1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:03:56.10 ID:6vkT7jwQo
アイマス×龍騎

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1356451435

引用元: 春香「戦わなければ生き残れない」 

 

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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:04:30.27 ID:6vkT7jwQo
【都内某所・765プロ事務所】

P「じゃあいくぞー。じゃん、けん……」

春香・P「ぽんっ!」パッ

春香「……やった!また私の勝ちですね!」

P「ああ、やられたよ。勢いがあるアイドルは違うな」

春香「えへへ……」

千早「……」

P「千早もやるか?」

千早「あ、いえ……私は……」

春香「そうですよ、プロデューサーさんはじゃんけん弱いんですから。やめときましょうよ!」

千早「えっ、春香、あなたまだ……」

P「そうだなー、俺弱いもんなー。じゃあやめとくか、また負けるしなー」

千早(驚いたわ……わざと負けてくれている事にまだ気付いて無いなんて……)

春香「よっし、今日も気持ちよく帰れますよ!それじゃお疲れ様でした!」

千早「待って春香。私も今帰るから……プロデューサー、お疲れ様でした」

P「おう、お疲れ。……ああ、二人とも。ちょっと待った」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:05:10.31 ID:6vkT7jwQo
春香「はぇ?なんですか?」

P「いや、ちょっとな。最近、あんまり良くない噂が多いから注意しろよ」

千早「良くない噂、ですか?」

P「ああ。ほら、あの……失踪事件の話、知ってるだろ?」

春香「あー……ニュースもそればっかりですもんね。密室で消失がどうとか……」

P「うん、だからまぁ、一応注意しておいてくれって言おうと思ったんだ。物騒だからな」

春香「はーい、わかりました!」

千早「心配しなくても、春香はちゃんと私が見てますから」

P「そうか。任せたぞ」

春香「えっ、なんで私だけ……」

P「日頃の行いの差かな」

千早「そういう事ね」

春香「うぅ……ふたりともひどい……」

千早「さ、帰りましょう。それでは失礼します」ガチャッ

春香「また明日ですね!」

P「ん、また明日ー」バタンッ

P「……さて、もう一仕事だなー」

……。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:05:48.01 ID:6vkT7jwQo
春香「うわっ見て見て千早ちゃん、息真っ白!」

千早「そうね。この季節は乾燥しているから、喉には気を使わないといけないわよ、春香」

春香「マスクして歩こうかなぁ。ほら、芸能人っぽいでしょ?変装ってさ」

千早「っぽいじゃなくて芸能人なんだから、変装していても誰も不思議には思わないと思うけれど」

春香「でも、私これで歩いてても誰にも気付かれないんだよ……オーラ無いのかな……」

千早「私は何度か声をかけられた事もあるけど……」

春香「うそっ!?どうやったの!?」

千早「何もしてないわ。ただ歌を聞いてくれていると言ってくれただけ」

春香「羨ましいなー、千早ちゃん……」

千早「春香だって、これからきっといろいろな所で気付かれるようになるわ」

春香「そうかなぁ。私じゃ駄目かも……」

千早「そんな事無いわよ。今にきっと……!?」リィィィイン

春香「千早ちゃん?」

千早「ごめんなさい、春香。先に帰っていてもらえるかしら」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:06:17.42 ID:6vkT7jwQo
春香「えっ、いいけど……どうかしたの?大丈夫?」

千早「事務所に忘れ物をしてしまったみたいなの。取りに戻ってくるから」

春香「そのくらいなら待っててもいいよ?」

千早「寒いし、待たせるのは悪いわ。私は大丈夫だから、ね?」

春香「う、うん……じゃあ、また明日ね」

千早「ええ、また明日」タッ

春香「……どうしたんだろう、千早ちゃんが忘れ物なんて珍しい。私じゃあるまいし……って、あ!」

春香「千早ちゃん!私借りてたCD持ってきてたんだよ!渡し忘れてたけど!」タタッ

春香「千早ちゃ……あれ?」キョロ

春香「おかしいな……こっちに来たはずなんだけど」

春香「千早ちゃん、足早いよー。仕方ないから明日また持ってこよう……」

千早「……見られなかったようね。良かった」

千早「春香を巻き込むわけにはいかないもの」

ソードベント

……。

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:06:55.65 ID:6vkT7jwQo
春香「おはようございまーす」

P「おはよう、春香」

春香「あ、プロデューサーさん。昨日千早ちゃん戻って来ました?」

P「あの後か?いや、見てないな」

春香「そうですか……変だなぁ」

P「何かあったのか?」

春香「昨日、二人で帰ってる途中で千早ちゃんが事務所に忘れ物したって言い出して」

P「それってこれか?携帯音楽プレイヤー。千早のだよな?」

春香「あ、ほんとだ……忘れ物は本当だったんだ。けど戻ってきてないんですよね?」

P「しばらく残った仕事片付けてたからな。間違いないよ。それに忘れ物も回収してないし」

春香「だとしたら……?うーん……」

P「そんなに気になる事か?」

春香「えっ、いや、そんなには……大したことじゃないんですけど」

P「そうか……?」

千早「私がどうかしましたか?」

春香「わっ、千早ちゃん!」

千早「おはよう春香」

P「おお、おはよう千早。そうだ春香、直接聞けばいいんじゃないか?」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:07:26.75 ID:6vkT7jwQo
千早「何がですか?」

春香「えっとね、コレなんだけど……」ゴソゴソ

千早「あ、このCD……持ってきてくれたのね」

春香「うん、返そうと思って。本当は昨日持ってきてたんだけど、渡し忘れちゃってて。それでね、昨日あの後追いかけたんだけど……」

千早「ごめんなさい、あんまり寒いものだから明日でいいと思ってそのまま帰っちゃったのよ」

春香「あ、そうだったんだ。ちょっと気になっちゃって……」

P「ほら、千早。もう忘れちゃ駄目だぞ?」

千早「ありがとうございます」

春香(気のせい?……じゃ、ないよね。だとしたら、何故……)

春香(千早ちゃんは、今嘘をついた。理由はわからないけれど、昨日私と別れてから何かしていたのを隠そうとしている)

千早(見られては、いないはずだけれど……何か勘付いたのかもしれない)

千早(ああ見えて鋭い所もあるから。だけど、春香には知られちゃいけない、知られたくない……私のしている事を)

P「……そうだ、今日のレッスン二人で行ってもらえるか?」

春香「え?私達だけでですか?」

千早「それは……かまいませんけど」

P「うん。千早と春香はお互いに吸収する所があると思うし。しっかりやれよ」

春香「えっと……わかりました!それじゃ行こっか、千早ちゃん!」

千早「え、ええ。それじゃあ行ってきます」

P「……さて。何があったか知らないけど、二人でよーく話しあってもらうとしよう。俺は事務仕事~っと」

……。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:08:07.51 ID:6vkT7jwQo
都内某所・レッスンスタジオ】

春香「あ~あ~あ~あ~あ~♪」

千早「音がズレてるわよ、春香」

春香「あ、えへへ……」

千早「一度聞いてみて。あ~あ~あ~あ~あ~♪」

春香「流石だね、千早ちゃん」

千早「このくらい、なんてこと無いわ」

春香「私はそのなんてこと無い事が出来ないんだけど……」

千早「あ……ごめんなさい」

春香「いいよ、謝らなくても。ねぇ、千早ちゃん」

千早「何?」

春香「千早ちゃん、私に隠してる事無い?」

千早「……いきなり何を言うの。そんなの」

春香「あるよね?」

千早「無いわ。どうしてそう思ったのかわからないけど」

春香「私、千早ちゃんの事一番の親友だと思ってる」

千早「と、突然何を……」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:08:42.80 ID:6vkT7jwQo
春香「だから、わかるんだよ。千早ちゃんが嘘ついた事」

千早「……」

春香「あのね、千早ちゃん、その、深く詮索するつもりは……」

千早「ごめんなさい、春香。何も言えないわ」

春香「うん、それはいいんだけど。千早ちゃんは、悩んでるわけじゃないの?」

千早「そうね……悩んでいないと言えば嘘になるわ。だけど、大丈夫だから」

春香「そっか。ごめんね、なんか問い詰めるみたいになっちゃって」

千早「私が悪いのよ、変に隠し事したりするから……」

春香「本当に心配ないんだよね?」

千早「ええ、自力でなんとか出来る事だから。安心していいわ。ありがとう」ニコッ

春香「そっか……うん、じゃあわかった!レッスン続けよ!」

千早「そうね。春香には安定して音を取ってもらわないと」

春香「しょ、精進します……」

……。

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:09:20.09 ID:6vkT7jwQo
千早「お疲れ様」

春香「千早ちゃんもお疲れ様。ちょっとはマシになったかな?」

千早「上達したと思うわ。私も春香の歌い方からは学ぶ事が多くて助かるわ」

春香「本当?私なんかでも?」

千早「春香が歌に込める気持ちは私とは違うもの。それだけでも参考になるわ」

春香「そっかー……何か照れるなぁ」

千早「ふふっ、本当のことよ。春香は……っ」リィィィン

春香「千早ちゃん?」

千早「えっ、ああ、何でも無いわ。私、もう少し自主練したいから先に事務所に帰ってもらえるかしら」

春香「あ、うん。じゃあ私は帰るね?」

千早「ええ。また後で事務所で」

春香「うん……」バタンッ

千早「……行ったかしら」カチャッ

千早「ごめんなさい、春香。また嘘をついたけれど……心配いらないというのは本当よ」

千早「私は、自分の力だけで勝利するから。……レッスン場は鏡張りの壁があって助かるわね」

千早「変身!」フォォン

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:10:35.20 ID:6vkT7jwQo
春香「千早ちゃん!」

千早「はるっ……」

春香「千早ちゃん、なんだよね?その格好……」

千早「……」クルッ

春香「ち、千早ちゃん?」

千早「……ごめんなさい、春香」シュゥン

春香「千早ちゃん!?鏡の中に……入っちゃった!」

春香「心配するなって言いながらあんな顔してたから、何かあるとは思ったけど……ど、どうしよう」

春香「追い掛ける方法が……」カツーン

春香「誰っ!?」シーン…

春香「誰もいない……じゃあ今の音は……あれ?」

春香「これ、なんだろう。カードケースと……ベルト?」

千早『変身!』

春香「そっか、これで……千早ちゃん、待ってて。話を聞かせて」カチャカチャ

春香「それで、鏡に向かって……変身!」

フォオオン バシィン

春香「わっ……千早ちゃんのと違って、なんかちょっと弱そうだけど……これできっと!」タッ

シュゥゥン……

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:11:29.93 ID:6vkT7jwQo
春香「わぷっ!ここが、鏡の中……全部左右反対なんだ」キョロ

春香「って、それどころじゃないんだった。千早ちゃーん!どこにいるのー!?」

春香「いない……逃げちゃったのかな。レッスン場から出ちゃってたら追い掛けるの大変だよ」ガサッ

春香「あ、今の音もしかして……千早ちゃん?」

春香「あの、千早ちゃーん……?私、千早ちゃんが悩んでるなら話しが聞きたいなって思って……」

春香「だから、逃げなくていいんだよ?隠さなくても、私は……」

ディスパイダー「グギ……」ガサガサ

春香「あれっ」

ディスパイダー「ギ……」シュルシュル

春香「あー、千早ちゃん、えっと、また変身したのかな?」

ディスパイダー「ガァァァ!」

春香「うわぁ!これ千早ちゃんじゃ無さそう!逃げなきゃ!」

「春香さん!下がってください!」アドベント

春香「今の声っ……」

ボルキャンサー「ギッギッ」カチンカチン

春香「もう一匹出たぁ!」

「大丈夫ですよ、春香さん。あのカニさんは私達の味方ですっ!」ストライクベント

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:12:02.87 ID:6vkT7jwQo
春香「この声……やよい!?」

やよい「うっうー!今やっつけちゃいますから、待っててください!」

ボルキャンサー「ギギッ」ガチンッ

ディスパイダー「ガッ……!」グググ

やよい「そのまま、そのまま……えぇい!」ガキィンッ

ディスパイダー「ガガァアアアアア……ガ……」バシュゥ

やよい「ふぅ。それじゃ食べちゃってください、カニさん」

春香「や、やよい……これ、一体……」

やよい「その前に、ちょっといいですか?カニさん!」スッ

ボルキャンサー「ギ!」スッ

やよい「ハイ、ターッチ!」カチンッ

ボルキャンサー「ギギ!」カンッ

やよい「いぇいっ!……詳しい説明は元に戻ってからにしましょう!今は早くこの場から……」

千早「……」スタッ

春香「あっ、ちは……」

千早「ふっ……」ソードベント

やよい「っ!」ガードベント

ガキィンッ

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:12:30.10 ID:6vkT7jwQo
春香「ちょ、えっ、千早ちゃん!何やってるの!?」

千早「知ってしまったのね、春香。なってしまったのね、ライダーに。もう、引き返せないわ」グググ

春香「それ、どういう……」

やよい「ち、千早さん?千早さん……なんですか?」グググ

千早「この声、高槻さん!?どうしてあなたが……」

春香「と、とにかく話しあおうよ!剣しまって!」

千早「……そうね。ごめんなさい、高槻さん」

やよい「うっうー、いいんです……けど。そろそろ時間なので、私は失礼します!後で事務所で会いましょう!」タッ

千早「確かに私もそろそろね……春香、帰りましょう」

春香「どうなってるの、何もかも……」

千早「戻ってから説明するわ。もう無関係ではいられないものね。私のやっている事、今起きている事全て」

春香「今、起きている事……」

千早「入ってきた鏡から帰れるわ。高槻さんも待っているだろうし、事務所に帰りましょう」

春香「うん……」

……。

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:13:25.51 ID:6vkT7jwQo
【都内某所・765プロ事務所】

春香「やよいはどうしてあんな事してたの?」

やよい「えっと、もともとデッキを持ってたのは違う人だったんです」

千早「譲り受けたのね」

やよい「ミラーモンスターが襲ってきた時に助けてもらって、だけどその人は負けちゃって……」

やよい「その人の代わりに、いろんな人を助ける為に戦ってるんです!」

春香「そうなんだ……怖くないの?」

やよい「ときどきすっごく怖いです。だけど、戦わないと誰かが襲われて、辛い目にあうから……」

春香「そっか。やよいは偉いね」

千早「……高槻さんは、そのデッキを持っていた人から詳しい説明を受けなかったのね」

やよい「はい。だけど、人を助けられるならそれでいいかなって」

千早「違うのよ。ライダーの力はその為にあるんじゃないの」

春香「どういう事?」

千早「ライダーは私達以外にもいるのよ。私達を含めて13人」

やよい「うっうー!すごいですぅ!それだけいれば、みーんな助けられますね!」

千早「そうとは限らないわ。高槻さんは知らないようだけど、ライダーはそもそも協力関係にないのよ」

春香「あ、それでやよいと知らずに斬りかかったんだね」

千早「そうなの。ごめんなさいね、高槻さん」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:13:53.67 ID:6vkT7jwQo
やよい「それはもういいんです。けど、それってどういうことですか?ライダーのお仕事は人助けじゃないんですか?」

千早「ライダーの目的は……ライダーバトルに勝ち残ること。つまり、ライダー同士は戦う宿命なのよ」

春香「……え?」

やよい「どっ、どーいう事ですかぁ?」

千早「ライダーはその力を持って戦いあい、最後の一人を決めるのが目的。いえ、厳密に言えばその先……」

千早「ライダーバトルに勝ち抜いた者は、その願いを叶えることが出来ると言われているわ」

春香「願いを……って、そんな荒唐無稽な……」

千早「そうかしら。ミラーワールドにミラーモンスター、それに介入できるライダーシステム。願いを叶える機構くらいあってもおかしくないと思うけれど」

やよい「……でも、このデッキを持っていた人は私の為に戦ってくれました!」

千早「力の使い方は個人の自由だから、高槻さんやその人のようにライダーバトルに積極的に関わらず、人助けをする人もいるわ」

春香「でも……千早ちゃんは戦うんだよね。だから、やよいにも挑んだんだよね」

千早「そうよ。何に縋ってでも叶えたい願いがあるから……死んだ人を生き返らせることだって出来るのよ」

春香「そっか……」

やよい「でも……でも、駄目ですよ!この力は、そんなことのために使っちゃ……」

千早「もともとその為の力よ。高槻さんたちの使い方の方が間違っているのよ」

やよい「だけど……うぅ……」

春香「……私は、やよいに賛成だな」

やよい「春香さんっ!」

春香「だって、少なくともやよいと千早ちゃんが戦わなきゃいけないんでしょ?そんなの、私やだよ……」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:14:26.35 ID:6vkT7jwQo
千早「それでも、私は願いを……」

やよい「……じゃあ!最後の一人になったら私、棄権します!」

千早「高槻さん……?」

やよい「デッキを渡すことが出来たってことは、きっと捨てることも出来るんですよ!千早さんと私が残ったら、私が棄権します!」

春香「じゃあ私もそうする!叶えたい願いなんて……無くはないけど、私のは自力で叶えて見せるし!」

春香(きっと、千早ちゃんの願いは……人の手じゃ、叶えようがないから)

千早「春香まで……だけど、それでも戦わなければいけないのよ?」

春香「でも、私達が手を組んだって事をはっきり示せばさ、人数差があるんだから積極的に仕掛けてくる人もいなくなるんじゃない?」

やよい「そうですよっ!仲間をいっぱい、いーっぱい作って、みんなでお願いして千早さんの願い事を叶えさせてもらいましょう!」

千早「そんな風に上手く行くかしら。私もそうだけど、他のライダー達もきっと何を捨てても叶えたい願いが……」

やよい「大丈夫ですよ!だって765プロにもう一人ライダーがいますから!きっと手伝ってくれますよ!」

春香「そうなの?それって誰の……」

P「ふぃー疲れ……って、お前ら何やってんだ神妙な顔して」

春香「わわっ!プロデューサー!」

やよい「う、うっうー!なんでもないかなーって!」

P「そうか?まぁいいけど」

やよい「私、お仕事も終わったし帰りますねー!お疲れ様でしたー!」バタバタ

千早「あのっ、高槻さん!さっきの話、高槻さんにお願いしていいかしら」

やよい「あっ、任せてください!私から話して見ます!それじゃ、また明日ー!」

P「なんだ、何か企んでるのか?」

春香「ぜ、ぜぜぜんぜんそんなことないですから!気にしないでください!」

千早「ええ。企むにしても悪いことじゃありませんし」

P「そうか。あんまり危ないことはするなよ。二人はもう帰るか?」

春香「あっ、そうしようかな。千早ちゃんは?」

千早「私も帰るわ。一緒に帰りましょう」

P「気を付けてなー」

春香「はーい、お疲れ様でしたー」ガチャッ

千早「お疲れ様でした」バタンッ

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:15:21.64 ID:6vkT7jwQo
春香「はわぁ、びっくりしたぁ……聞かれちゃったかと思った……」

千早「春香」

春香「ごめんね千早ちゃん。もしかしたらバレちゃったかも……」

千早「そうじゃないのよ。春香はライダーになる資格を手に入れたわ。だけど、その力を使わないで欲しいの」

春香「えっ?それってどういうこと?」

千早「詳しい話はまた今度するけど、例えば今日のようにミラーモンスターが出現すると、ライダーには感覚でわかるの」

春香「ふんふん」

千早「それで、ミラーモンスターは時折鏡の外の人を襲うこともある。それを聞いてどうしようと思った?」

春香「そりゃ、戦えるんだから助けなきゃ!」

千早「そう言うと思ったわ。でもダメよ。あなたのデッキはまたフルに機能しているわけじゃないの」

春香「えっ、そうなんだ。それじゃ、どうすればフルに使えるようになるの?」

千早「それについても説明はするけど……どちらにせよ、危険なのよ。だから、なるべく使わないで」

春香「うーん、でもなー。非常事態なら私も戦わないと……」

千早「それなら私か高槻さんがいる時だけにして欲しいの。お願い」

春香「……ん、わかった。だけどどうしても仕方ない時は使うよ?」

千早「そうね、自分の身を守らなければならない時もあるでしょう。極力使わないようにしてくれたらそれでいいわ」

春香「わかった。詳しい話はまた明日、やよいも含めてね!」

千早「もしかしたら増えるかもしれないもう一人と合わせて……ね」

春香「うん。それじゃ、また明日!」

千早「ええ、また明日」

千早「……また、明日」

……。

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:15:48.23 ID:6vkT7jwQo
【天海春香】

アーオーイートリーモシーシアーワーセー

春香「んん……電話……?」カチャッ

春香「もしもし、おはようございます……プロデューサー?」

春香「……え?ちょ、ちょっと待ってください。寝起きで良く……もう一度、お願いします」

P『だから、その……やよいが、死んだ。今日お通夜だそうだ』

春香「ドッキリですか?だとしたら悪質すぎますよ。私、だって昨日、また明日って」

P『事実だ。俺も詳しくは知らないけど、お通夜は出るよ。春香も夕方時間あったら……』

春香「は、い……わかりました。とりあえず、事務所に顔出します」

P『そうしてくれるか。朝早くに連絡してすまなかったな。それじゃ、他の皆にも連絡回さないといけないから』

春香「はい……また後で……」プツッ

春香(やよいが、死ん……事故?隠してた病気?それとも……殺された?)

春香(ライダーバトルの危険……そういう事なの?私も、その渦中にいる……)

春香「そうだ、千早ちゃん……千早ちゃんに、詳しく話を聞かないと。ライダーバトルについて、私はまだ何も知らないし……」ピッピッ

春香「出て、千早ちゃん……」グッ

……。

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:16:48.29 ID:6vkT7jwQo
【如月千早】

千早「何の用かしら、こんな深夜に」

伊織「……とぼけないで」

千早「どうしたの、水無瀬さん。私、何かしたかしら」

伊織「やよいの事よ」

千早「高槻さんの?何が……」

伊織「いいわ、だってアンタは白を切るしか無いんだから。全部聞いたのよ、やよいから」

千早「……何のことだか、わからないわ」

伊織「やよいをやったのはアンタね」

千早「……」

伊織「ライダーの事についてはやよいから聞いてたわ。昨日、アンタ達と別れた後に一度私に連絡をくれたから」

伊織「今まで人を助けるために力があると思っていたのに……悲しそうに、言ってたわ」

伊織「その後、もう一人のライダーに協力を頼みに行くって。私は、胸騒ぎがして、それで……」

伊織「最後を看取ったのは私よ。その時、やよいが言ったの」

やよい『千早、さん……に……』

千早「高槻さんが……そう……」

伊織「アンタが直接やってないにしても、何か知っているはずよ。出しなさい、アンタの持ってる何もかも!洗い浚い!」

千早「……何も、無いわ。私は何も知らない」

伊織「アンタっ、状況わかってるワケ!?この周囲は包囲させてもらってるわ!そう簡単に言い逃れ出来ると……」

千早「何度でも言うわ。私は何も知らない。これからどこで会おうとも、それ以外の回答が返ってくると思わないで」

千早「それから……付け狙うなら、私だけにしておきなさい。春香は本当に無関係。それだけ言いたかった」カチャッ

千早「高槻さんの……お通夜ね、今日は。また会うとしたらそこかしら。それじゃ、その時に。変身」フォン

伊織「しまっ……逃がさないで!」ザザザッ

千早「無理よ、水無瀬さん。ライダーの力は、人智を遥かに超越している」トリックベント

伊織「千早が分身っ!?どれが……」

伊織「……絶対に、掴んでやる。アンタの尻尾を!待ってなさい、如月千早!!」

……。

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:17:30.32 ID:6vkT7jwQo
【都内某所・765プロ事務所】

春香「千早ちゃん、どうなってるの?やよいはどうして……」

千早「私にもわからないわだけど、他の誰かが高槻さんを襲った可能性はあるわね」

春香「ライダーバトルって、こんな風に人が死んじゃう物なの?また、誰かが死ぬの?」

千早「……高槻さんが言っていた、モンスターに負けたライダーの話。詳しくは聞かなかったわね」

春香「え、うん……それがどうかしたの?」

千早「きっと、その人はそのモンスターに捕食されたのよ」

春香「ホショク……捕食って、え?」

千早「ミラーモンスターは人食いの化け物。そして、私達はそのミラーモンスターと契約して力を振るう」

千早「高槻さんがモンスターを使っていたでしょう?私達のデッキには、最低一枚の契約カードが入っているの」

春香「契約カード……そんなのあったんだ」

千早「それを使うと、モンスターの意志を無視して契約が成立する。そうする事でモンスターの力を得る事が出来る」

春香「そっか、それがライダーの力をフルに使うって事……でも、契約って事はこっちからも何か払う必要があるって事なの?」

千早「それが重要なのよ。ライダーは皆、そのリスクを背負っている。モンスターは、力を与える代わりに餌を求めるの」

春香「餌……あっ!やよいが倒したモンスターから何か出てたけど、アレが餌になるんだね」

千早「そうね。ライダーが倒したモンスターはエネルギーを残すわ。それを食べるか、もう一つは……」

千早「人を、食べるか」

春香「でも、その話の通りならモンスターと戦い続けていれば問題ないんじゃないの?やよいは昨日も一体倒してたよ」

千早「そうね、普通ならそれでいいわ。だけど、誰かがモンスターを狩ると、その分餌の入手が難しくなる人が出てくる」

千早「積極的にバトルに参加する意志が無くとも、邪魔になる可能性はあるという事よ」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:18:02.99 ID:6vkT7jwQo
春香「それじゃあ……やよいはそのせいで……?」

千早「かも、しれないわ。それとも単にライダーバトルが原因か、あるいは……本当にただ殺されただけか」

春香「もう、わからないよ……どうしてこんな事に……」

千早「だから、春香には知られたくなかった。参加なんて以ての外だと思っていたのに」

春香「千早ちゃんは、もう誰かをその……殺、倒したの?」

千早「まだよ。今のところはね」

春香「そっか……あのね、千早ちゃん。私、こんな戦いやめるべきだと思う」

千早「……」

春香「やよいは、その……本当に、可哀想で、辛いけど。これ以上続けたら、千早ちゃんまで戻ってこれなくなる」

千早「私はその覚悟をして戦いを始めたわ」

春香「それでも!……嫌なの」

千早「戦いを続ければ、高槻さんを蘇らせる事も出来るかもしれない。それでもそう言うの?」

春香「それは、確かにそうだけど。だけど、その……」

ガタン

千早「誰っ!?」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:18:42.99 ID:6vkT7jwQo
響「わっ、ごめん、盗み聞きするつもりは無かったんだけど……」

春香「……響ちゃん。もしかして、今の話聞いちゃった?」

響「う、うん……けど、多分心配ないと思う」

千早「いいえ、今は誰も信用出来ないわ。もし誰かにこの事を話すなら……」

春香「千早ちゃん!」

響「うわ、待って欲しいぞ!自分、ほら、コレ!」カチャッ

春香「それは……!」

響「自分もライダーなんだ。だから、誰かにバラすつもりも無いし、むしろもっと良く聞きたいと思ってる」

春香「千早ちゃん、響ちゃんが協力してくれたら……」

響「自分、二人と戦うつもりは無いぞ。戦いを止めるべきだっていうのに賛成さー」

春香「ほら、そんな警戒しないで。ね?」

千早「……我那覇さん、どうして私達の会話を聞いていたの?」

響「え?そりゃ、二人がなんかこそこそしてたから……」

千早「みんなは忙しそうね。高槻さんの事でやることが増えたのだから当たり前だけど。そして私達はそれを見計らって抜けだした」

春香「ち、千早ちゃん?何言ってるの?」

千早「私達に関心を払う余裕なんて無いと思ったからよ。我那覇さんは高槻さんの事なんてどうでも良かったのかしら?」

響「そっ!そんなわけないだろ!冗談でも怒るぞ!」

千早「そうよね、あなたはそういう人だわ。それでも私達が抜け出すのを目敏く見つけた……」

千早「あなたは、最初から私達の様子を窺っていたわね?その理由は何かしら」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:19:16.37 ID:6vkT7jwQo
響「……それは、その」

千早「私達がライダーだと知っていた。違うかしら。そして、それを知っているのは……高槻さんだけ、のはず」

千早(水無瀬さんの事は黙っていた方がよさそうだし、ね……)

春香「それって……」

千早「昨日、高槻さんが会いに行くと言ったもう一人のライダー。あなたのことね?我那覇さん」

響「そうだぞ。確かに昨日、やよいと会った」

千早「春香、下がって」

春香「えっ、どうして?」

千早「高槻さんと最後にあったのは恐らく我那覇さんよ。つまり……」

響「違う!自分はやってない!自分は、自分は昨日やよいに……」

千早「悪いけれど、協力の話はしばらく考えさせてもらうわ。今のあなたは潔白とは言い難いから。高槻さんの件を調べてからね」

響「本当なんだよぉ!自分、やってないんだってば!信じてよ、春香、千早ぁ!」

春香「千早ちゃん、きっと響ちゃんは……」

千早「別に信じないとは言っていないわ。信じるに足る裏付けを取るまで待って欲しいと言っているのよ」

春香「ごめんね、響ちゃん。今、ピリピリしてるから……」

響「わかったよ……自分、本当にやってないからな。いくらでも調べていいぞ。それで納得してくれるなら」

千早「……ごめんなさい、我那覇さん。行きましょう、春香」

春香「う、うん……」チラッ

響「……信じて、欲しいぞ」

……。

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:19:49.72 ID:6vkT7jwQo
【水瀬伊織】

新堂「お嬢様、そろそろお時間ですが……」

伊織「……行かないわ。今の私じゃやよいに顔向けできないもの」

新堂「……は、ではそのように」

伊織「千早の名前をわざわざ出したって事は、ライダーバトルが関わってる事はまず間違いないはず……」

伊織「やよいには止められていたけど、そのやよいも、いなく……なってしまった」

伊織「許してくれるわよね、やよい。アンタの……仇討ちなんだから」カチャ

伊織「新堂!」

新堂「はい、ここに」

伊織「お父様とお兄様に話があるわ。取り次いで頂戴」

新堂「は、それは……」

伊織「早くなさい!」

新堂「……仰せのままに」

伊織「ライダーバトル……そんな物、どうだっていい。私は、やよいを殺した奴を……[ピーーー]」

伊織「とにかく今は、千早に張り付いておくしかなさそうね……」

……。

26: saga忘れてた・・・ 2012/12/26(水) 01:21:21.91 ID:6vkT7jwQo
【水瀬伊織】

新堂「お嬢様、そろそろお時間ですが……」

伊織「……行かないわ。今の私じゃやよいに顔向けできないもの」

新堂「……は、ではそのように」

伊織「千早の名前をわざわざ出したって事は、ライダーバトルが関わってる事はまず間違いないはず……」

伊織「やよいには止められていたけど、そのやよいも、いなく……なってしまった」

伊織「許してくれるわよね、やよい。アンタの……仇討ちなんだから」カチャ

伊織「新堂!」

新堂「はい、ここに」

伊織「お父様とお兄様に話があるわ。取り次いで頂戴」

新堂「は、それは……」

伊織「早くなさい!」

新堂「……仰せのままに」

伊織「ライダーバトル……そんな物、どうだっていい。私は、やよいを殺した奴を……殺す」

伊織「とにかく今は、千早に張り付いておくしかなさそうね……」

……。

27: saga忘れてた・・・ 2012/12/26(水) 01:21:55.79 ID:6vkT7jwQo
【高槻家】

P「あの、この度は……」

春香「先に、お焼香済ませて来ようか……」

千早「そうね……」

春香「兄弟、いっぱいいるのにね」

千早「大事にしていたわね」

春香「……やっぱり、戦いなんてだめだよ」

千早「……それでも、私は」リィィイン

春香「あっ……なに、この音……!」リィイイン

千早「これが、ミラーモンスターが近くにいる時の感覚よ……!」リィィィン

春香「って事は、この場の誰かが!?」リィィィン

千早「かもしれないわ」リィィィン

春香「千早ちゃん!」リィィィン

千早「ええ、どこか鏡を……?」

春香「あれ……音が」

千早「誰かが倒した……?まさか!」ダッ

春香「千早ちゃん!待ってよ!」

千早「我那覇さん!我那覇さんはいる!?」

P「おい、千早。何があったか知らんけどあんまり騒がしくするなよ」

千早「す、すみません……あの、ところで我那覇さんは……?」

28: 今度は名前変え忘れてた 2012/12/26(水) 01:22:41.37 ID:6vkT7jwQo
P「響?響なら、ほら」

響「うっ、ぐすっ……やよいぃ……なんでだよぉ……」

千早「いる……」

P「ずっとああやって泣いてるぞ。人一倍仲間思いだからな、響は……」

千早「そうですか……」

P「どうかしたのか?」

千早「いえ、なんでも。あの、気分が悪いので帰っても大丈夫でしょうか」

P「ん、ああ、構わないけど。大丈夫か?」

千早「はい。あの、私の分も……」

P「……わかった」

千早「それじゃ、失礼します」

P「……千早も、やよいとは仲良かったもんな」

春香「……千早ちゃん」

春香(私は、戦いを止める。最後には千早ちゃんと戦う事になっても)

……。

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:23:10.65 ID:6vkT7jwQo
【水瀬伊織】

伊織「思ったより簡単なのね、契約っていうのも……」

伊織「これで、この力で……やよいの……」

伊織「とりあえず、周囲の雑魚を狩りましょう。お腹いっぱいになるまで食べさせてあげるわよ」

ブランウィング「キィッ!」バサッ

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:23:43.28 ID:6vkT7jwQo
【如月千早】

千早「……高槻さん」

千早「水無瀬さん」

千早「我那覇さん」

千早「春香……」

千早「私は、それでも……」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:24:15.38 ID:6vkT7jwQo
【天海春香】

春香「まずは、モンスターと契約する。戦いを止める為に力を、なんて、馬鹿げてるけど……」

春香「いいんだ、私は馬鹿だから。馬鹿でいい、馬鹿正直に……」

春香「もう誰も、死なせない。殺させない!」

春香「……だから、力を手に入れる」リィィィン

春香「変身!」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/26(水) 01:24:42.56 ID:6vkT7jwQo
【我那覇響】

響「やよいは、死んだ。戦ってたのに……」

響「じ、自分もいつ死ぬか……死んだら、どうなるんだ?にぃに、プロデューサー、貴音ぇ……」

響「怖い、怖いよ……死にたくない……」

響「……無くちゃ」

響「もっと強くならなくちゃ。もっと餌をあげなくちゃ。ギガゼールをもっと……」ガタガタガタガタ

響「戦わなくちゃ戦わなくちゃ戦わなくちゃ戦わなくちゃ戦わなくちゃ戦わなくちゃ」

33: 今日はここまで 2012/12/26(水) 01:25:39.57 ID:6vkT7jwQo
【???】

「……高槻やよい。やはりライダーでしたか」

「本当、当たるのね……占い」

「ええ。今まで外した事はありません」

「それで、私はどう出てるのかしら?」

「……まだ、なんとも」

「……死ぬつもりも無いし、殺すつもりも殺させるつもりもないわ。なんとかしましょう」

「ええ……この占いだけは、外れて欲しいものですから」

38: >>37VIPで書いてたのなら確かに私だ 2012/12/27(木) 01:59:37.11 ID:RWkVYB11o
【都内某所・765プロ事務所】

貴音「おはようございます。……あなた様だけでしたか」

P「……ああ、貴音か。おはよう」

貴音「どうかいたしましたか?何やら顔色が優れない様子」

P「まぁ、やよいの事とか色々な……今日、葬式にも顔出してくるよ。仕事があるからずっとはいられないけど」

貴音「真、不幸な話ですね。やよいは私達の中でも特に若く、未来に溢れた者でしたのに」

P「神様ってのがいるなら不公平だよな。あんなに頑張ってるやよいがなんで……」

貴音「あなた様。その言い方では、死んでも良い人間がいるようにとれますよ」

P「あ、いや、そういう意味じゃ……ダメだな、どうもまともに頭が回ってない。貴音のスケジュールはどうだったかな」

貴音「今日は響とばらえてぃの撮影があったはずですが」

P「そうなってるな。けど、響か……あいつ、かなり参ってたからな」

貴音「響は心優しいですから、傷付きやすくもあるのでしょうね」

P「そうだな。ちょっと連絡取ってみるか。無理そうなら申し訳ないけどキャンセルだ」チャッ

貴音「致し方ありませんね」

P「……出ないな。寝てるのか?」

貴音「……」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:00:04.13 ID:RWkVYB11o
P「お、出た出た。響?ああ、おはよう。今日の仕事なんだがな」

P「え?ああ、そうだけど……いや、大丈夫かと思ってな。その、お前昨日……」

P「そう、か。だったらいい。とりあえず事務所に顔出してくれ」プッ

貴音「どのような様子でしたか?」

P「思ったよりずっと元気だった。気を使ってるのかもしれないな。とにかく、仕事は大丈夫だそうだ」

貴音「……一人欠けただけで、何かとても大きな物を失ったような気持ちですね」

P「実際、一人一人が大きいんだろう。この事務所では特にな」

貴音「皆、滅多な事をしないと良いのですが」

P「やめてくれよ、縁起でもない」

貴音「そうですね、失言でした」

P「……大丈夫だ。お前達には俺がいる」

貴音「……はい」

……。

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:00:31.91 ID:RWkVYB11o
【如月千早】

千早「丁度いい鏡面が無くて時間がかかってしまったわ……もしかすると、もう誰か倒してしまっているかもしれないわね」

千早「そうなったら……そのライダーを倒せばいいだけなのだけれど」

ドゴォォォン……

千早「やっぱり……」ソードベント

千早「えっ、あれは……」

春香「遅かったね、千早ちゃん」

千早「春香……その姿は」

春香「契約しちゃったんだ、この龍……ドラグレッダーと。これで、私も戦わないわけにはいかなくなった」

千早「どうして……あれだけ言ったのに、どうして!」

春香「大切な人を守る為に」

千早「だからって、春香はバカよ!戦いの果てに何が待っているかは、わかっているはずなのに!」

春香「バカでいいんだよ、千早ちゃん。私は私に出来る事をやるって決めたの。それがどんなにバカな事でも」

春香「戦いを、止める。それが私の……ライダーとしての願いだから」

千早「春香……そこまで……」

「その話、どこまで本気なのかしら」シュートベント

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:01:09.96 ID:RWkVYB11o
春香「誰っ!?」

律子「動かないで」チャキッ

千早「この声……律子ね。あなたまで……」

律子「勘違いしないで頂戴。私は戦うつもりはないわ」

千早「なら、その銃を下ろして欲しいわ」

律子「それは無理よ。私に戦う気が無くとも、貴方達は違うかもしれない」

律子「ちょっと欲を出しただけなのに、命を賭ける事になるだなんて嫌だもの。こちらが有利な状況を保たせてもらうわ」

春香「私は戦うつもりは無いですよ?」

律子「春香は……多分、本気でしょうね。けど、千早はどうかしら。ストイックだからね、あんたは」

千早「……だから、その銃口を春香に向けているのね」

律子「そういう事。自分が苦しいのは平気でも、春香は見捨てられないでしょ」

千早「わかったわ、戦わない。口約束だけど、信用してもらえないかしら」

律子「……こっちも形式上やっただけだから、言質が取れればいいのよ。ごめんなさい、春香」スッ

春香「生きた気がしなかったですよ~……」

千早「それで、どうして律子は私達の前に姿を見せたのかしら。黙っていれば危険も無かったのに」

律子「理由は一つ。千早、あんたを止める為」

千早「私を?……私が春香に危害を加えるとでも?」

春香「そうですよ律子さん。千早ちゃんはそんな事……」

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:01:40.75 ID:RWkVYB11o
律子「護るために倒す事だってあるのよ。契約してしまったとなれば、春香も戦う事になる。どうやってもね」

律子「だけど、例えばデッキケースを破壊するとか、契約モンスターを倒すとか。そういう方法でリタイアさせられれば……」

千早「私はそんなつもりは無かったわ」

律子「そうかもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない。確信が持てない以上、牽制する必要があった」

千早「……どうして春香を守ろうとするのかしら」

春香「そりゃ、仲間だからに決まってるよ!」

律子「春香は利用価値があるからよ」

春香「り、律子さ~ん……」

律子「春香の思想は理想的よ。というより理想論とでもいいましょうか。実践値とは乖離している」

千早「それは私もわかっているわ」

律子「だけど、そういう理想を唱えられる人が必要なの。欲望のぶつかり合う、ライダーバトルには」

春香「私が、必要?」

律子「私ともう一人……あるライダーは、戦いを止めようとしているわ。だけど、それにはまず戦力がいる」

律子「損得を無視して、護る為に戦える戦力がね……私は、自分が特別な勇気を持っていると思えない。だから私自身も信用できないのよ」

千早「春香は信用出来るというの?」

律子「それは、千早が一番良く知ってるでしょう」

千早「……その通りね」

春香「あのっ、つまり、律子さんともう一人のライダーさんも一緒に戦ってくれるんですよね!?」

律子「それは無理ね。私達に出来るのは、こうやって牽制する所まで。私達は、少し……大人すぎるのよ」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:02:07.41 ID:RWkVYB11o
春香「そんな……一緒に戦ってくれれば、きっとみんな止められるのに」

律子「そうね、それが叶うよう、あなたは自分の想いを見失わないで欲しい。そして……この戦いを、止めて」

春香「律子さん……」

千早「身勝手な話ね」

律子「ええ、そうね。我ながらひどい話だと思うわ。でも、託せるのは春香しかいないの」

春香「……どうなるかわかんないけど、やれるだけやってみます!」

律子「ありがとう。……千早にも、少し忠告をしておいてあげるわ。あなた、狙われてるわよ」

千早「私が?」

律子「ええ。765プロには私も知らないライダーがまだまだいるみたい。やよいがいなくなって、これからきっと大きく動くわ」

春香「そんな事、させません!私が千早ちゃんを守ってみせます!」

千早「例え何が起こっても、私は春香を守るわ」

律子「それでこそ、よ。それじゃあまた会いましょう。ミラーモンスター退治は任せたわよ~」タッ

春香「あっ……行っちゃった」

千早「765プロに他のライダーがいる……それも、複数」

春香「誰なんだろうね……」

千早「春香、本当に戦いを止める気なの?」

春香「……うん。そうしたいと思ってる」

千早「なら、出来る限り協力するわ……だけど、最後の局面、どうしても戦わなくちゃいけなくなったら」

春香「わかってる。千早ちゃんにはそれだけの願いがあるんだもんね。……それは、止められないよ」

千早「……ごめんなさい」

春香「……帰ろっか」

……。

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:02:40.92 ID:RWkVYB11o
【四条貴音】

響「お疲れ様でしたー!」

貴音「お疲れ様でした」

響「今日は結構良く動けたなー。さっすが自分!」

貴音「……響、無理をしているのではありませんか?」

響「無理?自分無理なんかしてないぞ?」

貴音「ですが、昨日はとても辛そうに見えたので……」

響「辛くなんかないさー。頑張らなきゃいけない事ばっかりだからな、辛いなんて言ってる暇ないぞ」

貴音「……響、落ち着いて聞いてください。あなたは今余り良い状態にない」

響「そんな事ないよ!」

貴音「あるのです、響。あなたは……」

響「うるさいな!自分は平気だって言ってるでしょ!ほっといてよ!」ダッ

貴音「待ちなさい、響!響!」

貴音「……響、どうして……」

……。

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:03:16.12 ID:RWkVYB11o
【菊地真】

真「……信じ、られないや」

雪歩「……そうだね」

真「やよいがそんな事になってたなんて知らなかった……ボクは事務所の仲間なのに」

雪歩「誰だって気付くわけないよ……聞いた今でも信じられないもん」

真「やよいもやよいだよ、相談してくれれば何か出来たかもしれないのに」

雪歩「真ちゃん、自分を責めないで……見てる私も辛くなってくるから」

真「……相談されたって、どうせ何も出来やしなかったんだけどね。あの時のボク達は」

雪歩「……」

真「でも、今は違う。ボクは力を手に入れた。これで……」

雪歩「戦うの?」

真「うん。戦って、やよいを取り戻す。ボク達の日常は、誰が欠けてもダメなんだ」

真「……雪歩まで戦えとは言わない。それを誰かに渡して、なるべく安全に」

雪歩「ううん、私も戦う。真ちゃんの言う通りだと思うから。私達の事務所は、みんな揃って初めて765プロだもんね」カタカタ

真「雪歩……」

雪歩「ご、ごめんなさい。やっぱり、怖くて。私なんかに出来るかなって」カタカタ

真「……ありがとう」ギュッ

雪歩「……私がそうしたいから、そうするんだよ」ギュッ

……。

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:03:43.96 ID:RWkVYB11o
【秋月律子】

律子「……デッキを配っている金のライダー以外、確認しているライダーの正体は把握出来たわね」

伊織「そうね。随分助かったわ」

律子「それで、伊織はどうするつもりなの?」

伊織「知ってるでしょ。やよいの仇討ちよ」

律子「それは何も産まないわ」

伊織「それでも、そうせずにいられないのよ。そうじゃなきゃ、私は一歩も進めない」

律子「……言っておくけど、千早は違うわよ」

伊織「あら、意外ね。律子が千早を庇うなんて」

律子「そりゃ庇うわよ。仲間の誰にも人殺しになって欲しくないし、死んで欲しくもない」

伊織「私はどっちになると思ってるわけ?」

律子「さぁね。何にせよ、あの子は何もしてないわ」

伊織「それを証明出来るものは?」

律子「物証はないわ」

伊織「話にならないわね」

律子「強いて言うなら……千早は、自分から誰かを殺せない。命の重さを誰より知っているから」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:04:18.01 ID:RWkVYB11o
伊織「それは、律子の意見?」

律子「そうね、諸々鑑みての話よ」

伊織「……一応、覚えておいてあげるわ」スッ

律子「帰るの?」

伊織「ええ。少しやる事があるから」

律子「仇討ちもいいけど、体は大事にしなさいよ。私の担当アイドルなんだから」

伊織「伊織ちゃんを甘く見ないでよね。またね」バタンッ

律子「……」

ガチャッ

美希「律子……さんか。今そこででこちゃんに会ったの。二人で何のお話?」

律子「なんでもないわ。あんたはどうするの?やよいの……」

美希「もう顔出して来たの。ソファー借りるね、昨日あんまり寝られなかったから」

律子「どーぞ」

美希「……あふぅ」パタン

……。

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 02:04:59.46 ID:RWkVYB11o
【我那覇響】

響「戦わなきゃ、戦わなきゃ……」ブツブツ

ギガゼール「キー」

響「倒したか?良くやったぞ。全部食べていいからな」

ザッ

響「ん……ひっ!ら、ライダー……」

……。

49: 今日はここまで 2012/12/27(木) 02:05:26.09 ID:RWkVYB11o
【プロデューサー】

P「やよいが死んだ」

P「……誰かに殺された、らしい」

P「やよいのファンか?この業界でいれば、死ぬまでは行かなくとも危険なファンの話は聞く……」

P「それなら、納得できる。確かに不幸だけど、理屈は通る」

P「だけど、何かおかしい。何か、どこかが引っかかるんだ」

P「……調べてみるか。やよいに起きた事を」

51: 伊織の苗字が水無瀬になる不具合を修正しました 2012/12/27(木) 23:46:00.66 ID:RWkVYB11o
【都内某所・765プロ事務所】

春香「今日、来ないんですね、千早ちゃん」

P「ああ、連絡があったよ。やよいの事は妹みたいに思ってたからな。やっぱり普段通りではいられないんだろう」

春香「そうですよね……なんか、私が普通にお仕事してるのがおかしいのなかって思っちゃいますよ」

P「いや、立派だよ。春香だって辛いんだろ」

春香「……はい」

P「春香達は年齢的には子供だけど、立場は社会人と変わらない。辛いことも多いよな」

春香「でも、それは私達が選んだ事ですから」

P「そうか。一応、今日はレッスンだけど……どうする?千早もいないし、休んでもいいぞ」

春香「そうですか?でも……?」リィィィン

P「どうした?」

春香「あ、えと、やっぱりお休みさせてもらおうかな。ちょっと気分転換に散歩してきますね」

P「そうだな、それもいい。また後でな」

春香「はいっ、それじゃ!」タッ

P「なんだかわからんが忙しないな。……そろそろ響が来る頃なんだが、おかしいな」

真美「ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?おお、真美か。どうした、珍しく深刻な顔だな」

真美「うん、ちょっと、相談したい事があってさ……」

P「俺に?いよいよ珍しいな。明日は雨か?なんてな。何でも聞くよ。言ってみてくれ」

真美「……亜美の事なんだけど、さ」

……。

52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:46:32.99 ID:RWkVYB11o
【如月千早】

千早「はぁあ!」ガキィン

メガゼール「ギィイイ」バシュゥウ

千早「ダークウイング」

ダークウイング「ギッ」グァ

千早「これで八体目……だけど、まだまだ力不足ね」

千早「強くならないと……私の為だけじゃなく、高槻さんや春香の為にも」

ソードベント

千早「今の音……そこのライダー、出てきなさい!」

王蛇「……」スッ

千早「紫のライダー……初めまして、ね」ソードベント

千早「一応聞いておくわ。私は貴方と争うつもりはない。その剣を下ろしてもらえないかしら」

王蛇「……ごめんなさいね、千早ちゃん。その提案は聞けないわ」

千早「えっ、その声……あなた、まさか」

あずさ「律子さんから話を聞かなかったかしら?あなたを狙っているライダーがいる、って」

千早「それは……でも、どうしてあずささんが私を?」

あずさ「ライダーは、戦う者よ。あなたや春香ちゃんみたいに、戦いを止めようとする事が間違っているの」ダッ

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:47:08.57 ID:RWkVYB11o
千早「あずささん!私は本当に争うつもりは……!」ガードベント

あずさ「こういうの、何て言うのかしら~……そうそう、“問答無用”よ」ブンッ

千早「くっ……!」キィン

あずさ「ほら、剣だけじゃないのよ。手足だって立派に武器になるんだから」ドスッ

千早「あっ……ぐ」グラッ

あずさ「よいしょ、っと」バキィン

千早「きゃあっ!」ズザッ

あずさ「……弱いわね、千早ちゃん。今まで良く生き残ってこれたわね~」

千早「あなたにそんな事を言われる筋合いは無いわ!」トリックベント

あずさ「カードに頼った戦い方……さっきの動きを見てもわかったわ。あなたは自分を鍛える事をしていない」アドベント

あずさ「千早ちゃんは結構博識だから知っているかしら?それとも蛇なんて興味もない?」

ベノスネーカー「シュルルルルル……」キョロ

あずさ「ピット器官……蛇は赤外線を感知する事が出来るのよ~。サーモグラフィみたいな物が見えるのね」

千早「だから何だと言うんですか!」ダッ

あずさ「だから、私にはわからなくても……ベノスネーカーにはあなたが見えているってことよ」

ベノスネーカー「!」グルンッ

千早「なっ……」バシッ

あずさ「ほら、見えていたでしょう?」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:47:52.29 ID:RWkVYB11o
千早(強い……あずささんは飛び抜けて身体能力が高いわけではないわ、むしろ私の方が上でしょう)

千早(だけど、戦いに対する勘のような物が鋭すぎる。まるで私の何倍も戦ってきたかのような……)

千早「問答無用、とは言われました。けれど、一つだけ教えてください。あずささんがライダーになったのはいつですか?」

あずさ「そうね。千早ちゃんは今まで、みんなの先輩ライダーだったものねぇ。だけど、この戦いは千早ちゃん達が参加する前からずっと続いている」

あずさ「答えは……わかりやすく言えば、千早ちゃんよりずっと前から、よ」

千早「やはり、場数が違う……という事ですか。私では勝てないと」

あずさ「付け加えて言えば、千早ちゃんはまだ躊躇いがある。口では願いの為なら……って言いながら、最後の場面で躊躇する。そんな人は何も成すことは無いの」

千早「そんな、そんな事は……」

あずさ「私はこれから本気で千早ちゃんを殺すわ。そういう相手にはね、千早ちゃん」

あずさ「純然たる願いの下、漆黒の意志を持って、その剣を振り下ろすしか無いのよ」

千早「でも、私は……私と春香は、そんな事の為に力を手に入れたんじゃ……」

あずさ「構えなさい。それとも、あなたの願いはその程度だったのかしら?」

千早「私の、願い……」

千早「……」グッ

あずさ「それでいいの。それじゃあ……」シャコッ ファイナルベント

千早「決着を」ジャキッ ファイナルベント

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:48:24.58 ID:RWkVYB11o
あずさ「ふっ」クルンッ

千早「はぁあああ……」ギュルンッ

あずさ「はぁっ!!」

千早「やぁああああ!!」

バッ……

バシィィィィン!!

あずさ「……」スタッ

千早「……くっ」グラッ

千早(芯を外された……!全力で打ったせいで、もう戦闘は無理ね……)

千早「私の、負けです」

あずさ「そうね、私の勝ちね」

千早「最後に二つだけ、お願いしてもいいでしょうか?」

あずさ「何かしら?」

千早「春香を……よろしくお願いします。あずささんほどの実力があれば、命を奪わずにリタイアさせる事もできるはず」

千早「それから、止めは一息にお願いします。苦しむのは、嫌なので」

あずさ「……どちらも、聞けないわねぇ。ごめんなさいね、千早ちゃん」

千早「なら、まだ死ぬわけにはっ……!」ググッ

あずさ「だって、死ぬのは私だもの」ドスッ

千早「……え?」

あずさ「うふふ」グラリ パタン

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:48:56.08 ID:RWkVYB11o
千早「なっ、あずささん!?」ダッ

あずさ「驚かせて……ごめんなさい。だけど……千早ちゃんの覚悟が、見れたら……こうす……げふっ」ビチャッ

千早「わけがわかりません!説明してください!」

あずさ「言った、でしょう……?私は、千早ちゃんよりずっと、長く……ライダーを、やってきたの、よ……」

あずさ「残った時間は多く無いけれど、少しだけ、私の……昔話を、聞いて……もらえるかしら……」

……。

【三浦あずさ】

「願い事が叶う、と言われても~……」

「その為に誰かを犠牲にするのは、やっぱりダメよねぇ……」

「ミラーモンスターっていったかしら。アレが人を襲って食べてしまうなら、それから人を守る為に戦おうかしら」

……。

「こ、怖かったわぁ……けど、なんとか勝てたわね。あの、お怪我はありませんか?」

「あ、ありがとうございます!あなたが居なければどうなっていたか……」

「え、あの、その……」

「あなたは命の恩人です!ありがとうございます!ありがとうございます!」

「……あんまり丁寧にお礼を言われると、妙な気持ちがするものね~」

……。

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:49:45.15 ID:RWkVYB11o
「はぁっ!」

「ギィィィ!」

「大丈夫ですか?」

「痛っ……怪我しちまったよ。あんた、そんな力があるならなんで今まで放っておいたんだ」

「え、その、お仕事が……」

「人の命より仕事が大事だってのか!?ええ!?」

「ええと、そのぉ……すみません、でした」

「全く……」

……。

「ありがとう!」

「なんで助けてくれなかったの!?」

「あんた、ヒーローだよ!」

「遅いんだよ!」

「助かったぁ!」

……。

「また、助けられなかった」

「……私は、なんで戦ってるのかしら」

「……」

……。

58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:50:22.65 ID:RWkVYB11o
【如月千早】

あずさ「私が頑張って戦っても……助けた人は何も思わない、の。そして、助ける事すら……出来ない、ことも」

あずさ「人が、わからなく、なって……もう……戦う事も……疲れ……」

千早「なら、何故私と戦ったんですか……?」

あずさ「……春香ちゃん、は、いい子……ね。あの子は、本気で、戦いを止めようと……」

あずさ「だけど、想いだけじゃ、ダメ……最後に、必要なのは……覚悟と、力……」

あずさ「春香ちゃんには、それが足りない……わ。だけど、あの子の隣には、いつも……あなた、が」

千早「そんな……その為に私と……」

あずさ「千早ちゃんには、その意志が……ある。それを確かめたかった……だけ、なの」

千早「だからって、死ぬ事は無いじゃない!」

あずさ「疲れたのよ……誰かの為に戦う事も、自分の為に、戦う……事も。これで、やっと……千早ちゃんに託して、私は……」

千早「……」

あずさ「うん、めいの……人には、会えなかった、けれど……後は、よろしくね……」

千早「……わかりました。きっと、戦いを終わらせます。私と、春香で」

あずさ「これ以上、誰かが泣くのは……見たくないから。受け取って、私の願いと……」ググッ

あずさ「お疲れ様でした、プロデューサーさん」

千早「あずささん!」

あずさ「……」

千早「……お疲れ様でした、あずささん」

……。

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:50:50.47 ID:RWkVYB11o
【天海春香】

春香「……ふぅ。なんとか片付いたかな」

ガシャッ

春香「またモンスター!?」

ガイ「……」

春香(……じゃない、ライダー!ど、どうしよう。戦いたくないけど……)

ガイ「……はるるん?」

春香「え?」

ガイ「その声、はるるんだよね?」

春香「ええと……って事は……真美!」

亜美「ぶっぶー、亜美だよん!」

春香「あ、亜美ぃ……良かった、戦わなくちゃいけないのかと思って……」

亜美「んっふっふ~、ビビった?」

春香「めちゃくちゃビビった……亜美は、私と戦わない……よね?」

亜美「うん、はるるんと戦う理由なんて無いもん。そっちこそ、亜美やっつけちゃわないでいいの?」

春香「私は、出来れば誰とも戦いたくないなって思ってるんだ。良かった、知り合いで……」

亜美「さっすがはるるん、良いこと言うね!実はねー、亜美達もそう思って仲間集めてるんだ~」

春香「ええ!?それ、本当?」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:51:17.42 ID:RWkVYB11o
亜美「うん、ライダーバトルの事、知らずにライダーやってる人が結構いるみたいでさ。っていう亜美も知らなかったんだけどね~」

春香「そっか、そういう人もいるんだ……」

亜美「でー、せっかくだからチーム組んだらあんまり戦わなくていいんじゃないかって!」

春香「それ、私もおんなじ事考えてたんだよ!すごいじゃん亜美!」

亜美「でしょでしょー!はるるんも良かったら仲間入りしてみちゃーDoーDai?」

春香「うん!……あ、だけどちょっとだけ時間ちょうだい?」

亜美「え?どしてどして?」

春香「実は、千早ちゃんもライダーなんだよね。今のところ私と一緒に戦うって言ってくれてるんだけど……」

亜美「そっかそっか、相談したいんだね」

春香「うん。千早ちゃんもわかってくれると思うけど」

亜美「おっけー!じゃあ、えっと……明日さ、公園で集まろうよ!あ、もちろんミラーワールドでだかんね?」

春香「わかった!じゃあ今日中に相談しとくね!ありがとう、亜美」

亜美「こっちこそ、はるるんと戦うなんてやだもんね!じゃ、またね!」

春香「良かった、戦いたくないのは私だけじゃないんだ。えへへ、嬉しいな……」

……。

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:52:10.87 ID:RWkVYB11o
【双海亜美】

響「ん……ひっ!ら、ライダー……」

亜美(この声……ひびきんかぁ。あ、もしかして亜美の事気付いてないっぽい?)

亜美(んっふっふ~、ちょっとおどかしちゃお!)

亜美「……!」ストライクベント

響「う、うわあああああああ!行けっ、ギガゼール!!」

ギガゼール「ケェーン!」ザワザワ

亜美(うわっ!似たようなモンスターがいっぱい……あれ、これ、やばいんじゃ……)

響「やっつけちゃえ!勝てば……勝てばやよいみたいにならなくてすむんだろ!」ダッ

亜美「わわっ!こ、来ないでっ!」ブンッブンッ

響「その声……亜美?真美?どっちだ!?」

亜美「亜美だよっ!」

響「や、やめろ!止まれ、ギガゼール!」

亜美「……っ!と、止まった」

響「ごめんなぁ、亜美。びっくりしただろ?」ギュッ

亜美「わっ、びっくりしたけど、最初におどかしたの亜美だし……」

響「ごめんな、ごめんなぁ……ぐすっ」

亜美「泣かないでよひびき~ん……」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:52:38.93 ID:RWkVYB11o
響「自分、怖くて……負けたら死んじゃうって思ったら、怖くて……」

亜美「うそっ!?負けたら死んじゃうってどゆこと!?」

響「亜美も知らなかったのか?ライダーバトルは負けたら死んじゃうんだぞ。だけど最後まで勝ち抜けばどんな願いでも叶うんだって」

亜美「そうだったんだ……亜美、とんでもない事始めちゃったかな……」

響「自分も最初知らなくて……だから、ちょっとでも強くなろうって思って」

亜美「そか……あ、でもさ!死んじゃわなくてもライダーじゃなくなればいいんでしょ?」

響「え、そりゃ……そうだと思うけど」

亜美「じゃあさじゃあさ!このデッキケース、壊しちゃえばいいんだYO!亜美あったまいい!」

響「……そっか、なんで気付かなかったんだろ!そうじゃん、そうすれば戦わなくて良くなるさー!」

亜美「でしょでしょー!じゃあ亜美がひびきんの壊すから、ひびきんは亜美の壊してよ!」

響「う、うん……緊張するな……」

亜美「ほらほらー構えて構えて!いっくよー」

響「よ、よし!来いっ!」スピンベント

亜美「せーの、てりゃっ!」ガキンッ

響「ちょ、まっ……」パリッ

亜美「ひびき~ん、同時にやるとこっしょ、今の!」

響「ごめん、ちょっと手元が……でも、自分のデッキ壊れたさ!」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:53:07.24 ID:RWkVYB11o
亜美「これでイチ抜けだねっ!」

響「うんっ!もう戦わなくていいんだ!良かった、ほんと……?」

亜美「うんうん、亜美のおかげだね~!ね、ひびき……ん?」

ギガゼール「ガフッ、ガシュガシュ」バリバリ

亜美「え、ちょ、これ、どうな……」

亜美(ひびきんのモンスターが、ひびきんを、食べっ……?)

亜美「うっ……ぇ……」

亜美(に、逃げなきゃ。逃げなきゃ、次は亜美が……)

亜美「うぅ……ごめんね、ひびきん。ごめんねっ……」

……。

亜美「はぁ、はぁっ……はぁ……」

真美「あ、亜美おかえりー……ど、どったの?」

亜美「え?な、なんでもないよ!なんでも……」

真美「そ、そう?なんか調子悪そうだけど……」

亜美「なんでもないから!ほっといてよ!」

真美「あっ……ごめん……」

亜美(ひびきんは、死んだ。死んだ……?デッキが壊れると、モンスターが敵に戻るのかな)

亜美(知らなかった……ごめんね、ひびきん。ごめ……)

響『だけど最後まで勝ち抜けばどんな願いでも叶うんだって』

亜美(そっか……勝てばいいんだ。最後まで生き残れば、願いが……ひびきんが、帰ってくる)

亜美「そっか……そうすればいいんだ。そっか、そうじゃん……ふふ、ふふふふふ」

真美(……亜美、やっぱり変だよ)

……。

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:53:39.55 ID:RWkVYB11o
【水瀬伊織】

伊織「悪いわね、呼び出して」

P「いや、いいんだが……どうした?事務所じゃダメなのか?」

伊織「あんまりね……聞かれたく無い話なのよ」

P「何か悪い知らせか?」

伊織「さぁ、どうかしら」

P「勘弁してくれよ……今、いっぱいいっぱいなんだよ。やよいの事があって、みんなどっかおかしいんだ」

伊織「そうでしょうね……」

P「今日も真美に亜美の様子がおかしいって相談されたよ。もう、俺もどうしたらいいか……」

伊織「亜美が……?その話、本当なの?」

P「え?あ、ああ……」

伊織「……やっぱり悪い知らせよ。疑念がほぼ確信に変わったわ」

P「どうしたっていうんだよ」

伊織「これ」バサッ

P「ファイル?何のだ?」

伊織「いろいろよ。いい?絶対に読んでよ。それからこれも」チャッ

P「なんだこれ、ベルト?俺に渡してどうすんだ」

伊織「あんただから渡すのよ。使い方はそのファイルに書いてあるわ。……どう使うかは、あんたが決めて」

P「お、おう。わかった……」

伊織「私はやることがあるから、しばらく事務所には顔を出せないけど……他のみんなの事は安心していいわよね?」

P「ん?……そうだな。任された」

伊織「上出来よ。それじゃ……またね」

P「おい、伊織!……どうしたってんだ、ベルトが」

P「……事務所に帰って読んでみるかね」

……。

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:54:10.92 ID:RWkVYB11o
【四条貴音】

貴音「……響が、行方不明になったそうです」

律子「十中八九、ミラーワールドでってことね」

貴音「恐らくそうでしょう。こうならない為に動いてきたというのに……」

律子「貴音のせいじゃないわ。私だって何も出来なかった」

貴音「どうすれば良いのでしょう、私達は」

律子「今以上に出来る事なんて、無いわよ。今だってギリギリ中立でいられるんだから」

貴音「中立……?どういう事でしょうか?」

律子「……派閥ができてるのよ。春香や千早は戦いを止めるよう動くみたい。だけど、真と雪歩がね」

貴音「やはり、あの二人もライダーになってしまいましたか」

律子「二人は願いを叶えて全てをもとに戻すつもりみたい。なんとか契約は阻止したかったんだけど」

貴音「金のライダー……あの者については今を持って謎のままです」

律子「あいつをなんとかしないと、この戦いは終わらないのよね……きっと」

貴音「しかし、律子嬢の言う通りならば……響を倒したのは真か萩原雪歩という事になりますか」

律子「それが、妙なのよ。どうもその二人じゃなくて他の……」

貴音「なんと……ここに来て新たな存在ですか」

律子「そうなのよ。いろいろ考えてみたんだけど、もしかしたら……」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/27(木) 23:54:40.81 ID:RWkVYB11o
美希「んーっ!気分爽快なのっ!」

貴音「はっ!?」ガタッ

律子「貴音、落ち着きなさい。美希、いたのね」

美希「うん。社長室でお昼寝してたの」

律子「社長室ってアンタ……」

美希「社長の椅子は座り心地いいんだよ?律子知らないの?」

律子「さん、でしょ。もう、ちゃんと社長に許可取ったんでしょうね」

美希「うん。いいよって言ってたよ。社長は優しいのー」

律子「もう、アイドルに甘いんだから……」

美希「あはっ、ミキに厳しい人なんて律子、さんとハニーくらいなのっ!じゃあミキ、ちょっと出かけてくるね」

律子「はいはい。気を付けてね」

美希「うん。あ、そうそう……真クンと雪歩の様子が変なのってお仕事のせい?」

律子「え?いや、特には……プロデューサー殿の方が詳しいんじゃないかしら」

美希「そっか、そりゃそーなの。ありがと、律子、さん」バタンッ

貴音「……美希、何を知っているのでしょうか」

律子「さぁ、さっぱりだわ。あの子の場合感覚で理解してるって事があるからね……」

貴音「ではその感覚を信じてみるとしましょう。真と萩原雪歩から目を離さぬよう」

律子「……お互いね」

……。

67: 今日はここまで 2012/12/27(木) 23:55:15.04 ID:RWkVYB11o
【天海春香】

春香「って、話なんだけど……」

千早『……』

春香「えと、別に千早ちゃんが嫌なら無理にってつもりは無いんだよ?ただ、その……仲間は、多いほうがいいかなって」

千早『……』

春香「千早ちゃんは、どうしても叶えたい願いがあるってわかってる。だけど、ちゃんと話せばわかってくれる人だっているよ」

千早『春香』

春香「だから、その……良かったら、私と一緒に亜美の仲間に会ってくれないかな?」

千早『元から嫌だと言うつもりは無かったわ』

春香「えっ、そうなの?」

千早『ええ。仲間が多いに越した事は無いし……少し、色々とあって、やっぱり戦うのは好きじゃないってわかったの』

春香「そっか、うん、そうだよね。誰だって戦いなんてしたくないよね」

千早『……そうね。ただ、信用出来るかどうか少し探らせてはもらうわ。一緒に行くからといって仲間になるわけではないわよ』

春香「あ、そうだね。それでいいよ。良かった……千早ちゃん、行きたくないって言うのかと思って」

千早『少し前の私ならそう言ったでしょうね。でも、今の私には春香がいるから。願いも、春香も……失いたくないのよ』

春香「……ありがとう、千早ちゃん」

千早『お礼なんていいわ。それじゃ、明日ね』

春香「うん、また明日ね!」プツッ

春香「よかった、不安だったけど……千早ちゃんも戦うの、嫌いだよね。うん」

春香「亜美と一緒かぁ、そうだ、クッキーとか焼いて行こうかな。あ、でもクッキーもう飽きちゃったかも……」

春香「って、そもそももう夜だし、時間無いし。仕方ない、お菓子は同盟成立記念にでも作ろう!」

春香「……大丈夫だよね。私達、わかりあえるよね」

……。

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:25:10.45 ID:v3fMoSw+o
【都内某所・自然公園】

春香「……」

千早「……」

律子「……何か?」

春香「あの、そっちの……エイの人は……」

貴音「春香、私ですよ」

千早「四条さんなのね……」

春香「え、ええと……今日は、亜美に呼ばれて……?」

律子「違うわ。……というか、亜美?」

千早「私と春香は亜美が組んでいるチームと会う為に来たのだけれど」

律子「貴音、どう思う?」

貴音「……信じたくはありませんが」

春香「えっと……どういうことですか?」

貴音(今朝の占い……あの結果を覆す為に春香達を追っていたのですが……)

貴音(どうやら、想定以上に危険な状態にあるようですね)

ザリッ

春香「あ、亜美……じゃない?」

千早「あれは……黒い、春香?」

……。

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:26:10.44 ID:v3fMoSw+o
【水瀬伊織】

伊織「まずいわ……春香達と真達が出会ったら、きっと春香達は負ける」

伊織「全くどいつもこいつも!どうして冷静になれないのかしら!」

新堂「失礼ながら、お嬢様もつい先日まで」

伊織「う、うるさいわね!というか、どうしてそんなに楽しそうなのよ」

新堂「失言でございました。……いえ、お嬢様が何かを憎むに向かない方である事が喜ばしいのです」

伊織「……フン、別に仇討ちをやめるわけじゃないのよ。ただ、今はそれどころじゃないってだけ」

新堂「左様でございますか」

伊織「今のところ、正体まで辿り着いたのは私だけみたいだからね……私がやらないと」

新堂「では、ご準備の程を。健闘をお祈りしております」

伊織「当たり前よ。……まだ、やよいの家に行ってないんだから。生きて帰ってきて、報告しないと」

新堂「……それでは、いってらっしゃいませ」

……。

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:26:56.63 ID:v3fMoSw+o
【ミラーワールド・自然公園】

真「へぇ……春香に千早、かぁ」

律子「真と、隣は雪歩ね」

雪歩「り、律子さんまで……?」

貴音「萩原雪歩、やはり来てしまったのですね」

真「貴音もいる……こんな所で、765プロ勢ぞろいだ」

春香「いやいや、全然足りないよ」

真「いや、そうだけどさ……春香は緊張感無いなぁ」

春香「そうかな……でも、亜美が言っていた仲間って真達の事だったんだね!」

真「仲間……?」

春香「え、だって、亜美が今日は仲間と会って欲しいって……」

千早「……春香。下がって」

春香「ち、千早ちゃん?」

律子「どちらの側に付くつもりもないけど……警告するわ。この場で戦闘するなら、私はそれを止める」

貴音「私もそうさせてもらいます。千早も、一度下がって……」

真「四対一、かぁ……厳しいかな」ストライクベント

雪歩「四対二、だよ。真ちゃん」ストライクベント

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:27:39.02 ID:v3fMoSw+o
春香「ま、真?雪歩?」

千早「ダメ、春香。前に出ないで」

真「……ボクらが亜美に言われたのはね。無防備なライダーをここに連れてきてやるって事なんだ」

春香「亜美が……どうして……」

真「ボクは、願いを叶えたい。やよいや響と、また一緒に……だから!」

律子「やめなさい!あなたたちが戦うなんて……」シュートベント

貴音「律子、今は何を言っても無駄でしょう。強行手段を」スイングベント

真「他人ごとみたいに言ってるけど、二人だってボクの目標なんだっ!」ダッ

貴音「仕方ありません……律子、援護を!」タッ

律子「え、ええ!」チャキッ

雪歩「や、やらせない!」タタッ

春香「千早ちゃん!どいて!みんなを止めるんだから!」

千早「ダメ!春香だけでも逃げるの!この場は私達に任せて……」ソードベント

春香「私達って……千早ちゃん!ダメ!戦わないで!」

千早「無理なのよ……願いを叶えられるのは、私達の中の一人だけ。本気で倒そうとかかってくる相手には……」

千早「私の願いを持って、この剣を振り下ろす事でしか応えられないの」ヒュッドスッ

春香「うっ、げほっ……千早ちゃ……」グラッ…

千早「……ごめんなさい、春香」バッ

律子(……春香をミラーワールドの外へ……なるほど、良い選択だわ)

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:28:53.51 ID:v3fMoSw+o
真「余所見は駄目だよ、律子!」シュッ

律子「そうね。色々と煩わしくなったわ」ジャッ

貴音「律子、それはまだ……」

律子「いいえ、今しかないの。千早が春香を逃がす為にいない今なら、被害を来にせず撃てる。援護を!」フィアナルベント

貴音「……はぁっ!」コピーベント

雪歩「わ、私の武器……?」

真「二刀流か、かっこいいね。だけど一人でボク達を止められると思わないでよねっ!」ビュッ

貴音「ふっ!」ガキッ

雪歩「こんな時でも、四条さんは……戦い方まで、綺麗で。素敵ですぅ」ブンッ

貴音「光栄です、萩原雪歩。その手を緩めてはもらえませんか?」ギィン

雪歩「……ごめんなさい。私も、またやよいちゃんや響ちゃんに会いたい。それに、やっと真ちゃんの力になれるんだから……!」

律子「貴音!下がって!」

マグナギガ「ブォオオオ!」キュイイイイイ

真「あれはっ……!雪歩、下がろう!」

律子「私は春香みたいに甘くない。戦おうって相手なら、撃退もするわ。……死にはしないと思うけれど、悪く思わないで」

真「仕掛けたのはボクらだし、ね。ま、やるだけやってみるよ」ガードベント

雪歩(あれじゃ、きっと防げない。準備に時間がかかるだけあって、私にもわかるくらいの高火力……)

雪歩(なら、真ちゃんを助ける為には……!)ダッ

真「雪歩!?」

貴音「しまっ……いけません!」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:29:25.24 ID:v3fMoSw+o
律子「雪歩!?くっ!エンドオブ……」

雪歩「止まって……!」フリーズベント

律子「!?」ガチッ

雪歩「やぁあああああああ!」ブォッ

律子「あ……」ザクッ

雪歩「……」

律子「……とんだ、隠し玉……ね」ドロッ

雪歩「あ、あ……律子、さん……ごめんなさい、ごめ……」

真「雪歩!」

貴音「律子嬢!」

律子「謝る事、無いわ。戦うっていうのは、こういう事だも、の。それに……」ガチャッ

律子「私は、ただ負けただけじゃ、ない……から」

雪歩「あ……これ、ピスト」バキュンッダキュンッダキュンッ

律子(自分の事務所を持つ……本当なら、自力で叶える願いを……人に頼った、罰かしら)

律子(なら、それに付き合わされた雪歩は……本当に、理不尽な目に遭ったわけね)

律子「ごめ……なさ……」

雪歩「ご……なさ……い」

バタッ

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:30:28.06 ID:v3fMoSw+o
真「雪歩ぉぉぉぉ!!」

貴音「……このような……このような戦い!虚しいだけとは思いませんか!雪歩を失ってまで……」

真「……うるさい!逆だよ、貴音。こうなった以上、ボクが勝つしか無いんだ。願いが……更に強くなっただけだ!」ファイナルベント

貴音「……ならば、律子嬢の想いを!雪歩の想いを!真、貴方にぶつける!」ファイナルベント

真「でぇりゃあああああああ!」ゴウッ

貴音「はぁああああああああ!」バシュゥッ

コンファインベント

貴音「なっ……!?」

貴音(エビルダイバーが消えた……!?いや、打ち消され……っ!)

真「ボクの、邪魔をするなあああああ!」

貴音「……やはり、私の占いは」

ドッ……

ゴォオオオオオン

真「はぁ、はぁ、はぁ……」

真「貴音。待ってて。すぐに生き返らせてあげるから。それから……雪歩も、律子も」

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:31:47.73 ID:v3fMoSw+o
千早「……真」

真「千早か……おかえり、って言いたいとこだけど、ね」

千早「どうしても、戦うのね」

真「もう引き返せないんだよ。みんな、みんな失くしてしまった」

千早「……なら、戦いましょう。最後まで」

「んっふっふ~、それは無理、なんだよね~」

真「っ!?」ドスッ

千早「あなた……亜美ね」ソードベント

亜美「さっすが千早お姉ちゃん!その通りだよー」

真「亜美……騙したんだね……」ポタポタ

亜美「ごめんねまこちん。でもさ、亜美が勝ったらみーんな元通りにしたげるからさ。待っててよ」

真「……雪歩、貴音、律子……やよい……ボクは……」ガクンッ

亜美「……さーてと。千早お姉ちゃん。良かったらそのまま倒されちゃってくんない?」

千早「それは出来ないわ。今の亜美は信用できないもの」

亜美「もー、信用無いなぁ。ま、でも仕方ないね。こういう状況作ったのも亜美だし~」

亜美「あ、でもあんまり逆らったりしない方がいいっぽいよ?千早お姉ちゃん、はるるん逃したつもりみたいだけどさ……」

亜美「今、どこにいるかわかんないっしょ?」

千早「……まさか」

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:32:32.46 ID:v3fMoSw+o
亜美「そゆこと~。ミラーワールドのどっかに放置させてもらっちゃった」

千早「亜美、あなた……!」

亜美「だーいじょうぶだって。はるるんは戦うつもりなさそうだし、千早お姉ちゃん倒した後に助けたげるってば」

千早「……嘘は無いわね」

亜美「うん」

千早「……」カランッ

亜美「美しい友情!亜美カンドー!あはははは!さってと、それじゃ、またね!」チャキッ

千早「……っ!」

ドスッ

千早「……?」

亜美「ちょ、ちょっとー!なにやってんのさお姫ちん!」

千早「四条さ……」

貴音「千早……戦って、ください。私の占い……貴方の、死を……外し……」

亜美「占いとかわけわかんないよー!邪魔しないでよね!せっかく呂布のリを取ったんだからさー!」

貴音「……千早。前言を撤回致します。戦う必要は、無いようです」

亜美「何言って……」

貴音「亜美。時には後ろを振り返る事も……大事です、よ」バタッ

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:33:25.50 ID:v3fMoSw+o
「……それって、漁夫の利だと思うな」ギュルッ

亜美「ぐぇっ……この声……!」

美希「貴音、大丈夫?」

貴音「……」フルフル

美希「ごめん、なの。ちょっと遅くなっちゃった」

貴音「良いの、です。そのモンスターは、姿を消す事が……出来るのですね」

美希「カメレオンだからね」

貴音「如月千早の死……逃れようの無い運命かと、諦めかけましたが……」

貴音「やっと、私の占いが……外れ……」

千早「……ありがとう。助かったわ、美希」

美希「助けるっていうより、亜美をこれ以上見てられなかったの」

千早「……同感ね。ライダーバトルは、いえ、強い願いは人を狂わせる」

美希「春香を探しに行かないとなんでしょ?急いだほうがいいの。もうあんまり時間が無いかもだし」

千早「そうね。その……後は、任せるわ」

美希「うん。じゃあね、千早さん」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:33:54.02 ID:v3fMoSw+o
亜美「ミキミキ、下ろしてよ……苦しいよ……」

美希「……亜美、苦しいの?」

亜美「うん、苦しいよ……助けて、助け……」

美希「わかった。今助けてあげるね」

亜美「やった、ありがと」ゴキッ

美希「……ここで助かっても、亜美は壊れたまま。戻る場所がもう、無いんだよ」

美希「だから……さよならなの」

美希(これで、ミキの戻る場所も無くなった。けど……)

ザッ

美希「来るよね、やっぱり。……ミキも今、そっちに行くから」

美希(さよならなの、ハニー)

ゾンッ

……。

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/29(土) 00:34:36.90 ID:v3fMoSw+o
【如月千早】

千早「そう遠くに行く時間は無かったはず……春香、どこにいるの!?」

春香「……ち……」

千早「今の声……春香!近くにいるのね!?春香!」

春香「千早ちゃん……」

千早「春香!……それ、は」

春香「千早ちゃん……伊織が……伊織が死んじゃったよぅ……」

千早「何が、どうなっているの……一体」

……。

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:39:26.60 ID:+D5jvRmMo
【プロデューサー】

P「伊織からもらったファイル……書いてある事は荒唐無稽だけど、伊織が冗談でこんな物渡すはずがない」

P「なら、これは本物?そして……これも」ガシャ

P「ライダーと鏡の世界……そこで戦って願いを叶える」

P「その為に必要なのはベルトとデッキケース。そして、それを配布している人間がいること」

P「その人間とは……765プロ社内の人間だろうという事。これは765プロ内でライダーが急増した事から言えるらしい」

P「勿論、俺じゃない。そして伊織の調査では……」

『ファイル4:現在確認されているライダーとその変身者
 天海春香  契約モンスター:ドラグレッダー
 如月千早  契約モンスター:ダークウイング
 高槻やよい 契約モンスター:ボルキャンサー 死亡
 秋月律子  契約モンスター:マグナギガ
 四条貴音  契約モンスター:エビルダイバー
 三浦あずさ 契約モンスター:ベノスネーカー
 我那覇響  契約モンスター:ギガゼール   死亡
 水瀬伊織  契約モンスター:ブランウイング
 菊池真   不明
 萩原雪歩  不明
 オーディン 変身者不明』

P「真には走り書きでドラグブラッカー、雪歩にはデストワイルダー……」

P「これは伊織が自分で書いたんだな。ギリギリでわかったってことか」

P「亜美、真美、美希は契約しているかどうか不明。だけど伊織と話した時の反応からして、多分亜美は契約してると踏んだんだろうな」

P「その時点で11人。真美は恐らく契約してない。あいつはいつもと変わった所は無かったし、何より亜美の事を本当にわかっていないようだった」

P「つまり、美希は恐らく契約している……と考えられる。事務所内に絞ってるっていうのが本当なら、だけど」

P「……思い返せば、あいつの様子がどこか冷めてたのもそのせいか。なんで気付けなかった、俺は」

P「それに始まりのライダー、オーディンを加えて13人。これが伊織のデータに加えて俺が考えた結論だ」

P「いや、考えるまでも無く答えは見えてた。事務所内にオーディンがいると仮定した時点で」

P「伊織のファイルによればこのベルトは列記とした“技術”で出来ているらしい。水瀬グループでコピーも作れた」

P「ま、オリジナルのデッキがあったから出来たとも言えるが……何にせよ、どこかから降って湧いたんじゃなく、誰かが作った物だ」

P「アイドル達は勿論、俺にだってそんな物作れない。水瀬の後ろ盾があったから伊織に出来ただけだ」

P「技術、知識、背景……それら全部をクリアするような人物は、どう考えても一人しかいない」

P「……だけど、なんでですか。俺にはわからない」

P「確かめよう。本人に」

……。

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:39:54.65 ID:+D5jvRmMo
【双海真美】

真美「兄ちゃんが言ってた事、本当なのかな……」

真美「って事は、これがあれば真美も……」チャッ

真美「ごめんね、兄ちゃん。このベルト、勝手に持ってくね」

真美「亜美……亜美が何考えてるか、もう真美にはわかんないよ。だけど、亜美がどうなっても……」

真美「真美だけは、亜美の味方だかんね!変身っ!」シュォオン

……。

真美「亜美、今日は公園に行くって……多分、そこで戦ってるはずっ!」タタタッ

真美「あ、あれ!……って、え?」

亜美「やった、ありがと」ゴキッ

真美「今の声……亜美……あれ……」フラッ

美希「来るよね、やっぱり。……ミキも今、そっちに行くから」

真美「う、うわあああああああ!」ソードベント

美希「……」スッ

真美「えっ……」ゾンッ

美希「……さよなら……」

真美「ど、どうして避けなかったの!?なんで!?」

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:40:23.37 ID:+D5jvRmMo
美希「……」

真美「……ミキミキは、亜美を殺した」

真美「真美は、ミキミキを殺した」

真美「でも、亜美が生きていたらきっと、ミキミキを殺してた」

真美「真美の手が、今血で汚れてるのは誰のせい?」

真美「戦う事を決めた真美のせい?ミキミキを殺そうとした亜美のせい?亜美を殺したミキミキのせい?」

真美「こんな戦いが、あったから?」

真美「……ライダーなんて、いなくていい」

真美「真美じゃなくても、誰かがこんな思いをするくらいなら、ライダーなんていなくなればいい」

真美「この力があれば出来る。もう誰にもこんな思いをさせない為に」

真美「全てのライダーを、消滅させる」

……。

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:41:43.34 ID:+D5jvRmMo
【プロデューサー】

P「失礼します」コンコン

高木「どうぞ」

P「……」ガチャ

高木「何か相談でもあるのかね?」

P「ええ、少し。社長は事務所を立ち上げる前、俺や律子のようにプロデューサーをやっていたんですよね?」

高木「なんだ、プロデュースのコツでも聞きに来たのかね?なに、君なら大丈夫だ。アイドルをじっくり見極め……」

P「そのお話はまた今度で。俺が聞きたいのは、その当時社長が担当していたアイドルについてです」

高木「……ほう」ピク

P「社長がプロデューサーだった期間はごく短いものでしたが、その間に業界にしっかりした橋を架けた」

高木「確かに、その通りだ。若かったからね、無茶もしたよ」

P「しかし、担当していたアイドルが人気絶頂で突然の引退。それを機にこの事務所を立ち上げます」

P「いくらパイプがあったとは言え、当時はまだ……いえ、今でもでしょうか。業界では若輩扱い、事務所の経営はガタガタだった。そうですね?」

高木「……まぁ、そうだね」

P「社長はそんな無謀をするような人に思えません。当時プロデューサーとして所属していた事務所でもう少し下積みをするのが定石です」

高木「若いころはね、そういう定石を蹴飛ばすのも一興なのだよ」

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:42:17.79 ID:+D5jvRmMo
P「違いますよね。その無謀は若さが理由じゃない。社長は安全な道を捨ててでも事を起こさなければならない理由があった。違いますか?」

高木「……」

P「そして事務所を開いてからすぐ、交友関係が今まで以上に広がります。事務所の宣伝と新たなパイプ作り……そう考えると妥当ではありますが……」

P「諸大学の教授など、アイドルどころか芸能界とは程遠い人々とも繋がりを持ち始めた。何故です?」

高木「……」

P「社長がかつて担当していたアイドル……社長の担当したただ一人のアイドル」

P「音無小鳥と言う人に、関係があるんじゃないですか?」

高木「……良く調べたものだねぇ」

……。

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:42:48.04 ID:+D5jvRmMo
【水瀬伊織】

伊織「律子たちと連絡が取れれば良かったんだけど……事務所の近くを虱潰しね」

伊織「金のライダー、オーディンの正体を教えて、徒党を組んで何とかする。それ以外にこれ以上犠牲を出さない方法は無いはず」

伊織「やよい……響……あんた達の事は忘れないわ。だけど、ごめんなさい」

伊織「私は前を見るわ。あんた達の居た過去は大事だけど、過去があるから未来もある。あんた達だって……みんなが戦うとこなんて見たくないはずよね」

「ほう、良いことを言うねぇ」

伊織「っこの声……!出てきなさい!」

高木「隠れるつもりも無いんだがね。やぁ水瀬君。忙しそうで何よりだよ」

伊織「お陰様でね。……いい格好ね、金色で。まるで成金だわ」

高木「はっはっは、流石アイドルはファッションに厳しいね。だがこれとて無駄に豪奢なわけではないんだよ」

伊織「わかってるわよ。……最強のライダー、オーディン。その正体がこんな身近にいたなんてね」

高木「いやいや、隠していたわけではないんだよ。その証拠に、菊池君と萩原君には直接ベルトを渡したしね」

伊織「それはあの二人が私達にあんたの事を話す心配が無かったからでしょ。嫌な性格だわ、見透かした上で動いてる」

高木「そうでもないよ。なにせ君の行動はほとんどが想定外だ。困るんだよ、邪魔されてはね」

伊織「あんたの目的は予想がついてるわ。このゲームの真実も。そもそもこれは、願いを叶える為じゃなく……あんたが、音無小鳥を」

高木「おおっと、それ以上言わんでくれよ?自分の未熟な部分を言われているようで恥ずかしいんだ」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:43:18.12 ID:+D5jvRmMo
伊織「……余裕ね。私程度なら問題なく潰せるとでも言うのかしら」

高木「とんでもない。君だけでなく、他のライダー全て問題なく潰せるさ。見てごらん、水瀬君。これが理由だよ」ジャコッ

伊織「カード……普通のじゃないわね。それがパワーの源かしら」

高木「その通り!“サバイブ”のカードと言うんだよ。左翼が“サバイブ・烈火”、右翼が“サバイブ・疾風”」

高木「そして中央、私の契約モンスターゴルトフェニックス本体の姿が描かれているのが“サバイブ・無限”」

伊織「サバイブ……生き残れるカードってこと」

高木「その通り。つまりは勝ち残れるカードという事だ。これだけは特別でね、私以外にも使えるんだが……」

高木「こうして三枚とも私が保有している限り、私を脅かす力は誰も持てないという事だね」

伊織「いい事を聞いたわ。つまりそれさえ奪えばあんたと対等の力が得られるってわけ」

高木「それは君次第だよ、水瀬君。だが、そもそも奪えなければ意味が無いねぇ」スッ

伊織「……?何をする気なの?」

高木「サバイブのカードは一枚で充分だ。つまり私には無限さえあればいい。この烈火と疾風、君に進呈しよう!」シュルッ

伊織「なっ……!?」パシッ

高木「どうした?使わないのかな?せっかくチャンスをあげたのだから、好きにすればいい」

伊織(こいつの思惑はわからないけれど……間違いなく好機ではあるわ!だけど、これを使うのは私じゃない)

伊織「……このカードは、もっと相応しい人に渡すわ。今はあんたと戦わない。それが私の結論よ!」ダッ

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:43:49.32 ID:+D5jvRmMo
高木「何?……そうか、逃げるか。なるほど、やはり優秀だ!水瀬さんのお孫さんだけはある!」

伊織(千早なら……それから、真。あの二人の心と体の強さは私が良く知ってる。あの二人にこの力を渡せれば……!)

高木「だが、残念だ。水瀬君はここで退場だよ」パァァ

伊織「金色の……羽?」クルッ

高木「おっと、どこを見ているのかな?こっちだよ、こっち」

伊織(なっ……背を向けて走っていたはずなのに、何故振り向いた先にいないの!?)

高木「もうすぐゲームも終わるよ。一足先に、君も高槻君と同じ所へ行くといい」

伊織「やよい……あんた、まさかッ……!?」ドスッ

伊織「か、は……」

高木「うん、高槻君を殺したのも私だ。彼女の真摯な説得は何者にも代え難い力を持つからね。純真は時に最強の武器となる」

高木「困るんだよ、戦わないなどというライダーが増えては。だから、仕方なくだよ」

伊織「あんたは……最低よ……」

高木「君達だってそのデッキを取った時、強い願いを描いたはずだ。私はそれが誰よりも強い……それだけだよ」

高木「生きる事は戦う事だ。願いを叶える事は誰かを蹴落とす事だ。そういう意味では、人間は皆ライダーなのだよ」

伊織「……勝手に言ってなさい、エゴイスト」ガシャッ ガードベント

高木「むっ?これは……」ブワァッ

高木「……ふむ、羽に紛れて逃げられたか。だが長くは保たないだろう」

伊織(なんとか逃げ出せたけど、多分持って数分ね。誰かに、誰かにこれを渡さないと……)

春香「う、ぅん……千早ちゃ……戦っちゃ、ダメ……?あ、れ?ここは、一体」

伊織「……良かった。無駄死にはしなくて済みそうだわ」

……。

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:44:26.66 ID:+D5jvRmMo
【天海春香】

春香「伊織……伊織……」

千早「……春香、帰りましょう。一度ミラーワールドから出なければ、変身限界時間が来てしまうわ」

春香「……どうして、千早ちゃんは平気なの?伊織が死んじゃったのに……」

千早「……」

春香「こんな……頭では、わかってたつもりだった。戦いが続けば、こうなる事もあるって……なのに、こうして目の当たりにすると……」

春香「頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなる。こんなに辛いのに……千早ちゃんはどうしてそんなに冷静なの?」

千早「平気なわけ、ないわ」

春香「嘘だよ……」

千早「嘘じゃない」

春香「嘘だよっ!!」

千早「本当よ。今だって必死」

春香「そんな風には見えないよ……」

千早「春香を失いたくない。それだけが、今の私の支柱よ」

春香「……」

千早「立ちましょう。歩きましょう。歩けなくなったなら、引きずり起こしてでも歩かせるわ。私には……春香が必要だもの」

春香「……うん」ヨロ

千早「……何をするにも、生きていなければ不可能なのだから。でしょう?」

春香「ごめんね、千早ちゃん」

千早「何も言わないで。今はとにかく……」

春香「うん、生きるよ」

春香(伊織……ちゃんと、受け取ったからね)

……。

91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:45:00.97 ID:+D5jvRmMo
春香「そっか、律子さんも貴音さんも……真も、雪歩も」

千早「それに、亜美もきっと……」

春香「あは、は。今日だけでそんなに……」

千早「仕方ないわ。戦いというのは、そういうものだから」

春香「うん、わかってる。わかってるから、止めたかったの」

千早「美希も、いたのだけれど。あの後どこへ行ったのか……」

春香「ねぇ、千早ちゃん」

千早「……何?春香」

春香「私はね、みんなが大事だから……ずっと、みんなといたいから、戦いを止めようと思った」

春香「その為なら、自分が痛かったり怖かったりするのも平気だ、って。けど、けどね……」

春香「もう、何をしたらいいのかわからないよ。モンスターと戦えば、人は守れる」

春香「だけど、私が守りたかった人たちは……私の友達は、もう……」

千早「春香、あのね……」

春香「ごめん、千早ちゃん。やっぱり私、ちょっと疲れてるみたい。帰るね」

千早「……ええ、それがいいわ。ゆっくり休んで、それから」

春香「うん。それじゃ、さよなら」

春香「……さよなら」

……。

92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/30(日) 00:46:12.05 ID:+D5jvRmMo
【一週間後、都内某所・765プロ事務所】

千早「……誰も、いないわね」

千早「考えてみれば当たり前ね。ここにはもう一人のアイドルもいないのだから」

千早(あの日、765プロのアイドルの内……私達三人を残して全員が行方不明になった……)

千早(原因を知るのは私と春香だけ。真美は亜美の事があってか、事務所にも顔を出さないし電話にも出なくなった)

千早(プロデューサーは961プロに移籍する準備をしているらしい。765の事務所にいる事はほとんど無くなった)

千早(一応、真美も春香も勿論私も在籍扱いにはなっているけれど、呪われた事務所と噂の立つ765プロを使ってくれる所はもう無い)

千早(事実上の倒産……社長も、どこにいるのかわからない)

千早「……もしかしたら、と思ったのだけれど。ここでも無かったのね」

千早(春香とは……あの日から、一度も会っていない。いつも“またね”と別れる春香が、あの日“さよなら”と言った)

千早(電話にも出てくれない。家にも帰っていないそうだ)

千早(あれから、ミラーモンスターの反応も一度も無い。ライダーバトルは終わったのだろうか?それはわからない。だから、とにかく春香を探している)

千早「春香……あなたは今……」

1.「戦い続けているの?」

2.「戦いをやめてしまったの?」

100: 1.春香は戦いを続ける。 2012/12/31(月) 00:59:36.32 ID:uQ0AXOuBo
千早「春香……あなたは今、戦い続けているの?」

千早「……返事があるわけも無いわね」

千早(だけど、疑問が残るわ。ミラーモンスターの反応がここの所全く無いこと……)

千早(春香が生きているならライダーバトルは終わっていない。ミラーモンスターも際限なく現れるはず)

千早(逆に……考えたく無い事だけれど、春香がデッキを破壊されるか、倒された場合。ライダーバトルはその時点で終わり、私にも何らかの沙汰があるはず)

千早「一体どうなっているのかしら……」

千早(不思議。事務所に来たからかしら。春香に会えそうな気がしてきたわ。……嫌な予感も同じくらいあるけれど)

千早「……そこに、いるのね」リィィィン

……。

101: 1.春香は戦いを続ける。 2012/12/31(月) 01:00:18.35 ID:uQ0AXOuBo
【天海春香】

春香「ふぅ……」スタッ

ディスパイダー「ガ、ガ……」シュボッ

春香「ドラグレッダー」

ドラグレッダー「グォオオオ」ガバァ

春香「……今日も、人を守れた」

春香(友達は失った)

春香(家族も、あの日から顔を合わせていない)

春香(今日で一週間……心配しているだろうな)

春香「戦う理由も、情熱も、なくなってしまったのに。どうして私は戦っているんだろう」

春香「ちは……」

春香「……」ブンブン

春香「いつまでも頼ってちゃダメだよね。よし、今日は久しぶりに家に帰ろう。お父さんとお母さんに謝って、それから……」

春香「それから……事務所に、行って。やめますって、きっぱり言わないと。普通に進学して、普通に就職を……」ジワ

春香「私の歌、もう誰にも聞いてもらえないのかな。元々、上手くなんてない歌だけど……誰かに聞いてもらいたくて……」

春香「ぐす……ダメダメ、泣いたって何も変わらない。とにかくちゃんと……」

ブォンッ

春香「!!」サッ

「……」ザッ

102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:01:14.87 ID:uQ0AXOuBo
春香「来たね、今日も」

真美「来たよ、はるるん」

春香「今日も聞くよ。真美、今すぐ私を見逃して帰ってくれないかな?」

真美「それは出来ないよ。だって真美、決めたんだもん」

真美「はるるんや他のライダー達と違う意志……救う為に、戦うって。自分じゃなくて誰かの為にライダーを全部倒すって決めたんだもん」

春香「……倒すことが、救いなの?」

真美「はるるん。真美はミキミキを殺したんだよ。この剣で突き刺して。その時の感触を説明してあげよっか?」

真美「……最悪、だった。本当に、気分が悪かった。あれは、友達だったミキミキを刺したからなのかなって思ったけど、違った」

真美「人間じゃない、モンスターを倒すときも。切りつける度に、殴る度に、蹴る度に……相手の体が壊れる感触がするんだ」

真美「あんなの、嫌でしょ?はるるんだってそのはずだよ。真美がはるるんを倒すのは、それから解放してあげるため」

真美「真美わかったんだ。生きるって事は戦うって事だって。そして、戦うって事は嫌な事だって。だから、それから遠ざける為に……」

真美「はるるんを、殺す。終わったら、真美も死ぬ。向こうでまたみんなで歌おうよ」ソードベント

春香「……私は、まだ死ぬわけにはいかない。まだ答えが見つかってないから」ソードベント

真美「もう、強情だなぁ。……でも、はるるんらしいや」クスッ

春香「そうだね、私、思い込んだら融通利かないもんねぇ。ふふ」クスクス

真美「……行くよ」

春香「……うん」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:02:12.32 ID:uQ0AXOuBo
真美「はっ!」ダッ

春香「ふぅっ!」ダッ

ギャリンッ

真美「はぁぁぁ……」ギリギリギリ

春香「く、ァああああ!」ギギギギギ

真美「パワーなら、真美の方が上だったのに……この一週間で、強くなったね」ギンッ

春香「戦ってばっかりだったからね」ブンッ

真美「やっ!その戦いも、今日終わるよ!」ガインッ

春香「終わらせない!私は……戦いの意味を見つけて見せる!」ストライクベント

真美「戦いに意味なんて無い!ただ辛いだけだよ!」

春香「だって……そんなの、悲しすぎるじゃない!」ガパッ ゴォォオオ

春香「誰だって叶えたい願いがあった!このシステムさえ無ければ……そう思った事もあったけど、きっと誰も悪くない!」

春香「生きる事が戦いだっていうなら、戦いには意味が、辿り着く先があるはず!私は……それを見る!」

春香「だから……まだ、戦いをやめないよ!真美!ドラグクローファイア!」ボァッ

真美「炎!?ここに来てそんな技が……う、ぁあ!」ジャコッ

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:03:00.13 ID:uQ0AXOuBo
春香「……真美が、いない?」

真美「ふぅ……危なかったぁ。このカードが無かったらもらっちゃってたよー」アクセルベント

春香「いつの間に背後に……そっか、高速移動」

真美「その通り。それで、はるるんの首には今スラッシュダガーがかかってる」

春香「……」

真美「言うことがあれば、聞くよ。最後だしね……」

春香(あのカードを、ベント出来れば……伊織から受け取った、アレを)ガシャッ

真美「おっと、そうはいかないよ!」ガッ

春香「あっ!」パシンッ

真美「まだ抵抗する気だったんだ、びっくりしたよ。そんなに必死にならなくても、今より悪くなる事なんて無いんだからさ」

真美「力抜いて。……じゃね、はるるん」

ブォオオオオン

春香「バイクの……」

真美「エンジン音?」

キィッ

真美「……誰?」

春香「千早ちゃん……じゃないよね。あれは……真美と同じ?」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:03:39.58 ID:uQ0AXOuBo
真美「まさか、そんなワケ……誰なの!答えて!答えないと……」

「俺の事はもう忘れたのか?ふたりとも」

真美「こ、の……声」

春香「……プロデューサーさん」

……。

【プロデューサー】

黒井「……以上が、私の知っている全てだ」

P「そう、ですか」

黒井「高木があの時何を思ったのかは知らん。だが、あの時からヤツはどこかおかしかった」

黒井「……正直、当時は現実を受け入れられない弱者と見損なったものだが、今となっては何が現実なのかわからん」

P「でも、本当みたいです。ウチのアイドル達も、それで……」

黒井「辛気臭い顔をするな。お前はそれを何とかする為に私を訪ねたのだろうが」

P「ええ。社長にも強い願いがあることはわかりました。だけど、その為にみんなを利用していい事にはならない」

黒井「フン!貴様にしては良い判断だな。これを使え」ポイッ

P「っと、え、これって……」

106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:04:50.26 ID:uQ0AXOuBo
黒井「……水瀬伊織はあれで中々頭がいい。自分がどうにかなった時の為、私に擬似ライダーシステムの雛形を託していたのだ」

黒井「高木の事情を知る者として、な」

P「伊織……」ギリッ

黒井「とっとと行け。ここは765の人間がいる所ではない。……まぁ、貴様が961のプロデューサーになるというなら別だがな」

P「春香と千早、真美も一緒なら考えますよ」

黒井「私に弱小事務所のアイドルが世話出来ないとでも思うか?そんな事を考える前に、貴様の上司の目を覚ましてこい」

P「ありがとうございます。黒井社長って良い人なんですね」

黒井「……フン。高木が嫌いなだけだ」

P「ははは、そういう事にしときます。それじゃ、行ってきます!」

……。

P「……今もまだ、あいつらは戦っているんだろう。だから、俺が止める」

P「失った物は大きすぎるくらい大きいけど、それでも俺達は前に進まなければならないんだ」

P「お前達が前に進む為に戦う事が必要なら、代わりに俺が背負ってやる」

P「変身!」シュィイイン

……。

107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:05:23.51 ID:uQ0AXOuBo
春香「プロデューサーさん……プロ、デュ……う、ぅうう……」

真美「兄ちゃん、これどういう事?このベルトは二本あったの?」

P「いいや、違う。俺が伊織に託されたのは真美が持ってるそのベルトだけだ。これは、そのプロトタイプだよ」

P「伊織はこの擬似ライダーシステムを“オルタナティブ”と名付けたらしい。お前のそれが完成品なら、俺のこれはそこに至る前……1になる前の姿」

P「“オルタナティブ・ゼロ”だ」

真美「……して」

P「その剣を離せ、真美。お前はこれ以上戦わなくていい」

真美「どうして!兄ちゃんまで戦おうとするの!?真美はせっかく、みんなを戦いから抜けださせてあげようと思ったのに!」

P「真美。誰もそんな事望んでないんだ。そりゃ、戦いなんていいもんじゃ無い。だけど……」

真美「でも!ミキミキは笑ってたもん!真美が刺した時、笑ってたもん!」

真美「真美のやってる事が正しいんだよ!だって、そうじゃなきゃ……そうじゃなきゃ……!」

真美「真美は……生きてけないもん!!」アクセルベント

春香「あっ!プロデューサーさん、気を付けて!今の真美は……」

P「大丈夫だ」スッ

真美「えっ!?」ズザッ

春香「あ……見えない程速い真美の攻撃を、避けた?」

真美「な、なんで……なんでなの!?」バッ

P「なんでだろうな、真美の攻撃が手に取るようにわかるんだ」サッ

真美「当たらない……こんな、こんなはず……」

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:05:53.95 ID:uQ0AXOuBo
P「もうやめよう。俺達が戦う理由なんて本当は無いんだ」

真美「でも、真美は戦いを終わらせなきゃ……」

P「それは俺がやる。お前は休んでろ」

真美「うるさいうるさいうるさい!真美が……真美が全部終わらせるんだぁ!」ガシャッ ファイナルベント

春香「プロデューサーさん!逃げてください!後は私が……」

P「逃げるわけにはいかないよ。俺はお前達のプロデューサーだからな。真美を止めて、春香を連れて帰って。またアイドルやってもらわないと」ガシャッ

真美「真美の……邪魔をするなあああああ!」ギュルンッ

ザシュッ

真美「あ……」シュウウウウ

P「アクセルベントが使えるのはお前だけじゃない。少し緊張してたか?動きが雑だったぞ」

真美「真美の、デッキが……もう、戦えない……戦えないよぉ……」

P「戦わなくていい。お前の分も俺が戦う。……待ってろ、すぐ終わらせてやるから」

真美「でも、真美がやらないと……真美が……」

P「はぁ、何度も言わせるな。俺はお前のプロデューサーだぞ?一緒に泥被るのも仕事の内だ」

真美「兄ちゃん……うぅ……うぇええええん……」ボロボロ

P「……春香。お前にも話しておきたい事がある。とりあえず……!?」

パァアアアア

春香「金色の……光?」

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/31(月) 01:06:21.06 ID:uQ0AXOuBo
P「っ春香!真美任せた!」ドンッ

春香「わっ、とと……え、ぷ、プロデューサーさん?」ポフッ

P「逃げろ。俺が戦う」

春香「え、え?」

P「速く行け!!」

春香「は、はい!」ダッ

真美「兄ちゃん!兄ちゃん!はるるん、ダメだよ!兄ちゃんを置いてなんて……兄ちゃん!!」

P「ふぅ、探してたんですよ。……ようやく会えましたね、社長」

……。

【天海春香】

春香「真美はここにいてね?って言ってももう自力じゃ入れないだろうけど」

真美「はるるん、どうするの?」

春香「もう一度ミラーワールドに戻って、プロデューサーさん助けてくる」

真美「だけど、危ないよ……きっと、すごく危ない」

春香「でも、ほっとけないよ。だって私達のプロデューサーなんだもん」

真美「……でも」

110: 今日はここまで 2012/12/31(月) 01:06:48.09 ID:uQ0AXOuBo
春香「それに、真美の……私の大事な仲間の、恩人だもん。大丈夫、無理はしないから。ね?」

真美「うん……あのね、はるるん」

春香「何?」

真美「ごめんね、本当、ごめんなさい……」

春香「……その話は、全部終わってからにしよっか。私、行くから」

真美「絶対、絶対無事に戻ってきてね!」

春香「わかってるって。……っしゃぁ!」パンッ

春香(待っててください、プロデューサーさん!)

……。

春香「確かこっちに……」

ザッ

春香「足音……誰!?」クルッ

千早「……」

春香「あ、え、千早ちゃ……」

千早「春香。あなたは戦い続ける道を選んだのね」

春香「……うん。きっと、失った物にも意味があると思うから。無駄にだけは、したくないから」

千早「そう。春香らしいわ。今は先が見えなくても、我武者羅に進んでいく……私にも、そんな気持ちがあればいいのに」

春香「千早ちゃん?なんか、変だよ。どうかしたの……?」

千早「どうもしていないわ。最初の所に戻っただけ。私は、願いを叶えたい」

千早「だから、戦いましょう。天海春香」

113: あけましておめでとうございます。 2013/01/05(土) 02:13:20.10 ID:EHErn5gNo
春香「ま、待ってよ千早ちゃん!今それどころじゃ……」

千早「行くわよ、春香」ソードベント

春香「千早ちゃん!話を聞いて!」ガードベント

千早「もう、無理なのよ。もう……!」ジャッ

春香「くぁっ……何、か、あったんだね……!」ガキッ

千早「言ったでしょう、私には春香のように、真っ直ぐ進むだけの力がない……」ググッ

春香「何を言ってるの……?千早ちゃん、どうしちゃったの……?」ギギギッ

千早「気付いたのよ、全ては私の責任だって。私が、半端だったから」フッ

春香「そんな事ないよ、誰も悪く……」

千早「ミラーワールドで高槻さんと会った時、戦う事を選んでいれば、皆が殺しあう事は無かった」

千早「もし私が戦いを止める為に本気で動いたら、皆が殺しあう事は無かった。結果として、私は春香を邪魔しただけ」

千早「私が、どちらかの未練を断ち切れていたら……今のようにはならなかったのに!!」

千早「私にあるのは、もう願いだけ。それだけしか無いのよ……」

春香「……私だって、今日まで惰性で戦ってきたよ」

春香「元々願いなんて無い私だから、戦う意味がわからなくて。真美と戦って、プロデューサーさんが言ってた事を聞いて」

春香「私の中にぼんやりあった“何か”が、ようやく形になってきた」

千早「春香の中の、何か?」

114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:14:11.31 ID:EHErn5gNo
春香「うん。私の中の戦う理由。戦いなんて大嫌いだって思った。けど、それは他の誰だって同じなんだよ」

春香「だからね、千早ちゃん。私は……戦えない全ての人の代わりに、戦おうって思った」

千早「なら……戦わなければいけなくなった皆は。どうして犠牲にならなければいけなかったの?」

千早「無意味な戦いの犠牲になった人たちは、どうすれば報われるの?」

春香「無意味な犠牲なんて、無いんだよ。皆の戦いを見たから、私は戦おうと思えた」

千早「そんなの、思い込みよ。生き残った側の勝手な言葉だわ」

春香「それでも私はそう思いたい。私は皆から色んな物を受け取ってここに立ってるから」

千早「……もう、聞きたくないわ。力を抜いて、すぐに終わらせるから」ナスティベント

春香「うぁっ……耳が……!」キィィィイン

千早「……」

春香(千早ちゃんが何を言っているか、聞こえないけど。千早ちゃんは、もう前を見ていないのはわかるよ)

春香(そんな千早ちゃんは見たくないし、そんな千早ちゃんに負けてあげるわけにはいかない)

春香「……さっき、言ったよね。皆から色んな物を受け取ったって」

春香「今、見せてあげる。“伝える為に”“覚えている為に”……」

春香「“生き残る為の”カード」

ガシャンッ

SURVIVE

……。

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:14:39.52 ID:EHErn5gNo
【プロデューサー】

高木「君ぃ、挑んで来た割りにはもう一つ頑張りが足りないんじゃないかね?」

P「そっちが強すぎるんですよ、社長。ズルいなぁ」

高木「軽口を叩いている場合ではないぞ?今ごろ、君の担当アイドル達は戦っているかもしれないんだからね」

P「それはどういう事ですか?」

高木「なに、難しい事じゃないよ。ただ自身の鏡像を差し向けただけだ」

P「鏡像を……?」

高木「鏡は映し出す。己の姿を、余す所無く。見たくない部分、目を背けた部分も例外なくね。如月君は余程自分が嫌いと見える」

P「っ千早に何をしたんですか!?」

高木「だから、私は何もしていないよ。何かしたなら彼女自身だ。自らの醜さを見せつけられ、どう動くかはわからんが……」

高木「天海君と出会わない事を祈った方がいいねぇ。きっと、お互いに取って辛い邂逅となる」

P「あんたは……もう俺の上司じゃない!」

高木「おやおや、君は優秀だから手放すのは惜しいんだがね……本人の意向なら仕方がない」

高木「向こうでも達者でやってくれたまえ」

P「うぉおおおおおおおお!!」

……。

116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:15:19.99 ID:EHErn5gNo
【如月千早】

千早「……その姿は、何?」

春香「伊織が、この戦いを終わらせる為に手に入れたカード」

春香「私が、伊織から受け取った物だよ」

千早「水瀬さんから……そう。それが春香の本当の力なのね」

春香「私だけじゃない。伊織が……そしてやよいが。皆がくれた力だよ」

千早「何を言うの?水瀬さんから受け取ったのなら水瀬さんがくれた力じゃない」

春香「違うよ。伊織が命を賭けたのはきっと私の為だけじゃないから。この戦いで消えていった他の皆の為でもあるから」

千早「だから、それは思い込みで……」

春香「千早ちゃんから見ればそうなのかもしれない。だけど、過去は全部今に繋がってて、今の私はここにいる」

春香「どこか一つ間違えれば命を落としていたかもしれない。そんな中で、皆に助けられてここにいる」

春香「私はきっと、皆に色んな物を託されたから、まだライダーなんだよ」

千早「もういいわ、もう聞きたくない。その力、見せてもらいましょうか」シュバッ

春香「千早ちゃんだって、わかってるくせに!今の私達の中にあるのは、後悔だけじゃないって事!」ダッ

千早「だけど!後悔を忘れたら、私は高槻さんに、あずささんに、皆にどう顔向けしたらいいかわからないもの!」ファイナルベント

春香「違う!悔やむだけじゃない、忘れずに、だけど前を向く事で初めて皆に報いる事が出来るの!」シュートベント

千早「……春香ぁああああああ!」ギュルルルルルル

春香「今の、後ろしか見てない千早ちゃんになんて絶対に負けない!メテオぉ……バレットォ!!」グァッ ボボッ

ボゴォオオオオオン!!

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:16:12.32 ID:EHErn5gNo
千早「……どうして、どうしてなの。春香はどうして、まだ真っ直ぐに立っていられるの」ガクッ

春香「千早ちゃんの言う通り、思い込みなんだと思う。私が言ってる事、全部」

千早「そうよ。全部綺麗事……現実に被害が出てるのに、それを無視したみたいな」

春香「綺麗事だよ。だけどだからこそ、信じたいじゃない。私はその為になら、この体だって無くしたっていい」

千早「……春香は、こんな時でも未来を見ているのね」

春香「前を見て走る事しか、私には出来ないから」

千早「過去ばかり見ている私では、元から勝てるはずは無い……わね。私も、そんな風に生きたかっ……」グラリ

春香「千早ちゃん!」ガシッ

春香「……まだ遅くないよ。私達には出来る事が残ってる」

千早「私でも、出来るのかしら」

春香「迷う事なんて誰だってするよ。その時考えたことを忘れないのが進歩するって事なんじゃないかな」

千早「……春香、なんだか随分と大人になったのね」

春香「そうだね……そうならないと、いけなかったからかもしれない」

千早「なら、私がいつまでも駄々をこねているわけにもいかないわね。……教えて、私にも出来る事」

……。

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:17:19.93 ID:EHErn5gNo
【天海春香】

春香「……プロデューサー、さん」

千早「あれは、プロデューサーなのね……」

高木「おや、戻ってきてくれたようだね。いや有り難い、君達も必要なんだよ」

P「バカ、なんで……う、ぐ」

春香「あなただったんですね、全ての始まりは……」

高木「そうとも。天海君、如月君。よくぞここまで生き残った」

千早「……私は偶然です」

春香「私だって、千早ちゃんが守ってくれたからここまで生きてこれた。私だけの力じゃありません」

高木「それでも他のアイドル達は死んだ。……君達は知っているかな?大切な人を失った人間は、今までのどんな自分よりも強い力を発揮するんだよ」

千早「それが私達だって言いたいんですか?」

高木「いいや、私の話さ。……丁度いい、聞くかね?私の昔話を」

春香「社長の昔話……?」

高木「そこの彼も知りたがっていたしね。この戦いの始まりになった出来事だよ。……かつて、私が彼と同じようにプロデューサーだった頃の話だ」

高木「あの頃、私は傲慢極まりなかった。人を見出す才能は抜群だからね。何も迷う事は無かった」

高木「一人見つけ出したアイドルがいて、そのアイドルはトントン拍子に芸能界を駆け登っていった。名前を音無小鳥という」

高木「私と彼女の中も良好でね。歳の差はあれど……恋人のような仲だった。勿論、仕事の上の付き合いではあったがね」

高木「順調だった。全てが、順調だった。だが、それはすぐに壊れてしまう」

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:17:49.60 ID:EHErn5gNo
P「……音無さんとの死別、です、か」

高木「そう。表向きは行方不明となっているが……いや、それすら裏側だが、その実彼女は死亡している。表の世界ではね」

春香「表の世界では……そうか、そうなんですね」

千早「何らかの原因で死んだ音無さんは、ミラーワールドにまだ存在している。そして、それを蘇らせるために……」

高木「その通り。人は、表の世界とミラーワールドに別個に存在している。どちらかが死ぬともう片方もいずれ死ぬ」

高木「鏡に像が映るには、元となる物が必要だからだ。しかし何の因果か彼女の魂はこちらに残った」

高木「今は鏡像でしかないが、戦いの途中で集めた君達の仲間の生命があれば、新たな生命を生み出し彼女をまた表の世界に戻せるはずだ」

P「それが、社長の望み……この戦いを、始めた理由」

高木「そうだ。時間もかかった。君達アイドルを丁度良い人数揃え、更にそれぞれにデッキが渡るようにした」

高木「全ては……もうすぐ訪れる彼女との再開のためだ」

春香「……お話は、わかりました」

春香「でも、私は死ぬわけにはいきません。生きて、この戦いで消えていった皆の事を覚えていなければならない」

春香「だから、戦います。最後の最後だけど、全力で」ゴァッ

P「すごいな、春香。とんでもなく強そうだ」

春香「プロデューサーは下がっていてください。千早ちゃん!」シュッ

千早「……これは」パシッ

春香「わかってるから、今渡しておくね。決まったら……使って」ガシャッ

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 02:18:43.77 ID:EHErn5gNo
高木「勝てないと知りながらも戦うのかね?……だが、それもいい。君達はいわば被害者だ。望むまま抵抗し、死んでくれたまえ」

春香「そう簡単に諦めると思わないでください!やぁあああああ!」ダッ

千早「春香……」

千早(春香はわかっているのね……私が今の話を聞いてどう思ったか)

千早(私には、あの人を責める事はできないわ。だって、あれは数分前までの私の姿だから)

千早(優の為なら、誰だって犠牲にしてもいいって……心の隅で少しでも思ってしまった、私には)

千早(社長を責める事など、出来るわけがない)

P「千早……」

千早「プロデューサー、動かないで。怪我をしているのでしょう?」

P「いい、ほっといてくれ。……あのな、千早」

千早「……なんでしょうか」

P「春香が、強い理由はな」

千早(春香が、強い、理由……)

P「難しく考えないから、なんだぞ」

121: 今日はここまで 2013/01/05(土) 02:19:36.46 ID:EHErn5gNo
千早「……」

千早「流石ですね、プロデューサー」

千早(アイドルの事ならなんでもわかっているのね)

千早(そう、今私は思ったわ。春香は強いと。私には真似できないと)

千早(そして、そう考えて動けないでいる自分を嫌いだと、そう……思ってしまったわ。だけど、それじゃダメ)

千早(鏡の中の私は、憎しみと悲しみと自己満足の塊だったわ。そう、それも私)

千早「けど、無理にそれを見る必要はない。それが自分の中にあることを知っているなら」

千早「見つめ続けるのではなく、背を向けて、決別の意志を。それを自覚して尚、前に進もうとすることが必要」

千早「……なら、私も。あなたのようになれるかしら。春香」

ガシャンッ

SURVIVE

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:54:53.61 ID:4huHG8G8o
高木「……残念だよ。如月君なら理解してくれると思ったのだがね」

千早「痛いほど、わかります。取り戻せるなら何だって犠牲にしたっていい。そういう気持ちは」シュォオオ

千早「だけど……同じくらい失いたくない物ができたんです。失くした物があっても生き続けていれば、いつかそれと同じくらい大事な物が出来る」

千早「だから、私は使ったんです。春香が託された、このカードを。生き残る為に」

春香「千早ちゃん、大丈夫なの?」

千早「ええ。もうあれこれ考えるのはやめたの。こんな時に言うのも気恥ずかしいのだけど……」

千早「私も春香のように、真っ直ぐ生きる事にしたの。私の太陽のように」

春香「……私が太陽なら、千早ちゃんは月かな?」

千早「月?そうね、誰かの光でなければ輝けない月なのかもしれないわ」

春香「違うよ、千早ちゃん。私が沈んでる時、私の光を思い出させてくれる……私が落ち込んだ時、引っ張りあげてくれる人」

千早「そう、かしら。そうなれたらいいわね」

春香「もうなってるよ、千早ちゃんがいなきゃ今立ってられなかったもん」

P「お喋りはそこまでだ。構えとかないとまずいぞ」

春香「わっ、プロデューサーさん!」

千早「大丈夫なんですか?」

P「手助けくらいは出来るだろう。何もしないなんてのは、プロデューサーとして、一人の大人として絶対にナシだ」

高木「素晴らしい!流石我が社のアイドルとそのプロデューサーだ!」

123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:55:20.91 ID:4huHG8G8o
高木「だが、君を残して二人は死ぬ。その魂で音無君を蘇らせ、私は……」

春香「……社長、一言良いですか?」

高木「なんだね?」

春香「私はまだまだ子供です、この戦いで随分と価値観は変わりましたけど。だけど、私には……」

春香「社長が言ってる事、子供のわがままにしか聞こえないんです」

高木「……私が、子供?」

春香「大人になるって事は、いろんな物を失う事で、いろんな物を手に入れる事だと思います」

春香「それと同時に、周囲を見る事が出来るようになるのが大人なんだと思います。けど、今の社長は」

P「自分の願いしか見えてない。余裕の無い子供と同じ……だな」

高木「なるほど……言いたい事はそれだけかね?」

千早「私達は勝てないかもしれません。だけど私達の戦いは未来の為の戦い」

春香「過去に縛られている社長には見えない物が私達には見えている」

P「……社長、これで最後です。諦めて戦いをやめませんか」

高木「……追加で一つ、だ。大人になるという事は未来を失くすという事だ」

高木「音無君と居た時の私が、君達ほどの年齢であったなら……こうはならなかった。大人はね、残り少ない未来よりも、膨大な過去を頼りに生きるのだよ」

高木「それを否定するというのなら、君達の未来を持って、私の過去を粉砕してみるといい。私はもう、止まる事など出来ないのだから」ブァッ

春香「……行くよ、千早ちゃん!」ソードベント

千早「わかったわ、春香!」ソードベント

高木「来たまえ、受けてたとう」ソードベント

……。

124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:56:11.98 ID:4huHG8G8o
【プロデューサー】

P「ああ、強い……」

P「やっぱり社長は桁違いだ。二人がかりでこんな……」

P「いや、諦めるな。諦めるのは社長の言う大人だ。俺の思う大人は、もっとかっこよくて、あいつらを助けてやれるようなヤツだ」

P「俺に出来る事……考えろ、考えるんだ」

P「次元の違う勝負でも、いや、次元の違う戦いだからこそ俺の介入一つで戦局が大きく変わるはずだ」

P「今は見ろ……とにかく、あいつらの動きから目を離すな」

P「社長だって人間だ。あるはずなんだ、隙が……!」

……。

125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:56:51.51 ID:4huHG8G8o
【如月千早】

千早「くっ、隙が無い……!この力でも打ち込めないと言うの!」ギャリンッ

高木「そもそも私も君達と同じサバイブ体でね。その上で装備の性能と使いこなしに大きな差がある」

高木「大人は負ける勝負はやらないのだよ。勝てるように準備してから戦っているんだ」バシッ

千早「ぅあっ!なら、これで!」トリックベント ナスティベント

高木「おお、分身と超音波か。なるほど考えている、隙を作る為のベントというわけだね」

高木「だが、性能に差があると言ったはずだ。これでよくわかるはずだよ」コンファインベント トリックベント

千早「なっ……そのカードは!?」

高木「そう、君の物と同じ効果のカードだ。ライダーシステムを作ったのは誰だと思うね?」

千早「……それでも、負けるわけにはいかないんです!はぁぁ!」

高木「やれやれ、誰に影響されたのか。そんなに物分かりの悪い子だと思っていなかったんだがね」ガキィン

……。

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:57:23.11 ID:4huHG8G8o

【天海春香】

春香「千早ちゃん!」

高木「何、サバイブ体なら大したダメージでも無い。少し大きく吹き飛んだだけさ」

春香「このぉっ!」ガンッ

高木「如月君と違って天海君は動きに無駄が多いねぇ。いつか戦うつもりで研鑽していた者との差だろうか」バシッ

春香「きゃっ!」

高木「君が生き残れたのは本当に如月君のおかげのようだね。少しがっかりしたよ」

春香「……そう、私は一人じゃ何も出来ません。でも今は、千早ちゃんが隣にいる!」

高木「だが無意味だ。二人がかり程度じゃ何も起きない。わかっているのだろう?」

春香「まだ、まだ全部出しきってません!負けるもんかぁあ!!」

……。

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:57:51.93 ID:4huHG8G8o
【双海真美】

真美「……はるるん、もう少しで変身の限界時間のはず」

真美「大丈夫なのかな、もしかしてもう……」

真美「やだよ、はるるん……千早お姉ちゃん、兄ちゃん……」

真美「亜美……真美一人じゃダメだよ……力貸してよ……」グスッ

真美「うぁああん……」ポロポロ

スッ

真美「えっ」

真美「そんな、だって……嘘だ、そんなはず……」

真美「……お願い!はるるん達を助けてあげて!」

「任せて!行ってくる!」

……。

128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:58:18.45 ID:4huHG8G8o
【ミラーワールド】

高木「……そろそろ時間ではないかな?変身が解けるのを待ってもいいが」

春香「まだ時間はあります!最後の瞬間まで戦って見せます!」

千早「……だけど、実際残り時間は少ないわね。そろそろ勝負を付ける時みたい」

高木「最後まで戦うというのなら、これを受け止めてみるといい。私の持つ最大の技だ」ガシャッ ファイナルベント

千早「凄まじいエネルギー……なんて、神々しい光」

春香「これを、受け止める……?」

高木「ゴルトフェニックスと私が君達に突進するだけの単純な技だ。だが、その破壊力は君達のファイナルベントより遥かに高い」ゴゴゴゴゴ

千早「……下がって、春香。私が受け止めるわ」

春香「一人じゃ無理だよ。私も止める」

P「待て、二人共。それなら俺が……」

千早「無理言わないでください。プロデューサーじゃむしろ足手まといです」

春香「それに、もし私達が倒れたら……逃げてください。プロデューサーさんは元々戦う予定に無かった人なんですから」

P「くそっ……確かに足手まといだ、だけど逃げないぞ。反撃の隙を見つける為に、今はじっと耐えるだけだ」

春香「それでいいです。さて、と」ガードベント

千早「……最後かもしれないから、言っておくわ。春香、今まで」ガードベント

高木「行くぞ!」ボボボッ

春香「最後だなんて言わないで!私達みんな、生きて帰るんでしょう?」

千早「……そうね!」

「その通りです!これで最後になんてさせません!」ガードベント

129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 00:59:35.39 ID:4huHG8G8o
春香「なっ……」

千早「あなたは……」

P「や、やよい!?」

やよい「お久しぶりです、春香さん、千早さん、プロデューサー!」

高木「高槻君!?何故君が……!」

やよい「うぅぅうう……やぁっ!!」

ドォォォン……

春香「っは……無事、だよね?」

千早「ええ、生きているわ」

P「やよい、何で生きて……?」

やよい「……伊織ちゃんが、私の体をずっと治療し続けるよう手配してくれてたんです」

春香「伊織が……?」

やよい「生命反応?はずっとあったみたいなんですけど、意識が戻ったのは、ついさっきで。新堂さんにお話を聞いて、なんとかここまで……でも、もう限界みたいです」

千早「それで、水瀬さんは復讐をやめたのね。……生きていてくれてありがとう、高槻さん」

やよい「うっうー、どういたしまして!なんて、言ってる時間は無さそうです……」

高木「……素晴らしいガードベントだった。君のモンスターは防御に特化しているようだね」

高木「だが、それでもボロボロだ。そして変身時間も残っていない。さぁ、どうする?」

春香「どうもこうも、ありません」

千早「私達に残った全てを賭けて……あなたに、打ち込む」

ガチャンッ

ファイナルベント

130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 01:00:08.69 ID:4huHG8G8o
高木「いいだろう、打ってくるといい!それを弾き返し、全ての希望を絶って見せよう!」バッ

春香「来て!ドラグランザー!」

千早「来なさい、ダークレイダー!」

春香「これで……」ボゥッ

千早「終わりよ!!」バササッ

やよい「いっけぇー!!」

高木「……プロデューサー君の責任だよ、これは」

P「え?」

高木「私の能力を伝えなかった。それが彼女達の渾身の一撃を無駄にする」パァァ

P「しまっ……!」

高木「私は、ベントせずに瞬間移動を行える。彼女達の攻撃を紙一重で躱し、背後から切りつける。それで終わりだ」ブワッ

P「なんて、言うとでも思いましたか?」ガシッ

高木「なっ!?」

P「あなたと俺のライダーシステムは規格が違う。だからこのカードは持ってないでしょう」アクセルベント

高木「そうじゃない!私が驚いたのは、このまま彼女達の最大攻撃を食らえば君とて……」

P「いいんじゃないですか?それも」

高木「何を言っている!」

P「あいつらに、大人って社長みたいなのだけじゃないって伝えたいんですよ。だから、一緒にさようならです」

高木「く、このままでは……う、うぉおおおおおおおおお!」

春香「やあああああああああああああ!!」

千早「はあああああああああああああ!!」

バッ

ガオォオオオオオオン

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 01:00:35.87 ID:4huHG8G8o
春香「……はぁ、はっ……」スタッ

千早「ぐ、はぁ……う……」スタッ

春香「やった、の……?」

やよい「あ、そ、そんな……」

千早「……どうやら、まだのようね」

高木「……危なかったよ。手近に盾が無ければ私と言えど耐えられなかっただろう」

P「……」

春香「う、嘘……プロデューサーさん……」ガクッ

千早「春香、立って。まだ、体は動くわ」

やよい「私も戦います!」

高木「その必要はない」シュッ

春香「カード……?」

高木「タイムベントという。時間を遡るカードだ」

千早「時間を……遡るですって!?」

高木「そう。つまり今から君達と戦う直前に戻り、プロデューサー君を先に始末し、君達を一人ずつ倒す事も出来るんだよ」

やよい「じゃあ、私達は……」

高木「いくらやっても勝てないという事だね」

千早「今までの戦いは……何だったのかしら……」ガクッ

春香「で、でも、そんなカードがあるなら音無さんを助ければ……」

高木「このカードで時を遡り、音無君を救おうと試みた事もあった。だが、どうやってもミラーワールドが出来る前には遡れないのだよ」

高木「音無君の死が原因でこの世界が出来、この世界の力を使う以上ミラーワールドの無い時代には行けない。そういう事らしい」

高木「……さて、さようならだ。また立派に戦ってくれたまえ」ガシャン

春香「待って、やめ……」

千早「春香。もう、遅いわ……」

カチッ

……。

132: 次回で最終回 今日はここまで 2013/01/06(日) 01:02:21.55 ID:4huHG8G8o
【天海春香】

春香「はっ!?」

千早「春香?」

春香「千早ちゃん……あ、あれ?何か変な気が……」

千早「……私も同じよ。何か違和感が……」

やよい「うっうー!大変ですぅ!」

春香「あ、やよい!覚えてる?さっきまでの事」

やよい「はい、しっかり!でも……とにかく、来てください!」ガッ

春香「わわっ!ちょ、ちょっと!」

やよい「失礼しますー!」

高木「おお、どうしたね高槻君」

春香「社長!……あれ?社長?」

高木「天海君までどうかしたのかね?」

千早「失礼しま……社長、ではありませんね?」

高木「おいおい何を言ってる!君達の765プロの社長、高木順二朗だよ!」

春香「順二朗……?社長は順一朗ですよね?」

高木「何?いやいや、順一朗はもう会長職を退いただろう。三人ともどうしたんだね突然?」

千早「……なんでもありません。失礼しました」

やよい「た、大変ですよね!?」

春香「大変だね……どうなってるんだろう、一体」

千早「おかしいわ、何もかも」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:09:52.49 ID:pL1g7phlo
P「……よう」

春香「プロデューサーさん!」

P「一応聞いとくけど、お前たちも覚えてるんだよな?」

千早「ええ、はっきりと。どうなっているんでしょうか」

P「随分歴史が変わっているらしいな。確かめたい事があるから付き合ってくれるか」

春香「それは、はい……でも、一体何ですか?」

P「順一朗社長の伝言だよ」

千早「社長の……」

やよい「伝言……?」

……。

P「っと、あった。これだ」バサッ

やよい「……手帳、ですか?」

P「ここに隠しておくって、時間を戻す前に言われてたんだ」

春香「あの時、意識あったんですか?」

P「かろうじてな。お前ら二人の必殺技は良く効いたよ……」

千早「冗談言ってる場合じゃありませんよ。早く読んでください」

P「わかった。読むぞ……」

……。

135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:10:28.69 ID:pL1g7phlo
【高木順一朗】

カチッ

P「……」

高木「さて、しゃべる事は出来ずとも聞く事は出来るね?まだ意識はあるはずだよ」

高木「今は君と私以外止まった時間の中にいる。だから三人には何も聞こえない」

高木「君に言っておきたい事がある。私の最後の言葉だと思って欲しい」

高木「君達が記憶を取り戻すタイミングは遥かに後にしておく。私はその間に成すべきことを成すからね」

高木「記憶を取り戻したら、私の手帳を探したまえ。事務所の金庫に入れておく」

高木「そこに、全てを書き記しておく……さて、今度こそ時間を戻すよ」

高木「……さようなら」

ゴォーン……ゴォーン……

……。

136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:11:00.14 ID:pL1g7phlo
『始まりは、君達の言う通りだ。
 音無小鳥を救う為に、必要な人材を、コントロールしやすい立場で集めること。
 それが765プロ設立の理由だ。
 集まったアイドル達は紛うことなき逸材揃いだった。それは君達も良く知る所だろう。
 アイドルとしての才能は勿論、何よりも意志が強かった。そしてそれこそが、ライダーとなるに必要な事だった。
 君達の夢を利用して、自らの願いを叶えようとした私の罪は重いだろう。
 だが、謝る前に言っておく事がある。今の君達の状態についてだ。
 私は過去に遡り……』

……。

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:11:27.79 ID:pL1g7phlo
【765プロ事務所】

P「歴史の改変を行った。それも大幅に……?」

春香「ちょ、待ってくださいプロデューサーさん!」リィィィィン

千早「やはり、社長の言っていた事は本当だったようね。ミラーワールドの発生自体は既にどうしようも無い事だと」リィィィン

やよい「ってことは、ミラーモンスターもいるんですかぁ!?」リィィィン

千早「そのようね。高槻さんも感じるでしょう?」

やよい「でも、もし歴史が変わってるなら私達のカードは……」

春香「その心配は無いみたい。ほら」カチャッ

千早「……契約の印も入っているし、どうやら同じ道をたどったようね」

やよい「……色々わかんないですけど、今は戦いましょう!」

春香「そうだね!プロデューサーは続きを読んでてください!私達は……」

千早「一人でも多くの人を守ってきます」

P「おう、だけどどうなってるかわからない。気を付けてな!」

春香「はい!窓……でいいか!行こう!」

千早「ええ、春香」

やよい「もう誰も……悲しい目に遭わせたくないから!」

春香・千早・やよい「変身!!」

P「……行ったか。さて、続きだ。君達がこれを読む時……」

……。

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:11:58.10 ID:pL1g7phlo
春香「うそ……何、この量」

千早「信じられないわね。けど……」

やよい「負けるわけにはいかないです!」ストライクベント

春香「そうだね!やぁあ!」ソードベント

千早「ふっ!」ソードベント

……。

『君達がこれを読む時、私は恐らく事務所にはいないだろう。
 世界を回り、ミラーワールドを消滅させる手立てを探っているはずだ。
 私が時間を戻したのは、君達にもう一度戦わせる為ではない』

……。

やよい「あっ……!」バチンッ

春香「やよい!」

千早「くっ……敵の数が多すぎて、カバーに回れない!」

やよい「あ、や……」

メガゼール「グルルルル……」

やよい「いやあああああああ!」

バシュッ バキュンッ

「全く、危ないじゃない。三人とも無茶しないの」

「同感です。戦いとなるならば、私達に連絡してくれれば良い物を」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:12:46.08 ID:pL1g7phlo
春香「あ……」

やよい「律子さん!貴音さん!」

千早「生きていたのね、二人共……!」

律子「はぁ?千早、頭でも打ったの?」

貴音「ふざけている場合ではありませんよ。まだまだ敵は多いのですから!」

真「そうそう、やっつけてからゆっくりしないとね!たぁっ!」

雪歩「あ、危ないよ、真ちゃん……」

春香「真!雪歩も!」

響「あーも、この手のモンスターは自分とギガゼールに任せてって言ったでしょー?」

美希「じゃあ任せて帰るね?」

亜美「あー、ミキミキずるーい。だったら亜美も帰るよー」

あずさ「サボりはめっ!ですよ?ふたりとも」

千早「どういう事……?全員がライダーなのに、全く争う事が無かったとでもいうの?」

伊織「やよい!あんたまた一人でつっぱしって……って、わけでもなさそうね。ほら、危ないから下がってなさい」

やよい「い、伊織ちゃん……?」

伊織「何よ、私の顔に何かついてる?」

やよい「伊織ちゃーん!」ダキッ

伊織「ち、ちょっとやよい!?今それどころじゃ……どうしたのよ、一体!」

真美「真美もいるよー!」

春香「真美……契約モンスターは、サメ?」

……。

140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:13:53.46 ID:pL1g7phlo
『ミラーワールドの出現は止められん。そしてミラーモンスターも同様だ。
 だが、それを消滅させられれば問題無いはずだ。
 私はそうする事を選ぶ。
 君達にはわからないだろうが、あの戦いは既に何度も繰り返された物なのだ。
 タイムベントを使い、時間を巻き戻し……そしてまた繰り返す。
 何度繰り返したか、最早わからない。だが、その中の一度として、音無君が救えた事は無かった。
 私はそれを認められず、戦いを続ける事を選んだのだが……。
 私の選んだアイドル達は、本当に逸材だった。
 凝り固まった私の意志すら変えてしまう程に。
 音無君の事は諦めよう。本来そのはずだったのだ。それに気付かせてくれたのは、最も信頼する駒だった如月君だった。
 彼女も失った物を取り戻そうと戦っていたはずだ。だが今回、彼女はそれを捨て未来を選んだ。
 彼女はどの周回でも常に戦ってきた。そんな彼女でも変わる事が出来るのだ。
 私は愚かだ。
 私が君達にした事は、謝っても許される物ではない。
 それでも謝らずにはいられない。本当にすまなかった』

……。

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:14:46.59 ID:pL1g7phlo
やよい「……そういえば、不思議だった事があるんです」

春香「何が?」

やよい「私が、その……社長に刺された時の事です」

千早「何かあったのかしら」

やよい「……もしかしたら、ですけど。社長、私を殺すつもりなんて無かったんじゃないかなーって」

……。

『そしてもう一つ。
 ミラーワールドを消す手段を見つける、あるいは作り出すまでの間。
 ミラーモンスターの被害を失くす為、君達には戦ってもらう事になるだろう。
 それについても謝っておきたい。
 私は本当に大馬鹿者だ。
 虫のいい話だが、協力してくれないだろうか』

……。

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:15:24.48 ID:pL1g7phlo
やよい「私が死んだと思われたのって、もしかして社長が何かのカードで細工したせいなのかなって」

春香「……雪歩のフリーズベントとか、もしかしたらタイムベントかもね」

やよい「だから、そのカードの効果さえ切れれば復活できるようになってたのかもしれません」

千早「憶測に過ぎないわ。その後水瀬さんを手にかけているのだし」

春香「でも、あの時伊織は逃げ出してたわけだし。もしかしたらやよいと同じようにするつもりだったのかも」

千早「……確かに、サバイブのカードを私達に渡るようにしたり、おかしな事はあったわね」

やよい「もしかすると、迷ってたのかもしれませんね」

春香「そう、かもね。社長は、私達なんかよりずっと長く生きてて、その分辛い事も悲しい事もあって……」

千早「だからといって許される事ではないわ。結局私達に戦いを残しているのだから」

春香「でも、私が皆を守れるんだよ。これはこれで、結構充実してると思うんだけどな」

……。

P「本当に、虫のいい話ですよ。結局後始末に俺達を使ってる」パラパラ

P「ん……?最後のページにも何か……」

『アイドル諸君。
 トップアイドルの座につける事を祈っているよ。
 そしてプロデューサー。
 君はとても優秀だ。自信を持って、私の選んだアイドル達を導いてくれたまえ』

P「……元社長命令じゃしょうがないよな」

P「全員トップアイドルにしてみせますから、それまでにはよろしくお願いしますよ順一朗社長!」

……。

143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:16:14.75 ID:pL1g7phlo
春香「いろいろあったけどさ……」

千早「そうね」

春香「結局、誰が悪いとか、そういう事じゃないんだろうね」

千早「そうね」

春香「みんな、大事な物があって、それを守りたくて、取り戻したくて……」

千早「その結果、誰かを傷つけてしまって」

春香「でも、さ。タイムベントなんてなくても、私達はやり直せるもんね」

千早「ええ。間違えたら正してくれる仲間がいる。それだけで充分よ」

春香「……あの戦いには、正義も悪も無かった」

千早「……ただ、純粋な願いのみが……」


144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 00:21:20.47 ID:pL1g7phlo
というわけで、おしまい。
今回は春香が戦い続ける事を選んだルートでしたが、一応戦いをやめた時のルートもあります。
とりあえず一旦物語は終わり。

だけどいわゆる「もうちょっとだけ続くんじゃ」。

145: 2.春香は戦いをやめる 2013/01/08(火) 00:47:58.07 ID:brxHKv6qo
千早「春香……あなたはもう、戦いをやめてしまったの?」

千早「なんて、当然よね。元々不本意にライダーになったのだし」

千早「……帰ろう。多分もう、ここに来る事も無いでしょうね」

ガチャ

春香「あ……」

千早「はるっ……!」

春香「あ、えと……久しぶり、だね。千早ちゃん」

千早「一週間ぶりね。どこに行っていたの?」

春香「うん、いろいろ。あの、今時間あるかな?」

千早「時間?ええ、構わないけれど……」

春香「そっか。じゃあちょっと話さない?」

千早「そうね……ここで?」

春香「うん。ダメかな?」

千早「いえ、いいわ。もう随分変わってしまったけれど、やっぱりここが私達の事務所だもの」

春香「そうだよね。みんな、いなくなっちゃったけど……」

千早「ついさっきまで春香もその中に入っていたのよ。改めて聞くけど、何をしていたの?」

146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:48:24.84 ID:brxHKv6qo
春香「……戦ってた。ずっと」

千早「一人で?」

春香「うん。誰よりも早くミラーモンスターを倒すのが目標だったんだ」

千早「どうしてそんな事を……私だって協力するのに」

春香「戦うって意味が知りたくて。ずっと戦ってたら何か見えるのかなって思ってさ」

千早「それで、気は済んだの?」

春香「……色んな人を助けて、文句言われたり、感謝されたり。いろいろあったけど、結局わかんなかった」

春香「戦う事に意味なんてあるのかなぁ?私、バカだからわかんないや……」

千早「春香だけじゃないわ。きっと誰にもわかることでは無いのよ」

春香「そうかもしれないね。けど、意味がないなら戦い続ける理由ってなんだろうって思って」

春香「……少し、疲れちゃった」

あずさ『疲れたのよ……誰かの為に戦う事も、自分の為に、戦う……事も』

千早「そんな事言わないで……春香らしくないわ」

春香「そうかな?でも、もういいんだ。元々願いなんて無かったし、もうやめようって思って」

春香「痛いのも怖いのも、誰かの代わりだと思えば我慢できた。けど……私だけ痛くて怖いのはもう、疲れたな」

千早「何かあったの?私が知らない間に……」

春香「……真美が、ね」

千早「真美……?」

春香「真美が、私の事を……!?」リィィイン

147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:48:54.95 ID:brxHKv6qo
千早「この感覚……!」リィィィン

春香「千早ちゃんはここにいて!私、行ってくる!変身!」ガシャッ

千早「待って、春香こそ残って!私が行ってくるから!」

春香「ダメなんだよ、千早ちゃん。私が行かないと」ドッ

千早「うっ……くっ、春香……どうして……」ドサッ

春香「前はこうやって助けてもらったっけ。今度は私の番だね」

春香「会わせるわけにいかないよ、今の真美とは……なんだかんだでさ、痛いのも怖いのも……悲しいのも、私だけでいいから」

千早「はる……か……」

……。

【天海春香】

春香「モンスターは……!」

真美「おっそいよー、はるるん」

春香「……流石に早いね、真美」

真美「んっふっふ~、もう倒しちゃったもんね!そんでさ」

真美「今日こそ、デッキ渡してくれるよね?」

148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:49:25.31 ID:brxHKv6qo
春香「それは出来ないって言ったでしょ?真美に渡すには……このデッキは、重すぎるから」

真美「またそうやってバカにして……真美だって戦える!戦いを終わらせられる!」

春香「そうじゃない、そうじゃないんだよ。真美には戦って欲しくないから……」

真美「うるさい!だったらさっさとリタイアしちゃえばいいんだ!」ソードベント

春香「……そうだね、何やってるんだろう、私。だけど、だけどね」ソードベント

春香「もうやめたいって思っても、やめるわけにはいかないんだよ」

……。

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:50:06.02 ID:brxHKv6qo

【プロデューサー】

P「それが、社長の思惑ですか」

黒井「そうなるな」

P「……その為に、アイドル達が殺し合いを」

黒井「……そう、なるな」

P「くそっ!」ダッ

黒井「おい、どこへ行くつもりだ?」

P「すぐにでも春香と千早に連絡して戦いをやめさせるんです!そんな……くだらない願いなんかに、あの二人の命が費やされていいはずがない!」

黒井「貴様は家族を喪った事があるか?」

P「……それは、ありませんけど」

黒井「なら恋人は?」

P「それもありません」

黒井「ならば、貴様を慕うアイドルを亡くした事は?」

P「……」

黒井「貴様はヤツの願いを馬鹿にする事は出来ん。なぜなら同じ願いを一度でも持ってしまったからだ」

黒井「誰でもそうだ。私がヤツより先にミラーワールドとやらを知っていたら同じ事をしたかもしれん」

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:50:58.00 ID:brxHKv6qo
黒井「なんだ、その目は。けなされて喜ぶとは妙な趣味だな。ちょうど潰れかかった事務所があるから使える人材を頂こうというだけの事だろうが」

P「すみません、生意気言いました。高木社長の友人ですもんね。無関係なんて言えない」

黒井「断じて友人などではない!が、自分の分を弁えたようだな」ポイッ

P「わっと、なんですかこれ……これは!」

黒井「765のアイドルが私に寄越した物だ。プロトタイプだそうだが、実際に動作はするようだ」

P「伊織……」

黒井「わかったらさっさと行け。……甘さは捨てろ。最悪の場合、高木を殺してでも」

P「わかってます。俺はアイドル達とは違う。大人ですから、汚い事も出来る」

黒井「少しは良い顔になった。高木と相対してもその顔でいられるといいがな」

P「……行ってきます」

黒井「……フン」

……。

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 00:51:32.11 ID:brxHKv6qo
【如月千早】

千早「……う、ぁ」

千早「まだそんなに時間は経ってない。良かった、間に合いそうね……」

千早「春香、あなたが戦いをやめたいのなら手伝うわ。だから、一人で無茶しないで」

千早「変身!」

……。

千早「……戦闘の痕が点々と。追いやすいのはいいけど、追いついた時が怖いわね」

千早「無事でいて、春香……」

ゴッ

ゴォォオオオオ

千早「今の音は!?」バッ

千早「すぐ近く……そこにいるのね、春香!」

春香「……」

真美「……はるるん」

千早「春香!」

152: 今日はここまで 2013/01/08(火) 00:52:04.87 ID:brxHKv6qo
真美「なんで、止めを刺さないの?」

春香「……」

千早「真美……?何が、どうなっているの?」

真美「最後までそうやって、真美の事を馬鹿にするの?」

春香「……違うよ、真美」

真美「だったら!真美も殺して!亜美と同じ、みんなと同じ所へ送ってよ!」

春香「それは無理、かなぁ」

真美「なんでさ……どうして真美だけ……なんで……」

春香「ごめんね、真美。それから、千早ちゃん」

千早「春香……?」

春香「私、本当に疲れちゃった。もう……」グラッ

真美「あ……」

千早「春香ぁあ!!」

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:22:56.20 ID:eP3WPJzto
千早「真美!あなた……」

真美「ちっ、違う!真美じゃない!だって、真美そんな深く……」

春香「真美のせいじゃ、ないよ……」

千早「春香!まさか、体に何か……」

春香「この一週間、ずっと、ずーっと戦ってたんだ。寝る時間も削ってずっと……」

春香「だから、もう……限界みたい。体もボロボロで、力が入らないんだ」

千早「何故、どうしてそんなになるまで……春香は戦う事なんて嫌いだったはずでしょう!?」

春香「嫌いだよ……大嫌い。辛くて、やめたくて……」

春香「ううん、私はきっと、戦っていなかった。あの日から、戦う理由を失くして……」

春香「忘れる為に、逃げる為に命を危険に晒していただけ。私はとっくに、戦ってはいなかった」

千早「春香……ダメよ、諦めちゃダメ。あなたはまだ大丈夫だから」

春香「もう、いいんだよ。私、もう戦いたくない。このまま、時間が過ぎて……変身が、解けて」

春香「モンスターにやられるか、ミラーワールドに耐え切れず死んでしまうか……そうすれば、私はもう戦わなくて済む」

真美「は、るる……ん」

春香「戦うって事はこういう事なんだよ、真美。辛くって、痛くって、怖くって……」

真美「でも、真美は……」

春香「……いい加減に、しなさい。亜美だって、真美に戦って欲しいなんて思ってない」

154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:23:41.66 ID:eP3WPJzto
真美「……」

千早「春香、ダメ。力を抜かないで。歩くのよ。ミラーワールドから出て、体を手当すれば……」

春香「……」フルフル

千早「私は、春香に生きていて欲しいのよ!そんな……そんな終わり方って……!」

春香「千早ちゃん……願い、叶えてね。きっと、勝って……」スッ

千早「カード……?見たことのない……」

春香「使って……伊織から受け取った、カード……」

千早「え、ええ。でも、どうして……」

春香「……眠く、なってきたから。渡しておこうと思って……」

千早「春香、ダメ、ダメよ……」

春香「……」

千早「春香……!」

真美「あ、あ……はるるん……」

千早「……真美」

真美「あ、う……うん」

千早「春香の言いたいことは理解出来たわね?」

真美「……でも」

千早「聞き分けなさい。それとも戦うかしら?この私と」

真美「……っ」

155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:24:15.61 ID:eP3WPJzto
千早「構わないのよ、真美がそのつもりなら。私は……受けて立つわ」

千早「誰だって構わない気分なのよ。別に、あなたでも」

真美「ひ……!」ゾクッ

P「……そこまでにしておけよ、千早」

真美「兄ちゃん!」

P「あんまり真美をいじめるな。真美も真美で、意地になるんじゃない。お前だって本当はわかってるはずだろ」

真美「……う、うん」

千早「今頃出てきて何の用ですか?私は今忙しいんですが」

P「そうだな、確かに今頃だ。お前たちが戦っている間、俺は何も知らずにオロオロしていただけだった」

P「何もかも手遅れで、救える物も救えなかった。でも、まだ間に合う事もある」

P「真美。お前は早くここを出て、そのデッキを壊せ。いや、壊さなくてもいいけど、二度と使わないって約束してくれ」

真美「わかった。あの、兄ちゃん……」

P「俺に謝る必要は無いよ。むしろ謝るべきは俺だ。こうなる前に、止める事だって出来たはずなんだ」

真美「……じゃあ、後でいっぱい謝るね。外で待ってるから」

P「すぐ帰るよ。十分もしない内にな」

真美「千早お姉ちゃんも、待ってるからね」タッ

千早「……私に何を言う気なのかしら。まぁ、なんでもいいけれど」

P「さて、千早。お前が今優先するべき事はなんだ?」

千早「ライダーバトルももう終わりです。オーディンを倒し、私が願いを叶える」

156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:24:49.01 ID:eP3WPJzto
P「違うだろう。春香を助けて、ここから去る事だ」

千早「違いません。勝って願いを叶える事が何よりも優先されます。春香と約束したんです」

P「……オーディンは、俺が倒す。それでいいだろう」

千早「それでは私の勝利と認められないかもしれない。私が戦う必要があるんです」

P「どうしても、無理か」

千早「どうしても、無理です」

P「……甘さは捨てろ、か。黒井社長も無茶言うよ、ほんとに」

千早「プロデューサーこそ、どうしても邪魔をしますか」

P「ああ、する。お前が戦う必要なんてもう無いんだ。過ぎた事よりも未来を優先しろ。春香はまだ間に合う」

千早「過ぎた過去……その通りです。でも、まだ取り戻せるかもしれない。その可能性が残されている」

千早「プロデューサーにとって、他のみんながただの過去で済む存在なのは良くわかりました。そんな人に、私の邪魔はさせない」

P「千早、聞け。この戦いはそんなもんじゃ……」

千早「聞きません。私はあなたも倒してライダーバトルを続ける。それが変わらない答えです」

P「……わかった。それでお前の気が済むのなら」

千早「行きますよ」ソードベント

P「来い」ソードベント

千早「……」ジリッ

P「……」ズッ

157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:25:16.38 ID:eP3WPJzto
千早「……はっ!」バッ

P「おっ」ガキッ

千早「たぁっ!」バシュッ

P「おお、速いな」スッ

千早(当たらない……モンスターかスーツの力かしら。でも、これは素早いというより……)

千早「なら、これでっ!」トリックベント

P「……分身か。なるほど、便利なカードだ」

千早「出処のわからない攻撃も避けられますか」

P「どうだろうな。俺もわからん」

千早「はぁあ!」ダッ

P「おっと、こっちか」ヒョイッ

千早「くっ……やぁっ!」ブンッ

P「本体がバレたら分身の意味も無いぞ」サッ

千早「目じゃない……なら、これは!」ナスティベント

P「うおっ!すごい音だ……千早は撹乱用のカードをたくさん持ってるんだな。いいカードだ」キィィィン

千早「もし音で察知しているのなら、これで封じたはず」

千早「そして、背後からの一撃なら……はぁああ!」ブオッ

P「だが」ザッ

P「無意味だ」バシュッ

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:25:43.82 ID:eP3WPJzto
千早「ぐはっ……!な、どうして……!」

千早(この感覚、やはり違う。私の攻撃を見てから、聞いてから避けているというよりも……)

P「不思議か?俺の動きが。まるで自分の行動が読まれているようだと」

千早(そう、まるで私の動きを知っていて、先に動かれているよう。あり得ないわ、こんな事)

P「そうだな、俺も驚いたよ。だけど、俺は誰だ?お前のプロデューサーだぞ?」

P「日常的な動きは勿論、非日常における動きだって。お前の事は誰よりも見てきた男だ。もしかしたらお前自身より」

千早「まさか、そんな……」

P「俺は、多分お前たちにとって最悪のアンチユニットだ。日頃の真面目な仕事の成果か……」

P「お前の考えてる事、繰り出す攻撃、取るだろうリアクション。全て、わかる。もっとわかりやすく言おうか」

P「千早、お前が俺に勝つことは不可能だ」

千早「まだ、手はあります。私の動きが読めたとして、モンスターの動きは別なはず!」アドベント

P「それは正解だ。だけどその選択も予想の範囲内」アドベント

ダークウイング「キキッ!」

サイコローグ「ギュィン」

P「モンスターはモンスターに相手をさせればいいだけだ。そして……」

サイコローグ「ギギッ!」ガキン

ダークウイング「キー!」バタバタ

千早「ダークウイング!」

P「これはただのラッキーだが、俺のモンスターの方がお前のより強いみたいだな。さあ、どうする?手はあるか?」

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:26:53.88 ID:eP3WPJzto
千早「……それでも、私は負けるわけにはいかないんです」

P「そうか。なら、来い。お前の全てを受け止めて……わからせてやる」

千早「はぁあああ……」ファイナルベント

P「それがお前の最大の技か!いいぞ、来い!」バッ

千早(恐らくプロデューサーはガードベントで凌ごうとするはず……だけど、それを撃ちぬけば私の勝ち!この一撃に……)

千早「全てを賭ける!はっ!」バッ

千早「飛翔斬!!食らって……倒れてっ!!」ギュルルルル

ズドッ ゴォオオオン

千早「……はず、れた」

P「嘘ついて悪かった。受け止めるって言ったが、そもそも俺にそんな手は無いんだ」

P「アクセルベントって言ってな。俺の動きを一時的に加速させる事が出来るカードだ。お前の最大攻撃を誘って、これで避ける。そういうプラン」

千早「ま、だぁっ!」ブンッ

P「もう、止せ。もういいんだ」パシッ

千早「でも、それじゃ春香が……春香との約束が……」

P「……悪いけど、ここまでだ。逃げろよ、千早」ドスッ

千早「あ……」バリンッ

P「デッキは破壊した。これでお前はライダーじゃない。早く春香を連れて……」

パァアア

高木「なるほど、こうなったか。ならば私が天海君を倒してゲーム終了と言うわけだ」

千早「あれは……」

P「出たな、オーディン。いや、高木社長」

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:27:21.93 ID:eP3WPJzto
高木「君が何か探っているのは知っていたが……私の事まで辿り着いているとはね。恐れ入る、やはり優秀だねえ」

P「あなたが選んだプロデューサーですよ。無能なわけがないでしょう」ザッ

高木「嬉しい事を言うねぇ。さて、それでは業務命令だ。そこを退きたまえ。邪魔だよ」

P「実は961プロに移籍が決まってまして。今日限りで上司部下の関係は終わりということで……」

高木「なんと!そうか……残念だよ。では一人の男として君に聞こう。私の邪魔をやめる気はないかね?」

P「ありません。俺が今からやることは一つ。俺のアイドル達をこんな目に遭わせてくれたあんたをぶちのめすことだ」

高木「君の、ではない。私の事務所で私のアイドルだ。そもそもその為に集めた彼女達なのだから、別に怒るような事ではないよ」

P「どこまで言っても平行線。ならやる事は一つだけ……勝負だ、オーディン」チャッ

高木「……ふむ。無能ではない、が、頭は良くないようだ。君は如月君との戦いで消耗しているね?」

高木「それに、君の戦闘能力は如月君やそこにいる天海君より低いだろう。君が彼女に勝ち得たのは、その技能故だ」

高木「君は私の行動が読めるかね?そうでなくては勝ち目は無いよ」

P「……やってみなくちゃ、わからない!」ダッ

高木「ならば試してみるがいい。そして知りたまえ、自分の限界を」

千早(オーディンの正体は社長。私達はライダーバトルの為に集められた……?)

千早(わからない事だらけだけど、もういいわ。もう……疲れてしまった)

千早(春香……ごめんなさい。約束は守れなさそう。それから……あずささん。あなたとの……約束も……)

……。

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:27:50.88 ID:eP3WPJzto
あずさ「こーら。何をうずくまっているの?」

千早「えっ……?」

あずさ「もう。ダメよ~、そんなに簡単に諦めちゃ。私の言った事、覚えてるでしょう?」

千早「でも、春香ももうボロボロで、私ももう……」

あずさ「そうねぇ。大変だったみたい。でも、だからといって諦める理由にはならないわ」

千早「どうしてそんな事を言うんですか?自分は諦めて……死んでしまったのに」

あずさ「だからこそ、よ。千早ちゃんは、まだ立てるわ」

千早「もういいんです。もう……」

あずさ「立ちなさい、如月千早」

千早「……」

あずさ「あなたには義務があるの。立ち上がる義務が、足掻く義務が、諦めない義務が」

千早「……」

あずさ「あなたには色んな人が色んな物を託しているわ。それを放棄する事は許されない」

千早「……どうして、私が」

あずさ「……そうねぇ。身勝手で、ひどい話だわ。そういう私もその一人なんだけど」

あずさ「あのね、千早ちゃん。あなた、オーディションはいくつ受かってきたかしら」

千早「それは……数えきれません、今更」

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:28:19.05 ID:eP3WPJzto
あずさ「その時、あなた以外のアイドル達は落選したはずよね?」

千早「それは、そうでしょうけど」

あずさ「逆に、千早ちゃんが落ちた事もあるでしょう?」

千早「最初のうちはたくさん落ちましたよ」

あずさ「そのオーディションに受かった人がチャンスを蹴ったとしたら、どんな気分かしら」

千早「……理解出来ません。どうして私に勝っておいてそんな事をするのか」

あずさ「……そういう事なのよ、全て。私達は生きる上で常に人と競っていて、負けた人の思いを背負うのは残った人の義務なの」

千早「そんな!なら、生きる事って辛すぎるじゃないですか……」

あずさ「そうよ。それでもあなたは生きなければならない。私の事なんてどうだっていいわ。でも、春香ちゃんの事を考えて」

千早「春香……」

あずさ「いろいろと言ったけど、難しく考える必要はないの。あなたが報いたい人を思って戦えば、それでいい」

あずさ「春香ちゃんとの約束は、守ってあげないといけないわよね~。でしょう?」

千早「……春香との約束。勝つこと」

あずさ「きっと、色んな事を考えたと思うわ。けど、その上で出た言葉がそれなの。なら、千早ちゃんはどう応えるかよ」

千早「私は……戦って……」

あずさ「もう、迷わなくていいの!春香ちゃんに勝ってって言われて、プロデューサーさんが危ない。戦う理由がこれ以上必要かしら?」

千早「……あずささん」

あずさ「はーい?」

千早「もう、出てこなくてもいいです」

あずさ「あ、あらあら~」

千早「しっかり伝わりました。わざわざすみません。……ありがとうございました」

あずさ「……頑張ってらっしゃい」

……。

163: 今日はここまで 2013/01/09(水) 00:28:58.09 ID:eP3WPJzto
P「くそっ……どうやっても無理、か」

高木「わかっていた事だよ……君では無理だと。残るは戦闘能力の無い天海君と、君が変身不能にしてくれた如月君か」

高木「ライダー全員を倒さなければならないからね、君にもそろそろ本当に退場してもらおう」

P「千早、春香、真美……情けないプロデューサーでごめんな。みんな、今行くよ」

高木「じゃあ、さようならだ」ブンッ

ガキィンッ

高木「……君は、誰だね?」

P「千早……なのか?その姿は……」

千早「私のデッキは、プロデューサーに壊されました。それは間違いありません」

千早「だけど、私以外誰も知らない事もあります。私と、あずささん以外……」

高木「……なるほど。デッキを奪ったのか。その姿……王蛇のデッキは三浦君の物だね?」

千早「奪ったんじゃありません。託されたんです」

千早「あずささんとの約束の為に、プロデューサーを守る為に……春香との約束と、春香を守る為に!」

千早「託された力で、私は戦う!」ガシャンッ

SURVIVE

165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:13:54.14 ID:CkMgx33jo
高木「良い覚悟だ。だがそれではまだ駄目だ」

P「気をつけろ、千早。社長はまだまだ底を見せてないぞ」

千早「プロデューサー、お願いがあります。可能な限り確実に実行してください」ボソッ

P「な、なんだ?出来る事ならなんだって……」ボソボソ

千早「……」ボソボソ

P「……それは構わないけど、でも、それじゃ」

千早「……もう、無理なんです」

P「そうか……なら俺はそれを」

千早「私は……やれる所までやってみます!」ソードベント

高木「待ちたまえ。その前にやることがある」

千早「何を……?」

高木「むんっ!」ガキンッ

ダークウイング「キキッ!」バサバサッ

千早「ダークウイング!私のデッキが破壊されたから……」

高木「デッキを壊されて尚、主人だった者を狙わんか。なるほど、奇妙な信頼があったようだね。だが……」フワッ

高木「たかがモンスターが私に歯向かうなど、意味の無いことだ」

ダークウイング「ギ……キ……」バシュウウウ

高木「邪魔者はこれで消えた。さて、それでは……」

166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:14:21.77 ID:CkMgx33jo
千早「やあっ!」シュッ

高木「良い選択だ。どんな隙も見逃さない。そして躊躇わない」ガキンッ

高木「何よりも迷いが無いから出来る行動だ。如月君はナイーブだから心配していたんだが、どうやら成長したようだね」

千早「……皮肉ですけれど、あなたのお陰です。この戦いで色んな物を失い、それが私から迷いを消した」バッ

高木「君が成長出来たのなら何よりだよ。三浦君からデッキを、水瀬君、そして天海君からサバイブのカードを手に入れた」

高木「君の姿は今までの戦いの集大成と言った所か。だが、それでは足りないのだよ」スッ…

高木「まず第一。私は常にサバイブ状態である事。君が手に入れたカードではせいぜい互角になったにすぎない」パァアア

高木「そして第二……それは、見てもらえばわかるだろう。これだ」シュンッ

千早「消え……!?」フア…

高木「こっちだ」バシッ

千早「ぐっ!……後ろに!?」クルッ

高木「おっと、こっちだよ」バシュッ

千早「きゃあっ!どういう事……金色の羽が見えたと思ったら、気付けば私の背後にいる」

高木「これが、第二の理由。君と私はサバイブ体という意味では互角だ。だが、そもそもの性能が違いすぎる」

千早「このっ!」バッ

高木「君に私を捉える事は出来ない。攻撃は空を切るだけ……だ。そして私は一方的に君を攻撃する」ズバッ

千早「が、はっ……こんな……こんな差が……」ヨロ

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:14:55.12 ID:CkMgx33jo
高木「元々私が勝つ為に始めたゲームだ。負ける訳が無いのだよ」

千早「卑怯よ、こんな……」

高木「卑怯?それは君達の事を言うんじゃないかね?今こうしている間にも……」フワッ

P「くらえっ!」ブンッ

高木「背後から私を討とうとしている。不意打ちは卑怯だろう、君ぃ」

P「くそっ!やっぱり無理か!」

高木「やれやれ……邪魔はしないで欲しいんだがね。君はライダーバトルの外にいる人間だ。本来倒す価値もない」

P「なら退けてみたらどうです?社長ならすぐでしょう」

高木「もうやっているよ」ザクッ

P「ぐぁ……千早……約束は……」グググッ

バタッ

高木「……さて、今度こそ本当に邪魔者はいなくなった。そろそろ終わらせよう」

高木「ああ、第三の理由を言っていなかったね。君はその力を色んな人から受け継いだようだが……」

高木「そのデッキに、戦闘に使えるカードは少ない。せいぜいソードベント、アドベント、フィアナルベント。その三枚だ」

高木「三浦君は鍛錬で補っていたようだが……君では使いこなせないねぇ。ナイトのままの方が強かったのだよ、君は」

千早「プロデューサー……受け取りました、確かに」グッ

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:16:03.05 ID:CkMgx33jo
高木「それは……?」

千早「確かに、私はあずささんより弱い。カードの効果に頼った戦い方と言われて、その通りだと思いました」

千早「だから、この力では勝てない……それもその通りだと思います。でも、それなら」チャッ

高木「天海君のデッキか。彼は天海君のデッキを取りに行っていたようだね。という事は……天海君は死んだか。それは楽でいい」

高木「で、今更そんな物を使ってどうするつもりかね?王蛇のデッキのように、君が変身してみるのかな?」

千早「違う。私は、このデッキを……こうする」ブンッ

バキッ

高木「何?デッキを破壊して……何の意味があるんだね?」

千早「社長はデッキの内容をご存知だったはずですよね。考えてみてください。私のデッキに入っているカードを」

高木「王蛇のデッキ……まさか!!」

千早「そのまさかです」

ドラグレッダー「グオオオオオオオオオ!!」

千早「デッキが破壊されれば、契約モンスターは解き放たれる。そして、私のデッキには……」シュッ

千早「白紙のコントラクトカードがまだ残っている!」

千早「ドラグレッダー!私と契約しなさい!春香の仇を取るのに……あなたの力を貸して!」パシィイイン

ドラグレッダー「ガォオオオオオオオオオン!」

高木「……考えたねぇ。使える手札が少ないなら増やせばいい。その発想は中々だ」

千早「……春香には、最後まで頼りっぱなしね。借りるわ、もう一枚。これできっと、勝てる」ス…

高木「もう一枚のサバイブ……烈火と疾風。なるほど、それも計算に入れての行動か」

千早「ええ。あなたを倒せば戦いは終わる。その為に……」ガシャンッ

千早「あずささん……春香……一緒に、行きましょう!」SURVIVE

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:16:34.22 ID:CkMgx33jo
高木「素晴らしい……今の如月君は力の結晶のような存在だ。闘争の中、そこまで磨き上げたか!」

千早「私一人の力じゃありません。あずささんのデッキ、春香のカード……そして、それを渡してくれたプロデューサー」

千早「私がここに立っていられるのだって、高槻さんや律子、四条さん、美希達に助けられたから」

千早「そして、道は違えど……大事な何かを守る為に戦った他の皆」

千早「どこかで一歩間違えれば、私はここにいなかった。全てが私の為にあった……」

高木「それは傲慢ではないかね?」

千早「そうでしょうね。だけど、そう考えた方が……楽しいじゃないですか、生きる事が」

千早「生きる事は戦いかもしれない。でも、周りの人達は敵じゃない。だから、私は……」

千早「なんとしても、“生き残る”道を選びます」

高木「ふむ……随分と楽観的だが、まだ私の攻撃を破ったわけではないんだがね」

千早「そうですね。でも、不思議……何故か、負ける気がしないんです」

高木「ならば試してみよう。はぁっ!」スッ

千早「……」ガードベント

高木「む!?」バシッ

ベノスネイカー「シュルルルルル……」

千早「蛇って、ピット器官っていうのがあるそうです。人間よりよっぽど、気配を捉えるのが上手いらしいですよ」

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:17:13.91 ID:CkMgx33jo
高木「防御に徹すれば防げるようだが、それでも君の反撃は当たらない。攻撃せずに勝てるとでも言うのかね?」

千早「……一つ運試しをしてみましょう。これ次第で、勝敗が決まる」ストレンジベント

高木「ストレンジのカード……なるほど、面白い!いいだろう、何を引こうと叩き潰すのみ!」ザッ

千早「……」パシッ

千早「どうやら、私の勝ちのようです」

高木「ほう、余程良いカードを引いたようだね。だが全ては私の前に砕け散る」

千早「社長は絶対に受けられません。瞬間移動で避けるでしょう。そうしなければ痛手を負うから」

高木「……何?」ピク

千早「あなたでも私には勝てないと、そう言ったんです。これから出す技を、あなたは受けられない」

高木「下手な挑発だ。私は間違いなく最強のライダーであり、敗北はありえない。避けたとして、勝利に最も近い道だからそうするだけの事」

千早「だからあなたは勝てないんです。確実だなんて言葉を使って、勝負から逃げているから」

高木「……」

千早「春香は言いました。戦う事に疲れて、ただ逃げる為に自分を危険に晒していたと。恥ずかしそうに、言いました」

千早「諦めているのに、抗っているフリ。あなたの行為は闘争ではない。ただの逃避です。恥です」

高木「そこまで言うのなら、いいだろう。受けてみせよう、君の全てを」

千早「……ありがとうございます。行きますよ」ファイナルベント

高木「こちらも、行くぞ」ファイナルベント

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:17:56.77 ID:CkMgx33jo
千早「ふっ……」タンッ

高木「おぉおおおおお……」ゴゥッ

千早「はぁあああああああああ!!」バシュゥッ

高木「はぁあっ!!」ゴッ

バゴオオオオオオオン

高木「なん、だと……互角とは……信じられん!」スタッ

高木「だが、受け止めたぞ!止めを……!」

リターンベント

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 00:18:28.80 ID:CkMgx33jo
千早「本当に、下手な挑発でした。私は人の心の機微に関しては……どうにも、得意じゃありませんから」

高木「ストレンジで引いたのは……そのカードか!」

千早「賭けでした。ですが、社長が全力で受けてくれて助かりました。これで、もう一度は躱せない」ファイナルベント

高木「ふ、ははは……負け、か。私の……幾度と無く繰り返したライダーバトルの中で、初めて……」フラッ

千早「最後に打つのは……」ゴゴゴゴゴゴ

千早「春香の、技です」バッ

千早「やぁああああああああああ!!」ゴォオッ

高木「ぐわああああああああああ!!」

千早「……やったわ、あずささん、春香、皆」スタッ

高木「ぐ、ふ……君の、勝ちだ、が。まだ、終わりでは無いぞ……」ズッ

千早「もうあなたは戦えない。ライダーバトルは終わりでしょう?」

高木「言っただろう、負ける勝負はしていない……これがあるからな」

千早「そのカードがこの状況を逆転させるとでも言うんですか?」

高木「その通り、だ……これはタイムベント。時間を止めるも遡るも、自在に操るカード」

173: 次回で最終回 今日はここまで 2013/01/10(木) 00:20:21.90 ID:CkMgx33jo
千早「時間を……まさか!」

高木「また、最初からやり直しだ……今度は、失敗しないように……修正……」

千早「そんな……そんなカードがあるならなぜこんな戦いを!望みなんて全て叶えられるでしょう!?」

高木「駄目なのだよ、これでは。私の願いは……君と同じ。かつて失った、大切な人を……蘇らせる事」

高木「そもそもの、始まりは……彼女だった。私の担当アイドルだった、音無小鳥……彼女の死が……ミラーワールドの、始まり」

高木「彼女の死によって出来たこの世界は、奇妙な力に満ちていて……タイムベントや、他のカードは全て、その力を使う」

高木「だから、彼女の死の瞬間より前には……戻れないのだよ……」

千早「……」

高木「だからこそ、ライダーバトルが必要だった。戦いによって磨きぬかれた、12の魂を抽出し、新たな生命を作り出す……」

高木「ミラーワールドにいる、鏡像の音無君に命を与える為に、ね。すまないが、君達の願いなど最初から叶わなかったのだよ……」

高木「笑ってくれたまえ。こんな歳で、かつて失ったたった一人の女性に執着し続けている。恥ずかしい話だ、情けない」

千早「笑えません。社長の姿は、ほんの数分前までの私の姿ですから」

高木「そうか……今更だが、君たちには本当に済まない事をしたと思う。そして、これからも……」

高木「戦いは、また繰り返す……君達は、また私のせいで失って、失い続ける……私の願いが……叶う……まで」ググッ

高木「また、会おう。如月く」ズブッ

P「はぁ、はぁ……させる、もんか。戦いは、ここで終わりだ。俺の……そしてあなたのアイドル達は……これから……」グラッ

千早「プロデューサー!」

高木「まだ、生きて……君にも……あやま……」

千早「ぁ……ああ……」

千早「うあああああああああああああああああああああああああ!!」

……。

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:32:24.10 ID:FP1+F6sio
【都内某所・765プロ事務所】

P「……っていう夢を見たんですよね」

小鳥「はぁ……?」

P「嫌に真に迫った夢でしたね。辛かったー」

小鳥「あの、今仕事中ですよね?」

P「ええ、そうですよ?」

小鳥「仕事は……」

P「はっはっは、やってますとも。その上で無駄話をしてるわけです」

小鳥「そうでしたね、いつもそうですもんね……でも、私死んじゃってるなんて嫌だなぁ」

P「そう言われても、そればっかりは俺にもなんとも」

小鳥「それに、千早ちゃんが報われなさすぎますよ。せっかく決意して戦ったのに、何も残らないなんて」

P「そう、それですよ!夢の先が気になって仕方ないんです!千早、大丈夫だったのかなぁ……」

小鳥「って言っても……ねぇ?」

千早「ええ、夢の話ですし。心配していただかなくとも大丈夫ですよ」

P「わかってはいてもなぁ。結局振り回されて、願いも叶わなかったわけだろ?千早はそれで辛くないか?」

小鳥「ですから夢の……」

千早「それは……辛いでしょうね。けれど、その後私が何をしたかによって気持ちは大きく変わるんじゃないでしょうか」

P「それもそうか。よし!音無さん!俺達で千早を幸せにしてやりましょう!」

175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:32:50.31 ID:FP1+F6sio
小鳥「あの、私は仕事が……」

P「千早が心配じゃないんですか!?」

小鳥「……わかりました、考えてみましょう!千早ちゃんが可哀想ですもんね!」

千早「音無さん、仕事が残ってるんじゃないんですか?」

小鳥「仕方ないのよー、プロデューサーさんが無理にでもって言うんですもの。だから律子さんにはそう証言してね?」

千早「……はぁ、まぁ、なんでもいいですけれど」

P「さーてどうするか。とりあえず不思議な事が起こって……」

小鳥「プロデューサーさん、妄想にも一定のリアリティが必要なんですよ?」

P「む、手厳しいですね。流石妄想のプロ……」

小鳥「とはいえ、発想が突飛すぎて中々難しいですねぇ。タイムベントが使えたら色々出来るかもって思ったんですけど」

P「でも、結局小鳥さんは死んだままですよね」

小鳥「それは私が避けたい……!」

P「駄目だ、思い浮かばない。千早、お前自身はどうなったらいいと思う?」

千早「私ですか?そうですね……例えば、こういうのはどうでしょうか」

……。

176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:33:18.78 ID:FP1+F6sio
【如月千早】

千早「戦いは、終わった。けれど……もう何も……」

パァアアアア

千早「光……これは、一体」

高木「……新たなる、命。これが君の勝利の証だ」

千早「これが……命」

高木「もうじき私の命も……そこに取り込まれ、死者に再び命を与える新たな生命が……完成する。君の、物だ」

千早「……」

高木「君は、それをどう使う?よく考える事だ。タイムベントはもう使えない……戦いは、もう繰り返さない」

高木「この生命が……最後の、一つ、だ」

千早「光が強く……完成したのね、新たな命が。これを、どう使うか」

千早「萩原さん、真、我那覇さん、四条さん、亜美……」

千早「水瀬さん、律子、美希……」

千早「高槻さん……」

やよい『駄目ですよ!この力は、そんなことのために使っちゃ……』

千早「あずささん……」

あずさ『これで、やっと……千早ちゃんに託して、私は……』

千早「プロデューサー……」

P『むしろ謝るべきは俺だ。こうなる前に、止める事だって出来たはずなんだ』

千早「はる、か……」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:33:52.32 ID:FP1+F6sio
千早「選べないわ、とても。失った命はこんなに多いのに、救えるのは一人だけだなんて」

千早「いっそ、私が負けてしまえば……こんな思いはしなくて済んだのかもしれない。その方が、楽だったのかも」

千早「こんな物だけ残っても……」

千早(……?)

千早「いえ、やり直しは出来ないわ。タイムベントが無いもの」

千早(違う。私はあのカードを手に入れる事が出来る)

千早「……だとしても、戻せる時はミラーワールドが出来た直後まで。それ以前には戻れないと社長が」

千早(その時点まで戻れば、もしかして……)

千早「やってみる価値は、あるかもしれないわね」チャッ

……。

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:34:21.21 ID:FP1+F6sio
【都内某所・765プロ事務所】

P「それで、その後何をしたんだ?」

千早「そこで、社長の……オーディンのデッキを破壊したんです」

P「デッキを?なんで今更そんな事を?」

小鳥「あ!春香ちゃんのデッキと同じように……」

千早「そういう事です。デッキを破壊し、モンスターが解放されれば……」

P「……予備は一枚だけじゃなかったってことか」

千早「そういう事です。私はコントラクトのカードを使い、ゴルトフェニックスの新たな主となるんです」

小鳥「それでタイムベントを手に入れるのね。でも、それじゃ駄目なんじゃないかしら。いくらやり直せると言っても……」

千早「そうですね。結局の所同じ道を辿ることになる。それじゃ意味が無いので、私はこう考えたんです」

千早「ミラーワールドが消せないなら、ライダーシステムを消してしまおう、と」

……。

179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:34:54.78 ID:FP1+F6sio
【如月千早】

千早「可能な限り過去へ……ミラーワールドが出来る切欠となった、音無さんの死の瞬間の直後へ」

千早「私を導きなさい、ゴルトフェニックス!」

カチッ

ゴーン

ゴーン

ゴーン

千早「……ここ、が。そうなのね」スタッ

千早「交差点……そうか、音無さんは交通事故で亡くなったのね。そしてあの男の人は、当時の社長。腕に抱えているのが音無さんね。すごい美人……」

千早「社長が驚いたような顔をしているわ。この時初めてミラーワールドが生まれ、そこを観測した。これが全ての始まり」

「あなたは……誰?」

千早「……音無さんと、同じ顔。鏡像の音無さんというのはあなたの事ね」

小鳥「そう、私はあの体から離れたもう一人の音無小鳥……彼女、私は元々二面性の強い性格だったのね」

小鳥「それが、事故が原因で本当に二つに別れた。私は彼女であって彼女ではない、そういう中途半端なモノ」

千早「いいえ、あなたと本物の音無さんに違いは無いわ」

小鳥「鏡写しですもの、真逆なのは当然よ」

千早「違うわ。鏡というのは、その人の本当の姿を写す物。真逆に見えても、実際は本質を描いているだけなの」

小鳥「……それで、結局あなたは何者なのかしら」

千早「私は、そうね……あなたと、彼を救う為に来た者よ」

180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:35:29.24 ID:FP1+F6sio
小鳥「私とプロデューサーを……?」

千早「ええ。これから、あなたを失った悲しみの余り、彼は暴走とも言える行動を取るわ。それを止める為に私はやってきた」

小鳥「どこから?」

千早「未来から。あなたさえ良ければ、これを使って欲しい」パァアア

小鳥「眩しい……これは……」

千早「本来、あなたの為に使われるべきだったものだから。これがあれば、あなたはまたあの体に戻って生きる事が出来る」

小鳥「生きる……いいわ、もう。疲れたし、そんなの」

千早「もう、やめるの?」

小鳥「ストレスだったのよ。ずーっとそう。周りに期待される私で居続けるのはすごく辛い。人格が別れてしまう程に」

小鳥「私を隠す為に生まれた、もう一人の私は死んだ。これから私はこの世界で好きに生きていいんだから」

千早「……それも、自由。でも、いいのかしら?」

小鳥「問題なんて無いわ。ここは私の為にあるようなものなんですもの」

千早「ここには、高木しゃ……プロデューサーはいないわ」

小鳥「……!」

千早「見て。あの人の顔を。あなたを失って悲嘆にくれていたのが、この世界にあなたがいるという希望を得て……」

小鳥「すごい顔。鬼みたい。……何を、決意したのかしら」

千早「何もかもを、よ。これから周りの何を、自分の人生すら犠牲にしても、あなたを取り戻すという覚悟をしたのよ」

181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:35:59.24 ID:FP1+F6sio
千早「もう一度言うわ。いいのかしら。この、彼のいない世界で生きて」

小鳥「……でも、私は、本当の私は、すぐ妄想に走って、全然かわいくなくて、ダメダメなのに」

小鳥「そんな私が、もう隠れ蓑も無いのに、あの人と一緒にいていいわけが……」

千早「あなたもアイドルなら……プロデューサーを信頼しなさい。私から言えるのはそれだけ」

小鳥「私も……あなたもそうなの?」

千早「……それは、秘密。だけど、あなたもわかっているんじゃないかしら」

小鳥「……だって、私がこんな子だってバレたら恥ずかしいし」

千早「もう。やっぱりそうなのね。いい、音無さん。聞いて」

小鳥「……」コク

千早「プロデューサーの事が好きなら、恥ずかしがってないでちゃんと全部見せなきゃ駄目。お互いがお互いの全部をわかった上で……」

千早「それから、先に進むの」

小鳥「全部、見せる……」

千早「友達の、受け売りなのだけれど」

小鳥「会ってみたいな、そのお友達に」

千早「……きっと、会えるわ」

小鳥「私、もうちょっと生きてみる。今度は変に飾らずに、本当の私で」

千早「それがいいわ。それじゃ……縁があったら、また会いましょう」タイムベント

小鳥「ええ。きっと、また」

……。

182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:36:27.42 ID:FP1+F6sio
【都内某所・765プロ事務所】

P「そうか!その手があった!」

小鳥「私をすぐに蘇生させる事で、社長がライダーシステムを開発する事を無くしたのね」

千早「これでどうでしょう?」

P「やるなぁ千早。それでみんな戦わなくて済むわけだ」

小鳥「……でも、ちょっと待って千早ちゃん。それだと、結局ミラーワールドは残るのよね?」

P「あ、そうだ。そしたらモンスターも残る事にならないか?」

小鳥「それなのにライダーシステムが無いと……人が襲われて大変な事になるんじゃないかしら」

P「みんな助かってもそれじゃあなぁ……」

千早「ふふ、その点は大丈夫ですよ。その時間軸ではライダーシステムは開発されていなくても、一つだけデッキが残っていますから」

P「一つだけ?」

千早「ええ。タイムベントで改変された後の時代に戻ってきたという事は……」

小鳥「そうか、千早ちゃんの持っていたデッキは残っているのね」

P「いやいや待てよ。それじゃ千早はずっと一人で戦う事に」

千早「そうなりますね」

P「それじゃ意味が無いだろ!俺はだな、誰も戦わずに済む方法を……」

春香「プロデューサーさん!大変ですよ!」バタンッ

P「うおっ!どうした春香!」

183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:37:02.73 ID:FP1+F6sio
春香「律子さんがカンッカンに怒って、プロデューサーさん呼んでこいって……何かしたんですか?」

P「律子が?……うわ、着信すごい数入ってる。俺なんかしたっけ」

小鳥「あの~……これじゃないですか?」ツンツン

P「え?『竜宮と合同ステージ、打ち合わせ』……これは一体誰の予定なんだ」

春香「プロデューサーさんのですよ」

P「……行ってきます、小鳥さん!」ダダッ

小鳥「い、急いで気を付けていってらっしゃい!」

春香「もー、そそっかしいなぁ」

小鳥「普段はあんな事ないのに……今日はちょっと、千早ちゃんの事で熱が入っちゃったからかしらね」

春香「え?何ですか、それ」

小鳥「実はね……」

千早「……」リィイイイン

千早「春香、小鳥さん。私、少し出てきます」スッ

小鳥「え?あ、ええ。気を付けて……」

春香「千早ちゃ……!?」ドクンッ

千早「すぐ戻りますから。それじゃ、失礼します」パタン

小鳥「急にどうしたのかしら、千早ちゃん……」

春香「……千早ちゃん。ライダー、バトル……」

小鳥「え?」

春香「待って、千早ちゃん!」ダッ バタン

小鳥「……ええ?」

……。

184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/11(金) 01:37:56.13 ID:FP1+F6sio
千早「ふぅ……さて、それじゃ」カチャ

春香「千早ちゃん!」

千早「……春香。どうしたの?何か用事かしら」

春香「……戦いに、行くんだね」

千早「!」

春香「なんか、急に思い出して。デッキの事、ライダーバトルの事、千早ちゃんにあった事」

千早「そう……そういう事もあるのね」

春香「千早ちゃんのおかげで、私達は今こうしてアイドルが出来るんだよね?」

千早「そんな事無いわ。私が最後に残っただけ……」

春香「それで、今から戦いに行くんだよね。モンスターと」

千早「……そうね」

春香「……千早ちゃんが選んだ道だから、止めない。止められない。だけど、その代わりに言わせて」

春香「勝って。生きて戻ってきて。お願い」

千早「……春香が私の立場だったら、だけれど」

千早「きっと『誰かを守る為に戦えるなら、そんなに悪いことじゃない』なんて言うわね」

春香「……」

千早「あの戦いには善悪なんて無かった。誰もがただ、純粋に願いを叶えようとして……」

千早「でも、それは全て自分の為。あの中には一人として、他人の為に戦った人はいなかった」

千早「だからこそ、今……私は、誰かの為に力を使いたい」

千早「応援してくれるなら……春香。決して目を逸らさないで。私の戦いから、私の選んだ道から」

春香「うん……うん。ずっと、見てる。支えてる」

千早「……ありがとう。見ててね」

千早「変身!」