1: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:00:25.58 ID:SrxQsJWO0
サーヴァントが召喚されたままの平和な世界観
痛い地の文ありです
ご注意を

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431792015

引用元: 言峰「聖壺戦争」 

 

Fate/strange Fake(5) (電撃文庫)
成田 良悟
KADOKAWA (2019-04-10)
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2: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:02:34.62 ID:SrxQsJWO0
言峰「諸君、はるばるご足労頂き感謝する」

凛「珍しいじゃない、綺礼。あなたが私にお願いをするなんて」

士郎「俺や桜まで呼んで…一体何の用だ?」

言峰「実は…聖堂教会も最近は資金繰りに苦しんでいてな。新たな資金源を確保する必要に迫られているのだ」

凛「随分生々しい話じゃない…。ま、平和な世界だからもう存在意義もないものね」

士郎「まさか俺たちに金を貸せとか言う訳じゃないだろうな」

言峰「教会もそこまで落ちぶれてはいない。しかし、かなり切迫した状況なのも事実だ。従来の発想にとらわれずに資金を調達する必要がある」

言峰「そこで私が目を付けたものの一つがオンラインゲームだ。正直に話してしまえば最初はただの上の連中をからかうための冗談に過ぎなかったのだがね」

言峰「実際に提案したところ何故か食いつきがよく…あれよあれよという間にプロジェクトが進んでしまった」

アーチャー「聖堂教会には暇人しかいないのか…?」

3: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:03:57.99 ID:SrxQsJWO0
言峰「無論、ただのゲームではない。参加するためには魔力が必要となる。当然、参加できるのは魔術師のみということになる」

言峰「ハッカーと魔術師が協力し、ネットワーク上に結界を作り出し、固着させた。いわば、人工的な固有結界のようなものだな」

士郎「無駄にすごいことしてるな…」

言峰「参加者は、PCを通じて魔力を流すことで、その空間内に肉体ごと取り込まれる。ヘッドマウントディスプレイでも実現し得ないほどの臨場感が味わえる仕組みだ」

桜(某SA○のような感じでしょうか…?)

言峰「そこから試行錯誤の末、出来上がったのが…ネットの世界で聖杯戦争の疑似体験ができるオンラインゲーム『聖壺戦争』だ」

言峰「モチーフにしたのは、ネット上で最大の掲示板サイト『2ちゃんねる』――お前たちも名前くらいは聞いたことがあるだろう」

士郎「まぁ、名前くらいは…あんまりいい印象はないけどな」

言峰「その『2ちゃんねる』上で有名になった人物、逸話を元にサーヴァントを召喚し、競い合わせるのがこのゲームの趣旨だ」

士郎「なんか…ろくでもないような奴が召喚されそうだな」

4: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:05:00.23 ID:SrxQsJWO0
ライダー「そして最後まで生き残ったものが勝者となる…と?そう聞くと聖杯戦争と変わりありませんね」

言峰「その通りだ。基本的なルールは聖杯戦争と変わらない。が、これはあくまでゲームだ。ゲーム内で死亡しても影響はない。ただゲームの外に排出されるだけだ」

言峰「お前たちへの依頼というのはそのテストプレイだ。サーヴァントが戦うことによって生じる鯖への負荷等を検証したい」

セイバー「本来サーヴァントである私達が、マスターの気分を味わえるというのは面白いかもしれないですね」

アーチャー「…それに我々が参加するメリットはあるのか?教会の事情などこちらとしてはどうでもよいのだがね」

言峰「勿論、タダでとは言わん。謝礼は出す。食い扶持が増えた分の生活費にでも当ててくれたまえ」

アーチャー「くっ…」

言峰「せっかくだ。本気で競い合ってもらうために…生き残った順位によって謝礼の額も変えようか」

5: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:05:46.87 ID:SrxQsJWO0
凛「――いいわ、引き受けましょう、アーチャー。たかがゲームよ、気にすることないわ。すぐにクリアして、謝礼を貰っちゃえばいいのよ」

アーチャー「君のことだ。当然狙うのは優勝だろう?」

凛「あら、よくわかってるじゃない」

士郎「…謝礼が出るなら、俺も受けよう。これ以上バイト増やすのはキツイしな…」

セイバー「士郎が参加するのなら、当然私も参加します」

桜「あ、あの私も…参加します!」

ライダー「桜が参加するのなら私も参加しましょう」

言峰「決まりだな。私を含めて、ちょうど7人。今ここに、『聖壺戦争』の開始を宣言する」

6: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:07:15.50 ID:SrxQsJWO0
~~~~

士郎「あれ?さっきまで教会にいたはずなのに」


そこは無人の荒野だった。

周りには7人以外の人影はなく、静寂に包まれていた

辺りを見回すと、遠くの方にうっすらと森や、山の影が見えた


凛「ここがさっき言ってた結界…?すごいわね。本当に架空の世界を創りだすなんて…」

アーチャー「…肉体の再現度も完璧だ。ただし、サーヴァントとしての力は失われているようだがな」

言峰「お前たちに直接戦われては本末転倒なのでな。当然、調整してある。最も一般の魔術師程度の魔術行使は可能だ」

セイバー「それで…どうやってサーヴァントを呼ぶのですか?」

言峰「そうだな、ここらでゲームシステムの説明をするとしよう。サーヴァントを呼び出すためには『触媒』と呼ばれるアイテムが必要となる」

ライダー「『触媒』…ですか。セイバーに対するアヴァロン、アーチャーに対するペンダントに相当するものですね」

言峰「サービス開始時には『触媒』の奪い合いも実装予定だが…今回は戦闘データ収集がメインのためそこは割愛する」

言峰「各々に1つずつ『触媒』を割り当てている。場所は支給されている液晶端末で表示できる。確認してくれ」

桜「あ、本当だ…ポケットにいつの間にかスマートフォンのようなものが入ってます」

7: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:08:12.63 ID:SrxQsJWO0
士郎「えっと方向は…ここから北にずっと行った場所だな」

凛「私は南西の方角…成程、ここで解散ってわけね?」

言峰「そういうことだ。各自、『触媒』を手に入れたらその場で召喚を行ってくれ。全員の召喚が完了したら、ゲームの開始だ。自由に殺しあってくれ給え」

言峰「どんなサーヴァントが出るかは…まぁ、お楽しみというわけだ」

セイバー「士郎とは別行動ですか…残念ですが仕方ありませんね」

凛「次会うときは、敵同士ってことね…覚悟しておきなさいよ、アーチャー。普段のいやみったらしい説教の恨み、ここで晴らしてあげるんだから」

アーチャー「おお、怖い怖い。せいぜい一抜けしないよう気をつけるとしよう」

ライダー「桜、気をつけてください。ゲームとはいえ、あの神父のことです。なにか企んでいるとも限りませんから」

桜「うん、ありがとう。ライダーも気をつけて」

8: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:09:46.28 ID:SrxQsJWO0
~~~~

士郎「地図によるとここら辺だよな…」

士郎「お、なにか落ちてる。どれどれ」

士郎「…ネックレス?しかも指輪が通ってる」

士郎「うーん…?どんなサーヴァントなんだ?」

~~~~

セイバー「地図によると間違いなくここなのですが…」

セイバー「…まさかこれが触媒ですか?このお皿の中に入ったコレが…?」

セイバー「しかもこれは…食品じゃないですか。何故こんなものが触媒に?」

セイバー「たしか…以前大河の誕生日に振る舞われた食べ物の容器の中に、これと同じものが入っていましたね」

~~~~

凛「…世界の作り込みはすごいけど、肝心のシステムは雑じゃない?」

凛「まさかこのちゃっちいお守りが、触媒だっていうの…?」

凛「勝つためには最強のカードを引き当てないといけないっていうのに…」

凛「本当に性格悪いわねあのエセ神父!」

9: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:11:10.47 ID:SrxQsJWO0
~~~~

桜「触媒らしきものを見つけたのはいいんですけど…」

桜「…紙?文字がびっしりと書かれていますね…」

桜「…わざとでしょうか。文字化けしてて内容がわかりません」

桜「雰囲気的には、何かの契約書のような気がしますけど…」

~~~~

ライダー「…まさかとは思いますが」

ライダー「この折れた木片が…触媒なのですか?」

ライダー「いや…ただの木片ではないですね。持ち手が存在する。何かの武器のようです」

ライダー「木刀…?いえ、棍棒でしょうか…?」

~~~~

アーチャー「――やれやれ、あの神父のことだ。どうせろくでもないことを考えているとは思ったが」

アーチャー「まさか触媒が紙切れ一枚とは…全く恐れ入る」

アーチャー「…いや、よく見ると端に線が印刷されている。これは…ノートの切れ端か?」

アーチャー「ますます持ってわからんな。この程度の触媒で呼び出せるサーヴァントがどれほどのものか。果たして戦いになるのかね」

10: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:12:23.47 ID:SrxQsJWO0
~~~~

士郎「触媒を手に入れたから…いよいよ召喚か」

士郎「あっ…俺、自分でサーヴァント召喚したことないから、詠唱わかんないぞ…」

言峰『その点に関しては心配不要だ』

士郎「うわっ!今のは…端末からか?」

言峰『そうだ。今回はテストプレイということで、私が管理者としてこの端末を通じてある程度のサポートと監視を行う』

言峰『聖壺戦争に於いては、詠唱は不要だ。触媒に対しサーヴァントを召喚したいと念じれば良い。召喚の意思さえあれば、サーヴァントを呼び出すことができる』

言峰『ちなみに、この端末では一応私との通信が可能だが…余程のことがない限りはそちらからこちらへの通信は認められない』

言峰『それでは健闘を祈る』プツッ

士郎「…一方的に言って切りやがったな」

士郎「念じればいい、か。試してみるか」

士郎「…」スッ

11: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 01:14:01.62 ID:SrxQsJWO0



その瞬間、触媒を中心に魔法陣が広がった

魔法陣は白く輝き、眩しさで一瞬視界を奪われた




士郎「…!?」




その一瞬の間に…魔法陣の中の触媒は消滅していた

触媒があったはずの場所には、一人の『騎士』が立っていた

全身に白き鎧を纏い、その手には黒く輝く剣が握られている

――間違いない。このサーヴァントは、セイバー…!

そう、確信した

「…」

その騎士もこちらに気づいたようだ

こちらに視線を向け…ある一点を見つめている

それは、腕に刻まれた『令呪』

サーヴァントと魔術師の契約の証である

目の前にいる男が、自分のマスターだと悟った騎士は

静かに、契約の言葉を口にした






「――お前がどうやって俺のマスターだって証拠だよ」





士郎「…はい?」

19: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 17:41:09.52 ID:SrxQsJWO0
~~~~

「アンタが、俺のマスターか?お嬢ちゃん」

凛「…ええ、そうよ。不本意だけどね」

「おいおい、不吉なこと言うなよ。せっかくの機会だ。仲良くやろうぜ」


――お守りを触媒として召喚されたこのサーヴァント

そいつは、明らかに異質だった

鎧を身にまとっているわけでも無ければ、法衣に身を包んでいるわけでもない

それどころか、武装の痕跡すら無い

その格好は…明らかに現代の日本人の私服であり

年齢も自分より少し上くらい

そう、こいつは明らかに『普通の人間』だった

少なくとも、見た目だけは

20: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 17:41:51.76 ID:SrxQsJWO0

凛「一応聞いておくけど…あなた、クラスは何?会話ができるってことはバーサーカーではないでしょうけど、得物も何も持って無いみたいだし」

凛「ものすごい格闘の達人…ってわけでもないわよね」

「残念ながらな。まぁなんとなく察しはついてるかもしれんが」

「――俺は『キャスター』だ。よろしくな」

凛「…私の知っているキャスター像とは随分違うわね。アンタ、それで魔術師だって言うの!?」

壺キャスター「うーん…正確には違うな。俺の使うのは、魔術じゃない」

凛「じゃあ一体何なのよ!…そうだ、アンタの真名を」



壺キャスター「…待った、マスター。いきなりだが…客が来たみたいだぜ」

凛「…!」

凛(敵襲!?早すぎる!

21: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 17:42:50.87 ID:SrxQsJWO0
セイバー「――迂闊ですよ、凛。言われていたでしょう。『サーヴァントが全員召喚完了したら、戦いの開始』だと」

凛「…!セイバー!?」

セイバー「支給された端末には、サーヴァントが召喚された履歴が情報として残るのですよ。召喚を行った場所も、ね」

凛(くそっ…!使い方がいまいちわからなかったから地図以外見てなかった…!)

凛「へぇ…それで、召喚直後の情報の少ない隙を狙って攻撃してきたってわけ?偉大なる騎士王が、随分姑息なことするじゃない」

凛(今はとにかく…時間を稼がないと)

セイバー「凛。あなたは間違いなくこの戦いにおいて脅威になる。早めに倒せるならそれに越したことはありません。そして…」

セイバー「我々に時間稼ぎは無駄ですよ。…ランサー、お願いします」


「承知した」


セイバーの背後から現れたのは、全身を鎧で武装したサーヴァントだった

しかし、その鎧は決して重装ではなく、機動性を重視しているように見える

手には長槍を握っている。成程、セイバーが言ったとおり『槍兵』のサーヴァントなのだろう

頭には特徴的な兜を装着している。これは真名特定の足がかりになるかもしれない…そんなことを考えた

次の瞬間――そのサーヴァントは視界から消えていた

22: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 17:43:58.31 ID:SrxQsJWO0
凛「…へ?」


壺キャスター「上だ!マスター!」


キャスターに言われ咄嗟に上を見上げると

はるか上空まで飛翔したランサーが、凄まじい速度で落下してきていた

その槍の穂先は確実に自分を補足しており…すぐ目前に迫ってきていた

やられる…!


――だが

槍の穂先が体に触れる前に、体を発光する障壁が包み込んだ

槍は障壁に阻まれ、槍兵の体は弾き飛ばされた

弾き飛ばされた槍兵は、空中で体勢を立て直し、着地した


壺ランサー「ほう…なかなかいい結界じゃないか」

凛「へっ…な、何が…起きたの?」


脱力してその場に座り込むと懐から何かがポトッと落ちた

それは触媒に使ったものと同じ…お守りだった

23: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 17:44:29.96 ID:SrxQsJWO0
凛「…まさか、キャスター。あなたがこれを…?」

壺キャスター「…チッ。一回攻撃を受けただけで使い物にならなくなったか。いくらサーヴァントの攻撃とは言え…まだまだ親父のものには及ばないな」


壺ランサー「キャスターと聞いてたから少し引け目があったが…その分だと十分に戦えそうだな」

壺キャスター「よく言うぜ。いきなりマスターを狙ってきたくせによ」

壺ランサー「いやいや、失礼した。マスターが短期決戦をお望みだったのでね。…お詫びと言っては何だが」

壺ランサー「――全力で君を打ち倒すと約束しよう」

壺キャスター「ほう…やってみろ」


凛(…始まる。サーヴァント同士の対決が…!)

29: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:28:48.94 ID:SrxQsJWO0
二人のサーヴァントは、間合いを図っていた

片方は、長槍。もう一方は素手。リーチの差は歴然だ

だが、ランサーはまだ仕掛けない。相手には何か隠し球がある。そう確信しているかのように



壺キャスター「…威勢のいいこと言った割には、随分臆病なんだな」

壺ランサー「慎重と言ってほしいな。先程の結界といい、君の実力もまだ未知数だからね」

壺ランサー「ただ…もう、その結界で私の攻撃を防げるなどと思わない方がいい」


言うが早いか、ランサーは先程と同じく大きく飛翔した


壺キャスター「へ、学習しないな!また同じ手か!」

ランサーの槍は、再び障壁に阻まれた

激突の衝撃で、槍の穂先は大きく火花を吹いた

先ほどと違うのは…ランサーは弾き飛ばされず

逆に障壁に綻びが生じ――吹き飛ばされたのはキャスターの方だった


凛「そんな…!」

壺キャスター「…!くそっ…」

壺ランサー「さっきは失礼した。人間相手だったために合わせて加減してしまったようだ」スタッ

壺ランサー「今はうまく槍をかわしたようだが…次は確実に君の体を貫いてみせよう」

凛(…マズい!このままじゃ…!)

30: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:29:32.63 ID:SrxQsJWO0
壺キャスター『――聞こえるか、マスター』

凛『!?これは…念話?』

壺キャスター『そうだ。見ての通り、今俺たちは不利な状況だ』

壺キャスター『あの上空からの攻撃を防ぐ手段がない以上、敗北は時間の問題だ』

凛『…』

壺キャスター『だが、手がないわけじゃない。今から確実に、アイツにダメージを与えてみせる』

凛『…できるの?そんなことが』

壺キャスター『俺を信じてくれ。そして…俺の攻撃があいつに効いたら』

壺キャスター『急いで、西にある雑木林まで走ってくれ。大体200mくらいってところか』

凛『雑木林…?…成程、そういうことね。わかったわ』

壺キャスター『おそらく、同じ手は2度通じない。ラストチャンスだと思ってくれ』

凛『――頼んだわよ、キャスター』

31: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:30:47.97 ID:SrxQsJWO0
セイバー「ランサー。相手にはあなたの攻撃を防ぐ手段がないようだ。トドメを」

壺ランサー「承知した。…ここまでのようだな」

壺ランサー「さよならだ、キャスター」ビュン


凛(お願い…!キャスター!)


壺キャスター「――こっちに向かって来るってことは…俺からも狙いやすいってことだ!」

壺ランサー「何…!?」

壺ランサー(まさかあれは…宝具…!?)

壺キャスター「喰らいやがれ…俺の宝具を…!」



壺キャスター「『破戎すべき全ての恐怖体験(破ぁ!!)』!!」



キャスターの両手から青白い光弾が、ランサーめがけて発射された

32: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:32:20.75 ID:SrxQsJWO0
――ランサーの動揺は一瞬だった

この攻撃は通じない。恐るるに足りない。

そう気づくのに時間はかからなかった。

何故ならば…キャスターの攻撃はどう見ても魔術攻撃

三騎士クラスであるランサーには『対魔力』のスキルが備わっている

たとえ攻撃を食らったところで、大したダメージにはならない

避けるのは難しくない。だが、このまま攻撃を続行したところで何も問題はない

だからこそランサーは回避を捨て、自らキャスターの宝具に突っ込んでいった

これをかき消し、キャスターの体を貫く。どう転んでも勝利は揺るがない

――筈だった


壺ランサー「…!?な、にぃ!?」


キャスターの宝具は…確実にランサーの体にダメージを与えた

致命傷までには至らない。だが、一瞬でも意識を失いかけるような、強烈な一撃だった

自分が高速で落下して来たこともあり、反動で更に威力も増加しているようだ

ランサーは吹き飛び、地面に腹からたたきつけられた


セイバー「ランサー!?」

33: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:33:30.12 ID:SrxQsJWO0
壺キャスター「走れ!マスター!」ダッ

凛「オッケー!」ダッ!

セイバー「凛!?一体どこに行こうと…!?」

セイバー(あちらには雑木林が…木々で覆われた閉ざされた空間)

セイバー(そこでランサーの機動力を封じようという作戦ですか…考えましたね、凛)

セイバー「だが、させない!ストライク・エ…あ…」シュウウ

セイバー「エクスカリバーが…消えた…!?」

言峰『説明したはずだぞ、セイバー。お前たちのサーヴァントとしての力は失われていると』

セイバー「――ですが!私は魔術師ではない!どうやって戦えばいいというのですか!?」

言峰『その質問には答えかねる。自らの手で答えを探せ』プツッ

34: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/17(日) 20:35:13.23 ID:SrxQsJWO0
セイバー「くっ…!ランサー!起きてください!キャスターと凛を追いましょう!」

壺ランサー「…悪いな、マスター。時間切れのようだ。キャスターもキャスターのマスターも、もう森に入ってしまった」

壺ランサー「流石にあの中じゃ、分が悪い。キャスターの宝具もあることだしな」

セイバー「…ランサー。宝具の開放を許可します。あなたの宝具は対軍宝具の筈。あの森の一部くらいは吹き飛ばせるでしょう」

壺ランサー「ほう…いきなりだな。承知した、マスター」


壺ランサー「…キャスターよ。認めよう、お前を侮っていた。この結果は当然のことだ」

壺ランサー「だが…お前は知っているのか?この私にとって最も屈辱的な行為…それは『地に這いつくばる』こと」

壺ランサー「――あまり私を怒らせない方がいい^ ^」

38: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/18(月) 20:52:22.94 ID:yXua0bK10
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凛「はぁ…はぁ…なんとか無事に切り抜けられたみたいね」

壺キャスター「ああ。ランサーが素直に宝具に突っ込んでくれてよかったぜ」

凛「…教えてくれる?キャスター。あなたの攻撃が何故、ランサーに通じたの?」

壺キャスター「――確かに、三騎士クラスのランサーの持つ対魔力なら、通常の魔術攻撃は無効化されてしまうだろう」

壺キャスター「だけどな…俺の『破戎すべき全ての恐怖体験(破ぁ!!)』は純粋な魔術ではなく…霊体に対する絶対的な優位性を持つ『対霊』宝具だ」

凛「…!まさか…」

壺キャスター「そう、どれだけ強くとも、サーヴァントとは精霊の類であり、その肉体は霊核を中心とした仮初めの器。広義で『幽霊』と呼ばれる存在だ」

壺キャスター「相手が霊であるならば…防御の有無は関係なく確実に傷を負わせる事ができる」

壺キャスター「言ってみれば…サーヴァントにとっては天敵とも言える宝具ってことだな」

39: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/18(月) 20:53:32.84 ID:yXua0bK10
凛「――呆れた。そんな理不尽なルール無用の性能がまかり通っているなんて…。現実で行われている聖杯戦争のサーヴァントでも、あなたの宝具は防げないってこと?」

壺キャスター「俺が現実の聖杯戦争で呼ばれることはありえないから、その推測は無意味だな。それに…」

壺キャスター「さっきの戦いでわかったことだが…俺達の体はどうも普通のサーヴァントとは違うみたいだ」

凛「どういうこと?」

壺キャスター「『霊』という定義に当てはまる要素が薄いらしい。本来なら、さっきのでランサーは消滅していてもおかしくなかった」

壺キャスター「ここが現実世界では無いせいなのか、霊というよりは『データ』としての側面が大きい」

壺キャスター「ゲーム的に言うなら…防御力無視の固定ダメージを与えることはできるが、一撃で消滅させる程の大ダメージを与えることはできない…って感じだな」

凛「逆に言えば…相手が自分よりもはるかに強く、どんなに優れたサーヴァントだったとしても…当たりさえすれば一定のダメージは与えられるのね?」

凛「――十分よ、キャスター。ごめんなさい。私、あなたのこと正直ハズレサーヴァントだと思ってたわ」

壺キャスター「正直だな、マスター。気に入ったぜ。だが今はこの状況を切り抜ける方法を考えないとな」

40: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/18(月) 20:54:44.73 ID:yXua0bK10
凛「森の中に入ったはいいけど…この程度の木々なら、ランサーもさっきのジャンプ攻撃でなぎ倒しながら強引に攻撃してくるんじゃない?」

壺キャスター「その可能性もあるが…障害物を巻き込みながらの攻撃というのは精度に欠ける」

壺キャスター「それにやつは俺の宝具を喰らっている。うかつな行動はしてこないだろうさ」

壺キャスター「もっとも…もしあいつが、『ライダー』として召喚されてたら…こんな小細工は無意味だったろうな」

凛「…ランサーの真名に、心当たりがあるのね?」

壺キャスター「ああ。そもそも『2ちゃんねる』じゃ、槍に関する逸話を持った存在はほとんどいない」

壺キャスター「そして、あの竜を象った兜。上空に大きく飛翔する攻撃方法。思い浮かぶのは一人しかいない」

壺キャスター「…そいつは、とあるゲームの職業の一つがキャラクターとして具現化した姿」

壺キャスター「かつてその能力の低さが起因し、『ガリ』という蔑称が定着してしまった」


壺キャスター「“竜騎士”というジョブが人格を持った、ネ実が産んだ不遇の戦士…『リューサン』」

42: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 00:45:14.21 ID:AQnO2u6p0
凛「リューサン…それがあいつの真名…」

壺キャスター「先に相手の真名を知れたのはラッキーだな。対策が立てやすい」

凛「そのリューサンってのは…ゲームの竜騎士と同じ技を使えるってこと?」

壺キャスター「いや…それは微妙なところだな。聖壺戦争で召喚されるサーヴァントは『2ちゃんねる』上でイメージが形成され、生み出された英雄たちだ」

壺キャスター「だから当然実在の竜騎士そのものではない。同じ技が使えるとは限らないし、逆に言えば」

凛「本来の竜騎士が使えない技を使えるかも知れない、ってことね」

壺キャスター「頭の回転が早いな、マスター。こりゃ本気で優勝狙えるかもな」

凛「ねぇ、キャスター。ついでに聞くけど…リューサンの逸話から、宝具になり得るものを推測できる?」

壺キャスター「ああ、大体は検討が付いている。恐らくはアレだろう。そう…」


キャスターはそこで言葉を切った

森の外から、強力な魔力の発生を感じたからだ

43: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 00:46:15.84 ID:AQnO2u6p0

凛「この魔力…まさか宝具…!?」

壺キャスター「しまった…!あいつ…森ごと俺たちを吹き飛ばす気か!」

凛「ちょっ!?」

壺キャスター「ちっ…随分猪突猛進なマスターだな。魔力の消費も考えずここで高威力の宝具をぶっ放すとは」


~~~~

壺ランサー「この一撃で死ねば、それで良し。うまくかわしたところで…開けた場所ならキャスターに負ける道理も無し」

壺ランサー「どちらにしろ、君たちはここで終わりだ…キャスター!」


ランサーの持つ長槍に、魔力が集中する

槍は稲光のような強力な光を纏っており

今か今かと開放の時を待っていた

44: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 00:47:34.97 ID:AQnO2u6p0
~~~~

凛「もう魔力だけじゃない…!こんな暗い森のなかでもはっきりと、外で何かが発光してるのがわかる…!」

壺キャスター「相手はどうあってもここで俺たちを潰したいらしい…!随分警戒されてるな、マスター」

凛「キャスター!防御の手段は無いの!?」

壺キャスター「ありったけのお守りと札で障壁を作るつもりではあるが…焼け石に水だろうな」

凛「そんな…!?」


そして遂に

ランサーの槍から、幻獣の力を模した

強烈な閃光が放たれようとしていた――




壺キャスター「やばい、『紫電の槍(ライトニングスピア)』だ!」

48: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:10:08.66 ID:AQnO2u6p0
目もくらむような光とともに

天を裂くような轟音が鳴り響いた

凛は思った。

走馬灯とはこのようなものなのか

時間が無限に感じる

光を感じてから軽く数十秒は経った気でいるのに

未だにこの身を貫く衝撃は届いていない

――そこではじめて、奇妙なことに気づいた


凛「…攻撃が…来ない…?」

壺キャスター「やっと目を開けたかマスター。気絶したのかと思ったぜ」

凛「キャスターも無事…ってことは、あなたが私をかばったわけでもなさそうね」

壺キャスター「残念ながらな。…森の外を見てみろ」

凛「外…?」


キャスターに促され、差し込む光を頼りに森の外へと顔を出した

――目の前には夢想だにしなかった光景が広がっていた

そこにはランサーも、そしてそのマスターであるセイバーの姿もなく

直径数十メートルはあろうかという巨大なクレーターが形成されていた

49: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:10:54.36 ID:AQnO2u6p0
凛「何…コレ…!?ランサーの自滅…?」

壺キャスター「それはどうかな。こんな馬鹿でかい大穴をあけるには、真下にでも攻撃しないと無理だ」

壺キャスター「今まさに宝具をぶちかまそうとしていたランサーが、何者かの攻撃を受けた…ってのが自然なところだな」

凛「何者か…恐らくはアーチャーよね。辺りに人影はないし。遠距離から何かを飛ばして攻撃してきた…?」

凛「ランサーは…やられちゃったのかしら?」

壺キャスター「どうだか。アレだけの跳躍力だ。マスターを抱えてこの場を離脱するのもわけないだろうさ」

凛「…私達は、うまく切り抜けられた、って解釈でいいの?」

壺キャスター「ひとまずはそれでいいんじゃないか?全く、召喚されたばっかりだっていうのに疲れたぜ」

凛「そうだ、私、あなたの真名をまだ聞いてない。と言うか自己紹介もまだだったわね。…遠坂凛よ。よろしくね」

壺キャスター「おう。俺の真名は…」

50: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:12:56.64 ID:AQnO2u6p0
~~~~

セイバー「『寺生まれのTさん』…?それがあのキャスターの真名ですか?」

壺ランサー「ああ。間違いないだろう。出展はVIPともオカルト板とも言われているが…定かで無いらしい」

壺ランサー「魑魅魍魎による人々への悪意を因果をねじ曲げて救済する…伝説の退魔師さ」

セイバー「しかし驚きましたね。まさかランサーの対魔力を無視して攻撃を当ててくるとは…」

壺ランサー「ああ。だけど悪いことばかりでもない。一回攻撃を受けたことで…あの宝具の底も知れた」

壺ランサー「防御も何も考えず真正面からくらってあの程度の威力だ。無策で突っ込んでも恐らくは数発は持つ」

セイバー「その間に仕留めればいい…ということですか。マスターが凛でなければ、さほど苦労する相手では無いかもしれませんね」

壺ランサー「今考えなければいけないのは、俺らの妨害をしてきた奴のことだ」

セイバー「恐ろしい一撃でしたね…隕石でも降ってきたかと見まごうほどでした」

壺ランサー「攻撃方法からしておそらくアーチャーだろうが…いかんせん情報が少なすぎるね」

セイバー「ランサーに抱えて跳んでもらわなければ、間違いなくあそこで脱落でした。感謝します」

壺ランサー「誰かと一緒に戦えるだけで頑張れるってものさ。それよりマスター、魔力の方は大丈夫か?」

セイバー「問題ありません。戦闘力は失われましたが…竜の因子の恩恵は多少残っているようです。魔力の回復が異常に早い」

セイバー「たとえ魔力が空になっても、数十秒もあれば宝具を発動できるくらいにはなるでしょう」

壺ランサー「ははは…マスターも大概バケモノだな」

51: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:13:50.89 ID:AQnO2u6p0
~~~~

壺キャスター「さて…さっきばら撒いた札とお守りを回収しないとな」

凛「すごい量ね…どこに持ち込んでるのよこんなに」

壺キャスター「数だけあってもな。道具作成はもう少しちゃんと親父から習っておくんだったぜ」

凛「ん…?」

壺キャスター「どうした?マスター」

凛「…ううん!なんでもない」

壺キャスター「ならいいけどよ。拾うの少しは手伝ってくれよ」


凛は気づいた

この大量のお守りと札は――

先ほど自分が立っていた場所を守るように配置してあることに

召喚からまだ時間も立っておらず

ろくに会話も無いまま戦いに移行したにも関わらず

マスターである自分を守ろうと…

いや、マスターである前に一人の人間を守ろうとしたのだ

自分の身を顧みず


――寺生まれって凄い

初めてそう思った

52: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:15:00.16 ID:AQnO2u6p0
~~~~

ライダーは、戸惑っていた

原因は、目の前にいる一人の男…

つい先程、自分が召喚したサーヴァントである

召喚を終えたライダーは、自分のサーヴァントのことを知ろうと

同時に今自分たちの置かれている状況を整理しようと

情報交換をしていたところだった

しかし、その途中…

そのサーヴァントは何かの気配に気づいたかのように

突然明後日の方角に向かい――『何か』を投擲した

その威力は凄まじく、腕の振りだけで辺りに突風が発生した


男は『アーチャー』のサーヴァントだった

53: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:16:56.31 ID:AQnO2u6p0
ライダー「あ、アーチャー…?いきなり何を…?」

「ああ、ごめんねマスター。向こうで、サーヴァント同士が戦う気配がしたんだ」

ライダー「…!?(端末にも情報は載ってない…自分で気配を察知した…?)」

ライダー「戦闘中ということは…今の攻撃で漁夫の利を狙おうとしたのですか?」

「――心外だな。僕がそんなセコいこと狙うと思ったのか?」

「あの戦いは…もう終わりそうだった。僕が介入しなければ、1組脱落してたかもね」

ライダー「えっ?ということは…あなたは敵が減る機会をわざわざ潰したのですか…!?何故、そんなことを…」

「確かに、この戦いはバトルロワイヤル。最後まで生き残ったものが勝者だ。弱いものはいずれ駆逐されるだろう」

「だが戦いには相性がある。さっきやられそうだったサーヴァントも、もしかしたら僕にとっては天敵と呼べるような相手かもしれない」

「そうなると彼らは、僕らと戦えば勝機が掴めたかもしれないのに、運悪くその前にやられてしまう…ということもあり得た」

「――それって、フェアじゃないと思わないか?」

ライダー「フェ…ア…?」

54: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/19(火) 23:17:29.77 ID:AQnO2u6p0
それは、公正の名を借りた…傲慢以外の何者でもなかった

要するに、自分は全てのサーヴァントと戦わなければ気が済まない

自分と戦うまで、脱落することは許されない…そう主張しているのと同義だ

しかし――ライダーは改めて自分の召喚したサーヴァントを眺める

彼には…確かにその傲慢を突き通すだけの実力がある

まるで神話の英雄のような確かな実力と存在感を、このアーチャーから感じ取った


ライダー「…アーチャー。ならばせめて、一言私に相談してください。私もマスターとして、あなたの力になりますから」

「承知した、マスター。しかし…どうも『アーチャー』と言われるのは慣れないね」

ライダー「…?他に相応しいクラスがあるとでも?」

「クラス、というのも違うかな。僕自身を表すのに相応しい呼び名が他にあるからね。僕は…」


「――メジャーリーガーさ」

61: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:53:33.49 ID:+cLp6pGd0
~~~~

壺セイバー「一体いつになったら着くんですかねえ…?目的地までの距離が事前にわかっていれば安心もできるがわからない場合手の打ち様がおくれるんですわ?お?」

士郎「もうちょっとだから我慢してくれ、セイバー。ん…?霧が濃くなってきたな」

士郎「ここが地図にあった『霧に覆われた街』だな。やっと拠点が確保できそうだ」

壺セイバー「見事な霧だと感心するがどこもおかしくはない。ここらで休憩して敵の動きを見るべきそうすべき俺ならそうするだろうなこの時間から動いてもろくな結果にならないのは明白この探索は早くも終了ですね」

士郎「まぁもう時間も遅いしな。しかし実際の聖杯戦争と違って拠点も0から探さないといけないのはキツイな」


最初はセイバーの奇っ怪な言語に戸惑っていた士郎だったが

次第に打ち解けていき、今ではなんとなく言葉の意味もわかり

意思の疎通ができるようになっていた

現在二人は行動の拠点となる場所を求めて探索をしていた

ゲーム内にも昼夜は存在し、夜になれば暗黒が世界を包み行動は難しい

活動範囲を広げ、なおかついつでも敵サーヴァントを迎撃できる体制を整えるために

活動拠点の開拓は急務だった

62: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:54:04.93 ID:+cLp6pGd0
士郎「しかし街はあるのに人影が無いっていうのは不気味だな…」

壺セイバー「俺がGMならNPCくらい配置しているだろうな(この辺の心配りが人気の秘訣)」

士郎「隠れる場所には困らず、しかも霧で視界が悪い…アサシンにでも出くわしたら厄介そうな場所だな」

壺セイバー「戦闘に入ればアサシンとは別次元のナイトが最強の攻撃手段の持ち主なので心配ひ不要です。お前全力で安心していいぞ」

士郎「ははは…ありがとう、セイバー。でも一応ここらに仕掛けておくか。俺でも敵の侵入を知らせる簡単な結界くらいは貼れるはずだ」


壺セイバー「…おいィ?確かに攻めてくるのは勝手だがそれなりの攻め方があるでしょう?」

士郎「…!?敵か!?」


「あっ…良かった…先輩だ…!」

63: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:54:43.49 ID:+cLp6pGd0
桜「先輩、私です!桜です!戦うつもりはありません」

士郎「桜!?一体…?」

桜「私のサーヴァントにはちょっと離れたところで待ってもらってます。あの、先輩…私達、同盟を組みませんか?」

士郎「同盟…?」

桜「そうです!神父さんは順位によって報酬が変わるって言ってましたよね?」

桜「なら、何人かで同盟を組んで、上位を独占すればいいんじゃないでしょうか?卑怯な手かもしれないですけど…先輩の家の家計の事情を考えると…」

士郎「うっ…」

桜「多分、ライダーも協力してくれると思います。姉さんには悪いですけど…仕方ないです。私、少しでも先輩の力になりたいんです」

士郎(うーん…確かに最近家計は火の車なんだよなぁ。そもそもこのゲームに参加したのも賞金目当てだしな…)

士郎(同盟がルール違反とは言われていないし、おそらく敵対するであろう遠坂たちのサーヴァントと戦えば…言峰の目的も果たせるだろう)

士郎「わかった。同盟を組もう、桜。セイバーも、それでいいか?」

壺セイバー「いいぞ俺は寛大だからなアワれな敵サーヴァんトもたまに話しかけてやると勝手に俺の家来になる」

士郎「…うん!セイバーも快諾してくれたみたいだ。桜、これからよろしく…」



桜「…先輩、どうしたんですか、それ」

64: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:55:29.46 ID:+cLp6pGd0
桜「…先輩、どうしたんですか、それ」

士郎「…桜?そんなに怖い顔して…どうしたんだ?」

桜「――!どうしちゃったんですか!?先輩!何で…どうして…そんな…」

士郎「桜、急に何を」

桜「やめて!やめてください!もう…やめて…」

士郎(…!明らかに桜の様子がおかしい!一体何があったんだ…!?)

桜「…そのサーヴァントが悪いんですか。そのサーヴァントのせいで先輩が…」

士郎「桜!頼むから落ち着いてくれ」


桜「…あの人を倒して!ライダー!」

65: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:56:49.86 ID:+cLp6pGd0
~~~~

桜「はぁ…いつまで歩けばいいんでしょうか」

「スマンなマスター。私の乗り物は狭くて二人乗りできんのだ。一緒に歩くから許してくれ」

桜「気にしないで、ライダー。街に付けばきっと休めるはずだから」

壺ライダー「うむ。しかし街には既に先約がいるかもしれんぞ」

桜「…もう、誰かが拠点として使ってるってこと?」

壺ライダー「その可能性もある。なにせこの世界には街が数えるほどしか無いし。偶然バッティングしてもおかしくない」

壺ライダー「なぁにゲームの発売日が偶然かぶるのと同じことさ。気にする必要はない」

桜「その例えはよくわからないけど…一応、警戒しておきましょう…」

桜「うまく先輩に会えればいいんだけど…」

66: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:57:27.89 ID:+cLp6pGd0
二人も時を同じく、拠点を探しに翻弄していた

桜が契約したのは『ライダー』のサーヴァント

フィールドが広大なこのゲームにおいては

乗り物を操れるライダーのクラスはかなり有利になると思われた

――しかし、このサーヴァントの乗り物は本人一人しか乗ることができず

結局、フィールドを徒歩で移動する事を強いられていた


壺ライダー「むむ。マスター、街が見えてきたぞ」

桜「わぁ、本当だ。やっと、休憩できる…」

壺ライダー「…まて、マスター。人影がある。おそらく他の陣営だ」

桜「…!そんな…」

壺ライダー「どちらも男のようだ。これ以上近づくと気づかれるかも…」

桜「男…。なら、先輩かもしれない。ライダー、ここで待機して。私、行ってみます」

壺ライダー「お、おい!マスター」

67: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 22:59:11.10 ID:+cLp6pGd0
桜「…!よかった…先輩だ」


桜「先輩、私です!桜です!戦うつもりはありません」

士郎「桜!?一体…?」

桜「私のサーヴァントにはちょっと離れたところで待ってもらってます。あの、先輩…私達、同盟を組みませんか?」

士郎「同盟…?」

桜「そうです!神父さんは順位によって報酬が変わるって言ってましたよね?」

桜「なら、何人かで同盟を組んで、上位を独占すればいいんじゃないでしょうか?卑怯な手かもしれないですけど…先輩の家の家計の事情を考えると…」

士郎「うっ…」

桜「多分、ライダーも協力してくれると思います。姉さんには悪いですけど…仕方ないです。私、少しでも先輩の力になりたいんです」


良かった…先輩に会えて

最近、先輩が生活費を捻出するためにバイトを何個も掛け持ちしてるのを知ってる

そのせいで、ここのところゆっくりお話することもできない…

――不純な動機かもしれないけど、いいよね?

それで、少しでも先輩の力になれるなら…


士郎「やはりナイトは頼りにされていた!桜は一級廃人のナイトの足元にも及ばない貧弱一般人だがナイトと同名を組むことによりリアルより充実した聖壺生活が認可されるPT組んでもいいか?>>セイバー」


――えっ?

先輩、今のは…何?

68: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 23:00:55.72 ID:+cLp6pGd0
壺セイバー「いいぞ俺は寛大だからなアワれな敵サーヴァんトもたまに話しかけてやると勝手に俺の家来になる」

士郎「「やっと許しが出たか!」「封印が解けられた!」やっぱりナイトじゃないと駄目かー。圧倒的にさすがって感じ」


理解が追いつかない。

いや、理解を拒絶してる。

あの先輩が。私を命がけで守ってくれた先輩が

意味不明で不快な言語を連発してる…


桜「…先輩、どうしたんですか、それ」

士郎「何不安な顔してるわけ?死にたくないなら説明すべき」


桜「――!どうしちゃったんですか!?先輩!何で…どうして…そんな…」

士郎「まただよ(笑)はやく説明しテ!!はやくwはやくwはやくw」


桜「やめて!やめてください!もう…やめて…」

69: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/20(水) 23:01:43.76 ID:+cLp6pGd0
――嫌だ!

聞きたくない聞きたくない聞きたくない

こんな先輩…見たくない…!


桜「…そのサーヴァントが悪いんですか。そのサーヴァントのせいで先輩が…」


士郎「桜お前話し無視される奴の気持ち考えたことありますか?マジでぶん殴りたくなるほどむかつくんで止めてもらえませんかねえ・・?」


――あの人のせいだ

全部…あのセイバーのサーヴァントが悪いんだ

あの人のせいで、先輩は変わってしまった

先輩を…取り戻さなきゃ


桜「…あの人を倒して!ライダー!」

76: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:08:48.76 ID:gy7ZfBgk0
~士郎視点~

「…イイリイイイイイオオオオオオオオオオオオオオオン!」

壺セイバー「…!チィ!」

士郎「!?ライダーのサーヴァントか?」

霧の向こうから、高速で移動する影がセイバーへと向かっていった

セイバーは間一髪バックステッポで回避したみたいだったが実際かなり青ざめてた

だがあたってもアヴァロン並の硬さを誇ってるから最強に近いといえる

やはりナイトは格が違った


士郎「何とかかわしたみたいだ…な…?」

士郎「!?そんな…」

壺セイバー「今の攻撃を喰らったのが俺でなくてよかったな。マスターだったらお前死んでるぞ」

77: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:10:15.69 ID:gy7ZfBgk0
確かに攻撃をかわしたはずの黄金の鉄の塊で出来たナイトが

どうやら一発攻撃を喰らっていたらしくアワレにも肩の装甲が吹き飛んでいた

肝心のライダーはひきょうにも攻撃後また霧に紛れ姿を消していた

あのライダー絶対忍者だろ・・汚いなさすが忍者きたない

この不快霧はライダーにとっては神の贈物だがセイバーににとっては地獄の宴だった


壺セイバー「どうやらこしゃくな乗り物以外にも武器を持っている感。だがその程度でナイトを奔放できると思っているなら所詮は忍者だなナイトの敵ではにい」


遂にセイバーの腰に携えていた

グラットンソードの封印が解けられようとしていた

しかし――


壺セイバー「うおっ!?」

士郎「そんな!今度は後ろからだって!?」


装備をしようと思ったところを後ろから破壊され

アワレにもグラットンソードは数メートル吹き飛ばされてしまった

俺はこれでライダー嫌いになったな

あもりにもひきょう過ぎるでしょう?

78: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:11:38.47 ID:gy7ZfBgk0
士郎(霧で視界が悪いのは相手も同じはず。何でこちらの居場所が…?)

士郎(…!桜だ!桜はこっちを視界に入れている。自分の目を通じてサーヴァントにこちらの位置情報を伝えているんだな)

士郎(しかし、桜を攻撃するわけにもいかない。どうすれば…)


桜(これでセイバーは無防備。身動きが取れなくなったはず…)

桜「ライダー!お願い!」

壺ライダー「任せろおおおおおおおおおおおおおお」


士郎「真正面だと!?避けろ!セイバー!」


壺セイバー「…武器を取り上げた程度でナイトに勝てると思う浅はかさ愚かしい」

士郎(…!セイバーの左手に魔力が…?まさか宝具?あの剣が宝具じゃないのか…?)

壺セイバー「普段は確かに心優しく言葉使いも良いナイトでもおまえのあまりの粘着ぶりに完全な怒りとなった 仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」

壺ライダー「何っ!?」





壺セイバー「『雷属性の左』!!」

壺ライダー「ぶへぇあ!」

79: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:12:26.52 ID:gy7ZfBgk0
ライダーは何がおこったかわからずブザマにも吹っ飛んだ

乗り物は慣性でそのまま向こうへ行ったが多分霧の中で伝説になってる


桜「!?ライダー!」

壺セイバー「俺の宝具がひとつだと勝手に勘違いした結果がこれお前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」

士郎「すごいな…セイバー」


方や武器なんか持たなくても素手で怪力だから強いリアルではモンクタイプなセイバー

方や騎乗兵としての役目を果たせずアワレにも崩れそうになっているライダー(笑)

どちらが強いのかは一目瞭然だった

この戦いセイバーの勝利は確定的に明らか――


ここまで思い、敵のサーヴァントの姿を確認して…我に返った

80: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:13:41.62 ID:gy7ZfBgk0
こいつは、人間なのか…?

いや、聖壺戦争で召喚されるのは人間とは限らない

掲示板利用者から多くの信仰を集め、知名度を獲得した存在であるならなんであれ呼ばれる可能性があるのだ

目の前にいるサーヴァントは――人型ではあった

姿は戦争の雰囲気に似合わず正装だった

首には蝶ネクタイまで付けている

――だが、明らかに等身がおかしい

それ以前に頭の大きさがおかしい

肩幅ほどもある

何より特徴的なのは、その頭に…

81: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:14:29.30 ID:gy7ZfBgk0
ムクッ

壺ライダー「…ふっ」

壺セイバー「何笑ってんだ殺すぞ」

壺ライダー「なぁに先程の言葉…そっくりそのまま貴様に返そうと思ってね」

壺セイバー「そういうのいりませんストレス溜まるので(笑)自慢の乗り物は多分どっかでジャンクになってるだろうがそれでどうやって俺に勝つつもりだよ」

壺ライダー「あれはタダの宣伝用かつ移動用の手段にすぎん。だからこそ貴様の言葉を借りよう」

壺ライダー「何ィ…?」


壺ライダー「乗り物を取り上げた程度で…私に勝てると思う浅はかさ愚かしい」

82: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/21(木) 22:15:28.19 ID:gy7ZfBgk0
二人のサーヴァントは数メートル離れて対峙していた。それにもかかわらず…

言い終わった瞬間に放たれたライダーの攻撃が

セイバーの体を揺らした


壺セイバー「ぐはあっ!」

士郎「なっ…!?」


壺セイバー「…おいィ!?ライダーが飛び道具使えるのはずるい」

壺ライダー「貴様に言われたくはないっ」


すさまじい形相をしたライダーから

セイバーにも捉えきれぬ第二撃目が放たれた

89: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/22(金) 22:03:49.22 ID:uU2sB08U0
士郎「セイバー!」

壺セイバー「ぐっ…!」

壺ライダー「さっきまでの威勢はどうした?『ヴァナ・ディールのメイン盾』」

桜「…!ライダー、そのサーヴァントの真名を知ってるの!?」

壺ライダー「知らないほうがどうかしている。その汚染された言語を聞けばな」

壺セイバー「やはりナイトの知名度はとどまるところを知らぬようだな。上げたくてあげるんじゃない上がってしまう者がナイト」

壺ライダー「『2ちゃんねる』の中でも有数の逸話をもつ英雄だ。召喚されていてもおかしくは無いと思っていた」

壺ライダー「セイバーというクラスで召喚されていても、それに囚われぬ豊富なスキルと宝具を駆使して戦う…それがお前の戦闘スタイルだろう」

壺セイバー「ほうお前はなかなかわかっているようだな。ナイトはジョブを選ばない」

壺ライダー「――だが、流石に武器がなければ十分な実力は発揮できないようだな。この間合いを保ち続ければ手も足も出まい」



そういうとライダーはまた攻撃を放った

一瞬ではあったが、その攻撃の『正体』を垣間見ることができた

90: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/22(金) 22:04:56.68 ID:uU2sB08U0
――それは、謎の球体だった

先程から気になっていた、ライダーの頭部に繋がれている球体

それを飛ばし攻撃をしているのだ

言ってみれば、巨大な鉄球が弾丸以上の速度で飛んで来るような物だ

ライダーにとっては通常攻撃に過ぎないのだろうが、その破壊力は大きい

いくらセイバーでも、あれをくらい続けたら…


キンッ

壺セイバー「…下段ガードで固めた俺にスキはなかった」

壺ライダー「防いだか。しかしいくらメイン盾とはいえ、守ってばかりでは勝てんぞ?この聖壺戦争ではな」

壺セイバー「お前頭悪いなナイトは攻撃もかなり強い今は反撃の機会を伺ってるだけなんだが?英語でいうとリフレクション」

壺ライダー「ふん。口だけは立派なやつだ。そんなデカイ口を叩けるのも今の」


壺セイバー「それに…そんな『クソゲー』みたいなキャラデザのサーヴァんトにナイトが負けるわけがないという理屈で最初から俺の勝率は100%だった」

91: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/22(金) 22:05:48.63 ID:uU2sB08U0
瞬間、空気が冷たく張り詰めたのを感じた

セイバーが「クソゲー」という言葉を口にした瞬間

ライダーの纏う雰囲気が一変した


壺ライダー「――セイバー。…貴様今…『クソゲー』といったか」

壺セイバー「おまえもし化して話の意味が、理解できない馬鹿ですか?そんな冗談みたいな顔の奴が主役のゲームがクソゲーなのは確定的に明らか」


士郎(クソゲーという言葉に反応している…?セイバーも敵の真名に心当たりがあるみたいだな)


セイバーのしている行動は『挑発』

ヴァナ・ディールにおいて敵のヘイトを管理し

仲間を守るメイン盾であるセイバーにとってはわけもない行為だ

冷静を装っているが…ライダーが激しい怒りを覚えているのは明白だった


士郎(これは…チャンスかもしれない!)

92: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/22(金) 22:06:48.24 ID:uU2sB08U0
壺セイバー「じゃあお前自分でそんな頭から弾とばすゲームやって楽しいのかよ 見ろ、見事なカウンターで返した調子に乗ってるからこうやって痛い目に遭う」

壺ライダー「ふ、ふふふ…」ワナワナ

桜「ラ、ライダー!落ち着いて!ただの挑発よ!」


士郎「今だ!」ダッ

桜「先輩!?」


ライダーが冷静さを失っている今なら…

セイバーに届けられるかもしれない

先ほど弾かれた、『グラットンソード』を


士郎「よし!セイバー!受け取れ!」ブンッ

桜「そんな!?いつの間に剣のあるところまで移動したんですか!?」

壺ライダー「――甘い!」


宙に放り投げられた剣は

セイバーの手元に届く前にライダーの攻撃によって更に遠くに

霧の向こう側へと弾き飛ばされた


桜「…!やった!ライダー!」

壺ライダー「うらああああああああああ喰らいやがれえええええええええ」

壺セイバー「ウボァ!」

93: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/22(金) 22:07:25.93 ID:uU2sB08U0

ライダーの攻撃をまともに喰らい

セイバーは大きく後方に吹き飛ばされた

更にライダーとの間に距離が空いてしまい

このままライダー絶対有利の状況は変わらないように見えた


――しかし

壺ライダー「ば、馬鹿な!何故…それを持っている!」

桜「そんな…さっき確かに遠くに飛ばしたはずなのに」


セイバーの手には

確かに漆黒の剣が握られていた


桜「先輩…まさか!」


士郎「うまく行ったみたいだな。さっきセイバーに投げたのは俺の投影で生み出したハリボテさ」

士郎「このゲーム内じゃ性能は真似できないが…姿形を似せるのは可能だ」

壺ライダー「くそっ…まんまと敵の策略にはまってしまったな」


士郎「これで条件は一緒だ。行け!セイバー!」

壺セイバー「――封印が解けられた!」

101: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 02:57:46.44 ID:Rxfq6uck0
壺ライダー「…たとえ剣を持ったとて同じこと。距離を保てば恐れる必要はない!」


再び放たれるライダーの攻撃が

先ほどと同じ速度、威力でセイバーへと迫る


壺セイバー「――ハイスラァ!」


セイバーは球体を難なく弾き飛ばし
かつそのままライダーに向かって迫り間合いを詰めた


壺ライダー「…!マズイ!」バッ

壺セイバー「ついげきのグラドヴァイパ!」


今度はライダーが回避行動を取る番だった

さっきまでライダーが立っていた地面には大きな亀裂が入っていた

この一撃は宝具でも何でもないセイバーの通常攻撃のようなもの

それでも喰らえば即敗北につながりかねないほどの威力だ

102: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 02:58:52.56 ID:Rxfq6uck0
壺ライダー「斬撃がここまで伸びるとは…間合いは無意味だな」

壺セイバー「もうここまででも十分にグラットンの勝ちは圧勝に決まったのだが更に攻撃は続く」ダッ

壺ライダー「オラァ!」ブンッ

壺セイバー「まただよ(笑)同じこと繰り返すとかやはり雑魚おとなしく…」


先ほどと同じように球体を弾き返そうとしたセイバーであったが

球体は剣に触れる瞬間に軌道を変えた


壺セイバー「うおっ!」バッ

壺ライダー「直球しか能がないと思ったか?このボンボンは自在に軌道を操れるのだ」

壺セイバー「うざってぇ…」


2体のサーヴァントは互いに敵を見据え、硬直した

一撃の威力はセイバーに分がある

グラットンソードの尖った部分も駆使すれば相手に致命的な致命傷を負わせることもできるだろう

リーチと速度に関してはややライダーに分がある

このまま相手との距離を保ちつつ攻撃を続けていれば粘り勝つことも可能だろう

戦い方、勝利条件は違えど…

2体の実力は拮抗していた

――当然、『互いに切り札を温存している』という状況であるからこそだ

そして…

103: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 03:00:18.00 ID:Rxfq6uck0
壺ライダー「…セイバー、ここでは手打ちにしよう。気づいているだろう。このあからさまに気配を漂わせる強大な視線に」

壺セイバー「生半可なサーヴァんトには感じられない視線だが…マジでムカつくな喧嘩売ってんのか?」


桜「え…?」

士郎「視線…だって?」


壺ライダー「何者かは知らんが…そいつは自分の存在をあえて知らせながらこの戦いを監視してる。そんな状況で手の内を晒す訳にはいかないな」

壺セイバー「覗き見とかちょとsYレならんしょこれは・・?ここで決着をつけてもそいつが漁夫海苔を狙うことは間違いないな。ここで一歩引くのが大人の醍醐味」

士郎「そいつは…俺達が魔力を消費してボロボロになったところを狙おうってことか?」

壺ライダー「その割には全く気配を隠そうともしないのが気になるがな。まるで決着をつけるなと言っているみたいだ」


壺ライダー「…今回は我々が仕掛けた喧嘩だ。こちらが逃走するという形にしておいてやる…が、次こそは決着をつけるぞ、セイバー。」

壺ライダー「この私に対してクソゲーなどとのたまったことを…後悔させてやる」

壺セイバー「後悔させてやるとか言ってる時点で相手にならないことは証明されたな。次こそかなぐり捨ててやンよ」

104: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 03:01:13.25 ID:Rxfq6uck0
壺ライダー「…行こう、マスター」

桜「でも…いいの?ライダー。あの乗り物は…」

壺ライダー「ワゴンカートのことか?あんなもの魔力でいくらでも作れる。ほらこの通り」ポン

壺ライダー「よし、新しい拠点を探すぞ。掴まってくれ、マスター」

桜「えっ。これ一人乗りって話じゃ…」

壺ライダー「ああ。だからボンボンに掴まっていてくれ。地面に擦れないように高速でかっ飛ばすから」

桜「えっ」


壺ライダー「そうだ。…少年、君のサポートは見事だった。その健闘を讃えてプレゼントを贈ろう」

士郎「え、俺のことか?」

壺ライダー「ではさらばだ!セイバーとそのマスターよ!」

桜「ちょ、ま」

壺ライダー「ミィィィィィィィィィリィィィィィィィィィオォォォォォォォォォォォン!」ビュン

桜「いやああああああああああああああああああああ!」


士郎「行ってしまった…。結局プレゼントって何だったんだ?」ピラッ

士郎「…ん?足元に何か紙が落ちてる」

士郎「なんだこれ…『オプーナ』購入の権利書…?」


壺セイバー「――『オプーナ』…それがヤツの真名に間違いにい。正確にいうと『やるオプーナ』」

107: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:10:51.64 ID:Rxfq6uck0
~~~~

アーチャー「…私も焼きが回ったな。まさかバーサーカーを引き当ててしまうとはな」

「………」

アーチャー「聖杯戦争…いや、聖壺戦争ではサーヴァントとマスターとのコミュニケーションは必要不可欠だ」

アーチャー「だというのに相手が理性を持たぬバーサーカーではな。しかも触媒も用意されたものであるために真名を知ることもできない」

アーチャー「自分で推測しろということか…全くとんだ貧乏くじを引かされたものだ」

「………」


アーチャーは自分の召喚したサーヴァントを観察した

――はっきり言ってしまえば、とても戦闘をできるような体格ではない

細身の体は、敵の攻撃を耐えられるとは思えず

逆に敵に決定的な攻撃を与えることもできないだろう

108: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:11:26.73 ID:Rxfq6uck0
アーチャー(…この聖壺戦争では、『狂化』の影響が薄いのか?とてもステータスが上昇しているとは思えないが)


武器も持っておらず、バーサーカーであるために魔術主体の戦い方も期待できない

その身に纏っているのは学生服だろうか

俯いているため顔はよく見えない

その顔をはっきりと確認するために、覗きこんだ


アーチャー「…ん?」


――バーサーカーの目を見た瞬間

まるで引きずり込まれるような感覚を覚えた

そして…


アーチャー「…!?」

109: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:11:52.63 ID:Rxfq6uck0
*******


「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ」
「爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。まかせろって、爺さんの夢は――」


アーチャー(……?)


「こんなところでで死んでたまるか。…俺は、正義の味方になるんだ!」


アーチャー(…!?)


「ゴメンな、桜。俺は遠坂と一緒にイギリスに行く。…お前の気持ちには応えられない」


アーチャー(これは…まさか…)


「遠坂…お前にはもうついていけない。いや…お前は俺と一緒にいるべきじゃない。――ここでお別れだ」


アーチャー(…やめろ……)


「『守護者』…?…力をくれるのなら、何だっていい。それで誰かを、助けることができるなら…」


アーチャー「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

******

110: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:12:23.44 ID:Rxfq6uck0
アーチャー「…くっ!?」


腕に痛みが走り、我に返ると

思い切り地面を殴りつけていた

無意識のうちに手が出ていたようだ


アーチャー「ハァ…ハァ…。今のは…幻覚か…?」

「………」


アーチャーは再び、目の前のサーヴァントを見た

相変わらず何も発さず、微動だにしない

だが今の幻覚は間違いなく――こいつが引き起こしたものだ

アーチャーはそう確信した


アーチャー「…モノは使いよう、と言うわけだな。――成程、マスターとしての私の力量が試されそうだ」

111: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:12:56.48 ID:Rxfq6uck0
~~~~

言峰「開始1日目にして既に2箇所で戦闘が発生している。期待以上の結果だな」


言峰がいるのは、GMのみが入れるコントロールルームだ

ゲーム内の大陸のどこにも存在せず、だがどこからでも入ることができる

その中では全サーヴァントの情報がまるで監視カメラで撮影されているかのように表示されており

現在大陸のどこにいるのかも全て把握できる

ゲーム内でのバグや不正行為、不測の事態などを観測する目的で存在する

管理者の特権とも言える空間だ


言峰「本日一番負荷が大きかったのはアーチャーの放った一撃だが…この程度ならば許容範囲内だ」

言峰「好戦的な者、自分のサーヴァントに手を焼くもの…全てのマスター、サーヴァントが一様ではない。実に面白い」


「――ぬるいでちゅわ」

112: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:13:29.89 ID:Rxfq6uck0
言峰「…アサシン」


「ゲームだからってどいつもこいつも無防備過ぎまちゅ。あたちなら今日だけでマスターの半分は消せまちたわ」


言峰「ふっ…そう言うな、アサシン。今回の目的はサーヴァントの戦闘による負荷の検証が主目的だ。お前にマスターを暗殺してもらっては困るのだ」

言峰「それに…今回の戦いにおいてお前が最も脅威となるサーヴァントであるのは間違いないが」

言峰「それは私、つまり…GMに召喚されたことにより、この大陸の地理がほとんど頭に入っているからだ、ということは認識出来ているな?」

「勿論でちゅわ。――そうでなくても、あいつらにあたちを捉えられるとは思いまちぇんけど」


言峰が召喚したのは『アサシン』のサーヴァント

サーヴァント同士のの戦闘データの収集と

それに伴うサーバーへの負荷を調べるのが目的である言峰にとっては

『アサシン』をまともに運用され、マスター暗殺に力を入れてもらっては本末転倒であった

そのため、自分用に『アサシン』の触媒を確保しておくことで

他のマスターには純粋に戦ってもらう、というのが管理者としての言峰の狙いだ

113: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/23(土) 21:14:10.80 ID:Rxfq6uck0
言峰「そうだな…サービス開始時にはいっそアサシンのサーヴァントは運営側で管理してもいいかもしれんな」

言峰「全陣営が籠城を選択し、戦わないまま時間だけが過ぎる…という状況を避けるためアサシンを差し向け、硬直した戦況を一変させる。そんな使い方も有用だろう」

言峰「そう、まさに…『今、我々がやろうとしているように』な」



言峰「初日からここまで飛ばしてくれるのは予想外だったが…まだまだ足りん」

言峰「命令だ、アサシン。――お前の『力』を使い…全サーヴァントを、一箇所に集めろ」

言峰「場所は大陸南西部、城塞都市の…『闘技場』だ」

117: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/26(火) 01:00:17.81 ID:kflvzcqr0
サーヴァント紹介①

【CLASS】セイバー
【マスター】衛宮士郎
【真名】ブロント
【出典】ネトゲ実況,他
【性別】男
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力* 耐久* 敏捷* 魔力* 幸運* 宝具A
【クラス別スキル】

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:A
 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】

言語汚染:A++
 日本語の不自由さを表すスキル。言語汚染のランクが高いほど意思の疎通が困難となる。
 しかし極めて高いランクになると、それがひとつの言語として確立する。
 A++まで行くと逆に相手の言語を侵食するため、会話が成立する。

ナイトはジョブを選ばない:A
 クラスによる能力の制限を軽減するスキル。Aランクでは適正クラス以外で使用した宝具の威力をもほぼ100%引き出すことができる。

【宝具】
『グラットンソード』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~5 最大捕捉:1人
 暴食の名を冠する片手剣。ブロントを象徴する武器の一つ
 間隔が長いので遠くまで届き、尖っている部分で敵に致命的な致命傷を追わせることもできる
 真の力を開放することで他の宝具の発動条件を満たす

『雷属性の左』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 リアルではモンクタイプで喧嘩チームのリーダーでもあるブロントの左手から放たれる一撃
 電撃を帯びており、敵の防具の属性によって追加のダメージを発生させる

『????』

『????』

『????』




【CLASS】ランサー
【マスター】セイバー(アルトリア)
【真名】リューサン
【出典】ネトゲ実況
【性別】男
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力* 耐久* 敏捷* 魔力* 幸運* 宝具B+
【クラス別スキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
孤高の騎士:A
 PTを組めず、ソロ専などと虐げられたリューサンの不遇さを象徴するスキル。
 味方のいない状況でも精神的動揺を起こさず実力を発揮することができる。
 ただし、一度でも協力関係を成立させるとランクが大きくダウンする。

【宝具】
『紫電の槍(ライトニングスピア)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:5~30 最大捕捉:30人 
 幻獣イクシオンの力を宿した一撃。雷撃を槍に纏わせて放つ
 本来竜騎士が使える技ではないが、リューサンの使う技としてイメージが定着したために発動可能となった宝具

『????』

120: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/27(水) 01:44:36.79 ID:P9XtgADS0
~~2日目~~

凛「こんなところかしら…?キャスター、そっちはどう?」

壺キャスター「ここらの木にはだいたい札を貼り付け終わったぜ。お互い、寝ずに作業した甲斐があったな」

凛「よかった。お疲れ様」

壺キャスター「しかし、大胆だなマスター。ランサーたちもまさか俺たちがあれから動かず森を拠点にしてるだなんて思いもしないだろうぜ」

凛「それが狙いだもの。確かに拠点にするのにちょうどいい街は地図上で確認できるけど…移動の最中に敵に遭遇したらどうしようもないし」

凛「それに、そういう街なら既に他のマスターに狙われていてもおかしくないはず。それがもし騎士クラスのサーヴァントを保有しているなら、こっちから攻めても勝ち目はないわ」

凛「性には合わないけど…。キャスターらしく陣地を形成して力を蓄えましょう。工房内での迎撃戦なら、誰が攻めて来ようとある程度戦えるはずよ」

121: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/27(水) 01:45:58.53 ID:P9XtgADS0
壺キャスター「しかし結構でかい世界だ。ここに引きこもってったんじゃいつまでも敵と遭遇せずにゲーム終了になるんじゃないか?」

凛「それに関しては…きっとあの神父が何か介入してくるでしょうね。あいつの目的から考えると」

凛「けど、こっちは白兵戦が苦手なキャスターのクラスよ。防衛戦だって当然の権利だわ」

壺キャスター「ま、真っ向からぶつかり合えって言われても困るしな。しばらくはこのまま…」

キィーン キィーン

壺キャスター「…そううまくもいかないみたいだな」

凛「今の音…!誰かが結界を破って侵入しようとしてる…!嘘でしょ!?まだ着手したばっかりなのに!?」

壺キャスター「…だが、結界は破れても陣地が全破壊されるわけじゃない。この森のなかでの戦いなら、勝てる可能性は十分ある」

凛「あーもう!どこの誰だかしらないけど計画が滅茶苦茶じゃない!」

凛「いいわ…きっちり決着付けてあげる!」

123: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/27(水) 23:46:56.54 ID:P9XtgADS0
壺キャスター「来るぞ、マスター」


「――やぁ、昨日ぶりだな」


凛「…また、あなた達?いい加減にしてくれないかしら…」


セイバー「下手に動きまわるのは危険…。あなたならそう判断できると思いましたよ、凛」


壺キャスター「人気者は辛いな、マスター。それにしても、懲りない連中だ。またアーチャーから攻撃を受けるかもしれないぞ?」

壺ライダー「なぁに。君たちの作ったこの工房が守ってくれるさ。それにこれだけ森の奥までくれば、アーチャーだって正確な狙いは付けられないだろう」

凛「…いい度胸ね。あったま来た!大体セイバー!あなた何で私ばっかり狙ってんのよ!」

凛「この世界じゃ、マスターは皆条件は同じのはずでしょ!それなのに私に固執する理由は何!?」

セイバー「…凛。あなたはまだ気づいていなかったのですか。この聖壺戦争で、言峰綺礼の仕掛けた悪意に」

凛「へ?」

124: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/27(水) 23:55:47.43 ID:P9XtgADS0
セイバー「順位によって報酬の額を変える、と彼は言いました。この言葉の意図するところがわかりますか?」

凛「意図も何も…そのまんまの意味じゃない。より大きな報酬を得たかったら上位を目指せ、ってことでしょ?」

セイバー「では、手に入れた賞金の流れを考えて見てください。私は衛宮家に居候の身だ。獲得した賞金は当然士郎に渡します」

凛「賞金の流れ…?その理屈で言うなら、ライダーも士郎に渡すことになるわよね。アーチャーもああ見えて義理堅いし、私に渡すでしょうね」

凛「桜は…自分で使うってことはなさそう。優しい子だし、居候が増えた衛宮家を気遣って士郎に渡すんじゃないかしら」

凛「…あれ?」


衛宮家
士郎
セイバー→士郎
ライダー→士郎
桜→士郎

遠坂家

アーチャー→凛

125: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/27(水) 23:57:07.29 ID:P9XtgADS0
凛「綺礼は置いておくとしても…これって実質、士郎側と私側の2陣営での争いってこと?」

凛「…!?と言うか!そうだとしたら4対2での戦いになるじゃない!」

セイバー「気づきましたか、凛。その通りです。先にあなたとアーチャーが脱落してしまえば、上位は独占できてしまうのです」

セイバー「邪魔者を排除した後、心置きなく競い合いをすればいい。戦闘さえきちんとこなせば言峰綺礼も満足することでしょう」

セイバー「加えて言えば…凛、あなたは昨日アーチャーに宣戦布告している。4対2ではなく4対1対1ということもありえるのです」

凛「確かに同盟は禁止なんてルールは存在しない…あのクソ神父この状況を狙ってたってわけ!?」

セイバー「私が何故執拗にあなたを狙うのか、これで納得してくれたでしょう」

凛「…一応聞いておくけど、武士の情けとか無いの?あなた自身は卑怯だと思ってないの?」

セイバー「私は武士ではないので、当然武士の情けなどありません」

セイバー「私だって…士郎の役に立ちたいと思っています。戦う必要が無くなった以上、戦い以外で士郎のために何かしてあげたい」

セイバー「私一人が蔑まれて事が成せるのなら……喜んで卑怯者の汚名を被りましょう」

凛「…覚悟は決まってるってわけね」

129: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/29(金) 00:26:20.03 ID:4ucSnDq70
セイバー「アーチャーの言葉を借りるなら…汚れなど成果で洗い流せる。行きましょう、ランサー」

壺ランサー「ああ、勝利を掴もう」


壺キャスター『相手はもう迷いもないみたいだな。どうする?マスター』

凛『迷いがない?…いいえ、違うわ、キャスター。セイバーは口ではああ言ってるけど、内心は慙愧の念に堪えないはず』

壺キャスター『ほう。どういうことだ?』

凛『セイバーの考え方なら、私を1対1で仕留めるより、先に同盟を組んで複数で襲撃をかけた方が確実のはず』

凛『それなのに士郎を探して同盟を組む前に、先に自分たちだけで私達を倒そうとしている。私達に負い目があるんでしょうね』

壺キャスター『それでも勝てる、と。大した自信だな。だが、つまり…この戦いは誰の邪魔も入らないわけだな?』

凛『そうね。…徹夜で作成した工房に、ランサーの機動力を活かしにくい木々に覆われた森林。サシで戦っても十分に勝機はある』

凛「ここでなんとしても勝って…パワーバランスを崩すわよ!キャスター!」

壺キャスター「おう。行くぞ、ランサー!破ぁ!!」

131: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:24:57.13 ID:AdG+bINS0
壺ランサー「おっと…!いきなり攻撃か」サッ

壺ランサー「一度喰らった以上、意地でもかわしてみせるさ」

壺キャスター「破ぁ!!破ぁ!!」ビュンビュン

壺ランサー「…っ!それしかできないのか?君は」サッ

壺キャスター「速射性と燃費の良さが自慢の宝具だ。おらもう一発!破ぁ!!」

壺ランサー「付き合ってられないね」ヒュン

壺キャスター(…!早い!)

壺ランサー「ジャンプだけが能じゃないのさ。これで詰みだ」


ランサーは一瞬でキャスターの目前まで間合いを詰め

その心臓めがけ槍を放った

132: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:26:28.90 ID:AdG+bINS0
キィンッ

壺ランサー「!?」

壺ランサー(弾かれた…!馬鹿な!?)

壺キャスター「破ぁ!!」ダンッ

壺ランサー「ぐおっ!?」


ランサーの放った槍の一撃は障壁に阻まれ

逆にキャスターの放った宝具によってランサーは吹き飛ばされた


壺キャスター「まずは一発だ。わかってると思うが俺の宝具は対魔力や耐久、防具の加護(エンチャント)の良し悪しによるダメージ軽減はできない。あと何発耐えられるかな?」

壺ランサー「…何故だ?どうして私の槍が刺さらない…?」

壺キャスター「なんだ?泣き言か?」

壺ランサー「…ならば、これでどうだ!」バッ

133: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:27:36.39 ID:AdG+bINS0
ランサーは大きく飛翔し、上空からキャスターに標準を合わせた

木々をなぎ倒し、枝や蔓に阻まれながらの跳躍だが、ランサーは気にも止めていないようだった

しかし、勢いは確実に削がれており、回避は十分に可能にみえる

だが、キャスターは動かない。そのまま迎撃の体制をとった


壺ランサー「この一撃は防げまい!君の宝具を受けたとしても、このまま君を貫いて見せる!」

壺キャスター『ダメージ覚悟の特攻か…本当にやってきやがったな』

凛『ええ。…ここまでは予想通りね』

壺キャスター「破ぁ!!」

壺ランサー「ぐっ!うおおおおおおおおおおお!」

134: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:28:34.54 ID:AdG+bINS0

キャスターの宝具を無防備な状態で喰らったランサーだが

体勢は崩さず、そのままの勢いでキャスターへと向かっていった



――しかし、槍はまたしても障壁に阻まれた

槍と障壁の鬩ぎ合いの余波で、爆発に近い大きな火花が飛び散った


壺ランサー「何!?」

壺キャスター「その位置、その体勢…ベストポジションだ。何発ぶち込めるかな」

壺ランサー「しまっ…!?」

壺キャスター「破ぁ!!破ぁ!!!破ぁ!!!!」ドドド

壺ランサー「うわああああああああああああ」

135: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:29:20.01 ID:AdG+bINS0
凛「決まった!3発!流石にもう…」

壺ランサー「いや、2発だ。1発目はかわされてる。流石は騎士クラスだな」


壺ランサー「ぐぅ…はぁ…はぁ…」

セイバー「ランサー!馬鹿な…!?どうしてランサーの攻撃が届かない!」

セイバー「いくら凛とキャスターが協力したとはいえ…一晩では対魔力を持つランサーを弱体化させるほどの工房は作れないはず」

壺キャスター「敵にネタバレをしてやる義理は無いな。――そいつも、あと1発もくれてやれば消滅するだろうさ」

セイバー「まずい…!ランサー!宝具の開放を!」

壺ランサー「はぁ…はぁ…承知…した」

凛「させないわ!キャスター!」

壺キャスター「破ぁ!!」ビュン

壺ランサー「…!」サッ

壺キャスター「かわしたか…まぁいいさ」

136: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:30:33.14 ID:AdG+bINS0
凛(思った通り…!ランサーの宝具は発動までに溜めが必要みたいね)

凛(攻撃が通じない、とランサーに思わせれば…間合いを詰められることはない)

凛(そうなると相手が狙うのは、高威力の宝具のぶっぱによる一発逆転)

凛(それを妨害するために、こっちは遠距離からひたすら宝具を連発しておけばいい)

凛(威力は低いけど、キャスターの宝具によるダメージは簡単には回復できない)

凛(あとは逃げまわって消耗したところを仕留めるだけ…!)


凛「この勝負、貰った!決めるわよ、キャスター!」

壺キャスター「破ぁ!!」


ランサーは確実に消耗していた

万全の状態であるなら捌くのにわけはない一撃だったが

躱しきれず、槍を持つ手をかすめた

137: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:33:00.30 ID:AdG+bINS0
壺ランサー「ぐあっ!」カランッ

セイバー「…!槍が…!」

壺キャスター「貰った!破ぁ!」

セイバー「…!」ダッ


バシュッ


壺キャスター「な…!?」

凛「嘘でしょ…?」


ランサーに引導を渡すはずだった一撃は、乱入者によって阻まれた

飛び出してきたのは、セイバーだった

ランサーの前に立ち、キャスターの宝具を受け止めた

つまりは、キャスターの宝具をランサーの代わりに喰らってしまったということだ


マスターであるセイバーが、サーヴァントであるランサーを身を挺して庇ったのだ

138: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:33:41.06 ID:AdG+bINS0
セイバー「ゴホッ…ぐっ…見極めましたよ、凛。キャスターの宝具の特性を」

セイバー「『寺生まれのTさん』は逸話(コピペ)の中で、悪霊の類を大抵一撃で消滅させている」

セイバー「それを昇華させたのがその宝具だとしたら、おそらくそれは『霊殺し』に特化させたものなのでしょう。霊を殺すというのもおかしな話ですが」

セイバー「そして、それはサーヴァントにも適用されている。対魔力が意味を成さないのはそのためだ」


凛(くっ…セイバーの前で迂闊に宝具を連発しすぎたかしら。歴戦の勇士だもの、これくらいの洞察力は当然持ち合わせてるわよね…)


セイバー「だが、裏を返せば…その宝具に生身の人間に対する殺傷力はない、と睨んだのです。事実このようにサーヴァントの攻撃を受けても、私は五体満足で済んでいる」

セイバー「ランサーが回復するまで…私がランサーの盾となりましょう」

139: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:36:10.20 ID:AdG+bINS0
壺キャスター「――大した度胸だな。だがな、嬢ちゃん。アンタも喰らってわかっただろう?致命傷とまでは行かないが、この宝具は物理的な威力もそこそこ持ち合わせてる」

壺キャスター「1発や2発ならともかく…喰らい続けたらアンタが先に死ぬぞ?」


セイバー「ここでランサーを失えば、どちらにせよ敗北は確実です」

セイバー「ならば覚悟は決まっています。マスターとして私ができることはこれだけ…」


壺ランサー「…もういいんだ、マスター」

セイバー「ランサー!何を言うのですか!?」

壺ランサー「こちらの攻撃は通じず、宝具も封じられている…このままではとても勝ち目はない」

凛「ふぅん…素直に負けを認めるんだ」


壺ランサー「いいや、違う。奥の手を使うというだけさ。マスターにも存在を伝えていない――最後の宝具をな」


壺キャスター「…!最後の宝具だと…?槍も失ったのにか…?」

141: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/30(土) 21:37:24.65 ID:AdG+bINS0
セイバー「そのようなものが…!?何故、私にも隠していたのですか?」

壺ランサー「できれば使いたくなかったからさ。おそらく私だけではなく、この聖壺戦争に参加している他のサーヴァントにも…同様にその手の宝具があるはずだ」

凛「…そうなの?キャスター?」

壺キャスター「俺には心当りがないが…言わんとしてることはわからんでもない。『2ちゃんねる』上の伝承はプラスのイメージのものばかりなんてありえないからな」


壺ランサー「マスター、頼みがある。宝具を使った俺を見ても…」

壺ランサー「――驚かないで欲しい」

セイバー「…それは保証はできませんが、あなたを見下したり軽蔑したりしない、ということは騎士の名にかけて誓いましょう」

壺ランサー「…ありがとう、マスター」


凛「どっちにしろ、発動させるわけには行かないわね。キャスター!トドメを!」

壺キャスター「任せろ!」

セイバー「させない!ランサーが宝具を発動させるまで、私が――」



「――そこまででちゅわ」

149: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:52:30.44 ID:gJO05PWS0
凛「!?」バッ

セイバー「今の声は…?」

凛「キャスター!結界は!?」

壺キャスター「…信じられんが…何も反応していない。痕跡一つ残さず侵入された」

凛「…そんな芸当ができるサーヴァントは、限られてるわね」

セイバー「…アサシン!」


「マスターの命令でちゅ。あなた達にはもっと相応しい戦場を用意してありまちゅわ」


凛(どこ…?アサシンがすぐ側にいるとわかった以上、迂闊に行動できない…!)

壺キャスター(何故声をかけた…?アサシンが自分の存在を知らせる理由はない。何か目的があるはずだ)

150: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:53:15.75 ID:gJO05PWS0
壺ライダー「くっ…マスターが私のそばに来てくれたのはちょうどよかった。私のそばから離れるな、マスター」

セイバー「…ええ。アサシン相手に単独行動をする危険性は十分理解しています」


「――全然理解できてないじゃないでちゅか」


一瞬の出来事であった

セイバーとランサーの間

距離にして1mも離れていない

何も存在し得ないその空間に

突如謎の人影が出現した

151: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:53:48.48 ID:gJO05PWS0
壺ランサー「な!?マスター!!」

セイバー「えっ…?」


ランサーは手が出せなかった

あまりにも敵が近すぎたためだ

自分の攻撃がマスターに当たってしまう可能性があった

その一瞬の躊躇の結果――


凛「…え?」

壺キャスター「馬鹿な…!?」


セイバーとランサーは、忽然と姿を消した

152: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:54:27.81 ID:gJO05PWS0
凛「…駄目!理解が追いつかない!一体あれは何なの!?セイバーとランサーはどこに消えたの!?」

壺キャスター「落ち着け!!マスター!…正直俺にも理解できない。だがここで混乱したら奴の思うツボだ」

凛「…」

壺キャスター「状況を整理しよう。奴は音も立てず痕跡も残さず結界内に侵入してきた」

凛「あいつの正体は、間違いなくアサシン…」

壺キャスター「問題はその後だ。あいつは何もない空間から突如姿を表した。あれは気配遮断なんかじゃない。瞬間移動、もしくは空間転移の類だ」

凛「それか…姿を完全に隠す手段があった、ってところね」

壺キャスター「そして、ランサーとランサーのマスターが消えた…。暗殺目的なら、マスターだけを狙えばいいものを」

凛「…仕留めたわけではなさそうね。今端末を確認してみたんだけど、セイバーは生存中になってるわ」

壺キャスター「その端末は、他のマスターの位置情報までは確認できないんだったな。あいつらがどこに消えたのかも分からない、と」

153: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:55:23.43 ID:gJO05PWS0
凛「…今すぐここを引き払うわよ、キャスター。敵に位置情報を把握された以上、また侵入される可能性がある」

凛「いや、最悪のケースを想定すると…あいつのマスターが綺礼の可能性もあるわね」

壺キャスター「例のゲームマスターか?」

凛「ええ。このゲームの管理人よ。そうなると、あいつは全サーヴァントの現在地を把握してるのかも」

壺キャスター「おいおい…ゲームマスター側がそんな積極的に戦闘に介入していいのかよ」

凛「あのクソ神父ならありえない話じゃない。そうなると、私達がいくら拠点を変えても無駄ってことに…」


「その通りでちゅわ」


凛「!?」バッ


声がした瞬間、凛は即座に辺りを見回した

辺りは静寂が支配していた

当然のように、そこには『誰も』いなかった



凛「…!?キャスター…どこに行ったの…!?」



つい先程まで自分と会話をしていたキャスターの姿すら、そこにはなかった

154: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:56:40.76 ID:gJO05PWS0
凛は、初めて恐怖した

敵の目的が、敵の行動が、そして敵の正体が何一つわからないからだ


凛「…!」グッ


キャスターが作ったお守りを握りしめ、残った僅かな勇気を総動員して、アサシンの攻撃に備えた

勝てるとは思わない、だが少しでも敵の正体を見極めたい

アサシンの目的が暗殺ではないことはなんとなく察しているが、楽観はできない

せめて次に繋げられるだけの情報を手に入れるために、多少は粘らなければ

凛はそう考えた


凛(どっからでもかかってきなさい…!こっちだって、ただやられっぱなしじゃ収まりがつかないんだ)


瞬間、目の前に影がかかった

何かが、自分の前に立っていた


凛(か…ら…?)

155: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:57:47.68 ID:gJO05PWS0
あまりの急な出来事に

少し顔をあげて、その何かの正体を確認することすらもできなかった

そいつは、手を伸ばした


凛(…!)


凛は反射的に目をつむってしまった

肩に、その何者かに触られた感触を感じた


だが、それは一瞬だった

それ以降一切の干渉がなく、気配も消え去った


凛(…?)


凛は恐る恐る目を開けた

156: ◆nd9x4dt9shCh 2015/05/31(日) 19:58:59.92 ID:gJO05PWS0
凛「…えっ」


壺キャスター「マスター、アンタも来たか。と言うより…連れて来られたか」

凛「キャスター!無事だったのね!」

壺キャスター「…喜んでる場合でもないぜ。よく周りを見てみな」

凛「…?………!?」


凛「何処よ、ここ…!?」


景色が、一変していた

日光を遮るほどに生い茂っていた木々は見る影もなく

空は大きく開放されていた

広く平らな地面に、辺りにはそれを囲うような高い壁

その上には下をよく見下ろせる客席が備えられていた

そう、それは現代で言えば野球場のような、そして更に真に迫った言い方をすれば



セイバー「――まるで闘技場、ですね」

159: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/01(月) 22:30:53.73 ID:ny1FNppj0
~~~~

壺ライダー「な、なぁ、マスター。いい加減機嫌直してくれよ」ゴー

桜「…」

壺ライダー「ワゴンカートが一人乗りっていうのは敵をだますためのフェイクだったんだ。現に今はちゃんと乗っけてあげてるじゃないか」

桜「…」

壺ライダー「ほら、敵を欺くにはまず味方から、ってよく言うだろ?」

桜「…」

壺ライダー「そうだ!お詫びの印と言っては何だが…マスターにとっておきのプレゼントを贈ろう!このオプーナの購入権利書を」

桜「いらない。代わりに…一つ教えて、ライダー」

壺ライダー「そ、そうか…残念だ。それで聞きたいことは何だ?私に答えられることならなんでも答えよう」

桜「…聖壺戦争は、現実世界で行われた聖杯戦争とは違い、万能の願望機である聖杯を呼び出すことはできない」

桜「だったら…どうしてあなた達サーヴァントは召喚に応じるの?」

桜「叶えたい願いがあっても…叶えることはできないんでしょう?」

160: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/01(月) 22:32:10.93 ID:ny1FNppj0
壺ライダー「…そうだな。我々のように聖壺戦争で呼び出されるサーヴァントは…ただ単にそうプログラムされているに過ぎない」

壺ライダー「呼び出されたら、自分を呼び出したマスターと力を合わせて戦い、勝利を目指す。そういうふうにな」

壺ライダー「そこには理想も願望もない。勝利する喜びはあっても目的はない。たとえ勝っても負けても、同じことだ」

桜「だったら…」

壺ライダー「だけど…存在証明にはなる。マスターと共に戦ったという確かな証は、マスターの心のなかに刻み込まれる」

壺ライダー「戦いが終われば有象無象のデータの塊に戻ってしまうとしても、現界している間は頑張れる。自分と共に戦ったことを、ずっと覚えておいてもらいたいからな」

桜「…」

壺ライダー「けど、もし願望機があるなら…私にも叶えたい願いはあるぞ!ヨドバシのおもちゃコーナーよりも大きな夢がな」

桜「夢…?」

162: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/01(月) 22:34:03.53 ID:ny1FNppj0
壺ライダー「そうだ。マスターも、私という存在の『2ちゃんねる』上での扱いを知っているだろう」

桜「…」

壺ライダー「全くもって不本意だが…その悪いイメージのせいで、私はかなり苦しめられている」

桜「…それって、クソゲ」

壺ライダー「よりにもよって、オプーナを購入するのに権利が必要などという悪質なデマが蔓延しているのだ」

桜「あ、そっち?」

壺ライダー「お陰で、オプーナの売上はミリオンに遠く及ばなかった。残念だ…」

桜「じゃあ、ライダーの願いっていうのは…オプーナをミリオンセラーにすることなの?」

壺ライダー「な!?バカにしないでくれ!オプーナはそんなことを願わなくてもミリオンセラーを達成するポテンシャルを秘めている!」ドンッ

桜「ご、ごめんなさい…」

壺ライダー「だが…デマのせいで購入をためらう人が大勢いるのは事実だ」

桜(突っ込むのは野暮かしら…?)

壺ライダー「私の願いというのは、世界中の人たちにオプーナを購入する権利を与えることだ!」

壺ライダー「大人にも子供にも。今までオプーナを買いたくても買えなかった人たちに、心置きなくオプーナを購入して遊んでもらうためにな!」

桜「…ふふ。素敵な夢だと思うわ、ライダー」

163: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/01(月) 22:36:42.26 ID:ny1FNppj0
壺ライダー「そ、そうかな…へへ。そうだ、まずはマスターにオプーナを購入する権利を」

桜「それはいらない。…もう一つ聞かせて、ライダー」

壺ライダー「そうか…。もう一つ聞きたいこととは?」


桜「ライダーは…どうして、嘘を付いたの?」


壺ライダー「…」

桜「ワゴンカートが一人乗りと言っていたのは敵を欺くため、なんて流石に無理があると思う」

桜「本当は、乗るのが嫌だったんじゃないの…?」

壺ライダー「…スマン。マスターに隠し事をするべきじゃなかった」

壺ライダー「そうだな…説明のために、一つ喩え話をしよう」


壺ライダー「マスターは『無辜の怪物』というスキルを知っているか?」

167: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/03(水) 01:40:30.68 ID:yrvt6VGT0
桜「ええっと…確か、サーヴァント本人の意思に関係なく、風評やイメージによって姿形が変えられてしまう…呪いのようなスキルだったよね?」

壺ライダー「その通りだ。我々、壺のサーヴァントも同じようなものだ。自分の意志とは関係なく、『2ちゃんねる』上で形成されたキャラクター、設定が召喚時に反映される」

壺ライダー「だが、誰一人『無辜の怪物』のスキルを所有しているサーヴァントはいない。…何故だかわかるか?」

桜「…実在の人物じゃない、から?」

壺ライダー「そうだ。仮に実在の人物をモデルにしたサーヴァントがいたとしても、それは全く別物なんだ。世界と契約したわけでも、座に召し上げられたわけでもない」

壺ライダー「現実から独立したネット上で形成されたイメージの集合体…それが私達だ」

壺ライダー「言ってみれば完全な創作キャラクターである私達は、存在自体が『無辜の怪物』なんだ」


壺ライダー「例えば私などは、…不名誉な話だが『クソゲー』を象徴するキャラクターとしての側面が強い」

壺ライダー「サーヴァントとして召喚された結果、どうなったか。…自らを神ゲーと主張しながら、ワゴンなどという不名誉な乗り物で疾走するような、矛盾を抱えた存在になってしまった」

壺ライダー「…嫌に決まっているだろう。ワゴンに乗るということがどういうことか、私にだってわかるさ」

桜「…」

168: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/03(水) 01:42:25.89 ID:yrvt6VGT0
壺ライダー「ちょうどいい機会だ。伝えておこう」

壺ライダー「私には、もう一つ宝具がある。発動しただけで、ヘタしたらこの聖壺戦争を終わらせてしまう程の宝具がな」

桜「…!?そんなに強力な宝具を持っているの?」

壺ライダー「強力…それも少し違うかも知れない。この世界のシステムを破壊しかねないものであることは事実だが」

壺ライダー「だけど、私はなるべくその宝具を使いたくないんだ。私を象徴するものでありながら、私を否定する忌まわしい宝具をな」

桜「…それを使わせるな、ってこと?」

壺ライダー「いや、違う。さっきも言ったが我々に目的はない。ただマスターと共に勝利を目指すだけの存在だからな」

壺ライダー「だから、必要な場面が来たら、マスターのために使う。ただ…その時、私が葛藤の末にその宝具を使うんだということを、マスターに覚えておいて欲しくてね」

桜「…うん、わかった。なるべく、使わないで勝ちすすみましょう」

壺ライダー「うむ!では、当面の目標はセイバーの打倒ということにしようか」

169: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/03(水) 01:42:59.03 ID:yrvt6VGT0
桜「先輩たち、まだあの街に残ってるのかしら?私達に居場所がバレたから、移動してる可能性もあるわよね?」

壺ライダー「ふふふ。それについては手を打ってあるぞ。あの少年には『オプーナの購入権利書』を渡してあるのだ」

桜「えっ。それがなにか意味あるの…?」

壺ライダー「実はあれは魔力を込めた呪符の一種なのだ!攻撃はできないが…現在地くらいは把握できるぞ。端末に魔力の痕跡を送るように設定しておいたから確認するといい」

桜「結構抜け目ないのね、ライダー。…先輩が捨ててなければいいけど」

壺ライダー「な、捨てるわけがないだろう!誰もが欲しがるものだぞ!」

桜「私は欲しくないけど。…え?ライダー、これ、おかしいんじゃ?」

壺ライダー「ん?何がおかしいというのだ?どれどれ……」

壺ライダー「…何だ、これは…!?」

173: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/04(木) 01:36:14.05 ID:JDPYG+CF0
桜「昨日セイバーと交戦したのはこの霧の街よね?けど…今先輩たちがいるのはここからずっと南よ?」

壺ライダー「…ありえん。こんな長い距離を移動するのは一日がかりだぞ。ましてや奴らは乗り物も持っていない。瞬間移動でもしない限りは…」

壺ライダー「…いや、ありえるかもしれない」

桜「どういうこと?」

壺ライダー「昨日あの街に入って気づいたのだが…あの街の中では何故か非常に距離がつかみにくいのだ。霧のせいだけではない。セイバーが攻めあぐねていたのもそのせいだろう」

壺ライダー「おそらく、この世界ではフィールド毎にギミックが仕掛けられているのだろう。特定のクラス、スキルを強化するようなシステムがな」

桜「え!?でも、端末にはそんな事記載されてないわ」

壺ライダー「これもあくまで想像だが…ゲームに仕掛けられた『隠し要素』というやつかもしれない。それに気づいたプレイヤーは戦略に取り込む事ができる、というわけだ」

壺ライダー「考えてみればこのようなオープンワールドでは、キャスターやアサシンといったサーヴァントが活躍するのは難しい。それを補うためのフィールド効果、と考えればしっくりくる」

壺ライダー「昨日の戦場である霧の街は、おそらくアサシンに有利なフィールドとして作られていたのだろうな」

174: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/04(木) 01:37:27.90 ID:JDPYG+CF0
桜「よく気づいたわね。凄いわ、ライダー!」

壺ライダー「これでもゲームをモチーフに作られたサーヴァントだからな。気づかなければ沽券に関わる」

桜「となると、この遠距離移動もフィールドのギミックなの?ワープゾーンみたいなものがあるのかしら」

壺ライダー「…うーん。これだけ無駄に広い世界だし、ワープゾーンくらいあってもおかしくないと思うが」

壺ライダー「少なくともあの街にはそんなモノなさそうなんだがなぁ。自分で言い出しておいて何だが、やっぱり疑問は残る」

桜「先輩たちのところまで、どれくらいかかるかしら?」

「すぐに連れて行ってあげまちゅよ」

壺ライダー「カートをすっ飛ばしても半日は掛かりそうだな。…ん?」

175: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/04(木) 01:39:28.69 ID:JDPYG+CF0
桜「きゃあっ!?誰…!?」

壺ライダー「な、どうしたマスター!?」

桜「今、一瞬、カートの中に誰かが乗って…って、ライダー!前見て前!」

壺ライダー「えっ。おわっ!?」



「危ない、マスター!」ハァ!

「へっ?ってきゃああああああ!」


キキーッ


壺ライダー「あ、危なかった…何か轢いてしまうところだった」

桜「……姉さん!?」

壺ライダー「へ?」


壺キャスター「無事だったか、マスター。間一髪間に合ってよかったぜ」

凛「…マスター相手に宝具ぶっ放すとはいい度胸してるじゃない。全く何処のどいつよ!いきなり人をひき殺そうとする奴…は…?」

凛「…桜!?どうして桜までここに!?」

桜「『まで』?姉さんこそどうしてここに…?」

壺ライダー「…何処だ、ここは?」

178: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/05(金) 00:06:23.57 ID:e/iLQty20
~~~~

凛「セイバー!?あなた達もここに連れて来られたの?」

セイバー「ええ。気づいたらここに。あのアサシンの仕業でしょうね」

壺ランサー「律儀にも槍まで一緒に運んでくれたよ。何がしたいのかわからないな」

凛「…瞬間移動能力の使えるアサシン…一体どういうことよ…?」

壺キャスター「アサシンへの考察は後回しだ。今一番考えなきゃならんのは」

壺ランサー「この状況をどう捉えるか、だな」

セイバー「…」

壺キャスター「なんなら、さっきの続きをここで始めるか?」

179: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/05(金) 00:08:27.72 ID:e/iLQty20
凛『ちょっとキャスター!何馬鹿なこと行ってるのよ!』

壺キャスター『わかってるさ、マスター。陣地を失った俺達には、万に一つも勝ち目はない事は』

凛『…』

壺キャスター『だが、それを悟らせちゃいけない。奴らはまだフィールド固有の効果の存在も知らないはずだ』



キャスターと凛が『それ』の存在に気づいたのは、ランサー戦でばら撒いたお守りを回収していた時の事だった

森の外で交戦していた時よりも、お守りに込められた魔力量が増大しているように感じられた

確信に至ったのは、魔力を使い果たし役目を終えたはずのお守りにさえ守護の効力が復活していたためだ

この森の中では、キャスターの保有する陣地作成、道具作成のスキルが強化されている

そう気づいた彼らは、下手に移動せず森の中に陣地を形成する策をとった

ランサーたちの目を欺く形にもなり、一石二鳥の考えであるはずだった

少なくとも、その段階では

180: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/05(金) 00:10:08.21 ID:e/iLQty20
凛『…その情報さえ握っていれば、まだ立て直しは効く。そう言いたいのね?』

壺キャスター『ああ。そのためにもまず、ハッタリでも何でも使ってこの場を凌がないとな』


壺ランサー「…随分自信満々なんだな、キャスター。自慢の工房はもう無いというのに」

壺ランサー「こちらのダメージがまだ回復していないから、そこまで余裕なのか?それとも…」

壺ランサー「精一杯強がっているだけ、だったりするのかな?」グッ

壺キャスター「…!」

181: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/05(金) 00:10:52.22 ID:e/iLQty20
凛(ランサーが槍を構えた…!読まれてる…!?)

セイバー「待ってください、ランサー。アサシン陣営が我々をここまで連れてきた目的がわかりません」

セイバー「もしかしたら…いえ、まず間違いなく監視されていると見ていいでしょう」

セイバー「ここで私達を戦わせるのが目的だとしたら、こちらの手の内を晒すのは得策ではありません」

壺ランサー「どうした、マスター。らしくない。臆したのか?」


凛(よし!その調子よ、セイバー!そのままこの場を後にして)


セイバー「いいえ、ランサー。こう命じたかったのです。宝具を使わずにキャスターを仕留めてください、と」

凛(…!?)

182: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/05(金) 00:11:40.68 ID:e/iLQty20
壺ランサー「…どういうことだ、マスター。さっきの戦いを見てただろう。工房の中とはいえ、こちらの攻撃は彼らに全く届いていなかった。宝具を使わなければ…」

セイバー「ランサー、こう見えて私は観察眼には自身があるのです。…彼らからは先ほどのような脅威を感じません」

セイバー「具体的に言えば魔力の流れでしょうか。彼らの工房内で戦った時は、マスターである凛でさえ夥しい程の魔力を放出していました」

壺キャスター(マスターに持たせていたお守りか)

セイバー「ですが、今は彼女からさほど魔力の気配を感じません。おそらく工房の影響が失われたためでしょう。今の彼らなら、あなたの槍で十分貫けるはずだ」

凛(しまった…!私の方に着目されてたなんて…!)

壺ランサー「成程。だったら話は決まりだ」

壺ランサー「マスターの命令通り…宝具を使わずに君たちを仕留める。君の望み通りになって嬉しいだろう、キャスター」

壺キャスター「…ああ。嬉しくって泣けてきそうだよ」

凛(…こうなったら考えることは唯一つ。勝てるかどうかなんて後回し。どうやってここから離脱するか…!)



「――なんだ急にわけわからん場所に出た>>セイバー」

185: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 02:44:44.36 ID:qrPw5DnH0
壺ランサー「!新手の敵か!?」バッ

セイバー「…!いえ、彼は…」


凛「士郎!?…と、サーヴァント…」

壺キャスター「これはまたわかりやすいな。見た目からして明らかに騎士クラス、おそらくセイバーだろうな」


壺セイバー「降臨しただけで3回連続見つめられるとはやはりナイトが一番だな圧倒的に流石って感じ」

士郎「遠坂に、セイバー!?どうして…?」

壺セイバー「おいィ?俺はずっといるだろマスターそのヒットした頭を冷やすべき」

士郎「あ、いやそうじゃなくてな…」

186: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 02:45:33.42 ID:qrPw5DnH0
セイバー「士郎までここに連れて来られるとは…!やはりアサシンの仕業ですか?」

士郎『えっと…さっきまで俺たちは霧の街で作戦会議してたはずなんだが…』

壺セイバー「ナイトはアサシンよりも高みにいるから攻撃にも笑顔だったがいいかげんにしろよ。これやったの絶対忍者だろ…」

士郎『いや、アサシンの仕業だと思うぞ…』


セイバー「…」


「さっきまでミステリーが残された街で議論をたまにいつもやっていたんだが…?」
「これはアサシンの仕業でFA!」


セイバー「……?」

凛「何…?あれ…?」

壺キャスター「…あいつか……」

187: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 02:46:30.33 ID:qrPw5DnH0
壺ランサー「…やはり君も召喚されていたのか、『ブロントさん』」

壺セイバー「…む。そういうお前は『リューサン』」


セイバー「ランサー、彼の真名を知っているのですか?」

壺ランサー「ああ。出典が同じサーヴァントだからな。もっとも彼の場合はその独特の発言を聞けばだれでも気づくさ」

セイバー「…士郎の発言がおかしいのも、あのサーヴァントの影響と見て良さそうですね」


壺セイバー「ほう、経験が生きたな。で、ここが何処なのか早く説明してくれませんかねぇ…?」

188: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 02:47:39.53 ID:qrPw5DnH0
壺キャスター「――マスター。わかっているとは思うが」

凛「ええ。非っ常にマズイ展開ねこれ。相手は2体とも騎士クラス。しかも目的を考えると結託して襲ってくる可能性が高い。どうあがいても2対1じゃ…」

壺キャスター「2対1とは限らないぞ。…アサシンの目的がなんとなくわかったぜ」

凛「へっ?」

壺キャスター「恐らく奴は、ここに集められるだけサーヴァントを…」



「ライダー!前見て前!」

「えっ。おわっ!?」



壺キャスター(…!馬鹿な…!?気配もなくこのスピードで接近して来るだと!?)

壺キャスター(マスターの反応速度で躱せるか?一か八か…!)


壺キャスター「危ない、マスター!破ぁ!!」

凛「へっ?ってきゃああああああ!」


ゴシュ

191: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 13:18:50.31 ID:qrPw5DnH0
「あ、危なかった…何か轢いてしまうところだった」

「……姉さん!?」

「へ?」


壺キャスター「無事だったか、マスター。間一髪間に合ってよかったぜ」

凛「…マスター相手に宝具ぶっ放すとはいい度胸してるじゃない。全く何処のどいつよ!いきなり人をひき殺そうとする奴…は…?」

凛「…桜!?どうして桜までここに!?」

桜「『まで』?姉さんこそどうしてここに…?」

壺ライダー「…何処だ、ここは?」


壺ランサー「…また新手か。アサシンの奴は何がしたいんだ」

セイバー「もしかしてこのまま、全サーヴァントをここに集結させるつもりでしょうか…?」

192: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 13:20:17.45 ID:qrPw5DnH0
桜「…!ライダー、これ…!?」

壺ライダー「…位置情報が更新されている。まさか私達も瞬間移動したというのか?」

壺キャスター「その認識で問題ないぜ。…アンタがライダーか」

凛「あーもう次から次へと!」


桜「信じられないけど、確かにさっきまでと全然景色が違ってるわね…。そうだ!先輩は…?」

士郎「呼んだか?」

桜「きゃあ!」

士郎「人の姿見ただけで叫ぶのはやめてくれませんかねぇ?」

193: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 13:20:58.01 ID:qrPw5DnH0
桜「ライダー!今すぐセイバーを倒して!」

セイバー「なっ…!?いきなり何を言うのです、桜!」

桜「あ、ちがっ…セイバーさんじゃありません!」

壺セイバー「粘着してきた敵マスターも自分の地位を悟ったのかいつのまにやら丁寧語になっていた」

士郎「やはりナイトの存在があまりに大きすぎた」

桜「きいいいいいいいいいいいいい!」

壺ライダー「お、落ち着けマスター…!」

セイバー「桜、士郎!あなた方が争ってる場合ではありません!どうか冷静になってください!」

士郎「俺はいつでも冷静感情を抑えられない桜が雑魚なだけ」

セイバー「士郎!?いい加減にしてください!」

194: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 13:22:39.41 ID:qrPw5DnH0
凛「…これ、ひょっとしてチャンスじゃない?」

壺キャスター「願ってもない状況だな。このまま同士討ちを始めてくれれば最高だがそこまで待つ必要もない。今のうちにここから抜け出」


壺ランサー「――落ち着きたまえ^^」


士郎「落ち着いた^^」

セイバー「落ち着きました^^」

桜「凄く落ち着きました^^」


凛「えっ、何あれ」

壺キャスター「…考えるだけ無駄だと思うぜ」

壺セイバー「流石はリューサンだと関心はするがどこもおかしくはない」

凛「!?こいついつの間に」

壺セイバー「ヨミヨミですよ?お前らの作戦は。逃亡の証拠のログは確保したからなもう逃げることは出来ない」

195: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 13:24:47.56 ID:qrPw5DnH0
セイバー「…コホン。感謝します、ランサー」

セイバー「士郎、桜。ここは一旦休戦してください。我々の目的は一致しているはずだ。まずは凛とアーチャーを倒すことを優先すべきです」

桜「そうでしたね…すいません、冷静さを失ってました…」

壺ライダー「いやぁ、無理もないさ…」

士郎「やっと正気にもどったか。助かった、終わったと思ったよ」

桜「…」

壺ライダー「お、落ち着こう、な?」


凛「あ、あんたらねぇ…。3人がかりなんて卑怯だと思わないの…?」


壺セイバー「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」

士郎「聞こえてない」

桜「何か言いました?」

セイバー「私のログには何もありませんね」

凛「ちくしょうおまえらは馬鹿だ…」

壺キャスター「…流石に終わったか」


「――また随分と窮地に追い込まれているようだな、凛」

199: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 20:15:18.66 ID:qrPw5DnH0
凛「その声は…!」

セイバー「…!やはりあなたも連れて来られたのですね、アーチャー」

アーチャー「こちらは如何にこの戦いを勝ち抜くか知恵を絞っていた最中だというのに…急かすような無粋な真似をしてくれる」

セイバー「…意外ですね。あなたが素直にアサシンに暗躍を許すとは」

アーチャー「もとより、私には対抗手段がないからな。肝心のサーヴァントですらこのザマだ」

「……」

セイバー(アレが…アーチャーの呼び出したサーヴァント…!)

アーチャー「紹介しよう。バーサーカーだ」


壺バーサーカー「……」


セイバー(…不気味な雰囲気は感じますが……とても戦闘向きとは思えません。一体どんなサーヴァントなのでしょうか…)

桜「ライダー…あのサーヴァントの真名はわかる?」

壺ライダー「…割りと特徴的な外見はしているが…心当りがない。恐らくは逸話(コピペ)による内容先行型の、姿の設定が曖昧な英雄なのだろう」

200: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 20:17:11.55 ID:qrPw5DnH0
凛(アーチャーのサーヴァントがアーチャー…なんて都合の良い展開はなかったか。でもこの際贅沢は言ってられない…!)

凛「アーチャー!昨日の発言は忘れて手を貸しなさい!こいつらは手を組んで私達を先に脱落させようとしてるわ!」

アーチャー「もしかして、凛…君はその可能性を考えずに私に宣戦布告をしたのか?」

アーチャー「てっきり自分が不利な状況に追い込まれるのを覚悟の上で私と袂を分かったのかと思い、感心していたのだがね」

凛「くっ…アンタも気づいていたってわけ?」

アーチャー「当然だろう?逆の立場なら私も間違いなく同じことをしていた。――君の高潔さと勇猛さに身が震える思いだったよ」

凛「このっ…嫌味なやつ…!」

壺キャスター「抑えろ、マスター。おい、バーサーカーのマスター、状況は見ての通りだ。俺達がやられれば次はお前に火の粉が振りかかる」

壺キャスター「マスターがお前に何を言ったのかは知らんが…ここで手を組み状況を打開する以外に手はない」

アーチャー「当然、私とてただやられるつもりは無い。例え相手が何人いようとも、な」

201: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 20:19:12.42 ID:qrPw5DnH0
壺ランサー「…」グッ

壺ライダー「ほう…3対2なら勝てるとでも?」

壺セイバー「恥知らずなバーサーカー使いがいた!そんな貧弱黒魔とPT組んだところでどうやって勝てるって算段だよ。リアルで痛い目を見たいのか?」


壺キャスター「威勢がいいのは構わないが…相手は騎士クラスが2体。更には機動力に優れたライダーもいる。…言っちゃ悪いが、そのバーサーカーで戦力になるのか?」

アーチャー「問題はない。バーサーカーにとって、敵の数は関係ない。いやむしろ多いほうが好都合だ」


アーチャー「君たち『四人』のサーヴァントを相手取っても、十分勝算はある」


凛「へぇ、随分と頼もしいこと言ってくれるじゃない。…あれ?」

壺キャスター「…!」

セイバー「『四人』?それは、つまり…」


壺キャスター「俺達も、含まれてるってことか…?」ググッ

凛「…どういうつもりよ、アーチャー」

202: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/07(日) 20:21:16.35 ID:qrPw5DnH0
アーチャー「悪く思うな、凛。バーサーカーは攻撃の対象を選べないのだ」

アーチャー「それに、私自身この聖壺戦争でどこまで勝ち抜けるか試してみたい気持ちもあってね。今のこの状況は絶好の好機だ」


壺ランサー「…なめられたものである」

壺ライダー「――挑発に乗ってやろう。ここがお前の墓場(ワゴン)だ」

壺セイバー「…お前は一級廃人のおれの足元にも及ばない貧弱一般人」

壺セイバー「一級廃人のおれに対してナメタ言葉を使うことでおれの怒りが有頂天になった」


壺セイバー「――この怒りはしばらくおさまる事を知らない」グッ


凛「あれ?アーチャーにヘイトが向いてるからこれって結果オーライ?」ボソ

壺キャスター「そうみたいだな。適当に共闘するふりしてタイミングを見てずらかるぞ」ボソ


アーチャー「行け、バーサーカー。…力を見せつけてやれ」


壺バーサーカー「……ま……れ……!」


「「「「!?」」」」


アーチャー(――もっとも、その『力』というのは……君たち自身のモノだがね)

205: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/10(水) 01:16:15.73 ID:Ju73kEpy0
~~~~

「――くたびれまちたわ」

言峰「ご苦労だったな、アサシン」

壺アサシン「大体、この世界が広すぎるからこんなことしなくちゃいけないのでちょう。敵同士が遭遇するだけで一苦労でちゅわ」

言峰「ふむ…一理あるな。実装時には世界の広さも考慮しよう」

言峰「それはそうと…『闘技場』に集めたサーヴァントたちはどのような状況だ?」

壺アサシン「それは自分で確認してみるといいでちゅわ。あたちは運んだだけでちゅもの」

言峰「どれどれ…ん?」

言峰「アサシンよ…『アーチャー』の姿がないようだが」

壺アサシン「ああ、あれは無理でちゅわ。どれだけ距離を詰めても、逆に離れても。背後をとっても、マスターに手を出しても。…全部対応されまちゅ」

壺アサシン「あれを本気で捕まえようと思ったら、こっちも命懸けでちゅ。だから頃合いを見て離脱しまちたわ」

言峰「うーむ…一番戦闘データが欲しかったのは、この『アーチャー』だったのだが、今お前を失うわけにもいかないからな」

言峰「まぁいい。籠城を決め込むような受け身のサーヴァントでもない。となれば、いずれ他のサーヴァントと交戦する機会もあるだろう」

言峰「それまでは…この5陣営の戦いを眺めて待つとするか」

206: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/10(水) 01:18:13.85 ID:Ju73kEpy0
壺アサシン「――そこまでアーチャーの戦闘データが欲しいんでちたら、最初からあたちにプロテクトなんてかけなければよかったのでちゅわ」

言峰「ふっ…そうは言うがな、アサシン。お前の能力を完全に再現するには、まだ不安定な要素が多すぎる。下手をすればバグを誘発しかねない」

壺アサシン「ゲームの完成度が低いばかりに縛りプレイを余儀なくされるあたち…なんてかわいそうなのでちょう」

言峰「しかし、そうだな…フェイズを1つ引き上げる程度なら問題は無いかも知れん」

言峰「…よし、プロテクトを半分解除した。試してみろ」

壺アサシン「わぁい。ちょっと試しに行ってきまちゅね」


そう言うと、アサシンはその場から消えた

言峰はそれを見届けると、再びモニターに目を向けた

しかし、モニターを見続けながら、次の言葉を発した


言峰「――マスターが自分のサーヴァントの位置を把握できるのは知っているだろう。いつまでそこにいるつもりだ?アサシン」

207: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/10(水) 01:20:58.87 ID:Ju73kEpy0
壺アサシン「…ふふふ。どうでちゅか?あたちの力は」

言峰「ああ。完璧に背景と同化している。私がマスターでなかったら、目にしても全く気づかないだろう」

壺アサシン「その言葉が聞けて満足しまちたわ。もっとも、この能力が解放されても、アーチャーを捕らえられるかどうかは微妙でちゅけど」

壺アサシン「アーチャーをどうにかするのは、あたちのプロテクトが完全解除されてからにしまちゅわ。じゃ、ちょっと観光してきまちゅ」スッ


今度こそ本当に、その場からアサシンがいなくなったことを言峰は感じ取った

自分だけが存在する部屋の中で、ポツリと呟いた


言峰「…この世界の何処にでも存在し、その場のどんな風景にも擬態するサーヴァント、か」

言峰「――とんだバランスブレイカーだ。とてもプレイヤーに使わせるわけにはいかぬな」

213: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/11(木) 23:02:11.22 ID:Tj2WXp7l0
~~~~

壺セイバー「あ、アガッ…!」

壺ランサー「グ、グウ…」

壺ライダー「ぬうううううううっ!」

壺キャスター「あっ…あっ…」


セイバー「…?ランサーの様子が変だ…」

士郎「そうか?特に変わってない感」

桜「先輩は少し黙っててください。ランサーだけじゃありません…他のサーヴァントも…」

凛「けど、おかしいわ。バーサーカーは何もしてないわよ?」


アーチャー「…君らは何も感じていないのか?」

アーチャー(もしや…この闘技場というのは…)

アーチャー「成程、そういうことか」

凛「何ニヤついてるのよ、アーチャー!結局ただ思わせぶりなだけじゃない」

アーチャー「余裕だな、凛。自分のサーヴァントから目を離していいのか?」

凛「なんですって…?」

214: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/11(木) 23:03:10.42 ID:Tj2WXp7l0
*******

「何でエアリス使ってんの?ティファのが強いしエアリス死ぬよ?」

「……」

「何?」

「クラエアがデフォだしティファとかブサイクで醜い女入れたくない」

「は?エアリスってリミットゴミでしょ?それに強制離脱するから育てても無駄」

「――あたしの勝手じゃん!クラエア馬鹿にする気?」


「そうなら――あんたもう死ね!」


*******

「あーあ。リューサンまた床舐めてるよ」

「ちゃんと動き理解してきた?」

「だから言ったんだよ。竜騎士なんて誘うのやめようぜって」

「まぁ最初から期待してなかったし?(笑)フレとの話題作りだよ。あのリューサンとPT組みました!って(笑)」

「いつまでそこで寝てんの?誰も起こさないよ?」

「竜騎士はガリでも食ってろ(笑)」

「じゃあ、アタシ達戻るから。これからもソロで頑張ってね~」

215: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/11(木) 23:04:17.36 ID:Tj2WXp7l0
*******

「ミリオンとかwww身の程知らずにも限度があるだろwww」

「キャラデザひどくね?本気で売る気あんのかよ」

「マ○オおもしれー」

「オイお前らやめてやれ。オプーナが売れなかったのは購入する権利が必要だからだぞ!」

「俺もオプーナ欲しかったけど権利がなかったから買えなかったわ」

「ワゴンで見た」

「オプーナ…?ああ、2ちゃんで聞いたことあるよ。クソゲーなんでしょ?」

*******

「死ねぇ・・死ねぇ・・」

「全然怖くないんだけど」
「そんなに可愛い顔を怖がれるかよw」

「な・・・・っ!」


「しゃあねぇな。じゃあ入れよ」

「し、仕方ないわねっ・・!」ギュッ


「破ぁぁあッ!!!!!」


「きゃああああああ!」シュウ

「…」ポカーン


「ふぅ・・あぶなかったな・・・アイツは実はなんかイロイロヤバイ感じだったんだ、危なかった危なかった・・・」

*******

216: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/11(木) 23:05:25.65 ID:Tj2WXp7l0
壺キャスター「ハァ…ハァ…」

凛「キャスター…?」

壺キャスター「…ハアアアアアアアアアアアァァァァァァ!」バシュン!

壺ライダー「ぐおっ!」ズサッ

桜「ライダー!?ちょっと、姉さん!いきなり何するんですか!」

凛「え!?ちょっ、違っ…私は何も命じてないわよ!」


壺ライダー「ふっ…ふふふふふふふふふふふふふ」

壺ライダー「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン」ブンッ

壺キャスター「ウオッ!」メキッ


凛「キャスター!?ちょっと何よ桜!あなたこそひどいじゃない!」

桜「へ!?いや、その…!」

セイバー「…!違います、桜、凛!セイバーとランサーも様子がおかしい!」

217: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/11(木) 23:05:56.44 ID:Tj2WXp7l0
壺セイバー「オイィィィィィィィィィィ!」

壺ランサー「アアアアアアアアアアアアアアアア!」

ガキン

士郎「おい、セイバー!?その馬鹿みたいにヒットした頭を冷やせ!」

凛「…何よ、これ」


目の前には異様な光景が広がっていた

4体のサーヴァントはまるで理性を失ったかのように

バーサーカーそっちのけで交戦を開始した

キャスターとライダーは互いの飛び道具を放ち合い

セイバーとランサーは互いの武器をぶつけ合った

そこには戦略も技術もなく

ただの獰猛な獣達による喰らい合いでしかなかった


凛「バーサーカーと戦ってたはずなのに…むしろ狂化してるのは私達のサーヴァントの方じゃない…!」

221: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/13(土) 02:32:17.93 ID:qtCj9EUw0
桜「ライダー!攻撃を止めて!…駄目です。全然反応してくれない…」

凛「くっ…それだけじゃない。普段より多く魔力を吸われてるわ…!」

士郎「このままでは俺の寿命が魔力切れでマッハなんだが…」

セイバー(…私はともかく、このままでは桜たちは魔力切れによって脱落してしまうかもしれない)

セイバー(となると、やはり手はひとつ…)

士郎「俺は古代よりいる投影魔術の使い手何だが大食らいの居候が何か言いたい事があるらしく媚びた目線を向けてきた。ヨミヨミですよ?お前の考えは」

セイバー「……」イラッ

士郎「要するにマスターである汚いアーチャーを始末すればいいだけという理屈で最初から俺の勝率は100%だった。俺にかかればそれくらいチョロいこと。まぁみてなw」

桜「…」イラッ

凛「さっきから何なのこの士郎は…?」


士郎「――投影、開始(トレース・オん)」

222: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/13(土) 02:33:24.09 ID:qtCj9EUw0
士郎は自分のサーヴァント、セイバーの持つ刀剣、グラットンソードを投影した

性能の再現は不可能であるが、ゲーム内で普通の魔術師と変わらぬ肉体強度にされたアーチャーに対し

致命傷を与えるには十分な『凶器』だった

アーチャーは、士郎たちに背を向け

サーヴァントたちの狂乱ぶりを静かに眺めていた


士郎「――一瞬の油断が命取り」

士郎「是、ハイスラァ!」


士郎は、自身が出せる最強の一撃を

無防備なアーチャーの背中に浴びせた

しかし――


士郎「お、おいィ!?」

セイバー「馬鹿なっ…!?」


アーチャーには傷一つなく

逆にグラットンソードの刀身が根本から消滅していた

223: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/13(土) 02:35:17.10 ID:qtCj9EUw0
桜「攻撃を防いだ…!?けど、そんな素振り見せなかったのに…」

凛「いいえ、防いだというよりは…攻撃そのものが意味を成さないような感じね。概念的な防御に近いわ」


アーチャー「実に安直な行動だな。何故私が君たちを警戒していないのか。少しは考える努力をしてみてはどうかね」

士郎「…そういう悪口は名誉毀損で犯罪行為だからお前は死ぬ」

セイバー「言ってる場合ですか、士郎!」


桜「…フィールド、ギミック…?」

凛「…!?」ビクッ


セイバー「桜、何か知っているのですか?」

桜「ライダーが言っていたんです。この世界には私達プレイヤーに説明されていない隠し要素があるって」

桜「フィールドことに、私達に及ぼす影響が違ってくるらしいんです。だからおそらく、ここもそうだと思います」

224: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/13(土) 02:36:43.80 ID:qtCj9EUw0
セイバー「フィールド効果…。成程、そういうことでしたか、凛。合点がいきました。ランサーとの戦闘で、あなた達はそれを利用していたのですね」

凛「――ああもう!なんでバラすのよ、桜!黙ってればあなたも有利に勝ち進めたでしょう!?」

桜「今のこの状況を打破するには、情報の共有が必要だと思っただけです。姉さんほど勝ちにこだわってませんから」

士郎「ならさっきのアレもフィールドギミックのせいなのかよ まぁわかってた(予知夢)」

セイバー「おおよその予測ですが…この場所での効果はおそらく…」


アーチャー「バーサーカーの攻撃を受けた君たちに全く変化がなかったこと。そして衛宮士郎の一撃を受けて確信したよ」

アーチャー「この『闘技場』フィールドでは…我々マスターに対する攻撃は全て無効となるのだとな」

225: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/13(土) 02:38:02.31 ID:qtCj9EUw0
凛「はあああああああ!?何よそれ!バランス崩壊ってレベルじゃないわよ!」

桜「そんな…それじゃあ、打つ手無しってことですか…!?」

セイバー「成程。だからあなたはこちらを全く気にも止めていなかったのですね」

セイバー「マスターへの攻撃は無効。と、なると…厄介ですが、同時にこちらにとっても都合が良い」

アーチャー「ほう。どういう意味だ?」

セイバー「アーチャー。あなたが私達の妨害をすることも不可能だという事です」


セイバー「――令呪を使います。バーサーカーがどのような能力を使っているかはわかりませんが…少しの間であれば令呪によって正気を取り戻すのは可能のはず」

228: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:39:38.52 ID:0ckEERku0
桜「令呪を!?…でも、いいんですか?セイバーさん。貴重な令呪を…」

セイバー「構いません。桜、あなたは私にフィールド効果について教えてくれましたし、士郎は魔力を消費してアーチャーへの攻撃を試みました」

セイバー「ならば、今度は私が身を削るべきでしょう」

アーチャー「ほう…正気を取り戻したところでどうするつもりだ?この場から逃走でもしようと言うのか?」

セイバー「正気に戻るのが一瞬だとしても…バーサーカーを仕留めるには十分だと考えています」

アーチャー「…!」

セイバー「場を観察しているのはあなただけではありません、アーチャー。バーサーカーはおそらく能力に特化した存在なのでしょう?」

セイバー「狂化された4体のサーヴァントがバーサーカーに対してだけは敵意を向けていないのに、自分から攻撃を仕掛けていないのが良い証拠です」

アーチャー「……」

セイバー「素の戦闘能力に関してはこの場で最も低いと考えて良いでしょう。俊敏性に優れたランサーであれば、狂化の解けたその一瞬でバーサーカーを倒すことができます」

桜「…すごい。頼もしいです」

士郎「素晴らしい提案だすばらしい。騎士王の洞察力はまさしく鬼の力と言ったところかな」

凛(…こっちとしてはバーサーカーがやられても困るのよね)

アーチャー「…ならば、試してみろ。無駄なあがきになると思うがね」

セイバー「そうさせて頂きましょう。――令呪を持って命じます。ランサーよ、狂気を払い…理性を取り戻してください」スッ

229: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:40:48.62 ID:0ckEERku0
壺セイバー「オイイイイイイイイイイイイイイイイ!」キィン

壺ランサー「ウゴオオオオオオオオオオオオオオオ…お…?」キン


壺ランサー「…!?なんだこの状況は…!?」グググ

セイバー「説明をしている時間はありません、ランサー!今すぐバーサーカーを倒してください!」

セイバー「そのセイバーは理性を失っている!パワーは上がっているかもしれませんが、攻撃をいなすのはたやすい筈です!」

壺ランサー「なんだかよくわからないが…承知したぞ、マスター!」バッ

壺セイバー「オイイイイイ?」ヨロッ

壺ランサー「しばらく離れてろ!」バッ

壺セイバー「オイイイイイ!?」ズシャア


ランサーはセイバーのとの鍔迫り合いを解き

相手の姿勢を崩したところに強烈な蹴りを浴びせた

セイバーは吹き飛び、ランサーは自由に行動できる状態になった

230: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:41:22.21 ID:0ckEERku0
桜「やった…!」

壺ランサー「バーサーカーは…あそこか。私なら一足で間合いを詰められるな」

壺ランサー「覚悟しろ、バーサーカー!」ダッ

壺バーサーカー「…」


アーチャー「…フッ」

セイバー「…馬鹿な!?」


壺ランサー「…っ…あっ……なんだ…と…?」

壺キャスター「ハアアアアアアァ…」

壺ライダー「オオオオオ…」


今まさにバーサーカーに飛びかからんとしていたランサーに対し

キャスターとライダーが同時に攻撃を仕掛けた

二方向からの攻撃を躱すことができず、ランサーは地に伏した

231: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:42:09.68 ID:0ckEERku0
壺セイバー「オイイイイイイイイイ!」ブンッ

壺ライダー「くそっ…!」キィン


更に追い打ちをかけるように倒れたランサーにセイバーが斬りかかった

ランサーは仰向けになり辛うじてセイバーの剣を受け止めた


桜「何で…!さっきまでライダーとキャスターで戦っていたのに…!」

セイバー「…やはり通常の狂化とは違うと見るべきでしょうね。彼らは皆、狂化していない相手を優先的に狙っているようです」

アーチャー「――そして、時間切れだ」


壺ランサー「すま…ない…マス…タ…ア……アア」


壺ランサー「アアアアアアアアアアアアアアアア!」ガン

壺セイバー「オイイイイイ!」バッ


セイバー「ランサー!くっ…」

アーチャー「忠告通りだろう?無駄なあがきになる、と」

232: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:43:05.22 ID:0ckEERku0
桜「だ、だったら…私達全員で令呪を使えばいいんじゃないでしょうか!?」

凛「…無駄ね。私達が同時に令呪を使用したとしても、効力を発揮するのが同時とは限らないわ」

凛「マスターの魔力量、力量。サーヴァントの魔力耐性、耐久…それらによって必ずラグは発生する。当然、また元に戻ってしまうまでの時間も含めてね」

凛「そうなれば、同じことよ。バーサーカーを仕留める前に妨害が入って、また狂化の影響を受ける。令呪の無駄使いにしかならないわ」

桜「…」

凛「それに…バーサーカーが倒されれば、次は私達が狙われるのは確実。そんな状況で、私が素直にあなた達に協力すると思う?」

セイバー「……その通りですね」


アーチャー「君たちにできることは…『闘技場』の名にふさわしく、サーヴァント同士の戦いを眺めることだけだ」

233: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:43:51.75 ID:0ckEERku0
~~~~

ライダー「…召喚してから、あなたには驚かされてばかりですね、アーチャー」

壺アーチャー「それは褒められてるのかな?そこまで大げさなことをしたつもりもないんだけどね」パッパッ

ライダー「私には今、何が起きていたのかもよくわからなかったのですが…」

壺アーチャー「敵からの攻撃を受けていたんだ。恐らくはアサシンだろう。消えたりまた現れたり忙しい奴だったけど、いなくなったみたいだ」

ライダー「!?さり気なく凄いことを言いますねあなたは…」

壺アーチャー「そう驚くことでもないよ。アサシン自体はなかなか手強かったけど、倒せない相手ではないさ」

壺アーチャー「何が目的か、っていうのがわからないのが不気味だけどね」

ライダー「アーチャーでも手を焼くアサシン…やはり今回の戦いも一筋縄ではいかないようですね」

壺アーチャー「おいおい、どうして手を焼いたと決め付けるんだ?」

ライダー「あなたほどのサーヴァントがアレだけの長時間戦って仕留められないと言うのなら、強敵であることは間違いないでしょう」

234: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:45:29.49 ID:0ckEERku0
壺アーチャー「はは、僕を過大評価し過ぎだよ。僕だって一介のサーヴァントに過ぎないんだか…」ピクッ

ライダー「…アーチャー?」

壺アーチャー「…戦闘の気配がする。しかも一対一じゃなさそうだ。複数のサーヴァントが同時に戦っている」

ライダー「…!?」

壺アーチャー「位置も同じ…これはもしかしたら僕以外のサーヴァントが皆集合しているのかもしれないね」

壺アーチャー「…さっきのアサシンは、もしかして僕達を招待しようとしていたのかな」

ライダー「…」

壺アーチャー「――マスター、頼みがある」

ライダー「…いいですよ、アーチャー。私達も向かいましょう。あなたがこのまま他のサーヴァントが減るのを待つような人ではないことはわかっています」

壺アーチャー「ご理解の程感謝する。さて…どうやって行こうか」

ライダー「場所がここからどれだけ離れているかの検討は付きますか?」

壺アーチャー「大体はね。ただ少し距離があるな。マスターの足だと結構掛かりそうだ」

壺アーチャー「…マスターには申し訳ないけど、ここで少し待っていてもらおうかな」

ライダー「へ?」

壺アーチャー「そんなに長居はしないから、さ。すぐ戻ってくるよ」

235: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:46:42.26 ID:0ckEERku0
アーチャーは自分の武器…バットとボールを持ち出すと、ボールを軽く上に投げた

そして、その落ちてきたボールをバットで高く打ち上げた

と、同時に姿を消した


ライダー「…!?」


瞬間移動でもしたかと見紛う程であったが

実際は目にも止まらぬ早さで跳躍しただけであった

ライダーは、その姿を一瞬だけ捉えることができた


ライダー(…ボールの上に…足を乗せて…飛んでいる!?)


アーチャーは、自ら放った打球に乗り

遥か彼方まで飛び立っていった


ライダー「…私にどうしろと言うのですか」

236: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:47:23.20 ID:0ckEERku0
~~~~

セイバー(何か…何か打つ手は無いのですか…?)

アーチャー「ふむ、キャスター辺りはすぐにでもやられるかと思ったが…存外に粘るではないか、凛」

凛「この…!調子に乗って…!」


桜「…あれ、何でしょう…?」

セイバー「桜、どうしました?」

桜「いえ、遠くの空に…何かが浮いているような」

凛「この世界には飛行機もないし、空を飛んでるのなんて鳥くらいでしょ」

セイバー「…!違う!あれは…人だ!」

凛「は?何言ってるのよセイバー。大体あんな遠くにあるものの形がわかるわけが」

凛「…って、嘘!?こっちに向かってきてる!?さっきまで米粒くらいの大きさだったのに!?」

237: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 02:47:50.56 ID:0ckEERku0
セイバー「なんというスピードでしょう…!このままだと、『闘技場』内に落ちてきます!」

士郎「おいィ?まさか、アイツは…」


その人型の何かは、闘技場に降り立った

凄まじいスピードで落ちてきたにもかかわらず、ほとんど音はしなかった

しかし、着地の際の衝撃で、辺りには砂埃が舞った

砂埃の中で、その何かはゆっくり立ち上がった


「……」


砂埃が晴れると、『それ』は姿を表した


「――やぁ、僕も混ぜてくれないかな?」

242: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:17:17.28 ID:0ckEERku0
アーチャー「お前は…」

「思った以上に複雑な状況みたいだね。とりあえずは…」

「君のサーヴァントを倒せばいいのかな?」

アーチャー「…!」


「おっと、自己紹介が遅れたね」

壺アーチャー「僕は『アーチャー』のサーヴァントだ。よろしく」


桜「あ、ああ…先輩、あの人ってもしかして…!?」

士郎「うむ、どちかというと大賛成だな。間違いにい」

セイバー「…?知り合いなのですか?」

凛「サーヴァントに知り合いがいるわけ無いでしょう。あなた達真名に心当たりがあるのね?」

桜「セイバーさんはともかく、何で姉さんがわからないんですか!?」

桜「あの人は…イチローですよ!メジャーリーガーの!」

凛「イチロー?「誰それ?」「外人?」「歌?」ほらこんなもん。自分たちの基準で語らないでほしいわね」

桜「……」

士郎「お、おい遠坂!早く謝ってください!僕は絶望的な戦いはしたくないです!はやくあやまっテ!」

243: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:18:24.49 ID:0ckEERku0
セイバー「野球、というスポーツの選手ですか。ですが何故聖壺戦争に?現実世界での活躍がここで反映されるわけではないでしょう?」

アーチャー「確かに、ただ有名な人物というだけでは聖壺戦争で召喚されることはない。あれは現実世界のメジャーリーガー、イチローとは別の存在だ」

アーチャー「2ちゃんねる上で神格化され、逸話によるイメージが具現化した存在…」

アーチャー「つまり…『全盛期のイチロー』、というわけだな」

凛「『全盛期』…?普通と何処が違うっていうのよ」

アーチャー「…簡潔に言うぞ。まともに戦いを挑めば、優勝するのは間違いなくこいつだ」

凛「は?何言ってるのよアーチャー。要するにただのスポーツマンでしょ?」

セイバー「…いいえ、凛。あなたも見たでしょう。ランサーに対して放たれた一撃を」

凛「…あ」

セイバー「ただのスポーツマン、などということは絶対に有り得ません。現に今も…彼はこの状況に全く動揺していない」

244: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:18:58.28 ID:0ckEERku0
壺アーチャー「そうでもないさ。僕としては正々堂々他のサーヴァントと戦って勝ち残れればそれでいいんだけど…この状況はちょっと不快だね」

壺アーチャー「まるで野生動物の縄張り争いみたいだ。僕は、彼らとは万全の状態で戦いたいと思ってる」

壺アーチャー「つまり、この状況を作り出しているであろうそのサーヴァントが邪魔なんだ。悪いけど真っ先に退場してもらうよ。あまりおもしろい戦いにもならなそうだしね」

アーチャー「ふっ…やってみたらどうかね」


壺ライダー「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!」ブオン

壺アーチャー「…!」サッ

壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」ビュン

壺アーチャー「これは…!」スッ


アーチャーの思惑は、背後から攻撃を仕掛けたライダーとキャスターによって阻まれた

しかしアーチャーはこれらの攻撃を難なく躱し、回避しながら周囲の状況を観察していた

245: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:19:59.26 ID:0ckEERku0
桜「いけない!ライダー達は狂化されてない相手を優先的に狙う筈です!だから…」

壺アーチャー「なるほどねぇ…5対1ってことか」

セイバー「無茶です!いくらあのアーチャーがどれだけ強かろうと、他のサーヴァントも決して侮れる相手ではありません!」

セイバー「5対1での戦いなど、成立するはずがない!」

壺アーチャー「やってみなきゃわからないさ。最初から負けると思って戦う奴はいないだろう?勿論僕も勝つつもりでやる。だって僕は」

壺アーチャー「メジャーリーガー、だからね」シュン


言うが早いか、アーチャーは目にも留まらぬ早さでバーサーカーへと距離を詰めた

しかし、そこに立ちふさがったのはセイバーだった


壺セイバー「オイイイイイイイイイイイイイイ!」

壺アーチャー「…ちょっと、どいてもらうよ!」ズサァ

246: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:21:07.06 ID:0ckEERku0
アーチャーは、地に寝そべるような形で半身を滑らせ、足先からセイバーに突っ込んだ

いわゆる、スライディングという行為だ

しかし、アーチャーのスライディングの威力は普通のスポーツ選手の比ではなく

摺動面からはまるで閃光のように火花が散り、足先は真空状態となっていた

まともに喰らえば、足どころか下半身が吹き飛んでしまうだろう


壺セイバー「!オイイイイイイ!」グッ


しかし、セイバーもその威力を本能で察したのか

咄嗟に下段ガードで守りを固めてきた

本職はナイトであるセイバーのガードは一級品であり

生半可な一撃ではダメージどころか体を揺らすことすら不可能だ


壺アーチャー「んっ…!」

壺セイバー「オイイイイイイイイイイイイイイ!」

ゴオオオン

247: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:22:34.25 ID:0ckEERku0
2体のサーヴァントは激突し、衝撃が闘技場の地にヒビを入れた

この激突で軍配が上がったのは、アーチャーの方だった

セイバーは肉体にはダメージはほとんどなかったものの

衝撃により体を少し浮かされ、そのまま上空へと蹴り飛ばされた

しかし、アーチャーの攻撃も威力が完全に殺されており、バーサーカーまでは届かなかった


壺セイバー「オイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィ……!」


壺アーチャー「やるね。だけどこれで終わり…」

壺ランサー「アアアアアアアアアアアアアア!」


セイバーと入れ替わるように、ランサーが上空からアーチャーめがけて刺突攻撃を繰り出した

落下の衝撃とランサー自身の身体能力が合わさり、当たればアーチャーであろうとただではすまないだろう


ボズッ

248: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:24:06.00 ID:0ckEERku0
壺ランサー「アアアアアア…ア?」

壺アーチャー「上空からの攻撃か、悪くない。確かに頭上というのは人間にとって絶対の死角だ」

壺アーチャー「ただ…メジャーリーガーにはそれは当てはまらない」


アーチャーはランサーの一撃を左手…正確に言えばグローブを装着した左手で受け止めた

槍の穂先を、まるでフライを捕球するかのように掴み、完全に威力を抑えこんでいた


壺アーチャー「しばらく、離れていてくれ…よ!」ブンッ

壺ランサー「アアアアアア……!」ゴオォ


アーチャーは右手で槍を掴み、そのままランサーの体ごと闘技場の壁めがけて投げつけた

ランサーは壁に激しく激突し、一時的に意識を失った

249: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:25:21.36 ID:0ckEERku0
壺ライダー「オオオオオオオオオオオオオオオオン!」ブンッ

壺アーチャー「次から次へと…」スッ

壺アーチャー「ふんっ…」カァン!

壺ライダー「ぶへぇ!」グシャ


アーチャーは冷静にバットを構え、ライダーの放った球体をはじき返した

球体はライダーの体に直撃し、ライダーは後方にすっ飛んだ


桜「す、凄い…!複数人相手なのに、五角以上に戦ってる…!」

士郎「自慢じゃないが俺のセイバーも『ヴァナのイチローですね』と言われた事がある」

凛「本気で自慢にならないわね、それ…」

セイバー「ですが、あれほどの実力者が敵に回ると考えると…厄介ですね」

250: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/14(日) 20:27:10.87 ID:0ckEERku0
壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアアアア!」ビュン

壺アーチャー「…」サッ


今度はキャスターが、遠距離から攻撃を仕掛けてきた

先程と同じように、アーチャーはバットを構えキャスターの攻撃を弾き返す体勢を取った


バキィ!


壺アーチャー「…っ!」


しかし、逆にキャスターの一撃の威力に押され、アーチャーのバットはへし折れた


壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアアアア!」ビュン

壺アーチャー「こいつは、驚いた…!」サッ


桜「嘘…!ライダーの攻撃も難なく弾き返されたのに…!」

凛「…キャスターの言ってたことは本当だったのね」


壺アーチャー「やっぱり、僕の行動は間違いじゃなかった。こうして、僕を倒しうる相手とも戦うことができたんだから…!」

254: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/17(水) 22:08:27.40 ID:h1Ua8T3B0
士郎「おい何でキャスターがアーチャーにダメージ与えてるんだよチートは犯罪だぞ!チート使う奴は国家戦力を舐めすぎお前の家の住所ぐらいはすぐにばれる」

セイバー「士郎、キャスターの宝具は、サーヴァント自身が防ぐことはできないのですよ。例え黄金の鉄の塊で出来ているナイトであっても、です」

桜「防ぐことができない…けど回避はできるんですよね?」

凛「…この際だからバラしちゃうけど、キャスターの宝具はどんな手段を用いても『防御』は無意味なの。ダメージを軽減することはできない。その代わり一発で致命傷になることもないけどね」

凛「桜の言うとおり、回避に専念しておけば問題は無いわ。ただ…」

セイバー「この状況で…アーチャーが攻撃を回避し続ける事は難しいでしょうね」


壺セイバー「オイイイイイイイイ…!」ヨロッ

壺ランサー「…アアアアアア…アア…」ムクッ


壺アーチャー「…ちっ。もう少し寝ていてくれ…」

壺ライダー「オオオオオオオオオオオオオン!」バシュッ

壺アーチャー「よっ…!」サッ

壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアアアア!」シュン

壺アーチャー「…!」スッ

255: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/17(水) 22:10:06.10 ID:h1Ua8T3B0
セイバー「掠った…!アーチャーの動きをよく観察している…?」

凛「…やっぱりただの狂化じゃないわ、アレ。だんだん動きが精錬されてるもの」

士郎「狂化なら宝具使えないという時点でアレが狂化でないのは証明されたな。俺が思うにただ気がひゅんひゅん行ってるだけではないか?」

桜「このまま連携を組んでアーチャーを襲ってきたら…さすがに厳しいんじゃないでしょうか?」



壺セイバー「オイイイイイイイイ!」バッ

壺ランサー「アアアアアアアアアアアアアアア!」ガッ

壺アーチャー「おっと…!」ガシッ


セイバーとランサーは二人同時にアーチャーに斬りかかった

アーチャーは2体の攻撃を同時に、それぞれ片手で武器の持ち手を抑えこむことによって対応した

256: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/17(水) 22:10:57.41 ID:h1Ua8T3B0
壺セイバー「オイイイイイイイイ…!」ググッ

壺ランサー「アアアアアアアアアア…!」ガッガッ

壺アーチャー「流石に…近接特化の2クラス相手に力比べは…ちょっとしんどいね」グググッ


壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアア!」シュッ

壺アーチャー「おっと…後ろにもちゃんと気を配ってるよ」サッ


セイバー「――!?違う!本命は前です!」


背後からのキャスターの攻撃を危なげなく躱したアーチャーであったが

その隙を付き、ライダーとセイバーは手を振りほどいた

2体のサーヴァントはそのままアーチャーに攻撃を仕掛けるわけでもなく、左右に散らばった


その間から姿を表したのは、ワゴンカートに乗り猛スピードで突進してくるライダーであった

257: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/17(水) 22:11:49.76 ID:h1Ua8T3B0
壺アーチャー「…!」


先ほどまで2体の騎士を抑えこんでいたこともあり、さすがのアーチャーも反応しきれず

ライダーの攻撃によって宙に大きく跳ね飛ばされた


壺アーチャー「やるね…並大抵のキャッチャーでは吹き飛ばされてしまうだろう」


しかし、その攻撃ですらアーチャーに深傷を負わせることはできなかった

アーチャーは冷静に空中で体勢を立て直し、着地に備えた


壺キャスター「ハアアアアアアアアアアアアアアアア!」


壺アーチャー「何…っ!?」


――しかし、その落下予想地点に向けて、既にキャスターの宝具が数発放たれていた


壺アーチャー「…っ」シュウウウ

258: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/17(水) 22:12:48.74 ID:h1Ua8T3B0
桜「攻撃が…当たっちゃいました…」

凛「なんてえげつない連携してるのあいつら…チームワーク抜群じゃない」

桜「このままだと…アーチャーまで…」

士郎「ネガはやめておけといっているサル。あまりストレス貯めると病院で栄養食を食べる事になるぞ」

桜「…なんで先輩はそんなに呑気なんですか!今の状況わかってるんですか!?リアルで痛い目見たいんですか!?」

セイバー「桜、落ち着いて。…彼のクラスを思い出してみてください」

桜「クラス…?アーチャーはアーチャーじゃ… あっ」

セイバー「そう。彼は『弓兵』、つまり弓矢ではないにしても、飛び道具を駆使して戦うクラスです」

セイバー「彼は今、敵の力量を見極めるために、自分の能力が制限されるのを承知の上であえて相手の得意な間合いで勝負を挑んでいるのでしょう」

セイバー「…本領を発揮した彼の実力は、まだまだこの程度では無い筈です」

263: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 02:26:17.75 ID:xITDW4nS0
壺セイバー「オイイイイイイ…!」

壺ランサー「アアアアアアアアア…!」


セイバーとランサーは傷を負い動きを止めたアーチャーに対し同時攻撃を仕掛けた

2体の攻撃がアーチャーに命中しようかというその瞬間

2体のサーヴァントは遥か後方に吹き飛ばされた


桜「え…?何が…?」

セイバー「あれは…鉄球…いえ、ただの…革の球、ですか?」


アーチャーは2体に対してボールを放ち迎撃していた

その速度、威力は凄まじく、攻撃を喰らった2体のサーヴァントが吹き飛ぶ様は

傍から見ているだけでは球を視認できず

まるでサイコキネシスでも起こしたかのように錯覚するであろう

264: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 02:27:00.44 ID:xITDW4nS0
壺アーチャー「君たちの実力は…予想以上だったよ」

壺アーチャー「実に楽しい戦いだった。だからこそ…とても惜しい」


壺アーチャー「万全の状態の君たちと対戦できないのは、ね」


アーチャーの全身は溢れんばかりの闘気を纏っており

大気は震え、球を握る右手には力と魔力が込められている


壺アーチャー「だから、君たちには少し眠っていてもらう。目が覚めた時には正気に戻っていると思うよ」

壺アーチャー「まぁ、ショック療法みたいなものだと思えばいいさ。多少荒療治になるけど、しょうがないだろ?」


壺アーチャー「かなり威力は抑えるつもりだけど…この一撃で沈まないでくれよ」

265: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 02:27:48.14 ID:xITDW4nS0
セイバー「あの魔力…おそらく宝具を使うつもりですね」

凛「え?ここで?…マズイんじゃない?私達巻き込まれない?」

セイバー「闘技場のフィールド効果があるので私達は大丈夫でしょう。…問題はサーヴァントの方です」


壺アーチャー「――行くぞ。メジャーリーガーの真髄、篤と味わうがいい」


アーチャーはそう言うと、遥か上空へと跳躍した

その高度は、ランサーのそれをも凌いでいた

アーチャーは上空で大きく腕を振りかぶり、地上へ向けて投球した

放たれた硬球は激しく発光し、轟音は軌道の後から付いてきた

それはさながら彗星の顕現だった


――メジャーリーガーとして、その強肩で何人もの走者を仕留めた逸話から生まれた

アーチャーの代名詞とも言える宝具

そのあまりの早さと精密さにより、授けられた名は『レーザービーム』


アーチャーが絶対の信頼を置く宝具が、闘技場を焼き尽くそうとしていた

271: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:20:29.56 ID:xITDW4nS0
~~~~

言峰「これは…想像以上だな」

壺アサシン「アーチャーのことでちゅか?」スッ

言峰「戻ってきたか、アサシン。…その通りだ。まさか向こうから乱闘に参加しに来るとは。流石に予想外だった」

壺アサシン「案外普通に誘ったら素直に付いてきてくれたかもしれまちぇんね。しかしちょっと目を話した隙に面白いことになってまちゅ」

言峰「バーサーカーの存在は我々にとっては僥倖だったな。心置きなくサーヴァントに暴れてもらうことができる」

壺アサシン「けど今はアーチャー対他のサーヴァント全員になってまちゅわ。一方的な戦いになるんではないかちら?」

言峰「そうでもないぞ。よく見てみろ」

壺アサシン「…うわぁ、こいつはとんだチートキャラでちゅね」

言峰「ある程度は想定していた結果ではあるが…ここまで実力に差があっては困るな。調整が必要だ」

言峰「とは言え、キャスターの意外な活躍もあり…この勝負は拮抗状態と言った感じだな」

壺アサシン「…どこが拮抗状態でちゅか。アーチャー、宝具を使おうとしてまちゅよ」

272: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:23:31.25 ID:xITDW4nS0
言峰「…!?サーバーへの負荷が異常な数値まで跳ね上がっている。これは…アーチャーの影響か?このままではサーバーが吹き飛びかねん」

壺アサシン「早いところ対策しておいたほうがいいんじゃないでちゅか?テストプレイの段階まで来てデータロストなんて笑えまちぇんよ」

言峰「くっ…。仕方あるまい、緊急メンテナンスだ。一時的に闘技場以外の全てのフィールドギミックを解除。それらを構成していた魔力を闘技場周辺に集結」カタカタ

言峰「魔力全てを使い闘技場周辺に結界を同心円状に設置。アーチャーの宝具の威力と範囲を出来るだけ抑えこむ」

壺アサシン「あ、アーチャーが宝具を使いそうでちゅわ」

言峰「…さて、どうなる」

273: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:24:07.40 ID:xITDW4nS0
~~~~

アーチャーの宝具による激しい発光によって

マスターたちは一時的に視界を奪われていた

轟音と衝撃が辺りを包み、やがて静寂に包まれた時

彼らは視力を取り戻した


凛「は、はははは…」

桜「そんな…!」

セイバー「確かに、闘技場のフィールド効果により私達は無事のようです。ですが…」

士郎「…闘技場がそこにいたのにいなかったという表情になる」


先ほどまで自分たちが見ていた風景はそこにはなかった

アーチャーの宝具は全てを吹き飛ばし

見渡す限り一面、闘技場の跡地は荒れ果てた広野と化していた

274: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:25:51.75 ID:xITDW4nS0
桜「…!?ライダー!ライダーは無事!?」

壺アーチャー「心配はいらないさ」

セイバー「…!アーチャー!」

壺アーチャー「自分たちのサーヴァントを信じてあげなよ。彼らはそんなにやわじゃない。戦ってみてそれは確信できた」

壺アーチャー「ただ…しばらくは安静にしたほうがいいだろうね」

凛「…!?」


壺セイバー「……ォ…ォィィ…」

壺ランサー「ぅ………」

壺ライダー「オ………ン…」

壺キャスター「………」グッタリ


セイバー「ランサー!くっ…ひどい傷だ」

士郎「セイバー!お前マスターの許可も取らず倒れるとかまじぶっころしょ?早く目を覚ましテ!」

凛「…よかった、致命傷ではないみたい。意識を失ってるだけのようね」

桜「助かった、終わったかと思いましたよ」

275: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:29:35.71 ID:xITDW4nS0
壺アーチャー「言ったとおりだろう?彼らはやわじゃないって。まぁ威力も抑えたし、直撃もさせなかったからね」

壺アーチャー「尤も、バーサーカーくらいは仕留められたと思ったんだけどな」

アーチャー「…」

壺バーサーカー「…」


そう言うとアーチャーは、バーサーカーの方に視線を向けた

その目には明確な敵意が宿っていた


壺アーチャー「成程、マスターの影に隠れていたのか。ここではマスターは攻撃の影響を受けないらしいからね」

壺アーチャー「…ここから東にしばらく行ったところに、癒しの湖と呼ばれるフィールドがある。おそらくそこのギミックは治癒能力の向上だ。君たちはそこでサーヴァント達をゆっくり休めてやるといい」


セイバー「…私達を見逃すというのですか」

壺アーチャー「当然さ。君たちとはもっとちゃんとした形で決着を付けたい。傷が完治するまで決着はお預けだ」

壺アーチャー「――バーサーカー、君達以外はな」


アーチャー「…ほう」


壺アーチャー「君達の実力の底は知れた。結局は自分で戦う力を持たない寄生虫のようなサーヴァントだ。君達に期待することはもう何もない」

壺アーチャー「ここで終わらせてもらうよ、バーサーカー」

276: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/20(土) 20:30:44.98 ID:xITDW4nS0
桜「…セイバーさん、行きましょう。私達がここにいてもしょうがないです」

セイバー「…そのようですね。ランサーの回復に専念しなくては」

士郎「…じゃあな、カス猿」

凛「アーチャー…助けてあげられないけど、悪く思わないでよね。先に仕掛けてきたのはあなたなんだから」



凛達マスター4人は、闘技場の跡地を離れた

口には出さなかったが、全員が同じことを確信していた

『――バーサーカー陣営は、今日ここで確実に脱落する』と

282: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 02:50:37.45 ID:lCy0Wg980
~~~~

言峰「…マズイな、これは」

壺アサシン「とんでもないサーヴァントでちゅね、こいつは…」

言峰「何とかサーバーへの負荷は最小限の被害に留めたが…宝具を使うたびにこれではやってられん」

壺アサシン「それに、単純に強すぎまちゅね。相手するには、サーヴァント同士が手を組まないと戦闘にすらなりまちぇんわ」

言峰「…いまさら弱体化するわけにもいかん。かと言って素直にアーチャーを戦わせてはゲームが成立しない。ここは特殊ルールを追加するとしよう」

壺アサシン「どうするつもりなのでちゅ?」

言峰「まず1つ。アーチャーが最後まで勝ち残った場合、アーチャー陣営以外のマスターは賞金が発生しない」

壺アサシン「うわ~…報酬で釣っておきながら今更破棄とか…最悪でちゅね、それ」

言峰「これで奴らに『アーチャーを優先的に倒さなければいけない』という意識を植え付ける。そして2つ目だ」

言峰「アーチャーを倒した場合…令呪を合計で4画…いや、6画支給することとする」

283: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 02:51:20.62 ID:lCy0Wg980
壺アサシン「ほほう…さっきと打って変わって大盤振る舞いでちゅわね。けど、アーチャー相手に勝つのは不可能だと思いまちゅけど」

言峰「単独では、な。当然、アーチャーの実力を考えれば…お前の言うとおり複数体のサーヴァントでかからなければ相手にはならない」

言峰「いや、よくよく考えれば…残った4体のサーヴァント全員が手を組まなければ、勝利の可能性すらないだろう」

壺アサシン「なるほど、それでまとまった数の令呪を報酬にするわけでちゅね。分配しやすいように。それにしても残った4体って…まるでバーサーカーの敗北が確定しているみたいでちゅわね」

言峰「ほぼ確定と言って良いだろう。そんなレアケースを追っている状況でもあるまい」

壺アサシン「まぁ、たしかにそうでちゅけど。しかし、4体で6画っていう割り切れない数にする辺り悪意を感じまちゅわ…」

言峰「兎も角。これだけお膳立てをしてやれば、残ったマスターは嫌でも同盟を組む気になる筈だ。端末の情報を更新しておいた。明日以降の動向に注目といったところだな」

284: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 02:52:15.74 ID:lCy0Wg980
ちょこっと更新
以上です

286: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:48:43.32 ID:lCy0Wg980
~~~~

桜「…これからどうすればいいんでしょうか」トボトボ

士郎「下手にアーチャーに手を出さないほうがいいだろうなあいつパンチングマシンで100とか出すし。君子危うきに近寄らずという名セリフを知らないのかよ」

セイバー「私も同じ考えでしたが…そうはいかないようです。端末を確認してみてください」

凛「ん?情報が更新されたの?…!?何よこれ!」

士郎「ちょとsYレならんしょこれは・・?詐欺は犯罪だぞ紀伊店のか」

桜「アーチャーを倒さないと…報酬0、ですか…!?」

セイバー「神父はどうあっても我々をアーチャーと戦わせたいようですね。報酬の令呪の数を見る限り…同盟を組めということでしょうか」

凛「…ふぅん」

セイバー「…凛、厚かましい願いだということは十分承知しています。ですが」

凛「そりゃ、そう来るわよね。さっきの戦いを見る限り、アーチャーに効果的なダメージを与えることができたのはキャスターの攻撃だけ」

凛「かといってキャスターだけじゃアーチャーの攻撃を凌ぐことはできない。…いいわ、同盟を組んであげる」

287: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:50:06.37 ID:lCy0Wg980
士郎「流石に遠坂は格が違った。同じ時代を生きただけのことはあるなー」

凛「ただし!もし勝てたら、報酬の令呪は私が3つ貰うわ!」

セイバー「…!」

凛「文句無いでしょ?アーチャーを倒したら、まず私達が狙われるんだから」

士郎「お、おい遠坂!謙虚じゃないナイトに未来はにいぞ!」

桜「…姉さん、何調子に乗ってるんですか?本気出しますよ?」

凛「そう。だったらあなた達のサーヴァント3体だけでアーチャーをどうにかすることね」

セイバー「…いえ、要求を呑みましょう、凛。令呪の分配はあなたが3つ、私達がそれぞれ1つずつ。それで構いませんね?」

桜「な…!セイバーさん!」

288: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:50:58.47 ID:lCy0Wg980
セイバー「凛の言うとおり、我々は同盟を組んで凛を積極的に排除しようと画策していました」

セイバー「…今更になってこの主張はあまりにも都合が良すぎる。凛の要求は当然の権利でしょう」

凛「あら、わかってるじゃない」

セイバー「しかし…これで貸し借りはなしです。アーチャーを討伐した後は、改めて同盟を組んであなたと敵対するかも知れません」

凛「文句はないわ。それでいきましょう。こっちだって、アーチャーを倒さないと報酬がもらえないんだから」

セイバー「では、決まりですね。同盟の最優先事項はアーチャーの討伐。それまでは協力関係です。二人もそのようにお願いします」

士郎「普通だったら報酬のことで文句言う奴がぜいいんだろうが俺はいさぎよい武の心でながすことにした」

桜「…勝ったと思わないでくださいね」

凛「もう勝負ついてるから」

289: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:52:06.81 ID:lCy0Wg980
~~~~

壺アーチャー「さて…彼らの姿も見えなくなった。これで周りに配慮する必要も無くなったな」

壺アーチャー「覚悟は決まったかい?バーサーカーとそのマスターよ」

壺バーサーカー「…」

アーチャー「随分自信ありげだが…どんな確証を持ってバーサーカーを倒せると主張しているのだ、君は」

アーチャー「君にとっては未知のサーヴァントであることは変わりないだろう。まさか真名を看破したとでも言うつもりか?」

壺アーチャー「そんなハッタリをかませるとは落ち着いてるね。だけど、真名を看破する必要などはない」

壺アーチャー「いや、むしろ…そのサーヴァントに真名など存在しない、といったほうが正しいかな?」

アーチャー「…!」

290: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:56:26.53 ID:lCy0Wg980
壺アーチャー「僕の考えを言おうか。そのサーヴァントは、複数の逸話の集合体…つまり、逸話によって模られた、中身の無い英霊だ」

壺アーチャー「ある『共通項』を持った逸話が集結し…容器だけが形成され、内容物が空っぽの虚無の存在…それがバーサーカーだ」

壺アーチャー「狂化により理性を失っているわけではなく、そもそも人格というものが存在しないのだろう」

壺アーチャー「その容姿も逸話の中から適当に選出されただけだ。所詮は寄せ集めってことだな」

アーチャー「…そこまで見極めていたとはな。私がバーサーカーというサーヴァントを理解するのに、どれだけ時間と手間をかけたことか…やれやれ」

壺アーチャー「そして、その『共通項』というのが…彼らを狂わせたものと何か関係があるんじゃないか?」

壺アーチャー「残念ながらバーサーカーの攻撃は僕には通じていないから、それが何かは分からない。まぁ分かる必要も無いか」

壺アーチャー「謎解きタイムはここでお終いだ」グッ


アーチャー「…君の言うとおり、バーサーカーは、他のサーヴァントと違い特定の形を持った英霊ではない」

アーチャー「『2ちゃんねる』上に存在するある種類の逸話(コピペ)が一処に集まり顕現した、無形の存在」

アーチャー「数は多いが、その一つ一つに英雄を作り出す程の特別な信仰があったわけでもなく…他の多くの逸話(コピペ)の一つとして語られるのが関の山と言ったところだ」

アーチャー「だが…こういう考えはどうだろうか。バーサーカーを構成する逸話の中から…」


アーチャー「君をも倒し得る逸話を探し出し、それを以って戦いに挑むというのは」

291: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 20:58:11.75 ID:lCy0Wg980
壺アーチャー「…へぇ。面白い考えだね。だけど、そんなことは不可能だろう?」

アーチャー「普通の手段であれば、な。もともとそのような戦い方を想定しているサーヴァントでもないだろう」

アーチャー「ただ…バックアップがあればどうだ?小規模の奇跡を自発的に引き起こせるような、そんな都合の良いものが存在していたとしたら?」

壺アーチャー「…令呪、か」


アーチャー「そうだ。令呪の力を使い、バーサーカーに内包された逸話を引き出す。…勿論、成功するという確証はどこにもない。これは賭けになるな」

アーチャー「尤も…それさえも妨害されたら、その時点で敗北は確定だがね」チラッ


文字通り、それは大きな賭けだった

アーチャーが令呪の使用すら許さず、攻撃を仕掛けて来れば敗北は必至

アーチャーの自尊心と好奇心を刺激することが、この場での唯一の希望だった

292: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 21:01:29.72 ID:lCy0Wg980
壺アーチャー「――いいだろう。その挑発、受けて立つよ」

壺アーチャー「ただし、君には乗り越えなければいけない、2つの大きな試練がある」

壺アーチャー「まず1つ目は逸話の内容を問題なく引き出すこと。当然だな。これができなければお話にならない」

壺アーチャー「そしてもう1つは、その逸話を駆使して…僕を倒すこと」

壺アーチャー「僕自身、興味が湧いたよ。たかがネット上の、1つの書き込みに過ぎないモノでどうやって僕を倒そうとしているのか」

壺アーチャー「少しは期待しているんだ。あんまりがっかりさせないでくれよ?」

アーチャー「…善処しよう」

壺バーサーカー「……」


アーチャー「令呪を以って命じる。…重ねて令呪を以って命じる。――駄目押しだ。重ねて令呪を持って命じる」

壺アーチャー「一気に3画を消費か。思い切りがいいね」


アーチャー(もとより、これくらいでなければ引き出せる力ではあるまい。ただでさえバーサーカーというクラスは不安定なのだ)

アーチャー(呼び出すのは、唯一つ。――この最強のサーヴァントに、確実な死を与える逸話…!)

アーチャー「――バーサーカーよ……」

293: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/21(日) 21:02:47.69 ID:lCy0Wg980
~~~~

桜「セイバーさん!姉さんはどこですか!?」

セイバー「どうしたのですか?桜。凛なら、先程キャスターの様子を見に行くと行って湖の方に向かって行きましたが」

桜「…!…運がいいですね。このタイミングで情報が更新されるなんて…」

セイバー「…もしや、端末に新しい情報が?」

桜「ええ。…アーチャーが、脱落しました」

セイバー「アーチャーが?…そうですか。ですが仕方のない事です。あの圧倒的な戦闘能力の前では…」

桜「違います!そっちのアーチャーさんじゃないんです!」

セイバー「え…?……!?まさか、そんな事が…!?」


桜「脱落したのは、サーヴァントのアーチャー。倒したのは…バーサーカーです!」

305: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/22(月) 23:15:06.61 ID:L2RTVEiI0
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ライダー「…あれ?」シュウウ

ライダー「ここは…教会?」

ライダー「あれ、もしかして…アーチャーがやられたのですか!?」

ライダー「…私、まだ何もしてないのですが…」

ライダー「…ひとりきりは寂しいですね。誰か早くこっちに来てください…」

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言峰「…やってくれたな」

壺アサシン「ひえええ。アーチャーを単独で倒ちゅなんて…。しかも最弱候補のバーサーカーが。これはとんだ番狂わせでちゅわね」

言峰「同盟を組ませるための小細工も全て水の泡だ。全く面倒なことをしてくれる」

壺アサシン「…その割には嬉しそうでちゅね」

言峰「…ふっ。結果のわかりきった試合ほどつまらないものはない。バーサーカーのお陰で、聖壺戦争の行末が全く予想できないものになったのは事実だ」

言峰「素直に彼らの健闘を讃えようではないか。それに…」

言峰「令呪を3画消費することで、あのアーチャーですら仕留めることができるサーヴァントに…令呪が新たに6画支給される」

言峰「これの意味するところがどういうものか。――今後の動向が楽しみではないか」

306: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/22(月) 23:17:14.04 ID:L2RTVEiI0
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シュウウウ…

アーチャー「…アーチャー、君は間違いなく最強のサーヴァントだった」

アーチャー「いや、それだけではなく…最高峰の判断力、分析力を持ち合わせた…最高のサーヴァントであった」

アーチャー「だが、君は一つだけ大きな思い違いをしていた。それが君の敗北に繋がったのだ」

壺バーサーカー「……」

アーチャー「私が乗り越えるべき試練は2つなどではなく…1つだけだった」


アーチャー「アレを再現出来た時点で……私の勝利は確定するのだから、な」


アーチャー「…くっ…令呪を3画消費した上に、魔力も根こそぎ持って行かれた…正真正銘最後の切り札であったのだから当然だが」

アーチャー「アーチャーを仕留められただけも十分過ぎる成果ではあるが…これからどうすべきか…ん?」ピカア

アーチャー「…!?令呪が…復活している…!?」

アーチャー「いや、復活どころではない…!一気に6画も宿っている。これは一体…」ピッ

アーチャー「…成程。アーチャーを仕留めた報酬、というわけか」

アーチャー「流れは確実に私に向いている。この状況をうまく活かすためには…」


アーチャー「…フッ。私が出向くまでもなく、向こうから接触を試みるであろう人物に一人心当たりがあるな」

307: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/22(月) 23:18:38.92 ID:L2RTVEiI0
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壺キャスター「マスター、俺の傷もまだ完全に癒えてはいないんだ。もうちょっとゆっくりできないのか?」

凛「そんな場合じゃないのよ!あなた、狂っている時のこと何も覚えていないの?」ダッダッタ

壺キャスター「…いや、かすかになら。あのアーチャーの凄まじさは言うまでもなく、な」

凛「だったら話が早いわ。心して聞いてちょうだい。…やられたのよ、アーチャーが。それもバーサーカーに!」

壺キャスター「…冗談だろ?アーチャー以外のサーヴァント全員でかかったって勝てるかどうか怪しいのに…それをあのバーサーカーが倒しただと?」

凛「ええ。私だって今でも信じられないわよ。…けど、私達にとって大事なのはここからよ」

凛「アーチャーが倒された、ってことは…もう同盟を組む必要もなくなったのよ。つまり私達はお払い箱って訳」

凛「あのままあそこに留まっていたら、間違いなく次の標的になってるわ!桜達が追いかけてこないうちに、なるべく遠くに逃げないと」

壺キャスター「宛もなく逃げまわっても体力を消費するだけだぜ。相手の意表を付くために、あえて近くに留まっておくっていうのはどうだ?」

凛「それはダメ。セイバーには感付かれちゃう。それに…一応宛はあるのよ」

壺キャスター「ほう…聞かせてくれ」


凛「…バーサーカー陣営との同盟を試みるわ。数的な優位差を覆すには、これしか無い…!」


壺キャスター「…ははは。あっちへ行ったりこっちへ行ったり忙しいな。俺達はコウモリか」

凛「五月蝿い!」

317: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:50:28.97 ID:vHOwxXAZ0
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桜「…駄目です。姉さんはどこにも見当たりません」

壺ライダー「アーチャー脱落の情報を見て即座に逃亡を決めたのだろう。状況判断の早さは見事だな」

壺セイバー「遠くにいたと思ったら近かったということは稀によくあるらしいぞ?」

セイバー「…今回はそれはないでしょうね。先日凛は同じことを試みました。以前看破された物と同じ策を繰り返すような真似はしないはずです」

セイバー「彼女は優秀ですが、同時に素直な思考の持ち主だ。私の裏をかいて…というような発想には至らないでしょうね」

士郎「それは単純と言うのではないか?まあ一般論でね」

318: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:52:05.49 ID:vHOwxXAZ0

壺ランサー「やはり、バーサーカー陣営と接触しようとしてると見るべきか」

セイバー「その可能性は非常に大きいと見ています。ああ見えてマスター同士気の置けない仲でもありますし…アーチャーの方も素直に同盟に応じるのではないでしょうか」

壺ランサー「ただでさえバーサーカーの能力の底が知れないというのに、戦力が増えるのはやっかいだな…」

壺ライダー「私はそう危惧することもないと思っているぞ?アーチャーを倒した方法が何かはわからんが、そもそも気軽に使えるものならまず我々が犠牲になっていただろう」

壺ライダー「バーサーカー陣営も何か犠牲を払って決死の覚悟でアーチャーを倒したはずだ。付け入る隙はきっとある」

壺セイバー「…バーサーカーといえば、あれについて貧弱一般マスターたちに知らせておいた方がいいと思った(この辺の心配りが人気の秘訣)」

壺ランサー「むっ…ブロントさんの言うとおりだな。我々を狂わせたものについて、マスター達も注意しておいたほうがいいだろう」

セイバー「そういえば、そこは大切なところですね。バーサーカーは一体あなた達に何をしたのですか?」

壺ランサー「アイツがやったことは…こっちを見ただけさ」

士郎「お前頭わりぃなそれだけで」

桜「先輩黙っててもらえますか?」


壺ランサー「…バーサーカーの『眼』に、気をつけろ」

319: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:55:09.49 ID:vHOwxXAZ0
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アーチャー「…やはり来たか、凛」

凛「アンタもまだここに残ってたってことは…目的は同じみたいね」

凛「同盟を組んでるあの3人を相手にするつもりでしょう?…手を貸してあげるわ」

アーチャー「手を借りたい、の間違いじゃないのか?まぁ、こちらとしても手駒が多いほうが助かるがね」

凛「相変わらず口の減らない奴…。で、どうなの?手を組むの組まないの?ハッキリさせてちょうだい」

アーチャー「そう睨むな。言っただろう、手駒が多いほうが助かると。君と手を組むのはこちらとしても願ったりかなったりだ」

凛「だったら…」

アーチャー「ただし…凛、私はまだ君を信用しきれないのだ。もしかしたら君が未だに衛宮士郎たちと協力関係にあり、スパイとして我々の情報を入手しようとしているのでないか、とね」

凛「はぁ!?そんな訳無いでしょ!そんなことしたって賞金の大半は向こうに持って行かれちゃうじゃない!」

アーチャー「理由など、提示された条件次第でどうにでもなる。だからこそ、凛。君に潔白を証明して欲しいのだ」

320: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:55:43.38 ID:vHOwxXAZ0
アーチャー「自分が立ち位置をふらふらと変えていることは自覚しているだろう?」

凛「…どうすればいいっていうのよ」

アーチャー「簡単な話だ。ここで令呪を一画消費して貰おう。そうすれば私も君を信じられる」

凛「…!そんなことに令呪を使えっていうの……?」

壺キャスター「…」

アーチャー「おっと、そんなに睨まないでくれ、キャスター。…嫌だというのなら、仕方があるまい。この話はここで終わりだ」

凛「…令呪を以って命じるわ。キャスター…アイツをおもいっきり睨みつけてやりなさい」

壺キャスター「…」

凛「…どう!これで文句無いでしょ!?」

アーチャー「上出来だ。では、今後の方針について話し合うとしよう」

321: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:58:14.88 ID:vHOwxXAZ0
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セイバー「眼、ですか…」

壺ランサー「アイツの眼を見た瞬間…とても嫌な幻覚を見せられてね」

セイバー「幻覚?…それがあの狂化に繋がったということですか。具体的にはどのような?」

壺ランサー「思い出したくもない過去…いや、過去ということになっている映像、というべきかな。我々壺のサーヴァントには過去など無いからな」

壺ランサー「サーヴァントとして現界されるにあたって、『そういう風なもの』として設定されたトラウマ。それを奴は見せてきた」

セイバー「…精神干渉系の能力でしょうか。いずれにせよこちらの数的優位性を覆しかねない厄介なものですが…」


壺ライダー「…優位性、か」

桜「…?どうしたの、ライダー」


壺ライダー「少し思うところがあってな。聞いてくれるか?マスター」

322: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/24(水) 21:59:28.37 ID:vHOwxXAZ0
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アーチャー「ブロントにリューサン、そしてやるオプーナ、か…」

壺キャスター「まず間違いないぜ。どいつもこいつも特徴的な奴ばかりだ」

壺キャスター「ま、こっちの真名もとっくにバレてるだろうけどな」

アーチャー「奴らとの戦いでは君の宝具をどれだけ当てられるかいうのが鍵となりそうだ。フィールドはやはり森を選ぶべきか」

凛「…それよりも、アーチャー。私達は手持ちのカードを切ったのよ?自分だけ何も情報を提示しないで済ませるつもり?」

アーチャー「切り札についてはまだ情報を伏せさせてくれ。君の動向次第で戦いの最中敵に悟られる危険性がある」

凛「だったら、せめてバーサーカーの真名くらい教えなさいよ。どんな実力のサーヴァントかわからなければ、共闘しようがないわ」

アーチャー「うーむ…。その考えは理解できるが、実際そう言われても困るのだ。バーサーカーには真名など存在しないのだからな」

凛「は?何よそれ」

アーチャー「バーサーカーはある特定の逸話の集合体だ。個を形成するサーヴァントではない」

アーチャー「敢えて真名を付けるとしたら…そうだな、それらの象徴とも言える逸話を基にして…」


アーチャー「――『邪気眼使い』、といったところか」

326: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/26(金) 21:17:20.82 ID:jpd5HN4J0
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言峰「…そもそも、バーサーカーは実験体として作ったサーヴァントだった」

壺アサシン「実験、でちゅか」

言峰「他のサーヴァントは、複数の逸話や信仰に大勢の人間が関わり、個を形成している」

言峰「セイバーを例に挙げると、奴の人格を作り上げているのは…ある特定の人物の物とされる複数の書き込み」

言峰「またそれらの書き込みに感化された者達による、それを真似た書き込み…俗にいう『ブロント語』というやつだな」

言峰「書き込みの内容、そして書き込んだ人物がバラバラであっても、それらは一体感を生み出し…ひとつの『キャラクター』を形成した。それが壺のセイバー、ブロントだ」

言峰「このように、基本的にサーヴァントとして呼ばれるのは、『複数の逸話や大きな信仰により、一つの人物像が形成された存在』なのだ」

言峰「だが、このバーサーカーは違う。奴を構成しているのは、2ちゃんねる上で書き込まれた…主にファンタジー系統に重きを置いた痛い妄想」

言峰「つまり、『邪気眼』と呼ばれるコピペ群であり…そこには個を形成するだけの信仰はない」

言峰「当然だな。それらに共通しているのは…聞いているだけで恥ずかしくなるような痛い妄想、という点だけで、所詮は個人個人が好き勝手に妄想しているだけに過ぎないのだから」

言峰「言ってみれば…邪気眼という『ジャンル』そのものをサーヴァントにしたものがバーサーカーというわけだ」

327: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/26(金) 21:19:20.74 ID:jpd5HN4J0
壺アサシン「なるほど。ホラーやラブコメ、みたいな分類の一つとして…『邪気眼』というジャンルを一纏めにして呼び出したんでちゅね」

壺アサシン「でも、何でわざわざそんなことを?」

言峰「言っただろう。実験だと。もしそのようなことが可能であれば、呼び出せるサーヴァントの幅が広がるからな」

言峰「最初は失敗だと思ったがね。辛うじて肉体が存在するだけで、攻撃さえまともに出来ないサーヴァントだと」

壺アサシン「だけどここに来て思わぬ大躍進でちゅわね」

言峰「マスターに恵まれたな。ここまでやってくれるとは思わなかった」

言峰「だが、依然として不安定なサーヴァントであることには変わりない。誰が勝ち残るかは今後の展開次第と言ったところか」

言峰「テストプレイもこれで五回目。今回こそはうまくいってくれるといいのだが」


言峰「――『アヴェンジャー』を呼び出すために、な」

328: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/26(金) 21:21:51.54 ID:jpd5HN4J0
サーヴァント紹介②

【CLASS】アーチャー
【マスター】ライダー(メドゥーサ)
【真名】全盛期のイチロー
【出典】ニュー速VIP
【触媒】折れたバット
【性別】男
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷A+ 魔力C 幸運C 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。

【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

メジャーリーガー:A+++
 己の精神と肉体を駆使し、世界最高の舞台で戦う偉大なる挑戦者に与えられるスキル。
 A+++までいくと精神攻撃は100%シャットアウトし、物理攻撃も7割ほどダメージを低減できる。
 また、言語が堪能になる、戦いの気配を敏感に察する等の副次的効果もある。

【宝具】
『投げ穿つ死翔の球(レーザービーム)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:50人 
 本塁への送球の凄まじさからその呼び名がついた全盛期のイチローを象徴する宝具。
球を投擲するだけのシンプルな攻撃方法だが、威力は絶大。
 それだけでも強力な宝具だが、本領を発揮するのは『自分で放ったレーザービームを自分で打ち返した時』であり
 その場合は対軍宝具から対城宝具へと種別が変化し、速度、範囲、威力全てが大幅に上昇する。

333: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/28(日) 21:03:38.41 ID:WKLQStvF0
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セイバー「バーサーカー対策としては…単純ですが眼を見ずに戦う以外無いでしょうね。セイバーやランサーにも効いていたところを見ると対魔力では防げないようですし」

士郎「キャスターの宝具も大麻力を貫通するらしいぞ 同時に攻撃されたら守るのがやっとという風になるのではないか?」

セイバー「その分、サーヴァントとしての地力はこちらが上です。3体でかかれば突破は可能でしょう」

桜「…その事についてなんですけど…少し、話を聞いてもらえませんか?」

セイバー「?どうしました、桜」

桜「えっと…その…」

壺ライダー「いや、いいんだ、マスター。私の我侭だ。私の口から伝えよう」

壺ライダー「このまま3対2でバーサーカーたちと戦うのは…気が進まない」

セイバー「…!?」

壺ランサー「…どういうつもりだ、ライダー?」

壺ライダー「いや、済まない。これも正確ではないな」


壺ライダー「…私は、先にセイバーと決着を付けたいのだ。互いに万全な状態のうちに、な」


壺セイバー「…ほう」

334: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/28(日) 21:04:38.55 ID:WKLQStvF0
セイバー「そんな…!?バーサーカー達を倒してから、改めて戦いを挑めば良いではないですか!」

壺ライダー「相手はあのアーチャーを倒したサーヴァントだ。互いに無事生き残るとは限らない」

壺ライダー「仮に生き残ったとしても…満身創痍では意味が無い」

壺ライダー「今、この場においては…お互いに宝具も令呪も万全な状態だ」

壺ライダー「あの時の戦いの決着を今、ここで付けたい」


セイバー「…桜。あなたはどう思っているのです」

桜「…私は、ライダーの望みを叶えてあげたいと思っています」

桜「セイバーさん。私達にとっては、聖壺戦争はただのゲームです。ここで勝っても負けても、私達の生活に変化があるわけではありません。また元の日常に戻ります」

桜「だけど、ライダーにとっては…いえ、ここで召喚されたサーヴァント達にとっては…この戦いの間だけが全てなんです!聖壺戦争のためだけに呼び出されて、戦いが終わればまたデータの一部に戻ってしまう」

桜「…だから、ライダーには後悔してほしくないんです。例え短い間しか存在できない自我だとしても…」

セイバー「…」

335: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/28(日) 21:06:09.16 ID:WKLQStvF0
壺ランサー「――マスター、私からも頼む。ライダーの望みを聞き入れてやってくれ」

壺ランサー「実を言うと、私も3対2で戦うのはちょっと気が引けててね…せっかく騎士クラスとして呼び出されたんだから、正々堂々戦ってみたいんだ」

壺ランサー「こっちのほうが有利な状況じゃ、己の力全てを振り絞って戦う、ってことがなかなかできないかもしれないしね…」

壺ランサー「僕も、ライダーの話を聞いて覚悟を決めたよ。バーサーカー達との戦いでは、私の全てを出しきると」

セイバー「…そうですね。いえ、私が愚かでした。命も懸けていない私が、戦士の覚悟に水を差すなど…」

セイバー「――心置きなく決着を付けてください、ライダー。あなたとセイバー程の勇士であれば、どちらが生き残ったとしてもバーサーカーには負けない筈です」

桜「セイバーさん…!」

336: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/28(日) 21:06:45.34 ID:WKLQStvF0
壺セイバー「おいィ?何当事者抜きで話あってるわけ?」

壺ライダー「不満か?セイバー」

壺セイバー「――ナイトであればバーサーカーごときチョロいもん。例え2対2であったところでこちらの勝利は確定的に明らか」

壺ライダー「そんなナイトに対し喧嘩を打ってきた命知らずの騎兵がいた!もう結構ウデとか血管血走ってるから騒ぐと危険 ここで思い知らせてやる必要があると思った」

壺ライダー「…すまないな。感謝する」

壺セイバー「感謝するくらいならおれは牙をむくだろうな かかってこいよ雑魚」

壺ライダー「…ああ!行くぞ、セイバー」

士郎「セイバー…無理はしないふぇ下さい(約束)」


壺ライダー「オプーナとFF11…どちらがより素晴らしいゲームか、思い知らせてやろう!」

342: ◆nd9x4dt9shCh 2015/06/30(火) 01:11:27.77 ID:FP/LnN400
ライダーとセイバーは対峙し、しばらくにらみ合いを続けた

お互い、最初に繰り出す一手を探っているようだった


壺ランサー「…マスター、この戦いをどうみる」

セイバー「闘技場での戦いを見た限りでは…セイバーの方が有利かと」

壺ランサー「へぇ…それはどうしてだい?」

セイバー「ライダーというクラスの肝は宝具となる乗物です」

セイバー「しかし、このライダーの場合…肝心の乗物が、宝具としては力不足に感じます。あの時、攻撃が直撃したアーチャーはほぼ無傷でした」

セイバー「宝具による機動力と突破力を駆使して戦うのがライダーの常道でしょうが…生半可な攻撃ではこのセイバーには通じない」

壺ランサー「それでライダーが不利、と。だけど、マスター。彼らは一度戦っているそうじゃないか。もし力の差に開きがあったのなら、そこで決着がついていてもおかしくないぞ?」

セイバー「…その通りですね。お互いどう攻めこむのか、見せてもらいましょう」


次回 言峰「聖壺戦争」 後編