アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」前編
 

274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:19:33.69 ID:itpxcIft0
――――――――――

―――――――

――――

御坂「ちょ、ちょっと!いよいよ紫の天使まで追い込まれたわよ!ヤバいんじゃないの!?」

結標「うるさいわね。私達がここでいくら焦ったって、事態は変わらないのよ。
   少し落ち着きなさい」

御坂「落ち着きなさい!?落ち着いていられるわけないでしょーが!
   今すぐアンタの力で、私をあそこへテレポートしなさい!」

結標「だから!そうしたってあなたはやられるだけでしょ!あなたこそ頭冷やしなさい!」

御坂「それでも、例えそうだとしても!出来る出来ないの問題じゃなくて!
   やるかやらないか!それが問題でしょ!」

結標「負けると分かっている戦いに挑みに行くなんて、ただの無謀な愚か者よ」

御坂「そうかしら?戦いに挑みもしないで、ただただ殺されるのをガクガク震えて
   待つだけの方が、よっぽど愚か者な気がするけどね」

結標「分かったわ。そこまで言うなら、あなた1人送ってあげるわよ!」

絹旗「ちょ、2人とも超落ち着いてください!滝壺さんも喧嘩止めるの手伝ってくださいよ!」

引用元: アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」 

 

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275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:20:13.08 ID:itpxcIft0
2人のいがみ合いがヒートアップしていく中、カツンと2つの足音。

麦野「レベル5の第2位と3位が、くだらないことで争ってんなぁ」

麦野は先の戦いで左腕が吹き飛んだが、冥土帰しによって、新たな義手をつけられていた。

御坂「アンタ……」

結標「うるさいわね。第4位」

冥土帰し「まあまあ、少し落ち着くんだね?」

御坂「落ち着けませんよ!緊急事態だってのに、この臆病者は!」

結標「事態が呑み込めてないのよ。このお子様は」

麦野「私からしたら、どっちもお子様みたいなもんだけどなぁ」

御坂・結標「「はぁ!?」」

冥土帰し「こらこら、2人を煽るような事は止めるんだね?」

その時、外から爆音が響いた。

276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:21:07.55 ID:itpxcIft0
御坂「なんか凄い爆音が……急がなきゃ!」

冥土帰し「まあ待つんだね?君1人じゃあ勝てないよ」

結標「ほらね」

冥土帰し「ただ、言っている事は御坂君の方が正しい」

結標「んな!?」

冥土帰し「結標君の言う通り、1人じゃ勝てない。けど御坂君の言う通り
     このまま何もしなければ、戦わなくても殺されるだけだろうね?」

冥土帰し「なら、やるべきことは1つだね?」

御坂「な、何ですか?」

冥土帰し「“協力して倒す”だよ」

結標「はぁ!?そんなことしたって勝てるわけ」

冥土帰し「勝てるさ」

結標「根拠は?」

麦野「ぐちぐちうるせぇぞ」

結標「あなたのほうこそ、いちいち癇に障るわ」

冥土帰し「言い争っている場合ではないね?手短に話すよ?
     結標君、御坂君、麦野君、絹旗君の4人で、あの天使を討伐してもらいたい」

結標「4人が協力したところで、あの天使を倒せるとは」

冥土帰し「倒せる」

結標「……っ!」

277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:22:09.90 ID:itpxcIft0
冥土帰し「しかし、元々少なくない因縁がある君達が、そう簡単に協力できるとは思えない」

御坂「そこまで知っていて……じゃあ、どうするの?」

冥土帰し「まずは名前で呼び合う。既に親しい関係である絹旗君と麦野君は除いてね」

御坂「確かに、能力名や序列で呼び合うよりは良いと思うけど……そんなんで良いの?」

冥土帰し「もう1つ。『約束』をするんだ。『約束』は時に強い絆を生む。
     内容は『共に生き残り、この街を守り切る』これでどうだね?」

結標「そんなんで、何とかなるの?」

冥土帰し「なると僕は信じている。あとは君達次第だ。さあ、もう時間がない。
     結標君、絹旗君、御坂君、麦野君、そして滝壺君の補助。
     この5人で一方通行を助け、この街を守ってほしい。あとは頼んだよ?」

―――

――――――

―――――――――

一方通行「ふーン。『絆』の力ねェ」

冥土帰し「君は身をもって体験しているだろう?君と打ち止めの間にあるものさ。
     人は、大切な何かを守りたいときに本当に強くなれるんだよ?」

278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:23:35.20 ID:itpxcIft0
御坂「最愛!もっとビルを砕いて頂戴!」

絹旗「超分かっています!」

絹旗が砕く。御坂が撃つ。反撃を凌ぎながら、何度それを繰り返したことか。
多分1000発は撃っただろう。それにも関わらずウリエルの勢いは衰えない。

結標も持っていた手榴弾やその辺の瓦礫を、片っ端からウリエルの内側に
テレポートしているのだが、やはり勢いは衰えない。

結標「最愛!あなたは直接攻撃に回って!『超電磁砲』のための瓦礫は私が用意する!」

御坂「分かったわ!」

絹旗「超分かりました!」

2人が返事をした次の瞬間には、絹旗はウリエルの真上にテレポートされていた。

絹旗「行きますよ~」

窒素が螺旋状に回転しながら絹旗の両腕を包み込む。それはつまり、窒素のドリル。
まずは左腕から『神の火』へ落下していく。

ギギギギギ!とウリエルの頭上の輪っかと、窒素のドリルが擦れ合う。
輪っかは割れるどころか傷1つつかない。

絹旗「おりゃあああ!」

窒素の密度と回転速度を上げる。その甲斐あってか、ピシッ!とヒビが入った。
しかし、そこで左腕が弾かれる。

絹旗「こっこだああーっ!」

ヒビ目がけ、今度は右腕を繰り出す。そのヒビに、わずかにドリルがめり込んだ。
窒素の密度と回転速度を限界まで上げる。割る。この輪っかを絶対割って見せる。

10秒経って、その思いが通じたのか、バキィン!と、幅1mはある輪っかの一部が欠けた。
若干悶絶したように見えたがそれだけ。とても致命傷には至らない。
そこでウリエルから、全方向に風の波動が放たれた。

絹旗「ぐぬうううあああ!」

吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる絹旗。
窒素で覆われている絹旗にとって、大きい怪我にはならなかったが
連戦をこなし、今の今まで全力を出してきた絹旗は、もう限界だった。

279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:24:56.54 ID:itpxcIft0
結標(よく頑張ったわね。最愛)

結標「美琴ー!」

結標が叫ぶと、御坂の目の前に瓦礫――とは言い難い、操車場のコンテナ1個分ほどの
大きさの塊がテレポートされた。

御坂「行っけー!」

バギュゥゥゥン!と塊が『超電磁砲』となって放たれる。
間髪入れずに、結標は次々と塊をテレポートしていく。
御坂も、目の前にテレポートされていく塊を次々と放っていく。
先程までの、瓦礫でのちまちました攻撃とは違う。
まさに大砲のような一撃が、連続して放たれていく。

さすがのウリエルも、これは効いたのか。若干仰け反ったように見えた。

結標「これで決めましょう!」

御坂「ええ!」

結標が、御坂をウリエルの真上100m程にテレポートする。
同時に、操車場のコンテナ8個分程の大きさの塊も、御坂の目の前にテレポートされていた。

御坂「これで終わり、だああーっ!」

巨大な塊を、思い切り殴って『超電磁砲』として放った。
御坂の全身全霊究極の一撃。
それは輪っかの一部とウリエル本体の一部を縦にくりぬいた。
これには、さすがのウリエルも悶絶したようだった。

結標「(今しかない!)沈利ー!」

直後、結標により、滝壺の補助を受け、遠くで力を極限まで溜めた麦野が
御坂と同じような座標にテレポートされた。

麦野「消し飛びなぁぁぁあああ!」

直径100mの、1つの街を壊せそうなぐらいの『原子崩し』の一撃がウリエルを飲み込んだ。

280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:27:38.44 ID:itpxcIft0
結標の能力により、安全に地面までテレポートされた御坂と麦野。
現在、御坂と麦野と絹旗は能力を使い果たしていた。結標も、もう長くは持たない。

麦野「やっ……たの……?」

目の前にはウリエルが倒れている。
御坂と麦野の全力の攻撃により、羽はちぎれていて輪っかも砕けているが、消滅はしていない。

結標「念のため、動きを抑えておきましょうか」

そう言うと、どこからともなく、コンテナ5個分の大きさの塊20個ほどが
次々とウリエルにかぶさるようにテレポートされていった。

結標「はぁ……はぁ……さすがに、これで限界ね」

結標がヘナヘナと地面に座り込む。他の3人も同じ様なものだ。

御坂「やったのね……私達で」

絹旗「ええ」

麦野「ま、私にかかりゃちょろいもんよ」

結標「そうやってすぐ調子に乗る」

御坂「あれ?そう言えば……」

絹旗「超どうしたんですか?」

御坂「淡希の持っているそれ、何なの?」

御坂の言っている“それ”とは、結標の持っている、先端に宝石のようなものがついた
フレイルのことだ。

結標「これね。特注のフレイル。これで目印をつけているのよ」

絹旗「目印?」

結標「そう。本当はあのビルを丸々テレポートできればいいのだけれど
   今の私じゃ、距離は10km、質量は10tまでが限界なのよね」

御坂「自慢を聞きたい訳じゃないんだけど」

口ではそう言いながら、内心では結標のことを素直に感心していた。
後輩の白井黒子が結標と同じテレポーターだからこそ分かる。
距離10km、質量10tは化け者だ。さすが、ここ最近でレベル5第2位までに躍り出ただけはある。

結標「これからの説明に必要なことなの。で、ビルをテレポートできないからって
   ちまちま瓦礫をテレポートするのも効率悪いじゃない?」

絹旗「それは遠回しに私の事を超ディスっているのでしょうか?」

結標「瓦礫より大きいものをテレポートしたい。でもビルは出来ない。
   そんなときにこれを使って、コンクリートを削って線を引くの」

結標「今回の場合は、ビルに線を引いて、区切りをつけた。
   そうすると区切りをつけた部分が、ビルから失くなるのをイメージしやすくなって
   ビルの一部だけをテレポートできるって訳。分かった?」

御坂「うーん。なんとなく?」

結標「あれよ。折り紙をしようとしたとき、正方形の紙がなくて
   長方形の紙しかなかったらどうする?」

御坂「そりゃあ、折り目をつけて、その折り目に沿って、はさみで切るなり
   手で千切るなりで、正方形の紙を作るわ」

結標「それと同じよ。長方形の紙を勘で破いて、正方形の紙を
   生み出すのは難易度高いじゃない?けど折り目をつければ、綺麗に切れるでしょ?」

絹旗「成程。超納得です」

結標「ま、私も先生じゃないから、これ以上上手く説明は出来ないんだけど。
   こんな話は置いといて、帰りましょうか」

281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:28:56.34 ID:itpxcIft0
ちょっと雑談を交わした間に、能力が多少戻った結標は
テレポートで病院に帰還しようと立ちあがった、その時だった。

ウリエル「hjbghhjrghsgthfgmhjzsghv!」

ウリエルが雄叫びをあげて、起き上がった。

麦野「まだ……起き上がってくるって言うのか!?」

見たところかなり弱っている。先程までは雄叫びだけで、暴風が吹き荒れ
吹き飛ばされたと言うのに、今は空気がビリビリするくらいだ。
だが4人の少女達はそれ以上に弱っている。戦うのは愚か、立っているのがやっとの状態だ。

結標(どの道、一旦帰るしかないわね……!)

そう思いテレポートしようと演算したその時
かなり小さめではあるが、風の刃が飛んできた。
それは結標の手前の地面に直撃し、彼女を吹き飛ばした。

御坂・麦野・絹旗「「「淡希!!!」」」

結標「だ……いじょうぶよ」

口ではそう言ったが、弱っている状況で、この一撃はきつかった。
演算が出来ない――!そこへウリエルは次の一撃を放っていた。
もう駄目だ。誰もがそう思った。4人の少女達は反射的に目を瞑っていた。

282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:30:07.71 ID:itpxcIft0
結標「……?」

目を瞑ってから10秒ほど経っただろうか。衝撃は、来ない。
結標は、恐る恐る目を開けた。

女「ハァーイ、科学の子猫ちゃん達。お姉さんが助けに来てあげたわよー」

楽観的な声をあげて、黄色い女がそこに立っていた。

結標「あなたは……?」

女「私はヴェント。魔術師」

結標「てことは、私達の敵!?」

ヴェント「他の奴らはそうかもしれないけど、私は君達を助けに来たんだヨ?
     ま、信じる信じないは君達次第だけど」

御坂「はぁ!?意味が分からないわ!」

ヴェント「悪いけど、これ以上君達と問答している暇はない」

ヴェントがそう言い放った直後ウリエルの風の波動弾が飛んできた。
しかしそれは、ヴェントの肌に触れた瞬間、霧散していった。

ヴェント「私に風の攻撃は効かない」

そう言い放ち、ヴェントはウリエルの真上まで飛んだ。

283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:32:18.63 ID:itpxcIft0
ヴェント「喰らえ!」

ヴェントの風のハンマーが振り下ろされた。
しかし、鈍器で殴ったような鈍い音は一切しなかった。
ズブブと、ハンマーがウリエルに飲み込まれている。

ヴェント「ビンゴ!」

一見不発のように見えるが、これがヴェントの狙い。
初めから攻撃するつもりで、ハンマーを振り下ろした訳ではなかった。

ヴェント「吸収!」

元『神の右席』後方のアックアは、かつて自身の属性と適合する天使ガブリエルの
『天使の力』(テレズマ)を、わずかであるが体の中に抑え込んだと言う。
しかし、それは無謀というものだ。莫大なテレズマを吸収すれば、吸収した者は
そのエネルギーに耐えきれず、内側から爆発する。

だが、それは天使が万全状態の話。
今回の場合は違う。ウリエルは既に瀕死だ。今のウリエルなら吸収しきれる。
そして同時にパワーアップも出来る。ヴェントはそう考えていた。

しかし、現実はそうは甘くなかった。ウリエルの総量のわずか5%。
たったそれだけのテレズマを吸収しただけで、ヴェントの体は悲鳴を上げていた。

ヴェント(ここまでの……力を……!)

だからと言って、ここで退く訳にはいかない。今この現場でまともに戦えるのはヴェント1人。
もしリタイアすれば、少女達は殺され、病院は破壊される。

ヴェント「天使ごときが……なめんなァー!」

ヴェントが咆哮する。体からは血が噴き出す。それでも吸収を止めない。
そうして10%を吸収したところだった。

ヴェント「がは!」

先に限界を迎えたのはヴェントだった。血を噴き出し、地面へ真っ逆さまに落ちていく。

結標「くっ!」

結標が力を振り絞り、ヴェントを一気に地面の数cm上まで横にしてテレポートさせた。

284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:34:10.26 ID:itpxcIft0
ヴェント「くっそ……」

ヴェントは自分が情けなかった。颯爽と助けに参上して、調子に乗ってこのザマだ。
甘かった。瀕死だからと言って、吸収しきれるという考えが驕りだった。

ウリエルは少女達にボロボロにされ、ヴェントに吸収され、もう残り体力10%を
切っているだろう。しかし、10%もあれば、瀕死の彼女たちを蹂躙し、病院を破壊できる。
終わった。さすがにこれは終わった。誰もがそう思った時だった。

一方通行「演出ご苦労さン!仕上げは俺はやるぜェ!」

御坂「アンタ……!」

いつの間にか一方通行が少女達のところに居た。
そして、超巨大な光の拳が現れ、グシャ!とウリエルを一撃で潰した。
一瞬ではあるが、神化したのだ。

ヴェント「やるじゃない……アンタ……」

一方通行「はァ……はァ……当然だ……」

強がってはいるが、一方通行はかなり疲弊していた。
それは無理もなかった。寧ろよくやったと言うべきだろう。

ヴェント「けどまあその力、もう少し温存しとくべきだったかもね」

一方通行「はァ?どう言う意味だ?」

先程の状況でウリエルを倒せたのは一方通行だけだった。
もし一方通行が助けに入らなければ、事はもっと悪い方向に進んでいただろう。
それを温存しとくべきだったとはどういうことか。
寧ろあれ以上のタイミングがあったとでも言うのか。

ヴェント「『四大天使』。ガブリエル、ウリエル、ラファエルときたら、次に来るのは?」

一方通行「『神の如き者』(ミカエル)か」

そんな会話を繰り広げていた時だった。目の前にミカエルが降臨した。

ヴェント「『四大天使』の中でも別格の強さ。
     アンタの力はコイツにとっといてほしかったのよ」

御坂・麦野・結標・絹旗「「「「嘘でしょ……」」」」

一方通行「こりゃあ、万事休すかもなァ……」

285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:35:08.72 ID:itpxcIft0
上条「もしかして……操られているのか……」

ローラ「正解♪その子はもう私の人形だよ♪
    ちなみに、他の大半の魔術師のことも操ったり、弱み握ったりしたんだ♪」

気分が昂ぶっているせいか、いつもの似非古文口調ではなくなっている。

上条「テメェが……諸悪の根源か……」

ローラ「失礼な。私はアレイスターを殺して、世界を平和に導こうとしているのよ」

上条「ふっざけんな!これのどこが、世界平和に繋がるってんだ!
   つーか土御門から、俺の抹殺と学園都市の崩壊も目的だって聞いたぞ!」

ローラ「あら、バレてたの?そんなに興奮すると、血が噴き出しちゃうよ?」

上条「うる、せぇ。テメェみたいなのは、ここでぶん殴ってやる!」

上条はヨロヨロとした動きで立ちあがる。

ローラ「……人の話をちゃんと聞かない人は嫌いなの。もう飽きちゃった。
    レッサー、そいつを消しなさい」

レッサー「……たくないです」

ローラ「え?」

レッサー「やりたく……ないです」

上条「レッサー?」

ローラ「ふーん。私の洗脳に抗うんだ。じゃあもういいや。“弾け飛んで死ね”」

その瞬間、ローラの言葉通り、レッサーは体の内側から弾け飛んだ。

286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:36:41.27 ID:itpxcIft0
上条「な……にが……」

ローラ「使える魔術は、何もイギリス清教所属のだけじゃないの」

今のは、錬金術の最高峰『黄金錬成』(アルス=マグナ)。
しかもアウレオルスのように、鍼で緊張を緩める必要もない。
だが今の上条には、最早そんなことは関係なかった。上条は怒りで我を忘れローラに猛進する。

ローラ「窒息死」

上条の体が、ガクンと勢いを失う。
しかしこの技は一度喰らっている。対策は分かっている。
上条は右手の指を喉の奥に滑り込ませる。
バギィン!とガラスが割れるような音と共に、上条の呼吸が元に戻った。

ローラ「感電死」

瞬間、上条の四方八方を青白い電光が取り囲んだ。
上条は右手を突き出す。それが避雷針の役割を果たし、電光がそこに集中する。
結果、電光はあっさりと消し飛んだ。

ローラ「圧死、および轢死」

虚空から1台の車が降ってくる。上条の後方からは、車が突っ込んでくる。
上条はまず、振ってくる車を打ち消した。その後回転し、裏拳気味で後方から来る車を打ち消した。
しかしそれは、少しの間ではあるが、ローラの目の前で背を向けていると言う事。

ローラ「隙だらけだよん♪」

ローラは上条の背中に触れた。そしてローラの掌から、尋常ではない空気圧が放たれる。
上条の体は何十mも吹き飛ばされ、地面を転がった。

上条「ごふぁ!」

背中の傷と口から血が溢れる。もはや動くことすら厳しい。
地面に這いつくばりながらも、首だけはローラを見た。
そこには、銅、銀、金のゴーレムと、ローラのそれぞれの手には剣が握られていた。

287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:38:46.25 ID:itpxcIft0
ローラ「さて、どうやって殺してほしい?」

ローラとゴーレムが迫ってくる。だが上条は戦う事は愚か、もう動くことすらままならない。

ローラ「……あなたは今、絶望的な状況にあるのよ。今や学園都市の戦力は
    1体につき『聖人』5人を生贄に捧げた、大天使達に割かれている。
    助けが来る確率もない」

ローラ「なのにその目、諦めてない。この状況でも覆せると信じている目。ムカつくのよね」

上条「テメェみたいな奴には……死んでも負けるわけにはいかねぇからな……」

ローラ「あっそ。じゃあ死になさい」

ローラの右手の剣『カルンウェナン』が振り下ろされる。上条は思わず目を瞑った。
ザシュ!と肉を切り裂いた音が響いた。しかし、それは上条のものではない。

上条(一体……何が……)

上条はおそるおそる目を開いた。
そこには、ホスト風な男の持っている刀のようなものが、ローラの心臓を貫いていた。

男「おい、そいつを安全なところに連れてって手当てしてやれ。
  『冥土帰し』からもらった、あの薬を飲ませろ」

誰に話しているんだ。と上条は思ったが、直後に上条の体は抱きかかえられていた。
ドレスを着た、可愛い女の子だ。

ドレス女「本当に良いの?薬は、あなたの為に用意されたものじゃ」

男「誰に向かって口聞いてやがる。俺がそんな簡単に傷つく訳ないだろ。いいから早く行け」

ドレス女「分かったわよ。ていうか、もうその女死んだんじゃないの?」

男「こいつは偽者だ。どっかで俺達の事をほくそ笑んで見ているんだろう」

ドレス女「じゃあ、安全なところなんてないわね。あなたの側が1番安全ね」

男「……分かった。じゃあこの『未元物質』(ダークマター)空間で、おとなしくしていろ」

そう言って、レベル5第1位、垣根帝督は『未元物質』の空間を創り出し上条達を取り囲んだ。

288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:40:54.49 ID:itpxcIft0
直後に、偽者のローラは溶け、本物のローラが物陰から現れた。

ローラ「そんな気休めの檻みたいなので、私を止められるとでも思っているの?」

垣根「ふん。随分と余裕だな。俺の能力の全容を把握しきった訳でもねぇだろうに」

ローラ「その台詞、そっくりそのまま返すわ」

垣根「そりゃあアレさ。俺とテメェには、決定的な違いがある」

ローラ「性別が違うとか?」

垣根「まあ、それもあるかな。けれど、もっと違う決定的なモノ。戦う理由さ」

今の垣根は、上条とドレス女、即ち心理定規(メジャーハート)を守るために戦う。
ローラはとある人間を殺すために戦う。かつての垣根のように。
今なら、一方通行がどうしてあんなにも強かったのかが分かる。

ローラ「もしかして精神論?しかも科学の街で」

垣根「そうやって馬鹿にしているがいいさ。そうやって、俺も負けたんだからな」

ローラ「……よく分からないけど、あなたみたいなSっ気が強い人を、圧倒的な力で
    屈服させるの、楽しいのよねぇ♪」

垣根「黙ってりゃ可愛いのに。歪んだ○○をお持ちのようで」

ローラ「わざわざ邪魔してきたんだから、少しは楽しませてね♡」

垣根「テメェが『もう止めてください』て言うまで、○がせまくってやるよ」

289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:42:51.69 ID:itpxcIft0
心理定規「とりあえず、応急処置は済んだわ。ほら、これを飲んで」

上条は言われた通り、薬らしきものを飲んだ。すると体に活力が戻って来た。
不思議な事に、血も完全に止まって傷もかなり塞がった。

上条「今のは、何だったの?」

心理定規「私もよく分からないわ。あの人が『冥土帰し』から飲むように。
     ってもらったらしいけど」

上条「じゃあ俺が飲んだらヤバかったんじゃ……」

心理定規「かもしれないけど、あの人が良いって言ったんだから良いんじゃない?」

上条「よほど信頼しているんだな。けど、こう言っちゃ悪いけど、多分、あいつじゃ
   ローラには勝てない。いや一方通行でも勝てるかどうか怪しいレベルだ。
   だから、俺も今から一緒に戦う。俺の右手なら、この空間からも出られるはずだ」

心理定規「やっぱり、あなたの右手には特殊な力が宿っているのね」

上条「俺の右手の事を知っているのか?」

心理定規「詳しくは知らないけど、まあ、噂はね。それで、もう薄々分かっていると
     思うけど、あなたにはやってもらうことがあるの。そのために今は休んでいてほしいの」

上条「あの病院に向かっている光を消すことか」

心理定規「そう。どうやらあなたは、この街を救う為のキーパーソンみたいだからね」

上条「じゃあなおさら共闘してローラを早く倒したほうがいいだろ」

心理定規「じゃあ、百歩譲って出るのは良いけど、あなたは構わず病院へ向かって
     こっちはこっちで何とかするから」

上条「いや駄目だ。一緒に戦わないと奴には勝てない。やっぱ俺も一緒に」

心理定規「駄目よ」

心理定規は能力を発動させる。脳に直接作用するため、能力は通じる。
現在の心の距離は、先生と生徒のようなもの。

心理定規「あなたは、ここで大人しくするか、病院へ行くかの2択しかないの。分かった?」

上条「そいつは出来ねぇ相談だ」

心理定規(能力が作用しているのにもかかわらず、抵抗してくる!?)

ならばと、心理定規は再び心の距離を調節。上条にとって最愛の恋人となる。

上条「いくらお前の頼みでも、俺はここから出ないといけない」

心理定規(な……んで……)

簡単な話だった。心理定規の洗脳より、上条の意志が強かった。たったそれだけのお話。
上条は『幻想殺し』で『未元物質』の檻を砕こうとしたその時だった。
突如、外から爆音などが響き渡った。

290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:44:28.11 ID:itpxcIft0
上条「そういや、さっきまでめちゃくちゃ静かだったけど」

心理定規「この空間は、外界からの音や光景を全て遮断してしまうからね。
     もちろん、この中で起こった出来事も、外からは把握できない」

上条「じゃあ、その効果が切れたってことは」

心理定規「待って!まだ音は断続的に響いている!きっとあの人が負けた訳じゃない!」

上条「お、落ち着け。とりあえず、俺も加勢する。だからこの檻砕くぞ」

心理定規「駄目なの。あなたはここにいて。じゃないと、私」

上条の腕にしがみついて、涙目になりながら、上目づかいで必死に訴える心理定規。
その姿に、上条は不覚にもときめいてしまった。
それは現在の心の距離を考えると当たり前のことだった。

きっとこの少女は、垣根に何かあったと不安なのだろう。
だから、せめて上条をここから出さないと言う、垣根の言いつけだけは果たそうと必死なのだろう。

だからこそ、上条はこの檻から出なければならない。少女の不安を拭う為に。垣根を助けるために。上条はなんとなく自分が能力に干渉されているのだろうと言う事は分かっていた。
上条は自分の頭を触り、能力を解除した。
いつの間にか外の音が聞こえなくなって、再び静けさだけが漂っている。
右手で檻に触れた。檻が砕けた瞬間に広がった光景は

余裕綽々のローラに、無傷で倒れている垣根だった。
その状況に誰よりも素早く反応したのは心理定規だった。

心理定規「帝督!?帝督!?」

心理定規は垣根を抱え揺さぶるが、何の反応もない。まるで死んだように。

291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:47:03.23 ID:itpxcIft0
上条と心理定規が檻に入っていた5分間

垣根「時間がねぇんだ。さっさと決める」

垣根の背中から6本の白い翼が生えた。右手には『未元物質』で出来た白い刀。
その羽をはばたかせ、垣根は一瞬でローラへ肉迫し、その刀を縦に振り下ろしていた。

当然ローラは、右手の『カルンウェナン』と左手の『エクスカリバー』をクロスしてガードする。

しかし、垣根の刀は2本の剣を“すり抜けて”、そのままローラに振り下ろされた。
ガキィン!と金属音が周囲に響いた。

ローラ「くっ!」

ローラは一旦距離を取る。その顔面と、胸のあたりが“割れていた”。

垣根「なんだぁそりゃあ。鎧か?」

ローラは体表を覆うように黄金の鎧を纏っていた。そのため、実質無傷のままである。

ローラ「その刀、すり抜けたり、実体に戻したりすることが出来るのか!?」

垣根「へぇ。この刀のトリックを1発で見破るとはな。案外やるじゃねぇか」

ローラ(攻められるのは分が悪い。こちらから攻める!)

今のローラは、霊装の力や特殊な術式で、霊長類を遥かに超越した運動能力を宿している。
一瞬で垣根に肉迫し、まずは左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。

当然、垣根は右手の刀でガードする。すると垣根の左側が開くのは必然。
ローラはそこに右手の『カルンウェナン』を滑り込ませる。

ガキィン!と『カルンウェナン』が垣根の左手の刀にガードされた。

垣根「二刀流は、何もお前だけじゃないんだぜ」

しかもそれだけではない。垣根の翼が何やら蠢いている。ローラは距離を取る。

292: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:48:30.28 ID:itpxcIft0
垣根「そうだな。あまり俺に近付かない方が賢明かな。この翼も刃に成り得る。
   いわば八刀流かな」

ならばとローラは、先程から手持無沙汰だった、3体のゴーレムを操る。
1体5mほどの巨大なゴーレムだが、時速60kmで垣根に突っ込む。

垣根「そっか。まずはこいつらから消さなきゃな」

垣根の右3本、左3本、それぞれの翼達が巨大な光線状となり銅と銀のゴーレムを飲み込んだ。
残りは金のゴーレムのみ。

垣根「こんなんどうだ?」

垣根の目の前の空間から、いきなり巨大なビームが放たれた。『原子崩し』の応用だ。
それは、一瞬にして金のゴーレムを飲み込んだ。

垣根「もう終わりか?」

ローラ「調子に乗るな」

ローラは垣根の真上に、10tに及ぶ水のハンマーを生み出し、振り下ろした。
しかし垣根は、6枚の翼で自分を包み込みガードしていた。つまりは全くの無傷。

垣根「じゃあ、そろそろ終わらせるか」

垣根が6枚の翼をはためかせ、ローラへ肉迫し、刀を振り下ろした。

ローラ「ゼロにする」

ガードのモーションすらしなかったローラへ、刀が直撃した。
しかし、全く手応えがない。垣根は一旦距離を取る。

293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:50:17.45 ID:itpxcIft0
垣根「テメェ、何をした?」

ローラ「ソーロルムの術式。術者が認識した武器による攻撃力を『ゼロにする』というもの。   
    効果時間はおよそ10分。その間対象は『ゼロ』のままとなる。
    もちろん限度はあるけど、貴方程度なら完全に攻撃力をゼロにできる」

ローラ「私が認識したのは『未元物質』。あなたは10分間『未元物質』を使った攻撃では
    私を傷つけることは出来ない。さて、どうする?」

垣根「どうもしねぇよ。何も能力自体が完全に使えなくなった訳でもねぇし
   武器が駄目なら素手もあるし、認識されなけりゃ武器もアリなんだろ?
   そんだけありゃあ、充分だ」

言ったそばから、懐から拳銃を取り出し、ローラへ放った。
再び黄金の鎧を纏っていたローラには、避けるまでもない。カンカン!と弾丸は弾かれていく。

垣根「やっぱ堅いな。じゃあこれはどうよ?」

垣根は素早く弾丸を入れ替え、発砲した。
別にソーロルムの術式で『ゼロにする』ことは可能ではあったが
どうせ鎧は貫けないので、ローラは敢えてそれをしなかった。

ローラの思惑通り、弾丸は鎧を貫く事は無かった。
それでも若干ではあったが、弾丸は喰い込んた。

垣根「弾けろ」

瞬間、喰い込んだ何発もの弾丸は炸裂した。
垣根は追い討ちをかけるように、どこに収納していたのか10個ほどの手榴弾を、ローラへ投下した。
ボガァァァン!と辺りに壮絶な音が響き渡った。

294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:52:41.48 ID:itpxcIft0
垣根(出血大サービスで、持っていた武器をほとんど使ったんだけど)

煙の中には平然と立つ1つの影。

垣根(やっぱあの鎧をどうにかしねぇと駄目か)

煙が晴れ、改めて良く見ると、鎧にヒビが入っている。だがそれだけ。
傷を負わせてはいない。しかも鎧は再生していく。

垣根(このままじゃ分が悪いか。結局10分後には、またゼロにされるかもしれねぇが
   ここは一旦逃げて時間を稼ぐか)

垣根は翼をはためかせ、空中に漂う。

ローラ「分かってる?『未元物質』をゼロにしたと言う事は、その防御力もゼロになっている
    と言う事。つまり、そこに匿っている子猫ちゃん達の檻も
    あっさり破壊できるってことだよ?」

垣根(しまった!)

ローラ「灰は灰に、塵は塵に、吸血殺しの紅十字!」

ローラの両手から、3000度の炎が上条達へ向かう。

垣根「させるかよ!」

垣根は炎と上条達の間へ入る。

ローラ「あは♪君が割って入っても、能力で防ぐ事は出来ないんだよ!」

垣根「だから、こうするんだよ!」

垣根は6枚の翼を器用に操り、目の前の地面を捲りあげ、即席で土の壁を創り出した。
結果、壁は砕けるも、垣根も上条達も無事だった。

垣根(やつはどこへ!?)

ローラ「ライトニーングサンダー!」

声は上から。ビリビリ!と言う音と言葉から推察するに、電撃系の攻撃だろう。
ならばと、垣根は10m先程に、先端を尖らせた棒状の導体を生み出した。
結果、それは避雷針の役割を果たし、ローラの出した稲妻はそこへ導かれ
垣根も上条達も無傷だった。

ローラ「やるわね♪ならば直接行くとするわ」

垣根「させねぇ!」

ローラは右手の『カルンウェナン』を上条達の檻へ振り下ろした。
そこへ垣根は割って入り、ローラの右手首を左手で掴む。
黄金の鎧で覆われている以上、握り潰す事は出来ない。
けれども、覆っている鎧ごと捻りあげる事は出来る。
垣根はローラの右手を思い切り捻る。
ローラはたまらず『カルンウェナン』を落とすが、構わず左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。
垣根は『カルンウェナン』を拾い上げ応戦する。

ローラ「ゼロにする」

垣根(こいつ、自分の武器にためらわず――!)

ゼロになった『カルンウェナン』を『エクスカリバー』があっさりと砕き
そのまま垣根をも切り裂こうとしたが、ギリギリのところでその凶刃を避けた。

295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:54:05.99 ID:itpxcIft0
ローラ「あーあ『カルンウェナン』が砕けちゃったよ。どうしてくれるの?」

垣根「お前がやったことだろ」

ローラ「はぁ……もういいや。なんかこのまま戦い続けても、こっちが損するだけな感じするし。
    なかなか楽しかったけど、もう飽きちゃった。“死んで”」

瞬間、垣根は全身から力が抜け、ゆっくりと仰向けに倒れていった。
傷は無く、出血もなく、病気でもない。ただ、死んでいく。

垣根(ふ……ざけんな……)

こんな理不尽な事があるのだろうか。強い能力を持ってしまったばかりに『暗部』に
入れられ、一方通行に瀕死状態にされ、それでも死ねず脳を三分割されながら生かされ
この学園都市の危機にあたって、利用される為に蘇った。それでも護りたい人がいたから
ここまで垣根は垣根なりに精一杯生きてきた。それは決して誇れる人生ではなかったけど。

垣根(だからって……こんな最期って……ねぇだろ……)

先程までの炎や雷なら防ぎようはあった。
しかし言葉1つで、しかも「死ね」なんてあまりにも抽象的な表現では対策のしようがない。
そうして垣根の体は完全に地面に倒れた。『死』が確定した。

296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:55:12.01 ID:itpxcIft0
そうして垣根が倒れてから約30秒。
甲高い音と共に檻が砕かれ、中から上条と心理定規が現れた。

心理定規「帝督!?帝督!?」

垣根を抱えながら必死で叫ぶが、返事は無い。

上条(まさか……)

垣根は見たところ無傷。なのに電池が切れたように動かない。
この状態は知っている。かつて「死ね」と言われた姫神のようだ。

上条「くそ!」

上条は急いで垣根に触れる。しかし、何も起こらない。『死』は既に確定してしまったからだ。

ローラ「ははは!もう遅い!もう死んでるんだよぉ!」

上条「テンメェェェエエエ!」

上条は怒りで我を忘れ、ローラに突っ込む。

ローラ「倒れ伏せ。上条当麻」

瞬間、ズン!と上条は地面に伏せられた。アウレオルスとは段違いの力。
それでも右手を少しずつ動かし、指を噛んでこの状況から逃れようとするが
ローラは右手を踏み、それを阻んだ。

上条「ぐああああ!」

ローラ「お前なんてなぁ!右手がなけりゃ、ただの男子高校生にすぎないんだよぉ!」

垣根に案外苦戦した苛立ちと、上条をコケにしている興奮で
ローラのテンションは最高潮に達していた。

297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:56:08.98 ID:itpxcIft0
心理定規「帝督!お願い目を覚まして!私じゃ何も出来ないから!
     無理を言ってるのは分かってる!
     けれど、この状況を変えるには、あなたしかいないの!」

ローラ「あははははは!何言ってるの?そいつはもう死んでるんだよ?
    何言ったって聞こえてるわけなーいじゃーん!」

上条「笑うな……人の死を、笑ってんじゃねぇー!」

その時だった。上条の叫び声に応えるように、バグン!と垣根の体が跳ねた。

心理定規「ふぇ?」

ローラ「なんだ?何が起こった?」

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:56:36.86 ID:itpxcIft0
――うるせぇな、あいつ。人の死を笑うな?誰が死んだって?
何1つ守れちゃいねぇのに、死ねるわけねぇだろ――

――私じゃ何も出来ないから、目を覚まして?当たり前だ。
ハナっからお前に期待なんざしてねぇんだよ。お前は黙って俺に守られてろ――

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:57:14.61 ID:itpxcIft0
心理定規に抱えられながら、垣根はゆっくりと目を開けた。

垣根「よぉ」

心理定規「え?あなた、死んだんじゃ……なかったの?」

垣根「なんだ、その死んでた方が良かったみたいな言い方は」

心理定規「え?いや、あの、そんなつもりは」

垣根「分かってるよ。冗談だ」

などと言いながら、心理定規の頭をワシャワシャと撫でた。

心理定規「ちょ、やめてよ。髪が乱れる」

垣根「お前が泣いてたから、撫でてやってんだろ」

心理定規「誰のせいだと思ってるのよ……」

垣根「悪かったな。でも、もう大丈夫だから」

そう言って垣根は立ちあがった。

300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:58:15.82 ID:itpxcIft0
ローラ(馬鹿な!?何があった!?)

能力の不発?いや、それはあり得ない。
現に上条には打ち消されはしたが、ちゃんと能力は効いていた。
今も、倒れ伏せ。という命令が依然続いている。だとしたら、残った可能性は1つしかない。

一度死んで蘇った。もうそれしか考えられない。

ローラ(にわかに信じがたいが)

まあいい。例え奇跡的に生き返ろうが、また殺せば良いだけ。

ローラ「死ね」

再び、容赦なく言葉を放った。
しかし、垣根は平然と立ったままだった。

ローラ「あれ?」

垣根「おいおい、死ねって言われて素直に死ぬ奴がいるかよ。馬鹿じゃねぇの?」

上条「何が起こって……」

ローラ「くっ!死ね!死ね!!死ね!!!」

ローラは何度も同じ言葉を口にするが、垣根は平然としていた。

301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 01:59:46.96 ID:itpxcIft0
垣根「もう諦めろ。どうやら俺はレベル6に進化したみたいだ。誰であっても、今の俺は殺せない」

心理定規「嘘……」

垣根「自分で言うのもなんだが『一度死んだ者が復活した時、奇跡の力を得る』
   歴史上、こう言う例はいくつか存在するらしいぜ。多分、俺もそれなんだろう」

ローラ「進化したからと言って、私の能力が通用しないだと……」

垣根「さて、そろそろその汚い足をどけてもらおうか」

そう言った次の瞬間には『未元物質』で作られた刀で、ローラは切り裂かれていた。
先程までの羽をはばたかせるとか、そういった動作は一切なかった。
故に動きが予測できず、気付いた時には切り裂かれていた状態だった。

ローラ(しかも……鎧ごとあっさりと……!)

そんな事を考えながら、ローラは超高速で距離を取る。しかし、今の垣根はそれをも許さない。

垣根「遅ぇよ」

超高速で逃げようとしたローラに一瞬で肉迫し、ブン!と垣根は右足で蹴りを繰り出した。
ローラは『エクスカリバー』でガードをしたが、バゴォン!と垣根の蹴りは
『エクスカリバー』を易々と砕き、ローラへ直撃し、ノーバウンドで100m先のビルまで
ぶっ飛ばした。

302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 02:01:47.34 ID:itpxcIft0
ローラ(ソーロルムの術式の効果もなくなっているのか?
    とりあえず、砕かれた鎧と傷の回復を……)

そう考えたローラであったが、既に垣根が目の前に居た。

垣根「俺にはもう勝てねぇよ。さっきテメェが『死ね』って言っても死ななかっただろ?
   俺の能力の方が上ってことだ」

言いながら、垣根はローラの腹を踏みつける。
その足の重さは、どう考えても人間のものじゃなかった。
踏まれた事は無いが、インド象よりも重いのではないか。

ローラ「く……足よ……吹き飛べ……!」

必死に言葉を絞り出したローラだったが、垣根の足に全く変化はない。

垣根「テメェのその言葉だけ?で自分の思い通りにするやつ。確かに凄えよ。
   相手にまで干渉出来るんだからな」

垣根「その点、俺が思い通りに出来るのは、自分の身体だけだ。
   けど、逆に言えば今の俺は自分の身体だけなら、最弱にも無敵にもなれる」

垣根「簡単に言うぜ。俺は現在『未元物質』そのもの。
   俺そのものがこの世の法則に当てはまらない。
   俺が思えば、この世界の法則では死ななくすることもできるし
   光より速く動く事も出来るし、ダイヤモンドよりも硬くなれるし、質量だって自由自在だ」

垣根「分かったか?もうお前は俺には勝てない。最後のチャンスだ。
   このままもう何も抵抗せず、大人しくするなら命は見逃す。どうする?」

ローラ「ハイ……ワカリマシタ……モウ……ナニモシマセン……」

垣根「案外物分かり良いんだな。いいだろう。見逃してやる」

垣根は足をどけ、踵を返す。

ローラ(なーんて、馬鹿じゃないの!お前は殺せなくても上条当麻は殺せるんだよぉ!)

ローラ「死ね!上じょ」

しかし、その言葉は最後まで続く事は無かった。
垣根の背中から生えている6枚の翼の内の1つが、ローラの顎をもぎ取ったからだ。

垣根「俺が言えた立場じゃねぇんだけどよぉ。お前性根から腐ってやがるな。
   やっぱ殺すしかないか」

ローラ「……!……!!」

上条「やめろ!垣根!」

垣根「無理」

上条の言葉も聞かず、垣根は6枚の翼でローラを細切れにした。

303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/15(月) 02:02:47.49 ID:itpxcIft0
上条「垣根ぇ!何もそこまでしなくても!」

上条は垣根のもとへ駆け、その胸倉を掴む。瞬間、垣根はただの人間に戻った。

心理定規「ちょ、ちょっと!帝督はあなたを助けるために殺したのよ!
     あの女は、ああやって諦めたふりをして、あなたを殺す気満々だったのよ!
     殺すしかなかったのよ!」

上条「けど!」

垣根「盛り上がってるとこ悪いが、疲れた。少し眠らせてくれ」

言ったそばから、垣根の体から力が抜けていくのが、胸倉を掴んだ手から伝わってくる。

上条「お、おい!大丈夫か!」

心理定規「帝督!」

心理定規は上条を突き飛ばし、垣根を抱きかかえる。
抱きかかえた垣根から、すーすーと寝息が聞こえる。

心理定規「よかった。あ、ごめんなさいね、突き飛ばしたりしちゃって。
     帝督はもう無理そうだから、あなた1人で行ってくれる?」

上条「……ああ」

垣根の事が若干許せない上条であったが、これ以上時間を割いている余裕もない。
とにかく病院へと駆け出した。

321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 02:50:22.54 ID:iNh2rC4q0
イギリス清教 第零聖堂区『必要悪の教会』

隻眼の男「ローラの野郎、あれだけ調子こいてた割にはあっさり死んだみたいだな」

それが意味する事は、今まで操られていた魔術サイドの人間達が、正気を取り戻したと言う事。

隻眼の男「つーことは、こいつらの洗脳も解けたと言うことか。ったく、だりぃ」

『こいつら』とは、現在進行形で行われている、インデックスの『自動書記』(ヨハネのペン)の
完全修復と覚醒の儀式を、隻眼の男と一緒に護っている魔術師達の事だ。

傾国の女「私……何を……」

エリザリーナ「く……」

マタイ=リース「ローラの奴め……」

隻眼の男「洗脳が切れたなら、もう邪魔なだけだよな。死ね」

瞬間、3人の魔術師はグシャ!と一瞬で圧死した。辺りに血の海が広がる。

隻眼の男「あーあ、暇だなー。なんか、楽しい事ねぇかなー」

その時だった。結界で守られていた扉が開かれた。そこには男と女。

オッレルス「ギリギリ間に合わなかったか」

322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 02:52:46.51 ID:iNh2rC4q0
隻眼の男「オッレルス……!」

隻眼の男は、胸の高さまで腕を上げ、下ろす。先程3人の魔術師達にやった攻撃と同じだ。
それでオッレルスは潰れるはずだった。

だがオッレルスは右手を上にかざしただけで、3人の魔術師達とは違い潰れる事は無かった。

隻眼の男「……やっぱこの程度の攻撃じゃ死なねぇのか。あの噂は本当だって事か」

オッレルス「あの噂って?」

隻眼の男「テメェは本来、魔神になれるほどの実力を持っているのに、子猫を助けるために
     その機会を棒に振ったって事だ」

オッレルス「本当の事だけど?それは魔神になった君が言うべきセリフではない気がするけどね。
      オティヌス」

オティヌス「何で、子猫如きの為に、1万年に1度あるかないかのチャンスを棒に振った?」

オッレルス「子猫の命の方が、大事だったからに決まっているだろ」

仮にその子猫に100億円の価値があったからとかだったらまだ分かる。
しかしこの男は、たった1匹の小動物の『命』が大事だと言う理由だけで
『魔神』になる権利を捨てた。

オティヌス「余裕かましやがって。ムカつくぜ。最高にムカつく。殺す。ここで殺す!」

先程と同じように、腕を上げ、下ろす。
ただし、威力は先程の比ではないくらいに強く、しかも側に居るシルビアや
その空間ごと押し潰すつもりの攻撃。

対して、オッレルスも先程と同じように右手を上に挙げた。
それだけで、周りの地面はともかく、オッレルスとシルビアが潰されることは無かった。

323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 02:54:28.79 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「シルビア、君じゃあオティヌスには勝てない。その辺に隠れていてくれ」

シルビア「……分かったわ」

本当は出来れば共闘したい。だがシルビアには分かっていた。
自分がいても足手まといになるだけだと。

オティヌス「女を気遣うとは、余裕あるじゃねぇか」

オッレルス「今度はこっちの番だ。『禁書目録』は返してもらう」

無視して、オッレルスは左手を突き出す。『北欧王座』の『説明できない力』が前方に放たれる。
それは常人はもちろん、オティヌスですら不可視の攻撃――!

オティヌス「これが噂の『北欧王座』か!」

しかしオティヌスには、可視は出来なくとも何か強力なエネルギーが
放たれている事は分かっていた。腕を上げ、降ろす。
それだけでオティヌスの前方の『説明できない力』は潰れ、地面はへこんだ。

オッレルス「成程。君の重力、実に厄介だ。なら、これはどうかな」

オッレルスは右手を突き出す。
同じく『説明できない力』が放たれる訳だが、先の一撃とは違う。

オティヌス「っ!」

何かを感じたオティヌスは、後方に飛び退く。
すると先程まで居た空間に『説明できない力』が放たれていた。

324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 02:55:56.92 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「座標攻撃も出来んのか……!」

これでは重力で潰せない。面倒だ。ならば本人を潰すまで――!

オティヌス「死ねぇ!」

オティヌスの右手から直径30mほどの、触れれば吸いこまれ、圧し潰される重力球が放たれた。

対してオッレルスは右手を突き出し、重力球の中心に『説明できない力』を叩きこんだ。
それだけで重力球は内側から弾け飛んだ。

オティヌス(右手は座標攻撃、左手は普通の攻撃か)

オティヌスがそんな事を考えている内に、オッレルスは左手を突き出す。

オティヌス(普通の攻撃か。それなら――)

そう考え腕を上げ、降ろす。それで前方の『説明できない力』は押し潰された。
だが“それ以外の方向から”とんでもない衝撃。

オティヌス「ごっ、はぁ!」

肉体の表面から芯まで、その全てに均等に浸透するような不自然なダメージ。
しかし何故?オティヌスにはダメージより、疑問の方が大きかった。
そこへ考える暇も与えまいとオッレルスが突っ込んでくる。

325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 02:58:56.42 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「一発当てたからって、調子こいてんじゃねぇぞぉ!」

前方に重力の波動を放つ。それでオッレルスは潰れるはずだった。
しかし、オッレルスの姿は突如オティヌスの視界から消え去った。
それはオッレルスが一瞬でオティヌスの後方に周り込んだからに他ならない。

オッレルスは『説明できない力』を纏った右拳を繰り出した。これはもらった!と思ったが
拳が当たる直前に振り向きかけたオティヌスが微笑んでいるのをオッレルスは見逃さなかった。
そして、オティヌスにあと2cmというところで激痛と共にオッレルスは弾かれ
数十m先の壁に激突した。

オッレルス「これは……!」

考える暇もなく、追い討ちをかけるように
今度はオティヌスに向かって体が引き寄せられていく。

オッレルス(まさか、引力と斥力まで使えるのか――)

オティヌスは重力を纏った拳を構えている。上等だ。と
オッレルスも引力の勢いを逆に利用し、突っ込む。
1秒後、2人の拳は交錯し、ゴシャア!と壮絶な音が辺りに木霊した。

326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:03:40.17 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「がっ!」

拳が直撃したのはオッレルスだけだった。
初めから来ると分かっていてクロスカウンターをかましたオティヌスと
咄嗟の機転で攻撃に回ったオッレルスの差がこれだった。

しかも引力の効果はまだ続いている。
それはつまり、普通なら拳を受けぶっ飛ばされるはずが、まだそこに留まっていると言う事。
即ち、オティヌスがオッレルスを殴り放題だと言う事――!

オティヌス「タコ殴りじゃー!」

オティヌスの追撃の拳が放たれる。しかし、オッレルスはそれをいとも容易く右手で掴んだ。
と同時にオティヌスは気付いた。
殴り放題という至近距離は、オッレルスの手も届くと言う事。
オッレルスは左手をオティヌスの体に添える。

オティヌス「やべ、斥りょ」

オッレルス「遅い」

オッレルスの左手から、超至近距離で『説明できない力』が放たれた。
そのあまりの威力に、オティヌスは一瞬で数十m先の壁に激突した。
もう後退は出来ない。そこへオッレルスが右手を出しているのが見えた。座標攻撃が来る。

オティヌス(どうする――!)

オティヌスは何となく分かっていた。
座標攻撃が自分の居る座標に叩きこまれるのは当然、上にジャンプしようが
左右に移動しようが、敢えて前方に飛び込もうが、その全ての座標に
攻撃がセットされているだろうと。

だからオティヌスは、微妙に斥力を放ちながらジャンプした。
結果、本当にオティヌスの上にセットされていた『説明できない力』は弾かれた。

327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:07:09.02 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「君、案外冷静なんだね」

オティヌス「テメェこそ、あのタコ殴りにされるって状況で
      俺の拳を1発で掴み。逆に反撃してくるとはな。
      さすが『魔神』に最も近い男だと言われただけはあるぜ」

オティヌス(しかし、長期戦になるとマジでヤベェな。ここは一気に決める!)

オティヌス「喰らいやがれぇ!」

叫びと共に、突如オッレルスの周辺に7つ程の重力球が出現した。
その1つ1つが『聖人』ですら一撃で仕留める威力のをだ。

オティヌス「座標攻撃が出来るのはテメェだけじゃねぇんだぜぇ!」

対してオッレルスは、両手を水平に広げた。
そして全身から『説明できない力』を放ち、重力球を消滅させた。

オッレルス「別に俺の力は、手から出すと決まっている訳じゃないんでね」

オティヌス「くそが!ならこれはどうよ!?」

オティヌスは両手を上げ、下ろした。
重力のほとんどを分散させずに、敢えてオッレルスの真上に集約させ、下ろした。
しかしそれは、少し移動しただけで、重力の範囲からは逃れられると言う事。
オッレルスは攻撃を避けるのも兼ねて、両手を振り下ろして隙だらけのオティヌスに突っ込む。

オティヌス(かかったな!)

しかしこれはオティヌスの計算通り。
こうして突っ込んできたオッレルスを斥力で弾き、隙を作ろうと言う魂胆だった。
そうしてオティヌスは、拳があと2cmというところで、オッレルスに斥力をぶつけた。

だが、オッレルスは弾かれない。

オティヌス(何が!?)

間違いなく斥力の煽りは受けている。証拠にオッレルスの拳や体がビリビリと震えている。
斥力の煽りに弾かれないのではなくて、耐えている。
見れば、何もない後方に左手を突き出している。それが意味する事は、噴射。
左手から『説明できない力』を噴射し続けて、斥力に耐えている――!

328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:08:02.28 ID:iNh2rC4q0
オティヌス(くっそがぁ!)

オティヌスも斥力を最大まで強くする。それはもう、ビルすら吹き飛ばすほどの威力。
第零聖堂区『必要悪の教会』でなければ、全てが粉微塵に吹き飛でいただろう。
それでもオッレルスは噴射し続け耐える。

オッレルス「おおおおおおおおおおおお!」

常に冷静なオッレルスが、おそらく人生で初めての咆哮をした。拳があと1cmまで迫る。

オティヌス「おおおおおおおおおおおお!」

負けじとオティヌスも咆哮する。拳の距離が3cmになる。

オッレルス・オティヌス「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」

2人の咆哮が重なる。そして2人の咆哮以外の全ての音が消え――

329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:10:00.06 ID:iNh2rC4q0
ゴギャア!と1つの音。オッレルスの拳が、オティヌスの顔面を捉えた音だった。
それは確かに、顔面しか捉えていないはずなのに『説明できない力』の効果なのか
まるで体中に拳を喰らったようだった。勝敗は決した。

オッレルス「……ふぅ」

シルビア「オッレルス……」

心配だったのか、シルビアは物陰から出てきてすぐにオッレルスに抱きついた。
そんな彼女の頭を撫でながら、倒れているオティヌスに言う。

オッレルス「『禁書目録』を返してもらおうか。
      多分俺も時間をかければ儀式を中断することは出来ると思うが
      時間もないし、出来れば君に頼みたいんだが」

オティヌス「は?何でだよ?」

オッレルス「君の負けだからだよ。負けた奴は勝った奴の言う事を聞くのは当然だろ?」

オティヌス「だから、俺はまだ負けてねぇのに
      何で言う事を聞かなきゃいけないんだって聞いてんだよ」

オッレルス「何を言って――」

瞬間、オティヌスの体がバグン!と跳ね、同時にとんでもない衝撃波が繰り出された。

330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:11:41.23 ID:iNh2rC4q0
オッレルス達は、衝撃波が繰り出される直前に何とか飛び退き、直撃を回避した。
一方オティヌスはと言うと、平然と立ちあがっていた。その背中からは黒い翼。
手の爪は異様に伸び、そして黒い尻尾に、頭からは2本の角が生えていた。

オッレルス「君、その姿は――」

しかし、オッレルスの言葉は最後まで続かなかった。
オティヌスが一瞬でオッレルスに肉迫し、その顔面を思い切り殴りつけたからだ。
その一撃は、ぶっ飛ばされたオッレルスが第零聖堂区『必要悪の教会』の壁を易々と破り
イギリスの街を数kmに亘って転がるほどの威力だった。

オッレルス「がは!」

削板に音速の2倍以上の速度で叩きつけられようが、オティヌスの斥力で弾かれようが
平然としていたオッレルスが、ここで明確に悶絶した。

オッレルス(あの姿は……がっ!)

考える暇すらなかった。ぶっ飛ばされてから2秒も経っていないのに、オティヌスは
オッレルスの顔面を蹴り上げ、地面から30mほど浮いた彼を空中でタコ殴りにした。
それでオッレルスの意識は中断され、無残に地面へと落下していった。

331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:15:10.27 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「はは。案外、呆気ねぇもんだなぁ」

ボロ雑巾のようになっているオッレルスを見下しながらそう言った。
そこへ音速以上の速度で走ってきたシルビアが、オッレルスを介抱した。

シルビア「オッレルス!オッレルス!!」

抱え、呼びかけるが返事は無い。一応呼吸はしているので生きてはいるが。

オティヌス「あーあ。所詮『魔神』に“近い”だけで『魔神』じゃなけりゃ
      『魔神』の領域に達した俺には勝てないってことか。
      それにしても差があり過ぎだろ。もうちょっとは楽しめると思ったのに」

シルビア「アンタ……何をしたの?その体は一体……?」

オティヌス「見たらわかるだろ。今の俺は言葉や形だけじゃなく、本当の意味で
      『魔神』になったんだ」

『魔神』とは『魔術を極めすぎて、神様の領域にまで足を突っ込んでしまった』人間の事である。よって厳密には、まだ不完全な『北欧王座』しか使えないオッレルスも
『魔神』という座だけは冠していても、実際はオッレルスに負けるほどでしかないオティヌスも
『魔神』とは言えない。それなのにオティヌスは“本当の意味で”『魔神』になったと言った。

オティヌス「まあ魔術を極めた訳じゃねぇけど、神に等しい強さの力を取り込んだんだから
      『神』って言う表現は間違いでもねぇよなぁ」

シルビア「どう言う……意味……?」

オティヌス「聖人って言うのは、身体は丈夫でも、頭の方は弱いのかなぁ?」

シルビア「いいから、答えなさいよ……!

オティヌス「……この状況で強気だとは、お前、面白ぇな。
      さっき俺が言った事思い出せ。そしたら分かるだろ」

シルビア「まさか……いや、けど、そんなこと、有り得ない……!」

オティヌス「ま、普通はそう言う反応だわなぁ。
      自慢じゃねぇけど、多分、この世界でこんな事が成功したの俺だけだと思うぜ」

狼狽するシルビアに、オティヌスは笑ってそう言った。

332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:18:38.31 ID:iNh2rC4q0
オティヌスが多分世界で初めて成功した事。それは悪魔との融合。

シルビア「冗談でしょ?悪魔との融合なんて、普通の人間なら、死んでもおかしくないのに……」

オティヌス「だよなぁ。我ながら凄ぇと思うもん」

悪魔と融合するためには、まずは悪魔を召喚しなければならないのだが
これについては悪魔に関する魔道書を1冊でも読み、人間を何人か生贄にすれば可能になる。
召喚条件はそこまで難しいものではない。
そしてオティヌスのように融合が成功すれば、莫大な力を得る事が出来る。

ではなぜ世界中の魔術師はそれをしないのか。答えは実に簡単。
人間を生贄にするという、明らかな倫理観の無視と、リスクが大きいからだ。

召喚した悪魔と融合、もしくは力を借りる為には、召喚した悪魔に勝利しなければならない。
それは容易なことではなく、返り討ちにあって殺されるのも珍しくない。
仮に勝利できたとしても、力を取り込んだ瞬間にその莫大なエネルギーに耐えきれず
大抵の人間は死ぬ。今のところ、ここまでなら魔術世界でも数例確認されて来た。

ここからは実際の例がないので何とも言えないが、もし取り込めたとしても
取りこんだ悪魔に乗っ取られる。また精神崩壊や病で死ぬ。というのが予測されている。
要するに『ハイリスクローリターン』と言う事だ(もし成功したら、悪魔の力を使役できるので
ローリターンと言う訳ではないが、リスクと照らし合わせて考えた場合)。

目の前の男は、これだけの条件をすべてクリアしたとでも言うのか。
有り得ない。そんなことは、有り得るはずがない。

シルビア「嘘……嘘よ!そうよ。これは幻なのよ……!」

オティヌス「認めろよ。実際俺の見た目は変わり、オッレルスを圧倒しただろ?それが証拠だ」

それでもまだ信じられなかったシルビアは
自分でもよく分からないまま、思わずこんな質問をしていた。

シルビア「じゃあ、アンタと融合した悪魔は何なの……?」

オティヌス「サタン。悪魔の中でも上位のサタンだよ」

シルビア「悪魔と融合するなんて……アンタの目的は一体何なの……!?」

オティヌス「強くなりたかったから。ただそれだけのことさ」

333: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:20:34.87 ID:iNh2rC4q0
シルビア「そんな……アンタ、正気じゃない……!」

オティヌス「そーかぁ?もともと魔術なんてのは『才能のない人間が、才能のある人間へ
      追いつくために』存在するんだぜ。『強くなりたい』という俺の願望は
      それに最も近いだろ?」

シルビア「じゃあ聞くけど、そんなに強くなった先に何があるって言うの!?」

オティヌス「そりゃあ、まだ分からねぇよ。とりあえず最強無敵になってから考える」

オティヌス「つーかよぅ、それだったら何でお前らも強くなったんだよ?あ?」

シルビア「それは」

オッレルス「それは、大切な人やモノを守るためさ」

答えたのは、オッレルスだった。

オティヌス「今意識が回復したのか、それともだいぶ前から回復はしていて、
      黙って俺の話を聞いていたのか。ま、どっちでもいいけどよ。
      俺とコイツとの会話を邪魔すんじゃねぇよ」

そう言ってオティヌスは、オッレルスの頭を踏みつぶそうとしたが、
思い切り地面に足を降ろした頃には、既にオッレルスとシルビアの姿は無かった。

オティヌス「逃げたか」

だが今のオティヌスの魔力感知はずば抜けており、イギリス国内程度なら正確に位置を把握できる。追いかけて殺す事など造作もなかったが

オティヌス「ま、この世ともうすぐお別れする事になるんだ。少し待ってやるか」

取り込んだ悪魔に支配されていないからこそ湧き出た感情だった。

334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:22:36.46 ID:iNh2rC4q0
オティヌスから数km離れた場所にオッレルスとシルビアはいた。

オッレルス「シルビア、君は逃げるんだ。オティヌスの話が本当なら俺達は絶対に勝てない。
      だからせめて、君だけは逃げてくれ。俺が時間を稼ぐから」

シルビア「っざけんじゃないわよ!」

オッレルス「え?ぶはっ!」

シルビアはオッレルスを思い切りぶった。

シルビア「私だけ逃げる?そんなこと出来る訳ないでしょ!」

オッレルス「何を言っているんだ。分かるだろう?悪魔と融合したあいつは強い。
      はっきり言って俺でも勝てない。だから君だけでも」

シルビア「なら一緒に戦えばいい。
     アンタはこの程度で諦めるような、そんな人間じゃないでしょ!?」

オッレルス「じゃあはっきり言うけど、君なんかじゃ足手まとい以外の何物でもないんだよ!
      君なんかいても仕方ないんだ!」

言い方は酷いが、これはまぎれもない事実。オッレルスはシルビアを愛しているからこそ
諭すのではなく、真実を突きつけることによって、シルビアを諦めさせようとする。

シルビア「そんなこと分かってる。それでも一緒に行くって言ってんの。
     私だけ逃げるくらいなら死んだ方がマシ」

オッレルス「そんなの君の我儘だろ!俺は君に生きていてほしいんだ!」

シルビア「それだって、こっちからしたらアンタの我儘でしかない。
     アンタが私を連れてかないって言うなら、私はここで死ぬ」

オッレルス「意味が分からないよ……」

シルビア「アンタさ、待たされる側の気持ち考えたことある?」

オッレルス「それは」

シルビア「ないでしょ?私がいつもどれだけアンタを心配しているか……
     もう我慢できないの。なんなら私だけでもアイツに挑む」

オッレルス「でも」

その時だった。オッレルスのポケットの中の携帯が震えた。
着信を見ると、オッレルス達が現在住んでいる家からだった。

335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:24:40.91 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「もしもし」

保護された少女『もしもし、まだ帰ってこないのー?どこで何してるの?
        もしかして、また私達みたいな子達を助けているの?』

オッレルス「いや、そうじゃない。そうじゃないけど……」

言い淀んでいるオッレルスから、シルビアは携帯を強引に奪いとった。

シルビア「もしもし」

少女『あ、シルビアお姉ちゃん。
   あのねー、オッレルスお兄ちゃん元気ないみたいだけど、何かあったの?』

シルビア「お、声だけでオッレルスのテンションが分かるんだ」

少女『えっへへー。私はオッレルスお兄ちゃんの事が大好きだからねー。
   それくらいは当然なんだよー』

シルビア「そう。じゃあさ、頼みがあるんだけど」

少女『なになに?』

シルビア「元気がないオッレルスを励ましてやってくれないか」

少女『そんなことなら、お安い御用だよー』

シルビア「そう。じゃあ代わるわね」

そう言ってシルビアは、オッレルスに携帯を差し出す。オッレルスはそれを無言で受け取る。

オッレルス「もしもし」

少女『もしもし、あのねー。私には、お兄ちゃんが何に悩んでいるかは知らないけどね、
   落ち込んでいるなら、これだけは言っとくよー?』

少女『お兄ちゃんは、絶対に途中で諦める人じゃないよ。
   生きる希望を無くした私達に、お兄ちゃんが生きる希望を与えてくれた。
   今でも、感謝してる』

少女『それと、辛くなったらいつでも相談してねー。私なんかじゃ
   頼りにならないかもしれないけど。お兄ちゃんは1人じゃないんだよ?』

少女『じゃあね、お兄ちゃん。早く帰ってきてねー』

それで、通話は終了した。

336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:26:01.43 ID:iNh2rC4q0
オッレルス「……」

シルビア「分かったでしょ?私達には、私達を待ってくれている人がいる。
     もう軽々しく、君だけ逃げろなんて言わないでよね」

オッレルス「君だって、死んだ方がマシ。とか言ってたじゃないか」

シルビア「それぐらい言わないと、アンタ納得しないでしょ」

オッレルス「……」

シルビア「あの子も言ってたけど、アンタは途中で諦める人じゃない。私が1番良く分かってる」

オッレルス「でもやっぱり」

シルビア「まだ、私達は死んでない。ボコボコにされただけで、死んでない。
     だったら、また立ちあがればいい。やられても、立ちあがる。
     何度も、何度でも。死なない限りは」

シルビア「行こうよ。オッレルス。そして勝って、2人で帰ろう」

オッレルス「……もういいよ。分かった。やってやろうじゃないか。
      そもそも悪魔の1匹ぐらい倒せなきゃ『魔神』になる資格もないだろうし」

337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:26:58.23 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「おいおい、ようやく戻ってきたかと思えば、女連れかよ。
      せっかく逃がす時間を与えてやったてのによ」

オッレルス「余計な御世話だ。君は俺達2人で倒す」

オティヌス「あのさぁ」

瞬間、オティヌスはオッレルスの真横に居たシルビアの顎を蹴りあげていた。

オティヌス「調子乗ってんじゃねぇよ?」

そして蹴りあげられたシルビアを追撃しようと、オティヌスは飛ぼうとするが

オッレルス「それは君の方だ」

オティヌス「おお?」

オッレルスはオティヌスの尻尾を掴み、思い切り投げ飛ばした。
オティヌスはイギリスの街並みを数kmに亘って転がった。

338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:28:33.27 ID:iNh2rC4q0
オッレルス(大見得を切ったものの、やはり速い。
      何とか反撃は出来たが、やつの攻撃は全く見えなかった)

オッレルス「大丈夫かシルビア?」

シルビア「ええ。なんとかね」

オッレルス「油断するな。やつはすぐ戻ってくる」

そうやってオッレルスが注意を促した1秒後に、オッレルスはオティヌスの爪で切り裂かれた。
あまりの速度に、オッレルスは半歩しか下がれなかった。

オティヌス「浅かったか」

しかしオッレルスは、切り裂かれながらも咄嗟にオティヌスの手を掴んでいた。
そこへシルビアはオティヌスの後ろから剣を振るった。

オティヌス「甘ぇ!」

後方からの一撃に対して、オティヌスは尻尾で対抗。
結果、その一撃はシルビアを吹き飛ばした。

オティヌス「調子こきやがって」

オッレルス「くっそおおおぉぉぉ!」

叫びながら、オッレルスは左手をオティヌスの体に添え、全力で『説明できない力』を放った。
まともに喰らったオティヌスは、またも数km吹き飛ばされる。

オッレルス(攻撃する暇を与えちゃいけない!叩みかける!)

オッレルスは吹き飛ばされたオティヌスのもとへ駆けだす。

339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:30:24.07 ID:iNh2rC4q0
オティヌス「やるじゃねぇか」

オティヌスがそう言って体を起こした時には
既にオッレルスが真上から『説明できない力』を放っていた。

オティヌス「成程。攻撃する隙を与えないってかぁ!」

しかしオティヌスは、翼で自身を包み込みガード。
返す刀で翼を思い切り広げ、莫大な風力をオッレルスにぶつける。

オッレルス「ぐ、おお!」

それに対してオッレルスは左手から力を噴射し、風に耐えきった。
直後に右手から光の剣を出現させ、逆に突っ込む。
ガキィン!と光の剣は、しっかりと受け止められた。

オッレルス「くっ!」

オティヌス「こんな事も出来んのか。器用な奴だ。けど俺はこんな事も出来るぜ」

オッレルス(――っ!)

直後、オティヌスの口が大きく開かれ、ビュオ!と赤い光線が吐き出された。

340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:33:30.38 ID:iNh2rC4q0
ズザ!と靴が地面に擦れる音。オッレルスは光線を紙一重で避け後ろへ周りこんでいた。
オティヌスは咄嗟に尻尾を振るう。

オッレルス(待っていたよ!)

後ろからの攻撃に対して、もし何らかの防御策があれば
わざわざ振り向かずに、誰だってそれで防御するだろう。
そして分かっている攻撃なら、いくら速くても対応できる。
オッレルスは尻尾を左手で掴み、右の手刀で尻尾を切り裂いた。

オティヌス「ちぃ!」

思わずオティヌスは裏拳を繰り出す。これもオッレルスの予想通り。
後ろの敵へ即座に反撃すると言ったら、裏拳か後ろ蹴りくらいだ。
しかし後ろ蹴りは、かなりのバランス感覚を求められる上、外せば隙が生じる。
だから大抵は裏拳の場合が多い。
今のオティヌスなら翼もあるが、真後ろと言うのは、風で攻撃するにしても
翼を叩きつけるにしても角度的に難しい。性格上、翼で防御に転じると言う可能性も低かった。

よってオッレルスは、思い切りしゃがみ、裏拳をかわした。
右か左から来るかは分からなかったが、しゃがめば関係ない。
間髪入れずにオティヌスの足を払い、転ばせる。
そこへ、シルビアが空中から剣の切っ先を下へ向けながら
仰向けになったオティヌスの顔面目がけ落下する――!

オティヌス「馬鹿が、返り討ちだ!」

口を開き、そこから光線を発射しようとして――
そこにオッレルスの『説明できない力』が叩きこまれ、吐き気と共に光線は不発に終わる。

オティヌス「くっそがあああああああああああああああああああああああああ!」

断末魔の叫びと共に、グシャア!とオティヌスの顔面は貫かれた。

341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:37:00.45 ID:iNh2rC4q0
シルビア「はぁ……はぁ……」

オッレルス「……やったのか?」

シルビア「ええ」

剣が口の中を貫き、地面にまで刺さり、血まみれになっているオティヌスを見てそう言った。
しかしながら、大ダメージには違いないだろうが、まだ死んではいないはず。
そう判断したオッレルスは

オッレルス「念のため、これから封印するぞ。
      時間がもったいないが、放っておくわけにもいかない」

シルビア「分かったわ」

オッレルスはボロボロの体をひきずり、シルビアは跨っていたオティヌスから立ちあがって
封印するための準備をしようとしたところで、バキャア!という鉄が砕けた音が響いた。
瀕死のオティヌスが、剣を噛み砕いた音だった。オティヌスはゆっくり起き上がる。

オッレルス・シルビア「な――!」

オティヌス「テメェら……許さねぇよ?」

口の中を貫かれ、声なんて出せるはずないのに、何故か声が聞こえた。

オッレルス(くっ!)

ヤバい、と思った時にはもう手遅れだった。
オティヌスは一瞬で2人に肉迫し、顔面を掴み思い切り地面に叩きつけた。

オティヌス「ぎゃははは!」

オティヌスは気絶したシルビアを無視して、オッレルスを殴ろうとしたが
オッレルスは反撃の頭突きを繰り出した。
それは見事にヒットするが、ダメージを受けたのはオッレルスだけだった。

オティヌスは頭突きによって興醒めし、殴るのを止めオッレルスを真上に放り投げた。
そして赤い光線を吐きだし、オッレルスに直撃させた。ひらひらと紙きれのように
オッレルスは無残に落下する。光線を喰らえば、本来なら消滅してもおかしくないのだが
口の中を貫かれた事によって、威力は大分落ちていた。

オティヌス「あーあ。足りねぇ。足りねぇよ。もっともっと抵抗して来いよぉ!おらぁ!」

しかし既に気絶しているオッレルスとシルビアには聞こえていない。

オティヌス「つまんね。こうなったらイギリスの街を破壊して遊ぶか」

342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:38:51.69 ID:iNh2rC4q0
ボガァン!ドゴォン!バガァン!と爆発音のようなもので、シルビアは目を覚ました。

シルビア「……一体、何がどうなって……?」

そうして周りを見渡し、見つけたのはぐったりとしたオッレルスだけだった。

シルビア「オッレルス……!オッレルス!!」

側により、抱き上げ、呼びかけるが返事がない。それどころか、呼吸すらしていない。

シルビア「ちょ、ちょっと!ねぇ!ねぇ!」

思わずオッレルスの体を揺さぶってしまうシルビア。しかしやはり目覚めない。
ふと思い出して、胸に耳を当ててみると、心音も聞こえていなかった。

シルビア「嘘……嘘でしょ!」

言いながらシルビアは心臓マッサージを始めた。
確か心臓や呼吸が止まった人が助かるかどうかを大きく変える境界は10分だったはず。
自分は何分気絶していただろうか。考えながらも、心臓マッサージを続ける。

シルビア「お願い……!目を覚まして!」

343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:41:17.82 ID:iNh2rC4q0
そうして心臓マッサージを始めて、3分ほど経っただろうか。オッレルスは、目覚めない。

シルビア「どう……すれば……」

今でも爆発音が響いている。オティヌスがイギリスの街を破壊している音だろう。
しかし、オッレルスは目覚めない。自分も満身創痍。
こんな状態で、悪魔と融合したオティヌスを止める事など――

とそこで、シルビアは自分の思った事を反芻する。

シルビア(悪魔と、融合……)

そこで気付いた。まだ1つだけ方法がある事に。
だがそれは、最良の選択ではあるが、完璧なハッピーエンドには至れない。

シルビア(それでも――!)

344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:42:50.66 ID:iNh2rC4q0
それから3分後。
シルビアが描いた魔法陣の中心に倒れたオッレルスと、そこに寄り添うシルビアがいた。

シルビア「ゴメンね。2人で帰ろうって言ったけど、その約束守れそうにない」

そうしてシルビアは、オッレルスの唇に自分の唇を重ねた。

シルビア(あなたを……愛してる)

同時にオッレルスとシルビアは光に包まれた。シルビアが執った手段。
それは自身を生贄にしてテレズマの一部をオッレルスに託す事だった。
その光は徐々に広がり、やがて――

345: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:44:35.78 ID:iNh2rC4q0
オティヌスは遠くに光を見た。その光は決して大きくない。
けれど弱弱しくもなく、温かい光。

オティヌス「……ありゃあ……」

その光の場所へ、オティヌスは突っ込んでいく。

346: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:45:56.20 ID:iNh2rC4q0
オティヌスが光の場所へたどり着くまでに30秒もかからなかったが
その間に光はなくなっていた。代わりに、1人の『魔神』が浮遊していた。

オティヌス「面白ぇ。ようやく俺と同じ境地に至った訳か」

オッレルスは答えない。頭上には白い輪っかに、背中からは白い翼。
ただその目からは、一筋の涙が流れていた。

オティヌス「なぁーに、泣いてんですかぁ!」

両手の爪でオッレルスを切り裂こうと突進する。
オッレルスも迎え撃つように突進。0・0000001秒で2人の『魔神』が交差した。
それは本当にただの交差。爪がかすったとか、翼が掠めたとかそんなことは一切なかった。
にもかかわらず、オティヌスの全身に切り傷が走った。

オティヌス(かまいたち……なのか……!?)

オティヌス「なめやがってー!」

振り返り、もう一度突進。オッレルスもやはり突進。2人の『魔神』は2度目の交差をした。
それでオティヌスの黒い翼は根元からちぎれ、頭の角もへし折れ、腕はもぎとられた。
勝敗は、決した。

347: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:47:27.19 ID:iNh2rC4q0
無残に地面に落下していくオティヌスを見ながら、オッレルスは
オティヌスを倒した喜びとシルビアを失った悲しみに駆られていた。

オッレルス(シルビア……俺、やった。やったけどさ……君がいないんじゃ……)

しかしオッレルスに、感傷に浸っている暇はない。
彼が戦っていた理由は、オティヌスを倒すことではなく、インデックスを救出する事である。

とりあえず、第零聖堂区へ行こうとしたところで、ゾン!と圧倒的な威圧感。
それはもちろん瀕死のオティヌスのものではない。
威圧感の発生源は、まさに今から行こうとしているところからだ。

オッレルス(……急がなきゃ!)

だがその必要はなかった。儀式が完了し、ヨハネのペン状態になったインデックスが
オッレルスの鼻先数cmのところに、いきなり現れたからだ。

オッレルス「――!」

言葉を発する前に、彼の体は光の爆発に飲み込まれた。

348: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:51:02.81 ID:iNh2rC4q0
10%とは言え、テレズマを吸収したヴェントは『聖人』と同等か、それ以上の強さである。
もちろん、今は力が馴染んでいない為100%の力は発揮できないが、
せめてフィアンマ、もしくは『幻想殺し』の少年が来るまでの時間稼ぎくらいは出来ると
ヴェントは思っていた。

しかし、それは甘い考えだった。
ミカエルがたった一振り、右手に持っていた剣を振り下ろしただけで
学園都市の大地は割れ、ヴェントは愚か、遠くから見守っていた少女達と一方通行を吹き飛ばし
瀕死に追い詰めた。一方通行が一瞬神化して、皆を守らなければ全員死んでいただろう。
レベルが違った。現在意識を保っているのは、ヴェントと一方通行だけである。

一方通行「オマエ……カッコつけて出てきたくせに……さっきから
     何の役にも立ってねェじゃねェか……」

ヴェント「分かってるわよ……私だって……ケドさ……強いわ、やっぱ……」

軽い調子に聞こえなくもないヴェントの返事の仕方に、怒りすら覚えた一方通行だったが
ヴェントに怒ったところで、この事態が変わるわけでもない。彼女だけの責任でもない。
自分があまりにも無力な事もある。だからもう一方通行は、神頼みするしかなかった。

一方通行(誰か……いねェのか……残りのレベル5は何をやってやがる……
     あのヒーローは何をやってやがる……?)

もちろん今挙げた人物のどれか、いや寧ろ総動員したって、この大天使に簡単には勝てないだろう。
それでも一方通行は願った。そんな彼の願いは、届いた。

男「なんや、本当に一方通行君が地面に這いつくばってるなんてな。
  これはなかなか拝めへん光景やで~」

世界三大テノールでもびっくるするような野太さで、似非関西弁を話す声が聞こえた。
一方通行はその男を見た。青い髪の毛に、耳にピアス。

一方通行(何だアイツは……いや誰でもいい……この状況を変えられるなら……)

一方通行「頼む……コイツらを……助けてやってくれェ!」

男「言われなくても、この青髪ピアスが助けたるで~」

349: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:53:57.91 ID:iNh2rC4q0
会話はそこまでだった。ミカエルが左手から直径1kmにも及ぶ、莫大な炎の塊を放ったからだ。
その光景に誰もが息をのむ。1人の男を除いて。

青ピ「その程度では、僕を倒す事は出来へんで~」

瞬間、青髪の周囲から莫大な量の水が渦巻いた。
それは炎の塊とぶつかり、蒸発と言う形で相殺された。

一方通行「水流操作(ハイドロハンド)……!」

そのまま字の通り、水を操作する能力。
この量の水を操作できると言う事は、レベル4以上は確実だろう。

青ピ「僕の能力は『蒼竜激流』(ブルーストリーム)って言うんやけどね。
   まあ御坂ちゃんと同じ、カッコつけて違う能力名で申請しただけなんやけどね」

どうでもいい情報を聞かされた一方通行は、しかし青髪に何かを感じた。

青ピ「次はこっちから行くで」

瞬間、先程とは比べものにならない量の水が青髪の周囲から湧き出る。
それは竜の形になった。しかも2匹。1匹につき333tで、大きさはミカエル以上の竜。
2匹合わせれば確実に学園都市を水没にまで追い込めるほどの水量。
それをミカエルにぶつける――!

ミカエル「fghrsdtjwkgktgdjghq!」

ミカエルも右手の剣を振り下ろす。しかしそれは、2匹のうちの1匹の竜に止められた。
その隙にもう1匹の竜が、まさに激流の如くミカエルを飲み込んだ。

一方通行は確信した。この男はレベル5の第6位なのだろうと。
そしてこの強さは、御坂美琴や麦野沈利を越えているだろうと。

学園都市の序列は強さだけで決めるものではない。能力の研究価値の方が重要視される。
だからこの強さで第6位なのだろうと、一方通行は余計なことまで考えていた。
それほどまでに圧倒的だった。

しかしそれ以上の現実が、彼らを待ち受けていた。
333tもの水量をまともに喰らったのに、平然とミカエルが君臨していたことだ。

350: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:55:19.79 ID:iNh2rC4q0
一方通行(あの一撃でも……無理だってェのか……)

先程の青髪の一撃は、コンテナ8個分の超巨大『超電磁砲』や
極限までチャージ&滝壺の補助あり『原子崩し』よりも上だった。
一方通行も、さすがにこれだけでは終わらないだろうとは思っていたが
ここまで平然としているとは、予想だにしなかった。

青ピ「はぁ……はぁ……簡単にはいかへんと思っていたけども
   こうも余裕で耐えきられるとなあ。さすがにショックや……」

青髪ピアスは辟易していた。当然だ。と一方通行は思った。
あれだけの水量を生み出して攻撃をしたのにもかかわらず、余裕で耐えきられたのだ。
それは彼のプライドを引き裂いた事だろう。精神的なダメージは計り知れない。
加えてあれだけ能力を全開にした攻撃をすれば、疲れるのは当然。
正直立っているだけでも称賛に値する。

青ピ「まだや……まだ終わってへん……!」

再び青髪の周囲に水が渦巻く。先程よりは圧倒的に少ない水量。
それでも、残った持てる力の全てを発揮しようとしたところで

ミカエルの体が突然大きく仰け反った。

351: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:56:33.11 ID:iNh2rC4q0
青ピ「なんや!?何が起こったんや!?」

驚いているのは青髪ピアスだけではない。一方通行も目の前の光景に呆気に取られていた。
ただ1人、ヴェントだけは笑みを浮かべていた。

ヴェント「全く……遅いんだよ。アイツ」

一方通行「何言ってやがる?」

ヴェント「よく見な。ミカエルの顔面付近」

一方通行は言われた通り、見上げ、目を細めた。すると確かに、ミカエルとは別の赤い何かがいた。

一方通行「ありゃあ何だ?」

ヴェント「ちょっと特殊な右手を持った人間だよ。私のパートナーでもある」

そんなことまでは聞いていなかったのだが、言葉から察するにヴェントの仲間なのであろう。
それもミカエルを仰け反らせるほどの強さを誇るのならば心強い。
そんな事を考えている内に、赤い男がヴェントの前に降り立った。

フィアンマ「大丈夫……じゃないみたいだな。遅れてすまなかった」

ヴェント「本当よ。あと少し遅かったら、皆消炭になっていたところよ」

フィアンマ「その代わりと言っちゃあ何だが、あとは俺様に任せておけ」

一方通行「オマエが強いのは分かる。けど、1人でやれンのかよ?」

フィアンマ「出来る限りはな」

そう言ってフィアンマは、両手から炎を噴射し、ロケットのように飛び立った。

352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:57:39.08 ID:iNh2rC4q0
フィアンマは素早くミカエルの顔面前へ移動すると、噴射を左手だけにし
右肩から莫大な炎を噴射しながら右拳を放ち、ミカエルの顔面へ深く突き刺した。
それは比喩ではなく、本当に拳が顔面に喰い込んでいた。

フィアンマ「吸収!」

突き刺さった右手から、自身の属性と適合するミカエルのテレズマを吸収する。
だがミカエルのダメージは、青髪ピアスとフィアンマを合計しても1割ほどでしかない。
万全状態とさして変わらないこの状態から、全部を吸収しきれるはずもない。

フィアンマ(それでも、やれるだけやってやる!)

353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 03:59:40.21 ID:iNh2rC4q0
吸収から3分。実に25%ものテレズマを吸収したところで、フィアンマは限界をむかえた。
フィアンマは何とか地上に着地するも、右手を抑えてうずくまっていた。

一方通行「おいおい、俺が言える立場じゃねェけど、アイツあれで終わりかよ!?」

ヴェント「もう充分でしょ」

一方通行「オマエ、パートナーが頑張ったからって惚気てンのか!?
     過程がどうこうじゃねェ。結果がなきゃ意味ねェって言うのによォ!」

ヴェント「うるさいわね。もう充分だって言ってるでしょ」

だから何が充分なのか。一方通行がキレかけたところで、咆哮が聞こえた。
それは、忘れたくても忘れられない、あの少年の咆哮。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

右手に『幻想殺し』を宿した少年が、空中からミカエル目がけ落下する。

一方通行「アイツ、空飛ンで……」

浜面「迎えだ……」

いつの間にか重傷の浜面仕上が側にいて、一方通行にそう言った。

一方通行「あァ!?」

浜面「だから、ゴリラで上条を迎えに行った半蔵と郭が、あいつをビルの屋上から
   思い切り投げ飛ばしたりしたんだよ。多分。未だによくわかんねぇけどさ。
   あいつの右手、異能の力なら何でも打ち消せるんだろ?
   それで、あの赤い天使みたいなのが異能の力だと言うのなら
   もうチェックメイトなんじゃないのか?」

そうか。と一方通行は悟った。
ヴェントの充分だと言うのは、上条当麻が来るまでの時間だったのか。と

354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:02:36.36 ID:iNh2rC4q0
上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

落下してくる上条に対して、ミカエルは右手の剣を突き出した。
上条はそれに臆することなく、己の右手を繰り出す。
そして剣の切っ先と右手が触れた瞬間、キュイーン!とガラスが割れるような
甲高い音と共に、剣の方が先端から崩れていく。

ならばと、ミカエルは左拳を繰り出した。対して、上条はやはり右手を繰り出す。
そして拳と拳が触れ合った瞬間、やはり甲高い音と共にミカエルの左拳は触れた箇所から
消えていく。

剣と左手を失ったミカエルは、フリーになった右手でフックを繰り出す。
真正面から殴るのではなく、横から打つ。

上条「なめんなよぉ!」

上条は空中で180度右回転する。つまり、ミカエルの右フックを裏拳気味で迎え撃った。
結果、ミカエルの右腕は手首から消えていく。

そして上条の右手が、本体まであと10mというところで、ミカエルは炎に包まれた翼で
上条を包みこもうと翼を動かした。つまりは道連れ。

上条「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

右手に『幻想殺し』しか持たない上条に、空中で方向転換をする術は無い。
仮に上条の右手が本体へ触れ、打ち消しが始まったとしても、数秒は翼が残る。
そして数秒もあれば、その翼の残骸に上条は溶かされる。
万事休すか。上条と、下から見ていた意識を保っている面々はそう思った。
ただ1人の男を除いて。

青ピ「遅すぎるでカミやーん!」

青髪の咆哮と同時に、2匹の水の竜がミカエルの翼目がけ上昇し、噛みついた。
よって、翼の包み込む動作は止められた。

上条「終わりだぁぁぁあああああああああああああああああああああ!」

ついに上条の右手がミカエルの顔面に触れた。
瞬間、バリィィィィィン!と、鼓膜が破れるのではないかというほどの甲高い音が周囲に響いた。
触れた箇所から、ミカエルは徐々に消えていく。
そして上条が地上でヴェントにキャッチされた時には、完全に消滅していた。

355: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:05:11.34 ID:iNh2rC4q0
一方通行「やりやがった……あの天使を、右手1本で……」

前からとんでもない右手を持っている事は知っていたが、まさかここまでだとは思わなかった。
そんな風に、一方通行ですら尊敬しかけている上条当麻は現在、ヴェントの胸に顔を埋めていた。

ヴェント「ちょっと、早くどけてほしいんだけど」

胸に顔を埋められているヴェントは至って冷静にそう言った。

そもそも何故こんな事になっているかと言うと、上条を安全に着地させようと
ヴェントは魔術を使い上条を風に包みこんだのだが、上条が地上まであと3mの
ところで間違って『幻想殺し』で魔術を解除してしまったので
仕方なくスライディングを決め込み、何とか上条をキャッチしたからである。

そこで上条も早く避ければ良かったものの、たび重なる連戦での疲労の蓄積(回復魔術や
『冥土帰し』の薬などはあったが、あくまで応急処置的なもので疲労の方が圧倒的に大きい)や
ミカエルを倒して緊張の糸が解けせいか、上条は動けず顔を胸に埋めっぱなしだった。

それに黙っていなかったのは2人の男。

青ピ「おいおいカミやん。一体何人の女の子に手出せば気ぃ済むねん。
   僕も結構頑張ったよ?カミやんだけラッキースケベはずるいわ。
   だから、僕にも○○○○揉ませて下さい」

ヴェント「ツッコむとこそこじゃないでしょ。つーか揉ませねーよ」

フィアンマ「お前は後で殺す。その前にまずは上条当麻から殺すがな」

洒落にならない殺気を放ちながら、フィアンマは上条の制服の襟首を掴み持ちあげる。

上条「ぷはぁー!危ねぇ!呼吸できなくてもう少しで死ぬとこだった!」

フィアンマ「大丈夫だ。すぐに俺様の手で殺してやる」

上条「え、フィアンマさん?何でフィアンマさんがそんなに怒っているんでせうか?」

フィアンマ「俺様の女の胸に顔を埋めたから」

上条「なるほどそう言う訳ですか。いえね、上条さんも早くどく気はあったのですよ?
   ただ体が動かなくてですね、この件に関してはちょっとゆっくり話し合いで
   解決できませんか、できませんね、すいませんでしたーっ!」

いつもの癖で言い訳が謝罪になっている上条は、容赦なく殴られた。
フィアンマではなく、青髪ピアスに。その勢いで上条は地面を転がる。

上条「ちょ、何すんだよ!何でお前が怒ってんだよ!」

青ピ「うっさい!僕の心の痛みを知れ!」

訳の分からない事を言いながら、上条に殴りかかる青髪、対抗する上条。
いつもの下らない話題からの喧嘩になってきたところで

フィアンマ「……馬鹿馬鹿しい。もういい。大丈夫だったか、ヴェント」

ヴェント「うん」

356: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:06:58.15 ID:iNh2rC4q0
滝壺「あくせられーた、皆を守ってくれてありがとう」

浜面と同じく病院を飛び出した滝壺理后は、少女達を守ってくれたお礼を言った。

一方通行「俺は何もしてねェ。お礼なら、あそこで喧嘩している馬鹿2人と
     あの気持ち悪ィ右腕持ってる人間にでもするべきだ」

滝壺「そんなことないよ。あくせられーたは、黄色い天使を倒したし
   赤い天使の攻撃からも、むぎの達を守ってくれた。感謝してる」

一方通行「あっそォ。なら素直に受け取っとくわ。じゃあよ、情けない話なンだが
     肩かしてくれねェか?俺1人じゃ、立つこともままならねェ」

滝壺「もちろんだよ。恩人だからね」

一方通行は滝壺の力を借りて立ち上がる。立つ事もままならなかった彼はまともに歩けもしない。
よって一方通行は、必然的に滝壺によりかかるわけなのだが

一方通行「助かったわ。ところでよォ、なンつーか、後ろから殺気を感じるンだけどよォ。
     何とかしてくンねェ?オマエの連れだろ?」

一方通行の言っている意味が良く分からなかったが、滝壺はとりあえず振り返る。
そこにいたのは、一方通行×滝壺理后というシチュエーションに耐えきれず
今すぐにでも一方通行へ殴りかかろうとしている浜面仕上だった。

滝壺「は、はまづら……!?違うの。こ、これはね。
   私が出来る精一杯のお礼で、決して浮気なんかじゃ」

滝壺の説得?も虚しく一方通行は浜面に押し倒された。

357: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:08:24.89 ID:iNh2rC4q0
一方で4人の少女達は自力で目を覚ました。
そこで少女達が見たのは、1人の少年が真っ白な少年を押し倒しているのを必死で止める少女と
青い髪の毛の少年が、ツンツン頭の黒髪の少年と喧嘩している光景だった。
それだけで3人の少女の行動方針は決定した。

絹旗「浜面が超浜面のくせに、第1位を殴って、それを滝壺さんが止めるなんて
   一体何がどうなっているのでしょう?」

麦野「面白そうね。行ってみましょ」

麦野と絹旗は、滝壺達の方へ。

御坂「あ、あの青い髪の毛野郎何なの?今すぐぶちのめしてやる!」

御坂美琴は、上条当麻の方へ。

結標(なんか……私だけ1人ぼっち……)

麦野沈利と絹旗最愛は滝壺理后と『仲間』である。御坂美琴は上条当麻と頻繁に諍いを
起こしており、その様子は仲睦まじく『友達』と言えなくもない。
そんな中、誰ともそこまで親しくない結標淡希は迷った。
一方通行とは元『同僚』であって『仲間』なんて大層なものじゃないし
ましてや『友達』でもない。寧ろ因縁があるくらいだ。

結標(……そうね。どうせならあっちの集団に突っ込む方が面白いかも)

そうして結標は、上条達の集団へ突っ込んでいった。
これが運命の出会いになるとは、この時点ではまだ誰も知る由もなかった。

358: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:10:46.81 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「なんか……おかしくないか?」

ヴェント「彼ら、戦争が終わったと思って、はしゃいでるんじゃないの?」

フィアンマ「まだ終わっとらんと言うのに。無知とはいいものだな」

ヴェント「どうやったら止まるんだろう?」

フィアンマ「そもそも、俺様やヴェントは戦闘の始終を見ていたから分かるが
      あの女どもは、こうやって詳細をよく知らない俺様がいたり
      天使がいなくなったことに、何の疑問も持たんのか……」

ヴェント「この国で言う『空気を読む』っていうアレなんじゃない?
     上条当麻とかがはしゃいでいるから、それに則って。みたいな」

フィアンマ「ふん。良い風習なのか、悪い風習なのかよく分からんが……
      そろそろ本題に入りたいし、時間もないから、ここで制圧しとくか」

そう言うとフィアンマは地面を殴りつけて、その震動ではしゃいでいる連中を
黙らせようと思い、拳を振り下ろそうとしたところで

ドシィン!と地面が震動した。
はしゃいでいた連中と、フィアンマとヴェントは何だ?と思わず震源の方向を見る。

そこにいたのは何人かの人間を抱えたゴリラだった。
そのゴリラの頭から、2人の人間が出てくる。

半蔵「急患を何人か拾ってきた!何人か運ぶの手伝ってくれ!」

その声に反応したのは浜面、上条、青髪。3人ははしゃぐのをやめゴリラへ近付く。
ゴリラは抱えていた削板、垣根、心理定規と五和を含む天草式の何人かを降ろした。

五和「上条……さん」

意識はあるがフラフラの五和は、上条に寄りかかる。

上条「お、おい!大丈夫か?」

五和「はい……上条さんが支えてくれるので……何とか……」

青ピ「おいおいカミやん。こんな別嬪さんともフラグ立てとんのかい?
   女垂らしなんてレベルじゃねーぞ」

もはや似非関西弁すら忘れている青髪へ、上条が悪口を言われたと思ったのか、五和が言い返す。

五和「上条さんのことを……悪く言わないでください……この人は……
   自分の損得の為ではなく……人の為に動ける人なんです……」

上条「い、いいって五和。こいつはそんなつもりで言ったんじゃないんだ。
   冗談みたいなもんだから」

五和「でも……私……」

上条「とりあえず、病院に運ぶからじっとしててな」

そう言うと上条は、五和をおんぶして病院へ運んだ。

359: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:13:15.31 ID:iNh2rC4q0
青ピ(僕だけ……悪者みたいになってもうた……)

浜面「あいつモテるんだなー。つーか鈍感ってレベルじゃねーぞ」

青ピ「君もそう思うよな!?」

呟いただけなのに、馴れ馴れしく同意を求めてきた青い髪の毛の少年に、浜面は若干うろたえる。
彼らはあくまで初対面である。

浜面「ま、まあ。とりあえず、俺はこの特攻服みたいな兄ちゃん運びますわ」

なんとなく青髪のノリにはついて行けないと思った浜面は、倒れていた削板をおんぶして病院へ。

青ピ「君、男の人抱えて大丈夫なん?」

心理定規「大丈夫。この人は私が運ぶから。運ぶなら別の人をどうぞ」

そう言って心理定規は垣根をおんぶして、そそくさと病院へ。

青ピ(あの体格差で運ぶなんて無理あるやろ。けど大丈夫ってキッパリ断られたしなぁ)

半蔵「おいあんた、ボーっとしてないで運んでくれよ」

天草式の一員の香焼を運びながら、半蔵は言う。

青ピ「ああ。分かってるで」

青ピ(女の子、女の子を運んで感謝されたい!)

そんな不純な動機をもつ青髪ピアスは、地面に倒れていた人たちの中から
天草式の一員、対馬を発見する。

青ピ(むっふぉー!金髪○○美脚お姉さんキタコレ!)

そして対馬を運ぼうと手を伸ばしたその時

郭「あの、女性は私が運びますんで」

郭が素早い動きで対馬をおんぶして病院へ。

360: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:14:15.47 ID:iNh2rC4q0
青ピ(しゃあない。もう男で良いから運ぶか)

そうして天草式の牛深でも運ぼうかと思ったその時

ヴェント「別にアンタは運ばなくても良いわよ。あとは私が全員運ぶ」

青ピ「どうやって?」

ヴェント「こうやって」

そう言ってヴェントは指をパチン!と鳴らすと、患者達がフワフワと浮いた。
風の魔術の応用だ。

ヴェント「こういうわけだから、アンタは休んでなさい」

青ピ(あ、なんかもういいや……でも……)

青ピ「天使!あなたは僕の天使やでぇー!」

思わずヴェントに抱きつこうとする青髪を、ヴェントはひょい、っとかわして

ヴェント「触ろうとするな。気持ち悪い」

一言で撃沈した。

361: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:16:35.42 ID:iNh2rC4q0
御坂「ところでさ」

結標「何?」

上条と青髪がいなくなったので、暇になった彼女達は世間話をしていた。

御坂「なんで、こっちの集団に来たの?」

結標「駄目?」

御坂「駄目じゃないけど……」

結標「大丈夫よ。あなたの大好きなツンツン頭君を狙って。とかじゃないから」

御坂「ぶっ!な、何を言っているのかしら!わ、私は別にあの馬鹿の事なんて何とも」

結標「素直になりなさいな。あなた、バレてないとでも思ったの?」

御坂「……ほんとに?」

結標「何が?」

御坂「ほんとに、あの馬鹿を狙った訳じゃないの?」

結標「ほんとよ。ただあっちの集団に入るのもアレだったから、こっち来ただけ」

御坂「ふぅー。ならよかった」

結標「そうそう。そうやって素直になればイチコロよ。
   ただ、あの馬鹿呼ばわりはよくないと思うけど」

御坂「そ、それは分かってるんだけど……いきなり名前で読んだら変かなって……」

結標「あなた、そんなこと気にするタイプだったんだ。そんなことないわよ。
   名前で呼んじゃいなさいな」

御坂「わ、分かった。今度、というか、あとで、言ってみる……」

そうやってガールズトークが繰り広げられていたところで

フィアンマ「すまんが、まだ戦争は終わっていない。
      急だが、これからすぐ話し合いの場を設けたいのだが」

フィアンマがいきなり割り込んだ。

御坂「ちょ、アンタ一体誰!?」

結標「……」

即座に戦闘モードに入る御坂と結標。

フィアンマ「焦るな小娘ども。俺様は味方だよ。だから、その戦闘態勢を解いてくれ」

と言われても、真っ赤な服に異様な右手を持つ人間の言う事を
御坂と結標はそう簡単に信じることは出来ない。

362: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:17:16.88 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「……どうすれば信じてもらえるのか……」

膠着状態が続く中、タッタッタッと誰かが走ってくる音がした。
少女達はその足音の方を向く。

上条「おーい、フィアンマー!とりあえず、皆集めたぞ!」

フィアンマ「助かった。最後にこの小娘どもに説明してやってくれ」

上条「また俺が説明役かよ!」

フィアンマ「俺様はこの小娘どもが気絶した後に到着したからな。信じてもらえんのだよ。
      やはり魔術と科学に深くかかわっているお前が説明役に適任だ」

御坂「ちょっと、どう言う事なの?」

上条「それはだな――」

363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:19:01.58 ID:iNh2rC4q0
病院1階を占拠して、話し合いは行われていた。

上条「えーっと、俺から言える事は、皆仲良くやってね?」

上条はこう締めくくったが
あまり納得がいっていない様子の、御坂をはじめとする科学サイドの住人達。

御坂「あのさ、なんでこの日本刀女がここに居る訳?」

日本刀女とは様々な戦いを通して『聖人』の8割の力を失った神裂火織のことである。

上条「だからそれについては、このどう見ても神父には見えない神父さんが
   さっき説明してくれただろ?ローラって言う魔術師が倒れたおかげで
   弱みが無くなり、洗脳されていた魔術師も解放されたって」

ステイルを指差しながら、上条は言う。

絹旗「つまり、この魔術師さん達は、超やりたくなかったのに、無理矢理戦わされていた
   ってことですか?」

上条「そうそう、そう言う事!理解力良いねぇ!」

絹旗「それほどでも……ありますかね///」

御坂「ちょっと!それじゃあ私が理解力ないみたいじゃない!」

上条「いえ、決してそう言う訳では」

一方通行「いちいち話の腰を折るなオリジナル」

御坂「うっさい!」

上条「あわわわわわわ、どうすれば」

結標「放っておきましょ。ところで戦争が終わっていないと言うのは?」

上条「それは」

フィアンマ「それは俺様から説明しよう」

364: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:23:30.88 ID:iNh2rC4q0
とりあえずヒートアップした御坂を落ち着かせて

フィアンマ「まず、戦争が終わっていない事の前に、もう一度だけ説明するぞ」

フィアンマ「この戦争がなぜ起こったか。これはイギリス清教の長
      ローラ=スチュアートが魔術サイドを率いて起こしたものだ」

フィアンマ「イギリス清教の長でしかないローラが、何故魔術サイド全体を率いることが
      できたのか。それは第3次世界大戦で学園都市と共に勝者となったからだ。
      それによってイギリス清教は、魔術サイドのトップも同然になった」

フィアンマ「あとはもうローラの思うままだっただろう。
      このままだと世界は科学サイドの物になってしまう。
      とでも唆して、大半の魔術師を味方につけたのだろう」

フィアンマ「それでも、そこにいるステイル=マグヌス君とかは、最後まで反抗したようだがね。
      結局は反対派も、弱みを握られたり、洗脳されたりで言いなりになるしかなかった
      ようだがな。俺様などの一部の例外を除いて」

フィアンマ「しかし、ローラはもういない。そこの垣根君とやらがやったんだろう?
      いやはや、素直にすごい」

垣根「そりゃ、どーも」

心理定規「ちょっと。もう帝督は疲れているから休ませてほしいんだけど」

フィアンマ「すまんな。もう少しだけ話を聞いてくれ」

フィアンマ「でだ。ローラがいなくなったことにより、反対派の魔術師は解放された訳だ。
      ここにいる魔術師達は味方と思ってもらっていい。
      賛成派の魔術師も、既に学園都市の科学兵器によって大体駆逐されているだろう」

フィアンマ「逆に言えば、その賛成派の魔術師達を迎撃する為に、科学兵器などは
      使い切ってしまっただろうな。まさか能力者とは言え生徒たちを使う訳にもいくまい。
      つまり増援は期待できない」

フィアンマ「だからだ。できれば君達には戦ってほしい。君達はレベル4やレベル5なんだろう?」

この場に居る大体はフィアンマの言った通りなのだが、この条件に当てはまらない
浜面、半蔵、郭はわずかに震えた。とそこで御坂が疑問を呈する。

御坂「いや、力を貸すのは構わないけど、賛成派の魔術師は大体駆逐されて
   反対派の魔術師は解放されたんなら、一体何と戦うって言うの?
   結局戦争が終わってないとはどういうことなの?」

一方通行「だから、いちいち話に水を差すンじゃねェ。
     最後まで聞かないと何とも言えねェだろうが」

御坂「うっさい!」

フィアンマ「そうだな。話は最後まで聞いてほしいな。確かに一般の魔術師は大体倒れた。
      反対派の魔術師は解放された。残ったのは非戦闘員の信徒達ぐらい。
      大天使達も倒した。だがまだいるんだよ。『禁書目録』、通称インデックスが」

その名を聞いて、何人かは反応し、何人かはちんぷんかんぷんだった。

365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:26:05.52 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「彼女を倒さなければ、戦争に勝利したことにはならない」

青ピ「インデックスちゃんを倒す?あの女の子を?そもそも戦えるんかいな?」

フィアンマ「(こいつ、インデックスを知っているのか?)戦えるなんてもんじゃない。
      ヨハネのペンが発動した彼女は最強最悪の敵『魔神』いや『神上』といってもいい」

御坂「『かみじょう』って、と、と、とう、コイツの事?」

当麻と言いかけて、結局上条を指差しながらコイツ呼ばわりしてしまった御坂。

フィアンマ「違う違う。『神』に『上』と書いて『神上』だ。
      意味は言葉の通り、神より上の存在と言う事だ」

一方通行「つまり、あの天使達より強いとか言い出すンじゃねェだろうな?」

フィアンマ「強いだろうな」

あっさりとしたフィアンマの言葉に、科学サイドの面々は絶句する。

フィアンマ「だが、希望がない訳じゃない」

青ピ「なんや、その希望って言うのは?」

フィアンマ「上条当麻だよ」

フィアンマの一言に、科学サイドの面々は一斉に上条を見る。

フィアンマ「こいつの能力は『幻想殺し』だが『幻想殺し』なんて
      コイツの“中”にいる化け物を抑える蓋でしかない」

その一言に、またしても上条に注目が集まる。
今度は魔術サイドの面々、シェリーや土御門、エツァリやショチトル、天草式達も上条を見ていた。

366: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:27:34.28 ID:iNh2rC4q0
絹旗「では、この上条さんを中心に、私達がサポートしていくって感じですか?」

フィアンマ「いや、その必要はない。上条とインデックスの戦いは壮絶なものになる。
      俺様達では手が出せないほどにはな。上条には1対1で戦ってもらう」

その一言に、一方通行は疑問を呈する。

一方通行「じゃあ何で俺達までこのクソだりィ話聞かされたンだ?
     それだったら、オマエらだけで話し合えば良かったじゃねェか」

御坂「話は最後まで聞きなさいよ」

一方通行「うるせェ」

フィアンマ「続けるぞ。それが上条だけで良いと言う訳でもないのだよ。
      魔術師で勘の鋭い奴は気付いていると思うが、ロシアに莫大なテレズマが感じられる。
      つまり、天使達が召喚されている可能性が高い」

それに同意したのはステイルだった。

ステイル「確かに、ヨハネのペンの『禁書目録』なら天使の召喚など容易いだろう」

この天使の召喚にも生贄が必要なのだが、敢えて言わなかった。
生贄に使われた人間はどうしたって戻って来ないし、科学サイドの連中に
躊躇いを持ってもらっては困るからだ。

絹旗「超待って下さい。ということはつまり」

麦野「私達は天使達と戦えってことか」

麦野の一言に科学サイドの面々は凍りつく。

367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:31:25.42 ID:iNh2rC4q0
滝壺「ま、またあんな強さのと……」

浜面「滝壺……」

青ざめている滝壺を浜面は優しく抱きしめる。

フィアンマ「いや、さっきまでの天使達は、大天使と言うくらいだ。
      普通の天使達とは比べ物にならないくらい強い。
      逆を言えば、インデックスが引き連れてくるであろう天使達は
      おそらく大天使の4分の1の強さもない」

とはいえ、強いのに変わりはないがな。とフィアンマは付け加える。

フィアンマ「さらに、数も何体いるかは分からない。3体ぐらいしか連れてこないかもしれないし
      10体ほど連れてくるかもしれない」

いくらあの大天使より弱いとはいえ、10体もきたらどうなるのか。
先程まで天使の強さを垣間見たものや、魔術サイドの面々は恐怖に慄いた。
だが何人かは違う反応を見せた。

白井「よく分かりまんけど、今度こそお姉様の力になって見せますの!」

垣根「俺様が、軽く捻ってやるよ」

フィアンマ「その威勢、保っていると良いがな。ま、話をはこんなところかな。
      明日に備えて今晩はゆっくり休んでくれ」

一方通行「おい待て。本当に明日までは大丈夫なンだろうな」

フィアンマ「分からん」

一方通行「はァ?」

フィアンマ「だが多分大丈夫だ。天使の召喚と言ったって、1秒で終わる訳じゃない。
      時間はそれなりにかかる。数が多ければなおさらな」

一方通行「学園都市には、突然現れたじゃねェか。
     それに3体しか召喚しなかった場合は、時間はどうなる?」

フィアンマ「用心深いな。そんなものは違う場所で召喚の儀式が行われ
      召喚は学園都市の座標に合わせただけだ。それと呼び出す天使の種類
      質、数、準備など様々な条件によって時間は変わるが
      いくらインデックスとはいえ、最低10時間はかかるだろう」

一方通行「じゃあインデックスの天使もいきなり学園都市に召喚される心配は」

フィアンマ「その心配はない。この戦争が始まって、学園都市に侵入した魔術師が
      天使を『ここに呼び出す』と言う印をつけた。だがそれは俺様が既に処理した。
      それで遅れたんだよ」

フィアンマ「じゃあ1晩だけだが、ゆっくり休んでくれ。聞いたところによると
      ここには名医がいるそうじゃないか。できれば各自万全な状態にしてもらえ」

368: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:32:59.32 ID:iNh2rC4q0
時間は午後8時。ベッドが6つある部屋に『アイテム』と半蔵と郭がいた。
フレメアはレベル0の少女だった為、核シェルター級の避難所へ移送された。

半蔵「なあ浜面。さっきの話マジなのかなあ」

病室の窓に寄りかかりながら、半蔵は同じく寄りかかっている浜面に尋ねる。

浜面「嘘をつく理由がない。それに見たろ?あの赤い天使を」

半蔵「俺さ、怖いんだよ。俺だってレベル0なのに、明日化け物と戦う事が……
   そりゃ空気に流された俺も悪いけどさ……やっぱり怖ぇよ……」

言いながら半蔵は泣き始めた。よっぽど怖いらしい。

半蔵「浜面、お前はさ、怖く……ないのかよ……」

浜面「怖えよ。めちゃくちゃ。俺だって泣きだしたいぐらいだ」

けど、と浜面は続けて

浜面「守りたいモノがある。守らなきゃならないモノがある。
   だからさ、怖がっている暇なんてないんだよ」

半蔵「何だってんだよ……何でお前は……そんなに強いんだよ……」

浜面「強くなんかねぇ。ただの意地だ。お前にだってあるだろ?守りたいモノ」

半蔵(守りたいモノ……)

半蔵は病室を見まわし

半蔵(……郭……か?)

その時、狸寝入りを決めていた郭は心の中で

郭(もしかして半蔵様、今私の事思ってくれている?)

思わずテンションが上がっていた。

369: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:34:11.61 ID:iNh2rC4q0
同じく、狸寝入りを決めていた『アイテム』の面々は

絹旗(浜面のやつ、超浜面のくせにちょっとかっこよかった……)

滝壺(はまづらは、アイテムの中で1番の重傷で、1番弱いのに……私がサポートしなきゃ……)

麦野(……絶対に皆を死なせはしない)

静かなる闘志を秘め、麦野はゆっくりと目を閉じる。

370: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:35:40.77 ID:iNh2rC4q0
神裂「まずは謝ります。すいませんでした。建宮の事も」

天草式十字凄教の女教皇である神裂火織は、病院の一室で天草式の仲間たちに頭を下げた。

五和「いえいえ。分かってくれればいいんです。女教皇こそ、お体大丈夫ですか?」

神裂「ええ。それと、明日は壮絶な戦いになると思いますが、ついてきてくれますか?」

五和「もちろんです!」

神裂「感謝します。では、これで」

神裂は、天草式のメンバーが使っている病室を出て
シェリーやアステカの魔術師がいる自室へ戻った。

シェリー「許してもらえたのか」

神裂「おかげさまで」

シェリー「よかったな」

シェリーとの会話はそれで終わった。

神裂「あなたもすみません」

次に神裂は、エツァリに謝罪した。

エツァリ「ええ、とっても痛かったですよ。けどもう良いです」

にこりと優しい笑みを浮かべるエツァリ。

神裂「そう言ってもらえると助かります」

ショチトル「おい。私は許さないからな」

エツァリ「ショチトル。そんな事を言うものではありません」

ショチトル「ふん」

371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:38:48.02 ID:iNh2rC4q0
御坂「何なのこの割り当て、おかしくない?」

時間は既に午後9時。ベッドが4つある病室で、御坂美琴は文句を言っていた。

御坂「私と淡希と黒子は分かる」

御坂はそこで、けど、と一拍置いて

御坂「なんでアンタも一緒なのよーっ!」

一方通行「うるせェなァ。いいから早く寝ろよ」

御坂「眠れないわよ!こんな男がいる部屋で!」

一方通行「仕方ねェだろ。こううまい具合人間関係考えて整えると、こうなるしかねェンだよ。
     俺だって不満だわ」

御坂はここでぐぅの音も出なかった。正直彼女にはこれがベストメンバーに近い。
だって残りは、得体のしれない魔術師達に、全く面識のなかった垣根と青い髪の毛の少年
そして『アイテム』だ。
この中から選ぶぐらいなら、因縁があるとはいえ一方通行の方がマシかもしれない。

御坂(男の枠が、あの馬鹿だったら……)

一方通行(ようやく静かになりやがった)

この言い合いの一部始終を聞いていた白井黒子は

白井(お姉様……類人猿の次はアルビノ人間ですの?)

ベッドのシーツを噛みながらそんな事を思っていた。

結標(神経が図太すぎるでしょ……)

結標は白井とも御坂とも一方通行とも因縁がある。それなのにこの3人ときたら、この調子だ。
自分はひょっとしたら存在を認識されていないのかもしれない。

結標(ほんと、頭痛がしてくるわよ。このメンバー……)

372: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:39:35.48 ID:iNh2rC4q0
ヴェント「ねぇフィアンマ、私達、勝てるかな?」

病院の個室で1つのベッドに横になりながら2人は喋る。

フィアンマ「俺様がいるんだ。負けるはずがないだろう?」

ヴェント「ふふ。あなたはいつもそうだよね。でもさ、オッレルスもシルビアも負けたんだよね」

フィアンマ「まあインデックスが覚醒してしまっていることを考慮すると
      奴らは失敗したことになるな」

ヴェント「あの2人が負けるなんて、私不安で……」

そんなヴェントをフィアンマは強く抱きしめる。

フィアンマ「大丈夫だ。俺様が絶対に守ってやる」

ヴェント「うん///」

373: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:40:08.49 ID:iNh2rC4q0
同じく病院の個室のベッドで、垣根は物思いに耽っていた。
心理定規は、戦闘系の能力者ではない為避難所に行かせた。
絶対に迎えに行くと約束して。

374: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:43:08.63 ID:iNh2rC4q0
土御門「カミやん、色々済まなかったな。舞夏はもう無事だ。ほらステイルも謝れ」

4つのベッドがある病室で、ステイルは渋々といった調子で

ステイル「……すまなかった」

上条「もういいよ」

ステイル「そして、もう1つだけ頼みがある。絶対にインデックスを救ってくれ!」

ステイルは珍しく、いろんな意味で敵である上条に頼み込んだ。

上条「はは、お前らしくないな。言われなくてもそうするつもりだよ」

土御門「カミやん、フィアンマの言っていた事、本当か?」

上条「ああ。俺は“中にいる”力を使いこなして、インデックスを救って見せる」

そこへ特攻をかけたのは、話題について行けなくて空気だった青髪ピアスだ。

青ピ「それって、カミやんの『中の人』の力を使うってことやろ?
   それってさ、操り切れなくて暴走とかって言うお決まりの展開になるん?」

上条「それは、させない」

ここで普段の上条をよく知っている土御門と青髪は
何か雰囲気が違う上条に違和感を覚えた。と上条の雰囲気が元に戻る。

上条「つーかさ、お前普通に居るけどなんなの?」

青ピ「カミやん。ミカエルの翼抑えたのは、何を隠そうこの僕やでー。
   実は僕、レベル5の第6位なんや」

上条「マジかよ!?」

土御門(俺ですら詳細を知らない第6位が、まさかこんな身近にいたとはな)

上条「ちょ、じゃあお前、自分で言うのもなんだけど
   なんで俺らと一緒に底辺校通ってるんだよ!?」

青ピ「そんなん簡単やー。小萌先生がいたからやでー」

上条「は?それだけ?」

青ピ「それだけって、人生において、どんな教師に授業を教わったかというのは重要な事やで。
   大体僕はレベル5の器じゃないし、名門校なんてつまらなそうやし。
   カミやんたちとバカやってるの楽しいしな」

上条「青髪……」

上条は素直に感動した。

土御門(なるほどな。ま、レベルなんて高くても闇の世界に堕ちるか
    輪の中心に立つことは出来ても、輪の中に入る事は出来ないなど
    それほど良い事もないからな。こういう生き方もあるってわけか)

375: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:45:40.81 ID:iNh2rC4q0
青ピ「それよか、文句があるのはこっちやで」

上条「は?お前に何かした覚えねぇけど」

青ピ「僕は、カミやんやツッチーの事を親友やと思ってる」

上条「だから何が言いたいんだよ」

青ピ「あのな、僕もバカやない。詳しくは知らんかったけど、カミやんも土御門君も
   得体のしれない『何か』に関わっていることぐらい前から何となく感じてた」

青ピ「なのに一言の相談もなしやったんやで。親友としてはちょっとなぁ」

上条「親友だから、余計に巻き込みたくなかったんだよ。
   つーか俺はお前の事をレベル5って今日知ったんだからな。一般人を巻き込めるかよ。
   いやもちろん、レベル5と分かっていたとしても、お前を巻き込むつもりはなかったけどな」

青ピ「そんな気遣いいらんよ。寧ろ相談してくれないと疎外感あるやん」

土御門「ま、レベル5である事を隠していたお前が
    グチグチ言う権利は無いんじゃないかにゃー?」

青ピ「今までダンマリ決め込んでいたくせに、こういうときに限って
   ツッコんでくるなんて、ほんまツッチーはいやらしいなぁ」

土御門「まあレベル5隠していたのと“おあいこ”ってことで、今日はもう休もうぜい」

上条「そうだな」

青ピ「そうやな」

こうしてそれぞれの夜は更けていく。

376: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:48:42.24 ID:iNh2rC4q0
0:00 病院屋上

上条は屋上のフェンスに寄りかかりながら黄昏ていた。
そんな時、バタン!と屋上の扉が閉まる音。一体誰がこんな時間に?と
上条は扉の方へ視線を持っていく。

土御門「ようカミやん。こんな時間に、しかも寒空の下で何やってるのかにゃー?」

上条「そりゃこっちの台詞だ」

土御門「聞きたい事があってな」

言いながら、土御門は上条の隣に来て同じ様にフェンスに寄りかかる。

土御門「無駄な問答は避けたいから初めに言っておくが、俺はカミやんの記憶喪失を知っている。
    いや正確には記憶破壊か」

その時、上条は無言だったが、内心ではかなり驚いていた。
記憶破壊と言う辺り、あてずっぽうでない事は分かる。
そもそも、お前記憶喪失だろ?なんてあてずっぽうでも言わない。
土御門は確かに記憶喪失を認知していると思っていいだろう。

土御門「で、質問て言うのはさ。お前、インデックスの事好きだろう?」

その質問に何の意味が?と上条は思ったが、土御門が真面目に聞いてくるので真面目に回答する。

上条「前の『上条当麻』がどう思っていたかは知らないけどさ。俺は好きだよ。
   ただ最初の方は、恋愛対象としてではなく、家族としてって感じだったけどな。
   なんつーか、妹が出来たみたいだなーって」

土御門「じゃあちょっと辛い事を聞くかもしれんが、聞いてくれ。
    その好きな人と戦うのは、辛くないか?
    俺が舞夏と戦うなんて事になったら、多分俺は発狂する。何でそんなに冷静なんだ?」

上条「こう言うと語弊があるかもしれないけどさ。
   俺にとっては願ったり叶ったりな部分もあるんだよ」

土御門「どう言う意味だ?」

上条「今度こそ、インデックスを救えると思ったからさ。
   前の『上条当麻』が出来なかった事を、出来ると思ったから」

もちろん、前の『上条当麻』が何を思って救ったのかの詳細は知らない。
けれども、インデックスが牙をむくと言う事は、完璧には救えていなかったという事。

377: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:49:57.07 ID:iNh2rC4q0
土御門「いや、分からん。どう言う意味だ?」

上条「今の俺なら、インデックスの頭の中にある10万3000冊の魔道書を破壊できる。
   インデックスを完璧に救える!」

土御門「どうやって?
    インデックスの頭を開けて、脳細胞を直接破壊するとか言うんじゃないだろうな」

上条「そんなわけないだろ。けど、きっとできる。実際俺が記憶喪失になっているんだからな」

そう。上条の記憶破壊は、何も頭を開けて脳細胞を削ったからではない。異能の力によるものだ。

土御門「それはインデックスの脳細胞ごと魔道書の記憶を破壊すると言うことか?」

上条「いや、10万3000冊の魔道書だけを破壊する」

土御門「そんなことが」

上条「できる」

できるのか?と言おうとした土御門の言葉は遮られた。

土御門「そうか。いろいろ聞いて悪かったな。じゃあな。早く寝ないと風邪ひくぞ」

上条「ああ」

378: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:50:33.53 ID:iNh2rC4q0
『今更何のようだ?』

『インデックスを救いたい。だから力を貸せ』

『あの時は「引っ込んでろ」とほざいたではないか』

『うるせぇ。状況が状況なんだよ。力を貸さないって言うなら、勝手に借りてくぜ』

『貴様ごときに、我が力を使いこなせるとでも?無理だ』

『まあ我は一向に構わんがな。そのまま貴様の体を乗っ取ってやるだけよ』

『いいぜ、テメェごときが、この俺を支配できるってほざくなら――』

『――まずは、その幻想をぶち殺す』

379: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:53:05.02 ID:iNh2rC4q0
12月25日 AM9:00 病院前

半蔵「郭、準備は出来てるか?」

郭「はい!もちろんです!」

半蔵「あのさ、お前はこの戦い、降りても良かったんだぞ?死ぬかもしれないのに」

郭「私は半蔵様に一生ついて行くって決めましたから。
  それより、半蔵様こそ、何故この戦いを降りなかったのですか?」

郭は昨日の会話を狸寝入りで聞いている。
だから空気に流されてと言う事は知っているのだが、敢えて聞いた。

半蔵「正直言うと、かっこ悪いけど空気に流されてかな。
   だけど、この状況の学園都市や浜面とかを放っておけないと思ったのも事実だよ」

郭「半蔵様……かっこいいです……惚れ直しました///」

半蔵「戦闘に付き合わせるんだ。絶対お前の事を守ってやるからな」

郭「半蔵様///私も全力を尽くします!」

380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:53:32.92 ID:iNh2rC4q0
ショチトル「エツァリお兄ちゃん、私の事、守ってくれる?」

これから迎える戦いを想像して震えるショチトルを、エツァリは優しく抱きしめる。

エツァリ「もちろんですよ」

381: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:54:12.52 ID:iNh2rC4q0
神裂「これが最後の戦いです。気を引き締めていきましょう」

天草式「はい!!!!!」

そんな天草式十字凄教を遠目に見ながら、ステイルはルーンを仕込んでいた。
そこへシェリーが近付いてきた。

シェリー「お前1人ぼっちかよ?寂しい奴だな」

ステイル「君に言われたくはないね。そんなことより君の準備は良いのか?」

シェリー「そんなもの必要ないわよ。私の魔法陣を書く速度をなめるなよ」

ステイル「そうですか」

382: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:55:05.17 ID:iNh2rC4q0
絹旗は浜面の目の前で満面の笑みを浮かべながら

絹旗「浜面、超先に言っときますけどね。
   なんだかんだいって、浜面はかっこよかったです。それだけ!」

浜面「おい、それはお前の死亡フラグなのか?それとも俺の死亡フラグなのか?」

滝壺「大丈夫だよ。はまづらに死亡フラグが立ったとしても、私が守るから」

絹旗「滝壺さん!その言い方だと、私の事は超守ってくれないみたいじゃないですか!」

いつも通り騒がしくなってきた3人に、麦野はこう言った。

麦野「死亡フラグなんてもんあると言うのなら、私はそれをへし折ってやるよ」

383: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:56:02.57 ID:iNh2rC4q0
御坂「黒子、アンタ本当に大丈夫?あんなに重傷だったのに」

白井「お、お姉様が、黒子を心配して下さるなんて……お姉様こそ、
   あの日本刀女との戦闘の後も、力を使い過ぎたらしいですが……大丈夫ですの?」

御坂「大丈夫よ。駄目になりそうだったら言いなさいよ。私が守ってあげるからね」

白井「お、お姉様ーっ!」

思わず御坂に抱きつく白井。

御坂「ちょ、抱きつくな!あ、これは違うからね!勘違いしないでよね!淡希!」

白井「淡希って……!なんで、お姉様があの露出狂女の事を名前で」

御坂「こら!淡希のことを悪く言わないの!」

ゴチン!と白井はゲンコツをもらう。

白井「あ、あああ、そんな……」

結標(常盤台のお嬢様って……まともなのいないのかしら)

384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:57:26.32 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「だいぶ吸収したテレズマが馴染んできたな。お前はどうだヴェント?」

ヴェント「うん。私も良い感じかな?暴走しちゃったら場合は止めてネ♪」

フィアンマ「お前、たまに俺様でも恐怖を抱く様な事を平気で言うよな」

ヴェント「フィアンマの事を信じているから言える事だヨ?」

フィアンマ「あんま嬉しくない信頼だな」

385: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 04:58:47.09 ID:iNh2rC4q0
垣根「久しぶりだな。一方通行」

一方通行「何の用ですかァ?」

垣根「挨拶しただけなのに、その反応は酷いんじゃないの?」

一方通行「オマエと話す事なんてねェもン」

垣根「冷たいな。今の俺はレベル6だぜ。俺自身が『未元物質』になれる」

一方通行「その程度で粋がンな。
     俺もレベル6だし、オマエ自身が『未元物質』になろうが、俺はそれを解析する」

垣根「なるほどね。ま、初めての共闘をするわけだから、仲良くしようや」

一方通行「(序列コンプレックスはなくなったみたいだな)足だけは引っ張ンなよ」

386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 05:00:19.64 ID:iNh2rC4q0
青ピ「なあなあツッチー。能力者なのに、魔術って使えるの?」

土御門「なかなか鋭いにゃー。能力者に魔術は使えないぜい。
    めんどいんで詳しくは省くがな。俺は能力の特性上、3回ほど使える。
    逆に言うと、3回でギリギリだから、ほとんどはお前に頼ることになるぜい」

青ピ「ええー。ツッチーの役立たずー」

土御門「お前、昨日は頼れとか言ってたくせに!」

青ピ「共闘は良いけど、守りながら戦うのは勘弁や。女の子ならともかく!」

ふざけんにゃー!と喧嘩が始まる。

削板「おいお前ら!喧嘩は止めろ!」

削板が一喝した。その一言に、土御門と青髪の喧嘩がピタッと止まる。

土御門「つーか大丈夫なの?昨日は重傷すぎて、話も聞いてないんだろ?この状況理解してる?」

削板「うーん、よく分からんがな。とにかく戦って勝てばいいんだろ。任せとけ!」

青ピ(しっかし、一晩丸々休んだとはいえ、あの重傷がここまで回復するもんかいな。
   人間かコイツ……)

とそこで上条が口を開く。

上条「騒ぐのはその辺にしとけよ」

青ピ「なんや、カミやんちょっと冷たいでぇー」

上条「……」

青ピ「ガン無視されたんですけど」

土御門(カミやん……)

上条「フィアンマ」

フィアンマ「何だ?」

上条「これ以上待ってられない。ちょっと先に行って戦ってくる。皆に離れるように言ってくれ」

フィアンマ「どうやって?」

上条「良いから頼む」

その一言に得体の知れない威圧感を感じたフィアンマは指示に従う。

387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 05:01:18.93 ID:iNh2rC4q0
フィアンマ「離れてもらったぞ!」

上条から100mもの距離を取ったフィアンマが大声で上条に呼び掛けた。

上条「オッケー」

上条のその返事と同時に、バリィィィン!とガラスが割れるような音が響いた。

土御門「これは『幻想殺し』が能力を打ち消した時の音と似ている――!」

土御門がそう私見を述べた時には、辺りに暴風が吹き荒れた。
その暴風の源、上条を見ると、その背中から50mもの翡翠色の翼が生えていた。

フィアンマ「あれは『竜王の翼』(ドラゴンウィング)!もしや、やつの中にいるのは――!」

フィアンマがそう叫んだ時には、上条はフィアンマ達の視界から消えていた。

388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/06(火) 05:02:42.32 ID:iNh2rC4q0
上条は時速10000kmでロシアへ向かっていた。

上条「話によれば、ロシアから来るんだよな?」

ロシアから来るんだから、ロシアへ向かえば激突するんじゃね?という単純な考えで飛行していた。
とそこで、前方に9つの光が見えた。

上条「――!」

上条から光が見えてから、1秒。9つの光と上条は交差した。
それで9つの光の内の2つは、上条の『竜王の翼』に切り裂かれた。

残りの6つの光は、そのまま学園都市の方へ向かい、1つの光はその場に留まった。

禁書「――警告、第二十四章第六節。召喚された天使の迎撃を確認。
   現状、天使を迎撃した謎の力に対しての迎撃を優先します」

上条「よう、インデックス。今度こそ、完璧に救ってやるからな」

『神上』と『神浄』の戦いが始まる――!

395: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:14:23.85 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:15

フィアンマ「そろそろ来るぞ。皆準備は良いか?」

全員「おう!!!!!!!!」

と、全員が気合いを入れたところで

ビシュン!と天使3体が、突然フィアンマ達の目の前に現れた。

浜面「いきなり!?」

一方通行「おい。いきなり召喚されてンじゃねェか!」

フィアンマ「馬鹿かお前は。こいつらはたった今、学園都市に到着しただけだ」

つまりは、可視出来ぬ程の速度でやってきた。ただそれだけ。

フィアンマ「こいつはやばいぞ。質が半端じゃない。気を抜けば一瞬で殺されるぞ。
      現時点では3体だが、もう3体後から来るみたいだ」

直後、天使の内の1体、人型で黄緑色をした『神の雷光』(バラキエル)が
稲妻のようなものを乱発した。それにより、一瞬で病院前の大地は荒野になった。

天使達の目の前には荒野しか広がっていなかった。
ここで一般人ならフィアンマ達は消滅したと思うだろう。だが天使達は違った。
人間達は散り散りになっただけで消滅したわけではないと言う事を感知した。

396: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:15:43.40 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:17

結標「咄嗟に皆を滅茶苦茶にテレポートしちゃったんだけど、大丈夫かしら?」

病院から見て北5km地点で結標は嘆いた。とそこでパッ!と目の前に白井が現れた。

白井「ここからお姉様の匂いがしましたの!」

テレポーターはテレポーターをテレポートできない。
だから白井は、こうして遅れてテレポートしてきたのだ。

御坂「げ、黒子」

そして白井は見事に御坂の場所に辿り着いた。

白井「げ!とは何ですの。お姉様の匂いだけで辿り着いたこの健気な白井黒子を
   褒めてくださってもよろしいくらいですのに」

御坂「うるさい!気持ち悪い!」

そんなやりとりを見ながら

麦野「何で私がこんなメンバーのところに」

結標「ごめんなさいね。私が滅茶苦茶にテレポートしたばっかりに」

麦野「もういいよ。そんなことより」

ビシュン!と先程攻撃してきた天使バラキエルが結標たちの前に現れた。

麦野「さっさとこいつを倒すよ」

397: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:19:00.83 ID:Ih+JMOPW0
御坂が雷撃の槍を放つのと、大きさ10mほどのバラキエルが雷(いかずち)を放つのは同時だった。雷(かみなり)と雷(いかずち)がぶつかりあい周囲に余波が広がる。

麦野「喰らいな!」

バラキエルの後ろ10mにテレポートされていた麦野は『原子崩し』のビームを放った。
しかしバラキエルは雷を全方向に放ち、ビームを相殺した。

白井(普通の攻撃が効かないのなら、座標攻撃はどうですの!?)

白井は体に巻いていた大量の金属矢セットから
いくつかの金属矢をバラキエルの体内にテレポートした。
金属矢は確かにめり込んだものの、バラキエルは平然としていた。

結標「ふっ!」

結標は大きさ10mほどの塊を、バラキエルを覆うようにテレポートした。
結果バラキエルは塊に閉じ込められたが、バガァン!と放電しながら一瞬で塊から脱出した。

御坂「ぶっち抜けぇぇぇえええ!」

御坂は既にコンテナ8個分の塊と共に、バラキエルの真上20mほどにテレポートされていて
ウリエルすら追い込んだ必殺の『超電磁砲』を放っていたところだった。

御坂(これで最低でも瀕死に――!)

しかしそれは甘い考えだった。バラキエルは『超電磁砲』をかわし
一瞬で御坂の後方に周りこみ、即席で生み出した槍型の雷を放った。
その一撃から白井が連続でテレポートをして助けた。
かわした槍型の雷は地面に直撃すると壮絶な爆音と共に直径30m、深さ20mほどの穴が穿たれていた。

御坂(喰らえば即死ね。死体も残らないわ)

結標「気合いを入れ直すわよ!」

398: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:20:33.46 ID:Ih+JMOPW0
そうして戦いが始まって5分ほど経ったが
少女達は、未だにバラキエルに決定打を与えられていなかった。
このままだと消耗して不利なるのは少女達の方である。

御坂(くっそ!本当に速い!)

バラキエルの1番の強みは、スピードである。
そのあまりの速さにダメージを与えるどころか
テレポートで何とか攻撃を避けるくらいしか出来ない。

御坂(これならどうよ!)

御坂の周囲から大量の砂鉄が渦巻く。
それを鞭のようにしてバラキエルへ攻撃するが、グン!と砂鉄はバラキエルの手前で反発した。

麦野「やめろ美琴!やつも得意分野は電撃みたいだ!
   ということは、多分電撃による攻撃は効かない!」

御坂「そん……な……」

少女達の中でメインアタッカーである御坂が封じられた。
その事実は、少女達のモチベーションを著しく下げた。
それを敏感に感じ取ったバラキエルは、一気に勝負を決めようと、周囲2kmに数万の雷を放った。

結標(これは一旦退くしかない!)

そう考え、結標は御坂と麦野と共に、自身の上限である10kmの距離をテレポートした。

399: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:21:36.28 ID:Ih+JMOPW0
御坂「く、黒子!黒子が!は、早く私を戻して!」

結標「駄目よ。まだ放電は続いている。戻れない」

御坂「ふざけんじゃないわよ!黒子が!黒子が心配なの!」

麦野「落ち着け!きっと大丈夫だ」

麦野はそう言ったが、雷の速度に対して、一気に雷の範囲外まで飛んだ自分たちは
ともかく、範囲内に居るなら、テレポートしたところで逃げ切れなかっただろう。
つまり――

御坂「そ、そうよね。大丈夫よね」

御坂はそう自分に言い聞かせた。一旦冷静になるんだ。
そう思い深呼吸したところで

ビシュン!とバラキエルが御坂達の目の前に現れる。そして、放電。

結標・麦野・御坂(((ま……ずっ――!)))

完全に不意を突かれた御坂達は、思わず目を瞑った。

400: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:23:10.75 ID:Ih+JMOPW0
放電から10秒ほど経過しただろうか。衝撃は、ない。

麦野(……?)

恐る恐る最初に目を開いたのは、麦野だった。
そこに広がっていた光景は

一方通行「俺も長くは保たねェ!早くオマエらで止めをさせェ!」

神と化した一方通行に、彼が出した手に抑えられているバラキエルだった。

麦野(しかし、どうすれば……)

御坂「沈利!『原子崩し』を最大で出して!」

麦野「だが、それで倒せるとは到底」

御坂「いいから早く!私に考えがある!」

麦野「分かったよ!」

どうせ左手は義手だ。代わりはいくらでもある。
そう思い麦野は、左手が吹き飛ぶほどの『原子崩し』によるビームを放った。

その様子にギョッとする御坂であったが
それでも自身がいま出せる最大出力の、10億Vの雷撃の槍を『原子崩し』のビームに重ねた。
つまり『超電磁砲』と『原子崩し』の合体。

御坂「喰らえ!『超原子砲』(メルトガン)!」

麦野「え?」

バラキエル「hfgfwhbgfhw!」

バラキエルは危険を感じ取り、避けようとするも一方通行の巨大な手によって
身動きが取れない。そして――

バギャァァァァァン!と『超原子砲』がクリーンヒットした。
それでバラキエルは消滅した。

401: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:25:11.62 ID:Ih+JMOPW0
一方通行「ふゥ」

一方通行は神化を解いて、一息ついた。

御坂「レベル5同士の技の合体。新技の威力どうよ!」

御坂は得意気にガッツポーズをした。

麦野「いや、私達の技が強かったと言うより、相手の耐久力が低かっただけなんじゃないか?
   つーか、後輩は良いのかよ?」

御坂「そ、そうだ黒子!黒子!!」

麦野(今まで忘れていたのか?)

こいつひょっとして案外アホの子だったりするんじゃないかと思ったところで

パッ!と白井黒子が虚空から現れた。

御坂「く、黒子……!?黒子ー!」

思わず御坂から白井に抱きつく。

白井「え?お姉様、もしかして黒子の事心配して下さったんですの?」

御坂「当たり前でしょ。もう、黒子の馬鹿」

そこで白井は、あまりの嬉しさに本当に昇天しかけた。

白井(お、お姉様が、お姉様が黒子を心配して、お姉様が抱きしめてくれるなんて!グヘ、グヘヘ)

そこへ麦野は空気を読まず白井に尋ねる。

麦野「おい。お前どうやって助かったんだよ?」

白井「咄嗟に下水道にテレポートしたんですの。
   まあ地面や壁に埋まる可能性もありましたが、あの時はああするしかなかったんですの」

麦野「へぇ」

麦野は白井の度胸に素直に感心した。そんな様子を遠目に見ていた結標と一方通行。

結標「とりあえずあの子達を代表してお礼を言っとくわ。ありがとう」

一方通行「これで借りは1つ返したからな」

言いながら、抱えていた垣根を降ろす。

結標「そちらの方はもうダウンしたの?」

一方通行「まあな。けど置いとく訳にもいかねェし、仕方なく持って来たンだよ」

結標「私達を助けに来たってことは、貴方達はもう天使を倒したってこと?2人だけで?」

一方通行「あァ。結構あっさりな」

402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:26:24.12 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:16

病院から見て北西5km地点で一方通行と垣根は、大きさ10mほど、4つの翼と腕を持つ
人型の真っ白な『神の美』(ヨフィエル)と戦った。

まず垣根が自ら『未元物質』になり、ヨフィエルと激突。
その激突で垣根は戦闘不能になるも、ヨフィエルも翼と腕を2つずつ失うと言う重傷だった。

そこへ一方通行は神と化し、自身の手に連動する巨大な手を出現させ
一撃でヨフィエルを捻り潰した。

一方通行「こンな感じで終わった。で、黄緑の光が見えたンで、コイツ拾ってかけつけた訳だ」

結標「なるほどね」

一方通行「次行くぞ。あの橙色の光の方にな」

403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:28:54.20 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:20

病院から見て北東5km地点で、浜面、滝壺、絹旗、半蔵、郭、削板は
大きさは10m、人と豹を足して2で割ったような形で、尻尾も生えており、頭上には輪っか
背中には翼が生えた橙色の『神を見る者』(カマエル)と交戦していた。
先程の病院前にはいなかった天使である。

カマエルは見た目からして接近戦が得意そうだった。
そしてそれは、接近戦が得意なこのメンバーにとっては好都合だった。

半蔵は『発条包帯』(ハードテーピング)で自身の身体能力を向上。
浜面も能力を既に解放していて、滝壺に補助してもらいながらハードテーピングで二重の構え。
絹旗も滝壺の補助を受け強化。削板はいつも通り全力。郭は滝壺のサポート。
まさに万丈の構えだった。

カマエル「hwrhjkbytkwyt!」

カマエルはまず、削板に肉迫し引っ掻くように、腕を振り下ろした。

削板「遅い!」

対して削板はそれを避け、カウンターのアッパー。カマエルは空中を舞う。

絹旗「超喰らえ!」

そこへ浜面に投げられて空中を舞っていた絹旗のかかと落としが炸裂した。
カマエルは地面に叩きつけられる。

絹旗(それでも輪っかは割れませんか……)

カマエルは起き上がると、今度は滝壺を狙い肉迫した。

浜面「させるかよ!」

しかし浜面が滝壺と郭の前に立ち塞がった。
一瞬でも臆し、タイミングが遅れれば引き裂かれてしまう状況で
浜面はレベル4相当の渾身のクロスカウンターを放った。
それは見事にカマエルの顔面へ叩きこまれ、カマエルは3mほど吹き飛ばされた。
そこへ追い討ちをかけるように、半蔵は鎖鎌を投げつけ、巻き付かせた。

半蔵「っしゃあ!あとは――」

カマエルが巻き付いた鎖鎌を精一杯の力で振り回し地面に叩きつけた。
そこへ

削板「すごいパーンチ!」

倒れているカマエルに直接、渾身の一撃を叩きこんだ。

郭「これはいけますね、滝壺氏!」

滝壺「そうだね。でもまだ油断は出来ないよ」

404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:31:41.01 ID:Ih+JMOPW0
削板「あれ?」

絹旗「超どうしたんですか?」」

削板「いや、殴ったと思ったら空振ってた」

削板を除く全員が、は?と思ったその時、カマエルの咆哮が聞こえた。
それは削板の後ろから。不意の咆哮に全員が思わずたじろぐ。
カマエルの口が大きく開かれた。そこから黄土色の光線が吐き出され
ドゴォォォン!と辺りが蹂躙された。

削板(くっそ!光線は卑怯だろ!)

何とか直撃を免れた削板は、空中を舞っていた。とそこに
シュン!とカマエルが突然目の前に現れ、爪を振り下ろしていた。

削板(――!)

あまりの速度にガードすら出来ず、爪をまともに喰らった削板は、そのまま地面に叩きつけられた。
光線と削板が叩きつけられた衝撃で莫大な煙が立ち込める中
絹旗は腕に窒素のドリルを纏わせて、煙をかき分けカマエルの後ろから特攻した。

それに対してカマエルは、尻尾を振るった。
その一撃は窒素のドリルを掻い潜り、絹旗にダイレクトにヒットした。
尻尾の一撃をまともに喰らった絹旗は、学園都市の街並みを3km転がった。
いくら窒素を纏っているとはいえ大ダメージだった。

次にカマエルが狙いをつけたのは浜面。
0・1秒にも満たない時間で肉迫された浜面は、反撃もガードも出来ずに爪で無残に引き裂かれた。

滝壺「は、はまづらーっ!」

郭「た、滝壺さん駄目です!今そいつに近付いちゃ――」

郭の引きとめも虚しく、思わず飛び出した滝壺は頭から喰われた。

405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:33:04.94 ID:Ih+JMOPW0
郭「う、う、うわあーっ!」

泣き叫び、逃げ出す郭をカマエルが追いかけようとしたところで
ジャララ!と半蔵の鎖鎌が放たれる音が響いた。

カマエルはそれに敏感に反応し、軽く爪を振るい、やってきた鎖鎌を引き裂いた。

半蔵「ちっくしょおおおおおおおおおおおおお!」

半蔵は半ば以上ヤケクソで、巨大手裏剣を投げた。
だがそれも鎖鎌同様、軽く爪が振るわれただけで引き裂かれた。
そしてカマエルは、その場でもう一度爪を振るった。瞬間、半蔵の体に切り傷が走った。

半蔵(爪からの風圧だけで……)

半蔵は為すすべなく倒れた。

郭「ひ、あ……」

目の前に広がる地獄絵図に、郭は意識を保てず気絶した。

406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:34:03.00 ID:Ih+JMOPW0
「……わ……くる……るわ……郭」

郭「――っ!」

誰かが自分を呼ぶ声で郭は目を覚ました。
上半身だけを起こし、周りを見渡すと、すぐ近くに左腕がない麦野がいた。

麦野「よかった。アンタは無事だったみたいね」

郭「……」

郭は何も答えることが出来なかった。

麦野「ま、この状況見て気を失うのも無理はないわね。
   元暗部である私ですらも、これは酷いと思ったもの」

郭「どうして……どうしてもっと早く来てくれなかったんですか!」

八つ当たりなのは分かっていた。それでもこのやり場のない思いを吐きだしたかった。

麦野「すまなかった。絹旗と半蔵とナンバーセブンは生きているんだが、浜面と滝壺は……」

郭「……いえ、こちらこそすみませんでした」

407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:35:59.94 ID:Ih+JMOPW0
一方通行(ここでも力を使っちまった。もう俺も力を使えねェ。
     さて、次からはどうしたものか……)

地獄絵図と化していたこの現場を救ったのは、またしても神と化した一方通行だった。
一方通行がカマエルを取り押さえ、御坂と麦野の合体技『超原子砲』で仕留めたのだ。

一方通行(やっぱ耐久力は、大天使よりはないみてェだが……俺はそろそろ限界、
     垣根もこのザマだし、オリジナルと第4位もフルパワーで2回も攻撃したンだ。
     もう限界が近いだろう。今まともに動けるのは、結標とツインテールぐらいか……)

一方通行(このまま無理して増援に行っても、足手まといになる上に
     犠牲がいたずらに増えるだけか……?ここは一旦退くべきか……)

と一方通行がいろいろ思案しているところに、結標が尋ねる。

結標「で、どうするの?」

一方通行「何で俺に聞く?」

結標「この中で1番頭いいし、冷静だからよ」

一方通行「ンじゃあ一旦退きますかァ。このまま行っても、犠牲が増えるだけだ。
     能力が回復次第、増援に行く」

結標「分かったわ。じゃあそれを皆に伝えてくる」

408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:37:44.37 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:25

病院から見て南東5kmの地点で、ステイル、シェリー、神裂、天草式10数名
エツァリ、ショチトル、青髪、土御門はいた。

土御門「まずはこの状況について確認するが、今の状況は病院前での突発的攻撃に対して
    結標がランダムにテレポートした事による」

土御門「これにより、ステイルのルーンの仕込みは無駄になった。
    だからまずはステイルのルーンを仕込む事を優先する。
    この役はステイルと俺と天草式でやる」

土御門「残りはもうじき来るであろう天使を迎え撃つ役をやってもらう。……何か質問はあるか?」

ハイ、とショチトルが手を挙げる。

ショチトル「何でお前が仕切ってるんだ?」

土御門「仕切っちゃ駄目だったか?」

これ以上作戦に関係ない事を質問するのは止めなさい。
と言うエツァリの制止を振り切って、ショチトルは質問を続ける。

ショチトル「別に駄目じゃないが。なんか偉そうだったから」

土御門「それはすまなかったな。これでも仕切るのには慣れているつもりだったんだがな」

そうあっさり謝られると、もうこれ以上ツッコめないショチトル。

土御門「他に質問は?」

皆は特に発言しなかった。

土御門「よし。じゃあ早速行動開始だ」

409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:39:15.94 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:27

一方通行達は病院に辿り着いた。重傷であった半蔵、削板、絹旗はここでリタイア。
レベル0であるのと半蔵を見守るとして郭もリタイアした。
垣根もリタイア候補に挙がったが、垣根自身がまだ行けるとのことで
垣根はそのまま戦力として数えられた。
とりあえず重傷者以外は、病院の1階で待機することになった。

御坂「~!」

御坂は、助けに行きたくても行けないことでソワソワしていた。

白井「お姉様、お気持ちは分かりますが、落ち着いてくださいですの」

後輩の意見を御坂は素直に受け入れ、椅子に座った。しかし今度は貧乏ゆすりが激しかった。
はぁ。と溜息をつく白井。とそこで、左腕の取り付けが終わった麦野が治療室から出てきた。

冥土帰し「やれやれ。そう簡単に左腕を使い潰さないでほしいね?」

麦野「仕方ないじゃない。今回の敵は、何かを犠牲にしないと勝てないレベルなんだから」

それにしても、病院に来てから2分で義手をあっさりと取り付けるこの医者は
本当に人間なのだろうか?と一方通行は半ば以上疑問に思った。

冥土帰し「さて、次は君の番だよ。一方通行」

一方通行「あァ?何が俺の番だ?今の俺に出来る事は、こうやって休む事だけだが」

冥土帰し「僕は閃いたんだよ。君のレベル5の時の演算能力を取り戻す方法を」

一方通行「なン……だと……!?」

410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:41:29.97 ID:Ih+JMOPW0
冥土帰し「今から治療に入る――と言っても、君はただじっとしているだけでいい」

一方通行が案内された場所は、治療室どころかただの個室だった。
ベッドに腰掛けながら一方通行は尋ねる。

一方通行「からかってるンですかァ?こンなただの病院の個室で何するってンだよ?
     つーか何でコイツらがいるンだよ?」

コイツらとは垣根と結標の事だ。

冥土帰し「もちろん君の治療に必要だからだよ。
     正直言うと、これからやることは賭けなんだけどね?」

一方通行「一体、どうするってンだ……」

垣根「こうするんだよ」

垣根はそう言うと、人差し指から1辺が2cmほどの『未元物質』の立方体を生み出した。

垣根「今の俺は、限度はあるが無から有を生み出すなんて造作もねぇ」

一方通行「で、得意気に出したそれをどうするンだ?」

結標「私があなたの頭の中にテレポートするの」

一方通行「はァ?そンな異物頭の中にぶち込まれるとか、迷惑以外の何物でもねェよ」

冥土帰し「いやね、垣根君の『未元物質』。
     これが君の失われた脳細胞の代わりを担うんじゃないかと思ってね」

一方通行「はァ?能力が脳細胞になる?そンなことありえねェ」

垣根「おいおい。あまり俺をなめるなよ。これは一見ただの『未元物質』だが
   お前の脳味噌に触れると、自動的にお前の脳を補うように形が変質し
   完全にお前の脳味噌と同化する。これはそういう『物質』だ」

一方通行「そンなもン、常識的に考えてありえねェだろォが」

垣根「おいおい。忘れたのか?俺の『未元物質』に常識は通用しねぇ」

一方通行「カッコつけてンじゃねェよ」

冥土帰し「お話はそこまでにしようか。まだ戦いは終わっていないんだろ?
     さっさと『未元物質』をテレポートした方が良いね?」

一方通行「ちょっと待て。それが成功すると思うのか?」

冥土帰し「だから言ったじゃないか。賭けだと。けれども、このまま何もせず
     しょぼい演算能力のままと、垣根君の『未元物質』を信じてみるの
     どっちが良いと思う?」

一方通行(しょぼい演算能力ねェ……妹達がたくさン死んだ今は事実だが
     はっきり言ってくれるじゃねェか……)

一方通行「いいぜ。そこまで言うなら甘ンじて受けてやるよォ!」

冥土帰し「では、結標君」

冥土帰しがそう言うと、結標は無言でテレポートを実行した。
垣根の人差し指から『未元物質』が消え、一方通行の頭の中にテレポートされた。

411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:43:22.56 ID:Ih+JMOPW0
ステイル達がルーンを仕込み始めてから、3分もしないうちに
大きさ10mほどの人型ではあるが手は鋏で、蠍の尻尾のようなものが生えている
群青色の『神の栄光』(ハニエル)が神裂達の目の前に現れた。病院前では見なかった天使である。

神裂「では皆さん、ステイル達が来るまで耐えましょう!」

青ピ・シェリー・エツァリ・ショチトル「「「「おう!!!!」」」」

神裂「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)!」

魔法名を名乗ってから、ドン!と勢いよく地面を蹴って駆け出した。
今の彼女は『聖人』の力を8割方失っているが
それでも一般人をはるかに超越していることに変わりは無い。

神裂「唯閃!」

必殺の唯閃が放たれた。
が、ガキィン!と唯閃はハニエルの左鋏にあっさりと受け止められた。
そして反撃の右鋏に、神裂は腹の辺りから真っ二つにされた。

シェリー「くっそ!我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)!」

魔法名を名乗ると同時、シェリーは素早く魔法陣を描き上げ、3体のゴーレムを出現させた。
そして3体同時にハニエルへ襲い掛かる。

対してハニエルは、鋏から水をレーザーのように噴射した。
それはあっさりとゴーレムを貫き、シェリーをも貫いた。

412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:44:37.50 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「くっそおおおお!今度は僕の番や!」

言うと同時、青髪の周囲から水が渦巻き竜を模る。
数は2匹。2匹の竜は凄まじい速度でハニエルへ向かう。

対してハニエルは、両方の鋏から高密度の水を噴射した。
それはウォーターカッターのように、水の竜をあっさりと引き裂いた。
それだけでは終わらず、ハニエルは追撃の尻尾を繰り出す。
5mほどの長さしかなかった尻尾が、急激に伸びる。

青ピ「うおっ!」

青髪は地面を転がりながらも、何とか尻尾を避けた。尻尾はそのまま地面に突き刺さった。

青ピ「危なかったー」

エツァリ「まだ油断しないでください!」

青ピ「それってどういう――」

意味や?と言う前に、青髪がいた場所の下から尻尾が飛び出し、青髪を貫いた。

ショチトル「きゃあああああ!」

エツァリ「くっ!」

エツァリはトラウィスカルパンテクウトリの槍の切っ先をハニエルに向ける。
『分解』が発射され直撃するが、ハニエルにはまるで効いていないようだった。
そこへ追い討ちをかけるように、ハニエルは鋏から青紫色の光線を発射した。
それはエツァリとショチトルを飲み込み、消滅させた。

413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:45:56.56 ID:Ih+JMOPW0
青ピ(これが絶体絶命ってやつか……)

青髪は物陰に隠れてハニエルの様子をうかがいながらそんな事を思っていた。
先程尻尾に貫かれたのは、青髪が生み出した水の分身だった。

青ピ(今のところ奴が出した技を整理すると、水のレーザーに青紫色の光線
   あとは鋏に尻尾……駄目や……僕1人ではどうにも……)

と、いろいろ思考していたら気付いた。ハニエルの左鋏がこちらを向いている事に。

青ピ(――ひょっとして気配で存在を感知しているんかいな――!)

そう一瞬で判断して物陰から青髪が飛び出すのと
ハニエルの左鋏から青紫色の光線が放たれるのは同時だった。

青ピ「っは!」

飛び出した勢いと光線の余波で地面を転がった青髪だったが、何とかハニエルのほうを向き直した。
その時にはハニエルの右鋏がこちらへ向けられていて、光線がチャージされているところだった。

青ピ(やられる前にやる!)

そう判断して、即座に水の竜を生み出して突撃させる。
だがハニエルまであと2mというところで、無情にも光線が発射され
水の竜を一瞬で消し飛ばし、青髪のもとへ向かい

ボガァァァァァン!と周囲に爆音が響いた。

414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:47:02.13 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「ごほっ!ごほっ!」

青髪は莫大な煙が立ち込める中で咳き込んでいた。
そこで気付いた。自分はまだ生きていると。

ステイル「イノケンティウス!」

後ろからステイルの声が聞こえた。応じるように20mもの大きさのイノケンティウスが
ハニエルに近付き持っていた十字架を振り下ろした。ハニエルは左鋏で十字架を掴むが
イノケンティウスの十字架は消えない。そして10秒間十字架を掴んでいただけで
ハニエルの左鋏は溶けだした。さすがのハニエルも一旦距離を取る。

ステイル「逃がすな!」

ステイルがそう叫ぶと、イノケンティウスから火炎が放射された。
対してハニエルは右鋏から大量の泡を発射した。
火炎放射と大量の泡がぶつかり合うが、所詮水と火。
基本的な技の相性はハニエルの方に分があった。
火炎放射は愚か、イノケンティウスまでもが泡に飲み込まれ、一時的に消失した。

415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:48:37.14 ID:Ih+JMOPW0
天草式「女教皇の敵ぃぃぃ!」

五和「待って!皆冷静に!」

五和の引きとめも虚しく、無残に地面に転がっている神裂の上半身と下半身を見て逆上した
五和以外の天草式のメンバーは、ハニエルへ飛びかかる。

ハニエル「rgr殺hg」

ハニエルの蠍のような尻尾から、数千もの針のようなものが全方向に放たれた。
それは天草式メンバー全員の体に幾つも刺さった。

五和「きゃああああああああああああ!」

土御門「しっかりしろ五和!」

ステイル「イノケンティウス!」

一時的に消失したイノケンティウスは再び燃え盛るが
またしてもハニエルに泡を噴射され、消失した。

ステイル(1万枚のルーンを使って、天草式によって最適な配置をされた
     強力なイノケンティウスをこうもあっさり……!)

しかも力が強力な分魔力の消費も激しい。時間をかけている暇は無い。

416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:51:26.37 ID:Ih+JMOPW0
土御門(これはまずいか……!)

土御門「青髪、いつでも技を出せるように準備して
    俺の合図でお前の必殺技をフルパワーで出してくれ。数は1匹でな」

青ピ「……なんやよう分からんけど、分かったで!」

青髪は土御門の言われるままに、自身の周りに水を渦巻かせ待機する。

土御門「――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定」

土御門は懐からフィルムケースを取りだすと、蓋を開けて中身をばらまいた。
1cm四方の四角い紙片が大量に舞い上がる。

土御門「――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン」

土御門「――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス」

土御門「――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式」

土御門はさらに詠唱をしながら、亀、虎、鳥、龍の折り紙が入った
4つのフィルムケースを取り出し適当な方向に投げた。

土御門「――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置」

土御門「――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ」

と、詠唱もあと少しと言うところで、ハニエルが右鋏から光線を発射した。
詠唱を破棄する訳にもいかないし、防御をする手段もない。
青髪も力を溜めているので助けられない。とその時

ステイル「盾になれ!イノケンティウス!」

ステイルのイノケンティウスが土御門の盾になるように立ち塞がった。
イノケンティウスは自らを盾に光線を受けた。水ではない為、そう簡単に消失はしない。
とは言え、光線の噴射は続いている。そう長くは持たない。

青ピ(まさか、ツッチーはこれすらも計算に入れて、こんな長ったらしい詠唱をしてたんかいな!)

土御門「――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ、釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ」

土御門「――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン」

と詠唱が完了したところで、光線がイノケンティウスを貫き、土御門をも貫こうとしたところで

五和「七教七刃!」

ハニエルの周囲に張り巡らされたワイヤーが、ハニエルを切り刻んだ。
とは言え、この程度の斬撃では傷すらつかない。だが右鋏の照準を少しずらすことは出来た。
つまり光線の照準もずれたと言う事。光線は土御門の真上10cmを通過した。

土御門「よし!頼む青髪!」

青ピ「よっしゃ!」

青髪は、今できる限界の水の竜を放った。大きさは30m。水量は500t。

土御門「黒ノ式!」

叫びながら地面に手をかざす。
そこから大量の水が渦巻き、青髪の水の竜と合体し、強力な一撃となってハニエルへ向かう。

ハニエル「gshgmhvjv!」

さすがのハニエルも危険を感じたのか、尻尾から針を出して反撃するが
水の竜はそれらを軽く飲み込み、ハニエルすらも飲み込んだ。

417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:53:38.99 ID:Ih+JMOPW0
土御門「ごほっ!ごほっ!」

魔術を使った代償として、土御門は体中から血を噴き出して倒れた。

青ピ「大丈夫かいな!」

土御門「……大丈夫じゃないんだぜい。どうやら俺はここでリタイアのようだ」

と言って、土御門は意識を失った。

ステイル「……何とか天使を倒したみたいだが、その代償は大きかったみたいだね」

ステイルは周りを見回す。
そこには上半身と下半身に分かれた神裂に、腹を貫かれたシェリーがいた。
大量の針が刺さった天草式メンバーがいた。
エツァリとショチトルにいたっては死体すら残っていない。

五和「女教皇……皆……敵は……とりました……」

一度に大量の仲間と尊敬する人を失った五和は、そこで泣きだした。
それを見たステイルは、彼女は最早使い物にならないだろうと判断した。

ステイル「……土御門は戦闘不能。あそこにいる女も使い物にならなそうだ。
     仕方ないから、僕らだけであの深緑色の天使のところに行くぞ」

青ピ「せやけど、このまま放っておいてもええの?」

ステイル「どうせテレポーターとか言うのが、そいつらを迎えに来てくれるだろう」

青ピ「そうか……そうやな。じゃあ行こか」

ステイル(こいつはあのツンツン頭の熱血馬鹿よりは理解があって楽だな)

と思って走り出そうとしたその時だった。

結標「待って」

虚空から結標と御坂と麦野が突然現れた。

結標「走るよりは、テレポートの方が早いでしょ」

青ピ「せやけど、ツッチーや五和ちゃんはどうするんや?」

結標「あの子がいるから大丈夫よ」

そう言って結標が指差した先には白井がいた。

結標「あの子も、今では人間2人程度を運ぶのは余裕だからね」

青ピ「2人……なぁ……」

御坂「ちょっと!何グズグズしてんのよ!」

と結標にテレポートされてきた御坂は、もう待てないと言った調子で言った。
御坂は周りを見回しながら

御坂「こんな惨劇を、2度と起こさない為に急ぐわよ!」

418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:56:35.53 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:30

病院から見て南5kmの周辺は、大きさ3mほど、形は人型で深緑色の
『神の神秘』(ラジエル)によって、樹海にされていた。病院前にはいなかった天使だ。
そんなラジエルと交戦しているのはヴェントだった。
学園都市、というより日本時刻では朝のはずだったが、樹海のせいで薄暗かった。

ヴェント(……やっぱり、1対1はきついわね……いずれ体力が尽きてやられるのはこっち……)

などと考えている内に、地面から大量の蔦が生え、襲い掛かる。

ヴェント「ちぃ!」

ヴェントは飛び、ハンマーを振るった。
それだけで巨大な竜巻が発生し、大量の蔦と樹海の一部を吹き飛ばした。
そこへ、休ませまいとラジエルは大量の葉を回転させて、チャクラムの如く放つ。

ヴェント「はっ!」

空中でハンマーを振るった。風の刃が大量に生み出され葉のチャクラムとぶつかった。
結果は相殺。反撃とばかりに、ヴェントはもう一度ハンマーを振るう。
巨大な竜巻が生み出され、ラジエルを飲み込まんとするが
ラジエルが地面から生み出した蔓――と言っても樹齢1000年の木の幹の太さほどある
蔓とは言い難い蔓を壁のようにし、竜巻を迎え撃った。
結果、竜巻は蔓の壁をいくらか削ったが、ラジエル本体を捉える事は無かった。
そんな攻防をしているうちに、削られた樹海は復活していた。

ヴェント(このままじゃジリ貧……お願い……誰か早く来て……)

ヴェントがそんな事を願ったその時、突如樹海が燃えだした。

ヴェント(来た!)

これはフィアンマの出した炎じゃない。となるとこれはルーンの魔術師が出したものだ。
と一瞬で判断したヴェントは、樹海の燃焼に巻き込まれないように、飛んだ。
そして空中でハンマーを振るい、竜巻を発生させた。
それはラジエルを狙ったものではない。燃え盛る樹海を狙ったものだ。
それが意味する事は竜巻と炎の合体。そして鉄の沸点をも超える超高温の炎の竜巻は
そのままラジエルに向かい襲い掛かる!

ラジエル「frshdstwbyfh!」

さすがのラジエルも危険を感じ、蔓でガードするのではなく、超高速で後退した。
その判断は天使にとっては間違いであり、ステイル達にとっては狙い通りだった。

ステイル「イノケンティウス!」

ラジエルが後退した先には、ステイルが呼び出したイノケンティウスが待ち構えていて
十字架を振りおろしていた。高速で後退していたラジエルは、それが分かったころには
既に十字架に潰されていた。

419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:58:04.22 ID:Ih+JMOPW0
ステイル「ふぅ」

天使を潰せたと判断したステイルはイノケンティウスを引っ込めた。
その近くには麦野、御坂、結標、青髪がいた。

麦野「案外、あっさり終わったじゃない?じゃああの炎の竜巻、危ないだけだし
   ちゃっちゃと消しちゃってよ。あなたレベル5の第6位で水流操作系の能力者なんでしょ?」

青ピ「そう言う時だけ僕を使うの?簡単に言うけども、あれだけの炎を消すのは結構大変で」

麦野「えー、やってくれてもいいじゃない。もしやってくれたら、私の事」

青ピ「ぜひやらせていただきます!」

と言って、青髪は炎の竜巻に少し近づいて、水の竜で竜巻を消し飛ばした。

御坂「ちょっと!そんなこと言っていいの?」

麦野「そんなことって何よ?」

御坂「だからその、私の事、す、す、好きにしても良いなんて///」

麦野「そんなこと言ってないけど。私の事、までしか言ってない」

御坂「そ、それはちょっと屁理屈なんじゃ」

麦野「何?そこまで言うなら、美琴が代わりにピアス君の言う事を聞けばいいじゃない」

御坂「な、何でそう言うことになるのよ!私は嫌よ!」

などと喧嘩になりつつあった御坂と麦野だったが、突如ヴェントの怒号。

ヴェント「まだだ!まだ天使は消滅してない!」

御坂・麦野「「え?」」

瞬間、地面から大量の蔦が飛び出した。
それはそこにいた御坂・麦野・結標・ステイルの心臓を貫く様に向かう。
彼女達の心臓を貫くまであと数cmというところで、彼女達は結標によってテレポートされた。

420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 15:59:59.18 ID:Ih+JMOPW0
御坂「助かったわ、淡希」

結標「あれで本当に終わったのかな。と疑っていたから。警戒していたのよ」

麦野「私ともあろう者が……てかお前はなんか気配とか感じなかったのかよ?」

ステイルの方を見ながら、そう疑問を投げかけた。

ステイル「僕はテレズマ感知に優れているわけじゃない。
     気配を消されれば、どこにいるのかは分かりづらくなる。
     まして僕はもう疲れているんだ」

麦野「ちっ」

青ピ「まあまあ。皆無事やったんやし、とりあえずそれでええやないの」

ヴェント「そいつの言う通りだ。今は一致団結して天使を倒す事が優先だ」

いつの間にか近くにいたヴェントと青髪はステイルをそうフォローした。

麦野「天使倒すって言ったって、どこにいるんだよ?」

周りを見回すが天使らしきものが見当たらない。

ヴェント「下だ。地面の中からわずかにテレズマを感じる。
     だがどの辺りに埋まっているか、正確な位置までは分からない」

麦野「じゃあとりあえず、能力ぶっ放して地面を適当にめくりあげていけばいいのか?」

ヴェント「やめろ。能力を無駄に使うな。とりあえず私の魔術でアンタらを浮かせる。
     空中から様子を見る」

そう言って指をパチン!とならすと、皆の体がフワフワと浮き上がり、地上10m地点で留まった。

麦野「で、浮いたのは良いけど、こっからどうするの?」

ヴェント「私に考えがある。皆バラバラになって。多分、蔦の攻撃が来るけどなるべく避けて。
     能力は必要最低限にしか使わないで」

御坂・麦野・青ピ・ステイル・結標「「「「「OK」」」」」

421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:02:22.42 ID:Ih+JMOPW0
そうしてバラバラになってから2分が経過した。怒涛の蔦攻撃の連続に、全員辟易し始めていた。

麦野「おい!まだかよ!」

ヴェント「もう少し!もう少しだけ耐えて!」

怒鳴る麦野に、ヴェントも怒鳴って対応する。
そんなヴェントは地面から伸びてくる蔦を観察していた。

ヴェント(奴は多分、自身の体から蔦や蔓を出して攻撃する。
     学園都市に植物が無い訳ではないが、アスファルトだらけのこの街で
     植物を操って攻撃するのは効率が悪いはず)

ヴェント(さっき私が1対1で戦っていた奴は、分身か何かだろう。
     実際、やつ自身は何もしなかった。
     樹海で視界が薄暗い時に、武器でも作って突っ込んでくればいいのにだ)

ヴェント(わざわざ分身で戦うなんて、私を嘗めていたのか、遊び心なのか
     さっきみたいに倒したと油断させる為なのかは知らないけど)

ヴェント(遊び過ぎたわね!チェックメイトよ!)

ヴェントは、高速で蔦が最も盛んに生い茂っている地点の真上に移動した。

ヴェント「誰か!1番火力ある攻撃を出せる人来て!」

青ピ「僕かな」

麦野「私が行く!」

麦野はヴェントのもとへ移動して

麦野「ここにぶち込めば良いのね」

ヴェント「そうよ。出来ればとびっきりのをね」

麦野が力を溜め始める。

ヴェント(一見、蔦は地面から全体的に生えているように見えるが
     実際はその生え方には差がある)

ヴェント(蔦を地面に通せば通すほど、威力は弱くなっていく。
     強い攻撃を繰り出すには自分の体から出した蔦を
     地面からなるべく早く出した方が良い)

ヴェント(つまり、蔦が一段と生えているこの地点が、奴が潜んでいる場所!)

そんな事を考えているヴェントと、力を溜めている麦野を重点的に狙って蔦が伸びてくるが
ヴェントは風で切り、麦野は避ける。その内に麦野の力のチャージが完了する。

ヴェント「行け。遠慮なく叩きこんで!」

麦野「ぶっち飛びなあああ!」

と麦野が『原子崩し』のビームを放つ直前に、反撃の蔦が麦野を襲った。

麦野「おおおおおお!」

麦野はそれを義手の左手で抑える。
ギチギチと蔦が喰い込んでくるが、構わず右手から能力を放った。
ビームは一直線に落下して伸びてくる蔦を消し飛ばしながら、ドゴォォォン!と地面に直撃した。

422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:03:49.33 ID:Ih+JMOPW0
ビームによって直径、深さ共に10mほどの穴が出来た。
そこからゆっくりと、大きさ5mほどの鮮やかな緑色の花に包まれたラジエルが上昇してきた。

ヴェント「皆こっちきて!こうなったらゴリ押しよ!全員で今できる最大限の技を繰り出すの!」

言う通りに全員がヴェントの周囲に集まる。結標とステイル以外の全員が力を溜める。
ヴェントの背中からは黄色い翼が生える。ウリエルのテレズマを取りこんだヴェントの本領だ。

ヴェント「アンタとルーンの魔術師は、瓦礫に火をつけたものをあいつにテレポートして!
     皆、そろそろぶっ放すわよ!」

御坂・麦野・青ピ「「「おう!」」」

同時、竜巻、雷撃の槍、水竜、ビームが放たれた。
その4つの攻撃が合体したものがラジエルに向かう。
その攻撃に対抗するように伸びてきたのは緑色の光線。
最大級の攻撃はぶつかり合って、拮抗した。

423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:05:40.35 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント「今よ!炎の瓦礫をテレポートして!」

結標「それが……」

ステイル「彼女によってテレポートで配置されたルーンが、根こそぎ天使に荒らされたみたいでね。
     僕はもうライター程度の炎しか出せない」

ヴェント「新しくルーンを配置すればいいじゃない!その子のテレポートを使って!」

ステイル「ルーンがもうほとんど無いんだ!」

ヴェント「くっそ!じゃあもうただの瓦礫でもいいからテレポートしてくれ!」

結標「やってるけど、手応えが無いと言うか、効いてない感じがする!」

ヴェント「仕方ない!このまま私達がゴリ押しするしかないみたいね!皆、頑張るわよ!」

御坂・麦野・青ピ「「「おう!」」」

ヴェントを含む4人は力押しで、ラジエルを潰すことにした。
つまり、4人は力を放ち続けている。人間は同時に2つの事をやるのは困難だ。
もしこの状況で攻撃が来れば、避けることすら出来ない。
そしてその人間では対応できないような事は起こった。

ラジエルから夥しい数の蔦攻撃が全員を狙って放たれた。

ヴェント(強力な光線を放ちながら、蔦攻撃まで――!)

結標「皆!力の放出を止めて!」

その言葉に4人は一斉に放出を止めた。蔦が全員まであと数cmというところで
結標によって、天使から2km離れたビルの屋上にテレポートされた。

424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:07:08.59 ID:Ih+JMOPW0
御坂「これからどうするの?」

開口一番、御坂はヴェントにそう尋ねた。

ヴェント「どうするもこうするも、どうにかして攻撃を決めない限りは……
     ルーンの魔術師が使えればな……」

と、その時だった。

麦野「う、ぐうう、ああああああああああああああああああああ!」

義手の左腕を抑えながら、麦野が突然苦しみ出した。

ヴェント「その左腕、早くちぎらないと――!」

そう言ってハンマーを振るったときには遅かった。
麦野の左腕は爆発し、そこから種のようなものが全方向に拡散された。
突然の攻撃に、ステイル以外は何とか対応するも、ステイルだけは体中に種らしきものを浴びた。

ステイル「がはっ!」

ヴェント「何かヤバい!自分にルーンを貼って自分を燃やせ!」

ステイル「ご、あああああああああああ!」

しかし苦しむステイルには、ヴェントの声は聞こえていなかった。
間もなく、麦野とステイルの体に異変が起こった。体がどんどん干からびていく――!

ヴェント「電撃娘!2人に電撃を放って、種を焼き尽くすようにだ!」

御坂「よく分からないけど分かった!」

返事と同時、御坂の電撃が2人を射抜いた。だが、遅かった。2人の体は完全に干からびていた。

425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:09:30.13 ID:Ih+JMOPW0
御坂「う……そ……」

青ピ「一体……何が起こったと言うんや……」

ヴェント「種だよ。2人の体に埋められた種が、生命力や魔力を吸い取ったんだ。
     吸い取ったエネルギーは、多分天使に還元されているんだろう。
     もっと早く気付くべきだった。左腕が爆発したところでようやく気付くなんて……」

だが反省している暇などなかった。
2km先から、ラジエルの光線がヴェント達の居るビルを射抜いたからだ。
ビルが崩れ、全員が地面に向かって落ちていくが、ヴェントの魔術により無事に地上へ着地した。
とそこに、2kmもの距離を、地面を伝って移動してきたラジエルが
2匹の食虫植物のようなものと共にヴェント達の目の前に現れた。
食虫植物は、直撃すればそこから生命力を吸い取る種を無数に発射した。

ヴェントは風で、御坂は電撃を巧く放ち、青髪は水で盾を作って防ぐ。
しかし

結標(駄目だ――!もうテレポートできない――!)

ここまで結標は自分だけでなく、それなりの人数で相当な距離を連続でテレポートしてきた。
彼女はもう限界だった。寧ろここまで保った事の方が称賛に値するだろう。
そんな結標の異変に唯一気付いた青髪は

青髪「結標ちゃん!」

水の盾を自身の周囲に展開しながら、結標の前に躍り出た。
それで何とかなるはずだった。しかし

たった1つ、種が水の盾を貫き、青髪の左脇腹に直撃してしまった。

426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:10:34.47 ID:Ih+JMOPW0
結標「は、早く種を取り除かないと!あなたは!」

青ピ「大丈夫や。こうすれば……ぐっ!」

青髪は右手で昔のチョキのように銃を作り、自身の左脇腹に人差し指をあてがい
そこから水の弾丸を放った。つまり、自分で自分の脇腹を種ごと撃ち抜いたのだ。

青ピ「これで……吸収される事は無くなったはず……」

結標「でも……血がこんなに……どうして……どうして私なんかを庇ったの!」

青ピ「惚れたからや……」

結標「え?」

青ピ「君に惚れたから……惚れた女を守るのは当然やろ?」

結標「でも……それで死んだら意味ないじゃない!」

青ピ「大丈夫。僕は死なへん……昔から……体だけは丈夫やから……
   仮に死んだとしても……惚れた女を守って死ねるのなら……悔いは無い……」

それで、青髪は意識を失った。

結標「い、いやああああああああああああああああああああ!」

427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:11:47.58 ID:Ih+JMOPW0
御坂「これ以上……これ以上好きにさせてたまるかーっ!」

雄叫びをあげる御坂の周囲から莫大な量の砂鉄が舞い上がる。
それは30mほどの槍の形になって、ジャイロ回転をしていた。それを御坂は殴って放つ。

ヴェント(この一撃に懸けるしかない!)

御坂の『超電磁槍』にヴェントの竜巻が加わった。
その一撃は、ラジエルが咄嗟に盾にした2匹の食虫植物を易々と貫き

ボシュウウウウウ!と間抜けな音と共に、ラジエルの腹部辺りに咲いていた花に吸収された。

御坂「う……そでしょ……」

狼狽している御坂などお構いなしに、ラジエルの腹部の花が光り出す。

ヴェント「ヤバい!跳ね返す気だ!」

その言葉と当時、腹部の花からカウンターの一撃が放たれた。
それはラジエルから一直線に学園都市の街並み2kmを蹂躙した。

428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:13:39.60 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント「はぁ……はぁ……」

彼女達は生きていた。究極の一撃が放たれる直前に、御坂とヴェントは咄嗟に横に飛び
結標と青髪を抱え、直撃を免れたのだ。ただし、その余波だけで800m吹き飛ばされた。
ヴェントの風で着地は無事だったものの、結標は意識を失い、ヴェントも御坂も限界だった。

ヴェント(結局……私程度ではどうにもならないの……?)

這いつくばりながら、自身の無力さが情けなかった。
ウリエルのときだって何もできなかった。そして今も。

ヴェント(くっそ!くっそ!!)

這いつくばりながら、彼女は泣いていた。守りたい。
守るために戦わなきゃいけないのに体は動かない。動いてくれない。

御坂(2度と惨劇を起こさないと息巻いておきながら……このザマとはね……)

御坂も自身の情けなさに、地面に仰向けになりながら涙を流していた。

御坂(昨日から、泣いてばっかり……皆が信頼してくれているのに……それに応えられない……)

思いだけは。守りたいと言う思いだけは、自分が1番あると自負している。
けれども、体は動かない。どう足掻いても動かない。

ヴェント(もうそろそろ……奴が来るはず……)

ヴェントがそう考えた時、地面を破ってラジエルが現れた。
蔦などで貫けば終わりなのに、わざわざ出てきた真意は彼女達には知る由もない。
ただ1つだけ分かる事は、もう終わりだと言う事。

ヴェント(……こんな死に方かあ……せめて、死ぬ前に……もう一度だけ
     フィアンマに会いたいなあ……)

そんな事を思いながら、ヴェントはゆっくりと目を閉じた。

御坂(……あーあ、もう最悪。結局、あの馬鹿には告白できなかったし。
   黒子、私が死んだって知ったら、悲しんでくれるのかなあ……)

ツンツン頭の少年と、ツインテールの後輩を思い浮かべながら、御坂はゆっくりと目を閉じた。

――そして、緑色の光線は放たれた。

429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:15:07.42 ID:Ih+JMOPW0
AM9:37

『土御門』

土御門「!」

白井に病院までテレポートされて、病室のベッドに寝かされていた土御門は突然の声に飛び起きた。

土御門(傷が治っている……一体これは……)

『土御門、君に頼みがある』

土御門「!」

またしても脳内に直接語りかけるような声。この声の主を彼は知っている。

土御門「何の用だ?アレイスター」

アレイスター『もうすぐ上条当麻が帰ってくる。
       君には帰ってきた彼を、病院前に案内してほしい』

土御門(てことは、カミやんのやつ、本当に『神上』と化した
    インデックスに勝利したと言うのか?)

土御門「何故俺がそんな事をしなければいけない?一体何がしたい?」

アレイスター『そんなことは後で説明する。とりあえず言う事を聞いてもらおう。
       ちなみに、君以外の者に協力を求めようとしても無駄だからな。
       言う事を効かない場合はもちろん、土御門舞夏を』

土御門「分かっている。それ以上言うな。お前の言う事は聞く」

アレイスター『では、頼んだよ』

430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:16:23.77 ID:Ih+JMOPW0
ヴェント(ここは天国かなあ。それとも地獄かなあ。
     あまり良い事してこなかったし、やっぱ地獄なのかなあ)

そんな事を思いながら、ヴェントはゆっくりと目を開けた。
そこに広がっていた光景は、崩れたビルとか瓦礫の山だった。

ヴェント(あれ?地獄ってこんなところなの?)

とその時、ヴェントが1番聞きたかった人間の声が聞こえた。

フィアンマ「俺様の女を泣かすとは、覚悟は出来てんだろうなぁ!」

イメージカラーとは違い、普段は割と冷静な彼からは想像も出来ない程荒げた声だった。
天使にとっては、何を言っているかは分からないだろうが。

ヴェント(ひょっとして、私まだ生きている!?)

フィアンマ「一撃で仕留める」

ドォォォン!とフィアンマの右肩が爆発した。
真っ赤な炎に包まれた右腕を突き出しながら、一直線にラジエルに突っ込む。
対してラジエルは緑色の光線。先程フィアンマに右手で弾かれた光線より、10倍は強い。

フィアンマ「無駄だ!」

フィアンマの右拳と、緑色の光線が真正面からぶつかる。
それでもフィアンマの拳は止まらない。光線を押し退けながら突き進む!
そして――

ドッゴォォォォォン!と拳がラジエルに直撃したのと同時、爆発が起こった。
そのあまりの威力に、ラジエルは粉々に砕け散った。

431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:18:17.13 ID:Ih+JMOPW0
御坂(ここは天国?それとも地獄?てかそんなものないか。
   でももしあるのなら、天国が良いなあ。そりゃあ、自販機に蹴りいれたり
   あの馬鹿には散々迷惑かけてきたけど……地獄はあんまりだよね)

そんな事を思いながら、御坂はゆっくりと目を開けた。
そこに広がっていた光景は、逆さまの、真っ赤な瞳に真っ白な少年の顔だった。

御坂「うひゃあ!?」

思わず御坂は悲鳴を上げた。

一方通行「生きていてよかった。オマエに死なれちゃ、妹達に示しがつかないンでな」

御坂「一方通行がいるなんて、やっぱここは地獄なの?」

一方通行「つまらねェボケは止めろ。ここは地獄でも天国でもない、学園都市だ」

御坂「え?あ、そうなの?」

一方通行「本気で勘違いしていたのか?オマエ本当に第3位かよ?」

御坂「うっさいわね!アンタの顔が地獄みたいだからよ!」

一方通行「意味分かンねェし」

御坂「てかアンタと話している場合じゃない!あの天使は!」

一方通行「もう終わったぞ。アイツが1人でやった」

一方通行が顎で示した先には、異様な右手を持つ真っ赤な男がいた。

御坂「ほ、本当に!?」

一方通行「嘘ついてどうすンだよ」

御坂「そ、そう。あれ、そういやあの男、今まで見かけなかったけど何してたの?」

御坂はこれまでバラキエル、カマエル、ハニエル、そして今のラジエルと様々な天使との
戦いを見てきた。ヨフィエルの時は直接見た訳ではないが垣根と一方通行2人だけでやったと言う。
それらの戦いすべてにあの男はいなかった。

一方通行「オマエバカか?天使は全部で6体居たンだ。
     あの男はその内の1体を俺達と一緒に倒して助けに来たンだよ」

御坂「そ、そう言えばそうだった。てかアンタ達と私達が
   別行動したのはそれが理由だもんね。演算能力が戻った調子はどう?」

一方通行「……おかげさまで、結構調子は良い」

8月31日の出来事で脳の一部を失ったから、演算能力が云々で、垣根と結標の力によって
能力を取り戻した。と言う事だけ説明して病院で別れた。
9000人以上の妹達が死んだ事は言っていない。というより死んだ事を知っているのは
一方通行を除けば、冥土帰し、結標、土御門、垣根、フィアンマ、ヴェントくらいである。

432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:19:19.71 ID:Ih+JMOPW0
垣根「実際調子いいなんてもんじゃねぇよ。大活躍だったぜ、コイツ。
   コイツが天使を倒したと言っても過言じゃねぇ」

傍らに居た垣根が、一方通行を親指で指しながらそう言った。

一方通行「いきなり褒めるてくるとか、気持ち悪ィから止めろ」

フィアンマ「いや、実際助かったよ。
      あの俺様ですらピンチな状況をひっくり返してくれたんだからな」

そこに2体の天使との戦いを終えてボロボロのフィアンマも
ヴェントを抱えながら近付いてきて、一方通行を褒め称えた。

御坂「てか傷が無いけど、無傷で勝ったの?」

垣根「そうそう。そりゃあもう凄かったぜ」

433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:21:51.17 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:35

病院から見て南西5km地点で、大きさは30m、人型で虹色に光る『玉座に侍る者』(メタトロン)と
15分も交戦していたフィアンマは既にボロボロだった。

フィアンマ(メタトロン……ミカエルをも凌ぐ天使……まさか、この俺様が
      手も足も出ないだなんてな……)

メタトロンの攻撃は主に拳と炎だった。フィアンマは炎の魔術師で火炎属性攻撃に耐性があり
強力な拳も特異な右腕があったからこそ、ここまで対応できた。
フィアンマでなければ、4秒もかからずにこの世から消え去っていただろう。
そんなフィアンマも、もう限界だった。メタトロンの拳が来る。しかしもう体が動かない。

フィアンマ(ここで終わりか……さよならヴェント)

恐怖からではなく、諦めの気持ちでフィアンマはゆっくりと目を閉じた。
2秒後、ゴキィン!と言う音と共に、メタトロンの拳が弾かれた。

フィアンマ(何が……)

あまりにも異様な音に、フィアンマはゆっくりと目を開けた。
目の前に広がっていた光景は、ポケットに両手を突っ込んで
悠然と仁王立ちしている真っ白な少年だった。

一方通行「よう。今助けたので昨日の借りは返したぜ」

フィアンマ「あの……『一掃』レベルの拳を……弾いたと言うのか……」

垣根「あとはそいつに任しときな。多分、やってくれるぜ」

呆然とするフィアンマの隣に、いつの間にかいた垣根がそんな事を言った。

434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:24:56.03 ID:Ih+JMOPW0
一方通行「さァて、天使さン。楽しませてくれよォ!」

タン!と彼の軸足が軽く地面を踏んだ。
瞬間、一方通行を中心に1辺が3mの3×3マスのラインが入った。
もう一度同じ様に地面を軽く踏む。すると一方通行の周囲8マスが浮きあがった。
浮き上がった1辺3mのコンクリートの塊8個を2秒かからず蹴り終える。
1発1発が『超電磁砲』以上の威力だ。

だがそんな攻撃も、メタトロンは拳1つで突き破った。
しかし今の攻撃は、全盛期の演算能力を越えた現在の一方通行にとっては
小手調べ、陽動にすぎない。

一方通行「次はこれだァ!」

既に800m先のビルとビルの隙間に潜り込んでいた一方通行は、そのまま両手を広げて
ビルに手を突っ込んだ。そしてゴォォォン!という轟音と共にビルを持ちあげた。
惑星の回転エネルギーを奪い取った腕で、ビルを恐るべき速度で2つ放った。

メタトロン「ghdjshgkgkylueglku」

窓の無いビルでなくては耐えられないような究極の2つの攻撃を
メタトロンは両拳を突き出して砕いてみせた。その代わり拳にヒビが入った。

フィアンマ「あのメタトロンを……押している?」

メタトロンがヒビの入った拳を引き戻した時には
一方通行はメタトロンの懐に潜り込んで、双掌を腹部に突き刺していた。

一方通行「――解析――爆発」

解析を2秒で終えた一方通行は、テレズマのベクトルを操りメタトロンを内側から爆発させた。
それでも大ダメージではあるが倒すまでには至らない。

一方通行「成程。今迄の天使とはレベルが違うって訳かァ」

言いながら、メタトロンの顔面付近まで上昇した一方通行はその顔面に蹴りを叩きこんだ。
その一撃でフィアンマの拳ですら揺らがなかったメタトロンが仰け反った。

一方通行「空気を――圧縮」

両手を水平に広げて空中を舞っていた一方通行の頭上に関東中の風が集められる。
それは圧縮され、直径10mの『高電離気体』(プラズマ)が10個出来上がった。
そしてその数のプラズマを生み出してもなお、一方通行は余裕だった。

一方通行「本当は100m級のプラズマをぶつけても良かったンだけどよォ。
     あンまでかいのだと、学園都市を溶かしかねねェからよォ。
     仕方なく分散させたわけだわ。まァ、どうでもいいか。
     オマエが消滅する事に変わりはねェしなァ」

10個のプラズマが、メタトロンに向かって放たれた。
耐熱性があるメタトロンですら、摂氏10000万度を超えるプラズマに為す術なく溶かされ、消滅した。

435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:25:40.69 ID:Ih+JMOPW0
フィアンマ「あのメタトロンを……一方的に……」

垣根「ったく。いつになったら、俺はアイツに追いつけるのかねぇ」

と、垣根とフィアンマが会話を交わしている間に、一方通行が既に近くに居た。

一方通行「何してンだ。早くあの深緑の光のところに行くぞ」

436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:27:02.85 ID:Ih+JMOPW0
垣根「と、まあ厨二全開でとにかく凄かったって訳だ」

一方通行「うっせェぞ。クソメルヘン」

垣根「だから自覚はあるから。自覚がないお前よりマシだから」

御坂「『ちゅうに』って中学2年生の事?」

そんな風にアホな会話が繰り広げられているその時だった。

アレイスター「現在時刻は日本時間で9時42分。四大天使を倒し、学園都市を襲った
       6体もの天使をも倒した。君達は本当によくやってくれた」

一方通行達の目の前に、アレイスターが突然現れた。

垣根「何の用だ?」

アレイスター「そんなに睨まないでくれ。私はただお礼を言いに来ただけなんだから」

フィアンマ「だだお礼を言う為だけに、お前ほどの奴がわざわざ出てくるわけないだろう。
      何を企んでいる?」

アレイスター「何も。だからお礼を言いに来ただけと言っているじゃないか。
       そろそろ君達は休むべきだ」

アレイスターがそう言った直後だった。ドサッ!と何かが倒れるような音が連続でした。

フィアンマ「ぐ……!な……」

気付けば一方通行以外の全員が、うつ伏せに倒れていた。
そして壮絶な頭痛。フィアンマは確信した。アレイスターによって“何か”をされた。

一方通行「何を……しやがった……」

何とか立っている一方通行も辛そうだ。

アレイスター「成程。さすがに2人は耐えたか。だが終わりだ」

そうして、何とか意識を保っていたフィアンマと一方通行の意識も中断された。

437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:29:14.15 ID:Ih+JMOPW0
時は少し遡り、AM9:05。
ロシアへ向かう途中の海上で『神上』と『神浄』は対峙していた。

禁書「――『書庫』内の10万3000冊により、天使を迎撃した魔術の術式を逆算……
   該当する類似の『力』を特定。おそらく『竜王』(ドラゴン)の力だと思われます」

そう。上条の中に居たのは『竜王』。『幻想殺し』は莫大な異能の塊である『竜王』を
封じ込めるための『蓋』でしかなく、『蓋』を解いた今の上条は『竜王』の力の一部を使役できるのだ。

禁書「――『竜王』の力を使役する者に対して有効な魔術のくみ上げに成功しました。
   これより有効魔術『聖ジョージの聖域』を発動、天使を迎撃したものを破壊します」

バギン!と言う音と共に、インデックスの両目にあった2つの魔法陣が拡大した。
それは直径2mほどの大きさで、重なるように配置された。

上条「――何か来るな」

上条当麻は記憶喪失である。この状態のインデックスは、イギリスのクーデター後に
フィアンマと共に見た事はあるが戦った事はない。
それでも、もう少しで攻撃が来るだろうと言う事がなんとなく分かった。直感ではなく、経験として。

ズズズズズ、と翡翠色のエネルギーが上条の右腕から滲み出し、包み込んだ。
それは『竜王の顎』(ドラゴンストライク)を象った。その顎が大きく開かれる。

一方でインデックスの方も、人の頭では理解できない『何か』を歌い終わった。
直後、魔法陣の重なった部分に『亀裂』が入った。そこから莫大なエネルギーが滲み出ているのが上条には分かった。

上条「来い!お前の全てをぶつけてみろ!」

直後、ゴッ!と亀裂の奥から直径1mほどの光の柱が発射された。
『竜王の殺息』(ドラゴンブレス)。究極の一撃がインデックスから10mほど離れた上条に一直線に向かう。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

上条の咆哮と共に大きく開かれている『竜王の顎』から、光の柱が発射された。
同じく『竜王の殺息』。そして究極の一撃と究極の一撃がぶつかりあった。

438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:31:37.32 ID:Ih+JMOPW0
同じ『竜王の殺息』でも、一方は10万3000冊を活かした『偽物』(レプリカ)。
一方は本物の『竜王』を宿した者からの『本物』(オリジナル)。
優劣は10秒で明らかになった。上条の『竜王の殺息』が押し始めた。しかし、インデックスも馬鹿ではない。

禁書「――『聖ジョージの聖域』は効果が見られません。
   他の術式に切り替え、引き続き天使を迎撃した者の破壊を実行します」

効果がないのなら素直に退いて別の手段で攻撃すればいいだけ。
インデックスは『竜王の殺息』の発射を止めた。同時に上条の『竜王の殺息』が
インデックスに向かうが、凄まじい速度でそれを回避し、上条の後方に回り込んだ。

禁書「――続いて有効と思われる魔術『自然現象』(フェノーメノン)発動」

究極の怪物の一撃で真正面から打ち砕くのが駄目なら環境を、変えてしまおうと言うとんでもない発想。
思いつく事は出来ても、完璧に自然を操る事など一般人は愚か学園都市のレベル5やプロの魔術師だって到底出来ない。
しかし『神上』たる今のインデックスならそれが可能――!

禁書「タイダルウェイブ」

現在、上条とインデックスは海上で戦っている。
インデックスは真下の海水を操り、高さは100m、幅は10kmにも及ぶ津波を生み出した。

上条「――!」

上条は、インデックスを倒すのではなく助けるために戦っている。
そのため、極力インデックスを傷つけたくはない。このまま『竜王の殺息』を
出しながら振り返れば、津波ごとインデックスを貫いてしまうだろう。
だから上条は『竜王の殺息』の『性質』を炎に変え、相殺しようと考え振り返った。

結果『竜王の殺息』は津波を貫くことなく、見事に蒸発だけをさせた。

禁書「ダイヤモンドダスト」

津波、即ち水を蒸発させれば水蒸気が発生するのは道理。
相当量の水を蒸発させた上条の周りには、相当量の水蒸気があった。
それをインデックスは一気に冷却し、凍らせた。
本来ならば、実害は特になく幻想的に見えるだけのダイヤモンドダスト。
しかしインデックスが行使したダイヤモンドダストは、水蒸気を上条ごと氷漬けにした。

439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:32:48.96 ID:Ih+JMOPW0
禁書「――とどめです」

氷漬けにしただけでは足りないと言わんばかりに、頭上に100mを超える光の大剣を生み出した。
そして氷ごと上条を砕く為に、その大剣を振り下ろしたところで

バリィィン!と上条当麻が氷から脱出した。その瞳は黒から澄んだ青に変わっている。
しかしそんなことは些事にすぎない。氷漬けにされていようがされていまいが
瞳の色が変わろうが、この大剣で切り裂くことに変わりはないのだから。

上条「なめんな!」

上条の左腕から翡翠色のエネルギーが滲み出し、包み込んだ。
それは爪の形を象った。即ち『竜王の鉤爪』(ドラゴンクロウ)。
万物を切り裂くその爪は、光の大剣をあっさりと切り裂き

上条「遊びはやめようぜ。インデックス」

ボシュウ!とインデックスをも切り裂いた。

440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:34:46.68 ID:Ih+JMOPW0
その瞬間、インデックスは上条の後方20mの位置で勝利を確信してほくそ笑んでいた。
何故なら、上条が切り裂いたインデックスは蜃気楼にすぎず、加えて隙だらけだったからだ。

インデックス「――終わりです」

全長30mにも及ぶ光の槍を生み出し、繰り出した。それで勝利は確定した。

ゴキィィン!と上条の右腕の『竜王の顎』が光の槍を止めなければ。

禁書「――!」

上条「言ったはずだぜ。遊びは止めようぜ、と」

ゴギャア!と『竜王の顎』が咥えていた光の槍を噛み砕く。

上条「今の俺に小細工は通用しない。真正面から正々堂々と来い」

禁書「――ミラージュ」

光の屈折を操り、大量の蜃気楼の分身を生み出す。もちろん、本物の分身ではなく
映像のようなものにすぎないが、上条には本物が分からないはず。

上条「だからさ。小細工は通用しないんだって。それに――」

上条の背中に生えている翡翠色の『竜王の翼』が大きくはためいた。
それだけで風速200m級の暴風が吹き荒れた。それだけの風を喰らって蜃気楼で出来た分身は掻き消され
本物のインデックスですら即席で風の盾を作って防ぐことが精一杯だった。

上条「終わりだ。インデックス」

インデックスの後方に回り込んだ上条。右腕の『竜王の顎』の口が大きく開かれる。

禁書「――!」

風を防いだので精一杯だったインデックスは、後ろに回り込まれた事に気付く事は出来ても
対抗する手段がなかった。そして――

上条の『竜王の顎』がインデックスを丸々飲み込んだ。
飲み込んだ。と言うよりは『竜王の顎』の形をしたエネルギーを最大限に浴びせた。と言う方が的確かもしれない。
とにかく飲み込んだ瞬間、バリィィィィィン!という強烈な音と共にヨハネのペンは完全に崩壊し、インデックスは気絶した。

441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:36:17.60 ID:Ih+JMOPW0
AM 9:20

ヨハネのペンを完全に破壊した事は分かるが
頭の中の10万3000冊がどうなったのか分からない上条は
インデックスに負荷がかからない速度で、学園都市へ帰還する為に翼をはためかせた。

AM 9:35

『冥土帰し』の病院前に辿り着いた上条は、再び『幻想殺し』で蓋をして
『竜王』化を解き、インデックスを抱え病院内へ駆けこんだ。

上条(……なんだ?この異様な静けさは……)

そんな事を思いながら『冥土帰し』のもとを訪ねた上条の目の前に飛び込んできた光景は

気絶してがっくりと項垂れて椅子に座っている『冥土帰し』の姿だった。

上条(何が……何が起こって……)

とりあえず右手で触ってみるも反応はない。異能の力は関係していないのか。

上条(どうすれば……!)

その時だった。

土御門「カミやん!」

息を切らしてはいるが、体はピンピンしている土御門が現れた。

上条「土御門!これは一体……!」

土御門「話は後だ!インデックスを置いて、病院前に急ぐぞ!」

上条「……分かった」

442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:38:30.65 ID:Ih+JMOPW0
訳が分からなかった上条であったが、土御門に言われた通りインデックスをベッドに寝かせ
土御門の後に続いて病院前へやってきた。そこにいたのは

アレイスター「やあ。待ち侘びていたよ。上条当麻」

妹達&打ち止め&番外個体「「「……」」」

学園都市統括理事長アレイスタークロウリーと、やけに大人しく
ただ突っ立っているだけの御坂美琴のクローン達だった。

上条「こ……れは……一体……」

土御門「何のつもりだ!アレイスター!」

アレイスター「そうだな。それを説明する前に、まずはお礼を言っておこう。
       ありがとう。君達は本当によくやってくれた」

上条「どう言う意味だ……」

アレイスター「どう言う意味だも何も、私は感謝の意を述べているだけだが?」

土御門「ふざけるなよアレイスター。お前ほどの奴が、その程度の事でわざわざ出てくる訳がない。
    本当の目的は何だ?」

アレイスター「やれやれ、土御門はせっかちだね。そうだな。
       確かに私は、感謝を述べる為だけに現れた訳ではない。
       一言で言ってしまうと上条当麻、君と戦いに来た」

上条・土御門「「な!?」」

アレイスター「さあ、早く力を解放してくれ。最期の晩餐(ショータイム)の幕開けだ」

瞬間、ゴッ!とアレイスターからとんでもない威圧感が滲み出た。

443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:39:38.59 ID:Ih+JMOPW0
上条「い、意味が分からねぇ!アンタと俺が戦う理由がねぇ!」

土御門(それに、カミやんと戦いたいならば、カミやんだけを呼べばいいはず。
    わざわざ体の傷まで治して俺をここへ招いた理由は……)

アレイスター「土御門の疑問に対してはこうだ」

土御門「何!?」

ドキッ!とする土御門。
しかし冷静に考えてみれば、アレイスター程の人間ならば読心などわけないと、すぐに気付いた。

アレイスター「この戦いの立会人をやってもらいたくてね。その立会人が何故君だけなのか。
       どうして君じゃなければいけなかったのか。それにもいくつか理由があるが、それは後回しだ」

アレイスター「そして上条当麻。君は戦う理由がないと言ったね」

上条「ああ。それがどうした?」

アレイスター「では、こうすればどうかな?」

パチン!とアレイスターが指を鳴らした。それだけ。
たったそれだけで打ち止めや番外個体、そして妹達の体が内側から弾け飛んだ。

444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:42:08.92 ID:Ih+JMOPW0
上条「な……」

土御門「アレイスター!」

ここで土御門は、無駄だと分かっていながら、懐から拳銃を引き抜こうとして思い出した。
武器や折り紙などはすべて奪われてしまっている事を。

アレイスター「土御門、君ならば分かるだろう?もともとからではあるが
       武器も何もない君如きではこの私はどうにもならないと。
       だからだよ。君は弱いから立会人に選んだんだ。そして弱みもある。
       土御門舞夏という、決定的な弱みが」

そう。土御門は魔術師でありながら、無理矢理能力開発を受けたため中途半端になってしまった。
おまけに義妹を守るために刺し違えると言う選択も出来ない。
やるとすれば確実に勝利しなければならない。しかし上条と共闘したってただでは済まないだろう。
よって土御門は見守ることしかできない。

アレイスター「それにだ。魔術と科学に精通していて、なおかつこの私とある程度
       面識がある君が、1番早く状況を飲み込めると思ってね。
       戦いの後にする説明もよく聞いていてほしい」

土御門(何を……言っているんだ……?)

とそこで

上条「ゴチャゴチャうるせぇよ」

土御門の思考を遮るように、上条が呟いた。

上条「テメェ、まさか俺と戦う理由を作る為だけに、妹達を殺したんじゃないだろうな」

アレイスター「“だけ”ではないね。君と戦う理由の1つとして殺したのはあるが
       もう1つ理由はある。あとは個人的に役立たずだったからという感情はある」

上条「いいぜ、テメェが俺と戦うっていう下らない理由の為に妹達を殺したって言うのなら――」

上条「――そんな腐った考えのテメェは、ここでぶっ潰す!」

バリィィィン!という甲高い音。
『幻想殺し』という『蓋』が外され『竜王』の力が解放される。
一般人でも分かるくらいのとんでもないエネルギーを前に、普通なら怯えるところを
人間、アレイスター=クロウリーは歓喜に震えていた。

土御門(あの感情を表に出さないアレイスターが笑っている?)

アレイスター「さあ、始めようじゃないか!潰し合い(ショータイム)を!」

『神浄』と『人間』の戦いの火蓋は切って落とされた。

445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:43:55.62 ID:Ih+JMOPW0
上条の全身から滲み出た翡翠色のエネルギーはそれぞれ『竜王の翼』、『竜王の鉤爪』、『竜王の顎』を象った。
瞳の色は青く変わった。

土御門「カミやん!病院には仲間達が何人かいる!傷つけないように戦うんだ!」

上条「分かってる!」

アレイスター「そんなに心配しなくても大丈夫さ。舞台はしっかり用意している」

パチン!と指を鳴らす。瞬間、周りの光景がグルグルとめまぐるしく変化する。
3秒後、3人は窓のないビルの屋上に移動していた。

土御門「こ……れは……!?」

アレイスター「一応、ビルを変形させて、100坪ほどの広さにはなっているが……
       落ちるなよ、土御門。さて上条当麻。ここなら遠慮なく暴れられる。かかってきなさい」

2人の距離は約50m。

上条「言われなくても!」

と、上条がはばたく前に

ゴッ!と、いつの間にかアレイスターが右手に持っていた
『衝撃の杖』(ブラスティングロッド)から、ビル1つは軽く吹き飛ばせる衝撃が放たれた。

上条「効かねぇよ!」

右腕の『竜王の顎』が大きく咆哮した。それだけで衝撃波は打ち消された。

アレイスター「成程。実に出鱈目な力だ」

言いながら、もう一度『衝撃の杖』を振るおうとしたところで

上条「させるかよ!」

50mもの距離を一気に詰めた上条が、左腕の『竜王の鉤爪』を振るい
アレイスターの右腕ごと『衝撃の杖』を引き裂いた。

上条「まだだ!」

追撃の如く
右腕の『竜王の顎』がアレイスターを飲み込もうと、その口が大きく開かれたところで

アレイスターが爆発した。

446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:46:35.61 ID:Ih+JMOPW0
上条(そんな馬鹿な!?)

莫大な煙が立ち込める中、上条自身は、『竜王の顎』で爆発を喰らいつくしたため全くの無傷だった。
しかし驚きを隠せなかった。

上条(右腕を切り裂いた時は確かに手応えがあった。
   しかし顎で飲み込む時には、爆発する分身に入れ替わっただなんて……)

切り裂いてから、『竜王の顎』で飲み込もうとするまで1秒も無かった。
そんな一瞬の間に入れ替わったと言うのだ。誰だって驚きを隠せないに決まっていた。

アレイスター「君のその『竜王』の力、異能の力を喰いつくすんだろう?
       しかもその青い瞳は、分身など、そういうまやかしは効かず本物だけを見抜く力がある。
       単純に見切る力も半端ではない。全く、卑怯にも程があるんじゃないか?」

ゆったりとした声は後ろから。上条はゆっくりと振り向いた。
そこにまたしても驚くべき光景が広がっていた。

アレイスターの右腕が再生していたのだ。

上条「な……」

アレイスター「そこまで驚く事ではないよ。君みたいな『化け物』に比べたらね」

土御門「大丈夫だカミやん!今のところはカミやんが押しているし
    再生させる暇もなく一気に消し飛ばしてしまえばいい!」

愕然とする上条に、土御門のアドバイスが届いた。

上条(そっか。そうだよな。再生する暇もなく消し飛ばしちまえばいいんだ……)

とそこで、上条は自身の中に渦巻く黒い感情に気付いた。

上条(俺はなんてことを……考えてるんだ……)

よく考えれば、先程の攻防のやり取りも、完全に殺すつもりだった。
いくら妹達が殺されたからと言って、復讐に駆られてアレイスターを殺してしまったらアレイスターと同じ殺人者ではないか。
そんな上条の思考を遮るように、アレイスターが口を開いた。

アレイスター「どうした?君と戦いたいと言う理由で、妹達を殺した私が憎くないのか?
       それに早く私を殺さないと、君の大切な人達がさらにいなくなるかもしれないよ?」

上条「っ!」

その一言で、上条の中の黒い感情を呼び戻すには十分だった。

土御門(何だ……?何故奴は喰い気味にカミやんを挑発する?奴の狙いは何だ!?)

そんなことを考えている土御門などお構いなしに、戦いは激しさを増していく。

447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:49:08.39 ID:Ih+JMOPW0
上条「ぶっ殺す!」

一瞬でアレイスターとの距離をゼロまで縮めた上条は『竜王の鉤爪』を振るった。
しかしそれは、虚しく空を切っただけだった。

アレイスター「ふふふ。良い感じじゃないか」

目に見えて怒っている上条を後ろから見て、アレイスターは微笑んだ。

アレイスター「今度はこちらから行かせてもらおうか」

そう言って指を鳴らす。瞬間、虚空からアレイスターが3人現れた。

上条「馬鹿な……!」

上条が驚くのも無理なかった。現在の上条の青い瞳は分身や幻と言った類の力を見抜く事が出来る。
しかし今上条の目の前に居る4人のアレイスターは違った。
それぞれが誤魔化しているとか、力を等分して作り出した分身ではなく『本物』のアレイスターなのだ。

上条「こんなことが……」

そのくせ4人の見た目はそれぞれ違っていた。
1人は先程まで戦っていた、膝を超えるほどの長い銀髪で、手術衣のような色の服を着ている。その手には1本の杖。
1人はその髪の色が真っ赤で、服も真っ赤。それぞれの手には棍棒が握られている。
1人は髪の色は真っ青で、服も真っ青。手には1本の槍。
1人は金髪で、服も黄色い。手には鎚。そんな4人。
けれども4人とも『本物』。

上条(訳が……分からねぇ……!)

けれども、と上条は思う。

上条(4人とも本物だと言うのなら、4人とも潰すだけ!)

そうやって意気込む上条に

アレイスター「そう焦るな。今度はこちらからと言っただろう?」

ゴッ!と赤いアレイスターから、ミカエルを超えるほどの炎が放たれた。

アレイスター「まだだ」

そこに銀髪のアレイスターからの風が加えられる。鉄をも溶かす炎と風が合体したものが、上条に襲い掛かる。

上条「『竜王の殺息』!属性は『風』!」

『竜王の顎』から莫大な風のブレスが放たれた。
それはアレイスターが生み出した炎と風の塊を掻き消さずに、そのまま跳ね返す!

アレイスター「やるな」

青いアレイスターが水の盾を生み出す。そこに銀髪のアレイスターが風を加えた。
水と風が合体した盾は、炎と風の塊を相殺した。莫大な水蒸気が発生し周辺は霧のようになった。

448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:50:45.94 ID:Ih+JMOPW0
上条「――!」

咄嗟に左に跳んだ。直後に、バガァン!と何かが叩きつけられた音。
金髪のアレイスターが持っていた魔法の鎚『ミョルニル』が地面を叩いた音だった。
その一撃は、一方通行のビル投げですら揺らがなかった窓のないビルに、ヒビを入れるほどだった。

アレイスター「よく避けた。と言いたいところだが」

上条が跳んだ先の真後ろには既に、金髪のアレイスターが『ミョルニル』を振り下ろしていた。

アレイスター「光速で動くこの私には、いささか遅すぎるよ」

ゴシャア!と『竜王の鉤爪』の裏拳により『ミョルニル』が砕かれた。

アレイスター「ほう」

『ミョルニル』を失った金髪のアレイスターは一旦後退する。

上条「はぁ……はぁ……」

だらん。と左腕を下げる上条。窓のないビルにヒビを入れる一撃と真っ向から激突した『竜王の鉤爪』にヒビが入ったのだ。

アレイスター「まあすぐに再生するだろうけどね。だから、猛攻を仕掛けさせてもらうよ」

赤いアレイスターから溶岩の波が繰り出される。幅的にも高さ的にも避けられない一撃。

上条「ちっくしょう!『竜王の殺息』、属性は『氷』!」

『竜王の顎』から氷のブレスが発射された。その一撃は溶岩の波を軽く凍らせた。

449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:52:07.23 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「なら私だ」

青いアレイスターがの背中からガブリエルを彷彿とさせる氷の翼が生えた。
目の前の溶岩を凍らせた塊すらも、自身の氷の翼に取り込む。
翼の数はどんどん増えていく。そして直後――

10分の1秒の速さの氷の翼のラッシュが始まった。

上条「『竜王の翼』!」

ドドドドド!と凄まじい速度で様々な角度から襲い掛かる翼を、しかし上条は『竜王の翼』を器用に操り打ち砕いていく。

アレイスター「隙だらけだよ」

そんな激しい攻防が行われている上条の近くへ、赤いアレイスターが涼しい顔をして肉迫する。

アレイスター「ふっ!」

左手の棍棒『ヤグルシ』が振るわれた。それを上条は、『竜王の顎』で左手ごと破壊する。

アレイスター「だが左手が使えない今の君は、この一撃は防げまい」

赤いアレイスターは構わず右手の棍棒『アイムール』を振るった。

上条「そいつはどうかな!」

再生が完了していた『竜王の鉤爪』で、右手ごと『アイムール』を引き裂いた。

アレイスター「まさか、再生が完了していたとはね……」

上条「おらよ!」

呆れている赤いアレイスターへ、追い討ちの頭突きがクリーンヒットし、数十mほどぶっ飛んだ。

450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:53:51.95 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「やはり、隙だらけだ」

上条「がはっ!」

タイミングを見計らったかのように、頭突き直後で隙だらけの上条に
青いアレイスター投げた槍『トライデント』がクリーンヒットした。上条は地面を数十m転がる。
いつの間にか氷の翼のラッシュは終わっていた。

アレイスター「やはり、『竜王』の力が君の体を覆っている限り、貫けないか」

上条(何とか助かったが……)

常にと言う訳ではないが、上条の体を『竜王』の力が覆っているときは異能の力はほとんど効かない。
インデックスのダイヤモンドダストも、これで切り抜けた。
しかし全くノーダメージと言う訳ではないし、4対1の今の状況ははっきり言ってピンチだった。

とりあえず腹部に刺さりかけている『トライデント』を破壊し立ち上がる上条。
目の前には両手が再生し、なおかつ2本の剣を持っている赤いアレイスターがいた。

上条(何でもアリかよ……)

もう大抵の事では驚かなくなってきた。しかしどうしたものかと、上条は思考を巡らせる。
と、それを見透かしたようにアレイスターが口を開いた。

アレイスター「戦いの最中に考え事とはいただけないね」

上条「くっ!」

図星だったが故に上条は歯がみする。いつの間にか上空には黒雲が広がり雨が降り注いでいた。

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:56:22.03 ID:Ih+JMOPW0
土御門(何故だ?何故アレイスターは考え事をしている最中の隙だらけのカミやんに攻撃しない?)

戦いに巻き込まれないように、ビルの角ギリギリから戦いを眺めていた土御門はそう疑問に思った。
その疑問はすぐに解決される事となる。

アレイスター「私を倒すにはどうすればいいか悩んでいるんだろう?簡単だよ。
       力をもっと開放すればいい。今の君は『竜王』の力の3分の1程度しか使っていないだろう」

その声は、何故か200m以上離れている土御門にも届いた。

土御門(もしや、アレイスターの考えている事は、ものすごく単純な事なんじゃ……)

上条「ざっけんな。そんなことしなくても今すぐ倒してやる!」

アレイスター「そうか、残念だ。ならば引きずり出すまでさ!」

銀髪のアレイスターが、『テュルソス』を振るった。
瞬間、一般人は愚か、魔術師ですら感知できない数万のかまいたちが放たれた。

上条「くっ!」

しかし上条の青い瞳はそれを見切り、『竜王の翼』で自身を包み込むことでガードした。

アレイスター「まだだ」

黒雲から雷、金髪のアレイスターから稲妻、槍の『ブリューナク』が投擲された。
ゴッギャアアアアア!と、『竜王の翼』でガードしているとはいえ、雷と稲妻と『ブリューナク』をまともに喰らった上条。

上条「ぐ、おお……」

何とか耐え切った上条であったが、『竜王の翼』にはヒビが入った。

アレイスター「これで終わりじゃないよ」

炎に包まれた赤いアレイスターが、全身をドリルのように回転させながら突っ込んでいく。
2本の剣、『ドラグヴァンディル』と『バルムンク』の切っ先を上条に向けがら。

上条(来る!)

ガードしたままでは貫かれると直感した上条は、『竜王の顎』で迎え撃つ事にした。
翼のガードを解き、顎を大きく開く。

アレイスター「ふん」

ギュルルル!と構わず赤いアレイスターは突っ込んでいく。そして――

ドガァ!と『竜王の顎』と赤いアレイスターは激突した。

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:57:55.80 ID:Ih+JMOPW0
上条(『竜王の顎』と……拮抗するなんて……!)

本来ならば、異能の力など一瞬で喰いつくす『竜王の顎』と拮抗していると言う事は
それだけこの異能の力が喰らいつくせないくらい莫大だと言う事。

アレイスター「埒が明かないな」

目の前で高速回転している赤いアレイスターが、そう呟いた直後――

ドゴォォォォォォン!と核爆弾よりも強力な威力で赤いアレイスターが爆発した。
それは炎の柱となって、天空まで伸びるほどだった。

上条「自爆……だと……」

爆心地の中心、と言うより爆心地そのものである上条は、『竜王の顎』で
爆発をいくらか喰らい、『竜王』の力を纏っていたとはいえ、大ダメージだった。

アレイスター「休んでいる暇は無いよ」

上条の目の前で、青いアレイスターが鎌のような剣『ハルパー』を振るい
後ろでは、銀髪のアレイスターが『テュルソス』を振るっていた。

上条「ちっくしょおおおおおがあああああ!」

渾身の力を振り絞り、後ろの銀髪のアレイスターを『竜王の顎』で武器ごと喰らい
前に居る青いアレイスターの『ハルパー』を『竜王の鉤爪』で引き裂いた。

アレイスター「やるな。だが終わりだ」

瞬間、上条は時が止まったような錯覚に陥った。
何故なら、降り注ぐ雨粒が一瞬空中で留まったからだ。
一瞬後、大量の雨粒は一点に集められた。上条の真上に。

上条「させるか!」

何か来る。その前に真上にある莫大な水の塊を吹き飛ばそうとしたが

アレイスター「遅い。終わりだと言ったはずだ」

金髪のアレイスターによって電撃が加えられた水の塊が、上条に滝の如く降り注いだ。

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 16:59:55.60 ID:Ih+JMOPW0
上条「はぁ……はぁ……」

上条は『竜王の顎』で水の総量の半分ほどをを飲み込み、何とか2本の足で立ってはいたが、大ダメージには変わりなかった。

アレイスター「電気がよく通った水のお味はいかがかね?」

軽口を叩くアレイスターに、上条は言い返す気力もなかった。

アレイスター「これで分かっただろう?さあ、早くさらなる力を解放するんだ。
       さもなければ、土御門を初めとする、君の大切な人達を消していくが?」

上条(くっ……そ!)

上条には分かっていた。このままではこの『人間』には勝てない。大切な仲間達が殺される。

しかし、これ以上の力を解放すれば、それを御しきれはしないと、なんとなく分かる。

上条(どう……すれば……)

と上条が渋っている心を読んだアレイスターが口を開く。

アレイスター「大丈夫。たとえ君が力を解放して自我を失おうが、私が倒してみせるよ。
       それに、さっさと解放してくれないと、私も少々手荒な事をしなければならなくなるが?」

そう言って、指を鳴らした。すると虚空から鮮明な画像が現れた。
そこに映っていたのは、地面に伏している御坂美琴。

アレイスター「一度だけ言う。私がもう一度指をならせば、彼女は粉々に弾け飛ぶ。
       正直、妹達が死んだ時点で、彼女は“脅威”になる可能性の方が高いから
       殺そうかどうか迷っていたんだよ。ま、今の説明は要らなかったね。
       3秒カウントする。3秒以内に力を解放しなければ、彼女は吹き飛ぶ。では、3」

上条(外道が!)

アレイスターの言っている事はハッタリではないだろう。
事実、妹達を容赦なく殺した。このままでは、御坂が死ぬ。

アレイスター「2」

土御門「カミやん!迷っている暇は無い!カミやんなら大丈夫だ!」

今迄の戦いの煽りを受けて、割とボロボロの土御門が叫ぶ。

上条(駄目だ……俺が暴走しちまったら……俺が皆を殺しちまうかもしれない……!)

アレイスター「1」

土御門「カミやん!」

上条「くっそがああああああああああああああああああああああああああ!」

アレイスター「ゼーー」

ロ、と言って金髪のアレイスターが指をならそうとした時、ズシャア!と、その体が真っ二つに引き裂かれた。

454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:01:45.88 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「どうした?まだ5割程度の力しか出していないじゃないか。全力を出してくれよ」

3人もの自分を殺されているのにもかかわらず、残った青いアレイスターは涼しい顔で言い切った。

上条「ブッコロス……!」

土御門(カミやんのやつ、やはり飲まれた!?)

アレイスター「5割で自我崩壊か」

『竜王』の力の5割を解放した上条は、先程までとは比べ物にならないほどのエネルギーで身体が覆われていた。
瞳の色は赤く変わり、翼は大きくなり臀部の辺りからは『竜王の尻尾』(ドラゴンテイル)が生え
左手はもちろん、右手までもが『竜王の鉤爪』になり、頭部が雄ライオンのように『竜王の顎』に
覆われていた。

アレイスター「全力を出さないと、私には勝て」

青いアレイスターの言葉が途切れた。その顔が苦痛に歪む。理由は簡単だった。
窓のないビルを通して『竜王の尻尾』が、青いアレイスターを背後から貫いたのだ。

アレイスター「その程度で、私を」

やはり言葉は最後まで続かなかった。
一瞬でアレイスターに肉迫した上条が『竜王の鉤爪』を振るい、青いアレイスターを細切れにしたからだ。
4体のアレイスターは全滅した。

455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:03:30.73 ID:Ih+JMOPW0
土御門「野郎……やりやがった!」

しかし喜ぶにはまだ早い。今度は上条を止めなければならない。だが、勝てるはずもない。

土御門(どうすればいい!?)

焦る土御門に、100mは離れている上条の赤い瞳がゆっくり向けられる。
その眼光を見た瞬間、恐怖のあまり思考が吹き飛び、その場で動けなくなった。

土御門「……ぁ……ぁぁ」

そこに

アレイスター「待ってくれ。私との勝負はまだ終わっていないよ」

エコーがかかった声は、窓のないビルから。
土御門の目の前に、ズズズズズと、黒い西洋の鎧のようなものを身に纏ったアレイスターが背を向けて現れた。
その髪の色は、黒い。

アレイスター「異能の力がほとんど効かない『竜王』の力で覆われている君を
       これ以上魔術で攻撃するのはナンセンス。ここからは肉弾戦だ」

ドン!と上条とアレイスターは同時に地面を蹴った。
土御門が瞬きをしているい間に、グシャア!と肉を叩く音。上条が数十mほどぶっ飛ばされる。

上条「コロス!」

すぐに起き上がり、反撃に出る上条。
一瞬でアレイスターの後ろに回り込み、『竜王の鉤爪』を振るう。

アレイスター「攻撃が単調すぎる。理性を失った獣など、恐るるに足らない」

地面に背を向け、宙を舞う。
爪を避けたと同時、そのままオーバーヘッドキックの要領で、上条の頭上に足の甲を叩きつけた。

456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:05:48.35 ID:Ih+JMOPW0
上条「コ……ロス!」

それでも上条は止まらない。眼前から翡翠色の光線が放たれた。

アレイスター「遅い」

既に上条の後ろに回り込んでいたアレイスターは『竜王の尻尾』を掴み、地面に何度も叩きつけた。
5回ほど叩きつけたところで、グン!と上条が動かなくなった。『竜王の鉤爪』を地面に喰い込ませたのだ。
しっかりと地面に固定された上条は、掴まれている『竜王の尻尾』を振るい、逆にアレイスターを投げ飛ばした。

地面をスライドしながら踏ん張るアレイスターの後ろに、上条は右の『竜王の鉤爪』を振り下ろした。

アレイスター「本当に単調な攻撃だな。私を馬鹿にしているのか?」

右手で上条の右手首辺りを掴み、そのまま一本背負いの要領で地面に叩きつけた。
右手は離さず、左足で左手と左翼を踏み、顔面を右足で踏み、尻尾と右翼の反撃を左手で掴んだ。

アレイスター「何だこのザマは。理性のあった上条当麻の方がよっぽど強かったよ」

その挑発に上条の体がバグン!と跳ねた。そのせいで一瞬アレイスターの右足が顔面から離れた。
その一瞬で上条は眼前から翡翠色の光線を放った。

アレイスター「今のはちょっと危なかったかな」

そう言うものの、涼しい顔を浮かべて後退したアレイスターに上条が真正面から襲い掛かる。

アレイスター「後ろからが駄目なら真正面……君はアホだな」

カウンターの右ジャブ。次に左ジャブ。とどめに右アッパーを繰り出した。上条が30m上空に舞い上がる。

アレイスター「そろそろ終わりかな」

ギャルルルル!とアレイスターは縦回転しながら上昇していく。
そして、かかと落としを上条の脳天に叩きこんだ。
直後、ゴッシャァァァアアア!と上条は高さ60mほどある窓のないビルを貫き、地上に叩きつけられた。

457: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:07:11.26 ID:Ih+JMOPW0
土御門「なんて戦いだ……!」

思わず感想を漏らしてしまう土御門。
しかしこれ以上やると、上条は本当に死んでしまうのではないかと心配になる。
だからと言って、自分には何も出来ない。土御門は己の無力さを噛み締める。

そんな土御門の心情をアレイスターは読みとったのか、こんな事を言った。

アレイスター「残念ながら、もうそろそろ決着だ。まあそれも悪くないかな」

意味不明だった。上条が死んだら悪くない訳がない。
何が言いたいんだ、と疑問に思った土御門であったが、そこで冷静になって考えてみた。
そして1つの可能性。

土御門「アレイスター、お前、まさか――!」

アレイスター「当然だろう。寧ろ今まで気付かなかったのかい?」

と、その時だった。
翡翠色の光線がアレイスターを狙って、窓のないビルを一直線に貫いた。
アレイスターはと言うと、3歩後退しただけで光線を避けていた。
そして地面を蹴り、宙を舞う。直後、上条が窓のないビルから一気に上昇し、アレイスターへ肉迫する。

上条「シネェェェエエエ!」

左の『竜王の鉤爪』を、アレイスターはその身を低く縮めることによって回避。
続いて右の『竜王の鉤爪』が顔面を引き裂かんと襲い掛かるが、左手であっさりと弾く。
隙だらけの上条に、アレイスターは右拳を固く握り締めて、獰猛に笑ってこう言った。

アレイスター「歯をくいしばれよ『神浄』。私の究極の一撃は、少しばかり響くからね」

直後、ドガァ!とアレイスターの右拳が上条の腹部に深く突き刺さった。
その一撃で、上条は強かに地面に叩きつけられ、動かなくなった。

458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:09:00.04 ID:Ih+JMOPW0
土御門「ゲームセットだな」

土御門は冷静にそう言った。

アレイスター「上条当麻はまだ100%の力を出していない。戦いは終わっていないよ」

既に地に足をつけていたアレイスターはそんな事を言う。

土御門「いや終わりだよ。きっとあまりにも劇的な展開について行けなかったんだろうな。
    こんなに長い時間、生命維持装置から出て生き続けられるはずもないって
    単純なことに、今更気付いたんだからな」

アレイスター「言葉を返すようだけど、私は生命維持装置に居ながら戦うことだって出来るんだよ?」

土御門「ロシアでフィアンマを倒した事を言っているのか?馬鹿言え。
    あんなもの、どうせクローンか何かだろう。さっきまでの4体のアレイスターもそうだ。
    今目の前に居るお前がオリジナルだな?」

アレイスター「何だ。冷静に分析できるんじゃないか。そうだ。
       今迄のはクローン。今君の目の前に居る私がオリジナルだ。
       そして生命維持装置を飛び出したのも事実だ。だが私はまだ戦える」

土御門「無理だな」

きっぱりと、否定した。

土御門「先程お前が言った台詞、カミやんが一方通行を倒した時の台詞と酷似している。
    それは、この戦いが終わりだという暗示だろ?全く、くだらん演出だ。もうお前は限界なんだろう?」

アレイスター「本当によく分析できている。君になら任せられそうだな」

土御門「新統括理事長なら勘弁だぞ」

アレイスター「それは雲川芹亜に任せる。君に任せるのは……これだ」

ブチッと髪の毛の1本を千切る。それは1つの巨大な巻物になった。

アレイスター「これを後で読んでおいてくれ。重要な事が書いてある。いくつかのプレゼントもある」

アレイスター「それから、上条当麻の記憶も脳細胞ごと戻しておこう」

土御門「何で他人の記憶をお前が持っている?」

アレイスター「彼を生まれた時から観察していたからさ」

そう言って、今は『竜王』の力が全く出ていない上条の額に手を当て何かを唱えた。

459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:11:55.37 ID:Ih+JMOPW0
土御門「カミやんは、もう暴れる事は無いのか?」

アレイスター「多分ね。四肢のどれかを消したりすれば、そこから『竜王』が漏れ出すかもしれないが。
       いつの間にか『幻想殺し』で蓋もされているみたいだし」

土御門「で、結局お前の目的は何だったんだ?」

アレイスター「そうだね。君も大体見当がついていると思うが冥土の土産に教えてあげよう。
       いくつかの有益な情報もね」

まあ死ぬのは私だが。とアレイスターは付け加える。

アレイスター「簡単に言えば、魔術サイドへ復讐したかった。君ならばその理由は分かるだろう?」

土御門「『魔術師の頂点に立っていたお前は魔術を捨てて科学に走った。
    だから“世界で最も魔術を侮辱した魔術師”として世界中の魔術師を
    敵に回す羽目になり、最終的にはイギリス清教の追っ手に致命傷を負わされる』
    これが通説だ」

土御門「だがそれは違う。お前は、お前の才能を妬んだ魔術師達に罠にはめられたんだ。
    だから、魔術サイドへの復讐のために学園都市を作った。
    学園都市創設から、今迄の出来ごと全て、魔術サイドへの復讐の段取りだったんだ。
    そうだろう?」

アレイスター「その通りだ。君は本当に優秀だな。多角スパイなだけはある。
       やはり、君を立会人にして正解だった。ただ何箇所か間違っているのは
       私は罠にはめられたのではなく、自ら罠にはまったのだがね」

土御門「何だと!?」

アレイスター「それとだ。全て計算通りだった訳ではない。8月31日の出来事での一方通行の弱体化。
       何とか復活はさせたが、垣根帝督の瀕死。上条当麻が北極海に沈み、一方通行に『闇』が解体された時。
       今回の戦争では、大天使の出現と、妹達の雑魚さ加減は予想外だった」

アレイスター「まあ大天使というイレギュラーには焦りと同時ワクワクしたし、垣根帝督が
       1人でローラを倒す、一方通行完全復活と言う嬉しい誤算もあった訳だが」

土御門「じゃあ何か。上条当麻と戦いたいと言う以外で妹達を殺したのは
    その役立たずぶりに腹が立って殺したのか?」

アレイスター「それもある。あと1つだけ。君達が苦しまないようにするためだ」

土御門「どう言う意味だ?」

アレイスター「あとで巻物を見てもらえば分かる」

460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:13:09.78 ID:Ih+JMOPW0
アレイスター「さて、私はそろそろ限界だ。君の疑問はあと1つ。
       『魔術サイドへの復讐』が目的ならば、上条当麻と戦った理由は何なのか?
       でも、大体は見当がついているみたいだね」

土御門の心を読んだアレイスターは、なおも喋り続ける。

アレイスター「単純な事だ。『強い奴と戦いたかった』ただそれだけ。
       昔魔術師達の罠に、自らはまったのもこれが理由だ。
       当時は私より強い者がいなく、本当に退屈だったからね。
       それで負けて、復讐を誓った。逆恨みだと言うのは自覚しているよ。
       まあ君を含め、魔術師は『7人』残ってしまった訳だが、それはもういい」

土御門「強くなってしまうと、人間何を考えるか分からんな」

アレイスター「駄目だ。限界だ。有益な情報を与えようと思ったが無理みたいだ。
       まあ巻物に大体の事は書いてある。じっくり読むといい。では、さよならだ」

アレイスターの体が、下半身から黒い塵のようなものになって消えていく。
20秒もしないうちに、体は全て塵になり、風に流された。

461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:14:01.61 ID:Ih+JMOPW0
土御門「さて、あとはこのビルから降りるだけなんだが……」

どうしたものかと、土御門は頭を悩ませる。とその時

ヴェント「大丈夫か!?」

今迄気絶していたヴェントが、窓のないビルに舞い降りた。

ヴェント「アレイスターの野郎の反応は無いけど……お前が倒したのか?」

土御門「いや。勝手に昇天してっただけさ」

ヴェント「意味分からない……何があったか知らないけど、このビルも崩れそうだし降りるよ!」

そうして土御門と上条を上手い具合に風で包み込み
ヴェント達は無事地上に降り立った。戦争は完全に終結した。

462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:16:01.18 ID:Ih+JMOPW0
12月27日

学園都市と魔術サイドの戦争により、魔術の存在が明るみに出たと同時、消滅が確認された。
犠牲者は約20億を超え、主に魔術を使って暗躍し戦争のきっかけでもある、イギリス、イタリア、ロシアは世界中から糾弾された。
と言っても、イギリスは悪魔らしき物の手で壊滅状態、ロシアも天使のようなものに大地を荒らされ、同じく壊滅状態だった。
しかしイタリアは健在だったため、イタリアを理由にEUを落とし、世界のパワーバランスを変えようと
アジア辺りが動こうとし(建前として学園都市を攻めたことの報復)、第4次世界大戦が勃発しかけた。

それを新統括理事長となった雲川芹亜がとめた。1番の被害者である学園都市が
戦争なんかするなと言えば、それ以外の国は従うしかなかった。
まあそれは建前で、イギリス、イタリア、ロシアの連合軍に勝利した学園都市を恐れて従っただけであったが。

雲川「ったく、勝手に統括理事長に任命されて、いきなり大仕事だったんだけど」

雲川はモニターの向こうの貝積にぼやいた。

貝積「まあそう言うな。君のおかげで、第4次世界大戦が回避されたのだから。
   ところで、愛しの彼に会いに行かなくていいのかね?」

雲川「どっちのこと?」

貝積「どっちもだよ。見舞いに行けばいいじゃないか」

雲川「いいよ。2人とも昔から傷の治りだけは馬鹿みたいに早かった。きっともう退院しているけど」

貝積「では見舞いなどと言う理由が無くても、直接会いに行けばいいじゃないか」

雲川「お前はさっきから一体何なんだ?2人に会ってもすることなんてないけど」

貝積「若いうちは青春するべきだと思うけどねぇ」

463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:16:42.20 ID:Ih+JMOPW0
冥土帰しの病院

ナース「先生!大変です!上条さんがいません!」

冥土帰し「それは大変だ。多分彼が行くところは、あそこだ。君はついてこなくていい。僕だけで行く」

そう言うと、冥土帰しは年甲斐も無く走った。

464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:19:30.64 ID:Ih+JMOPW0
上条「インデックス!」

戦争が終わってから2日目だと言うのに、ほぼ傷が回復していた上条は病室を抜け出した。
インデックスがどこかに居ると信じて病院をかけずり回っていた。

探し始めてから5分。ついにインデックス様の文字を見つけ、病室の扉をノックもせずに開けた。

インデックス「ひゃう!?」

そこには着替え中のインデックスがいた。

インデックス「あ、あの……」

上条「ああごめんインデックス!決して覗くつもりじゃ――」

言いながら急いで扉を閉め――

インデックス「どちら様でしょうか……?」

上条「え?」

上条は一瞬自分の耳を疑った。

上条「上条……当麻……だけど……」

インデックス「『神浄の討魔』(かみじょうとうま)さんか。良い名前ですね。
       けれど、ごめんなさい。覚えがありません。医者から聞いた話だと私、記憶喪失みたいなんです。
       もしかして、私達は知り合いだったのでしょうか?」

上条「嘘……だろ……」

足から力が抜ける。ドアを背にして、上条は尻餅をついた。とそこで

冥土帰し「ああ……やはりここに……」

息を切らしながら冥土帰しが近付いてくる。

上条「先生……これは……」

冥土帰し「意識が戻ったら、ちゃんと説明しようと思ったんだけどね?
     まさか意識が戻った途端、行動を起こすとは……」

会話を聞いて、ドア越しに冥土帰しが居る事が分かったインデックスは言った。

インデックス「あの、先生。私、何かいけない事を言ってしまったのでしょうか?」

冥土帰し「大丈夫だインデックス君。君は何も心配する事は無いよ?さあ行こうか。上条君」

465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:22:29.85 ID:Ih+JMOPW0
空いている病室に移動した上条と冥土帰し。

冥土帰し「単刀直入に言うよ。彼女は記憶破壊を起こしている」

あまりにも衝撃的な一言に、上条は気絶しそうになった。

上条「まさか……俺の……せいで……?」

冥土帰し「話は大体土御門君から聞いた。君の中には『竜王』というのがいて
     その力を使って頭の中にある10万3000冊とやらを破壊しようとしたんだね?」

上条「はい……」

冥土帰し「僕には魔術なんてものはよく分からないから、土御門君と一緒にインデックス君を診てもらったんだけどね。
     10万3000冊の魔道書は綺麗さっぱり消えているらしい。脳細胞ごと『意味記憶』を破壊したのはなく
     10万3000冊だけが消えていた」

冥土帰し「ところが何故か『エピソード記憶』が脳細胞ごと破壊されていてね。
     まあ脳細胞だけなら、垣根君を使えば戻せるんだが……」

上条「の、脳細部さえ戻れば、容れ物さえ戻れば、記憶は蘇るんじゃないですか!?」

藁にもすがる思いで尋ねる。

冥土帰し「確かに、その可能性はある。けれど、戻らない可能性もある」

上条「じゃあ、可能性があるなら、早く脳細胞を戻して――」

冥土帰し「でも、駄目なんだ。彼女自身が、記憶を取り戻すことを拒んでいるんだ」

上条「な、んで……」

冥土帰し「彼女にね。彼女自身の名前を教えてあげたんだ。『君はインデックスと言うんだよ』って」

冥土帰し「そしたら彼女『インデックスって馬鹿にしてるんですか?目次なんて
名前つける親が、どこに居るって言うんですか?』って」

冥土帰し「はっきり言っちゃうと、そんなこと知るもんかと、僕は思ったんだ。
     けれど土御門君が、『あなたの名前は別にある。インデックスって言うのは
     役職みたいなもんだ。でも本名は俺も知らない。とにかく何でインデックス
     と言う二つ名がついたのか、説明しよう』って言ったんだ」

冥土帰し「そしたら彼女、何かを感じ取ったのか、『結構です』って断ったんだよ。
     当然『何で?』となるわけだけど、彼女の言い分はこうだった」

冥土帰し「『インデックスなんて役職与えられるなんて絶対におかしい。
     きっと私の過去は、碌でもないものなんだ。だったらそんな記憶いらない』と」

冥土帰し「僕としても心苦しかったんだが、さすがに患者の意志を尊重しない訳にいかなくてね。
     でも、これではあまりにも悲しい結末すぎる。
     彼女の1番の理解者である君が説得すれば、彼女の気も変わるかもしれない」

冥土帰し「とにかく、そういう事だから、今は何も出来ないんだ。力になれなくて本当にすまない」

そう言って冥土帰るしは病室から出て行った。彼も暇ではないのだ。

466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:24:12.04 ID:Ih+JMOPW0
上条「そんなの……アリかよ……」

少年に降りかかった現実はあまりにも残酷だった。
いつも一緒に居たインデックス。彼女助ける為にロシアにも行った。
北極海に沈み死にかけもした。それでも少年は生き延び、詳しい事は分からないが、何故か記憶も戻っていた。

それなのに、たった1つ。インデックスとの思い出が無くなった。
たったそれだけのことで、がらりと世界が変わって見えた。天国から地獄。今なら分かる。
大切な人に忘れられた辛さが。ステイルと神裂が、どうして敵になると言う選択を執っていたのかを。

上条「俺は今まで……何をしてきたんだろうな……」

フラフラと病室を出て上条が向かった先は屋上。
自殺防止のフェンスがあるが、その気になれば超えられない事もない。

上条は、身長135cmの教師から教わった言葉を思い出していた。

小萌『人って、いつ死ぬと思います?』

上条『いつって……寿命じゃないですか?老衰とか、事故とか』

小萌『違いますよ。それは肉体的に死んだだけで、他の人の心の中では生き続けます』

上条『じゃあいつ死ぬんですか?』

小萌『だからそれはこっちが聞いているのですけど……まあいいです。
   人が死ぬ時……ズバリそれは、人に忘れられた時です!』

人に忘れられたとき、人は死ぬ。
じゃあ世界で最も大切な人に忘れられた自分は死んだも同然。
もう生きる気力が湧かない。そうしてフェンスに手をかけたその時だった。

バタン!と屋上の扉が開かれた。

467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:26:09.89 ID:Ih+JMOPW0
五和「はぁ……はぁ……」

息を切らした五和が、立っていた。

五和「何……やってるんですか……?」

上条「何って……飛び降りようとしているだけだけど」

五和「ふざけないでください!何でそんな事を――」

上条「――うるせぇんだよ!外野は黙っとけ!」

そのあまりの気迫に、五和ビクッ!と震えてしまった。

上条「お前に何が分かる!大切な人に忘れられた気持ちが分かるのか!」

鬼気迫る上条に、しかし五和も怯まずに言う。

五和「分かりますよ!私だって!
   私だってこの戦いで女教皇と建宮さんをはじめとする仲間を失ったんですから!」

上条「そう言うレベルじゃねぇんだよ!俺は世界で1番大切な人から忘れられたんだ!
   しかも、その原因は俺のせいなんだよ!この辛さがお前なんかに分かって――」

五和「――分かります!!!」

今度は逆に、五和の気迫に上条が押される。

五和「確かに!女教皇と仲間の皆は敵にやられました!けれど!建宮さんを殺したのは私です!
   私の手で仲間を殺してしまったんです!その直後は、私も死にたいと思っていました……」

けれど!と五和は続けて

五和「仲間の1人が励ましてくれたんです!『あなたが死んで誰が喜ぶの!?』って!
   『建宮さんの事を本当に思うなら、死ぬんじゃなくて、上条さんを守り切ると言う
   建宮さんの遺志を引き継いで生き続けるべき』って!」

五和「世界はあなたとインデックスさんだけで構成されている訳ではありません!
   あなたが死んで、悲しむ人はまだ大勢います!それでも、自殺すると言うのなら――」

五和「そんなふざけた幻想(かんがえ)は、私がぶち殺します!」

468: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:27:29.70 ID:Ih+JMOPW0
そこで上条は絶句した。構わず五和は続ける。

五和「私、実はさっきの病室での会話聞いていたんです……」

その一言に、上条は目を見開く。

五和「まだ希望はあるじゃないですか。上条さんが説得して垣根さんの力を使えば
   脳細胞は戻り、記憶も戻るかもしれない……世界に見切りをつけるのは、まだ早すぎますよ……」

上条「でも……俺はもう……生きる気力が……」

五和「……じゃ、駄目ですか?」

上条「え?」

五和「私じゃ、駄目ですか?」

上条「何を言って……」

五和「こんなときに言うのも図々しいかもしれないですけど、私、上条さんの事が好きなんです。
   本当に。狂おしいほどに」

突然の告白に、上条の思考回路はついて行けなかった。

五和「私、ボロボロの上条さんを放っておけません。
   インデックスさんの記憶が戻るまでの“代わり”で良いんです。あなたを支えたい」

5秒ほどの沈黙。そして上条の思考は追いついた。
バッ!と五和の胸に顔を埋め

上条「うっ、うっ、うぅ~、うわああああ……!!」

中学1年生の夏休み以来、約3年ぶりに泣いた。

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:28:12.16 ID:Ih+JMOPW0
御坂(あーあ、失恋しちゃった)

こっそり屋上のドア付近で話を聞いていた御坂は、その事実を噛み締めていた。

御坂(……妹達も全員死んじゃったし。こうも不幸が連続で続くと心が折れそうだわ。私が死にたいくらい)

そんな事を考えていた時、パッ!と白井黒子が目の前に現れ

白井「すみませんお姉様」

御坂の手を掴み、もう一度テレポートした。

470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:29:44.88 ID:Ih+JMOPW0
病院前

御坂「私をこんなところにテレポートして、一体何の用?」

白井「ある殿方が、お姉様とお話がしたいとおっしゃるので……」

御坂「どこにいるの?」

一方通行「ここだ」

御坂の後ろ1mほどのところに、一方通行は立っていた。

御坂「何の用?悪いけどアンタの顔なんて見たくもないんだけど」

白井「お姉様、いくらなんでも言い方に棘があり過ぎますわ。この方はお姉様の恩人なのでしょう?」

御坂「恩人ってほどじゃないわ。それにアンタにも話したけど、私とコイツには因縁があるの。
   そして今回の戦争で妹達が全員死んだ。コイツが守り切れなかったから」

戦争が終結した直後、土御門により妹達が全滅した事が、御坂と一方通行に伝えられた。

御坂は、本当は一方通行だけのせいではないと分かっていた。
寧ろ妹達を死なせたのは、DNAマップを提供した自分のせいだと。
元凶は自分だと分かっていた。それでも上条と妹達を失った悲しみは計り知れなく、一方通行にぶつけるしかなかった。

一方通行「そうだ。俺が守り切れなかったせいだ」

御坂の心を知ってか知らずか、一方通行は言い切った。

一方通行「だから、せめてオリジナルのオマエは守らなきゃならねェ」

御坂「私はこれでもレベル5なのよ。アンタに守ってもらう必要なんかない」

一方通行「……一緒に暮らしてくれねェか?」

白井「はぁ?何をおっしゃって――」

白井が前に出ようとするのを御坂は腕で制して

御坂「人の話聞いてた?守ってもらう必要なんてない。
   てか常盤台に寮あるし一緒に暮らすとか無理だから」

一方通行「……そうか」

御坂が冷静に断ると、一方通行もあっさり引き下がった。一方通行は御坂達に背を向けて歩き出す。

御坂「何だったのよ……」

471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:32:13.16 ID:Ih+JMOPW0
心理定規「はい、あ~ん」

垣根「ガキじゃねぇんだ。1人で食える」

心理定規「うっ……!(涙目)」

垣根「わ、分かった。食えばいいんだろ。食えば!」

心理定規「うん!あ~ん」

垣根「あ、あ~ん」

現在、病院の個室で垣根は、お見舞いに来た心理定規からリンゴを食べさせてもらっていた。

垣根「つーかさ、お見舞いとか来なくても良いぞ?もっとお前のやりたいことやれよ」

心理定規「うん、やってるよ。あなたのお世話。楽しい♪」

垣根「あーそう。そりゃよかった(棒)」

心理定規「あのさ、何でさっきからそんな無愛想なの?
     可愛いあなたの彼女が献身的にお世話してくれているのよ。
     もう少し何かあるじゃない?股間を膨張させたりとかないの?」

コイツ頭大丈夫か?と垣根は半ば以上心配になる。

垣根「つーかお前、何彼女面してんの?」

心理定規「え?違うの?」

垣根「なんか俺、ノリでお前を守る的な事、ひょっとしたら万が一にでも言ったかもしれねぇけどさ。
   付き合って。とは一言も言ってねぇけど」

心理定規「えー、でも戦争が終わったら絶対に迎えに行く。とかも言っていたけど。
     まあ結局このザマで、私が見舞いに来ているんだけどね」

垣根「う、うるせぇよ!」

心理定規「まあ良いわ。で、彼女面しないで見たいなこと言っていたけど……
     じゃあ今から私とお付き合いして下さい。これで良いわね?」

垣根(な!?)

その瞬間、垣根は不覚にもときめいてしまった。
しかしこれは――

垣根「おいテメェ今告白と同時能力使っただろ。そうじゃないと、この俺がお前にときめくはずがねぇ」

心理定規「はぁ?そんなことで一々能力使うはずないでしょ。
     もしときめいたのなら、それはあなたの本心で・しょ♪」

言われてみればそうかもしれなかった。
常識的に考えてレベル6になるほどの『自分だけの現実』(パーソナルリアリティ)をもつ自分が、コイツ程度の能力など効くはずない。

垣根「そっか。そうだな。じゃあ正式に俺の女になったんだから、もう他の男と会話すんなよ」

心理定規「じゃああなたも、他の女と会話しないでね」

冗談で言ったのに、案外乗ってきた心理定規に、垣根は少し辟易した。

472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:33:31.64 ID:Ih+JMOPW0
青ピ「ん……」

病院の個室で青髪は目覚めた。何か右太もも辺りに若干の重みを感じる。
青髪はゆっくりと身を起こす。そこにいたのは

眠っている結標淡希だった。

青ピ(まじか!?僕の右太もも辺りに○○○○当たってるで!)

そんな風に密かに興奮していると、結標が目を覚ました。

結標「ふ……あ……あ、ご、ごめんなさい!私うっかり寝ちゃったみたいで……」

青ピ「構へん構へん。寧ろ大歓迎って感じ?」

結標「え?あ、そ、そうですか……」

青ピ「そんなかしこまらなくても……もっとラフにいこうや」

結標「でも、私の命の恩人ですし……」

青ピ「そんなん気にせんでええよ。人間、持ちつ持たれつやろ」

結標「そう、よね。やっぱり私に敬語は合わないわ。ところで、あの時言ってくれた事、本当なのかしら?」

青ピ「あの時って?」

結標「だ、だからのその、私の事を……な、なんで私が言わないといけないのよ!
   てかそのニヤケ顔、絶対気付いているでしょ!」

ポカポカと青髪を叩く結標。

青ピ「あはははは。可愛いなあ結標ちゃんは。まあ冗談はこの辺にしといて、
   あの時って言うのは、僕が君を庇って告白した事の事やろ?」

結標「そ、そうよ。それが本当かどうか聞いてるの!」

青ピ「本当かどうかって……本当に決まってるやろ。あそこで嘘つく意味がないし。
   で、返事聞かしてほしいんやけど」

結標「え、へ、返事?そ、それはまだちょっと……あ、わ、私先生呼んでくるわね!」

顔を真っ赤にしながら、病室を飛び出した。

青ピ「自分からこの話題出しといて……意外と初心なんやな~」

473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:34:43.92 ID:Ih+JMOPW0
この戦争で学園都市の総人口約230万人の内、約30万人が犠牲になった。
その30万人の内の3人、麦野、浜面、滝壺の墓の前で絹旗とフレメアは黙祷していた。

絹旗(皆さんごめんなさい……私が超弱ったばっかりに……もし今度……
   大切な人が出来たら……その人達を絶対守り切って見せますから)

3人の墓の前で、絹旗は誓った。

絹旗「フレメアちゃんは、今後どうするんですか?住むところとか」

フレメア「……一応、一方通行と住む事になった。『新入生』事件の時に浜面と一緒に私を助けてくれた人だから、大体大丈夫。
     絹旗お姉ちゃんこそ、どうするの?」

絹旗「私ですか?私はですね……とりあえず中学校にでも超通ってみようと思っています。
   あと風紀委員になって、皆を守りたいです」

フレメア「お姉ちゃんならきっとなれるよ」

絹旗「ありがとうございます。お世辞でも超嬉しいです」

474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:35:13.71 ID:Ih+JMOPW0
郭「おいしいですか?」

半蔵「ああ、まあ。リンゴの味だ」

病院の個室で、半蔵は郭が皮を剥いたリンゴを食べていた。

郭「あの……私、もっと強くなりますから……半蔵様を守れる位に」

半蔵「ああ、待ってる」

半蔵(そして俺自身も強くならねぇと……もうこれ以上大切な人達を失わないように……)

475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:38:38.73 ID:Ih+JMOPW0
イタリアのミラノ とある民家

保護された子供達「……」

フィアンマ「元気ないな」

ヴェント「仕方ないわよ。オッレルスとシルビアがいなくなってはしゃげるはずない。
     しかも死体も見つからなかったから、葬式もあげられないし」

フィアンマ「特にあの女の子が酷いな」

ヴェント「オッレルスに1番懐いていた子ね」

フィアンマ「どうしようか……」

ヴェント「下手に元気づけるよりは、ここは放っておいた方が良いかもね。
     それに子供達なら大丈夫だよ。オッレルスから教わった事、どんな事があっても
     生きる希望を失ってはいけないってこと、分かってるはずだから」

フィアンマ「もっと強くなる必要があるかもな……どんな災厄からも守り抜くために」

ヴェント「でも魔術サイドは滅亡して、もう戦争なんて起こる事ないだろうから
     強くなる必要はないんじゃない?私達に出来るのは、この子達の側に居てあげる事なんじゃない?」

フィアンマ「土御門から聞いたんだ。魔術師は俺様達を含めて『7人』残っていると」

ヴェント「え-っと、その土御門って言う奴と、天草式の五和って奴と私とあなた。
     あと3人か。偶々生き残ったんじゃないの?しかもそれがどうしたって言うの?」

フィアンマ「まあ順を追って説明する。偶々と言うか、3人のうちの1人は闇咲逢魔という流れの魔術師らしい。
      天草式と同じく日本人の上に、学園都市の近くに住んでいたから
      ローラも簡単に手が出せなかったのだろう。わざわざ1人の魔術師の為に日本に潜入するのも馬鹿らしいからな」

ヴェント「あとの2人は?」

フィアンマ「それが問題なんだ。神裂火織、アックア、シルビアはこの戦争で命を落とした。
      大天使の為に合計15人もの『聖人』が生贄にされた。だが『聖人』は全部で20人。
      あと2人いる計算になる。ローラでも手が出せなかったか、あるいは別の理由があったかは定かではないが
      とにかくそういう2人がいる」

ヴェント「だから偶々生き残っただけじゃないの?てかそれが私達に何か影響でもあるの?」

フィアンマ「でなきゃ、こんな説明はしない。土御門から聞いた話によると
      そいつらは『強い奴と戦いたい』とかいうイカれた思想を持ち合わせているらしい。
      つまり俺様達を狙う可能性もある」

ヴェント「はぁ?何それいい迷惑なんだけど。てか何で土御門がそんなこと知ってるの?
     それに『強い奴と戦いたい』という目的なら、なんで戦争に参戦しなかったの?」

フィアンマ「順に回答していくと、土御門はアレイスターに巻物を託されたらしい。
      そこに書いてあったんだと。そして戦争に参戦しなかった理由は……」
      
ヴェント「理由は?」

フィアンマ「悪魔との融合の儀式をしていたらしい。だから戦争には参加できなかったんだ。
      これも巻物に書いてあった事らしいが」

ヴェント「え?」

フィアンマ「ただその『聖人』2人の正確な特徴とかは一切説明が無いらしい。
      アレイスターの野郎の考えている事はよく分からん」

ヴェント「結局、要約するとどういうことなの?」

フィアンマ「悪魔と融合するほどの実力者が俺様達に牙をむくかもしれない。
      そいつらに対抗できるよう、俺様達も強くなるしかないってことだ」



悲しみを乗り越えた者。いまだにもがき苦しみ続ける者。
勝ちとった平和に幸せを噛み締める者。確かな目標を定めた者。
世界は新たなる局面に向かって廻り始めた。

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:40:03.40 ID:Ih+JMOPW0
年が明け、1月1日。
めでたく退院した上条と垣根、そして五和が土御門の部屋に招かれていた。

土御門「とりあえず退院おめでとうにゃー。まあ中に『竜王』がいるカミやんはともかく
    カッキーも異常な回復力で」

垣根「なんだカッキーって、気持ち悪ぃよ」

土御門「まあまあいいじゃないか。もう俺達は『仲間』なんだし」

上条「おい。そんなことより、俺達をここへ呼んだ理由はなんだ?」

五和「当麻さん、そんな言い方はどうかと……」

上条「あ、ああすまねえ」

垣根「おっとぉ、その雰囲気は、ひょっとしてお2人さん、結ばれちゃった感じ?」

五和「え、ええまあ」

上条「……」

垣根「……この空気は地雷を踏んじゃったかな~。すみませんでした。土御門君、話を進めてくれたまえ」

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:41:06.59 ID:Ih+JMOPW0
土御門「気を取り直して、まずは五和にプレゼントだ」

土御門が五和に渡したのは、槍の形のアクセサリーのようなものだった。

五和「これは……」

土御門「『グングニル』だ。五和ならその霊装の貴重さが分かると思う。
    何故か知らんが、それは如意棒みたいに自由自在に伸縮するから持ち運びには困らず、常に携帯できるぜい。
    縮むのはそのサイズ、伸びるのはその槍の本来の長さまでだがな」

五和「こ、こんな貴重なものを何で……」

土御門「アレイスターから巻物を託された。その中にあったんだ。何故託したのかは、今から説明する」

垣根「ちょっと待てよ。俺らには何かねぇのかよ」

土御門「ないにゃー。はい、説明始めます」

垣根「ちぇ」

478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:43:05.42 ID:Ih+JMOPW0
土御門「率直に言おう。いずれ学園都市から世界が滅亡するかもしれない」

上条「はぁ?」

土御門「もう一方通行には説明済みだが、この学園都市に反乱分子が1人いる。
    カッキーなら分かるんじゃないか?」

垣根「ああ、食蜂お嬢様の事でございますか?」

土御門「やっぱりわかってたかにゃー」

垣根「まああいつがレベル5の中で1番腹黒いだろうし。けどそれがどうしたってんだ?
   ぶっちゃけ順位こそ5番だが、いざ戦うとなればレベル5最弱だろ。
   あの窒素のチビにも負けるんじゃねぇの?逆らってきたら5秒で潰すまでだが」

土御門「カッキー、奴が恐ろしいところはそこじゃない。その能力によって人を洗脳することだ」

垣根「それで学園都市の能力者の大半を味方につけて、反乱をおこすのか?
   それとも人質を取るとか?どの道、そんなことはさせねぇし、させたとしても
   俺の大切な人を傷つけるのなら、容赦なく殺すだけだ」

土御門「カッキーは分かっちゃいない。実際人質を取られたら思うように動けないし仲間割れのきっかけにもなる」

土御門「例えばだ。舞夏が操られて、お前の彼女……心理定規を殺そうとする。
    するとお前は舞夏を殺す。そしたら俺はお前を殺そうとする。こういう負の連鎖が発生する」

垣根「だから、人質なんか取られなきゃいい。取られる前にさっさと殺せば良い。なんなら、今すぐにでも」

土御門「今食蜂に手を出せば、お前はただの殺人者だ」

五和「拘束とかは出来ないんでしょうか?」

土御門「出来ないな。実行に移さなければ、たとえ『人を殺したい』と強く思っていたとしても
    その人を罪に問い、裁く事は出来ない」

垣根「なら実行するまで待って、実行してからさっさと殺せばいいんだな?」

土御門「だから、そう甘くもないって。能力を使って操られた人かどうかなんて
    見分けはつかないし、そもそも食蜂を殺せば、洗脳が解けるとも限らない」

垣根「いや解けるだろ」

土御門「お前が進化したように、食蜂も能力の質が向上しているかもしれんぞ」

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:45:40.41 ID:Ih+JMOPW0
上条「で、結局何なんだよ」

上条がイライラした調子で言った。

上条「そんなネガティブな事言われたって、どうしろってんだ。
   結局今は何も出来ないんだろ?つーか俺達だって操られちまうんじゃねーの?」

五和「当麻さん、少し感じ悪いですよ……」

土御門「いや、いい。要するに最悪の場合、食蜂の手によって学園都市の大半の人間が
    操られてクーデターを起こし、世界を破滅に追い込むかもしれない。
    それとカミやん、垣根や一方通行はさすがに洗脳できないだろう」

垣根「こいつの『幻想殺し』ってやつか。まあ脳に干渉する以上、一時的には
   効くんだろうが、どうせすぐ解かれるだろうしな」

土御門「あとネガティブ情報ばかりだったが、朗報もある。さっきは例えで出したが
    実は五和や舞夏、心理定規など、俺達の大切な人達は洗脳されないようになっている」

垣根「どう言う事だ?」

土御門「アレイスターの巻物にそう書いてあった。洗脳されないようにアレイスターが何らかの干渉をしたんだろう」

垣根「そんなことが出来るなら、学園都市の人間中そうすればいいのにな。一体何なんだ?」

土御門「巻物にな。コメントが書いてある。
    私は『一方的な試合』(ワンサイドゲーム)は嫌いなんだ。ってな」

垣根「意味分かんねー」

土御門「つまりだ。食蜂が何かすると分かっていて、学園都市の人間全てを守って
    俺達を有利にする訳でもなく、かと言って、身内や親族などを人質に取られたら
    俺らが圧倒的に不利だ。やつはな、俺達に互角の戦いを演じてほしいんだよ。多分な」

垣根「余計意味不明だわ」

土御門「全くだ。俺も自分で言っていてよく分からんよ」

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:47:48.81 ID:Ih+JMOPW0
上条「んじゃあ、どうすりゃいいんだよ」

相変わらずイライラした調子で上条は言う。

土御門「だから、気をつけてくれって事さ。昨日まで友人だった奴がいきなり敵になるかもしれん。
    そして食蜂が本格的に行動を開始した時、協力してほしい」

垣根「にゃーるほどねぇ。でも何でそれを俺達だけにしか話さないんだ?
   他の奴にも話して置いて損はないだろ」

土御門「無駄なんだよ。話したところで、お前らほどのパーソナルリアリティを持つ者か
    カミやん並のイレギュラーでもない限り、洗脳は避けられないだろう」

垣根「麦野は死んだからあれだが、その上の『超電磁砲』や『座標移動』は効かないんじゃないか?
   逆にお前はヤバいよな。あと世界の破滅に繋がるっていうのもよく分からん」

土御門「俺は何が何でも、奴の洗脳からは逃れて見せるさ。
    『超電磁砲』は今、精神状態が芳しくない。あっさりと洗脳されるだろう。
    結標はムカつくことに、青髪と交際を始めてな。人生の絶頂期で精神状態も
    良好だろうが、逆に青髪を操られたら、そこから切り崩されるだろう」

土御門「世界が滅亡って言うのは、食蜂が世界の終焉を願っているみたいだ。
    巻物に書いてあった。ただ理由までは書いていなかった」

垣根「成程。奴ならそのぶっ飛んだ考えがあり得なくもないってところが怖いな。
   それにしてもアレイスターの野郎、本当に中途半端だな」

土御門「ああ。本当に意味不明だ。とにかく俺が言いたいのは気をつけろってことだ」

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:49:34.49 ID:Ih+JMOPW0
上条「ようやく終わったか。とにかく、まだ何も出来ないってことだな。
   結局長いネガキャンされただけだったな。じゃあ俺も暇じゃないんだ。お邪魔しました」

立ちあがり、ドアを乱暴に開け土御門の部屋を後にする。

五和「あ、あの悪く思わないでください。当麻さん、インデックスさんの事でいろいろ
   悩んでちょっとイライラしているだけなんです。本当はもっと優しくて」

土御門「フォローしなくてもあいつの性格も事情も分かっているよ。
    俺だって舞夏から忘れられたら、八つ当たりの1つぐらいするだろうしな。
    逆に親友としてお願いするよ。ちょっとドライで辛いだろうが今のあいつを、支えてほしい」

五和「はい。もちろんです。インデックスさんが記憶を取り戻すまで……
   インデックスさんの“代わり”に……では、私もこれで」

垣根「おい女。あいつどこいった?」

五和「え?多分、隣の自室に戻ったんだと思いますけど……」

垣根「OK。分かった。あいつ1発ぶん殴ってくる」

五和「え?ちょっと」

垣根「邪魔すんじゃねぇぞ。邪魔するならお前からぶん殴る」

五和「ひっ」

垣根の威圧感に、五和は怯み動けなくなった。

土御門(カッキー、カミやん……)

482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:50:46.82 ID:Ih+JMOPW0
ドンドンとドアを叩く音。現在同棲している五和は、鍵が開いている事を知っているはずだ。
誰だようるせぇな、と思いつつ上条はドアを開けた。

直後、上条は殴り飛ばされていた。殴られたと言う事を自覚するまで数秒の時間がかかった。

上条「何すんだよテメェ」

レベル6であり学園都市第2位である垣根に向かって、上条は一切物怖じしない。

垣根「何すんだよじゃねぇだろ」

グイ!と右手で上条の襟を掴み引き寄せた。

垣根「テメェが何を背負っているか、何に悩んでいるか詳しくは知らねぇ。
   けどな、だからってまわりに当たってんじゃねぇよ。迷惑だ」

上条「上から目線で偉そうに説教垂れてんじゃ、ねぇ!」

上条の右拳が繰り出された。それを垣根は左手で易々と止めた。

上条「うっぜぇ!」

ならばと上条は、無理矢理頭突きを繰り出す。

垣根「調子こいてんじゃねぇぞガキが!」

対して垣根も頭突き。ドガァ!と額と額が激突した。両者とも譲らない。

483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:53:39.40 ID:Ih+JMOPW0
垣根「お前さ、何甘ったれてんだ?」

上条「うるせぇ。テメェに俺の辛さが分かってたまるか」

垣根「ああ分かんねぇよ。だからどうした?」

上条「あ?」

垣根「確かにお前は不幸かもしれねぇ。けどな、そんな人世界中にたくさん居るんだよ。
   身近で言えば、一方通行と『超電磁砲』は妹達を失った。それでも
   あいつらは、テメェみたいにグレてねぇ。頑張って1歩を踏み出している」

上条「それが何だ?他人が不幸だからって、俺の不幸が軽くなる訳でもねぇし。
   それに俺の不幸の質は、次元が違う。何を隠そう、インデックスの記憶を奪ったのはこの俺なんだから!」

垣根「それこそ、それが何だ?だな。そんな不幸自慢して何になる?
   大体まだ生きているだけいいじゃねぇか。
   たとえその人が、お前の事を何とも思っていなくとも、生きている事実さえあれば」

上条「良くねぇよ。俺はこの手で、あいつを抱きしめたい。
   何で……ここまでやってきたのに……俺はよぉ!」

垣根「あとよ、あの女。物凄く辛そうだった。自分の事を“代わり”って言ってた」

上条「ああ、インデックスの記憶が戻るまで一緒に居てくれると言うから、言葉に甘えただけだよ」

垣根「ふーん。お前最低だな」

上条「何が!」

垣根「見ただけで分かる。あの女、お前の事を本当に好いている。
   お前はそんな女の気持ちを踏みにじるのか?」

上条「“代わり”で良いって言ったのはあっちの方だ。
   精神的に弱っているときにそんな事を言われたら、甘えたくなるだろ。
   ……正直、そういうやらしい考えがあったと俺は思っている」

垣根「それがどうした?確かに、そういう図々しい魂胆はあったかもしれねぇ。
   だがそれは100%の内の1%にも満たねぇだろうな。99・99%は心からお前を支えたいと思って言った事だろう。
   それでも、お前はそんな女の気持ちを踏みにじるのか。八つ当たりをして傷つけるのか!?」

上条「他人の人間関係に、土足で踏み込み過ぎなんだよ。俺は“今のところ”インデックスが好きなんだ。
   誰にどう思われようとも、“今”だけ一時的に支えてもらって、インデックスが戻ってきたら、インデックスと一緒に居たい」

垣根「そこまで言うなら、もう何も言わねぇよ。ただ1つだけ覚えとけ。
   あの女は“今”はお前の女なんだ。せめてその“今”の間ぐらいは、あの女を泣かせるんじゃねぇぞ。
   泣かせたら、俺がお前を殺す」

上条「分かったよ。けど、お前にそこまで言われる筋合いは無いね」

垣根「ふん」

垣根は襟から手を離し、上条の部屋を後にした。

484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:54:20.52 ID:Ih+JMOPW0
五和「と、当麻さん!大丈夫ですか!?」

垣根と入れ替わりで、五和が入ってきた。

上条「……ああ」

上条(……分かってるんだよ。インデックスの説得がうまくいかず、苛立って
   八つ当たりしちまってることぐらい……五和が心から俺を支えたいと
   思ってることぐらい……俺だって……分かってるけどよぉ!)

少年は苦悩する。

485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:56:03.23 ID:Ih+JMOPW0
冬休みが明け、始業式が終わり、上条、土御門、青髪の3人は
姫神、吹寄の2人に屋上に呼び出されていた。

吹寄「貴様ら、戦争中避難所に居なかったけど、どこに居た訳?」

いきなり核心を突かれて、焦る土御門と青髪。

青ピ「(ちょ、どうするんツッチー?)」

土御門(どうする?)

一般的な世間の解釈は、魔術と言う巨悪が滅んだ事によって、世界は完全に平和になったとされている。
だがまだ終わりじゃない。食蜂の反乱が待っているかもしれない。
その状況で自分達の立場を明かしていいものだろうか。

土御門(とは言え、ここからごまかすのも、至難の業だ……)

悩む土御門と青髪をよそに、上条は口を開いた。

上条「あれだ。別の避難所に居ただけだよ」

吹寄「それはどこ?」

上条「俺らさ、第6学区で遊んでたんだ。だから第6学区の避難所に避難したんだよ。
   お前らは第7学区だろ?」

吹寄「ふーん、そうなんだ。よーく分かったわ」

上条「用はそれだけか?じゃあ、俺は帰るぜ」

そして踵を返そうとした時

吹寄「貴様が嘘をついているってことがね!」

486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:58:10.51 ID:Ih+JMOPW0
上条「はぁ?何でそうなるんだよ?」

吹寄「だって、戦争があったイブのあの日、私と姫神さんで第6学区で遊んでいたんだもの!
   そしてそこでコードレッドになって、私達は第6学区の避難所に避難した。そこに貴様らはいなかったわ」

土御門(おかしい……だとしたら普通、俺らは第7学区の避難所に避難していると考え
    第6学区の避難所で会わないのも必然だと考えるはずだ……)

吹寄「もちろんその時、貴様らは普通に第7学区に避難したのかと考えたわ。
   私ね、皆が心配だったから、仲の良い数人に電話かけたのよ。そしたら1人の子が言ったのよ」

吹寄「『ここ』(第7学区の避難所)には3人がいないってね」

吹寄「じゃあどっか違うところにでもいるのかなとも考えたけどさ。
   ここで私は思ったのよ。姫神さんも同じ事思っていたわ」

吹寄「貴様らが何かに巻き込まれてるんじゃないかってね。
   何故そういう結論に至ったのか、言わなくても分かるわよね?」

上条「分かんねーよ」

姫神「上条君。それはギャグで言っているの?」

吹寄「あのさ、上条はよく入院して学校休みがちだったし、土御門も割と学校に来ていなかった。
   何より決定的だったのが、大覇星祭でのあの時の貴様の態度と、姫神さんから聞いた三沢塾での話」

吹寄「これだけの不審点があって、貴様らに何かあると思わない方がおかしいわよね?」

姫神「青髪君も。私が電話したのに。出なかったし」

吹寄「本当は入院中の貴様らにすぐにでも聞きたかったけど、やっぱそれは
   いくらなんでも辛いかなと思って、こうやって冬休み明けに速攻呼び出した訳」

487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 17:59:50.89 ID:Ih+JMOPW0
土御門(予想以上に、クラスメイトってのはクラスメイトの事を見ているものなんだな……
    こりゃあごまかせないかな)

まあでも、詳しくは教えられないかなと思いながら、白状しようとしたその時

上条「ああそうだ。確かに俺達は避難なんかしていない。
   正直言うと戦争に参加して戦ってきた」

上条「でもよ。それをほじくり返して何なるんだよ?
   俺らはお前らに心配かけまいと黙ってたんだぜ。
   それに終わった事だし、だから何だ?って話だ。いちいち詮索してんじゃねぇよ」

青ピ「カミやん、そんな言い方は」

吹寄「だから!」

突然吹寄が叫んだ。

吹寄「私が言いたいのは、今度何かあったら、私達相談しなさいよね!絶対力になってあげるんだから!」

上条「お前程度じゃ、どうにもならねぇよ」

青ピ「カミやん!」

吹寄「よして青髪!きっとそれは事実なんでしょう。だから、私は強くなっていつか貴様らの力になるから!」

上条「やめろ。足手まといだ。邪魔以外あの何物でもねぇ」

土御門(カミやん……)

土御門には分かった。苛立ちもあるのだろうが、こうやって敢えて冷たく
引き離すことによって、巻き込ませないようにするためだと。

だがその思惑を知ってか知らずか、1人の男が動いた。

青ピ「ええ加減にせぇよカミやん!」

ゴッ!と殴られた上条は地面を数m転がった。

488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:01:35.92 ID:Ih+JMOPW0
姫神・吹寄「「青髪(君)!!」」

青ピ「カミやんの事情はな、ツッチーから多少は聞いた。
   確かにカミやんは、今とてつもなく辛いんやろうけど
   それで当たるのは間違っているし、多かれ少なかれ誰だって不幸位抱えてるもんや」

青ピ「それでも皆強く生きてるんやで。何故それが出来るのか。
   それは、人間は1人だけで生きているからではないからや。皆支え支えられ、生きている」

青ピ「てーかカミやんが諦めてどうするんや?ずっと願ってたんやろ?
   映画みたいに絵本みたいに、命を賭けてでも、たった1人の女の子を救うって。
   だったらそれは全然終わってへん!始まってすらいてへん!
   少しぐらい長いプロローグで絶望してる場合やないやろ!」

上条「――!」

上条の目が見開かれた。記憶を取り戻した今なら分かる。
かつてこんな事を魔術師に言った気がする。
何故こんな事を青髪が?と疑問に思ったが、俺達は似た者同士なのかなと勝手に解釈した。

青ピ「――ええ加減グレるのはやめようや。いつまでもウジウジしってとぶっ飛ばすぞ!上条当麻!」

489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:03:17.44 ID:Ih+JMOPW0
上条「……馬鹿じゃねぇのお前。ぶっ飛ばすぞ!って既にぶっ飛ばしてんじゃねぇか」

青ピ「なんやと!?」

上条「けど、ありがとよ。お前のおかげで少し吹っ切れたわ」

青ピ「力になれて何よりや」

上条「けど、俺にも1発ぶん殴らせろ。それでおあいこだ」

青ピ「いやや!」

そう言って青髪は逃げだそうとしたが、土御門が羽交い絞めにした。

青ピ「ちょ、何するん!?」

土御門「殴られただけじゃ、さすがにカミやんが可哀想だからにゃー。殴り殴られるのも、青春だし」

上条「歯ぁ喰いしばれよ!」

青ピ「ぐはぁ!」

ドガァ!と上条の右拳が青髪の顔面にクリーンヒットし、土御門毎地面に伏した。

490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:06:43.62 ID:Ih+JMOPW0
吹寄「ちょ、貴様ら何やってるの!?」

土御門「青春だにゃー」

土御門は起き上がりながらそう言う。

上条「やべ、ちょっと強かったかな。手加減はしたんだけど」

姫神「青髪君。完全ノックアウト」

土御門「さてこの空気で言うのもアレだけども
    実は今日、俺達も姫神を呼び出すつもりだった」

上条「え?初耳だけど」

土御門「うん。今初めて言ったもん」

上条「はぁ?」

吹寄「ちょっと貴様らだけで盛り上がらないで説明しなさいよ!」

土御門「そうだな。一言で言うと、姫神の能力を取り除く方法を発見した」

姫神「!」

土御門「まあ別にその十字架を付けてでもいいんだけども、根本的に能力を取り除けば
    その十字架を外しても良いし、能力開発も出来るようになる。どうする?」

姫神「もちろん。出来る事ならお願いしたい」

土御門「OK分かったにゃー。じゃあカミやん『竜王の顎』だ。
    それで姫神を飲み込めば、原石である『吸血殺し』は失われる」

吹寄「ど、どらご、何だって?それ大丈夫なの?」

土御門「もちろん」

上条「ちょっと待て。俺は『竜王』の力を完璧に使いこなせなかった。
   もしインデックスの二の舞にしてしまったら……」

土御門「カミやん。あんまり自分を卑下するな。いいか。
    本来なら『竜王』の力は3割であろうと御しきるのは難しい。
    だがカミやんはアレイスター戦でそれをやってのけた。
    何が言いたいかって言うと、もっと自分に自信を持て。
    仮に暴走したとしても、俺達が絶対止めてやるから」

上条「駄目だ。姫神に危険が及ぶ可能性がある以上、俺には出来ない」

姫神「いや。お願い」

上条「え?」

姫神「さっきから上条君達の会話は理解できない。
   けれど。これだけは言える。私は上条君を信じているから。お願い」

土御門「だそうだ」

上条「けど」

土御門「友達を救いたいだろ?お前にしか出来ない事なんだよ」

姫神「上条君」

上条「……分かった」

バリィィィン!と甲高い音と共に『幻想殺し』が解除された。
上条の右腕から翡翠色のエネルギーが滲みだし『竜王の顎』を象った。

上条「いくぞ」

姫神「きて」

『竜王の顎』が姫神を飲み込んだ。
またしてもバリィィィン!と言う甲高い音が鳴り響いた。同時に姫神が地面に向かって倒れ出した。

491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:09:33.77 ID:Ih+JMOPW0
土御門「っと」

土御門は姫神を優しくキャッチした。上条も即座に『幻想殺し』で蓋をし姫神に近寄る。

上条「おい!大丈夫なのか!」

土御門「大丈夫。気絶しているだけだ。じきに目を覚ます」

とそこで、今まで絶句していた吹寄が口を開いた。

吹寄「……そう言えば、色々あって流されてきたけど、結局貴様らは何者なの?特に上条」

土御門「それは」

上条「もういいよ土御門。ここまで見られて隠すのはもう無理だ。正直に話そう」

土御門「……そうだな」

それから、上条と土御門は正直に話した。夏休みから今まで自分達が関わってきたこと全てを。
青髪については本当に一端しか知らないので、その一端だけを話した。

吹寄「そう……だったんだ……私、そんな事も知らないで今までのうのうと生きてきたんだ……」

土御門「それが普通だにゃー」

上条「それで、さっきはもし今度何かあったら協力したいと言っていたがもう関わる気もなくなっただろ?
   まあ、もう何も起こらねぇよ。きっと世界はずっと平和さ」

土御門(カミやん……)

吹寄「イヤ」

上条「え?」

吹寄「貴様らに守ってもらうなんて御免よ!私達は強くなって貴様らと一緒に戦う!」

上条「はぁ?だから世界は平和だって――」

吹寄「分からないわよ?前に学園都市でクーデターあったし、またあるかもしれないじゃない!?」

土御門(鋭い……)

吹寄「備えあれば憂いなし!まあ聞きたい事は聞いたし、姫神さんは私が連れていくから。
   協力するなって言われたって、無理矢理にでもついて行くんだから!」

姫神をおんぶして、吹寄は颯爽と屋上から去って行った。

492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:11:46.68 ID:Ih+JMOPW0
土御門「どうする?心強い味方が出来ちゃった感じだけども」

上条「馬鹿言え。気絶させてでも連れて行く訳にはいかねぇよ」

土御門「たまには人に頼っても良いんじゃないかにゃー?戦いながら守れば良いだけだし」

上条「簡単に言いやがって。それは厳しいだろ」

土御門「そんなことよりカミやん!話があるんだにゃー」

上条「話題の変更の仕方が強引すぎるだろ!つかこれ以上何があるんだよ!」

土御門「カミやんは知らないかもしれないけど、『原石』って言う天然の能力者が世界に50人ほどいる。
    『原石』はその特異さから世界中の研究機関から狙われている。
    つまり『原石』の人間は、自分が生まれ持った能力を快く思っていない」

上条「てことはまさか……」

土御門「察しが良いにゃー。そのまさかだぜい」

翌日から、上条は世界中から集められた『原石』の人間の能力を取り除くことになった。
世界の頂点である学園都市が招集をかけたので、どこの国も言いなりになるしかなかった。

週末は冬休み序盤に入院して出来なかった補習(後半は何とか出ていた)を強いられ忙しい日々を送った。

493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:13:55.08 ID:Ih+JMOPW0
そして2月某日。
補習も完璧に終え、吹寄との個人授業を経た上条は成績も中の下ほどになり、学年末テストも赤点を回避し、進級が決定した。

上条「今日で『原石』を取り除く作業も終わりか……」

とある高校屋上。最後の『原石』を土御門と共に待っていた。

土御門「最後の『原石』はカミやんも知っているあの人だぜい」

その時、ガチャと屋上の扉が開かれた。

雲川「はろ~」

上条「え?雲川先輩!?」

土御門「よく見るんだにゃー。もう1人いるぜい」

削板「よう!」

上条「削板!?」

土御門「レベル5第7位、通称ナンバーセブン、削板軍覇。彼が最後の『原石』だ」

上条「……マジか。てかそれなら何で雲川先輩も一緒に?」

雲川「私がいたら駄目なの?」

上条「え、いやそれは……」

土御門「カミやん。雲川先輩は何もかも知っている。今更隠す事なんて何もないんだぜい」

雲川「そう言う事だから、ちゃっちゃとやっちゃって。
   ウチの旦那には、土御門から事情を聞いて、もう説明してあるから」

上条「だ、旦那!?」

雲川「うん。軍覇は私の旦那だけど」

削板「おい。婚約した覚えはねぇぞ!?」

雲川「いいじゃん。どうせ結婚するんだから。私の事好きでしょ?」

削板「ま、まあ」

土御門「雑談はここまでだ。さっさと終わらせよう。カミやん、頼んだ」

上条「……マジか。ほんじゃま、遠慮なく!」

『幻想殺し』を一時的に解除し、『竜王の顎』で飲み込み、また『幻想殺し』で蓋をする。
もう手慣れたものだった。

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:14:59.39 ID:Ih+JMOPW0
削板「ああ、なんか微妙な気分だ」

上条「これを喰らって気絶しなかったなんて、削板くらいだよ」

削板「俺は常に鍛えているからな」

雲川「じゃあ帰りましょ。ダーリン♡」

雲川は削板の腕を掴んで引っ張り、颯爽と屋上を後にした。

上条「雲川先輩って、あんなキャラだっけ?」

土御門「恋をして乙女になったんだにゃー」

上条「はぁ。そんなもんなんかなー」

土御門「さて、これで『原石』50人の能力が『竜王』に戻った訳だが」

上条「何だよその言い方は。何かあるみたいじゃねぇか」

土御門「ああ。だが大したことじゃない。――お前の中に何故『竜王』が宿ったのか。
    それの答えを今から話そう」

496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:19:18.27 ID:Ih+JMOPW0
土御門「と言っても、本当に大したことじゃない。ただの過去のお話だ。
    知ったからと言って、何かが変わる訳ではない」

上条「前置きは良いから、早く話せよ」

土御門「エンゼルフォールを覚えているか?」

上条「え、まあ、覚えているけど」

土御門「あの時は、上条刀夜のお土産が偶然エンゼルフォールを発動した。
    カミやんに『竜王』が宿ったのも、それと同じなんだよ」

上条「いや、全く意味が分からねぇ」

土御門「お前が安全に生まれるように、お前の祖父、上条十牙(とうが)がいろいろやったんだよ。
    そして“偶然”お前が上条詩菜の胎内に居る時『竜王』が宿った」

上条「マジ……かよ……そんなこと有り得るのか……?」

土御門「にわかには信じがたいがな。
    アレイスターの巻物にも書いてあったし、実際エンゼルフォールの例もあるしな」

上条「で、それと『原石』がどう関係しているんだよ?」

土御門「カミやんもなかなか鋭くなって、しかも冷静だし会話が捗るにゃー」

上条「良いから早く話せよ」

土御門「アレイスターの巻物によると
    『竜王』がお前に宿ったと同時、『原石』にも能力が宿ったんだ。
    それは『竜王』の副産物で、もともとは『竜王』の力の一部だったらしい」

上条「じゃあ、俺の中の『竜王』は強くなったのか?」

土御門「強くなったと言うより、もとに戻ったと言う方が正しい。
    あと『吸血殺し』を吸収したからと言って、吸血鬼を殺せると言う訳でもない。
    ……分かっているのはここまでだ」

上条「ふーん。なんか大したことあった話だけど、今更って感じだったな」

土御門「だから初めに言っただろ?何か変わる訳でもないって。
    正直、話さなくても問題なかったんだが、どうせならと思ってな。
    あと、お前は愛されて生まれてきたってことも知ってほしくてな」

上条「そっか。ありがとな」

土御門「……インデックスの説得はうまくいっているか?」

上条「まだ駄目だよ。ようやく打ち解けてきたぐらいでさ。
   けど五和に言われた事と、お前の今の話で、俺はたくさんの人に愛されて生きているんだなって」

上条「垣根や青髪に説教されて、不幸なのは俺だけじゃないって。
   諦めるのはまだ早いって。まだ物語が終わってないだけだって」

上条「『原石』の人間から能力を取り除いて、こんな俺でも出来る事があるんだなって。
   そんな当たり前の事に、お前達は気付かせてくれた」

上条「皆だって、幸せな事ばかりじゃないはずだ。それでも皆頑張って生きていて。
   こんな俺を励ましてくれて。いつまでもウジウジしている訳にはいかねぇよ」

土御門「上条当麻完全復活だな。今日はお祝いでもするか」

上条「よせよ。皆当然の事を俺に教えてくれただけだ。寧ろ俺がお礼を言わないと。
   まあしばらくはインデックスの説得で時間がないけどな。今日もこれから行くんだ」

土御門「そうか。頑張れよ」

上条「ああ」

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:22:23.57 ID:Ih+JMOPW0
2月が過ぎ、3月。寒さのピークも過ぎ、徐々に暖かくなっていく。
学園都市では、12月25日から放置されていた半壊の窓のないビルの解体がようやく終わった。
街の復興も大体は完了したが、完璧ではなかった。

土御門は、巻物の中にあった音声プログラムを聞き『肉体再生』の能力を敢えて失うことに成功。
学園都市で能力開発に苦しんでいる者の為に使ってくれ、と土御門は雲川に音声プログラムを託した。

多分アレイスターは、魔術サイドの復讐の為だけに作った学園都市や能力者達を
そのまま放っておくのもどうかと思ったのだろう。
さらに、能力者が減れば食蜂の手駒も減る訳だし。と土御門は考えていた。
しかしアレイスターの考え(土御門の推測ではあるが)とは裏腹に当の学園都市の能力者達は
能力をリセットして新しい能力開発に勤しんだりしただけだった。それもそうだ。
『量子変速』(シンクロトロン)とか『絶対等速』(イコールスピード)とか
よっぽど変則的な能力でない限り、あって損はない。いや、例に挙げた能力も無いよりはマシだ。
あとはレベル0の能力者が一部使って学園都市を去った位だった。

ロシアやイギリスはゴーストタウンと化していた。
相変わらずEUを中心に世界はギクシャクしているのだが
世界の頂点である学園都市が『戦争をすればその国を制裁する』と宣言している(雲川案)ので
どの国も迂闊に動けなかった。

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:24:00.02 ID:Ih+JMOPW0
その後、学園都市でも世界でも何事もなく3月21日。
学園都市の小・中・高校の卒業式が大体終わった。
春休みに入り、学園都市の学生達の親から苦情が殺到した。
0930事件、クーデター、加えて戦争の舞台となった学園都市。
魔術サイドが滅んだとは言え、保護者達の我慢も限界だった。
これにより約80万人の学生が学園都市を去った(音声プログラムで能力を失ってから)。
しかしイギリス・イタリア・ロシアの連合軍との戦争に勝利した評判の方が大きく
学園都市に約100万人の学生達が新たに入った。戦争終結直後からだったのだが
大人の数が不足しているので、これを機に緊急で募集をした。これで生徒の総数は約200万人。大人の総数は約30万人となった。



土御門(参ったな。結局、学生の数は寧ろ増えた訳だ。食蜂の手駒がみすみす増えた訳だ。
    これはもう、巻き込みたくないとか言う前に、なりふり構わず
    いろんな人に協力してもらうしかないかな……)

舞夏「どうした兄貴ー。悩み事なら聞いてやるぞー」

自室で1人悩む土御門に、舞夏が声をかけた。

土御門「何でもないぜい。そんなことより、今日はいつまで居るのかにゃー?」

舞夏「今日は泊まっていこうかなー。兄貴も心配だしー」

土御門「おおう、マジかにゃー!じゃあ今日の夜はお楽しみだにゃー!」

舞夏「悩みは聞いてやるが、そう言う事をしようとするなら帰るぞー」

土御門「ああー嘘嘘!嘘だから!でもせめて、膝枕で耳かき肩揉みはして!」

舞夏「しょうがないなー。愛しい兄貴の為、それぐらいならやってやるんだぞー」

499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:24:48.93 ID:Ih+JMOPW0
常磐台中学 学生寮

白井「お姉様……」

御坂「……」

戦争終結直後から、ずっとこんな調子で塞ぎこみがちの御坂。
それは無理もなかった。20002人のクローンを失い、その上失恋したのだから。

白井「お姉様、どうか元気を出して下さいまし」

御坂「うん。ありがとう。気を使わせてごめんね。黒子」

白井「……では、行ってまいりますの」

とりあえず風紀委員第177支部へ行くことにした。

500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:26:14.99 ID:Ih+JMOPW0
風紀委員第177支部

白井「おはようございますの」

初春「おはようございます」

白井「聞いてくださいまし。お姉様、相変わらず元気がなくて……」

白井は、支部に来るたびに初春にそう言っていた。ただし妹達の件や失恋の事は一切言っていない。

初春「だからそう言われても……原因が分からないとどうにも……
   病気なのでしょうか……白井さんは何か知らないんですか?」

白井「うーん。知っていると言えば知っていますが、言えませんの。
   何とかお姉様を元気づける方法ありませんか?」

初春「毎回毎回そうやって濁して……まあ誰にだって知られたくない秘密はありますし
   深くは突っ込みませんけど。何回か佐天さんを含めて4人で遊びましたけど
   また集まって遊ぶのはどうでしょうか?」

白井「そうしましょうか。では善は急げ。今日の午後早速遊びましょう」

初春「私は大丈夫ですけど、佐天さんは分かりませんよ?」

白井「初春が誘えば来てくれますわよ」

初春「そうですね。あ、そう言えば、今日からこの支部に新しい子が入ってくるみたいですよ」

白井「初耳ですの」

初春「私も一昨日に聞いたばかりですよ。何でも、最近レベル5になった娘で
   研修もわずか2ヶ月しかしてなくて、特例で入るらしいですよ」

白井「へぇ~。一体どんな娘なんでしょうか?」

初春「もうそろそろ、固法先輩がその娘を連れてくるらしいですよー」

と、まさにその時、支部の扉が開かれた。
入ってきたのは、固法と、常盤台中学の制服を着た短い茶髪の女の子だった。

501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:27:33.51 ID:Ih+JMOPW0
絹旗「今日から第177支部で超活動することになりました絹旗最愛です!よろしくお願いします!」

初春「よろしくお願いします」

白井「あ、あなたは確か、あの時病院に居た……」

絹旗「えへへ。白井さんがいると知って、わざわざ177支部志願したんですよ。私、結構人見知りなんで」

白井「その制服は……」

絹旗「ああ、これですか。4月から常盤台中学の2年として超通うことになりました。
   白井さんとは同級生ってことになりますね」

初春「白井さん、絹旗さんと知り合いだったんですか?」

白井「ええまあ。戦友と言ったところでしょうか」

絹旗「そちらは初春さんですよね?資料で超拝見しました。
   何でも情報戦が得意で8月1日には、とある事件を解決するのに一役買ったとか」

初春「え?えへへ。そう言われると照れちゃいますよー。
   そちらこそレベル5の第4位なんて凄いじゃないですか」

絹旗「『窒素装甲』って言って、窒素を纏う能力なんですけどね。
   今ではある程度の量なら、大気中の窒素も超操れます」

初春「絹旗さんがいれば百人力ですね!」

絹旗「えへへ。そう言われると、超照れちゃいます」

固法「早くも打ち解けたみたいじゃない?それじゃ早速、見回り行くわよ」

絹旗・白井「「はい!!」」

502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:29:09.98 ID:Ih+JMOPW0
第6学区にある遊園地

結標「私ね。あなたと同じ高校に通おうと思うの」

ベンチで青髪と座っている結標は、そんな事を言った。

青髪「何で?霧ヶ丘に復学した方が、君の為になると思うけど」

結標「私、ああいう名門校って実は嫌いなのよね。それにあなたと同じ高校に通いたいって言うのもある」

12月27日にはぐらかされた青髪の告白だったが、結局翌日にOKをもらい正式に交際がスタートしていた。

青ピ「そうか。僕と同じ考えなんやなー。でも僕らの高校は底辺校やで?
   大覇星祭とか散々な順位やで。それでもええの?」

結標「底辺校なら、私の実力で引っ張り上げてやるまでよ。なんちゃって」

青ピ「そっか。結標ちゃんがそこまで言うなら、これ以上はなにも言わへんけどな」

結標「ねぇ。そろそろ名前で呼んで?あとあなたの本名も知りたいな」

青ピ「えー。名前で呼ばれるのもええけど、僕は『ダーリン♡』とか『ア・ナ・タ』とか呼んでほしいな。
   それに本名が分からないとかミステリアスで素敵やん?」

結標「えー、教えてよ。ダーリン♡」

青ピ「気ぃ向いたらな。淡希」

言いながら、結標の頭を優しく撫でる。

結標「はう///」

503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:30:15.37 ID:Ih+JMOPW0
黄泉川が住んでいるマンション

黄泉川「一方通行、買い物してくるじゃんよ。はい、これメモね」

ソファーに寝っ転がっていた一方通行とフレメアに、容赦なくメモを置いた。

一方通行「ちっ。だりィけど行くか」

フレメア「待って。大体私も一緒に行く」

一方通行「お菓子は1品までな」

フレメア「うん。大体分かってる」

2人はさっさと支度をして、ガチャと扉を開け、手を繋ぎながら消えていった。

黄泉川「一方通行も大分丸くなったと言うか、大人になったじゃんよ」

芳川「突然預かる事になったフレメアとかいうのも、最初はだいぶ手のかかる子だったけど
   今ではすっかり一方通行に懐いて、良い子になったわよね」

黄泉川「ああ。本当に子供の成長は早いじゃんよ」

芳川「それもこれも、あの時の愛穂があったからよ」

黄泉川「何じゃんよ?あの時って」

芳川「妹達が全員死んで、落ち込んで帰って来た時よ」

黄泉川「そ、その話はよすじゃんよ///」

一方通行「っくし!」

フレメア「大体大丈夫?風邪でも引いたのかにゃあ?」

一方通行「大丈夫だ。そンなンじゃねェ」

504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:31:36.97 ID:Ih+JMOPW0
芳川「落ち込んでいる一方通行に後ろから抱きついてさ。
   30分ぐらいなんか言いあっていたわよね。
   で、あなたが最後に言った言葉が『我慢しないで、泣いて良いじゃんよ?』だったかしら。
   その言葉であの子はあなたの胸に顔を埋めて泣きだして、あなた自身も一緒に泣いていたわね」

黄泉川「わー!何でそんな細かく覚えているじゃんよ!?」

芳川「うふふ。あの時の様子はしっかり録画させてもらったわ」

黄泉川「はぁー!その映像どこにあるじゃんよ!?今すぐ消すじゃん!」

芳川「映像には残っていないわ。私の脳内に焼き付いているの」

黄泉川「OK。今から桔梗の脳味噌の解体作業に入るじゃん」

ユラリと座っていた椅子から立ち上がり、芳川へ近付く。

芳川「え、ちょ、ちょっと待って?冗談よ冗談。アハハ、愛穂ったら本気にしちゃって」

黄泉川「問答無用じゃん!」

きゃああああああ!というアラサー女の悲鳴が部屋の中で木霊した。

505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:32:50.58 ID:Ih+JMOPW0
垣根「何か隣が騒がしいな」

心理定規「行ってみる?」

垣根「いや、いい」

偶然にも黄泉川の部屋の隣を借りて住んでいた垣根達は、隣室から聞こえる悲鳴をあえてスルーした。

垣根「お前、4月から常盤台通うんだろ?そしたら寮生活で、ここにも戻って来れないんだろ?考え直さないか?」

心理定規「私も、帝督と離れ離れになるのは寂しいけど、ちゃんと中学校に行って教養を身につけないとと思って。
     大丈夫。常盤台は女子校だから浮気はあり得ないし。寧ろ帝督が浮気しないかのほうが心配よ」

垣根「俺はそんな軽い男じゃねぇよ。長点のクソ○○○どもに興味はねぇ」

心理定規「とか何とか言って、誘惑されたら、コロッと落ちちゃうんじゃないの?」

垣根「俺様が弄ぶ事はあっても、弄ばされる事はねぇよ」

心理定規「弄ぶのも駄目!」

垣根「はいはい、分かりましたよ姫。そんなことより、今日良いよな?」

心理定規「そう言う事は、結婚してからじゃないと駄目!」

垣根(見た目派手なくせに、そういうところ純情と言うか、古い考えと言うか……
   ま、そう言うところも可愛いんだけどな)

心理定規「今私の事可愛いって思ったでしょ?」

垣根「ああ。思ったよ」

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:33:39.76 ID:Ih+JMOPW0
夕方 上条が住んでいる学生寮

上条「ただいまー」

五和「おかえりなさい。すみません。
   まだご飯も出来てないですし、お風呂も沸いてないです……」

上条「いや、別に良いよ。てか寧ろ一緒に料理作ろうぜ。そっちの方が楽しいし」

五和「はい」

そうして2人は料理を作り始めた。

五和「あの、インデックスさんの説得はうまくいっていますか?」

上条「ああ。あと一押しってところかな。
   まあ記憶を取り戻す気になって、ようやくスタートラインなんだけどな」

五和「それはよかったです」

屈託のない笑みを浮かべたように見えた。

上条(五和……)

507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:34:30.51 ID:Ih+JMOPW0
無事に料理は完成し、2人はそれを一緒に食べ始めた。

五和「私、4月から当麻さん達の高校に通うことになりました。
   3年生としてなので、一緒のクラスと言う訳にはいかないですけど」

上条「マジか!そりゃあ嬉しいな。勉強も教えてもらえるし」

五和「はい。当麻さんのお力になれれば、私も嬉しいです」

そんな感じでわいわい食事を終えたころには、お風呂も沸いていた。

五和「では私は食器を洗うので、先にお風呂入っちゃってください」

上条「ああ」

カチャカチャと食器を運ぶ五和の後ろ姿を見ながら、上条は言った。

上条「五和。お前の事、絶対に守って見せるから」

五和「え?(こ、これってもしかしてプロポーズ!?)」

一瞬期待に胸を膨らませたが、すぐに違うと切り替えた。
守ると言うのは、元日に土御門から言われた、食蜂の脅威からと言う意味だ。
そもそも私はインデックスの“代わり”でしかないのに、何バカな事を考えているんだ、と。

五和「はい。私も、当麻さんの事守って見せます」

508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/09/12(月) 18:35:31.00 ID:Ih+JMOPW0
『心理掌握』こと食蜂操祈は常盤台の寮で1人くつろいでいた。

食蜂「退屈ねぇ」

その時、コンコンと扉を叩く音。

食蜂「どうぞ」

少女「失礼します」

入ってきたのは、肩くらいまである鮮やかな紫色の髪の少女だった。
身長は130cmほど。その目は虚ろげだ。

少女「報告に参りました」

食蜂の目の前で跪き、報告を始める。

少女「『超電磁砲』こと御坂美琴様ですが、妹達を失った悲しみで
   精神崩壊一歩手前のようです。今の食蜂様なら、容易に操作できるかと」

食蜂「ふーん。まあその辺は私の改竄力で、いくらでも切り崩せるんだけどねぇ」

少女「結標淡希様ですが、どうやらレベル5第6位と交際中のようです。
   そこから切り崩せば問題ないかと」

食蜂「うんうん。続けて?」


少女「近頃レベル5の第4位までのし上がった絹旗最愛様ですが、
   直接叩きのめしたいと言う者がいまして、いかがいたしますか?」

食蜂「いいわ。そいつに任せましょう」

少女「はい。問題は垣根帝督様、一方通行様、そして上条当麻様ですが――」

食蜂「垣根と一方通行は、私達の開発力で『あの装置』が完成すればどうとでもなる。
   その上条当麻って言うのは、どれほどの男子力を持った人なのかしら?」

男子力とか半ば意味不明であるが、少女は一切突っ込まず続ける。

少女「はい。分かっている事は『幻想殺し』という能力が右手に宿っている事です。
   効果は、異能の力ならば何でも打ち消せると言うことらしいです。
   ここからは未確定情報なのですが、どうやら『幻想殺し』意外にも力が
あるみたいです」

食蜂「ふーん。じゃあそいつは私の女子力で殺しましょうか。なーんちゃって。
   てへ☆」

少女「……」

食蜂のボケ?にも一切反応を示さない少女。

食蜂「ちょっとは反応してよぉ。操祈、寂しくて泣いちゃうゾ☆」

少女「はい」

食蜂「……」

少女「……」

食蜂「まあいいわ。『あの装置』が完成すれば、すぐにでも動くから
   準備はしておきなさい。もう下がって良いわよ」

少女「はい」

少女は食蜂に一礼して、部屋を後にした。

食蜂「うふふ。楽しみだわ。この糞みたいな世界を終わらせることを考えると」



運命の時まで、残り約3週間。

                             To be continued…… 

続き 食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」前編