1: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:16:29.09 ID:5yj6i2oZ0
暁「(深海棲艦との戦いが終わって、十年)」

暁「(私たちの生活もすっかり落ち着いてきた)」

暁「(皆、成長して、それぞれの道を生きている)」

暁「(私もあの頃、思い描いていた一人前のレディに近づけたかな?)」

暁「(それは分からないけど、でも今、幸せだってことは確かなこと)」

暁「(そんな私の日常も、最近、ほんの少し変化した)」

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引用元: 暁「やさしさに包まれたなら」【艦これ】 

 

2: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:18:40.26 ID:5yj6i2oZ0
提督「暁」

暁『どうしたの? 司令』

暁「何、あなた」

提督「いや、呼んだだけ」

暁『もう』プクー

暁「(それは、あの頃の私が見えるようになったこと)」

3: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:22:49.43 ID:5yj6i2oZ0
暁「結婚式、楽しみね」

提督「ああ、皆、元気かな?」

暁「(響はロシアに留学した。雷と電は保育士をして、一緒に暮らしてるみたい)」

暁「(皆、日常に溶け込むのに苦労している)」

暁「(深海棲艦を倒した後、私たちは特別な力をなくした)」

4: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:27:37.79 ID:5yj6i2oZ0
暁「(そのことが私たちを不幸にしたし、幸せにした)」

暁「(もし、あのまま力を持ち続けていたらと思うと、ぞっとする)」

暁「(だけど、皆で一緒にいられなくなる理由にもなってしまった)」

暁「(あんな大所帯の組織を継続させるには、莫大なお金が必要だった)」

5: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:30:17.13 ID:5yj6i2oZ0
暁「(運送業でもやろうかって司令は言っていたんだけど……)」

暁「(不可能になってしまった)」

暁「(それでも救いだったのは退役する時、いくらかお金をもらえたことだった)」

暁「(仲の良いメンバーで集まって、会社を作った人たちもいた)」

6: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:39:39.69 ID:5yj6i2oZ0
暁「(この時期に結婚式を挙げるのも、理由があって)」

暁「(皆で集まりたいというのもそうだけど)」

暁「(落ち着いてきたからこそ、嬉しい話題を届けたかった)」

暁「(提督は馴染めない娘たちの面倒を見たりしていて)」

暁「(ゆっくりする時間もなかった)」

暁「(そういう諸々に、こうして区切りを付けるって、提督はそう言ってくれた)」

7: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:48:24.70 ID:5yj6i2oZ0
提督「皆、来てくれるかな?」

暁『勿論よ』

暁「まだ連絡の取れない人もいるものね。……心配?」

提督「そりゃあ、心配だよ。悪い奴らに騙されてないかな、とか」

暁『もう、司令は心配性なんだから』

暁「平気よ。青葉さんが調べるって言ってくれたんだから」

8: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 01:53:10.27 ID:5yj6i2oZ0
提督「そうかなあ?」

暁「心配ばかりしていても仕方ないわ」

暁「夕飯の買い物にでも行きましょう」

提督「今日の晩御飯は何の予定だ?」

暁「カレーライスにしようと思って」

暁『暁は辛口でも大丈夫なんだから』

9: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:01:28.08 ID:5yj6i2oZ0
次の日の朝

暁「(目を覚ますと、布団の中でうずくまっている私がいた)」

暁「(心地良さそうな表情で、時々寝言を言う)」

暁『暁は……一人前……レディ』

暁「(微笑ましくなって、つい時間も忘れて、眺めてしまう)」

暁「(目覚まし時計が鳴って、はっとする)」

暁「(カーテンを開けて、木の葉から漏れた朝日を浴びて、そうしてやっと私は目を覚ます)」

10: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:05:28.93 ID:5yj6i2oZ0
暁『』ボンヤリ

暁『一人前のレディは……』フワー

暁『寝坊なんか……しないのよ』コックリコックリ

ガチャ

提督「おーい、暁。起きてるか?」

暁「うん、今、朝ごはん用意するわね」

11: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:10:05.67 ID:5yj6i2oZ0
暁「(それを言われたのは、着替えてる途中だった)」

提督「あれ、何か太った? お腹回り、ぷよってない?」

暁『何よ、司令はデリカリーがないのね』

暁「デリカシーがないわ」

提督「あ、ごめん。いや、おれはどんな暁でも好きだよ」


12: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:13:15.43 ID:5yj6i2oZ0
暁『//////』

暁『し、仕方ないから許してあげるわ』

暁「そんなお世辞じゃ、許さないわ」

提督「ごめんって」

暁「フフフ、いいわよ。許してあげる」

13: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:15:10.33 ID:5yj6i2oZ0
暁「」クンクン

暁「変な匂いしない?」

提督「」クンクン

提督「するか?」

暁「何か火にかけてたりする?」

提督「あっ! 昨日のカレー、暖めてたんだ」

14: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:18:44.60 ID:5yj6i2oZ0
提督「ふー、焦げる所だった」

提督「よく気付いたな」

暁「うん、何だかね」

提督「暁もカレー食べるだろう?」

暁「じゃあ、お願い」

15: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:23:56.23 ID:5yj6i2oZ0
――――――――――――

暁「(最近は、昔のことをよく夢に見る)」

暁「(あの頃はどうしてか、何でも願いが叶うような気がしてた)」

暁『司令、レディな昼食になら付き合ってもいいわ』

暁『今度は旗が立ってないやつよ』

暁「(とてもあの頃が輝いて感じる時、何だか泣きそうになってしまう)」

16: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:30:16.97 ID:5yj6i2oZ0
暁「(今に不満があるわけではないけれど、それでも――)」

暁『司令に聞いたわ。天龍って本当はすごく強いんでしょ?』

暁「(あの頃は何にでも憧れて、何にでも強がってばかりいた)」

暁「(その感覚を懐かしく思ってしまう)」

暁「(そんな風に物を考えられなくなった自分を、つい責めてしまう)」

17: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:36:17.70 ID:5yj6i2oZ0
暁「(大人になった私に、もう奇跡が訪れてくれないんじゃないかって)」

暁「(不安になって、あの頃とは違うということを一層、深く実感する)」

暁『暁は一人前のレディなんだから』

暁「(きっと、私はやさしさに包まれていたんだと思う)」

暁「(だから、あんなにキラキラしてるんだ)」

18: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:40:59.46 ID:5yj6i2oZ0
――――――――――――――――――――――――――

提督「ただいま。今日は弁当買って来たよ」

暁「あ、ありがとう」

暁「」ウッ

バタバタ ガチャ 

提督「暁、どうしたんだ?」

提督「」ハッ

提督「おい、平気か? どこか体調悪いのか? 悪いもの食べたとか」

暁「そのから揚げ弁当、どこかへやって」

19: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:46:34.90 ID:5yj6i2oZ0
提督「お、おう」

暁「(ひどい臭い)」

暁「」ウッ

提督「病院に行ったほうが良いんじゃないか?」

暁『暁は大丈夫なんだから』

20: ◆PvInoPQKfhWB 2015/04/12(日) 02:51:32.92 ID:5yj6i2oZ0
―――――――――――――――――――――――

暁「(病院へ行った結果、結婚式でのサプライズが一つ増えた)」

暁「(提督は驚いて、それからすごく喜んでくれていた)」

暁「(これは私の予想だけど、小さな私との付き合いはあと八ヶ月ほど続きそうだ)」

終わり