前回 あずさ「嘘つき」
1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:02:36.21 ID:u8MfD43Fo
年が明け、新たな日々が流れていく。
「ふぅ……ふぅ……」
頬をほんのりと赤く蒸気させ、まだあどけなさの残る女性が階段を駆け上がる。
「…………よし」
ひとつ、両手を胸の前で握り扉を開けた。
それを勇気に変えるおまじないのように――
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THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 2 -SECOND SEASON- 03 三浦あずさ
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:03:16.09 ID:u8MfD43Fo
「ただいま戻りました~」
「お帰りなさい、あずささん」
あずさ「今日も寒くて参っちゃいました~」
「お疲れ様です。今、温かいお茶を――」
あずさ「ありがとうございます。でも、すぐに出ないといけないので……えっと……プロデューサーさんは?」
「一緒じゃないんですか?」
あずさ「先に戻ると……言っていたのに……」
「そうですか~、それはそれは」
あずさ「……」
「あずささん?」
あずさ「小鳥さん、律子さんを含めてお話をしたいので、今晩時間を作っていただけますか?」
小鳥「……それは構いませんけど」
あずさ「……」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:05:15.28 ID:u8MfD43Fo
【 2月 】
―――― 事務所
ガチャ
「ただいま戻りました」
あずさ「ただいま――」
「「 鬼はー外ー!! 」」
バッ
あずさ「……!」
「…………」
パラパラパラ
「兄ちゃんカッコイー! あずさお姉ちゃんを身をてーして守ったよ!」
「熱いよこのっ! 色男!」
「亜美、真美、言いたいことが三つ」
亜美「なーに?」
真美「うん?」
「今日はバレンタインデーであって、節分ではない」
亜美「そんなハズ無いよー。日めくりカレンダーは3日になってるよ、ほら」
「マジックで修正されてるようだが、世間では14日だ」
あずさ「あの、プロデューサーさん」
P「あ、すいません。中に入ってください」
あずさ「いえ、立ち話もなんですから」
真美「兄ちゃん、たくさんチョコ貰ってきたでしょ、真美達にも分けてよー」
P「傷口に塩を塗るようなこと言うんじゃないっ」
あずさ「プロデューサーさん」
P「あ、今日もお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね」
あずさ「は、はい」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:06:55.32 ID:u8MfD43Fo
亜美「さびしい兄ちゃんに亜美達から愛のこもったチョコをあげるね。はい」
P「ありがとう」
真美「3倍返しだかんね!」
P「いいのか? 10円チョコ三つで、一つ奪い合いになるぞ」
亜美「はっ! ダメじゃん! じゃあ4倍返しね!」
真美「8倍返しでもオッケーだよん!」
P「ホワイトデーは期待していてくれ。いつも頑張ってるから10倍にしよう」
亜美真美「「 やったね! 」」
P「それで、後二つ。俺は鬼じゃない。ついでに真美、あの掛け声はまずいぞ」
真美「そーなの?」
P「ちゃんと豆の回収をしておくように。いいな?」
亜美真美「「 兄ちゃんも手伝ってよ 」」
P「これから営業に行って来るんだ。小鳥さんにさせないでちゃんと自分たちで――」
「あずささん」
あずさ「……」
「あ、ず、さ、さん」
あずさ「! り、律子さん」
律子「驚くほど気付かなかったんですか」
あずさ「……」
小鳥「渡せなかったんですか?」ヒソヒソ
あずさ「……あ…朝の内に……っ」
小鳥「あ、そうですか……」
律子「塩口がどうのこうのって……一つで充分じゃないの」
あずさ「……でも、押し付けるような形になってしまって。カウントされてないみたいです」
律子「なんて失礼な……!」
あずさ「ちょっと怒ってみようかと……思ったんですけど……できませんでしたっ」
小鳥「……プロデューサーさんを屋上へ呼び出しましょうか」
律子「そうですね。堪忍袋の緒が切れましたよ」
あずさ「……」
あずさ「あの……通達はまだなんですか……?」
小鳥「……はい……まだのようです」
律子「……」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:09:04.87 ID:u8MfD43Fo
【 3月 】
―――― 事務所
「おはよーございまーす!」
あずさ「おはようございます、真ちゃん」
真「あれ、なんだか嬉しそうですね、あずささん!」
あずさ「うふふ」
真「さては、あの香水のCM撮影ですね!」
あずさ「嬉しくて困ってしまいます~」
真「あずささんとっても楽しみにしてましたからね」
あずさ「盆と正月と誕生日とバレンタインと夏休みと春休みが一緒に来た様な気分~」
真「どこまでも幸せそうで羨ましいな~」
律子「ほ、ほら、行きますよ。じゃ、収録に行ってくるから」
真「プロデューサーと一緒じゃないの?」
律子「春香とやよいの打ち合わせよ」
真「それじゃ、午後のボクの仕事は……?」
あずさ「大丈夫ですよ、間に合わせると言ってましたから~」
真「……わっかりました! それじゃ二人とも気をつけて!」
あずさ「は~い」
律子「真も気をつけてね」
バタン
真「あずささん忙しそうだなー、ボクも頑張らないと」
小鳥「真ちゃん、帰ってきたらケーキがあるから、楽しみにしててね」
真「ケーキ? やよいの誕生日にはまだ早いですよね。今日、なにか特別な日でしたっけ?」
小鳥「プロデューサーさんがホワイトデーにチョコケーキを買ってきてくれたの」
真「うわぁ、楽しみだなぁ。よーし、今日も張り切って行きますよー!」
小鳥「ふふ」
真「ところでー、小鳥さ~ん」
小鳥「あら、気付きましたか真さ~ん」
真「あずささんの嬉しさメーターが振り切ってましたけど~」
小鳥「プロデューサーさんとあずささんが悩みに悩んだあの香水……イメージは覚えておいででしょうか」
真「アメジスト、ですね」
小鳥「そう……。それが今日、あずささんの手に渡るのよっ」
真「くぅー! なんて良いホワイトデー返しなんだろう!」
小鳥「しかしですよ、真ちゃん」
真「え?」
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:11:28.14 ID:u8MfD43Fo
小鳥「あずささんはそれを受け取るだけで満足してるけど、それをプロデューサーさんの手から渡らなきゃ意味が無いの」
真「そうですね」
小鳥「真ちゃんはインタビュー後に、律子さんへ連絡をする」
真「了ッ解です!」ビシッ
小鳥「物分りが良すぎて少し不安なんだけど、段取りの確認をしてもらおうかしら」
真「ボクと待ち合わせ場所を決めて、律子が持っている香水をプロデューサーに渡して、あずささんへ。ですよね!」
小鳥「100点!!」
真「へへーっ、こういうの大好きなんですよねボク。どうせなら受け取る側になりたいなーって思いますけど!」
小鳥「あ……言っちゃった」
真「あぁ、あずささんどんな表情するんだろう! プロデューサーはどんな表情で渡すんだろう! ドキドキしてきたぁ!」
小鳥「ダメよ小鳥……みんなが幸せになるまで、自分の幸せは後回しって……そう思い込むことに決めたじゃない」
「「 おっはよーん!! 」」
小鳥「おはよう」
ドタドタドタ
亜美「兄ちゃん! 待ちに待ったホワイトデーだよー!」
真美「チョコちょ→だい!!」
亜美真美「「 あれ? 」」
小鳥「預かってるわよ、二人にこれを」
真「特別なんだ?」
真美亜美「「 一つ? 」」
小鳥「……」
亜美「この、かんしょく……」
真美「この、しつかん……」
真「……コンビニで売ってたのみたよ」
亜美「お手軽サイズ!!」
真美「真美達を怒らせるとどーなるか、教えてあげるよぉー!」
亜美「ピヨちゃん、大豆がまだあったよね!」
小鳥「ダメよ! 全部拾うの大変なんだから!」
真「ハム蔵が大活躍だったね」
真美「ふっふっふー、ホワイトデーを…………赤と緑と白色に染めてあげるぜぇ」
真「それ、クリスマスだよ」
小鳥「ちゃんとケーキがあるからっ」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:13:10.47 ID:u8MfD43Fo
―― 公園
タンッ...タタンッ
「どうかな?」
「問題ないかと。調子がよさそうですね」
「へへー、なんだか最近調子がいいぞ」
「わたくしも精進しなくては。それでは合わせてみましょう」
「うん、頑張ろうね!」
pipipipipi
「ん……プロデューサー?」
ピッ
「はいたーい! どうしたの?」
「……うん」
「本当に!?」
「やったやったぞ!」
「うん! ありがとね、プロデューサー!!」
プツッ
「吉報が入ったようですね」
「貴音! 自分の企画が正式に決まったって!!」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:15:48.98 ID:u8MfD43Fo
【 4月 】
―――― レッスンスタジオ
「ふぅっ…………ふぅ~……」
P「お疲れ、雪歩。はい、お茶」
雪歩「は、はい……ありがとうございますぅ」
P「調子はどうだ?」
雪歩「と、とても……いいと……思います……」
P「あまり無理はするなよ」
雪歩「え……? む、無理をしてるように……見えるんですか……?」
P「してないのか?」
雪歩「……はい」
P「すまん……飛ばし気味に見えたから……」
雪歩「…………」
真「プロデューサー、時間はいいんですか?」
P「え……?」
真「あずささんの撮影ですよ」
P「あ、あぁ……そうだな。それじゃ、貴音も美希も頑張ってくれ」
貴音「心得ました」
美希「ねぇ、プロデューサー」
P「?」
美希「時間が無いの?」
P「……あぁ」
美希「……」
P「ん? 行ってくるけど、話はないよな?」
美希「……うん」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:17:03.36 ID:u8MfD43Fo
雪歩「あ、あの、お気をつけて……」
P「俺もみんなに負けないくらい頑張るから、その調子でライブに向けて頑張ってくれ!」
雪歩「は、はいっ!」
バタン
貴音「……」
真「……」
美希「それじゃ、ミキも頑張ろっかな」
真「美希がやる気になってるのも珍しいよね」
美希「だって、時間が……無いんだもん……」
貴音「美希……」
美希「うん?」
貴音「いえ……」
美希「……」
雪歩「ど、どうしたの?」
真「なんだろう、少しづつ……焦ってくる」
真「なんて言ってる場合じゃないね、練習再開しようか!」
美希「頑張るのー!」
雪歩「み、みんなの足を引っ張ってばかりだけど……!」
貴音「皆で共に進みましょう」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:18:09.08 ID:u8MfD43Fo
―― スタジオ
「「「 お疲れ様でしたー! 」」」
P「お疲れ様でした!」
あずさ「おつかれさまでした~」
P「さて、次はラジオ局ですよ。少し急ぎましょうか」
あずさ「わかりました。あの、進行表をもう一度見直してもいいですか」
P「どうぞ」
あずさ「ありがとうございます。えっと……」
P「あ、歩きながら読まないでくださいっ」クィッ
あずさ「え?」
「おっと、失礼~」
あずさ「あ、す、すいません」
P「いえ。真面目なのはいいですけど、周りを見ないと危ないですよ」
あずさ「そうですね。えっと……トークの後に新曲を」
P「話聞いてない……っ」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:19:31.21 ID:u8MfD43Fo
―― 車内
P「あずささん、移動中に読むと酔いますよ」
あずさ「うぅ……っ」
P「遅かったか。……窓開けましょう、今日は温かくて気持ちがいいですよ」
あずさ「そうですね。……ごくごく」
P「……え!?」
あずさ「ふぅ~、まだ冷たさが残りますけど、春の風って素敵ですね~」
P「…………気付いていないっ?」
あずさ「どうしたんですか?」
P「いえ。……なんでも」
あずさ「プロデューサーさん、最近、体の調子はどうですか?」
P「ぼちぼちってところですよ。あずささんは絶好調ですね」
あずさ「はい……おかげさまで……」
P「……」
あずさ「ごくごく……この紅茶、新発売なんですよね……おいし……っ!?」
P「…………」
あずさ「……っ」
P「春香の誕生日……参加できなくて残念でしたね……」
あずさ「そ、そそそうですね……っ」
P「一口しか飲んでいないので、よかったらどうぞ」
あずさ「あ、ありがとうございますっ、すいませんっ」
P「なんというか、最近……ウッカリが多いのでは……?」
あずさ「……そ、そうですか?」
P「……仕事は順調にこなしていますけど」
あずさ「…………」
P「真面目な話、名前も売れているんですから、気をつけてください」
あずさ「プロデューサーさんが居るから安心しているんですね、きっと」
P「いつでも傍にいるわけじゃないんです」
あずさ「……はい」
P「俺が注意できないところだって、これから幾つも出てきますよ」
あずさ「……」
P「もっと……」
あずさ「……」
P「すいません、いきなり説教なんて……」
あずさ「いえ、その気持ちが嬉しいですから」
P「……」
あずさ「……」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:20:49.74 ID:u8MfD43Fo
―― ラジオ局
pipipipipi
ピッ
P「はい、どうした律子?」
P「……うん。……珍しいな」
P「わかった。戻ったら相談しよう。こっちは……あと1時間くらいで終わる」
P「それじゃ、事務所で」
プツッ
『世界の音楽祭、出場が決まったそうですね』
『はい~、私たち765プロ全員で参加することになりました~』
『最近、話題が尽きない765プロですが』
『みなさんの応援のおかげですね~』
『なんだか、楽しい気持ちが伝わってくるんですけど、いいことでも?』
『二つ、ありました~』
『二つもですか、いいですね~。春といったら、気持ちも弾んできますからね。ちなみにどんなことが?』
『春の風を感じたのと、春を見つけたのと』
『おっと、同じ意味に捉えそうな言葉ですけど……。爆弾発言のような気がしますね!』
『うふふ』
P「……はい。……それでは明日の午前中に予約を……お願いします」
プツッ
P「……」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:22:44.70 ID:u8MfD43Fo
【 5月 】
―――― 事務所
「冗談じゃないわよッ!」
バンッ
律子「ちょっと……落ち着いて」
「なんで私が……ッ!!」
P「外の空気を吸いに行こう、伊織……」
伊織「うるさいわねっ! 放っておいてよ!!」
P「物に当たるなんて、らしくないだろ」
律子「少し、頭を冷やしてきなさい。自分の立ち位置が見えなくなるわよ」
伊織「……ッ!」
ガチャ
「ただ今戻りました~」
伊織「――!」
あずさ「みんなで食べられるように……ケーキを……。……?」
伊織「……っ」
タッタッタ
律子「伊織!」
バタン
あずさ「あの……なにか……?」
律子「プロデューサー、私が行くと、説教してしまいそうなので……」
P「……わかった。あずささん、この後なんですけど……」
あずさ「一人で平気ですよ」
P「すいません。迎えには必ず行きますから」
タッタッタ
バタン
あずさ「律子さん……」
律子「先月から続けて四度目。オーディションに落ちてます」
あずさ「……」
小鳥「伊織ちゃん、どうしたんでしょうか」
律子「焦り……ですかね……」
あずさ「…………」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:24:59.38 ID:u8MfD43Fo
―― 公園
伊織「……」
P「……」
伊織「焦ってるのは認めるわ。だけど、なにを焦ってるのかが分からないの」
P「……悩みでもあるのか?」
伊織「あったら、ちゃんと相談してる」
P「……」
伊織「わからないから、余計にイライラして……ッ!」
P「ちゃんと息抜きとか……」
伊織「そうじゃない、そういうのじゃ…ない……!」
P「……すまん。最近、事務所に居られないから、伊織の事……良く分からないんだ」
伊織「私がわかってないこと、アンタにわかるわけ……ないでしょ……」
P「……」
伊織「せっかくここまできて……こんなところで足踏みしている自分が……許せない」
P「……」
伊織「…………」
P「……」
伊織「レッスンがあるから、戻るわ」
P「今のまま受けて、大丈夫か?」
伊織「さぁね」
P「おいしいものでも食べに行くか? 響たちも呼んで」
伊織「なによそれ、慰めのつもり?」
P「いや、丁度いいから、今のみんなの状況を知りたいだけだ」
伊織「時間が勿体無いから、遠慮しとくわ」
P「そうか……」
伊織「代わりに差し入れ、よろしく」
P「……あぁ」
伊織「駅前のケーキ屋ね」
P「あずささんがケーキを持ってきてただろ」
伊織「……こんな重要な時期にあずさを放っておいていいの?」
P「最近は、俺が必要無いぐらいに頑張っているから……安心できる」
伊織「卑屈気味に言わないで欲しいわね」
P「はは、そうだな」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:26:08.60 ID:u8MfD43Fo
P「……うーん」
伊織「なによ」
P「伊織は……あずささん、苦手か?」
伊織「……」
P「……」
伊織「別に。距離の取り方が分からないだけよ」
P「そうだな……みんなとも交流が取れてないし……」
伊織「私たちは思い出作りに来てるわけじゃないでしょ」
P「でも、想い出はあった方がいいよな」
伊織「……」
P「相談してみるよ」
伊織「……勝手にしたらいいじゃない」
P「あぁ、良くなるように一緒に考えてみる」
伊織「……あれ?」
P「……どうした、キョロキョロして」
伊織「今……なにか……違和感が……」
P「?」
伊織「……なんだったのかしら……?」
P「……?」
「ぴ…ぃ……」
伊織「……あ…」
P「……鳥の……雛?」
伊織「…………震えてる」スッ
ヒナ「……」
P「……」
伊織「怪我してるわ。巣から落ちたのね」
P「あの巣か……。病院が近くにあったな」
伊織「アンタは先に行ってて」
P「一人で平気か?」
伊織「大丈夫……この仔は私が連れて行くから」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:28:03.02 ID:u8MfD43Fo
―― レッスンスタジオ
P「陣中見舞いに来たぞ」
亜美真美「「 兄ちゃん! 」」
「プロデューサー、来てくれたんですね!」
P「やよいの顔を見るの久しぶりだな」
やよい「そーですね! 会いたかったです!」
P「俺も顔を見れなくて寂しかったよ。ほら、差し入れだ」
亜美「やったー! さっすが兄ちゃんだよね!」
真美「なになに、何を持ってきてくれたのー?」
P「期待されると困るな……」
亜美「なんだ……ゼリーか」
真美「もっと面白いものがあるのかと……」
P「美味しいよりそっちがいいのか……難しい」
やよい「あの……伊織ちゃん、今日は来ないんですか?」
P「さっき鳥の雛を拾ってな、今動物病院に行ってる。後で来るよ」
やよい「ヒナ……?」
P「巣から落ちて怪我していたんだ。伊織が触ってしまったから、巣に戻せないと思ってな」
やよい「……そうですか」
亜美「兄ちゃん……ホワイトデーのこと……忘れてないよ」
P「まだ引っ張るのか……」
真美「今日とゆう日を、黒と赤と黄色に染めてやるぜぇ」
P「ドイツの国旗……?」
「うぅーん……自分……沖縄の事、全然知らなかったんだなー」
P「響は何をしているんだ?」
やよい「ロケに向けて、勉強だそうです!」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:30:10.63 ID:u8MfD43Fo
―― ライブ会場
キキッ
P「到着。行こう、雪歩」
雪歩「わ、私なんかが……出入りしてもいいんですか……?」
P「確かに用事は無いけど、これもプロモーションだと思えばいいさ」
雪歩「は、はいぃ……」
P「……」
雪歩「わ、わぁ……凄い……」
P「ここに来るの初めてだったか?」
雪歩「は、はい……ここであずささんが……」
P「いづれ雪歩もこのステージに――」
「おつかれさん」
P「お疲れ様です。どうでしたか、リハーサル」
「バッチリだね。最近の彼女、磨きが掛かってていいね。こっちも気合が入るよ」
P「ありがとうございます」
あずさ「ありがとうございます」
「この会場を丸々呑み込んでしまう歌声だ」
P「そう言っていただけると、こっちも熱が入ります」
雪歩「あ……」
あずさ「シー……内緒ですよ、雪歩ちゃん」
雪歩「……?」
「彼女も765プロの子?」
P「そうです、雪歩?」
雪歩「は、はいっ!?」
P「自己紹介」
雪歩「はは、萩原雪歩と申しますぅ……!」
「あはは、俺なんかに緊張しなくてもいいのに。いつか、一緒に仕事が出来る日を楽しみにしてるよ」
雪歩「は、はい! よろしくお願いします!」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:31:52.01 ID:u8MfD43Fo
「彼女――三浦あずさも初々しい感じだったけど、こんな大きなステージに立つまでになったんだ。なんだか感慨深いね」
P「監督さんの演出のおかげです」
あずさ「……」
「いやぁ、ここ半年、三浦あずさの目覚しい活躍はプロデューサーさんの実力あってのものだろう」
P「まだまだこれからですよ。これからも彼女達をよろしくお願いします」
「どんどん仕事をしていきたいね。長話もなんだから、これで。また飲みに行きましょうか」
P「はい、響が教えてくれたあの店で」
「あぁ、あの店はよかった。それじゃあ」
P「お疲れ様でした」
雪歩「お、お疲れさまでしたぁ……」
あずさ「……私、そのお店に行ったことないですよ?」
雪歩「……ふぅ」
P「彼が舞台監督。気さくな人で面倒見がいいんだ」
雪歩「……な、なんとなくですけど……わかります」
P「こっちが本気ならどこまでも付き合ってくれる。やりがいは想像以上だ」
雪歩「は、はい……わ、私もこのステージに立ちたいですっ」
P「……うん」
あずさ「うれしそうです」
P「さっき二階席を見てたけど……」
雪歩「……えっと」
P「なにもないよな……ステージじゃなくてどうして二階なんだ?」
雪歩「……い、いえ……なんでもないです」
P「?」
あずさ「勘が鋭いですよね」
P「あずささんがいないな……まさか、控え室で寝てたりするのか?」
雪歩「……えっと」
あずさ「プロデューサーさん、私はここですよ~」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:33:04.90 ID:u8MfD43Fo
P「電話してみるか……」
ピッピ
雪歩「……」チラッ
あずさ「は~い」フリフリ
P「取るの早いですね……。迎えに来ましたよ。今どこにいるんですか?」
あずさ「すいません、もう少し眺めていたいので、待っていただけますか?」
P「眺める? よく分かりませんけど、とりあえず急がなくてもいいですから」
あずさ「わかりました」
P「なんだか、声が近いような……?」
あずさ「きのせいです」
P「……どうして小声に? 何をしているんですか?」
あずさ「うふふ、ひみつです」
P「……」
あずさ「……秘密ですよ~」
P「客席の方で待ってますから……」
あずさ「わかりました~」
プツッ
P「それほど大事なことなんだろうけど……眺めるってのが分からない」
あずさ「ふふ」
P「雪歩と話がしたかったんだ。そこに座ろう」
雪歩「……は、はい」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:35:44.54 ID:u8MfD43Fo
P「舞台監督には、ちゃんと挨拶できたよな」
雪歩「はい……」
P「真や美希の話では、ちゃんと練習に付いていけてると、聞いている」
雪歩「す、すいません……っ」
P「いや、責めてるわけじゃなくて。もう土台は出来上がってるはずなんだ」
雪歩「……っ」
P「……すまん。…………昼にさ、伊織と少し会話をしたんだ」
あずさ「?」
雪歩「伊織ちゃんと……?」
P「あまり上手く話が出来なくて……伊織が抱えてるものをちゃんと聞けなかった」
雪歩「……」
P「だから、雪歩にも、上手く伝えられないかもしれない」
雪歩「?」
P「俺の力不足で雪歩の仕事を取って来れてないけど――」
あずさ「!」
P「雪歩にはまだ時間があるから、ゆっくり確実に上っていこう」
雪歩「……わ、私が……悪いんですよね……っ」
P「あぁ、違う……そうじゃないんだ」
雪歩「うぅ……っ」
P「…………またやってしまった……」
あずさ「お、お待たせしましたっ」
P「……走ってきたんですか?」
あずさ「ふぅ……っ……ふぅ~…………いいえ」
P「いいえ、って……今、息を切らしてましたよね」
あずさ「き、きのせいですよ」
P「どうしてそこで小声になるんですか?」
雪歩「ふふっ」
P「……」
あずさ「お腹が空きましたね。帰りにどこか連れて行ってほしいです」
P「レストランが帰り道にありますから……。荷物は?」
あずさ「あらあら、私ったら、取りに行ってきます~」
P「……」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:41:56.05 ID:u8MfD43Fo
―― レストラン
P「それで、何を眺めていたんですか?」
あずさ「雪歩ちゃん、事務所にケーキがあったと思いますけど、いただきましたか?」
雪歩「いえ……」
あずさ「それなら問題ありませんね、食後にケーキを食べましょう」
雪歩「え、えっと……」
P「会計は気にしないでくれ。その代わり、亜美と真美、真には絶ッ対に内緒な」
雪歩「わ、わかりました」
あずさ「私はタルト・オ・フリュイにします。雪歩ちゃんはどうします?」
雪歩「同じので……。あずささん、好きですよね……」
あずさ「うふふ、あの日食べられなかったケーキですね」
P「…………」
あずさ「あ……プロデューサーさん、私、根に持っているわけではありませんよ?」
P「……はい」
雪歩「……?」
P「あずささん、伊織の事なんですけど」
あずさ「はい?」
P「あずささんに対して苦手意識を持ってますよ」
雪歩「ッ!?」
あずさ「まぁ、そうなんですか……寂しいです」
P「時間を合わせることは難しいですけど、なんとか距離を近づけられませんか?」
あずさ「わかりました。努力してみます」
P「努力……?」
あずさ「事務所にいるようにしてみようかと」
P「はい」
あずさ「プロデューサーさんも、事務所にいるようにしてくださいね」
P「そうなんですよね、俺もコミュニケーション取れて無いから……さっきは悪かった、雪歩」
雪歩「い、いえ……。え、えっと……その……直球ですね……っ」
P「遠まわしに言うより、この方が解決策を見つけやすいみたいなんだ」
雪歩「……」
P「あずささん、どうして今日、雪歩を連れてきたかわかりますか?」
あずさ「プロモーションと、話をしたかったからですよね」
P「そうです。あずささん、事務所でケーキ、食べましたよね」
あずさ「……はい」
P「体系管理、どうします?」
あずさ「明後日、ご一緒にジムでトレーニング……ですよねっ」
P「一緒って……俺は甘いもの食べていませんから、朝で充分です……」
あずさ「それじゃあ、それをご一緒します~」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:43:46.34 ID:u8MfD43Fo
P「少しズレたけど、こんな風になるんだ」
雪歩「朝……?」
P「朝のランニング。まてよ……話をしたかったのは偶々なんだよな……あれ?」
雪歩「そ、それは……」
P「雪歩、知ってるのか? 教えてくれ」
あずさ「ゆ、雪歩ちゃん内緒ですよ~」
P「あずささん、ズルイですよ?」
あずさ「?」
P「俺だけ見透かされてるようで、悔しいんですけど」
あずさ「プロデューサーさんが分かりやすい人だからですよ、きっと」
P「単純って事ですね」
あずさ「そうですよ。混じりけの無い、素直な人です」
P「浅いとも取れますけど」
あずさ「物は言いようですね。良い方を選びましょう~」
P「誤魔化されてるだけじゃないかと……」
あずさ「うふふ」
P「本格的に誤魔化さないで下さい。で、雪歩、眺めていたってなんだ?」
あずさ「内緒ですよ……雪歩ちゃん?」
雪歩「……」
P「雪歩、どうした?」
雪歩「あ……い、いえ……。意思の疎通……が……できてると……思って……」
P「……」
あずさ「一日一回は顔を合わせてますから。合わせているからじゃないかしら~」
雪歩「ど、どうして言い直したんですか?」
P「ごちそうさま。タルト・オ・フリュイを注文してきますけど、それでいいですよね」
あずさ「お願いします」
雪歩「は、はい」
P「少し席を外します。ゆっくりしててください」ガタッ
あずさ「わかりました。仕事の電話ですか?」
P「いえ、他のところですよ」
スタスタスタ
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:45:16.18 ID:u8MfD43Fo
雪歩「他……?」
あずさ「雪歩ちゃん、変なことを聞くようだけど」
雪歩「は、はい……?」
あずさ「プロデューサーさんのことで気になることある?」
雪歩「えっと……今日……突然、あずささんを迎えに行こうと言ってくれたこととか…かな……?」
あずさ「やっぱり、少しずつ、変化しているみたい」
雪歩「変化?」
あずさ「以前とは食事の傾向も変わっているのよね……野菜中心で……」
雪歩「…………」
あずさ「雪歩ちゃんと一緒に食事をするのも久しぶりよね」
雪歩「今日は、知らなかったことを沢山知ることができて……楽しいです」
―― 雪歩の家
P「それじゃ、おやすみ」
あずさ「おやすみ~」
雪歩「お、おやすみなさい……」
あずさ「プロデューサーさん、ドライブに行きませんか?」
P「行きませんっ、明日早いって言ってるじゃないですかっ」
バタン
ブロロロロロロ
雪歩「…………」
雪歩「……どうして…………怖くなるのかな……っ」
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:47:09.99 ID:u8MfD43Fo
―― 翌日・事務所
あずさ「真ちゃん、そろそろ行きましょうか」
真「おっと、そうですね。それじゃ、律子、行ってくるね」
律子「えぇ。しっかりね」
ガチャ
伊織「おはよ……」
あずさ「おはようございま――おはよう、伊織ちゃん」
伊織「プロデューサーは……?」
あずさ「これから、合流してライブ会場に行くけど……」
伊織「……そう」
あずさ「あの、伊織ちゃ――」
真「あずささん! 時間が!」
伊織「話があっただけ。大したことじゃないから……」
あずさ「……わかりまし――わかったわ。そう、伝えておくわね」
伊織「……」
バタン
伊織「相談した結果が……あれなのかしら」
律子「聞いたわよ伊織、雛を見つけたんだってね」
小鳥「プロデューサーさんが、よく見つけたなぁあの視点は――」
伊織「落ちたんじゃなくて、落とされたかもしれないんだって」
律子小鳥「「 え? 」」
伊織「雛が病気を持ってると、親鳥は育児を放棄して……巣から落とすこともある……」
律子「……そう」
小鳥「……」
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:48:35.46 ID:u8MfD43Fo
「おはようございまーっす!」
伊織「獣医に頼んだから、大丈夫でしょ」
律子「あんたが育てるもんだと思ってたわ」
伊織「冗談でしょ。知識の無い私に育てられるわけがないじゃない……せっかく助かったのに」
律子「正論、ね」
やよい「伊織ちゃん、大丈夫?」
伊織「えぇ、昨日はオーディションに落とされて、ちょっとムシャクシャしていただけ」
やよい「そ、そうだったんだ……」
伊織「今日のボイスレッスン頑張りましょ、やよい」
やよい「うん!」
律子「伊織、ちょっとこっち来て」
伊織「なによ?」
律子「あんた……あずささんの事、苦手なの?」
伊織「昨日まではね」
律子「あ、そう」
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:51:22.97 ID:u8MfD43Fo
【 6月 】
―――― レッスンスタジオ
「背中押してくれる?」
「えぇ……」グッ
「いっちに、さんしっ」
「ごうろく、しちはち」
「最近……プロデューサーさんの顔みてないなぁ……」
「そうね……」
「いっつも入れ違いなんだよね」
「……タイミングが合わないから、しょうがないわ」
「そうなんだけど。伊織と真にも会ってないや……」
「二人とも最近忙しそうだから……」
「だから私、響ちゃんが企画したロケ、とても楽しみなんだよ」
「……実は私も」
「響ちゃんと言えば、燕の雛の話、知ってる?」
「伊織が拾った雛?」
「うん。ありがとう、次は千早ちゃんの番ね」
千早「よろしく」
「いっちにぃ!」
千早「さんしっ……」
「にぃにぃ!」
千早「さんしっ……掛け声がさっきと違う……!」
「やよいと響ちゃん、あずささんで巣立ちを見送ったんだって」
千早「……よかったわね」
「うん……」
千早「どうしたの、春香?」
春香「あぁー、みんなに会いたいよ千早ちゃん」
千早「そうね……」
春香「私たちしかいないから、駄々こねてみようかな」
千早「……止めたほうがいいわ」
春香「でもね、なんかこう……抑えきれないわだかまりが……」
千早「あの、続きをお願いしたいんだけど……」
春香「まだ律子さんとあずささんが来てないから、遊ぼうよ!」
千早「何を言っても無駄なのね……。わかった……見てるから……」
春香「私一人で遊ぶの? それじゃ、受け身の練習でもしようかな」
千早「フローリングだから痛いと思う……」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:53:32.50 ID:u8MfD43Fo
春香「えいっ」
ゴロゴロ ザッ
春香「あいたたた」
千早「だから言ったのに……」
春香「はぁ…………どうしてかな、気持ちが先走っちゃう」
千早「…………春香は今、何をみているの?」
春香「え? ……照明?」
千早「それじゃ、私も」
春香「ここが河川敷だったら、二人並んで空を見上げて……青春って感じだよね」
千早「……そうなの?」
春香「そうだよ」
千早「……」
春香「……」
千早「私も、焦っているのだと思ってた」
春香「……?」
千早「みんな忙しくなってきて、私も負けないようにって」
春香「……うん」
千早「だけど、何かが違う」
春香「うん」
千早「これは焦りじゃなくて……」
春香「……不安」
千早「……」
春香「何が不安なのかわからないから……」
千早「……もっと不安になる。だから、春香がジッとしていられないもの分からないではない」
春香「じゃあ、何かして遊ぼうよっ!」
千早「分からないではないわけで、遊ぶという選択は……ない」
春香「じゃあ、一人で遊ぼうー」
ゴロゴロゴロ
千早「ちょ、ちょっと春香?」
春香「小さい頃やらなかった? こうやってゴロゴロ横転するの」
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:55:40.02 ID:u8MfD43Fo
千早「手首を傷めないよう気をつけて……記憶にないから、やってないと思う」
春香「そうなんだー。よいしょ、よいしょー」
ゴロゴロゴロ
ガチャ
あずさ「おまたせ……」
律子「え……」
ゴロゴロゴロ
春香「お、おはようございます。目が回って――」
P「……」
春香「目が……」
P「何をやってたんだ、春香……」
春香「あ!」
P「ゴロゴロ回転してたよな……」
春香「ち、違いますよっ!」
千早律子「「 プロデューサー 」」
あずさ「プロデューサーさん」
P「わかった。見なかったことにして俺は営業に戻る。律子、音楽祭の事項、よろしくな」
律子「はい、任せてください」
P「千早、久しぶりだな。顔色もいいみたいだ」
千早「おかげさまで」
P「春香、頑張れよ」
バタン
春香「何を応援されたんだろう!!」
千早「あずささん、ストレッチの相手をお願いします」
あずさ「は~い」
春香「久しぶりに会ったと思ったら変なとこ見られたぁー、恥ずかしいー」ジタバタ
律子「今日で最後のレッスンなんだから、気を引き締めていくわよ、春香」
春香「は、はい!」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:57:18.95 ID:u8MfD43Fo
【 初夏 】
―――― 事務所前
P「お気をつけて。律子たちから く れ ぐ れ も離れないでくださいね」
あずさ「……はい」
春香「行ってきます!」
千早「それではお先に」
律子「後の事、よろしくお願いしますね」
P「あぁ。律子もみんなのこと頼んだぞ」
律子「任せてください!」
P「真、貴音、雪歩、美希。4人もしっかりな」
貴音「はい」
雪歩「が、頑張ってきます……」
真「先に行って待ってますからね、プロデューサー」
美希「安心して任せて欲しいの」
P「……うん」
美希「どうしたの?」
P「いや、最近の美希は……なんだか、気合が入ってるな、と」
美希「……ミキ、頑張るよ」
P「その調子で、みんなを導いてやってくれ」
美希「……」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:58:16.34 ID:u8MfD43Fo
美希「今を導いてるのってあずさだよね」
P「……え?」
美希「なんでもない。それじゃあね」
P「行ってらっしゃい。……って、あずささん?」
あずさ「……はい?」
P「早く車に乗らないと……」
あずさ「えっと……その、海に沈む夕陽を……一緒に見たいと思いまして」
P「……?」
あずさ「その、綺麗だと響ちゃんに教えてもらって」
P「……そうですか」
あずさ「……いいですか?」
P「そうですね、みんな一緒に」
あずさ「行ってきますっ」
タンタンッ
バタンッ
「行ってきまーす!」
P「あぁ、後でな!」
ブロロロロロ
P「……」
P「また、約束を……俺は――。」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 21:59:23.08 ID:u8MfD43Fo
―― 事務所
やよい「おはようございまーす! 今日もいい天気ですね!!」
P「いや、沖縄の空は快晴らしいが、ここは降り出しそうだぞ……やよい」
やよい「えへへ、そうなんですかー!」
P「やよいの元気を見ていたら……気持ちが晴れてきたなぁ」
伊織「空港に向かわなくていいの?」
P「亜美と真美がまだ来てないんだ」
伊織「響は?」
P「途中で合流するから、二人が到着次第出発だ」
伊織「……そう」
P「……」
伊織「なによ?」
P「……焦りは解決したのか?」
伊織「まだよ。……だけど、それを気にしてたら前に進めないから、今は置いておくわ」
P「……そうか」
ガチャ
亜美「お待たせー!」
真美「さぁー、遠足の始まりだー!」
やよい「楽しみだよねー!」
P「遠足じゃない。そのお菓子の入った袋、置いていこうな真美」
真美「……ダメなの?」
P「……あぁ。ダメだ」
真美「……しょぼん」
小鳥「しょぼんなのは独りお留守番の私っ」シクシク
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 22:01:15.79 ID:u8MfD43Fo
―――― 那覇空港
「自分の故郷ーッ!!」
P「元気いっぱいだな、響」
響「この太陽の日差し! アスファルトの焼ける匂い! 空の蒼さ!」
響「これがうちなーだよ、プロデューサー!」
真美「コンビニ寄ろうよひびきん」
響「ま、真美、気分が台無しだぞぉー!」
亜美「暑い……暑いですぞぉ……。アイスを食べたいですぞひびきん~」
伊織「もう梅雨は明けたのね……」
P「2日前だそうだ。ラッキーだな」
やよい「ラッキーですねー!」
真美「ひーびーきーん!」
響「ダメだぞ、真美。そろそろ移動しなきゃいけないんだからな!」
P「迎えに来ているはずの運転手さんは……どこだ?」
やよい「あ、あの男の人じゃないですか?」
P「こっちに来るな」
響「よーし、みんなで挨拶するぞー!」
P「そうだな。最初が肝心だ」
男「……えっと、カウンターは3階だったよな」
「「「 よろしくお願いしまーす!! 」」」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 22:02:39.26 ID:u8MfD43Fo
男「……?」
タッタッタ
伊織「人違いじゃないの!」
P「……すまん。恥をかかせてしまった」
やよい「わ、私が……悪いんです……」
亜美「沖縄の服を着ていたから、しょーがないっしょ」
真美「いおりん、挨拶してなかったよね」
伊織「し、したわよ」
響「んー?」
「あ、あの……」
響「カウンターは3階だぞ?」
「あ、いえ。……765プロの方ですよね」
P「はい、そうです」
「私、みなさんの旅のお供をさせていただく、美弥嶺(れい)と申します」
亜美「運転手さんはナイスバデーですな」
真美「ふむふむ……これはこれは。あずさねぇねぇに負けず劣らずアルカトラズ」
P「こら」
やよい「よろしくおねがいしまーっす!」
響「ゆたしくうにげーさびら!」
伊織「よろしく」
嶺「はい、よろしくお願いします」
P「騒がしくなると思いますが、これからよろしくお願いします」
嶺「バスの運転手としてじゃなく、ガイドも務めさせていただきます」
響「自分、たくさん勉強してきたから、運転手さんに負けないからね!」
嶺「ふふっ。それでは、バスに案内致します」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/04(金) 22:05:49.16 ID:u8MfD43Fo
―――― バス
響「ハイサイハイサーイ! やってきました自分の故郷、OKINAWAーッ!」
やよい亜美真美「「「 OKINAWA!! 」」」
伊織「やれやれ、ね」
P「……」
響「えっと、なんだっけ?」
P「さっそく段取りを忘れたのか」
P「沖縄に来た経緯、今のこのバスの目的地、今居るメンバー、最後に俺を軽く紹介」
響「わかった」
響「まずは経緯からだね。去年の夏に開催された、世界の音楽祭に自分たち765プロが出場したんだぞ!」
伊織「そう。可憐で優美な私、水瀬伊織ちゃんと」
やよい「あずささん、真さん、律子さん」
亜美「去年は参加できなかったんだよねー」
響「そのメンバーでの出場でファン投票の結果、なんと! STAR OF FESTAの称号を手に入れましたっ!」
伊織「まぁ、私が出場したんだから、当然よね~」
響「その音楽祭が北谷で開かれてるんだけど、今、このバスが向かうのはお昼ご飯を食べるお店!」
やよい「エンダーですよねー!」
響「そうだぞ。そして、紹介しまーす。亜美、真美、やよい、自分のグルーヴィー」
伊織「ちょっと?」
響「伊織も入れてグルーヴィーチューンチームだぞ!」
P「違う、ファンキーノートチーム」
響「あはは。間違えちゃった。今、ツッコミを入れたのが、カメラマンでありディレクターのプロデューサー」
伊織「役名が三つもあってややこしいわね」
響「沖縄の観光地を周って面白おかしく楽しんでいくさー!」
響「というわけで、このロケはこのようになっています! 終わりっ!」
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:02:33.40 ID:Dn6vDb0to
―――― 北谷
あずさ「お待ちしていました~」
P「ッ!?」
亜美「あずさねぇねぇ?」
あずさ「みんなが到着するって聞いて、ここまで迎えに来ちゃいました」
やよい「ありがとうございまーっす!」
P「え? 一人でですか?」
あずさ「もちろんです」
P「え?」
あずさ「もぅ、信じてくれないんですか?」
P「……」
千早「……」フルフル
P「信じます」
あずさ「うふふ。それじゃ会場まで案内しますね」
響「……千早が――むぐ」
伊織「いいから、千早が見守ってるとか、いわなくていいから、ね?」
響「……」コクリ
真美「見守ってるってことは……」
P「ちゃんと、一人で……迷わずに……?」
響「曲が聞こえてくるぞ……」
『 CHANGE IN MY WORLD!! 』
やよい「この曲は……!」
『 止まらない愛 探して 』
あずさ「真ちゃん達です」
P「す、少し急ぎましょうか。俺も早く観たいですから」
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:04:05.83 ID:Dn6vDb0to
―― ライブ会場・控え室
P「舞台袖が控え室も兼ねてるんだな……」
律子「長旅、お疲れ様です」
P「お疲れさま。どうだった、午前の部は?」
律子「バッチリです。安心してください」
P「……そうか」
『 新しい未来追いかけながら
私らしい私でもっともっと 』
P「……雪歩もみんなに付いていってるな。いい感じだ」
あずさ「あの、プロデューサーさん」
P「……」
あずさ「長いフライトでしたから、疲れているんじゃありませんか?」
P「そうですね……」
あずさ「体の調子はどうですか?」
P「はい……」
あずさ「やよいちゃんが肩車してほしいそうです」
P「わかりました……。貴音も気合入ってるな……最近なにかあったのか……」
律子「どうしたんですかね。いつもならこっちを気遣うのに」
あずさ「集中すると周りの声が耳に入らなくなるんです」
千早「え、そ、そうなんですか?」
あずさ「月に二回くらいですけど……」
春香「し、知りませんでした……」
亜美「兄ちゃん、パフェが食べたいな」
P「さっきアイス食べただろ……?」
真美「意識を取り戻したかー」
伊織「はやく肩車しなさいよ」
やよい「あ、あの……その……えっと」
P「肩車……?」
響「……」
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:05:14.91 ID:Dn6vDb0to
―― バス内
律子「はーい、みんな今日はお疲れさまー。これからホテルに戻りまーす」
「「「 はーい 」」」
響「このロケの説明はしなくていいの?」
律子「ホテルでしましょう。カメラマン役のプロデューサーがいないからね」
響「……わかった。今日家に泊まるメンバーは決まってるんだよね」
律子「えぇ。民宿は、よみたんにあるって話だけど、運転手さんに確認してあるわよね」
響「バッチリだぞ!」
亜美「あれ、あずさねぇねぇもいないよ?」
律子「落し物を探してるから、もう少し待っていましょ」
春香「えんだー?」
真美「おいしかったよー」
美希「あふぅ」
雪歩「……ふぁぁ」
真「ボクも……眠くなってきた……」
貴音「西の空が……なんとも美しい……」
やよい「綺麗ですねー……」
伊織「……この景色を見てるのね」
千早「うん……きっとね……」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:06:32.16 ID:Dn6vDb0to
―― 砂浜
P「……あれ?」
あずさ「見つかりましたか?」
P「いえ……誰も……いない……」
あずさ「あ…あれ……?」
P「……」
あずさ「……!」
P「律子か……」
あずさ「……え、えっと」
P「バスに戻りましょう。今日は朝早かったので、疲労が溜まっているはずですよ」
あずさ「ま、まだ……平気ですよ…っ……?」
P「あずささんもそうですけど、みんなこのロケの為に過密なスケジュールを――」
あずさ「……最近」
P「……?」
あずさ「突き放されているように感じるのは気のせいでしょうか」
P「え……」
あずさ「事務所に居る時間も少なくなってると、小鳥さんから聞きました」
P「仕事が順調な証拠ですよ。嬉しい悲鳴ってやつですね」
あずさ「以前のプロデューサーさんなら……」
P「……」
あずさ「いえ、なんでもありません。……私の勘違いだったみたいですね」
P「そう…ですか……」
あずさ「私に時間をください」
P「……」
あずさ「応えてくれないんですか?」
P「どうしたらいいのか、分からなくて」
あずさ「今は一緒に、夕陽を見ます」
P「……」
あずさ「あの先はどんな景色なんでしょうね~」
スタスタスタ
P「あ、ちょっと、あずささん……!」
P「……」
P「…………すいません……本当に」
タッタッタ
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:08:09.81 ID:Dn6vDb0to
―――― 我那覇邸
響「とうちゃーく!」
P「ここが響の実家……」
真「よいしょっと」
雪歩「ここが……」
貴音「響の育った家、なのですね」
美希「意外と近かったね~」
あずさ「まぁまぁ……素敵なお家ですね~」
P「……運転手さん、明日からもよろしくお願いします」
嶺「はい。こちらこそよろしくお願いします」
響「運転手さんも一緒にご飯食べていくよねっ!」
嶺「お気持ちだけで。戻って業務報告もありますから」
響「残念だぞ」
嶺「ありがとうございます。それでは」
響母「遠いところからよく来てくれました。私、響の母をやっています」
P「初めまして、私、765プロで我那覇響をプロデュースしている者です」
響母「話は響から聞いていますよ」
P「響は単身で上京してきたにも関わらず、元気で明るく、事務所のみんなと楽しく過ごしています」
響母「……」
響「コケ麿~!」
コケ麿「コケー!!」
響「会いたかったぞ~!!」
コケ麿「コケー!!」
P「仕事現場でも今のように、誰にでも温かく接しているので、潤滑油のような存在ですよ」
響母「え、響」
響「うん?」
響母「絶対に逃がすんじゃないよ?」
響「はぁ?」
響「それより、アニキは?」
響母「ニィニィはまだ仕事」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:09:33.70 ID:Dn6vDb0to
響母「さぁさ、みなさん上がってくださいね~」
響「遠慮することないぞー」
真「友達のお家にお邪魔するってなんだか緊張するなぁ」
雪歩「う、うん……」
貴音「……」
美希「お邪魔するの~」
あずさ「あ、プロデューサーさん」
P「はい……?」
あずさ「背中に糸くずが……はい、取れました~」
P「ありがとうございます」
あずさ「いえいえ」
響母「……」
響「おかー? はやく、夕飯の――」
響母「響、あんた、諦めなさいね」
響「はぁ?」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:11:04.83 ID:Dn6vDb0to
―― 仏間
響「おとー。プロデューサーとみんなを連れてきたよー」
P「響、俺も線香をあげてもいいかな」
響「うん。おとーも喜ぶよ」
あずさ「私も、失礼して」
響「……うん!」
P「――。」
あずさ「響ちゃんのおかげで、私はいつも楽しく過ごせていますよ。
元気な、その姿をいつまでも見守っていてください」
真「ここでなにを?」
貴音「響のお父様にお祈りを捧げているのですね」
雪歩「わ、私の家にある仏壇より広いです……」
美希「ミキもいいかな?」
響「うん……挨拶してくれると……嬉しいな」
貴音「わたくしも」
真「えっと……この鉢でいいのかな」
雪歩「し、失礼します……」
P「……」
あずさ「……」
貴音「――。」
美希「誰にでも優しく接している響はみんなに好かれているの、
だから安心してゆっくり休んでね、響のお父さん」
P「美希……」
貴音「言葉には力が宿ります。美希の想い、必ずや届いていることでしょう」
真「そっか……。響のお父さん、響はいつも一生懸命に頑張っています、見守っていてください!」
雪歩「響ちゃんは、いつも私を励ましてくれてます……今日は挨拶ができて嬉しいです……」
響「……」グスッ
P「……」
響母「…………」
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:13:05.35 ID:Dn6vDb0to
―― 居間
美希「ご飯美味しかったの、ミキ食べ過ぎちゃった」
あずさ「美希ちゃん、食べてすぐに横になったら」
美希「じゃあ、あずさの膝を借りるね」
あずさ「えっと…………じゃあって……?」
美希「うーん、いい気持ちなの」ゴロゴロ
P「こら」
美希「羨ましい?」
P「今は大事な話をしてるんだぞ」
美希「はぁい」
貴音「……」
雪歩「……」
あずさ「……」
P「明日は午前に響たちのチームがライブに参加。午後はあずささんたちのチーム」
響「歌いまくるぞー!」
P「午後に、あずささんを除いたここにいるメンバーで観光地を周ってロケだ」
美希「……あふぅ」
雪歩「あ、あの、観光地は決まっているんですか?」
P「あぁ」
響「首里城と、公設市場だぞ」
真「首里城は有名だけど、公設市場ってあまり聞かないね」
響「テレビでよく流れてたけど、真はアンテナが足りないぞー」
貴音「わたくしも、幾つか拝見したことがあります」
P「運転手さんがガイドをしてくれるから、心強いな」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:14:45.65 ID:Dn6vDb0to
P「……と、まぁ、こんなものかな」
あずさ「プロデューサーさん、明日の朝はどうされます?」
P「……そうですね。どうしようかな」
真「朝?」
P「いや、気にしないでくれ」
P「適当にやります。せっかくの休暇みたいなものですから、あずささんはゆっくりしてください」
あずさ「……」
P「それじゃ、部屋に戻って休むように。寝坊して響のお母さんのご飯を食べられない、なんてことの無い様に」
美希「わかったのー」
P「俺は部屋で仕事を片付けてくるけど、何かあったら言ってきてくれ。おやすみ、みんな」
スタスタスタ
貴音「お休みなさいませ」
雪歩「お、おやすみなさい……」
真「……」
響「……むぅ」
美希「素っ気無いね」
あずさ「……」
真「あずささん、プロデューサーって……いつもあんな感じですか?」
あずさ「最近は……そうね……伊織ちゃんの雛の巣立ちの辺りから」
貴音「……」
真「せっかく色々とお喋りできると思ったのになー……」
雪歩「うん……」
響「つまんないぞ……」
あずさ「明日も早いから、部屋に戻りましょう」
響「うぅー」
あずさ「うふふ、私に提案があるのよ」
貴音「提案……?」
真「なんですか?」
あずさ「それは部屋で、ね」
雪歩「……は、はい」
響「楽しいことなら大歓迎だぞ」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:16:31.81 ID:Dn6vDb0to
―― 階段
貴音「……?」
「だけど、やっぱり、俺でもフォローできないところが出ているみたいですね。
だから、今回みたいな仕事が楽しいみたいで……良かったな、と思っています」
「……大変だや」
貴音(プロデューサーと……響のお兄様……?)
「いえ、みんなが頑張ってるのに、俺が弱音を吐くわけには……って、
こんなこと言ってる時点で頼っちゃってますけど」
「歳も近いし、男同士だから言えることもあるさ。気にしないでいいよ」
貴音(月を望むのは明日に――)
「もう一つ、聞いてもらってもいいですか?」
「なんね?」
「ドラマの仕事を貰ってきました。内容は、
『療養生活を支える物語』です」
「……ふむ」
貴音「?」
「……」
「……え?」
「誰が適役かな……と」
「その相談は乗れないな……」
「そうですよね、すいません」
「それは全然いいけど、候補はいるんでしょ?」
「響の持つ暖かさに注目しています……」
「暖かさ?」
「お兄さんもそうですけど、沖縄の暖かさを感じました」
「そうね?」
「食事のときも、お母さんと響を見てると……」
「響の温かさ、か……」
貴音「……」
貴音(この不安は……)
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:19:05.42 ID:Dn6vDb0to
【 二日目 】
チュンチュン
チュンチュン
―― 台所
P「おはようございます」
響母「はやいね、どうしたの?」
P「少し走ってこようかと思いまして」
響母「……以心伝心だね」
P「?」
響母「なんでもないさ。迷子にならないようにねー」
P「は、はい」
―― 玄関
P「迷子か……」
ガチャ
P「すでに迷子なのかも――」
あずさ「おはようございます~」
P「え?」
真「ほら、雪歩、ちゃんと体を解さないと」
雪歩「う、うん……真ちゃん、引っ張って」
響「あだだだっ、た、貴音っ」
貴音「失礼しました。身長差が不幸を招いたようです」
美希「あふぅ」
あずさ「美希ちゃんもストレッチしないと。はい、背中を合わせて、行くわよ~」
美希「んー……」
P「……」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:21:33.74 ID:Dn6vDb0to
――…
真「はっ……はぁっ……、いっちばん!」
響「うぎゃー! 負けたぞー!」
真「へっへ~ん」
響「悔しい……、自分のホームなのに……!」
雪歩「ふぅ……ふぅっ……はぁ、なっ……なんとかぁ……」
貴音「大分体力も付いてきましたね、雪歩」
雪歩「お、おかげさまで……って、涼しい顔……っ」
P「みんな、クールダウンをちゃんとしとくんだぞー」
「「「 はーい 」」」
P「俺はもうちょっと走ってくるから、先にシャワー浴びといてくれ」
真「あ、それじゃ付き合いますよ」
P「せっかくレディーファーストしてるのに」
真「あ、そうなんですかぁ、えへへー」
P「じゃ、行って来る」
タッタッタ
真「はっ!? 上手くかわされた気分!」
雪歩「あ、あれ……美希ちゃんとあずささんが……まだ……」
貴音「……」
響「自分ももう少し走ってこようかな」
真「ダメだよ、響。せっかくのプロデューサーの厚意を」
響「……わ、わかったぞ」
真「明日もあるんだから、急がない急がない」
響「だけど、プロデューサーとあずささんが泊まりロケで、毎朝走っていたなんてねー」
真「なんか、いいよねぇ……! いいなぁ、いいなぁ……!」
貴音「……」
雪歩「四条さん……?」
貴音「いえ……。それでは……参りましょう」
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:22:52.17 ID:Dn6vDb0to
あずさ「はっ……はっ……」
美希「あ、あずさ! ミキたち迷ってない!?」
あずさ「だ、大丈夫……っ……大丈夫……っ」
美希「す、ストップなの!」
あずさ「ふぅ~、わかったわ。……でも、道を戻ってるだけだから、大丈夫よ?」
美希「はぁっ、はぁ……そ、そんなに大丈夫って言われると……信用できないの……」
あずさ「うふふ、ほら、美希ちゃん」
美希「ふぅぅ…………あれ?」
P「あれ!?」
あずさ「もう一周するんですか?」
P「……はい」
あずさ「ご一緒しますね」
P「あずささん、道に迷って逆走してましたね」
あずさ「そうみたいですね~」
美希「……」
P「美希、疲れたか?」
美希「あずさをもっと信じたほうがいいの」
P「?」
美希「ミキが言うことじゃないけどね! 先に着いたほうがおかずを一品多く貰えるのー!」
タッタッタ
あずさ「あらあら~」
P「……しょうがないな」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:24:13.58 ID:Dn6vDb0to
―――― バス
響「今日も一日ゆたしくうにげーさびら!」
嶺「はい、よろしくお願いします」
P「ライブ会場に戻って、響たちのライブの後、観光撮影だ」
真「わかりましたー!」
雪歩「げ、元気一杯だね、真ちゃん」
貴音「……」
美希「すやすや」
あずさ「……」
響「あずささん?」
あずさ「はい?」
響「どうしたの? ぼんやりしてたけど」
あずさ「響ちゃん、プロデューサーさんが食後に何か飲んでいたもの、それが何か解る?」
響「うん……ビタミン剤って言ってたけど……?」
あずさ「……そう…ですか」
響「?」
あずさ「なんでもないのよ、気にしないでね」
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:54:16.74 ID:Dn6vDb0to
―――― 北谷・サンセットビーチ
春香「おはようございますっ、プロデューサーさん!」
亜美真美「「 おはよー、兄ちゃん! 」」
千早「おはようございます」
やよい「おはようございます!」
P「みんなおはよう! 今日も頑張って行こうな!」
「「「 はいっ! 」」」
P「お子様チー……ファンキーノートチームは午前の出番だから、気を引き締めていけよ!」
伊織「お子様って言ったわね!?」
P「さぁ、観客が待ってるぞ! 舞台袖で準備だ!」
やよい「はい!」
響「張り切っていくぞー!」
亜美真美「「 いえーぃ!! 」」
律子「元気ね……」
あずさ「……」
律子「あずささん、様子はどうでしたか?」
あずさ「そうですね……律子さんはどう見えます?」
律子「私は……いつも通りに見えるかな……」
あずさ「やっぱり、ずっと一緒にいないと気付けないみたいですね」
律子「何か、ありましたか?」
あずさ「少しだけ……」
律子「……この沖縄ロケが分岐点なのかもしれませんね」
あずさ「はい」
あずさ「みんなと一緒に過ごせる……」
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:55:55.90 ID:Dn6vDb0to
―― ライブ会場・控え室
『 Yo 灯台 もと暗し Do you know!? 』
『 ギリギリで おあずけ Funky girl 』
『ファンキーノートチームでしたー!!』
『それじゃ、みんな、またねー!』
ワァァアアアアア!!!
P「……調子良さそうだけどな、伊織」
亜美真美「「 兄ちゃん! 」」
響「自分たちのステージ、どうだったー!?」
P「文句無い出来だ。とてもよかったぞ!」
やよい「やったね、伊織ちゃん!」
伊織「ま、当然だけど、満足できたわ」
P「着替えをして、さっそく観光に行こう」
「「「 はーい! 」」」
律子「次は私たちの番ね、気合入れていくわよ」
春香「了解ですっ」
千早「えぇ」
あずさ「うふふ」
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:57:44.00 ID:Dn6vDb0to
―――― バス内
亜美「二日連続エンダー……」
響「さすがに、もう……遠慮したいぞ……」
やよい「おいしかったけどなー」
貴音「真に、堪能できた喜びを感じています」
真「ボクたちは初めてだからね……」
雪歩「え、えっと……次はどこですか、プロデューサー」
P「まずは首里城、次に牧志公設市場だな」
響「ねぇねぇ、プロデューサー、公設市場の二階ににね、食堂があるんだよー」
P「沖縄料理が食べられるのか?」
響「そうだぞ。ヒージャー汁とヤギの刺身、どっちがいい?」
美希「すやすや」
真美「ひーじゃ汁にしよう!」
P「どっちでもいいんだけど、響のお勧めは?」
響「ヒージャー汁だぞ!」
伊織「ひぃじゃぁってなんなの?」
響「ヤギ!」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 21:59:38.45 ID:Dn6vDb0to
―――― 牧志公設市場
嶺「豚の頭、チラガーになります」
雪歩「……ふぅ」フラリ
やよい「雪歩さん、しっかり!」グググッ
真美「やよいっち、ナイスフォローだよ!」
P「インパクトあるな……」
嶺「そうですね。内地の方は、大抵驚かれます」
P「内地……北海道や沖縄から見た、本州を差す呼び方ですね」
嶺「そうです」
P「運転手さん……は、内地の方?」
嶺「出身は札幌になります」
P「そうなんですか。札幌から……沖縄へ……環境の差が凄いですけど、どうしてそこまで?」
嶺「ふふ、沖縄に魅了されました。私みたいな人をシマナイチャーと呼ぶそうですよ」
「もしかして、響ちゃんじゃない!?」
「そうだぞー! って、変装してるんだから、大きな声で呼んじゃダメっ」
「ほら、響ちゃん、これ食べていってよ」
「ありがとね! ん~、まぁさんー」
「亜美ももーらい!」
「はいはい、どうぞ~」
嶺「響さんはとても人気がありますね」
P「地元に愛されてますね。沖縄に住んでどれくらいなんですか?」
嶺「まだ2年ほど」
真「……」スゥ
P「2年でまだ……う゛!?」ゾクリ
真「誰とでも仲良くなるのプロデューサーの良い所だと思いますけど……大事な人のこと――」
貴音「――努々お忘れなきよう」
雪歩「……」
P「……うん」
雪歩「…………」
伊織「こんなところでなにを油売ってるのよ」
やよい「響さん達2階に上がりましたよー?」
P「じゃあ、いただくか。ヤギ」
伊織「血の気が引いてるわね? 何があったのかしら」
真「さぁね~」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:00:16.48 ID:Dn6vDb0to
貴音「わたくしたちも参りましょう」
雪歩「あ、あの、四条さん」
貴音「?」
雪歩「大事な人って、あの人ですよね」
貴音「……そうですが」
雪歩「……」
貴音「どうしたのです?」
雪歩「辛い顔を……していませんでしたか……?」
貴音「……え」
……
…
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:02:54.02 ID:Dn6vDb0to
―――― ホテル・ロビー
P「うぅ……食べ過ぎた……」
真美「だいじょうぶ、兄ちゃん?」
P「……胃が重い……!」
伊織「サトウキビジュースなんて無理して飲むからよ」
真「あれが止めだったね。急所にガツンと」
P「……部屋で横になってくる」フラフラ
やよい「だ、大丈夫ですか、プロデューサー……」
P「大丈夫……だけど、あずささんには内緒にしておいてくれ」
雪歩「ど、どうしてですか?」
P「最近、なにかと心配させてしまってるから。……食べすぎで寝込んでるって情け無いだろ」
伊織「……はぁぁ、ほんっとーに情け無いわね」
亜美「大丈夫だよ。亜美は兄ちゃんの事、カッコいいと思ってるからね!」
P「気を遣わせて悪いな、亜美……」
律子「お帰り~って、どうしたんですか?」
P「食べ過ぎた……。仕事も残ってるから、少し篭ってくる」
フラフラ
律子「そうですか……お大事に……」
貴音「……」
伊織「……まったく。無理して食べることないじゃないの」
やよい「えへへー」
伊織「?」
響「あ、バッテリーが切れちゃうぞプロデューサー……あれ?」
やよい「部屋に戻りましたよ?」
響「うーん……どうしよう、このカメラ」
伊織「大事に持ってなさいな」
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:04:51.55 ID:Dn6vDb0to
春香「おかえりっ! 楽しかった?」
亜美「もち! の」
真美「ろん! ちゃんかん!」
春香「いいなぁ……!」
律子「真美、変な言葉を覚えないように」
あずさ「あらあら、おかえりなさ~い」
響「ただいまー!」
あずさ「プロデューサーさんは……?」
響「いないね……食べ過ぎて部屋で寝込んでいるのかな?」
あずさ「あらあら、大変!」
真伊織雪歩「「「 言っちゃった…… 」」」
貴音「律子、少しよろしいでしょうか」
律子「うん、いいけど……どうしたの?」
貴音「響、きゃめらを貸していただけますか」
響「うん、はい」
貴音「再生できるてれびのある部屋にてお話をしたいと」
律子「それじゃ……えっと……千早がいるけど、私たちの部屋でいい?」
貴音「……はい」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:06:49.87 ID:Dn6vDb0to
―― 律子・あずさ・千早・春香の部屋
貴音「失礼します」
千早「四条さん……?」
貴音「読書をしていたのですね」
千早「そうですけど……」
律子「えっと、接続はこれでいいのかしら……?」
ピッ
『響、きゃめらを貸していただけますか』
律子「話って?」
貴音「えぇと……巻き……巻戻しは……」
律子「私がやるから、止めたい映像が流れたら言ってね」
貴音「はい」
ウィーーーン
貴音「すとっぷです」
律子「……」
ピッ
『わたくしも、この刺激の強い匂いに、一つ退がりたい気持ちを隠せません』
ピッ
律子「ここでいいのね……?」
貴音「はい。状況を説明しますと、ひぃじゃぁ汁という沖縄料理を食す場面になります」
律子「ひぃじゃぁ?」
千早「……沖縄の方言でヤギ。とてもクセの強い料理だとか」
律子「ヤギ汁……詳しいのね」
千早「が、我那覇さんに教えてもらって」
律子「千早も一緒に勉強してたわよね、そういえば……」
千早「……っ」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:08:50.62 ID:Dn6vDb0to
貴音「再生を」
ピッ
『わたくしも、この刺激の強い匂いに、一つ退がりたい気持ちを隠せません』
『しかし、それではこのひぃじゃぁに対して、誠意を失うのではないか。そう思うのです』
『皆にそれを強いるのではなく。少しだけでもその誠意は持っていて欲しいと……』
『……そうだね』
『うぅ……私……食べ物で遊んだらダメだって言ってたのに……』
『いえ、申し訳ありませんでした。今のはわたくしの我儘でしかありません。どうか、聞き流してください』
貴音「映像にはありませんが、ひぃじゃぁ汁をプロデューサーが一口……」
『プロデューサー……』
『…………コメントできないっ』
貴音「すとっぷ」
ピッ
貴音「真、亜美、真美、雪歩、美希、プロデューサーは料理を一つ口にし、箸を置きました」
律子「……伊織とやよいは食べたのね」
貴音「重要なのはここから。再生を」
ピッ
『ふふっ、……みんな、わたくしの我儘を聞き入れてくれて、感謝していますよ』
『自分と貴音とプロデューサーで全部食べるさー』
『え……』
『健康とスタミナには最適な料理なんだぞ、プロデューサー』
『そ、そうか……よし。食べようじゃないか』
貴音「すとっぷ」
ピッ
貴音「律子は気付きましたか?」
律子「プロデューサーは無理して食べたから、今、部屋で休んでいる……」
貴音「そうです」
千早「それは……四条さんの言葉を受け止めたからでは……?」
貴音「そうやもしれません。しかし、違和感を感じました」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:11:41.56 ID:Dn6vDb0to
千早「どうして違和感を?」
貴音「もう一度、今の場面を再生していただけますか」
律子「……」
ピッ
『自分と貴音とプロデューサーで全部食べるさー』
『え……』
『健康とスタミナには最適な料理なんだぞ、プロデューサー』
『そ、そうか……よし。食べようじゃないか』
律子「……健康を気にしているから食べる気になった、と」
貴音「やはり、何か知っているのですね」
律子「……」
千早「あの……何を、言いたいのか私には……」
貴音「そうですね」
貴音「プロデューサーのことで最近、異変を感じたことはありませんか」
千早「え――」
律子「……」
貴音「些細なことでも……」
千早「……」
貴音「申し訳ありません。少し、気になっていたからと……不安にさせてしまったようです」
律子「そう思うきっかけがあった、ってことよね……?」
貴音「昨夜、プロデューサーと響のお兄様との語らいを耳にしました」
千早「……」
貴音「『療養生活を支える物語』という仕事の話を――」
律子「――!」
貴音「…………」
千早「……」
貴音「じょぎんぐの予定がありますので、失礼します」
スタスタスタ
律子「貴音」
貴音「心得ております」
バタン
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:35:57.72 ID:Dn6vDb0to
律子「……」
千早「四条さん、とても顔色が悪かったわ」
律子「……そうね。緊張もしていたみたい」
千早「それに繋がる、プロデューサーの異変……」
律子「思い当たる節……千早、ある?」
千早「……幾つか」
律子「教えて……」
千早「私はライブを終えた後、プロデューサーから改善点を含めた評価を頂いているんだけど」
律子「……」
千早「以前より、指摘される点が的確になった」
律子「的確……ね」
千早「私たちと一緒に居られる時間が少ないから、レッスンの先生方に直接、私たちの不足している点を聞いているんだと思う」
律子「……うん」
千早「それでも、あの指摘は不自然」
律子「それは、あずささんと共同であなた達の計画を立てているから。
だから、ステージに立つ私たちの視野が見えてきている、のだと思うわよ」
千早「…………そうね」
律子「納得して無いって顔ね」
千早「ううん、納得した。けど、余計に不自然に感じた」
律子「え?」
千早「まず一つ、あずささん。二つ、みんなの士気・意識の高さ。三つ目、みんなの不安」
律子「…………」
千早「不安だから、向上心が芽生えるというなら辻褄は合う。でも、あずささんが……」
律子「あずささんの件は置いてていいわ。というか、知ってるでしょ?」
千早「う、うん……そうね」
律子「みんなの不安か……さっきのプロデューサーの指摘と繋がりそうね」
千早「えぇ。……以前なら、一つ一つ確実に乗り越えていくところを、今では数歩先までみている。……まるで」
律子「……」
千早「……ううん。なんでもない」
律子「ありがと、千早。……これから一つでも見落とさないように注意しましょう」
千早「……今度は私が質問する番」
律子「なに?」
千早「健康とスタミナの二択を……どうして、健康だと選択できたの?」
律子「…………そうね。貴音も気付いたみたいだし、話しておくわ」
律子「貴音が聞いた仕事の話、私は知らない。それがプロデューサーの異変の一つね」
千早「……!」
律子「最初に気付いたのは仕事でほとんど一緒に居るあずささんなの」
千早「……」
律子「今は小鳥さんと私だけが知っている話。まだ確信では無いけれど――」
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:37:44.17 ID:Dn6vDb0to
―― プロデューサーの部屋
コンコン
ガチャ
P「はい――」
あずさ「大丈夫ですか?」
P「誰から聞きました?」
あずさ「えっと……勘です」
P「そうですか。何か用事でも?」
あずさ「ありません」
P「……仕事があるので」
あずさ「手伝いますよ」
P「いつもなら、そうしてもらうところですけど、個室なので、遠慮してください」
あずさ「……はい」
P「心配してくれて……ありがとうございます。それでは……」
あずさ「……」スッ
バタン
P「……ふぅ」
あずさ「……」
P「うぅ……サトウキビジュース……あれほどの破壊力とは」
pipipipi
ピッ
P「はい、もしもし」
あずさ「……ここがプロデューサーさんのお部屋」
P「……はい。来週には戻ります。詳細は後ほどメールにて」
あずさ「上着が脱ぎっぱなし……」
P「はい、よろしくお願いします。また何かありましたらいつでも連絡をください。……失礼します」
ピッ
P「? あずささんの声が聞こえたような……?」
あずさ「?」
P「思春期の高校生か俺は……」
あずさ「……?」
P「……」
スタスタスタ
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:39:32.79 ID:Dn6vDb0to
ガラガラガラ
P「いい景色だな……一人部屋なんてもったいない……」
あずさ「……」ソォー
P「海が広がって……。みんなの部屋はどうなんだろう……」
あずさ「同じ景色ですよ」
P「そうなんですか。初夏とはいえ、もう夏の空ですよね」
あずさ「そうですね。少しオレンジの入った空が切なくて」
P「……南国特有の空気ですよね。…………油断したな」
あずさ「上着、ハンガーにかけておきました」
P「これで何度目ですかっ」
あずさ「えっと……まだ3回目」
P「前は京都で……」
あずさ「最初は富山でしたね」
P「あの、本当に、次は無いですよ?」
あずさ「うふふ、どうしましょう」
P「勝手に入ってこないで下さいっ」
あずさ「プロデューサーさん、思春期の高校生って?」
P「純粋って意味ですよ……少し、寝ます」
スタスタ
あずさ「純粋……プロデューサーさんはピュアなんですね」
あずさ「おまけに無垢も付けちゃおう」
ゴロン
P「……はぁ……って、いかん。慣れたらダメだろこれ」
P「そうだ、小鳥さんに連絡……」
P「ひぃじゃぁ……クセの強い料理だったなぁ……」
ピッピッピ
trrrrrrrrr
ガバッ
P「もしもし、お疲れ様です、小鳥さん」
P「……はい、順調です。……ライブもいつも以上に気合入ってて……」
68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:42:00.32 ID:Dn6vDb0to
ガラガラガラ
シャー
P「……? ちょっ! ……いえ、こっちの話…………え?」
P「千早にですか?」
ギシッ
あずさ「……」
P「それは凄い…………って!」
あずさ「?」
P「あ、いえ。こっちの話…………あずささんから目が離せなくて」
あずさ「まぁ、ふふ」
P「違いますよ、いい意味ではないです。予想外の行動に出るので。千早の件は律子と相談します。それでは……!」
ピッ
P「あの、俺も男なので、ベッドに並んで座られると、困るんですけど」
あずさ「でも、いままで一度も――」
P「カーテンも閉めないで下さいっ」
スタスタスタ
あずさ「横にならなくても?」
シャー
P「……。あずささん、いつも言ってますが、無防備すぎます」
あずさ「……ん~」
P「今の話をしているんです。思い当たる節を探さないで下さい」
P「それより、千早の事で相談があるんですけど」
あずさ「はい。どうぞ、こっちに」ポンポン
P「いや、俺はソファに座りますから。……午後のあずささん達のステージの後、事務所に連絡が入りました」
あずさ「連絡?」
P「千早の将来に関する事です」
あずさ「千早ちゃんに話すべきかどうかですね」
P「……いつも思いますけど、どうして俺の考えを先読み出来るんですか?」
あずさ「いつも一緒にいますから」
P「……」
あずさ「そうですね……。千早ちゃんは今、沖縄の雰囲気をたくさん吸収していますから、
この音楽祭が終わるまでは伏せておいたほうがいいと思います」
P「同じ……考え……です……。なんだ、この悔しさは……っ」
あずさ「それじゃ、メールの作成しますね~」
P「俺の仕事ですから、あずささんはみんなと遊んできてください」
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:43:58.39 ID:Dn6vDb0to
―― ホテル・ロビー
やよい「プロデューサー! 行ってきまーっす!」
P「あぁ、あまり騒がしくしないようにな」
亜美「に、兄ちゃーん!」
真美「真美ここにいるよー、絶対に離れたくない!! 勉強やだもん!」
P「……すでに騒がしい気がするんだけど、大丈夫か」
伊織「さようなら……安寧の日々……」
律子「ほら、行くわよ」グイグイ
亜美真美「「 あいるびーばーっく 」」ズルズル
響「行ってくるね、プロデューサー!」
P「明日な……」
千早「……」
あずさ「それはそうと、せっかくですから、海辺を歩くのはどうでしょう」
P「すいません、俺はいくつか打ち合わせがあるので、部屋に戻ります」
あずさ「それは残念ですね~」
千早「夕食の時間になりましたら、迎えにいきます」
P「結構食べたから、お腹空かないと思うけどな……」
千早「……」
あずさ「ちゃんと食べないと、ダメですよ~」
P「……はい。それじゃ、後で」
スタスタスタ
あずさ「私達は、明日の予習でもしましょうか、千早ちゃん」
千早「あの、あずささん」
あずさ「はい?」
千早「ステージでも感じたのですが、今日はなんだか……とても嬉しそうですよね」
あずさ「うふふ」
千早「差し支えなければ、教えてくれませんか?」
あずさ「手を失礼」
ギュ
千早「……」
あずさ「こういうこと」
千早「……?」
あずさ「あ、真ちゃんが帰って来たわ」
真「ふぅー……あれ、こんなところでどうしたんですか?」
あずさ「なんでもないのよ~」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:45:39.68 ID:Dn6vDb0to
真「いやー、綺麗な夕陽を眺めながら海辺を走るのもいいですねー」
春香「お疲れ様、真。私も行けばよかったなぁ」
真「気持ちよかったよ……って、響たちは?」
あずさ「実家へ行ったわよ」
真「そうですか。響のお母さんの料理、美味しかったからまた食べたいな~」
千早「あずささん、もう少し詳しく教えていただけますか」
あずさ「今日の午前中に、少し怖い思いをしたのね」
千早「えっ!?」
あずさ「それで……なんとかなって」
真「それ、迷子になったときじゃないですか!?」
あずさ「そうだけど……」
春香「え、えぇー……」
千早「とりあえず、話の続きを……」
あずさ「怖い思いなのは変わりなくて……気が付いたときにはプロデューサーさんの手を……」
ギュ
あずさ「こうやって握っていたというわけなのよ……うふふ」
千早「……そうですか」
春香「肝心なところ抜け落ちてるけど……とりあえず、安心していいのかな?」
真「ダメ、ダメだよ……それ、プロデューサーはなんと?」
あずさ「『離れないで下さい』と」
真「本当に、離れないで下さいね。変な汗かきましたよ……」
美希「ふぅ、疲れたけど、気持ちよかったのぉ~」
雪歩「あ、あれ? 四条さんは……?」
真「一緒じゃないの?」
千早「……私が探してくる」
真「あ、うん……」
あずさ「?」
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:46:10.48 ID:Dn6vDb0to
―― 砂浜
ザザーン
貴音「……」
千早「四条さん」
貴音「……わたくしにできることはなんでしょうか」
千早「できること……」
貴音「いえ。これは己が導き出すべき問い」
千早「…………私も考えてみます」
貴音「……」
千早「……」
ザザァーン
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:46:50.68 ID:Dn6vDb0to
―― プロデューサーの部屋
コンコン
千早「プロデューサー、私です……」
コンコン
千早「……」
コンコン
千早「…………?」
千早「寝てるのかしら……」
ガチャ
P「……ちょっと待ってて」
千早「電話中でしたか、失礼しました」
P「……はい、…………落ちていません」
千早「?」
P「……今のところは。……はい、それでは」
プツッ
P「どうした? って、夕食の時間か」
千早「あの、今の……仕事の電話ですか?」
P「いや、他のところだよ。レストランだよな?」
千早「……案内します」
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:48:10.44 ID:Dn6vDb0to
―― ホテル・レストラン
「プロデューサーさーん! こっちですよ! こっち!」
千早「春香……」
P「注目集めてるな……すぐ見つかったからいいけど……」
千早「プロデューサー、先程の電話は……?」
P「今後について相談していたんだ。……なにか気になるのか?」
千早「少し、表情が硬かったので」
P「内容が内容だったからだけど」
千早「そうですか。詮索するようなことをして、すみません」
P「……」
真「ささ、どうぞ」
P「あ、ありがと」
あずさ「バイキングですので、プロデューサーさんの分、私が取ってきますね」
P「あの、あずささ――あぁ……行ってしまった」
春香「何か食べたいものでもありますか?」
P「いや、量を少なめに……」
春香「わかりました、伝えておきますね」
真「春香、楽しそうですね。ボクも行ってきます」
P「……美希は行かないのか?」
美希「雪歩にお願いしたの」
P「そうか……って、自分で行かないとダメだろ?」
美希「むぅ、あずさに行って貰ってるのにぃ」ジー
P「そうだな……じゃあ、飲み物でも取ってくるよ。何がいい?」
美希「オレンジをお願いするのー」
P「千早は?」
千早「私は、プロデューサーと同じもので」
P「わかった」
美希「ふぅー、砂浜を走るのって疲れるね……」
千早「美希、今日の撮影でプロデューサー……なにか変わったことなかった?」
美希「特になかったけど……どうしたの?」
千早「いえ、無いならいいの。私達もお皿を取りに行きましょう」
美希「おにぎりあるかな~」
千早「…………」
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:50:42.02 ID:Dn6vDb0to
―― 海辺
春香「んーっと……!」ノビノビ
美希「海風が気持ちいいの~」
あずさ「本当に……」
貴音「月の光が海に反射して……善き時間が流れていますね」
雪歩「……疲れが心地良いね」
真「…………うん」
美希「あずさ、膝枕してくれる?」
あずさ「いいわよ~どうぞ~」
美希「にやり」
あずさ「?」
美希「ごめんね、ミキで」
あずさ「美希ちゃんっ!」
真「食べてすぐ寝るなんて……」
春香「あれ、プロデューサーさんと千早ちゃんは?」
P「ごくごく……」
P「……ふぅっ」
千早「プロデューサー」
P「っ!?」
千早「こんなところで何を……?」
P「ビタミン剤を補給してただけだよ。最近疲れが溜まってるみたいで」
千早「……」
P「今日はどうかしたのか? なんというか、珍しいな」
千早「いえ、探していただけです」
ザザァーン
ザザーン
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:51:58.72 ID:Dn6vDb0to
春香「……」
あずさ「……」ナデナデ
美希「すやすや」
P「美希……潮風に当たりながら寝ると風邪引くぞ……」
真「……」
千早「ここ……静かでいいわね……」
貴音「真に……」
雪歩「……」
P「…………」
ザザァーン
あずさ「プロデューサーさん」
P「?」
あずさ「レストランでも思いましたけど、少し寂しそうですね」
P「え……? そうですか?」
春香「?」
あずさ「ひょっとして……」
P「ひょっとして?」
あずさ「響ちゃんが恋しいのでは?」
P「…………」
真「……」
美希「すやすや」
ザザァーン
pipipipipi
ピッ
P「もしもし」
『もしもし、私です。食事は取られましたか?』
P「あぁ。今は、みんなで海を見てるよ。そっちはどうだ?」
『海って、青春してますね。こっちは――』
『プロデューサー! こっちは勉強しかしてないぞー!』
『『 助けてよ兄ちゃーん! 』』
『ちょっと、しずかにしなさい! すいません、騒がしくなるので切りますね』
P「響に明日のラジオ出演の件、再確認しておいてくれ」
『はい、わかりました。それでは』
プツッ
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:53:41.71 ID:Dn6vDb0to
P「俺が行かなくて正解だったな……」
千早「律子からですか?」
P「あぁ、あっちは勉強中だそうだ」
春香「顔が綻んでますよ、プロデューサーさん」
P「響の声を聞いたからな。あずささんの言ったことがわかりました」
あずさ「まぁまぁ」ナデナデ
美希「むにゃむにゃ」
P「思えば、さっき別れるまで、ずっと響と行動を共にしていたんですよね」
P「響が俺を呼んで、沖縄の魅力を一つ一つ、教えてくれて」
俺が響を呼んで、新しいことを一つ一つ、教えてもらって」
P「沖縄の暖かいイメージがそのまま響なんだなぁって」
貴音「……」
P「俺は賑やかな方が好きみたいです」
あずさ「なんだか、羨ましいです」
真「じゃあ、賑やかにしましょうか!」
P「こういう静かな時間があるから、それも感じられるって話だな。無理に賑やかにしないでいいから」
真「……そうですか」
春香「私も、告白しちゃいますけど」
春香「プロデューサーさんが恋しかったんですよ?」
P「……律子に任せっ切りだったからな」
春香「本当ですよ。亜美達から撮影の話を聞くたびにいいなぁって、
響ちゃんが楽しそうなのを見てると羨ましいなぁって」
P「そうか……」
真「うわぁ……なんかいいですねぇ、こういう告白大会」
P「大会……?」
真「雪歩は何か無いの? 今がチャンスだよ」
雪歩「え、えぇ!?」
P「それより、春香たちチームは明日一日オフだけど、どこに行きたいとか決めてるのか?」
あずさ千早春香「「「 美ら海水族館へ 」」」
美希「ミキも行くの!」
P「そうか。美希たちも午後からオフで、丁度いい……」
P「…………」
P「……」
P「え」
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/05(土) 22:54:31.45 ID:Dn6vDb0to
―――― 我那覇邸
律子「ほら、いつまでも騒いでないで、寝るわよ」
亜美真美「「 はぁーい 」」
やよい「いつ行けるのかなー、美ら海水族館」ワクワク
伊織「そうね、明後日が一日オフだから、その時じゃない?」
やよい「とっても楽しみー」ドキドキ
響「みんな、おやすみぃー」
83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:01:11.58 ID:1uE5XE5co
【 三日目 】
―――― A&W・牧港店
春香「やよいの話を聞いて来てみたかったんです!
エーアンドダブリューですよ! エーアンドダブリュー!」
P「三日続けて……」
律子「響のラジオ、聞いていましたよ、プロデューサー」
P「どうだった?」
律子「ハラハラさせられましたけど、及第点だと思います」
P「……そうだな、響の新しい一面も見られた。美希達を連れてきてくれたのか」
律子「そのまま撮影に行けたらと思って」
P「助かる。……で、やよいの様子はどうだ……?」
律子「それはもう……見ているこっちの心が痛くなるくらいの空元気で……」
P「楽しみにしていたからな。お気に入りのカーリーフライで元気出るといいが……」
店員「店内でお召し上がりですか?」
あずさ「はい」
P「急いでます」
あずさ「まぁ、そうでしたね。すいません。お持ち帰りでお願いします~」
店員「はい、かしこまりました」キラキラ
P「律子、やっぱり俺がライブ会場に残るよ」
あずさ「……!」
P「その代わり、カメラ頼むな」
律子「それはいいんですけど……」
あずさ「……お先に……バスに……乗っていますね」
フラフラ
千早「あずささん! 一人にならないでください!」
タッタッタ
84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:02:20.40 ID:1uE5XE5co
律子「うーん……あずささんが放心してしまった……でも、やよいも気になるし……」
P「律子も行きたかっただろ?」
律子「それはそうですけど」
響「こうなったら、自分に任せてよ、律子!」
律子「え……?」
響「地元パワーを発揮する時だぞ!」
店員「お待たせしました、響ちゃん!」
響「はーい」
店員「あれ、あずささんがいない……!」
響「あずささんのファンなの?」
店員「『9:02pm』でファンになって……! その後に……響ちゃんに出会えたの!」
P「あずささんのデビューから……」
響「いちゃりばちょーでーだよね!」
店員「響ちゃん……!」
P「どういう意味?」
響「一度会ったらみんな兄弟って意味だぞ!」
P「……兄弟か」
P「店員さん、響たちのサインと、この最終日のチケットを。予定が空いていればぜひ」
響「いつも応援ありがとね! 見に来てほしいぞ!」
店員「」
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:03:20.39 ID:1uE5XE5co
―――― ライブ会場・控え室
やよい「あ…! プロデューサー…! 来てくれたん…ですね…!」
P「これは危険だな……」
伊織「どうするのよ、これほど落ち込んだやよい、みたことないわよ?」
やよい「伊織ちゃん…! 私…! 大丈夫…だよっ…!」
亜美「うぅ、やよいっち……それほどまでに水族館が楽しみだったんだね」
真美「なんだか、真美の胸が痛いよ、兄ちゃん」
P「……俺もだ」
やよい「よぉし…! ライブ……! がんば…る…よ…ぉ……」
伊織「あぁ! 電池が切れたみたいになったわ!」
響「やよい、大丈夫だぞっ」
やよい「……わかってます……山があって谷がある…………それが人生ですよね……」
P「悟ったやよいなんて見たくないな」
響「アニキが車を出してくれるって、だからライブに集中するんだ、やよい!」
やよい「ほんとうですか……?」
響「うん! 絶対だぞ!」
やよい「わっかりましたー! 私、頑張っちゃいますねー!」
伊織「よかった……本当に…よかった……!」
亜美真美「「 うんうん 」」
P「感動するのはあとだ。みんな最高のステージにしてこい! 美ら海水族館が待っているぞ!」
「「「「 はいっ! 」」」」
スタッフ長「私達も気を取り直してがんばるわよ!」
スタッフ一同「 はい! 」
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:05:03.58 ID:1uE5XE5co
―――― 備瀬のフクギ林
伊織「ど、どこなのよここは?」
真「か、勝手に入っていいのかな……?」
P「住民に迷惑をかけなければいいんじゃないか……?」
貴音「不穏な空気が漂っていますね……」
真美「なにか出そうですな」
律子「というより、異世界への入り口のような雰囲気ね」
P「……そうだな、不思議な雰囲気だ」
千早「……」
やよい「ドバーンと大きなジンベエザメが泳いでいて、ビックリしましたー!」
春香「私もだよー! 大きな海に触れることが出来た、貴重な一日だよね!」
千早「ここに来るまでずっと同じことを……」
P「本当に、やよいを連れてきてよかったよ……」
亜美「はい! 亜美にみょー案があります! ゲームしようよ!」
P「ゲーム?」
亜美「ここ迷路なんだよね、ひびきん!」
響「そうだぞー。海がすぐ傍にあるから、台風が来たとき家を守るようにと防風林が植えられてて、
今も陽射しがさえぎられていて暗いよね」
律子「迷路か……」
伊織「あずさと相性が良さそうな場所ね」
あずさ「まぁ~、どうしましょう~。うふふ」
P「伊織が皮肉が通用しない……!」
響「……水牛車もあって、観光客を乗せているんだぞーって、誰も聞いてないなんて酷いっ!」
千早「が、我那覇さん……私はちゃんと聞いていたから」
亜美「三人一組でチームを組んで、鬼ごっこしよう!」
P「待ってくれ、ライブが終わった後で、海洋博公園でも結構歩いてるんだぞみんな」
真美「鬼チームを三人……えっと、ここには何人いるの?」
あずさ「律子さんを含めたアイドルが13人……プロデューサーさんで14人」
真「それじゃ、チームを作りましょう」
~ 作成中 ~
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:07:16.82 ID:1uE5XE5co
真「運動能力を考慮してこうなりました」
真「お星様チーム!」
千早「如月の月……」
律子「秋月の月」
美希「あふぅ」
真「竜宮チーム!」
亜美「双海亜美です!」
伊織「水瀬の水ね」
春香「海っていいよね」
真「ボクのいるチーム!」
やよい「頑張りまーっす!」
真美「ボクのいるチームって変じゃない?」
真「そして、沖縄チーム!」
響「飛ばして行くからね!」
あずさ「頑張ります~」
貴音「必ずや、仕留めて見せましょう」
真「……あれ」
亜美「一人……足りない……」
P「深海の海のコーナーで変なトラウマを持ったか……連れてくる……」
律子「真、竜宮チームはあずささんが適役じゃないの?」
真「どうして?」
律子「亜美と春香は海が被ってるわ。三浦の浦島太郎で竜宮と繋がるでしょ?」
真「うわー! 律子頭良いね!」
律子「なるほど……竜宮なんとかってユニットもいいわね」
春香「私もユニットに入るんですか?」
律子「そうなる、かな」
真美「律っちゃーん! 真美も海が入ってるよー!?」
あずさ「……ユニット」
律子「まぁ、仮の話よ。ユニットを作るなら……のね」
雪歩「私なんて……私なんて……ブラックホールに吸い込まれて違う世界へ跳んじゃえばいいんだ……」シクシク
美希「スケールが大きいの」
P「真、どうする?」
真「よく考えるとあずささんが一人で走るのって危険ですよね」
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:11:00.54 ID:1uE5XE5co
真「と、いうことで、あずささんと雪歩を入れ替えて」
響「沖縄チーム!」
雪歩「うぅ……誰か私を深海の海へ連れて行ってください……っ」シクシク
貴音「新生沖縄となりまして。仕留めて見せます」
P「誰をだ、貴音……」
真「残ったプロデューサーはあずささんとペアで。そのペアをジャンケンで取り合いしましょう」
貴音「代表者、前へ」
千早「お星様チーム代表です」
亜美「竜宮の使いだよん!」
真「ボクが大将だね」
響「負けないぞー!」
「「「 じゃーんけーん 」」」
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:12:11.36 ID:1uE5XE5co
――…
P「『人数が多いから鬼』って、俺たちは完全にババじゃないか……!」
あずさ「うふふ、仕方ありませんね~。沖縄チームで頑張りましょう」
P「そうですね……見つけたら、俺が追いかけますから、後ろから付いてきてください」
あずさ「はい、わかりました」
P「絶対ですよ?」
あずさ「はい」
P「ここは本当に迷路なんですから。見失わないようにしてください」
あずさ「――はい」
P「一応、俺も離れないようにしますけど」
あずさ「――だいじょうぶ」
P「とりあえず、歩きますか。これだけ人数がいるんですから、鉢合わせもすぐでしょう」
あずさ「――。」
P「……? あずささん、今なんて――」
スッ
真「うわっ!?」
P「捕まえた」スッ
真「甘いですよッ!」サッ
タッタッタ
P「惜しい……! 待て真!」
ダッ
真「捕まえてごらんなさ~い」
P「くっ……余裕じゃないか!」
ダダダダッ
真「さすが成人男性ですねー!」
P「女の子の真に負けてられないからなッ!」
真「あ、今つかまってもいいかなーなんて思いましたよー!」
P「そんなことで……ッ……捕まったら許さないからなッ!」
真「へへーっ、そうこなくっちゃ!」
P「あずささん! 付いてきてますよね!?」
「はーい」
真「それっ」スッ
P「曲がったか……ッ! あずささんが迷子になるの……ッ……知ってて……やられた……ッ」
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:13:28.55 ID:1uE5XE5co
P「ハァッ……ハァッ」
「捕まえました」
P「え……?」
やよい「うぅー、プロデューサーが走って行ったから、良かったーと思っていたんですー」
あずさ「うふふ、油断大敵、よね」
P「こういう利点もあるのか……ふぅ~」
……
…
美希「……っ」
ザッザッ
「どこ行ったー?」
ザッ
美希「ふぅ~、響しつこいのぉ……どうしてミキばっかり……」
春香「美希……」コソコソ
美希「春香、どうしたの?」
春香「私もここに隠れさせて」
美希「分かったの」
「あ……ッ」
「また見失ってしまいましたね~」
「ハッ……ハァッ……ッ……」
「だ、大丈夫ですか、プロデューサーさん」
「だ……大丈夫……です……ッ」
美希「ドキドキするね」ヒソヒソ
春香「……」コクリ
「少し、休みましょう」
「で、でも時間が……っ……はぁ…ふぅ……」
「罰ゲームは私が受けますから」
「いやいや、それでは俺が情けないじゃないですか……」
美希「……」
春香「……」
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:15:13.92 ID:1uE5XE5co
「情けないなんて……そんなことないですよ」
「え……?」
「いつも、私達を支えてくれているじゃないですか」
「あ、あずささん……?」
美希「……!」
春香「……!」
「私を……私達をここまで連れてきてくれたんです……とても感謝しています」
「……」
「一昨日、一緒に見た夕陽……綺麗でしたね」
「……はい」
美希(いい雰囲気なの~……)ドキドキ
春香(え、えぇ!? 二人はすでにそういう関係だったのぉ!?)ドキドキ
「私、プロデューサーさんと一緒にあの夕陽を見ていて、決心したことがあるんです」
「決心……?」
「プロデューサーさんのおかげで、私は……私達は」
「……」
「……トップに手が届くところまできました」
「そうですね……後少しで、俺の夢も叶います」
美希(私の夢も。……時間は待ってくれないから)
春香(あれ……? プロデューサーさんの声が……変わったような……)
「……」
「このロケが終わって沖縄から帰れば、忙しい日々が待っています。ラストスパートですよ」
「……どうして、ラスト、なんて言うんですか」
「……」
「最後……なんですか?」
「……」
春香「!」スッ
美希「……っ」クイッ
春香「……?」
美希(あずさに任せるの)フルフル
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:16:50.70 ID:1uE5XE5co
「プロデューサーさんが最後というなら、私にも考えがあるんです」
「……?」
「ある人に告白をします」
「え……!?」
美希「ッ!?」
ガサッ
春香「~ッ!?」
美希「にゃ~う」
「……猫さんですね」
「あの……とりあえず、歩きましょう」
「…………はい」
「……」
ザッザッ
美希「こうしちゃいられないのっ」
春香「だ、ダメだよ、美希!」
ガサガサッ
P「はい捕まえた」
美希「にゃっ!?」
あずさ「うふふ」
ガサッ
タッタッタ
「芝居の稽古なんてずるいですよー!」
P「春香もいたのか!?」
「気付いてなかったんですかー!?」
……
…
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:22:50.48 ID:1uE5XE5co
― ビーチ ―
響「たくさん走ったから汗が凄いぞー」
律子「……二人とも汗を拭きなさい。はい、タオル」
響「ありがとー」
真「……うん……あれ?」
P「どうした?」
亜美「あ……」
真美「…ず……」
春香「……さ……」
やよい「……さ……」
雪歩「…………ん……」
貴音「……………が……」
伊織「………………い……」
千早「…………………な……」
真「………………………い……」
美希「あ、あずさがいないの!」
P「なななッ! この迷路の中にいるのか!?」
律子「気を利かせて、タオルを取りにバスへ……?」
亜美「大丈夫っしょー! 迷子になるわけ――」
シ ィ ー ン
亜美「ごめんね、軽い気持ちで言っちった」
真美「ううん、亜美は悪くないよ」
P「みんなで探すと余計混乱しそうだな……律子はここにいてくれ」
律子「わかりました」
P「千早とやよいはペアで、貴音は伊織とペアを組んで捜索、他は一時待機」
千早「はい」
伊織「しょうがないわね。無茶な競争をした真たち二人はへばってるし」
真「ぐっ……」
響「うぅ……」
P「じゃ、行って来る」
タッタッタ
律子「……プロデューサーも疲れてそうだけど」
真「プロデューサー、体力落ちてるよね」
亜美「そーなの?」
真「……うん、やっぱり少し変だよ」
伊織「貴音、行くわよ?」
やよい「千早さん?」
貴音千早「「 少し、待ちましょう 」」
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:24:43.78 ID:1uE5XE5co
―― フクギ林 ――
P「あっ! ラッキーだ! あずささーん!」
「……」スッ
P「どうしてそこを曲がるんですか!」
タッタッタ
P「……あ、あれ?」
P「入り組んでるから……本当に迷路だな……」
P「えっと……こっちか?」
タッタッタ
P「いない……っ」
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:26:15.94 ID:1uE5XE5co
―― ビーチ ―――
あずさ「あら?」
貴音「おや?」
千早「あ……」
律子「あー、今度はプロデューサーが迷子に……」
あずさ「まぁまぁ、プロデューサーさんが迷子なんですか?」
真「いえ、……まぁ、その……なんですかね。あずささんを信じなかったこと謝ります」
伊織「まったく……世話の焼けるコンビねぇ……」
響「……」
美希「ねぇ、あずさ」
あずさ「?」
美希「あずさは――」
律子「あずささん、お願いします」
あずさ「わかりました。責任を持ってプロデューサーさんを探してきます」
スタスタ
律子「あずささんに任せましょう」
亜美「また迷子になるよ、律っちゃん?」
律子「……」
真美「律っちゃん?」
律子「しばらくしたら、みんなで行動すればいいのよ」
やよい「……」
伊織「……律子、あんた……なにか知っているんじゃないでしょうね」
律子「何も知らないわよ……私は……私たちは何も聞いていないんだから」
伊織「……」
亜美「なにかって……なに……?」
千早「……」
貴音「……」
美希「…………」
響「ど、どうしたんだみんな……」
雪歩「さ、さっきまで……あんなにはしゃいでいたのに……っ」
真「……」
96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:27:26.61 ID:1uE5XE5co
―― フクギ林 ――
P「まずい……完全に迷子になった……」
P「とりあえず、一度ビーチに戻るか……?」
P「というか、ビーチってどこだっけ……」
P「迷路だな……本当に……」
P「……」
P「………………もう少しで……トップに……」
P「……」
P「大丈夫……なんくるないさー、だよな……、響」
P「俺の代わりが見つかれば……」
P「…………なんとかなるさ」
――
あずさ「……こっちでもない」
あずさ「…………」
あずさ「……」
あずさ「絶対に……」
あずさ「……」
P「おっと……」
あずさ「……あら」
Pあずさ「「 やっと、見つけました 」」
97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:29:36.96 ID:1uE5XE5co
P「いや……」
あずさ「あの……」
P「迷子になったの、あずささんですよね」
あずさ「……えっと……そうですね、はい」
P「???」
あずさ「うふふ、なんでもありません」
P「……よかった。それじゃ戻りましょう」
あずさ「……はい」
P「……」
あずさ「……」
P「今日は良い運動になりましたね」
あずさ「そうですね……」
P「……歩きっぱなしでちょっと疲れましたけど、良い思い出になれたかな」
あずさ「たくさんの思い出が作れています」
P「それならよかった」
P「この沖縄ロケの為に、みんな過密なスケジュールをこなしてくれて、乗り切ってくれて……」
あずさ「…………」
P「みんな、本当に成長しましたね。ライブを見ているとそれをとても実感して」
あずさ「…………」
P「もっと、見ていたいなって――」
あずさ「もっと見ていてください」
P「……」
あずさ「私も、見ていて欲しいんですから」
P「ある人――その人のことはいいんですか?」
あずさ「もぅ、いじわるです」
P「……」
あずさ「さっき、律子さんの案を聞いていて思ったことがあって……」
P「?」
あずさ「私も、美希ちゃんのように髪を切ったほうがいいですか?」
P「……美希は、自分で決めて、ショートカットにしました」
あずさ「……」
P「あれ? ここでもない……?」
あずさ「迷っちゃいましたね」
P「……本当に。とりあえず、進みましょう」
あずさ「はい」
P「…………」
98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:31:51.43 ID:1uE5XE5co
あずさ「あの、さっきの話。私もショートにしたほうがいいでしょうか?」
P「……あずささんが決めてください」
あずさ「……」
P「絶対、どっちも似合いますから」
あずさ「……」
P「…………」
P「……えっと、どっちだ?」
あずさ「質問を変えます」
P「え?」
あずさ「今のロングヘアの私と、ショートヘアの私……どっちがいいでしょう?」
P「いえ……どっちがいいかとかではなく」
あずさ「一緒に決めてきたんですから、一緒にここまで来たんですから、これからも一緒に考えてほしいです」
P「……俺は」
あずさ「はい」
P「今のあずささんがいいと――」
あずさ「わかりました~」
P「いや、最後まで聞いてください」
あずさ「うふふ、髪を切ったほうが若く見えるかな~なんて思っていたけど、ずっとこのままにしようっと」
P「待ってください、一緒に考えてないじゃないですか」
あずさ「そんなことありませんよ~。私はプロデューサーさんに相談しました」
P「そうですけど……そうじゃないですよ……!」
あずさ「ではショートのほうが?」
P「…………」
あずさ「やっぱりこのまま?」
P「……」コクリ
あずさ「ふふ……なんだか、嬉しい」
P「……」
あずさ「ありがとうございます、プロデューサーさん」
P「?」
あずさ「プロデューサーさんは、私を――」
「こっちだぞー!」
P「響?」
あずさ「みんなが見つけてくれましたね」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:33:48.46 ID:1uE5XE5co
響「やっとみつけた。二人とも迷子になるんだから、困るよっ!」
伊織「早くバスに戻りましょ、疲れちゃったわよ」
真美「えっと、バスはどこ?」
春香「あっちじゃないかな」
千早「…………」
雪歩「く、暗くなってきたよ……」
やよい「お化けがでるかもしれないですねー!」
貴音「や、やよい。言霊という――」
ガサガサッ
貴音「!」
黒猫「にゃあ」
亜美「きゃあ、こわーい」
律子「棒読みじゃないの……」
貴音「……ふぅ」
美希「あふぅ」
真「今日は本当に疲れたなぁ……」
春香「ほんと……バスでぐっすりだよねー……」
P「行きましょうか」
あずさ「私を――安心させてくれる人なんです」
P「……」
あずさ「だから、迷子になっても必ず見つけます」
P「…………」
響「お腹すいたさー」
あずさ「うふふ、帰りましょう、プロデューサーさん」
スタスタスタ
P「……ッ」
「プロデューサーさ~ん」
P「は、はい……!」
P「時間が…惜しい……ッ」
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:37:00.47 ID:1uE5XE5co
―――― 我那覇邸
P「……」
律子「……」
小鳥「あの?」
P「小鳥さんですか?」
小鳥「そうです」
律子「れ、連絡してくれればいいのに……」
小鳥「驚かせようと思ったんです、もっと驚いてくださいっ」
P「とりあえず、響たちを起こすか……」
響「くぅー……すぅ……」
P「響、着いたぞ、ひびきー」
響「ん……すぅ……」
P「起きてくれ」ユサユサ
響「んー!」バシッ
P「いた……」
響「……すぅ……すぅ」
千早「我那覇さん、起きて」ポンポン
響「ん……? ……千早と……プロデューサー?」
千早「みんなを起こさないよう、静かに降りましょう」
響「うん……ふぁぁ……懐かしい夢みたさー」
P「どうして俺が起こすと……機嫌が悪くなるんだ?」
―― 仏間
響「おとー、春香と千早が来てくれたぞー」
春香「――。」
千早「――。」
律子「先日はお騒がせしましたぁ」
あずさ「今日もお世話になります~」
P「……」
101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:39:08.60 ID:1uE5XE5co
―― あずさ達の部屋
春香「響ちゃんのお兄さん、プロデューサーさんに似てたね!」
千早「……そうね。……あの、春香?」
春香「二人並んでると、双子かっ、なんてねっ」
千早「あのね、春香」
春香「お母さんも優しいし、沖縄ってイメージ……ううん、響ちゃんのイメージそのままだよねっ」
千早「落ち着いて春香」
春香「楽しいよねっ、みんなと一緒だからもっと楽しいよねっ」
律子「うるさいっ」
春香「……すいません」
響「すぅ……」
千早「響が寝ているんだから、静かにしないと」
春香「へへー」
千早「な、なに?」
春香「名前で呼んで……なんだか、いいよねぇ」
千早「……っ」
律子「早く寝なさい、明日午前中にライブなんだから」
春香「なんだか、もったいないーって」
律子「気持ちはわからないでもないけど……あずささんは何を書いているんですか?」
あずさ「プロデューサーさんの日記です」
律子「そうですか……」
春香「プロデューサーさんの」
千早「……日記?」
あずさ「……あ」
律子「な、なんですかそれ!?」
春香「見せてくださいっ」
千早「……」チラッ
あずさ「だ、ダメですよっ、まだダメです」
パタン
律子「まだ?」
あずさ「ダメ」
響「ん……ん……?」
あずさ「起こしてしまったじゃないですか」
律子「いやいや、あずささんのウッカリのせいでしょう」
響「すぅ……」
千早「……ふぅ」
102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:41:23.84 ID:1uE5XE5co
春香「プロデューサーさんの日記……交換日記ですか?」
あずさ「……それ、いいわね~」ポワァー
律子「戻ってこーい」
千早「……いつも一緒にいるから意味が無いのでは」
律子「そうだ……確認しないといけない事があった……」
あずさ「プロデューサーさんにですよね」
律子「そうですけど?」
あずさ「……」ジー
律子「いや、言いませんって……。行って来ます」
バタン
あずさ「ないしょ」
春香千早「「 はい 」」
あずさ「小説とか、詩ではありません」
春香「……」
あずさ「今日あった、出来事なんかを書いているだけ」
千早「……」
あずさ「うん。……えっと、今日は……」カキカキ
春香「私たちが疑っていないと信じてるよね」ヒソヒソ
千早「そうね」ヒソヒソ
響「…………ん……?」
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:43:39.13 ID:1uE5XE5co
―― プロデューサーの部屋
コンコン
律子「プロデューサー、明日の事で話があるんですけど」
律子「……」
コンコン
律子「居ない……?」
―― 階段
「おとー、さ」
「え……、えぇー……」
「ショックだわけ?」
「いえ、光栄なんですけど。……兄を通り越して親……複雑です……」
律子(居間でお酒を飲んでるのかな……話しかけても大丈夫よね)
「真面目な話、響を一人の女性として見たことあるね?」
律子「ッ!?」
「ステージや、仕事で輝く響にドキドキすることはあります。
それは、響だけじゃなく……。はい」
「……ふむ」
「……だけど、それはアイドルとしての魅力なのかな、と」
「……」
「苦しくても努力して、今までの自分を乗り越えていく姿を見てるから、
人として、とても尊敬する部分があります。
だから、女性というより、まず先にくるのがアイドルなんですね」
「難しいさ」
「そうですね。難しいなぁ……。
人として尊敬している部分を好意に変えてしまうと、
アイドルとしての彼女達を上手く引き出せないような気がするんです」
律子「……」
律子(って、立ち聞きするのね私……)
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:45:59.45 ID:1uE5XE5co
「俺は……不器用なので、みんなに苦労かけています……。
だから、アイドルとしての彼女達を見守っていることが成功の近道なのかと。
これは……彼女達に一番失礼なことをしているかもしれない」
律子(戻るか……)
律子(彼女達には失礼だけど……それだけなら……あずささんを今の地位まで引き上げられない)
ギシギシッ
律子(少なくとも……あずささんだけは……一人の女性として見ていたはず……あの日までは)
律子「なにが……それを変えたのか……」
ガチャ
響「んー……」
律子「響?」
響「アニキたちの……声がする……ぞ……」
律子「ちょ、ちょっとまって」
―― 居間
響兄「娘のいいところをたくさん見つけて……ってヤツじゃないかな。だからお父さんだわけさ」
P「そ、そうなんですか……」
響兄「響が小さい頃におとーが亡くなってさ。
それまでおとーが響を起こす度に、うるさいなぁーって感じで手を払ってたよ」
P「俺が起こすときに手を叩かれたのって……」
響兄「そうさー。だから、雰囲気が似てたんだねぇ」
P「雰囲気?」
響兄「おとーの雰囲気よ。プロデューサーさん、今の話聞いてて思ったけど」
P「は、はい」
響兄「それ、事務所の子達、全員に当てはまってないでしょ」
P「え……?」
響兄「最初の――それは、響だけじゃなく――の後に、誰かの顔が浮かんだよね」
P「……」
響兄「その人がプロデューサーをアイドルとしてじゃなく、
一人の女性としてもドキドキさせてるんじゃない?」
P「――!」
響兄「図星みたいだね。沖縄方言で胸(チム)どんどんって言うさー」
P「ち、違っ……」
響兄「早く飲んで、グラスを空にしないと寝かさないよ」
P「うぅ……!」
響兄「響には可哀相かもしれんけど、強制はできないさ」
P「…………」
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:49:25.42 ID:1uE5XE5co
響兄「俺は安心したよ。これからもよろしくね、プロデューサーさん。酒が美味しいさ……ごくごく」
P「……忘れて、もっと先へ進んで欲しい」
響兄「ん? 忘れる……?」
P「いえ、なんでも……ごくごく」
響兄「変なこと聞くけどさ」
P「?」
響兄「プロデューサーさん、健――」
「んー、アニキー?」
P「起きてきたのか……」
響兄「……明日もライブだろ? 早く寝ろよ」
響「明日は一日オフさー……たくさん遊ぼうね、プロデューサー……」
P「そんなとこに座らないで、部屋に戻るんだ、響」
響「まだ日付越えてないからいいさー」
律子「ちょっと、響……こんなところで寝ないの……!」
響「寝てないぞー」
P「律子まで……」
千早「……急にどうしたの響?」
響「んー……なんかねー、プロデューサー見ないと……落ち着かなかったー」
千早「……」
春香「なんですかっ、まだなにかあるんですねっ?」
P「そのテンションはどうした春香。起きてたのか?」
律子「しずかに寝ようとしていたんですけど……春香以外」
P「あずささんは寝てるんだな……ほら、部屋に戻って――」
あずさ「すいません、降りてきちゃいました」
P「あぁ……!」
響母「なんね、まだ起きてたの?」
あずさ「すいませんお母さん、中々寝付けなくて」
千早「私もです……」
響母「クワンソウ茶淹れようね」
春香「くわんそう……って、なんですか?」
律子「昨日、亜美達はこれを飲んで静かになったの」
P「ぜひっ!」
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 21:50:45.96 ID:1uE5XE5co
響母「はいはい、あんたにも飲ませてあげるさ~」
P「あ、いえ……俺にはお兄さんが作ってくれた……」
響「どれどれ、どんな味?」
P「待てっ!」グイッ
響「うがっ!」
P「こんな時間に野生化は困る」
響「野生化ってなんだ?」
あずさ「ごくごく」
P「えぇ!?」
千早「あ、あずささんっ!?」
律子「……明日……大丈夫かしら」
あずさ「ふぅっ」
P「どうして……!?」
あずさ「うふふ、プロデューサーさんが遠慮してらっしゃるので~」
P「意味がわかりませんよ……!」
あずさ「……ちょっと、強い」
P「泡盛なんですから……」
あずさ「あらあら~」ポワァー
P「律子」
律子「はい、任せてください」
響兄「……プロデューサーさんにはそっちが必要みたいだねぇ」
P「え……?」
律子「すいません、プロデューサー」
P「なぜ謝る?」
107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:05:50.37 ID:1uE5XE5co
【 四日目 】
―――― バス
冬馬「……」
P「あずささん、紹介を」
あずさ「彼がジュピターのたちつてとうま君」
亜美真美「「 あまとうです 」」
冬馬「甘党って呼ぶんじゃねえ」
亜美「おやおや~? ルートビアよりオレンジを選んだのはどこのあまとうですかな~」
真美「ここのあまとうですな~」
冬馬「俺がここにいる意味ってなんだ」
千早「知りません。今すぐ下車しても構いませんよ。どうぞ」
冬馬「走行中だろうが!」
伊織「なんでアレが乗ってるのよ」イライラ
春香「私がぶつかった成り行きで……」
伊織「どういう成り行きでこうなるのよ」
律子「まぁまぁ、千早の週刊誌の件は彼らと関係ないって社長が言ってたんだし」
伊織「……それなら、別にいいんだけど」
律子「事務所を変えて彼らも再起したんだから、上手く利用すればいいのよ」
冬馬「で、どこに向かってるんだ?」
千早「答える必要があるんですか?」
冬馬「知る必要あるだろ」
千早「こちらに合わせていれば問題ないかと」
冬馬「ほとんど強引だっただろ、知る権利があるんじゃねえのか」
千早「権利? 無銭乗車で権利を主張しますか」
冬馬「だから、ほとんど拉致だったじゃねえか。財布を忘れてもしょうがねえだろ」
千早「言葉が過ぎます。控えてください」
冬馬「だから、降ろせよ。嫌われてるのに乗り続ける意味あんのかよ」
千早「どうぞ」
冬馬「だから、走行中だろうが!」
千早「運転手さん! 彼が降ります!」
冬馬「待て、財布忘れたって言っただろ。携帯電話も持って無いんだよ」
千早「歩いて帰ればいいじゃないですか」
冬馬「午前のライブで疲れてんだよ。土地勘もねえし、無茶言うな」
千早「帰りたいんですか? 乗り続けたいんですか? ハッキリしてください」
冬馬「ぐっ……」
亜美真美「「 あまとうの負けー! 」」
109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:07:47.66 ID:1uE5XE5co
千早「プロデューサー並みに優柔不断――あ」
P「あ、じゃないぞ、千早」
千早「と、とにかくどいてください!」
冬馬「ブルーシールアイス、うめえな」
やよい「うわー! お店がたくさん並んでるよ伊織ちゃん!」
伊織「……そうね」
響「国際通りって言うんだぞやよいっ!」
春香「プロデューサーさん、ハブ酒ですよ! ハブ酒!」
P「この速度でよく見えるな……」
律子「やよいの隣に座りたいだけなのよね……千早は」
P「俺、優柔不断ですか?」
あずさ「偶に……」
P「うーん……」
あずさ「アイスのダブル、種類を選ぶのに、迷っていましたよね」
P「おぉ……本当だ……」
あずさ「しょうがないですね、プロデューサーさんは……うふふ」
伊織「しょうがない、じゃないわよ。あんたも同じくらい悩んでたじゃないの」
律子「結局同じの買ってるからね、迷コンビだわ……」
亜美真美「「 時代はトリプルだよね。うまうま 」」
響「……うーん、なんだろ、ざわざわする……?」
110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:10:29.52 ID:1uE5XE5co
―――― 斎場御嶽
響「千早の希望で来ました、斎場御嶽ー!」
千早「ここが……セイファーウタキ……!」
嶺「私でよければ、解説いたしますが」
千早「よろしくお願いします」
嶺「はい」
冬馬「空気が重いな……」
亜美「ここだけ重力が3倍あるんだって」
冬馬「ホラ吹いてんじゃねえよ」
真美「視える、視えますぞ……あまとうの両肩に、口裂け女の霊が四人」
冬馬「反応に困る霊視すんなよ」
亜美真美「「 やっぱり兄ちゃんじゃないとダメだね、ダーメ 」」
冬馬「おまえら……!」
やよい「プロデューサー、一緒に見て回りませんか?」
P「う、うん……?」
やよい「ダメですか?」
P「いや、改めて言うほどの事じゃない……よな」
やよい「えへへ」
伊織「?」
あずさ「……」
律子「鬱蒼としてるわね。まるでジャングルね……」
春香「ハブとか出てきませんよね……」
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:12:30.05 ID:1uE5XE5co
―― 斎場御嶽・三庫裏(さんぐーい)
伊織「す、凄いわよ! 早くこっちに来なさいよプロデューサー!」
P「ど、どうした!?」
やよい「うわぁー! すごーい!」
あずさ「まぁ……」
P「……岩が真っ二つ……!?」
伊織「綺麗に割れているわ……!」
あずさ「岩と岩が寄りかかるように……素敵です~」
千早「岩と岩の三角の洞門……やはり、実物と写真では違いますね」
嶺「この洞門は約1万5千年前に起こった地震の断層のズレからできたと言われています」
千早「1万5千年……」
伊織「神秘的よね……!」
真美「これやったの、真美なんだよね」
P「自慢話か……」
「おーい、プロデューサー!」
やよい「あ、響さんが手を振ってます。奥に行けるみたいですよ」
P「行ってみよう」
嶺「奥に行くと、ある島を見ることができます」
伊織「島……?」
亜美「凄いよねー、本当に三角のくーかんだもんねー」
あずさ「岩のトンネル」
律子「本当に……凄い場所なのね……」
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:13:39.10 ID:1uE5XE5co
―― 斎場御嶽・久高遙拝所
響「ここ、ここから久高島が見えるんだぞ」
P「くだかじま?」
響「神の島って呼ばれてるんだよ。ほら、あの島!」
P「あれが……神の島」
やよい「み、見えないです、プロデューサー……!」ピョン
P「こっちの石に……これ踏んでもいいのかな……」
響「うーん……拝所は石が重要だったりするから、踏まないほうがいいぞ」
P「うがんじゅ?」
響「神様を拝む場所のこと」
亜美「ほら、兄ちゃん、屈んでよ」
P「う、うん……?」
真美「ほら、やよいっち」
やよい「え?」
伊織「肩車よ」
Pやよい「「 ゑッ!? 」」
あずさ「やよいちゃん、失礼するわね~」ギュッ
やよい「あ、あずささん!?」
あずさ「プロデューサーさん、いきますよ~、よいしょっ」
P「…………大丈夫か、やよい」
やよい「うぅー、恥ずかしいですー」
伊織「あれが神の島……ねぇ」
P「ど、どうだ?」
やよい「はい、見えます」
P「そうか」
やよい「……」
P「……」
やよい「……海が綺麗ですね」
P「そうだな……」
やよい「……不思議な気持ちがします」
P「……」
響「あ、向こうから春香たちが手を振ってるぞ」
亜美「おーい!」
真美「こっちおいでよー!」
113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:15:11.34 ID:1uE5XE5co
やよい「プロデューサー、行きましょー」
P「こ、このままか?」
やよい「えへへ、なんだか楽しいです」
P「やよいがそれでいいなら……」
あずさ「うふふ」
響「あはは、まるで家族だぞ」
亜美「兄ちゃん、あずさお姉ちゃん、こっち向いてー!」
あずさ「なんでしょう?」
やよい「あ、いぇい!」ブイッ
P「おっと……」
ピロリン♪
冬馬「なにやってんだ、あんた……」
嶺「ふふ……」
P「……まずい、他の観光客にも笑われてる」
やよい「視線が高くて、面白いですー!」
千早「私達もいきましょう、春香」
春香「う、うん……どうしたの千早ちゃん、溜息交じりなんだけど……」
伊織「ここで終わりなの?」
嶺「まだ奥にありますよ」
伊織「寄満(ゆいんち)よね?」
嶺「それでは全部回ったことになりますね」
やよい「プロデューサー、あっち、あのショウニュウセキのところお願いします!」
P「……そろそろ降りないか、やよい」
やよい「えへへ、もう少しだけお願いしますね!」
P「……珍しいな」
真美「これは何かな?」
響「チイタイイシだって」
あずさ「壺の水量によってその年の豊凶を占っていたそうよ」
亜美「水占いですな」
やよい「もう少しで触れそう」
律子「や、やよい、ダメよ?」
やよい「はい、止めておきますね」
真美「あずさねぇねぇもなにか水で占いできるのー?」
あずさ「いえ、もう占いはいいんです」
P「え……」
亜美真美「「 えぇ!? 」」
114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:15:42.98 ID:1uE5XE5co
あずさ「なんて、言ったらどうしますか?」
P「……亜美真美と同じくらい……それ以上にビックリします」
あずさ「……そうですか」
P「…………」
やよい「プロデューサー、そろそろ降ります」
P「わかった。……ほら」
やよい「ありがとうございました、楽しかったですー!」
P「……そうか、それはよかった」
千早「……」
あずさ「……」
春香「プロデューサーさん、ユインチに行きませんか?」
P「いいよ、行こう」
やよい「私もユウエンチに行きます!」
P「やよい、全然違うから。運転手さんに解説してもらってきなさい」
やよい「でも、プロデューサーがいないと見れません!」
P「胸張って言うことじゃないぞ……」
115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:17:33.80 ID:1uE5XE5co
―― 斎場御嶽・寄満(ゆいんち)
やよい「ここは特別な場所なんですねー!」
P「やよいは……なんというか、体が重く感じたりしないのか?」
やよい「しませんよー!」
P「どういうことだ? ここは『霊威の高い聖なる場所』……」
嶺「人によって違うということでしょうか」
P「運転手さんも感じますよね、霊的な、重さというか」
嶺「そうですね。自然のエネルギーが凝縮されているような」
律子「……」スゥ
P「あぁ、上手い表現――う゛」ゾクリ
律子「プロデューサー殿?」
P「……はい」
律子「大事な人が、いますよね?」
P「…………」
律子「返事は?」
P「……大事すぎて……どうすればいいのか、分からない」
律子「え?」
やよい「プロデューサー、律子さん! おかしな縄を見つけましたよ、見てください!」
ハブ「シャー」
P「」
律子「」
嶺「あの、やよいさん」
響「やよい、それは縄じゃないぞ。今すぐ放り投げて」
やよい「おもちゃみたいですね、動きますよー!」
ハブ「シュルルル」
P「」
あずさ「どうしたんですか、プロデューサーさん?」
P「ハッ!?」
春香「プロデューサーさん! ハブですよ! ハブ!」
P「春香、刺激しないでくれ。やよい、それを、捨てるんだ」
やよい「はぶ?」
ハブ「シュルル」
やよい「わ……」
P「やよ――」
116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:19:26.97 ID:1uE5XE5co
ハブ「シャー」
やよい「――ッ!」
嶺「……ッ!」ガシッ
ハブ「シュ」
嶺「ふぅ……」
響春香律子「「「 おぉー! 」」」
パチパチパチ
嶺「実践で捕まえたのは初めてですけど、訓練の賜物ですね」
冬馬「すげえ……」
亜美「こう、ガッとハブの頭を」
真美「バシッと捕まえたよね!」
春香「訓練すれば運転手さんのようになれるんですか!?」
嶺「こういう場所を案内するから、という理由ですよ。一般人……アイドルには必要ないかと」
千早「……」
やよい「あの……」
P「……え?」
あずさ「……あら?」
やよい「だ、大丈夫みたいですよ?」
P「そ、そうか」
あずさ「よ、よかったですね」
P「で、ですね」
あずさ「う、うふふ」
P「あ、あはは」
やよい「二人が守ってくれたから、助かりました! ありがとうございます!」
Pあずさ「「 ……いいえ 」」
律子「身を挺したのはいいけど、危なかったと気付いているのかしら…………はぁ……」
伊織「……」
117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:20:48.28 ID:1uE5XE5co
―――― バス
響「おきなわワールドとひめゆりの塔!」
P「そうだな、ひめゆりの塔へ行きたいと思う」
P「律子、悪いけど……みんなのこと、頼んだ」
律子「……頼むのはいいですけど、みんなの意見聞いてませんよね?」
P「え……?」
亜美「どうして亜美たちがぎゅくせんどう行くと思ったの?」
P「いや……あれ?」
やよい「ちょっと怖いかもですけど、みんなと一緒なら平気かなーって」
真美「うんうん、可愛い子には旅をさせよっていうかんね」
伊織「まぁ、後学のためね」
千早「そうね、人の感情は歌にとても重要だから。学べることはたくさんあると思う」
春香「私も……ちょっと怖いって思うけど……プロデューサーさんと一緒に行ってみたいです」
響「みんなが沖縄をもっと好きになってくれたら嬉しいさー!」
あずさ「プロデューサーさんと一緒です」
P「…………」
伊織「……テーマパークにも心残りがあるけどね」
やよい「ショウニュウドウ……見たかったかもです」
真美「地底探検……」
律子「こればっかりはしょうがないわよ」
千早「……そうね」
春香「あれ? 両方は――」
冬馬「両方行けばいいんじゃねえのか?」
一同「え?」
冬馬「ん?」
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:22:30.66 ID:1uE5XE5co
―――― ひめゆりの塔
嶺「慰霊碑、納骨堂になります。その手前が第三外科壕」
冬馬「……」
P「……」
響「……」
―― 第一展示室 ― ひめゆりの青春
春香「私達と同じ歳……」
千早「……時代が違うだけで……こうも変わるのね」
P「……」
響「……」
―― 第二展示室 ― ひめゆりの戦場
伊織「……これは、ジオラマね」
亜美「……うん」
嶺「防空壕を病院に……読んでも分かると思いますが、想像以上に過酷だったと思います」
真美「…………」
P「……」
響「……」
―― 第三展示室 ― 解散命令と死の彷彿
律子「結構……」
やよい「……~っ」ギュ
あずさ「…………やよいちゃん」
P「……」
響「……」
―― 第四展示室 ― 鎮魂
P「遺影……か……」
響「……うん」
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:23:36.83 ID:1uE5XE5co
―――― ひめゆりの塔
冬馬「……おい」
P「……?」
冬馬「いや……声かけてやんねえのか」
P「……そうだな……」
冬馬「?」
響「衝撃的だよね、戦争は」
伊織「……」
やよい「……」
亜美「……」
真美「……」
律子「みんな放心状態ね……。無理もないけど」
千早「……明るい太陽の下の、暗くて深い闇の中で……彼女達は……何を思っていたのかしら」
あずさ「生きたいと強く、願っていたのでは……」
P「――!」ホロリ
P「ッ!」ゴシゴシ
あずさ「……」
――
嶺「少し歩いたところに、第一外科壕がありますが」
P「第一……?」
嶺「ここは第三外科。第一、第二とあります」
P「…………」
嶺「防空壕の中に、少しだけ入られますよ」
P「……はい」
響「プロデューサー……?」
P「みんなはお土産屋か、バスで少し待っててくれ」
120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:24:59.92 ID:1uE5XE5co
―――― 第一外科壕
P「……あ、ここが?」
嶺「そうです。うっかりしてたら通り越す場所ですよね」
P「…………運転手さん、どうしてそこまで俺に?」
嶺「何かを学びたいから、ひめゆりを選んだのだと思いまして」
P「…………」
嶺「沖縄の深い部分を知っていただければ、より好きになっていただける。
響さんがおっしゃっていたことと同じですね」
P「……」
P「…………」
嶺「……」
あずさ「あの……」
嶺「少し待っていましょうか」
響「……うん」
あずさ「……」
――
P「セイファーウタキと同じくらい重いな……」
P「…………」
P「……ここで…………死と……隣り合わせに……」
P「彼女達は生きて……」
P「……」
P「同じ気持ちだったのか」
P「違う――」
P「俺にはまだ」
P「彼女達は……」
P「……」
P「…………」
P「…………生きたいと強く」
……
…
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:26:11.46 ID:1uE5XE5co
―――― 沖縄県平和記念公園
P「シーミー?」
嶺「清明祭。旧暦の三月に、お墓の前で行われる行事ですよ」
響「ピクニックだよね。ジュースやお酒を飲んだりして、御馳走を食べるんだぞ」
P「へぇ……」
伊織「私……戦争なんて……遠い国の話だと思ってた」
やよい「……うん」
伊織「沖縄であったって聞いても、そういうものだって」
真美「……うん」
伊織「広島や長崎でも……ね」
亜美「…………」
やよい「……」
真美「……」
嶺「落ち込んでるみたいですね」
律子「うぅん……私も意外すぎて……」
千早「無理も無いと思う」
響「ちょっとだけそっとしておくさー。すぐいつものみんなに戻るぞ」
春香「……」
冬馬「楽観過ぎないか?」
響「その為のエイサーだからね!」
―――― 駐車場
美希「バスはどこ……?」
小鳥「えっと、ここでいいのよね」
真「あ、あれ?」
雪歩「ど、どうしてっ?」
貴音「なんと……」
冬馬「なんだおまえら」
真雪歩「「 えぇーっ!? 」」
P「みんな揃ったな」
122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:27:52.49 ID:1uE5XE5co
―――― おきなわワールド
ドォン! ドォン!!
P「……」
あずさ「……」
響「自分も踊りたくなってくるさー!」
やよい「……」
伊織「……」
亜美「……」
真美「……」
貴音「……」
美希「お子様チームがしずかなの」
雪歩「ど、どうしたのかな……っ…」
律子「戦争体験を肌で感じてね。……これがエイサー」
小鳥「……」
真「かっこいいなぁ……なんだか勇姿って感じで!」
千早「活力が漲って……」
ドォン! ドォン!!
嶺「季節限定の踊りですが、ここでは毎日披露されています」
春香「なんだか、太鼓の音が胸に直接響いてくるよね、やよい」
やよい「……そうですね……」
伊織「先祖供養の舞踊って言ってたわよね」
嶺「そうです。送迎の心をもって旧盆時期に踊り、先祖の霊に見てもらうという行事ですね」
響「自分も上京するまでは毎年踊っていたんだぞ」
春香「響ちゃんも太鼓を持って踊ったの?」
響「そうだぞ。手踊りでもよかったんだけど、太鼓を叩きたかったからね!」
真「響のイメージ通りだよね」
P「響のイメージ……か……」
ドンドン! ドンドンッ!
真美「……ひびきんの踊ってるところ見てみたいな」
亜美「…………うん」
響「自分も見てるとなんだかウズウズしてきたぞ」
やよい「胸にどんどんっって……響いてくる」
春香「……うん」
冬馬「ふぅん……」
P「……太鼓の力強い音……、勇気付けられるな」
あずさ「……」
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:29:06.88 ID:1uE5XE5co
―――― ホテル・駐車場
亜美真美「「 お疲れ、あまとう! 」」
冬馬「……」
P「……」
冬馬「おい、色々と重かったんだが……」
P「いつもはもっと、騒がしいんだけどな……」
冬馬「なにかあんのか?」
P「?」
冬馬「いや、部外者だから分かるっつーか。おまえらの雰囲気がいつもと違ったからよ」
P「……そうか」
冬馬「……」
「チャオ☆」
「ここにいたんだ、冬馬君」
冬馬「すまねえ」
「はいこれ、冬馬君がお世話になったから、コザで買ったお土産」
P「あ、ありがと」
「じゃあねー」
「チャオ☆」
冬馬「まぁ、なんだ。あんまり心配かけるな。とりあえず、今後は馴れ合い一切無しだからな」
P「わかった。……またな」
冬馬「またな……って、こういうのを止めるって言ってんだよ!」
P「心配……か……」
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:30:58.16 ID:1uE5XE5co
―― ホテル・ロビー
「「「 じゃんけんほい! 」」」
律子「か、勝ってしまった……」
P「よし。そうと決まったら、響の家に移動する人は荷物をまとめてバスに乗ってくれ」
響「はーい!」
やよい「わかりましたー!」
美希「はいなのー!」
雪歩「わ、分かりましたぁ!」
あずさ「……」
小鳥「あの、いいんですか?」
P「俺がここに残るから平気ですよ。小鳥さんも楽しんできてください」
小鳥「そういう意味では……」
響美希やよい「「「 あー! プロデューサーが一緒じゃない! 」」」
伊織「今頃気付いたのね……」
雪歩「う、嬉しさのあまりに……忘れるなんて……」シクシク
春香「うぅ……みんなでご飯……」シクシク
真「はぁ……しょうがないか……」
亜美「むむむ……」
真美「……むむむ」
律子「あずささん、小鳥さん、千早。三人に話があります」
あずさ「……」
千早「……」
小鳥「……はい」
貴音「律子、わたくしも参ります」
律子「……それじゃ、外へ」
125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:34:33.01 ID:1uE5XE5co
―― ホテル・外
律子「あずささん、そろそろ話していただけますか?」
あずさ「……」
律子「私達……まだ確信には到っていませんが、ほとんど見えていると思います」
千早「……プロデューサーが隠していること」
あずさ「……そうですか」
貴音「あずさは、やはり知っているのですね」
律子「私と小鳥さんは大体知っていますけど、あずささんほどじゃないと思います」
あずさ「……」
千早「やはり、ビタミン剤では……ない……?」
あずさ「今ここで、告白しちゃいますけど」
律子「?」
あずさ「私――アイドルを引退しようと思います」
律子「えッ!?」
千早「なッ……!」
貴音「……」
小鳥「ど、どうしてそんな急に!」
あずさ「急に、ではなかったりします。沖縄に着いてから、いえ、あの日からそれは考えていました」
律子「……プロデューサーには相談したんですか?」
あずさ「まだです」
律子「ど、どうしてそんな大事なことを私達に最初に話すんですかッ!」
千早「り、律子!」
あずさ「……」
律子「ずっと一緒にやって来ていたじゃないですか……! 私が……プロデューサーの立場なら!」
律子「他の誰よりも一番最初に受け取りたい言葉ですよ!?」
あずさ「……ごめんなさい。プロデュースする側の気持ちを考えずに」
律子「……ッ」
貴音「わたくしも、あずさとプロデューサー、二人の歩む姿を見てきました」
貴音「心から信頼し合える二人の姿は、あずさのあいどるとしての地位を高めたのだと確信しています」
あずさ「そうですね。プロデューサーさんが一緒じゃなければ、私は……ここまでこられなかったと思います」
貴音「あずさに牽引される形で、今のわたくし達があると言っても過言ではありません。
二人の後姿を見つめながら追いかけて来たのも、また事実」
あずさ「……」
千早「その信頼関係を……壊しかねない思いまでして、私たちに告白した理由があるんですよね……?」
あずさ「……はい」
律子「あずささんの引退と……プロデューサーが隠していることに繋がるということですか?」
あずさ「そうです」
小鳥「……」
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:36:21.79 ID:1uE5XE5co
あずさ「小鳥さん、社長に聞いて欲しいことがあります」
小鳥「ひょっとして……」
あずさ「そうです。今、確認をしてくれますか?」
小鳥「わかりました」
小鳥「もしもし、お疲れ様です、社長」
『沖縄は楽しんでいるかね?』
小鳥「はい、おかげさまで」
『それはよかった。是非、お土産には紅芋タルトという――』
小鳥「あの、すいません、社長。プロデューサーさんのことでお話が」
『彼の事で話?』
小鳥「プロデューサーさんが隠していることについて」
『ふむ……彼が隠していること、か』
小鳥「……」
『私が知っているとして、だ。それを今、伝えられると思うのかね』
小鳥「いえ。重要なことでしたら、電話ではなく直接会って話すべきかと」
『その通りだと私も思う。それでは、この電話の意図を聞こう』
小鳥「……」
『私に聞かざるを得ない状況だと思うが……』
小鳥「少々お待ちを。……あずささん」
あずさ「はい」
『三浦君?』
あずさ「そうです。お忙しいところ申し訳ありません」
『……それは構わないが』
あずさ「私の決心を聞いて欲しくて電話しました」
『…………そうか』
あずさ「……」
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:38:25.87 ID:1uE5XE5co
『彼が隠していることについて、だったね』
あずさ「……はい」
『君達が帰ってきてから、直接話すとしよう。三浦君の話も、その時に聞こうじゃないか』
あずさ「社長は……私が――」
『君の決心も大よそ把握できている。私は君達の親だと、勝手ながらそう思ってもいる』
あずさ「……」
『無事に帰ってくるのを待っているよ』
あずさ「はい、失礼します」
プツッ
あずさ「……」
小鳥「社長はなんと……?」
あずさ「無事に帰ってくるのを待っている。話はその時に、と」
律子「期限は事務所に帰るまで……ということ、かしら」
あずさ「そうだと思います」
千早「……」
貴音「…………」
あずさ「律子さん、プロデューサーさんのこと、みんなが感じ取っていますよね」
律子「真も気付き始めてる……かな。あと伊織も最近焦っているみたい…ですけど、……他は」
あずさ「美希ちゃん、やよいちゃん……」
千早「やはり、斎場御嶽でのやよいは……」
貴音「なにかあったのですか?」
千早「いつもより、プロデューサーを慕っていると言うか、傍にいようとしていました」
貴音「戦争の体験を肌で感じたからだと聞きましたが、順は逆だったのですね」
小鳥「あまり長い話はできません、ロビーに戻りましょう」
律子「ふぅ……あずささんの件は、プロデューサーに託しましょうか」
あずさ「あの――」
伊織「そんな顔で戻ったら、プロデューサーに感づかれるじゃないの」
律子「伊織……どこから聞いていたのよ」
伊織「あずさが社長と話をしてるところからよ。私が迎えにきてあげたんだから、感謝なさい」
貴音「……」
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:39:46.83 ID:1uE5XE5co
千早「伊織、どうして焦ってるのか、自分でも気付いているの?」
伊織「さぁね。あんた達が知らないんだから、私もわからないわよ」
律子「……」
伊織「あずさ以外はね」
あずさ「……」
あずさ「今、変わってきていると感じるんです」
律子「え……?」
あずさ「少しずつ、プロデューサーさんの中で何かが……」
千早「……」
あずさ「だから、もう少し……待ってください……」
貴音「……」
律子「わかりました。二人を信じます」
あずさ「わがままを聞いてくれて……ありがとう……」
小鳥「……」
あずさ「さぁ、待たせるのもなんですから、行きましょう~」
律子「あずささん、プロデューサーは響の家に行けませんよ」
あずさ「あ……」
律子「しょうがない……私と代わってもらいますから……」
あずさ「ありがとうございます! 律子さんっ!」
律子「……そこまで喜んでもらえると嬉しいですね。伊織も亜美達と一緒に後で追いかけなさい」
伊織「……いいの?」
律子「やよいが心配だからね」
伊織「……」
小鳥「社長への電話で……みえてしまいましたね……」
貴音「プロデューサーは一人で抱え、あずさはそれを支えていたのですね」
律子「……想像以上に……キツイ……」
千早「あずささん……っ」
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:41:10.55 ID:1uE5XE5co
―――― 我那覇邸・仏間
響「おとー、みんながまた来てくれたぞ」
亜美「ひびきんのおっとさん、今日も遊びに来たよん」
真美「今日もみんなと一緒で楽しかったよん」
やよい「今日もお邪魔します」
伊織「私達を見守っていてくださぃ」
小鳥「初めまして、響ちゃんと同じ事務所で働く、音無小鳥と申します。お世話になります」
あずさ「今日で三度目ですが、お世話になります~」
P「……」
……
…
―― 仏間
P「面白いですね……」
嶺「沖縄の死生観――文化ですね」
亜美「ねえ、兄ちゃん」
P「?」
亜美「ひびきん知らない?」
P「一緒にお喋りしてたけど……」
嶺「先ほど響さんのお兄さんのお部屋へ行きましたよ」
真美「ひびきんの兄ちゃん? お話してるの?」
P「そうだけど?」
亜美真美「「 ふーん 」」
伊織「アンタはなにをしてるのよ」
P「運転手さんに沖縄の文化を聞いているんだ」
美希「すやすや」
伊織「あずさは?」
P「縁側で小鳥さんと泡盛を飲んでる……」
伊織「まったく、あんた達は……いつまでぐずついているのよ。イライラするわねぇ」
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:42:51.47 ID:1uE5XE5co
―― 響兄の部屋
響「話ってなに?」
響兄「おまえさ、プロデューサーさんのこと……大事に想ってるだろ?」
響「当たり前だぞ」
響兄「……そんなにハッキリ言われると、戸惑うな」
響「?」
響兄「それは恋愛としての好意か?」
響「…………うーん」
響兄「……」
響「それは違う」
響兄「どうして?」
響「プロデューサーは、事務所みんなのことを大事に想っているんだ」
響兄「……」
響「そりゃあね、頼れるし、ちゃんと見守ってくれるし、支えてくれる。とっても応援してくれるよ」
響兄「……」
響「困っていたら助けてくれる。弱きになったら励ましてくれる。落ち込んでいたら慰めてくれる」
響兄「……」
響「それは自分だけじゃなくてね、みんなに」
響「誰にでも優しくて、誰にでも厳しくて、誰にでも……甘やかしてくれる。そんな人」
響「だから好きだぞ」
響兄「……」
響「それに、大切な人がいるんだ。二人が並んでいるのがでぇじ好きさー」
響兄「……それはおとー、と同じ感覚じゃないか?」
響「……?」
響兄「おまえ、さっき言ったよな。おとーの夢をよくみるって」
響「……うん」
響兄「それ、プロデューサーさんの近くで眠ってるときだろ」
響「…………」
響兄「おまえはプロデューサーさんと、おとーを重ねてみてるさ」
響「そ、それが……?」
響兄「……」
あずさ「約束を」 後編
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