1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:45:38.72 ID:epCQiplY0
ピッ… ピッ…
真美「おはよ、亜美」
亜美「……」
真美「駐車場ににいちゃんがいるんだけど、仕事の電話で来られないって」
亜美「……」
真美「まあ、亜美も疲れてるだろうから、短めにね」
亜美「……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368632738
引用元: ・真美「亜美、あのね」
THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 08 双海真美
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双海真美(CV:下田麻美)
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:47:31.15 ID:epCQiplY0
真美「んっふっふ~、実は! 千早お姉ちゃんのソロライブが決まったんだよ!」
亜美「……」
真美「すごいよね! しかもね、ツアーライブなんだって!」
亜美「……」
真美「真美、東京公演観に行こうかなって思ってるんだけど……亜美も来る?」
亜美「……」
真美「まあ、目が覚めたら」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:49:30.43 ID:epCQiplY0
真美「後は……この間、みんな話しちゃったからなぁ」
亜美「……」
真美「ねー、亜美」
亜美「……」
真美「また一緒にゲームできるよね?」
亜美「……」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:52:05.15 ID:epCQiplY0
真美「またにいちゃんにイタズラできるよね」
亜美「……」
真美「また……手、繋げるよね」ギュッ
亜美「……」
真美「…………よし。じゃあ、また来るよ。亜美」
亜美「……」
真美「次に真美が来るときまでに、起きてなきゃ許さないかんね!」
バタン
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:54:14.21 ID:epCQiplY0
なーんか。
毎回言ってるなぁ。次に起きてなきゃ許さないって。
プリン8個分ぐらいは許してない気がするよ。
真美「……」スタスタ
P「おーい、真美」
真美「あれ、にいちゃん」
P「亜美はどうだった?」
真美「顔色は良かったよ?」
P「そっか」
にいちゃんが迎えに来てくれた。
病院の廊下を並んで歩く。
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 00:59:05.08 ID:epCQiplY0
P「なあ、真美」
真美「うん?」
駐車場で、にいちゃんが車の鍵を開ける。
助手席に乗り込んだ。
P「亜美の病気について調べてみたんだけどさ」
真美「うん」
P「結構、いきなり起きたりするみたいだぞ」
真美「そうなの?」
P「ああ。だから、心配しなくていい」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:01:15.27 ID:epCQiplY0
真美「まぁ、こうなるのもいきなりだったからね」
P「あの日って、朝はなんとも無かったんだろ?」
真美「うん」
P「……悪いな、思い出させて」
真美「いいの。思い出さないと、亜美がフツーにいるって勘違いしちゃうから」
P「…………」
真美「事務所に戻るんだよね?」
P「ああ。今日はもう帰れるぞ」
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:02:29.62 ID:epCQiplY0
真美「……事務所には泊まれない、よね」
P「そうだな……」
真美「ほら、ママとパパは病院が忙しいしさ」
P「うん」
真美「今まではそれでも平気だったけど、亜美がいないし」
P「……」
真美「家に帰ると、寂しくなっちゃって」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:08:11.27 ID:epCQiplY0
見覚えのある道だと思ったら、765プロの道だった。
P「俺ん家に入れるわけにもいかないしな……」
真美「大丈夫、帰れるからさ」
P「そうか」
真美「うん」
……車が停まる。
P「駐車場に停めてくるから、ここで降りてくれ」
真美「分かった」
P「そのまま帰ってもいいぞ」
真美「ううん、事務所に入るよ」
P「そっか、分かった」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:14:12.32 ID:epCQiplY0
「私と伊織ちゃんで、ジュースを買いに楽屋を出たんです」
「戻ってくると、亜美ちゃんが眠っていて。亜美ちゃんの真横のテーブルにコーラを置いたんです」
「それでも、しばらく起きなくて。テレビ局を出る時間になって」
「律子さんが帰ってきても、亜美ちゃんが起きなくて……」
「おかしいな、って思ったのが遅れちゃって」
「揺すっても、伊織ちゃんが叩いても、動かなくて。おかしいな……って」
「律子さんと伊織ちゃんが真っ青な顔で亜美ちゃんに呼びかけたり、局の人を呼ぶのを、見ることしかできなくて」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:19:56.73 ID:epCQiplY0
あずさお姉ちゃんがにいちゃんにした説明の言葉が、パッと頭の中に響く。
階段を駆け足で登って、ドアを開けた。
真美「ただいまー」
小鳥「おかえりなさい、真美ちゃん」
春香「おかえり、真美」
ソファに座った。
春香「亜美はどうだったの?」
真美「ん? 良い感じに寝てたよ」
春香「そう……」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:23:46.47 ID:epCQiplY0
伊織「ただいま」
小鳥「あっ、おかえりなさい、伊織ちゃん」
伊織「あれ、律子とあずさはまだ帰ってきてないの?」
春香「どうしたの?」
伊織「私、先に車を降りたのよ。律子とあずさが駐車場に行って」
真美「なら、にいちゃんと話してるんじゃないかな」
伊織「アイツも駐車場にいるの? そう……」
いおりんがソファへと歩いてくる。真美の隣に座って、溜息。
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:27:02.84 ID:epCQiplY0
真美「ねえ、いおりん」
伊織「なに?」
真美「竜宮の活動は今やってないんだよね?」
伊織「そうね。あくまでも私とあずさのコンビとして」
春香「竜宮の名前は使ってないんだ」
伊織「ええ。亜美がいなきゃ、竜宮小町じゃないもの」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:30:09.17 ID:epCQiplY0
真美「亜美のかわりに、真美がやるってのはどうかな。竜宮小町の仕事」
伊織「体をなしても、それじゃあ私とあずさと真美よ」
真美「……そうだよね」
伊織「アンタだって、仕事が忙しいじゃないの」
真美「……うん」
春香「真美……大丈夫?」
真美「だ、大丈夫だよ、へいき」
春香「そう……?」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/16(木) 01:33:11.31 ID:epCQiplY0
春香「なんだか、今日は特に落ち込んでるな……って」
真美「そ、そうかな」
伊織「……来週の誕生日に、間に合うかってこと?」
真美「…………」
伊織「なに辛気臭い顔してるのよ、7日もあれば絶対に亜美は目を覚ますわ」
春香「そ、そうだよ! いつもみたいに、賑やかにしてくれるよ!」
真美「でも、もう5日もあんな状態だし……」
24: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/17(金) 00:37:34.06 ID:gTP6CbwT0
はるるんが手をつないでくれる。
しっかりと力が入っている、温かい手。
亜美の手もこれぐらい、あったかいのに。
今は全然だよ。
ブーッ ブーッ
伊織「春香、電話」
春香「えっ? あっ、あわわっ」
スマホを取り出して、電話を耳に当てる。
春香「もしもし? ……千早ちゃん?」
25: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/17(金) 00:42:14.63 ID:gTP6CbwT0
春香「えっ? うん、わかった。……真美、千早ちゃんがかわってって」
真美「う、うん」
スマホを渡された。
真美「も、もしもし?」
『もしもし。ねえ、真美』
真美「なあに?」
『今日、うちに泊まっていかない? 春香も一緒なのだけれど』
真美「えっ? いいの?」
26: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/17(金) 00:47:55.25 ID:gTP6CbwT0
『最近、水瀬さんの家に泊まっているのでしょう?』
真美「そうだね……」
『明日、お休みが取れたのよ』
真美「オフ?」
『ええ。だから、春香を送った後、ふたりで過ごさない?』
真美「明日は、真美もお仕事ないけど……」
『どうかしら?』
27: ここまで ◆K8xLCj98/Y 2013/05/17(金) 00:54:49.39 ID:gTP6CbwT0
真美「じゃあ、おコトバに甘えて……」
『ありがとう。それじゃあ、今から急いで事務所に戻るわね』
真美「うん、ありがと」
『じゃあね』
電話が切れた。スマホをはるるんに渡して、なんとなく天井を見る。
伊織「千早の家に泊まるの?」
真美「そうなった」
春香「それじゃあ、今日は3人だねっ」
伊織「いいわねぇ、仕事がなかったら私も参加したいけど」
はるるんが真美に抱きついてくるその温かさが優しくて、辛かった。
31: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 22:58:47.05 ID:LhvyWoeL0
千早お姉ちゃんがお皿を洗うその音が聞こえている。
あの後、はるるんと3人でカレーを食べて、テレビを見て……。とっても楽しくて、そして辛かった。
だって、分かっちゃうんだもん。気を遣ってくれている、って。
はるるん、疲れて寝ちゃったし。それぐらい気を遣わせちゃったんだろうな。
千早「……真美も寝ていいのよ?」
真美「え?」
千早「私ももうすぐ寝るから」
真美「……うん」
千早「……なにかあるの?」
32: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:05:46.61 ID:LhvyWoeL0
真美「いや、なんとなくだけど……」
千早「ん?」
千早お姉ちゃんが、キッチンからリビングにやってくる。
真美「寝るの、怖くて」
千早「怖いの?」
真美「うん。……ほら、亜美も寝たまま……でしょ? だから、もう戻ってこれないんじゃないかってさ」
千早「……そんなことないわ、亜美だって絶対に目を覚ます」
真美「だけど」
33: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:09:21.08 ID:LhvyWoeL0
携帯が鳴った。画面をタッチすると、
真美「パパ?」
千早「……」
真美「もしもし」
『もしもし、真美! 急いで病院に来なさい』
真美「え?」
『時間がない、早く!』
真美「な、なにが――」
『亜美が危ないんだ!』
真美「……う、うそ」
34: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:10:59.37 ID:LhvyWoeL0
『タクシーで来るんだ!』
真美「――」
『ま、真美? 真美っ』
真美「……」
千早「ど、どうしたの?」
真美「あ、亜美が」
千早「……まさか」
真美「はやく、いかないと」
千早「待って、真美。いまタクシーを呼ぶから」
35: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:12:31.18 ID:LhvyWoeL0
真美「え……」
千早「こういう時は、落ち着かないと。私はタクシーを呼ぶから、あなたはプロデューサーに」
真美「あ、う、うん」
『真美?』
真美「あ……急いで行くよ」
電話を切って、にいちゃんを電話帳で探した。
千早お姉ちゃんがタクシー会社の番号を調べて、電話をかけている。
その音で、はるるんが起きたようだった。
結局真美達は、3人で病院に向かった。
36: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:14:16.56 ID:LhvyWoeL0
病室にはにいちゃんとりっちゃんとピヨちゃんが居た。
社長さんもすぐに来ると教えてくれた。
亜美「……」
真美「ねえ、亜美」
亜美「……」
真美「返事してよぉ……」
亜美「……」
真美「なんで……」
亜美は酸素マスクをつけて眠っている。
規則的に胸が上下に動いている。亜美の手をつないで、目線が定まらない。
37: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:16:48.00 ID:LhvyWoeL0
お医者さんがベッドの横で、険しい顔をして亜美を見ている。
真美「お、お医者さん……お願い、亜美をたすけて」
P「真美……」
真美「にいちゃん、亜美をたすけてよ」
P「……っ」
真美「りっちゃん、ピヨちゃん……お願いだよ」
小鳥「……」
律子「っ……」
38: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:19:27.18 ID:LhvyWoeL0
千早「真美……」
真美「千早お姉ちゃん……はるるん……」
春香「私だって……助けられるなら、助けたいよ……っ」
規則的に響く機械の音が、ゆっくりのテンポに変わった。
真美「――っ!」
お医者さんが亜美の周りの機械をいじっている。
春香「やだ……見たくないよ……っ」
P「……どうして……!」
39: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:21:21.51 ID:LhvyWoeL0
真美「亜美、亜美っ!」
亜美の手を握り直して、大声で呼びかける。
お願いだよ、起きてよ。
亜美がいなくなったら、真美はひとりっきりなんだよ?
あのね、亜美。
真美は左利きで、亜美は右利きだよね。
二人で一つだから、そうなんだよ、って。言ってくれたよね。
真美「亜美……っ」
―― キッ……ン
真美「っ……?」
耳鳴りがする。
40: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:24:45.02 ID:LhvyWoeL0
―― キーッ……ン
真美「……っ……」
律子「真美?」
―― キー……ン
小鳥「真美ちゃん?」
真美「あっ……」
頭が殴られたみたいに痛くて、変な音がする。
病室の床に倒れ込んだ。
「真美っ!」
「真美、どうしたの!?」
「お願い、亜美……2人とも、また元気で笑ってよ……」
目の前がだんだんと見えなくなっていって。
41: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:27:08.24 ID:LhvyWoeL0
―― まみ ――
さいご、あみのこえがきこえたきがした。
あみだよね。
もどっておいでよ。
42: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:31:10.33 ID:LhvyWoeL0
真美「……!」
目が覚めると、そこは見覚えのある場所だった。
二段ベッド。勉強机。使わなくなったランドセル。制服。
そして、真美が寝ているこの硬い床。
そこは、亜美と真美の部屋だ。
真美「……あれ…………?」
病院にいたのに。
最近帰っていなかったその部屋は、どこか自室でないような気がした。
真美「あ……み……?」
二段ベッドの下段を覗く。
すうすうと眠っている亜美が、そこにいた。
真美「亜美っ!」
気がつけば、思い切り亜美の身体を揺らしていた。
43: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:33:40.24 ID:LhvyWoeL0
亜美「ん……」
真美「!」
亜美が目を開ける。
なんだか、それがとっても懐かしくて。
亜美「……真美」
真美「亜美、おはよう! おはようっ……!」
泣いちゃったよ、亜美。
やっと目を覚ましたんだもん。
亜美「……ごめんね」
真美「え……?」
亜美「真美まで、連れて来ちゃったのかな」
44: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:35:38.35 ID:LhvyWoeL0
真美「連れてきた、って……」
亜美「…………亜美が目覚めたわけじゃなくてさ」
真美「……」
部屋を見回す。壁掛け時計の下部には、日付がデジタルで表示されているはず。
真美「なに、これ……」
エラーを表すであろう、Eの文字に埋め尽くされている。
時計の針は、10時50分で止まっている。
真美「10時50分……」
亜美「もう、その時計は動かないよ」
45: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:37:13.69 ID:LhvyWoeL0
真美「……まさか」
ポケットの中のスマホを見る。
着信履歴。
パパからの電話は、10時13分。
真美「あみとまみ……しんじゃったの?」
亜美「……」
真美「うそ……うそだよ」
亜美「……」
真美「なんで」
亜美「だいじょーぶ」
46: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:43:43.58 ID:LhvyWoeL0
真美「へ……?」
大丈夫、ってさっき千早お姉ちゃんにも言われた。
亜美「亜美、このセカイのこと……ちょっと知ってるから」
真美「知ってる、って……」
亜美「だよね、お姫ちん」
真美「……え?」
振り返ると、ドアのところに立っていたのは。
「その”お姫ちん”とは別人ですが……」
真美「お姫ちん……」
亜美「の、そっくりさん。このセカイの人なんだってサ」
亜美がおどけて言う。
47: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/21(火) 23:51:13.11 ID:LhvyWoeL0
お姫ちんのそっくりさんは説明をする。
「双海亜美は、自らの意思でこのセカイへとやってきたのです」
真美「え?」
亜美「……」
「その理由は、わたくしにも分かりません」
真美「……どうして?」
亜美「…………亜美も、わかんないよ」
「そして双海真美は、なぜだかこのセカイにやってきてしまった」
真美「亜美と真美は死んじゃった、ってことなの?」
「生と死の間です。貴方達の時計は止まってしまっていますが、また動かすことも出来る」
49: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:10:28.92 ID:HA1y125T0
真美「ちょ、ちょっと待ってよ……何が何だか」
亜美「……」
「時計を動かすには、時計が止まった理由を解明しなければなりません」
真美「ね、ねえお姫ちん……止まった理由って?」
「亜美がセカイへやってきた理由です」
亜美「……わかんないよ」
真美「どうして起きないか、ってこと?」
「はい、そうです」
お姫ちん……のそっくりさんは、手前にある真美の勉強机の椅子に座った。
50: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:14:02.27 ID:HA1y125T0
真美「亜美……」
亜美「ずーっと考えてるんだ、ここで」
真美「え?」
亜美「なんで亜美、ここに来ちゃったんだろって」
「時計が動けば、貴方達は元のセカイへと戻ることができます」
真美「それは、亜美も真美も……2人で、戻れるんだよね」
「はい」
51: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:17:50.30 ID:HA1y125T0
そっくりさんが笑う。その笑みは、お姫ちんとは似ても似つかない。
……どっちかって言うと、ミキミキみたいな…………。
お姫ちんの姿がぐにゃりと歪んで、光った。
強い光に目を細めて、再び見直すと、
「……ここは、悲しいことを受け入れられなくなったヒトが、自分を見つめなおすために来る場所なの」
真美「……み、ミキミキ」
ミキミキになっている。
亜美「お、お姫ちんは?」
「…………あれ? なんだか、変わっちゃったね。この人のこと、考えたの?」
頷く。
「それじゃあ、多分ソレだね。ミキ、イメージに強く影響されるから」
52: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:21:33.44 ID:HA1y125T0
「ねえ、亜美。悲しいこと、なかったの?」
亜美「悲しいこと……?」
真美「あの日のこと、思い出せる?」
亜美「えーっと……朝、真美とトースト食べて、家を出て」
亜美がベッドに寄りかかって、考えている。
亜美「竜宮の仕事に行って、それで…………あれ?」
真美「え?」
亜美「りっちゃんが……」
真美「り、りっちゃんがどうしたの?」
53: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:25:49.01 ID:HA1y125T0
亜美「――そっか」
亜美の声が震えだして、涙を流す。
真美「あ、亜美っ」
亜美「……んしょ……ごめん」
真美「何があったのっ」
亜美「……亜美たち…………オーディションに、落ちちゃったんだ」
真美「……え?」
「それが、亜美の悲しいことなの?」
亜美「……うん」
54: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:31:08.43 ID:HA1y125T0
亜美「竜宮のみんなで、絶対やりたい仕事だって頑張ってさ」
真美「……」
亜美「でも……収録が終わった後、りっちゃんが言ってきて……」
「…………それで?」
亜美「あ、うん……亜美、ボロボロ泣いちゃって……あずさお姉ちゃんといおりんが、ジュースを買いに行ったんだ」
「……その時かな」
亜美「……それで、気づいたらここにいた」
真美「……」
亜美、きっと本気でそのお仕事、したかったんだ。
でもそれが叶わなくて……そうして、このセカイに。
55: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:36:42.48 ID:HA1y125T0
「それじゃあ――」
ミキミキが光る。その眩しさが収まった時、そこにはひびきんが居た。
「――亜美、整理しよう」
亜美「……」
「亜美がやりたかった仕事は、出来なかったかもしれないけど」
真美「……」
「それでも、こんなとこに来ちゃダメだぞ。ここは、亜美たちみたいに未来が明るいヒトが来るところじゃない」
亜美「……でも」
「亜美はきっとすぐに目を覚まして、アイドルとして頑張るんだ。真美も同じ」
真美「……」
56: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:41:42.25 ID:HA1y125T0
亜美「……分かった」
「よし、頑張れよ」
ひびきんが亜美の頭を撫でる。
亜美「亜美、がんばる」
真美「ねえ、亜美」
亜美「ん?」
真美「もうすぐ真美たち、誕生日なんだよ」
亜美「……あっ」
57: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:44:29.02 ID:HA1y125T0
「忘れてたの?」
亜美「……うん」
真美は亜美の手をとって、
真美「年に一回だけなんだから、いっぱいお祝いしてもらおうよ」
亜美「……」
真美「ね?」
亜美「……うん」
真美「よーし、ひびきん! 後はよろしくね」
「分かった! もう、こんなとこに来るんじゃないぞ?」
58: 10時頃再開 ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 20:48:04.66 ID:HA1y125T0
亜美「……あっ、ねえ、ひびきん?」
「うん? 自分は”ひびきん”じゃないけど……なに?」
亜美「聞いてもいいかな」
「……?」
亜美「ひびきんは、誰なの?」
「…………そうだな、言葉に例えるとしたら」
―― キッ……ン
また、耳鳴り。
59: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 22:39:11.48 ID:HA1y125T0
亜美「うっ……!」
―― キー……ン
真美「……あ……みっ……」
亜美「…………まみ……!」
薄暗くなる視界、亜美を探す。
「自分は……」
手と手が触れ合った。
しっかりと繋ぐ。亜美の力を感じる、ぬくもりもある。
「――妖精かな」
ああ、妖精ね。
だから、その3人なのか。
目の前にかすかな光がある中、最後に思ったのはそんなことだった。
60: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 22:45:52.93 ID:HA1y125T0
――――
――
律子「退院おめでと」
亜美「んっふっふ~! りっちゃんりっちゃん!」
律子「ん、なあに?」
亜美「今日は何の日でしょうっ!」
律子「……はて」
亜美「あー! お姫ちんみたいにならないでよー!」
律子「ふふっ、さーて。事務所に行きましょう?」
亜美「おうよ!」
61: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 22:48:08.05 ID:HA1y125T0
律子『というわけで、向かいますねー』
P「おう、待ってるぞ」
春香「えへへ……飾り付けもだいたい終わったね!」
千早「ええ、後は……亜美を待つだけね」
伊織「ねえ、真美」
真美「うん?」
亜美、あのね。
いおりん達、また新しいオーディション見つけたみたいだよ。
当分はそれに向けて頑張るんだって!
伊織「こんなときに……少し場違いかもしれないけれど、気になることがあるのよ」
真美「気になること?」
62: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 22:54:47.68 ID:HA1y125T0
伊織「ええ」
真美「なに?」
伊織「最近亜美が、『お姫ちんは本当に妖精だったんだYO』って言うのよね」
真美「……ほう」
伊織「どういうことかしら?」
お姫ちんだけじゃなくて、ミキミキもひびきんも……妖精だったよね。
真美「……ごめん、真美には良く分かんないや」
伊織「……そう。突然、ごめんね」
真美「ううん」
63: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 22:57:42.96 ID:HA1y125T0
……亜美とりっちゃんはそれからほどなくしてやってきた。
律子「それじゃあ、準備するわよー!」
春香「さあさあ、真美も一旦、外に出て」
真美「オウケイだよー!」
亜美「あっ、真美」
真美「ん?」
事務所のドアの前で、亜美とふたりきり。
亜美「……手ぇ、つなご」
亜美の右手が、差し出された。
64: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 23:01:47.75 ID:HA1y125T0
真美「……どしたの?」
亜美「ううん、なんとなく」
真美「……亜美」
亜美「…………あのセカイ、ひとりだと全然抜けられなかったんだよね」
真美「え?」
亜美「やっぱり、亜美は真美がいないと……ダメ、みたい」
真美「…………うん」
ぎゅっ、と。亜美のぬくもりを感じる。
また、手をつなげたね。
65: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 23:07:06.91 ID:HA1y125T0
「亜美、真美ー! もう入っていいよー!」
「ミキ、早くお祝いしたいのー!」
「お待ちしていますよ」
真美「亜美、いこっか!」
亜美「うん!」
真美も、そう思ってるよ。
だって亜美と真美は双子だから。
真美は右手で、思い切りドアノブをひねって、ドアを開けた。
「亜美、真美! お誕生日おめでとう!」
ひとりじゃ出来ないことでも、ふたりなら出来るかもしれない。
だから、手をつなぐんだ。
66: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/22(水) 23:08:15.25 ID:HA1y125T0
終わりです。亜美真美お誕生日おめでとう!
お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。
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