1: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:07:21.91 ID:zsFgerQl0
千早「……ん」
春香「っ……ごめん、起こしちゃったかな」
千早「ん……どうしたの?」
手を握られる感触で、目が覚めた。
春香「ううん、なんでもない」
ベッドの中、春香との距離……0メートル。
普段は春香が同じベッドで寝ることを遠慮するけれど、今日は自分から提案してきた。
その原因は、おそらく。
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2: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:16:47.90 ID:zsFgerQl0
『春香なんて知らないの!』
『わ、私は、みんなで……』
『美希っ、やめなさい!』
『どうして、どうしてそんな考えでいられるの!? このコンテストで負けたら、負けたら……!』
『美希さん、落ち着いて下さいっ』
『そ、その、美希……』
『みんな、アイドルができなくなるかもしれないのに!』
3: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:26:36.05 ID:zsFgerQl0
千早「ねぇ、春香」
春香「ん?」
千早「春香は、間違ってないと思う」
春香「……え?」
千早「今日のこと」
春香「……」
千早「もし、アイドルトップフェスで私達が負けたら、961プロに引退に追い込まれる」
春香「……うん」
千早「だからこそ、出来れば最高の形が良いけれど、もし最悪の結果になるとしても、楽しく終わりたい」
4: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:36:40.66 ID:zsFgerQl0
春香「そんなこと、言わないでよ」
千早「……ごめんなさい」
そうだ。
春香は言った。
勝ち負け関係なく、楽しく踊ろう。
961プロのことなんて考えず、楽しく歌おう。
それが、私達のできることだよ……と。
春香「私、みんなで歌いたい。みんなで踊りたい」
千早「ええ」
春香「だから、だから……」
5: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:54:45.58 ID:zsFgerQl0
春香を撫でていると、次第に寝息が聞こえ始める。
消えそうに小さい。
千早「……」
春香は、真面目だと思う。
そして誰よりも他人のことを考えられる。
だから……背負いすぎてしまうんだ。
一人で悩み込んで、少しずつ自分自身を壊していってしまう。
守らなきゃいけない。
0メートルの距離から、私が。
春香の手をギュッと握って、目を瞑った。
6: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/27(月) 23:58:28.35 ID:zsFgerQl0
変な時間に目が覚めた。
春香の呼吸音がいつもより大きく聞こえる。
千早「……春香」
今日は、アイドルトップフェスの日。
ジュピターと対決して、私達が負ければ……全員、引退することになる。
そんな約束を取り付けてしまったプロデューサーは責任を感じていた。
絶対にそんなことはさせないと、プロデュースに力を注いでくれている。
だから、私達は恩で返さなければいけない。
それは「負けたくない」「引退したくない」という気持ちで、返せるものだろうか?
ふと、考えてみる。
7: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:04:21.32 ID:fpHXvZjZ0
春香の言うとおりだと思う。
最後のステージになっても、悔いのないように。
楽しく歌って、踊る。
「♪」
千早「……?」
機種変更したばかりの携帯電話が一瞬、鳴った。
千早「……美希」
スマホでは必須らしいトークアプリの緑色の画面が、光る。
『ミキ★』の名前。
8: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:06:21.46 ID:fpHXvZjZ0
『こんな真夜中にごめんね。起きてる?』
慣れないけれど、指をスライドさせて。
『ええ、大丈夫よ』
『いま、春香は千早さんの家にいるんだよね』
『いるわよ』
『ミキ、言い過ぎた』
いつもと違って、絵文字もスタンプもない静かな会話画面。
美希も、気にしていたんだ。春香にキツくあたったことを。
9: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:12:45.25 ID:fpHXvZjZ0
『春香が気にしていたわよ』
『ごめん』
美希のメッセージ、3文字はすぐに表示されて。
それからしばらく経った後、
『明日、楽しもうね』
と送られてきた。
『ええ、もちろん』
既読はつかない。時間は、2時40分。
こんなに遅くまで、悩んでいたのね。
10: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:23:04.81 ID:fpHXvZjZ0
スマホをベッドの横に置いて、目を閉じる。
――明日、すべて決まる。
今後の生活が変わるかもしれないし、今のまま過ごせることになるかもしれない。
それは私達次第。
明日は今までで一番輝けるように……歌って、踊りましょう。
春香の手を握って、呼吸を聞く。
心が、とっても落ち着いた気がした。
11: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:25:27.92 ID:fpHXvZjZ0
――――
「みなさん、私達は精一杯! 歌って踊ります!」
「だから、みんな! 応援してほしいのー!」
「聞いて下さい! 765PRO ALLSTARSで!」
A r e
Y o u...
『――READY!!』
――――
12: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:29:28.87 ID:fpHXvZjZ0
ベッドの中、春香との距離……0メートル。
今日は私から、一緒に寝ないかと誘った。
とても、嬉しいことがあったから。
春香「……おやすみ、千早ちゃん」
千早「ええ、おやすみ」
また、きらめく舞台で歌うことが出来る。踊ることが出来る。
春香の手のぬくもりと、静かな呼吸を感じる。
暗闇の中、私はまたひとつ、優しいあたたかさに触れた。
13: ◆K8xLCj98/Y 2013/05/28(火) 00:30:08.57 ID:fpHXvZjZ0
夜のSSを書くと心地良い眠気がやって来ますね。短くなってしまい、すみません。
お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。
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