1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:44:06 ID:4NmRuozU
……

……

……



ザクッ…… ザクッ……



烈「ここは……」

引用元: 烈海王「ここは……」 

 

2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:46:15 ID:4NmRuozU
烈「…………」

烈(そうか……)

烈(私は宮本武蔵氏との比武に挑み──)

烈(氏の刃を受け──)

烈(死んだのだな……)

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:49:01 ID:4NmRuozU
烈(悔いはあるか?)

烈(……あろうはずがない)

烈(比武の結果、重傷を負う、肉体の一部を失う、時には死する)

烈(武術家にとっては至極、当然のこと。覚悟していなければならないこと)

烈(悔いなど、あろうはずがない)

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:50:45 ID:4NmRuozU
烈(あえていうなら──)

烈(あの宮本武蔵、必殺の刃を受けてなお)

烈(次に活かせる、などと思ってしまったことが、悔いといえば悔い、か)

烈(すまぬ……武蔵ッ)



ザクッ…… ザクッ……

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:52:08 ID:4NmRuozU
「烈よ……」



烈「!」

「烈永周よ……」

烈「…………」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:54:12 ID:4NmRuozU
「君のことだ」

「すでに察していることだろう」

「ここは……死人(しびと)のみがたどり着ける領域」

烈「…………」

烈「はい……心得ております」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:56:55 ID:4NmRuozU
「これから君には二つのうち、いずれかの道を選択(えら)んでもらう」

「一つは、永遠の安息の地にて、その魂を安らげる道」

「そしてもう一つは──」

「“試練”というにはあまりにも理不尽で過酷な“試練”が待ち受ける道」

「さて、いずれの道を歩む」

烈「心は決まっております」

烈「どうか私に……試練をッ! 試練をお与え下さい!」

「…………」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 01:59:07 ID:4NmRuozU
「君の気性ならば、そう答えることは理解(わか)っていた」

「しかしながら、これだけはいわせてもらおう」

「安息の地といっても、決して武術とは無縁の平穏無事な世界というワケではない」

「自己鍛錬や、あるいは他の魂との切磋琢磨に励むことも充分可能」

「それでも……ゆくというのか?」

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 02:01:21 ID:4NmRuozU
烈「お心遣い、感謝致します」

烈「しかし、それを甘んじて受けてしまうこと──」

烈「それすなわち、私が私を否定することになってしまうのです」

烈「そしてそれは──」

烈「私が知るあらゆる苦痛にも勝る、苦痛となるでしょう」

烈「どうか……試練をッ」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 02:02:50 ID:4NmRuozU
「そこまでいうのならば、もはや君を止めることはすまい」

「……後戻りはできんぞ」

烈「一向に構いません」

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/06/26(金) 02:05:40 ID:4NmRuozU
「ならば、ゆくがよい」

「烈永周……いや……烈士、烈海王よ」



烈「謝々ッ!」



ザクッ…… ザクッ……






                                   ─ 完 ─