吹雪「司令官が行方不明？」


鎮守府に帰ると、そこは瓦礫の山でした。

敵の奇襲を受けたみたいです。

艦娘の皆さんは大丈夫でしょうか。

愛宕「みんな無事よー。基本的に艦娘は頑丈だからー」

間宮「生活物資を届けに来ていた民間人が何人か巻き込まれたけど

　　　近くの病院に搬送済みです」

高雄「ただ、司令官が…」


行方不明になったみたいです。


長門「これより、鎮守府の復興作業と提督の捜索を行う。

　　　各自かかれ！」


長門秘書官です。非常時にも頼りになります。

帰ってくるのにある程度時間がかかるはずなのに敵の追撃は無かったのか、とか考えてはいけません。

一度味方陣営を壊滅させてから復興する時間を与えるのはお約束なんです。

変身中に攻撃してはいけない、とかそういうのと同じです。様式美なんです。


吹雪「でも、司令官ってどんな顔してたっけ？」


長門秘書官に隠れていたり、逆光で見えなかったりして顔を見たことがないです。

このままでは司令官を探すことができません。皆に聞いて回りましょう。

夕立「この瓦礫重いっぽい」

睦月「手伝うよ、夕立ちゃん」

夕立「ありがとうっぽい」


私よりこの鎮守府に長くいる二人なら知っているかもしれません。


吹雪「夕立ちゃん、睦月ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」

夕立「ぽいー？」

睦月「何？吹雪ちゃん」

吹雪「司令官がどんな顔してるか知ってる？」

夕立「知らない」

睦月「断言！？」


改二になると語尾に”ぽい”がつかないことがあるみたいです。


吹雪「あはは…。睦月ちゃんは？」

睦月「あー。ごめんね吹雪ちゃん。

　　　提督の写真持ってたんだけど使っちゃったから無いの。

　　　でも、もとから顔はちゃんと写ってなかったから役に立たなかったかも」


知らないみたいです。他の人に聞きましょう。

島風「てーとく？何それ？」


まさか存在を知らない？


島風「ああ、長門さんの後ろに座ってる人？

　　　あの人偉い人だったんだ」


置物か何かのように思われていたようです。

島風ちゃんの思考はフリーダム過ぎて時々ついていけない…。


電「司令官ですか？長門さんじゃないのですか？」

雷「司令官？そんなのいなくても大丈夫よ！私がいるじゃない！」

暁「暁は一人前のレディだけど知らないわ」

響「ハラショー」


駆逐艦は司令官と会う機会が少ないみたいです。

他の艦種の人を当たった方がいいかもしれません。

愛宕「タンクが大きいと肩が凝るのよねぇ。」


駆逐艦よりも年上の重巡の人なら知ってるでしょう。


愛宕「司令官がどういう顔をしているかですってー？

　　　えーっと、えーっと、そうねえー」


まさか知らないなんてことは無いでしょう。

目をそらしつつ冷や汗をかいているように見えますが気のせいのはずです。


愛宕「ぱ」

吹雪「ぱ？」

愛宕「ぱんぱかぱーん！！」

吹雪「司令官のか」

愛宕「ぱんぱかぱーん！！！」


知らないみたいです。


高雄「私自身に、馬鹿め…と言って差し上げますわ！」

羽黒「ご、ごめんなさい！」

那智「悪いが、知らん」

足柄「年増扱いされた気がするのだけれど」


全滅です。

ちなみに足柄（あしがら）さんが”飢えた狼”と呼ばれているのは勝利に飢えているからであって

男に飢えているからではありません。

アニメの独自設定ですので、あしからず。…これが言いたかったわけではありませんよ？

提督ラブの金剛さんはどうでしょうか？


金剛「テートクはデスネー、格好良くて、ジェントルマンデース！

　　　白馬に乗って私をデートに誘いに来マース！

　　　口にはいつもバラの花を加えてマース！」


美化が通り過ぎて妄想の域に入ってるみたいです。

恋に恋してる感じです。参考になりません。


比叡「金剛お姉さまの言うことに間違いはありません」

榛名「はい、榛名はそれで大丈夫です！」

霧島「私の計算によれば、金剛お姉さまが間違っている確率は0.75%ですね」

これはもう駄目ですね。他を当たりましょう。

赤城さんとか。

私利私欲ではありません。司令官を探すために必要だから聞きに行くだけです。

司令官のことを口実に赤城さんと話をしようとしているわけでは断じてありません。


翔鶴「提督がどんな顔をしているか、ですか？」

瑞鶴「そんなこときいてどうするの？」


…赤城さんに会いに行く途中で五航戦のお二人に会ってしまいました。

提督の顔を知っているかもしれないので当然聞いてみます。

赤城さんに会いに行く途中でしたが。


翔鶴「えーと、よ、用事を思い出したわ。行かなくちゃ」

瑞鶴「翔鶴姉？」


提督の顔を知らないなんて言えませんよね。

ものすごい勢いで逃げ出しました。速いです。島風ちゃんより速いかもしれません。

が、しばらくして何かと衝突したような音が聞こえてきました。


瑞鶴「翔鶴姉！？ごめん、行かなくちゃ！」


五航戦のお二人も知らないみたいです。

さて、今度こそ赤城さ…一航戦のお二人です。


赤城「提督ですか？仕事をちゃんとこなそうとする吹雪さんはえらいですね」


褒められた！赤城さんに褒めてもらった！！


赤城「加賀さんは知っていますか？」

加賀「そうね、指揮能力はあまり高くないわね」


そういうことではなく提督の顔が分かるかどうかです。


赤城「あら、用事があったんでした。吹雪さん、程々に頑張ってくださいね」


赤城さんになでてもらった！幸せー！！


加賀「赤城さん、あなたを一人で行かせるわけには」


その後、大淀さんや間宮さん、他の皆さんにも聞きましたが誰も知りませんでした。


間宮「食料や娯楽物資だけは切らせたことが無いですね」

大淀「作戦指揮で苦労を掛けられ通しです」

長門「何？誰も提督の顔を知らないだと？」


長門秘書官！長門秘書官を忘れていました！

長門秘書官なら知っているはず！


長門「いや、すまん。提督とは長い付き合いだが、いつも光が強くて顔は見ていない。

　　　確かに、顔が分からないと捜索のしようがないな。

　　　止むを得ん、提督の捜索は打ち切ろう」


その後、長門秘書官の指揮により、深海棲艦を撃退することに成功しました。

”生活物資を届けに来ていた民間人”が運び込まれた病院にて


提督「いや…軍服で…分かる…だろ…」ガク




睦月「終わりだよ。にゅふふっ」

読んでくれた方ありがとうございました。
HTML化依頼を出してきます。

睦月はかわいくていい子です。