八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」 


79: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:03:35.36 ID:fup7xxcro
では二話です


テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「この世界で自分と全く同じ行動をとる人はいるのか?」

タモリ「そんな事を考えた事があると思います」

タモリ「例えば同じ瞬間に同じ曲を聞いたり」

タモリ「例えば同じ瞬間に同じものを食べたり」

タモリ「それを偶然という事もできますが」

タモリ「案外それが、奇妙な世界への入り口なのかもしれません」

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン

引用元: 八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」 

 

82: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:06:46.48 ID:fup7xxcro
八幡「そんな訳でテスト前である」

結衣「そうだねー、あっそうだ! これからみんなでどっかで勉強しようよ!」

八幡「断る。するメリットがない」

結衣「えー、いいじゃんー」

八幡「いいか、学生の本分は勉学だ。どうせ集まって勉強したって、雑談に走るのがオチだろ。そして俺は誰かと一緒に勉強したところで意味はない」

大体自分でわかるしな。わからないところもググればほぼ確実に解決する。グーグル先生本当素晴らしい。でも数学に関してだと大学以上の範囲を普通に出してくるグーグル先生恐ろしい。

八幡「だから俺は行かない」

結衣「ヒッキーのケチー」ブー

八幡「何とでも言え」

84: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:10:49.47 ID:fup7xxcro
八幡「さて、うるさい奴も説得できたし……家に帰るとするか」

八幡「だが俺には勉強するのに必要なものがある……!」ゴゴゴ…

八幡「勉強のお供にどうぞ! 脳が疲れた時の糖分補給用飲料! その名も! MAXコーヒー!」

八幡「やっぱあれがないとなー」ヤッパコレダネー

八幡「さて、赤い自販赤い自販……」キョロキョロ

八幡「おっ見っけ……なんだこれ、マッ缶ねぇじゃねぇか。使えない自販だな」

八幡「仕方ない。他の探すか……」トボトボ

88: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:13:23.13 ID:fup7xxcro
時同じ頃

戸部「隼人くん今日一緒にマックで勉強しねー?」

葉山「んー、今日はちょっと用事もあるし、パスするよ」

戸部「マジかー隼人くんダメかー」

三浦「戸部っち、隼人の邪魔するのはあーしが許さないからね?」

戸部「わかってるって!」

葉山「じゃあお先に」

90: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:14:13.13 ID:fup7xxcro
葉山「やっぱり戸部に悪かったかな……」テクテク

葉山「用事なんて本当はないのに」

葉山「でも流石にそろそろちゃんと勉強始めないと、成績にも影響が出るし」

葉山「おっ、自動販売機だ。何か買って行こうかな」

葉山「いつもコーラだし、たまには違うのを買ってみるのもいいかもしれないな」

葉山「……とは言え迷うな」

93: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:20:15.46 ID:fup7xxcro
八幡「おっ、この自販にはあるな。やはり千葉県民ならMAXコーヒーだろ」

葉山「運に任せるのも悪くないな」

八幡「この黄色いフォルム……最早芸術と呼んでも良い」

葉山「そうだ、目をつむって押してみよう」

八幡・葉山 ポチットナ

選ばれたのはMAXコーヒーでした

95: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:30:44.17 ID:fup7xxcro
皆様の支援に感謝



パッキイイイイイイイイイン



八幡「何だ……今の……?」

八幡「……さっきと微妙に雰囲気がちが……ってえっ?」

八幡「ここ、どこ……?」



葉山「今、すごい光と眩暈が……って何だろう、体が重いな」

葉山「心なしか視界が淀んで見える」

葉山「あれ? おかしいな、自動販売機にヒキタニくんが写ってるような……」

一分後

八幡「俺の身体が葉山になってるよな、これ」

葉山「なんで俺がヒキタニくんになってるんだ?」

八幡・葉山「「まさか……」」

八幡・葉山「「入れ替わったっっ!?!?」」

97: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:35:52.52 ID:fup7xxcro
八幡 in 葉山's body(以下八幡)

葉山 in 八幡's body(以下葉山)

八幡「どうなってんだよこれ……。なんでMAXコーヒー買おうとしたら、身体が葉山になってんの? 何これドッキリ?」

八幡「いや、ドッキリでも無理だな、これは」

八幡「しかしやばいな、これ早く何とかしないと……」

八幡「おっポケットに携帯入ってるな、悪いが使わせてもらうぜ」

トゥルルルルル

ゴーインゴーインアロンウェーイオレノーミーチーヲーイクーゼー

葉山「!」

葉山「俺の番号……!」

100: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:44:36.84 ID:fup7xxcro
八幡「……葉山か?」

葉山「やっぱりヒキタニくんか」

八幡「どうなってんだよ、これ」

葉山「正直俺にもさっぱりだよ」

八幡「……お前もMAXコーヒー好きなのか?」

葉山「えっ何の……あっそっか。さっきの適当に選んだときの……」

八幡「適当に選んだだと!?」

葉山「!?!?」

103: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:49:37.75 ID:fup7xxcro
八幡「……なんて怒るところじゃないな。今はそれどころじゃない」コブシプルプル

葉山「…………(ちょっと焦った。ヒキタニくんあんな声出せるんだ)」

葉山(あっ今は俺の身体だからか)

八幡「で、今葉山が買ったのがMAXコーヒー……、俺が買おうとしたのもMAXコーヒー……」

八幡「まさかMAXコーヒーで俺ら入れ替わったのか!?」

葉山「そんな……あり得ないよ……」

八幡「でもそれしか考えられねーだろ……」

105: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:54:40.23 ID:fup7xxcro
八幡(MAXコーヒーで入れ替わる……。そんなの現実的に考えればあり得ない)

八幡(でもそれ以外に原因は考えられない)

八幡(MAXコーヒーすごすぎだろ……甘いだけじゃなかったのか……)

葉山「これから、どうする?」

八幡「この状態で誰かに接触したくはないな」

葉山「でも今日はテスト前だし、もう校内にあまり人はいないと思う。学校で集合っていうのはどうだい?」

八幡「…………」

107: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 00:58:24.67 ID:fup7xxcro
八幡(由比ヶ浜と雪ノ下はどこかで、少なくとも校外で一緒に勉強しているはず)

八幡(戸塚も部活がないからいる理由がない)

八幡(他には……平塚先生にだけ気をつければ……)

八幡(ザイモクザ? 誰それ?)

八幡「そうだな、そうしよう」

葉山「よし、じゃあクラスの教室の前に集合にしよう」

八幡「わかった」

109: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:10:00.15 ID:fup7xxcro
八幡「さてと、着いたな」

八幡「本当に人の気配がしねーな。学校開いてんの?」

三浦「あれー? 隼人じゃん」

八幡「!?」

三浦「用事あるんじゃなかったの?」

八幡「み、三浦……」

三浦「はぁ? 隼人あーしのことそんな風に呼んでたっけ?」

八幡(やべぇっ! しまった! 焦ってミスった!)

八幡「ゆ……優美子……」

三浦「そ、そんな呼び方すんなし!///」

八幡(か、かわいい……)

111: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:15:50.10 ID:fup7xxcro
八幡「い、いや……ちょっと忘れ物しちまっ……じゃなくて、したから取りに戻ってたんだ」

三浦「ああ、そーなの」

八幡「おう、じゃあな」

三浦「隼人」

八幡「…………」

三浦「隼人!」

八幡「……あっ俺か」

三浦「無視すんなし……」

八幡「す、すまん……。で、なんだ?」

三浦「隼人の目、ヒキオみたいに少し腐ってるけど、何かあったの?」

八幡「…………」

八幡(これ身体的特徴じゃなかったのか……)

113: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:19:03.37 ID:fup7xxcro
八幡「わ、わからん! と、とりあえず用事があるみたいだからまたな!」タッタッタッ

三浦「あっ……」



八幡「危なかった……バレてねぇよな……?」

八幡「バレてないと祈ろう……」

葉山「……なんか、変な気分だな。自分の姿が目の前にあると」

八幡「葉山か。やべ、本当に俺が目の前にいる。気持ち悪いな……」

葉山「……とりあえず状況を整理しよう」

カクカクシカジカ

八幡「……原因やっぱりMAXコーヒーか?」

葉山「ここまで来るとそうとしか思えないな」

115: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:22:59.59 ID:fup7xxcro
今日は昨日より早めに落ちると思います
この話も終わらないかも……



海老名「あれ、隼人くんにヒキタニくん。こんな時間にこんなところで何してるの?」

八幡・葉山「「!?!?」」

八幡(しまったああああああああああああこの場で一番出くわしちゃいけないやつ出てきたあああああああああああ!!!)

葉山(ヒキタニくんすごい汗かいてるな……)

海老名「まさか! 秘密の会談!? 二人でコソコソ何をしてたの!? ねぇっ! 教えてっ!!」

葉山(そういえばこんなキャラだったっけ)

117: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:28:26.61 ID:fup7xxcro
八幡「い、いえ、何でもないですよ、海老名さん……」

海老名「海老名……さん……?」

八幡(くそ! またやっちまった!)

八幡「じゃなくて、何でもないよ、……姫菜」プイッ

海老名「」ポクポクポク

海老名「/////」チーン

葉山「…………」

119: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:36:00.10 ID:fup7xxcro
八幡(うおおおおおおお恥ずかし恥ずかし恥ずかしいいいいいいいい!!!)

八幡(リア充はこんなのいとも簡単にやってのけるのかあああああ!!!)

八幡(うわあああああああああああああああああああああっっ!!!)

八幡(……ふぅ、賢者タイムなう)

八幡「と、とりあえず! 何でもな……」

海老名「隼人くんが……デレた……隼人くんが……照れた……隼人くんが……」ユラーリユラーリ

葉山「」

八幡「」

121: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:42:04.98 ID:fup7xxcro
八幡「葉山、場所を移そう。ここじゃもう無理だ」

葉山「えっ、でも姫菜は……」

八幡「大丈夫だ(多分)」

葉山(いや、そっちじゃなくて。姫菜の中での俺のイメージが大変な事になってるような……)

八幡「いいから行くぞ!」テヲギュッ

葉山「!?」

海老名「ハヤハチ(海老名から見て)!! キマシタワーーーーーーーーー!!!」ブォウワアアアアアアアアアア

八幡「うおおっ!? 鼻血でここら一体が真っ赤になってんぞ!?」

葉山「このままじゃ姫菜が出血多量で死ぬ!」ダッ

八幡「くっ……仕方ねぇ……!」ダッ

125: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:48:37.59 ID:fup7xxcro
八幡「ふぅ……ヤバかったな……」

葉山「軽い貧血で済んだみたいだね」

八幡「あの出血量で、貧血程度って……海老名さん何者なんだ?」

葉山「よくやってるから、耐性がついたのかもね。ただ……」チラッ

葉山「まだ廊下は酷いけど……」

八幡「ん、どれどれ……げっ……何だこれ、ここで誰か殺されたのか?ってレベルだな……」

葉山「掃除しとかないと、固まったら落ちなくなる」

八幡「何でこんな事に……」

127: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 01:57:30.74 ID:fup7xxcro
結局俺らはまたさっきの自販機に戻ってくることになった。

本当、さっきの移動は何だったんだよ……。

八幡「よし、かけるか」

トゥルルルルル

葉山『もしもし』

八幡「こちら比企谷。自販機の前に着いた」

葉山『そうか。俺もそろそろ着くよ……あっあれだ』

チャリン、チャリン

八幡「……押すぞ。携帯の電話だと時間差が生まれるから、さっき言ったとおりの時間ぴったりにな」

葉山『ああ』

カチッカチッポチットナ

選ばれたのはMAXコーヒーでした。

129: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 02:06:41.11 ID:fup7xxcro
ガタッガタッドカンッ
マックスコーヒーダヨー

八幡「……何も起こらねぇな。体も戻ってない」

葉山『……あっ』

八幡「? 何だよ?」

葉山『今、君はさっき君がMAXコーヒーを買った場所に行った』

八幡「そうだな」

葉山『つまり、最初の状態と今の状態、身体が逆なんだ』

八幡「あっ……」


場所         A      B
最初      八幡in八幡body 葉山in葉山body
入れ替わり後  葉山in八幡body 八幡in葉山body
現在      八幡in葉山body 葉山in八幡body

131: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 02:13:52.75 ID:fup7xxcro
俺らは今度は場所を交換した

しかし

ガタッガタッドカンッ
マックスコーヒーダヨー

八幡「結局戻らねーじゃねーか!!」

葉山『……すまない』

八幡「あ、いや……お前が謝るような事じゃない。こっちこそすまなかった」

葉山(ヒキタニくん……)ドキッ

ピーンッ

海老名「今っ何かを感じた!」ガバッ

三浦「ほら、姫菜。動かないの」

133: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 02:23:04.91 ID:fup7xxcro
八幡「万策尽きたな……」

葉山「もうどうしようもないね……」

八幡「…………」ボー

葉山「…………」ボー

八幡「自然に戻るのを待つか」

葉山「……戻るのか?」

八幡「漫画とかではな」

葉山「そうか」

八幡「…………」ボー

葉山「…………」ボー

135: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 02:28:44.33 ID:fup7xxcro
八幡「そういや、今週末テストだっけな」

葉山「そうだ……な!?」バッ

八幡「ん、どーした?」

葉山「ヒキタニくん。このままだったら、テストは誰が受けるんだ!?」

八幡「そりゃーお前の分を俺が受けて、俺の分をお前が受けるんだろ?」

葉山「そうだ、大問題だ!」

八幡「?」

葉山「ヒキタニくん……俺は、指定校推薦、狙ってるんだ」

八幡「そうか、頑張れよ」

葉山「だから! 一度でもテストで失敗すると、それを取るのは難しくなる!」

八幡「……おい、お前……まさか」

138: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 02:35:04.29 ID:fup7xxcro
葉山「ヒキタニくん」ガッ

八幡「!?」ゾワゾワ

葉山「これからテストまで勉強会をしよう」

八幡「!?!?」

ピーン

海老名「キ! マ! シ! タ! ワ!ーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」ブワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

三浦「姫菜!?」



今日はここまで。
また明日、二話の後編を書きに来ます。
多分明日も連投できないと思いますので、また支援レスよろしくお願いします。
今日は本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
支援してくれた皆様に多大な感謝を。
それでは、おやすみなさい。

P.S.
自分は俺ガイルで八幡が一番好きですが、二番目は材木座です。

151: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 22:34:50.51 ID:ZzIucIYqo
八幡「で、なんでサイゼなんだ」

葉山「二人とも昼食まだだったしね。ここなら勉強もできて、丁度いい」

八幡「……お前あれマジか?」

葉山「うん。ヒキタニくんに悪い点数取られたらこっちが困るからね。もちろん俺も頑張るから、お互いに悪い話じゃないだろう?」

八幡「まあ、そうだが……」

葉山「じゃあ、始めよう。善は急げと言うし」

八幡「くっ……あの時マッ缶買わなきゃ数学は赤点ギリギリでもよかったのに……!」

八幡「生まれて初めて、MAXコーヒーを恨むぜ……」

葉山「ははは……。でもヒキタニくん、総武高入れるくらいだから、全くできないわけじゃないんだろう? なら今回の範囲は難しくないし、まだ数日ある。いけるよ。」

デネーユキノンー

八幡・葉山「「!?」」

153: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 22:39:27.40 ID:ZzIucIYqo
八幡「何であいつらここにいるんだよ!」ヒソヒソ

葉山「予想外だったね。せっかく少し遠目のサイゼにしたのに」ヒソヒソ

八幡「まあ、この距離なら見つからないよな。こっちの方にトイレとかドリンクバーないから、来る事もないだろうし」ヒソヒソ

葉山「本当、不幸中の幸いってやつだね」ヒソヒソ

アーヒッキーダー

八幡「あいつどこかの原住民なの? ここ結構距離あるぞ?」

葉山「実は超能力とかあるのかもしれないな」

157: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 22:42:33.46 ID:ZzIucIYqo
葉山「どうする?」

八幡「どうするも何も、見つかっちまったら無視できねーだろ」

葉山「そうだな……。あー結衣たちも来てたんだー」テヲフル

八幡「おいバカ……!」

結衣「ゆ……結衣!? てかヒッキーが気持ち悪いくらい爽やかな笑顔でこっちに手を振ってる!?」

雪乃「比企谷くん、いくら由比ヶ浜さんが優しくてもやっていい事と悪い事があるのよ?」

葉山「」

159: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 22:46:50.86 ID:ZzIucIYqo
八幡「あー、雪ノ下……さんたちも来てたんだ」

八幡(よし、今度は完璧だ。マジ俺順応性高すぎ。これなら死んだ世界戦線でもやってけるな。無理か。無理だな)

雪乃「どうして葉山くんと、比企谷くんが一緒にいるのかしら?」

八幡「あーそれはー」

葉山「葉山のやろーが一緒に勉強しようってしつこくてな。それにサイゼで奢るって言ってくれたし」

八幡(こいつ……! 俺の口調をほぼ完璧にコピーしてやがる!)

結衣「それでも珍しいねー。ヒッキー奢るって言われても隼人くんにはついて行かなそうなのにー」

八幡(俺だってこの状況じゃなかったら、ついてかねえよ!)

162: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 22:57:29.68 ID:ZzIucIYqo
書き込んでくれるみんなに心から感謝します



葉山「まーそーいうわけだ。これから俺ら勉強するから、あっち行ってくれ。ゆい……がはま……」

八幡(流石に呼び方を急に変えるのはむずいわな)

八幡(ん? 待てよ? 当分俺ら戻れないかもしれないんだよな……?)

八幡(じゃあ俺、由比ヶ浜の事を結衣って呼ばなきゃいけなくなるのか!?)

八幡(そんなの無理だぞ!)

結衣「そっかー、勉強の邪魔しちゃ悪いもんね」

葉山「ああ、お前も頑張れよ」

結衣「うん! またね、ヒッキー!」

葉山「よし、じゃあ始めるぞ、葉山」

八幡「うん、そうだね」シャベリヅレー



結衣「……私の時は、断ったくせに」ボソッ

164: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:01:30.07 ID:ZzIucIYqo
八幡「……ふぅ、行ったな」

葉山「ヒヤヒヤしたね」

八幡「お前すごいな。よくもまああそこまで言い方を真似られるもんだ」

葉山「君の方こそ」

八幡「まあしゃべくってる時間はねーしな。さっさと始めるぞ」

葉山「うん。じゃあヒキタニくん。方程式はわかる?」

八幡「お前は俺をバカにしてるのか……?」

170: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:12:32.89 ID:ZzIucIYqo
十分後

八幡「なるほどな。ベクトルってのはそういうことだったのか。ずっとただの矢印かと思ってたぜ」

葉山「実際、テストで点数取るんだったら、このくらいわかれば基礎は十分なんじゃないかな。それにしてもヒキタニくん、すごいね。ものの十分でここまでわかるようになるなんて」

八幡「いや、これはお前の教え方のおかげだ。数学アレルギーの俺にここまでわかりやすく教えられるなんて、お前、教師に向いてんじゃねーの?」

葉山「あはは、そこまででもないよ……。ヒキタニくん、実は数学食べず嫌いなんじゃないかな?」

八幡「……もしかしたらそうなのかもな」

八幡「……お前に対しても」ボソリ

葉山「ん、何か言った?」

八幡「いや、何でもない」

174: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:18:20.14 ID:ZzIucIYqo
八幡「む……葉山、これはどう解くんだ?」

葉山「ん、えーっとね……ここを、こうして……」

八幡「あーなるほどな。この内積で角度を出すのか」

葉山「そういうこと」

カリカリカリ…

葉山「ヒキタニくん」

八幡「なんだ?」

葉山「れんごくってどんな字だっけ?」

八幡「…………」サラサラ

『煉獄』

葉山「あっこんな字なんだ。すごいね、ヒキタニくん」

八幡「ん、大したことねーよ」

八幡(ただの中二病時代の忘れ形見だ)

177: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:30:23.56 ID:ZzIucIYqo
>>175
作者理系なので、文系のことよくわからんのです。
煉獄ってそんな簡単な方なのか……



カリカリカリカリ…

葉山「…………」カリカリカリカリ…

八幡「…………」ボー

八幡(こいつ本当にいいやつだよな……)

八幡(ボッチの俺に話しかけてくれたり)

八幡(こんな風に勉強教えてくれたり)

八幡(もしもあんな事がなかったら、こんなのなかったんだろうけど)

八幡(もしかしたら、俺とこいつは友達に……)

八幡(いやいやそれはない。キングオブボッチとキングオブリア充がそんなのになれるわけがない)

181: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:37:18.49 ID:ZzIucIYqo
葉山「……ん、どうかしたかい?」チラッ

八幡「あっいや、何でもねぇ」

葉山「そうか」カリカリカリ…

八幡(こいつの中の俺は、ただのボッチのかわいそうな子だろう)

八幡(そう、きっとそうだ。だから勘違いなどしてはいけない)

八幡(あの日々を思い出せ、俺は何度あの苦しみを味わった?)

八幡(こいつは根本的に誰にだって優しいだけだ)

八幡(葉山の優しさにすがってはいけない。葉山の親切心に甘えてはならない)

八幡(感情の処理は適切に)

八幡(彼我の距離は適当に)



八幡(――だから、もう一歩くらいは、踏み込んでも、いいのだろうか)

184: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:42:03.09 ID:ZzIucIYqo
葉山「んんんーっと」カラダノビー

八幡「お疲れ」

葉山「そっちもね。ドリンクバー行ってくるけど、ヒキタニくんおかわりいる?」

八幡(何だこれ、友達みたいだな)

八幡「あ、ああ……。じゃあコーヒーと、ミルク一つ、それとガムシロ十個頼む」

葉山「ああ、わかっ……えっ、十個?」

189: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/19(火) 23:49:53.44 ID:ZzIucIYqo
カリカリカリ…

八幡「葉山」

葉山「なんだい?」

八幡「本当にこれやるだけでいいのか?」

葉山「ああ、確かに不安になるよね。でもうちの先生は、その問題集とほとんど同じ問題しか出さないから、その範囲の問題解けるようになれば、それだけで九割越えるよ」

八幡「えっ、そんな甘いのか。うちの数学」

葉山「気づいてる人は少ないけどね」

八幡「…………」

八幡(やっぱこいつすげぇな)

191: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:01:47.83 ID:J6uAdG3Qo
八幡「ふぅ、とりあえずこの辺は大体解けるようになったな」

葉山「ヒキタニくん、実は理系の方が向いてるんじゃ……?」

八幡「いや、そんなわけねーだろ」

葉山「でも……君が最後に解いてたの、国立大の入試問題だよ……?」

八幡「えっマジで? ……マジだ」ジー

葉山「まさか一日でこんなにできるようになるなんて……」

八幡「さっきも言ったけど、お前が教えてくれたからだ。すごいわかりやすかったし、そのおかげでアレルギーも克服できたしな」

葉山「そう……なのかな……? 毎日戸部に教えてたのがよかったのかな……?」

八幡(でもそんなに成績が良くないんだよな……あいつ……。テスト返却の度にウェイウェイ言ってるし。……それはいつもの事だな)

八幡「今日一日で少し数学も好きになったし、もしかしたら来年国公立目指す事になるかもしれん」

八幡「だからもしそうなったら……」

八幡「……その時はまた、教えてくれないか?」

193: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:06:49.58 ID:J6uAdG3Qo
葉山「……ああ、もちろん!」サワヤカスマイル

八幡「そうか、ありがとな」プイッ

葉山「別にそのくらいいいよ。えーと……もう十時過ぎか……結構勉強してたね」

八幡「うぉっ!? 外真っ暗じゃねぇか」

葉山「じゃあもう帰ろう。えっと、俺が食べた分を俺の体に入ってるヒキタニくんが出して……」

八幡「ややこしいな、これ」

195: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:20:30.96 ID:J6uAdG3Qo
支援ありがとうです



八幡「…………」テクテク

葉山「…………」テクテク

葉山「ヒキタニくん」

八幡「なんだ?」

葉山「MAXコーヒーっておいしいのか?」

八幡「俺にとっては最高の飲み物だな。最早神からの贈り物と言ってもいい」

葉山「君が欲しいと言うから全部あげたけど、やっぱり一本貰えないか?」

八幡「……まあ六本もあるから一本くらいやるよ」ポイッ

葉山「おっと」キャッチ

198: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:26:48.25 ID:J6uAdG3Qo
カチャッ

葉山「試しに一口」ゴクゴク

葉山「……甘い。すごく甘い」

八幡「そりゃそうだ。MAXコーヒーなんだからな」

葉山「産まれて初めて飲んだ」

八幡「はぁっ!? 千葉県民でその歳でMAXコーヒー飲んだ事ないやつっていたのか!?」

葉山「見た事はあったけど、飲んだ事はなかったんだ」

八幡「ったく、不味いんなら俺にくれ。そう思われるくらいなら俺が飲んだ方がマッ缶も喜ぶ」

葉山「いや……悪くない。これからもたまに買おうかな」

八幡「…………」スッ

葉山「?」

八幡「もう一本、やる。やっぱ自分の好きなものを、他の誰かが好きになってくれると、何か嬉しいし」

葉山「ああ、ありがたく頂くよ」

200: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:31:50.93 ID:J6uAdG3Qo
八幡(そんなこんなでテスト当日になっても、俺らの体は元に戻らなかった)

八幡(この数日間で特に変わった事もなかった。せいぜい、俺と葉山が話す事が多くなって、海老名さんがずっとうるさいくらいだった)

八幡(俺も葉山もお互いを装うのが上手くなって、誰かに気づかれたりするなんてハプニングも起きなかった)

八幡(……それでも俺はまだ由比ヶ浜を結衣とは呼べないが)

202: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:39:44.44 ID:J6uAdG3Qo
教師「テスト開始」

ペラッカリッコッコッコッハヤハチサイコー

八幡(本当に葉山の言った通りだ。見た事ある問題ばかりだ)

八幡(これ、問題集で解いた問題だ! ……普通だな)

葉山(ヒキタニくん、ちゃんと解けてるかな……? 大丈夫だよな……?)

葉山(この問題ならヒキタニくんは大丈夫なはず)

八幡(解ける! 解けるぞ!)

葉山(もう信じるしかない)

204: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:47:04.77 ID:J6uAdG3Qo
>>203
そこは御都合主義ってことで。



八幡(手が止まらない。数学でこんな感覚は初めてだ)

八幡(今の俺なら何でも解けそうな気がする……!)

八幡(見ろ! ベクトルがゴミのようじゃないか! ……あっこれは内積0になって直角なんすね)

葉山(ふぅ……解き終わった。ヒキタニ君の手も順調に動いてるし、もう心配はいらないだろう)

葉山(しかし疲れたな……。この数日間、いろいろ大変だったし)カラダノビー

ガンッ!

葉山(あっ、カバン蹴っちゃった)

八幡(あと十分! これなら全問解ける!)カリカリカリカリ…

カリカリカサカサ

八幡(しまった、芯が切れた! 早く交換しないと!)アセアセ

ガンッ!

八幡(あっ、俺のカバンが!)

フワッ

二人のカバンから飛び出たのは、MAXコーヒーでした。

206: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:51:01.14 ID:J6uAdG3Qo





八幡・葉山「「すいません。MAXコーヒー落としました」」





パッキイイイイイイイイイン





208: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 00:56:57.04 ID:J6uAdG3Qo
八幡(この感覚……どっかで……)

八幡(あれ、テストが解き終わってる)

八幡(まさか……戻ったのか!?)

八幡(よく見るとシャーペンも違うし、俺の場所も変わってる)

八幡(てかさっき俺が座ってた場所に葉山が座ってる)

八幡(戻ったん……だよな……?)

葉山(戻った……みたいだ)

葉山(ヒキタニくんが、頑張ったおかげでテストもほとんど俺のと同じ、あとは最後の証明の数行を書き足すだけだ)

葉山(はぁ……よかった……)

八幡(てか戻る原因もやっぱりMAXコーヒーかよ)

211: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:06:06.17 ID:J6uAdG3Qo
テスト後

八幡「葉山……だよな?」

葉山「そういう君は……ヒキタニ君で合ってるかい?」

八幡「……戻ったな」

葉山「ああ。よかったよ、本当に」

八幡「数学……あれで問題なかったろ?」

葉山「ああ、ばっちりだったよ。もしかしたら君の方がいいかもしれないな」

八幡「おいおい、やめろよ謙遜は。お前の方が良いに決まってんだろ」

葉山「わからないよ。師を越える弟子の話ってよくあるし」

八幡「……お前、俺の漫画読んだな?」

葉山「あっバレたか」

八幡「バレるわ」

213: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:11:54.66 ID:J6uAdG3Qo
葉山「……じゃあ」クルッ

八幡「あっ……」

葉山 テクテク

八幡(これで終わっていいのだろうか?)

八幡(この一件で俺は葉山についていろんな事を知った)

八幡(それでわかったのだ)

八幡(葉山は俺の思うような完璧な人間ではないと)

八幡(彼もまた長所も短所もある一人の人間であるのだと)

八幡(そしてこの数日間で俺はこう思ったのだ)

217: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:17:21.92 ID:J6uAdG3Qo
八幡「葉山!」

葉山「ん?」クルッ

八幡(もう一歩)

八幡「俺と……」

八幡(踏み込んでみよう)





八幡「俺と、友達になってくれ!」

220: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:23:29.45 ID:J6uAdG3Qo
葉山「…………」ポカーン

八幡「…………」

八幡(小学校の頃を嫌な記憶が脳裏を回りまくるが、それを今は見て見ぬ振りだ。八幡、今はそんな事を思い出さないでくれ)

葉山「…………」グッ

八幡(葉山は何かを言おうとして口を開いては閉じるを繰り返している。……やはりダメなのだろうか)

葉山「……千葉村」

八幡「はっ?」

葉山「千葉村でのキャンプのこと、覚えているか?」

222: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:32:13.64 ID:J6uAdG3Qo
八幡(千葉村? ああ、ルミルミ可愛かったよな)

八幡「千葉村がどうかしたのか?」

葉山「俺は答える前に一つ、比企谷に言わなければならない事があるんだ」

八幡「何だよそれ……」

八幡(あれか? 断る前の前置きか? どうせ断るならサッと断って欲しいものだ)

八幡(あれ、今、比企谷って……)

葉山「俺はあの時、君にこう言った」

『なぁ、もし、ヒキタニくんが俺と同じ小学校だったらどうなってたかな』

『決まってんだろ。お前の学校にぼっちが一人増えるだけだよ』

『そうかな』

『そうだろ』

『俺はいろんなことが違う結末になったと思うよ。ただ、それでも……』

『比企谷君とは仲よくできなかったろうな』

224: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:44:10.13 ID:J6uAdG3Qo
八幡「…………」

葉山「でも、この数日間、君と関わるうちに、俺の君への印象は変わっていった」

葉山「だから、身勝手ではあるけど、言わせて欲しい」

葉山「あの時の言葉を、取り消すって」

八幡「…………」

八幡「……はっ」

葉山「?」

八幡「ったく、俺もお前もめんどくせーな、本当に」

八幡「そもそも俺はあんなの気にしちゃいねーよ」

八幡「ただ、お前がそうしなきゃ気が済まないなら、そうすればいい」

葉山「比企谷……」

八幡「これが俺の答えだ」

八幡「だから……お前の答えを、教えて欲しい」

葉山「……もちろん、イエスだ」



こうして俺は、うまれて初めて、友達が出来たのだった。



226: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:48:32.91 ID:J6uAdG3Qo
ガララー

八幡「うーす」

結衣「あっヒッキーだ」

八幡「なんだ、由比ヶ浜。先に来てたのか」

雪乃「私は無視かしら」

八幡「お前はいつも先にいるだろ」

結衣「……ヒッキー何かあった?」

八幡「えっなんで?」

結衣「ずっとニヤニヤしてる」

雪乃「比企谷くん、校内への侵入は不法侵入で捕まるわよ」

八幡「勝手に俺を不審者にするな」

雪乃「あら、そう言えば仮にもここの生徒だったわね。ごめんなさい、不審谷くん」

八幡「なんでも『ガヤ』つければいいと思ってんじゃねーぞ」

228: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 01:53:06.29 ID:J6uAdG3Qo
八幡「さてと、テストも終わったことだし、マッ缶買いに行ってくるかな」

結衣「あれ? ヒッキーテスト中に持ってたじゃん?」

八幡「ああ、あれは何と言うか……賞味期限切れてて飲めないんだわ」

八幡(それはもちろん嘘だ。俺はマッ缶を無駄には絶対しない)

八幡(ただ、俺と葉山を救ってくれたあのマッ缶を飲んでしまいたくはなかったのだ)

雪乃「あら、そうなの。じゃあ私の分も買ってきてくれないかしら?」

八幡「人をさりげなくパシるな」

231: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:01:44.58 ID:J6uAdG3Qo
時同じ頃

三浦「あれ、隼人そんなの飲んでたっけ?」

葉山「あぁ、比企谷に勧められて最近ハマったんだ」

海老名「比企谷……? ヒキタニじゃなくて……?」

ピカーン

海老名「隼人くん! 一体何があったの!? ねぇ! まさかのハチハヤ!? ねぇ!! ハチハヤなの!?!?」ガッ

葉山「あはは……」

三浦「姫菜擬態しろし」

三浦「……ふーん、戸部っち」

戸部「んー?」



八幡「で、何買ってくればいいの?」

雪乃「じゃあ」



雪乃・三浦「「MAXコーヒー買ってきて」」



パッキイイイイイイイイイン



233: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:08:16.23 ID:J6uAdG3Qo



雪乃「あれ、ヒキオ……なんで……」

八幡「」



三浦「葉山……くん……?」

葉山「」




235: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:16:35.86 ID:yIMOH77Wo
十分後



八幡「……やはりそっちもそうか」

葉山「みたいだね。今度は」

八幡・葉山「「雪ノ下(さん)と三浦(優美子)が入れ替わった」」

葉山「……どうする?」

八幡「うーん、スルーだな。当分変なのには関わり合いたくない」

葉山「人間的にどうかとも思うけど、正直俺も同じだ」

八幡「まああの二人ならどうにかなるだろーよ」

葉山「俺らみたいにあの二人も仲良くなるといいなぁ……」

八幡「ブフォアッ!?」ブシャー

葉山「だ、大丈夫か!?」

八幡「あ、ああ……。いきなり変な事言うんじゃねぇよ……」

葉山「?」

八幡(あ、こいつ素だ)

237: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:21:45.49 ID:yIMOH77Wo
葉山「あ、MAXコーヒー持ってるんだね」

八幡「ああ、さっき落としたやつな」

葉山「奇遇だね。俺もそれ持ってるんだ」サッ

八幡「じゃあ」カチャッ

葉山「そうだな」カチャッ

八幡「俺ら、この数日間頑張ったよな」

葉山「ああ!」

セーノ

八幡・葉山「乾杯!」

カンッと缶同士がぶつかり、綺麗な音がなった。

誰かと飲むMAXコーヒーも、なかなか悪くない。

239: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:30:53.60 ID:yIMOH77Wo
雪乃「なんであーしがあんたと入れ替わんだし! 意味がわかんないし!!」

三浦「私だってあなたみたいな、キャンキャンうるさい犬のような人と入れ替わりたくなかったわ」

雪乃「あーしが犬!?」

三浦「ええ、そうよ。耳が悪くて聞こえづらかったのなら、もう一度言うけど?」

雪乃「雪ノ下雪乃……あんた、絶対許さない!!」

三浦「ええ、何とでも言うがいいわ」



世にも
奇妙
な物語

241: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/20(水) 02:37:01.39 ID:yIMOH77Wo
テッテッテレレーテレレーテレレー

テッテッテレレーテーンテレーン

タモリ「思わぬ偶然から、一生の仲になる」

タモリ「そんな話を聞く事があります」

タモリ「そう言う意味では、奇妙な世界に迷い込むのも」

タモリ「実は悪くないのかもしれませんねぇ」 ニヤリ

テレレッテッテレレーテッテッ

テレテッテッテッテッテレレレレーレー

テッテッテレレーテレレーテレレ

テーンテレレレレレン

https://www.youtube.com/watch?v=ccMfyDn7RHI


258: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/21(木) 00:06:41.48 ID:EiQJmKCHo
それは、『比企谷八幡』になれなかった、比企谷八幡の物語。



俺は知っている。

俺を取り巻く環境が偽物である事を。

俺は比企谷八幡であって、『比企谷八幡』ではない。

だから俺はすがってはいけなかったのだ。『比企谷八幡』に。

それなのに、俺はすがってしまった。

あの世界を、望んでしまった。

これは、そんな俺への、罰なのかもしれない。

260: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/21(木) 00:09:16.12 ID:EiQJmKCHo
※時系列的には9巻のラストあたりからですが、正直あまり関係ありません。



「だって、ヒッキー絶対予定ないし……。あ、だからパーティー! あたし、ゆきのんのケーキ食べたいなぁ」

ようやく平穏を取り戻した奉仕部の部室。そこで由比ヶ浜がいつものように俺に話しかける。

その言葉が俺に向けられたものではない事を、俺はまだ忘れている。

それ以降も続く二人の会話を俺はただ横目で見ている。二人の間に俺が入る隙間はない。

「……そうね、それなら考えなくもないわ」

雪ノ下がそう告げると突然、世界が暗闇に満ちた空間となり、どこからか音楽が流れ始めた。

そして下から白い文字が流れ始める。これには見覚えがあるな。そうだ、これは、映画やゲームでよく見る、エンディングだ。

俺はその状況をまだ最初は理解できないが、時間が流れるにつれて、現状を理解する。そう、いつも通りに。

262: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/21(木) 00:24:22.92 ID:EiQJmKCHo
平塚先生に奉仕部に入れさせられ、雪ノ下や由比ヶ浜と知り合い、いろんな問題を乗り越えた数ヶ月間。

その日々は俺にとってかけがえのないものだった。

しかしいつだって現実とは残酷で、だから俺はまたこの夢に逃げ込んでしまうのだ。

エンディングが終わると、身体が急に重くなったように感じる。そしてそれまで見えていた視界が一度ブラックアウトし、数秒経つと俺が本当に生きるべき世界の風景が映し出される。俺の周りは機械の回路だらけで、何がどうなっているのかわからない。

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。ボリューム9は以上です。お気をつけてお帰りください。お帰りの際、忘れ物はなさいませんよう……』

いつもと同じように流れる無機質な機械音声。

これが、俺の現実だ。

264: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/21(木) 00:31:14.44 ID:EiQJmKCHo
俺のいる現実に、雪ノ下はいない。由比ヶ浜もいない。戸塚もいないし、平塚先生だっていない。それはそうだ。みんな全て空想のお話の登場人物なのだから。

始まりはほんの些細な出来心だった。たまたま学校から帰る途中で、怪しい店を見つけて、その中に入ってしまった。

その店は、自分の発明品を売って生計を立てているという、今時の子ども用アニメにも出てこないような怪しいおっさんが経営していた。

彼が作った発明品の中でも最高傑作(自称)。それは、俺の心を引くのには十分すぎるものだった。

彼が俺に勧めたのは『仮想現実体験装置』
デジタルで構成された別の世界へ行く事ができる装置だ。

もちろん俺はそんなのをバカ正直に信じられるほど純真無垢ではない。しかし彼は俺に初回だからと一回五千円のところを五百円にしてくれた。九割引きという響きに圧倒された俺は、マッ缶を四回我慢すればいいだけだと思い、その男に一枚の硬貨を渡してしまったのだ。

それからはお察しの通り。仮想現実の中の『俺ガイル』の世界にどっぷりハマってしまった俺は、いつしかそこだけが俺の生きがいになってしまっていた。

266: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/21(木) 00:47:24.85 ID:EiQJmKCHo
樋口さん一人を男に渡し、俺は店を出た。目に映るこの世界はモノクロに見える。夕陽で赤くなっているはずの空も、俺の腐った目には白と黒のグラデーションにしか感じられない。

「……帰るか」

そして俺は歩き出す。またいつもの日常を。

――瞬間、見覚えのある顔が俺とすれ違った。

「……えっ、今のは」

思わず振り返る。今すれ違ったのは、誰だ?

「……あっ、あの!」

今思えばあの時の俺はイカれてたとしか思えない。もし仮に彼女が現実にいたとしても、俺と彼女とは接点がないのだから。

――それでも、求めずにはいられなかった。

この世界で唯一見えた色。

それを逃したくなかった、

「……何でしょうか?」

振り返ったのは、夢で何度も見た黒髪の美少女――

――雪ノ下雪乃だった。


やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている。
最終話
『そして比企谷八幡は夢から覚める』

Coming Soon!!





274: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:13:18.11 ID:TmSLPRG4o
ピピピピ

八幡「うーん……朝か……」

八幡「ふぁーあ……今日は……まだか。目的の日まではまだ先だな」

昨日は休日でフリーダムな一日だったが、今日は学校あるんだったな。サザエさんやってたのに、すっかり忘れてたわ。

八幡「……起きねぇと」

冬の朝の寒さ対策に室内用の上着を羽織る。うん、あったかい。

床の冷たさに耐えながらリビングへと向かう。

そこにいるのは、俺の両親。母親は朝ごはんの準備をしていて、父親は新聞を読んでいる。

そして、この家に、比企谷小町はいない。

276: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:18:07.90 ID:TmSLPRG4o
朝ごはんを食べ、いつもの時間に家を出ると、マイチャリは今日も変わらず、同じ場所で俺を待っていた。

高校入学の時に買ってもらって、それからずっと愛用しているチャリだ。

サドルをまたぎ、イヤホンを耳につけ、ペダルを踏む。違法だとかそんなの知ったこっちゃない。……まあ捕まったらアウトだが。

見慣れた風景がそれなりのスピードで過ぎ去る。街を歩く誰もが自分の人生を生きていて、それ以外を望まない。

俺以外は。



あの日、俺は事故に遭わなかった。


278: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:23:24.80 ID:TmSLPRG4o
俺に友達がいないのは言わずもがなであるが、それ以上に俺、比企谷八幡が『比企谷八幡』と圧倒的に異なる点、それは――

俺が真のボッチである事だ。

俺に近づく人間はいないし、誰かに話しかけられる事はほぼ皆無と言っていい。

『比企谷八幡』にはボッチとは言え、それでもその周りに人がいた。

奉仕部のやつらや、戸塚や、材木座や……あいつ実はリア充じゃね? 実はボッチじゃなくて、自称ボッチなんじゃね?

しかし当の俺は休み時間はほぼ確実に寝てるか、スマホを弄ぶか、読んでいない本を読むかのどれかだ。校内で口を開く事はない。

そして最後に、絶望的な事実を告げよう。

俺の通う高校は、総武高校ではなく――海浜総合高校だ。

280: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:33:59.48 ID:TmSLPRG4o
>>279
残念ながら今回のはホモォはないです。
ごめんなさい。



八幡「はぁ……最新話の更新まであと二日か……長いな」

八幡「まあ、ちょうどその日クリスマスだし、自分へのクリスマスプレゼントとしていいかもな」

家のベッドに寝転んで、スマホを弄る。メールが来るのは親と、メルマガと、たまに来る女の子からのメールだけだ。

ゴーインゴーインアロンウェーイオレノーミーチーヲーイクーゼー

八幡「おっメールだ。この時間に来るとなると……」

ボッチはメルマガの届く時間を把握している。このメルマガは朝に、このメルマガは夜に、という風にだ。……やっぱりそういうのわかると、機械がやってるってわかっちゃうよね。

しかしこの時間にメルマガが届く事はまずない。つまりそれは……

『Sub:ユカリです☆良かったらお友達に』

八幡「なってくれ」

そして一番違うのは、俺がこの孤独を寂しく感じていることだ。

俺は『比企谷八幡』のように、強くなかった。

282: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:46:02.75 ID:TmSLPRG4o
八幡「ふふふ……ようやく来たな……この時が……」

八幡「『俺ガイル』ボリューム9 長い間これを待ち焦がれたぜ……」

八幡「8での終わり方があまりにもなぁ……。もう一日千秋とはこの事だと思ったわ」

八幡「さて、入るか」

博士「いらっしゃい。ああ、あんたか」

八幡「9は……?」

博士「悪いが、ちょっと先客がいてな。まああと三十分もせずに終わるから、外でブラブラしててくれ」

たまに俺の他にこの仮想現実体験装置を使っている人間がいる。それが誰なのかはわからない。この怪しいおっさん曰く、「顧客情報は極秘」らしい。

八幡「わかったっす。じゃあまた三十分後に」

そう言って店を出る。俺以外の仮想現実体験装置を使っている人間が誰であるが気にならないと言えば嘘になるが、かと言って意地でも知りたいかと言えばそういうわけでもない。

八幡「うーむ、何をしようか」

八幡「やっぱゲーセンか?」

284: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:49:17.53 ID:TmSLPRG4o
近場のゲーセンの格ゲーで時間を潰し、店に戻ると装置内は空っぽになっていた。前の人は終わって帰ったらしい。

博士「兄ちゃん、若いのによくそんな金あるね。まだ高校生だろう?」

『俺ガイル』は一回五千円。9までやったから、これで四万五千円の出費だ。高校生に痛くないわけがない。

八幡「……他に使い道がないんすよ」

あとはあれだ。MAXコーヒー。俺の小遣いは大体この二つで消える。何それ悲しい。

博士「『俺ガイル』のボリューム9で間違いないな?」

八幡「大丈夫です」

博士「んじゃ、行って来な」

装置を頭につけて、真っ黒な箱の中に入る。中は狭いが、始まれば気にならない。

……本当に別の世界に行くのだから。

287: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/22(金) 23:57:33.49 ID:TmSLPRG4o
八幡「……ここは、奉仕部の部室?」

八幡「なのに俺以外誰もいないな」

八幡「よく見るといつも三つある椅子も一つしかない」

八幡「とりあえず外に……!?」ガッガッ

八幡「開かない……?」

290: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:04:45.31 ID:qxl+pvlYo
八幡「…………」ポロポロ

博士「……大丈夫かい、兄ちゃん?」

八幡「はい……っ、だいじょぶ……でず……」

あんな終わり方になるなんて思わなかった。くそ、泣かせんじゃねーよ。8まであれだから、絶対バッドだと思ってたじゃねーか。

博士「まあ、満足してもらえたならいいや。兄ちゃん、代金」

八幡「はい……っひぐっ」バイバイヒグチ

博士「うむ、確かに頂いた。じゃあまた来てくれよ」

293: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:13:43.59 ID:qxl+pvlYo
『俺ガイル』をやってる時はいい。

ただ、終わると、ひどく死にたくなる。

俺は一体何をしているのだろう、と。

名前や顔が設定できるからとは言え、俺と同じ名前の人間があんな青春を送っているのに――まあ多少間違っているが。

そんな自分を嫌悪する事はある。

しかしそれでも、俺はやめられないのだ。あれにしか人生に楽しみを感じられない。

俺は生きがいを感じられない。唯一の生きがいが『俺ガイル』だ。金を払って生きがいができるのなら、いくらだって使ってやる。

しかし、いつからだろう。

八幡「こんなにも生きるのがつまらなくなったのは……」

295: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:19:17.50 ID:qxl+pvlYo
皆様の支援に感謝。
④で支援って読むんすね、つい先日気づきました。



八幡「…………」コツコツ

??「…………」テクテク

スッ

八幡「……えっ、今のは?」

その後ろ姿に、俺は見覚えがある。

八幡「……あっ、あの!」

しかしなぜ、彼女がここにいるのか。それが俺にはわからなかった。

??「……何でしょうか?」

八幡「雪ノ下……!」

298: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:27:19.68 ID:qxl+pvlYo
雪乃「……どうして私の名前を?」

八幡「えっ? あっ、えーとそれは……」

八幡「いや、そうじゃなくて、何でお前がここにいるんだ?」

雪乃「私が質問しているのだけれど? 質問を質問で返すなんて今時小学生でもしないわよ?」

八幡「…………」

まさか現実で雪ノ下の罵倒を受ける日が来るとは思わなかった。てかなんだこれ、夢? ほっぺたつねってみよう、……痛い。これ夢じゃねぇな。夢だけど、夢じゃなかった!

雪乃「ちなみに私は今学校から帰ろうとしていたところなのだけれど、私、あなたに会った事があったかしら?」

八幡「あー、会ったことはあると言うかなんと言うか……」

流石にゲームの中で会ったなんて言えない。

雪乃「はっきりしない人ね……」

300: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:31:31.60 ID:qxl+pvlYo
気が動転して話しかけてしまったが、そもそもどうするつもりだったんだ俺は。いきなり見ず知らずの女子に話しかけるなんて不審者もいいところだな。千葉県警のお世話にはなりたくない。

八幡「あーなんかどっかで会ったような気がして……」

雪乃「……まあいいわ。それでも、なぜ名前を?」

八幡「ぐっ……!」

雪乃「あなた……まさか私のストーカー?」

八幡「違う違う違う違う。本当に違う。俺もお前と会ったのは初めてだし」

雪乃「えっ?」

八幡「えっ?」

あれ、俺、いま墓穴掘ったんじゃね?

302: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:39:50.27 ID:qxl+pvlYo
雪乃「ちょっと待ってなさい」

雪ノ下は携帯を取り出した。ヤバい、タイーホフラグだ。

思いつくんだ、八幡! この場をおさめる方法を!

八幡「待ってくれ雪ノ下! 新聞! 新聞で見たんだ! お前の記事を!」

雪ノ下は番号を押す指を止めた。よかった、多分正解だ。

雪乃「……新聞?」

八幡「ああそうだ! 地方欄に載ってたやつだけどな!」

これは賭けだ。まず確実性はゼロ。そんなの見た記憶はないし、完全に出まかせだ。

しかし雪ノ下は反応した。つまり雪ノ下は新聞に載ったことがあるということだ。

ならばそれは何だ? 雪ノ下が新聞に載る理由は?

いくつもの可能性を浮かべては吟味する。この間わずか二秒。ボッチの思考スキルなめるな。

304: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:47:33.95 ID:qxl+pvlYo
やっぱりあれが一番可能性が高いな。

八幡「雪ノ下雪乃。俺らが小六の時の県の読書感想文コンクールで賞をかっさらった、天才少女」

八幡「確かそうだろ?」

俺がそう言うと、雪ノ下は携帯をしまった。すげぇ、一発で抜けれた。

雪ノ下「……そう、あれを見たのね」

八幡「あっああ、俺もあの時出したからな。よく覚えてるんだ」

ちなみに俺はあれ出した事がない。よくこんなにポンポン嘘出てくるなー。普段、人と話さないのに。

306: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 00:57:02.83 ID:qxl+pvlYo
前のレスの一つだけ雪ノ下になってる……。作者のミスです。



雪乃「なるほどね。でもなぜ私に話しかけてきたのかしら?」

八幡「えーとな、んーと、あれだ、新聞に載るようなすごい人間とすれ違ったから、つい反射的に……」

八幡(なんじゃそりゃああああああああああああ!?)

素晴らしく怪しい理由だが、今の俺にこれ以上の説明はできない。もっと頭が冴えていれば、マシな言い訳もできたかもしれないが。

雪乃「……筋は通っているわね」

ですよねー。やっぱり疑いますよねー。でも携帯を出さないところを見ると、通報する気はないらしい。助かった。

八幡「じゃ、じゃあ、俺はこれで」

無理だ、これ以上こいつと話していられる気がしない。いずれ本当の事を話させられて、警察行きだ。だから千葉県警にお世話にはなりたくないんだって。親に迷惑かけたくねーし。

雪乃「待ちなさい」

八幡「ぐぅ……!?」

308: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 01:04:21.97 ID:qxl+pvlYo
雪乃「あなたには聞きたい事がまだたくさんあるわ。勝手に逃げないでくれるかしら?」

八幡「でも……妹が……」

現実にいねぇだろ、俺。

雪乃「あら、そうなの。でもそんなので私が諦めると思うの? 一応私、あなたの事をストーカーだとまだ疑っているのよ?」

八幡「だがしかし……」

メリークリースマーストクベーツナーパーティーヲーキーミトスーゴシーターイー

八幡「?」

雪乃「あら、私の携帯ね。少し待ってくれるかしら」

八幡「お、おう……」

どうする……ここで逃げるか……?

310: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 01:08:34.29 ID:qxl+pvlYo
雪乃「もしもし、由比ヶ浜さん?」

八幡「!?」

雪乃「ちょっと私はいま忙しいのよ。ストーカーが私を……えっ? 連れて来て? 何を言って……あっ」

八幡「……帰らせて」

雪乃「予定が変わったわ。あなた、名前は知らないけどとりあえずついて来てくれるかしら?」

八幡「……嫌だと言ったら」

雪乃「…………」ケイタイサッ

八幡「喜んでついて行かせてもらいます」

312: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 01:13:31.37 ID:qxl+pvlYo
雪乃「ところで、あなた、名前は?」

八幡「比企谷八幡」

雪乃「随分と変わった名前ね」

八幡「うまれて初めて言われたよ」

雪乃「そう、意外ね」

八幡「だろ?」

だってそういう事話す相手いなかったし。

雪乃「比企谷……八幡」

雪乃「いい名前ね」

八幡「そうか?」

雪乃「ええ、名前はその人を表すというけれど、あなたにぴったりじゃない」

八幡「遠回しに貶してんじゃねぇか。うちの親に謝れ」

雪乃「ストーカーの親に謝る気はないわ」

八幡「だから俺はそんなんじゃないっつーの」

314: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 01:23:52.19 ID:qxl+pvlYo
こんな会話、『俺ガイル』の世界でもあったなと思う。一体どうなっているのだろう? あのゲームは現実世界とリンクしているのだろうか?

八幡「てか俺に対してそんなんでいいのか?」

雪乃「?」

八幡「だから、お前は俺をストーカーだと疑ってるんだろう? なのに、こんな風に話してるのは普通じゃなくないか?」

雪乃「普通の女子ならよくないでしょうけどね。でも、私ならあなた程度の体格の男ならいざ襲って来ても、余裕で勝てるから」

雪ノ下……恐ろしい子……!

雪乃「……着いたわね。さて、比企谷くん」

おっこの呼ばれ方を現実でされるのは、なかなか新鮮だな。

てかなんだここ、ただのサイゼじゃないか。

雪乃「これからあなたに会わせるのは私の親友よ。下手に手を出したら、あなたを社会的に抹殺するわ」

八幡「はい、わかりました。出しません」

両手を上げて降参のポーズをする。目が怖い。雪ノ下さん、凄く目が怖いです。

330: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 22:59:54.32 ID:FuuGq+bPo
結衣「ゆきのんやっと来たねー。えっ、ゆきのん誰それ……?」

予想通りそこにいたのは、『俺ガイル』の中と同じ、由比ヶ浜結衣だった。現実でもこの二人は友達らしい。世界を違えどもこの二人の友情は不変なんですね。これもう、ゆるゆりどころがガチゆりなんじゃねぇの?

雪乃「さっきも言ったでしょう? 私に対してのストーカーよ」

いや、だから違いますからね? まあそう思われても何も言い返せないが。

結衣「……目が」

八幡「腐ってんのは自覚ありだ」

結衣「!」ビクッ

由比ヶ浜は体を強張らせる。そうか、俺にとっては長い時を共にした知り合いではあるが、今の由比ヶ浜にとって、俺はただの雪ノ下のストーカーだもんな。それが初印象ってハードル高すぎじゃね?

332: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 23:07:21.68 ID:FuuGq+bPo
雪乃「比企谷くん? 手を出したらってさっき……」

八幡「手は出してない。口は出したが」

雪乃「屁理屈はいいわ」ケイタイサッ

八幡「ストップだ、ストップ。じゃあもうゆ……この人には話しかけない」

危なかった。思わず名前を出してしまうところだった。いくら電話で名前を聞いたからって、いきなりそれで呼ぶのはアウトだ。

雪乃「……ならいいのだけれど」スッ

334: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 23:17:15.54 ID:FuuGq+bPo

結衣「……で、比企谷くん、だっけ?」

八幡「…………」コクン

俺は頷く。話しかけないと言ったから、それだけで肯定の意を示す。

結衣「ゆきのんのストーカーって本当?」

八幡「…………」フリフリ

雪乃「由比ヶ浜さん、そんな事を聞いても認めるわけないでしょう? どこにその質問に対して「はい、私がストーカーです」と認めるストーカーがいるのかしら?」

結衣「あっそうか」

由比ヶ浜のバカさ加減はあまり変わらないらしい。

結衣「今、すごくバカにされたような……」

……てかこいつやっぱり超能力とかあるんじゃねぇの?

340: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 23:25:02.27 ID:FuuGq+bPo
結衣「あと比企谷くん……? 別に喋ってもいいからね?」

八幡「…………」チラッ

雪乃「本人がそう言うなら、私は止めないわ」

結衣「ゆきのんもこう言ってるし。正直喋ってくれないと私も話しづらいよ」

八幡「……そうか」

結衣「うん!」

雪乃「比企谷くん」

八幡「わかってる。由比ヶ浜、さっきのはすまなかったな」

結衣「え? あー……。でも私が失礼な事言っちゃったのが先だから、お互い様と言うか……」

やっぱりこいつ現実でも良いやつだな。中学の頃の俺だったら速攻で告白して振られているところだよ。え、振られちゃうのかよ。

342: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 23:37:00.53 ID:FuuGq+bPo
結衣「で、比企谷くんはゆきのんのストーカーなの?」

八幡「だから違うっつーの。ただ、見た事のある顔だったからつい話しかけちまったんだよ」

結衣「……ゆきのん、会ったことあるの?」

雪乃「いえ、ないわ」

結衣「じゃあなんで?」

カクカクシカジカ

結衣「へー、ゆきのん新聞に載ったことあるんだー! すごいねー!」

驚くとこそこかよ。まあ由比ヶ浜らしいと言えば由比ヶ浜らしいな。

345: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/23(土) 23:54:35.84 ID:FuuGq+bPo
雪乃「え、ええ。銀賞しか取れなかったけれど」

結衣「それでもすごいよ! へー、私はいつも夏休みの最後の方で、冷や汗かきながら書いてたなー」

ああ、すごい想像できる。こいつそういうの苦手そうだもんなー。

雪乃「由比ヶ浜さん、そんな話は今はどうでもいいのだけれど」

結衣「あ、そうだった。で、比企谷くん……なんか呼びづらいね、呼び方変えてもいいかな?」

八幡「ん? あ、ああ」

すごく、先の展開が予想できる。何なの、あの機械? まさか現実世界の未来を見せちゃうやつなの? 俺はあの間違った青春ラブコメを現実で体験できちゃうの? それなら大歓迎だが。

結衣「じゃあ、比企谷くんだからヒッキーって呼ばせてもらうね! ……いいよね?」

八幡「あ、ああ」

さっきから同じ事しか言ってないな、俺。まさかロボットなの? ……SFって怖いよね。

349: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:02:51.37 ID:keCsHfY1o
結衣「じゃあヒッキーは、ゆきのんの事を新聞で見て知ってて、それでたまたますれ違った時に話しかけたって事?」

八幡「……まあ、そういうわけだな」

結衣「それは……ストーカーって言うか微妙だね……」

雪乃「由比ヶ浜さん、この男の言う事を全部信じる気?」

結衣「うん?」

雪乃「それは今考えたその男の嘘かもしれないのよ? 新聞で見たのは本当なのかもしれないけれど、そこからずっと私をストーキングしていた可能性もあるのだし」

流石雪ノ下さん、一筋縄ではうまくいかない。……まあ俺の言い訳がザルなだけなのだが。

さて……ここからどうする?

351: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:09:51.26 ID:keCsHfY1o
今の持ち駒でこの場を打開する方法が思いつかない。

ならば方法は一つだ。

この現状を信じてくれそうな誰かの力を借りる。……それに該当するのは誰だ……?

……あの人しかいない。

もしもあの人が現実にいて、なおかつ総武高にいるのなら、雪ノ下たちと知り合っていてもおかしくはない。

八幡「あー、ちょっとトイレ行ってきてもいいか?」

話し合っている二人に許可を取る。本当は外に出たいが、雪ノ下が許さないだろう。

雪乃「ええ、構わないわ。逃げたりしなければね」

八幡「逃げねぇよ」

逃げても通報されてバッドエンドだ。そんな事くらいわかる。

354: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:18:24.65 ID:keCsHfY1o
八幡「……今度は『俺ガイル』の知識に助けられるかもな」

あの中で『比企谷八幡』は何度もその人物からの着信を受けていた。だから、その番号を覚えていたのだ。

あの人なら……もしかしたら信じてくれるかもしれない。

何度も何度も確かめながらゆっくりと番号を押す。

そして受話器のボタンを押す。

トゥルルルルルル

八幡「よし、コールが鳴った!」

つまり、この番号を持っている携帯が存在しているという事だ。緊張で心臓の鼓動が早まる、

トゥルルプツッ

??『もしもし、平塚ですが』

356: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:24:40.12 ID:keCsHfY1o
ビンゴ!! トイレの個室内で思いっきりガッツポーズを決める。こりゃ、Gacktさんも顔負けだな。ガッツポーズ世界選手権とかあったら、余裕で一位取れるレベル。

平塚『何でしょうか? いたずら電話なら切りますよ?』

雪ノ下たちと話している時にも思ったが、さっきまでゲームの中でしか聞けなかった声が現実で聞こえると、少し変な感じがする。

八幡「いえ、いたずら電話とかではありません」

平塚『男……』

八幡「えっ?」

平塚『い、いえっ! 何でもありません!』

……これは、多分本物だよな。

八幡「総武高で勤務している平塚先生で間違いないでしょうか?」

平塚『ひゃっ、はい、そうです!』

何この平塚先生、すごく可愛い。ひらつかわいい、しずかわいい。

360: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:32:05.03 ID:keCsHfY1o
平塚『えっと……そちらは……?』

八幡「比企谷八幡といいます。平塚先生、これから俺の言う話を信じてください」

平塚『えっ、あっ、はい』

そこから俺は話した。俺自身の事や、『俺ガイル』の事を。

平塚『……俄かには信じられない話だな』

こっちが年下とわかると、平塚先生はいつものような話し方になった。……あの平塚先生可愛かったのに。

八幡「でも、本当なんです。信じてください」

平塚『いや、比企谷とか言ったか? 信じるも何も、私は信じざるを得ないのだよ』

八幡「えっ?」

364: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:37:08.93 ID:keCsHfY1o
平塚『君の話は、私たちの身に起きた出来事とあまりに一致しすぎている。……まるで、本当にその場にいたかのように』

平塚『もちろん、君がいたわけではなかったから、解決方法は違ったが』

やはり、あの卑屈な方法を使う人間はいないか。まあそうだよな、『比企谷八幡』もあくまで解決ではなく、問題の解消しかしてなかったし。

平塚『例え、君がずっと私たちを見張っていたとしても、そこまで細かい説明はできないだろう』

平塚『だから信じる信じないの話じゃないんだ。信じざるを、得ない』

八幡「ありがとうございます。先生なら信じてくれると思いました」

平塚『だが、勘違いするな。私が信じたのはあくまでも、『君が言った事』のみだ。君自体を全面的に信じたわけじゃない』

八幡「それでも構いません」

今は協力者を得た、ということだけで十分だ。

366: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 00:53:54.84 ID:keCsHfY1o
平塚『……で、君は私にどうして欲しいんだ?』

八幡「今、俺は雪ノ下たちに捕まっているんです」

平塚『……それは、どういう状況だ?』

八幡「あっ、いや、別に犯罪的な意味ではなくてですね。さっきの話からもわかる通り、俺の中で雪ノ下たちは現実にいない人物だと思っていたので、道端で出くわして興奮してつい話しかけたら……」

平塚『ああ……もうわかった』

受話器の向こうから、はぁ……という溜息が聞こえる。

八幡「なので、俺が雪ノ下たちを知っていた理由の証人になってください」

平塚『つまり……嘘をつけと?』

369: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:07:31.73 ID:keCsHfY1o
八幡「察しが早くて助かります」

平塚『君がさっき私に話したみたいに、彼女たちにも真実を言えばいいじゃないか』

八幡「……雪ノ下たちが俺の言う事を信じてくれると思います?」

平塚『…………』

八幡「漫画とかそういうのを読む先生だから、話せたんです。そうじゃなかったら話せませんよ」

平塚『ま、待て、比企谷! 私はそのゲームの中でも私が見ていたアニメとかの話をしていたのか……?』

八幡「はぁ……まぁ……」

平塚『つまり君は私が話していた話がわかっていたんだな!?』

八幡「そうっすね」

平塚『そうか……!』

平塚先生は受話器の向こうで嬉しそうな声を出している。だからこの平塚先生可愛すぎるだろ。何で結婚できないんだよ。

371: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:13:45.50 ID:keCsHfY1o
八幡「とりあえずこの場をやり過ごすために、先生の力が必要なんです」

平塚『……状況は理解した。ただし一つ条件がある』

八幡「……なんですか?」

何故だろうか、すごく嫌な予感がする。

373: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:18:01.83 ID:keCsHfY1o



八幡「……どうしてこうなった」

雪乃「比企谷くん、それはこっちのセリフよ?」

雪乃「どうしてあなたがここにいるの?」

俺が今いるのは、見慣れた部屋。

奉仕部の部室だった。

八幡「……平塚先生に頼まれてな」

376: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:27:00.26 ID:keCsHfY1o
以下、回想

平塚『なら比企谷。奉仕部に入らないか?』

八幡「はっ? いや、それおかしくないすか?」

平塚『君が話しているのが本当なら、そのゲームの中で君は奉仕部に入っていたわけだろう? なら君としても実は願ったりなんじゃないか?』

八幡「…………」

俺はそれを否定できなかった。なぜあんなにも金を湯水のように使っていたのか、それはあの世界を望んでいたからじゃないのか?

八幡「でも、いきなり俺のようなやつが入って来ても、雪ノ下たちに迷惑がかかるんじゃ……」

平塚『そうかも知れないがな、ただ、今のままでも、よくないんだ……』

八幡「……?」

平塚『とりあえず、君が奉仕部に入るのなら、私は君と口裏を合わすが、どうする?』

俺の答えは、想像の通りだ。

以上、回想、終ワリ

379: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:31:19.04 ID:keCsHfY1o
雪乃「平塚先生が入れろと言うから入部させたけれど……」

八幡「他校の人間が校内にいるから、いろんなやつにジロジロ見られたわ」

雪乃「ええ、そうね。……それ以上にその目が原因と思われるけれど」

八幡「…………」ジーン

雪乃「!?」

まさか現実でこうなる日が来るなんて思わなかった……! 思わず感極まって泣きそう。

雪乃「……ごめんなさい」

八幡「!?」

381: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:34:44.95 ID:keCsHfY1o
何で雪ノ下が俺に謝ってんだ!? 雪ノ下こんなに優しかったっけ!? まだあっちからしたら会ったばかりだから、もっと酷い事を言われると思ってたんだけど!?

雪乃「あなたがそんなに傷つくと思ってなくて……」

あ、なるほど。俺が感極まって泣きそうになってたのを、雪ノ下は自分の言葉のせいだと勘違いしたのか。俺の事をよく知らないからこそ、この事態が起こったんだな。何これ、自分がタイムトラベルものの主人公になった気分。

八幡「あー、いや、大丈夫だから。そんなんで俺は傷つかん。今のはちょっとあくびで目がうるんだだけだ」

雪乃「そ、そうなの?」

少し遠慮がちに話してくる雪ノ下が可愛過ぎて生きるのが辛い。こんなの『俺ガイル』でもなかった気がするぞ。

八幡「あ、ああ」

383: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:37:53.52 ID:keCsHfY1o
ガララ

結衣「やっはろー!」

結衣「ってヒッキー何でいるの!?」

八幡「平塚先生に入れと頼まれたんだ」

正確にはほぼ命令に近いがな。

結衣「へぇー、先生が……」

八幡「そんなわけでよろしくな、由比ヶ浜」

結衣「あっうん! よろしくね! ヒッキー!」

八幡「ああ」

こうして、俺は現実世界でも奉仕部に入る事になった。俺はこの世界に、人生に意味を持てないでいたが、小さな偶然、勇気のおかげでそれを得る事ができた。

人生何が起こるかわからないものである。ゲームの話が現実で起こるなんて事も、本当ならば世にも奇妙な物語に出て来そうなものだが、俺はそれを否定したりしない。これは、俺が望んだ事なのだから。

だから――

やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている。



世にも
奇妙
な物語

389: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:43:37.58 ID:482HkEQoo



世にも
奇妙
な物語



世にも    I   ピュー
奇妙 <ワッナンダ I==
な物語    I



もI<ウワー
 I==
語I





それで終わればよかったと、今は思う。







392: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:47:48.50 ID:482HkEQoo
八幡「さて……と」

あれから数日が過ぎ、特にやる事もなく奉仕部は、そのまま冬休み前最後の日になった。

八幡「特にやる事はなかったな」

せいぜいこの数日もここで本を読むか、由比ヶ浜と少し喋るかのどちらかだった。まだ向こうからしたら、出会って数日だから話し方はぎこちない。

雪乃「ええ、そうね。……比企谷くん」

八幡「ん、なんだ?」

雪乃「あなた……この場の溶け込み方、異常じゃないかしら?」

八幡「と言いますと?」

雪乃「まるで、ずっと前からここにいたみたいに感じるわ」

八幡「……っ!? そっそうか……っ?」

395: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:52:47.89 ID:482HkEQoo
雪乃「ええ、……まあ、そんなのあり得ないのだけれど」

八幡「…………」

雪ノ下の勘が鋭くてたまに焦る。しかし俺がゲームでここを体験していたとは思わないだろう。トンデモな話って予想されないから助かるわ。

結衣「ヒッキー」

八幡「ん?」

結衣「今日、この後空いてる?」

八幡「ああ、暇だな」

むしろボッチだから24時間暇なまである。24の音楽ってカッコいいよな。

397: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 01:57:15.89 ID:482HkEQoo
結衣「じゃあカラオケ行こうよ! 新入部員歓迎会って事で!」

八幡「まあ……別にいいが」

結衣「やったぁ! ゆきのんも来るよね?」

雪乃「……由比ヶ浜さんの場合、断ってもあまり意味はない……」

結衣「よし、決定ぃー!」

わお、こんな関係になってたのか、この二人。雪ノ下さん、とことん由比ヶ浜さんに弱くなっていますね。

400: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:03:11.47 ID:482HkEQoo
雪ノ下「じゃあ、部室の鍵を返してくるから、由比ヶ浜さんたちは下駄箱で待っててくれるかしら?」

結衣「うん! じゃあヒッキーと待ってるね!」

由比ヶ浜さん、その言い方はこっちが勘違いしちゃうんですけど?

八幡「……じゃ、俺先に行ってるわ」クルッ

結衣「あっ、待ってよ! ヒッキー!」タッタッタッ



雪乃「…………」

雪乃「……今が……」

雪乃「……ハッ!」フルフル

雪乃「…………」

雪乃「はぁ……」

402: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:08:40.72 ID:482HkEQoo
八幡「…………」トボトボ

結衣「…………」テクテク

八幡「…………」トボトボ

結衣「…………」テクテク

結衣「あっあのね、ヒッキー」

八幡「お、おう」

結衣「……ゆきのんはね、あんな風にキツい事を言うけど、本当は優しい子なんだ。だからそこら辺、わかってて欲しいな~なんて」

エヘヘと由比ヶ浜は笑う。そんなのは俺だってわかり切っているが、そう答えるのは許されない。

八幡「そうか。心に留めとくよ」

結衣「うん……。だから、嫌わないでね」

八幡「……ああ」

405: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:16:49.72 ID:482HkEQoo
AAもどきを作るのに時間くって、書き溜めのストックが切れたので、投下遅くなります。ごめんなさい。



八幡「…………」トボトボ

結衣「…………」テクテク

??「…………」トボトボ

八幡「!?!?」

結衣「? ヒッキー、どうかした……、あー! さがみんだー!」

相模「あ……ゆいちゃんか……」

結衣「どうしたのー、さがみんこんな時間に?」

相模「別に、ゆいちゃんには、関係ないでしょ……?」

結衣「あ……そっか……そうだね……」

408: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:22:17.73 ID:482HkEQoo
八幡「…………」

相模「……! …………」プイッ

あれ、相模さん、俺を見てすぐに目をそらしたんですけど。何なの俺の目はそんなに怖い?

などと、ネタをぶっこむような状況ではない。

相模が現実世界にいる。それは何ら不思議な事ではない。

しかし、ここにいる相模は異様だ。

あまりにも、『俺ガイル』の世界の相模と違いすぎる。

相模の目が――

――俺のと同じように腐っていた。

411: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:26:26.85 ID:482HkEQoo
少し経って

八幡「……由比ヶ浜」

結衣「ん? なに?」

八幡「あの女子に……何かあったのか……?」

結衣「えっ……なんで……そう思うのかな……?」

八幡「いや、何となくだ。あまりにも暗いから何かあったのか……ってな」

結衣「……うーんとね。さがみんは、総武高の文化祭の委員長だったの」

うむ、ここまでは『俺ガイル』と同じだな。

413: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:33:55.30 ID:2QWy7oS5o
結衣「でも……さがみんは……あんまし仕事しなかったんだよね。それで、副委員長だったゆきのんがそれを代わりにやったの」

あっ読めた。

結衣「ゆきのんはちゃんとやったよ、委員長としての仕事を。もう完璧すぎるくらいにね。ただ、そのせいで委員会内でのさがみんに対する不満が増えてっちゃって……」

八幡「…………」

結衣「しかも当日本番には突然いなくなっちゃったりして、皆からすごい責められたんだ……」

俺がいなかったら、こんな風になってたのか。俺がもしも総武高に入っていたら、こんな事にはならなかったのだろうか……?

415: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:49:09.41 ID:2QWy7oS5o
相模に、あんな傷を負わせるような事にはならなかったのだろうか。

そんなもしもの事を考えたって意味がないのはわかっている。

それでも、考えずにはいられない。

結衣「それからかな……さがみんがあんな風になっちゃったのは」

八幡「そうか……。いろいろあったんだな、お前らにも」

結衣「……うん」

その頃、俺は何やってたっけ? あっちょうど『俺ガイル』にハマった頃だわ。由比ヶ浜たちが、いろいろ頑張っている時、俺はゲームやってたのか。何それ悲しい。

417: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 02:56:25.95 ID:2QWy7oS5o
由比ヶ浜たちが向かったのは、いつも何かパーティー事があると、使われるいつものカラオケだった。『俺ガイル』本当に何なんだよ、あれ。再現度高すぎじゃね?

結衣「えーっと、ヒッキーこと、比企谷八幡くんの入部歓迎会を始めます!」

八幡「もう、何日か経ってるけどな」

雪乃「入ったのが二十五日で、今日が二十八日だから、もう四日ね」

何日か明言しなかった俺に、ふふん、と雪ノ下が俺に自慢気な表情をする。甘いな、そこには穴があるのだよ、穴が! そういやアナ雪ってすごいよな。見てないけど。

八幡「六から二日間は土日だったから、正確には二日間しか部室行ってないんだけどな」

雪乃「屁理屈ね」

八幡「何とでも言え」

結衣「二人とも!! そんなのいいの! 何日か経ってても別にいいでしょ!」

八幡「まあ、それもそうだな」

雪乃「そうね、こんな男がいつ入ったかなんて、正直私には関係ないのだし」

雪ノ下さんはいつも通りですね、本当に。

419: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 03:01:49.05 ID:2QWy7oS5o
そんなこんなで新入部員歓迎会は終わりを迎えた。

結衣「うーん、歌った歌ったぁー」

雪乃「由比ヶ浜さん、後半はほとんどずっと歌っていたけれど、喉は大丈夫なの?」

結衣「あーーー、うん! ちょっと枯れるけど大丈夫だよ!」

雪乃「それでも枯れるのね……はい」サッ

結衣「わぁ! のど飴だ! ゆきのんありがとうー!」

雪乃「いえ、別にいいわよ」

雪ノ下と由比ヶ浜がゆるゆりしてるのを見ながら、俺は二人の後ろを歩いている。うん、こういうのを後ろから見てるのも悪くない。

雪乃「比企谷くんも」

八幡「?」

421: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 03:12:25.78 ID:2QWy7oS5o
ん? 俺今何で呼ばれたんですかね? あれですか、二人を見る目が気持ち悪かったんですか? それなら否定はできないが。

雪乃「……余ってるから、あげるわ」スッ

八幡「あ……サンキュな」

どうしよう、可愛い。惚れてまうやろー。

雪乃「比企谷くんでも、人にお礼は言えるのね」

八幡「お前は俺を何だと思っている?」

前言撤回。

やっぱりこいつ可愛くねぇ。

423: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 03:15:08.47 ID:2QWy7oS5o
雪ノ下たちと別れ、家に着いた。

八幡「ただいま」

八幡母「おかえりー」

八幡「んー、親父は?」

八幡母「まだ帰って来てないわね」

八幡「そうか」

小町がいないこの家を寂しく思わないと言えば、きっとそれは嘘になる。しかし、これで小町も欲しいと言うのは、流石に神様のバチがあたるだろう。奉仕部の二人と平塚先生と出会えただけで、俺は十分に満足している。

でも、たまに小町に会うために『俺ガイル』をやるのは、いいかもしれないな。



その夜、俺はなかなか眠りに就けなかった。

相模のあの目が頭にこべりついていたからだ。

俺は、あの目を知っている。

――人生に、絶望している目だ。

425: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 03:21:53.64 ID:2QWy7oS5o


それは何の気なしに行った行動だった。

本当に、何も理由はなかったのだ。学校が終わって、総武高に向かう途中に、何となくあの博士の店の事が気になっただけだった。

一時期、狂ったようにチャリで走っていた道を通り、その場所に辿り着く。

かつて博士の店があった場所には――



――何もなかった。 

435: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:03:06.51 ID:jqlb7iUho
八幡「なん……だと……?」

建物が並ぶこの通りからその部分だけすっぽり何もなくなっていた。残っているのは土のみ。ここだけいきなり取り壊されてしまったようだ。

八幡「……閉まるなんて話は聞いてなかったよな。また来いなんて言ってたから、そもそも閉める気ないだろうし」

八幡「……ただ、あんまし心配にならないんだよな、あの人だから」

437: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:06:41.18 ID:jqlb7iUho
以下、回想



八幡「うっす」

博士「おや、あんたか。またアレをやりに来たのかい?」

八幡「…………」コクン

博士「おーけー。じゃあ少し待っててくれ。この実験が終わったらすぐに準備するから」

八幡「……何やってんすか?」

博士「よくぞ聞いてくれた。比企谷くん、これは世界をも変える代物だよ」

そう言って装置を見せるが、文系の俺には何なのかわからない。

博士「これは、物を小さくできるんだ。同じ割合で全くズレのなしにね」

博士「例えばこの15センチ定規を50%の倍率で小さくすれば、7.5センチになるわけさ」

440: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:18:31.22 ID:jqlb7iUho
博士「しかしこの定規も完璧ではない。わずかに誤差がある。だがしかし! この装置があればそれも縮小できてしまうのだよ! 0.1ミリの誤差は10%に縮小すれば0.01ミリだ。科学者にとってこんな素晴らしい発明品はない!」

この人テンション上がるとちょっと中二っぽくなるんだよな。材木座ほどじゃないが。

八幡「へー、すごいっすね。でも何でそんなの作るんすか?」

博士「個人的には今言った通りだが、そうだな……君の身近な例えで言えば、同じ要領で大きくする装置が出来れば、物を簡単に運ぶ事ができるようになるだろう? 一度小さくして、着いた時に大きくすればいい。それだけでも十分すごい事じゃないか!」

八幡「そうっすかね。で、今からそれの実験を?」

博士「その通り! さぁ、この定規をセットだ」

博士は装置に繋げているパソコンを弄ると、装置が音を立てながら光り始めた。その光は次第に強くなり、俺たち二人は目を開ける事ができなくなった。

音が収まる頃には光も消えていた。目を開くと、そこには――

八幡「……8?」

8という大きな文字。その周りには黒い線がいくつも引かれている。

442: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:22:56.70 ID:jqlb7iUho
八幡「……これって」

博士「やっぱりあそこの回線は逆にするべきだったか」

八幡「ものの見事に失敗してんじゃねぇか」

博士「何を言っている。私たちの予想とは逆に大きくなったんだ。これはある意味成功と言ってもいいだろう?」

八幡「しかも倍率とか酷いし」

50%どころか何十倍にも大きくなった定規は、博士の店を真横に貫いていた。

博士「まだまだ改善の余地があるな。何が悪かったんだろうか……」ゴソゴソ

八幡「おいこら、客をこれ以上待たせんな」



以上、回想、終ワリ

447: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:28:29.51 ID:jqlb7iUho
八幡「どうせあの人の事だ、今度はワープ装置でも作って店ごとどっかに飛んでったんだろう」

今頃北極とかにいるんじゃねぇの? まあ心配は無用だろう。

??「…………」

それにしても、さっきからあの曲がり角から誰かが見ている気がする。

八幡「…………」チラッ

??「!」タタタッ

今、確かに誰かがいた。それが誰なのかまではわからなかったが。

八幡「……まぁいいか」

この目のせいで人からジロジロ見られるのには慣れてるし。今のもそれだろ。

八幡「そういや昨日が今年最後の奉仕部だったんだよな。なら総武高行く意味ねーじゃん」

家に帰るか。『俺ガイル』やったせいで金あんまないし。

八幡「~♪」チャリンチャリン

449: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:39:59.03 ID:jqlb7iUho
八幡「はぁ……」ドサッ

夕食を食べ終わった俺は、自分の部屋でそのままベッドに倒れた。食べてすぐ寝ると牛になる? んなもん知らん。

八幡「あー疲れたー。ここ最近いろいろありすぎて疲れた」

ちょっと前までゲーム中毒だった俺の現実世界に、そのゲームのキャラが現れるとかそれなんてエロゲだよ。使い古された設定だな。

八幡「……本当に、一週間前の俺だったら信じねぇよな、こんなの……」



八幡「……怖えよ」

こんなの、あり得ない。俺が享受していいような幸せじゃないように感じる。

451: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:47:06.17 ID:jqlb7iUho
あまりにも今が幸せすぎると、恐怖を感じるという話があるが、それはきっと「うまく行きすぎている」と懐疑と、その幸せが失われる事への恐怖のせいなのだと思う。

まさに今の俺だ。雪ノ下や由比ヶ浜や平塚先生に現実で出会えて、俺は幸せだと感じている。それは事実だ。否定する気はない。

だからこそ……これが仮初めの幸福なのではないかと疑ってしまう。

八幡「……結局何も変わってねぇのかな、俺は」

453: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/24(日) 23:54:25.51 ID:jqlb7iUho
年が明けて少し経ち、なぜか俺は神社にいた。

八幡「何で俺はここにいるんだ……?」

結衣「なんだかんだ文句言いながらも来てくれるんだね、ヒッキーは」

八幡「まあ……どうせやる事なかったしいいけどよ……」

結衣「ゆきのんは何をお願いするの?」

雪乃「そうね……家内安全……とかかしら?」

結衣「あー、ゆきのんっぽいー! じゃあヒッキーは?」

八幡「願い事ってのは人に聞かせる物じゃねぇんだよ。聞かれた時点で叶わなくなっちまう」

結衣「うわ……ヒッキー空気読まないね……」

読めなくて結構。それに、この二人には聞かれたくない。

455: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:05:15.73 ID:0YEmvjoTo
結衣「ゆきのん百円出すの?」

雪乃「ええ、もう17になるのだし、これくらいは出そうかと」

結衣「ヒッキーは?」

八幡「…………」サッ ゴヒャクエンダマピカー

結衣「おおっ!? 五百円玉だ!? ヒッキーなのに!!」

八幡「いや、別にそれは関係ないだろ」

結衣「あるよ! ヒッキー神様とか信じてなさそうだもん!」

八幡「それこういうところで言うセリフじゃねぇからな……」

457: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:11:02.77 ID:0YEmvjoTo
雪乃「…………」サッ

チャリーン

結衣「入れ!」ファッ

チャリーン

八幡「……よっと」スッ

バッキーーーン

八幡「!?!?」

結衣「ヒッキーの五百円玉だけ横に飛んで行った!?」

雪乃「流石比企谷くんね、神様にまで拒否されるなんて」

おいやめろ。俺もその思考にたどり着いたんだからよ。

459: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:16:33.86 ID:0YEmvjoTo

ペコリペコリ

パンッパンッ

ペコリ



八幡(もし願いが叶うならば――)




八幡(――この時が、何の支障もなく続きますように)




461: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:21:06.74 ID:0YEmvjoTo
結衣「うーん……初詣ってそんなに楽しくないね」

八幡「そもそも楽しむ物でもないしな」

結衣「……それでも何か忘れてるような……あっ! おみくじ!」

絶対言うと思った。俺、未来予知とかできんじゃねぇの?

結衣「みんなでおみくじ引こうよ!」

雪乃「別にいいけれど……そこの誰かさんは引かない方がいいんじゃないかしら?」

八幡「ああ、俺もそう思うわ」

結衣「えぇー? もしかしたらヒッキーいいの引くかもしれないじゃん!」

466: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:26:22.18 ID:0YEmvjoTo
くっ……どうして今日はこんなにも眠いんだ……!?
今日はすごく早めに落ちるかもです。



八幡「そもそもおみくじを引く意味がわかんねぇんだよな」

結衣「?」

八幡「よく考えてみろ。凶を引いたらそれはそれで気分悪いし、大吉引いたら逆にそこで運を使って、損をした気がしないか?」

結衣「んー、まあそうだけど……」

八幡「だから俺は引かん。百円玉が無駄になるだけだしな。その金でマッ缶買う方がよっぽど有意義だ」

結衣「お賽銭には五百円玉だったのにねー」

八幡「うっせ」

もうここみたいに賽銭拒否する神社にはこねぇよ、二度と賽銭なんかしてやるもんか!

468: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:33:20.84 ID:0YEmvjoTo
八幡「……とか言っても結局引く事になるんだよな」

結局世界線はそういう風に収束するのだろうか。やっぱり俺、タイムトラベラーなんじゃね。あのゲームだったらタイムリーパーか。

雪乃「……小吉ね。なかなかいいんじゃないかしら」

結衣「ゆきのん小吉かー。私は……吉だ! やった! ゆきのんに勝った!」

雪乃「由比ヶ浜さん」

結衣「ん?」メキラキラ

雪乃「……っ! いえ、何でもないわ……」

言えないよなー。あんな風に嬉しそうにしてたら流石の雪ノ下さんも、「実は吉よりも小吉の方が上」だなんて言えないよなー。それにしても本当に雪ノ下さんは、ガハマさんにデレすぎじゃないですかね?

470: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:42:54.47 ID:0YEmvjoTo
八幡「さてと、俺のは……」

八幡「…………」スーッ

八幡「……げっ!」

結衣「やっぱヒッキー悪いのだったんだ……」

八幡「いや、そうじゃなくて……」

結衣「えっ!? じゃあ大吉!?」

八幡「それでもなくてよ……」



『平』



結衣「えっ、何これ。初めて見た」

八幡「俺もだ」

雪乃「……このおみくじ、平があるのね」

八幡「雪ノ下知ってんのか、これ」

雪乃「ええ、ちなみに運勢的には凶の一つ上で、特に良くも悪くもないという意味だったと思うわ」

何でそんな反応に困る運勢作っちゃったんだよ……。

472: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 00:48:05.86 ID:0YEmvjoTo
結衣「ゆきのん、明日は空いてる?」

雪乃「え、ええ。でもどうして?」

結衣「明日はゆきのん誕生日でしょ? だからパーティーしようよ!」

八幡「またパーティーかよ」

結衣「うっ……! ……っ! いいの、それでも! ヒッキーが何て言っても、明日はゆきのんの誕生パーティーをするの! いいね!」

八幡「はいはい……」

年が変わっても、この関係は続くようだ。



……それがやっばり、すごく嬉しくて、すごく、恐い。

474: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 01:27:28.32 ID:0YEmvjoTo





そしていつだって、嫌な予感とは当たってしまうものだ。






477: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 01:33:40.87 ID:0YEmvjoTo
ゴーインゴーインアロンウェーイ

雪ノ下の誕生会から数日が経ち、冬休み最後の日を満喫していると、突然、携帯が鳴りはじめた。普段着信を受け取らない俺には、その音が酷く不自然に聞こえる。

着信の相手は由比ヶ浜結衣だった。

こんな時になんだろうか?

八幡「もしもし」

結衣『もしもしヒッキー!? 聞いて!! 大変なの!!』

由比ヶ浜の息が切れているのが受話器ごしに伝わる。

八幡「どうした!? 由比ヶ浜!」

そしてその声だけで今が緊急事態なんだと察した。

結衣『さがみんが……』

八幡「相模がどうした?」

結衣『さがみんが……っここ数日家に帰っていなくて、行方不明みたいなんだって……!』

八幡「……えっ?」 

491: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:04:46.64 ID:8vx9rIMTo
八幡「どういう事だよ……それ……?」

結衣『わかんない……。さかみんは大晦日の31日の夜に家を出てから今まで、家に帰ってきてないみたい……』

大晦日と31日って同じ意味だからな。まあ状況が状況だから言わないが。

結衣『それで何日も帰って来ないから、さがみんの親が警察に通報して、それを平塚先生が聞いて私たちにも知らせたってわけ』

八幡「でも、俺らにできる事なんてないだろ……」

結衣『それでも……何もしないなんて私にはできないよ……』

八幡「…………」チラッ

今の時間は19時。季節的にも時間的にも、とっくに陽は沈んでいる。こんな時間に由比ヶ浜を外に出すわけにはいかない。

八幡「わかった、俺が探しに出てくる」

結衣『じゃ、じゃあ……! 私も……!』

八幡「いや、お前は家にいてくれ。近頃物騒だし、こんな夜に女子一人で出歩かせたりなんかできない」

結衣『……わかった』

物分りが早くてよろしい。

494: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:06:53.25 ID:8vx9rIMTo
八幡「さて……と」

こんな事『俺ガイル』でもあったな。確かあれは文化祭の時のだから6か。

八幡「しかし……」

俺に思い当たる場所は二つある。時間的にはどちらかにしか行けなさそうだ。

八幡「……やっぱあそこか?」

いつも通り俺を待っているチャリをこぎ始める。冬の夜風が冷たい。やっぱマフラーとかしてくればよかった。

496: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:10:24.32 ID:8vx9rIMTo
八幡「……あっ」

その前に由比ヶ浜に聞かなければならないのを忘れていた。この現実世界の文化祭の時に、何が起こったのか。

着信履歴から由比ヶ浜の名前を探す。すごい、俺の携帯の中に家族以外の名前がある。やったね、八幡! 着信履歴が増えるよ! ……何か悲しいな。

トゥルルルルルル

結衣『もしもし、どうしたの、ヒッキー?』

八幡「聞き忘れた事があった。文化祭の時に相模が消えたって言ってたな」

結衣『う……うん』

八幡「その時は誰かが見つけたりしたのか?」

結衣『……ううん、あの時は誰にも見つけられなかったかな……。結局最後までさがみん出て来なくて、ちゃんとエンディングセレモニー終わらせられなかったの』

結衣『だからかな……あんなに責められたのは……』

八幡「そうか、それだけ気になってな。ありがとよ」

498: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:15:38.49 ID:8vx9rIMTo
由比ヶ浜の返答は俺の予想通りだった。

相模は文化祭の時に見つからなかった。だから『今度こそ』見つかろうと思った。

なぜこのタイミングを選んだのかはわからない。だがしかし、それしか現実的に考えてあり得ない。

……いや、逆に今だからなのか?

三が日が過ぎたとはいえ、冬休み中だから基本校内に人はいない。いたとしても校外で部活をする連中くらいだ。その絶妙なバランスの状況下で、自分を見つけてくれる人を求めている。

それに自分が行方不明になれば、職員会議が行われて校内に入り込むのは簡単になるだろう。だから今日ではなく数日前から家には帰らなかったのだ。恐らく一日二日いなくなった程度で、通報するような親だと相模自身思っていなかった。

しかしもうこの時間だ。誰かが見つけに来る事もない。このままで放って置いても相模は家に帰るだろう。

501: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:22:27.14 ID:8vx9rIMTo
――だが、それではダメだ。

脳裏に相模の目が思い浮かぶ。あの目は、自分の現状を呪っている人間にしかできない。ソースは俺。

きっとこのまま放って置いては、相模南はずっと救われないままだろう。時が解決する問題かもしれないが、数ヶ月後には相模も受験生になる。

総武高に通うくらいだから、進学志望だろう。そんな人生を左右するような時期を、このままで迎えてはいけない。迎えさせては、いけない。

もしも、全ての出来事に意味があるのなら――

――俺が『俺ガイル』を経験したのは、総武高で起こってしまった事件を解決するためなのかもしれない。

俺がすべきなのは、きっと『比企谷八幡』が行ったような問題の解消ではない。俺、比企谷八幡がすべきなのは、問題の解決だ。

503: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:26:51.24 ID:8vx9rIMTo
八幡「もしもし、比企谷です」

平塚『なんだ? 相模は見つかったのか?』

八幡「いえ、まだです。ただ、心当たりがありまして」

平塚『……なるほど、私の協力がまた必要だと』

八幡「先生察し早すぎじゃないすか?」

何なのこの人、実はエスパーなの?

平塚『まあとりあえず校門に来い。他の職員には私から言っておく』

八幡「わかりました」

505: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:30:38.30 ID:8vx9rIMTo
平塚先生と合流した――のはいいが。

八幡「何でお前たちまでいるんだ?」

結衣「やっぱりいても立ってもいられなくて、一人じゃ危ないから、ゆきのんと平塚先生も一緒なら大丈夫かなって」

まあ平塚先生がいるなら心配いらないな。多分痴漢とかに襲われても、相手が病院送りになるレベル。

雪乃「それにあなた一人に任せられるわけないでしょう?」

八幡「どんだけ信用ねぇんだよ俺……」

まあ出会ってまだ一週間も経ってないから当たり前か。

平塚「で、心当たりというのは?」

八幡「あ、ええっとですね……」

ヤバいどうする? 平塚先生しかいないと思ってたから、何も考えてなかった。

507: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:34:46.56 ID:8vx9rIMTo
平塚「あ、雪ノ下に由比ヶ浜。私職員室に携帯置いてきてしまったから、それを取りに行ってきてくれないか?」

雪乃「どうして、私たちが……? 自分に取りに行けばいいのでは?」

平塚「まあそう言うな、歳上の人間に貸しを作っておくのも悪くないぞ?」

雪乃「先生の場合、その貸しの事を忘れてしまいそうですが」

平塚「いいから、行って来い、二人とも。教師命令だ」

雪乃「理不尽ですね……」テクテク

510: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:41:57.91 ID:8vx9rIMTo
平塚「……すまなかったな。君のここの知識がゲームに基づいている事をすっかり忘れていた」

八幡「いえ、平塚先生の機転のおかげで助かりました」

平塚「まあ礼はあとでいい。それで、どこなんだ?」

八幡「屋上です」

平塚「えっ?」

八幡「あそこの鍵は壊れていて出入りが自由なんです。確か女子の間では有名な話だったような……」

平塚「……比企谷」

八幡「はい?」

平塚「確かに、屋上の鍵は壊れていた。それは事実だ。だがな――」



平塚「――去年の十一月に修理して、今は入れなくなっている」




512: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:46:11.05 ID:8vx9rIMTo
八幡「……えっ?」

『俺ガイル』と、ズレている。あの世界では屋上の鍵が修理されたなんて話を聞かなかった。きっとされてもいなかっただろう。

相模たちの運命が変わったのは、俺がいなかったからだろうが、屋上の鍵の話はそれに結びつかない。

俺がいなかった事と、屋上の鍵の事は何の関係もないはずだ。

ここまでほぼ一致していたのに、なぜ?

八幡「……あっ」

八幡「バタフライ……エフェクト……?」

514: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:52:23.36 ID:8vx9rIMTo
バタフライエフェクト。

バタフライ効果とも言う。

小さな差が大きな差となる事を表す言葉で、有名な例えに蝶の羽ばたきが遠く離れた場所の天候に大きな影響を及ぼす、というのがある。

ちなみに風が吹けば桶屋が儲かるとは違うみたいだから気をつけろよ。

つまり、俺がいなかったという小さな差が、この学校の屋上の鍵が直されるかどうかの違いになったというわけか。俺の存在で変わるのそれだけかよ。

てかそんなのとうでもいいな。正直ちょっと某中二病の何とか院さんに憧れただけだし。エル・プサイ・コングルゥ。

516: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/25(月) 23:56:50.09 ID:8vx9rIMTo
八幡「マジかよ……」

平塚「君の見てきた世界では屋上の鍵は直されていなかったのか?」

八幡「……はい。まさかこっちでは直されているなんて。俺が関わってないところでは、変化はないと思ってたんで、正直驚きました」

平塚「まさに風が吹けば桶屋が儲かる、というやつだな」

八幡「……先生」

平塚「ん、なんだ?」

八幡「それ、使い方間違ってます」

平塚「えっ?」

この人、本当に国語教師なのかよ。

518: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:06:30.12 ID:2/y2i9q9o
雪乃「で、結局心当たりは間違ってたと」

八幡「……そういう事になりますね」

結衣「その心当たりって何だったのー?」

八幡「……っ! えっとそれは……」

平塚「それよりもだ。まだ相模は見つかってない。明日から学校も始まるというのに、こんな問題を抱えたままではあまりよくない」

平塚「三人とも、他に心当たりはないのか?」

先生GJ。こんなに心配りできるのになんで結婚できないんだ?

結衣「うーん……最近はあんまりさがみんと話さないしなー」

雪乃「私も文化祭以来、接点はないわね」

520: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:12:24.38 ID:2/y2i9q9o
八幡「…………」

もう一度最初から考え直そう。

まず、現状の確認。

相模南は大晦日の夜から今日の今まで行方不明。短いな。

八幡「……誘拐、とかは?」

平塚「一応その線で今、警察は捜索している。ただこの歳で行方不明だと、家出の場合が多いからな。家に電話したところ、行き先は告げずに出て行ったらしいから、私は家出だと思っている」

八幡「そうすか」

誘拐ではないとして考えよう。誘拐だったらそれこそ、俺たちにはお手上げだ。

522: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:16:32.91 ID:2/y2i9q9o
書き溜めが切れましたので、投下が遅くなります。ごめんなさい。



八幡「……やっぱあれなのか?」ボソッ

雪乃「何か言ったかしら?」

八幡「いや、ただの独り言だ」

それはほとんど確率はゼロと言ってもいいような可能性。

そして何より、俺が認めたくない可能性の話だ。

これを真実と認めたら、他の俺の中での仮説が一気に確実性の高いものになる。

本当はその可能性の確認になど行きたくない。

しかしもしそれが真実であるのならば、俺は今、その確認をしなくてはいけない。

それは相模南のためではなく、俺のために。

524: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:23:09.18 ID:2/y2i9q9o
八幡「すまん、今日はもう帰るわ」

雪乃「どうしたの? 急に」

八幡「ちょっとな。あんまり人には話したくない。じゃあな」クルッ

俺は逃げるようにその場を離れた。

雪乃「……そうやって」ボソッ

雪ノ下が何かを呟いたが、俺は振り返らずに歩を進めた。

526: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:27:14.16 ID:2/y2i9q9o
チャリを走らせ数十分。

予想通り、相模南はそこにいた。

ああ、やっぱりここにいたか。

なんでいるんだよ。

ここにだけはいないで欲しかった。

八幡「……よう」

俺は話しかけた。もう、後戻りはできない。



そこは、あの博士のいた店の前だった。




528: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:32:30.81 ID:2/y2i9q9o
相模「あんた……ゆいちゃんと一緒にいた……」

八幡「もう知らんふりしなくてもいいんだぜ? お前なんだろ? あの時そこで、俺を見ていたのは」

あの時の曲がり角を指差す。店がなくなって呆然としていた時の事だ。

相模「…………」

八幡「そして、お前なんだよな? この店に通っていたもう一人の客は」

530: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:36:35.80 ID:2/y2i9q9o
相模「……何の事よ」

あくまでも相模は何も知らないふりを続けるつもりだ。

八幡「……仮想現実体験装置」

相模「!?」ビクッ

八幡「もう言い逃れはできないな」

相模「…………」

533: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:42:34.42 ID:2/y2i9q9o
多分、最初に廊下で相模に会った時に、心のどこかで俺は気づいていた。

こいつは、俺と同じだと。

俺と同じように、あの装置に手を出してしまったのだと。

ただ自分の人生を絶望するとは言っても、そこには限度がある。

――自分の人生しか知らないのであればの話だ。

しかし俺たちは仮想現実体験装置というものによって、他人の人生を体験、いや最早経験してしまった。

そしてその人生はあまりにも輝かしすぎて、だからこそ自分の人生があまりにも退屈で平凡で、腐っているように思ってしまった。

それは俺も同じだ。いや、今は『だった』と言う方が正しいだろう。

536: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:51:14.85 ID:2/y2i9q9o
八幡「この数日間、ずっとこの店を探してたのか?」

相模「……っ! そ、そうよ! いろんなところ回ったわ……!」

八幡「家にも帰らずにか。ずいぶんとご立派な事で」

相模「バカにしないで! あんたと違ってウチにはあの世界しかないの! あの世界でしか、ウチの存在価値はないのよ! だから邪魔しないでよ!」

この状況は、あの文化祭の時に似ているな、と思った。しかしあの時とは違う。葉山はこの場には現れないし、もし現れたとしても本当に何もできないだろう。今この世界で、彼女を説得できるのは、同じ経験をした俺しかいない。

538: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 00:56:13.22 ID:2/y2i9q9o
八幡「俺も、あの装置を使った」

相模「……わかるわよ。あんたの口ぶり聞いてれば」

八幡「……俺もお前と同じだったんだ」

相模「……?」

八幡「俺も、お前と同じようにこの世界に絶望した。お前と違って俺はうまれてからずっとボッチだったからな。あの世界にいる自分に死ぬほど嫉妬した」

542: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:07:05.00 ID:2/y2i9q9o
相模「…………」

八幡「考えてもみろよ。ずっとボッチだった奴があの装置の中で初めて人と接する事ができたんだ。それは依存するし、その中の自分に嫉妬するだろう?」

相模「それは……そうかもしれないけど……」

八幡「お前はどうなのかわからんが、俺はそんな自分が嫌いになったよ」

相模「…………」

八幡「だから俺は変えようとした。この世界をだ」

それは奇しくも『俺ガイル』の最初で雪ノ下が言った事と一致していた。

八幡「確かにこの現実で何かするなんてすごい勇気いるよな? それでも俺は振り絞った」

あの時、雪ノ下に話しかけなくたってよかったのだ。その方がずっと楽だったし。

八幡「……そして雪ノ下たちと知り合えた」

相手が雪ノ下であるという時点で少しズルをしている気がするが、今は相模を説得するためにスルーしよう。

546: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:11:38.78 ID:2/y2i9q9o
八幡「……もしも、雪ノ下たちに会えていなかったら、俺もお前と同じようになってたかもしれない」

八幡「だから……お前の事が放っておけないんだ。まるで自分を見ているみたいだからな……」

相模「…………」

さっきから相模は何も言えずにただうつむくばかりだ。

八幡「一つ聞くが、お前は今の自分が好きか?」

相模「っ……」

八幡「今の、機械に頼って依存して、挙げ句の果てに周りの人にまで迷惑をかけてしまう自分を好きになれるのか?」

今の質問は少しズルいな。こんなのにイエスと答えられるなんて、去年の十一月の俺くらいじゃねぇの? やだ、俺、ひねくれすぎ。

549: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:20:43.07 ID:2/y2i9q9o
相模「そんなの……ズルいよ……っ」

相模の目に涙が溜まり始めた。それを見て心が痛むが、まだ優しくするような時間じゃない。まだあわわわわわわのコラを見て吹いたのは俺だけか?

八幡「質問に答えろよ」

相模「好きに……なれるわけ……っ! ないでしょ……!!」

ようやく相模は涙を流した。それは文化祭の時に流したような軽い涙ではない。真剣に悩みに悩んで、泥の中を這いずり回るような思いをしてようやく流せた、涙だ。

八幡「なら、変われよ。変えようとしろよ」ガッ

感情が高ぶりすぎたせいか、つい相模の両肩を掴んでしまった。相模の目が大きく見開く。

552: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:28:26.08 ID:2/y2i9q9o
八幡「今の自分の現状が嫌だって思うなら……それを変えようとしろよ……!」

『比企谷八幡』は変わる事を否定した。それは彼が自分自身を肯定できてしまうような超人だったからだ。ベクトルは違えどもきっと、雪ノ下雪乃という人間と同じように。

だが、俺たちは彼らのような超人ではない。

今までの自分を肯定できないし、今の自分自身も肯定できないような、弱い人間ばかりなのだ。この世界にいるのは。

それに、『比企谷八幡』だって、時を経るにつれて変わっていった。それは変化の肯定なのではないだろうか? なら、今俺が相模にこう言うのは、間違っていない……はずだ。

554: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:39:30.02 ID:2/y2i9q9o
相模「……でも、ウチ、やっぱり怖い……」

八幡「それでも、今のままでいるのはよくない……と俺は思う」

相模「……君、名前、なんて言うの?」

八幡「比企谷八幡」

相模「……変な名前」クスッ

八幡「よく言われる」

まだ二回目だけどな。

556: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:42:49.91 ID:2/y2i9q9o
相模「じゃあ、比企谷くん……」

八幡「なんだ?」

相模「…………」モジモジ

八幡「…………」

相模「……ウチと」

八幡「…………」

先を続けさせたい衝動に襲われるが、我慢する。ここは相模自身の力で言わせなければならない。じゃなければ、これまでの時間が無駄になってしまう。

相模「ウチ……と……っ……! と……っ……友達になってください!!」

それは相模が変わろうとした事、そして変わり始めた事の現れであった。

558: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 01:47:37.67 ID:cCmfEDCuo
八幡「ああ、いいぞ」

相模「本当に!?」

八幡「ああ」

相模「はぁ……よかったぁ……」ドサッ

相模は全身の力が抜けたのか、地面に尻餅をついた。

相模「ありがとね、比企谷くん」

八幡「別に……これくらい大した事じゃねぇし……」

561: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:02:43.31 ID:cCmfEDCuo
こうして相模の説得に成功し、さらに初めての友達を得て、俺は帰宅した。ふぇぇ、疲れたよぉ。

自分の部屋に入り、とりあえずそのままベッドにぶっ倒れる。

ボスッと気持ちいい音がする。柔らかい。もう今日は寝たいが、やらなきゃならない事がまだ残っている。

ゴーインゴーインアロンウェーイ

おや、電話か。一日に二回も着信とかもう大地震が起こるレベルだろ、これ。

ピッ

八幡「もしもし」

結衣『あっヒッキー? あのね、さがみん無事見つかったって!』

八幡「おーそうか、よかったな」

結衣『うわーヒッキーすごい他人事みたいに』

八幡「実際他人だしな」

結衣『うー……。まあそういう事だから、もう心配しなくても大丈夫だよ!』

八幡「おう、連絡どうも」

結衣『じゃあまたね!』

ピッ

563: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:07:41.02 ID:cCmfEDCuo
八幡「……あんな事言っちまった以上、俺もこれ以上逃げてるわけにはいかねーよな」ゴロゴロ

八幡「よっと……!」スッ



カタッカタカタ

八幡「…………」カチッカチッ

八幡「……やっぱ……そうか」

565: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:13:05.77 ID:cCmfEDCuo
学校での始業式が終わり、その後のSHRが終わるとすぐに俺は総武高に向かった。

見慣れた扉を開くと、そこには初めて出会った時と同じように雪ノ下雪乃が、部室の中にいた。

雪乃「あら、来たのね。別にわざわざ校外から来なくてもよかったのだけれど」

八幡「悪かったな。来ちまったよ」

とりあえず雪ノ下の席から一番遠い椅子に座った。

567: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:15:27.24 ID:cCmfEDCuo
雪乃「……相模さん、家に帰ってきたみたいね」

八幡「そうだな」

雪乃「何をしたの?」

八幡「……別に、何もしてねぇよ」

雪乃「私の目を誤魔化せると思っているの?」

そう言われて彼女の目を見る。……こえぇよ。あと、怖い。

570: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:20:27.43 ID:cCmfEDCuo
八幡「本当に何もしてねぇって。何でそんなにしつこいんだよ。俺は相模とまだ二度しか会ってねぇし」

雪乃「二度……?」

あ、やべ。また墓穴掘った。

雪乃「やはり昨日会ったんじゃないの。それで、比企谷くんはまた変な事を言ったのね。自首しなさい。今ならまだ間に合うわよ」

八幡「自首してる時点でもう手遅れだと思うんですが」

雪乃「そうかしら?」

八幡「そうだろ」

572: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:23:08.91 ID:cCmfEDCuo
ああ、また話を引き伸ばしている。本当はもう話し始めなければならないのに。いつまで逃げているつもりなんだろうか。

八幡「……由比ヶ浜は?」

雪乃「少し遅れるそうよ。そうメールが来たから」

はいはい、仲良いアピールですか。もう慣れましたよ、そんなのには。

雪乃「で、相模さんには何て言ったの?」

八幡「……まあ頑張れとかそんな感じだ」

嘘はついてない、嘘は。判定はグレーだが。

575: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:35:46.27 ID:cCmfEDCuo
雪乃「……そう」

あれ? これだけで納得しちゃうの? この十数時間の間に何があったの?

などと言う冗談は置いといて。

八幡「雪ノ下、大事な話がある」

俺はそう切り込んだ。すると、雪ノ下はそれまで読んでいた本を閉じて、真っ直ぐ俺を見た。

流石、校内一の美少女と言われるだけある。その透き通った瞳は吸いこまれてしまいそうだと錯覚してしまう程に、美しかった。

577: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:48:32.96 ID:cCmfEDCuo
八幡「すぅーーーはぁーーーー」

一度、深呼吸。

それでも早まる一方の心臓の鼓動。

おかしいな、運動なんかしてないのに。

まあいいか。

八幡「雪ノ下」

雪乃「何かしら?」

八幡「俺はこれから真面目な質問をする。だから真面目に答えてくれ」

雪乃「……わかったわ」

もう一度、深呼吸。

そしてもう一度吸って、俺は声を振り絞るように出した。















八幡「この世界は、俺の夢なのか?」

















579: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 02:58:32.42 ID:cCmfEDCuo



世界が止まった。



音が消えた。



色も、何もかも、感覚というものが全てなくなってしまった。



ああ、なにも見えない。なにも聞こえない。



なにもかもが、真っ白だ。





581: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:02:03.09 ID:cCmfEDCuo
雪乃「…………」

言い終わると、雪ノ下は目を見開き、口を少し開いてただ俺を見つめていた。

八幡「…………」

俺も何も言わない。いや、何も言えないのだ。あまりの緊張で喉が乾きすぎて、声がうまく出せない。

お互い何も言えないまま、ただ時間だけが過ぎていった。

そして、その無言の時間のせいでわかってしまった。

俺の言った事は、本当なのだと。

583: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:05:28.20 ID:cCmfEDCuo
雪乃「……いつから、気づいていたの?」

雪ノ下が声を出したのが、俺が聞いてからどれくらい経った時なのか、わからなかった。

実は三十秒くらいしか経ってなかったのがしれないし、もしかしたら、二十分以上黙ったままだったのかもしれない。

そんな事、わからないし、どうでもいい。

八幡「……結構最初の方から疑ってはいた。所々おかしいところはあったしな」

雪乃「……例えば?」

586: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:08:56.75 ID:cCmfEDCuo
八幡「今思えば、最初からおかしかった。最初に話しかけた時、俺はあまりにも怪しかった。もしお前が本当に初対面であったなら、あんな風に会話なんてしなかったろう。すぐに通報されるかボコボコにされるかのどっちかだったと思う」

雪乃「…………」

八幡「由比ヶ浜に関してもだ。初めて会って数度会話してそれでもうあだ名をつけようなんて、早すぎる。これが普通の男であるならまだ納得できただろう」

八幡「しかしお前が由比ヶ浜に俺を紹介した時、何て言ったか覚えているか? ストーカーって言ったんだぞ? 親友のストーカーかもしれない人間にあだ名をつけようなんて、いくら由比ヶ浜でもしないと思っていた」

八幡「なぁ……」

八幡「お前たちも、本当は全部覚えてるんだろ……?」

雪乃「…………」

588: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:14:55.61 ID:cCmfEDCuo
雪乃「……ええ、覚えているわ。少なくとも、あのクリスマス会のところまでは」

八幡「ならなんで……? そもそも何なんだよ、これは!?」

雪乃「質問は一つずつにしなさい、比企谷くん。……なら後者の方から答えようかしら」

雪ノ下髪を一度整えてから、話し始めた。

雪乃「……あなたは、現実世界で『俺ガイル』にハマった。そして十二月二十四日に、ボリューム9をした。ここまでは合ってるわね?」

八幡「あ、ああ……」

やはり……全部知っていたのか……。

雪乃「でもね、ボリューム9が終わった時に予想外の事が起こったの」

雪乃「……脳にいくら信号を送っても、あなたは、目覚めなかった」

590: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:19:37.45 ID:cCmfEDCuo
雪乃「あなたは、『俺ガイル』内の世界を望み、そして現実を拒否しすぎて、現実で目覚めなくなってしまった」

雪乃「いえ、目覚めるのを拒絶した、と言うのが正しいのかしらね」

八幡「…………」

雪乃「だから、あなたを目覚めさせるためのプログラムが作動した」

八幡「それが……この世界ってわけか……」

雪乃「そうよ」

592: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:25:11.52 ID:cCmfEDCuo
八幡「だから……この世界には、俺と同じ状態の、相模がいたのか」

雪乃「ええ、そして彼女を説得するには、まずあなた自身が現実を肯定できるように、そして『嘘』を否定できるようにならなくてはならない」

八幡「…………」

雪乃「この世界はあなたのためだけに存在しているの」

雪乃「あなたの心が……現実を認められるくらい、強くなるために」



594: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:34:28.48 ID:cCmfEDCuo
雪乃「私からも一つ質問、いいかしら?」

八幡「あ、ああ。なんだ?」

雪乃「どうして、ここが夢だと気づいたの? さっきの理由だけでは不十分なように感じられるのだけれど」

八幡「ああ……それは、日付けだ」

雪乃「日付け?」

八幡「明確な狂いは日付けだった。まず、俺が現実にいた時、つまり『俺ガイル』の9をやる前、12月22日は月曜日だったんだ」

八幡「つまり、12月24日は『水曜日』になるはずだろう? でも、ここでは12月24日は『木曜日』になっていたんだ」



参照

>>274
>>280
>>417

596: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:43:55.21 ID:cCmfEDCuo
雪乃「……なるほどね。確かに一日の差とは言え、そんなズレは現実では絶対にあり得ないものね」

八幡「あの時の俺は『俺ガイル』の最新話を死ぬほど待ってたからな。日にちも全くズレなしで覚えてた。まあ一番の理由はそれだな」

雪乃「……そう。……由比ヶ浜さん、もう入って来ていいわよ」

ガララ

結衣「や……やっはろー……なんて……」

えへへと気まずそうに笑う。

八幡「由比ヶ浜……お前が嘘をつけるなんてな」

結衣「バ……バカにすんなし!」

八幡「いや、由比ヶ浜にしてはうまかったと思うぞ?」

結衣「それ喜んでいいのか微妙だね……」

599: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:48:00.73 ID:cCmfEDCuo
八幡「……俺は、目覚めなきゃいけないんだよな?」

雪乃「そうよ、じゃなければこれまでしてきた事の意味がなくなるでしょう?」

八幡「……また、会えるよな?」

雪乃「…………」

結衣「…………」

二人とも申し訳なさそうに目をそらした。由比ヶ浜に至っては既に涙ぐんでいた

八幡「な……何でだよ……? また続きが出たらやればいいじゃないか!」

結衣「……ダメなんだ、ヒッキー」

601: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 03:54:40.70 ID:cCmfEDCuo
八幡「なんで……?」

雪乃「一度、目覚めなくなると、次の時も目覚めなくなる可能性が爆発的に上がるの。しかも今回は心に問題があるからまだどうこうできるけど、二回目に原因はない。何も原因がないまま目覚めなくなってしまうらしいの……」

八幡「な……何なんだよ……それ……!」

雪乃「それはわかってないわ。だから一度目覚めなくなった人間は、もう仮想現実体験装置は使えない」

八幡「それって……つまり……」

八幡「もう二度と、雪ノ下や、由比ヶ浜に会えないという事か……?」

雪ノ下は小さく頷く。

八幡「そんなのって……ねぇよ……!」

603: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:00:20.00 ID:cCmfEDCuo
雪乃「でも、ここでずっと生きていけるわけ、ないでしょう? あなたの身体は現実にあるのだから、栄養を補給しなければいつかは死んでしまう」

八幡「でも……でも……!」

結衣「ヒッキー、さがみんに聞いたんでしょ?」

八幡「!」



八幡『お前は今の自分自身が好きか?』



結衣「今、現実から逃げたって、ヒッキーが自分の事を好きになれるわけ……ないじゃん……」

605: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:05:17.35 ID:cCmfEDCuo
八幡「くっ……そ……っ!」

何なんだよ、何なんだよこれは! 二度と雪ノ下や由比ヶ浜に会えない? そんなの、認められるか!?

結衣「ほら、ヒッキー。泣かないで。男の子でしょ?」

八幡「泣いて……ねぇよ……」

八幡「何なんだよ! こんなの突然言われて、納得できるわけ、ねぇだろっ!!」

結衣「……私たちが、納得しているように見える?」

八幡「……えっ?」

607: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:10:19.16 ID:cCmfEDCuo
結衣「納得できるわけないよっ!!!」

結衣「何でなの!? 何でヒッキーと一緒にいられないの!? 私もゆきのんも最初から知ってた!! 私は何度も何度も考えて、泣いて、それでもヒッキーの為だと思って、納得しようとしたよ!!!」

結衣「でも……認められるわけ……ないじゃん……!!」グスッ

由比ヶ浜は、もう感情を止めることはできなかった。

八幡「由比ヶ浜……」

結衣「なんで……好きな人と一緒にいたいって願いも……叶えてくれないの……? 酷いよ……酷すぎるよ……」

611: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:19:59.89 ID:cCmfEDCuo
雪乃「由比ヶ浜さん。落ち着いて」

雪ノ下が泣き続ける由比ヶ浜の背中をさする。

結衣「うぅ……っ、ごめんね……ヒッキー……。最後まっ……で……笑っていようと……思ったのに……っ」

八幡「……悪かった。お前たちの気持ちも考えてやれなくて」

雪乃「……私もね、あなたといるの、楽しかったわ」

雪乃「いつも私の暴言にあなたがツッコミを入れたり、由比ヶ浜さんがいつものように少しマヌケな事をしでかしたり……」

雪乃「そんな、この空間が、この部屋が……私は、好きだった」

八幡「…………」

雪乃「比企谷くん」クルリ

雪ノ下が俺に向き直った。その目が少し潤んでいるように見えるのは、きっと気のせいではないだろう。

雪乃「由比ヶ浜さんも言ってたけれど、私も言わせてもらうわ」

雪乃「比企谷くん。私は、あなたの事が、好きでした」

613: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:23:50.11 ID:cCmfEDCuo
八幡「……お、おう」

雪乃「はぁ……あなたは最後まで相変わらずね」

八幡「うっせーな。告られたの初めてだから、どう反応すればいいのかわかんねぇんだよ」

雪乃「うふふ……」

八幡「何だよ?」

雪乃「いえ……最後に、こんな会話をできてよかったと思っただけよ」

八幡「そうか……」

615: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:28:48.26 ID:cCmfEDCuo
八幡「……俺は」

八幡「こんなの、男らしくないかもしれないが……」

八幡「雪ノ下に、由比ヶ浜、二人とも好きだった」

八幡「どっちの方が好きとかはなくて、本当に、二人とも、好きだったんだ」

結衣「……ヒッキー、らしいね」

雪乃「ええ、最後まで比企谷くんは、比企谷くんだったわ」

八幡「おいコラ、それはどういう意味だ」

雪乃「そのままの意味よ」

結衣「あははははは!!」

こうして、最後の時が、過ぎていく。

617: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:36:21.84 ID:cCmfEDCuo
八幡「……じゃあ」

結衣「うん……」

雪乃「あなたがその扉を開けば、この夢は覚めるわ」

八幡「そうか……」

その前に一つだけ、気になる事を。

八幡「お前たちは、これからどうなるんだ?」

雪乃「大体は、記憶を消されてまた最初のに戻されるのだろうけれど……」

雪乃「……もしかしたらそうじゃないのかもしれないわね。記憶を残したまま、次の誰かの『俺ガイル』の中に出てくるかもしれないわ」

結衣「うん……、そうだったら、いいな……」

八幡「それは、俺が現実に戻ったあとにでも、博士に言っとくよ」

結衣「本当に!?」

八幡「ああ。俺は約束を破ったことはない」

バイトをばっくれたことはあるがな。

619: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:46:51.80 ID:cCmfEDCuo
結衣「ヒッキー、元気でね……」

八幡「ああ、お前も元気でな……。甘いもの食い過ぎんなよ、虫歯になるからな」

結衣「むー! ヒッキー最後までそうやって!」プクー

八幡「まあ、元気でやるさ」

雪乃「比企谷くん、今までありがとう」

八幡「……俺も感謝しきれない程、お前には世話になったな。ありがとな。本当にいろいろ助けられた」

雪乃「ええ……」

結衣「ヒッキー! 私もね、ヒッキーにたくさん感謝してる。だからね……今まで、ありがとう……!」

八幡「ああ、由比ヶ浜も、今までありがとな……」

雪乃「……さよなら」

結衣「バイバイ、ヒッキー……」

八幡「ああ……さよなら……」

俺は二人に背を向け、そして、ゆっくりと扉を開けた。

621: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:51:45.95 ID:cCmfEDCuo
……暗い。

どこだろう、ここは。

機械の甲高い音が俺の鼓膜神経を刺激する。

意識がはっきりしていくにつれて、身体が重力で地面に押し付けられている感覚が強くなった。

すると、突然、目の前から光が差し込んだ。

八幡「まぶし……っ!」

開いたその前に広がっているのは、博士の店の風景だった。

博士「ようやく起きたか?」

博士は俺に手を差し伸べる。その手は細長くて、少し力を入れれば折れてしまいそうだった。

623: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 04:56:19.54 ID:cCmfEDCuo
八幡「……今日は」

博士「12月24日。クリスマスイブだ」

八幡「…………」

博士「……すまなかったな。君には辛い思いをさせてしまった」

八幡「…………」

博士「だが夢の中で言ったとおり、もう君に仮想現実体験装置を使わせる事はできない。いくら金を積まれてもね」

八幡「いえ、それはもういいんです。ただ……」

博士「ただ?」

八幡「……雪ノ下たちの記憶を、消さないでやって欲しいんです」

625: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 05:04:07.12 ID:cCmfEDCuo
店から外へ出ると、どこからかジングルベルが聞こえてくる。

心にぽっかりと穴が空いてしまったような気分だ。当分何もする気は起きないだろう。

空を見上げながら俺はゆっくりと歩き始める。

もう、二度と会えない二人の友人たち。

彼女たちの事を思うと、今にも涙がこぼれてきそうだ。

いくら泣いたっていい。いくら胸の痛みに耐えかねて叫んだっていい

だが、それでも俺はこの現実で懸命に生きていこう。

彼女たちと、そう約束したのだから。



EDテーマ

Song for friends

https://www.youtube.com/watch?v=4Xtxym_NS58


639: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 14:51:52.06 ID:o7rJ+72zo
タモリ「少年が落ちてしまった三つの穴」

タモリ「その底に何があるのか、ここからではわかりません」

タモリ「そもそも底があるのかどうかも怪しいものです」

タモリ「おや、よく見ると、他にもたくさんありますねぇ」

タモリ「意外と、あなたのすぐそばにもあるのかもしれませんよ」

タモリ「くれぐれも足元をすくわれないよう、お気をつけて」



https://www.youtube.com/watch?v=jsta3tEY43s




640: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 14:55:06.61 ID:o7rJ+72zo
ストーリーテラー

タモリ



『恐怖小説』


比企谷八幡


材木座義輝


雪ノ下雪乃


由比ヶ浜結衣


平塚静




比企谷小町


脚本 作者




『マッ缶と俺とリア充』


比企谷八幡


葉山隼人


雪ノ下雪乃


由比ヶ浜結衣


三浦優美子


戸部翔




海老名姫菜


脚本 作者

スペシャルサンクス

MAXコーヒー


641: ◆.6GznXWe75C2 2014/08/26(火) 14:55:44.54 ID:o7rJ+72zo
『そして比企谷八幡は夢から覚める』


比企谷八幡


雪ノ下雪乃


由比ヶ浜結衣


平塚静


相模南




博士


脚本 作者


最終話エンディング

「Song for friends」


スペシャルサンクス


ここまで読んでくださった皆様


連投のできない作者のために支援レスをしてくれた皆様


総監督 作者


終わり


次回 八幡「やはり俺の世にも奇妙な物語は間違っている」特別編