2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:16:44 ID:HEm5xOzE
――――とある小さな村
長老「今日は何番目の勇者様のお話をしようかのぅ?」
****「じいちゃんまたそれかよ……俺もういい加減聞き飽きたよ」
長老「ん?そうか?」
****「当たり前だろ!?物心ついた頃からじいちゃんからいつもいつもその話ばっかり聞かされてて耳にタコができそうだよ……」
長老「いやいや、この村に代々伝わる勇者様達の伝承じゃぞ、何度でも聞かせてやるわぃ」
****「だー!!もー!!
一番目の勇者が竜の王を倒して、
二番目の勇者が破壊の神を倒して、
三番目の勇者が殺戮の神を倒して、
四番目の勇者が魔族の王を倒して、
五番目の勇者がえーっと……あの影の薄い……そう!ナメック星人!……じゃなかった、魔界の王!、を倒して、
六番目の勇者が異次元の魔王を倒して、
七番目の勇者が世界を切り離した魔王を倒して、
八番目の勇者が悲しみの魔王を倒して、
現実主義勇者の王国再建記I (ガルドコミックス)
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3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:17:58 ID:HEm5xOzE
長老「おぉ、よく覚えておるのぅ流石わしの孫じゃ」ホッホ
****「関係ないって!!、だいたいさ、勇者の伝説なんか聞いても何の役にも立たないっつーの」
長老「そんなことないじゃろ、勇者様達が如何にして世界を救ったか知っておれば何かの役に立つじゃろうて」
****「何かってなんだよ……そりゃこの世界にも魔王なんて危ないやつがいたらそん時は勇者の伝承が役に立つかもしれないけどさ」
長老「ほっほっほ、のるほどのう。そうなったらもしかしたらお前が世界を救うかもしれんな?
そしたらお前も勇者の仲間入りじゃな」ニッ
****「んなことあるわけないだろ?自分で言っといてなんだけど魔族は何千年も前に精霊様に封印されたんだろしさ……てか俺狩りに行くからおとぎ話は村の子供たちにでもしてるんだな、じゃ」タッタッタ
長老「ふむ……しょうがない奴じゃ」ポリポリ
子供A「ちょうろうさまー、きょうもゆうしゃさまのはなししてー」ニパ
子供B「してー」ニパ
長老「ん?おぉそうかそうか、じゃあ今日は三番目の勇者様の話をしようかのぅ。
あるところにアリアハンという国があってのぅ……」
4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:20:15 ID:HEm5xOzE
――――村入口付近
友A「よっ」
友B「おせーぞぉー」
****「悪ぃ悪ぃ、じいちゃんにつかまってた」
友B「またかよ」笑
友A「長老はホントにお前のことが可愛いみたいだな~」
****「ん~……まぁな、親父も母ちゃんも俺が小さい頃死んじゃったしばあちゃんはそれよりずっと前に死んじゃったから家族は俺しかいないからなぁ」
友A「………」
5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:21:07 ID:HEm5xOzE
友B「ま、お前も長老のこと大事にしてんだろ?」
****「はぁ?だれがあんなモーロクじじい!!」
友B「とか言ってぇ~、この前小遣い全部注ぎ込んで王都で高ぇお茶買ってきたの知ってるぜ?」
****「なな、なんでそれを!?」
友A「くくっ」
友B「へへへっ」
****「くぅ……!!さ、さっさと狩り行こうぜ!!今日も誰が一番デカい獲物仕留められるか勝負だからなッ!!」ダダダッ
友B「あ、待てよ!!」
友A「よし、負けないからな!!」
6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:21:54 ID:HEm5xOzE
――――村付近
???「この村で間違いねぇのか?」
???「えぇ、この村で間違いありません」
???「可能性のある二十八の村を調査した結果ここにそれだと思われる石碑や勇者を奉る祠を発見いたしました」
???「よし、全兵に命ずる。この村を殲滅しろぉ!!一人たりとも逃がすなァ!!」
???「はっ!!!!」
ザザザザザザッ!!
7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:22:39 ID:HEm5xOzE
――――山中
****「ふぃー、随分遠くまで来ちまったなぁ~。まぁそのおかげでこんなデカい獲物がとれたんだけどな」ポンポン
猪「」
****「こりゃ今日も俺が一番だな……俺ってば天才かもな」ニヤッ
****「村に帰るのにはちょっと時間がかかっちまうな……まぁのんびりいくか♪」ズリズリ
ドオン!!
ドオンドオン!!
****「!?」
****「なんだ今のすげー音!?」
タッタッタ
****「!!!! む、村が!!」
8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:24:02 ID:HEm5xOzE
――――とある小さな村
タッタッタ
****「ハァハァ……な、なんだこれ……家も畑もメチャクチャだ……」ダダダッ
****「!!!!」
****「オェ゛ェ゛エエエ……ゲェェ……ひどい……みんな……し、死んでる……うぷっ……」
ガサッ
****「だ、誰だ!?」ビクッ
友A「あ……ぐぁ…………」
****「と、友A!?大丈夫か!?しっかりしろ!!」
友A「そうか……お前は無事だったんだな……よかっ……た……」
****「喋るな!!今手当てを……」
友A「いや……内臓が何個か潰れて……るんだ……俺はもう助からな……い……」ヒュウ…ヒュウ…
****「畜生!!ちくしょうチクショウ!!一体どうしてこんな!!」
9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:25:45 ID:HEm5xOzE
友A「む……村からすごい音が聞こえたから友Bと狩りから引き返したんだ……そしたら……村のみんなが襲われててそれで……」
****「友Bは!?」
友A「……見ない方がいい……」グスッ
****「……っ!!」
****「どこのどいつがこんなことを……!!」
友A「ま……魔族だ……」
****「!?」
10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:26:20 ID:HEm5xOzE
友A「俺は……魔族を見たことは……ないけど……直感的にわかった……今まで感じたことのないあのおぞましい気配……あれは魔族……だ……」
****「な……だって魔族は……それになんのために……」
友A「それは俺もわからない……長老なら何か……知ってるかもしれない……」
****「!!!! じいちゃん!!」
友A「はや……く……長老のとこ……ろ……」
****「友A!?」
友A「」
****「友Aぇぇーーー!!!!」
友A「」
11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:27:10 ID:HEm5xOzE
――――長老の家
バァン!!
****「ハァ……ハァ……グス……じ、じいちゃん!!じいちゃんどこだ!?」ヒグッ
長老「……その声は……」
****「!! じいちゃん!!俺だよ!!」ガバッ
長老「おぉ……お前は無事なんじゃな?……良かったわい……もう目が見えん……村はどうじゃ……?」
12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:28:04 ID:HEm5xOzE
****「グス……ヒッグ……ダメだ……家は焼かれて村人はみんな殺された……友Aも……友Bも……八百屋のおじさんも隣のおばさんも……みんなみんな殺された!!」
長老「……生き残ったのはお前だけということか……?」
****「わかんないけど……たぶん俺だけだ……たまたま遠くに狩りに出てて帰ってくるのが遅れて……それで…………」グスッ
長老「そうか……お前がそうなのか……」
****「…………?」
長老「お前にこの村の秘密を……代々長老だけが知る秘密を話そう……」
****「……グス……ズズ……それが今回のことと関係あるのか……?」
長老「あぁ……その通りじゃ……」
13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:29:00 ID:HEm5xOzE
長老「この村の本当の名前はのぅ……【勇者の伝説を紡ぐ村】と言うんじゃ……」
****「……勇者の……伝説を紡ぐ村……?」
長老「村に古くから伝わる九人の勇者様の伝承……それを代々語り継ぐのがこの村の民の使命なんじゃ……」
****「で、でもだからってそんなことでこの村が襲われていい理由にはならないだろ!?」
長老「……そうじゃな……じゃがのぅ……勇者の伝説はもう一つあるんじゃ」
****「ど、どういうことだよ?」
長老「それこそが零番目の勇者の伝説じゃ……」
****「零番目の……勇者……?」
14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:30:00 ID:HEm5xOzE
****「なんだよそれ……聞いたことねぇよ……」
長老「そう……零番目の勇者の伝説こそが代々長老にのみ語り継がれる伝承……そしてこの世界の勇者じゃ……」
長老「そして零番目の勇者の伝説は冒頭しか書物に記されておらん……
【世界に再び闇が広がりし時、この村より生まれし一人の若者が世界の闇を打ち払うべく立ち上がることになるだろう】
……とな」
****「この村……?」
長老「……それが……おそらくお前じゃよ」
****「!?」
長老「この村の生き残りはお前一人……ならばお前こそが伝説の勇者じゃろうて……」
15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:30:55 ID:HEm5xOzE
****「……俺が……」
勇者「勇者……!?」
長老「どこで伝承を知ったかわからぬが魔族達はこの村から『勇者』が生まれることを恐れてこの村を襲ったんじゃろう……」
長老「……勇者様を奉る祠……その隣に生える御神木の根本に隠し部屋がある……そこに向かうんじゃ……そこで……精霊様のお告げを……」
勇者「じ、じいちゃん!?」
勇者「いきなり俺が世界を救う勇者とか言われてもワケわかんねぇよ!!俺アホだしいつも悪さばっかりだし大勢の人の役に立つことなんてできっこねぇよ!!」ブワッ
長老「勇者……それでもお前はやさしい子に育った……そのやさしさこそが"勇者"に一番大事なことじゃないかのぅ?」
勇者「じいちゃん……」ヒッグ
16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:31:46 ID:HEm5xOzE
長老「この間お前がわしにお茶をくれたじゃろ……?」
勇者「あぁ……」グスッ
長老「あのお茶のぅ……めちゃくちゃ苦くてとびきりマズかったわぃ……ヒヒッ」
勇者「なんだよ……それ……ヘヘッ」ポロポロ
長老「……でものぅ……すごく……すごく嬉しかった……胸の奥がじーんと温かくなった……わしが今まで飲んだお茶の中で……最高のお茶じゃった……」ニコリ
勇者「……じいちゃん……」ヒッグエッグ
長老「ありがとうのぅ……勇者……」
勇者「今度はもっと美味い茶飲ませてやるから覚悟しとけよ?」グスッ
17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:32:40 ID:HEm5xOzE
長老「」
勇者「……へへ……なんとか言えよ……じいちゃん……」ブワッ
長老「」
勇者「なんで……なんで動かねぇんだよ……!!」ボロボロ
長老「」
勇者「俺を……一人にしないでくれよォ!!……じいちゃん!!じいちゃん!!じいちゃん!!」ボロボロ
長老「」
勇者「うわあああああーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:33:30 ID:HEm5xOzE
――――翌日・勇者を奉る祠
勇者「……なんとかみんなの墓は作り終わった……じいちゃん……友A……友B……みんな……安らかに眠ってくれ……」ポン
勇者「……しっかしこのデッケェ木の根本っつってもなぁ……」
ガサゴソ
ガコン!!
勇者「おわっ!!……下り階段だ……あ、案外簡単に見つかったな……よ、よし、降りるぞ」
シュッ ボゥ
カッカッカッカッ……
勇者「ん……広い部屋に出たな……石造りの小部屋か……特に何があるわけでもなさそう……ん?」
パァァァァ……!!
勇者「う、うわっ!!部屋中が光ッ」
19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:34:16 ID:HEm5xOzE
???『……はじめまして……勇者……』
勇者「だ、誰だ!?」バッ
???『私はこの世界の観測者にして守護者……名をルビスと申します……今あなたの心に直接語りかけています……』
勇者「……ルビス……」
ルビス『ここに勇者であるあなたが来たということは世界に再び危機が訪れようとしていることは知っていますね?』
勇者「あぁ……」
20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:35:03 ID:HEm5xOzE
ルビス『魔族は何千年も前に私が封印しました……しかし封印から逃れた一匹の魔族がその身を隠し、長い年月力を蓄え、ついに私の封印を解くほどの力を得たのです……そして自らを魔王と名乗り封印から解放した魔族達を手駒に世界を支配するつもりなのです』
勇者(そういうことか……)
ルビス『私は人間には真似できない不思議な力を使うことができますが戦闘力としての力は高くありません……ですから勇者、あなたに魔王を倒して欲しいのです』
勇者「ちょっと待てよ!!そんなこと言ったって俺はただの人間だぞ!?魔族どころか魔物と闘ったことすらない!!そんな俺がどうやったらアンタでさえ倒せない魔王を倒せるっつーんだよ!!」
ルビス『そう……今のあなたでは魔王には勝てない』
勇者「…………」
ルビス『だからこれからあるところである人達に師事して修行をしてもらいます』
勇者「修行?」
22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:35:47 ID:HEm5xOzE
ルビス『そう……私の力で九つの世界・時代に生きる九人の勇者達のところへあなたを飛ばします。そこで勇者達に闘いを学ぶのです』
勇者「く、九人の勇者達に!?」
ルビス『えぇ……しかしそう長くは別の世界にあなたを飛ばすことはできません……次元を超えた出会いというのは様々な歪みを生むのです……』
ルビス『一つの世界にいられる時間はおそらく十日間が限界……つまり九人の勇者に一人につき十日ずつ、計九十日間の修行しかできないでしょう』
勇者「一人につき十日か……」
ルビス『この三ヶ月であなたがどこまで成長できるか……それに世界の命運がかかっているのです……それでもやってくれますか?』
23 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:36:40 ID:HEm5xOzE
勇者「……それがアンタの考えつく方法の中で一番可能性が高いんだろ?」
ルビス『……その通りです』
勇者「……わかった、俺やるよ」
ルビス『ありがとうございます』
勇者「でも三ヶ月後もこの世界はまだ無事なのか?」
ルビス『おそらく……大規模な魔族の進軍にはまだ時間がかかると思います』
ルビス『滅ぼされる国がいくつか出るかもしれませんが世界の全てが魔族の手に堕ちるには時間がかかるでしょう』
ルビス『とは言え犠牲になる人々が出るのは事実ですが……』
勇者「……くそっ!!」
24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:37:27 ID:HEm5xOzE
ルビス『しかしあなたが魔王を倒さねば世界が完全に魔族のものになることになります』
ルビス『自らの無力がつらいでしょうが今は耐えるしかないのです……』
勇者「…………そうか……アンタも俺と同じか……自分の無力がつらいんだな……」
ルビス『……』
勇者「まかせろ、アンタの分まで俺が力をつけて魔王をボコボコにしてやるからさ!!」
ルビス『……フフッ』
勇者「な、なんだよ!!」
ルビス『勇者……あなたはとてもやさしいのですね……』
25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:38:09 ID:HEm5xOzE
勇者「はぁ!?う、うるせぇな!!何言ってやがんだ!!////」カァ
ルビス『クスクス……失礼しました……さぁ、こうしている間にも魔族の脅威に怯える人々がいます』
ルビス『早速一番目の勇者の世界へとあなたを飛ばしますよ』
ルビス『準備はよろしいですか?』
勇者「……あぁ、わかった!!やってくれ!!」
カァァァァァア!!
勇者(じいちゃん……友A……友B……みんな……いってくるぜ……)
シュンッ!!
しーーーーん……
26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:38:55 ID:HEm5xOzE
――――???
勇者(なんだここ……)
勇者(暗闇の中に色とりどりの小さな光……)
勇者(まるで夜空の中を飛んでるみたいだ……)
ルビス『勇者……私の声が聞こえますか……?』
勇者「……あぁ」
ルビス『その世界の勇者に出会ったらまず彼らの体に触れるのです』
ルビス『そうすれば私の声が……あなたの世界のことが……勇者達にわかるようにあなたに魔法をかけておきました』
勇者「へぇ……気が利くな」
ルビス『さぁ……旅立ちの時です、勇者よ!!』
キィィイイイン!!
勇者(う……光の一つに吸い込まれ……!!)
27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:39:45 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界
パッ
勇者「!?」
勇者「う、うわあああーーー!!」
ドシーン
勇者「あてててて……もうちょっとどうにかなんなかったのかよルビス!!」
しーーーん
勇者「なんだ、もう聞こえないのか……」
勇者「ここは……森だな……つーか勇者ってどこにいるんだよ」
勇者「見つけるだけで十日かかるなんてのはナシだぜ?」苦笑
28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:40:29 ID:HEm5xOzE
ギラリ
ヒュバッ!!
勇者「のわっ!?」
ズバン
???「チッ、外したか」
勇者「い、いきなり何しやがんだテメェは!!」
???「だまれ魔王の手先!!俺の命を狙ってきたんだろ!?」
勇者「!?」
勇者「金髪に額飾り……赤い法衣……!!」
???「?」
勇者「で、伝承と同じだ!!ア、ア、アンタが一番目の勇者だな!?」
30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:41:26 ID:HEm5xOzE
???「そらみたことか!!やっぱり俺の命を狙ってきたんじゃないか!!」
ヒュバッ
勇者「わっ!!」
シュビッ
勇者「とっ!!」
ビュバッ
勇者「ちょっ!!」
???「ちょこまかと避けやがって……!!」
勇者「無茶言うな!!誰が黙って斬られるかよ!!」
31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:43:49 ID:HEm5xOzE
???「問答無用!!らあっ!!」
ブンッ!!
勇者「ひぃっ!!」
???「もらった!!」
勇者「な……裏拳!?」
バキイイィィ!!!!
勇者「ぐっはぁぁぁ」
キィィイイイン!!
???「!!」
???「なんだこれは……頭の中にお前のことが流れこんでくる……!!」
???「ゆ、勇者!?」
勇者「」ピクピク
???「……あ、あら~……」アセアセ
32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:45:33 ID:HEm5xOzE
――――???のキャンプ
???「いやー、さっきはすまなかった!!この通り!!なっ!!」
勇者「勘違いで殺されかけたらたまんねぇっつの」ブツブツ
???「だから悪かったって」アハハー
???「……っと、自己紹介がまだだったな!!」
???「俺は伝説の勇者ロトの血を引きし者、ワンって言うんだ、よろしくな♪」
勇者「ワンさん……?」
ワン「なんだよよそよそしいな、ワンでいいよ」スッ
勇者「うん、わかった!!」ガシッ
33 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:47:31 ID:HEm5xOzE
ワン「……で、さっきお前に触れた時にお前のことがなんとなくわかった……その……つらかったな」
勇者「……あぁ……」
ワン「でもお前には時間がないのもたしかだ、俺がこの十日でバッチリ鍛えてやるからな!!」
勇者「お、おう!!」
ワン「じゃあまず手始めに使える呪文を教えてくれないか?」
勇者「……ジュモン?」
ワン「……は?嘘だろ?呪文も知らねぇの?」
勇者「し、知ってるしー。えーと……」
34 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:48:05 ID:HEm5xOzE
勇者『ポッポルンガ プピリット パロ!!』
しーん
勇者『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ!!』
しーーん
勇者『ティロ・フィナーレ!!』
しーーーん
勇者『エル・プサイ・コングルゥ!!』
しーーーーん
勇者「……」
ワン「……」
35 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:48:45 ID:HEm5xOzE
ワン「はぁ……これじゃ先が思いやられるぜ……」
勇者「ご、ごめん……」シュン
ワン「いいか、呪文って言うのはな、世界に満ちている魔力を己の中の魔力とスペルをきっかけにして解き放つことだ」
勇者「ふむふむ」
ワン「俺が今からやるから見てろよ」
勇者「……」ゴクッ
ワン『ベギラマァ』!!
ボウゥ!!
勇者「おわっ!!手から火が出た!!すげーー!!」
ワン「ふふん、そうか?」テレッ
36 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:49:37 ID:HEm5xOzE
勇者「で、どうやんの!?どうやんの!?!?」
ワン「えーとな、もう一度詳しく解説するとな」
ワン「第一段階として世界に満ちる魔力の知覚。第二段階として自分の中の魔力を変換して扉を造る。第三段階で自分の発するスペルが鍵となり扉を開く。そして最後に世界に満ちる魔力が扉を通って放たれる」
ワン「そんなイメージで呪文ってのが使えるんだ」
ワン「自分の魔力が切れたら扉は作れないから呪文を使うこともできなくなる」
ワン「唱えられる呪文は契約したものでなければならない。だけど契約したから使えるってわけじゃなくてだな、自分の中の絶対魔力がその呪文を使える値に達しないと…………って聞いてるか?」
37 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:50:20 ID:HEm5xOzE
勇者「」
ワン「勇者?」
勇者「わ、わけわからん……」
ワン「……」
勇者「ゆ、勇者って頭悪いもんだと思った……」
ワン「『勇者』ってお前のこと?」
勇者「いや、アンタのこと」
ワン「……ま、まぁ逆に褒められたと思っておこう」ピキッ
ワン「さて、じゃあまずは修行の第一段階から始めるぞ!!」
勇者「おーー!!」
38 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:50:56 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・二日目
勇者「……」
ワン「……」
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「………………」
ワン「………………」
勇者「………………」ピクッ
ワン「かぁつッ!!」
バシィッ
39 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:51:31 ID:HEm5xOzE
勇者「いだぁ!!」
ワン「集中力が足りないぞ勇者!!」
勇者「んなこと言ったって昨日も今日もひたすら瞑想じゃん!!」
ワン「だからぁ、世界の中の魔力を感じるんだよぉ!!それができなきゃスタートラインにも立てねぇんだって!!」
勇者「ぐぬぬ……!!」
ワン「力んでも意味ねぇっつの!!」
ビシッ
勇者「ぐはっ!!」
40 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:52:13 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・三日目
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「…………」ピククッ
ワン「……ハァ」
勇者「ぐ………」
41 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:53:06 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・四日目
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「…………」
ワン「…………」
勇者「………………くそっ……」
42 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:54:03 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・五日目
勇者「……だめだ……全然わかんねぇ……」
ワン「……」
ワン「酷なようだがタイムリミットまどあと五日だ……」
勇者「わかってるよ!!」ガンッ
ワン「……焦っても何の解決にもならねぇぞ」
勇者「んなこと言ったって俺が……俺がやらなきゃならねぇのに……!!俺ができなきゃならねぇのに……!!」ギリッ
43 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:54:52 ID:HEm5xOzE
勇者「なんで……なんで俺なんだよ!!こんな才能もねぇ俺なんかが、なんで勇者なんだよ!!くそっ!!」ガンッガンッ
ワン「少し休むか……」
勇者「でも!!俺には時間が!!」
ワン「いいから!!少し休め……」
勇者「……くそっ」チッ
44 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:55:39 ID:HEm5xOzE
――――川
ザパァッ
勇者「……プハァ」
勇者「くそ……ダメだ……俺って……くそぅ……」
ガサッ
ワン「……少しいいか?」
勇者「!?」
勇者(……そこの木の影か……)
45 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:56:32 ID:HEm5xOzE
ワン「俺ってさ……ロトの血を引きし者、とか言われてさ、いきなりラダトーム城に連れてこられたんだ」
勇者「……」
ワン「俺の住んでた町はさ、魔物に滅ぼされちまってさ、途方に暮れてたら今度は『お前が世界を救う勇者だ』ときたもんだ……」
勇者(俺と……同じだ……)
ワン「自分の運命の重さに耐えられずに……『早く世界を救わないと』『早く強くならないと』って見えない何かに押し潰されそうになったりもしたよ……」
勇者「……」
46 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:57:21 ID:HEm5xOzE
ワン「でもさ、ある日気づいたんだよ」
勇者「?」
ワン「俺は俺だよな、って」
勇者「……」
ワン「焦ったり重圧感じたりしてもさ、俺は俺だよ、他の誰でもない……だから……俺は俺にできることを少しずつでもやっていくしかないんだな、って」
勇者「……」グッ
ワン「お前は昔の俺と同じだ……『勇者』っていう重圧と使命に押し潰されそうになってる」
勇者「……」
47 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:58:02 ID:HEm5xOzE
ワン「だけど……お前はお前だ」
ワン「俺でも他の誰でもない。お前はお前なんだ」
ワン「だから焦ったり重荷を感じたりしてもさ、お前はお前にできることをやっていくしかないんじゃないかな?」
ワン「お前にできることをやる……それでこそお前自身だろ……?」
勇者「……」グッ
ワン「……つまんない話したかな?」ハハッ
勇者「いや……ありがとう」
48 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 01:58:36 ID:HEm5xOzE
勇者「すぅぅ…………」
勇者「だあああああああああああ!!」
ワン「ゆ、勇者!?」バッ
勇者「よしっ!!」パンッパンッ
勇者「俺は俺にできることをやる!!やるぞ!!」
ワン「フッ……その意気だ」ニッ
勇者「あとさ……ワン、ちょっと思いついた修行方法があるんだ」
ワン「?」
49 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:00:44 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・七日目・川
ザアアアアア……
勇者(……)プカァ
ザアアアアア……
勇者(……感じる……)
ザアアアアア……
勇者(……川の流れ……水の冷たさ……風の爽やかさ……大地の胎動を……)
ザアアアアア……
勇者(……そこに満ちる……温かで禍々しいそれでいて惹かれる力を……)
勇者(……これが……これが魔力……)
50 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:01:26 ID:HEm5xOzE
勇者(……わかる……わかるぞ!!)
勇者「掴んだ!!」
バシャッ
ワン「……どうやら上手くいったみたいだな」ニヤ
勇者「あぁ!!」
ワン「さて、じゃあ修行の第二段階に移る前にちょいと行かなきゃならないとこがある……ちょっとこっち来い」
勇者「?」
ザブザブ
ワン「しっかり掴まってろよ!!」
ワン『ルーラ』!!
勇者「の……わぁぁぁぁぁあぁーーー!!」
ビューーーーン
51 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:02:20 ID:HEm5xOzE
――――ラダトーム城
ドオン!!
ワン「よっと」
スタッ
勇者「わわっ!!」
ガンッ
ドサッ
ワン「くくくっ…」
勇者「飛ぶなら飛ぶって一言言えよ!!」ガバッ
ワン「悪ぃ悪ぃ」クックック
勇者(コイツめ……)イラッ
勇者「それはそうとどこ行くんだ?ここは城みたいだけど……」
ワン「え?あぁ、ここはラダトーム城。この世界唯一の城さ」
ワン「用があるのは図書室だ」
勇者「図書室ぅ?」
53 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:03:39 ID:HEm5xOzE
――――ラダトーム城・図書室
勇者「うわーー!!本ばっかりだ!!」
ワン「当たり前だろ図書室なんだから……」
老人「おや?ワン様ではありませんか?」
ワン「よぅ、じいさん、元気にしてるかよ?」
老人「いやいや、わしももう歳じゃな……給仕の娘のお尻を撫でたらフライパンで叩かれてしもうてのぅ、昔はワケなく避けられたのじゃが……」
ワン「だっはっはっ!!そんな元気がありゃあ十分だ!!」
老人「ほっほっほ!!」
勇者「ワンー、ここで何するんだ?」
ワン「あぁ、そうだったな、じいさん。この図書室にあるありったけの魔法書持ってきてくれないか?」
老人「……と言うとあの少年が契約をするのか?」
ワン「そういうこった」
勇者「???」
55 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:07:48 ID:HEm5xOzE
老人「ふむ……わかったわぃ、ちょっと待っておれ」
勇者「けいやく?」
ワン「初日に話しただろ?契約をした呪文しか使えないんだ」
ワン「呪文の契約ってのは魔法書って本に書いてある魔方陣を地面に書き写してな、そこで瞑想することで契約が完了する」
ワン「でも前も言ったように契約したらその呪文が使えるってワケじゃない、修行して力量が上がっていくうちに使えるようになる。でも契約をしてなきゃその呪文は使えない……つまり呪文の契約は呪文を使うための必要条件なのさ」
勇者「???」
ワン「えーと……とりあえず呪文が使いたいならその呪文と契約しないとダメってこと。わかった?」
勇者「そう言われりゃわかる!!」ビシィッ
ワン「そ、そうか」
56 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:08:19 ID:HEm5xOzE
老人「ほい、ワン様、これでよいかのぅ」
ドシーッン!!
勇者「!?」
ワン「ありがとな、じいさん」
勇者「ま……まさかこれ全部……?」
ワン「当たり前だろー、あ、あとどの呪文がどんな効果なのか、しっかり覚えるんだぞ」
勇者「マ……マジかよ」
ワン「じゃあ俺は別の用があるから、じいさん後は頼んだぞ」
老人「ほっほっ、任せなさいな」
勇者「ちょ、待っ」
老人「さぁて、久しぶりに鬼呪文教官の血が騒ぐわい」ニタァ
勇者「た、助けてぇぇぇぇーーー!!」
57 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:09:03 ID:HEm5xOzE
――――ラダトーム城・中庭
勇者「ホイミベホイミベホイムベホム……いやベホモ?ベホメ?」ブツブツ
勇者「……ん?」
???「うふふふ」
ワン「で、そいつが言うのです『ロトのしるしがないと認めないぞ!!』と、それで……」
勇者「いよっ!!」
ワン「のわっ!!ゆ、勇者ぁ!?」ビクッ
勇者「なんだよ、あからさまに驚きやがって」
ワン「じゅ、呪文の契約はどうした」アタフタ
勇者「え?あぁ、今朝から始めて……だいたい3分の1くらいかな?今は契約した呪文の暗記タイムであと30分後にテストだってさ……」ハァ
58 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:09:43 ID:HEm5xOzE
???「あの……ワン様、こちらの方は?」
ワン「え?あぁ、勇者と言う……えーと、私の弟子です」
???「勇者様?勇ましいお名前ですね?」ニコッ
勇者「あ、ども勇者です」ペコッ
勇者「えーと、アンタは……ワンの彼女?」
ワン「ブーーーーーー!!////」カァ
???「か、かかか彼女だなんてそんな……////」カァ
ワン「だだだ、誰が彼女かぁ!!このラダトームの姫君ローラ様だぞ!?恐れ多いわこのアホが!!」
ガンッ
勇者「……ってぇ!!」
ワン「ローラ様に謝れ!!この!!この!!」
グイグイ
勇者「わたたたっ!!」
勇者(……あれ?でもたしか『ローラ』って一番目の勇者の……)
59 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:11:17 ID:HEm5xOzE
ワン「姫様、私の弟子がとんだご無礼を!!」ヘコー
ローラ「いえいえ、気にしてはいませんよ、その……私もビックリしてしまっただけですし」モジモジ
ワン「……ったく、お前は早く図書室に戻れ!!」
勇者「わ、わーったよ!!」
タッタッタッ
ワン(……余計なことを……)ハァ
60 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:12:06 ID:HEm5xOzE
ピタッ
勇者「あ、ワンー、ローラ姫ーー!!」
ワン「?」
ローラ「?」
勇者「アンタ達すっごくお似合いだと思うぜーー!!」ヒュー♪
ワン「なっ////」カァ
ローラ「まぁ////」カァ
ワン「ゆ、勇者ぁーー!!貴様ぁーーー!!」
勇者「やべっ!!じゃ!!」
ドヒュン!!
ワン「……ったくアイツめ……」ギリギリ
61 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:12:51 ID:HEm5xOzE
ワン「姫様二度にもわたるご無礼、なにとぞお許しを!!」
ローラ「いえ……その……ワン様?」
ワン「はっ!!」
ローラ「私と『お似合い』と言われるのは……ワン様はお気分を害されますか?」
ワン「い、いえ!!光栄の極みです!!しかし私の様な一介の旅人が姫様と釣り合うとは思えません故……その……」
ローラ「そうですか……その……ローラも嬉しゅうございました」
ワン「……え?」
62 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:13:27 ID:HEm5xOzE
ローラ「……////」カァ
ワン「あ……////」カァ
ローラ「……////」モジモジ
ワン「……////」モジモジ
ローラ「……////」
ワン「……////」
63 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:14:01 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・九日目・夜
老人「……97点と、一応合格じゃの」
勇者「よっしゃああーー!!」ガッ
老人「しかしのぅ、命のやりとりをする魔物との戦闘の最中に間違った呪文を唱えることは死に直結する。本来は100点じゃなきゃ合格させたくないところじゃよ」ポリポリ
勇者「あぁ……だが今は紙と机とペンから解放された喜びをゆっくり味わわせてくれ……」ジワッ
老人「まったく……呪文の契約自体は昨日で終わったと言うのに呪文の内容を覚えるのに一日かかるとは……やれやれじゃのぅ。ほっほっほっ」
64 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:14:36 ID:HEm5xOzE
ワン「……お、終わったとこみたいだな」
老人「えぇ、呪文の契約とわしの呪文講座は今終わりました。あとは勇者の努力次第じゃて」
勇者「ありがとうな!!じいさん!!俺頑張ってすげー呪文使えるようになるよ!!」
老人「そうかいそうかい、楽しみじゃのぅ……ワン様もいい加減ベホマぐらい……」
ワン「わーー!!わーーー!!」
勇者「?」
65 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:15:15 ID:HEm5xOzE
――――第一の世界・十日目・ラダトーム城付近の森
ワン「よし、始めろ」
勇者「……ふぅーー……」
勇者(まず世界の魔力を感じる……)
勇者(次に自分の魔力を感じる……)
勇者(そして自分の魔力で扉を造るイメージ……)
勇者(最後にかけ声と共に扉を開け放ち世界の魔力を扉を通過させて変化させる!!)
勇者『ギラッ』!!
ボウッ!!
勇者「で……出た……出たぞーー!!」
67 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:16:08 ID:HEm5xOzE
ワン「よくやったな、勇者!!」ニッ
勇者「あぁ!!ありがとうワン!!」
ワン「だがまだ呪文を出すまでに時間がかかりすぎる。最終日の今日は不安定な体勢や動きながらでも即座に呪文が使えるように練習するぞ!!いいな!?」
勇者「はいっ師匠!!」
68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:16:46 ID:HEm5xOzE
――――
勇者「ハァ……ハァ……」
ワン「もう日が暮れるな……」
勇者「だめだ……魔力ももうカラだよ……」ガクッ
ワン「だけどこの一日で随分と早く呪文が唱えられるようになったじゃないか」
勇者「へへ……」ニカッ
ワン「……もう十日か……早いもんだ……お前とももうお別れだな……」
勇者「ワン……」
勇者「あ、あのさ、お前も竜王を倒さなくちゃならないって言うのに十日も俺に稽古つけてくれてありがとうな」
ワン「気にするな、俺はずっと一人旅をしてきたからな、お前と過ごしたこの十日間は楽しかったぜ」
勇者「お、俺も!!つらい思いもしたけど楽しかった!!」
69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:17:24 ID:HEm5xOzE
キラキラキラ……
勇者「!?」
ワン「!?」
勇者「か、体が光って……」
ワン「どうやらお別れの時みたいだな……」
勇者「……」
キラキラキラ……
ワン「俺さ、お前に二つ内緒にしてたことがあるんだ」
勇者「?」
ワン「実は俺さ……呪文十個ぐらいしか使えないんだ」
勇者「ハァ!?」
ワン「攻撃呪文ならギラとベギラマ。回復呪文ならホイミとベホイミくらいかな」
70 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:17:55 ID:HEm5xOzE
勇者「な、なんだよそれ!!中級呪文がいいとこじゃねぇかよ!!」
ワン「だな!!」
勇者「なに開き直ってんだコノ野郎!!じゃあ俺はそんな奴に先輩面されて指導されてたワケか!?」
ワン「だな!!」
勇者「だから何開き直って……」
ワン「……ぷっ」
勇者「……くっ」
勇者・ワン「だっはっはっはっ!!」
勇者「くくくっ……で、もう一つの秘密は?」
71 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:18:30 ID:HEm5xOzE
キラキラキラ……
ワン「あぁ……それがな、普通は0から呪文が使えるようになるまで早くて一ヶ月はかかるもんなんだ」
勇者「……え?」
ワン「だから十日でここまでできるようになったお前はすげー素質あるよ。お前は才能のないグズなんかじゃない!!胸を張れ!!」
勇者「……ワン……」
ワン「呪文の初歩しか教えられなくてごめんな……後は他の世界の勇者とやらに任せることにするよ」
勇者「うぅん……ありがとな……」
72 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:19:06 ID:HEm5xOzE
ワン「これからも呪文の修行は怠るなよ!?俺もお前に負けないように呪文の練習してもっとすげー呪文使えるようになるからよっ!!そんで竜王なんてパパッと倒してやる!!」
勇者「ハハッ、わかった♪俺も負けないぜ!!」
キラキラキラ……
ワン「……元気でな……勇者」
勇者「あぁ……ワンもな……」
勇者「あ、俺からも一つ言わせてくれ!!」
ワン「?」
勇者「無事竜の王を倒したらさ、その時は世界を救った勇者として堂々とローラ姫に告白しろよ!?」
ワン「な、ななな、何言ってやがんだお前!!お、俺は別に……!!」カァ
73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:19:43 ID:HEm5xOzE
勇者「バレバレなんだよ、バカ」ニヤニヤ
ワン「ぐぬぬぬ……////」
勇者「な、漢と漢の約束だぜ?」
ワン「……わ、わかった」
勇者「じゃ指切りだ」
ワン「よし……」
勇者・ワン「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!!、と」
キラキラキラ……
74 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:21:44 ID:HEm5xOzE
ワン「勇者……」
勇者「なんだよ?」
ワン「俺はこの世界を救ってみせる……だからお前も自分の世界を必ず救えよ」
勇者「あぁ……!!」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
ワン「……また一人旅……か」
ワン「……じゃあな、勇者……」
75 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:22:15 ID:HEm5xOzE
――――???
勇者(……ここは……最初に来た星の海か……)
ルビス『第一の世界はいかがでしたか、勇者』
勇者「あぁ……ルビスか……一番目の勇者……ワンには呪文を教わったんだ……世の中俺の知らない不思議なことでいっぱいだなぁ……」
ルビス『そうですか、実りある十日間を過ごせたようですね』
勇者「……うん」
ルビス『では今は休みなさい、明日の朝になる頃次の世界へとあなたをいざないます』
勇者「わかった!!」
勇者(……なんか……)
勇者(夜空の中で寝るってのは不思議な感覚だなぁ……)
勇者(……zZzZ)
77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:24:56 ID:HEm5xOzE
――――第二の世界
パッ
勇者「フゴッ!?」
ドシーン!!
勇者「あいだぁっ!!」
勇者「つつつ……なんつー起こし方だよ……ルビスの奴狙ってやってるんじゃねぇだろうな!!」ワナワナ
勇者「……まぁた森か……」
ガサッ
勇者「?」
78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:25:28 ID:HEm5xOzE
???「ごきげんよう……あなたは?」ニコ
勇者「へ……?お、俺は勇者って者だが……」
???「勇者さん?勇ましいお名前ですのね」ニコッ
勇者「え……と、そりゃどうも」
勇者(ん……?聞き覚えのある台詞だな……しかもこの娘どこかで見たことあるような……)
勇者「……」ジッ
???「どうかなさいましたの?私のお顔に何かついてますの??」
勇者「あ、い、いや、そういうワケじゃ…………あ!!」
???「?」
勇者(そうだ!!ローラ姫だ!!この娘ローラ姫に似てるんだ!!)
勇者(……ってことはこの娘が……)
79 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:26:05 ID:HEm5xOzE
???(おーい、プリン~。どうかしたか~?)
プリン「あ、ツーさん!!」
ツー「ん?誰コイツ?」
勇者「青ずくめの服にゴーグル!!に、二番目の勇者!!」
ツー「???」
ツー「二番目ぇ?なんのことだ……?てかなんなんだお前?」
勇者「え……?あぁ……そうか……えっと……ちょっと握手してくれないか?」スッ
ツー「ハァ?いきなり握手してくれとか怪しすぎるだろ」
80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:26:47 ID:HEm5xOzE
プリン「あら、いいじゃないですの、握手ぐらい。ほら」ピト
勇者「あっ」
プリン「なんともありませんわよ」フフッ
勇者(……あ、あれ?)
ツー「ム……プリンがそう言うなら……」ガッ
キィィィイイイン
ツー「くっ……頭ん中にコイツのことが……!?」
プリン「ど、どうしましたのツーさん!!」アセアセ
ツー「い、いや、大丈夫……なんでもない。そうか……勇者ってのか、俺はツー。よろしくな」
勇者「あ、あぁ、こっちこそよろしく」
勇者(プリン姫には何も起こらなかった……どうやらその世界の勇者にしか俺のことは伝わらないみたいだな……)
81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:27:25 ID:HEm5xOzE
――――ツー一行のキャンプ
ツー「クッキー、遅くなってごめんな」
クッキー「ホントですよ~、一人で退屈だったんですよ?」
クッキー「一人じゃトランプもできないし……ん?こちらの方はどなたですか?」
ツー「ん、あぁ、詳しくは後で話すよ。ただこれから冒険はちょっと中断してな、俺はコイツに稽古をつけてやらなきゃならないことになったんだ」
クッキー「えー!?なんでまた!?」
ツー「だからそれも後で話すって」
82 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:27:59 ID:HEm5xOzE
クッキー「まぁ僕はのんびりできてそれはそれで良いですけどね~」
ツー(相変わらずののんびり屋だ)
クッキー「あ、今『相変わらずののんびり屋だ』って思ったでしょ?」
ツー「な、なんでわかった!?」ギクッ
クッキー「わかりますよ、なんだかんだで付き合い長いですからね」
プリン「フフフッ」
勇者「ぇえっと……」
クッキー「あ、僕はクッキー。クッキーでいいよ」
勇者「あ、俺勇者」ペコ
83 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:28:37 ID:HEm5xOzE
プリン「もうご存知と思いますが私はプリンと申します。プリンで構いませんわ」
ツー「んで俺がツーだ。みんなタメ口でいいぞ……っと、あぁそっか、悪ぃ悪ぃ。修行の話だったな、んーと……そうだなぁ……お前がどのくらいの力量なのか知りたいからな、軽く組手でもしてみるか!!」
勇者「く、組手!?」
ツー「そぅ、組手」
クッキー「お、これは面白そうですね♪」
プリン「ツーさーん、勇者さーん!!どちらも頑張って下さーい!!」
ツー「ほら、かかってきな。組手っつっても呪文もアリだぜ?本気で来な」ニッ
勇者「ぐっ……」
84 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:29:13 ID:HEm5xOzE
勇者(組手なんてしたことないや……昔友Bと喧嘩したくらいか……?)
勇者(しっかし……対峙してわかる……これが勇者の気迫!!命のやりとりでない闘いでさえ身体の隅々まで意識を集中しているのがわかる……スキがない……!!)ツー…
ツー「どうした、来ないのか?」ジリッ
勇者「くっ……いくぜ!!」ダッ
ツー(真っ正面から突っ込んでくるだけか……つまんない奴だな)
勇者「うおおおお!!」
ダダダッ
勇者「今だ!!」
85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:29:58 ID:HEm5xOzE
勇者『イオッ』!!
カッ!!
ボウンッ!!
ツー「!? 呪文で視界を!?」
カツンッ
ツー「だけどな……物音で右から来るのが丸分かりだぜ!!」
ブンッ
86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:30:32 ID:HEm5xOzE
ツー「!?」
コロコロ……
ツー「な、ただの石コロ!?」
勇者「もらったぁ!!」
ブワァッ!!
ツー(!! 呪文で正面の視界を遮り目眩ましをかけ横から攻撃するとみせかけ本当は爆煙を隠れ蓑に正面から攻める二重のフェイクか!!)
勇者「らぁぁ!!」
ドゴッ!!
87 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:31:08 ID:HEm5xOzE
勇者「勝負あっ……」
ツー「いい手だったが……こんなヘナチョコパンチ効くかよ」ニヤッ
勇者「なぁっ!?」
ツー「ふんっ!!」
ガンッ!!
勇者「ぶへぇいっ!!」
ドガンドガンドガン
バキバキバキ
ズズズーン
勇者「きゅう……」ピヨピヨ
ツー「あ、やべ……やりすぎた」アセアセ
クッキー「あーあ、ツーは馬鹿力なんですから、もぅ」
プリン「あらら、ですわ」
88 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:32:04 ID:HEm5xOzE
――――
ツー「いやー、悪かった。手加減って昔から苦手でさ、つい……な」アハハ
勇者「あの後プリンがベホマかけてくれたから良かったものの……一歩間違えた死んでるっつーの」ツーン
クッキー「笑いごとじゃありませんよ、ツー。まったく……で修行の内容は決まったんですか?」
ツー「あ、あぁそうだな。さっきの組手でわかったんだけどお前は全然筋力が足りてない。戦闘訓練・呪文の練習……これから何をやるにも筋力・体力は欠かせない。だから俺の受け持つ十日間は基礎ステータスの向上に努めようと思う」
勇者「うへぇ……基礎練かよ……」
ツー「なんだ、文句あんのか?」ゴキゴキッ
勇者「い、いえ!!何もありません!!」
89 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:32:44 ID:HEm5xOzE
ツー「よろしい。えーと、クッキー」
クッキー「なんですか?」
ツー「ちょっとローレシアまで飛んで貰えるか?」
クッキー「はぁ……僕はタクシーじゃないですよ……っと」
勇者「自分で飛べばいいじゃないか」
クッキー「あぁ、ツーは呪文が丸っきり使えないんですよ」
勇者「ぇえ!?勇者のクセに!?」
90 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:33:15 ID:HEm5xOzE
ツー「……」
勇者「……ぷぷっ」
ツー「……」ビキッ
ツー「いいんだよ、俺はその代わり力があるからなぁ!!」
グリグリ
勇者「ぎゃあああ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
クッキー「大人気ないなぁ、もう」ハァ
プリン「楽しそうですね」フフッ
91 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:34:07 ID:HEm5xOzE
――――ローレシア城付近の山中
ツー「さてと、えーと……この石でいいかな……プリン、インクあるか?」
プリン「これでよろしいですか?」
ツー「サンキュー」
ピト
キュッキキュッキュ
ツー「これでよし!!」
勇者「?」
ツー「おい、勇者。この石を見ろ」
勇者「??? インクで"亀"って書いただけのただの石コロじゃないか」
92 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:35:02 ID:HEm5xOzE
ツー「よーく見てろよ……」
勇者「???」
ツー「むぅん……!!」
ビキビキビキッ
ムキムキムキッ
ツー「ちぇあぁッ!!」
ビュッ!!
ヒューーーン……
勇者「? 石を遠くまで飛ばす修行か?」
ツー「いや、今投げた石を拾ってくる修行だ」
勇者「ハァ!?」
93 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:35:35 ID:HEm5xOzE
ツー「いいか、物を探すって言うのはだな……」
勇者「いやいやいや!!ワッケわかんねぇよ!!この険しい山あんな小さい石コロ探せってのか!?そもそもこの修行どっかで見たことあるぞ!?」
ツー「つべこべ言わずに拾ってこい!!これは修行の第一段階だからな!!お前には時間がないってことを忘れるな!!さぁ行け!!」
勇者「~~~~~っ!!」
勇者「くっそ!!遭難したら探してくれよ!!」
ダダダッ
ツー「はいはーい。ここらへんは魔物もいないし修行にはもってこいだ、頑張れよ~!!」
94 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:36:11 ID:HEm5xOzE
クッキー「……さて、彼が何者なのか、どうして冒険を中断するのか、話していただけますね?」
クッキー「石探しなんて修行を押しつけてあなたが自分の時間を作ったのはそのためでしょうから」
ツー(コイツは変なとこで鋭いんだよなぁ……)
クッキー「今『コイツは変なとこで鋭いんだよなぁ……』って思ったでしょう」
ツー「な、なんでわかった!?」ギクッ
クッキー「なんだかんだで付き合い長いですから」ニコッ
プリン「うふふっ」
ツー「はぁ……ぇえっと……どこから話せばいいかな……っつっても俺は勇者のこと全部知ってるワケじゃないけどな」
95 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:37:20 ID:HEm5xOzE
クッキー「ふーん……なるホド、そういうことですか」
プリン「自分の世界を救うために別の世界へ行くだなんて……なんだかロマンチックですわね」
クッキー「こんなこと言いたくはありませんが、彼がハーゴンの手先というのは考えられませんか?僕達を作り話で油断させて隙をうかがっているとか」
ツー「いや、アイツに触れた時温かなものを感じた……あれは間違いなく精霊様の気配だ。そして優しい声でアイツのことを話してくれたんだ。だからってのも変かも知れないけど俺はアイツのこと信じるよ」
プリン「私も信じますわっ♪」
クッキー「はぁ……なんで二人はそうお人好しかなぁ」
ツー「なんだよ、お前はアイツのこと信じられないのかよ?」
クッキー「いいえ、そんなことないですよ。彼が悪い人でないのは目を見ればすぐに分かりましたから」ニコッ
ツー「じゃあいらんこと聞くなよ」ククッ
プリン「ふふふっ」
96 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:37:57 ID:HEm5xOzE
クッキー「透き通っていて真っ直ぐで、とても温かで……でも心のどこかに不安や悩み、苦しみが潜んでいる……そんな瞳でしたね」
クッキー「もしかしたら精霊様は力をつけるためだけに彼を修行の旅に出しただけじゃなく何か別の部分でも彼に成長して欲しくて僕達に彼の修行を頼んだのかも知れませんね」
ツー(コイツはたまにワケのわからんことを言う……)
クッキー「今『コイツはたまにワケのわからんことを言う……』って思いましたね?」
ツー「だからなんでわかるんだよ!!」ギクッ
クッキー「それは……」
プリン「『付き合いの長さ』ですね」クスクス
クッキー「おや、僕としたことが」ポリポリ
プリン「うふふっ」
97 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:38:29 ID:HEm5xOzE
クッキー「まぁさっきも言いましたけど僕はのんびりできて良いですけどね~……ツーも楽しめそうで良かったですね?」
ツー「んあ?」
クッキー「さっきの組手……およそ素人には考えつかない二段フェイント……彼、かなりの素質がありますから」
ツー「たしかに……な」ニッ
98 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:39:14 ID:HEm5xOzE
――――第二の世界・二日目・夜
勇者「た……ただいまぁ……」ヨロヨロ
ツー「お、お疲れ様」
勇者「だめだ……丸二日もかかっちまった……」ヘロヘロ
クッキー「いえ、むしろ二日で見つけてきたのは早かったと言えますよ。石が飛んでいった方向だけを手がかりに山中から小石を見つけてくるなんてよほど嗅覚の優れたどこかの戦闘民族の子供でもないか限り数日かかりますからね~」
勇者「そ……そうかな」エヘヘ
ツー「なぁに照れてやがる。まぁ山中の小石探しってのは体力も集中力もフルに使うからな、良い修行だよ」
99 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:39:56 ID:HEm5xOzE
勇者「そっか……俺もうクタクタ……」ドサッ
ぐぎゅるるる~
勇者「腹も減ったし……」
ツー「ん、そうだな飯にするか……今日の晩飯当番は……」
プリン「はーい、できましたよー♪」
クッキー「……プリン……ですか……」タラ…
プリン「はい、勇者さんもたーんと召し上がれ♪」
勇者「め……飯だ……いただきまーす!!!!」
ガツガツガツ
勇者「………………!!」ドーン
プリン「どう?美味しいですか?」ニコッ
100 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:40:34 ID:HEm5xOzE
勇者「……と、とっても美味しいです」プルプルダラダラ
プリン「良かったですわ♪おかわりいっぱいありますからね~♪」
クッキー「……」ダラダラ
勇者「……クッキー?」ダラダラ
クッキー「……ん?」ダラダラ
勇者「……プリンの料理ってその……すごく個性的と言うか……前衛的と言うか……」ゲソッ
クッキー「……うん、言いたいことはわかりますよ……」ゲソッ
勇者「い、いつもこんな感じなのか?」
クッキー「えぇ……普段はなるべく料理は僕がやるようにしているのですが……たまにプリンが当番になる日がありまして……」
101 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:41:11 ID:HEm5xOzE
勇者「ルーラで町の宿屋にでも行って泊まればいいじゃないか……」
クッキー「そうしたいんですが……そうしない理由は二つあります」
勇者「二つ?」
クッキー「一つはルーラは街や城、任意の場所に瞬時に行くことのできる便利な呪文ですがそれ以外のところ……例えばサマルトリア南の森、ムーンブルク付近の砂漠……と言うように漠然とした場所に移動することはできないのです」
クッキー「ですから冒険者は冒険の最中にルーラで街に戻り宿に泊まるということはあまりせず野宿することが多いのです」
クッキー「聞くところによると勇者には修行の時間がないらしいですね。修行に適した今のキャンプ地に来るにはここから一番近いローレシアから歩いて来なければなりません。その移動時間の節約のためでもあります」
勇者「へぇ~……」
クッキー「そしてもう一つ……最大の理由が……あれです」
102 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:41:47 ID:HEm5xOzE
ガツガツガツ!!
ツー「おかわり!!」
プリン「はーい♪」
ツー「いやぁ、プリンの飯はいつ食っても美味いな!!」
プリン「ふふ、ありがと♪」
ガツガツガツ!!
ツー「またおかわり!!」
勇者「……嘘だろ……オイ……」
クッキー「ツーの味覚は常人の味覚とは著しく異なるらしく……プリンの料理を大絶賛して食べるのです……」
クッキー(とは言え美味しいものは美味しいと感じるらしいので『不味い』という認識が狂っているようですが)
103 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:42:22 ID:HEm5xOzE
勇者「……」
クッキー「……ですから僕の再三にわたる宿屋での宿泊の提案も『は?なんで?キャンプに不自由ないし別によくね?』で済まされる次第……」ウゥ
勇者「……つらかったんだな……」ウゥ
クッキー「……同じ苦しみを分かつことのできる友人ができて僕は嬉しいです……」グスッ
ツー「おーい!!お前らももっと食えよー!!」
プリン「そうですわ、遠慮することないですわよ~☆まだまだいーっぱいありますから♪」
勇者・クッキー「…………うん」ニコッ(泣
【この日、勇者とクッキーの間には同じ苦しみを乗り越えたことで確固たる友情が築かれたことは言うまでもない】
104 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:43:00 ID:HEm5xOzE
――――第二の世界・五日目
ツー「オラオラッ!!もっと速く走れ!!」
勇者「ぐぬぬ……!!無茶言うな……山道でしかもタイヤが重くて……ぐぅ……!!」
クッキー「勇者!!あの日の苦しみを忘れたのですか!!あの苦しみと比べたらこんなことなんでもないでしょう!!」
勇者「……!!」
勇者「ぅ、うぉおおおお!!」
ダダダダダダッ
クッキー「そうです勇者!!頑張って!!」グッ
ツー「なんかあの二人最近すげー仲良いよな……なんかあったのか?」
プリン「さぁ?でも良いことではありませんの?」ニコッ
105 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:44:00 ID:HEm5xOzE
――――七日目・夜
勇者「だぁ……今日もくたびれたぁ……」ドサッ
ツー「まぁ大分筋力も体力ついてきたよな、またプリンに頼んでラリホーでの熟睡とベホマでの体力回復だな」
勇者「うん……呪文って上手く使うと筋肉痛とかも治っちまうんだなぁ……ホントすごいや」
ツー「……なぁなぁ勇者、お前この世界に来る前は別の勇者に呪文の修行してもらってたんだろ?」
勇者「あれ?その話したっけ?」
ツー「最初にお前に触れた時にわかったんだ。だから俺は基礎ステータスの向上を修行にしたんだ」
勇者「なるホド」
ツー「んでさ、その勇者ってどんな勇者だったんだ?」
クッキー「僕も気になりますね」
プリン「私もですわ」
106 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:44:39 ID:HEm5xOzE
勇者「ぇーと……あ!!そうか!!そういやそうなのか!!ははーん、この時代はあの時代の後の時代だもんな~」
ツー「なんだぁ?」
勇者「ふむふむ」ジー
ツー「な、なんだよ」
勇者「ぅうむ」ジー
クッキー「な、なんですか?」
勇者「うんうん」ジー
プリン「どうしましたの?」
勇者「いや、お前らやっぱりワンとローラ姫に似てるな、と思ってさ」
ツー・クッキー・プリン「!?」
ツー「な、なんでお前がご先祖様の名前を知ってるんだよ!!」
クッキー「しかも会ったことがあるような口ぶりですね……」
プリン「もしかして……」
勇者「あぁ、前に俺に修行をつけてくれた勇者はお前達のご先祖様、アレフガルドを救った勇者、ワンだ!!」
107 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:47:03 ID:HEm5xOzE
――――夜更け
勇者「んでさ、アイツ姫様の前じゃ面白いぐらいオドオドしちゃってさ」ケタケタ
ツー「なんだそれ、伝承じゃ常に凛とした態度でローラ姫を魅了しやがて二人は恋に落ちたらしいぜ」
勇者「アイツ何嘘の伝承広めてやがんだっ!!」
一同「わっはっはっはっ」
クッキー「……まさかこうしてご先祖様の話を聞くことができるだなんて……これも精霊様のおぼしめしの賜物ですね」
プリン「そうですわね……」
勇者「あぁ……アイツは良い奴だったけどさ……ただ良い奴ってだけじゃなかったな……やっぱり『勇者』って感じだったな……」
ツー「……」
クッキー「……」
プリン「……」
108 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:48:06 ID:HEm5xOzE
ツー「『勇者』……か」
勇者「?」
ツー「……なぁ、勇者俺さ、呪文が使えないって話したろ?」
勇者「ん?あぁ」
ツー「だからさ、力だけは誰にも負けないように、呪文なんか使えなくても仲間の役に立てるように、ってずっと身体を鍛えてきたんだ」
クッキー「……」
プリン「……」
ツー「そんでさ、強さを求めていくうちに……いつのまにか力に飲まれちまった……」
勇者「……」
109 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:49:03 ID:HEm5xOzE
ツー「出会う魔物を叩き潰して、殺して、絶対的な勝利を欲した……」
ツー「んでさ、ある時……血まみれになった自分の拳を見て思ったんだよ」
ツー「これが『勇者』なのか?……って」
勇者「……」
ツー「魔物は悪……悪は根絶やしに……そうやって悪を殲滅する……それが勇者なのかよ?……って」
クッキー「……」
プリン「……」
ツー「そんなある日さ、森で魔物に襲われてる子供を助けたんだ」
ツー「そしたらその子がさ、魔物が怖くて涙流してたその子が、俺にニッコリ笑って言ってくれたんだ」
ツー「『ありがとう、お兄ちゃん』って……」
110 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:49:41 ID:HEm5xOzE
勇者「……」
ツー「そんで俺は思った……『あぁ……この笑顔が見たいから……この笑顔を守るために……俺は悪と闘うんだ……それが『勇者』なんだ』……ってな」
ツー「っつってもやることは前と変わってない。人々に害を及ぼさないように魔物を退治する……それが勇者の……俺達のやってること」
ツー「だけど……あの日から心の持ち方……何のために闘うのか、どうして闘うのか……それが俺にとって明確になったんだ……」
勇者「……」
ツー「もしお前がこれから自分のしてることがわかんなくなったら……『勇者』ってものがわかんなくなったら……お前の中の大事なもんに聞いてみたらいい……いつでもそこに答えがあるよ」
勇者「……ツー……」
ツー「……なーんてな!!脳筋の俺には似合わねぇ話だったかな」ハハッ
111 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:50:17 ID:HEm5xOzE
勇者「……やっぱりお前はワンに似てるよ……」
ツー「え?」
勇者「ワンもさ、俺が落ち込んでる時に道を指し示してくれたんだ……お前も俺に勇者の道を示してくれた……やっぱり血は争えねぇよな」
ツー「……かーっ!!ったく、ガラにもねぇ話して疲れちまったぜ!!今日はもう寝る!!」ガバッ
クッキー「フフッ」
プリン「うふふっ」
ツー「明日は地獄の方がまだマシって修行してやるから覚悟しとけよ!!」
勇者「うへぇ……そんなぁ」
112 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:51:05 ID:HEm5xOzE
――――第二の世界・十日目・夕方
勇者「298……」
勇者「299……」
勇者「ぐぬぬぬ……!!」
勇者「さん!!びゃぁくっ!!」
ドズンッ!!
勇者「ハァ……ハァ……」ゼェゼェ
ツー「……よく十日間俺の修行に耐えきったな」
勇者「……ったく、お前加減ってもん知らねぇんだもんな、何度死ぬと思ったことか……」
ツー「プリン、ベホマを」
プリン「えぇ」
プリン『ベホマ』!!
パァァ
勇者「ふぃ~……ふぅ……ありがと、プリン」
プリン「どういたしまして」ニコッ
113 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:52:09 ID:HEm5xOzE
ツー「さて……最後の修行だ……」
勇者「?」
ツー「もう一度俺と組手だ」
勇者「!!」
クッキー「勇者……あなたはこの十日で飛躍的に筋力・体力が向上しました。もう初日のように簡単にやられたりはしません」
勇者「……」
プリン「頑張ってね、勇者さん。今回だけはあなたの方を応援しますわ♪」
勇者「……ぁあ!!」
ザッ
勇者「よろしくお願いします」ペコッ
ツー「あぁ……」スッ
ジリ……ジリジリ……
クッキー「……はじめっ」
114 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:52:58 ID:HEm5xOzE
勇者「だぁっ!!」
ダンッ
クッキー(あの距離……初日には走って詰めていた間合いを一足飛びで詰めた……)
勇者「せぃ!!」
ビュッ
ツー「なんの!!」
ガッ!!
バッ!!
ブン!!
シャッ!!
ツー「どうした勇者!!こんな程度じゃないだろう!?」
勇者「へへっ、お前はどこのエリート王子だよっ!!」
115 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:53:36 ID:HEm5xOzE
ドゴッ!!
勇者「くっ!!」
ズザザー
勇者(よし、覚えたてのコイツで……!!)
勇者『ベギラマァ』!!
ボウゥ!!
クッキー「!! 中級呪文のベギラマ!!広範囲を焼く炎ですか!!」
ツー「甘いぜ!!破ァ!!」
ブンッ!!
ブワァッ!!
プリン「か、かき消しした!?」
プリン(何者ですの!?)
116 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:54:22 ID:HEm5xOzE
チリチリチリ……
ツー(……いない!?)
勇者「後ろだ!!」ザッ
ツー「な……!!」
勇者「もらったぁ!!」
ツー(威力のあるベギラマは攻撃と見せかけ本命は目隠しとしての陽動!?)
勇者「おぉぉらぁぁぁ!!」
ドゴオッ!!
勇者「どうだぁ!!」
ツー「……」ニッ
ガシッ
勇者「なっ!!」
ツー「初日とは全然違う……良いパンチだったぜ」
117 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:55:28 ID:HEm5xOzE
ツー「はぁ!!」
バキィッ!!
勇者「ぐっはぁぁぁ!!」
ドゴンドゴンドゴンドゴンドゴン!!
バキバキバキバキバキ!!
ズズズズズーン!!
勇者「っつつ……だめだ、やっぱり敵わねぇや」苦笑
ツー「でもお前は強くなったよ」
ツー「さっきのフェイントもパンチも良かったし……何より俺が本気の30%で殴っても気絶してない!!」
勇者「こ、これで30%かよ……」ゾッ
クッキー「ツーの馬鹿力は底なしですからねぇ」ククッ
118 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:56:05 ID:HEm5xOzE
勇者「……ったく、敵わねぇや、ホント」ヘヘッ
ツー「ほら、立てよ」スッ
勇者「……ありがとう」ガッ
キラキラキラ……
ツー「!?」
プリン「こ、これは……!?」
勇者「あちゃー、もうお別れの時間か……どうやら十日目の日が沈むまでがタイムリミットみたいだ……」
キラキラキラ……
クッキー「勇者……」
プリン「勇者さん……」
119 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:56:53 ID:HEm5xOzE
キラキラキラ……
ツー「……勇者……」
ツー「これからもちゃんと身体鍛えるんだぞ!!お前はまだまだ強くなれる!!俺が保証する!!」
勇者「ありがとう、ツー……」
クッキー「短い間でしたが楽しかったです……勇者……」
勇者「クッキー……」
プリン「どうかお体にお気をつけて……」
勇者「プリン……」
キラキラキラ……
120 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:57:30 ID:HEm5xOzE
ツー「勇者、お前は呪文も使えるし闘いのセンスもある、だから他の勇者のところでもっと修行してもっともっと強くなれ!!俺は呪文は使えないけど……俺なりの闘い方見つけてもっと強くなってみせるぜ!!」
勇者「ハハッ……それ以上強くなってどうすんだよ」
ツー「……行ってこい、勇者」
勇者「あぁ……」
キラキラキラ……
勇者「あ、ツー……最後に一言」
ツー「……?」
勇者「お前は間違いなく『勇者』だ!!胸張って自分が信じた道を仲間と突き進めよ!!」
ツー「……あぁ!!ぁぁ!!そうするとも!!」
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
121 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:58:08 ID:HEm5xOzE
ツー「行っちまった……」
プリン「短い間でしたが本当に楽しかったですね……」
プリン「勇者さん……自分の世界を救えると良いですね……」
クッキー「えぇ……さぁ、僕達は僕達の世界を救うために進みましょう。とんだ寄り道をしてしまいましたしね」
クッキー(でも……たまには寄り道も良いものですね……)
ツー「今『でも……たまには寄り道も良いものですね……』って思っただろ?」
クッキー「な、なんでそれを!?」ギクギクッ
プリン「長い付き合いですものね、私達♪」
ツー「そーゆーこった♪」
クッキー「……まったく、敵わないなぁ」苦笑
122 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 02:58:42 ID:HEm5xOzE
――――星の海(勇者命名)
ルビス『お帰りなさい……勇者』
勇者「あぁ……ただいま、ってここに住んでるワケじゃないのにただいまってなんか変だな」
ルビス『フフッ、たしかにそうですね……二番目の勇者とはどのような修行を?』
勇者「あぁ……ひたすら筋トレしたり走らされたり……キッツかったぁ……でも見てくれ、この筋肉!!」
ムキッ
ルビス『素敵ですね……さぁお休みなさい、明日は第三の世界への旅立ちです……』
勇者「うん……おやすみ……」
勇者「……zZzZ」
123 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:03:07 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界
パッ
勇者「……はっ!!」
???(!! ひ、人!?)
勇者「のわわわわ!!」
???(えーと、えーと、う、受け止めなきゃ!!)
ドシーン!!
???「きゃっ!!」
勇者「あつつつ……くそ、いい加減にしろよ……今度戻ったらちゃんと言わないと……」
勇者「暗いな……ここは洞窟かなにかか?」ムニュ
勇者「……?」ムニュ
勇者「……!!」
???「きゅう……」グルグル
勇者「うっわーーー!!な、ななな、なんで下に女の子がぁ!?」
124 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:03:47 ID:HEm5xOzE
カッカッ
???「この洞窟広いなぁ……僧侶ー、そっちはどうだ~?」ヒョコ
勇者「!!」タラー
???「!!」ギョッ
僧侶「きゅう……」
???「な、ななな、お前!!僧侶に乗りかかって何してやがる!!」
勇者「わ、ちょっ、まっ!!これは誤解だ!!」
???「うるさーい!!」
ゴウッ!!
???「どうしました?戦士?何やら騒がしいですが……」コッコッ
戦士「コイツが僧侶にあられもない仕打ちを……!!」
僧侶「きゅう……」
勇者「ま、待ってくれ!!これにはワケが!!」
ブンッ!!
勇者「わっ!!」
125 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:04:30 ID:HEm5xOzE
賢者「ほぅ……私達スリー一行の仲間を襲う愚か者ですか……わかりました、手加減はしませんよ!!」
戦士「オラァァァ!!」
ブンッ
勇者「ひぃっ!!」
賢者『メラゾーマ』!!
ゴウゥゥウ!!
勇者「あつあつっ!!あつ!!」
???「どうしたんだ、さっきから……」コッコッ
賢者「スリー様!!この者が僧侶に狼藉を!!」
スリー「ろ、狼藉!?」
126 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:05:09 ID:HEm5xOzE
勇者「た……助けてーー!!」
戦士「逃がさん!!」
スリー「…………」
スリー「…………やめろ」
賢者「……はい?」
スリー「やめろって言ってるんだ」
賢者「は、はぁ……」
スリー「まったく……賢者ともあろう者が情けないぞ?」
賢者「な、何がですか?」
スリー「彼の目をよく見てみろ、一片の濁りもない透き通った瞳だ」
スリー「あれは悪人の目じゃない」
賢者「……」
スリー「……っと」タンッ
127 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:06:01 ID:HEm5xOzE
戦士「うおおぉ!!」
勇者「ああああああ!!」
ガッ
スリー「そこまでだ、戦士」
戦士「ス、スリー!?」
スリー「彼は悪者じゃない、僧侶のことはきっと何かの間違いだろう。俺に免じて許してやってくれないか?」
戦士「むう……スリーがそう言うなら……きっとそうなんだろうな、うん」スッ
スリー「大丈夫か?」
勇者「あ……あ……!!」
スリー「?」
勇者「黒髪に額飾り、そしてマント!!」
勇者「アンタが三番目の勇者にして伝説の勇者ロトか!!!!」
スリー「ロト?人違いじゃないのか?」
スリー「まぁいいか、それにしても君はいつまでそこにへたりこんでるつもりだい?」クスッ
勇者「へ……?」ヘタッ
128 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:06:39 ID:HEm5xOzE
スリー「ほら、手を貸して」スッ
勇者「あ……」
グイッ
キィィィイイイン!!
スリー「っつう……なんだこれは……君の事が頭に……!!」
賢者「ゆ、勇者様!?」
スリー「だ、大丈夫」
賢者「貴様、やはりゾーマの手先か!!」
スリー「だからなんでもないってば、やめやめ」ハァ
スリー「ふぅん……そうかそうか」ジー
勇者「???」ゴクッ
スリー「ま、こんな暗くてじめじめところで話すのもなんだ、一旦外に出てそこでゆっくり話そう」
スリー「僧侶の手当てもしないとね」
僧侶「きゅう……」
129 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:09:10 ID:HEm5xOzE
――――洞窟外の森・スリー一行のキャンプ
戦士「がはははっ、なんだそんなことがあったのか、勘違いして悪かったな!!」バシンバシン
勇者「……ったく……なんで違う世界に来た時はいつも面倒ごとに巻き込まれるかな……」イライラ
僧侶「そ、その、ごめんなさい!!わ、わたしのせいで勇者さんが危ない目に遭ったそうで……わたし……」ウルウル
勇者「え、あ、う、……い、いやいや、全然気にしてなんかないよ、うん!!」
スリー「……」クスクスッ
賢者「……」ムッ
賢者「しかし……にわかには信じられません。この者が別の世界の……しかも勇者だなんて……」ジー
勇者「そう言われてもなぁ……」
スリー「人をあまり疑うのはよくないぞ、賢者。それに俺が聞いた精霊様の声が動かぬ証拠さ」
賢者「……えぇ……スリー様が信じろと仰るその一点でのみ私は今回の話を信じるに値する話と判断したのです」プイッ
勇者(……感じ悪いなぁ)
130 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:09:54 ID:HEm5xOzE
勇者「えーと、改めまして勇者です。短い間ですがよろしくお願いします」ペコ
スリー「俺はスリー。アリアハン出身の勇者……ってことになってるけど……まぁただの旅人ってとこじゃないかな?」ハハッ
スリー「彼が戦士。力自慢って奴だね。少し考えナシの行動が過ぎる熱い奴だけどとっても良い奴だ。俺達の兄貴分と言って良い感じかな」
戦士「よろしくな、坊主。戦士でいいぞ」
スリー「こっちは僧侶。我がパーティの回復主任だ。慌てん坊な上にそそっかしくてドジばかりだけどとっても優しい娘だよ。料理がすごく上手だから楽しみにしてろよ♪」
僧侶「な、なんだかスリーさんにそう言われると照れちゃいますぅ……////その……よろしくお願いします。わたしも僧侶、でいいです」
スリー「そして彼女が賢者。攻撃呪文も回復呪文も難なく扱う呪文のエキスパートさ。彼女の冷静さにはいつも助けられている。クールだからちょっと付き合いづらいかもしれないけど根は良い娘だから、勘違いしないでくれよ」
賢者「……賢者です」ツーン
勇者「はぁ~……なんか『結束感抜群のパーティに信頼感抜群の勇者』って感じだなぁ……」
スリー「ハッハッハ、褒めても何も出ないぞコイツゥ」
戦士「そうだぞ、坊主」ガッハッハッ
僧侶「ウフフッ」
賢者「……」ムスッ
131 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:10:30 ID:HEm5xOzE
スリー「さて、俺の修行だが……呪文の基礎と基礎体力作りはやったんだよね?」
勇者「うん」
スリー「ん~……じゃあ……実践訓練といこうか!!」
勇者「実践訓練と言うと……」
スリー「うん、魔物との戦闘さ」
僧侶「ま、まだ早くはないでしょうか!?その……危ないような……」
スリー「なぁに、まずは弱い魔物から慣らしていって段々と強い魔物にしていけばいいさ」
戦士「でもよぅスリー……」
スリー「それに俺達だって"魔物戦闘訓練"みたいものを受けたワケじゃないだろ?いきなり冒険に出てなんだかんだで闘ってきて、今みたいにうまくやれるようになったんじゃないか」
スリー「習うより慣れろ。今の彼なら中級モンスターぐらいなら倒せるだろうしね」
132 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:12:05 ID:HEm5xOzE
スリー「……あ、そうだ、素手はキツいな……えーと、ふくろフクロ……」ガサゴソ
スリー「ん、あった!!これでいいかな!!うん、刃も綺麗だし問題ないな」
スリー「ほらっ」ポイッ
勇者「わっ」パシッ
スリー「しばらくはそいつで闘うといい、メチャクチャ強力な武器ってワケじゃないけど八岐の大蛇って蛇の化け物の尻尾から出てきた業物、草なぎの剣だ」
勇者「……」
スラァ……
キラン
勇者「か、かっこいーー!!」
僧侶「とってもお似合いですよ♪」
戦士「あぁ、様になってやがるな!!」
勇者「そ、そうかなぁ」テレッ
133 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:12:40 ID:HEm5xOzE
賢者「スリー様、いくらなんでもあんなレアアイテムを授けることないのでは……」
スリー「だって俺には王者の剣があるし戦士には雷神の剣があるだろ?使わないもの大事に持ってたって仕方ないって」
賢者「ですが……」
スリー「まぁまぁ」
スリー「じゃ、まずは初級者コースからだ、みんな集まって……」
スリー『ルーラ』!!
134 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:13:35 ID:HEm5xOzE
――――アリアハン付近の森
スリー「よーし、いいか勇者。モンスターを倒すとモンスターメダルってのをたまに落とすんだ」
スリー「金銀銅の3種類があるんだけどね、どれでもいいから『大烏』『大ありくい』『魔法使い』『ホイミスライム』『バブルスライム』、この五匹のモンスターメダルをとってきたらこの初級ステージはクリアだ」
勇者「ぉお!!」
スリー「ステージをクリアしたら次のステージってゲーム形式で面白そうだろ?」
勇者「うんうん!!」
スリー「もしもの時のために戦士と僧侶もついていってやること」
スリー「ただしお前達が闘ったんじゃ勇者の修行にならないから勇者がどうしても危なくなった時に助けに入るだけだ、分かったか?」
戦士・僧侶「了解!!」ビシィッ
スリー「じゃ、気をつけて行っておいで、俺と賢者はここにキャンプの用意をしとくから」
勇者「はーい!!」
ダダダッ
戦士「あ、待て坊主!!」
ダダダッ
僧侶「あ、あ、2人とも待って下さぁ~い!!」
タッタッタッ
135 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:14:23 ID:HEm5xOzE
スリー「うーん、昔を思い出すなぁ……とは言えたかが一年前か」笑
賢者「……」
スリー「不服そうだね、賢者」
賢者「えぇ、いつ世界が大魔王ゾーマの手に落ちるかもしれないと言うのに十日も油を売るなどとは……私達は一刻も早くゾーマを倒し世界に平和を……!!」
スリー「まぁまぁ、そう焦らないの」
スリー「怒ってたんじゃせっかくの可愛い顔が台無しだ」
賢者「ななな……!!……も、もぅ!!////」カァ
スリー「それにこれはただの道草じゃないよ?」
賢者「……?」
スリー「人に何かを教えるってことは実は教える側の方が得るものが多いものなんだ。俺達もこの十日で得るところがあると思うな」
賢者「……」
137 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:24:30 ID:HEm5xOzE
――――夜
スリー「やぁ、おかえり。成果はどうだった?」
勇者「ん~……可もなく不可もなく……」キョロキョロ
戦士「どっちかっつったら不可だな」ガハハ
勇者「うるさいな!!」
スリー「そっか、メダルはどうだい?」
勇者「大ありくいの銅が一枚だけ……」
スリー「ふむふむ……思った通りだね」
勇者「?」
スリー「俺は適当に五匹の魔物を選んだワケじゃないんだ」
スリー「『大ありくい』……コイツは難なく倒せるだろうと思ってオマケとして入れたけど」
スリー「勇者、君は大烏との戦闘では攻撃が空を飛ぶ大烏に当たらずに仕止められないことが何度もあったんじゃないかい?」
勇者「!!」
スリー「魔法使いとの戦闘では間合いを詰めようとしてメラを食らったり……バブルスライムとの戦闘では攻撃しても相手に避けられたり……ホイミスライムとの戦闘ではダメージを少し与えてもふわふわした相手の動きが読めずにいるうちにホイミで体力を回復された……どうだい?」
勇者「……」ポカーン
138 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:25:13 ID:HEm5xOzE
僧侶「すごーい、全部当たってますぅ!!」
勇者「な、なんでわかったんだ!?」
スリー「それは簡単さ」
勇者「?」
スリー「俺も昔はそうだったからね」ニコッ
勇者「え?」
スリー「剣で相手を斬りつけようとただがむしゃらに相手に突っ込んでいった……でもそれだけで勝てるようなもんじゃないんだ」
スリー「大事なのはね、相手の隙を如何にして突くかってことさ」
スリー「これはどんな戦闘でも大事なことだよ、ただ考え無しに闘っては駄目だ」
スリー「それに君……今日呪文は使ったかい?」
勇者「あ……」
139 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:25:45 ID:HEm5xOzE
スリー「君に剣を与えたのは"剣での闘い"を意識させるためでもあったんだ」
スリー「もし君が素手で魔物を倒してこい、って言われたら君は間違いなく呪文を使っていただろうね」
スリー「戦闘において使える手は決して一つじゃない。自分の持てる手札を全て使って最善の闘いをする……これが闘いってものさ」
勇者「…………」
スリー「ま、長くなったけど『相手の隙を突く』『自分の使える手段をフルに使う』これを意識して明日は闘ってごらん?」
勇者「お、おうっ!!」
戦士「がハハハ、お前の師匠役もなかなかのもんだな♪」
僧侶「スリーさんかっこいいですぅ……////」パァ
スリー「まったく、二人とも茶化さないでくれよ」ハハッ
賢者「……」
勇者(す……すげぇ……すげぇぇ!!これが伝説の勇者か!!)
スリー「さ、ご飯にしようか。僧侶、よろしく頼むよ」
僧侶「は、はひ!!」ビシィッ
140 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:26:23 ID:HEm5xOzE
――――深夜・スリー一行のキャンプ
勇者「ふっ、ふっ」
勇者「198……199……200っと!!」
勇者「ふー、今日の筋トレはおしまいっと」
勇者「次は呪文の練習……ってあんまりうるさくするとみんな起きちゃうかな、小さめに小さめに……」
勇者『メラミ』ボソッ
しーーん
勇者「あちゃー、まだメラミは出ないか~」
賢者「……」ジッ
勇者「賢者みたいなメラゾーマが使えるのはいつになるかなぁ~」
賢者「……」
スリー「勇者のこと気になるのかい?」ヌッ
賢者「……!!」ドキーーン
141 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:27:55 ID:HEm5xOzE
スリー「ん?」ニコッ
賢者「わ、私はその……寝つけなかっただけです!!おやすみなさい!!」
スリー「ふふふっ、やっぱり"良い娘"だね、賢者は」クスクス
勇者『バギマ』ボソッ
ビュオッ
スリー「やぁ、夜中まで精が出るねぇ」
勇者「あ、スリー!!」
スリー「呪文の練習かい?」
勇者「うん……ほとんどの呪文の契約はしたんだけどさ、まだまだ使えない呪文ばっかりだから」
142 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:28:37 ID:HEm5xOzE
スリー「ふ~ん……勇者はデイン系の呪文は使えるかい?」
勇者「デインって言うと……雷?」
スリー「そう、昔からねデイン系の呪文は勇者だけが使える呪文なんだ」
勇者「へぇ~……」
スリー「だからデイン系が使えるのは勇者の証ってことさ、君も早く使えるようになるといいね♪」
勇者「……あぁ!!」
スリー「ま、明日も早いし今日はもう寝なさい」
勇者「ん、おやすみスリー!!」
143 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:29:20 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・二日目・昼
スリー「さてと、ボチボチキャンプを片づけようかな」
賢者「今……ですか?」
スリー「うん、多分そろそろだと思うし……」
賢者「はぁ……」?
ダダダッ
勇者「スリー!!見てくれ!!言われた通りに残りの四匹のメダルもとってきたぞ!!」ニパッ
賢者「……!!」
賢者(もう……!?)
スリー「おー、すごいな、俺が思ってたよりずっと早かったよ♪しかもバブルスライムは銀メダルじゃないか」
勇者「へへっ♪」
144 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:29:54 ID:HEm5xOzE
タッタッタッ
僧侶「はぁ……はぁ……やっと追いついた……」コテン
戦士「お前にも勇者の勇姿を見せてやりたかったぜ」
勇者「相手の攻撃の後、攻撃の最中、とかに隙ができるのがわかってさ、反撃の時にそのタイミングを見切れるようになったんだ!!」
勇者「そしたらすげーうまくいってさ!!」
勇者「あとあと、呪文で態勢崩して隙作ったりしてさ!!」
勇者「全部スリーのアドバイスのおかげだよ!!」ニカッ
賢者(……ただの雑魚魔物を倒しただけなのにあんなに嬉しそう……)
スリー「そっか、でも飲み込みの早い勇者もすごいぞ♪」
スリー「さ、キャンプを片付けて次の場所に向かおうか」
勇者・戦士・僧侶「おー!!」
145 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:30:29 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・四日目・ダーマ神殿付近の山中
【メタルスライム達が現れた】
勇者「えーと……いっぱいいる敵をまとめて倒すには……これだ!!」
勇者『イオラッ』!!
【メタルスライムAにはきかなかった】
【メタルスライムBにはきかなかった】
【メタルスライムCにはきかなかった】
【メタルスライムDにはきかなかった】
【メタルスライムEにはきかなかった】
【メタルスライムFにはきかなかった】
勇者「あ、あれ~!?嘘ぉ!!」
戦士「がっはっはっはっ!!そいつらには呪文は効かねぇよ!!」
勇者「な……そんな魔物もいんのかよ!?」
勇者「じゃあ……」
146 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:31:00 ID:HEm5xOzE
勇者「だあああ!!」
ガキン!!
【ミス!!メタルスライムCはダメージを受けない!!】
勇者「かってぇぇぇ!!」ジンジン
僧侶「うふふっ、しかも早く倒さないと……」
【メタルスライムAは逃げ出した】
【メタルスライムBは逃げ出した】
【メタルスライムCは逃げ出した】
【メタルスライムDは逃げ出した】
【メタルスライムEは逃げ出した】
【メタルスライムFは逃げ出した】
【メタルスライム達いなくなった】
勇者「えーーー!?」
戦士「がっはっはっはっ!!」爆
僧侶「うふふっ」
147 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:31:33 ID:HEm5xOzE
勇者「くそー!!待ちやがれ畜生!!」
ダダダッ
戦士「おっと、勇者を追いかけねぇとな」
僧侶「あ、は、はい!!」
タッタッタッ
戦士「なぁ……僧侶?」
僧侶「はい?なんですか?」
戦士「なんか……アイツ見てると懐かしい気持ちにならないか?」
僧侶「戦士さんもそう思います?」クスッ
戦士「あぁ……さっきのメタルスライムにイオラとか昔のスリーそのまんまだろ?」
僧侶「そうですね……」シミジミ
148 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:32:03 ID:HEm5xOzE
戦士「……ここ……ダーマの近くだよな」
僧侶「はい……それがどうかしました?」
戦士「いや……昔賢者が転職したての頃にキャンプからはぐれたことがあったなぁ……って」
僧侶「でも賢者ちゃんは何事もなくスリーさんと帰ってきたじゃないですか」
戦士「そうだっけ?」
僧侶「そうですよぅ、たしか賢者ちゃんは一人で近くを散策しに行って……」
僧侶「帰りが遅いから賢者ちゃんを探しに行ったスリーさんが迷子になってしまって……」
僧侶「それで逆に賢者ちゃんにスリーさんが助けられたんですよ」
戦士「よく覚えてやがるな」
僧侶「だって2人きりとかうらやま……はぅ!!」
戦士「裏山?」
僧侶「な、なんでもないですぅ!!」
149 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:32:31 ID:HEm5xOzE
戦士「しっかしよぅ……あの日以来賢者って……付き合い悪くなったっつーかなんつーか……冷たくなったよな……」
僧侶「うん……別に普通に話せるけどなんだか近寄り難い空気かも……」
戦士「……わかるなぁ……」
僧侶「わたしのこと僧侶”ちゃん"って呼んでくれなくなっちゃったし……」
戦士「そういや俺も呼び捨てに……ってあれ?勇者は……?」タラー
僧侶「はわわ……み、見失っちゃいました」タラー
150 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:33:34 ID:HEm5xOzE
――――ダーマ神殿付近・スリー一行のキャンプ
スリー「ん~、メタルスライムを狩るのには流石に骨が折れるだろうなぁ」
賢者「えぇ、たしかにその通りですね」
スリー「よっと、しばらく暇だろうから俺もそこらへんブラブラしてくるね」
スリー「賢者は留守番よろしくっ」
スタスタスタ……
賢者「はいっ!!」
賢者(……)
賢者(……ここ……あの時の……)
151 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:34:10 ID:HEm5xOzE
――――賢者の回想
賢者「うぅ……ま、迷子になってしまったわ……」
賢者「スリー様ぁー、戦士さーん、僧侶ちゃーん、どこー!?」
しーーん
賢者「……」クスン
ガサッ
賢者「スリー様!?」ガバッ
豪傑熊「ガオォォォ!!」バッ
賢者「きゃあっ!!」ビクッ
豪傑熊「グルルル……」
賢者「ど、どうしよう……」
152 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:34:41 ID:HEm5xOzE
賢者「転職したてだから私すごく弱いし……こんな魔物まだ一人じゃ……」ビクビク
豪傑熊「ガァッ!!」
ドガッ!!
賢者「ひゃっ!!」ペタン
賢者「あ……あ……腰が抜け……」ガクガク
豪傑熊「グルルルゥ……ガアァァァ!!」
賢者「きゃーーー!!」
153 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:35:20 ID:HEm5xOzE
『ライデイーーン』!!
ズガーン!!
バリバリバリ!!
豪傑熊「ギャウン!?」
スリー「でやっ!!」
タンッ
ビュババババ!!
スタッ
豪傑熊「クゥン……?」
スリー「……ごめんね、熊さん」
豪傑熊「!!」
ズバババババッ!!
ドサッ……ズズーン
賢者「……ス、スリー様ぁ!!」
154 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:35:50 ID:HEm5xOzE
勇者「大丈夫だったかい?賢者?」ヨシヨシ
賢者「ご、ごめんなさい!!私……私……!!」
勇者「いいんだ、無事で何よりさ」ニコッ
賢者「…………はい」ウゥ
勇者「さ、キャンプに帰ろ?」
155 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:36:23 ID:HEm5xOzE
――――賢者の回想・スリー一行のキャンプ
スリー「やー、ただいまぁ!!」
戦士「遅ぇぞスリー!!」
僧侶「賢者ちゃんもー、心配したんですよ?」
賢者「ごめんなさい……」
スリー「いやぁ、賢者探しに行ったつもりが俺が迷子になっちゃってさ、賢者に助けられちゃったよ!!」ナハハ
賢者「え!?違……」
スリー「しー……、な?」ボソッ
戦士「がっはっはっ!!スリーらしいなぁ!!」ゲラゲラ
僧侶「もぅ、スリーさんったら」クスクス
スリー「いやぁ、失敗失敗」アハハ
賢者「……」グッ
賢者(私は……守られてばかりいてはいけない……スリー様をお守りできるように……いえ、世界にいち早く平和をもたらせるようにならないと……!!)
賢者(常に毅然とした態度で……常に冷静に……強くあらねば……!!)ググッ
156 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:37:08 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・四日目・ダーマ神殿付近の山中
勇者「だーめだ、見失った……」
勇者「あれ?戦士と僧侶は?」キョロキョロ
勇者「やべーな、早く戻らな……」
スカイドラゴンA「ガオオ!!」
スカイドラゴンB「グルルル!!」
スカイドラゴンC「ギシャア!!」
勇者「な、なな……空飛ぶドラゴン!?」
勇者「コイツらは流石にヤバいんじゃないか……!?」ツ…
勇者「……いや、でもここ数日で俺も大分強くなった!!やってみせるぞ!!」グッ
157 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:38:21 ID:HEm5xOzE
スカイドラゴンB「ゴアァ!!」
ボウゥ!!
勇者「!! 火炎の息か!!」
勇者『ヒャダルコ』!!
パキパキパキ
ジュワァ……
スカイドラゴンA「ガルル!!」
ビュワッ
勇者「よっ!!」タンッ
スカッ
スカイドラゴンA「ギャウ!?」
158 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:40:05 ID:HEm5xOzE
勇者「オラァ!!」
ヒュバッ!!
ズバッ!!
スカイドラゴンA「ギャウ!!」
勇者「げ……あんまり聞いてない!?」
スカイドラゴンA「グアア!!」
ビュッ!!
勇者「わっ……と!!」
ガキン!!
ギャリリリリ!!
勇者「くそ、怒らせただけになっちまったか!!」
159 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:41:05 ID:HEm5xOzE
スカイドラゴンB「ギャウ!!」
ブンッ
勇者「ほっ!!」ヒョイ
スカイドラゴンC「グアアア!!」
勇者「しまった!!もう一匹……」
ドカン!!
勇者「ぐっは……!!」ビキビキ
勇者「ぐ……効くぅ……」ヨロ
160 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:41:32 ID:HEm5xOzE
勇者『ベホイ…』
スカイドラゴンA「ガァァ!!」
バキィ!!
勇者「ぐあああ!!」ドサッ
勇者「ハァ……ハァ……こりゃヤバいな……」
勇者「逃げときゃ良かっ……」
スカイドラゴン達「ガアァァァ!!」
161 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:42:11 ID:HEm5xOzE
『ギガデイン』!!!!
ズガガガーーーン
バリバリバリバリバリバリ!!!!
スカイドラゴン達「ギャウーーン!!」
ドザドサドサ
ズズズーン
スリー「いやー、危ないところだったなぁ」スタッ
勇者「ス、スリー……」
スリー「スカイドラゴンはこの先の塔にしか出てこないハズなんだけど……まさか山にも出てくるとは……」
スリー『ベホマ』!!
パアァァ
勇者「う……た、助かったぁ……ありがとうスリー」
162 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:42:44 ID:HEm5xOzE
スリー「いや、いいってことさ。でも今回は俺が助けに来られたから良かったけど自分より強い相手と闘うことになったら逃げるのも大事な選択だからね?」
勇者「……うん」
スリー「……なんだか昔を思い出すなぁ……」
勇者「?」
ダダダッ
戦士「あー!!やっぱりスリーだ!!」
僧侶「雷が落ちたからそうだと思ったんですぅ」
スリー「まったくお前達は……下手すりゃ勇者は死ぬところだったんだぞ?」
戦士「面目ない」ポリポリ
僧侶「ごめんなさいですぅ……」シュン
スリー「勇者も勇者で勝手に一人でつっ走ってはダメだ」
勇者「……うん、ごめん……」
スリー「罰として三人は晩ご飯抜き!!」
勇者・戦士・僧侶「ぇえーーー!?」
163 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:43:24 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・四日目・夜・スリー一行のキャンプ
戦士「ぅう……」グギュル~
僧侶「ひぇ~ん」ギュルル~
賢者(…………)スースー
――――ダーマ神殿付近の草原
勇者「はぁ……」トボトボ
スリー「やぁ、夜の散歩かい?」
勇者「ス、スリー!?」ビクッ
スリー「夜も魔物は出るから危ないよ?」
勇者「うん……でもここらへんは見渡しも良いしいきなり襲われるなんてことはなさそうだ」
164 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:43:57 ID:HEm5xOzE
スリー「そうだね……よっ」ゴロン
勇者「?」
スリー「勇者も横になってごらんよ、星が綺麗だよ?」
勇者「……」ゴロン
勇者「……ホントだ……」
スリー「……何か悩み事があるみたいだね?」
勇者「……どうして……」
スリー「俺も何か悩みごとがあると一人でブラブラしたりするからね、君もそうかと思って」
勇者「ハハッ……スリーはなんでもお見通しだな……」
スリー「……」
勇者「……ここ最近魔物と闘ってきてさ、力がついてきたなー、って自分では思ってたんだけどさ……」
勇者「今日のスカイドラゴンにはボコボコにやられちまった……」
スリー「……」
165 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:44:28 ID:HEm5xOzE
勇者「でも俺が手も足も出ない魔物もスリーは一発で倒しちまうしさ……」
勇者「なんて言うか……『これが世界を救う勇者なのか』って思い知らされたって言うか……俺ってまだまだ勇者なんかになれないんだな……ってさ」グッ
スリー「……」
勇者「……」
スリー「……勇者、君は『勇者』ってなんだと思ってるんだい?」
勇者「……え?」
勇者「そりゃ……悪の親玉を倒して世界を平和に導くヒーローじゃないか?」
スリー「君はおかしなことを言うね?」ニコ
勇者「??」
スリー「君が今言ったじゃないか、『悪の親玉を倒して世界を平和に導く』のは『ヒーロー』なんだよ」
勇者「あ……」
スリー「じゃあ勇者ってなんだい?」
勇者「……」
166 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:45:04 ID:HEm5xOzE
スリー「いいかい……『勇者』っていうのは『勇気ある者』のことさ、それ以上でもそれ以下でもない」
勇者「勇気ある者……」
スリー「そう、世界を救うの人間が勇者ってワケじゃないのさ」
スリー「巨悪に立ち向かう勇気……人々を守ろうとする勇気……新しいことを始めようと一歩踏み出す勇気……自分の気持ちを相手に伝えようとする勇気……」
スリー「そんな勇気を持つ者……それが勇者さ」
スリー「だから勇者は一人なんかじゃない、百人……千人……いや、もっともっといる。勇者は世界中に沢山いるんだよ」
勇者「……」
167 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:45:46 ID:HEm5xOzE
スリー「俺は『勇者』って人々から呼ばれてるけど……戦士も、僧侶も、賢者も……みんな勇者さ……勿論君もね?」
勇者「……」
スリー「だから強い人間だけが勇者じゃない」
スリー「どんなに小さくても君の心に勇気の火が灯っている限り、君は間違いなく勇者さ」
勇者「……そっか……ありがと……なんか勇気が沸いてきた」ニッ
スリー「それは良かった」ニコッ
勇者「俺もスリーみたいな勇者になってみせるよ♪」
168 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:46:34 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・九日目・メルキド付近の森
勇者「じゃあ行ってくる!!」
スリー「あぁ、お前達二人もちゃんとついていってやるんだぞ」
戦士・僧侶「合点承知!!」
タッタッタッ
スリー「いや~、しかし元から実力があったとは言え九日でアレフガルドの魔物と戦えるようになるとはなぁ……本当にたいしたもんだ」
賢者「しかしここの魔物達は地上の魔物達とは比べ物にならないくらい狂暴です」
スリー「うん、だからここでは戦士と僧侶の三人で闘うように言ってある。まぁあの二人がいれば大丈夫だろう」
賢者「……そうですね……では私は飲み水を汲みに行って参ります」
スリー「ん、あぁすまない」
賢者「いえ……」
テクテク
169 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:47:06 ID:HEm5xOzE
――――川
バシャッ
賢者「結局とんだ道草を食うことになってしまった……スリー様は何をお考えなのか……」ハァ
???「ヒィーッ、ヒッヒ」
賢者「誰!?」バッ
バシャッ
コロコロコロ……
エビルマージ「まさかスリー一行の一人がこうして呑気に孤立するとは……やはり監視をつけておいて正解じゃったわい」
賢者「!! ゾーマの手先か!!」
エビルマージ「いかにも……さて、賢者よ……死んでもらうぞ!!」
賢者「スリー一行を舐めないことね、私一人でも貴方を倒すなんて造作もないことよ」
エビルマージ「誰がわし一人だと言った?」
賢者「!?」
エビルマージ『バシルーラ』!!
賢者「くっ……!!」
ビューーーン
170 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:47:34 ID:HEm5xOzE
――――岩山
ビューーーン……
クルッ
スタッ
賢者「ここは……」
フッ
エビルマージ「ようこそ賢者……ここはのぅ……」
魔物の群「ケケケケ……!!」
わらわら
うじゃうじゃ
賢者「……なんて数!!」
エビルマージ「貴様の墓場じゃあ!!」
エビルマージ「かかれっ!!」
魔物の群「ケケーーー!!」
ドドドドドドッ!!
171 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:49:55 ID:HEm5xOzE
賢者「……大丈夫……私一人でもやってみせる!!」
賢者『フバーハ』!!
フワッ
賢者『スカラ』!!
キュワン
賢者『ピオリム』!!
キュワン
バルログ「ケケー!!」
賢者『メラゾーマ』!!
ゴウゥ!!
バルログ「ギャーー!!
172 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:50:23 ID:HEm5xOzE
サラマンダーA「ガアァー!!」
サラマンダーB「ガアァー!!」
賢者「はっ」
ターン
サラマンダー達「!?」
賢者『マヒャド』!!
パキパキパキ!!
ビキビキビキ!!
サラマンダー達「」カキーン
173 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:51:02 ID:HEm5xOzE
魔物の群「ガアァーー!!」
ドドドドドド!!
賢者『イオナズンッ』!!
カッ!!
ドゴーーーーーン!!!!
魔物の群「ギャーーー!!」
プスプス……
賢者「……」
スタッ
賢者「ふぅ……もうおしまい?」ファサァ…
174 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:51:36 ID:HEm5xOzE
魔物の群「ぐぐぐ……」タジタジ
魔物の群「がぁぁぁ!!」
ドドドドドド!!
賢者「はぁぁぁ……!!」
エビルマージ「ふむ……やはりスリー一行の賢者……流石じゃ……じゃがのぅ……」ニヤッ
エビルマージ『マホトーン』!!
賢者『ベギラゴ……』
キィン!!
賢者「……っ!!」
賢者「し、しまった!!」
175 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:52:21 ID:HEm5xOzE
エビルマージ「ヒィーヒッヒ!!呪文が使えなければいくら賢者と言えど直ぐ様あの世逝きじゃろう」ニタァッ
賢者「なら……ハッ!!」
バキッ
キメラA「クケェ!?」
ドカッ
キメラB「クワッ!?」
エビルマージ「ほぅ……体術もなかなかのもの……じゃがいつまでもつかのぅ……ヒィーヒッヒッヒッヒ!!」ニタァ
176 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:53:13 ID:HEm5xOzE
――――
賢者(……くっ……補助呪文もそろそろ切れる……このままじゃ……)ハァハァ
サラマンダーG「ガゥウ!!」
賢者「……!!」ヒラリ
メイジキメラJ「クワッ!!」
ビュッ!!
ドカッ
賢者「か……はっ!!」ドサッ
ダースリカント「グルルル……!!」
賢者(……殺られる……!!)
177 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:53:45 ID:HEm5xOzE
ダースリカント「ガァアアア!!」
賢者(……そう言えば……前にもこんなことがあったな……)
賢者(……あの時はたしかスリー様が助けてくれたんだっけ……)
賢者(……あの日から強くなろうと決めたのに……私ってやっぱり弱いんだな……)
賢者(……1人じゃ何もできない……)
ダースリカント「ガァアアア!!」
賢者(戦士……僧侶……スリー様……ごめんなさい……)
178 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:54:18 ID:HEm5xOzE
『ライデイーーン』!!
ズガーン!!
バリバリバリ
ダースリカント「ギャウンッ!?」
賢者「……この呪文!!スリー様!?」ハッ
勇者「らぁぁ!!」
ズバッ!!
ダースリカント「ガ……」
ズズーン……
勇者「へへっ、ライデイン……使えるようになったぜ!!……っと」
勇者「大丈夫か賢者!?」
賢者「勇者……」
179 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:55:47 ID:HEm5xOzE
僧侶「賢者ちゃん!!怪我してますよ、今治しますからね!!」
賢者「僧侶……」
僧侶『ベホマッ』!!
パアァァ
サラマンダーG「ギャオーーン!!」
ゴウッ!!
戦士「邪魔だ蛇公!!」
ズバァン!!
サラマンダーG「ギャオォ……」
ズズーン
賢者「戦士……」
180 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:56:18 ID:HEm5xOzE
賢者「……どうしてここに?」
戦士「ハッ、馬鹿なこと聞くなよ」
僧侶「ピンチの時に駆けつけてこそ仲間でしょ」ニコッ
勇者「魔物と闘ってたら岩山の方で爆発音とかが聞こえてきたからさ、気になって様子を見に来たら賢者が一人で魔物の群れと闘ってたってわけだ」
勇者「さ、早く片付けちまおうぜっ」チャキ
賢者「……いい」
勇者「……あん?」
賢者「私一人でいい!!私一人でもやれる!!」
戦士「賢者……」
僧侶「賢者ちゃん……」
賢者「他の人なんかに頼らなくても私一人でも闘え……!!」
パシィ!!
賢者「え……?」
181 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:57:22 ID:HEm5xOzE
戦士「勇者、お前……」
勇者「馬ッ鹿野郎!!何強がってんだよ!!何かっこつけてんだよ!!」ガッ
勇者「強い奴は仲間に頼らないとでも思ってやがんのか!?ふざけんじゃねぇぞ!?」
勇者「この際ハッキリ言わせてもらうけどな!!俺お前のそういうすかした態度気に食わなかったんだよ!!!!」
賢者「なっ…………!!」
勇者「こんなに素晴らしい仲間がいるってのにいっつも『私は一人で平気』みたいに振る舞いやがって!!」
勇者「仲間のこと頼ってみろよ!!仲間のこと支えてやれよ!!」
勇者「だって……それが『仲間』ってもんだろ!!??」
勇者「俺には仲間ってやつはいねぇけどな、それぐらいのことはわかるっつーの」フンッ
賢者「…………」
182 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:57:55 ID:HEm5xOzE
戦士「……そうだぞ、賢者。お前は真面目なのはいいけどなんでも一人で抱えすぎだ」
僧侶「うん……賢者ちゃんが苦しい時は私達も一緒に苦しい思いするよ、それでね、楽しい時は一緒に楽しもうよ、ね?」ギユッ
賢者「戦士……僧侶……」
賢者「……ごめんなさい……私……間違ってました……その……こんな私でも仲間って言ってくれますか……?」
戦士・僧侶「もちろんっ!!」ニコッ
賢者「……ありがとう……二人とも……」グスッ
勇者「……ったく、手間かけさせやがって……」ヘヘッ
勇者「さて、じゃあ行くぞ!?」
賢者「えぇ!!」
183 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:58:26 ID:HEm5xOzE
賢者『バイキルト』!!
キュワン
勇者「ぉお!?」
賢者『バイキルト』!!
キュワン
戦士「おっ!!」
賢者『ピオリム』!!
キュワワワワン
賢者「今貴方達の攻撃力と素早さを強化しました!!」
184 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:58:53 ID:HEm5xOzE
勇者「力がみなぎってくるぜ!!」
戦士「サンキュー賢者!!」
勇者「だぁあ!!」
ダンッ!!
戦士「ぬぁあ!!」
ドンッ!!
賢者「一緒にいくよ、僧侶ちゃん……」
僧侶「え……今僧侶"ちゃん"って……」
賢者「……////」
僧侶「……うん♪賢者ちゃん!!せーのっ」
賢者・僧侶『バギクロスッッ』!!!!!!
ビュォォ!!!!!!
ズババババババッ!!!!
魔物の群「ぎゃーーー!!」
185 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:59:25 ID:HEm5xOzE
――――
エビルマージ「くっ……まさか仲間達が集結するとは……こうなっては勝ち目がないのぅ、一旦引くしか……」コソコソ
スリー「いやぁ……良かった良かった♪良いものが見れたなぁ」
エビルマージ「!? 貴様いつから!?」ビクッ
スリー「賢者も無事に心を開いてくれたしさ、俺達パーティの結束もより強まったよ」
スリー「こういう状況を作り出してくれた君にはその点少ーーしだけ感謝しようかな?」ハハッ
エビルマージ「わ、わけのわからんことを言いおって……!!」
エビルマージ『メラゾーマ』!!
ゴウゥ!!
186 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 03:59:55 ID:HEm5xOzE
エビルマージ「フハハハッ!!油断しておるからだ!!」
ブワッ!!
スリー「でもね……」
エビルマージ「な……効いていないじゃと……!?」
スリー「俺の仲間を傷つける奴は絶対に許さない!!」
エビルマージ『イ、イオナ……』
ヒュバン!!
ブシャァアアア!!
スリー「特別サービスだ……」
ドサッ
スリー「痛みを感じることなく逝けただろ?」
キィン!!
187 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:00:25 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・十日目・リムルダール付近の森
スリー「早いものだね……もう十日目か」
勇者「あぁ……」
スリー「さて、二人とも最終日もよろしく頼むよ?」
戦士・僧侶「ラジャー!!」
賢者「あ……スリー様」
スリー「?」
賢者「今日は私が勇者について行きます……構いませんか?」
勇者「へ?」
戦士「どういう風の吹き回しだぁ?」ニヤッ
賢者「もぅ!!ただの気分転換よ!!私は一人で大丈夫だから」
スリー「うん、わかった。じゃあ賢者、よろしく頼むよ?」
188 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:00:53 ID:HEm5xOzE
スリー「アレフガルドには昼はないからね、地上での夕方ぐらいになったら帰ってきてくれ」
賢者「はい、任せて下さい!!」
勇者「じゃ、よ、よろしく」
賢者「えぇ」
タッタッタッ
戦士「スリぃ~」
スリー「ん?なんだい?」
戦士「お前最初から勇者が賢者の心を開かせられるかもしれねぇと思ってやがったな?」ニヤッ
スリー「なんのことやら」シレー
僧侶「ふふっ、とぼけたって無駄ですよぅ、私達ちゃーんとわかってますから♪」ニコッ
スリー「二人とも買いかぶりすぎだよもぅ」苦笑
僧侶「だって私達の自慢のリーダーですもん、ね~♪」
戦士「なー♪」
スリー「はいはいっ」笑
189 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:01:23 ID:HEm5xOzE
――――第三の世界・十日目・地上・夕方
戦士「地上に出てきてどうするんだ、スリー?」
スリー「ん、お別れ前にちょっと勇者に良いものを見せてあげようと思ってね」
勇者「良いもの?」
スリー「すうぅぅ……」
スリー「ピーーーーー!!」
勇者「?」
戦士「なるほど」
僧侶「あぁ!!」
賢者「わかりました」
バサッ
バサッ
勇者「な、ななな!!なんだこのでっかい鳥!?」
スリー「この鳥は不死鳥ラーミア……俺達の仲間さ」
190 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:01:49 ID:HEm5xOzE
ラーミア『スリー……この者は……?』
スリー「あぁ、勇者っていうんだ。俺達の弟子って奴かな?」
ラーミア『勇者……弟子……ですか』ジー
勇者「ふぇ~……世の中には不思議な生き物がいるんだなぁ……」ジー
スリー「ラーミア、彼も乗せてあげられるよな?」
ラーミア『えぇ、大丈夫です』
勇者「え?乗るって……コイツに!?」
スリー・戦士・僧侶「そう!!」
191 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:02:18 ID:HEm5xOzE
――――大空
ビュオオ!!
勇者「すっげーー!!」
勇者「飛んでる!!高い!!」
戦士「勇者ぁ、あんまりはしゃいで落っこちても知らんぞ?」ガハハ
僧侶「最後に大空から夕やけを見せてあげるだなんて……スリーさん素敵ですぅ」
スリー「ハハ、そうか?」ニッ
勇者「いつか……」
スリー「?」
勇者「いつか俺も俺の世界をこうして眺めてみたいなぁ……」
スリー「きっとできるよ、その時は『これが俺が守った世界だ』って胸張って見ることができるだろうさ」ニコッ
勇者「うん!!」
192 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:02:47 ID:HEm5xOzE
キラキラキラ……
勇者「あ……」
戦士「勇者が光って……」
僧侶「え?え?」
賢者「…………」
スリー「そうか……お別れの時間なんだね……勇者」
勇者「……うん」
キラキラキラ……
193 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:03:22 ID:HEm5xOzE
戦士「……なんか……寂しくなるな……」
僧侶「勇者さん……」グスッ
賢者「…………」
キラキラキラ……
勇者「戦士……いつも修行に付き合ってくれてありがとな……」
戦士「ハッ、いいってことよ」
勇者「俺もお前に負けないように強くなるよ……」
戦士「あぁ、お前ならできるさ、頑張れよ……くそっ目から汗が出てきやがるぜ」グスッ
僧侶「勇者さん……うっ」ヒックエッグ
勇者「僧侶も修行に付き合ってくれてありがとう……料理とっても美味しかったよ」ニコッ
僧侶「あ、ありがとうございますぅ」グスッ
勇者「世界が平和になったら……僧侶ならきっと良いお嫁さんになれると思うな」ハハッ
僧侶「な、何言ってるんですか!!////もぅ……」グスッ
194 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:03:50 ID:HEm5xOzE
賢者「……」
スリー「ホラ、賢者も……」
賢者「……」
勇者「賢者……その……昨日はビンタしちゃってごめんな、それに酷いことも言ったし…………今日謝れなくて……」
賢者「……気にしてません」
勇者「そ、そっか……」
賢者「……ア……」
勇者「ア?」
195 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:04:15 ID:HEm5xOzE
賢者「ア、アンタなんかに何にも感謝してないんだからねッ!!////」カァ
勇者(け……賢者×ツンデレだとぉ!?)ガハッ
賢者「また仲間と仲良くなれたのも全然アンタのおかげなんかじゃないんだからぁ!!////」
勇者(……これはヤバい)
賢者「アンタなんかさっさと元の世界に戻って世界を救っちゃえばいいのよ!!////」
勇者「あ……あの……ありがとな、俺頑張るよ」
賢者「あと……」
勇者「?」
賢者「離れてたってアンタも私達の仲間なんだからね、私達のこと忘れたら承知しないんだから!!」ウル
戦士「そうだぞぅ勇者ぁ!!お前も俺達の仲間だ」グスッ
僧侶「勇者さぁ~ん」ヒッグ
勇者「みんな……」
キラキラキラ……
196 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:04:44 ID:HEm5xOzE
スリー「勇者……」
勇者「スリー……」
スリー「よく考えたら俺って君にたいしたこと教えてないな、ごめん」アハハ
勇者「そんなことない……大事なこといっぱい教えてもらったよ」
スリー「もっと強くなれよ……この世界は俺達が……君の世界は君が……平和を取り戻すんだ」
勇者「うん……」
スリー「さっき賢者も言ったけどさ、俺達は離れていても仲間だ。きっと今まで君と会った勇者達も、これから君と会う勇者達も、それは変わらないだろう」
スリー「君は1人じゃない。心の絆でいつも仲間と繋がってるってことを忘れるなよ」
勇者「……うん!!」
キラキラキラ……
197 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:05:17 ID:HEm5xOzE
勇者「なぁ……スリー……」
キラキラキラ……
スリー「なんだい?」
勇者「スリーはさ、『勇気ある者が勇者だ』って俺に教えてくれたよな?」
スリー「あぁ……」
キラキラキラ……
勇者「でもさ、俺思ったんだ」
勇者「人々に勇気を与えられるスリーみたいな奴が本当の勇者じゃないかな、って」
スリー「……そうか」フッ
198 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:05:47 ID:HEm5xOzE
勇者「うん、俺スリーみたいな勇者になりたい。自分の勇気の灯火を人々に分け与えられるような勇者に!!」
スリー「うん……頑張れよ!!」スッ
勇者「……あぁ!!」ガシッ
キラキラキラ……
勇者「戦士……僧侶……賢者……そしてスリー……ありがとう……」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
199 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:06:21 ID:HEm5xOzE
スリー「……さよなら、勇者」
僧侶「勇者さぁ~~ん」ビェェン
戦士「ったく、いつまで泣いてやがんだオメェは……こっちまで……くぅ」グスッ
賢者「あら?戦士さんも泣いているんですね、『鬼の目にも涙』って奴かしら?」
戦士「誰が鬼だ!!誰が!!」
賢者「うふふっ」
僧侶「……あれ?賢者ちゃん笑って……」
戦士「……ん?そういやお前が笑うとこなんて久しく見てねぇぞ?」
賢者「ぇえ?えーとその……わ、笑ってないです!!」プイッ
200 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:06:48 ID:HEm5xOzE
戦士「いーや笑った!!」
賢者「笑ってないですー!!」
僧侶「笑ったよぉ~!!」
賢者「笑ってないですってば!!」
スリー「……賢者に笑顔が戻ってきたのも勇者のおかげだね」ニッ
スリー「さ、ゾーマを倒したらみんなでうんと笑おうか!!」
戦士・僧侶「おー!!」
賢者「だから笑ってないですってばぁ!!」
201 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:07:21 ID:HEm5xOzE
――――星の海
勇者「……ここの星も綺麗だけど……あの夕陽も綺麗だったなぁ……」
ルビス『綺麗な景色はいつの日も人々の心を洗ってくれるものですから……』
ルビス『今回の世界はどうでしたか?』
勇者「うん……魔物と沢山闘ったなぁ……あ、この剣持ってきちゃった……」
勇者「まぁいいか……大切にしよう……」ギュッ
勇者「あのさ……スリーって奴はホントにすごい奴なんだ……あれが『伝説の勇者』って奴なんだなぁ……って思ったよ」
ルビス『そうですか……貴方も彼の様な勇者になれると良いですね……』
勇者「うん……」
ルビス『さぁ……おやすみなさい』
勇者「……おやすみ……」
勇者(あれ?何かルビスに言うことがあったような……ま、いいか……)
勇者「zZzZ」
202 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 04:19:10 ID:HEm5xOzE
キリがいいからここいらでちょっと休憩するわ
まだまだ続くけど読んでくれたら泣いて(ry
203 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:06:26 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界
パッ
勇者「ふがっ!!」
バッシャーーン!!
勇者「ガボボボボ!!」ブクブク
勇者「プハァ!!」
ザバァ
勇者「ハァ……ハァ……死ぬわ!!」ピキッ
勇者「てか水!?川か……?」ポタポタ
???「誰だ!?」チャキッ
勇者「わわっ!!」
???「人間か……!!」ゴオッ!!
勇者「え!?ぇえっと……」
???「強欲で醜く穢らわしい……人間め……!!」ビキッ
204 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:07:16 ID:EE5PgR7.
勇者「ちょ……!!」
ヒュッ!!
バキィッ!!
勇者「が……!!」
???「ハァッ!!」ビュバッ!!
勇者「こ……のぉ!!」
ガキーン!!
勇者(誰だか知らないけどこのまま黙って殺されてたまるか……!!)
勇者「痛い目みても知らないからな!?」
???「フンッ、笑わせてくれる」
勇者「はっ!!てやぁ!!」ビュン!!ヒユッ!!
???「……ほぅ……人間にしては少しはやるではないか……」サッ スッ
勇者「!?」
205 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:07:58 ID:EE5PgR7.
???「でやぁ!!」ビュンッ!!
勇者「くっ!!」ガッ!!
???「甘い!!」サッ!!
ガッ!!
勇者「!? 足ばらっ……!?」グラッ
ドサッ
???「終わりだな……フンッ!!」
ビュン!!
サッ
勇者『イオラ』!!
カッ!!
???「むぅ!?」
206 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:08:30 ID:EE5PgR7.
ザッ!!
勇者「危ないとこだった……」ハァハァ
???「咄嗟にイオラを放ってこちらの体勢を崩すとは……なかなか面白い」
勇者(……コイツ……強い!!それもかなり!!)
???「だが……これで終わりにしよう」
勇者「!?」
ゴゴゴゴゴッ!!
???『ジゴスパー…』
ホビット「ピサロ様!!」
207 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:09:26 ID:EE5PgR7.
ピサロ「……どうした、長老ではないか……見ての通り私は今忙しい。用があるなら後にしてくれないか」
ホビット「誠に恐縮ながら申し上げます」
ホビット「私はこのロザリーヒルで長老を務める身。例え貴方様であっても村でいざこざを起こすことを許すことはできません……なにとぞこの場は剣を納めて下さいませんか?」
ホビット「この通りです……」深々
ピサロ「…………」
勇者「……?」
ピサロ「……フンッ、いいだろう。どうせ私は進化の秘法の力で全ての人間を滅ぼすのだ、今ここで一人殺すも殺さないも同じこと」キィン
ホビット「ありがとうございます」
ピサロ「……それにロザリーの墓の前で薄汚い血を流すわけにはいかないからな……」ボソッ
ホビット「……ピサロ様……」
ピサロ「私は魔界に行き進化の秘法を使う……おそらく人間への憎悪に燃える今の私が進化の秘法を使えば破壊と殺戮のみを求める化け物と化すだろう」
ピサロ「ここでロザリーと過ごした日々も化け物となった私は忘れてしまうだろうな……」
208 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:10:01 ID:EE5PgR7.
ピサロ「そうなる前に言っておきたい」
ピサロ「長老、今まで世話になった」
ホビット「ピサロ様……私めには勿体なきお言葉です」
ピサロ「ロザリーが愛したこの村を頼む……」
ホビット「……はっ」
ピサロ「……とは言えこの私自身がここを焼け野原にしてしまうかもしれんがな」苦笑
ホビット「……ピサロ様、今からでも遅くはありません。もう一度……」
ピサロ「……それはできん。もう……引き下がることはできんのだよ……」
ホビット「…………」
ピサロ「では、達者でな」フッ
ホビット「…………」
209 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:10:31 ID:EE5PgR7.
勇者(…………ピサロ……どっかで聞いた名前なんだけど…………あ!!)
勇者(そうだ!!四番目の勇者の世界の魔王だ!!)
勇者(……でもアイツが魔王……本当に悪の親玉なのか……?)
勇者(たしかにアイツからはものすごい憎しみと怒りを感じたけど……どこか寂しげで悲しげな……そんな眼をしてたな……)
勇者「……っくしょん!!」
ホビット「人間の方ですな?どうしてこのような場所に……?」
勇者「え?えーと……」
ホビット「まぁずぶ濡れのまま立ち話もなんでしょう。私の家へ案内しましょう」
210 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:11:04 ID:EE5PgR7.
――――ロザリーヒル・長老の家
ホビット「さぁ、私の畑でとれたカボチャのスープです。良かったら召し上がって下さい。温まりますぞ」
勇者「あ、ありがとう」ズズー
勇者「んーー!!んまい!!」プハァ
ホビット「それは良かった。おかわりもありますからお好きなだけ召し上がって下され」ニコッ
勇者「ありがとう♪」
勇者「なぁ、ホビットのじいちゃん。質問してもいいかな?その……答えたくないことなら答えなくていいんだけど……」
ホビット「なんですかな?」
勇者「……ピサロはどうして人間をあんなに憎んでるんだ?しかもただ憎んでるだけじゃない……どこか悲しげに……」
ホビット「ふむ……今や話しても構わないでしょうな……少し長くなりますがお付き合い下さい」
211 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:11:38 ID:EE5PgR7.
ホビット「あるところに一人のエルフの娘がおりました。その娘は世にも珍しい『ルビーの涙』を流すエルフでした」
ホビット「強欲な人間達が毎日のようにその娘を傷めつけ涙を流させようとしていました」
ホビット「そんなある日、人間達にいじめられていたその娘を魔族の総司令官であったピサロ様が助けたのです」
ホビット「名もないそのエルフにピサロ様は『ロザリー』と名を与えました……ここ、『ロザリーヒル』からとったと聞いています」
ホビット「ピサロ様は人間達からロザリー様をお守りするため、この村の塔に彼女をお隠しになられました……たまに二人で過ごす時間は静かで幸せそうでした」
勇者「……」
ホビット「魔族のトップとして地上を支配する……つまり人間と闘おうとしていたピサロ様でしたが……ロザリー様は違いました」
勇者「……?」
212 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:12:16 ID:EE5PgR7.
ホビット「人間に傷つけられ、酷な仕打ちを受けても、ロザリー様は全ての人間が悪でないとわかっていたのです」
ホビット「ピサロ様の地上支配を止めたい、ピサロ様に人間は悪い者ばかりではないとわかってほしい……ロザリー様はそう願っていました」
ホビット「そんなある日事件が起きます……欲に眼の眩んだ愚かな人間達が……ロザリー様の居場所を突き止め……ロザリー様をさらい……そして……」
ホビット「殺してしまったのです」
勇者「……!!」
ホビット「ロザリー様の元に駆けつけたピサロ様でしたが時既に遅くロザリー様は還らぬ人となりました……」
ホビット「人間の醜さ、欲深さ、傲慢さを改めて思い知ったピサロ様は憎しみに燃えました……そして人間を滅ぼすことを決めたのです」
勇者「……」
ホビット「しかしピサロ様は心のどこかで『人間を滅ぼしたところでロザリーは生き返らない』『人間を滅ぼすことをロザリーは望んでいない』とお思いなのでしょうな」
ホビット「勇者殿がピサロ様を『悲しげ』と感じたのはそのためでしょう……」
213 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:12:56 ID:EE5PgR7.
勇者「……悲しい話だな……ピサロは人間の悪いところしか見ることができなかったんだな……」
ホビット「えぇ……」
ゴゴゴゴゴッ!!
グラグラグラ!!
勇者「じ、地震!?」
ホビット「……!!」
勇者「どうした!?」
ホビット「私にはわかります……地の奥深く……そこで禍々しい何かが生まれたのです……」
ホビット「おそらくピサロ様がその身を怪物へと変えたのでしょう」
勇者「……ピサロ……」グッ
214 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:13:26 ID:EE5PgR7.
ホビット「……ところで勇者様はどうしてこの村に?」
勇者「………………あーー!!そうだった!!そうだよ、この世界のことも心配だけど俺にもやらなきゃならないことがあるんだ!!」
ホビット「はぁ……」
勇者「ホビットのじいちゃん、えーと……緑の髪でスライムピアスをつけて盾と剣持った男を知らないか!?」
ホビット「えぇと……ん?あの者ですかな?」
ホビット「村の道具屋にいる……」
勇者「!?」
215 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:14:19 ID:EE5PgR7.
――――ロザリーヒル・道具屋
マーニャ「高いー!!もうちょっとまけなさいよ!!」
道具屋「そう言ってもわしも生活がかかっておってのぅ……」アセアセ
ミネア「姉さん!!お爺さん困ってるじゃない!!」
アリーナ「うーん、でもわたし達が貧乏なのはたしかだもんね~」
???「やれやれ、『遂にピサロとの最終決戦だー』とか言って装備を調えに天空城からここに来たはいいけど金欠はどうしようもないな~」苦笑
マーニャ「まったく、マスタードラゴンもあたし達に世界を救え、って言うなら金銭的援助ぐらいしてくれないのかしら!?」
ミネア「……そのお金が姉さんの手によってカジノで消えることになるのは目に見えてますけどね」
マーニャ「」グサッ
アリーナ「ん?誰か走ってくるよ?」
???「?」
216 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:14:55 ID:EE5PgR7.
ダダダッ!!
勇者「やっぱりそうだ!!間違いない!!」ハァハァ
勇者「4番目の勇……わっ!!」
ガッ!!
???「!? あぶなっ……!!」
ドンガラガッシャーン!!
勇者・???「」ピヨピヨ
アリーナ「……???」
マーニャ「ほほぅ、白昼堂々フォーを押し倒すなんて相当な○○○○ね……」ニマニマ
ミネア「なんですぐそういう発想になるのかしら……」ハァ
217 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:15:46 ID:EE5PgR7.
――――ロザリーヒル郊外
フォー「……ってことらしい」
マーニャ「ふ~ん、ただの○○○○じゃないんだ~」
勇者「○○じゃねぇよ!!」
マーニャ「あら、そうなの?じゃあ……あたしとイイコトする?」ズイ
勇者「え!?ぇえっと……////」モジモジ
ミネア「姉さん!!」
マーニャ「冗談よ、冗談」ケラケラ
ブライ「しかし……老いぼれの固い頭には今一つ信じられませんわい」
フォー「ん~、俺のこと信じると思ってさ、な?」
ブライ「まぁフォー殿がそう仰るなら……」
クリフト「私はこの者の修行に付き合うなんて反対です!!ピサロは進化の秘法で怪物となり世界を滅ぼそうとしているのですよ!?それにこのような得体の知れない者、姫様に何か危害を加えるかもしれませんし……」
アリーナ「あら、いいじゃない♪この人色んな勇者に修行つけてもらってきたんでしょ?わたしも手合わせしてみたいし」
クリフト「そ、そうですね!!私達の旅にも何かいつもと違う刺激があるのは良いことですね!!」
フォー・ライアン・ブライ・トルネコ(……情けない奴……)ガクッ
218 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:16:36 ID:EE5PgR7.
ライアン「……コホン、悪人かどうかなど眼を見ればわかります。こんな澄んだ瞳の悪人はいないでござるよ」
フォー「えーと……じゃあ自己紹介でもしようか」
フォー「俺はフォー。世間じゃ『天空の血を引きし者』とか『勇者』とか呼ばれてるけど……まぁこのパーティのリーダーだ。フォーって読んでくれればいい、よろしくな」
ライアン「我輩はバトランド王宮騎士団のライアンと申す。今は世界を救うべくフォー殿にお供している身でござる。短い間でござろうがよろしくお願いいたす」
ペコ
勇者「あ、こちらこそよろしくな」
アリーナ「わたしはサントハイムの王女、アリーナって言うの。魔物の手で消されてしまったサントハイムのみんなを助け出すためにフォー達と旅をしてるわ、武者修行もできて一石二鳥ね♪」
勇者「……え?王女様が武者修行?」
アリーナ「そうよ、変?わたしは世界一強くなるのが夢なの」パァ
ブライ「やれやれ、だから『サントハイムのおてんば姫』などと呼ばれるんですぞ」ハァ
アリーナ「むっ」
ブライ「わしはブライ、姫様のお目付け役であると共にサントハイムの王宮魔法使いです、よろしく頼みますぞ」
219 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:17:13 ID:EE5PgR7.
クリフト「私はクリフトと言います、アリーナ姫にお供して世界を巡っております。王宮神官ですから回復呪文とザキは得意です!!」
フォー(ザキ厨が……)ハァ
トルネコ「私は武器商人のトルネコです。世界一の武器商人を目指してフォーさん達と旅をしています。あ、ちなみに私には美人な嫁がいましてね、ネネって言うんですが……」デヘヘ
マーニャ「はいはい、その話はまた今度ね」
マーニャ「あたしはマーニャ。情熱の街モンバーバラで踊り子のトップだったスーパーアイドルよんっ」ピンッ
ミネア「私はミネア……モンバーバラでは占い師として生計を立てていました。よろしくお願いします」
勇者「えーと、こっちがマーニャでこっちがミネア?よく似てるなぁ……」
マーニャ「そりゃ双子だからね~」
ミネア「下品な方がマーニャ、上品な方がミネアです」
マーニャ「ちょっと!!そりゃないんじゃない!?」
フォー「ハハハッ、こりゃいいや。これで俺達のことは大体わかったか?」
220 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:17:58 ID:EE5PgR7.
勇者「うん!でも……すごい大所帯だな、戦闘の時は8人で闘うのか?」
フォー「いや、流石にそんな大人数じゃ俺も指示が出せないからね、戦闘は四人で残りの四人は馬車の中で待機さ」
勇者「へぇ~、だから馬車があるのか」
フォー「あ、紹介が遅れたな、コイツはパトリシア。俺達の大事な仲間だ」
パトリシア「ヒヒーン!!」
勇者「よろしくな、パトリシア」
パトリシア「ブルルル……」
フォー「さて……俺のところでの修行は……」
ブライ「フォー殿」
フォー「ん?」
ブライ「先程クリフトも申しましたが世界に脅威が迫っているのも事実。のんびり寄り道などしてはいられないかと……」
フォー「あぁ、そうだな……じゃあ勇者にも魔界攻略を手伝ってもらおう!!」
勇者「魔界攻略!?」
221 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:18:37 ID:EE5PgR7.
フォー「ピサロがいるのは魔界の奥深く、でも俺達はまだ魔界に辿り着いてすらいない。この先魔物達の罠も待ち受けているだろうし仲間は多い方が良いだろ?」
アリーナ「勇者と一緒に闘えるの!?楽しみ♪」
ライアン「しかしそれでは我々の旅に勇者殿が加勢するだけで勇者殿の修行が疎かになるのでは……?」
フォー「それなら心配いらないと思うな、多分魔界にいる魔物達はピサロの側近達……つまり手練れだろう。勇者もそういった強敵とは闘ったことがないみたいだしいい実践経験になる」
フォー「……とは言えそれじゃ前の世界での修行とほとんど同じだから……うーん、そうだなぁ……」
フォー「ここらで勉強でもするか」
勇者「うえ!?」ゲェ
フォー「戦闘で頭を使うってのも大事なことなんだぞ、俺は仲間達に指示を出したりしてるからさ戦闘や魔物の知識に関してはそれなりにあるつもりだしそれを伝授しよう」
勇者「いや、でもさ、強けりゃそんなの……」アセアセ
フォー「甘いなぁ……じゃあ簡単な問題を出そう」
222 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:19:26 ID:EE5PgR7.
フォー「HPが200の魔物が二匹現れたとしよう。君は『一匹に200のダメージを与える攻撃』と『二匹に100のダメージを与える攻撃』が使える。君ならどう攻撃する?」
勇者「え……そんなの二回攻撃しなきゃならないんだからどっちでも同じじゃないか」
マーニャ「あたしは二匹に100を2回かな、一気に倒せた方が気持ちいいじゃん?♪」
アリーナ「わたしは一匹ずつ倒すな、やっぱり闘いは一対一じゃなくっちゃ!!」
ライアン「我輩もそうでござるな」
トルネコ「私はどっちでも同じような気が……」
クリフト「私もそう思います」
ブライ「やれやれ、情けないのぅクリフト」ハァ
クリフト「え!?」
ブライ「一匹に200を二回が正解じゃ」
ミネア「ですよね、フォーさん」
フォー「あぁ、その通りだ」
勇者・マーニャ「えー、なんでー?」
223 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:20:01 ID:EE5PgR7.
フォー「まず一匹に200を二回で闘うとしよう。一回目の攻撃で一匹の魔物を倒せる。そして残った魔物が君に攻撃してくるだろう。それを防ぐか避けるかして残りの魔物に攻撃して倒す……君は一回魔物から攻撃を受けることになる」
フォー「じゃあ二匹に100を二回で攻撃するとどうなるか。一回目の君の攻撃で二匹はダメージを受ける。そして二匹は君に攻撃を仕掛ける。その後君はまた二匹に攻撃をして倒す……君は二回魔物から攻撃を受けることになる」
勇者「あ……」
フォー「そう、同じ二回の攻撃で二匹の魔物を倒すように思えるけど実際はこっちが攻撃を受ける回数が違ってくるんだ」
フォー「実際の戦闘ではこんな風に計算通りにはいかないやりとりがあるワケなんだけど……戦闘で頭を使うことの大切さもわかっただろ?」
勇者「うん!!」
フォー「それに『この魔物は攻撃が効きにくいから呪文で倒した方が良い』、『この魔物にはこの呪文が効く』とか魔物にも特性があるからね。なんでもかんでもザキを使えばいいってもんじゃない」チラッ
クリフト「……」グサッ
224 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:20:38 ID:EE5PgR7.
フォー「だから俺は戦闘・魔物の知識を教えていこうと思う。と言っても勉強だけじゃ参っちゃいそうだから闘いを通して俺の仲間達に戦闘の修行をつけてもらうといい」
フォー「剣術……格闘……呪文に目利き……みんなそれぞれの分野のエキスパート達だ、きっと君の力になってくれるハズだ」
勇者「わかった!!」
アリーナ「わたし一度弟子ってとってみたかったの~、なんだかかっこいいじゃない?」パァ
ライアン「バトランドで培われた我輩の騎士道精神、しっかり勇者殿にお伝えするでござる!!」
勇者「みんなよろしくな!!」
マーニャ「攻撃呪文はブライ爺さん……回復呪文はクリフトにミネア……あーあ、あたし教えることないじゃ~ん」
マーニャ「……ねぇ、勇者、あたしがオトナのお勉強教えてあげよっか?」ニヒッ
勇者「ぇ?えっと……その……////」テレテレ
ミネア「姉さんは攻撃呪文の指導役です!!」グィ
マーニャ「痛い痛い!!冗談だってば、もぅ!!」
225 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:22:07 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・二日目・魔界へと続く道
ガラガラガラ
パトリシア「ヒヒーン」カポカポ
フォー「鳥系や空を飛ぶ魔物にはバギ系の呪文が有効だな、と言うのもバギ系は風を起こす呪文だから上手く気流を乱してやれば空を飛ぶ魔物はバランスがとれなくなって隙が出来る。バギ系呪文に耐性のある魔物でもこうして隙を作ることができるな。植物系の魔物の魔物は大抵が炎系の呪文が効きやすい……メラ系とかギラ系だな、でも希に植物系でも耐性のある奴が……って聞いてるか?」
勇者「……」
フォー「……」
勇者「……zZzZ」ポクポク
フォー「……」
ゴッ!!
勇者「いだぁっ!!」
226 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:22:36 ID:EE5PgR7.
フォー「なぁーに寝てんだ!!」
勇者「あぅ……ごめんごめん」ポリポリ
フォー「ったく、昨日も寝てただろ?」
勇者「うーん……なんか長くて難しい話って聞いてて眠くなっちゃって」ハハ
勇者「アリーナ達は外で魔物と闘う役なんだろ?俺も戦闘に参加したいよー」ブー
フォー「その戦闘をより効率的にするために俺が今こうして君に魔物の知識を教えているんだろ?」
勇者「う……はーい」
アリーナ「フォー!!洞窟抜けたみたいだよー!!」
フォー「お、そうか。待ってろ、今行く」ヒョイ
勇者「ここが魔界か~」
227 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:23:34 ID:EE5PgR7.
クリフト「紫の雲に濁った空気、血の様に赤い海……」
トルネコ「薄気味悪いところですね……」
フォー「ライアンとブライはどうした?」
マーニャ「なんでも敵の居城の斥候とか言ってさっき……」
ミネア「あ、帰ってきたみたいですね」
ライアン「……ダメでござるな」
フォー「?」
ブライ「あの城には強力な結界が張られていまして簡単には浸入できないようです」
フォー「……結界を解く術はあるのか?」
ブライ「あの手の結界はそれを形成するために幾つかの"柱"の様なものが必要です……私の見立てですが城の四方の四ヶ所の祠や塔がその役割を担っているかと……」
ミネア「……その場所、強い魔力を感じます……」
フォー「ピサロのしもべがそれを守っていると考えるのが妥当……か」フム
フォー「まぁなんにせよ今すぐ突入は無理だ、体勢を整えるためにもここらにキャンプでも作ろうか」
フォー「勇者はライアンに剣の稽古でもつけてもらえ、ずっと馬車の中で退屈だっただろ?」
勇者「うん、わかった!!」
229 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:24:22 ID:EE5PgR7.
――――魔界・フォー一行のキャンプ付近
勇者「せいっ!!」
ビュッ
ライアン「なんの!!」
ガキーン!!
キィン!!
カガキィン!!
キィン!!
マーニャ「へぇ、案外やるもんじゃない」
ミネア「えぇ、一ヶ月前は一般人とはとても思えませんね」
マーニャ「アンタも少しは力つけたらぁ?」
クリフト「わ、私ですか!?」
クリフト「しかし私は神官でして肉弾戦は苦手で……それに……」
クリフト「私にはザキがありますから!!」キッパリ
マーニャ(……言い切った)
ミネア(……むしろ清々しさすら感じる)
231 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:30:22 ID:EE5PgR7.
勇者「だりゃああ!!」
ライアン「むぅん!!」
ガッキーーーン!!
ヒュンヒュンヒュン
ザクッ
勇者「かー、負けちまったか……」
ライアン「むぅ……勇者殿はかなり腕が立ちますなぁ、まさかここまで本気を出すことになるとはこのライアン思ってもいませんでした」
勇者「そ、そうかな……?」テレッ
アリーナ「……」キラキラ
勇者「……?」チャッ
232 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:30:52 ID:EE5PgR7.
アリーナ「勇者ぁ!!次はわたしとやろう!!」
勇者「……え?別にいいけど……その……女の子とは闘いづらいと言うか……」
アリーナ「えー、何それ!!失礼しちゃうな!!」プンプン
ライアン「勇者殿……」ボソッ
勇者「?」
ライアン「本気でかかった方が良いでござるよ」ボソッ
勇者「??」
アリーナ「じゃあ行くよー!!」
ビュッ!!
勇者「な、はやっ……!!」
233 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:31:29 ID:EE5PgR7.
【勇者の咄嗟の突きをかわしざまに合わせたアリーナの右フックは】
【正確に勇者の顎の先端を捕え】
【勇者の脳を頭骨内壁に、あたかもピンポンゲームの如く繰り返し振動激突させて典型的な脳震盪の症状をつくり出した】
【既に意識を分断された勇者の下顎へダメ押しの左アッパー】
【崩れ落ちる体勢を利用した左背足による廻し蹴りは】
【勇者を更なる遠い世界に連れ去り――】
【全てを終わらせた!!! 】
【その間、実に2秒!!! 】
【これが、エンドール武術大会で優勝を収めたアリーナの、ベストコンディションの姿である】
234 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:32:13 ID:EE5PgR7.
勇者「」ドサッ
アリーナ「あら、呆気ないわね」
ライアン「むぅ……だから言ったのに……」
マーニャ(って言うか今のナレーションで元ネタ分かった奴はソッコー病院行くべきね)
アリーナ「おーい、勇者ぁ」ペチペチ
勇者「」
アリーナ「勇者ってばぁ」ペチペチ
勇者「……はっ!!」ガバッ
アリーナ「あ、起きた!!」
勇者「俺は……そうか……アリーナにやられて……」
勇者「……ってアリーナ強すぎじゃないか!?」
アリーナ「そうかなぁ?」シュビビッ
トルネコ「アリーナさんは呪文も使えませんしあまり強力な武具も装備できないのでフォーさんが入手した力の種や素早さの種、守りの種を全てアリーナさんに差し上げたんです」
勇者「!?」
235 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:33:35 ID:EE5PgR7.
アリーナ「なんだか種に頼ったみたいで嫌だからさ、ちゃーんと自分でも修行してるよ?」ヒュババッ
勇者(……見えない……)タラッ
アリーナ「さぁ!!2回戦行くぞー!!」
勇者「ちょっ、待っ!!」
【アリーナ腰を深く落とし真っ直ぐに相手を突いた!!】
ドゴォッ!!
勇者「がっ……!!」
【アリーナは爆裂拳を放った!!】
勇者「がぼぼぼぼっ!!」
【アリーナの飛び膝蹴り!!】
勇者「ぐっはぁぁ……!!」
ドサッ
勇者「」ピクピク
アリーナ「あれ~?またおしまい?」
236 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:34:07 ID:EE5PgR7.
アリーナ「クリフト~、ベホマお願ーい!!」
クリフト「はっ!!只今!!」ドヒュン
マーニャ「……実際アリーナがあたし達の中で一番強いんじゃない……?」
ミネア「えぇ……もしかしたらフォーさんより強いかも知れませんね……」
アリーナ「さぁ、3回戦だ!!」
勇者「助けてぇぇーー!!」
クリフト「あぁ……羨ましい……」ハァ
マーニャ「ダメだコイツ……はやくなんとかしないと」
237 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:34:49 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・三日目・魔界
ライバーンロード「グワアゥ!!」バサバサ
フォー「勇者!!そっち行ったぞ!!」
ガーディアン「ふんっ!!」
ガキーン!!
フォー「せいっ!!」ビュッ
ズバッ!!
勇者「えぇっと……空を飛ぶ魔物は……」
勇者『バギマ』!!
ビュオオオッ!!
ライバーンロード「!?」グラッ
勇者「今だ!!」
ズバッ!!
ライバーンロード「ギャオー……!!」
ズズーン
238 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:35:16 ID:EE5PgR7.
ミネア「お二人とも、回復致します」
勇者「いや、かすり傷ぐらいしかしてないし構わないよ」
フォー「俺が教えたことちゃんと覚えてたみたいだな」ニッ
勇者「当たり前だろ♪」
フォー「半分以上寝てたクセによく言うよ」
勇者「う……それを言われるとつらいな」ポリポリ
マーニャ「……で、パーティーはこの四人でいいの?」
フォー「あぁ、準備はいいか?」
勇者「おう!!」
239 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:35:54 ID:EE5PgR7.
――――結界の祠
アンドレアルA「ギャオオ!!」
ゴウゥゥ!!
フォー「ミネア!!」
ミネア「えぇ、わかってます!!」
ミネア『フバーハ』!!
フワッ
シュウウゥ!!
マーニャ「っつう!!フバーハあっても熱いわね!!」
勇者「フォー、ドラゴンの魔物は!?」
フォー「ドラゴン系の魔物は鱗が堅く皮膚が厚い上に体力もある。近接攻撃じゃ苦戦するだろう、だが火炎の息を吐くドラゴンは内臓器官に高熱の火炎袋を持っているから……」
240 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:36:48 ID:EE5PgR7.
アンドレアルC「ガウッ!!」
ビュン!!
フォー「……っと!!」サッ
アンドレアルB「ガルル!!」
シャッ!!
勇者「わっ!!」
ガキーン!!
勇者「解説はいいから早く!!」
フォー「つまり氷系の呪文に弱い!!」
フォー「ミネアはサポート、マーニャはそっちの一匹を!!時間を稼ぐだけで構わない!!」
アンドレアルA「グルル……」
マーニャ「りょーかいっ!!」
241 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:37:20 ID:EE5PgR7.
アンドレアルC「ギャオー!!」
フォー「コイツを片づけたらそっちに行く!!」
勇者「へっ、じゃあコイツは俺に任せな!!」
アンドレアルB「ギャース!!」
フォー「OK、行くぞ!!」
242 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:37:56 ID:EE5PgR7.
――――
勇者『ヒャダイン』!!
ビュオオオッ!!
アンドレアル「ガウッ!!」ググッ
勇者「マーニャ!!フォー!!今だ!!」
マーニャ「さぁ、ぶちかますわよ~♪」
マーニャ『イオナズン』!!
カッ!!
ドドーーーン!!
フォー「これで……」ダッ
フォー「トドメッ!!」
ズバンッ!!
アンドレアルA「ギャアアァァア!!」
ドシーン!!
アンドレアルA「……ピサ……ロサマ……ニ、コウウン……ヲ……」ガクッ
アンドレアルA「」
243 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:38:34 ID:EE5PgR7.
勇者「ふぃー、どうにか片づいたな」
フォー「ミネア、どうだ?」
ミネア「……はい、結界が弱まったのを確かに感じます」
マーニャ「お疲れお疲れー♪」
フォー「勇者、いい闘いぶりだった。正直敵の強者相手にここまでやれるとは思ってなかったよ」
勇者「へへっ、ありがとう♪でもここまでやれたのはフォーの的確な指示のお陰だな」
勇者「俺だけじゃなくてマーニャやミネアにもその状況での適切な指示を出してたもんな」
ミネア「えぇ、フォーさんが私達のリーダーたる所以です」
勇者「俺勉強は大ッ嫌いだけどフォーのそういう戦闘の知識、改めて知りたいと思ったよ」
フォー「そうか、じゃあビシバシいくからな?」
勇者「うん!!」
フォー「次寝たらゲンコツじゃなくてギガデインな」
勇者「ぇえ!?そ、そりゃひどいよ!!」アセ
244 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:39:15 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・四日目・夜
フォー「……で、ルーラの応用でトベルーラって呪文があるんだ。まぁこれは正式な呪文じゃないから契約とかは必要なくてルーラで飛ぶ要領で体を宙に浮かせる感じでできる。これをうまく使えば飛んでる敵とも互角に戦える。そこらへんは呪文担当のブライかマーニャに教えてもらえ」
勇者「へー、呪文にも応用とかあるのか~」
フォー「あぁ、でもまずはその呪文を完璧に使いこなせないと話にならないからな、呪文の応用は少しずつ練習していけばいいさ」
勇者「はーい」
アリーナ「フォー!!、勇者ぁー!!、ご飯できたよー!!」
フォー「ん、そうか。じゃあ今日の授業はここまでだな」
勇者「ふー、よっしゃ!!お腹ペコペコだよ~」
アリーナ「早くこないとわたしが全部食べちゃうからね♪」
勇者「だあぁ!!させるかぁ!!」
ブライ「ホッホッ、若いですなぁ」
245 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:39:51 ID:EE5PgR7.
――――魔界・フォー一行のキャンプ
トルネコ「ぐがぁ……!!すぴー……!!」ギリギリ
ミネア「うぅ……相変わらずトルネコさんのいびきはうるさいわ……ピサロを倒したら無事に快適な睡眠を得られるかしら?」ドヨーン
ライアン「ぐぅ……ぐぅ……」
ブライ「スー……スー……」
アリーナ「……さぁ、ピサロ!!かかってらっしゃい!!……むにゃむにゃ」
ボカッ
クリフト「姫様……!!もっといたぶって下さい!!……ぐーぐー」
マーニャ「すぴー……すぴー……」
ミネア「皆さんもよくこんな状況で寝れますね……」
ミネア「……あれ?フォーさんと勇者さんがいない……?」
246 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:40:43 ID:EE5PgR7.
――――魔界・森
勇者「機械や金属の魔物は……」フッフッ
勇者「えっと……」フッフッ
勇者「そうだ!電撃か関節部分への攻撃だ!!」フッフッ
勇者「ゴースト系の魔物は物理攻撃が効きにくいから……」フッフッ
フォー「よっ」
勇者「わぁ!!」
フォー「筋トレしながら今日の勉強の復習か……遅くまでお疲れ様、ほら冷えた水」ポイッ
勇者「……ったく、おどかすなよ……あ、ありがとう」パシッ
フォー「……なぁ、勇者?」
勇者「……ん?」ングング
247 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:41:18 ID:EE5PgR7.
フォー「勇者は『勇者の伝承』とやらで俺のこと知ってるんだよな?」
勇者「うん」
フォー「俺の……俺の村が魔族の手で全滅したこともか?」
勇者「……うん、知ってる……まぁそんなに詳しい状況まではわかんないけどな」
フォー「そうか……勇者、同じ境遇の君に聞きたい」
フォー「君は魔族を憎んでいるか?」
勇者「……!!」
フォー「正直に答えてくれないか?ありのままの気持ちを」
勇者「俺は……」
フォー「……」
勇者「俺は……多分魔族を憎んでいると思う」グッ
勇者「俺のじいちゃんを、友達を、村の人達を……一人残らず殺して……村のをメチャクチャにした魔族を許せない」ワナワナ
勇者「力を欲する理由も『世界を救う』なんて大層な理由はホントは建前で……復讐の気持ちがないと言ったら嘘になる」ギリッ
フォー「…………」
248 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:41:55 ID:EE5PgR7.
勇者「……なんかごめん……幻滅した?」
勇者「『お前なんか勇者にふさわしくない!!』とか思ってんだろ?」ハハッ
フォー「……いや、逆さ」
フォー「君が憎しみを胸に……自分の心を綺麗事で偽らない……そんな『勇者』で良かったと思った」
勇者「……?」
フォー「『勇者』なんてさ、世界の救世主みたいに思われてるけど……所詮はただの人間なんだよな」
フォー「面倒なことはやりたくないし、痛いことは嫌だし、時には人を憎んだり妬んだりもする……」
フォー「君が自分の中の憎しみを認めてるってことは……それはつまり自分をありのまま、完璧でなんかないただ一人の人間と自覚してるってことだ」
フォー「だからそんな君が『勇者』で良かった、って言ったんだ」
勇者「…………」
勇者「フォーも……」
249 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:42:29 ID:EE5PgR7.
勇者「フォーも……魔族を憎んでいるのか?」
フォー「うん……いや、憎んで"いた"ってのが正しいかな」
勇者「過去形……?」
フォー「勇者、敵の親玉……ピサロの哀しい話についても君は知ってるか?」
勇者「え?あ、あぁ……ロザリーヒルの長老のホビットからだいたいのことは聞いた」
フォー「そうか……じゃあピサロも人間を憎んでいるってことはわかるよな?」
勇者「うん……」
フォー「きっと俺がピサロの立場でも……人間を憎んでしまったと思う。ピサロが俺の立場でも……魔族を憎んでしまったと思う」
フォー「俺……ピサロの話を全部知った時……アイツがすごく可哀想になった……」
フォー「俺の村を滅ぼした張本人なのに……世界を壊そうとする巨悪なのに……憎いハズなのに……可哀想で仕方がなかった……」
勇者「……」
フォー「だけど……いや、だからこそ、かな。俺は闘うことを決意した」
フォー「ピサロへの憎しみからじゃなく……ピサロのことを悲しみと憎悪から解放してやりたくて……」
フォー「俺も憎しみにとらわれていたからこそ……ピサロを憎しみから解き放ってやりたいんだ」
250 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:43:08 ID:EE5PgR7.
フォー「自分の心の中にある憎しみを、怒りを、憤りを……確かに認めた上で、世界を救うため……ピサロを救うため……そのために俺は闘うんだ」グッ
フォー「死んでいった父さんも母さんもシンシアも村のみんなも……憎しみのためにピサロと闘えとは言わないと思う」
フォー「穢れを知らない人間の言う綺麗事なんてなんの価値もない。自分の中の暗く黒い感情をしっかりと見つめて、考え、そして掲げる綺麗事にこそ意味があると思う」
フォー「……だから俺はあえて綺麗事を言うよ」
フォー「人々の希望のために闘う……人々を悲しみから解き放つために闘う……それが『勇者』の使命だって」
勇者「……」
フォー「長々と話して悪かったな、俺と同じ境遇の君にどうしても話を聞いておきたくて、話をしておきたくて」
勇者「うん……ありがとう」
勇者「俺も迷って悩んで……穢れを知った心で綺麗事を見つけてみるよ」
フォー「……うん」
フォー「さて……と、ボチボチキャンプに戻って寝るとしようぜ」
251 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:43:43 ID:EE5PgR7.
――――草むら
ミネア「……フォーさん……」
ライアン「むぅ……流石フォー殿でござるな」ヨヨッ
マーニャ「ホントホント、偽善者にもホドがあるわよね~」
アリーナ「でもそこがフォーの良いところだよ!!」
ブライ「左様、あのやさしさ、正義の心こそがフォー殿の勇者たる所以でしょう」
クリフト「くぅ……私涙が……」ウゥ
ミネア「……って皆さんいたんですか!?」ギョッ
マーニャ「うん、なんだか面白そうだなぁって思って」ニヒッ
ライアン「決戦前にこうしてフォー殿のお気持ちを知ることができて良かったでござる」ウンウン
アリーナ「何があってもあたし達はフォーについていこうね、あたし達の信頼するリーダーにさっ♪」ニコッ
ミネア「えぇ……あれ?ところでトルネコさんは?」
マーニャ「あのオッサンはいびきかいて寝てるよ」
252 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:44:19 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・八日目・魔界・結界の祠
ライアン「むぅん!!!!!!」
ギガデーモン「はぁあ!!!!!!」
ガッ!!
ブワァッ
フォー「ブライ!!勇者にバイキルトを!!」
ブライ「はっ」
ブライ『バイキルト』!!
勇者(デカい棍棒振り回す巨体……典型的な力自慢タイプか……)ダッ
フォー「勇者、わかってるな?」
勇者「あぁ!!」
フォー「足元から!!」
勇者「切り崩す!!」
ズバズバン!!
ギガデーモン「がっ!?」
253 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:44:50 ID:EE5PgR7.
勇者『ライデイン』!!
フォー『ギガデイン』!!
ズガーーーーン!!
バリバリバリバリ!!
ギガデーモン「ぐあぁぁ!!」
フォー「ブライ!!たたみかけろ!!」
ブライ「えぇ!!」
ブライ『マヒャド』!!
ビュウウゥゥゥ!!
ガキーン!!
ギガデーモン「ぐっ……!!」
ライアン「もらったでござる!!」ブンッ
ズバアァン!!
ギガデーモン「……ぐふぅっ……」
ズズーン……
254 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:45:23 ID:EE5PgR7.
フォー「俺の教えたことがだいぶ身についてるみたいだな、勇者」
ブライ「見事な連携でしたな」
勇者「へへっ、伊達に寝る度にゲンコツで起こされてねぇっての」エヘン
フォー「そこは威張れるとこじゃないっての」ハァ
ギガデーモン「……ゼェ……ヒュゥ……」
ライアン「む、こやつまだ息があったか」チャキ
フォー「だが虫の息だ、トドメを刺すこともないだろう」
ギガデーモン「ぐ……うぅ……ピサロ様に栄光を……」
ブライ「……ピサロめはよほど部下から信頼されておるのですな、敵ながらそのカリスマ性には感嘆します」
フォー「……あぁ、そうだな……」
フォー「……ここの結界の柱は壊れた、行こうか……」
ギガデーモン「ピサ……ロ様に……栄光……を」
255 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:46:21 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・九日目
勇者「…………」
クリフト「そうです、私の魔力の波長に回復呪文を同調させて……」
勇者『ベホマ』!!
パアァ
クリフト「うん、上出来です」ニコッ
ミネア「えぇ」ニコッ
勇者「よっしゃ!!」ガッツ
勇者「ありがとう、クリフトとミネアのおかげで回復呪文に関しては随分と上達したよ♪」
ミネア「いえ、勇者さんの努力の賜物です」
クリフト「そうですね、勇者さんは才能がありますよ」
勇者「いやいやぁ」テレッ
ミネア「あ、そうだ。せっかくですから勇者さんのこと占って差し上げましょうか?」
勇者「え?ホント!?」
256 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:47:10 ID:EE5PgR7.
クリフト「ミネアさんの占いは怖いくらいに当たりますよ~」笑
勇者「なんだか楽しみだな」
ミネア「えぇ、う~ん……タロットより水晶占いの方がいいかしら」
ミネア「ではいきますよ?」
勇者「う、うん」
ミネア「…………」
ボワァ…
ミネア「これは……蛇?」
勇者・クリフト「蛇?」
ミネア「……蛇の隣に……鉱石?金属の欠片でしょうか?……それが三つと……青い宝石が1つ……」
勇者「???」
ミネア「蛇がそれらを食べて……龍になりました……」
ミネア「占いによるとその龍が勇者さんに大きな力を与えてくれるみたいですが……」
257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:47:40 ID:EE5PgR7.
勇者「なんだかよくわかんないな~」
クリフト「私にもさっぱり」
フッ
ミネア「う~ん、そうですね……。占いは人の道を指し示すものです、この占いで見えたことがいつか勇者さんのお役に立つかもしれません」
勇者「そうだな、サンキューミネア。覚えとくよ♪」
アリーナ「あ、勇者見っけ!!」
勇者「アリーナ!!」ビクッ
アリーナ「ちょうどクリフトとミネアの回復呪文講座は終わったみたいね」
クリフト「はい」
アリーナ「じゃあ暇でしょ?わたしと組手しましょ♪」
勇者「え、えーと……この後はブライとマーニャの攻撃魔法講座があるから……その……」アセアセ
アリーナ「えーーーつまんなーい」
258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:49:01 ID:EE5PgR7.
トルネコ「あれ?ブライさんとマーニャさんはフォーさんと一緒に最後の結界の柱付近の散策に行ったんじゃ……?」
勇者「ばっ!!」
勇者(空気読めよオッサンーーー!!)
アリーナ「じゃあ大丈夫だね」ニコッ
アリーナ「いくよーー!!」
勇者「ちょ、待っ」
アリーナ「わたしのこの手が真っ赤に燃える!!」
アリーナ「勝利を掴めと轟き叫ぶゥ!!」
カアアァァァ!!
勇者「ア、アリーナさん!?拳が光っちゃってますよ!?」
259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:49:45 ID:EE5PgR7.
アリーナ「流派、サントハイム不敗最終奥義!!!!」
アリーナ『石破天驚拳』!!!!!!
カッ!!
ズアオッ!!
勇者「ぎゃーーー!!」
勇者「」ピクピク
アリーナ「あちゃー、これ手加減難しいのよね~」
アリーナ「クリフトー」
クリフト「はっ、只今!!」
クリフト『ベホマ』!!
パアァ
勇者「ハッ!?」ガバッ
260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:50:22 ID:EE5PgR7.
アリーナ「さぁ!!第73回戦だよ!!……あれ74回戦?まぁいいや、次いっくよー!!」
フォー「ただい……って、アイツら何してんだ?」
マーニャ「さぁ?」
勇者「勘弁してくれぇー!!」ダダダッ
アリーナ「コラー!!師匠から逃げるんじゃなーい!!」ダダダッ
ミネア「勇者さん……不憫です」
261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:50:50 ID:EE5PgR7.
――――第四の世界・十日目・結界の塔
フォー「これが最後の結界の柱だな」
アリーナ「でもなんでここだけ塔なんだろうね?他は小さな祠だったのに……」
クリフト「ここの魔物は別格、ということじゃないでしょうか?」
勇者「心して進もうぜ」グッ
262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:51:48 ID:EE5PgR7.
――――結界の塔・最上階
???「今までお世話になりました」
エビルプリースト「ふははは、なに、気にすることではない。勇者一行が来るまでの良い暇潰しになったわ」
???「私も"デス"ピサロをこの目で見て進化の秘法の凄まじさを実感致しました」
エビルプリースト「真の完成まであと少し……その時こそが私が新たな魔王となるのだ!!……む?」
???「いかがなさいました?」
エビルプリースト「ようやく来おったか……」ククク
???「勇者達がですか?」
エビルプリースト「うむ」
???「そうですか……そろそろ時間ですし勇者達と事を構えるのは好ましくありません。私は失礼させていただきます」
エビルプリースト「そうか、達者でな」
???「はい、エビルプリースト様も……」フッ
エビルプリースト「……行ったか」
エビルプリースト(奴の秘めたる強大な魔力……私でさえ恐気がした……まさかあのような者がいようとはな……)
ザッ!!
263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:52:34 ID:EE5PgR7.
フォー「お前が最後の結界の柱か」チャッ
エビルプリースト「"最後"……それは相対的な順序によるもので私達結界の柱に順番などないが……まぁいい。いかにも、私が最後の柱、エビルプリーストだ。よくぞここまでたどり着いたな」
アリーナ「……コイツ……できるね」サッ
勇者「先に言っとくけどコイツにはザキは効かないからな?」チャッ
クリフト「わ、わかってますよ」サッ
エビルプリースト「……? 見慣れない小僧がいるな」
エビルプリースト「……なるほど、貴様が部下から報告のあった勇者達の新たな仲間か」
勇者「まぁそんなところだな」
264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:53:08 ID:EE5PgR7.
エビルプリースト「フフフ……このような者達に手を貸したりしなければ楽に余生を過ごすことができたものを……自ら絶望の中で生き絶えることを望むとは……とんだ愚か者よ」ククク
勇者「まったく……なんで悪人ってのは話が長いかな……」
アリーナ「まったくね」
クリフト「えぇ、教会のお偉い様の話よりつまらないです」
フォー「神官がそんなこと言っていいのかよ」ククッ
勇者「さて、じゃあ……」
フォー「いくぞっ!!」ドンッ
265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:53:48 ID:EE5PgR7.
――――
フォー『ギガデイン』!!
ズガーン!!
バリバリバリ
エビルプリースト「ぐぅ……」ヨロッ
アリーナ「そこぉ!!」シュビ
エビルプリースト「なめるなぁ!!」
ガッ
アリーナ「な!?しまった掴まれ……」
エビルプリースト「この至近距離なら爆死確実だな」ニッ
エビルプリースト『イオナ…』
勇者「せやぁ!!」
ゴッ!!
エビルプリースト「ぬ!?」
266 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:54:40 ID:EE5PgR7.
勇者「アリーナ!!今のうちに!!」
アリーナ「うん!!」ググッ
バッ
クルクルクル
スタッ
クリフト『ベホマ』!!
パアァァァ
アリーナ「ありがと、クリフト」
クリフト「いえ……しかしコイツ」ハァハァ
フォー「あぁ……強い!!」
エビルプリースト「流石魔界の帝王を倒しここまで来た伝説の勇者とその仲間達といったところか」ハァハァ
エビルプリースト「まさかここまでできるとは思わなかったぞ……」ハァハァ
267 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:55:19 ID:EE5PgR7.
エビルプリースト「だが貴様達はここで死ぬのだ、私が新たな魔界の王になる前の最後の雑務といったところか……」
勇者「『新たな魔界の王』?……どういうことだよ?」
エビルプリースト「フフフ……簡単なことだよ、魔界の王はその身を破壊の化身へと変えた……理性を失ったあの化物では魔族達を統率することはもはや不可能」
エビルプリースト「そうなれば新たな魔族の指導者が必要となるであろう……?」
フォー「お前にその役が務まるとは思えないけどな」
エビルプリースト「なに?」
フォー「ピサロは他の魔物や魔族達から絶大な信頼を受けている……もはや崇拝に近い」
フォー「そのカリスマ性がお前にはない、と言っているんだ」
エビルプリースト「フフフ……」
エビルプリースト「フハハハハハハハッ!!」
勇者「……何が可笑しいんだよ?自分の器の小ささを馬鹿にされたのががそんなに面白いのか?」
エビルプリースト「いや、失敬。あまりに"ピサロ"と奴を盲信する者達が哀れだったものでな」ククク
フォー「"ピサロ"……?」
268 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:55:54 ID:EE5PgR7.
エビルプリースト「私が魔族の王となることは以前から決まっていたことなのだよ」ククク
エビルプリースト「ピサロは言わば私が王の座に就くための踏み台だ」
エビルプリースト「魔族の王として他の魔族達を率い、そして悲劇の王として人間を憎み魔獣となる……その後釜に私はおさまる……」
エビルプリースト「"全て私の計画通り"というワケだ!!」
勇者「!?」
フォー「まさか……!!」
エビルプリースト「そう、貴様の想像通りだよ」ニタァ
エビルプリースト「ロザリーの隠れ家を人間に告げ、ロザリーを人間共に殺害させたのはこの私だ!!」
勇者・アリーナ・クリフト「!!」
エビルプリースト「まぁ人間共にはちょいと強力な催眠をかけて欲の感情を強くしておいたがな」ククク
エビルプリースト「あぁ、なんと可哀想なピサロとロザリー!!」ヨヨッ
エビルプリースト「だが私は君達の尊い犠牲を無駄にはしないよ……ククク……フフフフフ……フハハハハハハハッ!!」ゲラゲラ
269 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:56:26 ID:EE5PgR7.
フォー「許せない……」ビキッ
フォー「ピサロは……アイツはきっとロザリーと二人で静かに暮らしていければそれで幸せだったハズなのに……」グググッ
フォー「その心を憎しみに染めて……己の野望のために利用しただなんて……!!」
フォー・勇者・アリーナ・クリフト「絶ッ対に許せない!!!!」
勇者「だあぁ!!」ドンッ!!
ヒュッ!!
ズバァン!!
エビルプリースト「な!?どこにこんな力が」ヨロッ
勇者「せい!!てやぁ!!はぁ!!」
ズバッズババッ!!
エビルプリースト「ぐぅ……このぉ!!」
エビルプリースト『メラゾーマ』!!
ゴオオォォォ!!
勇者「ぐっ!!」
270 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:57:09 ID:EE5PgR7.
アリーナ「だぁ!!」
ドゴォッ!!
エビルプリースト「がふっ!!」
エビルプリースト「消し飛べ娘ぇ!!」
エビルプリースト『イオナズン』!!
カッ!!
ドゴーーーン!!
エビルプリースト「ハァ……ハァ……盾も持たない小娘がイオナズンを食らえばただでは済むまい……」
モクモク……
クリフト「えぇ、盾も持たない小娘でしたらね」ドン!!
エビルプリースト「!?」
クリフト「盾を持った男が全力でガードすればなんとか……」ヨロッ
エビルプリースト「まさか爆発の寸前に……」
271 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:57:49 ID:EE5PgR7.
ザッ!!
アリーナ「ナイス、クリフト!!」
エビルプリースト「!?」
アリーナ『まわしげり』!!
ゴッ!!
アリーナ『爆裂拳ッ』!!
ガガガガッ!!
アリーナ『捨て身ィ』!!
ドッガァーーン!!
エビルプリースト「ぐっはぁ!!」ガフッ
勇者『バギクロス』!!
ビュォオオオ!!
ズババババッ!!
エビルプリースト「ぐあぁ……!!」
勇者・アリーナ「うぉおおお!!」
272 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:58:26 ID:EE5PgR7.
エビルプリースト「図に……乗るなぁ!!」
ガガッ!!
勇者「ぐっ……!!」
アリーナ「くっ!!」
エビルプリースト「ハァ……ハァ……このまま人思いに握り潰してくれるわ……!!」ギュウゥ!!
アリーナ「う……ぅう!!」ミシミシ
エビルプリースト「フハハハ!!!!」
勇者「……ぎ……もう……」ボソッ
エビルプリースト「んん?せっかくの死に際の最後の台詞だが弱々しくて聞きとれんな?もう一度言ってくれんか?」ニマニマ
勇者「時間稼ぎは……」
勇者「時間稼ぎはもういいか!?フォー!!!!」
フォー「あぁ!!待たせたな!!」ドン!!
273 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:59:08 ID:EE5PgR7.
エビルプリースト「!?」
エビルプリースト「な……なんだそのいかずちの剣は……!!」
フォー「この一太刀は……ピサロの怒りだああぁぁぁ!!」
エビルプリースト「やめ……」
フォー『ギガソードォォォ』!!!!!!
カッッッ!!!!!!
ズバァァァァン!!
エビルプリースト「……ば、馬鹿な……」
ブシャアアァァ!!
エビルプリースト「魔界の王たる私がこんな……もう少しで進化の秘宝が……」ガフッ
ドサァッ
エビルプリースト「」
274 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 09:59:46 ID:EE5PgR7.
勇者「終わった……な」ハァハァ
フォー「いや、まだ肝心な奴が残ってるさ……」キン
フォー「ピサロを憎しみから解放した時が本当の終わりだ……」
アリーナ「……ピサロ」
クリフト「…………神よ……哀れな魔族の王は破滅によってしか救われないのでしょうか……?」
275 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:00:21 ID:EE5PgR7.
――――
エビルプリースト「」
使い魔A「おい、エビルプリースト様死んじまったぞ!?」ヒソヒソ
エビルプリースト「」ピク
使い魔B「……いや、まだ息があるようだ!!急いで治療すればまだ間に合う!!」
使い魔A「こうしちゃいられない、早く運ぶぞ!!」
276 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:01:11 ID:EE5PgR7.
――――魔界・フォー一行のキャンプ
ライアン「……そんなことがあったのでござるか……」
ミネア「部下に踊らされて憎悪の塊となってしまったなんて……ピサロ……敵ながら憐れとしか言い様がありませんね……」
フォー「でも……アイツにどんな事情があるにせよ、人々を、世界を壊すことを許すワケにはいかない」
フォー「だから俺は闘うよ、ピサロのためにも」グッ
ブライ「フォー殿……」
勇者「フォーらしいな、やっぱりどこの世界でも『勇者』は『勇者』……だな」ニッ
キラキラキラ……
勇者「あ……」
フォー「勇者……?」
277 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:01:45 ID:EE5PgR7.
アリーナ「わー!!勇者光ってるよ!!どうしたの!?」
勇者「いや……その……お別れの時間なんだ」
アリーナ「……えっ?」
ライアン「!!……そうでござるか……」
勇者「みんな、今までありがとうな、短い間だったけどすごく楽しくてすごく充実した時間が過ごせたよ」
フォー「勇者……君がいてくれたおかげで魔界攻略が随分はかどったよ」
フォー「ありがとう」
勇者「いやいや、俺の修行のために裂いてくれた時間がなかったらもっと早く結界を破れただろ?」
勇者「お礼を言うなら俺の方だよ」
278 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:02:30 ID:EE5PgR7.
ライアン「勇者殿、『弱きを助け、悪しきを断つ』……バトランド騎士団の信条でござる。勇者殿に誇り高き騎士の精神が宿らんことを……」ペコッ
勇者「ライアン……剣だけじゃなくてアンタには騎士道精神、しっかり教えてもらったよ」
アリーナ「勇者、暇な時とか修行の合間とかに組み手してくれてありがとうね。結局私の99戦全勝だったけど……勇者はセンスあると思うよ、またやろうねっ」
勇者「アリーナ……うん、その時はぎゃふんと言わせてやるからな?」
勇者(ホントは御免こうむりたいけど……)ハハッ
ブライ「呪文は精神に大きく左右される。いつも冷静に、心を乱さないことを心がけなされよ」
勇者「ブライ爺さん……呪文の稽古つけてくれてありがとうな、バギクロスとベギラゴンが使えるようになったのはブライ爺さんのおかげだよ」
クリフト「勇者さんはお一人で魔族達と闘うのでしょうからご自分の魔力の波動のパターンをしっかり理解なさって下さいね」
勇者「クリフト……うん、回復呪文の指南役本当にありがとう。ベホマが使えるようになったのは本当に大きいよ」ニカッ
279 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:03:03 ID:EE5PgR7.
マーニャ「勇者……あの夜の激しいあなた……あたし忘れないわ」ウル
勇者「マーニャ……わけがわからないよ」
ミネア「姉さん……場の空気壊さないで下さい!!」ビシッ
マーニャ「ナハハ、いや~あたし昔から湿っぽいのは嫌いでさ~」
ミネア「……まったく……勇者さん、お身体にお気をつけて」ペコッ
勇者「うん……ミネアの占いがいつどこで役立つかわからないけど、胸に刻んでおくよ」
トルネコ「…………」
勇者「…………」
トルネコ「…………」
勇者「い、色々ありがとな!!トラネコ!!」
トルネコ「やっぱり私何もしてませんよね!?ねぇ!?むしろオチが私の仕事ですか!?なんで私っていつもこんな仕打ちなんですか!!??」ブワッ
勇者「トラネコ……」
トラネコ「いやトルネコですから!!……ってなんでトラネコ表記になってるんですか!?ちょっとーー!!」ブワワッ
キラキラキラ……
280 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:03:43 ID:EE5PgR7.
フォー「元気でな、勇者」
勇者「うん、色々と教えてくれてありがとな」
フォー「三歩歩いて忘れたんじゃ大ニワトリ以下だからな?ちゃんと反復して知識を定着させろよ?」
勇者「アハハ、そうだな」苦笑
勇者「あとさ……俺と同じ境遇のフォーと出会えて良かったよ」
フォー「そっか……うん、俺もだ」
キラキラキラ……
281 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:04:16 ID:EE5PgR7.
フォー「……で?」
勇者「ん?」
フォー「俺と同じ境遇のお前はどんな結論に達したんだ?どんな想いで闘うんだ?」
勇者「んっと……正直わからない」
勇者「俺は世界のことも、魔族のことも、てんでわかっちゃいないからさ……まだフォーみたいにしっかりとした意志はない……」
フォー「……」
勇者「だけど一つだけ分かったことがある」
フォー「……それは?」
勇者「恐怖し悲しみ絶望して涙を流す人々がいたら、その涙が流れないようにするのが俺の役目だ、ってこと」
フォー「フッ……それがわかれば上出来だな」ニッ
勇者「きっとフォーもそう思ってピサロと闘う決意をしたんだろ?」
フォー「……あぁ」
キラキラキラ……
282 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:04:48 ID:EE5PgR7.
勇者「憎しみのためじゃなく、復讐のためじゃなく、俺はそのことを胸に闘うよ」
フォー「じゃあ俺もそのために闘おう……ここに誓おう」
アリーナ・マーニャ「穢れた綺麗事に懸けてってね♪」
勇者「あれ?なんでその話を!?」
フォー「さてはお前ら……!!」
トルネコ「え?なんの話ですかな?」
一同「アハハハハハハハハ」
キラキラキラ……
フォー「じゃあな、勇者」
勇者「うん」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
283 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:05:25 ID:EE5PgR7.
アリーナ「はぁ~、行っちゃったね~」シミジミ
ライアン「あっという間でござったなぁ……」
フォー「……勇者には勇者のすべきことがあるように、俺達にもすべきことがある……準備ができたらピサロの城へ向かうとしようか」
トルネコ「いよいよ進化の秘宝を使ったピサロとの決戦ですね」ゴクッ
フォー「あぁ、二、三日中には世界の命運を賭けた戦いの火蓋が切られる……みんな覚悟はいいか?」
ミネア「……そのことですがフォーさん」
マーニャ「ちょっとあたし達で考えたことがあんのよね~」
ミネア「先程のピサロの真実を聞いて一層強く思ったのですが……」
フォー「……?」
284 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:05:57 ID:EE5PgR7.
ブライ「ピサロを倒すのではなく、何か別の方法で世界を救ってみようではありませんか」ニッ
ミネア「世界中を旅してきた私達ですが、まだまだ知らないような神秘や奇跡がこの世界には満ちているでしょう」
アリーナ「そーゆー奇跡を探しに行かない?勿論時間はあんまりないだろうけど、それでもやってみようよ!!」
ライアン「フォー殿もさっきご自分で『涙を流している人の涙を止めるのが自分の役目』と言ったでござろう?」
クリフト「きっとピサロの魂も泣いていると思うのです……だから……」
フォー「お前ら……」
アリーナ「……どうかな?私達みんなで話し合ったんだけど……ダメ……かな?」
フォー「ハハッ……ダメなもんか」
フォー「化物と化した魔族の王を人間風情が倒して世界を救うなんて奇跡を起こそうなんて馬鹿なこと考えてるのが俺達だ、だったら馬鹿は馬鹿らしくもっとすごい奇跡を狙ってみるのもいいだろう!!」ニカッ
285 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:06:29 ID:EE5PgR7.
ミネア「じゃあ……」
マーニャ「決まり……ねっ♪」
フォー「闘わずにピサロを救って世界を救う……その方法を探しに行こう!!」
一同「おーーー!!」
トルネコ(……そして私だけ仲間外れなんですね、わかります)シクシク
286 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:07:29 ID:EE5PgR7.
――――星の海
ルビス『おかえりなさい……勇者』
勇者「ただいま……今度の勇者には戦闘や魔物の知識を教えてもらったよ」
ルビス『……なんだか逞しくなっていきますね、勇者』
勇者「そ、そうかな?」
ルビス『えぇ……十日おきに貴方がここに帰ってくる度に私はそう思います』
勇者「はは、ありがと」
ルビス『さぁ、次の世界へいざなうまでお休みなさい……』
勇者「……うん、おやす……って、あ!!」
ルビス『どうかしましたか?』
287 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:08:01 ID:EE5PgR7.
勇者「ルビスお前!!毎回毎回あれはわざとなのか!?」
ルビス『ぇえっと……なにがでしょうか?』
勇者「とぼけんな!!違う世界に俺のこと飛ばす時だよ!!」
勇者「毎回毎回高いとこから落とされて地面に頭ぶつけるしさ、前回なんて下が川で死ぬかと思ったんだぞ!?」ムカッ
ルビス『そ、そうですか……しかし別次元への生命体の転送というものは高度な技術と膨大な魔力を要するものでして……』
勇者「知るか!!今度からそーっと転移させてくれよ!?」
ルビス『はぁ……善処します』シュン
勇者「あー、やっと言えた~」
勇者「これで心置きなく寝れるぜ、んじゃおやすみ~」
勇者「zZzZ」
288 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:15:13 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界
パッ
勇者「おっ?」
フワッ
スー……
ストン
勇者「おー!なんだ、やればできるじゃないか♪」
勇者「うーん、清々しい朝だな~、絶好の勇者捜索日和だな♪」
???「ガオォ!!」
???「わー!!」
???「きゃー!!」
勇者「!? 悲鳴!?」ダッ
289 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:15:52 ID:EE5PgR7.
キラーパンサー「ガウゥ……」ジリジリ
???「うわーっ」
ガサッ
勇者「なっ!?」
勇者「子供達がキラーパンサーに襲われてる!?」
キラーパンサー「ガウガァ!!」バッ
勇者「危ない!!」ダンッ
???「!?」
サッ
キラーパンサー「ガゥ?」スカッ
スタッ
勇者「大丈夫だったかい?」ニコッ
???「あ、レックスお兄ちゃんずるいー!!」ブー
レックス「誤解だよタバサ!!ぼくは悪くないよ!!このお兄ちゃんがいきなり飛び出してきたのがいけないんだよ」ブー
290 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:16:31 ID:EE5PgR7.
勇者「え?俺ぇ?」
レックス「うん」
勇者「でも俺が来なかったらお前はキラーパンサーに食べられてたかもしれないんだぞ!?」
タバサ「ゲレゲレはそんなことしないです」
レックス「ぼくたち鬼ごっこしてただけだもん。ねー、ゲレゲレ」
キラーパンサー「クゥン……」
勇者「……は、はぁ?」
291 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:17:14 ID:EE5PgR7.
――――
勇者「へぇ~、ホントによくなついてるんだなぁ」
タバサ「はい♪」ナデナデ
ゲレゲレ「ゴロゴロ……」
レックス「ゲレゲレはお父さんが子供の頃からずっとお父さんと友達だったんだって」
勇者「へぇ……"地獄の殺し屋"なんて言われてるキラーパンサーがこんなに人になつくなんて聞いたことないや」
レックス「ゲレゲレだけじゃないよ、お父さんはたっくさんの魔物たちと友達なんだ♪」
勇者(モンスター使い……魔物を改心させることのできる存在か、もしかしてこの子達の父親って……)
ガサッ
???「お、いたいた」
292 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:18:08 ID:EE5PgR7.
レックス・タバサ「あ、お父さん!!」
???「レックス、タバサ、こんなところにいたのかい?……まったく、元気なのはいいけど元気すぎるというのも……?」
???「そちらの方は……?」
勇者「黒髪で紫のターバンに紫のマント!!五番目の勇者だ!!」
???「勇者?勇者は私ではなく……」
レックス「勇者は僕だよ!!」
勇者「え?あぁ、そうか、たしかにそうなんだけど……村の伝承じゃレックスのお父さんが勇者で……」
???・レックス・タバサ「???」
293 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:18:58 ID:EE5PgR7.
――――グランバニア・玉座の間
レックス「すごーい!!じゃあお兄ちゃんは色んな世界の色んな勇者に会う旅をしてるんだね!?」キラキラ
???「うん……そうだよね、勇者?」
勇者「あぁ」
レックス「かっこいー♪」キラキラ
タバサ「ロマンチックです」キラキラ
勇者「そ、そう?」フフン
???「さて、勇者の自己紹介は済んだことだしこっちの自己紹介でもしようかな」
???「私はファイブ。このグランバニアの王だ。今は魔界の王、ミルドラースを倒すために旅をしている」
勇者「よろしく、ファイブ」
ファイブ「この二人が私の双子の子供のレックスとタバサ」
レックス「よろしくね、お兄ちゃん」
タバサ「よろしくお願いします」ペコッ
勇者「うん、よろしくな」
294 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:19:29 ID:EE5PgR7.
ファイブ「こっちは私の妻の……グランバニア王妃ビアンカ」
ビアンカ「ただの宿屋の娘で王妃様ってガラじゃないんだけどね、よろしくね勇者君」ニコッ
勇者「よ、よろしくお願いします」
勇者(綺麗な人だなぁ……)ポワァー
ファイブ「……コホン」
勇者「!!」ドキッ
ファイブ「それと……グランバニアに代々仕える召し使いのサンチョ」
サンチョ「よろしくお願いします、勇者さん」
勇者「よろしく」
勇者(……なんかこの人トルネコに似てるな……)
サンチョ「どうかなさいました?」
勇者「あ、いや、なんでもない」
勇者(多分関係ないだろ)
295 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:20:03 ID:EE5PgR7.
勇者「……でもみんな俺が別の世界の人間だなんて信じられるの……?」
ビアンカ「たしかに正直言ってびっくりしたし信じられない気持ちもあるわ。でも……」
レックス「お兄ちゃんは嘘なんかついてないよ!!」
タバサ「勇者さんは優しい人だからきっと本当の事を言ってると思うの……」
ビアンカ「子供達もこう言ってるし私は信じるわ。それに勇者君そんな嘘をつくような子には見えないし」ニコ
サンチョ「そういうことですね」ニコ
勇者「……ありがとう」
ファイブ「さて、この世界での修行だが……魔物の心を理解できるようになろうか」
勇者「!?」
ビアンカ「え?でもファイブ……あなたが魔物を改心させることができるのはエルヘブンの民の血を色濃く受け継いだお母様の子供だからでしょ?」
ビアンカ「あなたの血を引くレックスやタバサでさえ魔物と仲良くなることはできても改心させることはできないし……」
296 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:20:47 ID:EE5PgR7.
ファイブ「うん、確かに魔物を改心させることができるのは母さんと僕ぐらいだろう」
ファイブ「けれど誰でも訓練すれば魔物の心を理解すること……つまり『魔物の動きを読む』ことはできるんようになれるんだよ」
ビアンカ「そうなの?」
ファイブ「あぁ、魔物の動きを目で追うんじゃなくて魔物が持つ魔力を感じとるんだ」
レックス「……?」
タバサ「それってわたしとお兄ちゃんが魔物さんとお話できることと関係あるの?」
ファイブ「あぁ、レックスとタバサは僕の子供達だから訓練なんてしなくてもなんとなくできてしまっているみたいだけどね」
勇者「へ~……なんだかすごそうだな」
297 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:21:19 ID:EE5PgR7.
ファイブ「第六感って言うのかな。極端な話この力を扱いこなすことができたら目を瞑ったって魔物と闘えるようになるよ」
勇者「ぉおー!!某有名バトル漫画の『気』みたいだな!!」
ファイブ「それは突っ込んじゃいけないところだ」苦笑
勇者「で!?何したらいいんだ!?」ワクワク
ファイブ「うん、じゃあまずは妖精の世界へ行こうか」
298 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:21:54 ID:EE5PgR7.
――――妖精の世界・妖精の村・ポワンの館
ベラ「はぁ~今日も良い天気ね~」
ベラ「だけど」
ベラ「つまんなーい」ゴロゴロ
ルナ「ハァ……行儀が悪いわよ、ベラ。ポワン様が見たらなんと言うか」
ルナ「それに世界がミルドラースの手に落ちようとしているのに不謹慎よ」
ベラ「だって~」ゴロゴロ
ルナ「……ん?あれは……」
ベラ「ん?」ヒョコ
ベラ「あ!!ファイブじゃない!!」
299 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:22:25 ID:EE5PgR7.
――――妖精の村・入口付近
勇者「ここってなんだかポカポカしてるなぁ~風も水も暖かいし」
ビアンカ「えぇ、素敵なところよね」
ファイブ「昔は雪と氷だらけでいつまでも春が来なかった時もあったんだよ?」
勇者「ここがか!?」
レックス「でも子供の頃のお父さんが妖精さん達の世界を救ってあげたんだよ♪」
勇者「へぇ~」
ベラ「ファイブー!!」タッタッタ
ファイブ「やぁ、ベラ」
タバサ「ベラさんっ」
ベラ「ようこそ、妖精の村へ……?」
300 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:22:56 ID:EE5PgR7.
勇者「妖精って初めて見るなぁ~、あんまり人間と変わらないんだな」ジー
ベラ「? 見ない顔ね」
ファイブ「うん、彼のことで来たんだ。ポワン様はいるかな?」
301 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:23:26 ID:EE5PgR7.
――――妖精の村・ポワンの館
ポワン「ようこそいらっしゃいましたファイブ」
ファイブ「お久しぶりです」ペコッ
ポワン「心の目であなたのことを見ていたので概ね事情は解っています。その者に魔力を知覚する術を習得させたいのですね?」
ファイブ「えぇ」
ポワン「勇者……私の目をよく見て下さい」
勇者「あ、はい」ジー
ポワン「……」ジー
勇者「……?」ジー
ポワン「なるほど、たしかに素質があるようですね」
ポワン「勇者がこの村に滞在することを許可しましょう……この妖精の村は人と魔物と妖精が互いに手をとりあって暮らすことを目指す村、貴方の滞在を歓迎しますよ」ニコリ
勇者「あ、ありがとうございます……」
302 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:24:08 ID:EE5PgR7.
勇者「でもさっぱり話が見えないんだけど……妖精の世界で過ごすとその魔力を知覚する術とやらが身につくのか?」
ファイブ「あぁ、妖精の世界は不思議な魔力で満たされていてね、ここで過ごしていれば自然と魔力知覚ができるようになる」
ファイブ「加えて君は素質がある。瞑想などの修行で常人より遥かに早く魔力知覚を習得することができるだろう」
ポワン「ファイブが魔物を改心させて仲間にできるのもエルヘブンの民の血だけでなく幼い頃にこの世界を訪れたことも関係しているのです」
勇者「へぇ~」
ファイブ「世界各地のモンスター爺さん達が魔物と心を通わせることができるのも、みんな子供の頃に私のように妖精の世界に来たことのある人達だかららしいよ」
レックス「えー!?そうだったんだ!!」
ビアンカ「あのお爺ちゃん達にそんな秘密がねぇ~」ヘェ
ファイブ「……と、言うワケで勇者には妖精の村で修行してもらうよ。修行については基本的に私が見ようと思うけれど、グランバニアで王としてやるべき仕事をしながらになるからいつもこちらにいることはできないな」
ビアンカ「じゃあ私はファイブのお手伝いね」
レックス「ねーねーお父さん、ぼくたちは?」
ファイブ「ん~、じゃあレックスとタバサは勇者の修行に付き合ってあげてくれないかな?」
レックス「やったー♪」
タバサ「わかりました」
勇者「よろしくな、二人とも♪」
303 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:24:49 ID:EE5PgR7.
――――魔界・エビルマウンテン最深部
ミルドラース「…………」
ミルドラース「……誰だ?」ギロリ
コツコツコツ……
???「気配を消して近づいてもお気付きになるとは……流石魔界の王と称されるミルドラース様、お見逸れ致しました」ペコリ
ミルドラース「ほぅ……私を魔界の王にして王の中の王、ミルドラースと知っていてここに来るか」
???「えぇ、生物の究極の力を求め進化の秘法の存在にたどり着き、神の怒りを買い魔界へと封ぜられし元人間の男……よく存じております」
ミルドラース「昔のことよ……今や私は神をも凌駕する力を手に入れた。マスタードラゴンへの復讐を遂げ地上を我が物とするのも時間の問題だ」グッ
???「誠にその通りでございますね」
ミルドラース「……して、そなたは何故私の元に来た?その内に秘めしどす黒い魔力……神の使者でないことはわかるが……私の首でも獲って新たな魔界の王にでもなりに来たか?」ニヤ
???「フフフ、それもまた一興ですね。しかし私は別の目的で貴方の元を訪れたのです……」
ミルドラース「……?」
???「貴方から進化の秘法の理を知るために」ニッ
304 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:25:24 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界・二日目・妖精の村
レックス「はい、ゲレゲレご飯だよ」
ゲレゲレ「ゴロゴロ……」ガツガツ
タバサ「ロビンも油注してあげるね」
キラーマシン「アリガトウゴザイマス……」プシュー
勇者「…………」ゴシゴシ
ゴーレム「…………」
勇者「……………………」ゴシゴシ
ゴーレム「……………………」
勇者「……だぁ!!」バシィ
勇者「なんで修行が魔物の世話なんだよ!?」バンバン
ゴーレム「……イタイ……」
305 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:25:54 ID:EE5PgR7.
ベラ「ファイブも言ってたけど魔物の持つ魔力を知覚できるようになろうとしてるんだから良い魔物と心を通わせられなくてどうするの」
ベラ「とは言えファイブの仲間の魔物達は沢山いるから全部世話してたら結構ハードね……ファイブもなんだかんだスパルタなのかしら?……あ、世話が一段落したらファイブが瞑想に付き合うから早いとこ片付けなきゃね」
勇者「ぐぬぅ……!!」ゴシゴシ
ゴーレム「…………」
レックス「お兄ちゃん、ゴレムスの体洗い終わったら次はキングスにご飯あげてね」
勇者「わあーってるわ!!」ゴシゴシ!!
306 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:26:25 ID:EE5PgR7.
――――
勇者「…………」シーン
ファイブ「基本は呪文を使う時と同じだよ」
勇者「…………」
ファイブ「世界に満ちる魔力を感じとる様に、今度は人や動物、魔物達が持つ魔力を感じとるんだ」
勇者「…………」
ファイブ「……どう?」
勇者「……ふぅ、やっぱすぐにはわかんないや」
ファイブ「まぁそうだろうね」
307 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:27:18 ID:EE5PgR7.
勇者「人や動物、魔物の持つ魔力ってさ、回復呪文を使う時の魔力の波長のこと?」
ファイブ「?」
勇者「前に回復呪文を教えてくれた先生が『回復呪文を使う時は自分の魔力を相手の魔力の波長に同調させると効果が高い』って言っててさ」
ファイブ「!!」
勇者「回復する相手の魔力の波長を感じとる修行をしてたんだけど……」
ファイブ「それだよ!!」
勇者「っつてもまだ短い距離でしか魔力を感じることはできないんだけどな」ハハッ
ファイブ「でもその感覚をもっと広い範囲に拡げていけばいいんだ」
ファイブ「君の先生達は優秀な人達ばかりみたいだね」
勇者「へぇ~……」
勇者(ミネアとクリフトに感謝しなくちゃな♪)
308 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:27:49 ID:EE5PgR7.
――――二日目・妖精の村・夜
ビアンカ「は~い、ご飯できたわよ~」
勇者・レックス「いっただっきまーーす!!」ガバッ
ガツガツガツ
タバサ「二人ともそんなにがっつかなくても……」
勇者「うめぇーーー!!」
ビアンカ「ふふ、ありがとっ」
レックス「もはあはんはほっへほほーひはほーふはんはお(お母さんはとっても料理が上手なんだよ)」モゴモゴ
ファイブ「こら、レックス、口に物を入れたまま喋らない」
レックス「はーい」モグモグ
309 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:29:06 ID:EE5PgR7.
ビアンカ「調子はどうなの?」
勇者「ん~まずまずかな」
勇者「魔力の知覚ってやつ?前の世界で回復呪文の修行を受けてたのが役に立ったみたいでさ、大体半径3mぐらいまでならそこにいる生き物の"存在"を知覚できるようになったよ」
ビアンカ「へぇ~じゃあ順調なんじゃない?」
勇者「でも動きを読むなんてまだまだできないなぁ」ポリポリ
ファイブ「二日でここまでできるようになればたいしたものだよ」ニコ
ファイブ「瞑想で魔力知覚の範囲を拡げ、魔物の世話で心を通わせれば次第に動きも読めるようになるさ」
勇者「りょーかい」
310 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:29:34 ID:EE5PgR7.
レックス・タバサ「ごちそうさまでした!!」
ビアンカ「ほら、レックス口が汚れてるわよ」
レックス「へ?」
タバサ「お兄ちゃんだらしない……」
ビアンカ「まったくもう……誰に似たのかしら?」フキフキ
ファイブ「僕は君じゃないかなと思うけどな」フフッ
ビアンカ「そういうセリフは口のまわりについたご飯粒をとってから言って欲しいわね」クスッ
ファイブ「へ?」
一同「アハハハハハ」
311 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:30:04 ID:EE5PgR7.
勇者「親子で仲が良いんだなぁ」
ビアンカ「そうね、大切な家族ですもの」
タバサ「……わたしとレックスは生まれたばかりの頃にお父さんとお母さんと離れ離れになってずーっと会えない日が続いたんです」
タバサ「だからお父さんとお母さんと一緒にこうしていられる今がすごく幸せ……」
レックス「ぼくも!!」
ファイブ「それはお父さんもお母さんも一緒さ、ね?」
ビアンカ「そうよ」ニコッ ナデナデ
タバサ「えへへ~♪」
レックス「お兄ちゃんのお父さんとお母さんはどんな人たちだったの?」
勇者「え?う~ん……あんまり覚えてないんだ」
勇者「父さんも母さんも俺が小さい頃に病気で死んじゃってさ、物心ついた頃からずっとじいちゃんに育てられてたから……」
312 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:30:33 ID:EE5PgR7.
レックス「あ……ごめんなさい、聞いちゃいけないことだったね……」
勇者「気にすんな、父さんと母さんが死んだのはあんまり昔のことだから悲しくないし俺にはじいちゃんって家族がいたからな、村のみんなも優しかったしな」
タバサ「…………」
ビアンカ「さ、ご飯が済んだら早く寝なさい」
レックス「は~い」テクテク
ビアンカ「ちゃんと歯磨きするのよ」
タバサ「はいっ」テクテク
ファイブ「おやすみ、レックス、タバサ」
レックス「おやすみなさ~い」
勇者「おやすみ」
タバサ「おやすみなさい」
バタン
313 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:31:12 ID:EE5PgR7.
勇者「…………」
ファイブ「……どうかしたかい?」
勇者「……いや、なんつーか」
勇者「家族っていいもんだな~、って思ってさ」
勇者「俺の父さんと母さんが生きてたら……こうして一緒にご飯食べたりたまに喧嘩したり……でも笑いあって……そんな風に過ごせていたのかな……って」
ビアンカ「……」
勇者「……っと、らしくないな、何言ってんだろ俺」苦笑
ファイブ「……」
勇者「なぁファイブ……俺、村の伝承でファイブのことも少しは知ってるんだけど……」
ファイブ「うん……」
勇者「その……さ、生きることに絶望したりしなったりしなかったのか?」
314 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:31:49 ID:EE5PgR7.
勇者「お父さんを目の前で殺されて……子供の頃からずっと奴隷として扱われてきて……自由の身になって結婚して幸せな日々を過ごせると思ったら子供達の成長を見守ることもできずに夫婦で石にされて離れ離れ……」
勇者「石から元に戻ってやっとお母さんに会えたのにそのお母さんも目の前で殺されちゃうなんて…………俺だったら耐えられないよ」
ビアンカ「…………」
勇者「じいちゃんが勇者の伝承の話を聞かせてくれる度に、五番目の勇者の話……ファイブの話を聞くといつも不思議に思ってたんだ」
勇者「……どうしてそんなに強いんだ?」
ファイブ「…………」
ファイブ「……私は強くなんてないよ」
ファイブ「つらいことや悲しいことがある度に涙を流しては『どうして自分ばかりが』って人生を呪ってばかりさ」
ファイブ「……でもこうして今を……未来を目指して生きていられるのはきっと失ったものを数えずに得たものを、得られるものを数えようとしているからだと思う」
ファイブ「……私が奴隷として生きてきた十年……あそこでの生活は本当に酷いものだった」
ファイブ「毎日過酷な労働を強いられ、作業が遅れれば鞭を打たれ、看守の機嫌が悪いだけで殴られる……人間として扱われていなかった……死んだ方がマシだ、って何度も思ったよ」
勇者「…………」
315 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:32:31 ID:EE5PgR7.
ファイブ「でも私は生きることを諦めなかった」
ファイブ「母が生きているという父の最後の言葉を胸に、父の遺志を継ぎ母に会おうと、そのために生きていこうとね」
ファイブ「子供達と離れ離れになってビアンカと石にされた時もそうさ、今はビアンカや子供達に会えなくても……いつか、いつかこの石化の呪いが解けたら子供達に会えるんじゃないか、ビアンカに会えるんじゃないか……って」
勇者「…………」
ファイブ「母を亡くした時も……悲しくて虚しくてやりきれない思いだったけれど……私にはまだ家族がいる。ビアンカやレックスやタバサ……グランバニアのみんなが」
ファイブ「みんなのために、みんなとこれからの日々のために生きようと思った。だから今もこうして未来を目指して生きているんだと思う……」
ビアンカ「…………」
316 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:32:58 ID:EE5PgR7.
ファイブ「まぁ言い方を変えたらただのプラス思考でしかないんだろうけどね」ハハッ
勇者「……いや、そう思えるってやっぱりファイブは強い人なんだと思うよ」
勇者「……はぁー、やっぱ勇者達はみんなすごいな……俺もみんなみたいな素晴らしい勇者になりたいもんだ」
ビアンカ「勇者君ならきっとなれるわよ」
ファイブ「あぁ」
勇者「ありがとう」
勇者「さてと、んじゃ明日も早いし今日はボチボチ寝るわ、おやすみ~」
ファイブ「おやすみ」
ビアンカ「おやすみなさい」
バタン
317 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:33:26 ID:EE5PgR7.
ビアンカ「……ねぇファイブ?」
ファイブ「ん?」
ビアンカ「勇者君……なんだか淋しそう……」
ビアンカ「明るく振る舞ってはいるけど心のどこかでは孤独を感じているって言うか……」
ファイブ「僕もそう思うよ……」
ビアンカ「だからさ、私達が勇者君の家族になってあげない?」
ビアンカ「勇者君がこの世界にいる間だけでいいからさ、私達で勇者君の心を温めてあげましょうよ」
ファイブ「……でもすぐに別れの日が来る。その時はまた勇者は一人だ……それが現実だ」
ビアンカ「…………」
ファイブ「そうは言っても僕は君に賛成だよ。勇者がまた一人になっても僕達と過した時間はいつまでも勇者の心に刻まれる。温かな思い出としてね」ニコ
ビアンカ「ファイブ……」キュン
ビアンカ「……あなたは本当に優しい人ね……」
ファイブ「……え?////」ドキッ
318 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:34:21 ID:EE5PgR7.
ビアンカ「あなたのそういうところ……大好きよ……////」
ファイブ「…………僕も君を愛しているよ////」
ビアンカ「……ファイブ……////」ドキドキ
ファイブ「……ビアンカ……////」ドキドキ
ビアンカ「……////」
ファイブ「……////」
ガチャ
ファイブ・ビアンカ「!?」バッ
レックス「トイレ……」ムニャ
ファイブ「な、なんだ、レックスか」アセアセ
ビアンカ「早くおトイレ済ませて寝なさい」アセアセ
レックス「…………?」
319 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:34:56 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界・四日目
アークデーモン「おーい、俺達の飯はまだかよ?」
勇者「ちょっと待ってろ!!こっちが終わったらすぐ持ってく!!」タッタッタ
アンクルホーン「あの人間、この仕事も大分板についてきたようだな」カッ
アークデーモン「あぁ、最初は頼りねぇとこもあるように見えたがなぁ」コッ
アンクルホーン「ファイブがモンスター爺さんの牧場から俺達魔物を全員妖精の世界に連れて来た時は何事かと思ったが……たまの気分転換は良いもんだな」カッ
アークデーモン「牧場は快適だけど狭っ苦しくていけねぇよなぁ」…コッ
アンクルホーン「……あい、チェックメイトと」カッ
アークデーモン「ぁあ!?」
アンクルホーン「今日の昼飯のスープは俺のもんだな」ゲラゲラ
アークデーモン「ふ、ふざけんな!!こんなハズじゃあ……テメェイカサマしやがったな!?」
アンクルホーン「してねぇよ阿呆!!」
アークデーモン「阿呆とはなんだ阿呆とは!!」
320 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:35:44 ID:EE5PgR7.
アンクルホーン「やんのか!?」
アークデーモン「上等!!」
アンクルホーン『バギクロ…』!!
アークデーモン『イオナズ…』!!
勇者「はいはい、そこまで!!」ガガッ
アークデーモン「んぁ!?」
アンクルホーン「むっ!?」
勇者「まったくアンクルもアクデンも喧嘩っ早いなぁ……」
アンクル「今回はコイツが悪いのだ!!」
アクデン「いや、コイツが俺が見てない隙にイカサマを……!!」
勇者「わーったわーった、えーっと……アンクルはスープの量二倍にしてやるから。アクデンにも普通にスープをやるから、これでいいだろ?」
321 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:36:13 ID:EE5PgR7.
アンクル「……うむ、俺はそれでいいぞ」
アクデン「けっ……わかったよ」
炎の戦士「くく……っ」
ブリザードマン「くくく……っ」
勇者「ファイアとブリザーは何笑ってんだよ?」
ファイア「別に~」クスクス
ブリザー「何でもないよ~」クスクス
タバサ「勇者さーん、次はレックスと一緒にシーザーをお風呂に入れるから手伝って下さ~い!!」
グレイトドラゴン「ガウゥ」
レックス「お兄ちゃん早くぅ!!」
勇者「オッケー、今行くー!」タッタッタ
322 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:36:41 ID:EE5PgR7.
アンクル「……アイツ俺達みんな名前を覚えたみたいだな」ガツガツ
アクデン「あぁ」ガツガツ
アンクル「……ま、何にせよ『わざと喧嘩してスープゲット作戦』成功だな」ニヤッ
アクデン「おぅよ」ニヤッ
ファイア・ブリザー「二人ともワルだな~」ケタケタ
アンクル「ほらよ、分け前だ♪」
アクデン「……っとと、すまねぇな♪」
323 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:38:02 ID:EE5PgR7.
――――
勇者「……ったく、シーザーはデケェなぁ、体洗うのも一苦労だ」ゴシゴシ
シーザー「ガウ……♪」
勇者「お?なんだ、ここが気持ち良いのか?」ゴシゴシ
シーザー「ガゥガァ♪」
勇者「そっかそっか」ゴシゴシ
タバサ「すごーい、勇者さんもう魔物とお話しできるようになったんですね♪」ゴシゴシ
勇者「え?そういえば……なんとなく魔物達の言いたいことが分かるようになったな」ゴシゴシ
レックス「それがお話しができるってことだよ♪」ゴシゴシ
勇者「おー、なんだかんだで俺も成長してるんだな!!」ゴシゴシ
324 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:38:36 ID:EE5PgR7.
勇者「そう言えばレックスやタバサって悪い魔物とも話せるのか?」
レックス「う~ん……改心した魔物さんとじゃないとお話しできないかな」
タバサ「でも悪い魔物さんってほとんどいないんですよ?」
勇者「そうなの?」
タバサ「たしかに凶暴な魔物さんもいますけど大抵の魔物さんは動物達と同じで自分の縄張りが荒らされたり命の危険を感じない限り人間を襲うことはないみたいです」
レックス「魔王の悪の波動に影響を受けて沢山の魔物が凶暴化してるんだって」
勇者「そうなんだ~……てっきり魔物はみんな悪い奴なんだと思ってたからなぁ……」
レックス「だからぼくが魔王を倒して人間だけじゃなくて魔物たちも助けてあげるんだ♪」
勇者「そっか……レックスは勇者だもんな」
325 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:39:33 ID:EE5PgR7.
勇者「……なぁレックス、お前自分が勇者であることを重荷に思ったことないか?」
レックス「?」
勇者「まだこんなに小さいのに……世界を救う伝説の勇者だなんて重責を背負って平気なのか?」
タバサ「…………」
レックス「う~ん……正直あんまり実感わかないんだよね」
勇者「そうなの?」
レックス「うん、お前は伝説の勇者だ、って言われてもぼくはぼくだし」
レックス「ぼくとタバサはお父さんやお母さん、おばあちゃんに会いたくて旅をしてきただけだしね」
レックス「……でも」
勇者「でも?」
レックス「おばあちゃんが死んじゃったとき、ミルドラースが世界中の人達をぼくたちみたいに悲しい気持ちにさせるつもりなら、そんなの絶対許せないって思ったんだ」
レックス「だからそのための力をぼくが持っていて良かったって、伝説の勇者で良かったって思った」
勇者「…………」
タバサ「…………」
326 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:40:04 ID:EE5PgR7.
レックス「お父さんとお母さんとタバサと……みんなで力を合わせて世界を平和にするんだ♪」
勇者「なるほどな、こんなに小さくてもしっかりとした勇者なんだな」
タバサ「ふふっ」
レックス「へへっ」
シーザー「ガゥゥ……」
勇者「……っとごめん、すっかり手が止まってたな」ゴシゴシ
レックス「タバサ、そろそろ洗い終わるからお水の用意しようか」ゴシゴシ
タバサ「うん♪」ゴシゴシ
327 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:40:43 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界・六日目・妖精の村
勇者「…………」シーン
ファイブ「…………」
勇者「わかった」パチッ
ファイブ「この地図で言うとどこだい?」パラッ
勇者「えーと……この山のてっぺんにゴレムスとシーザーがいて、この洞窟の中にベホマンとキングス、こっちのすごろく場にレックスとタバサ!!」
ファイブ「正解だ!!」
勇者「よっしゃぁ!!」
ビアンカ「六日で妖精の世界の全域を索敵できるようになんてすごいじゃない♪」
ファイブ「うん、たいしたものだ」
勇者「いやいや、それほどでも~」ニヘラ
ファイブ「じゃあそろそろ次の修行に移ろう」
勇者「ぉお!!」
328 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:41:39 ID:EE5PgR7.
ファイブ「ビアンカ」
ビアンカ「は~い」キュッ
勇者「? 目隠し……?」
ファイブ「初日に言っただろ?目隠ししても魔物と戦えるようになるって」
勇者「え、じゃまさか……」
ファイブ「その通りさ」ニヤッ
アクデン「まいどー」
アンクル「三河屋でーす」
ファイブ「目隠ししたままこの二匹と闘ってもらう」
勇者「マジかよ!?しかもよりにもよってこの二匹!?」
アクデン「手加減しなくていいんだよな?」
ファイブ「あぁ、存分にやってくれ」
329 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:42:07 ID:EE5PgR7.
勇者「え!?だって俺まだ全然動きとか読めないんだぜ!?」
ファイブ「『習うより慣れろ』って奴だね」
アンクル「では行くぞ!!」
勇者「ちょ……!!」
ファイブ「危なくなったら助けに入るから安心してくれ」
ビアンカ(ファイブってSっ気もあったのねぇ……)
アンクル「せいっ!!」ブンッ
ドゴッ!!
勇者「ぐぼはぁ!!」
ドサッ
勇者「」ピクピク
330 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:42:41 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界・九日目・妖精の村付近の森
アンクル「でやっ!!」ブンッ
勇者「……よっ!!」サッ
アクデン「はっ!!」シャッ
勇者「……くっ!!」ガッ
レックス「すごーい、ホントに目隠ししたまま闘ってるよ」
アクデン「ふっ!!」ビュン
勇者「……っとお!」ヒョイ
アンクル(よし、ここで……)
勇者「!!」ピクッ
勇者『マホカンタ』!!
ピキィン!!
アンクル『マヒャド』!!
ビュォォオオオ!!
アンクル「……って、え?マホカンタ!?」
331 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:43:12 ID:EE5PgR7.
カアァァ!!
ビュォォオオオ!!
アンクル「ぎゃーー!!」
アクデン「がががが!!」
カチーーン
アクデン「テメェ何マホカンタかかってんのにマヒャド出してんだよ!?」ガミガミ
アンクル「うるせぇよ!!お前だって今イオナズン唱えようとしてただろうが」ガミガミ
ファイブ「よし、いいぞ」
勇者「……ふぅ」スルッ
レックス「すごいやお兄ちゃん!!」
タバサ「ホントです♪」
332 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:43:47 ID:EE5PgR7.
勇者「最初は魔力が動いてくることしかわかんなかったんだけどだんだん魔力の微細な動きとか流れまで感じとれるようになってな」ニカッ
ファイブ「あぁ、私もまさか十日かからずここまでできるようになるとは思ってなかった。もっとかかるものだと思っていたが……正直驚いているよ」
勇者「えー、自分でこの修行内容にしといて十日で完成させられると思ってなかったのかよ、無責任な奴だな~」ムー
ファイブ「この十日で基礎を教えてあとは他の世界で修行しつつ完成させてもらうつもりだったからね、君の筋の良さは嬉しい誤算だよ」
勇者「へへ♪」
ファイブ「勇者の魔力知覚はまだ私ほどではないが十分なレベルなのは確かだ……勇者は明日この世界を去るんだろ?」
勇者「うん、十日目の日没と同時に……」
レックス「淋しくなるなぁ……」
タバサ「せっかく仲良くなれたのに……」
333 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:44:14 ID:EE5PgR7.
ファイブ「……よし、じゃあ明日は城で勇者の送別会をしようじゃないか」
勇者「え!?」
タバサ「お別れパーティー!!」パァ
レックス「ごちそういっぱいだ♪」パァ
勇者「送別会か……なんか嬉しいな……」
ファイブ「明日の昼過ぎに始めようか、それまでちゃんと修行だからね?」
勇者「あぁ!!楽しみがあると俄然やる気も出るってもんさ!!」
レックス「ぼくも楽しみだよ♪」
タバサ「わたしも♪」
アンクル・アクデン「どうでもいいがとりあえず助けろ」ブルブル
334 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:45:37 ID:EE5PgR7.
――――第五の世界・十日目・妖精の村
勇者「ども」
ルナ「あら?修行はもうよろしいのですか?」
勇者「うん、ファイブ達が送別会を開いてくれるらしくて昼過ぎぐらいにはグランバニアに来てくれってファイブに言われてるからさ、そろそろポワン様に挨拶してこようかと」
ベラ「それにしても十日でよくここまで魔力知覚をモノにしたものね~」
勇者「ファイブに言わせりゃまだまだ荒いみたいだけどな」ナハハ
ベラ「ファイブは特別よ」
ポワン「おや、勇者ではありませんか」
勇者「あ、ポワン様」
勇者「短い間だったけどお世話になりました。ベラもルナも色々とありがとうな」
ルナ「いえ、お役に立てたのならそれで構いませんわ」
335 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:46:09 ID:EE5PgR7.
ベラ「あーぁ、また退屈な日々か~」
ポワン「ベラ」ジッ
ベラ「し、失礼しました」
ポワン「勇者、ここで学んだことが貴方の力になることを祈っています。私達妖精も貴方を応援していますよ」
勇者「ありがとうございます」
ポワン「では名残惜しいですが……」
336 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:46:37 ID:EE5PgR7.
ポワン「!!」
ベラ「!!」
ルナ「!!」
ベラ「何!?これ……!?すごく大きい魔力が……!!」
ルナ「ポワン様!!人間界です!!」
ポワン「分かっています、勇者!!急いで人間界に向かいなさい!!」
勇者「あ、あぁ!!」ダッ
337 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:47:09 ID:EE5PgR7.
――――人間界・グランバニア
ファイブ「これは……!!」
ビアンカ「どうしたのファイブ!?」
レックス「すごく大きな魔力がいきなり現れたんだ!!」
タバサ「お父さん、これって……」
ファイブ「うん、この尋常じゃない大きさの魔力、忘れるものか…………ブオーンだ!!」
ビアンカ「え!?でもブオーンって確かファイブ達が倒してまた封印されたんじゃ……」
ファイブ「そのハズだけど……」
ファイブ(あの壺の封印がこんなにすぐ解けるとは考えにくい……なら誰かが意図的に封印を解いたのか……!?)
ファイブ「考えても仕方ない、このままじゃサラボナが危ない!!」
ビアンカ「大変、フローラさん達が!!」
ファイブ「みんな行くぞ!!」
338 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:47:44 ID:EE5PgR7.
タバサ「待ってお父さん!!」
ファイブ「!?」
タバサ「あっち……ずっと遠くにすごい数の魔力が……」
ファイブ「これは……ラインハットの方か!!」
ビアンカ「どうするの!?ファイブ!!」
ファイブ(くっ……二ヶ所を同時に攻めてくるとは……)
ファイブ「よし、僕とビアンカはサラボナへ向かう、レックスとタバサはラインハットを頼む!!」
ビアンカ「わかったわ!!」
レックス「うん!!」
タバサ「わかりました!!」
ファイブ「行くぞ!!」
ファイブ・タバサ『ルーラ』!!
339 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:48:23 ID:EE5PgR7.
――――サラボナ・見張りの塔
ブオーン「ブオーーーーン!!!!」
ルドマン「ま、まさかまた奴が暴れ出すとは……!!」
デボラ「ふーん、私の街に攻めてこようだなんていい度胸ね……」
フローラ「……私も闘います!!」
ルドマン「ならん!!あの化け物はとんでもなく強いんだ!!2人を危険にさらすワケにはいかん!!」
デボラ「じゃあ尻尾巻いて逃げろって言うの?私はごめんね」
フローラ「私も……私が育ったこのサラボナを魔物の好きなようにはさせたくありません!!」
ルドマン「だが……!!」
ビューーン
スタッ スタッ
ファイブ「ルドマンさん!!」タタッ
ビアンカ「フローラさん!!デボラさん!!」タタタッ
ルドマン「おお!!ファイブにビアンカ!!」
340 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:48:52 ID:EE5PgR7.
フローラ「ファイブさんっ!!」タタタッ
デボラ「私のしもべなんだからもっと早く来なさいよ、ファイブ」
ビアンカ「ファイブは私の夫です」キッパリ
フローラ「助けに来てくれたんですね」ギュッ
ファイブ「フ、フローラ!?えっと……」カァ
ビアンカ「……フローラさん?」ピクピク
フローラ「あ、ご、ごめんなさい!!つい!!」カァ
ファイブ「い、いや、いいんだ」カァ
ビアンカ「あなたも何顔赤くしてるのよ」グイ
ファイブ「いたたたっ!!」
341 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:49:22 ID:EE5PgR7.
ビアンカ「だいたいフローラさんもアンディさんがいるんだから……」
フローラ「……えっとアンディは仲の良い幼馴染みですけど……手のかかる弟みたいなものでファイブさんとは違うというか……その……」モジモジ
デボラ「ファイブ、グランバニアに一夫多妻制を導入する話はどうなったの?」
ファイブ「え?それは君が勝手に……」
ビアンカ「ちょっとファイブ!!そんな話聞いてないわよ!?」
ファイブ「いや、だから僕は……」
ギャーギャー
ルドマン「オホン!!……いいかね?」ジロッ
ファイブ・ビアンカ「す、すみませんでした」
342 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:49:52 ID:EE5PgR7.
ルドマン「見ての通り何故かブオーンが再び封印を破り出てきおった」
ルドマン「ファイブ達はわしが装備を整えて戻ってくるまで持ちこたえてくれ、頼んだぞ!!」ダッ
ファイブ「はい!!」
デボラ「ファイブ」
フローラ「私達も一緒に闘います!!」
ファイブ「しかし……」
ビアンカ「危ないわ!!」
フローラ「大丈夫、足でまといにはなりません……それに仲間は多い方が良いでしょう?」
デボラ「この私が一緒に闘ってあげるって言ってるのよ?拒否する理由なんてあるハズないわ」
ファイブ「…………わかった、ブオーン相手に私とビアンカ二人で闘うのはいくらなんでも分が悪い……頼りにさせてもらうよ」
フローラ「はいっ!!」
デボラ「当然ね、頼りになさい」
343 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:50:28 ID:EE5PgR7.
ドシーン!!
ビアンカ「……来るわよ!!」
ドシーン!!
ビアンカ「……な、なんて大きさなの」ゴクッ
ブオーン「ふわぁ……まさかこんなにすぐに出られるとは思わなかったわい。さて、今度こそルドルフの奴に……」
ファイブ「やぁ」
ブオーン「む……お前はこの前の……!!」
ファイブ「覚えていてくれたとは嬉しいね」
ブオーン「ぬぅ……いいだろう、まずは貴様を血祭りに上げてやる!!」
ファイブ「いくぞ、みんな!!!!」
344 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:51:12 ID:EE5PgR7.
――――ラインハット
タバサ『マヒャド』!!!!
ビュォォオオオ!!!!
ピキピキピキピキ!!!!
魔物の群「ぐわぁーー!!」
レックス「てぃ!!」ビュッ
ズバッ
ネクロマンサー「ぎゃあ!!」
レックス「せや!!」ビュッ
ズバッ
ホークブリザード「クェエ!?」
レックス「はぁっ!!」ビュッ
ザンッ!!
エビルマスター「ぎゃーーー!!」
スタッ
レックス「ふぅ……」
345 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:51:44 ID:EE5PgR7.
コリンズ「よくやったぞレックス!!」
ヘンリー「助けてもらっておいてなんだその態度は」
ゴンッ
コリンズ「いたた……」
マリア「レックス君、タバサちゃん、助けに来てくれてありがとうございます」
タバサ「いえ、間に合って良かったです」
レックス「魔物はそんなに強くはないけどこう数が多くちゃキリがないよ……」チャッ
タバサ「泣き言言わないの、お兄ちゃん」
タバサ『イオナズン』!!
カッ!!
ドッガーーーン!!
レックス「でもさぁ……」ブンッ
ズババッ!!
ガルバ「ぎゃっ!!」
ゴルバ「ぎぇえ!!」
346 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:52:19 ID:EE5PgR7.
タバサ「グランバニアで美味しいごちそうが待って…………」
レックス「どうしたの、タバサ?」
タバサ「あ、あ……」
レックス「?」
タバサ「グランバニアにまた禍々しい魔力が……」
レックス「……!!」
レックス「な、なんだこれ……こんな魔力今まで感じたことがないよ……!!」
タバサ「お兄ちゃんはラインハットのみんなをお願い!!わたしはグランバニアへ戻る!!」
レックス「無茶だタバサ!!あんなの一人じゃ勝てないよ!!」
タバサ「大丈夫、お父さんやお兄ちゃんが戻ってくるまでどうにか持ちこたえてみせる」
レックス「でも……」
タバサ「このままじゃグランバニアが危ないんだよ!?」
レックス「くっ……」
347 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:52:55 ID:EE5PgR7.
タバサ「お兄ちゃんルーラ使えないから天空のベル渡しておくね」スッ
レックス「……わかった、無理はしないで!!」
タバサ「うん、早く来てね……!!」
タバサ『ルーラ』!!!!
ビュンッ!!
ヘンリー「……おい、レックス、一人で大丈夫なのか!?いくら伝説の勇者でも……」
レックス「大丈夫です……だから少し離れていて下さい……」ゴオッ
ヘンリー「!!」ビクッ
ヘンリー「わ、わかった……」
魔物の群「ガアアァァァーーー!!!!!!」
レックス(待ってて、タバサ……すぐに行くから……!!)
レックス「フルパワーだ…………!!」バッ
レックス『ギガァデイィィーーーンッ』!!!!!!!!
ズガガアァァーーーーーーン!!!!!!!!
348 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:53:36 ID:EE5PgR7.
――――グランバニア
黄金の巨人「ハァッ!!」ブンッ
ドガッ!!
サンチョ「痛ぅ……!!」ヨロ
アクデン「大丈夫か、サンチョの旦那!?」
サンチョ「えぇ……なんとか」
スライムナイト『ベホマ』!!
パアァ
サンチョ「ありがとう、ピエール」
ピエール「なんの、お気になさらず」チャキッ
アンクル「しっかしなんなんだコイツは……見たこともない魔物だし恐ろしく強い!!」ジリッ
ゲレゲレ「グルルル……!!」
サンチョ「なんとしても坊っちゃん達が戻ってくるまで持ちこたえてるんです!!」
アンクル「あぁ!!」
アクデン「おうよ!!」
349 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:58:01 ID:EE5PgR7.
黄金の巨人「グランバニアヲ……ホロボス……」ドシンッ!!
グラグラグラ!!
アクデン「おわっ!?」
黄金の巨人「…………」ブンッ
アクデン「しまっ……!!」
ドガッ!!
アンクル「アクデン!!」
黄金の巨人「……」グアッ
ズシーン!!
アンクル「なんのぉ!!」ガッ
アンクル「うぉおおお!!」ビキビキ
350 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:58:40 ID:EE5PgR7.
アンクル「今だ!!」
ロビン「ピピッ……攻撃開始……!!」ビュン
ピエール「はあぁぁ!!」ビュババッ
シーザー「スゥ…………」
シーザー「ガァァァ!!!!」
ゴアァァァ!!!!
黄金の巨人「グ……」グラッ
サンチョ「行きますよゲレゲレ!!」
ゲレゲレ「ガウッ!!!!」ダダッ
サンチョ「はぁぁ!!」
黄金の巨人「…………」
黄金の巨人『バギクロス』!!
351 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:59:22 ID:EE5PgR7.
ビュォォオオオ!!!!
ズバズバズバズババ!!
サンチョ「ぐあっ!!」
ゲレゲレ「ギャウ!!」
ピエール「ぐ……!!」
アンクル「ぬぅ……!!」
シーザー「ガゥ……!!」
ロビン「ピピッ……」プシュー
サンチョ「くっ……」ハァハァ
ビュン
スタッ
タバサ「サンチョ!!みんな!!大丈夫!?」
サンチョ「タバサお嬢ちゃん!!」
タバサ「賢者の石!!」バッ
パアァァァァァ……!!
352 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 10:59:53 ID:EE5PgR7.
アクデン「ふぅ……ありがとうよ、大分楽になったぜ」
タバサ「あの巨人は……?」
サンチョ「わかりません……突然現れたかと思えばグランバニアを襲おうとして……」
ピエール「兵士達はグランバニア住民の避難を、拙者達グランバニアにいた魔物達とサンチョ殿は怪物の迎撃していたのです」
タバサ「……あの巨人すごく強いけど……お父さん達が来るまでなんとか持ちこたえなきゃ」
サンチョ「えぇ、グランバニアは私達が守りましょう!!」
353 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:00:26 ID:EE5PgR7.
――――サラボナ・見晴らしの塔
ビアンカ「ファイブ!!」
フローラ「デボラお姉さん!!」
ビアンカ・フローラ『バイキルト』!!
キュワワン!!
ファイブ「はあぁぁっ!!」ビュッ
バキィッ!!
ブオーン「がっ!?」
デボラ「はぁ!!」シャッシャッ
ズババッ
ブオーン「ぐっ……!!」ヨロッ
354 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:01:07 ID:EE5PgR7.
ファイブ「今だみんな!!」
ビアンカ「えぇ!!」
フローラ「はいっ!!」
デボラ「わかってるわ!!」
ファイブ『バギクロス』!!
ビアンカ『メラゾーマ』!!
フローラ『イオナズン』!!
デボラ『ベギラゴン』!!
カッッッ!!!!
ドッガアアァァーーーーーーーン!!!!!!
ブオーン「ぐああぁぁぁ!!」
355 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:01:36 ID:EE5PgR7.
ブオーン「ぐぅ……!!またも敗れるとは……こんな…………こんな馬鹿なぁ……!!!!」
カァァ!!
シュンッ!!
ファイブ「はぁ……はぁ……なんとか倒せたね」ハァハァ
デボラ「ふん……私が手伝ったんだから勝って当たり前よ……」ゼエゼエ
フローラ「お二人の力になれてなによりです」ハァハァ
ビアンカ「えぇ、ホントに助かったわ、ありがとう二人とも」ハァハァ
ファイブ「ラインハットの方はどうなって…………!?」
ビアンカ「?」
ファイブ「な、なんだこの魔力は……グランバニアが危ない!!」
ビアンカ「なんですって!?」
ファイブ「すぐにグランバニアに戻るよ、ビアンカ!!」
フローラ「待って下さい、それなら私達もお手伝いします」
デボラ「あんたに借りを作っとくのは嫌だからね」フンッ
356 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:02:09 ID:EE5PgR7.
――――グランバニア
タバサ「く……」ヨロッ
サンチョ「…………はぁ……はぁ」
ゲレゲレ「ガウゥ……」フラッ
アクデン「」
アンクル「」
ピエール「」
シーザー「」
ロビン「だめーじ限界を突破……戦闘続行不可……」プシュー
黄金の巨人「…………」
タバサ「ダメージは与えられてるけど……こっちが受けるダメージの方が大きくて戦闘が長引くにつれてどんどん不利に……」ハァハァ
357 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:02:52 ID:EE5PgR7.
サンチョ「坊っちゃん達はまだですか……ぐっ」
黄金の巨人「…………」ブンッ
ドカアッ!!
タバサ「きゃっ!!」ドサッ
サンチョ「タバサ嬢ちゃん!!」
タバサ「ぐぅ……」ググッ
黄金の巨人「…………勇者ノ妹……コロス」グアッ!!
タバサ「ーーー!!」ギュッ
ドガァン!!
サンチョ「タバサ嬢ちゃーん!!」
358 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:03:23 ID:EE5PgR7.
タバサ「…………?」パチッ
勇者「危ないところだったな、タバサ」
タバサ「勇者さん!!」ヒシッ
サンチョ「よ、良かった……」
勇者『ベホマ』!!
パアァァ!!
勇者「あんな化け物相手によく頑張ったな」
勇者「後は俺に任せてくれ」
タバサ「え!?でも……!!」
359 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:04:08 ID:EE5PgR7.
勇者「大丈夫、なんのために修行してきたと思ってるんだ?」ニカッ
黄金の巨人「……謎ノ男……障害トナルナラ排除スルノミ……」
勇者「かかってきな」チャッ
黄金の巨人「…………」ブンッ
勇者(……わかる……コイツがどこにどう打ち込もうとしてるのかが!!)
勇者「…………」スッ
ドガアッ!!
黄金の巨人「…………!?」ブンッブンッ
勇者「止まって見えるな」サッスッ
タバサ「すごい……全部紙一重でかわしてる……」
勇者「でやぁ!!」ヒュバッ
ズバッ
黄金の巨人「…………」ギロッ
勇者「あちゃー、全然効いてないな……」
360 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:04:42 ID:EE5PgR7.
黄金の巨人「…………」グアッ
勇者「……っと」ヒョイ
ズズーン
勇者(となると……一点集中攻撃で体勢を崩す!!)
勇者「せい!!」
ザンッ!!
黄金の巨人「…………」ブンッブンッ
ドガアッ!!ドゴオッ!!
ヒュッ!!シャッ!!
勇者「はぁ!!てやぁ!!」
ザザンッ!!
黄金の巨人「チョコマカト……!!」ゴウッ!!
ドッガァアン!!
シャッ
勇者「くらえっ!!」
361 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:05:18 ID:EE5PgR7.
勇者『メラゾーマッ』!!!!
ゴオオオッッッ!!
黄金の巨人「……!?」グラッ
ドシーーーン!!
勇者「伊達に右足ばっかり狙ってたワケじゃねぇさ」ニッ
勇者「んでもって……」チラッ
勇者「今だ!!ビアンカ!!」バッ
ビアンカ「ナイス、勇者君!!」ドン!!
362 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:05:46 ID:EE5PgR7.
タバサ「お母さん!!」
ビアンカ「フローラさん、デボラさん」
フローラ「えぇ、いつでも構いません」
デボラ「いくわよ……!!」
ビアンカ・フローラ・デボラ『ベギラゴンッッッ』!!!!!!!!
ゴオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!!
黄金の巨人「グ……グアァ…………!!」
バサッ!!
勇者「!?」
バサッ!!バサッ!!
ズズーン……!!
謎のドラゴン「ガアアァァ!!!!」
勇者「!? ド、ドラゴン!?」
363 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:06:17 ID:EE5PgR7.
謎のドラゴン「ガアァ!!」
ガブッ!!
黄金の巨人「グオォ……!!」
勇者「味方……なのか?」
タバサ「あれは……!!」
謎のドラゴン「グルルル……ガァアッ!!」
ブンッ!!
ドガァン!!
黄金の巨人「…………!!」
謎のドラゴン「グルルル……」
キラキラキラ……
シュン
ファイブ「……っと、もう時間切れか」
勇者「え!?ぇえ!?今のドラゴンってファイブだったの!?」
ファイブ「驚いたかい?このドラゴンの杖で少しの間ドラゴンに変身できるんだ」フフッ
364 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:06:55 ID:EE5PgR7.
黄金の巨人「……グゥ……」グググッ
黄金の巨人「…………グランバニア王……死ネェ」グアッ
ファイブ「……君の負けだよ」
キランッ!!
勇者「?」
ビューーー!!!!
レックス「だああぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
黄金の巨人「……!!!!」
レックス「これで終わりだぁぁぁ!!!!」
ズバアァァァンッッ!!!!
黄金の巨人「……ガ……アァ……ガ……」ヨロヨロッ
ドズーーーン!!
スタッ!!
レックス「遅くなってごめん、タバサ」
タバサ「ぅうん、平気だよお兄ちゃん」ニコッ
365 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:07:24 ID:EE5PgR7.
レックス「ありがとう、マスタードラゴン」
マスタードラゴン「なに、皆が無事で何よりだ…さて、私は天空城に帰るとしよう……私の力を借りたい時はまたいつでも天空のベルを鳴らすが良い……」
マスタードラゴン「では去らばだ」
バサッバサッ
勇者「ふぇ~、喋るドラゴンか……」
ビアンカ「あのドラゴンがこの世界の神様なのよ?」
勇者「そうなの!?」
レックス「人間の時はおかしなおじさんだけどね~」
勇者「???」
勇者「ま、何はともあれこの怪物を倒せたワケだな♪」
サンチョ「城の被害も軽微で何よりです」
366 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:07:58 ID:EE5PgR7.
ファイブ「…………」
タバサ「どうしたのお父さん?」
ファイブ「……この怪物は一体なんなのだろうと思って。見たことのない怪物だし……」
黄金の巨人「」
カアァァァ!!
ファイブ「!?」
勇者「!?」
シュウゥゥ……
ゴールデンゴーレム「」
ファイブ「これは……!?」
レックス「怪物がゴールデンゴーレムになっちゃった……!!」
勇者「どういうこった……?」
ファイブ(…………ゴールデンゴーレムがさっきの化け物の正体だったということか……? 一体……)
367 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:08:27 ID:EE5PgR7.
――――魔界・エビルマウンテン最深部
ミルドラース「どうやら失敗に終わったようだな」
???「えぇ……二ヶ所を同時に攻めた上で本命を叩く……上手くいくと思ったのですが難しいものですね」
ミルドラース「なかなかの采配であったが結果が出せないのならば無意味だ」
???「その通り……しかし私としましては十分な成果を得られました」
ミルドラース「?」
???「『進化の秘法』……未完成の代物ですらただのゴールデンゴーレムをあのような怪物に変えるとは……本当に恐ろしいものですね」フフッ
???「ミルドラース様からご教授いただいた進化の秘法の知識を元に、私は更なる進化の追求を致します、ありがとうございました」
ミルドラース「ふっ、この私直々に魔道の深淵に触れられたことを存分に感謝することだな……」
???「では私はこれにて……偉大なる魔界の王ミルドラース様に魔の神のご加護があらんことを……」
フッ……
ミルドラース「………………奴ならば完成させることができるかもしれんな……真の進化の秘宝を……」
368 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:09:01 ID:EE5PgR7.
――――グランバニア・玉座の間
勇者「んまい!!」ガツガツ
レックス「うん!!」ガツガツ
ファイブ「盛大な宴とまではいかなくなってしまったがささやかながらの食事会だ、思いきり飲み食いしてくれ」
勇者「うん!!やっぱり一仕事終えた後の飯は最高だな!!」ガツガツ
宿屋のおばさん「そうかい、たーんと作ったからじゃんじゃん食べておくれよ」
勇者「あ、レックス!!それ俺が狙ってた肉!!」モグモグ
レックス「違うよ!!ぼくが最初に狙ってたんだよ!!」モグモグ
タバサ「この十日で二人とも本当に仲良くなったね」
ビアンカ「そうね、なんだか兄弟みたいね」フフッ
フローラ「本当ですね」フフッ
369 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:09:33 ID:EE5PgR7.
勇者「そういやファイブ、この人達は?」
デボラ「私に向かって『この人』とは……失礼な男ね」ムッ
ファイブ「サラボナの名士、ルドマンさんの娘のデボラとフローラだ」
フローラ「勇者さん……ですね?先ほどファイブさんからお話しは伺いましたわ」ニコッ
勇者「ども……」ドキッ
勇者(ビアンカに負けないぐらい綺麗な人だなぁ……)
レックス「昔お父さんはお母さんかフローラさんかデボラさん、誰と結婚するかで選ぶことになってお母さんを選んだんだって」
勇者「何!?こんな美女3人に言い寄られてたのか!?」
ファイブ「言い寄られていたワケじゃないのだけれど……」
勇者「うるさい!!似たようなもんだ!!」クワッ
370 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:09:57 ID:EE5PgR7.
勇者「くぅ~……いいなぁモテる男はさぁ……俺にもいい人できないかなぁ……」
ビアンカ「勇者君かっこいいしやさしいし彼女なんてすぐできるわよ」
フローラ「そうですね」
デボラ「そうね……しもべにだったらしてあげなくもないけど」
勇者「それは遠慮しておきます」アセ
ファイブ「ハハハ」
タバサ「…………」ジー
勇者「? どうしたタバサ?」
タバサ「な、なんでもないです///」カァ
勇者「?」
371 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:10:22 ID:EE5PgR7.
キラキラキラ……
勇者「ん……」
タバサ「え……?」
レックス「!? お兄ちゃんが光ってる!?」
フローラ「勇者さん、これは……?」
勇者「あー……うん、お別れの時間ってことだ」
ファイブ「そうか……」
レックス「そんな……せっかく仲良くなれたのに……」
タバサ「…………」
ビアンカ「勇者君にはやることがあるの……仕方ないわ」
勇者「みんな今までありがとうな」
キラキラキラ……
372 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:10:55 ID:EE5PgR7.
フローラ「勇者さん、過酷な闘いになると思いますが頑張って下さいね。私も勇者さんの勝利をお祈りしています」
デボラ「ま、せいぜい頑張るのね」
勇者「ありがとう二人とも」
ビアンカ「私はあんまり勇者君の修行の手伝いはできなかったけど……勇者君と一緒に過ごした時間はとても楽しかったわ」
ビアンカ「頑張ってね、勇者君」
勇者「うん、ありがとう……俺も楽しかった」
ファイブ「タバサとグランバニアを助けてくれてありがとう、勇者」
ファイブ「親として王として、礼を言わせてもらうよ」
勇者「礼を言うのは俺の方さ……すっごく役立つこと教えてくれて本当にありがとう。もっと修行してファイブにも負けないくらい魔力知覚を洗練するよ」
ファイブ「うん、君ならできるさ、勇者」
キラキラキラ……
373 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:11:31 ID:EE5PgR7.
レックス「…………」
タバサ「…………」
ビアンカ「ほら、あなた達も勇者にお別れ言わないと……」
レックス「お兄ちゃーん!!」ヒシッ
タバサ「勇者さん!!」ヒシッ
レックス「お兄ちゃん!!また会えるよね!?もう会えないなんていやだよ!?」ウゥ
タバサ「わたしも……」グスッ
キラキラキラ……
勇者「…………それは…………」
ファイブ「きっとまた会えるさ」
374 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:12:02 ID:EE5PgR7.
ファイブ「それに長い間会えなくても私達はいつでも君と心で繋がっているよ」ニコッ
勇者「ファイブ……」
ビアンカ「そうよ……私達もう家族でしょ?」ニコッ
勇者「……そっか……そうだな」
レックス「う~……」ギュッ
タバサ「うぅ……」ギュッ
勇者「俺は一人じゃないんだな……」ナデナデ
レックス「へへ」グスッ
タバサ「……」グスッ
キラキラキラ……
375 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:12:37 ID:EE5PgR7.
レックス「お兄ちゃん!!ぼく立派な勇者になるよ!!そして魔王をやっつけて世界を救ってみせるよ!!」
勇者「あぁ!!楽しみにしてるぞ!!俺もレックスに負けないように頑張るな!!」
タバサ「…………ゆ、勇者さん……」
タバサ「わ、わたしが大きくなったら……その……」
勇者「?」
タバサ「わ、わたしのこと勇者さんのお嫁さんにして下さい!!!!」
勇者「え!?」
ファイブ「な!?」
タバサ「…………////」ギュッ
勇者「……そ、それは……」アセアセ
タバサ「ダメですか……?」
勇者「ダメじゃないけどなんと言うか……その……」
376 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:13:04 ID:EE5PgR7.
ファイブ「……」ポン
勇者「ファイブ……?」
ファイブ「……君が私の息子になるのは許せないがタバサのような良い娘を悲しませることも許さないよ?」
勇者「どうしたらいいんだよ!!」
一同「アハハハハハハ」
キラキラキラ……
ファイブ「……本当のお別れが近いみたいだね」
勇者「うん……」
377 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:13:41 ID:EE5PgR7.
キラキラキラ……
ファイブ「さっきも言ったが私達は家族だ。つらいことや悲しいことがあったとき私達との思い出が君の心の支えになれば、と思うよ」スッ
勇者「……うん、ありがとう」ガシッ
キラキラキラ……
勇者「本当にありがとう……」
キラキラキラ……
勇者「じゃあな……」
キラキラキラ……
フッ……
レックス「……お兄ちゃん行っちゃった……」グスッ
タバサ「勇者さん……」ウゥ
ビアンカ「お父さんが言ってたでしょ?勇者君は離れていても家族よ、私達とずっと繋がっているの」ナデナデ
レックス「うん……」グシッ
タバサ「はい……」ゴシゴシ
378 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:14:10 ID:EE5PgR7.
レックス「……でもタバサがお兄ちゃんと結婚したらお兄ちゃんがぼくの弟になるのか~……なんだか変な感じ」
ビアンカ「それを言うならファイブはたいして勇者君と歳も変わらないのに勇者君のお父さんね」クス
ファイブ「いや、そんなことは絶対認めない!!」グッ
フローラ「どうするタバサちゃん、お父さんは勇者さんとの結婚を認めてくれないみたいよ?」フフッ
タバサ「じゃあおじいちゃんとおばあちゃんみたいにカケオチします」
ファイブ「えぇ!?」
デボラ「あんたの負けね」フフッ
一同「アハハハハハハ」
379 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:14:47 ID:EE5PgR7.
――――星の海
勇者「ただいまーっと」
ルビス『お帰りなさい、勇者』
勇者「今回はすげー力を手に入れてきたからな、また一段と強くなってきたぜ」
ルビス『そうですか……早いものでこの修行の日々も折り返し地点ですものね』
勇者「え!?……あ、そっか、もう修行を始めてから五十日も経ったのか!!」
勇者「あっという間だなぁ……」
勇者「……そういえばあれ以来魔族の動きは?」
ルビス『……つい先日魔族は魔王軍なる軍隊を創り、遂に本格的に地上の侵攻を開始しました……』
勇者「……!!」
380 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:15:20 ID:EE5PgR7.
ルビス『各国が軍事同盟を結んで魔王軍に対抗していますが……平和に慣れすぎた人間達の軍隊では魔族や魔物達に勝てる筈もなく魔王軍の侵攻を遅らせるだけで精一杯といったところです……』
勇者「……くそ!!」
勇者「ルビス!!今から俺を元の世界に……!!」
ルビス『それはできません。貴方はたしかに強くなりましたがそれでもまだ魔王には勝てないでしょう』
ルビス『今は力をつけることだけを考えるのです』
勇者「……くっ!!」ギュッ
381 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:49:36 ID:EE5PgR7.
――――第六の世界
パッ
勇者「んっ」
スタッ
勇者「ふむ、ルビスも転送に慣れてきたのかな~……」
勇者(っつっても転送されるのもあと三回か……残り四十日でできるだけ強くならないと……)
バトルレックス「…………」ジー
勇者「ん?」
バトルレックス「…………」ジー
勇者「…………」
勇者「ぅわぁっ!!」バッ
382 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:50:09 ID:EE5PgR7.
勇者「ったく、誉めたとたんこれだ!!いきなり戦闘かよ……ってあれ?」
バトルレックス「…………」
勇者「なんだ、お前全然悪い魔物じゃないじゃん」
勇者「……俺は勇者、お前は?」
バトルレックス「……私……ドランゴ」
勇者「おー!!なんだ喋れるじゃないか♪」ナデナデ
ドランゴ「…………」
勇者(でもなんで悪意のないバトルレックスがこんなところに……?)フーム
???「……おい、アンタ。こんなところで何してるんだ?」
勇者「おわっ!!びっくりしたな~……」ドキッ
???「それは俺の台詞だ」
ドランゴ「ギルルン……旦那さん……」
勇者「あ、もしかしてこのバトルレックスの飼い主?」
???「まぁそんなようなもんだが……」
383 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:50:37 ID:EE5PgR7.
???「……ふ~ん」
勇者「?」
???「アンタ結構デキるみたいだな」ニヤッ
???「おーい、テリー!!ドランゴいたー?」ヒョコッ
テリー「あぁ、見つけたぜ」
???「いきなり走り出したからどうしたのかと思ったけど……ん?君は?」
勇者「!! その青髪!!六番目の勇者か!?」
???「……?」
384 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:51:04 ID:EE5PgR7.
――――ロンガデセオ郊外
ハッサン「へぇ~、色んな世界を旅して勇者に修行つけてもらってんのか」
バーバラ「おもしろそーう♪」
勇者「よく簡単に信じてくれたな」
???「俺達も現実の世界と夢の世界と狭間の世界……三つの世界を行き来して旅してるからね、たいして驚きはしないよ」
ハッサン「うんうん」
???「さて、勇者の紹介も終わったし俺達の紹介もしないとな」
???「俺はシックス。レイドックの王子だ。大魔王デスタムーアを倒すためにみんなと世界を旅している」
シックス「よろしくな」スッ
勇者「よろしく」ガシッ
385 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:51:30 ID:EE5PgR7.
ハッサン「俺はサンマリーノの大工の息子、ハッサンだ。旅の武闘家でもあるから体は鍛えてあるぜ!!」ムキッ
勇者「おぉー、俺が今まであった勇者とその仲間達の中でハッサンが一番マッチョだな」ペチペチ
ハッサン「何ぃ!?それはホントか!?」
勇者「え、う、うん」
ハッサン「そうかそうか~、まぁ俺の鍛え抜かれた筋肉の鎧はもはや芸術の域だからなぁ」ハッハッハ!!
勇者「……」
ミレーユ「私は夢占い師見習いのミレーユよ、よろしくね、勇者」ニコッ
勇者「よ、よろしくお願いいたします」ドキッ
勇者(うっわ、めっちゃくっちゃ美人じゃん!!)ドキドキ
バーバラ「なーに鼻の下伸ばしてんの」ジトー
勇者「の、伸ばしてねぇよ!!」
バーバラ「ふーん、まぁいいけど」クスッ
バーバラ「あたしは大魔法使いバーバレラの血を引く大魔法少女、バーバラよ。よろしくね」
386 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:51:56 ID:EE5PgR7.
勇者「……大魔法少女……」プッ
バーバラ「あー!!笑ったわね!!」
勇者「悪い悪い」ハハッ
シックス「バーバラの実力は本物だよ、その気になればここら一帯を消し飛ばせる」
勇者「……はぁ!?」
バーバラ「本当よ、でもその巨大な魔力を自分でもうまく制御できないからこうして修行してるの」
勇者「へぇ~……」
チャモロ「私はチャモロ。ゲントの神に使える者です、よろしくお願いします」
勇者「よろしく」
勇者(いかにも真面目そうな人だな……)
387 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:52:28 ID:EE5PgR7.
テリー「俺はテリー、最強の剣士を目指している。よろしく」
勇者「最強の剣士かー、すげーな」キラキラ
シックス「テリーは『青い稲妻』って異名を持つ凄腕の剣士でミレーユの弟なんだ」
勇者「そうなんだ……たしかにどことなく似てるような……」
シックス「それとコイツがスライムのルーキー、コイツがバトルレックスのドランゴだ」
ルーキー「ピキー!!」
ドランゴ「……ギルルン、勇者、よろしく」
勇者「うん、よろしくな♪」
ルーキー「ピキー!ピキキー!ピキ~~」
勇者「へぇ~……そっか、前はすごい爺さんのとこで世話になってたのか」
ハッサン「!?」
バーバラ「勇者ルーキーの言ってることわかるの!?」
勇者「うん、なんとなくだけどね。前の世界でそういう修行したから」
388 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:52:54 ID:EE5PgR7.
シックス「……と言うと君の職業は魔物マスターなのか?」
勇者「? 職業?」
チャモロ「シックスさん、勇者さんは今までダーマ神殿で転職をなさったことがないのでは?」
シックス「そうか……たしかにどの世界にも同じようにダーマ神殿があるワケじゃないだろうしな」
勇者「ダーマ神殿か……たしか第三の世界で近くに行ったことはあるけど職業がどうこうってのはわかんないなぁ」
勇者「職業ってどんなもんなの?農夫とか宿屋とか?」
ハッサン「馬鹿野郎んなワケねぇだろ、戦士とか武闘家とかそういう魔物と闘う職業だよ」エッヘン
シックス「何を偉そうに言ってるんだよ、ハッサンだって初めてダーマ神殿に行った時に似たようなこと言ってたじゃないか」
ハッサン「おっと、そうだったか?」ポリポリ
389 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:53:18 ID:EE5PgR7.
勇者「じゃあ俺って『勇者』なんじゃないの?」
ミレーユ「それはあなたの存在、使命が勇者なのであって職業が勇者というワケではないわ。職業を名乗るにはダーマの神の加護が必要なのよ」
バーバラ「ダーマの神様の加護を受けて職業に就いて修行を積めばその職業をどんどん極めていくことになるわ」
バーバラ「その過程で新しい呪文や特技を覚えていって最終的にはその職業を完全に極める。そうやって色んな職業を極めていけば新しい職業の道が開いてゆくのよ」
勇者「……??」
シックス「うーん……まぁこういうのは口で説明するより実際にダーマの加護を受けてみた方が早いだろう」
テリー「そうだな」
シックス「……と、その前に勇者」
勇者「?」
シックス「九人の勇者の伝承ってやつを詳しく聞かせて貰えないか?」
390 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:53:49 ID:EE5PgR7.
――――ダーマ神殿
勇者「おー!!ここがダーマ神殿か!!なんつーか神々しいな!!」
ミレーユ「あんまり大きな声出すと怒られるわよ?」フフッ
テリー「ここは神聖な場所だからな」
勇者「あ、ごめん」アハハ
シックス「勇者、こっちだ」
神官「ここはダーマの神殿。おのれ自身を見つめなおしこれからの行き方を考える神聖な場所じゃ」
神官「行き方を変えたいとお望みか?」
シックス「はい、この勇者が」
神官「どの職業になりたいのだ?」
勇者「…………」
神官「…………?」
391 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:54:15 ID:EE5PgR7.
勇者「…………シックス。俺って何になったらいいの?」
シックス「そっか!!じゃあ……まずは基礎の基礎として戦士にしよう」
勇者「戦士か~」
神官「それでは勇者よ、戦士の気持ちになって祈りなさい」
勇者「…………」
勇者(戦士……戦士か……スリーの仲間の戦士とかライアンのことだよな……あんな風になりたいって思えばいいのかな……)グッ
神官「おお、この世の全ての命を司る神よ!!勇者に新たな人生を歩ませたまえ!!」
パアァァ
勇者「……!!」
神官「これで勇者は戦士として生きてゆくことになった。生まれ変わったつもりで修行を積むが良い」
シックス「どう?」
勇者「……なんか不思議な感じだな!!こう……力がみなぎってくるって言うかさ!!」
シックス「だろ?」ニッ
392 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:54:41 ID:EE5PgR7.
勇者「……でもなんか呪文が上手く使えそうになさそうだな……あれ?」
シックス「それはそうだ、戦士は自分の肉体を武器にして闘う職業だからね」
シックス「戦士となった君自身もそういう闘い方に特化するようになる……習得する特技も近接攻撃中心になるよ」
勇者「ふーーん」ギュッ
ハッサン「シックスー!!勇者ぁー!!下の宿屋で飯食おうぜー!!」
ミレーユ「ハ、ハッサン、声が大きいわっ」
チャモロ「そうですよ、お静かに!!」シー
シックス「うん、今行くー」
勇者「んで修行って何すんの?」テクテク
シックス「魔物と闘うのが一番効率が良いね、魔物と闘う中でその職業での闘い方に磨きをかけていくんだ」テクテク
393 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:55:09 ID:EE5PgR7.
勇者「じゃあその職業を極めたら?」
シックス「そしたら次の職業に転職だ」
シックス「勇者が戦士を極めたとして次に武闘家になったら戦士としての闘い方を身につけた上で、今度は一から武闘家の闘い方を極める修行に入るワケだ」
勇者「なるほど、全部の職業を極めるとなると先は長そうだなぁ……」ウーン
シックス「はは、それは仕方ないよ」
ハッサン「遅ぇぞ二人とも、ほらさっさと飯にしようぜ!!」
バーバラ「まったく、ハッサンの頭の中って食べることと鍛えることと闘うことしかないんじゃないの?」
ハッサン「あと寝ることだな」
テリー「威張れたことかよ」
勇者「…………」ピクッ
テリー「どうした、勇者?」
394 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:55:39 ID:EE5PgR7.
勇者「な……なんだよこれ……」ガクガク
ミレーユ「……勇者?」
勇者「……ッ!!」ダダッ
シックス「おい、急にどうしたんだよ!?」
バァン!!
勇者「…………」
シックス「ここは……ダーマ神殿の謎の広間……」
ハッサン「ここって一体なんのためにあるのかよくわかんらないんだよな」
勇者「……この地下……」
ミレーユ「……?」
勇者「この地下深くにとんでもない化け物がいる……!!」
テリー「なんだと?」
勇者「巨悪とかそういうんじゃなくて……なんていうか……純粋な力の塊、破壊の化身って感じだ……」
シックス「破壊の化身……?」
ミレーユ「もしそんな存在がいるなら野放しにはできないわね……」
395 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:57:35 ID:EE5PgR7.
ハッサン「しかしよぅ、下に降りる階段どころか扉だってないぜ?」
バーバラ「何か仕掛けがあるとか?こう……壁が動いたり床が割れたり」
テリー「その仕掛けをどうやって起動させるんだ?」
バーバラ「それは…………わからないけど」
勇者「……シックス、さっきから気になってるんだけどこの台座の炎は一体?」
シックス「それが……さっぱりわからないんだ」
シックス「初めてこの広間に来た時にこの部屋のことを調べてはみたんだけど何もわからずじまいでさ、この炎がどうして灯っているのか分からなくて……それっきりだ」
ミレーユ「……前に来たときより炎の数が増えてるわね」
勇者「そうなの?」
テリー「俺はここに来るの初めてだぞ?俺が知るかよ……ハッサンどうなんだ?」
ハッサン「さぁ?さっぱり覚えてねぇや」
勇者・テリー「おい」ビシッ
シックス「たしかに言われてみれば……」
396 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:58:04 ID:EE5PgR7.
チャモロ「初めてここに来た時はたしか小さな炎が4、5個灯っていただけですが今はほぼ全ての炎が大きく燃え上がっていますね」
テリー「火が灯ってない台座はどうやらこの一つだけのようだな」コンコン
シックス「……どういう理屈かはわからないけどいつの間にか俺達……或いは他の誰かが火を灯す条件を満たしていた、って考えるのが妥当か」
ハッサン「う~ん……俺頭使うのは苦手だからなぁ……」ムムゥ
バーバラ「……16……17……全部で18か……」
バーバラ「……ねぇ、シックス?ダーマ神殿で転職できる職業って何があったかな?」
シックス「え?ん~……下級職が戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、踊り子、盗賊魔物マスター、商人、遊び人……上級職がバトルマスター、魔法戦士、パラディン、賢者、スーパースター、勇者、ドラゴン……じゃないか?」
テリー「……レンジャー忘れてるぞ」
バーバラ「17!!ねぇねぇ!!もしかしてこの台座の炎って今までに私たちが極めた職業に関係あるんじゃないかな!?」
397 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:58:29 ID:EE5PgR7.
ハッサン「どういうことだよ?」
バーバラ「だってさ、私達が極めた職業って人それぞれ違うけど合わせたら17種類でしょ?」
バーバラ「火が点いてる台座の数もピッタリ17種類じゃない!!」
バーバラ「ここは職業を司るダーマ神殿なんだし職業に関係することで火が灯るって考えたら納得いくと思わない?」
チャモロ「……たしかにそれなら初めてこの広間を訪れた時にはあまり灯っていなかった炎が今ではほとんど灯っているというのも頷けますが……」
シックス「でも台座は18個だよ?職業は全部で17個……数が合わないじゃないか」
バーバラ「ん~……それもそうね……」
ミレーユ「私達の知らない職業があるとしたら……?」
ミレーユ「あくまで私達が知っている職業が17個なだけで18番目の職業がある……だからこの台座も18個。そう考えると辻褄が会うんじゃないかしら?」
バーバラ「それだ!!」
398 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:59:12 ID:EE5PgR7.
シックス「なるほど……『職業は全部で17個』って誰かに言われたワケじゃないもんな、俺達が勝手にそう思い込んでただけか……」
チャモロ「では18番目の職業とは一体……?」
バーバラ「多分……悟りの書じゃない?『ドラゴンの悟り』があるみたいに『○○の悟り』があってさ、それが必要なんだよ!!どう!?」
チャモロ「うーん……証拠はないけど否定はできない、といったところですね」
シックス「でも他にアテがないのもたしかだ」
チャモロ「はい」
シックス「…………よし、これから冒険は二手に分かれよう」
シックス「一つは勇者の修行に付き合う班。もう一つは謎の悟りの書を探す班だ」
シックス「勇者と修行をする班は勇者と一緒に魔物と闘う」
シックス「悟りの書を探す班は世界各地をまわって悟り書、もしくはその情報を探す」
399 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 11:59:38 ID:EE5PgR7.
シックス「これでいこうと思うけど……いいか?」
勇者「俺は勿論賛成だけど……」
バーバラ「私も賛成ーっ」
ハッサン「このパーティのリーダーはお前だ、俺も文句ないぜ」
ミレーユ「えぇ、シックスが決めたことなら従うまでよ」
チャモロ「私もです」
テリー「俺も異論はないな、宝探しなんて懐かしいしな」
400 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:00:01 ID:EE5PgR7.
――――第六の世界・二日目・グランマーズの館
グランマーズ「…………」
ギィ……
ミレーユ「ただいま、おばあちゃん」
グランマーズ「ほっほっほ、来る頃だと思っていたよ。お前達のことはなんでもお見通しだよ」ホッホッホ
テリー「相変わらず薄気味悪い婆さんだな」
グランマーズ「口には気をつけんかい」ブンッ
テリー「いてっ」ゴンッ
グランマーズ「……さて、探し物だね?」
チャモロ「えぇ、私達は今未知の悟りの書を探しています」
ミレーユ「おばあちゃんの力でそのありかをなんとか占えないかしら?」
グランマーズ「未知の悟りの書ねぇ……本当にそんなものがあるのならいいけど…………ちょっとお待ち」フッ
ボワ~…………
グランマーズ「…………」
ミレーユ「どう?」
401 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:00:31 ID:EE5PgR7.
グランマーズ「……これは……どこかの洞窟の中かね……?」
グランマーズ「…………」
フッ
グランマーズ「ダメだね、私でもそこまでしかわからないよ」
ミレーユ「でも占えたってことは存在するってことね!!」
チャモロ「洞窟の中というのが分かっただけでも捜索範囲はかなり絞り込めましたしね!!」
テリー「……ほら、分かったらさっさと行こうぜ。しらみ潰しに洞窟を探して回るぞ」カツカツ
ミレーユ「あ、待ちなさいテリー!!おばあちゃんありがとうね!!」タッタッタッ
チャモロ「お力添えありがとうございました」タッタッタッ
グランマーズ「ほっほっ、また困ったことがあったらいつでもおいで」
402 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:00:58 ID:EE5PgR7.
バタン……
猫「にゃあん……?」
グランマーズ「なぁに、淋しくなんてないよ、世界に平和を取り戻したらあの子達も帰ってくる」
グランマーズ「それにお前もいるしね」ナデナデ
猫「にゃあ♪」ゴロゴロ
403 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:01:26 ID:EE5PgR7.
――――天馬の塔
キラーマシン2「…………」ビュッ
ハッサン「ほっ」サッ
ハッサン『飛び膝蹴り!!』バッ
ドゲシッ!!
キラーマシン2「ガガ……ギ……」プシュー
デスジャッカルA「ガアァ!!」
デスジャッカルB「ガゥ!!」
バーバラ『ザラキッ』!!
デスジャッカルA「ガ……!?」
シュンッ
デスジャッカルB「ガ……!?」
シュンッ
404 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:01:59 ID:EE5PgR7.
レジェンドホーン「ヒヒーン!!」パカラッパカラッ
勇者「でや!!」
勇者『隼切り』!!
ヒュババッ!!
レジェンドホーン「!?」ヨロ
勇者「シックス!!」
シックス『岩石落とし』!!!!
ブンッ!!
ガンッ!!
レジェンドホーン「」ドサッ
勇者「いっちょ上がりぃ♪」
405 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:02:24 ID:EE5PgR7.
ハッサン「勇者、お前強いな!!」ガハハ
バーバラ「ホントね、それだけ強かったら私達の仲間も十分務まるよ♪」
勇者「ありがとう、でも魔王を倒すにはもっと強くならないと……」グッ
シックス「戦士としての闘いには慣れたか?」
勇者「あぁ!!もう大分な!!魔人斬りだってできるようになったぜ」
シックス「魔人斬りが出来るとなると戦士はもう極めたも同然だな」
シックス「一旦ダーマ神殿に戻って次の職業に転職するとしよう」
勇者「忙しいな」
シックス「当たり前だろ?時間は限られてるんだ、できるだけ沢山の職業を極めないとな」
勇者「おう!!」
406 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:02:52 ID:EE5PgR7.
――――第六の世界・四日目・天馬の塔付近の山地
キングイーター「ガオゥ……」
ドサッ
勇者「ふぅ……僧侶にも随分慣れてきたな……でも極めるにはもうちょっとかかるかな~」
シックス「戦士、武闘家、魔法使いときて今は僧侶を極めつつある……順調だね」
ハッサン「でもよ勇者、お前魔法使いや僧侶になる前からその職業で覚える呪文はほとんど使えてただろ?それなのに魔法使いや僧侶に転職する意味なんてあったのかよ?」
勇者「ん~、新しく使えるようになった呪文はさしてないけどなんて言うか呪文が洗練されたかな」
勇者「今まで使えてたメラミでも魔法使いを経験してからの方が威力も精度もずっと高くなったしさ」
勇者「一つの職業を極めるっていうのはすごく意味のあることなんだな、って思ったよ」
ハッサン「へぇ~……」
バーバラ「おーい!!ご飯の準備出来たよー!!」
勇者「お、待ってました♪」
ハッサン「俺も腹ペコだぜ~」
シックス「じゃあ今日の修行はここまでにしておこうか」
シックス「明日は朝イチで僧侶を極めてまた転職だからな」
勇者「オーキードーキー♪」
407 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:03:30 ID:EE5PgR7.
――――夜・シックス一行のキャンプ
勇者「すぴー……すぷー……」
シックス「すー……すー……」
ハッサン「ぐがぁ……!!ぐがぁ……!!」ゴロン
ドフッ!!
勇者「がっ!?」フゴッ
ハッサン「ぐー……ぐー……」
勇者「う~ん……なんだハッサンよ……ったくホント寝相悪ぃな……」ムゥ…
勇者「…………あれ?バーバラがいないや」??
408 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:03:56 ID:EE5PgR7.
――――天馬の塔付近の山地・月のよく見える丘
バーバラ「…………」
勇者「あ、いたいた」テクテク
バーバラ「勇者!?どうかしたの?」
勇者「俺の台詞だよ、いきなりキャンプからいなくなったりして」
バーバラ「あ、そっか……はは、ごめんね」
勇者「隣……良い?」
バーバラ「うん」
勇者「よいしょ……」
バーバラ「座る時『よいしょ』だなんてオヤジくさいよ~」フフッ
勇者「う、うるさいな~」
勇者「で、どうしたのさ、一人でこんなとこで」
バーバラ「うん……ちょっとね」
409 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:04:23 ID:EE5PgR7.
勇者「…………」
バーバラ「…………」
勇者「…………なんかいつもと逆だなぁ」
バーバラ「……?」
勇者「俺が落ち込んだりしてた時は他の世界の勇者達が俺のこと励ましたりしてくれてたんだ」
勇者「俺はいつも話を聞いてもらう側だったからさ、いつもと逆だなぁ、って」
バーバラ「……そっか」
バーバラ「ねぇ、勇者」
勇者「なに?」
バーバラ「勇者はその……他の世界の勇者とその仲間達と仲良くなったんでしょ?」
バーバラ「お別れしなくちゃならない、ってわかってるのに仲良くなるのつらくなかった?」
勇者「え?う~ん…………」
410 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:04:58 ID:EE5PgR7.
勇者「考えたこともなかったなぁ~」ポリポリ
バーバラ「へ?」
勇者「たしかにせっかく仲良くなっても別れてもう会えないとなるとそれは悲しいけど……」
勇者「アイツらと過ごした思い出はずっと俺の胸の中にあるからね」
バーバラ「…………」
勇者「俺のこと『仲間』って言ってくれた奴もいた、俺のこと『家族』って言ってくれた奴もいた」
勇者「一人ぼっちの俺にとってその言葉がどんなに嬉しかったか……」
勇者「別れてしまう悲しさよりも出会えた喜びの方がずっと大きいんだ」
勇者「だからそんなに悲しくはないかなぁ……」
勇者「……う~ん、なんか上手く言えないなぁ……他の勇者達ならもっとビシッとかっこいいこと言えるんだろうけどな」ナハハ
バーバラ「……ううん、そんなことないよ」ニコッ
勇者「そうか?……でもなんでそんな話を?」
411 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:05:23 ID:EE5PgR7.
バーバラ「……うん……勇者になら言ってもいいかな……他のみんなには内緒だよ?」
勇者「? あぁ」
バーバラ「あのね……私……」
バーバラ「大魔王を倒したら多分シックス達とお別れしないとならないの」
勇者「え!?」
バーバラ「夢の世界のことは知ってるよね?」
バーバラ「人々の夢が造り出した想いの世界……」
バーバラ「大魔王デスタムーアがその世界も手に入れようとして世界に歪みを作ってるから夢の世界が具現化されて、本来なら交わることのない現実の世界と夢の世界が行き来できるようになってるの」
バーバラ「シックス達は現実の世界の住人……だけど私は夢の世界の住人なの」
バーバラ「……デスタムーアを倒して世界が元通りになったら……私は元の世界に、夢の世界に帰らなくちゃならない」
バーバラ「夢の世界と現実の世界が交わることがなくなればもう二度とシックス達に会うこともできなくなっちゃう……だからデスタムーアを倒したらみんなとお別れ……」
勇者「そんな……」
412 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:05:53 ID:EE5PgR7.
勇者「どうにかできないのか?何か方法は……」
バーバラ「こればっかりは……多分無理ね……」
勇者「……あんまりだろそんなの……バーバラはずっと……長い間シックス達と旅してきたんだろ?それなのに……」
バーバラ「いいの、仕方ないよ……デスタムーアを倒して世界が平和になるならそれが一番だし……」
勇者「だけど……」
バーバラ「それに勇者の話聞いたら元気出たしね」フフッ
勇者「え?」
バーバラ「別れの悲しさより出会えた嬉しさの方がずっとずーっと大きいな、って。私も勇者と同じだな、って思って」
勇者「バーバラ……」
バーバラ「だからもう大丈夫だよ、話聞いてくれてありがとうね」
413 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:06:20 ID:EE5PgR7.
バーバラ「あ、それとこの話は誰にも言わないって約束破らないこと」
勇者「……」
バーバラ「返事は?」
勇者「あ、あぁ、わかった」
バーバラ「よろしい」ニコッ
バーバラ「さ、もうキャンプに戻って寝ましょ……よいしょっ」
勇者「……ん?なんだよ、立ち上がる時に『よいしょ』なんて言ってるようじゃバーバラもおばさんくさいじゃないか」ハハッ
バーバラ「あ!!……アハハ~、失敗失敗♪」ナハハ
414 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:06:57 ID:EE5PgR7.
――――第六の世界・五日目・夢の世界・アモール北の洞窟
テリー「ったく、ここまで散々洞窟を探したのに見つからないとなるとあの婆さんの占いが間違ってるんじゃないのか?」
ミレーユ「そんなことないわ、おばあちゃんに限って占いが外れるなんて……」
チャモロ「まだ全ての洞窟を探し終えたワケじゃありませんよ、それに洞窟のようなところ……例えばどこかの地下通路や井戸の中ということも考えられますし」
ドランゴ「私も一生懸命……探す」
テリー「悟りの書を見つける前にデスタムーアに世界が滅ぼされなきゃいいけどな……っと」
テリー『盗賊の鼻』
テリー「……」クンクン
ミレーユ「……どう?」
テリー「……!!」ピクッ
テリー「どうやらこの階にはまだ一個お宝があるらしいな」
415 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:07:36 ID:EE5PgR7.
チャモロ「今度こそ当たりだといいですね」
ミレーユ「まったくね、取り忘れた桧の棒とかは勘弁して欲しいわね」
テリー「アイテムならまだ辛うじて許せるが昨日宝箱がミミックだった時は本気でキレそうになったな」
ドランゴ「…………?」ドシンドシン
ドランゴ「…………」ジー
ドランゴ「ギルルルルルルーーン!!」
テリー「どうした!?ドランゴ!?」
ドランゴ「旦那さん……これ……」
テリー「これは……!?」
ミレーユ「……巻物……まさか!?」
テリー「『はぐれの悟り』…………ビンゴだな」ニッ
416 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:08:09 ID:EE5PgR7.
――――ダーマ神殿
バーバラ「……あれ?ミレーユ達じゃない?」
ハッサン「ホントだ」
テリー「ったく、やっと来たか」
ミレーユ「ここで待っていればそのうち転職に来るだろうと思って」
チャモロ「勇者さんの修行はどうですか?」
勇者「今踊り子を極めて転職に来たとこ。まったく闘ってばっかりで嫌になっちゃうよ」ハァ
シックス「泣き言言わない……そっちは?」
テリー「フッ……見ろ」サッ
シックス「!?」
ハッサン「ぉお!?まさか!?」
バーバラ「これが!?」
テリー「そうだ、『はぐれの悟り』だ!!」
417 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:08:34 ID:EE5PgR7.
シックス「すげー!!ホントにあったんだな!!」
バーバラ「ね!?ね!?あたしの言った通りだったしょ!?」
シックス「みんなお疲れ様」
ミレーユ「ふふっ、いいのよ」
ハッサン「う~ん……でも『はぐれ』ってなんだ?」
チャモロ「さっきそこの職業に詳しいシスターさんに聞いたら『はぐれメタル』の『はぐれ』じゃないかって」
シックス「はぐれメタルか……」
バーバラ「どんな特技が覚えられるんだろうね?」ワクワク
勇者「で、誰がこれ使うんだ?たしか一回しか使えないんだよな?」
シックス「そうだな……じゃ例のアレ、やるか……」ゴゴゴ…
バーバラ「……仕方ないね」ゴゴゴ…
テリー「……あぁ」ゴゴゴ…
勇者「……アレ?」
418 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:09:11 ID:EE5PgR7.
シックス「……そう、じゃんけん大会!!!!!!」ドーン
ミレーユ「ウチでは新しく手に入った装備とか貴重なアイテムなんかを使う人を公平にじゃんけんで決めるようにしてるのよ」
シックス「……さて、参加者は!?」
バーバラ「はーい」
ハッサン「俺もだ!!」
テリー「俺も!!」
ミレーユ「私は今回は遠慮しておくわ」
チャモロ「私も皆さんに譲ります」
シックス「勇者は!?」
勇者「俺は……いいや、他の職業極めなきゃなんないし元々この世界の人間じゃないしさ」
シックス「よし……じゃあ参加者は俺を含めて四人か」
419 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:09:40 ID:EE5PgR7.
バーバラ「最初はグーで初めて相手の手が開きかけてたらチョキを出せば負けない……」ブツブツ
テリー「ふん、バトルマスターを極めた俺の動体視力に勝てるとでも?」ニヤッ
ハッサン「あの技は二刀流じゃんけんに敗北しただろうが、もう時代遅れなんだよ」
シックス「やっぱり漢ならこれしかないだろ……」ガッグリッ
シックス「…………見えた!!!!」カッ
シックス・ハッサン・バーバラ・テリー「最初はグー!!じゃんけんぽん!!!!あいこでしょ!!!!しょっ!!!!しょっ!!!!」
ざわざわ……
ひそひそ……
ミレーユ・チャモロ(た、他人のフリ他人のフリ……)カァ
420 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:10:06 ID:EE5PgR7.
――――第六の世界・七日目・狭間の世界・嘆きの牢獄付近の平原
バーバラ「もー、いつまでたっても慣れないよー!!」ムー
テリー「フン、はぐれメタルになれたんだから文句言うなよ」
バーバラ「そんなこと言ったってさー、素早さと身の守りがすごく上がったのはいいけど体力はガタ落ちするし非力になるし強力な特技覚えられるワケじゃないしで全然いいことないよ!!」ムスッ
勇者「非力で脆弱で硬くて俊敏……はぐれメタルそのまんまだな」ククッ
ハッサン「まさか隠れ職業が外れ職業だったとはなぁ」ゲラゲラ
シックス「まだ強力な特技を習得できてないだけで極めていけばすごい特技を覚えられるかもしれないよ?」
バーバラ「実際今はそれに期待するしかないわね……」ハァ
チャモロ「勇者さんはどうですか?」
勇者「俺は順調だな、下級職は今やってる遊び人で最後だ♪」
シックス「そしたら次はいよいよ上級職だな」
勇者「おおー!!楽しみだなぁ♪」
421 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:10:39 ID:EE5PgR7.
ミレーユ(……どうしてシックスは下級職を全て極めさせてから上級職に就かせようとしているのかしら……?)
シックス「ん?どうしたかした?ミレーユ」
ミレーユ「えぇ……前から気になっていたのだけれど勇者ほどの素質があるのならバトルマスターや賢者を極めればすぐに『勇者』への転職の道が開けるんじゃないかしら?それをわざわざ下級職を全部極めさせるなんて……」
シックス「あぁ、そのことならちゃんと考えがあってのことだ、大丈夫だよ」
ミレーユ「あなたがそう言うのなら大丈夫なのでしょうけど……」
ハッサン「おいシックス、そういやお前最近ターニアちゃんとこ行ってねぇんじゃないか?」
シックス「そういやそうだな……」
勇者「ターニア?」
バーバラ「シックスの妹さんよ」
チャモロ「今日はライフコッドで休んではいかがですか?」
勇者「俺も会ってみたいなー♪」
シックス「う~ん……そうだな、じゃあそうするか」
422 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:11:14 ID:EE5PgR7.
――――夢の世界・ライフコッド
ギィ……
勇者「ごめんくださーい」
ターニア「はーい、今行きまーす」ペタペタ
シックス「よっ」
ターニア「あ!!お兄ちゃん!!お帰りなさい!!」
バーバラ「元気にしてたー?」
ミレーユ「久しぶりね」
ハッサン「ターニアちゃん、一人で寂しくなかったかかい?」
ターニア「もう、子供じゃないんだから大丈夫ですよ」ウフフ
423 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:11:37 ID:EE5PgR7.
勇者「へー、シックスにこんな可愛い妹がねぇ」
ターニア「そちらの方は……お兄ちゃんのお友達ね?お兄ちゃんがお世話になってます」ペコッ
勇者「いやー、お世話になってるのは俺の方だけどな」アハハ
シックス「今日は泊まっていくよ」
ターニア「本当!?嬉しい!!」
ターニア「……あ、でもみなさん全員が泊まるとなると窮屈ですね……」
ハッサン「なぁーに、野宿に比べりゃ天国だぜ」
バーバラ「それに近くに温泉もあるしねっ♪」
勇者「温泉!?」
424 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:12:08 ID:EE5PgR7.
――――ライフコッド付近の温泉
ハッサン「ふぃ~……いい湯だ……」ハァ…
チャモロ「久しぶりに来ましたがやはりいいものですね……」ハァ…
勇者「驚いたな、村の近くにこんな温泉があるなんて……」チャプ
シックス「だろ?村の人だけが知る秘湯でさ、みんなで整備したんだ」
勇者「この温泉を売りにすれば観光客も沢山来るだろうに」
シックス「この温泉は村のみんなだけで静かに使いたいんだってさ」
勇者「なるほどな~」
テリー「ま、そのおかげで静かに湯に浸かれていいけどな」チャプ
425 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:12:44 ID:EE5PgR7.
ハッサン「ぁあん?テリー、まさかお前このまま温泉に入って体温めて終わる気かよ?」
テリー「は?何言ってるんだ?」
ハッサン「聞こえないのか!?あの天使達の歌声が!?」
勇者「……?」
ウフフ……
キャッ……
テリー「ま、まさかお前……!!!!」
ハッサン「そこに山があるから登るのが登山家……そこに謎があるから旅に出るのが探検家……なら!!」
ハッサン「そこに女湯があるなら覗くのが漢だろ……?」ニッ
テリー「何良い顔で言ってんだよ!!ただの変態だろうが!!」
426 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:13:13 ID:EE5PgR7.
ハッサン「なんだ、お前は行かないのか?」
テリー「当たり前だろ!!姉さんも入ってるんだぞ!?」
シックス「あれ?来ないの?」
勇者「なんだよ……シラけるな~」
テリー「お前らもかよ!!!!」
シックス「おい、ハッサン、こんな漢の風上にも置けないキザ野郎は無視していこうぜ」
ハッサン「あぁ、まったくだな」ハァ
テリー「ふん……勝手にしろ」
427 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:13:51 ID:EE5PgR7.
勇者「とか言ってホントは見たいんだろ?」
テリー「は?んなワケないだろ!?」
勇者「まぁまぁ……何も言わずにさ、ミレーユやバーバラの裸体を想像してみろよ?」
テリー「…………」
シックス「……見てみたいとは思わないか?」ポン
テリー「きょ、興味ないッ!!」フンッ
ハッサン「これ以上は何を言っても無駄だ、俺達だけであのエデンへ向かおうぜ」
勇者「これがホントの『エデンの戦士達』か……」フッ
シックス「なにそれ?」
チャモロ(よくやるなぁ……)チャプチャプ
428 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:14:30 ID:EE5PgR7.
――――
勇者「…………で」
ハッサン「なんでお前もついてきてんの?」
テリー「お、俺はお前らから姉さんを守るためにだな!!」
シックス「自分に正直になれよテリー……」フッ
テリー「だから違うって!!」
ハッサン「む!?静かに!!」
勇者「……!!」
ハッサン「このすぐ先だ……」
シックス「……」ゴクッ
テリー「……」ゴクッ
429 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:15:03 ID:EE5PgR7.
ハッサン「……行くぞ!!」ダッ
シックス「おぅ!!」ダダッ
勇者「あぁ!!」ダッ
テリー「あ、ま、待てお前ら!!」ダッ
ハッサン「この湯けむりの先にエデンが……!!」バッ
デアゴ「ゴアァ……」
ハッサン「!?」
勇者「え!?何この怪物!?」
シックス「これは……大地の精霊デアゴ!!!!」
デアゴ「ガルルアァ!!!!」ババッ
ハッサン「うわ!!て、撤退だ!!」
シックス「逃げろ!!」
勇者「のわーー!!」
テリー「なんで俺まで!!!!」
430 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:15:29 ID:EE5PgR7.
――――女湯
ギャーギャー
バーバラ「? 外が騒がしいねー」
ミレーユ「ふふっ、『召喚』使っておいて良かったわね」
431 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:15:59 ID:EE5PgR7.
――――男湯
ハッサン「つつ……さっきは酷い目にあったぜ……」
テリー「まったくだ、俺までとばっちり食らったぜ……」チッ
チャモロ「よく懲りもせずに毎回挑戦しますねぇ」ハァ
ハッサン「別ルートならあるいは……」
テリー「また行くのかよ!?」
勇者「……そういやターニアも温泉?」
シックス「いや、ターニアは晩飯の準備をしてくれてる」
勇者「そっか、しかしいい娘だよな~、可愛いし気も利くしさ、シックスの妹には勿体ないくらいだよ」ハハッ
シックス「なんだよ、ひどいな~」苦笑
勇者「……ん?あれ?シックスが王子様ならターニアは王女様だろ?なんでこんな山奥に一人で住んでるんだ?」
シックス「……俺とターニアは血の繋がりがないからな……」
勇者「……え?」
432 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:16:28 ID:EE5PgR7.
シックス「勇者、ここは夢の世界だ……ここに住む人々は例外なく人々の想いが創り出した存在」
シックス「つまり夢の世界のターニアも現実世界のターニアが想い描いた夢。『お兄さんが欲しい』っていう夢が俺との出会いを生んだんだ」
シックス「現実世界のターニアは若くして両親を失った一人っ子……きっと淋しかったんだろうなぁ……」
勇者「…………」
シックス「……俺さ、ちょっと前まである事情で精神と肉体に引き裂かれていたんだ」
勇者「うん、知ってる。魔王ムドーの呪いだっけ?」
シックス「そうそう。詳しい理屈はは俺にもよくわからないんだけどとりあえず精神だけの存在……記憶を無くした俺は夢の世界で……ターニアの兄として暮らしていた」
シックス「記憶を取り戻してからやっとわかったんだけど俺は小さい頃に妹を亡くしててな……きっと俺自身も無意識のうちに妹って存在を欲しがってたのかもしれないな」
シックス「……ま、肉体を取り戻して記憶が蘇って、ターニアが本当の妹じゃないってわかった今でも俺はターニアのこと本当の妹だと思ってるけどな」ニコッ
勇者「…………」
433 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:17:07 ID:EE5PgR7.
勇者(……デスタムーアを倒したらシックス達はバーバラだけじゃなくターニアとも別れなくちゃならないのか……)
勇者「あ、あのさ、シックス……」
バーバラ『……他のみんなには内緒だよ?』
勇者「……ッ」
シックス「ん?どした?」
勇者「うん……その……さ、えっと……」
勇者「……ターニアがお嫁に行っちゃったらどうする?」
シックス「はぁ?なんだよ、藪から棒に」ハハッ
勇者「すげー遠くにお嫁に行っちゃってさ、もう会えなくなったらどうする?」
シックス「うーん、そうだなぁ……」
シックス「ターニアが幸せならそれが一番だと思うけど……もし二度会えないとしても仕方ないかな、って思うな」
勇者「仕方ないって……それでいいのか?」
シックス「だってさ、ずっと一緒にいるなんて無理なことだぜ?」
434 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:17:44 ID:EE5PgR7.
シックス「人と人の付き合いには別れはつきものさ……人と人が出会った時からな」
シックス「だからいつか来る別れのときのために一生懸命思い出をつくるんだと思うんだ」
シックス「ホラ、えーと……なんて言ったかな……あ!!そうそう!!」
シックス「『一期一会』って奴だな」
シックス「出会った瞬間から別れのカウントダウンが始まる……だから運命のような偶然のような出会いを大切にしろってことじゃないか?」
シックス「懸けがえのないのない、大切な、温かな思い出を作るために……さ」チャプ…
シックス「まーでもターニアがどんなに遠くに嫁に行ったとしても世界中を旅してる俺達なら簡単に会えるだろうけどな」ハハッ
勇者「…………」
435 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:18:13 ID:EE5PgR7.
勇者「あーぁ、やっぱ敵わねぇな~」
シックス「?」
勇者「なんでもないよ、こっちの話」
勇者「さてと、のぼせそうだしもうあがるな」ザバッ
シックス「あぁ、俺ももうあがるよ」
シックス「………………」
シックス「……大丈夫……わかってるよ、勇者……」
436 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:19:31 ID:EE5PgR7.
━━━━第六の世界・九日目・狭間の世界・とある平原
バーバラ「……!!」
ハッサン「どうしたバーバラ?」
バーバラ「……極めたよ、はぐれメタル!!」
シックス「ついにか!!」
バーバラ「うんっ!!次の戦闘で見せてあげるよ」ニッ
勇者「言ってるそばからおいでなすったぜ」チャッ
ヘルクラッシャーA「キシャア!!」
ヘルクラッシャーB「カァ……!!」
ホロゴースト「……」
437 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/02/18(土) 12:20:02 ID:EE5PgR7.
バーバラ「いっくよー!!」
バーバラ『ビッグバン』!!!!
グゴゴゴゴゴ……!!!!
カッ!!
ドッガアアァァーーーン!!
ヘルクラッシャーA「」プシュー
ヘルクラッシャーB「」プスプス
ホロゴースト「」 ピクピク
バーバラ「アハッ♪すごーい!!!!ねぇねぇ見て見て!!」
ハッサン「」プシュー
シックス「」プスプス
勇者「」ピクピク
バーバラ「……あ…………テへッ」
次回 長老「今日は何番目の勇者様のお話をしようかのぅ?」 後編
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