1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/02(金) 21:39:55.97 ID:pPdC68lC0
その日、いつものように凸守と勇太と集まって、不可視境界線を探していた。
それは突然だった。ふっと、我に返るように。

「?どうかしたのか」

勇太の声で我に返った。どれくらいの間、私はぼうっとしていたのだろう。

「あ・・・ご、ごめん」

凸守も私の様子を訝しんでいる。

「マスター?」

「ごめん。用事思い出したから帰るね」

もちろん、用事なんてない。お姉ちゃんは今日も遅いし、今日の為に宿題もやっておいたから。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1351859995

引用元: 六花「覚醒の…反転『ディスアビュース』」 

 

中二病でも恋がしたい! (7) [Blu-ray]
ポニーキャニオン (2013-06-19)
売り上げランキング: 23,187
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/02(金) 21:45:53.15 ID:pPdC68lC0
家に帰り、自分の部屋を見渡す。
河原の石で作ったペンダント。種類も分からないのに買ったエアガン。
黒いマント。アンティークドール。形容しがたい謎の黒い物体。分厚いノート・・・。

ベッドに倒れ込み、自分の頭を布団に叩きつけた。ふと目に付いたはさみを掴み―――――


3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/02(金) 21:50:44.83 ID:pPdC68lC0
「よう、おはよう!」

月曜日の学校。席に座ると、誠が声をかけてきた。

「おはよう」

「何だ?月曜日の朝だから憂鬱か?」

やけに疲れた返事をしたせいか、誠が聞いてくる。

昨日、あいつが突然帰ったせいで、俺は凸守に遅くまで連れまわされた。
結局家に帰ったのは、12時を回っていた。マスターがいないと、好き放題やるサーヴァントらしい。

「いや。昨日遅くまで起きてて、疲れてるだけ」

「勇太、おはよう」


4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/02(金) 21:54:16.17 ID:pPdC68lC0
「ああ、おはよう…」

―――あれ?何かが変だ…。

「おはよう、一色君」

「おはよう、小鳥遊さん!イメチェン?」


「あ」

イメチェンと聞いてわかった。こいつ、眼帯をしていない。それどころか、カラコンも外している。

「お前、ちょっと来い!」



5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/02(金) 21:59:03.63 ID:pPdC68lC0
廊下に小鳥遊を連れ出す。

「お前、突然どうしたんだ?」

昨日の今日といい、こいつは何かおかしい。いつもおかしいが、厨二病とは違ったおかしさだ。
これじゃまるで、普通の女の子だ。

「何が?」

「何がじゃない。昨日はあの後大変だったんだぞ。凸守に遅くまで連れまわされるし…」

「・・・ごめん」

ますます不気味だ。凸守の話を振ったのに、素直に謝るなんて、不自然すぎる。

「それで、今日はその右目どうしたんだ?邪王真眼は飽きたのか?」

「うん」

「ほう。それじゃあ今回はどんな設定に「やめた」



7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 20:42:09.37 ID:hAXGTmR00
「やめた…?」

言ってることがの意味が解らず、思わず聞き返した。

小鳥遊は小さくうなずく。

「やめたの。不可視境界線も、邪王真眼も全部やめたの」

「・・・お前まさか!」

「もう私は厨二病じゃない!」


8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 20:47:20.39 ID:hAXGTmR00
小鳥遊六花を見た時、すぐに厨二病だってわかった。
不自然な眼帯に、カラーコンタクト。一度、腕に包帯を巻いてきたこともあった。

結局私は彼女と、そのサーヴァント、もとい後輩に関わることになるのだが―――


「……」

今日の彼女は明らかにおかしい。眼帯も、カラーコンタクトも付けていない。
これもはっきりした根拠は無いのだけど、今までとは空気が違う。
だから、あの子も冷めちゃったんだな、ってすぐに分かった。私もそうだったから。


9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 20:55:54.58 ID:hAXGTmR00
今日はチア部の練習があるけど、サボって昼寝部に行ってみることにした。
富樫君と小鳥遊さんも来るかもしれないし、気になることが一つあった。

小鳥遊さんが普通の子に戻ったら、あのサーヴァントはどうなるんだろう?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あいつは不自然な位、普通の女の子になった。
凸守とネットを通じて仲良くなるくらいだから、本来は社交的なのかもしれない。

今日だけでも、一色や俺の友達と普通に話す様になっていた。
いつもは俺かと一緒か、一人で食べる昼食も、さりげなく人の輪に入って行った。

まだ学校が始まってそれほど経っていないせいか、皆も受け入れたようだ。



「今日は部活に行く。勇太も来て」

「部活?お前にはもう必要ないんじゃないか?」

こいつが部活に行くつもりだとは思ってなかった。厨二病が治ったなら、必要ないはずだ。

「凸守に説明しなきゃいけない」

「……」



10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 20:59:49.39 ID:hAXGTmR00
「今日はデス、マスター!とダークフレイムマスター!」

いつものように部室に入ると、先に凸守が来ていた。
やたら長いツインテールを、ブンブント振り回している。

「あれ、マスター!その右目…もしや『力』が戻ったのデスかっ!?」

小鳥遊の目に気付いたようだが、新たな演出としか思ってないのだろう。
いつもの調子で聞いてくる凸守に、小鳥遊は短く答えた。

「やめたの」

「やめた?何をデスか?」

「そういうの。私、厨二病を卒業したの」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:04:31.45 ID:hAXGTmR00
「……」

「いきなりでごめん。でも、凸守には直接口で言いたいって思って」

凸守は一瞬押し黙った後、いつもの調子で答えた。

「突然何を言い出すのデスか、マスター!?もしや、機関に洗脳されているのデスか!?」 

「違うの。本当なの」

「主を正すのは臣下の勤めデス!この闇聖典を以てすれば…」

「やめて!!」

小鳥遊が大声を上げ、凸守も黙る。気まずい沈黙が続いた。

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:11:25.92 ID:hAXGTmR00
「マ、マスター?」

「その言い方もやめて」

「え…あ…」

凸守は何も言えなくなった。

「そういうの、恥ずかしくなっちゃったの。不可視境界線とか、邪王真眼も」

「・・・・・・」

「だからごめん。私、もう凸守とそういう遊びはできない」

「・・・っ」

「凸守!」

凸守は一瞬歯ぎしりした後、教室を飛び出していった。

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:15:13.07 ID:hAXGTmR00
「おい!いくらなんでも言い方ってもんがあるだろ!」

小鳥遊の肩を掴み、俺は大声を張り上げた。

「・・・・・・」

「何とか言えよ!」

「あーもう、うっとうしわね」

「丹生谷さん、いたの?」

「途中から教室に入ってきたの!大体の事情は分かってるわ」

「・・・・・・」

「厨二病が嫌になって、そのことをあいつに言ったんでしょ。答えなさいよ」

小鳥遊は、かすかにうなずいた。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:18:09.07 ID:hAXGTmR00
「ま、厨二病やめられて良かったじゃない」

軽い調子で丹生谷さんは言う。

「これであんたもまともな女の子ってわけ。時々悶え苦しむ事になるけど」

「そんな言い方…!」

「・・・・・・・ごめん。今日はもう帰るね」

そう言うと、小鳥遊も部室を小走りで去っていった。

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:23:15.21 ID:hAXGTmR00
小鳥遊の足跡が聞こえなくなった後、丹生谷さんが言った。

「もしかして怒ってる?」

「・・・・・・別に」

「嘘。怒ってる」

「怒ってない!」

挑発するような丹生谷さんの言い方に、声を荒立ててしまう。

「富樫君はさ、厨二病だった時の友達に、厨二病卒業したって報告した?」


16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:25:43.28 ID:hAXGTmR00
厨二病だった時、友達は一人もいなかった。周りに引かれて、新しい友達はできなかった。
元々中の良かった男子とも、自然と話さなくなった。女子については、言うまでもない。

「もしかして、友達いなかった?」

そんな様子を見透かされたのか、丹生谷さんに突っ込まれた。

「私もね、友達なんて一人もいなかったよ」


18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:30:59.35 ID:hAXGTmR00
「私も周りに引かれて、いじめられもしなかった。話すのは、せいぜい先生くらい」

「友達といえば、ネットでやり取りしてたあいつくらいね」

「富樫君て、中学の知り合いが誰も来ないから、この学校来たんだよね?」

その通りだ。この学校から俺の町まで、電車を2回乗り換える必要がある。
ここなら中学の俺を知る人間は誰もいないと思った。

「前に行ったと思うけど、私も同じ」

「私と富樫君って、何か似てるよね」

そう言って、丹生谷さんは少し笑った。

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:33:52.60 ID:hAXGTmR00
「でもね、あの子たちは違うの」

あの子たち、おそらく、小鳥遊と凸守のこと。

「違う?」

「あの二人は、厨二病でも友達がいる。それどころか、厨二病でつながってる」

「厨二病で…」

丹生谷さんの表情が真面目になる。

「そう。だから片方が厨二病じゃなくなってら、あの二人は友達じゃいられない」


20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:36:55.79 ID:hAXGTmR00
「そんなこと…」

反論したいが、言葉が出てこない。友達じゃいられない。俺には友達さえいなかった。

「今までは厨二病同士だったけど、これからは普通に仲良くしようなんて、そう簡単に言えない」

丹生谷さんは目を伏せる。

「友達のいなかった私たちが、どうこう言える話じゃない。これは、二人の問題よ」

21: 部活じゃなくて同好会でした。 2012/11/03(土) 21:44:22.33 ID:hAXGTmR00
結局あの後、俺たちは見回りの先生に急かされて、何事も無く帰った。

「・・・・・・」

ベッドに寝転んで、今日の事を考える。
考えても考えても、結論は出そうになかった。

「勇太、お客さんよ」

母さんに呼ばれ、下に降りていく。こんな時間に客?

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:48:28.90 ID:hAXGTmR00
「何があったか、聞かせてほしい」

尋ねてきたのは、十花さんだった。小鳥遊の件だろう。
リビングで、十花さんと向かい合う。重々しい雰囲気に、母親たちは部屋から出て行った。

「・・・あいつは多分、厨二病に冷めてしまったんだと思います」

「君もそうだったのか?」

「・・・ええ、まぁ」

「そうか」

そう呟くと、十花さんは、安心したように微笑んだ。

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:53:14.45 ID:hAXGTmR00
「ずっとこのままじゃないかって、心配だった。けど、もう大丈夫なんだな?」

厨二病が再発する可能性は0とは言えないが、一般には低いだろう。

「そうか、良かった。これからも、六花のことをよろしくな」

十花さんは、頭まで下げて帰って行った。母さんには、「妹が息子さんと仲良くさせてもらっている」と、
説明していた。

厨二病が治るのは、良いことだ。肥大化した自意識が縮小し、あるべき大きさに戻る。
それはある意味では成長だろう。小鳥遊は、分をわきまえた、普通の少女になった。


25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 21:58:18.32 ID:hAXGTmR00
ショックだった。最初は冗談かと思った。けど、そうじゃなかった。
『やめて』という言葉が痛かった。何だか、私自身を否定されている気がした。

耐えられなくなって、その場から逃げだしてしまった。これから、どんな顔をして会えばいいんだろう。
そもそも、私はあの部屋に行くべきなんだろうか。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ちょっとあんた、付き合いなさい」

朝、高等部のあいつに声を掛けられた。

「あ・・・」

「昨日の事。私も聞いてたの」

モリサマーを名乗る、子供みたいな先輩。だけど、今日は大人びて見えた。

「・・・・・・はい」

26: 原作未読なので、アニメ準拠で書いてます。お許しあれ。 2012/11/03(土) 22:04:22.80 ID:hAXGTmR00
「あんた、今でも厨二病?」

開口一番、嫌な事を聞かれた。そんなこと、自分でもわからない。

「・・・わからない」

「そ。でも、あんたのマスターはもうそうじゃない。それはわかる?」

「…嫌です」

「嫌って言っても仕方ないわよ。私だって、モリサマーはもうごめんだもの」


27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/03(土) 22:07:13.93 ID:hAXGTmR00
「・・・・・」

「いい。今日、必ず部室に来なさい」

「…嫌です」

「引っ張っても連れてくわよ。ほら」

先輩は、ハンカチを渡してきた。

「泣きそうな顔してるわよ」

「え…」

「放課後に必ず来ること。いいわね」

そう言い残して、先輩は去って行った。

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 16:47:32.13 ID:pfKgbYPR0
「来たわね」

部室に来ると、先輩が先に来ていた。どうやら、私たちだけの様だ。

「あんたがあいつに会いたくないのはわかる。でもね、あいつの落とし前の付け方をあんたは見なきゃいけないの」

「小鳥遊六花は、今までみたいにあんたとは遊んでくれない。恥ずかしくって、できるわけがない」

「必ず今日、あいつも部室に来る。不器用な説明だろうけど、きちんとあいつの話を聞いてあげて」

先輩の言葉に、力無くうなずく。元気出して、の一言でも言ってくれればいいのに。この人も、マスターに劣らず不器用だ。

「凸守」

ドアが開き、眼帯もカラーコンタクトもしていないマスターが入ってきた。

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 16:52:34.85 ID:pfKgbYPR0
「凸守、私は…

「いいんです。わかってますから」

「もう、飽きちゃったんですよね?飽きないと思っていても、いつかはその時が来てしまう」

「私は大丈夫です」

「凸守・・・」

「良かったじゃないですか!やっとやめられて!私もそろそろ潮時かなー、って思ってたんですよ」

「え…」

私の言葉が意外だったのか、マスターは目を開いて驚く。そろそろ潮時、嘘を言っているつもりは無い。

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 16:56:54.49 ID:pfKgbYPR0
不思議と言葉が出てくる。

「マスターって呼び方も、もうおかしいですね。先輩」

「私、これからもここに来ていいですか?」

「これかも、友達でいてくれますか?」


気が付くと、先輩に抱きしめられていた。

「…痛いですよ、先輩」

そっと、先輩の小さな頭を撫でる。先輩の華奢な体がひくついてるのがわかった。

「凸守、ごめんね」

「いいですよ。先輩」

そのまま、私たちはずっと抱き合っていた。

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 17:03:14.88 ID:pfKgbYPR0
「ありがとうございました」

廊下で、後輩が頭を下げてきた。他の人はもう帰ってしまった。

「あんたはあれで良かったの?ずっと抱き合ったままだったじゃない」

「いいんです。言葉が無くてもわかるんです。私たち、友達ですから」

―――友達。厨二病なのに友達がいるなんて、正直羨ましかった。

―――こいつは、もしかして。

「あんた、厨二病はどうするの?」

「…それは、もう潮時かなって。これからは、普通に戻ります」

―――やっぱり。

凸守も、友達を失うのが怖かったんだ。友達が厨二病をやめるなら、こいつもやめるしかないんだ。


37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 17:08:52.94 ID:pfKgbYPR0
「これ、返しますね」

凸守は、カバンから厚いノートを一冊取り出した。

闇聖典。二人のバイブルだった、私の黒歴史。

「元々は先輩のですし。あ、パソコンのコピーも消しておきます」

これを受け取れば、モリサマーは消滅する。自分の黒歴史が消えて無くなる。

私は、闇聖典を凸守に押し返した。

「別に返さなくていいわ。それはもうあんたのだし。好きにしなさい」

「でも…

「私も悪かったわ。あんたにつっかかたりして」

凸守の小さな頭に手を乗せる。

「だからあんたも、元気だしな」

凸守の頭を撫でまわす。上手くできてるかはわからないけど。

「じゃあ、最後にもう一つだけいいですか?」


38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/04(日) 17:14:42.12 ID:pfKgbYPR0
次の日も、小鳥遊は普通に部室に行っていた。これからも続けていくようだ。

極東魔術昼寝結社、という意味不明な名前は、そのまま残っている。

小鳥遊が厨二病じゃなくなった今、名前を変えると言い出すと思っていたが、違うらしい。

どうして変えないのか、なんて無粋な事は聞かないでおく。俺の剣と、同じかもしれない。




「こんにちは。先輩」

凸守は、髪をばっさり切っていた。長かったツインテールから、ショートヘアーになっている。

どうやら自分で切ったようだ。所々、髪が不自然になっている。

「凸守」

「大丈夫です。勝手にいなくなったりしませんから」

そう言って、凸守は微笑んだ。昨日までとは違って、その笑みはとても大人びて見えた。

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国) 2012/11/05(月) 20:18:21.24 ID:Gk8eZTbD0
改めて見ると、凸守の頭は酷いことになっていた。

昨日は上手く切れたと思ったのに、枝毛でボサボサだ。

「こんにちは、先輩」

「ん」

廊下で凸守に遭遇する。昨日から、妙に礼儀正しくなった。牛乳吹っかけられたのは嘘みたいだ。



「厨二病をやめた感想はどう?」

「ううんと、自分でもよくわからないです。ただ…」 

「ただ?」

「昨日、自分のノートを見て、『あー』とか思っちゃって…」

「これからも付いて回るわよ、それ。私だって三日に一回はフラッシュバックするし」

そう聞いて、凸守は苦笑いする。


「それじゃ。私は今日チア部があるから」

「…頑張んなさいよ、あんたも」

恥ずかしくなって、すぐに立ち去ろうとした。こういう時、上手いことの一つでも言えればいいのに。

結局、私は不器用なままだ。これも全部厨二病のせいだ。



「先輩!」

「な、何?」

凸守に呼び止められた。

凸守は微笑みながら言った。

「これからも、ここに来てくださいね」

「…うん」

何だか、恥ずかしくって、私も笑ってしまった。

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/07(金) 15:58:40.28 ID:OvkjSel80
帰り道。夕暮れの河原を三人で歩く。

「先輩」

「何、凸守?」

「この風・・・不可視境界線が開きかけていますっ!!」

「や、やめてよぉ」

「ふふ、冗談ですよ」

そう。冗談だ。厨二病なんて人の一生のうちの、冗談のような部分。
後から振り返って、恥ずかしくてたまらないような、ちょっとした恥。

実は、闇聖典のコピーを一部だけ残してある。もちろん、押し入れに封印済みだ。
数年後、数十年後、ふとした拍子に取り出して、過去の自分に悶えるのかもしれない。
でも、それは恥ずかしいことでも何でもない。




46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/07(金) 16:03:49.56 ID:OvkjSel80
厨二病で繋がった関係。だから、片方が変わったら関係は終わってしまう。
でも、もう一人も変わってくれたら、また歩き出せる。

凸守は変わってくれた。それだけが不安だった。

「先輩」

「何、凸守?」

「この風・・・不可視境界線が開きかけていますっ!!」

「や、やめてよぉ」

「ふふ、冗談ですよ」

冗談。私はそう思わない。
確かにやってることは子供みたいだったけど、私たちの仲は冗談じゃなかったはずだから。
ありがとう、凸守。

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/07(金) 16:08:24.66 ID:OvkjSel80
最近、六花ちゃんと凸守ちゃんが変わりました。
何というか、急に普通の女の子になった感じです。

今は、部室でトランプやゲームをして、皆のんびりとしています。

もりさまちゃんも時々来て、凸守ちゃんとゲームに熱中してます。

もりさまちゃんも、何となく変わったかな?

六花ちゃんは、お姉さんの所でアルバイトを始めたそうです。

富樫君は…あんまり変わってないかな?少し、優しくなったかも。


それにしても、皆いつになったらお昼寝してくれるんでしょうか? 
                                 
                                  終わり