1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 23:01:59.14 ID:rYAwHyb20
俺ガイルのssです。舞台は6巻終了後から。
ゆったりと頑張りますのでよろしくお願いします。

モノローグ多めです、大目に見てやってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357567319

引用元: 比企谷「やはり、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」 

 

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 23:23:33.58 ID:rYAwHyb20
第一章 由比ヶ浜の恋心



文化祭が終わって、一週間がたった。他の生徒はただの文化祭だったかも知れないが、俺は忘れもしない文化祭になった。
俺は相模をあのように蹴落としたが、結局嫌がらせのようなものは受けてはいない。別に受けたところで何にも無いけど。
俺の防御力は半端じゃないからな。マエケンの防御率なんて目じゃないレベル。


今日は由比ヶ浜と放課後遊ぶ約束をしている。いわゆる、制服デートというやつだ。
あのハニトーの借りを返さなければならないしな。
でも正直に言って由比ヶ浜がカースト最底辺の俺なんかと一緒にいるのを人に見られるのはあまりいい気分はしない。
自分が侮蔑された目で見られるのは構わないけれど、優しい由比ヶ浜のような奴が侮蔑された目で見られるのは耐えられない

でもつい彼女の優しさに甘えてしまうほど俺は彼女のことを信頼してるのかもしれなかった。


だけどこれ以上は距離を縮めたくはない、これい以上近づいてしまえば
そろそろ間違いを犯しそうだった。



「やっはろー、ヒッキー少し待った?」


「いや、俺も今来たところなんだけど」


「それじゃ、行こうよ。早くハニトーの借りを返してもらわなきゃ」


「仇討ちみたいに言うな、由比ヶ浜が気に入るかどうか分からないけど
 とりあえず、行くか」


といって俺と由比ヶ浜はアミューズメントパークの映画館へといった。
今週はテスト週間なので部活はなく、映画を見て夕食くらいは食べられそうだった。

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 23:35:10.63 ID:rYAwHyb20
由比ヶ浜は今日はやけにうれしそうで足取りが軽かったけど俺はそれがなんによるものなのかは考えないことにしている。

「ねえ、ヒッキーゆきのん文系選んだらしいよ?。あたしたちと一緒じゃん?
 どうする?三年で一緒のクラスになったら。」


「どうもこうもねえよ、いつもと同じように、何かない限りは話しかけないし近寄らない、
 それが俺たちだろ、そんなもんじゃないか。」


「まあそうだよね、ゆきのんも結構あたしたちに近づいてきてくれてると思うし。
 文化祭のバンドの時はほんと、うれしかったんだ」


「由比ヶ浜のおかげで、雪ノ下も心を開いてるんだと思うよ。ほんとに優しいな。お前は」


「いや、あたしにできることはほとんどないよ。ヒッキーがゆきのんやほかのみんな、
 たとえばルミルミやさがみんだって。ヒッキーが他人のために泥をかぶってまで助けるなんて
 優しいよ。ヒッキーが少し、遠いよ}

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 23:48:36.15 ID:rYAwHyb20
うっ、言葉に詰まる、なんていえばいいのかわからない
由比ヶ浜の悲しそうな瞳が俺をさらに混乱へと陥れる。

ちょうど映画館の前だ、とりあえずここは話を振っておくか。


「なあ、由比ヶ浜映画これでいいか?」


「ヒッキーにしてはすごいいいセンスしてるじゃん!
 マイナーなものが好きなヒッキーにしては珍しいね。これって、小町ちゃんが選んだんでしょ?」


「よくわかったな、俺が映画を選んだらどうなるかわかってるのかよ」

今回のデートは小町に映画や食事などの場所を考えてもらったことが大きい。
でなければ、場所はラーメン屋、俺の家でツタヤになってしまうところだった。

「ラーメン屋とか、ツタヤになるでしょ?」


「よくわかったな。さすが俺のぼっち力を見極められるようになったのか」


「ヒッキーのことはさ、いろいろ見てるし分かるんだよ。こうやって気配りちゃってんのも」

思わぬところまで見抜かれていた。ガハマさんぼっちのセンスあるよ。




 


5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/07(月) 23:56:50.94 ID:rYAwHyb20
そうこうしているうちに映画が始まった。
お互いこの後に飯を食べるつもりなので、ポップコーンは買わなかった。

映画は普通の恋愛ものだった。
一年前、高校を卒業して離れ離れになってしまったカップルがお互いを探しあう話だった。

男のほうが別の女に告白されたりして、男の心が揺れたりするところがうまく描けていた。

途中、由比ヶ浜を見ると、完全に主人公の女の子に感情移入してるらしく、
独り言をつぶやいている。
可愛いな、と不覚にもそう思っている俺がいる。

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 21:42:05.78 ID:THaUA5Xu0
でも、好きっていう気持ちなんて間違いでしかない、嘘なのだ。
俺はもう勘違いすることはない、勘違いなんて、プロのぼっちにはありえないことなのだ。
青春ラブコメなんかは、嘘なのだ。

だから俺は、優しい女の子も嫌いだ。



結局、リアリアな展開だった。うまくお互いが再開でき絵にかいたようなハッピーエンドってやつか。
つくづく、あまり好みではない展開だった。


となりで由比ヶ浜が「あたしもこんな恋愛できるかな」とつぶやいたが、聞こえなかったフリをした。



11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:00:12.53 ID:THaUA5Xu0
「ヒッキー、やっぱ映画はいいもんだね!ほんと、あんなラブコメやってみたいよ」


「んまあ、そうだよな、でも普通ではできないし、ありえないからこういう風に映画でやるんじゃねえの?
 とりあえず、飯行くぞ」


遅くなりすぎるのは、由比ヶ浜の母親を心配さるのもいけないし。

あれ、あそこのゲーセンで指ぬきグローブをつけた熊のような体躯の男。
あれは…。ざ、材木座

「ねえ、ヒッキー、あれ材木座じゃない?すごいドヤ顔。アンナカオスルンダネー」


「こら、ぼっちは視線に敏感だからな、こっちのこと絶対見てるぞ」


ぼっちは周りの視線には鋭い、そして自分の話をしていると絶対に気が付くのだ。
やはりだった。材木座ならそれくらいのことはやる。


「はちえもーん、我のこのスコアすごくない?ねねすごくない?」


「なんだよ[たぬき]みたいに」


「なに、八幡女を連れておるとは何事!もしや、八幡我の敵になるのか?
 それでもプロのぼっちなのか?もしかしてこれはデートというやつか?」


「いちいちうっとうしいな。デートじゃねえ、訳有りだ。材木座、戸塚と一緒だったら、
 一緒にゲーセンに行ってやってもいい。」

「ふむん、我も戸塚氏にはいてもらいたいところだ…、あとでメールする。」


「わかった。またな。」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/08(火) 22:07:36.68 ID:THaUA5Xu0
「さらばだ八幡。」

材木座もなかなかいいやつなんだけどな
鬱陶しさは尋常じゃないけど。

「最近中2デレて鬱陶しさが増したよね…」


「別に男にデレられたところで嬉しくもなんともねえよ。あ、でも戸塚は別」


「ヒッキー、さいちゃんどんだけ好きなの?」


「大好き、山よりも高く海よりも深いまである」


歩くことしばし


あ、ここ。
普通のイタリアンだけど、内装がやけにお洒落で庶民的なところがある普通のお店だった。
小町がなによりもここを押したのは、総武高校の卒業生がやっているので、制服を着てると、安くなるからだった

「おーい、着いたぞ」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/10(木) 17:44:19.74 ID:2UCuA8Kj0
あ、テーブルのところに葉山と、松井さん?…がいるじゃん。マジでゴジラ、引退お疲れ様です!
内装は普通のイタリアンって感じの綺麗なお店で、結構人もたくさんいる。
その中でも葉山はやはり目立つ存在だった。
つーか彼らはデートなの?もういっそ付き合っちゃえよ。

「あーヒキオ、話聞こえてんぞ。松井って誰だ、あーしは三浦だっての。」

恐ろしい、心の声を読まれていた。
それにヒキガヤです、とは口が裂けても言えないレベルの威圧感。
懸賞金、5億はくだらねえよ、海賊王も近いな


「あれ、比企谷じゃん。それに結衣も。もしかして打ち上げとか?
 お前、後夜祭きてなかったよな。だから二人でか、なかなかいいじゃん。」

さすがは葉山よくわかっていた。こいつはただの人気者ではないことは分かる。
クズを育てる英才教育の賜物だった。


「まあ、そんなもんだ。お前らはなんだ?デートか?」


「いや、そういうわけじゃ、ないんだ。時間があったからたまたま来ただけなんだけど。
 三浦がここ、来てみたいって言ってたしな。」


最近は戸部といい三浦といい、リア充組は好きな人をゲットするのに本気だな。
戸部もに三浦もマジで策士なんだよ。
俺だってね、好きな人と少しでも話したいから、帰るタイミングとか計ったり、放課後教室にいたりしたもんだったよ。
おかげで、その女の子に「好きな人の話してるから黙ってとか言われたことあるし。
まあ結局何が言いたいのかとい言うと、この手の試みって、たいてい失敗するもんなんだよ。
そもそもこういうので付き合うよりも、運とかそんなんだから。
袖振り合うも他生の縁とはよく言ったものだと思う。だいたい、出会いなんてそんなもの。

「いいじゃん、二人とも付き合っちゃえば」

「俺たちはそんな関係には、ならないかな。まあこれからどういう風になるかはわからないけど、悪友みたいな感じったのも悪くないとは思ってる。」

葉山そこでそれは。
なかなか厳しいんじゃないの、三浦さん涙目。
こうしてみると、ちょっと可愛かったりもする。
いや、初めはほんとにリアルゴジラだったんだよ。今は良くも悪くも女王さまって感じだな。
三浦頑張るんだ。勝ち目はまだある!ネバーギブアップ!


「そーいやヒキオ、一応隼人がお前のこといいやつだって認めてるから。あーしも認めてやってんだからな。
 結衣泣かせたら、許さねえからな。」

「泣かされないって、ヒッキーに泣かされるほどよわくないよ!!!」


俺は葉山にルミルミの件でも相模の件でも、あいつには大変な役回りをさせてんだよな。
あいつはほんとにこんな俺を評価してるのか?
葉山の器の大きさはほんとに底知れない。
雪ノ下に匹敵するだろう。と俺は思っている。


「つーかさ、戸部て姫菜のこと好きっしょ。
 あいつ、みょーに様子がおかしいってか、姫菜の前だと挙動不審なんだよね。」

うわー、やっぱり恋する乙女は違うんだね。
やっぱあのわかりやすくもわかりにくい、そんな策士アピールを続けている戸部であった。
つうか俺もぼっちなのにクラスの内情だいぶ知っているな。 我ながらびっくり。



20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/12(土) 16:54:08.62 ID:jjhVAqZk0
「んまあ、そうらしいけどな。別に人くらい好きになってもいいんじゃねえの?」


「人を好きにならなさそうな比企谷が、珍しいことを言うんだな。」


「いやいや、好きな人とかいっぱいいたぞ。まあトラウマになるから言わないでおくがな。
 まあ、いいもんだとは思う。」


「そんなことでさ、ヒッキーとか隼人くんとか、好きな女の子とかいないの?」


「思った、あーし、それ聞こうと思ってた。」


「いる…、いや、かつていた。だけどもう手に入らない。そんなもんさ。」

葉山は少し悲しそうな顔と、わずかな怒気を含ませて、自嘲気味に言った。
キャンプの時、彼はY、という名前だといっていた。
案外、イケメンリア充だからと言って、なんでも手に入るわけじゃあねえんだな。
俺は少し安心した。
雪ノ下にしろ葉山にしろ、人間離れしたところがあるように感じていた。
でも、それは俺の偏見でしかなかったようだ。リア充でも、完璧超人でもできないことや、手に入れられないものはきっとあるのだ。



21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/12(土) 16:59:20.29 ID:jjhVAqZk0
彼の声音には、人を黙らせるような迫力をもっていた。
由比ヶ浜は何か分かったようだ。話してくれたらその話をしよう。
あと、お前の話も、雪ノ下の話も。
三浦は何も言うことができない。
葉山隼人は本当にカリスマだった。
俺は、何か気の利いた言葉を捜そうとした。
結局コミュ力の低い俺は、言葉を捜すことを諦めた。

葉山隼人は、三浦を連れ店の外へと出て行った。


22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/12(土) 17:12:04.78 ID:jjhVAqZk0
そう言えば、比企谷と呼ばれたのは、文化祭のあの日からだった。
葉山がどう思っていいるのかは知らない。警戒しているのだろうか。
俺はただのぼっちなのに。何も警戒することなんてないだろう。

そのことを俺は一旦忘れて、由比ヶ浜と一緒にテーブルにつく。


「なあ由比ヶ浜、何頼む?ガムシロとは言わないから。今日は俺のおごりでいいから。」

俺は笑いかけ
「由比ヶ浜には、借りをたくさん作りすぎたな。今日ぐらいは、貸借りを返さないとな。」
ここの店は結構おいしいらしい。だが俺には、ラーメン位しか旨いとか不味いとかは分からない。
イタリアンとか食べねえから。

俺はとりあえず、ミネストローネとパニーニを頼んでみた。素人すぎて勝手がわからん。

由比ヶ浜も庶民的なので、うんうん唸りながら。

「じゃあ、あたしナポリタンでいい!ヒッキーのおごりってだけでうれしいから」

そういった由比ヶ浜の顔は、本当に可愛かった。

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/12(土) 17:26:01.70 ID:jjhVAqZk0
料理は案外すぐにやってくる。
俺たちは15分程度待っただろう。

ナポリタンを頬張りながら結衣は言う。


「隼人くんって、ヒッキーといろいろあったことで、たぶん本当の自分が出てきたのかな?
 みんなが一番っていう感じの人だけど、そうじゃないところもあるっていうのが、今日はっきりわかったよ」


「そうだな。俺も夏、キャンプに行ったときあったろ。
 そこで葉山の真の姿を見たような気がしたな。まあーそれにしても、あいつにも手にはいらなものがあるなんて良かったぜ。なんでも手に入れられたら。俺たちぼっちはどう生きていいかわかんねえな」

俺はフォークを料理に突き刺す。

「いや、ヒッキーそんなこと言わないでよ。ヒッキーには隼人くんにはないところ。
 たくさんはないかもしれないけど、きっとあると思うよ、だってあたしやゆきのんや川崎さんを助けてくれたんだもん。ヒッキーのこと、ゆきのんが「私たちだけが、本当の優しい彼を知っていること、なかなか悪い気はしないわ」
て、言ってたよ。」


そうか、雪ノ下雪乃も結構変わったんだな。
俺は本当にいい友達になれると思っているのに…。今からのことなんてわからないや。

「隼人君、ゆきのんのこと好きっだったって噂、一回だけ聞いたことある。あの、ちょっと苦手なあのお姉さんから。」

俺は思わずフォークを落としそうになった。
 

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/16(水) 21:30:09.78 ID:nx1L1UWz0
「葉山という男の謎少しは解けそうだな。」



「え、なんで?」



「まあ、あの夏合宿夜な、Yが好きだって言ってたんだよ。その時の雰囲気がなんつーか、凄かったんだ。
 だから三浦ではないとはうすうす思ってたけど。雪ノ下なら、説明がつくよな、二人の何とも言えないすれ違ってる感じ。なんか昔にあったんだろ。
それならさ、雪ノ下の葉山への棘のある言動も理解できるよな」



「たしかに。ゆきのんは隼人君のこと、認めてない感じだったしね。
 だからどっかで、かっこいいところ、見せたいんじゃ、ないのかな。」

由比ヶ浜もなかなかの頭のキレだった。おそらく空気を読みすぎるから人の些細な感情もわかっているのかもしれない。
まあ俺はクズを育てる英才教育のおかげで、名探偵並みの探偵スキルを持ってるんだよ。ぼっち探偵っていうやつだ。
葉山もほんとは雪ノ下にいいところ見せたいんだろうな。
彼なら絶対にいいところを見せられるだろう。そして雪ノ下も手に入れるんだろうか。
屋上で俺をしかりつけたときのあの悲しい表情を俺は忘れられなかった。



31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/16(水) 21:39:24.43 ID:nx1L1UWz0
「隼人くんはいずれきちんとそういうことには決着をつけると思うよ。由美子も隼人くんのこと、好きな感じだしさ」




「お前ら、ほんとにすぐ人のこと好きになれるよな、トラウマとかないの?俺なんか好きな人ができると同時にトラウマも生まれてくるんだけど。」




「それはヒッキーの目が腐ってるからだよ…。」




「そういうことは内輪でやってほしいよな。俺は輪の中に入ってねえからどうにもコメント出来ないからな」




「じゃあヒッキーさ、内輪って誰が内輪なの?」


「まず戸塚な。そして妹。これは絶対だ。その次にお前ら雪ノ下と由比ヶ浜。まあ、川崎とかな。川崎は俺と考え方似てるんだよ。」


川崎も文化祭でいい働きをして、いつも怒ったような顔をしていたが最近ではクラスでも笑うことが増えている。
どうでもいいが泣きぼくろが可愛い。


32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/16(水) 22:01:08.45 ID:nx1L1UWz0
「あとあんまり入れたくないけど、材木座かな。あと平塚先生とかもだろ」


実際に雪ノ下も由比ヶ浜なんかは俺のような奴が普通に過ごしていたら絶対に会えない相手だろうと思うし、そこはいい縁だったと思ってるし、ここまで踏み込んできてくれる由比ヶ浜のことを心配もしているが、本当はうれしかった。
雪ノ下の完璧ではあるが、どこか脆いところもなんとか守ってやりたいと思ってしまうし、この二人がいなければ、川崎や戸塚と仲良くなることもなかっただろう。こんな日常を送っている俺は案外幸せ者かもしれない。
と思える程度に俺も成長したのか、と思う。奉仕部に入れられたときは成長なんてするかと思ってた。



「よかった…。あたしも内輪に入ってたんだ」




由比ヶ浜が頬を染めている。何とも言えない可愛さだった。
この笑顔が見れるなら、クズ予防線を解除してもいいだろうか。



「お前が内輪じゃなかったら、誰が内輪なんだよ。相模のこととかほんとにさんきゅーな。
 なんだかんだで、いつも見てるからさ。」


相模は俺のことをさんざん言いふらしているようだった。
あいつはまだ俺のレベルには程遠い。ほんとにいやなことってのは。友達に愚痴るもんじゃないんだ。
一人で抱え込むものなんだよ。俺のようにな。
あからさまにいやな態度に出した時点で負けだ。
いろいろと由比ヶ浜のは相模のことを裏で解決してくれたようだった。
俺は別にどうでもよかったのだが、由比ヶ浜と雪ノ下が許さなかったらしい。葉山も協力してくれたようだった。


「見てていいんだよ、むしろ見ててほしい、な。何かあったら、また。あたしのこと助けてよ。」


それに答えるべき言葉は一つしかない。


「ああ、出来る限りで、適当にな。」


「それができれば、あたしは安心だよ。きっとゆきのんや川崎さんも、その一言だけで、安心できると思うよ。
 ヒッキーは隼人くんにないいいところいっぱい持ってるってあたしは知ってるよ。」


由比ヶ浜はほんとに優しい優しすぎる奴だな。ほんとにお前のことが好きになってしまいそうだ。
でもそれは誤解だし間違いなんだと言い聞かせる。ほんと、今日何回目だろうか。

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/16(水) 22:13:50.11 ID:nx1L1UWz0
「じゃあ、そろそろレジでもいくか?
 あ、でもお前ティラミス食べ終わってないじゃん。待っとくよ。ハニトーみたいに生クリームが食べられて、うれしいか?」



「もちろん、あたしほんとに今日はいい日になったよ、おつりが来そうだね。
 まだ時間あるしさ、ゆきのんの分のお土産買っていこうよ、奉仕部三人のおそろいキーホルダーもさ。」



「悪くねえな。あいつはパンさんが好きだから、ディスティニーの公式のショップじゃないと、たぶん怒るぞ。 
 筋金入りのマニアだからな。」


「そーだね。なんかゆきのんの「これは、なかなかいいものね。ありがたくもらっておくわ」
 じゃなくて。「ぜひ私に譲ってくれないかしら?」くらいは言わせたいよね」


由比ヶ浜のモノマネが上達していた。風呂場で練習でもしたんだろうか。


「上達したな。まあ俺には敵わないぞ。「返さないから…」なーんて言ってもらいたいな」


「あははははは。似てるに似てる。じゃあそろそろレジ行こうか。」


俺たちは、雪ノ下のモノマネをしながら、店の外に向かって歩き出す。
最高に幸せな時間だった。

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/18(金) 23:14:44.75 ID:Bc4+y8y70
俺たちはたわいのない会話をしながら、ディスティニーの公式ショップまで歩くことしばし。




俺はクラスメイトと買い物に行くのはこれが初めてのことかもしれない。
以前、小町の陰謀で雪ノ下と一緒になったことはあるのだが、お互い似た者同士の俺たちは必要のない言葉を交わすこともなく、ただ機械的に買い物しただけであって。お互い奢りあったりする展開なんて皆無っだった。
そんな雪ノ下のことが、俺はなかなか気に入っている。気に入っている、よな。


そんなことを思っていると由比ヶ浜がディスティニーのパンさんのキーホルダーの売り場を見つけたようだ
飛び跳ねながらこっちに手を振ってきている。 
あぁ、と言いながら、俺は由比ヶ浜のもとへと歩く。



「ねぇ、この8色も色がある!!!、結構色がいっぱい用意されてるんだね」


パンさんのキーホルダーは、赤、黄、オレンジ、緑、青、紫、黒、白だった
銀の縁取りがしてあり、はちみつをとろうと腰をかがめているパンさんが見事に表現されている感じ。
やっぱり国民的なキャラなだけあるし、公式となるとやっぱり綺麗なんだな。
さすが日本。



「ゆきのんのイメージカラーって何色????。あたしは白だとおもうけどなー。ゆきのんってやっぱ、優しいし、
 可愛いし、お姫さまみたいじゃーん。やっぱ雪って漢字も入ってるし、ここは白だと思うんだよね。」



いやいやいや、それはないぜガハマさん。
俺とお前は一度お互いの考える雪ノ下のイメージをぶつけ合う必要がありそうな気がしてきたぞ。
いや、でも雪ノ下は本当に雪のように脆くて、悲しい表情をするときがある、その意味では白なのかな…、と思ったりしないわけでもない。しないわけでもないー(棒読み)
でも基本的に黒い氷の女王だな。俺をdisる天才というか、いちいちいい笑顔でいってくるんだよな。
まあそれも悪くないと思うし、雪ノ下の魅力ってもんだろう。
ほんと槍水先輩よりも氷結の魔女ってのが似合うレベル、アサウラ先生、ベン・トーの10巻は雪ノ下を出場させてください。


とりあえず、雪ノ下が喜びそうなのは黒だし。それに黒いエプロンを買っていた。
あれは本当に似合ってたな。


「由比ヶ浜、お前の選択はまちがっている。
 雪ノ下は氷の女王だし、髪の毛とか黒いし、性格も黒いし、いつも俺を闇に葬り去ろうとしてくるし、どう考えても
 俺は黒だと思う異論は認めない。それにお前の誕生日プレゼントあいつと買いに行ったとき黒いエプロン買ってた。
 それがかなりよく似合ってたんだよ。だから、黒」



「まじで、ゆきのんの黒エプロンはにあうだろうなぁ、ちょっと今度ゆきのんに着てもらおうっ」



ほんとに雪ノ下のことが大好きなんだな。
こいつのおかげで、俺も雪ノ下も変わった。俺はそう思っている。それもいい方向に。


「んで、黒色でいいんだな。」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/18(金) 23:28:33.54 ID:Bc4+y8y70
「もうここまで来たら黒を選ぶほかにないと思う。」



あたしは、彼のすこし適当な表情を見て、即座に黒にすることに決めた。
彼はぼっちなのに、いや、ぼっちだからこそ人のことをよく見ている。あたしは彼の眼を信用している。くっさてるけどね。



「そーかい。まあ、白の雪ノ下ってのも、似合いそうな気がするんだ。んで、俺とお前の分は?、色決めるんだろ?」



そうだなあ、紫とかかな。ヒッキーはいつも家にも自分の心の中にもひきこもってるし、何より目が残念な感じに腐っているし。そんなところもあたしがヒッキーを好きなところなんだけどね。
そーだ、あたしは何色か聞かなきゃ、ヒッキーなら、まじめに答えてくれそうな気がするし。



「ヒッキーは紫、目が腐ってるし、自分の心の中にひきこもってるし。それでもなんか優しいし…異論は認めないよっう
 あ、あたしは何色が…、似合うの…かな…。」


ついつい早口になってしまう。ほんとこういうのを聞くのは苦手なんだよなぁ。
でも言葉にしないと伝わんないし!。
彼はゆきのんのようにこめかみに手をあててながら少し考えるようなしぐさをして、


39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/18(金) 23:54:11.11 ID:Bc4+y8y70


「俺が紫ってのは確定事項なのかよ、まあいい、紫好きだしな。しかももう目が腐ってるっつうのは俺への最大限の賛辞 だと理解した
 んー、由比ヶ浜の赤みがかった茶髪とか、いつも周りを笑顔にしてくれてるところとか優しいところとか、うーんオレ ンジとか、いいんじゃないのか。オレンジって優しい感じするだろ。それにとらドラのオレンジみたいに、青春っぽい 甘酸っぱい恋とかさ、そんなイメージあるだろ、俺が由比ヶ浜に買ってやるなら、オレンジだな」




とらドラは知っている。アニメをあまり見なかったあたしでも、クラスの人から勧められてみた名作だった。
あたしは、櫛枝実乃梨が一番印象に残っているキャラだったし、一番感情移入して見ていたような気がする。凄く友達思いでほんとは高須龍児のことが好きなのに親友のために身を引くシーンを思い出す。
あたしはゆきのんのためにヒッキーを譲ったりするのだろうか。
単なるあたしの予測ってか、空気の読めるあたしが自身をもっていえる。
ゆきのんがヒッキーに恋するのは、もはや時間の問題でしかない。
隼人くんもゆきのんを振り向かせるためにがんばるだおうけど、それができないってのはもうわかってるだろーな。
ゆきのんの笑顔はヒッキーといる時が一番輝いてみえるんもん。




でもあたしは、櫛枝のようになるよりも、両方をとりたい。ゆきのんとも今まで通り親友でいて、ヒッキーに振り向いてもらう。それがあたしの当面の目標だ。



3つのうちどれが選ばれるのだろうか。3つあるオレンジのキーホルダーの中から一番きれいなモノを選んでいるだろう。ヒッキーの真剣な横顔を見てあたしはそう思った。


47: 1 2013/01/21(月) 20:46:48.14 ID:c0FUVlJh0
そうして俺たちは二人でお互いのキーホルダーを買いあい、雪ノ下のは割り勘にした。

「ヒッキー、それ鞄にちゃんとつけといてよ、奉仕部でおそろいなんだから」


「お前、いいのか?まあ俺は喜んでつけさせてもらうわ
雪ノ下のは由比ヶ浜が適当に渡しといてくれ、頼むわ。そーせクラス違っても会いに行ったりするんだろ?」



こいつらは俺の見ていないところでも交流があるらしく、遊びに行ったりとかしているらしい。
お互い仲良くなったもんだな。今度雪ノ下に友達の定義について意見を聞こうと思う。



「わかったー。そうする。ヒッキーも明日、また学校でね。」


「あぁ、了解。雪ノ下がどんな顔をするのか、俺は楽しみで仕方がないな。」


「あはっ。あたしも、んまぁ今日はありがとう、すっごい楽しかったよ。文化祭の時、ホントかっこよかったから。」


「おう、俺は適当なことをしているだけだし。かっこいいって言葉は葉山にかけてやてくれよ」


「ほんとはさ、こんなことが言いたかったわけじゃ…なかったんだけどね。それにヒッキー、あたしにそんなこと、言わないでよ。」


由比ヶ浜の頬に赤みが差す。
俺はとうぜん心臓の鼓動が早くなる。
こんなことには、ならない予定だったんだが。

51: 1 2013/01/25(金) 21:29:26.10 ID:pmtylD4o0
もう既に日は沈んでいる。悲しそうに電灯が由比ヶ浜と俺を照らす。
あまりよく表情は読み取れない。薄い灯りが由比ヶ浜の赤い頬をはっきりとさせている。



「これだけはっ//」




俺の唇にあたたかいものが重なる。
これはなんなんだろう…と考えることさえできない。俺はただ、だまってされるがままだった。
由比ヶ浜の表情もきれいだな。ということだけしかわからない。
可愛いから、綺麗なぜ、想いが変わったのだろう。


俺は由比ヶ浜のことを大切に思っている。
でも、それとこれとはわけが違うんだよ…。
お前、ほんとにそれでいいのか?。もったいないこと、したんじゃないのか…



何秒たったのだろうか、一瞬のことかもしれないし、案外長かったのかもしれない。
俺が感じることができたのは、由比ヶ浜の優しさと、暖かさだけだった。


そして由比ヶ浜はゆっくりと唇を離し、いい笑顔を作ったように、見えた。


そして由比ヶ浜は少し早口で、けれど慌てたようすもなく、


「ヒッキー今日はありがと、すっごい楽しかったから!!!
文化祭の時、ホントかっこよかったから…」


といって、走り去っていった。




俺はただ茫然と由比ヶ浜を見つめる。
思わず、唇に手を触れる。あの感覚、由比ヶ浜の優しさがまだのこっている。


俺はそれを頭の中から振り払い、駅に向かって歩き出す。
電車はもうすぐだ。




54: 1 2013/01/28(月) 18:18:21.76 ID:WJGEKYBs0
案外冷静だったな、あたし。
走りながらそうつぶやく。
あたしの気持ちを最大限、彼につたえたつもりだ



彼と同じクラスになってから、学校生活がいっそう楽しくなった。


ホントは、彼があたしを助けてくれた時からずっと見てたし、何回も話しかけようと思ったけれど、彼は読んでいる本でニヤニヤしてたり、腐った目でなにかくだらないことを考えていそうな感じだったので話しかけられなかったんだ。


やっぱり話してみると、捻くれてはいるけれど、彼なりのポリシーがあって行動してるように感じる。
つまりは、優しいんだ。
本当に誰でも救ってしまうのだ。彼は。
でもそのたびに、彼は傷ついちゃうんだよね。
あたしが助けてあげなくちゃ、いつかだめになっちゃうもん。


ヒッキーは誰とも関わろうとしてこなかったから、あたしたちが忘れてしまったものを知ってるのかな。
そういうヒッキーが少し、うらやましくもある。


ゆきのんも、そんなヒッキーのことが好きなんだろうね。まだ気が付いていないようだけれど。
最近、ヒッキーをいじめるとき、妙に笑顔なんだもん。


だけどヒッキーは、たぶんトラウマのせいでもあるんだろうけど、
あたしやゆきのんの気持ちを信じてはいなんだろーな。たぶん「欺瞞だ」とかいって。

55: 1 2013/02/02(土) 10:14:21.20 ID:jTz+FvNP0
でも、それを含めて、あたしはヒッキーが好きなんだな。
きっとゆきのんも、川崎さんもそういうよね。

家のほうへ向かって歩き出す。もう真っ暗だ。

あたしは歩きながら、ヒッキーの表情を思い出すなあ
花火大会の申し訳なさそうな顔とか。
自分のひねくれた意見を力説するところとか。


文化祭の時マジで男だったなぁ。と思ったり。


まってないでこちらから行くと言ったものの、どうしていいかわからなかった。
でも、今日、頑張ってみたことですごく良くわかった。
今のままなんて嫌だ。もっと、ヒッキーのいろんな表情が見たい。
もっと見せてよ。



命短し恋せよ乙女


好きっていう気持ちに間違いなんてない。



~ fin~