あずさ「約束を」 前編
 

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:43:25.12 ID:1uE5XE5co

響「なにが……言いたいのか…………わからない」

響兄「無意識に気付いてるだろ。プロデューサーさんが何かを隠して――」

響「聞きたくない」

響兄「響……おまえはあの時、小さかったから」

響「アニキの馬鹿ッ!」

響兄「……」

響「なんでそんなこと言うんだ!!」

響兄「響、そうやって怒鳴るってことは……自分で認めているってことだぞ……」

響「――ッ!」


ガチャッ


バタンッ


ドタドタドタ......



響兄「はぁ……キツイ宣告したな……」


引用元: あずさ「約束を」 

 

132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:44:46.04 ID:1uE5XE5co

―― 玄関


響「最低だぞっ!! 馬鹿馬鹿! バカアニキッ!」

P「響、どうした?」

響「うぅッ! プロ…デューサー……ッ!」ジワァ

P「響……!」

響「~ッ!」

ドタドタドタ


亜美「ひびきん! どこ行くの!?」

響「散歩っ!」

ガチャ

バタン


響母「ケンカはしょっちゅうだけど。今のは珍しいさ、余程の事があったに違いないね~」

P「お母さん……」

響母「行き先は決まってるから、大丈夫よ」

小鳥「どうしたんですか?」

あずさ「響ちゃんの声が……」

響兄「ちょっと、喧嘩しまして……」

P「行ってきます」

響母「座喜味城に行ってるよー」

P「……わかりました」

響兄「プロデューサーさんは行かない方がいいよ」

P「え……?」

あずさ「私が行きます」

伊織「ちょ、ちょっと! あずさが行ったら迷子じゃないの!」

やよい「わ、私も」

小鳥「私とあずささんで行くから、待っててね」

やよい「……わかりました」

P「お願いします」

あずさ「はい」


ガチャ

バタン



小鳥「えっとザキミグスク……」

あずさ「こっちですよ」

タッタッタ


小鳥「……」


133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:47:16.75 ID:1uE5XE5co

―――― 座喜味城跡


響「……」

あずさ「いい風……」

響「あずささん、迷わずに来れたの?」

あずさ「三度も泊まっているから、覚えちゃったみたい」

響「…………」

あずさ「お昼にきたら、海が綺麗にみえるのかしら……」

響「……東シナ海が見える」

あずさ「……」

響「ここは入り口だから、あの城……」

あずさ「?」

響「城壁の上からみるともっと景色が広がるんだぞ」

あずさ「明日の朝、来て見ましょうか。みんなで」

響「……うん」

あずさ「……」

響「……」

あずさ「…………」

響「なんにもないから、夜景が綺麗ってわけでもないし、
  近くに米軍基地があるから空が明るくて星もあまり見えないよね」

あずさ「……」

響「だけどね、自分……ここの夜風がとっても好き」

あずさ「私も……好きですよ。包んでくれるようで」

響「うん」


響「……自分が小さい頃にね、おかーと一緒に来たことがあって」

あずさ「……」

響「二人で一緒に、おとーにお別れを言ったの……覚えてる」

あずさ「……っ」

響「それから二人で泣いて……っ」グスッ

あずさ「……うん」

響「どうしてっ……そんな事思い出すんだろッ」グスッ

あずさ「きっと、温かい思い出だから」

ギュウ


響「――!」

あずさ「プロデューサーさんが、沖縄の暖かいイメージがそのまま響ちゃんなんだな、って」

響「……」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/06(日) 22:48:47.97 ID:1uE5XE5co

あずさ「別け隔てなく一緒にいられる温かさは誰にも負けない」

響「?」

あずさ「ある人の言葉です」

響「……プロ…デューサー?」

あずさ「そうですよ。さっき言っていました」

響「んー、……別け隔てなくってのがわからないぞ」

あずさ「うふふ」


あずさ「そういえば、小鳥さんは……」

響「ピヨ子……? あ、あの人影」

あずさ「こっちですよ~」

響「……」

あずさ「私達も戻りましょう、プロデューサーさんが心配してるわ」

響「……うん」

小鳥「私は邪魔かなーと思いましてぇ」

あずさ「明日の朝、ここからの景色を望みましょう。海から昇る朝日もいいですね」

小鳥「あの……あずささん……東は向こうですよ。地平線の方」

あずさ「まぁ……東シナ海だからてっきり……!」

小鳥「東シナ海だから東……と覚えたわけですか……」

響「あのね……」

あずさ「?」

響「最近のプロデューサーを見てると……胸の奥がざわざわってする」

小鳥「……!」

響「アニキにそれを言われて……だから自分……怖くなって……」

あずさ「……」

響「二人は……しない?」

小鳥「私も……プロデューサーさんが私たちと違うところ見ているように思う……っ」

響「あずささんは?」

あずさ「……私は、しないみたい」


138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:36:16.87 ID:g3zELUwYo

―――― ホテル・春香達の部屋


春香「うぅー! どうしてあの時チョキを出さなかったんだろぉ!!」ジタバタ

千早「枕に顔を埋めて……気持ちはわかるけど、そのまま表現するなんて春香らしいわね」

律子「気持ちは分かるんだ……」


pipipipipi


春香「千早ちゃんのケータイじゃない?」ジタバタ

千早「うん……。プロデューサーから……?」

律子「あ……伊織たちの事すっかり忘れてた……」


ピッ

千早「もしもし……はい。今は部屋にいます。……え? 響の三線……?」


139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:37:56.62 ID:g3zELUwYo

―― ホテル・ロビー


真「急にどうしたの?」

春香「響ちゃんの三線だって」ワクワク

貴音「さんしん……? ばったぁぼっくすに響が立つのですか?」

律子「アウト決定なのね……」

千早「テレビ電話……?」

春香「そうだよー。顔を見ながらお話できるの」ワクワク

千早「科学の進歩はそこまで……」

真「千早が思っている以上に進んでるけどね……」


pipipipipi


春香「来たっ」


ピッ


春香「はい、こちら天海春香ですっ」


『みんな揃ったのか。庭で演奏するから、聞いていてくれ』


千早「……はい」


『いよっ、ひびきん!』

『 パチパチパチ 』

『なんだか恥ずかしいけど、それじゃ弾くね。 十九の春 』


貴音「?」

千早「沖縄の民謡曲……」

律子「詳しいのね」

千早「響のお母さんに少し教えてもらって」

春香「……」

真「……」

千早「なに?」

春香真「「 いえいえ 」」


『 カンカラカカカン 』

『  わたしが~ あなたに~ ほれたぁ のぉは~ 

   ちょうど 十九の春でしたぁ~        』


千早「え――」

貴音「このような唄い方……今まで……」

真「聞いたことない……」

律子「新鮮ね……」

春香「……」

140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:39:08.70 ID:g3zELUwYo

『  もとの~ 十九に しておく~れ~  』

『 カンカラカカカン 』


千早「……」

律子「サンシンという楽器も弾きこなして……」

貴音「……」

真「……」

春香「……」


『   主さん 主さんと 呼んだとて~

    主さんにゃ 立派なかぁたがある~

    いくら主さんとぉ 呼んだとてぇ

    一生 忘れぬ 片想い~       』
  


千早「響……」

律子「どうしたの?」

千早「いえ……なんでも……」

真「?」



『 春がくるような~ 夢を見て

  ホケキョ ホケキョと 鳴いていた~ 』


『 カカカン カン カン カン...... 』  


『ブラボー! ひびきーん!』

『凄いですー!』

『 パチパチパチパチ! 』


春香「なんだか……圧倒されちゃった……」

律子「もったいないことしたわね……」

真「あぁ、どうしてあの時チョキを出さなかったんだろう」

貴音「時の巻き戻しが出来ないのを残念に思います」

真「早送りもできないよ、貴音……」

律子「千早?」

千早「え、あ、うん……凄かった」


『なんだか照れるぞっ』

『凄く良かった。感動したよ、響』

『えへへ、ありがとー、プロデューサー』


千早「……」

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:40:24.86 ID:g3zELUwYo

『響……よかったぞ』

『アニキ、おとーもこの曲をおかーに聞かせたんだよね』

『そうさ。……技術は落ちたけど、気持ちは比べ物にならないな』

『当たり前さー! 自分は完璧だからね!』

『あのさ、響……』

『うん……? どうしたプロデューサー……って、なんで携帯電話をそこに置いてるの?』

『あんたの演奏、数キロ先の千早にまで届いてるわよ』

『『 んっふっふ~ 』』

『……え?』

『ぐろーばるすたんだーど、ですよねー!』


律子「ん?」

貴音「やよいはなんと……?」

真「さ、さぁ?」

春香「響ー! 私達も聞いてたよー!」


『は、春香!?』

『テレビ電話で中継を……な』

『うぎゃーっ! 自分! 演奏ダメダメだったぞー!?』


千早「ひ、響……とても良かったから!」


『おかけになった電話番号は現在使われておりません。
 ピーという発信音の後にメッセージをお願いします。ピー!』

『あらあら』

『喋っちゃダメだぞあずささん!』


律子「使われて無いのに留守電に繋がってるわよ響……」

千早「あ、あのっ、あずささん」


『どうしたの、千早ちゃん?』


千早「響を……その……抱きしめてあげてください」


『ち、千早!? なにを言って――』

『は~い』

『――ふぎゅ!?』


律子「千早、どういうこと?」

千早「多分、何かあったんだと思う……プロデューサーのことで……」

律子「…………え」

貴音「……」

真「……」

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:41:42.40 ID:g3zELUwYo

春香「響ちゃん、顔が真っ赤だよ~! あはは」


『はるるん、さっきねー、兄ちゃんといおりんがラブラブだったんだよー』


春香「は……」ピキーン

千早「……は?」

律子「今、なんて……?」

貴音「真、貸切り自動車の手配を」

真「かし……? あぁ、タクシー……駆けつけてどうするの!?」


『ちょっと! なに言ってんのよ!?』

『うふん、兄ちゃんの目見せてぇん』

『真美、いおりんは兄ちゃんのこと兄ちゃんって呼ばないよー?』

『あ、そっか。うふん、プロデューサーさぁん、メガネを取りますわぁん』

『いおりんの目綺麗だぜ、ベイベー』


千早「プロデューサー、弁解をどうぞ」


『なんで信じるんだよ!? 伊織はシークヮサーの皮で俺に目潰しをしようと――』

『話を誤魔化そうとするのはプロデューサーさんのよくないところだと思います』

『いや、違うでしょあずささん!?』

『少し見つめ合っていましたよね』

『空気が全然違いますからっ』



千早「……」

春香「……」

貴音「……」

律子「……」

真「現場のプロデューサーさぁーん……ここの空気、張り詰めてまぁーす」


『ま、真は信じてくれるんだな!』


真「当たり前じゃないですか!」


『そうか……!』


真「伊織にそんな度胸無いですからね!」


『なんですって……!?』


143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:47:25.57 ID:g3zELUwYo

真「ボクだってラブラブしたことないのに、伊織にそんな経験あるはずないでしょ」


『プロデューサーの一人や二人、どうってことないわよ! 私の魅力でイチコロなんだから!」


律子「……伊織、その表現」

春香「楽しそうだなぁ……」

貴音「真に」

千早「……」

真「はいはい」


『むっかーっ!』

『プロデューサーは一人なの、二人もいないのぉ』

『あんたは寝てなさいよ!』

『響のサンシン良かったのぉ……あふぅ』

『あとね、レイレイがさーたーあんだぎー占いをしてくれたんだよ~』

『不肖、音無小鳥、来年はいい年だそうです!』

『やったね、ピヨちゃん!』

『サーターアンダギーを転がして食べただけだぞ、ピヨ子……』

『すいません、適当でした』

『えぇー!?』


春香「運転手さんがそんなお茶目なことを……。喉渇いちゃった……」

真「小鳥さん酔ってる……?」

律子「気が沈みそうだったからってところかな……」

千早「小鳥さん、いつも場を明るくしてくれるから」

貴音「……そうですね」


『プロデューサー! あずさとお喋りしてないでこっちにきなさいよ!』


真「邪魔するなよ、伊織!」


『うるさいわよ、見てなさい真』

『そろそろ切るぞ?』

『プロデューサー、少ししゃがんでちょうだい』

『……なにをする気だ』

『警戒するんじゃないの。……ほらッ』

『うぐっ!?』

『ほらね、気がついたら、同じ目の高さ♪』


貴音「強引でしたが」

千早「何を?」

律子「はぁ……なにやってんだか……」

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:49:16.96 ID:g3zELUwYo

『さっきも思ったんだけど、アンタの目……気に入っちゃったみたいなのぉ』

『は、離せ……』

『暴れないの……、素直にならないとご褒美あげないわよ?』

『まぁまぁ、伊織ちゃん大胆ですね~』


真「……」

貴音「……」


『うふふ、吸い込まれそうになる……素敵な瞳……』

『亜美、真美。協力してるんじゃない』

『ドキドキしてきたよー』

『うぅー、伊織ちゃん、楽しそうですー』

『ほら、じっとして……私をみつめてほしいから』

『あのなぁ……』

『うふふ、まるでドラマのようですね~』


律子「……」

千早「……」

春香「えっと……なんだろう、これ?」


『教えてあげる。メガネを取ると、アンタの目、とっても可愛くなるのよ』

『伊織、怒るぞ』

『二度も通用しないわ。ほら……私に映るあなた……見えるでしょう?』

『……』

『息遣いまで……伝わってくる……ふふ……』

『……伊織』

『あずさがたまにやってるわよね、こうやって額を合わせて……』

『俺がやられてるみたいな言い方するな』

『それはどうかしら、いつも二人一緒だから、知らないところで……』

『おい』

『これは冗談。怒ったりしたら雰囲気が台無しよ?』

『……』

『……』


律子「お……?」

貴音「あずさの様子が……」

千早「さすがに近い」

真「……悔しい、ドキドキしてきた」


145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:50:29.90 ID:g3zELUwYo

『ずっとこうしていましょうか……』

『……』

『それとも、少しだけ進んでみる?』

『伊織』

『な、なによ?』

『冗談だとしても、何の意味があるんだ?』

『……』

『もういいだろ』

『冗談で、こんなことできると思ってるの?』


千早律子真「「「 っ!? 」」」


『アンタも、もう亜美達が抑えていないんだから、逃げられるでしょ』

『やっぱり……何か試しているんだな』

『さぁ……それはどうかしら』

『……』

『少なくとも私は、ドキドキしてる』

『そうか……』

『くしゅっ』

『私の胸に、手を当ててみればわかるわよ』

『いや……』


律子「くしゃみしたの……あずささん?」

真「……」

貴音「そのようで……」

千早「……」


『くしゅっ』

『唇、奪ってもいいかしら?』


律子千早「「 ! 」」

真「……」


『……』

『なによ、その目は』

『俺は伊織のことを分かりたいと思う。だけど、これがどういう意味なのかが分からない』

『……それで?』

『それが少し悔しい』

『……』

『……』



『アンタ、私達に吐いてはいけない嘘、吐いてない?』


146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:51:50.73 ID:g3zELUwYo

貴音「……!」

千早「伊織!」

律子「何を言ってるの!」


『……』

『答えて』

『嘘はついていない。みんなに隠すことはあっても、騙すことは絶対にしない』

『本当に?』

『あぁ。嘘はつかないって、決めている』

『……』

『疑うなら、なにをしてくれても構わない』

『……』

『今、この場で――』

『うるさいバカッ!』

『 コンッ 』

『いてっ!?』

『あらあら、いい音が……くしゅっ』

『いつっ……まったく、石頭なんだから……っ、あんた達も止めなさいよね……』

『何か本気だなーと思ったぞ、自分』

『どうせ止まるんだろうな、と思いました』

『ごごにじゅうご、ごろくさんじゅう、ごしちさんじゅうご』


真「雪歩ー! 九九の練習してないで戻ってきてー!」

貴音「……」

律子「まったく、ギリギリでやることじゃないでしょうに。焦りすぎよ……」

千早「……ふぅ」

真「あずささん、余裕だよね。伊織はそれも試したっぽいなぁ……」

律子「そうね。私も伊織に一杯食わされた感があるのに」

貴音「春香は……?」

千早「飲み物買ってくる、と」

律子「一番の大物は春香よね……」


147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:54:10.97 ID:g3zELUwYo

―――― 我那覇邸・小鳥達の部屋


小鳥「ぅ……ん……やよぃ…ちゃん」ギュウウ

伊織「ちょ、ちょっと……目を覚ましなさいよ……!」

小鳥「だい…じょうぶ……らよ」ギュウウ

伊織「く、苦しい……!」

亜美「抱き枕だね」

真美「兄ちゃんはどこで寝るの?」

亜美「おっとさんの所」




―― 仏間


響兄「へぇ、響が……」

P「一緒にでかけたりとか……?」

響兄「仕事に就く前はありましたけど。上京してからは機会が無くなりましたね」

P「ロケだと響への応援が必ずあるんですよ」

響兄「あのじゃじゃ馬が……頼もしくなったもんだ……」

P「…………」

響兄「……プロデューサーさん?」

P「あ、いえ……」


コンコン


P「……はい?」


「プロデューサー……わ、私です……」


P「雪歩……? どうしたんだ?」


「え、えっと……す、少し話がしたくて……」


響兄「入ってきていいよー」


「お、お話してたんですか? ご、ごめんなさいぃ……」


響兄「終わったから大丈夫、俺は失礼するさ」


「うぅ……」


P「もうこんな時間ですから……」

響兄「話がしたいって言ってるのに?」

P「いえ……これは――」

148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:56:13.71 ID:g3zELUwYo

スーッ


雪歩「し、失礼します……」

P「雪歩、俺はまだいいとは言ってない」

雪歩「で、でも……」

P「こんな時間に男の部屋に入るなんて――」

響兄「はい、そっちに座って」

雪歩「……っ」

P「お兄さん、これは俺の信条です」

響兄「……」

P「彼女達を守り抜くためならなんでもします。けど、これはそれに反していると判断しました」

P「これまでも、これからも、俺は自分が決めた流儀を守っていきたいんです」

雪歩「うぅ……や、やっぱり……」

響兄「建前でしょう?」

P「誓いです」

響兄「……」

P「明日、話を聞くから――」

雪歩「や、やっぱり……居ます! 聞いてください!」

P「雪歩、ダメだ」

雪歩「……っ」

響兄「あのねぇねぇがいたほうがいいのかや……」

P「……え?」

響兄「俺にはよ、プロデューサーさんが距離を置き始めてるとしか思えないさ」

P「……」

雪歩「……」

響兄「……そうだった」

響兄「はい、この続きはあんたに任せたよ」ポン

雪歩「ッ!」ビクッ

響兄「じゃ、おやすみ」

P「あの……」

響兄「?」

P「響の話、ありがとうございました」

響兄「どうってことないさ。ゆくいみそ~れ」


スーッ パタン


P「そんな……ゆっくりしていけって……」

雪歩「……?」

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:58:18.45 ID:g3zELUwYo

P「……」

雪歩「……ぅ…」

P「…………」

雪歩「……っ……っっ」

P「……雪歩」

雪歩「ぷ、プロデューサーが私の為に叱ってくれているのは分かりますっ」

P「……」

雪歩「でも……でも、明日じゃダメなんですっ。今じゃなきゃ……っ」

P「……雪歩がその意思を通そうとしてるのは解る。だけど――」

雪歩「わかって……いません……。私がわかっていないんですから……」

P「……?」

雪歩「私が……事務所、みんなの足を引っ張っているのは……お荷物なのは知ってます……」

P「そんなこと」

雪歩「あります……。私がこのまま事務所に居ても……プロデューサーの夢が叶えられないことも」

P「雪歩」

雪歩「っ!」ビクッ

P「『夢はみんなまとめてトップアイドル』」

P「そのみんなは雪歩が入っていなきゃいけないんだ」

雪歩「……」

P「だから、そんなこと言わないでくれ」

雪歩「……さっき、伊織ちゃんとあずささんが話をしてるとこ聞いちゃって」

P「話……?」

雪歩「プロデューサーが……隠していることについて……です」

P「……」

雪歩「私も……それになんとなく気付いてたのに……でも、どうしたらいいか分からなくて……」

雪歩「伊織ちゃんが詰め寄っても……それでも言えない事なんだと……ハッキリわかりました」

P「…………」

雪歩「た、頼りにならない、ちんちくりんな私ですけど……っ、私っ、頑張りますからっ!」

P「雪歩……」

雪歩「プロデューサーの夢を叶えるためにも……っ、絶対……絶対に……」

P「そんなに気負わないでくれ。俺の夢がみんなの足枷になっては意味が無い」

雪歩「……足かせなんかじゃ……ありませんよ」

P「……」

雪歩「最近……沖縄に来る……ずっと前から……嫌な夢を見ているんです……」

P「夢……?」

雪歩「プロデューサーが……私達を……置いて……遠くに行く夢……」

P「……!」

雪歩「雪のように……冷たくなっていく感覚……それが嫌で目が覚めて……」

雪歩「最初は……私のせいなんだって……私の仕事が少ないからなんだ……って、思っていました」

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 10:59:51.64 ID:g3zELUwYo

P「……」

雪歩「だけど……沖縄に来て……プロデューサーと楽しそうにしている響ちゃんを見て、みんなを見て……」

雪歩「隣で微笑んでいるあずささんを見て安心……暖かい気持ちになると同時に……怖くなるんです」

P「……」

雪歩「その暖かさを失わないようにするためには……どうしても……プロデューサーの夢を叶えなくてはいけないんですっ」

P「…………」

雪歩「もちろん、自分のためにも、です。だから、これからもよろしくお願い……しますっ!」

P「悪かった」

雪歩「……」

P「雪歩の意思を解ってるなんて……言ってしまって。全然解ってなかったんだな。知ろうともしないで」

雪歩「い、いえ……」

P「でも……、わかった。伝わったよ、その強い気力。これからも一緒に頑張ろう、雪歩」

雪歩「は、はい……ッ!」

P「…………やっぱり、雪歩の勇気は凄いな」

雪歩「……?」

P「いや。……でも、どうして、急にそんな決意が」

雪歩「亜美ちゃんからケータイの写真を見ました……」

P「写真……?」

雪歩「楽しそうなやよいちゃん、微笑むあずささん、困りながらも二人を気遣うプロデューサー。暖かい場所……」

P「…………」

雪歩「あずささんのように……素敵な人になりたいと……思いました」

P「……ッ」

雪歩「どう……したんですか……?」

P「……いや、なんでも……ない」

雪歩「……」


コンコン


P「はい……?」


「プロデューサーさん、私です~、あずさです~」


P「こんな時間にどうしたんだ?」


「えっとぉ、一緒に眠りたいなぁと思いまして~」


P「あのな……亜美」


「まぁ……」


P「あれ?」


151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:01:02.01 ID:g3zELUwYo


スーッ


亜美「えへへ、バレちゃったかぁ」

真美「真美もいるよー」

雪歩「……ど、どうしたの?」

亜美「それがねー……」

やよい「ぐすっ……」

P「やよい……どうしたんですか……?」

あずさ「ひめゆりの塔で見た写真を思い出したそうです……」

やよい「ぅ……っ……ぐすっ」

P「……」

亜美「亜美も思い出しちゃった……」

真美「…………」

P「……とりあえず、入ってください」

あずさ「……はい」

美希「……」スッ


スーッ パタン


P「ちょっと待ってくれ、美希?」

美希「なぁに?」

P「その枕はなんだ?」

美希「寝るときに使う道具だよ?」

P「いや、そうじゃない」

やよい「ぐすっ……プロデューサー……」

P「明日……大丈夫だろうか」

あずさ「一つ一つ解決していきましょう」

P「……そうですね。……えっと、雪歩はもう解消したというか、な?」

雪歩「……大丈夫です。私も、やよいちゃんが気になりますから、頑張って起きてます」グッ

P「うん……」

亜美「よいしょっ」ファサ

真美「ぽんぽん」ポンポン

亜美真美「「 準備おっけー 」」

美希「ありがとうなの……」ゴロン

亜美「ちょっと、ミキミキ、亜美達の布団で寝ないでよー」

P「俺の布団だ……」

やよい「……っ」

P「座って、やよい」

やよい「……はい」グスッ

P「……」

152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:02:53.60 ID:g3zELUwYo

やよい「写真に写っていた人たち……私と変わらない年齢でした……っ」

P「……うん」

やよい「きっと……友達とか……っ……家族とか……大切な人が……たくさんいたと思います……」

P「……」

やよい「そ、それなのに…っ……離れ離れに……なって……っ…」

やよい「私が……っ……そうなったら……嫌だなって……悲しいなって…………胸が痛くて……っ」グスッ

雪歩「やよいちゃん……っ」

亜美「……っ」

真美「……」グスッ

あずさ「……」

P「それはきっと、大事な痛みなんだと思う」

やよい「……大事……ですか?」グスッ

P「人は、その痛みからは決して逃れられない」

真美「……でも、やだよ……離れたくない……」


P「うん。俺だって離れたくない、ずっと……一緒にいたい……」


あずさ「――ッ!」


やよい「プロデューサー……?」

P「辛く悲しい痛みだ、寂しくなるから、その先を考えてしまうと怖くなる」

亜美「に、兄ちゃん……?」

P「亜美は……そうだな、響と響のお母さんを見て……どう思った?」

亜美「え………………それは……」

P「真美は響のお兄さんと、運転手――嶺さんと一緒に居てどう思った?」

真美「……楽しいと……思った」

P「響に話しかける地元の人たちをみて……やよいはどう思った?」

やよい「楽しそうだと……思いました」

P「こんな言い方……失礼かもしれないけど、沖縄の人は寂しがり屋なのかもしれない」

雪歩「……寂しがり屋」

P「うん。だから、誰かと一緒に居て、楽しく賑わっていたいんだと思う」

あずさ「……」

P「一人じゃ寂しいから、みんなと繋がって、誰かを引き入れてもっと楽しくしようって」

やよい「あ……」

P「俺も寂しがり屋だから、そう……勝手に思っているだけなんだけどな……」

あずさ「賑やかなのが好き、ってそういうことなんですね」

P「……はい」

亜美「亜美も……わかるよ……。みんなといたほうが楽しいもんね」

真美「……うん」

P「やよい」

やよい「は、はい」

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:04:50.26 ID:g3zELUwYo

P「その痛みから一時的に逃げることも目を背けることも、それは悪いことじゃないと思う」

やよい「……」

P「でも、やよいにはその優しい気持ちを忘れずにいてほしい。……なんて、これは俺のわがままだな」

やよい「はい……! 私……アイドルだから……きっと、楽しくさせる方法がたくさんあるはずですよね」

P「……!」

やよい「な、なんだか……明日が楽しみになってきました……!」

亜美「亜美もだよ……!」

美希「いいなー、お子様チームは……」

P「起きてたのか……って、投票次第では美希達も午後の出場がありえるんだからな」

美希「はーい。おやすみなのぉ」

P「頼むから部屋に戻ってくれっ」

真美「兄ちゃん、寂しいの……?」

P「え……あ……」

雪歩「……そういうこと……ですよね」

美希「どうなの?」

P「いや、今は……みんながいるから……ら……来週からハードになるけど頑張ろうな」

真美「んっふっふ~」

P「待て、俺はここに一人で寝るぞ」

あずさ「えっと……響ちゃんを呼んできますね」

P「どうしてですか!?」


スーッ


響「プロデューサー……聞いてたぞ自分」グスッ

P「くぅ……なんで布団を持ってきている……!」

響母「誰が寂しがり屋って?」

P「私ですね。沖縄の人ではなく私が寂しがり屋なんですね」

響母「あながち間違ってないかもね。ほら、お茶淹れたから、これ飲んで休んでね」

美希「ありがとうなのー♪」

やよい「ありがとうございます……」

亜美「うぅ、眠り茶だよ……」

真美「眠くなるんだよねー……枕投げ出来ないねー」

P「響のお父さんの前で暴れようとするんじゃない」


P「みんな、これを飲んだら部屋に戻って寝ような……」

響「そっかぁ、プロデューサーは寂しがり屋だったのかぁ……」グスッ

P「……っ」

雪歩「ふふっ」

あずさ「響ちゃん……」


154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:06:09.73 ID:g3zELUwYo

――…


チュンチュン

  チュンチュン


雪歩「プロデューサー、起きてください」

P「……ん……? おはよう……」

雪歩「おはようございます」

P「……ん?」

あずさ「すぅ……」

響「くぅ……」

P「嗚呼……お茶を飲んでそのまま寝てしまったのか……」

雪歩「やよいちゃん」ユサユサ

やよい「……は……はい…………あさですか?」

雪歩「おはよう」

やよい「おは…よぅ……ございます……」

P「なにが信条だ……なにが流儀だ……ダメじゃないか俺……」

亜美「すやすや」

真美「むにゃむにゃ」

やよい「美希さん、朝ですよー」ユサユサ

美希「すぅ……」グラグラ

P「……響、朝だぞ」ユサユサ

響「んー? なにー……?」

P「お父さんの夢、見たか?」

響「ふぁ…………見てないぞ……たぶん……」ボケー

P「そうか……。あずさん、朝ですよ」

あずさ「すぅ……すぅ……」

P「……あずさ…さん」

あずさ「……ん…………すぅ」

P「……」

響「ふぁぁ……」



あずさ「すぅ……」

P「……ッ」


雪歩「プロデューサー……?」


155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:07:21.71 ID:g3zELUwYo

P「悪い、雪歩、みんなを起こしておいてくれ……」スクッ

雪歩「え……」


P「……」


スーッ


パタン


亜美「おはよぉ……やよいっち……」

やよい「おはよー」

真美「あれ? 兄ちゃんは……?」

響「……」

雪歩「あずささん、起きてください」

あずさ「……ん…………はい……?」

雪歩「プロデューサーが……辛い顔……してましたよ」

あずさ「……」

あずさ「そう……ですか…………」

雪歩「……」




―― 小鳥と伊織の部屋


小鳥「すやすや」

伊織「朝……ね…………蛇…違うわ……ハブね…ハブに巻きつかれるなんて」

小鳥「やよい……ちゃん……らいじょう……」ギュウウ

伊織「起きなさいよ……小鳥……」

小鳥「……い、伊織ちゃん? どうして私の腕の中に!?」

伊織「あんたのせいで悪夢見たわよ、悪夢」


156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 11:09:04.04 ID:g3zELUwYo

―― 玄関


響兄「色々と大変だろうけど、ちばりよー」

響「……うん。自分には、みんながいるから……」

響兄「あの頃、おまえは小さかったからあまり覚えていないだろうけど」

響「…………」

響兄「真剣に聞いている響の前で、おとーはとっても楽しそうに三線を弾いてた」

響「……っ」

響兄「昨日の夜は逆だったけど、俺はそれを見てとても誇らしいと思ったよ」

響「うん……っ」

響兄「……自慢の妹さ」

響「ありがと、アニキ」

響兄「自分を信じれな、響」

響「うん! なんくるないさー、だよね!!」





「「「 お世話になりましたっ! 」」」

響母「五日間とても楽しかったさ~、また来てね~!」

美希「ご飯おいしかったの~、またね、響のお母さん」

あずさ「それではお元気で、またいつの日かお会いしましょう~」

響母「はいはい、元気でね~」

P「それでは、また」

響母「あんまりみんなを心配させるんじゃないよ、本当に」

P「……は、はい」

響母「響のこと、よろしくね」

P「はい!」

響「それじゃーね、行って来るさー!」

響母「ちばりよー、響!」


157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:02:43.67 ID:g3zELUwYo

【 最終日 】


―――― 北谷・特設ステージ


あずさ「なんだか、懐かしい気分になってきました」

P「え?」

あずさ「今、春、冬、秋、夏、そして私のデビュー、『9:02pm』」

P「……」

あずさ「このライブが終わったとき、私の決心を聞いてください、プロデューサーさん」

P「……」

あずさ「応えなくても、聞いてもらいます」

P「あずささん――」

あずさ「みんな、知りません」

P「……」

あずさ「だけど……みんなの想い、ちゃんと受け止めてくださいね」



P「……ッ」



雪歩「うぅ……よかったぁ……わ、私のせいでアンコール出場できなかったらどうしようって……っ」

真「ボク達だって負けてなかったんだから、当然だって!」

春香「みんなで歌いたいって……私は感動だよっ、千早ちゃん!」

千早「う、うん……春香、落ち着いて」

やよい「うぅー! 武者震いですぅー!」ブルブル

響「やよい、頼もしいぞっ!」


律子「一曲目は我が765プロの看板、あずささんを筆頭に真、響、貴音、千早。二曲目から全員で行くからね」

「「「 はい! 」」」



スタッフ「スタンバイお願いしまーす」


律子「あ、はーい!」

真「それじゃ、あずささん、いつものアレを」

あずさ「アレ?」

春香「コレですよ!」


スッ


あずさ「はいは~い」

真「バシッと決めてやりますよー!」

真美「うーし、やってやろうじゃんかー」

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:04:14.05 ID:g3zELUwYo

伊織「通過点に過ぎないけど、手を抜くつもりは無いわ」

亜美「メラッてきたよー!」

やよい「うぅー!」

雪歩「よ、よぉし!」

響「みんなに負けないぞー!」

千早「……ふふ」

あずさ「それでは~、765プロ~~」

貴音「……?」

あずさ「ふぁいとぉ~」


あずさ「おぉ~~」

一同「……」


あずさ「あら」

真「あの、あずささん。いつもの気迫はどこへ……?」

あずさ「そうですか? いつもと同じだと思いますが……」

伊織「ちょっと! デビューした時に戻ってるじゃないの! プロデューサー!」

P「気持ちだけじゃなく、感覚まで遡ってしまったか……」

響「えっと、どうするんだ?」

あずさ「それでは、もう一度~、765プロ~~」

春香「ファイトーッ!」


「「「 おーっ!! 」」」


P「あずささん、真、響、貴音、千早!」

「「「 はいっ! 」」」

タッタッタ


律子「ふぅ……空気読めてないのが逆に空気を読んでて……助かったかな」

春香「え……」



『みなさんこんにちは~』

『こんにちはー!』

『はいさーい!』

『……』



ワァァァアアア!



『あらあら、凄い歓声~……うふふ』

『あずさ……?』

『ちょ、ちょっとあずささんどこへ行くんですか!』

『舞台を通りこしちゃダメだぞー!』

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:05:37.27 ID:g3zELUwYo

P「あぁ……またそれを見るなんて……」

やよい「また、ですか?」

P「あずささんの最初のステージ、緊張しすぎて同じことしたんだ……」

亜美真美「「 あはははっ 」」

P「笑い事じゃないんだが……」

律子「さっきの掛け声といい、今のあずささん、少し変ですね……」

伊織「なにか、あるわね」キラン

美希「おでこが光ったの!」

伊織「鋭い目が光ったのよ!」


『三浦あずさと申します~』

『菊池真ですッ!』

『我那覇響だぞー!』

『四条貴音』

『如月千早です』

『それでは、さっそく。一曲目ですね~』

『響、曲紹介よろしくね!』

『まかちょーけー! それじゃーみんな、行くよー!』



『 THE IDOLM@STER !! 』




……






『 男には耐えられない痛みでも 』

『 女には耐えられます 』


『『『 強いから 』』』


ドォンッ!



ワァァアアアアアア!!





あずさ『うふふ、声援ありがとうございます~!』

響『ありがとーッ!』



マコトサマーッ!



真『ちゃんとボクを見ていてよね!』

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:06:47.70 ID:g3zELUwYo

貴音『……さて』

千早『二曲目に入る前に……』



アズササーン!



あずさ『まぁまぁ、ありがとうございます~』

千早『あずささん、メンバー紹介を』

あずさ『そうですね。ウチの事務所で歌唱力が高い、如月千早ちゃんです~!』

千早『……えっと』

真『ち、違いますよあずささん! ほら、みんなが今か今かと待ちわびていますよ!』

響『765プロの紹介だよね!』



P「みんな、音楽祭最後のライブだ。思う存分楽しんで来い!」


「「「 はいっ! 」」」


あずさ『リボンがトレードマークの天海春香ちゃんです~!』

春香『こんにちはー! 楽しんでいきましょうねー!』

あずさ『元気がトレードマークの高槻やよいちゃんです~!』

やよい『うっうー! また歌えて嬉しいですー!』

あずさ『双子がトレードマークの双海亜美ちゃん、双海真美ちゃんです~!』

亜美真美『『 双子だよ~ん! 』』

亜美『いやいや、双子がトレードマークってあずさねぇねぇ?』

真美『おやおや、一週回ってザンシンな紹介ですな』

あずさ『繊細な心がトレードマークの萩原雪歩ちゃんです~!』

雪歩『こ、こんにちはーッ!」

あずさ『メガネがトレードマークの秋月律子さんです~!』

律子『ど、どうもー! コンタクトにしたら周りからこの人誰と疑われた私ですー!』

あずさ『おでこ――』

伊織『みんなー! この水瀬伊織ちゃんが出たからには更に盛り上がって行くわよー!』

あずさ『お昼寝が大好き――』

美希『ミキだよー! 思う存分歌っちゃうのー!』


ワァァァアアアア!!



161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:07:32.10 ID:g3zELUwYo

やよい『わぁー、たくさんの人ですねーっ!』

雪歩『す、すごいですぅ!』

真美『ほんとだー、いち、にい、さん、しー』

貴音『何を数えているのです、真美。もしや観客の……』

律子『えっと、私たち765プロのメンバーが旅に出たのよね、伊織』

伊織『そうそう、最初はどうなるのかと思ったけどぉ。伊織、とっても楽しかったなぁ』

亜美『五日連続のエンダーもいい思い出だよね!』

真『沖縄の色んな観光地を周ったよねー』

あずさ『うふふ、それはともかく。二曲目まいりましょう~』

春香真『『 えぇー! いきなり話題を終えた!? 』』

美希『ミキも早く歌いたいから、そうするの!』

響『会場の声援に負け無いよう頑張ろうね、みんな!』


『『『 おぉーっ! 』』』


律子『せっかくの宣伝が……。千早、二曲目の紹介を』

千早『それでは聞いてください MUSIC♪  です!』



P「……」

小鳥「……」


162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:09:00.66 ID:g3zELUwYo

『 さあ PLAY START MUSIC♪
  
  進めGO!! かけ出すMELODY 今へ 』



P「…………」

小鳥「……」



『 もう DON'T STOP MUSIC♪

  掴めGOAL!! のり出すRHYTHM 未来へ 』



P「小鳥さん」

小鳥「はい」



『 PHRASE!!

  心を自由に描いてみよう 歌詞(ことば)にして
  
  声にして 響いてく  』



P「俺、事務所を辞めます」

小鳥「!」



『 FRESH!!

  歌うよ音楽に壁なんてない VOLUME上げて 最高に 

  STANDBY STAND UP 』



小鳥「理由を聞かせてください」

P「逃げます」



『 てっぺん目指せ!! 』



P「……」



『 奏でよう 夢のMUSIC 音符の翼 』



P「みんなにもちゃんと謝ります。夢を中途半端にしたこと」

小鳥「それだけで、納得できると思っているんですか?」



『 どこまでも翔ばたいてゆけるPOWER 』



P「いえ、納得せざるを得ないでしょう」

小鳥「……」


163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:10:09.01 ID:g3zELUwYo

『 鳴らそう 好きなMUSIC どんなKEYだって 』



P「俺のわがままで、彼女達を見てきましたけど。もう限界みたいです」



『 歌えばほら新しいDOOR 開いてく輝いて
  
  始まる世界LISTEN!!  』



P「彼女達は、どこまでも輝いていけるんです」



『『『  私のMUSIC♪  』』』




P「俺は幸運でした」



P「――――。」



小鳥「――そうですか」

P「……驚いてくれるかなって、期待してました」

小鳥「なんとなく、気付いていましたから」

P「……え?」

小鳥「現実味が無いから、小説やドラマのような感覚なのかもしれません」

P「……」

小鳥「でも、彼女は……傍にいましたよね」

P「知らないと、さっき聞きました」

小鳥「彼女の決心を受け止めてください」

P「酷ですよ」

小鳥「私から言えるのはここまで」



……




164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:20:22.06 ID:g3zELUwYo

真『その映像が発売されるかどうか……正直、ギリギリじゃないかな……』

雪歩『そ、そうなの? 楽しかったのにぃ……』

美希『ミキたち、遊んでただけだもんね』

響『そ、それは困るぞ……企画したの自分だから……』

律子『あぁ……私がもっとしっかりしていれば……』

伊織『ちょっとぉ、観客の前で遠い目をしないでくれるぅ~?』

亜美『このおきなーWAの旅は楽しかったよね!』

やよい『すーっごく楽しかったですー!』

真美『真美もめちゃ楽しかった!』

律子『っと、話は尽きないけど、最後の曲を歌いましょうか』

貴音『皆の想いを曲に乗せ、届けましょう』

千早『この曲は、私が苦しんでいるときに、みんなが歌ってくれた歌です』

春香『……』

千早『この歌を聴いて、誰かの心に少しでも伝わるのなら……、
   私が歌うことの意味をこれからも見つけていけると、そう信じて……』


P「千早……」


あずさ『私たちの大切な人へ』



『 約束 』



P「……」


  ねえ今 見つめているよ 離れていても

   Love for you 心はずっと 傍にいるよ 



P「みんなが成長する姿は……とっても綺麗で」



  もう涙を拭って微笑って 一人じゃない どんな時だって

   夢見ることは生きること 悲しみを超える力 



P「アイドルとして、とても魅力的で……」



  歩こう 果てない道 歌おう 天を超えて

   想いが届くように 約束しよう 前を向くこと



    Thank you for smile 



P「ずっと、ずっと……見ていたかった……」ホロリ



165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:21:47.23 ID:g3zELUwYo


……






―――― タクシー内


貴音「……」

真「薬を誤魔化すために、ビタミン剤と……」

雪歩「……ッ」

美希「……あずさは……知ってたのかな」



―――― 


千早「きっと、その先も知ってる」

春香「その先……?」

律子「プロデューサーが、隠し通す理由……」

春香「――え」



―――― バス内


亜美「もぉー! しつこいよー!」

真美「あずさお姉ちゃんを付け狙うパララッチ!」

やよい「あずささんとプロデューサー、大丈夫ですよね……」

小鳥「大丈夫よ、運転手さんが上手く引き寄せてくれたから」

亜美「レイレイの作戦大成功だよねー!」

嶺「恐れ多いですが、あずささんの身代わりになるのは気が引けました……」

真美「いやいや、ナイスバデーだもん」

小鳥「…………」

伊織「響……」



響「プロデューサー……やっぱり……おとーのように……」グスッ



響「いなくなっちゃうの……?」ボロボロ



166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:40:42.78 ID:g3zELUwYo


―――― 浜比嘉島・ビーチ



あずさ「プロデューサーさん、あの端まで行ってみませんか?」

P「……」




あずさ「綺麗な所ですね」

P「……」



ザザァーン



あずさ「あの、怒っていますか?」

P「……」

あずさ「アイドル引退の決心を……黙っていたこと……」

P「……いえ」

あずさ「そうですか……」

P「……あの、あずささん」

あずさ「はい」




「俺には時間がありません」

「……」

「病気を患っていて、…………余命を宣告されました」

「……」

「……約束も………誓いも……守れませんでした」

「……」

「…………沖縄に来るんじゃなかった……」

「……」

「人とのつながりを思い出したから迷いが生まれた……」

「……」

「生きていたい…って……ッ」ボロボロ

「……」

「あのまま……志半ばでも……よかった……ッ」ボロボロ

「……」

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:42:33.03 ID:g3zELUwYo

「諦めて…いたから……ッ……無心で……いられた…のに……ッ」ボロボロ

「……」

「俺はまた…っ……あずささんとの約束を――」ボロボロ

「手を、お借りしますね」


ギュ


「…っ………っ」ボロボロ

「どきどきしますか?」

「……いえ…………」グスッ

「私も、しません」

「……?」

「去年の秋」スッ

「ッ!?」

「こうやって、おでこを合わせた時、とてもどきどきしましたけど」

「……俺が…風邪気味の時……」

「そうです。つい、うっかり……やってしまって」

「…………」

「不思議です。今は心が落ち着いていくんです」

「……」

「ふふ、伊織ちゃんの言うとおり、あなたの目、可愛いです。気付けなかったのが悔しいかな」

「……あの」

「すいません。話が逸れましたね」

「……」

「知っていました」

「え……」

「あの日に見た……健康診断の通知」

「あの時はまだ……」

「数値を見ても、私には理解できませんでした」

「……」

「それから間を置かず、健康診断を受けるよう社命という形で指示がありましたよね」

「あ…あれは……!」

「はい。私と小鳥さん、律子さんで相談して社長にお願いしたんです」

「……ど、どうして……というか…そろそろ」

「今、離れると私が不安になるので、もう少しだけお願いします」

「……」

「あの吹雪の日、私をプロデュースして下さいとお願いしたのは、隣に・・・いたかったから」

「……」

「あなたが、離れないように、迷わないように」

「……っ」

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:45:12.74 ID:g3zELUwYo

「遠い彼方へ、行ってしまわないように」

「……」

「私の目を、見てください」

「……ッ」

「……」

「…………どうして」

「ずっと、あなたを目で追いかけていましたから」

「……」

「みんなが不安になったように、私も不安でした」

「……」

「二度目の健康診断の通知を見せていただけなかったことで、私はあなたへの不安が病気だと確信しました」

「……」

「あなたが不安にならないよう、私が頑張っていようって決めていましたけど」

「……」

「それは間違いだったようです」

「……」

「あなたにはみんなが、みんなにはあなたが、必要なんですから」

「それは……俺じゃなくても――」


「キス、してもいいですか?」


「……」

「私、昨日の夜……とても怖かったんですよ?」

「え……?」

「らぶらぶしていたじゃないですか」

「して…ません……」

「余裕なんて全然ありませんでした……」

「……」

「いつも傍にいてくれた……あなたを遠くに感じて……」

「……」

「隣に・・・いてくれるから」

「……」

「私の心は落ち着くことが出来て、安心できるんです」

「……」

「私はあなたの未来を信じられるんです」

「……!」

「諦めないでください」

「……」

「生きたいと……強く願ってください」

「……ッ」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:46:37.90 ID:g3zELUwYo

「……」

「~ッッ!」

「あなたの弱さを、初めて感じました」

「うぅッ」ボロボロ

「……ずっと、一緒にいてくれますか」

「でも……ッ」ボロボロ

「私の最後のわがままですから」

「ぅ……ぁ…ッ」ボロボロ

「額だけじゃ心細くなってきたみたいです」


ギュウ


「――!」

「……」

「すいません……こんな…ッ情け無い……ッ」ボロボロ

「情けないなんて……そんなわけないじゃないですか」

「ッッ!!」ボロボロ

「だいじょうぶ。こうして、掴まえていますから」

「……っ…っ」ボロボロ

「離しませんから」

「……安…心……しま…す……っ」ボロボロ

「…………私もです」

「あ…あり……っ……ありが……っ」ボロボロ

「これくらいのことなら、幾らでも」


ギュウウ


「……ッッ」ボロボロ

「……」

「……っ」グスッ

「……」

「すぅ……ッ……はぁッ……」グスッ

「……」

「怖いというより……無念さしか……ありませんでした……」グスッ

「……」

「輝くみんなを見られないのが…………夢を……途中で終わらせてしまうことが……」グスッ

「……」

「だけど……いつも……傍にいてくれたから……っ」

「……」

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:48:53.51 ID:g3zELUwYo

「俺は……おち…ついていられたんです……」

「……」

「もう……大丈夫……」

「……もう……少し……このままでいさせてください」

「…………」

「いつも一緒にいたのに……あなたを掴まえきれなくて……」

「…………」

「涙を堪えるの大変でした」

「え……?」

「『おれだって離れたくない、ずっと……一緒にいたい……』」

「……!」

「やっと、心の声がきけた……って」

ギュウウ


「…………」

「やっとつかまえることができたんです」

「…………」

「…………もうすこしだけ」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「うふふ、すいません、プロデューサーさん。そろそろ離れますね」



P「ありがとうございます、あずささ――」

あずさ「きゃっ!?」ズルッ

P「あ、危なッ!?」ギュウ

あずさ「!」

P「海に落ちるとこだったじゃないですか……」

あずさ「あ、……はい」

P「いくらビーチだからといって……服のまま海水浴は……」

あずさ「あの……」

P「あ、顔見ないでくださいね。……体勢を立て直します……」

あずさ「プロデューサーさんはしてないみたいですね……」

P「窮屈ですけどもう少し……え?」

あずさ「私……どきどきしています……」

P「?」

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:51:16.58 ID:g3zELUwYo

あずさ「プロデューサーさんに……その……抱きしめられて」

P「あ――」

あずさ「きゃぁ!」

P「あずさッ――!!」


ザッブーン



律子「あらら、落ちちゃった」

春香「あ、あれ……誰もいないよ?」

真「こっちじゃないのかな?」

美希「二人とも残念、とっても素敵なシーンを見逃したの~♪」

春香真「「 え? 」」

貴音「千早、髪を結って……どうされました?」

千早「青臭いかもしれませんが。私もこの日の思い出を作ろうと思います」

律子「千早、二人が落ちたのは事故なのよ?」

真「プロデューサーとあずささんが海に入ってる!?」

千早「如月千早、参りますッ」

貴音「千早」

千早「?」

貴音「わたくしも、付き合いましょう」

千早「あ、あの……っ、勢いを殺がれると……!」

貴音「準備は整いました。いざ!」

タッタッタ


春香「え、えぇ!?」

律子「……まぁ、いいか」



P「あずささん、大丈夫ですか?」

あずさ「はい。貴重品は律子さんに預かってもらっていますから」

P「いや、体の怪我とか……。防水だから、ケータイ壊れてないよな……?」

あずさ「プロデューサーさんは大丈夫ですか?」

P「はい。迷いが晴れました」

あずさ「……」


......タッタッ...



P「こんな俺ですけど……」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん……っ」

P「あずささんと――」

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:53:29.16 ID:g3zELUwYo

千早「えい――ッ」

貴音「せや――ッ」


ザッブーン


あずさ「きゃ!」

P「千早――! 貴音――!?」


ザバァ


千早「ふぅっ」

貴音「……素敵な気分ですね、千早」

千早「えぇ……とっても」


P「なにをしてるんだー!?」

あずさ「えっと……?」


千早「この行為を思い返した時、恥ずかしくて後悔すると思います」

P「……」

千早「それでも、その後悔は……良い思い出としていつまでも残ってくれる」

あずさ「……」

千早「みんなでいつの日か集まって、今を思い出したとき、笑いあっていたいから」

千早「だから、飛び込みました」


P「千早……知っていたのか」

千早「律子と小鳥さんの情報、やよいの敬慕、響の戸惑い」

貴音「伊織の問い、それを裏付けるプロデューサーの行動」

P「……」

千早「そして、あずささんの揺るがない想い」

あずさ「……」

千早「何度否定しても、辿りつく結論は同じ」

貴音「その耐え切れない不安を歌で昇華しようと決意いたしました」

P「…………あぁ、届いたよ」

あずさ「あの、二人ともこっちへ」

貴音「はて?」

千早「はい……?」


亜美真美「「 とぉ――ッ! 」」


ザッブーン


千早「きゃっ!?」

亜美「へへー、千早姉ちゃんだけ楽しい思いはさせないよーん!」

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:55:01.38 ID:g3zELUwYo

真美「そうだよー……っ!」

貴音「真美!?」

真美「あぶっ……ぶぶっ」バシャバシャ

千早「真美ッ! こっちに!」

あずさ「ま、真美ちゃん!」

P「真美――ッ!」


真美「あ、足着くじゃん」

P「おいー!! 古典的すぎるだろ!」

真美「えへへ、あんがとね、兄ちゃん」

P「そうだった、携帯電話! ……よかった」

P「……みんな、貴重品は?」

千早「運転手さんが……飛び込むかもしれないから置いていけと」

貴音「こうして、身軽な服を身に纏った次第です」

P「この島に来れたのも運転手さんのおかげだよな……世話になりっぱなしだ」



P「……みんな、出るぞ」

あずさ「あ、あの……」

千早「さ、先に出てください……」

貴音「思いのほか、羞恥心が……」

P「あ、あぁ……」

亜美「兄ちゃん、ひびきんが……」

P「え……?」

真美「ライブが終わってから……」

P「……」


あずさ「……」

千早「そろそろ出ましょうか」

貴音「……海は生命の源。これもいい経験かと」


やよい「響さん、どうして……っ」グスッ

雪歩「うぅ……ぐすっ……ッ」

響「……やだっ……やだやだ……」ボロボロ

P「……響、まだ、わからないんだから」

響「もう、あんな思いするのは……嫌ッ」ボロボロ

P「響、手を借りるぞ」


ギュ


P「俺は、ここにいるから」

響「うぅぅ……ッ」グスッ

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:56:23.01 ID:g3zELUwYo

P「もう、みんなから逃げないよ」

響「ぐすっ……」

P「……」

伊織「話しなさいよ。アンタが抱えているもの」

P「……わかった」


千早「着替えるのはあとですね」

貴音「……」

あずさ「……」

亜美「こ、怖い……っ」

真美「え……」


P「春香、美希、真もこっちに来てくれ」


春香「……はい」

美希「……」

真「……」


P「とりあえず、座ろう、みんな」

響「……っ」グスッ

P「765プロの今後についてから話す」

あずさ「……」


P「あずささんの引退が決まった」

亜美「え……」

真美「え……!」

やよい「本当ですか……!?」

あずさ「はい。私はアイドルを引退することに決めました」

真「……」

美希「……」

雪歩「……っ」

P「そして、千早」

千早「はい……?」

P「正式に移籍の話が来た」

春香「え……!」

千早「私が移籍……?」

P「千早の敬愛する人だ」

千早「え!?」

小鳥「すぐにでも来て欲しいと、先ほど社長へ連絡が入ったそうです」

真「小鳥さん……」

小鳥「うまく撒いたわ」

176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 21:58:34.98 ID:g3zELUwYo

千早「イタリア……」

小鳥「後日、事務所へいらっしゃるそうですけど……」

千早「……」

亜美「ま、待ってよ! なんで……なんで急にこんな!」

真美「そうだよ! いきなりすぎるよ!!」

伊織「……」

P「千早の気持ちを一番に考えるそうだ」

千早「彼女は、この音楽祭の為に来日していたのですね」

P「あぁ。彼女はとても――」

真美「待ってよ兄ちゃんッ!」

P「……」

真美「あずさお姉ちゃんが引退するってだけで寂しいのに! 千早姉ちゃんまでいなくなるって!」

亜美「い、嫌……だよ…………」

P「事務所から二人去ることになるが、一人はあずささんじゃない」

亜美「ど、どういうこと……?」

美希「……」

P「あずささんは俺の跡を継ぐ」

響「――嫌ァッ!」

あずさ「響ちゃん……」

真美「え、え?」

やよい「ぅ……!」グスッ

P「響、俺は――」

響「聞きたくないぞッ!!」

P「……」

あずさ「響ちゃん、プロデューサーさんが寂しがり屋さんなのは、昨日聞きましたよね」

響「うぅ……!」

あずさ「大丈夫だから。いなくならないから、ね」

響「……ッ」


P「俺の命は、来年の春まで持たないと宣告された」


雪歩「――!」

真「――な」

亜美「なにそれ――」

真美「――いや」

やよい「ううぅっ」ボロボロ


P「手術をしても助かる見込みは無いと」


伊織「……なによ……それ」

律子「……ッ」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:01:20.39 ID:g3zELUwYo

小鳥「……」

春香「……」

美希「……」

伊織「どうして…隠していたのよ……」


P「一番近くでみんなの成長を見ていたかったからだ」


伊織「なによ……それ、バッカじゃないの!?」

P「……」

伊織「アンタの為に私たちが居る訳じゃないでしょッ!」

やよい「伊織ちゃん……!」ボロボロ

伊織「ふざけないでよ! 今までで一番ムカついたわよッ!!」

やよい「伊織ちゃん~!」ガバッ

P「……すまん」

伊織「離して…このバカは引っ叩かないと――」

やよい「それで痛い思いするの伊織ちゃんだよ!?」ギュウウ

伊織「――ッ」

やよい「プロデューサーのこと、本当に心配してたの知ってるよ!」ボロボロ

伊織「ち、違う……ッ…」

律子「……いおり」

伊織「……ッ」

律子「どうして怒っているのか、落ち着いて考えてみて」

伊織「…………っ」

伊織「アンタ、夢を……どうするつもりだったのよ」

P「……途中でも構わないって思っていた」

伊織「この――ッ!」

美希「酷いよ」

P「……」

美希「私たちの夢も、プロデューサーを含めた全員でトップに立つことなのに」

P「……」

伊織「アンタだけ、途中で降りたら、私たちはどうなるのよ……!」

やよい「うぅぅ……ひぐっ……ぅぅっ」ボロボロ

貴音「やよい」

やよい「うぅ…~っ」ギュウ

真「ずっと見ていて欲しいのに…………あんまりじゃないですか……ッ!」グスッ

雪歩「き、昨日……一緒に頑張ろうって……っ……言ってくれたのに……ッ」ボロボロ

P「一人、勝手に諦めてた。すまない」

伊織「……許さないん…だから……」グスッ

P「……」

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:03:42.41 ID:g3zELUwYo

春香「本当に……治らないんですか……」

P「入院して、延命しても……意味が無いと思ったから、俺はその時間で限りを尽くそうと思っていたんだ」

律子「思っていた……って……」

P「俺は、生きることを諦めない。諦めないでいれば、希望は見えると思う……いや、見える」

亜美「兄ちゃん……ッ……兄ちゃんっっ」ボロボロ

真美「……ほん…と…う……に…………」

P「『夢はみんなまとめてトップアイドル』」

P「――だから」

あずさ「私たちの夢を叶えましょう」

千早「夢……?」

あずさ「私たちにしか出来ない夢を」

千早「――!」

真美「だって……あずさお姉ちゃんは……」

あずさ「私にもまだ、やるべきことが残っています」

やよい「ぐすっ……」

響「……」

春香「やろうよ、みんな」

亜美「はる…るん……?」グスッ

P「春香……」

春香「私、プロデューサーさんの為にも絶対にトップに立ってみせる」

あずさ「……」

真美「でも……ッ」

春香「夢を叶えて終わり。なんて絶対にさせない」

伊織「……っ」

春香「 歩いて行こう 決めた道 歌って行こう 祈りを響かすように 」

千早「 そっと誓うよ 夢を叶える 君と仲間に 」

P「――!」

春香「明るさだけが取り得の天海春香! 頑張りますっ!」

貴音「目指した先にある景色、プロデューサーにお見せしましょう」

P「それは……」

小鳥「お礼なんて言わないでください、当たり前なんですから」

律子「みんなを守ってやりますから、期待していてください。少し棘アリですけど」

真「真は期待に応えられる強い人、なんて言われちゃ止まってられないじゃないですか!」

亜美真美「「 みんなに元気を渡せばいいんだよね 」」

やよい「私……優しくなんてないですけど、少しでも誰かに伝わったら……嬉しいです」

P「……ッ」

雪歩「わ、私……臆病で頼りないかもですけど…ッ……絶対自分に負けませんから!」

伊織「高いところからの視野なんて、あるのかわからないけど、見ていてあげるわ」

美希「みんなを導いてやるの!」

179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:05:13.60 ID:g3zELUwYo

伊織「ちょっと、なによそれ」

美希「だって、プロデューサーがそう言ったんだもん」

伊織「アンタ、美希に変なこと――」

「――ッ」

伊織「……」

あずさ「嬉しくて顔を上げられないそうです」

「か、勝手に代弁しないでくださいっ」

あずさ「うふふ」

千早「私の歌声を、みんなに届けたい。だから、イタリアへ行きます。プロデューサー」

P「……あぁ、厳しいだろうが、千早なら乗り越えられる」

千早「はいっ」


千早「私の歌を、天を超えてあの子へ届ける。それが、私にしかできない事……」


千早「ありがとう、あずささん」

あずさ「…………うん」


181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:06:45.19 ID:g3zELUwYo


響「……」


P「響」


響「……」


P「ひびき……?」


響「…………」


P「俺こと……お兄さんから聞いたのか?」

響「……おとー、自分たち家族の為に……頑張って、気付いた時には……って」

P「知ってたんだな」

響「……なんだか、疲れちゃった」

P「え……?」

響「なんかね……力が入らないよ……」

P「……!」


響「おかーや、アニキ……みんなが応援してくれたのに……自分……」


響「ステージが終わって…………目的がなくなったみたい……」


響「また……家族がいなくなる…………」


響「自分……もう…………疲れた」


響「……こんな気持ち……面倒だな――」


P「立ってくれ、響」

響「……」

P「ほら、立つんだ」グッ

響「……ん」

P「響から貰った、暖かさ、返すぞ」

響「え……?」

P「……悪い」

ギュウ


響「……!」

P「俺のことで悩ませていたのに……あんな最高のステージに立てたんだ」

P「感動を通り越して、俺は響を尊敬するよ」

ギュウウ


響「ぷ、プロデューサー……!」

P「ありがとう、響……」

響「うぅ……っ」

182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:09:01.80 ID:g3zELUwYo

P「みんなと沖縄でずっと一緒に過ごせて、良かった」

響「うぅっ」ボロボロ

P「響の暖かさに触れて……本当に良かった」

響「うぅぅ……あぁぁぁああああ!!!」

P「大丈夫だから……」

響「やだ……やだぁ……!」ボロボロ

P「……ひびき」

響「おとー……っ……に……会いたいのにっ……会えな…いんだよ……!?」ボロボロ

P「……っ」

響「いやだ、こわいっ……もう……っ」ボロボロ

P「ひびき……ッ!」


あずさ「 約束 」

P「……!」

あずさ「約束を――もう一度してください」


響「や…やく……っ…そ……く……?」グスッ


P「俺は、いなくなったりしない」


響「――! ぜ…絶対…だからね……プロデューサーッ!」

P「……あぁ」


P「響、俺と約束だ」

響「……うんっ……す…る……約束……したからねっ」グスッ

P「あずささんの言葉で落ち着いたのか……暖かさ、全然伝わってないじゃないか」

響「だって……プロデューサー……冷たいんだもん」グスッ

P「海に入ってたからな……」

響「へへ、でもね……少しだけ……温かい」グスッ

P「……こんな俺でも、少しは伝えられたのかな……」

ギュウ


響「……うん……あたた……かいっ……」ボロボロ

P「……俺も、教えてもらったから」

響「ぅぅっ……こわい…けど…………がんば…る……よッ」ボロボロ

P「ありがとう、響」

響「ま…まだ早いぞ……」グスッ

P「そうだな、一緒に頑張ろう」

183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:11:44.26 ID:g3zELUwYo

響「うん……。あのね……それはいいんだけどね」グスッ

P「なんだ?」

響「あずささんという人がいながら、いつまで自分に抱きついてるの?」グスッ

P「あぁ、すま……ん? なぜそれを?」

響「お、お見通しだぞ……っ」

あずさ「うふふ」


真美「し…信じて……いいの……?」グスッ

P「頼りない俺を支えてくれ」

亜美「しょ、しょーがないな! 兄ちゃんは! 亜美達が居ないと……ダメだね、ダーメ!」

小鳥「……っ」グスッ

律子「……」

美希「今度は絶対……破らないでね……」

P「あぁ……」

あずさ「……」


やよい「ぐすっ……」

伊織「やよい、今はそんな顔してる時じゃないわ」

やよい「……うん」

伊織「あのバカに病気のことを忘れさせるくらい楽しませなきゃ」

やよい「……どうして」

響「ずっと……一人で抱えていたんだよね……」

あずさ「ずっと……私たちに悟られまいと一人で」

やよい「どうして話してくれなかったんですか……?」

あずさ「寂しがり屋さんだから。みんなと一緒にいたいから」

小鳥「それが裏目に出ていましたけど……ぐすっ」

律子「まったく……バカプロデューサー」


あずさ「律子さん、プランを考えてみました」

律子「プラン?」

あずさ「今まで、私のわがままでプロデューサーさんは一緒に活動していましたけど」

律子「もう、前を見ているんですか、あずささん」

あずさ「ここからが正念場だと思っています」

律子「どこまでみているんですか?」

あずさ「ずっと未来まで、ですよ」

律子「わかりました。私だけじゃなく、全員に伝えなくては……」

あずさ「そうですね」


184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:15:09.87 ID:g3zELUwYo

律子「みんな集まってー!」


美希「どうしたの?」

千早「?」

律子「えっとね。とりあえず今のみんなの状況を伝えるわね」

真「状況?」

律子「あずささん、プロデューサーが入院するまでってどのくらいですか?」

あずさ「通院しながらですから、秋までの2・3ヶ月です……短くみて」

美希「大体合ってると思う」

律子「その計算の早さ……なんだろう……」

響「以心伝心だよね!」

律子「まぁいいや。プロデューサーは嫌うんだけど、ランクで分けてみるわね」


律子「あずささんが765プロの看板として、ランクAAの位置。つまりトップにいる」

あずさ「ここまで来ましたから、ランクS――頂点を目指します」

律子「プロデューサー無しでですか?」

あずさ「……はい」

律子「大きなこと言ったんですから、自信なさそうにしないでください。とりあえず話を続けます」


律子「次が真と伊織のランクBBB。これも……1・2ヶ月でランクA――トップに到達できる」

真「それじゃ遅いと考えたほうがよさそうだね」

伊織「そうね」

律子「それで、美希がランクBB。今回の音楽祭でみんな上がるでしょうけど」

美希「みんなを引き上げる為にも、早く駆け上がらなきゃいけないの」

律子「そして、春香、響、貴音、千早のランクB。2ヶ月のライブ漬けでAに到達できるかなってとこ」

貴音「承知いたしました」

春香「よぉし!」

響「頑張りまくるぞー!」

千早「……」

律子「プロデューサーと一緒に仕事をして、動き回らないといけない亜美、真美、やよいのランクCCC」

亜美「ただ遊んでるだけじゃダメだね、真美!」

真美「そうだね、もっともっと遊ばなくちゃいけないよね! 亜美!」

やよい「うぅー! やりますよー!」

律子「そして、ランクCの雪歩」

雪歩「はい!」

律子「雪歩の問題は精神面だったから、今回の旅で格段に上がっていくわ」

あずさ「雪歩ちゃんにしかできない……ですよね」

律子「……はい。プロデューサーが言いそうな事をどうして」

185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:16:43.43 ID:g3zELUwYo

美希「律子は?」

律子「え? ……私は……その……ランクB?」

あずさ「セルフプロデュースしていけば、1ヶ月でランクAだと思います」

美希「どうして?」

あずさ「私の前に、プロデューサーさんは律子さんをプロデュースしていたのよ」

美希「そうだったんだ」

律子「なぜ……そう思うんですか?」

あずさ「うふふ、プロデューサーさんといつも一緒にいますから。大体は」

律子「一緒にいてわかる内容じゃないんですけど……」

あずさ「引退後はプロデューサーとして、みんなを支えたいと思っています」

律子「……なるほど。だから以心伝心なわけですか」


小鳥「3ヵ月後にライブを行い、それを大成功させればトップアイドルですね」

律子「えぇ。みんな、わかってるわね」

「「「 はいっ! 」」」

律子「この中の全員がランクAまで到達、そしてドームライブを2daysクリアして初めて夢が叶ったと言えるわ!」

春香「はい!」

真伊織「「 えぇー!? 」」

美希「あずさのすぐ後ろにいるのに、怖気づいてるの」

伊織「い、言ってくれるわね……!」

真「ど、どれだけ大変か……って……」

響「みんなの夢、必ず掴まえてみせるさー!」

やよい「……うん」

真伊織「「 ……むむ 」」


千早「あずささん、アレをやりましょう」

あずさ「えぇ、みんな、手を……!」


スッ


律子「あずささん、みんなの前で一つ確認させてください」

あずさ「なんでしょう?」

186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:17:56.94 ID:g3zELUwYo

律子「知っていて、辛くなかったんですか?」

春香「……」

美希「……」

千早「……」

真「……」

雪歩「……」

やよい「……」

伊織「……」

亜美「……」

真美「……」

響「……」

貴音「……」

小鳥「……」

あずさ「大切な人の隣にいるんです。辛いわけないじゃないですか♪」


美希響真雪歩「「「「 ――ッ! 」」」」

やよい伊織亜美真美「「「「 ――! 」」」」

千早貴音小鳥「「「 ……強い 」」」

春香「そうですね! 私たちの大切な人ですよね!」


律子「一人解ってなさそうだけど……気合入った……!」

あずさ「これからは春香ちゃんがお願いね」

春香「わ、わかりました!」

律子「初日に千早の凱旋ライブ、ラストはあずささんの引退ライブ! やり遂げるわよ!!」

春香「765プローッ、ファイトーッ!」


「「「 おぉーッ!! 」」」


律子「……よし!」

亜美「そうと決まったら兄ちゃんと遊ぼー!」

真美「あ! レイレイと雑談してるよー!」

雪歩「あ、あずささんもいつの間に!?」

律子「あずささん……プランは発表しないのね……」

美希「今は結束を固めただけなの」

律子「うぅ……あの迷コンビ……!!」


187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:20:25.87 ID:g3zELUwYo

P「神々の住む島……」

嶺「この島にはシルミチュという男神、アマミチュという女神が住んでいたと伝えられています」

嶺「アマミチュのお墓があり、無病息災、五穀豊穣、子孫繁昌を祈願されていますね」

あずさ「…………」

P「しるみちゅとは別なんですか?」

嶺「はい。神様達が住んでいたとされる洞穴がありまして、子宝を授かる霊石もそこに」

あずさ「……!」ボフッ

嶺「?」

P「あずささん? 顔が真っ赤ですけど……寒いんですか?」

あずさ「い、いえ……っ……なんでも……っ」カァァ

嶺「私、何かおかしなことを?」

P「いや……言ってないと思いますけど」

嶺「あ……あぁ……なるほど」

P「昨日もくしゃみしてましたけど、体調悪いんじゃないですか?」

あずさ「違い……ましっ……」

P「とりあえず、心配しなくてもいいんですよね?」

あずさ「だいじ…です…っ」

P「何が? ……それでアマミチュはニライカナイから来たと」

嶺「あ、はい」

伊織「このバカッ!」チョキン

P「いてっ!? 耳が! カニで攻撃!?」

伊織「あずさに変なこと言ったんでしょ!」

P「言ってないですよね!?」

あずさ「そ、そのっ……は、はい」カァァ

P「待ってください、それは言いましたって反応――」

伊織「アンタ、見かけによらず」

P「待ってくれ……なにがなんだか」

あずさ「あ、あのっ……プロデューサーさん…っ……」カァァァッ

P「どうしたんですか!?」

嶺「あの、私……お二人の間柄を知っていますから」

伊織「そうじゃないのよ、このバカは……!」

P「律子と今後について話してくるっ」

ザッザッザ


嶺「シルミチュ」

あずさ「……!」ボフッ

伊織「なによそれ?」

嶺「後で案内しましょうか?」

あずさ「……っっ」コクリ

伊織「ちょっと! 教えなさいよ!!」

188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:23:07.82 ID:g3zELUwYo

小鳥「まだ日は高いから、もう少しだけ楽しむ時間を――」


P「……なるほど、そうか」

律子「千早は、海外での経験が日本にいるよりも力をつけるのではないかと」

P「あぁ、俺もそう思っていた。新しい環境、慣れない生活、厳しい状況だけど」

P「千早の先生となる方は本物だから、吸収できる速度が計算できないけど、3ヶ月で充分だな」

律子「はい」

P「それと……律子、これから俺の仕事を託していくことに――」

律子「私じゃないですよね」

P「……律子が765プロを引っ張って――」

律子「最初の内はですか?」

P「怒ってる?」

律子「当然です」

P「……すまん」

律子「千早の件は、私を無視して一人……いや、あずささんと二人で進めちゃって」

P「……」ズキッ

律子「周りを頼れと言っていた本人様が、周りを不安にさせるだけでしたからね」

P「……」ズキィ

律子「これで約束まで破ったら、許しませんから」

P「……わかった」

律子「わかれば、いいです」

P「ありがとう、律子」

律子「…………はい」

P「……」

律子「こ、これからも礼を言わせますから、どんどん頼ってください」

P「律子は代わりの利かない相棒だな」

律子「……そんな感じですね。私も頼りにしてますから」


律子「人生の伴侶はちゃんと掴まえていてくださいよ?」

P「わかってる」

律子「うわ……恥ずかしい」

P「言ったの律子だろ」

律子「しかし、驚きましたね。音楽祭の評価を棄権してまで、みんなで観光をしたいだなんて」

P「あぁ」

律子「そのツケを取り戻すのは容易じゃありませんけど。それ以上の期待はできる」

P「……」

律子「どうしたんですか?」

P「俺、恵まれてるな……と」

律子「やめてください、そんな台詞吐くの……」

P「そうだな。自分を蔑ろにするのはもうやめる。……律子も泳ごう」

189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:24:21.76 ID:g3zELUwYo

律子「嫌ですよ。水着ならともかく服着て泳ぐなんて」

P「それが沖縄スタイルだそうだぞ。運転手さんが言っていた」

律子「……」

小鳥「律子さん、私が撮影していますから」

律子「……やっぱりいいです」

P「真ー! 美希ー!」

律子「?」


美希「どうしたの?」

真「なんですか?」

P「律子が海に入るの遠慮してるんだ」

美希「ふぅん……」ガシッ

真「そうなんだ」ガシッ

P「メガネ取っておこうな」スッ

律子「ちょっと!?」

ズルズル

律子「止めなさいよ! 怒るわよ!?」

美希「怖くないよー」

真「真に」

律子「貴音の真似、面白かったわよ。だから、離して、真、ね?」

真「Non」



P「ちょっと、バカになってきます」

小鳥「ふふ」



真「ここから放り込もう」

美希「貴音、よろしくなの」

貴音「次は律子ですか」

律子「や、やめなさい」

貴音「御意」ギュ

P「足は俺が」

律子「ちょっとーー!!」


真美「かもん、律っちゃーん」

やよい「えへへ、楽しいですよー!」


190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:25:55.88 ID:g3zELUwYo

貴音「いち、にの」

P「さん」

P貴音「「 はい 」」ポイッ


律子「きゃぅ」


ザッブーン


千早「大丈夫?」

律子「……まったく」ポタポタ


伊織「にひひっ、律子も形無しね」


律子「プロデューサー、次はそのキジムナーを」


伊織「誰が妖怪よ!」


P「……」スッ


伊織「ふんっ」サッ


P「なに……!?」


伊織「アンタに捕まるほど私は馬鹿じゃないのよ、べーっだ」

タッタッタ


あずさ「……はい」ギュウ

伊織「――ふぎゅう!?」

美希「サルトッテはミキが預かっててあげるね」

伊織「シャルルよ……鼻が……」ヒリヒリ

あずさ「ふふふ、伊織ちゃんも一緒に遊びましょう……ふふ」

伊織「な、なによ、この迫力……あんた……昨日のこと……やっぱり……」

あずさ「うふふ」

P「二人に放り投げられるのと、遠心力、どっちだ?」

伊織「……遠心力」

真「乗り気じゃないか伊織!」

美希「ふぅん」

あずさ「……あら」

伊織「ほら、しっかり握ってよね」

P「海に飛び込みたかったのか……?」ギュ

伊織「……海以外のところに放り出したら、怪我じゃすまないんだから」

P「じゃ、止めよう」

伊織「はぁ……本当に夢は叶うのかしら」

P「……行くぞ」ギュ

伊織「うん」

191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:27:29.77 ID:g3zELUwYo

P「……よしっ」ブンッ

伊織「……ッ!」


やよい「伊織ちゃん楽しそう」

真美「スリルだよ、スリルを楽しんでいるんだよ」


ブンッ ブンッ


伊織「小さい頃、お父様にされたことがある」

P「余裕だな、伊織」


ブンッ


P「そろそろ離すぞ」

伊織「……」


ブンッ


P「それ――」

伊織「……」ギュ


ブンッ


P「おい!?」

伊織「ちょっと、怖くて」ギュ


ブンッ


P「バ、バカ!!」

伊織「馬鹿とはなによ!」


P「待て待て待て」

伊織「ほら、止めなさいよ」

P「わかってる」

伊織「……」


P「……ふぅ、怖かった」

伊織「だらしないわね」ギュ

P「いや、伊織が怪我したらと思うと怖いだろ」

伊織「……」ギュ

P「……それほど勢いは出してないけど」

伊織「少し、目が回って」フラリ

P「大丈夫か?」

伊織「にひひっ、駄目みたぁい♪」ギュウ


トンッ


192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:29:26.19 ID:g3zELUwYo

P「いお――」


ザッブーン


千早「伊織?」

律子「また、この子は……」

亜美「あれ? はるるんは?」

やよい「見てないよー?」


ザバァ

P「最初から巻き添えにするつもりだったのか……」ポタポタ

伊織「いつつ、足を捻ったわ」

P「わ、わかった。真、マッサージしてやってくれ」

真「わかりました!」

P「ほら、砂浜まで行くぞ」

伊織「さすがプロデューサー、優しいのねぇ……」チラッ


あずさ「!」

美希「むぅ! でこちゃんのやりたい放題なの!」

律子「こら! 伊織!!」


伊織「いつっ……着水した時ね……」

P「……何か企んでないか?」

伊織「疑うなんてひどいわね。ここでいいわよ」

P「いや、ちゃんと水から上がったほうが」

伊織「菊池流、足払い」グイッ

P「うおっ!?」


ザブーン


真「こらー! 勝手に伝承するなー!」


伊織「ふふ、昨日の続きをしましょうか」

P「どこが足払いなんだ……」



小鳥「視聴者のみなさん、沖縄は海だけじゃありません、空も美しいのです」

小鳥「 空になりたい 自由な空へ 翼なくて 翔べるから素敵ね 」



伊織「ほら、海に浸かりながら密着すると、不思議な気分にならない?」

P「……どくんだ、伊織」

伊織「相変わらず、女性を傷つけるのがお上手だこと」

P「……ッ!」

伊織「ふふ、アンタにはいい薬ね」

193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:31:16.60 ID:g3zELUwYo

P「……」

伊織「あずさと大分近づいたみたいだけど、まだまだ私が入り込む余地はあるみたい」

P「…………」

伊織「? なんとか言ったらどうなの?」

P「昨日はわからなかったけど、今はわかる」

伊織「へぇ、答えてみなさいよ」

P「俺とあずささんを困らせたいだけだろ」

伊織「正解。よくできた子には、ご褒美を……」スッ

P「……」

伊織「……」

P「……」

伊織「後ろに退がらないと、本当に奪うわよ」

P「伊織、怒ってるのか」

伊織「当たり前でしょ。私の夢を、アンタなんかに潰されそうになったんだから」

P「……そうか」

伊織「…………」

P「まだなにか……あるのか……?」

伊織「バカね、それを言っちゃったら、後には引けないじゃない」


ギュウ


P「!」

伊織「私の胸の響き、伝わる?」

P「……あぁ」

伊織「昨日の夜も、私の呼吸、伝わっていたでしょ」

P「…………あぁ」

伊織「それなのに、どうしてアンタの鼓動は落ち着いているの?」

P「……」

伊織「あずさに対してもそうなの?」

P「…………そうだった」

伊織「……」

P「みんなの存在は俺にとって、とても崇高なものだったんだ」

伊織「……」

P「そこに、男性としての好意を含んでしまうと、みんなの輝きが陰ると判断した」

伊織「…………」

P「心配させてしまったから、ちゃんと言うけど」

伊織「……なによ」

P「輝くみんなを見ているだけで、救われていたんだ」

伊織「ふざけるんじゃ……っ……ないわよ……ッ」

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:33:41.09 ID:g3zELUwYo

P「それが俺の生きている意味だと、悟ったつもりでいた」

伊織「……ッ」

P「だけど、そんな諦めていた俺を、いつも傍で見守ってくれていた人が……」

伊織「あ…………ごめん」スッ

P「たまに素直になるな」

伊織「空気読みなさいよ」

P「……すまん」

伊織「やっぱり、腹が立つのよね」

P「……え?」

伊織「私たちはアンタだけの神様じゃないのよ?」

P「…………失礼なことをしていたと思う」

伊織「これでも人間よ。……あずさに嫌な思いをさせるのは本意じゃないけど」

P「?」

伊織「あずさと、キス、したの?」

P「いや、ま――どうでもいいだろ!?」

伊織「まだなのね……お子様なのはどっちよ」スッ

P「止まるんだ」

伊織「……なによ」

P「沖縄の神々は人間味が溢れてて、どの逸話も身近な感覚で捉えることができるんだ」

伊織「……それで?」

P「兄妹の神話が幾つもある。親と子の繋がりより、兄妹の血の濃さが表れているとか」

伊織「何が言いたいのよ」

P「俺は伊織のことを実の妹のように――」

伊織「アンタ、緊張すると口数が無駄に多くなるのよね」スス

P「話を聞くんだ、伊織」

伊織「アンタにならいいわ。私の初めて、あげる」

P「俺は伊織を信じ――」

伊織「……っ」スッ

P「……ッ」


コンッ


伊織「いった!」

P「怒らせたのは悪いと思うけど、頭を冷やせ」

伊織「……ここまでさせて……私のプライドはどうなるのよ」

P「だから、悪かったって――」

伊織「本当の兄妹の方が良かったかもね……ッ」スッ

あずさ「はい、お仕舞いですよ~」ギュッ

伊織「……あら残念、時間切れ」

P「……はぁ」

195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:35:19.27 ID:g3zELUwYo

伊織「遅いんじゃないの?」

あずさ「もぅ、伊織ちゃん」

伊織「わ、悪かったわよ……あんた達があまりに無防備だから……つい」


律子「つい、じゃないわよっ!」

ビシ コンッ

ビシ コンッ


P「いつっ」

伊織「ぎゅぅ!? チャームポイントに――」

律子「正座」

P「はい」

伊織「……はい」


ザザァーン


やよい「春香さんそこですー!」

春香「きゃー!」

真美「後はひびきんだねー!」

亜美「出てきたところを捕まえてやるさー!」

千早「きゃ!」

ザッブーン

真「千早ー!!」

雪歩「あ、足元をすくわれた!?」

貴音「次はわたくしが鮫の役を演じましょ――うッ」

ザッブーン

亜美真美「「 お姫ちーん!! 」」

雪歩「親指を立てながら沈んでいった……!?」


ザザァーン


律子「で、今のなに?」

P「わかりません……」

律子「めーごーさー!」ゴッ

P「いづっ! 本気の拳骨か……」ズキズキ

律子「……」

伊織「どこかのバカのせいで、私に魅力が無いのだと思っていました」

律子「暴走気味だったけど、まぁいいわ。ほら、亜美たちと遊んできなさい」

伊織「はーい♪」

P「え!?」

律子「馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、ここまで馬鹿だとは」

P「……評価が地に落ちた」


196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:37:27.81 ID:g3zELUwYo


小鳥「……ふぅ、びっくりしたぁ」



律子「あとはお願いします」

あずさ「……」

P「あ……」

あずさ「プロデューサーさんがそういうのにマヒしているのは、知ってます」

P「……はい。アイドルを女性としてじゃなく、偶像信仰の対象としているみたいです」

あずさ「…………」

P「…………」

あずさ「怖かったんですよ?」

P「……はい」

あずさ「……さっき……しておけば……よかった」

P「……えっと、体力のあるうちに」

あずさ「……え?」

P「失礼します」

あずさ「きゃっ!」



小鳥「まぁ、お姫様抱っこ♪」ウフフ



ジャブジャブ


あずさ「ぷ、プロデューサーさん……ッ!」

P「目を瞑ってください」

あずさ「え、え? この体勢で?」

P「大きく息を吸い込んで、行きますよ、一緒に海に堕ちましょう」

あずさ「そっちなんですか――っ!」

P「えいっ」


ザッブーン



美希「……」



197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:38:43.26 ID:g3zELUwYo

あずさ「も、もう……!」

P「いきなりですいません」

あずさ「うふふ、少しガッカリしましたけど嬉しかったりします」

P「そ、そうですか……ガッカリ?」

あずさ「あ、いえ……」

P「……っ」

あずさ「……っ」

P「……」

あずさ「……っっ」

P「ありがとうございます、あずささん」

あずさ「……」

P「……いつも支えてくれて」

あずさ「私も、支えられていますから」

P「……」

あずさ「……えっと、そうですね」

P「……?」

あずさ「引退とは別に、もう一つ決心したことがあるんです」

P「別?」

あずさ「…………きいてくれますか」

P「はい、なんでも」



あずさ「それじゃあ……」






あずさ「結婚してください」


P「――はい」





あずさ「…………」


P「…………」


あずさ「今度は冗談なんかじゃありませんよ?」

P「よかった」


198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:40:56.30 ID:g3zELUwYo

ザバァ!

春香「あずささん、食べちゃうぞー!」

真「プロデューサー! 覚悟してくだ……さ……」


あずさ「……」

P「……」


真「失礼しました……!」

春香「あ、すいません。稽古の練習……?」

Pあずさ「「 ぷふっ 」」

春香「えへへ、なんだか楽しいですよねっ!」



律子「あぁ……」

千早「春香……」


美希「やったのー!!」ダキッ

あずさ「美希ちゃん……」

P「……」

美希「ミキね、とってもとっても嬉しいよ……っ」グスッ

あずさ「……」

美希「だけど…ッ……やっぱり怖いよッ」ボロボロ

P「……美希」

美希「だから…………っ……少しだけ……二人に甘えていいよね……ッ」ギュウウ

あずさ「……うん」

美希「うぅぅっ……」ボロボロ

P「……」

やよい「プロデューサー……ッ」クイッ

P「……みんなを不安にさせてばっかりだな……」

真美「兄ちゃんがいなくなるの……絶対……ッ…絶対やだかんね!」ギュウ

P「……あぁ。みんなに負けてられないからな」

亜美「……ぐすっ」

雪歩「もうっ……あの冷たい感覚は嫌ですぅ……っ」グスッ

伊織「まったく……っ…アンタはどこまで罪を作るつもりよッ」

P「……ちゃんと、償うよ」

真「絶対乗り越えましょうね、プロデューサー……っ」グスッ

P「頼もしいみんながいるから、大丈夫だ」

律子「言ったからには……っ…お願いしますよ」

P「あぁ」

あずさ「あの、美希ちゃん?」

美希「……ねむ……」

律子「……号泣したら眠くなる性質なのかしら」グスッ

199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:42:48.67 ID:g3zELUwYo

春香「まだまだ今日は終わってないよ、みんな!」

真「明日からジャンジャンバリバリ頑張るんだから! もっと遊ばなきゃ!」

雪歩「そ、そうだよね!」

響「あはは、プロデューサー、大変だなぁー」スイスイ

P「響、あれやってみるか?」

響「あれ?」

P「肩車からの前宙」

響「いいの!?」

律子「プロデューサー!!」

P「海だから大丈夫かと……」

律子「馬鹿!」

やよい「わ、私もやってみたいかなーって」

真「じゃあさ! プロデューサーの肩に足を乗っけて、ロケットのように発射すればどうかな!」

P「なるほど。じゃあ、屈むからな」

響「おっけー!」


千早「ふふ」

貴音「もしや……」

千早「?」

貴音「……いえ」

千早「やっと……あの吹雪の日のような、プロデューサーに戻りましたね」

貴音「そうですね」


200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:44:08.20 ID:g3zELUwYo

ザバァッ!



響「とりゃー!」


クルッ


ザッバーン


「「「 おぉー! 」」」


P「すごいな……!」

春香「まるでイルカショーだよ、響ちゃん!」

響「えへへー、凄いだろー」

千早「凄いを通り越してる……」

貴音「真に」

真「それじゃ、次はボク」

雪歩「ま、真ちゃん、次は私」

伊織「待ちなさいよ!」

やよい「あ、あの!」

亜美「さぁ、よろしくね、兄ちゃん」

真美「ずるいよ、亜美!」

美希「くぅ……すぅ」

あずさ「み、美希ちゃん?」

律子「いくら安心したからって、海の中でも寝るのね……」



小鳥「……」



―――

――





201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:45:39.98 ID:g3zELUwYo

ザバァッ!


『とりゃー!』


クルッ


ザッバーン


『『『 おぉー! 』』』



「ひびきちゃん、すごいです」


『すごいな……!』

『まるでイルカショーだよ、響ちゃん!』

『えへへー、凄いだろー』

『凄いを通り越してる……』

『真に』

『それじゃ、次はボク』

『ま、真ちゃん、次は私』

『待ちなさいよ!』

『あ、あの!』

『さぁ、よろしくね、兄ちゃん』

『ずるいよ、亜美!』

『くぅ……すぅ』

『み、美希ちゃん?』

『いくら安心したからって、海の中でも寝るのね……』



「たのしそうですね、クロ」

クロ「にゃうん」

「とっても楽しい時間でしたよ」

「……」

クロ「にゃう」

「もう一度みんなでどこか行きたいですね。次は冬の北海道とか」

「なにをしているんですか……?」

「え?」


202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:47:19.07 ID:g3zELUwYo

『お、おぉ……!』


『春香にはまだ早いのー!』

『み、美希ー!?』

『 ザッブーン 』

『きゃー! 兄ちゃーん!』

『きゃー! あずさお姉ちゃーん!』

『あんた達も、まだ早い』

『『 うぉっ!? 』』

『 ザッブーン! 』

『『 わぁぁっ……! 』』


『海の中でなんてロマンティックな……!』

『小鳥嬢』

『た、貴音ちゃん、どいて! 私が見えないの!』

『ダメだぞピヨ子。カメラ持ってるじゃないか』

『あ……』



「……見ててドキドキしちゃいました」

「…………」

クロ「にゃ~う」


ピッ


「「 あ…… 」」

「お、終わりですよっ!」

「あずささん素敵でしたよ」

「も、もぅ!」

「やよい先生……なにをしていましたか?」

やよい「まだ、秘密ですよ~」

「や、やよいちゃん!」

「ひみつですか……」

やよい「はい、秘密です」

クロ「にゃん」


203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:48:46.28 ID:g3zELUwYo

「みないですか?」

やよい「そろそろ、響さんの番組が始まりますよ?」

「みます!」

やよい「はい、それじゃ、テレビに戻しますね」

「ふぅ、最後まで観るなんて……」

クロ「ゴロゴロ」


ピッ


『ジャコスは毎日が感謝day!』


ピンポーン


「は、は~い」

スタスタスタ


「やよい先生、あるぷすです!」

やよい「いいですよ~、はい、こっちに来てください」

「はいっ」

やよい「それじゃ、せっせっせ~の」

「よいよいよ~い」

やよい「あ~る~ぷ~す~」ペチ

「い~ち~ま~ん~じゃ~く~」ペチ


ペチペチペチ


「懐かしいことやってるわね」

「うふふ」

やよい「あ……」


204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 22:49:45.89 ID:g3zELUwYo

『あなたのハートをぶち抜くぞっ☆』

『ズギューン』


「ぶちぬくぞっ」

やよい「わわわっ」

「だ、ダメよそんな言葉覚えちゃ」

「りつこさん」

律子「はい、こんばんは」

「こんばんは」

律子「やよいも久しぶりね」

やよい「はい、お久しぶりです。最近、律子さんの事務所に行けなくて……」

律子「あぁ……すっかり落ち着いちゃって……」

やよい「?」

律子「いえ、なんでも……って、あずささん、まだ料理してるんですか?」

「はい~、中々決められなかったので~」

律子「仕事以外の事になると……優柔不断になるんだから……。こういう時は鍋にしましょう」

「あ、そうですね~」

やよい「それじゃ、私、手伝います」

律子「よろしくね」

やよい「はい!」

テッテッテ


214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:02:40.70 ID:pHjVdoaAo

律子「さっきのアイドル……伊織と同い年なのよね……」

「?」

律子「あ、ほら、始まるわよ」

「……!」



『 ジャジャンジャジャーン! 』


『『 はいさーい! 』』


「ひびきちゃん!」


『今日は3周年記念! の前の週だから……えっと、前夜祭でいいの?』

『打ち合わせ通りやろうな』

『生放送だぞ!』



律子「あぁ……響ぃ……!」

「だぞ!」


『今日はスペシャルゲストとして、ゴリ衛門が来てくれたぞ!』

『ハイサイ、ハイサイ、沖縄出身タレントということで呼ばれました!
  しかしゴリ衛門ではありません! ありませんよー!』

『年に一度の沖縄スペシャルー!』

『あんたのせいで、俺は道行く人から、ゴリ衛門と呼ばれるようになりました~』

『嬉しいよね!』

『よくないから否定アピールしてるんだろ!』



「ひびきちゃん、おこられてます」

律子「うんー……そういうのとは違うんだけど……」



ピンポーン


「はいは~い」

律子「あ、あずささん、私が出ますから」

「お願いしますね~」

律子「……貴音は春香たちと来るって言ってたから……誰だろ?」

スタスタ

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:04:48.08 ID:pHjVdoaAo

『これで4回目の登場だよね』

『毎年呼んでくれて嬉しいさー』

『今日はいつもの音楽紹介は無しなんだよ』

『そうなのか』

『以前に発売された沖縄ロケの話で盛り上げて欲しいぞ!』

『任せなさい。たくさんあるよ~……俺行って無いけど!?』

『来週のスペシャルの為に必要な話なんだよね』

『見ても無いから知らんよ!?』

『7650枚の初回生産限定のDVDが完売したんだよね。今ではプレミアが付いてて凄い値らしいんだぞ』

『話を続けるかぁ……、それは凄い』

『それでね、当時、追加生産の依頼があったんだけど……』

『その後に発売されたって聞いてなかったな。それはどうしてか?』

『ここで問題! どうして追加生産されなかったのか、3択です』



「こんばんは……あ!!」

「こんばんは……ゆきほ……ちゃん?」

雪歩「小さいあずささんがいるぅ~!」ダキッ

「ひゃっ!?」

律子「雪歩、落ち着いて」



『3.ノーカットバージョンの作成が困難だったから』

『難しいなぁ、2.キジムナーが映っていたから、っていうのも面白いけど。3で行こうか』

『正解!』

『はい、ありがとう』


律子「理由は私たちの希望だから。って、あれを公表できないわよねぇ」

雪歩「はぅ~」スリスリ

「うぅぅ……」

律子「ちょっと、雪歩」

雪歩「ご、ごめんね……」

「っ……」

律子「ほら、怯えちゃったじゃないの」

雪歩「あ、……えっと、どうしよう」

律子「ほら、怖い人じゃないから」ナデナデ

「……う、うん」

雪歩「ごめんね」

「……だいじょうぶ」

雪歩「……ッ」キュルルン

216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:09:38.47 ID:pHjVdoaAo

『実は、マスター映像の所有権があずささんに渡っているからでもあるんだぞ』

『そうかぁ……俺、なんで呼ばれたんだろう……』


律子「ちょっと、あずささんの事は触れちゃダメでしょうが……!」

雪歩「あずささん、ケーキ買ってきました」

「ありがとう、雪歩さん。……もしかして?」

雪歩「ふふ、そうです。タルト・オ・フリュイです」

「たるとおふるい?」

雪歩「お母さんの大好きなケーキなんだよ」

「ふるーつたくさんですか?」

雪歩「うん」

「すきです~っ」

雪歩「買ってきてよかったぁ」


『いつもはここで音楽紹介をするところだけど、今日はお休み』

『代わりになにが始まるば?』

『来週の告知をするぞ!』

『あれか、765プロ復活ライブ』

『そうそう! 来週はなんと――』

『ちょっと! いい加減に紹介しなさいよ!』


「いおりちゃん」

律子「はい、正解です」

雪歩「時間とか計算したやりとりなのかな……」

律子「多分してないわね。毎年遊び感覚だから……」

雪歩「そうなんですか……それって……凄いなぁ……」

クロ「にゃう」

雪歩「ふふ、可愛い」ナデナデ

クロ「ゴロゴロ」



『週刊誌にスクープされて世間が賑わってるけど事実ね?』

『普通そういうこと言わないわよ?』

『大変だな、伊織も』

『まぁね。有名税ってやつよ』

『して、熱愛してるば?』

『だから、そういうこと聞かないでよ。スタッフが白い顔してるじゃないの』

『どうなの、伊織?』

『盛り上がってるよな、結婚は間近か! って』

『話を聞きなさいよ。まぁいいわ、答えてあげる』

217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:13:40.15 ID:pHjVdoaAo

「けっこん……?」

雪歩「律子さん、これって、打ち合わせ通りじゃないですよね』

律子「そうだけど。でもいいわよ」


『結婚もいいけどぉ』

『いいけど?』

『私のメガネにかなう人じゃないわね~』

『大きく出ましたよぉ』

『口喧嘩が痴話喧嘩だなんて、滑稽よ。もうちょっと良い見出しをつけなさい、ふふーん』

『なぜか得意げだぞ。言いたかった台詞なんだな、きっと』

『相手は勢いのある若手俳優ですよね。お互いいい関係だと思いますが』

『あんた記者になったの? あれはウチの後輩を侮辱したからよ』

『さすが伊織だよね、怖いもの知らず』

『いいんですか? 生放送でそんなこと言って。相手は大手事務所ですよ?』

『No Problem. この番組スタッフには少し悪いけど、後輩を守れないんじゃ765プロの名が廃るわ』

『しかしですよ、キジムナー』

『あのね、今それを言ってるのあんただけよ? 伝わらない言葉使わないでよ』



律子「本当にやりたい放題ね……。まぁ、これがウケてるみたいだけど……」

「きじむなー?」

律子「妖怪のこと」

「よーかい……」

やよい「怖い妖怪もいれば、優しい妖怪もいるんですよ~」

「……きじむなぁは?」

やよい「少し、悪いことしますけど。いい妖怪です」

「……そうですか。よーかいってなんですか?」

やよい「明後日に、ご本を持って来ますから、一緒に読みましょうね」

「はい」

雪歩「うぅ……!」ウズウズ



『それで、本命はいるんですか?』

『そうねぇ……』

『お、居るって反応だぞ』

『あの海で、お互いの体温を感じあった瞬間(とき)は今でも忘れられない』

『して、来週はなにがあるって?』

『イタリア組が帰ってくるんだぞ! 初代765プロ全員が揃うスペシャル!』

『お互いの鼓動を一つ一つ交わしたの。あの夏の初めをもう一度、あの人と共に……』

『あ、あずささんは出演しないからね!』

『あのメンバーが揃うのか。大変だな』

『大変じゃないぞ、楽しいんだぞ!』

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:15:16.82 ID:pHjVdoaAo

雪歩「千早さん達、到着してる時間ですよね……」

律子「えぇ、もうこっちに向かってる頃だろうけど」

「ちはや……さん……?」

やよい「そうですよ。一緒に歌を聴きましたよね」

「……わすれました」

律子「正直でいいわねぇ……」


ピンポーン


律子「噂をすれば、かしら」

やよい「お迎えに行きましょう」スッ

「はい……!」ギュ

テッテッテ

雪歩「やよいちゃんに信頼を寄せてますね」

律子「いつも一緒にいるからね……って、あずささんはどこ?」



「はるかさん!」

春香「はーい、久しぶりー!」

「ボクの名前わかる!?」

「はい。さっき、みました」

「しぃえむ、でしょうか」

「たか……?」

「わたくし、四条貴音。と申します」

「たかね……」

貴音「お初にお目にかかります。貴方が、あずさのご息女なのですね」

「……?」

春香「あはは、そうだよねー?」

やよい「あずささんがお母さんですよね」

「はい」

春香「お邪魔していいかな?」

やよい「どうぞー」

「そ、それで。ボクの名前は?」

「まこと……くんです……」

真「くぅ~、ボクのボディを鋭く叩いてくるなぁ」


219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:18:09.85 ID:pHjVdoaAo

貴音「雪歩、来ていたのですね」

雪歩「貴音さん!? 全然変わってないよ!?」

春香「本当だよねー……、不思議だよねぇ」

「お母さん……?」

やよい「お母さんは買い物に行きましたよ」

「……」

やよい「一緒に行きますか?」

「ううん……」


『貴音も帰ってくるでしょ、美希も真美も帰ってくる。やよいも一日だけ復活だぞ!』

『そうか。頑張れよ』

『ここで水瀬伊織から重大告知よ! 私の全国ツアーのファイナルとなるドームで、
 一曲だけの特別で最高な時間を演出してみせるわ!』

『どうして一曲なんだ、伊織?』

『イタリア組の、如月千早、星井美希、双海真美が特別に出演してくれることが決まったからよ!』

『へぇ……って、聞いて無いぞ自分』


律子「あれ、私も聞いて無いんだけど」

「へぇ、凄いね、真美。伊織ちゃんのライブにゲストとして出るなんて」

「あ、あみちゃん……」

亜美「えへへ、お邪魔してるよ♪」

「……」

亜美「どうしたのかな?」

「まみちゃん……くるってききました」

亜美「どうして真美を知ってるの?」

「お母さんとけっこんしきみました」

亜美「結婚式? ……あぁ、結婚式の映像ね」

律子「あの映像もあずささんの意向でノーカットなのよねぇ……だから味があるっていうか」

真「あ、ボクもそれみたい!」

春香「わ、私も! 結局見て無いんだよね、あの映像!」

貴音「はて?」

やよい「私も見たいって言ったんですけど、あずささんが隠してしまって……」

春香真雪歩「「「 えぇー…… 」」」

「……ごめんなさい」

亜美「どうして謝ったのかにゃ?」

「かってにみたからです」

雪歩「ちっとも悪くないよっ」ダキッ

真「そうだよっ、先越されたっ」

「うぅ……っ、やよい先生ぇ……」

やよい「ゆ、雪歩さん、少し苦しそうです」

雪歩「ご、ごめんね……うぅ、嫌われちゃう……」

220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:21:40.66 ID:pHjVdoaAo

『来週は1時間のスペシャル放送だぞー!』

『ちゃんと見てくれなきゃ、ダメよー?』

『また来年~』


春香「あ、終わっちゃった」


ピンポーン


やよい「あ、千早さんかな?」

「むかえにいきます!」

やよい「はい、行きましょう~」

テッテッテ


真雪歩「「 可愛いなぁ~ 」」

貴音「律子の姿が見えませんが……?」

亜美「律子さんなら、ベランダだよ」

貴音「亜美、成長しましたね」

亜美「貴音さんは変わらないね~」

貴音「ふふ、浦島太郎の気分ですよ」

亜美「ふむ?」



「あぁっ! 小さいあずささんがいるっ!」

「そうかな? 見た目はあずさだけど……」

「Da quanto tempo、お久しぶりだね~」


やよい「わぁ……!」

「ちはや……ちゃん?」

千早「な、名前を……か、可愛い……っ」キラキラ

「みき……ちゃん」

美希「Mi sei mancata! 会いたかったよ!」

「まみちゃん!」

真美「いぇーっす! 双海真美、只今、凱旋ッ!」

亜美「真美、久しぶりだね」

真美「おぅおぅ、亜美じゃねえですか。って、私に内緒で髪を切ったのね」シクシク

やよい「ちょうど、あずささんが帰ってきました」

「まぁまぁ、みんな揃って……!」

千早「あずささん……」

美希「あずさ……」

真美「えへへ、あずさお姉ちゃんってまだ呼んでいいよね」

「うふふ、さ、中へどうぞ」

真美美希「「 お邪魔しまーす 」」

千早「お邪魔します」

221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:24:36.69 ID:pHjVdoaAo


律子「あ、お帰り」

真美「えぇー? 律っちゃん、反応薄いよー!」

千早「何度か連絡取ってるから、そういうものかも」

美希「淡白だなぁ、律子は」

律子「それより、あんた達、伊織のドームコンサートに出演するって話、どうして黙ってたのよ」

美希「私はあずさから聞いただけだよ?」

律子「あずささん?」

「えっと、お鍋といったらこれよね」

千早「あずささん、夕食を?」

「はい。と言っても、まだ作ってる最中ですけど」

真美「イチゴショートケーキ買ってきたよん!」

「ありがとう、真美ちゃん。そうだ、様子を見てくるから、やよいちゃん、お鍋の方をお願いね」

やよい「わかりました」

「少し失礼して。みんなゆっくりしててね~」

スタスタスタ


真美「あの落ち着き……!」

律子「響と伊織はこれから向かうのかしら……?」

春香「真美、美希、千早ちゃん!」

千早「久しぶりね、春香」

貴音「……わたくしは、それほど」

真美「お姫ちん!?」

千早「貴音さん!?」

美希「全然変わってないね」

貴音「わたくし、少しばかり旅に出ていました。どのような旅かは、とっぷしぃ――」


真美「どうしたのん?」

「……」

真美「なにか、顔に付いてるかな?」

「ううん……」

真美「あ、知らない人が来たから、びっくりしてるんだね?」

「あいたかったです」

真美「私?」

「はい」

真美「そっかそっかぁ、あずさお姉ちゃん達から真美の偉業を聞いたのかぁ」


222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:26:26.45 ID:pHjVdoaAo

真「貴音、どこに行ってたの?」

貴音「ですから、とっぷしぃ――」


やよい「ずっと真美に会いたがっていたよ? 結婚式の映像を見たから……って」

「さびしそうでした」

真美「あ、あぁ~、えへへ、あの時、とっても寂しかったからね」

「……」

真美「……兄ちゃんのこと考えてしまうとね…………あのとっても楽しい時間がね……」

「?」

真美「終わっちゃったって、そう思ったから」

「……」

亜美「真美……」

真美「でも、こうやってまた、あなたに会えた。だから、私はもう寂しくないよ」

「……はい」

真美「優しいところ、本当に、あずさお姉ちゃんだよぉ……」


雪歩「沖縄ロケの映像?」

やよい「そうです、さっきまで一緒に見ていましたよね?」

「たのしかったです」

千早「うぅ……! Vorrei abbracciarti!」

雪歩「?」

美希「抱きしめたいんだって」

「?」


美希「貴音、どこに行ってたの? 宇宙の外?」

貴音「ですから、とっぷしぃ――なぜそれを」


律子「ノーカットの沖縄ロケ、私も観たいのよねぇ……」

真「それじゃ、せっかくだから再生っと」


「ダメだぞ……律子、真……」


律子「いいじゃないですか、響の番組は後で観てくださいよ」

「お父さん……だいじょうぶですか?」

「ふぁぁ……大丈夫だよ……」

真美「兄ちゃん? どったの?」

亜美「なんだか、ダルそう……」

「亜美の声が響くな…………熱が出たみたいで……寝てたんだ」

律子雪歩「「 え!? 」」

「あ、大丈夫ですよ。熱は下がりましたから」

223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:31:06.45 ID:pHjVdoaAo

美希「本当に大丈夫なの?」

「体がびっくりしただけだろう。あずさ、水を――」

「どうぞ」

「はやい……ありがと。悪いが、響から確認させてくれ」

ピッ


『 ジャジャンジャジャーン! 』


『『 はいさーい! 』』


千早「あの、プロデューサー、お久しぶりです」

「……ん? あ! 千早、美希、真美! 来ていたのか!?」

美希「えー、さっき話しかけたのにぃ」

「すまん、寝惚けてた」

「千早さん、これを」

千早「え? ……あ、これは白蛇の……集合写真」

律子「懐かしいわねぇ、沖縄の地底探検の後に撮ったのよね」

雪歩「この一枚しかないんですよね……」

真美「その額縁、あまとうから貰ったお土産だったよね……どうしてるかな……」

亜美「きっと、私たちを見守ってくれてるよ……あの一番星のように……キラン」

「空に人を思い浮かべるんじゃない……亜美はスタジオで今日会っただろ」

亜美「そうでしたね♪」

貴音「……」

真「プロデューサー、観ないんだったら、沖縄ロケ、再生しますよ」

「だ、ダメですよっ、真さん!」

真「え? どうしたんですか、あずささん?」

「せめて最初からっ」

やよい「ふふ、さぁ、お鍋ができましたよ」

「……おなべですか?」

やよい「そうですよ……んー……もう時間過ぎてるから、先生は終わりね」

「うん! いっぱいたべようっよっ」

真美「兄ちゃんとあずさお姉ちゃんのあっつ~い bacio……」ポッ

「映ってないだろ……!」

「そ、そうですよっ」

千早「いえ、私たちの想い出には深く残っています」

「ばーちょ……?」

真美「キスって言うんだよ」

「きす?」

やよい「真美!」

224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:33:24.99 ID:pHjVdoaAo

春香「え……私、知らないよ……」

美希「だからね、春香にはまだ早かったんだよ」

春香「えぇ……基準が分からない……」

真美「両親の話なんだから、問題ないっしょ?」

やよい「そうだけど、まだ早いよ!」

亜美「過保護だよねぇ、やよいちゃんは」

「みんな、いいから座ってくれ……」

「ご飯にしましょう~」

「ごはんです」

千早「はい、そうしましょう」キラキラ

「千早、フェニーチェ劇場はどうだ?」

千早「素晴らしいの一言です。先生を身近で拝見していて……私は未だに感動することしか出来ていません」

「そうか……。いや、立てるのかって意味――」

千早「世界を甘く見すぎです。勘が衰えましたね、プロデューサー」

「そこまで怒るのか…………すまん」

美希「千早さん凄いんだよ」

千早「そんなことないわ。先生は来るもの拒まずだから」

真美「そうだけど……先生の凄さ知って諦めた人多いじゃん」

「そうか……話には聞いていたけど、そこまで……」

千早「私なんて……まだまだまだまだまだ」

美希「う……」

真美「その千早姉ちゃんの後を追ってる私たちはどうすればいいのよん」


真「はい、貴音」

貴音「……」

真「ほら、お椀を受け取ってよ……貴音?」

貴音「浦島太郎は……このような気持ちだったのですね」

真「え? どうして落ち込んでいるの?」

「もやしがたくさんです、やよいちゃん!」

やよい「みんなで集まった時はこれって決まっているんだよ~」

「きまっているんですかぁー」ピョンピョン

やよい「座ってないと、ダメだよー?」

「はぁいっ。みんなでったべようっよっ」

雪歩「楽しそうだなぁ……」ホンワカ

律子「プロデューサー、あずささんとイタリア組の件、企てましたね」

「伊織のドームの話か? そうだけど」

律子「正直でいいですねぇ……! 私、聞いていないんですけどぉ……!!」

「あ、あずさ…さん?」

「えっと、一緒に伝えようと思っていたんですけど……伊織ちゃんが告知をしちゃって……」

律子「プロデューサーが復活しての最初の共同企画ですからね、気持ちは分かりますよ」

225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:37:04.82 ID:pHjVdoaAo

律子「でも、ですね、これでも私、所長なので、本当に、そういうこと、されると、みんなに示しが、つかなくて」

春香「律子さんが悲しみながら怒っている……」

「律子さん……す、すいませんでした」

「なんというか、すまん」

律子「別に、いいんですけどねー」

美希「拗ねたの」

「ごめんなさい」

律子「この家族、ずるい……ッ!」

亜美「みんなに行き渡ったところでぇ、あ、この、わたくしぐぁ、乾杯の、音頭をぉ」

「りょうてあわせて」

真美「いただきまーっす」

「「「 いただきまーす 」」」

亜美「おぉ、恒例のギャグが……」

やよい「ぶおなぺてぃーと!」

千早「ふふっ」ホンワカ

「伊織、週刊誌の事、しれっと喋ってるな……」

「まぁ、本当ですね~」

「お父さん、はい、あーん」

「あーん……もぐもぐ…………響ぃ……!」

「自由にやっていて、楽しそうじゃないですか」

「あーん」

「あーん……もぐもぐ……って、ちゃんと食べなきゃダメだろ?」

「うふふ、そうですよ~。今度はこっちから、あーん」

「はい、あーん……もぐもぐ」

「あれ、この味……いつもと違う……?」

「やよいちゃんが作ってくれましたから」

「やよいちゃん、あーん」

やよい「私が出汁を取りました……あーん」

「おいしいよ、やよい」

「この味は出せませんね~」

「おいしい!」

やよい「ありがとう~」

貴音「…………」

美希「…………」

千早「…………」

雪歩「…………」

真美「…………」

律子「どうしたの、みんな?」

「「「「 なんでも……ないです…… 」」」」

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:40:20.13 ID:pHjVdoaAo

美希「暖かさを感じたら寒さを覚えるっていうよね……」

真「言わないでよ、美希……」

亜美「律子さん、いつも……こんな風景だったっけ?」

律子「あずささん達? そうだけど」

亜美「なんだか、プロデューサーとあずささんが遠くに行っちゃったようで、寂しくなっちゃった」シクシク

やよい「あの、美希さんと千早さん、真美に報告があります」

千早美希真美「「「 ? 」」」

やよい「私、アイドルを休業していましたけど、来週の響さんの番組出演を最後に、引退します!」

千早真美「「 え!? 」」

春香「決めたんだ、やよい……」

千早「ど、どうして……?」

やよい「プロデューサーとあずささん、律子さんが頑張っているのを見ていて、私も支える側に、って」

真美「え、えぇ……え……ぇ?」

やよい「プロデューサーも復帰しましたから、私も本格的に専念したいと思いますっ!」

美希「そうなんだ……これは知らなかったなぁ」

律子「私としては……セルフプロデュースとして頑張ってもらいたいんだけど……」

「そうですね~、私もそう思います」

「お父さん、きんぴらがありません」

「寝ていたから、作れなかったな。今度作るからね」

「はい」

やよい「でも、私……律子さんほど上手く動けないと思います」

律子「プロデューサーはどう思いますか?」

「……貴音は、復帰するんだよな」

貴音「はい。まだ、気力は衰えていません」

「やよい、貴音のプロデューサーとしてやってみてはどうかな?」

やよい「え……?」

貴音「……」

律子「それはプロデューサーを薦めると?」

「うん。貴音は復帰とはいっても、相当のブランクがある。……全然変わって無いから、ブランクを微塵も感じないが」

貴音「……」

「やよいはあずさ…さんと一緒に勉強していたから、それなりに動けるはずだ」

やよい「……貴音さんに甘えてしまいそうで」

「そうか、甘えか……」

律子「……」

「一番最初、俺が律子をプロデュースして活動していたのは知ってるよな」

やよい「……はい」

「俺は律子がいたから、プロデューサーとして力が付いたと思っている」

春香「……!」

真「……そうなんだ!」

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:43:13.65 ID:pHjVdoaAo

「そうですね。いつもそう仰っていましたから」

「あの、照れくさいので、それを言わないでください……」

律子「あの、私も照れくさくなるので、話の続きを」


真美「やよいっちの秘伝の味なんだよー」

「おいしいですね!」

真美「おいしいよね~」

「はい、あーん」

真美「あ、あーん……もぐもぐ……おぃしぃぃ」


「その後に、あずさ…さんの担当ととして、重点的にプロデュースを行った」

やよい「……はい」

「あずさ…さんもプロデューサーとしての勉強をしていて、俺と試行錯誤を重ねたからあの場所まで辿りつけたと思っている」

貴音「……」

「だから、甘えてもいいんだ。それに慣れて、おんぶにだっこがやよいの嫌うことなんだと思う」

やよい「代わりの利かない相棒……ですね」

「あの時の俺と律子がそうであったように、今のあずささんと律子がそうであるように……な」

貴音「やよい、わたくしと更なる頂を目指してみませんか」

やよい「はい、よろしくお願いします! 貴音さん!」

貴音「恐らく、やよいよりわたくしの方が歳は下……」

律子「社長に話を通すの忘れないでね」

貴音「はて? 律子は事務所に居られないのですか?」

律子「私は第二事務所にいるから」

貴音「第二?」

春香「私も第一がいいのに……」

真「ボクもですよ! プロデューサーがせっかく戻ってきたのに!」

「そうは言っても、二人ともあの事務所の出入りは禁止されてるからな……」

真美「どうして禁止されてるの?」

亜美「春香さんと真さんは第一事務所で遊ぶから……律子さんが令を出しただけの事さぁ」

千早「プロデューサーはまだあの事務所に?」

「社長と一緒にな。新人育成も兼ねてる」

亜美「んっふっふ、プロデューサー、さっちゃんに手を焼いてるよね」

「今日初めてあったばかりなのにな……あれは手ごわい……千早と同じくらい……ん?」

千早「手を焼かれていたんですね……」

「ほら、たくさん食べて、お母さんのように健康な体を作るんだぞ」

「はい」

「ま、まぁ……っ」

雪歩「話題を変えたね……」

228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:45:17.49 ID:pHjVdoaAo

真美「誰、さっちゃんって」

律子「候補生なんだけど……ちょっと変わり者でね……ん?」

千早「変わり者だったのね、私……」

律子「ほら、フォローしなさい春香」

春香「変わり者のどこが悪いんですか……!」ドンッ

「……」

千早「春香……誰も悪いなんて言ってない……」


ピンポーン


やよい「響さんですよ、きっと」

「!」ガタッ

「ちゃんと飲み込んでからですよ」

「もぐもぐもぐもぐ」コクリ

「しょうがないな、ほら、抱っこするから、おいで」

「もぐもぐもぐ」

「よいしょっ、急がないでゆっくり噛んで」

「もぐもぐ」コクリ

スタスタスタ


美希「プロデューサーがお父さんになってるぅ……!」

真美「兄ちゃんが父ちゃんに……」

千早「帰ってきて……よかった」

雪歩「……よかった」



ガチャ


伊織「あー、疲れた」

「おい、アイドルが疲れたお父さんみたいな声出すな」

「もぐもぐ」

響「はいたーい」

「……!」スッ

響「あはは、プロデューサーに似て、甘えん坊だぞ。おいでー」ギュッ

「俺……甘えん坊なのか……?」

伊織「さぁね」

「……てれびみました」

響「そっか。ありがとね」

「伊織、あの告知もうちょっと――」

伊織「うるさいわね。玄関で説教しないでよ」

「それもそうだな」


229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:47:42.45 ID:pHjVdoaAo


響伊織「「 貴音ッ!? 」」

貴音「久しいですね、二人とも。背が伸びたようで、歳相応といったところでしょうか」

「貴音は全然変わってないんだよな……」

伊織「なによこの遺伝子……」

響「まぁいいか……貴音は貴音だぞ」

「ひびきちゃん」

響「今日は生放送があったから、家族を連れてこれなかったさー、ごめんね」

「ううん……」

響「ほっぺにご飯付いてるぞ」

「こっちですか?」

響「そうだぞ」



『この太陽の日差し! アスファルトの焼ける匂い! 空の蒼さ!』

『これがうちなーだよ、プロデューサー!』


響「自分がいるね」

「ほんとうです」

「……また観るのか」

春香「私たち、観てませんから!」

雪歩「そうです!」

伊織「お邪魔するわねぇ」

美希「でこちゃん、私たちに挨拶してくれないの?」

伊織「あんたも、いつまでそれ言ってるつもりなのよ」

「お椀をどうぞ、伊織ちゃん」

伊織「ありがと。千早も真美も久しぶりね」

千早「えぇ。元気そうね」

伊織「まぁね~」

真美「いおりんから大人の魅力を……」

伊織「そうでしょ?」-☆

真美「やっぱり変わらないね」

真「雪歩のあの映画すっごくよかったよー」

雪歩「え、う、うん。ありがとね、真ちゃん」

真「そうだね、今はボクよりロケの映像が楽しいよね」

春香「あの、律子さん、私、第一事務所に移動したいのですがっ」

律子「そのうち、あずささんとやよいが移動するから、我慢しなさい」

春香「うぅ……それはそれでいいんですけど……」

やよい「そ、そうなんですか?」

「そ、そうなんですか!?」

律子「え、だって、プロデューサーが復帰したから……あずささんも第二で専属になってくれないと」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:49:43.40 ID:pHjVdoaAo

「……えっと……まだ体調の方が気になって……!」

律子「プロデューサーのことは、響と小鳥さんに任せて大丈夫だと思いますけど」

響伊織「「 あ……忘れてた 」」

「早く小鳥さんに連絡するんだ」

響「い、伊織頼んだぞ」

伊織「い、嫌よ、どうして私が」

「俺は大丈夫ですよ、あずささん」

「今日、挨拶回りでしたよね」

「う……! それでへばってるからいい格好ができない……!」

「へば……?」

響「疲れたーってなることだぞ」

「いおりちゃん、へばってるの?」

伊織「さ、さっきのは違うのよ~」

響「お父さん、帰ってきてどうだった?」

「やよいちゃんがきて、すぐねました」

律子「あずささんが第一、第二を行ったり来たりしてるから、無駄が生まれてるのよねぇ」

響「ゆんな~だよ、律子」

律子「……まぁ、そうね。今急いで決めることじゃないわ」

「ゆんな~ですね」

「うふふ」

響「ゆっくり、ゆっくり、ね」

「ゆっくり~、ね」

美希「そうだよね、時間はまだまだあるんだから」

千早「……えぇ」

「はやく、体力を戻さないと……!」

「焦りは禁物ですよ~」

真美「んっふっふ~、兄ちゃん、真美達が居ないから、怠けてたっしょー」

「確かに、あの頃は鍛えられてたのかもしれないな……」

「食べたいものありますか?」

「はくさいです」

「はーい、どうぞ~」

「もぐもぐ」

春香「……」


雪歩「アイスクリーム食べてたんだぁ」

真「ボク、それ食べてないなぁ」

貴音「わたくしもです」

響「うわ、なんだか恥ずかしいぞ」

231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:51:13.84 ID:pHjVdoaAo

亜美「私も恥ずかしいよぉ」

真美「ん?」

伊織「真美は変わらないのね」

千早「……そうね」

伊織「私も上品のままだけど」

真「ふっ」

伊織「誰よ今、鼻で笑ったの!」

美希「おいしいの~」

やよい「わ、私もなんだか恥ずかしいな……」

律子「無邪気なあなた達はもう……」

「ご飯付いてますよ」

「どこですか?」

「はい、取りました~」

「もぐもぐ」

「ほら、髪がご飯に付く」

「うん……?」

「髪、切ったほうがいいんじゃないか?」

「お母さんとおなじがいいです」

「……そうか」

「髪を結びますから、ジッとしててね」

「はい」

春香「……」



……




232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:53:23.06 ID:pHjVdoaAo

「セイファーウタキ……聖域であんなにはしゃいで……」

真美「楽しかったからいいっしょー」

律子「そういう問題じゃないの」

「……ん……ん?」

「あら、起こしちゃった?」

「ことり……さん?」

小鳥「ごめんね、うるさくしちゃって」

「うぅん……」

「すぅ……すぅ……」

「お父…さん…………」

「くぅ……すぅ……」

「……ん…………」

小鳥「あらあら」

響「お父さん大好きだよね」

「うふふ、そうなの」

「すぅ……すぅ……」

「すやすや」

春香「……」


貴音「あずさ、シロの姿が見えませんが」

「お母さんの方に懐いちゃって、その子供のクロちゃんと一緒に暮らしているのよ」

律子「そういえば、春香が来てから見えなくなったわね」

春香「……」

真「人見知り?」

「そうみたい。部屋で寝ているのかな?」

真美「亜美、兄ちゃんと一緒だったんでしょ? どうだったの?」

亜美「私も注意してみていたから、あの頃と変わりなくしてて、安心してたんだよ」

律子「そうよね。だから、さっき熱が出たって聞いたときはビックリしたわ」

「すぅ……くぅ……」

「すやすや」

伊織「私も眠くなってきたわぁ……ふぁぁ」

美希「それじゃ、川の字になって寝ちゃおうかな」

雪歩「あずささん、洗い物終わりましたよ」

「ありがとう、雪歩さん、やよいちゃん」

やよい「ケーキ、出そうかなと思っていたんですけど……」

「すぅ……」

「すぅ……」

美希「あんなに……小さかったのに…ね…………あふぅ」

春香「……」

233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:14:38.32 ID:pHjVdoaAo

「起きるのを待ちましょうか」

やよい「分かりました」

小鳥「春香ちゃん?」

春香「……」

小鳥「は、る、か、ちゃん」

春香「は、はい。なんですか?」

小鳥「なんだか、二人の親子を複雑そうな顔して見ているから」

春香「あ、あはは……」ホロリ

「もう、無理はさせませんから」

春香「……っ!」ボロボロ

雪歩「春香ちゃん……っ」

春香「凄い……なって……思っ…て……っ……」ボロボロ

律子「……」

「……ん……また寝ていたのか……」

「すぅ……すぅ……」

「おはようございます、お水、ここにありますからね」

「おはよう……」

真美「夜なのに?」

美希「すやすや」

「なんで美希まで……」

春香「……ッ」グスッ

「春香…どうしたんだ……?」

春香「三人を見ていたら、感動しちゃって……よかったって……っ」グスッ

「…………この子が、隣で寝ていると、決まって同じ夢を見る」

「すぅ……すぅ……」

伊織「夢……?」

「あの3ヶ月間の夢」

「……」

千早「あずささんの引退ライブまでの3ヵ月……ですね」

「あぁ。14人が一丸となって活動してるんだ」

律子「……」

「千早はいなかったのに、夢には必ず出てくる」

千早「……!」

真「へぇ……」

雪歩「な、なんだか素敵ですっ」

「あの時間があったから、この子と一緒に居ることができると思っている。ありがとう、春香」

春香「お礼なんて言わないでくださいっ」ボロボロ

234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:19:01.38 ID:pHjVdoaAo

「社長や小鳥さんも……力強く応援してくれた……」ナデナデ

「んん…………すぅ……」

小鳥「……」

「まぁ、この通り、夢から覚めると服が涎まみれになっているんだけどな」

春香「ふふっ……」グスッ

「着替えてくる……。悪いな、みんな来てるのに、寝てばっかりで」

貴音「いえ」

「すぅ……」

美希「くぅ……」

貴音「今日一日で、それほどの疲労が?」

「そうみたい。でも、顔色はいいので、気にしないでね」

律子「あの時の社長の活力……凄かった」

小鳥「そうですね。昔以上に……力が漲っていましたから……」

千早「あの3ヶ月……」

真美「休む暇なんて……無かったよね……」

伊織「……3daysに変更しちゃって……どれだけ……ハードルを上げるのよ……」

「うふふ、ごめんなさい」

伊織「あずさ、やっぱりあんただったのね……」

雪歩「でも……その3ヶ月を経験したから……もうなにも怖くないよね」

真「そうだね……その後の大きな試練も乗り越えているからね……ボク達」

真美「まこちんが言うとどうしてこうも格好いいんだろっ!」

貴音「……」

「貴音さん?」

貴音「……夢の話ですが、一つ気になることが」

律子「千早がいて、社長、小鳥さんを含めて14人……一人足りないのよぉ……ねぇ……」

真春香亜美「「「 え…… 」」」

伊織「さぁ~、だぁ~れだ?」

雪歩「うぅ……! やっぱり私……!?」

小鳥「だ、ダメよ、そういう話は」

美希「すぅ……」

「……ん…………おとう……さん……?」

「あらあら、よいしょ~」ギュッ

「おかぁ……さん…………っ……おとうさん……っ」グスッ

春香「――!」

「着替えに行っただけですよ、すぐに戻ってくるから、ね」

「ぅぅっ……ぐすっ……」

千早「……」

「ずっと、入退院を繰り返してたから……」

貴音「…………そうですか」

235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:21:37.71 ID:pHjVdoaAo

響「大丈夫だぞー、ちゃんといるからね」ナデナデ

「ぐすっ…………うん……」

やよい「……」

伊織「……」

「あの頃の美希の眠り癖が移ったみたいだな……なんて」

律子「……」

真美「……」

真「……」

「あれ……」

「ぐすっ……ひっく……」

「はい、お願いします」

「うん……」

「おとうさん……」ギュウ

「ごめんな、いつも心配させて」

「…………ん」ギュウウ

「もうおやすみする?」

「うぅん……」

「ケーキ、食べますか?」

「……はい」

やよい「それじゃ、準備しますね!」

亜美「私も手伝うよ!」

春香「律子さん、私、第二事務所で頑張りますからあずささんを――」

律子「あのね、春香。春香のそういうところがあぶなっかしいから、第一事務所の立ち入り禁止にしたのよ?」

春香「え……?」

伊織「なんでもかんでも抱え込もうとしないでよね。私たちはなんなのよ」

春香「……」

「事務所のために、じゃなく、自分の為だけに頑張ってもいい頃ですよ、春香ちゃん」

春香「……!」

律子「春香にとってはそれが難しいのかもしれないけど、いいのね?」

春香「……はい!」

律子「じゃあ、後輩の面倒とあずささんのフォローをよろしく。ついでに第一の出禁も解除ね。
   ……律儀に守る必要も無かったんだけど」

春香「そ、そうなんですかー」

響「あはは」

真「やったね、春香! ボクも遊びに行きますからね、プロデューサー」

「いや、真……」

貴音「真の出入りはまだ認められていませんよ」

真「え? なんでボクだけ……理不尽ですよ!」

律子「あんたがいると、候補生が集中しないからよ。諦めなさい」

真「うわ……本当に理不尽だぁ……」ガクッ

237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:25:10.98 ID:pHjVdoaAo

「色々と遊んでくれるって評判だったぞ。大人しくしているんだ」

真「……頷きたくない!」

小鳥「あ、あはは……」

「ほら、響と遊んでもらえ」

「はい」

響「おいでー」

春香「もう時効だよね、千早ちゃん」

千早「え?」

「なにがだ?」

「どうしたの、春香ちゃん?」

春香「あずささん、プロデューサーさんの日記ってなんですか?」

「はいっ!?」

「俺の……日記?」

千早「は、春香っ!」

響「なになに、なにそれ?」

「なんですか?」

美希「えっとね、その日のプロデューサーの体調とか、異変に感じたこととか」

「みみ、美希ちゃんどうしてそれを!?」

美希「ないしょー」

春香「なぁんだ……」

律子「がっかりしてるけど、なんだと思ってたの?」

春香「嬉しいこととか、楽しかったこととか。二人のらぶらぶ~な想い出~♪」

千早「それは交換日記よ……春香」

春香「そうだよね~、あずささんはプロデューサーさんの……為に……」

「ど…どうして……知っているの……っ」

「え……っ」

「い、いえ……そのっ」

「あ、えっと……っ」

小鳥「付き合い始めの初々しいカップルですか!?」

美希「せっかく私がフォローしたのになぁ……」


真美「ねぇ、兄ちゃん」

「な、なんだ? まだなにかあるのか?」

真美「亜美のことなんだけど、どうして兄ちゃんをプロデューサーなんて呼んでるの?」

「……」

真美「みんなをさん付けで呼んじゃってるよね」

「亜美は亜美で、色々と考えがあるんだろう。それか……」

真美「それか?」

「真美がいなくて寂しいから、無理して変わろうとしてるのかもな」

真美「ふむ……」

238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:27:03.38 ID:pHjVdoaAo

フッ


貴音「面妖なっ」

律子「照明が消えただけじゃない」

「けーきですね!」

響「そうだぞー。クローそろそろ出てこーい」

「クロ~」

雪歩「テレビ消すね」

真「うん。……雪歩の願掛け、叶ったね」

雪歩「……うん。そうだと嬉しい」

「願掛け?」

真「プロデューサーが復帰するまで、頑張るって」

「……そうか」

雪歩「ただ、それだけです」


亜美「ハッピーバースデー……じゃない」

やよい「復帰おめでとうございます! プロデューサー!」


「「「 おめでとー 」」」


「ありがとう、みんな」

「ろうそくです!」

「俺の代わりに消してくれ」

「?」

「ふぅーって」

「はいっ」


春香「せーっの!」


「ふぅーー!」


パチパチパチ


真美「兄ちゃんおめでとー!」

律子「まぁ、これからなんですけど」

美希「相変わらず鬼なの」

「ありがとう、雪歩」

雪歩「お礼なんて……いいですからっ」

「顔を見せないから、寂しくしてたけど」

「あずささん、あずささん、それ以上は」

「雪歩さんの新曲を聴いたり、雑誌やテレビで活躍してるのを見て満足してのよ」

「暴露しすぎですよっ」

雪歩「うぅ……っ」グスッ

239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:28:32.40 ID:pHjVdoaAo

「けーき……です」

雪歩「う、うん……ありがとっ」

「……あーん、してください」

雪歩「あ、あーん」

「……」

雪歩「おいしい……もう大丈夫だよ。…あ……目が……プロデューサーとそっくり」

「?」

伊織「どれどれ」

美希「でこちゃん、調子に乗るからダメ」グイッ

伊織「な、なによそれ!?」

クロ「ゴロゴロ」

響「白猫なのにねぇ、クロ」

「ね~、クロ」

小鳥「こ、このケーキはいつまでも変わらない味ね……極上!」

雪歩「真ちゃんも、ありがとう」

真「いやー、ボクは雪歩に便乗しただけだって」


真美「ね、やよいっち」

やよい「なに?」

真美「あの子、どうして、あーん、ってやるの?」

やよい「それは……」

響「お父さんに出来ること。なんだって」

真美「できること?」

響「なにかしてあげたいって、それだけ」

やよい「それが嬉しいんだと思う」

響「最近は癖になってるみたいだけどね」

真美「…………そっか」

240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:30:36.43 ID:pHjVdoaAo

貴音「響」

響「ん?」

クロ「にゃ」

貴音「人と人とのつながり」

響「?」

貴音「それは、縁」

貴音「その儚く紡がれた細い糸は出会いと時間を幾重にも重ね、強く頼れる縄になります」

響「……うん」

貴音「それは、絆」

響「……」

貴音「土質が劇的に変化したのは、貴方の存在が大きいそうですよ」

クロ「にゃ」

響「うん。なんの話?」

貴音「家族を思い遣る心。それが――」

「ひびきちゃん、あーん」

響「あーん……ん~、おいしいぞー」

「はい、あーん」

響「自分で食べないと、なくなるよ?」

「もぐもぐ」

美希「響がいたから未来が変わったの?」

貴音「いえ。確かに、響がきっかけにはなりましたが。
   響が持っている温かさは誰にでも持っているものなのです」

美希「ふぅん」

貴音「ですが、人はそれを忘れてしまうもの。気付かせてくれる存在が響なのですね」

美希「なるほどね」


響「おいしいね~」

「おいしいですね~」

響「お母さんにあーんってやってくる番だぞ」

「はい」

クロ「にゃ」


響「ごめんね、貴音。なんだっけ」

貴音「いえ、響は響。いつまでもそのままで」

響「よく分からないけど、分かったぞ」

クロ「にゃう」


241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:32:52.57 ID:pHjVdoaAo

「亜美」

亜美「なに、プロデューサー?」

「真美と一緒に、イタリアに行ってみたらどうだ?」


亜美真美「「 え? 」」


「私もそれは考えていましたけど」

律子「……ふむ」

「どうだ?」

亜美「やだ」

「どうして」

亜美「真美に負けてるもん!」

真美「そりゃ、あたくし、姉ですからん!」

亜美「あの時まで周りに心配ばっかりかけてたっしょ!」

真美「そうだよ~、あの時 ま で は」

亜美「うあー! 藪からハブだよー!」

「戻ってしまったか……」

やよい「ふふ」

「はぶ、なんですか?」

響「蛇だぞ」

「もう、大丈夫みたいですから」

「……そうですね」

亜美「兄ちゃん、私を、765プロで頑張らせてくだせぇ」

「わ、わかった。って、担当は俺じゃないが……」


真美「ねぇ、兄ちゃん。14人って、誰が居ないの?」

「俺の夢の話か?」

真「聞いていいことなのかどうか……」

律子「……そうね」

小鳥「……」

春香「……」


「お母さん、ふるーつたくさんです」

「おいしそうですね~。いちご食べますか?」

「たべたいです!」

「はい、あーん」

「もぐもぐ……おいしぃです~」


やよい「……」

伊織「……」

242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:54:49.30 ID:pHjVdoaAo

「夢の中では、なぜかあずさ…がいないんだ」


貴音「……」

響「……」


「お母さん、あーん」

「あーん……」

「おいしい?」

「おいしいですよ」

「ふふっ」


雪歩「笑い方があずささんだぁ」

千早「……」


「不安で目が覚めると、あずさの瞳が映る」


美希「……」



「『おはよう』って、必ず声をかけてくれる」



「はい、キウィですよ、あーん」

「あーん……もぐもぐ」

「おいしい?」

「おいしいです!」



「そして、この子が隣で寝ている」


「それが生きがいで、すべてなんだ」



「お母さん、けーきついてます」

「ここですか?」

「ちがいます。とります……はい、おっけーですよ」

「ありがとう」

「はい」



「夢をかなえてくれた――」


243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:55:59.02 ID:pHjVdoaAo



「あずさを愛している」


「私もあなたを愛していますよ」


「はい、お父さんとお母さんだいすきです」









245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 23:04:09.51 ID:pHjVdoaAo

時系列

あずさ「嘘つき」(一週目の冬) 

    ↓

/ 旅行者(宇宙人襲来)による時間早送り / ―なぜ早送りなのかは貴音のおまけ解説アリ



Pのいる時間・吹雪の日(2週目・経験地貯めてスタート)※一週目では倒れる1年前

    ↓

響の沖縄ロケ(2週目の初夏) ※一週目では倒れる半年前

    ↓

 あずさの結婚式(2週目の秋)

    ↓

   Pの手術(2週目の冬)

    ↓

母子で結婚式の映像(数年後)

    ↓

765プロによるPの復帰祝い 

    ↓

    ?


これで分かるでしょうか? 不足してるところを指摘してくれると助かります。

一年前に早送りした、と明記してなかったのが読者を困惑させた原因ですね。


246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 23:36:37.21 ID:82JSe1+DO
今のプロデューサーは病気完治してるが入退院繰り返してたから体力筋肉共に一気に堕ちてリハビリ?を兼ねてプロデュース業再開したって事?

247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:12:05.47 ID:FdKSdEvso
そうです。
一気に体力が落ちるため、引退後すぐに結婚式を挙げたという経緯があります。
そのための、あの島なんですね。

もう一つのENDがあるので、それを投下して貴音に入りたいと思います。

終わらせ方間違えたぁぁ!!!!

248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:14:22.03 ID:FdKSdEvso




――

―――




【 6月 】



あずさ「三浦あずさ、と申します。初めまして」

P「これから、よろしくお願いします」

あずさ「えっと、その……私、運動が苦手といいますか……」

P「?」

あずさ「ダンスレッスン、大丈夫でしょうか?」

P「え? 俺に聞くんですか……?」

あずさ「はぁ……プロデューサーさんですよね?」

P「そうですけど……えっと、練習をこなしていけば大丈夫かと」

あずさ「そうですね、テニスで三振しちゃうような私ですけど……こなしていけば、なんとか……!」

P「……え?」

あずさ「はい?」

P「今、凄く不安になることを聞いたような……?」

あずさ「ダンスレッスンをこなしていけば……?」

P「いえ、そこじゃなくて」

あずさ「?」

P「…………」

あずさ「……」

P「えっと、そうですね。初対面同士ですから、お互いの夢を発表して、なんというか、距離を縮めましょう」

あずさ「それは名案ですね、はい」

P「夢は、俺の手でトップアイドルを育て上げることです!」

あずさ「それは凄いと思います~。応援していますね」

P「…………はい」

あずさ「トップアイドル……そうですねぇ、そこまでいけばきっと……見つけてくれるのかもしれません」

P「……」

あずさ「…………」

P「あずささんの、夢……は?」

あずさ「あ、ある人を探しているんです……」

P「ある人?」

あずさ「は、恥ずかしいので、今はこれだけです~」


249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:15:14.42 ID:FdKSdEvso

【 7月 】



P「あずささん! ステージデビューが決まりましたよ!」

あずさ「まぁまぁ、それは凄いですね~」

P「どうして他人事なんですか! デビューするのはあずささんなんですよ!」

あずさ「そうですね、夢のようで嬉しいです~」

P「というか、お菓子を食べながらのんびりしてて、いいんですか……?」

あずさ「もぐもぐ……?」

P「時間……」

あずさ「まぁ……3時……」

P「急ぎましょう、真達も待ってますから……送っていきます」

あずさ「ありがとうございます~。あ、でも……私、車酔いしちゃうので……電車で行こうかと」

P「……え、えっと……酔い止めの薬、買って来ますから、準備していてください!」

タッタッタ


あずさ「食べながら歩くのは行儀が悪いですね。食べ終えてから行きましょう」


250: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:16:12.09 ID:FdKSdEvso


【 8月 】


あずさ「あの、本当に私なんかが出場してもいいんでしょうか……?」

P「だ、大丈夫ですよ」

真「そうですよ! ボク達だって、そんなに経験が無いんですから!」

伊織「そ、そうよ! せっかくのチャンス、無駄にするわけにはいかないわ!」

律子「伊織も緊張してるし……プロデューサーは頼りないし……大丈夫なのかしら……」

あずさ「うふふ、楽しみですね、南国の島」

真「そうですね~、テレビで紹介していましたけど、リゾート地になっていて、たくさん遊べそうでしたよ」

あずさ「まぁ~、いいですね~」

伊織「ちょ、ちょっと! 遊びに行くわけじゃないでしょ!」

P「遊びとは違うけど、楽しんでみよう。肩に力が入っていても結果は出せないからな……うん!」

律子「……はぁぁ……本当に大丈夫なのかしら……」


251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:16:58.31 ID:FdKSdEvso

【 9月 】


高木「まさか、短期間でそこまでいくとは」

P「律子と真が、伊織とあずささんを引っ張ってくれたようです」

高木「うむ、これからも君には期待してるぞ」

P「はい!」


響「はいたーい!」

P「今日も元気だな、響」

響「ねぇねぇ、自分の仕事、まだないのー?」

P「……そうだな、まだレッスンの日々だ」

響「自分が稼がないと家族を路頭に迷わせてしまうぞー!」

P「今は辛抱だぞ。律子も真も伊織もあずささんもそれがあったから……」

響「いぬ美が! ハム蔵が! へび香、シマ男、オウ助、うさ江、ねこ吉、ワニ子、ブタ太が!!」

P「わ、わかった。家族想いの響の期待に応えようじゃないか。俺も頑張って営業かけてくるッ!」

響「頼りにしてるからね、プロデューサー!」

P「律子、行くぞ」

律子「え……どうして私を……」

P「時間、空いてるよな?」

律子「頼りになるんだか、ならないんだか……」

小鳥「行ってらっしゃーい」

響「どうして律子と一緒?」

小鳥「戦略を立てるのかな?」


あずさ「今月の双子座は……」

亜美「……どうなのかな? わくわく」

あずさ「健康運、仕事運絶好調~!」

真美「遊び運はないの~?」



252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:17:39.52 ID:FdKSdEvso

【 10月 】


P「ひっくしゅっ」

あずさ「まぁ、大丈夫ですか?」

P「……油断しましたかね……くしゅっ」

あずさ「体温測りますね」スッ

P「……?」

コツ


P「ッ!?」

あずさ「えっと……そうですね、少し熱が……っ!?」

P「さすがに、それは……無防備すぎますよ、あずささん」

あずさ「すすすっ、すいませんっ」

P「というか、風邪移しそうなので、近づかないように……帰ったら手洗いとうがいを必ず……くしゅっ」

あずさ「……っっ」


253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:18:27.22 ID:FdKSdEvso

【 11月 】


美希「しあわせなの~!!」

春香「いいなぁ、美希……」

千早「……」

美希「千早さん、これおいしいよ~、食べてみる~?」

千早「いい。……悪いけど、歌詞を覚えているから」

美希「ごめんなさいなの~」

春香「どうして美希だけ、プロデューサーさんの料理を味わってるの?」

美希「ご褒美なんだって」

春香「よく分からないけど……」

あずさ「まぁまぁ、おいしそうですね~」

美希「プロデューサーが、ミキのために作ってくれたきんぴらごぼうだよ」

あずさ「……きんぴらごぼう?」

美希「食べてみる? おにぎりと絶妙のコンビネーションなの!」

あずさ「それじゃ、一口だけいただきますね」

美希「はい、どうぞ」

あずさ「もぐもぐ……ん!」

春香「た、食べたくなってきた」

千早「…………席を外します」

春香「……千早ちゃん…………」

あずさ「千早ちゃん」

千早「なんですか?」

あずさ「はい、あーん」

千早「遠慮します」

あずさ「あーん」

千早「……いえ」

あずさ「はい、あーん」

千早「…………ぱく」

あずさ「……どうでしょう?」

千早「よく、わかりません」

春香「おいしいよね! そうだよね!」

美希「春香はまだ食べてないの」


254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:19:41.24 ID:FdKSdEvso

【 12月 】


P「お、これからレッスンだったな」

貴音「はい。行ってまいります」

雪歩「……っ……い、行ってきます……っ」

P「気をつけてなー」


P「最近は俺にも慣れてきたみたいだ。少しずつだ、雪歩」



ガチャ


P「ただいま戻りましたー」

やよい「おかえりなさーい」

伊織「お帰り」

P「え……」

伊織「アンタ、私が挨拶したら引くってどういう神経してんのよ」

P「ただいま! 嬉しいぞ俺は!」

伊織「あっそ」

やよい「えへへー」

P「昼からのボイスレッスン、忘れて無いよな」

伊織「ノープロブレム」

P「うん。……それはそうと、なにか食べたい果物とかあるか?」

伊織「なによそれ」

P「仕事に関係しているんだ」

伊織「桃ね。桃よ桃、桃しかないわね、桃がいいわ」

P「そんなに好きだったのか。オレンジだと思ってたが……やよいは?」

やよい「梨かなー……?」

P「……わかった」

伊織「駅前のデパートで買ってきなさい、高級なヤツね。缶詰なんか買って来たら承知しないわよ」

P「…………小鳥さん、あずささん、知りませんか?」

小鳥「屋上で空を見てくるって言ってましたよ」

P「そうですか。そろそろ時間だから、呼んできます」

小鳥「ふふ、ごゆっくり~」

P「……? 急いでるって意味だったんだけどな?」

伊織「ちょっと、缶詰は駄目って聞いてるの?」

P「いいから、ちゃんと準備しておくんだぞ」

やよい「わっかりましたー!」

伊織「むっかー! 私を蔑ろにしたわね!?」

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:20:13.26 ID:FdKSdEvso


P「伊織も元気だな」


ガチャ



―― チリン。



P「鈴の……音?」



256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:21:52.11 ID:FdKSdEvso


「幸せの青い鳥は、身近に居る……ひょっとしたら……?」

「あずささん、寒くないんですか?」

「はっ!?」

「え!?」

「ぷ、プロデューサーさんっ、今の聞いていましたか!?」

「い、いえ……」

「そ、そうですか…………ふぅ」

「そんな格好では風邪引いてしまいますよ」

「うふふ、大丈夫ですよ。あたたかい、ですから」

「……よく分かりませんけど。レッスンの時間ですから、行きましょう」

「……そうですね、わかりました」

「そうだ、あずささんが好きなケーキ、なんでしたっけ」

「えっと……? なんでしたっけ?」

「ほら、フルーツがたくさんのってるケーキですよ」

「あ、タルト・オ・フリュイですね。……でも私、そこまで好きではありません……けど」

「あ、あれ? ……そうなんですか。……伊織の件といい、知らないことばかりだな、俺」

「そのケーキがどうしたんですか?」

「昨日の仕事で、あずささんは俺との約束を守ってくれたので、そのお返しに、と」

「約束……」

「指きりげんまんでもしますか? なんて、子供っぽいですよね」

「わかりました」

「いや、冗談ですよ……変なこと言ってすいません」


「はい、どうぞ~」


「う……」


ギュ


「ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんの~ます」


「……」


「うふふ、約束です」


「わ、わかりました……夜までには戻れると思いますので」


257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:23:04.49 ID:FdKSdEvso


―― チリン。


「ん? また鈴の音が……どこから?」



「……くしゅっ」


「わっ、あずささん! 早く中に入りましょう!」


「あら?」


「どうしたんですか……指をきらないんですか?」


「心の中が寒く感じたから……くしゃみ……を?」


「心が寒い……?」


「今は……あたたかい…です……。こうして、小指で繋がっていますから」


「……そうですか」


「……」


「……?」


「プロデューサーさんは――」




―― 運命の人、って……信じますか?




258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:25:03.55 ID:FdKSdEvso


―――

――





貴音「……」


ガラッ


貴音「おや?」

美希「少し冷えるけど、気持ちいいね」

貴音「……」

美希「邪魔かな?」

貴音「いえ。美希も一緒に、月を望みませんか」

美希「そうするね」

貴音「……」

美希「綺麗だね~」

貴音「明日も早いのでは?」

美希「ううん。日本に帰ってきたんだから、少しは余裕あるよ」

貴音「そうですか」

美希「みんな寝ちゃったから、チャンスだと思って。聞いて欲しいことがあるの」

貴音「美希は覚えているのですか?」

美希「ううん、違う」

貴音「的を射た発言が多くみられましたが」

美希「覚えているじゃなくて、知ってるが正しいよ」

貴音「知ってる?」

美希「ミキ……じゃなくて、私、あの頃よく寝てたでしょ?」

貴音「今は、時間を戻しても構いませんよ。わたくしも、時間はそれほど流れておりませんから」

美希「ふぅん……じゃあ、18のまま?」

貴音「いえ。19です」

美希「じゃあ、ミキ達の方が経験豊富なんだ。それって凄いね」

貴音「浦島太郎は、竜宮城から帰ったとき、知人が一人も残されていなかったと記されていますね」

美希「うん」

貴音「その気持ちを味会わなくて本当に良かったと、皆に囲まれて思いました」

美希「うん。ミキも貴音に会えてよかった」

貴音「……」

美希「なんかね、その寝ていた時間が多かったから、記憶が他の人より特質なんだって」

貴音「……記憶?」

美希「えっと、ネガフィルムって知ってるかな?」

貴音「写真の現像に用いられるふぃるむで相違ないですか?」

美希「そうそう。昔、映画の撮影なんかで使われてたやつね。それが流れ込んでくるの」

259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:28:36.79 ID:FdKSdEvso


美希「意識して目を瞑ると、そのフィルムがずらーっと並んで、一コマずつにたくさんの私――ミキ達がいるのね」

貴音「……」

美希「その一枚を取って、集中してみると、映像として動くの」

貴音「映像?」

美希「それは、思い出だったり、未来の予知だったり。もしかして、の世界だったり」

貴音「それが……記憶」

美希「うん。最初は小鳥みたいな妄想なのかと思ってたけど、違ったみたい」

貴音「人類の記憶を引き出し出来る……もしや――」


貴音「あかしっくれこぉど」

美希「そうみたい。でも、ミキ達以外には視えないから良くわかんないけどね」

貴音「その点について、補正を」

美希「?」

貴音「美希はこの宇宙の秘密に気付いていないのですか?」

美希「秘密……?」

貴音「宇宙規模による幾億の再生によって蓄積された、わたくし達の記憶。美希はそれを視ているのです」

美希「……」

貴音「先ほど挙げた、未来予知・もしかしての世界は、思い出として一つということ。それ故、人類の記憶」

美希「一度経験したことだったんだね。これも知らなかったなぁ」

貴音「それを教えたのは誰なのです?」

美希「リツって人と、黒猫。あ、あと忍者」

貴音「個性に富んだ集団ですね……」

美希「そのリツって人が黒猫と会話をしてて……その時初めてこの力? に気付いたの」

貴音「はて……、別の旅行者が……」

美希「多分違う」

貴音「美希も旅行者を存じているのですか?」

美希「うん。映像を視て、貴音に間接的に教えてもらったよ。宇宙の秘密は聞いて無いけど」

貴音「旅行者の説明不足ですが……腑に落ちません。この点を説明しなければ、接触する理由が……」

美希「貴音が隠したことなんじゃないの?」

貴音「わたくしが隠す……? その理由も……なるほど、合点がいきました」

美希「?」

貴音「話は後ほど。まずは美希の話を聞き終えてからにしましょう」

美希「うん」

貴音「美希はこの力をあの3ヶ月間で使っていないと推測しますが」

美希「まぁね。ただのデジャヴだと思っていたから。これを使えばトップなんて……朝飯前なのに……」

貴音「頑張りましたね、美希」

美希「……っ」

貴音「視えなくてもいいものまで視えてしまったのではないですか」

美希「う、うん……っ」グスッ

260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:30:12.80 ID:FdKSdEvso

美希「そ、それでね。……あの子の未来を視てもいいのかなって」

貴音「プロデューサーの病が……あの子にも……と?」

美希「……うん。怖くて……まだ視てないんだけど……」

貴音「あずさをはじめ、わたくし達はプロデューサーに対し不安を感じていましたね」

美希「……うん」

貴音「その不安が、今のこの時間を創っているのだとしたら、それは罪だと考えますか」

美希「ううん、絶対にそれは無いの」

貴音「喩え、神に対する冒涜であろうと、悪魔への尊崇だろうと、摂理の崩壊を招くとしても」


貴音「わたくしは美希を守ると誓いましょう」

美希「……わかった」


美希「手、握っててくれる?」

貴音「わかりました」


ギュ


美希「……ふぅ」



美希「――」



貴音「……」



美希「……」


貴音「どうでしたか?」



美希「もう一回」


ギュッ


美希「――――」



貴音「……」




美希「…………」


貴音「……」


美希「ミキと、貴音、律子の三つのフィルムがあるとするよ?」

貴音「はい」

261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:32:08.37 ID:FdKSdEvso

美希「三本の細長いフィルムが並んでいて、左から過去、右へ未来とコマは流れていくの」

貴音「……」

美希「三人が同じ想い出を作ると、それぞれ一コマに同じ映像が並ぶのね」


美希「その次のコマに移ると、三つそれぞれが全く違う映像になるの。そうやってフィルムはつくられている」


美希「それは最後まで。私たちが寿命を迎えるそのときまで」

貴音「はい」

美希「だけど、あの子には……その次のコマが無いの」

貴音「それは……?」

美希「わかんない」


美希「あずさの胸の中で眠るあの子。やよいと遊んでいるあの子……過去はあるけど、未来が視えない」

貴音「……」

美希「……ミキも詳しいことは分からないけど」

貴音「この時間は、特別なのやも」

美希「特別?」

貴音「決められた時間ではない、それだけのことですよ」

美希「ふぅん……あ、そっか。さっきのやよいの決意がそれなんだ……」

貴音「……」

美希「貴音の言うとおり、これから先は決まってないみたいだね」

貴音「皆で守っていきましょう。何が起ころうともこの時間を」

美希「うん。……ありがと、相談してよかった」


貴音「……もしや」

美希「そうだよ。この力? は、その旅行者がくれたみたい」

貴音「……辛いのなら、消してもらいますよ」

美希「できるの?」

貴音「……」

美希「探しに旅に出なきゃいけないんでしょ? いいよそこまでしなくても」

貴音「しかし……」

美希「私が適任だったんだよね……導き手として。特質だったから、丁度良かったって」

貴音「先を知るというのは、視えなくてもいい世界を視てしまうというのは、相応の負担になるのでは」

美希「うん。だから、悩んでいた真美と一緒にイタリアへ行ったの」

貴音「……」

美希「有り得ない選択を選んで、頑張ってみようって。おかげで、世界も広がったよ」

貴音「……美希」

美希「ズルだから、つまらなくなるけど……ミキはほら、保険? だからね」

貴音「道を間違えないように、と?」

美希「そう」

262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:34:44.20 ID:FdKSdEvso

貴音「酷な事を聞いても?」

美希「いいよ」

貴音「この時間の前……1周前を、存じているのですか?」

美希「うん。……プロデューサーのいない世界……」

貴音「……」

美希「あずさが頑張ってた」

貴音「そうですか」

美希「みんなの為に……っ……隣に・・・いない……っ……誰かさんを想いながらッ」グスッ

貴音「……」

美希「……だからね、ミキ……この時間がとっても嬉しいんだっ」

貴音「…………」

美希「あの美希が……少し……可哀相かな…………」

貴音「悲恋、なのですね」

美希「ま、まぁね」

貴音「美希があの初夏を迎える前、それが理由で髪を短くしたのですか」

美希「違う。このままだと、また……いなくなっちゃうなぁって感じたから。決意表明だよ」

貴音「……」

美希「勘違いしないでね? ミキはまだ……誰も好きになって無いんだから」

貴音「それはそれで、ですね」

美希「そうなんだよね……。あはっ、ありがと、貴音!」

貴音「聴いているだけ、ですよ」

美希「誰にも相談できないことだからね。とっても楽になったよ」

貴音「そうですね。話せば、余計に気を遣わせてしまうでしょう」

美希「……うん」

貴音「夢を見て、目が覚めれば悪い映像を視てしまってはいないか、など」

美希「そう、みんな優しいから」

貴音「やはり、早送りであって、消した訳ではなかったのです」

美希「……どうして早送りなの?」

貴音「既視感を強めるため、ですよ。今の自分自身に生まれ変わるのは時間を要しますから」

美希「そうなんだ……スケールが大きすぎるの」

貴音「先ほどの話に戻りますが。美希に世界の秘密を黙していたのは、何度も悲しみを味わう可能性があったからだと推測します」

美希「…………」

貴音「わたくしから旅行者の話を聞いた時の状況、話していただけますか?」

美希「えっとね。ミキはソファで寝てて。律子に起こされて、小鳥が貴音を急かしてて」

貴音「……」

美希「あずさが空を見に、屋上へ行っている間、貴音から、黒猫の正体を聞いたの」

貴音「……」

美希「あずさが屋上から戻ってきてからも少し聞いたよ」

263: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:36:11.16 ID:FdKSdEvso

貴音「その時のあずさの様子は?」

美希「少し調子悪そうだった。でも、すぐに回復して、ミキと貴音のレッスンに行ってるから大丈夫」

貴音「……プロデューサーの居ないその後の世界」

美希「気になる?」

貴音「答え様によっては聞かせてもらえるのでしょうか」

美希「ううん、それは無理。だんだん、フィルムを伸ばしたようになって、視えないんだもん……」

貴音「必要ないということ、なのやもしれませんね」

美希「そうだね。大事なのはプロデューサーの居るここであって、これからなんだもん!」

貴音「真、同意致します」

美希「うんうん」

貴音「……」

美希「……」

貴音「……あの、美希」

美希「ごめんね」

貴音「やはりっ!」

美希「貴音の過去、うっかり視ちゃった♪」

貴音「――!」

美希「ミキはもうこんなヘンテコな力? 持ってるから、驚きはしないんだけど」

貴音「みみ美希き」

美希「誰にも言わないの」

貴音「ふぅっ」

美希「でもね、貴音」

貴音「はいっ?」

美希「ミキと貴音の未来……それほど幸せじゃないんだよね」

貴音「なんと……!」

美希「ううん。それなりに幸せなんだけど……三人の家族のような、あの幸せじゃないの」

貴音「なんと……!?」

美希「ミキ達以外は良い……やっぱ止めた」

貴音「なんと……」

美希「あーぁ……。こればっかりはつまんない……って思っちゃうなぁ……あ、そうだ」

貴音「?」

美希「ミキが、幸せになれるように……これを見てるあなた!」




美希「早くミキを迎えにきてね☆」



264: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/09(水) 00:38:48.10 ID:FdKSdEvso

貴音「それは誰に向けためっせぇじなのです?」

美希「ミキと同じ力? を持った誰かに」

貴音「美希、相手も同じ時間を生きていなければ意味がありませんよ」

美希「あ、そっかぁ……なぁんだ……」

貴音「美希も、あずさのように積極的になってみてはどうでしょうか」

美希「……そうだね。それがいいかも!」

貴音「わたくしも精進しなくてはいけないようですね」


美希「それじゃ、次はミキの運命の人――ハニーを見つけようっかな」



美希「あふぅ」



End