1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:07:25.99 ID:angmwd9v0

――はじめに――

ミカサの幼い頃の話です

両親存命時代はミカサの言動が本編と異なります



各キャラ略称

ミカサ父→父
ミカサ母→母
ミカサは8歳から始まります(本編の回想シーンでは9歳)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371388045

引用元: ミカサ「あったかい」 

 

進撃の巨人 ミカサ・アッカーマン 1/8スケール PVC製 塗装済み完成品フィギュア
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:10:47.85 ID:angmwd9v0


――843年・夏――



ミカサ「お父さん何してるの?」

父「トウモロコシを収穫しているんだよ」


父「やぁ……今年もよくできたな」


ミカサ「私もとる」

父「お、ありがとう」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:15:06.90 ID:angmwd9v0

ミカサ「ん……んっ……」

ミカサ「んんーー」


ミカサ「…………」


ミカサ「お父さん……とれないよぅ」


父「ははは……背が届かなかったか」

父「ほら、抱えてあげるからとってごらん」

ミカサ「うん」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:20:20.52 ID:angmwd9v0

父「さぁ、持ち上げるぞ」

父「……よっと」


ミカサ「……どうやってとるの?」

父「掴んでそのまま下に引っ張るんだ」


ミカサ「ん……」


父「下のほうの幹は折っていいぞ」

ミカサ「うん」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:25:51.16 ID:angmwd9v0


――パキン


ミカサ「わぁ」


父「おっ、ずいぶんキレイにとれたなぁ」

父「さすがオレの子だ。偉い!」

ミカサ「お父さん……!」パァァ


父「じゃあ、とった野菜は全部この箱にいれて運ぼうか」

ミカサ「はぁい」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:31:02.35 ID:angmwd9v0

父「トウモロコシとチシャトウとニンジン……どれもうまそうだ」


ミカサ「……重い」

父「ミカサじゃ持ち上がらないだろう。お父さんが運ぶから、先に家に入ってなさい」

ミカサ「私も運びたい」


父「お手伝いさんだなぁ……このザルに少しわけるから、持ってくれるかな?」

ミカサ「うん!」

父「さぁ、お母さんが待っているぞ。朝ごはんにしよう」



―――

――

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:34:42.95 ID:angmwd9v0

母「ミカサ。とってきたトウモロコシの皮をむいて、持ってきてくれる?」

ミカサ「うん」


ミカサ「……何本?」

母「二本でいいわ」

ミカサ「もってくる」パタパタ

母「……ふふ」


――

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:38:40.53 ID:angmwd9v0


ミカサ「お母さん……これ、虫にいっぱい食べられちゃってた」


母「いいのよ、これで」

ミカサ「そうなの?」

母「これが当たり前なの。お母さんは自然のままの姿が一番好きだから」


父「そうだよ。虫に食われるってことは美味しいってことさ」

母「そうね。ほらミカサ……見てごらん。まだ半分以上残ってるでしょ?」

ミカサ「うん」


母「そこの粒を拾っていただきましょう」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:41:29.09 ID:angmwd9v0

父「とりたてだからな。生だけど、この粒をそのまま食べてごらん」

ミカサ「……」パク


ミカサ「!」


ミカサ「甘くておいしい」

父「そうだろう? トウモロコシはとった瞬間から、あっという間に味が悪くなっていくんだ」

父「一番おいしいのは、朝採りしたてをすぐに食べる! 味がもつのはせいぜい三時間ってとこだよ」

ミカサ「そうなの?」

父「ああ」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:45:38.91 ID:angmwd9v0


ミカサ「お母さん」

母「ん」

ミカサ「私も台所に立ちたい」

母「あら嬉しい。でもミカサに届くかしらね」


ミカサ「……お父さぁん」

父「この箱を踏み台にしなさい」

ミカサ「ありがとう」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:48:57.93 ID:angmwd9v0

ミカサ「……」ジー


母「じゃあ、このチシャトウの葉っぱを全部もいでくれる? こうやって」

ミカサ「うん……これどうするの?」

母「茎の皮をむいて輪切りにして三分ゆでるの。サラダでいただくからね」


母「葉っぱも捨てちゃダメよ。お昼に炒めるから」

ミカサ「はぁい」


――

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 22:53:08.71 ID:angmwd9v0


母「できたわ。食べましょう」


父「いただきます」

ミカサ「いただきます」


ミカサ「……おいしい」

母「ええ」ニコ



―――

――

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:06:04.08 ID:angmwd9vo


母「ミカサいらっしゃい。髪をすいてあげる」

ミカサ「うん」


ミカサ「あ……お父さんー」

父「ん?」

ミカサ「先にアレやって」


母「……まあ」

父「はは。おいで」

ミカサ「うん!」タタタ

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:09:45.48 ID:angmwd9vo


母「ミカサはお父さんに頭を抱いてもらうのが本当に好きねぇ……」

父「こうすると安心するそうだよ」ギュウ

ミカサ「うん」ギュウ


父「お父さんも安心するよ、ミカサ」ナデナデ

ミカサ「……」

父「……」ナデナデ

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:14:24.08 ID:angmwd9vo

ミカサ「お父さんの腕……大好き」

父「そうか」


ミカサ「頭もほっぺも首もあったかくなるの」

父「お父さんもあったかいさ」

ミカサ「……」ムギュ


母「いいわね」

父「お……おっと、お母さんが待ってるよ。そろそろ行きなさい」

ミカサ「……うん」


――

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:17:32.24 ID:angmwd9vo


母「……」スゥ

ミカサ「……」

母「……」スゥ

ミカサ「……」


母「ツヤのある綺麗な黒髪をしてるわね」

父「そこはしっかりお母さんに似たんだなぁ」

母「あら、ありがと」フフ

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:21:42.49 ID:angmwd9vo

ミカサ「……じゃあ、私もお母さんみたいな美人さんになれる?」

母「まぁ!」


父「ミカサは今でも自慢の美人さんだよ」

ミカサ「ほんと?」

父「本当だとも」

母「ええ、そうね」


ミカサ「あは」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:25:41.54 ID:angmwd9vo


母「さぁ、終わったわ」

ミカサ「ありがとう、お母さん」

母「どうしたしまして」


ミカサ「外に行ってきていい?」

父「あ……待った。お母さん、アレ」

母「そうでした。ミカサ、ちょっと待ちなさい」


ミカサ「?」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:28:30.03 ID:angmwd9vo

母「これ、アナタの新しい帽子よ」

ミカサ「わぁ……かわいい麦わら」

母「かぶってごらん」


ミカサ「うん!」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/16(日) 23:32:40.98 ID:angmwd9vo


ミカサ「……どう?」

父「おぉ、本当にかわいらしいな」

母「よく似合ってるわ」

ミカサ「ありがとう。お父さん、お母さん」


父「あまり遠くに行ってはいけないよ」

母「いってらっしゃい」

ミカサ「いってきます」


――

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:16:41.06 ID:tl5/IF23o


ミカサ「いい天気」


ミカサ「……」

ミカサ(大きな雲)


ミカサ「……あ」

ミカサ「この前のザリガニどうなったかな」


――

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:18:17.05 ID:tl5/IF23o


ミカサ(カゴの中に水はまだある)


ミカサ「ん……元気そう」

ミカサ(二匹いるからそのうち増える?)


ミカサ「エサとってこないと」


ミカサ「網と水桶どこ……あった」

ミカサ「……」テテテ


――

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:19:47.10 ID:tl5/IF23o


ミカサ(この小川はこのへん浅いから……)

ミカサ「……」ジー


ミカサ「ドジョウがいた」

ミカサ「網ですくえる?」ソー


――チャポン


ミカサ「あ」

ミカサ「逃げちゃった……速い」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:21:02.51 ID:tl5/IF23o

ミカサ「……」ジー

ミカサ(岸辺の草かげにいそう)


ミカサ「!」


ミカサ(小魚……メダカ?)

ミカサ「……」ソー


――スィー


ミカサ「あ、あ……」

ミカサ「また逃げちゃった」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:22:44.68 ID:tl5/IF23o

ミカサ(石のかげにザリガニ)

ミカサ「そっと……」


ミカサ「ん!」

ミカサ(つかまえた)


ミカサ「……」

ミカサ(ハサミ広げて怒ってる)


ミカサ「あなたはメダカやドジョウより強いのに、なんですぐ捕まるの?」


ミカサ「……よくわかんない」


ミカサ(三匹もいらないから……かえそう)

ミカサ「またね」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:24:37.69 ID:tl5/IF23o

ミカサ(うちのザリガニ……)


ミカサ(一昨日とってから、まだちゃんとしたご飯あげられてない)

ミカサ「飢えちゃう」


ミカサ「あの石にタニシがくっついてる」

ミカサ(ザリガニってタニシ食べる?)


ミカサ「……捕まえとこ」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:25:56.30 ID:tl5/IF23o

ミカサ「風……」


ミカサ「!」

ミカサ(いま雷鳴がした)


ミカサ「あ……雲が」

ミカサ(降ってくる……急がなきゃ)


ミカサ「水草だけとって帰る」


――

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:26:54.60 ID:tl5/IF23o


ミカサ(降ってきちゃった……服がびちょびちょ)

ミカサ(お母さんに怒られちゃう)


ミカサ「ザリガニさん……大丈夫?」

ミカサ(……じっとしてる)


ミカサ「タニシと水草しかないけど」

ミカサ「あなたたちにパンあげたら、また怒られちゃうから」

ミカサ「これでもいい?」


ミカサ「食べてね」


――

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:27:47.41 ID:tl5/IF23o


ミカサ「ただいま」

父「おお、帰ってきたか」

母「ミカサ、ずぶ濡れじゃないの!」

ミカサ「ごめんなさい」


母「遠くに行くなってお父さんに言われていたでしょ」

ミカサ「うん……」シュン

母「まったくもう。風邪ひいちゃうから早く脱いで、お父さんとお風呂に入ってらっしゃい」

ミカサ「!」


ミカサ(今日はお父さんと!)パァァ

ミカサ「はぁい」


――

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:29:16.91 ID:tl5/IF23o


ミカサ「お父さん。頭洗ってー」

父「はいはい」

ミカサ「わぁ」


父「……」ワシャワシャ

ミカサ「気持ちいい」

父「そうか。痛くないかな?」

ミカサ「うん!」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:31:05.66 ID:tl5/IF23o

父「お母さんも言ってたけど、本当にキレイな黒髪だなぁ」

ミカサ「……」テレ

父「よし、一緒に背中も洗って流すぞー」

ミカサ「うん」


父「細いな。まぁ、ミカサぐらいの歳だとこんなもんか」

ミカサ「……細い人ってきらい?」

父「いや……そうじゃないけど、ミカサにはやっぱり丈夫でいて欲しいからね。親としては」

ミカサ「ふぅん」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:32:46.68 ID:tl5/IF23o

父「でも女の子だから、細くてもいいんじゃないか」

ミカサ「お母さんも細い」

父「そうだね」

父「ミカサはお母さん似だからな」


ミカサ「私もお父さんみたいなあったかい人と結婚したい」

父「ミカサならきっと良い人と出会えるさ」

ミカサ「ほんとう?」

父「ああ。お父さんの自慢の娘だからな」

ミカサ「……ぇへ」



―――

――

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:34:25.66 ID:tl5/IF23o

ミカサ(昨日は一日中雨だった)

ミカサ(エサちゃんと食べてくれたかな)



ミカサ「ザリガニさん……元気?」


ミカサ(あれ?)


ミカサ「!」


ミカサ「え……」

ミカサ「ザリガニが……ザリガニ食べちゃっ……た」



ミカサ「…………お父さーん!」


――

36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:36:21.84 ID:tl5/IF23o


父「小川までもうちょっと」

ミカサ「……」トボトボ

父「生き物を飼うのは大変だってわかったね?」

ミカサ「……うん」グス


父「さぁ、ついた。そっと川に帰してやるんだ」

ミカサ「うん」

父「ちゃんとごめんなさいするんだよ」

ミカサ「……」コク


ミカサ「ザリガニさん……ごめんなさい」グス

父「よくできたね。良い子だ」


父「帰ろう」

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:37:27.86 ID:tl5/IF23o

ミカサ「……」


父「ミカサ」

ミカサ「……」


父「ミカサは自分の間違いがちゃんとわかる子だから」

父「お父さんもお母さんも怒ってないさ」

ミカサ「……うん」

38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:38:32.81 ID:tl5/IF23o

ミカサ「お父さん」

父「ん」

ミカサ「あそこ」


父「虫の死体か」

ミカサ「アリが運んでる……」


父「巣に持ち帰ってエサにするんだよ」

ミカサ「……」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:39:21.98 ID:tl5/IF23o

ミカサ「お父さん」

父「ん」


ミカサ「死んだらああやって食べられちゃうの?」

父「それが自然の掟だからね」

ミカサ「おきて?」

父「決まりごとさ」


ミカサ「……」

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:40:48.74 ID:tl5/IF23o

ミカサ「こわい」


ミカサ「お父さん……私こわい」ギュウ

父「……」


父「ミカサ。アレしようか」

父「ほら、お父さんの腕だぞ」フワ


ミカサ「……」

ミカサ「あったかい」

父「……」ナデナデ

41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/18(火) 18:42:56.43 ID:tl5/IF23o

父「まだ怖いかな?」

ミカサ「……」

ミカサ「ううん」

父「そうか。怖がりさんのミカサ」ニヤ

ミカサ「む」


ミカサ「……ちょっと暑い」

父「ははは。ごめんごめん」

父「さ、家まであと少しだよ」

ミカサ「うん」



―――

――

42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:14:13.57 ID:F7vamjOBo


――843年・秋―――



ミカサ「お父さん。キャベツと玉ねぎの苗ができてるよ」

父「お、もう植え付けできるな」

ミカサ「やっていい?」

父「ああ。お父さんは狩りにいってくるから、お母さんと一緒に頼めるかな?」

ミカサ「はぁい」

母「畑は任せておいてくださいね」

43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:15:34.79 ID:F7vamjOBo


父「よし、じゃあそろそろ」

母「あなた」

父「おっ!」


父「……」チュ

母「……」チュ

ミカサ「……」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:17:11.24 ID:F7vamjOBo

ミカサ「お父さん。私もする……ほっぺ」

父「おぉ」

ミカサ「……」チュ


父「……可愛らしいキスでお父さん百人力だよ」ヨシヨシ

母「……」クス


ミカサ「私はお父さんの口にしちゃダメ?」

母「ダメです」

父「ミカサの唇は結婚する人のためにとっておきなさい」

ミカサ「……うん」

45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:18:19.49 ID:F7vamjOBo

ミカサ「私のほっぺにもして」

父「そら……んー」チュ


ミカサ「お母さんも」

母「はいはい。じゃあ反対のほっぺにね」チュ


父「では行ってくるよ」

母「気をつけてくださいね」

ミカサ「いってらっしゃい」


――

46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:19:22.30 ID:F7vamjOBo


ミカサ「お母さん。キャベツ植えていい?」

母「ええ。株間は35cmで植えるんだよ」

ミカサ「かぶま?」

母「植えるのに空ける間隔のこと」


ミカサ「こう?」

母「そうそう」


母「春と秋だと成長する大きさが違うから、秋のときは少し狭めに植えます。覚えておいてね」

ミカサ「うん」

47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:20:32.40 ID:F7vamjOBo

ミカサ「玉ねぎはどうするの?」

母「15cm間隔でいいけど、植え方がちょっと難しいわ」

ミカサ「ん」


母「キレイな形の球を作るには、2.5cmぐらいの深さで植えないといけないの」

ミカサ「んー」


母「それより深いと縦長の球になるし、浅いと平らな球になっちゃうからね?」

母「あと根っこはなるべく傷つけないこと。そこが野菜の生命線」

ミカサ「むずかしい」


母「お母さんの真似しながら、ゆっくり覚えればいいよ」ニコ

ミカサ「はーい」


――

48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:21:38.51 ID:F7vamjOBo


ミカサ「いっぱい植えた」

母「これが最後の一本。ごくろうさま」


ミカサ「畑おしまい?」

母「あとは寒くなる前に霜よけのワラを敷くだけ」

ミカサ「ふぅん」

49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:22:37.47 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」

ミカサ(畑のすみっこ)

ミカサ(カマキリがカマキリ食べてる……)

ミカサ「……」


母「どうしたの?」

ミカサ「……ううん」

母「そろそろお父さんも帰ってくるから家に入りましょう」

ミカサ「うん」


――

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:23:30.23 ID:F7vamjOBo


父「おーい」

母「あら、早かったのね」


父「ああ! ほら見てくれ。キジだ」

母「まぁ、お見事」パチパチ

ミカサ「わぁ」


父「あと山のリンゴも赤くなってたから少しとってきたんだ」

母「豊作ねぇ」

父「お母さんとミカサのキスが効いたかな」

母「……お父さんったら」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 13:24:52.71 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」ジー

父「ん……小さいの一つやるか?」

ミカサ「かじっていい?」

父「かまわないが、少しにしておいたほうがいいぞー」


ミカサ「……がぶ」

ミカサ「……」シャリシャリ

ミカサ「…………すっぱぁい」


父「はっはっは」

母「ふふ」

母「山のリンゴは甘くないもの。すりおろしたり、漬け込んだりして使うんですよ」


――

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:46:26.10 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」

父「どうしたんだ。元気ないな、ミカサ」

母「本当ね」


父「せっかくの夕食が冷めちゃうぞ」

ミカサ「……」

母「悩み事かしら? お母さんに話してごらん」


ミカサ「……さっき畑のすみっこで」

母「ええ」

ミカサ「カマキリがカマキリを食べてたの」

母「そう……」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:47:50.72 ID:F7vamjOBo

ミカサ「前に……ザリガニもザリガニを食べちゃった」

父「あぁ。あったな」


ミカサ「虫も死んだらアリとかに連れていかれちゃう」

母「そうね」


ミカサ「ねぇ、お母さん、お父さん」

ミカサ「人間も……殺されたり食べられちゃったりするの?」


母「!」

父「!」

56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:49:28.86 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」


母「ミカサ。お母さんの膝の上にいらっしゃい」

ミカサ「うん」


母「……ミカサ」ギュ

母「人間は食べられたりすることは無いよ」

ミカサ「どうして?」

母「壁の中には人間より強い生き物はいないから」


ミカサ「壁の外の巨人は……?」

母「巨人は人間を食べることがあるかもね」

ミカサ「……」ブル

57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:50:37.28 ID:F7vamjOBo

母「だからミカサ。決して壁の外に出てはいけないよ? 絶対にね」ギュウ

ミカサ「……うん」


ミカサ「お母さん」

母「はい」

ミカサ「人間も人間に殺されたりする?」

母「……」

59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:51:39.47 ID:F7vamjOBo


父「世の中にはそういう悪いやつも……少しいる」

父「でも良い子にしてれば来ないよ。会うことは無いさ」


ミカサ「ほんと?」

父「あぁ……もしそんなやつが来たら、お父さんがこの銃で追っ払ってやる!」

母「お父さんは頼もしいんだから! 大丈夫ですよ」

ミカサ「……うん!」

60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 14:52:39.67 ID:F7vamjOBo

父「……ミカサ。明日はキノコ狩りに行こうか」

ミカサ「! いく」

父「お母さんも行くかい」

母「ええ」

父「よし、じゃあみんなで出よう」



―――

――

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:18:49.50 ID:F7vamjOBo

ミカサ「暑くなってきた……」

父「これだけ動いてるからね。でも山の中では決して素肌をさらしてはいけないぞ」

ミカサ「うん」


ミカサ「お父さん、あれ見て」

父「ん?」

ミカサ「キノコが……ならんで生えてる」

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:19:42.12 ID:F7vamjOBo

父「おお、これは」

母「あら……珍しい。菌輪ね」

ミカサ「きんりん?」


父「良いものを見たなぁ」

ミカサ「良いものなの?」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:20:41.36 ID:F7vamjOBo

父「私たちは妖精の輪っていうよ」

ミカサ「ようせい……」


母「妖精たちがね。夜中に手をつないで輪になって踊るの」

父「その踊ったときの足跡がキノコになるんだ」

母「だからこのあたりは、妖精たちが安心して歌って踊れるくらい良い場所ってことなのよ」

ミカサ「わぁ」


ミカサ「じゃあ、このキノコは食べちゃダメ?」

母「そうね。それにこれは、もともと食べられるキノコではないわ」

ミカサ「そうなの」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:21:25.38 ID:F7vamjOBo

父「おっ、本当に良い場所だったぞ。あっちを見てみなさい」


母「まぁ」

ミカサ「うわ」

父「マイタケだ」


母「……すごい大きさね」

父「これはご馳走だよ。まさに今の時期の恵みだ」

父「この場所は覚えておこう。だいたい同じ場所に生えてくるから」

ミカサ「うん」

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:23:02.58 ID:F7vamjOBo

母「あなた。あそこにアケビがなってる」

父「おおっと、これも立派」


ミカサ「ちょくちょく鳥に食べられてる」

父「十分さ。周りも食べれるし、むしろ中身がないほうが軽くていいかもしれないぞ」

母「私は中身のほうが好きですけど」

ミカサ「私も」


父「そうかそうか。ちゃんとお父さんが採って帰るから安心するんだ」

母「私も持ちますよ」

父「すまないな」

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:24:42.31 ID:F7vamjOBo

ミカサ「お母さん。あれってなに? ヒラタケ?」


母「あら、またミカサが見つけたわ」

父「才能あるなぁ」


母「……これはタモギタケ」

ミカサ「食べれる?」

母「食べられますよ。歯ごたえがあって味が深いの」

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 16:25:30.30 ID:F7vamjOBo

父「……これでもう荷物がいっぱいだな。そろそろ戻ろうか」

母「そうね」


父「次にくる時は、またミカサにキノコ探しをお願いしたいもんだ」

ミカサ「うん。やる」

父「お母さん。うちには豊猟の女神がいるから安泰だぞ」

母「ふふ」



―――

――

69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:05:32.10 ID:F7vamjOBo


――843年・冬――



ミカサ「星がすごくきれい」

父「ああ。今夜は一段とすごいな」

ミカサ「冬はいつも星が……まぶしい」

父「空気が澄んでいるせいかもしれないね」

ミカサ「……」


父「本当にここの星空は見事だよ」

ミカサ「ここの?」

父「町からだとこんなに見えないんだ」

ミカサ「……」

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:06:45.10 ID:F7vamjOBo

ミカサ「でも町の光もきれい」

父「そうだね」

ミカサ「お父さんは町には住まないの?」

父「お父さんは静かなここが好きなのさ。お母さんもね」


父「ミカサは町に行きたいのかな」

ミカサ「ううん」

ミカサ「……お父さんとお母さんがいる所ならどこでもいい」

父「そうか」

71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:07:29.70 ID:F7vamjOBo

父「風が出てきた。そろそろ家に入ろう」

ミカサ「うん」


ミカサ「あ」

ミカサ「うちの窓にクモの巣ができてる」

父「そっとしておいてやりなさい」

ミカサ「……」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:08:21.89 ID:F7vamjOBo

ミカサ(……クモがガを食べてる)

ミカサ(……)

ミカサ(考えない……何も見てない……)

ミカサ「……」ブル


父「なんだ。震えてるじゃないか」

ミカサ「……さむい」

父「外にいすぎたな。家の中は暖かいぞ」

ミカサ「うん」


――

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:11:36.37 ID:F7vamjOBo


ミカサ(暖炉で……ちょっとねむい)


ミカサ「……んー」

母「疲れた? ミカサ」

ミカサ「……んーん」


ミカサ「ねぇ、お母さんは何をぬってるの?」

母「みんなの服の穴とか、はずれそうなボタンを直してるの」


ミカサ「お父さんは?」

父「狩りの革靴が穴あいてたんで、縫いなおしてるのさ」

ミカサ「ふぅん……」

74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:13:12.75 ID:F7vamjOBo

父「ミカサ、飽きちゃったんだろう。それ……お父さんが代わりに縫ってやるか?」

母「ダメですよ、あなた。ミカサの仕事はミカサにやらせなきゃ」

父「そ、そうだな」

母「まったく甘いんだから」


ミカサ「お母さん。私ちゃんとやるもん……」

母「ええ、知ってますよ。ミカサはあと何が残ってるの」

ミカサ「ぞうきん三枚」

母「……もうひと頑張りね」

ミカサ「……うん」チクチク


――

75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:15:38.96 ID:F7vamjOBo

ミカサ(おわったけど……)

ミカサ(目がつかれちゃった)

ミカサ(でも、ふとんが気持ちいい)


母「ミカサ。もうちょっとそっち寄れる?」

ミカサ「うん」モゾモゾ

父「おいでおいで」

ミカサ「……ぅん」


ミカサ(並んで寝るのって暖炉よりあったかいから好き)

76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 18:17:18.82 ID:F7vamjOBo

母「あったかいわね」

父「ああ。冬はこれに限るね」

父「ミカサは寒くないか?」

ミカサ「……ホカホカする」

母「真ん中だもの」クス


ミカサ「おやすみなさい」

父「おやすみ」

母「おやすみなさい」



―――

――

77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:13:17.99 ID:F7vamjOBo


――844年・春――



ミカサ「お父さん。私も自分の畑ほしい」

父「お、それはいいかもしれないな。一人でやったほうが早く覚えるぞ」

父「よーし、そしたら畑の端っこをミカサ専用にしよう」

ミカサ「!」


父「じゃあロープで区切ってくるか」

母「よかったわね、ミカサ」

ミカサ「うん!」


――

78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:14:33.24 ID:F7vamjOBo


ミカサ「今年もそろそろトウモロコシのタネまく?」

父「そうだな。ジャガイモも植え終わったし……もう播き始めて良い頃だろう」


父「やり方はいつもどおりだ」

ミカサ「十日おき」

父「ああ、そして少しずつ苗作り!」

79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:15:46.93 ID:F7vamjOBo

ミカサ「私もちょこっとタネもらっていい?」

父「かまわないが、直接じぶんの畑に播くのかな?」

ミカサ「うん」


父「……」

ミカサ「?」

父「……いや、最初はそれでやってみなさい」

ミカサ「はぁい」


――

81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:16:49.74 ID:F7vamjOBo


ミカサ(地面にたっぷり水かけて)

ミカサ(水がしみこんだら指で穴あけて)


ミカサ「……」チョイチョイ


ミカサ(……ヘソが下)

ミカサ(土かけておしまい)


ミカサ「……」

ミカサ(元気な芽でて)ポンポン


――

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:18:08.68 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」ジー


ミカサ(三日目……)

ミカサ(お父さんのトウモロコシもまだでてないから)

ミカサ(私のもまだ)


ミカサ「……」

ミカサ「水あげとく」


――

83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:19:15.86 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」ジー


ミカサ(五日目……)

ミカサ(トウモロコシはそんなにすぐ芽でない)

ミカサ(がまん)


ミカサ「……」

ミカサ「また水」ジャバ


――

84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:20:34.90 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」ジー


ミカサ(七日目……まだ芽でない)

ミカサ(お父さんのはいくつか芽でてきたから)

ミカサ(きっともうちょっと)


ミカサ「……」

ミカサ「水たりない?」ドボドボ


――

85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:21:38.52 ID:F7vamjOBo


ミカサ「……」ジー


ミカサ(十日目……ひとつもでてない)

ミカサ(お父さんは次のタネまいてる)

ミカサ(……私のまだ?)


ミカサ「……」ソワソワ


――

86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:22:46.27 ID:F7vamjOBo


ミカサ(二週間目……)

ミカサ(……でない)

ミカサ(??)


ミカサ「……お父さぁん……」


父「どうした」

ミカサ「私のトウモロコシの芽がでない」

父「……む。見てみよう」

ミカサ「うん」

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:23:48.16 ID:F7vamjOBo

父「おかしいなと思ったときは」

父「……こうやって少し土を掘って種の状態を確かめてみるんだ」

ミカサ「……」ジー


父「播いたのはこのへんだね?」

ミカサ「うん」


父「…………」

父「どこにも無いな」

ミカサ「……ぇ」

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:24:52.13 ID:F7vamjOBo

父「たぶん……鳥がほじって食べちゃったんだろう」

父「トウモロコシや豆は鳥の大好物だからね」

ミカサ「ぜんぶ?」


父「どうかな……お!」

ミカサ「……残ってた?」

父「ひとつ残ってたが……腐ってる」

ミカサ「……」


父「腐るのは水のあげすぎだ……」

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:25:36.03 ID:F7vamjOBo

ミカサ「……ぜんぶダメ?」

父「全部ダメなようだ」


ミカサ「…………」ジワ


父「毎日ずっと様子を見てあげていたんだろうね……」


ミカサ「うわぁぁぁん」


父「……よしよし」

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:27:42.57 ID:F7vamjOBo

父「なに、最初はみんな失敗するんだ。失敗するとうまくなるんだよ」

父「まだまだ種播きは間に合うし、新しいのをあげるからもう一度やってごらん」ナデナデ

ミカサ「……ぅん」グス


父「苗作りが大切なことがわかったね? 今度はお父さんと同じように一緒にやろう」

ミカサ「うん」


父「きっとうまくいくよ。お父さんはミカサが作ったトウモロコシを食べたいな」


ミカサ「……うん! がんばる」

父「偉い偉い」


――

91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:53:29.85 ID:F7vamjOBo


父「トウモロコシは水をあげすぎてもダメだけど、十分に水を吸わないと芽が出ないんだ」

ミカサ「……よくわかんない」

母「お母さんも最初はわからなかったよ」


父「そこで種を一晩水に浸けておく」

ミカサ「これ?」

父「そうだ。ちょうど今日また種を播こうと思っていたから浸けておいた」

ミカサ「ふくらんでる」

父「これが十分に水を含んだ状態だね」

92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 20:56:25.59 ID:F7vamjOBo

父「これをこの細かい仕切りがついた木箱に播いて、網で覆って苗を作る」

父「じゃあ、これをテラスに置いてきてくれるかな」

ミカサ「はぁい」



母「ふふ……本当に素直な子ね」

父「ああ。それに芯が強いよ……怖がりでちょっと甘えたがりだけど」

母「それはあなたが甘やかすから」

父「そ、そうか?」

母「……まぁいいわ。まだ子供だもの」

父「そうさ」



―――

――

93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 23:03:42.19 ID:F7vamjOBo


――844年・夏――



父「おお。ミカサの畑のトウモロコシもよく育ってきたなぁ」

ミカサ「うん!」


父「そろそろ下の雌穂をかき取らないと」

ミカサ「しほ?」

父「実になる部分だよ。ほら、上のほうと下のほうに一つずつ付いてるだろう」

ミカサ「うん」


父「これの下をむしるんだ。じゃないと上がうまく太らないからね」

父「やってごらん」

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 23:05:06.09 ID:F7vamjOBo

ミカサ「……」パキ

父「やぁ、上手にとれた。そしたら皮をむいて」


ミカサ「……ベビーコーンになってる」

父「そうだ。ミカサの大好きな甘くて柔らかいベビーコーンだよ」


父「ミカサの畑の初収穫じゃないか。やったな!」

ミカサ「わぁぁ」


ミカサ「……お母さん見て」タタタ

父「……よかった」



―――

――

106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 00:22:46.64 ID:s64YTbRLo
ミカサ(今日もいい天気)


母「ハナショウブがキレイに咲いたわねぇ」

ミカサ「うん」


母「今日は久々に暑いわ」

ミカサ「うん」


母「朝晩は冷えるのに」

ミカサ「うん」


母「……もう。さっきからウンしか言ってないじゃない」

ミカサ「うん」

97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 23:33:22.99 ID:F7vamjOBo

母「……なにを見ているの?」

ミカサ「カマキリがバッタを食べてるの」


母「あら……ミカサはそういうの苦手じゃなかったかしら」

ミカサ「……こわいから……あんまり考えない」


母「それなのに見ているの?」

ミカサ「……うん」

母「変な子ねぇ」ハァ

98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 23:46:27.13 ID:F7vamjOBo

父「おぉい。玉ねぎとジャガイモの収穫を手伝ってくれ」

母「はーい」

母「ミカサ。お父さんのお手伝いをしましょう」

ミカサ「はぁい」


父「収穫時期を過ぎたら腐ったり割れたりするからな」

母「こういうものはすぐに一斉に採らないとダメなのよ」

ミカサ「うん」

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/19(水) 23:49:50.25 ID:F7vamjOBo

父「山だから普段このあたりは涼しくて助かるが……」

母「今日は暑いわ」

父「動いているから余計にな」


母「終わったらお茶にしましょう」

父「おお、それは頑張りがいがある」


母「まずは熱いお茶からですよ」

父「東洋式の納涼法か」

母「ええ。後で冷たいお茶をいただきましょう」

父「いいね」

ミカサ「……がんばる」


――

101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 00:04:46.19 ID:s64YTbRLo


ミカサ「……」グテ


母「お茶が入りましたよ」

父「待ってました」


母「……ミカサは寝ちゃったの?」

父「あぁ、風が通って一番涼しい所を占領している」


ミカサ「……」スゥスゥ


母「プッ……まるでネコね」

父「ははは……まったく」

103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 00:08:15.45 ID:s64YTbRLo

母「重い物をたくさん運んだから疲れちゃったのね」

父「ミカサは頑張り屋さんだから」


父「今年は玉ねぎもジャガイモもよく太って豊作だったなぁ」

母「あの玉ねぎを全部吊るすのは大変だったわ」

父「そのぶんだけ飢えずにすむさ」

母「そうね」

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 00:10:02.25 ID:s64YTbRLo


ミカサ「……」スヤスヤ


父「……後でミカサに何かかけておいてあげなさい」

母「ええ」

父「年々おまえに似ていく……良い旦那に恵まれるといいな」

母「本当に……そうですね」


母「可愛い子」



―――

――

107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:50:59.79 ID:s64YTbRLo


ミカサ「……」ソワソワ


ミカサ「ん……」


ミカサ(……窓の外)ジー


母「ミカサ」

ミカサ「!」

母「心配しなくても大丈夫よ」

ミカサ「……うん」

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:53:11.07 ID:s64YTbRLo

ミカサ「お母さん」

母「なぁに」

ミカサ「お父さんが集めたシイタケの原木売れたかな……」

母「きっと売れてますよ」


ミカサ「売れてなかったらどうしよう」

母「大丈夫。毎年ちゃんと買ってくれる人がいるから」

ミカサ「うん」

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:54:04.91 ID:s64YTbRLo

ミカサ「お母さん」

母「はいはい」

ミカサ「お父さんはどうして一緒に町につれていってくれないの?」

母「……町は危ないからですよ」


ミカサ「お父さんはここが静かだから好きって言ってた」

ミカサ「町はうるさい?」

母「そうね……」

ミカサ「町の光はきれいなのに」

母「ええ」

110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:55:03.88 ID:s64YTbRLo


――おおーい


ミカサ「!!」

ミカサ「お父さんの声がした」ダッ

母「あ、ミカサ。待ちなさい」

ミカサ「外にお父さんきてる」タタタ

母「……もう。せっかちなんだから」


母「ミカサ。ドアはゆっくり開けなさい」

ミカサ「うん」

111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:56:18.44 ID:s64YTbRLo


ミカサ「……お父さん?」ギィ

父「お、ミカサか。良い子にしてたか?」

ミカサ「うん……」ギュ

父「おおぅ。よしよし」


母「あなた……お帰りなさい」

父「ただいま。待たせたな」

ミカサ「おかえりなさい」

112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:57:18.90 ID:s64YTbRLo

父「これを見てくれ」

父「シイタケの原木は全部売れて、今季の小麦粉がこんなに買えたぞ」

母「まぁ、すごい」


父「それからこれも買ってきた」

母「新しいお鍋とお皿ね……ありがとう」

113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:58:17.69 ID:s64YTbRLo

父「ミカサにもお土産あるぞー」

ミカサ「ぇ」


父「ほら、新しいワンピースだ。こういうの欲しがってただろう」

ミカサ「わぁ……」

父「着て来てみなさい。きっとあの帽子にも似合うよ」

ミカサ「うん!」

114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 01:59:59.06 ID:s64YTbRLo


ミカサ「……どう?」


父「いやいやこれは……とてもよく似合ってるな」

母「ミカサにぴったりね」

父「ああ、美人さんが引き立っているぞ」

ミカサ「……」テレ


母「よかったわねぇ」

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 02:00:47.77 ID:s64YTbRLo

ミカサ「お父さん」

父「ん」

ミカサ「どうもありがとう」

父「どういたしまして」


母「ミカサはずっとお父さんの帰りを待っていたものね」

父「そうか。心配かけたかな?」

ミカサ「……」コク

116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 02:01:44.40 ID:s64YTbRLo

父「じゃあお詫びにアレをやろうか」

ミカサ「!」

ミカサ「うん」タタ


父「よしよし」

ミカサ「……」ギュウ

父「心配をかけてごめん」ギュ

ミカサ「……んーん」

117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 02:02:32.07 ID:s64YTbRLo

母「甘えたがりさんは相変わらずねぇ」


ミカサ「お父さんの匂い……好き」

ミカサ「ほっぺも頭もあったかい」

父「そうか」ナデナデ


母「まったく……妬けちゃうわ」ハァ

父「はは」



―――

――

118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:23:18.76 ID:s64YTbRLo


――844年・秋――



ミカサ「寒い」


父「夏が終わったばかりなのに急に寒くなったな」

母「今年は秋らしい秋が殆どないわね」

父「ああ。まったくおかしな気候だ」

121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:25:56.83 ID:s64YTbRLo

ミカサ「……」

母「どうしたの? ミカサ」

ミカサ「寒くなったらお父さんにもらった服が着れなくなっちゃう」


父「……あれは春秋用の長袖だから、山間のこのあたりでもまだ大丈夫だろう」

母「冬でも家の中ぐらいだったら着れるんじゃないかしら」

父「そうだな」

ミカサ「よかった」

122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:27:35.11 ID:s64YTbRLo

母「そういえばあなた」

父「ん?」

母「そろそろ甘薯を掘らないと」

父「そうだった」


ミカサ「かんしょ?」

母「……お母さんのご先祖様がサツマイモって呼んでいたお芋のことよ」

ミカサ「サツマイモなら好き」


父「甘薯より、そっちのほうが呼びづらいのに……覚えないんだなぁ」

父「ミカサはやっぱりお母さん似だよ」ハハハ


――

123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:46:36.31 ID:s64YTbRLo


ミカサ「大きいおイモがいっぱいできてる」


父「そうだろう。これは普通の野菜と違って、やせた土のほうがよくできるんだ」

父「なぁ? お母さん」


母「そうね。変わっているけどありがたいわね」

父「肥料は殆ど使わないからな」

ミカサ「ふぅん」

124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:48:16.88 ID:s64YTbRLo

ミカサ「虫食い穴がいっぱいあいてる」

父「……ちょっと畑が肥えてたかもしれない。虫を呼んでしまったようだね」

母「でもいいの。お母さんは自然のままの姿が一番好き」


ミカサ「お母さん、いつも同じこと言ってる」

母「そうです」

父「お父さんも一緒の意見だからな。うちはこれでいいんだよ」

ミカサ「……」コク

125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:49:14.24 ID:s64YTbRLo

父「ミカサ。向こうの山を見てごらん」

ミカサ「?」


母「……あら」

ミカサ「紅葉!」

父「急に寒くなった年は紅葉がキレイだ」


父「……だから寒いのも悪い事ばかりじゃないだろう?」

ミカサ「うん」

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:52:35.63 ID:s64YTbRLo

母「悪い事ばかりっていうのは世の中には無いんですよ」

ミカサ「はぁい」

父「このあたりの木は紅葉するものがあまりないから、残念ではあるけど」


ミカサ「しん……しんよぅ……」

母「針葉樹」

ミカサ「しんようじゅ」


母「じゃあ紅葉するのは?」

ミカサ「こうようじゅ」

母「よくできました」


父「あとはスペルも書けるようにしないとな。広葉樹って」

ミカサ「……うん」

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 17:59:18.09 ID:s64YTbRLo

ミカサ「でもお父さん」

父「ん?」

ミカサ「紅葉は遠くから見たほうがキレイかも」

父「どうしてそう思うのかな」


ミカサ「町といっしょ?」

父「町?」

ミカサ「近くだとうるさいけど、遠くから町の光を見たらキレイ……」


父「……わは」

母「プッ」

128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 18:06:10.77 ID:s64YTbRLo

父「確かに……なんでも自分の近くにあればと憧れはするが」

母「……遠くにあったほうが逆にわかることもあるわね」


父「ミカサは目のつけどころがいいなぁ」

母「そうねぇ。親バカじゃなければいいですけども」


父「親バカじゃないさ……いい子だよ……なっ?」ナデナデ

ミカサ「……」テレ

129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 18:13:50.34 ID:s64YTbRLo

父「よーし、寒いなら寒いなりに楽しもうか」

ミカサ「なにをするの?」

父「ここに芋があるだろう」

ミカサ「うん」


父「本来は二週間以上置いたほうが美味しくなるんだけど」

母「……やりましょうか」ニコ

父「たき火で焼いて食べてしまおう。味見だよ」

ミカサ「わぁ」


――

130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:02:42.31 ID:Ttkz0p2zo


――パチパチ


ミカサ「……焼けた?」

父「まだまだ」

母「お芋が大きいから結構時間がかかりますよ」


ミカサ「んー……」

母「暇してきたかしら」

ミカサ「寒くないから平気」

母「そう。もうちょっと待ってね」

ミカサ「うん」

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:07:56.39 ID:Ttkz0p2zo

ミカサ「あ」

父「どうした?」

ミカサ「アリが……みんなでエサ運んでる」

父「あぁ。もうじき冬だから、みんな蓄えに忙しいんだなぁ」


ミカサ「……」ジー

父「怖いか?」

ミカサ「んーん。あったかいから……こわくない」

父「そうか」

132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:12:39.67 ID:Ttkz0p2zo

父「お、そろそろいいんじゃないか」

母「そうみたい」

父「ミカサ。焼けたぞー」

ミカサ「!」


母「これで刺して取って……ナイフで周りのコゲを落としてくださいね」

ミカサ「……」プス

ミカサ「こう?」

父「串は二本使って広げて刺さないと落とすよ」


ミカサ「重い……」

父「お父さんが取ってあげよう……お皿に乗せて三等分でいいかな。お母さん」

母「ええ」

133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:15:17.66 ID:Ttkz0p2zo

父「……ほら、ミカサの分だよ」

母「熱いから気をつけて」

ミカサ「うん」


ミカサ「……いただきます」パク

ミカサ「……」ハフ

父「まだそんなに甘くはないだろう?」


ミカサ「んーん」

ミカサ「……おいしい」ホッコリ

母「そう。よかった」ニコ



―――

――

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:20:28.19 ID:Ttkz0p2zo


――844年・冬――



ミカサ(今日は晴れてるのに……すごく寒い)

ミカサ(嫌な感じ)

ミカサ「……」ブル


父「ミカサ、寒いのかな?」

母「もういい加減、そのワンピースを着るのやめて冬服にしなさい」

ミカサ「今日だけ……」


父「しょうがないな。風邪をひくんじゃないぞ」

ミカサ「……うん」

135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:26:43.99 ID:Ttkz0p2zo


父「しかし、ミカサも来年は十歳か……月日が経つのは早いもんだ」

母「そうね……」


父「本当に今日やるのか?」

母「ええ、決め事ですから」

母「ミカサもわかっているわね?」

ミカサ「……」コク


父「そうか……」

136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:32:26.68 ID:Ttkz0p2zo

父「お父さんはミカサの痛がる顔を見たくないな」

母「私だってそうですよ……」

ミカサ「……」


ミカサ「お父さん」

父「ん?」

ミカサ「私……痛がらないから」

ミカサ「……だから終わったら……アレやって」

父「お……おお……やってあげるとも。最後まで我慢できたら、いくらでもギュってするさ」

ミカサ「うん」

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:36:46.26 ID:Ttkz0p2zo

母「じゃあ、そろそろ始めましょう」

母「あなた。お水と布巾をお願いします」

父「ああ」


母「ミカサ。右腕をまくって出して」

ミカサ「うん」

母「刺青だから……消えない印が刻まれるからね。ちょっと時間かかるけど、頑張ってね」

ミカサ「……」コク


―――

――

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:39:02.19 ID:Ttkz0p2zo



――――――ズキ……

――――ズキ……

――うぅ……



ミカサ「うぅ……痛いよぅ……」


母「よく我慢できたね、ミカサ」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:43:21.85 ID:Ttkz0p2zo

母「――ミカサも自分の子供ができた時には、この印を伝えるんだよ?」

ミカサ「……?」グス


ミカサ「ねぇ、お母さん……どうやったら子供ができるの?」


母「さぁ……お父さんに聞いてみなさい」

ミカサ「ねぇー。お父さん」

父「もうじきイェーガー先生が診療に来る頃だから聞いてみようか……」


――コンコン


父「さっそく来たみたいだ」カチャ


――――

――


140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:47:45.55 ID:Ttkz0p2zo

――

――――


父「イェーガー先生。お待ちしてました」ドス


父「……?」


父「う……ぅ…………」

父「が……は……」ドサ



暴漢「どうも……失礼します」


ミカサ「……?」

ミカサ(イェーガー先生?)


母「……!」

母(……あなた!?)


ミカサ(……お父さん?)

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:51:00.78 ID:Ttkz0p2zo

暴漢「いいか? おとなしくしてろ」

暴漢「この斧で頭を割られたくなかったら――」


母「う……」


母「うあぁぁあぁぁあぁぁーーーっ!!」


暴漢「うぉぉ!? この女!」



ミカサ(え……なに?)


ミカサ(お母さん……なにしてるの?)


――なにが起こっているの?

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:54:09.10 ID:Ttkz0p2zo


<ミカサ!!>


<逃げなさい!!>


え…………お母さん?


<ミカサ!!>


えっと……逃げるって?


お父さん……どこ?


<早く!!>


お母さん……なんで暴れてるの?


え……なに? ……なに? イ……ヤダ……ヨ……

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:56:55.51 ID:Ttkz0p2zo


<ああ!! 何やってんだ馬鹿!!>

<殺すのは父親だけだと言っただろ!!>



…………お母さん?


<ミ……カサ……>


お母さん?



<…………>


……なんで血を出しているの?



<…………>


なんで……たおれているの?

145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:58:11.49 ID:Ttkz0p2zo


……お父さん?



<…………>


……あ……いた……



<…………>


体が動かないの?

お母さんも?


<…………>


何か……しゃべってよ……ねぇ……?


――――

――

146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 19:59:51.40 ID:Ttkz0p2zo

――

――――


ミカサ(寒い……)


ここはどこ?


ミカサ(知らない家……)


手首が縛られてる

でも全身が動かない


ミカサ(寒い……)


お父さん……やっぱり……この服もう寒い……

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:02:45.94 ID:Ttkz0p2zo


ミカサ(この家にも暖炉がある)


お母さん……暖炉に火つけて

お父さん……またたき火しよ

お芋はまだいっぱいあるから


ミカサ(…………)


三人で並んで眠ればあったかいのに……


いないの? ……お父さん……お母さん……



いないよ

死んじゃったもの


……壁の中なのになんで?

150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:04:29.41 ID:Ttkz0p2zo


―――世の中には悪いやつも……少しいる

―――でも良い子にしてれば来ないよ


来ちゃった

私が悪い子にしてたから?


―――……もしそんなやつが来たら、お父さんがこの銃で追っ払ってやる


お父さんが銃もってなかったから?



……わかんないよ

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:06:02.07 ID:Ttkz0p2zo


私の畑のトウモロコシ……

お父さんもお母さんも喜んでくれて嬉しかった



今度は玉ねぎ食べてもらいたくて

去年お母さんに教わったとおりに頑張ったのに

……もう食べられない



去年のマイタケも美味しかった

妖精の輪もかわいかった


……今年も生えていたのかな

また三人で行きたかった……

152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:07:54.01 ID:Ttkz0p2zo


悲しいはずなのに涙がでない

心の中が凍りついて

えぐられるように砕けて消えて

ただ……ただ……寒い



お母さん……私は……

どこに逃げればよかったの……?



お母さんもお父さんもいない所は……

私には寒くて生きていけない



お父さん……

最後まで我慢したらギュっとしてくれるって言ったのに



……約束したのに

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:10:45.03 ID:Ttkz0p2zo


<――ください>

物音が聞こえる



<小屋が見えたから……>

……人の声?



<ありがとう……おじさん>

……男の子だ



<もう……わかったから……>

……だれ?





エレン「死っっっんじゃえよ…………ッ!! クソ野郎ぉがぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!!」

154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:14:04.37 ID:Ttkz0p2zo


―――猛り狂った餓狼のような咆哮が―――


エレン「ぅらぁぁぁあああああっっっ!!」


―――迸る衝動に焼かれるような熱気が―――


エレン「おまえらなんか……こうだ!!」


―――凍てついた心に突き刺さる―――


エレン「こうなって当然だ!!」




犯人二人が死んだ……

あの男の子に殺された……



……あなたは……だれ?

155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:17:02.83 ID:Ttkz0p2zo


私を縛った縄が解かれる

……でも死んだ犯人は二人だけ



ミカサ「三人いたはず……」

エレン「え?」



暴漢「…………」



暴漢「てめぇが殺ったのか!?」

エレン「……ッ!?」



男の子が首を絞められてる



……また人が死ぬ?


ミカサ「あ…………」


……こわい

156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:20:21.49 ID:Ttkz0p2zo


<――――ぇ!!>

男の子がなにか叫んでる



<戦うんだよ!!>

戦う? ……私が?



エレン「戦わなければ……」

…………………………?



エレン「……勝てない!!」


ミカサ「…………ッ!!」

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:23:12.90 ID:Ttkz0p2zo


――勝てない……?


  ――できない!                           
      殺すなんて……                       
                                    
               ――できなければ死ぬ           
                                    
                        ――自然界の掟     
                                    
       ――犠牲になったカマキリ                 
                                    
              ――食べられたザリガニ           
                                    
――私も死ぬの?                            
                                    
                             ――こわい  
                                    
   ――巣に運ばれてエサになる                    

                                    
                ――イ……ヤダ……何も考えない     

                                    
      ――戦わなかったら死んだ?                 
                                    
                    ――無くなった         
                        お母さんの愛      
                                    
           ――消えた                    
               お父さんのぬくもり……          

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:25:37.77 ID:Ttkz0p2zo

この光景は知っている

今までに何度も……何度も……

……見てきた



そうだ……この世界は

残酷なんだ



……でも



―――― 私はその世界でまだ ――――


―――― 生 き て い る ――――

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:29:31.37 ID:Ttkz0p2zo


<戦え……>

世界が自分の内に入ってくる



<戦え!>

もう……何でもできる



<<<戦え!!>>>



私は跳んだ――

   ――男の子がいるところ
    
        ――あの光に向って!!


――――

――

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:31:52.68 ID:Ttkz0p2zo


――ミカサ

私を呼ぶ声がする



グリシャ「ミカサ」

ミカサ「……」

グリシャ「覚えているかい? ――」



……お父さんが話していた先生

そうだもう……犯人は全員死んだんだ……



ミカサ「イェーガー先生……私は」

ミカサ「……」

ミカサ「ここから……どこへ向って帰ればいいの?」



ミカサ「寒い……」

ミカサ「私にはもう……帰る所がない……」

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:33:33.99 ID:Ttkz0p2zo

エレン「……」

エレン「やるよ」スッ

エレン「……これ」グルグル



……マフラー?



エレン「あったかい……だろ?」



…………

この感じ……



ミカサ「あったかい……」

163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:35:01.27 ID:Ttkz0p2zo

グリシャ「ミカサ。私達の家で一緒に暮らそう」



え……



グリシャ「辛いことがたくさんあった……」

グリシャ「君には十分な休息が必要だ……」



え…………

164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:37:49.95 ID:Ttkz0p2zo

ミカサ「…………」



また……あったかい



――― ミカサ『お父さんの腕……大好き』

――― ミカサ『頭もほっぺも首もあったかくなるの』



あなたのマフラー……

同じところがあったかいよ……



エレン「……なんだよ?」

エレン「ほら」グイ



私の手を引っぱるの……?

165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:41:27.02 ID:Ttkz0p2zo


――― 父『風が出てきた。そろそろ家に入ろう』



お父さ……ん……?



エレン「早く帰ろうぜ……」

エレン「……オレ達の家に」



お父さんだ……ッ!



ミカサ「……うん…………」ジワ



約束どおり……また……ギュっとしてくれた……私を守ってくれた……



ミカサ「……帰……る…………」ポロポロ



…………ありがとう



―――

――

166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:43:23.86 ID:Ttkz0p2zo


――845年・春――



カルラ「今年で十歳だし、エレンとミカサにそろそろお小遣いあげるわ」

グリシャ「ああ、大事に使いなさい」


エレン「……やった! 父さん母さんありがとう!」

ミカサ「ありがとう」ペコ

167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:44:57.34 ID:Ttkz0p2zo

エレン「母さん。ミカサと出かけてきていい?」

カルラ「……夕飯までには戻ってくるのよ」

エレン「わかってるって!」


エレン「よし、行こうぜ。ミカサ」

ミカサ「どこへ行くの?」

エレン「いいから」

ミカサ「……うん」


――

168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:46:09.60 ID:Ttkz0p2zo


エレン「ええと……こっちだ」

ミカサ「どこへ向っているのか教えて」

エレン「花屋だ」

ミカサ「え?」


ミカサ「……」

エレン「そんな顔するなよ……恥ずかしいじゃんか」

ミカサ「どうして花屋なの?」

エレン「……ミカサの両親の墓参りをしようぜ」

ミカサ「!?」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:47:55.30 ID:Ttkz0p2zo

エレン「ほら。オレはまだ花をあげてなかったし……」

エレン「最初に自分で買うものはそうしようって……決めてたんだ」

ミカサ「そう……」

ミカサ「ありがとう」


エレン「家族の墓だろ。礼を言われることじゃねぇ……よ」

ミカサ「でも嬉しい」

エレン「いいっつーの」


ミカサ「……エレンがちょっと赤い」

エレン「うるせぇ! オレ一人で行くぞ!?」

ミカサ「! ……それはダメ」

エレン「冗談だよ……ほら、こっち」

ミカサ「うん」


――

170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:49:23.79 ID:Ttkz0p2zo

エレン「うーん……うーん……」

エレン「どの花もキレイで迷うな」

ミカサ「……」


ミカサ(キレイだけど……キレイすぎる)

ミカサ(つくられたようなお花たち)


エレン「どんな花がいいんだ……わかんねぇ」

171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:51:47.37 ID:Ttkz0p2zo

ミカサ(エレンの気持ちは嬉しい……けど)



―――お母さんは自然のままの姿が一番好き

―――お父さんも一緒の意見だからな――うちはこれでいいんだよ



ミカサ(お母さんとお父さんは……きっと)


エレン「なぁ……ミカサは何がいいと思う?」

ミカサ「……」

エレン「……どうした?」

ミカサ「……」


ミカサ「……キレイすぎて」

エレン「そうか……」

172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:53:31.49 ID:Ttkz0p2zo

エレン「出よう」

ミカサ「……え」


エレン「なんか花束を包むものかリボンみたいなのだけ買ってさ」

エレン「……そのへんの原っぱで花を摘んでいこうぜ」

ミカサ「!」


ミカサ「……うん!」


――

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:54:54.00 ID:Ttkz0p2zo

エレン「思ったより時間がかかったな」

ミカサ「うん」


エレン「でも墓が……とてもキレイになった」

ミカサ「きっとお父さんとお母さんも喜ぶ」

エレン「そうか!」


エレン「じゃあ祈ろう」

ミカサ「……」コク

174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 20:58:44.62 ID:Ttkz0p2zo

エレン「……」

ミカサ「……」



ミカサ(お父さんお母さん……)



――守ってくれてありがとう

エレンがいるお家は……あったかい

ううん……エレンがとてもとてもあったかいから

……私はもう寒くないです



今の私の居場所は……エレンのいる場所です

これから先ずっとエレンのそばで暮らしていきたい



だから私は……自分と自分の居場所を守るために強くなる

誰にも負けないぐらい……きっと強くなる



お父さんお母さん

二人が自慢にしてくれた娘を……

これからどうか見ていてください――

175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:00:25.32 ID:Ttkz0p2zo

エレン「……」チラ

ミカサ「……」

ミカサ「……もうちょっと」

エレン「……おう」





――あ、でもひとつだけ……

強くなるけど……やっぱりたまにはあったかい人に甘えたいです



お父さんお母さん

……そのときは許してください―― ミカサ

176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:02:43.13 ID:Ttkz0p2zo

ミカサ「……」スッ

エレン「……」

ミカサ「とても落ち着いた」

エレン「オレもだ」


エレン「風が出てきた」

ミカサ「この風……私のお父さんが……もう遅くなるから帰れって言ってる」

エレン「そうなのか?」

ミカサ「……そんな気がする」

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:04:12.88 ID:Ttkz0p2zo

エレン「じゃあ帰るか」

ミカサ「うん」

エレン「あ。なんだこれ?」

ミカサ「?」


ミカサ「あ!!」

エレン「キノコが並んでるぞ」


ミカサ(妖精の輪……)


ミカサ「それは……ここがとても良い場所であることを示す証」

エレン「へぇ……墓はあるけど、確かに静かで爽やかな感じの場所だよな」

ミカサ「うん」


ミカサ(お父さんお母さんは静かな場所が好きだったから……きっと喜んでる)

180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:06:57.36 ID:Ttkz0p2zo

ミカサ「……」

ミカサ「……エレン」

エレン「ん?」


ミカサ「……」

エレン「なんだよ……手なんか出して」

ミカサ「……」

181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:07:56.40 ID:Ttkz0p2zo

エレン「……わかったよ。つなぎたいんだろ?」

ミカサ「……」コク


エレン「ほら……」ギュ

ミカサ「……うん」ギュ


エレン「早く帰ろう。母さんが待ってるぜ」


―――

――

182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:09:35.44 ID:Ttkz0p2zo


カルラ「エレン? ……ミカサ?」

グリシャ「二人ともソファーだよ」


カルラ「んま……ご飯を食べたと思ったらすぐ寝ちゃったの」

グリシャ「小遣いを貰って遊び回ったんだろう」

グリシャ「疲れているだろうから、そっとしておいてやりなさい」


エレン「……」クー

ミカサ「……」スヤスヤ


カルラ「はいはい……二人とも肩を寄せ合って仲むつまじいですこと」

カルラ「……ミカサもあの頃が嘘みたいに幸せそうねぇ」


ミカサ「……」スー


――――

――

183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:11:45.84 ID:Ttkz0p2zo


ミカサ『エレン』

エレン『?』

ミカサ『ん……』



―――私もお父さんみたいなあったかい人と結婚したい

―――ミカサの唇は結婚する人のためにとっておきなさい



ミカサ『……』

エレン『なんだよ?』


ミカサ『ちょっとだけ……口にキスして……いい?』

エレン『な……なんだよそれ』


ミカサ『……ダメ?』

エレン『あ……ええと……ちょっとぐらい……ならな……』

ミカサ『うん!』

184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/20(木) 21:13:15.64 ID:Ttkz0p2zo

――

――――


ミカサ「……」ニヘ


カルラ「……」

カルラ「まったく……どんな夢を見ているのかしらね」


ミカサ「あったかい……」

ミカサ「ん……ぅ……」スヤスヤ


グリシャ「……毛布をかけてあげなさい」

カルラ「ええ……そうね」

カルラ「……ゆっくりおやすみなさい」





おわり