1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 01:56:47.76 ID:uURR3EFvo

「って、これ私宛てじゃないわね」

玄関のドアを開けて、中へと入りつつ手紙を確認する。
かわいらしい文字と絵で飾られてはいるが、それは本文ではなく飾りの部分。
肝心の本文は雑な字が踊っていた。
廊下を通りリビングへと入ったところで、朝食を準備していた同居人が声を掛けてきた。

「さっき呼ンだか?」

「呼んでないけど、あなた宛てに当麻たちから結婚式の招待状が来てるわよ」

当麻たち?と呟きながらその男は目を閉じた。
何かを考えているようだ。

ちらり、とその姿を見る。
男ながら美しいと思う。
何色にも染まる事のない綺麗な白髪。
彼が瞼を開ければ、綺麗なきれいな赤い瞳を見ることができるだろう。

「俺だけにか?」

目を開いた彼は素直な疑問を口に出す。

引用元: 美琴「当麻とインデックスから結婚式の招待状が来た」 

 

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 01:57:47.49 ID:uURR3EFvo
「ええ」

「お前には来てないのか」

「当麻は私が寮を出たあとの住所なんて知らないでしょ」

手前の椅子を引き、腰を掛ける。
簡単なトーストとサラダ。母のプロポーションに追いつくために牛乳は欠かすことはない。

「それとも、お前に気を使って送ってこなかったのかもなァ」

反対側の椅子に座りながら口に出すのは話の続き。
その手はコーヒー豆のケースに伸びている。
今の彼は飲むだけではなく、淹れる事も楽しみの一つとしている。

「あれ?当麻ってあたしたちの関係は知らないんだっけ?」

「少なくとも話したことは無ェな」

いただきますと手を合わせトーストにかじりつく。
簡単なものではあるが、二人で食べると何倍もおいしく感じられる。

「それ、あたしが行ってもいいのかな?」

「直接の知り合いだし、俺の身内だから良いンじゃねェか」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 01:58:32.68 ID:uURR3EFvo
コーヒーカップを差し出せば、意図が伝わったのか縁まで注いでもらうことができた。
さりげなくガムシロップを用意してくれる優しさが自分は好きである。

「身内、ね」

「身内だろ?」

少しあまっていた牛乳をコーヒーカップへと注ぎ、ぐるぐるとかき混ぜる。
黒と白が混ざり合って綺麗な茶色へと変わった。


「私たちの結婚式も、ちゃんと当麻たちを呼びましょう」












25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 21:16:37.45 ID:1CoMeExDo
御坂美琴の趣味はお菓子作りである。

もともと中学時代に習得した技術ではあるが、それが今日まで続いている。
難しいものは無理ではあるが、ケーキなども作る事が出来る。
お気に入りのピンクのエプロン。
ショートヘア。縛る事が出来ないから黄色のバンダナを付けている。

今日は日曜日である。

とは言っても外はあいにくの雨。
一方通行とデートでもしようと思っていたが、杖をつきながら傘をさすというのは大変なことなのだ。
だから雨の日はたいてい家で過ごしている。
と、言っても二人きりでのんびりするのは嫌いなことではない。
何をしてすごすかではなく、誰とすごすか。

明日の予定、今日の夕ご飯。
とりとめのないことを考えながらクリームなどを盛り付けるために手は動いている。
キッチンを覆う甘い香り。
幸せな自分そのもののようだ。

「できたよー」

皿に移しながらリビングにいる一方通行へと声をかける。
フォークを二つ用意してリビングへと入ると、ちょうどコーヒーを入れたところのようだ。

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 21:17:19.29 ID:1CoMeExDo
「へェ、腕を上げたじゃねェか」

崩れていない綺麗なケーキ。
何年間もやっていることだ、いい加減に慣れてきた。

「味の方は分からないけどね」

たとえ砂糖と塩を間違えたところで、この男はちゃんと食べてくれる。
というのも以前に有ったことなのだ。

「ほらよ」

自分の分と私の分の二つのコーヒー。
ケーキを食べる時は、砂糖も何も入れない。
そのかわりに、私は甘めにケーキを作る。

ケーキを一口。
少し甘すぎだけど、おいしい。
でもさすがに甘すぎたかもしれない。
代わりにコーヒーを一口。
程よい苦みを感じることができた。

「甘めェな」

ムッ、私の作るものにケチをつけるのか。
と思ったが、たしかに今日のケーキは甘すぎたかもしれない。

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/13(水) 21:17:55.79 ID:1CoMeExDo
「なによ、このコーヒーだって苦いじゃない」

普段は砂糖とミルクも入れるのに、今日は何も入れていない。
苦く感じるのも当然のことである。
とは言っても、お互い顔が笑っている。
本気で文句を言うつもりではないことぐらい、お互いわかっているのだ。

美琴はテーブルに手をつけ立ち上がった。
そして思いっきり一方通行の方へと伸びた。

チュッと音が鳴った。
口づけ。
そのまま舌を軽くからませればケーキの甘い味がした。
そのままたっぷり10秒間。
唇を離して、軽く深呼吸。
自分からしたこととはいえ、心臓が高鳴っているのが分かる。



「ちょうどいい甘さね」

「ちょうどいい苦みだな」



これが二人の、雨の日の過ごし方である。 

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/17(日) 22:26:30.46 ID:1405pmrqo
過去編導入


御坂美琴は上機嫌で街を歩いていた。
ゲコ太の新しいグッズが手に入り、次のグッズの予約までできたからだ。


いよいよ明日から高校生活である。
学園都市第二位の自分のところには、たくさんの高校からスカウトがきた。
最終的には長点上機学園への進学が決まった。
今日は、新しく住むマンションがさびしかったので街へ出てみたのだ。
いきつけのゲコ太グッズの店へ行ってみたらちょうど新商品の発売日であった。
機嫌が良くなるのも当然のことである。

さて、昼食をどうしようかと考えているところであった。
前から見知った顔が歩いてきた。

「あ、お姉様。おはようございます、とミサカは丁寧に挨拶をします」

現れたのは自身のクローンである妹達の一人であった。
その数は全部で9971体。
元々実験の為に作られたそうだが、その実験が中止となってしまった。
さすがに廃棄はできないだろうということで、世界中に散らばっている。
自分のクローンを勝手に作られたことに美琴は怒ったが、
いまではたくさんの妹ができたと割り切っている。

「えーっとその首飾りは0002号かな?おはよう。今日はどうしたの?」

「いえ、とくにやる事もなかったので出かけただけです、とミサカは空を眺めながら答えます」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/17(日) 22:27:41.93 ID:1405pmrqo
0002号は学園都市に残ったうちの一体である。
なので自分とよく会うし、なにより自身の好きな人を奪い合うライバルでもある。

「そうなの」

「そうです。ところでそろそろ時間なのでミサカは帰ります。
 お元気でお姉様、とミサカはぺこりとお辞儀をします」

「あなたも元気でね、何かあったら相談しなさい」

美琴は手を振って送り出すと再び歩き始めた。



しばらく歩いているとまた見知った顔を見つけた。

「あっ………おはよう」

「おはよう……」

今度は上条当麻であった。
少し気まずい雰囲気が流れたのは、自分が昔好きだった人だからである。
自分の能力に対抗できる能力を持っていることから興味を持ち。
いつの間にか好きになっていた。

とはいえ、あこがれが強かったのも否定はしない。
告白して、当麻が自身の同居人と付き合っていると聞かされたが、そこまでショックはなかった。
とは言っても気まずいものは気まずいので、あいさつだけするとそそくさとすれ違って行った。
とりあえず、気分を変えるためにご飯にしよう。
そう思った美琴は近くのナポリタンの店へと入っていた。

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/17(日) 22:28:19.94 ID:1405pmrqo





それから街を歩き回った美琴であったが、さすがに疲れて公園のベンチに座っていた。
ふと空を見れば、太陽が傾き初めている。
そろそろ夕飯の支度をしないといけない。

「あ、今日は見たいテレビが有るんだった」

時計を見ると時間はぎりぎりだった。
幸いにも自宅に食材はたっぷりと残っている。買い物には行かなくても平気だろう。
とはいえ、時間がないのも確かである。
美琴はあわてて走り出した。

右、左、曲がらず二つ。そして次を右。

と、走っていた美琴の視界に突然男が現れた。
曲がり角の直前である。
それまで人気がなかったため確認しないで走っていた。

「あっ」

声を出した時にはもう遅かった。
走っていた美琴は、曲がり角から出てきた男とぶつかってしまった。
ドスンという音。その男は地面に倒れている。
その男は、杖をついていて綺麗な白髪をもっていた。
さすがの美琴もまずいと思い、あわてて近寄て声をかける。

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/17(日) 22:28:55.65 ID:1405pmrqo
「だ、大丈夫ですか?」

「………あァ、平気だ。杖はついててもそンなに酷いわけじゃねェンだ」

男はそう言って立ち上がると、気にするなと言ってまた歩き始めた。
でも、と言って近よったがもう一度気にするなと言ってどこかへと歩いて行った。
美琴は安心したように溜息をつくと、反省してゆっくりと走り始めた。





先ほどから少し離れた地点にその男はいた。
白髪に赤い瞳。元学園都市の第一位、一方通行である。
杖は昔のままだが、もともとチョーカーがあった場所にはシルバーの十字が掛けられていた。

「ちゃンと、効いてるみてェだな」

独り言のつもりだったのだがそれに反応する者がいた。

「いったい何の話だい」

一方通行の呟きに反応したのは赤い髪の色をした神父だ。
学園都市は禁煙地区が多いので、ヘビースモーカーの彼はイライラ気味である。

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/17(日) 22:29:21.54 ID:1405pmrqo
「てめェらに頼ンだ魔術だよ」

一方通行はそこでいったん区切り、先ほど美琴とぶつかった方を見つめた。

そして、ゆっくりと、確かめるように言った。




「この都市に、俺を覚えている存在はいねェみたいだ」


92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/28(木) 00:45:16.37 ID:Iz+xLYJto
日曜日のことである。
世間一般は休日ではあるが、風紀委員にそんなものは存在していない。
その支部の一つ。
緊急事態を告げるサイレンが鳴り響いたのは、昼休みの時間帯であった。
当直のオペレーターが叫ぶ。

「銀行強盗!?人質を取っているようです!!ば、場所は駅前の…!!」

銀行強盗。
犯罪を犯す者などそのほとんどが学生であるが、能力者が闊歩している町である。
その事件の危険度はとても高い。
たまたま新人たちが多かった日でもある。
あたりは、騒然となった。
しかし、落ち着きのある凛とした声が響くと周囲の様子にも変化を見せ始めた。

「落ち着きなさい。私たちは最後まで冷静にならないといけませんわ」

支部長の一言にオペレーターを含めた新人たちはようやく落ち着きを取り戻す。
かつての電撃姫を思い出させるカリスマ。
レベル4という高いレベル。
長年積み上げてきた実績。

白井黒子、17歳。
優秀な風紀委員として知られている。

「初春は引き継ぎ。副支部長、後は頼みますわ」

黒子の指示により支部の面々は自分の仕事をするために走り始めた。
それを見送った黒子は自分の装備をつかみ取り、一気に現場へと跳んだ。




93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/28(木) 00:46:09.22 ID:Iz+xLYJto
現場に付いた黒子を待っていたのは最悪に限りなく近い状態であった。
以前の様にシャッターが閉まっていて中の様子が見えないということはなかった。
しかし、そのせいか野次馬に刺激された犯人の男は人質の少女の首筋に光る物体を突き付けているのが見える。

(刃物……)

刃渡り何cmであろうか。
にび色に輝くそれが、少女の髪に見え隠れしている。

「近づくなぁあァ!!」

男はかなり興奮した様子で、あたりに怒声を巻き散らかしている。
一人なら抑えられるかとも思ったが、どうやら単独犯というわけでもないらしい。
興奮した様子の男以外にも、奥のカウンターで店員に向かってどなっている数人が見えた。
ご丁寧に人質つきである。

(入口の男を止めることはできても、その間に奥の人間に動かれるとまずいですわね…)

黒子は、刺激しないようにと腕章を取り外して人ごみの最前列へと移った。
と、その時である。

カメラマンがその光景をカメラに収めようとシャッターを押した。
ピッ、とデジカメの音が鳴った。
しかし、犯人はそれに何かが刺激されたのか手に持っていた刃物をふりかぶった。

黒子はあわててテレポートするための演算を始めた。
しかし、当然のことながら……

(間にあわない……!!)

誰もがその白い首筋に走る鮮血を予想した。

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/28(木) 00:46:40.24 ID:Iz+xLYJto
その瞬間の事だ。
コンクリートの壁を突き破り、何かが高速で飛びこんできた。
それは白銀。外からの光により綺麗に輝いていた。
ガキン。刃物がはじかれる音。
それは人型をしており、ちょうど腕の部分が人質をかばうように鉄の刃を受け止めていた。

「な、なんだこいつは!?」

男は思わぬ乱入者に声を上げる。
奥に居た仲間もそれに気がついたのだろう。
ハッとした表情でその姿を見た。

刹那。

他の人質を取っていた犯人の一味に人の動きを超えた速度で近づきその腕を捉えた。
強引に人質から引きはがし、地面へと投げつける。
そしてそれと同時に、それが突っ込んできた穴から何人もの正式武装した警備員が駆け込んできた。
瞬く間に制圧されていく銀行施設。

あっという間の出来事であった。

黒子は思わず現場に近づき、その人型の鉄塊に訪ねた。

「あなたは、いったい……」


95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/04/28(木) 00:47:21.88 ID:Iz+xLYJto


『アンチスキルだよ』

それはかつての英雄の一人。

『警備員(アンチスキル)特殊機甲科所属』

一人の人間の為に学園都市の闇とも闘う不屈の精神。

『浜面仕上って言う者だ』 

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/05/22(日) 23:06:07.34 ID:wfi/es+ho
『一方通行、とある研究を手伝ってほしい』

『研究?』

『俺は『統一理論』と呼んでいる』

『………どンな内容なんだ?』

『超能力者の体で、魔術を使うにはどうすればいいのか?』

『ほゥ』

『不可能じゃないはずだ。アレイスターは科学によって天使を作った。
 お前は魔術も完全ではないが操作することができた。
 そしてなにより、『幻想殺し』は科学と魔術関係なく発動している。
 ならば、超能力者でも魔術を使うことができると思ってな』

『なるほど。魔術を使った事がある俺を、仲間に引き入れたいってわけか』

『そうゆうことだ。当然ながらお前にも益はある。
 MNWの補助を受けなくても済むようになるかもしれない』

『………!!』


『それは、お前にとっての鎖みたいなものだろう?』





103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/05/22(日) 23:07:11.15 ID:wfi/es+ho
「そういえば、あの言葉が切っ掛けだったンだよな」

大通りから少し外れた、閑散とした路地。
この町から離れた理由を思い出しながら一方通行は歩いていた。

チャリ、と胸にかけていた十字架が音を立てた。
そこに、かつてあったチョーカーはもうない。

「何か言ったか?」

前を歩くステイルがこちらを振り向いた。

「いや、なンも」

「そうか。それより、土御門から連絡があった」

歩みを止め、懐から一本の煙草を取り出し火をつける。
付き合いもだいぶ長くなってきたので、一方通行は何の文句も言わない。

「二人に会ったそうだ。今回の件については説明してある」

「あン?じゃあ俺らはどうすンだ」

「土御門と合流したようだからな、作戦の時間まで暇ができてしまった。
 僕は友人に会いに行くことにするよ。君も自由にして構わない。
 会う人間はいなくとも、好みの味の店ぐらい君にもあっただろう」

ステイルは短くなった煙草を揉み消すと、路地の外へと歩いて行った。







104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/05/22(日) 23:07:36.45 ID:wfi/es+ho
「ここのパフェおいしいわね!」

「そうですね、とミサカは興奮しつつ答えます」

美琴は自身の妹である0002号と共に適当に選んだ喫茶店へと来ていた。
学園都市に居る妹達の中でも、特に良く出会う個体なので色々な場所に二人で出掛けている。

「かわいらしいし、店の雰囲気もいいし今回は当たりね」

「値段は高めですがお姉様には関係ないですね、とミサカは格差社会に涙します」

「おごりだからいいでしょ」

「まぁそうですが、とミサカは肯定します」

しばらく何の会話もなく、二人はパフェを食べ進めた。
再び二人に会話が生まれたのは美琴がとある事を思ったからだ。

「そういえばなんで妹達は当麻の事を知ったんだっけ?」

「ミサカ0002号。つまりこのミサカが最初に街で出会いました、とミサカは過去を振り返ります」

「ああ、たしか木の上の猫を助けたんだっけ?」

「そうです、とミサカは……」

「どうしたの?」

急に黙り込むミサカ0002号。
手に握ったスプーンから雫がぽたりと垂れた。

「最初に会った時お姉様もいませんでしたっけ、とミサカは疑問を投げかけます」

「え?そんな訳ないじゃない」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/05/22(日) 23:09:05.10 ID:wfi/es+ho
だけど、自分の記憶の中におかしい点はある。

彼を好きになった理由が思い出せない。
自身がこの感情を自覚したのはいつ?

ロシアまで行くほどに好きになってしまったのはなぜ?


あれ?


木の上の猫を助けた?

この記憶は私の?

『お姉様』

私が初めて妹達に会った時の記憶?
でもこの個体は?

いや、それよりも。
もう一人いなかったっけ?


あなたはいったい誰? 

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/09/20(火) 23:35:39.61 ID:tC4RcHMGo
「あんたって、ファッションセンス良いわよね」

「いきなりなンだよ」

試着室の中。
カーテンの開けられたそこに居るのは御坂美琴。
くるりと一回転してから言った。

「ウルトラマンみたいってよく言われてるけど、まじめに服選べばかなりかっこいいし」

一方通行の服を指差してから一言。
そして自分の服を見おろしながら、

「あなたが選んでくれた服も、かわいいし」

もう一言。
シャッと音を立ててカーテンをしめる。
服を脱ぎながら尋ねた。

「男物はともかく、なんで女ものにまで詳しいのかしらね?」

「『妹達』」

「番外個体と打ち止めの二人?」

「を含めた連中だな。街で出会ったときによくねだられるンだよ」

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/09/20(火) 23:36:05.58 ID:tC4RcHMGo
元々着ていた服に着替え、試着した服をたたむ。
気にいったので購入決定。そのため少々乱暴なたたみ方だ。

「それでもあんたがついて行くなんて思えないけど」

「……………」


『ミサカはお姉様のクローンですから、好みは大方一致しています。とミサカは報告します。
 ですのでミサカと買い物をすればお姉様が気にいる服も見つかります。とミサカは提案します』

一方通行はポケットの中にあった無糖ガムを取り出し、一粒取り出し口に放り込んだ。
女性物の服屋で試着室の前で待つというのは、どうにも落ち着かないものである。

『お姉様の笑顔が見たくないですか?、とミサカは決めゼリフを使います』


「……………………言えるわけねェ」

「んー?なんか言った?」

カーテンを開けながら美琴が尋ねた。
一方通行は首を横にふって噛んでいたガムを銀紙へと包む。

「ちょっと待って、会計してくる」

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) 2011/09/20(火) 23:36:31.67 ID:tC4RcHMGo
「先に外に出てるぞ」

店を出ると強い太陽の光を感じた。
雨の日に杖をついているのは大変なので基本晴れの日にしかこうゆう事はしない。

「一方通行」

後ろを向く。
右手に買い物袋を持った美琴がほほ笑んでいた。

「ありがと」

一方通行は自分の頬が冷めるまで、美琴の顔を見る事が出来なかった。