一方通行「家がないだァ?」 垣根「お前のせいだよ!」前編
406: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:44:49.30 ID:tAWgjGHq0
一方通行「いや、俺は別にこのままでいいンだが」
結標「遠慮しないでちょうだい」
一方通行「オマエに任せるのが怖ェンだよ!」
海原「じゃあ、自分は番外個体さんとそちらの
ソファで待機してますので」
番外個体「漫画とかあるじゃん、読もーっと」トテテ
海原「小走りな番外個体さん……無邪気で美しい」クラッ
結標「んじゃ、とりあえずエクステつけましょうか」
一方通行「何で? 髪は足りてンぞ? どこに付けるンだ?」
結標「とりあえず腰くらいまでの白髪にしようかなと思って」
一方通行「はァ!? オマエ何考えてるンですかァ!?
俺は男ですけどォ!?」
結標「イメチェンを甘く見ないでちょうだい。 貴方の凶悪な
イメージを払拭するには性別の壁を乗り越えるくらいの暴挙に
出ないと駄目だと思うのよ」
一方通行「自分で暴挙って言ったなオイ! マジでやンのか?!」
結標「大丈夫よ。 世の中には髪の長い男性もいるわ」
一方通行「俺も髪の長い部類に入ってると思うンですけどね!!
つーか腰までとか長いってレベルじゃねェだろ!」
結標「ちょっと前髪伸ばしてくれない?」
一方通行「聞いてねェもンな!」オイ
結標「あ、髪伸ばせるんだったらエクステいらないじゃない。
もう全部の髪腰くらいまで伸ばしてくれない?」
一方通行「何つゥ無理難題を押し付けやがンだ!
そンな簡単に伸ばせるもンじゃねンだよ!」
結標「……小さい頃ね、海に行ったのよ」
一方通行「え、いきなり何……」
結標「幼稚園の遠足みたいなものだったかしらね。
その頃の私は今と違って髪が短かったわ。 丁度今の
貴方くらいの長さね」
一方通行「へェ……」
結標「私はその時仲の良かった友達と海辺で遊んでいたわ。
その子は腰までは行かないけど結構髪が長かったの」
結標「遊んでるうちにね、もうちょっと奥行ってみようって
ことになって。 先生の目を盗んで沖に出たわ」
結標「最初は足がつかない深さに興奮して浮き輪に
捕まりながらはしゃいでいたのだけれど、段々と自分たちが
流されていることに気づいたのよ」
結標「遠ざかっていく陸、広がっていく水平線。 怖かったわ。
人間ってパニックになると怖いものよ。 私は友達のことなんて
忘れて無我夢中でバタ足したわ。 でもどんなに足掻いても
陸は遠ざかっていくの」
結標「段々流れが速くなってきて、疲れ果てて、
半分諦めかけてたときにね。 横にいるはずの友達が
いないことに気づいたの」
結標「周りを探したらその友達はちょっと離れたところにいた
のだけど、私だけが沖に流れていってて、友達は
全然流されていなかったわ」
結標「よく見たら、その子の長い髪がね、すぐそばの……
茂みの木に引っかかってたの」
結標「髪の短い私は何にも引っかからずに沖へ沖へと
流されるだけだったわ」
一方通行「……もォ、いい。 悪ィな……思い出させちまって。
だから髪伸ばしてやがったのか……」グズッ
結標(まあ、嘘なんだけど)
一方通行「俺ぐれェの髪の長さ見ると思い出しちまうって
ことだよな? すまねェ、自分のことしか考えてなかった」
結標「分かって貰えたならそれでいいわ。 でも貴方が本当に
髪伸ばすの嫌なら無理強いしないわよ?」
一方通行「今更何言ってンだ。 伸ばしてやるよ」
結標(キタ!)
一方通行「思い出させちまった侘びだ。 髪くれェ
好きにさせてやンよ。 ちょっとトイレ借りるわ」ズビッ
結標「え? ここでやればいいじゃない」
一方通行「さすがに髪伸びてるとこ見られンのは
恥ずいだろォが!!」
番外個体「何あれ。 第一位が泣きながらトイレに
駆け込んで行ったんだけど」
海原「漏らしたんでしょうか」
チーズ工場(家)
垣根「思いのほか早く帰ってこれたな」ヨイショ
麦野「お姫様になった気分だった」
垣根「そりゃ俺が抱えてるベッドの上で優雅にティータイムしてたら
なあ……。 周りの視線が痛かったわ」
麦野「小腹が空いたわ。 チーズ」
垣根「ん、ちょっとまって。 新作あんだわ」ミニョーン
麦野「何? いろんな種類のチーズ作れるようになったの?」
垣根「種類っつーか……」
麦野「カルボナーラとか?」
垣根「いやそれチーズじゃねえからな。 ほら、出来た」ホレ
麦野「……別にいつもと変わらないじゃない」
垣根「まあ味は変わってねえかもな。 ちょっと裂いてみろよ」
麦野「裂く……?」ミニョニョニョ
麦野「すごい! 綺麗に裂けるわ!」ミニョニョニョ
垣根「裂けるチーズを参考にして作ってみたんだ」
麦野「これ面白いわね!」ミニョニョニョ
垣根「食べるだけじゃつまんねえかなと思ってよ。
次はスライスチーズに挑戦しようと思ってる」
麦野「カマンベールチーズを作って欲しいわ。
私あれ一番嫌いなのよ」
垣根「何で嫌いなのに食うんだよ」
麦野「チーズ製造機から生産されるチーズは食べられるのよ」
垣根「……それって遠まわしに俺のチーズはチーズじゃねえ
って言ってるようなもんだよな」ズーン
麦野「第一位も言ってたじゃない。 『オマエのチーズは
チーズであってチーズじゃねェ』って」
垣根「無駄に似てる!」スゲェ
麦野「それにあれよ。 あんたのチーズはチーズじゃないのよ」
垣根「何回も言うなよちょっとヘコむ」ズーン
麦野「馬鹿ね……ちょっと捉え方変えてみなさいよ」
垣根「どういう意味だ?」
麦野「常識が通用しないとか言って常識で考えちゃってるのね……
少しは頭捻れよレベル5の恥が」ゲシッ
垣根「なんだと……第四位の分際でテメェ……」
麦野「チーズであってチーズじゃないってどういうことだと思う?」
垣根「そりゃ、所詮チーズもどきってことだろうが」
麦野「だからアンタは万年第二位なのよ!」バン
垣根「第四位のお前に言われてもなんとも思わねえけどな!!」バン
麦野「いい? チーズであってチーズじゃないアンタのチーズは、
従来のチーズの価値観をそっくり引っぺがした新種のチーズ
だと思わない?」
垣根「チーズの価値観だと?」
麦野「そうよ。 チーズの常識が通用しないチーズよ」
垣根「!!」
麦野「このチーズは、チーズであり、チーズではない。
これはれっきとしたチーズということなのよ分かった!?」
麦野(どういうことだろ?)
垣根「あ、ああ……こんなことにも気づけなかった俺は
やっぱり万年第二位だな……。 このチーズを極めれば
チーズアレルギーの人や麦野みてえにチーズ嫌いなやつにも
チーズという夢のカケラを渡してやることが出来るかも
しんねえ……」
麦野(なんか納得してるみたいだしいいか)
垣根「よし、もう一方通行になんと言われようとくじけねえ。
俺の最終目標はこの家を本格的にチーズ工場にすることだ!」デーン
麦野(チーズって何だっけ)
美容室
番外個体「ぎゃあ! 白髪貞子!!」バッ
海原(ちょっ、番外個体さんが腕にしがみついて……)アワアワ
一方通行「海原ァァァ!! 番外個体から今すぐ
離れやがれェェェ!!!」ダダダダッ
番外個体「ぎゃああこっち来るなああああ!!」ムギュウウウウウウ
海原(おぅふ……腕に胸がぁあああぁあぁあぁ……)ポワー
結標「ちょっと貞子、暴れてないでさっさと椅子に座ってちょうだい」
一方通行「オマエが伸ばせっつたのにそれはなくねェ!?」
番外個体「ううっ……」グス
一方通行(そォいやこいつホラー系駄目だったなァ……)
海原「天国……」フラフラ
一方通行「クソ海原ァァァァァ!!」グァァァ
番外個体「ぎゃう!」ギュウ
海原「ふぇあああ……」ギュウウウウウ
一方通行(クソったれがァあああァあっァァあ!!!!!!)
結標「ほら、いつまでも貞子でいたい気持ちは
全然わからないけど早く座ってちょうだい」
一方通行「ったくしゃあねェ……! さっさとこの鬱陶しい
髪切ってくれ!!」
結標「どういうのにしよっかなー」パラパラ
一方通行「ン? 何見てンだ?」
結標「ヘアカタログよ」コレ
一方通行「オイこれ女物じゃねェかよ!
こんなふわっふわした髪お断りだからな!?」
結標「さっき好きに髪いじっていいっていったじゃん」
一方通行「あくまで男前提でだよォ!!」
結標「こう、のれんみたいに前髪よけてるのが
シュールで面白いわね。 写メっとこ」ピロリーン
海原「あ、それ自分に送っておいてください」
番外個体「あ、ミサカも」ケロッ
一方通行「切り替え早すぎンだろオマエらァァァ!!」
結標「ホラ、笑いなさいよ」ホレホレ
一方通行「これで満足かあ゛ァ゛ァ!?」ニヤァァァァァァァァアア
番外個体「ぎゃああああ!」ギュッ
海原「おふっ」ムギュ
一方通行(しまったァァァァァ!!)
一方通行「結標ェ!! 早く前髪だけでも切ってくれ!!」
結標「そんなに焦らなくても髪は逃げていかないわよ」ホゾン
一方通行「逃げねェから困ってンだよ見て分かれよ!!」ウガア
結標「貞子の分際で……」ボソッ
一方通行「え!? 何!? 分際って言ったの!?
理不尽にも程があンだろォ!!」
結標「はい前髪切りますよー目に入らないようにしてくださいねー」シャキン
一方通行「ぎゃああああ!! ハサミを目に向けるなァァァ!!」ギャアア
結標「はいちょっきーん」ザクッ
一方通行「えっ」
結標「……あら、眉上ぱっつんになってしまったわ」テヘ
一方通行「何してくれやがンだボケェェェェェ!!!??」
結標「何よ。 失敗しても伸ばせるしいいじゃない」
一方通行「オマエ俺の能力を何だと思ってンだ!?
第一さっきのでほとんどバッテリー使ったわ!」
結標「えっ」
一方通行「えっ!? どうせ伸ばせるしいいや!
みてェな適当な感じで切ったの!?」
結標「うん」
一方通行「うン。 じゃねンだよォォォ!! 人の髪を
何だと思ってンだテメェはァァ!!」
結標「……おもちゃ?」
一方通行「……はァ……。 そォいえば俺の周りはこンなやつ
しか居なかったわ。 うン。 分かってたよ。 うン」
結標「……まあ、私も悪かったしせちゅじつに謝るわ」ペコ
一方通行「」
右脳と左脳が割れた気がした。
切り開かれるその隙間から、何か鋭く尖ったものが頭蓋骨の
内側へ突き出してくる感覚が確かにあった。
脳に割り込んだ何かはあっという間に一方通行を飲み込んでいく。
そして訪れるのは、
一つの暴走。
「ォ」
自身を構成する柱が砕ける音がした。
こうなってしまった彼はもう誰にも止めることは出来ない。
「ォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
噴射。 怒りの象徴。 暴走の象徴。
その一対の黒い噴射は瞬く間に数十メートルも伸び、
店の内装を削り取った。
「結標さん! 逃げてください!」
「ちょっ……なんなのよ一体!?」
「第一位! 落ち着いてよ! ミサカたちが悪かったから!」
外野が騒いでいる。
しかしその声は黒い噴射の轟音にかき消され、
彼の耳に届くことは無かった。
もっとも、届いても無意味だっただろう。
「あ、ァァァァあああああああああ!!!!」
この感情は何だ? 悲しみ? 嫉妬? 怒り?
わからない。
何に対して?
わからない。
この感情はどこに向ければいい?
わからない。
むしゃくしゃする。
何に対して翼を振るうわけでもなく、ただがむしゃらに振り回している。
長く美しい白髪がぐしゃぐしゃに絡まっている。 その隙間から
見えた彼の紅い目には涙が浮かんでいるようにも見えた。
たすけて
誰か
海原光貴、結標淡希、番外個体の三人には、
一方通行がそう言っている気がしてならなかった。
その中で、番外個体が一方通行の元へ近づこうとして、
噴射の勢いで飛ばされたハサミに当たって倒れた。
海原が慌てて腕を掴み自分たちの方へ引き戻すが、
彼女の太ももからは一筋、二筋の血が流れていた。
(あの人を止める方法は無いの? ミサカたちじゃ
歯が立たない。 こんなことでお店がめちゃくちゃになる
なんておかしいよ!)
さらに咆哮が与えられ、店内が黒一色に染められた。
幸いにもこの店は学園都市最先端技術の未元物質コーティングを
採用していたため、能力対策は万全だった。
だが能力とはいえ、未知の力に対しての対策など出来るはずもない。
壁の軋む音が聞こえ、メキメキと亀裂の入った箇所が目立つ。
彼の黒い翼が与えるのは、人の領域を超えた絶望。
もしコーティングが破れ、店を吹き飛ばし、彼が街中へ出てしまえば。
そう考えただけでも恐ろしい。 そして一方通行の心は
再び砕け、二度と取り戻せなくなるかもしれない。
圧倒的な力を前に三人はただ呆然とすることしかできなかった。
しかし誰もが希望を失わなかった。 彼を助けたい。 救いたい。
そういった思いが確かにあった。
そんな彼らの前に、
―――最後の希望が舞い降りる。
それは、10歳前後の少女の形をしていた。
肩まである茶色い髪に、活発そうな顔立ち。
空色のキャミソールの上から男物のぶかぶかのワイシャツを
羽織った服装の『希望』は、店のドアを開けるなり、
少女なりに状況を察したのだろう。
吹き荒れる突風のなか、一生懸命に進み
一方通行の元へとやってきた。
「調整終わったよってミサカはミサカは報告してみる」
彼女は咆哮を続ける一方通行の背中へと近づいていく。
一方通行がゆっくりと振り返る。
ブォ!という音と共に生み出された風圧で内壁が
きしむ音がした。
その場に居た全員が悲劇を想像した。
あの黒い噴射に巻き込まれ、ぐしゃぐしゃになる
光景を思い浮かべた。
だが、
ガキィィィ!という凄まじい音と共に、
黒い翼は打ち止めの目の前で停止する。
「一方通行さん……!」
海原光貴は安堵の声を漏らしていた。
他の二人も同じことを思っているだろう。
彼の自我はまだ完全に崩壊まで至っていない、と。
一方通行の表情が強張っている。
自分の中での葛藤。 打ち止めという少女によって、
押し負けていた自我、理性が呼び戻された証だった。
「ァ……がァァァ!!!!」
何かを振り切るように一方通行は翼を振るった。
その翼の先には打ち止めがいる。
だが決して彼女は動じない。
ガキィィン!と再び打ち止めの手前で翼は停止した。
まるで見えない壁に阻まれているように。
「ミサカはあなたを信じてるのよって
ミサカはミサカは微笑んでみる」
光の世界はまぶしすぎた。
急に暗がりから出た彼の目では、何も見えなかった。
自分がこんなところにいるなんて間違っているんじゃないだろうか、
と考えていた時期もあった。
そんな彼でも今ではこの明るさに目が慣れて来た。
それなのに。
光よりも光だった。
手を伸ばしたかった。
―――目が眩む。
「ああああああァァァァァァァァァ!!!!!!」
彼の咆哮が再び放たれる。
しかしそこにはもう圧倒的な重圧は感じられなかった。
彼女はそれを眺めていた。 次々に振りかざされる攻撃に
対し、目を瞑ることすらしなかった。 信頼があった。
だから彼女は驚かなかった。
一際大きく翼が振りかざされ、渾身の一撃が彼女に
振り下ろされる。
それが彼女の顔の前でピタリと止まった時、
一方通行の動きも止まった。
俯く彼の表情は、長い白髪に隠れて誰にも見えない。
その背中にある一対の翼が、音もなく空気に溶けるように
消えていった。 それと同時に一方通行の体から全ての力が抜けた。
彼女は両手を広げて一方通行を受け止める。
彼の体重に押しつぶされそうになりながらも、彼女は一方通行を
自身の小さな手でしっかりと、それでいて優しく包み込むように抱きとめた。
彼女は一方通行の耳元に口を寄せて、小さな声でこう言った。
「お店……めちゃめちゃになっちゃったね
ってミサカはミサカは眺めてみる」
―――
――
一方通行「……本当に申し訳ございませンでした」ドゲザ
結標「いや、私たちも悪いのよ。 そんなに落ち込まないで?」
番外個体「ミサカも便乗しちゃったし……」
海原「今回ばかりは度が過ぎました。 反省してます」
打ち止め「みんなも悪いけど、お店に八つ当たりしたあなたも
悪いんだからねってミサカはミサカは念を押してみる」ビシ
一方通行「あァ……弁償代は置いていく」
海原「お互い様、ということにしておきましょうか」
一方通行「何か納得行かねェけどなァ」
打ち止め「あなたが納得しないと終わらないの!
ってミサカはミサカは説得してみる」プンプン
ガチャッ
小萌「結標ちゃーん、調子はどうで……ぎゃあああああ!
どうしたのですかこの惨状はああああ!?」ギャアア
結標「あら、小萌? せっかく来てくれたとこ悪いのだけど、
こんな状態だからしばらく営業は休止するわ」
一方通行「あン? いつだかの子供教師じゃねェか」
小萌「結標ちゃん、これは一体何があったのですか……?」
結標「ちょっと派手に散髪してしまっただけよ。 気にしないで」
海原「もしかしてこの方ですか? 結標さんが居候させて
頂いている家屋の主人は」
結標「ええ、そうよ」
一方通行「何だと!?」ガシッ
小萌「ふえぇ!? いきなり何なのですかっ!?」
一方通行「オマエが結標を救ってくれた先輩かァ!!?」ユサユサ
小萌「せ、先輩……? 何のことなのか先生にはさっぱりなのですよ」キョトン
一方通行「とぼけンなァァ!! 会いたかったぜ先輩よォォ!
これからも結標をよろしく頼むぜ!!」パァァ
小萌「よ、よくわからないですけど先生にまかせるのですよ……?」
結標「……?」
海原「すみません自分が余計なことを言ったばかりに……」
一方通行「ひゃっはァ! 先輩に会えて一気にテンション
上がっちまったぜェ……結標ェ! とりあえずこの髪切って
くれねェか!」ヒャッハァァァ
結標「ごめんなさい、ハサミが全部使い物にならなくなっているわ」
一方通行「」
番外個体「まあ、そうなるよね」
海原「家に帰ってから切ったらどうです? バッテリーも
もう無いのでしょう?」
一方通行「……俺は一体ここに何しに来たンだ?」ズーン
結標「テンションが下がってしまったわね」
番外個体「まあ、いいんじゃない? その髪型も似合ってるよ」ギャハ
海原「細身ですし、ボーイッシュな女性に見えなくもないですね」
黄泉川「……そもそも何で一方通行の髪がさらさら
ストレートロングになってるじゃんよ」
芳川「とうとう女装の道に走ってしまったのかしら」
一方通行「!? あれ!? オマエらいつからいた!?」
黄泉川「ついさっきじゃんよ」
芳川「打ち止めを一人で出歩かせるわけがないでしょう?」
打ち止め「二人に送り迎えしてもらったんだよって
ミサカはミサカは今更な報告をしてみる!」
海原「何だか人が増えてきましたね」
結標「とりあえず店の中を片付けたいのだけど……」
一方通行「ハッ! 黄泉川!?」
黄泉川「えっ? どうしたじゃ……うぉっ」ガシッ
一方通行「よくよく考えてみりゃあオマエも先輩じゃねェか!」ユサユサ
黄泉川「は、はあ……? 何のことじゃんよ?」ユサユサ
一方通行「何でこンなに身近にいるのに今まで気づかなかったンだ!
俺を救ってくれてありがとう! 打ち止めと番外個体をよろしく!」
芳川「言葉が支離滅裂だわ」
番外個体「ホームレス関係になるとああなるみたいだね」
海原「最初の頃よりはマシになってると思うのですが
気のせいでしょうかね」
黄泉川「何かその髪型でいると一方通行じゃないみたいじゃん」
一方通行「まァな、いっそのこと変装しちまうかァ?」
結標「なんかまたテンション上がったみたいね」
打ち止め「あっ、ミサカそういえばお買い物したかったんだった!
ってミサカはミサカは前に買えなかったお洋服に未練がある
ことを打ち明かしてみたり」
番外個体「そういえば前にもらったお金まだ使ってなかったね」
一方通行「何だオマエらまだ服買ってなかったのか」
打ち止め「あなたに選んでもらいたいの! って
ミサカはミサカは願望を言ってみたり!」
一方通行「しゃあねェ、今の俺は先輩に会いまくって
気分がイイからなァ! よし今から行くかァ!」
海原「え、一方通行さん? 貴方その格好で買い物行くんですか?」
一方通行「髪が長かろォが短かろォが俺は俺だ。
何か文句あンのかよ」
結標「周りからどんな目で見られるか分からないわよ?」
一方通行「今に始まったことじゃねェだろ」
打ち止め「あ、だったらあなたのお洋服も買って
着替えちゃえばいいんじゃないかなってミサカはミサカは
思いついてみたり!」
一方通行「やっぱり変装ってことだな? 燃えるねェ!
とりあえずキャップ被るだけ被っておくか」
打ち止め「わあ、すごい綺麗……ってミサカはミサカは
ボーイッシュなモデルさんを見ているような気分になってみたり」
番外個体「だったらいっそ服も女物にしちゃおうよ」ギャハ
一方通行「いいねいいねェ最ッ高だねェ!!
それで俺と分かるやつが居たら結婚してやってもイイぜェ!!」
打ち止め「えっ、じゃあミサカが一番に見破る! って
ミサカはミサカはこの人は誰にも譲らないって宣戦布告
してみる!」
黄泉川「思ってたより楽しそうでよかったじゃん」
芳川「あの子が家を飛び出したときはどうなることかと
思っていたけどね」
一方通行「結標ェ! 次来る時はちゃンと散髪しねェと
ただじゃおかねェからなァァ!!」ダダダッ
打ち止め「捨て台詞にしては手抜きすぎるかもって
ミサカはミサカはあなたの後を追いかけてみたり!」マッテー
海原「あれ、一方通行さんお金払いました?」
結標「店の修理代を異常な額置いていったから問題ないわ」
黄泉川の車
黄泉川「で、何で私の車に乗ってるじゃん?」
一方通行「せっかく車で来たなら乗せてくれてもイイだろ」
芳川「後部座席がぎゅうぎゅうじゃないかしら」
打ち止め「ミサカはこの人の膝に乗ってるから狭くないよ!
ってミサカはミサカは現状報告!」
一方通行「人の膝乗ってる時にはしゃぐンじゃありませン」ビシ
打ち止め「いてっ! もーっ、どうしてあなたはいつも
チョップばかりするのってミサカはミサカは文句を言ってみる」
芳川「彼なりの愛情表現よ」
打ち止め「きゃーっ、あなたってばミサカのこと愛してくれてたのね!
ってミサカはミサカはやっぱりこの人はミサカが独占するって
再三にわたって宣戦布告してみたり!」キャッキャッ
一方通行「やれるもンならやってみろ」
海原「中睦まじいですねー」ホノボノ
黄泉川「見てて飽きないじゃんよ」ニコニコ
番外個体(……)
一方通行「……あァ? オマエ脚怪我してンじゃねェか」
番外個体「……別に大したことないよ」プイ
打ち止め「本当だ、太ももが少し切れてるってミサカはミサカは
番外個体を心配してみる」
海原「ああ! 何でもっと早くに自分が気づいてあげられなかった
のでしょうか! と海原は海原は自分を戒めます!!!」アアアア
打ち止め「むっ、その口癖はミサカのアイデンティティーなのにって
ミサカはミサカは敵対意識を燃やしてみる!」
一方通行「そこ、小っせェことで張り合ってンな。 痛むか?」
番外個体「別に。 このミサカはあなたを傷つけることばかり
してきたからそれの罰ってことにしといてよ」
一方通行「いきなり何言ってンだァ? とりあえず止血しとくから
ちょっと大人しくしとけ」カチッ
番外個体「大丈夫だってば!」バッ
一方通行「っ……?」
番外個体「……黄泉川、ちょっと車止めてよ」
黄泉川「どうしたじゃんよ? もうすぐ着く……」
番外個体「いいからっ!」
バタンッ ダダダッ
一方通行「お、おいっ!」
海原「自分が追いかけます」ダダッ
一方通行「待て、俺もいk」ピー バタッ
打ち止め「バッテリーが切れちゃった!
ってミサカはミサカはあわててみる!」アワアワ
芳川「どうしたのかしら……」
黄泉川「悩み事でもあるのかじゃん……?」
打ち止め「今日は買い物無理そうだね……って
ミサカはミサカはしょんぼりしつつ言ってみたり」
芳川「とりあえず彼のバッテリーの充電をしてあげた
ほうがいいんじゃないかしら」
黄泉川「そうじゃんね。 一方通行の家に行くじゃん」
商店街
海原「番外個体さんっ」ガシ
番外個体「……っ!」
海原「どうしたんですか一体?」
番外個体「……海原君には関係ないよ。
このミサカの問題だからさ」
海原「……話したくないことなら無理に聞こうとはしません。
でも周りの皆さんは番外個体さんを心配していますよ」
番外個体「……」
海原「少しカフェにでも行って休憩しませんか?
疲れも溜まっているのでしょう」
カフェ
海原「……悩み事っていうのは一人で抱えるとだんだん
大きくなってしまって持ちきれなくなってしまうものです」
番外個体「……」
海原「一気にとは言いません。 徐々にでいいんです。
他人に持つのを手伝ってもらってはいかがですか?」
海原「一方通行さんならきっと親身に相談に乗ってくれますよ?
彼に言いにくいことなら自分でも構いませんし」
番外個体「……ミサカのは悩み事とかそういう次元の
問題じゃないんだよ。 宿命って言ってもいいくらい」
海原「……宿命、ですか」
番外個体「上位個体と第一位見てるとさ、イライラするんだよね」
海原「上位個体……打ち止めさんのことでしょうか」
番外個体「うん。 このミサカは一方通行を抹[ピーーー]るためだけに
作られた個体でさ。 悪意ばっかりが表にでるようにチューニングされてる」
海原「なんとなく一方通行さんから聞いたことはありますね」
番外個体「そんなミサカをさ、あの人は救ってくれたんだよ。
それで、これからも護ってやるって言ってくれた」
番外個体「悪意ばっかり出るって言ってもさ、やっぱ嬉しいよ。
ミサカの存在価値丸ごと引っぺがして新しい人生をくれたんだもん」
海原「一方通行さんはああ見えて根は優しいですからね……」
番外個体「今の生活があるのは全部あの人のお陰なのに、
それなのにミサカは何様なんだろうね? あの人のこと罵倒してばかり。
さっきだって素直にありがとうって言えばよかったのに。
それに、ちびっこが見るといつも思っちゃうんだよね」
番外個体「何であのミサカとこのミサカはこんなに違うんだろうって。
あのミサカは素直なのになんでこのミサカはひねくれてるのって」
海原「……何言ってるんですか。 番外個体さんと打ち止めさんは
違う人間なんですから、違ってあたりまえですよ」
番外個体「人間かあ……ミサカも普通の人間だったらこんなに
悪意まみれにならなくて済んだのかな……」
海原「思ったんですけど、番外個体さんが思ってるほと貴方は
悪意にまみれてないですよ? 今だってそうじゃないですか」
番外個体「今はね。 対一方通行用に製造されたミサカは
一方通行にしか悪意を抽出しないから」
海原「でも一方通行さんに感謝してるんですよね?」
番外個体「……」
海原「なら、それでいいじゃないですか」ニコ
番外個体「どういうこと?」
海原「別に無理しなくても、今までどおりでいいってことですよ」
番外個体「今までどおりって……そしたらミサカはいつかあの人に
嫌われちゃうかもしれないんだよ」
海原「一方通行さんはそんな人じゃないですよ。
番外個体さんも知ってるはずですよ」
海原「番外個体さんのそういう所を全て知った上で、
貴方を護ると言っているのでしょうし。 言葉にしなくても
一方通行さんには伝わっていると思いますけどね」
番外個体「そうかな……」
海原「言葉にするのは徐々に頑張ればいいんです。
悩むだけ時間の無駄ですよ」
番外個体「……ぶっちゃけ、上位個体が羨ましいんだよ。
ミサカはあの子みたいにはなれないからさ」
海原「確かになれないかもしれないですね。 でもそれが
マイナスになるなんて誰も言ってませんよ?
打ち止めさんには打ち止めさんの良さ、番外個体さんには
番外個体さんの良さがあるんですから」
番外個体「……ふふ」
番外個体「……なーんか馬鹿らしくなってきちゃった!
ミサカらしくなーい! 忘れて忘れて!」
海原「……」
番外個体「あーあ、帰ったら何て言い訳しよっかなー。
もーめんどくさいのミサカだいっキライなんだけど」
海原「いつもの番外個体さんですね」ニコ
番外個体「む、忘れてって言ったのに忘れてないな!」ベシッ
海原「いてっ」
番外個体「きゃは☆ ……でもありがとうね。 なんか
気持ち楽になったよ。 いつかあの人にありがとうって
言ってみせるから!」
海原「自分でよければ手伝いますよ」
番外個体「何言ってんの、問答無用で手伝わせるよ?
ミサカの相談に乗ったからには途中下車は認めないから」ギャハ
チーズ工場(家)
垣根「ひーーーっひーーっふぅぅぅううううう」ゲラゲラゲラ
打ち止め「カキネ笑い過ぎかもってミサカはミサカは
指摘してみる!!」ビシ
垣根「だって! こいつ! 白髪ストレートロング!
おまけにぱっつん!! どこぞの清楚なお嬢様目指してんのかよ
ってかんじだわ!! ひーーっ」ゲラゲラ
麦野「やばいわよ、これもう過呼吸の域入りかけてる」
一方通行「……」グデーン
垣根「お ん な の こ か よ っ !!!」ゲラゲラゲラゲラゲラ
ガチャ
番外個体「た、ただいまー……」オソルオソル
麦野「あ、おかえり」
打ち止め「あーっ! 一体どこ言ってたのって
ミサカはミサカは言及してみたり! ネットワークも
繋がってないから心配したんだから!」ポカポカ
番外個体「ごめんごめん、ちょっと用事があったんだよ」
海原「そうなんですよ、すっかり忘れてたみたいで」
打ち止め「むー、用事があったなんてしらなかったし、
お買い物がまた延期になったし……ってミサカはミサカは
ぶーたれてみる」ブー
海原「買い物なら明日改めてみんなで行きましょう」ニコ
打ち止め「ほんと!? わーいってミサカはミサカは
大はしゃぎ!!」ワーイ
番外個体「あれ、黄泉川たちは?」
打ち止め「帰ったよ! ってかてか! 今日はここに
お泊りしてもいいって! ってミサカはミサカはテンションが
急上昇!!」
海原「なっ、ダブルミサカがお泊り……ですって!?」
麦野「またセクハラまがいのこと考えてるんじゃ……」
海原「まさか。 自分は紳士です」
番外個体「時と場合により変態だけど」
海原「大丈夫ですよ、番外個体さんに対しては
いつでもどこでも紳士で居ると誓えます」キリッ
番外個体「そこらへんが既に変態だよね。
まあ嫌いじゃないけどさ」
麦野「えっ」
垣根「えっ?」
一方通行「えっ!?」ガバッ
垣根「ちょ、お前髪の毛食ってるぞ! ひーっ」ケラケラ
一方通行「ンァ!? ったく鬱陶しい毛だなァ……
っつか番外個体今なんつった」
番外個体「何が?」
一方通行(聞き間違いじゃなけりゃ、海原のこと
嫌いじゃねェって言ったよな……)
海原「もう自分幸せすぎて言葉が出ないっす」ジーン
一方通行「番外個体……オマエどォしちまったンだ」
番外個体「えー? また嫉妬? 第一位ってば
ねちっこーい☆ ぎゃは」ハッ
番外個体(……またやっちゃった)
―――
――
洗面所
垣根「何切ろうとしてんだよ」
一方通行「何って……髪だけど……」
垣根「何で切るんだよ」
一方通行「邪魔だから……?」
垣根「そんなこと許されねえぞ」
一方通行「何故……?」
垣根「聞いた話だとお前、女装に賛成したらしい
じゃねえか?」
一方通行「……酔った勢いみてェなもンだ。
当てにすンな」
垣根「明日みんなで服買いに行くらしいじゃねえか」
一方通行「だから何だよ」
垣根「優勝者からの最後の罰ゲーム」
垣根「明日まで髪切るな、ついでに女装しよう!」デーン
一方通行「」
リビング
海原「結局髪切らないんですね」
一方通行「罰ゲーム発動されちまった……」
海原「そういえば麦野さんが見当たりませんけど」
一方通行「あァ、第四位なら風呂入ってたわ」
垣根「お前今日シャンプー大変そうだな」ケラケラ
一方通行「こンな長ェ髪シャンプーしたことねェンだけど……」
打ち止め「じゃあミサカがお背中お流しいたしましょうか?
ってミサカはミサカはあなたの背中に突撃―っ!」ドーン
一方通行「うおォっ!? クソガキ! もォ夜なンだから
声のトーン押さえやがれェェェ!!」
垣根「お前も大概うるせえよ!!」
海原「貴方もうるさいですよ」
一方通行「オマエもうるせェ!!」
海原「自分はうるさくないと思うんですけど」
一方通行「オマエは存在がうるせェンだよ!!」ウガア
海原(どういうこと)
ガンッガンッドンッ
垣根「おいまた隣の家から石飛んで来てんぞ!」
一方通行「何で隣のやつも毎晩毎晩人ン家に石
ぶつけてくンだよ!?」
番外個体「ちょっとうるさいよ? 何時だと思ってるのさ」
一方通行「事の発端は全部垣根だ!」
垣根「え!? 絶対俺じゃないよね!? ねえ!?」
打ち止め「カ、カキネが発端だよってミサカはミサカは
責任転嫁してみたり……」
垣根「最後の希望が寝返ったああああああ!!」
一方通行「寝返ったも何も最初からオマエに付いてねンだよ!」
垣根「このロリコンが!!」バンッ
一方通行「ンだとこのメルヘンチーズが!!」バンッ
垣根「何その呼び名素敵」
一方通行「えっ」
海原「意外にも気に入られちゃいましたね」
ガンッガンッガンッドガガガドンッ
打ち止め「隣の家からの石の音が尋常じゃなくなってるかもって
ミサカはミサカは小声で注意を呼びかけてみる」
一方通行「よォしここまで来たら上等だかかってこいよ
隣の誰かさンよォォ!!」ゴォォ
垣根「コイツ……戦う気だ!!」
打ち止め「何馬鹿なこと言ってるの! 静かにすれば
済む話でしょってミサカはミサカは冷静に注意してみる」
番外個体「ちびっこがすごくかっこよく見えるよ」
海原「さすが打ち止めさんですね」
一方通行「オラァ隣人!!! 石ぶつけるくれェなら
正面からかかってこいよコラァァァァ!!!」ウォォォ
垣根「ちょ、お前さすがに窓開けて叫ぶのは……」
<ピーンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
垣根「やべえまじで押しかけてきやがった!!」
一方通行「上等だァァ!! 直々にチーズ工場の家主が
出迎えてやンよォォォ!!」
ガチャ
木原「毎晩毎晩うっせええええんだよおおおおおぉぉぉ!!!!!」
一方通行「」
木原「っつーか夜に限らず一日中この家うっせえんだよ!!!」
一方通行「き、木原くン……何で生きてンだ……」
垣根「何だ? こいつお前の知り合いかよ?」
木原「ああ!? 知るかこんな女!!」
垣根「ぶっ」
一方通行「えっ」
垣根(お前……普段着でも十分女装できてんじゃねえか)コソコソ
一方通行(嘘だろ……)
木原「お前の女かコイツ!? なら吠えねえように
調教しとけよこのクソ猿が!!」
垣根「んだと!? っつーか誰がコイツの彼s」ムグゥ
一方通行(ちょっとオマエ黙ってろ)コソコソ
一方通行「あーあー、ン」←声色調整
一方通行「うるさくしてごめンなさい。 今から気をつけるから、
許してもらえねェですか?」←精一杯の女声+上目遣い
垣根(!?)ゾワ
木原「……なんだコイツいきなり」
一方通行「ほら、ていとくも謝って。 オマエも騒いでたでしょ」グイ
垣根「さっ……触るなああああああ」ゾワワワワワ
一方通行(いいから合わせろよめんどくせェ!!)コソコソ
一方通行「ていとくったら照れやがって可愛いンだから」ギュッ←腕に抱きつく
垣根(あぎゃあああああああ!!!!!)ゾワーーーーーーーッ
木原「おいおい何だよこの状況は!? 人が殴りこみに
来てやってるってのに目の前でいちゃいちゃしやがって!!」
垣根「俺だって意味わかんねえんだよおおお!!」
木原「だからうるせえっつってんだろがああああ!!!!!!!」ウガァァ
一方通行「全員うっせェンですよォォォ!!!!!!!」
木原「何なんだよコイツ!? さっきからキャラが定まってねえぞ!?」
垣根「いいかげん離れてくれえええええ!!」
一方通行「だからうるせェって言ってるでしょ!! ていとくも
反省してるし、今日は帰ってくれねェですか」シッシッ
木原「くっそこのアマ誰かに似てる! すんげえムカつく!!」
リビング
打ち止め「なんか玄関がすごく騒がしいけどって
ミサカはミサカは気になってみたり」ソワソワ
番外個体「隣に住んでる人ってどんな人なんだろ?
あの人のことだし近所付き合いなんてできないだろうね」
打ち止め「ちょっと覗いてきてもいいかなって
ミサカはミサカは気になりすぎてやばいぜ」ソワソワ
海原「打ち止めさんのアイデンティティーが崩壊しつつある……」
番外個体「どんだけ気になってんのさ」
打ち止め「あの人が他人と会話してるのを見ると
ミサカはすごく嬉しい気分になるのって
ミサカはミサカは親心的な何かを語ってみたり」
海原「いいお母さんになれそうですね」
打ち止め「見てきていいのね! やったあ!
ってミサカはミサカはドアをちょっとあけて覗いてみたり」ソローッ
海原「あれ、会話が一方通行」
番外個体「寒いね」ギャハ
<テイトクッタラテレヤガッテカワイインダカラ
<オイオイナンダヨコノジョウキョウハ!!
打ち止め「」
海原「? どうしたんですか?」
打ち止め「……なんか見てはいけないようなものを
見てしまった気がするってミサカはミサカは
激しく後悔してみたり……」
番外個体「なにそれ、超気になるじゃん。 見てくる」
海原「自分も気になるんですが」
打ち止め「ミサカはあんな風に育てた覚えは微塵も
ないのよってミサカはミサカは……ぐすっ」
玄関
木原(今ドアから覗いてたガキ……いやまさかな)
一方通行「ってことでェ、私たちこれからオタノシミなンでェ、
とっととお引取りくださいなァ」シッシ
垣根「恐ろしいこと言うんじゃねえよおおお!!!」ウワァァ
一方通行(嘘に決まってンだろオマエは馬鹿か!?)コソコソ
木原「はいはい。 お前ら見てたらなんか気分萎えちまったわ。
せいぜい叫ばねぇように楽……」
<ドンガラガッシャーン!!!!!
一方通行「あ……?」
海原「いてて……番外個体さんが身を乗り出しすぎるから
こうなったんですよ」
番外個体「だって見えなかったんだもん」ムクッ
垣根「お前ら何して……」←一方通行に抱きつかれてる
海原「」
番外個体「」
一方通行「!!!!」バッッッ
垣根「いや、待て誤解だ! これはワナだ!!!」アワアワ
打ち止め「だから後悔するって言ったのに……」
海原「お二人にそんな気があったなんて……」
番外個体「こ、これは予想外……」ハハハ
木原「……何だ? 修羅場か?」
垣根「誤解だあああ!! 一方通行がいきなり
抱きついてきやがっただけなんだよ! 俺は白だ!
潔白なんだよ信じてくれ!!」
一方通行「俺に異常があるみてェな言い方すンなよ
余計にに誤解されンだろォが!!」
打ち止め「でも変な喋り方してたのをミサカは
聞いてしまったのってミサカはミサカは
事実を突きつけてみる」
一方通行「しょうがなかったンだよ!! 木原のクソ野郎が
さっさと帰らねェからこンな暴挙に出るしか……」
木原「一方通行……?」
一方通行「あァ!?」クルッ
木原「……」
一方通行「……あ」
―――
――
リビング
木原「どおりでムカつくと思ったぜ!」
一方通行「何でオマエ普通に上がって来てンの?」
打ち止め「まあまあいいじゃないって
ミサカはミサカはなだめてみる」
木原「ちょっと見ねぇうちに少しでかくなったな?」ヨシヨシ
打ち止め「あれ、ミサカはあなたと初対面じゃないの?
ってミサカはミサカは記憶をさかのぼってみる」
一方通行「ああ、そォいやあン時はオマエ終始
気絶してたから直接の面識はねェのか」
海原「気絶!? 打ち止めさんを気絶させるなんて
貴方は何をしているんですか!?」ウガァ
一方通行「あれはしょうがなかったンだよ!!」
打ち止め「ミサカが気絶してる間に何があったんだろう?
ってミサカはミサカは気になってやばいぜ」
木原「懐かしいな。 あん時は一方通行と俺が
打ち止めの親権を巡って壮大な戦いを繰り広げたんだったか」
一方通行「はァ!? ……いやざっくり間違ってはいねェけど!」
垣根「親権って……お前らどういう関係なんだよ」
木原「嫁と姑みてえな?」
垣根「よくわかんねえ」
海原「今打ち止めさんがここにいるってことは
親権を勝ち取ったのは一方通行さんですか」
一方通行「もォそれでいいわ。 っつか木原オマエ
何で生きてンだよ? あン時確か空で燃え尽きたよな?」
木原「いやあ、気が付いたら隣の家にいてよ。
多分根性で乗り切ったんじゃねえかな」ウン
番外個体「根性でどうにかなるって科学者としてどうなの……」
木原「科学者の癖に科学を否定するたあ何たる科学者だよさすが俺」
一方通行「俺の知ってる木原くンじゃねェ」
木原「いやーそれにしても一方通行は女の子になっちゃったかー」
一同「「「「えっ」」」」
木原「えっ?」
一方通行「ちょっとオマエよく俺を見ろ」
木原「俺に体を見て欲しいのか?」
一方通行「違ェ!! どォ見ても俺は男だろォが!!」
木原「え、だってさっきコイツのこと『ていとく可愛い』とか
言ってたじゃねえか? 付き合ってんだろ?」
一方通行・垣根「「んなわけあるかあああああああああ!!!!!」」
木原「じゃあそれは女装なのかよ? そういう趣味が?」
一方通行「これは罰ゲームなンだよ! クソ垣根のせいで
めんどくせェことになっちまったじゃねェか」
垣根「お前が変な芝居すっからだろーが!!」
木原「何だよてっきり股間を工事しちまったのかと思ったぜ」ムギュ
一方通行「ンあっ!?」ビクゥ
番外個体「」
海原「」
垣根「」
打ち止め「」
木原「……マジで付いてるもん付いてんな」
垣根「なんつー声出してんだ……」ゾワ
海原「やはりそっちの気があるのでは……」
番外個体「はいはいちびっこはミサカとあっちの
お部屋でテレビ見ようかー」
打ち止め「ミ、ミサカはミサカは何も見てないよ
聞いてないよー!」←目隠しされてる
一方通行「誤解だあああああ!!! うわァああああああン!!」ビェェェ
―――
――
木原「じゃ、俺帰るわ。 これお土産な」ホレ
一方通行「何で漬物石……?」
木原「いや、最初マジでこの家に特大の石ぶつけて
やろうと思っててよ。 使わなかったからやるよ」
一方通行「別にいらねェけどな」
垣根「帰ったか」
一方通行「嵐のような時間だった……」グッタリ
打ち止め「ミサカはどんなあなたでも大好きだからね
ってミサカはミサカは元気付けてみる」ヨシヨシ
一方通行「誤解だからな……俺はいたってノーマルだからな……?」
番外個体「さっきのあなたの声でミサカ、いろんな所が
勃っちゃったよ☆」ギャハ
海原「じゃ、じゃあ自分も真似して番外個体さんを……!」
番外個体「ちょっ、そういう意味で言ってるんじゃないって!
嫌味だよ嫌味!!」アワワ
一方通行「……」グデーン
海原「いつもならつっかかってくるばずなのに……」
番外個体「相当疲れてるんだろうね」
垣根「あ、麦野お前いつからそこいたんだよ?」
麦野「……」
番外個体「何だ、お風呂上がってたの? しゃ、次
ミサカとちびっこで入ってきていいかな」
一方通行「とっとと入れ」
垣根「……? どうした? ボーっとして。
のぼせたのかよ?」
麦野「……かっこいい」ボソ
一方通行「あン?」
麦野「あの人かっこいい……」ポー
一同「「「「!?」」」」
一方通行「えっ、マジで言ってンの??」
麦野「ねえ今の人誰なの?」
垣根「麦野が恋に落ちた……だと!?」
麦野「さっきの人誰なの? どこの人?」
打ち止め「一目惚れってやつかなって
ミサカはミサカは推測してみたり」
海原「一目惚れと言えば、そんなお米の品種が
ありましたよね」
番外個体「何それミサカ知らない」
垣根「学園都市の外にある品種だからな」
一方通行「ああ、海原はもともと外に住んでたンだったか」
海原「なんだ、皆さん外の情報とかはあまり知らないんですね」
打ち止め「ミサカは学園都市から出たことがないからね
ってミサカはミサカは外に夢を抱いてみる」
番外個体「でも他のミサカは外にいるのもいるし、
ネットワークで調べれば一発だと思うよ」
麦野「ねえ」
打ち止め「そっか! ってミサカはミサカは早速
ひとめぼれをネットワークで検索してみる」
垣根「それって便利だよな」
一方通行「俺も一応ネットワークに繋がってンだぜ」
海原「なんと!? ミサカさんたちとそこまでして
繋がりを持ちたいんですか!!」
一方通行「違ェよ! 違わないけど! 繋がってねェと
廃人状態になンのオマエ知ってンだろ!」
麦野「テメェら無視決め込んでんじゃねぇぞコラァァァァァアアアアア!!」
――翌日
セブンスミスト
打ち止め「やっとお洋服が買える! ってミサカはミサカは
歓喜の声をあげてみる!」
海原「好きなだけ買っていいですからね」
一方通行「俺の金だ俺の」
垣根「家主が固いこと言ってんじゃねえよ」
木原「俺はお前をそんなケチな子に育てた覚えはねぇ」
麦野「どうせ金持ってんだしいいじゃない」
垣根「そーだそーだ!」
一方通行「たった一言でそんなに責めることなくねェ!?」
海原「言葉は選んで発言してください」
番外個体「ねえ早く買い物したいんだけど」
垣根「そうだな、さっさと一方通行を女の子に仕立ててやんねぇと」
木原「あの店とかふわふわした服あっていいんじゃねえか?」
垣根「おお、いかにも女の子って感じがすんな」
海原「目つきの悪さがネックですけど……」
一方通行「……なあ」
木原「あ? どうした」
一方通行「いや、どうしたじゃなくてさァ。
なんでナチュラルに混ざってンの?」
木原「細けえこと気にすっとハゲるぞ?」
一方通行「科学者が迷信語ってどォすンだよ」
木原「科学者のくせに科学を否定するたあ何たる科学者だよさすが俺」バンッ
一方通行「そォですねェカッコいいですねェ」
木原「そんなお前は可愛いぜ」
一方通行「嬉しくねェよ。 って話逸らしてンじゃねェよ!」
木原「こいつに呼ばれたんだよ」
麦野「私が呼んだのよ」
一方通行「麦野オマエ行動力ありすぎだろ……」
麦野「思い立ったら即行動。 常識でしょ?
昨日あんた達全員私のことスルーしまくったから
自分で住所突き止めたわよ。 隣だったけど」
一方通行「女って怖ェ」
番外個体(肉食系女子、か……)
海原「ストーカーになれますね」
一方通行「オマエが言うと褒めてるようにしか
聞こえねェのは何でなンだろォな」
海原「その言い分だとまるで自分がストーカー
極めてるみたいじゃないですか」
一方通行「傍から見りゃ極めてンだよ」
打ち止め「ねえねえ早く着せ替え人形しようよ!
ってミサカはミサカはあなたの袖を引っ張ってみたり」グイグイ
一方通行「あァ? 着せ替え人形ってもしかして
俺のことか、俺のことだよな? 俺をおもちゃにするたァ
いい度胸してンじゃねェかクソガキ!!」
垣根「よし一方通行。 お前は今から着せ替え人形だ。
リカちゃんを見習えよ」
打ち止め「ミサカはおうちで着せ替え人形で遊んでるから
この中で一番あなたの服を着せ替えする才能に長けてると思うの!
ってミサカはミサカは自己の優秀性をアピールしてみる」エッヘン
番外個体「ミサカもファッション誌読んだりしてるし、
服のセンスはあると思うんだけど」
麦野「あ、服のセンスなら第二位も馬鹿に出来ないわよ。
前に私の服勝手にコーディネートしてたけど普通にセンスあったわ」
垣根「聞いたか!? 俺のファッションセンスは第四位公認だ!」
一方通行「オイオイ俺の話スルーか!? 着せ替え人形なンざ
ごめンだからな!?」
垣根「一方通行。 罰ゲームだってこと忘れてねェか?」
一方通行「罰ゲームは着せ替え人形になることじゃなかったはずだろ……」
垣根「優勝者の言葉は絶対っていう暗黙のルールがあるだろ?
つまり……そういうことだ」
一方通行「知らねェよそンなルール!」
木原「ファッションセンスなら俺も結構あっと思うぜ」フフン
一方通行「フフン、じゃねェよ! 木原くンの服見て育って来たから
俺にもセンスが移っちまったンだよ! つまりセンスは皆無だ!」
木原「俺の真似してるとか可愛いなお前。 ムカつくけど」ヨシヨシ
一方通行「頼むから会話してくれ会話」
―――
――
番外個体「ミサカそこのお店に入りたいなー」
一方通行「オマエ……そんな露出度高い服着てどォすンだよ」
番外個体「そりゃもちろんあなたを悩殺するために決まってるよ」
一方通行「残念だったな、もっと上品な服じゃねェと
悩殺されねェンだわ」
番外個体「ねえちょっとくらいいいじゃん、着てみたいんだよ」グイグイ
打ち止め「ミサカも付いていく! ってミサカはミサカは
大人っぽい服を着てみたかったり」
一方通行「ガキはガキらしい服着てろ」
打ち止め「むー、そうやっていつも子供扱いするんだから
ってミサカはミサカは文句を言ってみる」ブー
一方通行「そもそもサイズが合わねェだろ。 あっちの店はどうだ?
マセガキにゃぴったりな服だらけだぞ」
打ち止め「おおおーー!! 子供っぽくない! かといって
背伸びしすぎたデザインでもない服がたくさんある!
ってミサカはミサカは一目散に駆け出してみる!」ダダダッ
一方通行「おいコラ一人で突っ走ンな迷子になンだろ!
ったく……、ここからしばらく別行動な。
俺はクソガキに付いてっから各々好きなとこ行け」
垣根「何だよ、みんなで着せ替えすんのが面白いのに」
一方通行「後でいいだろ……。 何かあったら携帯で呼べ」
木原「すっかり親御さんになっちゃって……」ホロリ
番外個体「ちぇー、ミサカと一緒に露出高い服着て
貰いたかったのになー」
海原「番外個体さん、入らないんですか?」
番外個体「え? 何が?」
海原「このお店入りたかったのでしょう?
自分がご一緒しますよ」ニコ
番外個体「え、あ……んじゃ付き合ってもらおうかな」
麦野「あ、木原さん。 よかったら私の服選んで
くれないかしら?」
木原「ああ? いいけどあのガキが言うには俺には
服のセンスがねぇらしいぞ?」
麦野「別にセンスなんて関係ないわ。
木原さんに選んでもらいたいのよ」
木原「そうか? モノトーンの矢印Tシャツとか
選んじまうかもしんねぇけど」
麦野(それはさすがに嫌だわ……)
麦野「ま、とにかく私の買い物に付き合って。
あの店行くわよ」グイッ
木原(さりげなく俺のセンスを敬遠しやがって……)シュン
木原「……ってオイ!? そこ下着売り場!! ちょ、え!? マジ!?」グイグイ
垣根「……やべえ、ハブられた」
海原サイド
海原「番外個体さんは何着ても似合いますね」ウットリ
番外個体「でしょ? ミサカって何気にナイスバディだからね」
海原「自分、悩殺されました」ズキューン
番外個体「海原君を悩殺しても面白くないんだけど」
海原「まあ、常に番外個体さんの一挙一動に悩殺されてるので」ズキューン
番外個体「よく疲れないよね。 逆に尊敬するよ」
海原「番外個体さんに尊敬されるなんて自分には1000世紀
早いです。 自分なんてゴミです。 ほこりですから」
番外個体「海原君の中のミサカって一体なんなんだろう……」
海原「そりゃもちろん、崇拝すべき対象ですよ」
番外個体「意味も分からず崇拝されるこっちの気持ちを考えればいいのに」
海原「次こっちの服着てみてくれませんか?」
番外個体「あれ、崇拝してる割には着せ替え人形にされてる」
海原「ちょっとこの網タイツ履いてもらえません?」ワキワキ
番外個体「絶対崇拝してないよねこれ」
海原「あ、なんなら自分が着せてさしあげましょうか!?」
番外個体「ちょ、何言ってんの変態! ミサコン!
自分で着替えるもんそれ貸して!」
海原「おうふ、番外個体さんに罵られた……」
番外個体(もうこの人どうにかして欲しいよー)
海原「着替えましたか?」
番外個体「え、まっ、まだに決まってるじゃんちょっと
開けようとしないでよ!」アワアワ
海原「そろそろ自重するべきかもしれませんね」
番外個体「存在を自重してくれないかな……」
海原「遠まわしに死ねと?」
番外個体「その変態の人格だけは滅して欲しいね」
海原「これは自分のアイデンティティーなので」
番外個体「もっと他のとこで個性出しなよ……。
はい、着替えたけどどう?」バッ
海原「セクシーすぎてもう鼻血出そうです」ブハ
番外個体「もっと他の言い回しはないわけ?」
海原「この姿の番外個体さんを独り占めしてる自分が憎い!」
番外個体「なんか海原君に慣れてるミサかが恐ろしいや」
海原「慣れてもらえて嬉しい限りですけどね」
番外個体「もうちょっと普通にしてればいいのに……」ボソ
海原「十分普通なんですけど……」
番外個体「全然普通じゃないからね」
麦野サイド
木原「オイこの小娘、男を強引に女物の下着売り場に連れ込むとか
頭おかしいんじゃねぇのか!?」
麦野「小娘じゃない、し・ず・り!」
木原「麦野、お前頭おかしい」
麦野「名前で呼んでくれないのね……」
木原「お前なぁ、こういう場所には女友達か彼氏と来いや。
俺みてぇなおっさんは場違いにも程があんだよ……」
麦野「え、木原さん全然若いじゃないの」
木原「えっ」
麦野「全然おっさんじゃないわよ。 私の方が年上に
見られてしまうかもしれないくらいだし」
木原「お、おう……」
木原(いつも老けて見られてんのかな……可哀相に)
麦野「さ、どの下着にしようかなー♪ あ、
この下着とかどう?」ヒラッ
木原「だからって俺が選ぶわけねえだろうが!!」ダッ
麦野「あっ、ちょっと待ってよ!」
麦野(さすがに初っ端から下着はハードルが高すぎたわね)
上品な店
木原「こういうな? 上品な服の方が可愛く見られるもんだぞ?」
麦野「露出多いほうが興奮しない?」
木原「まあ、着こなし方にも寄るけどよ……」
麦野「パンモロよりもパンチラのほうがいいのかしら?」
木原「俺は断然パンチラだな。 パンツが見たいんじゃねぇ、
パンチラが見たい……って何の話だよ!?」
麦野「なるほど、パンチラが見たい、っと……」メモメモ
木原「待て待て、お前は俺に何を求めてんだ」
麦野「愛……かな」テレ
木原(こりゃ癖のある女に引っかかっちまったな……)
麦野「結論は、上品な服でパンチラ、でいいかしら?」
木原「よくねぇよ! 意図的にパンチラかましてる時点で
上品でもなんでもねえよ!」
麦野「大丈夫よ、自然に見せれば問題ないわ」
木原「見せる見せないの話じゃねえんだよ!」
麦野「冗談よ。 私は自分を安売りしないから安心して」
木原「冗談に聞こえなかったぞ……」
麦野「ねえ、どんな服が私に似合うと思うかしら?」
木原「うーん……さっきも言ったけど俺センスねぇからな……
女物とか更にわかんねえよ」
麦野「じゃあ、私に来て欲しい服を選んでみてくれない?」
木原「着て欲しい服か……あれだな、ゆったりしたやつだな
そのほうが動きやすいだろ?」
麦野(動きやすさ重視って……)
木原「まあ、動きやすさで言ったらジャージがダントツなんだけど、
それはさすがにねぇだろ? だと……これとかどうだ」
麦野「ドルマンTシャツね……結構いい線行ってるんじゃないかしら」
木原「お、そうか? 調子出てきたぞ。 下はロングスカートとかどうだ?
下着見えにくくていいと思うぜ」
麦野(やっぱりセンスないわ)
麦野「利便性じゃなくてファッションを第一に考えてみて」
木原「俺はこれでも十分いい線行ってると思う」
麦野「……ドルマンだけ買うわ」
一方通行サイド
打ち止め「どう? ってミサカはミサカは感想を求めてみる」
一方通行「ン、いいんじゃね?」
打ち止め「もう、さっきから何着てもそれしか言わないじゃない
ってミサカはミサカはあなたの適当さを指摘してみる」
一方通行「ガキは何着たって変わらねェンだよ」
打ち止め「むきーっ! そんなにばっさり言うことないじゃん!
ってミサカはミサカは心の中でグレてみる」
一方通行「欲しいのあンならさっさと買え。 オマエのせいで
別行動する羽目になったンだからな」
打ち止め「うう……それは言い返せないって
ミサカはミサカは反省してみる」グス
一方通行「そこまで責めてねェよ……ったく」ナデナデ
打ち止め「!」
一方通行「……あン?」
打ち止め「あ……あなたになでなでしてもらえるなんて
今日はいいことありそうな予感! あ! なでなでされたのが
既にいいことだった! ってミサカはミサカははしゃいでみる!」ワー
一方通行「やっぱガキだな……」ハァ
打ち止め「あ、そういえば番外個体が海原お兄ちゃんと一緒に
行動してたみたいだけど放っといてよかったの?
ってミサカはミサカは聞いてみる」
一方通行「あ! ……まァいいか。 あれだ、あまり俺が
アイツの人間関係に干渉すンのも悪いだろ」
打ち止め「ちょっと見ない間に心が広くなったのねって
ミサカはミサカは感動してみる」
一方通行「オマエ変なとこガキっぽくねェよな」
打ち止め「ミサカはガキじゃないんだから!
ってミサカはミサカは再三にわたって忠告してみる」
一方通行(っつってもやっぱ海原と二人は危険すぎるよなァ……
よりによって海原って。 垣根あたりと行動してれば……いや、
それはそれでムカつくな。 俺が引っ張ってくりゃよかった話か)ブツブツ
打ち止め「何ブツブツ言ってるの? ってミサカはミサカは
問いかけてみたり」
一方通行「ン、あァ……ちょっと考え事だ。
それより買うもン決まったのか?」
打ち止め「うん、このスカートが欲しいなって
ミサカはミサカは広げてみる!」ヒラ
一方通行「それだけでいいのかよ?」
打ち止め「うん、これだけで十分だよって
ミサカはミサカは言ってみる」ニコ
一方通行「欲のねェガキだなァ……。 ま、いいことかァ?」
打ち止め「でね、あなたに前もらったお金、全部番外個体が
持ってるんだけど……ってミサカはミサカは今手元に
お金が無いことを明かしてみる」
一方通行「ンなの関係ねェだろ、俺が買ってやるっつってン
だからよ。 あっちはあっちで勝手に買ってンだろ」
打ち止め「買ってもらってばっかりでごめんねって
ミサカはミサカは謝ってみる」
一方通行「ガキはガキらしく買ってもらってればいいンだよ。
自分で買いてェなら手伝いでもして駄賃貯めてるンだな」
打ち止め「あなたに言われなくても既に実行中なんだから
ってミサカはミサカは日ごろの黄泉川の手伝いを振り返ってみる」
一方通行「ほら、それ寄越せ。 さっさと買って
番外個体と合流すンぞ」
打ち止め「なんだ、やっぱり気になってるんじゃないって
ミサカはミサカはにやけてみる」ニヤニヤ
一方通行「どォいう意味のにやけ顔だそれ」
打ち止め「二人とも素直じゃないんだからって
ミサカはミサカはまたまたにやけてみる」ヒュー
一方通行「何なンだよオマエ……」
垣根サイド
垣根(何なんだよいい感じにペア作りやがって……
奇数なんだから絶対誰かあぶれるに決まってんじゃねえか)ブツブツ
垣根「あー暇くせえ、することねぇ。 一方通行を着せ替えるために
ここに来たようなもんだったからなあ!」
インデックス「公共の場では静かにすべきかも!」クワッ
垣根「あ? ……お前、カレー屋の!」
インデックス「あ、この間食べに来てくれた垣根!」
垣根「おお……名前まで覚えてやがるとは想定外……
っつかここで何してんだ?」
インデックス「ここで何してるって聞くのは馬鹿だと思うんだよ」
垣根「お前いい度胸してんな、俺はこう見えて学園都市で
ナンバー2の頭脳持ってんだぜ?」
インデックス「ふーん」
垣根「ちょ、すげえとか言わねぇのかよ!」
インデックス「頭の良さとかよくわかんないかも」
垣根「俺のこと馬鹿呼ばわりしたくせにか」
インデックス「だってここはお店なんだよ?
買い物しかすることないと思うんだよ」
垣根「……まあ、そうだけどよ。 あ、お前一人か?
俺今暇でさ、一緒に行動してもいい?」
インデックス「とうまが知らない人には付いて行っちゃ駄目って」
垣根「え、俺って知らない人に分類されてんの?
この流れで?」
インデックス「どうせナンパだと思うんだよ!」
垣根「どうせとか言うなよ傷つく! なあ頼む俺のツレが
みんな迷子になっちまって」
インデックス「要するに一人取り残されたんだね」
垣根「勘が鋭すぎるぞお前……」
インデックス「お前じゃなくてインデックスって言うんだよ!」
垣根「悪い悪い。 んでインデックス、何買ってたんだ?」
インデックス「とうまとはまづらにお洋服をプレゼントするんだよ!」
垣根「なんだコイツめちゃくちゃいい子じゃねえか……」
インデックス「お店も繁盛してるし、二人への
感謝の気持ちを込めてるの」
垣根「感動もんだなオイ……じゃ、あれだな、俺の場合は
養ってくれてる一方通行になんか買ってやんなきゃなんねえな」
インデックス「そうするといいかも! きっとあくせられーたも
喜ぶと思うんだよ!」
垣根「じゃあ何を買って……いけね、俺無一文だった」
インデックス「え? お金持ってないの?」
垣根「忘れてた……金がねえから養ってもらってんのに……」
インデックス「貸してあげようか?」
垣根「いや、遠慮する。 こんな小さな女の子にもらった金で
プレゼントなんてレベル5の風上にも置けねえ」
インデックス「じゃあ、働けばいいかも」
垣根「……何故俺は今まで働こうという選択肢が
思いつかなかったんだ? ただのニートじゃねえか……
そうと決まればインデックス! お前の店で雇ってくれ!」
インデックス「無理なんだよ」
垣根「そ、即答……」ガクッ
インデックス「人は足りてるし、相応の技術が必要なの。
能力に頼るような人はお呼びじゃないんだよ」
垣根「見かけによらず辛口だな……」
インデックス「コネを使おうなんて考えないで正々堂々
面接してもらえばいいと思うかも!」
垣根「そ、そうだな……インデックスの言うとおりだよ」
インデックス「そこに求人誌が何冊か置いてあるから
持って帰ればいいと思うよ」
垣根「何だ、こんなうすっぺらいのか……求人誌ってぇと
タウンページみたいなのかと思ってたのに」
インデックス「そんなに仕事があったら日本は不景気じゃないんだよ」
垣根「お前と同年代の女の子は絶対そんなこと言わないだろうな……」
海原サイド
海原「それはそうと、ここで服購入されるんですか?」
番外個体「あー、どうしようかな。 ミサカはこういう服
着てみたかっただけだし……」
海原「買って一方通行さんに見せてあげたらどうです?
きっとあの方も悩殺できますよ」
番外個体「べ、別にあの人を悩殺しようなんて思ってないし」
海原「最初に言ってたじゃないですか」
番外個体「だからそれは嫌味だって」ソワソワ
海原「……この際単刀直入に聞きますけど、
番外個体さん、一方通行さんのこと好きですよね?」
番外個体「え、……まあ、感謝はしてるけど」
海原「恋愛的な意味で」
番外個体「……何でそういう見解に辿り着くのか
ミサカには理解不可能なんだけど」
海原「傍から見てるともう、一方通行さんに構って欲しい
オーラがすごいんですよ」
番外個体「……勘違いだよそんなの」
海原「違うなら違うでいいんですけど、昨日カフェで
話してた内容も、自分には一方通行さんに関わる女性に
対する嫉妬心が結構あるように感じたんですよね」
番外個体「海原君、ミサカを観察しすぎてて怖い」
海原「こんなだからストーカーとか言われるのかも
しれないですね」
番外個体「でもそんな海原君も嫌いじゃないよ。
ミサカの相談に親身になってくれるしね」
海原「まあ、番外個体さんのことが好きですからね」
番外個体「いや、それは知ってるよ」
海原「いえ、そうではなくて……真剣に言ってるんです」
番外個体「……え?」
海原「自分は、普通に番外個体さんが好きです。
女性として」
番外個体「……えーっと……」
海原「……いきなりすみません」
番外個体「あの……ミサカ、こういうこと言われたの
初めてだからなんて言っていいかわかんない」
海原「何も言わなくていいですよ。 自分が勝手に
言っただけなんですから」
番外個体「……」
番外個体「海原君の言うとおりかもしんない」
海原「……というと?」
番外個体「麦野が第一位にひっついてたら焦るし、
ちびっことあの人がじゃれてたら苛々するし、
構って欲しいから悪態ついてたのもあるかも」
海原「そうですか……」
番外個体「ぶっちゃけ、今のミサカネットワークに悪意なんて
ほんの少ししかないんだよね」
海原「……では、一方通行さんに素直になれないのは
ネットワークのせいではなかったと?」
番外個体「そ、海原君の言ったとおり、ただの嫉妬だよ」
海原「では、やはり一方通行さんのことが……」
番外個体「……うん」
番外個体「好きなのかもしれない」
一方通行「えっ」
海原「!」
番外個体「っ!?」
一方通行「あ……悪ィ、盗み聞きとかじゃなくてだな……
偶然通っちまったっつゥかよ……」アセアセ
番外個体「き、聞いた……?」カァァァァァァ
一方通行「いいいや、聞いてねェ! 何かシリアスな雰囲気
だったから話しかけられなかっただけで……
ただ、好きとかどうのっては……聞こえた、か?」
番外個体「あ、う……っ」カァァァァァ
海原「番外個体さん、しっかりしてください」
一方通行「……なンか邪魔したみてェで悪ィな」
海原(番外個体さん、ちゃんと言わないと誤解されたままですよ!)
番外個体(も……もうどうにでもなれ!!!)
番外個体「……第一位っ!」
一方通行「な、何だよ……?」
番外個体「こっ、このミサカは! 第一位のことが好きなの!
分かった!? このもやし!!」バン
一方通行「なっ……、はァ?」
番外個体「馬鹿! アホ! 死ね! もういいもん!
あ、ちびっこ! ミサカの買い物付き合ってよ!」グイ
打ち止め「えっ、あ、あの人はどうするのってミサ……」
番外個体「知らない!」スタスタ
一方通行「……」ポカーン
海原「……追わないんですか」
一方通行「いや、ちょっと状況の整理が追いつかねェ」グルグル
海原「……自分はフラれましたよ」
一方通行「!?」バッ
海原「分かってはいましたけど、やっぱり悲しいですね……」
一方通行「オマエ……」
海原「言って置きますけど、ミサカさんだから好きなんじゃないですよ。
番外個体さんが好きなんです」
一方通行「そォか……」
海原「番外個体さんの気持ちに答えてあげたらどうですか」
一方通行「……ったく……面倒くせェ」
海原(ん、メールが……)
―――――――――
From:番外個体さん
件名:なし
ありがとう
―――――――――
海原(完敗ですね……)フフ
番外個体「第一位の馬鹿! もやし! あの人のお金なんか
全部使ってやる! たくさん服買ってやる!」ポイポイ
打ち止め「今着替えちゃいなよってミサカはミサカは
提案してみる」
番外個体「あああああああ!! 苛々するうう!!」ガンガンガン
打ち止め「このワンピースとかいいんじゃないかなって
ミサカはミサカは薦めてみる」
番外個体「んじゃ着替える。 着替えて気持ちリセット。
これで第一位悩殺決定だね、ぎゃははは!!」ゲラゲラ
打ち止め「大丈夫かなあ……ってミサカはミサカは
心配してみたり」
番外個体「どうよちびっこ!」バーン
打ち止め「わあ! いつもとイメージがすごく違う!
ってミサカはミサカは暗に女の子っぽいって言ってみる!」
一方通行「あァ、こりゃ悩殺もンだわ」
番外個体「っ!? 何でここにいんの!?」バッ
一方通行「あンな捨て台詞吐かれたら
追いかけたくもなンだろ」
番外個体「な、何度でも言ってあげるけどね!
もやし! 馬鹿! アスパラ!」
一方通行「ったくめんどくせェなァ……」
番外個体「めんどくさくて悪かったね! このミサカは
そういう性格なんだよ!」
一方通行「知ってる。 オマエちょっと落ち着け」
打ち止め「そうだよ、あまり騒ぐとお店の迷惑になるよって
ミサカはミサカは注意してみる」
番外個体「ぐ……しょうがないな」
一方通行「オマエ何様だよ……せっかく人が
気持ちに応えてやろォとしてンのによ」ポリポリ
番外個体「……え?」
一方通行「いや、正直びっくりした。 オマエが俺のこと
そンな風に思ってるとか知らなかった」
番外個体「う……」
一方通行「ま、あれだ。 オマエもどォせ言われて気づいたタチだろ?
俺もクソガキに言われて気づいたからな」
番外個体「ちびっこに?」
打ち止め「だって、番外個体と海原お兄ちゃんが話してると
いつもつっかかるでしょってミサカはミサカはそれは嫉妬だって
教えてあげたの」
一方通行「ま、そォいうこった」
番外個体「え……どういうこと?」
一方通行「オマエ……その切り返しは
場の空気が冷めンぞ……」
番外個体「だってわかんないんだもん」
一方通行「ったく……ちょっとこっち向け」
番外個体「何さ……」
チュ
番外個体「…………へ」キョトン
一方通行「理解したか」
番外個体「ま……マジで言ってんの……?」
一方通行「冗談で言うかボケ」
番外個体「え、その……えっと」カァァァ
一方通行「お、一丁前に照れるよォになったか」ニヤニヤ
番外個体「うるさい。 ……どうぞよろしく?」
一方通行「何で疑問系なンだよ……。 まァ、よろしくな」
打ち止め「お……おめでとーーーーー!!
ってミサカはミサカは祝福してみたりーーー!!!」ワァァ
海原「番外個体さん! よかったですね!」ヌッ
一方通行「オマエいつの間に……」
海原「さすがに一人取り残されるのは悲しすぎたので」
番外個体「でもこれ……傍から見たらすごい面白い絵
になってるよね?」
打ち止め「この人の髪型がこんなだから……ってミサカはミサカは
雰囲気ぶち壊しの原因を指摘してみる」
一方通行「何でこのタイミングだったンだよ……」ハァ
番外個体「あなたが割り込んで来たのが悪いんだよ」
一方通行「まァそォだけどよ」
海原「いいじゃないですか、想いが実ったんですから」
番外個体「恥ずかしいからその話もうやめようよ」
一方通行「お、オマエとりあえず会計済ましてこい。
垣根たちと合流すンぞ」
海原「うまく話題を変えましたね」
打ち止め「今日はいいことがありそうっていうのは
あながち間違いではなかった! って
ミサカはミサカはなでなで効果がすごいってことを
確信してみたり」
―――
――
垣根「いや、お前やべえな、スカート異常に似合うわ」パシャパシャパシャパシャパシャ
海原「そのうちメイド服とか着ていただきたいですね」パシャパシャパシャパシャ
木原「パンチラしねえかなーパンチラしねえかなー」パシャパシャパシャパシャ
一方通行「……」グデー
打ち止め「あの人の目が助けてと訴えている!
ってミサカはミサカは意思疎通してみたり」
麦野「あの男共は揃いも揃って……」
番外個体「みんな馬鹿なんだよ」
海原「次はこれを着ていただきたいのですが」
垣根「やっべー! 超露出してんじゃねえか!」ワキワキ
一方通行「絶対着ねェ! 断固拒否する!」
垣根「優勝者の言葉は絶対なんだよ!」バン
一方通行「どこまでが罰ゲームなんだよ!?」
海原「いいんですか? この服は番外個体さんが
貴方に着てほしいと選んだ服なのに」
一方通行「えっ」
番外個体「あ、え……うん、着て欲しいな。
写真とって待ち受けにして見せびらかすからさ」ギャハ
一方通行「くっそォ!! オマエら俺をおもちゃにしやがって……」
打ち止め「まあ、たまにはいいじゃないってミサカはミサカは
試着室に放り込んでみたり」ドンッ
木原「打ち止め何気にひでぇ……」
麦野「純粋な子が周りに染められていくわ……」
一方通行「ほら、これで満足か」バッ
一同「「「」」」
一方通行「あ? 何だよ固まって……」
垣根「お前……脚綺麗すぎ……」
海原「女性の敵ですよこれは……」
木原「ちょ! 背中もマジでやべぇぞ!」
垣根「マジか見る!」
麦野「……男に興奮してどうすんのよ」
打ち止め「今は女の子になってるしいいんじゃない
ってミサカはミサカはフォローしてみる」
番外個体(……)
垣根「やっべすべすべなんだけど!!」サワサワ
一方通行「うわァァ!! 何触ってンだやめろ!!」ゾワ
木原「お前本当は性別どっちだよ?」
一方通行「男だっつってンだろォが!!!!」グォォ
木原「あー……確かに付いてたもんな」ツー
一方通行「ひゃうっ!? ちょ、オマエらふざけンのも大概に……」
番外個体「そっ、その人に触るなあーーーー!!」ドン
垣根「おおっ?」
木原「なっ?」
海原(GJ!)
番外個体「ミ、ミサカだってそんなに触ったことないのに、
みんなしてずるいよ!!」
一方通行「ちょ、おま」
番外個体「この人はミサカのなんだから、こ、このミサカしか
触っちゃいけないの!」プンスカ
麦野「えっ?」キョトン
垣根「……ん?」
番外個体(ぎゃああああミサカ何言ってんのおおおお!!??!)カァァァ
打ち止め「あ、この二人実は付き合ってるんだよって
ミサカはミサカは報告してみる」
海原(その調子です番外個体さん)グッ
垣根「何だよお前らやっと付き合ったのか」
一方通行「やっとって何だよ」
木原「一丁前に彼女なんて作っちゃって……
でもその格好だと百合にしか見えねえ……」
麦野「ワーストってやっぱり第一位のことが好きだったのね」
番外個体「うう……」カァァァ
垣根「ミサワちゃんが唐突に壮大にデレたから
何があったのかと思ったぜ。 とにかくおめでとう」ニヤニヤ
番外個体「みんな前から気づいてたの……?」カァァ
一方通行「とりあえず着せ替えごっこはもう終わりに
しねェか……?」
海原「そうですね、写真もたくさん撮れましたし」
垣根「んじゃそろそろ帰るか。 みんな荷物寄こせ。
台車の俺が責任を持って家まで運んでやる」
番外個体「あ、海原君。 第一位の写真ミサカに
送っておいてね」
海原「了解しました」
一方通行「オマエ……」
――数日後
チーズ工場(家)
一方通行「なァ、垣根と麦野はどこ行ったンだ?」←髪は元に戻りました
海原「ああ、麦野さんは木原さんとご飯食べに行くって行ってました。
垣根さんはどっかで道草食ってるんじゃないですかね」
一方通行「さすが垣根だなァ、飢えを雑草で凌ぐたァホームレスの鏡だ」ウン
海原「今はホームレスじゃないですよ」
一方通行「元ホームレス様の話だコラ。
この家のメンバーの中で一番壮絶な生活してただろ」
海原「そうですね」
一方通行「そォですよ」
海原「……この家に一方通行さんと二人きりって、
なんだか久しぶりですね」
一方通行「そォだな……最初以来じゃねェか?」
海原「今日はミサカさんたち来ないんですか?」
一方通行「そォ毎日来れるもンじゃねンだよ。 通院してる身だ」
海原「そうですか……残念です」シュン
一方通行「……一応言っとくけどアイツはもォ俺のもンだからな?」
海原「分かってますよ」
一方通行「ま、オマエのこといい友達だとか言ってたから
関わるなとは言えねェけどよ」
海原「番外個体さんがそんなことを……嬉しい限りですね」
一方通行「オマエもあまり変態を前に出すのは控えとけよ」
海原「そんなに変態ですかね……」シュン
一方通行「それにしても暇だなァ」ゴロゴロ
海原「いつも何してましたっけ?」
一方通行「ン……寝て起きて飯食ってダラダラして……」
海原「要するにニートですね」
一方通行「買い物とかたまに行ってンだろォが!」プンプン
海原「まあ、そうですけど」
一方通行「……よし、じゃあアレやろォぜ。 Wii」
海原「この家にありましたっけ?」
一方通行「黄泉川ンとこからパクって来たンだよ」
海原「それって打ち止めさんが困るんじゃ……」
一方通行「クソガキの了承は得てるンだよ」
海原「だったらパクったとか物騒な言い方しないでくださいよ」
一方通行「俺これやってみてェンだよな! Wii Sports!」コレ
海原「体力のない貴方にできますかね?」
一方通行「確かに体力はねェけどゲームくらいなら大丈夫だろ」ワキワキ
海原「そうだといいですけどね」
一方通行「これどォやって設置すンだよ」
海原「どれ、貸してください。 自分がやりますよ」ヨイショ
一方通行「嫌だ。 俺がコードつなげる」ヤダ
海原「何駄々こねてるんですか、いつまでたっても
始められませんよ」
一方通行「じゃあどこに繋げたらいいか口で言えよ。
俺がその通りに繋ぐから」
海原「どんだけ繋ぎたいんですか……」
一方通行「ったくこのテレビ無駄にでけェから
後ろのプラグに手が届かねェンだよ……」
海原「ポジティブに考えてください。 大画面ですよ?
大迫力でゲームが出来るじゃないですか」
一方通行「だから早くやりてェンだよォォ!!
どこに繋げたらいいンだよォォ!!」ウワァァ
海原(この一方通行さんを番外個体さんが見たら
どうなることだろう)
―――
――
一方通行「よし、接続完了!」
海原「何でそれだけで30分もかかってるんですか」
一方通行「あれだ、ウォーミングアップだ。
マラソン選手とかも本番前に体を温めンだろ?」ホクホク
海原「何のウォーミングアップをしたんですか貴方は」
一方通行「野球やろうぜ野球」ピッ
海原「聞いてないですもんね」
一方通行「俺バッターすっから海原はキャッチャーやれよ」
海原「え? ピッチャーじゃなくてですか?」
一方通行「何言ってンだ、ピッチャーはキャッチャーの指示に
したがってボールを投げるンだろ? だったら必然的に
キャッチャーを操作してることにならねェ?」
海原「いや、プレイヤーはピッチャーの動きをするんですから、
キャッチャーを操作してるとは考えにくいんじゃ……」
一方通行「細けェこたァいいンだよ!! さっさと投げやがれ!」
海原「分かりましたよ」ヒュッ
<ストラーイク!
一方通行「オ、オマエ……その無駄の無い無駄に洗練された
無駄な動き……。 さては初心者じゃねェな?」
海原「何を隠そう自分はショチトルと毎日のように
このゲームで競い合っていましたからね」フフン
一方通行「クッソ……ハンデを要求する!
オマエは左で投げろ!」
海原「おや、学園都市の第一位ともあろうお方が格下に
ハンデを要求するなんていかがなものかと」
一方通行「愉快に素敵にカチンときたぜェェェ!!
ハンデなしでオマエをボッコボコにしてやンよォォ!!」ウォォ
海原(ちょろい)
海原「では投げますよ」ヒュッ
一方通行「うおおォォォォ!!!」ブォォォォォン
<ストラーイクツー!
海原「2ストライクですよ」ニヤニヤ
一方通行「クッソ何で当たらねェ!?」ブォンブォン
海原「あまり振り回さないでくださいよ。
自分に当たりそうで怖いです」
一方通行「角度か? 角度がいけねェのか?
今のボールの速度と高さだと……ここがベストポジションか!」ピコーン
一方通行「オラ海原ァ! もういっぺン投げろ!」カモン
海原「3アウト狙いますよ」ヒュッ
一方通行「もらったァァァ!!」ブォォォン
<ストラーイク! 3アウトチェンジ!
一方通行「なっ、変化球……だと!?」
海原「変化球の種類はたくさんあるんですよ」ニヤニヤ
一方通行「第一位が三振とは情けねェ……」ガクッ
海原「次は自分がバッターですね」
一方通行「はン! 変化球があると知った以上、
とことん変化球投げて三振取ってやるぜェェ!!」
海原(ストレートは使わないと宣言したようなものですね)
一方通行(このボタンを押しながら投げるとフォークが投げれンのか……
フォークって何だ? フォークみてェにぶっ刺す勢いの球ってことか?)
一方通行「よォし、第一球は君に決めたァァァ!!
構えろ海原ァァァ!!」
海原「どんなボールだろうが受けて立ちます」
一方通行「いくぜオラァァァァ!!!!」ビュッ
海原「見切りました」キラーン
<カキーーン!! ホームラン!!
一方通行「な……なンだ、と……!?」ゼェゼェ
海原「誰も塁に出てないので一点しか入りませんが……
まあ、いい出だしでしょう」
一方通行「フォークのくせにバットに刺さりもしねェのか……」
海原「何ですかそれ」
一方通行(投げ方が甘かったかァ? じゃあ次はスライダーにすっかな。
最近の垣根はスライスチーズに挑戦してるみてェだし負けてらンねェ)ブツブツ
海原「そろそろ疲れてきたのではないですか?」ニヤニヤ
一方通行「はン、甘ェな。 この俺がこンくれェで疲れるもンか」ゼーハー
海原「その割には息が上がってますけど」
一方通行「深呼吸だよ見てわかンねェのか。 精神統一には
深呼吸が一番なンだよ」
海原「すってーはくのがー」
一方通行「しンこきゅゥー」スー
海原「すってーはくのがー」
一方通行「しンこきゅうゥー」ハー
一方通行「って何やらせてンだオイ!!」バン
海原「アクセロリズム体操は終わりですか」
一方通行「終わりも何も始まってすらいねェよ!
つか何だそのネーミング!」
海原「ほら、早く次のボール投げてください。
放置してるからキャラクターが暇そうにしてるじゃないですか」
一方通行「何か今日のオマエは余裕に満ち溢れてるなァ……
いや、いつもだけどよ」
一方通行「じゃあ投げンぞォ」
海原「構いません」
一方通行「宣告しておく。 次に俺が投げるボールはやべェ」
海原「どんな風に?」
一方通行「そりゃ、あれだ。 虫眼鏡の拡大レベルくれェだ」
海原「へぇ」
一方通行「とにかくやべェ。 羽毛布団の圧縮率くれェやべェ」
海原「はぁ」
一方通行「下手したら表札に振動が伝わって家が
爆発しちまうかもしンねェ」
海原「やばいじゃないですか」
一方通行「だが安心しろ。 オマエが空振ってくれりゃァいい話だ」
海原「……」
一方通行「……今の一連の流れはジョークだ」
海原「そうですか」
一方通行「何、オマエ疲れてンの? 反応薄くて寂しいなァ」
海原「貴方そんなキャラでしたっけ」
一方通行「投げまァァァァァす!!!! うォォりゃァァァァ!!!」ビュッツ
海原「ちょっ」
肩に力が入りすぎた。
勢いよく振り下ろされた一方通行の手に握られていた白色のリモコン型コントローラーが、
するりと彼の手から飛び出してしまった。
コントローラーの向かう先には100インチの大型テレビ。
この家に来たときに一方通行がテレビを壊してしまったために新しく買い換えた物だ。
このままでは大画面にコントローラーが直撃してしまう。
そうなってしまえばゲームの続行は不可、再びテレビの調達に出向かなければならない。
(めんどくせェ)
一方通行は自身の能力をコントローラーに向けて行使する。
進行方向のベクトルを操作、正反対の向きに変更。
直後、今まさに大画面の手前まで迫っていたリモコン型のコントローラーが、
何かに引っ張られるように元来た道を戻っていく。
リビングと廊下を仕切る扉がある。
今のコントローラーの行く先はその扉だ。
まァ、扉くらいなら壊れても構わねェよな、と一方通行は思案する。
不意にその扉が勢いよく開け放たれた。
「一方通行!! 俺ついに仕事が決まっごぶおぉッ!!!」
コントローラーは垣根提督の顔面にクリーンヒットした。
この間わずか1秒。
垣根「痛ってえぇええええええええええぇぇ!!!!!!」ジタバタ
一方通行「ナイスタイミング。 オマエのおかげで扉もリモコンも
壊れずに済ンだわ」
海原「一方通行さん、何でストラップ付けてないんですか」
一方通行「熱くなって忘れてたわ」テヘ ペロッ
海原「何ですかそれ」
垣根「鼻がああああ鼻あああああああ!!!!」ジタバタ
一方通行「何オマエ鼻がどうかしたのか?」
垣根「今まさにオマエが投げた(?)リモコンが
俺の鼻頭にめり込んだんだよおお!!!」
一方通行「悪ィ」テヘ ペロッ
海原「だからそれなんのつもりなんですか」
一方通行「俺の凶悪なイメージを払拭しよォかな、と」テレ
海原「逆に怖いです、逆に」
一方通行「っつか今何だかンだでオマエ空振ったよな!? よな!?」
海原「いや、さすがに貴方がリモコンをボールのように投げたことに
驚きすぎて思考がフリーズしましたよ」
一方通行「それほどでもォ」テレ
海原「いや、褒めてないですし。 自分から見たら、一方通行さんの手から
リモコンが投げ出されたと思ったら後ろに飛んでって垣根さんにぶつかった
っていう状況ですよ。 まさに一瞬の出来事ですよ」
垣根「待て待て俺なんかドア開けたらリモコン飛んできたんだぞ」
一方通行「いきなり入ってくるオマエが悪いだろ」
垣根「理不尽!」
一方通行「さてさてゲームを続けよォか」
海原「次こそは打ちますよ」
一方通行「俺の剛速球を食らいやがれ!」
垣根「待て待て待て待て!! 何ナチュラルに俺をのけ者にしてんの!?」
一方通行「え、オマエそォいうポジションじゃン」
垣根「そんなポジション確立した覚えねぇよ!! 大体この間買い物
行ったときも俺だけ一人で寂しかったんだからな!?」
一方通行「よしよし」ナデナデ
垣根「えへへー」
一方通行「何コイツ……」ウワァ
垣根「そういう流れじゃなかったのかよ!? 何なんだお前!」
一方通行「何かと言われれば、プロ野球選手だ」
海原「突拍子もない」
一方通行「俺なら野球選手くれェちょちょいと頑張ればなれるがな」
海原「そんな反則な能力持ってたら誰も勝てませんよ」
一方通行「学園都市の野球って殺伐としてて怖ェよなァ。
小せェ子供とか観覧してたら泣くやつ出てくンだろ」
海原「能力禁止のルールを採用してる大会もありますよ」
一方通行「そォなのか? そっちは平和そォでいいな」
海原「貴方も随分言動が丸くなりましたよね」
一方通行「まァ、闇とは手を切ったし、いつまでもウジウジしてたら
クソガキに余計な心配与えちまうしなァ」
海原「番外個体さんも心配しますよ」
一方通行「オマエに言われなくても分かってンだよ」イラ
海原「嫉妬しなくてもいいじゃないですか」ニヤニヤ
一方通行「嫉妬してねェ!!」
海原「一方通行さんってウブなんですね」ニヤニヤ
一方通行「違ェし! 俺はガツガツ行く方だし!」
海原「まあ、どっちでもいいですけど、一方通行さんのメールが可愛らしい
という情報は番外個体さんから既に入手済みですので」
一方通行「はァァァ!?」
垣根「ちょっと待てお前らなんでまたナチュラルに俺をハブるわけ!?」
一方通行「何オマエらどんなメールのやりとりしてンの!?」
海原「気になるんですか」ニヤニヤ
一方通行「いや、気になるわけねェし……いや、ただアイツの身を案じてだなァ」
海原「自分はいつでも変態なわけじゃないですから安心してください」
一方通行「うわ、ついにコイツ変態って認めやがった」
海原「いえ、自分が変態だなんて一時も思ったことは無いのですが、
番外個体さんからも何度も言われてますので、さすがに認めざるを得ないかなと」
一方通行「もうオマエ番外個体って言うな、絶対言うな、二度と言うな」
海原「何てわかりやすい嫉妬なんでしょう」
一方通行「なんということでしょう、みてェなニュアンスで言うな!」
海原「さっきから言うな言うなって無理な要求を」
一方通行「オマエの口を縫い付けてやろォか!?」
海原「いえ、自分にそういう趣味はないので……」
一方通行「はァ!? ……ちげェよ!! 何想像してンだきめェ!!」
海原「え、裁縫のなにが気持ち悪いんですか?」
一方通行「えっ」
海原「自分は、口を裁縫するなんていうアブノーマルな趣味は
ないといったのですが……」
一方通行「いや、それはそれで変態嗜好だなァ」
海原「あ、もしかして一方通行さんは口を口で塞いじゃうー
みたいな想像しちゃったってことですか? そうですよね?」ニヤニヤ
一方通行「うわァァ!! 来ンな! こっち来るなァァ!」
海原「あっ、番外個体さん」
一方通行「えっ!?」バッ
海原「うっそー」
一方通行「うううああああああああァァァァァァァ!!!!!!」
垣根「頼むから俺も会話に混ぜてくれよぉおおお!!」ウェェェン
―――
――
一方通行「なんで俺が一人なんだよ」
海原「仕方ないじゃないですか、ランダムですし」
垣根「やっと俺にもコントローラーが……」キラキラ
一方通行「俺ぶっちゃけテニスのルール知らねェンだけど」
海原「ならこちらが優勢ですね」
垣根「だな」
一方通行「鬼! 悪魔! フェアプレー精神がなってねェ!」
垣根「一人の寂しさをその身をもって味わうがいいさ」
海原「自分はフェアプレー精神など持ち合わせていません」
一方通行「いいし! 第一位の勘で受けて立つし!」
垣根「じゃあ最初俺がサーブだな」ポーン
一方通行「よっしゃスマッシュゥゥゥ!!」パーン
一方通行「……あ? 何かそっちに点入ったンだけど」
海原「最初のサーブは後ろの人が返さないと駄目なんですよ」
一方通行「だァァ! テニス難ィィ!!!」
番外個体「テニスってなんかいやらしい響きだと思わない?」
一方通行「おォォォ!?!?」バッ
番外個体「やっほう、遊びに来たよ☆」ギャハ
打ち止め「ミサカもいるよ! ってミサカはミサカは
自己の存在をアピールしてみる!」
海原「あれ、今日はお二人共来れないはずだったのでは?」
番外個体「え? 今日は調整はないってこの人に言っておいたはずなんだけど」
一方通行「……」
海原「……なんてわかりやすいのでしょう」ニヤニヤ
垣根「独占欲、か」ウン
一方通行「うわァァァァン!!」ビェェ
番外個体「ちょっと何泣いてんのみっともない」フキフキ
垣根「あらやだお母さん」
打ち止め「ミサカのポジションが乗っ取られてる!
ってミサカはミサカは焦ってみる」
一方通行「丁度いい、番外個体オマエ俺と組め」
番外個体「え? あ、いいけど」
一方通行「っしゃァァ! 孤独から脱出したぜざまあみろ垣根!」
垣根「くそ……こんなに早く抜け出すとは」
打ち止め「えっと……ミサカは……」
海原「あ、打ち止」
垣根「打ち止めちゃん、お兄ちゃんと代わりばんこにやろうぜ」
打ち止め「うん! ってミサカはミサカはカキネのお膝に
乗っかってみたり」
海原(あれ、取り残された)
一方通行「仕切りなおしだァ! 第一ゲーム始めンぞォ!!」
番外個体「ミサカ、あまりゲームとか得意じゃないんだけどね」
垣根「じゃあ打ち止めちゃん最初にやっていいぜ」ホラ
打ち止め「やったーってミサカはミサカはリモコンを構えてみる!」
――30分後
垣根(……打ち止めちゃんが一向に俺と代わってくれない)
打ち止め「あーっ、打てなかったってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」ショボ
海原「大丈夫ですよ打ち止めさん。 今のは一方通行さんが
大人気なかったです」
一方通行「大人気ねェもクソもあるかァ!! これは立派な戦争だ、
敵対している以上容赦はしねェンだよ!!」
番外個体「大人げない……」
一方通行「あ、悪ィ……」ショボ
打ち止め「いいのよ、ミサカがあなたのスマッシュを打ち返せるように
なればいい話だもんってミサカはミサカは慰めてみる」ヨシヨシ
一方通行「打ち止めァ……」ジーン
海原「次は自分がサーブですね」
一方通行「ばっちこォい!!」
番外個体「さっきからミサカにボールが全然回ってこないんだけど」
海原「一方通行さん、チームワークが大事ですよ。
貴方ばかり打っていては番外個体さんもつまらないでしょう」
一方通行「俺、反射が得意だろォ? だからつい反射的に
ボールを打っちまう癖が付いてだなァ」
打ち止め「全然関係ないよってミサカはミサカは論破してみる」
番外個体「ま、たかがゲームだし気にしないけどさ」
一方通行「オイ、オマエ今「たかが」っつったか」
番外個体「だから?」
一方通行「ゲームなめンじゃねェぞコラァァ!!」バン
番外個体「はいはい」
打ち止め「知らない間にあの人の扱いが上手くなってるって
ミサカはミサカはびっくりしてみる」
海原「前は口を開けば喧嘩でしたもんね」
垣根「おい、お前ら俺を無視してんじゃ」
海原「ではサーブを打ちますね」
一方通行「ばっちこォい!!」
垣根「ねぇ、ちょ」
番外個体「ミサカの華麗なレシーブ!」パーン
打ち止め「そしてミサカの瞬速スマッシュ!」バーン
垣根「なあ」
一方通行「さらに一方通行の豪速スマッシュ返し!」ポーン
海原「閉めの海原カウンタースマッシュ!」バコーン
垣根「……」
一方通行「そのだせェネーミングと一緒にぶっ飛べ海原!」パーン
海原「なんと、自分のスマッシュ返し返しを更に返してくるとは!」バシーン
一方通行「甘ェ! スマッシュ返し返し返し返し返しだァ!」ポーン
番外個体「あれ、回数違くない?」
一方通行「え?」ピタ
打ち止め「もらったあああ! ってミサカはミサカは
二人の死角へジャンピングスマーッシュ!!」バチコーン
打ち止めのスマッシュが一方通行達のコートへ突き刺さる。
特別速いわけではなかったのだが、確実に死角を突いたそのボールは、
容赦なくその進路を進んでいく。
まだワンバウンド。
もう一度地面に付く前に打ち返せば相手側に点が入るという事態は避けることが出来る。
「クソったれ……!」
一方通行は、今まさに地面へ向かって放物線を描いているそのボールに
プレイヤーを向かわせる。
「もう間に合わないよ!」
番外個体の悲痛な叫びが耳を突く。 彼女も一方通行同様に
プレイヤーをボールへ向かわせたのだが、距離があったために追いつかなかった。
頼みの綱は、一方通行の操作するプレイヤーのみだ。
一方通行がラケットを振る動作をすると共に、画面の中の一方通行は
滑り込みをするような形でラケットをボールへ突き出す。
打てるか、打てないか。
操作をし終えた一方通行は、画面を見つめていることしかできない。
「入ったあああああああ!!!」
刹那に響く歓喜の声は、打ち止めのものだった。
ラケットは、わずかにボールへ届いていなかったらしい。
「初めてミサカのスマッシュが決まった!
ってミサカはミサカは興奮してみたり!!」
「やりましたね打ち止めさん」
「クソォ……オマエが途中で茶々入れなかったら打ててたのによォ」
「彼女に責任転嫁するなんて情けない第一位だね、ぎゃはは」
打ち止め(垣根)・海原チームは、点を入れることが出来たと喜びを語り、
一方通行・番外個体チームは、何でもっと早く動かなかったんだ、
オマエが余計なこと言わなければ、と今の点の損失責任を互いに
なすりつけ合っていたりしていた。
各々が一戦の余韻に浸っている中、一方通行はあることに気づいた。
「……あ? 垣根のやつはどこ行ったンだァ?」
垣根がいない。
さっきまでは打ち止めの近くに座っていたはずだ。
トイレにでも行っているのだろうか? と思ったがどうも違うらしい。
「垣根さんならさっきふらふらと外に出て行きましたよ」
「外だァ? 何でだよ」
「ミサカがコントローラーを占領してたからつまんなくなって
いじけちゃったのかなあってミサカはミサカは反省してみる」
「いや、いじけるとか多分ねェからそンな落ち込むな」
そういえばゲームをやっている最中に垣根が何か話しかけてきていたような
気もしたようなしないような……と一方通行は記憶を穿り返してみるが、
ゲームに全神経を集中させていたためにどうも思い出せない。
話しかけても反応してもらえないからいじけたのか? だがそんなことは日常茶飯事だ。
思えば垣根はやたらゲームをやりたがっていた。
打ち止めの言ったことはあながち間違いではないのかもしれない。
――と、その思考に、垣根の声が割り込んだ。
玄関の方から声がしたようだったが、ドアが閉められているために上手く聞き取れなかった。
多分、「おいてめぇらー!」的なことを叫んだのではないかと思われる。
全く、近所迷惑にも程がある。
「ったく何なンだ……オイ、うるせェぞ!」
うるさいぞ、と注意した一方通行も大概うるさいのだが、
そんなことを言っている場合ではない。
一方通行は重い足取りで、めんどくせェとでも言いたげな表情を浮かべながら
玄関のドアを開けた。
そこで彼は、信じられないほど恐ろしい光景を目の当たりにすることになる。
玄関を出て数メートル先に、石垣がある。
垣根は見るからに不機嫌そうな顔でそこに突っ立っていた。
何がしてェンだよ、と呟きかけた一方通行は、垣根の手の位置を見て、
全身の血の気が冷めていく感覚を味わった。
垣根の右手は石垣に隠れており、一方通行には見えていない。
そこまでは問題ない。 だが次が問題だ。
その右手の目の前にある石垣。 その右手のある高さ。
そこには、汚い字で「チーズ工場」と書いてある『表札』が貼り付けられてあるのだ。
「オ、オマエ……その手は一体どォいうつもりだ……」
「これ以上俺をのけ者にするってんならなあ……
俺にだって考えがあるんだよおおお!!!」
「待て! 少し落ち着け垣根!」
「これが落ち着けるかああ!!」
どうやら先ほどの予想は大方当たっていたようだ。
これくらいでいじけるなんて大人気ない。 と言いたいところだが、
今垣根を逆撫でするような言葉を吐けば、この家がどうなってしまうかは言うまでもない。
例えるなら、今垣根は核爆弾の起爆スイッチを片手に、
俺を仲間に入れないとお前たちを殺す、と言っている様な状況だろう。
その通りすぎて例えになっていないのだが。
「今自分が何しよォとしてンのか分かってンのか!?」
「俺に常識は通用しねんだよおお!!!」
さすが学園都市第二位。 常識うんぬんの前に会話が成立していない。
故に一方通行は無理やり言葉を解釈する。
何しよォとしてンのか分かってンのか!?(中にはまだ人がいる)
↓
常識は通用しねえ!(人が死んでも構わねえ!)
「この野郎ォ…………!!」
家の中には自分が保護すると決めている三人がいる。
一方通行の中では、垣根や麦野もそれに相当するのだが、
今の垣根は自分の保護すべき対象を破壊しようとしている。
だが。
一方通行の心は揺らがない。 何があろうと垣根は保護すべき対象だ。
そしてこの家、「チーズ工場」も。
「いいぜェ……、オマエが自分の勝手でチーズ工場を破壊して
俺の大切なやつらを奪おうってンなら……、
まずは常識が通用しねェなンて言うその腐った常識を捻り潰してやる!!」
(やべえ、一方通行に火つけちまった)
垣根帝督は焦っていた。
最初からこの家を爆破しようなんて気は更々無かった。
ちょっと脅して、自分を仲間はずれにするのを止めてもらおうと思っただけだった。
だが目の前の白い人間は真っ赤な闘志に燃えている。
白から赤に変色するのではないかと思うくらいにオーラがヤバい。 マジでヤヴァい。
「何か騒がしいってミサカはミサカは外の様子を伺いに来てみたり」
「二人とも何して……あれ? その表札って……」
「かっ、垣根さん!? 何してるんですか!?」
(今更、冗談でしたーなんて言ったらまた総無視コース一直線だよな。
どうしてこうなった……)
「オマエの根性を叩きなおしてやンよォォォ!!!」
グオッ、と一方通行が一直線に垣根の元まで駆け寄る。
チョーカーのスイッチは通常モードのままのようだった。
あくまで素で殴り合いをしようというワケだ。 一方通行も男らしいところがあるものだ。
「おらァァァァ!!」
「うぉっ!?」
間一髪だった。 垣根の手が表札に触れそうなギリギリの位置にあるというのに、
一方通行は容赦なく垣根に殴りこんできた。
垣根がとっさに表札から手を離したからよかったものの、そのままの位置に手を置いていたら、
殴られた衝撃で表札に手が当たり、微弱な摩擦熱を感知して爆発、
などという最悪な事態になっていたかもしれなかった。
(あっぶねえええええええええ!! お前こそ自分が何したか分かってんのかよ!?)
爆薬は正真正銘の本物だ。 未元物質で作られた爆薬は威力があるからと、
研究素材に使われた過去もある。
彼がそんな危険物質を冗談半分で家の基礎に謎の技術で埋め込み、
表札をスイッチにするなどという暴挙に出た理由は、
先ほどのように、何かあったときに脅せるようにという何とも幼稚な発想からだった。
何も実際に埋めることなんてなかったのでは? と思う方が大勢居るかもしれないが、
「俺に常識は通用しねえ」と返答して置くとしよう。
第一位と第二位の殴り合いは続いた。
互いに能力は一度も使用していない。 男と男の真剣勝負、である。
そもそもは垣根の度が過ぎた脅し、一方通行の派手な勘違いが原因なのだが、
最早そんなことはどうでもいい。
日ごろ溜まっているお互いへの鬱憤を晴らすだけの殴り合いに変わっているからだ。
「何なんだお前は彼女出来たからって調子に乗りやがって!!」
「彼女いねェからって嫉妬してンじゃねェよこの童貞がァ!!」
「童貞じゃねえよ!! 馬鹿にしてんじゃねえぞコラ!!」
一方通行は垣根の胸倉を掴んでは殴り、殴り、殴り、ぶん投げる。
能力を使用していないなめに、胸倉を掴んでもさほど持ち上がらないし、
投げても派手に転がったりはしない。
対する垣根は、一方通行のみぞおちにストレート、アッパー、更に首根っこを掴み
地面へ押し付け頭を足で踏みつける、という酷い有様だった。
「ぐァ……か、は」
「どうしたもう降参かよ? 能力使っても全然構わねえんだぜ!?」
「うる……せェ……」
一方通行は、ペッと乱暴に口の中に溜まった血液を地面に吐き捨てる。
そして、よろよろとおぼつかない足取りで立ち上がり、
目の前の男を、その深い紅色の瞳で睨み付けるように見据えた。
「もうやめなよ!」
「さすがにやりすぎだよってミサカはミサカは制止の声をあげてみる!」
「うるせェ黙ってろ」
あまりの惨状に耐えかねた番外個体と打ち止めが彼の側へ駆け寄るも、
一方通行は、邪魔だと二人の護るべき少女を睨み付けた。
「おーおーカッコいいねえ!! ミサワちゃんも惚れちゃうわけだこりゃ」
「ふざけてンなクソが……次で終わりだ」
「ああ、いいぜ……全力で来いよ。 ああ、今までも十分全力だったか?」
「言ってろ生涯童貞が」
「だから童貞じゃねんだよおおおおおおお!!!!!」
垣根のその叫び声を合図に、学園都市のツートップは勢いよくその拳を交差させた。
――勝敗は決した。
能力を使用しないで一方通行が垣根に勝つなど不可能だ。
相手が番外個体のような女性だったとしても負けていたかもしれない。
それほどに彼の身体能力、体力は著しく欠落していた。
が、
今はそれは関係ない。
体力差以前に一方通行と垣根には結構な身長差がある。
身長が大きい人程それに比例して腕も長い。
故に拳を交差させてお互いの顔にお互いの鉄拳が、などという展開にはならなかった。
一方通行の拳は寸止めのような状態になり垣根に届くことなく散った。
一方、垣根の拳は一方通行の顔面に勢いよくめりこみ、垣根の全力を
モロに受けた一方通行の体は、その勢いを失うことなく後ろへ投げ出された。
まあ、もし垣根に拳が当たっていたとしても同じ展開になった可能性も否めないが。
これで一件落着、と殴った瞬間垣根は思った。
その直後、後ろに飛んでいく一方通行の背後を見て愕然とする。
一方通行が飛ばされた先にあるのは、
『表札』だ。
(やべえええええええええええええ!!!!!!!!!)
垣根は焦った。 今までこれほど焦ったことなんてないというくらいに焦った。
しかしどうすることも出来なかった。
己の全力を受けた一方通行の身は恐るべき速度で『表札』の付いた
石垣に向かって進んでいる。
垣根には今この瞬間に見えているこの光景が、スローモーションになって見えた。
これで俺たちはまた、「ホームレス」になるのかな、と。
半ば悟り気味にそう思考した次の瞬間、
一方通行が表札の付いた石垣に激突し、石垣はその原型をなくした。
垣根「――っ!」
海原「……」
打ち止め「……」
番外個体「……」
一方通行「」ピクピク
海原「……あの、垣根さん」
垣根「……あ、れ?」
番外個体「これって、触ったら爆発するんじゃ……」
打ち止め「表札は粉々になっちゃってるよって
ミサカはミサカは一応報告してみる」
一方通行「」ピクピク
番外個体「ねえ、大丈夫?」ユサユサ
一方通行「あ……あァ……これくらいどォってこたァ……」ピクピク
打ち止め「あとで病院で診てもらおうねって
ミサカはミサカはあなたの体を心配してみる」
一方通行「あァ……。 それより垣根、こりゃどォいうことだ」
垣根「えっ……?」ダラダラ
海原「とぼけないでください。 表札が粉々になってるのに爆発なんて
起きないじゃないですか」
垣根「いやぁ、そのぉ……」
垣根(確かに爆薬のテストはしたはず……まさか、しけった……?)
一方通行「いや、正直爆発しなくて安心したンだがよ」
垣根「……だったらもういいじゃねえか」
一方通行「別に爆弾うンぬンはどォでもいいよ。
だがオマエはずっと俺たちに嘘を付いてたってことだよなァ」
海原「そこまでしてこの家をチーズ工場にしたかったんですか」
打ち止め「まあそんなに責めなくてもってミサカはミサカは
表札に触らないように気をつけていたのが無駄だったと知って
なんだかむなしくなってみたり」
番外個体「ミサカたちは嘘に踊らされてたってわけ?」
垣根「……ハッ、だから最初からジョークだって言ってたじゃねえかよ!
端から嘘なんか付いてねえんだよバァーカ! ターコ!」ベー
―――
――
打ち止め「あーっ、ミサカがピーチ使いたかったのに!
ってミサカはミサカは文句を言ってみたり!」ブー
番外個体「ミサカだってピーチ使いたいし。 お姉ちゃんは
妹に譲ってあげないと駄目なんだよう?」
一方通行「コラ喧嘩すンな。 平等にじゃンけンしろ」
打ち止め「むー、じゃあミサカはデイジーでいいよって
ミサカはミサカは心の広さをアピールしてみる」
番外個体「あっ、やっぱちびっこがピーチ使っていいよ、
ミサカはデイジーでがまんしてあげるし!」
打ち止め「今更遅いよ、番外個体はミサカに甘えてピーチを
使えばいいんじゃないかな? ってミサカはミサカはピーチを推してみる」
番外個体「いやだ! ミサカがデイジーを使う!」
打ち止め「もうデイジー選んじゃったから無理だもんね!
ってミサカはミサカはピーチを譲ってあげたことを誇ってみる」
一方通行「どっちも同じよォなのなンだからどっちでもいいだろ……」
海原「女性には女性の見方というものがあるんですよ。
それにしても貴方がキノピオなんて可愛らしいキャラクターを
選ぶなんて意外ですね」
一方通行「そォか? マリオ系のゲームする時はいつもコイツを使ってるンだが」
海原「ワリオとかワルイージとか選びそうだな、と思って」
一方通行「いや、キノピオの模様がよォ、なンか妙に親近感沸くっつゥか……」
海原「ああ、赤と白ですもんね」
打ち止め「あなたがキノピオならミサカはキノピコを使おうかなって
ミサカはミサカは番外個体にデイジーを譲ってみる」
番外個体「ああ! ミサカもキノピコ使いたい!」
一方通行「だァァ! オマエさっきから何なンだよ!!」
番外個体「だって……」モジモジ
一方通行「もォ俺が勝手に決めンぞ。 オマエら姉妹なンだから
仲良くマリオとべビィマリオでも使ってろ」
打ち止め「じゃあ番外個体がべビィマリオだね!
ってミサカはミサカは暗に妹は妹らしく小さいほうを使えと言ってみる」
番外個体「むきーっ! 肉体年齢的にはミサカの方が上なんだから
べビィマリオはちびっこが使いなよ!」
一方通行「あァァァァ!! 埒が明かねェェェェェ!!!!」グァァ
垣根「……あの、さっきは俺が悪かったから無視しないで……
俺もマリオカートやりたいよー……」ズビ
数時間後
垣根「おらああああ!! 俺の赤甲羅さばきを目に焼き付けろおおお!!」
一方通行「ちょ、オマエそれ全部俺に当たってンぞ!!」
打ち止め「カキネが一位になった! ってミサカはミサカは実況してみたり」
垣根「ハッハァ!! どうだ一方通行! 第二位に繰り下がった気分はよ!?」
一方通行「クソッたれがァ! 何で俺のアイテムはバナナしか出ねンだよ!」
番外個体「ゲームしてる最中にそんな卑猥なこと言わないでよ」ギャハ
一方通行「オマエ最下位じゃねェか……」
番外個体「だからミサカはこういうゲーム得意じゃないんだって」
垣根「随分一位と二位の差が開いたんじゃねえか?
敵がいねえってのは暇なもんだな……ってうお!?」
海原「隙ありですよ」
一方通行「うォォ!? 何でオマエ逆走してンだァァァ!!」
海原「もちろん一方通行さんの邪魔をするために」
番外個体「その手があった! ミサカも逆走しよーっと」
一方通行「オィィィィ!!」
打ち止め「ふああ……なんだか目が疲れてきちゃったかも
ってミサカはミサカは疲労を訴えてみる」
一方通行「半日ぶっ続けでゲームしてりゃ目も疲れるだろ。
ここらでゲームは終わりにするか」
番外個体「ミサカは肩が凝っちゃったよ」
海原「自分がマッサージしてさしあげましょうか?」
一方通行「さァァァァせるかァァァァ!!」グァァァ
海原「下心なんてありませんよ?」
一方通行「俺の気持ちの問題だボケ!」
海原「自分、マッサージの腕はある方だと自負しているのですが」
一方通行「マッサージなら俺のベクトル指圧マッサージで
血行改善間違いなしだろォ!!」モミモミ
番外個体「あー……そこそこ……」ポワー
海原「能力を使うなんて卑怯じゃないですか」
一方通行「あるもン使わねェとかもったいねェだろォが!」モミモミ
番外個体「ふにゃー……」
垣根「能力の無駄遣いとはこのことか……」
打ち止め「ミサカも能力使って電気マッサージが出来ると思う!
ってミサカはミサカは再チャレンジを試みてみる」
垣根「お、じゃあ試しにお兄ちゃんにやってみてくれよ」
打ち止め「分かった! ってミサカはミサカは
うつぶせになるようにカキネに促してみる」
垣根「なんだ、全身マッサージしてくれるのか?
肩だけでも十分だったんだけどな」
打ち止め「ミサカは小さいから寝転がってもらったほうが
やりやすいのってミサカはミサカはカキネにまたがってみる」
垣根「軽いな……」ホノボノ
打ち止め「じゃあ始めまーす! ってミサカはミサカは
開始の合図をしてみたり!」
垣根「そうだな、最初は腰のあた」
打ち止め「えいっ」ビリッ
垣根「りっ!?」ビクン
打ち止め「あ、あれ? 強すぎたのかな……
ってミサカはミサカはカキネを心配してみる」
垣根「あ、ああ大丈夫だ。 伊達に第二位やってるわけじゃねえ。
ただ、もう少し弱めのほうが嬉しいかな」
打ち止め「えいっ」ピリピリ
垣根「おっ、あ、はははははははひゃ!! ちょ、ま、
あはははははは!!! くすぐ、た、ひゃはははは!!」ジタバタ
一方通行「垣根のやつ……打ち止めのマッサージ実験体に
自ら名乗り出るたァ尊敬するぜ……」モミモミ
番外個体「前にあなたもマッサージされてたもんね……」フニャー
一方通行「あれは地獄だな。 痛みとくすぐったさに
クソガキの気が済むまで付き合ってやる羽目になる」
番外個体「ミサカならもっとうまくマッサージできると思うよ」
一方通行「いや、今は遠慮しとくわ」
番外個体「夜のマッサージの方がお望みだった?」ギャハ
一方通行「オマエなァ、仮にも女なンだからそォいうこと
ベラベラ喋ンなよ……」
番外個体「仮にもって酷いんじゃないの」
海原「まあまあ落ち着いて。 ここは間を取って
自分が一方通行さんをマッサージしてさしあげましょう」
一方通行「えええええええ!? どォしてそォなンだよ!!」
海原「垣根さんと打ち止めさんはあちらで実験中ですし、
番外個体さんのマッサージは終えてしまいましたし、
残るは一方通行さんしかいないじゃないですか」
一方通行「待て待て待て! 何でマッサージする前提なンだよ!」
海原「自分のマッサージの腕を披露したいんですよ」
一方通行「いや本当マジ勘弁してくれませンかねェ!
俺全然凝ってないンで! つーか自分で血行調整できるンで!」アセアセ
番外個体「じゃあやっぱりミサカが夜のマッサージを……」
一方通行「オイ番外個体!? ちょ、オマエその手は何だ!?
待てベルト外そうとすンな! 頭おかしいンじゃねェのか!?!?」
番外個体「ミサカ、公衆の面前でもOKよって言ったらどうする?」
一方通行「どうもしねェよ!! 何言ってンだオマエは!?」
番外個体「……あ、そ。 ま、あなたはチキンでもやしだし仕方ないよねー。
今まで一回もミサカに手出したことないし? そんなもんだよねー」ツーン
一方通行「はァ? いきなり何すねてンだよ……」
番外個体「ばーか! もやし! ホワイトアスパラ!
新しくチェリーボーイも追加してあげるから喜ぶんだね! ギャハハ!」
一方通行「」プッチーン
一方通行「……よォし上等じゃねェかコラ。 ヤってやンよ」
番外個体「え……え?」
一方通行「なァに逃げてるンですかァ? オマエから誘ってきたンだろォが」
番外個体(うそ、何かのスイッチ入れちゃった……?)
番外個体「え、ちょ待ってよ、場所考えてよ変態!」
一方通行「あァ? 公衆の面前でもOKなンじゃないンですかァ?」
番外個体(ここここ心の準備が……)
番外個体「あ、あの、ミミ、ミサカは……」
一方通行「…………ったく、冗談だよ冗談。
その減らず口もちったァ自重しやがれってンだ」
番外個体「へ? ……あ……?」
番外個体(じょ、冗談か……何だ……)ホッ
海原「そういう一方通行さんこそ発言を自重してくださいよ。
打ち止めさんがすぐ近くにいるんですよ」
一方通行「あ、やべ」チラ
垣根「がぁぁぁぁああああああああ!! いてええええ!!
すと、ストップうううううううううう!!!」ビリビリビリ
打ち止め「ごめんなさい!ってミサカはミサカは電流を弱めてみる!」ピリピリ
垣根「ひゃあああああははははははああうひゃあははは!!!」ジタバタジタバタ
打ち止め「うわああん! 全然進歩しないよーって
ミサカはミサカは試行錯誤してみるんだけどおおお」ピリピリ
一方通行「……垣根大丈夫かあれ」
海原「……どうでしょう」
番外個体「あなたの時ほどじゃないから大丈夫だとは思うけど」
海原「これよりも酷い光景だったなんてそんな」
番外個体「正直あんな第一位は見たくなかったね……」
一方通行「忘れてくれ頼む」
海原「というわけで肩だけでもマッサージさせてください」
一方通行「何でだよ!! 触ンな!」
海原「そんなに嫌がることないじゃないですか……。
さすがに少し傷つきますよ」シュン
一方通行「いや、オマエのことが嫌いなわけじゃねンだぞ?
ただよォ、オマエが近くにくっとなンか、こう……胸がこう……
キュンってなって苦しくなンだよ」
海原「」
番外個体「」
一方通行「……え、何? 何その顔」
―――
――
麦野「ちょっと、起きなさいってば」ユサユサ
一方通行「ン……あ?」
木原「おはようさん、もう晩飯の時間だけどな」
打ち止め「あなたが起きるまでみんな待ってたのよって
ミサカはミサカは報告してみる」
一方通行「……あのあと昼寝したンだったか」ボー
番外個体「夜寝れなくなっちゃうんじゃないの?」ギャハ
一方通行「ン……」ギュウ
番外個体「んえ!? え!?」
打ち止め「やっぱりこの人に眠気は鬼門なのかもって
ミサカはミサカはうらやましい気持ちを押し殺してみる」
木原「かーっ、大胆だねえ一方通行!」
麦野「……」チラッ チラッ
木原(何か視線を感じる……)
垣根「それはそうとマジで腹減ったわ。 俺ら日中ゲームしてて
昼飯食うの忘れてたんだよ」
麦野「どんだけゲームにのめり込んでたのよ……。
まあいいわ。 ご飯は買ってきてあるからそれを食べましょう」
海原「何を買ってきてくださったんですか?」
麦野「ふふ、チーズ製造機兼台車。 喜びなさい」
垣根「何だ? 俺の好物でも買ってきてくれたのか?」
麦野「ええ。 ダブルカレー饅頭よ」バーン
垣根「」
打ち止め「わあ、大きいお饅頭だ! ってミサカはミサカは
驚いてみたり!」
番外個体「こんなに大きいの食べれないよ」
一方通行「一人一個なわけねェだろ、小分けするわボケ」ギュー
垣根「オイコラそこ目の前でイチャイチャすんじゃねえ!」
麦野「一つはみんなで分けて食べるといいわ」
海原「残り二つは取っておくんですか?」
麦野「二つは私と第二位の分よ」
垣根「」
麦野「さあ、お互い己の限界に再チャレンジしようじゃないの」
垣根「嫌な記憶がフラッシュバックしやがる……」グルグル
木原「ほれ、皿寄こせ。 取り分けてやる」
一方通行「ン」つ皿
番外個体「カレー餡が詰まってる……」
打ち止め「外側はカレー味のお餅だよ!
ってミサカはミサカはつまみ食いしちゃってみたり」
一方通行「クソガキ!! ちゃンと手は洗ったか!?」
打ち止め「え、あ、うん洗ったよ! ってミサカはミサカは
予想外の突っ込みどころにびっくりしてみる」
番外個体「あ、そうそう、ミサカたち今日泊まっていくから」
一方通行「そォかい」
木原「あ、じゃあ俺も泊まるかな」
一方通行「はァ!? なンでだよ! 家隣だろォが帰れ!」
木原「いいじゃねえか、一人は寂しいんだよ」
一方通行「オマエのキャラじゃねェだろ……」
海原「でも、実際一人は寂しいですよ」
麦野「そうね……私も一人が寂しくて、誰かと話したかったから
インドックスカレーに毎日のように通ってたわ」
打ち止め「そうだよ、ミサカもあなたに出会うまでは一人で
心細くて、どうしたらいいかわからなかったものって
ミサカはミサカは昔を振り返ってみる」
番外個体「ミサカは一人が寂しいって感情を知らなかったけど、
あなたのおかげで大勢は楽しいってことが分かったよ」
垣根「……俺も、一方通行に楽しさを教えてもらったな」
一方通行「オマエら……」
海原「ホームレスさん救出大作戦、でしたっけ?
もう、ホームレス限定にする必要なんてないのではないですか?
助ける人に条件を付けるのは終わりにしませんか?」
一方通行「条件……? ……そォか、俺は今まで無意識に
差別しちまってたのか……」
海原「ホームレスさんを助けるではなくて、困っている人を助ける
という心構えに変えてみてはいかがですか?」
一方通行「……そォだな、でもそォなると俺一人じゃ足りねェ」
海原「では、自分たちも手を貸しましょう」
一方通行「あァ、オマエらにも救える人がいるかもしれねェしな」
麦野「みんなでやればたくさんの人を救えるってわけね」
木原「やりがいがありそうじゃねえか」
番外個体「ま、あなたがどうしてもっていうなら」
打ち止め「ミサカは常に黄泉川のお手伝いをして
黄泉川を助けてるんだから! ってミサカはミサカは先手必勝!」
垣根「じゃあまずは空腹で困ってる俺たちの救出だな!」
一方通行「ハッ、オマエらしいな」
海原「じゃあ、食べましょうか」
一方通行「そォだな」
一同「いただきます!」
おしまい
投下しに来ました!
サイドストーリー的な感じで
短めの垣根のお話です。
とある垣根の就職活動
垣根「いよいよ面接か……緊張してきたな」ドキドキ
垣根「面接ってどういう風にすればいいんだ? やっぱり自分の
いいところを全面的に出したほうが採用されるよな……」ウン
垣根「いや、緊張しちまって上手く喋れねえ可能性があるな。
昨日電話入れた時だって……」
垣根『あの、もしもし!』
『お電話ありがとうなのです、どのようなご用件なのですか?』
垣根『あ、あの、求人誌見たんですけど、その、アルバイトを、』
『アルバイトの面接希望なのですか?』
垣根『はい! そうなんです!』
『じゃあ失礼なのですけど、お名前と年齢を伺ってもよろしいですか?』
垣根『はい! お名前は垣根帝督です! 年齢は……あれ、いくつだっけ』
『年齢は……』
垣根『えっと、17! 17くりゃ、くらいです多分!』
『はぁ……じゃあ履歴書持って明日の午前10時にお店まで来て欲しいのです』
垣根『はい! 楽しみにしてます!』
垣根「……電話越しであんなに緊張すっとは思わなかったな」
垣根「……この店か。 営業してねぇみてーだけど何なんだろ」
垣根「よし、深呼吸スーハー……、いざ! 垣根帝督参る!」ガチャ
垣根「……鍵閉まってやがる」ガチャガチャ
垣根(今の時間は午前9時……さすがに早く来すぎたってことか?)ガチャガチャ
垣根「くっそおおお! この店は10時開店だったりしやがんのか……!!?」ガチャガチャ
結標「ちょっと、店のドア壊さないでちょうだいね」
垣根「あん?」
結標「あら、もしかしてお客様だったりするのかしら? ごめんなさい、
今お店いろいろあって休業中なのよ」
垣根「な、なんだと……!? そんなはずはねえ!」ガチャガチャ
結標「そんなはずあるのよ」
垣根「てめえ何様だ……俺の面接を邪魔するってんなら女でも容赦しねぇぞ」ギロ
結標「面接? ……もしかして貴方が今日面接予定の垣根さん?」
垣根「えっ? あ、はい」
結標「なんだそうだったの。 まだ時間じゃないから気づかなかったわ」
垣根「え? 待て、え? じゃああんたは……」
結標「私はこの店の店長よ」
垣根「」
―――
――
結標「予定より1時間早いけど面接を始めるわ」
垣根「はい、よろ、よろしくお願いします……」ガチガチ
垣根(何だこの店、ボロボロじゃねぇか……)
結標「じゃあ履歴書を出してもらえるかしら」
垣根「は、はい!」スッ
結標「……住所が書いてないんだけど」
垣根「あ、いやそれはなんつーか、家はあるんだが住所がないっつー……」
結標「ふざけているのかしら?」
垣根「いえ! 大真面目です! いやあ店長すっげぇ美人ですね!」
結標「あら、そう……?」テレ
垣根(よし、単純なヤツだ)
結標「職歴は……ないのね」
垣根「まあ……ないっちゃないですね」
結標「あるっちゃある、ってことかしら?」
垣根(ここは職歴あるっていった方が有利だったか?
いや、でも暗部のことは言っちゃ駄目だよな……)
結標「まあいいわ。 ここは専門職だしあまり関係はないわ」
垣根「そ、そうか」ホッ
結標「……垣根君」
垣根「何でしょうか店長」
結標「貴方、資格は一つも持っていないの?」
垣根「まあ、そうっすね」
結標「……ここは美容室なんだけど」
垣根「それくらい知ってますけど?」
結標「……美容師免許を持ってないと働けないのよ?」
垣根「び、美容師免許……だと!?」ガタッ
結標「ええ、持っていないのなら……残念だけど採用はできないわね」
垣根「そんな……! 俺、今から免許取ってくる!」
結標「無理よ、最低でも2年はかかるわ」
垣根「俺に常識は通用しねぇんだよおおおおお!!!」ブァッサァ
結標「きゃっ! 羽!? ちょっとストップ! これ以上お店を壊さないで!」
垣根「あ、……悪い、つい能力が出てきちまった……」
結標「前にそんな感じの羽みたいなのでこの店はボロボロになったのよ」
垣根「だから休業してるってわけか」
結標「そうね、今修復してる最中なのよ」
垣根「修復……? そうだ、いいこと思いついたぜ店長!」ピコーン
結標「何? 貴方がお店を直してくれたりする?」
垣根「ああ、朝飯前だ」
結標「えっ」
垣根「交換条件みてぇで気が進まねぇが、
俺がこの店を直せたら、採用してくれ! たのむ!」ドゲザ
結標「ちょ、ちょっと土下座なんてしないでよ!」アセアセ
垣根「頼む! 俺が世話になってるヤツに恩返しがしてぇんだ!
そのためには自立しねぇと駄目なんだよ! いつまでもスネかじってる
わけにはいかねぇんだよ!」
結標「垣根君……」
垣根「……頼む」
結標「……わかったわ。 直すだけ直してみてちょうだい。
出来上がり具合で私が判断してあげるわ」
垣根「ほ、本当か店長!」パァァ
結標「特別よ。 貴方の言ってることはとても分かるわ。
私も同じ理由で美容師になったんだもの」
垣根「店長……」
結標「自立して、一人前になって、恩返しをする。
それが私の目標なの。 まだまだ一人前とは言えないのだけど」
垣根「俺……採用してもらえるように頑張ります!」
結標「期待してるわ。 これ、ボロボロになる前の店内の写真よ」
垣根「この通りに直せばいいんだな、よーし燃えてきたぁああ!!」ゴォォ
10分後
垣根「終わったぜ」ピカーッ
結標「も……元通りだわ……信じられない……」
垣根「俺にかかればこんくらいちょろいもんだぜ」
結標「これは採用せざるを得ないわ……」
垣根「! ということは……」
結標「ええ、明日から出勤していいわよ」
垣根「っしゃああああああああああ!!!!!!!!!」ヤッホーーーー
結標「ただし条件があるわ」
垣根「へ、……なんだ?」
結標「2年以内に美容師免許を取得すること。
雑用だけで採用なんて甘い考えは持ち合わせてないわ。
働くならちゃんとハサミを持てるようになってもらわないと」ビシ
垣根「はっ、楽勝なんだよそんくれえ!」
結標「ふふ、2年後が楽しみね」
垣根「ああ、店長を出し抜いてるかもしんねぇな」
結標「それくらい精進してくれたらとても助かるわ」
結標(一方通行が置いていった修理代、結局使わなかったわね……)
垣根「じゃあ、俺は帰って仕事が決まったことをあいつに報告してぇから
今日はこの辺で帰るわ」
結標「あっ、待って」
垣根「何だ? まだ何かあんのか?」
結標「これ、今日の分の給料よ」ドサ
垣根「……!?」
結標「前にこの店で暴れた人が修理代として置いていってくれたのだけど、
もう貴方が直してくれたから使いどころがないのよ」
垣根「いや、それはいいんだがこの量、ざっと見て100万はあるんじゃ……」
結標「ただ働きってのもなんかあれだし、持っていってちょうだい」
垣根「……いや、今は受け取れねえ」
結標「どうして?」
垣根「俺はまだそんな大金をもらえる程働いてねぇだろ。
俺の給料はそこから少しずつ貰うことにする」
結標「……そう」
垣根「その金全部を給料として貰い終わった時には、
俺も立派な美容師になってんだろ」
結標「……期待してるわ」
垣根「期待をいい意味で裏切ってやるよ。 じゃ、また明日な、店長」ガチャ
小萌「おわっと! ごめんなさい!」
垣根「あ? 客か?」
結標「あら小萌、来てくれたの?」
小萌「差し入れを持ってきたのですよ! こちらの方はどちら様なのですか?」
結標「この店の新しいメンバーよ」
垣根「え、ああ、どうも……」ペコ
小萌「あー! もしかして昨日意味の分からない電話をくれた子なのですか!?」
垣根「意味分からないってなんだよ! あれでも頑張ったんだぞ!」
小萌「まあ、結標ちゃんに仕事仲間が出来たみたいで、
先生はとっても嬉しいのですよ」ニコ
垣根「せ、先生……? 店長、こいつなんなんだ?」
結標「……私を助けてくれた人、よ」
>>572へ続く
とある麦野と生卵
ピーンポーン
麦野「木原さーん、待ちくたびれたわよー」ピンポンピンポン
麦野「この私を待たせるなんてそこに痺れる憧れるー」ピンポンピンポンピンポン
木原「だぁああああ!! 朝っぱらからうっせぇんだよこの生娘がぁああ!!」ガチャ
麦野「おはよう木原さん、寝坊したの?」
木原「寝坊してねえよ! まだ約束の時間まで3時間あんだろーが!!」
麦野「見て、前に木原さんが選んでくれた服を着てきたわ」
木原「おお……なかなか似合って……って逸らしてんじゃねえよ!」
麦野「今起きたばかりなの?」
木原「今何時だと思ってんだよ!」
麦野「午前6時ね」
木原「あー、寝起きで叫んだらめまいしてきたわ……」フラ
麦野「大丈夫? 少し休んだほうがいいんじゃないかしら」
木原「休んでる最中だったんだよおおおおおおお!」
――しょうがないので家に入れてあげました
麦野「朝ごはんはまだよね。 私が作ってもいいかしら」
木原「勝手にしろ……」グッタリ
麦野「ふんふふ~ん♪」ルンルン
木原「朝から元気なヤツだな……。 着替えてくるか」
麦野「あ、着替えなら私がコーディネートしたものがソファの上に
置いてあるわよ」
木原「ん? ああ、サンキュ……ええ!?」ガタッ
麦野「どうかしたの?」
木原「いつの間にタンス開けてんだお前!?」ガタガタ
麦野「さっき了承を得たじゃない」
木原「いや知らねえ!! 俺が寝起きなのをいいことに何してんだ!」
麦野「うちの家主が持ってるような服がたくさん詰まっていたわ」
木原「ぎゃああああああああああああ」
麦野「はら、もう朝ごはん作り終わるわよ」カタ
木原「クソ……、俺の何かが欠けた気がするわ……」トボトボ
―――
――
木原「目玉焼きか、なかなか美味いじゃねぇか」モグモグ
麦野「頑張って卵を割ったわ」
木原「スクランブルエッグもいい味付けだ」モグモグ
麦野「愛情こめてかき混ぜたわ」
木原「玉子焼きも甘すぎなくて丁度いいな」モグモグ
麦野「砂糖控えめで醤油を多めにしたわ」
木原「……卵しかなくてごめん」
麦野「冷蔵庫を開けたら卵しかなくてびっくりしたわ」
木原「卵が安くてつい……」
麦野「しかも全部賞味期限が明日だったわよ?」
木原「しまった……どうしよう」
麦野「ざっと見て100個はあったわね……」
木原「クソォ……安いからって買いだめするんじゃなかった……」ガク
麦野「でも安いうちに買っておきたくなる気持ちはわかるわよ」
木原「小娘の分際で分かってくれるのか……いいやつだな……」ホロリ
麦野(分際……?)イラ
木原「卵が1パック70円は誰でも買っちまうだろ……? でも何故か
他の客は全く見向きもしてなかったから俺が買い占めてやったんだけどな」
麦野(70円……? あれ、冷蔵庫の中には4個入り1パックが大量にあったような)
麦野「……まあ、賞味期限が切れる前に全部調理しておいたほうがいいわね」
木原「そうだな……生よりは熱を通したものの方が長持ちする
ような気がするしな……」
麦野「それでも早く消費するに越したことはないわよ」
木原「じゃあ全部玉子焼きにでもしとくか……?」
麦野「待って、それじゃあ卵がもったいないわ。
せっかくだからいろんな卵料理を作りましょうよ」
木原「え? 何だお前も一緒に作ってくれんのか?」
麦野「私、料理には結構自信があるのよ」エッヘン
木原「何か悪いな。 今日は飯食いに行く約束してたのに」
麦野「木原さんといれるならどこでもいいのよ……」ボソ
木原「ん?」
麦野「ううん、何でもないわ」
木原「じゃあ何から作るかなー。 やっぱ最初は目玉焼きか?
いや、今食ったものは除外だろ……?」ブツブツ
麦野「何ぼそぼそ言ってるの? 材料を買いに行かないと
何も始まらないでしょ」
木原「えっ、卵料理って卵だけで作るもんじゃねぇのか?」
麦野「卵だけで作れる料理なんて目玉焼きくらいでしょ……」
木原「いや、俺ぶっちゃけ料理とか全くわかんねぇからよ……
今まで卵かけご飯とか目玉焼き位しか作らなかったし」
麦野「それは栄養的にやばいわよ」
木原「だよな……俺も卵産めるんじゃねぇかって最近
思い始めてきたしな……」
麦野「これは末期ね……」
スーパー
麦野「とりあえず使えそうなものは全部買っておきましょ。
ついでにいろいろ食材も買って……」ポイポイ
木原「オイオイこんなに買う金持ってねぇぞ?」
麦野「私が出すから大丈夫よ」ポイポイ
木原「いや、確かにお前はレベル5だから金あるだろうけどな、
女に金出させるってのはちっと気が進まねぇんだよ」ポリポリ
麦野「全然気にしなくていいのよ?」
木原「男のプライドってもんがあんだよ」ショボ
麦野「そんなプライドはタンスに閉まっておいて、
ここはしずりんに甘えてちょうだい」
木原「お前さっき絶対俺の下着とか漁っただろ」
麦野「人聞きの悪いこと言わないでほしいわ」プイ
木原「何だやってねぇのか」ホッ
麦野「ぐちゃぐちゃに詰め込まれてたから綺麗に畳んでおいたわよ」
木原「オイィィィィ!!!! しっかり見てんじゃねぇかああああ!!」
麦野「人の下着を漁るなんて痴女みたいなことするわけないじゃない」
木原「そういう問題じゃねえええんだよおおお!!」ブンブン
麦野「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……///」ポッ
木原「その顔やめろおおおお! 頬を赤らめるな!」
店員「お会計24079円です」
麦野「あ、カードでお願いするわ」スッ
木原「……カードかっけぇ」
木原宅
麦野「まずはたまごプリンを作りましょう」
木原「プリンか、それならかなり保存がきくな」
麦野「プリンは極めて簡単よ。 木原さんにもできるわ」
木原「本当か? じゃあ俺が作ってみてもいいか?」
麦野「この箱の裏に作り方が書いてあるからその通りにしてみて欲しいわ」
木原「なんだ簡単じゃねぇか。 フルーチェが作れる俺に
死角はねぇな!」ハハハ
麦野「分量を間違えないようにだけしてちょうだいね」
木原「お安い御用だな」
麦野(さてと、木原さんがプリン作ってる間に私はお昼ご飯用に
かに玉を作るとしようかしら)
木原「……なあ、麦野ちゃんよ」
麦野「えっ、な、何?」ドキ
木原「俺は今からこのレシピの①を実行しようと思うんだがよ……」
麦野「あ、うん……卵割ってかき混ぜるだけ、よね?」
木原「毎日毎日卵割ってるとな……申し訳ない気持ちになんだよな。
生まれるはずだったこの小さな命をよ……」
麦野「え……」
木原「こいつらはひよことして生まれるはずだったんだよ……
なのに生まれることさえ許されない……悲しすぎんだろ!?」ズビ
麦野「いや……無精卵だしほっといても生まれないわよ……?」
木原「え?」
麦野「というか、仮に生まれたとしても鶏肉にされるでしょ」
木原「え?」
麦野(この人科学者よね……?)
―――
――
木原「よし、あとは冷やすだけだな」
麦野「思ったよりスムーズだったわね」
木原「俺プリン作る才能あるわ」ウン
麦野「とりあえずこれで卵が50個減ったわね」
木原「え……お前かに玉に卵何個使った?」
麦野「30個使ったわ」ドーン
木原「多っっっ!!!! でかっっっ!!!」
麦野「プリンが固まるまで1時間以上はかかるから、
かに玉でお昼休憩でもしましょうか」
木原「ん、ああ……もう昼か……熱中してると時間って早いな」
麦野「どう?」
木原「ん、悪くはねぇな」モグモグ
麦野「そう? 良かったわ」ニコニコ
木原「お、おお……」
木原(何だコイツ笑うと可愛いじゃねぇか)
麦野「うーん、ちょっとあんが甘すぎたかしら……」モグモグ
木原「いや、俺としてはこれくらいが丁度いいな」モグモグ
麦野「量足りなかったりしたかしら? もう少し何か作る?」モグモグ
木原「いやいやいやこれのどこをどう見たら足りないと思えんだよ。
普通に多いわ。 多すぎんだよ」モグモグ
麦野「木原さんは意外と小食なのかしら。 ごちそうさま」ペロリ
木原「いや、俺はむしろ食う方だぞ? まあ最近まともな
料理食ってなかったから少し胃は小さくなっちまったかもしんねぇけどよ」モグモグ
麦野「呼んでくれればいつでもご飯作りにくるわよ?」
木原「そりゃ助かるな。 気持ちだけもらっとく」
麦野「そんな遠慮しなくてもいいのに……」モジモジ
木原「俺が怠け者みてぇで嫌なんだよ。 作るなら俺も一緒に作る。
んで俺も一人で料理出来るようになりてぇな」
麦野「そういうことなら教えてあげるわ」
木原「お前料理スキルだけは人一倍だからな……ん?」
麦野「『だけ』は余計よ。 どうしたの?」
木原「いや、お前いつの間に食い終わってやがった?」
麦野「うーん……ちょっと前?」
木原「俺まだ半分も食ってねえぞ……?」
麦野「見たら分かるわよ?」
木原「……お前の胃袋どうなってんだ」
麦野「こんなのダブルカレー饅頭に比べれば
屁でもないわ」エッヘン
木原「食事中に屁とか言うなよ!」プンスカ
麦野「あ、ごめんなさい」
―――
――
麦野「プリン出来たわよー」
木原「も、もう食えね、うぷ……」
麦野「あと一口じゃない、それくらい食べちゃいなさいよ」
木原「う、一口……一口がでけぇ……」ウプ
麦野「はい、あーん♪」
木原「ちょ、ま、押し付けんな、ねじ込むな、もが」ムググ
麦野「はい、完食お疲れ様! 食器洗ってくるわね」スタスタ
木原「むぐ、もぐ」ゴクン
木原「は、はー……うっ、腹がくるし……」
木原「べ、ベルト抜こう……チャックもあけておこう……」カチャカチャ ジー
木原「ふー、幾分か楽になったわ……うっぷ」ゲフ
麦野「はいプリン持ってきたわ、よ……!?」
木原「今の俺見てまだ俺が何か食える状態に見えんのかよ……」ゲプ
麦野「えっ、あ、木原さん、前、あの、開いてるわよ……」カァァ
木原「あ、悪い……腹がきつくて開けてたんだわ」カチャカチャ
麦野「そ、そう……///」
木原(コイツ人のパンツ平気で触ったくせに何恥ずかしがってんだ……?)
麦野「うん、プリンなかなか美味しいわ」モグモグ
木原「お前まだ余裕で食えるのかよ……」
麦野「でもこれだけ卵料理食べてると飽きてくるわね……」モグモグ
木原「もう飽きたのかよ! 俺なんか一週間前からずっと卵しか食ってねぇのに!」
麦野「あと50個残ってるんだけど……正直もう料理は疲れたわ」
木原「お前あれか、物事長続きしねぇタチか」
麦野「それで、いい考えがあるんだけど……」
木原「何だ?」
麦野「ちょっと出かけましょう」
木原「オイオイ勘弁してくれよ……
動いたら今にも腹がはち切れそうなんだよ」
麦野「今にも賞味期限を迎えようとしている卵がいるのよ?
お腹がはち切れるのとどっちが大変なの!?」
木原「いや普通に腹はち切れる方がやべぇだろ」
麦野「とにかく外出るわよ」ガチャ
木原「はいはい……」シブシブ
麦野「……あれ、第二位がいるわ」
垣根「ふんふっふ~ん♪ 一方通行のやつどんな反応すっかなー?
喜ぶか!? 驚くか!? やべテンション上がりすぎて声に出てたわ。
待ってろ一方通行!」ルンルン
木原「……なんかあいつ気持ち悪いくらいテンション高ぇけど」
麦野「いいことでもあったんでしょ。 さっさと行きましょ」
インドックスカレー
上条「麦野さんじゃないですか!」
浜面「え? 麦野?」ヒョコ
インデックス「むぎの!?」ヒョコ
麦野「久しぶりね」
上条「最近めっきり来なくなったから寂しかったですよ!」
麦野「ちょっと忙しくてね」
木原「なんだお前ここの常連なのか?」
麦野「まあそんなとこかしら」
浜面「何だ麦野男作ったのか?」ニヤニヤ
木原「あ? いや俺は……」
麦野「そうそう、彼氏できたのー♪」ダキッ
上条「!」
浜面「ま、まじか……!」
インデックス「全メニュー制覇という目標を放り出して
いちゃいちゃしてたなんて見損なったんだよ!」プンプン
木原「いやいやいや、嘘に決まってんだろ……」
浜面「え? そうなんすか?」
インデックス「結局どっちなのか分からないんだよ!」
麦野「ごめんごめん、今は冗談よ」アハハ
木原(今は……?)
上条「な、なんだ……」ホ
浜面「ま、麦野に寄ってくる男とか物好きにも程があるよな」ハハハ
麦野「はーまーづーらー? ……覚えとけよ」
浜面「……すんません」
麦野「今日は料理長に頼みがあってきたのよ」
インデックス「何なのかな?」
麦野「この卵で……何か作って欲しいのよ」ドン
上条「た、卵が2、4、6……50個!」
麦野「明日で賞味期限が切れてしまうのよ。
さっき私たちで50個消費したんだけど、もう限界で……」
インデックス「何でこんなにたくさん卵があるの?」
木原「ああ、俺が安さに釣られて買占めちまったんだ」テヘ
上条「買占め……だと!?」ガタッ
浜面「オイ、上条?」
上条「安いからといって買占めるのは頂けない!
何事にも限度ってものがあるんですのことよ!!?」
木原「いきなりなんだコイツ……」
麦野「この人節約術のプロ(自称)だからいろいろ学んだほうがいいわよ」
木原「え? あ、ああ……」
上条「――つまり節約というのは、いかに最低出費で、いかに効率よく、
かつ無駄の無い買い物がうんたらかんたら……」クドクド
インデックス「とうまってば節約スイッチ入っちゃってるんだよ……」
―――
――
浜面「卵料理って何作ったらいいんだ?」
麦野「何でもいいわ。 材料を提供したから半額でいいわよね」
インデックス「甘いんだよ! 4分の3で妥協してあげてもいいけど」
麦野「料理長が値段をまけてくれるなんて珍しいわね」
インデックス「計算機で計算した結果なんだよ!」エッヘン
上条「何か科学に馴染みすぎてねーか……?」
インデックス「じゃあこの間メニューに追加したカレープリン改を作るんだよ!」
麦野「相変わらずのネーミングね」
木原(何だこの店のメニュー!? ぜんぶカレーじゃねぇか!
カレーパフェ!? 狂ってやがる!)
木原「っつか俺は腹パンパンだからなんも食わねぇぞ?」
麦野「食べれないときは持ち帰れるから大丈夫よ」
浜面「じゃあ俺と料理長で厨房入ってくるわ」
上条「ああ、任せた」
麦野「それにしてもいつも客がいないわよね……
経営は大丈夫なの?」
上条「心配しなくてもちゃんと来てますよ。 ここは夜がピークなんで」
木原「カレー店なのに珍しいな」
麦野「まあ貸切みたいで気が楽だけどね」
ガラッ
上条「お、噂をすればお客さん、いらっしゃいませー!」
ショチトル「……」
上条「お一人様でよろしいですか?」
ショチトル「……複数いるように見えるか?」
上条「え、ああ、お一様ですね、どちらのお席に……」
ショチトル「……」
上条「……」
麦野「……ねえ! あなた良かったら私の隣に座らない?」コッチコッチ
ショチトル「……」
上条「えと……お好きな席にどうぞ?」
ショチトル「……隣失礼する」
麦野「どうぞ」ニコ
木原「オイ何してんだ小娘」ボソボソ
麦野「寂しそうな顔してたんだもん。 放っとけないでしょ」ボソボソ
木原「だからってお前な……」ボソボソ
ショチトル「……」
麦野「……」
木原「……」
木原(なんか空気重くなったー!)
上条「ご、ご注文は?」
ショチトル「……」
上条(何なんですかこの子ー!?)
浜面「カレープリンお待ちー!」ヒョコ
上条(はまづらぁああ……! ナイスタイミング!)
麦野「見た目は前のと変わってないわね」
木原「オイオイ俺食わねぇっつったのに何で二個頼んでやがんだ」
インデックス「ごめんなんだよ……あなたも食べるのかと思って
作っちゃったんだよ……」シュン
木原「あ、いやそんなに責めてねぇから落ち込むなよ?」
浜面「お? そっちは麦野の友達かなんかか?」
ショチトル「いや私は……」
麦野「そうそうたった今友達になったのよ」
ショチトル「……!?」
浜面「そうか! じゃあ俺の友達でもあるな!」ヨロシク
上条「おい、一応客なんだから礼儀くらいだな……」
ショチトル「……別に気にしていない」
浜面「ほら、気にしないって言ってるしさ!
この店のいいところはフランクな店員がいることだろ?」
上条「いつ誰がそんなこと言ったんだよ!
……あー! もうなんでもいいや!」
麦野「そうそう、堅苦しいのは似合わないわ」モグモグ
インデックス「むぎの、新作の感想は?」
麦野「……前と違ってプリンの中にもカレーが入っていてユニークね。
カラメルもカラメルの絶妙な甘さと苦さのバランスがとてもいいわ」
インデックス「なかなか好評価で嬉しいんだよー!」パァァ
麦野「あ、木原さんが食べないっていうからあなたにプリンあげるわ」
ショチトル「いいのか?」
麦野「遠慮しないでちょうだい。 そういえば名前は?」
ショチトル「……ショチトル」
麦野「ショチトルね。 私は麦野沈利よ」
ショチトル「……」パク
麦野「どう? おいしいでしょ? この店のメニューは全部
一級品なのよ」ニコ
ショチトル「……」パクパク
麦野「……初対面で言うのもどうかと思うんだけど、
あまり思いつめない方がいいわよ?」
ショチトル「……」ピク
麦野「図星かしら? まあ、私に相談しろなんて言わないけど、
一人で抱え込むのはお勧めしないわ。 そうだ、せっかくだし
アドレス交換しましょうよ!」
ショチトル「ケータイ、というものか? 持ってはいるが生憎
使い勝手があまり分からなくて……」
麦野「ちょっと貸してくれる? ………はい、登録しておいたわ。
メールの練習相手くらいにはなってあげられるわよ」
ショチトル「……ありがとう」
麦野「いえいえ」ニコ
ショチトル「…………喧嘩したんだ」
麦野「……」
ショチトル「一緒に住んでいる人なんだが……
家から追い出してしまって」
麦野「……仲直りできていないのね?」
ショチトル「……」コク
麦野「……話してくれてありがとう。
初対面の分際で何って思うかもしれないけど、
私でよければ相談相手になるわ」
ショチトル「エツァリって言うんだ」
麦野「一緒に住んでた人ね。 彼氏さん?」
ショチトル「いや、義兄……のようなものだ」
麦野(複雑なご家庭なのかしら……)
ショチトル「居候している分際でエツァリを追い出したんだ……」
麦野(……私達が第一位を追い出す、みたいな感じかしら)
麦野「喧嘩の原因は何だったの?」
ショチトル「……」
麦野「あ、無理に聞こうってんじゃないのよ。
話したくないならそれで……」
ショチトル「タンスの中を……見られたんだ」
麦野「……タンス?」
ショチトル「引き出しを間違えただけだというのは分かってるんだが……
その……下着の入っている引き出しだったんだ」カァァ
麦野「……エツァリ君に下着を見られてしまったというわけね」
ショチトル「恥ずかしさのあまり追い出してしまったんだが、
それきり家に戻ってこなくて……」
麦野「それは心配ね……どこにいるか分からないの?」
ショチトル「一度メールというものを送ってみたんだが、
『自分は未熟だから修行してくる』と返ってきてそれっきりなんだ」
麦野「相当ショックだったんじゃないかしら……」
ショチトル「今は本当に悪かったと思ってる。
あの時は気が動転してたんだ」
麦野「年頃の女の子はみんなそうよ」
麦野(……私も木原さんに同じことしたわよね)
ショチトル「麦野。 私はどうしたらいいんだ?」
麦野「そうね……エツァリ君が帰ってくるのを待つしかないわね」
ショチトル「やっぱりそれしかないのか……」
麦野「すぐ帰ってきてくれるわよ、そんなに落ち込むことないわ。
話を聞く限りだと、エツァリ君はショチトルのこと大好きみたいだし」
ショチトル「エツァリお兄ちゃん……」ショボ
麦野「きっとエツァリくんは、ショチトルに相応しい兄になろうと
奮闘してるのよ。 帰ってくるころには一回りも二回りも
成長してるんじゃないかしら」
ショチトル「そうかな……帰ってくるかな……」
麦野「帰ってくるわよ! お兄ちゃんはショチトルを見捨てるような
人間だったの?」
ショチトル「……」フルフル
麦野「……お兄ちゃんが帰ってくるまで、私が遊びに行ってあげるから!」
ショチトル「……ありがとう。 何だか気持ちが楽になった」
麦野「そう、良かったわ」ニコ
―――
――
麦野「じゃ、そろそろ私達は帰るわね」
ショチトル「……あとでメールを送るからな」
麦野「楽しみにしてるわ」
浜面「麦野! お前にちょっとプレゼントがある」
麦野「何? 指輪でもくれるの? 物だけもらっておくわ」
浜面「違ぇから! ほら、これだ」ドン
木原「なっ……!」
麦野「こ、これ……!」
浜面「どうだ? 卵入りダブルカレー饅頭だ!」
ショチトル「ダブルカレー饅頭……?」
木原「ちょっと待て、何で3つあんだよ」
浜面「いや、残りの卵と店にある卵全部使ったからさ……」
インデックス「ええ!? 卵全部使っちゃったの!?」
上条「悪いインデックス……浜面が吹っ切れちまって
歯止めが利かなかったんだ」
浜面「もう俺一人でダブルカレー饅頭作れるし!
お前らの手伝いなんていらねーんだよ!!」ハハハハハ
麦野「というか浜面、金持ってんの?」
浜面「……持ってません」
麦野「ま、それくらい私が買うわよ。 持ち帰って晩御飯にするわ。
第二位とリベンジマッチよ」
木原「嘘だろ……お前帰ってからそれ丸々食うつもりなのか……!?」
麦野「さすがの私もダブルカレー饅頭は食べきったことがないのよ。
第二位と勝負するのはすこし不利になりそうね……」
インデックス「むぎのの食べっぷりだけは評価してあげるんだよ!」
麦野「だけ……?」
木原「それよりこれどうやって持ち帰るんだ?」
麦野「……」
浜面「……」
上条「……」
インデックス「……気合で頑張るんだよ」
―――
――
麦野「友達が出来たわ……」ニヨニヨ
木原「良かったな、これからは俺じゃなくてそいつと遊べ」
麦野「それとこれとは違うわよ」
木原「めんどくせぇな……」ポリポリ
麦野「料理覚えるんでしょ、意地でも叩き込んでやるわ」
木原「おー怖ぇ怖ぇ。 さすが人のパンツに手を出すだけあるわ」ケラケラ
麦野「あ……その、それに関しては……悪いと思ってるわ……」
木原「あ? どうしたいきなり」
麦野「い、いや、なんでもないわ。 ほら家入りましょ。
少しくらい寄っていって」ガチャ
木原「言われなくてもそのつもりだけどな。 っつかこの石垣の惨状は何だ?
爆発でもしたのか?」
麦野「何があったのかしら……」
麦野「ただいまー! ……あれ」シーン
木原「んだ? 誰もいねぇのか? っつか饅頭重いんだよ……」
麦野「……何この殺人現場のような光景は」
木原「あーあー、ガキ共揃って雑魚寝しやがって……ったく、
夜寝れなくなってもしらねぇぞ?」
垣根「ん……? 麦野か……」ムク
番外個体「騒がしいな……」パチ
木原「ほら寝れなくなる前にさっさと起きちまえ」ポンポン
打ち止め「うーん、あと5分……ってミサカはミサカは
定番のしぇりふを言ってみゆ……」ムニャムニャ
垣根「なんだもう外真っ暗じゃねぇか!?」ガバッ
海原「げふっ」
垣根「おふっ、なんだ海原か……こんなとこで寝てんじゃねぇよ……」
海原「そんな理不尽な……」
―――
――
番外個体「第一位が全然起きないよ」ユサユサ
打ち止め「この人は寝るときは寝るからねって
ミサカはミサカはこの人に眠気は鬼門だと言ってみる」
海原「もう放っておいたらいいんじゃないですか?」
木原「いや、もったいねぇだろ」
垣根「もったいない?」
木原「お前さ、コイツが寝てたらまず何を思う?」
垣根「いや……寝てるなーって思うな」
木原「甘ちゃんだなー。 そんなんだからいつまで経っても
コイツに勝てねぇんだよ」
垣根「なんだと!?」プンプン
番外個体「ミサカだったら寝込みを襲うね」ギャハ
麦野「私は顔に落書きするわ」
打ち止め「ミサカは一緒に寝るよ! ってミサカはミサカは
自分の意見を出してみたり!」
海原「自分だったら……弄り倒しますね。 録画しながら」
木原「それだ」ピンポーン
垣根「なんて酷いやつらなんだ……」
打ち止め「ミサカは酷くないもんってミサカはミサカは
誤解を解いてみる」
垣根「打ち止めちゃん以外のやつらだよ」ナデナデ
木原「よーし録画準備OK! まず最初はこの耳かきの先に
付いてるふわふわしたやつで耳を……」
なんやかんやで>>636へ続く
【1日まとめ】
4:00 麦野起床
↓
6:00 麦野が木原の家へ
海原起床
↓
7:00 垣根起床
↓
9:00 麦野・木原買出し
垣根面接開始
↓
9:30 卵料理開始
一方通行起床
↓
11:00 かに玉完成
Wii sports プレイ中
↓
12:30 プリン完成
垣根帰宅
↓
13:00 麦野・木原インドックスカレー来店
チーズ工場に番外個体・打ち止め乱入
↓
14:00 ショチトル来店
表札破壊
↓
15:00 第一次マッサージ戦争勃発
↓
16:00 昼寝TIME
↓
18:00 麦野(と木原)帰宅
↓
19:00 一方通行起床
↓
19:30 晩御飯
病室
番外個体「……結局入院とかもやしにも程があるよね」
一方通行「肋骨折れてンだからしょうがねェだろ……」
番外個体「そんな体でよくあんだけはしゃげたもんだね」
一方通行「もっと過酷な状況生き延びてきた俺にとっちゃ
こンくれェ痛くもかゆくもねェンだがな」ケラケラ
番外個体「どれ」ツン
一方通行「あぐっ!?」ズキ
番外個体「痛いんじゃん」ケラケラ
一方通行「オマエ……俺は一応けが人なンだぜ……?
もっと労われよ、癒せよ、崇めろよ」
番外個体「欲張りだね。 ひとつに絞りなよ」
一方通行「俺を崇めろ」
番外個体「却下」
一方通行「ひとつに絞れっつったのオマエだろ」
番外個体「ほら、まだ二つ残ってるじゃん」
一方通行「何この流れ? クイズ? じゃ、俺を労われ」
番外個体「そうじゃないでしょ」バチコーン
一方通行「ぐほァッ!?」ズキン
番外個体「目の前にミサカがいたら問答無用で癒しでしょ?」バチコーン
一方通行「ちょ、ま、げふゥ!」グハ
番外個体「あ、怪我してるの忘れてた」パッ
一方通行「死ぬかと思った……」ズキズキ
番外個体「ごめんごめん、いつものノリでやっちゃった」テヘ
一方通行「テヘ☆ じゃねンだよ!」
番外個体「あなたがテヘって言うと不気味」ゾワ
一方通行「悪かったなこンな顔で!!」
番外個体「ミサカもこんな可愛くてごめんね」
一方通行「自分で言ったな……」
番外個体「だってミサカ可愛いでしょ?」ウルウル
一方通行「……まァ、それなりには」
番外個体「じゃ、はい」グイ
一方通行「……何だよ顔近ェな」
番外個体「この鈍感野郎」ブス
一方通行「あー、わァったよ。 オラ、目ェ閉じてろ」
番外個体「何で?」
一方通行「え、あ、いや、こォいうのって普通目ェ閉じるンじゃねェの?」
番外個体「素直に恥ずかしいって言いなよ」ケラケラ
一方通行「違ェし! 恥ずかしくなンかねェし!
いいぜオマエの目ガン見でキスしてやるよォ!!」グイ
ガラッ
海原「一方通行さーん、お見舞いに……」
一方通行・番外個体「」←キスする直前
海原「……」
海原「ごゆっくりどうぞー」ガチャ
一方通行「うわァァァァァァァァァァァ!!!!」ボフッ///
番外個体「にゃあああああああああ!!!!」ボフッ///
―――
――
打ち止め「でね、ミサカはね、りんごでうさぎさんを作ってきたの!
ってミサカはミサカはお披露目してみる!」
一方通行「うさぎさン……だとォ!? 海原ァ!
クソガキに包丁持たせやがったのか!?」
海原「大丈夫ですよ、怪我はしていませんので」
一方通行「そォいう問題じゃねンだよ! 危ねェだろォが!」
打ち止め「ミサカはもう一人でうさぎさんも作れるんだよ!
そんなに過保護にしなくても大丈夫かもってミサカはミサカは言ってみる」
一方通行「オマエは包丁の危険さを知らねェからそンなことが言えンだよ」
打ち止め「え? 包丁で指を切らないようにすればいいんじゃないの?
ってミサカはミサカは細心の注意を払って包丁を握っているって言ってみたり」
一方通行「うちの包丁はな、黄泉川ンとこの包丁と仕組みが違ェンだ」
打ち止め「仕組み? ってミサカはミサカは聞き返してみる」
一方通行「あァ。 12歳未満のガキがうちの包丁を持つと、
そのガキは包丁に生気を吸い取られちまうンだ」
海原「なんと……!」
一方通行「もォ子供じゃねェからって何回も包丁を使ってるとな、
段々包丁に生気が吸い取られて、しまいには自分が包丁になっちまうンだ……」
打ち止め「い、いくらなんでもそんな見え透いた嘘にミサカが騙される
わけがないってミサカはミサカは震えながら言ってみたり」ブルブル
一方通行「包丁になっちまったガキは、自分の周りにいた人間を片っ端から
刺し殺していくらしいンだ……」
打ち止め「え……」ガクガク
一方通行「……そォか……俺は包丁になっちまった打ち止めに
刺されて死ぬ運命なンだな……」ホロリ
打ち止め「……ミ、ミサカは12歳になるまで包丁は使わないって
ミサカはミサカは誓いを立ててみたり」ガクブル
番外個体「うっわ、茶番すぎて笑えないわ」
一方通行「しょうがねェだろ、こォでも言わねェと危なくて気が休まらねェ」
番外個体「あなたは過保護すぎるんだよ」
一方通行「本来ならオマエにも刃物は握って欲しくねェンだが、
そォすっとオマエの飯が食えねェからな。 妥協してンだ」
番外個体(えっ、ミサカの作るご飯食べたいのかなこの人)
海原「自分は12歳以上だから包丁になる心配はありませんね……
打ち止めさん、貴方が12歳になるまでは自分があなたの手足となり
包丁を扱って見せましょう」グッ
打ち止め「海原お兄ちゃん……! 足になる必要はないよ……!
ってミサカはミサカは感嘆の声を上げてみる!」キラキラ
海原「今ここに『包丁同盟』が誕生した……!」
一方通行「なンか海原も騙されてくれたみてェだけどまァいいか」
番外個体(帰りに料理本買っていこうかな……)ソワソワ
一方通行「そォいや他のやつらはどォした? 家にいンのか?」
海原「ああ、垣根さんと麦野さんなら下の階で診察受けてると思いますよ。
なんか二人ともお腹が痛いらしくて」
一方通行「腹が痛いだァ? 昨日のでけェ饅頭のせいじゃねェのか?
あいつら妊婦みてェになってたしよォ」
海原「診察が終わったらここに寄るように言ってあるので、
そろそろ来るんじゃないですかね?」
ガラッ
垣根「……よお」ゲッソリ
一方通行「垣根……か?」
垣根「俺のせいで入院させちまって……悪いな……」
一方通行「いや、それはいいンだが、オマエ何でそンなげっそりして……」
ガラッ
麦野「遅くなったわ……第一位……元気?」ゲッソリ
一方通行「オマエもかァァァァァ!?」
木原「ほら、ここ段差あっからつまづくなよ?」ヨイショ
麦野「ごめんなさいね……木原さん……」
一方通行「やべェ木原くンが介護師に見える」
海原「お二人とも大丈夫なんですか? 腹痛は治まったんですか?」
垣根「一方通行……ちょっとベッド半分貸して……」ノソノソ
番外個体「やめてよ、ミサカだって入りたいけど我慢してるのに」グイグイ
一方通行「オイィィィィ!? やめろ! 二人共来ンな!
俺骨折れてンだよ! うぎゃァァァァ……」ギュゥゥゥゥゥ
麦野「木原さん、ちょっとそこの椅子とってくれないかしら?」
木原「これか? ほら」
麦野「ありがとう、よっこらせ」
海原「なるほど、これは重症ですね」
打ち止め「どうしてこんなに弱ってしまっているの?
ってミサカはミサカは疑問に思ってみる」
木原「それなんだがよ、さっき二人とも手術してきたばっかりなんだ」
一方・海原・番外・打止「「「「!?」」」」
木原「食べすぎによる胃袋裂傷だとよ。 昨日カレー饅頭を
無理して完食したのが原因だろうな」
一方通行「マジで饅頭が原因だったのかよ……」
打ち止め「入院しなくて大丈夫なのってミサカはミサカは
二人を心配してみたり……」
木原「本当なら入院しなきゃなんねぇ位重傷らしいんだが
こいつらときたら入院を頑なに拒みやがってよ」ヤレヤレ
一方通行「何考えてンだオマエら……そンな状態じゃ
まともな食事できねェだろォが、おとなしく入院して点滴でも打っとけ」
垣根「何言ってんだお前に続いて俺らまで入院なんてしたら
入院費用が馬鹿になんねぇだろ!?」
一方通行「第一位なめンじゃねェェェ!! それくらいどォってことねェンだよ!」
麦野「そういうことじゃなくて……」
一方通行「あァ? 何だよ」
麦野「アンタに負担をかけたくないのよ。 私も台車も」
垣根(何故ここで台車って呼ぶし)
一方通行「負担だァ? オマエらそンなこと気にしてンのかよ」
麦野「第一位にとっては『そんなこと』でも私たちにとっては『大事なこと』なの」
垣根「そうだそうだ! いつまでも俺らがおとなしく
養われてると思ったら大間違いだぜ!」
海原「そうですね、一方通行さんに甘えてばかりでは自立できませんしね」
垣根「それに俺の場合入院したら仕事に行けなくなるだろ……
せっかく受かった仕事だから毎日行きたいんだよ」
一方通行「仕事ォ? オマエ仕事してンのか」
垣根「昨日言ったのにスルーしたじゃねえかあああああ!」ウワァァァン
一方通行「そ、そォだったか……?」
海原「ああ、そういえば帰ってきたときに仕事がどうのって言ってましたね」
一方通行「まァ……良かったじゃねェか。
ぜいぜい長続きするよォに頑張るンだな」ケラケラ
垣根「ハッ、俺にはもう既に美容師になるという目標ができたからな!
そう簡単に辞めねぇよ!」
一方通行「えっ、美容師?」
垣根「えっ、駄目なの?」
一方通行「いや……チーズ工場はどォした?」
垣根「ああ……まあ趣味程度に?」
一方通行「……そォか」
垣根「……」
一方通行「……」
垣根(えー? 何この空気!?)
番外個体「……ねえ、『あれ』渡さなくていいの?」
一方通行「……」
打ち止め「あれって何? ってミサカはミサカは聞いてみたり」
一方通行「あンま気にすンな。 たいしたことじゃねェ」
番外個体「素直じゃないな、ミサカ勝手に出しちゃうよ」コレ
垣根「……表札?」
木原「ああ、そういえば石垣ごとぶっ壊されてたな」
番外個体「さっき第一位が作ったんだよ」
垣根「一方通行が?」
一方通行「……悪ィかよ」プイ
垣根「いや、お前チーズ工場嫌がってたじゃねぇか。
なんでまた同じもん作ってんだよ?」
一方通行「同じじゃねェよよく見やがれ!!!」プンスカ
垣根「ええ!?」
一方通行「前の表札はオマエのきったねェ字で適当に作られてただろ!?
これは俺の達筆な字で丁寧に作られてるンだよ見て分かれ!!」
麦野(要するにまったく変わってないわね)
一方通行「何つーか……俺の中じゃもォあの家は『チーズ工場』以外の
何でもねェンだよ。 最初は嫌だったはずなンだけどよ」
木原(俺だけ話について行けてねえな)
一方通行「だから、オマエのそのチートなチーズ能力使って石垣適当に直して
この表札適当に貼り付けてこい」
垣根「い、いいのか……!?」
一方通行「あァ、家主公認の表札だ。 胸張って付けろ」
垣根「お前が認めてくれるなら、美容師兼台車兼工場長目指すわ俺!!」
一方通行「物騒な仕掛け付けたら追い出すからな」
一週間後
一方通行「やっと退院かァ……」カツカツ
一方通行(アイツらのことだから迎えに来ると踏んでたが、
誰も来なかったな……)カツカツ
一方通行(別に寂しいとか思ってねェし!? 予想が外れて
悔しいだけだし? ……それじゃまるで迎えを期待してたみてェじゃねェか!)ガァァァァ
一方通行「……ン?」
垣根「お、一方通行じゃねえか」トントンカンカン
一方通行「何してンだオマエ」
垣根「何って、お前に言われた通り石垣直して表札貼ろうとしてんだよ」
一方通行「いや、そォじゃなくて何で能力使わねェの?」
垣根「いや、自分で壊したもんは自分の力で直そうと思ってな」
一方通行「能力も自分の力の一環だろォが……」
垣根「ま、あれだ。 何でも楽しようとしちゃいけねぇ。
能力使いまくって仕事してたら店長に怒られたわ」
一方通行「そりゃそォだろ」
垣根「だから一週間ずっと俺一人の力で直し続けてたんだよ、
すごくね? 俺すごくね?」
一方通行「すげェすげェ」
垣根「よし、後は表札貼るだけだな」
一方通行「さっさと貼っちまえよ」
垣根「……一方通行、お前が貼ってくれ」
一方通行「はァ? 何でだよ」
垣根「やっぱ、家主のお前に表札を貼ってもらいてぇんだよ」
一方通行「誰が貼ったって同じだろォが……」
垣根「頼む! 一生に何回かのお願い!」ドゲザ
一方通行「軽い願いだなオイ。 ……ったく、貸せオラ」
ペタ
一方通行「チーズ工場一丁あがりィ」テーレッテレー♪
垣根「まいどーー!」ワァァ
一方通行「お前時間考えろ、もう夜だぞ」
垣根「俺の心はいつでも真昼の太陽さ」キリ
一方通行「頭狂ってンな、さっさと家入れうざってェ」
垣根「お前が先入れよ。 家主ファーストって言うだろ?」
一方通行「初めて聞いたわそンなの」
垣根「俺が玄関までエスカレートしてやっからよ」ホレホレ
一方通行「玄関目の前だけどな。 オマエの頭の沸騰がエスカレートしてンぞ」
垣根「家主様のお帰りでーす!!」ガチャ
一方通行「だからうっせェ……」
パンッ パンッ パパンッ ←クラッカー
海原「一方通行さん退院おめでとうございます!」
打ち止め「おめでとー!ってミサカはミサカは
祝福してみたり!」
麦野「おめでとう、第一位」
木原「めでてぇなあああああ!!!!」
番外個体「まったく待ちくたびれたよ、おかえり」
一方通行「オマエら……」ウルウル
垣根「ミサワせんせー、一方通行が泣きそうでーす」ハーイ
番外個体「ほらほらこっち来てみてよ」ジャーン
一方通行「な、何だこの豪華な料理は……!?」
番外個体「あなたの退院を祝ってみんなで作ったんだよ」
打ち止め「主に番外個体が作ったんだけどねって
ミサカはミサカは暴露してみたり」
一方通行「オマエ、料理出来たのか……?」
番外個体「勘違いしないでよね、病院であなたが私の料理が食べたいみたいな
こと言ってたから一週間猛練習したとかじゃないんだから」
海原「なんというテンプレ」
木原「ほらお前らとりあえず座れ、一方通行ちょっとそこのビデオカメラ取ってくれ」
一方通行「これか? ビデオでも見ンのか?」
木原「ああ、退院祝いにこの間撮ったビデオ見せようと思って」
麦野「そのビデオってまさか……」
番外個体「ミサカは今酷い嫌がらせを見た」
打ち止め「ミサカは何も知らないよーってミサカはミサカは
目を泳がせてみたり」
海原「皆さん座りましたね? じゃ、一方通行さんの退院を祝して!」
一同「カンパーイ!」
その晩のチーズ工場はとても賑やかで、近所の住民が警察に苦情を通報したという。
★おしまい★
406: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:44:49.30 ID:tAWgjGHq0
一方通行「いや、俺は別にこのままでいいンだが」
結標「遠慮しないでちょうだい」
一方通行「オマエに任せるのが怖ェンだよ!」
海原「じゃあ、自分は番外個体さんとそちらの
ソファで待機してますので」
番外個体「漫画とかあるじゃん、読もーっと」トテテ
海原「小走りな番外個体さん……無邪気で美しい」クラッ
結標「んじゃ、とりあえずエクステつけましょうか」
一方通行「何で? 髪は足りてンぞ? どこに付けるンだ?」
結標「とりあえず腰くらいまでの白髪にしようかなと思って」
一方通行「はァ!? オマエ何考えてるンですかァ!?
俺は男ですけどォ!?」
結標「イメチェンを甘く見ないでちょうだい。 貴方の凶悪な
イメージを払拭するには性別の壁を乗り越えるくらいの暴挙に
出ないと駄目だと思うのよ」
一方通行「自分で暴挙って言ったなオイ! マジでやンのか?!」
引用元: ・一方通行「家がないだァ?」 垣根「お前のせいだよ!」
とある魔術の禁書目録(インデックス)II 一方通行 (アクセラレータ) (1/8スケール PVC製塗装済み完成品)
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407: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:45:25.01 ID:tAWgjGHq0
結標「大丈夫よ。 世の中には髪の長い男性もいるわ」
一方通行「俺も髪の長い部類に入ってると思うンですけどね!!
つーか腰までとか長いってレベルじゃねェだろ!」
結標「ちょっと前髪伸ばしてくれない?」
一方通行「聞いてねェもンな!」オイ
結標「あ、髪伸ばせるんだったらエクステいらないじゃない。
もう全部の髪腰くらいまで伸ばしてくれない?」
一方通行「何つゥ無理難題を押し付けやがンだ!
そンな簡単に伸ばせるもンじゃねンだよ!」
結標「……小さい頃ね、海に行ったのよ」
一方通行「え、いきなり何……」
結標「幼稚園の遠足みたいなものだったかしらね。
その頃の私は今と違って髪が短かったわ。 丁度今の
貴方くらいの長さね」
一方通行「へェ……」
408: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:45:52.22 ID:tAWgjGHq0
結標「私はその時仲の良かった友達と海辺で遊んでいたわ。
その子は腰までは行かないけど結構髪が長かったの」
結標「遊んでるうちにね、もうちょっと奥行ってみようって
ことになって。 先生の目を盗んで沖に出たわ」
結標「最初は足がつかない深さに興奮して浮き輪に
捕まりながらはしゃいでいたのだけれど、段々と自分たちが
流されていることに気づいたのよ」
結標「遠ざかっていく陸、広がっていく水平線。 怖かったわ。
人間ってパニックになると怖いものよ。 私は友達のことなんて
忘れて無我夢中でバタ足したわ。 でもどんなに足掻いても
陸は遠ざかっていくの」
結標「段々流れが速くなってきて、疲れ果てて、
半分諦めかけてたときにね。 横にいるはずの友達が
いないことに気づいたの」
結標「周りを探したらその友達はちょっと離れたところにいた
のだけど、私だけが沖に流れていってて、友達は
全然流されていなかったわ」
結標「よく見たら、その子の長い髪がね、すぐそばの……
茂みの木に引っかかってたの」
409: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:46:19.20 ID:tAWgjGHq0
結標「髪の短い私は何にも引っかからずに沖へ沖へと
流されるだけだったわ」
一方通行「……もォ、いい。 悪ィな……思い出させちまって。
だから髪伸ばしてやがったのか……」グズッ
結標(まあ、嘘なんだけど)
一方通行「俺ぐれェの髪の長さ見ると思い出しちまうって
ことだよな? すまねェ、自分のことしか考えてなかった」
結標「分かって貰えたならそれでいいわ。 でも貴方が本当に
髪伸ばすの嫌なら無理強いしないわよ?」
一方通行「今更何言ってンだ。 伸ばしてやるよ」
結標(キタ!)
一方通行「思い出させちまった侘びだ。 髪くれェ
好きにさせてやンよ。 ちょっとトイレ借りるわ」ズビッ
結標「え? ここでやればいいじゃない」
一方通行「さすがに髪伸びてるとこ見られンのは
恥ずいだろォが!!」
番外個体「何あれ。 第一位が泣きながらトイレに
駆け込んで行ったんだけど」
海原「漏らしたんでしょうか」
410: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:46:50.03 ID:tAWgjGHq0
チーズ工場(家)
垣根「思いのほか早く帰ってこれたな」ヨイショ
麦野「お姫様になった気分だった」
垣根「そりゃ俺が抱えてるベッドの上で優雅にティータイムしてたら
なあ……。 周りの視線が痛かったわ」
麦野「小腹が空いたわ。 チーズ」
垣根「ん、ちょっとまって。 新作あんだわ」ミニョーン
麦野「何? いろんな種類のチーズ作れるようになったの?」
垣根「種類っつーか……」
麦野「カルボナーラとか?」
垣根「いやそれチーズじゃねえからな。 ほら、出来た」ホレ
麦野「……別にいつもと変わらないじゃない」
411: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:47:20.00 ID:tAWgjGHq0
垣根「まあ味は変わってねえかもな。 ちょっと裂いてみろよ」
麦野「裂く……?」ミニョニョニョ
麦野「すごい! 綺麗に裂けるわ!」ミニョニョニョ
垣根「裂けるチーズを参考にして作ってみたんだ」
麦野「これ面白いわね!」ミニョニョニョ
垣根「食べるだけじゃつまんねえかなと思ってよ。
次はスライスチーズに挑戦しようと思ってる」
麦野「カマンベールチーズを作って欲しいわ。
私あれ一番嫌いなのよ」
垣根「何で嫌いなのに食うんだよ」
麦野「チーズ製造機から生産されるチーズは食べられるのよ」
垣根「……それって遠まわしに俺のチーズはチーズじゃねえ
って言ってるようなもんだよな」ズーン
麦野「第一位も言ってたじゃない。 『オマエのチーズは
チーズであってチーズじゃねェ』って」
垣根「無駄に似てる!」スゲェ
麦野「それにあれよ。 あんたのチーズはチーズじゃないのよ」
垣根「何回も言うなよちょっとヘコむ」ズーン
412: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:47:53.11 ID:tAWgjGHq0
麦野「馬鹿ね……ちょっと捉え方変えてみなさいよ」
垣根「どういう意味だ?」
麦野「常識が通用しないとか言って常識で考えちゃってるのね……
少しは頭捻れよレベル5の恥が」ゲシッ
垣根「なんだと……第四位の分際でテメェ……」
麦野「チーズであってチーズじゃないってどういうことだと思う?」
垣根「そりゃ、所詮チーズもどきってことだろうが」
麦野「だからアンタは万年第二位なのよ!」バン
垣根「第四位のお前に言われてもなんとも思わねえけどな!!」バン
麦野「いい? チーズであってチーズじゃないアンタのチーズは、
従来のチーズの価値観をそっくり引っぺがした新種のチーズ
だと思わない?」
垣根「チーズの価値観だと?」
麦野「そうよ。 チーズの常識が通用しないチーズよ」
垣根「!!」
麦野「このチーズは、チーズであり、チーズではない。
これはれっきとしたチーズということなのよ分かった!?」
麦野(どういうことだろ?)
413: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:48:23.89 ID:tAWgjGHq0
垣根「あ、ああ……こんなことにも気づけなかった俺は
やっぱり万年第二位だな……。 このチーズを極めれば
チーズアレルギーの人や麦野みてえにチーズ嫌いなやつにも
チーズという夢のカケラを渡してやることが出来るかも
しんねえ……」
麦野(なんか納得してるみたいだしいいか)
垣根「よし、もう一方通行になんと言われようとくじけねえ。
俺の最終目標はこの家を本格的にチーズ工場にすることだ!」デーン
麦野(チーズって何だっけ)
美容室
番外個体「ぎゃあ! 白髪貞子!!」バッ
海原(ちょっ、番外個体さんが腕にしがみついて……)アワアワ
一方通行「海原ァァァ!! 番外個体から今すぐ
離れやがれェェェ!!!」ダダダダッ
番外個体「ぎゃああこっち来るなああああ!!」ムギュウウウウウウ
海原(おぅふ……腕に胸がぁあああぁあぁあぁ……)ポワー
414: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:49:00.17 ID:tAWgjGHq0
結標「ちょっと貞子、暴れてないでさっさと椅子に座ってちょうだい」
一方通行「オマエが伸ばせっつたのにそれはなくねェ!?」
番外個体「ううっ……」グス
一方通行(そォいやこいつホラー系駄目だったなァ……)
海原「天国……」フラフラ
一方通行「クソ海原ァァァァァ!!」グァァァ
番外個体「ぎゃう!」ギュウ
海原「ふぇあああ……」ギュウウウウウ
一方通行(クソったれがァあああァあっァァあ!!!!!!)
結標「ほら、いつまでも貞子でいたい気持ちは
全然わからないけど早く座ってちょうだい」
一方通行「ったくしゃあねェ……! さっさとこの鬱陶しい
髪切ってくれ!!」
415: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:49:33.91 ID:tAWgjGHq0
結標「どういうのにしよっかなー」パラパラ
一方通行「ン? 何見てンだ?」
結標「ヘアカタログよ」コレ
一方通行「オイこれ女物じゃねェかよ!
こんなふわっふわした髪お断りだからな!?」
結標「さっき好きに髪いじっていいっていったじゃん」
一方通行「あくまで男前提でだよォ!!」
結標「こう、のれんみたいに前髪よけてるのが
シュールで面白いわね。 写メっとこ」ピロリーン
海原「あ、それ自分に送っておいてください」
番外個体「あ、ミサカも」ケロッ
一方通行「切り替え早すぎンだろオマエらァァァ!!」
結標「ホラ、笑いなさいよ」ホレホレ
一方通行「これで満足かあ゛ァ゛ァ!?」ニヤァァァァァァァァアア
416: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:50:09.31 ID:tAWgjGHq0
番外個体「ぎゃああああ!」ギュッ
海原「おふっ」ムギュ
一方通行(しまったァァァァァ!!)
一方通行「結標ェ!! 早く前髪だけでも切ってくれ!!」
結標「そんなに焦らなくても髪は逃げていかないわよ」ホゾン
一方通行「逃げねェから困ってンだよ見て分かれよ!!」ウガア
結標「貞子の分際で……」ボソッ
一方通行「え!? 何!? 分際って言ったの!?
理不尽にも程があンだろォ!!」
結標「はい前髪切りますよー目に入らないようにしてくださいねー」シャキン
一方通行「ぎゃああああ!! ハサミを目に向けるなァァァ!!」ギャアア
結標「はいちょっきーん」ザクッ
一方通行「えっ」
結標「……あら、眉上ぱっつんになってしまったわ」テヘ
417: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:50:56.29 ID:tAWgjGHq0
一方通行「何してくれやがンだボケェェェェェ!!!??」
結標「何よ。 失敗しても伸ばせるしいいじゃない」
一方通行「オマエ俺の能力を何だと思ってンだ!?
第一さっきのでほとんどバッテリー使ったわ!」
結標「えっ」
一方通行「えっ!? どうせ伸ばせるしいいや!
みてェな適当な感じで切ったの!?」
結標「うん」
一方通行「うン。 じゃねンだよォォォ!! 人の髪を
何だと思ってンだテメェはァァ!!」
結標「……おもちゃ?」
一方通行「……はァ……。 そォいえば俺の周りはこンなやつ
しか居なかったわ。 うン。 分かってたよ。 うン」
結標「……まあ、私も悪かったしせちゅじつに謝るわ」ペコ
一方通行「」
418: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:51:28.74 ID:tAWgjGHq0
右脳と左脳が割れた気がした。
切り開かれるその隙間から、何か鋭く尖ったものが頭蓋骨の
内側へ突き出してくる感覚が確かにあった。
脳に割り込んだ何かはあっという間に一方通行を飲み込んでいく。
そして訪れるのは、
一つの暴走。
「ォ」
自身を構成する柱が砕ける音がした。
こうなってしまった彼はもう誰にも止めることは出来ない。
「ォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
噴射。 怒りの象徴。 暴走の象徴。
その一対の黒い噴射は瞬く間に数十メートルも伸び、
店の内装を削り取った。
419: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:52:05.00 ID:tAWgjGHq0
「結標さん! 逃げてください!」
「ちょっ……なんなのよ一体!?」
「第一位! 落ち着いてよ! ミサカたちが悪かったから!」
外野が騒いでいる。
しかしその声は黒い噴射の轟音にかき消され、
彼の耳に届くことは無かった。
もっとも、届いても無意味だっただろう。
「あ、ァァァァあああああああああ!!!!」
この感情は何だ? 悲しみ? 嫉妬? 怒り?
わからない。
何に対して?
わからない。
この感情はどこに向ければいい?
わからない。
むしゃくしゃする。
420: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:52:39.33 ID:tAWgjGHq0
何に対して翼を振るうわけでもなく、ただがむしゃらに振り回している。
長く美しい白髪がぐしゃぐしゃに絡まっている。 その隙間から
見えた彼の紅い目には涙が浮かんでいるようにも見えた。
たすけて
誰か
海原光貴、結標淡希、番外個体の三人には、
一方通行がそう言っている気がしてならなかった。
その中で、番外個体が一方通行の元へ近づこうとして、
噴射の勢いで飛ばされたハサミに当たって倒れた。
海原が慌てて腕を掴み自分たちの方へ引き戻すが、
彼女の太ももからは一筋、二筋の血が流れていた。
(あの人を止める方法は無いの? ミサカたちじゃ
歯が立たない。 こんなことでお店がめちゃくちゃになる
なんておかしいよ!)
さらに咆哮が与えられ、店内が黒一色に染められた。
幸いにもこの店は学園都市最先端技術の未元物質コーティングを
採用していたため、能力対策は万全だった。
421: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:53:17.30 ID:tAWgjGHq0
だが能力とはいえ、未知の力に対しての対策など出来るはずもない。
壁の軋む音が聞こえ、メキメキと亀裂の入った箇所が目立つ。
彼の黒い翼が与えるのは、人の領域を超えた絶望。
もしコーティングが破れ、店を吹き飛ばし、彼が街中へ出てしまえば。
そう考えただけでも恐ろしい。 そして一方通行の心は
再び砕け、二度と取り戻せなくなるかもしれない。
圧倒的な力を前に三人はただ呆然とすることしかできなかった。
しかし誰もが希望を失わなかった。 彼を助けたい。 救いたい。
そういった思いが確かにあった。
そんな彼らの前に、
―――最後の希望が舞い降りる。
422: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:53:47.62 ID:tAWgjGHq0
それは、10歳前後の少女の形をしていた。
肩まである茶色い髪に、活発そうな顔立ち。
空色のキャミソールの上から男物のぶかぶかのワイシャツを
羽織った服装の『希望』は、店のドアを開けるなり、
少女なりに状況を察したのだろう。
吹き荒れる突風のなか、一生懸命に進み
一方通行の元へとやってきた。
「調整終わったよってミサカはミサカは報告してみる」
彼女は咆哮を続ける一方通行の背中へと近づいていく。
一方通行がゆっくりと振り返る。
ブォ!という音と共に生み出された風圧で内壁が
きしむ音がした。
その場に居た全員が悲劇を想像した。
あの黒い噴射に巻き込まれ、ぐしゃぐしゃになる
光景を思い浮かべた。
だが、
ガキィィィ!という凄まじい音と共に、
黒い翼は打ち止めの目の前で停止する。
423: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:54:23.02 ID:tAWgjGHq0
「一方通行さん……!」
海原光貴は安堵の声を漏らしていた。
他の二人も同じことを思っているだろう。
彼の自我はまだ完全に崩壊まで至っていない、と。
一方通行の表情が強張っている。
自分の中での葛藤。 打ち止めという少女によって、
押し負けていた自我、理性が呼び戻された証だった。
「ァ……がァァァ!!!!」
何かを振り切るように一方通行は翼を振るった。
その翼の先には打ち止めがいる。
だが決して彼女は動じない。
ガキィィン!と再び打ち止めの手前で翼は停止した。
まるで見えない壁に阻まれているように。
424: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:55:04.05 ID:tAWgjGHq0
「ミサカはあなたを信じてるのよって
ミサカはミサカは微笑んでみる」
光の世界はまぶしすぎた。
急に暗がりから出た彼の目では、何も見えなかった。
自分がこんなところにいるなんて間違っているんじゃないだろうか、
と考えていた時期もあった。
そんな彼でも今ではこの明るさに目が慣れて来た。
それなのに。
光よりも光だった。
手を伸ばしたかった。
―――目が眩む。
425: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/10(日) 19:56:18.23 ID:tAWgjGHq0
「ああああああァァァァァァァァァ!!!!!!」
彼の咆哮が再び放たれる。
しかしそこにはもう圧倒的な重圧は感じられなかった。
彼女はそれを眺めていた。 次々に振りかざされる攻撃に
対し、目を瞑ることすらしなかった。 信頼があった。
だから彼女は驚かなかった。
一際大きく翼が振りかざされ、渾身の一撃が彼女に
振り下ろされる。
それが彼女の顔の前でピタリと止まった時、
一方通行の動きも止まった。
俯く彼の表情は、長い白髪に隠れて誰にも見えない。
その背中にある一対の翼が、音もなく空気に溶けるように
消えていった。 それと同時に一方通行の体から全ての力が抜けた。
彼女は両手を広げて一方通行を受け止める。
彼の体重に押しつぶされそうになりながらも、彼女は一方通行を
自身の小さな手でしっかりと、それでいて優しく包み込むように抱きとめた。
彼女は一方通行の耳元に口を寄せて、小さな声でこう言った。
「お店……めちゃめちゃになっちゃったね
ってミサカはミサカは眺めてみる」
435: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:50:24.39 ID:7CXOR5C/0
―――
――
一方通行「……本当に申し訳ございませンでした」ドゲザ
結標「いや、私たちも悪いのよ。 そんなに落ち込まないで?」
番外個体「ミサカも便乗しちゃったし……」
海原「今回ばかりは度が過ぎました。 反省してます」
打ち止め「みんなも悪いけど、お店に八つ当たりしたあなたも
悪いんだからねってミサカはミサカは念を押してみる」ビシ
一方通行「あァ……弁償代は置いていく」
海原「お互い様、ということにしておきましょうか」
一方通行「何か納得行かねェけどなァ」
打ち止め「あなたが納得しないと終わらないの!
ってミサカはミサカは説得してみる」プンプン
ガチャッ
小萌「結標ちゃーん、調子はどうで……ぎゃあああああ!
どうしたのですかこの惨状はああああ!?」ギャアア
結標「あら、小萌? せっかく来てくれたとこ悪いのだけど、
こんな状態だからしばらく営業は休止するわ」
436: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:50:56.25 ID:7CXOR5C/0
一方通行「あン? いつだかの子供教師じゃねェか」
小萌「結標ちゃん、これは一体何があったのですか……?」
結標「ちょっと派手に散髪してしまっただけよ。 気にしないで」
海原「もしかしてこの方ですか? 結標さんが居候させて
頂いている家屋の主人は」
結標「ええ、そうよ」
一方通行「何だと!?」ガシッ
小萌「ふえぇ!? いきなり何なのですかっ!?」
一方通行「オマエが結標を救ってくれた先輩かァ!!?」ユサユサ
小萌「せ、先輩……? 何のことなのか先生にはさっぱりなのですよ」キョトン
一方通行「とぼけンなァァ!! 会いたかったぜ先輩よォォ!
これからも結標をよろしく頼むぜ!!」パァァ
小萌「よ、よくわからないですけど先生にまかせるのですよ……?」
結標「……?」
海原「すみません自分が余計なことを言ったばかりに……」
437: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:51:24.76 ID:7CXOR5C/0
一方通行「ひゃっはァ! 先輩に会えて一気にテンション
上がっちまったぜェ……結標ェ! とりあえずこの髪切って
くれねェか!」ヒャッハァァァ
結標「ごめんなさい、ハサミが全部使い物にならなくなっているわ」
一方通行「」
番外個体「まあ、そうなるよね」
海原「家に帰ってから切ったらどうです? バッテリーも
もう無いのでしょう?」
一方通行「……俺は一体ここに何しに来たンだ?」ズーン
結標「テンションが下がってしまったわね」
番外個体「まあ、いいんじゃない? その髪型も似合ってるよ」ギャハ
海原「細身ですし、ボーイッシュな女性に見えなくもないですね」
黄泉川「……そもそも何で一方通行の髪がさらさら
ストレートロングになってるじゃんよ」
芳川「とうとう女装の道に走ってしまったのかしら」
438: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:51:52.99 ID:7CXOR5C/0
一方通行「!? あれ!? オマエらいつからいた!?」
黄泉川「ついさっきじゃんよ」
芳川「打ち止めを一人で出歩かせるわけがないでしょう?」
打ち止め「二人に送り迎えしてもらったんだよって
ミサカはミサカは今更な報告をしてみる!」
海原「何だか人が増えてきましたね」
結標「とりあえず店の中を片付けたいのだけど……」
一方通行「ハッ! 黄泉川!?」
黄泉川「えっ? どうしたじゃ……うぉっ」ガシッ
一方通行「よくよく考えてみりゃあオマエも先輩じゃねェか!」ユサユサ
黄泉川「は、はあ……? 何のことじゃんよ?」ユサユサ
一方通行「何でこンなに身近にいるのに今まで気づかなかったンだ!
俺を救ってくれてありがとう! 打ち止めと番外個体をよろしく!」
芳川「言葉が支離滅裂だわ」
番外個体「ホームレス関係になるとああなるみたいだね」
海原「最初の頃よりはマシになってると思うのですが
気のせいでしょうかね」
439: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:52:19.62 ID:7CXOR5C/0
黄泉川「何かその髪型でいると一方通行じゃないみたいじゃん」
一方通行「まァな、いっそのこと変装しちまうかァ?」
結標「なんかまたテンション上がったみたいね」
打ち止め「あっ、ミサカそういえばお買い物したかったんだった!
ってミサカはミサカは前に買えなかったお洋服に未練がある
ことを打ち明かしてみたり」
番外個体「そういえば前にもらったお金まだ使ってなかったね」
一方通行「何だオマエらまだ服買ってなかったのか」
打ち止め「あなたに選んでもらいたいの! って
ミサカはミサカは願望を言ってみたり!」
一方通行「しゃあねェ、今の俺は先輩に会いまくって
気分がイイからなァ! よし今から行くかァ!」
海原「え、一方通行さん? 貴方その格好で買い物行くんですか?」
一方通行「髪が長かろォが短かろォが俺は俺だ。
何か文句あンのかよ」
結標「周りからどんな目で見られるか分からないわよ?」
一方通行「今に始まったことじゃねェだろ」
打ち止め「あ、だったらあなたのお洋服も買って
着替えちゃえばいいんじゃないかなってミサカはミサカは
思いついてみたり!」
440: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:52:47.11 ID:7CXOR5C/0
一方通行「やっぱり変装ってことだな? 燃えるねェ!
とりあえずキャップ被るだけ被っておくか」
打ち止め「わあ、すごい綺麗……ってミサカはミサカは
ボーイッシュなモデルさんを見ているような気分になってみたり」
番外個体「だったらいっそ服も女物にしちゃおうよ」ギャハ
一方通行「いいねいいねェ最ッ高だねェ!!
それで俺と分かるやつが居たら結婚してやってもイイぜェ!!」
打ち止め「えっ、じゃあミサカが一番に見破る! って
ミサカはミサカはこの人は誰にも譲らないって宣戦布告
してみる!」
黄泉川「思ってたより楽しそうでよかったじゃん」
芳川「あの子が家を飛び出したときはどうなることかと
思っていたけどね」
一方通行「結標ェ! 次来る時はちゃンと散髪しねェと
ただじゃおかねェからなァァ!!」ダダダッ
打ち止め「捨て台詞にしては手抜きすぎるかもって
ミサカはミサカはあなたの後を追いかけてみたり!」マッテー
海原「あれ、一方通行さんお金払いました?」
結標「店の修理代を異常な額置いていったから問題ないわ」
441: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:53:12.70 ID:7CXOR5C/0
黄泉川の車
黄泉川「で、何で私の車に乗ってるじゃん?」
一方通行「せっかく車で来たなら乗せてくれてもイイだろ」
芳川「後部座席がぎゅうぎゅうじゃないかしら」
打ち止め「ミサカはこの人の膝に乗ってるから狭くないよ!
ってミサカはミサカは現状報告!」
一方通行「人の膝乗ってる時にはしゃぐンじゃありませン」ビシ
打ち止め「いてっ! もーっ、どうしてあなたはいつも
チョップばかりするのってミサカはミサカは文句を言ってみる」
芳川「彼なりの愛情表現よ」
打ち止め「きゃーっ、あなたってばミサカのこと愛してくれてたのね!
ってミサカはミサカはやっぱりこの人はミサカが独占するって
再三にわたって宣戦布告してみたり!」キャッキャッ
一方通行「やれるもンならやってみろ」
海原「中睦まじいですねー」ホノボノ
黄泉川「見てて飽きないじゃんよ」ニコニコ
番外個体(……)
442: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:53:44.11 ID:7CXOR5C/0
一方通行「……あァ? オマエ脚怪我してンじゃねェか」
番外個体「……別に大したことないよ」プイ
打ち止め「本当だ、太ももが少し切れてるってミサカはミサカは
番外個体を心配してみる」
海原「ああ! 何でもっと早くに自分が気づいてあげられなかった
のでしょうか! と海原は海原は自分を戒めます!!!」アアアア
打ち止め「むっ、その口癖はミサカのアイデンティティーなのにって
ミサカはミサカは敵対意識を燃やしてみる!」
一方通行「そこ、小っせェことで張り合ってンな。 痛むか?」
番外個体「別に。 このミサカはあなたを傷つけることばかり
してきたからそれの罰ってことにしといてよ」
一方通行「いきなり何言ってンだァ? とりあえず止血しとくから
ちょっと大人しくしとけ」カチッ
番外個体「大丈夫だってば!」バッ
一方通行「っ……?」
番外個体「……黄泉川、ちょっと車止めてよ」
黄泉川「どうしたじゃんよ? もうすぐ着く……」
番外個体「いいからっ!」
443: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:54:21.07 ID:7CXOR5C/0
バタンッ ダダダッ
一方通行「お、おいっ!」
海原「自分が追いかけます」ダダッ
一方通行「待て、俺もいk」ピー バタッ
打ち止め「バッテリーが切れちゃった!
ってミサカはミサカはあわててみる!」アワアワ
芳川「どうしたのかしら……」
黄泉川「悩み事でもあるのかじゃん……?」
打ち止め「今日は買い物無理そうだね……って
ミサカはミサカはしょんぼりしつつ言ってみたり」
芳川「とりあえず彼のバッテリーの充電をしてあげた
ほうがいいんじゃないかしら」
黄泉川「そうじゃんね。 一方通行の家に行くじゃん」
444: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:54:47.73 ID:7CXOR5C/0
商店街
海原「番外個体さんっ」ガシ
番外個体「……っ!」
海原「どうしたんですか一体?」
番外個体「……海原君には関係ないよ。
このミサカの問題だからさ」
海原「……話したくないことなら無理に聞こうとはしません。
でも周りの皆さんは番外個体さんを心配していますよ」
番外個体「……」
海原「少しカフェにでも行って休憩しませんか?
疲れも溜まっているのでしょう」
カフェ
海原「……悩み事っていうのは一人で抱えるとだんだん
大きくなってしまって持ちきれなくなってしまうものです」
番外個体「……」
海原「一気にとは言いません。 徐々にでいいんです。
他人に持つのを手伝ってもらってはいかがですか?」
445: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:55:16.33 ID:7CXOR5C/0
海原「一方通行さんならきっと親身に相談に乗ってくれますよ?
彼に言いにくいことなら自分でも構いませんし」
番外個体「……ミサカのは悩み事とかそういう次元の
問題じゃないんだよ。 宿命って言ってもいいくらい」
海原「……宿命、ですか」
番外個体「上位個体と第一位見てるとさ、イライラするんだよね」
海原「上位個体……打ち止めさんのことでしょうか」
番外個体「うん。 このミサカは一方通行を抹[ピーーー]るためだけに
作られた個体でさ。 悪意ばっかりが表にでるようにチューニングされてる」
海原「なんとなく一方通行さんから聞いたことはありますね」
番外個体「そんなミサカをさ、あの人は救ってくれたんだよ。
それで、これからも護ってやるって言ってくれた」
番外個体「悪意ばっかり出るって言ってもさ、やっぱ嬉しいよ。
ミサカの存在価値丸ごと引っぺがして新しい人生をくれたんだもん」
海原「一方通行さんはああ見えて根は優しいですからね……」
446: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:55:49.39 ID:7CXOR5C/0
番外個体「今の生活があるのは全部あの人のお陰なのに、
それなのにミサカは何様なんだろうね? あの人のこと罵倒してばかり。
さっきだって素直にありがとうって言えばよかったのに。
それに、ちびっこが見るといつも思っちゃうんだよね」
番外個体「何であのミサカとこのミサカはこんなに違うんだろうって。
あのミサカは素直なのになんでこのミサカはひねくれてるのって」
海原「……何言ってるんですか。 番外個体さんと打ち止めさんは
違う人間なんですから、違ってあたりまえですよ」
番外個体「人間かあ……ミサカも普通の人間だったらこんなに
悪意まみれにならなくて済んだのかな……」
海原「思ったんですけど、番外個体さんが思ってるほと貴方は
悪意にまみれてないですよ? 今だってそうじゃないですか」
番外個体「今はね。 対一方通行用に製造されたミサカは
一方通行にしか悪意を抽出しないから」
海原「でも一方通行さんに感謝してるんですよね?」
番外個体「……」
海原「なら、それでいいじゃないですか」ニコ
447: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:56:17.38 ID:7CXOR5C/0
番外個体「どういうこと?」
海原「別に無理しなくても、今までどおりでいいってことですよ」
番外個体「今までどおりって……そしたらミサカはいつかあの人に
嫌われちゃうかもしれないんだよ」
海原「一方通行さんはそんな人じゃないですよ。
番外個体さんも知ってるはずですよ」
海原「番外個体さんのそういう所を全て知った上で、
貴方を護ると言っているのでしょうし。 言葉にしなくても
一方通行さんには伝わっていると思いますけどね」
番外個体「そうかな……」
海原「言葉にするのは徐々に頑張ればいいんです。
悩むだけ時間の無駄ですよ」
番外個体「……ぶっちゃけ、上位個体が羨ましいんだよ。
ミサカはあの子みたいにはなれないからさ」
海原「確かになれないかもしれないですね。 でもそれが
マイナスになるなんて誰も言ってませんよ?
打ち止めさんには打ち止めさんの良さ、番外個体さんには
番外個体さんの良さがあるんですから」
番外個体「……ふふ」
448: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:56:46.40 ID:7CXOR5C/0
番外個体「……なーんか馬鹿らしくなってきちゃった!
ミサカらしくなーい! 忘れて忘れて!」
海原「……」
番外個体「あーあ、帰ったら何て言い訳しよっかなー。
もーめんどくさいのミサカだいっキライなんだけど」
海原「いつもの番外個体さんですね」ニコ
番外個体「む、忘れてって言ったのに忘れてないな!」ベシッ
海原「いてっ」
番外個体「きゃは☆ ……でもありがとうね。 なんか
気持ち楽になったよ。 いつかあの人にありがとうって
言ってみせるから!」
海原「自分でよければ手伝いますよ」
番外個体「何言ってんの、問答無用で手伝わせるよ?
ミサカの相談に乗ったからには途中下車は認めないから」ギャハ
449: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:57:25.04 ID:7CXOR5C/0
チーズ工場(家)
垣根「ひーーーっひーーっふぅぅぅううううう」ゲラゲラゲラ
打ち止め「カキネ笑い過ぎかもってミサカはミサカは
指摘してみる!!」ビシ
垣根「だって! こいつ! 白髪ストレートロング!
おまけにぱっつん!! どこぞの清楚なお嬢様目指してんのかよ
ってかんじだわ!! ひーーっ」ゲラゲラ
麦野「やばいわよ、これもう過呼吸の域入りかけてる」
一方通行「……」グデーン
垣根「お ん な の こ か よ っ !!!」ゲラゲラゲラゲラゲラ
ガチャ
番外個体「た、ただいまー……」オソルオソル
麦野「あ、おかえり」
打ち止め「あーっ! 一体どこ言ってたのって
ミサカはミサカは言及してみたり! ネットワークも
繋がってないから心配したんだから!」ポカポカ
番外個体「ごめんごめん、ちょっと用事があったんだよ」
海原「そうなんですよ、すっかり忘れてたみたいで」
450: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:57:54.43 ID:7CXOR5C/0
打ち止め「むー、用事があったなんてしらなかったし、
お買い物がまた延期になったし……ってミサカはミサカは
ぶーたれてみる」ブー
海原「買い物なら明日改めてみんなで行きましょう」ニコ
打ち止め「ほんと!? わーいってミサカはミサカは
大はしゃぎ!!」ワーイ
番外個体「あれ、黄泉川たちは?」
打ち止め「帰ったよ! ってかてか! 今日はここに
お泊りしてもいいって! ってミサカはミサカはテンションが
急上昇!!」
海原「なっ、ダブルミサカがお泊り……ですって!?」
麦野「またセクハラまがいのこと考えてるんじゃ……」
海原「まさか。 自分は紳士です」
番外個体「時と場合により変態だけど」
海原「大丈夫ですよ、番外個体さんに対しては
いつでもどこでも紳士で居ると誓えます」キリッ
番外個体「そこらへんが既に変態だよね。
まあ嫌いじゃないけどさ」
麦野「えっ」
垣根「えっ?」
一方通行「えっ!?」ガバッ
451: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:58:20.84 ID:7CXOR5C/0
垣根「ちょ、お前髪の毛食ってるぞ! ひーっ」ケラケラ
一方通行「ンァ!? ったく鬱陶しい毛だなァ……
っつか番外個体今なんつった」
番外個体「何が?」
一方通行(聞き間違いじゃなけりゃ、海原のこと
嫌いじゃねェって言ったよな……)
海原「もう自分幸せすぎて言葉が出ないっす」ジーン
一方通行「番外個体……オマエどォしちまったンだ」
番外個体「えー? また嫉妬? 第一位ってば
ねちっこーい☆ ぎゃは」ハッ
番外個体(……またやっちゃった)
452: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:58:51.81 ID:7CXOR5C/0
―――
――
洗面所
垣根「何切ろうとしてんだよ」
一方通行「何って……髪だけど……」
垣根「何で切るんだよ」
一方通行「邪魔だから……?」
垣根「そんなこと許されねえぞ」
一方通行「何故……?」
垣根「聞いた話だとお前、女装に賛成したらしい
じゃねえか?」
一方通行「……酔った勢いみてェなもンだ。
当てにすンな」
垣根「明日みんなで服買いに行くらしいじゃねえか」
一方通行「だから何だよ」
垣根「優勝者からの最後の罰ゲーム」
垣根「明日まで髪切るな、ついでに女装しよう!」デーン
一方通行「」
453: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 09:59:45.77 ID:7CXOR5C/0
リビング
海原「結局髪切らないんですね」
一方通行「罰ゲーム発動されちまった……」
海原「そういえば麦野さんが見当たりませんけど」
一方通行「あァ、第四位なら風呂入ってたわ」
垣根「お前今日シャンプー大変そうだな」ケラケラ
一方通行「こンな長ェ髪シャンプーしたことねェンだけど……」
打ち止め「じゃあミサカがお背中お流しいたしましょうか?
ってミサカはミサカはあなたの背中に突撃―っ!」ドーン
一方通行「うおォっ!? クソガキ! もォ夜なンだから
声のトーン押さえやがれェェェ!!」
垣根「お前も大概うるせえよ!!」
海原「貴方もうるさいですよ」
一方通行「オマエもうるせェ!!」
海原「自分はうるさくないと思うんですけど」
一方通行「オマエは存在がうるせェンだよ!!」ウガア
海原(どういうこと)
ガンッガンッドンッ
垣根「おいまた隣の家から石飛んで来てんぞ!」
一方通行「何で隣のやつも毎晩毎晩人ン家に石
ぶつけてくンだよ!?」
454: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 10:00:20.51 ID:7CXOR5C/0
番外個体「ちょっとうるさいよ? 何時だと思ってるのさ」
一方通行「事の発端は全部垣根だ!」
垣根「え!? 絶対俺じゃないよね!? ねえ!?」
打ち止め「カ、カキネが発端だよってミサカはミサカは
責任転嫁してみたり……」
垣根「最後の希望が寝返ったああああああ!!」
一方通行「寝返ったも何も最初からオマエに付いてねンだよ!」
垣根「このロリコンが!!」バンッ
一方通行「ンだとこのメルヘンチーズが!!」バンッ
垣根「何その呼び名素敵」
一方通行「えっ」
海原「意外にも気に入られちゃいましたね」
ガンッガンッガンッドガガガドンッ
打ち止め「隣の家からの石の音が尋常じゃなくなってるかもって
ミサカはミサカは小声で注意を呼びかけてみる」
455: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/13(水) 10:01:04.78 ID:7CXOR5C/0
一方通行「よォしここまで来たら上等だかかってこいよ
隣の誰かさンよォォ!!」ゴォォ
垣根「コイツ……戦う気だ!!」
打ち止め「何馬鹿なこと言ってるの! 静かにすれば
済む話でしょってミサカはミサカは冷静に注意してみる」
番外個体「ちびっこがすごくかっこよく見えるよ」
海原「さすが打ち止めさんですね」
一方通行「オラァ隣人!!! 石ぶつけるくれェなら
正面からかかってこいよコラァァァァ!!!」ウォォォ
垣根「ちょ、お前さすがに窓開けて叫ぶのは……」
<ピーンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
垣根「やべえまじで押しかけてきやがった!!」
一方通行「上等だァァ!! 直々にチーズ工場の家主が
出迎えてやンよォォォ!!」
ガチャ
木原「毎晩毎晩うっせええええんだよおおおおおぉぉぉ!!!!!」
一方通行「」
467: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:43:44.88 ID:T9OJ7nsu0
木原「っつーか夜に限らず一日中この家うっせえんだよ!!!」
一方通行「き、木原くン……何で生きてンだ……」
垣根「何だ? こいつお前の知り合いかよ?」
木原「ああ!? 知るかこんな女!!」
垣根「ぶっ」
一方通行「えっ」
垣根(お前……普段着でも十分女装できてんじゃねえか)コソコソ
一方通行(嘘だろ……)
木原「お前の女かコイツ!? なら吠えねえように
調教しとけよこのクソ猿が!!」
垣根「んだと!? っつーか誰がコイツの彼s」ムグゥ
一方通行(ちょっとオマエ黙ってろ)コソコソ
一方通行「あーあー、ン」←声色調整
一方通行「うるさくしてごめンなさい。 今から気をつけるから、
許してもらえねェですか?」←精一杯の女声+上目遣い
468: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:44:20.26 ID:T9OJ7nsu0
垣根(!?)ゾワ
木原「……なんだコイツいきなり」
一方通行「ほら、ていとくも謝って。 オマエも騒いでたでしょ」グイ
垣根「さっ……触るなああああああ」ゾワワワワワ
一方通行(いいから合わせろよめんどくせェ!!)コソコソ
一方通行「ていとくったら照れやがって可愛いンだから」ギュッ←腕に抱きつく
垣根(あぎゃあああああああ!!!!!)ゾワーーーーーーーッ
木原「おいおい何だよこの状況は!? 人が殴りこみに
来てやってるってのに目の前でいちゃいちゃしやがって!!」
垣根「俺だって意味わかんねえんだよおおお!!」
木原「だからうるせえっつってんだろがああああ!!!!!!!」ウガァァ
一方通行「全員うっせェンですよォォォ!!!!!!!」
木原「何なんだよコイツ!? さっきからキャラが定まってねえぞ!?」
垣根「いいかげん離れてくれえええええ!!」
一方通行「だからうるせェって言ってるでしょ!! ていとくも
反省してるし、今日は帰ってくれねェですか」シッシッ
木原「くっそこのアマ誰かに似てる! すんげえムカつく!!」
469: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:44:50.58 ID:T9OJ7nsu0
リビング
打ち止め「なんか玄関がすごく騒がしいけどって
ミサカはミサカは気になってみたり」ソワソワ
番外個体「隣に住んでる人ってどんな人なんだろ?
あの人のことだし近所付き合いなんてできないだろうね」
打ち止め「ちょっと覗いてきてもいいかなって
ミサカはミサカは気になりすぎてやばいぜ」ソワソワ
海原「打ち止めさんのアイデンティティーが崩壊しつつある……」
番外個体「どんだけ気になってんのさ」
打ち止め「あの人が他人と会話してるのを見ると
ミサカはすごく嬉しい気分になるのって
ミサカはミサカは親心的な何かを語ってみたり」
海原「いいお母さんになれそうですね」
打ち止め「見てきていいのね! やったあ!
ってミサカはミサカはドアをちょっとあけて覗いてみたり」ソローッ
海原「あれ、会話が一方通行」
番外個体「寒いね」ギャハ
<テイトクッタラテレヤガッテカワイインダカラ
<オイオイナンダヨコノジョウキョウハ!!
打ち止め「」
470: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:45:19.14 ID:T9OJ7nsu0
海原「? どうしたんですか?」
打ち止め「……なんか見てはいけないようなものを
見てしまった気がするってミサカはミサカは
激しく後悔してみたり……」
番外個体「なにそれ、超気になるじゃん。 見てくる」
海原「自分も気になるんですが」
打ち止め「ミサカはあんな風に育てた覚えは微塵も
ないのよってミサカはミサカは……ぐすっ」
玄関
木原(今ドアから覗いてたガキ……いやまさかな)
一方通行「ってことでェ、私たちこれからオタノシミなンでェ、
とっととお引取りくださいなァ」シッシ
垣根「恐ろしいこと言うんじゃねえよおおお!!!」ウワァァ
一方通行(嘘に決まってンだろオマエは馬鹿か!?)コソコソ
木原「はいはい。 お前ら見てたらなんか気分萎えちまったわ。
せいぜい叫ばねぇように楽……」
<ドンガラガッシャーン!!!!!
471: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:45:55.05 ID:T9OJ7nsu0
一方通行「あ……?」
海原「いてて……番外個体さんが身を乗り出しすぎるから
こうなったんですよ」
番外個体「だって見えなかったんだもん」ムクッ
垣根「お前ら何して……」←一方通行に抱きつかれてる
海原「」
番外個体「」
一方通行「!!!!」バッッッ
垣根「いや、待て誤解だ! これはワナだ!!!」アワアワ
打ち止め「だから後悔するって言ったのに……」
海原「お二人にそんな気があったなんて……」
番外個体「こ、これは予想外……」ハハハ
木原「……何だ? 修羅場か?」
472: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:46:21.03 ID:T9OJ7nsu0
垣根「誤解だあああ!! 一方通行がいきなり
抱きついてきやがっただけなんだよ! 俺は白だ!
潔白なんだよ信じてくれ!!」
一方通行「俺に異常があるみてェな言い方すンなよ
余計にに誤解されンだろォが!!」
打ち止め「でも変な喋り方してたのをミサカは
聞いてしまったのってミサカはミサカは
事実を突きつけてみる」
一方通行「しょうがなかったンだよ!! 木原のクソ野郎が
さっさと帰らねェからこンな暴挙に出るしか……」
木原「一方通行……?」
一方通行「あァ!?」クルッ
木原「……」
一方通行「……あ」
473: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:46:50.13 ID:T9OJ7nsu0
―――
――
リビング
木原「どおりでムカつくと思ったぜ!」
一方通行「何でオマエ普通に上がって来てンの?」
打ち止め「まあまあいいじゃないって
ミサカはミサカはなだめてみる」
木原「ちょっと見ねぇうちに少しでかくなったな?」ヨシヨシ
打ち止め「あれ、ミサカはあなたと初対面じゃないの?
ってミサカはミサカは記憶をさかのぼってみる」
一方通行「ああ、そォいやあン時はオマエ終始
気絶してたから直接の面識はねェのか」
海原「気絶!? 打ち止めさんを気絶させるなんて
貴方は何をしているんですか!?」ウガァ
一方通行「あれはしょうがなかったンだよ!!」
打ち止め「ミサカが気絶してる間に何があったんだろう?
ってミサカはミサカは気になってやばいぜ」
木原「懐かしいな。 あん時は一方通行と俺が
打ち止めの親権を巡って壮大な戦いを繰り広げたんだったか」
一方通行「はァ!? ……いやざっくり間違ってはいねェけど!」
474: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:47:20.93 ID:T9OJ7nsu0
垣根「親権って……お前らどういう関係なんだよ」
木原「嫁と姑みてえな?」
垣根「よくわかんねえ」
海原「今打ち止めさんがここにいるってことは
親権を勝ち取ったのは一方通行さんですか」
一方通行「もォそれでいいわ。 っつか木原オマエ
何で生きてンだよ? あン時確か空で燃え尽きたよな?」
木原「いやあ、気が付いたら隣の家にいてよ。
多分根性で乗り切ったんじゃねえかな」ウン
番外個体「根性でどうにかなるって科学者としてどうなの……」
木原「科学者の癖に科学を否定するたあ何たる科学者だよさすが俺」
一方通行「俺の知ってる木原くンじゃねェ」
木原「いやーそれにしても一方通行は女の子になっちゃったかー」
一同「「「「えっ」」」」
木原「えっ?」
475: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:47:51.97 ID:T9OJ7nsu0
一方通行「ちょっとオマエよく俺を見ろ」
木原「俺に体を見て欲しいのか?」
一方通行「違ェ!! どォ見ても俺は男だろォが!!」
木原「え、だってさっきコイツのこと『ていとく可愛い』とか
言ってたじゃねえか? 付き合ってんだろ?」
一方通行・垣根「「んなわけあるかあああああああああ!!!!!」」
木原「じゃあそれは女装なのかよ? そういう趣味が?」
一方通行「これは罰ゲームなンだよ! クソ垣根のせいで
めんどくせェことになっちまったじゃねェか」
垣根「お前が変な芝居すっからだろーが!!」
木原「何だよてっきり股間を工事しちまったのかと思ったぜ」ムギュ
一方通行「ンあっ!?」ビクゥ
番外個体「」
海原「」
垣根「」
打ち止め「」
476: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:48:19.66 ID:T9OJ7nsu0
木原「……マジで付いてるもん付いてんな」
垣根「なんつー声出してんだ……」ゾワ
海原「やはりそっちの気があるのでは……」
番外個体「はいはいちびっこはミサカとあっちの
お部屋でテレビ見ようかー」
打ち止め「ミ、ミサカはミサカは何も見てないよ
聞いてないよー!」←目隠しされてる
一方通行「誤解だあああああ!!! うわァああああああン!!」ビェェェ
―――
――
木原「じゃ、俺帰るわ。 これお土産な」ホレ
一方通行「何で漬物石……?」
木原「いや、最初マジでこの家に特大の石ぶつけて
やろうと思っててよ。 使わなかったからやるよ」
一方通行「別にいらねェけどな」
477: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:48:46.22 ID:T9OJ7nsu0
垣根「帰ったか」
一方通行「嵐のような時間だった……」グッタリ
打ち止め「ミサカはどんなあなたでも大好きだからね
ってミサカはミサカは元気付けてみる」ヨシヨシ
一方通行「誤解だからな……俺はいたってノーマルだからな……?」
番外個体「さっきのあなたの声でミサカ、いろんな所が
勃っちゃったよ☆」ギャハ
海原「じゃ、じゃあ自分も真似して番外個体さんを……!」
番外個体「ちょっ、そういう意味で言ってるんじゃないって!
嫌味だよ嫌味!!」アワワ
一方通行「……」グデーン
海原「いつもならつっかかってくるばずなのに……」
番外個体「相当疲れてるんだろうね」
垣根「あ、麦野お前いつからそこいたんだよ?」
麦野「……」
番外個体「何だ、お風呂上がってたの? しゃ、次
ミサカとちびっこで入ってきていいかな」
一方通行「とっとと入れ」
478: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:49:16.88 ID:T9OJ7nsu0
垣根「……? どうした? ボーっとして。
のぼせたのかよ?」
麦野「……かっこいい」ボソ
一方通行「あン?」
麦野「あの人かっこいい……」ポー
一同「「「「!?」」」」
一方通行「えっ、マジで言ってンの??」
麦野「ねえ今の人誰なの?」
垣根「麦野が恋に落ちた……だと!?」
麦野「さっきの人誰なの? どこの人?」
打ち止め「一目惚れってやつかなって
ミサカはミサカは推測してみたり」
海原「一目惚れと言えば、そんなお米の品種が
ありましたよね」
479: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/15(金) 17:49:46.49 ID:T9OJ7nsu0
番外個体「何それミサカ知らない」
垣根「学園都市の外にある品種だからな」
一方通行「ああ、海原はもともと外に住んでたンだったか」
海原「なんだ、皆さん外の情報とかはあまり知らないんですね」
打ち止め「ミサカは学園都市から出たことがないからね
ってミサカはミサカは外に夢を抱いてみる」
番外個体「でも他のミサカは外にいるのもいるし、
ネットワークで調べれば一発だと思うよ」
麦野「ねえ」
打ち止め「そっか! ってミサカはミサカは早速
ひとめぼれをネットワークで検索してみる」
垣根「それって便利だよな」
一方通行「俺も一応ネットワークに繋がってンだぜ」
海原「なんと!? ミサカさんたちとそこまでして
繋がりを持ちたいんですか!!」
一方通行「違ェよ! 違わないけど! 繋がってねェと
廃人状態になンのオマエ知ってンだろ!」
麦野「テメェら無視決め込んでんじゃねぇぞコラァァァァァアアアアア!!」
489: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:10:34.48 ID:lkZrkix20
――翌日
セブンスミスト
打ち止め「やっとお洋服が買える! ってミサカはミサカは
歓喜の声をあげてみる!」
海原「好きなだけ買っていいですからね」
一方通行「俺の金だ俺の」
垣根「家主が固いこと言ってんじゃねえよ」
木原「俺はお前をそんなケチな子に育てた覚えはねぇ」
麦野「どうせ金持ってんだしいいじゃない」
垣根「そーだそーだ!」
一方通行「たった一言でそんなに責めることなくねェ!?」
海原「言葉は選んで発言してください」
番外個体「ねえ早く買い物したいんだけど」
垣根「そうだな、さっさと一方通行を女の子に仕立ててやんねぇと」
木原「あの店とかふわふわした服あっていいんじゃねえか?」
垣根「おお、いかにも女の子って感じがすんな」
海原「目つきの悪さがネックですけど……」
490: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:11:08.02 ID:lkZrkix20
一方通行「……なあ」
木原「あ? どうした」
一方通行「いや、どうしたじゃなくてさァ。
なんでナチュラルに混ざってンの?」
木原「細けえこと気にすっとハゲるぞ?」
一方通行「科学者が迷信語ってどォすンだよ」
木原「科学者のくせに科学を否定するたあ何たる科学者だよさすが俺」バンッ
一方通行「そォですねェカッコいいですねェ」
木原「そんなお前は可愛いぜ」
一方通行「嬉しくねェよ。 って話逸らしてンじゃねェよ!」
木原「こいつに呼ばれたんだよ」
麦野「私が呼んだのよ」
一方通行「麦野オマエ行動力ありすぎだろ……」
491: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:11:38.05 ID:lkZrkix20
麦野「思い立ったら即行動。 常識でしょ?
昨日あんた達全員私のことスルーしまくったから
自分で住所突き止めたわよ。 隣だったけど」
一方通行「女って怖ェ」
番外個体(肉食系女子、か……)
海原「ストーカーになれますね」
一方通行「オマエが言うと褒めてるようにしか
聞こえねェのは何でなンだろォな」
海原「その言い分だとまるで自分がストーカー
極めてるみたいじゃないですか」
一方通行「傍から見りゃ極めてンだよ」
打ち止め「ねえねえ早く着せ替え人形しようよ!
ってミサカはミサカはあなたの袖を引っ張ってみたり」グイグイ
一方通行「あァ? 着せ替え人形ってもしかして
俺のことか、俺のことだよな? 俺をおもちゃにするたァ
いい度胸してンじゃねェかクソガキ!!」
492: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:12:09.08 ID:lkZrkix20
垣根「よし一方通行。 お前は今から着せ替え人形だ。
リカちゃんを見習えよ」
打ち止め「ミサカはおうちで着せ替え人形で遊んでるから
この中で一番あなたの服を着せ替えする才能に長けてると思うの!
ってミサカはミサカは自己の優秀性をアピールしてみる」エッヘン
番外個体「ミサカもファッション誌読んだりしてるし、
服のセンスはあると思うんだけど」
麦野「あ、服のセンスなら第二位も馬鹿に出来ないわよ。
前に私の服勝手にコーディネートしてたけど普通にセンスあったわ」
垣根「聞いたか!? 俺のファッションセンスは第四位公認だ!」
一方通行「オイオイ俺の話スルーか!? 着せ替え人形なンざ
ごめンだからな!?」
垣根「一方通行。 罰ゲームだってこと忘れてねェか?」
一方通行「罰ゲームは着せ替え人形になることじゃなかったはずだろ……」
垣根「優勝者の言葉は絶対っていう暗黙のルールがあるだろ?
つまり……そういうことだ」
一方通行「知らねェよそンなルール!」
493: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:12:39.74 ID:lkZrkix20
木原「ファッションセンスなら俺も結構あっと思うぜ」フフン
一方通行「フフン、じゃねェよ! 木原くンの服見て育って来たから
俺にもセンスが移っちまったンだよ! つまりセンスは皆無だ!」
木原「俺の真似してるとか可愛いなお前。 ムカつくけど」ヨシヨシ
一方通行「頼むから会話してくれ会話」
―――
――
番外個体「ミサカそこのお店に入りたいなー」
一方通行「オマエ……そんな露出度高い服着てどォすンだよ」
番外個体「そりゃもちろんあなたを悩殺するために決まってるよ」
一方通行「残念だったな、もっと上品な服じゃねェと
悩殺されねェンだわ」
番外個体「ねえちょっとくらいいいじゃん、着てみたいんだよ」グイグイ
打ち止め「ミサカも付いていく! ってミサカはミサカは
大人っぽい服を着てみたかったり」
一方通行「ガキはガキらしい服着てろ」
494: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:13:33.96 ID:lkZrkix20
打ち止め「むー、そうやっていつも子供扱いするんだから
ってミサカはミサカは文句を言ってみる」ブー
一方通行「そもそもサイズが合わねェだろ。 あっちの店はどうだ?
マセガキにゃぴったりな服だらけだぞ」
打ち止め「おおおーー!! 子供っぽくない! かといって
背伸びしすぎたデザインでもない服がたくさんある!
ってミサカはミサカは一目散に駆け出してみる!」ダダダッ
一方通行「おいコラ一人で突っ走ンな迷子になンだろ!
ったく……、ここからしばらく別行動な。
俺はクソガキに付いてっから各々好きなとこ行け」
垣根「何だよ、みんなで着せ替えすんのが面白いのに」
一方通行「後でいいだろ……。 何かあったら携帯で呼べ」
木原「すっかり親御さんになっちゃって……」ホロリ
番外個体「ちぇー、ミサカと一緒に露出高い服着て
貰いたかったのになー」
海原「番外個体さん、入らないんですか?」
番外個体「え? 何が?」
海原「このお店入りたかったのでしょう?
自分がご一緒しますよ」ニコ
番外個体「え、あ……んじゃ付き合ってもらおうかな」
495: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/18(月) 20:14:10.85 ID:lkZrkix20
麦野「あ、木原さん。 よかったら私の服選んで
くれないかしら?」
木原「ああ? いいけどあのガキが言うには俺には
服のセンスがねぇらしいぞ?」
麦野「別にセンスなんて関係ないわ。
木原さんに選んでもらいたいのよ」
木原「そうか? モノトーンの矢印Tシャツとか
選んじまうかもしんねぇけど」
麦野(それはさすがに嫌だわ……)
麦野「ま、とにかく私の買い物に付き合って。
あの店行くわよ」グイッ
木原(さりげなく俺のセンスを敬遠しやがって……)シュン
木原「……ってオイ!? そこ下着売り場!! ちょ、え!? マジ!?」グイグイ
垣根「……やべえ、ハブられた」
506: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:49:28.49 ID:38uRWaUi0
海原サイド
海原「番外個体さんは何着ても似合いますね」ウットリ
番外個体「でしょ? ミサカって何気にナイスバディだからね」
海原「自分、悩殺されました」ズキューン
番外個体「海原君を悩殺しても面白くないんだけど」
海原「まあ、常に番外個体さんの一挙一動に悩殺されてるので」ズキューン
番外個体「よく疲れないよね。 逆に尊敬するよ」
海原「番外個体さんに尊敬されるなんて自分には1000世紀
早いです。 自分なんてゴミです。 ほこりですから」
番外個体「海原君の中のミサカって一体なんなんだろう……」
海原「そりゃもちろん、崇拝すべき対象ですよ」
番外個体「意味も分からず崇拝されるこっちの気持ちを考えればいいのに」
507: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:49:58.50 ID:38uRWaUi0
海原「次こっちの服着てみてくれませんか?」
番外個体「あれ、崇拝してる割には着せ替え人形にされてる」
海原「ちょっとこの網タイツ履いてもらえません?」ワキワキ
番外個体「絶対崇拝してないよねこれ」
海原「あ、なんなら自分が着せてさしあげましょうか!?」
番外個体「ちょ、何言ってんの変態! ミサコン!
自分で着替えるもんそれ貸して!」
海原「おうふ、番外個体さんに罵られた……」
番外個体(もうこの人どうにかして欲しいよー)
海原「着替えましたか?」
番外個体「え、まっ、まだに決まってるじゃんちょっと
開けようとしないでよ!」アワアワ
508: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:50:25.41 ID:38uRWaUi0
海原「そろそろ自重するべきかもしれませんね」
番外個体「存在を自重してくれないかな……」
海原「遠まわしに死ねと?」
番外個体「その変態の人格だけは滅して欲しいね」
海原「これは自分のアイデンティティーなので」
番外個体「もっと他のとこで個性出しなよ……。
はい、着替えたけどどう?」バッ
海原「セクシーすぎてもう鼻血出そうです」ブハ
番外個体「もっと他の言い回しはないわけ?」
海原「この姿の番外個体さんを独り占めしてる自分が憎い!」
番外個体「なんか海原君に慣れてるミサかが恐ろしいや」
海原「慣れてもらえて嬉しい限りですけどね」
番外個体「もうちょっと普通にしてればいいのに……」ボソ
海原「十分普通なんですけど……」
番外個体「全然普通じゃないからね」
509: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:50:55.92 ID:38uRWaUi0
麦野サイド
木原「オイこの小娘、男を強引に女物の下着売り場に連れ込むとか
頭おかしいんじゃねぇのか!?」
麦野「小娘じゃない、し・ず・り!」
木原「麦野、お前頭おかしい」
麦野「名前で呼んでくれないのね……」
木原「お前なぁ、こういう場所には女友達か彼氏と来いや。
俺みてぇなおっさんは場違いにも程があんだよ……」
麦野「え、木原さん全然若いじゃないの」
木原「えっ」
麦野「全然おっさんじゃないわよ。 私の方が年上に
見られてしまうかもしれないくらいだし」
木原「お、おう……」
木原(いつも老けて見られてんのかな……可哀相に)
麦野「さ、どの下着にしようかなー♪ あ、
この下着とかどう?」ヒラッ
木原「だからって俺が選ぶわけねえだろうが!!」ダッ
麦野「あっ、ちょっと待ってよ!」
麦野(さすがに初っ端から下着はハードルが高すぎたわね)
510: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:51:22.37 ID:38uRWaUi0
上品な店
木原「こういうな? 上品な服の方が可愛く見られるもんだぞ?」
麦野「露出多いほうが興奮しない?」
木原「まあ、着こなし方にも寄るけどよ……」
麦野「パンモロよりもパンチラのほうがいいのかしら?」
木原「俺は断然パンチラだな。 パンツが見たいんじゃねぇ、
パンチラが見たい……って何の話だよ!?」
麦野「なるほど、パンチラが見たい、っと……」メモメモ
木原「待て待て、お前は俺に何を求めてんだ」
麦野「愛……かな」テレ
木原(こりゃ癖のある女に引っかかっちまったな……)
麦野「結論は、上品な服でパンチラ、でいいかしら?」
木原「よくねぇよ! 意図的にパンチラかましてる時点で
上品でもなんでもねえよ!」
麦野「大丈夫よ、自然に見せれば問題ないわ」
木原「見せる見せないの話じゃねえんだよ!」
511: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:51:55.65 ID:38uRWaUi0
麦野「冗談よ。 私は自分を安売りしないから安心して」
木原「冗談に聞こえなかったぞ……」
麦野「ねえ、どんな服が私に似合うと思うかしら?」
木原「うーん……さっきも言ったけど俺センスねぇからな……
女物とか更にわかんねえよ」
麦野「じゃあ、私に来て欲しい服を選んでみてくれない?」
木原「着て欲しい服か……あれだな、ゆったりしたやつだな
そのほうが動きやすいだろ?」
麦野(動きやすさ重視って……)
木原「まあ、動きやすさで言ったらジャージがダントツなんだけど、
それはさすがにねぇだろ? だと……これとかどうだ」
麦野「ドルマンTシャツね……結構いい線行ってるんじゃないかしら」
木原「お、そうか? 調子出てきたぞ。 下はロングスカートとかどうだ?
下着見えにくくていいと思うぜ」
麦野(やっぱりセンスないわ)
麦野「利便性じゃなくてファッションを第一に考えてみて」
木原「俺はこれでも十分いい線行ってると思う」
麦野「……ドルマンだけ買うわ」
512: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:52:26.74 ID:38uRWaUi0
一方通行サイド
打ち止め「どう? ってミサカはミサカは感想を求めてみる」
一方通行「ン、いいんじゃね?」
打ち止め「もう、さっきから何着てもそれしか言わないじゃない
ってミサカはミサカはあなたの適当さを指摘してみる」
一方通行「ガキは何着たって変わらねェンだよ」
打ち止め「むきーっ! そんなにばっさり言うことないじゃん!
ってミサカはミサカは心の中でグレてみる」
一方通行「欲しいのあンならさっさと買え。 オマエのせいで
別行動する羽目になったンだからな」
打ち止め「うう……それは言い返せないって
ミサカはミサカは反省してみる」グス
一方通行「そこまで責めてねェよ……ったく」ナデナデ
打ち止め「!」
一方通行「……あン?」
513: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:52:59.90 ID:38uRWaUi0
打ち止め「あ……あなたになでなでしてもらえるなんて
今日はいいことありそうな予感! あ! なでなでされたのが
既にいいことだった! ってミサカはミサカははしゃいでみる!」ワー
一方通行「やっぱガキだな……」ハァ
打ち止め「あ、そういえば番外個体が海原お兄ちゃんと一緒に
行動してたみたいだけど放っといてよかったの?
ってミサカはミサカは聞いてみる」
一方通行「あ! ……まァいいか。 あれだ、あまり俺が
アイツの人間関係に干渉すンのも悪いだろ」
打ち止め「ちょっと見ない間に心が広くなったのねって
ミサカはミサカは感動してみる」
一方通行「オマエ変なとこガキっぽくねェよな」
打ち止め「ミサカはガキじゃないんだから!
ってミサカはミサカは再三にわたって忠告してみる」
一方通行(っつってもやっぱ海原と二人は危険すぎるよなァ……
よりによって海原って。 垣根あたりと行動してれば……いや、
それはそれでムカつくな。 俺が引っ張ってくりゃよかった話か)ブツブツ
514: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:53:28.95 ID:38uRWaUi0
打ち止め「何ブツブツ言ってるの? ってミサカはミサカは
問いかけてみたり」
一方通行「ン、あァ……ちょっと考え事だ。
それより買うもン決まったのか?」
打ち止め「うん、このスカートが欲しいなって
ミサカはミサカは広げてみる!」ヒラ
一方通行「それだけでいいのかよ?」
打ち止め「うん、これだけで十分だよって
ミサカはミサカは言ってみる」ニコ
一方通行「欲のねェガキだなァ……。 ま、いいことかァ?」
打ち止め「でね、あなたに前もらったお金、全部番外個体が
持ってるんだけど……ってミサカはミサカは今手元に
お金が無いことを明かしてみる」
一方通行「ンなの関係ねェだろ、俺が買ってやるっつってン
だからよ。 あっちはあっちで勝手に買ってンだろ」
515: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:53:58.70 ID:38uRWaUi0
打ち止め「買ってもらってばっかりでごめんねって
ミサカはミサカは謝ってみる」
一方通行「ガキはガキらしく買ってもらってればいいンだよ。
自分で買いてェなら手伝いでもして駄賃貯めてるンだな」
打ち止め「あなたに言われなくても既に実行中なんだから
ってミサカはミサカは日ごろの黄泉川の手伝いを振り返ってみる」
一方通行「ほら、それ寄越せ。 さっさと買って
番外個体と合流すンぞ」
打ち止め「なんだ、やっぱり気になってるんじゃないって
ミサカはミサカはにやけてみる」ニヤニヤ
一方通行「どォいう意味のにやけ顔だそれ」
打ち止め「二人とも素直じゃないんだからって
ミサカはミサカはまたまたにやけてみる」ヒュー
一方通行「何なンだよオマエ……」
516: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:54:27.15 ID:38uRWaUi0
垣根サイド
垣根(何なんだよいい感じにペア作りやがって……
奇数なんだから絶対誰かあぶれるに決まってんじゃねえか)ブツブツ
垣根「あー暇くせえ、することねぇ。 一方通行を着せ替えるために
ここに来たようなもんだったからなあ!」
インデックス「公共の場では静かにすべきかも!」クワッ
垣根「あ? ……お前、カレー屋の!」
インデックス「あ、この間食べに来てくれた垣根!」
垣根「おお……名前まで覚えてやがるとは想定外……
っつかここで何してんだ?」
インデックス「ここで何してるって聞くのは馬鹿だと思うんだよ」
垣根「お前いい度胸してんな、俺はこう見えて学園都市で
ナンバー2の頭脳持ってんだぜ?」
インデックス「ふーん」
垣根「ちょ、すげえとか言わねぇのかよ!」
インデックス「頭の良さとかよくわかんないかも」
517: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:54:55.97 ID:38uRWaUi0
垣根「俺のこと馬鹿呼ばわりしたくせにか」
インデックス「だってここはお店なんだよ?
買い物しかすることないと思うんだよ」
垣根「……まあ、そうだけどよ。 あ、お前一人か?
俺今暇でさ、一緒に行動してもいい?」
インデックス「とうまが知らない人には付いて行っちゃ駄目って」
垣根「え、俺って知らない人に分類されてんの?
この流れで?」
インデックス「どうせナンパだと思うんだよ!」
垣根「どうせとか言うなよ傷つく! なあ頼む俺のツレが
みんな迷子になっちまって」
インデックス「要するに一人取り残されたんだね」
垣根「勘が鋭すぎるぞお前……」
インデックス「お前じゃなくてインデックスって言うんだよ!」
518: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:55:30.38 ID:38uRWaUi0
垣根「悪い悪い。 んでインデックス、何買ってたんだ?」
インデックス「とうまとはまづらにお洋服をプレゼントするんだよ!」
垣根「なんだコイツめちゃくちゃいい子じゃねえか……」
インデックス「お店も繁盛してるし、二人への
感謝の気持ちを込めてるの」
垣根「感動もんだなオイ……じゃ、あれだな、俺の場合は
養ってくれてる一方通行になんか買ってやんなきゃなんねえな」
インデックス「そうするといいかも! きっとあくせられーたも
喜ぶと思うんだよ!」
垣根「じゃあ何を買って……いけね、俺無一文だった」
インデックス「え? お金持ってないの?」
垣根「忘れてた……金がねえから養ってもらってんのに……」
インデックス「貸してあげようか?」
垣根「いや、遠慮する。 こんな小さな女の子にもらった金で
プレゼントなんてレベル5の風上にも置けねえ」
インデックス「じゃあ、働けばいいかも」
垣根「……何故俺は今まで働こうという選択肢が
思いつかなかったんだ? ただのニートじゃねえか……
そうと決まればインデックス! お前の店で雇ってくれ!」
インデックス「無理なんだよ」
519: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/19(火) 16:56:06.27 ID:38uRWaUi0
垣根「そ、即答……」ガクッ
インデックス「人は足りてるし、相応の技術が必要なの。
能力に頼るような人はお呼びじゃないんだよ」
垣根「見かけによらず辛口だな……」
インデックス「コネを使おうなんて考えないで正々堂々
面接してもらえばいいと思うかも!」
垣根「そ、そうだな……インデックスの言うとおりだよ」
インデックス「そこに求人誌が何冊か置いてあるから
持って帰ればいいと思うよ」
垣根「何だ、こんなうすっぺらいのか……求人誌ってぇと
タウンページみたいなのかと思ってたのに」
インデックス「そんなに仕事があったら日本は不景気じゃないんだよ」
垣根「お前と同年代の女の子は絶対そんなこと言わないだろうな……」
527: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:39:44.27 ID:68UQ6j7s0
海原サイド
海原「それはそうと、ここで服購入されるんですか?」
番外個体「あー、どうしようかな。 ミサカはこういう服
着てみたかっただけだし……」
海原「買って一方通行さんに見せてあげたらどうです?
きっとあの方も悩殺できますよ」
番外個体「べ、別にあの人を悩殺しようなんて思ってないし」
海原「最初に言ってたじゃないですか」
番外個体「だからそれは嫌味だって」ソワソワ
海原「……この際単刀直入に聞きますけど、
番外個体さん、一方通行さんのこと好きですよね?」
番外個体「え、……まあ、感謝はしてるけど」
海原「恋愛的な意味で」
番外個体「……何でそういう見解に辿り着くのか
ミサカには理解不可能なんだけど」
528: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:40:13.93 ID:68UQ6j7s0
海原「傍から見てるともう、一方通行さんに構って欲しい
オーラがすごいんですよ」
番外個体「……勘違いだよそんなの」
海原「違うなら違うでいいんですけど、昨日カフェで
話してた内容も、自分には一方通行さんに関わる女性に
対する嫉妬心が結構あるように感じたんですよね」
番外個体「海原君、ミサカを観察しすぎてて怖い」
海原「こんなだからストーカーとか言われるのかも
しれないですね」
番外個体「でもそんな海原君も嫌いじゃないよ。
ミサカの相談に親身になってくれるしね」
海原「まあ、番外個体さんのことが好きですからね」
番外個体「いや、それは知ってるよ」
海原「いえ、そうではなくて……真剣に言ってるんです」
番外個体「……え?」
海原「自分は、普通に番外個体さんが好きです。
女性として」
529: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:40:40.12 ID:68UQ6j7s0
番外個体「……えーっと……」
海原「……いきなりすみません」
番外個体「あの……ミサカ、こういうこと言われたの
初めてだからなんて言っていいかわかんない」
海原「何も言わなくていいですよ。 自分が勝手に
言っただけなんですから」
番外個体「……」
番外個体「海原君の言うとおりかもしんない」
海原「……というと?」
番外個体「麦野が第一位にひっついてたら焦るし、
ちびっことあの人がじゃれてたら苛々するし、
構って欲しいから悪態ついてたのもあるかも」
海原「そうですか……」
番外個体「ぶっちゃけ、今のミサカネットワークに悪意なんて
ほんの少ししかないんだよね」
海原「……では、一方通行さんに素直になれないのは
ネットワークのせいではなかったと?」
530: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:41:05.41 ID:68UQ6j7s0
番外個体「そ、海原君の言ったとおり、ただの嫉妬だよ」
海原「では、やはり一方通行さんのことが……」
番外個体「……うん」
番外個体「好きなのかもしれない」
一方通行「えっ」
海原「!」
番外個体「っ!?」
531: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:41:34.62 ID:68UQ6j7s0
一方通行「あ……悪ィ、盗み聞きとかじゃなくてだな……
偶然通っちまったっつゥかよ……」アセアセ
番外個体「き、聞いた……?」カァァァァァァ
一方通行「いいいや、聞いてねェ! 何かシリアスな雰囲気
だったから話しかけられなかっただけで……
ただ、好きとかどうのっては……聞こえた、か?」
番外個体「あ、う……っ」カァァァァァ
海原「番外個体さん、しっかりしてください」
一方通行「……なンか邪魔したみてェで悪ィな」
海原(番外個体さん、ちゃんと言わないと誤解されたままですよ!)
番外個体(も……もうどうにでもなれ!!!)
番外個体「……第一位っ!」
一方通行「な、何だよ……?」
532: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:42:04.39 ID:68UQ6j7s0
番外個体「こっ、このミサカは! 第一位のことが好きなの!
分かった!? このもやし!!」バン
一方通行「なっ……、はァ?」
番外個体「馬鹿! アホ! 死ね! もういいもん!
あ、ちびっこ! ミサカの買い物付き合ってよ!」グイ
打ち止め「えっ、あ、あの人はどうするのってミサ……」
番外個体「知らない!」スタスタ
一方通行「……」ポカーン
海原「……追わないんですか」
一方通行「いや、ちょっと状況の整理が追いつかねェ」グルグル
海原「……自分はフラれましたよ」
一方通行「!?」バッ
533: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:42:52.78 ID:68UQ6j7s0
海原「分かってはいましたけど、やっぱり悲しいですね……」
一方通行「オマエ……」
海原「言って置きますけど、ミサカさんだから好きなんじゃないですよ。
番外個体さんが好きなんです」
一方通行「そォか……」
海原「番外個体さんの気持ちに答えてあげたらどうですか」
一方通行「……ったく……面倒くせェ」
海原(ん、メールが……)
―――――――――
From:番外個体さん
件名:なし
ありがとう
―――――――――
海原(完敗ですね……)フフ
534: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:43:19.24 ID:68UQ6j7s0
番外個体「第一位の馬鹿! もやし! あの人のお金なんか
全部使ってやる! たくさん服買ってやる!」ポイポイ
打ち止め「今着替えちゃいなよってミサカはミサカは
提案してみる」
番外個体「あああああああ!! 苛々するうう!!」ガンガンガン
打ち止め「このワンピースとかいいんじゃないかなって
ミサカはミサカは薦めてみる」
番外個体「んじゃ着替える。 着替えて気持ちリセット。
これで第一位悩殺決定だね、ぎゃははは!!」ゲラゲラ
打ち止め「大丈夫かなあ……ってミサカはミサカは
心配してみたり」
番外個体「どうよちびっこ!」バーン
打ち止め「わあ! いつもとイメージがすごく違う!
ってミサカはミサカは暗に女の子っぽいって言ってみる!」
一方通行「あァ、こりゃ悩殺もンだわ」
535: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:43:47.52 ID:68UQ6j7s0
番外個体「っ!? 何でここにいんの!?」バッ
一方通行「あンな捨て台詞吐かれたら
追いかけたくもなンだろ」
番外個体「な、何度でも言ってあげるけどね!
もやし! 馬鹿! アスパラ!」
一方通行「ったくめんどくせェなァ……」
番外個体「めんどくさくて悪かったね! このミサカは
そういう性格なんだよ!」
一方通行「知ってる。 オマエちょっと落ち着け」
打ち止め「そうだよ、あまり騒ぐとお店の迷惑になるよって
ミサカはミサカは注意してみる」
番外個体「ぐ……しょうがないな」
一方通行「オマエ何様だよ……せっかく人が
気持ちに応えてやろォとしてンのによ」ポリポリ
番外個体「……え?」
536: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:44:16.27 ID:68UQ6j7s0
一方通行「いや、正直びっくりした。 オマエが俺のこと
そンな風に思ってるとか知らなかった」
番外個体「う……」
一方通行「ま、あれだ。 オマエもどォせ言われて気づいたタチだろ?
俺もクソガキに言われて気づいたからな」
番外個体「ちびっこに?」
打ち止め「だって、番外個体と海原お兄ちゃんが話してると
いつもつっかかるでしょってミサカはミサカはそれは嫉妬だって
教えてあげたの」
一方通行「ま、そォいうこった」
番外個体「え……どういうこと?」
一方通行「オマエ……その切り返しは
場の空気が冷めンぞ……」
番外個体「だってわかんないんだもん」
537: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:44:48.12 ID:68UQ6j7s0
一方通行「ったく……ちょっとこっち向け」
番外個体「何さ……」
チュ
番外個体「…………へ」キョトン
一方通行「理解したか」
番外個体「ま……マジで言ってんの……?」
一方通行「冗談で言うかボケ」
番外個体「え、その……えっと」カァァァ
一方通行「お、一丁前に照れるよォになったか」ニヤニヤ
番外個体「うるさい。 ……どうぞよろしく?」
一方通行「何で疑問系なンだよ……。 まァ、よろしくな」
打ち止め「お……おめでとーーーーー!!
ってミサカはミサカは祝福してみたりーーー!!!」ワァァ
海原「番外個体さん! よかったですね!」ヌッ
538: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:45:20.07 ID:68UQ6j7s0
一方通行「オマエいつの間に……」
海原「さすがに一人取り残されるのは悲しすぎたので」
番外個体「でもこれ……傍から見たらすごい面白い絵
になってるよね?」
打ち止め「この人の髪型がこんなだから……ってミサカはミサカは
雰囲気ぶち壊しの原因を指摘してみる」
一方通行「何でこのタイミングだったンだよ……」ハァ
番外個体「あなたが割り込んで来たのが悪いんだよ」
一方通行「まァそォだけどよ」
海原「いいじゃないですか、想いが実ったんですから」
番外個体「恥ずかしいからその話もうやめようよ」
一方通行「お、オマエとりあえず会計済ましてこい。
垣根たちと合流すンぞ」
海原「うまく話題を変えましたね」
打ち止め「今日はいいことがありそうっていうのは
あながち間違いではなかった! って
ミサカはミサカはなでなで効果がすごいってことを
確信してみたり」
539: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:45:48.42 ID:68UQ6j7s0
―――
――
垣根「いや、お前やべえな、スカート異常に似合うわ」パシャパシャパシャパシャパシャ
海原「そのうちメイド服とか着ていただきたいですね」パシャパシャパシャパシャ
木原「パンチラしねえかなーパンチラしねえかなー」パシャパシャパシャパシャ
一方通行「……」グデー
打ち止め「あの人の目が助けてと訴えている!
ってミサカはミサカは意思疎通してみたり」
麦野「あの男共は揃いも揃って……」
番外個体「みんな馬鹿なんだよ」
海原「次はこれを着ていただきたいのですが」
垣根「やっべー! 超露出してんじゃねえか!」ワキワキ
一方通行「絶対着ねェ! 断固拒否する!」
垣根「優勝者の言葉は絶対なんだよ!」バン
一方通行「どこまでが罰ゲームなんだよ!?」
540: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:46:19.12 ID:68UQ6j7s0
海原「いいんですか? この服は番外個体さんが
貴方に着てほしいと選んだ服なのに」
一方通行「えっ」
番外個体「あ、え……うん、着て欲しいな。
写真とって待ち受けにして見せびらかすからさ」ギャハ
一方通行「くっそォ!! オマエら俺をおもちゃにしやがって……」
打ち止め「まあ、たまにはいいじゃないってミサカはミサカは
試着室に放り込んでみたり」ドンッ
木原「打ち止め何気にひでぇ……」
麦野「純粋な子が周りに染められていくわ……」
一方通行「ほら、これで満足か」バッ
一同「「「」」」
一方通行「あ? 何だよ固まって……」
垣根「お前……脚綺麗すぎ……」
海原「女性の敵ですよこれは……」
木原「ちょ! 背中もマジでやべぇぞ!」
垣根「マジか見る!」
541: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:46:49.86 ID:68UQ6j7s0
麦野「……男に興奮してどうすんのよ」
打ち止め「今は女の子になってるしいいんじゃない
ってミサカはミサカはフォローしてみる」
番外個体(……)
垣根「やっべすべすべなんだけど!!」サワサワ
一方通行「うわァァ!! 何触ってンだやめろ!!」ゾワ
木原「お前本当は性別どっちだよ?」
一方通行「男だっつってンだろォが!!!!」グォォ
木原「あー……確かに付いてたもんな」ツー
一方通行「ひゃうっ!? ちょ、オマエらふざけンのも大概に……」
番外個体「そっ、その人に触るなあーーーー!!」ドン
垣根「おおっ?」
木原「なっ?」
海原(GJ!)
542: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:47:16.82 ID:68UQ6j7s0
番外個体「ミ、ミサカだってそんなに触ったことないのに、
みんなしてずるいよ!!」
一方通行「ちょ、おま」
番外個体「この人はミサカのなんだから、こ、このミサカしか
触っちゃいけないの!」プンスカ
麦野「えっ?」キョトン
垣根「……ん?」
番外個体(ぎゃああああミサカ何言ってんのおおおお!!??!)カァァァ
打ち止め「あ、この二人実は付き合ってるんだよって
ミサカはミサカは報告してみる」
海原(その調子です番外個体さん)グッ
垣根「何だよお前らやっと付き合ったのか」
一方通行「やっとって何だよ」
543: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/20(水) 15:47:48.77 ID:68UQ6j7s0
木原「一丁前に彼女なんて作っちゃって……
でもその格好だと百合にしか見えねえ……」
麦野「ワーストってやっぱり第一位のことが好きだったのね」
番外個体「うう……」カァァァ
垣根「ミサワちゃんが唐突に壮大にデレたから
何があったのかと思ったぜ。 とにかくおめでとう」ニヤニヤ
番外個体「みんな前から気づいてたの……?」カァァ
一方通行「とりあえず着せ替えごっこはもう終わりに
しねェか……?」
海原「そうですね、写真もたくさん撮れましたし」
垣根「んじゃそろそろ帰るか。 みんな荷物寄こせ。
台車の俺が責任を持って家まで運んでやる」
番外個体「あ、海原君。 第一位の写真ミサカに
送っておいてね」
海原「了解しました」
一方通行「オマエ……」
555: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:08:35.50 ID:/zwzR3W60
――数日後
チーズ工場(家)
一方通行「なァ、垣根と麦野はどこ行ったンだ?」←髪は元に戻りました
海原「ああ、麦野さんは木原さんとご飯食べに行くって行ってました。
垣根さんはどっかで道草食ってるんじゃないですかね」
一方通行「さすが垣根だなァ、飢えを雑草で凌ぐたァホームレスの鏡だ」ウン
海原「今はホームレスじゃないですよ」
一方通行「元ホームレス様の話だコラ。
この家のメンバーの中で一番壮絶な生活してただろ」
海原「そうですね」
一方通行「そォですよ」
海原「……この家に一方通行さんと二人きりって、
なんだか久しぶりですね」
一方通行「そォだな……最初以来じゃねェか?」
556: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:09:03.50 ID:/zwzR3W60
海原「今日はミサカさんたち来ないんですか?」
一方通行「そォ毎日来れるもンじゃねンだよ。 通院してる身だ」
海原「そうですか……残念です」シュン
一方通行「……一応言っとくけどアイツはもォ俺のもンだからな?」
海原「分かってますよ」
一方通行「ま、オマエのこといい友達だとか言ってたから
関わるなとは言えねェけどよ」
海原「番外個体さんがそんなことを……嬉しい限りですね」
一方通行「オマエもあまり変態を前に出すのは控えとけよ」
海原「そんなに変態ですかね……」シュン
557: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:09:41.54 ID:/zwzR3W60
一方通行「それにしても暇だなァ」ゴロゴロ
海原「いつも何してましたっけ?」
一方通行「ン……寝て起きて飯食ってダラダラして……」
海原「要するにニートですね」
一方通行「買い物とかたまに行ってンだろォが!」プンプン
海原「まあ、そうですけど」
一方通行「……よし、じゃあアレやろォぜ。 Wii」
海原「この家にありましたっけ?」
一方通行「黄泉川ンとこからパクって来たンだよ」
海原「それって打ち止めさんが困るんじゃ……」
一方通行「クソガキの了承は得てるンだよ」
海原「だったらパクったとか物騒な言い方しないでくださいよ」
558: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:10:08.18 ID:/zwzR3W60
一方通行「俺これやってみてェンだよな! Wii Sports!」コレ
海原「体力のない貴方にできますかね?」
一方通行「確かに体力はねェけどゲームくらいなら大丈夫だろ」ワキワキ
海原「そうだといいですけどね」
一方通行「これどォやって設置すンだよ」
海原「どれ、貸してください。 自分がやりますよ」ヨイショ
一方通行「嫌だ。 俺がコードつなげる」ヤダ
海原「何駄々こねてるんですか、いつまでたっても
始められませんよ」
一方通行「じゃあどこに繋げたらいいか口で言えよ。
俺がその通りに繋ぐから」
海原「どんだけ繋ぎたいんですか……」
559: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:10:46.36 ID:/zwzR3W60
一方通行「ったくこのテレビ無駄にでけェから
後ろのプラグに手が届かねェンだよ……」
海原「ポジティブに考えてください。 大画面ですよ?
大迫力でゲームが出来るじゃないですか」
一方通行「だから早くやりてェンだよォォ!!
どこに繋げたらいいンだよォォ!!」ウワァァ
海原(この一方通行さんを番外個体さんが見たら
どうなることだろう)
―――
――
一方通行「よし、接続完了!」
海原「何でそれだけで30分もかかってるんですか」
一方通行「あれだ、ウォーミングアップだ。
マラソン選手とかも本番前に体を温めンだろ?」ホクホク
海原「何のウォーミングアップをしたんですか貴方は」
一方通行「野球やろうぜ野球」ピッ
海原「聞いてないですもんね」
560: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:11:15.40 ID:/zwzR3W60
一方通行「俺バッターすっから海原はキャッチャーやれよ」
海原「え? ピッチャーじゃなくてですか?」
一方通行「何言ってンだ、ピッチャーはキャッチャーの指示に
したがってボールを投げるンだろ? だったら必然的に
キャッチャーを操作してることにならねェ?」
海原「いや、プレイヤーはピッチャーの動きをするんですから、
キャッチャーを操作してるとは考えにくいんじゃ……」
一方通行「細けェこたァいいンだよ!! さっさと投げやがれ!」
海原「分かりましたよ」ヒュッ
<ストラーイク!
一方通行「オ、オマエ……その無駄の無い無駄に洗練された
無駄な動き……。 さては初心者じゃねェな?」
海原「何を隠そう自分はショチトルと毎日のように
このゲームで競い合っていましたからね」フフン
561: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:11:42.59 ID:/zwzR3W60
一方通行「クッソ……ハンデを要求する!
オマエは左で投げろ!」
海原「おや、学園都市の第一位ともあろうお方が格下に
ハンデを要求するなんていかがなものかと」
一方通行「愉快に素敵にカチンときたぜェェェ!!
ハンデなしでオマエをボッコボコにしてやンよォォ!!」ウォォ
海原(ちょろい)
海原「では投げますよ」ヒュッ
一方通行「うおおォォォォ!!!」ブォォォォォン
<ストラーイクツー!
海原「2ストライクですよ」ニヤニヤ
一方通行「クッソ何で当たらねェ!?」ブォンブォン
海原「あまり振り回さないでくださいよ。
自分に当たりそうで怖いです」
562: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:12:10.70 ID:/zwzR3W60
一方通行「角度か? 角度がいけねェのか?
今のボールの速度と高さだと……ここがベストポジションか!」ピコーン
一方通行「オラ海原ァ! もういっぺン投げろ!」カモン
海原「3アウト狙いますよ」ヒュッ
一方通行「もらったァァァ!!」ブォォォン
<ストラーイク! 3アウトチェンジ!
一方通行「なっ、変化球……だと!?」
海原「変化球の種類はたくさんあるんですよ」ニヤニヤ
一方通行「第一位が三振とは情けねェ……」ガクッ
海原「次は自分がバッターですね」
一方通行「はン! 変化球があると知った以上、
とことん変化球投げて三振取ってやるぜェェ!!」
海原(ストレートは使わないと宣言したようなものですね)
563: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:12:37.09 ID:/zwzR3W60
一方通行(このボタンを押しながら投げるとフォークが投げれンのか……
フォークって何だ? フォークみてェにぶっ刺す勢いの球ってことか?)
一方通行「よォし、第一球は君に決めたァァァ!!
構えろ海原ァァァ!!」
海原「どんなボールだろうが受けて立ちます」
一方通行「いくぜオラァァァァ!!!!」ビュッ
海原「見切りました」キラーン
<カキーーン!! ホームラン!!
一方通行「な……なンだ、と……!?」ゼェゼェ
海原「誰も塁に出てないので一点しか入りませんが……
まあ、いい出だしでしょう」
一方通行「フォークのくせにバットに刺さりもしねェのか……」
海原「何ですかそれ」
一方通行(投げ方が甘かったかァ? じゃあ次はスライダーにすっかな。
最近の垣根はスライスチーズに挑戦してるみてェだし負けてらンねェ)ブツブツ
564: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/22(金) 18:13:05.11 ID:/zwzR3W60
海原「そろそろ疲れてきたのではないですか?」ニヤニヤ
一方通行「はン、甘ェな。 この俺がこンくれェで疲れるもンか」ゼーハー
海原「その割には息が上がってますけど」
一方通行「深呼吸だよ見てわかンねェのか。 精神統一には
深呼吸が一番なンだよ」
海原「すってーはくのがー」
一方通行「しンこきゅゥー」スー
海原「すってーはくのがー」
一方通行「しンこきゅうゥー」ハー
一方通行「って何やらせてンだオイ!!」バン
海原「アクセロリズム体操は終わりですか」
一方通行「終わりも何も始まってすらいねェよ!
つか何だそのネーミング!」
海原「ほら、早く次のボール投げてください。
放置してるからキャラクターが暇そうにしてるじゃないですか」
一方通行「何か今日のオマエは余裕に満ち溢れてるなァ……
いや、いつもだけどよ」
571: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:32:02.57 ID:NYIbFvck0
一方通行「じゃあ投げンぞォ」
海原「構いません」
一方通行「宣告しておく。 次に俺が投げるボールはやべェ」
海原「どんな風に?」
一方通行「そりゃ、あれだ。 虫眼鏡の拡大レベルくれェだ」
海原「へぇ」
一方通行「とにかくやべェ。 羽毛布団の圧縮率くれェやべェ」
海原「はぁ」
一方通行「下手したら表札に振動が伝わって家が
爆発しちまうかもしンねェ」
海原「やばいじゃないですか」
一方通行「だが安心しろ。 オマエが空振ってくれりゃァいい話だ」
海原「……」
一方通行「……今の一連の流れはジョークだ」
海原「そうですか」
一方通行「何、オマエ疲れてンの? 反応薄くて寂しいなァ」
海原「貴方そんなキャラでしたっけ」
一方通行「投げまァァァァァす!!!! うォォりゃァァァァ!!!」ビュッツ
海原「ちょっ」
572: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:32:50.86 ID:NYIbFvck0
肩に力が入りすぎた。
勢いよく振り下ろされた一方通行の手に握られていた白色のリモコン型コントローラーが、
するりと彼の手から飛び出してしまった。
コントローラーの向かう先には100インチの大型テレビ。
この家に来たときに一方通行がテレビを壊してしまったために新しく買い換えた物だ。
このままでは大画面にコントローラーが直撃してしまう。
そうなってしまえばゲームの続行は不可、再びテレビの調達に出向かなければならない。
(めんどくせェ)
一方通行は自身の能力をコントローラーに向けて行使する。
進行方向のベクトルを操作、正反対の向きに変更。
直後、今まさに大画面の手前まで迫っていたリモコン型のコントローラーが、
何かに引っ張られるように元来た道を戻っていく。
リビングと廊下を仕切る扉がある。
今のコントローラーの行く先はその扉だ。
まァ、扉くらいなら壊れても構わねェよな、と一方通行は思案する。
不意にその扉が勢いよく開け放たれた。
「一方通行!! 俺ついに仕事が決まっごぶおぉッ!!!」
コントローラーは垣根提督の顔面にクリーンヒットした。
この間わずか1秒。
573: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:33:22.92 ID:NYIbFvck0
垣根「痛ってえぇええええええええええぇぇ!!!!!!」ジタバタ
一方通行「ナイスタイミング。 オマエのおかげで扉もリモコンも
壊れずに済ンだわ」
海原「一方通行さん、何でストラップ付けてないんですか」
一方通行「熱くなって忘れてたわ」テヘ ペロッ
海原「何ですかそれ」
垣根「鼻がああああ鼻あああああああ!!!!」ジタバタ
一方通行「何オマエ鼻がどうかしたのか?」
垣根「今まさにオマエが投げた(?)リモコンが
俺の鼻頭にめり込んだんだよおお!!!」
一方通行「悪ィ」テヘ ペロッ
海原「だからそれなんのつもりなんですか」
一方通行「俺の凶悪なイメージを払拭しよォかな、と」テレ
海原「逆に怖いです、逆に」
一方通行「っつか今何だかンだでオマエ空振ったよな!? よな!?」
海原「いや、さすがに貴方がリモコンをボールのように投げたことに
驚きすぎて思考がフリーズしましたよ」
一方通行「それほどでもォ」テレ
574: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:33:55.42 ID:NYIbFvck0
海原「いや、褒めてないですし。 自分から見たら、一方通行さんの手から
リモコンが投げ出されたと思ったら後ろに飛んでって垣根さんにぶつかった
っていう状況ですよ。 まさに一瞬の出来事ですよ」
垣根「待て待て俺なんかドア開けたらリモコン飛んできたんだぞ」
一方通行「いきなり入ってくるオマエが悪いだろ」
垣根「理不尽!」
一方通行「さてさてゲームを続けよォか」
海原「次こそは打ちますよ」
一方通行「俺の剛速球を食らいやがれ!」
垣根「待て待て待て待て!! 何ナチュラルに俺をのけ者にしてんの!?」
一方通行「え、オマエそォいうポジションじゃン」
垣根「そんなポジション確立した覚えねぇよ!! 大体この間買い物
行ったときも俺だけ一人で寂しかったんだからな!?」
一方通行「よしよし」ナデナデ
垣根「えへへー」
一方通行「何コイツ……」ウワァ
垣根「そういう流れじゃなかったのかよ!? 何なんだお前!」
575: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:34:21.82 ID:NYIbFvck0
一方通行「何かと言われれば、プロ野球選手だ」
海原「突拍子もない」
一方通行「俺なら野球選手くれェちょちょいと頑張ればなれるがな」
海原「そんな反則な能力持ってたら誰も勝てませんよ」
一方通行「学園都市の野球って殺伐としてて怖ェよなァ。
小せェ子供とか観覧してたら泣くやつ出てくンだろ」
海原「能力禁止のルールを採用してる大会もありますよ」
一方通行「そォなのか? そっちは平和そォでいいな」
海原「貴方も随分言動が丸くなりましたよね」
一方通行「まァ、闇とは手を切ったし、いつまでもウジウジしてたら
クソガキに余計な心配与えちまうしなァ」
海原「番外個体さんも心配しますよ」
一方通行「オマエに言われなくても分かってンだよ」イラ
海原「嫉妬しなくてもいいじゃないですか」ニヤニヤ
一方通行「嫉妬してねェ!!」
海原「一方通行さんってウブなんですね」ニヤニヤ
576: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:34:49.68 ID:NYIbFvck0
一方通行「違ェし! 俺はガツガツ行く方だし!」
海原「まあ、どっちでもいいですけど、一方通行さんのメールが可愛らしい
という情報は番外個体さんから既に入手済みですので」
一方通行「はァァァ!?」
垣根「ちょっと待てお前らなんでまたナチュラルに俺をハブるわけ!?」
一方通行「何オマエらどんなメールのやりとりしてンの!?」
海原「気になるんですか」ニヤニヤ
一方通行「いや、気になるわけねェし……いや、ただアイツの身を案じてだなァ」
海原「自分はいつでも変態なわけじゃないですから安心してください」
一方通行「うわ、ついにコイツ変態って認めやがった」
海原「いえ、自分が変態だなんて一時も思ったことは無いのですが、
番外個体さんからも何度も言われてますので、さすがに認めざるを得ないかなと」
一方通行「もうオマエ番外個体って言うな、絶対言うな、二度と言うな」
海原「何てわかりやすい嫉妬なんでしょう」
一方通行「なんということでしょう、みてェなニュアンスで言うな!」
577: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:35:19.77 ID:NYIbFvck0
海原「さっきから言うな言うなって無理な要求を」
一方通行「オマエの口を縫い付けてやろォか!?」
海原「いえ、自分にそういう趣味はないので……」
一方通行「はァ!? ……ちげェよ!! 何想像してンだきめェ!!」
海原「え、裁縫のなにが気持ち悪いんですか?」
一方通行「えっ」
海原「自分は、口を裁縫するなんていうアブノーマルな趣味は
ないといったのですが……」
一方通行「いや、それはそれで変態嗜好だなァ」
海原「あ、もしかして一方通行さんは口を口で塞いじゃうー
みたいな想像しちゃったってことですか? そうですよね?」ニヤニヤ
一方通行「うわァァ!! 来ンな! こっち来るなァァ!」
海原「あっ、番外個体さん」
一方通行「えっ!?」バッ
海原「うっそー」
一方通行「うううああああああああァァァァァァァ!!!!!!」
垣根「頼むから俺も会話に混ぜてくれよぉおおお!!」ウェェェン
578: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:35:49.92 ID:NYIbFvck0
―――
――
一方通行「なんで俺が一人なんだよ」
海原「仕方ないじゃないですか、ランダムですし」
垣根「やっと俺にもコントローラーが……」キラキラ
一方通行「俺ぶっちゃけテニスのルール知らねェンだけど」
海原「ならこちらが優勢ですね」
垣根「だな」
一方通行「鬼! 悪魔! フェアプレー精神がなってねェ!」
垣根「一人の寂しさをその身をもって味わうがいいさ」
海原「自分はフェアプレー精神など持ち合わせていません」
一方通行「いいし! 第一位の勘で受けて立つし!」
垣根「じゃあ最初俺がサーブだな」ポーン
一方通行「よっしゃスマッシュゥゥゥ!!」パーン
一方通行「……あ? 何かそっちに点入ったンだけど」
海原「最初のサーブは後ろの人が返さないと駄目なんですよ」
一方通行「だァァ! テニス難ィィ!!!」
番外個体「テニスってなんかいやらしい響きだと思わない?」
579: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:36:18.36 ID:NYIbFvck0
一方通行「おォォォ!?!?」バッ
番外個体「やっほう、遊びに来たよ☆」ギャハ
打ち止め「ミサカもいるよ! ってミサカはミサカは
自己の存在をアピールしてみる!」
海原「あれ、今日はお二人共来れないはずだったのでは?」
番外個体「え? 今日は調整はないってこの人に言っておいたはずなんだけど」
一方通行「……」
海原「……なんてわかりやすいのでしょう」ニヤニヤ
垣根「独占欲、か」ウン
一方通行「うわァァァァン!!」ビェェ
番外個体「ちょっと何泣いてんのみっともない」フキフキ
垣根「あらやだお母さん」
打ち止め「ミサカのポジションが乗っ取られてる!
ってミサカはミサカは焦ってみる」
一方通行「丁度いい、番外個体オマエ俺と組め」
番外個体「え? あ、いいけど」
580: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/27(水) 17:36:44.20 ID:NYIbFvck0
一方通行「っしゃァァ! 孤独から脱出したぜざまあみろ垣根!」
垣根「くそ……こんなに早く抜け出すとは」
打ち止め「えっと……ミサカは……」
海原「あ、打ち止」
垣根「打ち止めちゃん、お兄ちゃんと代わりばんこにやろうぜ」
打ち止め「うん! ってミサカはミサカはカキネのお膝に
乗っかってみたり」
海原(あれ、取り残された)
一方通行「仕切りなおしだァ! 第一ゲーム始めンぞォ!!」
番外個体「ミサカ、あまりゲームとか得意じゃないんだけどね」
垣根「じゃあ打ち止めちゃん最初にやっていいぜ」ホラ
打ち止め「やったーってミサカはミサカはリモコンを構えてみる!」
591: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:51:25.50 ID:ksyL7fN/0
――30分後
垣根(……打ち止めちゃんが一向に俺と代わってくれない)
打ち止め「あーっ、打てなかったってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」ショボ
海原「大丈夫ですよ打ち止めさん。 今のは一方通行さんが
大人気なかったです」
一方通行「大人気ねェもクソもあるかァ!! これは立派な戦争だ、
敵対している以上容赦はしねェンだよ!!」
番外個体「大人げない……」
一方通行「あ、悪ィ……」ショボ
打ち止め「いいのよ、ミサカがあなたのスマッシュを打ち返せるように
なればいい話だもんってミサカはミサカは慰めてみる」ヨシヨシ
一方通行「打ち止めァ……」ジーン
海原「次は自分がサーブですね」
一方通行「ばっちこォい!!」
番外個体「さっきからミサカにボールが全然回ってこないんだけど」
海原「一方通行さん、チームワークが大事ですよ。
貴方ばかり打っていては番外個体さんもつまらないでしょう」
592: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:52:01.01 ID:ksyL7fN/0
一方通行「俺、反射が得意だろォ? だからつい反射的に
ボールを打っちまう癖が付いてだなァ」
打ち止め「全然関係ないよってミサカはミサカは論破してみる」
番外個体「ま、たかがゲームだし気にしないけどさ」
一方通行「オイ、オマエ今「たかが」っつったか」
番外個体「だから?」
一方通行「ゲームなめンじゃねェぞコラァァ!!」バン
番外個体「はいはい」
打ち止め「知らない間にあの人の扱いが上手くなってるって
ミサカはミサカはびっくりしてみる」
海原「前は口を開けば喧嘩でしたもんね」
垣根「おい、お前ら俺を無視してんじゃ」
海原「ではサーブを打ちますね」
593: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:52:29.25 ID:ksyL7fN/0
一方通行「ばっちこォい!!」
垣根「ねぇ、ちょ」
番外個体「ミサカの華麗なレシーブ!」パーン
打ち止め「そしてミサカの瞬速スマッシュ!」バーン
垣根「なあ」
一方通行「さらに一方通行の豪速スマッシュ返し!」ポーン
海原「閉めの海原カウンタースマッシュ!」バコーン
垣根「……」
一方通行「そのだせェネーミングと一緒にぶっ飛べ海原!」パーン
海原「なんと、自分のスマッシュ返し返しを更に返してくるとは!」バシーン
一方通行「甘ェ! スマッシュ返し返し返し返し返しだァ!」ポーン
番外個体「あれ、回数違くない?」
一方通行「え?」ピタ
打ち止め「もらったあああ! ってミサカはミサカは
二人の死角へジャンピングスマーッシュ!!」バチコーン
594: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:53:01.13 ID:ksyL7fN/0
打ち止めのスマッシュが一方通行達のコートへ突き刺さる。
特別速いわけではなかったのだが、確実に死角を突いたそのボールは、
容赦なくその進路を進んでいく。
まだワンバウンド。
もう一度地面に付く前に打ち返せば相手側に点が入るという事態は避けることが出来る。
「クソったれ……!」
一方通行は、今まさに地面へ向かって放物線を描いているそのボールに
プレイヤーを向かわせる。
「もう間に合わないよ!」
番外個体の悲痛な叫びが耳を突く。 彼女も一方通行同様に
プレイヤーをボールへ向かわせたのだが、距離があったために追いつかなかった。
頼みの綱は、一方通行の操作するプレイヤーのみだ。
一方通行がラケットを振る動作をすると共に、画面の中の一方通行は
滑り込みをするような形でラケットをボールへ突き出す。
打てるか、打てないか。
操作をし終えた一方通行は、画面を見つめていることしかできない。
「入ったあああああああ!!!」
刹那に響く歓喜の声は、打ち止めのものだった。
ラケットは、わずかにボールへ届いていなかったらしい。
595: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:53:36.81 ID:ksyL7fN/0
「初めてミサカのスマッシュが決まった!
ってミサカはミサカは興奮してみたり!!」
「やりましたね打ち止めさん」
「クソォ……オマエが途中で茶々入れなかったら打ててたのによォ」
「彼女に責任転嫁するなんて情けない第一位だね、ぎゃはは」
打ち止め(垣根)・海原チームは、点を入れることが出来たと喜びを語り、
一方通行・番外個体チームは、何でもっと早く動かなかったんだ、
オマエが余計なこと言わなければ、と今の点の損失責任を互いに
なすりつけ合っていたりしていた。
各々が一戦の余韻に浸っている中、一方通行はあることに気づいた。
「……あ? 垣根のやつはどこ行ったンだァ?」
垣根がいない。
さっきまでは打ち止めの近くに座っていたはずだ。
トイレにでも行っているのだろうか? と思ったがどうも違うらしい。
596: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:54:10.38 ID:ksyL7fN/0
「垣根さんならさっきふらふらと外に出て行きましたよ」
「外だァ? 何でだよ」
「ミサカがコントローラーを占領してたからつまんなくなって
いじけちゃったのかなあってミサカはミサカは反省してみる」
「いや、いじけるとか多分ねェからそンな落ち込むな」
そういえばゲームをやっている最中に垣根が何か話しかけてきていたような
気もしたようなしないような……と一方通行は記憶を穿り返してみるが、
ゲームに全神経を集中させていたためにどうも思い出せない。
話しかけても反応してもらえないからいじけたのか? だがそんなことは日常茶飯事だ。
思えば垣根はやたらゲームをやりたがっていた。
打ち止めの言ったことはあながち間違いではないのかもしれない。
――と、その思考に、垣根の声が割り込んだ。
玄関の方から声がしたようだったが、ドアが閉められているために上手く聞き取れなかった。
多分、「おいてめぇらー!」的なことを叫んだのではないかと思われる。
全く、近所迷惑にも程がある。
「ったく何なンだ……オイ、うるせェぞ!」
うるさいぞ、と注意した一方通行も大概うるさいのだが、
そんなことを言っている場合ではない。
一方通行は重い足取りで、めんどくせェとでも言いたげな表情を浮かべながら
玄関のドアを開けた。
そこで彼は、信じられないほど恐ろしい光景を目の当たりにすることになる。
597: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:54:48.40 ID:ksyL7fN/0
玄関を出て数メートル先に、石垣がある。
垣根は見るからに不機嫌そうな顔でそこに突っ立っていた。
何がしてェンだよ、と呟きかけた一方通行は、垣根の手の位置を見て、
全身の血の気が冷めていく感覚を味わった。
垣根の右手は石垣に隠れており、一方通行には見えていない。
そこまでは問題ない。 だが次が問題だ。
その右手の目の前にある石垣。 その右手のある高さ。
そこには、汚い字で「チーズ工場」と書いてある『表札』が貼り付けられてあるのだ。
「オ、オマエ……その手は一体どォいうつもりだ……」
「これ以上俺をのけ者にするってんならなあ……
俺にだって考えがあるんだよおおお!!!」
「待て! 少し落ち着け垣根!」
「これが落ち着けるかああ!!」
どうやら先ほどの予想は大方当たっていたようだ。
これくらいでいじけるなんて大人気ない。 と言いたいところだが、
今垣根を逆撫でするような言葉を吐けば、この家がどうなってしまうかは言うまでもない。
例えるなら、今垣根は核爆弾の起爆スイッチを片手に、
俺を仲間に入れないとお前たちを殺す、と言っている様な状況だろう。
その通りすぎて例えになっていないのだが。
598: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:55:32.16 ID:ksyL7fN/0
「今自分が何しよォとしてンのか分かってンのか!?」
「俺に常識は通用しねんだよおお!!!」
さすが学園都市第二位。 常識うんぬんの前に会話が成立していない。
故に一方通行は無理やり言葉を解釈する。
何しよォとしてンのか分かってンのか!?(中にはまだ人がいる)
↓
常識は通用しねえ!(人が死んでも構わねえ!)
「この野郎ォ…………!!」
家の中には自分が保護すると決めている三人がいる。
一方通行の中では、垣根や麦野もそれに相当するのだが、
今の垣根は自分の保護すべき対象を破壊しようとしている。
だが。
一方通行の心は揺らがない。 何があろうと垣根は保護すべき対象だ。
そしてこの家、「チーズ工場」も。
「いいぜェ……、オマエが自分の勝手でチーズ工場を破壊して
俺の大切なやつらを奪おうってンなら……、
まずは常識が通用しねェなンて言うその腐った常識を捻り潰してやる!!」
599: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:56:09.23 ID:ksyL7fN/0
(やべえ、一方通行に火つけちまった)
垣根帝督は焦っていた。
最初からこの家を爆破しようなんて気は更々無かった。
ちょっと脅して、自分を仲間はずれにするのを止めてもらおうと思っただけだった。
だが目の前の白い人間は真っ赤な闘志に燃えている。
白から赤に変色するのではないかと思うくらいにオーラがヤバい。 マジでヤヴァい。
「何か騒がしいってミサカはミサカは外の様子を伺いに来てみたり」
「二人とも何して……あれ? その表札って……」
「かっ、垣根さん!? 何してるんですか!?」
(今更、冗談でしたーなんて言ったらまた総無視コース一直線だよな。
どうしてこうなった……)
「オマエの根性を叩きなおしてやンよォォォ!!!」
グオッ、と一方通行が一直線に垣根の元まで駆け寄る。
チョーカーのスイッチは通常モードのままのようだった。
あくまで素で殴り合いをしようというワケだ。 一方通行も男らしいところがあるものだ。
600: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:56:49.78 ID:ksyL7fN/0
「おらァァァァ!!」
「うぉっ!?」
間一髪だった。 垣根の手が表札に触れそうなギリギリの位置にあるというのに、
一方通行は容赦なく垣根に殴りこんできた。
垣根がとっさに表札から手を離したからよかったものの、そのままの位置に手を置いていたら、
殴られた衝撃で表札に手が当たり、微弱な摩擦熱を感知して爆発、
などという最悪な事態になっていたかもしれなかった。
(あっぶねえええええええええ!! お前こそ自分が何したか分かってんのかよ!?)
爆薬は正真正銘の本物だ。 未元物質で作られた爆薬は威力があるからと、
研究素材に使われた過去もある。
彼がそんな危険物質を冗談半分で家の基礎に謎の技術で埋め込み、
表札をスイッチにするなどという暴挙に出た理由は、
先ほどのように、何かあったときに脅せるようにという何とも幼稚な発想からだった。
何も実際に埋めることなんてなかったのでは? と思う方が大勢居るかもしれないが、
「俺に常識は通用しねえ」と返答して置くとしよう。
601: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:57:20.48 ID:ksyL7fN/0
第一位と第二位の殴り合いは続いた。
互いに能力は一度も使用していない。 男と男の真剣勝負、である。
そもそもは垣根の度が過ぎた脅し、一方通行の派手な勘違いが原因なのだが、
最早そんなことはどうでもいい。
日ごろ溜まっているお互いへの鬱憤を晴らすだけの殴り合いに変わっているからだ。
「何なんだお前は彼女出来たからって調子に乗りやがって!!」
「彼女いねェからって嫉妬してンじゃねェよこの童貞がァ!!」
「童貞じゃねえよ!! 馬鹿にしてんじゃねえぞコラ!!」
一方通行は垣根の胸倉を掴んでは殴り、殴り、殴り、ぶん投げる。
能力を使用していないなめに、胸倉を掴んでもさほど持ち上がらないし、
投げても派手に転がったりはしない。
対する垣根は、一方通行のみぞおちにストレート、アッパー、更に首根っこを掴み
地面へ押し付け頭を足で踏みつける、という酷い有様だった。
「ぐァ……か、は」
「どうしたもう降参かよ? 能力使っても全然構わねえんだぜ!?」
「うる……せェ……」
602: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:57:58.64 ID:ksyL7fN/0
一方通行は、ペッと乱暴に口の中に溜まった血液を地面に吐き捨てる。
そして、よろよろとおぼつかない足取りで立ち上がり、
目の前の男を、その深い紅色の瞳で睨み付けるように見据えた。
「もうやめなよ!」
「さすがにやりすぎだよってミサカはミサカは制止の声をあげてみる!」
「うるせェ黙ってろ」
あまりの惨状に耐えかねた番外個体と打ち止めが彼の側へ駆け寄るも、
一方通行は、邪魔だと二人の護るべき少女を睨み付けた。
「おーおーカッコいいねえ!! ミサワちゃんも惚れちゃうわけだこりゃ」
「ふざけてンなクソが……次で終わりだ」
「ああ、いいぜ……全力で来いよ。 ああ、今までも十分全力だったか?」
「言ってろ生涯童貞が」
「だから童貞じゃねんだよおおおおおおお!!!!!」
垣根のその叫び声を合図に、学園都市のツートップは勢いよくその拳を交差させた。
603: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:58:37.16 ID:ksyL7fN/0
――勝敗は決した。
能力を使用しないで一方通行が垣根に勝つなど不可能だ。
相手が番外個体のような女性だったとしても負けていたかもしれない。
それほどに彼の身体能力、体力は著しく欠落していた。
が、
今はそれは関係ない。
体力差以前に一方通行と垣根には結構な身長差がある。
身長が大きい人程それに比例して腕も長い。
故に拳を交差させてお互いの顔にお互いの鉄拳が、などという展開にはならなかった。
一方通行の拳は寸止めのような状態になり垣根に届くことなく散った。
一方、垣根の拳は一方通行の顔面に勢いよくめりこみ、垣根の全力を
モロに受けた一方通行の体は、その勢いを失うことなく後ろへ投げ出された。
まあ、もし垣根に拳が当たっていたとしても同じ展開になった可能性も否めないが。
これで一件落着、と殴った瞬間垣根は思った。
その直後、後ろに飛んでいく一方通行の背後を見て愕然とする。
一方通行が飛ばされた先にあるのは、
『表札』だ。
604: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 21:59:29.38 ID:ksyL7fN/0
(やべえええええええええええええ!!!!!!!!!)
垣根は焦った。 今までこれほど焦ったことなんてないというくらいに焦った。
しかしどうすることも出来なかった。
己の全力を受けた一方通行の身は恐るべき速度で『表札』の付いた
石垣に向かって進んでいる。
垣根には今この瞬間に見えているこの光景が、スローモーションになって見えた。
これで俺たちはまた、「ホームレス」になるのかな、と。
半ば悟り気味にそう思考した次の瞬間、
一方通行が表札の付いた石垣に激突し、石垣はその原型をなくした。
605: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 22:00:27.84 ID:ksyL7fN/0
垣根「――っ!」
海原「……」
打ち止め「……」
番外個体「……」
一方通行「」ピクピク
海原「……あの、垣根さん」
垣根「……あ、れ?」
番外個体「これって、触ったら爆発するんじゃ……」
打ち止め「表札は粉々になっちゃってるよって
ミサカはミサカは一応報告してみる」
一方通行「」ピクピク
番外個体「ねえ、大丈夫?」ユサユサ
一方通行「あ……あァ……これくらいどォってこたァ……」ピクピク
打ち止め「あとで病院で診てもらおうねって
ミサカはミサカはあなたの体を心配してみる」
一方通行「あァ……。 それより垣根、こりゃどォいうことだ」
垣根「えっ……?」ダラダラ
606: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 22:01:12.21 ID:ksyL7fN/0
海原「とぼけないでください。 表札が粉々になってるのに爆発なんて
起きないじゃないですか」
垣根「いやぁ、そのぉ……」
垣根(確かに爆薬のテストはしたはず……まさか、しけった……?)
一方通行「いや、正直爆発しなくて安心したンだがよ」
垣根「……だったらもういいじゃねえか」
一方通行「別に爆弾うンぬンはどォでもいいよ。
だがオマエはずっと俺たちに嘘を付いてたってことだよなァ」
海原「そこまでしてこの家をチーズ工場にしたかったんですか」
打ち止め「まあそんなに責めなくてもってミサカはミサカは
表札に触らないように気をつけていたのが無駄だったと知って
なんだかむなしくなってみたり」
番外個体「ミサカたちは嘘に踊らされてたってわけ?」
垣根「……ハッ、だから最初からジョークだって言ってたじゃねえかよ!
端から嘘なんか付いてねえんだよバァーカ! ターコ!」ベー
607: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 22:01:52.55 ID:ksyL7fN/0
―――
――
打ち止め「あーっ、ミサカがピーチ使いたかったのに!
ってミサカはミサカは文句を言ってみたり!」ブー
番外個体「ミサカだってピーチ使いたいし。 お姉ちゃんは
妹に譲ってあげないと駄目なんだよう?」
一方通行「コラ喧嘩すンな。 平等にじゃンけンしろ」
打ち止め「むー、じゃあミサカはデイジーでいいよって
ミサカはミサカは心の広さをアピールしてみる」
番外個体「あっ、やっぱちびっこがピーチ使っていいよ、
ミサカはデイジーでがまんしてあげるし!」
打ち止め「今更遅いよ、番外個体はミサカに甘えてピーチを
使えばいいんじゃないかな? ってミサカはミサカはピーチを推してみる」
番外個体「いやだ! ミサカがデイジーを使う!」
打ち止め「もうデイジー選んじゃったから無理だもんね!
ってミサカはミサカはピーチを譲ってあげたことを誇ってみる」
一方通行「どっちも同じよォなのなンだからどっちでもいいだろ……」
海原「女性には女性の見方というものがあるんですよ。
それにしても貴方がキノピオなんて可愛らしいキャラクターを
選ぶなんて意外ですね」
608: ◆LMXQc2mCMY 2011/04/30(土) 22:02:48.19 ID:ksyL7fN/0
一方通行「そォか? マリオ系のゲームする時はいつもコイツを使ってるンだが」
海原「ワリオとかワルイージとか選びそうだな、と思って」
一方通行「いや、キノピオの模様がよォ、なンか妙に親近感沸くっつゥか……」
海原「ああ、赤と白ですもんね」
打ち止め「あなたがキノピオならミサカはキノピコを使おうかなって
ミサカはミサカは番外個体にデイジーを譲ってみる」
番外個体「ああ! ミサカもキノピコ使いたい!」
一方通行「だァァ! オマエさっきから何なンだよ!!」
番外個体「だって……」モジモジ
一方通行「もォ俺が勝手に決めンぞ。 オマエら姉妹なンだから
仲良くマリオとべビィマリオでも使ってろ」
打ち止め「じゃあ番外個体がべビィマリオだね!
ってミサカはミサカは暗に妹は妹らしく小さいほうを使えと言ってみる」
番外個体「むきーっ! 肉体年齢的にはミサカの方が上なんだから
べビィマリオはちびっこが使いなよ!」
一方通行「あァァァァ!! 埒が明かねェェェェェ!!!!」グァァ
垣根「……あの、さっきは俺が悪かったから無視しないで……
俺もマリオカートやりたいよー……」ズビ
627: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:22:11.74 ID:wlCiw1je0
数時間後
垣根「おらああああ!! 俺の赤甲羅さばきを目に焼き付けろおおお!!」
一方通行「ちょ、オマエそれ全部俺に当たってンぞ!!」
打ち止め「カキネが一位になった! ってミサカはミサカは実況してみたり」
垣根「ハッハァ!! どうだ一方通行! 第二位に繰り下がった気分はよ!?」
一方通行「クソッたれがァ! 何で俺のアイテムはバナナしか出ねンだよ!」
番外個体「ゲームしてる最中にそんな卑猥なこと言わないでよ」ギャハ
一方通行「オマエ最下位じゃねェか……」
番外個体「だからミサカはこういうゲーム得意じゃないんだって」
垣根「随分一位と二位の差が開いたんじゃねえか?
敵がいねえってのは暇なもんだな……ってうお!?」
海原「隙ありですよ」
一方通行「うォォ!? 何でオマエ逆走してンだァァァ!!」
海原「もちろん一方通行さんの邪魔をするために」
番外個体「その手があった! ミサカも逆走しよーっと」
一方通行「オィィィィ!!」
628: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:23:02.85 ID:wlCiw1je0
打ち止め「ふああ……なんだか目が疲れてきちゃったかも
ってミサカはミサカは疲労を訴えてみる」
一方通行「半日ぶっ続けでゲームしてりゃ目も疲れるだろ。
ここらでゲームは終わりにするか」
番外個体「ミサカは肩が凝っちゃったよ」
海原「自分がマッサージしてさしあげましょうか?」
一方通行「さァァァァせるかァァァァ!!」グァァァ
海原「下心なんてありませんよ?」
一方通行「俺の気持ちの問題だボケ!」
海原「自分、マッサージの腕はある方だと自負しているのですが」
一方通行「マッサージなら俺のベクトル指圧マッサージで
血行改善間違いなしだろォ!!」モミモミ
番外個体「あー……そこそこ……」ポワー
629: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:23:32.11 ID:wlCiw1je0
海原「能力を使うなんて卑怯じゃないですか」
一方通行「あるもン使わねェとかもったいねェだろォが!」モミモミ
番外個体「ふにゃー……」
垣根「能力の無駄遣いとはこのことか……」
打ち止め「ミサカも能力使って電気マッサージが出来ると思う!
ってミサカはミサカは再チャレンジを試みてみる」
垣根「お、じゃあ試しにお兄ちゃんにやってみてくれよ」
打ち止め「分かった! ってミサカはミサカは
うつぶせになるようにカキネに促してみる」
垣根「なんだ、全身マッサージしてくれるのか?
肩だけでも十分だったんだけどな」
打ち止め「ミサカは小さいから寝転がってもらったほうが
やりやすいのってミサカはミサカはカキネにまたがってみる」
垣根「軽いな……」ホノボノ
打ち止め「じゃあ始めまーす! ってミサカはミサカは
開始の合図をしてみたり!」
630: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:24:00.81 ID:wlCiw1je0
垣根「そうだな、最初は腰のあた」
打ち止め「えいっ」ビリッ
垣根「りっ!?」ビクン
打ち止め「あ、あれ? 強すぎたのかな……
ってミサカはミサカはカキネを心配してみる」
垣根「あ、ああ大丈夫だ。 伊達に第二位やってるわけじゃねえ。
ただ、もう少し弱めのほうが嬉しいかな」
打ち止め「えいっ」ピリピリ
垣根「おっ、あ、はははははははひゃ!! ちょ、ま、
あはははははは!!! くすぐ、た、ひゃはははは!!」ジタバタ
一方通行「垣根のやつ……打ち止めのマッサージ実験体に
自ら名乗り出るたァ尊敬するぜ……」モミモミ
番外個体「前にあなたもマッサージされてたもんね……」フニャー
一方通行「あれは地獄だな。 痛みとくすぐったさに
クソガキの気が済むまで付き合ってやる羽目になる」
631: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:24:35.26 ID:wlCiw1je0
番外個体「ミサカならもっとうまくマッサージできると思うよ」
一方通行「いや、今は遠慮しとくわ」
番外個体「夜のマッサージの方がお望みだった?」ギャハ
一方通行「オマエなァ、仮にも女なンだからそォいうこと
ベラベラ喋ンなよ……」
番外個体「仮にもって酷いんじゃないの」
海原「まあまあ落ち着いて。 ここは間を取って
自分が一方通行さんをマッサージしてさしあげましょう」
一方通行「えええええええ!? どォしてそォなンだよ!!」
海原「垣根さんと打ち止めさんはあちらで実験中ですし、
番外個体さんのマッサージは終えてしまいましたし、
残るは一方通行さんしかいないじゃないですか」
一方通行「待て待て待て! 何でマッサージする前提なンだよ!」
海原「自分のマッサージの腕を披露したいんですよ」
一方通行「いや本当マジ勘弁してくれませンかねェ!
俺全然凝ってないンで! つーか自分で血行調整できるンで!」アセアセ
632: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:25:03.26 ID:wlCiw1je0
番外個体「じゃあやっぱりミサカが夜のマッサージを……」
一方通行「オイ番外個体!? ちょ、オマエその手は何だ!?
待てベルト外そうとすンな! 頭おかしいンじゃねェのか!?!?」
番外個体「ミサカ、公衆の面前でもOKよって言ったらどうする?」
一方通行「どうもしねェよ!! 何言ってンだオマエは!?」
番外個体「……あ、そ。 ま、あなたはチキンでもやしだし仕方ないよねー。
今まで一回もミサカに手出したことないし? そんなもんだよねー」ツーン
一方通行「はァ? いきなり何すねてンだよ……」
番外個体「ばーか! もやし! ホワイトアスパラ!
新しくチェリーボーイも追加してあげるから喜ぶんだね! ギャハハ!」
一方通行「」プッチーン
一方通行「……よォし上等じゃねェかコラ。 ヤってやンよ」
番外個体「え……え?」
633: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:25:29.19 ID:wlCiw1je0
一方通行「なァに逃げてるンですかァ? オマエから誘ってきたンだろォが」
番外個体(うそ、何かのスイッチ入れちゃった……?)
番外個体「え、ちょ待ってよ、場所考えてよ変態!」
一方通行「あァ? 公衆の面前でもOKなンじゃないンですかァ?」
番外個体(ここここ心の準備が……)
番外個体「あ、あの、ミミ、ミサカは……」
一方通行「…………ったく、冗談だよ冗談。
その減らず口もちったァ自重しやがれってンだ」
番外個体「へ? ……あ……?」
番外個体(じょ、冗談か……何だ……)ホッ
海原「そういう一方通行さんこそ発言を自重してくださいよ。
打ち止めさんがすぐ近くにいるんですよ」
一方通行「あ、やべ」チラ
634: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:26:02.01 ID:wlCiw1je0
垣根「がぁぁぁぁああああああああ!! いてええええ!!
すと、ストップうううううううううう!!!」ビリビリビリ
打ち止め「ごめんなさい!ってミサカはミサカは電流を弱めてみる!」ピリピリ
垣根「ひゃあああああははははははああうひゃあははは!!!」ジタバタジタバタ
打ち止め「うわああん! 全然進歩しないよーって
ミサカはミサカは試行錯誤してみるんだけどおおお」ピリピリ
一方通行「……垣根大丈夫かあれ」
海原「……どうでしょう」
番外個体「あなたの時ほどじゃないから大丈夫だとは思うけど」
海原「これよりも酷い光景だったなんてそんな」
番外個体「正直あんな第一位は見たくなかったね……」
一方通行「忘れてくれ頼む」
635: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:26:28.26 ID:wlCiw1je0
海原「というわけで肩だけでもマッサージさせてください」
一方通行「何でだよ!! 触ンな!」
海原「そんなに嫌がることないじゃないですか……。
さすがに少し傷つきますよ」シュン
一方通行「いや、オマエのことが嫌いなわけじゃねンだぞ?
ただよォ、オマエが近くにくっとなンか、こう……胸がこう……
キュンってなって苦しくなンだよ」
海原「」
番外個体「」
一方通行「……え、何? 何その顔」
636: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:27:02.82 ID:wlCiw1je0
―――
――
麦野「ちょっと、起きなさいってば」ユサユサ
一方通行「ン……あ?」
木原「おはようさん、もう晩飯の時間だけどな」
打ち止め「あなたが起きるまでみんな待ってたのよって
ミサカはミサカは報告してみる」
一方通行「……あのあと昼寝したンだったか」ボー
番外個体「夜寝れなくなっちゃうんじゃないの?」ギャハ
一方通行「ン……」ギュウ
番外個体「んえ!? え!?」
打ち止め「やっぱりこの人に眠気は鬼門なのかもって
ミサカはミサカはうらやましい気持ちを押し殺してみる」
木原「かーっ、大胆だねえ一方通行!」
麦野「……」チラッ チラッ
木原(何か視線を感じる……)
637: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:27:34.61 ID:wlCiw1je0
垣根「それはそうとマジで腹減ったわ。 俺ら日中ゲームしてて
昼飯食うの忘れてたんだよ」
麦野「どんだけゲームにのめり込んでたのよ……。
まあいいわ。 ご飯は買ってきてあるからそれを食べましょう」
海原「何を買ってきてくださったんですか?」
麦野「ふふ、チーズ製造機兼台車。 喜びなさい」
垣根「何だ? 俺の好物でも買ってきてくれたのか?」
麦野「ええ。 ダブルカレー饅頭よ」バーン
垣根「」
打ち止め「わあ、大きいお饅頭だ! ってミサカはミサカは
驚いてみたり!」
番外個体「こんなに大きいの食べれないよ」
一方通行「一人一個なわけねェだろ、小分けするわボケ」ギュー
垣根「オイコラそこ目の前でイチャイチャすんじゃねえ!」
638: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:28:02.95 ID:wlCiw1je0
麦野「一つはみんなで分けて食べるといいわ」
海原「残り二つは取っておくんですか?」
麦野「二つは私と第二位の分よ」
垣根「」
麦野「さあ、お互い己の限界に再チャレンジしようじゃないの」
垣根「嫌な記憶がフラッシュバックしやがる……」グルグル
木原「ほれ、皿寄こせ。 取り分けてやる」
一方通行「ン」つ皿
番外個体「カレー餡が詰まってる……」
打ち止め「外側はカレー味のお餅だよ!
ってミサカはミサカはつまみ食いしちゃってみたり」
一方通行「クソガキ!! ちゃンと手は洗ったか!?」
打ち止め「え、あ、うん洗ったよ! ってミサカはミサカは
予想外の突っ込みどころにびっくりしてみる」
639: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:28:33.96 ID:wlCiw1je0
番外個体「あ、そうそう、ミサカたち今日泊まっていくから」
一方通行「そォかい」
木原「あ、じゃあ俺も泊まるかな」
一方通行「はァ!? なンでだよ! 家隣だろォが帰れ!」
木原「いいじゃねえか、一人は寂しいんだよ」
一方通行「オマエのキャラじゃねェだろ……」
海原「でも、実際一人は寂しいですよ」
麦野「そうね……私も一人が寂しくて、誰かと話したかったから
インドックスカレーに毎日のように通ってたわ」
打ち止め「そうだよ、ミサカもあなたに出会うまでは一人で
心細くて、どうしたらいいかわからなかったものって
ミサカはミサカは昔を振り返ってみる」
番外個体「ミサカは一人が寂しいって感情を知らなかったけど、
あなたのおかげで大勢は楽しいってことが分かったよ」
垣根「……俺も、一方通行に楽しさを教えてもらったな」
一方通行「オマエら……」
640: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/09(月) 01:29:08.01 ID:wlCiw1je0
海原「ホームレスさん救出大作戦、でしたっけ?
もう、ホームレス限定にする必要なんてないのではないですか?
助ける人に条件を付けるのは終わりにしませんか?」
一方通行「条件……? ……そォか、俺は今まで無意識に
差別しちまってたのか……」
海原「ホームレスさんを助けるではなくて、困っている人を助ける
という心構えに変えてみてはいかがですか?」
一方通行「……そォだな、でもそォなると俺一人じゃ足りねェ」
海原「では、自分たちも手を貸しましょう」
一方通行「あァ、オマエらにも救える人がいるかもしれねェしな」
麦野「みんなでやればたくさんの人を救えるってわけね」
木原「やりがいがありそうじゃねえか」
番外個体「ま、あなたがどうしてもっていうなら」
打ち止め「ミサカは常に黄泉川のお手伝いをして
黄泉川を助けてるんだから! ってミサカはミサカは先手必勝!」
垣根「じゃあまずは空腹で困ってる俺たちの救出だな!」
一方通行「ハッ、オマエらしいな」
海原「じゃあ、食べましょうか」
一方通行「そォだな」
一同「いただきます!」
おしまい
647: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:33:30.83 ID:HU1ySd250
投下しに来ました!
サイドストーリー的な感じで
短めの垣根のお話です。
648: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:34:07.78 ID:HU1ySd250
とある垣根の就職活動
垣根「いよいよ面接か……緊張してきたな」ドキドキ
垣根「面接ってどういう風にすればいいんだ? やっぱり自分の
いいところを全面的に出したほうが採用されるよな……」ウン
垣根「いや、緊張しちまって上手く喋れねえ可能性があるな。
昨日電話入れた時だって……」
垣根『あの、もしもし!』
『お電話ありがとうなのです、どのようなご用件なのですか?』
垣根『あ、あの、求人誌見たんですけど、その、アルバイトを、』
『アルバイトの面接希望なのですか?』
垣根『はい! そうなんです!』
649: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:34:38.20 ID:HU1ySd250
『じゃあ失礼なのですけど、お名前と年齢を伺ってもよろしいですか?』
垣根『はい! お名前は垣根帝督です! 年齢は……あれ、いくつだっけ』
『年齢は……』
垣根『えっと、17! 17くりゃ、くらいです多分!』
『はぁ……じゃあ履歴書持って明日の午前10時にお店まで来て欲しいのです』
垣根『はい! 楽しみにしてます!』
垣根「……電話越しであんなに緊張すっとは思わなかったな」
垣根「……この店か。 営業してねぇみてーだけど何なんだろ」
垣根「よし、深呼吸スーハー……、いざ! 垣根帝督参る!」ガチャ
垣根「……鍵閉まってやがる」ガチャガチャ
垣根(今の時間は午前9時……さすがに早く来すぎたってことか?)ガチャガチャ
垣根「くっそおおお! この店は10時開店だったりしやがんのか……!!?」ガチャガチャ
結標「ちょっと、店のドア壊さないでちょうだいね」
650: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:35:20.09 ID:HU1ySd250
垣根「あん?」
結標「あら、もしかしてお客様だったりするのかしら? ごめんなさい、
今お店いろいろあって休業中なのよ」
垣根「な、なんだと……!? そんなはずはねえ!」ガチャガチャ
結標「そんなはずあるのよ」
垣根「てめえ何様だ……俺の面接を邪魔するってんなら女でも容赦しねぇぞ」ギロ
結標「面接? ……もしかして貴方が今日面接予定の垣根さん?」
垣根「えっ? あ、はい」
結標「なんだそうだったの。 まだ時間じゃないから気づかなかったわ」
垣根「え? 待て、え? じゃああんたは……」
結標「私はこの店の店長よ」
垣根「」
651: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:35:49.43 ID:HU1ySd250
―――
――
結標「予定より1時間早いけど面接を始めるわ」
垣根「はい、よろ、よろしくお願いします……」ガチガチ
垣根(何だこの店、ボロボロじゃねぇか……)
結標「じゃあ履歴書を出してもらえるかしら」
垣根「は、はい!」スッ
結標「……住所が書いてないんだけど」
垣根「あ、いやそれはなんつーか、家はあるんだが住所がないっつー……」
結標「ふざけているのかしら?」
垣根「いえ! 大真面目です! いやあ店長すっげぇ美人ですね!」
結標「あら、そう……?」テレ
垣根(よし、単純なヤツだ)
結標「職歴は……ないのね」
652: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:36:21.30 ID:HU1ySd250
垣根「まあ……ないっちゃないですね」
結標「あるっちゃある、ってことかしら?」
垣根(ここは職歴あるっていった方が有利だったか?
いや、でも暗部のことは言っちゃ駄目だよな……)
結標「まあいいわ。 ここは専門職だしあまり関係はないわ」
垣根「そ、そうか」ホッ
結標「……垣根君」
垣根「何でしょうか店長」
結標「貴方、資格は一つも持っていないの?」
垣根「まあ、そうっすね」
結標「……ここは美容室なんだけど」
垣根「それくらい知ってますけど?」
結標「……美容師免許を持ってないと働けないのよ?」
653: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:36:55.06 ID:HU1ySd250
垣根「び、美容師免許……だと!?」ガタッ
結標「ええ、持っていないのなら……残念だけど採用はできないわね」
垣根「そんな……! 俺、今から免許取ってくる!」
結標「無理よ、最低でも2年はかかるわ」
垣根「俺に常識は通用しねぇんだよおおおおお!!!」ブァッサァ
結標「きゃっ! 羽!? ちょっとストップ! これ以上お店を壊さないで!」
垣根「あ、……悪い、つい能力が出てきちまった……」
結標「前にそんな感じの羽みたいなのでこの店はボロボロになったのよ」
垣根「だから休業してるってわけか」
結標「そうね、今修復してる最中なのよ」
垣根「修復……? そうだ、いいこと思いついたぜ店長!」ピコーン
654: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:37:33.65 ID:HU1ySd250
結標「何? 貴方がお店を直してくれたりする?」
垣根「ああ、朝飯前だ」
結標「えっ」
垣根「交換条件みてぇで気が進まねぇが、
俺がこの店を直せたら、採用してくれ! たのむ!」ドゲザ
結標「ちょ、ちょっと土下座なんてしないでよ!」アセアセ
垣根「頼む! 俺が世話になってるヤツに恩返しがしてぇんだ!
そのためには自立しねぇと駄目なんだよ! いつまでもスネかじってる
わけにはいかねぇんだよ!」
結標「垣根君……」
垣根「……頼む」
結標「……わかったわ。 直すだけ直してみてちょうだい。
出来上がり具合で私が判断してあげるわ」
垣根「ほ、本当か店長!」パァァ
結標「特別よ。 貴方の言ってることはとても分かるわ。
私も同じ理由で美容師になったんだもの」
655: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:38:15.32 ID:HU1ySd250
垣根「店長……」
結標「自立して、一人前になって、恩返しをする。
それが私の目標なの。 まだまだ一人前とは言えないのだけど」
垣根「俺……採用してもらえるように頑張ります!」
結標「期待してるわ。 これ、ボロボロになる前の店内の写真よ」
垣根「この通りに直せばいいんだな、よーし燃えてきたぁああ!!」ゴォォ
10分後
垣根「終わったぜ」ピカーッ
結標「も……元通りだわ……信じられない……」
垣根「俺にかかればこんくらいちょろいもんだぜ」
結標「これは採用せざるを得ないわ……」
垣根「! ということは……」
656: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:38:56.71 ID:HU1ySd250
結標「ええ、明日から出勤していいわよ」
垣根「っしゃああああああああああ!!!!!!!!!」ヤッホーーーー
結標「ただし条件があるわ」
垣根「へ、……なんだ?」
結標「2年以内に美容師免許を取得すること。
雑用だけで採用なんて甘い考えは持ち合わせてないわ。
働くならちゃんとハサミを持てるようになってもらわないと」ビシ
垣根「はっ、楽勝なんだよそんくれえ!」
結標「ふふ、2年後が楽しみね」
垣根「ああ、店長を出し抜いてるかもしんねぇな」
結標「それくらい精進してくれたらとても助かるわ」
結標(一方通行が置いていった修理代、結局使わなかったわね……)
垣根「じゃあ、俺は帰って仕事が決まったことをあいつに報告してぇから
今日はこの辺で帰るわ」
結標「あっ、待って」
657: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:39:45.75 ID:HU1ySd250
垣根「何だ? まだ何かあんのか?」
結標「これ、今日の分の給料よ」ドサ
垣根「……!?」
結標「前にこの店で暴れた人が修理代として置いていってくれたのだけど、
もう貴方が直してくれたから使いどころがないのよ」
垣根「いや、それはいいんだがこの量、ざっと見て100万はあるんじゃ……」
結標「ただ働きってのもなんかあれだし、持っていってちょうだい」
垣根「……いや、今は受け取れねえ」
結標「どうして?」
垣根「俺はまだそんな大金をもらえる程働いてねぇだろ。
俺の給料はそこから少しずつ貰うことにする」
結標「……そう」
垣根「その金全部を給料として貰い終わった時には、
俺も立派な美容師になってんだろ」
658: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/13(金) 19:40:27.31 ID:HU1ySd250
結標「……期待してるわ」
垣根「期待をいい意味で裏切ってやるよ。 じゃ、また明日な、店長」ガチャ
小萌「おわっと! ごめんなさい!」
垣根「あ? 客か?」
結標「あら小萌、来てくれたの?」
小萌「差し入れを持ってきたのですよ! こちらの方はどちら様なのですか?」
結標「この店の新しいメンバーよ」
垣根「え、ああ、どうも……」ペコ
小萌「あー! もしかして昨日意味の分からない電話をくれた子なのですか!?」
垣根「意味分からないってなんだよ! あれでも頑張ったんだぞ!」
小萌「まあ、結標ちゃんに仕事仲間が出来たみたいで、
先生はとっても嬉しいのですよ」ニコ
垣根「せ、先生……? 店長、こいつなんなんだ?」
結標「……私を助けてくれた人、よ」
>>572へ続く
668: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:04:51.14 ID:IIXroB1e0
とある麦野と生卵
ピーンポーン
麦野「木原さーん、待ちくたびれたわよー」ピンポンピンポン
麦野「この私を待たせるなんてそこに痺れる憧れるー」ピンポンピンポンピンポン
木原「だぁああああ!! 朝っぱらからうっせぇんだよこの生娘がぁああ!!」ガチャ
麦野「おはよう木原さん、寝坊したの?」
木原「寝坊してねえよ! まだ約束の時間まで3時間あんだろーが!!」
麦野「見て、前に木原さんが選んでくれた服を着てきたわ」
木原「おお……なかなか似合って……って逸らしてんじゃねえよ!」
麦野「今起きたばかりなの?」
669: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:05:34.95 ID:IIXroB1e0
木原「今何時だと思ってんだよ!」
麦野「午前6時ね」
木原「あー、寝起きで叫んだらめまいしてきたわ……」フラ
麦野「大丈夫? 少し休んだほうがいいんじゃないかしら」
木原「休んでる最中だったんだよおおおおおおお!」
――しょうがないので家に入れてあげました
麦野「朝ごはんはまだよね。 私が作ってもいいかしら」
木原「勝手にしろ……」グッタリ
麦野「ふんふふ~ん♪」ルンルン
木原「朝から元気なヤツだな……。 着替えてくるか」
670: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:06:10.02 ID:IIXroB1e0
麦野「あ、着替えなら私がコーディネートしたものがソファの上に
置いてあるわよ」
木原「ん? ああ、サンキュ……ええ!?」ガタッ
麦野「どうかしたの?」
木原「いつの間にタンス開けてんだお前!?」ガタガタ
麦野「さっき了承を得たじゃない」
木原「いや知らねえ!! 俺が寝起きなのをいいことに何してんだ!」
麦野「うちの家主が持ってるような服がたくさん詰まっていたわ」
木原「ぎゃああああああああああああ」
麦野「はら、もう朝ごはん作り終わるわよ」カタ
木原「クソ……、俺の何かが欠けた気がするわ……」トボトボ
671: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:06:43.32 ID:IIXroB1e0
―――
――
木原「目玉焼きか、なかなか美味いじゃねぇか」モグモグ
麦野「頑張って卵を割ったわ」
木原「スクランブルエッグもいい味付けだ」モグモグ
麦野「愛情こめてかき混ぜたわ」
木原「玉子焼きも甘すぎなくて丁度いいな」モグモグ
麦野「砂糖控えめで醤油を多めにしたわ」
木原「……卵しかなくてごめん」
麦野「冷蔵庫を開けたら卵しかなくてびっくりしたわ」
木原「卵が安くてつい……」
麦野「しかも全部賞味期限が明日だったわよ?」
木原「しまった……どうしよう」
672: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:07:13.21 ID:IIXroB1e0
麦野「ざっと見て100個はあったわね……」
木原「クソォ……安いからって買いだめするんじゃなかった……」ガク
麦野「でも安いうちに買っておきたくなる気持ちはわかるわよ」
木原「小娘の分際で分かってくれるのか……いいやつだな……」ホロリ
麦野(分際……?)イラ
木原「卵が1パック70円は誰でも買っちまうだろ……? でも何故か
他の客は全く見向きもしてなかったから俺が買い占めてやったんだけどな」
麦野(70円……? あれ、冷蔵庫の中には4個入り1パックが大量にあったような)
麦野「……まあ、賞味期限が切れる前に全部調理しておいたほうがいいわね」
木原「そうだな……生よりは熱を通したものの方が長持ちする
ような気がするしな……」
673: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:07:43.88 ID:IIXroB1e0
麦野「それでも早く消費するに越したことはないわよ」
木原「じゃあ全部玉子焼きにでもしとくか……?」
麦野「待って、それじゃあ卵がもったいないわ。
せっかくだからいろんな卵料理を作りましょうよ」
木原「え? 何だお前も一緒に作ってくれんのか?」
麦野「私、料理には結構自信があるのよ」エッヘン
木原「何か悪いな。 今日は飯食いに行く約束してたのに」
麦野「木原さんといれるならどこでもいいのよ……」ボソ
木原「ん?」
麦野「ううん、何でもないわ」
674: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:08:12.17 ID:IIXroB1e0
木原「じゃあ何から作るかなー。 やっぱ最初は目玉焼きか?
いや、今食ったものは除外だろ……?」ブツブツ
麦野「何ぼそぼそ言ってるの? 材料を買いに行かないと
何も始まらないでしょ」
木原「えっ、卵料理って卵だけで作るもんじゃねぇのか?」
麦野「卵だけで作れる料理なんて目玉焼きくらいでしょ……」
木原「いや、俺ぶっちゃけ料理とか全くわかんねぇからよ……
今まで卵かけご飯とか目玉焼き位しか作らなかったし」
麦野「それは栄養的にやばいわよ」
木原「だよな……俺も卵産めるんじゃねぇかって最近
思い始めてきたしな……」
麦野「これは末期ね……」
675: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:08:42.10 ID:IIXroB1e0
スーパー
麦野「とりあえず使えそうなものは全部買っておきましょ。
ついでにいろいろ食材も買って……」ポイポイ
木原「オイオイこんなに買う金持ってねぇぞ?」
麦野「私が出すから大丈夫よ」ポイポイ
木原「いや、確かにお前はレベル5だから金あるだろうけどな、
女に金出させるってのはちっと気が進まねぇんだよ」ポリポリ
麦野「全然気にしなくていいのよ?」
木原「男のプライドってもんがあんだよ」ショボ
麦野「そんなプライドはタンスに閉まっておいて、
ここはしずりんに甘えてちょうだい」
木原「お前さっき絶対俺の下着とか漁っただろ」
676: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:09:17.76 ID:IIXroB1e0
麦野「人聞きの悪いこと言わないでほしいわ」プイ
木原「何だやってねぇのか」ホッ
麦野「ぐちゃぐちゃに詰め込まれてたから綺麗に畳んでおいたわよ」
木原「オイィィィィ!!!! しっかり見てんじゃねぇかああああ!!」
麦野「人の下着を漁るなんて痴女みたいなことするわけないじゃない」
木原「そういう問題じゃねえええんだよおおお!!」ブンブン
麦野「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……///」ポッ
木原「その顔やめろおおおお! 頬を赤らめるな!」
店員「お会計24079円です」
麦野「あ、カードでお願いするわ」スッ
木原「……カードかっけぇ」
677: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:09:50.92 ID:IIXroB1e0
木原宅
麦野「まずはたまごプリンを作りましょう」
木原「プリンか、それならかなり保存がきくな」
麦野「プリンは極めて簡単よ。 木原さんにもできるわ」
木原「本当か? じゃあ俺が作ってみてもいいか?」
麦野「この箱の裏に作り方が書いてあるからその通りにしてみて欲しいわ」
木原「なんだ簡単じゃねぇか。 フルーチェが作れる俺に
死角はねぇな!」ハハハ
麦野「分量を間違えないようにだけしてちょうだいね」
木原「お安い御用だな」
麦野(さてと、木原さんがプリン作ってる間に私はお昼ご飯用に
かに玉を作るとしようかしら)
木原「……なあ、麦野ちゃんよ」
麦野「えっ、な、何?」ドキ
678: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:10:20.47 ID:IIXroB1e0
木原「俺は今からこのレシピの①を実行しようと思うんだがよ……」
麦野「あ、うん……卵割ってかき混ぜるだけ、よね?」
木原「毎日毎日卵割ってるとな……申し訳ない気持ちになんだよな。
生まれるはずだったこの小さな命をよ……」
麦野「え……」
木原「こいつらはひよことして生まれるはずだったんだよ……
なのに生まれることさえ許されない……悲しすぎんだろ!?」ズビ
麦野「いや……無精卵だしほっといても生まれないわよ……?」
木原「え?」
麦野「というか、仮に生まれたとしても鶏肉にされるでしょ」
木原「え?」
麦野(この人科学者よね……?)
679: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:10:54.86 ID:IIXroB1e0
―――
――
木原「よし、あとは冷やすだけだな」
麦野「思ったよりスムーズだったわね」
木原「俺プリン作る才能あるわ」ウン
麦野「とりあえずこれで卵が50個減ったわね」
木原「え……お前かに玉に卵何個使った?」
麦野「30個使ったわ」ドーン
木原「多っっっ!!!! でかっっっ!!!」
麦野「プリンが固まるまで1時間以上はかかるから、
かに玉でお昼休憩でもしましょうか」
木原「ん、ああ……もう昼か……熱中してると時間って早いな」
680: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:11:29.19 ID:IIXroB1e0
麦野「どう?」
木原「ん、悪くはねぇな」モグモグ
麦野「そう? 良かったわ」ニコニコ
木原「お、おお……」
木原(何だコイツ笑うと可愛いじゃねぇか)
麦野「うーん、ちょっとあんが甘すぎたかしら……」モグモグ
木原「いや、俺としてはこれくらいが丁度いいな」モグモグ
麦野「量足りなかったりしたかしら? もう少し何か作る?」モグモグ
木原「いやいやいやこれのどこをどう見たら足りないと思えんだよ。
普通に多いわ。 多すぎんだよ」モグモグ
麦野「木原さんは意外と小食なのかしら。 ごちそうさま」ペロリ
木原「いや、俺はむしろ食う方だぞ? まあ最近まともな
料理食ってなかったから少し胃は小さくなっちまったかもしんねぇけどよ」モグモグ
681: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:12:00.05 ID:IIXroB1e0
麦野「呼んでくれればいつでもご飯作りにくるわよ?」
木原「そりゃ助かるな。 気持ちだけもらっとく」
麦野「そんな遠慮しなくてもいいのに……」モジモジ
木原「俺が怠け者みてぇで嫌なんだよ。 作るなら俺も一緒に作る。
んで俺も一人で料理出来るようになりてぇな」
麦野「そういうことなら教えてあげるわ」
木原「お前料理スキルだけは人一倍だからな……ん?」
麦野「『だけ』は余計よ。 どうしたの?」
木原「いや、お前いつの間に食い終わってやがった?」
麦野「うーん……ちょっと前?」
木原「俺まだ半分も食ってねえぞ……?」
麦野「見たら分かるわよ?」
682: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:12:35.13 ID:IIXroB1e0
木原「……お前の胃袋どうなってんだ」
麦野「こんなのダブルカレー饅頭に比べれば
屁でもないわ」エッヘン
木原「食事中に屁とか言うなよ!」プンスカ
麦野「あ、ごめんなさい」
―――
――
麦野「プリン出来たわよー」
木原「も、もう食えね、うぷ……」
麦野「あと一口じゃない、それくらい食べちゃいなさいよ」
木原「う、一口……一口がでけぇ……」ウプ
麦野「はい、あーん♪」
木原「ちょ、ま、押し付けんな、ねじ込むな、もが」ムググ
683: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:13:19.66 ID:IIXroB1e0
麦野「はい、完食お疲れ様! 食器洗ってくるわね」スタスタ
木原「むぐ、もぐ」ゴクン
木原「は、はー……うっ、腹がくるし……」
木原「べ、ベルト抜こう……チャックもあけておこう……」カチャカチャ ジー
木原「ふー、幾分か楽になったわ……うっぷ」ゲフ
麦野「はいプリン持ってきたわ、よ……!?」
木原「今の俺見てまだ俺が何か食える状態に見えんのかよ……」ゲプ
麦野「えっ、あ、木原さん、前、あの、開いてるわよ……」カァァ
木原「あ、悪い……腹がきつくて開けてたんだわ」カチャカチャ
麦野「そ、そう……///」
木原(コイツ人のパンツ平気で触ったくせに何恥ずかしがってんだ……?)
684: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:13:50.69 ID:IIXroB1e0
麦野「うん、プリンなかなか美味しいわ」モグモグ
木原「お前まだ余裕で食えるのかよ……」
麦野「でもこれだけ卵料理食べてると飽きてくるわね……」モグモグ
木原「もう飽きたのかよ! 俺なんか一週間前からずっと卵しか食ってねぇのに!」
麦野「あと50個残ってるんだけど……正直もう料理は疲れたわ」
木原「お前あれか、物事長続きしねぇタチか」
麦野「それで、いい考えがあるんだけど……」
木原「何だ?」
麦野「ちょっと出かけましょう」
木原「オイオイ勘弁してくれよ……
動いたら今にも腹がはち切れそうなんだよ」
685: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:14:23.64 ID:IIXroB1e0
麦野「今にも賞味期限を迎えようとしている卵がいるのよ?
お腹がはち切れるのとどっちが大変なの!?」
木原「いや普通に腹はち切れる方がやべぇだろ」
麦野「とにかく外出るわよ」ガチャ
木原「はいはい……」シブシブ
麦野「……あれ、第二位がいるわ」
垣根「ふんふっふ~ん♪ 一方通行のやつどんな反応すっかなー?
喜ぶか!? 驚くか!? やべテンション上がりすぎて声に出てたわ。
待ってろ一方通行!」ルンルン
木原「……なんかあいつ気持ち悪いくらいテンション高ぇけど」
麦野「いいことでもあったんでしょ。 さっさと行きましょ」
686: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:15:03.24 ID:IIXroB1e0
インドックスカレー
上条「麦野さんじゃないですか!」
浜面「え? 麦野?」ヒョコ
インデックス「むぎの!?」ヒョコ
麦野「久しぶりね」
上条「最近めっきり来なくなったから寂しかったですよ!」
麦野「ちょっと忙しくてね」
木原「なんだお前ここの常連なのか?」
麦野「まあそんなとこかしら」
浜面「何だ麦野男作ったのか?」ニヤニヤ
木原「あ? いや俺は……」
麦野「そうそう、彼氏できたのー♪」ダキッ
687: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:15:40.34 ID:IIXroB1e0
上条「!」
浜面「ま、まじか……!」
インデックス「全メニュー制覇という目標を放り出して
いちゃいちゃしてたなんて見損なったんだよ!」プンプン
木原「いやいやいや、嘘に決まってんだろ……」
浜面「え? そうなんすか?」
インデックス「結局どっちなのか分からないんだよ!」
麦野「ごめんごめん、今は冗談よ」アハハ
木原(今は……?)
上条「な、なんだ……」ホ
浜面「ま、麦野に寄ってくる男とか物好きにも程があるよな」ハハハ
麦野「はーまーづーらー? ……覚えとけよ」
浜面「……すんません」
688: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:16:14.17 ID:IIXroB1e0
麦野「今日は料理長に頼みがあってきたのよ」
インデックス「何なのかな?」
麦野「この卵で……何か作って欲しいのよ」ドン
上条「た、卵が2、4、6……50個!」
麦野「明日で賞味期限が切れてしまうのよ。
さっき私たちで50個消費したんだけど、もう限界で……」
インデックス「何でこんなにたくさん卵があるの?」
木原「ああ、俺が安さに釣られて買占めちまったんだ」テヘ
上条「買占め……だと!?」ガタッ
浜面「オイ、上条?」
上条「安いからといって買占めるのは頂けない!
何事にも限度ってものがあるんですのことよ!!?」
木原「いきなりなんだコイツ……」
689: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:16:47.73 ID:IIXroB1e0
麦野「この人節約術のプロ(自称)だからいろいろ学んだほうがいいわよ」
木原「え? あ、ああ……」
上条「――つまり節約というのは、いかに最低出費で、いかに効率よく、
かつ無駄の無い買い物がうんたらかんたら……」クドクド
インデックス「とうまってば節約スイッチ入っちゃってるんだよ……」
―――
――
浜面「卵料理って何作ったらいいんだ?」
麦野「何でもいいわ。 材料を提供したから半額でいいわよね」
インデックス「甘いんだよ! 4分の3で妥協してあげてもいいけど」
麦野「料理長が値段をまけてくれるなんて珍しいわね」
インデックス「計算機で計算した結果なんだよ!」エッヘン
上条「何か科学に馴染みすぎてねーか……?」
690: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:17:23.96 ID:IIXroB1e0
インデックス「じゃあこの間メニューに追加したカレープリン改を作るんだよ!」
麦野「相変わらずのネーミングね」
木原(何だこの店のメニュー!? ぜんぶカレーじゃねぇか!
カレーパフェ!? 狂ってやがる!)
木原「っつか俺は腹パンパンだからなんも食わねぇぞ?」
麦野「食べれないときは持ち帰れるから大丈夫よ」
浜面「じゃあ俺と料理長で厨房入ってくるわ」
上条「ああ、任せた」
麦野「それにしてもいつも客がいないわよね……
経営は大丈夫なの?」
上条「心配しなくてもちゃんと来てますよ。 ここは夜がピークなんで」
木原「カレー店なのに珍しいな」
麦野「まあ貸切みたいで気が楽だけどね」
691: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:18:04.44 ID:IIXroB1e0
ガラッ
上条「お、噂をすればお客さん、いらっしゃいませー!」
ショチトル「……」
上条「お一人様でよろしいですか?」
ショチトル「……複数いるように見えるか?」
上条「え、ああ、お一様ですね、どちらのお席に……」
ショチトル「……」
上条「……」
麦野「……ねえ! あなた良かったら私の隣に座らない?」コッチコッチ
ショチトル「……」
上条「えと……お好きな席にどうぞ?」
ショチトル「……隣失礼する」
692: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:18:39.81 ID:IIXroB1e0
麦野「どうぞ」ニコ
木原「オイ何してんだ小娘」ボソボソ
麦野「寂しそうな顔してたんだもん。 放っとけないでしょ」ボソボソ
木原「だからってお前な……」ボソボソ
ショチトル「……」
麦野「……」
木原「……」
木原(なんか空気重くなったー!)
上条「ご、ご注文は?」
ショチトル「……」
上条(何なんですかこの子ー!?)
693: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:19:21.74 ID:IIXroB1e0
浜面「カレープリンお待ちー!」ヒョコ
上条(はまづらぁああ……! ナイスタイミング!)
麦野「見た目は前のと変わってないわね」
木原「オイオイ俺食わねぇっつったのに何で二個頼んでやがんだ」
インデックス「ごめんなんだよ……あなたも食べるのかと思って
作っちゃったんだよ……」シュン
木原「あ、いやそんなに責めてねぇから落ち込むなよ?」
浜面「お? そっちは麦野の友達かなんかか?」
ショチトル「いや私は……」
麦野「そうそうたった今友達になったのよ」
694: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:19:53.99 ID:IIXroB1e0
ショチトル「……!?」
浜面「そうか! じゃあ俺の友達でもあるな!」ヨロシク
上条「おい、一応客なんだから礼儀くらいだな……」
ショチトル「……別に気にしていない」
浜面「ほら、気にしないって言ってるしさ!
この店のいいところはフランクな店員がいることだろ?」
上条「いつ誰がそんなこと言ったんだよ!
……あー! もうなんでもいいや!」
麦野「そうそう、堅苦しいのは似合わないわ」モグモグ
インデックス「むぎの、新作の感想は?」
麦野「……前と違ってプリンの中にもカレーが入っていてユニークね。
カラメルもカラメルの絶妙な甘さと苦さのバランスがとてもいいわ」
インデックス「なかなか好評価で嬉しいんだよー!」パァァ
695: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:20:23.86 ID:IIXroB1e0
麦野「あ、木原さんが食べないっていうからあなたにプリンあげるわ」
ショチトル「いいのか?」
麦野「遠慮しないでちょうだい。 そういえば名前は?」
ショチトル「……ショチトル」
麦野「ショチトルね。 私は麦野沈利よ」
ショチトル「……」パク
麦野「どう? おいしいでしょ? この店のメニューは全部
一級品なのよ」ニコ
ショチトル「……」パクパク
麦野「……初対面で言うのもどうかと思うんだけど、
あまり思いつめない方がいいわよ?」
ショチトル「……」ピク
696: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:20:53.99 ID:IIXroB1e0
麦野「図星かしら? まあ、私に相談しろなんて言わないけど、
一人で抱え込むのはお勧めしないわ。 そうだ、せっかくだし
アドレス交換しましょうよ!」
ショチトル「ケータイ、というものか? 持ってはいるが生憎
使い勝手があまり分からなくて……」
麦野「ちょっと貸してくれる? ………はい、登録しておいたわ。
メールの練習相手くらいにはなってあげられるわよ」
ショチトル「……ありがとう」
麦野「いえいえ」ニコ
ショチトル「…………喧嘩したんだ」
麦野「……」
ショチトル「一緒に住んでいる人なんだが……
家から追い出してしまって」
麦野「……仲直りできていないのね?」
ショチトル「……」コク
麦野「……話してくれてありがとう。
初対面の分際で何って思うかもしれないけど、
私でよければ相談相手になるわ」
697: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:21:24.25 ID:IIXroB1e0
ショチトル「エツァリって言うんだ」
麦野「一緒に住んでた人ね。 彼氏さん?」
ショチトル「いや、義兄……のようなものだ」
麦野(複雑なご家庭なのかしら……)
ショチトル「居候している分際でエツァリを追い出したんだ……」
麦野(……私達が第一位を追い出す、みたいな感じかしら)
麦野「喧嘩の原因は何だったの?」
ショチトル「……」
麦野「あ、無理に聞こうってんじゃないのよ。
話したくないならそれで……」
ショチトル「タンスの中を……見られたんだ」
麦野「……タンス?」
698: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:22:10.40 ID:IIXroB1e0
ショチトル「引き出しを間違えただけだというのは分かってるんだが……
その……下着の入っている引き出しだったんだ」カァァ
麦野「……エツァリ君に下着を見られてしまったというわけね」
ショチトル「恥ずかしさのあまり追い出してしまったんだが、
それきり家に戻ってこなくて……」
麦野「それは心配ね……どこにいるか分からないの?」
ショチトル「一度メールというものを送ってみたんだが、
『自分は未熟だから修行してくる』と返ってきてそれっきりなんだ」
麦野「相当ショックだったんじゃないかしら……」
ショチトル「今は本当に悪かったと思ってる。
あの時は気が動転してたんだ」
麦野「年頃の女の子はみんなそうよ」
麦野(……私も木原さんに同じことしたわよね)
ショチトル「麦野。 私はどうしたらいいんだ?」
699: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:23:54.81 ID:IIXroB1e0
麦野「そうね……エツァリ君が帰ってくるのを待つしかないわね」
ショチトル「やっぱりそれしかないのか……」
麦野「すぐ帰ってきてくれるわよ、そんなに落ち込むことないわ。
話を聞く限りだと、エツァリ君はショチトルのこと大好きみたいだし」
ショチトル「エツァリお兄ちゃん……」ショボ
麦野「きっとエツァリくんは、ショチトルに相応しい兄になろうと
奮闘してるのよ。 帰ってくるころには一回りも二回りも
成長してるんじゃないかしら」
ショチトル「そうかな……帰ってくるかな……」
麦野「帰ってくるわよ! お兄ちゃんはショチトルを見捨てるような
人間だったの?」
ショチトル「……」フルフル
麦野「……お兄ちゃんが帰ってくるまで、私が遊びに行ってあげるから!」
ショチトル「……ありがとう。 何だか気持ちが楽になった」
麦野「そう、良かったわ」ニコ
700: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:24:30.92 ID:IIXroB1e0
―――
――
麦野「じゃ、そろそろ私達は帰るわね」
ショチトル「……あとでメールを送るからな」
麦野「楽しみにしてるわ」
浜面「麦野! お前にちょっとプレゼントがある」
麦野「何? 指輪でもくれるの? 物だけもらっておくわ」
浜面「違ぇから! ほら、これだ」ドン
木原「なっ……!」
麦野「こ、これ……!」
浜面「どうだ? 卵入りダブルカレー饅頭だ!」
ショチトル「ダブルカレー饅頭……?」
木原「ちょっと待て、何で3つあんだよ」
浜面「いや、残りの卵と店にある卵全部使ったからさ……」
インデックス「ええ!? 卵全部使っちゃったの!?」
上条「悪いインデックス……浜面が吹っ切れちまって
歯止めが利かなかったんだ」
浜面「もう俺一人でダブルカレー饅頭作れるし!
お前らの手伝いなんていらねーんだよ!!」ハハハハハ
701: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:25:12.70 ID:IIXroB1e0
麦野「というか浜面、金持ってんの?」
浜面「……持ってません」
麦野「ま、それくらい私が買うわよ。 持ち帰って晩御飯にするわ。
第二位とリベンジマッチよ」
木原「嘘だろ……お前帰ってからそれ丸々食うつもりなのか……!?」
麦野「さすがの私もダブルカレー饅頭は食べきったことがないのよ。
第二位と勝負するのはすこし不利になりそうね……」
インデックス「むぎのの食べっぷりだけは評価してあげるんだよ!」
麦野「だけ……?」
木原「それよりこれどうやって持ち帰るんだ?」
麦野「……」
浜面「……」
上条「……」
インデックス「……気合で頑張るんだよ」
702: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:25:47.19 ID:IIXroB1e0
―――
――
麦野「友達が出来たわ……」ニヨニヨ
木原「良かったな、これからは俺じゃなくてそいつと遊べ」
麦野「それとこれとは違うわよ」
木原「めんどくせぇな……」ポリポリ
麦野「料理覚えるんでしょ、意地でも叩き込んでやるわ」
木原「おー怖ぇ怖ぇ。 さすが人のパンツに手を出すだけあるわ」ケラケラ
麦野「あ……その、それに関しては……悪いと思ってるわ……」
木原「あ? どうしたいきなり」
麦野「い、いや、なんでもないわ。 ほら家入りましょ。
少しくらい寄っていって」ガチャ
木原「言われなくてもそのつもりだけどな。 っつかこの石垣の惨状は何だ?
爆発でもしたのか?」
麦野「何があったのかしら……」
703: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:26:19.62 ID:IIXroB1e0
麦野「ただいまー! ……あれ」シーン
木原「んだ? 誰もいねぇのか? っつか饅頭重いんだよ……」
麦野「……何この殺人現場のような光景は」
木原「あーあー、ガキ共揃って雑魚寝しやがって……ったく、
夜寝れなくなってもしらねぇぞ?」
垣根「ん……? 麦野か……」ムク
番外個体「騒がしいな……」パチ
木原「ほら寝れなくなる前にさっさと起きちまえ」ポンポン
打ち止め「うーん、あと5分……ってミサカはミサカは
定番のしぇりふを言ってみゆ……」ムニャムニャ
垣根「なんだもう外真っ暗じゃねぇか!?」ガバッ
海原「げふっ」
垣根「おふっ、なんだ海原か……こんなとこで寝てんじゃねぇよ……」
海原「そんな理不尽な……」
704: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:26:51.43 ID:IIXroB1e0
―――
――
番外個体「第一位が全然起きないよ」ユサユサ
打ち止め「この人は寝るときは寝るからねって
ミサカはミサカはこの人に眠気は鬼門だと言ってみる」
海原「もう放っておいたらいいんじゃないですか?」
木原「いや、もったいねぇだろ」
垣根「もったいない?」
木原「お前さ、コイツが寝てたらまず何を思う?」
垣根「いや……寝てるなーって思うな」
木原「甘ちゃんだなー。 そんなんだからいつまで経っても
コイツに勝てねぇんだよ」
垣根「なんだと!?」プンプン
705: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:27:22.23 ID:IIXroB1e0
番外個体「ミサカだったら寝込みを襲うね」ギャハ
麦野「私は顔に落書きするわ」
打ち止め「ミサカは一緒に寝るよ! ってミサカはミサカは
自分の意見を出してみたり!」
海原「自分だったら……弄り倒しますね。 録画しながら」
木原「それだ」ピンポーン
垣根「なんて酷いやつらなんだ……」
打ち止め「ミサカは酷くないもんってミサカはミサカは
誤解を解いてみる」
垣根「打ち止めちゃん以外のやつらだよ」ナデナデ
木原「よーし録画準備OK! まず最初はこの耳かきの先に
付いてるふわふわしたやつで耳を……」
なんやかんやで>>636へ続く
706: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/20(金) 03:29:06.04 ID:IIXroB1e0
【1日まとめ】
4:00 麦野起床
↓
6:00 麦野が木原の家へ
海原起床
↓
7:00 垣根起床
↓
9:00 麦野・木原買出し
垣根面接開始
↓
9:30 卵料理開始
一方通行起床
↓
11:00 かに玉完成
Wii sports プレイ中
↓
12:30 プリン完成
垣根帰宅
↓
13:00 麦野・木原インドックスカレー来店
チーズ工場に番外個体・打ち止め乱入
↓
14:00 ショチトル来店
表札破壊
↓
15:00 第一次マッサージ戦争勃発
↓
16:00 昼寝TIME
↓
18:00 麦野(と木原)帰宅
↓
19:00 一方通行起床
↓
19:30 晩御飯
715: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:43:08.12 ID:9YFceV260
病室
番外個体「……結局入院とかもやしにも程があるよね」
一方通行「肋骨折れてンだからしょうがねェだろ……」
番外個体「そんな体でよくあんだけはしゃげたもんだね」
一方通行「もっと過酷な状況生き延びてきた俺にとっちゃ
こンくれェ痛くもかゆくもねェンだがな」ケラケラ
番外個体「どれ」ツン
一方通行「あぐっ!?」ズキ
番外個体「痛いんじゃん」ケラケラ
一方通行「オマエ……俺は一応けが人なンだぜ……?
もっと労われよ、癒せよ、崇めろよ」
番外個体「欲張りだね。 ひとつに絞りなよ」
一方通行「俺を崇めろ」
番外個体「却下」
716: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:43:33.34 ID:9YFceV260
一方通行「ひとつに絞れっつったのオマエだろ」
番外個体「ほら、まだ二つ残ってるじゃん」
一方通行「何この流れ? クイズ? じゃ、俺を労われ」
番外個体「そうじゃないでしょ」バチコーン
一方通行「ぐほァッ!?」ズキン
番外個体「目の前にミサカがいたら問答無用で癒しでしょ?」バチコーン
一方通行「ちょ、ま、げふゥ!」グハ
番外個体「あ、怪我してるの忘れてた」パッ
一方通行「死ぬかと思った……」ズキズキ
番外個体「ごめんごめん、いつものノリでやっちゃった」テヘ
一方通行「テヘ☆ じゃねンだよ!」
717: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:44:07.71 ID:9YFceV260
番外個体「あなたがテヘって言うと不気味」ゾワ
一方通行「悪かったなこンな顔で!!」
番外個体「ミサカもこんな可愛くてごめんね」
一方通行「自分で言ったな……」
番外個体「だってミサカ可愛いでしょ?」ウルウル
一方通行「……まァ、それなりには」
番外個体「じゃ、はい」グイ
一方通行「……何だよ顔近ェな」
番外個体「この鈍感野郎」ブス
一方通行「あー、わァったよ。 オラ、目ェ閉じてろ」
番外個体「何で?」
718: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:44:44.74 ID:9YFceV260
一方通行「え、あ、いや、こォいうのって普通目ェ閉じるンじゃねェの?」
番外個体「素直に恥ずかしいって言いなよ」ケラケラ
一方通行「違ェし! 恥ずかしくなンかねェし!
いいぜオマエの目ガン見でキスしてやるよォ!!」グイ
ガラッ
海原「一方通行さーん、お見舞いに……」
一方通行・番外個体「」←キスする直前
海原「……」
海原「ごゆっくりどうぞー」ガチャ
一方通行「うわァァァァァァァァァァァ!!!!」ボフッ///
番外個体「にゃあああああああああ!!!!」ボフッ///
719: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:45:18.09 ID:9YFceV260
―――
――
打ち止め「でね、ミサカはね、りんごでうさぎさんを作ってきたの!
ってミサカはミサカはお披露目してみる!」
一方通行「うさぎさン……だとォ!? 海原ァ!
クソガキに包丁持たせやがったのか!?」
海原「大丈夫ですよ、怪我はしていませんので」
一方通行「そォいう問題じゃねンだよ! 危ねェだろォが!」
打ち止め「ミサカはもう一人でうさぎさんも作れるんだよ!
そんなに過保護にしなくても大丈夫かもってミサカはミサカは言ってみる」
一方通行「オマエは包丁の危険さを知らねェからそンなことが言えンだよ」
打ち止め「え? 包丁で指を切らないようにすればいいんじゃないの?
ってミサカはミサカは細心の注意を払って包丁を握っているって言ってみたり」
一方通行「うちの包丁はな、黄泉川ンとこの包丁と仕組みが違ェンだ」
打ち止め「仕組み? ってミサカはミサカは聞き返してみる」
720: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:45:48.98 ID:9YFceV260
一方通行「あァ。 12歳未満のガキがうちの包丁を持つと、
そのガキは包丁に生気を吸い取られちまうンだ」
海原「なんと……!」
一方通行「もォ子供じゃねェからって何回も包丁を使ってるとな、
段々包丁に生気が吸い取られて、しまいには自分が包丁になっちまうンだ……」
打ち止め「い、いくらなんでもそんな見え透いた嘘にミサカが騙される
わけがないってミサカはミサカは震えながら言ってみたり」ブルブル
一方通行「包丁になっちまったガキは、自分の周りにいた人間を片っ端から
刺し殺していくらしいンだ……」
打ち止め「え……」ガクガク
一方通行「……そォか……俺は包丁になっちまった打ち止めに
刺されて死ぬ運命なンだな……」ホロリ
打ち止め「……ミ、ミサカは12歳になるまで包丁は使わないって
ミサカはミサカは誓いを立ててみたり」ガクブル
721: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:46:23.40 ID:9YFceV260
番外個体「うっわ、茶番すぎて笑えないわ」
一方通行「しょうがねェだろ、こォでも言わねェと危なくて気が休まらねェ」
番外個体「あなたは過保護すぎるんだよ」
一方通行「本来ならオマエにも刃物は握って欲しくねェンだが、
そォすっとオマエの飯が食えねェからな。 妥協してンだ」
番外個体(えっ、ミサカの作るご飯食べたいのかなこの人)
海原「自分は12歳以上だから包丁になる心配はありませんね……
打ち止めさん、貴方が12歳になるまでは自分があなたの手足となり
包丁を扱って見せましょう」グッ
打ち止め「海原お兄ちゃん……! 足になる必要はないよ……!
ってミサカはミサカは感嘆の声を上げてみる!」キラキラ
海原「今ここに『包丁同盟』が誕生した……!」
一方通行「なンか海原も騙されてくれたみてェだけどまァいいか」
番外個体(帰りに料理本買っていこうかな……)ソワソワ
722: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:46:56.67 ID:9YFceV260
一方通行「そォいや他のやつらはどォした? 家にいンのか?」
海原「ああ、垣根さんと麦野さんなら下の階で診察受けてると思いますよ。
なんか二人ともお腹が痛いらしくて」
一方通行「腹が痛いだァ? 昨日のでけェ饅頭のせいじゃねェのか?
あいつら妊婦みてェになってたしよォ」
海原「診察が終わったらここに寄るように言ってあるので、
そろそろ来るんじゃないですかね?」
ガラッ
垣根「……よお」ゲッソリ
一方通行「垣根……か?」
垣根「俺のせいで入院させちまって……悪いな……」
一方通行「いや、それはいいンだが、オマエ何でそンなげっそりして……」
723: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:47:28.41 ID:9YFceV260
ガラッ
麦野「遅くなったわ……第一位……元気?」ゲッソリ
一方通行「オマエもかァァァァァ!?」
木原「ほら、ここ段差あっからつまづくなよ?」ヨイショ
麦野「ごめんなさいね……木原さん……」
一方通行「やべェ木原くンが介護師に見える」
海原「お二人とも大丈夫なんですか? 腹痛は治まったんですか?」
垣根「一方通行……ちょっとベッド半分貸して……」ノソノソ
番外個体「やめてよ、ミサカだって入りたいけど我慢してるのに」グイグイ
一方通行「オイィィィィ!? やめろ! 二人共来ンな!
俺骨折れてンだよ! うぎゃァァァァ……」ギュゥゥゥゥゥ
724: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:48:06.38 ID:9YFceV260
麦野「木原さん、ちょっとそこの椅子とってくれないかしら?」
木原「これか? ほら」
麦野「ありがとう、よっこらせ」
海原「なるほど、これは重症ですね」
打ち止め「どうしてこんなに弱ってしまっているの?
ってミサカはミサカは疑問に思ってみる」
木原「それなんだがよ、さっき二人とも手術してきたばっかりなんだ」
一方・海原・番外・打止「「「「!?」」」」
木原「食べすぎによる胃袋裂傷だとよ。 昨日カレー饅頭を
無理して完食したのが原因だろうな」
一方通行「マジで饅頭が原因だったのかよ……」
打ち止め「入院しなくて大丈夫なのってミサカはミサカは
二人を心配してみたり……」
725: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:48:40.59 ID:9YFceV260
木原「本当なら入院しなきゃなんねぇ位重傷らしいんだが
こいつらときたら入院を頑なに拒みやがってよ」ヤレヤレ
一方通行「何考えてンだオマエら……そンな状態じゃ
まともな食事できねェだろォが、おとなしく入院して点滴でも打っとけ」
垣根「何言ってんだお前に続いて俺らまで入院なんてしたら
入院費用が馬鹿になんねぇだろ!?」
一方通行「第一位なめンじゃねェェェ!! それくらいどォってことねェンだよ!」
麦野「そういうことじゃなくて……」
一方通行「あァ? 何だよ」
麦野「アンタに負担をかけたくないのよ。 私も台車も」
垣根(何故ここで台車って呼ぶし)
一方通行「負担だァ? オマエらそンなこと気にしてンのかよ」
麦野「第一位にとっては『そんなこと』でも私たちにとっては『大事なこと』なの」
726: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:49:10.35 ID:9YFceV260
垣根「そうだそうだ! いつまでも俺らがおとなしく
養われてると思ったら大間違いだぜ!」
海原「そうですね、一方通行さんに甘えてばかりでは自立できませんしね」
垣根「それに俺の場合入院したら仕事に行けなくなるだろ……
せっかく受かった仕事だから毎日行きたいんだよ」
一方通行「仕事ォ? オマエ仕事してンのか」
垣根「昨日言ったのにスルーしたじゃねえかあああああ!」ウワァァァン
一方通行「そ、そォだったか……?」
海原「ああ、そういえば帰ってきたときに仕事がどうのって言ってましたね」
一方通行「まァ……良かったじゃねェか。
ぜいぜい長続きするよォに頑張るンだな」ケラケラ
垣根「ハッ、俺にはもう既に美容師になるという目標ができたからな!
そう簡単に辞めねぇよ!」
一方通行「えっ、美容師?」
垣根「えっ、駄目なの?」
727: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:49:41.98 ID:9YFceV260
一方通行「いや……チーズ工場はどォした?」
垣根「ああ……まあ趣味程度に?」
一方通行「……そォか」
垣根「……」
一方通行「……」
垣根(えー? 何この空気!?)
番外個体「……ねえ、『あれ』渡さなくていいの?」
一方通行「……」
打ち止め「あれって何? ってミサカはミサカは聞いてみたり」
一方通行「あンま気にすンな。 たいしたことじゃねェ」
番外個体「素直じゃないな、ミサカ勝手に出しちゃうよ」コレ
728: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:50:31.17 ID:9YFceV260
垣根「……表札?」
木原「ああ、そういえば石垣ごとぶっ壊されてたな」
番外個体「さっき第一位が作ったんだよ」
垣根「一方通行が?」
一方通行「……悪ィかよ」プイ
垣根「いや、お前チーズ工場嫌がってたじゃねぇか。
なんでまた同じもん作ってんだよ?」
一方通行「同じじゃねェよよく見やがれ!!!」プンスカ
垣根「ええ!?」
一方通行「前の表札はオマエのきったねェ字で適当に作られてただろ!?
これは俺の達筆な字で丁寧に作られてるンだよ見て分かれ!!」
麦野(要するにまったく変わってないわね)
729: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:50:59.83 ID:9YFceV260
一方通行「何つーか……俺の中じゃもォあの家は『チーズ工場』以外の
何でもねェンだよ。 最初は嫌だったはずなンだけどよ」
木原(俺だけ話について行けてねえな)
一方通行「だから、オマエのそのチートなチーズ能力使って石垣適当に直して
この表札適当に貼り付けてこい」
垣根「い、いいのか……!?」
一方通行「あァ、家主公認の表札だ。 胸張って付けろ」
垣根「お前が認めてくれるなら、美容師兼台車兼工場長目指すわ俺!!」
一方通行「物騒な仕掛け付けたら追い出すからな」
730: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:51:38.15 ID:9YFceV260
一週間後
一方通行「やっと退院かァ……」カツカツ
一方通行(アイツらのことだから迎えに来ると踏んでたが、
誰も来なかったな……)カツカツ
一方通行(別に寂しいとか思ってねェし!? 予想が外れて
悔しいだけだし? ……それじゃまるで迎えを期待してたみてェじゃねェか!)ガァァァァ
一方通行「……ン?」
垣根「お、一方通行じゃねえか」トントンカンカン
一方通行「何してンだオマエ」
垣根「何って、お前に言われた通り石垣直して表札貼ろうとしてんだよ」
一方通行「いや、そォじゃなくて何で能力使わねェの?」
垣根「いや、自分で壊したもんは自分の力で直そうと思ってな」
731: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:52:16.42 ID:9YFceV260
一方通行「能力も自分の力の一環だろォが……」
垣根「ま、あれだ。 何でも楽しようとしちゃいけねぇ。
能力使いまくって仕事してたら店長に怒られたわ」
一方通行「そりゃそォだろ」
垣根「だから一週間ずっと俺一人の力で直し続けてたんだよ、
すごくね? 俺すごくね?」
一方通行「すげェすげェ」
垣根「よし、後は表札貼るだけだな」
一方通行「さっさと貼っちまえよ」
垣根「……一方通行、お前が貼ってくれ」
一方通行「はァ? 何でだよ」
垣根「やっぱ、家主のお前に表札を貼ってもらいてぇんだよ」
732: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:53:09.67 ID:9YFceV260
一方通行「誰が貼ったって同じだろォが……」
垣根「頼む! 一生に何回かのお願い!」ドゲザ
一方通行「軽い願いだなオイ。 ……ったく、貸せオラ」
ペタ
一方通行「チーズ工場一丁あがりィ」テーレッテレー♪
垣根「まいどーー!」ワァァ
一方通行「お前時間考えろ、もう夜だぞ」
垣根「俺の心はいつでも真昼の太陽さ」キリ
一方通行「頭狂ってンな、さっさと家入れうざってェ」
垣根「お前が先入れよ。 家主ファーストって言うだろ?」
一方通行「初めて聞いたわそンなの」
733: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:53:40.74 ID:9YFceV260
垣根「俺が玄関までエスカレートしてやっからよ」ホレホレ
一方通行「玄関目の前だけどな。 オマエの頭の沸騰がエスカレートしてンぞ」
垣根「家主様のお帰りでーす!!」ガチャ
一方通行「だからうっせェ……」
パンッ パンッ パパンッ ←クラッカー
海原「一方通行さん退院おめでとうございます!」
打ち止め「おめでとー!ってミサカはミサカは
祝福してみたり!」
麦野「おめでとう、第一位」
木原「めでてぇなあああああ!!!!」
番外個体「まったく待ちくたびれたよ、おかえり」
一方通行「オマエら……」ウルウル
734: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:54:13.04 ID:9YFceV260
垣根「ミサワせんせー、一方通行が泣きそうでーす」ハーイ
番外個体「ほらほらこっち来てみてよ」ジャーン
一方通行「な、何だこの豪華な料理は……!?」
番外個体「あなたの退院を祝ってみんなで作ったんだよ」
打ち止め「主に番外個体が作ったんだけどねって
ミサカはミサカは暴露してみたり」
一方通行「オマエ、料理出来たのか……?」
番外個体「勘違いしないでよね、病院であなたが私の料理が食べたいみたいな
こと言ってたから一週間猛練習したとかじゃないんだから」
海原「なんというテンプレ」
木原「ほらお前らとりあえず座れ、一方通行ちょっとそこのビデオカメラ取ってくれ」
735: ◆LMXQc2mCMY 2011/05/27(金) 00:54:46.20 ID:9YFceV260
一方通行「これか? ビデオでも見ンのか?」
木原「ああ、退院祝いにこの間撮ったビデオ見せようと思って」
麦野「そのビデオってまさか……」
番外個体「ミサカは今酷い嫌がらせを見た」
打ち止め「ミサカは何も知らないよーってミサカはミサカは
目を泳がせてみたり」
海原「皆さん座りましたね? じゃ、一方通行さんの退院を祝して!」
一同「カンパーイ!」
その晩のチーズ工場はとても賑やかで、近所の住民が警察に苦情を通報したという。
★おしまい★
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