地点の一つ手前の路地裏へ入った」
ナンシー『予定とは異なるが用は一目につかなければいい。捕縛後D地点へ移動しろ。
無能力者の中学生二人に手こずる事は許されないぞ』
マイク「了解した。ヒュー、JC相手とかお兄さんテンション上がっちゃうよー」フヒヒ
デニス「落ち着けよロリコン、もし逃がしたら木原さんにぶっ殺されるんだぞ」
マイク「大丈夫、問題ない」キリッ
デニス「ほんとかよ……。行くぞ」
――――――――
マイク「お嬢ちゃんたち、こんなとこ歩いてるとスキルアウトに狙われちゃうよ」
二人に声をかけたのは猟犬部隊のマイクと呼ばれていた男だ。
その手には小型の拳銃のようなものが握られていて照準はすでに初春に合わせられている。
その隣には同じく猟犬部隊のデニスと呼ばれていた男が、マイクと同じものを佐天に向けている。
声をかけられた佐天と初春は、ぴくっと肩を震わせそっと後ろを振り向く。
足が止まっているその隙に猟犬部隊の二人はトリガーを引く。
小型拳銃から勢いよく発射されたのは銀色に光る細い針、
これは対象に突き刺さると電撃が流れる拳銃型のスタンガンなのだ。
対象との距離は僅かに5メートル足らず、使い慣れたその武器が目標を逸れることはない。
発射された針は二人の首筋に目掛け真っ直ぐに飛んでいく。
しかし、その針は二人を目前にして何かに弾かれ落下する。
マイク「なっ!?」
思わぬ出来事に目を剥く二人。
マイクは何が起こったのか理解できず驚愕している。
同じく言葉もなく驚愕しているデニスだが、彼が驚いたのは針が弾かれたことにではない。
デニス(この状況で笑ってやがる、だと……?)
振り向いた無能力者の中学生二人――、
暗い路地裏で誰かもわからない相手に声をかけられたというのに彼女らは口元を歪め笑っていたのだ。
ナンシー『予定とは異なるが用は一目につかなければいい。捕縛後D地点へ移動しろ。
無能力者の中学生二人に手こずる事は許されないぞ』
マイク「了解した。ヒュー、JC相手とかお兄さんテンション上がっちゃうよー」フヒヒ
デニス「落ち着けよロリコン、もし逃がしたら木原さんにぶっ殺されるんだぞ」
マイク「大丈夫、問題ない」キリッ
デニス「ほんとかよ……。行くぞ」
――――――――
マイク「お嬢ちゃんたち、こんなとこ歩いてるとスキルアウトに狙われちゃうよ」
二人に声をかけたのは猟犬部隊のマイクと呼ばれていた男だ。
その手には小型の拳銃のようなものが握られていて照準はすでに初春に合わせられている。
その隣には同じく猟犬部隊のデニスと呼ばれていた男が、マイクと同じものを佐天に向けている。
声をかけられた佐天と初春は、ぴくっと肩を震わせそっと後ろを振り向く。
足が止まっているその隙に猟犬部隊の二人はトリガーを引く。
小型拳銃から勢いよく発射されたのは銀色に光る細い針、
これは対象に突き刺さると電撃が流れる拳銃型のスタンガンなのだ。
対象との距離は僅かに5メートル足らず、使い慣れたその武器が目標を逸れることはない。
発射された針は二人の首筋に目掛け真っ直ぐに飛んでいく。
しかし、その針は二人を目前にして何かに弾かれ落下する。
マイク「なっ!?」
思わぬ出来事に目を剥く二人。
マイクは何が起こったのか理解できず驚愕している。
同じく言葉もなく驚愕しているデニスだが、彼が驚いたのは針が弾かれたことにではない。
デニス(この状況で笑ってやがる、だと……?)
振り向いた無能力者の中学生二人――、
暗い路地裏で誰かもわからない相手に声をかけられたというのに彼女らは口元を歪め笑っていたのだ。
444: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/25(水) 01:08:19.88 ID:ywbmnuto0
デニス「くそっ!」
咄嗟に再びトリガーを引くが、先ほどと同じように発射された針は何かに弾かれた後重力に引かれ落下する。
マイク「無能力者じゃなかったのかよ!?」
事前に与えられていた情報と異なる今の状況に、怒りの声をあげる。
初春は右手を残骸の取っ手から手を離し呆然と立ち尽くす猟犬部隊に向けた後、左手で携帯のボタンを押す。
すると、初春の右手からは電撃が放出され猟犬部隊の二人を襲う。
マイク「ぐああぁぁ」
デニス「うぐおおぉ」
猟犬部隊は短い悲鳴をあげた後、どさりと倒れ完全に沈黙した。
佐天「初春、ちょっとやりすぎなんじゃないの?」ウヒョー
初春「電流は低めに抑えましたから、大丈夫ですよ」タブン
佐天「んー、まいっか。ふははは、無能力者をなめるからこうなるのだー」ヤー
初春「超能力者が何言ってるんですか、まったくもう。
……この先にスキルアウトが溜まり場にしてる廃工場がありますからそこへ行きましょう」トテテ
佐天「りょーかーい」テクテク
ゴロゴロゴロ……
咄嗟に再びトリガーを引くが、先ほどと同じように発射された針は何かに弾かれた後重力に引かれ落下する。
マイク「無能力者じゃなかったのかよ!?」
事前に与えられていた情報と異なる今の状況に、怒りの声をあげる。
初春は右手を残骸の取っ手から手を離し呆然と立ち尽くす猟犬部隊に向けた後、左手で携帯のボタンを押す。
すると、初春の右手からは電撃が放出され猟犬部隊の二人を襲う。
マイク「ぐああぁぁ」
デニス「うぐおおぉ」
猟犬部隊は短い悲鳴をあげた後、どさりと倒れ完全に沈黙した。
佐天「初春、ちょっとやりすぎなんじゃないの?」ウヒョー
初春「電流は低めに抑えましたから、大丈夫ですよ」タブン
佐天「んー、まいっか。ふははは、無能力者をなめるからこうなるのだー」ヤー
初春「超能力者が何言ってるんですか、まったくもう。
……この先にスキルアウトが溜まり場にしてる廃工場がありますからそこへ行きましょう」トテテ
佐天「りょーかーい」テクテク
ゴロゴロゴロ……
445: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/25(水) 01:08:58.24 ID:ywbmnuto0
――――――――
結標淡希は人気もない暗がりの路地裏を足早に歩いていた。
彼女は協力者からの連絡を受けとある廃工場に向かっているのだ。
情報によれば風紀委員の中学生が残骸を拾ったらしく、友人とともにそれを持って風紀委員の詰所に移動する途中、
学園都市の暗部組織に襲われその中学生たちは件の廃工場へ逃げ込んだという。
結標「無能力者だっていうし、とっくに捕まって残骸も回収されてそうだけど……」
なんの力も持たないただの中学生が暗部組織に狙われて無事なはずがない。
その中学生たちがどれだけ時間稼ぎをできるかはわからないが、いまだ立てこもっているのが理想。
最悪のケースは残骸は持ちされれ何の痕跡も残されていないことだ。
いくつかの可能性を考慮しながら歩き続けると路地裏から抜けひらけた場所に出てくる。
結標「ハァ、手遅れだったみたいね」
同時に廃工場が目に飛び込んできたが思わず落胆の声をあげる。
その理由は廃工場の扉が大きく開かれていたからに他ならない。
結標「まだ暖かい死体でも残ってるといいんだけど」
廃工場の扉が開いていると言うことは、暗部組織が中へと進入してしまったと言うこと。
まともに対峙すればただの中学生など拳銃の一発で沈黙させられてしまっていることだろう。
できるだけ多くの情報が残されていることを期待してその工場の中へと足を運ぶ結標だったが、
目の前に広がっていた光景に思わず言葉を失う。
結標「……これは、一体?」
そこにあったのは、倒れた人、人、人……。
恐らくは暗部組織の一員と思われる彼らがなぜこんなところで倒れているのか。
予想外の出来事で硬直し、結標はその場に呆然と立ち尽くす。
初春「あれ? もしかして結標淡希さんですか?」
結標「ッ!?」
突如かけられた声に完全に脱力していた結標はハッとして我に返る。
咄嗟に手にしていた軍用警棒構えて声のした方へと意識を向けると同時に
周囲にある座標移動でテレポートさせられそうなものを視界の端へ押さえておく。
初春「お待ちしてました。けど、思ったより早かったですね」
廃棄された工場の中には何もない。
声の主はその工場の奥の方に友人と思われる黒髪の少女とともに立っていた。
結標(ぇ、何あの頭……)
彼女を見た瞬間、結標の脳裏には某国の鉢植えから人の頭が生えた某ゲームが過ぎったという。
結標淡希は人気もない暗がりの路地裏を足早に歩いていた。
彼女は協力者からの連絡を受けとある廃工場に向かっているのだ。
情報によれば風紀委員の中学生が残骸を拾ったらしく、友人とともにそれを持って風紀委員の詰所に移動する途中、
学園都市の暗部組織に襲われその中学生たちは件の廃工場へ逃げ込んだという。
結標「無能力者だっていうし、とっくに捕まって残骸も回収されてそうだけど……」
なんの力も持たないただの中学生が暗部組織に狙われて無事なはずがない。
その中学生たちがどれだけ時間稼ぎをできるかはわからないが、いまだ立てこもっているのが理想。
最悪のケースは残骸は持ちされれ何の痕跡も残されていないことだ。
いくつかの可能性を考慮しながら歩き続けると路地裏から抜けひらけた場所に出てくる。
結標「ハァ、手遅れだったみたいね」
同時に廃工場が目に飛び込んできたが思わず落胆の声をあげる。
その理由は廃工場の扉が大きく開かれていたからに他ならない。
結標「まだ暖かい死体でも残ってるといいんだけど」
廃工場の扉が開いていると言うことは、暗部組織が中へと進入してしまったと言うこと。
まともに対峙すればただの中学生など拳銃の一発で沈黙させられてしまっていることだろう。
できるだけ多くの情報が残されていることを期待してその工場の中へと足を運ぶ結標だったが、
目の前に広がっていた光景に思わず言葉を失う。
結標「……これは、一体?」
そこにあったのは、倒れた人、人、人……。
恐らくは暗部組織の一員と思われる彼らがなぜこんなところで倒れているのか。
予想外の出来事で硬直し、結標はその場に呆然と立ち尽くす。
初春「あれ? もしかして結標淡希さんですか?」
結標「ッ!?」
突如かけられた声に完全に脱力していた結標はハッとして我に返る。
咄嗟に手にしていた軍用警棒構えて声のした方へと意識を向けると同時に
周囲にある座標移動でテレポートさせられそうなものを視界の端へ押さえておく。
初春「お待ちしてました。けど、思ったより早かったですね」
廃棄された工場の中には何もない。
声の主はその工場の奥の方に友人と思われる黒髪の少女とともに立っていた。
結標(ぇ、何あの頭……)
彼女を見た瞬間、結標の脳裏には某国の鉢植えから人の頭が生えた某ゲームが過ぎったという。
452: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:32:16.83 ID:2TFYHFVz0
結標(いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないでしょ)
一瞬関係のないことに意識を奪われそうになったが自身が置かれている異様な状況を改めて把握しようとする。
工場の内部はおよそ20m×16mの敷地に天井までの距離が5mぐらい。
空間移動能力を持つ彼女にとって空間把握は呼吸をするぐらい簡単なこと。
両目でしかと目視さえできればこの程度の体積は10cmの誤差もないことだろう。
そしてその床に散らばるのは軍隊を連想させる特殊な服に身を包んだ、意識を失っているであろう人間たち。
ぴくりとも動かないそれらが生きているのかさえわからない。
結標(こいつらは暗部の人間でしょうけど……、それが17人も倒れてるなんて)
それにこちらの名前を知られているというは非常にまずい。
おそらくは名前だけでなく結標の能力や強度、下手をすればトラウマのことも知られていることだろう。
結標「無能力者が襲われてるって聞いて助けにきてあげたんだけど、襲われたのはこの人たちの方なのかしら?」
数を数えるついでにそれぞれの服の状態を確認しつつ、それについての答えを少女たちへ問いかける。
もちろん明確な回答を期待しているわけではない。
これは状況を分析するためのただの時間稼ぎだ。
初春「襲われたのは紛れもなく私たちの方ですよ、結標さん。
そしてこの人たちに対して私たちは何の能力も使用していません」
結標「そうなの? じゃあこの人たちは仲間内で同士討ちでもしたのかしら?」
結標(焼け焦げたような跡、壁に何かを叩きつけたような人型の凹み、鋭利なもので切り裂いた様な跡もあるわね。
何が、『何の能力も使用していない』よ。恐らくはどちらかが発火能力、もう一人は空力操作かしらね)
初春「さぁ? それはどうでしょうか?」
結標(何にせよ、真正面から戦う必要はないわね。残骸はあっちのガーデニング娘が持ってる。
それを私の手元に座標移動して私自身も座標移動すればこの子たちは追ってこられない……)
佐天「それより、私たち結標さんに聞きたいことあるんですよ」
結標「残念だけど私急いでるのよ。悪いけど失礼させてもらうわ」
結標(残骸を、座標移動ッ!)クイッ
一瞬関係のないことに意識を奪われそうになったが自身が置かれている異様な状況を改めて把握しようとする。
工場の内部はおよそ20m×16mの敷地に天井までの距離が5mぐらい。
空間移動能力を持つ彼女にとって空間把握は呼吸をするぐらい簡単なこと。
両目でしかと目視さえできればこの程度の体積は10cmの誤差もないことだろう。
そしてその床に散らばるのは軍隊を連想させる特殊な服に身を包んだ、意識を失っているであろう人間たち。
ぴくりとも動かないそれらが生きているのかさえわからない。
結標(こいつらは暗部の人間でしょうけど……、それが17人も倒れてるなんて)
それにこちらの名前を知られているというは非常にまずい。
おそらくは名前だけでなく結標の能力や強度、下手をすればトラウマのことも知られていることだろう。
結標「無能力者が襲われてるって聞いて助けにきてあげたんだけど、襲われたのはこの人たちの方なのかしら?」
数を数えるついでにそれぞれの服の状態を確認しつつ、それについての答えを少女たちへ問いかける。
もちろん明確な回答を期待しているわけではない。
これは状況を分析するためのただの時間稼ぎだ。
初春「襲われたのは紛れもなく私たちの方ですよ、結標さん。
そしてこの人たちに対して私たちは何の能力も使用していません」
結標「そうなの? じゃあこの人たちは仲間内で同士討ちでもしたのかしら?」
結標(焼け焦げたような跡、壁に何かを叩きつけたような人型の凹み、鋭利なもので切り裂いた様な跡もあるわね。
何が、『何の能力も使用していない』よ。恐らくはどちらかが発火能力、もう一人は空力操作かしらね)
初春「さぁ? それはどうでしょうか?」
結標(何にせよ、真正面から戦う必要はないわね。残骸はあっちのガーデニング娘が持ってる。
それを私の手元に座標移動して私自身も座標移動すればこの子たちは追ってこられない……)
佐天「それより、私たち結標さんに聞きたいことあるんですよ」
結標「残念だけど私急いでるのよ。悪いけど失礼させてもらうわ」
結標(残骸を、座標移動ッ!)クイッ
453: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:33:30.41 ID:2TFYHFVz0
結標は軍用警棒をくるっと回して残骸を手元へ座標移動させようとする。
完了したら同時に続けて自身を座標移動するために予め気構えておく。
ヒュン
それは空間移動で現れたものが空気を切り裂く音。
結標(さぁ、掴んで……。ぇ?)
結標は残骸の入ったアタッシュケースの取っ手を掴もうとその手を伸ばしたがそこには何もありはしない。
結標(どういうこと……。演算をミスしたとでもいうの……?)
演算ミス。その単語が一瞬頭を過ぎっただけでトラウマが刺激され全身を嫌な汗が伝う。
初春「どうかしましたか? 『空気』なんか座標移動して」クスクス
結標の立つ位置とは対極の壁際に立つ少女はくすくすと笑う。
結標(空気? 私が今座標移動したのは空気だって言うの?)
今の状況に頭が追いついてこない。
だが、少女の含みのある口ぶりに結標は直感で何かがあることを感じ取っていた。
少女たちは依然としてくすくすと笑っているだけだが、気味が悪いと言ったらない。
結標(黒髪の方が耳打ちして……、爆笑!? こっち指差して二人で爆笑するってどういうことよ!?)
そこはかとない悪意も感じ取った結標は、爆笑する二人の少女に目を向けたまま自身のブレザーのポケットに意識を移す。
そこに入っているのは2本のダーツの矢。
結標(何かしたっていうのならまずはその元凶を絶ちましょうか。あと笑われたのも腹立つし)
ポケットには手を触れず目標へ向けてダーツの矢を座標移動する。
結標(その可愛い顔を苦痛に歪めなさい!)
完了したら同時に続けて自身を座標移動するために予め気構えておく。
ヒュン
それは空間移動で現れたものが空気を切り裂く音。
結標(さぁ、掴んで……。ぇ?)
結標は残骸の入ったアタッシュケースの取っ手を掴もうとその手を伸ばしたがそこには何もありはしない。
結標(どういうこと……。演算をミスしたとでもいうの……?)
演算ミス。その単語が一瞬頭を過ぎっただけでトラウマが刺激され全身を嫌な汗が伝う。
初春「どうかしましたか? 『空気』なんか座標移動して」クスクス
結標の立つ位置とは対極の壁際に立つ少女はくすくすと笑う。
結標(空気? 私が今座標移動したのは空気だって言うの?)
今の状況に頭が追いついてこない。
だが、少女の含みのある口ぶりに結標は直感で何かがあることを感じ取っていた。
少女たちは依然としてくすくすと笑っているだけだが、気味が悪いと言ったらない。
結標(黒髪の方が耳打ちして……、爆笑!? こっち指差して二人で爆笑するってどういうことよ!?)
そこはかとない悪意も感じ取った結標は、爆笑する二人の少女に目を向けたまま自身のブレザーのポケットに意識を移す。
そこに入っているのは2本のダーツの矢。
結標(何かしたっていうのならまずはその元凶を絶ちましょうか。あと笑われたのも腹立つし)
ポケットには手を触れず目標へ向けてダーツの矢を座標移動する。
結標(その可愛い顔を苦痛に歪めなさい!)
454: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:34:59.83 ID:2TFYHFVz0
ポケットの中からダーツの矢が1本消失し、次に初春の前方約2mほどの空中に現れカランと床を転がるダーツの矢。
結標「なっ!?」
思わず驚きが声に出る。
結標は自身を除く座標移動には絶対的な自信がある。
肩口を狙った今の攻撃が数cmずれて床を転がるならまだわかる。
だが、その誤差が2mは考えられない。
これは何かされていることの確定的な裏づけとも言える事象なのだ。
佐天「何ですか? プレゼントですか?」プププ
結標(あっちの黒髪の方ほんと腹立つわね……。それはそうとあの二人は発火能力と空力操作のはずよ。
ならこれは発火能力の応用で蜃気楼のようなものと考えるのが妥当かしら)
怒りで一瞬我を忘れそうになるがギリギリで思いとどまって状況の分析を行う。
結標は焼け焦げた跡を発火能力と切り裂かれた跡からカマイタチのような空力操作、
壁の凹みは空力操作で叩きつけたか、発火能力で爆発でも起こしたものと考えている。
そこから、残骸とダーツの座標移動の失敗により目標をずらされているのだと断定し、推測を立てた。
だがそれは残念ながら間違いである。
加えて正しい解は敵対する少女の口から明かされることになる。
初春「偏光能力(トリックアート)っていうんですよ」
結標「……ハァ?」
偏光能力――、それは能力の名称なのだろう。
だがそれはおかしい。
この状況で考えうる能力からかけ離れているのだ。
結標「それがあなたの能力だっていうの? ならこいつらは誰にやられたって言うのかしら?
外傷と辺りの様子から焼けた跡に切り裂かれた跡、それに強い力で叩きつけられたような跡もあるわね。
もしあなたの能力が本当にその偏光能力だとしたら、もう一人のあなたがこれを全部やったっていうのかしらね?」
イライラを吐き出すように早口でまくし立てる。
そんなことは不可能なはずだと、そんな嘘に騙されはしないと確固たる意思を示す。
佐天「私? 私は手を出してないですよ。全部初春がやりましたー」
結標「な、にを言って……!」
まるで教師にいたずらを咎められた生徒が友人にその罪を擦り付けるような言い回しにさらなる苛立ちを覚える。
さっきから会話の内容にまったくと言っていいほど整合性が感じられないのだ。
もうこれ以上の会話は無駄だと感じ始めていた結標はこの少女たちをどう殺すかを考え始めていた。
偏光能力にしろ発火能力による蜃気楼にしろ、数mの誤差が関の山、
ならばその誤差の最大範囲にありったけの物量を座標移動させてやればいい。
残骸と移動させるものが重ならないように地面から1mほど離した場所に座標移動させれば何一つ障害にはなりえない。
結標「なっ!?」
思わず驚きが声に出る。
結標は自身を除く座標移動には絶対的な自信がある。
肩口を狙った今の攻撃が数cmずれて床を転がるならまだわかる。
だが、その誤差が2mは考えられない。
これは何かされていることの確定的な裏づけとも言える事象なのだ。
佐天「何ですか? プレゼントですか?」プププ
結標(あっちの黒髪の方ほんと腹立つわね……。それはそうとあの二人は発火能力と空力操作のはずよ。
ならこれは発火能力の応用で蜃気楼のようなものと考えるのが妥当かしら)
怒りで一瞬我を忘れそうになるがギリギリで思いとどまって状況の分析を行う。
結標は焼け焦げた跡を発火能力と切り裂かれた跡からカマイタチのような空力操作、
壁の凹みは空力操作で叩きつけたか、発火能力で爆発でも起こしたものと考えている。
そこから、残骸とダーツの座標移動の失敗により目標をずらされているのだと断定し、推測を立てた。
だがそれは残念ながら間違いである。
加えて正しい解は敵対する少女の口から明かされることになる。
初春「偏光能力(トリックアート)っていうんですよ」
結標「……ハァ?」
偏光能力――、それは能力の名称なのだろう。
だがそれはおかしい。
この状況で考えうる能力からかけ離れているのだ。
結標「それがあなたの能力だっていうの? ならこいつらは誰にやられたって言うのかしら?
外傷と辺りの様子から焼けた跡に切り裂かれた跡、それに強い力で叩きつけられたような跡もあるわね。
もしあなたの能力が本当にその偏光能力だとしたら、もう一人のあなたがこれを全部やったっていうのかしらね?」
イライラを吐き出すように早口でまくし立てる。
そんなことは不可能なはずだと、そんな嘘に騙されはしないと確固たる意思を示す。
佐天「私? 私は手を出してないですよ。全部初春がやりましたー」
結標「な、にを言って……!」
まるで教師にいたずらを咎められた生徒が友人にその罪を擦り付けるような言い回しにさらなる苛立ちを覚える。
さっきから会話の内容にまったくと言っていいほど整合性が感じられないのだ。
もうこれ以上の会話は無駄だと感じ始めていた結標はこの少女たちをどう殺すかを考え始めていた。
偏光能力にしろ発火能力による蜃気楼にしろ、数mの誤差が関の山、
ならばその誤差の最大範囲にありったけの物量を座標移動させてやればいい。
残骸と移動させるものが重ならないように地面から1mほど離した場所に座標移動させれば何一つ障害にはなりえない。
455: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:37:12.49 ID:2TFYHFVz0
初春「その倒れてる人たちですけど、そっちの三人には発火能力を使いました」
結標は耳を貸そうとしない。
また何か言い始めたがそんなことより何をどの位置へ座標移動するかを考えている。
初春「そっちの四人は窒素爆槍(ボンバーランス)、そっちの六人はまとめて電撃能力でやっちゃいました」
偏光能力に加えて、これで4つ。
一人に一つの能力しか得ることができないことは大前提だというのに、馬鹿な話だ。
今この場にいるのはたった二人、辺りに三人目が隠れることができそうな場所はどこにもない。
初春「そっちの二人は空力操作ですね、こんな風に」
ガーデニング娘が携帯を突き出し、何か操作したかと思うと辺りに突風が吹き始める。
そこで結標の思考が停止した。
外と繋がる出入り口は結標が入ってきた大きなスライド式の扉だけだ。
そしてその扉は結標の背後、だというのにこの突風は少女の方から吹いているではないか。
だが、まだこれだけなら偏光能力というのが二人の少女のどちらかの能力で、もう一人が空力操作だと考えられたかもしれない。
実際に目にしたのはまだこの二つだけなのだから。
だがしかし、
初春「そして残りの二人は空間移動で3mぐらいの高さから落としてあげました。……こんな風に」
いつの間にかその少女の手に握られていたダーツの矢。
それが手の平から跡形も消えてしまう。
そして結標の右肩を襲う激痛。
結標「ああぁっ……!?」
思わず悲鳴を上げて肩膝をつく。
見れば先ほどまで少女が握っていたダーツの矢が右肩に突き刺さってるではないか。
結標は耳を貸そうとしない。
また何か言い始めたがそんなことより何をどの位置へ座標移動するかを考えている。
初春「そっちの四人は窒素爆槍(ボンバーランス)、そっちの六人はまとめて電撃能力でやっちゃいました」
偏光能力に加えて、これで4つ。
一人に一つの能力しか得ることができないことは大前提だというのに、馬鹿な話だ。
今この場にいるのはたった二人、辺りに三人目が隠れることができそうな場所はどこにもない。
初春「そっちの二人は空力操作ですね、こんな風に」
ガーデニング娘が携帯を突き出し、何か操作したかと思うと辺りに突風が吹き始める。
そこで結標の思考が停止した。
外と繋がる出入り口は結標が入ってきた大きなスライド式の扉だけだ。
そしてその扉は結標の背後、だというのにこの突風は少女の方から吹いているではないか。
だが、まだこれだけなら偏光能力というのが二人の少女のどちらかの能力で、もう一人が空力操作だと考えられたかもしれない。
実際に目にしたのはまだこの二つだけなのだから。
だがしかし、
初春「そして残りの二人は空間移動で3mぐらいの高さから落としてあげました。……こんな風に」
いつの間にかその少女の手に握られていたダーツの矢。
それが手の平から跡形も消えてしまう。
そして結標の右肩を襲う激痛。
結標「ああぁっ……!?」
思わず悲鳴を上げて肩膝をつく。
見れば先ほどまで少女が握っていたダーツの矢が右肩に突き刺さってるではないか。
456: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:37:50.64 ID:2TFYHFVz0
結標「あなた一体……ッ!」
結標は突き刺さったダーツの矢を引き抜くと少女の方をキッとにらみつける。
初春「すごいでしょう? これ、『私の能力じゃない』んですよ?」
結標はその一言で完全にブチ切れた。
結標「っっいい加減にしなさいよアンタッ! 人にこんなもん突き刺しといて自分の力じゃないですって?
冗談も休み休み言いなさいよ!」
佐天「先に突き刺そうとしたのは自分の方なのに、刺されたらブチ切れるってどうなのよ」プススー
結標「黙りなさい!」
初春「佐天さん、あんまり挑発しちゃダメですよ。私たちは結標さんに聞かなきゃいけないことがあるんですから」
佐天「あはは、ごめんごめん」
結標「くっ、……いいわ、聞きたいことあるんでしょう? 言ってみなさいよ」
それに答えるかどうかは別だけど、と付け加える。
初春「私たちが聞きたいのは一つだけ。……総括理事長のいらっしゃる場所への転移座標、
もちろん知ってますよね? 『案内人』さん」
それを聞いたときの驚きはもはや言葉にすらならなかった。
ただの中学生が何故そのことを知っている? 何故そんなことを知りたがる?
何故、何故、何故何故何故……。
結標「あなたたち……、そんなこと聞いてどうしようって言うのよ」
佐天「もちろん決まってるじゃないですか。『学園都市をのっとる』んですよ!」
結標「……ぷっ、あははははは!! あなた本気で言ってるの?」
佐天「私たちには力がある! それを可能にするだけの力が!」
結標「このっ……」
突拍子もない発言に思わずこらえきれず噴出したが、黒髪の少女の言葉にカッとなる。
意識は再びポケットの中へ。
そこには残ったもう一本のダーツの矢。
結標「何が『力』よ、どういうカラクリか知らないけど、超能力なんかであの化物に立ち向かえるわけないでしょう!」
結標が実際にそのような行動を起こそうと思ったことなど一度もない。
ただ、一度だけ対峙し目を見たことがある。
多くは語らないが、その時に『超能力なんかでは勝ち目が微塵もない』と本能のようなものでそう感じ取った。
結標は突き刺さったダーツの矢を引き抜くと少女の方をキッとにらみつける。
初春「すごいでしょう? これ、『私の能力じゃない』んですよ?」
結標はその一言で完全にブチ切れた。
結標「っっいい加減にしなさいよアンタッ! 人にこんなもん突き刺しといて自分の力じゃないですって?
冗談も休み休み言いなさいよ!」
佐天「先に突き刺そうとしたのは自分の方なのに、刺されたらブチ切れるってどうなのよ」プススー
結標「黙りなさい!」
初春「佐天さん、あんまり挑発しちゃダメですよ。私たちは結標さんに聞かなきゃいけないことがあるんですから」
佐天「あはは、ごめんごめん」
結標「くっ、……いいわ、聞きたいことあるんでしょう? 言ってみなさいよ」
それに答えるかどうかは別だけど、と付け加える。
初春「私たちが聞きたいのは一つだけ。……総括理事長のいらっしゃる場所への転移座標、
もちろん知ってますよね? 『案内人』さん」
それを聞いたときの驚きはもはや言葉にすらならなかった。
ただの中学生が何故そのことを知っている? 何故そんなことを知りたがる?
何故、何故、何故何故何故……。
結標「あなたたち……、そんなこと聞いてどうしようって言うのよ」
佐天「もちろん決まってるじゃないですか。『学園都市をのっとる』んですよ!」
結標「……ぷっ、あははははは!! あなた本気で言ってるの?」
佐天「私たちには力がある! それを可能にするだけの力が!」
結標「このっ……」
突拍子もない発言に思わずこらえきれず噴出したが、黒髪の少女の言葉にカッとなる。
意識は再びポケットの中へ。
そこには残ったもう一本のダーツの矢。
結標「何が『力』よ、どういうカラクリか知らないけど、超能力なんかであの化物に立ち向かえるわけないでしょう!」
結標が実際にそのような行動を起こそうと思ったことなど一度もない。
ただ、一度だけ対峙し目を見たことがある。
多くは語らないが、その時に『超能力なんかでは勝ち目が微塵もない』と本能のようなものでそう感じ取った。
457: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:39:53.00 ID:2TFYHFVz0
結標の怒りは限界に来ていた。
中学生なんかに小馬鹿にされ、大能力者としてプライドを傷つけられた。
全てをぶち壊してしまい衝動に駆られ、ダーツの矢を黒髪の少女の頭が重なる位置へと座標移動させる。
それに対し、その少女は唐突に半歩後ろへ下がったではないか。
直後、ダーツの矢がさっきまで少女の頭があった場所へ微塵の誤差もなく現れる。
結標「かわした……? そんなことできるはずが……」
結標が移動させたのは佐天からは見えないポケットの中のダーツの矢だ。
それをいつ移動させるかもわからないのにまるで見えていたかのようにかわされるなんて考えられなかった。
佐天「時が見えるよ、初春」フフフ
初春「なんていうか、ほんと反則ですねその能力」
目を背けたくなるような現実に両膝を突いて腰を落とす結標を前に、
二人の少女たちは自分たちの会話に花を咲かしている。
結標(もう、何も考えたくない……)
佐天「ねー、もう諦めたのなら転移座標教えてくれませんか?」
結標(元々学園都市を裏切るつもりだったんだし、教えたっていいじゃない……)
佐天「おーい、聞いてますかー?」
結標「いいわ、あなたたちの好きにしなさいよ。転移座標は……」
全てを諦めたような表情の結標が、総括理事長のいる窓のないビルへの転移座標を口にしようとした時だった。
中学生なんかに小馬鹿にされ、大能力者としてプライドを傷つけられた。
全てをぶち壊してしまい衝動に駆られ、ダーツの矢を黒髪の少女の頭が重なる位置へと座標移動させる。
それに対し、その少女は唐突に半歩後ろへ下がったではないか。
直後、ダーツの矢がさっきまで少女の頭があった場所へ微塵の誤差もなく現れる。
結標「かわした……? そんなことできるはずが……」
結標が移動させたのは佐天からは見えないポケットの中のダーツの矢だ。
それをいつ移動させるかもわからないのにまるで見えていたかのようにかわされるなんて考えられなかった。
佐天「時が見えるよ、初春」フフフ
初春「なんていうか、ほんと反則ですねその能力」
目を背けたくなるような現実に両膝を突いて腰を落とす結標を前に、
二人の少女たちは自分たちの会話に花を咲かしている。
結標(もう、何も考えたくない……)
佐天「ねー、もう諦めたのなら転移座標教えてくれませんか?」
結標(元々学園都市を裏切るつもりだったんだし、教えたっていいじゃない……)
佐天「おーい、聞いてますかー?」
結標「いいわ、あなたたちの好きにしなさいよ。転移座標は……」
全てを諦めたような表情の結標が、総括理事長のいる窓のないビルへの転移座標を口にしようとした時だった。
458: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/27(金) 14:40:54.39 ID:2TFYHFVz0
ドゴオオオオオン!!
御坂「佐天さん! 初春さん!」
三人(と倒れた猟犬部隊たち)のいた廃工場の壁に、轟音とともに大きな横穴が空けられる。
そしてその直後に聞こえてきた少女の声。
白井「お姉さま! もし初春と佐天さんがいらっしゃたらどうするおつもりで……」
さらに追って聞こえてくる鈴の音のような少女の声。
破壊によってもたらされた白煙が晴れて、横穴を抜けて姿を現す二人の影。
学園都市の誇る超能力者、超電磁砲こと御坂美琴とそのパートナーの風紀委員、白井黒子である。
御坂「佐天さん! 初春さん!」
三人(と倒れた猟犬部隊たち)のいた廃工場の壁に、轟音とともに大きな横穴が空けられる。
そしてその直後に聞こえてきた少女の声。
白井「お姉さま! もし初春と佐天さんがいらっしゃたらどうするおつもりで……」
さらに追って聞こえてくる鈴の音のような少女の声。
破壊によってもたらされた白煙が晴れて、横穴を抜けて姿を現す二人の影。
学園都市の誇る超能力者、超電磁砲こと御坂美琴とそのパートナーの風紀委員、白井黒子である。
462: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:14:59.10 ID:mWF4Ej+f0
初春「……」
佐天「……」
御坂「よかった、二人とも無事みたいね」ホッ
白井「私が携帯をもっと早く確認していればよかったのですが……、申し訳ないですの」
結標「白井黒子に、第三位……」
白井「結標、淡希!?」
御坂「なんですって!?」
結標「私もとことんついてないわね」ハァ
御坂「あんた、佐天さんと初春さんに何もしてないでしょうね」
結標「見ればわかるでしょう。ご覧の有様よ」
左手で右肩を押さえ、覇気のない受け答えする様は何とも言えない哀愁が漂っている。
白井「この倒れている妙な格好をした方々は一体……」
御坂「残骸を狙う他の組織と争って共倒れってとこかしら?
おかげで佐天さんも初春さんもなんともなかったみたいね」チラリ
初春「……」
佐天「……」
佐天「……」
御坂「よかった、二人とも無事みたいね」ホッ
白井「私が携帯をもっと早く確認していればよかったのですが……、申し訳ないですの」
結標「白井黒子に、第三位……」
白井「結標、淡希!?」
御坂「なんですって!?」
結標「私もとことんついてないわね」ハァ
御坂「あんた、佐天さんと初春さんに何もしてないでしょうね」
結標「見ればわかるでしょう。ご覧の有様よ」
左手で右肩を押さえ、覇気のない受け答えする様は何とも言えない哀愁が漂っている。
白井「この倒れている妙な格好をした方々は一体……」
御坂「残骸を狙う他の組織と争って共倒れってとこかしら?
おかげで佐天さんも初春さんもなんともなかったみたいね」チラリ
初春「……」
佐天「……」
463: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:16:02.27 ID:mWF4Ej+f0
結標「ふふ、おめでたいわね、あなたたち」クス
白井「何にせよ、あなたは警備員に突き出させて頂きますの」
風紀委員で支給されている手錠を取り出し、結標に近づく白井。
結標「もう何もかもどうでもよくなっちゃた。好きになさ、ぇ?」
ゴオォッ!
御坂「キャッ、目が……。何なのよこの突風!?」
白井「お姉さま! 結標淡希が!」アレヲ!
御坂「と、飛んでる……」ポカーン
結標「この風……、どういうつもりかしら、お花畑のお嬢ちゃん?」 ←空中
初春「……」
結標が視線を向けた先で、初春は携帯を持った左手を結標に向けて
まるでこの風を操っているような、そんな手の動きをしていた。
白井「何にせよ、あなたは警備員に突き出させて頂きますの」
風紀委員で支給されている手錠を取り出し、結標に近づく白井。
結標「もう何もかもどうでもよくなっちゃた。好きになさ、ぇ?」
ゴオォッ!
御坂「キャッ、目が……。何なのよこの突風!?」
白井「お姉さま! 結標淡希が!」アレヲ!
御坂「と、飛んでる……」ポカーン
結標「この風……、どういうつもりかしら、お花畑のお嬢ちゃん?」 ←空中
初春「……」
結標が視線を向けた先で、初春は携帯を持った左手を結標に向けて
まるでこの風を操っているような、そんな手の動きをしていた。
464: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:17:16.21 ID:mWF4Ej+f0
御坂「初春さんって空力操作だったの……?」ホェー
白井「そんなはずは……。確か、初春の能力は定温保存(サーマルハンド)、
手で持っているものの温度を一定に保つ能力のはずですの」
佐天「結標さんには聞かなきゃならないことが残ってるんです。邪魔しないで下さい」
白井「佐天さん、何を言ってるんですのっ!?
初春も、これがあなたの仕業だと言うのなら早く結標淡希を下ろしてくださいまし!」
初春「それはできません。佐天さんが言ったとおり結標さんには聞かなきゃいけないことがあるんです」
白井「聞かなきゃならないこと……? それは、一体……」ギリ
初春「白井さんに答える必要はありません」
白井「初春っっ!」
初春「結標さんは私たちが警備員に連行しておきますからお二人は帰ってもらえませんか?
あぁ、手柄がほしいのなら一七七支部に連れて行きますけど」
結標「人のこと、物扱いしてくれちゃって」ギリリ ←空中
白井「初春……、一体どうしてしまったんですの?」ガクリ
初春「……」
白井「そんなはずは……。確か、初春の能力は定温保存(サーマルハンド)、
手で持っているものの温度を一定に保つ能力のはずですの」
佐天「結標さんには聞かなきゃならないことが残ってるんです。邪魔しないで下さい」
白井「佐天さん、何を言ってるんですのっ!?
初春も、これがあなたの仕業だと言うのなら早く結標淡希を下ろしてくださいまし!」
初春「それはできません。佐天さんが言ったとおり結標さんには聞かなきゃいけないことがあるんです」
白井「聞かなきゃならないこと……? それは、一体……」ギリ
初春「白井さんに答える必要はありません」
白井「初春っっ!」
初春「結標さんは私たちが警備員に連行しておきますからお二人は帰ってもらえませんか?
あぁ、手柄がほしいのなら一七七支部に連れて行きますけど」
結標「人のこと、物扱いしてくれちゃって」ギリリ ←空中
白井「初春……、一体どうしてしまったんですの?」ガクリ
初春「……」
465: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:18:20.13 ID:mWF4Ej+f0
御坂「黒子、言っても無駄よ」
白井「お姉さままで!」
御坂「二人がどういうつもりなのかわからないけど、残骸が関わってる以上引くわけにはいかないの」
白井「まさか、お姉さま」
御坂「張っ倒してでも言うことを聞いてもらうわ」ビリビリ
佐天「ふーん、やっぱり高レベルの能力者って傲慢なんですね」
御坂「今回ばっかりはなんと言われても引かないって決めてるの。例え友だちが相手でも、ね」ビリビリ
佐天「それ本当に友だちって言えるんですか?」プススー
初春「御坂さんって私たち以外に友達いなさそうですもんねー」クスクス
御坂「なっ……! ふ、ふふふ、いいわ二人とも。きついお仕置きが必要みたいね……」ワナワナ、ビリビリ
佐天「アハハハ、お仕置きだってさ初春っ」ハハッ
初春「怖いですねー、佐天さん」アロハ
ぷちん
御坂「レベル5舐めてんじゃねえぞクソがあああアアアァァ!」ピシャーン!
白井「お姉さままで!」
御坂「二人がどういうつもりなのかわからないけど、残骸が関わってる以上引くわけにはいかないの」
白井「まさか、お姉さま」
御坂「張っ倒してでも言うことを聞いてもらうわ」ビリビリ
佐天「ふーん、やっぱり高レベルの能力者って傲慢なんですね」
御坂「今回ばっかりはなんと言われても引かないって決めてるの。例え友だちが相手でも、ね」ビリビリ
佐天「それ本当に友だちって言えるんですか?」プススー
初春「御坂さんって私たち以外に友達いなさそうですもんねー」クスクス
御坂「なっ……! ふ、ふふふ、いいわ二人とも。きついお仕置きが必要みたいね……」ワナワナ、ビリビリ
佐天「アハハハ、お仕置きだってさ初春っ」ハハッ
初春「怖いですねー、佐天さん」アロハ
ぷちん
御坂「レベル5舐めてんじゃねえぞクソがあああアアアァァ!」ピシャーン!
466: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:18:52.23 ID:mWF4Ej+f0
怒りのボルテージが最高潮に達した御坂は、加減を忘れて強力な電撃を放つ。
白井「おおお、お姉さまぁあっ!?」アワワ
御坂「ハッ! つい怒りに我を忘れて……。初春さん! 佐天さん!」
佐天「ひゃー、あんなの食らってたら黒コゲになっちゃうよ」
初春「ですねー、ヒステリックな女性って嫌ですよねー」
御坂「ぇ」
白井「ぶ、無事なんですの?」
初春「お返しです!」カチ
バチバチッ
初春が携帯を操作した直後、突き出した右手から電撃が放たれる。
御坂「そんなっ!?」
白井「馬鹿なことがっ!?」
ピシャーン!
白井「おおお、お姉さまぁあっ!?」アワワ
御坂「ハッ! つい怒りに我を忘れて……。初春さん! 佐天さん!」
佐天「ひゃー、あんなの食らってたら黒コゲになっちゃうよ」
初春「ですねー、ヒステリックな女性って嫌ですよねー」
御坂「ぇ」
白井「ぶ、無事なんですの?」
初春「お返しです!」カチ
バチバチッ
初春が携帯を操作した直後、突き出した右手から電撃が放たれる。
御坂「そんなっ!?」
白井「馬鹿なことがっ!?」
ピシャーン!
467: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:19:57.66 ID:mWF4Ej+f0
御坂「こんなものぉっ!」ビリビリ
電撃使いの御坂は放電して軽く相殺してみせる。しかし、
白井「ですの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」
御坂「黒子おおおお!!」
電撃を視認してから回避するなどまず不可能。
そんなことが可能なのは電撃使いか一部の能力者ぐらいである。
御坂「黒子! しっかりして、黒子!」
白井「お、おねぇ……」ガクリ
初春「心配しなくていいですよ、私は『御坂さんと違って』ちゃんと手加減しましたから」
佐天「初春やっさしィー!」バシッバシッ
初春「ちょ、ちょっと、佐天さん痛いですって」ケホケホ
御坂「なんなのよ……、結標を浮かせてる風といい今の電撃といい、わけわかんないわよ!」
初春「知りたいですか? この力の正体が」ウフフ
御坂「……」コクリ
電撃使いの御坂は放電して軽く相殺してみせる。しかし、
白井「ですの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」
御坂「黒子おおおお!!」
電撃を視認してから回避するなどまず不可能。
そんなことが可能なのは電撃使いか一部の能力者ぐらいである。
御坂「黒子! しっかりして、黒子!」
白井「お、おねぇ……」ガクリ
初春「心配しなくていいですよ、私は『御坂さんと違って』ちゃんと手加減しましたから」
佐天「初春やっさしィー!」バシッバシッ
初春「ちょ、ちょっと、佐天さん痛いですって」ケホケホ
御坂「なんなのよ……、結標を浮かせてる風といい今の電撃といい、わけわかんないわよ!」
初春「知りたいですか? この力の正体が」ウフフ
御坂「……」コクリ
468: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:21:28.71 ID:mWF4Ej+f0
初春「いいでしょう、実は誰かに言いたくてうずうずしてたんですよ。
この力、電撃も風もですがこれは人工的に作り出した超能力なんです」
御坂「は? 人工的にって、超能力自体が元々……」
初春「残骸……、つまり樹形図の設計者に演算させて行使する超能力、こう言えばわかりやすいですか?」
結標「まさか、嘘でしょう……!?」 ←空中
初春「樹形図の統計者の演算速度、記憶領域は人間の脳を上回ります。
それならAIM拡散力場の情報と演算パターンを書庫(バンク)から拝借すれば、なんというかこの通りなわけです」
佐天「実際、超能力使ってるのは初春って言うより樹形図の統計者みたいなものってことですよ」フフン
御坂「あ、ありえないわそんなこと……」
佐天「ありえないって言われても、その目で見たんですから信じてもいいんじゃないですか?」
初春「徹夜でプログラム組むの大変だったんですよ、まったく」
--------
昨夜のこと――。
佐天「ねぇ、この樹形図の統計者ってどのくらいのすごいものなの?」
初春「ぶっちゃけ人間の脳よりもすごいですよ」
佐天「へー……、じゃあ超能力とかも使えるかな?」ピコーン!
初春「そんな馬鹿なこと……、いや可能かもしれません、そんな気がしてきました!」
佐天「やれる! 初春ならやれるよ!」
初春「私もそんな気がしてきました! 偶然にもうちのパソコンに接続できますしやってみましょう!」
明け方――。
初春「できましたー!」
佐天「さすが初春ー!」
この力、電撃も風もですがこれは人工的に作り出した超能力なんです」
御坂「は? 人工的にって、超能力自体が元々……」
初春「残骸……、つまり樹形図の設計者に演算させて行使する超能力、こう言えばわかりやすいですか?」
結標「まさか、嘘でしょう……!?」 ←空中
初春「樹形図の統計者の演算速度、記憶領域は人間の脳を上回ります。
それならAIM拡散力場の情報と演算パターンを書庫(バンク)から拝借すれば、なんというかこの通りなわけです」
佐天「実際、超能力使ってるのは初春って言うより樹形図の統計者みたいなものってことですよ」フフン
御坂「あ、ありえないわそんなこと……」
佐天「ありえないって言われても、その目で見たんですから信じてもいいんじゃないですか?」
初春「徹夜でプログラム組むの大変だったんですよ、まったく」
--------
昨夜のこと――。
佐天「ねぇ、この樹形図の統計者ってどのくらいのすごいものなの?」
初春「ぶっちゃけ人間の脳よりもすごいですよ」
佐天「へー……、じゃあ超能力とかも使えるかな?」ピコーン!
初春「そんな馬鹿なこと……、いや可能かもしれません、そんな気がしてきました!」
佐天「やれる! 初春ならやれるよ!」
初春「私もそんな気がしてきました! 偶然にもうちのパソコンに接続できますしやってみましょう!」
明け方――。
初春「できましたー!」
佐天「さすが初春ー!」
469: ◆tVP11EVtkPKg 2011/05/28(土) 22:22:23.00 ID:mWF4Ej+f0
結標「可能だったんだわ……、人間以外が超能力を使うこと……」 ←空中
初春「能力にもよりますが今のところレベルは3~4が限界なんですよね。
プログラム次第でもしかしたらレベル5クラスかそれ以上も可能かもしれませんけど」
御坂「そ……ない」
佐天「はい?」
御坂「そんなの、絶対に認めない!!」バチバチバチ!
初春「無駄です、そんなチャチな電撃じゃ窒素装甲(オフェンスアーマー)の壁は破れませんよ!」
御坂「プログラム次第でレベル5かそれ以上? 私の努力を何だと思ってるのよ!!」ピシャーン!
佐天「うわー、なんか変なとこでスイッチ入っちゃったみたいだよ、初春」ワーォ
初春「でも、もし御坂さんが超電磁砲(レールガン)撃ってきたら窒素装甲じゃ防げませんよ?
窒素装甲の強度は4ですし同時に使える能力は二つまでですからね」
結標「」 ←空中 ←2つ目
佐天「じゃあその前に私が御坂さんを倒さないとってことね」
初春「お願いします」
佐天「あいよ。安心してよ、初春に力は絶対使わせないから」
初春「能力にもよりますが今のところレベルは3~4が限界なんですよね。
プログラム次第でもしかしたらレベル5クラスかそれ以上も可能かもしれませんけど」
御坂「そ……ない」
佐天「はい?」
御坂「そんなの、絶対に認めない!!」バチバチバチ!
初春「無駄です、そんなチャチな電撃じゃ窒素装甲(オフェンスアーマー)の壁は破れませんよ!」
御坂「プログラム次第でレベル5かそれ以上? 私の努力を何だと思ってるのよ!!」ピシャーン!
佐天「うわー、なんか変なとこでスイッチ入っちゃったみたいだよ、初春」ワーォ
初春「でも、もし御坂さんが超電磁砲(レールガン)撃ってきたら窒素装甲じゃ防げませんよ?
窒素装甲の強度は4ですし同時に使える能力は二つまでですからね」
結標「」 ←空中 ←2つ目
佐天「じゃあその前に私が御坂さんを倒さないとってことね」
初春「お願いします」
佐天「あいよ。安心してよ、初春に力は絶対使わせないから」
476: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/03(金) 00:06:04.12 ID:LX3NBIR50
御坂「機械なんかに簡単にレベル5越えられたらこっちはたまんないのよ!」バチバチピシャーン!
佐天「……じゃあ機械なんかじゃなく私と勝負しませんか?」ズズイ
御坂「なんですって?」ピク
佐天「御坂さんたちにはまだ言ってませんでしたよね。私実はレベル5の超能力者なんですよ?
って言っても昨日なったばっかりなんですけど」
御坂「へー、おめでとう。それで序列は何位なのかしら?」
佐天「さぁ? 結構珍しい能力みたいで他と比べるのが難しいらしいんですよ。
けど……、そうですね。今ここで御坂さんを倒せたら、私は実質二位ですよね?」
御坂「ぷっ……、あはははははは。本気で言ってるの? それ」
佐天「もちろん本気ですよ」
御坂「いいわ、やってやろうじゃない。レベル5ってのが嘘か本当かは知らないけど
佐天さんがそう言うんだったら私も本気でやらなきゃいけないわよね。何せ相手もレベル5なんだし」
佐天「ええ、手なんか抜いたら御坂さんボッコボコですよ」
御坂「(ぶちっ!)……どいつもこいつも、第三位のこの私をイラつかせてんじゃないわよぉ!!」ババリバリッシュ!
初春「佐天さん……」
初春(三位の人を倒したらその人が三位です、二位じゃありませんよ……)
佐天「……じゃあ機械なんかじゃなく私と勝負しませんか?」ズズイ
御坂「なんですって?」ピク
佐天「御坂さんたちにはまだ言ってませんでしたよね。私実はレベル5の超能力者なんですよ?
って言っても昨日なったばっかりなんですけど」
御坂「へー、おめでとう。それで序列は何位なのかしら?」
佐天「さぁ? 結構珍しい能力みたいで他と比べるのが難しいらしいんですよ。
けど……、そうですね。今ここで御坂さんを倒せたら、私は実質二位ですよね?」
御坂「ぷっ……、あはははははは。本気で言ってるの? それ」
佐天「もちろん本気ですよ」
御坂「いいわ、やってやろうじゃない。レベル5ってのが嘘か本当かは知らないけど
佐天さんがそう言うんだったら私も本気でやらなきゃいけないわよね。何せ相手もレベル5なんだし」
佐天「ええ、手なんか抜いたら御坂さんボッコボコですよ」
御坂「(ぶちっ!)……どいつもこいつも、第三位のこの私をイラつかせてんじゃないわよぉ!!」ババリバリッシュ!
初春「佐天さん……」
初春(三位の人を倒したらその人が三位です、二位じゃありませんよ……)
477: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/03(金) 00:08:11.94 ID:LX3NBIR50
御坂「とりあえず、自称レベル5の佐天さんのお手並み拝見といきましょうか」
御坂はそう宣言してから得意の電撃を、佐天に向かってノーモーションで放つ。
怒りに我を忘れつつある御坂の攻撃は手加減なしの文字通り一撃必殺の高圧電流が佐天を襲う。
佐天「遅すぎて話になりませんね」ヒョイ
御坂「なっ!?」
視覚してから回避行動など取れるはずもないその一撃が佐天に直撃する直前、
信じられないスピードで動き回避してしまったのだ。
ありえない、考えられないことだと御坂は目を白黒させている。
しかし、実のところ佐天は右方向へ『歩いて』移動したに過ぎなかった。
たったの二歩、足を右、左と動かしただけ。
それこそありえない話だが、佐天の能力がそれを可能にしていた。
佐天「時間加速(タイムアクセル)、それが私の手に入れた力の名前です」
御坂「たいむ、あくせる……?」
佐天「周囲の時間を加速させる力です。私は今の御坂さんの攻撃を歩いてかわしただけです。
ただし、御坂さん過ごしている時間の20倍の早さで、ですが」
御坂「時間を操る超能力なんて聞いたことが……」
佐天「今、その目で確認したじゃないですか。なのに信じられないと? なら……」
そこで一度区切り、佐天は御坂に向かって足を一歩踏み出す。
そして次の瞬間、御坂が気付いた時には佐天は御坂の真後ろに立っていた。
遅れてゴオォと突風が巻き起こる。
佐天「御坂さん自身で体感してみますか? 通常の100万倍ぐらいの時間加速を」
御坂はそう宣言してから得意の電撃を、佐天に向かってノーモーションで放つ。
怒りに我を忘れつつある御坂の攻撃は手加減なしの文字通り一撃必殺の高圧電流が佐天を襲う。
佐天「遅すぎて話になりませんね」ヒョイ
御坂「なっ!?」
視覚してから回避行動など取れるはずもないその一撃が佐天に直撃する直前、
信じられないスピードで動き回避してしまったのだ。
ありえない、考えられないことだと御坂は目を白黒させている。
しかし、実のところ佐天は右方向へ『歩いて』移動したに過ぎなかった。
たったの二歩、足を右、左と動かしただけ。
それこそありえない話だが、佐天の能力がそれを可能にしていた。
佐天「時間加速(タイムアクセル)、それが私の手に入れた力の名前です」
御坂「たいむ、あくせる……?」
佐天「周囲の時間を加速させる力です。私は今の御坂さんの攻撃を歩いてかわしただけです。
ただし、御坂さん過ごしている時間の20倍の早さで、ですが」
御坂「時間を操る超能力なんて聞いたことが……」
佐天「今、その目で確認したじゃないですか。なのに信じられないと? なら……」
そこで一度区切り、佐天は御坂に向かって足を一歩踏み出す。
そして次の瞬間、御坂が気付いた時には佐天は御坂の真後ろに立っていた。
遅れてゴオォと突風が巻き起こる。
佐天「御坂さん自身で体感してみますか? 通常の100万倍ぐらいの時間加速を」
482: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/04(土) 22:49:42.69 ID:aHCYqHOn0
御坂の頬を伝う一筋の冷や汗。
100万という桁外れな数字に驚きよりも先に恐怖と言う感情が降って湧く。
御坂「ぅ、うわあああああ!!」バチバチ
咄嗟に触れさせまいと四方八方に手当たり次第の電撃を放つ。
佐天「あはははは、御坂さんビビリ過ぎでしょー」ハハハ
その声は真正面から。
さっきまで背後にいたのに佐天は再び御坂の正面に立ち対峙していた。
御坂「はぁはぁ……。当然よ、一瞬でおばあさんにされたらたまらないわ!」
佐天「大丈夫ですよ。私の能力、人間に使うには致命的な欠陥があるんです。
仮に100倍の早さで時間を加速させたとすれば、その人は1秒で100秒分の行動が可能です。
まぁ、要するに反抗する人には使えないってことです」
御坂「なっ!? さっきのはただの脅しってわけ……。私がビビる様はさぞ滑稽だったでしょうね」ギリリ
佐天「おかしすぎてお腹がよじれそうでしたよ」ハイ
御坂「けど、それならそのことは黙っておくべきだったわね。
私自身に使えないんならそんな能力これっぽっちも怖くないわ」
佐天「“敵”に弱点を教えてもらって勝った気ですか?
レベル5ってやっぱり傲慢ですね、私はこんな風にならないようにしないと」フフン
御坂「御託はいいからかかってこいって言ってんのよッ!!」ピシャーン!
度重なる挑発を受けて、御坂は怒りに任せた超高圧電流を放つ。
佐天「無駄無駄ー!」
佐天に向かって一直線に飛んでいった電撃だったが、目標を目前にして右へと逸れてしまう。
御坂「ッ! もう一度!」
演算ミスによる操作ミスかと思い、再び電撃を放つ御坂だがやはり同じように逸れていく。
100万という桁外れな数字に驚きよりも先に恐怖と言う感情が降って湧く。
御坂「ぅ、うわあああああ!!」バチバチ
咄嗟に触れさせまいと四方八方に手当たり次第の電撃を放つ。
佐天「あはははは、御坂さんビビリ過ぎでしょー」ハハハ
その声は真正面から。
さっきまで背後にいたのに佐天は再び御坂の正面に立ち対峙していた。
御坂「はぁはぁ……。当然よ、一瞬でおばあさんにされたらたまらないわ!」
佐天「大丈夫ですよ。私の能力、人間に使うには致命的な欠陥があるんです。
仮に100倍の早さで時間を加速させたとすれば、その人は1秒で100秒分の行動が可能です。
まぁ、要するに反抗する人には使えないってことです」
御坂「なっ!? さっきのはただの脅しってわけ……。私がビビる様はさぞ滑稽だったでしょうね」ギリリ
佐天「おかしすぎてお腹がよじれそうでしたよ」ハイ
御坂「けど、それならそのことは黙っておくべきだったわね。
私自身に使えないんならそんな能力これっぽっちも怖くないわ」
佐天「“敵”に弱点を教えてもらって勝った気ですか?
レベル5ってやっぱり傲慢ですね、私はこんな風にならないようにしないと」フフン
御坂「御託はいいからかかってこいって言ってんのよッ!!」ピシャーン!
度重なる挑発を受けて、御坂は怒りに任せた超高圧電流を放つ。
佐天「無駄無駄ー!」
佐天に向かって一直線に飛んでいった電撃だったが、目標を目前にして右へと逸れてしまう。
御坂「ッ! もう一度!」
演算ミスによる操作ミスかと思い、再び電撃を放つ御坂だがやはり同じように逸れていく。
483: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/04(土) 22:50:48.80 ID:aHCYqHOn0
佐天「はいはずれー」クスクス
御坂「佐天さん、あなたなのね……。今度は何をしたって言うのかしら」
佐天「えー、少しは自分で考えて下さいよー。御坂さんも“自称”レベル5なんですよねー?」
御坂「こ、んのおおおおおおおおお!!」
三度放たれる電撃。
今度は一直線に伸びる一本の電撃ではなく上、右、左とカーブを描いた三本の電撃。
しかし、今度も佐天を目前にして電撃はあらぬ方向へと逸れてしまう。
佐天「第三位程度じゃわからないかもしれませんねー。めんどくさいし、答え教えてあげますよ。
これはですね、私の周囲の時間を加速させてるんですよ。
電撃に限らず全ての現象は時間の流れの速い方へと流れていくんです。それで、」
御坂「知ったことかあああああああああアアアアアァァァ!!」チャリーン
怒声とともに御坂が取り出したのは一枚のコイン。
もう何も聞きたくなかった。何も知りたくなかった。
目の前の全てを、破壊しつくしてしまいたくて、己が二つ名を全力で放つ。
御坂「超電磁砲(レールガン)!!!」
ローレンツ力をによって音速を超えてはじき出されたコインは凄まじい破壊力を見せる。
何よりも常人が音速の攻撃に反応などできるはずもない。
だが――。
ゴオオオォォン!!
その音は真上から聞こえてきたものだ。
見上げれば廃工場の天井に大きな穴が開いている。
佐天「人の話は聞きましょうよ。言ったでしょう、全ての現象は時の流れに逆らえないって」
時の流れの前に超電磁砲も平等に歪んでしまった。
さっきの電撃と同じように逸らされてしまったのだ。
御坂「佐天さん、あなたなのね……。今度は何をしたって言うのかしら」
佐天「えー、少しは自分で考えて下さいよー。御坂さんも“自称”レベル5なんですよねー?」
御坂「こ、んのおおおおおおおおお!!」
三度放たれる電撃。
今度は一直線に伸びる一本の電撃ではなく上、右、左とカーブを描いた三本の電撃。
しかし、今度も佐天を目前にして電撃はあらぬ方向へと逸れてしまう。
佐天「第三位程度じゃわからないかもしれませんねー。めんどくさいし、答え教えてあげますよ。
これはですね、私の周囲の時間を加速させてるんですよ。
電撃に限らず全ての現象は時間の流れの速い方へと流れていくんです。それで、」
御坂「知ったことかあああああああああアアアアアァァァ!!」チャリーン
怒声とともに御坂が取り出したのは一枚のコイン。
もう何も聞きたくなかった。何も知りたくなかった。
目の前の全てを、破壊しつくしてしまいたくて、己が二つ名を全力で放つ。
御坂「超電磁砲(レールガン)!!!」
ローレンツ力をによって音速を超えてはじき出されたコインは凄まじい破壊力を見せる。
何よりも常人が音速の攻撃に反応などできるはずもない。
だが――。
ゴオオオォォン!!
その音は真上から聞こえてきたものだ。
見上げれば廃工場の天井に大きな穴が開いている。
佐天「人の話は聞きましょうよ。言ったでしょう、全ての現象は時の流れに逆らえないって」
時の流れの前に超電磁砲も平等に歪んでしまった。
さっきの電撃と同じように逸らされてしまったのだ。
484: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/04(土) 22:51:59.34 ID:aHCYqHOn0
御坂「そんな……、私の超電磁砲が……」ガクガク
佐天「なんか拍子抜けだなぁ。学園都市、女性最強の超能力者がこの程度だったなんて。
私、まだ本気の半分も出してませんよ? その気になればこんなことだって……」
佐天は落胆の声を漏らした後、両手を宙に向かって掲げる。
御坂はただその姿を茫然自失といった状態で眺めているだけだ。
佐天『時よ、進め』
たった一言。
佐天が呟いただけで突如として工場内が暗闇に包まれた。
御坂「っ!?」ビクッ
御坂は突然の暗転に息を飲み暗闇に恐怖する子どものように肩を震わせる。
時刻は6時前、夏至は過ぎたといってもまだまだ日は長く、
工場にはいくつもの窓がありさっきまではそこから赤みがかった日差しが差し込んできていたはずだ。
しかし、今はそれがなく光源と呼べるものがまったくといってなくなってしまっていた。
佐天「空を見てください」
暗闇の中で響き渡る声に、また大きく肩を震わせる。
恐る恐るといった感じで御坂は言われたとおり空を見上げる。
そして思わず眼を剥く光景を目にする。
御坂「星……?」
超電磁砲によって空けられた天井の大穴。
そこから差し込んでくる仄かな明かりは夜空に輝く星々のものだった。
佐天「太陽系の星の時間を加速させました。今は深夜0時ぐらいです」
世界は佐天を中心に回っている。
比喩でも錯覚でもなく御坂にはそれがこの世の真理とさえ思えていた。
佐天「なんか拍子抜けだなぁ。学園都市、女性最強の超能力者がこの程度だったなんて。
私、まだ本気の半分も出してませんよ? その気になればこんなことだって……」
佐天は落胆の声を漏らした後、両手を宙に向かって掲げる。
御坂はただその姿を茫然自失といった状態で眺めているだけだ。
佐天『時よ、進め』
たった一言。
佐天が呟いただけで突如として工場内が暗闇に包まれた。
御坂「っ!?」ビクッ
御坂は突然の暗転に息を飲み暗闇に恐怖する子どものように肩を震わせる。
時刻は6時前、夏至は過ぎたといってもまだまだ日は長く、
工場にはいくつもの窓がありさっきまではそこから赤みがかった日差しが差し込んできていたはずだ。
しかし、今はそれがなく光源と呼べるものがまったくといってなくなってしまっていた。
佐天「空を見てください」
暗闇の中で響き渡る声に、また大きく肩を震わせる。
恐る恐るといった感じで御坂は言われたとおり空を見上げる。
そして思わず眼を剥く光景を目にする。
御坂「星……?」
超電磁砲によって空けられた天井の大穴。
そこから差し込んでくる仄かな明かりは夜空に輝く星々のものだった。
佐天「太陽系の星の時間を加速させました。今は深夜0時ぐらいです」
世界は佐天を中心に回っている。
比喩でも錯覚でもなく御坂にはそれがこの世の真理とさえ思えていた。
498: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:45:44.69 ID:8zN+MrmJ0
佐天「その気になればこんな大掛かりなこともできますし……」
御坂「ぅ……あぁ……」ガタガタ
佐天「こうやって小さく円を描くように能力を使えば、手の平の上で竜巻を作ることもできます」ビュオオォ
御坂(無理! むりムリ、無理よこんな化物……、勝てっこない……)ガクガク
佐天「さっきまでの威勢はどうしたんですかー?」ビュゥン
佐天は小首をかしげながら手の平の竜巻を放り投げる。
小規模なそれは人を巻き上げるほどではないにしろ、辺りに強風を撒き散らせる。
御坂「きゃああっ」
かつて第一位の能力者に対して味わった絶望という感情。
同じレベル5でありながらなぜこんなにも差があるのか――。
佐天「あはははは。御坂さんはいつもこんな気持ちで能力を振るってたんですねー。
楽しいです、とっても楽しいですよ、弱いものいじめって!」
天を仰ぎ笑いながらくるくると回る佐天。
もはや彼女を止めることができるものなどこの場には存在し得ないのか……。
御坂「ぅ……あぁ……」ガタガタ
佐天「こうやって小さく円を描くように能力を使えば、手の平の上で竜巻を作ることもできます」ビュオオォ
御坂(無理! むりムリ、無理よこんな化物……、勝てっこない……)ガクガク
佐天「さっきまでの威勢はどうしたんですかー?」ビュゥン
佐天は小首をかしげながら手の平の竜巻を放り投げる。
小規模なそれは人を巻き上げるほどではないにしろ、辺りに強風を撒き散らせる。
御坂「きゃああっ」
かつて第一位の能力者に対して味わった絶望という感情。
同じレベル5でありながらなぜこんなにも差があるのか――。
佐天「あはははは。御坂さんはいつもこんな気持ちで能力を振るってたんですねー。
楽しいです、とっても楽しいですよ、弱いものいじめって!」
天を仰ぎ笑いながらくるくると回る佐天。
もはや彼女を止めることができるものなどこの場には存在し得ないのか……。
499: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:46:22.72 ID:8zN+MrmJ0
「お姉さまは、そんなこと、絶対にしたりしませんの……」
佐天「はい?」
擦れるような声に笑い声が中断される。
白井「お姉さまは、嬉々として弱いものいじめをするような方では、ございませんの!」
御坂「く、黒子……?」
佐天「白井さんてば、もう目が覚めたんですか?」
初春「御坂さんの電撃で電撃慣れしてたからでしょうかね、あの威力なら数時間は目覚めないと思ったんですけど」
白井「風紀委員として、道を踏み外そうとしている友人を放って寝てなんかいられませんもの」
佐天「そう言われてもですね、他に選択肢がなかったんですから仕方ないじゃないですか。
正直、何の事情もわかってない白井さんに口出しされたくないですよ」
白井「なら事情を話してくださればいいじゃないですの!」
佐天「話せるわけないでしょう!」
白井「どうしてですの!」
佐天「話したら……! 白井さんたちが、危険な目に合うから……」
白井「!!」
御坂「佐天さん、あなた……」
佐天「はい?」
擦れるような声に笑い声が中断される。
白井「お姉さまは、嬉々として弱いものいじめをするような方では、ございませんの!」
御坂「く、黒子……?」
佐天「白井さんてば、もう目が覚めたんですか?」
初春「御坂さんの電撃で電撃慣れしてたからでしょうかね、あの威力なら数時間は目覚めないと思ったんですけど」
白井「風紀委員として、道を踏み外そうとしている友人を放って寝てなんかいられませんもの」
佐天「そう言われてもですね、他に選択肢がなかったんですから仕方ないじゃないですか。
正直、何の事情もわかってない白井さんに口出しされたくないですよ」
白井「なら事情を話してくださればいいじゃないですの!」
佐天「話せるわけないでしょう!」
白井「どうしてですの!」
佐天「話したら……! 白井さんたちが、危険な目に合うから……」
白井「!!」
御坂「佐天さん、あなた……」
500: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:47:41.71 ID:8zN+MrmJ0
佐天「私が馬鹿だったから……、パンドラの箱を開けてしまったから……、
学園都市の暗部に狙われて初春も巻き込んじゃって……。
学園都市を支配するなんて厨二臭い計画、失敗したら間違いなく死んじゃいますよ……。
そんなことにこれ以上大事な友達を、巻き込めるわけないじゃないですかっ!」
白井「佐天さん……」
御坂「私たちのことを思って……」
佐天「……」
初春「……」
結標「はいはいはい、青臭い茶番をどうもありがとう、反吐が出るわ糞餓鬼ども」 ←空中
初春「結標さんでしたっけ? いい話の途中なんですからもう少し空気読んでもらえますか?」
結標「お断りよ。もううんざり、何もかも……。そう何もかもがうんざりなのよ!」 ←空中
白井「突然何を……」
結標「私の目的はね、その残骸を使って人間以外が超能力を行使できるかどうか調べること……。
なのにあなたたちが一足飛びで答えを教えてくれちゃって、私の頭ん中ぐっちゃぐちゃよ!」 ←空中
御坂「それは空力操作で飛ばされてるからじゃ……」
結標「もういいわ……、皆殺しにしてあげる」ゴゴゴゴ ←空中
白井「なっ!?」
学園都市の暗部に狙われて初春も巻き込んじゃって……。
学園都市を支配するなんて厨二臭い計画、失敗したら間違いなく死んじゃいますよ……。
そんなことにこれ以上大事な友達を、巻き込めるわけないじゃないですかっ!」
白井「佐天さん……」
御坂「私たちのことを思って……」
佐天「……」
初春「……」
結標「はいはいはい、青臭い茶番をどうもありがとう、反吐が出るわ糞餓鬼ども」 ←空中
初春「結標さんでしたっけ? いい話の途中なんですからもう少し空気読んでもらえますか?」
結標「お断りよ。もううんざり、何もかも……。そう何もかもがうんざりなのよ!」 ←空中
白井「突然何を……」
結標「私の目的はね、その残骸を使って人間以外が超能力を行使できるかどうか調べること……。
なのにあなたたちが一足飛びで答えを教えてくれちゃって、私の頭ん中ぐっちゃぐちゃよ!」 ←空中
御坂「それは空力操作で飛ばされてるからじゃ……」
結標「もういいわ……、皆殺しにしてあげる」ゴゴゴゴ ←空中
白井「なっ!?」
501: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:49:06.23 ID:8zN+MrmJ0
初春「何を言い出すかと思えば、能力が使えないあなたがどうやって私たちを殺すんですか?」
結標は初春によってただいま絶賛空中を舞っている最中である。
初春「空間移動ならともかく、こんな風に不規則に宙を舞わされている状態で座標移動の複雑な演算は不可能でしょう」
結標「ええ、そうね。O点の私が常時動いている状態じゃ『精確な』演算はできないわね。けど……」 ←空中
初春「?」
結標「もっと大きな空間から同じくらいの空間への、大雑把な座標移動なら可能なわけよ。
例えば、この工場内の上半分の空気を下半分に座標移動する、なんてのはどうかしら?」 ←空中
初春「そ、そんなことしたらあなただって!!」
結標「言ったでしょう、『皆殺し』だって」 ←空中
御坂「はぁっ!?」
佐天「ちょっ、いくらなんでもそんな大規模なテレポートされたら!!」
白井「馬鹿な真似はおよしなさい!」
結標「みんな死ねええええええええええええええ!!!!!」 ←空中
結標は初春によってただいま絶賛空中を舞っている最中である。
初春「空間移動ならともかく、こんな風に不規則に宙を舞わされている状態で座標移動の複雑な演算は不可能でしょう」
結標「ええ、そうね。O点の私が常時動いている状態じゃ『精確な』演算はできないわね。けど……」 ←空中
初春「?」
結標「もっと大きな空間から同じくらいの空間への、大雑把な座標移動なら可能なわけよ。
例えば、この工場内の上半分の空気を下半分に座標移動する、なんてのはどうかしら?」 ←空中
初春「そ、そんなことしたらあなただって!!」
結標「言ったでしょう、『皆殺し』だって」 ←空中
御坂「はぁっ!?」
佐天「ちょっ、いくらなんでもそんな大規模なテレポートされたら!!」
白井「馬鹿な真似はおよしなさい!」
結標「みんな死ねええええええええええええええ!!!!!」 ←空中
502: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:49:36.65 ID:8zN+MrmJ0
初春(いけない……、佐天さんの能力は長距離の移動はできない……)
佐天自身の時間の流れと、能力対象外の時間の流れが異なる場合、
一時的に五感を失うのと等しい状況に陥る。
空気の流れが対比してゆっくりになれば匂いは感じ取れなくなるし、音も聞こえなくなる。
そして時間経過で移動しているのは空気だけでなく光も同じである。
空気同様に、自身を加速しすぎれば光さえ失ってしまうのだ。
おそらく結標の狂乱ぶりから残りわずか数秒で空気を座標移動するだろう。
その残り時間を佐天の能力で2倍に引き伸ばしたとすれば、
明るさに限って言えば今の半分の暗さの中を移動することになる。
4倍に引き伸ばせば明るさは四分の一になってしまう。
日中の明るさなら10倍、つまり十分の一の明るさでもうすぼんやりと周囲が見渡せた。
だが、今は深夜なのだ。
調子に乗った佐天が刻を夜まで加速させたため、今存在する光源はわずかばかりの星の明かりのみ。
ぎりぎり見えるかどうかの3倍に引き伸ばしたとして約10秒前後の時間がある。
その間に初春を連れ、御坂と白井を連れ、この廃工場から脱出することは不可能。
まさに絶望的な状況。
初春(こうなったら……)
佐天自身の時間の流れと、能力対象外の時間の流れが異なる場合、
一時的に五感を失うのと等しい状況に陥る。
空気の流れが対比してゆっくりになれば匂いは感じ取れなくなるし、音も聞こえなくなる。
そして時間経過で移動しているのは空気だけでなく光も同じである。
空気同様に、自身を加速しすぎれば光さえ失ってしまうのだ。
おそらく結標の狂乱ぶりから残りわずか数秒で空気を座標移動するだろう。
その残り時間を佐天の能力で2倍に引き伸ばしたとすれば、
明るさに限って言えば今の半分の暗さの中を移動することになる。
4倍に引き伸ばせば明るさは四分の一になってしまう。
日中の明るさなら10倍、つまり十分の一の明るさでもうすぼんやりと周囲が見渡せた。
だが、今は深夜なのだ。
調子に乗った佐天が刻を夜まで加速させたため、今存在する光源はわずかばかりの星の明かりのみ。
ぎりぎり見えるかどうかの3倍に引き伸ばしたとして約10秒前後の時間がある。
その間に初春を連れ、御坂と白井を連れ、この廃工場から脱出することは不可能。
まさに絶望的な状況。
初春(こうなったら……)
503: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:50:11.81 ID:8zN+MrmJ0
結標「これが、触れていない物も移動できる空間移動と座標移動と絶対的な差よおおおおお!!」 ←空中
自棄を起こした結標が全てを自爆覚悟の座標移動を行おうとした次の瞬間!
初春「ロック!」
初春が一言呟いただけで、何も起こりはしなかった。
御坂「……え? え?」
白井「何も、起こりませんの?」
佐天「初春! あんたまさか!」
初春「……」
佐天「能力、……使ったの?」
御坂「初春さんの、能力……?」
自棄を起こした結標が全てを自爆覚悟の座標移動を行おうとした次の瞬間!
初春「ロック!」
初春が一言呟いただけで、何も起こりはしなかった。
御坂「……え? え?」
白井「何も、起こりませんの?」
佐天「初春! あんたまさか!」
初春「……」
佐天「能力、……使ったの?」
御坂「初春さんの、能力……?」
504: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:50:56.08 ID:8zN+MrmJ0
結標を見上げれば口をパクパクと動かし、まるで壁を叩くパントマイムのように空中をバンバンと叩くような動作をしている。
さっきまでの違いは空力操作によってくるくると回されていたのが、今は何もない空中に立っているように見える。
そして初春はまるでお祈りでもするかのような両手を組んだ姿勢をとっている。
当然だがその手からは携帯が手放され地面に叩きつけられていた。
初春「他に方法が思いつかなくて……」
佐天「ごめん、私が調子に乗ったばっかりに……」
白井「初春の能力は定温保存(サーマルハンド)のレベル1のはず。ならこれは樹形図の設計者による能力では……」
初春「……」
初春は答えない。
ただ、その両手をそっと開き、落とした携帯を拾おうとする。
結標「……けんじゃなっ、わっ!? ひゃあああ」
同時に結標の声が聞こえ、空中にいた彼女は落下して尻餅をついた。
結標「いたた……、この能力、まさかあなた……第六位!?」
初春「ッ!!」ビクッ
がしゃん。
その言葉に目に見えてうろたえた初春はせっかく拾った携帯を再び落としてしまう。
さっきまでの違いは空力操作によってくるくると回されていたのが、今は何もない空中に立っているように見える。
そして初春はまるでお祈りでもするかのような両手を組んだ姿勢をとっている。
当然だがその手からは携帯が手放され地面に叩きつけられていた。
初春「他に方法が思いつかなくて……」
佐天「ごめん、私が調子に乗ったばっかりに……」
白井「初春の能力は定温保存(サーマルハンド)のレベル1のはず。ならこれは樹形図の設計者による能力では……」
初春「……」
初春は答えない。
ただ、その両手をそっと開き、落とした携帯を拾おうとする。
結標「……けんじゃなっ、わっ!? ひゃあああ」
同時に結標の声が聞こえ、空中にいた彼女は落下して尻餅をついた。
結標「いたた……、この能力、まさかあなた……第六位!?」
初春「ッ!!」ビクッ
がしゃん。
その言葉に目に見えてうろたえた初春はせっかく拾った携帯を再び落としてしまう。
505: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:52:03.20 ID:8zN+MrmJ0
結標「その反応……、本当にあなたが第六位、密室殺人(デスルーム)なのね」ゴクリ
御坂「です、るーむ?」
初春「……」
佐天「……」
結標「空間と空間の間に壁を作り隔離する空間断絶能力……。
都市伝説かと思ってたけど実在したなんて……」
御坂「能力を暴走させ窒息死したっていう、あの……?」
結標「間違いないわ。こんな特異な能力、該当する人間は他にはいないはず」
白井「初春がそんなすごい能力者だったなんて……」
初春「……すごくなんてないです」
佐天「初春……」
初春「こんな……人殺しの能力なんて……」
御坂「人、殺し……?」
御坂「です、るーむ?」
初春「……」
佐天「……」
結標「空間と空間の間に壁を作り隔離する空間断絶能力……。
都市伝説かと思ってたけど実在したなんて……」
御坂「能力を暴走させ窒息死したっていう、あの……?」
結標「間違いないわ。こんな特異な能力、該当する人間は他にはいないはず」
白井「初春がそんなすごい能力者だったなんて……」
初春「……すごくなんてないです」
佐天「初春……」
初春「こんな……人殺しの能力なんて……」
御坂「人、殺し……?」
506: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:52:40.81 ID:8zN+MrmJ0
初春「あれは一年前の出来事でした。能力調査の一環でテレポーターを私の能力で閉じ込める、ただそれだけ」
初春はぽつりぽつりと語り始める。
初春「結果、私の力は11次元にまで干渉し、テレポーターさえも出て来れないことが判明しました」
白井「なんと……」
初春「これは面白いと研究者たちは大喜びでしたが、そこで悲劇が起きました。――能力の暴走です」
御坂「暴走?」
初春「能力を解除しようと思っても解除できなかったんです。手を開いても閉じても能力は解除されず、
テレポーターの人は私が隔離した空間の中で弱っていきました。
隔離した空間は小さめでしたからすぐに空気がなくなり、彼女は絶命しました」
結標「……」ゴクリ
初春「私は貴重なレベル5ということでこれといったお咎めはなし、考えられないでしょう?
レベル5は人殺しが許されるんってことですよ?
自身の能力に恐怖した私は書庫をハッキングして自分の能力をレベル1に書き換え今日まで暮らしてきました」
定温保存――。
その実態は、保温対象を隔離し外界との温度差を生じさせないことで空間内の温度を変化させない
密室殺人の能力応用によって作り出された偽の能力だったのだ。
初春はぽつりぽつりと語り始める。
初春「結果、私の力は11次元にまで干渉し、テレポーターさえも出て来れないことが判明しました」
白井「なんと……」
初春「これは面白いと研究者たちは大喜びでしたが、そこで悲劇が起きました。――能力の暴走です」
御坂「暴走?」
初春「能力を解除しようと思っても解除できなかったんです。手を開いても閉じても能力は解除されず、
テレポーターの人は私が隔離した空間の中で弱っていきました。
隔離した空間は小さめでしたからすぐに空気がなくなり、彼女は絶命しました」
結標「……」ゴクリ
初春「私は貴重なレベル5ということでこれといったお咎めはなし、考えられないでしょう?
レベル5は人殺しが許されるんってことですよ?
自身の能力に恐怖した私は書庫をハッキングして自分の能力をレベル1に書き換え今日まで暮らしてきました」
定温保存――。
その実態は、保温対象を隔離し外界との温度差を生じさせないことで空間内の温度を変化させない
密室殺人の能力応用によって作り出された偽の能力だったのだ。
507: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:53:34.90 ID:8zN+MrmJ0
結標「超電磁砲(レールガン)に時間加速(タイムアクセル)、挙句の果てに密室殺人(デスルーム)ですって?
冗談じゃないわよ、こんな化物ばかりの空間にいたら命がいくつあっても足りないわ。
私は一足先に帰らせてもらうわ」
結標は軍用警棒を一振り、自身を座標移動させこの場から離れようとするが……。
結標「あら? ……もう一度っ!」
初春「逃がしませんよ? すでにこの工場全体を能力で囲いました。
私が第六位だと知られた以上、皆さんにはここで死んでもらいます」
結標「なっ!? ちょっと、冗談でしょう!?」
白井「初春! やめるですの!」
御坂「何も殺さなくたって……!」
初春「白井さんに御坂さんも、これは他人事じゃないですよ?
皆さんって言うのは結標さん、白井さん、御坂さんのことですから」
御坂「え?」
白井「はい?」
冗談じゃないわよ、こんな化物ばかりの空間にいたら命がいくつあっても足りないわ。
私は一足先に帰らせてもらうわ」
結標は軍用警棒を一振り、自身を座標移動させこの場から離れようとするが……。
結標「あら? ……もう一度っ!」
初春「逃がしませんよ? すでにこの工場全体を能力で囲いました。
私が第六位だと知られた以上、皆さんにはここで死んでもらいます」
結標「なっ!? ちょっと、冗談でしょう!?」
白井「初春! やめるですの!」
御坂「何も殺さなくたって……!」
初春「白井さんに御坂さんも、これは他人事じゃないですよ?
皆さんって言うのは結標さん、白井さん、御坂さんのことですから」
御坂「え?」
白井「はい?」
508: ◆tVP11EVtkPKg 2011/06/19(日) 19:54:26.47 ID:8zN+MrmJ0
佐天「初春! 白井さんや御坂さんはこのことを人に言ったりなんて……」
初春「信用できません。私が信用するのは世界でただ一人、佐天さんだけです」
佐天「う、初春」///
初春「他の人なんか何人死んだって構いません。白井さんや御坂さんも例外じゃありません。
私の世界には佐天さん一人いればそれで満足なんです」
白井「や、やばいですの、初春の目が光を失って完全に病んでますの」ウググ
御坂「私たちの声、絶対聞こえてないわよ……」アワワ
初春「佐天さん、私が隔離できるのは一つの空間だけです。
工場全体を囲ってテレポートでの逃走は封じてますから、佐天さんがぶっ殺しちゃって下さい」
佐天「……初春」
御坂「佐天さんこんなことやめて!」
白井「そうですの、さっきだって私たちを巻き込みたくなかったって」
佐天「ごめんなさい、白井さん、御坂さん。初春と約束なんで、死んで下さい」ニコッ
初春「信用できません。私が信用するのは世界でただ一人、佐天さんだけです」
佐天「う、初春」///
初春「他の人なんか何人死んだって構いません。白井さんや御坂さんも例外じゃありません。
私の世界には佐天さん一人いればそれで満足なんです」
白井「や、やばいですの、初春の目が光を失って完全に病んでますの」ウググ
御坂「私たちの声、絶対聞こえてないわよ……」アワワ
初春「佐天さん、私が隔離できるのは一つの空間だけです。
工場全体を囲ってテレポートでの逃走は封じてますから、佐天さんがぶっ殺しちゃって下さい」
佐天「……初春」
御坂「佐天さんこんなことやめて!」
白井「そうですの、さっきだって私たちを巻き込みたくなかったって」
佐天「ごめんなさい、白井さん、御坂さん。初春と約束なんで、死んで下さい」ニコッ
515: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:23:54.81 ID:3WDZ9zM20
結標「冗談じゃないわよ、あんたらみたいなガキに殺されてたまるもんですか!
直接動きを制限されないのなら、あなたの方から殺すまでよ。死になさい!」
結標は軍用警棒を振るう、振るう。
足元に転がっていた暗部の犬どもを初春と『重なる』ように座標移動させる。
初春「無駄ですよ」
だが、初春は事も無げに座標移動で送られてきた暗部をバックステップでかわす。
初春「この工場内は私の手の平も同じ、おかしな動きがあればすぐに察知できます」
結標「このっ!」
佐天「あと、余所見は厳禁ですよ?」
結標「がぁッ!?」
それは一瞬の出来事だった。
気付けば佐天が目の前に立っていて、腹部に蹴りが深々と突き刺さっている。
佐天「あなたには統括理事長のいる場所への転移座標を聞かないといけないから、まだ殺しません。
だから、しばらく気絶しててください」
沈黙。
膝から崩れ落ちた結標はピクリとも動かず、完全に沈黙してしまった。
佐天「次は白井さんと御坂さんの番ですよ」ニコリ
御坂「ひっ!」タジ
白井「くっ、お姉さまが脅えて……」
直接動きを制限されないのなら、あなたの方から殺すまでよ。死になさい!」
結標は軍用警棒を振るう、振るう。
足元に転がっていた暗部の犬どもを初春と『重なる』ように座標移動させる。
初春「無駄ですよ」
だが、初春は事も無げに座標移動で送られてきた暗部をバックステップでかわす。
初春「この工場内は私の手の平も同じ、おかしな動きがあればすぐに察知できます」
結標「このっ!」
佐天「あと、余所見は厳禁ですよ?」
結標「がぁッ!?」
それは一瞬の出来事だった。
気付けば佐天が目の前に立っていて、腹部に蹴りが深々と突き刺さっている。
佐天「あなたには統括理事長のいる場所への転移座標を聞かないといけないから、まだ殺しません。
だから、しばらく気絶しててください」
沈黙。
膝から崩れ落ちた結標はピクリとも動かず、完全に沈黙してしまった。
佐天「次は白井さんと御坂さんの番ですよ」ニコリ
御坂「ひっ!」タジ
白井「くっ、お姉さまが脅えて……」
516: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:24:41.55 ID:3WDZ9zM20
白井「佐天さんを傷つけることになってしまいますが、仕方ありませんの……」
白井はそっと両の手をスカートの裾から中へと伸ばし、得物に触れる。
ヒュン、と空気を割くような音をさせ鉄心を転移させる。
狙うのは佐天の足首、アキレス腱だ。
佐天「はい、はずれー」
白井「!?」
鉄心が転移する瞬間、佐天は白井の狙った右足を横にずらす。
転移した鉄心は重力に引かれて床に落ち、金属の高い音を響かせる。
佐天「テレポートの瞬間って、時間ベクトルがわずかに『揺れる』んですよ。
私にはそれがわかる、見える、感じるんです。下等なテレポーターごときが勝てるわけないんですよ。
正直めんどくさいんで潔く死んでくれませんか?」
白井「ご冗談を。佐天さんこそ今なら友人のよしみで原稿用紙20枚分の反省文で許してあげてもよろしいですのよ?」
佐天「力の及ばない格上相手にする交渉とは思えませんね。もういい、死n」
途中から佐天の言葉がぶれて聞こえる。
言葉のぶれを感知したときには佐天が白井の目の前から姿を消していて、
コンマ数秒後には結標同様に意識を刈り取られていることだろう。
白井(ッ! 殺られる……!)
佐天(さようなら、白井さん。初春のために死んでくだ……、ッ!?)
バチバチッ!
空気との摩擦で何かが弾けるような音を立てて電撃が迸った。
白井はそっと両の手をスカートの裾から中へと伸ばし、得物に触れる。
ヒュン、と空気を割くような音をさせ鉄心を転移させる。
狙うのは佐天の足首、アキレス腱だ。
佐天「はい、はずれー」
白井「!?」
鉄心が転移する瞬間、佐天は白井の狙った右足を横にずらす。
転移した鉄心は重力に引かれて床に落ち、金属の高い音を響かせる。
佐天「テレポートの瞬間って、時間ベクトルがわずかに『揺れる』んですよ。
私にはそれがわかる、見える、感じるんです。下等なテレポーターごときが勝てるわけないんですよ。
正直めんどくさいんで潔く死んでくれませんか?」
白井「ご冗談を。佐天さんこそ今なら友人のよしみで原稿用紙20枚分の反省文で許してあげてもよろしいですのよ?」
佐天「力の及ばない格上相手にする交渉とは思えませんね。もういい、死n」
途中から佐天の言葉がぶれて聞こえる。
言葉のぶれを感知したときには佐天が白井の目の前から姿を消していて、
コンマ数秒後には結標同様に意識を刈り取られていることだろう。
白井(ッ! 殺られる……!)
佐天(さようなら、白井さん。初春のために死んでくだ……、ッ!?)
バチバチッ!
空気との摩擦で何かが弾けるような音を立てて電撃が迸った。
517: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:25:31.21 ID:3WDZ9zM20
白井「お姉さま!」
佐天「あっぶなー……、さっきまで子犬みたいに震えてたくせに、まだ戦うんですか? 御坂さん」
御坂「もう、何も失いたくないから……」
佐天「はい?」
御坂「黒子も、妹達も、佐天さんも初春さんも、誰も失いたくないのよもう!」
バチバチ、ピシャーン!
感情の高ぶりをそのまま攻撃に乗せた、超高電圧の電撃が佐天を襲う。
佐天「そんなの喰らったら一発で心臓止まりま、うぇぁっ!?」
時間加速で御坂の攻撃を回避した佐天を、再び電撃が襲う。
寸でのところではあったが同様に時間加速でどうにか回避に成功する。
御坂(今の佐天さん相手に手加減なんかしてたら勝てっこない……。
当たったら心臓止まっちゃうだろうけど、電気ショックで蘇生すれば問題ないわ!)
佐天(動きが読まれてる? 御坂さんの能力を考えれば電磁波を使ったレーダーか何か。それなら……)
連続して電撃を放つ御坂から、大きく距離をとる佐天。
佐天「……」
御坂「……」
御坂と佐天、二人のレベル5はじっと互いを睨みあったままもう口を開こうとはしない。
喋ることすら隙に繋がる、僅かな隙が敗北に繋がる。
この戦いはそれほど高次元の戦いなのだ。
佐天「あっぶなー……、さっきまで子犬みたいに震えてたくせに、まだ戦うんですか? 御坂さん」
御坂「もう、何も失いたくないから……」
佐天「はい?」
御坂「黒子も、妹達も、佐天さんも初春さんも、誰も失いたくないのよもう!」
バチバチ、ピシャーン!
感情の高ぶりをそのまま攻撃に乗せた、超高電圧の電撃が佐天を襲う。
佐天「そんなの喰らったら一発で心臓止まりま、うぇぁっ!?」
時間加速で御坂の攻撃を回避した佐天を、再び電撃が襲う。
寸でのところではあったが同様に時間加速でどうにか回避に成功する。
御坂(今の佐天さん相手に手加減なんかしてたら勝てっこない……。
当たったら心臓止まっちゃうだろうけど、電気ショックで蘇生すれば問題ないわ!)
佐天(動きが読まれてる? 御坂さんの能力を考えれば電磁波を使ったレーダーか何か。それなら……)
連続して電撃を放つ御坂から、大きく距離をとる佐天。
佐天「……」
御坂「……」
御坂と佐天、二人のレベル5はじっと互いを睨みあったままもう口を開こうとはしない。
喋ることすら隙に繋がる、僅かな隙が敗北に繋がる。
この戦いはそれほど高次元の戦いなのだ。
518: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:26:33.16 ID:3WDZ9zM20
次元の違いに白井が割って入る隙など存在しない。
白井にできるのは御坂の勝利を祈って見守ることだけ。
そして永遠に続くのではとさえ思われた長い、あるいは短い睨みあいの状態から先に動いたのは佐天だった。
こつこつと、ローファーを鳴らせて御坂に向かって直進する佐天。
まだ能力(タイムアクセル)は使わない。
一歩、二歩と近付くたびに緊張が走る。
そして5歩目、御坂が牽制の電撃を放とうかと考えた瞬間、佐天が姿を消す。
御坂(目では見えなくても、私のレーダーには映ってるわよ……、その右後方からの不意打ち!)
御坂「そこよっ!」
ばっ、と振り向き様に電撃を放つ。
御坂「!?」
しかしそこには誰もいない。
なぜ?という疑問が浮かぶ前に御坂の鳩尾に痛みが走る。
御坂「かはっ……」
佐天「残念でした、それは私が時間を意図的にゆがめて作ったダミーです。そしてとどめ!」
腹部の痛みに膝を突く御坂を前に、佐天はバックステップで軽く距離をとり両手を広げる。
佐天「まがれマガれ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ……」
御坂「ぐっ、何を……?」
御坂の周囲を回るように突風が吹き始める。
それは佐天の能力によって時間が歪められたことで発生したもの。
そしてどんどんと勢いを増していく突風は瞬時にして竜巻と化す。
白井にできるのは御坂の勝利を祈って見守ることだけ。
そして永遠に続くのではとさえ思われた長い、あるいは短い睨みあいの状態から先に動いたのは佐天だった。
こつこつと、ローファーを鳴らせて御坂に向かって直進する佐天。
まだ能力(タイムアクセル)は使わない。
一歩、二歩と近付くたびに緊張が走る。
そして5歩目、御坂が牽制の電撃を放とうかと考えた瞬間、佐天が姿を消す。
御坂(目では見えなくても、私のレーダーには映ってるわよ……、その右後方からの不意打ち!)
御坂「そこよっ!」
ばっ、と振り向き様に電撃を放つ。
御坂「!?」
しかしそこには誰もいない。
なぜ?という疑問が浮かぶ前に御坂の鳩尾に痛みが走る。
御坂「かはっ……」
佐天「残念でした、それは私が時間を意図的にゆがめて作ったダミーです。そしてとどめ!」
腹部の痛みに膝を突く御坂を前に、佐天はバックステップで軽く距離をとり両手を広げる。
佐天「まがれマガれ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ凶れ……」
御坂「ぐっ、何を……?」
御坂の周囲を回るように突風が吹き始める。
それは佐天の能力によって時間が歪められたことで発生したもの。
そしてどんどんと勢いを増していく突風は瞬時にして竜巻と化す。
519: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:27:14.55 ID:3WDZ9zM20
佐天「フィニッシュ!」
佐天が両手を交差すると竜巻の直径が小さくなる。
さっきまでの大きさが竜巻の中心に人が一人入れるかどうかというもの、
それがさらに小さくなったとなれば吹き飛ばされまいとどうにか耐えていた中の人間は竜巻に巻き込まれ宙を舞う。
御坂「きゃああああああああぁぁ」
佐天「必殺、時の竜巻(タイムタイフーン)!」
ごしゃあぁぁっ!!
錐もみ状態で宙を舞っていた御坂が勢いよく地面に叩きつけられる。
ぐったりとした様子でピクリとも動かない。
佐天(決まった……!)
佐天「フッ、みねう、」
初春「佐天さん、後ろッ!」
佐天「え?」
佐天は憧れていた一つ年上の少女に完膚なきまでに勝利して自己陶酔に陥っていた。
隙だらけの佐天が振り向くよりも先に少女は佐天にしがみ付く。
佐天「なっ……し、白井さん!!」
白井「お姉さまが命がけで作ってくださったこのチャンス、無駄にはしませんわ……!」
佐天が御坂にとどめを刺し、完全に意識が逸れた隙に白井は佐天の約5m背後に空間移動していたのだ。
佐天が両手を交差すると竜巻の直径が小さくなる。
さっきまでの大きさが竜巻の中心に人が一人入れるかどうかというもの、
それがさらに小さくなったとなれば吹き飛ばされまいとどうにか耐えていた中の人間は竜巻に巻き込まれ宙を舞う。
御坂「きゃああああああああぁぁ」
佐天「必殺、時の竜巻(タイムタイフーン)!」
ごしゃあぁぁっ!!
錐もみ状態で宙を舞っていた御坂が勢いよく地面に叩きつけられる。
ぐったりとした様子でピクリとも動かない。
佐天(決まった……!)
佐天「フッ、みねう、」
初春「佐天さん、後ろッ!」
佐天「え?」
佐天は憧れていた一つ年上の少女に完膚なきまでに勝利して自己陶酔に陥っていた。
隙だらけの佐天が振り向くよりも先に少女は佐天にしがみ付く。
佐天「なっ……し、白井さん!!」
白井「お姉さまが命がけで作ってくださったこのチャンス、無駄にはしませんわ……!」
佐天が御坂にとどめを刺し、完全に意識が逸れた隙に白井は佐天の約5m背後に空間移動していたのだ。
520: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:27:57.18 ID:3WDZ9zM20
白井「こうやって密着してしまえば佐天さんの力は何一つ有効な手はない、そうでしょう?」ニヤリ
白井の言う通り佐天の力の弱点は相手に密着されること。
佐天「離れてくださいよ、このっ、このおおおお!」
白井「そんなに離して欲しいのでしたらお望み通りに」
暴れる佐天に白井は自身の力を行使する。
佐天「うぇっ!?」
気付けば天井近くの空中に、しかも上下逆さまという状態に佐天は目を丸くする。
そして後を追って白井自身も佐天の両脇に足を乗せ、両足を掴むように空間移動する。
初春「あ、あれはっ!」
白井「固法先輩直伝、疾風迅雷落とし! またの名を……」
ズガアアアアアン!!
白井「 キ ン 肉 ド ラ イ バ ー !!」
キャンバスに叩きつけられた佐天はぐったりとした様子でピクリとも動かない。
白井の言う通り佐天の力の弱点は相手に密着されること。
佐天「離れてくださいよ、このっ、このおおおお!」
白井「そんなに離して欲しいのでしたらお望み通りに」
暴れる佐天に白井は自身の力を行使する。
佐天「うぇっ!?」
気付けば天井近くの空中に、しかも上下逆さまという状態に佐天は目を丸くする。
そして後を追って白井自身も佐天の両脇に足を乗せ、両足を掴むように空間移動する。
初春「あ、あれはっ!」
白井「固法先輩直伝、疾風迅雷落とし! またの名を……」
ズガアアアアアン!!
白井「 キ ン 肉 ド ラ イ バ ー !!」
キャンバスに叩きつけられた佐天はぐったりとした様子でピクリとも動かない。
521: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:28:25.44 ID:3WDZ9zM20
佐天、御坂、結標、さらに猟犬部隊の17人が倒れ伏し死屍累々といった状況で
工場内に立っているのは白井と初春の二人だけ。
初春「そんな、佐天さんが負けるはず……!」
白井「驕りが過ぎたんですの。佐天さんも、初春も」
初春「ひっ!」
初春は咄嗟に祈るように握っていた両の手を開き工場全体にかけていた能力を解除する。
そしてすぐに白井の周囲に能力を再度行使しようとする。
白井「遅いですの」
初春の真後ろに空間移動した白井は初春の右手を掴み捻りあげる。
初春「うっ、ぐぁ……は、離して」
白井「初春、終わりにしましょう……」
そう呟いて白井は初春を空中に空間移動させる。
佐天に仕掛けたとき同様に、直後に自身も空間移動すると今度はパンツの中に初春の頭をねじ込みパイルドライバーを叩き込む。
ズガアアアアアン!!
白井「 パ ン ツ ド ラ イ バ ー !!」
キャンバスに叩きつけられた初春はぐったりとした様子でピクリとも動かない。
工場内に立っているのは白井と初春の二人だけ。
初春「そんな、佐天さんが負けるはず……!」
白井「驕りが過ぎたんですの。佐天さんも、初春も」
初春「ひっ!」
初春は咄嗟に祈るように握っていた両の手を開き工場全体にかけていた能力を解除する。
そしてすぐに白井の周囲に能力を再度行使しようとする。
白井「遅いですの」
初春の真後ろに空間移動した白井は初春の右手を掴み捻りあげる。
初春「うっ、ぐぁ……は、離して」
白井「初春、終わりにしましょう……」
そう呟いて白井は初春を空中に空間移動させる。
佐天に仕掛けたとき同様に、直後に自身も空間移動すると今度はパンツの中に初春の頭をねじ込みパイルドライバーを叩き込む。
ズガアアアアアン!!
白井「 パ ン ツ ド ラ イ バ ー !!」
キャンバスに叩きつけられた初春はぐったりとした様子でピクリとも動かない。
522: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:29:22.06 ID:3WDZ9zM20
今、工場内に立っているのは白井だけ。
白井は呆然とした様子で立ち尽くし空を見上げる。
白井「……虚しいですの」
視線を下に戻し、もう一度周囲を見渡す。
目当てのもの――残骸(レムナント)を見つけゆっくりとした歩調で近付く。
白井は残骸に触れると能力で外側のケースのみを空間移動させ中身を露呈させる。
パソコンの部品程度にしか思えないソレを見下ろし、白井は残骸のケースを振り下ろす。
白井「こんなもの! こんなものさえなければ誰も傷つかずに!
壊れろ! 壊れてしまえですのッ!!」
がしゃん、がしゃん、ばきり、ぐしゃり
残骸が文字通りの残骸と化しても白井はケースを振り下ろすのをやめない。
力の続く限り何度も何度も振り下ろし続ける。
白井「このおおおおお!! ……あ」
感情に任せてケースを振り回していた白井にもついにそのときが訪れたのだ。
手に汗が滲み、取っ手が滑りケースが宙を舞う。
ケースの行き先を見届けようと見上げると、目の前にケースが落下してくるところだった。
がんっ!
頭を強く打った白井は倒れこみぐったりとした様子でピクリとも動かない。
そして、工場内に立っているものは誰もいなくなった。
――――――――
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白井は呆然とした様子で立ち尽くし空を見上げる。
白井「……虚しいですの」
視線を下に戻し、もう一度周囲を見渡す。
目当てのもの――残骸(レムナント)を見つけゆっくりとした歩調で近付く。
白井は残骸に触れると能力で外側のケースのみを空間移動させ中身を露呈させる。
パソコンの部品程度にしか思えないソレを見下ろし、白井は残骸のケースを振り下ろす。
白井「こんなもの! こんなものさえなければ誰も傷つかずに!
壊れろ! 壊れてしまえですのッ!!」
がしゃん、がしゃん、ばきり、ぐしゃり
残骸が文字通りの残骸と化しても白井はケースを振り下ろすのをやめない。
力の続く限り何度も何度も振り下ろし続ける。
白井「このおおおおお!! ……あ」
感情に任せてケースを振り回していた白井にもついにそのときが訪れたのだ。
手に汗が滲み、取っ手が滑りケースが宙を舞う。
ケースの行き先を見届けようと見上げると、目の前にケースが落下してくるところだった。
がんっ!
頭を強く打った白井は倒れこみぐったりとした様子でピクリとも動かない。
そして、工場内に立っているものは誰もいなくなった。
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523: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:30:13.73 ID:3WDZ9zM20
夜明け――。
結標「ぅーん、ッイタタ……何これ、体中が痛いわ……」
死屍累々の工場内で最初に目を覚まし身体を起こす一人の少女。
全身の痛みに耐えながらぼーっとした頭で周囲を見渡す。
結標「何よ、これ……」
理解することを拒否しそうになるわけのわからない状況に苦悶の声を漏らす。
昨日あったことをゆっくりと反芻してどうにか状況を理解する。
結標「残骸も粉々で何も残ってない……笑っちゃうわね」
笑うといっても自嘲気味の乾いた笑いにしかならないのが情けない。
結標「それもこれもこいつらのせい……!」
何があったかはわからないがどうやら気絶しているだけらしい。
今のうちにと、落ちている残骸の破片を邪魔をしてくれて目障りな少女たちの脳みそ目掛けて座標移動させようとする。
結標「……うそ、でしょう?」
能力が使えない、能力を使おうとすると激しい動悸に襲われ演算に集中できなくなっていた。
結標「は、はは……、私にはほんとに何も残ってないのね……」
もう何も考えたくなかった。
危害を加える気力も失い、結標はそのまま工場を跡にした。
――――――――
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結標「ぅーん、ッイタタ……何これ、体中が痛いわ……」
死屍累々の工場内で最初に目を覚まし身体を起こす一人の少女。
全身の痛みに耐えながらぼーっとした頭で周囲を見渡す。
結標「何よ、これ……」
理解することを拒否しそうになるわけのわからない状況に苦悶の声を漏らす。
昨日あったことをゆっくりと反芻してどうにか状況を理解する。
結標「残骸も粉々で何も残ってない……笑っちゃうわね」
笑うといっても自嘲気味の乾いた笑いにしかならないのが情けない。
結標「それもこれもこいつらのせい……!」
何があったかはわからないがどうやら気絶しているだけらしい。
今のうちにと、落ちている残骸の破片を邪魔をしてくれて目障りな少女たちの脳みそ目掛けて座標移動させようとする。
結標「……うそ、でしょう?」
能力が使えない、能力を使おうとすると激しい動悸に襲われ演算に集中できなくなっていた。
結標「は、はは……、私にはほんとに何も残ってないのね……」
もう何も考えたくなかった。
危害を加える気力も失い、結標はそのまま工場を跡にした。
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524: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:30:42.92 ID:3WDZ9zM20
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
佐天「う~ん、もう食べられないってば~」
初春「何漫画みたいな寝言言ってるんですか、佐天さん。いい加減起きてくださいよもう!」ベチン
佐天「ふぇ? あれ、初春おはよ……ってなんで初春がいんの?」
御坂「初春さんだけじゃないわよ」
白井「私たちもおりますのよ」
佐天「いやいや、それこそなんでいるんですか? っていうかここどこ!? 何この状況!?!?」
初春「佐天さんもわからないんですか?」
佐天「私もってどういうこと?」
御坂「どうもこうも、目が覚めたらこの状況よ。結標を追いかけてるとこまでは覚えてるんだけど……」
白井「私もですの」
初春「私もここ二日くらいの記憶が曖昧で……、佐天さん何か覚えてませんか?」
佐天「うーん……、確か昨日学校帰りに初春と風紀委員一七七支部に向かってたような……。
けどそこまでしか思い出せない……、ぅー身体もなんか痛いし……」
全員「「うーん……」」
佐天「う~ん、もう食べられないってば~」
初春「何漫画みたいな寝言言ってるんですか、佐天さん。いい加減起きてくださいよもう!」ベチン
佐天「ふぇ? あれ、初春おはよ……ってなんで初春がいんの?」
御坂「初春さんだけじゃないわよ」
白井「私たちもおりますのよ」
佐天「いやいや、それこそなんでいるんですか? っていうかここどこ!? 何この状況!?!?」
初春「佐天さんもわからないんですか?」
佐天「私もってどういうこと?」
御坂「どうもこうも、目が覚めたらこの状況よ。結標を追いかけてるとこまでは覚えてるんだけど……」
白井「私もですの」
初春「私もここ二日くらいの記憶が曖昧で……、佐天さん何か覚えてませんか?」
佐天「うーん……、確か昨日学校帰りに初春と風紀委員一七七支部に向かってたような……。
けどそこまでしか思い出せない……、ぅー身体もなんか痛いし……」
全員「「うーん……」」
525: ◆tVP11EVtkPKg 2011/07/22(金) 22:31:11.83 ID:3WDZ9zM20
御坂「このままここで考えてても仕方ないし、病院にいきましょうか……」
白井「そうですわね、結標に付けられた傷が痛みますの……」
佐天「この変な格好で倒れてる人たちはどうします?」
初春「匿名で通報しときましょう。私たち記憶がないですし、関わり合いにならないほうがいいですよ」
御坂「じゃ、そういう感じで」
なんか私、特に首が痛いです
うん、私も首が……
私は頭ですの、瘤ができてて、イタタ……
ほんと何があったのかしらね……
あの工場でバトルロイヤルでもやってた、とか?
あはは、なんですかそれ~、そんなわけないですよ
それなら全員倒れてる理由がわかりませんの、お姉さまは勝ち残っているはずですの
そうですよね、そんなことがあったらレベル5の御坂さんの優勝ですよねー
あはははは、くすくす、えーそんなー……
とある科学のタタリの昼に――。 / 終
白井「そうですわね、結標に付けられた傷が痛みますの……」
佐天「この変な格好で倒れてる人たちはどうします?」
初春「匿名で通報しときましょう。私たち記憶がないですし、関わり合いにならないほうがいいですよ」
御坂「じゃ、そういう感じで」
なんか私、特に首が痛いです
うん、私も首が……
私は頭ですの、瘤ができてて、イタタ……
ほんと何があったのかしらね……
あの工場でバトルロイヤルでもやってた、とか?
あはは、なんですかそれ~、そんなわけないですよ
それなら全員倒れてる理由がわかりませんの、お姉さまは勝ち残っているはずですの
そうですよね、そんなことがあったらレベル5の御坂さんの優勝ですよねー
あはははは、くすくす、えーそんなー……
とある科学のタタリの昼に――。 / 終
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