1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:16:10.24 ID:y57AAgno0

初雪「」モグモグ

提督「ね?」

初雪「……」ゴクン

初雪「まだ、良いよ……」

提督「そうか」



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引用元: 提督「そろそろ大掃除の時期だね」 

 

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:18:15.50 ID:y57AAgno0

提督「初雪ちゃん。ちょっと笑ってみて」ニカッ

初雪「ええ……やだぁ……」

提督「大掃除、せにゃならんね?」ジロ

初雪「……」

初雪「食事中は、私語……厳禁だし」

初雪「ご飯が美味しくなくなっちゃう、し……」

提督「……」

提督「あっ」

初雪「……何?」

提督「初雪ちゃん、君の飲み物だいぶ微温くなってそうだなぁ!」

提督「俺のお冷まだ口付けてないから、氷分けてやるよ」カラン

初雪「え、ちょ。微温くなんてなってないし。ちょっと待」

ガラ カラカラ チャポンッ トポンッ

初雪「」

提督「遠慮するなって」ニタァ……

初雪「遠慮なんてしてないから……! 余計だし……!」

提督「ほらほら、遠慮せずに飲みなさい。氷解けたら味が薄くなっちゃうぞ?」

提督「あ、もしかして……初雪ちゃんは野菜ジュースが飲めないのかなぁ?」ニタニタ

提督「君の大好きなホットミルクに取り替えてきてあげよっか?」ニチャァ……


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:20:14.15 ID:y57AAgno0

初雪「」ムッカァァァ……

初雪「飲めるし! 全然……好きだし! 余裕だから、見てて……!」フンスッ

初雪「」カラン……カプッ コクコクコク

初雪「……っ!」ピッキィーン

提督「どうしたのかな?」

初雪「……な、なんでもないし。ちゃんと飲んだし」

提督「飲んでる途中で、顔をしかめたよねぇ……? 痛そうに……」

初雪「……」

提督「もしかして」



提督「 歯 が 染 み る の か な ? 」



初雪「……」


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:21:57.56 ID:y57AAgno0

初雪「……ネチネチうざい」イライラ

提督「ネチネチと音が鳴るのは、君の口の中じゃないかな~?」

初雪「ただの、知覚過敏だし……音が鳴るのは乾燥してるからだし……」

提督「口の中を見せt」

初雪「もう……分かったよ……!」イライラ

初雪「行くよ。歯医者……来週」

提督「ダウトッ!!」

提督「来週じゃなくて明日! 可能ならば今日行きなさい!」

提督「『来週行くから……』と、何十回聞いたことか」

初雪「だ、だって……もう歯医者閉まってると思うし……」

提督「閉まってるわけないだろ! 今俺らが食ってるの朝食だからな!」

初雪「でも……」

提督「でもじゃない! 今から予約してやるからな」ピッポッパップッポッパップップ...トゥルルルルルン

初雪「ま、待って! これからちゃんと歯磨くから……!」

提督「手遅れだ! 歯石や虫歯を歯ブラシで取り除けるものかよ!」トゥルルル...ガチャ

提督「あ、もしもし。シラツユ歯科さんですか?」

提督「今日の午前か午後に、診療の予約をとりたいんですけどー」

提督「……あ、そうですか。なるほど。はい。はい……」

提督「では、来週の予定を確認してから再度伺います」

提督「……はい。失礼致しましたー」

提督「……」ガチャン

提督「予約一杯で、来週しか空いてないって」

初雪「フフンッ!」フンスッ

提督「こんな事で勝ち誇るんじゃあないよ!」


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:24:09.13 ID:y57AAgno0

提督「そもそも初雪ちゃんよ」

提督「冷たいモノが食べられないというのはツラくないかね」

初雪「……あったかい料理の方が好きだし」

提督「間宮アイス」ボソッ

初雪「……」

提督「不思議に思っていたんだ」

提督「以前なら間宮アイスを食べればキラッキラになっていた君が」

提督「どうしてか、数日前からキラッキラにならなくなった……」

提督「間宮も心配していたぞ。『何か不手際でもあったのかしら……』ってな」

初雪「うっ……」

提督「試しに、伊良湖の最中アイスを差し出してみたこともあった」

提督「すると、なんと君は外側のモナカだけを食べて」

提督「中身のアイスを、北上に食べてもらっていたではないか……!」

提督「彼女は『えー。食べ残しを人に渡すって……うぜぇ……』と文句を垂れつつ」

提督「『しょうがない。勿体無いから食べてやんよ』と言って食べてくれたから良いものの……」

提督「もし食べてくれなかったらどうするつもりだったんだ」

提督「間宮のように、伊良湖も『口に合わなかったのかしら……』と心配するかもしれないぞ」

初雪「その時は……」

初雪「その隣に居た、大井さんに……」

提督「そういう発想が問題なんだよォッ!」バァンッ


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:26:59.53 ID:y57AAgno0

初雪「だ、大丈夫だし……大井さん、何故か私には結構優しい、し……」

提督「そこじゃなーい! 根本的に治療すれば、そんなことする必要ないだろって事だ!」

提督「ていうか、虫歯があるんだから食べ残しを食べて貰ったら不味いだろ!」

提督「彼女らに伝染ったらどうすんだ!」

提督「まぁ、皆は歯をちゃんと磨いているから、そういう心配は薄いけどな」

提督「君と違って、な」ジロ

初雪「う、うひー……歯磨き粉って侘び寂びよねぇ……」

提督「北上のモノマネで誤魔化すなァッ!」

初雪「チッ……歯磨きの習慣が付かない環境が悪いのよ……」

提督「大井のモノマネでも駄目ッ!!」


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:28:50.90 ID:y57AAgno0

――翌週


初雪「」ガタガタガタガタガタガタ

提督「初雪ちゃァン。院内ではお静かに」

初雪「最後に……最期に……美味しいカレーを食べたい……」

提督「食べればいいじゃない。その痛ましい歯で」

初雪「でも、あと数分で終わり……初雪に、金曜日は永遠に来なくなるんだ……」

提督「あー、はいはい。始まるんですよ。快適で黄金になりうる食生活が」

初雪「北上さん……大井さん……あと忘れられがちだけど木曾さん……」

初雪「貴女達は駆逐艦の憧れでした……さようなら」ポロポロ......

提督「木曾が忘れられがちなもんかよ……うちの艦隊じゃ上から4番目の練度なのに」

提督「……初雪ちゃァン」

初雪「その呼び方ムカつくし……やめて」イラッ

提督「北上って、『駆逐艦うざい』って言ってるじゃん?」

初雪「……言ってるけど。それが何」

提督「それなのに、よく面倒見てくれるじゃん?」

提督「そういう面があるからこそ、彼女を慕う駆逐艦が多いわけで」

提督「君も、彼女とは比較的良好な関係を保てているわけだ」

初雪「……まぁ、うん」

提督「でもさ」

提督「もしも、『うざい』じゃなくて『くさい』や『汚い』だったらどうだろうか」

初雪「……!?」


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:31:21.35 ID:y57AAgno0

提督「『うざい』だなんて曖昧な表現の言葉は、使う人によれば口癖レベルの可愛いもんだが」

提督「『くさい』だとか『汚い』だとか、具体性が色濃く根拠がある言葉の場合は」

提督「一人が言えば、周囲の人間も同じように考えている可能性が非常に高い……」

提督「それに物理的な問題だから、人格の相性とは関係なく問題が生じやすくなる」

提督「しかし、初雪を艦娘として働く……つまり、一人の社会人として認めているが故に」

提督「横並びの人間なら、思いはすれども口には出せないかもしれない」

初雪「ぅ、ぅぅ……」

提督「今の話を踏まえた上で過去を振り返り、その時に会った相手の心の声を想像してみろ……」

初雪「……」

―――
――

※以下、初雪の妄想

夕立(初雪ちゃん、口臭い。引きこもり過ぎて口の中にカビが生えてるっぽい)

時雨(梅雨は嫌いじゃないけど、口の中までジメジメした人は嫌いだなぁ……)

睦月(にゃにゃ~!? 口の中で黄色い糸が引いてるにゃしぃ! 睦月ドン引き~!!)

木曾(虫歯か……歯の痛みで、戦闘に必要な集中力を欠いたらどうするんだ。ナシだな)

大井(……前歯に歯垢がビッシリね。何かの拍子で北上さんに虫歯が伝染ったら承知しないわ)

北上(駆逐艦、くさい……いや、駆逐艦じゃないな……)

北上(初雪、くさい)

※以上、初雪の妄想

――
―――

初雪「ぁ、ぁゎゎゎ……」ガクガクガク

提督「そんな可能性に怯え続ける人生など、楽しいものか……!」


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:32:43.06 ID:y57AAgno0

初雪「ど、どうすれば……」

提督「分かっている筈だ」

初雪「……治療受ける」

提督「それから?」

初雪「毎日、歯を磨く……」

提督「おー、よしよし。偉いぞォ~! 初雪ちゃァン」

初雪(呼び方、ムカつく……)

提督「それに、安心しなさい」

提督「最近は技術が進んでてな、麻酔注射を挿す時も全然痛くない」

初雪「嘘だぁ……」

提督「本当さ。表面麻酔と言ってな、麻酔注射を行う為の麻酔があるんだ」

初雪「……じゃあ、安心」


シラツユ歯科医「初雪さーん! 1番の診療台へどうぞー!」


初雪「は、はい!」

初雪「……頑張る。うん」フンスッ

提督「おう、その意気だ! 頑張れよ!」


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:34:49.86 ID:y57AAgno0

――40分後


初雪「嘘つき……!」

初雪「表面麻酔なんて使ってくれなかった……!」

提督「だって、あれ保険対象外だもん」

初雪「……!?」

提督「自分で申し込まなきゃ、滅多に使ってくれないぞ」

初雪「」



――更に30分後


初雪「」ズキズキ

初雪「麻酔切れた……」ズキズキ

初雪「痛み止めも効かないし……」ズキズキ

初雪「もうやだぁ……」ズキズキ

初雪「痛い……帰りたい……」ズキズキ

提督「まぁでも良かったじゃないか。一回の受診で終わったんだから」

提督「普通なら1ヶ月ぐらいかかるもんだ」

初雪(逆に言えば普通じゃないってことじゃん……)

初雪(あそこ、診療台の番号が全部1番だったし……)

初雪(明らかに普通じゃなかった……)


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/21(木) 15:37:48.23 ID:y57AAgno0

――1ヶ月後


提督(あれから、初雪は)

提督(俄然、意気込んで歯を磨いていた)

提督(何度か歯磨きをサボりかける事もあったが)

提督(親しい艦娘の激励や協力を得ながらも)

提督(なんとか歯磨きの習慣を身につけることができたようだ)

提督(アイスも食べられるようになったみたいだし)

提督(何より、表情が柔らかくなった。歯を見せることに自信が生まれたのだろう)

提督(身体と心の健康面は勿論のこと、艦娘としての士気も安定することだろう)

提督(そういったモノが積み重なって、個人的な自信にも繋がることがあるし)

提督(ああいうデリケートな部分のケアも必要だよなぁ)

提督(初雪とは、比較的親しい間柄だからあそこまで踏み込めたのであって)

提督(信頼関係の具合を見誤れば、セクハラになりかねないから気をつけよう)

提督(それはそうと、今考えるべきは自分のことだが……)



シラツユ歯科医「こんにちは! 今日はどういったご用件でしょうか」

提督「あ、はい。今日はちょっと……」

提督「ヤニ取りの方を、ね……」



提督(……面と向かって)

提督(『提督さん、歯が黄ばんでるっぽい……?』なんて指摘されたら)

提督(流石に、凹むよなぁ……)

提督(俺、タバコやめられるかなぁ……)

提督(……頑張ろう。うん)





END