穂乃果「伝説の邪神……?」 前編 

402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:13:21.73 ID:O8Vs3+kmO
どごおおおおおおおおあおおおんんんん!!!!!

激しい爆音と共に、辺り一体が焦土と化す。

拳をすんでの所で左手でガードしたツバサは、ふんばる場所もなく、そのまま業火の炎と共に地面へと飲み込まれた。

穂乃果「っ……はぁ……凛ちゃん……だい……じょうぶ?」

凛「……もう、むりかも……」

穂乃果「あ、はは……それなら、早く病院に……」

ズザッ

穂乃果「……え?」

ツバサ「っ……やって、くれるじゃない」

そこには、倒したはずのツバサが立っていた。

引用元: 穂乃果「伝説の邪神……?」 

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403: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:14:08.98 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「そん……な……」

凛「……ばけもの……だにゃ」

全身全霊を込めた渾身の一撃をくらってもなお立ち上がるツバサに、穂乃果は愕然となる。

エネルギーを使い果たした、体は疲れて指一本動かない。

もう、勝つ手段は……。

ツバサ「……そんな顔しなくてもいいわ、貴女たちの勝ちよ」

穂乃果「え……?」

ツバサ「……はぁ、やっぱり折れてる」

ツバサ「本当、いつ以来かしらね、片腕持ってかれたの」

ツバサ「貴女のことを見くびっていたわ、名前を教えてもらってもいい?」

穂乃果「……高坂、穂乃果」

ツバサ「穂乃果……ね。貴女は?」

凛「……おしえない」

ツバサ「ふふ、嫌われたものね」

404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:14:51.74 ID:O8Vs3+kmO
ツバサ「それじゃあ私は帰るから、生きてたらまた会いましょう」

穂乃果「ま、待って……」

ツバサ「何?」

穂乃果「どうして、見逃してくれるの?」

ツバサ「……見逃したわけじゃない。片腕を折られたということは、私にとっては敗北なのよ」

ツバサ「私はまだ強くなれる」

ツバサ「次に戦う時はこの10倍は強くなってるから、楽しみにしてなさいよ」

穂乃果「は、はは……」

ツバサ「それじゃあね」

ザッザッザッ

405: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/28(日) 01:16:14.74 ID:O8Vs3+kmO
穂乃果「……行っちゃった」

凛「穂乃果ちゃん……そんな、ことより……」

穂乃果「うん……早く、皆を助けないとね……」

凛「今動けるのは穂乃果ちゃんだけなんだから、しっかりしてよ……」

穂乃果「いやぁ……それが、さっきので力を使い果たしちゃったみたいで……」

凛「や、役立たず……だにゃ……」

穂乃果「ひ、酷いよ……凛ちゃん……」

穂乃果「あ……だ、駄目だ、意識が……」

ドサッ

十数分後、爆発の様子を見にきた騎士によって、穂乃果たちは全員病院へと運ばれた。

413: 第9話:最後の宝玉を求めて 2015/01/11(日) 00:46:47.99 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「……暇だぁ」

「「「「…………」」」」

穂乃果「ぅぅ……ひーまーひーまー!」

にこ「うっさいわね! 静かにしてなさい!」

穂乃果「だってぇ、また病院生活なんだよ!? 暇すぎて死んじゃうよ!」

にこ「だからって騒ぐんじゃないわよ!」

にこ「看護婦さんなんて『また煩いのが来た』ってうんざりしてたじゃない!」

にこ「追い出されたらどうすんのよ!?」

414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:49:14.68 ID:PMVxAJUdo
真姫「それなら必要ないわ」

にこ「え?」

真姫「ここ、パパの経営してる病院だから」

にこ「…………」

花陽「す、凄い……まさか病院を持ってるなんて……」

凛「お金持ちは違うにゃー……」

真姫「煩いのは勘弁だけど、追い出される心配はないわ」

真姫「ただまあ、確かに退屈ね。にこちゃん、何か面白いことしてよ」

にこ イラッ

にこ「……そうですね、でしたら少し、お話をさせて頂こうと思います」ニコォ

415: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:50:54.42 ID:PMVxAJUdo
凛「(にこちゃんの笑顔が歪んでる気がする)」

花陽「(きっとこの間の戦いでお顔を殴られちゃったんだよ)」

凛「(……かよちんって、たまに天然入るよね)」

花陽「(え?)」

凛「でもそんなかよちんも大好きだにゃー」ギュー

花陽「わわっ///」

穂乃果「なんだろなんだろー」ワクワク

真姫「早くしなさいよ」

にこ「それではお話させていただきます」

416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:51:54.99 ID:PMVxAJUdo
昔々、ここに病院が立つ前のお話。

ここには一軒の小さな家と、一人の若者が暮らしていました。

若者は貧しいくらしをしていましたが、毎日田畑を耕し、神にお祈りをし、質素ながらも満足していました。

そんなある日、一人の女性が夜分に訪ねて来たのです。

美しい姿に惚れ込んだ若者は、道に迷ったというその女性を家に招き入れました。

女はあまり話をしようとせず、若者も、女の白い肌、美味しそうな太腿に目がいくばかりで、二人の間には沈黙が生まれました。

しかし、とうとう我慢しきれなくなった若者は、女に襲いかかります。

女は必死に抵抗しようとしましたが、とうとう組み伏せられ、そのまま食べられてしまいました。

417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:52:27.41 ID:PMVxAJUdo
花陽「あ……あああ///」

真姫「……? それがなんだっていうの?」

凛「人なんて食べても美味しくないと思うにゃー」

花陽「り、凛ちゃん、違うんだよ///」

穂乃果「うーん……面白い?」

にこ「まだよ。まだ話は終わってないの」

にこ「この話には続きがあってね」

418: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:53:59.72 ID:PMVxAJUdo
その事件は村では大騒ぎになりましたが、年が経つにつれてどんどん忘れさられ、そこには大きな病院が建てられました。

病院のおかげで、村の人々は病気になっても治療してもらうことができ、また、看病してもらうことができます。

そんなある日、怪我をして入院してしまった女の子が、夜にトイレに行きたくなりました。

壁を支えにゆっくり暗い廊下を進んでいくと、どこかから、ヒック……ヒック……という啜り泣きが聞こえてきます。

気になった少女が声の方に向かって進むと、廊下に横たわって泣きじゃくる女性が目につきました。

「どうして泣いているんですか?」と少女が聞くと、「大事な物を無くしてしまったんです。探しても、見つからなくて」と女性が答えます。

可哀想だな、っと思った少女が「私も一緒に探してあげます」と言うと、女性は「もし見つからなかった、貴女のをください」と答えます。

ちょっと困りながら「私にあげられるものでしたらいいですよ。何が欲しいんですか?」と言うと、女性はゆっくりと振り向いて口を開きます。

「お前の目玉だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

419: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:54:56.90 ID:PMVxAJUdo
にこ「それは、若者に目を食べられた女性の怨念だったの」

にこ「そして、その少女は次の日、遺体で発見された」

にこ「女性のように、目玉がくり抜かれた状態で……ね」

にこ「それ以来、夜な夜な目を探して彷徨う女性の姿が目撃されるようになったの」

にこ「もし捕まったら、少女と同じように目玉を取られちゃうかも」

にこ「だから、夜はあんまり……部屋から出ない方がいいわよ?」

にこ「ふふっ」

420: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:57:16.64 ID:PMVxAJUdo
花陽「」

凛「ち、ちょっと怖かったにゃぁ……」

凛「それでかよちん、何が違うの?」

花陽「えっ?」

凛「食べられるって、何が違うの?」

花陽「それは、その、ええと……///」

凛「ねぇ、教えてよ?」

花陽「ぅ……ぅぅぅ……///」

花陽「凛ちゃんのえっち!!」バサッ

凛「な、なんでそうなるの!?」

421: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 00:59:09.74 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「こ、怖かったぁ……にこちゃん、怖い話するなら先にそう言ってよ!」

にこ「ふん、心構えがあったら薄れるでしょ」

にこ「それで、どうだった? 少しは面白かった?」

真姫「」

にこ「ん……?」

真姫「」

にこ「真姫ちゃん?」

真姫「はっ!?」

真姫「な、なにかしら?」

にこ「…………」ニヤァ

422: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:00:17.70 ID:PMVxAJUdo
にこ「真姫ちゃん……もしかして怖かったの?」

真姫「は、はぁ!? 怖いわけないでしょ!」

真姫「こ、このくらいなんともないわよ!」

にこ「へぇ、そうなんだ」

にこ「それじゃあ夜も遅いし、そろそろ寝るにこ?」ソッ

真姫「ま、待ちなさい!」

にこ「ん?どうしたの??」

真姫「さ、さっきの話し……にこちゃんが怖がってるといけないから、一緒に寝てあげてもいいのよ?」

にこ(にこが話してるのに怖がるわけないでしょ)

423: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:02:20.06 ID:PMVxAJUdo
にこ「うーん、ちょっと怖いけどぉ、真姫ちゃんに迷惑かけちゃうから我慢するにこっ」

真姫「べ、別にたまにくらい迷惑かけてもいいのよ?」

真姫「わ、私は心が広いから……」

にこ「ううん、でも駄目。我慢するね」サッ

真姫「ま、待って……」ギュッ

にこ「!?」

真姫「め、命令よ……そ、側にいなさい……」カァァ

にこ「…………」

にこ(こうしてると、なんだか妹みたいね)

にこ「ごめんね、怖がらせて」

にこ「手を繋いであげるから、安心して寝なさい」ナデナデ

真姫「……うん」

にこ(いつもこうなら可愛いのに)

にこ「っと、穂乃果、あんたも━━」

穂乃果「すやぁ……」

にこ「……いつの間に寝てんのよ」

ーーー

ーー


424: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:03:49.69 ID:PMVxAJUdo
ーーーープラーミャ遺跡

穂乃果「ここに宝玉があるの?」

にこ「ええ、情報が本当ならね」

凛「なんでこんな山奥に作ったんだろうね」

花陽「防衛するためだからしょうがないよ」

真姫「はぁ……虫もたくさんいるし本当最低だわ」

真姫「さっさと終わらせて帰りましょう」

穂乃果「そうだね!」

425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:05:53.38 ID:PMVxAJUdo
コツコツコツ

にこ「……そこ、罠があるから踏まないように」

穂乃果「はーい!」

にこ「…………ん?」

穂乃果「どうしたの?」

にこ「この岩、動くわね」

ゴゴゴゴ

穂乃果「わわっ!? 道が出てきた!?」

にこ「隠し通路……か。ということは、さっきの道は行き止まりね」

426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:07:17.01 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「…………」

にこ「何よ」

穂乃果「いや、にこちゃんって実は凄いんだなって」

にこ「馬鹿にしてんの!?」

凛「いつもがあれだからしょうがないにゃー」

花陽「り、凛ちゃん!」

にこ「あんたらがいつもにこをどーいう目でみてるか解ったわ」

穂乃果「ま、まあまあ。そのおかげで皆助かってるんだし」

にこ「はぁ……」

427: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:08:28.46 ID:PMVxAJUdo
にこ「……ん?」

穂乃果「あれ……道がない?」

隠し通路を進んだ先にあったのは、巨大な吹き抜け。

下には暗い闇が続き、底を覗くことができない。

凛「行き止まりなのかな?」

にこ「そんなはずないわ……ちょっと待ってなさい」

にこ ジッ

真姫「何を見てるの?」

にこ「……向こうに扉があるわね」

花陽「えっ?」

穂乃果「そうなの? 真っ暗で何も見えないけど」

凛「凛も何も見えないよ」

428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:09:24.34 ID:PMVxAJUdo
にこ「とすると……どこかに仕掛けが……ん?」

にこが空へと視線を泳がせると、壁画が目に飛び込んできた。

そこに描かれていたのは、大きな太陽と崇拝するかのように跪く人々。

そして、崩れ落ちた塔。

にこ「あれは……とすると……」ブツブツ

真姫「にこちゃん? 何があったの?」

にこ「ちょっとね……穂乃果、ちょっといい?」

穂乃果「どうしたの?」

にこ「あんた、炎って飛ばせる?」

穂乃果「炎……うーん、どれくらい?」

にこ「ざっと200mくらいね」

穂乃果「む、無理かなぁ……」

にこ「そう……」

429: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:10:04.81 ID:PMVxAJUdo
花陽「炎がどうしたんですか?」

にこ「ここの仕掛けを突破するのに炎が必要なのよ」

真姫「仕掛け? もっと詳しく話しなさいよ」

にこ「上の方の壁画に、太陽とそれを崇拝する人が描かれているのよ」

にこ「それで、もしかすると炎が関係するんじゃないかって思って探したら、向こうの方に松明を発見したの」

真姫「つまり、そこに火を灯せ……と」

にこ「そ。だから穂乃果に頼もうとしたんだけど」

穂乃果「あ、あはは……」

にこ「何か、他の手段を考えないと……」

花陽「私がやります!」

430: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:11:16.68 ID:PMVxAJUdo
にこ「花陽……?」

にこ「あんた、炎なんて使えないでしょ」

花陽「うん。だから、穂乃果ちゃんに協力してほしいの」

穂乃果「穂乃果? 別にいいけど、どうするの?」

花陽「えっと……《白百合の砲台》(リリー・ショット)!」

花陽の声と共に姿を現したのは等身大の百合の花。

号令を待つ砲台のように、その白い花弁を直立させている。

花陽「にこちゃん、場所はどこですか?」

にこ「あっち……もう少し左上の方に向けて……そこね」

431: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:13:03.30 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「それで、穂乃果はどうすればいいの?」

花陽「お花の前で、炎を出しておいてもらえますか?」

穂乃果「? いいけど……燃えろッ!」

ぼっ、と穂乃果の手のひらに現れる火の玉。

穂乃果はそれを花の先端へと近づける。

花陽「それではいきます……」

花陽「てぇーーーーー!!!」

ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!

耳をつんざく音と共に白百合から放たれた弾丸が、炎を纏い闇の彼方へと飛んでいく。

ぼっ。

灯る松明。

闇の彼方に現れた小さな太陽は、だんだんとその輝きをましていき……。

ごごごごごごごごごごごごご!

地ならしの音をたてながら、大きな橋が目の前に降りてきた。

432: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:15:17.10 ID:PMVxAJUdo
凛「かよちん凄いにゃー!」ダキッ

花陽「えへへ、やったよ、凛ちゃん!」

穂乃果「ぅ……ぁ……」ジーン

花陽「ほ、穂乃果ちゃん!?」

穂乃果「や、やるならやるって言ってて欲しかった……なぁ……」ヒリヒリ

花陽「ご、ごめんなさい!」

にこ「それくらい我慢しなさい。それより、道ができたんだから行くわよ」

433: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:17:15.50 ID:PMVxAJUdo
ギシギシ

穂乃果「それにしても……手の込んだことするよね」

穂乃果「もっと簡単に取らせてくれてもいいのにー」

にこ「侵入者に宝玉を取られるわけにはいかないし、当然と言えば当然よ」

真姫「そうね。それに、ここの洞窟は能力者がくることを前提に作られているみたいだしね」

凛「? 何でそんなことが解るの?」

凛「火をつけるぐらいなら、道具さえあればできると思うんだけど」

真姫「普通の道具じゃあそこまで届かないわよ」

真姫「第一、まず壁画と、目当ての松明を見つけることすらできない」

434: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:18:06.12 ID:PMVxAJUdo
花陽「そう思うと、やっぱりにこちゃんって凄いですよね」

にこ「ふふん、当然よ」

にこ「って、そろそろ橋が終わるわね」

にこ「扉の向こうに何があるのかわかんないけど、気を抜かないようにね」

凛「もうゴールだったりしないかな?」

にこ「あるわけないでしょ……っと」ギィッ

にこ「……これは」

扉の先にあったのは、巨大な広間。

その中央には石碑が立てられ、壁には9人の人間が描かれている。

435: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:19:47.18 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「なんだろ、これ?」

にこ「石碑ね」

凛「……文字がいっぱい書いてあるにゃ」

穂乃果「よし、にこちゃん任せた!」

にこ「はぁ!? 読む努力くらいしなさいよ!」

穂乃果「いやほら、にこちゃんって凄いしさ?」

凛「そうそう、にこちゃんは凄いからね!」

にこ「あんたら……馬鹿にしてるでしょ!」

にこ「まあいいわ、読むわよ」

436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:21:08.97 ID:PMVxAJUdo
ある所に、9人の賢者がいました。

9人は皆仲良しで、毎日幸せに過ごしていたのです。

しかし、そんなある時、その幸せに影が差し込みました。

なんと、ある夜に二匹の悪い悪魔がやってきて、二人を殺して成り代わってしまったのです。

翌日発見された二人の遺体はぐちゃぐちゃになっていて、誰のものかはわかりません。

すぐに全員で集まって、誰が悪魔の成り代わりなのかを話し合うことになりました。

賢者達は、それぞれの考えを話します。

ただし、悪魔達もおとなしくしているわけではありません。

嘘の話しをして、皆を混乱させようと企みました。

437: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:23:16.70 ID:PMVxAJUdo
賢者は以下の9人


紫の巫女

水色の老婆

赤い踊子

黄色の少年

緑の少女

青い幼女

白い姫君

橙色の漢

桃色の覆面



それぞれの話を元にして、悪魔達を探し出し、偽りの姿を同時に断罪せよ。

438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:25:10.85 ID:PMVxAJUdo
紫の巫女「うちの勘では赤い踊子はんと青い幼女はん、橙色の漢はんは本物どす」

水色の老婆「緑の少女ちゃんと青い幼女ちゃん、桃色の覆面は本物かねぇ」

赤い踊子「この私が悪魔に入れかわられるなんてヘマするわけないでしょ。他の人たちは知らないけど!」

黄色の少年「くんくん、水色の老婆、緑の少女、青い幼女、白い姫君の中に偽物が1人混じってる!僕の鼻はごまかせないよ!」

緑の少女「紫の巫女さんと黄色の少年さん、それから橙色の漢さんは本物だと思います」

青い幼女「緑の少女は本物じゃ!わらわが奴を見間違えるはずが無かろう!」

白い姫君「紫の巫女さんは本物です。そう夢のお告げがありました」

橙色の漢「…………」

桃色の覆面「緑の少女、白い姫君、橙色の漢の中には偽物がいるよ。人数まではわからなかったけど」

439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:27:47.71 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「……なに、これ?」

凛「……頭いたいにゃ」

にこ「…………」ダラダラダラ

穂乃果「にこちゃん解った?」

にこ「え? あ、あったり前でしょ!」

にこ「余裕よ、よ・ゆ・う!」

にこ「もう見た瞬間に解っちゃったわ!」

穂乃果「凄い! それで、誰が答えなの?」

にこ「え、えーと……それは……」ダラダラ

凛「やっぱり解ってないんだにゃー」

にこ「うっさいわね!」

440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:28:30.71 ID:PMVxAJUdo
凛「かよちん、解けた?」

花陽「う、うーん……」

穂乃果「ねぇねぇ、なんで橙色の漢さんは喋ってないの?」

にこ「! そ、それよ!」

穂乃果「え?」

にこ「き、きっと橙色の漢は悪魔だったんだけど、怪しまれるのが怖くて何も言えなかったのよ!」

穂乃果「おお、流石にこちゃん!」

にこ「ふふ、となると後一人ね……こんなの自分が本物とか言ってる赤い踊子ちゃんが犯人で決まり━━」

真姫「そんなわけないでしょ」

441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:30:28.35 ID:PMVxAJUdo
にこ「ぐっ……」

穂乃果「違うの?」

真姫「当たり前よ。第一、これは全員の話を総合して矛盾を見つける問題よ」

真姫「証言が怪しいから偽物だなんてあるわけないじゃない」

にこ「ふ、ふーん……そこまで言うなら、真姫ちゃん、もう誰が偽物か解ってるんだー?」

真姫「ええ、解ってるけど」

にこ「なっ!?」

真姫「というか、なんで解らないの?」

真姫「こんなの簡単じゃない」

穂乃果「誰が偽物なの? 教えてよぉ?」

真姫「ふふ、しょうがないわね」

真姫「この真姫様の華麗な推理を披露してあげるわ」

442: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:31:10.85 ID:PMVxAJUdo
真姫「まず始めに注目するのは『紫の巫女』」

真姫「こいつが本物ってことが解るわね」

穂乃果「どうして?」

真姫「『緑の少女』と『白い姫君』が本物と言ってるからよ」

真姫「もしも『紫の巫女』が偽物なら、この二人も嘘を言ってることになる」

真姫「でも、悪魔の数は二人。それだと前提がおかしくなる」

真姫「だから、この『紫の巫女』は本物よ」

穂乃果「なるほどなるほど」

443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:32:48.12 ID:PMVxAJUdo
真姫「正直、ここが解れば後は簡単よ」

真姫「本物の『紫の巫女』が『赤い踊子』『青い幼女』『橙色の漢』は本物って言ってるから確定」

真姫「『青い幼女』が『緑の少女』を本物と言ってるから確定」

真姫「『緑の少女』が『黄色の少年』を本物と言ってるから確定」

真姫「残ったのは『水色の老婆』『白い姫君』『桃色の覆面』の三人」

真姫「『白い姫君』の証言、『紫の巫女』が本物、というのは正解」

真姫「よって、『白い姫君』も本物」

真姫「偽物は、『水色の老婆』と『桃色の覆面』」

444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:33:57.55 ID:PMVxAJUdo
真姫「どう? 私の推理は」

穂乃果「凄い! 凄いよ真姫ちゃん!」ダキッ

真姫「うぇっ!? き、気安く抱きついてんじゃないわよ!」

穂乃果「えー、いいじゃんー」プクー

にこ「へ、へー……や、やるじゃない」

真姫「ま、このくらい私にとっては朝飯前ね」

真姫「そんなことより、さっさと壊すわよ」

穂乃果「何を?」

445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:35:06.93 ID:PMVxAJUdo
真姫「……石碑に書いてあったでしょ、偽物を断罪しなさいって」

真姫「あれはおそらく、偽物の壁画を破壊しろってこと」

真姫「だから、こうやって……《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

どごん!

がががががががががががががが!

現れた二本の氷の槍が二つの壁画を貫くと、行き止まりだと思っていた石壁が動き、扉が出現する。

真姫「さ、先に進むわよ」

コツコツコツ

446: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:36:37.23 ID:PMVxAJUdo
長い長い一本道。

所々に現れる壁画に導かれるようにその道のりを歩くと、一つの扉と、立て札が現れた。

にこ「『汝、宝玉を求むるなら、己に打ち勝つべし』」

凛「どういうこと?」

花陽「宝玉が欲しいのなら、自分に勝てってこと……かな」

花陽「でも、自分に勝つって……?」

穂乃果「考えてもしかたないよ!」

穂乃果「とりあえず、入ってみよう!」

にこ「ちょ、待った、まちなさーー」

キィ

ーーー

ーー


447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:37:51.13 ID:PMVxAJUdo
にこ「…………ここは?」

にこが辺りを見回すと、そこには広い空間があった。

皆の姿はない。

そんな時、視界の端を横切る人影に気づく。

にこ「誰……え?」

にこ『…………」

そこにいたのは、にこ自身。

目の前に、自分と全く同じ少女が、立っていたのだ。

448: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:38:55.12 ID:PMVxAJUdo
にこ「何よ……これ」

にこ「……まさか、自分に打ち勝てって……っ!」

さっと膝を屈めて姿勢を低くすると、さっきまで顔があった所をナイフが横切る。

にこ「っ……やっぱり!」

屈んだまま右手を相手のお腹に繰り出すと、地面を蹴って距離を取られる。

にこ『『影縫い』!』

にこ「っ!?」

聞き覚えのある技名と共に放たれた刃物を蹴り飛ばす。

449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:40:09.83 ID:PMVxAJUdo
にこ「こいつ……まさか!」

にこ『『目暗し』!』

闇に覆われる視界。

今まで見えていた風景は黒一色に閉ざされ、敵がどこにいるのか解らなくなる。

にこ「やっぱり、こいつ……」

こつこつ、と聞こえる足音。

だが、やはり姿を見ることはできない。

にこ「にこと……同じ技を……!」

にこの背中に、鋭い刃物が振り下ろされた。

450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:40:59.58 ID:PMVxAJUdo

ーーーーーーーーーーーーーー

花陽「ふっ……!」

花陽『…………』

ぎりぎりと絡み合う触手。

二人の操る触手が、一進一退の攻防を繰り返しているのだ。

花陽「なんで、いきなり攻撃を……」

花陽『凛ちゃん、助けて』

花陽「え……?」

花陽『怖い、嫌だ、戦いたくない』

花陽「や、やめっ!」

ぎぎぎぎ

花陽「っ!?」

自分の本音を喋るもう一人の自分。

それに動揺してしまい、触手の均衡が崩れる。

451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:42:07.93 ID:PMVxAJUdo
花陽「まっ……がっ!?」

必死に食い止めようとするが間に合わず、一本の触手の横薙ぎで、体を大きく吹き飛ばされる。

花陽『《縛鎖の蔓》(バインバインド)』

花陽「っ……ぁ……」

ぎちぎちと体に纏わりつく蔓に体が固定され動けなくなる。

花陽『怖くて体が動かない、お願い、誰か助けて」

花陽『そうやって、誰かに助けを求めることでしか、生きられない』

花陽「ち、ちが……ぅ……」

自分の心を抉る言葉、強制的に自分の中の弱い部分と対面させられる。

身動きがとれなくなった花陽はそれを受け入れるしかない。

452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:45:21.20 ID:PMVxAJUdo
花陽『でもいいよ、私には凛ちゃんがいるもん』

花陽『凛ちゃんなら、いつでも私を守ってくれる』

花陽「……そんな、こと……」

花陽『ううん、皆だって、私を守ってくれる』

花陽『だから、私は弱いままでもいいんだ』

花陽「違う……そんなの……!」

花陽『便利な仲間を持って、幸せだ━━』

花陽「違うッ!」

花陽『━━━━』

花陽「《蔦葛の伴奏》(クリープ・メロディ)!」

地面から伸びる大量の蔦。

それが旋律となって自分を縛る蔓と、相手を飲み込んでいく。

花陽「皆……大切な仲間」

花陽「助けてもらうだけだなんて、仲間なんかじゃない」

花陽「私だって、皆を助けたい!」

花陽「だから、私も頑張らないといけない!」

453: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:46:12.36 ID:PMVxAJUdo
ーーーーーーーーーーーーーー

凛「『かそくそーちっ!』」

凛『『かそくそーちっ!』』

同時に加速する二人。

ぶつかる拳。

交差する蹴り。

全く同じタイミングで繰り出される攻防は均衡しており、崩れない。

凛(凛と全く同じをしてくる……厄介だにゃ)

凛(早くしないと……)

凛『かよちんが危ない』

凛「え……?」

454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:47:05.42 ID:PMVxAJUdo
凛『早くこいつを倒して、かよちんの所に言ってあげないと」

凛「凛の心を……」

凛『凛がこんなに苦戦してるんだもん、かよちんじゃあ勝てないよ』

凛「そんなこと、凛は思って━━がっ!?」

心の僅かな動揺が隙となる。

お腹を抉る拳。

保たれていた均衡が、ゆっくりと傾き出した。

455: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:47:49.68 ID:PMVxAJUdo
ーーーーーーーーーーーーーー

真姫『情けないわね、こんな奴一人倒せないなんて』

真姫「っこの!」

真姫「《戒めよ極氷の息吹》(ブリザード・シャックル)!」

真姫『《戒めよ極氷の息吹》(ブリザード・シャックル)!』

ぶつかる二つの吹雪は、お互いに打ち消しあい、ゆっくりと消えていく。

真姫『早く倒さないといけないのに』

真姫『また、皆の足を引っ張ってしまうの?』

真姫「っ!?」

456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:48:25.59 ID:PMVxAJUdo
真姫『いつも戦闘で活躍するのは穂乃果と凛』

真姫『あの二人はもう覚醒したというのに、自分にはその兆候がない』

真姫「っ……うるさい!」

真姫『私には才能がある』

真姫『でもそれは思い違いで、本物の才能を前にしたら霞んでしまうんじゃないの?』

真姫『もしかすると……私一人だけ、覚醒できな━━』

真姫「黙りなさいッ!」

457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:51:08.01 ID:PMVxAJUdo
真姫「さっきから黙って聞いていれば……人のこと馬鹿にしまくって!」

真姫『…………』

真姫「私を馬鹿にした奴がどうなるか、教えてあげるわ」

真姫「《麗しき湖氷の舞姫》(ビューティフル・マーチ)!」

真姫『《麗しき湖氷の舞姫》(ビューティフル・マーチ)!」

真姫の前に現れたのは輝く氷の道。

何処へでも作られる道は、空を滑ることをも可能とする。

真姫「初めて踊る相手が自分の偽物だなんて……ま、我慢してあげるわ」

真姫「さあ、舞踏会を始めましょうか」

二人の作る道が空へと伸びた。

458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:52:36.26 ID:PMVxAJUdo
ーーーーーーーーーーーーーー

穂乃果「ま、待って! ちょっと待って!」

穂乃果『問答無用!』

穂乃果「な、なんで攻撃してくるの!?」

穂乃果「逢えば戦わなくちゃいけないってわけでもないでしょ!?」

穂乃果『どっちなの!』

穂乃果「うっ……」カアッ

穂乃果『恥ずかしく思うなら言うなッ!』

459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:53:03.74 ID:PMVxAJUdo
もう一人の自分と相対した穂乃果は逃げ回っていた。

掴みかかろうとする腕を弾き、拳を避け、ひたすら防御に徹する。

穂乃果『戦わずに済むはずなんてない』

穂乃果『そんなことがあるなら、ことりちゃんは死ななかった』

穂乃果「っ!?」

穂乃果『もし私が風邪をひかなかったら、どうなっていたんだろう』

穂乃果『もしかすると、ことりちゃんは死なずにすんだんじゃないのか?』

穂乃果「そんな、こと……」

穂乃果『私のせいで……ことりちゃんは死んだ!』

穂乃果「づっ!?」

防ぎきれなかった拳が左肩を撃ち抜き、後ろに弾き飛ばされる。

すぐに襲いかかる追撃。

迫ってくるもう一人の穂乃果を足払いで牽制し、態勢を立て直す時間を作る。

460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:53:38.18 ID:PMVxAJUdo
穂乃果『海未ちゃんは、自分のすることを見つけた』

穂乃果『邪神を復活させて、ことりちゃんを生き返らそうとしている』

穂乃果『それなのに、私は何もできていない』

穂乃果『騎士になって、皆を助けて、得られる満足感で自分の悲しみを消そうとしてるだけ』

穂乃果『それなのに、その役目を満足に果たせない』

穂乃果『海未ちゃんに負けて、希ちゃんに負けて、ツバサちゃんに見逃してもらって』

穂乃果『せっかく覚醒したと思ったのに、もう一度使うこともできない』

穂乃果「っ……!」

461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:54:35.93 ID:PMVxAJUdo
穂乃果『本当にこのまま進んでいいの?』

穂乃果『それが正しい道なの?』

穂乃果『今からでも、宝玉を敵に全部渡して邪神を蘇らせたほうがいいんじゃないの?』

穂乃果『こんなに迷っていて、本当に邪神の復活を阻止できるの?」

穂乃果「…………」

穂乃果『逃げたいよ……こんな役目、背負いたくない』

穂乃果『英雄になんてなりたくない!』

ごっと放たれた拳が、穂乃果の胸へと吸い込まれる。

だが、もう一人の穂乃果が感じたのは、妙な手応え。

これ以上、拳が前に進まないんだ。

462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:56:40.81 ID:PMVxAJUdo
疑問を感じたもう一人の穂乃果は、本物の穂乃果へと目を向ける。

そこに映っていたのは、優しい瞳。

穂乃果『……なんで』

穂乃果「そっか……そういうことだったんだね」

穂乃果『何……を……』

穂乃果「貴女は、私の心の弱い部分なんだ」

穂乃果『!』

穂乃果「だからこうやって、不安ばっかり背負ってる」

穂乃果「悲しい目をしている」

穂乃果『やめて……』

463: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:57:19.67 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「確かに、私も不安だよ」

穂乃果「敵は強いし、死んじゃうかもしれない」

穂乃果「でも、皆がいてくれるから」

穂乃果『っ…………!』

穂乃果「私に期待してくれる人、信頼してくれる人、頼ってくれる人」

穂乃果「そして、離れていても信じてくれている人」

穂乃果「だから、私は前を向いて歩ける」

穂乃果「希望を持つことができるッ!」

464: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 01:59:06.09 ID:PMVxAJUdo


穂乃果『うるさい! そんなもの!』

穂乃果「貴女だって、その一つだよ」

穂乃果『え……?』

穂乃果「その不安も、悲しみも、私を作る大事なもの」

穂乃果「だから、私は絶対に貴女を忘れたりしない」

穂乃果「貴女も連れて、私は邪神の復活を阻止してみせる!」

穂乃果『…………』

穂乃果「だから……心配しないで」

穂乃果「怯えなくても、いいんだよ」

穂乃果『ぁ…………』

そっと抱きしめられた温もり。

不安と悲しみしか知らない、氷の壁を溶かしてくれる暖かさ。

皆が目を背けて、忘れようとする物を、目の前の少女は一緒に行こうと言ってくれる。

そうだ、それこそが、私━━━━。

ーーー

ーー


465: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 02:00:52.81 ID:PMVxAJUdo
穂乃果「ここは……」

気がつくと、目の前には祭壇があった。

そこには、宝玉が光り輝いている。

穂乃果「そっか……私……」

穂乃果「そうだ、皆は!?」

くるっと振り返ると、そこには全員の姿があった。

少し顔が曇っていたり、吹っ切れたような顔をしていたり、表情は様々だ。

凛「かよちん」

花陽「どうしたの?」

凛「凛は、かよちんのこと、信じてるからね」

花陽「え……?」

凛「本当に、信じてるんだから」

花陽「……うん。ありがとう、凛ちゃん」ギュッ

466: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 02:01:27.02 ID:PMVxAJUdo

にこ「まったく、お暑いことで」

真姫「…………」

にこ「どうしたのよ、黙っちゃって。何かあっの?」

真姫「別に……」

にこ「そう、それならさっさと宝玉を貰って帰りましょう」

穂乃果「そうだね、そうしよっ」

「その必要はないわ」

穂乃果「えっ━━」

467: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/11(日) 02:02:58.85 ID:PMVxAJUdo

高く響き渡る声。

それと共に全員の間を稲妻が駆け抜ける。

穂乃果「がっ!?」

全身が痺れて動かない。

他の皆も悲鳴をあげながら地面へと倒れこんだ。

穂乃果「な、に……が」

稲妻が人の形を形成し、金髪が綺麗に靡く。

目の前に現れたのは、背の高い、青い瞳をした少女。

その少女が、倒れた穂乃果達をじっと見下ろしている。

「これで、全て揃う」

絵里「邪神を復活させるための、宝玉が」

475: 第10話:戦慄の花園 2015/01/18(日) 00:22:43.85 ID:y0EsyzNV0
絵里「これが、この遺跡の宝玉ね」ゴトッ

穂乃果「ま……っ……」

絵里「貴女達のおかげで楽に手に入れることができたわ」

絵里「ありがとう」

穂乃果「あ……っ……」

絵里「それと、貴女の持っている宝玉も貰うわね」ゴソッ

穂乃果「ぅ……くっ……」

476: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:23:11.69 ID:y0EsyzNV0
絵里「これで、9つ」

絵里「全ての宝玉が揃った」

穂乃果「か……し……」

絵里「……無駄なことはやめなさい」

絵里「体は動かないし、言葉も満足に喋れないでしょ?」

絵里「なかなかのやり手って聞いてたけど……正直拍子抜けね」

穂乃果「…………!」

477: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:23:45.54 ID:y0EsyzNV0
絵里「……お喋りしている場合じゃなかった」

絵里「急がないと」

タタタタタ

穂乃果「ま……ぅ……」

凛「ぎ……ぎぎぎ……!」グググ

穂乃果「り……ちゃ……」

凛「わっ!?」グラッ

ガシッ

凛「……?」

にこ「ふらつくんじゃ、ない、わよ……」ヨロヨロ

478: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:24:18.06 ID:y0EsyzNV0
にこ「とりあえず、治るまで、私が全員を運ぶわ」

にこ「急がないと、邪神が復活してしまうかもしれない」

凛「でも、宝玉、は……」

にこ「……宝玉を、全て手に入れたって、あいつは言ってた」

にこ「嫌な予感が……する」グイッ

穂乃果「ぅ……ごめ、ね」

にこ「そう思うんなら、早く、動けるようになりなさい」

穂乃果「あはは……」

479: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:24:48.52 ID:y0EsyzNV0
タタタタ

穂乃果「ぅぅ……やっと戻ったぁ」

にこ「……痺れがとれるまで約5分か、とんでもない能力ね」

真姫「完全に油断してたわね……」

花陽「うん、まさか敵が来るなんて思ってなかったから……」

穂乃果「とにかく、なんとかして追いつかないと」

凛「でも、何処に行ったかなんてわからないんだよ……?」

穂乃果「う……」

にこ「一度町に戻って、報告した方がいいわ」

480: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:25:23.79 ID:y0EsyzNV0
凛「やっと出口だね……」

真姫「次に会ったら覚えてなさいよ、あいつ!」

凛「真姫ちゃんが小物っぽいにゃー」

真姫「なんですって!?」

にこ「あんたら……こんな時にまで━━」

真姫ママ「はい、すとーっぷ」

花陽「わわっ!?」

穂乃果「貴女は……!」

481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:27:01.51 ID:y0EsyzNV0
真姫ママ「やっほー、元気にしてた?」

真姫「なんでママがここに?」

真姫ママ「それがちょっと困ったことになっちゃってね」

凛「困ったこと?」

真姫ママ「ええ、実は王宮の宝玉全部取られちゃって」

穂乃果「え……?」

482: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:27:38.68 ID:y0EsyzNV0
真姫ママ「それで慌てて貴女達に知らせに来たのよ」

穂乃果「ち、ちょっと待ってください、宝玉って、凄い警備で守られてるんじゃ……」

真姫ママ「ええ……でも、奪われたの」

真姫ママ「相手は相当の手練れみたいね」

穂乃果「そんな……」

真姫ママ「貴女達は……大丈夫?」

穂乃果「……っ、ごめんなさい」

真姫ママ「……そう」

真姫ママ「ということは、もう全部の宝玉が集まったってことね」

483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:28:11.20 ID:y0EsyzNV0
穂乃果「じゃあ、もう邪神が……」

真姫ママ「いえ、まだよ」

真姫ママ「邪神を復活させるには、儀式を行う必要があるの」

真姫ママ「それも、決まった場所でね」

穂乃果「そこは……?」

真姫ママ「かつて、邪神が封印された場所」

真姫ママ「彼女達は、絶対にそこにいるはずよ」

484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:28:42.63 ID:y0EsyzNV0
穂乃果「あの……他の騎士の方に、応援は頼めないんですか?」

真姫ママ「……無理よ」

穂乃果「どうして……?」

真姫ママ「詳しくは話せないけど、今王宮は大変なことになってるの」

真姫ママ「騎士を総動員するくらいの大事に……ね」

穂乃果「…………」

真姫ママ「それに、貴女達の戦いについていける騎士なんてほとんどいない」

真姫ママ「……世界を頼むわよ」

穂乃果「……はい!」

486: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:29:11.10 ID:y0EsyzNV0
ーーーーカニェーツの霊峰

穂乃果「ここが、邪神の封印された場所……?」

凛「……禍々しい気配がするよ」

にこ「真姫ちゃんのお母さんが言ってた通りなら、ここに敵が全員いるはず」

にこ「おそらく、前に戦ったことがある人もいるでしょうね」

「「「「…………」」」」

487: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:30:09.67 ID:y0EsyzNV0
穂乃果「…………」

穂乃果(海未ちゃんも、きっとここにいる)

穂乃果(今度こそ、ちゃんとお話して、絶対に……)

穂乃果「絶対に、止めてみせる」

穂乃果「邪神の復活なんて、させない!」

穂乃果「皆、頑張ろう!」

花陽「……うん!」

凛「了解だにゃー」

真姫「ま、私一人でも十分だけどね」

にこ「まったく、いつも騒がしいんだから」












希「いやいや、それはちょっと困るなぁ」

穂乃果「っ!?」

488: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:30:37.98 ID:y0EsyzNV0
希「これでも結構苦労してるんやで?」

希「こんだけ宝玉集めんのに」

穂乃果「希ちゃん……」

希「お、名前覚えとってくれたんか」

希「嬉しいなぁ」

穂乃果「……なにしにきたの?」

希「わかっとるやろ? 足止めや」

希「えりちの邪魔はさせへんよ」

489: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:31:05.51 ID:y0EsyzNV0
希「あんまり暴力に訴えることはしたくないし、おとなしくしといてくれへん?」

穂乃果「希ちゃんこそ、おとなしくそこを通してくれない?」

希「ふふ、交渉決裂やな」

穂乃果「…………」グッ

凛「待って、穂乃果ちゃん」

穂乃果「凛ちゃん……?」

凛「ここは、凛とかよちんが引き受けるよ」

穂乃果「え……?」

490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:31:42.80 ID:y0EsyzNV0
花陽「一人に時間を取られていたら、きっと間に合わなくなります」

花陽「だから、先に進んでください」

穂乃果「でも……」

凛「大丈夫」

凛「かよちんと一緒なら、凛は無敵だから」

花陽「そういうことですから、ここは任せでください」

穂乃果「……二人とも」

491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:32:32.17 ID:y0EsyzNV0
にこ「……じゃあ、ここは任せるわよ」

真姫「……頑張ってね」

花陽「うん、頑張る」

穂乃果「それじゃあ行こう、真姫ちゃん、にこちゃん!」

タタタタタ

希「…………」

凛「随分とあっさり通してくれるんだね」

希「カードが通してやれって言ってるからね」

希「それじゃあ、こっちもぼちぼち始めようか!」

492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:33:05.66 ID:y0EsyzNV0
希「《THE EMPRESS》!」

ぼこぼこ、と音を立てて地面から出てくる無数の稲。

一本一本が10m程の大きさになり、巨大な実を実らせている。

花陽「お米……!」

凛「かよちん! 今はそんな場合じゃないよ!」

花陽「う、うん……」

希「なんや、お米好きなん?」

希「それなら、たらふく味わえばええで!」

凛「来るっ!」

493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:33:32.38 ID:y0EsyzNV0
希が手を翳すと、巨大な実が雨となって二人に降り注ぐ。

凛「かよちん、凛の側に!」

花陽「うん!」

二人を押し潰せる程の大きさの粒が空から降って来るというのに物怖じしない。

花陽が凛の側に来るのを確認すると、凛は真っ直ぐに希を睨みつける。

凛「行くよ……!」

ごおっ!

凛が右手を素早く凪ぐと、周囲に激しい暴風が巻き起こる。

494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:34:18.91 ID:y0EsyzNV0
希「これは……!」

凛「突撃!」

巻き起こった暴風が二人に降り注ぐ実を弾き飛ばす。

それと同時に風と共に現れた猫達が、巨大な稲を刈り取りながら希へと迫る。

希「《STRENGTH》!」

向かってくる猫を見て、発動する能力を変更。

巨大な稲、降り注ぐ実は姿を無くし、希の体に強い力が宿る。

希「はぁっ!」

ごっ、と拳を降り降ろす希の横を、さっと駆け抜ける猫。

通り際に肩を、足を、腕を切り裂こうとするが、強化された希の体にはほとんど傷をつけられない。

495: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:34:51.29 ID:y0EsyzNV0
希「っ……速いッ!」

猫を追って、素早く状態を後ろへと傾ける。

だが、それが隙になることに気づき視線を前に戻すと━━━━

凛「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

希「くっ!」

目の前に迫る凛。

咄嗟に腕を交差させると、そこに凛の拳がぶち当たる。

希「ちっ!」

弾き飛ばされるように後ろへと状態を崩すと、凛は追撃をやめずにそのまま希を追う。

496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:35:21.05 ID:y0EsyzNV0
花陽「《蔦葛の伴奏》(クリープ・メロディ)!」

その希の行く先にあるのはたくさんの蔦。

ここから先は通さないとばかりに無数に張り巡らされている。

希「全く……あの短時間でようここまで連携できたもんや」

希「でも、まだまだ甘い!」

希「《THE TOWER》!」

凛「っ!?」

花陽「えっ!?」

497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:35:52.16 ID:y0EsyzNV0
急に体の力が抜け、勢いのまま地面を転がる凛。

張り巡らせた蔦が一斉に枯れ、困惑する花陽。

その混乱に乗じて、希はそっと二人との間に距離をとる。

希「全く、ちょっとびっくりしたやん」

希「まさか凛ちゃんが覚醒しとるなんて」

凛「勝手に勘違いしたのはそっちだにゃ」

希「うん、そうやね」

希「それなら……うちもちょっとだけ本気をださせてもらおうか!」

希「《THE MAGICIAN》!」

498: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:36:23.82 ID:y0EsyzNV0
希の前に集まる光の粒子。

前に圧倒的な破壊力を見せた、あの技だ。

凛(あの技……前の……)

花陽(私の技じゃ、防ぎきれない……!)

ピタッと止まった二人の足。

その光の粒子をどうすればいいのか、その思考が上手くまとまらないのだ。

希「拡散っ! てーーーーーーーっ!」

ぎゅおん! ぎゅおん! ぎゅおおおおおおおおおん!!

粒子が巨大な塊からいくつものビームに別れ、うねりながら二人へと迫ってくる。

499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:36:52.75 ID:y0EsyzNV0
花陽「うっ、えっ!?」

目の前に迫る粒子に、体が動かない。

何をしたらいいのかが解らない。

だから、目の前の恐怖をただ眺める━━━━

凛「かよちん!」

ぎゅっと強く抱き寄せられる感触。

凛が花陽を抱え込み、ビームを避けたのだ。

希「安心するのはまだ早いで!」

だが、それだけではない。

いくつものビームが凛へと向かい、避けても避けても方向を変え、何度も凛へと迫る。

500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:37:35.21 ID:y0EsyzNV0
凛「はぁ、はぁっ、はあっ、」

凛の顔に出ているのは焦りの表情。

思ったように能力が発動できず、ビームを避けるので精一杯。

風は止み、猫も姿を消している。

状況を打破するための方法も浮かばず、ただ逃げ回るしかない。

花陽(おかしい……)

花陽(凛ちゃんが、これくらいで……)

花陽(! もしかして!)

花陽「《白百合の砲台》(リリー・ショット)!」

希を囲むように現れた白百合の花弁が、一斉に希へと狙いをつける。

501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:38:10.08 ID:y0EsyzNV0
希「へぇ……!」

花陽「てぇーーーー!」

一斉に爆発音を立てての砲撃。

凛と花陽を追っている粒子では、ガードは間に合わない。

希「《TEMPERANCE》!」

ピタッと空中で静止する種の砲弾。

だが、それと共に光の粒子は姿をなくし、凛の周囲に再び風が巻き起こる。

希「いやぁ、今ので仕留められへんとはね」

凛「っ……凛に、何をしたの……」

希「さぁ? 知りたかったら、力強くで聞いてみたらええんとちゃう?」

凛「っ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:38:39.54 ID:y0EsyzNV0
巨大な風の奔流が辺りを包む。

花陽「凛ちゃん! 落ち着いて!」

希「ぐすぐずしとると、今度はそっちの子もおかしくなってしまうかもなぁ」

凛「っ!」

怒りに突き動かされるように希へと迫る凛。

そんな凛の耳に、花陽の声は届いていない。

希「そうら、お返しや!」

止まっていた種の弾丸を凛に目掛けて放つ。

凛「『にだんジャンプッ!』」

だが、凛はそれを空中で軽々と避けて希へと迫る。

503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:39:17.84 ID:y0EsyzNV0
タロットカードは、向きによってその意味を変える。

正位置と、逆位置だ。

本来、それらは相反し、二つの意味を同時に示すことはない。

だが、希の能力は別だ。

希の隠していた力……それは、正位置と逆位置の能力を同時に使用できること。

それにより凛と花陽は心を乱し、能力を制限され、暴走してしまう。

破滅へと向かって。

504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:39:46.02 ID:y0EsyzNV0
希「やっぱり当たらんか!」

希「それなら……《THE FOOL》!」

繰り出される左足の蹴りを右手で跳ね除ける。

今の一撃を防がれたことに驚いた凛は空中を蹴り、希の真上へと逃れようとする。

希「甘い!」

だが、希はその隙を見逃さない。

左足を掴み、そのまま地面へと叩きつける。

505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:40:46.57 ID:y0EsyzNV0
凛「っ!」

花陽「凛ちゃん!? 《縛鎖の蔓》(バインバインド)!」

希と凛を囲むように現れる蔓。

だが、希はそれを見ても笑みを絶やさない。

希「それはあかんやつやん?」

希「そーれっと!」

凛「があああああああああっ!?」

捕まえたままの凛を手にくるくると周り、現れた蔓をへし折っていく。

顔、お腹、腕、至る所に蔓がぶつかり、凛の体に無数の傷が付く。

花陽「あっ……あっ……」

506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:41:15.70 ID:y0EsyzNV0
自分のせいで凛が傷ついた。

その現実が、花陽の心を蝕んでいく。

凛「っ……あっ!」

希「おっと」

右足の蹴りから逃げるように凛をぱっと離す。

体勢を立て直した凛は、既に満身創痍といった状態だ。

希「もう辞めにしたらええんちゃう?」

希「これ以上やっても、うちには勝てへんよ」

凛「……そんなこと、ない」

凛「勝つのは、凛達だ!」

507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:42:01.19 ID:y0EsyzNV0
ざっ、と三匹の猫が希を目掛けて駆ける。

それに追随するように、凛も希へと駆け出す。

希「最後の打ち込み……か」

希「ええで、受けて立とうやない!」

希が手を凪ぐと、飛びかかろうとしていた猫が真っ二つに切り裂かれ、風へと還る。

他の二匹はぐるぐると地上、空中を周り、希を撹乱させる。

迂闊に打ち込まず、様子を見て。

一匹目がやられたことから、希が動きに対応していることは明白だから。

だから、希の視界を錯乱させるように、視界の両端からその姿を消して━━━━

凛「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

自分から視線が離れた一瞬で、凛が距離を詰める。

508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:43:12.20 ID:y0EsyzNV0
希「それじゃあ、さっきの攻撃となんも変わりないで!」

凛「『かそくそーちっ!』」

すぐに迎撃体勢をとる希。

それにも構わず、凛は突撃の速度を緩めない。

希「そっちがその気なら……しゃあないな」

希「最低でも、片腕は貰うで!」

ひゅっ、と振り下ろされる手刀。

凛のスピードに合わせて振り下ろされたそれに対し、凛は━━━━


ずちゃぁ!


切り裂かれる左腕。

だが、凛の歩みは止まらない。

希「なっ!?」

凛「片腕くらい、くれてやる!」

ごしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

凛の右手が、希の腹を貫いた。

509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:44:15.28 ID:y0EsyzNV0
凛「はぁっ……はぁっ……」

凛「勝った……よ、かよち━━」

ずちゅっ!

凛「ごふっ!?」

胸に走る激痛。

貫かれた胸。

目の前には、いまだに笑みを浮かべている希。

希「だから言ったやろ? 愚者(THE FOOL)ってな」

ずちゃぁぁぁぁぁぁぁ!

胸から体を裂くように動かされた手刀が、左胸を抉る。

真っ赤な血飛沫をあげながら、凛の体はゆっくりと地面へと崩れ落ち、動かなくなった。

510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:44:49.47 ID:y0EsyzNV0
希「ふぅ……《DEATH》!」

対象的に希の体は急速に回復していく。

抉られたはずのお腹は傷口も見当たらないくらいに再生され、まるで今の戦いがなかったみたいに。

希「あんま殺したくはなかったんやけどね……まあ、しょうがないか」

希「それで、君はどうする?」

倒れた凛を信じられない表情で見つめる花陽。

信じられない、信じたくない。

そんな気持ちが簡単に汲み取れる。

511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:45:28.12 ID:y0EsyzNV0
花陽「嘘……だよ……」

花陽「凛ちゃんが……そんな……」

希「悪いけど、嘘やないで」

希「悲しくても、受け入れないといけないもんはあるんや」

花陽「っ……ぁ……ぁ……あああああああああああああああああああああああ!!!!」

希「あんまり大きな声あげんとい……ぐっ!?」

希「がああああっぅづぅぅぅぅぅぅ!!?」

体中に走る激痛。

今まで味わったことない痛みに、全身が悲鳴をあげる。

花陽「許さない……」

花陽「絶対に許さない!」

512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:45:57.22 ID:y0EsyzNV0
希「なんや、何をっ……げほっ!」

真っ赤な吐血。

余りの激痛に立っていられず、希は両膝を地面へとつく。

希「っ……《DEATH》!」

体内から攻撃されているのだと感じるが、確証はない。

希「おげぇ、ごぼっ、うぐっ、」

頭に沸き起こる吐き気。

たまらずに血混じりの嘔吐をしてしまう。

希「うちの体に……なにを……し……」

花陽「…………」

513: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:46:24.87 ID:y0EsyzNV0
花陽は応えない。

激痛に悶える希を見ても、なにも感じない。

まるでこうなるのが当たり前かと言うように、その表情は怒りに凍りついている。

希「がっ……ぎっ……なっ、で……」

再生、回復しているはずなのに収まることのない激痛。

それどころか、体が全身から壊されていくような感覚に支配される。

514: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:46:57.87 ID:y0EsyzNV0
希の体で起きているのは、菌の変異。

体内の細菌が変異、活性化され、細菌の分裂を1秒に10回、100回のレベルまで促進されているのだ。

それによって生まれる無数の変異株。

そのスピードは、《DEATH》の再生力でも追いつくことができず、希の体内を侵食していく。

515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:47:27.88 ID:y0EsyzNV0
だんだんと動かなくなっていく体。

体の至る所から体液が漏れ出し、意識が朦朧としていく。

再現なく繰り返される激痛は、自分がもうすぐ死ぬことを教えてくれる。

自分の油断が招いた敗北。

後悔と同時に思い出されるのは、一人の少女のこと。

懐かしい、出会いの時。

516: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:48:33.41 ID:y0EsyzNV0
~~~~~~~~~~~~~~

ーーーーとある小屋

希「お父さん、お母さん、それじゃあ行ってきます」

山奥にひっそりと立つ一軒の小屋。

そこに住んでいるのは、一人の少女。

父、母と共に、貧しいながらも幸せに暮らしていたが、ある時、二人は事故にあって死んでしまう。

それ以来、彼女はこうして毎日お墓にお参りをしてから、食糧や、使えそうなものを探しに外へと出かける。

517: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:49:01.24 ID:y0EsyzNV0
そんな生活も早一年。

だんだんと慣れてきた一人だけの生活に、石が投じられた。

希「ん……? あれは……?」

絵里「……ぅ……」

希「なんでこんな所に女の子が……それに、体もボロボロで……」

希「早く家に連れ帰らないと……」

タタタタ

518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:49:37.18 ID:y0EsyzNV0
チュンチュン

絵里「ん……っ……」

絵里「ここ……は……?」

絵里「っ!?」

絵里「誰っ!?」

希「んっ……気がついたの……?」

絵里「貴女は誰なの!? ここは何処!? 私をどうするつもり!?」

希「えっ……えっと……」

絵里「答えなさいッ!」

希「…………」ニコッ

希「うちは東條希」

希「よろしゅうな」

519: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:50:06.27 ID:y0EsyzNV0
絵里「希……?」

希「そっ。貴女は?」

絵里「…………」

希「人に聞いておいて、自分が名乗らんのはあかんと思うよ?」

絵里「……絢瀬絵里よ」

希「ええ名前やね」

希「それで、なんであんな所に倒れとったん?」

絵里「…………」

希「話してはくれへんか」

520: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:50:46.77 ID:y0EsyzNV0
絵里「……助けてくれたことにはお礼を言うけど、あんまり私に関わらないで」

絵里「死にたくないのならね」

希「なんや物騒な話やん」

絵里「……私はもうでるわ」ギシッ

希「待ってや、その体じゃ外にでるのは危険なんよ?」

希「ここを出て、行く当てあるん?」

絵里「それは……」

521: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:51:22.87 ID:y0EsyzNV0
希「無いんなら、ここに住まへん?」

希「ちょっと不便やけど、楽しいで?」

絵里「……そんなことしたら、貴女の家族にも迷惑をかけるわ」

希「その心配はいらんよ」

絵里「え?」

希「うちの家族は……もうおらへんから」

絵里「……ごめんなさい」

希「ええんよ、もう過ぎたことやし」

希「それで、拒む理由が無くなったけど、どうするん?」

絵里「……はぁ。どうなっても知らないわよ」

希「ふふ、これからよろしゅうな、えりち」

522: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:52:37.85 ID:y0EsyzNV0
それから、二人だけの生活が始まった。

最初の内は悲しい目をして表情を翳らせていた絵里は、いつも笑顔な希に元気付けられるように、少しずつ笑うようになっていく。

薪を割って、魚を取って、焼いて、食べて。

一緒に料理をして、たまにはピクニックに行って。

だんだんと心を開いていく絵里はある日、自分の生い立ち、出会いの日のことを希に話す。

厄介事でしかない、悲しい過去。

希は嬉しかった。

彼女が自分のことを信頼して、こうやって話してくれるのが。

こうして、二人の信頼はどんどん深まって行った。

それから、数年の月日が流れて━━━━

523: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:53:25.66 ID:y0EsyzNV0
絵里「邪神を復活させれば、私の願いは叶う」

絵里「だから……今日でここを出て行くわ」

希「そっか……」

絵里「今まで本当にありがとう」

絵里「さようなら……」

希「待って!」

絵里「止めても無駄よ! 私は必ず家族の仇を……」

希「ううん、止めたりはしないよ」

希「でも、うちも一緒に行く!」

524: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:53:54.74 ID:y0EsyzNV0
絵里「!?」

絵里「駄目よ! 命の保証も無いのに……」

希「だからこそや」

希「そんな危ない旅にえりち一人で行かせられるわけ無いやん」

希「えりちは、うちのたった一人の家族なんやから……」

絵里「希……」

~~~~~~~~~~~~~~

525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:54:25.75 ID:y0EsyzNV0
希「っ!」

希(何寝ぼけてるんや、うちは!)

希(うちは……えりちの助けになるために、戦ってるんやろ!)

希(へばっとる場合やない……)

希(例え、死んだとしても……)

希「えりちの邪魔は! 絶対にさせへんッ!」

花陽「っ!? があっっうぅぅぅぅっっ!?」

526: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:55:16.48 ID:y0EsyzNV0
突如として花陽の体に現れる異変。

花陽の体の肉が削げ落ち、骨が剥き出しになったのだ。

花陽「ぎっ!? ぃぃ!」

希「っぉぐっ! は、が、我慢比べ……や」

崩壊。

それは、《DEATH》の正位置の能力によるもの。

だが、骨が砕かれ、体が解体される激痛に身を蝕まれても、花陽は意識を手放さない。

目の前の敵だけを睨みつけ、憎悪の炎で燃やし尽くすかのように。

527: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:56:17.40 ID:y0EsyzNV0
花陽「許さ……ない……!」

花陽「絶対に……殺して……や……」

希「それは、うちの……せり……」

途絶える声。

生命機能は、意思を無視して停止する。

そこに残されたのは、無残な爪痕。

肉が半分削げ落ちたもの、全身が変色し体液を撒き散らしたもの、体を大きく切り裂かれたもの。

激しく巻起こった戦いは、ひっそりと幕を閉じた。

528: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:56:44.89 ID:y0EsyzNV0
タタタタ

にこ「……なるほど、だから簡単に通してくれたのね」

穂乃果「え?」

にこ「新しい敵の登場よ」

穂乃果「……! あの人は!」

真姫「っ……!」

ツバサ「やあ、久しぶりだね」

穂乃果「ツバサさん……」

530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:57:40.09 ID:y0EsyzNV0
ツバサ「ふふ、また会えると思ってたよ」

ツバサ「君との再戦を楽しみにしていたんだ」

穂乃果「っ……」

バッ

にこ「穂乃果、行きなさい」

穂乃果「え?」

にこ「ここは私と真姫ちゃんでなんとかするから」

にこ「だから、先に行きなさい」

穂乃果「でも……」

にこ「いいから行きなさいって言ってんでしょ!」

穂乃果「!」ダッ

タタタタ

531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/18(日) 00:58:12.76 ID:y0EsyzNV0
にこ「……楽しみにしてた割には、通すんだ」

ツバサ「残念だけど、彼女には因縁の相手がいるようだからね」

ツバサ「仕方が無いから、ちょっと遊んでもらうよ?」

真姫「ふん、減らず口を叩けるのも今のうちよ」

真姫「この私に楯突いたこと、絶対に後悔させてあげる」

ツバサ「へぇ……それは楽しみだね」

ツバサ「それじゃあ……始めようか!」

539: 第11話:幼馴染 2015/01/25(日) 00:36:36.98 ID:bUvSTvwQ0
にこ「真姫ちゃんは後衛から援護をお願い」

にこ「前衛はにこがやるわ」

真姫「了解!」

前衛は近接戦闘が主体のにこ。

後衛は遠距離戦闘が主体の真姫。

基本的な布陣をとる二人を、ツバサは訝しげに見ている。

ツバサ「本当にそれでいいの?」

にこ「なによ、なにか文句でもあんの?」

ツバサ「いえ、貴女一人で前衛が務まるのかなって」

540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:37:08.32 ID:bUvSTvwQ0
前回の戦いで、にこは一瞬のうちにツバサに沈められた。

このまま戦っても、前回と同じ道を辿るだけだ。

にこ「ふん……あんまり舐めるんじゃないわよ」

にこ「にこは……あの時の三倍は強いわよ」

ツバサ「そうか、それは楽しみだね」

ツバサ「でも、それだけじゃ足りない」

にこ「え?」

ツバサ「私は……あの時の10倍は強いッ!」

541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:37:40.95 ID:bUvSTvwQ0
ひゅっ、とツバサの姿がにこの視界から消える。

瞬間移動ではない、ただ単純に姿を追うことができなかっただけだ。

咄嗟に辺りを見渡すが、ツバサの影すら捉えることができない。

ツバサ「こっちだよ」

にこ「っ!?」

声がしたのは、にこの体の正面。

ツバサ「終わりだ」

握り拳に腹を抉られ、その衝撃と共に大きく吹き飛ばされる。

受け身をとることも叶わず、そのまま地面を転がることとなった。

542: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:38:16.54 ID:bUvSTvwQ0
真姫「にこちゃん!?」

ツバサ「余所見をしている暇はないよ?」

真姫「っ!? 《戒めよ━━」

だが、真姫の技が発動することはなかった。

両眼に突き出された指に、言葉が止まってしまったのだ。

真姫「ぅ……」

ツバサ「……ちょっと期待外れだったかな」

ツバサ「お休み」

迫る拳に、体が反応できない。

また負けた。

何もできずに。

悔しさと恐怖に目を瞑る━━━━だが、訪れるはずの衝撃が来ない。

543: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:38:44.74 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「……へぇ」

にこ「…………」

ツバサの拳を受け止めていたのはにこ。

がっしりと小さな掌でツバサの手を握っている。

にこ「悪いけど……その子に触れさせはしないわよ」

にこ「こんなんでも、大事なご主人様だからね!」

凪ぐように繰り出された手刀をツバサは後ろに跳んで躱す。

544: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:39:13.06 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「……今の力」

にこ「ふふ、やっとにこにーもパワーアップしたってことかしら?」

最初の打ち込みとは違い、自分の早さに対応してみせた少女。

歯応えがありそうな相手に、ツバサの口元に笑みができる。

にこ「それで、あんたの能力は《肉体強化》でいいの?」

ツバサ「いいや、違うよ」

ツバサ「私は《能力者》じゃない」

にこ「はぁっ!?」

545: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:39:45.85 ID:bUvSTvwQ0
にこ「嘘でしょ……?」

ツバサ「いや、本当だよ」

ツバサ「私は《能力》を持ってない」

信じられないというにこの表情。

当然だ、《能力者》が《無能力者》に身体能力で負けることはあり得ないはずなのだから。

にこ「《無能力者》が《能力者》を退ける……どういうことよ……!」

ツバサ「しらいでかッ!」

ツバサ「飯食って山消して寝るッ!」

ツバサ「戦士の鍛錬はそれで十分よッ!」

546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:40:18.97 ID:bUvSTvwQ0
にこ「っ……頭おかしいんじゃないの!」

にこ「『乱れ手裏剣』!」

にこの前に現れる無数の手裏剣。

流れるようにうねうねと動き、ツバサへと迫る。

ツバサ「この程度ッ!」

自らへと迫る手裏剣を次々と手で撃ち落とす。

その体には、傷一つついていない。

真姫「《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

集結させた氷の槍による追撃を狙う。

手数に紛れた強力な一撃━━だが、ツバサがそれを見逃すことはない。

547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:41:22.52 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「はぁっ!」

巨大な槍を右蹴りで粉砕すると、バラバラと氷の破片が辺りに飛び散り、視界を狭める。

そのツバサの視界の何に、にこの姿がない。

にこ「『影縫い』!」

にこから放たれたナイフがすっとツバサの影へと吸い込まれる。

相手の動きを縛る、にこの技。

《能力》を持たないツバサでは抜け出すことはないはず━━

ツバサ「ふっ!」

ばんっ、と影から弾き飛ばされたナイフ。

にこの首に、冷や汗が流れた。

548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:41:55.38 ID:bUvSTvwQ0
にこ「あんた……本当に人間?」

ツバサ「失礼な質問だね」

ツバサ「私はれっきとした人間だよ」

ぐっと強く地面を踏み込み、にこへと迫るツバサ。

そのスピードは、今までのものよりも速い。

にこ「『目暗まし』!」

にこを中心に広がる闇の世界。

圧倒的な質量の闇が、遠く離れた真姫をも飲み込む。

549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:42:24.82 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「その技なら、既に破った!」

急に視界を閉ざされても、ツバサの歩みは止まらない。

速度が衰えることはなく、ツバサの拳がにこの体へと突き刺さ━━━━

ツバサ「なっ!?」

━━━━るとこはなかった。

ツバサの拳は空を切り、そのまま前のめりになってしまう。

にこ「はぁっ!」

その一瞬の隙をにこは逃さない。

ツバサの左頬へと放たれた右ストレートが、ツバサの体を揺らがせる。

550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:42:59.55 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「っ……そこだ!」

殴られたことにより位置を特定したツバサが反撃にでる。

にこがいるであろう場所を切り裂く手刀。

だが、それも虚しく空を切るだけであった。

にこ「こっちよ!」

にこの拳が右の脇腹を抉る。

動いた音は聞こえなかった。

揺らいだ風もなかった。

それなのに、にこは真逆の所から攻撃してきた。

ツバサ「……面白いッ!」

その事実に、ツバサの興奮が高まる。

551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:43:39.83 ID:bUvSTvwQ0
にこは、闇と同化することによってこの空間内を自由に行き来することができる。

音も立てず、全く気づかれないように。

そのせいでツバサはにこの姿を捉えることができない。

一度攻撃を受けからでは反撃は間に合わず、かろうじて腕を掴んでもすぐに消えてしまう。

無闇に走り回っても、暗闇の中ではにこに追いつかれる。

ツバサの必殺の拳は、にこには届かない。

552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:44:09.71 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「ふふ、厄介だね」

ツバサ「それなら……」

すっ、とツバサが構えを解く。

自然体になり、ゆっくりと見えない目を瞑る。

にこ「…………」

これはツバサからの誘い。

感覚を研ぎ澄ませることによって、にこの出現する居場所を探ろうというのだ。

だが、こんなチャンスを逃す手はない。

ツバサの背後へと出現したにこは、無防備な背中へと手刀を━━━━

ツバサ「甘いッ!」

553: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:44:46.10 ID:bUvSTvwQ0
ガツンと激しい衝撃に脳が揺さぶられ、くらくらとする。

ツバサの掌底がにこの顎を撃ち抜いたのだ。

にこ「がっ……ぁっ……」

宙を舞った体は、ゆっくりと地面へと落ちる。

にこ「なん……で……」

ツバサ「風の流れが変わったからだよ」

ツバサ「質量を持てば、風を遮ってしまうからね」

ツバサ「だから、貴女の居場所が解った」

554: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:45:19.51 ID:bUvSTvwQ0
闇が溶けて、辺りに光が戻る。

そこにあったのは、地面に倒れるにこと、余裕の笑みを浮かべるツバサ。

真姫「そん……な……」

真姫はさっきの戦いに参加できなかった。

闇の中では、にこに攻撃を当ててしまう危険があったから。

いや、それだけではない。

自分が、全く役に立たないことが解っていたから。

555: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:46:04.74 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「さて、それじゃあそろそろあっちの子も……」

にこ「させない……わよ!」

ぐらぐらと揺れる視界。

目の焦点が合わないまま起き上がり、がむしゃらにツバサへと殴りかかる。

ツバサ「諦めたほうがいい」

だが、そんなものが通じるはずもない。

裏の拳でにこの頬を弾くと、そのままにこは地面へと倒れ込んだ。

556: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:46:36.44 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「貴女は十分頑張った」

ツバサ「誇ってもいいわ」

にこ「まだよ……」

ぐぐっと、無理やり体を起こしツバサへと向き直る。

頬を流れる血が、ぴちょんと地面を濡らす。

だが、その瞳に敗北の色はない。

にこ「まだ、終わって━━━━」

言い終わる前に、にこの体は再び宙を舞った。

557: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:47:12.27 ID:bUvSTvwQ0
真姫「にこちゃん!?」

どさり、と地面に吸い込まれたにこに駆け寄り抱き起こす。

肌から、口から、至るところから血を垂れ流すにこの姿に、真姫は唇を噛みしめる。

にこ「真姫……ちゃん」

にこ「もう少し、待ってて……あいつを、倒して、くるから……」

真姫「何言ってんのよ……にこちゃん……こんなにボロボロじゃない……」

558: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:47:41.51 ID:bUvSTvwQ0
いつ倒れてもおかしくないはずの傷。

ツバサの攻撃を何度ももらってフラついた体。

それでもなお、にこは真姫を押し退けて立ち上がる。

真姫「なんで……なんでよ……」

真姫「なんで……そんなに……頑張るのよ……」

元々、にこはこの戦いに無理やり参加させられたのだ。

彼女を縛るものなんて、何もない。

なのに、彼女はずっと離れないでいてくれる。

呆れた顔をしても、酷いことを言っても。

559: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:48:13.30 ID:bUvSTvwQ0
今の戦いだってそうだ。

足手まといの私に近づかせないように、にこはツバサの気を全て自分に向けさせた。

本来なら奇襲がメインの彼女が、自分を庇いながら戦っているのだ。

こんなもの、勝てるはずがない。

なのに、彼女は逃げ出さない。

ボロボロになっても、自分を守ろうとしてくれる。

にこ「なんで……か」

にこ「そんなの……決まってるじゃない」

ふらふらと体を揺らしながら、ゆっくりと振り返る。

そこにあるのは、満面の笑み。

にこ「あんたを、笑顔にするためよ」

真姫「え?」

560: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:49:20.95 ID:bUvSTvwQ0
にこ「いつも仏頂面して、面白くなさそうにして……」

にこ「子供はね、もっと素直に笑わないといけないの」

にこ「……でも、もしも歩んだ道のせいでそんな性格になっちゃったっていうのなら」

にこ「にこが、笑わせてあげるしかないでしょ」

真姫「そんな……理由で……」

笑顔にする。

たったそれだけの理由で、彼女はこんなにボロボロになっても諦めない。

それなのに自分は、強気に啖呵を切っておきながら、何もできずに、諦めて……。


美しくない。


そんなもの、西木野真姫ではない。


私が、私こそが、至高でなくてはならないのだから。

561: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:50:01.85 ID:bUvSTvwQ0
にこ「え……?」

全身を撫でる風が急速に冷えて行く。

ぱきぱきと凍り付く地面。

目の前の少女が、ゆっくりと微笑む。

真姫「なによ、偉そうに説教して」

真姫「いつからご主人様に意見を言えるほど偉くなったわけ?」

にこ「……真姫ちゃん」

真姫「勝手にふらふらになって、仕方ない駄犬ね」

真姫「私を笑顔にさせたいんなら、もっと頑張りなさいよ」

562: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:50:34.29 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「へぇ……これは、もう少し楽しめそうかな?」

真姫「ふん、その余裕の表情、凍り付かせてやるわ」

真姫「にこちゃん」

にこ「何?」

真姫「一分よ」

真姫「一分持たせなさい」

真姫「そうしたら、私があいつを仕留めてあげる」

にこ「……了解!」

563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:51:10.62 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「作戦会議は終わりかい?」

ツバサ「何をするつもりか知らないけど、簡単に倒れないでね!」

にこ「それなら、自分の心配をすることね!」

にこ「『影分身・姿見』!」

ツバサ「……っ!?」

驚愕するツバサの瞳。

目の前に現れたのは、全く同じ姿をした自分自身。

まるでツバサをそっくりそのまま模写したような、ドッペルゲンガー。

564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:51:39.34 ID:bUvSTvwQ0
にこ「確かにあんたは強いわ」

にこ「でも、そんなあんたにも勝てない相手がいる」

にこ「それは、自分自身よ!」

分身のツバサが地面を蹴り、本物のツバサへと迫る。

繰り出される蹴りを左手で防ぎ、胸元へと掌底を繰り出すと、左腕で弾かれる。

速さ、威力、全てが自分と同じ。

完全なる分身。

だが、それでもツバサの笑みが絶えることはない。

565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:52:21.13 ID:bUvSTvwQ0
真姫「……頼むわよ、にこちゃん」

ツバサを倒すための時間稼ぎ。

にこが必至で作ってくれた時間を、無駄にするわけにはいかない。

真姫「『夢に煌めく氷の世界』」

真姫の口から紡がれたのは詠唱。

真姫「『全てを凍てつかせるその輝きは、衰えることを知らない』」

己の力を全て解放し、ツバサへとぶつけるために。

566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:52:53.22 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

ぶつかり合う拳。

衝撃でめり込む地面。

一歩も譲らない踏み込み━━だが、ゆっくりとその均衡は崩れる。

にこ「嘘……!?」

ずりずりと押される分身。

ツバサの力が、分身を上回りだしたのだ。

ツバサ「らぁっ!」

分身が弾かれて、後ろに大きく飛び退く。

すかさずそれを追撃しようと、距離を詰めるツバサ。

567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:53:28.39 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「そこっ!」

幾度と打ち合う拳。

やや押される気味の分身に、にこは驚きを隠せない。

ツバサ「りゃぁ!」

ツバサの拳が分身の肩を抉り血飛沫が舞う。

いつのまにか、分身は防戦一方。

完全に打ち負けている。

568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:54:35.40 ID:bUvSTvwQ0
にこ「なんで……」

ツバサ「おかしいことなんてないさ」

にこの疑問を、ツバサはおかしくないとばっさり切り捨てる。

ツバサ「私は常に己の未熟を恥じ、今の自分に満足することなく研鑽を重ねきた」

ツバサ「だからこそ私は日々成長を続け、こうしてここに立っている!」

崩れた均衡。

ツバサの手刀が、分身の片腕を切り落とす。

ツバサ「それこそが答えッ!」

ツバサ「『今』の私が、『過去』の私に後れを取るなどあり得ないッ!」

ツバサの貫手が分身の胸を貫き、分身はそのまま影へと消えていった。

569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:55:31.31 ID:bUvSTvwQ0
真姫「『揺らめき落ちる月の欠片』」

真姫「『燃えることを許されぬ太陽』」

真姫「『輝く星々も静まり返り、只その身を永遠に委ね続ける』」

真姫「『それこそが私の夢、私の世界』」

真姫「『焦がれ、痺れ、どれだけ手を伸ばしても届くことがない』」

真姫「『高嶺の華はただ孤高に冴えるのみ』」

真姫「『全てを魅了し、凍らせても、華は枯れず、永遠にその輝きを増すだろう』」

570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:56:01.57 ID:bUvSTvwQ0
真姫の詠唱はまだ終わらない。

もう少し、もう少しだけ時間を稼がないと。

にこ「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

大きく踏み込み、ツバサへと勢いをつけて飛びかかる。

だが、それは隙を見せたのと同じだ。

ツバサ「はぁっ!」

にこ「がっ!?」

繰り出されたアッパーがお腹を抉り、そのまま宙へと放り出される。

その無防備な体へと、ツバサは地面を蹴って迫る。

571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:56:59.13 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「これで……終わりッ!」

思いっきり放たれた拳がにこの体を吹き飛ばす。

確かな手応え。

これでもう、彼女は立つことはでき━━━━

にこ「あああああああああああ! 『影縫い・千羽鶴』!」

投げられた一本のナイフが、次々に分身して無数のナイフが生み出される。

最初に放ったナイフが突き刺さったのはツバサの影。

その周囲に無数のナイフが次々と突き刺さり、ツバサの体が空中に縫い止められる。

572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:57:50.85 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「くっ、この程度……!」

先程のように力を込めて脱出しようとするが、上手くいかない。

ツバサが視線を下にずらすと、あることに気づく。

ツバサ「なっ……まさか……!」

ツバサの影を縫ったナイフ。

その影を縫う別のナイフ。

またその影を縫う別のナイフ。

次々の影を縫うように地面へと刺さったナイフが、翼を広げた鶴のように広がっているのだ。

573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:58:30.34 ID:bUvSTvwQ0
真姫「『さあ、踊りなさい』」

真姫「『終焉への序曲を』」

真姫「『奏でなさい』」

真姫「『新生への終曲を』」

真姫「『私は只一人アリアを詠い、全てのタクトを握る』」

真姫「『この世界の全てが私の物』」

真姫「『私だけに許された楽園』」

574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 00:59:48.31 ID:bUvSTvwQ0
ツバサ「くっ……あっ!」

にこ「づっ……ぁっ、ぎっ!」

身体中から流れる大量の血。

ツバサの抵抗を必死に押さえつける度に、血管が切れ、体が悲鳴をあげる。

どれだけの激痛が体を蝕んでも、意識を手放すことはしない。

それが、矢澤にこの、信念なのだから。

ツバサ「あああああああああ!!!」

にこ「っ……あああああ!! 真姫ッ!」

真姫「『私に逆らう者は、永遠にアビスで彷徨うがいい!』」

真姫「《天地万物歩みを止める絶対無音の氷結世界》(アブソリュート・ゼロ)!」

575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:00:35.00 ID:bUvSTvwQ0
出現する絶対零度の世界。

全てを氷漬けにする輝きが草木を、大地を、空気を凍てつかせながらツバサへと迫る。

ツバサ「こんなものッ!」

にこ「づっ!?」

にこの拘束を無理やり抜け出すツバサ。

だが、高速で迫る氷の奔流から逃れることはできない。

ツバサ「消し飛びなさいッ!」

突き出した拳が大気をかき混ぜ暴風を生み出し━━━━

ツバサ「なっ!?」

凍り付く右腕。

パキパキとなぞるように、身体中が凍り付いていく。

ツバサ「そんな……!」

ツバサの表情から笑みが消える。

手、足、体、全てが凍り、首へと冷気が迫る。

ツバサ「また、私の……負け━━━━」

輝きの波に呑まれたツバサは、絶対零度の氷の中へと閉ざされた。

576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:01:27.91 ID:bUvSTvwQ0
真姫「はぁ……はぁ……」

真姫「やった……勝った……!」

真姫「にこちゃん! 勝ったわ━━━━っ!?」

真姫の視界が捉えたのは、ボロボロになって動かないにこ姿。

無理に無理を重ねて限界が来たのだろう、にこは言葉を発することもない。

真姫「嘘……でしょ……」

真姫「何勝手に……倒れてんのよ……」

真姫「目を開けなさいよ……ねぇ……」

真姫「私を笑顔にするんでしょ……?」

真姫「それなら、早く……」

真姫「お願い、目を……開けてよ……」

真姫「にこちゃん……」ポロポロ

一人に慣れたはずの少女。

凍り付いた世界に流れる雫は、氷を溶かすこともなく、ただ静かに凍るだけであった。

577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:01:59.71 ID:bUvSTvwQ0
タタタタ

穂乃果「!」

海未「やはり来ましたね、穂乃果」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「絵里の邪魔はさせませんよ」

海未「私は、絶対に邪神を蘇らせないといけないんです」

穂乃果「……ことりちゃんを、生き返らせるために?」

海未「……ええ」

578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:02:34.31 ID:bUvSTvwQ0
海未「私のせいで、ことりは死にました」

海未「あの時、私が何もできなかったから」

穂乃果「……海未ちゃんは悪くない」

海未「悪くない……?」

海未「守ると誓ったのに、その約束を果たせなかった私が悪くないと言うのですかッ!?」

穂乃果「そうだよ!」

穂乃果「あの時の海未ちゃんは子供だった!」

穂乃果「それなのに、守る力なんて持ってるはずがない!」

穂乃果「海未ちゃんは自分のせいにして、悲しい現実から逃げてるだけッ!!」

579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:03:28.08 ID:bUvSTvwQ0
海未「っ……!」

穂乃果「ねぇ、もう止めようよ」

穂乃果「こんなことしても、ことりちゃんは喜ばないよ?」

海未「うるさい!」

海未「覚悟を持たずのこのこと遊び半分で戦場に立つ貴女は……」

海未「ことりの……ことりの何を知っていると言うんですか!」

穂乃果「覚悟ならあるッ!」

穂乃果「私は、絶対に邪神を復活させない!」

海未「それなら、その覚悟を、構えてみなさい!」

580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:03:53.77 ID:bUvSTvwQ0
がっ、と地面を蹴って穂乃果へと迫る海未。

それを牽制するように穂乃果は右ストレートを海未へと放つ。

海未「甘い!」

腕を掴まれる感触。

気づくと穂乃果の視界はぐるんと揺れていた。

穂乃果「っ!?」

綺麗な一本背負い。

背中に伝わる強い感触、目の前に迫る海未の掌。

581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:04:19.37 ID:bUvSTvwQ0
穂乃果「爆発!」

小規模な爆発が穂乃果の手でおき、海未は咄嗟に掴んだ手を離す。

その隙に立ち上がり、再び海未と退治する格好となる。

海未「貴女では私に勝つことはできない」

海未「おとなしく、降参してください」

穂乃果「それは、こっちの台詞ッ!」

582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:04:56.34 ID:bUvSTvwQ0
海未の動きには一切の無駄がない。

攻撃も、回避も、全て最小限の動きで行い、穂乃果の隙をついてくる。

穂乃果「くっ!」

再び掴まれそうになった腕を咄嗟に引き戻す。

海未「そこっ!」

ぐいっと引っ張られる感触。

服に指が引っ掛けられ、そのまま空中を回転させられる。

海未「はぁっ!」

迫り来る手刀をなんとか受け止め、その反動で海未から距離をとる。

583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:05:42.64 ID:bUvSTvwQ0
穂乃果「はぁ……はぁ……海未ちゃん、今の反則じゃない?」

海未「穂乃果も、同じことをしてもいいんですよ」

穂乃果「それはちょっと……無理かな」

穂乃果は攻めあぐねていた。

幼い頃から鍛錬を続けてきた海未には隙がない。

こちらの攻撃を的確に避け、いなして、確実に反撃してくる。

高火力を武器にする穂乃果にとっては、致命的に相性が悪い。

584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:06:29.96 ID:bUvSTvwQ0
海未「中々粘りますね」

穂乃果「タフさだけが取り柄だから」

海未「……そうでしたね」

海未「貴女は、昔から諦めなかった」

海未「これと決めたことを、最後まで笑顔でやり通した」

穂乃果「それは海未ちゃんだって同じだよ」

穂乃果「海未ちゃんも、絶対に諦めない」

穂乃果「ふふ、似た者同士だね」

海未「ええ……そうですね」

海未「でも、だからこそ……」

ほのうみ「「この戦いは譲れないッ!」」

585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:07:00.27 ID:bUvSTvwQ0
海未「《霧雨》!」

突如として遮られる視界。

大量の水が迸り、霧となって周囲を包み込む。

穂乃果「っ……海未ちゃん、何処に━━━━ぐっ!?」

肩に走る激痛。

水でできた矢が、穂乃果の肩を撃ち抜いたのだ。

海未「穂乃果! よく聞きなさいッ!」

海未「ことりを殺したのは、隣国の兵です!」

穂乃果「え……?」

586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:07:30.87 ID:bUvSTvwQ0
海未「あの場に残されていた武器や防具は、隣国の物と一致しました!」

海未「奴らは、ことりを殺す機会を窺っていたのです!」

海未「だから私は、邪神を蘇らせて隣国を滅ぼします!」

穂乃果「そんなこと……絶対にさせないッ!」

海未「それなら、私を倒してみせなさい!」

587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:08:22.33 ID:bUvSTvwQ0
ひゅっ、ひゅっ、と射られる矢。

狙いは的確。

視界が邪魔をされているせいで反応が送れ、じわりじわりと体を削っていく。

穂乃果「そんなこと、ことりちゃんは望んでないッ!」

穂乃果「ことりちゃんは争いが嫌いだった」

穂乃果「皆が仲良くしてるのを見て、いつもにこにこ笑ってた!」

穂乃果「ことりちゃんのことを知らない……?」

穂乃果「それは海未ちゃんのことだよ!」

穂乃果「海未ちゃんの中のことりちゃんは、隣国を滅ぼして喜ぶ残忍な子なの!?」

海未「っ……!」

588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:08:58.57 ID:bUvSTvwQ0
海未の体が動揺に揺れる。

足元に突き刺さる矢。

穂乃果は、一歩も動いていない。

穂乃果「今なら、まだ間に合う」

穂乃果「だから、一緒に━━」

海未「無理……ですよ」

穂乃果「え?」

海未「私は、穂乃果ほど強くないんです」

海未「どうしても、もう一度、三人で仲良く遊んでいたあの日が欲しいんです……!」

海未「だから、私は……」

海未「こうすることしかできないんですよッ!」

海未「《片時雨》!」

589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:09:32.55 ID:bUvSTvwQ0
迸る水の奔流。

空中にできた巨大な水の塊から、無数の矢が穂乃果へと降り注ぐ。

穂乃果「うあああああああああああああ!!!!」

両手の拳で迫り来る矢を次々と薙ぎ払う穂乃果。

弾かれた矢は水へと還り、辺りに水溜りを作る。

590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:10:12.17 ID:bUvSTvwQ0
穂乃果「まだまだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

弾ききれなかった矢が肌を割いても、穂乃果は怯まない。

段々と小さくなる水の塊。

もう少し、あと少し。

最後の矢を放ち、水の塊が姿を━━━━

海未「《涙雨》!」

穂乃果「がっ!?」

突如として貫かれた足。

水溜りから放たれた一撃は完全に穂乃果の不意をつき、たまらず膝をついてしまう。

そして、それを見逃すほど海未は甘くない。

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:11:13.63 ID:bUvSTvwQ0
~~~~~~~~~~~~~

「かわいい! 今のもっかいやってみて!」

「このわざがあればみんながしあわせになれるね!」

「じゃあ完成いわいにことりが名前をつけてあげる!」

「このわざの名前は………」

~~~~~~~~~~~~~













海未「撃ち抜け━━━━《ラブアローシュート》」

592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:11:56.74 ID:bUvSTvwQ0
海未(許して欲しいとは言いません)

海未(ずっと貴女に恨まれることになっても、甘んじて受け入れましょう)

海未(二人が私を許してくれなくても、それでもいいんです)

海未(二人が、笑って生きていてくれるなら)

海未(だから、ごめんなさい、穂乃果)

海未(一度だけ、死んでください)

海未(必ず……生き返らせますから)

593: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:12:52.23 ID:bUvSTvwQ0
迫り来る死の矢。

体勢を崩した穂乃果は、それを避けることはできない。

このまま終わりたくなんてない。

まだ、海未ちゃんを止められてないんだから。

だが、死が歩みを止めることはない。

恐怖に思わず目を瞑ってしまう。

ごめん、皆。

最後に出てきたのは、そんな悲しい言葉。

……だが、いつまで経っても終焉が訪れることはなかった。

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/25(日) 01:14:10.29 ID:bUvSTvwQ0
ゆっくりと目を開けると、そこにあったのは空間の裂け目。

海未の放った必殺の一撃は、ここに吸い込まれたのだ。

海未は驚愕に目を開かせ、某然としている。

その海未の視線の先にあったのは……。

「間に合ってよかったぁ」

戦場に似つかわしくない甘い声。

聞き覚えのある、懐かしい音色。

穂乃果「この声、まさか……!」

海未「そんな……あり得ません……だって、貴女は、あの時確かに━━━━」

驚愕する穂乃果と海未。

そんな二人をよそに、純白の少女はゆっくりと口を開く。

「もう、駄目だよ、海未ちゃん」

ことり「その技は、皆を幸せにするものでしょ?」

608: 第12話:譲れない想い 2015/02/15(日) 00:50:32.63 ID:8ECCLwp30
ことり「久しぶりだね、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

穂乃果「ことりちゃん……なの?」

穂乃果「本当に……?」

ことり「ふふ、驚いちゃった?」

ことり「あの時からすっごく成長してるもんね」

穂乃果「…………」

ことり「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「ことりちゃん!」ギュッ

ことり「わっ!?」

609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:51:12.93 ID:8ECCLwp30
穂乃果「生きてたんだ……」ポロポロ

ことり「……うん」

穂乃果「良かった……本当に……良かった……」

穂乃果「私、ことりちゃんが死んだって聞いて、悲しくて、ぐすっ」

穂乃果「でも、何もできなくて……」

ことり「…………」ナデナデ

穂乃果「……お帰りなさい、ことりちゃん」

ことり「……うん、ただいま、穂乃果ちゃん」

610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:52:07.05 ID:8ECCLwp30
海未「嘘……です」

海未「だって私は、確かに……」

ことり「ことりが死んじゃう所を見た?」

海未「…………っ」

ことり「それじゃあ、ここにいることりは偽物だと思う?」

海未「……思いません」

海未「貴女は本物のことりです」

海未「私の中の何かが、そう言っています」

611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:52:37.66 ID:8ECCLwp30
海未「生きていたんですね……ことり」

ことり「うん」

海未「……良かった」ウルッ

ことり「……海未ちゃん、泣いてる?」

海未「……泣いてなんていません」グスッ

ことり「ふふ、相変わらず強がりさんなんだから」

612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:53:07.89 ID:8ECCLwp30
穂乃果「……! そうだ!」

穂乃果「ごめん、ことりちゃん」

穂乃果「今はあんまりお話してる時間がないの」

穂乃果「早く儀式を止めないと!」

海未「させません!」

穂乃果「え?」

海未「絵里の邪魔は、させません」

穂乃果「なんで……?」

穂乃果「海未ちゃんの願いはことりちゃんを生き返らせることでしょ?」

穂乃果「それなら……もう邪神を復活させる必要なんて……」

613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:53:47.66 ID:8ECCLwp30
海未「……絵里の目的は、隣の国を滅ぼすことです」

穂乃果「!」

海未「ことりが生きていることがわかれば、あの人たちはまたことりの命を狙うかもしれません」

海未「だから、邪神は復活させます」

穂乃果「……ことりちゃんが悲しむよ?」

海未「……それでも、ですよ」

海未「もしも先に進みたいのなら、私を倒してからにしてください」

穂乃果「…………っ」スッ

海未「…………」スッ





ことり「はい、そこまで!」

614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:54:16.76 ID:8ECCLwp30
ことり「もう、ことり抜きで会話を進めないで欲しいなぁ」

ことり「せっかく再会したんだから、仲良くしよう?」

海未「……そうですね」

海未「全てが終わった後に、二人が許してくれるのであれば」

ことり「……全く、相変わらず頑固さんなんだから」

穂乃果「海未ちゃん……どうしてもなの?」

海未「……ええ」

ことり「…………」

615: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:55:06.40 ID:8ECCLwp30
ことり「穂乃果ちゃんは先に行って」

ことり「穂乃果ちゃんならきっと絵里ちゃんを止められる」

ことり「手を繋いでくれる」

穂乃果「え……」

ことり「海未ちゃんの相手はことりがします」

穂乃果「で、でも……」

ことり「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」

ことり「ことりが、一度でも海未ちゃんに負けたことがあった?」

穂乃果「!」

穂乃果「……一度もなかったね」

ことり「でしょ?」

穂乃果「……うん、それじゃあお願いね、ことりちゃん」

穂乃果「後で、たくさんぎゅってしちゃうからね」

ことり「うん♪」

タタタタ

616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:56:03.48 ID:8ECCLwp30
海未「っ! 待ちなさい!」

ことり「待つのは海未ちゃんだよ」

ことり「海未ちゃんの相手は、ことりだもん」

海未「!」

ことり「あんまりことりのことを無視しちゃうと」

ことり「鳥籠の中に閉じ込めちゃうよ?」

ことり「《ハッピーワールド・クリア》」

ぐわん、と暗転する景色。

青々とした木々が、黒ずんだ土が、濁った空気が姿を消し、真っ白な世界が視界を埋めつくした。

ことり「は~い、一名様ごあんな~い♪」

617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:56:32.47 ID:8ECCLwp30
海未「……なんですか、ここは」

ことり「うーん、次元の狭間、っていうのかな?」

海未「っ、ここから出してください!」

ことり「だーめ♪」

海未「……何故ですか! どうして邪魔をするんですか!」

海未「私はただ、貴女に死んで欲しくないだけなのに!」

618: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:57:19.96 ID:8ECCLwp30
ことり「海未ちゃんのしてることは間違ってる」

海未「え?」

ことり「罪の無い人たちをたくさん殺すなんて、そんなの絶対に駄目だよ」

ことり「どれだけの人が悲しむか、海未ちゃんには解るでしょ?」

海未「…………っ」

海未「わかり、ますよ」

海未「大切な人が死んだ時の悲しみなんて、痛いほどに」

海未「ですが、それでも……」

海未「私の信念は変わりません!」

海未「ここを出て、穂乃果を止めます!」

619: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:59:02.95 ID:8ECCLwp30
ことり「……説得はできないかぁ」

海未「もう一度言います、ことり」

海未「ここから出してください」

海未「私は貴女を傷つけたくありません」

海未「ですが、もし出してくれないのであれば」

海未「少しだけ……痛い思いをするかもしれません」

ことり「痛い思い……ね」

ことり「海未ちゃんは一つだけ勘違いをしています」

海未「え?」

ことり「だってさ……」

ことり「ことりは、海未ちゃんより強いんだもん」

ことり「《トリッククロック・フェアリー》!」

620: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 00:59:43.77 ID:8ECCLwp30
海未「っ!?」

鍛え抜かれた身体が警鐘を鳴らし、咄嗟に地面を蹴って身を逸らすと、肩に鋭い痛みが走る。

さっきまで立っていた場所にはことりが立っており、右腕があった位置を、ことりの右手が貫いていた。

ことり「今のを躱すなんて、流石海未ちゃん」

海未の視界は、ことりの姿を捉えることができなかった。

初期動作から攻撃まで、何も見えなかったのだ。

その事実に、海未の身体が自然と臨戦体勢に入る。

ことり「ことりね、実はちょっとだけわくわくしてるの」

ことり「今まで、海未ちゃんと喧嘩なんてしたことなかったから」

ことり「だから、ね」

ことり「簡単に倒れちゃ嫌だよ、海未ちゃん!」

621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:00:14.94 ID:8ECCLwp30
視界から消えることり。

いや、消えたわけではなない。

目を凝らした海未には、ことりの動きが少しだけ見えていた。

海未「っ!?」

左足に走る激痛と共に、前のめりに崩れる体勢。

危険だと頭でわかっていても、体はそれに追いつけない。

ことり「はぁっ!」

海未「がっ!?」

左脇腹に突き刺さる鈍い痛み。

倒れそうになる体をなんとか持ちこたえさせ、さっとことりから距離をとる。

622: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:00:46.79 ID:8ECCLwp30
海未「……高速移動、ですか」

ことり「うん、大正解」

自分の動きを加速させる技。

単純であるが、それゆえに対応が難しい。

目で追いきれない速さでは、いつクリーンヒットをもらってもおかしくはない。

だが、負けるわけにはいかない。

ことり「ふっ!」

再び消えることりの姿。

その動きに合わせて、海未はゆっくりと身構える。

623: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:01:17.31 ID:8ECCLwp30
海未「そこっ!」

目を凝らすと辛うじて捉えることができた動き。

迫り来る掌底を左手で逸らせ、そのままことりの右腕を掴む。

海未「捕まえましたよ、ことり」

動きが速いのであれば、捕まえてしまえばいい。

後は完全に抑え込めば海未の勝ちは決まる━━━━だが、ことりの顔はずっと笑顔のままだ。

ことり「捕まえられたのは、海未ちゃんのほうだよ」

624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:02:20.55 ID:8ECCLwp30
気持ちの悪い浮遊感。

気づいた時には海未の体はことりの真上を過ぎ去り、逆側の地面へと叩きつけられた。

海未「ぐっ!?」

ことり「ことりは、あの時とは違う!」

圧倒的な速さ。

海未が腕を掴んだのを利用して、ことりは海未を投げたのだ。

倒れた体を蹴り上げられ、どさりと床を転がる。

あちこちが悲鳴をあげる体を必死に持ち上げると、じっとこちらを見つめることりと目があった。

ことり「ことりはもう、海未ちゃんに守ってもらうだけのか弱いお姫様じゃない」

その瞳は、薄暗さを含んだもの。

きらきらと光るだけの、明るい瞳ではなくなっていた。

625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:04:38.80 ID:8ECCLwp30
~~~~~~~~~~~~~~

今日は楽しいピクニック。

ほのかちゃんとうみちゃんといっしょに行くよていだったんだけど、ほのかちゃんがかぜを引いてしまいました。

だから、うみちゃんとたくさん遊んで、今度はほのかちゃんと三人で来ようねって。

そうなるはずだったのに。

うみ「っ……ことり……にげ……」

ことりを守ろうと必死に手を伸ばす海未ちゃん。

目の前にいるのは、大きな男の人。

逃げなくちゃってわかってるのに、体が動いてくれない。

お願い、動いて━━━━

ぐちゅり。

嫌な音と一緒に、お腹に走る鋭い痛み。

悲鳴すらあげることのできない体が、死への恐怖でさらに激しく震える。

どうしてだろうか、目の前の物事がゆっくりと動く。

少しずつ膨らむ男の人の体。

ことりは、このまま死んじゃうんだろう。

本能的にそう悟るけと、どうにもならない。











嫌だ、死にたくない。

目の前の世界が、くるんと暗転した。

626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:06:02.17 ID:8ECCLwp30
ことり「ここは……?」

ことりを殺そうとした人がいない。

海未ちゃんも、兵士の皆もいない。

目の前にあるのは真っ白な空間だけ。

ことり「うっ!? おげ、げぼっ、げっ!」

口から吐き出される血。

剣を突き刺された所からも、激しい痛みと共に洪水のように血が溢れてくる。

ことり「いや……いやっ」

必死に手で抑えても止まらない。

手を真っ赤に染めながら、真っ白な床を紅く色付かせる。

ことり「たすけて……うみちゃん……」

自分を守ると言ってくれた勇敢な騎士。

でも、その声が彼女に届くことはない。

ここには、ことり一人しかいないのだから。

627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:07:21.46 ID:8ECCLwp30
ことり「はぁっ、や、だ、」

ことり「こわい、こんな、いや、」

ぽたぽたと床を濡らす透明な雫。

ゆっくりと近づいてくる死の足音が、少しずつことりの心を蝕んでいく。

ことり「…………え?」

頭に思い浮かんだ言葉。

聞いたことがないはずの言葉を、ことりはゆっくりと口にする。

ことり「《スイートシュガー・リバース》」

ぽたり、と零れ落ちる血が止まる。

これは体の傷を治すものだと、いつの間にかことりは理解していた。

628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:07:52.55 ID:8ECCLwp30
ことり「はぁ……はぁ……」

だが、いつまで経っても治る気配はない。

ことりの能力は、すぐに治せるほど、まだその力は強くないのだ。

ことり「ぅ……ぎ、ぃ……」

だが、激痛だけは収まらない。

お腹を抉られた痛みがずっとことりの体を蝕み続けるのだ。


ーーー
ーー

629: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:08:42.47 ID:8ECCLwp30
ことり「やだ、もう、やだ、よ」

治療を開始してから三時間が過ぎた。

体の傷は以前として大きいまま。

全然治ってなどいない。

絶え間無く脳に送られる激痛もずっと続き、ことりは痛みで気が狂いそうになる。

ことり「たすけて、だれか、たすけてよぉ……」

いくら助けを呼んでも、誰も来てくれない。

ここには、ことりを守ってくれる人なんていない。

ことり「もう、いたいの、やだぁ……」

ことり「こんなに、くるしいなら……」

もう、しんでしまいたい。

630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:09:44.33 ID:8ECCLwp30
そっと能力の発動を止めると、堰を切ったようにお腹から血が流れてくる。

もう楽になりたい。

痛みで麻痺した思考は、諦めることを選んだ。

ゆっくりと思い出すのは、皆の笑顔。

世話をしてくれたメイドさん。

いつも挨拶してくれる兵士さん。

ちょっと口うるさい大臣さん。

そして、ことりをいっぱい甘やかしてくれたお母さん。

ことり「ほのかちゃん……」

いつもことりを引っ張ってくれて、ことりの知らない物をたくさん教えてくれる大切な人。

ことり「もういちどだけ、会いたかったなぁ」

あの眩しい笑顔を、もう見ることができない。

だから、最後くらい、思い出の中で━━━━












『かならずあなたをわるものから守ってみせます』

ことり「え……?」

631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:10:37.21 ID:8ECCLwp30
目を閉じた時に聞こえてきたのは、あの時の約束。

ことりのことを守れなかった、うみちゃんの言葉。

ことり「いや……いやっ!」

もしも、ことりがこのまま死んだらうみちゃんはどう思うのだろうか。

ことり「やだ、やめて、かんがえたくない!」

責任感が強い彼女のことだ、ことりが自分のせいで死んだって、自分をいっぱい責めるだろう。

ことり「おねがい、やめて……」

もしかしたら、責任を感じて自殺してしまうかもしれない。

ことり「や、なの……もう、いや……」

それじゃあ、ことりはどうすればいいのか。

ことり「もう、いたいの、いや、なのに……」

ことりが、生きればいい。

ことり「……《スイートシュガー・リバース》」

地獄の日々が、幕を開けた。


ーーー
ーー

632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:11:09.57 ID:8ECCLwp30
ことり「…………」

ことり「…………ぁ」

ことり「ここ、どこ……」

ことり「なんで、ことり……」

ことり「……あ」

ことり「ことり、生きて……る?」

ことり「あはは……やった、よ」

ことり「ことり、がんばって、たえっ……」ポロポロ

~~~~~~~~~~~~~~

633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:12:21.15 ID:8ECCLwp30
ことり「ことりは、誰かに守ってもらう必要なんてない」

ことり「ことりはもう、一人で生きていけるんだから」

決意に溢れた言葉。

だが、海未の耳には、それが悲痛な叫びに聞こえた。

海未「……ことり」

ことり「なに?」

海未「騎士の条件とは、なんだと思います?」

ことり「…………?」

海未「あの時、ことりを守れなかった私が言っても説得力はいでしょう」

海未「ですが、一つだけ確かなことがあるんです」

ことり「……それは?」

海未「主君よりも、強いということです!」

海未「《片時雨》!」

634: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:13:01.06 ID:8ECCLwp30
出現する巨大な水の塊。

そこから千切れた無数の矢が、ことりへと迫る。

ことり「そんなの、効かないよ!」

ことり「《ハッピーワールド・クリア》!」

忽然と姿を消す水。

ことりの前では、飛び攻撃など無意味なのだ。

海未「でしたら……《村時雨》!」

先程とは違い、小さな水の塊が大量に空中へと現れる。

一つでも消し損えば、水の矢がことりへと襲いかかるだろう。

635: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:13:37.73 ID:8ECCLwp30
ことり「考えたね……だけど!」

ことり「《ハッピーワールド・クリア》!」

拡散的に散らばる雨の矢が地面へと降り注ぎ、水溜りをつくる。

だが、ことりへと近づいた矢は、全て途中で消えてしまう。

海未「これは……」

ことり「無理だよ、海未ちゃんの攻撃は、ことりには通じない」

海未「《霧雨》!」

ぶわっと現れた大量の水が霧となって視界を遮る。

ことり「通じないって言ってるでしょ!」

ことり「《ハッピーワールド・クリア》!」

目の前の水が一瞬にして消え失せる。

だが、そこに海未の姿はない。

636: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:14:06.86 ID:8ECCLwp30
ことり「何処っ!?」

動いたようには見えなかった。

でも、ことりの視界からは消えている。

ことり「っ!」

気配を察知して振り返ると、そこにはこちらに飛びかかってくる海未の姿があった。

ことり「っ……どうやって……!」

あの一瞬でことりの後ろに回り込むなんてできるはずがない。

それこそ、瞬間移動でもしない限り。

637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:14:36.93 ID:8ECCLwp30
振り払われた海未の手刀をすんでの所で回避し、後ろへと距離をとる。

海未「《氷雨》!」

逃さないと言わんばかりの追撃。

海未の手元から放たれた雹の弾丸がことりへと迫る。

ことり「遅い!」

直線状に飛ぶ雹を右へと逸れて躱す。

海未から十分に距離を取り体勢を立て直す。

ことり「ふふ、残念だったね、海未ちゃん」

ことり「今のはちょっとだけおし━━━━」

海未「はぁっ!」

638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:15:12.85 ID:8ECCLwp30
目の前に迫る海未の体。

予備動作も無しに、海未はことりの前へと一瞬で移動したのだ。

ことり「っ!?」

海未は、自分の能力で生み出した水でできた水溜りの上に瞬間移動ができる。

例え自分が何処にいても、何をしていても、水溜りがあれば、一瞬の内に。

だが、ことりはそれを知らない。

だから、不用意に水溜りへと近づいてしまう。

ことり「まだっ!」

だが、ことりの速さは健在だ。

いくら海未が不意打ちをしようとしても、気づいてしまえば問題ない。

639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:15:42.49 ID:8ECCLwp30
海未「いえ、終わりですよ」

海未「《戻り梅雨》!」

ことり「なにを……ごぼっ!?」

口元から溢れてくる水。

急に現れた水に息が詰まり、思考が一瞬途切れる。

海未「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

それを見逃すほど、海未は甘くない。

強い衝撃と一緒に、ことりは地面へと押し倒された。

640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:16:10.58 ID:8ECCLwp30
海未「私の勝ちですよ、ことり」

倒れたことりの上に馬乗りになる海未。

両腕を抑えられ、ことりは抵抗することができない。

ことり「……そっか、ことり、負けちゃったんだ」

ことり「やっぱり、海未ちゃんは凄いなぁ……」

負けたというのに、なんだか嬉しそうにそう呟くことり。

海未は、そんなことりを悲しそうに見つめるだけ。

641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:16:40.95 ID:8ECCLwp30
ことり「ねぇ、最後のって、どうやってやったの?」

ことり「周りは警戒してたつもりだったんだけど」

海未「……私が出した水を、戦闘中に少しずつ蒸発させていったんです」

海未「そして、その空気を、ことりは吸ってしまった」

海未「最後の技は、それを元の水へと戻すものです」

ことり「……なるほどね」

ことり「ふふ、ことりの完敗だよ、海未ちゃん」

642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:17:31.71 ID:8ECCLwp30
海未「ことり、この空間から出してください」

海未「私は、穂乃果を止めなくていけません」

ことり「……いや」

海未「ことり!」

ことり「……そんなに、ここから出たいの?」

海未「……ええ」

ことり「……それなら、脱出する方法を教えてあげる」

ことり「それはね……」

ことり「ことりを殺すこと」

643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:18:20.14 ID:8ECCLwp30
海未「え……?」

ことり「ことりを殺せば、この空間は無くなって、海未ちゃんは元いた場所に帰れるよ」

海未「何を、言って……」

ことり「本当だよ」

ことり「穂乃果ちゃんに追いつきたいなら、ことりを殺すしかないの」

海未「なんで、そんな冷静でいられるんですか……」

海未「自分の言ってることがわかってるんですか?」

海未「死んでしまうかもしれないんですよ……?」

ことり「……うん、いいよ」

ことり「海未ちゃんになら、殺されても」

海未「っ!?」

644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:18:55.38 ID:8ECCLwp30
ことり「ことりはね、元々あそこで死ぬはずだったの」

ことり「でも、海未ちゃんのおかげで生き延れた」

ことり「海未ちゃんが守ってくれたから、ことりは生きてるの」

海未「私は、守ってなんて……」

ことり「ううん、守ってくれたよ」

ことり「『死にたい』って気持ちを、いつも『生きたい』って気持ちに変えてくれて」

ことり「お節介なくらい、ことりを励ましてくれた」

ことり「だから、いいよ」

ことり「海未ちゃんになら、ことりの命、あげる」

645: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:20:03.49 ID:8ECCLwp30
海未「……っ、ぁ」

ゆっくりとことりの首元へと手がかかる。

海未「わ、私は……どうしても……」

殺しても、復活させてもらえばいい。

だから、海未ちゃんはきっとことりを殺すだろう。

海未「こと……り……」

首を伝う暖かい感触。

覚悟をするようにそっと目を閉じる。

前とは違って、死への恐怖はない。

ただ、ちょっとだけ、ううん、とっても悲しいかも。

首にかかる力が強くなる。

今度こそ、本当にさようなら。














海未「できるわけ、ないじゃ、ないです、かぁ……」ポロポロ

646: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:20:35.71 ID:8ECCLwp30
ことりの肌を伝う暖かい雫。

ぽつん、と落ちてきてはつーっと肌を辿って地面を濡らします。

海未「なんで、なんで、そんな、こと、言うん、ですか」

海未「私が、今まで、どんな、気持ち……で……」

ことり「…………」

海未「最低、です……貴女は、最低……です」

海未「せっかく会えたのに、生きてて、嬉しかったのに」

海未「死んでもいいなんて……言わないでください……!」

ことり「……海未ちゃん」

647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:21:48.06 ID:8ECCLwp30
人前では決して泣かないはずの海未。

その少女が、今はことりの目の前で涙を流している。

あの時から閉じ込めた悲しみを全て吐き出すように、溢れて止まらない涙。

ことり「……ごめんね、海未ちゃん」

そっと抱き寄せると、胸の中で赤ちゃんのように泣きじゃくる。

海未「わたし、の、まけです、よ」

海未「こんなの、さいしょ、からぁ」

ことり「……うん」

海未「ことり、ほんとに、いきてて、よかった……」


ーーー
ーー

648: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:22:25.73 ID:8ECCLwp30
ことり「落ち着いた?」

海未「……はい、ありがとうございます」

海未「それで、これからどうするんですか?」

海未「ここにいる以上、私はことりに従うしかありませんので」

ことり「うーんとね……」

ことり「《ミッシング・ダイアリー》」

空間の中に映し出されのは、絵里と対峙する穂乃果の姿。

ことり「とりあえず、穂乃果ちゃんを応援しよっか」

649: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:22:58.72 ID:8ECCLwp30
~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「お姉ちゃん!」ダキッ

絵里「ふふ、どうしたの、亜里沙」

亜里沙「お姉ちゃん、王宮の騎士試験に合格したって本当?」

絵里「あら、どうして知ってるの?」

亜里沙「お父さんに聞いたの!」

絵里「ふふ、黙っておいてって言ったのに、しょうがないんだから」

亜里沙「むー、亜里沙にも内緒にしておくつもりだったの?」

絵里「後で驚かせようとしただけよ、怒らないで」ナデナデ

亜里沙「えへへ///」

650: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:23:42.19 ID:8ECCLwp30
絵里父「絵里、いるか」

絵里「はい、ここに」

絵里父「今回は良くやったな、絵里」

絵里父「最年少での合格だ。私の鼻も高いぞ」

絵里「それを言うのは四回目よ」

絵里父「おや、そうだったか?」

絵里父「まあいいではないか」

651: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:24:24.42 ID:8ECCLwp30
絵里「それで、どうかしたの?」

絵里父「今度皇帝が直々に顔を見たいらしくてな」

絵里父「家族も連れて是非来てくれ、ということだ」

絵里「…………」

絵里父「油断はするなよ」

絵里父「我々絢瀬家は、独裁政治に反対する貴族の中でも高い地位を持っている」

絵里父「だからこそ、奴が私たちを歓迎することはない」

絵里「……ええ」

絵里「でも、まさか王宮の中では仕掛けてこないでしょう」

絵里父「ああ……そうだな」

652: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:24:54.38 ID:8ECCLwp30
亜里沙「?」

絵里「ふふ、ごめんね亜里沙、難しい話をして」

絵里「今度、王宮に一緒にいきましょう?」

亜里沙「いいの!?」

絵里「ええ、もちろんよ」

亜里沙「わぁ……一回見てみたかったの」

亜里沙「どんなとこなんだろうなぁ」


ーーー
ーー

653: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:25:23.39 ID:8ECCLwp30
ーーーー王宮

亜里沙「ハラショー……」

亜里沙「凄い大きい!」

亜里沙「お姉ちゃん! 床がツルツルしてる!」

絵里「亜里沙、落ち着いて」

絵里「私たちの家も同じようなものでしょ?」

亜里沙「……そうだった!」

654: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:25:58.51 ID:8ECCLwp30
「……絢瀬様ですね?」

絵里父「ああ、そうだ」

「皇帝陛下がお待ちです。どうぞ、お二人だけで来てください」

絵里父「妻と娘はどうする」

「どうぞ待合室の方で寛いでいてください」

絵里父「とのことだ。絵里、いくぞ」

絵里「はい」

絵里「それじゃあ亜里沙、また後でね」

亜里沙「はーい」

655: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:26:35.82 ID:8ECCLwp30
スタスタスタ

絵里父「ご機嫌うるわしゅう、皇帝陛下」

絵里「…………」

皇帝「……面を上げよ」

絵里 スッ

皇帝「先の試験は私も見せてもらった」

皇帝「その齢にしてその力量、大層見事である」

皇帝「これからは王宮の騎士として名に恥じぬ行いをせよ」

絵里「はっ! 畏まりました!」

656: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:27:09.82 ID:8ECCLwp30
絵里(これが皇帝……)

絵里(噂では極悪非道な人物と聞いたけど……)

皇帝「時に、絢瀬の党首よ」

絵里父「はっ」

皇帝「お主は、まだ我に反抗する気か?」

絵里父「いえ、そのようなことは決してございません」

絵里父「しかし、独裁政治を行った国は長続きはしません。それは歴史が証明をしております」

絵里父「国家繁栄のため、何卒ご一考頂ければと」

657: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:27:43.31 ID:8ECCLwp30
皇帝「ふん……そうやって貴様が反対しているから、下々の奴らも調子ずく」

皇帝「今なら重く取り立ててやるぞ?」

絵里父「…………」

皇帝「ふん、強情な奴だ」

皇帝「ならば、荒っぽい手段をとるしかないな」

絵里父「……?」

皇帝「おい、連れてこい」

絵里父「な、何を……!?」

絵里「なっ!?」

ゆっくりと連れて来られたのは、縄で縛られた亜里沙。

両側を兵士に挟まれ、無理やり歩かされている。

658: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:28:47.92 ID:8ECCLwp30
絵里父「こ、これは一体……」

皇帝「よく聞け皆のもの!」

皇帝「こいつは先程、不敬にも私の命を狙った!」

皇帝「よって、死刑を宣告する!」

絵里「何を言って……亜里沙がそんなことするわけありません!」

絵里父「貴様……」ギリッ

皇帝「ふん、素直に言うことを聞いておればいいものを」

皇帝「さあ、反逆者共を捕らえろ!」

亜里沙を人質にされては、抵抗することもできない。

絵里達は捕まり、暗い地下牢へと送られた。


ーーー
ーー

659: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:29:17.02 ID:8ECCLwp30
皇帝「今から、私の命を狙った反逆者の処刑を始める」

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

皇帝「こやつらは自分達の地位を利用して王宮に潜り込み、私を殺そうとした!」

皇帝「逆らう者には死を!」

「「「「死を!!!!」」」」

皇帝の言葉に合わせて言葉を返す市民。

絵里はその光景を絶望的な表情で見ていた。

660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:29:51.82 ID:8ECCLwp30
皇帝「それでは、まずは一人目」

「おら、歩け!」

亜里沙「づっ……」

足に重りを付けられ、手枷をされたまま無理やり歩かさせられる亜里沙。

その表情からはいつもの笑顔は消えていて、体のいたるところに痣がつけられている。

絵里「いや! やめて! 亜里沙は無実よ!」

「うるせぇ人殺し!」

「死ね!」

弁明は何の意味ももたない。

石を投げつけられ、絵里の体に小さな傷ができる。

661: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:30:31.56 ID:8ECCLwp30
絵里「いや……亜里沙……」

こつんこつんと階段を登って、断頭台へとゆっくりと固定される亜里沙の体。

恐怖を体験させるためであろう、絵里の位置からも顔が見られるようになっている。

そこに映っていたのは、紛れもない恐怖。

集まった全ての人間が亜里沙を敵と呼び、殺せという。

狂った世界。

こんな奴らを守るために、私は今まで必死に頑張ってきたというのか。

662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:31:02.86 ID:8ECCLwp30
皇帝「さあ、それでは始めようか」

皇帝「一人目の断罪を」

皇帝「何か言い残すことはあるか?」

亜里沙「…………はい」

皇帝「そうか、それでは言うといい」

皇帝の言葉に静まりかえる民衆。

奴らは待っているんだ、亜里沙が命乞いをするのを。

それを見て、楽しもうとしているんだ。

泣き叫ぶ表情を。

663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:31:52.95 ID:8ECCLwp30
亜里沙「…………お姉ちゃん」

皇帝「…………?」

だが、亜里沙はそんなことはしない。

そっと名前を呼ばれて亜里沙の方を見ると、必死に笑顔を作る亜里沙と目があった。

亜里沙の瞳はこんな状況でも優しく、少しだけ、温もりが分けられた気がして。

亜里沙の唇が、そっと言葉を紡ぐ。

亜里沙「……大好きだよ」

にっこりと微笑む亜里沙。

今までで一番可愛くて、愛らしい、心からの笑顔。

その表情に惹かれるように、絵里の口も自然と動く。

絵里「私も……亜里沙のこと━━━━」

ガチャ

ずぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!!

飛び散る血飛沫。

絵里の言葉は、誰にも届くことはなかった。

664: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:32:42.74 ID:8ECCLwp30
絵里「ああああああああああああああああああああああああ!?!!?!?」

皇帝「美しい姉妹愛だ」

皇帝「皆のもの、面白い物が見られたな」

「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

「ははは、みんなの前で告白するほどお姉ちゃんが好きなのか!」

「流石、犯罪者はやっぱり狂ってますね」

「あいつの面見たか? 最高だぜ!」

絵里「っ……ああああ!!!」

絵里「殺してやる! 全員、殺してやる!!!」

「うるせぇ、死ぬのはてめーだろ!」ゴスッ

絵里「うぐっ!?」

665: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:33:16.16 ID:8ECCLwp30
「さぁて、次はどいつにするかな」

「お姉ちゃんは最後までとっておいてやれよ」

「そうだな、それじゃあ次はおっさんだな」

絵里父「…………」キッ

絵里父「むぅん!」

「なっ、うわっ!?」

近づいてきた兵士に飛びかかり、武器を奪う。

そのまま器用に手枷を壊すと、絵里の鎖も破壊した。

666: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:33:46.89 ID:8ECCLwp30
絵里父「絵里、逃げろ」

絵里「っ……私は、亜里沙の仇を……」

絵里父「ああ。だが、今は無理だ」

絵里父「力を手に入れろ。そして、いつか奴を討ち果たすのだ」

絵里「でもっ!」

絵里父「いいからいけ!道は私が作る!」

ごっと斧を振り回して民衆の中へと突っ込むと、大きく道が開く。

667: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:34:20.18 ID:8ECCLwp30
絵里父「今だ、早く!」

絵里「やだ……亜里沙……」

絵里父「絵里ッ!」

絵里「ッ!?」

父の言葉に押されるように、ばっと空いた空間へと飛び込み、がむしゃらに走る。

後ろを振り向かずに、前だけを見て。

ひたすら、自分の無力さを噛み締めながら。

668: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:34:52.10 ID:8ECCLwp30
絵里母「私たちが、でしょ?」

絵里父「……すまんな、お前まで巻き込んで」

絵里母「気にしていないわ」

絵里母「夫の晴れ舞台に付き合うのも、妻の務め」

絵里母「あの子のために、思う存分暴れましょう」

絵里父「……ああ」

向かってくるのは多数の兵士。

皇帝は、その光景を見て、ただ笑うのみ。

669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:35:35.52 ID:8ECCLwp30
絵里「はぁ……はぁ……」

どれだけ走ったかわからない。

知らない道を、誰にも見つからないように、追いつかれないように、三日三晩走り続けた。

どさりと地面に倒れこむ。

体はもう言うことを聞かない。

こんな山奥では、助けてくれる人なんていないだろう。

いや、元から私を助けてくれる人なんていないか。

まだ何も復讐できていないというのに、ここで死んでしまうのだろうか。

段々と重くなった瞼を閉じながら、絵里はこの世界を呪った。

~~~~~~~~~~~~~~

670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:36:09.34 ID:8ECCLwp30
絵里「私は、あの国を滅ぼす」

絵里「父を、母を……」

絵里「そして、亜里沙を」

絵里「嘲笑って、貶して、殺して」

絵里「尊厳を踏み躙ったあいつらを」

絵里「私は、絶対に許さない」

絵里「だから、貴女に邪魔をされるわけにはいかないのよ」

穂乃果「…………」

671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:37:01.82 ID:8ECCLwp30
絵里「よくここまで来られたわね」

穂乃果「皆が頑張ってくれているおかげだよ」

絵里「そう……」

穂乃果「ねぇ、やめようよ、こんなこと」

穂乃果「こんなことしても、誰も喜ばない」

穂乃果「私たちは言葉が通じていて、きちんと話せばわかりあえるはずです」

穂乃果「だから、戦う必要なんか━━━━」

絵里「……偽善者」

絵里「この世界には、貴女のような偽善者が多すぎるッ!」

672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:37:31.97 ID:8ECCLwp30
ごぅん、と穂乃果へと迫る絵里。

素早く繰り出されるパンチを、穂乃果は正確に受け止める。

絵里は常に動きながら穂乃果へと攻撃を行い、その速さと手数に穂乃果は防戦一方になる。

穂乃果「っ……う!?」

がくん、とよろける体。

段々と体中が思うように動かなくなり、手足のだんだんと感覚が消えていく。

673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:38:37.37 ID:8ECCLwp30
絵里「人間は解りあえたりしない!」

絵里「そんな風にできてなんかいたりしないッ!」

絵里「何も知らないくせに……知ったような口を聞かないでッ!」

ゆらゆらと動いたかと思うと、ぐっと距離をとる絵里。

その直後、凄まじい加速と共に穂乃果へと迫る。

穂乃果「っ!」

だが、わかっていても体は動かない。

がら空きになったお腹へと絵里の拳が突き刺さる。

674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:39:05.48 ID:8ECCLwp30
穂乃果「がぁぁぁっっぎっっづぅ!?」

どたどたと地面を転がる穂乃果。

激しい痛みに負けないように体を起こそうとするが、ピクリとも動いてくれない。

絵里の攻撃には電撃が不可されており、攻撃を受け止める度に末梢神経が障害され、次第に手足の自由が奪われていく。

絵里の攻撃を素手で防御すればするほど、彼女の思うがままということだ。

675: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:39:48.50 ID:8ECCLwp30
絵里「……やっぱり、期待外れね」

絵里「所詮貴女も、口だけの人間だったってこと」

絵里「苦しまないように、せめて最後くらい楽に死なせてあげるわ」

ゆっくりの穂乃果の前に立つ絵里。

穂乃果はその光景に唇を噛むことすら許されない。

穂乃果(死ぬ……)

穂乃果(私が死ぬ……)

穂乃果(何にもせずに、このまま……?)

穂乃果(皆が頑張ってるのに……私だけ、何もせずに……)

穂乃果(そんなの、絶対に駄目)

穂乃果(ここまできて……)









穂乃果「死ねるかぁぁぁぁぁぁ!」

絵里「っ!?」

676: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:40:24.08 ID:8ECCLwp30
穂乃果の胸を貫いた筈の絵里の抜き手は、空を切る。

そこにあるはずの、穂乃果の体を通り抜けて。

絵里「っ!」

咄嗟に自分の体を雷と化して距離をとると、穂乃果の周りが熱を帯び始めたことに気づく。

いや、それだけじゃない。

絵里「どうして、立って……」

体の動きを封じた筈の穂乃果が、立ち上がっている。

穂乃果が体を炎にしたことで、活動電流による神経伝達という概念が消失しため、穂乃果の体は自由に動くようになったのだ。

677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:40:58.07 ID:8ECCLwp30
だが、驚きは一瞬。

すぐに思考を切り替えた絵里は、すかさず穂乃果へと追撃を開始する。

穂乃果「はぁっ!」

絵里「ふっ!」

ぶつかりあう炎と雷。

穂乃果は軸足へと放たれた蹴りを躱すとお返しにと右ストレートを繰り出す。

絵里「甘いッ!」

まっすぐ向かってくる拳を左手で受け止めると、腕を引いて穂乃果の体勢を崩し、胸元に肘を叩き込む。

678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:41:32.37 ID:8ECCLwp30
穂乃果「ぐっ!?」

重い痛みによろめくが、絵里は穂乃果の手を離してはくれない。

そのまま追撃をしようと、より一層力を込める。

穂乃果「爆発ッ!」

ぼん、と大きな音と一緒に起こる爆発。

絵里は咄嗟に手を離し、その隙に穂乃果はさっと絵里と距離をとる。

最初と同じように、押され気味な穂乃果。

体の麻痺は無くなったと言っても、やはり手強い相手には違いない。

679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:42:03.71 ID:8ECCLwp30
絵里「……なかなか粘るわね」

絵里「いいわ、それならお終いにしてあげる」

すっと拳を構える絵里。

あたりからばちばちっと電気が弾けたような音が起こり、空気を電流が走る。

絵里「『紫電一閃(オストラ・モールニア)(Острая молния)』!」

迸る稲妻。

一瞬にして限界にまで加速された拳が、穂乃果の体へと突き刺さり、巨大な衝撃と共に吹き飛ばす。

680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:42:49.86 ID:8ECCLwp30
穂乃果「あっ……ぐ……」

絵里「……殺すつもりだったんだけど、ね」

穂乃果は当たる直前、咄嗟に両腕を交差して後ろに飛び、衝撃を和らげたのだ。

だが、それでもダメージは凄まじい。

炎になっていなければ、体が消し飛んでいただろう。

絵里「まあでも、もう満身創痍には違いなさそうだけどね!」

絵里は油断をしない。

すぐに決めようとはせず、さっきと同じように、速さで撹乱しながら攻撃を繰り出す。

681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:43:31.84 ID:8ECCLwp30
穂乃果「く……ぅ!」

さっきの攻撃のせいで、思うように反撃ができない。

防戦一方。

このままでは、確実に負ける。

何か、逆転する方法を考えないと。

穂乃果(…………!)

必死に攻撃を受け止めながら考える穂乃果の前を、光の筋が通る。

絵里が通り過ぎた後に、一瞬だけ残るみたいに。

682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:44:05.85 ID:8ECCLwp30
これだ。

出来るかどうかはわからない。

でもやるしかない。

絵里の右ストレートをガードすると、同じようにさっと身を翻して絵里は穂乃果との距離をとる。

その瞬間、穂乃果は目の前に残された一筋の光を握り締めた。

絵里「っ!?」

がくん、と動きが止まる絵里。

過去に雷化した絵里に触れることが出来た者など、誰一人いなかった。

だからこそ、何が起きたのかを理解できない絵里は一瞬反応が遅れてしまう。

683: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:44:40.51 ID:8ECCLwp30
穂乃果「雷を、握り潰すようにぃぃぃぃぃ!!!」

ようやく掴んだ希望の光。

穂乃果はそれを全力で手繰り寄せ、絵里を自分の方へと引き寄せる。

それに対応できない絵里は、穂乃果の方へと吸い寄せられる。

穂乃果「解放! 全開!」

体に秘める力を、全て拳に、熱に、炎に。

穂乃果「マキシマムゥゥゥゥゥゥゥストラァァァァァァァァァァイクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

ごっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

無防備な絵里へとめり込んだ拳は大爆発を起こし、絵里の体を宙へと舞いあげた。

684: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:45:20.89 ID:8ECCLwp30
穂乃果「はぁ……はぁ……」

完全な直撃。確かな手応え。

勝ちを確信した穂乃果が絵里のところに向かおうとすると、絵里の体がピクリと動いて、ゆっくりと起き上がる。

絵里「うっ……げほっ、ごほっ」

絵里「やってくれるじゃない……」

さっきまでの余裕の表情は眉を潜め、その瞳は怒りに満ち溢れている。

絵里「もしかして、今ので終わりと思ってないでしょうね……」

絵里「私は、あんなのでやられるほど、甘くはないわよ!」

685: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:45:56.26 ID:8ECCLwp30
絵里が手を翳すと、空中から稲妻が迸り、穂乃果を襲う。

穂乃果「っ!」

重い体に鞭をうち、すんでのところでそれを躱す。

だが、一撃だけでは終わらない。

二撃、三撃、と次々に落雷が穂乃果へと迫る。

絵里「上ばかりに気を取られている暇はないわよ?」

絵里の声に振り向くと、穂乃果を目掛けて飛んでくる岩の弾丸が目に映る。

穂乃果「くっ!」

飛び退いて躱すと、ごおんと地面を抉る岩。

普通の岩なら、あたっても問題はない。

しかし、この岩は電気を帯びている。

当たったら、ただではすまないだろう。

686: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:46:51.20 ID:8ECCLwp30
さっきの一撃をもらった絵里は、接近戦を危険だと考えて、遠距離戦へと戦術を変えた。

雷を落とし、帯電させた岩を飛ばす。

これらの動作を同時に行いを、手を触れずに多数の波状攻撃をしかける。

穂乃果は辺りに炎を撒き散らして絵里の攻撃に対応するが、手数の多さに追いつかない。

そして、穂乃果の炎を軽々と躱しながら、近づかれないように距離を取り続ける。

絵里の優位は揺るがない。

このままいけば、いずれ穂乃果の体力は限界になるだろう。

687: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:47:25.07 ID:8ECCLwp30
しかし、絵里は焦っていた。

一方的だと思っていた戦いを穂乃果は一度覆して見せたから。

もしかすると、まだ奥の手を隠しているのかもしれない。

だから、早く倒してしまわないといけない。

絵里にそう思わせるほど、穂乃果のさっきの攻撃は絵里に恐怖を与えたのだ。

だが、穂乃果は倒れない。

躱して、弾いて、体をかすめて。

ボロボロになりながらも、絶対に倒れない。

そんな姿が、絵里をますます焦らせる。

688: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:47:59.10 ID:8ECCLwp30
絵里「それなら、一撃で沈める!」

ばちばちばちっ!

辺りの空気が全体が電気を帯びたように、鋭さを増す。

手を前へと翳す絵里。

その前に、夥しい粒子が溢れ出す。

穂乃果「!」

待っていた転機。

相手が大きな隙を自分から作った。

ここしかない。

彼女に勝つためには。

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

纏う炎を、熱く、大きく。

一撃で彼女を倒せるように。

己の全てを、燃やして、穂乃果は空へと跳ぶ。

689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:48:40.70 ID:8ECCLwp30
絵里「消えなさいッ!」

絵里「《雷霆万鈞(ピリヴョルノテ・シヤーニェ)
(Перевернутый сияние)》!」

ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん!!!

放たれた巨大な粒子の奔流。

それは、反物質粒子砲。

全てを消滅させる悪魔の輝きが、穂乃果へと迫る。

穂乃果「燃えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

穂乃果「烈火! 流星!」

全てを焼き尽くす灼熱を身に纏い、絵里へと目掛けて急降下をする。

穂乃果「メテオォォォォォォォォインパクトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

全ての力を、粒子の波へと叩きつける。

690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:49:21.96 ID:8ECCLwp30
絵里「あああああああああああああ!!!!」

迫り来る穂乃果を近づけないように、体の力を全て振り絞ってエネルギーを供給する。

反動でずるずると後ろに下がる体。

だんだんと力が抜けていくのがわかる。

穂乃果「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

迫り来る粒子を、炎を盾に引き裂いていく。

体に触れれば消滅してなくなる。

だが、ここでのうのうと引き下がるわけにはいかない。

ほのえり「「負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんん!!!!

耳を劈く激しい爆音。

力と力のぶつかり合いが、大爆発を引き起こした。

691: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:50:07.24 ID:8ECCLwp30
絵里「うっ……ぁっ……」

爆風に巻き込まれて吹き飛ばされた絵里は、倒れそうな体を必死に起こし、穂乃果の姿を探す。

ゆっくりと散っていく砂埃。

その開けた視界には、地面に倒れた穂乃果の姿があった。

穂乃果「…………ぁ」

穂乃果の体は動かない。

炎のおかげで衝撃は和らげられたものの、爆心地のすぐ側にいたせいだろう、体全体が焼け爛れたように痛い。

体力を使い果たしたせいか、炎化はすでにとけてしまっている。

692: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:51:07.61 ID:8ECCLwp30
負けた。

止められなかった。

悔しさが、不甲斐なさが、全身を駆け巡るが、体は動いてはくれない。

絵里「はは、勝った……私は、勝ったのよ」

絵里「これで、邪神は復活する……!」

絵里も既に満身創痍だが、それでも体を動かすことはできる。

自分の勝利にほっと気を緩めてしまう絵里。

だからこそ、彼女は気づけなかった。

迫り来る、足音に。

「そうね。だからもう、貴女は必要ないわ」

ぐちゅっ!

693: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/15(日) 01:51:41.82 ID:8ECCLwp30
絵里「かっ……はっ……」

ぴちゃん、と穂乃果の頬にかかる暖かい液体。

絵里の胸が、後ろから貫かれたのだ。

絵里「そん……な……」

全身の力が抜けたように膝を着くと、ゆっくりと地面へと倒れ込む。

それにより穂乃果の視界に絵里を貫いた人物が映る。

それは、穂乃果のよく知る人。

そして、絶対にここにいないはずの人物。

理事長「これで、全ての準備が整った」

702: 第13話:未来、心重ねて紡ぐ歌 2015/02/22(日) 23:01:27.89 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「女王……様……」

理事長「久しぶりね、高坂さん」

理事長「ここまでやってくれるなんて、本当に貴女は優秀だわ」

穂乃果「どうして、ここに……」

理事長「それは言わなくてもわかると思いますよ」

理事長「邪神を復活させるため……とね」

703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:02:04.24 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「なん……で……」

穂乃果「だって、復活を阻止するために……私たちを……」

理事長「ああ、それは嘘ですよ」

理事長「本当は、貴女たちに潰しあってもらいたかったです」

理事長「忌々しい賢者共と同じ《能力》を持った貴女たちは、私にとって障害にしかなりませんからね」

理事長「だから何度も貴女たちに助言して、彼女たちと同等に戦えるようにしたんですよ」

穂乃果「…………っ」

704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:02:33.11 ID:GlxCdK0z0
絵里「かっ……はっ……」ゴボッ

理事長「おや、まだ息がありましたか」

理事長「やはりこの体ではほとんど力が出せませんね」

理事長「絢瀬絵里、貴女も本当によく頑張ってくれました」

理事長「全ての宝玉を集めるなんて、流石としかいいようがありません」

理事長「貴女に集めさせたのは正解だったようですね」

絵里「え……?」

705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:03:08.10 ID:GlxCdK0z0
理事長「まだわからないのですか?」

理事長「貴女に邪神の情報を流したのはこの私ですよ」

理事長「家族を失った怒り……とても良い感情です」

理事長「おかげで貴女はすんなりと信じてくれました」

絵里「っ……全部、貴女の思惑通りだと言うの……?」

理事長「ええ、そうですよ」

理事長「全ては、私の復活のため」

穂乃果「私の……復活……?」

絵里「まさ……か……」

理事長「そう、私が邪神よ」

706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:03:50.98 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「そんな……だって……」

理事長「もちろん、私は封印されたはずです」

理事長「しかし、私は封印させる時に思念を少しだけ飛ばしました」

理事長「今の私は、その思念が乗り移ったもの」

理事長「無論、力も弱いため、心の強い人間には何もすることができません」

理事長「しかし……心の弱った人間なら、ゆっくり心を蝕んで、私の思い通りに動かすことができる」

穂乃果「……ことり、ちゃん」

理事長「正解ですよ、高坂さん」

707: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:04:19.57 ID:GlxCdK0z0
理事長「あの事件も、私が引き起こしたものです」

理事長「あの子だけは、先に殺しておかなければいけなかったので」

穂乃果「っ……!」

絵里「……私を、騙していたの……!?」

理事長「いいえ、騙してなどいませんよ」

理事長「約束通り、貴女の願いを叶えてあげましょう」

理事長「この世界を全て滅ぼして……ね」

絵里「っ!?」

708: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:05:00.87 ID:GlxCdK0z0
絵里「そんなこと、私は、望んでない」

絵里「私は、あの国に復讐して、そして、もう一度、家族皆で……」

理事長「家族……皆……?」

理事長「ふふ、あははははははははは!」

絵里「何が、おかしいのっ!?」

理事長「いえ、とても滑稽だと思ったのよ」

理事長「大切な家族を見殺しにした人間が、家族と一緒にいたいだなんて」

絵里「何を……」

理事長「貴女の家族なら、さっき死んだわよ」

絵里「え……?」

709: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:05:32.15 ID:GlxCdK0z0
理事長「あら、酷い子ね」

理事長「自分の大切な家族のことを忘れちゃうなんて」

絵里「……のぞ、み?」

理事長「そう、希さんよ」

理事長「最後まで貴女の邪魔をさせないようにと、自分の命を犠牲にしてまで頑張った」

絵里「う……そ……」

理事長「本当は気づいていたんでしょ、こうなることくらい」

理事長「それでも、貴女は大切な家族を死地へと赴かせた」

理事長「貴女の家族への思いは、所詮その程度ということよ」

絵里「ぁ……ぁ……」

710: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:06:01.02 ID:GlxCdK0z0
理事長「ふふ、でも安心して」

理事長「私が全部壊してあげるから」

理事長「貴女の気に入らない物、全部壊してあげるから」

理事長「だから、おとなしく見ていなさい」

理事長「この世界が終わるところを」

理事長「大丈夫、ちゃんとあの世で再開させてあげるから」

711: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:06:28.71 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「そんなこと、させない……」

穂乃果「復活なんて……」

理事長「ふふ、そんな体で何ができるというの?」

理事長「本当は始末するところだけど、貴女はよく頑張ってくれた」

理事長「だから、見せてあげるわ」

理事長「私が復活するところを」

理事長「世界が終焉へと向かうところをね」

712: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:07:47.01 ID:GlxCdK0z0
台座へと備えられた九つの宝玉。

それへと手を翳すと、そっと口を開く。

理事長「『解き放て、神の御霊よ』」

理事長「『全てを滅ぼす、終焉の力よ』」

ひゅぃぃぃぃぃぃぃぃん!

輝き出す九つの宝玉。

禍々しい輝きと共に溢れ出す暗黒の瘴気。

理事長「『時は満ちた』」

理事長「『世界よ、終われ』」

ぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!

宝玉が一斉に砕け散ると、激しい轟音と共に世界が暗い闇に覆われる。

「見るがよい、我の真の姿を」

邪神「そして絶望せよ、己の未来を」

713: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:08:20.53 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「そん……な……」

穂乃果の目の前に現れたのは、巨大な化け物。

所々膨れ上がった手足、獰猛な目。

赤と黒で染められた身体は見る者の不安を駆り立てる。

邪神「ふはは、力が溢れるこの感覚、とても心地よい」

邪神「気が変わった、貴様らをためしに殺してみよう」

巨大な手の前に集まる闇の粒子。

球状になった闇の球を、穂乃果へと向かって投げつける。

714: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:08:57.22 ID:GlxCdK0z0
虚ろな瞳の絵里は、抵抗する素振りを見せない。

ただ、迫り来る死を受け入れるだけ。

穂乃果は必死に避けようとするが、体が動かない。

能力を発動することもできない身体は、足掻くことすらできない。

このままただ殺されるのを待つしかないのか。

だが、穂乃果の目に諦めはない。

だって、穂乃果には。

ことり「《ハッピーワールド・クリア》!」

仲間がいるんだから。

715: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:09:33.48 ID:GlxCdK0z0
ことり「ふぅ、なんとか間に合った」

穂乃果「あはは……二度目、だね」

穂乃果「ありがとう……」

ことり「ううん、穂乃果ちゃんが無事で良かった」

海未「大丈夫ですか、穂乃果」

穂乃果「ちょっとやばいかも……」

邪神「……貴様、生きていたのか」

ことり「残念だったね?」

邪神「……ふん、生意気な小娘だ」

邪神「だが、今更何ができる」

邪神「たった二人で我に刃向かう━━━━」

ことり「二人じゃないよ」

邪神「なんだと……?」

716: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:10:12.51 ID:GlxCdK0z0
凛「凄く大きいにゃあ……」

花陽「これが邪神……」

にこ「ま、にこなら余裕ね」

真姫「あんまり調子に乗ってんじゃないわよ」

希「また面倒そうなのがおるなぁ」

ツバサ「ふふ、『伝説』との闘いか……面白そうじゃない!」



邪神「死んだはずのものまで……?」

邪神「貴様、まさか……」

ことり「正解」

ことり「ことりの能力は、死者を生き返らせることもできる」

ことり「あなたが勝ち誇ってお喋りしている間に、ことりは皆を集めてたの」

717: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:11:00.85 ID:GlxCdK0z0
~~~~~~~~~~~~~~

希「ぷはっ!?」ガバッ

希「あれ、ここは……? うち、何して……」キョロキョロ

凛「…………」キッ

花陽「…………」

希「あはは……死んであの世で再会なんてな」

ことり「残念だけど、ここはあの世じゃないよ」

希「……はじめまして、やね? もしかして、うちまだ生きとるん?」

ことり「うん」

718: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:11:33.52 ID:GlxCdK0z0
海未「希、混乱しているとは思いますが、今は説明している時間がありません」

希「おっけ、移動しながら把握するわ」

ことり「ほらほら、花陽ちゃんと凛ちゃんも行くよ」

凛「…………」

ことり「……今、穂乃果ちゃんは危険な状態なの」

凛「!」

ことり「それを助けるには、二人の力が必要なんだよ」

花陽「凛ちゃん……」

凛「うん……わかってる」


ーーー
ーー

719: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:12:11.89 ID:GlxCdK0z0
にこ「げほっ、ごほっ!」

にこ「こ、ここは……? 戦いはどうなったの!?」

にこ「…………ん?」

真姫「…………」ジワッ

にこ「真姫ちゃん……? なんで泣いて……」

真姫「バカ! バカバカバカバカバカバカ!!」

真姫「ご主人様を残して……勝手にいなくなるんじゃないわよ……」ポロポロ

にこ「……ごめんね」ナデナデ

720: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:12:50.09 ID:GlxCdK0z0
海未「二人とも、感動の再会は後です」

海未「先を急ぎたいのですが」

真姫「あんたは……!」

にこ「……今は味方、ってことね」

海未「はい、その認識でお願いします」

海未「ことり、氷は溶かせそうですか?」

ことり「うん、今からやるね」

ぴきぴきぴき

ことり「え?」

ぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!

ツバサ「よっと!」

721: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:13:17.20 ID:GlxCdK0z0
ツバサ「ここまで凄い力だとは思わなかった」

ツバサ「おかげで抜け出すのに結構かかっちゃったかな」

真姫「…………」

ツバサ「おや、さっきぶりだね」

にこ「……化け物」

ツバサ「人よりちょっと頑丈なだけだよ」

にこ「何がちょっとよ!」

722: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:14:01.32 ID:GlxCdK0z0
海未「皆さん、よく聞いてください」

海未「邪神が復活しました」

海未「ですが、絵里の目的は果たされません」

海未「邪神の目的は、この世界を滅ぼすことです」

海未「だから、私たちは邪神と戦い、倒すつもりです」

海未「もしも戦うのが怖いのであれば、無理強いはしません」

海未「この場から、立ち去ってください」

「「「「「……………」」」」」

海未「……ありがとうございます」

海未「ことり、お願いします」

ことり「うん、それじゃあ、行くよ!」

~~~~~~~~~~~~~~

723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:14:34.55 ID:GlxCdK0z0
邪神「やはり……貴様はあの時殺しておくべきだった」

ことり「今さら言っても遅いよ」

ことり「ここで、あなたは負ける」

邪神「ほざけ! 貴様らごときに何ができる!」

ことり「ことりは、あなたを倒す手段を知ってるよ?」

邪神「……なんだと?」

ことり「かつて邪神を封印した方法」

ことり「ことりが使えばどうなるかわかってるから、ことりを殺そうとしたんでしょ?」

邪神「…………」

724: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:15:19.08 ID:GlxCdK0z0
ことり「《スイートシュガー・リバース》」

みるみるうちに傷が治る穂乃果と絵里。

疲労感も全てなくなり、万全の状態へと戻る。

ことり「今からことりは、邪神を倒すための儀式をします」

ことり「だから、それまでの時間稼ぎをお願い」

穂乃果「あいつを、ことりちゃんに近づけさせないようにすればいいんだよね?」

ことり「うん」

ことり「っと、その前に……」

ことり「《ハッピーワールド・クリア》!」

ひゅっと消える女王の身体。

ぴくりとも動かなかったが、邪神に解放されて気を失っていただけだろう。

725: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:16:02.75 ID:GlxCdK0z0
ことり「さて……と」

海未「ことり」

ことり「ん?」

海未「……私が言っても、説得力はないのでしょうが……」

海未「今度こそ……貴女を……」

ことり「守ってくれるんだよね……?」

海未「!」

ことり「よろしくお願いします、勇敢な騎士様」ペコリ

海未「……お任せください、王女様」

海未「必ず貴女を悪者から守ってみせます」

726: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:16:33.79 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「絵里ちゃん」

絵里「…………」

倒れ込んだままの少女へと声をかけるが、なんの反応もない。

焦点の合わない瞳は、彼女が放心状態であること示している。

穂乃果「……私は、絵里ちゃんの気持ちなんてわかってあげられない」

穂乃果「だって、その悲しさも、苦しさも、全部絵里ちゃんだけのものだから」

穂乃果「でも、それでも、今の絵里ちゃんは間違ってると思う」

穂乃果「だって、まだ何も終わってないんだから」

727: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:17:20.70 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「馬鹿だよ、絵里ちゃんも、海未ちゃんも!」

穂乃果「自分だけで背負い込もうとして、その重さに潰されて、簡単なことに気づかない!」

穂乃果「隣の国の人たちを殺す?」

穂乃果「そんなの、誰も望んでない!」

穂乃果「生き返らせたかった人たちがどう思うかなんて全く考えてない!」

穂乃果「絵里ちゃんの生き返らせたかった人だってそうでしょ?」

絵里「…………」

穂乃果「間違えたのなら、直せばいいんだよ」

穂乃果「一緒に、邪神を倒そう」

728: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:17:50.92 ID:GlxCdK0z0
絵里「……無理よ」

穂乃果「!」

絵里「私には、もう戦う理由がない」

絵里「ならここで、このまま死んでしまったほうがいい」

絵里「家族を取り戻せないなら、私も生きる意味なんてない」

穂乃果「……意味なんて、後から考えればいいんだよ」

穂乃果「だから━━━━」

穂乃果「生きるのを諦めないでッ!」

絵里「!」

729: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:19:19.79 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「私は、絵里ちゃんともっとお話したい!」

穂乃果「一緒にご飯食べて、冗談言って!」

穂乃果「楽しく遊んでみたい!」

穂乃果「だから生きてよ!」

穂乃果「こんなところで諦めないでッ!」

穂乃果「絵里ちゃんを必要としてる人だっているの!」

穂乃果「その人達のためにも、絵里ちゃんはここで死んだら駄目ッ!」

絵里「…………」

穂乃果「私は、絵里ちゃんのこと、信じてるからね」

そう言うと、仲間のもとへと駆け出す穂乃果。

絵里は、その背中を静かに見送った。

730: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:20:00.28 ID:GlxCdK0z0
ことり「…………」

そっとことりが目を閉じると、その周りを淡い光が包む。

儀式の始まり━━━━それは戦いの始まりを意味していた。

邪神「あくまでも我に楯突こうと言うのなら……」

邪神「ここで全員消しさってくれようぞ!」

ぎゅおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!

邪神の翳した手が光り、凝縮されたエネルギーが薙ぎ払うように穂乃果達へと迫る。

花陽「《荊棘の城塞》(ソーン・プロテクション)!」

凛「『ばりあー!』」

731: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:20:33.26 ID:GlxCdK0z0
絡み合う荊が穂乃果達を包み込み、それを支えるように固められた大気が荊を覆う。

ごおおおおおおおおおおおおおおん!!!

ビームが荊の壁を直撃し、全てを焼き切ろうとする。

花陽「っ……大丈夫、このくらい! 凛ちゃんと一緒なら!」

凛「ふふっ、凛は強気のかよちんも好きだよ!」

だが、壁が消えることはない。

巨大な力に押しつぶされてなお、城塞は人を守り切る。

732: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:21:32.73 ID:GlxCdK0z0
邪神「ちぃ……これならどうだ!」

邪神の頭上に出現した無数の隕石。

真っ赤に燃えたそれらが、穂乃果達へと降り注ぐ。

にこ「『乱れ手裏剣』!」

真姫「《煌めく氷晶の槍》(プリズム・ランス)!」

それを迎え撃つのは無数の手裏剣と氷の槍。

それらが迫る隕石達を次々に相殺していく。

にこ「いい!? 一個も通すんじゃないわよ!」

真姫「はっ、誰に向かって言ってんのよ!」

目まぐるしく落ちてくる隕石を、彼女たちは一つも見逃すことなく打ち砕いた。

733: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:22:16.18 ID:GlxCdK0z0
邪神「ならば手数を増やしてくれる!」

多数の魔法陣が現れ、そこから多数の魔物が姿を表す。

あるものは羽を生やして空を飛び、あるものは骨だけでけたけたと嗤う。

海未「『片時雨』!」

空中から無数の水の矢が降り注ぎ、出現した魔物たちを次々と屍へと変えていく。

海未「穂乃果ッ!」

穂乃果「うん!」

穂乃果「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 燃えろおおおおおおおおおおおお!!!」

穂乃果が腕を凪ぐと、巨大な炎が波となって流れ、触れたものを燃やし尽くしていく。

734: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:23:00.63 ID:GlxCdK0z0
絵里「なんで……皆頑張るのよ」

絵里「無理よ……勝てるわけないじゃない」

そんな皆を、絵里はじっと眺めているだけ。

敗北の決まった戦い。

相手は世界を滅ぼせるほどの力を持った存在だ。

力の差は圧倒的……例え今は善戦できていたとしても、いずれこの均衡は途絶えるだろう。

そして皆、殺される。

それはもう、決まったことなのだ。

735: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:23:32.90 ID:GlxCdK0z0
絵里「どうして……」

それなのに、彼女たちは諦めない。

それどころか、更なる闘志を燃やして強大な敵へと立ち向かっている。

希「わからんの?」

絵里「のぞ……み……」

世界から見放された絵里を暖かく迎えてくれた、命の恩人。

たった一人の家族。

絵里「……ごめんなさい」

恩返しをしたいのに、自分は希に迷惑しかかけていない。

今回も、彼女を危険な目に合わせてしまった。

736: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:24:02.53 ID:GlxCdK0z0
希「いきなり謝るなんてどうしたん?」

絵里「……死んだって、聞いたわ」

希「あー……ま、一回だけやし?」

希「貴重な体験だったわ~」

絵里「…………っ」

絵里「ごめん、なさい……」

絵里「私、いつも迷惑ばかりで……」

絵里「辛い思い……させて……」ポロポロ

希「……それは違うんよ、えりち」

絵里「え……?」

737: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:24:35.25 ID:GlxCdK0z0
希「家族ってもんはな、迷惑かけるのが当たり前なんや」

希「一緒に困難乗り越えて、それで最後には皆で笑顔になる」

希「だいたい、うちだってえりちにはたくさん恩もらっとるんやで?」

希「一人ぼっちで寂しかったうちの、家族になってくれた」

希「もうな、うちの望みは叶っとるんよ」

希「だからな、えりち、今さら遠慮しんといて」

希「えりちの本当にしたいことはなんなん?」

738: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:25:10.06 ID:GlxCdK0z0
絵里「私……は……」

思い浮かんだのは、亜里沙の笑顔。

無邪気で、優しくて、ころころと笑う子だった。

もしも亜里沙が、今の私を見たらなんと言うだろうか。

励ましてくれるだろうか。

それとも怒るだろうか。

そんなことはわからない。

だが、一つだけ確かなことがある。





『皆を殺すなんて、そんなの絶対駄目だよ、お姉ちゃん』

739: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:25:47.68 ID:GlxCdK0z0
ああ、私は馬鹿だ。

なんでこんな簡単なことを言われるまで気づかなかったのか。

いや、それが彼女との差なのだろう。

それを知っていたからこそ、彼女は諦めずに立ち上がれる。

前に進むことができる。

そうだ、まだ終わってなどいない。

今ならまだ、取り返しがつく。

絵里「私は……邪神を倒す!」

絵里「亜里沙が好きだった世界を、守ってみせる!」

絵里「希、力を貸してくれる?」

希「もちろんや!」

740: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:26:24.76 ID:GlxCdK0z0
どおおおおおおおおおおおん!!

あちこちで起こる爆発。

地面は焼け、抉られ、その姿を黒へと変えていく。

邪神「……しぶといな」

邪神「それなら、一人ずつ消してくれる!」

穂乃果「!」

魔物の中心で戦っていた穂乃果に、漆黒の焔が迫る。

周りに気を取られていた穂乃果は反応が一瞬遅れてしまった。

穂乃果「くっ!」

咄嗟に炎で身体を覆おうとするが、間に合わない。

高速で飛んでくる焔は穂乃果の身体へと━━━━

ばちばちばちばちっ!

741: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:27:03.04 ID:GlxCdK0z0
邪神「盾……?」

絵里「雷よッ!」

穂乃果の前に現れたのは、雷の壁。

それが焔を打ち消したのだ。

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「ありがとう、穂乃果」

絵里「貴女のおかげで目が覚めたわ」

絵里「一緒に、邪神を倒しましょう」

穂乃果「うん!」

742: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:27:37.80 ID:GlxCdK0z0
邪神「小賢しい……雑魚が何人増えたところで、戦局は変わらん!」

希「それがそうでもないんやな」

邪神「なんだと……?」

希「あのなぁ……うち、今相当イラついとるんや」

希「ボロボロのえりち見たときからな、頭に血が登っとるんよ」

邪神「だったらなんだという」

希「よくもうちの家族を弄んでくれたな?」

希「絶対に許さへん」

743: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:28:06.96 ID:GlxCdK0z0
希「『掛まくも畏き天神』」

希「『禍事罪穢有らむをば祓へ給ひ清め給へ』」

希「『八百万の神等諸共に』」

希「『顕現せよ! 天照大神!』」

ひゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!

溢れ出る光の粒子が闇の世界を照らし出す。

光の中から現れたのは巨大な女性。

全てを輝き照らす、太陽の神。

744: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:28:47.02 ID:GlxCdK0z0
邪神「馬鹿な……」

邪神「それは、人の身に余る力」

邪神「あり得るはずが……!」

希「あるんやなぁ、それが」

邪神「貴様……何故今までこれを使わなかった」

邪神「使っていれば、死なずとも……」

希「なんでか? そんなん決まっとるやないか」

希「力が強すぎて、封印されてたあんたが浄化されるとあかんからや!」

天照大神が手を振るうと、光が粒が無数に広がり、邪神へと襲いかかる。

邪神「ぐっ!」

邪神は闇の波動で受け止めるが、防ぎ切れずに体へと突き刺さる。

希「さあ! 全員反撃の時間や!」

745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:29:17.23 ID:GlxCdK0z0
ツバサ「それじゃあ、一番乗りをもらおうか!」

地面を駆けて一直線に邪神へと迫るツバサ。

邪神「愚か者が!」

それに気づいた邪神が闇の粒子を打ち出すが、ツバサはそれを全て弾き返す。

ツバサ「この程度……私には通じない!」

邪神「ならばこれならどうだ!」

ごぉっと迫る邪神の右腕。

その巨大な力が、ツバサへと迫る。

746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:29:53.23 ID:GlxCdK0z0
ツバサ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

だが、ツバサは避けない。

迫る拳に目掛けて、己の拳をぶつかりあわせた。

邪神「なん……だ……と!?」

ツバサ「この、てい、どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!

弾かれる邪神の拳。

衝撃に押され、その身体を揺らす。

ツバサ「ふふ、いい拳を持ってるじゃない!」

ツバサ「楽しませてくれそうだ!」

ツバサの顔には、いつもの笑みが広がっている。

747: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:30:24.77 ID:GlxCdK0z0
凛「かよちん!」

花陽「うん!」

凛の召喚した猫に跨る花陽。

凛を先頭に、邪神へと向かって駆け出す。

凛「はぁぁぁぁぁぁ!!」

迫り来る魔物達をすれ違いざまに切り裂き、道を突き進んでいく。

邪神「はぁっ!」

それに気づいた邪神が、凛達に目掛けて隕石を落とす。

748: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:30:52.05 ID:GlxCdK0z0
花陽「《白百合の砲台》(リリー・ショット)!」

地面から生えてきた白百合が次々のその花弁を上へと向ける。

花陽「てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

花陽の号令と共に爆音を響かせ、迫り来る隕石をどんどん撃ち落としていく。

花陽「凛ちゃん! 足!」

凛「了解!」

花陽の掛け声と共に進路を足へと向ける。

749: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:31:19.34 ID:GlxCdK0z0
邪神「小賢しい!」

それに気づいた邪神は足を持ち上げようとするが、それを花陽は見逃さない。

花陽「《縛鎖の蔓》(バイン・バインド)!」

邪神「ちぃ!」

無数に足元へと蔓が絡みつき、動きが制限させる。

振り払おうにも、千切れるたびに新しく生まれる蔓がしつこくて、上手く抜けることができない。

花陽「凛ちゃん! 今だよ!」

凛「うん! 《かまいたち!》」

750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:31:46.65 ID:GlxCdK0z0
凛「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

凛の手元へと形成させる風の大鎌。

高速で邪神の足へと迫った凛は、力一杯にその足を切り裂いた。

邪神「ぐおおおおおお!?」

ぐらっと揺れる巨体。

バランスを失った邪神は、どかんと膝を地面へと落とす。

751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:32:18.76 ID:GlxCdK0z0
真姫「いい仕事するじゃない!」

真姫「《麗しき湖氷の舞姫》(ビューティフル・マーチ)!」

真姫の前に現れる氷の道。

その上を滑り、真姫は邪神へと迫る。

空中へと続く道を進むと、前を阻もうと翼をもった魔物が真姫を襲う。

真姫「群雀共がうじゃうじゃと!」

真姫「《舞い踊る氷雪の花弁》(スプリーム・フラワー)!」

かちん、と一瞬のうちに凍りつく魔物たち。

真姫の周囲は急激に冷え、氷の雫があたりに煌めく。

752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:32:47.56 ID:GlxCdK0z0
邪神「しねぇぇぇぇ!」

倒れた体勢のまま、真姫を握りつぶそうと手を伸ばす邪神。

スピードにのっていた真姫は、今さらそれを躱すことなどできない。

真姫「ふっ」

だが、真姫の顔からは笑みが消えない。

次の瞬間、真姫の身体が闇の中へと消え、邪神の手が空を切った。

753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:33:15.58 ID:GlxCdK0z0
にこ「全く、危ない真似するんじゃないの」

にこ「 今の、当たってたら死んでたわよ」

真姫「でも、にこちゃんが助けてくれたでしょ?」

にこ「……はぁ」

にこ「全く、呆れたご主人様よ、あんたは」

真姫「呆れる前に、あいつの動きを止めなさい!」

にこ「はいよ! 『影縫い・千羽鶴』!」

754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:33:48.31 ID:GlxCdK0z0
邪神「ぐぅ……!」

分身したナイフが無数に地面を縫い、邪神の身体を固定する。

真姫「《天地揺るがす青氷の剣》(マグニフィック・バスター)!」

空中に出現する巨大な剣。

邪神の腕くらいの大きさを持つ、氷の剣だ。

真姫「冷たい火傷を教えてあげる!」

ずばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!

真姫の号令で振り下ろされた剣が、邪神の腕を切断した。

755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:34:33.85 ID:GlxCdK0z0
ことり「穂乃果ちゃん! 絵里ちゃん!」

溢れ出る魔物を対処していた二人に、ことりの声がかかる。

穂乃果「ことりちゃん!? 儀式は……!」

眩い光に包まれたことりの姿。

それは、儀式を終えたことを示している。

穂乃果「終わったんだね!」

ことり「うん」

ことり「後は、これを思いっきり邪神にぶつけるだけ」

756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:34:59.54 ID:GlxCdK0z0
絵里「それで、私たちはどうすればいいの?」

ことり「二人には、これを邪神にぶつけてほしいの」

穂乃果「私たちに……?」

ことり「うん」

ことり「ことりができるのは、これを作るところまで」

ことり「邪神を倒すためには、強力な一撃と一緒に、叩き込まなくちゃいけないの」

757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:35:56.99 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「……わかったよ、ことりちゃん」

絵里「やってみせる……必ずね」

ことり「……ありがとう」

ことり「『二人に宿って……希望の光よ』」

ことり「『私たちの想いよ』」

穂乃果「!」

絵里「これは……」

二人を包み込むように湧き出る光。

その一つ一つが暖かくて、優しくて、込められた想いが、勇気が、全身へと伝わってくる。

758: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:36:27.43 ID:GlxCdK0z0
ことり「……っ」フラッ

穂乃果「ことりちゃん!?」

ことり「大丈夫……ちょっと疲れただけ」

ことり「穂乃果ちゃん、絵里ちゃん」

ことり「……頼んだよ」

穂乃果「うん……いくよ、絵里ちゃん!」

絵里「ええ!」

輝きを纏いながら邪神へと駆ける二人。

それを見つめながら、ことりはゆっくりとその場に崩れ落ちる。

759: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:36:53.75 ID:GlxCdK0z0
ことり「あはは……流石に疲れちゃったなぁ……」

全ての力を使い果たしたせいか、能力も上手く発動できない。

そんなことりを目掛けて、魔物達がどっと押し寄せるが、逃げることができない。

海未「《氷雨》!」

だが、魔物達がことりへと触れることはない。

大量の雹の弾丸が魔物達を貫き、その機能を停止させる。

760: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:37:23.55 ID:GlxCdK0z0
海未「大丈夫ですか、ことり」

ことり「うん……ありがとう」

ことり「でも、今はあの二人を助けてあげて」

ことり「あれが成功しないと、邪神を倒すことはできない」

ことり「だから、ことりよりも、向こうを……」

海未「お断りします」

海未「あの二人の道を作りながら、ことりも助けます」

海未「それが……私の、騎士としての役目です」

761: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:37:53.66 ID:GlxCdK0z0
海未「希!」

希「わかっとる!」

希「邪神の力を増大させとるんは、あの闇や!」

希「それなら……祓ったればええ!」

天照が両手を翳すと、山を覆う闇が薄れ、光が差し込む。

邪神を覆う闇も弱まり、その動きが鈍る。

762: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:38:24.86 ID:GlxCdK0z0
邪神「ぐぅ……おのれぇぇぇぇ!」

忌々しげに天照を睨みつける邪神。

切断された部位はゆっくりと再生しているが、絶え間無く繰り出される攻撃に対応するせいで、体勢を元に戻せない。

穂乃果「はあっ! りゃぁ!」

絵里「ふっ! やぁっ!」

その視界が、戦場を駆ける炎と雷に気がつく。

魔物を焼き払い、隕石を撃ち落とし、凄まじい速さで自分へと迫る光。

全身が、その光を恐れている。

763: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:38:59.15 ID:GlxCdK0z0
邪神「やめろ……来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんん!!!

邪神の口から巨大なビームが二人へと放たれる。

だが、二人は避ける素振りをしない。

ただ、前を見て、まっすぐに邪神へと足を進める。

海未「撃ち抜け━━━━《ラブアロー・シュート》!」

二人の目前へと迫ったビームが真っ二つに切り裂かれ、光の道を作り出した。

764: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:39:51.76 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

皆の想いが伝わってくる。

大変でも、辛くても、仲間を信じて、想いを託して。

一人じゃない。

手を伸ばせば、温もりが返ってくるんだから。

そっと手を伝う感触。

そこに込められていたのは、決意。

皆の心を重ね合わせ、紡いでいくための。

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「穂乃果!」

ほのえり「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」


《それは僕たちの奇跡》

765: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:40:46.80 ID:GlxCdK0z0
邪神「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?!?」

溢れ出る光の奔流が邪神へとぶつかる。

邪神「馬鹿な……あり得ん!」

光を受け止めることができず、ゆっくりと消滅していく身体。

邪神「おの……れぇぇぇぇぇぇ!!!」

邪神「人間ごときがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ほのえり「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

邪神「ぐっ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ひゅごおおおおおおおおおおおおおんんんんん!!!!

迸る輝きが世界を包み込む。

それと共に、邪神は光の彼方へと消し去られた。


ーーー
ーー

766: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:41:18.52 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「これ全部食べていいの!?」

穂乃果「頂きまーす!」パクパク

海未「こら、穂乃果、はしたないですよ」

穂乃果「 ふぁっふぇふぉいふぃいんふぁふぉん」

海未「ああもう、食べながら話さないでください」

ことり「まあまあ、美味しそうに食べてるんだからいいんじゃないかな」

海未「ことりは穂乃果を甘やかしすぎです」

ことり「むー……」

767: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:41:48.78 ID:GlxCdK0z0
凛「あー! 穂乃果ちゃんばっかりずるいにゃー!」

凛「凛もお肉食べたいのにー!」

穂乃果「んっ……はい、あーん」

凛「あーん……」パクッ

凛「んー! 美味しいー!」

凛「かよちん! こっちのお肉おいし━━」

花陽「ん? どうしたの、凛ちゃん?」モグモグ

花陽「このお米美味しいよぉ」

凛「……凛はこっちのかよちんも好きだにゃー」

768: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:42:23.11 ID:GlxCdK0z0
真姫「全く……騒がしいと思ったら」

穂乃果「真姫ちゃん!」

真姫「パーティーの主役がご飯に夢中だなんて聞いたことがないわよ」

穂乃果「えへへ、だってお腹空いちゃったんだもん」

にこ「全く……ちょっとは自覚を持ちなさいよ!」

にこ「私たちは世界を救ったんだからね!」

凛「両手にお皿抱えてる人の台詞じゃないにゃー」

にこ「なっ!?」

769: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:42:55.17 ID:GlxCdK0z0
理事長「皆さん、こんばんは」

穂乃果「女王様!」

理事長「畏まらないでください」

理事長「貴女達には本当に感謝をしています」

理事長「私の心が弱いせいで、邪神に心を乗っ取られ、世界を危険に晒してしまった」

理事長「貴女達がいなければ、今頃民は傷つき、多くの人々が犠牲となったことでしょう」

理事長「改めて、お礼を言わせてください」

理事長「ありがとうございました」ペコリ

770: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:43:31.33 ID:GlxCdK0z0
穂乃果「……えっと、どういたしまして、でいいんでしょうか?」

理事長「ええ、もちろんです」

理事長「そのお礼も兼ねて、色々用意させて頂きました」

理事長「今日は十分に、楽しんで行ってくださいね」

穂乃果「ありがとうございます!」

穂乃果「…………あれ?」

穂乃果「絵里ちゃんは?」

海未「パーティーの開始にはいたと思いましたけど……」

穂乃果「うーん……」

771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:44:04.31 ID:GlxCdK0z0
ワイワイガヤガヤ

絵里「…………」スタスタ

希「何処に行くん?」

希「パーティー会場はあっちやで?」

絵里「……私は、邪神を復活させようとした首謀者よ」

絵里「あそこにいる資格なんてないわ」

希「そっかぁ、それで一人で姿を消そうとしたん?」

絵里「…………」

772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:44:36.88 ID:GlxCdK0z0
希「それで、なんでうちまで置いて行こうとしたん?」

絵里「……ここにいれば、希は英雄として幸せに過ごすことができる」

絵里「無理に私に付き合う必要なんてない」

希「……はぁ」

希「なぁ、うちはえりちのなんなん?」

絵里「大切な、家族よ」

絵里「だから━━━━」

希「だったら、置いてかんといてや」

希「離れ離れになるんが、うちには一番きついんよ、えりち」

絵里「希……」

773: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:45:07.19 ID:GlxCdK0z0
絵里「私がしようとしていること、わかってるの?」

希「うん」

絵里「辛い思いをするかもしれないのよ?」

希「覚悟の上や」

絵里「傷ついて、また死んじゃ━━」

希「大丈夫って言っとるやろ、えりち」ギュッ

絵里「っ!」

希「安心して……うちは、ずっとえりちの側におるから」

絵里「……ありがとう、希」

774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:45:56.21 ID:GlxCdK0z0
ーーーー絢瀬絵里

パーティーの最中、忽然と姿を消す。

かつて住んでいた隣国へと戻った絵里は家族のお墓を作り、とある決意を口にする。

数年後、反乱が起こり隣国の独裁政治は終わりを迎える。

新しい統治者となったのは、反乱軍のリーダー。

金色の髪をたなびかせ、民衆を導いた彼女の姿は、聖女として後世へと語り継がれたという。

775: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:46:34.34 ID:GlxCdK0z0
ーーーー東條希

パーティーの最中、絵里と共に姿を消す。

国を変えようとする絵里を手伝うために隣国へとついて行き、挫けそうになる絵里をいつも励ました。

革命後は国の統治へと尽力し、いくつもの問題を解決する。

忙しい中でも常に笑みは絶やさず、皆を元気付ける少女。

たまに二人でふらっといなくなり、かつて二人で住んでいた家で休んだりもしているらしい。

二人きりでゆったりと過ごすのが、彼女にとっては一番幸せな時間なのだろう。

776: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:47:33.02 ID:GlxCdK0z0
理事長「……ごめんなさい」

理事長「私の心が強ければ、貴女が死んでしまうことはなかったのでしょうね」

英玲奈「……彼女を殺したのは私です」

英玲奈「責めるなら、私を責めてください」

理事長「……いいえ、これは私の責任です」

理事長「ごめんなさい、あんじゅさん」

理事長「せめて……やすからに眠ってください」

英玲奈「…………」

「あの……」

あんじゅ「一応、生きているんですけど……」

777: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:48:04.31 ID:GlxCdK0z0
英玲奈「……いや、だが、あんじゅはこっちだろ?」

あんじゅ「いや、あんじゅは私よ」

英玲奈「……だいたい、なんでお前は生きてるんだ」

あんじゅ「知らないわよ……気づいたらこの身体に乗り移ってたんだもの」

英玲奈「……魂を宿す、か」

英玲奈「それもお前の能力の一つだったんだろうな」

あんじゅ「……人形に乗り移ったのは不便だけどね」

778: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:48:36.10 ID:GlxCdK0z0
理事長「あら、そんなことないわよ?」

理事長「だってこんなに可愛いんだもの」ギュー

あんじゅ「じ、女王様///」

理事長「ふふ、お部屋に欲しいくらいだわ」

あんじゅ「私でよければいくらでもぉ///」

英玲奈「……そいつは危険ですよ、女王様」

英玲奈「私が預かっておきます」ヒョイ

あんじゅ「ちょっと! 離して!」

779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:49:14.10 ID:GlxCdK0z0
ーーーー統堂英玲奈

恩赦を受け、英玲奈はあんじゅと共に女王の護衛となる。

常に険しい表情をしているため、一時は皆から距離を取られる英玲奈。

だが、あんじゅを肩に乗っけて話す姿は、一人で人形と話しているように見え、逆に皆から気を使われるようになる。

そんな周りの変化には本人は無頓着なようで、いつも女王の部屋に忍び込もうとするあんじゅを捕まえては、口論をしている姿が城の日常となっている。

780: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:50:04.12 ID:GlxCdK0z0
ーーーー優木あんじゅ

気がつくと小さな人形に乗り移っていた。

城へと戻ると全てが終わっており、女王の護衛に任命される。

戦闘に支障はないが、ただの人形と思われることが多く、買い物などには一人で行くことができない。

そのため、英玲奈や女王様の肩に乗っていることが多くなる。

しかし、苦労はたくさんあるが、女王様に抱きしめられることもあり、ちょっとだけ気に入っている部分もあるようだ。

781: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:50:44.94 ID:GlxCdK0z0
ツバサ「次は腕立て伏せ1000回!」

ツバサ「気合い入れてやりなさい!」

「「「「はい!!!」」」」

英玲奈「いつ見ても盛況だな」

ツバサ「おや、来てたのかい」

あんじゅ「よく皆逃げださないわね」

ツバサ「それだけこの国を守りたい者が多いということさ」

782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:51:14.41 ID:GlxCdK0z0
「隊長!」

ツバサ「どうしたの?」

「お手紙が届いております」

ツバサ「へぇ……」パサッ

ツバサ「……ふふ、面白そうじゃない」

ツバサ「英玲奈、皆の指導を任せたよ」

英玲奈「またか……」

ツバサ「世直しも騎士の役目ってことさ」

ツバサ「二日で終わらせて戻るよ」

783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:52:11.50 ID:GlxCdK0z0
ーーーー綺羅ツバサ

邪神討伐の功により、騎士隊長として王国に使える。

敗北したのが相当悔しかったようで、より一層訓練に力を入れるようになった。

また、自分だけでなく、兵士達の教育係としても才能を発揮し、強靭な兵士を育てると有名になる。

強者と戦いたい気持ちからか、事件が起きる度にふらりといなくなり、各地でその姿が目撃される。

784: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:52:39.34 ID:GlxCdK0z0
真姫「ふぅ……疲れた」

にこ「お疲れ様、紅茶でも入れる?」

真姫「ええ、お願い」

真姫「それにしても……最近多いわね、訪問者」

にこ「それだけ皆真姫ちゃんに会いたいってことなのよ」

真姫「……ま、こんなに可愛いんだからそれもしかたないことね」

にこ「調子に乗ってんじゃないわよ」

785: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:53:15.61 ID:GlxCdK0z0
真姫「ねぇ、にこちゃん、次の暇っていつ?」

にこ「そうね……三日後かしら」

真姫「そう……久しぶりに静かに羽を伸ばしたいわ」

にこ「それなら、皆で何処かに行きましょう?」

にこ「こころ達もたまには遊びに行きたいって言ってたし」

真姫「…………」

にこ「ど、どうしたの?」

786: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:53:43.31 ID:GlxCdK0z0
真姫「いいえ、別になんでもないわ」

にこ「なんでもなくないでしょ?」

にこ「何かあるならはっきり言いなさいよ!」

真姫「なんでもないって言ってるでしょ!」

にこ「別に怒らなくてもいいじゃない!」

真姫「なによ!」

にこ「なんなのよ!」

787: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:54:45.06 ID:GlxCdK0z0
ーーーー西木野真姫

邪神討伐後、自分の家へと帰る。

旅で得た経験は彼女の心を大きく育て、すぐに町長へ抜擢される。

まだ幼いと取り入ろうとする人間を一蹴し、才女と呼ばれるようになった彼女を一目みようと訪れる人は多い。

考えることが多い彼女は、スケジュールの管理を全てにこに任せているようだ。

にこと一緒にいる時の笑顔が少しだけ優しいのは、本人も自覚はしていないのだろう。

788: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:55:48.05 ID:GlxCdK0z0
ーーーー矢澤にこ

邪神討伐後、実家へと帰る。

しかし、住んでいた家に人影はなく、真姫に探してもらおうと家を訪れると、そこには探していた家族の姿があった。

贅沢を覚えてしまった家族に元の生活に戻れと言い出せるはずもなく、にこは真姫の付き人として働くことになる。

それを知った時のにこは溜息をつきながら文句を言っていたが、その表情は満更でもなさそうであった。

よく言い争いをしているが、それを見る者は皆微笑ましい気持ちになるという。

789: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:56:18.73 ID:GlxCdK0z0
凛「かよちん! 急ぐにゃー!」

花陽「待ってよ凛ちゃん~」

凛「早くしないと訓練に遅れちゃうよ!」

花陽「わかってるよぉ……」

凛「もう……なにしてるの?」

花陽「えへへ、もう食べらないですぅ……」

凛「…………」ガラッ

花陽「うーん……」スヤスヤ

790: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:56:48.88 ID:GlxCdK0z0
凛「かよちん!」

花陽「ん……?」

花陽「あ、凛ちゃん、おはよう……」

凛「おはようじゃないよ!」

凛「もうすぐ訓練の時間だよ!」

花陽「うーん……後五分……」グゥ

凛「もう、早く起きるにゃ~」ユサユサ

花陽「むぅ……」グイッ

ドサッ

791: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:57:16.36 ID:GlxCdK0z0
凛「か、かよちん!?」

花陽「むにゃ……」

凛「……はぁ」

凛「全く、これで遅刻確定だよ……」

凛「怒られたら、かよちんのせいだからね」

花陽「うーん……」ギュッ

凛「……凛もちょっとだけ寝ちゃおっと」

凛「おやすみ、かよちん」

792: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:57:47.33 ID:GlxCdK0z0
ーーーー小泉花陽

邪神討伐後も変わらず騎士として王宮に使える。

旅での成長からか、大事な時にはきちんと自分の意見を言えるようになり、彼女を知る者はその変化に驚いたという。

しかし、心優しい性格はそのままで、休日には凛に引きずられるように町を走り回る姿がよく見られる。

その姿はちょっとだけ困りながらも笑っており、彼女にとっては楽しいことであるとわかる。

また、農業にも関わり、彼女が手伝った所は必ず豊作になると言われ、豊穣の女神として一部の人達に崇められたそうだ。

793: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:58:36.62 ID:GlxCdK0z0
ーーーー星空凛

邪神討伐後も花陽と一緒に騎士を続け、多数の功績を残す。

いつも元気に走り回る姿は皆を和ませ、マスコットとして皆に好かれるようになる。

しかし、ある時お城で開かれたダンスパーティーでドレスを披露すると、周りの目が一変。

場内を歩いていると毎日のように求婚されるようになり、それ以来ドレスは着なくなったそうだ。

凛にとっては、花陽と一緒に過ごす時間が一番心地よさそうである。

794: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:59:07.10 ID:GlxCdK0z0
海未「こ、こんなの破廉恥です!」

ことり「もう、いい加減慣れてよ、海未ちゃん」

海未「そ、そんなこと言われても……」

ことり「穂乃果ちゃん、ぎゅー」ギュー

穂乃果「えへへ、ことりちゃーん」ギュー

ことり「穂乃果ちゃんいい匂いだよぉ」スンスン

穂乃果「もう、くすぐったいよ、ことりちゃん」

795: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/22(日) 23:59:41.19 ID:GlxCdK0z0
ことり「ほら、海未ちゃんも」

海未「む、無理です……!」

ことり「……ふぇっ」グスッ

ことり「そうだよね……海未ちゃんはことりなんかに抱きつきたくないよね……」

ことり「ことりは……寂しく、一人で……」ポロポロ

海未「な、泣かないでください」ギュゥ

海未「ほら、側にいますから……」

ことり「えへへぇ、海未ちゃんてば大胆だよぉ」ギュー

海未「う、嘘泣き……!?」

796: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:00:08.19 ID:sVryBcMW0
ことり「二人に抱きつかれて、ことり幸せぇ」

ことり「今日はいい夢が見られそう♪」

海未「き、今日もこのまま寝るんですか……?」

ことり「当然!」

穂乃果「ことりちゃんの髪の毛さらさらだね」

ことり「穂乃果ちゃんのほっぺはぷにぷにだよ」ツンツン

穂乃果「ふふっ」

797: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:00:43.33 ID:sVryBcMW0
穂乃果「それじゃあお休み…………ってあああああ!?」

ことり「わっ!?」

海未「急にどうしたんですか?」

穂乃果「しまった……今日は雪穂と一緒に寝る約束してたんだ……」

海未「え……」

穂乃果「ごめんね、ことりちゃん」

ことり「……いいよ。でも、明日はことりと一緒がいいな」

穂乃果「うん、また明日一緒に寝よ!」

海未「ま、待ってください……それじゃあ……」

ことり「今日は海未ちゃん抱き枕でお休みだよぉ♪」ギュゥ

海未「そ、そんなの恥ずかしくて寝れません!!」

798: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:01:33.39 ID:sVryBcMW0
ーーーー南ことり

邪神討伐後、再び王女として過ごす。

ずっと一人でいた反動からか、常に誰かと一緒にいないと不安を感じるようになってしまう。

寝る時は穂乃果と海未に挟まれると安心するようで、よく三人で一緒に寝るようになった。

また、寝る時だけでなく、朝も、昼も、夜も、失った時間を取り戻そうと子供みたいにはしゃぐ姿は微笑ましい光景として皆に愛される。

穂乃果と一緒に海未に悪戯を仕掛けては、海未に説教させる姿がよく見かけられるが、本人が幸せそうだからとわざわざ口を挟む人はいないようだ。

799: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:02:14.64 ID:sVryBcMW0
ーーーー園田海未

邪神討伐後、ことりの強い推薦もあり、ことりの護衛騎士になる。

決死の覚悟で両親に会いに行くと、良くやったと褒められるだけで、怒られることはなかったらしい。

立ち振る舞いは大和撫子そのもので、彼女に魅了される者は多いが、穂乃果とことりを説教する声に怯えて皆顰蹙してしまう。

最近はお風呂を上がると着替えがいつの間にかメイド服やドレスになっていたりしており、彼女の苦労は絶えなさそうである。

しかし、二人と一緒にいる時の笑顔はとても優しく、そんな苦労も楽しみのうちの一つなのだろう。

800: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:02:45.20 ID:sVryBcMW0
穂乃果「はぁっ……はぁっ……」

ガラッ

穂乃果「雪穂!」

雪穂「……遅かったね」プクー

穂乃果「ごめんね、遅くなっちゃって」

雪穂「いいよ、別に」

雪穂「どうせ、お姉ちゃんにとって私なんて……」

ギュッ

801: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:03:11.95 ID:sVryBcMW0
雪穂「!」

穂乃果「雪穂は、私にとって大切な人だよ」

穂乃果「だから、そんなこと言わないで」

雪穂「……大切」

穂乃果「うん、大切だよ」

雪穂「王女様と、どっちが?」

穂乃果「二人とも、おんなじくらい」

雪穂「……そう」

802: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:03:42.52 ID:sVryBcMW0
雪穂「ふふっ」ポフッ

穂乃果「雪穂?」

雪穂「もう、お姉ちゃんは仕方ないんだから」

雪穂「許してあげる」

穂乃果「ありがとう、雪穂」ナデナデ

雪穂「んっ……」

雪穂「ねぇ……お姉ちゃん」

穂乃果「なに?」

雪穂「おかえりなさい」

穂乃果「うん……ただいま」

803: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:04:23.86 ID:sVryBcMW0
ーーーー高坂穂乃果

邪神討伐後、将軍へと任命される。

問題が起こるとすぐに駆けつけては、持ち前の愛嬌で見事に解決し、行く先々でファンを増やしてしまう。

しかし、本人にその自覚は無く、家で話しては雪穂の機嫌を悪くして、宥めるためによく町へ一緒に出かける。

王宮では海未、ことりといつも一緒で、突拍子もないことを思いついては、静かな王宮を賑やかにしているらしい。

見る者を元気付けるその笑顔は、今日もまた誰かを笑顔にし、彼女の周りから笑顔が耐えることはなかった。

804: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/23(月) 00:05:27.61 ID:sVryBcMW0
これで終わりです。こんな駄文に付き合って頂きどうもでした。
適合者さんもいて楽しかったです。
レスくれた人もありがとね。