1: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:12:03.93 ID:5RXWDyN00

この作品は、艦隊これくしょんの2次創作SSです。

空母艦娘どうしの呼び方(鳳翔へのお母さん呼び)に、独自設定を使用しています。


瑞鶴「鳳翔お母さんの女子力が低い?」 飛龍「うん」

鳳翔「夢はあなたと共に」


前2作のその後を短編形式で書いていく予定です。
タイトルのふざけっぷりでわかるとおり、シリアスはかなり薄めで行きます。


第2話以降、「こんな話が読んでみたい」と下記の設定にある程度沿ったお題を書き込んで頂きますと、
お話として面白いものが出来そうだったら頑張って書きます(安価は今のところ予定なし)。

第1話は提督と鳳翔のデート、行き先を指定して頂ければと思ってます。
書き込みがなければ水族館を予定。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429722723

引用元: 鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」 【お題募集】 

 

3: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:27:28.34 ID:5RXWDyN00


~鎮守府の愉快な仲間たち~

(改二実装済み艦娘は基本改造済みです)


・提督

正規空母6隻を指揮する。鳳翔と鎮守府の皆が好き。

指輪は鳳翔と6人娘に渡しているが、鳳翔以外とは家族愛以上に発展していない。

奥手だったが勇気を振り絞って鳳翔と結ばれ、鎮守府に砂糖を振りまく。

例の悪夢の事件の後、鳳翔への溺愛っぷりに拍車がかかった。

個人的には「図書館戦争」の堂上教官と小牧教官を足して2で割ったイメージ。

2人とも純情なのでハーレムに到達する敷居は少々高い。


・鳳翔

鎮守府のお艦にして提督の正妻。提督と、空母6人娘と、鎮守府の皆が好き。

料理はじめ各種の家事、航空戦から夜戦(意味深)までなんでもござれの超人。練度はカンスト済。

ケッコンから時間が経ち、お互い奥手だった提督とも毎日一緒に寝るなど、遠慮なくベッタリする。

悪夢の内容は覚えておらず、急にひっついてくるようになった鎮守府の皆に戸惑う。

ただし現代的なセンスには疎い。最近少しずつファッションを勉強している。

4: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:28:31.92 ID:5RXWDyN00

・赤城

6人娘の長女的立場として日々奔走する。鎮守府の皆と、鳳翔のご飯が好き。

戦場で高揚し易かった性格も、鳳翔の教育(物理)で冷静さを保つようになる。

今では正規空母最高練度として、名実ともに機動部隊のトップを務める。

提督の背中を押して鳳翔を助ける。提督を諦めたわけではなく、隙あらばアプローチをかけてくる。


・加賀

一航戦の誇りを胸に後輩たちを引っ張る、面倒見のいいお姉さん。

プライドが高かった性格も今ではほぼ丸くなり、ほんの少しだけ泣き虫な本性が出るようになる。

翔鶴や瑞鶴とは普通に仲良し。一緒の部屋で寝たりすることも。

今のところ提督には、尊敬以上の感情はあんまりない。ここから恋愛に発展するには……?


・蒼龍

6人娘で赤城の次に着任、提督との付き合いも長い。

鳳翔は正妻として敵わないと認めつつも、提督のことは未だに好き。

2号の座を目指して、今日も家事の腕を磨いて健気に頑張る。

個人的性格が掴みづらい子ナンバー1。何かしらキャラ付けをしてあげたい。


・飛龍

鎮守府の皆の仲を取り持つしっかり者。提督や鳳翔からの信頼も厚い。

基本的な家事スキルは身に付いており、また現代っ子のセンスも持っているため女子力は高め。

家族の和を何よりも大切にする。提督と鳳翔が幸せにしているところを見るのが好き。

提督は恋愛対象にするには若すぎるため、家族から恋人に発展するハードルは一番高いと思われる。


・翔鶴

先輩の後を追いかけて日々努力する、6人娘の薄幸美少女担当。憧れは加賀先輩。

練度は充分なものの前世からの枷が抜けきっておらず、日常でも時折ドジっ子っぷりを発揮する。

自分の不運をもカバーする機動部隊の運用で、提督を心から信頼し、いつしか好きになる。

提督を諦めきれないが、鳳翔の圧倒的正妻感の前にぐぬぬの日々。嗚呼。


・瑞鶴

6人娘で一番最後に着任したが、艦載機運用のポテンシャルは逸品で、すぐに皆に追いついた天才型。

時折毒舌が飛び出したりするが、鳳翔や家族を大切にする気持ちは人一倍強い。

着任当初は加賀といがみ合ったりしたが、今では背中を預けあうまでに仲良くなる。紆余曲折はいずれ。

加賀と同じく、提督へは尊敬の感情が一番強い。恋愛のきっかけは出てくるのか。

5: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:31:07.90 ID:5RXWDyN00

話の都合上、軽空母は登場していません。

今までの出番が少なすぎるため、艦娘が増えたり減ったり、性格が変更される可能性もあります。


長門:連合艦隊旗艦。今のところながもんさんになる予定はない。可愛い物好きを隠さないタイプ。

陸奥:出番が全然なかったため扱いに困る。これからのエピソードでキャラ付けしていければ。

扶桑:鎮守府最古参の戦艦。優しくて面倒見もいいので、駆逐艦からも慕われる。

山城:改二になってから運は改善したものの口癖は抜けない。そのせいで不幸を呼び寄せている。

摩耶:重巡最古参。鳳翔からこっそりと数々の手ほどきを受け、女子力はかなり高い。

川内:ふざけて印を組んだりしてみたら本当に分身出来るようになってしまった。家事はかなり得意。

神通:軽巡最古参。川内と共に、鎮守府初期の前線と家事を支えたしっかり者。特技は肢曲。

那珂:実は練度は6人娘に次いで高い。分身の数を増やすと戦闘のような複雑な動きが出来なくなっていき、
最高の48人ではダンスしか出来なくなる。

五月雨:初期艦。海域攻略が進むうちに那珂と組んでの遠征が多くなる。戦闘よりも向いていると、提督と本人も思っている。

吹雪:自己紹介で頑張り、補給するたび頑張り、改装で頑張り、新年のあいさつでも頑張り、とにかく頑張りまくる。
鳳翔からは対空の手ほどきを何度も受けて、実力は相当高い。

叢雲:吹雪の次に鎮守府に来た古参の1人。最近改二になったが、川内型改二の特殊能力を目の当たりにし自信喪失気味。


・その他、前スレ登場の艦娘たち。殆どキャラ付けがなされていないため、ほぼテンプレ通りの性格。これからの活躍に期待。

妙高 那智 高雄 愛宕 鳥海 最上

朝潮 満潮 雪風 時雨

綾波 敷波 村雨 春雨 

大淀 明石 間宮 伊良湖

6: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:34:25.36 ID:5RXWDyN00


第1話 デートをしよう!


鳳翔「あ……逢引きに……誘われました////」

飛龍「やったね、お母さん! 提督も積極的になってきたじゃん」

瑞鶴「お母さんが洋服着たら、熱出したなんて勘違いしてた頃の朴念仁とはえらい違いね」

鳳翔「そ、それで、ですね。もう一度、私の洋服を、見繕って欲しいんです……」

飛龍「おお、お母さんが積極的に洋服着たいだなんて」

瑞鶴「恋はひとを変えるもんなのねぇ」

飛龍「任せといて! 思わず提督が見とれちゃうコーデをばっちり考えるよ」

瑞鶴「最近は暖かくなってきたもんね。前に提督さんの誘惑に使った、例のタートルネックじゃちょっと暑いか」

鳳翔「あ、あんなの人前で着れるわけないでしょ!?////」

飛龍「でも提督が着て欲しいって言ったら?」

鳳翔「ふぇ!?」

瑞鶴「シンコンの時に、お母さんを膝に乗せて食べさせあいっこする提督さんだもんねぇ。どんな性癖持ってるかわかったもんじゃないわ」

鳳翔「そ……それはそうなんですけど……流石に人前じゃあ……」

飛龍「でも提督の頼みだったら?」

鳳翔「そ、それは……」

瑞鶴「着るんでしょ? ね、ね」

鳳翔「……き、着ます!! あの人が傍に居てくれるなら、どんな格好でも大丈夫です!!」

飛龍「う、うおっと、大変だ。お母さん湯気出そう」

瑞鶴「ごめんごめん、冗談だから。提督さんはお母さんに恥ずかしい思いなんてさせないから……きっと」

7: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:36:44.04 ID:5RXWDyN00

飛龍「さてと、どんなコーデにしようかな。お母さんみたいな黒髪に良く似合うのは……」

瑞鶴「明るい色のがいいわよね。普段見ない分、余計に魅力的に映るかも」

飛龍「春物は大体暖色系ばっかりだから、その辺は大丈夫だね。桜色とかお母さんっぽいわ」

瑞鶴「じゃあカーディガンはその色で行きましょう。それから、フレアとか良いと思うんだけど」

飛龍「いいね! お母さん足細いし長いから、いい感じに短いスカートを探そう」

瑞鶴「それから……えーと、今年のトレンドはオールホワイトだって」

飛龍「カーディガンは暑ければ脱げばいいし……どうせ行くならデニムも買っちゃいましょう。グッ○もプラ○も今年は発表しまくってたわ」

瑞鶴「トップスはTシャツでもいいんだけどまだ寒い日もあるから、長袖のブラウスの方がいいかしらね」

飛龍「意外とワンピースも似合うんじゃないかな? 最近はレース付きで良いのが出てて……」

キャッキャッ コレカワイー!! ワタシモカッチャオウカナー


鳳翔「……」

鳳翔(娘の会話が呪文にしか聞こえません……)

鳳翔(でも、お洒落していったら、あの人喜んでくれるかしら?)

鳳翔「////」

8: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 02:41:31.46 ID:5RXWDyN00

飛龍「……まあ、とりあえず、考えたものは買えるだけ買ってみようか……」

瑞鶴「……そ、そうですね……これじゃ埒があかないですし……結局お母さんなら大体着こなせますし……」

飛龍「あ、そうだ忘れてた。パンプスも選ばないと」

瑞鶴「そういえばお母さん、あの時のニーハイブーツしか持ってませんもんね。……ん?」

飛龍「どしたの?」

瑞鶴「お母さんって、今まで草履しか履いたことなかったのよね」

飛龍「……ああ、そっか!! ちょっとお母さん!!」

鳳翔「どうしたの?」

瑞鶴「これ、履いてみてくれない? 私のオープントゥなんだけど」

鳳翔「あ、ハイヒールね? ちょっと履いてみたかったんです」ウキウキ

飛龍「初めての人がデートに履くのはちょっと危ないかも……長く歩けないしなぁ」

鳳翔「かかとが高いとはいえ、所詮靴なんですから……きゃあああ!?」ドタッ

瑞鶴「……思ったよりバランス感覚悪いわね」ボソッ

飛龍「こりゃ無理だね。ローかショートブーツを探しましょう」

鳳翔「うう……情けないです……」

瑞鶴「少しずつ慣れて行けば大丈夫だって」

21: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 23:30:11.53 ID:5RXWDyN00


◇執務室前・廊下


蒼龍「――あいってなんなーんだ、せいぎってなんなんだー♪」

蒼龍「ちからでかつだーけじゃー、なにかーが……あれ?」

長門「――そういえば明日は、提督の久々の休日だったな」

蒼龍「!!」キキミミ

提督「ああ」

長門「何か予定はあるのか?」

提督「あー、実はね。鳳翔の都合も合うから、2人で出かけてこようと思うんだ」

長門「ほう、そうなのか。つまりデートだな?」

提督「あまり他の子には言わないでくれよ?」

長門「わかっているよ、ゆっくりしてきてくれ。2人とも働き過ぎだからな」

提督「うん。ありがとうね」



蒼龍(デート……)

22: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 23:32:25.93 ID:5RXWDyN00


◇空母寮談話室


翔鶴「え、ええっ!? 明日提督とお母さんがデートするんですか!?」

赤城「……」

蒼龍「そうなのよ! 執務室の前で聞いちゃったの」

飛龍(あっちゃー、蒼龍にばれちゃったかぁ……)

瑞鶴(お母さんも内緒にして欲しいって言ってたのにね)

加賀(貴女たちがコーデしたのはこのためだったのね?)

瑞鶴(うん。出来れば2人で楽しんでほしかったんだけど……)

翔鶴「こうしちゃいられません、私たちもこっそりついて行きましょう!!」

瑞鶴「なんでそうなるのよ翔鶴姉」

翔鶴「え、えーと、提督のご趣味とか、好きな場所とかを調査するためよ」

瑞鶴「2人を邪魔しようとか考えてないでしょうね?」

翔鶴「な、何言ってるの瑞鶴!! 提督が1人になった瞬間に偶然を装って近づいて、
なし崩し的にデートから家族旅行にしちゃおうとか、全然考えてないわ!!」

瑞鶴「お、おう」

23: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 23:40:02.83 ID:5RXWDyN00

瑞鶴「どうしよっか、飛龍さん」

飛龍「うーん、しょうがない。私たちもついて行こう。私も蒼龍が暴走しないか監視しなきゃならないし」

加賀「明日は提督がいないから、出撃も演習もお休みだしね」

赤城「……」

瑞鶴「赤城さんはさっきから黙ったままで、どうしたのかしら?」

加賀「きっと、提督とお母さんのデートを応援すべきか阻止するべきか、自分の良心の呵責に揺れ動いているんだわ」

飛龍「一番のお姉さんらしい悩みね」

24: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 23:47:05.68 ID:5RXWDyN00

瑞鶴「ということは、明日は結局6人でストーキングするわけね」

蒼龍「ストーキングじゃないよ!! 提督とお母さんを見守る会って言おうよ」

飛龍「見守る原動力が邪なのが約3名いるけどね」

加賀「目的地はどこなのかしら?」

瑞鶴「隣町の遊園地だって。電車で行くって言ってたわ」

飛龍「それじゃ結構早く出ないとね。今日は寝て、明日に備えましょう」


蒼龍「飛龍飛龍!! カメラとか着替えとか持って行った方がいいかな!? お弁当も作ろうか!?」

翔鶴「ず、瑞鶴、一応おめかししていった方がいいわよね!? 提督と会うかも知れないし、
もしかしたら2人で観覧車乗るかもしれないし、きゃっ!! そんないきなり大胆な……」

飛龍「2人ともうっさい!! さっさと寝ろ!!」

瑞鶴「何があっても、観覧車に2人で乗せることは私が絶対させないわよ」

赤城「……遊園地ですか。殿方と行ける日がこれから来るのでしょうか」

加賀「……確かに、初の遊園地がデートの監視とは何とも言えませんね」

25: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/23(木) 23:56:15.46 ID:5RXWDyN00


◇次の日・鎮守府


鳳翔「それでは、今日1日よろしくお願い致しますね?」

長門「うむ、任せておけ。2人でゆっくりしてくるといい」

陸奥「今日は提督の決裁が必要なこともないし、仕事は忘れて楽しんできてね」

鳳翔「ありがとうございます……それじゃ、行ってきます」

陸奥「行ってらっしゃーい」

長門「……あんな楽しそうな鳳翔は久々に見たな」

陸奥「そうねぇ、そもそも鎮守府から出ることが少ないしね」

長門「ところで提督はもう出発したのか?」

陸奥「ええ。先に駅の前で待ってるんだって」

長門「何故鎮守府から一緒に行かないのだ?」

陸奥「やぁねぇ長門ぉ、そんなの、デートのお約束をするために決まってるじゃないの」

長門「……?」

26: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:03:06.34 ID:9jm2JpFs0

飛龍「ほら赤城さん、急いで下さい! 遅れたら最初のイベントが見れないよ!」

赤城「ま、待って下さい。お、お弁当の風呂敷が見つからなくて」

加賀「結局お弁当持って行くんですか。遊園地にはいくらでもレストランがありますよ」

瑞鶴「そんな大荷物背負って尾行なんて無理ですよ……あ、加賀さんの私服かわいい」

加賀「ありがとう。貴女も似合ってるわよ」

飛龍「おーい蒼龍、翔鶴!! いい加減に出ないと間に合わないよ!!」

蒼龍「ま、待って、マスカラが上手く付けらんなくて」

翔鶴「瑞鶴、ネックレスはこれとこれ、どっちが提督の好みだと思う!?」

瑞鶴「普段やらないこと無理してやらない方がいいよ。あと提督さんの好みはお母さんに似合うアクセだから」

加賀「っていうか、飛龍が一番楽しそうにしてるじゃない」

27: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:07:39.89 ID:9jm2JpFs0


◇駅


提督「……」

鳳翔「……あなた! 遅れました、待ちましたか?」

提督「いや、今来たところだよ――お、おお」

鳳翔「? どうかされました?」

提督「今日は一段と、その……綺麗だね」

鳳翔「ほ、本当ですか? こんなお洋服着るの初めてで、似合うかわからなかったんですけど……」

提督「本当さ。君はスタイルが良いからなんでも似合うけど、良い感じに露出が少なくてすごく上品に見える。私の好みだよ」

鳳翔「ありがとうございます……あの、これ、飛龍ちゃんと瑞鶴ちゃんに選んでもらったんです」

提督「そうだったのか。後でお礼言っとかなきゃな……それじゃあ、行こうか」

鳳翔「はい!」

28: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:17:05.03 ID:9jm2JpFs0

飛龍「よしっ、定番ネタ回収、頂きました!!
――ちなみに今回のコーデ! 桜のロングカーディガンに白のブラウス、ネイビーのフレアスカートで上品な印象に仕上げたよ」

瑞鶴「ショートブーツじゃちょっと暑いしシルエットが引き締まらないから、白いぺたんこシューズで無難に纏めたわ。
ローヒールは歩きまわるデートに向かないからまた今度ね」

加賀「それと、大事なのがバッグね。肩紐がチェーンのキルティングは柔らかい印象を与えるから、
スカートの上品さと相まって良く合うわよ。ステッチははっきりしている物の方がワンポイントになってお勧めね」

赤城「……あの、誰に向かって喋ってるんですか?」

飛龍「気にしない気にしない。私たちも電車乗るよ、2車両分開けてね」

蒼龍「うう……やっぱりお母さん可愛い……」

翔鶴「私、今日の服で大丈夫かしら……やっぱりこの間買ったTシャツの方が良かったかな……」

瑞鶴「なんでデートする前提なのよ」

29: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:25:21.73 ID:9jm2JpFs0


◇遊園地最寄駅


瑞鶴「――歩き始めたわね。どう思う、加賀さん?」

加賀「あくまで自然に、自分が車道側を歩くあたりポイント高いわね。
それから背の低いお母さんに合わせて、歩きやすい早さで歩いてるのがさらに好印象よ」

瑞鶴「なるほど、さりげない優しさがにじみ出てるわけね。流石提督さん」

加賀「それだけじゃないわ。2人の繋いでる手を見て」

瑞鶴「……!! あ、あれは、恋人繋ぎ!!」

加賀「その通り。多分お母さんはあの繋ぎ方の意味をわかってないわ。
だから提督は自分の欲望を満足させつつ、お母さんの自然な表情を間近で楽しむことが出来るのよ」

瑞鶴「て、提督さん……恐ろしい子っ!!」

飛龍「楽しそうね2人とも……ちゃんとお邪魔虫3人を見張っててよ?」

30: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:32:54.02 ID:9jm2JpFs0


◇遊園地に到着!


提督「――さて、何から乗ろうか?」

鳳翔「あ、あの、ですね、私こういうところに来たことがなくて……だからどんなものがあるか、よくわからないんです」

提督「あ、そうだったね。といっても、私も幼いころに家族と来たっきりだから、慣れてるわけじゃないんだけど」

鳳翔「乗る順番が決まっていたりするのですか?」

提督「いや、そんなことはないよ。好きなアトラクションから乗っていけばいいんだ……何か気になるものはない? 見た感じで良いよ」

鳳翔「そ、それじゃあ、あれに乗ってみたいです!!」

提督「ん、どれ……!?」


→遊園地デートのラスト鉄板


提督「あれはダメです」(真顔)

鳳翔「え、どうしてですか? 一番大きくて楽しそうですけど」

提督「とにかく今はダメなの。最後にちゃんと乗るから、ね?」

鳳翔「そ、そうですか? それじゃあっちの方の……」


瑞鶴「うわ、お母さん定番が効かないのね」

飛龍「ちょっとやりにくそうだけど、ここが提督の腕の見せ所だね」

31: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:43:34.33 ID:9jm2JpFs0

鳳翔「あ、あれ可愛いですね!」

提督「コーヒーカップか。じゃあ乗ろう」

鳳翔「はい!」


蒼龍「むむ、コーヒーカップに向かったよ!」

翔鶴「私たちも行きましょう、蒼龍さん!」

瑞鶴「ちょっとちょっと! 何ナチュラルに並ぼうとしてるのよ」

加賀「私たちはあくまで忍びの身なのよ? 見つかったらダメなのよ」

飛龍「また良からぬことを企んでるんじゃないでしょうね?」

翔鶴「な、何言ってるんですか飛龍先輩!! お母さんが初めてのコーヒーカップで、回し方の加減がわからずにどんどん回して、
目を回した提督とお母さんを偶然を装って引き離して、提督を膝枕で介抱してあげようなんて、全然考えてませんよ!!」

飛龍「お、おう」

32: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 00:53:37.88 ID:9jm2JpFs0

瑞鶴「……じゃあわかったわよ、翔鶴姉。私と一緒に乗ろう」

翔鶴「ず、瑞鶴! 手伝ってくれるのね!?」

飛龍「……どうするつもり? 瑞鶴」(小声)

瑞鶴「大丈夫大丈夫。任せといて」(小声)

加賀「蒼龍は私と一緒に乗りましょうか」

蒼龍「あ、ありがとう加賀さん! よしっ、頑張るぞ」

赤城「……」モグモグ

飛龍「……あれ赤城さん、もうお弁当開けちゃったの?」

赤城「? いえ、これは10時のおやつですけど」

飛龍「わ、わかったわ。重箱10段って赤城さんのお昼にしては少ないと思ってたのよね」

33: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 01:01:09.42 ID:9jm2JpFs0

鳳翔「あなた、このハンドルは何ですか?」

提督「これを回すとカップが早く回るんだよ。遊具だと思って甘く見てると、結構――」

――ジリリリリリリ――

鳳翔「あ、始まりましたよあなた! 回してみて良いですか?」

提督「う、うん。無理しないで、気分が悪くなったらすぐ言うんだよ」

鳳翔「もうっ、私そんなに体弱くありませんよ!! でも……心配してくれて、ありがとうございますね?」

提督(くそっ、可愛い!! カメラ構えたいが乗り物中は危ない、ウオォッ!!)

34: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 01:04:07.22 ID:9jm2JpFs0

翔鶴「お、お母さん、あんなに提督にくっついて羨まし、い、いや、心配ですね!!」

瑞鶴「もう全然ごまかせてないじゃん……せっかく私と乗ってるんだから、楽しんでほしいのに……」

翔鶴「ず、瑞鶴……ごめんなさい、私、我が儘だったわね……」

瑞鶴「ううん、いいのよ。それより私がハンドル回して良い?」

翔鶴「ええ、もちろんよ瑞鶴!」

瑞鶴「よっし、じゃあ任せといて。それっ!!」

翔鶴「……」

瑞鶴「もっともっとー!!」

翔鶴「……ず、瑞鶴? ちょっと待って、そんなに左右に振り回したら――」

瑞鶴「まだまだ行けるよー!!」

翔鶴「……う、うぅっ……目が……」

35: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/24(金) 01:05:37.06 ID:9jm2JpFs0

飛龍「なるほどね、そういうことか……加賀さんと蒼龍は?」

蒼龍「――や、やめてぇ加賀さーん!! 右回転は……右回転ずっとはダメなんだよぉ!!」

加賀「良い機会だから貴女もトラウマを直しなさい。これから悪夢を見ないとも限らないし」

蒼龍「今は関係ないしぃいいいいいい……」

飛龍「……2人ともあんなに弱くて良く乗ろうとしたわね。その度胸は褒めてやるべきか」

赤城「初めての遊園地は中々刺激的ですね。皆で来れて良かったです」

飛龍「赤城さんまだお弁当食べただけじゃん……これから酔って吐かないでよ?」

赤城「問題ありません。これからのお昼と、3時のおやつの分を考えて食べてますから」

飛龍「うーん、遊園地に食べ放題ってあるのかなぁ……」

43: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 12:52:18.82 ID:C43MGMvA0

鳳翔「楽しかったですね、あなた!!」

提督「そうかそうか、喜んでくれたならよかったよ」

鳳翔「……? 何故カメラを構えていらっしゃるんですか?」

提督「君が可愛いからだよ」

鳳翔「え、ふぇ!?////」

提督「アトラクションの最中は危ないから、こういう時に沢山撮っておかないとね」

鳳翔「は、恥ずかしいですよ……」

提督「私服なんて普段着ないんだから、今日は鳳翔アルバムが潤うね」

鳳翔「なんですか鳳翔アルバムって!?」

44: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 12:53:30.40 ID:C43MGMvA0

飛龍「よしよし、良い雰囲気のまま次に向かったね」

瑞鶴「この調子で行きましょう」

蒼龍「」

翔鶴「」

加賀「次のアトラクションまでは復活しないでしょう……赤城さんは?」

赤城「――ソフトクリーム全種類、2つずつ下さい――あ、全部コーンで――カード使えます? じゃあこれで――」

加賀「私もちょっと行ってきます」ダッ

瑞鶴「加賀さんも甘党だったんだ」

飛龍「赤城さんは提督より食欲なのかしら?」

瑞鶴「そこら中から甘い匂いが漂ってきてますからね」

46: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 13:14:00.54 ID:C43MGMvA0

鳳翔「何かあそこだけ、他と雰囲気が違いますね」

提督「どれ? ああ、お化け屋敷か」

鳳翔「どんな所なんですか?」

提督「うーん、言っちゃうと面白くないからな。とりあえず、色んなお化けが脅かしてくる所だね」

鳳翔「あはは、お化けなんていませんよー。作りものとわかってて怖いわけないじゃないですか」

提督「それがそうでもないんだなぁ。入ってみようか?」

鳳翔「はい! 私が全部正体を見破ってあげちゃいます」フンスッ

提督(胸張って強がってる鳳翔も可愛い)シャシンシャシン……

47: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 13:18:51.98 ID:C43MGMvA0

提督「あ、はい、2人です――中で写真は――やっぱりダメ? そうですよねぇ――」

鳳翔(並んでる方々も、私たちみたいなカップルばかりですね……)

鳳翔(私とあの人もちゃんとカップルに見えてるかしら?)

鳳翔(////)

――キャアアアアアアアアアア!!!!――

――ウワァアアアアアアアアア!!!!――

鳳翔「!?」ビクッ


提督「おお、随分やってるな。結構有名な怖い所らしいよ」

鳳翔「そ、そんなに怖いんですか!?」

提督「やめておくか?」

鳳翔「い、いえ大丈夫です……でも……」

提督「?」

鳳翔「ち、近くに居て下さいね……?」

提督「任せておけ何があっても守ってみせる」

48: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 13:25:44.96 ID:C43MGMvA0

提督「……おお、流石に暗いな」

鳳翔「あ、あなた、あなた! 手離さないでくださいね!!」

提督「おう、大丈夫だy」

→動く骸骨・ろくろっ首・のっぺらぼう

提督「うお「きゃあああああああああああああああ!!!!」

提督「ほ、鳳翔!?」

鳳翔「いいいい行きましょう早く進みましょう!!」

提督(お化けの方がびっくりしてるぞ)

49: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 13:32:56.78 ID:C43MGMvA0

→ゾンビ・動く騎士・デュラハン・キョンシー・飛頭蛮

鳳翔「いやあああああああ!!!! なんですかあれあんなの知りませんっ!!」

提督「外国のお化けだよ、しかし随分ごちゃ混ぜのお化け屋敷だな」

鳳翔「なんであなたはそんなに平然としてるんですかっ!?」

提督「いや、だってなぁ……」

提督(鳳翔の表情見てる方が可愛くて面白いんだもん)

鳳翔「あっ、出口見えましたよ!! 早く行きま」


→唐突な顔にこんにゃく


鳳翔「」キュウ……

提督「おっと。よしよし、頑張ったね」

提督(いや楽しかったな。色々な表情が見れてよかったよ)

52: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:29:13.17 ID:C43MGMvA0

鳳翔「……ハッ、ここは?」

提督「レストランの中だよ。丁度いい時間だったから、混む前に入れてよかった」

鳳翔「うう、まさかあなたの前で気絶するなんて……情けないです……」

提督「そんなことないって、可愛かったしさ」

鳳翔「もっと頼りがいのある女になりたいんです」

提督「十分頼りにしてるよ。ほら、バイキングだから料理取っといで」

鳳翔「あ、はい。それじゃ行ってきますね」

53: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:31:20.57 ID:C43MGMvA0

蒼龍「うう、なんかすごく、嫌な夢を見てたような」

加賀「そのまま思い出さなくて良いわよ」

飛龍「ふー、6人分席取れて良かったね」

翔鶴「私、バイキングで得するほど食べられそうにないです……」

瑞鶴「だ、だからごめんってば」

赤城「大丈夫です。私が6人分元取りますので」

飛龍「バイキングで元取るのは難しいんだけどねー」

加賀「私もいますので問題ありません」

瑞鶴「レストランにとっては問題ありありだよ……ん?」


鳳翔「~~♪」

54: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:32:09.68 ID:C43MGMvA0

瑞鶴「うおおおおおいちょっとちょっと!! 提督とお母さんと同じお店じゃん!!」(小声)

飛龍「う、うそ!? あの2人の好みから、もっと落ち着いたとこで食べると読んでここにしたのに!!」(小声)

蒼龍「そ、そんな……これじゃ何度もお料理を取りに行ったら」

翔鶴「お母さんや提督にばれてしまうかも……」

赤城「」

加賀「だ、大丈夫です。私服なので多分ばれませんよ」

55: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:34:38.78 ID:C43MGMvA0

鳳翔「おいしいですね、あなた!」

提督「う、うん。そうだな」

提督(鳳翔の料理に慣れてしまうと物足りないな……喜んでるから良かったけど)

鳳翔「この後はどうしましょうか?」

提督「そうだな、後いくつか乗って、最後に観覧車かな」

鳳翔「あの大きなやつですね、楽しみです」

提督「本当は明日も休みにして、ゆっくりしたかったんだけどね」

鳳翔「大規模作戦の前ですからね、1日ゆっくりできただけでも良しとしましょう」

提督「そうだね……あれ?」

鳳翔「どうかなさいました?」

提督「いや、なんか今、赤城たちの声が聞こえたような……」

鳳翔「……」

56: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:36:23.23 ID:C43MGMvA0

赤城「飛龍、こっちですよ、早く早く」

飛龍「赤城さん、しーっ!! ほら、お肉とお魚持ってきましたから」

瑞鶴「目立たないように1人ずつ取りに行って、何とか1人前くらいは食べられたけど」

加賀「時間制だから、そろそろ出なければならないわね」

蒼龍「私は結構甘いもの食べられたから満足かな―」

翔鶴「まだちょっと食べられないです……あとで何か買おうかしら」


瑞鶴「提督さんたちは食べ終わって出て行ったわね」

飛龍「私たちはもうこの辺で退散しない? 何個か乗りに行ってもいいからさ」

蒼龍「こ、これじゃあ仲良しグループで遊園地に遊びに来ただけじゃん!!」

翔鶴「私は提督と観覧車に乗りたいんです!!」

瑞鶴「させないって言ってるでしょ。いい加減諦めなさい」

加賀「赤城さん、食べ終わりましたか? そろそろ行きますよ」

赤城「あ、あの、重箱に残りを詰めてもいいでしょうか?」

飛龍「ダメに決まってるでしょ。それ以前にみっともないよ」

加賀「帰りも重箱背負って帰るつもりですか……」

57: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:38:15.70 ID:C43MGMvA0

鳳翔「……あなた、ちょっとあっちの広場に行きませんか」

提督「そうだね、食べたばっかりだからちょっと休むか」

鳳翔「はい。それからですね、ちょっと……」



加賀「ここは確か、イベント広場だったわね」

赤城「あ、チュロスの屋台が出てます。ちょっと買って……あら?」

翔鶴「どうしました?」

赤城「今、何かエンジンの音が……!! 皆伏せて!!」

蒼龍「きゃあああ!! な、何!?」

瑞鶴「いきなり飛行機が……!? まさか敵襲!?」

飛龍「真っ黒にペイントしてあったけど、深海棲艦の艦載機じゃなかったような……」

58: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:42:22.42 ID:C43MGMvA0

赤城「とにかく私が迎撃します。散開して下さい!!」

瑞鶴「ど、どうして艦載機を持ってきてるの!? それに弓なんてどこから!?」

赤城「お母さんに作ってもらった、折り畳み式の飛行甲板セットです!! 全機発艦!!」

瑞鶴(とりあえずツッコミは置いておこう)

蒼龍「あっちは3機でこっちは6機だよ!!」

翔鶴「しかも、赤城先輩の戦闘機は烈風改です!!」

加賀「負けるはずがありませんね」

飛龍(フラグ)

瑞鶴(フラグ)

59: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:44:18.96 ID:C43MGMvA0

赤城「……!?」

蒼龍「う、うそ!? こっちが落とされてく!!」

翔鶴「そんな、最高練度の正規空母に最高の戦闘機ですよ!?」

瑞鶴「……あのエンジンの音、零戦21型に似てるけど」

飛龍「それにしてはクリアな音だし、格闘性能が良すぎるよ」

加賀「旧式の戦闘機をあそこまで扱えるひとなんて……」

赤城「ぜ、全滅!? 6機の烈風改が、30秒で全滅ですか!?」


「だから、敵を侮るのは悪い癖だと言っているでしょう」


赤城「お……」

「「「お母さん!!」」」

60: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:46:09.09 ID:C43MGMvA0

提督「突然どうしたのかと思ったよ」

飛龍「ご、ごめんなさい提督、お母さん」

加賀「お二人を邪魔する気はなかったのですが……」

鳳翔「まったく、デートの後をつけるなんて、帰ったらお説教ですね」

蒼龍「う……反省します……」

翔鶴「いつから気付いていらしたのですか?」

鳳翔「鎮守府を出るときから、はるか上空に航続距離の長い九七艦攻をあの人の護衛に張り付かせていました」

瑞鶴「最初っからバレバレじゃん!!」

鳳翔「私たちに実害がなければ、お互いに楽しめればいいと思っていたんです。しかしレストランでの会話は聞き捨てなりません」

赤城「レストランで?」

鳳翔「観覧車は私が一緒に乗るんです。初の遊園地で、ここは譲れません!!」

加賀(あら?)

瑞鶴「お母さん可愛い!!」

61: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/25(土) 16:47:06.42 ID:C43MGMvA0

飛龍「ほらほら、いい加減帰りますよ!」

赤城「ちょ、ちょっと待って下さい。さっきのチュロスを……」

瑞鶴「ほら翔鶴姉、諦めて帰ろう」

翔鶴「て、提督!! 今度は私と一緒に観覧車乗って下さい!!」

加賀「蒼龍も帰るわよ」

蒼龍「うー、き、今日の所は負けです!!」

加賀「勝ったことないでしょう……それでは、失礼します」



鳳翔「ふー……まったくもう」

提督「ちょっと邪魔が入ってしまったな」

鳳翔「本当ですよ。2人でせっかく楽しんでいたのに」

提督「でも、丁度日も暮れてきたし良い時間だ。観覧車に向かおう」

鳳翔「夕暮れに乗るのがいいんですか?」

提督「その辺は色々意見があると思うよ、夜景をメインにするとか。でも私は、夕焼けがきれいな時間が好きだな」

68: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:10:33.23 ID:nGgkZAiN0


◇観覧車


鳳翔「……結構ゆっくり回るものなんですね?」

提督「うん。その時間を楽しむものだから」

鳳翔「だから最後に乗るんですね」

提督「大体はね。これに乗って帰る人も多いんじゃないか」

鳳翔「確かに、他のと違って落ち着きますね」

提督「そうだね。君のそばにいるともっと落ち着くな」

鳳翔「そうですか? うれしいです」

69: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:19:42.50 ID:nGgkZAiN0

鳳翔「うわ、見て下さい! 海が見えますよ、鎮守府も見えるかしら」

提督(夕日に照らされた鳳翔の横顔……綺麗だ……額縁に入れて飾っておきたい……)

提督(カメラ……は、無粋だな。自分の目と胸に焼きつけておくか)

鳳翔「もうっ、あなた、聞いてます?」

提督「お、おうっ? なんだっけ」

鳳翔「ほら、普段から見慣れてる海も、高い所からだと印象が違いますよ」

提督「本当だな。君たちが守ってきた海だ、やっぱり美しいな」

鳳翔「私たちと、あなたがですよ」

提督「……ああ」

70: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:20:21.92 ID:nGgkZAiN0

提督「鳳翔、こっちにおいで」

鳳翔「はい」

提督「君には伝えたいことが沢山あるんだ。でも、言葉にすると安っぽくなる気がする」

提督「あの約束もそうだけど、君への気持ちは態度で示していきたい」

提督「私は奥手だそうだからね」

鳳翔「……ふふ、そうですね」

提督「だけど、これだけは言わせて欲しい」

提督「――君に会えてよかったよ。いつまでも私のそばに居てくれ」

鳳翔「――はい! こちらこそ、よろしくお願い致します――」

71: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:21:28.42 ID:nGgkZAiN0

――ガタァン――

鳳翔「!?」

提督「と、止まった!? なんてベタな……」

鳳翔「あなた、これって止まるものなんですか?」

提督「いや普通は止まらないけど、約束と言うか定番と言うか」

鳳翔「きゃ……揺れますね」

提督「天辺は過ぎたけど、結構上の方で止まったから風強いな」

鳳翔「……あの、あなた……抱きしめてもらってていいですか」

提督「もちろん。……でも、あまり怖そうじゃないね?」

鳳翔「ひとりだったら怖かったんですけど。あなたと一緒なので全然大丈夫です、うふふ」

72: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:25:44.18 ID:nGgkZAiN0

提督「……ふー……鳳翔」

鳳翔「はい?」

提督「今の君は最高に可愛いな。いやいつも可愛いけどさ」

鳳翔「な、なんですかいきなり!?」

提督「こんな所に2人でいると、キスしたくなるな」

鳳翔「いや、あのう、そんな直接言われるとですね……」

提督「ダメかな?」

鳳翔「も、もう、私は妻なんですよ! デートに連れてきて許可なんか取ってないで、行動で示して下さい!!」

73: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:27:17.15 ID:nGgkZAiN0

提督「ご、ごめん。今のは無しで頼む」

鳳翔「本当ですよ、まったくもう――はい!」

提督「ありがとう――」

鳳翔「――ん――ふぅ。――あ、観覧車動きましたね」

提督「結構早く動いたな。よかったような残念なような」

鳳翔「……あのですね、仕事柄、なかなか2人っきりになれないじゃないですか?」

提督「そうだね」

鳳翔「だからこんな時くらい、お互い遠慮せずに話しましょうよ」

提督「気を使わせてすまない……」

鳳翔「謝らないでくださいよ。私、今日とっても楽しかったですから」

提督「それなら良かったけど……デートも終わりか。また明日から仕事頑張らなきゃな」

鳳翔「……」

提督「鳳翔?」

74: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:28:09.42 ID:nGgkZAiN0

鳳翔「……ねぇ、あなた。わがまま言って良いですか?」

提督「珍しいな。なんでも言ってごらん」

鳳翔「あ、あの! 私今日は帰りたくな……じゃ、なくって、その!!」

提督「何だって?」

鳳翔「鎮守府に帰るのは、明日の朝にしませんか!?」

提督「お、おうっ!? 今日は大胆だな鳳翔、酔ってるのか!?」

鳳翔「2人で過ごせる時間も、もうしばらく取れないと思うんです。これからE海域の攻略ですし、きっと寝る時間もずれるでしょうし!」

75: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:30:11.66 ID:nGgkZAiN0

提督「いや、大変に魅力的な提案なんだけど……明日の執務開始には間に合うように帰らないと、仕事が……」

鳳翔「ある程度は、長門さんと赤城ちゃんに任せれば大丈夫ですから! この時期は演習だけですし、月末で忙しいってわけじゃないですし。ね?」

提督「いや、それでも編成は自分が決めないと……」

鳳翔「……ダメ……でしょうか……?」

提督「書類は赤城に編成は長門に任せよう私が指揮を執れない時の練習にもなるしないっそ明日は提督権限で2人とも有給にしてゆっくり帰ろう」

鳳翔「はい、あなた!」



第1話 終


76: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:38:04.66 ID:nGgkZAiN0


第1.1話 ~そんな簡単に観覧車は止まりません~


呉提督「そろそろ良い時間だな。観覧車乗って帰るか」

榛名「は、はい。そうですね……」

呉提督「チケット買ってくるから、ちょっと待っててくれや」

榛名「あ、はい」

榛名「……」

榛名「あーあ、楽しい時間は過ぎるのも早いなぁ……」

榛名「もうちょっとゆっくりして……ううん、だめ、提督はお忙しいんだから」

榛名「今日遊べただけでも良かったと思わなくちゃ」

榛名「……うう、でも……あ、あれ? これは」

――開園1周年企画! 観覧車の天辺で、恋人ともっと仲良くなろう!――

榛名「な、何だろう、これ」

77: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:38:57.98 ID:nGgkZAiN0

スタッフ「お客様、ご興味がおありですか?」

榛名「え!? いえ、私はその」

スタッフ「カップル限定の企画でして、観覧車の一番上でストップさせて甘い時間を過ごしてもらおうというものです」

榛名(なんて傍迷惑な企画!!)

スタッフ「止まる時間は1分、1日3組様限定です」

榛名(1日に3回も止まる観覧車って……)

78: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:40:03.37 ID:nGgkZAiN0

スタッフ「如何でしょう。本日は残り、1組様分となっておりますが」

榛名「い、いえ、流石にちょっと他の人に迷惑かな、って」

スタッフ「1回転18分のうち1分ですし、より長く楽しんで頂けるので好評ですよ」

榛名「上の方で止まったなら良いかもしれませんけど……」

スタッフ「それに、この企画は今日までなんです。次はいつになるかわかりませんよ」

榛名「……」

スタッフ「この観覧車でキスをしたカップルは、二度と離ればなれにならないという逸話が」

榛名「あ、あの! これ、お願いします!!」



呉提督「おう、お待たせ……何かあったのか?」

榛名「な、何でもありません!! 早く行きましょう!!」

呉提督「お、おい落ち着けって。急いでも並ばないと入れねーぞ」

79: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:45:22.07 ID:nGgkZAiN0


第1.2話 ~長門と赤城、お留守番はつらいよ~


長門「もしもし、こちら――ああ、提督か」

長門「――何? 明後日の朝まで帰れない? どういうことだ」

長門「――おいちょっと待て、明日の演習はどうするんだ!?」

長門「――任せるだと!? そんな急に言われても困るぞ!!」

長門「おい、それじゃ鳳翔は――待て、まだ切るな!! あっ……」

陸奥「どうしたの? 何かあった、長門」

長門「……えらいことになった……また鎮守府がひっくり返るぞ」

陸奥「はい?」

80: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:47:43.61 ID:nGgkZAiN0

時雨「た、大変だ長門さん!! 五月雨と綾波が洗濯物を運んでたら、2人とも転んで泥だらけにしちゃったんだ!!」

長門「何だと!? あれほどあの2人には誰か監視をつけろと言っておいただろう!!」


那智「大変だ、赤城!! 朝から大淀がてんてこ舞いで、演習任務の受注を忘れたと言ってるぞ!!」

赤城「な、何ですって!? すぐ加賀さんに言って、一番早い飛行機を飛ばして下さい!! 今なら輸送車に追いつけるはずです!!」


妙高「大変です長門さん!! 演習相手が開始時間を早めて欲しいって、もうこちらに向かってるそうです!!」

長門「そんなこと当日に言われても困るぞ!! とりあえず間宮にお茶でも出させて足止めしておいてくれ!!」


山城「大変よ、赤城!! 扶桑姉様が瑞雲と間違えて、零水偵ガン積みのまま演習に出て行っちゃったわ!!」

赤城「だから主砲と水上機をぽこぽこ乗せ換えるのはやめて下さいと言ってたじゃないですか!! いい加減改二の艤装にも慣れて下さい!!」



雪風「お二人とも、しれぇと鳳翔さんからのご連絡です!! 『もう一泊してきてもいいか』だそうです、お返事は!?」

長赤「「スグカエレ!!!!」」 

81: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 12:51:32.86 ID:nGgkZAiN0


第1.3話 ~正規空母Presents! ナンパ男ぶった切り 6番勝負~


◇提督と鳳翔お化け屋敷中

瑞鶴「加賀さん加賀さん! ジェットコースター乗りに行こう!」

加賀「ちょ、ちょっと待って。あの3人を見張ってないと」

飛龍「大丈夫だよ加賀さん。私が付いてるから2人で行っといで」

瑞鶴「ありがと飛龍さん! すぐ戻ってくるからね!」

加賀「ごめんね、それじゃ行って来るわ」


赤城「……」ポップコーンモグモグ

蒼龍「」

翔鶴「うー……頭痛い……」

飛龍「まあ3人ともおとなしいから大丈夫でしょ」

82: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:08:52.07 ID:nGgkZAiN0

赤城「……」アイスクリームモグモグ

モブA「さっきから見てたけど随分食べるんだね。お腹空いてるの?」

赤城「……」パンケーキモグモグ

モブA「あ、ごめんね、いきなり話しかけちゃって。君の食べてる姿がすごい可愛くてさ」

赤城「……」タイヤキモグモグ

モブA「あっちに美味しそうなお店見つけたんだけど、一緒に行かない? 奢ってあげるから」

赤城「……」パフェモグモグ

モブA「あの……聞いてる?」

赤城「……」ドーナツモグモグ

モブA「なんだこの人……ダメか」

赤城「……」クッキーモグモグ


赤城「……」

赤城「……ふう。甘いものも1人だと空しいですね」

赤城「……今度は誰かと……いえ、あの人と一緒に……」

赤城「……正々堂々と誘ってみようかしら」



飛龍「赤城さん、ちょっとその辺歩いてきてもいい?」

赤城「ええ、どうぞ」

83: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:09:54.52 ID:nGgkZAiN0

蒼龍「」

モブB「……ねえ君、君。さっきからずっとうなだれてるけど、気分でも悪いの?」

蒼龍「……」

モブB「大丈夫? あっちに医務室があるから、連れて行ってあげようか」

蒼龍「……ブツブツ……」

モブB「え、何?」

蒼龍「……右回転は嫌だ右回転は嫌だ右回転は嫌だ……」

モブB「(これアカン奴や)」

モブB「……じ、じゃあねー」


蒼龍「……」

蒼龍「……はっ、あ、あれ? 私一体何を……」

蒼龍「あーあ、提督とコーヒーカップ乗りたかったなー……」

84: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:11:46.00 ID:nGgkZAiN0

翔鶴「うーん……」

モブC「ねえ君! ずっとベンチに座ってちゃつまんないよ、俺らとなんか乗りに行かない?」

翔鶴「……? どこか連れて行ってくれるんですか?」

モブC「お、脈アリ? どこでもいいよー、ゴーカートでもパイレーツでも、観覧車でも」

翔鶴「……は? 観覧車?」

モブC「あ、2人じゃ不安? こっちは友達と来てるからさ、君の友達も……」

翔鶴「何言ってんのアンタ。提督と乗れない観覧車なんて何の意味があるっての?」

モブC「えっ」

翔鶴「逆に聞くけど、初対面の人と観覧車乗って何話すの? 今日は良い天気ですねーとか話してみる?」

モブC「」

翔鶴「男の集団で来てる連中、警戒しないとでも思ってんの?」

翔鶴「私がそんなに軽い女に見えたんなら、安っぽい口説き文句考える前に眼医者行きなさい。脳外科の方がいいかもね」

モブC「」

翔鶴「言ってる意味わかるかしら、アンタらは私が遊びにつきあってもいいかなってレベルにさえ達してないの。わかったらさっさと失せなさい」

モブC「ひ、ひぃっ!!」


翔鶴「……」

翔鶴「……はっ、あ、あれ? 私一体何を……」

翔鶴「あーあ、提督と観覧車乗りたいなー……」

85: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:16:51.27 ID:nGgkZAiN0

飛龍「すてきなおもいつなぎあわせーてー、すこしずつできるネックレス♪」

モブD「あ、あの……」

飛龍「だれにもーみえない――わたしのほうせき――」

モブD「あの、すみません!! ハンカチ落としましたよ」

飛龍「? え、私? ……いや、これ私のじゃないけど」

モブD「そうですか? おかしいな」

飛龍「……ははぁ、これナンパ? 随分古臭い手使うのねぇ」

モブD「う……やっぱりそうでしょうか」

飛龍「でも、そうやって勇気を振り絞って声掛けてくる所には好感持てるね。私、結構古風なの好きだし」

モブD「本当ですか? それじゃ、良かったら……」

飛龍「でもごめんねー、貴方、ちょっと若すぎなのよね」

モブD「そ、そうですか」

飛龍「貴方に落ち度は全然なくて申し訳ないんだけど。悪いけど私、年上好みなの」

モブD「……申し訳ありませんでした、失礼します」

飛龍「お、諦めもいいね。大丈夫、きっと良い人が見つかるよ」


飛龍「……」

飛龍「……なんちゃってね。赤の他人の恋路、心配してる場合じゃないでしょ、私」

飛龍「改めて思えば、提督は超優良物件よねー。これでもうちょっと年食ってたらな……」

飛龍「……あーあ……何とかしてよ、多門丸」

86: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:18:43.54 ID:nGgkZAiN0

瑞鶴「並んでるわねー」

加賀「そうね、でも30分ぐらいかしらね」

モブE「ねーねー、君たち2人? 可愛いねー」

モブF「この後一緒に回ろうよ。チケット余っちゃってさぁ」

加賀「結構よ」

モブE「そんなこと言わないでさー、きっと楽しいから、ね?」

モブF「俺らも2人じゃつまんないからさ、助けると思って一緒に来てよ」

87: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:20:13.55 ID:nGgkZAiN0

瑞鶴(か、加賀さん……)

加賀(瑞鶴、ちょっと私に合わせて)

加賀「貴方たち、2人で来たの?」

モブE「お? そうそう、そっちも2人でしょ? 丁度いいと思ってさ」

加賀「そうなの。こんなところで同好の士に会えてうれしいわ」

モブF「へ? 同好?」

加賀「随分不思議そうな顔するのね? 貴方たちもこんな関係なんでしょ?」


→恋人繋ぎ見せつけ・肩に頭乗せ


モブE「」

モブF「」

瑞鶴「そ、そうよね! 遊園地に来るのに男2人なんて、こうじゃなきゃ考えられないわよね!」

加賀「その通りよ。よかったら連絡先教えてくれない? 今度そういう集まりがあるから紹介してあげるわ」

モブE「お、おい」

モブF「バカ! 逃げるぞ、早く!!」

88: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:21:26.36 ID:nGgkZAiN0

加賀「まったく……頭の悪そうな人種ね」

瑞鶴「あ、ありがとう加賀さん。流石機転が利くわね」

加賀「いきなりあんな事してごめんなさいね」

瑞鶴「い、いいのよ! すごく助かったわ」

加賀「貴女も、こういう人混みでは気をつけなさい。なるべく1人になるのは避けるのよ?」

瑞鶴「はぁい。……あの、加賀さん……」

加賀「ん? ……ああ。ごめんなさい、手離すの忘れてたわ」

瑞鶴「う、うん」


瑞鶴「……」

瑞鶴「……恋人繋ぎか。これから誰とするかなんて想像つかないなぁ」

89: ◆GoPzFNH1CI 2015/04/29(水) 14:22:50.22 ID:nGgkZAiN0

加賀「何か言ったかしら?」

瑞鶴「あのさぁ、加賀さん。提督さんのことどう思ってる?」

加賀「……上司として信頼できる方だと思ってるけど。そういうことじゃないのよね?」

瑞鶴「うん。男性としてさ」

加賀「そうね……今のところは蒼龍や翔鶴ほどの感情は無いかしらね」

瑞鶴「あ、加賀さんも? 私もおんなじ感じ」

加賀「私、まだ誰かと恋愛したいとか思ったことがないから。誰かとそんな関係になるって、ちょっと想像つかないわね」

瑞鶴「そっかぁ……」

加賀「それに、提督を好きになったら大変よ。まずお母さんに勝たなくちゃならないじゃない」

瑞鶴「あはは、そうそう。だから赤城さんたちも苦労するのよね」



加賀「……今は、提督やお母さんや貴女たちと、みんなで仲良くできればそれで良いんじゃないかと思ってるわ。今はね」

瑞鶴「そうね。提督さんなら私たちを離ればなれにしたりしないだろうし……それからのことは、また考えればいいわよね」

102: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 19:57:41.46 ID:b21AWWBP0


第2話 ~E海域攻略、お疲れ様!~


提督「パーティだって?」

陸奥「ええ。第十一号作戦は無事成功、甲種勲章も頂いたでしょ?」

提督「そうだな。皆頑張ってくれたよ、本当」

陸奥「だから一区切りってことで、慰労パーティしましょうよ!」

提督「うん、良いと思うよ。しばらく出撃は無いから、明日の夜あたりにしようか」

陸奥「料理とかお酒の買い出しは、間宮さんや鳳翔さんと協力してやっておくわ。提督はゲームの景品でも用意しておいてね」

提督「私が選んでいいのか?」

陸奥「貴方が選ぶからいいんじゃない。みんな喜ぶと思うわよ」

提督「そうかな? でもそう言われると困るな。どんなのにすればいいんだろ」

陸奥「まあ、誰かに相談してもいいし。それこそ鳳翔さんとかいいんじゃない?」

提督「ん、それもそうだ。それじゃ、後で領収書渡してね」

陸奥「了解よー」

103: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 19:58:51.29 ID:b21AWWBP0

鳳翔「第十一号作戦、お疲れ様でした!」

提督「皆のおかげだよ。君も、ステビア海まで支援に出てもらって」

鳳翔「私の出撃も久しぶりでしたが、お役に立てて良かったです」

提督「それで、陸奥に言われたんだけど――」

鳳翔「――慰労パーティですか。いいですねぇ」

提督「うん、明日の夜は間宮や伊良湖と協力して、普段より豪華なのをお願いしたいんだ」

鳳翔「はい、お任せ下さい!」

104: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 19:59:34.29 ID:b21AWWBP0

提督「外注してもいいんだけど……下手なお店より君たちの料理の方が全然美味しいからね」

鳳翔「あら、お上手ですね」

提督「いや本音だよ……それで、パーティでやるゲームの景品を用意しなきゃならないんだけど」

鳳翔「まあ、あなたが用意するのですか。きっとみんな喜びますね」

提督「そうかな? あんまり自分のセンスに期待されても困るんだけど」

鳳翔「でも、ちょっと大変ですね。駆逐の子と、戦艦や重巡の皆さんでは嗜好が全然違いますからねぇ」

提督「そうなんだよ。何を用意すれば良いか、相談しに来たんだ」

105: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 20:00:29.91 ID:b21AWWBP0

鳳翔「そうですね。お菓子とかお酒、間宮さんのチケットでいいんじゃないでしょうか」

提督「そんなのでいいのかな……大規模作戦の後だから、全員にあげても良いくらいなんだけど」

鳳翔「あなたが手渡しするのに価値があると思いますよ。全員にあげるなら、ゲームに勝った子には量を多くするとかで如何ですか」

提督「あ、それいいね。それじゃ宴会で飲む分と別に、景品用の酒とお菓子を買ってこよう」

鳳翔「私もお供いたしましょうか?」

提督「いや、一人で大丈夫だよ。勿論君の分も用意したいから当日まで秘密にしたい」

鳳翔「まあ……本当に楽しみですね!」

106: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 20:01:30.97 ID:b21AWWBP0

陸奥「――というわけでパーティの準備するわよ!!」

摩耶「えらく端折ったな。つまり、E海域攻略のお祝いってわけか」

那智「今回も全員無事だったからな。めでたいことだ」

妙高「そうね。しっかり休んで次に備えましょう」

愛宕「2人とも相変わらず真面目ね~。気を抜くときは抜かないと疲れちゃうわよ?」

鳥海「姉さんはもうちょっと……いえ、何でもないです」

最上「料理はボクたちが協力して作るの?」

陸奥「ええ。今回は駆逐ちゃんたち、すっごく頑張ってくれたじゃない?」

扶桑「そうですね、特に連合艦隊では何度も修復材を使って……」

山城「連続で出撃してた子もいたわね……流石に提督が休みは入れてたけど」

107: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/03(日) 20:02:21.23 ID:b21AWWBP0

陸奥「だから私たち年長組がねぎらう意味も込めて、料理とかお酒を用意しましょう」

長門「間宮たちと協力してか。うん、良いんじゃないか」

高雄「今回はあの子たちにゆっくりしてもらいたいですしね」

摩耶「……そういや正規空母組はどうした?」

最上「さっき呼びに行ったら、6人ともまだ寝てたよ。そりゃもう泥のように」

妙高「例の鳳翔さんの件がようやく解決したら、そのまますぐE海域攻略に入りましたからね……」

那智「疲れが一気に出たのだろうな。今回は休ませておいてやろう」

116: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:18:24.97 ID:QaT8IrKR0





伊良湖「ええと、お食事はバイキング形式がいいでしょうか」

間宮「そうね。皆で談笑しながら好きなものを取るのが良いと思うわ」

鳳翔「お料理は私と年長組の皆さんで作りますので、お二人には甘味をお任せしてよろしいでしょうか」

間宮「ええ、構いませんが。それなりの量を作るとなると、材料費の方も……」

鳳翔「それは気にしないで大丈夫ですよ。あの人が全部受け持つと言っていましたから」

伊良湖「だ、大丈夫なんですか? 最近お砂糖の値段もかなり上がってきてますけど」

鳳翔「ふふ、鎮守府の皆さんを楽しませるぐらいの甲斐性は見せて頂かないと困ります」

間宮「あらあら。うふふ」

伊良湖(鳳翔さんが妻の顔に……)

117: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:19:46.99 ID:QaT8IrKR0

提督「ただいまー」

鳳翔「おかえりなさい……まあ、すごい大荷物ですね」

提督「全員分のプレゼントだからな。間宮、冷蔵庫貸してくれ」

間宮「はい、こちらです。手伝いますね」

提督「あ、いや、良いんだ。というより、出来ればパーティまであまり見ないでくれるとありがたいんだけど」

伊良湖「? どういうことですか?」

鳳翔「提督は一人ひとりにゲームの景品を用意してくれてるんです。渡す時まで秘密ですって、私にもね」

伊良湖「まあ! 私楽しみです!」

提督「お、おい。ハードル上げてくれるなって……」

118: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:22:04.91 ID:QaT8IrKR0

提督「料理の方は大丈夫かな?」

鳳翔「戦艦や重巡の皆さんが手伝って下さいますので。人手は十分ですよ」

提督「……何人か不安になる面子がいるんだが」

間宮「こら、提督! 女の子にそんなこと言っちゃだめですよ」

提督「あ、ごめん」

鳳翔「そういえば今まで、私がお料理を教えたことがあるのは摩耶さんと那智さん、妙高さんだけですね……他の方の腕前はどうなのかしら」

伊良湖「お菓子の方は力仕事が多いので頼もしそうですが」

提督「苦労かけてすまないけど、皆で協力してやってくれ。私も明日の夜は仕事を空けられるようにするから、頼んだよ」

鳳翔「はい、お疲れ様です」

119: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:23:38.92 ID:QaT8IrKR0





長門「手伝いが私で大丈夫なのか? 菓子など作ったことがないのだが」

扶桑「私もお恥ずかしながら……お料理でも、お菓子は敷居が高いですよね」

伊良湖「お菓子で難しいのは、材料を正確に量ることと、混ぜ合わせ方なんです。
混ぜるのにはすごく力が要りますので、大量に作る時は力の強い方が必要なんですよ」

鳥海「ダマにならないようにするとか、聞いたことはあるんですけど。お役に立てれば良いのですが」

最上「計量は間宮さんたちに任せた方がいいと思うな……早く混ぜるくらいならボクにも出来そう」

間宮「そんなに気を張る必要ありませんよ。大切なのは作った人の気持ちですからね」

扶桑「……普段は、小さい子たちがいつも、甘いものを好きなだけ食べられる様な時節ではありませんからね」

長門「そうだな。祝い事の時くらい、沢山食べさせてやりたいな」

間宮「うふふ、その気持ちを込めてあげて下さい。それじゃ、まずはホールケーキを作りましょう」

120: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:26:03.62 ID:QaT8IrKR0





摩耶「――さてと、アタシらは洋食担当だ。まずはカレーとハンバーグ、カツとオムライスを作るぞ」

那智「なぜそのメニューなんだ?」

摩耶「一番の目的は駆逐たちのねぎらいだからな。とりあえずちびっ子に人気なの作っとけば外れねーだろ」

那智「……」

摩耶「どうした那智?」

那智「いやな、お前が年下の艦娘に好かれている理由が、なんとなく察せられてな。そういう気遣いを彼女らも感じ取っているのだろう」

摩耶「ばっ、何だよそれ! 別に気遣いとか考えてねぇって!」

那智「照れなくてもいいだろう。最近入った子にも、早く打ち解けられるように色々気を回してたらしいじゃないか? 甘味処に連れて行ったりとか」

摩耶「な……誰がそんなこと!!」

那智「司令官から聞いたぞ」

摩耶「あの野郎っ!! 黙っとけって言ったろうが!!」

121: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:27:53.17 ID:QaT8IrKR0

那智「ふふ、まあ落ち着け。私はハンバーグを捏ねてるから、他の方を頼むよ」

摩耶「わかったよ、ったく。――さてと」

高雄「……」ダラダラ

愛宕「あ、あの、摩耶ちゃん……」

摩耶「あー、うん。大丈夫だ、わかってるから。高雄姉と愛宕姉が、今まで包丁持ったことないってことはさ」

高雄「あんまり大きな声で言わないで……」シクシク

摩耶「事実だろうが。良い機会だから、せめて人並みに材料切ったり皮向いたりくらいは出来るようになっておこうぜ」

愛宕「……摩耶ちゃんに教わるってなんか屈辱~」

摩耶「嫌なら別にいいんだ。誰かとケッコンして、亭主に出す料理は全部レトルトで済ますつもりなら……」

愛宕「それはイヤ!! 私頑張るわ、ぱんぱかぱん!!」

摩耶「意味不明だけどまあいいや。まず包丁の握り方から……」

122: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:30:08.35 ID:QaT8IrKR0

高雄「む……くっ」プルプル

摩耶「……おい高雄姉、もうちょっと肩の力抜け。ジャガイモの皮はそんなに厚くねーぞ」

愛宕「にゃー、にゃー……にゃあー」プルプル

摩耶「……愛宕姉、落ち着け。アタシはネコ手で材料を押さえろって言ったのであって、ネコになれとは言ってない」

那智「ハンバーグのタネは出来たぞ。あとは煮込むなり焼くなり……何があったんだ、こっちは」

高雄「話しかけないでっ!! 気が散るわ」

那智「……皮むき機を使って、どれだけ力を入れればここまで厚く削れるんだ?」

愛宕「摩耶ちゃん、これ欠陥品じゃない? 包丁がまな板に突き刺さるんだけど」

摩耶「だから力は加減しろって言ったろ!! 自分の馬力を忘れんなよ!!」

123: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:32:39.93 ID:QaT8IrKR0





鳳翔「私たちは和食担当ですね。妙高さん、揚げ物をお願いしていいかしら」

妙高「はい! 昔、鳳翔さんに教わりましたから大丈夫です」

山城「鳳翔さん、ご飯炊けたわよー」

鳳翔「ありがとうございます。それじゃ、酢飯にしてもらえますか? 全員分のちらしは、少し大変ですけど」

山城「了解よ」

陸奥「私はどうしようかしら?」

鳳翔「ちらしの具を作りましょう。魚を捌いたり、卵を焼いたりね」

陸奥「あの、薄焼き卵をほそーく切るやつね。どっちもちょっと難しそうね……」

鳳翔「それじゃ、一緒に卵焼き作りましょうか。錦糸卵を失敗せず作れるようになれば、色々応用できますから」

陸奥「よろしくお願いします、先生」

124: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:33:45.43 ID:QaT8IrKR0

鳳翔「……そうです、そこから、竹串で周りを一周して取り出します。……冷めたら、薄焼きをくるくる巻いて、千切りにします」

陸奥「こ、これでいいかしら」

鳳翔「はい、これで完成です! 陸奥さん筋が良いですね」

陸奥「教え方が良かったのよ。貴女の手料理を毎日食べれる私たちは幸せね」

鳳翔「まあ、照れちゃいますね」

陸奥「提督に出すものには、何か特別な料理を作ったりしてるの?」

鳳翔「いえ、あの人は私の負担が増えないようにって、食堂で皆さんと同じものを食べていますよ」

125: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/09(土) 02:35:06.10 ID:QaT8IrKR0

陸奥「あらあら、奥さんとしては複雑ね。もっと手の込んだものを食べて欲しいとか思わない?」

鳳翔「時々、あの人がお仕事で忙しい時は、執務室に持っていきます……
その時に、ちょっと一品足してみたりとか……きゃっ、私ったら何を……」

陸奥「可愛いわねー……提督がデレデレの理由もわかるわ」

鳳翔「も、もうっ!! 錦糸卵、あと100枚焼いて下さい!!」

陸奥「」

陸奥「そ、そうだったわ……1枚焼いて終わりじゃなかったわね……」

132: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:14:40.84 ID:ORHlqHJo0





提督「えー……皆揃ったかな?」

提督「今年度最初の大規模作戦が終了し、こうしてまた全員で集まれたことを、とても嬉しく思う」

提督「これも皆の働きのおかげだ。ありがとう」

提督「挨拶は手短にして、先に乾杯を……赤城」

赤城「……」

提督「赤城」

赤城「は、はいっ! なんでしょうか!」

提督「料理を早く食べたかったら、前に出て音頭取ってくれ」

赤城「み、皆さん!! 第十一号作戦、お疲れ様でした!! 今日一日楽しく過ごして、明日からまた頑張りましょう!! 乾杯!!!!」

「「「か、かんぱーい」」」


鳳翔「切実ね、赤城ちゃん」

提督「でも、とりあえず挨拶はしっかりしてるな」

133: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:15:39.82 ID:ORHlqHJo0

赤城「」モグモグ

加賀「」モグモグ

提督「今回は皆お疲れ様。注ぐよ」

飛龍「あ、ありがとうございます提督」

蒼龍「なんか準備全部任せちゃったみたいで……」

鳳翔「後で戦艦と、重巡の皆さんにお礼を言っておいてね」

翔鶴「何故か、昨日の記憶がないんですが」

瑞鶴「私たち全員、ずーっと寝てたみたいだからねー」

提督「あまり纏まった休みは取らせてやれないけど……せめて今日くらいはゆっくりしてくれ」

鳳翔(私たちは遊園地の後ゆっくりしてきちゃいましたけどね)

134: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:16:56.08 ID:ORHlqHJo0

川内「え、う、ウソ!? このカレー高雄さんと愛宕さんが作ったの!?」

高雄「何よその言い方……」

摩耶(川内は高雄姉たちが料理出来ないの知ってるからな)

愛宕「どう? 初めてにしては良く出来てるでしょ~」エヘンプイ

摩耶(皮剥いて材料切っただけだけどな。突っ込むのは野暮か)

那珂「すごく美味しいよ!! どんなスパイス使ったの?」

愛宕「え? す、スパ……ひ、秘密よ!! 重巡の料理レシピは軍機よ、軍機!!」

摩耶「仲間うちで軍機作ってどうすんだよ」

135: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:19:00.75 ID:ORHlqHJo0

神通「でも本当に美味しいですね、味付けは摩耶さんが?」

摩耶「おう、カレー粉が手に入らなかったからな。南方海域へ出撃した時、
海運会社のおっさんに香辛料を融通してもらうよう頼んどいたのさ」

那智「自分でスパイス調合したのか? やるじゃないか」

摩耶「……アタシが考えたんじゃない。厨房の奥に、調合のやり方が隠してあったんだ。
その通りに作ったら自分でもびっくりの旨さになった」

妙高「秘蔵レシピってわけですか、一体誰のでしょう?」

摩耶「『竜飛』って書いてあったんだが……先代の料理長かなんかかな」

136: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:21:24.91 ID:ORHlqHJo0

山城「ど、どうかしら、間宮さん」

間宮「ええ、程よく酢がきいてて良い感じですよ、このちらし」

伊良湖「これなら食堂でも出せそうです。山城さんにも食堂を手伝ってもらいたいくらい」

山城「そうね、時間が空いてるときは手伝うわ」

扶桑「良かったわね、山城」

最上「ボクたちも、お菓子が上手く出来て良かったね」

鳥海「そうですね。殆ど伊良湖さんにやってもらっちゃいましたけど」

間宮「鎮守府の皆さんは、皆お料理得意で助かりますね」

鳥海「姉さんたちも今回は随分頑張ってましたし」

最上「姉妹かー。元気かな、三隈たち」

137: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:23:12.63 ID:ORHlqHJo0

雪風「長門さん長門さん!! 雪風はケーキが食べたいです!!」

長門「デザートは料理を食べてからにするんだ、一杯作ったから急がなくても大丈夫だぞ」

村雨「でも赤城さんと加賀さんがすごい勢いで食べちゃってるよ」

長門「……先にケーキ確保しておいた方がよさそうだな。欲しい者は私に言ってくれ」

綾波「あ、は、はい! 私もお願いします!」

春雨「……」モジモジ

陸奥「春雨? 遠慮しないでいいのよ、ね?」

春雨「で、でも、私今回の作戦中は遠征要員でしたし」

陸奥「そんなの誰も気にしてないわよ。私たちが戦えるのは、貴女たちが資源を持ってきてくれるからなのよ?」

春雨「でも、あの、出撃してた人たちより先に食べちゃうのはちょっと」

陸奥「……んもー可愛いわねー!! お姉さんの分全部あげちゃう!!」ムギュー

春雨「ギュ!! く、くるし……」

138: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:25:01.21 ID:ORHlqHJo0

吹雪「これからは高射砲の時代だよ!! 司令官も新しい高射装置、改修してるし!!」

時雨「ゴクッゴクッ……ふう……吹雪、駆逐艦の本来の役目を忘れたのかい。 
敵に肉薄して必殺のロングランス、それが水雷戦隊の戦いだろう?」

吹雪「グビグビ……それを否定してるわけじゃないよ。でも敵の航空機への対処は必要だよ、
最近は丸っこい新型もよく見るし!!」

時雨「その言い方はまるで、空母の先輩たちを信頼してないように聞こえるよ。
対空戦は任せて、僕たちは夜間雷撃の技術を磨くべきだと思うけどね」

吹雪「そんなことないもん!!」

139: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:26:05.10 ID:ORHlqHJo0

敷波(ちょっと誰、あの2人にお酒飲ませたの!!)

朝潮(し、知らないよぉ、さっきまで仲良く喋ってたんだよ)

吹雪「叢雲は私の言うこと、わかってくれるよね!? 同じ特Ⅰ型改二として!!」

叢雲「ち、ちょっと落ち着きなさいよ」

時雨「満潮はわかってくれるだろう? 西村艦隊の仲間としてね」

満潮「どっちも大事でいいじゃない。こんなくだらないことで喧嘩するんじゃないわよ」

敷波「ちぇ、2人は良いよな。5連装酸素魚雷とか、高射装置付き高角砲とか装備出来てさー」

朝潮「私たちも改二欲しいねー」

140: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/24(日) 15:27:45.24 ID:ORHlqHJo0

提督「えー、皆楽しんでもらえているかな」

提督「この辺でビンゴゲーム始めるぞ。パーティの最初に配ったカードを用意してくれ」

提督「景品は全員分用意してあるが、もちろん早くビンゴになれば豪華なものを渡す」

提督「だから皆頑張ってくれ」

摩耶「何をどう頑張るんだよ」

提督「……それもそうか。祈っててくれ」

山城「こんな運に頼るゲーム用意するなんて……ふ」

提督「――ゴホン。それじゃ始めるぞ」

提督「まずは3つ。61、6、19だ」

148: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:39:26.88 ID:10iJP0jW0

摩耶「お、幸先いいな。3つともあるぜ」

鳥海「……私1個も無いのに」

提督「誰かにリーチ出るまでは、テンポ早めでどんどん行くぞ。次は5、51、43」

飛龍「未だに0個……運の値は関係ないのかな……」

伊良湖「わ、私もです……」

提督「25、18、53」

伊良湖「あ、やっと1個」

飛龍「う、うそ!? ここまで全滅なんてアリエナイ!!」

149: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:41:01.21 ID:10iJP0jW0

川内「はいはい!! 私リーチ!!」

蒼龍「私も……あ、しかもダブルだ」

飛龍「蒼龍、私のと交換して!! 今度友永隊貸してあげるから!!」

蒼龍「だめだよ。そんなことで妖精さん賭けないでよ」

摩耶「……最初の3個以外、全然来ないんだが」

鳥海「結構そういうことあるのよね、ビンゴって」


no title


150: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:43:09.25 ID:10iJP0jW0

提督「リーチが2人か。それじゃ2個ずつにするぞ……44、68」

飛龍「よし来た2個来た!!!! これで勝つる!!!!」

瑞鶴「まだ2個だけですよ、落ち着いて下さい」

提督「リーチいるかー? ――よし次、36、42」

蒼龍「……」

蒼龍「……んん?」

蒼龍「……あれ」

蒼龍「――やったぁあああビンゴだぁああああ!!」


no title


151: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:44:57.20 ID:10iJP0jW0

提督「ビンゴ第1号は蒼龍か。おめでとう」

蒼龍「ありがとうございます提督!!」

飛龍「今からでも遅くない、取り替えて!! 今なら友永隊に加えて江草隊もつけちゃう!!」

蒼龍「いつの間に江草隊持っていったのよ!! 返して!!」

提督「ビンゴ3人揃うまで、ちょっと待っててくれな。次行くぞー」


陸奥「」 ←まだ1個

間宮「」 ←まだ1個

伊良湖「」 ←まだ1個

朝潮「うーん……」 ←2個

雪風「2個です!! これって当たりですか!?」 ←2個

敷波「え、雪風がまだ2個なんだ。どうした幸運」 ←2個

村雨「わかんないよー? これから一気に追い上げ来るかも」 ←2個

152: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:46:20.86 ID:10iJP0jW0

提督「28、24」

大淀「唐突に私がリーチです!!」

明石「ほ、本当に唐突ね……私も結構当たってるんだけどなー」

提督「結構当たり増えてきたかな?」

提督「次は……7、70だ」

鳳翔「! あ、あの、私、リーt」

川内「はいはいはーい!!!! 私ビンゴだよ!!!!」

鳳翔「……」


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153: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:47:40.27 ID:10iJP0jW0

提督「よしよし、2番は川内だな。おめでとう」

川内「景品期待してるからねー!!」

提督「さて、そろそろ終盤だな。1個ずつ行くぞ――57」

加賀「リーチです」

提督「リーチも増えてきたな……次だ、12……20」

瑞鶴「リーチよ!!」

明石「私もです!!」

提督「31」

明石「ダブルリーチ!!」

妙高「私もリーチです」


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154: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/25(月) 19:48:50.54 ID:10iJP0jW0

提督「48」

愛宕「リーチよ~」

提督「58……66……37」

叢雲「やっとリーチね」

提督「52」

高雄「よし、リーチです」

提督「49」

赤城「リーチです!」

提督「74」

「「「……」」」


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167: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/27(水) 01:27:21.35 ID:adMSY7sN0

提督「リーチ増えたなあ。次で決まるかな?」

鳳翔(……)

鳳翔(割と早い段階でリーチを引きましたが……)

鳳翔(もうっ、こういうときの勝負運は悪いですね、私!)

鳳翔(景品の内容は相談されましたけど、何か良いものを用意してくれてるはず)

鳳翔(他の子たちには申し訳ないですけど、私だって気になるんです!!)

鳳翔(32……32……32です……!!)

168: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/27(水) 01:30:28.78 ID:adMSY7sN0

提督「次は――32だ」

鳳翔「!!」

鳳翔「やったぁああ!! やりましたよ、ビンゴです、あなた!!!!」ピョンピョン

提督「お……おう、良かったね、鳳翔」

瑞鶴「お、お母さん?」

翔鶴「お母さんが飛び跳ねて喜ぶなんて……珍しいですね」

飛龍「うわぁああああ多聞丸ぅうううう!!!!」

翔鶴「飛龍先輩……そんなに勝ちたかったんですか?」

瑞鶴「窮地から逆転するのが好きだからね、飛龍さん。それだけの勝負運も持ってるし」

蒼龍(その割にはカード交換しようとか言ってきたじゃん……後で江草隊迎えに行かなきゃ)

169: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/27(水) 01:33:21.85 ID:adMSY7sN0

提督「さてと、ビンゴした3人への景品は……」

提督「まず1つ目、商店街から提供して頂いた金券。甘味処でも呑屋でも支払い出来るそうだ」

提督「1人分には多いから、誰かを誘って行くといいんじゃないかな」

提督「2つ目、間宮から提供のチケット。ビンゴの早い順に10、5、2枚」

提督「最後3つ目は、休暇申請の優先権だ」

提督「E海域攻略の後だから、もちろん全員に休暇を取れるよう調整するが……」

提督「ビンゴの3人には、休暇を取る日の希望を優先して聞くことにする」

提督「本当はもっと良い装備とか、用意しようかと思ったんだけどね。ビンゴの順番によっては意味が無くなっちゃうから」

170: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/27(水) 01:35:42.82 ID:adMSY7sN0

蒼龍「いいんですか、10枚も?」

提督「正規空母組は連合艦隊で出ずっぱりにしてしまったからね。自分で使ってもいいし、飛龍たちを誘ってもいいし」

飛龍「蒼龍!! 私信じてるからね!!」

蒼龍「信じてるじゃない!! 江草隊返せ!!」

提督「あー、とりあえず、間宮のチケットは全員に1枚ずつ渡すから安心してくれ」

翔鶴「本当ですか提督!!」

瑞鶴「随分太っ腹じゃん!! ねえ赤城さん」

赤城「」モグモグ

加賀「」モグモグ

瑞鶴「ってまだ食べてたんかい!!」

赤城「残したらもったいないですからね」モグモグ

加賀「ビンゴにはちゃんと参加してたわ。忘れずにリーチもかけてたしね」モグモグ

翔鶴「そんな、麻雀じゃないんですから」



鳳翔(チケットが2枚……つまり2人分)

鳳翔(2人……)

鳳翔(////)

171: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/27(水) 01:37:11.39 ID:adMSY7sN0

提督「ああ、そうだ。全員への景品はもう1つあるんだ」

提督「まず蒼龍にはこれね」

蒼龍「お酒ですか? ……あ、私の名前!!」

no title



提督「物流も滞ってるなかで、全員分探すのは結構苦労したよ……色々伝手を使って何とかした。
君たちの名前とか、生まれた場所などで私が勝手に用意してしまったが」

川内(私の鹿児島限定って書いてる……どうやって用意したんだろ、提督の伝手ってどうなってんの)

no title



鳳翔(こういう細やかな気遣いが出来る人なんですよね……だから皆から好かれているんでしょうけど)

鳳翔(とっても嬉しいんですけど、ちょっと複雑です……)

no title


175: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/28(木) 00:30:05.76 ID:nsEukIYF0

提督「――よし、これで景品は全員分行き渡ったね?」

提督「良い時間になったし、そろそろ御開きにしようか」

提督「明日は通常の業務だから、部屋呑みはほどほどになー」

間宮「それじゃ、後片付けしましょう」

飛龍「あ、大丈夫だよ、私たちでやっておくから」

蒼龍「そうだね。準備は全部してもらっちゃったし」

間宮「そうですか? それじゃお願いしますね」

瑞鶴「うん、任せといて……あれ? ここに残ってた料理は?」

翔鶴「お皿もありませんね……あ、あと、赤城先輩と加賀先輩もいません」

瑞鶴「……あー!! 片付けから逃げて、何処かで隠れて二次会やるつもりなのよ!!」

飛龍「な、なんですってぇ!! 貸し1つじゃ済まないよ!!」

提督(鳳翔もいないな。さっきまでいたのに、何処行ったんだ?)

176: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/28(木) 00:31:35.23 ID:nsEukIYF0

赤城「――はいお待たせしました、妖精の皆さん」

加賀「余りものですみませんが……お母さんたちが腕を揮って下さったので、味は保証できますよ」

工廠妖精s「――!!」

赤城「い、いえいえ、良いんですよ、お礼なんて。私たちだけで楽しんじゃってて、遅くなってごめんなさい」

艦載機妖精s「――!!」

加賀「妖精さんたちも祝勝会でしたか。……あら? でも、お酒が少ないようだけれど」

整備妖精s「――!!」

赤城「え、明日の仕事に差し障るからですか? まあ……なんだかこっちが申し訳ないですね」

加賀「でも、一杯ぐらい私たちと乾杯しませんか? ちょうど提督から頂いたものが……あら」

赤城「お料理を持っていくのに気を取られて、お酒置いてきちゃいましたね……」

177: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/28(木) 00:32:28.98 ID:nsEukIYF0

鳳翔「――あ……貴女たち……」

加賀「!?」

赤城「ひぃ!? お、お母さん!!」

鳳翔「お酒を忘れるなんて妙だと思ったら……まさか……」

加賀「あ、あの、これはですね」

赤城「決して片付けをサボろうとかそういう思惑ではなく……」

鳳翔「……」



鳳翔「うぅ……グスッ……」

赤賀「!?」

178: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/28(木) 00:37:50.38 ID:nsEukIYF0

鳳翔「まさか……まさか貴方たちが、料理を独り占めせずに分け合うことが出来たなんて……」

赤城「お、おかあさん!!」グスッ

鳳翔「瑞鶴ちゃんの言うとおり、何処かに隠れて酒宴でも開いているのかと私も思ってましたが……成長しましたねぇ、グスッ……」

鳳翔「お説教に来るつもりが、いいものを見せてもらいました!! 私も入れて下さい!!」

加賀「お母さん……」

加賀「……」

加賀(私たちはそこまで信用されていないのですか!?)ガーン

鳳翔「さあ乾杯しましょう!」

赤城「はい!! かんぱーい!!」

加賀「か……乾杯……」シクシク



第2話 終


183: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:25:43.65 ID:75OPGDHy0


第2.1話 ~ホリデー・スペシャル~


飛龍「蒼龍蒼龍!! ビンゴで貰った、休暇の優先権どうするの!?」

蒼龍「え? ど、どうって」

飛龍「せっかくのチャンスなんだから、提督の休みに合わせてさ。一緒にどっか行ってきたらいいじゃん」

蒼龍「飛龍……貴女、提督とお母さんの仲を応援してるんじゃなかったの?」

飛龍「うーん、応援って言うか、応援するまでもないって言うか……あの2人、もう心配するまでもなくラブラブだし?」

蒼龍「……やっぱりそうだよねorz」

飛龍「でもさ、とりあえずこの戦争が終わるまでは、提督は結婚しないって言ってたのよ。問題はその後ね」

蒼龍「カッコカリ?」

飛龍「カッコガチ」

184: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:27:54.45 ID:75OPGDHy0

飛龍「私なりにこの戦争の後のこと、ちょっと考えてみたんだけど。多分提督はお母さんと本物の夫婦になって、一緒に暮らすよね」

蒼龍「うんうん」

飛龍「私たちは色々身の振り方があるけど、仮に軍をやめることになったらどうなると思う?」

蒼龍「うーん、普通に何か仕事を探して生きていくんじゃない?」

飛龍「だよね。それで、鎮守府を出た後はどこに住む?」

蒼龍「そ、そんなのまだわかんないよ」

飛龍「そう、まだわからない。つまり、今なら何でも希望を出せるっ!! フリーダムなのよ!!」

蒼龍「……酔ってんの?」

飛龍「……雰囲気と勢いでね」

185: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:32:48.15 ID:75OPGDHy0

蒼龍「結局何が言いたいの? 飛龍」

飛龍「え、ええとね? 笑わないで聞いてほしいんだけど」

蒼龍「うん」

飛龍「……私……その……戦争が終わった後も、提督とお母さんと、空母の皆で暮らしたいな……って、思ってるの」

蒼龍「……」

186: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:33:46.12 ID:75OPGDHy0

飛龍「普段からそんなこと言ってたら、提督にもお母さんにも重く受け止められちゃうから、
今まで誰にも言ってないんだけどね?」

飛龍「ほら、あの戦争ではすぐ別れちゃったお母さんや翔鶴、瑞鶴とも、仲良くやれてるじゃん? 
これで戦争終わって、これからは別々に歩みましょうって……」

飛龍「なんかその、やなの」

飛龍「もちろんこんなのは私のわがままで、その後は提督が決めることなんだけどさ」

飛龍「でも、私は今の、家族みたいな関係が好き。出来ればずっと一緒にいたいな、って」

187: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:43:17.96 ID:75OPGDHy0

蒼龍「……」

飛龍「蒼龍?」

蒼龍「もぉ~~可愛いなぁ飛龍はぁ~~!! 大好きだよ~~~~」ギュー!!

飛龍「きゃぁ!! ちょっとぉ!!」

蒼龍「飛龍がいつまでも独り身なんてだめだと思ってたけど、そんなこと考えてたんだね」

飛龍「い、いつまでもじゃないよ。私だってちゃんと結婚願望は」

蒼龍「飛龍につり合う殿方なんてそうそう簡単にいるわけないじゃん? 適当な男との結婚なんて私が認めないから」

飛龍「蒼龍が認めるって、提督以上の人ってこと? ……それだと私、当分結婚出来そうにないんだけど」

188: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:47:12.09 ID:75OPGDHy0

蒼龍「とりあえず、提督となんとか一緒に出かけて、将来のビジョンを聞いてみるよ。私も気になるしね」

飛龍「う、うん。それとなーく聞いてよ? 変に負担掛けたくないし」

蒼龍「大丈夫だよ。任せてね」

蒼龍「いつまでも6人まとめて可愛がって下さいって、ちゃんと伝えとくから。じゃあね~!!」

飛龍「ちょ、違う!! 私が言いたいのはそんなんじゃなくて……」

飛龍「ていうか今ので伝わんないって、冗談だよね蒼龍!? 私相当頑張って恥ずかしいこと言ったのに!! ねぇってば――」

189: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:56:10.48 ID:75OPGDHy0





翔鶴「提督、赤城さん、お茶が入りましたよ。休憩しませんか」

提督「ああ、ありがとう翔鶴」

赤城「翔鶴も一緒に飲みましょう。お菓子もありますよ」

翔鶴「ありがとうございます、それじゃ……」



蒼龍「――ノックノック!!」

赤城「はい、どちらさま?」

蒼龍「ドラゴンだよ!!」

翔鶴「何ドラゴンさんですかー?」

蒼龍「ジャパニーズブルーだよ!! ゲームじゃないよ、がおー」

提督「……あんまり上手くないな」

蒼龍「ちょっとぉ。一生懸命考えたんだよ」

190: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 00:58:36.65 ID:75OPGDHy0

提督「どうしたんだ?」

蒼龍「ビンゴ景品の、休暇の申請に来たよ。でもその前に……提督、次の休みの日教えて? 私その日に休むから」

提督「えーと、3日後だね。どうして?」


蒼龍「提督!! その日私とデートして!!」

赤城「!?」ブフゥッ

提督「デートか。いいぞ」

翔鶴「!!!?!?」ゲホッゲホッ

蒼龍「うんうん、提督はお母さんとの方がいいってわかってる。でもちょっと大事な話を……」


蒼龍「……へ? いいの?」

提督「ああ。買い物とかなら付き合うけど」

蒼龍「やったぁ!! じゃあその日によろしくね、それじゃ!!」

191: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:01:24.47 ID:75OPGDHy0

翔鶴「ちょ、て、提督、良いんですか!? お母さん以外の人とデートなんて!!」

提督「デートって言っても買い物だろう? それくらいは許してくれるさ」

翔鶴「そ、それじゃあ提督、次のお休みの日は私と」

提督「あー、ごめん。次は鳳翔との約束が入ってるんだ」

翔鶴「」

提督「加賀や瑞鶴と一緒に行ってくればいいんじゃないか?」

翔鶴「やめてください提督……そのセリフは私に効きます……」グスッ

赤城(突然積極的になるなんて……何があったの、蒼龍?)

192: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:03:58.35 ID:75OPGDHy0





蒼龍「さてと、次のお店はーっと」

提督「ちょっと……休ませて……流石に店20軒ハシゴは……」

蒼龍「もう、しょうがないな。じゃあお茶にしましょう」

提督「こんなにたくさん服買って、全部着れるのか?」

蒼龍「全部私のじゃないよ。お母さんとか、飛龍たちに似合いそうなのを買ってきたの」

提督「あ、そうなのか……優しいじゃないか、蒼龍」

蒼龍「ふふーん、もっと褒めていいからね? あんまり気軽に鎮守府の外に出れないからね」

提督(費用持ちは大体私だけどな。まあそういうことならいいか)

蒼龍「提督も、お母さんの私服が増えれば嬉しいでしょ。うふふ」

提督「そ、そうだね」

193: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:06:03.63 ID:75OPGDHy0

蒼龍「喫茶店のクリームソーダ、たまに飲むと美味しいね」

提督「はは、時々懐かしくなるんだよな。……ところで、蒼龍」

蒼龍「んー?」

提督「何か話があるんじゃなかったのか? 休暇取りに来た時に言ってただろ」

蒼龍「あ、そうだった。うーん」

蒼龍(それとなくって言われたけど、上手く言えそうにないなぁ……)

蒼龍「提督、この戦争が終わった後ってどうなると思う? いつになるかわからないけど」

194: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:13:20.78 ID:75OPGDHy0

提督「そうだな、まず間違いなく軍は縮小されるだろうな。
私たち軍人や、艦娘がどうやって生きていくか、今から考える必要がある……」

提督「とはいえ、そんなに近い話ではないと思うけどね。泊地の様なわかりやすい目標だけじゃなく、はぐれ艦隊も多いし。
完全に脅威が無くなるまで、海上護衛は続ける必要があるだろうな」

蒼龍「提督は、その……軍を退役したら、どうするつもり?」

提督「まだはっきりとした考えはないよ……どこか静かな所に、家を探そうかと思ってるけどね」

蒼龍「お母さんと一緒に暮らすの?」

提督「……ああ。鳳翔が軍を退役する時、正式に結婚を申し込もうと思ってるよ」

195: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:15:34.64 ID:75OPGDHy0

蒼龍「そっか……そうだよね」

提督「でもそれは最後だな。最低でも鎮守府にいる子たちの、生活の目処がついてから退役する。私のことはその後だ」

蒼龍「……私たち6人も?」

提督「もちろん。何か希望があれば出来る限り、叶える努力はするさ」

蒼龍「……希望……ね」

提督「話ってこのことか? もしかして何か、将来のことで」

蒼龍「ううーん、ちょっと待ってね……」

蒼龍(落ち着け、私……提督の1番はお母さんって、わかってたじゃない……)

196: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:19:29.28 ID:75OPGDHy0

提督「どうした、蒼龍。大丈夫か?」

蒼龍「だ、大丈夫大丈夫。ごめんね? 変なこと聞いて」

提督「いや、大事なことだからね」

蒼龍「それに、戦いはまだ続くし……私たちだってどうなるか」

提督「蒼龍、誰かが欠けることは絶対にない。それだけは信頼してくれ」

蒼龍「あ、ご、ごめんなさい」

提督「謝ることじゃないよ。危険なのはいつも君たちなんだから」

197: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:25:29.45 ID:75OPGDHy0

提督「でも、どうしてそんな話に?」

蒼龍「ちょっと話してたんだよね……せっかくまた会えたんだから、ずっと一緒に居たいねー、って」

提督「鳳翔や空母の子たちと、か?」

蒼龍「うん。あと提督もね」

提督「そうか。それは嬉しいな」

蒼龍「ほんと? お母さんと愛の巣を作りたいんじゃないのー?」

提督「いや、そんなことは……ないわけじゃないけどな。愛情がなければ、君たちに指輪なんて渡さないぞ」

蒼龍「……家族としての愛情でしょ?」

提督「ああ。鳳翔が君たちに注ぐ愛情を見ていたら、ね」

蒼龍「ふふ、まだ子供いないのに、お父さんみたいだね」

198: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:30:54.03 ID:75OPGDHy0


蒼龍「……もし、もしだよ?」

蒼龍「私たちが、本当の家族になりたいって言ったら」

蒼龍「軍を出た後も一緒に暮らしたいって言ったら……どうする?」


提督「……さっきも言ったけれど……私は出来る限り、君たちの希望を叶えたい」

提督「きっと鳳翔も、君たちと一緒に居たいと願ってる……」

提督「いや、それだけじゃない」

提督「それは私も同じなんだ。鎮守府を出た後も、その……鳳翔と、君たち6人の、傍に居たい」

提督「もし君たちもそう思ってくれているなら、とても嬉しいな」


蒼龍「……そっかぁ」

提督「もちろん、君たちが自分自身の進む道を見つけてくれるまででいいんだ。
そのために私は何でもするし、いつでも帰って来てくれてもいい」

提督「君たちの、命を預かって戦った者として果たす、最低限の責任だと思っている」

199: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:34:02.98 ID:75OPGDHy0

蒼龍「……優しいんだね、提督。本当にお父さんみたい」

提督「多分に私の希望が入っているよ」


蒼龍「私の自惚れじゃなければ、私たち6人は、提督にとって特別ってことでいいのかな?」

提督「ああ。普段こんなことは、あまり言えないけど」

提督「鳳翔と、君たちと、共に歩んでいくことが出来れば……間違いなく、幸福な人生だと思うよ」


蒼龍「……うふふ。そっかそっか」

提督「あまり言いふらさないでくれよ?」

蒼龍「うん、わかってるよ。一応軍人だしね」

200: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:37:38.98 ID:75OPGDHy0


蒼龍「さてと、そろそろ帰ろうか。今日はありがとうね」

提督「あれ、もういいのか? また店をまわるんじゃ」

蒼龍「ううん、いいの。これ以上紙袋増やしたら、持って帰るのが大変でしょ? ……提督が」

提督「これ1人で持って帰るのか!?」

蒼龍「こういうところで甲斐性見せてくれたら、うれしいなぁ。ね?」

提督「まったくもう……タクシー拾うかな」

蒼龍「ごめんね提督」



蒼龍「――あ、そうだ。空母寮の消耗品頼まれてたんだった……本当に悪いんだけど、先に戻っててもらえる?」

提督「ああ、わかった。1人で大丈夫か?」

蒼龍「うん、ちょっとしたものだから。――それじゃ、また明日ね。今日は本当にありがとう」

提督「私も楽しかったよ。じゃあ、また明日」


201: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:40:54.97 ID:75OPGDHy0


蒼龍「……もういいよ。聞いてたでしょ、飛龍?」

飛龍「……ありがとね」

蒼龍「提督も結構、色んな事考えてるみたいだね」

飛龍「蒼龍は良かったの? あんまり進展しなかったんじゃ」

蒼龍「あはは、今の状態じゃ何言ってもダメだよ。恋愛感情は、完全にお母さんに向いちゃってるもん」

飛龍「そうだねぇ……」


蒼龍「でもね、皆と暮らせたら私だって嬉しいし」

飛龍「家族で……蒼龍はいいの?」

蒼龍「私だってお母さん大好きなんだよ? 幸せになってほしいし……」


蒼龍「でも提督も好きなの!!」

飛龍「うーん……辛い所ね」


202: ◆GoPzFNH1CI 2015/05/30(土) 01:44:43.36 ID:75OPGDHy0


蒼龍「ここはとりあえず保留だよ、保留」

飛龍「告白を保留するの? 本当に辛いわね」

蒼龍「提督は私たちを娘みたいに見ちゃってるわ。まずは恋する乙女として見てもらうところから始めないとね」

飛龍「茨の道ね」

蒼龍「赤城さんや翔鶴とも協力して、女子力磨いてくよ! 飛龍も協力してね?」

飛龍「う、うん。まずはどうするの?」

蒼龍「……それがわかったら苦労しないじゃん……」


蒼龍「よしっ、今日は空母寮で女子会にしよう!! 皆で語り合って、これからのこと色々考えよう」

飛龍「……ふふっ、そうだね、明日に差し障りがない程度に、今日は騒いじゃおうか」

飛龍「なんか私も、今日は呑みたい気分」


蒼龍「よぉおーし!! 頑張るぞーっ!!」


212: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:14:47.45 ID:CDjlfiS50


第2.2話 ~スペリオル・キャリアーズ~


川内「……」モグモグ

神通「――あれ、姉さん!? どうしたんですか、熱でもあるんですか!!」アワアワ

川内「……朝ご飯食べてるのがそんなに珍しい?」

那珂「そんな早起きして大丈夫なの!? 体溶けたりしてない!?」

川内「ドラキュラか私は」

神通「今日はお休みなんですか?」

川内「そうだよ、ビンゴの景品の。有給とか貰っても特にすること変わんないし、適当に取っちゃったよ」

213: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:16:48.41 ID:CDjlfiS50

那珂「せっかくのオフなのに、嬉しくないのー?」

川内「嬉しくないワケじゃないけどさ。出撃がない日とか、普通に暇だし」

川内「提督に、景品交換してってお願いしてみようかな……間宮さんのチケットを、夜戦許可チケットかなんかに」

神通「あるんですかそんなの」

那珂「あったとしても、あの提督が他の子を危険にさらす個人の感情、優先してくれるわけないじゃん」

川内「最近は正規空母が昼戦で大活躍して、夜戦の機会あんまりないんだもん」

神通「ウチは機動部隊メインですからね。提督も、夜戦突入の判断は慎重ですし」

214: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:18:45.92 ID:CDjlfiS50

川内「神通と那珂は? 今日は予定無いの?」

神通「そうですね、演習も遠征もありませんが」

那珂「私もー。皆のオフが被るってあんまりないね」

川内「よーし、それじゃ、もらった金券で久々にお姉ちゃんが……」

川内「……ん」

川内「待てよ? 3人か……」

215: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:20:09.26 ID:CDjlfiS50

神通「どうしました? 姉さん」

川内「今の私たちの練度なら、その辺の敵艦隊なんて鎧袖一触だよね」

那珂「突然どうしたのー? まあ流石に負けないとは思うけど」


川内「ちょっと提督に3隻で出撃させてって言って来る!!」ドギューン

神通「」

那珂「」


加賀「なるほど、3隻なら昼戦で敵を全滅させるのはまず不可能。確実に夜戦突入出来るというわけね」

神通「いたんですか加賀さん」

加賀「呼ばれた気がしたわ」

那珂「大盛り朝ご飯に夢中だと思ったら、意外と聞いてるんだね」

216: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:23:07.42 ID:CDjlfiS50

神通「加賀さんも、今日はご予定はないのですか?」

加賀「ええ。最近は備蓄メインだそうだから」

那珂「空母の人たちは大食らいだかrイタッ!! 顔はやめてよ顔は!!」

加賀「弩級戦艦よりはマシよ」

神通「その分駆逐艦の子たちにはすごく働いてもらってますが……」

加賀「実戦での負担を減らせるよう、私たちは航空爆撃や雷撃の腕を磨かないとね」

那珂(磨き過ぎて毎回MVPとってくのはどうかと思うんだけどな……駆逐の子がちょっと不憫)

217: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:24:29.78 ID:CDjlfiS50

川内「(´・ω・`)」

神通「あ、お帰りなさい」

那珂「なんて言われた?」

川内「提督がいなかったから、鳳翔さんに言ってみたら……」


鳳翔『神通さんと那珂さんに迷惑がかからないよう――』

鳳翔『夜偵と探照灯と照明弾を、全部自分で持っていくなら許可してあげましょう』ニッコリ


川内「だって(´・ω・`)」

那珂「観測射撃も雷撃も出来ないじゃん」

神通「夜戦突入出来ても、それじゃ意味がありませんね……」

218: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:26:42.57 ID:CDjlfiS50

加賀「……川内、夜戦がしたいのね」

川内「したいです(ノД`)」

加賀「じゃあ、夕方から演習しましょうか。今日は演習海域の使用予定はないし」

川内「ホント!? いいの加賀さん!!」

加賀「休みが続くと、私たちも妖精さんたちも勘が鈍るから。同僚との演習もいい経験になるでしょう」

川内「やったね!! それじゃあ、こっちは神通と那珂とあと3人、声掛けておくから!!」

神通「結局私たちも付き合うんですね……」

那珂「那珂ちゃんもー!? 寝不足はお肌の大敵なのにぃ」

加賀「せっかくだから、会敵まで編成はお互い伏せておきましょう。
情報が遅れたときの練習に……まあ、なるかもしれないわ」

219: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:28:51.92 ID:CDjlfiS50

加賀「それじゃ、私も僚艦を集めてくるから。演習の申請は、私がおか……鳳翔さんに言っておきます」

川内「うん、ありがとね!! よぉぉし夜戦だぁああああ!!!!」

那珂「はぁーあ、オフはしっかり休むのが那珂ちゃんのモットーなのに」

神通「加賀さん、休みを使って付き合って下さるなんて優しいですね」

那珂「優しいのかな。加賀さんもじっとしてるのが嫌になっただけじゃないの」

神通(でも……正規空母の加賀さんが、苦手な夜戦の話を持ちかけてきた所が引っかかりますね)

神通(何をお考えなのでしょうか……)

220: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:33:31.73 ID:CDjlfiS50

川内「――演習の開始は一八〇〇、範囲は鎮守府正面海域。東軍と西軍に分かれて、艦隊の初期位置は不明でスタートする」

神通「お互いに偵察機を飛ばして、早く発見するほど有利になりますね」

那珂「でも、開始が一八〇〇かー。すぐ夜になっちゃうから飛行機飛ばすのは危険だね」

川内「まー、いざって時には鎮守府の滑走路に降りてもらえばいいんだけどさ。
一応演習って名目だし、作戦行動でも応用できるように……」

那珂「普段通り、夜間航空戦は流石になしか」


神通「では、砲雷撃が得意な子にお願いしましょう。それから対空戦闘の用意も……いいですね、姉さん」

川内「う、うん」

那珂「神通ちゃんまっじめー」

神通「那珂ちゃんも真面目にやって下さい。やるからには勝つんですよ」

那珂「わ、わかってるよう」


川内「あと分身は禁止だって」

那珂「あ、やっぱり?」

221: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:36:08.56 ID:CDjlfiS50





川内「――よし、時間だ。摩耶さん、那珂、よろしく!!」

摩耶「よっしゃ。偵察機飛ばすぜー」

那珂「那珂ちゃんの飛行機、現場入りまーす!!」


川内「私たちは輪形陣でこのまま進むよ」

吹雪「でも川内さん、いくらなんでも、正規空母の皆さんと索敵合戦して勝てるとは思えないんですけど」

時雨「こっちは夜偵を合わせても5機……向こうは偵察機の他に、足の長い艦攻も使えるしね」

川内「うん、わかってる。もともと水偵は長距離索敵に向いてないし……
だけど、先に見つけられることは織り込み済みなんだ」

川内「演習海域に居ることはわかってるんだから、まず間違いなくこっちが先に発見される。
時間によっては、日没前に攻撃隊が来るかもしれない」

川内「でも着艦の時間を考えたら、規模はそれほどでもないはず。
対空戦が得意な摩耶さんと吹雪がいれば、そんなに被害を出さずに対応できると思うんだ」

222: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:38:07.12 ID:CDjlfiS50

川内「そして、攻撃隊が帰っていく方向に向かって全力突撃。相手が着艦中、日没と同時に――」

川内「やせぇえええええんんん!!!!」

吹雪「」ビクッ

川内「――ってワケ。おーけー?」

吹雪「は、はい。その頃には飛行機は飛べませんもんね」


時雨「……くっ」

吹雪「時雨?」

時雨「くふふ……久々に僕の5連装酸素魚雷が唸るよ……」

吹雪「」

川内「期待してるよー。この中で雷撃が一番強力なのは時雨だからね」

時雨「任せておいて……酸素魚雷とか、うん……ばっちり積んできたよ、ふふふふ……」

吹雪(時雨も私みたいに、対空戦得意なはずなんだけどな……なんで魚雷大好きになっちゃったんだろ)

223: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:40:05.87 ID:CDjlfiS50

神通「――姉さん、敵の艦載機です!! 触接されました!!」

川内「了解――攻撃隊が来るよ。全艦対空戦闘!!」

時雨「あの飛行機はどうする? 撃ち落とすかい」

川内「放っておいていいよ、もう位置は打電されただろうし。攻撃隊を誘導してもらった方が、逆にわかりやすくて助かる」


那珂「――むっ、那珂ちゃんの偵察機が敵編隊を発見――10時方向から来るよ!!」

川内「隊列維持のまま進むよ。連携を忘れずにね!!」

224: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:41:59.98 ID:CDjlfiS50





那珂「――攻撃隊が退いていくよ。しのぎ切ったね」

川内「損害報告!!」

摩耶「アタシが小破だ」

吹雪「私もです。戦闘航行に支障ありません!!」

川内「よしっ、単縦陣に組み直すよ。――神通!!」


神通「――夜偵からの報告来ました。敵の編成は……正規空母2、重巡2、駆逐2です」

川内「空母と重巡が2隻ずつか。先に重巡を潰せばこっちの勝ちだね」

川内「私が先頭で、探照灯は責任持って照射するよ!! 各艦は砲雷撃、それぞれよろしくね!!」

225: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:44:06.36 ID:CDjlfiS50


神通「――距離20000。敵艦隊、単縦陣で転舵しました」

川内「早いね。こちらも合わせて、同航のまま距離を詰めよう」


神通「――て、敵一番艦と二番艦に発砲炎です!!」

陸奥「もう撃ってきたか。重巡の主砲でも射程ギリギリのはずなんだがな」

那珂「こっちの夜戦火力を少しでも減らそうとしてるんじゃない?」

神通「水柱の大きさから見て、重巡の20.3cm砲のようですね」

川内「なんにせよ、夜間にこんな距離でそうそう当たるもんじゃないからね。時雨は魚雷、吹雪は照明弾を確認だよ!!」

時雨「了解」

吹雪「了解です!」

226: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:52:48.99 ID:CDjlfiS50

川内「さて、私も探照灯を用意してっと」

摩耶「最初の目標はどうする?」

川内「一番艦と二番艦が先に撃ってきたから、敵の重巡はその2隻だろうね」

川内「先にその2隻を撃破できれば、夜戦火力の差で勝てるはずだよ!!」


神通「距離5000!!」

川内「砲雷撃戦、用意!! 目標、敵一、二番艦!!」

「「「宜候!!」」」

川内「探照灯、照射!! 敵重巡に集中こ――」




赤城「うおっまぶしっ(/-\)」

川内「げぇっ、赤城さん!! なんで!?」


227: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:53:50.03 ID:CDjlfiS50

川内「摩耶さん、那珂!! 水偵から吊光弾を――」

摩耶「だ、ダメだ。もう落とされちまった」

神通「私の夜偵は行けます。吹雪さんも照明弾を!!」

吹雪「了解、撃ちます!!」

那珂「――見えた、重巡は三、四番艦だよ!! 先頭は正規空母2隻!!」

川内「まさか、正規空母が巡洋艦並みの火力を……予定通り、先に重巡に……」

時雨「川内、危ない、魚雷が!!」

川内「え――」

228: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:55:08.65 ID:CDjlfiS50





川内「……」タイハ

川内「ぬわーっ!! 何も出来ずに魚雷直撃なんて!!」

那珂「まさか、正規空母が20cmクラスの主砲を使えるとは思わなかったよ」タイハ

赤城「いや、普通は使えないんですけどね……艦載機を満載した方が明らかに強いですし」チュウハ

加賀「戦艦として生まれた私たちの、昔取った杵柄と言いますか。二航戦や五航戦の子たちにはちょっと無理かもね」

神通「重巡の砲撃より先に撃ってきたのは、私たちの目標を引きつけるためだったんですね……」チュウハ

229: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 17:56:26.85 ID:CDjlfiS50

摩耶「くっそー、全部作戦かよ。やられたなぁ」タイハ

那智「ああ。赤城と加賀が攻撃機を最小限にして、主砲を積んできたときは驚いたが」

妙高「その分私たちが、砲撃と雷撃に集中することが出来たんです」

時雨「そう悲観したものでもないよ、川内。僕の魚雷はしっかりと駆逐を仕留めたからね」

叢雲「」タイハ

満潮「5連装魚雷を扇状に……お、覚えてなさいよ……」タイハ

吹雪(あれ、私あんまり活躍してない!?)

230: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 18:04:58.54 ID:CDjlfiS50

赤城「それにしても、加賀さんが積極的に演習に誘って来るなんて、珍しいこともあったもんですね」

那智「そうだな、いつもは自主鍛錬が主の加賀がな」

妙高「川内さんのためですか? 優しいですね、加賀さん」

加賀「え、ええ、まあ」


川内「――おーい加賀さーん。はいこれ、負けたから約束の間宮チケットね」

加賀「ちょ、ちょっと!! 帰ってから母港で渡しなさいとあれほd」

赤城「加賀さーん?? 私、聞いてませんけど??」ニッコリ

加賀「……」

加賀「ここは譲れません」ダッ

赤城「あっ、こら!! 半分寄越しなさい!!」ダッ

那智「……司令官は全員分渡してたはずだろう」ヤレヤレ

妙高「もらった次の日に使っちゃってたわよ。まあ、許してあげましょう」

231: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 18:14:41.84 ID:CDjlfiS50

川内「あーあ、負けちゃったなぁ……」

神通「残念でしたね、姉さん」

那珂「かえってストレス溜まっちゃったかな?」

川内「……ううん」

川内「皆私のわがままに付き合ってくれて、嬉しかったよ。普段とは違う戦いも経験できたしね!!」

神通「姉さん……」

那珂(あんな型破りなこと、何度もされちゃたまんないけど)

232: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 18:16:17.11 ID:CDjlfiS50

川内「よしっ!! このままその辺の哨戒でもして行こうか、2人ともついてきて!!」

那珂「ちょ、何言ってんの!? 今は演習用装備だし、しかもほとんど空っぽなのに!!」

神通「大丈夫よ那珂ちゃん、探照灯は私が引き継ぎますから」

那珂「」

那珂(わ、忘れてた。神通ちゃんも川内ちゃんに負けず劣らず、夜戦大好きだった……)


川内「ほらほら那珂、遅れてるよ~」

神通「那珂ちゃん、夜偵の収容お願いしますね」

那珂×8「「「いい加減にしろ!! 強引に連れて帰るぞ!!」」」

233: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 18:17:21.85 ID:CDjlfiS50





鳳翔「――ただ今戻りました。勝手に出てしまって申し訳ありません」

提督「いやいいんだ、お疲れ様。どうだった?」

綾波「えーと、日没直前に鳳翔さんの艦載機が、敵のはぐれ潜水艦2隻を発見」

敷波「演習海域に迷い込みそうになってたから、急行して――」

雪風「撃沈しました!! 危なかったです、しれぇ!!」

提督「そうかそうか、頑張ってくれたね。はい、ご褒美の間宮チケット」


アリガトウゴザイマスシレェ!! チョットヒトリデモッテカナイデー ア、アタシハベツニゴホウビノタメニヤッタワケジャ……

234: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/04(木) 18:19:49.41 ID:CDjlfiS50

提督「――よく気付いてくれた。助かったよ」

鳳翔「いえ、演習海域とはいえ、はぐれ艦の行動は読めませんし。
演習弾しか持ってないあの子たちが心配になってしまいまして……」

提督「これからも、気になることがあったらどんどん言ってくれ。演習で損害を出すなんて笑い話にもならない」

鳳翔「はい、あなた」



提督「それにしても、そうやって艦隊を心配する君を見てると……」

鳳翔「?」

提督「あの子たちが君のこと、お母さんと呼ぶ理由がわかるな」

鳳翔「……あなたにだけは、お母さんって呼ばれたくないです」プイッ

提督「ごめんごめん、拗ねないでくれよ……」


提督「私の奥さんだろ?」

鳳翔「////」

鳳翔「も、もうっ、しょうがない人ですね!!」


244: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:48:32.97 ID:oBwjYTQi0


第2.3話 ~ラヴァーズ・コンチェルト~


鳳翔「――あなた、ちょっと」

提督「うん? どうした」

鳳翔「蒼龍ちゃんとデートしたって、本当ですか」

提督「えっ……あ、ああ、この間の買い物のことか。あれはデートと言うよりはな……」

鳳翔「本当なんですね……まったく。いきなりプレゼントだと言って、洋服を渡されたんですよ」

提督「蒼龍が空母の皆に、って選んでたやつだな」

245: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:49:36.72 ID:oBwjYTQi0

鳳翔「蒼龍ちゃんと飛龍ちゃんがニコニコしながら渡して来たから、何かと思って問い詰めたら」

提督「あんまり言ってやらないで欲しいな……その、ちょっと真面目な話もしたし」

鳳翔「何ですか真面目な話って!! 私には隠し事しないって約束ですよ!!」ガクガク

提督「う……そう、なんだけど……今はダメだ。隠し事というか、大事な話だから、また改めて機会を」


鳳翔「浮気ですか」ボソッ

提督「そんなわけないだろ。私の一番はいつも君だよ」

鳳翔「……い、いきなり真顔で見つめないでください」

246: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:50:57.98 ID:oBwjYTQi0

提督「時期が来たら必ず話すから。ちょっと待ってくれ、頼む」

鳳翔「そんな表情でお願いされたら何も言えませんよ……わかりました、信頼してますから」

提督「うん、ありがとう」

鳳翔「今日は私に1日、付き合ってもらいますからね!」

提督「ああ、わかってるよ」

鳳翔「それじゃ、まずは間宮さんのお店です。行きますよ、さあ!!」

提督「お、おい、引っ張らないでくれよ」

247: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:52:28.98 ID:oBwjYTQi0





間宮「いらっしゃいませ提督、鳳翔さん」

鳳翔「間宮さん、これ!! 2人分のチケットです、お願いします!!」

間宮「わ、わかりました。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

伊良湖「……どうしたんですか提督? 鳳翔さん、あんなに鼻息荒くして」

提督「うーん、大体私のせいだな。すぐ落ち着くと思うけど」

鳳翔「ほらあなた、こっち座って下さい!!」

提督「わかったわかった」

248: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:54:06.82 ID:oBwjYTQi0

間宮「――お待たせしましたー、抹茶パフェになります。ごゆっくりどうぞ」

提督「ありがとう、間宮」

鳳翔「ありがとうございます」


提督「……君とこうして、ここへ来るのも久しぶりだな」

鳳翔「そうですね。最後に来たのはケッコンカッコカリの前……もう、1年近くになりますか」

提督「そんなになるのか」

鳳翔「はい。まだあなたが、私に敬語を使ってた頃ですね」

提督「2人の時間も、もっと取れればいい……いや、取りたいんだけど」

鳳翔「ふふっ、お互い覚悟してたじゃありませんか。この戦争が終わるまで、ですよ」

提督「……そうだね」

249: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 22:55:33.34 ID:oBwjYTQi0

提督「しかしそれも、何時になることやら」

鳳翔「あらあら、軍人さんの言葉にしては弱気が過ぎるんじゃありませんか?」

提督「そうだな、皆には聞かせられないな……こんなこと、君の前でしか言えない」

鳳翔「いいんですよ? 弱音吐いちゃっても。私しかいませんから」

提督「だ、だめだだめだ。あんまり君の優しさに甘え過ぎるのは良くない」

鳳翔「……むう。もっと頼ってくれていいですのに」

250: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:03:48.69 ID:oBwjYTQi0

提督「いつも頼らせてもらってるって。出撃も演習も、この間の対潜哨戒だってそうだ」

鳳翔「いえ、あの、それもそうなんですけど」

提督「ああ、それだけじゃないよ」


提督「普段から君に頼るというか、私が助けられていることはね」

提督「こうして2人で話をしたりとか、ご飯を作ってくれたりとか、いつも一緒に寝たりとか」

提督「……私の前で、笑っていてくれること、とか」

提督「それだけで十分なんだ。傍に居てくれるだけでいいんだよ」

提督「指輪を渡した時にも言ったけれど、君の喜んだ顔を見るのが、私は一番幸せなんだからね」

251: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:12:32.50 ID:oBwjYTQi0

提督「それから……こんな関係になっておいて、すごく今更なんだけどね?」

提督「お互いまだ軍属だし、ケッコンした仲とはいえ仕事上での特別扱いが過ぎるから、おおっぴらには言えないけれど」

提督「その、なるべく、私の近くにいてもらいたいというか、危ない目に遭って欲しくないというか……」

提督「この間の出撃だってな、君が無事戻ってくるまで私は……」

提督「って、流石にエゴが過ぎるな。これは忘れてくれ」


提督「とにかく、だな。この先戦い続けるためには、私は君に支えてもらわないとだめなんだ」

提督「頼るにも、君が居てくれないとどうしようもないんだから」

提督「しっかり私の傍に戻って来てくれ。頼む」

252: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:14:03.90 ID:oBwjYTQi0

鳳翔「……」


鳳翔「……~~~~!!」

鳳翔(か、顔が火照って……前が見えない)


提督「鳳翔?」

鳳翔「ちょっと待って……こっち見ないで下さい……」

提督「大丈夫か? 気分でも」

鳳翔「あ、あなた!! あーんして下さい、あーん!!」

提督「どうしたんだ、いきなり」

鳳翔「いいですから、ほら、はい!!」

提督「あ、あーん……」

253: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:17:03.74 ID:oBwjYTQi0


間宮「…………」[壁]ω・)チラッ

伊良湖「…………」[壁]д・)チラッ


間宮「……がはっ」

伊良湖「ま、間宮さん! 大丈夫ですか!?」

間宮「うう、私はもうダメ……砂糖吐きそう……」

伊良湖「お、落ち着いて下さい、吐くならこのボウルに!! お砂糖は高いんですから!!」

間宮「……それは突っ込んだ方がいいのかしら……」

254: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:17:46.78 ID:oBwjYTQi0

提督「この後はどうする? どこか出掛けるか」

鳳翔「そうですねぇ、外に出ると、またゆっくりしたくなっちゃいますから。今回は鎮守府の中で過ごしましょうか」

提督「……私は外出でもいいんだけどな」

鳳翔「また長門さんに迷惑かけちゃいますからね。ほどほどにしてあげないと」

提督「そういえば遊園地デートの後は大変だったみたいだな。やはり君がいないとダメみたいだね」

鳳翔「赤城ちゃんもすごく頑張ってるんですけどね」

255: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:25:40.21 ID:oBwjYTQi0


赤城「はい私頑張ってます、はい!!」

飛龍「赤城さん、右舷から雷撃来てる!!」

赤城「はい、赤城は大丈夫です!!」


朝潮「……演習で慌てる赤城さん、珍しいですね」

村雨「最近鳳翔さんのお手伝いで、遅くまでお弁当作ったりしてるみたいだよ」

綾波「あ、今日のお弁当楽しみですねぇ」

春雨「なんでそんな悠長に話してるんですか!! 演習中ですよ!?」


村雨「あ、ほら危ないよ春雨」

春雨「え? ――きゃぁっ!!」ショウハ

朝潮「だめですよ、爆弾は最後まで諦めずに迎撃を試みないと」

綾波「隊列維持に気を取られ過ぎずに、爆撃機と雷撃機の動きによく注意してくださいね」

春雨「は、はいっ」

春雨(なんか納得いかない……)

256: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:27:45.66 ID:oBwjYTQi0





鳳翔「今日は暖かくて、心地良い陽気ですねー……」

提督「そうだねー……」

鳳翔「あなたの膝に乗るのも久しぶりですねー」

提督「うん……」

提督(この体勢だと鳳翔の髪のかほりが……絶対口には出せないが)


鳳翔「あの、重くないですか?」

提督「それ前も聞いただろう? 全然大丈夫だって。もっと寄りかかっていいよ」

鳳翔「あ、はい。それじゃ……」

提督(ああ……幸せだな、今)

257: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:29:08.32 ID:oBwjYTQi0

鳳翔「そういえば、あなた。私、しばらくキスして貰ってません」

提督「え? そ、そうだっけ」

鳳翔「そうですよ。確か観覧車の中でしてもらったのが最後です」

提督「そんなにしてなかったか……ごめんよ」

鳳翔「まあ、あれから忙しかったですし、寝台は一緒でしたけどね」


提督「……よし、わかった。今日は夜戦しよう」

鳳翔「夜戦ですか。そうですね、今日は早めに執務を――んむ――」


提督「――ふう。これは前哨戦ね」

鳳翔「い、いいですよ。受けて立ちましょう!」

258: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/09(火) 23:35:15.51 ID:oBwjYTQi0


飛龍「……」

飛龍(執務室でイチャコラはやめろとあれほど)


赤城「どうしました、飛龍? 演習の報告書を提出に……」

飛龍「い、いや、今はダメです。その……都合が悪いんです」

赤城「でも、勝利の報告を、早く提督にしたいんですっ」

飛龍「ダメなんです。今執務室は戦場ですから」

赤城「はい?」

飛龍「赤城さんや蒼龍、翔鶴……それに私たちの戦いはまだまだ続くんだから。被害は最小限に抑えないと」

赤城「よくわからないけど……」

飛龍「後で一緒に報告しに行きましょう、ねっ?」

赤城「は、はあ。それじゃあ、先にごはんを食べましょうか」

269: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:21:51.20 ID:bGgb/8Dx0


幕間1 ~今日は何の日?~


飛龍「父の日だよ提督!! プレゼントあげる!!」

提督「お、おお。唐突だな」

飛龍「結構選ぶの苦労したんだー。普通のお父さんと違っていつもジャケット着ないから、定番のネクタイはダメだしね」

提督「――万年筆!? すごいな、高かったんじゃないか?」

飛龍「そこそこね。でもまあ、普段の感謝の気持ち」

提督「いやあ、嬉しいな……大切に使うよ、ありがとう」

飛龍「うふふ、いいんだよぉ。……他に、誰かからもらった?」

提督「いいや? 君が最初だな」

飛龍(あ、そっか。赤城さんや蒼龍、翔鶴が父の日って変だし……加賀さんと瑞鶴には退役後の話、まだしてないもんね)


飛龍「提督のお父さんには、何か渡した?」

提督「一応ね。もう定年してるから実用品じゃなく、父が好きだった日本酒を送った」

飛龍「都市部以外じゃ、手に入りにくい銘柄もあるもんね」

271: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:25:36.13 ID:bGgb/8Dx0

提督「そういえば、父の日で思い出したけど……母の日には、鳳翔に何か渡したのか?」


飛龍「…………」

飛龍「……ははの、ひ?」

提督「先月だから今更だけどね」


飛龍「……て、提督は渡した?」

提督「渡したよ、ワインを赤と白一本ずつ。前に花を送ったら、私も父と同じく酒の方がいいと言われてな……」

飛龍「そうじゃなくて、鳳翔お母さんにだよ!!」

提督「私が送るのは変だろう、奥さんだぞ」

飛龍「あ、そうだった……って、それどころじゃないっ!! おーい、赤城さぁあああん――」


提督「……余計なこと言っちゃったかな」

提督「まあ鳳翔も先月は忙しくて忘れてるみたいだし、また仲良く治まるだろ」

272: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:28:19.98 ID:bGgb/8Dx0


瑞鶴「――なぁーーーんで6人が6人とも忘れてんのよ!! 年頃の女がこれだけ揃ってみっともない!!」

赤城「5月10日といえば……大規模作戦の直前、備蓄で大忙しだった頃ですね」

翔鶴「で、でも、それじゃ言い訳になりませんよ」

蒼龍「飛龍、父の日はなんで思い出したの?」

飛龍「提督と蒼龍にくっついて街に行った時、6月21日は父の日ってポスター見たのよ」

加賀「……私たちも、父の日さえ今思い出したからね。これは全員の落ち度よ」


翔鶴「ど、どうしましょう赤城先輩。謝って許してくれるでしょうか」

赤城「許すも何も、お母さんはそんなことで怒ったりなんかしませんよ。ただ……」

瑞鶴「が、がっかりさせちゃったかもしれないわね」

蒼龍「それじゃ、ええと、皆でプレゼントを選ぶ?」

加賀「それはもちろんだけれど、他に何かないかしらね」

飛龍「遅れちゃったのを埋め合わせできるような、ね」


翔鶴「あ、そうだ!! いいことを思いつきました、やっぱり提督と――」

273: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:30:55.51 ID:bGgb/8Dx0


鳳翔「――The hills are alive――With the sound of music――」

鳳翔「With songs they have sung――For a thousand years――」


提督「随分懐かしい歌を歌ってるね」

鳳翔「あらあなた。ご存知でしたか? これ」

提督「映画のだろ? 学生の頃、英語の勉強をした時に見ていたよ」

鳳翔「私、あの映画大好きなんです……今度一緒に見ましょう」

提督「そうだね、今度借りてこよう」


鳳翔「――よしっ、これでお洗濯終わりですね」

提督「結局、君の仕事は楽になったのかな」

鳳翔「なりましたよ? 時々小さい子たちも手伝ってくれますし……楽になったというか、楽しくなりましたね。うふふ」

提督「それならいいんだけどね」

274: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:35:07.53 ID:bGgb/8Dx0

鳳翔「さてと、次はお昼ご飯の……」


翔鶴「――あ、お母さんここにいらっしゃいましたか。お昼ご飯なら私と瑞鶴で、間宮さんたちを手伝ってます」

鳳翔「あら、本当? それじゃあ、お風呂掃除を」

翔鶴「それは赤城先輩がやってくれました」

鳳翔「……遠征から、帰ってくる子たちのおやつを」

翔鶴「それは加賀先輩が。つまみ食いの分もしっかり作られてます」

鳳翔「じゃ、じゃあ、お夕飯の仕込みを……って」

翔鶴「ご想像のとおり、蒼龍先輩と飛龍先輩がやってくれてます」


鳳翔(このパターン、少し前に見たような……)

275: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:38:26.95 ID:bGgb/8Dx0

鳳翔「どうしたんですか? 最近は皆演習で忙しいから、お手伝いはいいと言ったのに」

翔鶴「あのですね、私たち、先月の母の日をすっかり忘れていまして」

鳳翔「えっ、母の日?」

鳳翔「……ああ、そういえば先月でしたっけ」

翔鶴「えー!? お母さんも忘れてたんですか!?」

鳳翔「先月は皆忙しかったし、作戦の準備もあったし」

提督(やっぱり忘れてたのか……私が一声かけてもよかったかな?)

276: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:40:01.02 ID:bGgb/8Dx0

翔鶴「いや、まあ、それは良いんですけど。遅めのプレゼントで、はい! これ、私たち6人からです」

鳳翔「まあ、ありがとう……お食事券?」

翔鶴「最近、近くに出来たレストランのです!! 提督と一緒に行ってきて下さい」

提督「鳳翔の時間を作るために皆で家事を……優しいな」

翔鶴「忘れちゃってたほんの償いです、お2人でごゆっくりなさって下さい! 
――それじゃあ、私は厨房に戻りますので」


鳳翔「…………」

277: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:42:31.59 ID:bGgb/8Dx0

鳳翔「……ねえ、あなた?」

提督「うん? ……ああ、そうだな。そうしようか」

鳳翔「翔鶴ちゃん。レストラン、8人で行きましょう?」

翔鶴「えっ、でも、これはお詫びで」

鳳翔「そんなこと気にしないでいいの。全員で集まれるのもあんまりないし、たまには皆で甘えちゃいましょう。ね?」

翔鶴「――はいっ!! ありがとうお母さん、皆呼んできますね!!」


鳳翔「……いいですよね、これで」

提督「ああ、もちろん」

278: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/13(土) 12:45:01.07 ID:bGgb/8Dx0

提督「……いいなこれ、週末の家族みたいで」

鳳翔「ふふっ、随分子沢山な家族ですけどね。……ところで」

提督「うん?」

鳳翔「最近パーティやらお出掛けやら、色々出費がかさんでると思いますけど……大丈夫なんですか?」

提督「大丈夫じゃない。赤城と加賀には自重するよう言っておいてくれ」

鳳翔「あらあら? 娘に、いっぱい食べちゃだめなんて言うお父さんがどこに居ますか」

提督「…………」


鳳翔「甲斐性見せて下さいね、お父さん?」

提督「甲斐性って食費のことだっけか……」




<お題:母の日>

297: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:00:28.09 ID:vzzB/h4E0


幕間2 ~母と娘と姉と~


赤城「――いただきます!!」パンッ

蒼龍「おはよう赤城さん。今日は早いんだね」

飛龍「そんなに張り切って、何かあったの?」

赤城「今日は久々に、お母さんと一緒の艦隊で演習なの」

赤城「旗艦として、日ごろの鍛錬の成果を見てもらうチャンス!」

赤城「一航戦赤城!! 頑張ります!!」パクパクモグモグ

298: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:01:39.06 ID:vzzB/h4E0

蒼龍「気合い入ってるねー。演習も、どんぶり飯の盛り方も」

飛龍「胃袋の鍛錬はいつも見てもらってるんじゃない?」

飛龍「…………」

飛龍「……消化最高練度……く、くくく……」

蒼龍(自分で言って笑ってるよ)


赤城「ほっといて下さい!! 提督はいっぱい食べる私が好きって言ってくれてます!!」

蒼龍(先週のレストランの後、財布見てため息ついてたのは黙っててあげよ)

飛龍「お母さんも、赤城さんが来ると何も言わずにご飯大盛りにしてくれるもんね」

蒼龍「加賀さんの食べっぷりといい、同じ正規空母でよくも変わるよねー」

299: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:03:07.13 ID:vzzB/h4E0



鳳翔「赤城ちゃん、今日はよろしくね?」

赤城「はい、こちらこそ!!」

鳳翔「私の艦載機は、貴女の指示で動かしますからね。自由に使ってもらっていいわ」

赤城「ええと、それでは、艦隊の直掩はお母さんの戦闘機隊に。
一次攻撃隊は私の、二次攻撃隊は私とお母さんの残りで編成します」

鳳翔「了解よ」

赤城「対空戦闘の指揮は鳥海さん、お願いしますね」

鳥海「お任せ下さい!」

長門「この2人が攻撃隊を出せば……ふむ。この長門の出番も無いかもしれんな?」

鳳翔「うふふ、流石にそれは無理ですよ」

300: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:08:04.78 ID:vzzB/h4E0

赤城「では行きます。第一次攻撃隊、発艦してください!」

鳳翔「――うん、発艦も随分早くなりましたね。鍛錬の成果が良く出てます」

赤城「…………」

赤城(お母さんに褒められた! 嬉しい!)

赤城「うふ、えへへへへ」

長門「おい、気を抜くなよ。そろそろ敵方の攻撃隊も……」


「「「……………」」」


敷波「……全然来ないね」

雪風「あっ、鳳翔さんの直掩機が!! 敵編隊をすごい勢いで叩き落してます!!」 ←双眼鏡

長門「相変わらず凄まじい技量だな。数の上ではどう考えても劣勢なのに」


鳳翔「――鳥海さん、4機抜かれました。迎撃お願いしますね」

鳥海「あ、は、はいっ」

鳥海(わざと抜かせたように見えたんだけど……) ←熟練見張員

鳥海(もしかして私たちの演習のために……? まさか、ね……) 

301: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:09:43.64 ID:vzzB/h4E0

鳳翔「そろそろ、第二次攻撃隊を出しますか?」

赤城「あ、はい、そうですね。――装備換装を急いd」アタフタ

鳳翔「赤城ちゃん」肩ガシッ

赤城「ひゃいっ!?」

鳳翔「この時期にそのセリフはやめて頂戴。お願いですから」ハイライトOFF

赤城「は、はい、わかりました……」ナミダメ

鳳翔「まったくもう。演習で対地爆弾なんか、持ってきていないでしょうに」

赤城「すみません、何か勝手に、口をついて出てしまって」

鳳翔「まあいいでしょう、では攻撃隊を――」


――ドォオオオオ……――


鳳翔「……?」

鳳翔(今の音……戦闘音ではない?)

302: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:11:11.08 ID:vzzB/h4E0

提督『――演習艦隊、聞こえるか!?』

赤城「提督? どうされました、演習中に」

提督『鎮守府沖合の海底で地震だ、演習は中止!!』

赤城「え……」

提督『規模は不明だが、津波の恐れもある。艦隊を纏めて、直ちに帰還せよ。向こうの艦隊とは話を付けた』


赤城「……じ、じしん……」

鳳翔「!!」

303: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:11:59.71 ID:vzzB/h4E0

鳳翔「長門さん、聞きましたね!? 先に皆さんを連れて退避を!」

長門「了解だ。皆行くぞ」


赤城「また……地震が……」

鳳翔「赤城ちゃん、落ち着いて。大丈夫だから、ね?」

赤城「……はっ、い、いえ、私はなんともありません!」

鳳翔「膝が震えているわ、無理しないで」

鳳翔「第一次攻撃隊は、鎮守府の滑走路へ着陸!! 燃料が少ない機は、私の方へ着艦して下さい!!」

赤城「…………」

304: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:12:42.41 ID:vzzB/h4E0

提督「――これで全員戻ったか。良かった」

鳳翔「はい。地震の情報は入りましたか?」

提督「ああ、先ほどから津波注意報が出てる。これから余震も続くかも知れないそうだ」

鳳翔「そうですか……あの、あなた」

提督「ああ、わかってる。周辺住民への対処は、今いる人員で十分だから……赤城についていてやってくれ」

鳳翔「ありがとうございます」

提督「先に自室へ戻らせておいたから」

鳳翔「はい、それでは失礼しますね」

305: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:13:35.17 ID:vzzB/h4E0

鳳翔「――赤城ちゃん、入りますよ?」

赤城「お母さん……ごめんなさい、全部任せちゃって」

鳳翔「いいのよ。妖精さんは全員点呼を取りましたから、安心してね」

赤城「ありがとうございます……だめですね、私。自然現象なんかに狼狽えて……まだまだです」

鳳翔「そこまで気に病むことではないわ。私たちの、艦船としての記憶がそうさせているんだもの」

赤城「でも、今回は演習だったからいいようなものの……有事の際に、体が動かなかったら」

鳳翔「そう、ね。少しずつ、慣れていくしかないわね」

赤城「はい。皆の足を引っ張るわけにはいきませんから!」

306: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/17(水) 17:16:29.26 ID:vzzB/h4E0

鳳翔「……でもね、赤城ちゃん。自分の記憶を否定するのは、いけないと思いますよ」

赤城「えっ?」


鳳翔「面識は無かったかもしれないけれど……貴女の姉になるはずだった艦の意思を、貴女は継いでいるのですから」

鳳翔「船として生まれながら、海の上を一度も走れなかった無念は……如何ほどのものだったでしょうね」

鳳翔「前世の艦船や姉妹艦の魂を受け継いでいる……」

鳳翔「貴女が地震を苦手なこと、私は決して責めたりなんかしませんよ」


赤城「ありがとう、ござい、ます……お母さん」

鳳翔「これから先は、私や他の皆……あの人にも、頼っていいんですよ」

鳳翔「一緒に頑張っていきましょうね?」

赤城「はい、お母さん!!」




<お題:地震、鳳翔に甘える(赤城編)>

313: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:20:31.75 ID:Ytnu0Cyk0


幕間3 ~戦艦は仲良し~


山城「ふ、ふふ、ふふふふふふふ……」

山城(今日は久々に、姉さまと2人でお出かけ)

山城(誰にも邪魔されずに、姉妹の時間を楽しむわ!!)


扶桑「おまたせ、山城。そろそろ出ましょうか」

山城「はい姉さま! お洋服もよくお似合いです!」

扶桑「うふふ、ありがとう。それじゃあ――」


玄関『外は暴風雨やで!! 看板が吹っ飛ぶレベルや!!』


扶桑「」

山城「」

314: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:22:04.61 ID:Ytnu0Cyk0

長門「なんだ2人とも、出掛けるのか? 今日はこの近辺、局地的大豪雨らしいぞ」

山城「今日の朝まであんなに晴れてたじゃないの!!」

大淀「何故か今日だけ大荒れなんですよ。各観測台も、平均を大きく外した値を送ってきてます」

扶桑「おかしいわね、天気予報で晴れの日に休暇を申請したのに」

大淀「突然低気圧が発生したそうです。外に出るのは危ないですよ」

山城「冗談じゃないわ不幸だわ!! せっかくお休み取ったのに!!」


長門「それなら、私の車でモールまで送ろう。出かけられないよりはいいだろう」

扶桑「まあ、いいんですか? ありがとうございます」

長門「同じ戦艦のよしみだ、息を抜くときは抜かねばな」

大淀「気を付けて下さいねー」

315: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:23:59.94 ID:Ytnu0Cyk0

長門「――随分強くなってきたな。帰りは電話してくれれば迎えに行くから」

山城「帰りもいいの? 迷惑かけるわね」

長門「なに、気にするな……おや?」

扶桑「どうされました?」


ペダル『いきなり重くなったで!! シフトレバーもカクカクや!!』


長門「……いかん、クラッチがおかしい。故障だ」

扶桑「」

山城「」

316: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:28:38.24 ID:Ytnu0Cyk0

山城「こ、故障って」

長門「妙だな、明石に整備して貰ったばかりなのだが」

山城「やっぱり私のせいよ……不幸だわ」

扶桑「山城、その口癖は直さないと、本当に不幸になっちゃうわよ」

長門「すまんが、長く走れそうにないな」

扶桑「では、近くの駅までお願いします……」

長門「うむ」

317: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:30:36.37 ID:Ytnu0Cyk0

扶桑「駅も、誰もいないみたいね……」

山城「やっぱり日を改めた方が良かったかもぉ」シクシク

扶桑「諦めちゃ駄目よ、山城。ここまで出てきたんだから、何としてもたどり着いてみせまs」


電車『海沿いは危険や!! 少しの強風ですぐ止まるで!!』

バス『自治体から大型車は危険って言われたやで~』


扶桑「」

山城「」

318: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:32:11.38 ID:Ytnu0Cyk0

扶桑「そうよね……こんな日に公共交通が動いてるわけ無かったわ……」

山城「いえ、まだまだです。タクシーは動いてるみたいですから、これで……あら?」


2人のバッグ『底に大穴や!! 財布も携帯も鎮守府に落として来たで!!』


扶桑「…………」

山城「…………」


「「長門助けてえええええええええ!!!!」」

319: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:34:27.57 ID:Ytnu0Cyk0

扶桑「」ブルブル

山城「はっくしゅん!!」ガタガタ

陸奥「ちょっと大丈夫? この時期に風邪ひいたら結構つらいわよ」

長門「風呂湧いたぞ、2人で入ってこい。着替えは持ってきておくから」

扶桑「ありがとう……行ってくるわ……」

山城「ごめんなさい姉さま、無理に出ようとしなければ……」

扶桑「いいのよ、私だって行きたかったもの……」

山城「姉さまぁ!!」ブワッ

長門「いいから早く行け。ほら、タオルとシャンプーとヘアゴム。あと私物だが入浴剤だ、あったまるぞ」

陸奥「あら気が利く。我が姉は相変わらずイケメンねー」

長門「……せめてイケジョと呼んでくれよ」




<お題:財布なくした!>

321: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:39:24.38 ID:Ytnu0Cyk0


幕間4 ~家族がいる幸せ~


加賀「……今日は休日だけれど……朝から大嵐とは気が滅入るわね」

瑞鶴「これじゃどこにも出れそうにないわねー」

提督「まあ、今日はほとんど開店休業だな。遠征も取りやめにしとこう、駆逐には辛いし」

瑞鶴(悪天候とはいえ、こんな自由に休みにしちゃって……軍としていいのかな)


加賀「提督、何か暇つぶしになるようなものはありませんか」

提督「そうだな、映画でも見るか? ちょうど借りてきたのがいくつか……」

瑞鶴「おー、いいわね。提督さんのおすすめって気になるわ」

322: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:43:35.34 ID:Ytnu0Cyk0

提督「そうだな。嵐と言えば……これとかどうだ、嵐を呼ぶ ○ッパレ! 戦国大合せイテテテテテテ!!!!」

瑞鶴「私たちをバカにしてるのかしら?」アイアンクロー

提督「っつう……この名作を知らないのか? 時代も流れたもんだ」

加賀「それは確か、5歳児が臀部丸出しで踊っている漫画ではありませんでしたか」

提督「……間違ってはいないが、その言い方では悪意しか伝わらないぞ。あとこれはアニメね」

瑞鶴「そんなのを薦めるなんて提督さんも墜ちたものね!! お母さんの相手としての資質も怪しいもんだわ!!」

提督「そこまで言うか。こんなことで愛を疑われちゃたまらんな」

323: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:45:08.05 ID:Ytnu0Cyk0

提督「まあ、何も言わずに見てみないか。嘘や冗談じゃなく、自信を持って薦められる作品だから」

加賀「……提督がそう仰るなら」

瑞鶴「えー、もっと洋画とか見たかったのに」

提督「見て良かったと思ってもらえると思うよ? 気に入らなかったら他のをまた貸すから」

瑞鶴「アニメでそんな感動するとか思わないけどねー」

加賀「じゃあ、私の部屋で見てみましょう」

提督「後で感想聞かせてくれな」

324: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:50:45.77 ID:Ytnu0Cyk0

瑞鶴「提督さんは自信ありげだったけど」

加賀「好きなものを人に薦めるときは、皆そういうものよ……はい、ポップコーンとコーラとホットドッグね」

瑞鶴「本格派ねー加賀さん。ありがと」

加賀「始めましょう」



――オナジユメヲ、オナジジカンニミルクライ――

――コノセカイニハナ、ミブントイウモノガアッテ――


瑞鶴「タイムスリップ物か」

加賀「お姫様と侍の恋愛、難しいわね」


――シンノスケノイナイセカイニ、ミレンナンテアルカ――

――センゴクジダイデモドコヘデモ、イッテヤロウジャナイノ――


瑞鶴「いい家族ねぇ」

加賀「…………」

325: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:54:07.52 ID:Ytnu0Cyk0

――ミナ、オサナイコロヨリシッテイルカオバカリダナ――

――ギニヨッテ スケダチイタス――

――オマエ、ニゲルノカ――


瑞鶴「…………」

加賀「(ぐ、く……)」 ←タオル噛んでる


――オマエノイウトオリ、サイゴニ、ソレヲツカワナイデヨカッタ――

――オイ、アオゾラザムライ――



瑞鶴「……ふー、良かったわ……正直ちょっとなめてたわね、ねえ加賀さん?」

加賀「ふぐっ、うう……ぐっ、ひぐっ、グスッ……」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「そういえば結構涙もろかったわね」サスサス

326: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:56:36.10 ID:Ytnu0Cyk0

加賀「ありがとうございました提督、良かったです」キリッ

瑞鶴「…………」

提督「そうかそうか、それは何より」

加賀「他にもシリーズがあるのですか?」

提督「うん、色々評価が分かれてるけど」

瑞鶴「でしょうね。いい話ばっかりなら、親御さんに色々言われてないでしょうし」

327: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 18:59:23.24 ID:Ytnu0Cyk0

瑞鶴「ちょっと調べたけど、さっきのやつの1個前も感動ものらしいじゃない?」

提督「確かに、私はボロボロ泣いたけど。……扱ってる時代とか話題が複雑なんだよね、君たち世代にとっては」

加賀「私が見て判断します、見ましょう」フンスッ

瑞鶴(隠してるつもりなのかそうじゃないのか)

提督「そうか。それじゃ、せっかくだから鳳翔と一緒に見ようか?」

瑞鶴「そうね、私呼んで来るわ」

328: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 19:02:26.98 ID:Ytnu0Cyk0


――トウチャン、オラガワカル?――


加賀「おうっ、うぐっ……ぐす、ひくっ、ううう……」プルプル

瑞鶴「……大丈夫? 加賀さん」サスサス

加賀「だ、だいじょうぶ……ふううっ……」


――カゾクノイルシアワセヲ、アンタタチニモワケテヤリタイクライダゼ――


提督「やはり、この映画は大人になってからだと全然印象が違うな」

鳳翔「家族のために働くお父さんは、本当に格好いいですね」

329: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/19(金) 19:04:31.98 ID:Ytnu0Cyk0


――アノネ オカアサン オボエテル?――


加賀「ううっ、ぐすっ、おかあさん、おかあさん……」

鳳翔「よしよし、感動して泣くことはとってもいいことですからね。加賀ちゃんは純粋で優しい子ね」ナデナデ

瑞鶴「……えーい」ガバッ

鳳翔「瑞鶴ちゃん?」

瑞鶴「私も私も、ね?」

鳳翔「はいはい」ナデナデ

加賀「……ぐすん」


提督(……家族か)

提督(蒼龍に話したこともあるし、自分も甘い考えではいられないな)

鳳翔「あなたあなた。こっちに来て、私も撫でて下さい。ねっ?」

提督「まったく……母性から、いきなり可愛くなるのは反則だろう」




<お題:鳳翔に甘える(瑞加賀編)>

335: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:42:36.99 ID:e+dmduNG0


幕間5 ~教えて鳳翔先生~


翔鶴「蒼龍先輩、私思ったんですけど」

蒼龍「うん? どしたのいきなり」

翔鶴「提督はお母さんの、どのあたりが好きになったんでしょうね?」

蒼龍「そういえば聞いたことなかったなぁ」

翔鶴「私は比較的、ここへ来るのが後の方になったので。
蒼龍先輩なら、提督やお母さんをよく見ていらっしゃったんじゃないかと」

蒼龍「ううーん、多分、何処が好きって答えられない気がする」

翔鶴「というと?」

蒼龍「全部だよ全部。私から見ても、お母さんあらゆるところで隙がないもの」

翔鶴「……隙がないのが好k」

蒼龍「言わせないわよ」

336: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:47:37.08 ID:e+dmduNG0

翔鶴「思ったのはですね。お母さんをよーく見てみれば、提督に振り向いてもらえるヒントがわかるんじゃないかと」

蒼龍「そうかなー? 私たちがお母さんの真似しても意味ないんじゃないの。別な魅力で勝負すれば……」

翔鶴「それはわかるんですけど。艦載機の扱いはもちろん、
お料理とかの家事も負けてるって、空母としても女性としてもどうかなって思いません?」

蒼龍「……確かにそうかも。私もお料理は練習してるけど、お母さんと比べたらなぁ」

翔鶴「しかも、最近お母さんはオシャレも勉強なさってるんですよ。飛龍先輩や瑞鶴が色々教えてるんです」

蒼龍「本当に勝ち目無くなっちゃうね、今のうちにどうにかしないと」

翔鶴「それじゃ、こっそりお母さんを観察してみましょう。どこかしら隙があるかも……」

337: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:51:07.04 ID:e+dmduNG0





摩耶「――カスタードはこんな感じで良いのか?」

鳳翔「そうですね、もう少し混ぜた方がいいと思います……薄力粉はふるっておいたので、これ使って下さい」

摩耶「おう、サンキュー」

那智「……なぜ私まで手伝ってるんだ?」

摩耶「この間のパーティの準備で、色々言ってくれた礼だ。
もうお前にはばれてるってわかったから、色々利用させてもらうぜ」

那智「まったくもう……生地出来たぞ。これでいいか」

鳳翔「ええ、よく出来てますね。タルトレットなので、この小さい型に詰めて下さい」

那智「ああ、わかった」

338: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:54:38.62 ID:e+dmduNG0

那智「――しかしな、どうして突然菓子作りなんだ?」

摩耶「あー、それはな……普段食べる甘味と言えば、缶詰が多いだろ?」

那智「そうだな、酒保にはそれくらいしかないが」

摩耶「それに原材料も高めだから、いつも間宮に行けるわけじゃなし」

鳳翔「そうですね、駆逐ちゃんたちもあんまり行けませんね。缶詰は単調な味で物足りないかも」

摩耶「それでも喜んで食べてるのを見てると、その……もっと美味しく食べられねーかって、そう思ったんだよ」

339: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:55:51.89 ID:e+dmduNG0

那智「…………」

摩耶「なんだよその顔は!! アタシが菓子作りなんてガラじゃないのは自分が一番わかってるよ!!」

鳳翔「ふふっ、そんなことありませんよ。ねえ?」

那智「ああ。ちょっとお前の思いやりに感動しただけだ、気にするなよ」

摩耶「ふん、どうだか……出来あがってもあんまり食えねーぞ、チビ共優先だからな!!」

那智「はは、わかったわかった」

鳳翔「あ、今日は演習があるので。その子たちの分は私が持って行きますね」

摩耶「そうか、よろしく頼む」

鳳翔「ちゃんと、摩耶さんが作ってくれたって言っておきますからね。うふふ」

摩耶「い、いいよ別に……」

340: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 02:56:54.25 ID:e+dmduNG0

蒼龍「…………」[壁]д・)

翔鶴「…………」[壁]д・)

蒼龍「あれ、おかしいな……この鎮守府、女子力高めじゃない?」

翔鶴「摩耶さんは最古参の1人ですからね、お母さんにも色々教えてもらってるみたいですし」

蒼龍「参ったな、私ももっとお料理頑張らなきゃ」

翔鶴「流石に誰かに教えるほど、まだ上手くありませんからね……」

341: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:03:43.47 ID:e+dmduNG0





鳳翔「今さら言う必要も、ないかと思いますが――」

鳳翔「駆逐艦は装甲も薄いうえ、艦1隻の火力では航空機への対処は困難です」

鳳翔「――吹雪ちゃん、私が一番最初に教えたこと、覚えていますね?」

吹雪「はいっ! 僚艦との連携です!」

鳳翔「よろしい。対空砲火の密度は、陣形と僚艦との位置取りに大きく影響を受けます」

鳳翔「――叢雲ちゃん。当鎮守府の駆逐艦で、機銃よりも高角砲を優先装備している理由は?」

叢雲「はいっ! 機動部隊の護衛として、個艦よりも大型艦の防空を重視するためです!」

鳳翔「よろしい。ただし重視とは、身を呈してでもと言っているのではありません。
敵機の投弾を、最小限にするための戦術を磨くということです……」

342: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:05:27.69 ID:e+dmduNG0

鳳翔「――満潮ちゃん。初期装備である12.7cm連装砲から、
現在主装備である10cm連装高角砲に換装した際の、一番大きな違いはなんでしたか?」

満潮「はいっ! 対空戦闘用に、仰角を大きく取れるようになったことです!」

鳳翔「よろしい。その通りです……しかし、換装の際は皆さん、新しい主砲の扱いに、随分苦労しましたよね?」

鳳翔「――雪風ちゃん、その理由はわかりますか?」

雪風「はいっ!! わかりません!!」

鳳翔「よろし……ごほん」

343: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:09:04.72 ID:e+dmduNG0

鳳翔「……あの戦争での高角砲は、秋月型以前の駆逐艦には装備されていなかったのです。
つまり吹雪型、朝潮型、陽炎型である皆さんは、元々の艦の記憶によって装備を扱うのが難しい、ということです」

鳳翔「もちろんこれだけが理由である、というわけではありませんが、自分の命を預ける艤装と兵装をよく理解し……」

鳳翔「訓練を繰り返して、装備の習熟を行うことが大事なのです。わかりましたね?」

「「「はい!!」」」

鳳翔「本日の訓練は、輪形陣の中心に配置した正規空母の護衛です。評価は個艦でなく、護衛対象の損害状態で行います」

鳳翔「指揮は瑞鶴ちゃん、貴女が執るように。いいですね?」

瑞鶴「はいっ!」


鳳翔「正規空母が大破するか、私の攻撃を3回しのいだ時点で訓練は終了です――では、配置について」

「「「了解!!」」」

344: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:12:54.52 ID:e+dmduNG0

鳳翔「――ああ、言い忘れてましたが」

鳳翔「演習用魚雷の中に、1発だけ実弾を混ぜています。危ないので本気で避けるように」

「「「…………」」」

鳳翔「うふふ」


瑞鶴(実弾って……そんなことするわけないのに。最近のお母さん茶目っ気多いな)

吹雪(あ、最初期の鬼教官モードだ……あの頃は訓練の後よく吐いたなぁ)トオイメ

叢雲(いくら鍛錬積んで改二になっても、私たちのしごきは全然変わらないわね)トオイメ

満潮「……雪風、魚雷受けてくれない? あんたならどうせ全部不発でしょ」

雪風「え? 敵の魚雷って当たるものなんですか?」

345: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:14:46.58 ID:e+dmduNG0


蒼龍「…………」←双眼鏡

翔鶴「…………」←双眼鏡

蒼龍「相変わらずハードな訓練してるなぁ。どう翔鶴、勝てそう?」

翔鶴「絶対無理です……おかしいですよ、あの動き。どんな妖精さんが操縦してるんでしょう」

蒼龍「妙だよねぇ。お母さんの主力戦闘機は九六式艦戦、たまに零戦21型だけど」

翔鶴「烈風改を使っている赤城先輩、烈風601空の加賀先輩の、お2人合わせてようやく優勢だと仰ってました」

346: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:15:35.18 ID:e+dmduNG0

蒼龍「妖精さんとの信頼関係の差なのかなー。私も負けてないと思うんだけど」

翔鶴「ちょっと自信なくしそうです」

蒼龍「翔鶴は十分優秀だからね? 比較対象がぶっとんでるだけで」



『――わずか1回の攻撃で、旗艦含む4隻大破とは……』

『弛み過ぎです!! 演習海域を隊列維持のまま、之字航行で20往復!!』

『『『エー!?!?』』』

―― イマモンクイッタコハ 50オウフク!!

―― ヒェエーー!!!!

347: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:17:27.26 ID:e+dmduNG0





翔鶴「結局、お母さんの優秀さを再確認しただけでしたね……」

蒼龍「うん……ホントに、女として敵う所あるのかなって思うよね……」

鳳翔「――あら、私は、貴女たちから学ぶことがいっぱいあるんですよ?」

翔鶴「あ、お母さん! 演習お疲れ様です」

蒼龍「学ぶことって何かな?」

鳳翔「例えば翔鶴ちゃんは、明るいお洋服とか、アクセサリーがよく似合うわよね。
あまり詳しくない私から見ても、健康的でとっても可愛いと思うわ」

鳳翔「お洋服のセンスは勉強したいと思ってるの。今度一緒にお買い物、連れて行ってくれないかしら?」

翔鶴「は、はいっ!! もちろんです、お母さん!!」

348: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:18:44.96 ID:e+dmduNG0

蒼龍「ねえねえお母さん、私は私は!?」

鳳翔「そうね、蒼龍ちゃんはいつもすごく元気よね。貴女の笑顔は、鎮守府の皆を元気にしてくれるわ」

鳳翔「それに、いつもうらやましく思っているの。貴女のその、まっすぐで積極的な性格がね」

蒼龍「えへへ、そうかなぁ~」

鳳翔「ええ。……それで、貴女に聞きたいことがあったの」

蒼龍「なになに、何でも聞いて!!」


鳳翔「この間、まっすぐ積極的に……あの人をデートに誘ったわよね」肩ガシッ

蒼龍「」

349: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/21(日) 03:20:48.42 ID:e+dmduNG0

鳳翔「ねえ、何話したの? 怒らないから言ってみて。さあ、さあ」

翔鶴(ホントに怒らないならそんなこと言いませんよ)

蒼龍「いやー、あれはその……ほら、提督がまだ内緒って言ってたじゃん……」

鳳翔「……あの人がそう言ったことを何故知ってるの?」


鳳翔「……はっ、まさか口裏を合わせて、あんなことやこんなことを!! 白状しなさいっ!!」首ガクガク

蒼龍「そ、そんなことしてたらもっと喜んでるよぉ~……」

翔鶴「ほらほら、落ち着いて下さい。演習後の皆のために、ご飯作りませんと。ね?」


翔鶴(……やっぱり私、お母さんも提督も好きなんですよね)

翔鶴(相思相愛で羨ましいですけど、まだまだ負けませんからね!)




<お題:無双、鳳翔に甘える(蒼龍、翔鶴編)>

358: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:48:49.26 ID:6U4AKNyk0


幕間6 ~ずっとみんなで~


飛龍「…………」

瑞鶴「ん……ふぁー……あれ、飛龍さん? 早いわね」

飛龍「おはよう瑞鶴。まだ早いから寝てていいよ?」

瑞鶴「お母さんが心配でぐっすり眠れなくて……飛龍さんこそ、こんな早くにどうしたの?」

飛龍「瑞鶴といっしょ。寝る前に明石さんの話聞いたら、変な夢見ちゃって」

瑞鶴「変な夢?」

飛龍「ほら、原因はMI作戦かもって言われたじゃない。そしたら私も、イヤな記憶が夢に出てきたみたいでね」

359: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:49:48.00 ID:6U4AKNyk0

瑞鶴「……あんまり深く聞かない方がいいですよね?」

飛龍「ああ、ごめんごめん。言い方が悪かったわね」

瑞鶴「仕方ありませんよ。私は実際に見たことないけど、記録を見れば大体は想像が……」

飛龍「それは瑞鶴も一緒でしょ。時間と場所が違っても、あの戦争は本当にひどかったわね」

瑞鶴「そうねえ……この中で最後まで残ったのは私だったけど、辛い思いをしたのは皆一緒よね」


飛龍「さっきの夢はね、私が沈むほんのちょっと前に、味方の飛行機が来たっていうところだったの」

瑞鶴「……もしかして、写真の?」

飛龍「うん。私の最期の」

360: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:50:50.73 ID:6U4AKNyk0

瑞鶴「史料で見たけど、あれを撮ったのって確か……」

飛龍「そ。『鳳翔』の艦載機」

瑞鶴「そうか……お母さんも後方に居たのよね」

飛龍「どんな気持ちだったのかな。あのときは、もう私以外の3人は……」

瑞鶴「絶対聞けませんけどね」

飛龍「そうね、うん。わかってる」

361: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:52:19.67 ID:6U4AKNyk0

赤城「…………」

加賀「……すぅ」

蒼龍「うーん……」

翔鶴「くぅ……」


瑞鶴「なんとなく、全員同じ部屋で寝ちゃったわね」

飛龍「……お母さんがああなって、皆一人で寝るのが怖かったのね」

瑞鶴「それじゃ私、もうちょっと寝ますけど……飛龍さんどうします?」

飛龍「そうね、もう起きようかな。ちょっと散歩してくるよ」

362: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:53:43.78 ID:6U4AKNyk0


飛龍「――んー、今日もいい天気……」

飛龍「そろそろ提督も起きてくる頃かな? 上手くいってると良いんだけど」

飛龍「それにしても、MI作戦か……いつまでも、私たちやお母さんを縛り付けてるのね」

飛龍「……お母さんは、どんな夢見てたんだろ?」


『――赤城、加賀、蒼龍の飛行甲板が――』

『――我、これより航空戦の指揮を――』

『――味方機――手を振れ――』


飛龍「――っ!」

363: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:54:33.86 ID:6U4AKNyk0

飛龍(いやだよぉ、せっかく皆でまた会えたのに……お母さんがいないなんて)

飛龍「そんなの意味ないよお母さん!!」


「何がかしら?」

飛龍「えっ――」

364: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:55:50.78 ID:6U4AKNyk0

鳳翔「随分早いのね、まだ陽が出たばっかりなのに」

飛龍「おかあ、さん……」

鳳翔「あの人にね、お仕事の前に貴女たちのところへ……あら、どうしたの!?」

飛龍「……あ、あれ、おかしいな……えへへ、ほっとしたら涙が」

鳳翔「大丈夫? 怖い夢でも見たの?」

飛龍「夢……うん、そうなの」

鳳翔「しっかり者の飛龍ちゃんが珍しいわね」

飛龍「そんなことないよ……ありがとう、もう大丈夫だよ。行こう」

365: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:57:08.62 ID:6U4AKNyk0

鳳翔「どんな夢だったのかしら」

飛龍「あのね、赤城さんたちやお母さんと、皆離ればなれになっちゃうの」

鳳翔「……」

飛龍「あの戦争での記憶と……艦娘になった後の記憶がごちゃ混ぜになったような……」

鳳翔「そう……嫌な夢ね」

鳳翔「でも心配ありませんよ。あのときと違って今は、私もあの子たちも、皆ここにいますから」

飛龍「……うん! ――ほら、ここだよ」

鳳翔「――あら、どうしたの? 皆一緒の部屋で……しかも、5人寄り添って寝てるなんて」

飛龍(あれ、お母さん覚えてない?)

366: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:57:56.75 ID:6U4AKNyk0

飛龍「……昨日遅くまで話してたからね。部屋に戻らないで寝ちゃったのよ」

鳳翔「あらそう。あまり夜更かしはいけませんよ?」

飛龍「ふふ、気を付ける……ほら皆、起きて! 起きてってば!!」

赤城「うーん……もう朝なの?」

加賀「まだ暗いじゃないの……」

鳳翔「ああ、そんな、寝てるなら起こさなくても――」

367: ◆GoPzFNH1CI 2015/06/26(金) 00:59:42.55 ID:6U4AKNyk0

瑞鶴「……えっ、お母さん?」

翔鶴「お母さん、目が覚めたんですね!!」

蒼龍「良かった、お母さん!!」

鳳翔「あ、あらあら……どうしたの、皆……?」

「「「うわああああああああん!!!!」」」

鳳翔「??? ちょ、ちょっと……?」


鳳翔(……皆で怖い夢でも見てたのかしら?)

「「「おかあさああああああん!!!!」」」

鳳翔「よしよし、大丈夫ですよ。私も貴女たちも、ちゃんと一緒に居ますからね」


鳳翔「……ふふっ、まだまだ子供なんですから」




<お題:空母寮の朝、鳳翔に甘える(飛龍編)>

381: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:01:12.92 ID:Bcle+ROj0


幕間7 ~趣味も真面目に艦隊旗艦~


長門「遺憾の意を表明するぞ」

提督「なんだ、どうしたんだ」

長門「提督たちが先日見ていた、映画のことだ」

瑞鶴「あー、お母さんと加賀さんと一緒に見てたやつね」

長門「うむ。加賀が大泣きしながら歩いているのを見て、私も久々に見たくなってな」

提督「久々? 長門もあれ、見たことあったのか」

長門「当然だ。陸奥と一緒に映画館で見た」

瑞鶴(……あれ? いつの映画だったっけ)

382: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:02:10.26 ID:Bcle+ROj0

長門「それで昨日、私のビデオを再生しようとしたら、磁気が吹っ飛んで使い物にならなくなっていたのだ」

提督「あー、多分私のもそうだろうな。捨てるに捨てられないんだが」

長門「ぶいえいちえすは思ったより保管が難しい」

提督「うん。当時のCMとか見るのも楽しいんだけどな」

長門「結局見損ねたのだ。貸してくれ提督」

提督「わかった、後で持って行くよ」

瑞鶴(VHSって何かしら?)

383: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:03:11.85 ID:Bcle+ROj0

長門「何が遺憾かと言うと、あの名言を間違って覚えている輩が多すぎるのだ」

瑞鶴「名言って?」

長門「色々ある。特に間違いが多いのは、エレベーターをこじあける所」

長門「家族がいる幸せを、あんた達にもわけてあげたいくらいだぜ……だ」

提督「わけてやりたいくらいさ……じゃなかったっけ」

長門「それだよ提督。名言で検索すると、その間違った台詞が上位に出てきてしまうのだ」

提督「へえ。皆間違えて覚えちゃってるのか」

長門「家族のいる……とか、お前達にも……という間違いも多い」

瑞鶴「こまかっ!! 別にいいじゃないの、意味が伝われば」

長門「何を言うおろかもの。間違ったまま覚えてどうする」

提督「この辺性格が出るな」

384: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:05:34.88 ID:Bcle+ROj0

長門「話は変わるがな瑞鶴。最近、加賀と一緒に居ることが多いな」

瑞鶴「ああ、そう言われれば、そうかしら?」

長門「その、2人は……恋仲なのか」

瑞鶴「…………」


瑞鶴「えー……どーしてそうなんのよ」

長門「いやな、2人で出掛けたり同じ部屋で寝たり、随分仲が良いようだから……」

瑞鶴「あのね、仲良しと恋仲は別物でしょ。長門さんだって、仲の良い子のお部屋に泊まったりとかするでしょ」

瑞鶴「お買物だってそうよ。女の子どうしが出掛けるのなんて普通じゃない」

長門「うむ……」

瑞鶴「恋仲まではいかないと思うわよ。ただの先輩後輩よりはちょーっと深い仲かもだけど」

385: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:07:11.20 ID:Bcle+ROj0

瑞鶴「……まあ? 私も、加賀さんとは着任当時は色々あったけどぉ? 今はちゃんと認めてもらえてるしぃ?」

瑞鶴「頑張れば頑張るほど褒めてくれるしぃ? もっと仲良くなれれば嬉しいかなー、とか……」


瑞鶴「って何言わせんのよ!!」

長門「あ、ああ。すまん」

提督「前に、加賀とのデートが潰れたってぶーたれたこと無かったか?」

瑞鶴「別にお出掛けをデートって言ってもいいじゃないの」

提督「そうなのか? ……若い子の感性はちょっとわからないんだが」

瑞鶴「提督さんはそれでいいのよ。お母さんと合ってるから」

386: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:08:07.57 ID:Bcle+ROj0

鳳翔「失礼します、あなt……提督、お茶ですよ」

瑞鶴「あら、噂をすれば」

提督「ありがとう、鳳翔」

鳳翔「はい、長門さんと瑞鶴ちゃんも」

長門「すまない……なあ鳳翔」

鳳翔「はい、なんでしょう」

長門「お前の夢は、なんだったかな」

鳳翔「そうですねぇ、いつか2人で、小さなお店でも……」

387: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:09:02.86 ID:Bcle+ROj0

鳳翔「……?」

瑞鶴「…………」

提督「……鳳翔」

鳳翔「…………////」

鳳翔「いきなり何なんですかっ、もう!!」

長門「すまんすまん、なんとなくだ。最近、戦いとは別のことも考える余裕が出てきてな」

鳳翔「なんとなくでそんな大事なこと言わせないで下さい!!」

瑞鶴「かわいい~。大事なことだって、提督さん」

提督「あ、ああ……」

鳳翔「もうっ、2人とも!!」

388: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:10:16.63 ID:Bcle+ROj0

提督「……ちょうど良かった。鎮守府の家事の当番を、そろそろ見直す必要があると思っていたんだ」

鳳翔「ああ、そういえば。間宮さんと伊良湖ちゃんが来て、そろそろ3か月……」

瑞鶴「そっか。次は呉に行くのよね」

長門「食事当番か。鳳翔1人では大変だからな」

鳳翔「演習や出撃が無い子に、お手伝いしてもらえると助かるのですが」

提督「そうだね。余裕がありそうな時に当番に入るよう伝えておくよ」

鳳翔「お願いします」

389: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:11:39.11 ID:Bcle+ROj0

提督「それから、ちょっと先だが横須賀に出張が入った。各地の戦況の確認と、E海域の情報収集だな」

鳳翔「出張ですか。他の鎮守府の方も一緒ですか?」

提督「ああ、確か……国内にいる司令官は集まるそうだよ。次のE海域の場所によっては、その付近の提督は集まれないだろうけど」

瑞鶴「ここ留守にするの? どれくらいかかるのかな」

長門「少なくとも泊りだろう、前回は……5日かかったか?」

提督「あの時はMI作戦の発動で、全泊地の司令官が集まったからな。規模が大きいほど長くかかるだろう」

提督「まだ決定ではないけど、鳳翔と赤城……戦艦の誰かは連れて行くことになるだろうな」

鳳翔「留守はお願いね、瑞鶴ちゃん」

瑞鶴「この3人がいなくなっちゃうと大変ねー」

390: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:13:16.70 ID:Bcle+ROj0

提督「まあ、鎮守府の仕事は調整しておくから。長門はとりあえず知っておいてもらえればいいよ」

長門「了解だ、戦艦組には言っておく」

長門「……それはそれとして、あれを貸してくれ」

提督「わかったわかった。後で部屋に持ってくから」

長門「では失礼するぞ」

瑞鶴「私も~」

瑞鶴「――長門さん映画好きだったの? 何かおすすめ貸してよ」

長門「ああ、いいぞ。好みが合うかわからんがな」

瑞鶴「一番好きなのは?」

長門「……スター○ォーズだ」

瑞鶴「あ、それ見たわよ。真っ赤な顔して、両刃のライトセーバー使うやつ」

長門「私が好きなのはエピソード6のラストだ。まったく最近の若い者は、新三部作だけで……」ブツブツ


―― バタン

391: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:14:19.15 ID:Bcle+ROj0

提督「……君の夢、しっかり聞いたことがなかったけど」

鳳翔「あ、あれは、その……忘れて下さい……」

提督「無理だなぁ」

鳳翔「私だけ、戦いが終わった後のことを考えてるような……他の方に申し訳ないので」

提督(意外とそうでもないんだけどね)

鳳翔「……でも、もし」

鳳翔「皆無事に、戦いを終わらせることが出来たら、その……」

提督「うん、その夢を叶えよう。約束だ」

鳳翔「……はい、ありがとうございます、あなた!」




393: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:42:24.66 ID:Bcle+ROj0


第3話 ~強襲の機動部隊~


蒼龍「なつやすみー!!」

飛龍「あついんだよー!!」

瑞鶴「どっかつれてけー!!」


提督「ええい、やかましい!! 何だ一体!!」

翔鶴「す、すみません提督。最近出撃もないので、気が抜けてるようで」

鳳翔「加えて、この蒸し暑さですから。ちょっとストレスが溜まってるんですよ」

提督「確かに辛い季節だけどな……」

赤城「別に特別なことしなくてもいいんじゃないですか? みんなで近くの海に遊びに行くとか」

鳳翔「貴女たち、夏は苦手だったんじゃ……」

394: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:43:06.07 ID:Bcle+ROj0

提督「しょうがない。明日から3日間休みにするか」

瑞鶴「やったぁ!! 泳ぐわよー!!」

加賀「…………」


加賀(こんなに遊び呆けてて、なぜ鎮守府が維持できているのかしら……?)

赤城「加賀さんも暑いでしょ? 泳ぎたいですよね」

加賀「いえ、私は結構です。皆で行ってきて下さい」

赤城「えー、行きましょうよー」

加賀「結構と言いました」スタスタ

赤城「ああ、ちょっと!! 怒らないで下さいよ」

395: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:46:28.30 ID:Bcle+ROj0

陸奥「失礼するわよ提督。明日の演習……って、何の騒ぎ?」

提督「おお、いいタイミングだ陸奥。後で知らせに行こうと思ってたんだ」

陸奥「どうしたのよ」

提督「明日から鎮守府は夏休みな」

陸奥「あーはいはい、お休みね」

陸奥「…………」

陸奥「ってちょっとお!! いつ決まったのよ!?」

提督「さっきだ。決めたのは私」


鳳翔「すみませんねぇ、ご迷惑お掛けして」

陸奥「ああ、いや別に迷惑ってわけじゃ」

396: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:47:13.23 ID:Bcle+ROj0

陸奥「それにしてもどれだけテキトーな組織なのよ。いいの?」

提督「命掛けて戦ってるんだ。これくらい普通だろ」

陸奥「随分偏った普通ね……」

提督「いいんだよ。鎮守府は司令長官の性格が色濃く反映されるから」

陸奥「他の鎮守府は休み取れてるのかしら」

提督「多分ね。休みなしじゃ流石に艦娘が黙ってないだろうし」

397: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:48:33.87 ID:Bcle+ROj0

陸奥「全員一緒に休みじゃないでしょうね?」

提督「勿論、哨戒は休めない。第1から第4艦隊までは日程をずらすよ」

陸奥「明日からの演習はどうするの?」

提督「これまで色々なところとやってきたんだ。そろそろ休んでも罰は当たらないだろ」

陸奥「どっちにしろ正規空母が休むなら、あんまり意味ないけどね」

提督「表立って夏休みというわけにもいかないからな。それらしい言い訳を考えとくか」

陸奥「……貴方も相当6人娘に毒されてきたわよね」

提督「最初からこんな感じだったろ?」

陸奥「本人が気付かないから毒なのよ」

398: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:49:38.65 ID:Bcle+ROj0

鳳翔「海水浴ですか、お弁当作らなくちゃ」

鳳翔「……あれ、海?」

瑞鶴「翔鶴姉、新しい水着買いに行こうよ!!」

翔鶴「え、わ、私はいいわよ、去年ので……」

蒼龍「私も買いに行こうかなー、提督に見せるんだし! 飛龍は?」

飛龍「うーん、そうね、私も……」

飛龍(あ、お母さん)



鳳翔「…………」

鳳翔(水着なんて持ってませんよ!?)

鳳翔(ど、どうしましょう、どうしましょう……)オロオロ


飛龍(……私が全部口出さない方がいいかな?)

399: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:50:42.01 ID:Bcle+ROj0

鳳翔「……あの子たちに連れて行ってもらう?」

鳳翔「だ、ダメよダメよ!!」

鳳翔「またあんな胸空きセーターみたいな、破廉恥なの選ばれちゃったりするわ」


鳳翔「……じゃあ、自分で買いに行く?」

鳳翔「でも私、一人でお洋服も買ったことないのに水着なんて……」

鳳翔「……いいえ」

鳳翔「いつまでも娘に頼るって訳にもいきませんっ!」


鳳翔「あなた!! ちょっと出掛けてきます!!」

400: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/08(水) 01:52:17.99 ID:Bcle+ROj0

提督「あ、ああわかった。気を付けて……何買いに行くんだ?」

鳳翔「私のみz……いえ、明日わかります!!」

提督「! ……私も一緒に行こうか?」

鳳翔「え、本当ですか?」パァッ


鳳翔「――って、ダメです!! これは私一人じゃないとダメなんですううう……」ダダダダッ


―― バタァン!!


提督「…………」

提督「……かわいい」

提督「ああ楽しみだなあチクショウ!!」

陸奥「いや貴方は明日仕事でしょ」

405: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 00:53:07.56 ID:jtsPayZ/0





提督「わたしのーみみもー、かいのからー♪」

提督「あなたのーこえが――ききたいーけれど――」

提督「あなたは、ほしより――とーおー」

五月雨「提督!! ただ今戻りました!!」バァン!!

提督「いさみだれええええ!!!?? な、なんだ、どうした!?」

五月雨「? どうしたって、遠征から帰ってきたんですよ。第4艦隊、無事帰還です、提督!」

提督「あ、そ、そうか……お疲れ様」

五月雨「はい! これ、報告書です」

提督「う、うん。――それで、聞いた?」

五月雨「え、何をです?」

提督「いやなんでもない。とにかく、報告は確かに受け取ったよ」

五月雨「はい、今日も皆で帰ってこれましたね!」

提督「ああ。よかったよかった」

406: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 00:54:19.65 ID:jtsPayZ/0

五月雨「…………」

提督「……? どうした、五月雨。疲れたろう、補給を済ませたらもう休んでいいよ」

五月雨「あのー、提督」

提督「どうした、そんな神妙な顔して」

五月雨「私、初期艦ですよね?」

提督「ああ、そりゃそうだ。どうしたんだ、いきなり」

五月雨「大体毎日、顔を合わせてますよね」

提督「遠征の出発前は、出来る限り見送るようにしてるからな。多分、顔合わせない日の方が少ないだろ?」

五月雨「何故でしょうか。こうして提督と話すのが、ものすごく久々な気がします」

提督「……そうだったかなぁ」

407: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 00:56:01.66 ID:jtsPayZ/0

五月雨「そうですよ! 遠征以外にも、お洗濯の手伝いとかも頑張ってるのに」

提督「ああ、長門に聞いたよ。綾波と一緒に転んで泥だらけにして……」

五月雨「そこだけ思い出さないで下さい!!」


五月雨「この間のパーティの時は、空母の皆さんとばっかり喋ってるし」

提督「乾杯の後は皆のテーブル回って、1人ずつお疲れ様とねぎらったと思うんだけど」

五月雨「そうですけど、それだけじゃないですかぁ。ビンゴはいくつか数字揃っただけで、特に何もなく終わっちゃいましたし」

五月雨「恐ろしいですよね。私の活躍の場を削る、悪魔的な何かが働いてるとしか思えません」

提督「考え過ぎだろ、そう力まない方がいいぞ」

408: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 00:57:33.50 ID:jtsPayZ/0

五月雨「提督はもうちょっとまんべんなく皆をねぎらうべきだと思いますー」プクー

提督「そんなに露骨だったか?」

五月雨「どーせ私個人の感想ですー」

提督「はは、拗ねないでくれ。これから気を付けるから」

五月雨「それじゃ大成功のご褒美として、間宮さんチケットを所望します!」

提督「そんなしょっちゅうあげられるもんじゃないの。 ……まあしばらく食べられなくなるし、近いうちに味わっておかないとな」

五月雨「皆でですよ、みんなで!」

提督「相変わらず優しい子だな。わかってるよ」

409: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 00:58:43.72 ID:jtsPayZ/0

提督「そうだ、ちょうど良かった。明日から鎮守府は夏休みに入るんだが」

五月雨「入るんだが、ってそんなこと月次日程にありましたっけ?」

提督「ない。だから、遠征の予定を組み直さないとならないんだ。手伝ってくれ」

五月雨「……ふー。鎮守府の業務が滞らない程度に、遠征の予定を減らせばいいんですよね」

提督「そうそう。流石わかってるな」

五月雨「なら思い切って、遠征は取りやめて近海の哨戒だけにしましょう。
第2から第4艦隊でローテーションすれば負担が減ります。空母の皆さんにも偵察機を出してもらいましょう」

提督「そう、だな。遠征資源も、今すぐ必要なほど不足してないし……
何より、休みがずれるのは仲良しの子たちに申し訳ないと思ってたところなんだ」

410: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:00:16.89 ID:jtsPayZ/0

五月雨「えっ、こんな簡単に決めちゃっていいんですか?」

提督「いいんだよ。――それに、最近の駆逐艦たちを見てると、ちょっと不安になることがあるんだ」

五月雨「不安ですか」

提督「そう。特に君と、吹雪だ」

五月雨「えっ、私?」

提督「出撃した時はもちろん、母港にいる時も改装の時も……」

提督「果ては補給するときも、頑張ります頑張ります、と」

提督「いつ息を抜いているのか、見ていて不安になるんだよまったく」

五月雨「あー、あれは多分吹雪ちゃんも、無意識に喋っているというか……」

提督「息を抜くときは抜かないと、いつかパンクしてしまうぞ。だから夏休みなんだ」

411: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:02:50.63 ID:jtsPayZ/0

五月雨「……なーんかいい感じに丸めこまれたような」

提督「君も最初に反対しなかったじゃないか」

五月雨「だってもう提督が決めちゃったんですから。
正しいことなら、なんとかそれを実行できるようにするのが、艦娘の務めだと思います」

五月雨「私たちを思って休みを作って下さったんですからね」

提督「……そう言われると……その、照れるな」

五月雨「私はてっきり、鳳翔さんを海に連れ出して水着デートでもするのかと思いましたが」

提督「それはあくまで副産物であって……いやなんでもない」

412: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:05:31.50 ID:jtsPayZ/0

五月雨「それじゃ、私は補給に向かいます」

提督「うん、ありがとう。後で全員に知らせておくから」

五月雨「私も会った人には伝えます。では――」

五月雨「――ああ、それと提督?」

提督「うん?」

五月雨「いくらご機嫌だったとはいえ、提督のような歳の男性が、ドラ○もんの歌を大声で歌うのはどうかと」

提督「」

五月雨「それでは失礼します」


提督「…………」

提督「……恐るべきは鳳翔の魅力かな」

413: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:07:08.31 ID:jtsPayZ/0





鳳翔「えーと、女性ものの水着……」

鳳翔「大まかにビキニ、ワンピース、セパレート、スクール、競技用……があり……」

鳳翔「プールや海水浴用の、ビキニには……」

鳳翔「三角、ホルターネック、チューブトップ……パンツタイプにモノキニ、マイクロなど……が、あり」

鳳翔「最近は……キャミソール、タイプ? や、パンツなどの形を組み合わせた、タンキニが人気……」


鳳翔「……ふむふむ、なるほど」

鳳翔「さっぱりわかりませんね」

414: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:09:50.59 ID:jtsPayZ/0

鳳翔「元々、よそ行き用の服を持っていなかった私が、1人で選ぶのは土台無理だったのかもしれませんね……」

鳳翔「あの人なら、何を着ても似合ってると言ってくれそうですけど」

鳳翔「……出来ることならあの人の好みの格好をしたいですね」

鳳翔「確か、露出がひかえめな格好が好きだと言っていたような……カタログカタログ、っと」

鳳翔「…………」

鳳翔「タンキニは露出が抑えめみたいですね」

415: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:11:03.55 ID:jtsPayZ/0

鳳翔「……上はタンクトップ、またはキャミソール、ブラジャー? ……タイプのものと重ね着されることもあり……」

鳳翔「下は……ビキニの下、ショートパンツ、ホットパンツ、スパッツ、スカート……」

鳳翔「さらにパレオが巻かれることもあり……一概に定義はなく……」


鳳翔「…………???」

鳳翔「種類が多すぎるのも考えものですね……」

鳳翔「迷ってても仕方がありませんね。店員さんに協力して貰いましょう」

416: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:12:10.91 ID:jtsPayZ/0


鳳翔「よしっ、それじゃ出掛けますか。なるべく見られないように……」

雪風「あ、鳳翔さん!! お出掛けですか!!」

鳳翔「きゃあああああ!!!!」

時雨「雪風、声が大きいんだよ……」

叢雲「でも珍しいわね、1人で買い物?」

鳳翔「え、ええ。そうなんです」

―― ドドドドド

提督「――なんだ今の悲鳴は!! 大丈夫か、鳳翔!!」

時雨(……ここから執務室まで結構遠いんだけどな)

417: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:13:15.72 ID:jtsPayZ/0

鳳翔「だ、大丈夫です、なんでもありませんよ、あなた」

提督「これから出掛けるのか、本当に1人で大丈夫か?」

鳳翔「大丈夫ですってば、心配し過ぎですよ、あなた!」

提督「心配するに決まってる。前にも言ったが、私は君にずっと傍に居て欲しいんだ」


提督「あんまり言い過ぎるのも重くなると思って今まで抑えてたけど……これからは遠慮しないぞ、決めたからな」

提督「今回だって君に止められなければ、ついて行きたかったんだぞ? 仕方なくだ」

提督「君が目の届かない所に行くのが、心配で仕方ない……わかってくれ、鳳翔」ギュッ

鳳翔「あなた!」ギュッ

418: ◆GoPzFNH1CI 2015/07/12(日) 01:14:19.95 ID:jtsPayZ/0


叢雲「…………」

叢雲(たかが買い物に何言ってんのかしらコイツは)

雪風「おおー」キラキラ

時雨「相変わらず熱いんだね、2人とも」ニコニコ

「「……はっ!」」バッ

提督「と、とにかく! 気を付けてな!!」

鳳翔「は、はい! 行ってきます!!」


鳳翔「……って別に、こそこそする必要まったく無かったじゃないですか」

鳳翔「ああ恥ずかしい恥ずかしい……」


次回 鳳翔「ちび空母鎮守府!」