ローラ「某の新たな家庭教師なるぞ」上条「」前編
322: ゴミ箱 2012/03/01(木) 00:50:57.92 ID:1lgym2Lm0
暗闇にたたずむ二人。辺りを照らす光は、月明かりのみ。
ローラ「あぁ……いや……」
ローラ「な、なにをいいしなの?わ、私の日本語は――「もういいんだ」
ローラ「え...?」
上条「もう無理なんかしなくても、いい」
ローラ「な…なんで……なんでなの?」
上条「そんな事、すぐわかるさ。上条さんはローラの家庭教師なんですよ?」
ローラ「...っ!」
上条「なぁ……そうなんだろ?」
その言葉を最後に、その場には沈黙が訪れる。
上条は、ただローラの答えを待つ。
ローラ「……たしは...」
上条「…なんだ?」
ローラ「私…は...」
上条「…」
ローラ「…」グッ
上条「どうなんだ...?」
ローラ「…」ダッ!
上条「あ!ちょ、ローラ!!」
ローラは突然走り出してどこかへ行ってしまった。
上条「くそ...!!」
上条「おい!まて!ローラ!!」
上条もローラを追いかけようとしたが、その足はふいに止まる。
上条を遮る者がいたからだ。その者は、いつの間にか上条の目の前にいた。
月明かりのおかげか、顔は良く見えた。
「…」
上条「んなっ・・・!!な、なんでお前がここに…!?」
ローラ「あぁ……いや……」
ローラ「な、なにをいいしなの?わ、私の日本語は――「もういいんだ」
ローラ「え...?」
上条「もう無理なんかしなくても、いい」
ローラ「な…なんで……なんでなの?」
上条「そんな事、すぐわかるさ。上条さんはローラの家庭教師なんですよ?」
ローラ「...っ!」
上条「なぁ……そうなんだろ?」
その言葉を最後に、その場には沈黙が訪れる。
上条は、ただローラの答えを待つ。
ローラ「……たしは...」
上条「…なんだ?」
ローラ「私…は...」
上条「…」
ローラ「…」グッ
上条「どうなんだ...?」
ローラ「…」ダッ!
上条「あ!ちょ、ローラ!!」
ローラは突然走り出してどこかへ行ってしまった。
上条「くそ...!!」
上条「おい!まて!ローラ!!」
上条もローラを追いかけようとしたが、その足はふいに止まる。
上条を遮る者がいたからだ。その者は、いつの間にか上条の目の前にいた。
月明かりのおかげか、顔は良く見えた。
「…」
上条「んなっ・・・!!な、なんでお前がここに…!?」
323: ゴミ箱 2012/03/01(木) 00:51:52.88 ID:1lgym2Lm0
上条「...吹寄!!」
吹寄『・・・』
上条「お前……学園都市に帰ったんじゃなかったのか!?」
吹寄『・・・』
上条「・・・?」
上条(なんだ?なんで何も言わねえんだ?いつもの吹寄ならもっとなんかあんだろ!?
てかいつの間にここにいたんだ?なんでここに!?)
吹寄『・・・』
上条(クソ!埒が開かねえ...!)
吹寄『・・・』
上条(とりあえず...)
上条「すまねぇ、吹寄。今、俺やらなくちゃいけない事があるんだ。
事情は後で聞くから、それじゃあな!」
そういって上条は吹寄の横を通ってローラを追いかけようとした。
が、
吹寄『・・・』ドンッ
上条「がっ...!?」
丁度吹寄の真横を通った直後。上条の脇腹に、吹寄が強烈な一撃を放っていた。
完全な不意打ち。上条は防御は愚か、まったく身構えてすらいなかった。
吹寄『・・・』
上条「お前……学園都市に帰ったんじゃなかったのか!?」
吹寄『・・・』
上条「・・・?」
上条(なんだ?なんで何も言わねえんだ?いつもの吹寄ならもっとなんかあんだろ!?
てかいつの間にここにいたんだ?なんでここに!?)
吹寄『・・・』
上条(クソ!埒が開かねえ...!)
吹寄『・・・』
上条(とりあえず...)
上条「すまねぇ、吹寄。今、俺やらなくちゃいけない事があるんだ。
事情は後で聞くから、それじゃあな!」
そういって上条は吹寄の横を通ってローラを追いかけようとした。
が、
吹寄『・・・』ドンッ
上条「がっ...!?」
丁度吹寄の真横を通った直後。上条の脇腹に、吹寄が強烈な一撃を放っていた。
完全な不意打ち。上条は防御は愚か、まったく身構えてすらいなかった。
324: ゴミ箱 2012/03/01(木) 00:52:51.85 ID:1lgym2Lm0
上条「ぐ…がはぁ...!」
上条(なん……だ!?)
吹寄『・・・』クス
上条「吹…寄...?一体、なにを……」
倒れこむ上条を、立ったまま見下ろす吹寄。その顔には、笑みが見える。
上条(笑ってる…のか?)
吹寄『・・・』スッ
上条(やべっ…!)
吹寄が上条にしゃがみながら接近する。
もし今もう一度攻撃されたら、身を守ることなどできない。
上条「く...そぉ……!!」
吹寄『だめよ……』グッ
上条「な...!?」
立ち上がろうとする上条を抑え込む吹寄。
振り払って立ち上がろうと思った上条であるが、その体のどこからでてくるのか。
異常なまでの力に抑えられて、動くとができない。
今にして思えば、先ほどの攻撃も異様なまでの力だった。不意打ちにしては体へのダメージが大きすぎる。
上条「吹寄…おまえ、一体……どうしちまったんだよ!?」ググゥ...
吹寄『・・・』ニコ
上条「なん……!?」
吹寄『ん...』チュ
吹寄がいきなり、上条にキスをした。
いや、そんな物ではない。口の中に舌を無理やり入れてきている。
上条「ん…ぐぅ...!?」
吹寄『はぁ…んん...』
上条(こいつ……口の中になにかを!?)
吹寄は、恐らくあらかじめ口の中に入れていたのであろう何かの薬を上条の口の中に無理やり入れてきた。
拒む上条であったが、最後には強制的に飲み込まされてしまった。
吹寄『ぷはぁ...』
上条「ぐ……うぅ…なんのつもり...」
上条(あれ……なんか……眠…く...)バタン
吹寄『・・・』クス
上条の意識は、そこでとだえてしまった...
343: ゴミ箱 2012/03/05(月) 01:59:28.83 ID:RXLOTQqb0
とある川にかかる橋の上。
見た目20歳の美女、イギリス清教の最大主教ことローラ=スチュアートがそこにはいた。
彼女を照らすのは今、なにもない。
満月の月明かりも今では雲に遮られてしまっていた。
ローラ「はぁ……」
ローラ「逃げてきてしまったわね...」
正直な所、ローラ自身なぜ逃げてきてしまったかわからない。
気が付いていたら走っていたのだ。
上条『もう無理なんかしなくても、いい』
ローラ(そんな事言われたって…)
苦悩するローラ。もはや、自分が何をしたいのかすらもわからない。
だが、そんな彼女を救うものは唐突にやってくる。
「おや?そこにいるのはミサカの宿命のライバルである人ではありませんかと
ミサカは道に迷っていたので助かったと安堵します」
ローラ「...?」クル
御坂妹「どうもとミサカは軽く会釈をします」
振り向いたローラの目の前に居たのは、学園都市に帰ったはずの御坂妹であった。
見た目20歳の美女、イギリス清教の最大主教ことローラ=スチュアートがそこにはいた。
彼女を照らすのは今、なにもない。
満月の月明かりも今では雲に遮られてしまっていた。
ローラ「はぁ……」
ローラ「逃げてきてしまったわね...」
正直な所、ローラ自身なぜ逃げてきてしまったかわからない。
気が付いていたら走っていたのだ。
上条『もう無理なんかしなくても、いい』
ローラ(そんな事言われたって…)
苦悩するローラ。もはや、自分が何をしたいのかすらもわからない。
だが、そんな彼女を救うものは唐突にやってくる。
「おや?そこにいるのはミサカの宿命のライバルである人ではありませんかと
ミサカは道に迷っていたので助かったと安堵します」
ローラ「...?」クル
御坂妹「どうもとミサカは軽く会釈をします」
振り向いたローラの目の前に居たのは、学園都市に帰ったはずの御坂妹であった。
344: ゴミ箱 2012/03/05(月) 01:59:58.68 ID:RXLOTQqb0
ローラ「御坂妹さん……で、よろしいのかしら?」
御坂妹「知っていましたかとミサカは少し驚きます」
ローラ「少しわね。確か、御坂美琴のクローン……妹達の一人だったわね」
御坂妹「はい、仰る通りですとミサカは肯定します。
ミサカの検体番号は10032号、一番古い個体ですとミサカは詳しく説明します」
ローラ「ってことはつまり...」
御坂妹「えぇ。察する通り、ミサカ以前のミサカ達は全て実験により失われましたとミサカははっきりと言います」
ローラ「それは……」
思わず言葉を濁すローラ。
ローラは最大主教と言う立場の上で、今まで多くの事件に介入してきた。
時には部下に首輪をつける為、時には戦力を増やす為、時にはただ利益の為だけに部下に非道な仕打ちをした事もあった。
だが、ローラ自身人が死んでも何も思わないとかそんな人間ではない。
もし隣で悲しむ者がいれば共に悲しみ、もし隣で怒れる者がいればそれを清らかな心で沈め、
もし目の前に大量虐殺者がいれば、それを許すような者ではないのだ。
だからこそローラは言葉に詰まる。
大量に死んだ妹達の内の一人に、どう話しかけていいのかがわからない。
御坂妹「ミサカに気を使っているのですか?ならばその必要はありませんとミサカは断言します」
ローラ「でも……」
御坂妹「消えていったミサカ以前のミサカ達は、もう気に掛ける必要はありません」
ローラ「それはつまり、貴方以前の妹達はどうでも良いという事?」
御坂妹「そうではありません。
消えていったミサカ達は、もう既に救われましたからミサカは補足します」
ローラ「救われた……?」
御坂妹「はい。ミサカ達は、上条さんに救われたのですとミサカは答えます」
上条
今一番ローラの心に引っかかっている者の名前。
ローラ「当麻が……」
御坂妹「ミサカは美琴お姉さまのクローンであり、一万体以上もいる中のたった一つの個体にしかすぎません。
そんなミサカ達にとって、生きるも死ぬも等価値でしたとミサカは某SFアニメのシ者のセリフを引用します。
ですが、上条さんはミサカに生きろと言ってくれました」
ローラ「………」
御坂妹「上条さんはミサカだって一人の人間だと、死んで良い筈が無いと言ってくれました。
上条さんは初めてミサカ達クローンに、生きとろ訴えかけてくれたのですとミサカは興奮気味に説明します」
御坂妹「それが、ミサカ達にとっての救いだったのですとミサカは再度言い放ちます」
御坂妹「上条さんにとって、ミサカ達が幸せになる事が唯一の幸福だと言ってました。
それが上条さんにとっての幸せならば、ミサカは絶対にこの命を投げたりはしませんとミサカは宣言します」
見た目感情のこもっていない瞳で、しかししっかりと、力強く言う御坂妹。
それには信念のような物を感じられた。
345: ゴミ箱 2012/03/05(月) 02:01:00.29 ID:RXLOTQqb0
ローラ「そう……なら、一つ聞いていいかしら?」
御坂妹「なんでしょうかとミサカは快く受け付けます」
ローラ「貴方にとって、当麻は一体何?」
ローラ「命の恩人?感謝すべき相手?一生忠を尽くすべき者?守るべき者?
一体……なんだと言うの?」
ローラは恐る恐る聞く。
もし自分がこんな事を聞かれたとしたら、絶対に答えられないだろう。
正直に言って、どんな答えが返ってくるのかがわからない。
それがただ単に、怖い。でも聞かなければならない。そんな気がする。
御坂妹「ずっとそばに居たい、大切な人ですとミサカは即答します」
ローラ「大切な人……それはなんなの?
それはやはり『好きな人』という事ではないの!?」
意図せずして声を荒げるローラ。
「大切な人」とは一体なんなのか。それが、わからない。
自分のこの上条に対して芽生えつつあるのだろう
「恋」という感情がまだよく分からないからこそ、なおさらその答えをしりたい。
ローラ「貴方も当麻が好きだからこそここまで来たのでしょう?
ならばなぜ好きな人と言わないの?」
自分の考えをぶつけるローラ。
さながら、自分もわからない答えの問題を相手に解かせるように。
御坂妹「ミサカ達には恋愛感情等はわかりません。
ですが、これが例え恋だとしても、そうでなくともミサカのこの思いは変わりませんとミサカは断言します。
呼び方等どうでも良いのです。ミサカが上条さんの傍に居たいのには変わりませんとミサカは自分の考えを訴えます」
ローラ「そんな答えじゃ……わからないわよぉ...!」
絞り出すように声を出すローラ。
帰ってきた答えが理解できない。そんな苦しみが自らの体を突き刺す。
彼女にはもはや、イギリス清教の最大主教の影などはない。
ただ、一人の男に悩む「女」その物であった。
346: ゴミ箱 2012/03/05(月) 02:02:23.04 ID:RXLOTQqb0
御坂妹「分からない筈がありませんとミサカは貴方の考えを否定します。
貴方は既に理解している筈ですとミサカは当たり前のように言います」
ローラ「どういう事...?」
御坂妹「貴方は上条さんとずっと同棲していましたとミサカは嫉妬を含みながら言います。
その間に、貴方は感じていなかったのですか?とミサカは問いかけます」
ローラ「感じる……一体、なにを...?」
徐々にローラを照らし出す光。
その光は、ローラを闇から引きずりだすもの。
御坂妹「貴方は上条さんと共に居たいとは、ずっと傍にいたいとは思わなかったのですかとミサカは再度確認します」
ローラ「ずっと……」
御坂妹「もし思っていたのならそれが答えですとミサカは簡潔に言います」
ローラ「………」
ずっと一緒に居たい。
そんな事は分かっていた。
ずっと上条と一緒に暮らせればいいだなんて、そんな事はずっと前からわかっていた。
だけど、分からないふりをしていた。今までだって何度かふと思うことはあった。
この時間が、一緒に居る時がずっと続けばいいだなんて。
だけれど、そのたびに自分の中のなにかが邪魔をする。
『最大主教の私』が全ての邪魔をしていた。
この気持ちは全て偽り。全てはこの国の利益の為の『偽』だ、と。
無意識下で全てを押さえつけていた。
幸せと感じる事も、何もかも。
そして最後には、偽りの『結婚』をして終わりのENDを、無理やりに描いていた。
結婚した後はまた別々の世界。一生会う事も無いだろう、と。
だが、果たしてそれは本当の願いか?『女の私』の願いか?
彼女のその迷いは、すぐに断ち切られる。
御坂妹「貴方はもう少し、自分に素直になるべきではないでしょうかとミサカは軽い助言をします」
ローラ「あぁ...」
自分に素直になればいい。
そんな単純な言葉が、これほどまでに自分を楽にさせたことは今までに無かったのではないか。
この時、ローラを繋ぎ留め、拘束する物は何もなくなった。
ローラ「そう……そうね」
御坂妹「どうかしましたか?とミサカは少し言いすぎたかと心配になります」
ローラ「いいえ、なんでもないわ。フフ♪ なんだか踊りたいような気分ね」
御坂妹「急にどうしたんでしょうかとミサカは若干戦慄します」
ローラ「言ったでしょう?なんでもないわよん。さぁ、当麻の所に行きましょう」
御坂妹「そうですねとミサカは余り深くは追及しないようにします」
二人はそのまま歩みだす。
その二人の頭上の満月は、いつしかはっきりと見て取れるようになり、
何にも遮られることもなく透き通るような光で二人をつつみこんでいた...
363: ゴミ箱 2012/03/07(水) 01:22:27.63 ID:t5rH/4An0
上条が吹寄によって眠らされた後。
微睡の中、彼は携帯のコール音を頼りに目を覚ました。
上条「うぅ……」prrrrrrrrrr
上条「んー...」ピッ
上条「もしもしどちらさまで『ようやくつながったか!!』
上条「耳元で叫ばないで頂けると上条さんはとても助かるのですが」キーン
なんとも眠たそうな口調で喋る上条。
電話の相手は声を聴いただけで一発で分かった。
土御門だ。
土御門『ふざけてる場合じゃねえ、かみやん!!何回電話したと思ってる!?』
上条「あーすまねぇ、ちょっと寝ちまってたみたいで」
土御門『寝てた?一体どこでだ?』
上条「えーっと...」キョロキョロ
見渡す上条。どうやら倉庫のような所らしい。
天窓から差し込む月明かりによって、かろうじてだが中の様子が分かる。
上条「なんか倉庫っぽい所だ」
土御門『具体的な場所はわかるか?』
上条「ちょっとまってろ」
上条は立ち上がり、目の前にある大きな扉を開けようとする。
だが、びくともしない。鎖やつっかえ棒などは見当たらない。
魔術的な物なら関係は無い筈だし、単純に上条一人の力では足りないのだろう。
上条「だめだ。外に出られねぇ」
土御門『閉じ込められたのか?』
上条「そうみたいだな」
土御門『そうだな...ならまずは何があったか説明してくれ』
上条「分かった」
自分でも驚くほどに冷静に状況を説明する上条。
別にこんな状況に慣れたわけでもない筈だが、今はとにかく感謝すべきか。
微睡の中、彼は携帯のコール音を頼りに目を覚ました。
上条「うぅ……」prrrrrrrrrr
上条「んー...」ピッ
上条「もしもしどちらさまで『ようやくつながったか!!』
上条「耳元で叫ばないで頂けると上条さんはとても助かるのですが」キーン
なんとも眠たそうな口調で喋る上条。
電話の相手は声を聴いただけで一発で分かった。
土御門だ。
土御門『ふざけてる場合じゃねえ、かみやん!!何回電話したと思ってる!?』
上条「あーすまねぇ、ちょっと寝ちまってたみたいで」
土御門『寝てた?一体どこでだ?』
上条「えーっと...」キョロキョロ
見渡す上条。どうやら倉庫のような所らしい。
天窓から差し込む月明かりによって、かろうじてだが中の様子が分かる。
上条「なんか倉庫っぽい所だ」
土御門『具体的な場所はわかるか?』
上条「ちょっとまってろ」
上条は立ち上がり、目の前にある大きな扉を開けようとする。
だが、びくともしない。鎖やつっかえ棒などは見当たらない。
魔術的な物なら関係は無い筈だし、単純に上条一人の力では足りないのだろう。
上条「だめだ。外に出られねぇ」
土御門『閉じ込められたのか?』
上条「そうみたいだな」
土御門『そうだな...ならまずは何があったか説明してくれ』
上条「分かった」
自分でも驚くほどに冷静に状況を説明する上条。
別にこんな状況に慣れたわけでもない筈だが、今はとにかく感謝すべきか。
364: ゴミ箱 2012/03/07(水) 01:23:18.44 ID:t5rH/4An0
土御門『やっぱ吹寄か……くそっ!』
上条「やっぱ?どういう事だ、土御門」
土御門『とりあえずかみやん、今度はこっちの状況を説明するから、頭に叩き込め』
上条「分かった」
土御門『いきなりで混乱するかもしれないが、俺と天草式以外、主要な魔術師が全員拘束された』
上条「は...?」
土御門『拘束と言っても縄とかで縛られたわけじゃない。全員、聖ジョージ大聖堂に閉じ込められた』
上条「ちょ、ちょっとまってくれ!主要な魔術師ってまさか...」
土御門『あぁ。ご察しの通り、かみやんの新居に暮らしてたキャーリサ王女やねーちん、
それとおまけに御坂美琴もだ。くそったれ』
上条「んな……キャーリサや神裂が...?一体どうやって!?」
忘れてはならないが、神裂は聖人、キャーリサはカーテナの破片を持ち、御坂はLEVEL5の電撃使いだ。
それ以外にも魔術師はいるだろう。
その面々を拘束、しかも聖ジョージ大聖堂に閉じ込めるなど、よほどの者でもなければ不可能だ。
土御門『たまたま俺や天草式は別の場所にいたから良かったが、
ねーちん達が聖ジョージ大聖堂に固まってる所を狙われた』
上条「何処の魔術師だ!?」
土御門『いや、魔術師じゃない……と思われるがな。
敵は催涙ガスを使ってねーちん達をまとめて眠らせたんだ。
どういうわけか聖ジョージ大聖堂の防御結界は全部機能停止している』
上条「催涙ガス……ってことは...まさか!」
土御門『あぁ。恐らく……科学側の人間だ』
科学側の人間。
その言葉が土御門の口から発せられただけで、上条に戦慄が走る。
上条「やっぱ?どういう事だ、土御門」
土御門『とりあえずかみやん、今度はこっちの状況を説明するから、頭に叩き込め』
上条「分かった」
土御門『いきなりで混乱するかもしれないが、俺と天草式以外、主要な魔術師が全員拘束された』
上条「は...?」
土御門『拘束と言っても縄とかで縛られたわけじゃない。全員、聖ジョージ大聖堂に閉じ込められた』
上条「ちょ、ちょっとまってくれ!主要な魔術師ってまさか...」
土御門『あぁ。ご察しの通り、かみやんの新居に暮らしてたキャーリサ王女やねーちん、
それとおまけに御坂美琴もだ。くそったれ』
上条「んな……キャーリサや神裂が...?一体どうやって!?」
忘れてはならないが、神裂は聖人、キャーリサはカーテナの破片を持ち、御坂はLEVEL5の電撃使いだ。
それ以外にも魔術師はいるだろう。
その面々を拘束、しかも聖ジョージ大聖堂に閉じ込めるなど、よほどの者でもなければ不可能だ。
土御門『たまたま俺や天草式は別の場所にいたから良かったが、
ねーちん達が聖ジョージ大聖堂に固まってる所を狙われた』
上条「何処の魔術師だ!?」
土御門『いや、魔術師じゃない……と思われるがな。
敵は催涙ガスを使ってねーちん達をまとめて眠らせたんだ。
どういうわけか聖ジョージ大聖堂の防御結界は全部機能停止している』
上条「催涙ガス……ってことは...まさか!」
土御門『あぁ。恐らく……科学側の人間だ』
科学側の人間。
その言葉が土御門の口から発せられただけで、上条に戦慄が走る。
365: ゴミ箱 2012/03/07(水) 01:23:46.01 ID:t5rH/4An0
上条「科学側の人間が魔術師を襲うって、それ結構やばくねえか?」
土御門『そうなんだが……どうにもそこらへんの判断がつかねぇんだ』
上条「どういう事だ?」
土御門『さっきも言ったが、なぜか大聖堂の防御結界は機能停止してたんだ。
どうもこれは魔術の色が濃い。だが使われたのは催涙ガスだ』
上条「なら、単に魔術師が催涙ガスを使っただけじゃねえのか?」
土御門『それも考えたが、実はもう一つ科学側の人間が襲ったと言う証拠がある』
上条「なんだ?」
土御門『今、聖ジョージ大聖堂の周りに不可視光線が張り巡らされてる。
触れただけで蒸発もんのな。それのせいで俺らはねーちん達の救出ができていねぇ』
上条「なっ……」
土御門『しかもこの光線が何処から放たれてるのか把握できてない。
こんな技術、学園都市製でもなければありえない』
上条「そんな………」
土御門『だがこれにももう一つ、疑惑がある』
上条「まだあるのか?」
土御門『あぁ。何も俺らはこの不可視光線をただ黙って受け入れたわけちゃいねえ。
何度も消そうと試みた』
上条「魔術でか?」
土御門『そうだ。だが……全て失敗に終わった。
光を屈折させる魔術も、大聖堂の周辺をごっそり消し去る魔術もな。
恐らくこれに干渉してるのも魔術だ』
上条「一体……何が起こってんだ...?」
土御門『今それについても天草式が全力で調べ上げてる。だが望みは薄いな』
上条「土御門はなにしてんだ?」
土御門『俺も最初は天草式の連中と一緒に調べてたんだが……ちょっと事情が変わってな』
上条「なにがあったんだ?」
土御門『丁度俺がかみやんに会いに行こうとした時にだ。
かみやんの家の前に姫神が倒れてた』
上条「姫神が!?」
土御門『意識は無かったが命に別状はない。心配する必要はねぇ』
上条「だからって……!!」
土御門『とにかく、その時点で学園都市に帰ったはずの吹寄にも連絡した。
だが応答なしだ。なにかあると思ってはいたがな』
上条「でも、なんだってあいつらはまだイギリスに残ってんだ?」
土御門『さっき調べたが、どうやら日本行きの旅行便が一機事故で運休になっていた。
恐らくそれだな』
上条「って事は……御坂妹も!?」
土御門『恐らくな』
上条「くそっ!!なにがどうなってんだ!!」ガン
思わず壁に拳を叩きつけた上条。
土御門『そうなんだが……どうにもそこらへんの判断がつかねぇんだ』
上条「どういう事だ?」
土御門『さっきも言ったが、なぜか大聖堂の防御結界は機能停止してたんだ。
どうもこれは魔術の色が濃い。だが使われたのは催涙ガスだ』
上条「なら、単に魔術師が催涙ガスを使っただけじゃねえのか?」
土御門『それも考えたが、実はもう一つ科学側の人間が襲ったと言う証拠がある』
上条「なんだ?」
土御門『今、聖ジョージ大聖堂の周りに不可視光線が張り巡らされてる。
触れただけで蒸発もんのな。それのせいで俺らはねーちん達の救出ができていねぇ』
上条「なっ……」
土御門『しかもこの光線が何処から放たれてるのか把握できてない。
こんな技術、学園都市製でもなければありえない』
上条「そんな………」
土御門『だがこれにももう一つ、疑惑がある』
上条「まだあるのか?」
土御門『あぁ。何も俺らはこの不可視光線をただ黙って受け入れたわけちゃいねえ。
何度も消そうと試みた』
上条「魔術でか?」
土御門『そうだ。だが……全て失敗に終わった。
光を屈折させる魔術も、大聖堂の周辺をごっそり消し去る魔術もな。
恐らくこれに干渉してるのも魔術だ』
上条「一体……何が起こってんだ...?」
土御門『今それについても天草式が全力で調べ上げてる。だが望みは薄いな』
上条「土御門はなにしてんだ?」
土御門『俺も最初は天草式の連中と一緒に調べてたんだが……ちょっと事情が変わってな』
上条「なにがあったんだ?」
土御門『丁度俺がかみやんに会いに行こうとした時にだ。
かみやんの家の前に姫神が倒れてた』
上条「姫神が!?」
土御門『意識は無かったが命に別状はない。心配する必要はねぇ』
上条「だからって……!!」
土御門『とにかく、その時点で学園都市に帰ったはずの吹寄にも連絡した。
だが応答なしだ。なにかあると思ってはいたがな』
上条「でも、なんだってあいつらはまだイギリスに残ってんだ?」
土御門『さっき調べたが、どうやら日本行きの旅行便が一機事故で運休になっていた。
恐らくそれだな』
上条「って事は……御坂妹も!?」
土御門『恐らくな』
上条「くそっ!!なにがどうなってんだ!!」ガン
思わず壁に拳を叩きつけた上条。
366: ゴミ箱 2012/03/07(水) 01:24:18.05 ID:t5rH/4An0
土御門『落ち着けかみやん。今慌てたって何にもならねえぜ?
とりあえず連絡が取れただけ良しとしよう』
上条「くっ...!」
こうしている間にも刻々と時は過ぎていく。
何もできない自分が歯痒い。
とりあえず、一刻も早くここから脱出しなければ。
上条「土御門、俺の携帯からここの位置情報をわりだせないか?」
土御門『やってみる、少し待ってろ!』
そういって土御門は電話を切ってしまった。
上条「頼むぞ……」
「終わったか?」
上条「!?」
声がした方を上条は振り向く。
そこには、体長2mはあるだろうか。かなり大柄な男が立っていた。
全身を黒に統一し、大きなマントを羽織っている。
上条(何時の間に!?)
「ふむ。とりあえず自己紹介といこうか」
名無し「とは言っても名前など無いのだがな。まぁ名無しとでも呼べばいい」
上条「………」ジリジリ
上条は一切視線を逸らそうとせず、無言のまま構えを取る。
名無し「ふむ、危機管理能力と言うべきか。そこらへんはちゃんと備わっているようだな。
では無駄話もなんだ。単刀直入に言わせてもらおう」
そういうと名無しは、懐からハンドガンを取り出した。
上条「!?」
名無し「上条当麻。君には死んでもらおうか」パーン
そういうと名無しは、間髪入れることなく引き金を引いた―――
とりあえず連絡が取れただけ良しとしよう』
上条「くっ...!」
こうしている間にも刻々と時は過ぎていく。
何もできない自分が歯痒い。
とりあえず、一刻も早くここから脱出しなければ。
上条「土御門、俺の携帯からここの位置情報をわりだせないか?」
土御門『やってみる、少し待ってろ!』
そういって土御門は電話を切ってしまった。
上条「頼むぞ……」
「終わったか?」
上条「!?」
声がした方を上条は振り向く。
そこには、体長2mはあるだろうか。かなり大柄な男が立っていた。
全身を黒に統一し、大きなマントを羽織っている。
上条(何時の間に!?)
「ふむ。とりあえず自己紹介といこうか」
名無し「とは言っても名前など無いのだがな。まぁ名無しとでも呼べばいい」
上条「………」ジリジリ
上条は一切視線を逸らそうとせず、無言のまま構えを取る。
名無し「ふむ、危機管理能力と言うべきか。そこらへんはちゃんと備わっているようだな。
では無駄話もなんだ。単刀直入に言わせてもらおう」
そういうと名無しは、懐からハンドガンを取り出した。
上条「!?」
名無し「上条当麻。君には死んでもらおうか」パーン
そういうと名無しは、間髪入れることなく引き金を引いた―――
372: ゴミ箱 2012/03/10(土) 01:10:02.78 ID:tYPzszl50
名無し「死んでもらおうか」パーン
何の躊躇いも無く、慣れた手つきで引き金を引いた名無し。
銃口から飛び出る鉄の塊は、正確に、寸分の狂いもなく上条の頭に向かって行く。
上条「―――ッ!!」
上条はそれを間一髪、頭を少し逸らす事により回避する。
名無しが上条の頭を正確に狙っていたからこそ成しえた芸当。
それでなくとも、ただの平和ボケした一般人では反応すらできなかったであろう。
上条「っぶねぇな!いきなりなにして...!!」チャッ
名無し「………」パーン
上条「くっ!!」バッ
無言のまま次弾を撃つ名無し。最早対話の余地はないのだろう。
名無しの撃つ弾はやはり上条の頭を正確に狙っている。
至近距離で撃たれ続けるこの状況を少しでも打開しようと、前転により回避をしたのだが、それが裏目に出た。
名無し「………」パーンパーンパーン
上条(なっ……壁に当たった弾が跳ね返って―――)
前進により場所が少しずれたことにより、角度が丁度合わさってしまったのか。
上条から外れた筈の弾は、跳ね返って上条に向かってきていた。
上条「くそ!!」
避けようと試みる上条であるが、到底避けられるはずもない。
只でさえ外とは違って狭い倉庫の中。当然壁も近くにあり、跳弾は簡単に上条に届く。
徐々にだがかすり傷を負っていく上条。
太ももから、腕から、肘、肩、様々な場所から血が滴り始めた。
このままではいずれ綺麗に食らってしまうだろう。
そんな時...
名無し「………」カチカチ
上条(弾切れ!?)
今まで打ち続けていた名無しの銃の弾が切れた。およそ弾数は20発と言ったところか。
ハンドガンにしては嫌に多い量である。
上条(今しかねぇ!)
上条「うぉおおおお!!」
その隙を狙って一気に近づこうとする上条。
名無し「………」バッ
上条「な!?」
だが、名無しは躊躇することなく弾の切れた銃を捨て、腰に掛けてあった他の銃を手に取った。
弾薬を変える行為をせず、銃そのものを変える事により圧倒的に隙を少なくする。
たった一つの武器に固執せず、瞬時に状況を判断できるからこその行為であった。
何の躊躇いも無く、慣れた手つきで引き金を引いた名無し。
銃口から飛び出る鉄の塊は、正確に、寸分の狂いもなく上条の頭に向かって行く。
上条「―――ッ!!」
上条はそれを間一髪、頭を少し逸らす事により回避する。
名無しが上条の頭を正確に狙っていたからこそ成しえた芸当。
それでなくとも、ただの平和ボケした一般人では反応すらできなかったであろう。
上条「っぶねぇな!いきなりなにして...!!」チャッ
名無し「………」パーン
上条「くっ!!」バッ
無言のまま次弾を撃つ名無し。最早対話の余地はないのだろう。
名無しの撃つ弾はやはり上条の頭を正確に狙っている。
至近距離で撃たれ続けるこの状況を少しでも打開しようと、前転により回避をしたのだが、それが裏目に出た。
名無し「………」パーンパーンパーン
上条(なっ……壁に当たった弾が跳ね返って―――)
前進により場所が少しずれたことにより、角度が丁度合わさってしまったのか。
上条から外れた筈の弾は、跳ね返って上条に向かってきていた。
上条「くそ!!」
避けようと試みる上条であるが、到底避けられるはずもない。
只でさえ外とは違って狭い倉庫の中。当然壁も近くにあり、跳弾は簡単に上条に届く。
徐々にだがかすり傷を負っていく上条。
太ももから、腕から、肘、肩、様々な場所から血が滴り始めた。
このままではいずれ綺麗に食らってしまうだろう。
そんな時...
名無し「………」カチカチ
上条(弾切れ!?)
今まで打ち続けていた名無しの銃の弾が切れた。およそ弾数は20発と言ったところか。
ハンドガンにしては嫌に多い量である。
上条(今しかねぇ!)
上条「うぉおおおお!!」
その隙を狙って一気に近づこうとする上条。
名無し「………」バッ
上条「な!?」
だが、名無しは躊躇することなく弾の切れた銃を捨て、腰に掛けてあった他の銃を手に取った。
弾薬を変える行為をせず、銃そのものを変える事により圧倒的に隙を少なくする。
たった一つの武器に固執せず、瞬時に状況を判断できるからこその行為であった。
381: ゴミ箱 2012/03/12(月) 01:09:24.95 ID:8PFTh0pi0
名無し「………」チャ
上条(けど、こっちのがはええ!!)
名無しが構えを取っているときには既に懐に入っていた上条。
いつも通り、あとはそのまま右ストレートを顔面に加えるだけ……
の筈だったのだが。
名無し「まだまだ甘い」スッ
上条(なっ……構えを解いた!?)
名無しは何を思ったか、狙いをつけていた銃を降ろした。
上条の右手が顔面に突き刺さる直前だと言うのに、ノーガードで突っ立っている。
上条(何を考えて――――?)メリ
上条「ごは……あぁ!?」ドン
名無しが構えを解いた直後。
上条はその行動の意味を考えている間に、左の脇腹に強い衝撃を受け吹っ飛ばされていた。
上条「なん……だ...?」
震えながらもなんとか立ち上がる上条。自分がさっきまで立っていた場所を見る。
そこには、何処か満足気な笑みを浮かべた吹寄が立っていた。
上条「吹寄……お前、また…なんで...?」
吹寄『………』ニコ
この倉庫の中には上条と名無ししかいなかった筈。
それに、上条を一発で吹っ飛ばすなど生身の人間、それに女子高生が到底できる事とは考えられない。
誰がどう見ても、明らかに異常だ。
上条「まさか……」
名無し「気づくのに時間がかかりすぎているな。彼女がここに出現した瞬間に気づくべきだ」
上条「くそ...!吹寄になにをした!?」
名無し「なに、少し夢を見てもらっているだけさ」
上条「夢……?」
名無し「そう、夢だ」
夢
それは、人間が睡眠時に行う脳内の情報整理の時に起きる、一種の幻覚である。
その日見た中で一番強烈なイメージ、深層心理の状態、外部からの影響等により、人は様々な夢を見る。
それを今、吹寄は見ていると名無しは言う。
382: ゴミ箱 2012/03/12(月) 01:10:17.61 ID:8PFTh0pi0
名無し「正確には彼女本心が...と言った方が良いがな」
上条「どういう意味だ?」
名無し「気づいていただろう。彼女の様子がおかしくなっていたのがな。
そうだな...大体君らが食事をとっていた時か」
上条「食事...」
上条は初めて吹寄達が来たときの事を思い出す。
その時の、吹寄の様子。
吹寄『私達だってこんな家で暮らしたいのよ!!』
自らの願望を大勢の前で豪語し...
吹寄『まったく、のんきなんだから……イギリスよ!?イギリス!!』
欲求を人に押し付け...
吹寄『そうよ!私達はイギリスにこれるっていうから上条にあいにきたのに!!』
上条としては本当はちょっと寂しかったこの言葉。
あの時はただ受け流していたが……
上条「そんな……あの時から...?」
名無し「そうだ。彼女は普段から自分の欲望を押さえつけているようであった。
そのはけ口として通販と言う手段を無意識の内に用いていたようだが、
今回はその抑え込んであった欲望を利用させてもらったのだよ」
上条「それと夢とどういう関係があるってんだ!!」
名無し「簡単な事だ。君に会う前に、彼女には寝ている間にある催眠をかけておいた。
それにより彼女の意識、本心は今だ寝ている状態にある。
彼女は起きた後も、全ての行動も『夢』と勘違いしている。
夢の中ならば何をしても良い。自分のしたい事をし、誰に咎められても後ろめたい事など無い」
上条「なら、今の吹寄も夢を見てこんな事をしてるってのか!?」
名無し「それは違う。私はもう一つ、
彼女の欲が満たされた時、ある催眠が発動するようにスイッチを仕掛けておいた」
上条「………」
上条はもう名無しに食って掛かる事はせず、食い入るように名無しの顔を見ていた。
上条「どういう意味だ?」
名無し「気づいていただろう。彼女の様子がおかしくなっていたのがな。
そうだな...大体君らが食事をとっていた時か」
上条「食事...」
上条は初めて吹寄達が来たときの事を思い出す。
その時の、吹寄の様子。
吹寄『私達だってこんな家で暮らしたいのよ!!』
自らの願望を大勢の前で豪語し...
吹寄『まったく、のんきなんだから……イギリスよ!?イギリス!!』
欲求を人に押し付け...
吹寄『そうよ!私達はイギリスにこれるっていうから上条にあいにきたのに!!』
上条としては本当はちょっと寂しかったこの言葉。
あの時はただ受け流していたが……
上条「そんな……あの時から...?」
名無し「そうだ。彼女は普段から自分の欲望を押さえつけているようであった。
そのはけ口として通販と言う手段を無意識の内に用いていたようだが、
今回はその抑え込んであった欲望を利用させてもらったのだよ」
上条「それと夢とどういう関係があるってんだ!!」
名無し「簡単な事だ。君に会う前に、彼女には寝ている間にある催眠をかけておいた。
それにより彼女の意識、本心は今だ寝ている状態にある。
彼女は起きた後も、全ての行動も『夢』と勘違いしている。
夢の中ならば何をしても良い。自分のしたい事をし、誰に咎められても後ろめたい事など無い」
上条「なら、今の吹寄も夢を見てこんな事をしてるってのか!?」
名無し「それは違う。私はもう一つ、
彼女の欲が満たされた時、ある催眠が発動するようにスイッチを仕掛けておいた」
上条「………」
上条はもう名無しに食って掛かる事はせず、食い入るように名無しの顔を見ていた。
383: ゴミ箱 2012/03/12(月) 01:10:57.36 ID:8PFTh0pi0
名無し「その催眠は、いたって簡単。彼女に新たなる欲を植え付けるというものだよ。
彼女は今私の命令を受け付けると言う『欲』に従って行動しているの。
恐怖や脅しではない、彼女自身の欲求により行動している」
吹寄『………』
名無し「それと同時に、彼女の自我にも少し眠ってもらっている。
いわば、今の彼女はもう一つの人格によって動かされていると言っても間違いではないな」
上条「つまり……今の吹寄はお前の奴隷って分けか...」
名無し「奴隷という表現は適切では無い。強いて言えば召し――「うぉおおおおおおお!!」
名無しが言い終わる前に、上条は雄叫びを上げて突っ込んでいた。
それを見た名無しは、手に持つ銃をぶら下げた少し振る。
すると、立っていた吹寄が上条の前に立ちふさがり、名無しの壁となった。
名無し「それと、彼女の身体能力の向上は薬によるものだ。
催眠が切れると同時に効果も切れる。ま、最悪でも一週間程度の筋肉痛だろうな」
まるで自分はただ観戦しているだけと言わんばかりに冷静に説明する名無し。
彼がこうして説明をしている間に、上条は吹寄の蹴りを食らい、またも吹っ飛んでいた。
上条「く…そ……」
絶望的な状況の中、震える足で立ち上がりながら上条は握りしめた右手を見る。
だが、そんな上条に名無しは無情にも真実を告げる。
名無し「無駄だ。彼女を操っているのは異能の力ではない。
脳への光信号を電気的に操って行った洗脳だ。君は無力だよ」クイ
吹寄『………』ダッ
上条「くっ!」
立っただけで体に痛みが走る。
そんな状態の上条に、止めを刺さんとばかりに吹寄が飛びかかってきた。
一発一発が致命傷。次食らったら、もう後は無いと考えていいだろう。
上条「っ!!」バッ
吹寄『………』ドン
体のバランスをわざと崩し、吹寄のとび蹴りを最少の動きで避けた上条。
上条がいた筈の場所に放たれた吹寄の一撃は、軽く地面をえぐっていた。
名無し「さて、少し無駄話が過ぎたな。どうする?幻想殺しの少年」
上条「………」グッ
自分の右手が通用しない。相手は魔術師でも能力者でもない。
今までの事件とは、戦闘とは何もかもが違う。
だが、それがなんだというのか。
上条「てめぇの洗脳に右手が通用するかどうかなんてはなからわかってる」
吹寄『………』ユラ...
名無し「ほぅ...」
上条「けど、きかねえからなんだってんだ!」
384: ゴミ箱 2012/03/12(月) 01:11:23.66 ID:8PFTh0pi0
そうだ。
今までの事件だって、もし上条の右手に幻想殺しが宿っていなかったとしても、
上条はそのまま黙っていただろうか?
上条「俺のこの右手が通用しないからって助けない理由にはならねんだよ!
だから、どんな事があっても、俺は絶対にてめぇから吹寄を助ける!!」
名無し「………」クィ
吹寄『………』ダッ
上条の言葉など無視し、またも吹寄は上条に襲い掛かる。
上条「いいぜぇ、名無し」スッ
それを見た上条もまた、構えをとる。
上条「てめぇがそんなふざけた事を平気でやるってんなら」バッ
吹寄『……!』スカ
今度は自分から一歩後ろに跳ぶ事により吹寄のとび蹴りをよける上条。
どうやら吹寄自身の戦闘経験は無いようなので、よけられた後等体ががら空きであった。
上条「まずはそのふざけた幻想をぶち壊す!!」
吹寄『――――ッ!?』
ノーガードの吹寄の顔面に渾身の一撃を食らわせる上条。
吹寄の体はそのまま綺麗な放物線を描き、吹っ飛ばされる。
今までの事件だって、もし上条の右手に幻想殺しが宿っていなかったとしても、
上条はそのまま黙っていただろうか?
上条「俺のこの右手が通用しないからって助けない理由にはならねんだよ!
だから、どんな事があっても、俺は絶対にてめぇから吹寄を助ける!!」
名無し「………」クィ
吹寄『………』ダッ
上条の言葉など無視し、またも吹寄は上条に襲い掛かる。
上条「いいぜぇ、名無し」スッ
それを見た上条もまた、構えをとる。
上条「てめぇがそんなふざけた事を平気でやるってんなら」バッ
吹寄『……!』スカ
今度は自分から一歩後ろに跳ぶ事により吹寄のとび蹴りをよける上条。
どうやら吹寄自身の戦闘経験は無いようなので、よけられた後等体ががら空きであった。
上条「まずはそのふざけた幻想をぶち壊す!!」
吹寄『――――ッ!?』
ノーガードの吹寄の顔面に渾身の一撃を食らわせる上条。
吹寄の体はそのまま綺麗な放物線を描き、吹っ飛ばされる。
393: ゴミ箱 2012/03/16(金) 01:53:54.88 ID:4nn6VYca0
上条「すまねぇ……吹寄」
殴られた吹寄が宙を舞うその瞬間だけ、スローモーションの様にゆっくりと流れる。
そして、地面にたたきつけられたその時。
―――バギン
上条「・・・は?」
それは、上条のよく聞きなれた「異能の力を破壊した」時に起きる、独特の破裂音。
それが吹寄の体からした。
上条「なん……で...?」
名無し「やはりな」チャ
上条「!?」
上条はそう意味深な言葉を吐いた名無しの方を見る。
すると、今まさに名無しは吹寄に向かって銃を撃たんとしていた。
上条「っんのぉ――――!!」ダッ
名無し「ふむ」バン
思い切り地面をけり、その勢いのまま倒れていた吹寄を庇う上条。
なんとか吹寄に弾が当たる事は防げたが、代わりに上条は右足の脹脛に一発食らってしまった。
上条「っ痛―――」
名無し「まさかいきなり殴るとは思わなかったよ。わざわざ異能の力では無いと言っておいたのにな。
保険を掛けておいて正解だった」
上条「どういうことだ!?」
名無し「まず初めに一つ訂正をしよう。彼女の洗脳は科学の力等ではない」
上条「なに?」
名無し「なに、深く考える必要などない。
至極簡単な事、現行の科学力では人の心を完全に制御するなど不可能なのだよ」
上条「まさかてめぇ、能力を使って……!」
名無し「そうだ。学園都市の中には精神操作系能力者などいくらでもいる。
別に完全に操れなくとも良い。少し心に方向性を加えるだけでよいのだ。
それぐらいならば低能力者でも十分できる」
上条「くっ……!」
上条は心の中で舌打ちをしながら自分の右手と気絶している吹寄を交互に見る。
殴られた吹寄が宙を舞うその瞬間だけ、スローモーションの様にゆっくりと流れる。
そして、地面にたたきつけられたその時。
―――バギン
上条「・・・は?」
それは、上条のよく聞きなれた「異能の力を破壊した」時に起きる、独特の破裂音。
それが吹寄の体からした。
上条「なん……で...?」
名無し「やはりな」チャ
上条「!?」
上条はそう意味深な言葉を吐いた名無しの方を見る。
すると、今まさに名無しは吹寄に向かって銃を撃たんとしていた。
上条「っんのぉ――――!!」ダッ
名無し「ふむ」バン
思い切り地面をけり、その勢いのまま倒れていた吹寄を庇う上条。
なんとか吹寄に弾が当たる事は防げたが、代わりに上条は右足の脹脛に一発食らってしまった。
上条「っ痛―――」
名無し「まさかいきなり殴るとは思わなかったよ。わざわざ異能の力では無いと言っておいたのにな。
保険を掛けておいて正解だった」
上条「どういうことだ!?」
名無し「まず初めに一つ訂正をしよう。彼女の洗脳は科学の力等ではない」
上条「なに?」
名無し「なに、深く考える必要などない。
至極簡単な事、現行の科学力では人の心を完全に制御するなど不可能なのだよ」
上条「まさかてめぇ、能力を使って……!」
名無し「そうだ。学園都市の中には精神操作系能力者などいくらでもいる。
別に完全に操れなくとも良い。少し心に方向性を加えるだけでよいのだ。
それぐらいならば低能力者でも十分できる」
上条「くっ……!」
上条は心の中で舌打ちをしながら自分の右手と気絶している吹寄を交互に見る。
394: ゴミ箱 2012/03/16(金) 01:54:22.64 ID:4nn6VYca0
名無し「だが、それでは君に洗脳が解除される恐れがあった。
君は男女平等にグーパンチをかましているらしいのでな。
だから彼女にはある一つの保険を掛けておいたのだよ」
上条「それが身体能力強化の副作用って分け……か」
名無し「ご名答だよ。中々に理解力があるな」
上条「ふざけんじゃねぇ!!」
そういって上条は立ち上がり、名無しに向き直る。
それだけで右足がズキンと痛む。右足以外にも体の各所にかすり傷を負っている。
それが地味にだが、確実に上条の体力を削っている。
名無し「さぁ、君は彼女を守りながら戦えるか……?」チャ
上条「くそっ!」
名無しは吹寄の洗脳が解けたとして、
その後は上条の足枷となるように体の自由を奪う副作用を持つ身体能力向上薬を吹寄に飲ませていた。
もし吹寄が目覚めたとして、動けない体の吹寄。
上条の性格を考えれば、これ以上に無い足枷である。
動かなければ蜂の巣。動けば吹寄が危機に晒される。まさに、見えぬ抑止力。
状況は絶対的に不利、絶望的なまでの窮地。
上条(考えろ……!この状況をなんとか……)
両者の間の距離はたった10m前後。なにかきっかけがあればいい。
何か気を逸らすことができれば……
名無し「残念だが、打開策など無い。さぁ、終わりだ」
上条(くそ!なにか、なにかあるはずだ!!)
トリガーに指をかける名無し。
その間も、必死にこの状況の打開策を探し続ける上条。
地面を見、壁を見、天井から吹寄の体。隅々まで見渡した。
その果てに、上条はある事に気づく。
君は男女平等にグーパンチをかましているらしいのでな。
だから彼女にはある一つの保険を掛けておいたのだよ」
上条「それが身体能力強化の副作用って分け……か」
名無し「ご名答だよ。中々に理解力があるな」
上条「ふざけんじゃねぇ!!」
そういって上条は立ち上がり、名無しに向き直る。
それだけで右足がズキンと痛む。右足以外にも体の各所にかすり傷を負っている。
それが地味にだが、確実に上条の体力を削っている。
名無し「さぁ、君は彼女を守りながら戦えるか……?」チャ
上条「くそっ!」
名無しは吹寄の洗脳が解けたとして、
その後は上条の足枷となるように体の自由を奪う副作用を持つ身体能力向上薬を吹寄に飲ませていた。
もし吹寄が目覚めたとして、動けない体の吹寄。
上条の性格を考えれば、これ以上に無い足枷である。
動かなければ蜂の巣。動けば吹寄が危機に晒される。まさに、見えぬ抑止力。
状況は絶対的に不利、絶望的なまでの窮地。
上条(考えろ……!この状況をなんとか……)
両者の間の距離はたった10m前後。なにかきっかけがあればいい。
何か気を逸らすことができれば……
名無し「残念だが、打開策など無い。さぁ、終わりだ」
上条(くそ!なにか、なにかあるはずだ!!)
トリガーに指をかける名無し。
その間も、必死にこの状況の打開策を探し続ける上条。
地面を見、壁を見、天井から吹寄の体。隅々まで見渡した。
その果てに、上条はある事に気づく。
395: ゴミ箱 2012/03/16(金) 01:55:05.65 ID:4nn6VYca0
上条「……?」
それは、たった 0,数秒の世界の事。
偶然天窓から差し込む月明かりが名無しの体を照らし瞬間。
その一瞬、一瞬だが、上条は見た。
名無しの体の各所から、血が滲み出ているのを。
今までは薄暗い中で、しかも名無し自身黒い服を着ていたので分からなかったが、
明るい光に照らされた一瞬だけ、はっきりと分かった。
体中から血がにじみ出ているのを。
それは何処か、土御門が魔術を使ったときの反動にも似ていた。
それを見た上条は、一瞬で思考する。
今までの名無しの言動、攻撃、仕草など、様々な点を。
そうして上条は、ある一つの答えにたどり着く。
今の名無しは「ほぼ行動不能状態である」と。
名無しの今の体の状態を起点にして、一瞬で浮かび上がった名無しの行動の疑問点。
なぜわざわざ接近した上条を吹寄に迎撃させたのか。
なぜ吹寄の洗脳が解けると分かっていて上条の行動を阻止しようとしなかったのか。
なぜ名無しは一歩も動こうとしていないのか。
それら全てを消化した結果であった。
なぜそんな状態に陥っているか等は分からない。
だが、そうと分かればやる事は一つ。
上条「ふん!」ブン
名無し「なに...」
上条は、自分の懐に在った携帯電話を名無しに投げた。
名無し「くっ……!」バン
名無しはそれをキャッチしようとはせず、銃で撃ち落とした。
上条(かかった!!)
それは上条の予想通りの行動であった。
もし体を自由に動かすのが困難な状態ならば、飛んでくるものをキャッチする事は極力避ける筈。
持ち前の銃で打ち落とすだろう、と。
かくして名無しは上条を撃つタイミングを逃し、自ら自分が行動不能だという事を露呈した。
上条はこの絶好の機会を逃す事はしない。
それは、たった 0,数秒の世界の事。
偶然天窓から差し込む月明かりが名無しの体を照らし瞬間。
その一瞬、一瞬だが、上条は見た。
名無しの体の各所から、血が滲み出ているのを。
今までは薄暗い中で、しかも名無し自身黒い服を着ていたので分からなかったが、
明るい光に照らされた一瞬だけ、はっきりと分かった。
体中から血がにじみ出ているのを。
それは何処か、土御門が魔術を使ったときの反動にも似ていた。
それを見た上条は、一瞬で思考する。
今までの名無しの言動、攻撃、仕草など、様々な点を。
そうして上条は、ある一つの答えにたどり着く。
今の名無しは「ほぼ行動不能状態である」と。
名無しの今の体の状態を起点にして、一瞬で浮かび上がった名無しの行動の疑問点。
なぜわざわざ接近した上条を吹寄に迎撃させたのか。
なぜ吹寄の洗脳が解けると分かっていて上条の行動を阻止しようとしなかったのか。
なぜ名無しは一歩も動こうとしていないのか。
それら全てを消化した結果であった。
なぜそんな状態に陥っているか等は分からない。
だが、そうと分かればやる事は一つ。
上条「ふん!」ブン
名無し「なに...」
上条は、自分の懐に在った携帯電話を名無しに投げた。
名無し「くっ……!」バン
名無しはそれをキャッチしようとはせず、銃で撃ち落とした。
上条(かかった!!)
それは上条の予想通りの行動であった。
もし体を自由に動かすのが困難な状態ならば、飛んでくるものをキャッチする事は極力避ける筈。
持ち前の銃で打ち落とすだろう、と。
かくして名無しは上条を撃つタイミングを逃し、自ら自分が行動不能だという事を露呈した。
上条はこの絶好の機会を逃す事はしない。
396: ゴミ箱 2012/03/16(金) 01:58:05.79 ID:4nn6VYca0
上条「うぉおおおお!!」ダッ
名無し「ちぃ!!」チャ
上条「おせえ!!」
上条は痛む右足を極力使用せず、左足一本、たった一歩で名無しの懐まで踏み込む。
名無しは上条を負いきれず、銃の有効射程距離の内側に侵入を許してしまった。
名無し「くっ...!?」ガク
名無しは後ろに跳ぼうと考えたのか、地面を軽く蹴った。
だが、それが裏目に出た。
後ろに軽く飛んだあと、名無しは自らの体重を支える事ができずに、転倒してしまった。
二人の間には再び2m程度の間が空く。
その間に、壁は無い。
上条「てめぇだけは……」グッ
名無し「くっ...!!」
上条「許さねえ!!」ダッ
そういい、上条が名無しに向かって踏み込む。
両者を隔てる物は何もない。なにも無かった筈だった、が。
カチ
上条が踏み込むと同時。地面から、なにかスイッチが入ったような音が聞こえた。
上条「!?」
名無し「かかったか」
上条は恐る恐る下をみる。すると、そこにあった物は...
只<チワーッス
上条「なっ...」カッ
薄暗い倉庫内を、一瞬にして閃光が満たす。
そして、耳を塞いでも聞こえる程の爆音が、上条を起点に響き渡った...
397: ゴミ箱 2012/03/16(金) 01:58:33.51 ID:4nn6VYca0
――同時刻 とある倉庫の外
そこには、季節に合わずアロハシャツを着、サングラスをかけた金髪の男と、
黒ずくめのフードに身を隠した者が四人、対峙していた。
土御門「お前ら……どこのもんだ?」
魔術師A「それを答える義務はない」
魔術師B「もちろん、ここを退く義務もな」
土御門「へっ……なら、俺にはそこを通る権利があるんだが?」
魔術師C「ならば証明しろ」
魔術師D「その権利とやらをな」
土御門(チッ、こいつは面倒な事になったにゃー)
焦りながらも、どこか落ち着いている土御門。それもそのはずだ。
こいつらは見ただけでわかる程の弱魔術師。所謂「モブ」と言う奴だ。
確かに四人もいて厄介だが、手を出さなければ問題はない。
土御門がここに到着した時点で、天草式の面々を応援として呼んである。
少しでも時間稼ぎをすれば十分。事を急いでも何も変わらない。
彼らしい考え方である。
だが、その余裕は一瞬でかき消される。
ドン!!
一瞬の閃光と爆音が倉庫の方からした。
土御門「なに!?」
魔術師A「どうした……?」
魔術師B「慌てるな」
魔術師C「なにがあっても結果は変わらない」
魔術師D「結局はあいつが全て終わらせる...」
まるで何かを崇拝するかのように呟いていく魔術師達。
一体あの倉庫でなにが起きているのか。
土御門はまだ、それを把握する事ができなかった...
そこには、季節に合わずアロハシャツを着、サングラスをかけた金髪の男と、
黒ずくめのフードに身を隠した者が四人、対峙していた。
土御門「お前ら……どこのもんだ?」
魔術師A「それを答える義務はない」
魔術師B「もちろん、ここを退く義務もな」
土御門「へっ……なら、俺にはそこを通る権利があるんだが?」
魔術師C「ならば証明しろ」
魔術師D「その権利とやらをな」
土御門(チッ、こいつは面倒な事になったにゃー)
焦りながらも、どこか落ち着いている土御門。それもそのはずだ。
こいつらは見ただけでわかる程の弱魔術師。所謂「モブ」と言う奴だ。
確かに四人もいて厄介だが、手を出さなければ問題はない。
土御門がここに到着した時点で、天草式の面々を応援として呼んである。
少しでも時間稼ぎをすれば十分。事を急いでも何も変わらない。
彼らしい考え方である。
だが、その余裕は一瞬でかき消される。
ドン!!
一瞬の閃光と爆音が倉庫の方からした。
土御門「なに!?」
魔術師A「どうした……?」
魔術師B「慌てるな」
魔術師C「なにがあっても結果は変わらない」
魔術師D「結局はあいつが全て終わらせる...」
まるで何かを崇拝するかのように呟いていく魔術師達。
一体あの倉庫でなにが起きているのか。
土御門はまだ、それを把握する事ができなかった...
407: ゴミ箱 2012/03/19(月) 20:17:42.25 ID:Ydf4GKjU0
~上条邸~
上条が目覚めた頃、丁度ローラと御坂妹が家に到着していた。
ローラ「ただいま~」
御坂妹「ただいまとミサカはしれっと自分の家アピールをします」
凍える体にとりあえず暖を取るべく、上条の部屋に行く二人。
外に上条がいなかったから、部屋にいる筈だ。
ローラはいち早く上条に会いたかった。
いきなり逃げた事等、自分の気持ちに蹴りをつける為に。
ローラ「あら…当麻がいない...?」ガチャ
だが、上条の姿は家の何処にもなかった。
御坂妹「どうしたのでしょうとミサカは心配になります」
ローラ「それに、他の者たちも帰ってきてないわね...」
それどころか、いまだにキャーリサらも帰ってきていないようだ。
ローラ(これは一体、どういう事……?)
確かにキャーリサ達が帰ってきていない事も気がかりだが、
何より不信なのは上条も一緒にいないと言うところ。
別にこの時間になにか出かける用があるとも思えない。
元々ここに集まってきた者達は、全員が平和な表世界とは少しずれた者たちだ。
そんな者たちが一斉に消えるなんて事、普通はありえない。
つまり、今この状況は普通ではない。
御坂妹「おや…?あれはなんでしょうとミサカは指を立てます」
ローラ「ん?」
御坂妹が指を指す方向。
そこにはベットがあり、誰もいない筈なのに少し盛り上がっていた。
上条が目覚めた頃、丁度ローラと御坂妹が家に到着していた。
ローラ「ただいま~」
御坂妹「ただいまとミサカはしれっと自分の家アピールをします」
凍える体にとりあえず暖を取るべく、上条の部屋に行く二人。
外に上条がいなかったから、部屋にいる筈だ。
ローラはいち早く上条に会いたかった。
いきなり逃げた事等、自分の気持ちに蹴りをつける為に。
ローラ「あら…当麻がいない...?」ガチャ
だが、上条の姿は家の何処にもなかった。
御坂妹「どうしたのでしょうとミサカは心配になります」
ローラ「それに、他の者たちも帰ってきてないわね...」
それどころか、いまだにキャーリサらも帰ってきていないようだ。
ローラ(これは一体、どういう事……?)
確かにキャーリサ達が帰ってきていない事も気がかりだが、
何より不信なのは上条も一緒にいないと言うところ。
別にこの時間になにか出かける用があるとも思えない。
元々ここに集まってきた者達は、全員が平和な表世界とは少しずれた者たちだ。
そんな者たちが一斉に消えるなんて事、普通はありえない。
つまり、今この状況は普通ではない。
御坂妹「おや…?あれはなんでしょうとミサカは指を立てます」
ローラ「ん?」
御坂妹が指を指す方向。
そこにはベットがあり、誰もいない筈なのに少し盛り上がっていた。
408: ゴミ箱 2012/03/19(月) 20:18:09.63 ID:Ydf4GKjU0
ローラ「なにかしら」テクテク ガバ
ローラ「!? こ、この子……」
御坂妹「姫神……さん?とミサカは驚愕しながら呼びます」
ローラがめくった布団の下には、学園都市に帰った筈の姫神の姿があった。
恐らく、御坂妹と一緒に残ったのだろう。
家に帰る途中の話では、
三人でいた筈がいつのまにか御坂妹だけになってしまい、他の二人は行方しれずだった筈。
それが、なぜここにいるのか。
姫神「うぅ……」
そんな事を考えていると、姫神が何かを話そうとしていた。
ローラ「大丈夫?」
姫神「ふ…ふき……」
どうやらまだ起きているわけでは無い様子。
ローラ「ふき……?」
御坂妹「もしや、吹寄さんの事ではありませんかとミサカは回答を補助します」
姫神「だめ……それ以上...」
御坂妹「夢を見ているのでしょうかとミサカは予測します」
ローラ「随分うなされているわね」
改めて見ると、ひどく汗をかいている。
別に熱があるわけでもなさそうだし、なにか病気にかかっている訳でも無いと思える。
姫神「上条くん……がぁ...」
ローラ「!!」
御坂妹「なぜ上条さんの名前がとミサカは少々混乱します」
姫神「う……」
姫神の寝言(?)はそこで途絶えてしまった。
いきなり姫神の口から発せられた上条の名。ローラは思う。
それは単に、夢の中に出てきたからだとか、そんな単純な理由ではない気がする、と。
もし夢の中に出てきたとして、うなされる程の夢に一体どんな風に出てきたのか。
そして、吹寄に対して発せられたであろう「ダメ、それ以上」とは何を指しているのか。
どうにも単なる夢ではない気がする。
ローラは何か、ただならぬ嫌な予感に体を支配されていた。
ローラ「!? こ、この子……」
御坂妹「姫神……さん?とミサカは驚愕しながら呼びます」
ローラがめくった布団の下には、学園都市に帰った筈の姫神の姿があった。
恐らく、御坂妹と一緒に残ったのだろう。
家に帰る途中の話では、
三人でいた筈がいつのまにか御坂妹だけになってしまい、他の二人は行方しれずだった筈。
それが、なぜここにいるのか。
姫神「うぅ……」
そんな事を考えていると、姫神が何かを話そうとしていた。
ローラ「大丈夫?」
姫神「ふ…ふき……」
どうやらまだ起きているわけでは無い様子。
ローラ「ふき……?」
御坂妹「もしや、吹寄さんの事ではありませんかとミサカは回答を補助します」
姫神「だめ……それ以上...」
御坂妹「夢を見ているのでしょうかとミサカは予測します」
ローラ「随分うなされているわね」
改めて見ると、ひどく汗をかいている。
別に熱があるわけでもなさそうだし、なにか病気にかかっている訳でも無いと思える。
姫神「上条くん……がぁ...」
ローラ「!!」
御坂妹「なぜ上条さんの名前がとミサカは少々混乱します」
姫神「う……」
姫神の寝言(?)はそこで途絶えてしまった。
いきなり姫神の口から発せられた上条の名。ローラは思う。
それは単に、夢の中に出てきたからだとか、そんな単純な理由ではない気がする、と。
もし夢の中に出てきたとして、うなされる程の夢に一体どんな風に出てきたのか。
そして、吹寄に対して発せられたであろう「ダメ、それ以上」とは何を指しているのか。
どうにも単なる夢ではない気がする。
ローラは何か、ただならぬ嫌な予感に体を支配されていた。
409: ゴミ箱 2012/03/19(月) 20:18:57.37 ID:Ydf4GKjU0
ローラ「御坂妹さん、少し、この子を見ていて下さらないかしら?」
御坂妹「えぇ、いいですが貴方はどうするのですかとミサカは疑問を口にします」
ローラ「少し外に出ているだけよ」
そういってローラはそそくさと部屋をでていってしまった。
御坂妹「一体どうしたのでしょうとミサカは首をかしげます」
姫神「んぅー...」
御坂妹「とりあえず姫神さんの介抱でもしましょうかとミサカは袖をたくしあげます」グィ
姫神「あぁ……」
御坂妹「大丈夫です、私がついていますよとミサカは宥めるように言います」
姫神「い、妹さん死んじゃだめぇ……」
御坂妹「………」
まったくもって本当にどんな夢を見ているのか、御坂妹は気になって仕方がなかった。
424: ゴミ箱 2012/03/21(水) 20:40:51.71 ID:D8BAwt/T0
ローラ「はぁ、はぁ」タッタッ
街灯の無い道を、長い髪をはためかせながら走るローラ。
彼女が走る道を照らす物はただ、月明かりだけ。
今のローラの表情は、とても優れたものではない。
ローラ(当麻……)
ローラは焦っていた。
以前の自分がみれば、信じられないと笑う程に。
彼女の心中にある、ただ一人の男の姿。
イギリス清教の最大主教と言う名の鎧を捨て、自分の本心と向き合ったローラは、
ただこの男。上条当麻の事を思い、焦り、不安に駆られていた。
ローラ(絶対に……絶対に無事でいて、当麻!!)
そんなローラはなにも、当てもなく駆け回っている訳ではない。
自分のこの最大主教と言う「立場」をフルに活用し、上条が何処にいるかを調べてみた。
そうしたらば、今現在キャーリサ達共々大変な事になっていると言う情報と共に、
土御門が上条のいる場所に向かったという情報も入った。
キャーリサ達の事もきになる。が、とにかく今は上条の事が気がかりだ。
つまり、土御門の情報だけが頼りだった。
ローラ「たしか、こっちだったかしら」クル
少し走った所、突き当りにぶつかり方向を変えたローラ。
と、丁度その時。
ローラ(……?)
ローラが方向を変えた時、遠くの方で何かが光った気がする。
それだけではない。普通だったら気のせいにする程小さな音だが、爆発音もした気がする。
ローラ(間違いない、あっちに土御門が……当麻がいる!?
じゃぁ、今の光は……まさか...!)prrr
ローラの携帯が鳴る。
このタイミングでかかってきたという事は、恐らく土御門であろう。
街灯の無い道を、長い髪をはためかせながら走るローラ。
彼女が走る道を照らす物はただ、月明かりだけ。
今のローラの表情は、とても優れたものではない。
ローラ(当麻……)
ローラは焦っていた。
以前の自分がみれば、信じられないと笑う程に。
彼女の心中にある、ただ一人の男の姿。
イギリス清教の最大主教と言う名の鎧を捨て、自分の本心と向き合ったローラは、
ただこの男。上条当麻の事を思い、焦り、不安に駆られていた。
ローラ(絶対に……絶対に無事でいて、当麻!!)
そんなローラはなにも、当てもなく駆け回っている訳ではない。
自分のこの最大主教と言う「立場」をフルに活用し、上条が何処にいるかを調べてみた。
そうしたらば、今現在キャーリサ達共々大変な事になっていると言う情報と共に、
土御門が上条のいる場所に向かったという情報も入った。
キャーリサ達の事もきになる。が、とにかく今は上条の事が気がかりだ。
つまり、土御門の情報だけが頼りだった。
ローラ「たしか、こっちだったかしら」クル
少し走った所、突き当りにぶつかり方向を変えたローラ。
と、丁度その時。
ローラ(……?)
ローラが方向を変えた時、遠くの方で何かが光った気がする。
それだけではない。普通だったら気のせいにする程小さな音だが、爆発音もした気がする。
ローラ(間違いない、あっちに土御門が……当麻がいる!?
じゃぁ、今の光は……まさか...!)prrr
ローラの携帯が鳴る。
このタイミングでかかってきたという事は、恐らく土御門であろう。
425: ゴミ箱 2012/03/21(水) 20:41:29.95 ID:D8BAwt/T0
ローラ「土御門!!」
土御門『最大主教、厄介な事に――「当麻は!?」
土御門『落ち着いて下さい、最大主教』
ローラ「今どうなっているの?」
土御門『たった今、上条当麻がいるはずの倉庫が爆発しました。
倉庫に接近しようとしましたが、現在4人の魔術師に阻まれました。
天草式が到達するまで接近は困難です』
ローラ「なっ……爆発って」
上条のいる倉庫が爆発した。
一瞬にして頭が真っ白になっていくローラ。
ローラ「そんな……当麻が……」
土御門『まだ上条の身になにかあったと決まったわけでもない。
とりあえず倉庫に接近できなければ話になりませんから、
最大主教もくるなら早く来てください』
それだけ言うと、電話は切れてしまった。
土御門の方から一方的に切ったようだ。
ローラ「くぅ……」ダッ
今にも爆発しそうな程の感情を胸に抱き、声にならない悲鳴を上げて、
走り出すローラ。
彼女の願いはただ一つ。 それは、上条との再会。
それもただの再会ではなく、笑って抱き合えるような。そんな、再会だ。
土御門『最大主教、厄介な事に――「当麻は!?」
土御門『落ち着いて下さい、最大主教』
ローラ「今どうなっているの?」
土御門『たった今、上条当麻がいるはずの倉庫が爆発しました。
倉庫に接近しようとしましたが、現在4人の魔術師に阻まれました。
天草式が到達するまで接近は困難です』
ローラ「なっ……爆発って」
上条のいる倉庫が爆発した。
一瞬にして頭が真っ白になっていくローラ。
ローラ「そんな……当麻が……」
土御門『まだ上条の身になにかあったと決まったわけでもない。
とりあえず倉庫に接近できなければ話になりませんから、
最大主教もくるなら早く来てください』
それだけ言うと、電話は切れてしまった。
土御門の方から一方的に切ったようだ。
ローラ「くぅ……」ダッ
今にも爆発しそうな程の感情を胸に抱き、声にならない悲鳴を上げて、
走り出すローラ。
彼女の願いはただ一つ。 それは、上条との再会。
それもただの再会ではなく、笑って抱き合えるような。そんな、再会だ。
426: ゴミ箱 2012/03/21(水) 20:42:13.88 ID:D8BAwt/T0
土御門「ふぅ……」ピッ
土御門「まったく、相変わらず最大主教とは話したくないな。
敬語疲れるにゃ~」
建宮「おいおい、なに呑気な事いってんのよ」
土御門「お、もう終わったか」
建宮「当たり前なのよ。あんな青二才共、俺一人で十分なのよな」
持ち前のフランベルジェを肩に掛けながら言う建宮。
彼の背後には、四人の魔術師が倒れていた。
建宮「それよりも、早くいかなくて良いのか?」
土御門「ああ、もう少しまて」
建宮「いいのか?上条当麻にもしもの事があったら……」
土御門「かみやんは頑丈だから大丈夫だぜい? それに」
建宮「それに……?」
土御門「もう少し焦らした方が面白くなるからにゃー」
建宮「?」
土御門「まったく、相変わらず最大主教とは話したくないな。
敬語疲れるにゃ~」
建宮「おいおい、なに呑気な事いってんのよ」
土御門「お、もう終わったか」
建宮「当たり前なのよ。あんな青二才共、俺一人で十分なのよな」
持ち前のフランベルジェを肩に掛けながら言う建宮。
彼の背後には、四人の魔術師が倒れていた。
建宮「それよりも、早くいかなくて良いのか?」
土御門「ああ、もう少しまて」
建宮「いいのか?上条当麻にもしもの事があったら……」
土御門「かみやんは頑丈だから大丈夫だぜい? それに」
建宮「それに……?」
土御門「もう少し焦らした方が面白くなるからにゃー」
建宮「?」
431: ゴミ箱 2012/03/22(木) 00:09:30.70 ID:xNInyE/70
ここはどこだろう
なにもない
だ
真っ暗
あぁ……すごく、 心地が
い
い
だけど
すごく
き も ち が わ る い
432: ゴミ箱 2012/03/22(木) 00:10:35.20 ID:xNInyE/70
―――――――……て!
聞こえる
―――――――………めよ!
声が
―――――――――――上条!!
これは………
上条「はっ……」
吹寄「上条!!!」
上条「吹……寄...?」
吹寄「よかった…!!」
上条「どうした……痛ッ!」
吹寄「だめ、まだ動いちゃ!」
上条「体中がいてぇ……一体どうなって...ゑ?」チラ
吹寄「……!」ハッ
吹寄「だめよ!みたらだめ!!」
上条「はは……なぁ、なんだよこれ...」
なにが起こったのか、そんな事はまだわからない
上条「なんで・・・」
だが、それでも一つだけ理解できた
上条「なんで俺の足……ないんだよ...」
あるべきはずの場所に、あるべき物が無い
吹寄「だめ……みたら、だめえぇぇ...」
吹寄、なんでお前が泣いてるんだ
上条「はは・・・はははは」
なんでお前は、うごけるんだ?
上条「なんだよこれ……どうなってんだよ」
なぜ、俺のまわりにはなにもないんだ
上条「なん・・・で・・・」
そこで少年の意識はまた、閉ざす。
自らの精神を防衛するため、海よりも深く、深く深く深く。
どこまでも、深く。もぐりこむ。
もはや、起きる事など二度とないと言わんばかりに。
一体なにがあったのか。 時は少し、ほんのすこしだけ遡る。
聞こえる
―――――――………めよ!
声が
―――――――――――上条!!
これは………
上条「はっ……」
吹寄「上条!!!」
上条「吹……寄...?」
吹寄「よかった…!!」
上条「どうした……痛ッ!」
吹寄「だめ、まだ動いちゃ!」
上条「体中がいてぇ……一体どうなって...ゑ?」チラ
吹寄「……!」ハッ
吹寄「だめよ!みたらだめ!!」
上条「はは……なぁ、なんだよこれ...」
なにが起こったのか、そんな事はまだわからない
上条「なんで・・・」
だが、それでも一つだけ理解できた
上条「なんで俺の足……ないんだよ...」
あるべきはずの場所に、あるべき物が無い
吹寄「だめ……みたら、だめえぇぇ...」
吹寄、なんでお前が泣いてるんだ
上条「はは・・・はははは」
なんでお前は、うごけるんだ?
上条「なんだよこれ……どうなってんだよ」
なぜ、俺のまわりにはなにもないんだ
上条「なん・・・で・・・」
そこで少年の意識はまた、閉ざす。
自らの精神を防衛するため、海よりも深く、深く深く深く。
どこまでも、深く。もぐりこむ。
もはや、起きる事など二度とないと言わんばかりに。
一体なにがあったのか。 時は少し、ほんのすこしだけ遡る。
446: ゴミ箱 2012/03/22(木) 15:34:45.29 ID:xNInyE/70
只<チワーッス
上条「なっ...」カッ
薄暗い倉庫内を、一瞬にして閃光が満たす。
耳をふさいでもまだ足りない程の爆音が倉庫内に響き渡る。
そして...
上条「」
名無し「ふむ……まぁ、なんとか予定通りか」
まるで、何事も無かったかのように立ち上がった名無し。
上条を起点とし、名無しの目の前には扇状に「破壊の跡」があった。
天井と壁はもろく吹っ飛び、地面には焦げた跡が付いている。
名無し「まったく、君は恐ろしいな。
私がもしもの時の為に仕掛けておいたクレイモアを使う羽目になるとはね」
つまりは、一番最悪なシナリオの保険。 クレイモア。
内部には複数の鉄球が入っており、それを爆発物を用いて飛ばす。
その鉄球は扇状に跳び、最大加害距離は約250m、有効加害距離は約50m程。
名無し「まさか私の撃つ弾をことごとく避け、彼女を催眠から解き、
瞬時に私のこの身体状況を把握するとはね」
名無しはそういいながらも、銃を構える。
狙いは勿論、上条の「頭」。
名無し「それにしても……君は本当に不幸体質なのか?
まさかクレイモアを受けて尚、まだ息があるとはな」
名無しの言うとおり、上条はまだ生きていた。
僅かだが肩が上下している。息をしている証拠だ。
名無し「見た所、クレイモアの真上にいたおかげで鉄球の被害を最小限に抑えたか。
だが……その足だけはどうにもならなかったようだな」
足
クレイモアの真上にいたおかげか、確かに扇状に広がる鉄球はよけれた。
だが、それは体全体を見たらの話。完全によけれた分けではない。
これもまた真上にいたせいか、爆散した鉄球が集中して上条の足に降り注いだ。
結果……上条の両足は、膝から下がとても見れたものではなくなってしまっていた。
名無し「さて……独り言はこれ位にして。今度こそ……終わりだ」チャ
名無しがトリガーに指を掛ける。
躊躇などしない。ただ、まっすぐに……撃つ。
だが、その手は動かない。動くことができなかった。
上条「なっ...」カッ
薄暗い倉庫内を、一瞬にして閃光が満たす。
耳をふさいでもまだ足りない程の爆音が倉庫内に響き渡る。
そして...
上条「」
名無し「ふむ……まぁ、なんとか予定通りか」
まるで、何事も無かったかのように立ち上がった名無し。
上条を起点とし、名無しの目の前には扇状に「破壊の跡」があった。
天井と壁はもろく吹っ飛び、地面には焦げた跡が付いている。
名無し「まったく、君は恐ろしいな。
私がもしもの時の為に仕掛けておいたクレイモアを使う羽目になるとはね」
つまりは、一番最悪なシナリオの保険。 クレイモア。
内部には複数の鉄球が入っており、それを爆発物を用いて飛ばす。
その鉄球は扇状に跳び、最大加害距離は約250m、有効加害距離は約50m程。
名無し「まさか私の撃つ弾をことごとく避け、彼女を催眠から解き、
瞬時に私のこの身体状況を把握するとはね」
名無しはそういいながらも、銃を構える。
狙いは勿論、上条の「頭」。
名無し「それにしても……君は本当に不幸体質なのか?
まさかクレイモアを受けて尚、まだ息があるとはな」
名無しの言うとおり、上条はまだ生きていた。
僅かだが肩が上下している。息をしている証拠だ。
名無し「見た所、クレイモアの真上にいたおかげで鉄球の被害を最小限に抑えたか。
だが……その足だけはどうにもならなかったようだな」
足
クレイモアの真上にいたおかげか、確かに扇状に広がる鉄球はよけれた。
だが、それは体全体を見たらの話。完全によけれた分けではない。
これもまた真上にいたせいか、爆散した鉄球が集中して上条の足に降り注いだ。
結果……上条の両足は、膝から下がとても見れたものではなくなってしまっていた。
名無し「さて……独り言はこれ位にして。今度こそ……終わりだ」チャ
名無しがトリガーに指を掛ける。
躊躇などしない。ただ、まっすぐに……撃つ。
だが、その手は動かない。動くことができなかった。
447: ゴミ箱 2012/03/22(木) 15:35:39.79 ID:xNInyE/70
名無し「なっ……!?」
名無しは目を疑った。
だれだって自分の目が正常に機能しているのか疑うだろう。
なぜならば、足をもがれ、生命維持が困難になっていた筈の上条が……
たった!!
上条『・・・』
名無し(どうなっている……!?
確かにこいつの足は使い物にならない筈……)
名無しは再び上条の足を見る。
名無し(なんだ……あれは。光が集まって……足を作っている?
いや、そもそもあの光はなんだ?一体どこからでている!?)
上条『・・・』スッ
無言のまま、名無しに向けて右手を突きだす上条。
その目には、光も何もない。暗闇が広がっていた。
名無し(意識がないのか……?なにをするつもり―――
様々な疑問を膨らませている名無しは、その思考を途中で辞めさせられる。
上条の右手から、直視できぬほどの「光」が押し寄せてきたからだ。
名無し「くっ……!?」
何とか右に前転することで回避した名無し。
名無しの身体状況は上条が予想していた通り、走る事すらままならないような物。
先ほどこけたのは演技でもなんでもない。
そんな状態での前転など、体に負担がかからない筈がない。
上条『・・・』ユラァ
名無し「あれはたしか…… 竜王の殺息!!」
閃光は一瞬で止んだが、それこそ一瞬で判別できた。
あんな物、この世界に二つと存在しない。見間違えるはずもなかった。
名無し(どういうことだ、これは!)
上条はまたもこちらに右手を向けている。もう一度放つだろう。
名無し(くっ……まさか、命の危機に反応して発動したのか...奴の〟中〝が)
上条『・・・』パァァ
名無し(とにかく、ここ方退避せねば……あれは直線攻撃。
運がよければまだ撤退の余地はあるはずだ)
そう思い、名無しは急いで走る準備をする。
448: ゴミ箱 2012/03/22(木) 15:37:18.66 ID:xNInyE/70
名無し「避難地区……解除」ピン
名無しが懐で何かをしたのか、軽く何かが弾ける音がした。
すると、次の瞬間。
名無しの体から何かが解かれるかのように、衝撃波が起きた。
名無し(よし、これで後は逃げるだけ……?)
上条『・・・』グィ
名無し(なっ……手を上に掲げて……まさか!!)
上条は右手を真上に掲げる。
それと同時に、上空に無数の赤い槍の様な物が出現した。
名無し「『硫黄の雨は大地を焼く』だとぉ!?」
上条『・・・』ブン
上条が掲げた右手を振り下ろす。それと同時に、無数の槍は地面に降り注ぐ。
それは、容赦なく地上を「一掃」する――――
倉庫跡から約400m地点
土御門「なっ……あれはまさか」
建宮「間違いねぇ、『竜王の殺息』なのよな!!」
土御門「チッ!これはまずいな。まさかこんな事になるとは思わねぇって!」
建宮「そもそもこれは恋愛小説の筈なのよな。仕方ねえ事」
建宮「……?おい、あれはなんだ」
土御門「あれは…槍?...!!」
建宮「知ってるか?」
土御門「『硫黄の雨は大地を焼く』だ。まさに「必殺」って言葉が似合う魔術だ!」
建宮「とりあえず、俺らで止めるしかないのよ!!」ダッ
土御門(正直行きたくないにゃ~……トホホ)ダッ
上条『・・・』ブン
名無し「くる……か」
恐らく、上条が放ったと思われる槍が降り注ぐ。
名無し「終わりか...」
最早名無しには、避けようなどと言う考えはなかった。
そんな物意味をなさない。
男が女子更衣室に間違って入って弁解をしようとするほど、無意味。 意味は無い。
名無し「・・・!」
無言のまま立ち尽くす名無し。
その名無しの視線に入ったのは、たった一つ。
449: ゴミ箱 2012/03/22(木) 15:37:48.80 ID:xNInyE/70
吹寄だった。
恐らく、伏せていたからか。先ほどのクレイモア地雷に当たらなかったのだろう。
無傷だった。それが今、上条の攻撃により危機にさらされている。
名無しは確かに冷酷だ。命令とあらば誰でも殺す。
情など無い。命令でなくとも、危険因子と自己判断した者は、消す。
だが、それ以外は普通の人間だ。誰でも無差別に殺して何も感じない分けがない。
今回は単に吹寄が上条にとっての良い障害だったから利用しただけ。
何も殺そう等とは考えていなく、逆に生きて返してやりたいくらいだ。
つまり……
名無し「やらせるわけにはいかん!!」バンバン
名無しは無駄ろうと思いつつも、上条に向けて発砲する。
案の定、弾は全て上条の手前で全て落ちた。弾かれた等ではなく、「落ちた」
なんらかの特殊な『領域』でもあるのか、攻撃は全て防がれてしまうようだ。
つまり、上条の周囲は安全。
名無し「うぉおおおお!!」ダッ
名無しは謎の領域をかすめるようにして上条の脇を通り越し、吹寄の元へと向かう。
吹寄はいまだに意識不明の様だ。だが、かえって好都合だ。抵抗される恐れが無い。
名無し「ふん!!」ブン
抱き上げた吹寄を、間髪入れることなく上条の元へと投げる。
またも吹寄の体はそのまま飛ぶことなく、落ちた。叩きつけるわけでもなく、落ちる。
名無し「さて……これでいいか」
名無しは頭上を見上げる。すると、もう槍は目前に迫っていた。
名無し「……」
今から上条の元へ行こうとしても、もう遅いだろう。
名無しは何をするわけでもなく、目を閉じた...
453: ゴミ箱 2012/03/22(木) 21:30:11.26 ID:xNInyE/70
吹寄「うぅ……」
上条が名無しを倒すために、全てを薙ぎ払ったのと同時に、吹寄は目覚める。
目に入ったのは、丁度槍が降り注ぎ、上条が同時に倒れこむ光景。
吹寄「え……?」
まず最初に、なんだこれは。と、そんな漠然とした疑問しか浮かばない。
ここはどこだ?自分は何をしていた?そして……なにこれ、と。
なにがなんだか分からない。
とりあえず、なぜか倒れている上条を起こしてみよう。そう思い、上条の体を見る。
吹寄「ちょっと、起きなさい……よ、上……条...?」
なにかがおかしい。なぜ、上条の足が無い。
吹寄「え・・・ちょ、上条?」
上条「」
吹寄「ねぇ・・・ねぇったら!上条!!おきて!!」
吹寄「うそ……だめ!死んじゃだめぇ!!」
吹寄の脳裏によぎる、「死」
自分がいままで居た世界では考えられなかった筈なのに……なのに、意外とすんなりと分かった。
もしかしたら、上条は死んでしまうのではないか? と。
今分からない事はいっぱいある。なぜここにいるのか。
いったいどうなってるのか、まったくわからない。
だけれど、そんな事よりもなによりも……今は上条の事しか考えられない。
吹寄「上条!!」
すがりつくように叫ぶ。そして……
454: ゴミ箱 2012/03/22(木) 23:40:15.86 ID:xNInyE/70
そして時は再び、時は上条が眠った頃に戻る。
吹寄「うぅ……ひっぐ」
眠り込む上条に縋り付くようにして泣きじゃくる吹寄。
吹寄「どうしたら……いいのぉ...?」グス
土御門「さて、かみやんは眠ったか」
建宮「さすがにやばいのよな、これは」
吹寄「あれ……つちみか…ど?なんでここに」
土御門「おおっと、目覚めたばっかりで悪いが、少し眠ってもらうぜい?」プシュ
吹寄「ぇ……ちょっとまちな…さ...」パタ
土御門「無針注射だにゃー。さて、建宮にはこいつを運んでもらうか」
建宮「上条の方はいいのか?」
土御門「これぐらいなら大丈夫だ。足の一本や二本、学園都市なら再生できるぜい?」
建宮「・・・冗談に聞こえねえのよな」
土御門「まぁ安心しろって。とりあえずそいつは先に学園都市に運んでくれ」
建宮「上条の方はどうするんだ?」
土御門「こっちは簡単に送る分けにはいかない。少し応急処置をした上で送る」
建宮「わかった。じゃ、先にいってるのよ」
土御門「頼む」
そういうと建宮は、フランベルジェを脇に刺し、吹寄をお姫様だっこをして走り去っていった。
土御門「さて……そろそろ来る頃か」
土御門がそう言いながら、建宮が去って行った方向とは逆の方を見る。
すると、そっちから長い金髪を揺らしながら、ローラが走ってきた。
455: ゴミ箱 2012/03/22(木) 23:41:38.94 ID:xNInyE/70
土御門「最大主教」
ローラ「土御門!当麻は!?」
土御門「ここに」
土御門は右手で上条の方を指す。
そこには、かろうじて息はしているものの、今にも事切れてしまいそうな上条がいた。
ローラ「と……とうま...?」
ローラは土御門の指示した方を恐る恐る辿る。そして、上条を見た瞬間。
魂が抜けてしまったかのように崩れ落ちてしまった。
ローラ「う……嘘でしょぅ...?ねぇ当麻ぁ……とう…まぁ...」
ローラはそのまま、上条にすがりより、上条をだきしめる。
それを見たまま、土御門は淡々と告げる。
土御門「最大主教、決断をしろ」
ローラ「な……なによ」
土御門「上条当麻は助かる。今すぐに学園都市に連れて行けばな」
ローラ「ほ、本当に!?」
土御門「あぁ」
土御門がそういってすぐに、遠くからヘリの音がし始めた。
恐らく、上条がこうなっていると予測して、初めから呼んでいたのだろう。
ローラ「なら早く当麻を!」
土御門「勿論そうする。上条は……かみやんだけは絶対に死なせたりはさせないからな」
土御門「俺が聞きたいのはそこじゃない。最大主教。いや、ローラ=スチュワート。
お前はこれからどうするつもりだ?」
ローラ「私が……?」
土御門が敬語を使わなかったりお前とかいったりとすさまじい無礼をしているが、
どうやらローラは気づいていないようだ。
土御門「かみやんはこれから学園都市に連れて行く。だがお前はどうする?
かみやんと一緒に行くか?ここにとどまるか?」
ローラ「勿論当麻と一緒に――「最大主教がか?」
ローラ「―――ッ!!」
土御門「お前は仮にもイギリス清教の最大主教だ。
学園都市に行く等、そう簡単じゃない事位自分でもわかるだろう」
土御門がそう言う間に、ヘリは土御門の丁度真後ろに到着した。
乗務員と見られる者が、多数出てきた。
ローラ「土御門!当麻は!?」
土御門「ここに」
土御門は右手で上条の方を指す。
そこには、かろうじて息はしているものの、今にも事切れてしまいそうな上条がいた。
ローラ「と……とうま...?」
ローラは土御門の指示した方を恐る恐る辿る。そして、上条を見た瞬間。
魂が抜けてしまったかのように崩れ落ちてしまった。
ローラ「う……嘘でしょぅ...?ねぇ当麻ぁ……とう…まぁ...」
ローラはそのまま、上条にすがりより、上条をだきしめる。
それを見たまま、土御門は淡々と告げる。
土御門「最大主教、決断をしろ」
ローラ「な……なによ」
土御門「上条当麻は助かる。今すぐに学園都市に連れて行けばな」
ローラ「ほ、本当に!?」
土御門「あぁ」
土御門がそういってすぐに、遠くからヘリの音がし始めた。
恐らく、上条がこうなっていると予測して、初めから呼んでいたのだろう。
ローラ「なら早く当麻を!」
土御門「勿論そうする。上条は……かみやんだけは絶対に死なせたりはさせないからな」
土御門「俺が聞きたいのはそこじゃない。最大主教。いや、ローラ=スチュワート。
お前はこれからどうするつもりだ?」
ローラ「私が……?」
土御門が敬語を使わなかったりお前とかいったりとすさまじい無礼をしているが、
どうやらローラは気づいていないようだ。
土御門「かみやんはこれから学園都市に連れて行く。だがお前はどうする?
かみやんと一緒に行くか?ここにとどまるか?」
ローラ「勿論当麻と一緒に――「最大主教がか?」
ローラ「―――ッ!!」
土御門「お前は仮にもイギリス清教の最大主教だ。
学園都市に行く等、そう簡単じゃない事位自分でもわかるだろう」
土御門がそう言う間に、ヘリは土御門の丁度真後ろに到着した。
乗務員と見られる者が、多数出てきた。
456: ゴミ箱 2012/03/22(木) 23:42:50.06 ID:xNInyE/70
ローラ「くっ……でも!!」
土御門「でも……どうするつもりだ?その権限を使って無理やりにでも行くか?
残念だが今回はそれは無理だ」
ローラ「な、なぜ!?」
土御門「☆直々に命令が下っている。内容はこうだ」
土御門「上条当麻を事実上拉致したイギリス清教の最大主教を学園都市に入れるな。
接近した場合は打ち落として構わない、とな」
ローラ「ぐっ……アレイスターめ、なんのつもりで!」
土御門(嘘だけど)
そうこうしている間に、乗務員は上条をヘリに収容し終わったようだ。
最後に一人だけ、ローラに一礼した。
土御門「さぁ……どうするつもりだ?時間は無いぞ」
ローラ「わ、私は……」
上条は自分にとってなんなのか...それに気づいた。それだけで十分か………?
いや、満足はしないだろう。だが、今の自分ではどうする事もできない。
ローラ「―――いや」
土御門「………」
ローラ「私は……当麻と共に生きたい!!」
土御門「たとえ死んでも……か?」
ローラ「だって……私は、当麻を……当麻...」
そのままへたり込んでしまうローラ。
ヘリのパイロットが土御門に急げと指示をしている。
恐らく、これ以上グダグダしていては危険なのだろう。
ローラ(一体……どうしたら……)
あらゆる事を考えるローラ。
最初は自分の事最大主教という立場を使い、無理やりついていく等簡単だと思っていた。
だが、☆直々に厳戒態勢が敷かれているとなれば、話は別。
ここまで自分が無力だと思ったことは今までになかっただろう。
ローラ(最大主教の名が聞いて呆れるわね...)
ここにきて、この立場が本当に憎たらしいと思うローラ。
ローラ「……立ち……場...?」
土御門「………」ニヤ
ローラ「そう……そうだわ……そうよ!」
土御門(ようやく分かったか)
ローラ「土御門、私はいくわよ」
土御門「いいのかにゃ~?最大主教は学園都市にはいれないんだぜい?」ニヤニヤ
ローラ「そう、最大主教はね……」
土御門曰く、この時のローラには一切の迷いはなかったと言う。
457: ゴミ箱 2012/03/22(木) 23:43:52.52 ID:xNInyE/70
「私は、最大主教を辞退する!!!」
458: こんな時に改行ミスるとか俺死ね 2012/03/22(木) 23:46:37.00 ID:xNInyE/70
土御門(相変わらず言い方が古いな……ま、でも)
土御門「よし、ならもういいな?いくぞ!」
ローラ「へ……あ、ちょ、ちょっとまちたれよ、土御門!!」
そうしておてんばローラは完全に最大主教と言う拘束を脱ぎ捨て、
イギリスを後にするのであった...
土御門「よし、ならもういいな?いくぞ!」
ローラ「へ……あ、ちょ、ちょっとまちたれよ、土御門!!」
そうしておてんばローラは完全に最大主教と言う拘束を脱ぎ捨て、
イギリスを後にするのであった...
477: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:10:44.05 ID:dIOK0Kl80
それぞれの様子
―――学園都市―――
上条が学園都市に帰還してから二週間が経った。
季節は冬。
秋の色は完全に消え去り、外は何処を見てもカップr……あぃや、冬色に染まっている。
そんな中。早朝のとある病院の一室に彼らは居た。
カエル「―――――今日付けで退院できる筈だよ」
土御門「本当かにゃ~?」
カエル「うん。ただし、日常生活に戻るためにはしばらくリハビリが必要だろうね?」
土御門とカエル顔の医者が話ている傍には、一人の少年がベットの上で眠っていた。
体の所々に包帯をまかれ、足にはこれでもかとまでに包帯がまかれ、
その上にギブスでがちがちに固められていた。
土御門「まさか本当に回復するとは……カミやん、とうとう人間をやめたか」
カエル「確かにこの少年の回復力は常人を逸しているが、どちらにせよ当たり前な事だね?
僕はもう、絶対にこの少年に負ける分けにいかない」
カエル顔の医者が見下ろすのは、イギリス帰りで速攻病院にシュゥゥゥーッ!!された上条だ。
上条が病院に到着した時日本は丁度真昼だったからか、大した混乱は起こらなかった。
にしても病院側の対応はそれはそれは素晴らしかったんだとか。
思わず土御門は突っ立ったままその流れる様な動きに見とれてしまったらしい。
カエル「うちの常連さんだからね?」
土御門「カミやんにも同情するにゃ~・・・」
カエル「するだけ無駄だろうがね?
さ、とりあえず僕はこれで失礼するよ。君も早く出て行ってくれたまえ」
土御門「今回ばっかりはそうさせてもらうとするぜい。ばいばいにゃーカミやん」
そう言って二人は病室を後にする。
土御門「ふぅー……ってもうこんな時間だと!?子萌先生を泣かせる分けにはいかないぜよ!
さっさといかねぇと―――」
そのまま病院を走り去ろうと思っていた土御門は、ロビーの所で不意に立ち止まる。
見知った顔がいたからだ。
478: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:12:01.91 ID:dIOK0Kl80
土御門「おやおや~?こんな所でなにしてるんですたい、ねーちん」
神裂「土御門ですか……」
ロビーに居たのは、椅子に座っていた神裂だった。
どことなく疲れているようだが、土御門はそんな事知らんといった感じで話かける。
土御門「まっさかーやっぱりカミやんの事が気になってるんじゃ――「そ、そんな事ありませんよ!?」バッ
土御門「分かったからねーちんその刀をしまうぜよ!!」
神裂「へ?あ、申し訳ありません」グイ
土御門「ってもっと突きつけられてるんですけどぉ!?ねーちんそれはまずいぜよ!!」
神裂「はぁ……もう良いです」スッ
土御門「ふぅ……で~?なにしにきたんですかねーかんざーきさーん?」ニヤニヤ
神裂「……上条当麻のお見舞いです。それ以外なんでもありませんよ」
土御門「こんな時にまでお見舞いとは、さすがねーちん抜かりないにゃ~」
神裂「元はと言えば貴方のせいでこうなったのでしょう!?」
神裂「最大主教の交代なんて許されるはずがありません!それを勝手に!!」
土御門「あれは別に俺じゃなくて元最大主教の決断だ。なにも問題はない」
神裂「しかし!」
土御門「それともなんだ?もしかしてこれで自由にあの女がカミやんと
一緒にいれるってんで妬いてるのか?くぅ~...ッハハハハハハ!!!
さっすがねーちんは乙女だ……ってなんでまた刀を構えてるんですか
ここは病院だから流血はまずいって流血はぎゃあああああああぁぁぁ....
本日ここにもう一人の患者が生まれた瞬間であった。
ちなみに子萌先生はしっかりと欠席した土御門に対して泣きましたとさ。
479: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:12:55.73 ID:dIOK0Kl80
~常盤台中学校女子寮~
御坂&黒子の部屋
携帯[・・・]
御坂「まだかしら………」ソワソワ
携帯[・・・]
御坂「あ~もう!昼休み終わっちゃうじゃないのよ!!」ソワソワ
そう一人で悶絶するは、ベットの上で正座をしている御坂美琴である。
彼女の目の前には、以前上条とお揃いで手に入れたゲコ太のストラップがついたケータイが一つ。
携帯[そげぶ!!そげぶ!!]ブーブー
御坂「!!」ピッ
御坂「は、はひ!みみみみみさきゃでしゅけど!!」
御坂「・・・は?」
御坂「あーはい、わかりました。伝えておきますー」ピッ
御坂「PC部品の発注キャンセルですってぇ~……?」プルプル
御坂「だあああああああああ!!くぅぅううううろこおおおおおおお!!」
風紀委員第一七七支部
黒子「!!」ビクン
初春「どうしました?白井さん」
黒子「なぜだか黒子に死期が近づいている気がしますの...」
初春「?」
480: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:14:35.47 ID:dIOK0Kl80
御坂「……んっもう!!こうなったらとことん待ってやるわ!」
携帯[・・・]
御坂「………」
携帯[・・・]
御坂「・・・」イライラ
携帯[・・・]
御坂「~~~~!!!」プルプル
携帯[・・・]
御坂「っこんのぉ……!」
携帯[・・・]
御坂「さっさとかかってこいやああ!!」バチバチ!
携帯[そげぶ!!そげぶ!!]ブーブー
御坂「はいもしもし御坂でしゅ!!」ピッ
カエル『あー御坂美琴君かな?』
御坂「はい!はいそうです!!」
カエル『今日彼は退院できると判断したから、明日からリハビリを始めるよ』
御坂「明日からですか!」
カエル『うん。という事で、明日からきてくれるかな?』
御坂「いいともぉ!!」
カエル『では日時等は前に言った通りだから。遅れずにくるようにね?』
御坂「はい、はい!!ありがとうございました!!」ピッ
御坂「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
寮監「なにがきたって?御坂美琴ぉ!!」バンッ
御坂「ひっ!?」
寮監「もうすでに昼は終わっているぞ?なのに貴様はなぜここにいるんだろうなぁ?」
御坂「そそそそそれはあのーほら、ふかーい訳があって...」
寮監「そうか。ならば、その訳というのを聞いてやらんとなぁ」
御坂「そ、そうです!是非聞きましょう!」
寮監「あわてるな。まずは貴様にたっぷりと規則の重さというものの重さを教えてからだ……なぁ?」バキ、ボキ
御坂「ひぃ・・・いやあ、ここ、こないdひいいいいいいいいいいいいい!!」
普段荘厳としている女子寮の中に、一人の少女の悲鳴が響き渡ったのであった。
481: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:16:13.78 ID:dIOK0Kl80
―――イギリス―――
イギリス清教女子寮内食堂
恐らく、この女子寮内に居るであろう全ての人間が集っていた。(神裂を除く)
アニェーゼ「さぁ、今日はいよいよ我らが新最大主教就任式典ですからね!
気合入れて望んじまってください!」
シスター達「ねぇねぇ、前の最大主教って駆け落ちしたんでしょ?」「やだ、本当!?」
「ありえないってー!だって〝あの〟最大主教よ?」「それがそれが、相手はあの……」
「嘘!?本当に?」「良いわよねー、私達だって奪ってってほしいわよー」 ザワザワ
アニェーゼ「ちょ、ちょっと静かn――「じゃあ神裂も今学園都市に行ってるって事!?」ザワザワ
アニェーゼ「私の――「なんで私達もいけないの~!!」ザワザワ
アンジェレネ「シスタールチア、修道女は結婚してもよろしいのでしょうか?」
ルチア「あたりまえでしょう、アンジェレネ。私達は神に仕える身なのですから」
アンジェレネ「そうですか……では、元最大主教はもう結婚できるんでしょうか?」
ルチア「なぜです?」
アンジェレネ「だって、もう修道女ではないのでしょう?違うのですか?」
ルチア「!!」
シェリー「どうした?『しまった』って顔してるぜ~?」グイ
ルチア「な、なぜ私がそんな顔をしなければならないのですか!///」
シェリー「どうせあれだろ?上条と同居してたのはシスターだから出し抜かれないとか考えてたんじゃねえの?」ニヤニヤ
オルソラ「まぁ、ルチアさんもお盛んなのでございますよ」
ルチア「ってオルソラさんまで!どうしてそうなるのですか!?」
アニェーゼ「~~~~~!!!」プルプル
この後アニェーゼが泣きながら叫び続けてたのは言うまでもない。
482: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:17:36.37 ID:dIOK0Kl80
――同イギリス 英国王室内――
ヴィリアン「さて、ドレスの着付けはこれぐらいでいいでしょうか」
ヴィリアン「今日の式典にウィリアム様も出席すると聞いては、着付けは一人でやらねば!」グッ
ヴィリアン(って思いっきり大きな声で言ってしまいました...お、お姉さまは聞いていないでしょうか?)チラ
キャーリサ「はぁ……」ズーン
ヴィリアン「ちょ、姉さま!?なんでまだパジャマなんですか!」
キャーリサ「うぅ……軍事とかもうそんなの違うし、私なんてただの雌だし~」
ヴィリアン「言ってる事よくわかりませんよ!体育座りなんてどっかの高校生みたいなことしてないで、
早く支度をしなきゃ式典に間に合いませんよ~!!」ググゥ
キャーリサ「聖ジョージ大聖堂にとじこめられた私なんて王女でもなんでもないし、
式典に出る必要もないの~~」
ヴィリアン「まだそれを引きずってるんですか!?もーお姉さまらしくありませんよぉ!」グイグイ
キャーリサ「うぅ……」
ヴィリアン(よっぽどショックだったんでしょうか……心も体もぴくりとも動きません)
サーシャ「ぅー……」ガチャ
ヴィリアン「あ、サーシャちゃん。今起きたの?」
サーシャ「第一の回答ですが、その通りです。今何時でしょうか?」
ヴィリアン「もう八時ですよ。早く支度しないとサーシャちゃんも式典におくれちゃいますよ?」
サーシャ「そ、それは早くしなければなりませんね」
ヴィリアン「いつもは早起きなサーシャちゃんがこんな時間に起きるなんて、何かあったの?」
サーシャ「第二の回答ですが、昨日はキャーリサ様を寝るまで励ましていたので……」
ヴィリアン(お姉さまぁぁぁあああ!?)
キャーリサ「はぁ……」イジイジ
この後、騎士団長とエリザードが殴り込みに来るのだが、それはまた別の話...
483: ゴミ箱 2012/03/26(月) 01:21:00.22 ID:dIOK0Kl80
I am Alpha and Omega.
the beginning and the end.
the first and the last.
終了。
493: ゴミ箱 2012/03/26(月) 23:59:36.98 ID:dIOK0Kl80
―――再び学園都市―――
時計の針は12を指している。丁度昼時だ。
上条の病室には神裂がいた。
神裂「体調の方はどうでしょうか?」
上条「もう大分良くなってるよ。ただ、これ以上入院生活をつづけたら上条さんはどうにかなってしまいそうですよ...」
神裂「それも今日までなのでしょう?」
上条「そうなんだけど、この足はまだリハビリをしないと使えないらしいからな」
神裂「その……あの時は、本当に申し訳ありませんでした...」
上条「いやいやいや、なんで神裂があやまってんの」
神裂「なんでと言われましても……私達はまた貴方を危険と言うレベルでは済まされない事に巻き込んでしまいましたから...」
上条「うーん、今回のは巻き込まれたって言うか、俺が原因じゃないか?神裂達がどうこうってのはちょっとちがう気がするな」
神裂「それもそうですが……」
上条「それに結果的に俺はこうして生きてるわけだし。もう過ぎたことはやめにしようぜ」
神裂「そうですね……やはり、貴方はやさしい御方です...」ボソ
上条「ん?なんか言ったか?」
神裂「い、いえ!なんにも言ってません!あ、こここれ、林檎です」サッ
上条「お、サンキュー。ありがたくいただくぜ。……ってこれ、もしかしてあの刀で切ったのか...?」
神裂「七天七刀の事ですか?はい、そうですが……何か?」
上条「いえ、なんでもないですよホホホホホ」
上条(血の付いた刀で切ったんだなんて言ったらわざわざ包丁買ってきてここで切ったりしかねないからな)
神裂「おや、失礼」prrrr
上条「んー構わないぞー」
時計の針は12を指している。丁度昼時だ。
上条の病室には神裂がいた。
神裂「体調の方はどうでしょうか?」
上条「もう大分良くなってるよ。ただ、これ以上入院生活をつづけたら上条さんはどうにかなってしまいそうですよ...」
神裂「それも今日までなのでしょう?」
上条「そうなんだけど、この足はまだリハビリをしないと使えないらしいからな」
神裂「その……あの時は、本当に申し訳ありませんでした...」
上条「いやいやいや、なんで神裂があやまってんの」
神裂「なんでと言われましても……私達はまた貴方を危険と言うレベルでは済まされない事に巻き込んでしまいましたから...」
上条「うーん、今回のは巻き込まれたって言うか、俺が原因じゃないか?神裂達がどうこうってのはちょっとちがう気がするな」
神裂「それもそうですが……」
上条「それに結果的に俺はこうして生きてるわけだし。もう過ぎたことはやめにしようぜ」
神裂「そうですね……やはり、貴方はやさしい御方です...」ボソ
上条「ん?なんか言ったか?」
神裂「い、いえ!なんにも言ってません!あ、こここれ、林檎です」サッ
上条「お、サンキュー。ありがたくいただくぜ。……ってこれ、もしかしてあの刀で切ったのか...?」
神裂「七天七刀の事ですか?はい、そうですが……何か?」
上条「いえ、なんでもないですよホホホホホ」
上条(血の付いた刀で切ったんだなんて言ったらわざわざ包丁買ってきてここで切ったりしかねないからな)
神裂「おや、失礼」prrrr
上条「んー構わないぞー」
494: ゴミ箱 2012/03/27(火) 00:00:22.82 ID:7Lo07t6z0
神裂「はい、もしもし」ピッ
神裂「……えぇ、そうですが」
神裂「ちょ、ちょっとなんでそうなるんですか!///」
上条「?」
神裂「うぐぅ……はい、わかりました。失礼します」ピッ
上条「すげぇ慌ててたな、誰からだ?」
神裂「建宮からです」
上条「(呼び捨てェ……)で、何の用だったんだ?」
神裂「それが、これから急いでイギリスに戻らなければいけなくなりまして……」
上条「ふーん……ってこれから!?いくらなんでも急すぎじゃねぇか?」
神裂「貴方も知っているでしょう?今日なにがあるか」
上条「あれって神裂も出席すんの?あれに出席すんのってかなり偉い人とかだけじゃなかったっけ」
神裂「いえ、私は出席するのではなくて新最大主教の護衛をするのだそうです。
なんでも、先ほど差出人不明の犯行予告が送られたそうで……」
上条「それでか……確かに、神裂が護衛に付いたらもう手出しできなさそうだもんな」
神裂「そ、それはどういうことでしょうか……?」
上条「だって神裂強いしな。聖人ってだけで戦う気起きないだろ」
神裂「そうですか……はぁ...」ショボーン
上条「?」
神裂「とにかく、私はこれでいきます。どうぞ、お大事に」ペコリ
上条「おう、またなー」バタン
上条「ふぅ……これでまた暇になったか。一応学校は出席停止になってるからいいけど……話し相手ぐらい欲しいな」
御坂妹「では私が話相手にでもなりましょうかとミサカはひょっこり現れます」
上条「うぉ!?って御坂妹か。びっくりしたー」
神裂「……えぇ、そうですが」
神裂「ちょ、ちょっとなんでそうなるんですか!///」
上条「?」
神裂「うぐぅ……はい、わかりました。失礼します」ピッ
上条「すげぇ慌ててたな、誰からだ?」
神裂「建宮からです」
上条「(呼び捨てェ……)で、何の用だったんだ?」
神裂「それが、これから急いでイギリスに戻らなければいけなくなりまして……」
上条「ふーん……ってこれから!?いくらなんでも急すぎじゃねぇか?」
神裂「貴方も知っているでしょう?今日なにがあるか」
上条「あれって神裂も出席すんの?あれに出席すんのってかなり偉い人とかだけじゃなかったっけ」
神裂「いえ、私は出席するのではなくて新最大主教の護衛をするのだそうです。
なんでも、先ほど差出人不明の犯行予告が送られたそうで……」
上条「それでか……確かに、神裂が護衛に付いたらもう手出しできなさそうだもんな」
神裂「そ、それはどういうことでしょうか……?」
上条「だって神裂強いしな。聖人ってだけで戦う気起きないだろ」
神裂「そうですか……はぁ...」ショボーン
上条「?」
神裂「とにかく、私はこれでいきます。どうぞ、お大事に」ペコリ
上条「おう、またなー」バタン
上条「ふぅ……これでまた暇になったか。一応学校は出席停止になってるからいいけど……話し相手ぐらい欲しいな」
御坂妹「では私が話相手にでもなりましょうかとミサカはひょっこり現れます」
上条「うぉ!?って御坂妹か。びっくりしたー」
495: ゴミ箱 2012/03/27(火) 00:00:55.28 ID:7Lo07t6z0
御坂妹「お久しぶりですとミサカは一週間ぶりの対面に心躍らせながら挨拶します」
上条「いつ帰ってきたんだ?」
御坂妹「丁度さっきです。イギリス時間で午後6時頃に出発しましたのでとミサカは懇切丁寧に説明します」
上条「そうか。確か、一週間前から新最大主教就任式典とかってのの手伝いでイギリスに行ってたんだよな」
御坂妹「はい、ミサカだけではなく世界中の妹達が手伝いに行きましたとミサカは補足します」
上条「でもなんだって妹達が手伝いに行ったんだ?別に普通の人でいいだろ」
御坂妹「聞いていませんか?これは元最大主教である彼女たっての希望だったそうです」
上条「元最大主教って……」
御坂妹「ローラさんですとミサカは先に言います」
上条「ローラ……」
御坂妹「何故ミサカ達が呼ばれたかはミサカ達にもわかりませんとミサカは真意を話します」
上条「そうか……」
御坂妹(そういえば、ローラさんがイギリスに向かったのは丁度一週間前、しかもミサカよりも早くにでしたね...)
御坂妹「ところで、今日退院できると聞きましたが本当なのでしょうか?とミサカは小首を傾げて聞きます」
上条「あぁ、一応そうなってるけど実際はリハビリとかもあるからもうちょっと後だな」
御坂妹「そうですか……なら、そのリハビリに私も付き合いましょうかとミサカはしれっと爆弾発言をします」
上条「誘ってもらって悪いんだけどさ、なんかリハビリを手伝ってくれる奴はもう決まってるらしいんだよ」
御坂妹「そ、それはまさか彼女でしょうかとミサカは恐る恐る尋ねます
上条「なんか話によるとお前らのお姉さまだと」
御坂妹「ミサカのお姉さま……だと……!?」
上条「ど、どうした?」
御坂妹(糞、やられました!まさか先手を打っていたとは……!とミサカは心の中で壁を殴ります)ガン ガン
上条「おい、大丈夫か?」
御坂妹「はい、大丈夫ですとミサカは内心大焦りで答えます」
上条「(焦ってるんだ)そうか?まぁ、とにかく悪いな」
御坂妹「でも、上条さんはよろしいのですか?とミサカはなんとか突破口を開こうと試みます」
上条「あぁ、なんか最近あいつ感じ良いし。俺が目覚められたのもあいつのおかげらしいからな」
御坂妹「そ、それはどういう事でしょうとミサカは震えながら聞きます」
上条「なんか、俺が二週間前学園都市に帰ってきてから一週間意識不明だったのを、
御坂があの電気で目覚めさせてくれたらしいんだ」
御坂妹(そうだったのかとミサカは真実を知って壁を殴ります!!
しかも『御坂』っていつのまにか名前で呼んでる!!とミサカは悔しさを隠しきれずにリアルの壁を殴ります)ガン ガン
上条「お、おい何やってんだ……?」
御坂妹「ハッ!申し訳ありませんとミサカは慌てて謝罪します」
上条「まぁいいんだけど……なんか疲れてんのか?」
御坂妹「そうですね……今日はもう帰りますとミサカは戦略的撤退をします」
上条「おぅ、そうか」
御坂妹「では、ミサカはこれで失礼しますとミサカは名残惜しい気持ちを我慢しつつ撤退します」バタン
上条「おー……さって、これでまた一人ですか」
496: ゴミ箱 2012/03/27(火) 00:04:33.69 ID:7Lo07t6z0
御坂妹が去ってから、特に面会に来た人物もいなかった。
そのまま夜までずっと上条はボーっとしているしかなかった。
上条「………」
時刻は十二時。今日はどうやら雲一つない満天の星空のようだ。
月は……出ていない。窓から差し込む光は、外の街灯の物か。
病院の面会時間は既に過ぎており、それどころか消灯時間も余裕で過ぎている。
だが、上条は眠る事ができなかった。
どうにも誰かが来るような気がして、胸の高鳴りが抑えられずに眠る事ができなかったのだ。
例えるならば、遠足の前の日の夜の様な物か。
上条「……寝るか」
だが、誰かが来るなんてありえない。来たとして、まずここまで来れないだろう。
それを理解したのか、さっきまでの胸の高鳴りが嘘のように引いて行った。
上条「くそ……なんでこんなに……」
上条(寂しいんだ...)
胸にぽっかりと穴が空いたような虚無感。目覚めてからの一週間ずっと感じていた、満たされない感じ。
お見舞いに来た人は確かにいっぱいいた。
昼に来た神裂に御坂妹、五和に建宮に……そういえば御坂本人はきていなかった気がする。
土御門は毎日来ているらしいし、一回アニェーゼ部隊が全員で来たこともあった。
だが、それでも満たされない。何かが足りない。
上条「はぁ……」
それを埋める事は叶わぬまま、上条の意識は眠りにつくのであった……
497: ゴミ箱 2012/03/27(火) 00:06:11.02 ID:7Lo07t6z0
チュンチュン チュンチュン
上条「ん...んん...」モゾ
上条は、雀の囀りを目覚ましにして起きる。
上条(ねみぃ……ん?)
起きて早々に上条は、ある違和感を感じとった。なにか物が置いてあり、布団が突っ張っているような。うまくはぐことができない。
布団の中に完全にもぐりこんでしまった上条は、そのせいで起きる事が出来ない。
心当たりがない上条は、誰かがお見舞いでも置いていったのかと思った。
だが、まさか布団の上にお見舞いを置く人なんていないだろう。まったくもって分からない。
上条(仕方ない、面倒だけど布団から這い出ますかね~)モゾモゾ
枕がある方とは反対の方から布団を這い出た上条。そして、そのまま布団を抑えていた物体を見る。
上条「ったく、誰だよ人が寝てるっての…に……」
498: ゴミ箱 2012/03/27(火) 00:06:39.42 ID:7Lo07t6z0
それを見たとき、最初は夢かと思った。まだまだ自分は起きていないのだと。
だから頬を抓ってみた。だが、痛い。とても痛い。どんなに抓っても変わらない。
じゃあ、ただの見間違えか。起きたばかりでまだ目が正常に機能していないのか。
だから目を擦ってみた。だが、視界は鮮明になるばかり。自分の見ている視界は変わらなかった。
上条「は……はは……まさか」
ベットの上で四つん這いになりながら、〝彼女〟に近づいていく。
上条「本当に……」
ただただそっと、はやる心を抑えて近づく。
上条「本当に、お前なのか……?」
そして、とうとうたどり着く。手を少し出せば、もう届く。
「う……うぅーん...」
上条「は……ははは…本当に?嘘じゃない...?」
「なにかしr―――!!」
もう二度と会う事はないと思っていた。だからこそ、内心何処かであきらめがついていたのかもしれない。
(この時上条は知らなかった。自分が眠っていた一週間、ずっとそばに彼女がいたのを)
だからこそ、もうこのこみ上げる気持ちを抑えられなかった。
彼が語りかける言葉は一つ。
上条「お帰り……ローラ」ギュ
よく自分の所に帰ってきた、と。
ローラ「と……当麻ぁ...」ギュゥ
そして、二人は抱き合う
今までの分を全て取り返すように
そして、これからもずっと離さないと……そう誓うかのように...
527: ゴミ箱 2012/03/30(金) 01:42:27.31 ID:Qz8XKdhL0
長い事抱きしめあった後、一応病人である上条はベットに横になり、ローラはその横に座った。
以前、上条とローラは手を握り合っている。
上条「久しぶり……だな」
ローラ「えぇ……本当に、会いたかったわ。当麻...」
上条「今度は絶対に離さないからな」ギュ
ローラ「え……?」
上条「最後にあった時、逃げられっぱなしだったからな。やっぱり、日本語……治ってたんだな」
ローラ「騙していて、ごめんなさい……」
上条「なぁ、なんで黙ってたんだ?」
ローラ「そんなの、簡単よ...」
ローラ「だって、だって治ってしまったら、当麻と一緒に居られなくなってしまうでしょう...?」
上条「でも、最初に俺を家庭教師として呼んだのはローラなんだろ?」
ローラ「それは……」
上条「ん?」
ローラ「……そうね。当麻には、もう全てを話すわ」
上条「全てって……?」
ローラ「全て……よ。私が当麻を家庭教師と称して私の傍に居させた本当の目的」
上条「やっぱり、なんか裏があったのか……?」
ローラ「ない分けが無いでしょう?
私が何の理由も無しに科学側の、しかも学生を家庭教師にする理由がある?」
上条「まぁそりゃあそうだよな...」
上条(そうだ……若干忘れてたけど、ローラって〝あの〟魔術師達のリーダーだもんな。
なんの考えも無しに俺を家庭教師にしたりしないか……)
528: ゴミ箱 2012/03/30(金) 01:43:41.95 ID:Qz8XKdhL0
ローラ「私が当麻を家庭教師にしたのはね……当麻を私の傍に居させて、我が物にしようとしたからよ」
上条「我が物って……って、具体的に言うと...?」
ローラ「当麻を、私の夫として迎えようとしていたのよ」
上条「お、夫!? って結婚ですか!?」
ローラ「そうよ。当麻を私の夫とすることで、当麻はイギリスを離れる事ができなくなり、
私の言う事を嫌でも聞かなければならなくなるから」
上条「そうだったのか……」
ローラ「私と共に居させることで、私に惹かれさせようとした。
私は貴方と結婚をして、私の。ひいてはイギリス清教のいい手駒にしようとしたわ……」
上条「なぁ、やっぱりそれって……これの為なのか?」
ローラ「えぇ。もし貴方が幻想殺しを持ってなかったとしたら、貴方には興味も沸かなかったでしょうね」
ローラ「最初は、当麻じゃなくて……その右手が手に入れば十分だったのよ」
上条「そう……か。そうだよな...」
上条(はは……なんだ、結局俺はローラの思う壺だったって分けか)
もしローラの言う事が全て事実ならば、上条はローラの思い通りに動いていた事になる。
事実、ローラと一緒に居るのを悪くないと思い始め、あまつはかつてのインデックスと同じ立場となりつつあった。
共に居なければ、違和感さえ覚える関係に。
だが、それは全て、上条の思いこみだったのか……?
さっきローラの「会いたかった」等、全てが偽りだったのか……?
ローラ「でも、今は違うの」
上条「え……?」
ローラ「言ったでしょう? ずっと会いたかったって。私は、ずっと当麻と話がしたかった」
上条「俺と...?」
ローラ「………」コクリ
ローラ「私は、確かに最初は貴方のその右手を手に入れる為に行動をしてきた」
ローラ「でもね……途中から、おかしくなってきたのよ」
上条「おかしく……?」
ローラ「そう……なんだか、段々当麻自身の事ばかり考えるようになって、幻想殺し等の事は、忘れかけていたの...」
ローラ「当麻と一緒にいる毎日が心の底から本当にたのしくって、幸せに感じて」
ローラ「正直、他の事などどうでもよかったわね」
上条「ローラ……」
ローラ「貴方とずっと共にいれれば良いとさえも考えてしまった」
ローラ「だから、貴方がいなくなってしまうと思った時……どうしたら良いか分からなくって、逃げてしまった」
ローラ「でも、もう逃げないわ」ズイ
上条「な! ちょ、ちょっとローラ?」
上条「我が物って……って、具体的に言うと...?」
ローラ「当麻を、私の夫として迎えようとしていたのよ」
上条「お、夫!? って結婚ですか!?」
ローラ「そうよ。当麻を私の夫とすることで、当麻はイギリスを離れる事ができなくなり、
私の言う事を嫌でも聞かなければならなくなるから」
上条「そうだったのか……」
ローラ「私と共に居させることで、私に惹かれさせようとした。
私は貴方と結婚をして、私の。ひいてはイギリス清教のいい手駒にしようとしたわ……」
上条「なぁ、やっぱりそれって……これの為なのか?」
ローラ「えぇ。もし貴方が幻想殺しを持ってなかったとしたら、貴方には興味も沸かなかったでしょうね」
ローラ「最初は、当麻じゃなくて……その右手が手に入れば十分だったのよ」
上条「そう……か。そうだよな...」
上条(はは……なんだ、結局俺はローラの思う壺だったって分けか)
もしローラの言う事が全て事実ならば、上条はローラの思い通りに動いていた事になる。
事実、ローラと一緒に居るのを悪くないと思い始め、あまつはかつてのインデックスと同じ立場となりつつあった。
共に居なければ、違和感さえ覚える関係に。
だが、それは全て、上条の思いこみだったのか……?
さっきローラの「会いたかった」等、全てが偽りだったのか……?
ローラ「でも、今は違うの」
上条「え……?」
ローラ「言ったでしょう? ずっと会いたかったって。私は、ずっと当麻と話がしたかった」
上条「俺と...?」
ローラ「………」コクリ
ローラ「私は、確かに最初は貴方のその右手を手に入れる為に行動をしてきた」
ローラ「でもね……途中から、おかしくなってきたのよ」
上条「おかしく……?」
ローラ「そう……なんだか、段々当麻自身の事ばかり考えるようになって、幻想殺し等の事は、忘れかけていたの...」
ローラ「当麻と一緒にいる毎日が心の底から本当にたのしくって、幸せに感じて」
ローラ「正直、他の事などどうでもよかったわね」
上条「ローラ……」
ローラ「貴方とずっと共にいれれば良いとさえも考えてしまった」
ローラ「だから、貴方がいなくなってしまうと思った時……どうしたら良いか分からなくって、逃げてしまった」
ローラ「でも、もう逃げないわ」ズイ
上条「な! ちょ、ちょっとローラ?」
529: ゴミ箱 2012/03/30(金) 01:49:11.43 ID:Qz8XKdhL0
ローラは上条のベットに上に乗り、上条に限りなく近づく。
ローラ「私は……もう、当麻と離れたくない。気づいたのよ、この気持ちに」
ローラ「幻想殺しとか、イギリスの為だとか、そんな事はもういいの。ただ、私は貴方と一緒にいれればいい...」ギュ
ローラは、そのまま上条の胸に頭をうずくめる。
上条もそれを拒む事無く、そっと両腕でローラを包み込み、抱きしめる。
ローラ「だから……私はね」
上条「………」
ローラ「私は……」
再び顔を上げ、上条と対面するローラ。
お互いの距離は、ほぼ零距離。
ローラ「私は……貴方が好...ん――――――!!」
上条「………」ギュゥ
ローラがそれを言い終わる前に、上条がローラの唇を奪った。
それは、あまりにも唐突な物であり、ローラはまったく予想もしていなかった。
だが、心のどこかでそれを望んでいたのかもしれない。
一切抵抗することも無く、ローラはされるがまま、長い長い口づけを交わした。
上条「――――っはぁ」
ローラ「当……麻……? 今、なんで...」
上条「ったく、上条さんももう限界ですよ!」ガバァ!
ローラ「キャ! ちょ、ちょっと当麻!?///」
上条は、ベットの上で自身と同じように半起きになっていたローラを、無理やり押し倒した。
上条「俺だってずっとお前といたかったんだ! 二度と会えないかもしれないとかも思ったけども……」
上条「けど、それでもお前の事だけは忘れられなかったんだよ!!」
ローラ「とう……ま...」
上条「さっきお前が全部話してくれた時は、本当に悲しかった」
上条「やっぱり全部、俺の一方的な思い込みだとも思ったさ」
上条「でもその後、ずっと一緒にいたいって言ってくれた時は……正直、死ぬほど嬉しかった」
上条「だからってか……もう、俺も迷わない!」
ローラ「そ、それじゃぁ……」
上条「ったく。こんな所じゃなくて、もっとムードあるとこで言えよな……」
ローラ「うふふ……なにを?とーま♪」
ローラ「私は……もう、当麻と離れたくない。気づいたのよ、この気持ちに」
ローラ「幻想殺しとか、イギリスの為だとか、そんな事はもういいの。ただ、私は貴方と一緒にいれればいい...」ギュ
ローラは、そのまま上条の胸に頭をうずくめる。
上条もそれを拒む事無く、そっと両腕でローラを包み込み、抱きしめる。
ローラ「だから……私はね」
上条「………」
ローラ「私は……」
再び顔を上げ、上条と対面するローラ。
お互いの距離は、ほぼ零距離。
ローラ「私は……貴方が好...ん――――――!!」
上条「………」ギュゥ
ローラがそれを言い終わる前に、上条がローラの唇を奪った。
それは、あまりにも唐突な物であり、ローラはまったく予想もしていなかった。
だが、心のどこかでそれを望んでいたのかもしれない。
一切抵抗することも無く、ローラはされるがまま、長い長い口づけを交わした。
上条「――――っはぁ」
ローラ「当……麻……? 今、なんで...」
上条「ったく、上条さんももう限界ですよ!」ガバァ!
ローラ「キャ! ちょ、ちょっと当麻!?///」
上条は、ベットの上で自身と同じように半起きになっていたローラを、無理やり押し倒した。
上条「俺だってずっとお前といたかったんだ! 二度と会えないかもしれないとかも思ったけども……」
上条「けど、それでもお前の事だけは忘れられなかったんだよ!!」
ローラ「とう……ま...」
上条「さっきお前が全部話してくれた時は、本当に悲しかった」
上条「やっぱり全部、俺の一方的な思い込みだとも思ったさ」
上条「でもその後、ずっと一緒にいたいって言ってくれた時は……正直、死ぬほど嬉しかった」
上条「だからってか……もう、俺も迷わない!」
ローラ「そ、それじゃぁ……」
上条「ったく。こんな所じゃなくて、もっとムードあるとこで言えよな……」
ローラ「うふふ……なにを?とーま♪」
530: ゴミ箱 2012/03/30(金) 01:50:13.52 ID:Qz8XKdhL0
好 き だ ロ ー ラ
543: ゴミ箱 2012/04/02(月) 00:51:19.50 ID:Y4D1Wu4h0
―――とある病院―――
12月20日 火曜日 時刻は午前10時
今日は、上条当麻が晴れて退院する日である。
(退院と同時に足のリハビリが始まる為、実質まだ退院と言うわけではないのだが)
御坂「ふっふ~ん♪ やっとこの日が来たわね~」
御坂「今日から手取り足取りみっちりしごいてやるんだから!!」
しごいてどうするというツッコミは置いといて、御坂は今、上条の入院している病院に来て居る。
以前から予約していたらしい、上条の「リハビリの付添人」であるからだろう。
御坂「っと、とりあえずリアルゲコ太にあわなきゃいけないかしら……」
御坂「まぁ後でいっか。そんな事よりも早くあいつに会わなきゃね~」
御坂「今日私が来る事は知らない筈だし、きっと驚くだろなー......ふふっ♪」
御坂「い、嫌別に驚く顔が見たいとかそういうわけじゃないんけど」
一人ツンデレをしている間に、御坂は上条の部屋を発見する。
スライド式のドアの所に「上条様」と書かれたプレートが張られていた。
良く見ると透明なプラスチックに直に書かれており、それは固定され剥がせない事を示していた。
どうやらこの個室は上条専用の部屋の様だ。以前来た時は普通の病室だった筈だ。
病院に専用の個室を持つ気分とはどんな物だろうか。
そんな事を考えながらも、御坂は上条の部屋の前にたどり着く。
今まで何度も彼のお見舞いには来ていたが、今回はただのお見舞いではない。
面会時間外による突撃。
前々から計画していた、サプライズお見舞いだ。
(小心者の御坂にはこれが限界なのだ。大目に見てあげよう)
御坂(まだあいつは誰も来ないと思って油断しているだろうし、ここで思いっきり突撃すれば相当驚く筈よね!)
御坂(そして、突撃した後のドタバタに乗じてあいつとあんな事やこんな事……///)
御坂(よ、よし! いくわよ~!)バチバチ
御坂はドアの前にしゃがみ、そのまま右手で取っ手をつかむ。
両足に力を込めて、力強く蹴りだす準備をする。
御坂(このままドアを開くと同時に一気に……!!)
御坂「っせーの.......うぉおおりゃぁ……あ…………え?」ガラガラ
上条「!?」
ローラ「え……?」
12月20日 火曜日 時刻は午前10時
今日は、上条当麻が晴れて退院する日である。
(退院と同時に足のリハビリが始まる為、実質まだ退院と言うわけではないのだが)
御坂「ふっふ~ん♪ やっとこの日が来たわね~」
御坂「今日から手取り足取りみっちりしごいてやるんだから!!」
しごいてどうするというツッコミは置いといて、御坂は今、上条の入院している病院に来て居る。
以前から予約していたらしい、上条の「リハビリの付添人」であるからだろう。
御坂「っと、とりあえずリアルゲコ太にあわなきゃいけないかしら……」
御坂「まぁ後でいっか。そんな事よりも早くあいつに会わなきゃね~」
御坂「今日私が来る事は知らない筈だし、きっと驚くだろなー......ふふっ♪」
御坂「い、嫌別に驚く顔が見たいとかそういうわけじゃないんけど」
一人ツンデレをしている間に、御坂は上条の部屋を発見する。
スライド式のドアの所に「上条様」と書かれたプレートが張られていた。
良く見ると透明なプラスチックに直に書かれており、それは固定され剥がせない事を示していた。
どうやらこの個室は上条専用の部屋の様だ。以前来た時は普通の病室だった筈だ。
病院に専用の個室を持つ気分とはどんな物だろうか。
そんな事を考えながらも、御坂は上条の部屋の前にたどり着く。
今まで何度も彼のお見舞いには来ていたが、今回はただのお見舞いではない。
面会時間外による突撃。
前々から計画していた、サプライズお見舞いだ。
(小心者の御坂にはこれが限界なのだ。大目に見てあげよう)
御坂(まだあいつは誰も来ないと思って油断しているだろうし、ここで思いっきり突撃すれば相当驚く筈よね!)
御坂(そして、突撃した後のドタバタに乗じてあいつとあんな事やこんな事……///)
御坂(よ、よし! いくわよ~!)バチバチ
御坂はドアの前にしゃがみ、そのまま右手で取っ手をつかむ。
両足に力を込めて、力強く蹴りだす準備をする。
御坂(このままドアを開くと同時に一気に……!!)
御坂「っせーの.......うぉおおりゃぁ……あ…………え?」ガラガラ
上条「!?」
ローラ「え……?」
544: ゴミ箱 2012/04/02(月) 00:52:33.82 ID:Y4D1Wu4h0
ドアを開けると同時に、御坂はその場で固まる。
思いっきり蹴りだそうとしていた両足は、凍りついたかのように動かす事ができなかった。
ドアを開けた時に目に飛び込んだ光景が、信じられなかった。
御坂「なに……やってんのよ」
上条「び、びりびりこそなんでここに」
御坂「今……今、そこの女となにしてたのよ」ポロ
何かが耐え切れなくなった御坂は、それを我慢することも忘れて涙を流す。
上条「これはあのーそのー……」チラ
ローラ「見てわからなかったかしら?」
御坂「なんで……」
御坂「なんれキスしてたのよおおおお!!」ダッ
上条「あ! ちょ、ちょっとまてよビリビリ!!」グッ
ローラ「駄目よ当麻! まだその足で走ったら駄目!!」
上条「でも、追わないと駄目だろ!!」
ローラ「私が行くから、大丈夫よ」
上条「良いのか……?」
ローラ「えぇ。だから待っててね、当麻」ニコ
上条に天使の様な微笑をすると、ローラは長い金髪をたなびかせながら、歩いて御坂の事を追いかけた。
決して急ぐことはせず、逆に時間を掛けてゆっくりと追いかけた。
彼女の足取りに迷いはなく、向かった先は病院の屋上であった。
545: ゴミ箱 2012/04/02(月) 00:53:07.19 ID:Y4D1Wu4h0
ローラ「やっぱりここに居たわね」
御坂「何よ……」
ローラ「貴方が心配になって来たんじゃない。どう? 涙はもう枯らしたかしら」
御坂「泣いてなんか……いないわよ!!」ドシャン
御坂が一際大きな声で否定すると同時、けたたましい音を立てながら、御坂を中心に落雷が起きた。
周りの事をまるで考えていない能力の行使。御坂のパーソナルリアリティが暴走を起こしつつある証拠だ。
御坂「なんであんたがくんのよ!!」
ローラ「あら、まさか当麻に来てほしかった? とんだ策士だこと」
御坂「――――っさいわねぇえ!!」バチバチ
御坂の一言一言に答えるかのように、電撃が周囲に放出される。
だが、決してそれはローラを狙おうとはしない。
ローラ「違う? なら、貴方はどうしてほしかったと言うのかしら」
御坂「あんたには関係ないでしょうが!!」
ローラ「ふ~ん……そう。なら、私は当麻の所に戻るわ」
まるで興ざめしたかのようにローラはその場を去ろうとする。
御坂「なっ……ちょ、ちょっとまちなさいよ!!」
ローラ「なにかしら?」
御坂「さっきのあれは……あれは、なんなの.......?」
今にも泣きそうな勢いでローラに答えを求める御坂。放電はいつの間にかストップしていた。
今のミサカからは、自分でも知ってる癖になにを聞いているのか、と。そんな自己嫌悪混じりなオーラが漂っている。
それに対してローラは、頭を抱えながらも御坂と改めて対面する。両者の距離は、さっきよりも近づいている。
546: ゴミ箱 2012/04/02(月) 00:54:26.36 ID:Y4D1Wu4h0
ローラ「私には関係が無いと自分でいってたじゃないの。それを今更私に質問するのね。まったく、本当に都合がいいわね貴方」
御坂「ぐっ……」
ローラ「まぁいいわ。それで、あれがなんなのか……見てしまったのでしょう? 貴方も」
御坂「本当に……してたの?」
ローラ「えぇ。貴方の見間違いでもなければ、勘違いでもないわよ。正真正銘の……ね」
御坂「そんな......じゃぁ、もしかして」
そこで言葉を詰まらせた御坂。どうにもこの先の言葉が出てこないようだ。
御坂「うぅ、ぐす……うえぇ......」ポロポロ
ローラ「はぁ……まったくもぅ」テクテク
泣き出してしまった御坂に、少し急ぎ足で近づいていくローラ。
さっき時間をかけてきたのも、御坂が泣き止むのを待つためのローラの考えであったのだが、今ここで泣いてしまってはどうしようもない。
ローラ「ほら、もう泣き止みなさい」ガバ
御坂「え……?」
泣いている御坂を、やさしく抱き込んだローラ。さっきとは打って変わったローラの態度に、御坂もどうしていいか分からない様子。
御坂「な、なにしてるのよ」
ローラ「別に私は貴方をいじめてるわけじゃなーいの」ナデナデ
御坂「撫でるのをやめなさいよ......///」
ローラ「貴方に涙は似合わないわよ。だからほら、笑わなくちゃだめでしょう?」ニコ
抱き込んだまま、御坂を励ますローラ。
何故だか分からないが、そこにはさっきとはまるで違うローラの一面を御坂が垣間見た気がした。
何処か、全てを許し、何もかもを受け入れる。それこそ女神の様で、聖母の様な物を……
547: ゴミ箱 2012/04/02(月) 00:56:26.23 ID:Y4D1Wu4h0
御坂「でも……私、もうどうしたらいいかわかんないのに......」ギュ
ローラ「なに? まさか当麻を私に奪われたから?」
御坂「それ自分で言う事!?」
ローラ「んふふ♪ でも事実でしょう?」
御坂「そりゃぁそうなんだけど……」
ローラ「それで? 貴方はそれだけで何もかもを失うようなか弱い人間?」
御坂「それって……どういう事?」
ローラ「美琴。貴方は前に私の前で宣言したじゃないの。絶対に当麻は私の物に、って」
御坂「それはあれよ! 場の流れでいっちゃっただけで」
ローラ「じゃあ誤りなの? それに、当麻を守るとも言ったじゃない」
御坂「別に嘘って分けでもないけど……でも、もう当麻はあんたと......」ゴニョゴニョ
ローラ「別に私達は婚約を決めた分けでもないわよ? NTRぐらいしようとは思わないのかしらね~」
御坂「ってそれをあんたが言うか!?」
ローラ「そうでなくとも、言った事を実行する力ぐらい、美琴にはあるじゃないの」
御坂「無視するのねそこは」
ローラ「じゃぁもし、もしも当麻が危険な目にあった時……貴方はそれを放置する?」
御坂「するわけないじゃない!!」
ローラ「なら、もう大丈夫ね。それだけ聞きたかったのよ」
そう言ってローラは御坂から離れた。
御坂「あんた……」
上条「おーい、大丈夫かー!」
タイミングを見計らったかのように、上条が屋上へとやって来た。
御坂「あっ…………」
ローラ「当麻ー!」タッタッタッ
上条「さっき大きな音がしたから気になってきたんだってローラちょ飛び込んでくrうおぉ!」ガバ
ローラ「来ちゃダメっていったのに」
上条「あははは、心配だったからな。御坂がさ」
御坂「私が……?」
上条「あぁ。さっきあんなもん見られちまったし、急に泣いて走っちまうんだもん」
御坂「まったく……どこまでも馬鹿なんだから......」
この時の御坂の心の中には、ある一つの感情が芽生えていた。
絶対に私にふりむかせてみせる!!
その感情を原動力にして、少女は再び新たな一歩を踏み出していく……
554: ゴミ箱 2012/04/03(火) 21:56:02.01 ID:95pHOiAU0
――学園都市 第七学区――
上条「ふぅ~......疲れたー」カラカラ
ローラ「当麻ったらあんなに張り切っちゃって。これで体を壊したら元も子もないのよ?」カラカラ
上条は今、ローラの押す車椅子に座り自らの家へと向かっていた。
イギリス帰りで速攻病院に送られた上条は、自分の家でもある学生寮に帰れていなかった。
その為、退院してすぐに上条は自分の寝床が無事かどうか確認する必要があったのだ。
ちなみに、ローラの言う「張り切りすぎ」とはリハビリの事である。
上条「いや別に上条さんはそんなに張り切ってないんですけどね?」
ローラ「でもいきなり走ろうとしたりジャンプしたりしようとしてたじゃない」
上条「それは御坂が電撃で追い立てたりするからだって!」
ローラ「あれも治療の一環なのでしょう? だったら受けなきゃ駄目じゃない」
上条「あんなん食らったら死ぬだろ普通!!」
ローラ「大丈夫よ、当麻なら頑丈だもの」
上条「何を根拠にそれが言えるんですかね~上条さんにはわかりませんよ」
ローラ「とにかく、早く治ってもらわないと困るのよ」
上条「別にこれぐらいどうってこと無いんだけどなぁ」
ローラ「私が困るのっ!」
上条「な、なんでだ?」
ローラ「だって……その足じゃ、抱きつけないじゃないの///」
上条「うっ……/// って昨日とびかかって来たよな? な!?」
上条「ふぅ~......疲れたー」カラカラ
ローラ「当麻ったらあんなに張り切っちゃって。これで体を壊したら元も子もないのよ?」カラカラ
上条は今、ローラの押す車椅子に座り自らの家へと向かっていた。
イギリス帰りで速攻病院に送られた上条は、自分の家でもある学生寮に帰れていなかった。
その為、退院してすぐに上条は自分の寝床が無事かどうか確認する必要があったのだ。
ちなみに、ローラの言う「張り切りすぎ」とはリハビリの事である。
上条「いや別に上条さんはそんなに張り切ってないんですけどね?」
ローラ「でもいきなり走ろうとしたりジャンプしたりしようとしてたじゃない」
上条「それは御坂が電撃で追い立てたりするからだって!」
ローラ「あれも治療の一環なのでしょう? だったら受けなきゃ駄目じゃない」
上条「あんなん食らったら死ぬだろ普通!!」
ローラ「大丈夫よ、当麻なら頑丈だもの」
上条「何を根拠にそれが言えるんですかね~上条さんにはわかりませんよ」
ローラ「とにかく、早く治ってもらわないと困るのよ」
上条「別にこれぐらいどうってこと無いんだけどなぁ」
ローラ「私が困るのっ!」
上条「な、なんでだ?」
ローラ「だって……その足じゃ、抱きつけないじゃないの///」
上条「うっ……/// って昨日とびかかって来たよな? な!?」
555: ゴミ箱 2012/04/03(火) 21:57:41.09 ID:95pHOiAU0
そんなやり取りをしている間に、上条の住んでいる学生寮が見えてきた。
カエル顔の医者の居る病院と同じ第七学区に位置する上条の学生寮。
それは、可もなく不可もなく。いたって普通の学生寮である。
ローラ「あれが当麻の家?」
上条「あれがって言うかあれの一部っていうか。寮制だからあれ全部ってわけじゃないぞ?」
ローラ「そうなの……前々から大きな家を買っておけば良かったかしら」ボソボソ
上条「ん? なんか言ったか?」
ローラ「いえ、なにも」
上条「そうか。えーっと、俺がこんなんだからエレベーターを使わなきゃだめだな」
ローラ「あら、エレベーターなんてついているの?」
上条「え? 普通ついてないか?」
ローラ「イギリスには機械が備わっている寮なんて物自体があまりないのよ。
まして、エレベーターが備え付けられているなんてそうそう無いわね」
上条「ふ~ん。まぁ、ここは日本だし、学園都市だし……」
上条「…………イギリス?」
ローラ「?」
上条「…………あ゛」
上条が丁度自分の部屋の前に来た時に、何かを思い出したかのように声を上げた。
ローラ「どうしたの?」
上条「やべぇ……インデックスの事忘れてた」
ローラ「……何を言ってるの? 当麻」
上条「どうしよう……イギリスに置きっぱなしだよ。ステイルが居るだろうけど、どうしよう」
上条「こ、殺される……」ガクブル
ローラ「はぁ……当麻、まさか貴方何も聞いていないの?」
上条「へ? 何が?」
ローラ「当麻は私が最大主教を辞めたと言うのは聞いたかしら」
上条「あぁ、すげぇ唐突だったよな。そういえばなんでだ?」
ローラ「もう、そうしなきゃ当麻とずっといられないからよ......///」
上条「そ、そうだったのか///」
ローラ「あーコホン。話しを戻すわよ。それで、私が最大主教を辞めるという事は、誰かが代わりを務めなければいけないの」
上条「……ちょっとまってくれローラ。その話の流れからしてすっごく嫌な予感しか上条さんしないんですけど」
ローラ「多分当麻の思っている通りなのだけれど」
上条「え゛っ。まじで?」
ローラ「うん」
ローラ「禁書目録が新最大主教よ」
上条「は……? はぁぁあああああああああああああ!?」
556: ゴミ箱 2012/04/03(火) 21:59:14.11 ID:95pHOiAU0
上条は心の底から叫んだ後、とりあえず部屋に入った。勿論、インデックスはいなかった。
上条「さて、さすがにこの部屋の中で車いすは使えないしな。よいしょっと」
車椅子から立った上条は、車椅子に引っ掛けておいた折り畳み式の松葉杖を取り出した。
ローラ「当麻、この車椅子は何処に置けばいいの?」
上条「あーそれ畳めるんだけど……無理か?」
ローラ「え? えーっと……?」
上条「ここ ここ。このボタンを押せば……ほら」ウィーン カチャ
上条は車椅子の取っ手についていた赤いボタンを押した。
すると、某ロボットアニメ張りの変形でみるみる内に車椅子はアタッシュケース位の大きさに畳まれた。
ローラ「やっぱりすごいわね、学園都市は。たった一つのボタンで畳めるなんて」
上条「まぁそこは近未来科学都市なんだし(多分)。あ、それ玄関に置いといていいぞー」
ローラ「はーい」
上条「さて…………この惨状はどうしたもんかな」
玄関を抜け、上条は自分の部屋の全体を見渡す。
タンスからは衣服が投げ出されたままであり、押し入れからは物が溢れ出ている。
図ったかのように冷蔵庫のドアは漫画につっかえて閉じておらず、炊飯器は無残にも下に落ちてぶっ壊れている。
恐らくしばらく家を空けている間に泥棒にでも入られたのだろう。
色々と言いたいことは山ほどあった上条だが、とりあえず一言だけで済ますことにした。
上条「不幸だ……」
557: ゴミ箱 2012/04/03(火) 22:00:00.83 ID:95pHOiAU0
――イギリス 聖ジョージ大聖堂――
新最大主教就任式典終了後
ステイル「最大主教様、ご苦労様でした」
イン「あ、ステイルだ!」
ステイル「どうも」
イン「そんな堅苦しくしないで欲しいんだよ」
ステイル「では、どうすればいいでしょうか?」
イン「いつも通りにしてほしいんだけど、だめ?」
ステイル「貴方がそういうのであればそうしますよ」
イン「それと、ちゃんと名前で呼んで欲しいかも!」
ステイル「分かりました。インデックス、調子はどうかな」
イン「うん、なんだか清々しい気分なんだよ」
ステイル「清々しい?」
イン「なんだか、頭がきれいさっぱりしたって言うのかな」
ステイル「ふぅん……?」
イン「ねぇ、ステイル。ちょっとだけ聞いていい?」
ステイル「なんだい?」
イン「私ね、昨日まで自分が何してたか思い出せないんだけど……なにしてたのかな?」
イン「確か、ステイルと火織が泣きながら何かを言ってるのは覚えているんだけど……」
ステイル「…………嫌、別段なんともなく普通だったよ」
イン「そう? なら良いんだけど……そうだ、火織に会いに行こう!」
ステイル「あぁ、いいとも」
イン「今火織は何処に居るのかな?」
ステイル「多分インデックスの護衛が終わった後には女子寮の方に戻っていた筈だよ」
イン「女子寮……? そんなのあったかな?」
ステイル「あぁ、知らなかったかい?」
イン「うん、初耳なんだよ。私が一回知った物を忘れるわけないから当たり前かも」
ステイル「そうか……まぁ、これからまた覚えていけばいいさ」
イン「?」
ステイル「そう、これからね……」
558: ゴミ箱 2012/04/03(火) 22:00:52.24 ID:95pHOiAU0
――女子寮内 食堂――
式典が終了し、寮内のほとんどの者が帰ってきていた。
アニェーゼ「ふぅ、皆さんとりあえずお疲れ様でしたね」
シスター達「「「「「「お疲れ様でしたー」」」」」」
アニェーゼ「今日の仕事は私達がここにきて行った中でもかなり大きな仕事でした!」
シスター達「「「「「「オォーー」」」」」」
アニェーゼ「それで、皆さんに朗報です!
新最大主教就任によるイギリス清教の新体制が安定するまで、皆さんには休暇が与えられました!」
シスター達「「「「「「やったーーー!!」」」」」」
アンジェレネ「シスタールチア、お休みですよ! どこに行きましょうか!」
ルチア「アンジェレネ、なぜ休みをもらったからと言ってどこかに行くとなるのですか」
ルチア「私達は修道女の身ですよ? それを――――「ってことで女子寮内選抜学園都市派遣組を決めちまいます!!」
ルチア「ってシスターアニェーゼ!?」
アニェーゼ「どうやら休暇は二週間近くあるみたいですし、せっかくだから学園都市に潜入しちまいましょう!」
ルチア「ど、どうしてそうなるのですか!?」
シスター達「なんだなんだ」「さっすがルチアはガリ修道女ね」「いいじゃないの、私達だって羽を広げたいもん」
「そうだそうだー」「修道女で何が悪い―!」
ルチア「なっ……あ、貴方たちは」
シェリー「んー? なんだかおもしろそうな事になってるじゃねぇか」
ルチア「あ、シェリー! 貴方も何か言ってやってくださいよ!」
シェリー「いや、今来たばっかなんだけど」
神裂「どうやら女子寮内から学園都市に向けて派遣部隊が作られるみたいですよ」ヌゥ
559: ゴミ箱 2012/04/03(火) 22:01:22.15 ID:95pHOiAU0
シェリー「っていたのか神裂」
神裂「いえ、今来ましたが会話は聞こえていたので」
シェリー「さっすが聖人だな」
神裂「うれしくありませんけど」
ルチア「二人ともなに呑気にしているんですか!
私達は修道女なのに――――「それで、派遣部隊の人数は何人にいたしましょうか?」
神裂「いたんですか、オルソラ」
オルソラ「最初からいたのでございますよ」
ルチア「話を――――「とりあえずそんなに人数は遅れませんから、三人っすかね」
シェリー「まぁ妥当か。で、決め方は?」
アニェーゼ「ふっふっふー……じゃじゃーん! 特製あみだくじです!」
神裂「そんな物まで作っていたのですか」
シェリー「おお、ちゃんと人数分の棒があるぞ」
アニェーゼ「ぬかりはねぇっすからね。さ、ここに居る全員、棒の上に名前を書いちまってください」
オルソラ「では私から書かせて貰いましょう」
神裂「では次は私が――――「あ、神裂は駄目だからな?」
神裂「なっ、なぜですか!?」
シェリー「あたりまえだろー? お前今日も学園都市から帰ってきたって言ってたじゃねぇか」
神裂「うっ……ま、まぁそうですが」
アニェーゼ「聖人にくれてやる運はねぇってことです」
神裂「うぅ…………」
シスター達「次私ー!」「ちょ、押さないでよ!」「絶対あててやるんだから!」
「まだーー?」「早くしてよ~」ガヤガヤ
アニェーゼ「ちょっ、そんなに押さないで―――
アンジェレネ「シスタールチア、私達も早く行きましょう」クィクィ
ルチア「ぐすん…………」ズーン
572: ゴミ箱 2012/04/04(水) 00:09:39.37 ID:F1mzn4rb0
――女子寮内 食堂――
アニェーゼ「さて、これで全員ですかね?」
シェリー「まて、枠が一つ余ってるぞ」
アニェーゼ「え? えーっと……あっ、本当ですね」
オルソラ「もしかして、神裂さんの分を残していたのではないですか?」
アニェーゼ「あ…………」
シェリー「図星かよ」
アニェーゼ「で、ではこの枠は無かった事に」
シェリー「もしその枠が当たりだったらどうするんだ?」
オルソラ「それも無いわけではありませんよね」
アニェーゼ「うぅ……で、ではどうしましょう?」
神裂「こうしましょう!」
シェリー「なんだ?」
神裂「見ていて下さい」
オルソラ「何をするのでしょう?」
アニェーゼ「空いてるところに名前を……って」
シェリー「…………天草式?」
神裂「はい」
アニェーゼ「どういうことですか?」
神裂「ここに居る者達だけでこの選抜を決めるのは不公平だと思いました」
神裂「ですから、我らが天草式の中からも一人選抜したいとおもいまして」
オルソラ「それはやはり、五和さんなのでしょうか?」
神裂「いえ……その、五和は......」
シェリー「あーオルソラはしらねーんだっけか」
オルソラ「はい?」
アニェーゼ「五和さんは上条さんと元最大主教がくっついたって聞いて倒ちまったようなんですよ」
神裂「どこから入手した情報なのかは大体予想できますが……」
シェリー「で? 天草式の中のだれがいくんだ?」
神裂「それはまず当たらなければ話になりませんから、とりあえずやりましょう」
アニェーゼ「そうしますか」
アニェーゼ「では…………」
一同「………………」ゴクリ
アニェーゼ「えぃ!」バサ
アニェーゼ「さて、これで全員ですかね?」
シェリー「まて、枠が一つ余ってるぞ」
アニェーゼ「え? えーっと……あっ、本当ですね」
オルソラ「もしかして、神裂さんの分を残していたのではないですか?」
アニェーゼ「あ…………」
シェリー「図星かよ」
アニェーゼ「で、ではこの枠は無かった事に」
シェリー「もしその枠が当たりだったらどうするんだ?」
オルソラ「それも無いわけではありませんよね」
アニェーゼ「うぅ……で、ではどうしましょう?」
神裂「こうしましょう!」
シェリー「なんだ?」
神裂「見ていて下さい」
オルソラ「何をするのでしょう?」
アニェーゼ「空いてるところに名前を……って」
シェリー「…………天草式?」
神裂「はい」
アニェーゼ「どういうことですか?」
神裂「ここに居る者達だけでこの選抜を決めるのは不公平だと思いました」
神裂「ですから、我らが天草式の中からも一人選抜したいとおもいまして」
オルソラ「それはやはり、五和さんなのでしょうか?」
神裂「いえ……その、五和は......」
シェリー「あーオルソラはしらねーんだっけか」
オルソラ「はい?」
アニェーゼ「五和さんは上条さんと元最大主教がくっついたって聞いて倒ちまったようなんですよ」
神裂「どこから入手した情報なのかは大体予想できますが……」
シェリー「で? 天草式の中のだれがいくんだ?」
神裂「それはまず当たらなければ話になりませんから、とりあえずやりましょう」
アニェーゼ「そうしますか」
アニェーゼ「では…………」
一同「………………」ゴクリ
アニェーゼ「えぃ!」バサ
573: ゴミ箱 2012/04/04(水) 00:10:05.76 ID:F1mzn4rb0
シェリー「えーっと」
オルソラ「まぁ、はずれなのでございますよ……」ショボーン
アニェーゼ「ちぇっ! はずれちまいましたね」
神裂「天草式は見事にあたりましたね」
シェリー「私もあたりだな」
神裂(私が含まれた天草式なのだから外れるなんてありえませんのに)ニヤ
アニェーゼ「では、他の一人は誰っすか?」キョロキョロ
シスター達「これが運命」「我々モブに」「光はない」
「神は主人公に」「光を照らすのだ」
オルソラ「違うようですね」
シェリー「一体誰だ――――「シスタールチア、みてください!!」
シェリー「ん?」
アンジェレネ「あたってますよ! ほら!!」
ルチア「なんですか……もう私はどうでも......え?」
アンジェレネ「だから、ルチアがいけるんですよ!!」
ルチア「なっ……これは本当ですか!?」
アニェーゼ「これじゃあいつものメンバーと変わらないっすね」
シェリー「まぁそうだろうな」
神裂「では私は天草式の元にいってきます」
シェリー「おー」
オルソラ「まぁ、はずれなのでございますよ……」ショボーン
アニェーゼ「ちぇっ! はずれちまいましたね」
神裂「天草式は見事にあたりましたね」
シェリー「私もあたりだな」
神裂(私が含まれた天草式なのだから外れるなんてありえませんのに)ニヤ
アニェーゼ「では、他の一人は誰っすか?」キョロキョロ
シスター達「これが運命」「我々モブに」「光はない」
「神は主人公に」「光を照らすのだ」
オルソラ「違うようですね」
シェリー「一体誰だ――――「シスタールチア、みてください!!」
シェリー「ん?」
アンジェレネ「あたってますよ! ほら!!」
ルチア「なんですか……もう私はどうでも......え?」
アンジェレネ「だから、ルチアがいけるんですよ!!」
ルチア「なっ……これは本当ですか!?」
アニェーゼ「これじゃあいつものメンバーと変わらないっすね」
シェリー「まぁそうだろうな」
神裂「では私は天草式の元にいってきます」
シェリー「おー」
574: ゴミ箱 2012/04/04(水) 00:11:12.75 ID:F1mzn4rb0
――天草式詰め所――
対馬「さーて、今日からの休暇はどうしますか」
浦上「対馬さん、一緒に日本にかえりませんか?」
対馬「んーそうね、久々にかえりましょうか」
香焼「そういえば二人とも何処出身なんっすか?」
対馬「それは……私にもわからないのよね」
浦上「私もです」
香焼「そうっすか……俺もなんで、なんかほっとしたっす」
浦上「じゃぁ香焼さんも一緒に帰りましょうか」
香焼「えっ、いいんっすか?」
対馬「いいもなにも、別に一人増えた位じゃ問題ないもの」
浦上「っというわけです」
香焼「それなら同伴させてもらうっす。ありがとうございまーす!」バタン
神裂「皆そろっていますか?」
対馬「さーて、今日からの休暇はどうしますか」
浦上「対馬さん、一緒に日本にかえりませんか?」
対馬「んーそうね、久々にかえりましょうか」
香焼「そういえば二人とも何処出身なんっすか?」
対馬「それは……私にもわからないのよね」
浦上「私もです」
香焼「そうっすか……俺もなんで、なんかほっとしたっす」
浦上「じゃぁ香焼さんも一緒に帰りましょうか」
香焼「えっ、いいんっすか?」
対馬「いいもなにも、別に一人増えた位じゃ問題ないもの」
浦上「っというわけです」
香焼「それなら同伴させてもらうっす。ありがとうございまーす!」バタン
神裂「皆そろっていますか?」
575: ゴミ箱 2012/04/04(水) 00:11:43.67 ID:F1mzn4rb0
浦上「女教皇様!」
対馬「いえ、大体の者はもう休暇でどこかにいってしまいましたが……」
神裂「まぁ、ここに居る者だけでもいいでしょう」
香焼「なんかあったんすか?」
神裂「それがですね、なんと合法的に学園都市に二週間滞在できるようになりました」
対馬「えっ!?」
香焼「合法的に……!?」
浦上「ですか......?」
神裂「はい。一人だけですが」
浦上「一人ですか……」
対馬「前だったら五和に行かせてあげたんだけどねぇ......」
香焼「あれじゃぁいかせられないですよね」
神裂「では、この中の三人からきめましょう」
対馬「三人? 女教皇様は行かないのですか?」
神裂「私は貴方たちの中から誰かが行けば保護者同伴の様な形で行く事ができますから」
香焼「ず、ずるいっす」
浦上「いいなー……学園都市。行ってみたいかも」
対馬「じゃぁいってくれば?」
浦上「へ!?」
対馬「浦上ちゃんなら何にも問題ないだろうし、あっちでも女教皇様のお邪魔にならなさそうだからね」
浦上「そ、そんなこと言っても」
香焼「そうっすね、俺も別に行きたいと思わないですから。行って来たらどうですか?」
浦上「対馬さんはいきたくないんですか!?」
対馬「私も大していきたいと思わないもの。普通に日本に帰るだけで十分よ」
浦上「そうなんですか……」
神裂「では決まりですね。さぁ浦上、準備をしてください。出発は明日ですよ」
浦上「は、はい!!」
乙女達の聖戦は、終わらない......
581: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:41:47.89 ID:F1mzn4rb0
――イギリス市内――
インデックスの希望により、ステイルはインデックスをイギリス清教女子寮へと案内していた。
イン「ねぇステイル、その女子寮って所にはどんな人が住んでるの?」
ステイル「そうだねぇ、神裂の他にはシェリー=クロムウェルやオルソラ=アクィナスと、それからアニェーゼ部隊かな」
イン「火織は知ってるけど……シェリーにオルソラ?
アニェーゼ部隊とかってもう、私の知らない人ばっかりなんだよ」
ステイル「今日会いに行けばいいさ」
イン「うーん……ねぇステイル、その女子寮っていつからあったのかな」
ステイル「ちゃんと機能し始めたのはつい二か月前くらいだよ」
イン「二か月……?」
イン「それって確か、私がステイルや火織と一緒に世界中を飛び回ってた時じゃなかったかな」
ステイル「あぁ……」
イン「うーん、やっぱり変なんだよ」
イン「うーん…………」
ステイル(やはり……全てを話すべきだろうか)
ステイル(あの時、あの女にはああ言われたが……)
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
――――――――――
――――......
インデックスの希望により、ステイルはインデックスをイギリス清教女子寮へと案内していた。
イン「ねぇステイル、その女子寮って所にはどんな人が住んでるの?」
ステイル「そうだねぇ、神裂の他にはシェリー=クロムウェルやオルソラ=アクィナスと、それからアニェーゼ部隊かな」
イン「火織は知ってるけど……シェリーにオルソラ?
アニェーゼ部隊とかってもう、私の知らない人ばっかりなんだよ」
ステイル「今日会いに行けばいいさ」
イン「うーん……ねぇステイル、その女子寮っていつからあったのかな」
ステイル「ちゃんと機能し始めたのはつい二か月前くらいだよ」
イン「二か月……?」
イン「それって確か、私がステイルや火織と一緒に世界中を飛び回ってた時じゃなかったかな」
ステイル「あぁ……」
イン「うーん、やっぱり変なんだよ」
イン「うーん…………」
ステイル(やはり……全てを話すべきだろうか)
ステイル(あの時、あの女にはああ言われたが……)
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
――――――――――
――――......
582: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:44:45.71 ID:F1mzn4rb0
ステイル『最大主教! これはどういう事ですか!!』
ローラ『あら、ステイルじゃないの。そんなに血相を変えてどうしたのかしら?』
ステイル『どうしたじゃありませんよ!』
ステイル『なぜ禁書目録が次期最大主教になるのかと聞いているのです!!』
ローラ『あら……それの事ね』
ステイル『何……?』
ローラ『いい? 禁書目録が最大主教になるという事は、
禁書目録にはこれから「道具」としてではなく、立派な「人」としての価値が与えられるのよ』
ローラ『それはつまり、今の様に仮初の平和等ではなく、真っ当な人として、一個人として生きていける事を表すわ』
ステイル『!!』
ローラ『つまり、私も禁書目録などではなく「あの子」と呼ばなければいけない分けよ』クスクス
ローラ『失礼。それに、禁書目録が持っている魔道書の制御だって、もう心配なくなるわ』
ステイル『どういう事です?』
583: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:45:18.51 ID:F1mzn4rb0
ローラ『人の上に立つとなれば、当然人から見られることとなるの。それも大勢よ』
ローラ『そうなれば、何もせずとも自然と人の目という「鎖」が付いて回る事になるわ』
ローラ『その鎖があれば、禁書目録は自ずと魔道書の知識を自己勝手に使おうなんて考えなくなるわよ』
ステイル『くっ……だが、問題はそれだけではないだろう!』
ステイル『今あの子は、胸糞悪いがあの少年の元にいる! あの少年が生きる支えとなっているんだぞ!?』
ローラ『それも問題ないわよ』ガサゴソ
ローラ『ほれ、これを見てみなさい』ポイ
ステイル『これは……日記?』
ローラ『そうよ』
ローラ『「あの子」の日記』
ステイル『二年前の日記!? なっ、なぜ貴方が?』
ローラ『簡単よ。来たるべき時の為に、とっといておいたのよ』
ステイル『来たるべき時……?』
ローラ『そう、まさに今ね』
ローラ『それを使えば、あの子の記憶は二年前にリープするわ』
ステイル『二年前に……リープ?』
ローラ『まぁ、簡単に言ってしまえば「巻き戻る」のよ』
ローラ『丁度、ステイルと神裂火織と共に行動をしていた頃にね』
ステイル『二年前……まっ、まさか、本当に?』
ローラ『この後に報じて嘘をつく必要などないわよ』
ステイル『じゃ、じゃぁあの子は〝前〟に戻ると言うのか?』
ローラ『えぇ、そうよ』
ステイル『なら、あの子の〝今〟はどうなるんだ?』
ローラ『消えるわね。きれいさっぱり』
ステイル『またあの子の記憶を消すと言うのか……貴方は』
ローラ『それは違うわよ? 元々無かった事になるだけ。本来あるはずのない「if」となって消えるだけよ』
ステイル『そんな事が許されると思っているのか!』
ローラ『元々、私は許される事など一つもしてきた事は無いわ』
ローラ『そうなれば、何もせずとも自然と人の目という「鎖」が付いて回る事になるわ』
ローラ『その鎖があれば、禁書目録は自ずと魔道書の知識を自己勝手に使おうなんて考えなくなるわよ』
ステイル『くっ……だが、問題はそれだけではないだろう!』
ステイル『今あの子は、胸糞悪いがあの少年の元にいる! あの少年が生きる支えとなっているんだぞ!?』
ローラ『それも問題ないわよ』ガサゴソ
ローラ『ほれ、これを見てみなさい』ポイ
ステイル『これは……日記?』
ローラ『そうよ』
ローラ『「あの子」の日記』
ステイル『二年前の日記!? なっ、なぜ貴方が?』
ローラ『簡単よ。来たるべき時の為に、とっといておいたのよ』
ステイル『来たるべき時……?』
ローラ『そう、まさに今ね』
ローラ『それを使えば、あの子の記憶は二年前にリープするわ』
ステイル『二年前に……リープ?』
ローラ『まぁ、簡単に言ってしまえば「巻き戻る」のよ』
ローラ『丁度、ステイルと神裂火織と共に行動をしていた頃にね』
ステイル『二年前……まっ、まさか、本当に?』
ローラ『この後に報じて嘘をつく必要などないわよ』
ステイル『じゃ、じゃぁあの子は〝前〟に戻ると言うのか?』
ローラ『えぇ、そうよ』
ステイル『なら、あの子の〝今〟はどうなるんだ?』
ローラ『消えるわね。きれいさっぱり』
ステイル『またあの子の記憶を消すと言うのか……貴方は』
ローラ『それは違うわよ? 元々無かった事になるだけ。本来あるはずのない「if」となって消えるだけよ』
ステイル『そんな事が許されると思っているのか!』
ローラ『元々、私は許される事など一つもしてきた事は無いわ』
584: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:45:59.50 ID:F1mzn4rb0
ローラ『今回私は自分が一番幸せになる道を選んだ』
ローラ『けれど、それだけじゃ私は余りにも傲慢だわ』
ローラ『だから……貴方達にも幸福を差し伸べたのよ』
ステイル『幸福……?』
ローラ『えぇ。ハッピーエンドをね』
ステイル『まさか……あの子を前に戻す事がハッピーエンドにつながるとでも?』
ローラ『えぇ、そうよ』
ローラ『私は今まで幾多の非道をあの子にしてきたわ』
ローラ『首輪をつけ、幸せをむしり取り、記憶を消し……』
ローラ『そして、何人もの「主人公」が犠牲になってしまった』
ローラ『そう、貴方達も巻き込んでしまった』
ステイル『………』
ローラ『だから、私ができる範囲であの子に幸せを与えようと思ったのよ』
ステイル『そういう事ですか……』
ローラ『それに、これは私のしょく罪でもあるの』
ローラ『ステイル=マグヌス……』
ステイル『な、なんですか』
ローラ『今まで、本当にごめんなさい』ペコリ
ステイル『んなっ…………』
ローラ『これは、私にできる最大限の償いよ』
ローラ『これからあの子を守ってあげなさい。「主人公」さん』
ローラ『それじゃあ、今度再び会いまみえたらよろしくお願いするわね』クルリ
ステイル『あ、最大主教! 待ってください!!』
ローラ『もう私は最大主教じゃないわ』カツカツ
ローラ『ただの女……よ』クル ニコ
ローラ『けれど、それだけじゃ私は余りにも傲慢だわ』
ローラ『だから……貴方達にも幸福を差し伸べたのよ』
ステイル『幸福……?』
ローラ『えぇ。ハッピーエンドをね』
ステイル『まさか……あの子を前に戻す事がハッピーエンドにつながるとでも?』
ローラ『えぇ、そうよ』
ローラ『私は今まで幾多の非道をあの子にしてきたわ』
ローラ『首輪をつけ、幸せをむしり取り、記憶を消し……』
ローラ『そして、何人もの「主人公」が犠牲になってしまった』
ローラ『そう、貴方達も巻き込んでしまった』
ステイル『………』
ローラ『だから、私ができる範囲であの子に幸せを与えようと思ったのよ』
ステイル『そういう事ですか……』
ローラ『それに、これは私のしょく罪でもあるの』
ローラ『ステイル=マグヌス……』
ステイル『な、なんですか』
ローラ『今まで、本当にごめんなさい』ペコリ
ステイル『んなっ…………』
ローラ『これは、私にできる最大限の償いよ』
ローラ『これからあの子を守ってあげなさい。「主人公」さん』
ローラ『それじゃあ、今度再び会いまみえたらよろしくお願いするわね』クルリ
ステイル『あ、最大主教! 待ってください!!』
ローラ『もう私は最大主教じゃないわ』カツカツ
ローラ『ただの女……よ』クル ニコ
585: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:46:31.57 ID:F1mzn4rb0
――――
―――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――......
ステイル「………」
イン「ステイル! ステイルー!」
ステイル「はっ。なんだい、インデックス」
イン「さっきから何度も声をかけてたんだよ?」
ステイル「あぁ、すまなかったね」
イン「もう、ぼーっとしてたらあぶないかも」
イン「これからは気を付けるんだよ?」
ステイル「うん、これからね」
ステイル(そうだ……これはあの女が、ローラ=スチュアートが行った〝善〟)
ステイル(それを踏みにじる事だけはできないな)
ステイル「インデックス」
イン「ん? どうしたの?」
ステイル「いや、最大主教」
ステイル「僕はこれから何処までも護衛するからね」
ステイル「例え死ぬ事になろうとも、死んだあとでも何処までも」
ステイル「地獄の果てまでも、ね」
イン「別に、護衛じゃなくたっていいのに」
イン「ステイルは、インデックスとしてついてきてほしいな」
ステイル「ふっ……そうかい?」
イン「当たり前なんだよ」ニコ
―――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――......
ステイル「………」
イン「ステイル! ステイルー!」
ステイル「はっ。なんだい、インデックス」
イン「さっきから何度も声をかけてたんだよ?」
ステイル「あぁ、すまなかったね」
イン「もう、ぼーっとしてたらあぶないかも」
イン「これからは気を付けるんだよ?」
ステイル「うん、これからね」
ステイル(そうだ……これはあの女が、ローラ=スチュアートが行った〝善〟)
ステイル(それを踏みにじる事だけはできないな)
ステイル「インデックス」
イン「ん? どうしたの?」
ステイル「いや、最大主教」
ステイル「僕はこれから何処までも護衛するからね」
ステイル「例え死ぬ事になろうとも、死んだあとでも何処までも」
ステイル「地獄の果てまでも、ね」
イン「別に、護衛じゃなくたっていいのに」
イン「ステイルは、インデックスとしてついてきてほしいな」
ステイル「ふっ……そうかい?」
イン「当たり前なんだよ」ニコ
586: ゴミ箱 2012/04/04(水) 21:47:48.75 ID:F1mzn4rb0
これで全てが報われたといわけではないだろう
あの錬金術師にだってこんな終わり方が無ければ不公平だっただろう
けれども、それでも
僕はもう、この僕に向けられた笑顔を、決して絶やすわけにはいかない......
604: ゴミ箱 2012/04/05(木) 23:24:24.09 ID:gMfe2w4M0
――学園都市 とある学生寮――
久々に帰った自分の寝床である部屋を見て、愕然とした上条。
だがそんな不幸の余韻に浸っている暇なんてあるはずもなく、今彼は……いや。
彼らは、とりあえず座るスペースだけを確保して、話こんでいた。
上条「それで、インデックスの事なんだけど……」
ローラ「やはり……気になるの?」
上条「そりゃぁ気にならないわけないよな。だって、あいつが最大主教とか意味わかんないし」
上条「なぁ、なんだってそんな事したんだ?」
特に我慢する必要は無いと判断したのか、上条は遠慮する事なく疑問を投げつける。
だが、上条の予想とは裏腹に、ローラは少し困ったかのように答えた。
ローラ「単純に考えて、色々と都合がよかったから……かしらね」
上条「都合?」
ローラ「そうよ」
上条「なんのだ?」
ローラ「うーん……」
そこでローラは口ごもってしまった。
自分では言いたいのだが、なにかがつっかえて言う事が出来ない様に見える。
上条「どうした?」
ローラ「その……」
上条「ん?」
ローラ「当麻、一つ約束をしてほしいわ」
上条「約束?」
ローラ「えぇ」
ローラ「私がこれから話す事を聞いても、絶対に……」ギュ
上条「え?」
605: ゴミ箱 2012/04/05(木) 23:24:52.74 ID:gMfe2w4M0
ローラは言い終える前に、上条に抱きついた。絶対に離さないと、そう言いたげな表情で。
ローラ「絶対に私を嫌いにならないと……私を捨てないと約束してくれるの......?」
上条「何言ってんだよ……」ギュゥ
上条「永遠に話してやるもんか。いやだって言ったって離さねぇからな」
ローラ「当麻……」
少しばかりの、静寂。二人はただ抱きしめあうだけ。
お互いの存在がこんなにも近くに感じられると、それだけで十分なのだ。
ローラ「なら、話すわね」
上条「無理しなくても……いいんだぞ?」
ローラ「ううん、いずれ話さなければならなくなるでしょうし、それに気になるでしょう? 当麻も」
上条「そりゃぁまぁそうだけどさ……」
ローラ「無理しなくたっていいのよ」
上条「それじゃあいいか?」
ローラ「えぇ」
そこからローラが話した内容は、ステイルに述べた物と同じ
インデックスとステイル達を救うのと同時に、自らのしょく罪でもある、と
だが、そこには一つだけ違うものがあった
それは――――
ローラ「私は……あの子が邪魔だった」
上条「邪魔って……」
ローラ「だって……あの子がいる限り、私は貴方の傍に居る事はできない!」
ローラ「だから…………だからぁ......」ポロポロ
自らの、思い。 感情であった。
確かに償いは彼女のしたい事でもあったのだが、それはインデックスに対しての罪悪感からくるものが生み出したもの。
彼女本心の願いは別にあった。
インデックスがいなくなればいい。
その手段の一つとして、彼女はインデックスを最大主教としたのだ。
ローラ「絶対に私を嫌いにならないと……私を捨てないと約束してくれるの......?」
上条「何言ってんだよ……」ギュゥ
上条「永遠に話してやるもんか。いやだって言ったって離さねぇからな」
ローラ「当麻……」
少しばかりの、静寂。二人はただ抱きしめあうだけ。
お互いの存在がこんなにも近くに感じられると、それだけで十分なのだ。
ローラ「なら、話すわね」
上条「無理しなくても……いいんだぞ?」
ローラ「ううん、いずれ話さなければならなくなるでしょうし、それに気になるでしょう? 当麻も」
上条「そりゃぁまぁそうだけどさ……」
ローラ「無理しなくたっていいのよ」
上条「それじゃあいいか?」
ローラ「えぇ」
そこからローラが話した内容は、ステイルに述べた物と同じ
インデックスとステイル達を救うのと同時に、自らのしょく罪でもある、と
だが、そこには一つだけ違うものがあった
それは――――
ローラ「私は……あの子が邪魔だった」
上条「邪魔って……」
ローラ「だって……あの子がいる限り、私は貴方の傍に居る事はできない!」
ローラ「だから…………だからぁ......」ポロポロ
自らの、思い。 感情であった。
確かに償いは彼女のしたい事でもあったのだが、それはインデックスに対しての罪悪感からくるものが生み出したもの。
彼女本心の願いは別にあった。
インデックスがいなくなればいい。
その手段の一つとして、彼女はインデックスを最大主教としたのだ。
606: ゴミ箱 2012/04/05(木) 23:26:08.56 ID:gMfe2w4M0
上条「………」
ローラ「私は、あの子を救うと言う名目で当麻からあの子を引きはがしたの!」
ローラ「そして、今私はあの子が居る筈の場所に、今ここにいる!!」
上条「……いぃ」ボソ
ローラ「結局、私はそうやって自分に有益になるようにしか動いてないのよ」
上条「もう……いぃ」
ローラ「ごめんね、当麻。ここまで来て私は、結局はこんな惨めな女だったのよ」
上条「もういいっていってんだろ!!」ギュゥ
上条「それ以上……言わないでくれ」
ローラ「当……麻…………」
上条「頼む……頼むから、それ以上俺の傍から離れようとしないでくれ......!!」
上条「いっただろ! 俺は、どんな事があってもお前を離さねぇって!!」
上条「だから……だからこれ以上、俺を…………俺を迷わさせないでくれよ......!」
ローラ「うぅ……ぅぅぅ......うぁぁああああ!!」
上条「くそ……くそぉ......!!」ポロポロ
何があっても離れないと、そう誓った二人。
だがそれは、言う程簡単ではない。
お互いの全てを背負っても、それでもつぶれる事なく、永久の道を二人で歩いていく。
それができる者のみが、誓う事ができるのだ......
ローラ「私は、あの子を救うと言う名目で当麻からあの子を引きはがしたの!」
ローラ「そして、今私はあの子が居る筈の場所に、今ここにいる!!」
上条「……いぃ」ボソ
ローラ「結局、私はそうやって自分に有益になるようにしか動いてないのよ」
上条「もう……いぃ」
ローラ「ごめんね、当麻。ここまで来て私は、結局はこんな惨めな女だったのよ」
上条「もういいっていってんだろ!!」ギュゥ
上条「それ以上……言わないでくれ」
ローラ「当……麻…………」
上条「頼む……頼むから、それ以上俺の傍から離れようとしないでくれ......!!」
上条「いっただろ! 俺は、どんな事があってもお前を離さねぇって!!」
上条「だから……だからこれ以上、俺を…………俺を迷わさせないでくれよ......!」
ローラ「うぅ……ぅぅぅ......うぁぁああああ!!」
上条「くそ……くそぉ......!!」ポロポロ
何があっても離れないと、そう誓った二人。
だがそれは、言う程簡単ではない。
お互いの全てを背負っても、それでもつぶれる事なく、永久の道を二人で歩いていく。
それができる者のみが、誓う事ができるのだ......
614: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:07:40.92 ID:QLJzXwBk0
――とある学生寮――
夕方時。丁度空が夕日により紅色に染まる頃。
上条「さて、ローラ。もう泣き止んだか?」
ローラ「えぇ、もう大丈夫よ」
上条「まったく、せっかくここまできたんだからあんな事はもうこりごりですよ」
ローラ「うぅ……こ、今回は仕方ないじゃないの。もぅ」
上条の言う「あんな事」とは、ローラの泣きじゃくりながらの抱きつき(攻撃)の事である。
本人は意識していないようだが、それはそれはもうすごい力なんだとか。
おかげで上条は、離された後もしばらくもだえる事となった。
上条「いやーそれにしても、今にして思えば結構貴重な所を見れたのかもな」
ローラ「貴重って?」
上条「だって、ローラがあんなに泣く姿なんてそうそう見れたもんじゃなさそうだし」
ローラ「なっ、ななななにを言うの当麻は!? 当麻だって泣いてたじゃないの!」
ローラ「子供みたいに大きな声で『びえーん』って泣いてたじゃない!」
上条「びえーんなんていってねぇし! それにローラ程子供でもねぇよ!」
ローラ「んなっ! わ、私が子供だとでも言うの!? 当麻は!!」
上条「だってそうですよねーころころ機嫌変わるし、なんか仕草とかも大人には見えませんけど?」
ローラ「私は立派な大人よ! 当麻こそまだ高校生で、私から見たら子供なのだけれど?」
上条「なっ! お前歳を持ち出すのはずりぃぞ!!」
ローラ「ふふん、ここは絶対に譲れない所ね」
上条「…………いや、ちょっとまてよ?」
ローラ「ん? どうしたのかしらん?」
上条「……なぁ、ローラ」
ローラ「急におとなしくなって、どうした?」
今まで何故疑問に思わなかったのか自分でも不思議だった上条。
今まさに、自分の中に芽生えたある一つの疑問を正直に投げつけようとしている。
まぁ歳の話を持ち出されたのだから、聞かなければ気が済まなかったのであろうが、
それが禁句だとも知らずに......
上条「ローラってさぁ」
ローラ「なぁに? 当麻」
上条「何歳なの?」
ローラ「」プッチン
まぁその後上条の身に何が起こったかは……ご想像にお任せしよう。
615: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:08:43.75 ID:QLJzXwBk0
上条の身にカオスが起きた後の事
上条「うぅ……い、いくらなんでもこれはやりすぎではないのかと上条さんは思いますの事よ」ボロ
ローラ「ふん! 乙女のディープな所を突いた当麻が悪いのよ」プンプン
上条「そりゃぁ悪かったって。ってててて......」
ローラ「と、当麻が悪いのだから!」
上条「不幸だ……」
ローラ「悪い……のだから…………」チラ
上条「うわ、買い物いかなきゃ食糧ねぇじゃん……不幸だ」ハァ
ローラ「うぅ~......」プルプル
自分でぼろぼろにした上条を見て、なんとも切ない気持ちになっていくローラ。
ローラにも列記としたプライドと言うものがあり、自分でやったのだから後は知らんぷり。
…………するつもりだったのだが。
ローラ「っもぅ!」ダダダッ ギュゥ
上条「へっ、は? ちょっ、ちょっとローラさんなにをしているんでせうか!?」
やっぱりというかなんというか、上条にとびかかっていた。
ローラ「ごめんね、当麻! もうこんな事しないから……!」ギュゥウ-
上条「いやいやいやこれは色々とまずいってローラ、ちょっ、離れろって!」
ローラ「嫌! 離さない!!」
上条「何故だやばいんだってこれええ!!」
上条(主に胸が顔に当たってくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」)
余談ではあるが、ローラの抱きつきが攻撃として成り立っているのは〝これ〟のせいなのだ。
いつも地味(自称)な修道服を着ているローラだが、それでも一目でわかるの程の二つの大きなゲフンゲフン。
これが上条を滅茶苦茶に圧迫していた。
ローラ「当麻が苦しそうにしてるのをみてるのなんて……やっぱり耐えられない!」グス
上条「えっ……!?」
そんな若干ふざけた事を考えていた上条であったが、今のローラの一言により目が覚める。
これで思考が覚醒しない方がおかしい。なぜなら――――
ローラ「ひっぐ……うぅ」ポロポロ
ローラは今、また泣いていたからだ。
上条「えーっとそのーほら、そんなに泣くなって」
ローラ「ご、ごめんなさい……ぐす」
上条「俺もあんな何も考えずに不幸だとかなんだとか言っちまって悪かったよ」
ローラ「当麻は何も悪くない……悪くないわよ」
悪魔でも傷つけた自分が悪いと言い張るローラ。だが、それを上条は許さなかった。
上条「うぅ……い、いくらなんでもこれはやりすぎではないのかと上条さんは思いますの事よ」ボロ
ローラ「ふん! 乙女のディープな所を突いた当麻が悪いのよ」プンプン
上条「そりゃぁ悪かったって。ってててて......」
ローラ「と、当麻が悪いのだから!」
上条「不幸だ……」
ローラ「悪い……のだから…………」チラ
上条「うわ、買い物いかなきゃ食糧ねぇじゃん……不幸だ」ハァ
ローラ「うぅ~......」プルプル
自分でぼろぼろにした上条を見て、なんとも切ない気持ちになっていくローラ。
ローラにも列記としたプライドと言うものがあり、自分でやったのだから後は知らんぷり。
…………するつもりだったのだが。
ローラ「っもぅ!」ダダダッ ギュゥ
上条「へっ、は? ちょっ、ちょっとローラさんなにをしているんでせうか!?」
やっぱりというかなんというか、上条にとびかかっていた。
ローラ「ごめんね、当麻! もうこんな事しないから……!」ギュゥウ-
上条「いやいやいやこれは色々とまずいってローラ、ちょっ、離れろって!」
ローラ「嫌! 離さない!!」
上条「何故だやばいんだってこれええ!!」
上条(主に胸が顔に当たってくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」)
余談ではあるが、ローラの抱きつきが攻撃として成り立っているのは〝これ〟のせいなのだ。
いつも地味(自称)な修道服を着ているローラだが、それでも一目でわかるの程の二つの大きなゲフンゲフン。
これが上条を滅茶苦茶に圧迫していた。
ローラ「当麻が苦しそうにしてるのをみてるのなんて……やっぱり耐えられない!」グス
上条「えっ……!?」
そんな若干ふざけた事を考えていた上条であったが、今のローラの一言により目が覚める。
これで思考が覚醒しない方がおかしい。なぜなら――――
ローラ「ひっぐ……うぅ」ポロポロ
ローラは今、また泣いていたからだ。
上条「えーっとそのーほら、そんなに泣くなって」
ローラ「ご、ごめんなさい……ぐす」
上条「俺もあんな何も考えずに不幸だとかなんだとか言っちまって悪かったよ」
ローラ「当麻は何も悪くない……悪くないわよ」
悪魔でも傷つけた自分が悪いと言い張るローラ。だが、それを上条は許さなかった。
616: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:09:25.33 ID:QLJzXwBk0
上条「いいや、全部俺が悪い」
ローラ「え……?」
上条「ローラと一緒に過ごせているのに不幸だなんて、そんな事いう俺は本当に馬鹿野郎だよ」ギュ
ローラ「!!」
何時になく強気な発言を裏から支えるのは、やはりローラの存在だった。
不幸と言うのが日常の彼にとっての、常なる幸福。
この言葉は、その幸福を野放しにした不幸で消し去ろうとした自分への戒めでもあったのだろう。
上条「さっきの言葉も……その、すげぇ嬉しかったし」
ローラ「じゃ、じゃあ当麻。当麻は今……幸せなの?」
上条「あぁ、幸せだとも」
上条「不幸だなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇさ」
それが今の彼の本音。
どんなに不幸が降りかかろうと、どんなに不幸が彼を気づつけようとも、
結局自分は幸福である事に変わりはないのだと。
それがローラと共に過ごした彼なりの「答え」なのだ。
ローラ「そう……ふふ♪ そう、そうなのね♪」ガバ
上条「ってまたかよ!」
ローラ「私も幸せよ……当麻」ギュウゥ
上条「ったく、本当に泣いたり笑ったり忙しいよな。ローラは」
ローラ「いいじゃない、だって」
ローラ「当麻だけなんだから♡」
上条「はいはい……って、え?」
617: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:10:20.94 ID:QLJzXwBk0
――学園都市内 外――
色々とごたごたしている内に、もう日は完全に落ちてしまっていた。
だが、上条はそこで食糧が無いという前代未聞の緊急事態を思い出し、買い出しに来ていたのだ。
今は車椅子には乗らず、松葉杖で外に出てきている。
たまには歩きたいという上条が無理やり外にそのままでてきたのだ。
上条「なぁローラ」
ローラ「なぁに?」
上条「ローラってさぁ……その服以外になにも持ってないのか?」
ローラ「えーっと……この修道服の事かしら?」
上条「そうそうそれ」
ローラ「なんで?」
上条「いや、そのー……なぁ?」チラ
ローラ「?」
上条がジッと見るのは、ローラの胸。
オルソラと言いなんと言い、修道服と言うのはどうしてこう出ている所を隠さないのだろうと上条は思う。
ローラ「って当麻……何処を見ているの か し ら ?」ニコ
上条「ひっ!!」ビクン
一瞬笑うローラの背後に燃え上がる何かを垣間見た上条。
やはりこういう時のローラ程怖い物は無いと再認識させられる。
ローラ「もう! 当麻のスケベ!」
上条「ぐぅっ……」
ローラ「それで? なんでそんな事を急に言い出したの?」
上条「いや、普通に考えてちょっと目立ちすぎかなーっと思ってな」
ローラ「そうかしら? 私は結構地味な物を選んでいるつもりなのだけれど」
上条「だってどんなに服が地味でもローラがそんなに目立ってちゃな」
上条のいう事はもっともであった。
日本人とはとても思えない顔立ちに、最早同じ人間かと疑いたくなる程に綺麗で、長い黄金色の髪。
そして……
上条「そのー……胸とか」ボソ
ローラ「なっ……///」
上条「と、とにかく目立つなら目立つでちゃんとした服を着て欲しいと上条さんは思うんです!!」
ローラ「むぅ~……当麻は私に目立ってほしいの?」
上条「だって……ローラは何着ても目立っちまうだろうからな。そのー……綺麗だし、かわいいし?」
ローラ「そ、そう/// まぁ当麻がそういうなら……」テレテレ
上条「じゃあ今度セブンスミストにでも――「あ? 上条じゃねぇか! おーい!」
上条「え?」
618: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:11:05.05 ID:QLJzXwBk0
後ろから急に名前を呼ばれ、振り返った上条。
そこには、元スキルアウトであり、上条の友達である浜面仕上がいた。
浜面「よっ!」
上条「おぉ! 久しぶりだな!!」
浜面「どれくらいぶりだ?」
上条「大体一か月程度じゃねえか?」
浜面「えーっと最後に会ったのが戦争の時だったから……そうか、もうそんなにか」
上条「はは、それにしても元気そうだな」
浜面「お前こそ変わらねえな。って、その足どうしたんだ?」
上条「あぁいや、いろいろあってな」
浜面「はは、なんだ。またどうせ『不幸だー!』とか言ってやらかしたんだな?」
上条「まぁそんな所だな」
上条「お前こそまだあの女の子達の尻にしかれてんのか?」
浜面「あ? あぁまあな」
上条「ははは、まだやられてんのかよ」
浜面「お前こそ年がら年じゅう不幸ばらまいてんじゃねェか」
上条「ハハハハハ」
浜面「ハハハハハ」
浜面「あ゛?」
上条「ほぉ?」
結局険悪ムードになってしまった二人。だがこれが友達と言うものなのでさして問題はない。
そう、この二人の間は問題がないのだが……
「は~まづらぁ~……お前さぁ、私を置いて走って一人で行くとか舐めてるの?」
浜面「あっ……」
「 ブ チ コ ロ シ 確 定 ね 」
そこには、元スキルアウトであり、上条の友達である浜面仕上がいた。
浜面「よっ!」
上条「おぉ! 久しぶりだな!!」
浜面「どれくらいぶりだ?」
上条「大体一か月程度じゃねえか?」
浜面「えーっと最後に会ったのが戦争の時だったから……そうか、もうそんなにか」
上条「はは、それにしても元気そうだな」
浜面「お前こそ変わらねえな。って、その足どうしたんだ?」
上条「あぁいや、いろいろあってな」
浜面「はは、なんだ。またどうせ『不幸だー!』とか言ってやらかしたんだな?」
上条「まぁそんな所だな」
上条「お前こそまだあの女の子達の尻にしかれてんのか?」
浜面「あ? あぁまあな」
上条「ははは、まだやられてんのかよ」
浜面「お前こそ年がら年じゅう不幸ばらまいてんじゃねェか」
上条「ハハハハハ」
浜面「ハハハハハ」
浜面「あ゛?」
上条「ほぉ?」
結局険悪ムードになってしまった二人。だがこれが友達と言うものなのでさして問題はない。
そう、この二人の間は問題がないのだが……
「は~まづらぁ~……お前さぁ、私を置いて走って一人で行くとか舐めてるの?」
浜面「あっ……」
「 ブ チ コ ロ シ 確 定 ね 」
619: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:13:36.51 ID:QLJzXwBk0
瞬間、浜面の背後から青色の光線の様な物が飛んできた。
浜面はそれを間一髪しゃがんでよける。
浜面「っぶねーな!! 当たったらどうすんだよ!?」
「別に浜面ならこんぐらいじゃ死なないし大丈夫でしょ?」
上条「あれ……たしかあんたは」
「あら? どっかで見た顔だと思ったらあんた」
上条「麦野……さん?」
麦野「あら~覚えててくれたの? うれしいわね、前大戦の英雄に覚えていてもらうなんて」
浜面と共に現れたのは、LEVER5の第四位「原子崩し」こと麦野沈利であった。
どうやら上条の事を「英雄」としているようだ。
上条「いや、そんな英雄なんてもんじゃないですよ」
麦野「そうかしら? だって貴方が居なければ世界がどうなってたかわかんなかったんでしょ?」
麦野「ここにいる無能で馬鹿で屑みたいな奴より全然良いじゃない」ニコ
浜面「うぅ……」ズーン
上条(浜面ェ……)
麦野「って、その足どうしたの?」
浜面「なんかまた不幸でやらかしたらしい」
麦野「あんたも本当に不幸ねぇ……」
上条「はははは......」
麦野「所で、今日はこんな所でなにしてるのかな~?」
上条「あっ……」
そこで上条は今更のように思い出す。
今日は自分一人ではなかったと。
浜面はそれを間一髪しゃがんでよける。
浜面「っぶねーな!! 当たったらどうすんだよ!?」
「別に浜面ならこんぐらいじゃ死なないし大丈夫でしょ?」
上条「あれ……たしかあんたは」
「あら? どっかで見た顔だと思ったらあんた」
上条「麦野……さん?」
麦野「あら~覚えててくれたの? うれしいわね、前大戦の英雄に覚えていてもらうなんて」
浜面と共に現れたのは、LEVER5の第四位「原子崩し」こと麦野沈利であった。
どうやら上条の事を「英雄」としているようだ。
上条「いや、そんな英雄なんてもんじゃないですよ」
麦野「そうかしら? だって貴方が居なければ世界がどうなってたかわかんなかったんでしょ?」
麦野「ここにいる無能で馬鹿で屑みたいな奴より全然良いじゃない」ニコ
浜面「うぅ……」ズーン
上条(浜面ェ……)
麦野「って、その足どうしたの?」
浜面「なんかまた不幸でやらかしたらしい」
麦野「あんたも本当に不幸ねぇ……」
上条「はははは......」
麦野「所で、今日はこんな所でなにしてるのかな~?」
上条「あっ……」
そこで上条は今更のように思い出す。
今日は自分一人ではなかったと。
620: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:14:03.68 ID:QLJzXwBk0
上条(や、やばいっ!! すっかり忘れてましたよこの馬鹿野郎!!)チラ
恐る恐る後ろを振り返る上条。
そこにはちゃんとローラが居た。居たのだが……
ローラ「………」ブツブツ
上条「え、えーっと……ローラサーン?」
ローラ「ふん! 当麻なんて知らない!!」
上条「うわああああああ!!!」
案の定、である。
麦野「え……な、何この人」
浜面「ん? どうしたんだ沈……oh...」
どうやらこの二人はいまだにローラに気づいていなかった様子。
上条が話しかけた時、やっと自分達に関係のある人だと理解したようだ。
まず第一印象が――――
麦野(こんなに綺麗な人見たことないわよ……)
だそうで。
浜面(な、なんだあのクソなげぇ金髪は、すっげえ綺麗だ......)
っとまあ当然な反応であった。
621: ゴミ箱 2012/04/08(日) 01:14:32.05 ID:QLJzXwBk0
浜面「お、おい上条。その人はだれなんだ?」
上条「え!? あーえっと……なんていったらいいかな」
ローラ「ふんっ!!」プイ
上条「あぁもう機嫌直してくれって! 俺がわるかったから!!」
麦野「あら、もしかして……そういう関係?」
ローラ「………」ピク
上条「えっ……?」
浜面「おいてめぇ! どうなんだよ!! あぁ!?」
上条「いやいやいやそういう関係ってどういう関係なのか上条さんサッパリなのですが」
麦野「だからー、あれよアレ」
麦野「夫婦」ニヤ
上条「っ!?」
浜面「かみじょぉぉおおおおおお!!」
上条「いや、まぁそういうわけじゃ」
麦野「違うのかにゃーん? じゃあ直接きいちゃおうかしら」
そういって麦野はローラに近づいていく。
以前、ローラは機嫌を損ねてそっぽをむいている……わけではなかった。
麦野「失礼、貴方のお名前を教えてもらってもよろしいかしら?」
ローラ「ローラ=スチュアートよ」
麦野「麦野沈利よ、よろしく」スッ
ローラ「えぇ、よろしくね」ギュ
麦野「それで本題ですけど、あの子とは一体どういう関係ですかねぇ?」ニヤァ
上条「いや、そのー―――――「妻、よ」
麦野「!?」
浜面「!?」
上条「あー……」
ローラ「上条当麻の妻……よ?」
640: ゴミ箱 2012/04/12(木) 22:24:32.31 ID:F1CGNAUv0
――――――妻……よ?
ビルに囲まれた街中。そこに、隙間を掻い潜るように漏れ出していた夕日が、未だにうっすらと影を残している。
ローラ=スチュアートが放った一言は、確かにその瞬間、世界を止めていた。いや、凍りつかせていた。
…………なんだけれども。
上条「うーん…………」
ローラ「だめ……かしら?」
頬を赤らめ、少しモジモジしながら上条の答えを待つローラ。
そのかわいらしい仕草の前に、上条は脆くも崩れ去るしかなかった。
上条「うぅ……/// ま、まぁ俺はそれでも構わない……かな?」
自らの気持ちを声にだすのが恥ずかしいのか、目線は何処か落ち着きがなく、少し照れているようだった。
だが、その言葉に一切の迷いは無い。
ローラ「ふふ♪ よかった♡」
松葉杖を気にしてなのか、思いっきり抱きつく事はせずに、そっと上条の腕に自分の腕を絡めたローラ。
それを拒む事無く、終始頬を赤くしたまま上条もローラに少し身を寄せる。
詰まる所、もう「どうしてこうなった」と言う事しかできない程自分達の世界に浸っていた。
浜面「おい沈利……これどうすんだよ」
最早驚くでもなく、慌てる事もなく。むしろ何かを悟ったかのような態度で麦野の指示を仰ぐ浜面。
浜面「…………あれ?」
だが、いくら待っても答えは返ってこない。
不信に思った浜面は、麦野の方を軽く横目で見てみた。
641: ゴミ箱 2012/04/12(木) 22:24:58.96 ID:F1CGNAUv0
麦野「………」
そこには、確かに麦野がいた。だが、何処か様子がおかしい。
暗がりなので浜面には良く分からないが、若干火照っているように見える。
その証拠に、頬が赤くなっている。いや、顔全体といって差し支えないだろう。
それに、何かをブツブツ呟いているようだ。
少しの間それを見ていた浜面の行き着いた考えはただ一つ。
浜面(よし、帰ろう!!)
まったくこの状況についていけない浜面は、もう考えるのをやめ、とにかくこの場から離れる事にした。
浜面(上条からは後で話きけばいいか。ぜってえ絞り出してやる)
別にあの金髪の美女が誰なのかとか、なぜ妻とか言ってるのかとか色々気になる事が無いわけではなかった。
だが、とにかくもうこの場に居るのが嫌になった浜面は、未来の自分に全てを託し、撤退する事にしたのだ。
浜面(沈利も一体どうしちまったんだか。まぁ、先に帰っててもいいy……は?」
「ギュッ」っと。それこそ、そんな効果音が似合うような感触が、浜面を襲う。
その正体を確かめるべく、浜面は恐る恐る視線を下に、自らの胴体に落とす。
そこには、見惚れるような女性の腕が巻きつけられていた。
浜面「お、おい! 沈利……だろ!? きゅっ、急にどうしたんだよ!!」
浜面にはもう心当たりが一つしかなかった。
この時間帯にはもう人はあまり見かけられないし、何より自分にこんな事をするような人物など一人しか知らない。
浜面は恐る恐る振り返る。そして、自分の胴体に腕を回して抱きついていたのは…………やはり麦野であった。
浜面「なんのつもりだよ…………」
麦野「そのー……ね?///」
―――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――
――....
642: ゴミ箱 2012/04/12(木) 22:25:26.22 ID:F1CGNAUv0
~数分後~
上条「あれ? 浜面の奴、何処に行った?」
自分たちの世界からようやく戻ってきた上条。
周囲を見渡してみると、浜面どころか人っ子一人いなかった。
上条「まっ、いっか。別にまた会えるだろうし」
普通にまた会えると言う事がどれほど素晴らしい事なのかを度々痛感させられる事の多い上条。
だが、それをさらっと言える程に、今の彼は平和的世界の上に立っていた。
そんな折、ふと上条はローラを見た。
ローラ「~♪」
上条の腕にしがみついて離そうとする気配がない。
どうやら、未だに甘い世界に浸っている様子だ。
上条(そういや浜面達の前で堂々と抱きしめちゃったな)
あの時は、完全に周りが見えていなかったのだろう。
人目を気にする事無く、完全に甘い甘い自分達の世界に浸っていたのだ。
もし次もこんな事があったとしたら……というか、そんな事考えたくも無い。
上条(まっ、隠すような事でもないんだけど……ちょっと浮かれすぎか?)
この時初めて、上条に「羞恥心」やら「自重心」なる物が芽生え始めた。
だが、己の腕にしがみつくローラを離したりとかそういった事はせず、逆にさらに抱き寄せる。
それに反応したのか、ローラがこちらを向いて一言。
ローラ「大好きよ……当麻」
上条(あぁもう幸せなんだからいっか)
折角芽生え始めた上条の良心(?)も、結局はローラよってあっけなく摘み取られてしまった。
643: ゴミ箱 2012/04/12(木) 22:25:52.20 ID:F1CGNAUv0
ローラ「ねぇ、当麻」
上条「ん?」
上条が結論を下した時。ローラが少し、不満気な顔で上条迫っていた。
どうしたかと思い、足を止める上条。
ローラ「…………お腹がすいたわ」
上条「あっ」
その時上条はやっと思い出した。なぜ自分が外に出ていたのか。
今足を止める前は、何処に向かって足を進めていた?
上条「っ上条さんは何をやってるんでしょうかねえ!!」
急いで携帯内蔵の時計を見る。
すると、案の定。
上条「六時……十分……」
ローラ「とうま~買い物なら早くいきましょうよ~」
完全下校時刻は、当に過ぎていた。
644: ゴミ箱 2012/04/12(木) 22:28:07.13 ID:F1CGNAUv0
上条「そりゃーそうだよなー」
いきつけのスーパーを前にして、嘆く上条。
ローラ「どうしたの? 早く入らないと…………」
上条「いや、それがだな」
入れない、と上条は言うのだ。
ローラ「入れない……?」
小首を傾げ、頭に?マークを立てながらオウム返しをするローラ。
上条「いや、入れないわけじゃないんだけどさ」
ローラ「どういう事?」
ローラは何を言うのかと不思議そうだ。
だが、入れない理由等至って単純と言うか、実に上条らしかった。
上条「入りづらいんだよ。完全下校過ぎちゃったから…………」
学園都市特有の絶対制度、完全下校。基本的に学生は、この時間以降は外出が禁止となっている。
もし外を歩こう物なら、それだけで警備員の目に留まる。
この制度のせいで、上条は今までに何度涙を拭いて来た事か。
ローラ「完全下校……?」
上条「あぁ、ローラには後で説明するよ」
ローラ「お願いね」
上条「おう。さて、どうするか」
別に入れないわけではない。
原則外に出てはいけないだけで、日本の法律程の縛りも無い。
だが、ただの学生が下校時間後のこの時間にここに入るのは、なんというか、嫌だった。
このままでは食糧にたどり着けない。っと、そんな時。
上条「あっ……そうだ」
どうやら、この状況をどうにかする方法を思いついたようだ。
ローラ「なにか思い出したの?」
上条「いや、ちょっとした思い付きなんだけど」
それは、今上条が最もしたい事。
上条「外でたべようか」
外食であった。
662: ゴミ箱 2012/04/20(金) 21:46:42.49 ID:kjj2cSL90
学園都市
その名の通り、都市そのものが大きな学園となっている場所。
人工の7~8割を学生が占め、それ以外は教職員か研究者ぐらい。
大人という存在自体が珍しい……と、極端にいえばそうなる。
そうなってくると、当然。居住スペース等も決まってくる。
大体が学生寮かアパート、マンションと呼べる物は稀有だ。
つまり、絶対的に学生と無縁の場所と言うものも生まれてくるのだ。
その一つの例として、ホテルがあげられる。
学園都市外の要人の為に一応設置はしてあるが、学生がここを利用する事などほとんどない。
そんな事情の最中、とある高級ホテルの最上階に二人の姿は在った。
663: ゴミ箱 2012/04/20(金) 21:47:47.62 ID:kjj2cSL90
――レストラン Sweet a Hest――
二十階建てというここらへんに広がるホテル街の中でも、少々大き目な部類に入るこの高級ホテル。
その最上階に、このレストランは入っていた。
外から見れば、円盤をそのまま上にくっつけた様な感じであり、
中からは円形のホール状になって見える。
特に柱と言えるような物は無く、唯一中央に支払用のカウンターとエレベーターがポツンと突っ立っている程度。
天井、床、テーブル、全てがシンプルかつ豪華。壁……は全面ガラス張り。
そんな部屋を、薄暗い紫色の照明が、少しうっとりさせるような空間を作り出す。
厨房は見えないが、
何処からともなく料理を運ぶ紳士が現れては消えていき、客は突然料理が現れたかのような錯覚にすら陥る。
総じて言えば、まさに高級レストラン。
来たものは全員、個々の世界を持ち、そこで料理を食べる。
それが可能な場所であった。
そんなレストランの窓際にて......
上条「はぁ……キレイだな」
ローラ「えぇ……」
頬杖をついたまま、窓に向かって溜息をつく上条。
いや、正確に言えば、窓から覗ける「景色」 眺めに対してだろう。
前述した通り、周りのホテルよりも少し高いこのホテル。
それ故に、ここからの眺めを遮る物等、無い。
遠くを覗ける空に、下方に位置する建物の明かりが浮かび上がる。
皮肉にも、人工のその光は、自然界の蛍を連想させた。
ローラ「こんな物、初めて見たわ。まさか、ここでこんな気持ちになれるなんてね」
うっとりとした表情のローラ。
店内の雰囲気と相まってか、ここはどこよりも心地が良いのかもしれない。
上条「意外だな」
ローラ「え?」
ローラの方を振り返らず、口から洩れたような疑問を投げかける上条。
上条「ローラって、ここに来る前にこんなの一杯見てきたと思ってたんだけどな」
ここに来る前。つまり、まだローラが最大主教だった頃。
上条「普通にすごい立場だっただろ? なら、こんな場所で食事なんてザラにあったんじゃないかなーって」
ローラ「確かにそれもそうねぇ……」
首を傾げ、顎に手を当てている素振りを見る限り、
自分自身なぜここまでゆったりとしていられるのかが分からないらしい。
ローラ「あっ」
上条「ん?」
ポン、と。難問がようやく解けたかのように、手を打つ。
そのローラの顔は、今までに無いくらいに微笑んでいた。
二十階建てというここらへんに広がるホテル街の中でも、少々大き目な部類に入るこの高級ホテル。
その最上階に、このレストランは入っていた。
外から見れば、円盤をそのまま上にくっつけた様な感じであり、
中からは円形のホール状になって見える。
特に柱と言えるような物は無く、唯一中央に支払用のカウンターとエレベーターがポツンと突っ立っている程度。
天井、床、テーブル、全てがシンプルかつ豪華。壁……は全面ガラス張り。
そんな部屋を、薄暗い紫色の照明が、少しうっとりさせるような空間を作り出す。
厨房は見えないが、
何処からともなく料理を運ぶ紳士が現れては消えていき、客は突然料理が現れたかのような錯覚にすら陥る。
総じて言えば、まさに高級レストラン。
来たものは全員、個々の世界を持ち、そこで料理を食べる。
それが可能な場所であった。
そんなレストランの窓際にて......
上条「はぁ……キレイだな」
ローラ「えぇ……」
頬杖をついたまま、窓に向かって溜息をつく上条。
いや、正確に言えば、窓から覗ける「景色」 眺めに対してだろう。
前述した通り、周りのホテルよりも少し高いこのホテル。
それ故に、ここからの眺めを遮る物等、無い。
遠くを覗ける空に、下方に位置する建物の明かりが浮かび上がる。
皮肉にも、人工のその光は、自然界の蛍を連想させた。
ローラ「こんな物、初めて見たわ。まさか、ここでこんな気持ちになれるなんてね」
うっとりとした表情のローラ。
店内の雰囲気と相まってか、ここはどこよりも心地が良いのかもしれない。
上条「意外だな」
ローラ「え?」
ローラの方を振り返らず、口から洩れたような疑問を投げかける上条。
上条「ローラって、ここに来る前にこんなの一杯見てきたと思ってたんだけどな」
ここに来る前。つまり、まだローラが最大主教だった頃。
上条「普通にすごい立場だっただろ? なら、こんな場所で食事なんてザラにあったんじゃないかなーって」
ローラ「確かにそれもそうねぇ……」
首を傾げ、顎に手を当てている素振りを見る限り、
自分自身なぜここまでゆったりとしていられるのかが分からないらしい。
ローラ「あっ」
上条「ん?」
ポン、と。難問がようやく解けたかのように、手を打つ。
そのローラの顔は、今までに無いくらいに微笑んでいた。
664: ゴミ箱 2012/04/20(金) 21:48:31.34 ID:kjj2cSL90
ローラ「うふふ♪」
上条「どうしたんだ?」
ローラ「いいえ、あまりにも簡単だった物だから。ついね」
上条「簡単って……さっきのか?」
ローラ「そうよ」
そう言いつつ、上条に迫るローラ。
今更なのだが、二人は対面して座っている分けではない。
忘れてはならないが上条は怪我人であるため、一人立つのも一苦労する。
そこで、ローラの提案により二人は隣同士で座る事にしたのだ。
その方がなにかと便利らしい。(何が便利かは上条も知らない)
っとまぁそんな事情により、ずっとベタベタしているわけで。
上条「おいローラ。さすがにここでそれは」
ローラ「いいじゃない、ちょっとぐらい」
ちょっとと言いつつも、がっつり上条の腕にしがみついているローラ。
上条「ちょっとってなんだっけ?」
ローラ「これぐらいよ」
やはり、離す気はないらしい。
さらにがっしりとつかんで、二度と離さんとしている。
それを拒まない辺り、上条も満更ではないようだが。
上条「それで? 結局、どうしてなんだ?」
ローラ「あら、分からないのかしら?」
上条「うーん…………」
そんな事を言われても……と、上条は黙り込む。
元々レベル0の烙印を押されている上条からしてみれば、
毎日何かしらの肉を食べれればそれだけで豪華と言える程の経済事情。
そんな状態で、それこそ王族レベルの生活を送っていたローラの思考等、分かるわけがない。
ローラ「別に、今の当麻ならわかってくれてもいいと思うのだけれど」
上条「そうなのか?」
ローラ「そうよ」
上条「うーん……」
ローラの言う、「今の上条」とは、一体どういう事なのか。
今のという事は、以前とは違う状態と言う事になる。
だが、自分自身結構以前と変わったと思う上条。
それをいざ上げてみるとなると、中々出てこない。
665: ゴミ箱 2012/04/20(金) 21:49:26.96 ID:kjj2cSL90
ローラ「本当にわからないの?」
上条「んな事いわれたってなぁ……」
一番変わったと言えば、インデックスが居なくなった所だろうか。
だが、それは今とは関係が無い。
ローラ「そう……」
ずっと唸っている上条を見ていたローラは、突然、糸が切れたかのように崩れ落ちてしまった。
実際にはまだ上条にしがみついてはいるのだが、なんとなく、そんな風にとれる。
ローラ「わからないのね……そう。いいもん別に」
上条「えっ?」
ローラ「ふんっ」
そう言い放ち、上条から顔を逸らすローラ。
どうみてもいじけている。急にどうしたと言うのか。
上条(不覚にもかわいいと思ってしまいましたよ。っと、そんな事は置いといて)
上条(やっぱり、分からないと駄目なのかな)
考えられる要因としては、上条がこの〝答え〟にたどり着いてないという事。
だが、それのせいでローラが機嫌を損ねるとは考え難い。
っと、そこまで思考して、上条はある事に気づく。
上条(まてよ……おい、ちょっとまて)
上条(俺の身の回りで一番変わったって言えば――――)
なぜ、今の今まで気づかなかったのか。
答えなど、そこに転がっているではないか。
上条「そういうことか......」
ローラ「え?」
上条「ごめんな、ローラ」
自分の馬鹿さ加減を謝り、そっぽを向いているローラを強く抱きしめる上条
ローラ「へ? ちょっ、当麻?///」
上条「そりゃそうだよなー。上条さんだって今までとは違うにきまってるよな」
ローラ「それって……」
上条の意味深な発言に、その意図を察したローラ。
その顔には、みるみる笑顔が広がっていく。
上条「そりゃーそうだよな。だって――」
666: ゴミ箱 2012/04/20(金) 21:49:55.32 ID:kjj2cSL90
上条「今の俺には、ローラがいるからな」ギュ
ローラ「…………良かった♡」
675: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:18:13.86 ID:Y9j4v7s10
コトッ
上条「え?」
テーブルの上からしたらしい、物が置かれる音。
それに反応して顔を向けたとき、そこにはただ自分が頼んだ料理が置いてあるだけであった。
上条「いつのまに……」
ローラ「どうしたの?」
上条「いや、なんかもうここすげえわ」
なんと言ったらいいのか、自分の中の高級レストランのイメージがさらに覆された気分だった。
まさか、料理を運ぶ姿を見せないとは、一体どういう事か。
上条「まぁ、こっちのムードも壊されないしいいんだけど」
ローラ「あら? 私の料理もある」
今度は物音が一切しなかった。一体どういう原理だ、と上条は思わずにはいられない。
ちなみに、上条が頼んだのは、デミグラスソースオムライス。
時々だが、こういうものが食べたくなるのだと言う。
ローラも上条と同じくオムライス。
なんでも、上条と同じ物が食べたかったのだとか。
上条「本当にそれでよかったのか?」
ローラ「えぇ、勿論」
上条「まぁそれならいいんだけどな……さっ、いただきます」
ローラ「はい、いただきます」
正直言ってもう空腹が限界にまで達していた上条。
もう待って等いられなかった。
早速一口食べてみる。
上条「んぐ…………ンンン!?」
ローラ「あら、これは……」
上条「うっ、うめええええええええええええええ!!」
思わず、ほぼ条件反射的に叫んでしまった上条。
もし足が普通に使えたのなら、その場で踊りたくなるほどに、おいしい。
676: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:19:01.29 ID:Y9j4v7s10
ローラ「すごいわね、ここ。こんな物、あちらでも食べられないと思うわ」
上条「あぁ、そういえばローラはこんな物毎日のように……ってもう食べ終わったのかよ」
ローラ「え?」
ローラの目の前においてある皿には、オムライスの影も形も無かった。
丁寧にごはん粒の一つすらも残っていない。
ローラ「あら……」
上条「はぁ……前にもこんな事あった気がするんですけど」
上条が初めてローラに料理を振舞った時の事。
味噌汁や白いご飯に梅干し等、到って普通の和食だった。
それをローラは、上条が少し目を離していた間に全て平らげてしまっていた事がある。
「あっと言う間に」という言葉があるが、まさにそれだ。
ローラ「えーっと……テヘ☆」
小首を傾げ、如何にもと言った感じで誤魔化したローラ。
上条「嫌別に誤魔化さなくても」
ローラ「だって……行儀悪いと思われたら嫌だもの」
上条「って言われてもなぁ……」
正直な所、食べている所を見ていないのだからどうしようもない、っと思う上条。
もしかしたら犬食いをしていたかもしれないし、丁寧にスプーンを使い食べていたかもしれないし、
はたまた箸を使っていたかもしれない。
様々な妄想が膨らむ。
上条「まぁ、そんな気にするなって」
ローラ「そう……?」
上条「そうそう。さて、上条さんも食べますかね」
別段そこまで重要な事でもないし、気にすることでもない。
そこで上条は思考をやめ、自分の分を食べる事にした。
上条「それに」
ローラ「それに?」
上条「どんなローラだって、俺は好きだからな」
ローラ「えっ?
上条「それでいいだろ?」カチャカチャ
ローラ「ああぁ……うぅ///」
677: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:19:32.89 ID:Y9j4v7s10
上条「ふぅ……うまかった」カチャ
ローラ「ごうそうさま……ね」
上条「あぁ、ごちそうさま」
上条が食べ終わった頃には、もう七時を回っていた。
上条「そういやバスとか全部止まってるんだよな……っとなると、また歩くのか」
ここから上条の住む学生寮まではそう距離はない。
とはいえ、今から歩いて帰るとなると、家に着くのは何時になるのやら。
ローラ「まぁ、いいじゃない。時間はたっぷりあるんだから……ね?」
上条「そう……だな。時間なら、いっぱいあるからな」
今や自由の身のローラと、まだまだ若い上条。これから二人には、余りあるほどの時間がある。
それがある幸せを、もう二人は痛い程に理解している。
だからこそ、急ぐこと等せずに、ゆっくり、ゆっくりと……愛を育んでいくのだ。
上条「それじゃあ、行こうか。さすがにいつまでもここに居る分けにはいかないからな」
ローラ「それもそうね」
ローラの補助もありながら、席を立つ上条。
おぼろげな足取りで、ゆっくりと部屋の中央のエレベーターに向かう。
そこで、ローラがふと、関心したように言った。
ローラ「それにしても、当麻がこんなレストランにこれるなんて意外だったわ」
上条「あー……」
それは、ある意味で上条にとっては禁句の一言でもある。
時折上条は、見栄を張って自分の経済力ではどうにもならない事をする。
その時は、決まってこのような言葉で〝ボロ〟をだしてしまうのだ。
上条「ふっふっふ~」
だが、この時の上条はいつもとは違った。
上条「じゃじゃ~ん!」
ローラ「これは……チケット?」
上条がポケットから取り出したのは、金色で縁取りされた、二枚のチケットの様な物であった。
678: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:21:14.17 ID:Y9j4v7s10
上条「そう、なんとなんと、このレストランの食費などもろもろがタダになる特別チケットなのだ!」
ローラ「タダ……って、そんな物どこで手に入れたの?」
怪しい、っと、率直に思うローラ。
単純な話、ローラの舌もうならせる程の高級レストランのタダ券等、誰でも怪しむ。
上条「これはな、なんとあの土御門が見舞いに来た時にくれたんだよ」
見舞いの時にくれた。つまり、まだ上条が入院していた時の事。
――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
―――――――――――
――――...
――とある病院の一室――
上条「こ、高級レストランの……タダ券だと……!?」
土御門「そうだにゃ~」
上条「も、ももももしかしてそれを……俺に?」
土御門「そうだにゃ~」
上条「……まじで?」
土御門「しつこいぜい、カミやん。こういう時はおとなしくもらっとくもんだにゃ~」
上条「ありがたや~!」
土御門「丁度二枚余っただけだからいいぜい」
上条「二枚も……?」
土御門「おっと、その二枚目をどう使うかはしらんぜい。ばいばいにゃ~」ガラガラ
上条「あっ! ちょっとま……」バタン
……――――
―――――――――――
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――......
上条「って、もしかして土御門の奴、二枚くれたのって……」
そこで土御門の意図にようやく気付いた上条。
もしローラと二人で行くのを予測して二枚くれたのだとしたら……
今までシスコン軍曹と言っていたのを、改めなければならないだろう。
679: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:21:53.70 ID:Y9j4v7s10
ローラ「なら、今度土御門元春の奴にお礼をしなければね」
そう何処か、見直したと言った風な笑顔を浮かべながら言うローラ。
やはり、同じ思いであった。
上条「そうだな……」
心の中で、土御門にこれでもかとばかりに賞賛を送るしか、今の上条にはできなかった。
680: ゴミ箱 2012/04/25(水) 15:22:22.15 ID:Y9j4v7s10
タダ券二枚を片手にギュッと握りしめ、エレベーターの傍にあるレジに向かう二人。
だが、この時上条はある予想をしていた。
上条(いつもだとここで駄目になるんだけど……どうだ?)
やはり、そこは不幸体質故か。
どんなにこのタダ券があろうが、安心はできないらしかった。
もしかしたら、今この場で不幸にもなくしてしまうかもしれない。
もしかしたら、今この場で突然発火系能力者が攻撃してきて、チケットが灰と化すかもしれない、
もしかしたら、このチケットはもう使えなくなっているただの紙切れかもしれない。
もし、もし、もし......
そんな予測が、絶えず脳裏をよぎる。
だが、
店員「はい、本日の食事料金は無料となります。どうぞ、またお越しください」
その予想は、簡単に裏切られた。
上条「よかった……!!」
思わずその場で、感極まってへたり込んでしまった上条。
他の人からすればむしろこうならなければおかしいレベルの事だが、それが上条にとっては幸運なのだ。
ローラ「はぁ……当麻、早く行きましょう」
その様子を見たローラは、溜息を吐きつつも早くするように促す。
上条「おう、行くか!」
だが、当の本人はローラが若干呆れているのも知らずに、終始上機嫌であった。
696: ゴミ箱 2012/05/02(水) 23:18:29.23 ID:h4i+rz2A0
――とある学生寮――
上条「あー忘れてた」
玄関から少し進んだところで、上条は突っ立ったままそう言った。
彼の目の前には、目も当てられないような程に物が散乱していた。
上条(貴重品とかはあっちに持っていってらから無事だったけど、どうすっかなこれ)
改めてみると、今の彼の部屋はとても生活できるような状況ではなかった。
ベットの上には割れた窓ガラスが散乱しており、タンスは倒れている。
押し入れからは物と言う物が凍りついた滝の様な状況で飛び出している。
家電製品は冷蔵庫とかろうじて炊飯器が生きている程度か。
エアコン……は元々壊れていたから問題はない。
ローラ「どうしたの? とう……」
後から来たローラも、この様子を見て言葉を濁す。
さっきまでの幻想ムードは、一瞬にして残酷な現実によって上書きされてしまった。
上条「仕方ない。 今日は子萌先生にお世話になるか」
そう思い、携帯で子萌の家へと電話を掛けようとする上条。
だが、そこで一つだけ気になる事が。
上条(そういえば、今子萌先生の家に居候してた人いなかったっけ?)
いつ知ったかは覚えていないが、確か結標とか言う人が居た筈だ。
自分の記憶が正しければ、
かなりの美人で○○、おまけに変なファッションセンスだったと、若干下心混じりに思い出す。
もしその人が今も居候をしているとすれば、男上条一人だけそこで寝るわけにはいかない。
上条「どうしよう……」
ローラ「当麻、とりあえず少し片付けましょう?」
そういうローラの姿は、既に部屋の中にあった。
上条「そうだな……」
今この時間帯から片付けるとなると、恐らく夜が明けかねない。
だから片付けは明日に回してもいいが、そうするとそれはそれで色々と困る事になる。
上条「よし、とりあえずベットの上から片付けるか」
ローラ「分かったわ」
とにかく、ベットだけでも使用可能にして、寝る場所だけでも確保しようという結論に至った。
上条は、また浴槽に布団を敷いて寝ればいいと考えていた。
697: ゴミ箱 2012/05/02(水) 23:19:05.42 ID:h4i+rz2A0
ローラ「それにしても、当麻の部屋をこんなにしたの……だれなのかしら」
上条「まぁ、どうせスキルアウトとかだろう。 もう上条さんは慣れっこですからね~」
別に貴重品は奪われてないのだし、家電製品も学園都市側の援助もあって安く買えるだろう。
それ故に、遠まわしな軽い不幸発言で事を終わらせつつ、タンスを起き上がらせ、ベットへの道を作る。
常にローラの前にいて仕事をさせない辺り、紳士的ともいえる。
上条「あっ、ローラはちょっと洗面所の方を見てきてくれないか?」
ローラ「洗面所?」
上条「そっちの方にあるから、荒らされてないか見てきてくれ」
ローラ「わかったわ~」
上条に指示をされる事に、何処か気分を良くしたのか。 鼻歌混じりに洗面所に向かうローラ。
その後、しっかりとローラがこの場を離れるのを後ろ目で確認する。
上条(ローラは行ったか……よし!)
そして、驚くべきスピードでベットの下を確認した。
上条(ローラがいない間に、俺の秘蔵コレクションをなんとかしなければ!)
上条の言う秘蔵コレクション。
それは、世の男性紳士諸君ならば理解できるであろう、ある意味で自分だけの現実の事。
それは絶対に他人(特に異性)には見られてはいけないし、見られたら自分の存在を抹消したくなるほどの物。
だからこそ、それは核シェルターを使ってでも守り通さなければいけないのだが……
上条「あ……れ……?」
そこにある筈の物は、今上条の目の前には無かった。
698: ゴミ箱 2012/05/02(水) 23:21:20.64 ID:h4i+rz2A0
上条「ない、ないないないないない!!」
上条「どういう……ことだ!? 俺、確かにここにいれといた筈……あ!!」
そこで、はっとなる。
自分が隠したのは、ここではなかったと。
上条(そういえば、行く直前にインデックスに見つかりそうになって……)
上条は中腰に立ち上がり、ゆっくりと後ろを振り向く。
首から「ギギギ......」という機械音すら鳴りそうだった。
上条(洗面所に移したんだっ……)
気づいた時には既に遅し。
自分がとった安全策により、逆に墓穴を掘る事になろうとは。
そんな世界の絶望を垣間見たような彼の目の前には、ローラがそびえ立っていた。
ローラ「ねぇ当麻~……〝これ〟はなに……?」
少し引きつった笑顔を浮かべながら、掲げている右手に持っているのは、上条の命とプライドの次に大切な秘蔵コレクション。
上条「い、いやーそれはその~……」
ローラ「えーっと……ロリっ子大全――「うわあああああ!!」
なんとか読み上げられる前に取り返した上条。
誰もいないとはいえ自分の○○を暴露されるなどたまったものではない。
ローラ「ねぇ当麻。 それ、どうするつもしかしら?」
上条「どうするって……」
怖いくらいの笑みを浮かべたまま、上条の持つ〝それ〟を指さすローラ。
それを持つ上条の手は、今までのどんな時よりも震えていた。
上条「………」
ローラ「………」
しばしの沈黙。 しかしローラは笑ったままだ。
痛いくらいの視線と沈黙により、最早思考がまとまらない。
そんな上条に再起をかけるのは、ローラの言葉。
ローラ「なら、一つだけ聞くわ」
上条「な、なんだ?」
策士ローラが考えるのは、あまりにも無慈悲で、それでいて絶対不可避な質問。
ローラ「当麻がそれを捨てないのなら……もうここで私とはお別れね」
上条「なっ!?」
実際別れる気など一マイクロメートルも無いのだが、脅し文句としてこれ以上の物はないだろう。
元より答え等一つしか期待していないのだから、なにも恐れる事はない。
699: ゴミ箱 2012/05/02(水) 23:21:47.19 ID:h4i+rz2A0
ローラ「それはそうでしょう? そんな物を大事にとっとくと言うのなら――ビリ
ローラ「……え?」
ビリ、ビリリ……と、上条の手にあったそれから、音がする。
それは見るまでも無く、上条がそれを破り捨てていた音であった。
ローラ「と、当麻……そんな簡単に」
正直な話し、ローラも上条のこの行動に戸惑っていた。
まさかなんのためらいもなローラ「それはそうでしょう? そんな物を大事にとっとくと言うのなら――ビリ
ローラく上条がそれを破り捨てるなんて、まったく予測していなかった。
上条「簡単に、きまってんだろ…………」
だが、上条はそれが至極当然と言いたげな風にそれを床に叩き付け、ローラに向かって歩き出した。
ローラ「ちょっと、当麻!」
松葉杖を捨て、自らの足でローラに向かって歩き出す。
だが、現実はそこまで甘くは無い。 当たり前のように、上条の前進は、脆く崩れ去る。
上条「ローラにそんな事言われたら……上条さんにはこうするしか道はないって――――ッ!」
そうして、二歩、三歩と進んだ後、前のめりに倒れそうになるところを、ローラがやさしく抱き支える。
上条「だから……できるなら、もうそんな事は言ってほしくないんだ……」
ローラ「ごめんね、当麻。 でも、大丈夫よ……」
ローラ「私は、絶対に何処へも行かないから」
上条のすがる様な言葉に、聖母の様に、やさしく言い聞かせるように、ローラは言った。
上条「はは……まぁ、俺が絶対に離さないけどな」
ローラ「信頼してます! ふふ♪」
こうして、ようやく再会を果たした二人の長い長い一日は終わりを迎えるのであった。
700: ゴミ箱 2012/05/02(水) 23:22:14.88 ID:h4i+rz2A0
上条(やっべー、俺の秘蔵DVDコレクションまではばれてなかった!)
上条(ここはローラの気をこのままこっちに引いて、なんとか後で回収して――「あ、そうそう」
ローラ「なんだか良く分からない丸いプラスチックの板も割っておいたわ」
上条「………………」
716: ゴミ箱 2012/07/04(水) 00:24:12.13 ID:JY94tZFF0
――とある学生寮 上条の部屋――
上条「うぅ――――さみぃ......」モゾモゾ
冬の寒さから身を守るように、布団の中に改めて体を押しやる上条。
部屋の寒さは冬の外とさして変わりがなかった。
割れた窓ガラスを塞いでいるガムテープの隙間から、冷気が漏れ出しているせいであろう。
上条とローラが再開を果たした翌日。
荒らされた部屋の掃除を中途半端な状態で終え、上条達はさっさとベットで寝てしまっていた。
上条(まぁ別に急ぐもんでもないし。 一日かけたって終わるか分からないからな)
上条が言う事ももっともであった。
慣れているとはいえ、荒らされた部屋の掃除は引っ越しをする時並みに苦労をする。
ましてや、足をうまく使えない身だ。 常人の倍、疲労が増すだろう。
上条(まぁ、足が治ったら掃除しますかね。 さ、寝よ寝よ)
そう心の中で決め、再び眠りに付こうと体の向きを壁向きから反対にした。
上条「…………ぁ」
あまりに唐突だったので、少し面喰ってしまった。
目の前に、ローラがいたのだ。
上条(そういえば、一緒に寝てたの忘れてたな……)
普通忘れるなんてありえないのだが、そこは上条と言ったところだろうか。
ローラ「むにゃ……とうまぁ、そんな事......ん♡」
上条(ってどんな夢見てんだ!?)
思わず突っ込んでしまいたくなったが、そっと心の中に抑えた。
というか、上条からしてみれば、それどころではなかった。
上条「うぅ――――さみぃ......」モゾモゾ
冬の寒さから身を守るように、布団の中に改めて体を押しやる上条。
部屋の寒さは冬の外とさして変わりがなかった。
割れた窓ガラスを塞いでいるガムテープの隙間から、冷気が漏れ出しているせいであろう。
上条とローラが再開を果たした翌日。
荒らされた部屋の掃除を中途半端な状態で終え、上条達はさっさとベットで寝てしまっていた。
上条(まぁ別に急ぐもんでもないし。 一日かけたって終わるか分からないからな)
上条が言う事ももっともであった。
慣れているとはいえ、荒らされた部屋の掃除は引っ越しをする時並みに苦労をする。
ましてや、足をうまく使えない身だ。 常人の倍、疲労が増すだろう。
上条(まぁ、足が治ったら掃除しますかね。 さ、寝よ寝よ)
そう心の中で決め、再び眠りに付こうと体の向きを壁向きから反対にした。
上条「…………ぁ」
あまりに唐突だったので、少し面喰ってしまった。
目の前に、ローラがいたのだ。
上条(そういえば、一緒に寝てたの忘れてたな……)
普通忘れるなんてありえないのだが、そこは上条と言ったところだろうか。
ローラ「むにゃ……とうまぁ、そんな事......ん♡」
上条(ってどんな夢見てんだ!?)
思わず突っ込んでしまいたくなったが、そっと心の中に抑えた。
というか、上条からしてみれば、それどころではなかった。
717: ゴミ箱 2012/07/04(水) 00:28:34.48 ID:JY94tZFF0
上条「……近い」ボソ
そう、すさまじく近い。
もはや顔面はゼロ距離に近い。
唇と唇がくっつくまであと3センチあるかないかと言ったところだ。
体の方は、気を遣ってローラに使わせている厚めの毛布のおかげで触れてはいない。
とはいえど、毛布越しにでも当たるところは当たっている。
上条「………」ゴクリ
いままさに、上条の中で紳士と獣が闘っていた。
天使や悪魔とかそんな大それた物ではないが、上条にとっては今後の人生を左右しかねない程の戦いである。
上条(いや、もうほら、キキキキスまでしちゃったんだし別に変じゃないさ。
でもいいのか!? だからって、一線超えるような真似してもいいのかよ!!)
すさまじい自問自答を繰り返す上条。
なんとか自分の中のゲス条を抑えようと必死になっていだのだが、
ローラ「好き……」
上条(ちょっとだけならいいと上条さん思うんですよ)キリ
結局敵う事はなかったのである。
上条「ってことで……お、おじゃましますよ~」ゴソゴソ
ローラ「うぅん......」
ローラが包まっている毛布の中に、起こさないように体をすべり込ませていく上条。
こういう時にだけ器用さが発揮されるとはなんとも情けない話である。
上条(お、俺なんかとんでもない事してないか……!?)
今の上条とローラとの距離は……いや、距離なんて物もはやないだろう。
完全に密着している。 ローラの寝息がかかるたび、心臓が跳ね上がるのが分かる程だ。
上条(ってかやっぱりむ、胸が!!)
上条の体に、何か柔らかい物が押し付けられるのがわかる。
最早意識しないようにするなんて不可能だった。
思わず、視線が行ってしまう……と、その時に初めて上条は気づいた。
上条(……おい、ちょっとまてよ)
視線はローラの胸から、さらに下までつい行ってしまう。
そして、さらに驚愕の事実を目撃する。
上条(なんで……なんでYシャツにパンツ一枚なんでせうか......?)
良く見れば、Yシャツの下に何も着ていなかった。
所謂……
上条(裸Yシャツ……!?)
725: ゴミ箱 2012/08/02(木) 22:08:37.58 ID:8E3i1uYX0
なんでローラがこんな恰好で寝ているのかとか、その他諸々様々な疑問が津波の様に押し寄せる。
だが、それを考えるより先についつい目が行ってしまう。
上条(いやいやいやさすがにこれはまずいですだろおい……おい!)
心の中でそう叫びつつも、徐々にローラの首に手を回して抱きしめていく。
まったく言動と行動が一致していなかった。
上条(あーなんかいい匂いだし、なんていうか……気持ちいいなぁ)
抱きしめたローラの髪の毛の香りが、上条にとっては心地よかった。
それだけで満足したのか。 自分の行為の重大さなんてどっかにやってしまったらしい。
上条(にしてもこれ、さすがにダイレクトにおっぱ……胸の感触が伝わりすぎじゃないか?)
Yシャツ越しに感じている筈のローラの胸の感触は、生で触れているそれを変わりなかった。
大きさといいなんといい、感じる全てがとても服越しとは思えない。
いくらYシャツ一枚だけとはいえ、ここまで分かりやすく胸の感触とは伝わるものだろうか?
不信に思った上条は、ゆっくりと視線を胸元に向ける、と。
上条「ってボタンが取れてる!?」
ローラ「うぅん……」
上条(やべ、起きたか!?)
ローラ「ほぇ…………? とうま……?」
上条「いや、ちょっとてローラ! これには深いわけがあるんだって!!」
思春期真っ盛りな高校生が布団の中で寝ている女性を抱きしめていた。
しかも、その女性は半裸。
これだけでも十分起訴はできる。
上条に弁解の余地なんてなかった。
だが、それを考えるより先についつい目が行ってしまう。
上条(いやいやいやさすがにこれはまずいですだろおい……おい!)
心の中でそう叫びつつも、徐々にローラの首に手を回して抱きしめていく。
まったく言動と行動が一致していなかった。
上条(あーなんかいい匂いだし、なんていうか……気持ちいいなぁ)
抱きしめたローラの髪の毛の香りが、上条にとっては心地よかった。
それだけで満足したのか。 自分の行為の重大さなんてどっかにやってしまったらしい。
上条(にしてもこれ、さすがにダイレクトにおっぱ……胸の感触が伝わりすぎじゃないか?)
Yシャツ越しに感じている筈のローラの胸の感触は、生で触れているそれを変わりなかった。
大きさといいなんといい、感じる全てがとても服越しとは思えない。
いくらYシャツ一枚だけとはいえ、ここまで分かりやすく胸の感触とは伝わるものだろうか?
不信に思った上条は、ゆっくりと視線を胸元に向ける、と。
上条「ってボタンが取れてる!?」
ローラ「うぅん……」
上条(やべ、起きたか!?)
ローラ「ほぇ…………? とうま……?」
上条「いや、ちょっとてローラ! これには深いわけがあるんだって!!」
思春期真っ盛りな高校生が布団の中で寝ている女性を抱きしめていた。
しかも、その女性は半裸。
これだけでも十分起訴はできる。
上条に弁解の余地なんてなかった。
726: ゴミ箱 2012/08/02(木) 22:09:03.32 ID:8E3i1uYX0
ローラ「もう、とうまうるさい」
上条「あ……ご、ごめん」
目の前で叫ぶ上条に、いつも通りしかるローラ。
それで眼が冴えたのか、今の状況を確認する。
ローラ「ねぇ、これどういう事かしらん?」
上条「あーっと……」
返答に困った上条ではあるが、ローラの首に回した手を解こうとはしない。
ローラ「全く……良い? 当麻」
上条「な、なんだ?」
ローラ「こういう事しても良いけど、次からは起きてる時にしてほしいわね」
軽く子供を叱るように、コツンとおでこを上条の頭にぶつける。
そして、自身の腕を上条の首に回しつつ、互いの距離を縮めるようにゆっくりと抱きしめるローラ。
ローラ「分かった?」
上条「あぁ……ごめん」
ローラ「分かったなら良いの」
果たして、高校生上条当麻に弁解の必要など鼻っからなかったのであった。
ローラ「さぁ、もう少し寝ましょうか?」
上条「それが、上条さん結構トイレにいきたいのですが……」
ローラ「はぁ……ぶち壊しね」
上条「あ……ご、ごめん」
目の前で叫ぶ上条に、いつも通りしかるローラ。
それで眼が冴えたのか、今の状況を確認する。
ローラ「ねぇ、これどういう事かしらん?」
上条「あーっと……」
返答に困った上条ではあるが、ローラの首に回した手を解こうとはしない。
ローラ「全く……良い? 当麻」
上条「な、なんだ?」
ローラ「こういう事しても良いけど、次からは起きてる時にしてほしいわね」
軽く子供を叱るように、コツンとおでこを上条の頭にぶつける。
そして、自身の腕を上条の首に回しつつ、互いの距離を縮めるようにゆっくりと抱きしめるローラ。
ローラ「分かった?」
上条「あぁ……ごめん」
ローラ「分かったなら良いの」
果たして、高校生上条当麻に弁解の必要など鼻っからなかったのであった。
ローラ「さぁ、もう少し寝ましょうか?」
上条「それが、上条さん結構トイレにいきたいのですが……」
ローラ「はぁ……ぶち壊しね」
727: ゴミ箱 2012/08/02(木) 22:09:30.57 ID:8E3i1uYX0
上条「そういえば、なんでそんな服で寝てるんだ?」
ローラ「? そんな服って……これ?」
上条「いや、なんでボタンはずしてんのかなーって…………」
目を少し泳がせながらも、今にも漏れ出しそうなそれを指す上条。
キョトンとしていたローラであったが、自分の胸を見た瞬間顔が真っ赤になってしまっていた。
ローラ「これ……その、寝間着なかったから」
上条「そのYシャツ俺のだろ?」
ローラ「ベランダで見つけたから、着ちゃった……てへ」
上条「てへって……じゃあそのボタンは?」
ローラ「とれちゃったのよ。 最初は締めてたのだけれどねぇ......」
上条「と、とにかく今日買いに行くぞ!」
ローラ「うん」///
744: ゴミ箱 2012/09/09(日) 23:39:02.16 ID:TeZVJdhk0
―――とある病院―――
リハビリ二日目
今日も今日とて御坂美琴先生による壮絶なリハビリが行われていた......!!
御坂「オラァ! もっと背筋伸ばす!!」
上条「お、おう」
御坂「返事は『はい』でしょうが!!」
上条「はい!!」
御坂「分かったらこの廊下をあと五往復!」
上条「そんなにやるのかよ!?」
御坂「電流流して手助けしてやるんだから楽でしょうが!
ほら早くする!」バチバチ
上条「分かったからその電気を俺に向けるなって!」パキィ
御坂「ッてなに消してんのよ、この馬鹿!」ドガァン
上条「病院でそんなに電気使う奴に馬鹿なんて言われてたまるかあ!!」パキィン
ローラ(あの子あんな性格だったかしら……?)
745: ゴミ箱 2012/09/09(日) 23:40:17.18 ID:TeZVJdhk0
――――二時間後 休憩室
上条「ハァハァ……も、もう立てない......」
ローラ「はいとうま、お疲れ様」
今まさに倒れんとする上条をやさしく抱き支え、ソファーへと座る。
勿論、ひざまくら。
上条「にしても、きつすぎるだろこのリハビリ」
溜息混じりにつと不満を漏らす。
御坂の電気により、本来動くはずのない足を無理やりに動かすこのリハビリ。
足を使う時の信号を普段通り脳へと送る事により、通常よりも治癒を速めると言う。
とんでもない荒療治であるが、効果は抜群と言ったところか。
カエル「その代りに、体への負担はとんでもない程に大きいけどね?」
ローラ「あら、お世話になってます」
そう補足をしながら、冥土返しは入ってきた。
カエル「動かしてはならないという脳の命令を無視して体を動かすんだから、
それ相応の負担が体にかかるのは当たり前だよ」
座っているローラに軽い会釈をしつつ、説明を続けた。
カエル「ま、これも全部彼女の力のおかげと言ったところかな」
上条「まぁそうなんですけど…………」
御坂の協力が無ければ成立しないこのリハビリ。
心の中で彼女に感謝しつつも、御坂に対して若干の恐怖心が上条の中に芽生えつつある。
自分に電気を差し向けてくる者に対して、無心でいろと言う方が無茶だ。
カエル「まあ、仕方がない事だね? こればっかりは避けようがないよ」
上条「ははっ、ですよねー」
上条自身も分かっている事だけに、軽く鬱になりそうだった。
746: ゴミ箱 2012/09/09(日) 23:41:29.22 ID:TeZVJdhk0
ローラ「でもとうま、なんでわざわざこんなつらい事をしているの?」
上条「え?」
そんな折、上条の頭を撫でながらローラがそう言った。
ローラ「だって、こんな方法じゃなくても、普通に直せばいいじゃない?」
上条「あぁ、まあそりゃそうなんだけど」
ローラ「私は、できるならあんまり無茶は――――それについてなんだけどね」
カエル「昨日説明し忘れていたけど、君のその足は普通のリハビリでは治らない物なんだよ」
上条「は…………?」
ローラの言葉を遮って、突然語られた事実。
まったくもって無防備だった上条。
事実を受け止めるとかより、とにかく思考が停止した。
カエル「君のその足は元の形に戻っただけでも奇跡なんだ。
本来それを動かすためのリハビリなんてあるはずがないんだよ」
ローラ「…………」
だが、それを聞いてもローラは特に慌てる事も無く、静かに上条の頭を撫でるのみ。
柔和な顔を崩す事もなく、むしろ少し安心したと言った感じであった。
上条「――――って、それどういうことなんだよ!?」
そんなローラの事等露知らず、ようやく我に返った上条は、
上半身を起こしながら冥土返しに問いただした。
だが、当の本人は呑気に自販機で飲み物を買っている。
カエル「人の話しはちゃんと聞いてほしいね?
言った筈だよ。『普通のリハビリでは治らない』と」
747: ゴミ箱 2012/09/09(日) 23:42:22.26 ID:TeZVJdhk0
缶コーヒーを飲みながら、特に重苦しい雰囲気も無くあっさり話す。
こういった態度の時は、決まって特に重要な事を話さない時だ。
上条「普通のリハビリ……って事は」
カエル「…………まさかとは思うけど、
君がやっている〝それ〟がただのリハビリだと思っていたのかい?」
上条「えー……」
頬を軽く掻きながら、昨日今日の「リハビリ」の内容を思い出す。
周りには患者さんは愚か看護婦一人いなく、同伴者はローラ一人のみ。
「講師」もとい「先生」である御坂は思いっきり電気を放ってくる。
そして、動かない筈の足を能力で無理やり動かしてただひたすら廊下を往復する。
ローラ「絶対に普通じゃないわね」
上条「うん。 うん......」
カエル「むしろこれが普通だと思ってた方が異常だね?
一回脳の検査でもしてみるかい?」
上条「いやふざけんなよ!」
748: ゴミ箱 2012/09/09(日) 23:44:02.40 ID:TeZVJdhk0
そうこうしている間に、
「ま、あまり気にする必要はないからとにかく安静にね。 絶対安静だよ、絶対」
と強く言い残し、冥土返しは部屋を出て行った。
上条「ってことはなにか。 上条さんは普通のリハビリはできないんですか」
ローラ「むしろこれを普通と思ってたのが本当に異常よ?」
上条「そんなこと言われても......」
上条自身としては、ただ治るのが早い〝普通の〟リハビリだと思っていた。
それが上条専用特化メニューだとしらされたのだ。
上条(嫌になったら他の人のにしてもらおうと思ってたんだけですけど。
って......)
上条「これじゃ余計にビリビリに頭上がんねえじゃねえか!」
ローラ「とうま、静かに」
上条「あ、ごめん」
正直叫びたくもなる。
上条は御坂が居なければ二度と歩けなかったわけなのだ。
言ってしまえば御坂は命の恩人なのである。
上条「歩けるようになったら御坂に何されるかわかんねえ……」
当然ながら代償として何か要求されるであろう。
だが、絶対に上条が想像している事とは違うことが要求される事は確かだ。
ローラ「それにしても……」
上条「どうかしたのか?」
ローラ「いえ、なにもないわ」
上条「?」
いつもなら上条に少し甘えているローラが、やけに静かである。
それどころか、何処か真剣な顔で何かを考えている
ローラ(とうまがここにこうしているのに、美琴がこないわね……)
上条「ローラ?」
ローラ(リハビリ中も、前見たときより若干とげとげしかったような気もするし)
上条「おーい」
ローラ(あの子の性格を考えればここに突入してきても良いと思うのだけれど)
上条「…………」
ローラ「…………」ブツブツ
上条(無視って……つらいね)
久しぶりにローラが居ない時の事をふと考えさせられた上条であった。
それからしばらく休憩室にいた二人だが、とうとう御坂が来ることは無かった。
756: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:37:40.98 ID:SrU97Wy80
12月23日 土曜日
上条が退院した三日後
セブンスミスト内衣服屋
ローラ「こっちなんてどうかしら、とうま」
自分が持っていた服を、上条に当てかけてみせる。
上条「あぁ、いいと思う」
ローラ「あら、そう......」
それに対し、あまりにもありきたりと言うか、中身のない生返事で済ます上条。
持っていた服を元に在った場所に戻し、再度他の服を選ぶ作業にはいる。
757: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:38:44.20 ID:SrU97Wy80
ローラ「むー」
それにしても、あまりに素っ気ないと思う。
上条がどう思っているのかがどうしても気になるから素直に聞いているのだが、
これではこちらとしても張り合いが無い。
そう思っている間も、上条は服をみる分けでもなく、只々ボーっとしているだけ。
ローラが服を選びはじめてから、ずっとこの調子であった。
女の買い物を男は嫌うとどこかで聞いたことがあった。
だがまさかここまで面倒臭そうにされるなんて、思ってもみなかった。
ローラ「はぁ……」
ローラ(楽しみにしてたのに、ちょっと残念ね)
先日、上条から修道服以外の服も有った方が良いと言われ、
その時から楽しみにしていた今日の買い物。
学園都市に来てから初めての買い物という事もあって、昨晩は中々寝つけなかった。
それが、始まってみたらこんなのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
上条『すごく似合ってるぜ、ローラ』
上条『それ着てるローラ、かわいいよ』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ローラ(理想って程でもなかったのだけれどねぇ……)
ローラ(やっぱり、かわいいって言われたかったわね)
いつもなら素直にそういう事を言うのだが、今はとてもそんな気分ではなかった。
ショックや残念といった様々な感情が入り混じっていた。
思えば、上条と一緒にいてこんな気分になるのは初めてだったかもしれない。
758: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:41:32.94 ID:SrU97Wy80
ローラ(さ、帰りましょう)
心の中でそっと呟いて、地味に気に入っていた服を一つ手に取りレジへと向かう。
上条「あ、まった」
ローラ「え?」
だが、レジへと行く前に上条に腕をつかまれとめられてしまった。
一体、どうしたのか?
ローラ「とうま、どうしたの?」
上条「それ、買うのか?」
ローラ「? そうよ?」
上条が指を指しながら言ったのは、自分が持っている服だった。
白を基調とした、若干ながら自分の今着ている修道服に近い形の冬物の服である。
自分は服の種類などは分からないが、やはりズボンだとかそういうのは似合わない気がするのだ。
ローラ「これが、どうかしたの?」
上条「いや、そのー……」
上条「こっち……じゃ、だめか?」
ローラ「え?」
759: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:42:31.35 ID:SrU97Wy80
上条が指さした先に在ったのは、マネキンに着せられた一式そろった服であった。
全身灰色で統一され、やっぱりロングスカートに、上は冬用のコートであろうか。
フードがついており、コートの中には白の服が着こまれている。
率直な感想で言えば、こちらの方が自分が今手にしているのよりも魅力的であった。
だが、あえて見て見ぬふりをしていたのだ。
ローラ「ってとうま、これ……本当に?」
上条「嫌かな?」
ローラ「嫌じゃないわよ? ただ……」
そう。 ただ、高い。
自分が今手にしているのよりも、一桁0の数が多かった。
だからこそ、見て見ぬふりをしてきた。
ローラ「でも、どうして?」
上条「え? あーいや、だってさ」
「かわいいから」と、上条は言うのだ。
確かに今まで見せてもらった物も良かったのだが、やっぱりこれの方が良いと。
思えば、ずっと上の空だった上条の視線は、ずっとこのマネキンに向かっていたのかもしれない。
760: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:47:06.81 ID:SrU97Wy80
ローラ「とうま…………いいの?」
上条「なんで?」
ローラ「なんでって、お金が」
上条「そんなの気にする程じゃないからいいって。
俺はローラが喜んでくれればそれが一番うれしいし、なによりかわいいし」
最後の言葉で、思わず顔から火が噴きでそうであった。
というか、買う理由になっていない。 なんだ、かわいいからって。
ずっと自分が言われたかった言葉が、こうもあっさり口から出る物なのか?
上条「さ、それじゃあ買おうぜ!」
ローラ「あっ、ちょちょっと!」
なんの躊躇いもなく、それはレジを通った。
そしてそのまま、その場で着替えさせられてしまった。
上条「うん、やっぱりそれの方が良いと思うんですよ」
ローラ「そ、そうかしら?」
上条「ああ」
まさか、本当に買うとは思っていなかった。
さっきまでの勝手な絶望ムードは一気に晴れていった。
鏡の前で、一回転してみようかとしていたところに、
おもむろにこちらに近づいてくる上条。
何をするかと思えば、抱きしめられてしまった。
ローラ「きゃっ!!」
上条「やっぱり、かわいいよなーローラは」
ローラ「――――!!」///
そのまま頭を撫でられ、しばしその時を過ごしていた。
やっぱり今日は、幸せな日であった。
楽しみにしていた、幸せな日だ。
761: ゴミ箱 2012/10/08(月) 00:48:56.51 ID:SrU97Wy80
上条「………」
上条「インデックスが居ないと、俺ってこんな買い物もできるのか……」
783: ゴミ箱 2012/11/04(日) 00:10:40.77 ID:wikovjaa0
ローラの服を買った後、上条達はセブンスミストの丁度中央あたりに居た。
デパートメントストアの基本と言えば基本だが、
衣服店や雑貨店エリア、レストランが集中しているエリア等、
全てのエリアに通ずる場所が一か所はある。
現在進行形で、彼らは今後の事を考えていた。
上条「さって、服も買ったしどうする――――グゥ~
上条「ん?」
上条の背後から、明らかに空腹時に鳴る独特の音が聞こえた。
上条(気のせい――――グウゥゥ......
上条(気のせいじゃないな)
上条は今松葉杖ではなく車椅子で移動している。
ローラに押してもらっているのだが、どうも音がする場所が近すぎる。
つまり――――
上条「ローラ?」
ローラ「!!」ビクッ
一応確認しようと顔を向けずに確認したのだが、どうやらビンゴの様だ。
上条「…………ごはん、食べるか」
ローラ「うん………」///
ローラ自身女性として結構恥ずかしかったのだろう。
上条が見たときは、顔から火が出そうになっていた。
784: ゴミ箱 2012/11/04(日) 00:11:21.10 ID:wikovjaa0
セブンスミスト
「虚空事件-グラビトン事件-」後地
虚空事件が起きてから数か月経った今、
セブンスミスト内の爆発の在った場所は、以前とは全く様変わりしていた。
以前は衣服店やらが散漫していたのだが、
今では爆発によってできたスペースを利用して休憩所となっていた。
奇跡的にも店内側への爆発の影響は少なかった(上条が防いだのだが)為、
爆発の影響をもろに受けた店外側を解放空間として日光を取り入れたのだ。
座る場所等を多く設け、店内にも拘わらず植林を多くしたりして自然的環境に近づけた結果、
飲食可のやすらぎスペースとして多くの客の憩の場となっていた。
上条「で、えーっとローラさん? なんでここに?
てかレストランこっちじゃねえぞ?」
ローラ「~♪」
当初上条は、レストランに行くと思い込んでいた。
だが、予想を裏切り車椅子を押すローラの足はここに運ばれていた。
先ほどから何度もローラに話し掛けているのだが、
鼻歌交じりに全てガンスルーされている。
上条(さっきから無視されてるんですけど男上条泣いてたまるか!!)
と強がるものの、やはり無視は堪える物があるようだ。
今までもそうであったが、傍に人がいるのが当たり前になっている上条にとって、
無視といった類の事は一番耐え難い物となっていた。(大抵大げさだが)
そう上条が一人悶えている間に、目的地についたらしい車椅子は前触れもなく止まった。
それに気づき、どうしたかと上条は前を見た。
すると、そこには公園などによくあるベンチがあった。
なぜこんな所にあるのかと疑問に思ったが、
所々に植えられている人工の植物やらやたら取り込まれている日光を見る限り、
どうやら店側としては公園を意識しているらしい。
上条(つっても普通に四人位座れる場所あんじゃねえか。
ベンチまでだして確かに雰囲気出てるけど無理あるだろ)
無理して公園に見せようとしているらしい店側に、若干呆れてしまっている。
785: ゴミ箱 2012/11/04(日) 00:11:57.58 ID:wikovjaa0
ローラ「さ、とうまここに座って」
上条「へ?」
終始無言だったローラが突然そんな事を言うので、上条は思わず面喰らってしまう。
上条「いや、あのー昼飯は……?」
ローラ「いいから、はやくはやく」
上条「お、おお」
急かすローラの両手には、既に上条専用の松葉杖が持たれていた。
それを上条に押し付けてくるのだから、上条も慌てるほかない。
ローラ「あ、こっちに座ってね」
上条「端っこ?」
ローラ「そうよ」
ローラは、上条をベンチの端っこに座るように促した。
自身は上条の反対側に座った。
上条(なんで間開けるんだ? てか、なんでベンチ?)
周りを見てみると、ちゃんとテーブルがある空席が見られるし、
何より周辺に食べ物屋が全くない。
よくあるフードコートの様な物かと思えるが、完全にただの休憩所のようで、
飲食物は持参するしかないらしかった。
上条(ん……?)
と、ここまで一人ぼんやりと考えていたが、
何か自分の考えに引っかかる所があったらしく、少し首を傾げる。
上条(持参する……?)
上条がそうしている間に、
ローラは上条との間にできたスペースに何処からだしたか、
丁寧に布に包まれた長方形の大き目な箱を置いていた。
それを見た時、上条の中に一つだけ浮かび上がる物があった。
786: ゴミ箱 2012/11/04(日) 00:12:27.81 ID:wikovjaa0
上条「弁当…………?」
ローラ「ふふっ、さすがに気づくかしらん?」
そう言うやいなや、ローラは箱を包んでいた布を解いた。
包まれていたのは、プラスチック製のタッパーの様な容器であった。
様なというのは、蓋がプラスチックせいの透明な物ではなく、
しっかり中が見えないように色づけされ、
汁がこぼれないようにゴム加工が施されたらしい立派な物だったからだ。
ローラ「本当はしっかり弁当箱に入れたかったのだけれどね?
とうまの部屋にこれしかなかったのよ」
上条「だからってこれに入れてきたのか……?」
ローラ「あら、だめだったかしら?」
上条「いや、駄目ってこたないけど......」
上条(さすがに大きすぎじゃね?)
というのも、
この容器は普段上条が残り物を適当に詰め込んで取っておくために使うものだ。
当然ながら何も考えていない上条は、とりあえず多く詰め込めるものを買うわけで。
普通に考えればとても弁当箱にするには大きすぎる事がわかるだろう。
そんな風な疑問が多々あるのだが、一番気になった事と言うのは別にあった。
上条「てか、こんな量いつ作ったんだ? それに、材料なんてあったか?」
後半は若干震え声になっていた。
理由は単純で、こんな量の食材が上条の部屋にあった心あたりはないし、
そもそも冷蔵庫自体昨日していなかった気がするからだ。
ローラ「材料なら心配いらないわよ?」
上条「へ? なんで?」
余りにもあっさりとした答えに、一瞬だが拍子抜けしてしまう。
上条「心配いらないって、どういう事だ?」
ローラ「昨日親切なお隣さんからもらってきたのよん」
上条(土御門ェ……)
隣から元最大主教が来たとなればいくら土御門といえどどうしようもないだろう。
新手のたかりの様な物だ。
787: ゴミ箱 2012/11/04(日) 00:19:00.75 ID:wikovjaa0
上条(材料費ゼロはうれしいんだけど、今は節約の必要もあんまないしな。
後で土御門に謝っとくか)
ローラ「もう、とうま。 そういう事は中身を見てからにしましょうよ」
上条「ん? ああ、そうだな。 じゃ、早く食べようぜ!
もう上条さんお腹ペコペコですよ」
ローラ「慌てないの! ほら、開けるわよ」
上条「oh......」
弁当箱(の様な物)の中身は、結論として言えば「豪華」の一言だった。
一般的なおせちやそういった類の豪華ではなく、
「普通のピクニックに持っていくような弁当としては最高レベル」といった意味だ。
ウィンナーや小さな星形のポテトと言った定番と言えるような物は勿論、
野菜も色とりどり入っており、なぜかスパゲッティやらハンバーグも入っている。
なんでも弁当という名前がしっくり来る内容だった。
それでいて、食べ盛りの男子高校生の胃袋を十分に満たす量を両立している。
上条「す、すげえ…………」
ローラ「ちょっと、気合入れすぎちゃったかしら?」
思わず苦笑するローラだが、そんな心配をよそに上条の手には既に箸が握られていた。
上条「もう我慢できねえ! いただきます!」
ローラ「あっ! ちょっと、感想のひとつぐらいないの!?」
ローラの言葉も無視して、まずは一口目に付いたハンバーグをほおばった。
大きさや形からみて、手作りらしいそのハンバーグは口の中に入れると共にうまみが広まっていき......
上条「うめえええ!!」
ローラ「はぁ……まあ、いいかしらね。 いただきます」
814: ゴミ箱 2012/12/12(水) 23:25:10.38 ID:4Dwmi2s30
時刻は昼過ぎ。
休憩スペースに居座る人はあまり多くなく、上条達の周囲に目立った人影は見当たらなかった。
このエリアはそう見られないが、世はクリスマスムード一色である。
本来なら子連れの親子はクリスマスプレゼントを買い、
カップルはカップルで互いのためのプレゼントを選んだりと忙しい時期だ。
上条「ふー……ごちそうさま」
そんな事には我関せずと言った様子で、
上条はローラの用意した弁当をものの見事に平らげられていた。
ローラ「はい、お粗末さま。 どう? 口にあったかしら」
上条「うまいにきまってますよ! ローラの作った飯がまずいわけねえだろ?」
ローラ「本当? うれしいわ、とうま」
微笑みを浮かべるローラの手には、
既に大きな弁当箱(タッパー)が綺麗に包まれていた。
余談であるが、ローラの用意した弁当はほぼ全て上条が一人で食べていた。
ローラはローラで別に小さな弁当箱を用意していたらしい。
上条「さって、飯も食ったしこれからどうするか」
ローラ「まあまあとうま、ちょっとゆっくりしましょう?
特にする事もないんだから……ね?」
早々に行動を開始しようとした上条をなだめると、
そのままローラは上条の肩に身をまかせ、もたれかかった。
ローラ「久しぶりにこうしたって…………いいでしょう?」
上条は大して気にしていないが、周りを見渡してみると、カップルが多くいるのが分かる。
ただ何か喋っていたり買った物を開けていたりと、
それぞれがそれぞれ違う形でこの時間を、空間味わっているのが見て取れる。
それを見たローラがしたくなることと言えば、簡単な事だった。
上条「そうだな……それもいっか」
上条もそれを拒む事無く、ローラを抱き寄せる。
この時上条は、なんとなくローラがなぜベンチに座ったのかが分かった気がした。
815: ゴミ箱 2012/12/12(水) 23:26:32.46 ID:4Dwmi2s30
上条「はぁ…………」
ローラ「………」
特に何をするでもなく、ただぼーっとベンチに座っている二人。
寄り添い、腕を絡ませてお互いを支えあっている。
上条「それにしても、本当にうまくなったな」
ローラ「なにが?」
上条「料理だよ。 味噌汁作ってた頃がなつかしいな」
上条の言うとおり、ローラの料理の腕の上達はめざましい物があった。
たった一か月で基本的な料理のレシピは覚え、上条の好み等も把握していた。
ローラ「良き妻になる為なのよん」
上条「妻……か」
ローラは度々そんな事を漏らすのだが、
実を言えば、上条自身まだ「妻」やら「夫婦」と言った物の実感は無かった。
別に将来が本当に約束されたというわけでもないし、
まだ高校生である上条にはどうもしっくりこない事だ。
上条(けど、恋人……ってのもしっくりこねえよなぁ......)
ローラ「どうしたの? とうま。 急に黙っちゃって」
ローラの問いかけにもしっかりとした反応は無く、終始上の空だった。
816: ゴミ箱 2012/12/12(水) 23:27:02.63 ID:4Dwmi2s30
上条「なあローラ。 一つ聞いていいか?」
ローラ「なあに?」
上条「俺の事好きか?」
ローラ「え、えっ?」
何処を見る分けでもなく、
しっかりローラを見据えていったわけでもないこの言葉。
照れるとか失礼とかよりも、ただ戸惑うしかローラにはできない。
上条「俺の事、好き?」
ローラ「えっ!? ちょ、ちょっとそんな急に......」
上条「俺は好きだ」
ローラ「ととととうま!?」
そうは言うものの、上条はやはり何処か別の所を見ている。
口ではそういうものの、やはり何か別の事を考えているといった感じだった。
ローラ「ねえ、どうしたの急に?」
上条「嫌いか?」
ローラ「嫌いってそんな…………」
ここにきて、ようやく自分が何を聞かれてるのかしっかり理解できてきたローラ。
体が若干熱くなってきているのか、頬が赤くなり若干汗も出ているようだ。
ローラ「もう……あ、愛してるにきまってるわよ......///」
上条「そっか」
対する上条はなんとも素っ気ない返事を返すばかり。
だが、ローラの手を握る強さは確実に強くなっていた。
上条「じゃあさ……」
ローラ「………」
上条「俺と、これからもずっと一緒にいてくれるか……?」
それを言う時には、上条はしっかりと視界にローラの姿をいれていた。
その目は何処か、何かを決断したようで、何か覚悟をしたような、そんな目であった。
傍から見たらただのプロポーズかもしれない。
だが、ローラには何か、もっと深い別の意味もあるように感じられた。
817: ゴミ箱 2012/12/12(水) 23:27:39.62 ID:4Dwmi2s30
ローラ「…………とうまが今何を考えていたのか、私にはさっぱり分からないわ」
上条「………」
ローラ「まったく、私の事をしっかりと見ないで「好きか?」ですって。
もう、ありえないわよ?」
上条「それは――――「まあ、そんな事はいいのよ」
ローラ「とうまが私を好きでいてくれるのは知っているから」
上条「そ、そうか…………?///」
ローラ「もしそうでなかったとしたら……ね?」
上条「うっ!?」
一瞬だが、尋常じゃない殺気をローラから感じ取った上条。
信じられないが、上条の目にはローラの背後からなにか黒いオーラの様な物が見えていた。
ローラ「とにかく。 とうまがなにを心配してるのか分からないけど」
そう言いながら、ローラは上条の首に手をまわし、抱きしめる。
互いの顔はゼロ距離まで近づいていて、相手の吐息がかかるたび心拍数が跳ね上がる。
ローラ「私は、もうとうまの元を離れる気はないわ」
ローラ「どんなにつらい事があっても、死ぬまでとうまについていく」
ローラ「例え、もしとうまに忘れられようとも…………」
上条「ローラ……」
一瞬だが、顔に陰りを見せる。
それを見た上条は、その時になってようやく気付いた。
ローラとて、不安なのだと。
最大主教の座を明け渡し、たった一か月一緒に居ただけの高校生に、全てを捧げる事に。
これから先上条の気持ちが変わるかもしれない。
そんな不安にかられながらも、今を幸せに生きていたのだ。
818: ゴミ箱 2012/12/12(水) 23:28:56.97 ID:4Dwmi2s30
上条「大丈夫だ」
ローラ「え?」
上条「例えどんな事があったって、俺だってローラの事を忘れないし」
上条「そのー……ず、ずっと愛し続ける」
ローラ「とうま......」
上条「もしこれから先どうなるかなんて不安があるなら――――」
そんな幻想、この俺がぶち壊してやる
その言葉をどれほど心待ちにしていたのか。
ローラの顔には、不安やらの感情の一切なく、安心しきった笑顔だけが残っていた。
ローラ「うん……やっぱり、私はとうまと一緒にいてよかったのね」
ムードの欠片もない場所で、世に言う「プロポーズ」を成した上条。
だが、そんな事気にもしない。 彼らには、場所など関係ないのだろう。
上条「ローラ……ごめんな」
ローラ「もう、なんで謝るのかしら?」
上条「いや、俺自分の事しか考えてなかったからさ……」
ローラ「うふふ……もういいのよ」
そのまま二人は顔を近づけていき、唇と唇を重ねた。
少しの間離さず、しっかりとお互いの温度、感触を確認する。
所謂「フレンチ」止まりのキスであったが、今の二人にはそれでも十分だった。
上条「ローラ…………」
ローラ「とうま…………」
体を徐々に離し、
しばしこの余韻に浸ろうと上条が視点を座ってる方向、前に向けたときだった。
一方通行「……チッ」
打ち止め「……///」
子萌「か、上条ちゃん…………?」
黄泉川「……じゃん」
上条「」
ローラ「とうま?」
上条(ああああああああああああああああああああっ!!!!)
少し、周りに気を配るべきだったかもしれないと、
一秒にも満たない時間の間に後悔をする上条だった。
835: ゴミ箱 2013/01/14(月) 22:44:34.07 ID:gB42oeJi0
~黄泉川邸~
黄泉川「ッハハハハ!!」
小萌「ちょ、ちょっと黄泉川先生笑いすぎなのですよ!」
とあるマンションの一室。
黄泉川の借りている部屋から、その笑い声は響きわたっていた。
響き渡っていたと言うのは何の比喩表現でもなく、本当に上下左右の部屋に響いていた。
黄泉川「だってこれが笑わずにいられるかって、そりゃ無理じゃんよ!」
黄泉川「買い物に来て弁当食べてたら急にプロポーズしてキスなんて……」
黄泉川「…………なんか冷静になると結構むかついてきたじゃん」
そう言うや否や、手に持っていた飲みかけの缶ビールを一気飲みした。
見てみれば、黄泉川の傍には既にいくつもの空き缶が転がっている。
黄泉川「これ結構笑ってる場合じゃないじゃぁん?
なんでこんなウニ頭野郎がぁ……ヒック」
すっかり酔っぱらっている黄泉川の怒りの矛先は、
ばったり会った流れで黄泉川のマンションに連れてこられた上条だった。
いま上条は、四人掛けのごく普通のダイニングテーブルに、
教師二人に対面する形で座っていた。
テーブルの上には特に豪華な料理があるわけでもなく、
帰り際に勝ったピザが二枚と、酒のつまみになりそうな物と例によって缶ビールがたくさん乗っているだけだ。
黄泉川「たぁっく、な~んで高校生がこんな外人連れて買い物なんてしてるんだっちゅうに、
教師としてこれは見過ごせないじゃん!! ......ヒック」
黄泉川「そもそも病気で出停処分だったはずの奴が……ヒック
のんびり買い物なんてなにしてるん……ヒック」
小萌「黄泉川先生! 生徒の前で飲みすぎなのですよ~!」
黄泉川「んぁ? あーそうじゃん、ちょっと飲みすぎたじゃんよ。 ......ヒック」
上条「うぅ……」
ローラ「とうま、大丈夫?」
上条「お、おう、大丈夫大丈夫」
黄泉川「でもやっぱ納得いかないじゃん!!」
上条「ひっ!」
小萌「黄泉川先生!」
黄泉川がビールの缶を開けてから、既にこのようなやり取りは一時間は続けられていた。
黄泉川のぐだりを小萌が宥める。 一旦は冷静になるが、やはりまたぐだりだす。
それを当事者視点で見ている上条としては、たまった物ではなかった。
それに、上条は自分がなぜここにつれて来られたのかが分からなかった。
一方通行や打ち止めは何処か別の所に追いやられたようで、今部屋には先生と生徒とその恋人(妻)だけ。
一般的に考えて教師が生徒の不純異性交遊を見て補導した……ともとらえられる。
だが、上条の属性(フラグ乱立)を知っている小萌としては、そんな措置をとったつもりはさらさらなかった。
黄泉川「ッハハハハ!!」
小萌「ちょ、ちょっと黄泉川先生笑いすぎなのですよ!」
とあるマンションの一室。
黄泉川の借りている部屋から、その笑い声は響きわたっていた。
響き渡っていたと言うのは何の比喩表現でもなく、本当に上下左右の部屋に響いていた。
黄泉川「だってこれが笑わずにいられるかって、そりゃ無理じゃんよ!」
黄泉川「買い物に来て弁当食べてたら急にプロポーズしてキスなんて……」
黄泉川「…………なんか冷静になると結構むかついてきたじゃん」
そう言うや否や、手に持っていた飲みかけの缶ビールを一気飲みした。
見てみれば、黄泉川の傍には既にいくつもの空き缶が転がっている。
黄泉川「これ結構笑ってる場合じゃないじゃぁん?
なんでこんなウニ頭野郎がぁ……ヒック」
すっかり酔っぱらっている黄泉川の怒りの矛先は、
ばったり会った流れで黄泉川のマンションに連れてこられた上条だった。
いま上条は、四人掛けのごく普通のダイニングテーブルに、
教師二人に対面する形で座っていた。
テーブルの上には特に豪華な料理があるわけでもなく、
帰り際に勝ったピザが二枚と、酒のつまみになりそうな物と例によって缶ビールがたくさん乗っているだけだ。
黄泉川「たぁっく、な~んで高校生がこんな外人連れて買い物なんてしてるんだっちゅうに、
教師としてこれは見過ごせないじゃん!! ......ヒック」
黄泉川「そもそも病気で出停処分だったはずの奴が……ヒック
のんびり買い物なんてなにしてるん……ヒック」
小萌「黄泉川先生! 生徒の前で飲みすぎなのですよ~!」
黄泉川「んぁ? あーそうじゃん、ちょっと飲みすぎたじゃんよ。 ......ヒック」
上条「うぅ……」
ローラ「とうま、大丈夫?」
上条「お、おう、大丈夫大丈夫」
黄泉川「でもやっぱ納得いかないじゃん!!」
上条「ひっ!」
小萌「黄泉川先生!」
黄泉川がビールの缶を開けてから、既にこのようなやり取りは一時間は続けられていた。
黄泉川のぐだりを小萌が宥める。 一旦は冷静になるが、やはりまたぐだりだす。
それを当事者視点で見ている上条としては、たまった物ではなかった。
それに、上条は自分がなぜここにつれて来られたのかが分からなかった。
一方通行や打ち止めは何処か別の所に追いやられたようで、今部屋には先生と生徒とその恋人(妻)だけ。
一般的に考えて教師が生徒の不純異性交遊を見て補導した……ともとらえられる。
だが、上条の属性(フラグ乱立)を知っている小萌としては、そんな措置をとったつもりはさらさらなかった。
836: ゴミ箱 2013/01/14(月) 22:50:59.20 ID:gB42oeJi0
小萌「こ、コホン。
えーっと、とりあえずとして黄泉川先生の言ってる事全部が全部間違っているわけではないのは分かりますか?
上条ちゃん」
上条「え? えー…………は?」
突然、小萌がいつもの先生モードになり、上条に問いかけた。
黄泉川の言っている事が、正しいかどうか……と。
だが、小萌が何を言わんとしているのか、上条にはさっぱりわからなかった。
わざとらしく顎に手を当て、上を向いて考えてみるが、やはり分からない。
隣に座っていたローラはなんとなく察したのか、気まずそうな顔をしている。
それを見ていた小萌は、溜息を吐くしかなかった。
小萌「はぁ……やっぱりわかっていないんですね」
上条「??」
小萌「んー……えと、ロー……」
ローラ「ローラ・スチュワート。 ローラと、呼んでもらって構いませんわ」
小萌「はい、ではローラさん。 貴方はこの事の重大さ……分かっていらっしゃいますか?」
ローラ「ええまあ、なんとなくわかりますわ」
上条「えっ!?」
小萌の言う「事の重大さ」という言葉すら理解できない上条としては、
この状況が全くわからなくなってくる。
上条(一体皆何と闘っているんだ……!!)
ローラ「とうま、こんな時にその冗談はちょっと……」
上条(読まれた!?)
小萌「顔を見ればなんとなくわかるだけですよ~上条ちゃん」
上条「小萌先生まで!?」
小萌「まあ上条ちゃんですから仕方ないんですけどね~」
半ば何かを諦めたような顔で、ふっと呟く。
ローラも小萌の心情を察したのか、苦笑していた。
小萌「では上条ちゃん。
言わなきゃわからないようなので先生がみっちりと教えてあげるのです!」
上条「いや~なんのことかさっぱり上条さんには分からないのですが......」
小萌「だからそれを今から教えるのです!!」
「ふぅ」っと一息ついて、小萌はさっきまでの物よりも、さらに先生らしく真剣な顔を作った。
その小萌からを向けられる鋭い眼差しは、いつも上条に向けられる物とは明らかに違っていた。
837: ゴミ箱 2013/01/14(月) 22:53:29.23 ID:gB42oeJi0
小萌「上条ちゃん。 今貴方の横にいるその彼女は、誰ですか?」
上条「え? ローラですけど……」
小萌「そういうことではなくて! 一体どういう方なのかを聞いているのです」
上条「どういうってそれは……」
「どういう方」か。 つまり、「どのような人物か」ではなく、「何者か」というニュアンスだ。
それは、いったいどういう質問なのか。
小萌の眼は、いつの間にか鋭くなり、ローラに向けられていた。
それを見れば、その質問の意味と〝意図〟は理解できた。
ローラ「………」
上条「えっと、ローラは……」
小萌「お馬鹿な上条ちゃんでもこれだけは分かっている筈ですが、一つ説明しておきますよ?」
小萌「ここ学園都市は学生の街です。 勿論、日本人のみで構成された」
小萌「例外として先生や留学生として生徒の中に外国人がいるかもしれませんが、
そんな事は、恐らくないでしょう」
小萌「何故だかわかりますか?」
上条「それは……」
言葉に詰まる上条。 答えは分かっている。
それは、ここが「能力者」を育てる学園だから。
普通とは違う。
だからこそ、普通じゃない人が集い、普通は消えていく。
小萌「日本人ですら、[外部者]と[内部者]で隔てられるのです」
小萌「では、何故そんなこの町に[外国人]がいるのでしょう?」
上条「ッ……!」
ローラ「………」
上条は、答える事ができない。
仮に答える事ができたとして、それがどうしてできようか?
上条がそれをすると同時に、ローラをこの学園の、
「異常が普通である中」での〝異常〟であると認める事になる。
そんな事、できる分けが無い。
上条「ローラはその……」
小萌「………」
小萌と上条の間に短い沈黙が訪れる。
短い筈のその沈黙。
だが、その沈黙の間の時計の針の動きは、どんなときよりも進むのが遅かった。
838: ゴミ箱 2013/01/14(月) 22:59:34.48 ID:gB42oeJi0
上条「くっ…………」
小萌「どうしても答えられませんか?」
上条「えっと……ごめんなさい」
小萌「はぁ……まあいいです。 いつもの事ですからね」
上条「え?」
さっきまでの張りつめた緊張の糸が、嘘のように切れていくのを肌で感じ、
あっけにとられてしまう上条。
小萌の顔もいつもの柔和な物になっていて、ローラに至っては普通にピザを食べている。
いや、さっきから食べていたのかもしれない。
妙に静かだと思えば黄泉川は寝ているし。
上条「あれ、もしかして……」
小萌「勝手に緊張していたのは上条ちゃん一人だけですよ?」
上条「えっ? いやだって、さっきの質問どう考えても」
小萌「尋問って言いたいんですか?」
上条「いやまあ……はい」
小萌「はぁ…………いいですか? 上条ちゃん」
小萌「私は教師として、高校生である上条ちゃんに、[教えている]のですよ?」
小萌「ですから、尋問や拷問なんて思ってもらうと、少し傷ついちゃいます」
上条「で、でもさっきのは」
小萌「それに! 良く考えればすぐにわかることですよ?」
小萌「さっきの質問、そこに居るローラさんだけでなく、インデックスちゃんやステイルちゃんの事も説明つきませんよね?」
上条「あっ……たしかに」
小萌「では、なんで私がいまこんな質問したかわかりますか?」
上条「え? いや、それは……」
小萌「そのローラさんが、上条ちゃんにとって[大切な人]だと思ったからです」
上条「あっ」
結論として、小萌は「教師」として、生徒であり高校生である上条に。
ローラの存在をどう思っているか問うたのだ。
ここでもしあっさり喋っていたのなら、その程度。
頑なにしゃべらず、自らを危険にさらしてでも〝それ〟を守ることができるか。
つまりそういう事だろうかと、上条は一瞬で思いついたのだが。
839: ゴミ箱 2013/01/14(月) 23:00:41.98 ID:gB42oeJi0
上条「もしかして、試してたんですか?」
小萌「試す? はて、なんの事でしょう?」
全く自分は何も知らないと言った顔で、子萌は未開封の缶ビールを手にかけた。
小萌「私は教師ですから、私ができることは生徒に[教える]ことだけですよ♪」
上条「えー……?」
試していたのか、それすら思い込みなのか。
どうにも腑に落ちない。
上条(結局何が言いたいんだ?)
小萌「不純異性交遊って言えばわかりますか?」
上条「ぶっ!!」
小萌「まっ、教師としてそれだけは言っておくのです」エッヘン
上条「は、はい……」
結論から言えば、「高校生らしいしっかりした〝恋愛〟をする事」と言いたかったのか。
それを初めて理解した上条は、心の底から大きく息を吐き、
徒労感に見舞われながらもなんとか黄泉川家で一夜を過ごす事となった。
840: ゴミ箱 2013/01/14(月) 23:02:37.45 ID:gB42oeJi0
上条と小萌のやり取りを無言で見ていたローラ。
その顔には何処か、陰りを見せていた。
ローラ(これはとうまを試していたわけでも、単に質問していたわけでもない)
ローラ(生徒に[教える]ねぇ。 確かに教師として普通かもしれないけれど......)
――少しまわりくどすぎやしないかしら?――
ローラ(本当に教師として注意するなら、一言で足りる)
ローラ(とうまの理解力や空気の読めなさを知っているなら、なおさら一言で終わらせる筈よねぇ?)
果たして、この「質問」をされていたのは本当に上条本人なのか。
それとも、本当にこれは「質問」だったのか?
ローラ(まあさしずめ、[警告]と言ったところかしらね?)
ローラ(この小萌って子と黄泉川って子は恐らく根っからの良識人)
ローラ(私やアレイスターとは根本から違う人間の筈)
ローラ(ならば、私達に……いえ、私にだけ分かる形で[教えて]くれたのかしらね)
こんな風に思考を巡らせる時、ローラは決まって無言になる。
それは、上条と暮らし始めた時からついた癖であった。
少しでも上条と共になにも無い平穏な日々を送る為の、彼女なりの努力だった。
ローラ「ねぇとうま」
上条「ん? なんだローラ」
ローラ「私は、本当にずっととうまと一緒に居れる……?」
不安と、どこか落ち着きの混じったような声色で尋ねる。
まるで、答えが分かり切っているのに、それが確かなのか疑心暗鬼になっているような。
上条「急にどうしたんだ?」
ローラ「ちょっと、不安になってしまって」
これは、事実だ。
小萌のこのやりとりを聞いていて、やはり蘇る不安感。
魔術側の頂点に立っていた過去の記憶。 近い過去の呪縛。
それを未だに忘れきれないでいる、不安。
841: ゴミ箱 2013/01/14(月) 23:06:52.16 ID:gB42oeJi0
ローラ(でも…………)
上条「大丈夫だよ」
結局はいつも、この男の言葉で全てが晴れる。
上条「ローラは俺が守ってやる。 絶対に、離さねえよ」
ローラ「ありがとう……やっぱり、大好き......」
こうして、いつもこの男に抱きついている。
それが幸せだし。 別に、誰にも咎められやしないし。
――守ってやる――
それに、今はこの言葉に甘えるしかない。
これが幻想だとしても。
夢でもなんでもなく、しっかりと実在していても。
今はまだ、不安定な足場の上で。
それでも安心できるから。
ローラ(とうまと一緒なら......)
小萌「だからイチャイチャしすぎなのですよぉ!!」
上条「うわすいません!!」
ローラ「…………はぁ」
…………早く大人にならないかなぁ……なんて、ね♪
869: ゴミ箱 2013/02/17(日) 02:27:12.66 ID:ZeeWVO+s0
上条が黄泉川家にて小萌に指導(自称)された後の事。
黄泉川「う~ん……もっと酒もってくるじゃんにゃん......」
小萌「かみじょうちゃ~ん補修でしゅぅ......」
上条「なあローラ。 これ寝言だよな?」
ローラ「だれが見ても寝言でしょう? 何がそんなに怖いの?」
結局教師二人は生徒の目の前で完全に酔いつぶれていた。
時々何か寝言を言っているが、教師故か、
その一言一言が上条にとっては戦慄を覚える内容である。
ローラ「それにしても、自分達の教え子の前でこの体たらくとは、
ちょっと呆れるわねぇ……」
上条「あっはは…………まじでどうすんだこれ」
「そいつらは俺が処理しといてやンよォ」
上条が溜息を吐こうとしていたところに、その声は玄関からした。
独特の口調と、どこか面倒臭そうな感じが入り混じった話し方。
声色も良く知っている。 こんな喋り方をするのは一人しかいない。
上条「よ、よう。 一方通行」
一方通行「おォ」
何処かぎこちなく挨拶をする上条。
対して、予想外にも一方通行は軽く返事を返してきた。
上条の予想としては、一言目に軽く毒づけられると踏んでいたのだが、
拍子抜けしてしまった。
打ち止め「やっほー! ってミサカはミサカは深夜テンションで話しかけてみたり!!」
上条「おっ、打ち止めもいるのか」
そんな所に、一方通行の後ろから打ち止めが顔を出してきた。
いつも通り元気な声で……というか、妙にハイなテンションだ。
黄泉川「う~ん……もっと酒もってくるじゃんにゃん......」
小萌「かみじょうちゃ~ん補修でしゅぅ......」
上条「なあローラ。 これ寝言だよな?」
ローラ「だれが見ても寝言でしょう? 何がそんなに怖いの?」
結局教師二人は生徒の目の前で完全に酔いつぶれていた。
時々何か寝言を言っているが、教師故か、
その一言一言が上条にとっては戦慄を覚える内容である。
ローラ「それにしても、自分達の教え子の前でこの体たらくとは、
ちょっと呆れるわねぇ……」
上条「あっはは…………まじでどうすんだこれ」
「そいつらは俺が処理しといてやンよォ」
上条が溜息を吐こうとしていたところに、その声は玄関からした。
独特の口調と、どこか面倒臭そうな感じが入り混じった話し方。
声色も良く知っている。 こんな喋り方をするのは一人しかいない。
上条「よ、よう。 一方通行」
一方通行「おォ」
何処かぎこちなく挨拶をする上条。
対して、予想外にも一方通行は軽く返事を返してきた。
上条の予想としては、一言目に軽く毒づけられると踏んでいたのだが、
拍子抜けしてしまった。
打ち止め「やっほー! ってミサカはミサカは深夜テンションで話しかけてみたり!!」
上条「おっ、打ち止めもいるのか」
そんな所に、一方通行の後ろから打ち止めが顔を出してきた。
いつも通り元気な声で……というか、妙にハイなテンションだ。
870: ゴミ箱 2013/02/17(日) 02:28:27.52 ID:ZeeWVO+s0
上条(一方通行があまりつっかかって来なかったのは打ち止めがいたからか)
――――とか思っていたのだが。
一方通行「おゥ、あいさつは良いからさッさとこの部屋から出てきなァ」
上条「はい?」
今さっきまでの甘い考えは、一方通行がチョーカーのスイッチを入れると共にぶち壊された。
いきなりの戦闘モードに思考も体もついていけない上条。
一体、どういう事なのか?
上条(いやいやいやいやなんでどうしてこうなってるんですか!?)
ローラ(ちょっととうま、昼間の事思い出して……!)
上条(昼間……あっ、もしかしてあれの事怒ってるのか!?)
〝あれ〟というのは、とても簡単な事で……
打ち止め「ねえねえ!!
ヒーローさんとお隣に居る綺麗な髪の人の話をミサカはミサカは直接聞いてみたい!!」
一方通行「だァァあああああ!! だからそれはまだ早いッて言ッてるだろゥがああ!!」
一方通行が叫ぶや否や、上条に飛びかかってくる。
その様は正に子を守る親の様であり、それでいて背後からどす黒い〝何か〟が垣間見える。
上条「ってやっべ逃げるぞローラ!!」
ローラ「あっ、ちょちょちょっと待つのよとうま!!」
打ち止め「ヒーローさん待ってよ! ってミサカはミサカは逃げるヒーローさんをとっ捕まえる!!」
一方通行「ォらああああああああ!! さッさとでていきやがれェェええええええええ!!」
871: ゴミ箱 2013/02/17(日) 02:29:36.06 ID:ZeeWVO+s0
~学園都市内 とある路上~
上条「ハァッ……ハァッ……」
ローラ「ふぅ…………もう! 何よあの子。 話しに聞いていたよりも親馬鹿じゃない」
上条「ハハッ、まあそんだけ大切なんだろ」
黄泉川のマンションを出て、一方通行の攻撃を振り切った二人。
そんなに距離を離してはいないが、一方通行の姿はいつの間にかなくなっていた。
上条「それにしても――――つっ、疲れた……!!」
ローラ「そんな体で無茶するからよ、もう」
現在の上条の足は、まだ使用不可能な未完成品。
本人も忘れがちではあるが、走ったりするなど本来もってのほかである。
ローラ「とうまの馬鹿……車椅子忘れてくるってどういう事?」
上条「あははは、いやー上条さんついうっかりしてましてですね」
ローラ「はぁ…………」
深い溜息をつくローラ。
その溜息は上条を心配するからこその物なのだが、本人は当然分かっていなかった。
上条「てか、ここ何処だよ……」
辺りを見渡してみると、特に目立った物はない。
到って普通のマンションや、街灯が突っ立っているだけ。
ローラ「GPS……という物は使えないの?」
上条「ああ、マップの事か? それならすぐに……っと」
上条が現在地を確認するために、携帯を起動する。
上条(そういや今日はあんま携帯使ってねえな)
とかそんな事を考えながらホーム画面を見ると、
そこには、 「12月24日」 と今日の日付が大きく表示されていた。
上条「……は?」
ローラ「どうしたの? とうま」
上条「なあローラ……今日って何日?」
ローラ「え? 23日でしょう?」
上条「ってことは……日付またいだかーうわー」
ローラ「?」
何処ともしれぬ路上の上で、一人頭を抱え込む。
本人にとって、一番最悪な形でクリスマスを迎えてしまった瞬間である。
889: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:00:44.76 ID:NdhWv0Ou0
12月24日
学園都市には狙ったかのように白い雪が降っており、クリスマスムードに包まれていた。
科学サイドであり、さらに宗教感の薄い日本では、クリスマスなんて結局はカップル達がいちゃつく名目でしかない。
そんなものとは無縁の筈のとある男子寮の一室。
ローラ「とうまー、そろそろできるわよ~」
上条「おっ、やっとか! 上条さんはまちくたびれましたよ~!」
クリスマスという事で、たった二人だがパーティーでも開く事にした上条達だった。
のだが、要の料理をなんとすべてローラが作ると進言していたのだ。
その内容といえば、
「まあクリスマスパーティーならこんな料理がでるんじゃね?」という上条の安直な発想によって決められた。
ローラ「運ぶの手伝ってくれるかしら?」
上条「おう、任せなさい」
どうやら運びきれない量があるらしい。
どれどれと上条が覗き込むと、そこにはどこの家族パーティーかと言いたくなるほどの料理が置いてあった。
上条「俺が言ったやつ全部作ったんでせうか……?」
ローラ「あら、だめかったかしら?」
上条「いやー……」
グラタン、鳥のチキン、ケーキ1ホールとチーズフォンデュになぜか寿司と少し首をかしげるものも混ざっている。
たった二人のパーティーにしては豪華すぎる内容であった。
上条(ま、まあパーティーだし大丈夫大丈夫)
実際、この量ならば以前居候していたインデックスの一食分とさして変わらなかった。
ローラ「さ、食べましょう?」
学園都市には狙ったかのように白い雪が降っており、クリスマスムードに包まれていた。
科学サイドであり、さらに宗教感の薄い日本では、クリスマスなんて結局はカップル達がいちゃつく名目でしかない。
そんなものとは無縁の筈のとある男子寮の一室。
ローラ「とうまー、そろそろできるわよ~」
上条「おっ、やっとか! 上条さんはまちくたびれましたよ~!」
クリスマスという事で、たった二人だがパーティーでも開く事にした上条達だった。
のだが、要の料理をなんとすべてローラが作ると進言していたのだ。
その内容といえば、
「まあクリスマスパーティーならこんな料理がでるんじゃね?」という上条の安直な発想によって決められた。
ローラ「運ぶの手伝ってくれるかしら?」
上条「おう、任せなさい」
どうやら運びきれない量があるらしい。
どれどれと上条が覗き込むと、そこにはどこの家族パーティーかと言いたくなるほどの料理が置いてあった。
上条「俺が言ったやつ全部作ったんでせうか……?」
ローラ「あら、だめかったかしら?」
上条「いやー……」
グラタン、鳥のチキン、ケーキ1ホールとチーズフォンデュになぜか寿司と少し首をかしげるものも混ざっている。
たった二人のパーティーにしては豪華すぎる内容であった。
上条(ま、まあパーティーだし大丈夫大丈夫)
実際、この量ならば以前居候していたインデックスの一食分とさして変わらなかった。
ローラ「さ、食べましょう?」
890: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:03:38.09 ID:NdhWv0Ou0
上条「いただきます」
ローラ「いただきます」
時刻はすでに七時を回っていた。
昼間上条達が何をしていたかをいえば、昨日の疲労によりずっと寝てしまっていたのだ。
上条「はー散歩ぐらいしたかったな」
ローラ「まあいいじゃない? 本当のクリスマスは明日なんでしょう?」
確かに、日本ではそこらへん曖昧だが25日が本来クリスマスであるので、まだまだクリスマスムードは終わらない。
上条「まあそうだけど…………」
ローラの作った料理に舌鼓をうちつつ、上条には別の疑問が浮かび上がっていた、
上条(なんかすっかり日本の習慣に浸ってるけど、良いのか?)
元々イギリスの、さらに魔術サイドのトップという奇異な立場にいたのだ。
それこそ「クリスマス」という一大イベントは重要視すると上条は踏んでいたのだが、
いざクリスマスになってみればそこにはすっかり日本に順応したローラがいるではないか。
それだけではない。
あぐらの上条に対し正座であり、さらに箸、フォーク、ナイフ、スプーンそれぞれを的確に使い分けている。
大体の外国人はすべてを無理やり箸で食べようとするのだが、そこらへんさらに日本慣れしている気がする。
上条「あのーローラさん」
ローラ「ん? どうひたのふぉーま」モグモグ
上条「クリスマスですよね?」
ローラ「そうね」ゴックン
上条「なんかこーしなくていいのか?」
ローラ「なんかって……なにかしら?」
上条「例えばそのー教会に行ったり祈ったり」
ローラ「しないわよ?」
上条「え?」
ローラ「だってここ日本じゃない」
これには上条も参った。まさか数週間の間にローラがここまで日本に適応していたとは。
もうすこし何か宗教を重んじるものがあってもよいのではないかと思っていたのだが。
ローラ「ほらとうま、早く食べないと冷めちゃうわよ?」
上条「あっ、そうだな。 やっぱりおいしいですよローラのご飯は」
ローラ「うふふ、ありがとう、とうま♡」
上条(かわいいしどうでもいいや)
結局こんな調子でうやむやにしてしまうのである。
ローラ「いただきます」
時刻はすでに七時を回っていた。
昼間上条達が何をしていたかをいえば、昨日の疲労によりずっと寝てしまっていたのだ。
上条「はー散歩ぐらいしたかったな」
ローラ「まあいいじゃない? 本当のクリスマスは明日なんでしょう?」
確かに、日本ではそこらへん曖昧だが25日が本来クリスマスであるので、まだまだクリスマスムードは終わらない。
上条「まあそうだけど…………」
ローラの作った料理に舌鼓をうちつつ、上条には別の疑問が浮かび上がっていた、
上条(なんかすっかり日本の習慣に浸ってるけど、良いのか?)
元々イギリスの、さらに魔術サイドのトップという奇異な立場にいたのだ。
それこそ「クリスマス」という一大イベントは重要視すると上条は踏んでいたのだが、
いざクリスマスになってみればそこにはすっかり日本に順応したローラがいるではないか。
それだけではない。
あぐらの上条に対し正座であり、さらに箸、フォーク、ナイフ、スプーンそれぞれを的確に使い分けている。
大体の外国人はすべてを無理やり箸で食べようとするのだが、そこらへんさらに日本慣れしている気がする。
上条「あのーローラさん」
ローラ「ん? どうひたのふぉーま」モグモグ
上条「クリスマスですよね?」
ローラ「そうね」ゴックン
上条「なんかこーしなくていいのか?」
ローラ「なんかって……なにかしら?」
上条「例えばそのー教会に行ったり祈ったり」
ローラ「しないわよ?」
上条「え?」
ローラ「だってここ日本じゃない」
これには上条も参った。まさか数週間の間にローラがここまで日本に適応していたとは。
もうすこし何か宗教を重んじるものがあってもよいのではないかと思っていたのだが。
ローラ「ほらとうま、早く食べないと冷めちゃうわよ?」
上条「あっ、そうだな。 やっぱりおいしいですよローラのご飯は」
ローラ「うふふ、ありがとう、とうま♡」
上条(かわいいしどうでもいいや)
結局こんな調子でうやむやにしてしまうのである。
891: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:12:35.43 ID:NdhWv0Ou0
パーティーといっても特別何かを祝うわけでもないので、
結局は豪華な料理を食べ、雰囲気を味わうだけで一日は終わってしまう。
問題は、その雰囲気をどれだけ楽しめるかなのだ。
上条「ふぅー……」
ローラ「あら、こんな時に溜息なんてついて。 どうしたの?」
上条「いや、なんか信じられなくてさ」
ローラ「信じられないって……?」
上条「そのーなんていうか、色々とな」
色々と言っても、上条周りで変わっている部分なんて目立って一つしかなかった。
たった一ヶ月と少し。
たったそれだけの期間。
だがそれは、今年の夏休みに起こったことと同じぐらいに、上条の運命を変えていた。
上条(インデックスがいなくて、いまここにはローラがいる)
ローラ「?」
上条「まあ、それだけなんだけどな」ハハッ
ローラ「もう、なんのこと?」
こんなことなんども二人で確認したのだ。
いまさら言うことでもないだろうと思い、上条はそれをそっと心の中にしまった。
それ以上に、上条にはひとつ引っかかっている物があった。
上条(あの夢はなんだったんだ……?)
かつて見た、夢。
それは、インデックスとローラがいて、さらに結婚もしていた筈。
筈というのも、インデックスと同居という事実の方がインパクトが強すぎてはっきり覚えていないのだ。
まさか正夢かとも内心思っていたのだが、実際には現実とかけ離れている。
インデックスは離れ離れでいるし、何より結婚なんて全く現実味がない。
もしあれが単なる夢だったとしても、夢とは必ず何かしら自分に起因する要素がある物。
さらに、あれだけ鮮明な夢だとすれば、より強いなにかがあるはずなのだ。
上条(もしかしたらあれは……)
上条(俺の――――)
ローラ「とうま……!?」
上条「あれ?」
気づいたときには、すでに瞳から涙を零していた。
ローラ「と、とうま、急にどうしたの!?」
上条「いや、なんでもない、あくびだよあくび」
なんで泣いたか、ぼんやりとだがわかっていた。
結局、未練がましいという事なんだろうか…………
そこで上条は思考をやめた。
これ以上は、もう不要だと判断したからだ。
ローラと過ごす上で......
結局は豪華な料理を食べ、雰囲気を味わうだけで一日は終わってしまう。
問題は、その雰囲気をどれだけ楽しめるかなのだ。
上条「ふぅー……」
ローラ「あら、こんな時に溜息なんてついて。 どうしたの?」
上条「いや、なんか信じられなくてさ」
ローラ「信じられないって……?」
上条「そのーなんていうか、色々とな」
色々と言っても、上条周りで変わっている部分なんて目立って一つしかなかった。
たった一ヶ月と少し。
たったそれだけの期間。
だがそれは、今年の夏休みに起こったことと同じぐらいに、上条の運命を変えていた。
上条(インデックスがいなくて、いまここにはローラがいる)
ローラ「?」
上条「まあ、それだけなんだけどな」ハハッ
ローラ「もう、なんのこと?」
こんなことなんども二人で確認したのだ。
いまさら言うことでもないだろうと思い、上条はそれをそっと心の中にしまった。
それ以上に、上条にはひとつ引っかかっている物があった。
上条(あの夢はなんだったんだ……?)
かつて見た、夢。
それは、インデックスとローラがいて、さらに結婚もしていた筈。
筈というのも、インデックスと同居という事実の方がインパクトが強すぎてはっきり覚えていないのだ。
まさか正夢かとも内心思っていたのだが、実際には現実とかけ離れている。
インデックスは離れ離れでいるし、何より結婚なんて全く現実味がない。
もしあれが単なる夢だったとしても、夢とは必ず何かしら自分に起因する要素がある物。
さらに、あれだけ鮮明な夢だとすれば、より強いなにかがあるはずなのだ。
上条(もしかしたらあれは……)
上条(俺の――――)
ローラ「とうま……!?」
上条「あれ?」
気づいたときには、すでに瞳から涙を零していた。
ローラ「と、とうま、急にどうしたの!?」
上条「いや、なんでもない、あくびだよあくび」
なんで泣いたか、ぼんやりとだがわかっていた。
結局、未練がましいという事なんだろうか…………
そこで上条は思考をやめた。
これ以上は、もう不要だと判断したからだ。
ローラと過ごす上で......
892: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:13:27.78 ID:NdhWv0Ou0
上条「なあ……」
ローラ「なあに?」
上条「もう、寝るか……?」
ローラ「そう、ね。 もうこんな時間だし」
時刻は十時過ぎ。
特に何かをしていたわけでもないが、まったりとしている間に時間とは恐ろしい速度で経つものだ。
二人ともすでに風呂に入り、寝巻きに着替えている。
ローラは昨日まではしっかりと新しく買ったパジャマを着ていたのだが、
なぜか今日は一回りしてTシャツ一枚に下着だけとなっている。
上条のほうは勿論しっかりパジャマを着ている。
上条「………」
ローラ「………」
二人の間に、変な空気が流れていた。
その空間をもし子供連れの親が見たら、真っ先に子供の目と耳をふさぐであろう。
それだけ、アレな空気であった。
上条「えっと、その、あー俺ほら、クリスマス誰かと過ごすとかはじめてでさ。 多分……」
ローラ「そ、そうなの? 私はほら、護衛とか誰かいたけれど」
どんな話をしようと、やっぱりこの空気ははれない。
もう逃れられないと悟ったのか、上条は後ろ髪を欠きながら、ベットに横になるそぶりを見せた。
上条「じゃ、じゃあ……電気、消すか」
ローラ「そうね……うん///」
その日、何があったか……それは誰にもわからない。
が、次の日、二人は昼過ぎまで寝ていたという…………
893: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:14:03.43 ID:NdhWv0Ou0
学園都市には依然として雪が降っている。
呪われた人生を歩んでいる者、幸福な人生を歩んでいる者、自ら運命を変えた者、変えられた者、守られる者、守る者。
全てに、平等に。
とある二人には、はっきりとした幻想と淡い現実を抱かせるように。
学園都市の一人の少年と、魔術界のトップの二人の駆け落ちの一年は、幕を閉じる――――――
神裂「私たちは……?」
ルチア「ま、まあまだ学園都市についてませんから……」
…………まだまだ、舞台にはでれない。
894: ゴミ箱 2013/04/25(木) 04:14:32.40 ID:NdhWv0Ou0
おわれ
コメント
コメント一覧 (5)
おわんなよおおおおおお
やややややや
ね?あれだよね?25日にいちゃこらするんだよね?
......うわああああああああああああああああああ
内容も最高でした
どのシーンもキャラの個性を壊さず世界観を保ち
かつ起承転結がちゃんとしているベリーグッドな内容でした
でも、キリスト関係だったら「クリスマス」は25日で
祝うのも25日だと思うよ。日本はカップルのSEX目的で
イブの24日をフライングして「クリスマス」と呼ぶようになってるけど。
続編期待
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