1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:02:09.43 ID:x0a6t6Dv0
絵里「今日は天気悪いわね。夕方なのに、真夜中みたい」

部室に絵里と二人きり。滅多にないこの状況。

絵里「ね、ねぇ海未」

すぐ隣に座る彼女の、いつもより頼りない声が私の心を揺さぶります。

絵里「作詞の手伝いなんだけど、また今度に……」

そういうわけにもいきません。この機会を逃すわけには。

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引用元: 海未「絵里のハートを」 

 

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:03:21.02 ID:x0a6t6Dv0
絵里「ほら、外、暗いし」

ピッカン、と彼女の言葉を遮るかのように曇天が光りました。

絵里「ひゃっ!」

大丈夫ですよ、絵里。遠くで雷が鳴っただけです。

ガタッガタガタッ

絵里「う、海未! 窓が揺れて……」

大丈夫。風がちょっと強く吹いただけです。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:04:14.82 ID:x0a6t6Dv0
絵里「うぅっ……」

それよりも、キリッとした眉が下がっていますよ。ふふっ。

絵里「もうっ、なに笑ってるのよ!」

すみません、つい……。それにしても、ずいぶんと厚い雨雲ですね。

絵里「ほんとにね。今にも落ちてきそうだわ」

そう言って、窓の外を眺める絵里の横顔。ふふっ、やっぱり不安そう。

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:05:19.67 ID:x0a6t6Dv0
絵里「さっきからなにを笑っ……」

絵里がこちらに目を転じるとともに、今度はずいぶんと近くで雷が鳴りました。

絵里「いやぁ!」

フッ、と部室の明かりが消えました。まさかとは思いますが。

絵里「え……な、なに? ねぇ海未、なにがあったの?」

扉の向こう、廊下の先で先生の大きな声が聞こえます。

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:06:19.34 ID:x0a6t6Dv0
絵里「まさかとは思うけど……」

停電。それだけは聞き取れました。

絵里「だから言ったじゃない、また今度にって!」

怒っているのに震えている声。生徒会長の威厳は、そこにはありません。

絵里「ねぇ、海未……」

閉めきった部室。外から差し込む光も少ない今、闇よりも暗いのではないかと錯覚してしまいます。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:07:16.46 ID:x0a6t6Dv0
絵里「ねぇってば!」

袖口をぎゅっと掴まれ、絵里がいるはずのほうに顔を向けると。

絵里「……」

バチリ、と音をたてるかのように、うっすらと目に涙を浮かべた絵里と視線がぶつかりました。

絵里「電気がつくまで、このままでいいかしら……」

うなずきもせず、その瞳をじっと見つめたまま、彼女の方へと身体を寄せます。

絵里「……海未?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:08:01.38 ID:x0a6t6Dv0
普段ならしないであろう私の行動。彼女はなにを思っているのでしょう。

絵里「ちょっと、どうしたのよ……」

昼とも夜とも言えないこの時間。この時が訪れるのを待っていました。

絵里「なにか言ってよ、海未……」

白か黒か……はっきりさせましょう。

絵里「どうしたのよ、ねぇ」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:09:08.97 ID:x0a6t6Dv0
彼女の肩を抱き寄せ、髪を結っているおかげであらわになっている耳元へと、唇を添えます。

絵里「ちょっと、くすぐったいわ……」

狼狽えるような声。当然、その表情はわかりません。

絵里「海未?」

ねぇ……ドキドキ、しますか?

絵里「!」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:10:04.02 ID:x0a6t6Dv0
私と絵里しかいないこの部室で。

絵里「い、いきなり、どうしたの?」

それでも、絵里にしか聞こえないよう、他の誰にも聞かれないよう、囁きます。

絵里「今日のあなた、少しおかしいわ……」

おかしくなんてありません。これが、本当の私です。

絵里「……」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:10:43.32 ID:x0a6t6Dv0
私の言動に驚いたのか、あるいは、やはり暗闇が怖いのか、その肩は少し震えています。

絵里「あなたがこんなことをするなんて」

怖く、ありませんよ。

絵里「っ……」

耳元で囁けば、返ってくるのは声にならない声。

絵里「海未、いい加減にしないと……」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:11:39.63 ID:x0a6t6Dv0
耳元から顔を離し、なお抗おうと開くその唇に、そっと、 人差し指を添えると。

絵里「あっ……」

素直ですね、絵里は。そういうところも、素敵です。

絵里「……」

ねぇ、絵里。

絵里「……なによ」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:12:24.76 ID:x0a6t6Dv0
少し怒らせてしまったようです。キッ、と睨むその目は……あぁ、その表情も、また素敵です。

絵里「……」

おっと、そんなこと思っている場合ではありません。せっかくの機会を棒に振ってはいけませんから。

絵里「なにか言ったらどうなのよ」

……ねぇ、絵里。

絵里「……」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:13:03.57 ID:x0a6t6Dv0
あなたの心、鷲掴みにしますね。

絵里「急にどうし……っ」

無意識に、あるいは意識的に、私の左手は、彼女の太ももへとのびていました。

絵里「う、海未?」

右手は彼女の頬に触れて。

絵里「んっ……」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:14:04.39 ID:x0a6t6Dv0
いいんですか。

絵里「……」

目を瞑る彼女は、声にしなかったその問いに応えるように、小さくうなずきました。

絵里「……」

微動だにしない彼女へと、そっと、そっと近づきます。

絵里「……っ」

少しだけ開いた唇から、微かに息が漏れるのを感じました。……もう少し。

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:14:55.32 ID:x0a6t6Dv0
重なる唇。あぁ、なんて……。

絵里「んっ……」

なんて、幸せなのでしょう。

絵里「……海未」

離した唇、彼女の顔を見るのが恥ずかしくて、彼女の首もとに顔をうずめてしまいました。

絵里「……」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:15:27.24 ID:x0a6t6Dv0
どう、でしたか。

絵里「どうって、その……」

私は、とてもドキドキ、しました。

絵里「その、えっと……」

……。

絵里「私も、ドキドキ……したわ」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:16:10.14 ID:x0a6t6Dv0
絵里「……あ、電気、ついたわよ」

そう、絵里は言いますが、私の視界は彼女でいっぱいでわかりません。

絵里「ほら、海未。いつまでそうして」

順番が逆になってしまいましたが。

絵里「あら、なぁに?」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:16:47.65 ID:x0a6t6Dv0
好きだから。

絵里「……ええ、私もよ」

……。

絵里「……」

……それ以上、何も言えませんでした。あなたへ抱く、この熱い思いのことは。

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:17:42.23 ID:x0a6t6Dv0
それから数日が経ち、私と絵里は何事もなかったかのように振る舞っています。

絵里「ちょっと、海未……皆がいるわよ……」

そっと耳打ちしてくる彼女。そう。皆の前で、振る舞っているだけ、なのです。

絵里「んっ……」

皆があれやこれやと話している部室。その中で、私は隣の彼女の太ももをなぞっています。

絵里「バレたらどうするのよ……」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 02:18:25.11 ID:x0a6t6Dv0
それは、私も困ります。

絵里「じゃあ」

でもね、絵里。

絵里「……なに?」

私……何よりも刺激が大好きかもしれません。

――おわり