1: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 01:25:58.99 ID:9Ami6TQr0

引用元: 穂乃果「ただいま」希「おかえり」 

 

ラブライブ! HISTORY OF LoveLive!
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2: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 01:31:26.24 ID:9Ami6TQr0
こんにちは、高校三年生になった高坂穂乃果です

前の三年生が卒業して早くもひと月と半分が過ぎようとしていますが、いまだに少し広くなった部室には慣れません

もう少しすれば新入部員も増えて、また部室が狭くなるのかなぁ…

…なんて考えてはいるんだけどね、えへへ

まだ始まったばかりだから、入部希望者はひとりもいません…はい

そうそう、ひとつご報告が

部室は確かに広くなったんだけど…

ガラガラ

穂乃果「ただいまっ!」

希「おかえり、穂乃果ちゃん」

その代わり、我が家が少し狭くなりました

3: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 01:38:02.45 ID:9Ami6TQr0
穂乃果「今日は早いんだね」

希「うん、今日は講義が午前だけやったからね。終わってすぐ帰って来たんよ」

穂乃果「友達と遊びに行ったりしないの?」

希「…だってえりちもバイトやし、にこっちはチビちゃんたちとデートやし」

穂乃果「あぁ…」

まだ二人以外に友達できてないんだね…

希「いまちょっと失礼なこと思ったやろ」

穂乃果「えっ!? そ、そんなことないー? それより、すぐ着替えてくるね!」

希「…まあいいや。お客さんもあんまり来ないし、暇だから急がなくていいよ?」

穂乃果「いいのいいの、ちょっと待っててー」パタパタ

希「うん」

つまるところ、希ちゃんは正式にうちでアルバイトをしているのです

前みたいな住み込みってわけじゃないんだよ?

まあ、毎日夜ご飯食べたりそのまま寝ちゃって泊まったり…ほぼ住み込んでるようなものなんだけどね

それについては責めないでおきます

私もちょっと嬉しいし

4: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 01:44:08.16 ID:9Ami6TQr0
希ちゃんが大学生になってからも、我が家との交流は続いていました

というのも、希ちゃんが大学の帰りによく遊びに来るからなんだけどね

卒業祝いに呼んで、入学祝いに呼んで…あれ、むしろうちが呼んでるのかな?

…まあいいや、希ちゃんが来てくれて私も嬉しいもん

それでね、実は希ちゃんは大学進学と同時に巫女さんのバイトをやめちゃったの

なんでって聞いたら、なんとなくって答えてくれたっけ

私は穂むらの手伝いしか知らないから分からないんだけど、バイトってそんなものなのかな?

でも大学生はお金が必要みたいで、代わりのバイトを探してるみたいだったの

だから私が言ったの

ここで働いてよ! ってね♪

穂乃果「おまたせ、変わるよー」パタパタ

希「ううん、変わらなくていいよ」

穂乃果「え?」

希「変わらんでいいから、お客さんが来るまでお話ししてよ?」ニコリ

穂乃果「うんっ!」

それからは、学校から帰ってきた私を迎えるのが希ちゃんのお仕事になったのです

6: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 02:07:13.69 ID:9Ami6TQr0
穂乃果「今日もね、新入部員来なかった…」

希「そっか…新生音ノ木坂学院スクールアイドルは大変そうやなぁ」

穂乃果「ほんとだよぉ…私たちの時はさ、希ちゃんが色々手伝ってくれたからうまくことが運べたけど…」

希「いつまでも先輩に頼っちゃダメってことやね。明日は新入生歓迎会なんやろ? ライブ、頑張らんとね!」

穂乃果「うん…希ちゃんたちも見にきてほしいな」

希「うーん、行きたいのはヤマヤマなんやけど…明日は一日中大学に篭ってないとあかんから…」

穂乃果「そっか…」

希「ごめんね、穂乃果ちゃん」ナデナデ

穂乃果「ううん、いいの! ヒデコたちに動画撮っててもらうから、また見てくれる?」

希「もちろんやん! ウチらの抜けた穴、どうやって埋めるのか楽しみにしてるね」

穂乃果「プレッシャー…でも、頑張る! ファイトだよっ!」

希「ふふふ、頑張れ頑張れ♪」

穂乃果「うんっ!」

希ちゃんが応援してくれるなら、私は頑張れるよ!

絶対に成功させるんだから!

…と心に誓った瞬間

ガラガラ

客「こんにちは~」

表の引き戸が開き、常連のお客さんがやってきました

その途端に私たちはお仕事モードに切り替わり

にこりと笑みを浮かべ、声を揃えて言うのです

のぞほの『いらっしゃいませ!』

12: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:14:27.02 ID:7iSQnN1FO
穂乃果「はあ…つかれた」グデー

希「おつかれさま、今日は早く寝るんよ?」ナデナデ

穂乃果「うん、そうする」

去年の文化祭の一件以来そうしているのです

どれだけ焦ったって、前日に何かやって変わるわけじゃないもん

むしろ悪い方向に変わってしまうことだってあるんだから

希「ふふん…成長したんやね」

穂乃果「そうだよー? 私は日々成長してるんだよ」


13: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:19:18.02 ID:7iSQnN1FO
希「と言っても」ギュッ

穂乃果「?」

後ろから抱きしめられちゃった

…ん?

この体勢…ま、まさか…!

希「ここはそうでもないみたいやけど」フニ

穂乃果「ちょぉっ!? や、やめてよ…!!」ビクッ

希「ふぅん…やっぱり穂乃果ちゃんはわしわしのやり甲斐があるねぇ」ニヤリ

穂乃果「もう! 大学ではそんなことやっちゃダメだよ!?」

希「なんでー?」

穂乃果「だ…だって、セクハラだし」

希「…そんなマジなこと言われるとは思ってへんかったよ…」

穂乃果「わ、私ならいいから! だから外でやって捕まっちゃダメだよ!」

希「ほぉ…ならお言葉に甘えてたっぷりわしわしさせてもらおうやん!」ワキワキ

穂乃果「ひぃっ…ゆ、ゆきほも使っていいよー…?」

希「…」

穂乃果「…?」

希「やだ」

穂乃果「!!?」

希「わしわしMAXやー!」ガバッ

穂乃果「いやぁぁぁーーー!!!」

14: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:20:23.34 ID:7iSQnN1FO
・・・・・
・・・
・・

穂乃果「もうお嫁に行けない…」グスグス

希「ウチがもらってあげよーか?」

穂乃果「…考えとく」

希「そっか」クスッ

15: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:29:06.41 ID:7iSQnN1FO

雪穂「ただいまー」

穂乃果「ゆきほ…おかえり…」

希「おかえり雪穂ちゃん」

雪穂「どしたのお姉ちゃん…」

穂乃果「わしわしされた…」

希「わしわししちゃった♪」

雪穂「…あ、あんまり店ではやめてね…希さん」

希「はーい」

穂乃果「お店じゃなくても、人がいるところじゃやめてほしいな…」

希「人がいなかったらいいん?」

穂乃果「そういう問題じゃないよ…」

16: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:30:11.14 ID:7iSQnN1FO
穂乃果「…それはそうと、新入生オリエンテーションどうだった? 長かったみたいだけど」

雪穂「進路の話ばっかりで疲れた…まだ入学したばっかりなのにね」

穂乃果「あー…私も進路考えなきゃだよ…」

希「それなら、ウチの大学おいでよ。ちょっと勉強頑張らないとやけどね♪」

穂乃果「行きたいけどぉ…勉強かぁ…」

雪穂「それくらい頑張りなよ…」

穂乃果「えー…」

雪穂「…あ、お姉ちゃん。明日の新歓見に行くからね」

穂乃果「うん! ありがと、頑張るからねっ!」

雪穂「勉強もそれくらい頑張れたらいいのに」

希「そうやよー? 練習だってあんなに頑張れたんやから、きっと大丈夫!」

穂乃果「じゃあ、また教えてくれる?」

希「うん♪」

17: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 16:35:24.18 ID:7iSQnN1FO
ほのママ「おつかれさま、二人とも。雪穂もおかえり」

雪穂「ただいま」

希「あ、お疲れさまですお母さん」

穂乃果「つかれたぁー! ごはんまだー?」

ほのママ「いま作ってるから待ってなさい。希ちゃん、店閉めといてくれる?」

希「はいっ!」

雪穂「ごはんなに?」

ほのママ「今日は唐揚げよー」

穂乃果「やった!」

ほのママ「希ちゃんも食べてってね」

希「いつもありがとうございます」

穂乃果「えへへっ」

希「どしたん?」

穂乃果「ふふふ、楽しいなって思って」

希「ふふっ…そうやね」

希ちゃんがバイトに入る前から、こうだった気もするけど…

やっぱり大勢で食べた方が美味しいし楽しいよねっ!

だって希ちゃん、ごはん食べてる時すっごくいい笑顔なんだもん♪

それが見れるだけで私は幸せなのです!

22: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/19(金) 22:12:12.18 ID:9Ami6TQr0
・・・

みんな『ごちそうさまでしたー』

食事が終わって、みんなでごちそうさまをして

食器の片付けが終わりそうな頃になると、お姉ちゃんは決まってこの一言

穂乃果「のぞみちゃ~ん、お茶~」

希「はいはい♪」

雪穂「…」

…最近、お姉ちゃんが希さんにお茶をお願いするようになりました

いままではずっと私だったのに

今でもお願いされるんだけど、希さんが来てる時は絶対に希さんにお願いしてる

私がやらなくて済むんだし、全然いいんだけど

でも…ちょっと寂しいとか思っちゃうんだよね

希「雪穂ちゃんもお茶どうぞ~」

雪穂「あ、ありがとう希さん。…あれ、紅茶?」

穂乃果「うわっ、ほんとだ!」

差し出されたのが紅茶で、私とお姉ちゃんはびっくりしてしまった

和菓子屋である我が家に紅茶なんか…

いったいどうしたんだろう

希「今日ね、大学の近くのお店でチョコと一緒に買ってきたんよ。だから…一緒に食べよ?」

雪穂「おお…うん!」

穂乃果「希ちゃんさすが!」

お姉ちゃんだけじゃなくて、私のことも見てくれてるようで

こういうところがあるから…私も懐いちゃうんだ

23: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 08:53:14.59 ID:JWW8vIwi0
私の知ってる希さん

スタイルよし

気遣いよし

性格もよし

…でも、ちょっとだけ自分で抱え込んじゃうところがある、そんな人

そしてなによりも、私たちのお姉ちゃん的存在

勉強も教えてくれるし、悩み事とか相談とかも聞いてくれる

…お姉ちゃんよりお姉ちゃんらしい人だな

でも、なんとなくお母さんに近い気もするんだよなぁ…

とかなんとか、ぼーっと考えてたら

希「あーん」スッ

希さんの声とともに視界に黒い物体が現れて、何事かとよく見てみたら

希さんが私の口元にチョコを持ってきたみたい

雪穂「ぁ…な、なにっ!?」ビクッ

いきなりすぎてびっくりしてしまった

24: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 08:56:31.19 ID:JWW8vIwi0
希さんは人差し指と親指で、チョコをつまんだまま私に微笑んでくれる

希「難しそうな顔してるから、笑顔にしてあげよーと思ってね♪ ほらほら、口開けてや」

あーんなんて、ちょっと子供っぽいなと思うけど

それでも、してもらうのはちょっと嬉しい

恥ずかしいけど

雪穂「あ、あ…あーん///」

希「あーん」

雪穂「あー…む」パク

雪穂「んふふ…」

こうして私が甘やかしてもらうと

穂乃果「雪穂だけー?」

こんな風にお姉ちゃんが言って

希「穂乃果ちゃんも、あーん」

穂乃果「あーん」バク

穂乃果「んふ…あま~♪」

私と同じように笑顔になるんだ

そんな私たち姉妹を見て、希さんも笑顔になる

それを見たら、お姉ちゃんを取られた寂しさなんて消えちゃうんだよね

私の負けです、希さん

25: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 09:01:21.61 ID:JWW8vIwi0
はあ…やっぱりチョコおいしいなぁ

餡子入りとは大違いだね

穂乃果「餡子入りチョコとは大違いだよぉ…さすがちゃんとしたお店のチョコだね」

同じこと言ってるし

希「喜んでくれてよかった」

ほのパパ「…」ムスッ

あ、お父さんがふてくされた

ほのママ「穂乃果!」

穂乃果「ひぃっ!?」

怒られるの分かってて言うんだからお姉ちゃんは…

あ、もいっこ食べよ

…うん、甘くて美味しい

ほのママ「毎回毎回あんたは!」

穂乃果「ごめんなさーい!」

希「お、お母さん落ち着いてください…私は餡子好きですから!」

大変そうだな…希さん

ま、頑張れおっきなお姉ちゃん!

30: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 19:55:40.17 ID:JWW8vIwi0
・・・。

穂乃果「よし、ごはんとデザートの後はお風呂だ! 希ちゃん、行くよ!」

希「えっ、ウチ…そろそろ帰ろうかと思ってたんやけど」

穂乃果「じゃあ泊まっていけばいいんだよ」

希「それで一昨日も泊まらせてもらったばかりやん…」

ほのママ「うちはいつでも歓迎よー? 希ちゃんの着替えとかも置いてるんだし」

希「で、でもいつもお世話になってばかりですし…」

ほのママ「そんなの、今更じゃない?」

希「すみません…」

穂乃果「いいからいいから! ほら、行こう!」グイグイ

希「ほ、ほのかちゃぁん…」

穂乃果「希ちゃん…私とお風呂はいるのイヤ?」

希「そ、そんな言い方はずるいやん…わかった、はいるよ」

穂乃果「やった!」

ほのママ「いってらっしゃい」

ほのパパ「…」zzZ

雪穂「…zzZ」

31: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:01:17.05 ID:JWW8vIwi0
~お風呂~

チャプ

希「はあ…あったかいね」

穂乃果「うん…お風呂は命の洗濯だよね」

希「なにそれ?」

穂乃果「わかんないけど、とにかく気持ちいいねってことじゃないから」

希「ふむ…まあ、そうやね」

穂乃果「えへへ」ギュー

希「ふふん」ナデナデ

一緒にお風呂にはいると、穂乃果ちゃんはいつもウチに抱きついてくる

肌が密着してちょっと恥ずかしいけど、あったかくてなんだか気持ちいい

ついこの前まで、ここまでのスキンシップはしなかった気がするけど…

ウチの家族との一件で、距離が縮まったんやろか?

なんとなく、穂乃果ちゃんがいままでよりも近い存在に感じられる

なんだろう…すごく、心地いい

ウチが頭を撫でてあげると、ふにゃりと柔らかく微笑むんよ

それがとっても可愛くて

つられてウチも笑うと、穂乃果ちゃんはもっと笑顔になって

穂乃果「希ちゃん、いつも柔らかいね」

希「穂乃果ちゃんも柔らかくて、ぎゅってすると気持ちいいよ」

穂乃果「セクハラだよー」

希「そっちが言い始めたんやん」

穂乃果「あはは、そだね」

穂乃果ちゃんとお風呂に入ると、時間がゆっくりと流れるようで

いつまでも湯船に入ってられる

こんな時間がずっと続けばいいなぁ…なんて

ちょっと考えちゃうこともあるんやけど

穂乃果ちゃんから癒しの効果が出てるんかな?

32: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:04:46.16 ID:JWW8vIwi0
穂乃果「ねえ」

希「ん?」

穂乃果「私とお風呂に入るの、嫌だった? 無理やり入らせちゃった?」

希「どうして?」

穂乃果「…さっき、ちょっと嫌がってたみたいだし。今もなにも言わないし」

あら、気にさせちゃった?

穂乃果「気にするってほどじゃないけど…嫌なのに入らせちゃったかなって…」

希「ふふふ…だから穂乃果ちゃんはおバカさんなんや」

穂乃果「えぇっ!?」

希「嫌なわけないよ、だって、穂乃果ちゃんとお風呂に入ってる時は幸せなんやからね。ずっとこんな時間が続いたらいいなーって思うもん」

にこりと笑って答えてあげると

穂乃果「ふ、ふーん。そっか」

穂乃果ちゃんはウチに背中を向けて、あっちを向いちゃった

希「穂乃果ちゃん? どうしたん?」

穂乃果「み、みないで! おねがいだから!」

いつになく慌てたご様子で

両手で顔をおおって身悶えしてるやん

希「本当にどうしたん?」

ちょっと無理やり穂乃果ちゃんの手を掴んで、こっちを向かせてみると

穂乃果「う、うぅ…///」

顔を真っ赤にして

笑い出しそうになるのを堪えてたみたい

33: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:16:44.59 ID:JWW8vIwi0
希「なにぃ…照れてるん?」

穂乃果「言わないでよ! あぅぅ…にやけそうになるの我慢してるのにぃ…///」

どうやら本気で恥ずかしかったみたい

穂乃果「希ちゃんがあんなこと言うからだよ! あ、あんなの…誰だって照れるよ!」

そこまで照れられると、なんだか…

希「ぅ…///」

ウチまで恥ずかしくなってくるやん…

穂乃果「な、なんで希ちゃんが照れてるの…///」

希「だっ…だって…///」

あ、あかんよ…顔、見られへん…!

穂乃果「ちょ、ちょっとお互いに深呼吸だよ! ね!?」

希「う、うん!」

34: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:18:24.32 ID:JWW8vIwi0
お互いに背中合わせになって、ゆっくりと深呼吸

すぅ、はぁ

背中越しに伝わってくる

穂乃果ちゃんのぬくもりと、深呼吸の動き

それを意識してしまうと…

希「…///」

ほら…深呼吸なんて意味ないやん…

もう諦めてしまおうかな

恥ずかしがってたら、ずっとこのままやし

そんなの嫌やし、穂乃果ちゃんが照れてるところ見たいし

だってほら、こんな風に妹をいじめることが出来るのもお姉ちゃんの特権やん?

35: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:20:08.91 ID:JWW8vIwi0
決心して、くるりと身体ごと振り向いて

まだ深呼吸中の穂乃果ちゃんにぎゅっと抱きついてみたら

穂乃果「んひゃぁっ!!?」

びくんと大きく跳ねた

穂乃果「まだ深呼吸終わってないよ!?」

希「ふふん、ごめんやん♪」

まあ、それが狙いなんやけど

希「ぎゅー」

穂乃果「や、やめてよ希ちゃん…まだダメだよ!」

希「もうウチは大丈夫やもーん」

穂乃果「私はまだなんだよー!」

希「ふふふっ、照れてる顔をもっと見てみたいなー」

穂乃果「も、もぉ…希ちゃんのバカ…///」

潤んだ瞳でそんなことを言われたら

もっと抱きしめたくなっちゃうやん

ふふふ…お姉ちゃんにそんなことしていいん?

36: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:21:54.54 ID:JWW8vIwi0
希「ほーのかちゃんっ」ギュッ

穂乃果「な、なにさ」

希「なんでもー」

穂乃果「むぅ…ね、ねえ」

希「どしたん?」

穂乃果「…あ、あの…私もそっち向いていいかな」

顔を真っ赤にしたままの穂乃果ちゃんが

少しだけ口をすぼめてそんなことを言った

穂乃果「…私も、希ちゃんの顔見たいし…///」

希「う、うん」

くるりと身体を回転させて

ぎゅって抱きついてくる穂乃果ちゃん

穂乃果「…希ちゃん、顔赤いよ」

そんなこと、分かってる

ウチの顔が真っ赤で熱くなってることくらい

いくらなんでもね、やっぱり恥ずかしいもん

妹いじりには自分の犠牲も必要ってことやね! うん

希「…のぼせたんかもね」

でも、なんだか認めるのは嫌で

そんな風に返しちゃう

37: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:23:28.86 ID:JWW8vIwi0
そしたら穂乃果ちゃんは心配そうに表情を変えて

穂乃果「だ、大丈夫?! 私が抱きついちゃったからかな…すぐに上がろう…?」

そんなウチの嘘を信じちゃうんやもん

やっぱりこの子をいじめるのは、あんまりやりたくない

希「冗談よ」

穂乃果「えー…」

希「ほら、身体洗ってあげる。おいで?」ザパッ

穂乃果「ま、またわしわしするんじゃ…」

希「してほしいん?」

穂乃果「結構です! 普通に身体洗ってください!」

希「よろしい。さ、おいで」

穂乃果「うんっ!」


38: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:26:12.18 ID:JWW8vIwi0
・・・。

穂乃果「ねえ…またいつもの、お願いしてもいい?」

希「うん、いいよ」

お風呂からあがると、私は希ちゃんに髪を乾かしてもらいます

年末のバイトの時に希ちゃんがしてくれたんだけど

あれがとっても気持ちよかったから、今では私からお願いしてるの

39: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:27:53.32 ID:JWW8vIwi0
希「いつも穂乃果ちゃんの髪の毛はさらさらで気持ちいいね」ゴォォォ

ドライヤーを私の髪にあてながら、希ちゃんが言った

穂乃果「そうかな?」

私としては、お姉ちゃんにこうやってもらう方が気持ちいいんだけどなー

希「ふふん。これにはね、わしわしで鍛えた技術が生かされとるんよ?」

穂乃果「意外な活用法だね…」

希「むしろこのためにわしわしで鍛えてたんやで?」

穂乃果「おぉ…ということは、私のためってことだね!」

希「ふふ、そうやね」ニコリ

穂乃果「…///」

どうして、希ちゃんはそんな簡単に頷いちゃうのかな

…ドキッとしちゃうじゃん

ずるいなぁ、希ちゃんは

40: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/21(日) 20:31:08.47 ID:JWW8vIwi0
希「おやおや、また照れてるん?」

うあ…また見抜かれた…!

ずるいなぁ、お姉ちゃんは

穂乃果「い、いつかやり返すんだかね!」

希「ふふん。お姉ちゃんに勝とうなんて百年早いよ穂乃果ちゃん」

穂乃果「なにおう!? 希ちゃんだってさっき照れまくってたじゃん!」

希「っ…そ、それは穂乃果ちゃんの方が先に照れたんやからウチの勝ちやろー!」

穂乃果「いーや! どっちも照れたんだから引き分けだよ!」

希「むむむむ…」

穂乃果「ふぬぬぬ…」

のぞほの『ぷふっ…』

希「あはははははっ…もう、穂乃果ちゃん…」

穂乃果「あははは、ごめーん」

希「ふふふっ…よし、次はウチのを乾かしてくれる?」

穂乃果「了解です!」

こんなやりとりが

本当に楽しくて、幸せ

それもこれも、年末のバイトから始まったんだよね

ふふ…やっぱり、あのとき希ちゃんにお願いしてよかった!

45: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:07:35.50 ID:NBenjVjqO
~翌朝。居間~

穂乃果「ねむた…」ポケー

希「夜更かしするからよ…」ポケー

穂乃果「おしゃべりが楽しくて…」ポケー

希「それはそうやったけどぉ…」ポケー

ほのママ「さっさとご飯食べて行く!」

のぞほの『はーい…』ポケー

46: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:17:11.26 ID:NBenjVjqO
・・・

穂乃果「…よし、今日のサイドポニーもいい感じ!」キュッ

雪穂「お姉ちゃん早く行くよー」

穂乃果「あ、待ってー」

希「ウチもそろそろ行かないと」

穂乃果「こんなゆっくりでいいの?」

希「講義は二限目からやから」

穂乃果「そういうことか」

雪穂「でも、二限からだと早くない?」

希「レポート書かなあかんから、ちょっと早めに行こうと思って」

雪穂「そっか、大学生はレポートがあるんだね。お姉ちゃんは書けるかな?」

穂乃果「私はまだ高校生だからいいんですー」

雪穂「もう言ってるうちに大学生だよ? わかってる?」

穂乃果「わかってるよー! ほら、もう行こうよ!」

雪穂「はいはい」

47: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:18:05.12 ID:NBenjVjqO
ほのママ「あんたたち、お弁当持った?」

雪穂「うん」

希「はい」

穂乃果「あーっ! 忘れてた!」

ほのママ「穂乃果ぁ…」

穂乃果「ごめんなさーい」

ほのママ「ったく…頑張りなさいよ」

穂乃果「うん!」

ほのママ「ほら、いってらっしゃい。雪穂も希ちゃんもしっかりね!」

のぞほのゆき『いってきまーす!』

49: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:21:48.81 ID:NBenjVjqO

~某大学。講義室~

にこ「おはよ、希」

希「あ、にこっち…おはよう」

にこ「やけに眠たそうね」

希「うん…昨日、穂乃果ちゃんちに泊まったんよ…それで話し込んじゃって」

にこ「またぁ? 今週何回目よ…」

希「えっと…三回目…」

にこ「泊まりすぎ…もう住んでるのと変わんないじゃない」

希「あはは、もう下宿しちゃおうかな」

にこ「後輩の家に下宿って…」

希「じ、冗談やから!」

50: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:23:41.80 ID:NBenjVjqO
にこ「まあ…あんたたちが仲良しなのは今に始まったことじゃないけどね」

希「うん…穂乃果ちゃんにはお世話になりっぱなしやからね」

絵里「ほんとそうね」

希「あ、えりち…おはよ」

にこ「おはよう、遅かったわね」

絵里「電車に乗り遅れたの…それで、穂乃果の話?」

にこ「そう。希がね、昨日も泊まったんだって」

絵里「またなの?」

希「またなんよ。それでね、お世話になりっぱなしやからお礼とかしたいなーって」

にこ「お礼ねえ…」

51: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:26:43.45 ID:NBenjVjqO
絵里「はあ…私たちはまた希と穂乃果のために相談に付き合わされるのね」

希「いいやんそれくらい」

絵里「もちろんいいわよ? あなたたち二人の話は面白いし」

希「なにそれ?」

絵里「なんでもー」

希「むぅ…」

にこ「そんなことどーでもいいわよ。で、お礼ってどうしたいの?」

希「うんとね、とにかく穂乃果ちゃんを喜ばせてあげたいんよ」

にこ「なら…ケーキとかは? 買ってってあげたら喜ぶんじゃない? 安く済むし」

希「喜んでくれるやろうけど、それはいつもしてあげてるから…」

絵里「じゃあ遊びに連れて行ってあげるとか」

希「ああ…そういえば、穂乃果ちゃんと二人で遊んだことってあんまりなかったなぁ」

にこ「近場ならたくさんあるじゃない」

希「近場なら、ね。今度のお休み、ちょっと遠くまで連れてってあげようかなぁ」

絵里「いいんじゃない? きっと喜ぶと思うわ。亜里沙から聞いたけど、アイドル活動も頑張ってるみたいだし…そのご褒美も兼ねてね♪」

にこ「ああ、そういえば今日は新歓ライブだっけ? 昨日の夜に花陽からメールあったわ」

52: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 20:51:56.80 ID:NBenjVjqO

希「そうやね…じゃあ、その労いも込めて遊びに連れてってあげようかな」

にこ「大好きなお姉ちゃんと遊べて穂乃果は幸せねー」

希「にこっち…なに?」

にこ「いーえ? あんたらが仲良すぎって言ってるだけですけどー」

希「そ、そうかな?」

にこ「否定しないのね…」

希「えっ…あ、あはは…///」


53: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:02:25.69 ID:7h7iyAwS0
絵里「ふふっ、希のこんなところは珍しいわね。写真に収めておこうかしら」カシャッ

希「ちょっ…ちょっとえりち!?」

絵里「あー間違えて穂乃果に送っちゃったー」

希「えりちー!!」

絵里「ふふふっ、冗談よ冗談。まだ送信確認画面で止めてるから」

希「じゃあ早く消して!」

絵里「いやよ。希の珍しい照れ顔なんだもの」

希「お願いやから消して…」

絵里「力ずくで消してみなさい」

希「じゃあそうする!」ガバッ

絵里「っ!」

ドタドタ

にこ(大学生になってまで何してんだか…成長しない二人ねー)

にこ(あ、私は成長したわよー? きっとμ'sに入らなかったらこんなこと考えもしなかったはずだし)

にこ(それ以前に、学部は違ってもこうやって友達と大学に通うことさえね…私も穂乃果には感謝しなくちゃいけないわね)

絵里「ちょっ、のぞみ…痛い痛い痛い!」

希「じゃあ早く消して!」

絵里「わ、わかっ……」pi!!

絵里「……あ」

希「えっ」

54: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:03:23.91 ID:7h7iyAwS0
絵里「…送っちゃった…希の照れ顔写真」

にこ「あらら」

希「」

絵里「ご、ごめんね希。あとでアイスおごるから」

希「…ウチ、もう穂むらに行かれへん…」

にこえり『そこまで!?』

55: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:12:02.85 ID:7h7iyAwS0
~音ノ木坂。三年教室~

私の席は窓際です

だから春はとっても暖かくて、夏はとっても暑くて、冬はとって寒いのです

今日は一段と暖かいからポカポカしちゃって

もうブレザーは着ていられないくらい

だからブレザーを脱いで、机にぺたりと突っ伏してみると

もうこれ以上の…至福はありません…

…zzZ

先生「高坂!!」

穂乃果「はいぃっ!!!」ガタンッ

授業中は寝てはいけません

それは生徒会長でも同じこと

海未「…」

ああ、海未ちゃんの鋭い視線が突き刺さる…

そんな目で私を見ないでください…

58: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:15:39.26 ID:7h7iyAwS0
・・・

海未「穂乃果!」

授業が終わって、やっと眠れそうだな~って思ってたのに…

なにさ海未ちゃん

海未「なにさじゃありません! いい加減に生徒会長としての自覚を持ってください!」

穂乃果「持ってるよぉ…昨日だって仕事頑張ったじゃん!」

海未「だからといって、授業中に寝ていいわけがないでしょう!! 放課後には新歓ライブもあるというのに!」

穂乃果「うぅ…海未ちゃんお母さんみたい…」

海未「誰がお母さんですか! だいたいあなたはいつもいつも…」

今日はいつもより怒っているらっしゃる…

こ、ことりちゃん助けてぇ…

ことり「う、海未ちゃん…そのへんでやめておいてあげたら?」

そーだそーだ!

60: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:19:51.80 ID:7h7iyAwS0
海未「ことりは穂乃果に甘すぎます! 甘々です!」

ことり「でも、あんまり怒るとかわいそうだよ…」

海未「で、ですがこのままでは穂乃果のためにも…」

ことり「そこは大丈夫じゃないかな?」

海未「どうしてです?」

ことり「穂乃果ちゃん、こう見えて分かってると思うし…あんまりガミガミ言っちゃうとね?」ニコリ

海未「…それもそうかもしれませんね」クスッ

穂乃果「え? なにが?」

海未「やっぱり分かってませんよ穂乃果は!」

ことり「あ、あははは…」

穂乃果「??」

ソレゾレガスーキナーコートーデガンバレールナラー♪

穂乃果「あ、メールだ」

61: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:22:39.37 ID:7h7iyAwS0

穂乃果「絵里ちゃんからだ…なんだろ」

ことり「絵里ちゃん?」

海未「絵里から…って、何事でしょう」

絵里【珍しいものが撮れたわ】

ことほのうみ『珍しいもの…?』

穂乃果「画像付きだ。開いてみるね」

ことほのうみ『…』

ことり「こ、これは…確かに珍しい、かも」

海未「希もこんな顔するんですね…ふふ、少し意外です」

穂乃果「むぅ…」

海未「穂乃果?」

穂乃果「…なんでもない」

私には見せてくれないのにー…

でも画像は保存しちゃうんだもんね

ふふん、これを使ってケーキ買ってもらおー♪

海未「悪用はいけませんよ穂乃果」

穂乃果「じょ、冗談です…」

62: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/22(月) 21:29:48.41 ID:7h7iyAwS0

でも画像を眺めてると…

穂乃果「あはっ」

きっと昨日のお風呂でもこんな顔してたかなーなんて思っちゃう

…見せてくれなかったから真相は闇の中だけど

穂乃果「希ちゃん、うちでもあんまりこんな顔見せないのになぁ」

海未「そういえば、希は穂むらで働いてるんでしたね」

穂乃果「そだよ。昨日も泊まったんだ~」

ことり「卒業しても、いつでも会えるなんて羨ましいなぁ。私も会いたいなっ」

海未「では、久々に今日の帰りにでも寄ってみましょうか?」

ことり「そうだねっ! お話もしたいし~」

穂乃果「あー…ごめん二人とも」

ことうみ『?』

穂乃果「今日は希ちゃん、大学が忙しくて来れないんだって」

海未「そうでしたか…」

ことり「じゃあ次の機会だね…」

穂乃果「じゃあ今度は絵里ちゃんとにこちゃんも連れてきてもらおうよ!」

ことり「うんっ!」

海未「では、私たちは凛と真姫と花陽も誘いましょうか」

穂乃果「μ's大集合だね!」

なんだか楽しみが増えちゃった!

えへへっ

よし、ライブに備えて体力を…

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「はいっ!」

ことりちゃんにまで怒られた…

海未「当然です」

…はい

69: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:13:42.11 ID:71pkFxf1O
~夜・のぞホーム~

レポートが終わって

自分のマンションに戻って

ご飯やお風呂も済ませてやっと一息つける時間

窓から入ってくるひんやりした風を浴びながら、電話を片手にベッドに寝転がって

希「そんなにウチの声が聞きたいの?」

穂乃果『だって毎日聞いてるんだもん』

希「だから、聞かないと気が済まない?」

穂乃果『そう!』

電話の相手は穂乃果ちゃん

バイトのない日はいつも電話してるんよ

本当、ウチの生活のどこにでも穂乃果ちゃんがいるみたい

そんなにウチが好きなんかな?

…なんてね♪

71: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:19:39.88 ID:71pkFxf1O
希「そういえば、今日のライブ、どーやった?」

穂乃果『うん! もう講堂が満員でさ、みんなμ's!μ's!ってすごいコールだったよ』

穂乃果『もうμ'sじゃないよーって説明するのが大変でさぁ…』

希「そっか…でもそこまでみんなの心に残れたなら、嬉しいなぁ」

穂乃果『だよねだよね! 私も嬉しくって、ちょっと泣きそうになっちゃった…』

希「あはは、でも泣いたらあかんよー? もうμ'sじゃないんやからね」

穂乃果『はーい…えへへ』

72: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:21:48.49 ID:71pkFxf1O
穂乃果「あっ」

何かを思い出したかのように穂乃果ちゃん

穂乃果『そういえば、絵里ちゃんからのメールだけど』

希「ぅ…」

えりちのメールって、あれやね…

ウチの写真の…

穂乃果『希ちゃん、すっごく可愛かったね』

希「ウチは泣きそうなほど恥ずかしかったよ…」

穂乃果『えー? でも、私は希ちゃんのあんな表情が見れてよかったと思うんだけどなぁ』

良くないよ…だって、恥ずかしいもん

でも穂乃果ちゃんの言いたいことは分かる

だって人が照れてる顔って、すごく可愛らしい時があるもんね

昨日の穂乃果ちゃんもそれやね

でも今は自分のこと

人は人、自分は自分

あれだけは見られたくなかった…

73: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:24:08.48 ID:71pkFxf1O
希「だ、だって…みんなの前ではしっかりしないとーって思ってたし…」

穂乃果「じゃあ、もうみんなの前じゃないんだしあんな顔できる?」

な、なんやろ…今日の穂乃果ちゃんはちょっとイジワルやん…

まさか…あの画像、保存して…

希『そ、そんなわけないやろ!? あんな…恥ずかしい顔…あんまり見せられるもんやないやん! というか保存してないよね!?』

穂乃果「えー? 可愛いのに」

わかるけど、それは分かるけど

返事しないってことは保存してるんやね…

えりちと違って、穂乃果ちゃんは言っても消してくれへんからなぁ…

もう諦めることにしよう…

でも、せめてもの抵抗くらいは!

希「可愛くないー! こっちはほんまに恥ずかしくて死そうなんやから! だから消してー!」

穂乃果『そっかぁ…じゃあ私にだけ見せて?』

希「それもイヤ!」


74: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:26:31.42 ID:71pkFxf1O
というか、それだけは絶対にダメ

穂乃果ちゃんにだけは見られたくない

穂乃果『ちぇー』

希「当たり前やん…」

穂乃果『なんでー?』

希「なんでも」

穂乃果『ぶー』

抵抗という抵抗も出来なかった…

はい、諦めます…

75: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:27:56.37 ID:71pkFxf1O
穂乃果『…ねえ、希ちゃん』

希「ん?」

穂乃果『明日は来てくれる?』

希「うん。明日は五時くらいに入れるかな」

穂乃果『じゃあ三時間労働コースだね』

希「ファミレスなんかやったら、十時くらいまで働かされそうやなぁ」

穂乃果『ふふん。うちは早くて七時、遅くても八時には店仕舞いしちゃうホワイト企業だからね!』

希「そのぶん朝はとっても早いけどね」

穂乃果『そ、それはほら…仕込みとか色々あるし』

穂乃果ちゃんと電話すると、いつもこう

最初にその日のことを話して

何でもない雑談をして

穂乃果『…それじゃあ、明日も学校だから…そろそろ寝るね』

希「うん」

76: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 12:30:26.67 ID:71pkFxf1O

穂乃果『おやすみ、希ちゃん』

希「おやすみ、穂乃果ちゃん」

これがウチと穂乃果ちゃんの日課

最初に始めたのは…穂むらでバイトする前日やったかな

大学があるから時間も取れないだろうなと思って、神田明神でのバイトを辞めて

でもお金は必要やし

コンビニのバイトとかも考えてたんやけど、なんとなく合わなさそうで

どうしようかなーなんて考えてたら、穂乃果ちゃんから電話があったん

『希ちゃん…今月、お金に困ったりしてない?』

なんでもない雑談の中で、そんなひと言が飛び出した

なんだかそれがすごく懐かしく思えた

穂乃果ちゃんは神田明神で聞いて知ってたみたいなんやけど

事情を説明して

そうしたら穂乃果ちゃんは

『じゃあうちで働かない?』

ウチはその言葉に、二つ返事で承諾した

翌日に穂むらへ行って、正式にアルバイトとして雇ってもらうことに

履歴書を書いて、穂乃果ちゃんによる面接があったん

あはは…あれも面接なんて呼べるほど大層なものやなかったなぁ

それも面白かったんやけど、お話しするのはまたの機会にね…ふふっ

希「…あ」

やってしまった…

希「穂乃果ちゃんを遊びに誘うの忘れてた…」

81: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:46:32.92 ID:4nzHZnnI0
~翌日・穂むら~

ガラガラッ

希「ただいま~」

ほのママ「おかえり、希ちゃん」

希「ぁ…また…」

ほのママ「ふふっ、いいんじゃない? 私もおかえりって言えて嬉しいし」

希「すみません…///」

ほのママ「穂乃果もあと一時間くらいで帰ってくるから、お店番お願いしていい? もう肩凝っちゃって」コキコキ

希「あ、じゃあ私、肩揉みします!」

ほのママ「ほんと? じゃあお願いするわー」

希「はいっ」

82: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:48:46.11 ID:4nzHZnnI0
モミモミ

ギュッギュッ

ほのママ「おぉ…いいわ、すごい…効くぅ…」

希「ほんとですか? よかったです」

ほのママ「希ちゃん、和菓子屋辞めて整体師になれるんじゃない?」

希「なんでですか…ふふふっ」ギュッギュッ

ほのママ「それほど上手ってこと…あぁ、そこそこ…」

希「…でも、私はここのお仕事が好きなんです」

ほのママ「そうなの? なんだか嬉しいわね…穂乃果なんかはすぐに隙を見てはサボろうとするのに」

希「ふふふっ…穂乃果ちゃんらしいですね」クスクス

ほのママ「でしょー? あの子ったら本当どうしてくれようかしらね。後継いでもらわなきゃなのに」

希「後継ぎ…ですか」

83: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:50:00.46 ID:4nzHZnnI0
ほのママ「…まあ穂乃果が他にやりたいことがあるなら、私たちはそっちを応援するけどね。それは雪穂に対しても同じ」

希「でも、それじゃあお店は…」

ほのママ「うちの子らの自主性に任せます」

希「そ、それって…」

ほのママ「その時になるまで分からないってことね」

希「そうですよね…」

ほのママ「…あ、そうだ」

希「?」

84: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:52:02.20 ID:4nzHZnnI0
ほのママ「希ちゃん、ここ継いでみる?」

希「えぇっ!!?」バッ

ほのママ「ここの仕事好きなんでしょ? 店番は完璧だし、和菓子作りもおとーさんと修行すればすぐに上手くなる程度には出来るし」

ほのママ「これで穂むらも安泰だわー」

希「ちょ、ちょっ…」アセアセ

ほのママ「あはははははっ…冗談よ♪」

希「も、もう…お母さん…!」

ほのママ「でも、希ちゃんになら店を譲ってもいいと思うのはホント。おとーさんにも聞いてみたら?」

希「うえぇ…」

ほのママ「ふふ…まああんまり真剣に悩まないで? オバサンの戯言だから」

希「は、はい…」

ほのママ「オバサンってとこは否定してほしかったけどね」

希「ぁ…ご、ごめんなさい…」

ほのママ「あははは。ありがと、だいぶ軽くなったわ」

希「いえ、またいつでも言ってください」

ほのママ「ありがとー」

お母さん…未だによく分からんとこあるなぁ…

でも、後継ぎかぁ…

大変なんやね、和菓子屋も…

85: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:54:02.47 ID:4nzHZnnI0
・・・。

老婦人「いつもありがとね、希ちゃん」

希「こちらこそいつもご贔屓にしていただいて、ありがとうございます!」

ここで働くようになって、穂むらの常連さんとも顔見知りになった

優しいおばあちゃん

ちょっと怖い顔のおじいちゃん

茶道の先生だったり

他にも近くのホテルのオーナーさんが、結婚式のためにってよくお饅頭を注文しに来たり

こんな人たちに支えられてるおかげでずっとやってこれたんやなぁ

ここのお菓子が大好きだから、みんなこのお店に来てくれて

お饅頭を買って帰ってくれる

…それは穂乃果ちゃんたち、高坂家のみんなの人柄の良さもあるんかもしれないね

このお家に住んでるみんなが優しくて暖かいから

だからたくさんの常連さんが毎日来てくれるんやろなぁ

かく言うウチも、そんな中の一人やしね

86: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:56:13.99 ID:4nzHZnnI0

でも…こんなにいいお店の後継ぎは、二人とも女の子

男の子がいれば継がせられたのに…まあ、婿に取るってことも出来るんやけど

穂乃果ちゃんも雪穂ちゃんも、自分のやりたいことがあるはずやもんね

それを応援するって、親心も素敵

ほんま、いい家族やね

なんてちょっと一人でしんみりしちゃった

…そろそろ穂乃果ちゃんの帰ってくる時間かな

そういえば雪穂ちゃんはどうしたんやろ?

まだ一年生は入部前だと思うんやけどなぁ

ガラガラ

ほのゆき『ただいまー』

なんて考えてたら、噂の二人が帰って来たみたい

一緒だったんやね

希「おかえり二人とも」

穂乃果「希ちゃーん!」ギューッ

希「おおっと…いきなり抱きついたら危ないやろ?」

穂乃果「えへへっ、ごめんなさーい」スリスリ

希「まったくもう…」ナデナデ

雪穂「お姉ちゃんたち、店でやらないで」

希「あ…そ、そうやね」

穂乃果「ちぇー」

87: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/23(火) 23:58:07.48 ID:4nzHZnnI0
希「二人とも、一緒にいたん?」

穂乃果「うん! 雪穂と亜里沙ちゃんがね、うちの見学に来てたの」

希「へぇ…雪穂ちゃん、スクールアイドルに興味あるんや?」ニヤニヤ

雪穂「そ、そういうわけじゃ…! た、ただの付き添い! 亜里沙の付き添いだよ!!」

ふふん

そんな顔真っ赤に否定したら、逆に怪しいんやで?

雪穂「そ、そんなことないー!」

希「ふふふっ…ま、そういうことにしといたげるー」

雪穂「ぬぅぅ…///」

穂乃果「雪穂だって歌のレッスン参加してたじゃん! 真姫ちゃんに褒められて喜んでたくせに!」

雪穂「お姉ちゃんうるさい!」

希「真姫ちゃんに? すごいやん雪穂ちゃん!」

雪穂「そ…そうかな? えへへ…」

穂乃果「なにそれ! 私のときと反応違う!」

雪穂「うーるーさーいー!」

穂乃果「雪穂のがうるさいよ!」

88: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:00:37.27 ID:k4Cy5JJX0

雪穂「ったく…じゃあ私、先にお風呂入るから」タタッ

穂乃果「なっ! ちょ…あーもう」

希「先取られちゃったなぁ」

穂乃果「うん…あ、お店手伝う?」

希「ううん、大丈夫。それより疲れてるやろ? ゆっくりしとき」

穂乃果「大丈夫! 希ちゃんと話してたら疲れも吹っ飛んじゃうよ」

希「それは嬉しいけど、ここはお店やからね。あがったらお話ししよーね」

穂乃果「むう…わかった」

ちょっとほっぺたを膨らませた穂乃果ちゃん

とぼとぼ奥に入る背中は、少し小さく見えた

ウチと話したら…か

ずいぶんと懐かれちゃったもんやね

…悪い気分は全くしないし、嬉しいことやけどね

よし、ウチもがんばろっ!

89: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:02:15.82 ID:k4Cy5JJX0
・・・。

希「お店、閉めました」

ほのママ「ありがと」

八時ごろ

店の戸締りと軽い掃き掃除を終えた希ちゃんがリビングにやって来て

お母さんに鍵を渡したところで

ほのママ「ご飯食べてく?」

いつものようにお母さんが訪ねると

希ちゃんもいつものように

希「いつもすみません…」

と言って、私の隣に座るのです

穂乃果「おつかれさま、希ちゃん」

希「うん」

それからみんなでいただきますをして、おしゃべりしたりデザートを食べたり

そして今日もお泊まりなのです

でもね、今日は私が頼んだからじゃなくて

ご飯食べたあと、十二時くらいまで明日の仕込みをしなくちゃいけないみたい

だから私ひとりでお風呂なのです

…ちょっと残念

90: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:03:50.44 ID:k4Cy5JJX0
でも、お風呂から出たら私の部屋でお話ししよーねって約束したの

…だけど

一人でベッドに寝転がってたら…

もしかしたら、今までのことって迷惑だったんじゃないかって…思っちゃった

ずっとずっと希ちゃんにベタベタしてさ

電話はいつも私からかけてるし

自分がやりたいから、そうしてるんだけど…

希ちゃんにとっては迷惑なんじゃないかなって

ちょっとうんざりしてるんじゃないかな…なんて

思っちゃった

91: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:08:34.99 ID:k4Cy5JJX0
突然すぎて、私もびっくりなんだけどね

一度思ったら、止まらなくて…

希ちゃんはどう思ってるのかなって

きっと聞いたら、希ちゃんはそんなことないよって言ってくれる

希ちゃんは優しいから…

迷惑に思ってても言わないんだよね…

希「遅くなってごめんね、お風呂も入ってたんよ」

そんなことを考えてたら、いつの間にか時間が経ってたみたいで

髪の毛をおろした、パジャマ姿の希ちゃんが部屋に入ってきました

そのまま私の隣に腰掛けたところで私は…

穂乃果「…ねえ、私、迷惑じゃない?」

せっかくの機会だし…思い切って聞いてみることにしました

私の胸はばくばくしてて、緊張しきってるみたい

自分から聞いておいて、頷かれたらどうしようって

不安になっちゃって

私ってバカだなぁ…と思いました

92: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:10:52.05 ID:k4Cy5JJX0
いつも絡みにいってるし、電話もかけてるし

希ちゃんひとりの時間を、私が奪っちゃってるんだもん

…うんざりしてない?

希「ウチが迷惑に感じてるって、ほんとに思うん?」

そう言った希ちゃんは、すっごくめんどくさそうな言い方をしてた

やっぱり、思ってるんだよね?

穂乃果「希ちゃんは優しいから…」

希「…やっぱり穂乃果ちゃんはアホやね」

今度は、穏やかな声だった

それを聞いて、さっきの声はめんどくさそうだったんじゃなくて

呆れてただけなんだって分かった

隣同士でベッドに腰掛けた私を、優しく抱きしめてくれる

穂乃果「…ん」

希「今さらウチが穂乃果ちゃんに隠すことなんて、たいして無いよ。それにね…ウチは穂乃果ちゃんと一緒にいて幸せに感じることだってあるもん」

そうだったんだ…なんだか、嬉しいな…

希「嫌やったらちゃんと言うし…穂乃果ちゃんは心配せんでいいよ」

穂乃果「…うん」

93: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:13:27.53 ID:k4Cy5JJX0
考えてみれば、そうかも

私も同じで…学校のこととか、その日のことはだいたい話してる

隠し事なんて言えば、ほんの些細なことばっかりだもんね

希「穂乃果ちゃんったら…そんなつまんないことで悩んでたん?」

穂乃果「あはは、ごめんね…」

ほんとにつまんないことで悩んでたな、私

しかも気づくのも遅すぎるし…

穂乃果「ありがとう、希ちゃん」

なんだか泣きそうになっちゃったから、私はぎゅっと希ちゃんに抱きついちゃう

おっきな胸に顔を押し付けて、ひたすら声を出さないようにするの

…だって、泣きかけの声なんて聞かれたくないじゃん

しかもこんなつまらないことで

希「…」ナデナデ

希ちゃんはなにも言わず、頭を撫でてくれた

やっぱり気持ちいいな…希ちゃんのなでなでは

94: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 00:14:28.43 ID:k4Cy5JJX0
そしてちょっと落ち着いた頃に…

希「ま、たまにうんざりすることもないわけやないけどね」

穂乃果「気をつけます…」

希「ふふふっ」ナデナデ

大事にすることと、大事に思うことは違う

そう学んだ気がしました

…ごめんね

ありがとう、お姉ちゃん

103: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 22:45:31.23 ID:k4Cy5JJX0
・・・

電気を消したら、部屋は真っ暗でなにも見えません

でも、私のすぐ傍は温かいの

今日は希ちゃんと一緒に眠るのです!

穂乃果「…えへへ」

希「ん?」

穂乃果「ううん、なんでも」

こうやって寝るのは、希ちゃんのおうちに泊まった日以来かな

その日は雪穂も一緒に寝たっけ…

一昨日もうちに泊まったけど、一緒には寝なかったんだよね

夜遅くまでおしゃべりしたけど


104: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 22:47:59.05 ID:k4Cy5JJX0
穂乃果「むぎゅー♪」

希「ぎゅー」

ふふふ…やっぱり希ちゃんは暖かいね

あ、そうだ

忘れる前に話しとかなきゃね

穂乃果「ねえ、希ちゃん」

希「なーに?」

穂乃果「今度さ、μ'sのみんなでお茶会しない? うちのお店で」

希「いいやんそれ! じゃあウチはえりちとにこっちを誘えばいいね」

穂乃果「うんっ! …あ、そういえばにこちゃんって同じ大学だったね」

希「学部は違うけどね」

105: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 22:51:24.90 ID:k4Cy5JJX0
穂乃果「あのにこちゃんでも入れたし…私でも大丈夫かな?」

希「にこっちの名誉のためにも言っとくけど…にこっち、意外と勉強頑張ってたんよ?」

穂乃果「なぬっ…!」

あのにこちゃんがっ!?

希「休日の練習の後とか夏休みとか、よく三人で一緒に勉強したし」

穂乃果「そうだったんだ…私も頑張らなきゃだね…」

希「ウチが見てあげるから、がんばろっ!」

穂乃果「うんっ!」

希「大丈夫、穂乃果ちゃんは出来る子やからね。ウチはよーく知ってるよ」

そう言って希ちゃんは私の頭を撫でてくれる

気持ちいいなぁ…えへへっ

106: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/24(水) 22:55:37.60 ID:k4Cy5JJX0
希「…元気出たみたいやね」

穂乃果「おかげさまで」

希「じゃあ…そんな穂乃果ちゃんをもっと元気にするために、お姉ちゃんからひとつ」

穂乃果「え…?」

なんだか、少し緊張したような声の希ちゃん

なんだろう?

まさか、またわしわしじゃないよね…

なんて、恐ろしい考えは大間違いで

ぎゅっと私を抱きしめて、希ちゃんは…

希「今度の日曜日、ウチとデートしよ?」

と、私の耳元に囁くように言いました

111: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:12:11.07 ID:sH2O4n9O0

で、デートって…

穂乃果「ふえぇ…っ!!?///」

た…たぶん、希ちゃんも恥ずかしくて声が小さくなっちゃっただけなんだよね?

密着して寝てたから、だから囁くような形になっちゃったんだよね?

そうなんだよね?!

でも言われた瞬間の私にはそんな判断ができなくて

そう思うことができなくて

穂乃果「…あ、ぁの…えと…」

頭が真っ白になっちゃった

112: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:14:20.00 ID:sH2O4n9O0
穂乃果「…でーと?」

希「うん」

穂乃果「り、りありぃ?」

希「いえす」

穂乃果「…希ちゃんと?」

希「うん」

穂乃果「でーと…デート…」

希「あ、あんまり連呼せんといてよ! 恥ずかしく…なってくるやん…」

穂乃果「ご、ごめん」

そう言って希ちゃんは布団を頭までかぶっちゃった

暗くてよく見えなかったけど、希ちゃんの顔はたぶん真っ赤だよね

そういえば、友達と遊ぶことをデートって言ったりするん…だっけ

そういう意味なんだよね…?

113: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:16:25.33 ID:sH2O4n9O0
…でも、ほんと? デートに連れていってくれるの?

希「う、うん…イヤやった?」

布団越しに伝わる希ちゃんの震えた声

うわあ、顔熱いよ…

私も恥ずかしい…

えっと、こういうのって…ちゃんと答えた方がいいんだよね?

私は希ちゃんから布団を引っぺがして

やり返すように、希ちゃんの耳元で…ぼそりと

穂乃果「喜んで…お受けさせていただきます」

…言っちゃった///

114: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:20:39.57 ID:sH2O4n9O0
私、顔真っ赤だよ

胸もすごくドキドキしてる

こんなに緊張したのって、いつ以来かな…なんてね

言い様に吐息がかかっちゃったのかな

希ちゃんが小さく「ひゃっ…」って言ったのを私は聞き逃しませんでした

ごめんなさいと思いつつ

可愛い声だな、なんて思っちゃった

希「ぁ…ほ、ほんま? よかったぁ…///」

この声は、きっと希ちゃんも照れてる…のかな?

暗くて見えないや

ちょっとほっぺた触ってみようかな…なんちゃって

触れるわけないんだけどさ

穂乃果「…じゃあよろしくお願いします///」

希「う、うん…こちらこそ…///」

自分で言うのもなんだけど…なんだろ、この感じ…

すっごい照れちゃう…

…でも、なんだか幸せな気分

胸が満たされる感じ

心地よい充足感

えへへ…幸せだなぁ、私

115: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:23:46.43 ID:sH2O4n9O0
穂乃果「…ねえ、どこに連れてってくれるの?」

希「新しくできた遊園地とかいいかなって思ってるんやけど…どうかな?」

穂乃果「遊園地…えへへ、いいね。いきたいな…希ちゃんと」

遊園地…えへへ、想像しただけで楽しそうだなぁ

日曜日が待ち遠しいなっ

穂乃果「楽しみにしてる」

希「うん、今度の日曜日ね」

穂乃果「はいっ」

希ちゃんとのデート、楽しみ

照れちゃって、今日は寝付けない自信があるよ…てへへ

116: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 00:25:18.52 ID:sH2O4n9O0
希「ふふっ…ほら、明日も学校やろ? もう寝よっ」

穂乃果「うん」

…このまま、抱きついて寝てもいい?

それなら眠れそうだから…

希「ふふん…むしろウチが抱きついちゃおっと」ギュー

穂乃果「あはっ…あったかいね」

希「そうやね、あったかい…」

…ああ、またこの感覚だ

心の底がじんわりと温かくて、満たされてく感じ

幸せ…って、感覚

希ちゃんも感じてくれてるのかな

私だけだったら、寂しいな…

穂乃果「希ちゃん…?」

希「ん…なに?」

穂乃果「えへへ…なんでもない」

希「そう?」

穂乃果「…おやすみ、希ちゃん」

希「うん…おやすみ穂乃果ちゃん」

でも…希ちゃんも幸せって感じてくれてるなら…

もしそうだったらなら、嬉しいな

129: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 16:51:04.73 ID:sH2O4n9O0
~日曜日~

今日は待ちに待った日曜日

希ちゃんとの…デートの日です!

いつもなら希ちゃんが家まで迎えに来てくれるんだけど…これだとデートっぽくないもんね

だから今日の待ち合わせ場所は駅前の広場なの

ほら、よくある…時計台の下で、みたいな感じ!

130: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 16:52:43.79 ID:sH2O4n9O0
せっかくだからオシャレしてみたんだけど、どうかな…かわいいかな?

遊園地で遊ぶから、動き回れる感じにはしてみたけど…

いままで希ちゃんと二人きりで遊んだのは学校の帰りとかだったから、なんだか緊張しちゃうなぁ

しかもデートなんて言い方されたら、なおさら…

あぅ…顔、真っ赤じゃないよね?

まだ時間までちょっとあるし…近くのトイレで確認してこようかな…

でもでも、行ってるあいだに来ちゃったら…

希「ほのかちゃーん」

きちゃった…

よし、もうこのままでいこう!

穂乃果「のぞみちゃーん」

希「ごめんごめん、待たせちゃったね」

穂乃果「ううん…私もいま来たとこだから」

えへへ、ちょっと言ってみたかったセリフです!

131: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 16:54:51.70 ID:sH2O4n9O0
希「ふふっ」

ん?

な、なんだろ…私のことジロジロ見て…

もしかして、変なところあった!?

希「今日はいちだんと可愛いね♪」

穂乃果「なっ…!!」

なんと正反対!?

いきなり、いきなりそんなことっ…

ああもうダメ、それはダメ…

絶対顔真っ赤だよぉ…

穂乃果「ぅ、うぁぁ…///」

希「ふふん」

穂乃果「は、はずかしい…」

希「いいやん。嘘は言ってへんもーん」

穂乃果「うぅ…///」

希ちゃん…それはずるいよ…

照れるに決まってるじゃん…

132: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 16:56:20.01 ID:sH2O4n9O0

希「ウチはどうかな? 気合い入れてきたんやけど」

くるりとまわってみせる希ちゃん

初めて見る大人っぽい姿の希ちゃんは、ふだんとはまた違った印象で新鮮です

お姉ちゃんというより、お姉さんって感じ

かわいいじゃなくて、綺麗とかそんな印象かな?

希「ふふん。もう大学生なんやし、それくらいはね♪」

でも中身はいつものかわいい希ちゃん

ギャップってやつだね!

133: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 16:58:52.02 ID:sH2O4n9O0
穂乃果「それに比べて私は…」

ふだんよりは大人っぽいかもしれないけど

希ちゃんに比べたら、まだまだ子供かなぁ…

希「そんなことないよ。すっごくかわいいやん」

穂乃果「そ…そうかな?///」

希「うんっ!」

にこりと笑ってくれる希ちゃん

その笑顔を見てると、これでいいかなって思えてくるの

だって、希ちゃんが褒めてくれたんだもん!

134: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:05:33.56 ID:sH2O4n9O0
希「そろそろいこっか」

穂乃果「うんっ」

と言って差し出してくれた手を…いつもの私なら普通に握り返していたと思います

でも今日はデートなんだよね?

だったらさ…

穂乃果「えへへっ」

希「ほ、ほのかちゃん…!?」

ぎゅっと腕をとって、そこに私の腕も絡めて…

つまり、腕を組んじゃうのです!

穂乃果「いいでしょ? デートなんだしっ」

希「う、うん…」

希ちゃんってやわらかいし、あったかいし

抱き心地さいこー!

希「あんまり嬉しくないなぁ」

穂乃果「じゃあやめる…?」

希「いや…や、やめんといて」

穂乃果「はーい♪」

135: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:11:44.74 ID:sH2O4n9O0
~電車~

タタン タタン

ここから電車でしばらく移動したところに、遊園地があるの

有名なテーマパークなのです!

えへへ、楽しみだなぁっ

穂乃果「♪」

移動中も腕は組んだままで

たまに擦り寄ってみたりして、希ちゃんの反応を楽しんでると…

希「あ、あんまり電車では…ね?」

顔を真っ赤にして、希ちゃんはそう言いました

あ、もしかして照れてる?

希「そ、そんなことないっ」プイッ

穂乃果「うそだ~」

指先でほっぺたをつんつんしてみると

希「嘘やないもんっ」

指を払われちゃった

穂乃果「あはは、照れてる希ちゃん可愛いっ」

希「あ…あんまり言うと怒るで!?」

穂乃果「ごめんなさーい」

顔真っ赤にして言ったって怖くなんてないよ?

こんなに余裕のない希ちゃんも珍しいね♪

希「誰のせいやと思ってるん…」

穂乃果「さあ?」

希「むぅ…」

今だけは強い穂乃果です!

そう、今だけ

136: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:13:49.31 ID:sH2O4n9O0

…実は、私もすっごく恥ずかしいんだけどね

だって腕組んでるし、こんなにくっついてるんだもん

恥ずかしくないわけないよ…

…でも、それ以上に楽しいって気持ちの方が大きいんだ

だって…せっかくのデートなんだもん

全部を楽しまなくちゃ損だよねっ!

希「ふふっ…そうやね」

希ちゃんの緊張もほぐれたのかな?

ちょっと表情に余裕が戻ったみたい

でも、それって…

希「ふふふ…さっきはよくもいじめてくれたね穂乃果ちゃん?」

穂乃果「あ、あははは…」

希「覚悟してな~?」

穂乃果「…はい」

これから私、もう何もできなくなるってことなんだよね…あ、あははは…

137: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:17:08.00 ID:sH2O4n9O0
~遊園地~

穂乃果「ついたー!」

希「やっとやね」

穂乃果「もう並んでる! いこっ」ギュッ

希「うんっ」

さすが有名なテーマパーク

入場ゲートもすごい行列で、チケット購入だけでも並ばなくちゃいけないみたい

でもおしゃべりしてたら時間なんてあっという間だったよ

だいたい一時間くらい並んだのかな?

ついにチケットカウンターまでたどり着いたのですが…

希「ここはウチが出すから」

と希ちゃんが言い出したことには驚きました

138: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:18:41.41 ID:sH2O4n9O0
穂乃果「…で、でも…ここ、結構するんだよ?」

希「デートに誘ったのはウチやから…それくらいさせて?」

それくらいって言うけど、でも…やっぱりダメだよ、割り勘にしよ?

希「いいからいいから!」

私の言葉も聞かず、希ちゃんは半ば強引にお金を払ってチケットを購入しました

自分で払えるのに…

穂乃果「希ちゃん…」

希「ん…ちょっと強引やったね、ごめん」

落ち着いた声で、頭を撫でてくれる希ちゃん

ほんとだよ…あんな無理やり…

希「ごめんね」

穂乃果「…もういいよ、でも次は私が払うからね!」

139: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:21:21.70 ID:sH2O4n9O0

希「次のデートってこと?」

穂乃果「そう!」

希「まだ今日のデートも終わってないのに…ずいぶんとせっかちやなぁ。ふふふっ」

穂乃果「うっ…だ、だって…///」

私にとっては、もう楽しいんだもん…

と言えるわけもなく

誤魔化すようにアトラクションのひとつを指差して

穂乃果「ほ、ほら! あの…アトラクションのお金とかも自分で出すから!」

希「入場しちゃえばアトラクションはお金払わんで乗れるんよ?」

ぐあ…そうだった!

じゃ、じゃあ…えっと

穂乃果「お昼ごはん! お昼ごはんは私が出すから!」

希「それもダメ」

穂乃果「なっ…なんで?」

希「それもウチが出させてもらいますー」

穂乃果「な、なんでさー! じゃあ割り勘にしよ!」

希「むぅ…」

穂乃果「だって、そうじゃないと私も素直に楽しめないよ…」

払ってもらってばっかりなんて、私、嫌だし

希「…わかった。ごめんね穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん! じゃあほら、さっそくアトラクション回ろ!」

希「うん…えっと、どこがいいかな?」

穂乃果「ジェットコースター!」

希「よし、じゃあいこ!」

穂乃果「うん!」

ここのジェットコースターはすごいみたい

最初の急降下ってあるでしょ?

あれがね、なんと地上70mからの急降下なの! すごいよね!

でも一番前は本当に怖いらしくて…まあ、でも大丈夫だよね?

うん、私、ジェットコースター大好きだし!

大丈夫!

140: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:23:57.32 ID:sH2O4n9O0
~ジェットコースター~

ガタガタガタガタ

穂乃果「…大丈夫じゃなかった」

希「どうしたん?」

穂乃果「よりにもよって一番前だなんて…」

希「いいやん♪ ジェットコースターを一番楽しめる座席やで?」

穂乃果「う、うん…」

ガタガタガタガタ

ゆっくりと頂点目指して登っていくコースター

まるで処刑台に登る受刑者のような気分です…

うう、こわい…

好きなアトラクションなのになぁ…

高さがあるだけでこんなに怖いなんて…

141: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:26:16.94 ID:sH2O4n9O0
あ、あれれー…手が震えてきたよぉ…?

これってマズイかな…

少し顔が青ざめかけてたそのとき

希「…手、貸して?」

穂乃果「え…?」

希「ちょっと、怖くなってきちゃって…手の震えが止まらないんよ。だから、握っててくれる?」

穂乃果「う、うん」

にこりと笑って差し出された手を、私はそっと握りました

でも希ちゃんの手はまったく震えてなんかなくて

むしろ震えてるのは私のほう

だけど希ちゃんが握ってくれたから、もう怖くなくなったよ

気づいてくれてたんだね…

穂乃果「…ありがと」

希「何か言った?」

穂乃果「なんでもなーい!」

希「?」

分かってるくせにね…ほんと、優しいんだから

さて…そうこうしているうちに、コースターはまもなく頂点です

ゆっくりと

本当にゆっくりとコースターはレールを登り

頂点に達すると…

穂乃果「…」ドキドキ

ふわりと身体が浮かび上がるような感覚

もう限界でした

穂乃果「いやぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

希「きゃーっ♪」

142: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:27:46.95 ID:sH2O4n9O0
・・・。

ジェットコースターから解放されて

少し休憩することに…しました

ジェットコースター好きなのに…高さが違うだけであんなに怖いなんて…

希「穂乃果ちゃん…大丈夫?」

穂乃果「少し休めば…」

希「そっか」

でも不思議と、もう一度乗りたくなるのはなんでかなぁ

やっぱりジェットコースター好きなんだなぁ

それとも希ちゃんが手を握ってくれてたおかげかな?

143: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:29:33.53 ID:sH2O4n9O0

少し落ち着いたところで

希ちゃんが私の頭を撫でながらひと言

希「穂乃果ちゃん、髪の毛ボサボサやね」

穂乃果「ええっ!? うわ…ほんとだ」

せっかく綺麗にしてきたのに…

穂乃果「ちょっと直してくるよ…」

と立ち上がろうとすると、希ちゃんに手を掴まれました

穂乃果「なに?」

希ちゃんはバッグから櫛を取り出して

希「直してあげる」

穂乃果「い…いいの?」

希「うん。ほら、もうちょっとこっちおいで」

穂乃果「う、うん」

すすっとそちらへ身体を寄せると、希ちゃんは慣れた手付きで私の髪をとかしはじめました

しゅっしゅっと髪を撫でられるような感覚が、とても気持ちいい

ボサボサになったところを丁寧に櫛でとかして

サイドポニーも結い直してくれたの

手鏡で確認すると自分でやるよりも綺麗に整ってて、また笑顔が漏れちゃった

えへへっ

144: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:31:53.03 ID:sH2O4n9O0
希「次はどこ行きたい? ショーとかパレードみたいなんもあるみたいやけど」

穂乃果「えっとねぇ…じゃあ、フリーフォール! 次はライド型のアトラクションとか!」

希「なんでそんな、また髪がボサボサになるようなのピックアップするん…」

穂乃果「だって、またやってもらえるでしょ?」

希「まあそうやけど」

穂乃果「ふふん!」

希「もう…じゃあ、お化け屋敷いこっか」

穂乃果「うんっ!」

そうしてまた、希ちゃんのやわらかい二の腕に抱きつく穂乃果でした!

…ん、あれ?

穂乃果「お化け屋敷?」

希「うん」

穂乃果「フリーフォールは…」

希「またあとで♪」

145: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:32:36.72 ID:sH2O4n9O0
・・・。

穂乃果「はあ…楽しかったぁ」

希「ちょ、ちょ…まって…」

穂乃果「大丈夫?」

希「大丈夫、やないかも…」

穂乃果「うーん…ちょっと休む?」

希「うん…」

お化け屋敷から出てきた私たち

でも希ちゃんは調子が悪いみたい

…まあ、仕方ないよね

だって…

146: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:35:39.19 ID:sH2O4n9O0
~回想~

希「な、なんや暗いね…!」

穂乃果「そうだね」

ガタンッ

希「ひぅっ!?」ビクッ

穂乃果「おおっ」ビクッ

希「だっ…大丈夫っ!? 怖くない!?」

穂乃果「え…う、うん」

希「わたしについてくるんやで!」

穂乃果「うん」

希ちゃん…怖いんだね

さっきから私に思いっきりしがみついてるし

口調もおかしくなっちゃってるし

先に行こうとすると涙声で

希「先に行かないでぇっ…!」

…いつもの関西弁はどこへやら

ついてこいって言ってたのに…

きっと切羽詰まった状況なんだろうなぁ

と、歩いていたら

通路の横側に鉄格子のついた窓がありました

たぶん、この前を通ると…

『うあぁぁぁあああああっ!!!ガンガンガンッ!!!

穂乃果「うわっ」

希「きゃぁぁああああっ!??」

穂乃果「大丈夫、大丈夫だよ希ちゃん」ギュッ

希「こんなはずやなかったのにぃ…ぐす、ううっ…」グシュ

穂乃果「私も一緒だから大丈夫だよ」

こんなはず…ってことは、あれかな?

きっとこの逆のパターンを予想してたんだろうね

私が怖がって希ちゃんに抱きついて、よしよしーって撫でてもらう感じ

残念だけど希ちゃん…実は私、この前テレビで見たんだよね

お化け屋敷の攻略法…

曲がり角に小窓みたいなものがあったら、曲がった途端におどかされるとか

希「ほのかちゃあん…」

穂乃果「大丈夫だよー」

『ん゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙!!!』

希「いやあああああっ!!」

手加減してあげてよ、オバケさん…

…まあ、珍しい希ちゃんを見れたからいいかな?

~回想終わり~

147: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:37:49.35 ID:sH2O4n9O0
希「よくない!」

穂乃果「えー…」

希「だって…ほんとはウチがかっこいとこ見せたろーって思ってたのに…」

穂乃果「でも怖がってる希ちゃんも可愛かったよ?」

希「そんなんいややん!」

穂乃果「…っ! の、のぞみ…ちゃん…」

希「えっ…なに、なに…?」

穂乃果「肩のとこ…それ、なに…!?」

希「いやぁあああっ!!?」バッ

穂乃果「あはは、ごめん冗談」

希「ほのかちゃんのばかー!」

穂乃果「ごめーん」

私はもう、希ちゃんを怖がらせまいと誓いました

ごめんね、希ちゃん

・・・。

穂乃果「色々まわったねー」

希「そうこうしてるうちに、もうお昼時やね。ごはんにしよっか」

穂乃果「うんっ!」

148: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:39:35.62 ID:sH2O4n9O0
~レストラン~

穂乃果「ふう…やっと座ったーって感じだね!」

希「そうやね。朝からアトラクションに乗りっぱなしやったから、ちょっと疲れたね」

穂乃果「でも楽しいね」

希「うんっ」

穂乃果「怖がる希ちゃんも見れたし」

希「ちょっと!」

穂乃果「あははっ、ごめんごめん」

希「もう…あんまりイジワルせんといてよ」

また希ちゃんは顔を赤くして、そっぽ向いちゃった

言い過ぎたかな?

ごめんね

希「…いいけど」

穂乃果「そう? よかった、じゃあなに食べるか選ぼうよ!」パラパラ

希「うん」

149: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:48:05.58 ID:sH2O4n9O0
穂乃果「おお! どれも豪華だなぁ、というか高い…」

このオリジナルステーキ…は2000円

ハンバーガーセットでさえ900円!?

さすが有名テーマパーク…レストランさえお高いなぁ…

でも、今日はデートなんだもん

こんな日くらい、お金を惜しんじゃ損だよねっ!

よしよし、そうと決まれば…

穂乃果「うーむ…」

希「決まった?」

穂乃果「うーんとね、このスペシャルミックスと…チキン&ハンバーグのどっちかで迷い中…」

希「じゃあ穂乃果ちゃんはスペシャルミックスにしたら?」

穂乃果「どうして?」

希「もう片方のはウチが注文するつもりやったから…分けてあげるよ」

穂乃果「いいの?」

希「もちろんやん。その代わり、穂乃果ちゃんのもちょっとちょうだいよ?」

穂乃果「うんっ! ありがとう、希ちゃん!」

これぞデートの醍醐味だね!

二人で別々の料理を選んで、分け合うんだよっ

150: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/26(金) 17:49:23.37 ID:sH2O4n9O0
希「ソフトドリンクもお願いしよっか」

穂乃果「じゃあ…」

少し考えてメニューに目を走らせ

穂乃果「私はオレンジジュースね」

希「ウチはアイスコーヒーにしよっと」

手早くドリンクを決めて、店員さんを呼ぶボタンを押して

ほどなくしてやってきた店員さんに注文を伝え終わると、希ちゃんは遊園地の地図を広げ始めました

希「ごはん食べたら、次はどのアトラクション行くか決めんとね」

なるほど…待ち時間を利用して選んでおくわけだね

さすが希ちゃん!

希「お昼過ぎからパレードがあるんよ。パーク内を一周する、期間限定の大きなやつみたいやね」

穂乃果「ほえぇ…じゃあ、それ見に行こうよ! どんなパレードなのかなぁ」

希「ふふふっ…穂乃果ちゃんは本当になんでも楽しそうやね」

穂乃果「そりゃそうだよ! なんだって楽しまなくっちゃね!」

希「穂乃果ちゃんが楽しいと、ウチまで楽しくなってくるからね」

穂乃果「ほんと? じゃあずっと楽しんでおきます!」

希「うん! そうしてくれる?」

穂乃果「はいっ♪」

153: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:15:17.45 ID:JBu3R06L0

ごはんを食べて

パレードやショーを楽しんで

もう夕方に差し掛かるころ

そろそろ帰ろうかなんて話し合ってたんだけど…

穂乃果「希ちゃん」

希「ん…なーに?」

穂乃果「帰りにさ、私…行きたいところがあるの」


154: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:16:23.25 ID:JBu3R06L0
~観覧車~

もう空が赤く染まる時間帯

遊園地で遊び切って、やっと

私たちは遊園地から出て、わざわざここまでやってきた

希「やっと着いたね」

穂乃果「うん。…ごめんね、無理言って」

あの遊園地には、観覧車がなかったから…

私が少しわがままを言って、連れてきてもらったの

希「いいんよ。…でも、どうして観覧車に?」

穂乃果「だって…今日はデートでしょ? だから、最後は観覧車かなって」

ちょっと昭和チックかもしれないけど、やっぱりデートの定番は観覧車だと思って…

希「ふふん…穂乃果ちゃんもそんなロマンチックな心があったんやね?」

穂乃果「えへへ…自分でもびっくりだけどね」

冗談を少し言い合って

それから観覧車に乗りました

155: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:19:21.26 ID:JBu3R06L0
ゆっくりゆっくり

本当にゆっくりと上っていくゴンドラに揺らされていると

私たちは何も言葉を交わさなくなって…

ドラマで見たことがあるけど、観覧車に乗ると…本当に静かになるんだね

なんだかすごい発見をした気分だなぁ

なんて考えながら窓の外を眺めると

赤い夕陽が、空をおんなじ色に染め上げていて

私と希ちゃんが乗ったゴンドラの中も真っ赤に染まって、とっても綺麗

夜が来ると、今度は観覧車はイルミネーションの明かりに包まれるんだろうなぁ

それもそれで見てみたいけど…そんな遅くまでいられないもんね

頂上まで、まだ半分

そんなとき、対面の希ちゃんが口を開いた

希「…今日は楽しかった?」

穂乃果「うん! ありがとう希ちゃん」

希「ふふっ」

私の答えに満足したのかな…希ちゃんはにこりと微笑んで、また何も言わなくなった

なので、今度は私から話を振ることにします

156: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:24:30.84 ID:JBu3R06L0
穂乃果「最近、おとうさんおかあさんとはどうなの?」

こんなところじゃないと、話せそうにもない話題

少しだけ、聞きたくなっちゃった

こんなとこで聞くことでもないけどね

希「ウチの?」

穂乃果「うん」

希ちゃんのおかあさんと最後にあったのは…いつだっけ

ラブライブが終わって、うちでパーティしたときかな?

もうずいぶんと前のことのように思えるけど、実はあれからまだ半年も経ってないんだ

希ちゃんはあれから、また連絡をとってるらしいし

どうなのかなー? と思って

希「あれから連絡取り合ってることは言ったよね?」

穂乃果「うん」

希「今度のゴールデンウィークにこっち来るみたい。穂むらでバイトしてること伝えてるから、遊びにくるんやないかな?」

穂乃果「ほんとー! えへへ、楽しみだなぁ」

希「おかあさん、穂乃果ちゃんのこと気に入ってるで…迷惑かけたらごめんね?」

穂乃果「そんなのいいよ! むしろ気に入ってもらえるなんて、嬉しいし」

希「そう?」

穂乃果「うん! だってほら、お互いの両親公認ってことじゃん!」

希「…それは別の意味になっちゃうよ?」

穂乃果「む…いやだった?」

希「…いややないけど」

穂乃果「ふふん」

また照れちゃった?

希「い、いわんといて!」

穂乃果「あはは、ごめーん♪」

希「もう…///」

157: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:28:21.72 ID:JBu3R06L0
穂乃果「でも、そっかぁ…仲良くできてるみたいでよかったなぁ。また何かあったら私に言ってね!」

希「ふふふ、ありがとう穂乃果ちゃん」

穂乃果「ふふん。お姉ちゃんのピンチは妹が救うものだからね!」

希「うん…もう、何度も救われたよ…穂乃果ちゃんには」

穂乃果「…そんなことないよ」

希「あるの。μ'sが出来てからというもの、ウチは穂乃果ちゃんに救ってもらってばかりなんよ? 今日はね、そのお礼も込めてデートに誘ったん。楽しんでもらえて本当に嬉しい」

にこりと笑った希ちゃんの目は、夕陽のせいか、潤んで見えた

潤んだ瞳に映る私も…また同じように

そんな自分を見せられなくて、視線を窓に向けちゃう

158: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:35:41.49 ID:JBu3R06L0
穂乃果「そんな、お礼なんていいのに…」

希「でも…ウチには、こんな風にしかやり方がわからなかったから」

穂乃果「えへへ…ありがと。すごく楽しかったよ」

心からの笑顔で答えた…ちょうどそのとき

穂乃果「…頂上まで来たみたいだね」

希「うん。いい眺めやね」

穂乃果「わあ~! ほらあそこ、音ノ木坂じゃない?」

希「あら、ほんとやね。こんなとこからでも見えるんや…」

穂乃果「お米みたいに小さいけどね」

希「あはは、花陽ちゃんが喜びそうやなぁ」

穂乃果「さ、さすがに花陽ちゃんでもそれは…」

希「……」

ふとした沈黙

でも、互いの目で、何を言いたいのか通じ合ってる

そんな繋がりが、私はとっても嬉しくて

すごく大切なものなんだって、実感できた

穂乃果「…ねえ、そっち行ってもいい?」

希「…うん、おいで」

希ちゃんが、自分の横の空席をとんとんと叩く

私はそこへ座ると、もぎゅっと希ちゃんの腕に抱きつきました

159: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:38:33.10 ID:JBu3R06L0
穂乃果「えへへ」

希「こんなとこでも腕組むん?」

穂乃果「希ちゃんと触れ合いたかったんだもーん♪」

希「そっか」

くすりと希ちゃんが笑うので

穂乃果「だからぎゅーってしてます」

私も笑顔で答えると

希「じゃあウチもぎゅーってしちゃお」

希ちゃんも笑顔でぎゅーってしてくれる

えへへ、胸の中が温かい気持ちでいっぱいです

穂乃果「…今日はありがとね」

希「こちらこそ…ありがとう」

穂乃果「またデートしてね?」

希「うん、でも今度は穂乃果ちゃんから誘ってくれる?」

穂乃果「じゃあ来週…は、練習だぁ…」

希「ふふふっ、まずは自分の予定との相談からはじめよーね?」

穂乃果「はーい…」

もうすぐデートも終わり

そしたらまた、いつもの日常がやってきて

学校に行って、練習して、バイトにきてる希ちゃんとおしゃべりして

そんな何でもない毎日が幸せだから

今日みたいな日はもっと幸せに感じられたのかな?

なんだろね

私の幸せって、希ちゃんと一緒にあるのかな? …なんて

顔を見上げてみたら…

穂乃果「ぁ…」

希「っ…」

……目が、合っちゃった

160: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:41:25.47 ID:JBu3R06L0
希ちゃんの顔は真っ赤で

私の顔も、真っ赤に染まっている

その色は夕陽の色なのか



それとも…



穂乃果「…希ちゃん」

希「な…なあに…?」

なんだか、いきなり緊張しちゃったなぁ

ふふっ…変なの

穂乃果「んーん、なんでもない」

希「えー? なによー」

穂乃果「なんでもないもーん♪」

ぎゅーっと抱きついたり

ほっぺたをすりすりすると

希「もー、穂乃果ちゃんったら…」

希ちゃんは頭を撫でてくれる

それがとっても気持ちよくて




私は………

161: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:43:23.07 ID:JBu3R06L0
・・・・・・。


穂乃果「海未ちゃんことりちゃん! みんなも早く早くっ!」

海未「い、いそぎすぎです! そんな…誰も逃げないですから…っ!」

ことり「そうだよぉっ…はあ、はあっ…」

穂乃果「ぁ…ご、ごめん…ちょっとトラウマが…」

ことうみ『トラウマ?』

穂乃果「ううん、なんでも! ほら、いそごっ!」

今日はね、久しぶりにμ'sが集まる日なの!

しかも穂むらを貸し切りで!

お父さんにお願いしたら、二つ返事でオーケーもらっちゃって

なんでも今日だけの特別な和菓子も作ってくれるんだって!

また餡子かぁ…って呟いたら怒られちゃったけどね

162: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:45:37.72 ID:JBu3R06L0
穂乃果「絵里ちゃんたち、もう来てるって!」

凛「じゃあやっぱり急ぐにゃー!」

穂乃果「よーし、穂むらまで競争だー!」

凛「かよちんも行くよー!」

花陽「だ、だれかたすけてー!!」

海未「人もいるんですから走らないでください!」

花陽「ごめんなさぁ~い!!」

ことり「ま、まってぇ…」

真姫「まったく…ちょっとくらい落ち着きなさいよ…」

ことり「ふふん」

真姫「な、なに?」

ことり「真姫ちゃん、さっきから落ち着いてないみたいだから」

真姫「うえぇっ!?」

ことり「またみんなに会えるの、楽しみだもんねっ!」

真姫「そっ、そんなこと! …ある、けど…///」

凛「素直じゃないにゃー!」

真姫「うるさい!」

穂乃果「ほらほら二人も急いでー!」

真姫「なっ…ま、待ちなさいよー!」

ことり「まってぇ~…!」

163: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:50:06.75 ID:JBu3R06L0
私ね、幸せって…小さなことからも見つけられるって気づいたんだよ

こんななんでもない日常も

スクールアイドルの活動をしてるときも

友達のみんなで遊んでいるときも

家族とごはんを食べてるときも

みんなみんな幸せ!

でもね

希ちゃんがくれる幸せは、そのどれとも違う感じがするの

これってどういう幸せなのかな?

とびっきり仲良しのお姉ちゃんといるときの幸せ…?

ううん、そうじゃない

何かが違う

希ちゃんといるときの幸せは、そんなイメージじゃないの

こんな感覚初めてで、ちょっと戸惑っちゃうよ

まだ自分でもなんだかよく分かってないんだけど

だけど、この気持ちは…とても大切なものだと思うんだ

いつもならみんなにも分けてあげたいって思うかもしれないけど

これだけは私の独り占め

誰にも分けてあげないんだ

海未ちゃんやことりちゃんはもちろん

μ'sのみんなも

家族にだって

絶対にあげないんだからね!

164: ◆SFVLwYaa.o 2014/09/27(土) 00:57:15.70 ID:JBu3R06L0

やっと見えてきた自宅のドアを思い切り開けて

雪崩のように中に入り込む私たち

絵里ちゃんやにこちゃんはもう集まってて

希ちゃんもその中で楽しそうに笑っていて

私たちに気づくと

希「あら。みなさんご一緒やね?」



ね、さっき…私だけの幸せって言ったけど

ちょっと訂正するね

その幸せはね

私と希ちゃんだけの…

二人だけの幸せなの

独り占めじゃなくて、ふたり占めだね!


でも、とりあえず

まずは挨拶をしなくっちゃね

穂乃果「はあ、はぁ…ふぅ」

息を整えて

私はいつものように

希ちゃんにむかって

こう言うのです


穂乃果「ただいま」

希「おかえり」



おしまい