1: ミガサ 2013/05/21(火) 21:16:47.22 ID:NE1MhhiA0
―――事務所―――

ちひろ「プロデューサーさん」

P「なんでしょうか?」

ちひろ「上から指示が来まして、新しいアイドルを探してこいだそうです」

P「……はい?」

ちひろ「と、いうわけで。明日は確かプロデューサーさん空いてましたよね?」

P「いや何を言っているんです?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369138607

引用元: モバP「或書店の魔女」 

 

2: ミガサ 2013/05/21(火) 21:19:23.79 ID:NE1MhhiA0
ちひろ「何をって、上からの指示を伝えてるんですが」

P「いやいやいや。この事務所、もう160人以上いるのに、更にまた増やすんですか?」

ちひろ「上がそのように」

P「そもそも社長ならわかりますが、上ってなんです?上って」

ちひろ「……運営」ボソッ

P「へ?」

3: ミガサ 2013/05/21(火) 21:20:29.44 ID:NE1MhhiA0
ちひろ「ああ、社長と同じくらいの権力を持っている方々ですよ」

P「は、はぁ」

ちひろ「なのでまぁ、社長からの指示と思ってくれて相違ないです」

P「そうですか……」

5: ミガサ 2013/05/21(火) 21:21:30.33 ID:NE1MhhiA0
ちひろ「では話を戻しますが、明日プロデューサーさんは空いてましたよね?」

P「一応、スケジュールではそのように」

ちひろ「では、明日から愛媛の方に向かってもらいます」

P「……は?」

6: ミガサ 2013/05/21(火) 21:22:04.98 ID:NE1MhhiA0
―――翌日 愛媛―――

P「……」

P「いやいやいやいや」

P「【翌日 愛媛】じゃねーよ。何があったんだよちひろさんと会話が終わった後」

P「俺もなんでちゃんと旅支度してるんだろ……なんだこれ怖いんだけど」

P「だが仕事となればしょうがない……ちひろさん曰く、他の日に休日回してくれるみたいだし」

7: ミガサ 2013/05/21(火) 21:22:53.03 ID:NE1MhhiA0
P「いよっし。そうと決まれば、可愛い子探すぞー!」

P「……」

P「誰もノってくれないとちょっと寂しいな……」

―――二時間後―――

P「……」ジーッ

8: ミガサ 2013/05/21(火) 21:23:34.86 ID:NE1MhhiA0
JK1「やだ、何あの人。こっち見てるんだけど」

JK2「でもでもなんかかっこよくなーい?」

JK3「でもでも~。あたし的にはもうちょっと太ってると~」

JK1&2「お前には聞いてねぇよブタゴリラ」

P「……ダメだな」

10: ミガサ 2013/05/21(火) 21:24:18.77 ID:NE1MhhiA0
P「はぁ……もうこっちについてからかれこれ二時間かぁ」

P「俺のプロデューサーアイも鈍ったか……?最近、仕事の都合上スカウトとかしてないからなぁ」

P「……主に蘭子とかアーニャのせいで」

P「アーニャとか総選挙の影響で一気に仕事増えたもんなぁ。そのうち、新しいライブ衣装とか用意してやるか」

P「蘭子は……まぁ、2ndシンデレラガールとして、でかい仕事が入ってるからな」

P「二人共全力でサポートしてやらないとなぁ」

11: ミガサ 2013/05/21(火) 21:25:23.16 ID:NE1MhhiA0
P「……ん。素質ありそうな子もいるんだけどなぁ」

???「フゴフゴ!っはぁ。フランスパン美味しい……♪」

P「あの子とかいいなぁ……声かけてみようかなぁ」

P「おーい!ちょっとそこの君ー!!」

???「モグモグ……?」

P「あ、えっと……す、凄い量のパンだね。家族への買い物か何かかい?」

12: ミガサ 2013/05/21(火) 21:26:02.52 ID:NE1MhhiA0
???「モグモグ、そうですか?あ、いやコレ全部あたしの分ですよ!」

P「(かな子といい勝負……いや、それ以上か……?)」

???「それで、何かご用ですか~?」モッキュモッキュ

P「あ、ああそう。聞きたいんだけど、アイドルって興味あるかい?」

???「アイドル、ですか?モグモグ、興味はありますけど……モグモグ。あ、ところでどなた様でしょ?」

P「ああ、申し遅れた。俺はこういう者で―――」

13: ミガサ 2013/05/21(火) 21:27:06.89 ID:NE1MhhiA0
―――数十分後―――

P「ふぅ。やっと一人か」

P「興味を持ってくれてよかった。……パンを大量に買ったせいで財布が少し軽くなったけど」

P「さて、この調子でどんどん行こ……」ピタ

P「……ふむ」

14: ミガサ 2013/05/21(火) 21:28:25.53 ID:NE1MhhiA0
P「随分と歴史を感じさせる建物だな……なになに?鷺沢書店……?」ティン!

P「……ティンと来た。入ってみよう」

P「……えーっと……お、お邪魔しまーす……?」ギィィィ

P「うわ、凄い埃だな……だが、それもまた味なのか……?」

???「……」ポケーッ

P「……ん、あの子」

16: ミガサ 2013/05/21(火) 21:29:04.17 ID:NE1MhhiA0
???「……あ。いらっしゃいませ……」

???「何かお探しですか……?」

P「ああ、いや。アイドルを探してるんだ」

???「……はい?」

P「いや、アイドルを」

17: ミガサ 2013/05/21(火) 21:29:41.47 ID:NE1MhhiA0
???「アイドルを……お探しですか?当店ではアイドル雑誌などのお取り扱いはございません」

P「いや、アイドル雑誌じゃなくて」

???「……違うのですか?」

P「うん。アイドルを探しているんだ。で、今、見つけた」

???「…………ええと」

18: ミガサ 2013/05/21(火) 21:30:16.75 ID:NE1MhhiA0
P「君、よかったらアイドルやってみないかい?」

???「あの、お話がよく飲み込めないのですが」

P「ああ、ごめんごめん。俺はこういう者で―――」スッ

???「……アイドルのプロデューサーさん、ですか」

P「そそ」

???「それで……これを何故私に?母なら今外出中で……」

19: ミガサ 2013/05/21(火) 21:31:07.27 ID:NE1MhhiA0
P「いやいやいや。俺が誘ってるのは君だよ?」

???「……はい?」

P「あ、えーっと……なんて呼べばいいかな?」

文香「鷺沢……文香です」

P「そっか。じゃあ文香ちゃん。俺は君にアイドルになってみないかって誘ってるんだ」

文香「私が、アイドル?」

20: ミガサ 2013/05/21(火) 21:31:46.10 ID:NE1MhhiA0
P「そうそう」

文香「……何かのご冗談では?」

P「冗談じゃない。君には光る何かが見えたんだ」

文香「光、ですか……私はむしろ闇だと思いますが」

P「闇?それまたどうして」

文香「……すぐわかると思いますよ。そろそろ、小学校の下校時間ですので」

21: ミガサ 2013/05/21(火) 21:32:48.27 ID:NE1MhhiA0
P「は、はぁ」

小学生A「―――でさ~」

小学生B「あっはは!マジで?」

小学生C「おいおいそりゃねーだろ!」

文香「……来ましたね」

P「和む風景じゃないか」

22: ミガサ 2013/05/21(火) 21:33:53.57 ID:NE1MhhiA0
文香「私は……そうは思えません」

P「……?」

小学生A「お、おいここ魔女の家だぜー!」

P「魔女……?」

小学生B「そそ!ほんと、魔女の洋館みたいだよなぁ」

小学生C「そのうち火事にでもなるんじゃね?魔女狩りだー!なんちゃって」

小学生A&B「あっはっはっは!!」

23: ミガサ 2013/05/21(火) 21:34:44.92 ID:NE1MhhiA0
P「……」

文香「わかり、ましたか?」

P「なんとなくは」

文香「私、魔女なんですって」

P「……見た目だけで判断するのは、子供のよくない癖だな」

24: ミガサ 2013/05/21(火) 21:35:28.35 ID:NE1MhhiA0
文香「ふふふ。こんな魔女に、アイドルなんて出来ると思いますか?」

P「できるさ」

文香「……無理ですよ。私、人前に立つのも苦手なんですよ。人と話すのも」

P「そんなのどうにかなるさ。実際、最初は人前に立つだけで震えてた子が今や売れっ子だ」

文香「……でも、無理です」

P「……うーん」

27: ミガサ 2013/05/21(火) 21:37:58.36 ID:NE1MhhiA0
P「そうだ。本は好きか?」

文香「……私は、好きです。プロデューサーさんは……?」

P「俺は乱読家でな。なんでも読むなんだが……」

P「今まで読んだ中に、【或阿呆の一生】という物語がある」

文香「……芥川龍之介さんの」

29: ミガサ 2013/05/21(火) 21:39:23.16 ID:NE1MhhiA0

P「そうだ。さすが書店の子だ」

P「で、この【或阿呆の一生】は芥川龍之介の、遺稿だ」

P「……冷たい、欝を連想とさせる文体で書かれている」

文香「少しは、知ってます」

P「そのせいで一般に、【敗北の文学】なんて呼ばれてるんだ」

30: ミガサ 2013/05/21(火) 21:40:23.01 ID:NE1MhhiA0
文香「……作者が自[ピーーー]ることにより、作品が芸術として完成したから……」

P「そうだ。だけど俺はこれを敗北とは思わない」

P「むしろ勝利だろ。大勝利だ」

文香「……何故?」

P「だって、この作品は【完成】したんだ」

31: ミガサ 2013/05/21(火) 21:41:15.79 ID:NE1MhhiA0
おうふ……書き直ししまするorz


文香「……自殺することにより、芸術として完成したから……」

P「そうだ。だけど俺はこれを敗北とは思わない」

P「むしろ勝利だろ。大勝利だ」

文香「……何故?」

P「だって、この作品は【完成】したんだ」

32: ミガサ 2013/05/21(火) 21:41:49.76 ID:NE1MhhiA0
P「……アイドルには、【完成】なんてないんだ」

P「【完璧】もない。【完成】なんてない」

P「アイドルっていうのは、不完全な芸術なんだ」

文香「……だから、勝利、と?」

P「ああ。だが決して、羨ましいとは思わない」

34: ミガサ 2013/05/21(火) 21:42:54.90 ID:NE1MhhiA0


P「【完成】したら、もうそこで終わりだからな……それ以上がないんだ」

P「現に、この作品に続きはないし、それ以上もない」

P「だから俺は、【完成】を【完璧】を目指さない」

文香「……普通の人が聞いたら、不真面目だと思うでしょうね」

P「それで構わないんだよ。不真面目でもいい、適当でも、ニートでもいいさ」

35: ミガサ 2013/05/21(火) 21:43:50.91 ID:NE1MhhiA0
P「人は絶対に何か、欠けているんだ。君だってそう。俺だってそう」

P「その部分を無理に直す必要はないさ。むしろそれも一つの個性だ」

P「だから……そんな個性ある、不完全な君を、俺はアイドルにしたい」

文香「……どんなスカウトの言葉ですか……」

P「ははっ。カッコつけすぎか?それも俺の個性の一つだ」

P「俺も最初、すっごく根暗でな。でも今じゃ立派な中二病患者、もしくはカッコつけ、かな」

36: ミガサ 2013/05/21(火) 21:44:22.75 ID:NE1MhhiA0
文香「……ふふっ」

文香「……もし……アイドルになったら、何か変われますか?」

P「変われるさ。新しい、君に」

文香「……新しい自分……興味あります」

P「本当かい?」

37: ミガサ 2013/05/21(火) 21:44:50.57 ID:NE1MhhiA0
文香「書の世界はどこか時が止まったような感覚で……」

文香「その止まった世界から、アイドルという道に一歩踏み出せば……私も前に進めるでしょうか?」

P「ああ!一緒に進んでいこう!」

文香「……はいっ」

38: ミガサ 2013/05/21(火) 21:45:38.83 ID:NE1MhhiA0
―――翌日―――

文香「そ、その……こんにちは」

文香「私は……鷺沢文香、と申します……」

文香「……本が、好きです」

文香「あ、あの……えっと」

P「(大丈夫かな)」

文香「私も、皆さんと一緒に……変わっていきたいと思っています」

文香「……よろしく、お願いします」ペコリ


おわり

39: ミガサ 2013/05/21(火) 21:47:50.22 ID:NE1MhhiA0
N+の画像見てすぐ書き始めたので、ちょっと読みにくい部分があるかもしれません……申し訳ない。

文香ちゃん可愛いですよね。晴ちゃんも出したかったんですが、あの子の場合親が勝手に応募したとの事で……出すにいたらず。

最後に、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました!

……もしかしたら、おまけとかも書くかも。

41: ミガサ 2013/05/21(火) 22:00:19.08 ID:NE1MhhiA0
おまけ1 「似てる二人」


文香「……」

小梅「……」

幸子「(な、なんですかコレ)」

文香「……」

小梅「……」

幸子「(し、新入りの方に事務所を案内しろと言われたのはいいんですが……)」

42: ミガサ 2013/05/21(火) 22:01:24.35 ID:NE1MhhiA0
文香「……」

小梅「……」

幸子「(な、なんで二人共黙ったままなんですか?!)」

文香「……ふふっ」

小梅「……ふふっ」

幸子「(しかも時たま急に笑いだすし?!なんなんですかこの二人?!)」

43: ミガサ 2013/05/21(火) 22:03:31.77 ID:NE1MhhiA0
文香「……本、好きなの?」

小梅「そ、そうみたい」

幸子「へぇ、文香さんは本好きなんですか?(やっと喋ってくれた……)」

文香「私は……書店で働いてたから……」

小梅「そう、なんだ。私、ホラー小説しか、読まないから」

幸子「え?さっき小梅さん、本好きだって言ってませんでしたっけ?」

44: ミガサ 2013/05/21(火) 22:05:32.60 ID:NE1MhhiA0
小梅「え?い、言ってないよ」

文香「言ってない……ね」

幸子「それじゃあ、さっきのは?」

文香「それは……ほら。幸子ちゃんの隣……」

幸子「え?」

小梅「お、女の子、が、歩いてる……」

45: ミガサ 2013/05/21(火) 22:07:33.17 ID:NE1MhhiA0
幸子「……は?」サーッ

文香「……あ」

小梅「そ、そっか。見えない人……だったの」

幸子「さ、ささささ、さっきから何を言っているんです?ぼ、ぼぼぼ、ボクの隣なんて」

文香「……ごめん。気にしないで……」

小梅「そ、そうだよ。気にしたら……負け」

幸子「な……なんなんですかぁ!もう二人なんて知りません!!」タッタッタッタ

46: ミガサ 2013/05/21(火) 22:09:08.34 ID:NE1MhhiA0
文香「あ、行っちゃった……」

小梅「ふ、二人じゃなくて……三人……」

文香「……」

小梅「……」

文香「……改めてよろしくね?」

小梅「は、はい」


おまけ1 おわり

47: ミガサ 2013/05/21(火) 22:13:03.60 ID:NE1MhhiA0
おまけ2 「本好きな二人」


頼子「ここで……合ってるかな」

文香「……いらっしゃいませ」

頼子「あ、文香さん。よかった……ここで、あってたみたい」

文香「え、えっと……?」

頼子「こんにちは。……同じ事務所で働いてる、古澤頼子って言うの」

48: ミガサ 2013/05/21(火) 22:15:25.35 ID:NE1MhhiA0
文香「頼子……ちゃん」

頼子「うん。私、本が好きで……プロデューサーに文香さんの事聞いたら、いてもたってもいられなくて」

文香「そうなんだ……でも、ここ……古い本しか、ないよ?」

頼子「それでもいいの……楽しみ……」

文香「……初めて」

頼子「え?」

49: ミガサ 2013/05/21(火) 22:17:06.17 ID:NE1MhhiA0
文香「ここを見て……楽しみ、って言ってくれたの……頼子ちゃんが、初めて」

頼子「そっか。嬉しいな……あの、文香さん」

文香「なに?」

頼子「文香さんのお勧め……教えてくれない、かな?」

文香「……喜んで」


おまけ2 おわり