1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:49:41.70 ID:I8siRGJK0

※「ダンガンロンパ」より捏造

引用元: 霧切「違う…犯人は私じゃない…!」 

 

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:50:28.22 ID:I8siRGJK0

十神「ならば説明してもらおうか。なぜ苗木の部屋から、貴様の頭髪が出てきたのかを…な」
 
朝日奈「霧切ちゃん、どうして…!」
 
霧切「私は…彼を、苗木君を助けようとして…!」
 
腐川「う、嘘付きなさいよ!あんたがやったんでしょ!?」
 
葉隠「あの部屋に忍び込めるのは、マスターキーを持ってる霧切っちしかいねーべ!」
 
 

霧切「違う…苗木君を殺したのは、私じゃない!!」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:52:02.49 ID:I8siRGJK0

霧切「確かに私は…昨日苗木君の部屋にいたわ」

霧切「白衣と怪しげな仮面を身に着けた不審者が、彼の部屋から出てきたところを目撃して…」

霧切「そして私が後を追って彼の部屋に入ったとき、既に苗木君は……」


朝日奈「…霧切ちゃんは、その仮面白衣が苗木を殺した人間だ、って…言いたいの?」

霧切「……その可能性が、高いわ」

葉隠「んなもん、誰も信じらんねぇべ…」

腐川「そ、そうよ! 他に誰も、その不審者を見た人間はいないんだから!」

十神「……いや、あるいはこう言いたいのか?」


十神「俺たちの中の誰かが、その苗木を殺した仮面白衣だ、と…」


霧切「……わからないわ」

霧切「でも、私はやっていない…私じゃない」

霧切「私が苗木君を、殺したりなんかしない…!」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:53:05.39 ID:I8siRGJK0

モノクマ「うぷぷぷ、絶望してるぅ?」


霧切「モノクマ…!」


モノクマ「信頼していた仲間が、気を許したはずの友人が、ちょっと気になっていたあの人が」

モノクマ「殺されるってどんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?」

モノクマ「あ、やだなぁ、怒った? ほんの冗談だってば、ごめんごめん」

モノクマ「ホラ、これあげるから機嫌直して!」


 『モノクマファイル』を手に入れた。


朝日奈「こ、こんな状況でも…学級裁判はやるの…?」

モノクマ「こんな状況?こんな状況ってどんな状況?」

モノクマ「今まで通りでしょ?誰かが裏切って、誰かが裏切られて」

モノクマ「裏切り者を処刑するために、捜査して」

モノクマ「それは…被害者が苗木君だったとしても、変わらないよ?」

モノクマ「そんじゃ裁判開始まで、頑張って裏切り者を見つけ出してね!」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:53:58.78 ID:I8siRGJK0

十神「相変わらず…人の神経を逆撫でするのが得意な奴だな」

霧切「とにかく…調べましょう。そのファイルも、どこまでが本当かわからないけど」



朝日奈「相変わらず…あの二人は、冷静だね」

葉隠「冷静でいてもらわなきゃ、困るべ…俺らの頭脳だかんな」

朝日奈「うちら馬鹿担当じゃ、何も出来ないもんね…二人が頼りだよ…」

腐川「あ、あんた達…本気で言っているの?」

朝日奈「え?」


腐川「霧切の髪の毛がっ…苗木の部屋から、出てきたのよ?」

腐川「霧切が第一発見者で、白衣の仮面を見たって言ってるのも霧切だけなのに」

腐川「それをっ…し、信用するっての…?」


朝日奈・葉隠「……」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:55:10.25 ID:I8siRGJK0

霧切「…このモノクマファイル、妙ね」

十神「妙、だと?」

霧切「…『死因が明記されていない』のよ」

十神「…どういうことだ?」

霧切「現場の状況はつぶさに記されているのに…」


 被害者:苗木誠
 現場:苗木誠の部屋
 追記:手首に薄い線、首に細い紐をあてがわれたような跡。
    部屋には争ったような痕跡はなく、事件以前と以後で変わったところはない。
    部屋の中からは白い長髪が見つかっている。


十神「…なるほどな。確かにこれまでのファイルには、なぜ被害者が死んだかが、ある程度は細かに記されていた」

十神「死亡時刻が記されていないのも妙だな。おい、霧切…お前が苗木の死亡を確認したのはいつだ?」

霧切「……」

十神「霧切…聞いているのか、おい!?」

霧切「! あ、ええ…ごめんなさい…」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:56:37.97 ID:I8siRGJK0

霧切「私が彼の…、……死亡を確認したのは、明け方の三時頃よ」

霧切「十神君に鍵を預けて、どこで眠る訳にもいかないから…寮の中をうろついていた」

霧切「白衣仮面の人影が彼の部屋から出てきたのを見て…それを追いかけて」

霧切「けれど、途中で思い留まって、苗木君の無事を確かめに、彼の部屋に戻った」

霧切「……その時には、既に」

十神「……そう、か」


霧切「…あなたは、私を疑わないの?」

十神「なんだと?」

霧切「第一発見者で、彼の部屋から出てきた私を…あなたは、真っ先に疑うと思ったのだけれど」


十神「…別に、貴様を信じているわけじゃない」

十神「しかし、盲目的に決めつけていては、見えなくなってしまう真実もある」

十神「それを…生意気にも、苗木が俺に気付かせたんだ」

十神「この教訓は、あいつの形見だ。俺はそれを蔑ろにはしない」


霧切「……そう」

十神「お前が加害者じゃない可能性も残っている。なら、お前の証言だけを疑うことはしない」

霧切「…ありがとう」

十神「ふん。礼なら苗木に言え」

霧切「そう、ね……彼の部屋を見てくるわ」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:57:44.87 ID:I8siRGJK0

霧切(苗木君……)

霧切(傷一つない、綺麗な顔…本当に、死んでいるのね…)


霧切(みんなには、私が殺したわけじゃない、と主張したけれど)

霧切(あとほんの少しでも早く、彼の部屋を見守っていたら、助けられたかもしれない…)

霧切(守れなかった…私を庇ってくれた男の子を…)



霧切「……」

霧切「…懺悔や自責なら、後でいくらでもできるわ」

霧切「まずは、なぜ苗木君が死んでしまったのか…それを明らかにしないと…」

霧切「彼も、浮かばれない」



朝日奈「あ…霧切ちゃん」

霧切「……」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 01:59:00.59 ID:I8siRGJK0

朝日奈「捜査、してるの…?」

霧切「…そうよ」


朝日奈「…苗木、本当に死んじゃったんだよね…?」

霧切「ええ…」

朝日奈「っ…」


朝日奈「…あたし、もう訳わかんないよ」

朝日奈「みんな、一致団結しかけてたじゃん…なんで、なんでまだ事件が起きるの…?」

朝日奈「なんで、よりによって…苗木が殺されなきゃいけないの…!?」


霧切「朝日奈さん、落ち着」

朝日奈「霧切ちゃんが殺したかもしれないんでしょ…?」

霧切「…!!」


霧切「…状況的には、そう疑われても仕方がないわ」

朝日奈「もう、あたし、何を信じたらいいかわかんないよ…」



霧切(朝日奈さんは軽くパニックを起こしている…無理もないわね)

霧切(彼女から有益な情報を引き出すことは難しいかも…)


朝日奈「…なんで、霧切ちゃんはそんな冷静なの?」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:00:06.14 ID:I8siRGJK0

霧切「…」


朝日奈「苗木が死んだんだよ? 悲しくないの?」

朝日奈「ちょっと頼りなかったけど、ずっとまっすぐで、みんなのこと気にかけてくれて」

朝日奈「あたしがさくらちゃんを庇ってみんなを騙した時も、悪いのは私やみんなじゃなくて黒幕だ、って」

朝日奈「一生懸命仲間を信じて立ち向かって、あの苗木が…っ、もう、目を覚まさないんだよ!?」

朝日奈「ねえ、なんで冷静なの?悲しくないの? それとも、本当に霧切ちゃんが殺したから――」


 ガタッ



霧切「冷静なわけ、ないでしょう!!」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:00:40.75 ID:I8siRGJK0

朝日奈「っ……」

霧切「……、ゴメンなさい」

朝日奈「う、うっ…」

霧切「…部屋を出ましょう。これ以上、彼の前で争いたくないわ」



霧切(……?)

霧切「鍵…」

朝日奈「どしたの…?」

霧切「……いえ、なんでもないわ。…さっきは急に怒鳴って、ゴメンなさい…私も冷静さを欠いているのよ、今は」

朝日奈「…ううん。あたしこそ、ゴメン…もう、何が何だか、わかんなくなっちゃって…」


 言弾:『部屋の鍵』を手帳に記録しました。

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:28:55.63 ID:I8siRGJK0

霧切(…状況証拠は、さっきの鍵以外、ほとんど手掛かりがないわ)

霧切(他の人から、証言を集めなければ…)


腐川「……な、何よ」

霧切「…いっそ、あなたくらいあからさまに疑ってくれれば、私も楽なのだけれど」

腐川「そ、そんなこと言って、騙すつもり…? あた、あたしには、分かってんだから…」


霧切「十神君に言われたのよ、腐川さんから話を聞いて来いって」

腐川「何でも聞きなさいよ。そ、そして白夜様に、あたしの証言の有用性を証明するのよ…」

霧切(……)



霧切「とりあえず話を聞きたいから、食堂まで着いてきてもらえる?」

腐川「へ、変なことしたら承知しないんだからね…あたしはまだ、あんたを疑ってるんだから…」

霧切「……」

14: >>12>>13なんか間違えたっぽい 2011/10/08(土) 02:31:54.28 ID:I8siRGJK0

霧切「えっと、どこにあったかしら…」

腐川「…何よ、何探してんのよ」

霧切「厨房にしかないものよ。これが無いと、あなたから必要な証言が…あった」

腐川「…何それ、コショウ?そんなもの、何に…」

霧切「こう使うのよ」

腐川「! ふぁ、は、あ……ふぇっくしゅんっっ!!!」



ジェノ「呼ばれて飛び出て(ry」

霧切「早速だけど質問があるわ」

ジェノ「……ちょっと、自己紹介ぐらいさせなさいってのよぉ。マジ萎えるわー」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:33:19.02 ID:I8siRGJK0

霧切「殺人鬼のあなたに聞いて、確かめたいことがあるのよ」

ジェノ「ん? あぁー、まーくん死んじゃったんだったわねー」

霧切「……そうよ」

ジェノ「そんであんたは何? あ、捜査してんの? よくやるわねー、仲間一人死んじゃった後で」

霧切「……」

ジェノ「いやぁ、惜しい萌え素材を失くしたわ、マジで。パッと見は冴えないけど磨けば光りそうなリトルボーイだったのにぃ」

霧切「……うるさいわ…」

ジェノ「萌えたら殺! を信条としてるアタシとしては、先を越されて悔しいっていうか、」



霧切「――それ以上一言でも、苗木君の死を侮辱してみなさい。口と舌を持って生まれたことを、後悔することになるわよ」


ジェノ「……チッ、マジにとんなっての」

霧切「下衆びたジョークを受け流せるほど、冷静にはなれないのよ…あなたもでしょ、ジェノサイダー翔」

ジェノ「…まぁねぇ。根暗な『コイツ』にも殺人鬼なアタシにも、結構優しくしてくれたしねぇ、あの子は」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:34:28.21 ID:I8siRGJK0

ジェノ「で? 確かめたいことってなんなの?」


霧切「……あなた、人の首を絞めたことは?」

ジェノ「ぶはッ、唐突! 何? アタシがまーくん殺したとか疑っちゃってたりするわけ?」

霧切「…質問に答えなさい」

ジェノ「あらあら?さっきと比べて随分しおらしいじゃないのー! 鉄面皮だと思ってたけど、それなりにショック受けて、」


霧切「……お願いよ…ちゃんと質問に、答えて」

ジェノ「……」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:35:39.19 ID:I8siRGJK0

ジェノ「…ねーよ。絞殺はアタシの美学に反するわ」

霧切「…もう少し、質問の範囲を広げましょうか。絞殺されて死んだ人間を見たことは?」

ジェノ「あー、それならあるある。詳しく聞きたい?」

霧切「結構よ。ただ、どんな風に死んだかを教えてくれる?」


ジェノ「…つまんなーいの。いいけどさ」

ジェノ「んー、まぁ…結構エグめ。顔はチアノーゼで酷い色だし、なんかもー色々垂れ流しだし」

ジェノ「あと、最初はすっげぇ暴れる。陸に上がった魚みたいに…っつっても、最初のうちだけだけどね」


霧切「眠っている間に首を絞められたら、気づくかしら?」

ジェノ「んんー…よっぽど上手く縊り殺さない限りは、まあ苦しくて起きるだろーねー。死んだこと無いから知らんけど」

霧切「そう…わかったわ」


 言弾:『ジェノサイダー翔の証言』を手帳に記録しました。

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:36:34.14 ID:I8siRGJK0

霧切(…目をつけるべき所はあるけれど)

霧切(考えれば考えるほど、謎は深まっていくばかりだわ…)

霧切(いつもよりも、捜査に思考を集中できない…)

霧切(身内以外の死で動揺したのは、これが初めてかも知れないわね…)



苗木『霧切さんの笑った顔って、すっごく、可愛いんだよ?』



霧切「……あなたが、冗談でもあんなこと言うから…」

霧切「……」

霧切「……あなたのせいで、当分は笑顔になれないわ…」



    グスッ



葉隠「霧切っち、泣いてるべ?」

霧切「!!!」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:38:18.79 ID:I8siRGJK0

霧切「は、葉隠君…いつからここに…?」

葉隠「なんかボソボソ喋ってんのが聞こえたから…今し方来たんだべ」

霧切「そ、そう…」

葉隠「いやぁ、あの霧切っちでも泣くんだなぁ…俺ちょっと感心したわ、実際」


霧切「…あなた、デリカシーが無いってよく言われない?」

葉隠「ひでぇ言い草だべ!」


葉隠「…捜査は、進んでんのか?」

霧切「…今一つ、ね。あまりにも取っ掛かりが少なすぎるわ」

葉隠「…そうか」

霧切「…やっぱりあなたでも、苗木君の死は…」

葉隠「…たりめーだべ。言っとくけど、今回はマジ金勘定とか無しだ。苗木っちが死んだことそのものが悲しいんだべ」

霧切「…わかっているわ」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:39:24.31 ID:I8siRGJK0

葉隠「…俺、思ったんだけどさ」

葉隠「苗木っちを殺した奴は、何を思って殺したんだべな…」

葉隠「殺されるような人間じゃないべ…苗木っちがいなくなって、いいことなんて一つも…」



霧切「…苗木君を殺した、意味……?」

葉隠「や、そういうんじゃなくてさ、なんつーか…なんで殺したんだよ、っていう、」

霧切「苗木君を殺した目的は、……まさか、私たちを…?」

葉隠「あの、霧切っち? おーい…」


 言弾:『犯人の動機』を手帳に記録しました。

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:40:09.45 ID:I8siRGJK0

霧切「…というか、そう言えばどうして葉隠君はここに来たの?」

葉隠「うお、忘れるところだったべ! あのな、十神っちが呼んでっから」

霧切「十神君が?」

葉隠「マジ頼むべ。悔しいけど捜査は俺じゃ無理だから、二人が頼りだべ」


霧切「…ええ。必ず見つけるわ、私が…この事件の犯人を」


霧切(苗木君…まさか、あなたは……)

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:41:53.59 ID:I8siRGJK0

十神「…どうだ。有益な情報は集められたか?」

霧切「……核心に迫るようなものは、ないわ」

十神「含みのある言い方だな…まあいい。一つ、お前に忠告しておかなければならないことがある」

霧切「忠告…?」


十神「お前が見たという苗木を殺人した犯人は、白衣と怪しげな仮面を着けていた、と言っていたな」

霧切「ええ…まだ、その人物が殺人を犯した、とは決めつけられないけれど」

十神「仮面はどんなものだった?」

霧切「顔全体を覆っていたわ。レスラーが被るような。目と口が描かれた、笑っているような柄の…」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:43:37.05 ID:I8siRGJK0

十神「それは今、どこにあるんだ」


霧切「……なるほど。私が無実を証明するためには…」

十神「ああ、そうだ。現物があれば、その言い訳にも筋が通るというものだろう」

十神「逆に言えば、それすらもなしに貴様を信用しろというのは…難しい話だ」


霧切(そんな当たり前のことすら失念していたなんて…探偵失格かしら…)

霧切(しかも、噛ませ眼鏡に気付かされてしまうなんて失態…苗木君には見せられないわね)


十神「おい、今…俺を侮辱しただろう」

霧切「いいえ」


十神「チッ…まあいい。他の連中はみな、多少なりともお前に疑いの目をかけている」

十神「無実を証明したければ、探して来るんだな」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:48:54.46 ID:I8siRGJK0

霧切「…とはいうものの」

霧切「さすがに、目に見える場所に置いておくようなヘマ、しないわよね…」

霧切「……これほどまでに証拠が少ない状況で、無実を立証するのは難しい…」


霧切(……それでも)


霧切(苗木君なら、信じてくれたかしら…)

霧切(彼は、馬鹿正直だから……もしかしたら…)



霧切「……ありもしない『もし』を仮定するなんて…探偵の性、というやつかしら」

霧切「…それとも、それほどにまで私が、苗木君を…」

霧切「……」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 02:50:39.33 ID:I8siRGJK0

霧切(…証拠は少ないし確定は出来ないけれど、事件の真相の『仮説』は出来つつある…)

霧切(そして犯人も…見当はついた)

霧切(あの裁判で、仮説の正しさを証明することは重要じゃない…重要なのは、信じてもらうこと…)

霧切(苗木君ならきっと、信じてもらえたのでしょうね…彼ほどに人望を集めていれば)

霧切(この絶望的な環境で、誰よりも他人を信じ、他人に信じられていたあなたなら…)



霧切「……苗木君、見ていて」

霧切「感傷に浸るのは、ガラじゃないけれど」

霧切「この事件の真実を、私が必ず付きとめてみせる…!」



 キーン、コーン カーン、コーン


モノクマ『もういいかな? もういいよね?』

モノクマ『もうこれ以上捜査しても無駄だって、そろそろみんな気付いたよね?』

モノクマ『じゃあ、ちゃっちゃと裁判場への移動を始めちゃってください。うぷぷぷ…』

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:51:30.05 ID:I8siRGJK0


 学級裁判 開廷!


モノクマ「あらためて、ルールを確認しておこうかな」

モノクマ「学級裁判の結果は、お前らの投票で決定」

モノクマ「正しい犯人(クロ)を指摘できればクロだけがオシオキ」

モノクマ「間違った人物を指摘してしまえば、クロ以外の全員がオシオキ。クロは晴れて卒業でーす」


モノクマ「じゃ、まずは事件のまとめからだね? 議論を開始してくださーい」



腐川「始めるまでもないわ…き、き、霧切が犯人なんでしょ…?」

朝日奈「ま、待ってよ腐川ちゃん…確かにあたしも、霧切ちゃんは怪しいと思うよ…」

霧切「……」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:52:12.87 ID:I8siRGJK0

朝日奈「だけど念のために、どうして霧切ちゃんが怪しいのか、最初からちゃんと確認しようよ!」

腐川「は、はぁ? そんなことに何の意味が…」


朝日奈「だって…ホラ、一番最初の学級裁判でも、苗木が一番怪しかったでしょ?」

朝日奈「でも、ちゃんと確認したら、犯人は苗木じゃなかった…」

朝日奈「きっと今回も、もしかしたら…あたしたちが見落としている事実があるかもしれないじゃん」


腐川「ぐ、ぐぐ…馬鹿のくせに、そうやってあたしの発言を一切認めないつもりね…」

十神「…おい、腐川」

腐川「すみません二度と黙ります」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:52:49.55 ID:I8siRGJK0

十神「…霧切。死体を最初に見たのは、お前が最初か?」

霧切「おそらく、そうね…」

十神「…どうやってそれを証明する?」

霧切「…どういうこと?」

十神「お前が本当に第一発見者か? と、いうことだ」


霧切「……なるほどね」

霧切「順を追って確認しましょうか」

霧切「まず、私が苗木君の部屋に入り…彼の死を確認する」

霧切「そのあと、私は…」

霧切「白衣仮面の後を追って、部屋を出たわ」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:53:29.24 ID:I8siRGJK0

十神「……」


霧切「結局、白衣仮面は逃がしてしまったけれど…そのあとで、」

葉隠「な、なぁ」

霧切「…何?」

葉隠「そいつの名前…「白衣仮面」で統一すんのか?」

霧切「問題あるかしら?」

葉隠「いや、ねぇけどさ…」


腐川「……」

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:54:04.50 ID:I8siRGJK0

霧切「…話を戻しましょうか」


霧切「白衣仮面を逃がした私は、苗木君の部屋に戻り、もう一度彼の死を確かめた…これが、確か朝の三時半頃」

霧切「そこで私は廊下に出て…」

朝日奈「早朝ジョギングしてた、あたしと出会ったんだよね」


葉隠「三時半だべ!? そ、早朝過ぎねえか…!?」

朝日奈「あは、は…なんか眠れなくてさ…夜時間だってわかってたけど、つい」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:54:37.51 ID:I8siRGJK0

十神「つまり…第二発見者は朝日奈、ということだな?」

朝日奈「うん…」


朝日奈(あの時の霧切ちゃん…見てられなかったな)

朝日奈(いや、そりゃあ…あたしだってすごくショックだったけど)

朝日奈(フラフラしてたし、声も震えてたし…世界が滅びる寸前みたいな顔してた…)


朝日奈(やっぱり、霧切ちゃんが犯人なんて信じられない…)



腐川「……」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:55:23.94 ID:I8siRGJK0

霧切「…続けて、朝日奈さん」

朝日奈「うん…それで、あたしは…みんなを起こしに行ったんだよ」

葉隠「ああ、覚えてるべ。泣きながらすっげぇ叫んでたから、ビックリしたべ」

十神「…最初に起こされたのは、葉隠か?」

葉隠「だべ。んで、苗木っちが死んでるって言われて、急いで部屋に行って…」


十神「苗木の死体を、見たんだな?」


葉隠「な、なんでそんなに強調するんだべ…はっ、まさか俺が犯人だと疑われて!?」

霧切「…違うわ。重要なのは、あなたが苗木君の死体を確認したかどうか」

葉隠「んぁ? そりゃ、したけど…」


朝日奈「そんでその後に、腐川ちゃんと十神を起こして…」

十神「俺たちも、死体を確認した…さあ、ここが最初の論点だ」



霧切「本来なら私たちが苗木君の死体を発見した時に、『あるはずのものが無かった』…」

朝日奈「あるはずのもの…?」



腐川「……!」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:56:04.82 ID:I8siRGJK0

霧切「十神君。腐川さんが喋りたそうにしているわよ」

朝日奈「もしかして、腐川ちゃんはわかったの? あるはずだったものが…」

腐川「……」コクコクッ

十神「チッ…話せ」



腐川「し…死体発見時の…アナウンス…?」



十神「…正解だ。たまには冴えているところを見せるようだな」

腐川「はっ、はいぃい!」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:57:25.48 ID:I8siRGJK0

霧切「そもそも…『殺人が発生し、その死体を三人以上が目撃した場合に、死体発見アナウンスが流れる』」

霧切「このルールには、あまりにも不明瞭だわ」

霧切「目撃者に、クロは含まれるのかどうか…そこが、今回のトピックで最も重要な問題よ」


朝日奈「え? 殺した時点で、『クロも死体の目撃者に含まれる』んじゃないの?」

霧切「…それではクロ殺人後にが現場を離れたら、実質二人目の発見者が現れた時点でアナウンスが鳴る、ということになるわね」

朝日奈「え?……あ、そっか」

腐川「は、犯人が攻撃したときはまだ生きてたけど、犯人がいなくなった後で被害者が死んだら…?」

霧切「その時は、クロを抜かして三人目の発見者が現れてからアナウンスが流れるわ」

十神「それは、『クロは目撃者には含まれない』というルールの時も同じだ。死んでいようがいまいが…」

霧切「でもその場合、三人の発見者のうちの一人がクロだった場合は…」



葉隠「ああああ! 頭こんがらがってきたべ!!」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 13:58:22.30 ID:I8siRGJK0

霧切「そして、ここで重要なのは、苗木君の死体を目撃した順番よ」

十神「順番は…もちろん全ての証言に偽りが無ければだが…1:霧切 2:朝日奈 3:葉隠 4:腐川 5:十神 だ」

霧切「苗木君を殺害した犯人は、この『順番』と『死体発見時のアナウンスが鳴ったタイミング』で、本来はある程度目星を付けられる」




十神「まず、アナウンスの条件が『一切の条件下において、クロを目撃者にカウントしない』の場合」

霧切「…これは少しあり得ないけれど、一応可能性として検討しておきましょう」

十神「霧切がクロだとした場合…目撃者のカウントは朝日奈から開始だ。アナウンスは腐川が発見した時に流れる」

霧切「同様に、朝日奈さんと葉隠君がクロの場合も、腐川さんの発見時にアナウンスが流れるわ」

十神「ただし。腐川か俺がクロの場合は、目撃者のカウントは霧切から。アナウンスは葉隠が発見した時に流れる」


霧切「つまりクロの疑いを、『私か朝日奈さんか葉隠君』と『十神君か腐川さん』に二分できるのよ」

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:00:51.66 ID:I8siRGJK0
十神「次に『クロは目撃者にカウントするが、まだ被害者が存命しているうちにクロがその場を離れたらノーカウント』の場合」

霧切「…朝日奈さんと会った段階で、彼女と二人で苗木君の死亡を確認しているわ」

十神「つまり、苗木の死亡はそれ以前だ…が、クロが部屋を離れた時点では、苗木が存命していたと仮定する」

霧切「…ただ、今回のケースは私がクロだとしても、カウント開始は不動。アナウンスは葉隠君の発見で流れる」

十神「朝日奈がクロの場合も同様だ。霧切と会った後に苗木の死亡を確認している…アナウンス開始は葉隠による発見」

霧切「そして、葉隠君がクロの場合…これも同様ね。葉隠君が発見した段階でアナウンスが流れる」

十神「最後に、俺か腐川がクロの場合…これも、葉隠が発見した段階でアナウンスが流れる…」

霧切「つまり、順番に関わらず、アナウンスは葉隠君が発見した時点で…」



朝日奈「ちょ、ちょっと待って…今整理中だから」

葉隠「朝日奈っち、んなことしなくていいべ。俺らは考えるだけ無駄だべ」

腐川「あの二人で情報をまとめちゃうんだから…流して聞いていればいいのよ」

葉隠「このへんは冗長だから、深く読まなくていいってことだべ」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:01:57.33 ID:I8siRGJK0

十神「そして『クロはカウントするが、殺害時の目撃はノーカウント。次回の目撃からカウント』の場合」

霧切「…これまでの事件と裁判発生を見る限り、これが基本条件である確率が一番高いわね」

十神「もちろん、これまでの事件が『被害者存命時はノーカウント』に抵触していた、という可能性もあるがな」


霧切「私か朝日奈さん、葉隠君がクロの場合は、葉隠君が発見した時点でアナウンス」

十神「俺か腐川がクロの場合も、葉隠が発見した時点でアナウンスが流れる」

霧切「つまりこの場合も、誰がクロかに関係なく、葉隠君による発見でアナウンスが流れるのね」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:02:38.55 ID:I8siRGJK0
十神「最後に『どの時点でも関係なく、殺害開始からクロを目撃者にカウントする』場合」

霧切「…これまでの事件と裁判発生を見る限りは、おそらくこの条件であることはないわ」

十神「しかし、一応論証は行う。霧切か朝日奈、葉隠がクロの場合…葉隠が発見した時点でアナウンス」

霧切「けれど今度は、十神君と腐川さんがクロの場合…二人は殺害時に、苗木君の死を目撃している第一発見者」

十神「すなわち、そのあとに霧切と朝日奈が目撃した段階で、今度はアナウンスがなる訳だ」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:03:18.42 ID:I8siRGJK0

朝日奈「う、うぅ…分かったような、分かんないような」

腐川「と、とにかく…死体発見時のアナウンスの条件がはっきりすれば、もっと簡単に犯人が分かるってことでしょ?」

モノクマ「……」

霧切「簡単に言えば、そういうことよ。誰が発見した時にアナウンスが流れたか、で、犯人を特定できるかもしれないの」



十神「さて、モノクマ…ここで貴様に質問だ。なぜ今回は、死体発見時のアナウンスを流さなかった?」

霧切「アナウンスが流れる明確なルールは? クロはどの段階で、死体の目撃者になるの?それともならないの?」



モノクマ「……うぷ、うぷぷぷ」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:04:14.26 ID:I8siRGJK0

モノクマ「君たちは、本当に…重箱の隅をつついてくるね」

モノクマ「そんな風に細かい性格だと、誰もお嫁さんにもらってくれないよ…霧切さん」



 ダンッッ!



腐川「ひっ…!」

モノクマ「うわぁ、びっくりしたぁ。モノに当たっちゃダメだよ、霧切さん。クマにもね」


霧切「――質問にだけ答えなさい…!」


葉隠「お、おおお落ち着くべ、霧切っち!」

朝日奈「キレたらモノクマの思う壺だよ!?」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:05:17.96 ID:I8siRGJK0

十神「モノクマ。細かいルールの設定は、どちらにしろ必要だろう」

十神「今後の裁判で、それが重要な証拠になる可能性もあるんだ」


モノクマ「…はふぅ、しょうがないなぁ。次までに考えておくから」

霧切「次まで、ですって…?」


モノクマ「そもそもこのルールは、犯人を割り出すために作ったわけじゃないんだよ」

モノクマ「詳しく決めると、犯人を当てやすくなっちゃうし、面白くないでしょぉ?」

モノクマ「そこまで細かく決めていた訳じゃないからなぁ…しょうがないから、決めておいてあげるよ」



霧切「モノクマ……っ!」

朝日奈「霧切ちゃん、抑えて…お願いだから…!」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:06:09.77 ID:I8siRGJK0

十神「おい、待て…」

モノクマ「ぎくり!」

十神「ドサクサに紛れて俺の質問をはぐらかすな…なぜ今回は、死体発見のアナウンスを流さなかった?」

モノクマ「……」


十神「本来ならいつ流れたのかは、聞かないでおいてやろう…明確な条件すらもまだ決まっていないからな」

十神「しかし、条件はどうあれ…三人以上の目撃者が現れた後も、アナウンスを流さなかったのは何故だ?」


モノクマ「…アナウンスかける前に全員目撃しちゃったから、いいかなーと思って」

十神「…本当に、それだけの理由か?」

朝日奈「止めなよ、十神。相手にするだけ時間の無駄だって…」

葉隠「どうせ深く考えてなかったとか、ついうっかり忘れてたってオチだべ」


霧切「……」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:07:30.08 ID:I8siRGJK0

霧切(本当に、ただの考え無しやうっかりなだけ…?)

霧切(あれほどまでルール…校則の存在に拘っていた黒幕が…?)


モノクマ「話は終わり?じゃ、さっさと裁判に戻れー!早くクロを決めないと時間切れだよ?」

十神「貴様がルールを正確に決めておけば、もっと早くクロを割り出せたんだがな」

モノクマ「無いものをねだってもしょうがないでしょ。甘やかされた御曹司はこれだから…」

腐川「び、白夜様に口答えしてんじゃないわよ…!」



霧切「…モノクマ。私から、もう一つ質問があるわ」


モノクマ「えー…霧切さんはさっき机叩いて怒鳴ったから、教えたくないなぁ」

霧切「…そう。じゃ、葉隠君」

葉隠「うぇ!?」

霧切「代わりに聞いてくれる?」

葉隠「お、俺が!? いいけど…なんて聞けばいいんだ?」


モノクマ「はいソコぉ!」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:08:59.05 ID:I8siRGJK0

モノクマ「自分がわからないのが恥ずかしいからって、他の人に代わりに質問させるな!」

モノクマ「先生は、そんな生徒に育てた覚えはありません!」


霧切「…どうしろって言うのよ」

モノクマ「そうだなぁ…霧切さんがそれなりの誠意を見せてくれれば、教えてあげてもいいよぉ」

霧切「誠意…?」

モノクマ「怒鳴られて、繊細な僕の心は傷ついてしまいました…」

朝日奈「はぁ!?そんなの、あんたが霧切ちゃんを挑発するから――」


霧切「朝日奈さん、いいの」

朝日奈「で、でも霧切ちゃん…」

霧切「…いいのよ」


 スッ


朝日奈「え…」


霧切「……場を弁えず…怒鳴り散らして、すみませんでした」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:10:08.66 ID:I8siRGJK0

葉隠「ちょ…! 何も、土下座までしなくても…!!」

十神「…見損なったぞ、霧切…」

腐川「あ、あんた…プライドとか、ないわけ…!?」



霧切「…プライドならあるわ」

霧切「自分が納得するまで、徹底して真実を追求する…それが私のプライドよ」

霧切「そのためなら…何だってする。土下座一つで真実が教えてもらえるなら、安いもの」



モノクマ「……、…」

モノクマ「……引くわー」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:11:04.27 ID:I8siRGJK0

モノクマ「え?なにそれ。僕がパンツ見せてって頼めば、見せてくれるの?」

霧切「…それで真実を教えてもらえるなら」

モノクマ「頭おかしいんじゃない?」

霧切「……」


モノクマ「ほら、みんなドン引きだよ、霧切さん。君が空気読まずに土下座とかしちゃうからだよ」

モノクマ「まあ、今回は特別に…質問に答えてあげるけどね」

モノクマ「簡単に頭を下げちゃう人間は嫌いだから、次はないけどね」


霧切「…そう。では、遠慮なく聞かせてもらうわ」



霧切「…なぜ今回のモノクマファイルには、彼の…苗木君の死亡時刻や死因の詳細が載っていないのかしら?」

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:11:54.46 ID:I8siRGJK0

モノクマ「なぜ…って、何?」

モノクマ「僕がそれをいちいち細かく記載しなきゃいけないって法律でもあるの?」

モノクマ「いつそれが決まったの?何時何分何秒?地球が何回回ったとき?」


朝日奈「うざっ…」

葉隠「小学生かよ…」


モノクマ「…特に理由はないよ」

モノクマ「…『苗木誠は首を絞められて窒息死』だよ」


霧切「……そう」

朝日奈「え、そんだけ?」

腐川「死亡時刻は…」

十神「…聞くだけ無駄だろう。こいつは答えない」


モノクマ「……」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:12:48.84 ID:I8siRGJK0

霧切「……モノクマ」

モノクマ「なぁに?」

霧切「一つ、私と勝負しない?」

モノクマ「勝負ぅ?」



霧切「裁判の前に得た情報と、これまでのあなたの態度から…私は今回の事件に、一つの仮説を立てた」



霧切「これからその仮説を…あなたと、みんなの前で披露するわ」

モノクマ「はぁ?」

霧切「その仮説は…私の無実の証明だけではなく、苗木君を殺した真犯人へと繋がっている」



霧切「…もしこの仮説が合っていたなら…私たち全員を、この学園から解放しなさい」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:13:34.05 ID:I8siRGJK0

モノクマ「…馬鹿じゃないの? そんなお願い聞けるわけ…」


霧切「ただし」

霧切「もし、この仮説が外れていたなら…」




霧切「私を好きにしていいわ」




十神「おい…お前、本気か…!?」

葉隠「な、何言い出すべ、霧切っち!」

腐川「あんた、何されるかわかってんの…!?」

朝日奈「死んじゃうかもしれないんだよ!?」


霧切「…死ぬ、で済めばいいわね」

朝日奈「それ、って…」

霧切「……覚悟の上よ」



霧切「…それに、仮説を外すつもりはないわ。超高校級の…いえ、霧切の名にかけて」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:14:28.87 ID:I8siRGJK0

モノクマ「……うぷ」

モノクマ「うぷぷ、うぷぷふふははははは!!!」

モノクマ「何?熱血展開?今時少年漫画でもない限り流行らないよ!」

モノクマ「でも、いいね! おもしろそう! 気に入った!」


十神「考え直せ、馬鹿…! 例えお前の仮説が合っていても、モノクマが正直に正解だと教えると思うのか!?」

腐川「そ、そうよ…そんな危ない橋じゃなくて、普通に学級裁判で犯人を決めればいいじゃない…」


霧切「…学級裁判では、私は自分の無実を証明できない」


モノクマ「…」


霧切「ただでさえ証拠が少ない中で…第一発見者。その上、マスターキーを持っていて」

霧切「…五人の中で、一番長い時間を彼と過ごしていた」

霧切「私が疑わしい存在だということは、私自身が一番よくわかっているわ」

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 14:15:17.07 ID:I8siRGJK0

モノクマ「…なるほどね。自分独りじゃ、いくら仮説を解いてもみんなを説得できないんだ」


霧切「ええ。だから、あなたに仮説の正しさを証明してもらうのよ」

モノクマ「それと引き換えに、より危ない橋を渡るんだね」


霧切「あなたは、学級裁判で嘘をつけない。なぜなら、このゲームには視聴者がいるから」

霧切「このゲームは、視聴者のためのもの。だからこそ、あなたがルール違反するわけにはいかない」

霧切「それは、主催者であるあなたが、視聴者を裏切ることになるから」


モノクマ「考えたね、霧切さん…カッコいいじゃない」



モノクマ「まるで、主人公みたいだね」



霧切「…皮肉のつもり?」

モノクマ「さあ?」

霧切「…まあ、いいわ。それで、私の挑戦…受ける? 逃げる?」


モノクマ「受けてたつ」

58: 続き 2011/10/08(土) 18:45:19.51 ID:I8siRGJK0

霧切「…あなたたちも、それでいいかしら?」


葉隠「いや…いいっつうか…」

腐川「…あんたがっ、勝手に挑んだ勝負でしょ…。あ、あたしたちにデメリットはない、から…」

十神「……もう俺は、口を挟まん。好きにしろ…」

朝日奈「霧切ちゃん……やめて…」


霧切「……三人は、異論はないようね」


霧切「じゃあ、朝日奈さん」

朝日奈「ふぇっ!?」

霧切「私の仮説を証明する手助け、あなたにもしてもらえるかしら?」

朝日奈「えっ、えぇっ?」

霧切「…あなたが力になってくれれば、仮説の正しさを証明できるかもしれないの。お願い」

朝日奈「! う、うん、わかった…」


葉隠(霧切っち、朝日奈っちを手懐けるの上手いべ…)

十神(いや、朝日奈が単純なだけだろう)

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:46:46.63 ID:I8siRGJK0

霧切「まずは、なぜ私が容疑者として疑われているか。朝日奈さん、説明してくれる?」

朝日奈「えっ…そ、それは…霧切ちゃんがマスターキーを持ってるから」

霧切「そうね。もう少し詳しく説明できる?」

朝日奈「う……えっと、だから…霧切ちゃんはマスターキーを持ってて、それで…」


朝日奈「…苗木が死んでいたのは、『苗木の部屋』だった…」

朝日奈「ってことは、『苗木の部屋に入れる人間が犯人』…」

朝日奈「でも、部屋には『鍵をかけられる』から…」

朝日奈「苗木が鍵をかけずに眠っていたわけでもない限り、『鍵を開けられる人間』が、苗木を殺した犯人…って、ことだよね」


霧切「…そうね。その通りよ。説明してくれてありがとう」

朝日奈「あ、うん…どういたしまして」

霧切「あなたの上手な説明のお陰で、私の仮説が証明しやすくなったわ」

朝日奈「そ、そう? えへへ…」


霧切「では次に、この朝日奈さんの説明の間違いを指摘していくわね」

朝日奈「ふぇっ!?」



葉隠(褒めて持ち上げてから突き落とすとか…)

十神(天然の鬼畜か、こいつ…)

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:47:38.35 ID:I8siRGJK0

霧切「葉隠君」

葉隠「うぉ…今度は俺だべか」


霧切「朝日奈さんは『あの部屋に入れるのはマスターキーを持つ私だけ』と言ったけれど、本当?」

葉隠「う……」

霧切「思ったことを、正直に答えて」


葉隠「…その説明は、厳密に言えば間違いだべ」

朝日奈「葉隠までっ!?」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:48:48.93 ID:I8siRGJK0

霧切「私以外にも、二人…『あの部屋に入れる存在』があるわよね…葉隠君」


葉隠「……ああ。『部屋の主である苗木っち』と…『黒幕のモノクマ』だべ」

朝日奈「…あ、そっか」

葉隠「でも…苗木っちはもうその時には死んでるから、除外しても…」

朝日奈「……違う」


霧切「気付いたようね、朝日奈さん」

霧切「そう…私が容疑者として疑われた理由が、『マスターキーを持っているから』であるのと同様に」

霧切「苗木君が自分の部屋に入ることが出来る理由は、『自分の部屋の鍵を持っているから』」

霧切「鍵さえあれば、誰でも彼の部屋に入れるのよ」


霧切「たとえば、殺して奪い取った後でも…ね」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:50:22.64 ID:I8siRGJK0

霧切「つまりこの事件は、私だけじゃない…全員が、その容疑者になりえるものだったのよ…」



葉隠「で、でも…苗木っちは、自分の部屋で死んでいたんだべ?」

葉隠「おかしいだろって…苗木っちを殺すために部屋に入るんだから、その前に鍵を持ってないと…」

葉隠「でも、部屋鍵を持っているのは部屋にいる苗木っちだから…」

葉が暮れ「やっぱりマスターキー持ってる霧切っちしか、苗木を殺すために部屋に入ることはできないべ」


朝日奈「苗木がどこかで間違って鍵を落としちゃった、って可能性も…」


霧切「その可能性もありえないわけじゃない…けれど、私の仮説では」


霧切「苗木君は、死んだ後で鍵を奪われたのよ…」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:51:05.07 ID:I8siRGJK0

葉隠「???」


霧切「さっきモノクマが教えてくれたでしょう。苗木君の死因は、首を絞められたことによる窒息」


霧切「さて、首を締められると人はどうなるんだったかしら…腐川さん?」

腐川「ひっ…し、知らないわよ、そんなの…」

霧切「…あ、そうね。腐川さんじゃない方だったわ。ちょっとジェノ呼んでくれる?」

腐川「そんな、友達みたいな軽いノリで、」



十神「おい、腐川」

腐川「ぶぇっクシ!!!」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:51:54.33 ID:I8siRGJK0

ジェノ「呼ばれ(ry」

霧切「ジェノサイダー翔、もう一度みんなに説明してもらえる?」

ジェノ「おい」



ジェノ「ったく、人殺し使いが荒いんだから…」

ジェノ「…えっとぉ、血管が締め付けられて、呼吸困難になって、顔面チアノーゼ色でしょー」

ジェノ「そのまま死んで、筋肉全部ガバガバになるから、大も小も垂れ流し状態でー」

ジェノ「あとすっごい苦しいから、意識があっちにイっちゃうまで暴れ回るのよねぇ」



霧切「…はい、どうもありがとう。戻っていいわよ」

ジェノ「ちょっとぉ! 扱い酷すぎるんじゃないのコレ!?」

十神「おい」

ジェノ「ふぇッキシ!!!」

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:52:32.71 ID:I8siRGJK0

霧切「…そういうことよ」

朝日奈「何が、そういうこと、なの…?」



十神「『苗木はあの部屋で殺された訳じゃない』…と、いうことだろう」

霧切「……ええ」


葉隠・腐川・朝日奈「???」


十神「首を絞められた人間は、暴れて抵抗する」

十神「そのまま死ねば、そこで糞尿を垂れ流す」

十神「酸欠状態で、顔色も紫色になり、血液が圧迫されて腫れ上がる」


十神「…朝日奈。お前があの部屋に着いた時、このどれか一つの痕跡でもあったか?

朝日奈「あ…無かった…!」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 18:55:03.34 ID:I8siRGJK0

十神「犯人が片づけた、というのも考えにくい…」

十神「時間が短すぎるし、手間もかかる…何より、片づけたその数々の証拠をどこに捨てる?」


霧切「モノクマは、首を絞められたことが死因だと言った…黒幕は嘘をつかない」

霧切「ならば何故あの部屋に、その痕跡が無いのか?」

霧切「彼が別の場所で殺害され、その後にあの部屋に運ばれてきたからよ…」


朝日奈「ってことは、霧切ちゃんが見た、白衣仮面は…?」

霧切「ええ。あの部屋で苗木君を殺してから出たわけじゃなく…」

十神「…別の場所で苗木を殺して、あの部屋に苗木を移動させ、出てきたところを目撃された…そういうことだな」

腐川「で、でも…何のために?」



霧切「何の、ために」

霧切「それが、犯人が今回の事件を起こした動機へと、繋がっていくのよ」

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:30:37.23 ID:I8siRGJK0

霧切「葉隠君が言ったわ…犯人の気持ちがわからない、と」

霧切「彼がいなくなっていいことなんて、一つもない…」

霧切「そう…彼は私たちにとって、まるで希望そのものだった…」

霧切「だからこそ、それが失われた時…私たちに降りかかるダメージも大きい」

霧切「信じていたはずの仲間が、また殺人を犯した…やっぱり誰も信じられない、と…私たちは考える」



霧切「――それこそが、犯人の目的だった」

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:31:18.95 ID:I8siRGJK0

朝日奈「どういうこと…?」

腐川「そ、そのまんまよ…あたしたちを失意のどん底に突き落とす事が、犯人の目的だったんでしょ」

葉隠「で、でも…そんなことして、俺たちの誰が得をするんだべ?」

十神「いるだろう…一人だけ、その条件を満たす奴が」



霧切「そもそも鍵なんて盗まなくても、苗木君の部屋に出入りすることが出来て…」

霧切「私たちを絶望の底に叩き落とすことこそ、最大の目的として…」

霧切「この中でただ一人、苗木君の死亡時刻も死んだ理由も知っていた…」




霧切「あなたが事件の犯人でしょう…モノクマ。いえ……黒幕」

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:32:06.21 ID:I8siRGJK0

モノクマ「……」


十神「…なんとか言ったらどうだ」

葉隠「ま、マジで…黒幕がやったんか…?」

朝日奈「苗木のこと、殺したの…?」

腐川「で、でもそれ…ルール違反じゃ」



モノクマ「……ぷっ」

モノクマ「うぷぷ、ぷぷぷぷぷ…」



モノクマ「…そうだよ。僕が事件の犯人」


全員「!!」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:32:51.24 ID:I8siRGJK0

モノクマ「霧切さんの仮説…細かいところがボロボロだけど、本筋は合ってるね」

モノクマ「だからちょっとおまけして、補欠合格かな。他のみんなは不合格だけど」


朝日奈「は…!?」

葉隠「いや、不合格って…みんな、出した結論は同じのはずだべ?」

腐川「あんたが苗木を殺して、色々細工したんでしょ?」

十神「俺たちを絶望の底に落とすため、か…おい、どうしてゲームに貴様が介入してくるんだ?」


モノクマ「うぷぷぷふふふははっ、わはははははは!!!」

モノクマ「だから!君たちは不合格だって言ってるんだよ!」

モノクマ「こんな、こんな簡単なこともわからないなんて!」

モノクマ「それでも本当に、希望ヶ峰学園の生徒なの!?」


霧切「……」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:33:46.02 ID:I8siRGJK0

モノクマ「ねえ、霧切さん。君は、なんとなく気付いているんでしょぉ?」

霧切「……」

モノクマ「だって、君は、僕のことを事件の犯人だと当てはしたけれど」


モノクマ「――『僕が苗木誠を殺した』とは、一言も言わなかったもんね」


朝日奈「……え、ちょっと、どういうこと?」

腐川「事件の犯人がモノクマならっ…、苗木を殺したのもモノクマ、でしょ…?」


十神「!! ……そういうことか、クソッ」

葉隠「は?は? なぁ、十神っち?」


モノクマ「十神君も気付いた?そうだよね、君は気付くよね」

モノクマ「だって、同じようなことを二回目の裁判でやったんだから」

モノクマ「けれど…やっぱり今更気付くようじゃ二流かなー!ざーんねーん!」


十神「ああ、クソッ…ふざけるな! 俺は弄ばれるのが大嫌いなんだ…!」

葉隠「ちょっと、十神っち…落ち着くべ…」

十神「霧切!お前は全部知っていたのか!?」

霧切「……」

十神「何とか言ったらどうなんだ、おい!」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:35:32.44 ID:I8siRGJK0

霧切「…最初に疑問を抱いたのは、葉隠君が動機の話をした時よ」

霧切「もしかして…事件を起こしたのは、私たち五人以外の誰かかもしれない、って」

霧切「…『犯行動機』、『ドアの鍵』、『鳴らなかったアナウンス』と『アナウンスの条件』、『苗木君の状態』…」

霧切「証拠を集めれば集めるほど、黒幕に焦点が絞られていく」

霧切「けれど、黒幕はルールは守る…校則違反でもしない限り、黒幕自身が誰かを殺すことはない」

霧切「…なら、事件を起こす事はあっても、自分が殺した人間で学級裁判をすることはない」


霧切「だから考えられる事実は一つ……事件が起きる前から、苗木君は死んでいたのよ」


十神「……」

葉隠「……」

朝日奈「……」

腐川「……」


霧切「黒幕は、既に死んでいた苗木君の体を、あたかも事件によって殺されたかのように見せかけ、細工した…」

霧切「私たちの間に不和を生み、疑心暗鬼に落とすために」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:36:09.44 ID:I8siRGJK0

モノクマ「うぷ、うぷぷぷ! 補欠とはいえ、合格しただけのことはあるね!」

モノクマ「さすが、超高校級の探偵!」

モノクマ「もしかして霧切さんは、僕の正体にも目星がついちゃったりしてるのかな?」


霧切「……言いたく、ないわ」


モノクマ「あ、そう?でも僕は、正体を表しちゃうけどね!」


モノクマ「君たちに、」


モノクマ「更なる絶望を、」


???「与えるために!」

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:37:31.10 ID:I8siRGJK0

朝日奈「……うそ」

十神「何の冗談だ、おい…」

???「嘘でも冗談でもないよ。僕がこの事件の…黒幕だよ」


腐川「なん、……」

葉隠「だって、死んでた…んだろ?」

???「うぷぷぷ!いいね、その表情!事実を知って絶望した?」


???「信頼していた仲間が、気を許したはずの友人が、ちょっと気になっていたあの人が」




苗木「――事件の黒幕だった、なんて」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:38:22.32 ID:I8siRGJK0

苗木「普通、可笑しいと思わない? 超高校級の高校生が集まるこの学校に、一人だけ凡人がいるだなんて」

苗木「超高校級の幸運? なにそれ、ゲームやライトノベルの主人公じゃあるまいし!」


霧切「……信じたく、なかった。あなたが…」


苗木「霧切さんは、随分と僕に思い入れが深かったみたいだね」

苗木「でも、いくらなんでも、マスターキー使って部屋に入ってくるのは、頭おかしいんじゃない?」

苗木「変態だよね。ドン引きだよね。パンツ見せて、って言ったら見せてくれるんでしょ? 見せてよ、ホラ」


葉隠「おい、俺は…幽霊でも見てんのか」

腐川「どういうこと…? なんで、苗木が生きているの…?」

朝日奈「だって、これは…苗木が死んだから、学級裁判やってるんでしょ…?」

十神「何より、お前が黒幕…だと…?」


苗木「あれあれ?まだ信じられない?しょうがないよね、信じてたんだもんね」

苗木「信じた仲間に裏切られて、頭が混乱しているでしょ?」



苗木「……『私』の『お兄ちゃん』も、そうやって死んでいった」

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:39:32.03 ID:I8siRGJK0

霧切「苗木君…いえ、あなたは…」



苗木妹「…霧切さんには話したよね。妹がいる…って」

苗木妹「胸にサラシ巻いてカツラ被るだけで、男の子に見えるでしょ?」

苗木妹「もともとお兄ちゃんと顔の作りは一緒だから。私の方がちょっと大きいけどね」


霧切「なりすましていたのね…最初から、死んだ苗木君の代わりに…」


苗木妹「……お兄ちゃんが死んだのは、二年前の冬。この学校に入学して、最初の年」

苗木妹「夏休みに帰ってきたお兄ちゃんは、見るからにやつれてた…手首には、リストカットの痕もあった」

苗木妹「口には出して言わなかったけれど…この学園が原因だって、すぐにわかった」

苗木妹「希望ヶ峰学園に、『超高校級の幸運』がスカウトされる理由…」


苗木妹「それは、他の超高校級の高校生たちと…比較するための定規が必要だから」


苗木妹「一般人と比べてどれくらいすごいのか…それを測るためには、比較対象になる一般人が必要でしょ…?」

苗木妹「その事実を知らないまま、お兄ちゃんは嬉しそうに、この学校に入学したのよ…!」

苗木妹「超高校級の高校生たちと、肩を並べて授業を受けられるなんて、光栄だって…!!」

苗木妹「は、はは。笑っちゃうよね。『肩を並べる』だって」

苗木妹「比較されるたびに、自分がどれほどちっぽけな凡人かを思い知らされて…」



苗木妹「お兄ちゃんのプライドは…ズタボロだったよ…」

全員「……」

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:54:20.57 ID:I8siRGJK0

苗木妹「…冬休みになっても、お兄ちゃんが帰ってくることはなかった」

苗木妹「学校で首を吊って、死んだって…」

苗木妹「私、私ね…ちょっとホッとしてたの…頭おかしいと思われるかもしんないけど」

苗木妹「天国に行けば、もう比較されることもない…お兄ちゃんは自由になれるんだ、って」


苗木妹「……でも、お兄ちゃんの体は…この学園に保存されたままだった…」


苗木妹「自殺の理由すらも一般的だから…お兄ちゃんが死んだ理由を、道徳の授業で使うんだって…」

苗木妹「生きている間には見られなかった、内臓とか、筋肉とかを…解剖して見るんだって…」

苗木妹「死んだ後も…お兄ちゃんは…っ… 色んな人と、比較、され続けるんだって…」



苗木妹「…首を絞めたから?自殺?窒息?」

苗木妹「違う…! お兄ちゃんはそんな理由で死んだんじゃない!」


苗木妹「あんたたちが!二年前に!お兄ちゃんを殺したんだ!」

苗木妹「あんたたち全員がクロよ!死因はあんたたちが比べたからよ!」

苗木妹「殺されていい人間じゃない?必ず犯人を見つけ出す?」

苗木妹「お兄ちゃんを殺しておいて、どの口が……ぁああああ!!」



腐川「ひ、ひぃいいぃっ」

葉隠「ななな、なんだべ…!? ヒステリー!?」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:55:05.00 ID:I8siRGJK0

霧切「…死亡推定時刻や、三人以上による死体発見時のアナウンスを流さなかったのは…」

苗木妹「二年前にあんたたちは!その目で!お兄ちゃんの死体をもう見ているでしょ!!」


霧切「彼の死因が明記されていなかったのも…」

苗木妹「窒息死じゃない…お兄ちゃんが死んだのは、あんたたちのせいだよ…!」


霧切「わざわざ犯行現場を彼の部屋にしたのは…」

苗木妹「あんたに疑いをかけるためよ…あんたの髪の毛は寝ているときに採取して、部屋の至る所に散ばせた」


霧切「…私たちが見た苗木君の死体は」

苗木妹「…本物の苗木誠の死体だよ…冷凍保存されてたやつ。この数日間一緒に過ごしていた苗木誠は、偽物である私…」

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:55:45.27 ID:I8siRGJK0

苗木妹「……私は」

苗木妹「お兄ちゃんを殺したこの学園に、復讐するって決めた」


苗木妹「『超高校級の絶望』が引き起こした事件に便乗して…この学園を乗っ取って」

苗木妹「全員の記憶を奪い、そして私が『苗木誠』になる…」

苗木妹「もう一度、『苗木誠』の学園生活をやり直すのよ…」

苗木妹「お兄ちゃんを殺した奴らに殺し合いをさせて…今度は『苗木誠』だけが生き残る」

苗木妹「それが…この学園の、『超高校級の絶望』計画…」


苗木妹「その…はず、だったのに…」

苗木妹「……」


霧切「…私たちは結束し、ゲームを降りることを宣言した」


苗木妹「あの雰囲気じゃ、到底殺人事件は起きそうにない…だから、私は…」

霧切「私たちをお互いに疑心暗鬼にさせるため、事件を作り上げた…」

81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:56:49.87 ID:I8siRGJK0

苗木妹「…それも、まさか暴かれるとは思わなかったけどね…」



朝日奈「……ちょ、待って…まだ、意味わかんない…」

葉隠「俺たちが、苗木っちを…殺した…?」

腐川「二年間、この学校で一緒に暮らして…」

十神「その記憶を、奪われた…だと…?」

霧切「……」


苗木妹「……記憶は、そのうち戻るよ。数ヶ月くらい。霧切さんは、もう思い出しかけているみたいだけどね」

苗木妹「人工的に記憶を失わせるのは、一時的にしか不可能だから」

苗木妹「……」


霧切「…この数日間で、私たちが見ていた苗木君は…」

苗木妹「…全部、私の演技だよ。できるだけお兄ちゃんの真似はしてみたけど」

十神「学級裁判での正答率の高さも…そういうことか」

苗木妹「私が黒幕で、事件の真相知ってるんだから…まあ、当たり前だよね」

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:57:26.55 ID:I8siRGJK0

苗木妹「……あーあ、結局どうしよっかな」

苗木妹「事件の犯人は黒幕である私だけど…お兄ちゃんを殺したのは私以外の全員」

苗木妹「…これって言いかえれば、全員がクロってことだよね?」



苗木妹「そうだ…じゃあ、みんなで受けようか。オシオキ」



全員「!?」



苗木妹「…なんで意外そうな顔してるの? 当たり前でしょ?」

苗木妹「人を殺した罪は、重いんだよ…」

苗木妹「お兄ちゃんを殺しておいて…その罪を逃れて…ぬくぬくと生きるつもり!?」


苗木妹「そんなの絶対…許さない。私があんたたちを裁く」



  みなさん が クロ に きまりました

    オシオキ を カイシ します




      ~さよなら絶望学園~

    [Breakdown in the Classroom]

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 21:59:11.29 ID:I8siRGJK0

 ゴゴゴゴゴ…


十神「何の音だ!?」

葉隠「まさか…崩れるべ!?」

朝日奈「ここ地下だから、崩れたら…」

腐川「に、二度と…出られない!?」


苗木妹「…地下だけじゃないよ。学園全体」

苗木妹「もともと…超高校級の絶望事件の締めは、学校の倒壊事故で終わらせる予定だったんだ」

苗木妹「そして、超高校級の幸運『苗木誠』だけが、運よく事件を逃げ延びて…完成。の、はずだったんだけど」

苗木妹「もういいや…失敗しちゃったし。みんなで平等に、死のう」

苗木妹「死んだら、みんな同じだよ。誰かと比べられることも、もう無いよ」


腐川「な、何言ってんのコイツ…」

葉隠「腐川っち、構うな! 早くエレベーターに乗るべ!」


苗木妹「出口は全部塞いでるんだよ…出られるわけないじゃん」

朝日奈「それでも、こんなところにいたら助かるものも助からないよ…!」

十神「全員乗ったか!? 上に向かうぞ…」



霧切「待って…まだ、彼…いえ、彼女が…!!」

86: もうちょっとだけ続くんじゃ 2011/10/08(土) 22:00:21.63 ID:I8siRGJK0

苗木妹「…何待ってるの? 私が乗る訳ないでしょ」

霧切「……」

苗木妹「…ああ、なるほどね。霧切さんの中では、まだ『僕』は苗木誠なんだね」

霧切「……」


苗木妹「例えこの事件の黒幕でも、超高校級の絶望の正体でも…霧切さんにとっては、僕は僕なんだ」

苗木妹「だから偽物ってわかっても、捨てられないんだね」

苗木妹「この数日…一緒に過ごした時間は、霧切さんにとっては紛れもない本当だもんね」


苗木妹「でもね、霧切さんがそんな気持ちになるの…おかしいんだよ」

苗木妹「だって…霧切さんも、一緒になって殺したんだ。二年前に、僕を」

苗木妹「だから…僕は君と一緒には行けない。行きたくない。分かるよね」



霧切「…例え偽物でも」

霧切「…記憶を失った私にとって、あなたは…!」

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 22:01:02.93 ID:I8siRGJK0

苗木妹「……」


苗木妹「…最後だから教えてあげる」


苗木妹「……僕、霧切さんのこと…だいっきらい」


苗木妹「いつもポーカーフェイス気取って、でも本当はすごく感情に流されやすくて」

苗木妹「自分に自信満々だけど、他人のことは簡単に信用できなくて」

苗木妹「ファザコンで、何考えてるかよくわかんなくて、ぶっきらぼうで」


霧切「苗木君…!」


苗木妹「だから、絶対一緒には行かないよ。さようなら」

十神「おい霧切、もう扉閉めるぞ!」


霧切「あなたが、あなたが私のことを嫌いでも、あなたが偽物でも、」


霧切「私は――!」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 22:02:31.16 ID:I8siRGJK0
―――――

苗木妹「……」

苗木妹「…行っちゃった」


苗木妹「…あーあ、最後の最後で失敗しちゃったなぁ」

苗木妹「ごめんね、お兄ちゃん。敵討てなかったよ」


苗木妹「だってさ」


苗木妹「みんな、思ってたよりも、全然いい人たちだったんだもん」

苗木妹「『超高校級の幸運』ってだけで差別しないし、こんな状況でも助け合おうとするし」

苗木妹「本当にお兄ちゃんがあの人たちのせいで死んだのか、って…迷っちゃった」

苗木妹「…自分が何をしたかったのか、よくわかんなくなっちゃったんだよ」


苗木妹「……ねえ、お兄ちゃん」

苗木妹「霧切さんって、いい人だね」

苗木妹「……数日間しか、一緒にいられなかったけど」

苗木妹「あの人がお兄ちゃんを殺しただなんて、信じらんないよ」


苗木妹「最後の最後で……死んでほしくない、って思っちゃった」

苗木妹「だから…嘘ついちゃったよ。だって、ああでも言わないと…霧切さんエレベーターに乗らなそうだったから」

苗木妹「もしかしたら、霧切さんもホントにお兄ちゃんを殺した人なのかもしれないのにね」

苗木妹「……なんか、最後までグッダグダな計画だったなぁ」


苗木妹「ゴメンね、お兄ちゃん…」

―――――

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2011/10/08(土) 22:03:35.20 ID:I8siRGJK0

葉隠「……っつー…みんな、無事か?」

朝日奈「…嘘みたい。生きてるんだね、あたしたち」

十神「うまく、瓦礫の隙間に入り込んだみたいだな」


霧切「……」

腐川「…ちょっと、あんた…生きてる?」

霧切「…生きてるわ。最悪にも」

腐川「最悪、って……」

十神「放っておけ。大好きな苗木誠に振られて、放心状態なんだろ」

朝日奈「ちょっと、そんな言い方…!」


霧切(……生きている)


霧切(瓦礫同士が重なって出来た隙間に、全員…)


霧切(まるで奇跡……いえ、幸運ね)



霧切(あなたが…分けてくれたの……?)




霧切「……考えすぎかしら、ね」



END