1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/25(金) 23:49:39.66 ID:Yh5EBiJAO
この話はAnotherにスカイハイという漫画をクロスさせたものです。
だいぶ昔の漫画なので知らない人もいると思いますが、みなさんに伝わるように頑張るのでよろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359125379
引用元: ・杉浦「赤沢泉美…お生きなさい」
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/25(金) 23:55:13.11 ID:Yh5EBiJAO
~~
『…イズコ。やはり今回も夜見山から魂がくるあの時期のようだな』
イズコ「……門主様はどう思われますか?」
『なにがだ?』
イズコ「…いえ。何年も怨みの門番をやっていますが、夜見山から来る魂にだけはいつまでたっても慣れなくて…」
『そうだな。…………お前がイズコをやり始めて長くなるな』
イズコ「…ええ」
『そろそろ選択の時かもしれんな…』
イズコ「……」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/25(金) 23:58:06.24 ID:Yh5EBiJAO
『…あれ…ここは?』
『また夜見山からの死者が来たな』
イズコ「…はい」
『あ、すいません。…ここはどこか分かりますか?』
イズコ「ようこそ怨みの門へ…」
『え?』
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/25(金) 23:59:29.16 ID:Yh5EBiJAO
イズコ「杉浦多佳子。あなたは死んで魂だけの存在になったの」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:01:55.85 ID:LKduMq/AO
杉浦「……え?どういう…」
イズコ「覚えていないのも無理はないわ。貴方は杉浦「…………あ。…いえ、大丈夫です…。思い出しました。…全部」
イズコ「…珍しいわね。普通はなかなか自分が死んだなんて思い出せないのに」
杉浦「……そっか。私もう…」
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:04:32.14 ID:LKduMq/AO
イズコ「そろそろ私の話をしてもいい?」
杉浦「……話?そもそもここはいったいなんなんですか?」
イズコ「ここは怨みの門。不慮の事故や殺された魂が来る場所。そして私は門番のイズコ」
杉浦「……」
イズコ「ここに来た魂は三つの選択からどれかを選ぶ事が出来る」
杉浦「選択?」
イズコ「ええ。死を受け入れ天国へ旅立ち再生を待つ。死を受け入れずに魂だけで現世をさ迷う。そしてもう一つ」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:07:58.86 ID:LKduMq/AO
イズコ「人を一人呪い殺す」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:12:28.22 ID:LKduMq/AO
杉浦「…!」
イズコ「ただし人を殺した魂は地獄に落ちて再生のない苦痛を味わう事になるわ」
杉浦「……」
イズコ「ゆっくり考えなさい。時間はまだたくさんあ杉浦「決めました」
イズコ「早いのね。で、どうするの?」
杉浦「見崎鳴を…殺す!」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:15:39.60 ID:LKduMq/AO
イズコ「話を聞いてなかったの?地獄はとても辛い場所よ?それになぜその子なの?」
杉浦「なぜって…私は対策係なんです!早くアイツを殺さないと泉美が…みんなが!」
イズコ「…その子が貴方達の言う死者だと考えているのね」
杉浦「…なんでそれを?」
イズコ「何年かおきに夜見山から多くの魂が一気に来る時期があったの。だから気になって聞いた事があるわ」
杉浦「ふーん…。事情知ってるんだ…。……なら早く!早く殺してよっ!」
イズコ「いいの?死者じゃない子を殺しても?」
杉浦「…………は?」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:20:54.32 ID:LKduMq/AO
イズコ「彼女は違う。ちゃんと生きているただの女の子よ」
杉浦「そんなはずはっ…!だって不完全な復活をしたから記憶と姿が…」
イズコ「不完全な復活?そんなことをさせない為に門番の私がいるの。それに一度死んだ魂が生き返って死者になるんでしょ?見崎鳴の魂はまだ一度もこの門をくぐった事はないわ」
杉浦「そんな…。じゃあ私は……なんのために…私のした事は…」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:24:39.52 ID:LKduMq/AO
イズコ「……貴方はみんなの為によく頑張ったわ。もう天国に行って楽になったら?」
杉浦「…それは出来ない」
イズコ「なぜ?」
杉浦「…今みんなは見崎鳴を殺そうとしているんです…。みんな疑心暗鬼になって…もしかしたらまた誰かが死んだかもしれない…。私のせいなんです…」
イズコ「…責任を感じているのね」
杉浦「私が原因なのよ!?私だけ楽になって言い訳ないじゃない!」
イズコ「…ならどうするの?現世をさ迷う?」
杉浦「それも嫌…今のみんなを見るのも辛いし…。もう分からないよ…。……泉美、私どうしたら…」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:29:15.17 ID:LKduMq/AO
イズコ「……貴方のような魂にはもう一つだけ可能性があるわ」
杉浦「…え?」
イズコ「貴方がイズコになって魂を導いてあげるの」
杉浦「…私が?」
イズコ「ええ。きっと今からも貴方の知り合いが何人か来るわ。その子達がさっきの貴方のように間違った選択を選びそうなら、貴方が正しい選択に導いてあげなさい」
杉浦「……」
イズコ「ただし私情を挟みすぎると貴方の魂は地獄へ落ちるわ。その掟を守れるならやりなさい」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:33:39.94 ID:LKduMq/AO
杉浦「…やります。私がみんなの為になにか出来るなら…」
イズコ「…わかったわ。なら…」
―スッ―
杉浦「なにを…?」
イズコ「私情を挟めないのだから知り合いにばれたくないでしょ?だから私と似たような姿に変えさせてもらったわ」
杉浦「そっか…」
イズコ「それと、見える?あの門の近くにある光。あれは貴方の魂よ」
杉浦「掟を破ればあれが…。人質みたいなものですか」
イズコ「ええ」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:35:56.26 ID:LKduMq/AO
杉浦「……イズコさんはもう行くんですか?」
イズコ「本当はすぐに天国へ行きたいけれど、貴方が知り合いを全て導くまではここにいるわ。もし貴方が掟を破ってイズコを辞める事になったら大変だから」
杉浦「…ありがとうございます」
イズコ「私はなにもしないわよ。全てイズコの貴方がやるの」
杉浦「はい」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:45:37.70 ID:LKduMq/AO
『……え…なにここ?』
イズコ「どうやら次の魂が来たようね。…知り合い?」
杉浦「はい。…でもあの子は私よりも先に…」
イズコ「死んだ時間なんて関係ない。現世で死を受け入れた魂から来るの。ここに来ればまた死んだ事を忘れているのがほとんどだけど」
杉浦「そうですか…」
イズコ「辛いでしょうけど頑張りなさい。…同じ姿の人が二人いても困るだろうから私は隠れているわ」
杉浦「ありがとうございます。…………ようこそ怨みの門へ」
『…うわっ!…えーっと…あなたは誰ですか?それになに?怨みの…え?』
杉浦「私は門番のイズコ」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/26(土) 00:48:47.09 ID:LKduMq/AO
杉浦「綾野彩。あなたは死んで魂だけの存在になったわ」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:29:46.21 ID:FEIaXnhAO
綾野「え…何言ってるんですか?私が?」
杉浦「ええ。あなたは小椋「彩ー!置いてくなー!…え、誰?」
綾野「わかんない」
杉浦(まさか二人一緒なんて。…仲良かったもんね)
杉浦「…二人に説明するわ。まずあなた達は…――」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:34:52.27 ID:FEIaXnhAO
…
……
綾野「…そうだったね。私崖から落ちて…」
小椋「私達…もう死んじゃったんだ」
杉浦「どうする?天国に行くのが一番いいと思うけど?」
小椋「…見崎さんは本当に死者じゃないの?…悪い事しちゃったなぁ」
杉浦「ええ。それにもしそうだとしても殺そうなんて考えない方がいいわ。地獄はとても恐ろしい所だから」
杉浦(二人を地獄になんか行かせるもんか…)
綾野「…天国行こっか。ね?」
小椋「そうだね…それが普通だもんね」
杉浦「それがいいと思うわ」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:36:52.25 ID:FEIaXnhAO
綾野「でもその前に…みんなの顔を見に行きたいなぁ。イズコさんダメ?」
杉浦「…止めた方がいいわ。今現世は大変な事になっているから」
小椋「…さっきから死者の事とかいろいろ詳しいね」
杉浦「……イズコだからよ」
小椋「ふーん」
杉浦(ばれないようにって結構難しいわ…)
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:39:38.52 ID:FEIaXnhAO
小椋「…まぁ私もみんなに会いたいかな。…聞こえないだろうけど見崎さんに謝りたいし」
杉浦「…本当にいいのね?」
綾野小椋「うん!」
杉浦「……分かったわ」
杉浦(止めたのは二人に見せたくないから?……それとも私が見たくないから?)
綾野「イズコさんどうしたの?早く行きたいよ~」
杉浦「…なんでもないわ、ごめんなさい。……じゃあ降りましょうか」
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:41:40.86 ID:FEIaXnhAO
…
……
『僕はね、君が死者だと思うんだ』
…
……
『私が介錯してあげる!』
…
……
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:44:20.98 ID:FEIaXnhAO
~~
綾野「……止められなかったね」
小椋「……仕方ないよ。私達…死んじゃったんだから」
杉浦(分かっていたけど…やっぱり辛いわ。それにあのままだと…)
小椋「……風見ももしかしたら来るのかな?」
杉浦「…彼はもうすぐ死ぬけどここには来ないわ。現世で人を殺した場合も地獄へ落ちるの」
小椋「…そっか」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:45:54.32 ID:FEIaXnhAO
綾野「……ねぇ待って?もしあのまま風見が…。そしたら泉美はどうなっちゃうの!?泉美が殺したことになるの!?」
小椋「!」
杉浦「……ええ、彼女も地獄へ落ちるわ」
綾野「ダメだよそんなの!」
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:49:55.85 ID:FEIaXnhAO
杉浦「これは決まりなの」
綾野「……決めた。イズコさん。私風見を殺す。そしたら泉美は大丈夫だよね?」
杉浦「やめなさい…」
小椋「そうよ!クラスメイトを殺すなんてダメ!」
綾野「あははっ。由美にそう言われるとはね~。…でもそうしたら泉美を守れる。…地獄で風見に会ったらたくさん謝るよ」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:53:31.03 ID:FEIaXnhAO
杉浦「やめなさい」
綾野「ねぇイズコさん?…さっきの泉美を見てイズコさんが一番辛そうな顔してた。…なんでかな?」
杉浦「……気のせいよ。あんなものを見たら誰でもそうなるわ」
綾野「……そっかぁ。まぁそうだよね。…イズコさん早くして?泉美が殺した事になっちゃうよ」
小椋「彩…」
綾野「ごめんね由美。由美はちゃんと天国に行くんだよ?」
小椋「……」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:55:40.55 ID:FEIaXnhAO
杉浦「…後悔しない?」
綾野「するに決まってるよ。クラスメイトを殺すんだよ?でも…そうするしかないから」
杉浦「そうよね。……その選択、承りました」
綾野「もう地獄に行っていいかな?早く行かないとダメな気がするんだ…」
杉浦「…ええ」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:56:58.93 ID:FEIaXnhAO
杉浦「綾野彩…お逝きなさい」
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 00:59:03.86 ID:FEIaXnhAO
…
……
杉浦「今風見智彦は死んだわ。彼女の呪いで」
小椋「……」
杉浦「あなたはどうする?もう天国に行く?」
小椋「……彩ね、ものすごい寂しがりやなんだ」
杉浦「……そう」
小椋「それにね、ものすごい怖がりで…今頃泣いてんじゃないかな…」
杉浦「……そう」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:01:31.81 ID:FEIaXnhAO
小椋「…決めた。イズコさん。私も地獄に行く」
杉浦「あなたまで…やめなさい。それに誰を殺すつもり?」
小椋「死者を。ねぇ、私だけでいいからまた降ろして。今から私が死者を探して殺す」
杉浦「……」
小椋「早くして。これ以上誰かが死ぬ前に…」
杉浦「……その選択、承りました」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:13:25.16 ID:FEIaXnhAO
…
……
小椋「……殺してきたよ」
杉浦「…意外と早く見つかったのね。…誰だったの?」
小椋「副担の先生。しかも殺そうとしてたのがその先生の身内の生徒でね…。間に合って良かった。自分のおばさんを殺すなんて嫌だもんね」
杉浦「……」
小椋「でも榊原君は自分がやったって思うのかな?つるはし振り落とした瞬間だったからさ…」
杉浦「大丈夫。彼は地獄に来ないわ」
小椋「……」
杉浦「どうしたの?」
小椋「後ね……泉美も死んでた。…間に合わなかった。それに私先生を…綺麗でね、優しくてね…憧れてた先生を私…」
杉浦「…あなた達はみんなの為に頑張った。それにあなたは対策係の仕事をしただけ。悪い事なんてしてないわ」
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:19:02.73 ID:FEIaXnhAO
小椋「ありがと……あれ?私自分が対策係だって言ったっけ?」
杉浦「…さっきも言ったでしょ?イズコだからよ」
小椋「…そういう事にしといてあげる。なんとなくあたしの友達にそっくりのイズコさん」
杉浦「……なんの事かしらね」
小椋「ふふっ、さぁ?なんとなく。…ねぇ、早く地獄に送って?彩が待ってる」
杉浦「…ええ」
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:20:21.98 ID:FEIaXnhAO
杉浦「小椋由美…お逝きなさい」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:21:55.93 ID:FEIaXnhAO
~~
綾野「……やっぱり地獄って嫌な所だね。怖いよ…寂しいよ…」
小椋「ふっふ~、予想通り♪」
綾野「由っ…なんで来たの!?それに誰を!?」
小椋「私が死者をやっつけたのだよ!それにあんたをこんな場所に一人で行かせらんないって!」
綾野「……えへへ、ありがとね」
小椋「いいのいいの。…二人で頑張ろうね?」
綾野「うん!」
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:23:24.26 ID:FEIaXnhAO
―ギュッ…―
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 01:33:39.69 ID:FEIaXnhAO
~~
イズコ「お疲れさま。危なかったけどあれくらいなら私情を挟んだ事にはならないわ」
杉浦「…私っ…二人をっ…導けなっ…」
イズコ「天国に行かせる事だけが全てじゃない。魂にとって本当の正解を選ばせる事がイズコの役目よ」
杉浦「でもっ…私こんなんじゃイズコ失格です…感情を抑える事が出来ない…」
イズコ「感情を抑える必要なんてない。だって魂を相手するイズコにとって何より大事なのが優しさなの。人の為に泣ける貴方なら大丈夫よ」
杉浦「うっ…ぐすっ…」
イズコ「……これからも頑張れる?」
杉浦「…はい」
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 22:58:17.65 ID:FEIaXnhAO
…
……
『あれ?僕は…』
杉浦「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 22:59:27.50 ID:FEIaXnhAO
杉浦「王子誠、あなたは死んで魂だけの存在になったわ」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:01:08.02 ID:FEIaXnhAO
杉浦「覚えてない?あなたはクラスの合宿で焼け死んだの」
王子「……そういえばそうだったね。…そうだ!猿田は!?猿田は無事なの!?」
杉浦「彼は無事よ。それにあなた達を苦しめていた災厄も止まったわ」
王子「良かった…猿田、無事だったんだね…」
杉浦「…災厄よりも彼の事が大事なのね」
王子「うん。初めて出来た友達で…僕のヒーローなんだ」
杉浦「…せっかくだから話を聞かせてもらってもいい?」
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:03:47.92 ID:FEIaXnhAO
王子「…僕の名字さ、少し変わってるでしょ。実際家もちょっと変わったとこがあってね…。それが原因なんだろうけどなかなか友達が出来なかったんだ。『あそこの家は変わってるから関わるな』って…。寂しかった」
杉浦「…そう」
王子「でもね、そんな時に猿田が転校して来たんだ。まぁ明るくて面白いヤツだったから僕なんかが関わる人じゃないなって思ってた」
杉浦「……」
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:06:21.94 ID:FEIaXnhAO
王子「転校生だからさ、事情をなにも知らないんだよ。僕が避けられているのに気づいていきなりみんなを怒ってさ…。それで誰かが僕の家の事を猿田に言ったんだけど、『じゃあコイツがなんか悪い事したか!』って。…嬉しかった」
杉浦「いい人ね」
王子「そのおかげでだんだんみんなも家の事を気にせずに僕に話しかけてきてくれるようになったんだ」
杉浦「良かったじゃない」
王子「…それとね、僕好きな人がいたんだけど、その子は猿田に誘われて入った吹奏楽部で知り合ったんだ。…ははっ。なんか僕の思い出にはいつも猿田がいるんだ」
杉浦「……」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:08:33.10 ID:FEIaXnhAO
王子「そういえば…イズコさんだっけ?怨み、って言ってたけど僕は別にそんなのはないよ。なぜここに来たの?」
杉浦「不慮の事故や殺された場合はここに来るの。そしてあなたのような人はだいたい天国に行くわ」
王子「だいたい?」
杉浦「三つの選択肢があるの。天国へ旅立ち再生を待つ。魂だけで現世をさ迷う。人を一人呪い殺す」
王子「その中じゃあ確かに天国に行くのが一番だね」
杉浦「ええ」
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:09:53.97 ID:FEIaXnhAO
王子「イズコさん。天国に行く前に猿田に会いたいけど駄目かな?」
杉浦「あなたの姿は見えないわよ?」
王子「うん。…一目見るだけでいいから」
杉浦「……じゃあ降ろしてあげる」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:11:09.98 ID:FEIaXnhAO
~~
王子(…クラスのみんなの話を聞いたら本当に災厄は止まったんだね。でも猿田と多々良さんはいなかった。まだ部活の時間じゃないのに…)
王子(…音楽室に行ってみようかな)
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:13:06.59 ID:FEIaXnhAO
猿田「王子…王子…なんで死んだぞな…」
多々良「猿田君…いい加減元気出そうよ?いつまでも悲しんでたら王子君だって…ね?」
王子(…いた。この二人と音楽室にいるの懐かしいなぁ)
猿田「じゃあ多々良はもう平気なんか!?好きだったヤツが死んで!?」
多々良「……」
王子(…そうだったんだ。だったら死ぬ前に想いを伝えればよかったな…)
猿田「…すまん、当たってしまったのう…無理矢理音楽室に付き合わせたくせに…」
多々良「いいよ、気にしないで。私だって悲しいもん…。一番の友達だったんだから猿田君は尚更…」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:15:06.53 ID:FEIaXnhAO
猿田「……ワシはホントに王子と友達だったんかのう?」
王子(!…なに…言って…)
多々良「なにそれ?どういう意味?」
猿田「ワシは昔から特撮とかに出てくるヒーローに憧れとっての…。転校してきてすぐに王子を助けた話は知っとるか?」
多々良「うん…王子君凄い嬉しそうに話してくれたよ。僕の為にって…」
猿田「違う…。アイツの為になんてこれっぽっちも考えてなかった。ただ格好つけたいだけだったんだぞな。ヒーローの真似をして気分を味わいたいだけだったんだぞな…」
多々良「……」
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:18:46.36 ID:FEIaXnhAO
王子(…いいんだよ?それでも僕は…)
多々良「別に王子君の事が嫌いって訳じゃ…」
猿田「そんな訳ないじゃろ!ただ…ずっと後ろめたかった…。その後もアイツがいろんな事で『ありがとう』って言ってくれるたびに思い出して…。でもな、反面やっぱり嬉しいんじゃ。最低な事に…」
多々良「ありがとうって言われたら誰だって嬉しいよ?変な事じゃないと思う」
猿田「『ありがとう』って言ってもらう為に厚かましい事もした。…周りからはおとなしい王子をワシが助けてるように見えたかもしれんが、ホントはただワシがアイツからの感謝に依存してただけなんだぞな…」
多々良「……」
猿田「ヒーローを気取りたい最低なヤツなんだぞな…」
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:23:27.51 ID:FEIaXnhAO
王子(……イズコさん、聞こえる?)
杉浦「ええ」
王子(僕…天国に行くのをやめるよ。猿田のそばにいたい)
杉浦「…いいの?現世でいう未成仏霊になるのよ?」
王子(かまいません。…イズコさん知ってるかな?)
杉浦「なにを?」
王子(ヒーローにはたまにどうしようもならないピンチが来るんです)
杉浦「……」
王子(でもね、そのピンチを助けてくれるのは他のヒーローなんかじゃない…)
王子(昔ヒーローに助けてもらっただけのただの一般人なんだ)
杉浦「…その選択、承りました」
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:26:35.66 ID:FEIaXnhAO
杉浦「王子誠…お往きなさい」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:28:12.56 ID:FEIaXnhAO
猿田「……」
多々良「猿田君…」
~♪~
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:32:45.06 ID:FEIaXnhAO
多々良「え…王子君の楽器の音…?」
~♪~♪~~
猿田「この音楽は…!王子!そこにおるんか!?」
多々良「え!?なんなの?」
猿田「……ワシが一番好きだったヒーロー番組の主題歌…。アイツに無理矢理見せた…。『猿田にぴったりの歌だね』って…なぜか練習しとった…。こんな子どもみたいな曲演奏するがらじゃあないんにのう…」
多々良「…良かったね。王子君のヒーローさん」
猿田「ありがとう王子…」
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/01/27(日) 23:34:51.87 ID:FEIaXnhAO
王子(ありがとう猿田…僕のヒーロー。ヒーローのピンチには助けてあげたいから…もう少しそばにいさせてもらうよ)
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:36:09.33 ID:U2euUmDAO
…
……
『…ここどこだ?薄気味わりぃな…』
杉浦「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:37:13.85 ID:U2euUmDAO
杉浦「川堀健蔵、あなたは死んで魂だけの存在になったわ」
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:38:34.37 ID:U2euUmDAO
川堀「…は?いきなり出てきてなにを言ってんスか?」
杉浦「覚えてない?いいわ。あなたが死んだ瞬間を見せてあげる」
…
……
川堀「…うっわ~。思い出した。…自分の死んだ瞬間見せられるのってだいぶキツイなぁ」
杉浦「そうね」
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:41:04.38 ID:U2euUmDAO
川堀「で、結局ここなんなの?天国よりは地獄っぽいけど、俺そこまで悪い事した覚えは…」
杉浦「ここには不慮の事故で死んだ魂や殺された魂が来るの。そして三つの選択から一つを選ぶことが出来る」
川堀「三つ?」
杉浦「天国へ行き再生を待つ、霊になって現世をさ迷う、人を一人呪い殺して地獄へ落ちる」
川堀「なっ…!」
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:43:00.38 ID:U2euUmDAO
杉浦「あなたはどうする?」
川堀「…どうするって、殺したいヤツでもいるかって意味で聞いてんスか?」
杉浦「…そういう意味にもなるかもしれな川堀「ふざけんな!あんた俺のこと知らないからそんなこと言えんだよ!」
杉浦「……」
川堀「俺達はなぁ、みんな理不尽なものに理不尽な理由で殺されてんだよ!もうこれ以上誰かが死ぬのなんか見たくねぇんだよ!ましてや俺が殺すなんてありえねぇだろ!」
杉浦「……」
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:44:38.88 ID:U2euUmDAO
川堀「……あ。いきなりごめん、イズコさん。つい…」
杉浦「…こっちこそごめんなさい。でも門番をやる以上聞かないといけないの」
川堀「冷静に考えりゃそりゃそうだよな。ははっ、死んでからもすぐカッなるとこは直んねぇもんだな…」
杉浦「なにがあったの?」
川堀「…俺、いろいろあってクラスメイトを殺そうとしてたんだよ。だからバチが当たったんだろうな」
杉浦「……ごめんなさい」
川堀「ん?なんか言った?」
杉浦「…いえ」
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:46:09.42 ID:U2euUmDAO
川堀「さてと…ここでうだうだしてもあれだし、天国に行くか。あ、その前にクラスのみんなに会いたいんだけどさ…」
杉浦「ええ。なら降ろしてあげる」
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:47:41.03 ID:U2euUmDAO
…
……
川堀(どうやら現象は止まったみたいだけど…どうしたんだよお前ら?)
『……』
『……』
『……』
川堀(確かに死んだヤツのことを思ったら辛いだろうけどさ…お前達は生き残ったんだろ!?暗くなんなよ!笑っててくれよ!俺たちの分までさ!)
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:51:43.04 ID:U2euUmDAO
『……今日も辻井君テレビに出てたね。…笑ってた』
『そうだね…』
川堀(辻井がテレビに?ますます意味が…)
沙苗(あたしが教えてあげようか?)
81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:53:26.21 ID:U2euUmDAO
川堀(水野の姉さん!?)
沙苗(おっひさー!)
川堀(相変わらず明るいッスね…。ていうかなんでここに?)
沙苗(イズコさんに会った?あたしね、猛が心配だから傍にいさせてもらうように頼んだんだ)
川堀(…そういえば最近あいつ本を読みだしたけどもしかして…)
沙苗(あははっ!あたしのこと見えないはずなのにね~)
川堀(…ところで教えてくれるって…)
沙苗(…あたしんち行こっか)
82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:55:26.01 ID:U2euUmDAO
…
……
川堀(水野から聞いてたけど凄い量の本ッスね)
沙苗(でもあの子もうこれ全部読み終わったんだよ?…それでね、この本読んでみて)
川堀(え…本?俺あんまり本読んだこと…は!?作者辻井ゆ…は!?)
沙苗(辻井君が書いたんだよこれ。出版社に持ち込んでそこから一気に売れてね。今や有名な若手小説家だよ。最近はテレビにもよく出てるしね)
川堀(そういうことか…。どんな話なんスか?)
沙苗(…読んだら分かるよ)
83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:57:00.62 ID:U2euUmDAO
…
……
川堀(……)
沙苗(…感想は?)
川堀(これ…うちのクラスの現象が元ネタッスよね?)
沙苗(…うん。良くできてるでしょ?)
川堀(確かに…でもなんだろ)
沙苗(…なんか違和感がある?)
川堀(上手く言えないけど…なんかモヤモヤが)
84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 22:59:18.23 ID:U2euUmDAO
沙苗(あたしが当ててあげようか?…この本からは辻井君の悲しさが感じられない。むしろ楽しそうに書いてた気がする)
川堀(あ…それだ)
沙苗(なんかこの本さ、死んだみんなの為に書いた小説じゃなくて、小説の為にみんなの死を材料にしてる気がするんだ)
川堀(…これクラスのみんなは読んだんスか?)
沙苗(うん。…そしてみんな同じ様に思ってたよ。猛なんか読み終わってものすごい怒ってた)
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:04:31.93 ID:U2euUmDAO
川堀(辻井は俺らのこと…)
沙苗(全然悲しんでない訳じゃないと思う。…でもそれ以上に彼にはチャンスに見えたんだろうね。自分の才能を知ってもらう為の)
川堀(……)
沙苗(ホラー小説としては凄い良くできてる。…でもやっぱりいい気持ちはしないよね)
川堀(あいつみんなの死をこんな形で…)
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:06:40.08 ID:U2euUmDAO
沙苗(…今度はあたしが聞いてもいいかな?)
川堀(…なんスか?)
沙苗(辻井君は全部の死を自分の目で直接見た訳じゃないよね?)
川堀(どういう意味…)
沙苗(嫌な話になるけどいい?あたし一人で抱えるのはちょっと辛いから。…見ちゃったんだ)
川堀(……)
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:09:13.41 ID:U2euUmDAO
…
……
杉浦「どうだった?」
川堀「イズコさん。水野沙苗って人知ってるよな?」
杉浦「…ええ」
杉浦(イズコとしてではないけど…忘れる訳ないわ)
川堀「その人から聞いたんだけどさ…うちのクラスの辻井ってやつな、俺達のこと小説にしててさ」
杉浦「……」
川堀「なんかその小説…死んだヤツらを侮辱したような話だったんだ」
杉浦「…そう」
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:14:03.96 ID:U2euUmDAO
川堀「それにアイツ、自分が直接見てない死に方もすげぇ上手な表現で書いてたんだ。心臓発作で死んだヤツのこととか、刃物で刺されたらどんな風になるかとか。…見た事あるんじゃないかってぐらいに」
杉浦「……」
川堀「水野の姉さん見たんだよ!辻井が…野良犬とかをいろんな風に[ピーーー]とこ!アイツ小説の為にそんなことまでしてんだよ!」
杉浦「…死の辛さを知っているはずなのに」
川堀「そうなんだよ!俺達はさ、あんな目に会ったからこそ命の大事さが分かってなきゃいけないんだよ!なのに!」
杉浦「……」
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:15:25.58 ID:U2euUmDAO
川堀「それにアイツ、自分が直接見てない死に方もすげぇ上手な表現で書いてたんだ。心臓発作で死んだヤツのこととか、刃物で刺されたらどんな風になるかとか。…見た事あるんじゃないかってぐらいに」
杉浦「……」
川堀「水野の姉さん見たんだよ!辻井が…野良犬とかをいろんな風に殺すとこ!アイツ小説の為にそんなことまでしてんだよ!」
杉浦「…死の辛さを知っているはずなのに」
川堀「そうなんだよ!俺達はさ、あんな目に会ったからこそ命の大事さが分かってなきゃいけないんだよ!なのに!」
杉浦「……」
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:18:23.78 ID:U2euUmDAO
川堀「…アイツさ、その内人も…」
杉浦「…否定は出来ないわ」
川堀「…俺決めたよ」
杉浦「さっき自分で言ったじゃない。命は大事だって」
川堀「さすがに許せねぇよ!…でもせめて、少しだけ辻井と話せるようにしてくれないか?少しでもアイツの間違いを直せれたら…」
杉浦「…その選択、承りました」
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:19:56.81 ID:U2euUmDAO
…
……
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:23:51.88 ID:U2euUmDAO
川堀(辻井…俺が見えるか?)
辻井「…なんて事だ!まさか幽霊がホントにいるなんて!ありがとう川堀!君のおかげでまたアイデアが浮かびそうだよ!」
川堀(てめえ…。なぁ、お前あの小説どんな気持ちで書いた?)
辻井「うわぁ嬉しいなぁ!まさか幽霊に読んでもらえるなんて!どんな気持ち?悲しいに決まってるじゃないか♪」
川堀(みんなの死に方を現実よりも酷くしてるのにか?)
辻井「君達の死に方は品がなかったからね。僕が文字の力で美しくしてあげたんだよ?」
川堀(…そりゃ野良犬あんなに殺したら見てなくても死ぬ瞬間とか怪我の仕方とか上手に書けるよな?)
辻井「芸術に犠牲はつきものだろ?」
川堀(…もういい、分かった。お前はもう元に戻れないんだな)
辻井「何がだい?」
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:25:32.12 ID:U2euUmDAO
川堀(ごめんな辻井…さよならだ)
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:27:07.35 ID:U2euUmDAO
―先日、超若手小説家としてデビューしたばかりの辻井雪人さんが自宅で遺体となって発見されました。目立った外傷はないため死因は心臓麻痺と見られ……―
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:29:55.42 ID:U2euUmDAO
川堀「……またカッとなっちまったな」
杉浦「……」
川堀「なぁイズコさん。辻井が死んだことをみんなは喜ぶのかな?」
杉浦「それはあり得ないわ。あなた達は誰よりも死を身近に体験したのよ。どれだけ辛いことかは知っているはずよ」
川堀「それを聞いて安心したよ。もしみんなが辻井が死んで喜ぶようなヤツらだったらそれこそやりきれねぇ…」
杉浦「…そうね」
川堀「…そろそろ行くよ」
杉浦「…ええ」
96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/15(金) 23:30:43.03 ID:U2euUmDAO
杉浦「川堀健蔵…お逝きなさい」
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 18:59:46.34 ID:iJTcPL5AO
…
……
『ここどこ?恐いよ…』
『大丈夫。なんかあったらあたしが守ってあげるから』
杉浦「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:00:44.07 ID:iJTcPL5AO
杉浦「金木杏子、松井亜紀、あなた達は死んで魂だけの存在になったわ」
113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:02:16.80 ID:iJTcPL5AO
松井「私達…死んだ?やだよ…」
金木「おいあんた!いきなり何言ってんだよ!亜紀が怖がってんじゃねぇか!」
杉浦「そう言われてもこれは事実よ。あなた達はクラスメイトの風見智彦に刺されて死んだ」
松井「嫌…思い出した…風見君…怖くて…いやあぁー!」
金木「亜紀!大丈夫だよ、あたしがついてる。…よしよし」
松井「……ありがと、杏子ちゃん…」
114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:03:45.18 ID:iJTcPL5AO
杉浦「仲が良いのね」
金木「まあね。で、なんなのここ?」
杉浦「ここは事故や殺された魂がくる所。そして次の三つの選択から一つを選ぶの。天国へ旅立ち再生を待つ。魂だけで現世をさ迷う。現世の人間を一人呪い殺す」
金木「…へぇ」
杉浦「ただし人を呪い殺したら再生のない地獄へ落とされるわ」
115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:05:17.90 ID:iJTcPL5AO
松井「…杏子ちゃん。一緒に天ご金木「てことはさ、風見に仕返し出来るんだよね?」
松井「ダメだよ!地獄に行くんだよ!?」
杉浦「そうよ。地獄はそんな甘い所じゃない。それに風見智彦はすでに死んで、あなた達を殺した罪でもう地獄に落とされたわ」
金木「へっ…ざまあみろ。亜紀を殺したんだからな」
松井「……」
116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:07:13.01 ID:iJTcPL5AO
杉浦「どうする?天国に行くのがいいと思うけど」
金木「…風見の幼なじみでさ、勅使河原ってやつがいるんだけど、そいつは生きてる?」
杉浦「ええ」
松井「…杏子ちゃん?」
117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:08:09.43 ID:iJTcPL5AO
杉浦「彼に罪はないんじゃないの?」
金木「何言ってんのさ。幼なじみなんだろ?親友なんだろ?だったら風見の罪は勅使河原の罪じゃん。あたしだったら亜紀の為ならなんだって出来るよ?」
杉浦「…その理屈は少しずれてるんじゃない?」
金木「…それにさ、元々あいつが風見が狂った原因なんでしょ?それで十分じゃん」
松井「杏子ちゃん…やめようよ」
金木「亜紀は気にせずに天国に行きな?あたしは亜紀の為にしたいんだからさ」
松井「違う…違うよ。私はそんなこと…」
118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:09:26.21 ID:iJTcPL5AO
金木「亜紀はホントに優しいね…そこがとてもいいとこ。でもね、少しは厳しくならないと生まれ変わっても『また』失敗するよ?」
松井「……」
金木「…イズコさん。そういうことだからあたしだけあいつのとこ連れてって」
杉浦「…その選択、承りました」
119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:11:57.66 ID:iJTcPL5AO
…
……
松井「杏子ちゃん…」
杉浦「…さっきの『また』ってなんのことなの?」
松井「…私ね、小さい時から自分の意思を出すのが怖くてね、無理な頼まれ事とかも断れなかったんだ」
杉浦「それを彼女が?」
松井「うん。どうしても無理なことを頼まれて断ったら…みんなから『なんで駄目なの!?いつもしてくれるじゃん!』って責められて。…杏子ちゃん違うクラスだったんだけど、たまたまそれを見て守ってくれたの」
杉浦「そう」
120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:15:01.01 ID:iJTcPL5AO
松井「それからは杏子ちゃんのクラスによく行くようになって、いつも一緒にいて…昔はそれが楽しいってだけだったんだけど…。なんか最近それだけじゃなくて…」
杉浦「好きなのね」
松井「やっぱり変だよね?女の子同士だもん」
杉浦「愛はとても素敵なもの。他の人と形が違っても恥ずかしがることはないわ」
松井「…ありがとう」
121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:16:54.84 ID:iJTcPL5AO
杉浦「彼女の選択もあなたを愛するあまりのもの。ただ少し愛の表現を履き違えてるわ」
松井「私あんな杏子ちゃん見たくない…。いくら私の為だからって、このままじゃ嫌いになっちゃう…」
杉浦「彼女を止めたい?」
松井「…うん」
杉浦「わかったわ。頑張りなさい」
松井「え?」
123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:20:01.98 ID:iJTcPL5AO
…
……
金木(勅使河原のやつなんで学校来てないんだよ。病気か?バカのくせに。…あいつんちどこだっけ?)
124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:22:08.32 ID:iJTcPL5AO
…
……
金木(…いた。なに学校サボってひこもってんだよ。あたし達は行きたくてももう行けないんだぞ?)
勅使河原「…………金木…か?」
金木(へぇ。あたしのこと見えるんだ)
勅使河原「…うっすらとな。なんだよ?」
金木(私はあんたを勅使河原「あぁそうか。お前ら風見に…。だから代わりに幼なじみの俺を殺しに来たのか?…いいよ、殺せよ。…もう殺してくれよ!」
金木(なっ…!)
125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:24:27.01 ID:iJTcPL5AO
勅使河原「そりゃそうだよな!俺のせいで風見が狂ってお前らに迷惑かけた!それ以外にもきっと俺がなんかしたせいでみんなに迷惑かけたんだ!申し訳なさすぎて生きるのが辛いんだよ!」
金木(何言ってんだよあんた…)
勅使河原「それにな、幼なじみの風見も大好きだった赤沢ももういねぇんだ!もう俺には生きる意味がないんだよ!」
金木(違う…こんなあんたを殺しても報われない。命乞いして死にたくないって泣き叫ぶあんたじゃないと意味が…)
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:26:13.55 ID:iJTcPL5AO
松井(…もうやめよ?)
金木(亜紀?なんで来たの?)
松井(杏子ちゃん。もし勅使河原君を殺したら、それこそ風見君と一緒だよ?)
金木(でも…)
松井(私ね、杏子ちゃんが大好き。でも私の好きな杏子ちゃんはこんなひどいことする人じゃない。…今の杏子ちゃん、大嫌い)
金木(…あたしは亜紀の為にしてるのに…間違ってるって言いたいの?)
松井(うん)
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:29:06.40 ID:iJTcPL5AO
金木(……)
松井(……)
金木(…………ちゃんと自分の言いたいこと言えるようになったね)
松井(うん。…良かった。今の杏子ちゃんは私の大好きな杏子ちゃんだよ)
金木(…ありがと。私ちょっと舞い上がってたね)
松井(怖かったけど…私をそんなに思ってもらえるのはやっぱり嬉しいかな?…勅使河原君?私も見える?)
勅使河原「…あぁ」
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:32:00.32 ID:iJTcPL5AO
松井(さっき生きる意味がないって言ったのは本気?)
勅使河原「…まあな」
松井(そう。……ふざけるなっ!!!!!!)
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:34:07.60 ID:iJTcPL5AO
勅使河原「!?」
金木(亜紀!?)
松井(私達はねっ!もう生きたくても生きれないんだよっ!?こんな私達を目の前で見て来たのに死にたいって言うのっ!?私達の気持ち考えてよっ!ふざけないでよっ!)
勅使河原「……」
松井(お願いだから生きてよ…一生懸命生きてよ…。ぐすっ…私達の分まで…)
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:37:48.93 ID:iJTcPL5AO
勅使河原「……そうだよな。俺お前らの気持ちなんも考えてなかった…ごめん。許してはもらえないだろうけど風見のこともホントにごめん」
金木(うん。風見のことは多分許せない。でもあんたは悪くないよ。もう気にすんな)
松井(勅使河原君ムードメーカーなんだから、そんな暗くなったらダメだよ?みんなに早く明るいとこ見せてあげてよ)
勅使河原「そうだな…。ちょっと遅れたけど学校行くか。昼休みには間に合いそうだし」
金木(ちゃんと授業も受けろよ!)
勅使河原「おう!…お前らの分もな!」
松井(…うん!)
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:40:06.81 ID:iJTcPL5AO
…
……
『…ようみんな!しばらくだな!』
『勅使河原…久しぶりだね』
『勅使河原君、もう大丈夫なの?』
『あったりまえよーっ!俺はムードメーカーなんだからな!』
『自分で言うのそれ…?』
『それにな、いつまでもくよくよしてちゃみんなに悪いだろ!?』
『…そうだね』
『だからなお前ら!ちゃんと一日一日一生懸命生きるんだぞ!分かったか!?』
『分かったから静かにしてよ…はぁ』
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:42:16.60 ID:iJTcPL5AO
…
……
金木「イズコさんさ、こうなること分かってたんじゃないの?」
杉浦「どうかしらね」
金木「愛想悪いなー。まぁいいや」
松井「…行こっか。イズコさんありがとう」
杉浦「どういたしまして」
『あの~…少し待ってもらえますか?』
133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:45:19.72 ID:iJTcPL5AO
杉浦「?」
松井「だれ?よく見えない…」
金木「あれ……ゆかり?」
桜木「はい。みなさんお久しぶりです。…あれ?イズコさんなんか前と…」
杉浦「…あなたを導いたのはおそらく私の前のイズコよ」
桜木「そうですか…」
杉浦(どういうこと…?ゆかりは確かもう門をくぐってるのよね?何故またここに戻れるの?)
桜木「あ…私がここに来たのは…というか来れたのは…えっと、どういえば…」
134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:48:14.08 ID:iJTcPL5AO
イズコ「私が説明するわ」
金木「うわぁ!」
松井「イズコさんが二人!?」
桜木「あ、イズコさんお久しぶりです」
イズコ「えぇ久しぶりね。…ごめんなさい、まだこの子はイズコになって間もないから知らないこともあるの」
桜木「…お願いします。自分じゃ上手く説明できなくて…」
135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:51:00.85 ID:iJTcPL5AO
イズコ「彼女は貴方達より前にここに来て、天国へ旅立った。でもね、彼女は少しだけ貴方達と違うの」
松井「違う?」
イズコ「分かりやすく言うと彼女は霊媒体質なの。そういう人は、死に関わるものに他の人よりも多く干渉出来るの」
杉浦「門をくぐった後にここに来れるのも?」
イズコ「ええ」
136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:55:57.32 ID:iJTcPL5AO
イズコ「そしてもう一つ。徳を積んで人を業『カルマ』から救うことも出来る」
金木「徳…業?なにそれ?」
松井「なんとなくだけど…良いことと悪いことみたいな意味?」
イズコ「その考え方で大丈夫よ。簡単に言ったら、彼女の魂が良いことを積み上げれば地獄に落ちた人を救えるのよ」
桜木「すいません説明してもらって…。それで今あっちから二人に会いに来た理由なんですけど、それは…」
137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 19:58:17.67 ID:iJTcPL5AO
金木「…はぁ。いいよ。風見を助けてやりな」
桜木「いいんですか!?」
金木「確かに風見はまだ憎いけど、だからって私達にゆかりを止める権利は無いよ」
松井「ゆかりちゃん…もし駄目だって言ったらどうしたの?」
桜木「…いいって言ってもらえるまで説得するつもりでした」
松井「駄目なんて言わないよ。ところでゆかりちゃん…」
桜木「…残念ですが他にも何人か地獄に…。だからその全員も救います」
金木「人の事言えないけどさ…そいつら何やってんだよ」
138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:01:02.18 ID:iJTcPL5AO
桜木「それに、夜見山岬さんも救います。そうすればこれからは現象も止まるはずですから」
松井「そんなことも出来るんだ。ゆかりちゃんすごいね…」
桜木「岬さんは業がたくさんあるから大変なんですけど…でも頑張ります」
金木「頑張りなよ。あたし達は応援しか出来ないけどさ」
桜木「ありがとうございます。では私は…」
松井「うん。みんなのことお願いね?」
桜木「はい!」
139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:02:43.62 ID:iJTcPL5AO
金木「…さてと。私達どうしようか?」
松井「多分私、同じこと考えてる」
金木「…きっと長くなるよ?」
松井「その分杏子ちゃんと一緒にいれるもん」
金木「ふふっ。…イズコさ…あ、また一人になった」
杉浦「あっちのイズコはあくまで私の補佐だから。それで決まった?」
140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:04:53.73 ID:iJTcPL5AO
金木「うん。私達現世でゆかりの頑張った結果を見届けたい」
杉浦「いいの?いつ成仏出来るか分からないわよ?」
松井「ゆかりちゃんにしてもらうよ。さすがにただの幽霊の私達じゃゆかりちゃんの負担を増やさないよね?」
杉浦「ええ。あなた達のような綺麗な魂は誰にも迷惑をかけない。安心して」
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:05:52.56 ID:iJTcPL5AO
杉浦「金木杏子、松井亜紀…お往きなさい」
142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:07:09.44 ID:iJTcPL5AO
…
……
『…………』
『救いに来ましたよ』
『君は…』
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:08:22.30 ID:iJTcPL5AO
…
……
………
…………
……………
…………
………
……
…
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:09:33.95 ID:iJTcPL5AO
…
……
『風見君だよね?』
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:12:27.31 ID:iJTcPL5AO
『え?僕そんな名前じゃ…。あれ?でもなんか懐かしい気が…』
『今は違っても昔はそうだったんだよ?』
『おい!お前こんなキレーな年上のお姉さんと知り合いだったのかよ!?』
『君は勅使河原君だね?』
『は?俺そんな名前じゃ…あれ?違う…よな?なんか覚えがあるっていうか…』
『いきなり変なこと言ってごめんね?…ところで二人は仲良し?』
『当たり前じゃん!なぁ!』
『うるさいな…』
『ふふっ、良かった』
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:16:35.61 ID:iJTcPL5AO
『えっと…お姉さん誰ですか?それに話かけてきた理由は…』
『私はね…今は違うけど昔は桜木ゆかりっていう名前だったの』
『…お姉さんの名前も懐かしい気がする』
『ありがとう。…ねぇ勅使河原君』
『だから俺そんな名前じゃない…はずなんだけどなぁー。まぁいいや、なに?』
『私風見君とお話がしたいの。…いいかな?風見君も今からちょっと付き合ってもらえる?』
『僕は大丈夫ですけど…』
『うん、こいつ貸すよ。でもこいつス だしお姉さんみたいな人タイプだから気をつけた方がいいよ』
『変なこというなっ!』
『ふふっ。…じゃあ行こうか?』
147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:20:11.10 ID:iJTcPL5AO
…
……
『ここは…なんだろ、僕凄く嫌な気分になる…』
『ずっと昔ね、まだこの建物が使われてた頃…とても悲しい事件が起きたの』
『……!…あ……あ…僕は昔ここで…クラスメイトを…うわあぁっ!…ごめんなさい…ごめんなさい…』
『…ごめんね、辛いこと思い出させちゃって。でも最後は自分で罪に気づかないと本当の意味で救われないの』
『僕はなんてことを…』
『大丈夫。風見君はちゃんとあっちで償ったし、相手ももう怒ってないよ?』
『…本当に?』
『うん』
148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:21:50.45 ID:iJTcPL5AO
(…ですよね?)
(まあね。結構時間経ったからもうどうでもよくなるよ。…あ~あ、化けて出て驚かすつもりだったのになぁー)
(もう杏子ちゃん…。ゆかりちゃん、みんな救えたんだね)
(はい。二人もそろそろ…)
(そうだね。ゆかりお願い)
(…はい)
149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:24:37.62 ID:iJTcPL5AO
…
……
『ごめんね風見君、じゃなくてえっと…』
『風見でいいですよ。僕もお姉さんのこと桜木さんって呼びますから』
『うん。…それでいきなりこんな胡散臭い話に巻き込んじゃって…』
『いえ、お姉さんは嘘をついてる感じはしないし…遅くなったけど過去の過ちに気づけたから』
『そっか…。それじゃあまたね…風見君。もう会うことはないだろうけど…』
150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/02/17(日) 20:26:49.61 ID:iJTcPL5AO
『あ!えっと…』
『なにかな?』
『…僕はまた桜木さんに会いたいです。……駄目ですか?』
『風見君…。良かった。ホントはね、そう言ってもらえたらいいなぁって…期待してた』
158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:28:34.83 ID:m7w53M7AO
…
……
『……』
杉浦「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
『……』
159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:30:35.46 ID:m7w53M7AO
杉浦三神「「三神怜子、あなたは死んで魂だけの存在になったわ」」
杉浦「…え?」
160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:33:37.67 ID:m7w53M7AO
三神「なにを驚いてるの?私ここ二回目よ?前は通り魔にね」
杉浦「…そうね」
三神「前のイズコさんとは違う人みたいね。なんだか子どもっぽい感じ」
杉浦「バカにしないでもらえる?…確かにイズコになってまだ間もないけど」
三神「ふふっ、ごめんなさい。教師だったからついね」
161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:35:33.11 ID:m7w53M7AO
杉浦「…その様子だと現世の記憶は残っているようね」
三神「えぇ。…ねぇ、私は恒一君に殺されたんじゃなくて…」
杉浦「あなたの生徒の小椋由美によって呪い殺されたわ」
三神「やっぱり。実はね、最後にぼんやり見えたの。…『ごめんなさい』って泣いてる小椋さんが」
杉浦「彼女を怨んでる?」
三神「まさか。災厄からみんなを守る為よ。ありがとうって言いたいくらいよ。おかげで恒一君も地獄に行くことはないし」
杉浦「そうね」
162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:39:11.12 ID:m7w53M7AO
三神「…でもそれ以上に小椋さんに申し訳なさでいっぱいなの。だって私のせいで…」
杉浦「…えぇ。彼女は地獄に落ちたわ。でもあなたのせいじゃない。彼女が決めたこと」
三神「そんなの屁理屈よ。私はあの子の…みんなの先生なのよ?何があっても子ども達を守らないといけないの。…イズコさんお願い、私を地獄に送って」
杉浦「誰かを呪い殺さない限り地獄へ導くことは出来ないわ」
三神「…お願い。小椋さんがあまりにも不憫じゃない。彼女はみんなの為にしたのよ…。せめて地獄の苦しみからあの子を守ってあげたいの」
杉浦「残念だけど掟なの」
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:41:33.98 ID:m7w53M7AO
三神「…ねぇ、こうは考えられない?私が死者として生き返ったことでこの惨事が起きたんだから、直接じゃないにしても私がみんなを苦しめた原因なの。だから私には地獄に行く権利がある」
杉浦「そこまでして地獄に行きたいの?」
三神「言ったでしょ?私は先生なのよ。生徒を助けてあげないといけないのよ。……それに…」
杉浦「なに?」
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:44:26.80 ID:m7w53M7AO
三神「……もう生き返りたくないの。前私がここに来た時は天国に行ったんだけど…まさか死者として再生するなんて思ってなかったわ」
杉浦「……」
三神「あの時私が再生を望まなかったらみんなは私のせいでこんなに苦しむことはなかったはず。…そう考えるともう再生する気なんておきないの。…生きるのが恐いの」
杉浦「あなたが再生を望んでなかったとしても他の誰かが変わりに死者として再生するだけよ」
三神「…でも生徒を苦しめるなんて、先生として最低のことよ。私は地獄に行くべきなの」
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:47:25.15 ID:m7w53M7AO
杉浦「…あなたにいいことを教えてあげる」
三神「…なに?」
杉浦「現象はもう止まっているわ。あなたの生徒の桜木ゆかりが夜見山岬を業から救ったおかげで。同時に小椋由美や他の地獄に落ちた子たちも全員救われた。何人かはもう再生もしているわ」
三神「…!」
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:52:37.36 ID:m7w53M7AO
杉浦「現象がなくなったのだから、あなたはもう生に怯えなくていいの。…どうする?これでもまだ地獄へ行きたい?」
三神「…………私生き返ってもいいのかな?」
杉浦「みんなあなたの幸せを願っているはずよ。あなたは慕われていたんだから」
三神「…そう思ってもらえてたら嬉しいわね。……ねぇ、みんなは今何歳くらいになってるの?」
杉浦「それぞれの道を歩いて、何人かは家庭をもつ者がいるくらいの歳よ」
三神「そう…。もう大人になったのね。見届けたかったなぁ…」
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:54:56.71 ID:m7w53M7AO
杉浦「みんなと話したい?」
三神「もちろんよ」
杉浦「なら、一日だけみんなの夢の中に入れてあげる。」
三神「いいの!?…でも私死者だからみんな覚えてないんじゃ…」
杉浦「あなたを本当に慕ってた子なら思い出してくれるかもね」
三神「ちょっと、ハードル上げないでよもう…。じゃあお願いするわ」
杉浦「えぇ。…今度こそはいい人生を送れるといいわね」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 15:56:15.62 ID:m7w53M7AO
杉浦「三神怜子…お生きなさい」
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 16:01:45.85 ID:m7w53M7AO
…
……
三神『恒一君…』
榊原『…怜子さん?あれ?』
三神『久しぶり。…大きくなったね』
榊原『はい…。あ……ごめんなさい怜子さん。僕怜子さんを…』
三神『…実はね、私は恒一君に殺される直前に死んでたの。ちょっと説明しづらいけど…とにかく恒一君は私を殺してないからもう気にしないでいいのよ』
榊原『……本当ですか』
三神『えぇ。…どう?夢は叶った?』
榊原『はい。まだ新人扱いですけどね』
三神『芸術の世界なんてそういうものよ。でもあきらめちゃ駄目だからね?…ごめんね、もっと話したいけどみんなのとこにも行かないといけないから。…元気でいてね』
170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 16:05:20.37 ID:m7w53M7AO
…
……
『…恒一君、起きて。朝ご飯出来たよ』
『……ん…おはよう』
『どんな夢見てたの?…泣いてたよ?』
『え?…あ、そっか…』
『?』
『…怜子さんと話す夢を見たんだ』
『……一緒だね』
『え?』
『私も夢で先生と話したよ。いない者にしてごめんなさいって謝られた』
『……』
『…私、先生と話せて嬉しかったよ?』
『…僕もだよ。そういえば今日は…』
『うん。後でお墓参り行こ?』
『そうだね…』
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 16:09:22.03 ID:m7w53M7AO
―ピンポーン―
『…誰だろ?』
―ガチャ―
『あ、朝早くごめんね?』
『よぉサカキ!あと見さ…おっとこっちももうサカキだったな!』
『いきなりどうしたの?』
『なに言ってんだよ?今日は先生の命日だろ?墓参り行こうぜ。他のみんなはもう先に着いてるぜ』
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/03(日) 16:14:28.62 ID:m7w53M7AO
『……え!?怜子さんのこと覚えてるの!?』
『覚えてるっつーか、今日夢に先生が出て思い出したんだよ。ほかのヤツらも同じらしくてさ。…それにしてもあんなにいい先生のこと忘れてたなんてな~。なぁ望月?』
『まったくだよ。なんで忘れてたんだろ?……あれ、榊原君泣いてる?』
『…ありがとうみんな』
『なんでお前がお礼言うんだよ?変なの』
『…そうだね』
『…良かったね、恒一君』
『うん…』
『あーあ、見せつけてくれちゃって。…ほら、早く準備しろよ』
『…うん!』
178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:33:14.26 ID:WwWfxdrAO
…
……
杉浦「イズコさん。もしかしたら私…」
イズコ「私情をはさみ過ぎて掟を破らないよう気をつけなさい」
杉浦「…はい」
179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:35:00.46 ID:WwWfxdrAO
…
……
『ここ…どこなの?』
杉浦「……ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
『……あれ?』
杉浦「赤沢泉美、あなたは死んで魂だけの存在に…――
赤沢「多佳子…よね?」
杉浦「……」
180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:37:52.78 ID:WwWfxdrAO
杉浦「……それは誰のこと?私はそんな名前じゃないわよ」
赤沢「姿が変わっても分かるわよ。親友なんだから。…ねぇ、多佳子でしょ?」
杉浦「…いいえ」
赤沢「どうして嘘をつくの?私は多佳子にまた会えて嬉しいのに…」
杉浦「…やめて」
赤沢「多佳子…」
杉浦「…………やめてよ…私だって…」
赤沢「?」
杉浦「私だって…泉美に会えて嬉しいに決まってるじゃない…。泉美に会えたのに掟なんて守れないわよ…」
赤沢「…どういうこと?」
181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:40:16.07 ID:WwWfxdrAO
…
……
赤沢「…私なんてことを…!多佳子ごめん!」
杉浦「別にいいわよ。私だって今回は我慢出来ないって思ってたから」
赤沢「でも私のせいで…」
杉浦「いいって言ってるでしょ?それに泉美と会えたのに、私情をはさむな、なんてやっぱり嫌だから」
赤沢「…ありがと。…それにしても死んだ後もこんなオカルトくさいものと関わるなんて思わなかった。…それに先生が死者だったなんて」
182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:43:10.10 ID:WwWfxdrAO
杉浦「…私達見崎さんにひどいことしちゃったね」
赤沢「もう謝ることも出来ないし…。見崎さんも大事な人を亡くしてたのなら、言ってくれれば良かったのに…」
杉浦「言ったところで、てのもあるし…大事な人がいない世界なんてどうでもよくなったんじゃない?」
赤沢「でも知ってさえすれば…少なくとも私は見崎さんを…」
杉浦「…似てるもんね」
赤沢「…えぇ。私だって災厄で…。気持ちは誰よりも分かるわよ。…ふふっ、本当なら仲良くなれたのかしらね?」
183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:44:47.90 ID:WwWfxdrAO
杉浦「…その変わり恋のライバルになっちゃうけどね」
赤沢「なっ…!なに言ってんのよ!?」
杉浦「バレバレだから、榊原君のこと」
赤沢「…嘘?」
杉浦「ホント」
赤沢「…恥ずかしい」
184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:46:43.46 ID:WwWfxdrAO
杉浦「私は勅使河原の方がお似合いだと思うけど?」
赤沢「なんでアイツが出てくるのよ?あり得ないでしょ」
杉浦「そうかな?」
赤沢「そうよ。バカは嫌。……ところで今の多佳子、綺麗な髪ね。長くて黒くて」
杉浦「いきなりなに?…ばれたらやりにくいだろうって姿を変えられたのよ」
赤沢「…中尾に見せてあげられたら良かったのにね?」
杉浦「なんで中尾が出てくるのよ!?」
185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:49:29.21 ID:WwWfxdrAO
赤沢「さっきの仕返しー。だって中尾髪の綺麗な人がタイプらしいじゃん」
杉浦「なんの関係があるのよ!」
赤沢「あれ~?その話を聞いて恵に髪の毛の手入れの仕方聞いてたじゃない?なぜか彩も一緒に」
杉浦「…癖っ毛が気になってただけよ」
赤沢「ふ~ん」
杉浦「はいもうこの話は終わり!」
赤沢「ふふっ…はいはい」
186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:50:55.72 ID:WwWfxdrAO
赤沢「…そういえば、私はいつまでに決めればいいの?」
杉浦「期限は12日よ。ただし天国以外に行かせるつもりはないわよ?」
赤沢「私情はさみまくってんじゃない…。大丈夫よ、多佳子に言われなくてもそうするつもり」
杉浦「…そう」
赤沢「えぇ。だからね、今からギリギリまで一緒にいよ?…後、出来れば元の姿に戻って欲しいかな」
杉浦「…うん」
―スッ―
187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:55:31.30 ID:WwWfxdrAO
…
……
赤沢「…ところでなんで勅使河原が…」
杉浦「なんか夫婦漫才みたいだから」
赤沢「え?私お笑いキャラ?」
杉浦「……ある意味」
赤沢「アイツと一緒なんて…最悪」
杉浦「…実際どう思ってるの?」
赤沢「だからどうも思ってないって!…まぁいいヤツだとは思うけど…」
杉浦「なら勅使河原にしとけば良かったのに。…あの二人結婚してるし」
赤沢「……」
杉浦「あ…」
赤沢「…絶対恒一君の近くに生まれ変わって奪ってやる!」
杉浦「今すぐ生まれ変わっても親子くらいの差があるけど…」
赤沢「大丈夫よ!見崎さんがいけるってことは恒一君はちっちゃい女の子が好きってことじゃない!むしろチャンスよ!」
杉浦「…好きな人がそんな変 でいいの?」
188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 22:58:21.67 ID:WwWfxdrAO
…
……
赤沢「あーあ、またイノヤ行きたかったなー」
杉浦「あの変な名前のコーヒー?未だにあれの美味しさが分からないんだけど。ココアの方が甘くて美味しいじゃん」
赤沢「変な名前って言わない!まったく…多佳子は見かけによらず甘党の子ども舌なんだから」
杉浦「見かけによらずってどういう意味よ?」
赤沢「そのまんまの意味よ。…覚えてる?前ファミレスに行った時タバコ吸うか聞かれたこと」
杉浦「いい加減忘れなさいよ!…なによ、私そんなに老けてる!?中学生って言って信じてもらえたことないのよ!?酷くない!?」
赤沢「由美みたいに小学生に間違われるよりはましだと思うけどな~」
189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:00:26.30 ID:WwWfxdrAO
…
……
赤沢「ねぇ、久しぶりに一緒に寝てみない?」
杉浦「死んだんだから睡眠は必要ないのに…。ていうかくっつきすぎじゃない?」
赤沢「いいじゃん小さい頃みたいで」
杉浦「…はいはい」
赤沢「でもどっちかって言ったら多佳子が私にくっついてたけどね」
杉浦「ホントどうでも良いことばっか覚えてるのね…」
赤沢「『いずみぢゃ~ん!ぐらいとオバケ出るよ~!恐いがらぐっづごうよ~!うぇ~ん!』」
杉浦「そこまでは言ってない!!」
赤沢「そんな多佳子ちゃん、今や立派なオバケに…」
杉浦「あんたも似たようなものでしょうが!」
190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:04:56.34 ID:WwWfxdrAO
…
……
赤沢「…もう12日経ったのね。多佳子と一緒だとあっという間」
杉浦「…そうね」
赤沢「もっと一緒にいたいけど…そろそろ行かないとね。再生しないといけないし」
杉浦「本気で榊原君を奪うつもりじゃないでしょうね?」
赤沢「あれは冗談だって。…でも、恒一君には会えたら嬉しいし、見崎さんにも会いたいかな…。まぁこの記憶はないんでしょうけど」
杉浦「…そうね」
191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:06:26.40 ID:WwWfxdrAO
赤沢「…多佳子はどうするの?」
杉浦「私はまだイズコをやるつもりよ。やってもいいならの話だけど」
赤沢「そう…」
杉浦「悲しい顔しないでよ…」
赤沢「…ふふっ、そうね。…私達もまたいつか会おうね」
杉浦「…うん」
192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:07:10.32 ID:WwWfxdrAO
杉浦「赤沢泉美…お生きなさい」
193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:08:50.29 ID:WwWfxdrAO
…
……
『もぉ!おうちでボールあそびしたらあぶないでしょ!』
『おねぇちゃんにさからうきかーっ!このー!』
194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:14:04.14 ID:WwWfxdrAO
『はぁ…来年から小学生なのに』
『ふふっ』
『それにしてもまさか双子なんてね…未だに信じられないや』
『うん。…ねぇ、やっぱり私達不謹慎だったかな?』
『まだ言ってるの?…大丈夫、みんな分かってくれたし、いい名前だって言ってたでしょ?』
『…そうだね』
『僕もびっくりしたけど…でも違和感はなかったし嫌な気持ちにもならなかったよ?』
『なぜかね…生まれてきたこの子達を見たら思い浮かんだの。これ以上似合うのはないってくらいに』
『…うん。ぴったりだと思うよ』
195: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:15:25.24 ID:WwWfxdrAO
『パパー!おねぇちゃんがまたゆうこときかないー!』
『ママー!いもうとのくせにまたわたしにもんくゆうー!』
『…もう』
196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:18:33.63 ID:WwWfxdrAO
『未咲、泉美、ご飯だからケンカはおしまい。今日は二人の誕生日だからママがケーキ焼いてくれたよ?』
『『わーいっ♪』』
197: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:21:42.22 ID:WwWfxdrAO
…
……
杉浦「…私はまだイズコをやってもいいんですか?」
イズコ「えぇ。掟を破ったことにはならないらしいわね。彼女は自分で選択したんだし」
杉浦「…結構曖昧な基準ですね」
イズコ「あなたの救いがまだ死んだ魂に必要とされてるからでしょうね。…辞めたいなら別にいいけど?」
杉浦「いえ、やります。ところで…もう全員ですか?」
イズコ「えぇ。私が導いた人もいるし、貴方の知り合いはもう来ないわ」
杉浦「…そうですか」
イズコ「どうしたの?」
杉浦「…いえ」
イズコ「…なら私は行くわね。頑張りなさい」
杉浦「…ありがとうございます」
198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:24:05.11 ID:WwWfxdrAO
…
……
………
…………
『…イズコよ』
杉浦「なんですか、門主様?」
『長い間イズコを続けたな』
杉浦「そうですね」
『お前ほどイズコを続けたやつはいないが…そろそろ選択の時期ではないか?』
杉浦「……」
『……』
『次の魂が来た』
杉浦「はい」
『……ここは?』
杉浦「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:25:20.24 ID:WwWfxdrAO
杉浦「榊原鳴、あなたは死んで魂だけの存在になったわ」
200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:27:39.75 ID:WwWfxdrAO
見崎「…私が?」
杉浦「あなたは家族旅行の途中交通事故にあって死んだの」
見崎「…そう…あ!家族は…恒一君や子ども達は無事なの!?」
杉浦「子ども達は一命をとりとめたわ。…でも残念だけど榊原恒一はその内ここに来ることになるわね」
見崎「…そんな…」
杉浦「辛いでしょうね。…けど命なんて儚いもの。あなたはそれを誰よりも知っているから今まで一生懸命生きてこれたはずよ?」
201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:29:24.52 ID:WwWfxdrAO
見崎「…私のことを知ってるんですか?」
杉浦「…えぇ」
見崎「そうですか…。ところでここはいったい…?」
杉浦「ここは不慮の事故や殺された魂が来るところ。そしてここで三つの選択から一つを選ぶの」
見崎「選択?」
杉浦「天国へ行き再生を待つ、霊になって現世をさ迷う、人を一人呪い殺して地獄へ落ちる」
202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:31:58.85 ID:WwWfxdrAO
見崎「…天国。私なんかが天国に行ってもいいんですか?」
杉浦「なぜ?」
見崎「……ずっと昔、私のせいで多くのクラスメイトが亡くなったんです」
杉浦「あれはあなたのせいじゃないわ」
見崎「…現象のことも知ってるんですね」
杉浦「えぇ。…あなたより先に来た人も誰一人としてあなたを怨んでいなかったわ」
見崎「…でも私は災厄をもっと早く止めることが出来たんです。それなのに…」
203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:34:22.14 ID:WwWfxdrAO
杉浦「人を殺すなんて出来ない方が当たり前よ。あなたは悪くないわ」
見崎「そうだったとしても私はずっと…。私はどれを選べばいいんですか?」
杉浦「それは自分で考えることよ。天国に行きたくないのならね」
見崎「……他に選択はないんですか?」
204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:37:36.34 ID:WwWfxdrAO
杉浦「……仕方ないわね。なら…イズコをやってみる?」
見崎「え?」
杉浦「あなたが救われるには自分の罪の意識を取り払うしかないわ。ならばイズコとなって迷える魂を導いてあげなさい。少しはあなたも救われるはずよ」
見崎「……やります。こんな私が、誰かのためになにか出来るのなら」
杉浦「分かったわ。なら…」
―スッ―
杉浦「あの光が見える?あれはあなたの魂。もしあなたが魂の選択に対して私情をはさみ過ぎたら、あれは地獄に落とされるから気をつけなさい」
見崎「…分かりました。」
205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:38:57.88 ID:WwWfxdrAO
杉浦「それと…私は訳があって本来の姿じゃないの。あなたがイズコになる以上私は元の姿に戻るけど…びっくりしないでね?」
見崎「?」
―スッ―
杉浦「……」
見崎「……杉浦…さん?」
206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:40:30.78 ID:WwWfxdrAO
杉浦「…今更だけど、ごめんね見崎さん…酷いことして…。泉美やみんなも謝ってたよ…」
見崎「ううん。私がみんなに隠し事したから…私こそごめん」
杉浦「…まさか謝まられるとはね。さっきも言ったでしょ?見崎さんは悪くないよ?」
見崎「……ありがとう。…杉浦さんはもう行くの?」
杉浦「うん。大変だけど頑張るんだよ?」
見崎「なんか子ども扱いされた気がする…一応私の方が長生きしたんだからね?」
杉浦「ふふっ。…じゃあお願い」
見崎「うん…」
207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:42:31.41 ID:WwWfxdrAO
見崎「杉浦多佳子…お生きなさい」
208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:43:31.19 ID:WwWfxdrAO
…
……
杉浦「長かったなぁ…」
中尾「ホントにな。まさかイズコになるなんて…。どんだけ待たせるんだよ」
杉浦「中尾!?あんたなんで!?」
209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:45:32.31 ID:WwWfxdrAO
中尾「天国に行くって決めたけどさ、俺が死んだ後のお前を見たらなんか心配になってな。入り口で待ってたんだよ」
杉浦「…そういうのは泉美にしてあげればいいのに」
中尾「確かに俺は赤沢さんが好きだけどさ、それ以上にお前は大事な友達だからな」
杉浦「…友達、か。ふふっ、もうそれでもいっかな」
中尾「ん?なんか言った?」
杉浦「な~にも言ってませんよ~だ」
中尾「子どもみたいな真似すんなよ…」
杉浦「ふふっ。…ねぇ中尾」
中尾「ん?」
210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:47:04.18 ID:WwWfxdrAO
杉浦「……今度も一緒だと嬉しいなぁ…。ダメ?」
中尾「…おう。任せろ」
211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:48:31.24 ID:WwWfxdrAO
…
……
見崎「……」
『あれ…ここは?』
見崎(……来たんだね)
『…誰かいるんですか?暗くてよく…』
見崎「ようこそ怨みの門へ。私は門番のイズコ」
212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/09(土) 23:49:59.74 ID:WwWfxdrAO
見崎「榊原恒一、あなたは…――
……end
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