1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:14:26.75 ID:+VUsYrYC0
私、高坂穂乃果!
音ノ木坂王国騎士団所属の16歳!
まだまだへっぽこな私だけど、一つだけ取り柄があります!
なんと、炎を操る力を持っているんです!
私みたいな不思議な力を持つ人は数千人に一人。
持って生まれたこの力、平和のために活かさなきゃ!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414253656

引用元: 穂乃果「伝説の邪神……?」 

 

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2: 第一話:宝玉と邪神の伝説 2014/10/26(日) 01:15:37.18 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「ぐぅ……」zzz

雪穂「お姉ちゃんー?」キィ

雪穂「……まだ寝てるし」

雪穂「お姉ちゃん、朝だよ。早く起きなよ」ユサユサ

穂乃果「うーん……もうちょっとだけ……」

雪穂「こんな時間まで寝てていいの?」

雪穂「今日って入団式の日でしょ?」

穂乃果「…………」

穂乃果「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」ガバッ

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:16:21.73 ID:+VUsYrYC0
ドタドタ

穂乃果「どうしてもっと早く起こしてくれなかったの雪穂!?」

雪穂「私に言われても困るんだけど……」

バタバタ

穂乃果「あれ、制服がない!?」

穂乃果「雪穂! 私の制服は!?」

雪穂「お母さんが居間に出してたと思うけど」

雪穂「てゆーかそれくらい昨日のうちに準備を……」

ガタガタ

穂乃果「うわっ!?」ドテッ

雪穂「はぁ……」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:17:10.63 ID:+VUsYrYC0
ドタドタドタ

穂乃果「いってきます!」ガラッ

穂乃果ママ「穂乃果? 朝ご飯は?」

穂乃果「いらない!」

タタタタタ

穂乃果「うう、急がないと……」

「おはよう、今日も元気だねぇ」

穂乃果「おはよう、お婆ちゃん!」

タタタタタ

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:17:45.11 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「はぁ……はぁ……」

穂乃果「間に合ったぁ……」

ヒデコ「落ち着いてる暇はないよ」

ヒデコ「もうすぐ女王様の演説が始まるから早く広間にいかないと」

穂乃果「ヒデコちゃん! おはよう」

ヒデコ「おはよう。こんな日も遅刻すれすれなんてやっぱり穂乃果は凄いよ」

穂乃果「えへへ、それほどでも」

ヒデコ「褒めてないんだけど……」

ヒデコ「とりあえず急ぐわよ」

穂乃果「はーい」


ーーー
ーー

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:18:17.75 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「ねえねえ、あれが新しく入る子たちかな?」

穂乃果「やっぱり皆緊張してかちこちみたい」

穂乃果「私も一年前はああだったんだよね」シミジミ

ヒデコ「いや、一年前も寝坊してギリギリに来てたわ」

穂乃果「あ、あれぇ……?」

ヒデコ「というか、静かに。始まるわよ」

「それでは、女王様、よろしくお願いします」

スッ

穂乃果「…………」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:18:56.01 ID:+VUsYrYC0
理事長「皆さん、音ノ木坂王国騎士団へようこそ」

理事長「今年もこうして勇敢な騎士を迎えいれられて、とても嬉しく思います」

理事長「皆さんも知っての通り、音ノ木坂は比較的治安はいい方ですが、盗賊や山賊に苦しめられている人々がいるというのも事実です」

理事長「また、隣国では軍備の増大計画が始まっており、いつこの国の平和が脅かされるかわかりません」

理事長「これから皆さんには国民を守る盾となり、敵を貫く剣となり、国のためにその身を捧げてもらうことになります」

理事長「それはとても危険なこと……ですが、恐れないでください」

理事長「あなた達がいてくれるからこそ、国民は安心して暮らしていけるのですから」

理事長「勇敢な騎士達に、神の御加護がありますように」スッ

スタスタスタ

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:19:37.86 ID:+VUsYrYC0
「それでは、これより配属ごとに対面式を行いますので、各部隊は指定された場所に向かってください」

穂乃果「さてさて、私の後輩になるのはどんな子かな」

「穂乃果」

穂乃果「ん? どうしました、隊長?」

「お前はこれから謁見待合室に行ってくれ」

穂乃果「え? なんでですか?」

「女王様がお呼びらしい。内容は私も聞かされてはいない」

「……お前、なにやらかしたんだ?」

穂乃果「何もやってないですよ!」

「そうか。まあ打ち首にならないように気をつけろよ。はっはっは」

穂乃果「……冗談だよね?」ブルブルッ

穂乃果「……とりあえず行かないと」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:20:08.84 ID:+VUsYrYC0
スタスタスタ

穂乃果「ここだよね……」

穂乃果「どうか打ち首にはなりませんように……」

コンコン

穂乃果「失礼します」キィ

穂乃果「……あれ?」

凛「ん?」

花陽「え?」

穂乃果「女王様じゃ……ない?」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:20:51.75 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「えーと……初めまして」

穂乃果「私は高坂穂乃果。騎士団の一員だよ」

花陽「騎士団の……あっ、は、初めまして、小泉花陽です! 今日から騎士団に入団することになりました!」

凛「同じく今日から入団することになった星空凛です。よろしくお願いします」

穂乃果「二人とも新しく入った子なんだ。これからよろしくね」

穂乃果「それはそうと、二人ともどうしてここに?」

花陽「えっと……入団式が終わったら、女王様がお呼びと言われて」

凛「かよちんは何かやっちゃったんじゃないかってとっても心配してるの」

凛「理由も解らないし……」

穂乃果「二人も理由を知らないのかぁ」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:21:34.34 ID:+VUsYrYC0
コンコン

穂乃果「はーい」

「女王様がお呼びです。謁見室まで起こし下さい」

穂乃果「解りました」

花陽「一体なんなんでしょうか……」

穂乃果「解らないけど……行くしかないよね」

穂乃果「……打ち首にならないといいけど」ボソッ

凛「ええっ!? 凛達打ち首になるの!?」

花陽「ひっ!?」

穂乃果「じ、冗談だよ……多分」

凛「それならもっと冗談らしい顔をして欲しいよ……」


ーーー
ーー

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:22:10.33 ID:+VUsYrYC0
理事長「よくぞ来てくれました、三人とも」

理事長「実は、貴女達に頼みたいことがあったのです」

穂乃果「頼みたいこと……ですか?」

理事長「はい」

理事長「邪神の伝承は知っていますか?」

穂乃果「え?」

花陽「それって……古くから伝わる御伽噺の……?」

理事長「その通りです」

凛「それがどうかしたんですか?」

理事長「どんな物語か、一度話してもらえますか?」

穂乃果「はい。えっと……」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:23:42.98 ID:+VUsYrYC0
むかしむかし、あるところに悪い神様がいました。
生と死を司るその神様は、人々に邪神と呼ばれ恐れられており、この国を滅ぼそうと村や町を襲っていたのです。
たくさんの兵隊が邪神を倒すために戦いましたが、強大な力を持つ邪神には歯が立ちません。
邪神は自身を崇拝する者を配下に加えながら、とうとう都へと手を伸ばしました。
このまま邪神に滅ぼされてしまうのだろうと皆が諦めかけた時、9人の能力者が皆の前に現れたのです。
襲いかかる邪神の手下を打ち倒し、遂に邪神を山の中に追い詰めます。
そして激しい死闘の末、見事に邪神を打ち倒し、世界に平和が訪れましたとさ。
めでたしめでたし。

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:24:11.99 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「という話だったと思います」

理事長「はい、よくできました」

理事長「ですが、それはただのお伽噺ではありません。過去に実際に起こった出来事なのです」

凛「え?」

理事長「そして、その物語は少しだけ間違っていて、続きがあるのです」

穂乃果「続き……ですか?」

理事長「ええ」

理事長「本当は、邪神を倒すことはできなかったのです」

花陽「!?」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:24:46.33 ID:+VUsYrYC0
理事長「邪神はあまりにも強く、封印するのがやっとだったのです」

理事長「そして、邪神を封印した時に出来たのが9つの宝玉」

理事長「彼女たちは宝玉を一人一人持ち帰り、邪神が復活しないように管理することにしたのです」

理事長「ですが、最近その宝玉の一つが盗賊団に奪われました」

理事長「もしも悪い心の持ち主に宝玉が渡り邪神が復活したら、この世界は再び危機に見舞われることとなります」

理事長「ですから、貴女達には宝玉の回収をして欲しいのです」

穂乃果「あの……」

理事長「はい、どうしました?」

穂乃果「どうして私たちなんですか?」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:25:15.49 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「えっと、任務が嫌だとかいうわけじゃなくて」

穂乃果「こんな重要そうなお仕事なら、もっと凄い人達にお願いしたほうが……」

理事長「……宝玉をとった盗賊団ですが、その中にいたという報告が入っているのです」

理事長「≪能力者≫……が」

穂乃果「!」

花陽「そんな……」

凛「え?」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:25:56.84 ID:+VUsYrYC0
理事長「貴女達も知っていますよね、能力者がどういうものか」

理事長「人よりも遥かに優れた身体能力を持ち、その身に異能を宿す者」

理事長「出現率は数千人に一人と言われ、また能力を実用性まで高められる才能を持つのはその中でもごく僅か」

理事長「そう、敵にはその能力者がいるのです」

理事長「能力者に対抗できるのは能力者だけ」

理事長「これが、私が貴女達を呼んだ理由です」

理事長「行ってもらえますね?」

ほのりんぱな「「「はい!!!」」」

理事長「ありがとうございます、三人とも」

理事長「ここに在処の解っている宝玉の場所を示しておきました」

理事長「三人に、神の御加護がありますように」スッ


ーーー
ーー

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:26:39.75 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「ただいま~」ガラッ

雪穂「お帰り、お姉ちゃん」

雪穂「ちゃんと間に合った?」

穂乃果「うん、大丈夫だったよ」

穂乃果「ただ、その後ちょっといろいろあってね」

雪穂「? 何があったの?」

穂乃果「私ね、ちょっと出かけなくちゃならなくなっちゃったの」

雪穂「え? ど、何処に!?」

穂乃果「それは……言えないんだけど。女王様の命令で」

雪穂「そうなんだ……危ないことじゃないよね?」

穂乃果「……うん。ちょっとお使いにいくだけ」

雪穂「そっか、それなら安心だね」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:27:11.07 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「ただ、ちょっと長引きそうかなって」

雪穂「ふーん……」

穂乃果「それで、これから準備したらすぐに出発しなくちゃいけないの」

雪穂「え、すぐに?」

穂乃果「うん」

雪穂「……そっか」

雪穂「お姉ちゃん」

穂乃果「どうしたの?」

雪穂「……気をつけてね」

穂乃果「……うん!」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:27:46.46 ID:+VUsYrYC0
タタタタタ

穂乃果「花陽ちゃん! 凛ちゃん! お待たせ!」

穂乃果「ごめんね、待たせちゃったかな?」

花陽「私たちも今きたところです」

穂乃果「そう? それじゃあ早速出発だよ!」

凛「もう何処に行くか決まってるの?」

穂乃果「うん、最初は一番近くの村に行こうかなって」

穂乃果「よーし、行くぞー!」

りんぱな「「おー!」」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:28:20.39 ID:+VUsYrYC0
スタスタスタ

穂乃果「へぇ、花陽ちゃんと凛ちゃんは幼馴染なんだ」

花陽「そうなんです。家が近所なので昔から二人で遊んでました」

凛「えへへ、凛とかよちんは昔から仲良しだもんね」ギュー

花陽「もう、凛ちゃんたら……」

凛「そうだ、高坂先輩には幼馴染はいないんですか?」

穂乃果「…………」

穂乃果「いない……かな」

花陽「そうなんですか……」

凛「なんだか寂しいね……」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:28:51.10 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「あ、でも、妹がいるよ」

花陽「高坂さん、妹がいるんですか?」

穂乃果「うん。雪穂っていって、おとなしいけんだけど意地悪で怒りっぽいの」

穂乃果「でも……本当は私のことを心配してくれる優しい子なんだよね」

穂乃果「えへへ、だから寂しくなんてないんだよ」

花陽「高坂さん……」

穂乃果「花陽ちゃん、その高坂さんって呼び方無し!」

花陽「え?」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:29:37.82 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「私たちはもう友達でしょ?」

穂乃果「それならさ、そんな他人行儀な呼び方はやめようよ!」

花陽「えっと……それじゃあ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うん!」

穂乃果「ほら、凛ちゃんも」

凛「穂乃果ちゃんよろしくにゃー!」

穂乃果「うん、私こそよろしくね!」

穂乃果「よーし、それじゃあ次の町まで急ごう!」

りんぱな「「おー!」」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:30:26.37 ID:+VUsYrYC0
ーーーーヴィントの村

穂乃果「ここが宝玉のある村か~」

凛「まずはどうするの?」

穂乃果「うーん、どうしよう」

穂乃果「どうしたらいいと思う、花陽ちゃん」

花陽「えっ!? えーと……村長さんの所に行ってみたらいいかなーと……」

穂乃果「おお、確かに。流石花陽ちゃん!」

花陽「いえ、このくらいは……」

穂乃果「村長さんのお家は何処だろう……すいません!」

「はい、なんでしょうか」

穂乃果「村長さんのお家って何処ですか?」

「村長なら西の方にある少し大きめの家に住んでますよ」

穂乃果「ありがとうございます!」

穂乃果「西の方だって、行こう」

凛「はーい」

スタスタスタ

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:31:27.18 ID:+VUsYrYC0
ーーーー村長の家

コンコンコン

村長『どなたですかな?』

穂乃果「えーと……音ノ木坂王国騎士団の高坂穂乃果です」

穂乃果「女王様の命令で来ました」

村長『王国騎士団……そういうことですか。入ってください』

キィ

穂乃果「失礼します」

花陽「お邪魔します」

凛「お邪魔します」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:32:00.35 ID:+VUsYrYC0
村長「どうぞ、座ってください」

ガタッ

穂乃果「えっと」

村長「用件は、この村にある宝玉のことについてですかな?」

穂乃果「! 解るんですか!?」

村長「ええ、解りますとも。女王様の命令で騎士の方々が来られたとなるとこれしかございませぬから」

穂乃果「それじゃあ、宝玉は」

村長「はい、お渡しいたします」

穂乃果「いいんですか?」

村長「ええ」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:32:27.74 ID:+VUsYrYC0
村長「最近、とある盗賊団によって宝玉が奪われたと聞きました」

村長「昔のわしなら勇んで来るなら来いと思ったのでしょうが、今はただの口うるさい老いぼれです」

村長「この宝玉を守るのが我々一族の役目……ですが、娘は村を出て行き、今ではわししかおりません」

村長「ですから……一族に宝玉を守る力が無くなった以上、国に保管して貰うのが一番だと思ったのです」

村長「全く……情けない話じゃ」

穂乃果「おじいちゃん……」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:33:00.63 ID:+VUsYrYC0
村長「老いぼれの話に付き合わせてすまなかったの、お嬢さん方」

村長「これが、一族に伝わる宝玉じゃ」

スッ

花陽「綺麗……」

村長「確かに綺麗ですが、魅入られてはいけませんぞ」

村長「ここに封印されているのは凶悪な邪神なのですから」

穂乃果「それじゃあ、お受け取りします」

村長「……頼みますぞ」

スッ

穂乃果「ありがとう、おじいちゃん」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:33:41.08 ID:+VUsYrYC0
穂乃果「よし、これで任務完了だね」

凛「もっと大変なことになるんじゃないかって思ってたにゃー」

花陽「平和に越したことはないよぉ」

村長「若い子は元気があってええのぉ」

村長「それでは、私も見習って皆さんを町の入り口までお見送りさせていただきますかな」

穂乃果「無理しちゃ駄目だよ!」

村長「いやいや、無理などしとらんよ」

村長「ちょうど散歩に行く時間じゃしの」

凛「おじいちゃんは毎日散歩してるの?」

村長「もちろんじゃ。どれ、わしの軽快なフットワークを見せてあげよう」

スタスタ ガチャ

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:34:38.33 ID:+VUsYrYC0
花陽「出て行っちゃいました……」

穂乃果「元気なおじいちゃんだね」

凛「あれだけ元気なら敵が来ても勝てるにゃ!」

穂乃果「あはは、本当ーー」


『何者じゃ貴様ら!!!』


ほのりんぱな「「「!?」」」

穂乃果「今の声……おじいちゃん!?」

花陽「何かあったのかも」

凛「凛達も外にいくにゃ!」

ドタドタ ガチャ

穂乃果「!」


村長と対峙するのは黒装束に身を包む謎の集団。
村長の剣幕から友好的な相手というわけではないのだろう。

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:35:35.36 ID:+VUsYrYC0
「この村にある宝玉を渡してもらおうか」

村長「貴様らに渡す物などない! さっさと村からでていけ!」

「……拒むのなら、力ずくで奪うだけだ」

ちゃきり、と先頭にいた男が剣を構えると同時に、その後ろにいた敵が各々の武器を取り出す。

穂乃果「おじいちゃん!」

村長「来てはならん! 早く逃げるんじゃ!」

穂乃果「そんなの駄目だよ! おじいちゃんを見捨ててなんて絶対にいけない!」


おじいちゃんを庇うように前に出る。凛ちゃんと花陽ちゃんも続き、三人で敵と相対する形になった。

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:36:15.84 ID:+VUsYrYC0
「小娘が……死にたくなければそこをどけ」

穂乃果「どかないよ! 困ってる人を助けるのが、騎士の役目だから!」

「騎士……? ふん、こんな子供が騎士を名乗るだなんて、この国も地に落ちたものだな」

「恨むのなら、そんな国に生まれた自分のうんめーー」

敵が言い終わる前に地面を強く蹴り、無防備なお腹に拳を叩き込む。
どさりと、いう音と共に続きの台詞は地面へと消えていった。
続けざまに近くにいたもう一人の敵を蹴り飛ばす。二人目。

「っ……武器を構えろ!」

展開に脳が追いついたのだろう、敵が反撃に移ろうと武器を構えようとする。けど、遅い。
体制を整える前に敵に肉薄し肘打ち。敵は悲鳴をあげる間も無く地面へと倒れる。三人目。

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:36:58.16 ID:+VUsYrYC0
「なんだこいつは!?」

「無闇に近付くな! 弓で遠巻きに仕留めろ!」

焦りを孕んだ声。敵は近接戦闘では勝てないと悟り、こちらから距離をとりながら素早く矢を放ってくる。

穂乃果「! おじいちゃん!」

自分に向かってくる矢を素手でいなしていると、孤を描きながら村長へと向かう矢が目に留まる。

凛「まかせて! 『ばりあー!』」

さっと村長の前に躍り出た凛が両手を前に翳すと、飛来した矢が見えない壁にぶつかったかのように弾かれた。

「おい、今の……」

「まさか……≪能力者≫!?」

今更気づいても遅い。驚きに足を止めた二人をノックアウトする。残り二人。

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/10/26(日) 01:37:50.29 ID:+VUsYrYC0
「逃げるぞ! こいつらはやばい!」

勝ち目がないと解り一目散に逃げ出す。仲間意識が薄いのか、倒れた味方を気にもかけていない。

花陽「……逃がしません! 《縛鎖の蔓》(バインバインド)」

彼らの足元の地面を引き裂いて現れたのは何本もの巨大な蔓。触手のようにうねり、逃げ出した彼らの体を拘束する。

「くそっ……動けねぇ!」

盗賊団の一人が必死にもがくが、頑丈な蔓はびくともしない。
これで全員の制圧が完了した。

42: 第二話:邂逅 2014/11/02(日) 01:09:45.07 ID:djfyiK2I0
穂乃果「おじいちゃん、大丈夫だった?」

村長「ああ、おかけで助かったわい」

村長「それにしても……まさかお嬢さん方が≪能力者≫じゃったとは」

村長「宝玉を回収する任務に割り当てられるのも納得がいくのぅ」

穂乃果「うん……だから、おじいちゃんは安心して休んでていいよ」

村長「そうじゃな、これからは緩やかな隠居生活を送らせてもらうとしよう」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:10:14.67 ID:djfyiK2I0
花陽「あの、この人たちは……」

穂乃果「あー……」

凛「山にでも捨てちゃうかにゃー?」

花陽「だ、駄目だよ凛ちゃん、そんなことしたら……」

凛「でも7人も連れていけないよ」

花陽「それはそうだけど……」

穂乃果(こういう時はどうするんだっけ)

穂乃果(うーん……)

穂乃果「そうだ!」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:10:54.99 ID:djfyiK2I0
穂乃果「おじ……村長さん」

村長「なんですかな」

穂乃果「私たちが王都まで戻り、騎士団の派遣の要……」

穂乃果「…………」

村長「???」

凛「(穂乃果ちゃん、どうしたの?)」

穂乃果「(続き忘れちゃった)」

凛「(無理して難しい言葉を使おうとしなくてもいいよ!)」

穂乃果「(うう……ごめん)」

穂乃果 コホン

穂乃果「えっと、帰ったら騎士団の人たちにお願いして来てもらうから、それまで犯人の人たちを見てもらってもいいですか?」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:11:26.34 ID:djfyiK2I0
村長「構わんよ」

穂乃果「ありがとう、おじいちゃん」

村長「礼を言うのはこちらのほうじゃ」

村長「お嬢さん方が来てくれんかったら、宝玉は悪しき者の手に渡っていたことじゃろう」

村長「本当に、ありがとう」

村長「また暇があったら、村に遊びに来てくれ」

村長「その時は面白い昔話の一つや二つお話しさせてもらおう」

穂乃果「うん、絶対にまた来るよ」

穂乃果「それじゃあ、またね」

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:12:06.93 ID:djfyiK2I0
スタスタスタ

穂乃果「後はこれを女王様に届けるだけだね」

穂乃果「はぁ、それにしても本当に盗賊団がでるなんて……びっくりしちゃったよ」

花陽「でも、間に合ってよかったですね」

穂乃果「うん。もう少し遅れてたら、村長さんが危険な目にあってたかもしれないしね」

凛「凛はもう少しあの村にいたかったにゃー」

凛「いい風が吹いてて気持ちよかったし」

穂乃果「確かにそうだけど、あんまりのんびりしてられるって状況じゃないから」

凛「解ってるよー」


ーーー
ーー

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:12:49.03 ID:djfyiK2I0
ーーーー謁見の間


穂乃果「こちらが、村から回収した宝玉です」スッ

理事長「ありがとうございます、三人とも」

理事長「それでは、特別保管庫に運んでください」

「「はっ」」

コツコツコツ

理事長「報告は一足先に聞きました」

理事長「盗賊団と戦闘になったようですね」

穂乃果「はい。それで、村に彼らを捕まえてありますから……」

理事長「解っています。先程騎士達を向かわせました」

穂乃果「ありがとうございます」

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:13:23.92 ID:djfyiK2I0
理事長「お礼を言うのはこちらのほうですよ」

理事長「貴女たちのおかげで宝玉を守ることができました」

理事長「この宝玉は厳重に警備するので、安心してください」

穂乃果「お願いします」

穂乃果「それでは、次の町に行ってきます」

理事長「もう行くのですか?」

理事長「今日くらい休んでもいいと思うのですが」

穂乃果「休んでる間にも、盗賊団のせいで苦しめられる人々がいるかもしれません」

穂乃果「私は、皆を守りたいんです」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:14:02.42 ID:djfyiK2I0
理事長「……解りました。頑張ってくださいね、三人共」

ほのりんぱな「「「はい!」」」

スタスタ

理事長「高坂さん」

穂乃果「はい」ピタッ

理事長「……気にしているのですか、あの事件のこと」

理事長「あれは、貴女には何の責任もないんですよ」

穂乃果「…………」

穂乃果「……気にしていないと言えば嘘になります」

穂乃果「でも、皆を守りたいというのは、私の本心です」

穂乃果「失礼します」

スタスタスタ

理事長「…………」

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:14:34.93 ID:djfyiK2I0
穂乃果「花陽ちゃん、凛ちゃん、ごめんね」

凛「? いきなりどうしたの?」

穂乃果「休まずにすぐに出発させちゃって」

花陽「いいんですよ。私も皆が心配ですし」

凛「凛も休んでるよりは体動かしてる方が好きだから気にしないにゃー」

凛「それに、こうやって旅してたら美味しい物が食べられるし」

花陽「新しいお米との出会いもあります!」

穂乃果「よーし、じゃあ新しい町に行って美味しい物を食べよう!」

りんぱな「「おー!」」


ーーー
ーー

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:15:18.02 ID:djfyiK2I0
ーーーーリョートの街


穂乃果「ここが次の宝玉がある街かぁ」

穂乃果「王都程じゃないけど、大きい街だね」

花陽「ここは他の国とも近いから、商人の人たちが良く行き来するんです」

穂乃果「へぇ、そうなんだ」

凛「それで、宝玉はどこにあるの?」

穂乃果「えっと……あ、場所も書いてある」

穂乃果「街の北のほうにある大きな建物だって」

凛「町長さんの家かにゃー?」

穂乃果「うーん、そこまでは書いてないや」

穂乃果「とりあえず行ってみよう」

スタスタスタ

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:15:55.20 ID:djfyiK2I0
穂乃果「うわぁ……凄い豪邸」

花陽「この街にこれだけの家を建てるなんて……」

凛「お金持ちだにゃー……」

「何かごようでしょうか」

穂乃果「えっと、私たち、王国騎士団の者です」

穂乃果「この家にある宝玉のことでお話があってきました」

「少しお待ちください」

「…………」

凛「(目をつぶってなにしてるんだろう?)」

花陽「(うーん……お祈り、かな?)」

「お嬢様のお許しが出ました」

「屋敷の中へどうぞ」

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:16:34.77 ID:djfyiK2I0
トコトコ

凛「なんだか高そうな物がいっぱいだにゃー」

穂乃果「……もしかして、宝玉も何処かに飾ってたり?」

「そのようなことはございません。宝玉はきちんと管理されております」

穂乃果「そ、そうですよね」

ピタッ

「着きました。お嬢様、失礼いたします」

キィ

真姫「……王国騎士団の人たちが来るって聞いてたけど」

真姫「なんだ、まだ子供じゃない」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:17:37.39 ID:djfyiK2I0
凛「(そっちも子供だにゃー)」

花陽「(凛ちゃん、しー)」

穂乃果「初めまして、私はーー」

真姫「自己紹介なんていいわ、特に興味もないし」

真姫「それより用件を早く話してくれる?」

真姫「私は結構忙しいの」

凛「…………」

花陽「…………」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:18:10.08 ID:djfyiK2I0
穂乃果「えっと、この家にある宝玉を回収しに来ました」

真姫「お断りよ」

穂乃果「え?」

真姫「宝玉は先祖から代々受け継いできた物。それを渡せるわけないでしょ」

穂乃果「で、でも女王様の命令で……」

真姫「……聞かされてないようだから教えてあげる」

真姫「宝玉は一箇所に集まるのが一番危険なの」

真姫「だから悪い権力者の手に集められないように、宝玉は勅命によって侵されないという決まりが作られてるのよ」

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:18:39.74 ID:djfyiK2I0
穂乃果「で、でも盗賊団が……」

真姫「そのことなら既に聞いているわ」

真姫「でも安心しなさい。例え誰が来ようと、全員倒してあげるから」

真姫「私の≪能力≫でね」

穂乃果「!」

真姫「話は終わりかしら?」

真姫「騎士の方々がお帰りよ。案内してあげなさい」

「はっ」

真姫「さようなら」

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:19:13.19 ID:djfyiK2I0
ーーーー宿屋


凛「流石にあの態度はないよ!」

凛「盗賊団に襲われて一度痛い目みればいいんだにゃ!」

花陽「言い過ぎだよ、凛ちゃん」

花陽「本当にそんなことになったら、不幸になる人が増えるんだよ?」

凛「そうだけど……でも、あんな態度はないよ」

凛「穂乃果ちゃんもそう思うよね?」

穂乃果「…………」

凛「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「決めた!」

花陽「え?」

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:19:48.16 ID:djfyiK2I0
穂乃果「二人とも、明日もう一度行ってみようよ!」

凛「行ってどうするの?」

穂乃果「持って帰るのが無理なら、守るのを手伝えばいいんだよ!」

花陽「それも許してくれないかも……」

穂乃果「でも、このまま放っておくなんて絶対駄目!」

凛「……確かにそうだけど」

穂乃果「大丈夫、話せばきっと解ってくれるよ!」

穂乃果「よーし、そうと決まれば早速でかけよう!」

花陽「何処に……ですか?」

穂乃果「さっきのお家に!」

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:20:24.32 ID:djfyiK2I0
穂乃果「もし襲撃するなら、下見をする可能性が高いからね」

穂乃果「だから、怪しい人物がいないかチェックしにいこう!」

凛「穂乃果ちゃんって意外に真面目だにゃ……」

穂乃果「意外には余計だよ!?」

「お客さんたち、もしかして今から出かけるつもりかい?」

穂乃果「はい、そうですけど」

「それなら気をつけるんだよ、ここの街は治安がそんなに良くないからね」

穂乃果「そうなんですか?」

「ああ……それも全部隣国のせいだよ」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:20:55.13 ID:djfyiK2I0
凛「どういうこと?」

「この国は全体的に平和だけど、隣国はそうでもないんだよ」

「国は大きいけど、独裁政治のせいで不満を持つ人が多くて、毎日のように事件が起きてるって話だよ」

「子供が暗殺未遂で捕まって、一族皆死刑になったなんて噂も聞いたことがあるし……本当恐ろしいよ」

「そんな国から逃げ出して来た人達はこの街に来るんだけど、その人たちがよくいざこざを起こしてねぇ」

「悪いことは言わんから、夜に外をうろつかないほうがいいよ」

穂乃果「ありがとう、でも私たちは大丈夫だよ」

穂乃果「行こう、二人とも」

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:21:29.31 ID:djfyiK2I0
スタスタスタ

花陽「何度見ても大きいですね」

凛「門番や警備の人も巡回してるし、やっぱりお金持ちだにゃ……」

穂乃果「それでも何処かに穴はあるはず」

穂乃果「裏の方に回ってみよう!」

タタタ

ドンッ

穂乃果「わっ!? あててて……」

にこ「っ~~! ちょっとあんた! 何処見て歩いてんのよ!」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:21:59.98 ID:djfyiK2I0
穂乃果「ご、ごめんなさい」

にこ「まったく……せっかくの戦利品が台無しになったらどうすんだか」ガサガサ

花陽「風呂敷の中に高そうな物が……」

凛「……戦利品?」

にこ「ふう……なんとか無事そうね」

にこ「いい? これからはちゃんと前見て歩きなさいよ」

穂乃果「う、うん……」

にこ「はぁ……時間損したわ。早くいかないと」

「いたぞ! こっちだ!」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:22:27.31 ID:djfyiK2I0
にこ「やばっ」ダッ

穂乃果「え?」

「逃げたぞ! 追え!」

穂乃果「あの、彼女が何かしたんですか?」

「あいつは泥棒だ!」

花陽「泥棒!?」

凛「悪い奴だにゃ!」

「くそっ……早い」

穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん、行くよ!」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:22:56.40 ID:djfyiK2I0
タタタタ

にこ「ふふん、今日も楽勝ね」

にこ「ま、にこに追いつける奴なんているわけないから当たり前だけど」

凛「そこまでだよ!」ザッ

にこ「! あんた、さっきの……」

にこ「ちっ!」クルッ

穂乃果「逃がさないよ」

花陽「ここは通しません」

にこ「…………」

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:23:33.56 ID:djfyiK2I0
穂乃果「さあ、逃げ場はないよ」

穂乃果「おとなしくして」ジリッ

にこ「……ふん、こんなので捕まえた気になってんの?」

穂乃果「えっ?」

にこ「それなら、甘すぎるわ!」

にこ「『影縫い』」ヒュッ


少女の手を離れた三本のナイフは、三人の影へと突き刺さる。それと同時に三人の体が空気に縫い止められたかのように動かなくなった。

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:24:10.81 ID:djfyiK2I0
穂乃果「か、体が……動かない……」

にこ「にこの邪魔をするからこんなことになるのよ」

にこ「そのままずっと動けずに、可哀想な人たちの慰み者にでもなってなさい」

にこ「それじゃあね」

タタタタ

穂乃果「うっ……あああ!」ググッ

凛「ビクともしない……凛たち、ずっとこのままなのかにゃ?」

花陽「ええっ!?」

穂乃果「はぁ……はぁ……そうだ!」

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:24:49.74 ID:djfyiK2I0
穂乃果「花陽ちゃん、前みたいに蔦を出してナイフを抜けない?」

花陽「やってみます! 《縛鎖の蔓》(バインバインド)」

シュルシュル スポッ

凛「わっ! 動ける!」

穂乃果「助かった……ありがとう、花陽ちゃん」

花陽「えへへ……」

穂乃果「……でも驚いたよ。まさか能力者だったなんて」

凛「そのせいで逃げられちゃったしね」

穂乃果「しょうがない……かぁ」

穂乃果「もう少し見回りをして、宿に戻ろう」


ーーー
ーー

68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:25:30.63 ID:djfyiK2I0
「お嬢様」

真姫「どうしたの?」

「訪問者が来ております」

真姫「今日は全部断ってって言っておいたはずだけど?」

「申し訳ありません。ですが、騎士団の方々を粗末に扱うわけにはと思いまして……」

真姫「騎士団……もしかして、昨日の?」

「はい、その通りです」

真姫「はぁ……解ったわ。通していいわよ」

真姫「せっかく面白い物が手に入ったっていうのに……」

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:26:28.04 ID:djfyiK2I0
コツコツコツ

穂乃果「門前払いされるかと思ったけど、通してもらえてよかったね」

凛「お昼に行った時はまだ寝てるって追い返されたけど」

凛「絶対ぐうたらだにゃー」

花陽「きっと疲れてたんだよ」

「どうぞ、お入りください」

キィ

穂乃果「失礼します」

真姫「あんた達もしつこいわね」

真姫「何度言っても宝玉は渡さないわよ」

穂乃果「それについて話したいことが……あれ」

真姫「? 何よ」

穂乃果「あそこにいるの……」

凛「あっ!」

花陽「昨日の……」

にこ「げっ……」

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:26:59.13 ID:djfyiK2I0
真姫「何? にこちゃんの知り合い?」

にこ「知り合いというか……そのぉ……」

穂乃果「その人は泥棒です!」

真姫「……ああ、そういうこと」

真姫「まったく、面倒事を増やしてくれるわね」

にこ「……申し訳ありません」

真姫「貴女たち、今は彼女のことは関係ないわ」

真姫「話したいことってなによ」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:27:37.46 ID:djfyiK2I0
穂乃果「私たちにも宝玉の警備をさせてください」

真姫「……警備をさせて欲しい?」

真姫「冗談じゃないわ、貴女たちみたいな子供に何ができーー」

穂乃果「私たちは、≪能力者≫です」

真姫「!」

凛「穂乃果ちゃん……?」

花陽「…………」

真姫「…………へぇ」

真姫「いいわよ、許してあげる」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:28:44.68 ID:djfyiK2I0
穂乃果「本当!?」

真姫「ええ、本当よ」

真姫「そうそう、それなら自己紹介をしなきゃね」

真姫「私は西木野真姫。この家の主よ」

穂乃果「私は高坂穂乃果。王国騎士団に務めています」

花陽「小泉花陽です」

凛「星空凛だにゃー」

真姫「ちなみに、隣にいるのは矢澤にこ」

真姫「彼女の身柄は私が所有しているし、警察にも話は通してある」

真姫「だから余計なことはしないでね」

真姫「それじゃあにこちゃん、三人を客間に案内してあげて」

にこ「かしこまりました」ペコッ

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:29:26.03 ID:djfyiK2I0
コツコツコツ

にこ「…………」

穂乃果「ねえ、なんでここにいるの?」

にこ「…………」

穂乃果「もしかして、真姫ちゃんの命令で泥棒してたの?」

にこ「……そんなわけないでしょ」ボソッ

穂乃果「えっ?」

ガチャ

にこ「客間はここよ。綺麗に使いなさいよね」

にこ「それと、余計なことは聞かないで。あんたらには関係ないんだから」

スタスタスタ

凛「感じ悪いにゃー」

花陽「何かあったのかな……?」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:30:03.74 ID:djfyiK2I0
~~~~~~~~~~~~~~
ーーーー昨夜


にこ「全く……見つかるなんてとんだヘマしたわ」

にこ「このままだといつ追ってがくるかもわからないし……この街もさっさと出た方がいいわね」

にこ「それなら最後にあの大きな屋敷でお宝ごっそり頂くとしましょう」

にこ「金持ちな世間知らずのお嬢様の家なんて楽勝よ、楽勝」

にこ「……待っててね、皆」

スタタタタ

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:30:37.34 ID:djfyiK2I0
シュタ

にこ「ふふ、簡単に忍び込めたわ」

にこ「やっぱり余裕ね」

にこ「……っと、扉の前に見張りが二人」

にこ「あそこが当たりかしら?」ニヤッ

にこ「『影縫い』」

「っ!?」

「!!」

にこ「ふふん、そこでおとなしくしてなさい」カチャカチャ

ガチャン

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:31:08.05 ID:djfyiK2I0
コツコツコツ

にこ「……? 随分殺風景な部屋ね」

にこ「向こう側に扉があるけど……じゃあこの部屋は何の意味が?」

バタン

にこ「え?」

にこ「扉が閉まった……?」

にこ「まさか!」

真姫『ふふ、罠にかかったわね』

真姫『お間抜けな盗賊さん』

にこ「くっ……!」

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:31:46.17 ID:djfyiK2I0
にこ「舐めんじゃないわよ……こんな部屋、壊して出てやるわ!」スッ

ドン ドサッ

にこ「痛っ!?」

真姫『無駄よ。その部屋は特殊な金属で作ってあるんだから』

真姫『例え能力者であっても、簡単には抜け出せないわ』

にこ「そんな……」

真姫『……それで、彼女が何者か解ったの?』

『はっ。こちらをご覧ください』

真姫『……へぇ、そういうこと』ペラペラ

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:32:21.09 ID:djfyiK2I0
真姫『矢澤にこ』

にこ「どうしてにこの名前……」

真姫『貴女、家族がいるそうね』

にこ「!」

真姫『貧しい家庭で育ち、家族を養うために盗賊をしていた……と』

真姫『ふふ、良かったじゃない。これからは家族皆で牢屋でご飯が食べられるわよ』

にこ「なっ!? 悪いのはにこよ! 皆は関係ないでしょ!?」

真姫『それを決めるのは貴女じゃないわ、私よ』

にこ「ぐっ……!」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:32:55.75 ID:djfyiK2I0
キィ

真姫「もし家族を助けたいなら、解るわよね?」

にこ「にこに、どうしろって言うのよ……」

真姫「ふふっ」スッ

パァン!

にこ「!?」

真姫「どう? 札束のビンタの味は」

真姫「貧しい家族を助けたいんでしょ?」

真姫「それなら、私の物になりなさい」

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:33:44.15 ID:djfyiK2I0
「お嬢様、それは!」

真姫「黙ってて」

真姫「貴女たちも見たでしょ? 彼女の≪能力≫」

真姫「ちんけな物じゃない、本物の≪能力者≫よ」

真姫「身のこなしからしてもそれはよくわかる」

真姫「私の召使に相応しいわ」

真姫「さあ、選びなさい」

真姫「私に従うか、家族仲良く捕まるか」

真姫「ふふっ」


~~~~~~~~~~~~~~

81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:34:27.42 ID:djfyiK2I0
にこ(あんな屈辱的なこと、話せるわけないじゃない!)

にこ(覚えてなさいよ、いつか吠え面かかせてやるんだから)

真姫「案内は終わった?」

にこ「はい、お嬢様」

真姫「ふふ、召使いの姿、とっても似合ってるわよ」

真姫「才能あるんじゃない?」

にこ「……ありがとうございます」

にこ(そんなこと言われても嬉しくないわよ!)

真姫「それじゃあ晩餐の支度をしてくれる?」

にこ「かしこまりました」


ーーー
ーー

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:35:01.78 ID:djfyiK2I0
真姫「それじゃあ警備をしてもらいたいんだけど……」

凛「晩ご飯美味しかったね!」

穂乃果「うん! 見たことないものばっかりだったよ!」

花陽「お米も美味しく炊けてました!」

真姫(本当に大丈夫かしら)

真姫「まあいいわ、適当に見回って好きなように警備してて」

真姫「くれぐれも邪魔だけはしないでね」

穂乃果「はーい」

穂乃果「そうだ、ちょっと聞いてもいい?」

真姫「なに?」

穂乃果「このお屋敷って、私たちの他にも能力者がいるの?」

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:35:48.90 ID:djfyiK2I0
真姫「ええ、いるわよ」

真姫「頭の中で会話したり、侵入者を察知したり、相手の名前を読み取ったり」

真姫「でも、どれも中途半端なものばかり」

真姫「本物の能力者と呼べるのは、私とにこちゃんくらいよ」

穂乃果「そうなんだ……」

真姫「それじゃあ、私は寝室に行くから、せいぜい頑張りなさい」

穂乃果「うん。お休み、真姫ちゃん」

真姫「……お休み」

スタスタスタ

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:36:17.71 ID:djfyiK2I0
凛「やっぱり感じ悪いにゃ」

穂乃果「うーん……そうだけど、悪い子じゃなさそうだよね」

穂乃果「どちらかといえば、接し方を知らない……って感じに思えるかな」

凛「凛にはよくわからないよ」

花陽「……あの」

穂乃果「どうしたの?」

花陽「この後どうしましょう?」

花陽「巡回の仕方とか……」

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:37:22.72 ID:djfyiK2I0
穂乃果「うーん……何かあると危険だし、三人で一緒に行動しよう」

凛「でも、それだと一日中起きてることになるんじゃ」

穂乃果「あ……」

花陽「二人で行動して、一人は仮眠をとるというのはどうでしょうか?」

花陽「それで、仮眠は順番に……」

穂乃果「うん、そうしよう!」

穂乃果「それじゃあ、初めは誰から……」

ザワザワ

タタタタ

穂乃果「? どうしたんだろ?」

凛「きっと侵入者でも来ーー」



ドゴォォォォォォォオオンンン!!!

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:37:52.96 ID:djfyiK2I0
凛「な、何が起きたにゃ!?」

花陽「一階の方から聞こえて……」

穂乃果「行くよっ!」ダッ

凛「穂乃果ちゃん!?」

タタタタ

穂乃果「さっきの音……もしも道具を使わずに起こされた物だとしたら……」

花陽「≪能力者≫がいるかもしれないってことですか?」

穂乃果「うん。だから、急がないと皆が危ない!」

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/02(日) 01:39:57.35 ID:djfyiK2I0
ダンッ

穂乃果「っ……」

一階への階段を降りきると、ぐったりと倒れた使用人の人々が目に飛び込んで来た。
外傷はあるものの、誰も死んではいないように見える。でも気を失っているのか誰もピクリとも動かない。

凛「あいつが……やったのかにゃ」

その言葉に誘われるようにふと顔をあげると、自然と口から驚きの声が漏れた。

穂乃果「え……?」

群青の髪に、蜂蜜色の瞳。
その姿は、過去の思い出の少女の面影を残していて。

穂乃果「そんな……」

知っている。私は、彼女の名前を知っている。
だって、彼女は……

穂乃果「海未、ちゃん……」

大切な、幼馴染なんだから。

92: 第3話:決意を握りしめて 2014/11/09(日) 00:50:37.60 ID:ETfRB5p70
海未「……穂乃果?」

穂乃果「そうだよ……久しぶりだね、海未ちゃん」

海未「何故、貴女がここに?」

穂乃果「それはこっちの台詞だよ……なんでこんなこと……」

海未「…………」

海未「その服……」

海未「そうですか……騎士になったのですね、穂乃果」

穂乃果「……うん」

93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:51:10.89 ID:ETfRB5p70
穂乃果「……海未ちゃんは、宝玉を奪いにきたの?」

海未「だったら、どうしますか」

穂乃果「やめようよ、こんなこと」

穂乃果「おじさんもおばさんも、ずっと海未ちゃんのこと心配してるよ」

穂乃果「だから、一緒に帰ろう」

穂乃果「こんなことしたって……意味ないんだよ?」

海未「……意味なら、ありますよ」

穂乃果「え……?」

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:51:53.52 ID:ETfRB5p70
海未「……これ以上話すことはありません」

海未「痛い思いをしたくなければ、道を開けてください」

穂乃果「……宝玉を揃えたら、邪神が復活するかもしれないんだよ」

海未「全て承知の上です」

穂乃果「……そっか」

穂乃果「それなら、海未ちゃんをこのままにしておくわけにはいかない」

穂乃果「皆を守るために……海未ちゃんをここで捕まえる」

穂乃果「騎士として!」

95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:53:24.10 ID:ETfRB5p70
地面を強く蹴り、海未の方へと駆け出す。

穂乃果(邪神の復活なんて絶対にさせない!)

ぐんぐんと距離が縮まるが、海未は自然体のまま動こうとはせず、冷たい瞳でこちらを見ているだけだ。

その立ち振る舞いに少しずつ疑念が生じる。

穂乃果(罠……? ううん、海未ちゃんはそんなことしない)

記憶の中の少女は卑怯なことを嫌い、正々堂々を信条としていた。
そんな彼女が、最初から罠を使うわけがない。

穂乃果(それなら……思いっきり殴って、目を覚まさせる!)

大きく振りかぶった拳を海未へと放つ。
それは無防備な海未の体へと深々と食い込む━━━━ことはなかった。

96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:54:09.34 ID:ETfRB5p70
穂乃果「え……?」

目の前から海未の姿が一瞬の内に消え、拳が空を切る。

海未「遅い」

足元に強い衝撃を受け、態勢が崩れる。足払いを受けたと気づいた時には、穂乃果の体は宙を舞っていた。

凛「穂乃果ちゃん!」

はっとなった凛が穂乃果を助けようと駆け出す。
凛には今の出来事は海未が消え、穂乃果の近くに出現したように見えた。

ここから一つの推測が生まれる。

凛(おそらく……能力は瞬間移動)

凛(それなら、能力が発動する前に叩けばいい!)

97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:55:04.67 ID:ETfRB5p70
床を蹴る足に力を込める。海未が反応できない速さで攻撃すれば、能力で躱すこともできないはず。

だが、すぐにその推測が間違っていることを知る。

凛「っ……あっ……」

振り上げようとした足の動きが止まる。カウンターの要領で突き出された拳に鳩尾を捉えられ、激しい痛みが胸を抉る。

海未「言ったでしょう、遅い、と」

胸ぐらを掴まれ、思いっきり花陽の方へと投げられる。

花陽「凛ちゃ……きゃっ!?」

急な展開に思考が追いつかず、弾丸のように迫る凛にぶつかり、二人一緒に床を転がる。

98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:55:52.49 ID:ETfRB5p70
海未「空中では、何もできないでしょう」

もどかしい浮遊感の中で、穂乃果は目の前の出来事に唇を噛む。

早く地面に付いて。あの二人を助けないと。

海未「他人よりも、自分の心配をした方がいいですよ」

穂乃果「っ!?」

振り下ろされる手刀。咄嗟に防御の姿勢を取ろうとするが、気を取られていたせいで僅かに遅れてしまう。

穂乃果「あぐっっっ!?」

それは腹へと減り込み、そのまま穂乃果の体は床へと叩きつけられる。
そこを中心に、床には蜘蛛の巣状にヒビが入った。

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:56:43.26 ID:ETfRB5p70
海未「貴女たちは、能力者との戦いに慣れていない」

激しい痛みに意識が飛びそうになるのを堪えながら、海未へと視線を向ける。

海未「一般人相手なら、単調な攻撃や能力で簡単に勝つことができます」

海未「しかし、能力者との戦いはそうはいきません」

海未「その決定的な違いは、貴女たちがダメージを受けることです」

穂乃果「……っ」

海未「痛みを忘れ、安穏とした世界で生きていた貴女たちが」

海未「覚悟を持たずにのこのこと遊び半分で戦場に立つ貴女たちが」

海未「私に勝てる道理など、ありません」

海未「解ったら、もう二度と私の邪魔をしないでくださ━━」

にこ「『目暗まし』!」

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:57:44.62 ID:ETfRB5p70
深い闇に呑まれたように目の前が真っ暗になる。

館の灯りも、月の光も閉ざされたその空間では、周りにあるものが霞んで見えることさえない。

にこ「少しの間おとなしくしてなさい」

ぐっと持ち上げられる感触。
そのままゆっくりとにこの肩に担がれる格好になる。

どうやらにこにはこの暗闇の中でも目が見えているようで、足音を消したまま素早く廊下を移動していく。

にこ「動けるんなら自分の足で走って欲しいけど……仕方ないわね」

凛ちゃんと花陽ちゃんのことだろうか。
どうやら二人のこともちゃんと連れて行ってくれるらしい。

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:58:25.60 ID:ETfRB5p70
サァァァァ

穂乃果「あれ、目が見える……?」

にこ「効果の範囲から出たのよ」

穂乃果「……助けてくれてありがとう、にこちゃん」

にこ「お礼は本当に助かってからにしなさい」

にこ「まだ、何も終わってないわよ」

穂乃果「うん……これからどうするの?」

にこ「宝玉の置いてある部屋まで撤退」

にこ「そして……あいつを閉じ込める」

穂乃果「どうやって?」

にこ「宝玉がある部屋の前には、あのお嬢様が作った特殊な部屋があるの」

にこ「あそこなら、能力者でも出られない」

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 00:58:58.78 ID:ETfRB5p70
スススス

真姫「遅いわよ」

真姫「全く、こんな所にご主人様を連れてきて放置するなんて躾が必要なようね」

にこ「お仕置きがしたいなら後で受けてあげるわ」

にこ「でも、今はあいつをなんとかしないといけない」

にこ「あいつ……嫌な感じがする」

真姫「……ふん、まあいいわ」

真姫「ちょうど敵も罠にかかったようだしね」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:00:01.65 ID:ETfRB5p70
海未「面白い能力を持っていますね」スタスタ

海未「ですが、それで私は倒せませんよ」

にこ「倒すつもりなんて最初からないわよ」

にこ「それと、あんたの負けよ」

バタン

海未『……? 扉を塞いて、閉じ込めたつもりですか?』

真姫「そうよ、あんたは閉じ込められたの」

真姫「本当はこの真姫様が直々に手を下してもよかったんだけどね」

真姫「ま、能力者でもそこからは出られないからおとなしくしてなさい」

真姫「私の家に侵入した罰として、後でたっぷり可愛がってあげるわ」

海未『…………』

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:00:34.09 ID:ETfRB5p70
穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん、大丈夫?」

凛「うん……なんとか」

花陽「だ、大丈夫……です」ガタガタ

真姫「何が大丈夫なのよ、震えてるじゃない」

花陽「こ、これは……違っ……」

穂乃果「花陽ちゃん、大丈夫、落ち着いて」

花陽「穂乃果……ちゃん」

穂乃果「解ってるから……今はちょっと混乱してるだけ」

花陽「…………っぁ」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:01:19.45 ID:ETfRB5p70
穂乃果「……それで、この後どうするの?」

にこ「使用人に助けを呼ぶように言ってあるから、明日までにはきっと手練れの騎士が来てくれるはず」

真姫「それまでずっとこの部屋にいろって言うの? 冗談じゃないわ」

にこ「出口がないんだから我慢しなさい」

にこ「食糧と飲み物は一応用意しておいたから」

真姫「……はぁ、最悪ね」

真姫「それもこれも全部こいつのせいだわ」

真姫「ちょっと! 黙ってないで命乞いでもしたらどうなの?」

真姫「自分の立場解ってるんでしょ!?」

ガンガン

106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:01:59.08 ID:ETfRB5p70
にこ「なにしてんのよ!」

真姫「暇つぶしよ」

にこ「だからって挑発━━」

海未『貴女たちは、能力者というものを何も理解していないのですね』

真姫「……喧嘩売ってんの?」

海未『事実を言っているだけですよ』

海未『だって、もしも理解しているのなら』

海未『この程度で閉じ込めたなどと、思えるわけがありませんから』

にこ「っ!? 危ない!」グイッ

真姫「きゃっ!?」

ドゴオオオオオオオオオオン!!

107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:02:34.84 ID:ETfRB5p70
コツンコツン

海未「もう少し硬いかと思いましたが、案外脆いものですね」

にこ「そんな……」

真姫「……上等じゃない」グッ

にこ「駄目よ……戦っても勝てない」

にこ「隙をついて逃げないと……」

真姫「巫山戯たことを言わないで」

真姫「私が逃げるなんて、あり得ないわ」

ザッ

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:03:40.13 ID:ETfRB5p70
海未「痛い目にあいたくなければ、おとなしくしておいてください」

海未「それとも、命乞いでもしますか?」

真姫「っ! 舐めてんじゃないわよ! 《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

真姫の周りを覆うように氷の槍が多数出現し、海未を目掛けて高速で飛んでいく。

その光景を見つめながら真姫は笑みを浮かべる。
当然だ、この攻撃を躱しきるなんて不可能なんだから。

一般人にとっては。

真姫「なっ……!?」

だが、海未にはそれが可能だった。
まるで舞踊のように静かに、最小限の動きでその全てを避けている。

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:05:13.95 ID:ETfRB5p70
海未「何も考えずに飛ばしているだけでは、いつまでたっても当たりませんよ」

海未「そして……貴女は無防備すぎます」

真姫「何を━━」

グチュッ

耳触りな肉を抉る音と共に、左肩に鋭い痛みが走る。

真姫「っぁぁぁぁぁぁぎぃぃぃぃぃぃっぐぐぐぐぅぅっっ!?!!?!」

真姫の肩に刺さるのは一本の矢。
そして、海未の手にはいつの間にだしたのか、弓が握られている。
大量に飛んでくる氷の槍を避けながら、正確に真姫の肩を撃ち抜いたのだ。

真姫「いっあっあああああやっいっ……」

痛みでその場にうずくまる真姫。それは戦闘では致命的な行為。
だが、そんなこともわからないほど真姫は混乱していた。

110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:06:18.15 ID:ETfRB5p70
幼い頃に能力に目覚め、資産家の両親に甘やかして育てられた真姫は、体に痛みを感じることなどなかった。

転んでも痛くない。
誰かにぶつかっても、痛がるのは相手。
苛々を物にぶつけても、壊れるのは物。

そう、真姫にとってそれは初めて感じる痛みと言ってもいい。
ゆえに、真姫の心は初めて死の恐怖を感じることになる。

海未「さて……どうしてあげましょうか」

真姫「ひっ!?」

ゆっくりと近づいた海未は、右手に握った矢を真姫へと突きつける。

真姫「嫌……嫌っ……」

今までの気丈な振る舞いは影を潜め、壊れたオルゴールのように同じ言葉を繰り返す。

恐怖に染められた心は簡単には元に戻らない。
彼女はもう、戦えないだろう。

111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:07:07.26 ID:ETfRB5p70
凛「真姫ちゃんから離れろ!」

海未の気を真姫からそらさなくてはならない。
そう思った凛が海未へと駆け出そうとした時、既に海未の弓は凛へと狙いを定めていた。

凛「っ!? 『ばりあー!』」

咄嗟に手を前に翳して防御を試みる。

凛「ぎっっぃ!?」

しかし、空気の壁に阻まれるはずの矢は、貫通して凛の膝へと突き刺さった。

花陽「凛ちゃん!」

花陽「しっかりして、凛ちゃん!」

急いで凛の所に駆けつけ、止血をしようとする花陽。
先程までの震えは消え、凛を助けようと必死な様子が伺える。

112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:07:50.70 ID:ETfRB5p70
海未「貴女は、何もしないんですか?」

にこ「……戦って、勝てる相手じゃないからね」

海未「いい判断です。それでは、宝玉は頂いて━━」

穂乃果「させない」

穂乃果「宝玉は、絶対に渡さない」

海未「……力の差は思い知ったでしょう?」

海未「貴女では、私には勝てない」

海未「それなのに……何故そうまでして私の邪魔をしようとするのですか?」

穂乃果「海未ちゃんのしてることは、絶対に間違ってる」

穂乃果「皆が不幸になって、悲しむだけ」

穂乃果「だから……私が絶対に止めないといけない!」

113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:09:07.31 ID:ETfRB5p70
海未「……そうですか」

海未「それなら、止めてみてください」

穂乃果「っ……はあっ!」

穂乃果「えん! けん! ヒートストライク!!!」

ごうっと穂乃果の右腕が炎を纏う。

チャンスはここしかない。海未が本気を出せば、すぐに穂乃果は倒されてしまうだろう。

それなら、海未が仕掛けるまえに、全ての力を拳に込めて━━━━放つ!

海未「……貴女は、学習しませんね」

穂乃果「えっ……がっ……!」

穂乃果のお腹にめり込む拳。
穂乃果の攻撃は、またしても空を切るだけであった。

穂乃果「ぐうっ……げっ……」

込み上げてる吐き気。
胃が逆流しているような感覚に頭がくらくらとしてくる。

海未「宝玉は頂いていきますよ」

スッ

114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:09:58.01 ID:ETfRB5p70
コツコツコツ

穂乃果「待って……海未ちゃん」

海未「…………」

穂乃果「海未ちゃんがこんなことしてるのは、あの事件のせいなの?」

海未「……違いますよ」

海未「私は、自分の欲望ためにしているだけです」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「……それと一つ忠告しておきますが、二度と私の邪魔をしないでください」

海未「ちゃんとした能力の使い方もわからず、身体能力に頼った戦い方では、私に勝つことなどできません」

海未「次は……容赦しませんよ」

スタスタスタ

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:10:38.02 ID:ETfRB5p70
にこ「行ったようね……」

にこ「全く……雇われて初日からこれとか冗談じゃないわよ」

真姫「あ……あ……」

にこ「……あんた達は客間で休んでなさい」

にこ「にこはこの子の手当てをしないといけないから、案内はなしだけど」

にこ「それと、後処理もこっちでやっておくから」

穂乃果「…………」

にこ「……あんた達は十分戦った」

にこ「相手が悪かっただけよ、気に病む必要はないわ」

スタスタスタ

116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:11:12.41 ID:ETfRB5p70
凛「これが、戦い……なんだね」グッ

花陽「凛ちゃん、まだ立ったら駄目だよ!」

凛「かよちんが手当てしてくれたからもう大丈夫だよ」

凛「ごめんね、心配かけて」

花陽「……凛ちゃんは悪くないよ」

花陽「だって勇敢に戦ってたんだもん」

花陽「私は……怖くて震えていることしかできなかったのに」

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:11:55.12 ID:ETfRB5p70
凛「しょうがないよ……凛だって怖かったから」

凛「皆、あんな恐怖と戦いながら頑張ってだんだね」

凛「それが……当たり前のはずなのに」

花陽「凛ちゃん……」

凛「でも、一番辛いのは……」

穂乃果「…………」

凛「穂乃果ちゃん……」

穂乃果「…………」

凛「あの子、友達だったんだよね?」

凛「とっても悲しいと思うけど、元気出して欲しいな」

穂乃果「…………」

凛「穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「よし、決めた!!」

凛「え?」

花陽「な、何をですか?」

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:12:30.72 ID:ETfRB5p70
穂乃果「私、絶対に海未ちゃんを止めてみせる!」

穂乃果「今のままじゃ駄目だけど、修行して、皆を守れるくらい強くなる!」

花陽「穂乃果ちゃん……」

花陽「…………」グッ

花陽「私も……私もやります!」

穂乃果「え?」

花陽「皆が傷ついてる時に私だけ何もできないなんて嫌なんです!」

花陽「だから……私も一緒に戦います!」

花陽「戦わせてください!」

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:13:11.93 ID:ETfRB5p70
穂乃果「花陽ちゃん……」

凛「凛もやるよ」

花陽「……いいの?」

凛「かよちんがやるんだもん、それなら凛もやらないわけにはいかないにゃー」

凛「大丈夫、かよちんは凛が守るから」

花陽「わ、私だって……凛ちゃんを守るもん」

穂乃果「二人とも……ありがとう」

穂乃果「一緒に頑張ろうね」


ーーー
ーー

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:13:50.92 ID:ETfRB5p70
ーーーー次の日

穂乃果「それじゃあ王都に帰ろうか」

穂乃果「怒られちゃうかな?」

花陽「うーん……でも、行かないわけにはいかないよね」

凛「全部穂乃果ちゃんのせいにするにゃ」

穂乃果「なんでそうなるの!?」

凛「よく怒られてそうだから」

花陽「り、凛ちゃん」アワアワ

穂乃果「そんなことないよ!」

穂乃果「というか、凛ちゃんもう足は大丈夫なの?」

凛「うん、もう結構治ってるにゃ」

スタスタ

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:14:33.61 ID:ETfRB5p70
「待ちなさい!」

穂乃果「え?」

真姫「私に断りも無く帰ろうとするなんていい度胸してるじゃない」

穂乃果「ごめんね、真姫ちゃん。でも、昨日のこともあったし……」

真姫「ふん、あのくらいなんともないわよ」

真姫「そんなことより、私も貴女たちについていくから」

真姫「にこちゃんもね」

にこ「えっ」

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:15:08.09 ID:ETfRB5p70
穂乃果「……これは、遊びじゃないんだよ?」

穂乃果「痛いことも、辛いことも、いっぱいあると思うよ?」

穂乃果「それでも……いいの?」

にこ「い、いや、にこは……」

真姫「当然よ、覚悟はとっくにできてるわ」

真姫「そんなことよりも……私の家を襲ってくれた奴らにお礼をしなくちゃいけない」

真姫「私に喧嘩を売ったこと、絶対に後悔させてあげる」

穂乃果「解った。これからよろしくね、真姫ちゃん、にこちゃん」

真姫「ええ、よろしくね」

にこ「えー……」

123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:15:46.25 ID:ETfRB5p70
真姫「そうだ……凛、だっけ?」

凛「何?」

真姫「……えっと、その」

凛「???」

真姫「昨日は……庇おうとしてくれて……あ……あ……」

真姫「あ、あり……ありが……と……」ボソッ

凛「!!」

真姫「……っ」カアッ

凛「ふふ、どういたしましてにゃー」ギュー

真姫「うぇっ!? は、離しなさい!」

124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:16:22.71 ID:ETfRB5p70
花陽「なんだか賑やかになりそうだね」

穂乃果「うん……でも、そっちの方が楽しいよね」

花陽「はい!」

にこ「全く……なんでにこまで」

花陽「これからよろしくお願いします」

にこ「…………はぁ」

にこ「解ったわよ、あんた達危なっかしいからね」

にこ「にこが直々に鍛えてあげるわ」

にこ「いい、これからにこのことは師匠って呼びなさい!」

花陽「えっ……」

にこ「なんで困惑してるのよ!?」

穂乃果「あははははは!」

125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/09(日) 01:17:02.58 ID:ETfRB5p70
穂乃果(確かに……私はまだ何も解っていないのかもしれない)

穂乃果(宝玉を守って邪神の復活を阻止するなんて、凄く途方もない話だと思う)

穂乃果(でも、皆と一緒ならできる気がする)

穂乃果(ううん、絶対にしなくちゃいけないんだ)

穂乃果(それが……私の騎士としての役目)

穂乃果(そして、私の気持ち)

穂乃果「絶対に……止めてみせるから」

穂乃果「待っててね……海未ちゃん」

129: 第4話:フォーチュンテラー 2014/11/16(日) 00:59:52.69 ID:kSdXoKTa0
~~~~~~~~~~~~~

ほのか「わーい!」タタタタ

うみ「あんまり走るとあぶないですよ、ほのか!」

???「まあまあ、げんきなのはいいことだよ」

うみ「もう、おうじょさまはいつもほのかに甘すぎます」

???「むぅ……おうじょさまじゃなくて、なまえでよんでって言ってるでしょ」

うみ「で、ですが……それはきまりですので」

???「つーん、もううみちゃんなんか知りません」

???「ほのかちゃん、いこっ」

タタタタ

130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:00:36.31 ID:kSdXoKTa0
うみ「あ、まってください!」

ほのか「よーし、あっちまできょうそうだー!」

???「うん!」

うみ「そんなにいそいでころんだらどうするんですか!」

うみ「ああもう!」

うみ「まってください! ほのか!」

うみ「ことり!」

~~~~~~~~~~~~~

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:01:39.77 ID:kSdXoKTa0
パチッ

海未「…………」

海未「随分と、懐かしい夢を見てしまいましたね」

海未「……穂乃果」

海未「まさか、貴女が騎士になっているとは」

海未「本当に……何が起きるのかはわからないものですね」

海未「もし何もなければ、一緒に……」

海未「……いえ、余計なことは考えてはいけません」

海未「もう少しで……全て叶うのですから」

132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:02:13.66 ID:kSdXoKTa0
コンコン

ガチャ

英玲奈「失礼するぞ」

海未「……何のようですか?」

英玲奈「先日の宝玉の件で聞きたいことがあってな」

海未「宝玉ならきちんと受け渡しをしたと思いますが」

英玲奈「ああ、それについては感謝する」

英玲奈「お前はきちんと仕事をこなしてくれた」

海未「それでは、他に何の用があるというのですか?」

英玲奈「お前と戦った奴らについてだ」

133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:02:53.55 ID:kSdXoKTa0
海未「…………別に、変わったことなどありませんよ」

英玲奈「そうか? 相手は能力者だったんだろ?」

海未「ええ」

英玲奈「どうして奴らを見逃した?」

海未「…………」

英玲奈「生かしておけば、またこちらの妨害をするかもしれない」

海未「力の使い方も、何もわかっていない素人達ですよ」

海未「脅威にはなりません」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:03:21.87 ID:kSdXoKTa0
英玲奈「…………」

海未「…………」

英玲奈「……そういうことにしておこう」

英玲奈「次の指令が入るまで、ゆっくり休んでおくといい」

ガチャ

英玲奈「!」

あんじゅ「あらぁ、 お邪魔だったかしら?」

英玲奈「いいや、今話が済んだところだ」

あんじゅ「そう? それならよかった」

135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:04:00.02 ID:kSdXoKTa0
英玲奈「あんじゅ、次の任務はお前にも出てもらうからな」

あんじゅ「前に言ってた所?」

英玲奈「いや、それは他の奴が向かうらしい。また別だ」

あんじゅ「ふーん、別にいいけど、どこいくの?」

英玲奈「今調べさせているが、手がかりを掴んだという報告が入った」

英玲奈「後数日でわかるはずだ」

あんじゅ「りょうかーい」

英玲奈「お前には期待している。頑張れよ」

あんじゅ「はーい」

英玲奈「邪魔したな失礼する」

ガチャ

スタスタスタ

136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:04:27.80 ID:kSdXoKTa0
海未「貴女は何の用ですか」

あんじゅ「暇だからお話をしにきたのよ」

海未「私に話すことはありません。帰ってください」

あんじゅ「つれないわねぇ」

海未「…………」

あんじゅ「ふふ、じゃあまた来るわ」

あんじゅ「さよなら~」

海未「…………」

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:05:09.79 ID:kSdXoKTa0
ーーーー謁見の間

理事長「そうですか、そんなことが……」

穂乃果「……申し訳ありません」

理事長「いえ、謝ることはありません」

理事長「相手が相手です……仕方ないことですよ」

理事長「それよりも、無事に帰ってきてくれてありがとうございました」

理事長「それに、新しい仲間も増えたようですね」

真姫「…………」

にこ「ど、どうも……」

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:05:57.54 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「女王様、次の宝玉の場所に向かってもよろしいでしょうか?」

穂乃果「本当は修行してもっと強くなりたいんですけど、次の宝玉の情報が……」

理事長「……そうですね、こんな所で悠長に話している暇はありませんよね」

理事長「ですが、その前に少し≪能力≫についての話を聞いていきませんか?」

穂乃果「≪能力≫について、ですか?」

理事長「はい。貴女達のこれからの戦いにも、少し役に立つかもしれません」

穂乃果「……わかりました、お願いします」

理事長「それでは……入ってもらえますか?」

スタスタスタ

真姫ママ「こんにちは♪」

真姫「ママ!?」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:06:27.93 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「えっ?」

真姫「な、なんでママがここに……」

真姫ママ「研究者として王都で働いてたんだけど……言ってたなかったけ?」

真姫「き、聞いてないわよ!」

真姫ママ「じゃあ今言ったってことで、ね?」

理事長「……こほん、本題に入ってもらってもいいでしょうか?」

真姫ママ「はーい」

真姫ママ「それじゃあ簡単にだけど説明するわよ」

140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:06:55.41 ID:kSdXoKTa0
真姫ママ「まず、話は聞かせてもらったんだけど、貴女達の戦い方は単調なのよね」

真姫ママ「騎士学校で格闘術とかも教えてるはずだけど……使わないの?」

穂乃果「うっ」

凛「げっ」

花陽「あはは……」

真姫ママ「……まあ、能力者だと組手の相手も見つからないし、実戦練習でも一撃で相手が倒れるからあんまり身につかなかったんでしょうね」

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:07:24.91 ID:kSdXoKTa0
真姫ママ「能力者用の特別講師がいればいいんだけど」

理事長「……そこまで人手が足りないのです」

理事長「強力な能力者は重要な所に警備についてもらっているし」

真姫ママ「ま、それは仕方ないか」

真姫ママ「でも、能力者の指導はちょっと考え直した方がいいと思うわよ」

真姫ママ「対能力では、通常の武術でも凄い役に立つんだから」

理事長「わかりました」

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:08:02.91 ID:kSdXoKTa0
真姫ママ「あとねぇ、技がおかしい!」

真姫ママ「凛ちゃんだっけ? 『ばりあー』ってなんなの?」

凛「防御に使うものですけど……」

真姫ママ「いや、避ければいいじゃない」

真姫ママ「いちいち防ぐ必要はないのよ?」

凛「あっ……」

真姫ママ「花陽ちゃんも、もっといろんな植物出せるんじゃない?」

花陽「え、でも……無理かなと……」

真姫ママ「無理じゃないわ。強烈な植物貸してあげるから、思う存分堪能しなさい」

真姫ママ「能力者なんだし死なないでしょ、多分」

花陽「え、ぇぇぇ……」

143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:08:34.41 ID:kSdXoKTa0
真姫ママ「他の三人も、自分にどんなものが必要なのかを考えなさい」

真姫ママ「貴女たちには才能がある。だから、自分で可能性を狭めないように」

「「「「「はい!!」」」」」

真姫ママ「それじゃあ、そろそろいくわね」

穂乃果「ありがとうございました!」

真姫ママ「また何かあったら質問しにきてねー」

スタスタスタ

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:09:23.20 ID:kSdXoKTa0
理事長「……わかりましたか?」

穂乃果「なんとなくわかりました!」

理事長「そうですか……それでは、次の任務も頑張ってください」

穂乃果「はい!」

穂乃果「それでは、行って参ります」

理事長「気をつけてくださいね」


ーーー
ーー

145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:09:57.84 ID:kSdXoKTa0
ーーーーリヒトの町

ワイワイ ガヤガヤ

凛「なんだか賑やかな町だね」

穂乃果「明日は年に一回のお祭りがあるらしいから、それの影響だと思うよ」

凛「そうなの? それじゃあ早速!」

穂乃果「屋台に向けてレッツゴー!」

にこ「するわけないでしょ!」

にこ「なんのために急いでここに来たのかわかってんの!?」

146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:10:35.18 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「えー……でも、せっかく来たんだし……」

にこ「駄目よ! さっさと目的地に行って、話をつけないと!」

穂乃果「ぅぅ……美味しそうな匂いがするのに……」

真姫「そんなことより、花陽は大丈夫なの?」

花陽「えっ?」

真姫「さっきからもらって来た花の匂いずっと嗅いでるけど」

凛「『食べちゃっても大丈夫だからね♪』なんて渡してたけど、本当に大丈夫なのかにゃー?」

花陽「た、多分大丈夫……かな」

花陽「私も、戦えるように頑張らないと」

147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:11:29.78 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「よーし、早く任務を終わらせて、皆で修行しよう!」

にこ「最初からそう言ってるでしょ!」

真姫「それで、場所はもう解ってるの?」

穂乃果「うん! えーと……大きい神社だって」

凛「きっとあれだにゃー!」ビシッ

穂乃果「それじゃあ出発ー!」

148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:12:05.24 ID:kSdXoKTa0
スタスタスタ

穂乃果「近くで見ると凄く大きいね」

凛「なんでこんなに大きく作るんだろうね?」

凛「階段も長がったし」

穂乃果「なんでだろ……運動が好きだから?」

真姫「そんなわけないでしょ……」

穂乃果「だよねぇ……あの、すいません!」

「はい、どないしました?」

穂乃果「神主さんに会いたいんですけど」

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:12:44.43 ID:kSdXoKTa0
「すいません、神主様は今準備で忙しくて」

穂乃果「いつ頃ならお会いできますか?」

「そうですね……今からですと、一週間後くらいになります」

穂乃果「そんなに待てません!」

「……参拝にこられた方々ですよね?」

「ご案内やお祓いでしたら、うちが代わりにさせて頂くこともできますが」

「っと、申し遅れましたが、うちは東條希と言います」

希「よろしゅうお願いします」

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:13:17.57 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「えっと、希さん、私たちはどうしても神主さんに会わないといけないんです」

希「うーん、そうは言われましても……」

真姫「ああもう焦れったいわね!」

真姫「私たちは王都から派遣された騎士よ!」

真姫「この神社で保管されてるものについて話があるの」

真姫「だからさっさと神主を呼んできなさい!」

希「……騎士」

希「解りました、少々お待ちください」

タタタタ

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:13:54.44 ID:kSdXoKTa0
凛「真姫ちゃんはこういう時は頼りになるね」

真姫「私はいつでも頼りになるわよ!」

穂乃果「うーん、希ちゃん、怒られてなければいいんだけど」

花陽「優しそうな人でしたしね」

にこ「いいのよ、それが仕事なんだから」

タタタタ

希「お待たせしました、お会いになられるそうです」

希「こちらへ起こしください」

スタスタスタ

152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:14:30.67 ID:kSdXoKTa0
ーーーー奉納の間

神主「貴女達が、王都から派遣された騎士の方々ですか」

神主「私は明日の準備に向けて忙しいのです、手短にお願いします」

穂乃果「明日の祭りを中止にしてください」

神主「……祭りを、中止に?」

穂乃果「はい」

穂乃果「ここの宝玉は、昔、邪神を倒した英雄の一人が封印したと聞いています」

穂乃果「しかし、明日の祭りでは宝玉を神に捧げるために、その封印を一時的に解除するんですよね?」

神主「はい。それが、代々伝わる祭りの伝統ですから」

神主「それを神に奉納することによって、この世界を平和にしてもらうのです」

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:15:03.38 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「その宝玉が、今狙われているんです」

穂乃果「封印の中から出したら、絶対に奪われます」

神主「……盗賊の話なら既に聞いています」

神主「ですが、そんな野蛮な人たちのために、この祭りを中止にすることはできません」

穂乃果「ですが!」

神主「それに、祭りの最中、宝玉は常に私が持っています」

神主「ですから、安心して祭りをお楽しみください」

穂乃果「……相手は、能力者なんですよ」

神主「…………」

154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:15:30.62 ID:kSdXoKTa0
神主「それでも、同じことです」

神主「私も神に能力を承りし者」

神主「異教の者に、遅れなどとりません」

穂乃果「でも!」

神主「お引き取りください」

神主「私が祭りを中止にすることは絶対にありません」

穂乃果「…………っ」

神主「それではさようなら、小さな騎士達さん」

155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:16:10.82 ID:kSdXoKTa0
スタスタスタ

穂乃果「…………」

真姫「呆れたわね……人の忠告を全く聞かないなんて」

にこ「あんたがそれ言う?」

真姫「? 何の話?」

凛「そんなんだからそんななんだよ」

真姫「何が言いたいのよッ!」

花陽「でも、どうしましょうか……このままにしておけませんよね」

穂乃果「……お祭りの間だけ、私たちも警備をしよう」

穂乃果「それで、無事にまた宝玉が封印されたら、一件落着ってことで」

にこ「ま、それしかなさそうね」


ーーー
ーー

156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:17:19.60 ID:kSdXoKTa0
ーーーー祭り当日

穂乃果「凛ちゃん! 次は向こうのお粥さん食べようよ!」

凛「こっちのお肉も美味しそうだにゃー」

花陽「ま、待ってよ凛ちゃん、穂乃果ちゃん!」

にこ「あいつら……警備に来てるって自覚あんの?」

真姫「…………」ウズウズ

にこ「……あんたも食べ歩きしたいの?」

真姫「うぇっ!? そんなわけないでしょ!」

真姫「だ、だいたいこんな庶民の食べ物なんて私にはごもっ」

157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:17:50.76 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「えへへ、真姫ちゃんにもおすそ分けだよ」

穂乃果「ソーセージ、美味しいでしょ?」

真姫「むぐっ……むぐっ……」

真姫「ぷはっ……いきなりなにすんのよ!」

穂乃果「真姫ちゃんももっと楽しもうよ!」

真姫「こ、子供じゃないんだから……」

にこ「……あんた達! なにしにきてるか解ってんの!?」

穂乃果「ふぉひふぉん!」モグモグ

にこ「食べながら話すんじゃないわよ!」

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:18:29.51 ID:kSdXoKTa0
にこ「少しは緊張感を持ちなさい!」

穂乃果「あはは……ごめんね、にこちゃん」

穂乃果「でも宝玉が出るまでは暇だし……」

にこ「そうだけど……それなら見回りとかすることはあるでしょ!」

希「おや、昨日の騎士さん達やん」

希「お祭り見学かな?」

穂乃果「そんなとこ! 希ちゃんはお仕事?」

希「うん、もう少しで奉納の儀も始まるからね」

希「多分びっくりすると思うから、楽しみにしといてな」

穂乃果「うん!」

スタスタスタ

穂乃果「それじゃあ、私たちも儀式が行われる所にいこうか」

にこ「はぁ……やっとね」

にこ「なんにも起きなきゃいいけど」

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:19:10.88 ID:kSdXoKTa0
ーーーー封印の間

ヒュォォォォォォ

神主「…………解除完了」

神主「それでは、少しの間宝玉をお借りいたします」スクッ

神主「そろそろ向かわねば、遅れてしまいますね」

希「その必要はないで」

神主「……貴女は」

希「宝玉はうちが借りるから、ここでゆっくりおねんねしててや」

神主「……そういうことですか」

神主「舐められたものですね、小娘一人で私を倒せるとでも?」

希「思うよ」

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:20:23.48 ID:kSdXoKTa0
神主「……それなら後悔しなさい、その傲慢を」

神主「『掛けまくも畏き英霊……禊祓へ禍事』!」

神主の口から紡がれたのは一説の祝詞。それと共に、光の中から英霊━━━━かつてこの地を護った英雄が武具を携えてその姿を現出させる。

希「へぇ……面白い能力やん」

希「けど、痛い目見る前に宝玉渡した方がええと思うで」

神主「減らず口を……あの世で後悔しなさい」

希「ふふ、せっかちやなぁ」

希「それじゃあ、お楽しみといこうか」ニヤッ

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:21:00.55 ID:kSdXoKTa0
ーーーー中庭

「少々お待ちください、もう少しで始まりますので……」

穂乃果「……どうしたんだろう、全然始まらないね」

凛「ご飯食べ過ぎて動けないとか?」

花陽「それはないと思うよ……」

真姫「……もしかして、何かあった?」

にこ「……かもしれないわね」

にこ「ちょっと、あんた!」

「は、はい!」

にこ「神主は今何処にいるの?」

「えっと、おそらく封印の間に……」

にこ「聞いたわね? 行くわよ!」

穂乃果「うん!」

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:21:36.35 ID:kSdXoKTa0
タタタタ

にこ「あれが封印の間ね」

にこ「皆、気を引き締めなさいよ!」

バァン!

穂乃果「っ!? 神主さん!」

扉を開くと、そこには床に横たわる神主と、笑みを浮かべながら宝玉を手にする巫女の姿があった。

希「ちょっと遅かったね、宝玉はうちが頂いたよ」

穂乃果「希ちゃん……まさか、貴女が」

希「ふふ、そんな怖い顔せんといてな」

希「ちょっと借りるだけやから、ね」

163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:22:17.27 ID:kSdXoKTa0
凛「それは返さない人の台詞だにゃー」グッ

穂乃果「おとなしく捕まる気はありませんか?」

希「これっぽちもないね」

穂乃果「それなら……力ずくでも捕まえます!」

希「やれるもんならやってみや!」

希「《STRENGTH》!」

164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:23:04.21 ID:kSdXoKTa0
穂乃果が地面を蹴るのと同時に、希が能力を発動させる。

待ち構える姿勢の希に、穂乃果は足を緩めない。

待ち構えたいるなら、意表をつけばいいのだから。

穂乃果「爆発!」

どぉん、と穂乃果の足で小さな爆発が起こり、穂乃果の踏み込みが瞬発的に加速する。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

予期していない早さに驚く希の胸に、重い一撃を叩き込む。

165: >>164訂正 2014/11/16(日) 01:24:20.60 ID:kSdXoKTa0
穂乃果が地面を蹴るのと同時に、希が能力を発動させる。

待ち構える姿勢の希に、穂乃果は足を緩めない。

待ち構えているなら、意表をつけばいいのだから。

穂乃果「爆発!」

どぉん、と穂乃果の足で小さな爆発が起こり、穂乃果の踏み込みが瞬発的に加速する。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

予期していない早さに驚く希の胸に、重い一撃を叩き込む。

166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:25:01.62 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「…………え?」

妙な感触。まるで硬い地面を殴ったような、そんな感触が拳を伝う。

手応えはある、だが拳がいつもよりも前に進まない。

希「ふぅ……いきなり驚かされたわ。もろにくらっとったら危なかったかもな」

目の前にいる希はおどけた口調のまま、友達にでも語りかけるように口を開く。

その姿に、全員が唖然となる。

希「それじゃあ……今度はこっちのばんやな!」

にこ「穂乃果! 逃げなさい!!」

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:25:32.76 ID:kSdXoKTa0
ごしゃっ。

咄嗟に手を交差させて希の拳を受けるが、踏ん張りきれずに吹き飛ばされ床を転がる。

咄嗟に立ち上がろうとしても、腕に激痛が走り上手く立ち上がることができない。

希「おお、今のでまだ生きとるんやね」

希「おもいっきり殴ったつもりだけど」

にこ「……近づくのは危険ね」

真姫「それなら、離れて攻撃すればいいだけ! 《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:26:06.67 ID:kSdXoKTa0
空中に現れる無数の氷の槍。

避けられるなら、避けられない量の槍を出せばいいとの考えからか、前回の時よりもその量を遥かに増している。

真姫「串刺しになりなさい」

希「お断りや! 《TEMPERANSE》!」

残り数メートルにまで迫った氷の槍がピタッと空中で静止する。

これ以上進むのは正しくないと言わんばかりの光景に、全員が動揺を隠せない。

希「串刺しになるんは、君らや」

花陽「《荊棘の城塞》(ソーン・プロテクション)!」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:26:52.28 ID:kSdXoKTa0
五人を包み込むように出現した茨の壁に、氷の槍が突き刺さる。

真姫が指示したわけではない、希の能力によるもの。

真姫「能力は……肉体強化じゃないの?」

最初の穂乃果との打ち込みで見せた凄まじい力。あれこそが希の能力だと思っていた。

だがその予想は外れ、花陽のおかげでピンチを免れた形になっている。

希「えらい硬いなぁ……それなら《THE MAGICIAN》!」

微かな茨の隙間から、希の前に光の粒子が集まるのがわかる。

堅固な盾が煩わしいなら、それを一撃で壊せる剣があればいい。

にこ「っ!? 全員、避けなさい!」

希「てーーーーっ!」

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:27:51.31 ID:kSdXoKTa0
ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんん!!

放たれたエネルギーはビームとなって茨姫を貫き、後ろの壁をことごとく貫通する。

辛うじて交わすことができたが、その威力は凄まじいもので、もしも当たっていたら消し炭になっていただろう。

にこ「穂乃果、大丈夫?」

穂乃果「うん……ありがとう、にこちゃん」

最初の攻防から回復しきれていない穂乃果はにこに助けられる形となり、不甲斐なさを感じてしまう。

希「あー……やっぱり外れてしまうかー」

希「やっぱり動かない物じゃないと駄目やね」

希「それなら、これはどうかな?」

にこ「! 皆! 何か来るわよ!」

希「《THE HANGED MAN》!」

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:28:30.49 ID:kSdXoKTa0
真姫「あがっ!?」

花陽「ぐっ!」

突如として首元に現れた縄が、真姫と花陽の首を締め上げる。

必死で解こうとするが、絡みついた縄はびくともしない。

凛「かよちん!? 真姫ちゃん!?」

真姫「あっ……かっ……」

花陽「う……ぎっ……」

段々と締め付けがきつくなる縄。

必死に酸素を取り込もうともがくが、思考が少しずつ麻痺していく。

希「無駄や無駄。その縄は切れはせんよ」

凛「そんな━━━━」

にこ「凛、行くわよ!」

凛「!」

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:29:07.28 ID:kSdXoKTa0
にこの合図で二人同時に地面を蹴る。

凛にはにこが何を考えているのかわからない。

だが、花陽と真姫を助けるには、にこの言葉に従うのがいいと直感が告げている。

希「へぇ……苦しんでる仲間を見捨てて攻撃しにくる……か」

にこ「ふん、動揺させようったって無駄よ」

にこ「あんたの能力には一つ欠点がある」

希「……ほぅ?」

にこ「それは……技を一つずつしか使うことができない所!」

にこ「『目暗まし』!」

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:29:50.47 ID:kSdXoKTa0
希のいる地点を中心に暗闇が広がる。

光を閉ざされたこの空間では、希も周りを見ることができない。

凛「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

凛「『凛ちゃんキーック!』」

希「はっ! 目が見えんくても、どこにいるかはわかっぐっ!?」

強い衝撃を受けて後方へと吹き飛ばされる。

確かに避けたはずの攻撃、だが、現に希はそれに当たったのだ。

希「……今の、蹴りの感触やなかったけど、なにしたん?」

凛「かよちんを離せ!」

起き上がり際に放たれた拳を左手で受け止め、返しの足払いで凛の体勢を崩す。

その凛の背後から現れたのはにこ。

片手片足を攻防に使った隙を狙っての追撃。

視界が無いこともあり、完全に反応が遅れてしまう。

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:30:28.27 ID:kSdXoKTa0
希「でも、まだまだや!」

意表を突いたとはいえ、にこはまだ戦闘になれていない。

それゆえに、希にはにこの動きが気配だけでもよく解っていた。

右手を振り上げる動作、狙いは顔。

女の子の顔を狙うなんて酷いなぁ、なんて思いながらも、余裕の笑みは崩さない。

だが、それが一瞬の油断となる。

穂乃果「はぁっ!」

希「なっ!?」

背後からの予期せぬ攻撃に、前のめりになってしまう。

待ち構えるのは、にこ。

体を逸らすこともできず、にこの拳が顔面へと突き刺さった。

175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:30:58.93 ID:kSdXoKTa0
にこ「っし!」

確かな感触。にこの拳は希へとクリーンヒットした。

後は三人でこのまま追い打ちをかければこちらの勝ちだ。

希「《THE CHARIOT》」

にこ「っ!?」

何かが現れるような重い衝撃をうけ、後方へと弾き飛ばされる。

穂乃果と凛も同様に飛ばされたらしく、床を転がるもすぐに体勢を整えた。

にこ「なによ……あれ」

『目暗まし』が解除され、大量の砂埃と共に大きな馬が二匹、その巨体を示す。

176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:31:33.31 ID:kSdXoKTa0
希「いやぁ、びっくりしたわ」

希「穂乃果ちゃん、立てるようになっとったんやなぁ」

希「どうやって暗闇の中でうちの居場所を把握したん?」

穂乃果「……秘密だよ」

穂乃果「それより、どうして私の名前を知ってるの?」

希「秘密やん」

穂乃果「…………」

希「まあまあそんな怖い顔せんといて」

希「あの二人も無事に助かったみたいやしな」

穂乃果「!」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:32:16.21 ID:kSdXoKTa0
真姫「かはっ……はぁ……はぁ……」

花陽「けほっ……ひぃ……ふぅ……」

穂乃果「良かった……」

希「ふふ、良かったなぁ」

希「それじゃあ、楽しかったけどうちはそろそろお暇させてもらうで」

穂乃果「! させない!」

希「いやいや、これに轢かれるとただじゃすまんからやめとき」

希「それじゃ、また会おうね」

ゴゴゴゴゴコゴゴゴ

凄い地ならしの音と共に、戦車は流星のように空へと駆けていった。

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:32:55.16 ID:kSdXoKTa0
凛「かよちん、大丈夫!?」

花陽「うん……ありがとう、凛ちゃん」

真姫「あいつ……覚えてなさいよ……ごほっ」

穂乃果「…………」

穂乃果「……逃げられちゃった、かぁ」

にこ「違うわ、見逃してくれたのよ」

穂乃果「え?」

にこ「戦ってる最中もずっと手加減をしていた」

にこ「多分、本気で戦ってたら、今頃皆殺しよ」

穂乃果「そう……なの?」

にこ「そうよ」

179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:33:21.43 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「……もっと、強くならないと駄目だね」

にこ「そうね。だから、王都に戻ったら修行するわよ」

にこ「今のところ、他に宝玉の場所が解ってる所はないんでしょ?」

穂乃果「うん」

にこ「ならいい機会だわ」

にこ「この次も、相手が見逃してくれるとは限らないからね」

穂乃果「……そう、だね」

180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:33:55.28 ID:kSdXoKTa0
穂乃果「! そうだ! 神主さん!」

穂乃果「……よかった、生きてるみたい」

にこ「さっさと病院に運ぶとしましょう」

にこ「さっきの戦いで外も騒がしくなってきたし、大変そうだけど」

真姫「ちょっと、さっきから私を無視してんじゃないわよ!」

にこ「いや、なんだかんだで平気でしょ、真姫ちゃんは」

真姫「心配くらいしなさいよ!」

にこ「はぁ……わがままなんだから」


ーーー
ーー

181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:34:24.16 ID:kSdXoKTa0
ーーーーとある小屋

希「ただいま~」

「おかえりなさい、希」

「首尾はどう?」

希「無事に宝玉はゲットできたで」コトン

「そう……ありがとう」

「怪我はしてない?」

希「全然しとらんよ」

希「神主さんもあんまり強くなかったしなぁ」

182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/16(日) 01:35:09.96 ID:kSdXoKTa0
希「あー……ただなぁ」

「どうしたの?」

希「前に報告があった騎士達おったやん?」

「ええ」

希「その子らもおったんやけど、なかなかやりおるで」

希「遊んでたとはいえ、二発ももらうとは思わへんかったからなぁ」

希「もしかすると……後々面白いことになるかもしれんよ」

希「えりち」

絵里「…………」

188: 第5話:大切な友達 2014/11/23(日) 01:06:50.85 ID:LAIWt0YR0
理事長「そうですか……リヒトの町の宝玉も奪われてしまいましたか」

穂乃果「申し訳ありません……」

理事長「貴女のせいではありません」

理事長「能力者用の訓練をきちんと考えなかった私の責任です」

理事長「そのせいで辛い思いをさせて……申し訳ありません」

穂乃果「そ、そんなこと……」

理事長「……そこで、私から提案があります」

穂乃果「提案……ですか?」

理事長「はい。武術を習ってみませんか?」

189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:07:30.98 ID:LAIWt0YR0
凛「教えられる人がいるんですか?」

理事長「ええ……能力者ではないんだけれどね」

理事長「でも、基礎と戦い方を覚えていれば、それが役に立つと西木野さんのお母さんも言っていたし」

穂乃果「解りました、お願いします」

理事長「……悩みもしませんか」

穂乃果「私たちは、もっと強くならなきゃいけないんです」

穂乃果「それで、何処に行けばいいんですか?」

理事長「高坂さんがよく知っている所ですよ」

穂乃果「……まさか」

190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:07:58.19 ID:LAIWt0YR0
ーーーー園田家

海未父「…………」

穂乃果「…………」

真姫「(まさか修行するのが敵の道場だなんて)」

凛「(女王様は何を考えてるのかにゃー)」

花陽「(えっと、お父さんとお母さんは良い人なんじゃ……ないのかな?)」

にこ「(多分そうでしょ)」

191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:08:49.15 ID:LAIWt0YR0
穂乃果「本日は、特訓に付き合って頂くことになりありがとうございます」

海未父「……海未に、会ったそうだな」

穂乃果「!」

海未父「あいつは今、何をしているんだ?」

穂乃果「……解りません。でも、自分のしたいことのためと」

海未父「……そうか」

海未父「娘が、苦労をかけたな」

穂乃果「…………」

海未父「それにしても、あのおてんば娘が騎士になったのか」

海未父「言うのが遅くなったな、おめでとう」

穂乃果「ありがとうございます」

192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:09:24.05 ID:LAIWt0YR0
海未父「海未が何を考えているかは、よくわからん」

海未父「そして、そこは俺の立ち入れる話ではない」

海未父「だから、俺はお前たちに託すことにする」

凛「(話がよく見えないにゃ)」

にこ「(私たちが頑張れってことよ)」

海未父「……聞こえているぞ」

りんにこ「「!!」」

海未父「全く……面白い仲間を持ったな」

穂乃果「えへへ……自慢の仲間です」

193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:09:58.29 ID:LAIWt0YR0
海未父「それじゃあ、早速訓練を始めるぞ」

海未父「期間はあまり長くはとれないと聞いている」

海未父「だから、基本的な戦い方をメインにやるぞ」

海未父「穂乃果と……さっき話が見えないとか言った君はこっちへ来なさい」

海未父「残りの三人は……あの人についていきなさい」

真姫「あの人……?」

海未母「どうも、皆さんこんにちは」

海未母「本日から皆さんの指導をさせてもらうことになりました、よろしくお願いします」

穂乃果「!」

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:10:31.06 ID:LAIWt0YR0
海未母「それでは、三人ともこちらへ」

スタスタスタ

凛「優しそうな人だったね」

穂乃果「…………」タラタラ

凛「あれ、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「三人とも生きて返ってきますように」ナムナム

凛「え、ど、どういうこと!?」

海未父「……さて、こちらも始めるか」

凛「質問に答えて欲しいにゃ!!」

195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:10:59.18 ID:LAIWt0YR0
ーーーー中庭

海未父「まずは基本的なサンドバックの打ち込みからしてもらう」

穂乃果「あの」

海未父「大丈夫だ、能力者の訓練のために女王様からもらったものだ」

凛 バンバン

凛「本当だ、全然壊れないよ」

海未父「今から俺がいいと言うまで打ち込みだ」

海未父「始め!」

196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:11:38.42 ID:LAIWt0YR0
バンバン バンババン

海未父「ただ殴るだけではない、思いっきり力を込めろ!」

海未父「たまにフットワークを混ぜて実戦でも足を動かせるように!」

ほのりん「「はい!!」」

バンバン

穂乃果「はっ! ふっ!」

海未父「そうじゃないッ!」

海未父「稲妻を喰らい、雷を握り潰すように打つべしッ!」

穂乃果「言ってること全然わかりませんッ!」

穂乃果「でも、やってみます!」

197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:12:21.12 ID:LAIWt0YR0
ーーーー園田母side

園田母「貴女たちは武器を使うと聞きましたので、私が担当させていただきます」

園田母「共に頑張りましょう」

花陽(優しそうな人で良かったぁ)

園田母「それでは、修行に使う道具を用意しましたので、お持ちください」

真姫「……剣なら自分のがあるんだけど、仕方ないか」ヒョイ

真姫「ん? ちょっと重い?」

にこ「へぇ、面白いわね」

園田母「……それは常人では到底持ち上げることなど叶わぬ物」

園田母「貴女たちはまずその武器を持って素振りをしてもらいます」

園田母「寝ずに」

花陽「え?」

198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:12:56.54 ID:LAIWt0YR0
ヒュッ ヒュッ

花陽「はぁ……はぁ……」

園田母「息が切れてますよ! まだ6時間しかしていません!」

園田母「気合を出しなさい!」

花陽「はい!」

ヒュッ

真姫「っ……冗談じゃ……ないわよ!」

真姫「身体中に、重りを付けて素振りなんて!」ゼェゼェ

園田母「私語してる暇があったらもっと速くやりなさい!」

真姫「は、はい!」

199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:13:31.09 ID:LAIWt0YR0
スッ スッ

にこ「ふっ!」

園田母「良い調子です」

にこ「ありがとうございます!」

園田母「ご褒美に重りを追加しましょう」

にこ「」

園田母「ほら! もっと速く!」

園田母「そんな速さじゃ武器を振る前に首が飛びますよ!」

園田母「全員声をあげなさい!」

ぱなまきにこ「「「はい!!!」」」

200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:14:07.46 ID:LAIWt0YR0
ーーーー園田父side

タッタッタッ

凛「とばっちりで、こっちも重りを付けさせられたにゃ……」ハァハァ

穂乃果「はぁっ、はぁっ……」

穂乃果「でも、こっちはまだ優しいほうだよ」

凛「……寝る時も素振りの音が響いてきてたからね」

穂乃果「でも、それだけ皆頑張ってるってことだよ!」

穂乃果「私たちも頑張ろう!」

凛「うん!」

201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:14:38.67 ID:LAIWt0YR0
園田父「よし、次は組手を行う」

園田父「能力の使用は自由だ、大怪我をしない程度にやってくれ」

園田父「たまに指示を出すから、その通りにやること」

園田父「それでは始め!」

ほのりん「「はい!!」

ヒュッ シュッ

園田父「違う! 攻撃を大きく躱すな!」

園田父「最小限の動きで回避して反撃しろ!」

凛「はい!」

202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:15:13.93 ID:LAIWt0YR0
園田父「隙もないのに大振りの技を使うな!」

園田父「それが自分の隙であることを理解しろ!」

穂乃果「はい!!」

グッ ビシッ

園田父「拳だけじゃない、足元にも注意しろ!」

園田父「隙があったらすかさず突け! 見逃すな!」

ほのりん「「はい!!」」

ゴッ ガッ

園田父「…………」

園田父(凄まじい上達速度の速さ……これが才能か)

園田父(末恐ろしいな)

203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:15:48.76 ID:LAIWt0YR0
ーーーー園田母side

園田母「そんな大振りな能力が当たるわけないでしょう!」

園田母「隙を攻撃するか、相手の動きを予測しなさい!」

真姫「は、はい!」

園田母「集中力を切らさない!」

園田母「素振りしながらでも能力を自由に使えないようでは、実戦で戦いながら能力なんて使えませんよ!」

花陽「は、はい!」

園田母「もう一個ボールを追加します。落とさないように触手同志で打ち返し続けるんですよ!」

花陽「はい!」

204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:16:23.04 ID:LAIWt0YR0
園田母「踏み込みが甘い!」

園田母「それでは反撃をもらって返り討ちにあうだけです!」

園田母「もっと気配を消し、相手に自分の行動を悟られないようにするんです!」

にこ「はぁっ……はぁっ……はい!」

園田母「摺り足はもっと速く!」

園田母「相手が気づいた時には目の前から消えているぐらいの速度です!」

にこ「ひっ、は、はい!」

園田母「休みがあると思わない!」

園田母「時間が足りないんです! ぶっ倒れてでも続けなさい!」

ぱなまきにこ「「「はい!!!」」」

205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:17:19.01 ID:LAIWt0YR0
ーーーー合同

バシン バシン
ヒュッ ヒュッ

凛「はぁ……はぁ……」

穂乃果「っ……あっ!」

にこ「ふっ……!」

園田父「全体を把握しろ! 避けきれないなら能力を使え!」

にこ「っ……なんの拷問よこれ」

にこ「花陽の触手に囲まれてドッチボール避けながら真姫の攻撃も避けなさいって……」

園田母「私語をしない! 集中しなさい!」

にこ「っ……はい!」

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:17:53.15 ID:LAIWt0YR0
ヒュゥゥゥ ゴスッ

凛「がっ!?」

花陽「凛ちゃん!?」

花陽「ご、ごめ━━」

園田母「続けなさい」

花陽「で、でも!」

園田母「敵は倒れても待ってくれません」

園田母「ここで貴女が手を抜けば、実戦で彼女の死ぬ確率があがるのですよ」

花陽「……っ」

207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:18:34.59 ID:LAIWt0YR0
凛「かよちん……」

花陽「あっ……」

凛「凛は、大丈夫だから……続けて」

花陽「っ……」

ヒュッ

凛「はあっ!」

グッ ガクッ

凛「しまっーー」

穂乃果「やあぁぁぁぁぁっ!」

パリン!

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:19:29.40 ID:LAIWt0YR0
凛「穂乃果ちゃん!?」

穂乃果「にこちゃん、そっちお願い!」

にこ「……この数捌き来れる自身はないわよ」

穂乃果「凛ちゃん、立てる?」

凛「う、うん」

凛「でも、こんなことしたら……」チラッ

園田母「…………」

凛「……あれ?」

園田母「惚けている場合ではありません」

園田母「立てるのなら、自分の足で回避しなさい!」

園田母「いつでも助けてもらえるとは思わないこと!」

凛「はい!」


ーーー
ーー

209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:19:59.36 ID:LAIWt0YR0
凛「ふぅ……今日も疲れたにゃ」

花陽「凛ちゃん……ごめんね」

凛「もう、かよちんは気にしすぎだよ」

凛「全然平気だから気にしないで」

花陽「で、でも……」

凛「そんなに謝ってばっかりいると、ぎゅってしちゃうよ」ギュー

花陽「り、凛ちゃん!?」

凛「えへへ、かよちんはあったかいにゃー」

花陽「……もう」

210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:20:34.97 ID:LAIWt0YR0
真姫「それにしても……本当にきついわね」

真姫「こんなに疲れたのは初めてよ」

穂乃果「あはは……海未ちゃんのお母さん、厳しいからね」

にこ「厳しいってレベルじゃないわよ……殺す気でしょ」

穂乃果「そんなことないよ……多分」

凛「凛はもうくたくただにゃー」

凛「でも、なんだか前より強くなってる気がするよ!」

にこ「ま、確かにそうね」

ドンドンドン!

穂乃果「? なんだろ?」

211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:21:07.95 ID:LAIWt0YR0
ガラッ

「夜分遅くに申し訳ありません」

海未父「何事だ?」

「宝玉の場所が判明しました」

「盗賊団も動き出したようで、至急騎士の皆さんにご報告を」

花陽「来ましたか……」

真姫「……短い休暇だったわね」

凛「せっかく休めると思ったのに……」

にこ「はぁ……馬車の中で休憩するしかないわね」

穂乃果「皆、行くよ!」

212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:21:33.26 ID:LAIWt0YR0
海未父「短い間だがよく頑張った」

海未父「いいか、時間がある時は修練を怠るな」

穂乃果「はい!」

海未父「……お前らには素質がある」

海未父「自分で自分の限界を決めるな」

海未父「必ず生きて帰って来い」

皆「「「「「はい!!!」」」」」


ーーー
ーー

213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:21:59.36 ID:LAIWt0YR0
ーーーーグルントの遺跡

穂乃果「ここに宝玉が……?」

にこ「らしいわね」

にこ「さっき聞いたとおり、この洞窟には罠がたくさんあるらしいわ」

にこ「仕掛けたのはかつて世界を救った内の一人……となれば……」

真姫「対能力者用の罠もあるってことね」

にこ「ええ、おそらくわね」

214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:22:46.77 ID:LAIWt0YR0
にこ「あんた達はこういうところに慣れてないだろうから、私が先頭を行くわ」

にこ「勝手に罠にはまられたら困るからね」スタスタスタ

ガコン

にこ「あっ」

かぶりを振って歩き出したにこの足が、床に少しだけ沈む。

何かを踏み抜いた感触。

しまったと思った時には、足場が跡形もなく消え去っていた。

穂乃果「え?」

真姫「は?」

にこ「しまっ」

ほのまきにこ「「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

ひゅぅぅぅぅぅぅどぉぉぉぉぉぉぉんんん!!!

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:23:55.28 ID:LAIWt0YR0
凛「落とし穴!?」

三人が落ちて行った大穴へと駆け寄ると、そこには真っ暗な空間が広がっていた。

ただ落ちただけなら問題ないが、これが能力者用の罠なら何が起こるかわからない。

真姫『ちょっとにこちゃん!? 何が「勝手に罠にはまられたら困る」よ!』

にこ『だ、誰にでもミスはあるわよ!』

穂乃果『びっくりした……凛ちゃん、花陽ちゃん、そっちは平気?』

花陽「こっちは大丈夫です。穂乃果ちゃん達はどうですか?」

穂乃果『三人とも平気だよ!』

216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:25:06.90 ID:LAIWt0YR0
凛「良かった、それならすぐに合流━━」

しよう、と言いかけた時、崩れたはずの床が一瞬の内に元通りとなった。

これは落とし穴なんかではない、侵入者を閉じ込める、もしくは分担するための罠だ。

凛「すぐに助けないと!」

だが、本来ならすぐに壊れるはずの床を殴りつけてみてもびくともしない。

そこでようやく、対能力者用という意味を理解した。

凛「……どうしよう」

花陽「…………」

先程までの喧騒は無く、重い静寂が辺りを支配する。

いつも指示を出してくれたリーダーがおらず、今自分達が何をすべきか、何をすればいいのかがわからない。

217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:25:37.57 ID:LAIWt0YR0
花陽「……進もう、凛ちゃん」

凛「え?」

花陽「穂乃果ちゃん達は……きっと大丈夫」

花陽「あの三人なら、絶対に脱出できるはず」

花陽「だから、私と凛ちゃんで、宝玉を守らないと」

凛「かよちん……」

花陽「多分……穂乃果ちゃんなら、そう言うと思うから」

凛「……そう、だね」

凛「先に進もう」

スタスタスタ

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:26:19.01 ID:LAIWt0YR0
薄暗く灯された松明を道標に先へと進んで行く。

冷んやりとした空気、不気味な静寂。

響き渡るのは自分たちの足音のみ。

だが、その静寂は別の足音によって破られることになる。

カツン カツン

凛「……何か来たにゃ」

花陽「…………」ゴクッ

ごおっ、と炎を上げた松明。

そこに映し出されたのは、肉と皮が無くなった髑髏。

肉を失い、動くはずのないそれが、今、目の前で武器を━━

凛「はぁぁぁぁぁぁっ!」

219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:26:53.57 ID:LAIWt0YR0
鋭い突きで胸元を貫くと、がしゃん、と音を立ててその場に崩れ落ちる。

数はざっと30体。全員武器に剣や槍を携えている。背後からの敵は無し。

その情報を瞬時に読み取り、骸骨の軍団の中を駆け抜けて行く。

すれ違いざまに腕を振るい、首を跳ね飛ばし、床に白骨をぶちまける。

凛の速度は飛躍的に上昇しており、骸骨達は反応できない。

武器を構えた時には、既に首が宙を待っているのだから。

凛「ふっ!」

ざっ、と地面を踏みしめ凛がその足を止めた時、床は真っ白に染め上げられていた。

220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:27:19.42 ID:LAIWt0YR0
花陽「凛ちゃん凄い!」

凛「このくらい楽勝だよ!」

凛「かよちんは大丈夫だった?」

花陽「うん、凛ちゃんが皆倒してくれたから」

凛「良かった……それじゃあ先に行こっか」

凛「また出てくると困るしね」

花陽「うん!」

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:28:04.30 ID:LAIWt0YR0
少し駆け足に、薄暗い廊下を進んで行く。

たまに骸骨が現れるが、数は多くて5人程度。

最初に会ったのが最大級の軍団のようだ。

敵の察知、攻撃へと移る速度は圧倒的に凛の方が早く、出会い頭に骸骨を叩き潰してしまうため、二人は難なく先へと進むことができた。

凛「ん……? 何の音だろう?」

花陽「……水の音、かな」

足を進めるにつれて、川のせせらぎとは程遠い轟音が耳に響いてくる。

凛「この扉の向こうから……だね」

花陽「うん……開けるよ」

ぎぃぃ、と大きな音をたてて扉を開くと、そこには大きな湖が広がっていた。

222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:28:34.53 ID:LAIWt0YR0
凛「大きな湖だね」

花陽「うん……あ、凛ちゃん、あそこに看板があるよ」

凛「本当だ……えーと、『汝、宝玉を求めるならば己が覚悟を示せ。袂を分かたれし国に進む意思あり』……」

凛「かよちんかよちん、何言ってるのか全くわかんないよ!」

花陽「えーと……多分だけど、あそこの湖の真ん中にある小さな島に、向こう側の扉を開く鍵があるんだよ」

凛「そうなんだ、流石かよちん!」

凛「でもさ、それならどうしてこんな難しい文章を書くの?」

花陽「なんでだろう……」

223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:29:08.05 ID:LAIWt0YR0
凛「まあいいや、それじゃあちょっと泳いで取ってくるにゃ」

花陽「待って! 湖をよく見て!」

凛「え?」

湖に視線を向けると、そこにはぷかぷかと白い骨が浮いていた。

噛み砕かれたかのように粉々になっているものや、綺麗に肉がないものと沢山の骨がそこには存在した。

花陽「泳ごうとすると、湖の中の何かに食べられちゃうんだよ」

凛「どうしよう、これじゃあ先に進めないよ」

花陽「……ううん、任せて」

花陽「《蔦葛の伴奏》(クリープ・メロディ)!」

床から這い出した触手がうねうねと絡み合い、離れ小島へと大きな橋を作る。

224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:29:53.69 ID:LAIWt0YR0
花陽「これで、多分大丈夫」

凛「凄いよかよちん!」

花陽「えへへ、私も役に立ててよかった」

凛「よーし、それじゃあ頂いちゃおう」

スタスタスタ

凛「あった! これだよ!」スッ

花陽「じゃあ、向こう側に渡ろうか」

再び花陽の能力で、今度は先へと進む扉の方に橋を架ける。

少し歪んだその橋を渡っていると、静かだった湖の水面に波がでてきたことに気づく。

凛「っ! かよちん! 何か来る!」

花陽「え?」

225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:30:25.98 ID:LAIWt0YR0
ざばぁぁぁん、と大きな音を立てて、湖から巨大な魚が凛と花陽を目掛けて飛びかかってくる。

まるで鮫をそのまま巨大化させたようなその魚は、二人を丸呑みにしようと大きな口を開き、鋭い牙を覗かせている。

周りは湖。逃げ場はない。

水の中に入れば、たちまち魚の餌食となるだろう。

花陽「っ! 《蔦葛の伴奏》(クリープ・メロディ)!」

だが、その魚の飛翔は空中で動きを変えることになる。

巨大な触手が鞭のようにその魚へと振られ、ずずん、と大きな音をたてて陸地へとダイブすることとなった。

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:30:55.43 ID:LAIWt0YR0
花陽「びっくりしちゃった……」

凛「流石はかよちんだにゃ!」

凛「でも、よくすぐに反応できたね」

花陽「えへへ、多分修行のおかげだよ」

花陽「どんな時でも自分への攻撃に敏感になれって、いろいろ練習させられたから……」

凛「……大変だったね」

花陽「……うん」

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:31:55.27 ID:LAIWt0YR0
花陽「あのね、凛ちゃん」

凛「どうしたの?」

花陽「一緒にいてくれてありがとう」

凛「え?」

花陽「凛ちゃんがいてくれなかったら、多分途中で諦めてたと思うの」

花陽「私たちが邪神の復活を止めるなんて途方もない話だし、修行は大変で逃げ出したいこともあった」

花陽「今だって、もし凛ちゃんがいなかったら、私はどうしていいかわからずに、一人で震えてたと思うの」

花陽「でも、凛ちゃんと一緒だから、こうやって冷静でいられるの」

花陽「だから、ありがとう」

228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:32:42.74 ID:LAIWt0YR0
凛「……急に言われると、ちょっと照れちゃうよ」

花陽「ごめんね……でも、伝えたくなっちゃったから」

凛「そっか……それじゃあ、凛もありがとう」ギュッ

花陽「わわっ!?」

凛「かよちんが頑張ってるのは、凛が一番知ってるにゃ」

凛「だから、もっと自信を持っていいんだよ」

花陽「凛ちゃん……」

凛「それじゃあ、先を急ごう」

凛「早く宝玉を取って、皆を助けないと」

花陽「うん!」

タタタタ

229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:33:16.79 ID:LAIWt0YR0
ガチャン

コツンコツン

凛「凄く大きな空間……」

花陽「もしかすると、この奥にあるのかも」

凛「そうだね……ん?」

花陽「どうしたの?」

凛「……誰かいる」

花陽「え?」

凛「……奇襲をかけよう」

凛「多分、敵だよ」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:34:01.93 ID:LAIWt0YR0
あんじゅ「これが宝玉ね」

棺に中を覗き込むあんじゅ。

苦労して辿り着いて、目当ての物を発見し、心の中でほっと一安心をする。

あんじゅ「っ!」

だが、それでも油断することはない。

背後から迫る気配に気付き、振り返ると、目の前には自分へと迫る拳があった。

あんじゅ「くっ!」

放たれた右の拳を、左手のひら押し出すように逸らす。

続け様に伸ばされれ左足。おそらく防御しても間に合わないだろう。

それを見てあんじゅは━━━━

あんじゅ「降参しまーす」

呆気なく白旗を上げた。

231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:34:32.16 ID:LAIWt0YR0
凛「え?」

目の前で両手を上に上げておどけるような仕草をする敵に、戸惑いが隠せない。

もしかすると演技しているのかもしれない、と警戒心を強める。

あんじゅ「だから降参よ、お願いだから攻撃しないで」

凛「……宝玉を取りにきたんじゃないの?」

あんじゅ「んー、そうなんだけど、貴女たちが来たのならいいわ」

凛「……どういうことだにゃ」

あんじゅ「貴女たちに宝玉はあげるって言ってるの」

232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:35:03.21 ID:LAIWt0YR0
あんじゅ「はい、これよ」ヒュッ

花陽「わわっ!?」パシッ

あんじゅ「ナイスキャッチ!」

凛「……何が目的なの?」

あんじゅ「貴女たちに宝玉を持ち帰ってもらうことかしら」

凛「…………」

あんじゅ「そう警戒しないでよ、私は貴女たちの味方よ」

あんじゅ「この場所が分かったのだって、私が教えたからなんだから」

凛「え?」

233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:35:52.99 ID:LAIWt0YR0
あんじゅ「自己紹介がまだだったわね」

あんじゅ「音ノ木坂王国騎士団近衛兵所属、優木あんじゅ」

あんじゅ「潜入任務で盗賊団の仲間の振りをしてるの」

凛「本当に……?」

あんじゅ「本当よ。だから、宝玉はそのまま持ち帰ってもらっていいわ」

凛「…………」

あんじゅ「疑り深いわねぇ、追ったりしないから、先に帰っていいわよ」

凛「……行くよ、かよちん」

花陽「うん……あの、ありがとうございます」

花陽「気をつけてくださいね」

あんじゅ「ふふ、貴女たちもね」

スタスタスタ

234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:36:30.01 ID:LAIWt0YR0
花陽「不思議な人だったね」

凛「うん……」

花陽「多分悪い人じゃないと思うよ」

凛「凛も……そう思うけど」

花陽「もしいい人だったら、今度謝ろう」

凛「そうだね……」

タタタタ

穂乃果「おーい! 花陽ちゃん、凛ちゃん!」

凛「穂乃果ちゃん!」

花陽「良かった……無事だったんですね」

凛「どうやって脱出したの?」

235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:37:03.33 ID:LAIWt0YR0
真姫「あそこ、通路があったのよ」

真姫「そこを進んで行ったら、入り口に戻れたのよ」

にこ「矢が降ってきたり、骸骨が襲いかかってきたり、散々だったわ」

真姫「元はと言えばにこちゃんのせいでしょ」

にこ「ぅ……」

穂乃果「二人は大丈夫だった?」

凛「うん! 宝玉もこの通り」

花陽「なんとか取れました」

穂乃果「凄いよ二人とも!」

凛「えへへ」

花陽「ふふっ」

236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/23(日) 01:37:37.12 ID:LAIWt0YR0
穂乃果「よーし、それじゃあ帰ろうか」

凛「戻ったら美味しいものが食べたいな」

花陽「ご飯を食べましょう!」

にこ「あんたらねぇ……帰ったら修行の続きよ!」

真姫「そうね、にこちゃんはもう一度たっぷり絞ってもらったほうがいいわね」

穂乃果「あはは、確かにそうかも」

にこ「ぐっ……」

にこ「ああもう悪かったって言ってるでしょ!」

にこ「いつまでも根に持ってんじゃないわよ!」

245: 第6話:約束 2014/12/07(日) 00:53:38.33 ID:GStAiULi0
英玲奈「失敗した……か」

あんじゅ「頑張ったんだけどねぇ……まさか騎士の子達が来るとは思わなかったわ」

英玲奈「例の騎士達か。海未の言っていたことは外れだな」

英玲奈「だが……少し妙だ」

あんじゅ「? 何が?」

英玲奈「タイミングが良すぎるんだよ」

英玲奈「私たちと同じタイミングで向こうもあの遺跡を発見したとは考えにくい」

あんじゅ「何処からか情報が漏れたかもってこと?」

英玲奈「もしくは故意に漏らされた、だな」

246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:54:15.00 ID:GStAiULi0
英玲奈「どちらにしろ捨て置けない問題だ」

英玲奈「これに関しては調査をしなくてはならんな」

あんじゅ「そうよ、次もこんなことになったら迷惑なんだから、ちゃんとやってよね?」

英玲奈「解った。ご苦労だったな、自分の部屋で休んでいいぞ」

あんじゅ「はーい」

あんじゅ「じゃあまた何かあったら呼んでねー」

スタスタスタ

247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:55:03.98 ID:GStAiULi0
あんじゅ(危ない危ない、もうそこまで勘付いてるなんて)

あんじゅ(あんまり目をつけられることはしないようにしないとね)

あんじゅ(もしばれたら殺されちゃうかもだし)

あんじゅ(でも、情報集めるならちょっとの危険は付き物だもんねぇ)

あんじゅ(お肌に悪いわぁ)

あんじゅ(…………)

あんじゅ(けど、それでも私は任務を果たさなくちゃいけない)

あんじゅ(あの人の役に立つために)

248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:55:39.09 ID:GStAiULi0
~~~~~~~~~~~~~~

「気持ち悪いんだよ、この犯罪者!」

「さっさと死んじまえ!」

あんじゅ「痛っ、やめてっ……殴らないでっ」

「うるせぇ!」ゴスッ

あんじゅ「づぅ!?」バタッ

「お前の親のせいで……俺の父ちゃんも、母ちゃんも、皆殺されたんだよ!」

「責任とれよ!」

あんじゅ「っ……ごめんなさい、ごめんなさい」

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:56:27.06 ID:GStAiULi0
二年前、この町は殺人事件で騒然となった。

とある男性が、町中の人々を無差別に殺害したのだ。

その男には妻と子供がおり、家庭は順風満帆の幸せな日々だったという。

だが、ある日博打で失敗をして、大量の借金を背負い全てを失う。

自暴自棄になった男は妻を殺して、交通人を殺して、最後には自殺をしたのだ。

ありきたりな不幸。自業自得。

誰もこの男に同情することはないだろう。

それじゃあ、一人だけ残された子供はどうなるのだろうか?

250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:56:59.76 ID:GStAiULi0
園長「そろそろご飯ですよ、皆さん家の中に戻ってください」

「ご飯だってよ、そろそろいこうぜ」

「そうだな、行くか」

スタスタスタ

あんじゅ「ぅっ……ひっく……」

園長「……ざめざめと泣いて、相変わらず腹立たしい餓鬼ですね」

園長「全く、何で犯罪者なんかの面倒なんか見ないといけないんだか、吐き気がします」

あんじゅ「違う……私……は……」

園長「ああっ!? 口答えしてんじゃねーぞ糞餓鬼!?」ゴスッ

あんじゅ「うっ!?」

251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:57:34.77 ID:GStAiULi0
園長「いつまで地面に這いつくばってるんだ!?」

園長「飯の時間だっつってんだろ!」ドスッ

あんじゅ「あっ……ごめん……なさい……」

園長「解ったらさっさと立て!」

あんじゅ「は、はい……」ヨロッ

園長「ノロノロするな!」バキッ

あんじゅ「ぎっ!?」ドサッ

園長「ふん、そんなに地面が好きなら土でも食ってろ」

園長「お前にはお似合いだ」

スタスタスタ

252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:58:09.25 ID:GStAiULi0
あんじゅ「うっ……あっ……」ポロポロ

あの後、天涯孤独となった少女は孤児院へと引き取られた。

周りは皆が孤児、そして優しそうな園長先生。

ショックに落ち込んでいる少女の助けになると思われたその場所は、少女にとって地獄だった。

全員から犯罪者扱いされ、正義の名の下に白昼堂々と行われる暴行。

酷い時には腕を折られ、それでも虐めは止まらない。

そして、いい人だと思っていた園長先生も、周りの孤児達と同じ。

いや、それ以上に酷かった。

253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:58:47.89 ID:GStAiULi0
体が痣になるまで殴られ、機嫌が悪いとご飯を食べさせてもらえない。

口答えをすれば、すぐに暴行を加えられる。

酷い時では、全員のサンドバッグにされたり、寒空の中に放り出されたりもする。

過酷な環境。だが一人で生きる術を知らない少女は、ここから逃げ出すことはできなかった。

最初の内は抵抗をした。自分は悪くないと叫び続けた。

でも、そんな物に誰も耳を傾けない。

叫んでも、助けを求めても、何をしても意味がない。

少女には、味方がいないのだから。

だからだろう、だんだんと彼女の口から出るのは謝罪の言葉が多くなっていった。

254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 00:59:45.55 ID:GStAiULi0
園長「おい! 掃除は終わったのか!?」

あんじゅ「は、はい!」ビクッ

園長「ちっ、ビクビクしやがって、気持ち悪い奴だな」

あんじゅ「っ…………」

園長「ふん、まあいい、今日は買い物に行くぞ」

園長「たくさん買うから重くなるだろうなぁ」ニャァ

あんじゅ「!?」

園長「しっかり持てよ?」

園長「落としたりしたら、飯抜きだからなぁ?」


ーーー
ーー

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:00:21.93 ID:GStAiULi0
あんじゅ「はぁ……はぁ……」ヨロヨロ

園長「ふらふらしてんじゃねーぞ」

あんじゅ「ごめんなさい……」

「あら、園長先生じゃないですか」

園長「おや、これはどうも」

「毎日ご苦労様です……っこれが例の子供ですか。どうしてこんな犯罪者を引き取ったんです?」

園長「犯罪者の子供とはいえ、彼女は孤児です」

園長「困っている子供を助けるのが、私の使命ですから」

「まるで天使様のようですね、流石は園長先生です」

園長「褒められても何も出せませんよ」

256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:00:58.90 ID:GStAiULi0
園長「少し話が長くなりそうですから、君は何処かで休んでいてください」

園長「噴水とか、綺麗でいいと思いますよ」ニヤッ

あんじゅ「っ……」

噴水はこの町の中心に位置し、多くの人が待ち合わせの場所として使っている。

そんな所に自分が行ったらどうなるか、少女でも簡単に想像がつく。

あんじゅ「わかり……ました」

だが、少女には行くしかない。

反抗すれば、またひもじい思いをすると解っているから。

257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:01:40.52 ID:GStAiULi0
あんじゅ(怖い……)

あんじゅ(お願い……誰も気づかないで)キュゥ

「おい、あの餓鬼」

「なんだ、まだ生きてやがったのか」

あんじゅ(っ……)グイッ

あんじゅ「きゃっ!?」

「よくものこのことここに顔出せたな、ああ!?」バキッ

あんじゅ「いつっ!」バタッ

「二度とこの町に来れなくしてやるよ」ググッ

あんじゅ「あっ……く、くるしっ……」

258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:02:20.80 ID:GStAiULi0
「おい、待てよ」

「あ? なんだ?」

「犯罪者とはいえ……中々の上玉じゃねぇか?」

「はん、こんな子供が好きだなんていい趣味してんな。いいぜ、思う存分やってやれ」

「へへ、ありがとよ」ガバッ

あんじゅ「っ!? いや、な、何をするんですか!?」

「立派な女にしてやろうってんだよ」グイッ

259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:03:03.82 ID:GStAiULi0
あんじゅ「いやっ! いやっ!!」

あんじゅ「助けて!」

「誰も助けになんか来ねーよ」

「見てみろよ周りの奴らを」

あんじゅ「あっ…………」

「皆お前が酷い目に合うのを楽しみにしてるんだよ」

「解ったら、悲鳴あげながら犯されろ」グッ

あんじゅ「っ……あっ……」ポロポロ

あんじゅ(こんなの……もう……嫌……)

あんじゅ(誰か……助けて……)





「やめなさい!!!」

260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:03:44.73 ID:GStAiULi0
「あぁ? なんだお前は」

「この餓鬼を庇う気か!?」

理事長「自分達のストレスをぶつけるために、罪のない子供に暴行するなど言語道断です!」

理事長「誰一人としてこの状況をおかしいと思わないなんて、あなた達はそれでも大人ですか!?」

「くそ女が、調子にのってんじゃねーぞ!」

「お、おい、待て、あの顔……まさか!?」

理事長「この犯罪者達を捕まえなさい!」

ダダダダ

「じ、女王様!?」

「な、なんでここにっ……ぐあっ」

261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:04:14.72 ID:GStAiULi0
あんじゅ「あっ……あっ……」

理事長「大丈夫ですか?」

あんじゅ「ひっ!? ごめんなさい……ごめんなさい……」

理事長「謝らなくても大丈夫です。私は貴女の味方ですよ」

あんじゅ「え……? みか……た?」

理事長「はい。よければお名前を教えてもらえますか?」

あんじゅ「……優木、あんじゅ」

理事長「あんじゅちゃんね、いい名前だわ」

262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:05:11.61 ID:GStAiULi0
園長「すいません、その子が何かしましたか?」

あんじゅ ビクッ

理事長「……貴女は?」

園長「孤児院をやっているものです。その子も孤児の一人でして……」

理事長「……そうですか。それでは、今日からこの子は私が預かります」

園長「え?」

理事長「こんな細い体をして……さぞ美味しい食事をさせてもらっていたんでしょうね」

園長「っ……」

理事長「あなたも後程取り調べがあります。覚悟してくださいね」

理事長「さて、それじゃああんじゅちゃん、いきましょうか」ニコッ


ーーー
ーー

263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:05:47.71 ID:GStAiULi0
理事長「ほら、いっぱい食べていいんですよ?」

あんじゅ「で、でも……」

理事長「遠慮してはいけません」

あんじゅ「は、はい……」モグモグ

あんじゅ「美味しい……」

理事長「ふふ、それは良かった」

理事長「そうだ、あんじゅちゃんにプレゼントがあるの」

あんじゅ「え?」

理事長「はい、どうぞ」

あんじゅ「わぁ……!お人形さん!」

264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:06:14.85 ID:GStAiULi0
あんじゅ「もらって……いいの?」

理事長「ええ、もちろん」

あんじゅ「ありがとうございます」

理事長「ふふ、喜んでもらえたのなら良かったわ」

理事長「他にも、何か欲しい物があったら遠慮なく言ってね?」

あんじゅ「…………っ」

理事長「どうしたの?」

あんじゅ「助けてくれて……ありがとうございます」

265: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:06:49.33 ID:GStAiULi0
あんじゅ「私……本当に辛くて……」ポロポロ

あんじゅ「でも、誰も助けててくれる人、いなくて……」

あんじゅ「それにっ……こんなに優しくしてもらったのも……」

理事長「…………」ギュッ

あんじゅ「っ」

理事長「今まで……よく頑張ったわね」

理事長「これからは、私がずっと貴女の味方になってあげるから」

理事長「だから……もう、我慢しなくていいのよ」

あんじゅ「っ……うっ……」

あんじゅ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!」

266: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:07:26.12 ID:GStAiULi0
それ以来、あんじゅは宮殿の中で育てられることとなった。

もちろん、女王様は多忙なため、会うことのできる時間は少ない。

お目付役としてメイドが付き添い、完全な自由というわけでもない。

でも、皆が自分の話を聞いてくれて、自分に優しくしてくれる。

彼女にとって、そこはまさしく天国のような場所であった。

だが、一年も経つ頃、あることに気づく。

自分を助けてくれて、自分に笑顔を向けてくれる女王様の顔には、いつも曇りがあることに。

彼女は女王様の力になりたかった。

自分を助けてくれた恩を返したかった。

だから……

267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:08:00.42 ID:GStAiULi0
理事長「どうしても……なの?」

あんじゅ「はい! 騎士になって、女王様の力になりたいんです!」

理事長「……貴女はいてくれるだけで十分私の力になってくれています」

理事長「もう一度、考え直してくれませんか?」

あんじゅ「……このままずっと甘えているのは嫌なんです」

理事長「…………」

あんじゅ「お願いします!」

理事長「……解りました。ただ、危ないことはしないでくださいね」

あんじゅ「はい!!」

268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:08:26.30 ID:GStAiULi0
それから彼女は必死に頑張った。

勉強も訓練も、誰にも負けないくらい。

それでいて、誰からも疎まれず、好かれるように。

もちろん大変なことではあったが、過去に比べればこのくらいどうということはない。

全ては、助けてくれた女王様に音を返すため。

そして月日は流れ、彼女は騎士になった。

269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:09:24.05 ID:GStAiULi0
あんじゅ「お久しぶりです、女王様」

理事長「お久しぶりです。それと、おめでとうございます」

あんじゅ「ありがとうございます!」

理事長「まさか本当に騎士になってしまうなんて……驚きですよ」

理事長「噂も良く聞いていました」

理事長「捉えどころのないミステリアスで妖艶な雰囲気を持ってる……と」

あんじゅ「それは……えっと……」

理事長「ふふ、聞いた時は驚きましたが、今の姿を見て安心しました」

理事長「昔と変わっていないようですね」ナデナデ

あんじゅ「…………」カァッ

270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:10:04.29 ID:GStAiULi0
あんじゅ「も、もう私は子供ではありません!」

理事長「ごめんなさい、つい昔の癖で」

あんじゅ「……べ、別に構いませんけど」

あんじゅ「そうだ、今日はもう一つお知らせしたいことがあるんです」

理事長「? どうしたの?」

あんじゅ「私、能力に目覚めました」

理事長「!」

あんじゅ「これで、私は貴女の役に立てます」

あんじゅ「だから何でもお命じください」

あんじゅ「私は、何だってしてみせます」

~~~~~~~~~~~~~~

271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:10:41.26 ID:GStAiULi0
あんじゅ(今日の夜は出歩くな、広間には近づくな)

あんじゅ(怪しいなんてもんじゃない、絶対何かあるわね)

あんじゅ(それが次の宝玉の場所を示すものなのか、それともまた違う話なのか)

あんじゅ(どちらにしろ、逃す手はない)

あんじゅ(彼女たちを倒して、女王様の心労を早く取り除いてあげないと)

キィ

パタン

スタスタスタ

272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:11:39.13 ID:GStAiULi0
ーーーー広間


「それで、何故ここへ来たの?」

絵里「貴女の力を借りるためよ」

「へぇ……どういうこと?」

絵里「宝玉の場所が見つかったのよ」

「君ほどの力があれば、簡単に入手できるさ」

絵里「今回はそうでもないのよ」

絵里「邪神を封印した能力者の一人が、生涯を、自分の命を使って宝玉をある遺跡に封印したの」

絵里「入口の門は希の能力でも破壊できなかった」

絵里「おそらく、命を対価に門を封印したんだわ」

「だから私を頼ってきた……と。ふふ、面白い、いいよ」

273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:12:11.26 ID:GStAiULi0
絵里「海未、貴女にも来てもらうわよ」

海未「ええ、構いません」

海未「約束は覚えていますよね?」

絵里「もちろんよ。邪神が復活したら、貴女の願いは叶えてあげる」

海未「……ありがとうございます」

絵里「準備を整えたら出発しようと思う」

絵里「多分、宝玉の中で一番厳重に保管されたものだから、気をつけること」

絵里「詳細はまた話すわ」

274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:13:02.57 ID:GStAiULi0
あんじゅ「……場所までは言わないか」

あんじゅ「でも、彼女たちの話が本当なら、リーダーと海未がいなくなる」

あんじゅ「早く、お知らせしないと」

あんじゅ「もしかすると、ここにある宝玉を奪えるかもしれない」ザッ

あんじゅ「……!」

英玲奈「あんじゅ、こんなところで何をしている」

あんじゅ「えっと……ちょっと涼みたくなったから、散歩してるのよ」

英玲奈「話を聞いていたな? 全く、お前には期待していたというのに」

あんじゅ「……だったら、どうするの?」

英玲奈「裏切り者には死の制裁を」スッ

275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:13:39.43 ID:GStAiULi0
あんじゅ「やれるものならやってみなさい! 《不朽の従者》(イモータル・アーミー)!」

突如として現れる多種多様な人形達。

ある者は斧を持ち、ある者は弓を構え、ある者は継ぎ接ぎだらけの歪な姿。

それぞれに意思が宿ったように、ゆっくりと動き出す。

英玲奈「これがお前の能力か」

英玲奈「お人形遊びが好きなメルヘン少女ではなかったんだな」

あんじゅ「あら、そんなか弱い女の子のほうが好みだった?」

英玲奈「いいや、今のほうが断然いい女だよ」

276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:14:52.43 ID:GStAiULi0
あんじゅ「だったら見逃してくれない?」

あんじゅ「しつこい女は嫌われちゃうわよ」

英玲奈「それは困った……では、お前を始末したら身の振り方を考えることにしよう」

あんじゅ「……っ! 勝てると思ってるの?」

英玲奈「もちろんだ」

あんじゅ「そう……それなら」

あんじゅ「刀を抜く暇もなく死になさい!」

277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:15:37.13 ID:GStAiULi0
英玲奈の背後から忍び寄っていた人形が、剣を振り下ろす。

あんじゅが会話をしていたのは自分に注意を引くため。

その目論見は成功し、英玲奈は背後から攻撃されているのにも関わらず、刀を抜くことすらできていない。

英玲奈「刀を抜く暇もなく……か。それなら心配無用だ」

キン、と高い音が鼓膜に響く。

それと共に英玲奈の背後にいた人形が動きを止める。

英玲奈「もう……抜いた」

ガラガラと音を立てて、胴体を真っ二つにされた人形が崩れ落ちる。

刀は鞘に収まったまま。

あんじゅには、今の一瞬で何が起きたのか理解できなかった。

278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:16:14.18 ID:GStAiULi0
あんじゅ「っ! かかりなさい!」

驚愕は一瞬。同時に四体の人形が英玲奈へと襲いかかる。

キン

槍を携えた人形の顔が跳ね飛ばされる。

その隙をつこうと両側から斧と剣が英玲奈を襲うが、元より隙などない。

キン

一瞬にして二体の胴体が切断される。

四体目がその頭上から飛びかかるように強靭な爪を振るう━━━━が、その爪が英玲奈に届くことはなかった。

キン

真っ二つにされた人形が、床に打ち付けられて激しい音を立てる。

279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:16:47.52 ID:GStAiULi0
あんじゅ「なんで……」

英玲奈は柄に手をかけているものの、一度も刀を抜いてはいない。

じゃあ、さっきからなっているあの音はなんなんだ。

あんじゅ「……まさか!」

いや、違う。

さっき英玲奈は「もう抜いた」と言っていた。

つまり、あの音は、刀を鞘に戻す時の音。

それに気づき、すぐに英玲奈と距離をとろうと後ろに駆け出す。

280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:17:20.52 ID:GStAiULi0
英玲奈「気づいたか……だが遅いッ!」

猛然と距離を詰める英玲奈。

行く手を阻もうとした三体の人形も、一瞬の内に切り捨てられる。

英玲奈「終わりだ」

あんじゅ「っ!」

背筋に走る悪寒。

今までの経験が、あんじゅに回避行動をとらせた。

キン

ズシュ

281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:17:53.50 ID:GStAiULi0
あんじゅ「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!??!!??」

ぼとりと肉の落ちる音。

激しい痛みと喪失感。

体を切り裂くはずの刃は、足を切断していた。

英玲奈「殺すつもりだったんだが……な」

英玲奈「流石だ」

笑みを浮かべながらゆっくりと迫る英玲奈を、その場から動けなくなったあんじゅは睨みつけることしかできない。

英玲奈「言え、お前は誰の指示で動いている」

あんじゅ「…………」

282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:18:38.96 ID:GStAiULi0
英玲奈「この状況でだんまり……か。やはりお前はいい女だよ」

英玲奈「最後に何か言い残すことはあるか?」

あんじゅ「…………」

自分はもう助からない。

この状況を打開する術を探そうとしても、何も思いつかない。

それどころか、今までの思い出が走馬灯のようにぐるぐると自分の中を駆け巡るのだ。

理事長に拾われて、遊んでもらって、笑って。

こんな時なのに、と自分に少しだけ苦笑してしまう。

だから、今までの人生の全てを籠めて、口を開く。

あんじゅ「私は……幸せでした」

キン

ザシュ

283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:19:37.15 ID:GStAiULi0
ガチャ

「おや、終わった?」

英玲奈「ああ」

「彼女はお気に入りだったんだろ? 本当に良かったの?」

英玲奈「構わん。私情を挟んでは下の者に示しがつかないからな」

「はは、相変わらず固いね」

英玲奈「それよりも、話はついたのか?」

「ああ。今から出発するから、ここは任せるよ」

英玲奈「了解した。お前が帰ってくるまでしっかりと守っておく」

「うん、よろしく」


ーーー
ーー

284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:20:08.09 ID:GStAiULi0
~~~~~~~~~~~~~~

うみ「ほのか! ことり! きいてください!」

ほのか「どうしたの?」

ことり「おなかいたいの?」

うみ「ちがいます! とうとう能力にめざめたんです!」

ことり「すごーい!」

ほのか「さすがうみちゃん!」

うみ「えへへ」

285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:20:38.78 ID:GStAiULi0
ほのか「うみちゃんはどうしてきしになりたいの?」

うみ「そのだ家はだいたいきしのかけいだからです」

うみ「わたしもお父さまのあとをついで、りっぱなきしになりたいんです」

うみ「そして、ほのかとことりをわるものから守ります!」

ことり「かっこいいー!」

ほのか「それならお家のお手伝いからほのかを━━」

うみ「それは自分でやってください!」

ほのか「ぶー」

286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:21:16.56 ID:GStAiULi0
ことり「そうだ、こんどおしろの外にピクニックに行くんだけど、ほのかちゃんとうみちゃんも行こうよ!」

うみ「わかりました。お父さまとお母さまにそうだんしてみます」

ほのか「ほのかはだいじょうぶだよ!」

うみ「もし何かあったら、わたしが二人を守ります!」

ことり「おおげさだよぉ、きしさんたちもついてくるから」

ほのか「それじゃあみんなでかくれんぼしよ!」

ことり「たのしそう! やろうやろう!」

うみ「あんまりはしゃぎすぎないようにするんですよ!」

ほのこと「「はーい」」


ーーー
ーー

287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:22:18.34 ID:GStAiULi0
ことり「えー、ほのかちゃん行けなくなっちゃったの?」

うみ「はい……たのしみで前日にはしゃぎすぎて、かぜをひいたみたいです」

ことり「うーん、ざんねんだなぁ」

うみ「まったく、ほのかはいつになっても成長しませんね」

ことり「あ、でもそれなら、今日はことりだけがうみちゃんに守られるんだね」

うみ「え? ええ、そうなりますね」

ことり「よろしくおねがいします、ゆうかんなきしさま」ペコリ

うみ「……おまかせください、おうじょさま」

うみ「かならずあなたをわるものから守ってみせます」

288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:22:45.61 ID:GStAiULi0
ガサガサ

ことり「森の中ってこんなふうになってるんだぁ」

うみ「ことり、足下にちゅういしてくださいね」

うみ「それと、つかれたらすぐに言ってください」

ことり「ぶぅ……うみちゃん、お母さんみたい」

「ははは、王女様には立派な騎士様がついてますね」

「そうだな、これは将来有望だぞ」

289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:23:28.18 ID:GStAiULi0
ことり「みんなでかくれんぼしよ!」

「……申し訳ありません王女様。護衛任務のため、私たちは遊ぶことができないのです」

ことり「えー!」

うみ「ことり、あまりみんなを困らせてはいけません」

うみ「それよりも、あっちにおもしろいものがありました」

ことり「ほんとう!?」

うみ「ついてきてください」スタスタ

ことり「わーい! なにかななにかな?」スタスタ

「……まさか子供に助けられるとは」

「今の間にコネを作っておいたほうがいいかもな」

290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:24:02.44 ID:GStAiULi0
うみ「まちなさい! ことり!」

ことり「きゃー! きゃー!」タタタ

うみ「おかしの中にからいものを入れるなんてどうして思いつくんですか!」

ことり「ほのかちゃんにおしえてもらったのー!」

うみ「くぅぅ……ふたりでわたしをからかおうとしたのですか!」

ことり「ごめんなさーい!」タタタ

ことり「あれ?」ピタッ

ポタッ ポタッ

291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:24:32.58 ID:GStAiULi0
ことり「あめ……?」

うみ「ことり、ぬれるといけませんから、帰りますよ」

ことり「あ、うみちゃん」

ことり「えっと……その……」アセアセ

うみ「はぁ……おこっていませんから、安心してください」

ことり「ほんとう……?」

うみ「はい、ほんとうです」

ことり「よかったぁ」ホッ

292: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:25:05.48 ID:GStAiULi0
トテトテ

うみ「すいません、おまたせしました」

「おう、お帰り、雨が降ってきたし帰るぞ」

ことり「はーい」

「あの……一人行方がわからなくなったのですが、どうしましょうか」

「どうせそこらで寝てるんだろ、ほっとけほっとけ」

「「「はははははは」」」

ガサッ

「お? 噂をすればなんとやら……っ!?」

293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:25:47.10 ID:GStAiULi0
茂みを掻き分けて出てきたのは、フードを被った巨体。

その手に握られている剣からは、血の雫がこぼれ落ちている。

「全員! 王女様を守っ━━」

凄まじい速度で動いた大男が剣を振るうと、近くにいた騎士の首が空を舞う。

男は速度を緩めず、王女様━━━━ことりの方へと迫って行く。

うみ「あ……あ……」

大男が一度腕を振るえば、それだけで死骸ができる。

もちろん、大男も無事ではない。

反撃で受けた剣が肉を裂き、放たれた矢が体を抉る。

だが、それでも男は止まらない。

294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:26:26.03 ID:GStAiULi0
バシュ

ピチャッ

あげられた血飛沫が頬へと降りかかる。

目の前で自分たちを守ってくれた騎士はもういない。

他の騎士達は少し離れた所からここに駆けつけようとしているが、それは子供二人を殺すのには十分な時間だ。

だから、自分がことりを守らなくてはいけない。

そのはず、なのに。

うみ「っ……あ……ぅ……」

自分の意思とは無関係に震える足。

立ち向かなくてはいけないのに、足が竦んで動くことができない。

後ろにことりがいなければ腰を抜かしていただろう。

295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:27:02.89 ID:GStAiULi0
うみ「それいじょう……こっちに……がっ!?」

男が振り払った腕に打ち付けられ、海未の体は大きく跳ね飛ばされる。

ことり「うみちゃん!?」

うみ「っ……ことり……にげ……」

全身を走る痛みに耐えながら、届くことのない手を必死にことりへと伸ばす。

剣を構える男、足が竦んで逃げられないことり、そして、何もできない自分。

ぐちゅり。

永遠のような一瞬の後、男の剣がことりの体を貫いた。

296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:27:41.45 ID:GStAiULi0
ことり「かっ……ふっ……」

ゆっくりとことりの衣服に赤い染みができる。

騎士達は間に合わなかった、いや、まだ、今なら間に合うかもしれない。

駆けつけた騎士の一人が男に向かって剣を振り下ろす━━━━が、その剣が男に触れることはなかった。

どごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんん!!!

耳をつんざくような爆発音。

飛び散る大小の肉片。

頬を濡らす雨は、いつの間にか赤色へと変わっていた。

297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:28:27.62 ID:GStAiULi0
うみ「そん……な……」

うみ「うそ、です……だって……」

うみ「わたしは……ことりと、ほのかを、わるものから……守る……」

うみ「それで、きしになって……」

うみ「い……や……」

うみ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

~~~~~~~~~~~~~~

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:29:01.93 ID:GStAiULi0
海未「っ!?」ハッ

ガラガラガラ

海未「…………」

絵里「大丈夫? 随分と魘されていたようだけど」

海未「……心配ありません」

絵里「そう、それならいいけど」

絵里「あまり無茶はしないようにね」

海未「……ええ」

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/07(日) 01:29:38.52 ID:GStAiULi0
海未(穂乃果とことりを守るために己を鍛えてきたはずなのに、あの日無様にも生き残ってしまった)

海未(出来損ないの騎士として恥を晒してきた)

海未(穂乃果……貴女が同じ立場なら、どうしていたんですか?)

海未(同じように、ことりを生き返らせようとしましたか?)

海未(いえ……多分しないでしょうね)

海未(ですが……私はなんとしてでもことりを蘇らせなくてはならない)

海未(それが、私のできる唯一の償いなのだから)

海未(そしてもう一度、三人で一緒に……)

307: 第7話:胸の鼓動 2014/12/14(日) 00:53:42.01 ID:VqlUowVo0
「女王様!」

理事長「どうしたのですか、そんなにも慌てて」

「こちらをご覧ください」スッ

理事長「紙……ですか?」

理事長「!」

『盗賊団のアジトの場所を記す。今が好機。副リーダーの戦い方は━━』

理事長「これは……」

「掃除の時に、メイドが部屋の中で発見したもようです」

「地図も記されていますが、どうにも焦って書いてあるようで……文章も途中で終わっています」

「人形も、そのまま倒れっぱなしでした」

理事長「…………」

「どうしましょうか?」

理事長「あの子たちを呼んでください」

「はっ!」

308: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:54:23.86 ID:VqlUowVo0
ーーーー高坂家

穂乃果「んー! やっぱり家は落ち着くなぁ」

雪穂「あのお姉ちゃんが疲れるまで頑張るなんて……昔からは想像できない」

穂乃果「えー、酷いよ雪穂!」

雪穂「本当のことだからしょうがないじゃん」

穂乃果「うー……穂乃果は傷つきました」

穂乃果「お詫びにお茶を要求します!」

雪穂「それくらい自分でいれなよ……」イソイソ

309: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:54:56.32 ID:VqlUowVo0
雪穂「はい、どうぞ」

穂乃果「えへへ、ありがとう」ズズッ

穂乃果「なんだかんだ言っていれてくれるんだから、雪穂って優しいよね」

雪穂「別に……頑張ってるからちょっとご褒美あげただけ」

穂乃果「えへへ、それでも嬉しいんだよ」ニコッ

雪穂「…………」

雪穂「今回は……どれくらいいられるの?」

穂乃果「…………」

310: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:55:31.60 ID:VqlUowVo0
穂乃果「どうだろう……私にもわかんないや」

穂乃果「でも、大切なことだから」

穂乃果「寂しい思いをさせちゃって、ごめんね?」ナデナデ

雪穂「っ/// さ、寂しくなんてないし!」

雪穂「お姉ちゃんのおもりをしなくていいから、私もちょっと楽だもん」

穂乃果「酷い!?」

雪穂「……だから、その……」

雪穂「が、頑張ってね……」

穂乃果「……うん!」

311: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:56:19.39 ID:VqlUowVo0
穂乃果「それじゃあ、今日は久しぶりに一緒にお風呂に入ろっか!」

雪穂「は、はぁ!? な、なにいってんのよ急に///」

穂乃果「あれれ、もしかして照れちゃってる?」

穂乃果「でも、お姉ちゃんとして雪穂の成長具合を確かめないと!」

雪穂「確かめなくていい!」

雪穂「そんなこと言ってると、ご飯抜きにするよ!」

穂乃果「ご、ごめんなさい!」

雪穂「全く……お姉ちゃんのばか……」

穂乃果「えへへ、ごめんね?」

雪穂「……はぁ。いいよ、ご飯食べたら一緒に━━」

ガラッ

「夜分遅くにすいません! 女王様が高坂穂乃果さんをお呼びです!」

穂乃果「……了解しました」

雪穂「…………」

312: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:57:06.62 ID:VqlUowVo0
ーーーー謁見の間

穂乃果「何があったんですか?」

理事長「盗賊団のアジトが判明しました」

にこ「!」

理事長「貴女たちには、奪われた宝玉の回収をお願いします」

理事長「時間があまりありません、すぐに向かってもらえますか?」

「「「「「はい!!」」」」」

理事長「ありがとうございます、ことりがその地図です」スッ

穂乃果「……! あの、これは……」

理事長「盗賊団に潜り込んでもらっている騎士からの報告です」

凛「!」

313: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:57:45.56 ID:VqlUowVo0
にこ「……慌てて書いたようね」ジッ

真姫「そうね……まるで死ぬ間際に書いたみたい」

穂乃果「!」

穂乃果「あの、その騎士の方との連絡は……」

理事長「それ以降、報告はありません」

花陽「そんな……」

理事長「まだ死んだと決まったわけではありません」

理事長「それを確かめるためにも、行ってください」

穂乃果「わかりました」


ーーー
ーー

314: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:58:19.74 ID:VqlUowVo0
穂乃果「ここが……入口?」

真姫「地図によるとそうみたいだけど」

花陽「…………」

凛「かよちん? どうしたの?」

花陽「凛ちゃん……えっと……」

凛「……あの子のこと?」

花陽「……うん。どうなったのかなって」

花陽「もしかすると、捕まって酷い目にあってたり……」

315: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:58:57.77 ID:VqlUowVo0
にこ「……普通に捕まってるだけなら能力で連絡がとれるはず」

にこ「考えられる可能性は、『意識がない』、『意識はあるけど能力が上手く使えない』、『すでに死んでいる』のどれか」

にこ「どれにしろ……かなりヤバイ状況だと思うわ」

花陽「あ、あの!」

にこ「なに?」

花陽「私、あんじゅさんを探しに行きたいです!」

にこ「……駄目よ、私たちは宝玉の確保をしなくちゃいけないの」

花陽「でも!」

穂乃果「いいよ」

316: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 00:59:33.11 ID:VqlUowVo0
にこ「穂乃果、私たちの任務は」

穂乃果「解ってるよ、にこちゃん」

穂乃果「私たちはこの国を、皆を守るために戦ってる」

穂乃果「でも、だからこそ、あんじゅさちゃんを見殺しにしたくなんてない!」

にこ「……死んでるかもしれないのよ」

穂乃果「それでも、だよ」

穂乃果「それに、二手に別れるのは悪いことじゃないと思うの」

穂乃果「どちらにしろ、宝玉も探さなくちゃいけないし」

317: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:00:15.02 ID:VqlUowVo0
にこ「はぁ……解ったわ」

にこ「花陽と凛はその子を探しなさい」

花陽「ありがとうございます!」

にこ「最初ににこと穂乃果と真姫ちゃんで突撃するから、あんたらは少ししてから入りなさい」

真姫「ちょっと! 何かってに決めてんのよ!」

にこ「真姫ちゃんの能力わぁ、凄く強いからぁ、前線で戦うのに相応しいと思ったんだけどぉ……駄目かなぁ?」キュルン

真姫「ま、まあね。私にかかれば盗賊団を蹴散らすことなんて朝飯前よ!」

にこ(ちょろい)

穂乃果「それじゃあ行くよ!」

「「「「おー!!」」」」

318: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:00:59.55 ID:VqlUowVo0
タタタタ

にこ「! 曲がり角で二人待ち伏せしてるわ!」

穂乃果「まかせて!」

少し強めに床を蹴り、曲がり角へと踏み込む。

敵の姿は二人。

一人はナイフ、もう一人は剣を構えて待ち伏せしていたようだが、タイミングを外されたせいか、体が硬直している。

穂乃果「はぁっ!」

ガラ空きのお腹へと軽くジャブをいれると、二人はどさりとその場に崩れ落ちた。

319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:01:39.05 ID:VqlUowVo0
穂乃果「終わったよ!」

にこ「前より動きが速くなってるわ」

穂乃果「本当?」

にこ「ええ、本当よ」

にこ「でも油断をしたら駄目」

穂乃果「解ってるよ」

穂乃果「さあ、どんどんいこう!」

タタタタ

320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:02:19.38 ID:VqlUowVo0
にこ「!」

にこ「扉の向こう側に敵がいるわ」

にこ「人数は……30人くらい」

穂乃果「突っ込んじゃえばいいんじゃないの?」

穂乃果「私たちに攻撃は効かないし」

にこ「……全部がそうということでもないのよ」

穂乃果「え?」

にこ「能力者にもダメージは与えられる」

321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:02:55.96 ID:VqlUowVo0
穂乃果「どうやって?」

にこ「例えば、武器生成の能力者がいたとするわよ?」

穂乃果「うん」

にこ「そいつが作った武器で攻撃してきたら痛いでしょ?」

穂乃果「うん」

にこ「それなら、普通の人がその武器で殴ってきたら?」

穂乃果「……あ!」

にこ「もちろん、前例なんてない」

にこ「でも、可能性だけは考えておいた方がいいわ」

にこ「だから、ここは……」

真姫「焦れったいわね」ガチャ

322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:03:30.37 ID:VqlUowVo0
にこ「ちょ、何やってーー」

真姫「そんなこと考えたら日が暮れるわ」

真姫が扉を開けると、広間にいた30人あまりもの敵が、怒号と共に一斉に矢を放つ。

通り抜ける隙間はない、このままいれば矢はすぐにでも真姫に直撃するだろう。

真姫「この程度で私に刃向かおうなんて百年早いのよ!」

真姫「《戒めよ極氷の息吹》(ブリザード・シャックル)!」

突如として真姫の周りから極寒の風が沸き起こる。

矢は弾かれ、床がぱきぱきと音をたてながら氷、やがてそれは敵全体をも飲み込んでいく。

323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:04:14.22 ID:VqlUowVo0
真姫「ふふん、どんなもんよ」

風が止んだ後に残ったのは全てが氷ったニブルヘイム。

ある物は驚愕し、ある物は恐怖に顔を歪めてその姿を氷の中に閉ざされている。

穂乃果「凄いよ真姫ちゃん!」

穂乃果「いつの間にこんな技を覚えたの!?」

真姫「さっき思いついたのよ」

穂乃果「嘘っ!?」

真姫「嘘よ」

穂乃果「えっ」

真姫「そんなことより、先を急ぐわよ」

にこ「そうね……きっと、もう少しで……」

タタタタ

324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:04:53.98 ID:VqlUowVo0
にこ「……中に一人いるわ」

真姫「当たり?」

にこ「ええ、多分ね」

穂乃果「……行くよ」

ギィィィィィ

「遅かったじゃないか、侵入者共」

「随分と派手に暴れてくれたようだな」

英玲奈「生きて帰れると思なよ」

325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:05:39.95 ID:VqlUowVo0
タタタタ

凛「……さっきから、誰にも会わないね」

花陽「うん……きっと、穂乃果ちゃんたちが頑張ってるんだと思う」

凛「それじゃあ、早く助けて戻らないとね」

花陽「うん……」

凛「! 突き当たりに部屋があるよ!」

花陽「中に人はいる?」

凛「……いないけど、なんだか変な感じがする」

花陽「……凛ちゃん、注意してね」

凛「大丈夫……行くよ!」

ガチャ

326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:06:24.30 ID:VqlUowVo0
凛「…………」

花陽「何も……ない?」

凛「かよちん、あそこに」

花陽「……あれって、棺桶……かな?」

凛「……まさか」ゴクッ

カタン

花陽「ひっ!?」

凛「っ!?」

花陽「そんな……なんで……」

花陽「あんじゅさん……」

棺桶に入っていたのは助けたかった人。

両足が痛々しく切断され、それを隠すことなくそのまま入れられている。

だが、体の傷とは逆に、彼女の顔は穏やかであった。

327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:06:54.06 ID:VqlUowVo0
英玲奈「まさか正々堂々正面から来るとは思わなかった」

英玲奈「隠密に盗もうとは思わなかったのか?」

にこ「そんな高度なこと、できると思う?」

英玲奈「……無理そうだな」

にこ「でしょ」

穂乃果「ちょっとにこちゃん!?」

真姫「あなたどっちの味方なのよ!」

にこ「本当のことでしょ!」

328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:07:37.20 ID:VqlUowVo0
英玲奈「……敵を前にしてその態度か、面白い連中だな」

穂乃果「それなら、友達になろうよ」

英玲奈「……何?」

穂乃果「こんなことやめて、皆で一緒に遊ぼう」

穂乃果「傷つけあうより、絶対にそっちの方が楽しいよ」

英玲奈「……面白いやつだな、お前は」

英玲奈「だが、断らせてもらおう」

英玲奈「私には、私の大義がある。もちろん、投降する気もない」

英玲奈「止めたければ、力ずくで止めてみせろ」スッ

穂乃果「そう……それなら」

穂乃果「騎士として、貴女を拘束します!」

329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:08:27.71 ID:VqlUowVo0
穂乃果(あの子が副リーダーだとしたら……迂闊に近づくわけにはいかない)

穂乃果(あんじゅさんの記した通りならね)

英玲奈「どうした? 威勢がいいのは口だけか?」

英玲奈「来ないなら、こちらから行くぞ!」

真姫「《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

駆け出そうとする英玲奈を止めるかのように、真姫の周りに氷の槍が出現する。

真姫「集いなさい!」

真姫の声に導かれるように小さな槍が集結し、頭上に大きな槍を形成する。

避けられるなら、避けきれないくらい大きく、そして強くする。

真姫「一撃で終わらせてあげる」

真姫が手を前に翳すと、巨大な槍が凄まじい速さで英玲奈へと向かっていった。

330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:09:08.84 ID:VqlUowVo0
英玲奈「一撃……か」

キン

甲高い音が響いたと思うと、氷槍がその動きを止め、ぱきぱきとヒビが入る。

真姫「っ!?」

英玲奈「仕留め損なったな」

槍はそのまま砕け散り、辺りに冷気をばら撒いた。

英玲奈は微動だにせず、顔には余裕の笑みを浮かべている。

刀は、鞘に収まったまま。

穂乃果「……『居合』」

英玲奈「ほぅ……今ので気づいたのか?」

穂乃果「ううん、あんじゅちゃんに教えてもらったんだよ」

英玲奈「!」

331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:09:53.10 ID:VqlUowVo0
英玲奈「……くく、そうか、まさか死ぬ間際にそんなことをしていたとはな」

英玲奈「嫁にでももらっておくべきだったか」

穂乃果「……あんじゅちゃんをどうしたの?」

英玲奈「今のでだいたい察せるだろ、殺したよ」

穂乃果「……どうして!」

英玲奈「敵を殺すのは当然のことだ」

英玲奈「それ以上の理由はない」

穂乃果「…………っ」

英玲奈「……ああ、そうだ、一つ教えておいてやろう」

英玲奈「私に奇襲は通じない」

にこ「っ!?」ゾクッ

332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:10:35.73 ID:VqlUowVo0
真姫の能力の発動と共に英玲奈の背後へと回り込んだにこ。

会話に気を取られている間にゆっくりと近づき、飛びかかろうとしたところ、背筋に悪寒が走る。

にこ「っ!」

キン

後ろに大きく飛び、英玲奈の間合いから逃れる。

だが、少し間に合わなかった前髪が、少しだけはらはらと床に落ちた。

英玲奈「いい反射神経だ」

にこ「なんで……」

英玲奈「お前の隠密が下手なんじゃない、私との相性が悪いだけだ」

真姫「にこちゃん! 離れなさい!」

真姫「《戒めよ極氷の息吹》(ブリザード・シャックル)!」

333: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:11:18.40 ID:VqlUowVo0
間合いに入ったものが全て切られてしまうのであれば、切られないもので攻撃すればいい。

氷の世界が音をたてながら急速に英玲奈のへと襲いかかる。

真姫「……終わりよ」

刀で風を切ることはできない。

温度をあげることもできない。

つまり、英玲奈にはこれを防ぐ手段がない。

英玲奈「《虚空烈閃陣》」

全方向に繰り出される高速の斬撃。

それが衝撃波となり、進行する冷気を弾き飛ばす。

真姫「そんなっ!?」

英玲奈「マジックはもう終わりか?」

英玲奈「ならば引導を渡す!」

穂乃果「真姫ちゃん! 危ない!」

334: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:12:02.76 ID:VqlUowVo0
猛然と真姫の方に向かう英玲奈の前に立ち塞がる穂乃果。

攻撃が全て近接の穂乃果には最悪の相性と言ってもいい敵。

だが、勝ち目がないわけじゃない。

切ってから、しまって、また抜くまでの一瞬の間に間合いを詰めれば、攻撃できる。

だから、フェイントで一度相手に刀を抜かせようと。

穂乃果「!」

間合いに入るギリギリのタイミングに、後ろ足を蹴り、前のめりになった所でつま先に力をこめ少し後ろへと下がる。

ここが勝負所だ。

斬撃が見えなくても、この位置なら風圧でわかる。

後は、それに合わせて攻撃を……。

英玲奈「お前は見誤った」

335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:12:51.85 ID:VqlUowVo0
穂乃果「え?」

髪の毛をゆらす風は来ない。

刀をしまう甲高い音も響かない。

襲いかかるために準備していた身体は、逃げる術を知らない。

英玲奈「私には……お前たちの様子が全て見えている」

英玲奈の能力は特殊なものだ。

広範囲の視野と、情報を得られる『観察眼』。

相手の身体能力、弱点、重心の位置、ほとんどの情報を読み取り、相手の次の行動を予測する。

それはほぼ『未来予知』と言えるもの。

ただ、相手の心、能力などは読み取ることができないため、完全な未来予知ではない。

336: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:14:19.91 ID:VqlUowVo0
だが、穂乃果はそれを知らなかった。

フェイントは読まれており、自分は英玲奈の間合いへと足を踏み入れてしまった。

真姫は動けない。

にこは離れすぎている。

助かるためには、自分でなんとかするしかない。

刀を受け止める━━━━無理だ、速すぎる。

間合いから逃げる━━━━逃れるよりも早く、刀が穂乃果の首を切り落とすだろう。

完全な詰み。

湧き上がる死の恐怖が身体中を包み込み、走馬灯が足早に駆け巡る。

大切な仲間。

騎士になってできた友達。

近所のおじいちゃんやおばあちゃん。

優しくしてくれたお父さんや、お母さん。

いつも支えてくれた雪穂。

そして、いつも遊んでいた大切な幼馴染の二人━━━━。






……駄目だ、こんな所で諦めたら。

私には……まだ、やらなくちゃいけないことがある!













ドクン

337: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:15:05.50 ID:VqlUowVo0
キン

甲高い音が部屋の中を木霊する。

だが、訪れるはずの終焉……穂乃果の死は現実にはならなかった。

英玲奈「馬鹿な……何故」

確実に捉え、切り裂いたはずの相手が目の前に健在でいる。

その事実が、英玲奈の心に動揺を与えた。

そして、そんな隙を見逃すほど、穂乃果は腑抜けてはいない。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

渾身の右ストレートが英玲奈の胸を捉え、英玲奈の身体は後方に大きく吹き飛ばされる。

英玲奈「ぐっ……あっ!」

だが、英玲奈も負けてはいない。

瞬時に動揺を自分から切り離して、拳が当たる前に後ろへと体をずらし、クリーンヒットするのを避けた。

338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:15:54.94 ID:VqlUowVo0
パシャン

先程、真姫が作った氷が全て溶けたのか、立ち上がった足が水溜りを踏み抜く。

胸に残る熱さと、焼け焦げた服。

伝わる熱気、自分の『眼』からの情報。

そして、斬撃が当たらなかった現実。

それら全てを統合させると、信じられない推測ができる。

英玲奈「……嘘だろ」

英玲奈「お前……身体が炎になっているのか……?」

穂乃果「…………」ゴオッ

339: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:16:46.74 ID:VqlUowVo0
能力は多様である。

しかし、それでもだいたいの場合において似たような能力は存在する。

だが、こんな能力は、聞いたことも文献で見たこともない。

自分の身体を、炎に変えるなど。

穂乃果「やぁっ!」

英玲奈「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

キン キン キン

穂乃果の踏み込みに対し、三回の斬撃が襲いかかる。

敵を三回も殺せる一瞬の居合━━━━そう、相手が普通の能力者であれば。

英玲奈「がっ!?」

穂乃果の右の拳が左頬に吸い込まれ、激しい痛みに意識が飛びそうになるのを堪える。

刀が通じない……それは、英玲奈にとって致命的な弱点であった。

340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:17:43.67 ID:VqlUowVo0
英玲奈「っ……舐めるなよッ!」

英玲奈「《虚空烈閃陣》!」

切れないのであれば、消し飛ばせばいい。

無数の斬撃と真空波が穂乃果へと降りかかる。

英玲奈「消し飛べ!」

激しい風に飲み込まれる穂乃果。

だが、灯火が消えることはない。

穂乃果「炎! 拳!」

英玲奈「なっ!?」

激しく燃え盛る炎を両手に携え、その姿を再び現せる。

その炎で出来た身体からは、次の動きを読み取ることができない。

穂乃果「ヒィィィィィトォォォォォォォォォォォォストライクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

真っ直ぐに放たれた拳は体へとのめり込み、吹っ飛ばされた英玲奈は、その身体を床へと沈めた。

341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:18:24.88 ID:VqlUowVo0
穂乃果「はぁ……はぁ……」

真姫「穂乃果……大丈夫なの?」

穂乃果「真姫ちゃん……うん、へいき、へっちゃら……」

にこ「平気じゃないでしょ……少し休んでなさい」

にこ「ほら、おぶってあげるから」

穂乃果「あはは……ごめんね」

にこ「……うん、触っても大丈夫ね」グイッ

真姫「ちょっと、こいつはどうすんの?」

にこ「真姫ちゃんの能力で氷漬けにして連れ帰りましょう」

真姫「……何気に酷いわね」

342: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:18:58.55 ID:VqlUowVo0
バァン!

凛「三人とも、大丈夫!?」

にこ「あんた達……遅いわよ!」

花陽「ご、ごめんなさい!」

にこ「全く……ってあれ、その棺桶……」

凛「…………」

花陽「…………」

にこ「……大事に運びなさいよ」

花陽「うん……」

343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:19:44.74 ID:VqlUowVo0
真姫「向こうの部屋を漁ったけど、宝玉は一個しか見つからなかったわ」

にこ「そんなはずないわよ、もっとちゃんと探しなさい!」

真姫「誰に向かって命令してんのよ!」

真姫「こういうのはにこちゃんの方が得意でしょ!?」

にこ「ぅ……し、仕方ないわねぇ……」

にこ「凛、ちょっと穂乃果をお願い」

凛「うん、解ったよ」グッ

にこ「……本当にないわね」ガサゴソ

真姫「……他の人が持っていった?」

にこ「他の人って誰よ」

真姫「ここにいない、盗賊団のリーダーよ」

真姫「それに、私をコケにしてくれた海未もいないし」

にこ「……まだ終わりじゃないってことね」

344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/14(日) 01:20:26.43 ID:VqlUowVo0
花陽「……どうして、死んじゃったんだろう」

花陽「前にあった時は、戯けてて、笑ってたのに……」

凛「かよちん……」

穂乃果「もっと前にあってたら、友達になれたよね……きっと」

花陽「うん……」

穂乃果「持って帰って、お墓を立ててあげよう」

穂乃果「それが、唯一してあげられることだよ……」

353: 第8話:頂点に立つ者 2014/12/28(日) 00:39:41.36 ID:O8Vs3+kmO
絵里「まさか……アジトが襲われるなんて」

「…………焦げ跡、か」

絵里「え?」

「ちょっと用事ができたから、私は別行動させてもらうよ」

絵里「それなら私も━━」

「いや、絵里は残りの宝玉を探していてくれ」

「こっちは私に任せてもらおう」

絵里「……気をつけてね」

「ああ」


ーーー
ーー

354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:40:31.84 ID:O8Vs3+kmO
ーーーー病院

穂乃果「お腹空いたよぉ……」

にこ「さっき食べたばっかでしょ、我慢しなさい!」

穂乃果「えー」

真姫「……能天気な人たちね」

穂乃果「真姫ちゃん?」

真姫「私たちがなんでこんなところにいるか解ってるの?」

穂乃果「よくわかんない!」

真姫「あんたのせいでしょうが!!」

355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:41:22.60 ID:O8Vs3+kmO
真姫「戦って勝ったのはいいけど、そのあとあんたの体調が悪いからわざわざ近くの病院で休んでるんじゃない」グリグリ

穂乃果「い、いひゃいよぉ……」

花陽「真姫ちゃん、そのくらいにしてあげてよ」

花陽「穂乃果ちゃんも好きでそうなったわけじゃないんだし……」

穂乃果「ぅぅぅ……花陽ちゃん」ギュゥ

花陽「わわっ!?」

真姫「ちょっと花陽! 穂乃果を甘やかさないで!」

花陽「えええっ!?」

穂乃果「花陽ちゃん……」ウルウル

真姫「花陽!」

花陽「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

にこ「あんたら病院で騒いでるんじゃないわよ!!!」

356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:42:01.93 ID:O8Vs3+kmO
凛「うるさいにゃー……」ムクッ

にこ「あんたは病人じゃないくせにベッド占領してんじゃないわよ!」

凛「ふぁぁ……今日もにこちゃんは元気だね」

にこ「馬鹿にしてんの!? だいたいあんたは━━」

花陽「あ、あの!」

凛「かよちん! どうしたの? お腹空いたの?」

花陽「え?」

穂乃果「よーし、じゃあ何か食べに行こっか!」

にこ「話しを聞きなさいよ!!」

357: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:42:36.14 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「それより、どうしたの、花陽ちゃん?」

花陽「あ、えっと、私たちはこのあとどうするのかなって……」

真姫「どうするもこうするも、ここで待機じゃないの?」

にこ「副リーダーは騎士団に引き渡したし、女王様には起こった出来事の報告書を送った」

にこ「だから、真姫ちゃんの言うとおりここで待機ね」

穂乃果「うーん……いいのかなぁ」

にこ「大丈夫よ、怒られたら全部あんたのせいにするから」

穂乃果「酷い!?」

358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:43:10.62 ID:O8Vs3+kmO
真姫「ああもう、いつまでふざけてんのよ!」

真姫「とりあえず、今は先のことだけ考えなさい!」

凛「でも、穂乃果ちゃんが治らないと何もできないにゃー」

穂乃果「うっ……」

真姫「それが問題なのよ。体が上手く動かせないだけで、他におかしいところもないし」

真姫「これは能力の後遺症なの……? それとも、敵の能力……?」

真姫「ああ! こんな時にママがいたら!」

真姫ママ「はーい、呼んだかしら?」

真姫「うぇっ!?」

359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:43:44.03 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「貴女は……」

真姫ママ「皆元気にしてた?」

真姫「ちょ、なんでママがここにいるのよ!?」

真姫ママ「んー……ちょっと気になることがあってね」

真姫ママ「高坂さん」

穂乃果「はい!」

真姫ママ「体が炎になったって本当なの?」

穂乃果「……はい」

360: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:44:12.77 ID:O8Vs3+kmO
真姫「……まさか」

真姫ママ「そう、私は報告書を呼んで急いでやってきたの」

真姫ママ「高坂さん、今その能力を発動してみてって言ったら、できる?」

穂乃果「……ごめんなさい、多分できないと思います」

穂乃果「あの時は……どうして発動したのかわからないんです」

真姫ママ「そっかー……ま、仕方ないわね」

361: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:44:56.52 ID:O8Vs3+kmO
真姫ママ「まず始めに言っておくけど、高坂さんの体が上手く動かないのは、能力の後遺症みたいなものよ」

真姫ママ「体が炎になってしまった時の感覚が残ってるせいで、脳が自分の体を上手く認識できていないだけ」

真姫ママ「適当に走り回ってたら治るわ」

穂乃果「良かったぁ……」

真姫ママ「……それと、もう一つ話があるの」

真姫「話……?」

真姫ママ「ええ……《能力》についてのね」

穂乃果「!」

にこ「…………」

362: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:45:40.53 ID:O8Vs3+kmO
真姫ママ「本来、《能力》というのは人間には大きすぎる力なの」

真姫ママ「弱い肉体にそんなのが宿れば、まず間違いなく壊れてしまう」

真姫「……身体能力の向上」ボソッ

真姫ママ「ふふ、大正解」

凛「え? どういうこと?」

真姫ママ「入れ物が弱いせいで入りきらないなら、入れ物を強くすればいいってことよ」

真姫ママ「だから、能力者の肉体は強くなる。能力が強ければ、強いほど」

真姫ママ「どんどん新しい技も覚えていくしね」

真姫「……何がいいたいの? さっさと結論を言ってよ!」

真姫ママ「もう、せっかちねぇ、誰に似たのかしら」フゥ

真姫ママ「貴女たちの能力には、もう一つ上があるってことよ」

花陽「上……?」

363: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:46:27.64 ID:O8Vs3+kmO
真姫ママ「ええ、貴女たちが使っている能力っていうのは、大元となる能力の片鱗でしかないの」

穂乃果「それじゃあ……」

真姫ママ「ええ、そうよ」

真姫ママ「おめでとう、高坂穂乃果さん。貴女は扉を開くことに成功したわ」

真姫「!」

穂乃果「扉……?」

真姫ママ「ええ、体を炎と化す……それが本来の貴女の《能力》」

真姫ママ「まあ、たまたまだったみたいだけど、開けたことに変わりはないわ」

真姫ママ「正直な話し、ここまで辿り着く人はほとんどいないの」

真姫ママ「久々に驚いちゃったわ」

364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:47:20.67 ID:O8Vs3+kmO
真姫ママ「それじゃあ私はそろそろ帰るわね」

真姫ママ「次の宝玉が見つかるまで、ゆっくり修行しながら待っててね」

穂乃果「あ、あの、盗賊団から取り返した宝玉は……」

真姫ママ「王都に全部置いとくのもなんだし、貴女たちが預かってていいわよ」

穂乃果「えっ」

真姫ママ「それじゃあまたね~」

ガチャ

パタン

凛「……嵐のような人だったね」

花陽「でも、穂乃果ちゃんが無事そうでよかったぁ」

にこ「ま、言われた通りゆっくり修行でもしながら待ちましょう」

真姫「……そうね」

365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:47:54.00 ID:O8Vs3+kmO
スタスタスタ

真姫ママ(体を炎に変える……か)

真姫ママ(一人だけ、今までに一人だけ、同じ能力を授かった人がいる)

真姫ママ(……そんなはずないとは思ったけど……でも、真姫を含めた皆の能力、そして邪神)

真姫ママ(……私の予測通りなら、これは運命、って呼ぶべきなのかもね)

真姫ママ「頑張りなさいよ、皆」

366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:48:25.53 ID:O8Vs3+kmO
ーーーー夜

ヒュォォォォ

花陽「…………」

凛「かよちん? どうしたの、こんな時間に」

花陽「あ、凛ちゃん……」

花陽「……ちょっと、眠れなくって」

凛「……あんじゅちゃんのこと?」

花陽「……えへへ、流石凛ちゃん。解っちゃうんだ……」

凛「昔から一緒だもん、かよちんの考えてることはなんでも解るよ」

367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:49:39.47 ID:O8Vs3+kmO
花陽「……お墓、立ててあげられなかったね」

凛「しょうがないよ、遺体も持っていかれちゃったんだもん」

凛「……きっと、女王様がちゃんとしたのを立ててくれるよ」

花陽「うん……そう、だよね」

凛「帰ったら、お墓参りにいこ?」

花陽「……うん」

368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:50:15.37 ID:O8Vs3+kmO
花陽「ねぇ、凛ちゃん」

凛「どうしたの?」

花陽「私も……死んじゃうのかな?」

凛「え……?」

花陽「今でもね、戦いになると足が竦んじゃうの」

花陽「怖いって、逃げ出したいって」

花陽「でも、そんなことしたら絶対に後悔しちゃうから……って……」

花陽「ごめんね、こんなこと言っちゃって」

花陽「そろそろ寝よっ━━」

ギュッ

369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:50:48.10 ID:O8Vs3+kmO
花陽「え?」

凛「大丈夫だよ」

凛「かよちんは、凛が絶対に守ってあげるから」

花陽「凛……ちゃん……」

凛「ほら、そんなに悲しそうな顔をしないで笑って?」

凛「かよちんには、笑顔の方が似合ってるよ」ニコッ

花陽「……ありがとう、凛ちゃん」


ーーー
ーー

370: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:51:30.41 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「完全復活!」

凛「やったにゃー!」

にこ「四日で完治……か。まあ、本当になんにもなくてよかったわ」

穂乃果「ねぇねぇ、皆で草原の方に行こうよ!」

花陽「え、えっと、病み上がりだし、あんまり町からはでないほうが……」

穂乃果「でもでも、ずっと病院で退屈だったんだもん!」

穂乃果「皆で遊ぼうよ!」

真姫「もう一週間くらい倒れてたほうが良かったんじゃない?」

穂乃果「なんでそんな酷いこというの!?」

371: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:52:12.75 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「ねぇねぇ、真姫ちゃん、遊ぼうよぉ」

真姫「嫌よ、子供じゃないんだし」

穂乃果「……もしかして真姫ちゃん、怖いんだ?」

真姫「はぁっ!?」

凛「穂乃果ちゃん、あんまりいじめちゃ駄目だよ」

凛「真姫ちゃんはお嬢様育ちだから鬼ごっこをやったことないんだから」ニヤッ

花陽(凛ちゃん……)

真姫「っ……な、なにいってんのよ! やったことあるわよ!」

真姫「上等じゃない! 私の走りを見せてあげるわ!」

穂乃果「やったぁ!」

穂乃果「それじゃあ早くいこうよ!」

にこ(にこは強制なのよね……はぁ)

372: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:52:53.17 ID:O8Vs3+kmO
サァァァァァァァ

穂乃果「んー! いい風吹いてる!」

真姫「それで、まずは誰が鬼をやるのよ?」

にこ「誰でもいいんじゃない?」

凛「(なんだかんだでノリノリだね)」

花陽「(えへへ、真姫ちゃんも皆と遊びたいんだよ)」

穂乃果「どーしよっかなー」

穂乃果「よーし、皆でじゃんけんして決めよう!」

「いや、その必要はないよ」

穂乃果「え?」

373: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:53:30.89 ID:O8Vs3+kmO
真姫「誰よあんた」

穂乃果「真姫ちゃん、その聞き方は失礼だよ」

「ああ、すまない、名乗っていなかったね」

ツバサ「私はツバサ。綺羅ツバサ」

ツバサ「仲間がお世話になったようだね」

374: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:54:08.04 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「ツバサ……さん?」

ツバサ「うん、よろしくね」

穂乃果「はい、よろしくお願いしま━━」

にこ「下がりなさい! 穂乃果ッ!」

穂乃果「え?」

にこ「仲間がお世話になった……ってことは、あんた……」

真姫「……盗賊団の、仲間」

ツバサ「正解」ニコッ

375: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:54:49.46 ID:O8Vs3+kmO
にこ「……真姫ちゃんと花陽は後方支援、穂乃果と凛は後ろよりで二人を守ってなさい」

穂乃果「にこちゃん……?」

にこ「こいつが組織を潰された仕返しに来たのなら、私たちがある程度の力を持っていることは知っているはずよ」

にこ「それなのに一人で来たってことは……まず間違いなく、《能力者》ってことで間違いないわ」

穂乃果「!」

にこ「だから、まずはにこが様子を見る」

穂乃果「でも……」

にこ「さっさと動きなさいッ!」

穂乃果「っ!」タタタタ

376: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:55:26.54 ID:O8Vs3+kmO
ツバサ「ちょっと後ろに下がらせすぎじゃない?」

にこ「ふん、このくらいでちょうどいいわよ」

ツバサ「近くにいると、私が範囲能力を使った時に巻き込まれる恐れがあるから……かな?」

にこ「…………」

ツバサ「ま、いいけどね」

ツバサ「一対一の方が燃えるから」

377: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:55:58.02 ID:O8Vs3+kmO
にこ「……あんたが頭領でいいのよね?」

ツバサ「あってるよ」

にこ「……それじゃあ、とっても強いんでしょうね」

ツバサ「もちろん」

にこ「そう、それなら……」

にこ「早々にケリをつけさせてもらうわッ!」

にこ「『目暗まし』!」

不意打ち気味の先制攻撃により、深淵の闇がツバサの周囲を包み込む。

378: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:56:36.98 ID:O8Vs3+kmO
にこ(視覚は奪った……この間に!)

いくら強者といえど、急に視覚をとざされたのなら混乱するはず。

対処方法として予想されるのは、こちらを近づけさせないように《能力》を発動させるか、もしくは闇の範囲から逃げ出すこと。

だから、上手く行けば相手の能力を知ることができる……いや、相手に致命傷を与えることだってできるかもしれない。

もちろん、にこはツバサのことを決して軽んじてはいない。

むしろ、自分より格上の相手だと気を引き締めていた。

だが、それでも、見通しが甘かった。

ツバサの強さを、測り間違えた。

379: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:57:15.51 ID:O8Vs3+kmO
にこ「え……?」

目に映るのは澄んだ青空。

ツバサに近づこうと踏み込んだ体は、何故か宙を舞っている。

にこ「なっ……づぅ!」

遅れてやってくる鈍い痛みがお腹を襲う。
そこでやっと、自分が殴り飛ばされたことに気づいた。

にこ「なん━━」

穂乃果「にこちゃん! 前ッ!」

穂乃果の声ではっとなったにこが目を前に向けると、すぐ前に手を振りかざすツバサの姿があった。

ツバサ「まず一人」

ずどおおおおおおおおおおおおおんん!!!

振り下ろされた手刀がにこの体へとのめり込み、激しい轟音を立てながら体を地面へと叩きつける。

380: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:57:48.22 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「嘘……」

仰向けに倒れこみ、ピクリとも動くことのないにこを見て某然とする。

穂乃果に見えていたのは、暗闇から飛ばされたにこが、ツバサに一瞬で沈められたところ。

相手は、圧倒的に私たちより強い。

凛「穂乃果ちゃん! 行くよ!」

穂乃果「っ……うん! 花陽ちゃん、真姫ちゃん、援護お願い!」

あの敵を二人に近づけさせるためにはいかない。

即座に切り替えて、穂乃果は凛と二人でツバサの方へ駆けだした。

381: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:58:32.06 ID:O8Vs3+kmO
凛「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

勢いを乗せた右の拳をツバサに向けて突き出す。

ツバサ「遅い!」

凛「っ!?」

だが、拳がツバサに届くことはない。

ツバサの左手が、伸び切った右腕を掴んでいたのだ。

凛「そんっ━━」

穂乃果「っ!?」

ぐるんと妙な浮遊間と共に振り回され、少し後に迫った穂乃果へとぶつけられる。

凛「……ぁっ!」

穂乃果「ぐっ!」

衝撃と共に手が離され、二人は遠心力と一緒に地面を転がることとなった。

382: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:59:15.37 ID:O8Vs3+kmO
花陽「凛ちゃん!? 穂乃果ちゃん!?」

真姫「花陽! 目を逸らしたら駄目!」

真姫「凍りなさい! 《戒めよ極氷の息吹》(ブリザード・シャックル)!」

吹き荒れる極北の吹雪が竜巻となってツバサへと迫る。

猛然と迫る自然の脅威に、ツバサは笑みを崩さない。

ツバサ「はぁぁぁぁぁぁっ!」

竜巻に向けて突き出された拳が暴風を引き起こし、真姫の技を飲み込み、そのまま打ち消した。

真姫「っ…… 《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

花陽「 《縛鎖の蔓》(バインバインド)!」

ツバサ「温すぎるッ!」

383: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 00:59:51.92 ID:O8Vs3+kmO
迫りくる無数の氷の槍を片手で弾き飛ばし、体を捉えようとする蔦を腕の一振りで引きちぎる。

歩みを止めるどころか、遅くすることさえできない。

真姫「あり得ない……」

ツバサ「いいや、なくはないさ」

真姫「っ!?」

ツバサ「二人目」

鋭く放たれた蹴りが胸を抉り、大きく空に舞い上がった真姫の体は、そのまま地面へと叩きつけられた。

花陽「あ……あ……」

ツバサ「ふむ……あんまり戦い慣れはしていないようだね」

ツバサ「安心して、少し痛いだけだから」

384: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:00:30.79 ID:O8Vs3+kmO
ぎゅっと拳を握るツバサを前に、花陽は足が動かすことができない。

何をしても無意味だという絶望に、体が動いてくれなくなっているんだ。

凛「かよちんから離れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

怒号と共に繰り出される蹴りを、ツバサはなんなく受け止める。

ツバサ「そうやって誰かを守ろうとする心、嫌いじゃないよ」

ツバサ「でも、それならもう少し考えた方がいい」

凛「うぁっ!?」

掴んだ足を大きく上下に振り、そのまま地面へと叩きつける。

385: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:01:12.09 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「させないッ!」

後から追いついてきた穂乃果が、凛に拳を振りかざすツバサの背後を捉える。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁ! 炎! 拳!」

ごうごうと燃え盛る拳。

穂乃果「ヒートストライクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

英玲奈を倒した必殺技。

その拳に力を全て乗せ、放つ。

ずどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんん!!!

激しい爆音と熱気が辺りを支配する。

それは、ツバサを倒すための唯一の希望。

穂乃果「……う、そ」

だが、ツバサは倒れない。

穂乃果の拳は、ツバサになんなく受け止められていたのだ。

386: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:01:57.29 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「なん……で、どう……して……」

ツバサ「衝撃は八勁でかき消した」

渾身の一撃を受け止められて、穂乃果の身体から力が抜け落ちる。

ツバサ「炎……か。ということは貴女が英玲奈を倒したのね?」

ツバサ「この程度なら英玲奈が倒されることはないと思うんだけど……もしかして、まだ何か隠してる?」

ツバサ「それなら、早く見せてくれないかな」

穂乃果「……っ」

ツバサ「……そう、見せる気はない、と」

ツバサ「それなら、退場してもらおうかしら」

穂乃果「かっ……っ!」

深く深く腹にめり込んだ拳が引き抜かれ、穂乃果の身体が崩れ落ちる。

387: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:02:30.73 ID:O8Vs3+kmO
花陽「ほ、穂乃果……ちゃん……」

ツバサ「貴女も、やる気がないなら寝ていなさい」

花陽「ぎっ!?」

顔に走る激痛。

鼻から垂れる熱い感触と一緒に、花陽も地面へと倒れこんだ。

凛「っ……かよ、ちん……」

ツバサ「さて、残ったのは貴女一人ね」

ツバサ「全員、思ったより歯応えがなかったけど、貴女は面白そうだから最後まで残しちゃった」

ツバサ「さ、続けましょう」

388: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:03:04.86 ID:O8Vs3+kmO
凛「っ……うぁぁ!」

足に力を込め、全力で地面を蹴る。

花陽にやったように顔を殴ってやろうとした拳は前と同じように受け止められ、逆に顔を殴られる。

凛「づ……ああああ!」

殴られながらも必死に右脚を伸ばし、強くツバサを蹴ろうとするが、お返しとばかりに腹に蹴りを入れられる。

ツバサ「いいわ、もっと足掻いてみなさい!」

凛「っ!」

389: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:03:41.82 ID:O8Vs3+kmO
距離を取ろうと大きく後ろに飛ぶ凛。

だが、その動きはもちろんツバサに補足されている。

ツバサ「そんな大きな隙……殴ってくれって言ってるようなものよ!」

凛「『ばりあー!』」

翳している凛の手の前に現れたのは、見えない大気の壁。

だが、そんなものは何の役にも立たないことは明白だ。

ツバサ「はぁぁぁぁぁ!」

花陽「《荊棘の城塞》(ソーン・プロテクション)!」

凛とツバサの前に現れたのは巨大な茨の壁。

凛を守るように、現れたその壁は、ツバサの攻撃を僅かに送らせ、凛の足場を作ることに成功した。

390: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:04:17.19 ID:O8Vs3+kmO
凛「っはぁ……はぁ……」

どさり、と衝撃で倒れ込む凛。

直撃はしていないものの、先程からの攻防で既に満身創痍だ。

ツバサ「まだ意識があったのね」

だが、ツバサからの追撃はこない。

ツバサの注意は、二人の戦いに割り込んだ者へと向けられていた。

ツバサ「これ以上戦いに水を差されても興醒めだし、先に止めを刺しておきましょうか」

凛「っ!」

花陽の元へと歩みだしたツバサの足を、もがくように掴む凛。

そんな凛の頭は、石ころのように蹴り飛ばされる。

391: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:04:53.87 ID:O8Vs3+kmO
凛「うぐっ……!」

ツバサ「……この手を離しなさい」

凛「嫌だ……かよちんは殺させない……ッ!」

ツバサ「そう……わかったわ」

ツバサ「動けない相手をいたぶるのは趣味じゃ無いけど」

ツバサ「貴女から先に殺してあげるッ!」

ツバサは少し残念そうに目を細めると、殺意の拳が凛へと振り降ろす。

そして、その拳は、ボロボロになった凛の体を貫━━━━

ガシッ

392: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:05:54.01 ID:O8Vs3+kmO
掴まれた拳。

凛を殺すはずの一撃が、目の前で受け止められているという事実に、初めてツバサに動揺が走る。

ツバサ「なん……ですって……」

凛「……凛が死んだら、次はかよちんが殺される」

約束したから。

凛「だから……凛も絶対殺させないッ!」

彼女を守ると約束したから。

凛「かよちんを死なせないために……」

そして、凛が死んだら、悲しむから。

凛「かよちんを守る凛を死なせないために……」

だから、絶対に。

凛「凛は………貴女を倒すッ!!」

ごおっ、と巻き起こる暴風が、二人を、周囲を飲み込む。

『守りたい』という思いが、一人の少女の扉を開いた。

393: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:06:32.21 ID:O8Vs3+kmO
ツバサ「これは……」

暴風と共に現れたのは、三匹の猫。

敵だと認識しているかのように、獰猛な目をツバサへと向けている。

凛「……行くよ! 」

ぐっと地面を蹴って凛がツバサへと駆け出す。

先程の戦闘とは対して変わらない様子に少し残念だと思いながらも、こちらに向けて放たれた腕を掴もうと手を伸ばし━━━━

凛「『かそくそーちっ!』」

一瞬で間合いを詰めた凛の早さに対応しきれず、空を掴む手。

首を振り、迫り来る右ストレートをすんでのところでかわす。

394: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:07:27.85 ID:O8Vs3+kmO
ツバサ「……面白い!」

崩れた体勢から拳を放つと、後ろに飛んで距離を取ろうとする。

能力が変わっても癖は変わらない。

そのまま追撃をしようとツバサも地面を強く蹴る。

凛「『にだんジャンプッ!』」

だが、ツバサはまたもや驚愕することになる。

後方に飛んだはずの凛が、空中で反転してこちらに向かってきたのだから。

ツバサ「それならっ……なっ!?」

ずしゃり、と体を引き裂く痛み。

現れた猫が、足を切り裂いたのだ。

傷は軽症。

だが、吹き荒れる暴風と合間って、ツバサの反応は一瞬遅れることになる。

凛「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

おもいっきり放たれた右ストレートが、ツバサの顔へとのめり込んだ。

395: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:08:02.46 ID:O8Vs3+kmO
凛「はぁ……はぁ……」

ツバサ「っ……ははっ!」

凛「っ!?」

ツバサ「流石よ、顔を殴られるのなんて本当久しぶり」

ツバサ「それに、こんなに心踊る戦いをするのもね」

ツバサ「お礼に、本気で相手をしてあげるわ」

ツバサ「簡単に壊れないでね!」

ぞくっ、と背筋に走る悪寒に後ろに飛びすさる。

凛を守るために一匹の猫がツバサの足元へと襲いかかる。

ツバサ「ふふ、まるで鎌鼬ね」

ずしゅ、っと鋭い手刀に引き裂かれた猫は、霞となって空気へと消えた。

396: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:08:52.00 ID:O8Vs3+kmO
力では勝てない。

そう悟った凛は速さ勝負へと持ち込む。

凛「はぁっ!」

『かそくそーちっ!』は空気を押し出して体を動かし高速移動を可能とするもの。

『にだんジャンプッ!』は足元の空気を固定して、その場での踏み場を作るもの。

これに凛の持ち前の運動神経が加わり、召喚した猫がサポートをするという布陣だ。

ツバサの攻撃を避けて、一撃を加えてすぐに離脱する。

一見押しているようにも見えるが、それでは全くツバサにダメージを与えられない。

それどころか、一瞬でも集中力が切れれは、すぐにでも首を刎ねられるだろう。

397: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:09:28.64 ID:O8Vs3+kmO
だが、ツバサも攻めあぐねていた。

風を纏って襲いかかる凛は動きが全く読めない。

攻撃をのらりくらりとかわされ、お返しにと一撃とだろう叩き込まれる。

でも、次第にその均衡は崩れていくこととなる。

ツバサ「そこっ!」

凛「っ!」

ずしゃり、と二匹目の猫が切り裂かれた。

段々と動きに慣れてきているツバサに凛は焦りを覚える。

凛の力では、今のツバサにダメージを与えられない。

398: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:10:24.70 ID:O8Vs3+kmO
凛「!」

そんな時に、凛の視界があるものを捉えた。

これしかない、この化け物に勝つためには。

凛「『かそくそーちっ!』」

体を最大限に加速させ、ツバサへと襲いかかる。

体勢を低くして、反応しにくい下側からアッパーを打ち込む。

ツバサ「甘いッ!」

だが、当たらない。

避け際に飛んでくる足払いをジャンプして躱す。

ツバサ「捉えたッ!」

凛「『にだんジャンプッ!』」

空気を蹴って、空中へと跳ぶ。

ついてこれるならついてこい、そんな挑発じみた行いに、ツバサは笑みを浮かべる。

ツバサ「捉えたと言った!」

ごっ、と地面が抉れるほど力強く、凛を追ってツバサも空へと身を晒す。

399: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:11:10.80 ID:O8Vs3+kmO
凛「『にだんジャンプッ!』」

再び方向を変えようとした凛に、ツバサはやはり、笑みを浮かべたままだ。

ツバサ「そこッ!」

ツバサが手を凪ぐと、衝撃波となって凛の足元━━━━固定した空気を破壊する。

凛「っ!?」

ツバサ「ふふ、つーかまーえた」

咄嗟のことに反応できない。

凛には、迫り来るツバサをどうにかする手段がなかった。

ズチュッ

凛「がっああああああああああああああ!?」

ツバサの貫き手が、凛の体を貫いた。

400: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:11:53.24 ID:O8Vs3+kmO
ツバサ「恥じることはない」

ツバサ「貴女は私をこんなにも苦戦させたんだもの、誇ってもいいわ」

敗者に対する慰めなどではない。

ツバサは本心からそう思ったのだ。

凛「……ふふっ」

ツバサ「……何がおかしいの?」

だからこそ、彼女には解らなかった。

凛が笑った理由が。

既に勝利を確信してしまった彼女には。

凛「つーかまえた」

ツバサ「っ!?」

401: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:12:39.08 ID:O8Vs3+kmO
ツバサの視野が違和感を捉える。

巻き上がる砂埃に邪魔されながら違和感を探ると、そこにはあるべきものがなかった。

そう、倒したはずの、高坂穂乃果の姿が。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ツバサ「上ッ!?」

猫に連れられて、空の上から凄まじいスピードで落下してくる穂乃果。

だが、気づいた所で意味などない。

いくら力をもっていても、空中では身動きが取れないのだから。

穂乃果「裂空! 爆砕!」

身体に残るエネルギーを全て、右手に集める。

そして、一つの隕石のように己を燃やし、その拳を、解き放つ!

穂乃果「シュゥティングゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥスタァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


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