1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:02:28.91 ID:0cCa/XPqo
P「ただ今戻りましたー」

小鳥「お疲れ様ですプロデューサーさん」

P「お疲れ様です音無さん。まだ残ってたんですか?」

小鳥「ええ、出来るだけ今日中に終わらせたい仕事がありまして。それに…」


音無さんの目線の先にはソファで寝るあずささんがいた。

成人した女性が寝る場所にしては少し手狭に見える。

仮眠室の導入を検討するよう社長に言うべきなのかもしれない。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342612948

引用元: P「だって今日は」 

 

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:04:08.16 ID:0cCa/XPqo
小鳥「あ、さっき紅茶入れたんですけどプロデューサーさんもいかがですか?」

P「はい、お願いします」

小鳥「よかったぁ、少し多めに入れちゃって…」


P「そういえば、あずささん、どれくらい寝てるんですか?」

小鳥「3時間前くらいに帰ってきてからずっとあのままなんですよ」

P「最近特に忙しそうでしたもんね」

小鳥「有り難いことなんですけどね…」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:08:46.24 ID:0cCa/XPqo
小鳥「でも、みんなが事務所に来なくなっちゃうのはちょっと寂しいです」

音無さんは苦笑いをしながらポットを運んできた。

小鳥「アールグレイなんですけどいいですか?」

P「ええ、わざわざありがとうございます」

差し出されたカップに角砂糖を一つ入れようとすると怒られた。

音無さん曰く、アールグレイはストレートで飲むものらしい。

仕方なく、角砂糖を元の場所に戻した。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:10:51.90 ID:0cCa/XPqo
小鳥「ところでプロデューサーさん」

音無さんがこちらを見つめてきた。

不満に思っていたことが顔に出ていたのだろうか。

できるだけ平静を装って音無さんの方を向く。

小鳥「そのスーパーの袋はなんですか?」

どうやらばれていないようだ。

熱いストレートティーをすすりながら答える。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:11:43.61 ID:0cCa/XPqo
P「今日の晩飯の材料ですよ。ついでにビールも」

小鳥「もしかして事務所で作るんですか?」

P「ええ、俺も今日中に片づけたい仕事があるもので」

小鳥「プロデューサーさんって、ほんと仕事熱心ですね」

音無さんが呆れたように笑う。

小鳥「でも、事務所で飲んじゃだめですよ?」

P「わかってますよ。ただ、帰りにまた同じスーパーに寄るのも馬鹿らしいなと思いまして」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:13:15.04 ID:0cCa/XPqo
そういって紅茶を飲み干すと、
彼女は空になった紅茶のカップを片付けてくれた。

自分も手伝うべきだとは思ったのだが、
食洗機の使いかたがわからないのでその場でおとなしくしていた。

小鳥「食洗機が導入されるなんてこの事務所もランクアップしましたね」

P「でもエレベーターは壊れたままですけどね」

全く持って社長の気まぐれはよくわからない。

あんな窮屈な給湯室に食洗機を入れるなど普通思いつかないだろう。

でも音無さんが嬉しそうにしているのを見ると
その気まぐれも悪くないと思えるから不思議だ。

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:14:44.84 ID:0cCa/XPqo
小鳥「それじゃあ、あずささんのことお願いしますね」

P「お帰りですか?」

小鳥「ええ、書類整理も終わりましたしそれに…」

意地悪そうに笑って続ける。

小鳥「私がいるとビール飲めないんじゃないかなあって」

P「そんなことしませんよ」

そう返事をしたものの、どうやら信用してないようだ。

何か言いたげな含み笑いがそれを示している。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:16:06.99 ID:0cCa/XPqo
小鳥「それと」

その含み笑いを浮かべたまま続ける。

小鳥「あずささんをしっかり送ってあげていってくださいね」

P「もちろんです」

小鳥「はい、お願いします
それでは、お先に失礼しますね」

P「はい、お疲れ様でした」

ドアが閉まって階段を下りる音がどんどん遠ざかって行く。

それを聞いて、やはりエレベーターを直すべきだと思った。

今度社長と顔を合わせたら提案してみよう。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:18:57.19 ID:0cCa/XPqo
先に米だけ炊いておけば書類を終わらせるくらいには炊けるはずだ。

そんな風に考えて炊飯器をセットし、
買ってきた食材と酒を冷蔵庫に入れる。

決してここでビールを飲むからではなく、
家に帰ってからビールを冷やす時間が惜しく感じたからだ。


用を済ませて給湯所から自分のデスクに戻る時に、
ホワイトボード上のやたら強調された部分が目に入った。

P「そういえば明日が誕生日なのか…」

これはきっと亜美と真美の仕業だろう。

これだけ派手にホワイトボードを埋めるのはあいつらしかいない。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:20:06.76 ID:0cCa/XPqo
それを見て2週間くらい前に
あずささんの誕生会が企画された事を思い出した。

もっとも、全員の都合が合わずに来週にお流れになったのだが。

書類を作りながら何をプレゼントしようかと考える。

こういうのは高すぎてもダメだし安すぎてもダメだ。

ましてやあずささんに渡すのだから下手なものを渡すわけにはいかない。

となると…


「んん…」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 21:31:01.48 ID:0cCa/XPqo
声のする方を見る。

そこでは相変わらず、
紫色のボレロを羽織った女性が横になっていた。

かけられた毛布が邪魔ですべては見えないが
白いロングスカートを身に着けているのがわかる。


…いくらロングスカートとはいえ、
スカートのまま横になるのはいかがなものかと思いますよ。

ときどき窮屈そうに身体をよじる彼女を横目に、
書類の作成は滞りなく進められた。

思った以上のスピードで仕事が出来ているのは、
ひょっとするとさっきの紅茶のおかげなのかもしれない。

これなら米が炊ける前に仕事が終わるだろう。

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:06:02.28 ID:0cCa/XPqo
そして、その予想は見事的中した。

自分の予想通りに事が運んだことが嬉しくなる。

思わず料理にも力が入りそうになるが、
事務所の給湯室で大したものが作れるはずもない。

仕方なく当初の予定通りに、
レタスとベーコン入りの炒飯を作ることにした。


問題は皿を何枚用意するかである。


食事は1人より2人の方が絶対にいい。

しかしながらもう一人はすっかり眠ってしまっている。

結局、2枚の皿に炒飯を盛りつけた。

もしあずささんがこれを食べなくても、
ラップして冷蔵庫に入れておけば誰かしら食べるだろうと思ったからだ。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:15:57.67 ID:0cCa/XPqo
もう一方の皿にラップして、給湯室を後にした。

もしここで食事をとっている間にあずささんが帰ってしまったら…
そんなことは考えたくもなかった。

音無さんとの約束を反故にするわけにはいかないし、
あずささんを失踪させてしまったら大変だ。


扉を開くとソファの背もたれ越しにあずささんが顔だけのぞかせていた。

P「おはようございます、あずささん」

あずささんが寝ぼけ眼でこちらを見つめてくる。

どうにかこの、平静を装ったふうな顔を保とうと努めた。


あずさ「おはよう……おとーさん、ごはんできたの?」


平静を装っていたであろう顔が一気に崩れていくのがわかる。

自分が今どんな顔をしているのか、それすらわからなかった。

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:18:12.61 ID:0cCa/XPqo
P「あの、あずささん?」

あずさ「うん?」

P「ここがどこだかわかりますか?」

あずさ「もう、馬鹿にしないで?ここは事務所…」

表情が見る見るうちに変わっていく。

どうやら現在の状況を把握することが出来たようだ。

それと同時に沈黙が訪れる。


これは困った。

フォローを入れてどうにかなるような状況じゃない。

そう確信させるくらいには気まずい沈黙だった。

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:21:51.87 ID:0cCa/XPqo
あずさ「ぷ、プロデューサーさん?」

P「は、はい」

あずささんがどうにか口を開いた。

これで事態が好転すればいいのだが。

あずさ「え~っと…あ、あなたは今起こったことを忘れる~忘れる~、…はい!」

催眠術をかけているかのように指を回す。

その動きのおかげで白のロングスカートではなく
ワンピースを身に着けていることが分かった。

しかし自分が理解したのはそれだけだった。

願わくばその催眠術にかかりたかったが、
どうやらそれもかなわぬことらしい。

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:23:24.70 ID:0cCa/XPqo
あずさ「…これで忘れました…よね?」

P「…」

これは返答に困った。

こういう時に選択肢が出てくるほど現実は甘くないことを思い知らされる。

「…やっぱり、だめ、ですか?」

どうやら時間切れだ。

懇願するような目でこちらを見つめてくるあずささんには申し訳ないが首を縦に振る。

「あら~…」

明らかに目が泳ぎまくっている。

彼女がこれだけ動揺しているのも珍しいと思ってしまった。

18: ↑ミス 2012/07/18(水) 22:26:02.50 ID:0cCa/XPqo
あずさ「…これで忘れました…よね?」

P「…」

これは返答に困った。

こういう時に選択肢が出てくるほど現実は甘くないことを思い知らされる。

あずさ「…やっぱり、だめ、ですか?」

どうやら時間切れだ。

懇願するような目でこちらを見つめてくるあずささんには申し訳ないが首を縦に振った。

あずさ「あら~…」

明らかに目が泳ぎまくっている。

彼女がこれだけ動揺を見せるのも珍しいと思ってしまった。

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:27:02.95 ID:0cCa/XPqo
あずさ「…あの~」


あずさ「どうにか、今起こったことを忘れていただけませんか?」

絞り出すように声を出している。

しかしながら忘れろと言われて忘れられるようなことではない。

それくらい衝撃的な事件だったのだ。

P「…善処したいと思います」

あずさ「…それって忘れてくれないってことじゃないですか~」

そう言うとあずささんは両手で顔を覆い隠した。

現実はやはり甘くない。

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:28:50.49 ID:0cCa/XPqo
ここでようやく自分の持っている皿と、
給湯室において来たもう一つの皿のことを思い出した。

これは使えるのではないか。

P「あの、炒飯作ったんですけどあずささんもどうですか?」

あずさ「…」

P「えーと、少し作りすぎちゃったんですけど…」

あずささんが指と指の間から眼だけをのぞかせて言う。

あずさ「…いいですね。実は私、晩ごはん、まだ食べてなくて~…」

その答えを聞いて片手で皿を持ち直し、再び給湯室へと向かう。

あずささんは声をかけるまでもなく後ろから何も言わずについて来てくれた。

声をかけずに済んだのはありがたかったが沈黙が重かった。

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:31:32.56 ID:0cCa/XPqo
P「大したもんじゃないんですけどね…」

さっきかけたラップを外す。
まだ冷めていないのが幸いだった。

あずさ「ありがとうございます~。それでは、いただきます」

P「はいどうぞ。」

二人の夕食が始まった。

炒飯がうまくできていたおかげなのか、
思った以上に会話は弾んだ。

あずさ「…プロデューサーさんはよくお料理するんですか?」

P「そうですね。忙しくない時は基本的に自分で作ることにしています」

あずさ「お料理上手なんですね~。すごいです」

P「あずささんもすごいですよ。最近お仕事たくさん入ってますよね」

あずさ「いえいえそんな~」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:49:49.42 ID:0cCa/XPqo

   ***
あずさ「ごちそう様でした~。すごく、おいしかったです」

P「ありがとうございます。あずささんにそう言ってもらえるとうれしいです」


あずさ「…あの、先ほどはすいませんでした」

P「いえいえ、貴重なものが見れたので大丈夫ですよ」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん!」

先ほどの沈黙の時間が嘘のようだった。

炒飯を作れることがこんなに役に立つのだから現実は分からない。

あずさ「もう…私、なんであんなこと言っちゃったのかしら?」

P「もしかして、俺とあずささんのお父さんが似てたりとか…?」

あずさ「いえ~、まずプロデューサーさんと歳が違いすぎますし…不思議ですね~」


23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:52:24.21 ID:0cCa/XPqo
P「じゃあ、お父さんがご飯作ったりしてくれるんですか?」

あずさ「えっ、何でわかったんですか~?」

さっき自分で言っていたじゃないですか、と言いかけてやめる。

先ほどの沈黙を呼ぶことを恐れたからだ。

しかし彼女もそれを察したようで顔を伏せてしまった。

彼女の勘の良さも時として仇になるのだ。

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 22:54:17.76 ID:0cCa/XPqo
あずさ「私が自分で言ったんですよね~…」

P「そう、ですね」

あずさ「あ~もう、恥ずかしいです」

P「これであずささんを脅すネタが一つできましたね」

あずさ「もう!プロデューサーさん、意地悪です…」

少しおどけてみせたのが功を奏したのか今度の沈黙は短く済んだ。

誰に言おうかな~というと、
また目線が泳がせてそれだけはやめて下さい~、と苦笑いしてくる。

いちいち感情が顔に出る人だと改めて思った。

あずさ「それはそうと、お皿片付けないといけませんね~」

P「いいですよ、俺がやっときますんで待っててください」

そういうのだがあずささんは自分から食器を運んでくれた。

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:31:14.77 ID:0cCa/XPqo
しかし二人とも食器洗い機の使い方がわからずに散々苦戦することになった。

まさか洗剤をどこに入れるのかすらわからないとは思わなかったのだ。

結局、以前のようにスポンジを使って食器を洗うことにした。

あずさ「音無さんに使い方聞いておかないといけませんね…」

P「ええ…」

食洗機に触れる機会がなかったところを見ると、
あずささんも事務所に来る機会がなかったのかもしれない。

食事を終わらせたときにはまだ11時前だったはずの時計はすでに11時半を指していた。

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:35:34.71 ID:0cCa/XPqo
あずさ「ペットボトルのお茶でいいですか?」

そういって彼女は冷蔵庫を開ける。

熱いお茶を飲む気にはなれなかったから、その提案には賛成だ。

あずさ「あら~?」

P「どうしました?」

あずさ「冷蔵庫の中にビールが」

P「ああ、家に帰ってから飲もうかな、と」

あずさ「そうですか~」

危うくビールを持ち帰るのを忘れるところだった。

これだけの時間冷やせば移動を考えても冷やしなおす必要はないだろう。

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:39:20.89 ID:0cCa/XPqo
あずさ「えいっ」

プシュッと心地良い音がした。

その音のした方をつい二度見する。

そこには満面の笑みを浮かべたあずささんがプルタブの空いた缶ビールを持っていた。

P「あ、あずささん?何してるんですか?」

あずさ「ふふっ、これをプロデューサーさんが飲んだことにしようかなと思いまして」

P「なんでわざわざ!?」

あずさ「さっきのこと誰かに言ったら~」

満面の笑みを更に深めた。
もう嫌な予感しかしない。

あずさ「プロデューサーさんが事務所でビール飲んでたこと、誰かに言っちゃおうかしら~」

P「」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:41:00.26 ID:0cCa/XPqo
P「…あずささんもかなり意地悪だと思いますよ?」

あずさ「あらあら~」

まさかこの人がこんなことをやるとは思わなかった。

このままいくと俺はあずささんの策略にまんまとはめられてしまう。

…これはどうにかしなければ。

そうして考えた結果、一つの名案にたどり着く。

P「あずささん、もう一本の缶ビール、とってくれませんか?」

あずさ「?どうぞ~」

不思議そうな顔をして缶ビールを手渡してきた。

計画通りだ。

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:43:03.71 ID:0cCa/XPqo
プシュッ

手渡された缶ビールを開けた。

何が何だかわからない顔のあずささんに向かって言う。

P「じゃあ俺もあずささんがここでビール飲んでたって誰かに言いますね?」

なんて大人げない争いだろう。

しかしこのくだらない争いにもこれで終止符が打たれるはずだ。

俺はそう確信していた。

あずさ「プロデューサーさん、ずるいです…」

でも、と彼女は続けて言った。

あずさ「これで共犯ですね」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:45:33.25 ID:0cCa/XPqo
「「かんぱ~い」」

結局二人で飲むことになってしまった。

もともと家で飲む気だったのでつまみは特売で300円のサラミだけだ。

こんなしょぼくれたものをアイドルに食べさせていることに罪悪感を覚える。

あずさ「ふふっ、二人だけの秘密ですね~」

そんな心情を知ってか知らずか嬉しそうに声をかけてくる。

P「そうですね。それにしても、あずささんって結構子供っぽいとこあるんですね」

あずさ「むっ、プロデューサーさんには言われたくありません~」

そう言ってべーっと舌を出す。

このような仕草がすでに子供っぽいということがわかっていないのだろうか。

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:46:44.69 ID:0cCa/XPqo
あずさ「それより、プロデューサーさんとお話しするのって久しぶりですよね?」

P「そう、ですね。二人とも忙しかったですし。」

あずさ「それになかなか事務所にも行けなかったから少しさびしかったです~」

P「はは、音無さんも同じこと言ってましたよ」

あずさ「そうですね~。だから今日音無さんの顔を見に来たんですけど…」

そういって缶を傾けた。

それにしてもアイドルと缶ビールというのはいまいち似合わない。

あずさ「………はふ」

声が自然に漏れたようだ。

こういったところに表れる彼女らしさに安心させられる。

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:49:47.81 ID:0cCa/XPqo
P「見に来たんですけど…の続きはないんですか?」

つい続きを催促してしまう。

なんとなく、このままにしておくとその続きが聞けない気がしたからだ。

あずさ「ええ…、音無さんの顔を見たら
プロデューサーさんの顔も見たくなっちゃったんです~」

P「それでソファに座ってたらそのまま、ですか」

あずささんは恥ずかしそうに首を縦に振る。

これだったら外回りをもっと早めに切りあげてくればよかった。

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水) 23:55:41.84 ID:0cCa/XPqo
P「あずささん、早寝ですもんね」

あずさ「はい~」

P「それで起きたらお父さんがいたわけですか」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん!それはわすれてください!」

そんなやり取りを続けながら冷たいビールを流し込む。

音無さんには悪いが、やはり暑い日には冷たいビールが一番いい。

もっとも、紅茶好きのあずささんにこんなことを言ったら、
怒られてしまうかもしれないが。

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:00:00.54 ID:62SD9PFOo
机上においてあったあずささんの携帯が点滅する。

ふと時計を見ると針は0時を指していた。

P「お祝いメールですか」

あずさ「はい~、亜美ちゃんと真ちゃんと…え~と後は…」

そういってうちのアイドルたちの名前を次々にあげていく。

誕生会は来週だけど当日のお祝いもやはり格別なはずだろう。

P「あ、俺からも誕生日おめでとうございます」

あずさ「はい、ありがとうございます~」

P「そうだ、誕生日プレゼント送りたいんですけど何がいいですか?」

あずさ「そうですね~…」


35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:02:18.42 ID:62SD9PFOo
ひとしきり考えた後に彼女はおかしな提案をしてきた。

あずさ「じゃあ、プロデューサーさんは、私に何を送りたいですか?」

わかりやすい人なのに、こちらが予測できない行動ばかりしてくる。

今日はすっかりあずささんに振り回され気味だ。

P「そうですね…」

うーんとうなった後、先日見つけた隠れ家のようなバーのことを思い出した。

P「最近いい店を見つけたんですよ」

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:04:32.68 ID:62SD9PFOo
P「今日はちょっとひどいものを食べさせてしまったので今度一緒にどうですか?」

あずさ「ひどいもの、ですか?炒飯ならおいしかったですよ?」

どうやら今つまんでいるものに気付いていないらしい。

その手に挟まれたものを指さしていう。

P「それ、特売でだいぶ安かったんですよ」

あずさ「ふふっ、そうでしたか~」

手に持ったサラミをまじまじと見た後、
こちらを向きなおした。

あずさ「じゃあ、連れて行ってくださいね?」

もちろんだと首を縦に振った。

今日から節約生活を始めなくてはならないようだ。

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:08:30.49 ID:62SD9PFOo
P「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

あずさ「え~、もうですか?」

P「また今度、ゆっくり話しましょう」

不服げなあずささんをしり目に空いた缶ビールをビニール袋に入れる。

しかし、あの社長のことだ。
これがばれたところでどうにもされないような気もしてきた。

あずさ「どうかしましたか?」

さっきから本当に勘がいい人である。

ひょっとすると大体のことを見透かされているのかもしれない。


38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:11:30.63 ID:62SD9PFOo
P「いや、ここで飲んだことがばれても何も言われないんじゃないかって思って」

あずさ「…今さら気づいたんですか~?」

P「えっ」

あずさ「社長なんかたま~にこっそり飲んでたりしますよ?」

…この人を敵に回してはいけない。

強くそう思いながら事務所の明かりを消して鍵をかけた。

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:16:20.27 ID:62SD9PFOo
あずさ「でも、律子さんや伊織ちゃんに気付かれちゃったらまずいかもしれませんね~」

P「確かにそうですね。その時はあずささんも一緒に怒られてください」

あずさ「あらあら~」

P「だから秘密なんですよ」

あずさ「そうですね~、だから共犯なんですよね」

P「そういうことなんです」

あずさ「ふふっ、そういうことなんですね」

暗くてよく見えないがきっと笑っているのだろう。

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:20:40.67 ID:62SD9PFOo
P「ていうかプレゼントあんなのでいいんですか?」

長い階段を下りながらたずねる。

帰り道は長い方がいろいろ話せていい。

これはエレベーターを直さなかった社長に感謝するべきなのだろうか。

あずさ「そうですね~…」

あずさ「何か身に着けられるものがほしいです」

P「身に着けられるもの、ですか」

あずさ「はい~。なかなか会えないので、
何か近くに、そういうものがあったらいいなぁって思いまして」

この人は無自覚でこういうことを言うのだろう。

無自覚だからこそ、タチが悪いのだが。

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:23:14.31 ID:62SD9PFOo
あずさ「それとですね…」

P「まだあるんですか?」

あずさ「駄目ですか?」

前に出て向きなおり、うわ目づかいにこちらを見つめてきた。

ここまで来ると、
本当にわからずやっているのか疑問に思えてくる。

P「いいですけど…よくばりなんですね」

あずさ「たまにはいいでしょう?」

P「はいはい。それで、なんですか?」

あずさ「…お祝いメールがほしいなぁ、って」

P「メール、ですか?」

あずさ「メール、です」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:34:41.64 ID:62SD9PFOo
P「さっき祝ったのだけじゃご不満ですか?」

あずさ「そういうわけじゃないんですけど…」

深くは問わない方がいいのだろう。

わかりました、とだけいうと彼女は小さくガッツポーズをした。

これだけ感情が表に出やすい人なのに、
その行動が予測できないのはなぜなのか。

本当に不思議な人だと思う。

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 00:40:50.27 ID:62SD9PFOo
そのあとはここまでできなかったたくさんの話をした。

誕生日に予定が入ってないことを気付かれるのが嫌で
実家での誕生会を翌日にしたということ。

そしてその日には父親が特別に料理をふるまってくれることも
こっそり教えてくれたのだった。

P「お父さん、料理うまいんですか?」

あずさ「う~ん…それほど、上手ではないんですけど、
お母さんがおいしそうに食べてるから、きっとおいしいですよ」

あずささんが目を覚ました直後の沈黙が嘘のように
彼女はたくさん話してくれたのだった。

46: ↑ミス 2012/07/19(木) 00:46:33.37 ID:62SD9PFOo
そのあとはここまでできなかったたくさんの話をした。

誕生日に予定が入ってないことを気付かれるのが嫌で
実家での誕生会を翌日にしたということ。

そしてその日には父親が特別に料理をふるまってくれることも
こっそり教えてくれたのだった。

P「お父さん、料理うまいんですか?」

あずさ「う~ん…それほど、上手ではないんですけど、
お母さんがおいしそうに食べてるから、きっとおいしいですよ」

あずささんが目を覚ました直後の沈黙が嘘だったかのように
彼女はたくさん話してくれた。

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 01:02:19.73 ID:62SD9PFOo
あずさ「今日はありがとうございました~」

P「いえいえ、どういたしまして」

結局、あずささんの家に着いたのは1時過ぎだった。

自分が家に帰ると何時くらいになるんだろうか。

あずさ「それじゃあお願いしますね?」

P「まずメールですね、わかりました」

あずさ「はい、そうです。あと…」

そう言うと彼女はこちらに顔を近づけてきて耳元でささやく。

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 01:04:06.35 ID:62SD9PFOo





あずさ「今日のこと、本当に内緒ですからね?」




それじゃ、おやすみなさいと言って
あずささんは彼女の住むマンションへと入って行った。

本当に何をしでかすかわからない人だ。

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 01:07:56.13 ID:62SD9PFOo
帰路につく中で、あずささんに送るお祝いメールの文面を考える。

どのようなメールを送れば彼女が一番喜ぶのだろうか。

それにいい店を知っている、と言ったものの
まだ実際に店の中に入ったことはないのだ。

店に入ってメニューの金額を見た瞬間に
目を回すような事態に陥ることだけは避けたい。

あとは身に着けるものだ。

洋服だろうか、それともアクセサリーの類だろうか。

それともキーホルダーやストラップだろうか。
でも、それだと少し安っぽくなってしまう恐れがある。

アクセサリーだとしたら
彼女の好みに合わせなくては身につけてもらえないかもしれない。

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 01:14:11.63 ID:62SD9PFOo
それにしてもリクエストを聞いたことで
余計悩む羽目になるとは思わなかった。

とにかく、まずはメールをしなければならない。

これに関しては今日までというタイムリミット付きなのである。

せっかくなら当日のお祝いをしてあげるべきだ。

しかし、あの何をしでかすかわからない人にどんなメールを出せばいいのか。
自分には全く見当もつきそうもない。

とりあえずどんな店が好きなのか、
どんなアクセサリーが好きなのかをメールできいてみよう。

ひょっとすると、今以上に思い悩むことになるかもしれないけど。

でも、なぜか今日はそれを面倒なことだと思わなかった。


だって今日はそういう日なのだから。

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/19(木) 01:14:45.33 ID:62SD9PFOo
おわり