前回 楯無「安価で一夏くんにミッションインポッシブル!」一夏「」 

以下463 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/30(金) 00:14:00 ID:3DKFEX..
一夏「あ…い、いつの間にか…100秒経ってたのか…あはは…」

シャル「……」

シャル(もぉ~~~~!! なんてタイミングで~~!! 一夏のバカ~~~!!!)

一夏「シャ、シャル…。さっき、言いかけたことは…」

シャル「…ふんだ」プイッ

一夏「お、おい…何で怒ってるんだよ…?」

シャル「怒ってない」フンダ

一夏「えぇー…(絶対に怒ってる…)」

シャル(何でそういうのは分かるのに…僕の気持ちは分からないかなぁ…はぁ…)

一夏「シャル…」

シャル「ん?」

一夏「お前が心配しなくても…俺はずっと、お前の味方だ。だから、大丈夫だ」

シャル「――ッ!」

一夏「会社のこととか解決して、卒業しても…お前が困っていたら、助けてやるから。
    だから俺たちは…ずっと一緒だ」


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464 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/30(金) 00:17:26 ID:3DKFEX..
一夏「そ、そろそろあがろうぜ。湯冷めしちまう」

シャル「あ、ちょっと待って一夏」ザバン

一夏「え?」

シャル「えっとね…約束、してくれたから」

一夏「ん?」

シャル「僕と、ずっと一緒にいてくれるって」

一夏「あ、あぁ…」

シャル「だから…これはそのお礼と、誓いの証」

一夏「へ―――


チュッ


一夏「!?」

シャル「…えへへっ。ちょっと恥ずかしいな///」

一夏「お、おぉ…(額に…キスされた…///)」 


465 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/30(金) 00:21:09 ID:3DKFEX..
シャル「あ、あがろ! 次のミッション、あるんでしょ!」

一夏「あ、ああ…そうだな」

シャル「…一夏」

一夏「ん?」

シャル「僕、負けないから!」

一夏「お、おぉ…何だか知らんが、頑張ってくれ」

シャル「うん! 一夏かもね! 待ってるから! じゃあね!」タッタッタ…

一夏「あ、あれ…シャルの奴、行っちまった…水着のまま…」

一夏「うーむ…楯無さんといい、簪といい…最近、女子の間ではお礼をキスで返す習慣でもあるのだろうか…」

―――――――――
―――――
―――

シャル(は、はぅぅぅぅぅ…! 恥ずかしかった~!)

シャル(で、でも…生徒会長も、あの簪って子も…これくらいはやったんだし…!)

シャル(…絶対に負けないから!) 

466 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/30(金) 00:27:13 ID:3DKFEX..
~生徒会室~

楯無「おぉ…やっぱシャルロットちゃん、大胆だね~」

簪「……」

楯無「簪ちゃんも、少しは見習った方がいいよ?」

簪「…ふん。一夏ってば…デレデレしちゃって…」

楯無「あらあら…ご立腹だ」

ガラガラ

一夏「ふぅー。いいお湯だったー。さっぱりしました」

楯無「おかえりなさーい。お疲れさーん」

簪「……」キッ

一夏「うッ…(だ、だから何で睨むんだよ…)」

楯無「はいはい簪ちゃん。一夏くんへの鬱憤は、ミッションで発散させよーね。さてさて…
   体も心もリフレッシュできたことだし、次なるミッションに移りましょう!」ガサガサ

一夏「あぁ…そういやまだ続いてたんだ…日を跨いだから忘れそうだったけど…」


楯無「はい出ました! 次なるミッションは…『>>468』です!!」 


現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■□□□□□□□
楯無   ■■■■■□□□ 
簪    ■■□□□□□□
シャル  ■■■□□□□□ 

468 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/03/30(金) 00:28:02 ID:QBM3Q6FQ
千冬への日頃の感謝の気持ちを作文にして、クラスメイト全員の前で読む 

93 : ◆Xj0T19PFxU:2012/04/15(日) 20:14:48 ID:1VssNhtw
『織斑先生への日頃の感謝の気持ちを作文にして、クラスメイト全員の前で読む』


一夏「」

簪「……」

楯無「あっはっはっはっは!! これは罰ゲームミッションだね!!」

一夏「な、何だよコレ…どんな羞恥プレイだよ…」

簪「しかもクラスメイト全員の前で読むって…模様は全校放映しなきゃ、だから…」

一夏「実質全校生徒の前で音読…うわぁ、死にてぇ…」

楯無「あー大丈夫だよー。そこはミッションの内容に倣って、発表は1組の教室だけにしておいてあげるから」

一夏「そ、そうですか…まぁ恥ずかしいことには変わりないんだけど…」

楯無(まぁ…結果はあまり変わらないと思うけどね…♪)ニシシッ

簪(お姉ちゃん…また悪い顔してる…良からぬ事が起きるのを知ってて黙ってる顔だ…) 

494 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:20:32 ID:1VssNhtw
楯無「はい☆ というわけで、じゃあ今回のミッションを具体的な内容ね!」

楯無「これから一夏くんには作文執筆作業に移ってもらいまーす♪
   存分に織斑先生に思いの丈をぶつけてもらえるように、ライティング環境は整えるからね!」

楯無「とりあえず、寮に篭って書いてもらおうか。もちろんその間は放映しません! 
   納得する原稿が出来上がるまで存分に書き上げてね!
   どこぞの鬼編集のように締め切りの催促はしないけど、あんまり遅いとお姉さん怒っちゃうぞ☆」

楯無「無事脱稿したらそのまま教室へ直行! 最後まで音読できたら終了!
   あ、ちなみに原稿の文字制限とかはないよ! 思い思いに書いてね!
   説明は以上! さぁ、文豪の時間だ!」

一夏「へーい…」トボトボ…


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…まぁ織斑先生なら安心かな」ボソッ

簪「ん? 何か言ったお姉ちゃん?」

楯無「え? えええええええいやいやいやいや!! 何も言ってないよ! うん!」ブンブン

簪「……」

―――――――――
―――――
――― 

496 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:24:17 ID:1VssNhtw
~廊下~

一夏「はぁ…なんでこんな…これって完璧に罰ゲームじゃねぇか…。
   あのミッション入れた人、何考えてんだよ…」

一夏「…まぁ『好きな女の子の名前をカミングアウトする』とかじゃないだけマシか。
   いないから言いようがないけど」

一夏「はぁ…作文の音読なんて小学校の時以来だよ…どうやって―――」

千冬「よぉ織斑」

一夏「どわっ!? ち、ちふゆ―――」


バギャスッ


一夏「」

千冬「まったく何度目だ。学校では織斑先生と呼べと言っているだろうが莫迦者」 

497 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:27:03 ID:1VssNhtw
一夏「いてて…せっかく引いた腫れがまた…」

千冬「学習しないお前が悪い。それよりも織斑、面白いことになっているじゃないか、えぇ?」ニヤッ

一夏「うッ…」

千冬「ははははは。気兼ねなく存分に書いていいからな。別に内容で罰則など設けようとは思わんから安心しろ」

千冬「だがまぁ…あまり私に恥をかかせるなよ。言いたいことはそれだけだ」

一夏「は、はい…」

千冬「ふははははは。ではな。しっかりと書け。誤字脱字のチェックも怠るなよ」ツカツカ

一夏「はーい…」

一夏「…暗に釘を刺されたのか、今のは?」

一夏「はぁ…気が重い」

―――――――――
―――――
――― 

498 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:29:30 ID:1VssNhtw
千冬「……」ツカツカ

千冬「……」スタスタ

千冬「……」カツカツ

千冬「……」

ダッ!!

―――――――――
―――――
―――

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

山田「ほぇ?」

千冬「やぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダダダダダダダダダダダ

山田「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 

499 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:32:45 ID:1VssNhtw
山田「おおおおおおおおお織斑先生!? い、いったい―――」

ガシッ

山田「ひぃえ!?」

千冬「正直に答えろ山田先生…何故あんなものを投函した!?」

山田「あ…や、やっぱり、分かっちゃいました?」

千冬「何年一緒にいると思っているんだ! お前の筆跡くらいすぐに分かるぞ!!」

山田「お、織斑先生…落ち着いてください…痛いですぅ…」ギリギリ

千冬「あ…」

パッ

千冬「す、すみません山田先生…公私混同してしまいました」

山田「い、いえ…(ああ、研修時代のトラウマが…)」 

500 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:36:27 ID:1VssNhtw
千冬「…しかし山田先生といえども感心しません。あれは何ですか? 私をからかっているんですか?」

山田「い、いえ! そんなことは全然!」

千冬「では何故!?」クワッ

山田「ひぃ!? だ、だって…織斑先生…弟のことで、相当悩んでいらっしゃったようですので…」

千冬「はい?」

山田「ほら、前にバーで飲みに行った時も、自分は織斑くんに執着しすぎているような節があるとか」

千冬「む…」

山田「それに…普段自分が織斑くんからどう思われているのかも、気になさっていたようですから…」

千冬(あぁそうか。山田先生たちは、私の部屋の一夏とのやりとりを知らないんだったな)

山田「…でも、私には織斑くんは貴女のことを邪険にしているようには思えません。
   むしろとても尊敬していると思います」

千冬「……」 

501 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:41:16 ID:1VssNhtw
山田「確かに織斑くんは危なっかしくて、座学も…正直いっていい成績とは言えませんが…
   でも、とてもいい子だってことくらいは分かります」

山田「そんな立派な弟さんが、貴女の事を悪く思うなんて考えられないんですよ」

山田「だからここは、正直に織斑くんに言ってもらえば分かってくれるんじゃないかなぁ、って…」

千冬「…それならわざわざクラスで発表させることもないのではないですか?」

山田「え…? あ、ははははは…そうかもしれませんね…。きっと作文にすれば織斑くんも考えがまとまると
   思って…どうせなら発表させた方がいいかなぁ、なんて…あははは…」

千冬「まったく…余計なお世話も程々にしてください。人の家庭の事情に節介とは何を考えているんですか」

山田「あ、はははは…すみません」

千冬「…まぁ悪気がないのはよく分かりました。しかし、今後はこういうことは謹んでください」

山田「は、はい…」

千冬(気持ちはありがたく受け取っておくが…しかしやはり恥ずかしいことには変わりない…!)

千冬(くぅ…! 頼むから余計なことは書くなよ、一夏…!)

―――――――――
―――――
――― 

502 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:46:37 ID:1VssNhtw
~IS学園寮:織斑一夏の部屋~

一夏「ふむ…まぁというわけで鉛筆と作文用紙(400字詰め)を用意したわけだが」

一夏「…しかし何を書いていいのか分からん。作文なんて得意じゃないしな」

一夏「とりあえず思いつく限り書いてみるか。えーと…昨日は千冬姉に殴られて、部屋の掃除して、
   マッサージして、色々話して、そんで今日もまた殴られて…」カキカキ

一夏「……」グシャグシャ

一夏「だめだ…これじゃただの日記だ…」

一夏「というか下手なことは書けないな。そうだ、思い切って褒めちぎってみるか」

一夏「ええと…俺の姉は容姿端麗、頭脳明晰、才色兼備、文武両道を兼ね備えた超人であり、
   モンド・グロッソで優勝したこともあり、林間学校のときの水着姿もそれはそれは麗しく…」カキカキ

一夏「……」ビリビリ

一夏「あからさまな賛美は逆効果だな…絶対に千冬姉に嘘だってばれる…」

一夏「はぁ、どうすればいいんだ…」 

503 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:49:47 ID:1VssNhtw
一夏「……」

一夏「取りあえず千冬姉について整理してみよう」

一夏「まずは俺の姉。まぁここまではいい。それで…モンド・グロッソで一回優勝したんだけど、
   次の大会は決勝戦を放棄して…」カキカキ

一夏「…これって俺のせいなんだよな。そういえばラウラも最初はこのことで怒っていたっけ」

一夏「そのあとはドイツに1年ほど赴任して、その後は知らなかったけどIS学園に教師として働いていた。
   箒のときもそうだったけど、再会してすごくビックリしたっけ」

一夏「それで、学校生活ではいつも怒られて、殴られて…。たまに帰ってきてもマッサージと飯を作るくらいで…」

一夏「……」

一夏「あれ? もしかして俺、千冬姉の事、あまり知らない?」 

504 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:54:15 ID:1VssNhtw
一夏「千冬姉のこと、確かにあまり知らないよな…学園で働いている時も何も言われなかったし」

一夏「うーむ…となると、千冬姉をよく知る人にきいてみるか?
   候補はラウラ、山田先生、あと叶うなら束さんくらいだけど…」

一夏「……」

一夏「何言ってんだよ俺…自分の姉のことなのに、人に訊かなきゃ分からないなんて…みっともなさ過ぎるだろ」

一夏「はぁ…」 

505 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 20:57:43 ID:1VssNhtw
一夏「…別に千冬姉の情報が全てじゃない。こんなの、俺が千冬姉をどう思ってるかが重要なんだ」

一夏「そこのところを意識して、もう一度思い返してみよう」

一夏「まずは千冬姉に対するイメージは…うん、とにかく厳しい。やたら殴るし」

一夏「それで…やけに女生徒たちに人気がある。『ブリュンヒルデ』とか呼ばれてるんだっけか。
   本人はあまり好きじゃないみたいだけど…弟の俺からしても複雑だけど…」

一夏「…なんてこった。碌な思い出がないぞ」

一夏「……」

一夏「いや、違うな…一番印象に残っているのは…やっぱアレだな。俺が小学生の時、剣道を教えてくれた時だ」

一夏「あの時の千冬姉の言葉は…今でも印象に残っているなぁ」

一夏「きっとあれが…俺の原点なんだと思う」

一夏「俺も千冬姉みたいになりたくて…」

一夏「守られてばかりじゃなくて、今度は俺の方から守ってあげたくて…」 

506 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/15(日) 21:01:15 ID:1VssNhtw
一夏「……」

一夏「そっか…」

一夏「俺って昔から…ずっと千冬姉に守られていたんだな」

一夏「俺に剣を握らせてくれたのも、結局は俺自身が俺を守れるように。
   それを教えてくれたのは、俺を守るためだもんな」

一夏「千冬姉…本当にありがとう」

一夏(俺もいつか…千冬姉みたいに)

一夏「……」

一夏「よし! 書くべきことは大体決まったな! 筆がなるぜ!」カキカキ

一夏(うーむ…そういえば千冬姉が守りたい人って誰なんだろうな?
   学園の生徒たちかな? いや、一人しかいないような口ぶりだったけど)

一夏(っと…。いかんいかん。原稿に集中せねば)カキカキ

―――――――――
―――――
――― 

519 : ◆Xj0T19PFxU:2012/04/17(火) 22:13:45 ID:ELX1zZJU
~1時間後、1組教室前廊下~

一夏「…で。書きあがったからいざ来てみたら…」

わいわい
がやがや
ざわざわ

一夏「何だよこの人の多さは…教室の後方や廊下にまではみ出しているじゃねぇか…」

楯無「あっはっはっは! 一夏くん、大人気だね!」

一夏「た、楯無さん! どういうことですかこの状況は!?」

楯無「何か問題でも?」

一夏「だ、だって! 発表は俺のクラスだけにしてくれるって!」

楯無「うん、その約束は守ってるじゃない。でも、それでも寄ってくる生徒に対しては保証しきれませーん。
    イベントを楽しみにしてくれてる娘たちを追い返すのも悪いじゃない?」

簪「こういう、ことだったのね…お姉ちゃん」

一夏「か、簪…何でお前までいるんだよ…」

簪「ご、ごめん…やっぱり、気になって…」

鈴(…フォローしてあげたいけど、あたしも出刃亀でここにいる以上は何も言えないわ…) 

520 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:20:25 ID:ELX1zZJU
「あ、織斑くんよ!」「きゃー! ついに織斑お姉さまの赤裸々な事情をきけるのね!」
「弟からしたら、お姉さまってどう見えるのかしら!? 気になるわー!」

一夏「…なんかギャラリーのほとんどは俺目当てじゃなくて、千冬姉のおっかけみたいだな」

楯無「そーいうこと。だから一夏くんは気にしなくていいのよっ♪」

一夏(いや、逆にプレッシャーですよ…余計逃げ出したくなってきたし…)

楯無「はいはい! いつまでもこんな廊下で油売ってないで、とっとと入っちゃいなさい!」ドン!

一夏「うわぁ!? …ったく。分かりましたよ、はぁ…」ガララッ

ラウラ「……」キッ!

箒「……」ムスッ

セシリア「……」プイッ

シャル「あは、はははは…」

一夏(な、何だよ…何で専用機持ちの皆はシャル以外は不機嫌そうなんだよ…)

一夏(いや、ていうか…)


千冬「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


一夏(黒板の隣で仁王立ちしている俺の姉が怖いです、はい…) 

521 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:25:54 ID:ELX1zZJU
ラウラ(一夏め…! 私の嫁という自覚が足りないばかりか、よりにもよってあの女に振り回されおって…!)

箒(クソッ…! 何故いつまで経っても私の番が回ってこないのだ…!)

セシリア(私の肉じゃがを食べてくださる約束をしましたのに…! 他のレディの料理を褒めるなんて…!)

シャル(み、皆荒れてるなぁ…でも僕は僕で色々やっちゃったから、フォローしても火に油だし…)

のほほん「おりむーだー! 待ってたよー!」ピョコンピョコン

一夏「あはは…のほほんさん…」

相川「織斑くーん! 早く早くー!」
谷本「織斑先生の秘密、知りたいー!」
鷹月「ま、まったく皆ってば…」

一夏「いや、秘密とかそんな大したもんじゃないけど…」


千冬「……」ギロッ!!


女生徒たち『』ビクッ

一夏「?」

シャル(…流石一夏。織斑先生の視線に全く気付いてない)

山田(あぅぅぅぅぅ…織斑先生の隣、怖いですぅぅぅぅ…)ヒィィン… 

522 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:29:55 ID:ELX1zZJU
千冬「…さて、静かになったところで織斑。とっとと原稿を読み上げろ」

一夏「は、はい」スタスタ

一夏(うおぅ…き、緊張する…高校生にもなってまさか作文の読み上げするとは…)

一夏「えー…コホン。では、始めます。タイトルは…『僕の姉さん』」


箒(普通だ)

セシリア(普通ですわね)

ラウラ(シンプルでいいな)

シャル(僕って…)


一夏「僕の姉さんは、怖いです」


女生徒たち『』

千冬「」

山田(…織斑先生の絶句が、怖いです) 

523 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:34:12 ID:ELX1zZJU
一夏「普段は眉間に皺が寄っていることが多いです。怒ると口よりも手が先に出ます」

一夏「僕が失敗すると、大抵は拳骨されてから二言めくらいに『莫迦もの』と呼ばれます」

一夏「正直おっかないです」

箒「」

セシリア「」

シャル「」

ラウラ「ふむふむ」


鈴「」

簪「」

楯無「ぷっ…くくく…」プルプル



千冬「……」ツカツカ ガララッ

山田「ちょ、織斑先生、どこへ、え、何で空き教室の方に―――」

ドガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

山田「」 

524 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:41:27 ID:ELX1zZJU
千冬「ふぅ…やれやれ。柄にもなく取り乱してしまった」ツカツカ

山田「」

千冬「…放心している山田先生は放っておいて、と。まったく一夏め…また余計なこと喋っていないだろうな」


ガララッ


一夏「家に帰ると下着姿で放浪してます」

千冬「」

箒セシ『』

ラウラ「ほう…なるほど、半裸健康法か。私も今度隊に戻ったら実践してみるか」メモメモ

一夏「しかもお酒を飲みまくります。飲んだくれというほどではありませんが、年齢的にもちょっと控えて欲しいです」

女生徒たち『』


山田(か、帰ってきてみたら…何ですかこの空気は…)←立ち直った

千冬「……」ドドドドドドドドドドド…

山田(…織斑先生の背後からただならぬ瘴気が) 

527 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:46:28 ID:ELX1zZJU
一夏「家での家事は基本的に僕の仕事です。姉は家事をあまりしないようです」

一夏「掃除、洗濯、料理とこなしていく内に、僕も一通りの生活の術を身に付けられました」

一夏「その辺は感謝してます」

箒(それは遠まわしに馬鹿にしているぞ…)

一夏「ちなみに姉のお気に入りは、僕の作ったコーヒーゼリーです」

一夏「しかし、やはり身の回りのことはもう少し気を付けて欲しいと思います。さっき寮の部屋に入った時も――」

千冬「―――!!」ビュッ!!

山田(あ! いつのまにチョークを!? ライフル弾のごとく織斑くんの方に!?)


パァン!!
パラパラ…


千冬「!?」

楯無(ふふふ…させませんよ、織斑先生…今、面白いところなんですから)<IS部分展開>

千冬(ぐ…! おのれ、更識姉の方…! だがまぁいい…余計な部分はシャットアウトできた…)

一夏(? なんか一瞬変な音がしたけどまぁいいか)

シャル(一夏、何で気付いてないの!?) 

528 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 22:55:17 ID:ELX1zZJU
一夏「と、まぁこのように、普段のイメージとは違った一面もあり、皆さんも驚いているかもしれません」

セシリア(驚いている以前に織斑先生の株価がストップ安な気が…)

一夏「姉はよく僕の事を『放っておけない奴だ』とよく言いますが」

シャル(一夏やめてあげて…多分このクラス全員がとばっちり受ける羽目になるから…)

一夏「僕としては姉の振る舞いも、少し見ていて心配な部分があります」

谷本「…なんだかなぁ」ヒソヒソ

相川「イメージと違うというか…そういうのじゃなくて…」コソコソ

鷹月「これ以上は聴いちゃいけない気がしてきた…」ボソボソ

箒(…何だか同情の念が湧いてきた)

ラウラ(実に興味深い)

千冬「…山田先生。今度の実習ですが、いい場所があります。富士の樹海などはどうでしょうか?」

山田「織斑先生…さらっとクラス全員と心中する算段をたてないでください…」

一夏「でも…それでも僕の命を賭けて言えることが1つだけあります」

全員『……?』


一夏「僕の姉の織斑千冬先生は、世界一の女性です」 

530 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:02:19 ID:ELX1zZJU
女生徒たち『…!』

千冬「……」

一夏「実力の意味でももちろんそうです。僕の姉がモンド・グロッソで優勝した経験があるのは、皆さんも知っていると思います」

一夏「そして…2回目の大会で突如試合を放棄してしまったこともご存じでしょう。
   あれは…僕のせいなんです」

一夏「僕はあの時、亡国機業誘拐されていました。そしてそれを助けてくれたのが、姉なんです」


ざわざわ…


ラウラ(…一夏。言ってしまうのか、あれを)

千冬(莫迦者が…また余計なことを…)

一夏「あの時の不安は…今でも忘れられません。わけも分からないまま連れてこられて、
   何をされるかも分からないまま怯えていました」

一夏「そんな時に駆けつけてくれた姉は…本当に格好良かったです。僕は、姉に命を救われました」

「そんな事情があったのね…」
「いい話だわ…」
「織斑先生も…やっぱり人間なのね」

千冬「…ふん」 

532 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:06:06 ID:ELX1zZJU
一夏「僕の姉は、世界最強という称号を投げ捨ててまで僕を助けてくれました。
   それは決して、誰にでも真似できることではないと思います」

一夏「家族の存在のありがたさを、僕が身を以て一番体感した瞬間でした」

「まぁ確かに…」
「でも、仕方ないことじゃない?」
「確かにねぇ…トロフィーか家族かって言われたら、誰だって家族を選ぶと思うけど…」

千冬「……」

一夏「僕はそのとき、『守られる』ということがどういうことかを思い知りました」

一夏「自分のために駆けつけてくれる人がいる。そんな人がいるということは…とても素晴らしいことです」


『……』


一夏「…でも、それだけではありません。
   僕の姉は…『守る』ということがどういうことかも教えてくれました」


千冬「――!!」 

533 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:09:33 ID:ELX1zZJU
一夏「最初は僕が小学校の時…初めて剣道を習った時です。
   自分が剣を振るうその意味を…その大切さを最初に教えてくれた人が…他でもない千冬姉です」

一夏「あの言葉は僕の原点であり、そして僕の道標でもあります」

一夏「そして…強さとは何のためにあるのか、そういう大切なことも…本当に色々なことを教えてくれました」

箒「……」

セシリア「……」

シャル「……」

ラウラ「……」

千冬「……」 

535 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:15:25 ID:ELX1zZJU
一夏「思えば、僕には千冬姉しかいなかったように、千冬姉にも僕しかいませんでした。
   でも僕とは違い、寂しがったり悲しがったりもせず…ただ直向きに、前を走っていました」

一夏「今でも僕は、その背中を追うのに必死です。でも、僕の姉はとても優しい。
   僕が転んでも、起き上がるまで待ってくれるような人です。」

千冬「……」

一夏「普段僕にも、皆にも辛く当たるのはそういう理由なんだと思います。
   誰だって生きていくには力が要ります。一人で立ち上がるくらいの力は必要です」

一夏「だから姉は手を引っ張っていくよりも、ちゃんと自分自身で立てるように促せる人間なんです」

一夏「僕の姉は、そういうことがよく分かってるんだと思います。
   誰よりも強さというものは何かを理解し、力が何のためにあるのかを知っている人ですから」


鈴「……」

簪「……」

楯無「……」

山田「……」


千冬「……」 

536 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:19:31 ID:ELX1zZJU
一夏「自分の都合よりも、皆のことを誰よりも思っている」

一夏「そしてたった一人の家族の僕に、『守られることの温かさ』と『守ることの大切さ』を同時に教えてくれました」

一夏「だから姉は僕のたった一人の家族であり、教師であり、目標であり…」

一夏「僕を守ってくれる人であり…そしてこれから僕が、守ってあげたい女性の一人です」

千冬「……!」カァァァ…

一夏「厳しくて怖い所もあるけど、でも色々知ってて、格好良くて、何よりも強い姉を、僕は尊敬してます」

一夏「だから僕の姉は世界一です。たった一人の、大好きな姉です」

千冬「~~~~~~~///」

一夏「ですから皆さん、これからもどうか…僕の姉の織斑千冬先生を、宜しくお願いします」

一夏「…拙い文章で申し訳ありませんでした。最後にこの場を借りて、一言だけ言わせて下さい」

全員『……?』



一夏「…千冬姉、いつもありがとう。俺、千冬姉の弟で本当に良かった」ニコッ



千冬「―――!!」ドクン!! 

537 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:24:32 ID:ELX1zZJU
一夏「以上です。ありがとうございました」ペコッ

全員『……』


パチパチパチパチパチパチパチ


箒(…敵わないな)

セシリア(本当に…大切ですのね)

ラウラ(教官の言っていたこと…ほんの少しだけ分かった気がします)

シャル(やっぱり…織斑先生は強いなぁ…色々な意味で)


鈴(まったく…見せつけてくれちゃって)

楯無「ブラボー! ハラショー!!」パチパチ

簪「お、お姉ちゃん…」 

538 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:26:50 ID:ELX1zZJU
千冬「……」

山田「…本当に、いい弟さんをお持ちになりましたね(一時はどうなることかと思いましたが…)」

千冬「……」

山田「…織斑先生?」

千冬「……」

千冬(な、何を考えているんだ私は…!? ぐ、愚弟のあんな三文作文で…)ドキドキ

千冬(どうかしている…! あ、あんな言葉で…あんな台詞でここまで…私が嬉しがっているだと!?)バクバク

千冬(こ、こんなはずでは…! あんな…あんな、一夏の笑顔などで…!)ドッキンドッキン

千冬「……///」 

540 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:30:39 ID:ELX1zZJU
山田「あ、あのぉ…」

千冬「…山田先生、あとは頼みます」

山田「へ?」

千冬「どうやら私は…少し腑抜けてしまったようです。少し鍛えなおしてきます」

山田「え」

千冬「取りあえず、頭を冷やしてくる意味も込めて、アリーナを100周ほどランニングしてきます。
   何かありましたら…呼んでください。では」ズカズカ

山田「あ、ちょっと……」

山田「…気のせい、かしら。織斑先生、笑っていたような…」

―――――――――
―――――
――― 

542 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:36:19 ID:ELX1zZJU
~生徒会室~

楯無「はーい! というわけで無事一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

一夏「もうこれには馴れてきたけど…今回のはマジで精神的にきつい…」

簪「お、お疲れ様…」

楯無「ひっひっひ☆ 想像以上だったよ! まさか織斑先生のあんな一面見れちゃうなんてね!」

一夏「あぁそういえば…あれから千冬姉の姿が見えないんだよな…見れないだけに後々どうされるのか怖い…」

楯無「…まぁ悪いようにはしないと思うよ。精々がIS装備でフルマラソンくらいじゃない?」

一夏「それって千冬姉がマジギレした時に課すデスマーチを覚悟しておけってことですか…はぁ…」

楯無(迂闊だったわ…肉親はないかと思っていたけど、思わぬ伏兵がいたものだわ…)

簪(織斑先生…手ごわいけど、やっぱり負けたくない…!)

楯無「さてさてー…一夏くんも大分慣れてきたことだし、次のミッションに移りますかね!」


ゴソゴソ


楯無「なになにー…次のミッションは…『>>544』だー!!」 

544 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/17(火) 23:37:16 ID:.JZu4liQ
箒、簪、鷹月さんと行く一泊温泉旅行。 


548 : ◆Xj0T19PFxU:2012/04/17(火) 23:40:14 ID:ELX1zZJU

現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□ 
簪    ■■□□□□□□
シャル  ■■■□□□□□ 

 根気よくスナイピングしてれば個別√もあるかもしれないけど
566 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:17:32 ID:FV8IfFjs
『ランダムに選ばれた3人と一緒に一泊の温泉旅行に行く』

一夏「温泉?」

簪「旅行?」

楯無「…ふむ」

一夏「何だか結構ほのぼのとしてるなぁ。まぁ前のミッションよりは全然マシだからいいけど」

楯無(これは…きっと一夏くんとあんまり面識のないけど好意を寄せてる子が入れた奴ね。
   任意に一夏くんが相手を選んじゃえば、専用気持ちの誰かに決まってるから…)

一夏「しかし相手選べないのかー。全然知らない人だったらどうしようかな」

楯無「まーまーミッションだからしょうがないよ。ちょっと待っててねー。今アミダ作ってくるから」

楯無「ランダムってことだから徹底して作ってくるよ。
   学年もクラスも教員も生徒も用務員も全部ごちゃ混ぜにするから」

楯無(ふっふっふ…アミダに細工して私も同行メンバーにあやかろう―――

簪「……」ジロッ

楯無(…と思ったけどなしなし。最近読んだマンガでも公平こそパワーとか言ってたし。
   意味はよく分からないけど)

―――――――――
―――――
――― 

568 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:21:43 ID:FV8IfFjs
楯無「…なんとまぁ」

一夏「相手は箒と簪と鷹月さんか。面識がない相手じゃなくて良かったぜ」

簪「……」←見えないところでちょっとガッツポーズしてる

楯無(アトランダムに選んだのに3人中2人が専用気持ちって…。
   何だか一夏くん、IS関係ではいい意味でも悪い意味でも妙な縁を持ってるわね…)

一夏「でも温泉か。林間学校の時に行ったところとかになるのかな」

楯無「あーそこでいいかな。ちょうどいいし。領収書貰って来てくれれば費用は生徒会でもつから安心してね」

楯無「じゃあ今回も特筆すべき内容はないね。一泊温泉旅行に行って、翌日に一夏くんは
   この生徒会室に戻ってくればミッション・クリアということで」

楯無「まぁ模様は絶賛放映しているから、あまり気を抜き過ぎないようにねー。
   じゃ、ミッション☆スタート!」

一夏「おっし。簪、行こうぜ」

簪「う、うん…///」トテトテ

楯無(ふっふっふ…1日待ちぼうけを食らうんだから…ちょっとくらいちょっかい出してもいいよね…?)

楯無(さて…どうやってかき回そうかなぁ…今から悪知恵が冴えるわぁ…)ニヤリ

―――――――――
―――――
――― 

569 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:26:21 ID:FV8IfFjs
~廊下~

一夏「お、箒と鷹月さん。探していたんだ」

鷹月「お、織斑くん…」

箒「……」

一夏「ちょうどいいな。2人して見つかるなんて」

鷹月「い、いや…篠ノ之さんと私は同室だから…」

一夏「そういやそうだっけ。あ、そうだ。鷹月さんは会うのは初めてだよな。4組の専用気持ちの更識簪だ」

簪「……」ペコッ

鷹月「ど、どうも…」

箒「……」ムスッ

一夏(…心なしか箒が何故か荒れている)

箒(ぐ…! やっと私の番が回ってきたかと思えば…! 何故同伴者がいるんだ! これではいつもと同じではないか!)

鷹月(何で私がここにいるんだろう…完全に場違いな気がしてならないんだけど…) 

570 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:30:24 ID:FV8IfFjs
一夏「とりあえず、バスの手配は楯無さんがしておいてくれたんだってさ」

鷹月「えぇ!? じゃあ、今から行くの?」

一夏「そうだな。とりあえず寮の部屋に戻って準備しようぜ。出来たらモノレールに集合で」

簪「…分かった」

鷹月「う、うん…ほら、行こうよ篠ノ之さん」

箒「ああ。すぐ行く」

一夏「しかしこうしてみると、クラス旅行みたいでワクワクするな。林間学校も色々あったから楽しめなかったしな」

箒「たるんでいる。あれだって遊びに行ったわけではないんだぞ」

一夏「あ、はははは…(何で不機嫌なんだろう…)」

―――――――――
―――――
――― 

571 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:33:10 ID:FV8IfFjs
~行きのモノレール~

鷹月「で、その時アナウンスで言ってたのよ。『じゃあ今から離陸しますよ』って。
   そうしたら機内はパニックになったそうよ」

一夏「ははははは。相変わらず鷹月さんは面白い話をするな」

鷹月「あ、ありがとう…雑誌の受け売りだけど」

箒「……」

簪「……」

鷹月(ていうか気まずい…篠ノ之さんは相変わらず不機嫌だし、会長の妹は全然喋らないし…)

鷹月(そ、そりゃあ…私だって織斑くんはちょっといいな、とか思ってたけど…。
   私なんて全然地味だし、織斑くんって競争率高いし半ば諦めてるのに…)

鷹月(というか明らかに篠ノ之さんが一途だから気まずいわ…)

一夏「簪も箒もさっきから黙ってどうした? 緊張してるのか?」

簪「…別に(ちょっとしてるけど…)」

箒「お前に気を使われるまでもない」プイッ

一夏「そ、そうか」

鷹月(織斑くんは平常運転だし…) 

572 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:34:17 ID:FV8IfFjs
~モノレール終着駅前~

一夏「おぉー。本当に来てたな」

簪「…小っちゃい」

一夏「まぁ4人だしな。大型バス借りるのも勿体なかったんだろう」

一夏「席は2人掛けが2列か。席順はどうしようか?」

鷹月「私はどこでもいいわ」

箒「私もだ」

簪「わ、私は…い…」

一夏「2人はそっか。簪はどうする? 窓際がいいとかあるか?」

簪「え、えっと…い…」

一夏「?」

簪「…いいよ、どこでも」

簪(一夏の隣がいいって…言えなかった…)シュン

一夏「そっか。じゃあじゃんけんで決めるか」

一夏の隣は誰?
>>573 

573 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:38:13 ID:/LKSNvLE
簪 

574 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:43:52 ID:FV8IfFjs
一夏「俺の隣は簪か。よろしくな」

簪「う、うん…///」コクッ

箒「……」ゴゴゴゴゴ…

鷹月(篠ノ之さん…不機嫌になるくらいなら何で素直に隣になりたいって言わないのよぉ…
   私、隣座るの怖いよぉ…)

一夏「じゃあ席順も決まったし早く乗ろうぜ。俺、タランプ持って来たしな」

一夏「あ、簪は席は通路側と窓際どっちがいいかってあるか?」

簪「で、出来れば窓際で…」

一夏「了解。じゃあ先に乗っててくれ」

簪「う、うん…///」

箒「ぐっ…!」ギリリッ

鷹月(ひぃぃぃぃ…) 

575 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:49:02 ID:FV8IfFjs
~行きのバス内~

一夏「……よし! こっちだ!」ピッ

一夏「ぐわああああああああ! またババかー!」

箒「ふん、性根が曇っているからだ。お前にはババがお似合いだ」

一夏「くっそー…じゃあ次は簪の番だな。引いてくれ」

簪「うん…」ピッ

簪「…あがり」

一夏「うわ、またか!? 簪、ババ抜き強いな…」

簪(さっきから篠ノ之さんの手から札を引いてる度に、一夏の手元が丸見えなのは…言わない方がいいのかな…) 

576 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:54:08 ID:FV8IfFjs
鷹月「じゃあ次は私が引く番ね。織斑くん、出してくれる」

一夏「お、おう」スッ

鷹月「……」サッ

一夏「……」ビクッ

鷹月「……」スッ

一夏「……」ホッ

鷹月「……」ピッ

一夏「ぬが!?」

鷹月(分かりやすい…)

一夏「くっそー…何でこうもあがれないんだ…」

箒「鍛練が足りんのだ未熟者め。私もあがりだ」ピッ

一夏「げ!? こ、このまま最下位続きなんて嫌だ! 絶対に勝ってやる!」

箒「言っておくが、多分お前は100万回やっても勝てないと思うぞ?」

一夏「え…?」

鷹月(織斑くん…面白いくらいにババ抜き向いてないね…。
   …でも、篠ノ之さんがちょっと機嫌直ったみたいで良かったわ) 

577 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 20:58:27 ID:FV8IfFjs
~しばらくして~

簪「うぅ…」

一夏「ど、どうした簪? 顔色が悪いぞ?」

簪「ご、ごめん…ちょっと酔ったかも」

一夏「大丈夫か? 背中さするな」スリスリ

簪「!!」ビックゥ

一夏「あと、なるべく遠くの景色とか見てろ。ほら、もう海が見えてるぞ?」ズイッ

簪(い、一夏! 顔、近いぃぃぃ…!)カァァァァ

一夏「お、おい簪! 顔まで赤くなっているけど大丈夫か!?」

簪「~~~~~///」プシュゥゥゥゥゥ

箒「……」グググググ

鷹月「し、篠ノ之さん…トランプがひしゃげちゃってるわよ…?」

鷹月(うぅ…また居心地が悪くなってきた…)

―――――――――
―――――
――― 

579 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:04:06 ID:FV8IfFjs
~旅館前~

一夏「ここに来るのも久しぶりだな」

簪「……///」ドキドキ

一夏「…簪、本当に大丈夫か?」

簪「だ、大丈夫…! 平気…!」フルフル

一夏「そっか。もう夕方だから、夕食までゆっくり部屋で休んでいろよ?」

簪「……」コクコク

箒「……」ピリピリ

鷹月(織斑くん…天然ジゴロでイチャつくのはよして…)

一夏「じゃあ一足先にチェックインしてくるから、ちょっと待っててくれ」

鷹月「う、うん…」

―――――――――
―――――
――― 

580 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:07:49 ID:FV8IfFjs
一夏「…どういうこった」

鷹月「どうかしたの?」

一夏「いや、部屋割りが…ちょっと面倒なことになってな」

簪「え?」

鷹月「え? 織斑くん1人と、女子は3人共用じゃないの? 順当に考えれば」

一夏「いや、何だか2人ずつ充てられたんだ」

鷹月「えぇ!?」

箒「なッ…!? み、見損なったぞ一夏! お前はどこまで破廉恥な奴なんだ!」

一夏「お、俺じゃねぇよ! 知らないうちに予約が入ってたんだよ!」

簪(…きっとお姉ちゃんだ)

鷹月「え、ええと…じゃあ誰が織斑くんと一緒の部屋なの?」

一夏「それが…」

一夏と同室は誰?
>>581 

581 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:12:12 ID:VM.mq8CU
簪 

582 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:18:09 ID:FV8IfFjs
簪「え…」

一夏「はぁ…」

箒「……」ピキピキ

鷹月「」

簪「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

一夏「いや、何ていうか…ごめん」

簪「い、いや、あの、べつに、嫌じゃなくて、その…///」

一夏「そ、そっか…まぁ悪く思ってないならいいや」

簪「よ、よろ…しく…///」

一夏「お、おう(また顔が…熱でも出てるのかな?)
   そんなわけだからさ。箒は鷹月さんと一緒な。普段から同室だから気を使わないで済むだろ?」

箒「知らん!!」

一夏「え」

箒「私は先に部屋に戻る! キーを寄越せ!!」バッ

一夏「あ、おい…って、行っちまいやがった」

鷹月(うわぁ…どうしよう…もの凄く帰りたい) 


584 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:23:00 ID:FV8IfFjs
~一夏と簪の個室~

一夏「おぉーやっぱ和室はいいなー」

簪「う、うん…///」

一夏「…簪、本当に大丈夫か?」

簪「だ、だい、じょう、ぶ」カチコチ

一夏「いや、大丈夫じゃないだろ…バス移動が長かったから疲れてんのか?」

簪「べ、別に…そんな、こと…」

一夏「まぁひとまず夕食まで時間あるし、ゆっくりてようぜ。俺はテレビとか見てるよ」ピッ

簪「あ、うん…」

一夏「おぉー。何か旅館の地方番組って、わけもなくテンション上がるよな」

簪(一夏…全然緊張してない…)

簪(…なんかムカつく) 

585 :お風呂~:2012/04/22(日) 21:28:27 ID:FV8IfFjs
簪「…お茶、淹れるけど?」

一夏「ん? じゃあ貰おうかな」

簪「うん」


簪「はい」

一夏「ありがと。うーん、やっぱり和室で飲む日本茶は旨いな」ズズッ

簪「お茶菓子…」スッ

一夏「お、ありがとな。こういう個室に備え付けられてる茶菓子って結構好きなんだよ」ポリポリ

簪「うん…」モグモグ

一夏「はぁー落ち着く…最近はミッション続きで休まる心地がしなかったからなー」ズズッ

簪「…うん」

簪(…一夏が全然気にしないから、ちょっと残念だけど)

簪(でも…私といて気が休まるってことで…何か、一夏とこうしてのんびりするのも…)

簪「…ちょっといいかも」ボソッ

一夏「ん? 何か言ったか?」

簪「べ、別に…!」 

587 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 21:54:24 ID:FV8IfFjs
~箒と鷹月の部屋~

箒「まったく一夏め…! 軟弱者め!」ブツブツ

鷹月「あ、ははは…」

箒「くそ…! 目を離すとすぐデレデレしおって助平め…!」クドクド

鷹月「……」

箒「本当にしょうがない奴だ! 今度会ったら、性根を叩きなおして―――」

鷹月「あー篠ノ之さん? その…」

箒「ん?」

鷹月「その、さ。あんまり気負いすることもないと思うよ?」

箒「べ、別に私は…! あんな唐変朴に気を使うなど!」

鷹月「織斑くんもさ。別に意地悪で篠ノ之さんに構ってあげないんじゃないんだから」

箒「なッ…!?」 

588 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:01:38 ID:FV8IfFjs
鷹月「まぁ確かに…織斑くんは私からしても目に余るほどの鈍感っぷりだけど…」

鷹月「でも裏返せばね。織斑くんの親切は、引け目とかそんなもんじゃない、本当の気遣いだって分かるでしょ?」

箒「そ、それは…まあ」

鷹月「…織斑くんも織斑くんだけど、篠ノ之さんも篠ノ之さんだよ。
   言いたいことも言えないようじゃ駄目だよ? あの鈍感の織斑くん相手なら、尚更」

箒「だ、だから、私は、その…」

鷹月「ほら。そう強がっちゃうからダメなの。ちゃんと素直に向き合わなくちゃ」

箒「……」

鷹月「…私は雑誌を貸したり、こうしてお節介をやくことくらいしか出来ないけどね。
   でも、これでも応援はしてるつもりだよ?」

箒「…静寐」

鷹月「ね?」

箒「…ありがとう」

鷹月「いいわよ。ルームメイトじゃない」

鷹月(というか、本当に気持ちの整理をつけてくれないと…同室として私も困るってのもあるけど…) 

589 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:06:58 ID:FV8IfFjs
~食堂~

一夏「お、2人も今来たのか」

鷹月「こんにちは、織斑くん」

一夏「鷹月さんも箒も浴衣似合うなー」

箒「なッ…///」

鷹月「そ、そうかな…///」

簪「……」ムスッ

一夏「箒は浴衣もいいんだけど、この間神社で見た巫女装束もすごく似合ってて」

ガスッガスッ

一夏「うげ!?」

箒「お、お前という奴は! あの事をほいほい他言するな!」

一夏「いてぇな…殴ることないだろ…ていうか何で簪まで…」

簪「別に…」

鷹月「あ、ははは…(こりゃすぐには無理かなぁ…)」

簪(一夏…私の浴衣姿には何も言ってないくせに…) 

590 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:11:23 ID:FV8IfFjs
一夏「おー。やっぱ旨そうだな」

鷹月「またここの料理が食べられるとは思ってなかったわ」

一夏「そうだな。そういやセシリアがあの時、正座に慣れてなくて苦労したな」

鷹月「オルコットさんにもお茶目なところあるよね」

一夏「あははは、そうだな」ストン

箒「……」スッ

一夏「ん? 箒、俺の隣か?」

箒「ふ、不服か!?」

一夏「いや、別にそういうわけじゃないけど」

箒「ふ、深い意味などない! ただ、お前の食べ方の指導をしてやろうと思っただけだ!」

一夏「えぇー…何だよそれ…」

鷹月(やれやれ…まぁ一歩前進、ってことにしときますか) 

591 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:17:15 ID:FV8IfFjs
箒「ほら、姿勢がなってないぞ! 背筋がまた曲がっている!」

一夏「べ、別にいいだろ…」

箒「ダメだ! 食の作法は武の作法にも通じる! 怠ることは許さん!」

一夏「まったく…飯くらい落ち着いて食おうぜ」バクバク

箒「こら! 箸の扱いが雑だぞ! 箸先は、3cmまでしか濡らしてはいかん!」

一夏「こまけぇなー…いいだろ別に」

箒「…行儀の悪い奴はこうだ!」パクッ

一夏「んが!? 俺が楽しみに取っといた刺身を!?」

箒「信賞必罰だ。作法を嗜まないお前が悪い」

一夏「なら俺は…! これをいただく!」ガバッ

箒「甘い!」ガキン!

一夏「ぐ…! 流石は箒…甘くはないか…!」ググググ

箒「生憎だったな…この出汁巻き卵は渡さん!」ギギギギ

鷹月「行儀悪いよ2人とも」パクパク

簪「まったく」モグモグ 

592 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:21:48 ID:FV8IfFjs
鷹月(…まぁ楽しそうだからいいか)

簪「……」ジィー

鷹月(…この簪って子。さっきからずっと織斑くんの方を見てる…)

簪(一夏のバカ…イチャイチャしちゃって)

一夏「まったく…あれ? ほ、箒! また俺の飯盗ったな!?」

箒「は? 知らんぞ」

一夏「嘘付け! 大事に守っていたエビフライがなくなっているじゃないか!」

箒「知らないうちに食べていたんだろ。濡れ衣など男らしくないぞ」

一夏「白を切るって言うなら…容赦しないぞ!」ババッ

箒「ぬわ!? こら貴様! プリンを取るな!」

簪「……」モグモグ

鷹月(…簪って子の皿の上の海老の尻尾が…2つになってる)

簪「…ふん」 

593 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:26:33 ID:FV8IfFjs
一夏「はぁ…結局食べ損ねるし、箒には殴られるし、散々だ…」

箒「当たり前だバカ! 私のプリンをよくも!」

一夏「何だよー。お前なんかメインディッシュ2つじゃないか。デザート1個じゃ割りに合わないぜ」

箒「だからエビフライは潔白だと言っているだろうが! それに…女子から甘味を奪うとは貴様!」

一夏「うぉ…な、何で怒ってんだよ…」

鷹月「織斑くん、今のはダメだよ」

一夏「え?」

鷹月「覚えておきなさい。女の子ってのはね。甘いものと綺麗になるためなら、命だって賭けれるんだよ」

簪「…今のは一夏が悪い」ウンウン

一夏「え、えぇー…」

箒「まったくお前は! 反省しろ!!」

一夏「は、はい…(チクショウ…俺だって被害者なのに…)」 

594 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:30:12 ID:FV8IfFjs
一夏「お、ここって卓球台があるじゃないか。ちょっとやってかないか?」

鷹月「え? 食後なのに? まぁ私はいいけど」

一夏「だってこの後風呂に入るだろ? 風呂前に汗をかく方がいいんじゃないか?」

箒「まだ賛成と言ってないのに話を進めるな」

一夏「っと、そうだな。すまん、箒はパスか?」

箒「…いや、やる。プリンの恨み、この卓で晴らしてやる!」

一夏「お、おう…簪はどうする?」

簪「…皆が、やるなら」

一夏「よし。じゃあ2対2でやるか。ペアは…またじゃんけんでいいか?」


一夏のペアは?

>>595 

595 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:30:31 ID:1r39zBLc
たかつきさん 

598 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:36:03 ID:FV8IfFjs
鷹月「わ、私!?」

一夏「よろしくな、鷹月さん」

鷹月「う、うん…(うわぁ…どうしよう…篠ノ之さんの背中を押した手前なのに…)」

箒「…まぁそういうわけだからよろしく頼む」

簪「う、うん…」



一夏「じゃあまずは俺からのサーブだ」パコッ

箒「貰った!」バシーン!!

鷹月「きゃぁ!?」ガッ

箒「よし! まずは先制だ!」

一夏「い、いきなりリターンエースかよ…容赦ねぇな」

箒「ふん! 私を敵にまわしたことを後悔するんだな!」ビシッ

鷹月(ラバーに焦げ後が…どんだけ本気なのよ…) 

600 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:40:33 ID:FV8IfFjs
簪「…えい」パコン

一夏「甘い打球! こいつは貰った!!」バシーン

箒「させるか!」カキーン!

鷹月「ひッ!?(またぁ!?)」

一夏「危ない!!」ガッ

鷹月「え」

カラカラ…

一夏「あー…ネットか。ごめんな鷹月さん」

鷹月「う、ううん…ていうか、ダブルスだと同じ人は2回打っちゃダメなんじゃ?」

一夏「そうなのか? まぁ温泉卓球なんだから公式ルールはいいだろ」

鷹月「そ、そうかもね…あはは…」 

601 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:43:35 ID:FV8IfFjs
一夏「なるべく俺が打つから、鷹月さんはフォロー頼む」

鷹月「う、うん…」

一夏「俺が守るから、安心してくれ」

鷹月「うッ…///」ドキッ

一夏「? どうかしたか?」

鷹月「べ、別に…」

一夏「?」

鷹月(な、なるほど…皆こうやって織斑くんに…)

箒「……更識簪。私が前に出るから援護してくれ」

簪「…了解。全力で手を貸す」

箒「潰すぞ」

簪「うん」

鷹月(あ、ははは…2人の背後から暗雲が…) 

602 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:47:58 ID:FV8IfFjs
箒「はぁ!!」バコーン!!

一夏「うぉ!?」ガッ

簪「ふん!!」バシーン!

一夏「ひぃ!?」パコン

箒「おらおらおらおらおらぁ!!」ガキーン!!

一夏「ちょ、ま、何で2人して俺を狙い打っているんだ!?」

箒「戦略だ!!」

簪「共闘戦線!」

鷹月(…何だかすごく暇になっちゃった)

一夏「い、意味がわから……あ」ガッ

箒「甘いわ! 喰らえ!!」バガッッッ


ベチコーン!!


一夏「がは!?」ドサッ

鷹月「も、もろ顔面に!? 大丈夫、織斑くん!」 

603 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:52:47 ID:FV8IfFjs
一夏「いててて…眉間に入った…」

箒「ふん…鉛玉や矢でなくて良かったな」

鷹月「まったく…大丈夫、織斑くん?」

一夏「だ、だいじょう……いぃ!?」

鷹月「?」

一夏(た、鷹月さんの浴衣がはだけてる!?)

一夏「た、鷹月さん! 水色、水色!」

鷹月「水色? いったい何の……」

鷹月「!!」バババッ

箒「」ピクッ

簪「」ピキッ 

604 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/22(日) 22:56:29 ID:FV8IfFjs
鷹月「おおおおおおお織斑くん! 見たの!?」

一夏「い、いや、その…ほんの、ちょっとしか…」プイッ

鷹月「きゃぁぁぁぁぁ///!」

箒「いちかぁぁ…きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴ

一夏「いいいいいいいいやいやいやいや待て待て!! これは不可抗力で!!」

箒「問答無用だ! そこに直れ!!」ブンッ

一夏「うわ待て待て待て待て!! ラケットを振りかぶるな!! 本当に洒落にならないから!」

簪「……」

一夏「か、簪! 見てないで止めてくれ!!」

簪「…変態」スッ

一夏「え、ちょ、あの、何で簪までラケットを振りかぶってんですか…?」

箒「天誅!!」

簪「成敗!」

一夏「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


バガスバガスッ 

613 : ◆Xj0T19PFxU:2012/04/27(金) 21:55:30 ID:CYeMkxFo
―――――――――
―――――
――― 

~女湯~

カポーン…

箒「まったく一夏め…! あそこまで不埒だとは思わなかったぞ!」

簪「同感…!」

鷹月「あぁもう…だから2人とも。あれは事故だって言ってるじゃない」

箒「腹づもりがなかろうとあろうと結果は同じだ! 女の下着姿に●●しおって!」

簪「…!」コクコク

鷹月「よ、●●って…はぁ…。じゃあ何? 自分の裸で●●して欲しかったとか?」

箒「ばばばばばばばばばばばばばばバカな事いうな!!
  そのような邪な感情を抱かれたら、問答無用で穿千をお見舞いしてくれるわ!」 

614 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:03:11 ID:CYeMkxFo
簪(……)

鷹月「あんたねぇ…そうやってISやら竹刀を振り回さない方がいいわよ?」

箒「知らん! 腐りきった性根を叩きなおしてやるのも幼馴染の務めだ!」プカプカ

簪(浮いてる…)

簪「……」ジッ↓

簪「……ぐすっ」

鷹月「…?」 

615 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:08:11 ID:CYeMkxFo
※何かもう鷹月さんが『篠ノ之さん』って言うの違和感ありまくりだから変更
鷹月「…前々から思ってたけどさ」

箒「ん?」

鷹月「織斑くんってよく箒に愛想尽かさないわよね」

箒「なッ…!?」

鷹月「だってそうでしょ? 事あるごとに竹刀やら木刀やらで暴力振るわれてるのに。
   それで次の日くらいになると何事もケロッとしてるんだもん」

箒「ま、まぁな! 私は一夏のことはよく知ってる! 一夏はそんなことくらいでは私を嫌いになったりはしない!」

鷹月「…織斑くんって今更言う必要ないくらい鈍感だけど、それが上手い具合に好転しているのがそれよね」

箒「は?」

鷹月「要するに。幼馴染という立場と鈍感という織斑くんの性格を知っているから、
   箒はそんなことも出来るってことだよね?」

箒「ま、まぁ…そう、なるのか…?」

鷹月「…逆に言うとね。今のままじゃ、絶対に箒と織斑くんの仲は進展しないと思うよ」

箒「え…?」 

616 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:14:00 ID:CYeMkxFo
鷹月「裏を返すと箒の言い方は、織斑くんと幼馴染であることに胡坐をかいていることになるからね」

箒「わ、私は…そんな、つもりは…」

鷹月「だって織斑くんのこと、信じてるからそういうことが出来るんでしょ?
   まさか愛情表現の一種として殴ってるわけじゃあるまいし」

箒「そ、そんなわけない! 私だって好きで暴力を振るいたいわけではない! ただ、あいつが不甲斐ないから…」

鷹月「だからってすぐ殴るようなことでもないでしょ? さっきも言ったけど、あれは事故だったんだよ?
   織斑くんはとんだトバッチリなのに、何で全部織斑くんが悪い言い方するの?」

箒「な、何だ静寐…。お前は、あいつの味方なのか?」

鷹月「味方か敵とかそういう問題じゃない。あくまでモラルの問題よ、これは。
   諭すにしても、もっとやり方ってものがあるでしょう」

箒「ぐっ…」

簪「う…」 

617 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:18:14 ID:CYeMkxFo
鷹月「…箒が織斑くんのことをどう思ってるかくらい、私にだって分かる。
   でも今の箒や更識さんは、見ていて不安だよ」

鷹月「今は幼馴染や友達同士のじゃれ合いで済んでいるからいいけど、織斑くんだって人間だよ?
   いくら鈍感とはいえ、絶対に我慢の限度ってものがあると思う」

箒「……」

簪「……」

鷹月「…友達でも幼馴染でもいたくないなら、まずはその関係性を壊すことから始めなきゃ。
   そして、その関係でいたくないならまずは自分を変えることが大事だと思う」

箒「自分を…」

簪「変える…」

鷹月「男は黙って女に従順するなんて女尊男卑の精神、織斑くんには通じない。
   なら古風に、女を磨いて振り向かせる他ないじゃない」

鷹月「だからすぐに暴力に訴えるのはNG。分かった?」

箒「お、おう…」

鷹月「返事は?」

箒「は、はい…(なんかルームメイトが怖い…)」

簪「はい…」 

618 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:24:56 ID:CYeMkxFo
箒「し、しかし…そう言われても、どうすればいいんだか…」

鷹月「焦る必要なんてないのよ。まずは身近なところから変えてけばいいの」

箒「わ、分かった…なるべく、善処してみる」

鷹月「うん。頑張って」

箒「すまない静寐…また世話をかけた」

鷹月「いいのよ」

簪「…ねぇ」

箒「ん? 私か?」

簪「やっぱり…篠ノ之さんも、一夏のこと、好き、なの…?」

箒「なッ…!?」

簪「……」 

619 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:27:34 ID:CYeMkxFo
箒「……」

簪「……」

箒「…お前はどうなんだ。更識簪」

簪「わ、私は…」

箒「……」

簪「…一夏のこと、好き。大好き」

箒「…そうか」

簪「…///」

箒「私もだ」

簪「…!」

鷹月(あ、あれ…? これってもしかして地味に修羅場?) 

620 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:35:42 ID:CYeMkxFo
箒「…私だって一夏が好きだ。小学校の頃からずっと、あいつを想っていた」

簪「…そう」

箒「今やセシリアたちや生徒会長やらお前まで恋敵が増えてしまったが…。
  だが、一夏への想いは誰にだって負けない自信がある」

簪「…年月なんて、関係ない」

箒「ふふふっ。そうは言うけどな。私はあいつがいつまで寝小便をしていたかも知っている。
  私と一夏はそれくらい旧知の仲だ」

簪「わ、私なんか…! 両親に、挨拶を済ませた…!」

箒「ははは。そう言えばそうだったな」

箒「…想ってきた年月なんて些細な問題かもしれない。
  だが、私は誰よりも一夏を理解しているつもりだ」

箒「だから一夏も私を理解してくれているはずだ。今は届いてないが…いつか絶対に振り向かせる」

簪「…私だって負けない。相手がお姉ちゃんでも、幼馴染でも、絶対に一夏を諦めない」

箒「……」

簪「……」

鷹月(温泉に浸かっているはずなのに…すごく肌寒いんですけど…) 

621 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:41:12 ID:CYeMkxFo
鷹月「ね、ねぇ2人とも!」

箒「?」

簪「?」

鷹月「え、ええと…その、さ! 2人の気持ちはよく分かったけど…
   でも、だからと言っていがみ合う必要なんてないんじゃないかな!?」

箒「……」

鷹月「せせせ折角こうして、女子が3人水入らずなんだし、もっと親睦を深めあおうよ!」

簪「……」

箒「…そうだな。まぁ一夏のことは置いといて、お前とはちゃんと話したかったからな」

簪「え…?」

箒「ゴーレムⅢのとき、お前の活躍がなければ私も危うかったからな。
  だから今更だが、礼を言いたかった」

簪「あ、あれは…お姉ちゃんと、篠ノ之さんと、一夏が頑張ってくれたからだし…」

箒「だからこそだ。私たちは一度、共に死線を潜り抜けた仲だ」

簪「あ…」

箒「共に背を預けあい、助け合ったなら、それは立派な仲間だからな」 

622 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:44:15 ID:CYeMkxFo
簪「……」

箒「こ、こんな格好で言うことではないかもしれないが…これからも、よろしく頼むぞ」スッ

簪「…一夏のことは、負けないけど」

箒「その言葉はそっくり返すが…それはそれ、これはこれだ」

簪「……」スッ

ギュッ

箒「改めて、篠ノ之箒だ」

簪「更識、簪、です…よろしく、篠ノ之さん」

箒「改まる必要などない。名前で呼び合わないか?」

簪「あ、うん…よ、よろ、しく…箒」

箒「ああ。こちらこそよろしく頼む、簪」

鷹月(ほっ…。何とか穏便に済んで良かったわ…)

鷹月(それにしても…あの箒が、自分から友達を作ろうとするなんてね)

鷹月(…ちゃんと変われてるとこもあるじゃない。口を出すまでも無かったかな) 

623 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:48:21 ID:CYeMkxFo
箒「何か好きなものでもあるか?」

簪「え、ええと…抹茶が好き。マフィンも、作るし」

箒「おぉそれはいいな! 私も日本茶が好きなんだ!
  今度いい店を紹介するぞ! 宇治のを使った特級品でな! 茶菓子も絶品なんだ!」

簪「い、行きたい!」パァァ

箒「よしっ、今度の休みに行こう! 空いているか?」

簪「うん! 行く!」

鷹月(新たな友情が芽生える瞬間…いいわねぇ…)ウンウン

―――――――――
―――――
――― 

624 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:51:42 ID:CYeMkxFo
~生徒会室~

楯無「いやーいいねー! これぞ青春! って感じがするね!」

楯無「箒ちゃん…本当にいい娘だね…こんな後輩持てて、お姉さんは嬉しいわぁ…」グスッ

楯無「しかし未成年向けとは言え、モザイクかけるなんて惜しいことしたわぁ…。
   同席してる簪ちゃんが羨ましいわ。箒ちゃん、なんてナイスバディなの…」ジュルリ

楯無「……」

楯無「…簪ちゃん。友達できて…良かったわ」

楯無「ありがとう、箒ちゃん。姉の私からも、妹を宜しくお願いするわ」 

625 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:55:28 ID:CYeMkxFo
楯無「さてさて…まぁ姉妹の私情は置いておいて…生徒会会長としての職務を真っ当しますか!」

楯無「現在、一夏くんはダウン中。女子と入れ替わりで温泉に入る模様」

楯無「勿論この旅館の温泉は男女で別れていますが…」

楯無「…さてさて。聡明な諸君らは、私がしたいこと分かるわよね?」


楯無「そう! これぞ定番中の定番の温泉旅行のメインイベント! 
   『ドキドキ混浴会~きゃっ/// 何でアンタがここにいるのよ!~』を決行します!!」バーン


楯無「ふふふ…。これから起こる出来事には露知らずで乙女トークを咲かせてるところ悪いけど…。
   このまま行っても盛り上がりに欠けるからね! だからここでテコ入れさせてもらうわよ!」

楯無「さてさて…流石に3人か2人と鉢合わせるのはまずいわね…発覚も早くなりそうだし」

楯無「というわけで…ここにいる3人の内、誰かは一夏くんとドキドキ展開を繰り広げてもらいます!」

楯無「さぁ、撮影班の方! 脱衣所から、誰かの衣服一式をかっぱらっちゃってください!!」


誰の下着と浴衣がなくなった?
>>626 

626 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 22:58:42 ID:IggRFuRM
箒 

627 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:03:03 ID:CYeMkxFo
~脱衣所~

撮影班「あいあいさー!」

撮影班「しかしとは言ったものの…誰が誰のかなんて分からないわよね…」

撮影班「あ…これは鷹月さんのね。水色だし…」

撮影班「…織斑くん、こういうのがいいのかしら。なら、私だって…」

キャッキャウフフ

撮影班「はッ!? あまりのんびりしてられないわ! 早く済ませなきゃ!」

撮影班「ええい、これでいいや!」ガババッ

―――――――――
―――――
――― 

撮影班「…これ、篠ノ之さんのだ…てか何よこのブラのサイズ…こんなのってないわよ」グスン

撮影班「っとっとっと…。私怨はこのくらいで、仕事、仕事、と」

『男湯』『女湯』
『女湯』『男湯』

撮影班「これでよし、と」 

628 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:07:56 ID:CYeMkxFo
~女湯~

箒「な、ない!?」

鷹月「箒、どうしたの?」

箒「なくなってる! 私の下着も服も!」

鷹月「えぇ!?」

簪「ま、まさか、盗まれた…!? さ、財布は!?」

箒「いや…ISなどの貴重品は、個室の金庫に入れているから問題ないが…」

鷹月「きっと誰かが間違えて持ってっちゃったか、回収しちゃったのね。
   私たちの他にも、入れ替わりで出てっちゃった人がいたし」

箒「どどどどどどうすれば!?」

鷹月「落ち着きなさい。取りあえず、フロントに訊いてきてあげるから。
   箒は湯冷めするのもあれだし、もう一回入っちゃえば?」

箒「す、すまない…そうさせてもらおう。本当に世話をかける」

鷹月「いいっていいって」

簪「私は…そろそろ、一夏を呼びに行ってくる」
―――――――――
―――――
――― 

629 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:12:11 ID:CYeMkxFo
~一夏と簪の個室~

一夏「はぁ…だいぶ腫れも引いてきたかな」←氷袋で患部を冷却中

ガララッ

簪「一夏…あがったよ」

一夏「おぉそうか。じゃあ俺も入ってこようかな」ノソッ

簪「…瘤、平気?」

一夏「まぁこれくらい、いつものことだよ」

簪「…あの」

一夏「ん?」

簪「ごめん、ね…?」

一夏「え? あぁ、別にいいよ」 

630 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:15:12 ID:CYeMkxFo
簪「怒って、ない…?」

一夏「怒るっているというか何と言うか…まぁいつのものことだし」

簪「…ごめん」

一夏「ど、どうしたんだよ。気にしてないって」

簪「事故だったのに…ごめんね」

一夏「ま、まぁ…分かってくれたならいいけど」

簪「これからは、気をつけるから…」

一夏「あ、ああ。反省してくれてるなら別にいいよ」

簪「うん…」

一夏(しかしこういう場合…俺が泣き寝入りするのがお決まりだったんだが…何かあったのか?)

一夏(…ま、いいか。それよりも久しぶりの温泉だ。ゆっくり浸かってこよう)

―――――――――
―――――
――― 

631 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:17:44 ID:CYeMkxFo
~男湯(女湯)~

一夏「おぉー。客は俺1人か。こりゃゆっくり入れるな」

一夏「まぁ今はシーズンオフだしなぁ。こんないい旅館なのに、勿体無い」

一夏「弾の奴にも教えてやるとするか。今度あいつらと銭湯でも行こうかな」

一夏「さてさて。まぁそれはそれとして…お邪魔しまー」ガララッ


箒「なッ…!?」


一夏「え」 

632 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:22:23 ID:CYeMkxFo
箒「」バイーン

一夏「ほ、箒!?なんでここに!? ここここここここ、男…」

一夏(ていうかやべぇ…! 箒の裸、モロに見ちまった!)

箒「…こ」プルプル

一夏「え」

箒「この戯けがああああああああああああああああああああああああ!!!」ガッ

一夏「ひぃぃぃぃ!?(ヤバイ! 桶を投げられる!?)」ババッ

箒「…///」

一夏(あ、あれ…桶が飛んでこない…?)

箒「…し」

一夏「し、し?」

箒「早く閉めろ! ジロジロ見るな!!」

一夏「は、はぃぃぃ!」ガララッピシャッ 

633 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:25:36 ID:CYeMkxFo
箒「……」

ツカツカ

箒「……」ザブン

箒「い、一夏に…」

箒「見られて…しまった…」

箒「~~~~~~///」ブクブク

―――――――――
―――――
――― 

一夏「はぁ…はぁ…はぁ…危なかった…絶対に殴られるか殺されるかと思った」

一夏「しかし箒が…大人しくしてるなんて珍しいこともあるもんだ…どんな心境の変化だ?」

一夏(し、しかし箒…久しぶりに見たけど、小さい頃とは全然違…///)

一夏「いや待て待て待て! 何で箒が男湯にいるんだ!? ちゃんと入る時に確認したのに!」


「箒ー? いるー?」


一夏「!?」 

634 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/27(金) 23:29:13 ID:CYeMkxFo
一夏「ままままままままずい! 誰か来たのか!? この声は、鷹月さん!?」

一夏「やばい…! 脱衣所には隠れるところなんてない!」

一夏「…かくなる上は!」


ガララッ


箒「い、一夏!?」

一夏「すまん箒! 匿ってくれ!!」

箒「バババババババ莫迦者!! 堂々と覗きにくる奴があるか!!」

一夏「覗きとかそんな趣味は毛頭ねぇよ! 何でだか知らんが、男湯にお前がいたんだ!」

箒「はぁ!? そんなわけあるか!」


「箒ー? まだ入ってるのー?」


箒「し、静寐!?」 

635 :予想以上に長くなってしまった…続きは明日でオネシャス:2012/04/27(金) 23:34:23 ID:CYeMkxFo
一夏「話はあとだ! とにかく匿わせてくれないと、俺が社会的に死ぬ!」

箒「だ、だからといって…」

一夏「頼む箒! お前だけが頼りなんだ!」

箒「…!」


「箒ー? 大丈夫ー? そこに誰かいるのー?」


箒「わ、分かった! とにかくお前は、湯の中でじっとしてろ!」

一夏「あ、ああ! 助かるぜ、箒!!」ザブン

箒「うぷ!? い、いきなり入るなこの莫迦!!」

鷹月「誰が莫迦だって?」

箒「うわぁ!? い、いきなり驚かせるな!!」

鷹月「いやだって…いきなり大きな水音がしたから…転んだかと思ったじゃない」

箒「そ、そうかすまん! ちょうど、シンクロナイズドスイミングの練習をしていたもんでな! はっはっは!」

鷹月「?」

一夏(あ、危ねぇ…風呂の湯が乳白色じゃなかったら一発でアウトだった…) 

639 : ◆Xj0T19PFxU:2012/04/28(土) 20:09:32 ID:/lDRzvEk
箒「そ、それよりどうだ!? 私の服は見つかったか!?」

鷹月「うーん…フロントに訊いてみたんだけど、見つけてもいないし届けられてもいないって」

箒「そ、そうか…」

鷹月「だから新しい浴衣とバスタオルを貰ってきたわ。箒の持ち物も盗まれたのもは下着だけみたいだし、
   明日朝市で売店に買いに行きましょう。今日は下着無しで寝てもらうことになるけど、我慢してね」

箒「わ、分かった…仕方ないな」

鷹月「許さないわねぇ…。旅館の人達は、場合によっては警察呼ぶって言ってるわ」

箒「そ、それは困る! 私物を盗まれたばかりか、はしたない格好で寝ていたなんて知られたくない!」

鷹月「…まぁ箒がそれでいいならいいけど」


一夏(ま、まずい…お湯の中で息を止めているのって…予想以上にきついぞ…)フガフガ 

640 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:13:30 ID:/lDRzvEk
鷹月「そういえばさ。何だか女湯の暖簾、逆になってたんだけど」

箒「な、何!? それは本当か!?」

鷹月「ええ。おかしいと思って旅館の人にはもう言っておいたから、多分そろそろ直っているわ。
   で、誰か男の人とか入ってきてない?」

箒「ふぇ!? いいいいいいいや知らんぞ! 誰も入ってきてないぞ、うん!」ブンブン

鷹月「?」


一夏(ぐ…やばい! そろそろ、息が…! 岩陰に移動して、こっそり呼吸しよう…)モゾモゾ

モニュッ

箒「きゃぁ!? い、いきなり何すんだ!!」ドゲシッ

一夏(ぶほぉ!?)ブブブッ

鷹月「!?」 

641 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:15:57 ID:rTfyHaGQ
アッー 

642 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:18:11 ID:/lDRzvEk
鷹月「ほ、箒…? どうかしたの?」

箒「へ…? いいいいいいいや! 何でもないぞ! いきなり背筋に水が垂れてきたから、ビックリしただけだ!」

鷹月「露天風呂なのに水が垂れてきたの? 天気だって晴れなのに…って、あら?」


ブクブク…


箒「あ…」

鷹月「ほ、箒…それ…」

箒「うわぁ! み、見るなぁ!! これは、違うんだぁ!!」

鷹月「な、何言って……あ」

鷹月「あー…そういうことか…」

箒「え?」

鷹月「分かったわ。今のは黙っておいてあげるから。箒ものぼせない程度に早くあがってきてね」ソソクサ

箒「え…あ、あぁ…うん」

鷹月(まったくはしたないわね…お風呂で…《ゴニョゴニョ》なんて…。ま、まぁ女の子といえど、しょうがないけど…) 

644 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:25:14 ID:/lDRzvEk
箒「……」

箒「…行ったぞ」

ザッパーン

一夏「ぶはぁ! はぁ、はぁ、はぁ…! お、お湯、少し飲んじまった…はぁ、はぁ…」

箒「このバカ者! いきなり股座を触るな! 変な声が出てしまったではないか!」

一夏「し、仕方ないだろ! このお湯の中じゃ、全然分からないんだよ!」

箒「まったくお前は! 女湯に忍び込むばかりでは飽き足らないのかこの女こましめ!」

一夏「だから違うんだって! お前が男湯に入っていたからビックリしたんだよ!」

箒「お前はまだ…あ、そういえば静寐も似たようなことを言っていたぞ…?」

一夏「だろ!? 俺は無実だよ!」

箒「そ、そうか…って、こっち見るな!!」ガバッ

一夏「ひぃ!? ご、ごめん!」ササッ

箒「…///」プルプル

一夏(あ、あれ…? また、殴ってこないぞ?)

箒(くぅ…堪えろ…堪えろ、篠ノ之箒…! ここで変わらなければ…私は一生後悔する…!) 

645 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:32:00 ID:/lDRzvEk
一夏「え、ええと…」

箒「…///」

一夏「ほ、箒…? 怒って、ないのか?」

箒「怒っているわバカ!!」

一夏「ひぃ!?」

箒「ただ…どうやらこれはお前には責はないようだから…責める様な真似などできん。それだけだ!」

一夏「そ、そうか…」

箒「だ、だからといって私の裸を見られた辱めは許したわけではないからな!」

一夏「わーったよ。まったく…道場の外じゃ素っ裸で水浴びしたこともあったじゃないか」

箒「いつの話だいつの! それに裸だったのは貴様だけだろう!」

一夏「あははは。そうだったっけか」 

646 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:38:28 ID:/lDRzvEk
箒「ま、まったく! とにかく私はもう出るぞ!」ザパッ

一夏「あ、あぁ…うん」

箒「やれや…(はッ!? し、しまった! こんな手ぬぐい1つでは、裸を隠し切れない!!)」

箒「いいいいいいいいい一夏! やっぱり、お前が先に出ろ!」

一夏「はぁ!? 何でだよ!」

箒「私が先に出るとお前に私の裸を見られるだろうが! 私はお前が出て行ったのを確認してから出る!」

一夏「な、何言ってんだよ! そんなことしねぇよ!
   それに、俺が先に出たら脱衣所で誰かに鉢合わせるかもしれないだろ!?」

箒「ぬ…そ、それは困るな…幼馴染を●犯罪者にするわけにもいかないし…」

一夏「あ、あぁ…そうしてくれると助かる」

箒「…///」

一夏「と、とにかく俺は体を洗ってくるよ」

箒「わ、分かった…」

一夏「…こっち、見るなよ?」

箒「みみみみみみみみみみ見るかバカ!!」 

647 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:44:13 ID:/lDRzvEk
カポーン

一夏「はぁ…いい湯だなぁ…」

箒「まったく。親父臭いぞ」

一夏「いいじゃねぇか。久しぶりの温泉だ」

箒「やれやれ…」

一夏「そういや、お前と風呂に入るのって久しぶりだよな」

箒「なッ!?」

一夏「ほら、小学校の時にさ。夏場とかお前の道場の風呂とか借りて、一緒に入った時とかあったよな」

箒「ああああああああれは雪子叔母さんに半ば無理やり…ていうか、今になってその話を出すな!」

一夏「お、おいおい…顔が赤いぞお前。のぼせているんじゃないか?」

箒「煩いこのバカ!」ザパッ

一夏「うわ!?」ササッ

箒「……」フルフル

一夏「あ、あれ…? また?」

箒(ぐ…止めているとはいえ、やはり反射的に手をあげてしまう…まだまだ修行が足りない…!) 

648 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:52:30 ID:/lDRzvEk
一夏「な、なぁ箒」

箒「なんだ一夏」

一夏「お前…どこか具合が悪いのか?」

箒「はぁ!?」

一夏「いやだって…いつもならこういう時、真っ先に叩いたり殴ったりするもんだからさ」

箒「私を何だと思ってる!? 暴漢か何かと勘違いしているのか!?」

一夏「そういうわけじゃないけど…まぁ、お前らしくないかな、って」

箒「私だって好んでお前を叩いているわけではない! お前が助平だからだ!」

一夏「お前こそ普段俺をどういう風に見てるんだよ…」

箒「事実を言ったまでだ! 好きあらば女子と破廉恥なことばかりしおって!」

一夏「いつそんなことしたんだよ!?」

箒「た、例えば…シャルロットと裸で風呂に入っていた時とか…山田先生の、その…胸を…」

一夏「いや、それらは全部事故だぞ!? 第一、俺がいつ自分からそんなことしたんだよ!」

箒「そ、それは…」 

649 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:54:40 ID:/lDRzvEk
箒「そ、そういえば…お前が自発的にそのような行為に臨んでいたことなど…なかったかもしれないな」

一夏「だろ!?」

箒(いつも頭に先に血が上っていたから…気がつかなかった)

箒「す、すまん一夏…」

一夏「え?」

箒「わ、私はそうとは知らずに…お前に色々とひどいことを…」

一夏「い、いや…別に気にしてないけどさ」

箒「ほ、本当か?」

一夏「まぁな。箒って真面目だけど、昔からそそっかしいからな」

箒「ぐッ…!」

一夏「でもまぁ俺も俺で色々と抜けてるところがあるからな。お前に諭されたり、正されたりするのは嫌いじゃないよ」

箒「え…?」

一夏「昔からお前や千冬姉には叱られてたからなぁ。だからお前が何だか大人しいのは、少し寂しいっていうかさ」

箒「一夏…」 

650 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 20:58:14 ID:/lDRzvEk
箒「ま、まったく! 叱咤されることを望んでいるなんて、お前はとんだ変態だな!」

一夏「何だよそれ…別に怒られたい願望なんかねぇよ…」

箒「…まぁ、私は特に変わる気はないさ。ただ、これからお前を正す時は、
  しっかりと事実を見極めてからにしようと思っただけだ」

一夏「そっか。そうしてくれると助かるな。毎回お前に殴られるのはかなわないからな」

箒「お前…厳しくされたいのかされたくないのか、一体どっちなんだ」

一夏「あははは。まぁお前はお前らしくしてくれていいんじゃないか? 俺もその方がいい」

箒「…そうか?」

一夏「何年の付き合いだと思ってんだよ。お前の事、結構分かってるつもりだぜ?」

箒「…そうだな。ただ、やはり私ももう少し自制はするように心掛けてみることにするよ」

一夏「ああ、そうだな。それで、俺が道を外れそうになったら、遠慮なく引っ張っていてくれよ」

箒「まったく。やはりお前は私がいないとダメだな」

一夏「何だそれ。ぷっ…あはははははははは!」

箒「ふふふふふふ…はははははははは!」

―――――――――
―――――
――― 

651 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:03:02 ID:/lDRzvEk
~脱衣所~

箒「……」キョロキョロ

ガララッ

箒「一夏、今なら大丈夫だ。抜けられるぞ」

一夏「そ、そうか。じゃあお前は廊下に出て、ちょっと見張っててくれ。俺は風呂から出て着替えてくるから」

箒「わ、分かった…」ガララッ…ピシャッ

箒(…本当に見られてないだろうな? 一夏はずっと向こう見ていると言ってはいたが…)スタスタ

箒(ま、まぁ一夏なら…私の裸を見られても…別に…)

箒(なななななななななな何考えているだ私は!? そんな変態じみたことを――)

箒(うぅ…///)カァァ…

―――――――――
―――――
――― 
~一夏と簪の部屋~

一夏「はぁ…やっと部屋に帰ってこれたぜ…あれ、簪は…」

※簪は? 1.起きてる2.寝てる3.部屋にいない
>>652 

652 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:31:29 ID:euwYsvfI

653 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:38:02 ID:/lDRzvEk
簪「あ…」

一夏「簪、起きてたのか。もう遅いのに」

簪「う、うん…心配、だったから」

一夏「そっか。何か悪いな」

簪「…お」

一夏「ん?」

簪「おかえり、なさい、一夏…」

一夏「あ、ああ。ただいま、簪」

簪「…///」

一夏「?」 

654 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:41:49 ID:/lDRzvEk
簪「…なんで、遅かったの? 探したよ?」

一夏「え? わ、悪い…俺、長風呂だからさ…ははは…」

簪「…そっか」

一夏「あ、ああ」

簪「……え、えっと」

一夏「ん?」

簪「もう、寝る?」

一夏「あ、ああそうだな。明日も朝早いし、もう寝ようか」

簪「そ、そう…///」

一夏(? 何で顔が赤くなっているだろう?)

一夏「って、布団が綺麗に横に並べられている…」

簪「~~~~~~///」プシュゥゥ… 

655 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:46:27 ID:/lDRzvEk
一夏「ま、まぁ男子と同室でゴメンな。俺は壁の方に寄って寝るから」

簪「え…」

一夏「やれやれ…多分この部屋決めは多分楯無さんの差し金だろうけど、あの人も何考えてんだか…」イソイソ

簪「い、一夏!」

一夏「ん?」

簪「そ、その…! 離れること、ないんじゃない?」

一夏「え?」

簪「え、ええと…その…」

一夏「だ、だっていいのか? 布団くっつけて寝るんだぞ?」

簪「わ、私は、別に、その…あぅ…///」

一夏「?」

簪「さ、作法! 折角部屋の中央に並べてくれたから、崩しちゃ、失礼! 旅館の人に!」

一夏「え? そういうもんか?」

簪「……」コクコク

簪(自分で言ってて苦しい言い訳だけど…でも、誰にも負けたくないって決めたから…!) 

656 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:49:45 ID:/lDRzvEk
一夏「…まぁ簪がいいならいいけどな」

簪「う、うん…」

一夏「じゃあ寝るか。電気、消すぞ?」パチッ

簪「あ…」

一夏「おやすみ、簪」

簪「お、お休み…一夏」

―――――――――
―――――
―――

~30分後~

簪「……」

一夏「……」

簪(ね、眠れない…)ドキドキ

一夏(やべぇ…何か、近くに女の子が寝てるってだけで…すげぇ緊張してる…)バクバク 

657 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:52:36 ID:/lDRzvEk
一夏「…簪?」

簪「な、何…? 一夏」ビクッ

一夏「…お前も眠れないのか?」

簪「一夏も?」

一夏「ああ。何か、興奮しちまってさ。完全に修学旅行のテンションみたいなもんだな」

簪「…そっか」

一夏「ははは。そういや林間学校でも1人部屋だったからな。誰かと一緒に寝たのなんて久しぶりだ」

簪「そ、そっか…」

一夏「寝付けないし、何か話すか?」

簪「…うん!」

一夏「うーん。といっても、何を話せばいいやら」

簪「そ、そうだね…」 

658 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 21:58:27 ID:/lDRzvEk
簪(…そういえば、箒は一夏の小さい時の頃を知ってたんだよね)

簪「…一夏の、小さかった時の話とか、訊きたいな」

一夏「俺の? そんなんでいいのか?」

簪「うん」

一夏「そうだなぁ。小さかった頃って言ってもな。俺は物心ついたときから親の顔を知らなくて、
   俺にとっては千冬姉が親みたいなもんだったしなぁ」

一夏「千冬姉の勧めで剣道始めて、箒と出会って別れて、中学校では鈴とか、友達とバカ騒ぎした記憶くらいしかないし」

一夏「まぁ高校に行ってからは、お前の知るところだよ」

簪「…そっか」

一夏「…なんか、ゴメンな」

簪「え…?」

一夏「ほら、俺が急にIS動かしたもんだからさ。お前のISの開発が先延ばしにされた事あったじゃないか」

簪「あ、あれは…もう、いいよ」

一夏「いいのか?」

簪「うん…。あれがあったから、私は努力できた」

一夏「…そっか」 

659 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:03:33 ID:/lDRzvEk
簪「…一夏はさ」

一夏「ん?」

簪「…楽しい?」

一夏「は?」

簪「学校」

一夏「学校? そりゃあ、楽しいさ」

簪「…そう」

一夏「どうしてそんなこと、訊くんだ?」

簪「深い意味は、ない…。ただ、男の子にとっては、環境が特殊すぎる、と思ったから…」

一夏「あはははは。まぁ確かに最初は苦労したよ」

簪「…嫌にならない?」

一夏「何が?」

簪「え、ええと…女の人が、いっぱいで…男の人にとっては、あまり良い思いはしない、かなって…」

一夏「んー。そういうもんはないかな。何だかんだで皆優しいから、そういうのは特にないよ。
   そういや俺がチヤホヤされてるのは、俺が国家保護受けるくらい特殊な奴だからって俺の親友に言われたっけか」

簪「……」 

660 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:10:07 ID:/lDRzvEk
簪「…一夏って、すごいね」

一夏「ん?」

簪「男でIS動かせるのに…それをひけらかしたりしない、から」

一夏「そうか? 別に自慢するようなもんでもないと思うけどな」

簪「そんなこと、ない。実際、女尊男卑が酷すぎて、男性の集団のデモ抗議なんか、世界中で起きてるから」

一夏「そういやそういうの、ニュースでよく見るな」

簪「だから普通は、男の人がISを持ったら、すごく危険だと思った」

簪「…でも、一夏だったら全然大丈夫。同じ男なのに、何でだろう。一夏がISを持っても、すごく安心する」

一夏「あははは。まぁ確かに男だと割りに合わない世の中だけどさ。俺は別に気にしてないよ。
   その世の中でたまたまISを動かせるからって、どうこうしようなんて思わない」

簪「……」

一夏「俺は世の中に抵抗するなんて大それた真似…柄じゃねぇしな。
   折角の力なら、身近な誰かを守るために使いたい。俺はただ、そう思ってるだけだよ」

簪「…そっか」 

661 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:15:59 ID:/lDRzvEk
一夏「はははは。まぁ本当はそんな大したことじゃなくてさ。最初は慣れなかった学園も、幼馴染の箒と再会したり、
   新たな友達も出来たりとすごく充実してる」

一夏「だから俺はそいつらと同じ青春を送りたいと思うし…それが壊されそうになったら精一杯抗いたい。
   ただ、そう思ってるのかもしれないな」

簪「……」

一夏「…守りたいって難しいよな。俺は家族も友達も、守りたいって思ってるけど…。
   でも、そう考えると、結局は自己満足を守るためにやっているんじゃないかって思えてくるよ」

一夏「結局俺は…自分のためだけに、力を振るいたいのかな…。何か、分かんなくなってきた」

簪「…それで、いいと思うよ?」

一夏「え?」

簪「誰だって…自分が可愛いもの」

一夏「簪…」

簪「私だって…そうだったから」

一夏「……」 

662 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:23:41 ID:/lDRzvEk
簪「私もね…自分のためだけに、必死に頑張ってきたから」

簪「お姉ちゃんのこと、今では好きだけど…でも、元々は私のことを気遣ってくれていた、
  というよりは、私との関係が鬱々としていたもので、それが耐えられなかったから、だとも思う」

一夏「簪…本当に楯無さんは、お前を気遣って」

簪「分かってる。これは、見方の問題。あのね一夏。きっと誰かが行動を起こす時って、
  多かれ少なかれ、自分に益が出ることを吟味する、と思うの」

一夏「それって…何か、悲しくないか? 打算的みたいでさ」

簪「そうは思わない。打算でも何でも、行動の結果で救われる人がいるなら、私はそれでいいと思う」

簪「完全な人はいない。お姉ちゃんが言ってた。だから、完全な善も存在しない。私は、そう思ってる」

一夏「……」 

663 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:28:48 ID:/lDRzvEk
簪「あのね一夏。一夏、誰かを救った時、一夏も嬉しくなるでしょ?」

一夏「そ、そりゃ…まぁな」

簪「それでいいんだよ。それでね…一夏が嬉しいと、きっと救われた人も嬉しいと思う」

一夏「え…?」

簪「そしてその人が嬉しいと分かった時、一夏はもっと嬉しくなる。一夏がもっと嬉しくなると、相手もまた…」

簪「そうやっていくと…嬉しさが、どんどん積み重なっていくの。
  倍々ゲームみたいに…どんどん、幸せみたいなものが、膨らんでいくと思うの」

簪「これってさ…すごく、素敵なことだと思う」

一夏「簪…」

簪「…だから私は、一夏には嬉しくなってもらいたい。
  一夏が嬉しいと、私も嬉しい」

一夏「……」

一夏「ありがとな、簪。お前がそう思ってくれて…俺も嬉しいよ」

簪「…うん」 

664 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:31:09 ID:/lDRzvEk
一夏「何かちょっとスッキリしたよ。本当にありがとう、簪」

簪「ううん」

一夏「ふぁぁ…話し込んだら眠くなっちまったよ。そろそろ寝ようぜ」

簪「そうだね」

一夏「…簪」

簪「何?」

一夏「お前の話…聞けてよかったよ。ありがとう」

簪「…うん」

簪(私も…一夏のこと、知れて嬉しかった)

一夏「お休み、簪」

簪「うん」

―――――――――
―――――
――― 

665 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:35:05 ID:/lDRzvEk
~帰りのバス内~

一夏「ふあぁぁ…」

箒「また欠伸か。たるんでいるぞ」

一夏「う~ん…昨日は色々あったからなぁ…あまり寝つけてないんだよ」

箒「…まさか簪とやましいことしてないだろうな?」

簪「なッ…!? ちょ、ちょっと、箒!」

一夏「してねぇよ。まぁ夜中にちょっと話したくらいだよ」

箒「本当か?」

一夏「本当だよ。まぁ説明するのもちょっと面倒だし…俺は寝るから、モノレール駅に着いたら起こしてくれ」ゴロン

箒「あ…まったくこいつは…」

一夏(やれやれ…寮のベッドに慣れちまったから、旅館の布団は寝つきが悪かった…)

一夏(…あれ? 箒と簪って名前で呼び合う仲だっけ? いつのまに仲良くなったんだ?)

一夏(…まぁいいや。俺はちょっと寝よう…) 

666 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:39:22 ID:/lDRzvEk
箒「やれやれ…本当にこいつはマイペースな奴だ」

鷹月「まぁまぁ。疲れているんだから寝かせてあげなさいよ」

箒「何を言っているんだ。朝は一日の要だぞ。朝こそシャキっとしなくてどうする」

鷹月「やれやれ…あんただって朝方すごい格好で寝てたんだから大目に―――うぷ!?」

箒「うわああああああああああああ!? そ、それは言うなって言っただろうが!!」

簪「…?」

箒「そ、そんなことより簪! お前、昨晩一夏と何かあったのか!?」

簪「…別に何も」

箒「…本当か?」

簪「うん。少し話しただけ」

箒「そ、そうか。差し支えなければ、どんな話か訊いてもいいか?」

簪「ダメ」

箒「なッ…!?」

簪「秘密」

箒「ぐぬぬ…」 

667 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:43:34 ID:/lDRzvEk
鷹月「もぉ…せっかく仲良くなれたんだから、帰りにそんな張り合わなくてもいいじゃない…」

簪「箒は、誰も知らない一夏の秘密を知ってる。だから、これでおあいこ」

箒「ぐぐぐ…」

簪「…ふふっ」

鷹月(うわぉ…すごくいい笑顔だ…)

箒「ふん、まぁいい。私だって昨日は一夏と色々あったからな」

簪「え…?」

箒「ふふふふ…一応言っておくが二人きりだったんだぞ?」

簪「なッ…!? な、何があったの!? 教えて!」

箒「ダメだな。一夏と私の秘密だ」

簪「ぐッ…」プルプル

鷹月「あーもう…ほら、そのくらいにしましょうよ。旅館のお土産でも食べながら落ち着きましょう?」

一夏「……」グゥー…グゥー…

―――――――――
―――――
――― 

668 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:53:21 ID:/lDRzvEk
~生徒会室~

楯無「おっかえりなさーい☆ そして一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

一夏「うぉ…起きぬけにこれは結構堪えますね…」

楯無「今回は色々と長丁場だったしねー。ま、気分もスッキリできたことだし、良しとしますか!」

一夏「あはは…また凄惨なミッション地獄の日々が始まるのか…」

楯無「文句言わないのー! ほら、ちゃっちゃとスタンバイする!」

一夏「へーい…」

簪「……」

楯無「あ、あれ…? 心なしか、簪ちゃんかなり落ち着いてるわね…?」

簪「え? お姉ちゃん、見てたんじゃないの?」

楯無「流石に消灯時間過ぎてからは撮影できないよ…ま、まさか部屋で何かあった?」

簪「…秘密」

楯無「ぬぅ!? き、気になるわ切実に! か、簪ちゃん…一応聞くけど、まだ●●だよね?」

簪「!? なななななななななななな何、言って、る、の!?」

楯無「あ、ああ良かった…まだ穢れてないみたいでお姉さん安心したよ…。やれやれ。
   さてさてじゃあ不安もなくなったことだし…次のミッションを読みまーす。ええと…『>>670』だね」 

669 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:54:02 ID:/lDRzvEk


現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□ 
簪    ■■■■■■□□
シャル  ■■■□□□□□ 
箒    ■■■□□□□□
鷹月   ■□□□□□□□ 

670 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/28(土) 22:55:15 ID:hUVniiCM
簪と全校生徒の前でキス 

695 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/06(日) 18:43:45 ID:PxVGl0xY
『簪ちゃんと熱いあっつ~い大人のキ☆ス…(全校生徒の前で♪)』


楯無「」

一夏「楯無さん? 何で固まってんですか? クジ、早く見せてくださいよ」

楯無「」

一夏「…楯無さん?」

楯無「はッ…い、いやーごめんごめん! 今引きなおすから!」

一夏「え?」

楯無「あっはっは! 全然ミッションとか関係ないもん入ってたから面食らっちゃった!
   多分誰かがゴミ箱と間違えて捨てたもんだね! というわけで、気を取り直して―――」


ガシッ


楯無「え」

簪「…お姉ちゃん」

楯無(わ、私が腕をつかまれた!? いくら何でも油断しすぎたわ!) 

696 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 18:49:40 ID:PxVGl0xY
簪「…見せて」

楯無「えぇ!? だだだだだだだダメよ簪ちゃん! これは全然関係ないから!」

簪「見せて」グィィ…

楯無「いだだだだだだだだだだ! ちょちょちょちょちょタイムタイム! 折れる、折れちゃうから!」

一夏(簪が関節技を…流石は更識家の次女だ。柔術の心得はあったのか)

一夏(というか楯無さんが弱音吐いているところなんか初めて見た。やっぱ妹相手だと甘くなるのか?)

簪「…何が、書いてあったの?」チラッ

楯無「あぁダメ! それを見ちゃ―――」


『簪ちゃんと熱いあっつ~い(略)』


簪「」

一夏「な、何で簪まで固まってんだよ。一体何が書かれて―――」


『簪ちゃんと(ry』


一夏「」 

697 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 18:56:57 ID:PxVGl0xY
楯無「あ…」

簪「……」

一夏「ちょ…た、楯無さん…これ、何ですか…?」

楯無「え、ええっとぉ…何、だろう、ねぇ…? あはは…」

一夏「●●系はなしだったんじゃ…」

楯無「い、いや…キスはギリギリOKなのよね、それが…あはは…」

一夏「え、ええええええええええ!? いやいやいやいや! これはいくら何でも問題あるでしょ!?」

簪「……」

一夏「ちょ、簪も黙ってないで何か言ってくれ! お前だって―――」

簪「一夏」

一夏「ん?」

簪「ちょっと、出てってもらえる?」

一夏「え?」

簪「話があるから。お姉ちゃんと」 

698 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:02:30 ID:PxVGl0xY
一夏「楯無さんと?」

簪「うん」

一夏「そ、そうか…流石にお前も、こればっかりは嫌だったか」

簪「…違う」

一夏「え」

簪「だってこれ…入れたのは、私だから…」

楯無「!?」

一夏「はぁ!?」

簪「…///」 

699 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:03:17 ID:PxVGl0xY
一夏「お、おい簪…冗談、だよな?」

簪「…嘘、じゃないよ」

一夏「え…」

簪「…一夏はさ」

一夏「はい?」

簪「私とするの、嫌…?」

一夏「なぁッ!?」

簪「~~~~~///」

楯無「……」

一夏「いいいいいいいいいや待て待て簪! 嫌とかそういう問題じゃなくてだな!
   とと、とにかく落ち着いて―――」

楯無「…一夏くん」

一夏「はい?」

楯無「私からもお願い。ちょっと席を外してくれる? 簪ちゃんに訊く事が出来ちゃった」

一夏「?」 

700 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:09:26 ID:PxVGl0xY
楯無「そうだなぁ…場所はアリーナがいいかな。あそこなら、全校生徒が入れるはずだから」

一夏「ちょちょちょちょ! 何で楯無さんまで乗り気なんですか!?
   流石に妹が好きでもない男からキスされるのは、姉としても嫌で―――」

簪「…ッ」ズキッ

楯無「…!」


パァン!!


一夏「え」ツーッ…

簪「…ッ!」

楯無「……」

一夏「ひ、ひぃぃぃ!? ななななななな何すんですか楯無さん! ちょっと頬を掠めたじゃないですか!」

楯無「聞こえなかったの?」

一夏「え…?」

楯無「消えなさい」

一夏「へ…?」 

701 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:14:34 ID:PxVGl0xY
一夏(な、なんだこれ…ここまで本気で怒ってる楯無さん…初めて見るぞ…)

簪「…お姉ちゃん。やめて」

楯無「……」

簪「一夏。お願いだから、先に行ってて」

一夏「あ、ああ…」

簪「…一夏」

一夏「な、何だよ…」

簪「…キス、するからね?」

一夏「いぃッ!?」

簪「…あと、大事な話があるから」

楯無「…!?」

一夏「え…」

簪「待ってて…ね?」

一夏「な、何言ってんだよまったく…」

楯無「……」 

702 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:22:43 ID:PxVGl0xY
一夏「と、ともかく何だか込み入った話があるようだから俺は失礼するよ」

簪「うん」

一夏「…簪」

簪「なに?」

一夏「え、ええと…本気、なのか?」

簪「…うん」

一夏「そ、そっか…///」

簪「…///」

一夏「な、なんかごめんな…相手が俺でさ」

簪「…いいよ」

一夏「え…?」

簪「というか…一夏だから…一夏じゃなきゃ、私…」

一夏「うッ…!?」バックン!

簪「~///」 

703 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:30:44 ID:PxVGl0xY
一夏「ま、まったく…。とにかく、先に行ってるからな」ドキドキ

簪「…うん」

一夏「じゃ、じゃあな(うぅ…簪のこと、まともに見られない…というか、歯を磨いた方がいいのだろうか…?)」


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…ごめんね簪ちゃん。いくら鈍感でも、あれは流石にドタマにきたわ」

簪「…うん」

楯無「…それよりさ、何であんな事言ったの?」

簪「…さっきのクジ、私が書いた、って言ったこと?」

楯無「うん…」

簪「やっぱり…お姉ちゃん、だったんだね。書いたの」

楯無「…うん」

簪「お姉ちゃん」

楯無「…何かな」

簪「何で隠そうと、したの?」 

704 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:36:11 ID:PxVGl0xY
楯無「…ッ」

簪「答えて」

楯無「何でか、なんて…そ、そりゃあ…」

簪「……」

楯無「だ、大事な妹が…毒牙にかかりそうだってのに、見過ごせる姉がこの世にいるのかなぁ、なんて…」

簪「…ホントに?」

楯無「あ、当たり前じゃん!」

簪「自分で入れたのに?」

楯無「そ、それはその場のノリよ! 悪ノリが過ぎたと思っただけ!」

簪「……」

楯無「え、ええと…だから、私が言いたいのは…」

簪「…お姉ちゃん」

楯無「な、何…?」

簪「はっきり言って今のお姉ちゃん…かっこ悪い」

楯無「…ッ」ズキッ 

705 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:44:28 ID:PxVGl0xY
簪「お姉ちゃん、私のことを本当に考えてくれてるのは知ってる」

簪「さっきの一夏の心無い言葉も、私のことなのに本気で怒ってくれた。
  私は…そこまで私のことを思ってくれるお姉ちゃんのことが好きだし、感謝してる。姉妹として」

簪「だからお姉ちゃん、また私のことを思ってくれたのも分かる。
  本気で私の背中を押そうとして、これを入れてくれたんだって」

楯無「……」

簪「…私は一夏のことが好き。でもねお姉ちゃん…私が一番幸せになって欲しいのはね…お姉ちゃんなんだよ?」

楯無「え…」

簪「私は…お姉ちゃんにはもっと素直になって欲しいと思う。
  ヒーローでも…普通に恋をする権利くらい、あるはずだから」

楯無「…ッ///」

簪「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんとはちゃんと勝負したいの。
  お姉ちゃんが一夏のこと、ちゃんと向き合って…それで、お姉ちゃんに勝ちたい」

簪「もしね。もし、お姉ちゃんが私に気を使って、お節介を焼いて、一夏の事を諦めるなら」

簪「私きっと…今度こそ、本当にお姉ちゃんを嫌いになると思う。
  一生、軽蔑すると思う」

楯無「……」

簪「だって逃げてるのなんて、お姉ちゃんじゃない。そんなの、私の姉だなんて認めないから」 

706 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 19:52:13 ID:PxVGl0xY
簪「…言いたかったのはそれだけ。一夏が、待ってるから、私行くね」

楯無「……」

簪「お姉ちゃん。私、本気だから。本気で、一夏と…」

楯無「待って」

簪「…なに?」

楯無「ここまで言われてさ…流石に引き下がれないよ。
   みっともないけど…言い訳にしかならないけど、でも聴いてくれる?」

簪「……」

楯無「私だって、こんな風になるなんて思わなかったんだよ?
   最初は…簪ちゃんと一夏くんのこと応援してた」

楯無「箒ちゃんや他の皆の気持ちも何となく分かっていたけど、ちょっと悪いかな、って思ってたけど…。
   でも、私からすればとてもお似合いに見えたから。簪ちゃんと…一夏くんは」

簪「……」

楯無「…でも。でも、ね…。何でかな。今は胸を張って、2人を応援できないんだよ。
   私だって簪ちゃんはすっごく大切だし、一夏くんだって大事な後輩。
   でも2人が一緒だとね…こう、胸の奥が…すごく縮こまっちゃうの」

簪「……」

楯無「…遠まわしにしか言えなくてごめんね。結局は…そういうこと、なんだろうねぇ…あはは」 

707 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 20:04:04 ID:PxVGl0xY
楯無「でもさ…簪ちゃんだって酷いよ」

簪「……」

楯無「最初は一夏くんのこと…可愛い後輩くらいにしか思ってなかったのに…。
   でも、最初に一夏くんと一緒に散歩して…カレー食べたりして、さ…」

楯無「そしたらさ…いつの間にか、頭も胸も一夏くんで一杯になってた」

簪「……」

楯無「でも、きっかけは簪ちゃんだったんだよ?
   簪ちゃんがあんなミッション入れてなければ、私はまだ堂々と2人を応援できてた」

簪「……」

楯無「どういうつもりなの? 私、本気で2人のこと、いいカップルだなって思えてたのに。
   何で私の心を、こんなに目茶苦茶にしたがるのかな?」

簪「お姉ちゃんも、さ」

楯無「?」

簪「意外と…鈍感さん、なんだね」

楯無「はぁッ!?」 

708 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 20:06:40 ID:PxVGl0xY
楯無「ちょ、ちょっと待ってよ! 何で私まで、あんな唐変朴と同じ扱いを受けなきゃならないの!?」

簪「だって…今更になって、気付くなんて、ね」

楯無「わわわわわわ私は! 別に、最初はそんな気、これっぽちも無かったよ!」

簪「最初は、そう思っていたかもしれない。でも、きっとお姉ちゃんは…遅かれ早かれ、こうなってたよ」

楯無「へ?」

簪「お姉ちゃんは…すごく、一夏のこと、気にかけてたから」

楯無「いや、それは…将来、すごく有望な後輩的な意味合いだよ?」

簪「そう。一夏はね、すごいんだよ」

簪「男でISを使えるってだけじゃなくて、才能もずば抜けてて…それで、言ったことは絶対に守るの」

簪「それでね…いつの間にか、皆の心の中に入っていっちゃうの。いつかの、私みたいに」

楯無「……」

簪「だから皆…一夏を好きになるんだと思う」

簪「…お姉ちゃんだって、そうでしょ?」

楯無「……」 

709 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 20:15:11 ID:PxVGl0xY
簪「でね。お姉ちゃん、言ったよね? 一夏は、有望だって」

楯無「…まぁね。一夏くんなら、きっと私よりも強くなると思うよ。世辞も贔屓もなしに、本当にすごいから」

簪「でしょ? だからお姉ちゃんも、きっと、一夏の事しか考えられなくなると思った。私と同じように」

楯無「え…?」

簪「だって、一夏はすごいから。お姉ちゃんと、ようやく肩を並べられる存在が…一夏だから」

簪「お姉ちゃん、一夏のことになると、すごく楽しそうになる。からかっている時も、特訓しているときも、
  とても一夏が大切なんだなって、すごく伝わってきた」

簪「きっと一夏は、お姉ちゃんにも負けないくらいの操縦者になれるから。
  だから、お姉ちゃんは嬉しかったんでしょ? 一夏が、いてくれたこと」

楯無「…つまりは、良きライバルってことだね」

簪「うん。最強っていうことはね。てっぺん、だから。昇るべき壁も山もない、ってこと。
  それはすごく…悲しくて、寂しい事なんだと思う。だから、対等な相手が見つかることは…嬉しいこと」

楯無「…まさか簪ちゃんに看破されるとは思わなかったよ」

簪「アニメの受け売り」

楯無「あはは。なるほどね」

簪「それで…ライバルが異性同士なら、恋愛感情が芽生えるのも、お決まりのパターン」

楯無「なッ…///」 

710 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 20:20:22 ID:PxVGl0xY
簪「だからいつか絶対、お姉ちゃんはそうなっていた。私は、少し早めたに過ぎない」

簪「お姉ちゃんに、後悔だけはさせたくなかったから。私のことを理由に、不幸にさせたくなかったから」

楯無「……」

簪「…でも、お姉ちゃんが逃げるなら話は別。私、本気で一夏を手に入れる」

楯無「簪、ちゃん…」

簪「もう、素直になってなんて、言わないから。だからお姉ちゃん…。
  もたもたしてると、取っちゃうよ?」

楯無「…すごいね」

簪「…何が?」

楯無「簪ちゃんが」

簪「…一夏の、おかげ」

楯無「そんなことないよ。簪ちゃんだって…本当にすごいよ。
   そこまで言えるようになれるなんて」

簪「…一夏が、好きだから。それだけ、だよ」

楯無「…そっか」 

711 :ご飯食べてくる:2012/05/06(日) 20:22:46 ID:PxVGl0xY
楯無「簪ちゃん」

簪「なに?」

楯無「私たち…やっぱり、姉妹なんだね」

簪「…そうだね」

楯無「うん。ちょっと、嬉しいのかも…しれない。複雑な気持ちだけど」

簪「…うん」

簪「…そろそろ、行っていい?」

楯無「うん。呼び止めてごめんね」

簪「…ううん」

簪「じゃあね、お姉ちゃん」

ガララッ…ピシャッ

楯無「…ありがとう、簪ちゃん」

楯無「貴女のような妹を持てて…すごく、幸せだよ」

―――――――――
―――――
――― 

712 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:08:23 ID:PxVGl0xY
~第3アリ-ナ:入り口前~

一夏「…遅いなぁ簪」

一夏(結局部屋に戻って念入りに歯を磨いてしまった…)

一夏(し、しかしまさか簪があそこまで乗り気だとは思わなかった…
   てっきり恥ずかしがって絶対にやらないと思ってたから…)

一夏(楯無さんも何だか知らんけど容認してるみたいだし…。
   あれ? そういえば楯無さん、何であの時怒っていたんだろ?)

一夏(やっぱり、俺なんかが簪と…キ、キスするなんて耐えられなかったのかな?)

一夏(けど簪の奴、俺だったらいい、って言ってたけど…あ、あれ…? もしかして簪、俺の事…)

一夏(……)

一夏(いやいやいや。ないないない。そんなアニメだかドラマみたいなご都合主義) 

713 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:18:38 ID:PxVGl0xY
一夏(…簪、か)

一夏(最初は取っ付き難い奴だって思えたけど…でも、実はすごく頑張り屋なんだよな)

一夏(あいつは何かと自分の姉と比べる癖があるけど…でも、やっぱり凄い奴なんだよな。
   ISを1から組み立てようとするなんて…俺なんか絶対に出来ない)

一夏(……)

一夏(千冬姉から言われたっけ。『1人くらい守りたい奴を決めろ、って』)

一夏(実は守りたいって意味で一番傍にいたのいのは…簪なんだよな)

一夏(箒やセシリアたちや他の専用機持ちの皆は…何というか、すごく芯があるんだ。
   みんな見ていて惚れ惚れするくらい、それぞれの強さを持ってる)

一夏(でも簪は自分が弱いって思ってる。自分はダメだからって、非力だからって思っちまう癖がある)

一夏(あいつの親父さんも言ってたけど、本当は凄くて強い奴なのに…自分で気付けないでいるんだ。
   だから何だか…支えてやらないと不安なところがある)

一夏(だから誰かが傍にいて…しっかり、手を握ってやりたいと思っちまうんだよなぁ。不思議と)

一夏(…って、こんな保護者みたいな考え方、あいつが聴いたら怒るだろうな)

簪「…一夏?」

一夏「うわぁ!? お、驚かすなよ簪!」

簪「?」 

715 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:23:55 ID:PxVGl0xY
簪「ご、ごめん…」

一夏「あ、あぁ…こっちこそ、いきなり声を荒げて悪い。
  (やべぇ…変なこと考えてたから、自然と意識しちまう…)」

簪「え、ええと…」

一夏「ん?」

簪「そ、その…よろ、しく…」

一夏「あ、ああ…ああん、その…こ、こちら、こそ…?」

簪「…///」コクッ

一夏(な、何か気まずい…)ポリポリ 

716 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:27:26 ID:PxVGl0xY
一夏「そそそそそそそう言えばさ! 大事な話があるって言ってたけど、なんだ!?」

簪「あ…」

一夏「な、何だ!? 打鉄弐式の整備の話か!? それなら、また俺が一緒に整備班の皆に―――」

簪「ち、違う、の…」

一夏「え?」

簪「え、ええと…あの、そのぅ…」

一夏「ん?」

簪「い、今は、無理…かな?」

一夏「は?」

簪「ミ、ミッションが、済んでから…じゃ、ダメ?」

一夏「え?」

簪「あ、あぅ…///」プュシゥゥゥ…

一夏「え、ええと…別にそれで、いいなら」

簪「う、うん…///」

一夏(し、しかし…キ、キスの後に言うことって…ま、まさか…いいいいやいやいやいや! 考えすぎだ俺!) 

717 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:33:24 ID:PxVGl0xY
一夏「…///」

簪「…///」

一夏(な、何だこの空気…)


ピンポンパンポーン


一夏「ん?」

楯無『あーテステステスー。本日は晴天なりー』

一夏「あ、この声…」

簪「お姉ちゃんだ…」

楯無『ええーどうやら役者は揃ったようなのでー。全校生徒の皆さんはーアリーナの観客席の方に移動してくださいー』

一夏「あ…///」

簪「う…///」

楯無『ほらほらほらー。簪ちゃんも一夏くんも、何時まで舞台袖にいる気なのー?
   そんなんじゃオーディエンスから生ゴミぶつけられちゃうよー』

一夏「あぁもうこの人は…どこまで俺たちを弄べば気が済むんだ…」

簪「……」 

718 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:39:10 ID:PxVGl0xY
~第3アリーナ中央~

ざわざわ…
がやがや…
きゃっきゃうふふ…


一夏「うぅ…本当に全校生徒が集まっているのか…。すごい視線の数だ…」

簪(は、はぅぅぅ…恥ずかしすぎて…し、死にそうぅぅぅぅ…)

楯無『さぁさぁー! 今日の千両役者の登場だよー!
   皆さん、盛大な拍手で出迎えてあげましょうー!』


わー!ぱちぱち!
やんややんや


一夏「や、やべぇ…もう帰りたくなってきた…」

簪「…同じく」 

719 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:45:39 ID:PxVGl0xY
楯無『はいはいー! それじゃ早速だけど、メインイベントにいっちゃいますか!』

楯無『既に皆さんも知っての通り、今日のミッションは…簪ちゃんと一夏くんの熱いキスです!!』

楯無『お2人にはアリーナの中央で…キスをしてもらいます!!』

わーきゃーやいのやいの

一夏「…簪。正直ちょっと限界だ。さっさと終わらせようぜ」

簪「う、うん…(流石にこれはちょっと…お姉ちゃんを焚き付けるんじゃなかった…)」

楯無『ただしミッションの指定には「大人のキス」とあったので…ただの触れ合うだけのキスは無効です!』

一夏「なッ!?」

簪「え、えぇッ!?」

楯無『というわけで…以下の条件のどれかをクリアーしたら、ミッション・コンプリート扱いにします!!』

楯無『①舌を絡ませあう!』

楯無『②30秒間キスを続ける!』

楯無『③ぎゅぅぅぅぅっと、互いの体を抱き寄せながらキス!!』

楯無『以上!!』

一夏「」
簪「」 

720 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:54:08 ID:PxVGl0xY
楯無『ルール説明は以上!! さぁ、張り切っていこうか!!
   大人の階段を上っていくシンデレラたちを、皆さんで温かく見守りましょう!!』


きゃー///ふけつー///でもすてきー!


一夏「な、なんだこれ…どどどどどどうすればいいんだ…」

簪「わ、私も…何をどうすればいいやら…」

一夏「…い、一応確認するけど…①ってどう思う?」

簪「むむむむむむむむむむ無理無理無理! 絶対、無理!」

一夏「だ、だよな…///」

簪「…///」コクッ

一夏「じゃ、じゃあ…②?」

簪「そ、それも、ちょっと…」

一夏「そ、そっか…」

簪「わ、私…30秒も、息を止めてられないから…」

一夏(そんな理由だったの!?)

簪(本当は2分くらいなら息を止めていられるけど…一夏とキスしながらなんて…ぜぜぜぜぜぜぜぜ絶対無理!) 

721 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 21:59:50 ID:PxVGl0xY
一夏「…じゃあ、消去法で③か」

簪「あ、うん…」

一夏「こ、これくらいなら俺でも…」


ちょっとー!はやくしてよー!
あまりじらさないでー!

『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』
『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』『キース!』


一夏「ま、まったく皆…人の気も知らないで…」

簪「あ、あぅぁ…///」

一夏「…簪?」

簪「い、いち、かぁ…」プルプル

一夏「あ…」

簪「……」ガクガク

一夏(簪…震えてる…怯えきったみたいに、今にも泣きそうなくらい…) 

722 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 22:08:25 ID:PxVGl0xY
一夏(…バカだな俺は。全然学習しねぇや)

一夏(頑張りやだけど…でも恥ずかしがり屋で人見知りのこいつが…
   ここに立っているだけだけでも限界だって、分かりきっていたはずなのにな…)

一夏(だから俺が支えてあげたいって思うようになっていたのに…。
   またこいつを、不安にさせちまうところだった)

一夏(…本当にごめんな、簪)


ギュッ


簪「きゃっ…///」

一夏「大丈夫だ、簪」

簪「いち、か…?」

一夏「俺がついてる」

簪「あ…」

一夏「俺が簪を守るよ」

簪「ッッッ!!」ドクン!! 

723 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 22:11:53 ID:PxVGl0xY
きゃー!いよいよよー!
はやくはやくー!


簪(あ、う…し、心臓がすごく跳ねちゃった…一夏に、バレた、かな…?)ドックンドックン

一夏(と言ったのはいいけど、正直俺も限界なんだよな。簪に動悸、聞こえてないかな…?)バックンバックン

簪「…一夏」

一夏「な、何だよ…」

簪「…ありがとう」

一夏「…気にするな」

簪「……」


ギュッ


一夏「うッ…///」

簪「一夏がいるから…私、頑張れるよ?」

一夏「そ、そうか…///」 

724 :お風呂~:2012/05/06(日) 22:19:36 ID:PxVGl0xY
簪「…一夏」

一夏「ん?」

簪「……」スッ

一夏「いぃ!?」


きゃー!だいたんー!
おりむらくんおとこをみせてー!


一夏(か、簪が…キスを、待ってる!?)ドキドキ

簪「……///」ドキドキ

一夏(簪の顔が…すごく、近い…!)ドキドキ

一夏(睫毛がすごく長くて…肌も白くて、でもほんのりと紅潮していて…)バクバク

一夏(それで何だか…シャンプーのすごくいい香りが…お、女の子って…皆こんな匂いがするのか…?)ハラハラ

一夏(か、簪…///)バックンバックン 

725 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 22:52:40 ID:PxVGl0xY
楯無『ふっふっふー…ギャラリーそっちのけで盛り上がってますねー』

楯無『さてさて…アッツアツなところ悪いんだけどー…ここで1つ、言い忘れたことがありまーす』

楯無『今回招待した生徒諸君らはアリーナの観客席に集まってもらいましたが…実はこれには訳があります』

楯無『その訳、とはねー…ふふふっ♪ 実は専用機持ちの皆には、特等席を用意しちゃったのです☆』

楯無『そう…! 一夏くんと簪ちゃんのチューを、超間近で見れるという特等席をね!!』


簪「……」

一夏「……」

簪「い、一、夏…はや、くぅ…」

一夏「か、簪…それなんだが…」

簪「…?」

一夏「お、俺だって必死に…しようとは、しているんだが…」

一夏「ど、どういうわけか…体が…動か…」ググググ…


???「…随分と楽しそうにしているなぁ…嫁よ」ゴゴゴゴゴゴゴ 

726 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 22:56:04 ID:PxVGl0xY
簪「!?」

一夏「そ、その声は…まさ、か…!?」ギリギリ


???「お前の初めてのキスの相手は私だというのに…そしてお前は私の嫁だと言うのに…」

???「そんなことも忘れ…あまつさえあの女の妹を手に掛けようなどと…万死に値する…!」

???「お前の唇は、私以外は認めん! 異論も反論も、断じて認めん…!!」


ラウラ「このラウラ・ボーデヴィッヒとシュバルツァ・レーゲン! 赦しはせんぞ!!」



<AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)> 

727 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:02:47 ID:PxVGl0xY
簪「え…?」

一夏「な、なんで…お前が、ここに…?」

ラウラ「知らん! 専用機持ちは別スペースに案内されたから来てみれば…! ここはアリーナ内ではないか!」

ラウラ「私の手の届くところで嫁の唇が奪われそうになるのに…手を拱いて見ていられるわけがないだろうが!!」

一夏「な、何言ってんだお前…」

ラウラ「一夏、忘れたのか! 私の初めてのキスは…とうにお前に浚われてしまったのだぞ!!」

簪「…一夏、どういうことなの?」

一夏「い、いや…あれは事故みたいなもんで…」

ラウラ「兎に角だ! これ以上はお前たちの好きにはさせん!!
    このシュバルツァ・レーゲンで…止めさせてもらおう!!」ドビュッ

一夏「か、簪…! 逃げろ!」

簪「で、でも…でもぉ…!」

ラウラ「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 一夏のキスは私のものだー!」

???「それはどうかな!!」 

731 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:08:49 ID:PxVGl0xY
ラウラ「何ッ!?」


<高速切替(ラピッド・スイッチ)――重機関双銃「デザート・フォックス」>


ラウラ「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」ガギギギギギギギ

シャル「ふぅ…危ない危ない」

ラウラ「…お前か、シャルロット」

シャル「ダメだよラウラ。自分だけ先に行っちゃ」

ラウラ「緊急事態だったからな。やむを得まい」

シャル「ははは。まぁそうかもしれないけどね」

ラウラ「…だから邪魔立てするな、シャルロット」

シャル「そうはいかないかな。こっちだって緊急事態だからね」

ラウラ「…そうか。出来るなら、お前とは戦いたくなかったが」

シャル「僕だって同じだよ。同じルームメイトだしね」

ラウラ「ふッ…だが悲しいかなシャルロット。お前には、タッグトーナメントで煮え湯を飲まされた遺恨がある。
    その雪辱…不本意だが、ここで晴らさせてもらうぞ!」

シャル「趣旨が微妙に変わってるけど…こっちだって容赦しないよ! 一夏を守りたいのは、ボクも一緒だから!」 

733 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:13:56 ID:PxVGl0xY
簪「な、何あれ…」

一夏「…おい簪。逃げるぞ。ラウラがシャルに気を取られているうちに」コソコソ

簪「あ、うん…」

一夏「ま、まったく…何考えてんだあいつ等…。なるべく音を立てずに立ち去るぞ」ギュッ

簪「あ、うん…///(て、手を握られちゃった…)」

ゴツッ

一夏「いてっ。ててて…なんだ? 何かにぶつかったぞ?
   あ、あれ…? アリーナの中央なのに何かにぶつかった…?」

一夏「て、ていうかこれ…ピ、ピッォ!?ト」


<ブルー・ティアーズ>


一夏「うわぁ!?」


<龍砲>


一夏「ぎゃぁぁぁぁ!?」 

735 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:16:40 ID:PxVGl0xY
セシリア「……」

鈴「……」

一夏「セ、セシリアに鈴!? お前らまでここにいたのか!?」


<展開装甲―――雨月>


一夏「どわぁ!!??」

箒「……」

一夏「ほ、箒まで…何で揃いも揃って、ISを展開してるんだよ!?」

箒「何で、だと…?」

セシリア「どの口が…」

鈴「言ってるのかしらね…」

一夏「え」 

736 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:21:42 ID:PxVGl0xY
箒「…流石にこれは看過できんぞ」

セシリア「同感ですわね…おふざけも程々になさいませ、一夏さん」

鈴「あんたねぇ…あたしらの前でそんなことさせられて…指くわえて見てろって言うの…?」

一夏「な、何言ってんだお前ら…そんな見たくないなら、見なければいいじゃないk――」


「黙れ!!」「お黙りなさい!!」「うっさいわねこのバカ!!」


一夏「」ビクッ


箒「…ともかく、幸いにも生徒会から何のお咎めもない」

セシリア「故に、私たちの妨害行為は黙認されているということ!」

鈴「だったらここで…全力で止めてやるわ!! 覚悟しなさい!!」ジャキッ

一夏「ひ、ひぃ!?」


??「盛り上がっているところ悪いけど…誰か忘れてない?」 

738 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:27:26 ID:PxVGl0xY
簪「え…!?」

一夏「な…!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


箒「ぐぅ!?」ドゥン!

セシリア「うぅ!!」ドゥン!

鈴「きゃぁぁ!?」ドゥン!


??「ふふふふ…言ったよね? 専用機持ちの皆は、特等席を用意してあるって」

??「なのに私を差し置いてきゃっきゃうふふと洒落込もうなんて…ちょっと妬けちゃうなぁ…可愛い後輩たち」


楯無「この学園最強の…生徒会長を差し置いて遊ぶなんてさ…!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ


ダリル「ちなみに私たちもいまーす」

フォルテ「何か面白そうね。ダリル、行ってきたら?」

ダリル「だが断る。働きたくないでござる」

フォルテ「まぁそうよね」 

740 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:32:23 ID:PxVGl0xY
箒「な、なんで貴女がここに!?」

楯無「何でって心外だなー。君たちと同じ事をしようとしているだけだよ?」

セシリア「な、何ですって!? 生徒会長も参加されていますの!?」

鈴「じょ、冗談じゃないわ!」

簪「お姉ちゃん…」

楯無「…やぁ、簪ちゃん」

簪「何で、こんなこと…」

楯無「…私も本気だそうと思っただけ」

簪「え…?」

楯無「何だかさ…色々と吹っ切れたから。だから、私も本気で…戦おうかなって思ったの」

簪「……」

楯無「でも…私だけじゃフェアじゃないから、この子達も参加させたかったの。
   別に悪気があったわけじゃないわ」

簪「…そう」 


741 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:36:36 ID:PxVGl0xY
簪「お姉ちゃんがそう来るなら…私、行くよ。おいで、打鉄弐式」


<打鉄弐式―――展開>


一夏「か、簪!? 本気なのか!? 楯無さんと戦うなんて!」

楯無「…ほらほら一夏くん。なにボサとしてるの」

一夏「え?」

楯無「男なら、女の子ばっかりに守らせてないで、気概を見せなさいな!」

一夏「あぁーもう!! 何がなにやらだけど、こうなりゃヤケだ!!」


<白式―――展開>


簪「いち、か…」

一夏「ともかく1人ずつ撃破するぞ、簪!」

簪「で、でも私…まだ、調整が…」

一夏「簪は弾幕を張ってくれるだけでいい!! あとは俺に任せろ!
   お前のフォローがあれば…大丈夫だ!!」

簪「…!!」 

742 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:42:41 ID:PxVGl0xY
箒「ぐッ…おのれ…!」

セシリア「見せ付けてくれますわね…!」

鈴「あぁもうー! そっちがその気なら、こっちだって行くわよ!」

シャル「一夏、本気だね…僕だって負けないからね!」

ラウラ「学園最強がどうした! そんなもの、蹂躙してくれるわ!」

楯無「ふぅー怖い怖い…。さてさて淑女の皆さん…もう、言いたいことは分かるね?
   欲しいなら…全部勝ってからにしなさい!!」


『上ッ等!!!』


一夏「や、やるしかないのか…!」ジャキッ

簪(一夏と…一夏がいてくれれば…私は大丈夫! 誰にだって…負けない!!)



フォルテ「何か盛り上がってるわねー。あ、ダリル。ポテチ取って」

ダリル「ぽたぽた焼きうめぇ」ポリポリ 

744 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:45:56 ID:PxVGl0xY
箒「先手必勝だ!!」


<展開装甲―――スラスター>


一夏「ぐッ…!? いきなり箒…仕掛けてきたか!」

鈴「あ、バカ!」

箒「え?」

セシリア「よ、よけ―――」


<スターライトmkⅢ>

<龍砲>


箒「ぬがぁぁ!?」ドッゴォォォ!

箒「な、何するんだ貴様ら!!」 

745 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:50:14 ID:PxVGl0xY
鈴「いや、あんたがいきなり突撃するもんだから…」

セシリア「まずは威嚇射撃により陽動するのが定石というものでしょう!?
     そんなことも分かりませんの!?」

箒「知るか!! 武士なら特攻あるのみだ!!」

楯無「やーれやれ…連携がまるで取れてないね。
   そんな半人前諸君には…こうだ!」パチン


<清き熱情(クリア・パッション)>


ドォォォォン!!


箒「うぉわ!?」
セシリア「きゃぁ!?」
鈴「うぐッ!?」


楯無「ほい、縦3連鎖ってとこかな。固まって言い争いなんかするから、狙いやすかったわ」

一夏「う…や、やっぱり楯無さんは強いな…連携が取れてないとはいえ、あの3人を手玉にとるなんて…」 

746 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/06(日) 23:56:35 ID:PxVGl0xY
箒「ぐッ…やはりあの会長を何とかしなければ…!」

セシリア「ですわね…」

鈴「不本意だけど、あたしが風(フェン)で陽動をしかけるわ! セシリアは援護!
  箒はタイミングを見計らって決めて!」

セシリア箒「「了解!!」」


<風(フェン)>


楯無「ふむふむ…フットワークは中々のものだね…。でも、敵地に無闇に飛び込んでいいのかな!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!


鈴「きゃぁ!?」

箒「ば、バカ!! 動きを止めるな!!」


<蒼流旋>

鈴「か、は…!?」ドゴォ 

747 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 00:00:42 ID:gSx2lRb6
箒「鈴!!」

セシリア「まさか水蒸気爆発を囮に使うとは…!」

楯無「爆破させるだけが芸じゃないわ! ようは使い方よ!」

セシリア「ですが…隙が出来たのは同じ事ですわ!!」


<スターライト・mkⅢ>


ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!


楯無「おぉっと!!」


グィン


セシリア「なッ…!? き、軌道が勝手に逸れましたわ!?」

楯無「正確にはちょっと違うね。空気中の気圧差と湿度差による光の屈折現象だよ。
    レーザー系の武器は、私には届かないよ!」 

748 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 00:04:30 ID:gSx2lRb6
箒「ならば…直接斬り込むまで!!」


<展開装甲―――スラスター>

<展開装甲―――エネルギーソード>


楯無「また特攻!? そんなもの、爆破で視界を覆えば…」グッ


<AIC>


楯無「なッ…!?」

ラウラ「私を忘れてもらっては困る!!」

楯無「ラウラちゃんか…」

ラウラ「私が押さえている間に…箒、決めろ!!」

箒「応ッ!!」 

749 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 00:09:29 ID:gSx2lRb6
楯無「ラウラちゃん。別にラウラちゃんを忘れてたわけじゃないんだよ」グググ…

ラウラ「そうか…だが、どちらにせよ同じことだ。あと数秒もしないうちに、箒がお前に引導を渡す」

楯無「やれやれ…でもねラウラちゃん。1つ、忘れてない? 君のAIC、捕捉の対象は1つだけなんだよね?」

ラウラ「まぁな。だが、今は充分だ」

楯無「それでね…AICを使っている最中の君は、すごく無防備」

ラウラ「…何が言いたい?」

シャル「!?」

楯無「そろそろ…身を守る準備をした方が…いいんじゃないかな!?」


<清き熱情(クリア・パッション)>


シャル「ラウラ、危ない!!」ドン!


ドォォォォン!!


ラウラ「ぐッ…!?」 

750 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 00:14:43 ID:gSx2lRb6
箒「ラウラ!?」

楯無「余所見している場合!?」

箒「なッ…し、しま―――」


ドゴッ


箒「ぐわぁ!?」ドサッ

楯無「あと一歩の詰めで油断なんてまだまだだね」

ラウラ「す、すまん...シャルロット、大丈夫か…?」

シャル「大丈夫だよ。防御パッケージで何とか防げたから」

楯無「私の本体ばっかりに気を囚われすぎたね。
   私のISは不可視なんだから、もっと警戒しないとダメだよ?」

箒「つ、強い…」

セシリア「こ、こんなの…」

鈴「勝てるの…かしら?」 

751 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 00:18:33 ID:gSx2lRb6
楯無「やれやれ…これくらいで戦意喪失? もっと頑張って―――」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

楯無「!!??」


ガキン!!


楯無「…まさか本丸から、お出ましとはね!」

一夏「楯無さん…あんた、何考えてんですか!!」

楯無「何ってねぇ…一夏くんがそれを言うの?」

一夏「答えてください!!」ギギギ…

楯無「…別に。楽しいのは、皆がいた方が面白いでしょ?」

一夏「ふざけんな!!」


<零落白夜>


楯無「!!??」 

756 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 20:24:27 ID:GiHi7MNM
楯無「…クッ!」クン!

一夏「逃がさねぇぇぇぇ!!」バシュッ!

楯無「…!」スッ



<清き熱情(クリア・パッション)>


ドゥン!! ドゥン!! ドゥン!! 


一夏「ぐッ!?」

簪「一夏!!」

一夏「大丈夫だ簪! ただの目くらましだ!」

楯無(…予想以上に技の発動速度が向上してる。私が後手に回らなきゃいけないほどに)

一夏「クソ…逃げられちまった」

楯無(本当に一夏くん…すごい速度で成長しているね) 

757 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/07(月) 20:34:58 ID:GiHi7MNM
楯無「…というか一夏くん酷くない? 私が相手とはいえ、本気で斬りかかることないでしょ?」

一夏「…大人げないのは楯無さんだって一緒ですよ」

楯無「あらあら嫌われたものね。私たちがここまでする理由も出来ない君に言われるなんてね」

一夏「…確かにこいつ等が、なんでここまでムキになっているかなんて俺には分かりません」

箒(ああもう…)ハァ…

鈴(こいつって奴は…)ヤレヤレ…

一夏「…でも」

楯無「?」

一夏「楯無さんが…間違っていることくらいは分かります!!」

楯無「!?」

一夏「あんたがやっていること…すごく、らしくない!
   こんな一方的なリンチみたいなやり方、絶対におかしい!」

楯無「言いたい放題だね。まるで私が弱い者虐めでもしているみたいじゃない」

一夏「何が違うんですか!? 今の楯無さんは…俺にはただ、自分の力をひけらかしているようにしか見えない!」

楯無「…ッ!」

一夏「そんなの、全然あんたらしくない! 何でそんなに必死なんですか! おかしいですよ!」 

758 :正直風呂敷を広げすぎたことを後悔してるんだけども:2012/05/07(月) 20:44:02 ID:GiHi7MNM
楯無「私は…ただ、本気で皆と向き合いたかっただけ。
   本気でこの子達と…渡り合おうとしたかっただけだよ?」

一夏「だったら尚の事…俺は、あんたを認めることは出来ない!!」

楯無「な…ッ」

一夏「今の楯無さんは…見ていてすごくかっこ悪いんです!こんな…
   こんな暴力に頼るばかりのあんたなんか…間違っている!
   いい気になっているガキ大将と、何一つ変わらない!」

楯無「わ、私は…そんな、つもりは…」

一夏「例えどんな理由があっても…これ以上、俺の仲間を傷つけさせない!
   もし、これ以上―――」

スッ

楯無「あ…」

一夏「か、簪…」

簪「一夏…もう、いいから」

一夏「でも!」

簪「一夏の気持ちは、充分分かったから。だからこれ以上、お姉ちゃんを虐めないで」

楯無「……」 

759 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 20:52:17 ID:GiHi7MNM
一夏「い、虐めてるってお前…」

簪「…ごめんね一夏。お姉ちゃんがこんなことするのは…私の所為、なんだよ」

一夏「え…」

楯無「……」

簪「…今のお姉ちゃんはね。確かに、いつもとは違うかもしれない。
  でもそれは…やっと、素直になってくれたお姉ちゃんなの」

簪「こんな不器用な形になっちゃったけど…でも、生徒会長でもない、更識家当主としてでもない」

簪「ただの一人の女の子としてのあの人を…これ以上否定しないで」

一夏「簪…」

楯無「……」

簪「…でも、一夏の言ってることも分かる。お姉ちゃんなら…もっと、やりようがあったはず」

簪「わざわざISなんて使わずに…もっと、自分の気持ちを伝える術があったはずだもの」

簪「だからこれは…私が、止めないといけない」スッ


<夢現>


簪「私…戦うよ。一人の女として、お姉ちゃんと戦う」 

760 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 20:57:53 ID:GiHi7MNM
一夏「簪…お前…」

簪「止めないで一夏。これはね…本当に、譲れないから」

楯無「簪ちゃん…」

簪「お姉ちゃん。やっと、やっと素直になってくれて嬉しい。
  だから私は…今、本気で貴女に勝ちたいと思う」

楯無「…私も、今貴女と本当の意味で向き合えて嬉しく思う。
   そして…今までごめんね、簪ちゃん」

簪「……」

楯無「私さ、気付いたんだ。今まで簪ちゃんたちのことを応援しているつもりで…
   簪ちゃんのこと、嘗めてた」

楯無「また要らないお節介を焼いて…貴女に、何もかも与えた気になって、悦に浸ろうとしていた。
   そういうの、簪ちゃんが一番嫌うはずなのに…ごめんね」

簪「うん。お姉ちゃんのそういうところ、嫌い」

楯無「あはは。でもさ…もう、やめる。私…貴女とは、本当に対等でありたいもの」

楯無「姉妹としても、ライバルとしても…貴女と共に生きていきたいと、心から願ってる」

簪「…うん」 

761 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:04:57 ID:GiHi7MNM
楯無「でも、自分の心と向き合って出した結論がこれじゃ…格好つかないね。
   だって自分が誇れるところと言ったら…これくらいしか思いつかなかったからさ」

簪「お姉ちゃんらしいと言えば、らしいよ」

楯無「あはは、ありがと。でも…やっぱり私は、今は最強であることよりも、最愛であることを望みたい」

楯無「ただ力をぶつけ合うんじゃなくて…気持ちで、貴女にも皆にも勝ちたい。
   今なら、心からそう思える。本当にありがとう、簪ちゃん」

簪「…うん」

楯無「私、もう逃げないから。だから…私の気持ちを、どうか受け止めて欲しい」


<ミストルテインの槍>


一夏「なッ…!?」

簪「…本気、ってことだね」

楯無「うん。こればっかりはどうしても譲れないからね」

一夏「しょ、正気ですか楯無さん!? 妹相手に、そんな大技を…」

楯無「生憎、私の相手をしているのは妹じゃないよ。私の…最大のライバルだからね」

簪「…!」 

762 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:11:34 ID:GiHi7MNM
一夏「くッ…! なら、俺も!」ジャキッ

簪「一夏…邪魔、しないで」

一夏「ふざけるな!! お前にここまでさせて…黙っていられないだろ!」

簪「…ッ!」

一夏「約束しただろ! お前はどんなことがあっても…俺が守ってやるって!」

簪「いち、か…」

楯無「……」

一夏「俺にできる事なんてあまりないかもしれないけど…援護と陽動くらいなら出来る」

一夏「だから決着は…お前がつけろ簪」

簪「…うん!」

簪(不思議…一夏が、守ってくれる…。
  それだけで…お姉ちゃんが相手でも、絶対に負けないって思えてくる…!)

楯無「……」


ズキン… 

763 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:19:02 ID:GiHi7MNM
楯無(…簪ちゃん、一夏くん、それに箒ちゃんや皆…ごめんね)

一夏「行くぞ簪!!」

楯無(私…また逃げてただけみたい。皆と気持ちでぶつかり合おうと決めながら…
   ただ、自分の圧倒できるフィールドに持ち込みたかっただけ。
   一夏くんの言うとおり…弱い者虐め、したかっただけかもしれない)

簪「うん!!」

楯無(皆本当にごめん…そしてありがとう、簪ちゃん。
   貴女は本当に…強く、立派になったんだね)

簪(山嵐で清き熱情(クリア・パッション)の射程を抑えつつ…一夏とのコンビネーションで間合いを詰めて…
  そして、夢現を叩きこむ!)

楯無(でも、だからこそ…私は全力で貴女を迎え撃ちたい! もう、逃げたくない!)

一夏「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

楯無(だって……)


楯無「私も……一夏くんが―――」




??「その辺にしておけ。この大馬鹿ども」 

764 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:23:56 ID:GiHi7MNM
楯無「!!??」


ガキン!!


楯無「ぐっ…!?」

簪「お、お姉ちゃん!!」

一夏「何だ…!? いきなり、ショートブレードが楯無さん目がけて飛んできたぞ!?」

箒「いや、あの装備は…!」


千冬「茶番は終わりだ。この場は私に預からせてもらうぞ」


一夏「ち、千冬姉!!」

千冬「だから学園では…まぁいい。それよりも更識。お前…どういうつもりだ?」

楯無「それはこっちの台詞ですよ。どういうつもりですか織斑先生」

千冬「見て分からぬか大馬鹿め。これ以上、つまらぬ私情で生徒たちを争わせる訳にはいかん」

楯無「…心外ですね。私たちが伊達や酔狂でこんなことしていると言うんですか?」

千冬「別に小娘どもの小便臭い色恋沙汰に首を突っ込む趣味はない。だが、これ以上は看過できない。
   凰やボーデヴィッヒをあそこまで痛めつけて…お前、何様のつもりだ?」 

765 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:31:33 ID:GiHi7MNM
楯無「…確かにやり過ぎただけかもしれません。それは反省してます」

千冬「ならとっととISを解除しろ。何故、臨戦態勢を解かない?」

楯無「それとこれとは話が別です。だって…この催しを後押ししたのは他でもない、貴女なんですよ?」

千冬「…それを言われると痛いな。まさか貴様がここまで暴走するとは思わなかったからな」

千冬「とんだ見当違いだったよ。私はお前を見誤っていたようだ」

楯無「……」

千冬「とにかく、これ以上の戦闘行為は許可できん。代表候補生が揃って再起不能では学園の沽券に関わるからな」

楯無「…断る、と言ったら?」

千冬「今、貴様を生徒会から除名したうえで八つ裂きにしても構わんが…。
   色々と面倒だ。だから、言伝を頼まれている」

楯無「…頼まれて、いる?」

千冬「…学園長からな」

楯無「!!??」

千冬「これ以上は言う必要はないな? つまりはそういう事だ」

楯無(轡木さんからか…流石にこれは逆らえないわ。幾らなんでも暴れすぎちゃったみたいね…) 

766 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:34:52 ID:GiHi7MNM
楯無「…分かりました。ごめんなさい」


<ミステリアス・レイディ―――解除>


千冬「まったく…とんだ尻拭いもあったものだ。二度と御免被る」

箒「た、助かったのか…?」

セシリア「一応…そのよう、ですわね…」

鈴「はぁ…色んな意味で生きた心地がしなかったわ」

ラウラ「納得いかん! 教官、私はまだ負けてません!」

シャル「ラウラ、今は大人しくしてて。爆破で鼓膜がやられてる可能性もあるから、診てもらわないと」

ラウラ「ぐッ…!」

楯無「……」

千冬「小娘どもはさっさと持ち場に戻れ。更識は後で職員室に来い」

楯無「…はい」 

767 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:39:50 ID:GiHi7MNM
一夏「や、やれやれ…」

簪「ええと…これ、どうなっちゃうのかな?」

千冬「ああそうだ。織斑と更識の妹はこっちに来い」

一夏「え」

簪「え」

千冬「別に取って食おうって訳ではない。さっさと来んか馬鹿者」

一夏「な、何なんだよ…」スタスタ

簪「…?」トテトテ

千冬「…ふん」グイッ

一夏「え」

簪「え…」


ブチュゥ


一夏「!?」

簪「!!??」 

768 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:44:42 ID:GiHi7MNM
楯無「!!??」

一夏「んんんんん!? んんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」ジタバタ

千冬「騒ぐなこのバカ者。いいから大人しくしてろ」

箒「なななななななななななな何してんですか千冬さん!?」

セシリア「そそそそそそそそそうですわ!! そのような不埒な行為を自ら―――」


千冬「黙ってろォッッ!!!」クワッ


女子たち『』ビクッ

千冬「…私の監督不行き届きが招いた結果だからな。
   せめてこの命令だけは全うさせてやる」


一夏(な、何だこの状況!? か、簪と…キキキキキキキキキキスしてるのか!?)

簪(いいいいいいいいいいいいい一夏が…! 一夏の顔が、一夏の唇、がぁぁ…!?)

簪(~~~~~~~~~~~~~~///)ボボボボボボ

一夏(か、簪の顔からSL汽車の如く蒸気が…いやいやいやいやいや冷静になってる場合じゃなくてだな!?) 

769 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:49:02 ID:GiHi7MNM
一夏「―――」

簪「―――」


スッ


一夏「ッッぷはぁ!! はぁ…はぁ…はぁ…い、いきなり何すんだよ千冬ね―――」

ボゴスッ

一夏「いってぇ!?」

千冬「いい加減にせんかこの馬鹿め」

簪「~~~~~~~~~///」


ドサッ


一夏「か、簪!」

楯無「簪ちゃん!!」

千冬「…ったく。どいつもこいつもキスくらいで騒ぎおって」 

770 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:52:40 ID:GiHi7MNM
一夏「お、おい簪! しっかりしろ!!」

楯無「簪ちゃん! お願いだから気を確かに!」

簪「いち、か…」

一夏「な、何だ簪!」

簪「わた、し…」

簪「……」ボソボソ

楯無「……え」

一夏「…何て言ったんだ簪? 無理、しなくていいんだぞ?」

簪「あの、ね…私……」

楯無「ま、待って! 簪ちゃん、一夏くん、待っ―――」



簪「…一夏が、好き。大、好き……」



楯無「―――」 

771 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 21:57:55 ID:GiHi7MNM
一夏「え……」

簪「大事な、話、だから…」

一夏「お、お前…え…?」

楯無「……」

簪「…///」


コテッ


一夏「お、おい簪! どうした!?」

楯無「…安心して、気を失っちゃったみたいね」

一夏「な、何だそうか…はぁ、良かった…」

楯無「…うん」

一夏「て、ていうか簪…今、さっき…」

一夏「俺の事……え…?」

楯無「……」 

772 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:02:20 ID:GiHi7MNM
楯無「……」

一夏「え、ええと…好きって…アニメとか、か…?」

ゴスッ

一夏「いてっ」

楯無「…そんなわけないでしょこのおバカさん」

一夏「え、えぇ…!? ほ、本当に…簪、俺を…!?」

一夏「ちょ、ちょっと待ってくれよ…そんなこと、急に、言われても…///」

楯無「……」


ツーッ


一夏「ん?」

楯無「ま、まったく! 一夏くんも隅に置けないね!」ゴシゴシ

一夏「あ、あの…」

楯無「まさか私の可愛い妹まで侍らせるなんてさ! 流石は天性の女たらしだよ!」

一夏(…気のせい、だよな? 楯無さんが…泣いて、いた…?) 

773 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:07:06 ID:GiHi7MNM
千冬「おい更識。いつまで油を売っている。お前はさっさと来い」

楯無「はいはーい! じゃあ一夏くん! 私、ちょっと怒られてくるね!
   悪いけど、簪ちゃんをお願い!」

一夏「あ、あぁ…分かり、ました」

楯無「…いい子だからって手を出したら…お姉さん、怒っちゃうぞ☆」

一夏「ししししししししししししませんよ! 何言ってんですか!?」

楯無「あっははは♪ じゃあね、バイビー!」タッタッタッ…



楯無「お待たせしてすみません」

千冬「まったくだ」

楯無「えへへ…」

千冬「…涙の痕くらいちゃんと隠せ。気丈に振る舞っても、誤魔化せるのはウチの愚弟だけだ」

楯無「ははっ。なら、いいかな。こんな格好悪いところ…一夏くんには、絶対に見られたくないですし」

千冬「……」
―――――――――
―――――
――― 

774 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:13:01 ID:GiHi7MNM
~生徒会室~

一夏「やれやれ…何とか簪を保健室まで送り届けることができたぞ」

一夏「一緒にいた箒や鈴たちからきつい詰問されたが…まぁ何とか適当に誤魔化せた…気がする」

一夏「簪はただの過労だからすぐに戻れるし、楯無さんもきっとすぐに終わるだろう」

一夏「それまでは1人だな…」

一夏「……」

一夏「それよりも簪が…あんな風に思っていたなんて…」

一夏「大事な話って…絶対にそんなことないとか、思ってたのに…まさか本当に、告白だなんて…」

一夏「…返事、ちゃんとしなきゃいけないよな」

一夏「でも…色々あり過ぎたせいか、まだ気持ちの整理がつかないんだよな」

一夏「俺は…簪の事、どう思ってるんだろう?」 

775 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:19:25 ID:GiHi7MNM
一夏「あいつとは付き合いはそんな長くないけど…。
   でも、この数日あいつと過ごせたのは…とても楽しかった」

一夏「一緒に実家に行った時も、温泉旅行で過ごした日も…すごく心が落ち着いた」

一夏「何というか…鈴みたいにバカ騒ぎするんじゃなくて…。
   あいつといると、すごく穏やかになれて…俺は、その時間がとても好きだった」

一夏「それで…俺が傍で、支えてやりたいと思えた相手だ」

一夏「……」

一夏「…ダメだ。まだ…確信が持てない。これが…そういうことかどうかなんて、俺には分からねぇよ…」

一夏「情けないな…何だかこう…喉に魚の小骨が引っかかっているのに、取る方法が全然分からないような」

一夏「簪のこと考えると…何か、すげぇ落ち着かないんだけど…。
   でもこれは…初めて告白されたから動揺しているだけなのかもしれない」

一夏「…俺ってひょっとして鈍感なのだろうか」


ガララッ


一夏「あ…」

楯無「…やぁ」 

776 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:22:33 ID:GiHi7MNM
一夏「お、おかえりなさい…」

楯無「うん、ただいま♪ いやーまいったまいった! こっぴどく怒られちゃったよ!
   でもまぁ、ISの使用を禁止した上でなら、まだ続けていいって!」

一夏「そ、そうなんですか…」

楯無「うん! 流石にここまで来て途中で終わりにしたくないしね!」

一夏「……」

楯無「…一夏くん」

一夏「ん?」

楯無「簪ちゃんの事、好き?」

一夏「はぁ!?」

楯無「教えて、くれないかな?」

一夏「なななななななななな何でそんなこと、訊くんですか!?」

楯無「なんでも」

一夏「なッ!?」 

777 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:24:16 ID:GiHi7MNM
一夏「お、おかえりなさい…」

楯無「うん、ただいま♪ いやーまいったまいった! こっぴどく怒られちゃったよ!
   でもまぁ、ISの使用を禁止した上でなら、まだ続けていいって!」

一夏「そ、そうなんですか…」

楯無「うん! 流石にここまで来て途中で終わりにしたくないしね!」

一夏「……」

楯無「…一夏くん」

一夏「ん?」

楯無「返事、決まった?」

一夏「……」

楯無「……」

一夏「…いえ」

楯無「…そっか」 

778 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:29:15 ID:GiHi7MNM
一夏「…ごめんなさい。まだ、よく分からないんです。これが本当に…好きってことなのか、どうか」

一夏「あいつの事は友達としては好きだし、一緒に居ると落ち着くし、守ってやりたいとも思うけど…」

一夏「でも…まだ、そういう感情を持てるっていう確信が持てないんです」

楯無「…なるほどね」

一夏「だから、その…もっと、ちゃんと向き合ってみたいんです」

一夏「あいつともっと…他の人とももっと接して…俺がどう思ってるか、考える時間が欲しいです」

楯無「…分かったよ」スッ

一夏「え?」

楯無「次は君が引きなさい」

一夏「俺が?」

楯無「うん。何となくだけど…君が引かなきゃいけない気がするから」

一夏「……分かりました。じゃあ…引きます」


ゴソゴソ


一夏「ええと…次のミッションは……『>>780』?」 

780 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/07(月) 22:30:20 ID:CIBCD89s
鷹月さんとプール&遊園地(一泊)。 

781 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/07(月) 22:30:45 ID:GiHi7MNM
現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□ 
簪    ■■■■■■■■←リーチ!
シャル  ■■■□□□□□ 
箒    ■■■□□□□□
鷹月   ■□□□□□□□ 

802 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/10(木) 22:06:35 ID:4ExeANO.
『誰かと一緒に遊園地とプールに行く(一泊で)』


一夏「え…また一泊?」

楯無「……」

一夏「ええとこれは…誰かといけるか、俺が選べるって事ですか?」

楯無「そういうことになるね。誰かと行くか、決まってないの?」

一夏「…ええ、まぁ」

楯無「…てっきり、簪ちゃんと行くと思ったんだけど」

一夏「……」

一夏「…いえ。まだ…決められませんよ」

楯無「…そっか」

一夏「まだ整理が付きませんから。それに、簪には昨日も今日も相当無理させてますし」

楯無「そっか。そう言えばそうだね」

楯無(一夏くん…簪ちゃんに優しいね)

楯無(それに…『まだ』、か…)

…ズキッ 

804 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:15:04 ID:4ExeANO.
楯無「じゃあどうするの? 専用機持ちの誰かと行くの?」

一夏「それも考えたんですけど…どうせなら、ゆっくりと相談できる相手と行こうかなぁ、って」

楯無「相談役なら、シャルロットちゃんとか鈴音ちゃんが適任そうだけど?」

一夏「いや、シャルも鈴もさっきの事で無理させてますし。今日はゆっくり休んでもらわないと」

楯無「うッ…」ズキッ

一夏「あ、ごめんなさい…楯無さんを責めてるわけじゃないんです」

楯無「う、うん…でも、ごめんね?」

一夏「…俺じゃなくて、ちゃんと皆に謝ってくださいね」

楯無「あ、うん…そうだね。ごめん…」

一夏(…なんか楯無さん、いつもと違ってすごくしおらしいな)

一夏「あの…」

楯無「ん?」

一夏「アリーナでは、何であんなことを?」

楯無「あははは。一夏くんがそれを訊くんだ」

一夏(…そういえば同じようなこと言われたな) 

805 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:20:51 ID:4ExeANO.
一夏「…教えてくれないんですか?」

楯無「うん、そうだね。こればっかりは女の子の矜持に関わるから」

一夏「そ、そうですか」

楯無「でもコレだけは言っておこう」

一夏「え?」

楯無「甲斐性なし」

一夏「いきなり何ですかこの言われよう」

楯無「はははは。まぁ思い当たる節が分からないのなら、このミッションを通じて学んできなさい」

一夏(何だか上手く流された気が…)

楯無「ミッションの内容は前回と一緒で、この部屋に戻ってきてくればクリアー。
   けど今回は予約とかは出来ないから、遊蕩費と宿泊費は自腹でお願いね。
   また領収書を貰ってきてくれれば、後でこっちで立て替えるからさ」

一夏「うッ…一時的とはいえ、結構な出費が」

楯無「こらこら。女の子と遊びに行くのに財布の紐を気にするんじゃありません。
    だから甲斐性なしなんて言われるんだよ」

一夏(え…俺って、結構守銭奴ってことか…?) 

806 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:24:45 ID:4ExeANO.
楯無「それで、もう誰と行くか決めた? まだ決めてない?」

一夏「それなんですけどね。実はさっき、思い当たる人が出来ました」

楯無「そうなんだ。一体―――」

楯無(あ、あれ…? そういえば1年生の専用機持ちの皆とは行かないって言ってたし…。
   それで、唯一行ける相手とすれば…)

楯無(まままままままままさか、わた―――)

一夏「鷹月さんと行こうかなぁ、って思うんですよ」

楯無「ちょちょちょちょちょっと待ってよ一夏くん! 簪ちゃんがいるのにまだそんな、心の準備が…って、え?」

一夏「い、いや何驚いているんですか…?」

楯無「え、ええと…誰と行くって?」

一夏「だから鷹月さんですって」

楯無「鷹月って…もしかしてさっき箒ちゃんと簪ちゃんと一緒に行った子? 何でまた?」

一夏「何でって…まぁ、何となくって言うのもありますけど…鷹月さんって、大人しいじゃないですか」

一夏「それで真面目だし、箒たちが暴走しそうになった時も止めてくれたりしてたし、
   相談するにはいい人かなって」

楯無「な、なるほどね…(相談ごとで一泊つきのデートに誘うのってどうなのよ…)」 

807 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:30:33 ID:4ExeANO.
楯無(…って言うよりも、また良からぬフラグが立つかそれともポッキリと折れる予感がしてならないんだけど)

一夏「そういうわけですので、行ってきますね」

楯無(…まぁいいか。一夏くんが、決めたことだもの)

楯無「そうだね。行ってらっしゃい」ヒラヒラ

一夏「はい。失礼します」


ガララッ…ピシャッ…


楯無「…そうだよね。決めるのは、一夏くんだもの」

楯無「私がいくら引っ掻き回しても、横槍入れても…きっと彼なら、添い遂げられるパートナーを選べるわ」

楯無「……」

楯無「待つ身って辛いなぁ…。それも、実るかどうかも分からないなんて…不安で押しつぶされそうだよ」

楯無「簪ちゃんも、箒ちゃんたちも…こんな気持ちだったんだ」

楯無「…辛いなぁ」

―――――――――
―――――
――― 

808 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:35:29 ID:4ExeANO.
~廊下~

一夏「お、いたいた。探したよ鷹月さん」

鷹月「お、織斑くん…本当に、私でいいの?」

一夏「まぁな。鷹月さんとなら、さっき一緒に行ったからな。
   専用機持ち以外なら他の皆よりは気兼ねしなくて済むと思ってさ」

鷹月「そ、そうなんだ…(それでも淡い期待を捨てきれない自分が恨めしい…)」

一夏「そんな訳だからさ。また一泊で悪いけど、付き合ってくれよ」

鷹月「うん、そうだね―――って、あれ…?」

一夏「?」

鷹月(よ、よくよく考えれば…明日まで織斑くんと2人きり!?
   ここここここんな、1組のアイドルと言っても過言ではない織斑くんと、私が!?)

一夏「どうかしたのか?」

鷹月「ふぇ!? なななななななな何でもないわ!」ブンブン

一夏「そ、そうか?」

鷹月(ヤ、ヤバイわ…! すごく緊張してきた…!)ドキドキ
―――――――――
―――――
――― 

809 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:41:27 ID:4ExeANO.
~遊園地~

一夏「ここに来るのも久しぶりだなぁ」

鷹月(あぁ、うぅぅ…移動中、織斑くんと何話してたか全然記憶に無いわ…)

一夏「平日なのに人は結構いるもんだなー」

鷹月(ていうか箒に何て言えばいいんだろう…応援すると言ったのに、こんなことしてていいのかしら…。
   しかも谷本や相川や布仏にも後で茶々入れられそうだし…)

一夏「…鷹月さん?」

鷹月「は、はぃぃ!?」

一夏「ど、どうしたんだよ…具合でも悪いのか?」

鷹月「え、えぇ!? そそ、そんなこと、ないわよ!?」

一夏「そうか? もしかして嫌だった? 疲れてから行くのも何だし、最初に遊園地にしようと思ったんだけど」

鷹月「え…(織斑くん、ちゃんと考えてくれてたんだ…///)」

一夏「ごめんな。こういうの、あんま慣れてないから。」

鷹月「ちち、違うの! 別に嫌とか、そういうのじゃなくて!」

一夏「そ、そうか?」

鷹月「ごめんね、ボーっとして! 早く行こうか!」 

810 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:47:28 ID:4ExeANO.
~メインストリート~

鷹月「あ、織斑くん見て! マスコットだよ!」

一夏「おー…こ、これは…何ていうか…」

モッピー「モッピー知ってるよ。一夏は最後には私を選ぶって事」

鷹月「……」

一夏「……」

モッピー「…風船あげるよ」スッ

鷹月「あ、ありがとう…」

モッピー「モッピーは出来る女だからね。でも●●ったら容赦しないからね」キョムキョム

一夏「…何かどこと無く、誰かと面影があるマスコットと思うのは気のせいか?」

鷹月「そ、そうだね…(しかも気のせいじゃなければ…私たちの共通の知り合いと…)」

一夏「…でも何でだろう。軽くイラッとくる」

鷹月(実は私も…)

―――――――――
―――――
――― 

811 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:53:40 ID:4ExeANO.
~ジェットコースター~

一夏「やっぱ遊園地に行ったからにはこれに乗らないとな」

鷹月「う、うぅ…」

一夏「どうかしたか?」

鷹月「ご、ごめん…私は、ちょっと…(絶叫系、苦手なのよね…)」

一夏「そ、そうか…じゃあ、他のにするか?」

鷹月「ごめん、そうしてもらえる?」

一夏「分かった。じゃあ、アレなんかどうだ?」

―――――――――
―――――
―――

~バイキングシップ~

ゴゥンゴゥンゴゴゥン
ワー キャー シヌー

鷹月「」

一夏「これ、前から乗りたかったんだよなぁ」

鷹月(なんで間髪入れずに絶叫系チョイスなの!?) 

813 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 22:59:06 ID:4ExeANO.
鷹月「ご、ごめん…実は私、絶叫系はちょっと…」

一夏「あ、何だそうなのか。気が利かなくてごめんな」

鷹月「う、ううん…何か、ごめんね」

鷹月(箒から散々聞いていたけど…確かに鈍感ね)

一夏「じゃあそうだなぁ…アレなんかいいんじゃないかな? ちょっと着いてきてくれるか?」

鷹月「あ、うん…///」

鷹月(なるほどね。ハッキリ言えば、あとはちゃんとエスコートしてくれるのね…)

鷹月(ちょ、ちょっといいかも…なんて…///)

―――――――――
―――――
―――

~ゴー・カート~

ブオンブオンブオン ゴガァ
キャー

一夏「おぉー! やっぱいつ見ても楽しそうだぜ!」

鷹月(前言撤回。チョイスが男の子過ぎるわ…) 

814 :お風呂~:2012/05/10(木) 23:04:34 ID:4ExeANO.
一夏「あれ? どうかした? ここなら、あまり怖くないぜ?」

鷹月(なるほどね…乙女心に関しては壊滅的に鈍いわ…しかも悪気が無いから余計に性質が悪い…)

鷹月(…でも、何度も遠慮するのも悪いしそろそろ付き合わないといけないわよね)

鷹月「ごめんなさい。今から行くわ(まあ、これくらいならきっと…)」



鷹月「う、うぷ……」

一夏「ご、ごめん…いくら何でもはしゃぎ過ぎた…」

鷹月「い、いいから…気に、しないで…。
  (予想以上に…衝突時の振動が身体に響くわ…ていうか女の子相手に全力突進て…)」

一夏「本当にごめん…弾と一緒に乗った時と同じよう要領でやっちまった…」

鷹月「大、丈夫、だから…でも、次は大人しい乗り物でお願いね…?」

一夏「わ、分かったよ…本当にごめんな」

鷹月(箒も…苦労してるのねぇ…)

―――――――――
―――――
――― 

816 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 23:39:41 ID:4ExeANO.
~観覧車~

一夏「だ、大丈夫か鷹月さん…?」

鷹月「う、うん…(織斑くんの肩を借りてるのに…ドキドキしていいやら胸焼けをこじらせていいやら…)」

一夏「ほら、もうすぐだから。高いところから景色を眺めれば、気が紛れるだろ」

鷹月「あぅぅ…ありがとぅ…」



鷹月「ふぅ…ちょっと落ち着いてきたわ」

一夏「そっか。良かったよ」

鷹月「それにしても…いい景色ね。学園まで見渡せるわ」

一夏「そうだな」

鷹月「あれ? 何か織斑くん、あまり興奮してない?」

一夏「あぁー…高いところからの景色は、ISでしょっちゅう見てるからかなぁ…」

鷹月「そっかぁ…専用機持ちってやっぱりいいなー」

一夏「そうか?」

鷹月「そりゃそうよ。自分だけの専用機は、IS学園に入学した者なら誰だって憧れるわ」 

817 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/10(木) 23:49:26 ID:4ExeANO.
一夏「そっか。やっぱり、そういうもんか」

鷹月「そ、そういうもんって…織斑くん、専用機持ちがどれだけ凄いか、分かってないの?」

一夏「分かってるよ。ISってのは専らスポーツ競技用とはいえ、紛れも無く兵器だからな。
   だからそれを自由に使役できる専用機持ちって言う立場のステータスも、少しくらいは知ってる」

鷹月「う、うん…」

一夏「…まぁ俺は、正直言って棚ボタでISを貰ったようなもんだからな。確かに認識は甘いかもしれないよ」

鷹月「あ、ごめん…別に、そういうつもりじゃ…」

一夏「…でも、俺は別に専用機持ちがそんなにいいとは思えない」

鷹月「え…?」

一夏「兵器を持つって事は言うまでもなく、力を持つことだ。
   力を持ったからには、それ相応の責任も当然付きまとう」

一夏「使い方次第で国を左右するし、気に入らなきゃ色々とぶっ壊す事だって出来る。
   だから専用機持ちの皆は、誰だって何かしらの責任を背負っているからな」

一夏「セシリアも、鈴も、シャルも、ラウラも、楯無さんも、国の代表としての誇りを持ってる。
   代表候補生でない俺や箒だって、決して生半可な覚悟でISを持ってるわけじゃない」

鷹月「……」 

818 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:00:08 ID:UZ5lYknk
鷹月「そっか…他の皆は、専用機をファッションかトレンドの何かと勘違いしてるみたいだけど…。
   本当は、そんな大事なものなんだね」

一夏「あぁ、ごめん。別に他の皆に覚悟が足りないとか、そんな意味じゃないんだ」

鷹月「分かっているわ。でも、それでも織斑くんは…立派だね」

一夏「…まぁ千冬姉にはまだ甘いって言われるけどな」

鷹月「あはは…でも、そっかぁ…。確かに、そんな中途半端な気持ちで専用機持ちになりたいってのは…
   ちょっと、おこがましかったかもしれないわ。反省する」

一夏「別になりたければ、それに向かって努力するのはいいと思う。
   でも俺は…やっぱり皆、普通の女子高生でもいいと思う」

鷹月「え…?」

一夏「ISが出る前は、俺たちの頃の高校生ってさ。普通に友達同士で遊びあっていたじゃないか。
   でも今は…何となくだけど、すごくギスギスしてるんだよな」

一夏「ISが出てから、何かと皆は自分以外の誰かを追い越そうと、出し抜こうと必死になってる気がするんだ」

一夏「だから別にISなんか乗れなくてもさ…普通にまた、笑い合いながら友達と遊ぶだけの…
   そんな高校生ってだけでも、全然構わないと思う。だってそれが…普通だったはずだから」

鷹月「……」

一夏「…まぁ、今となっては男としての甘い考えなのかもな」

鷹月「そんなこと…ないと思うよ」 

819 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:09:34 ID:UZ5lYknk
鷹月「ありがとう。何だか、少し楽になったわ」

一夏「そうか? 大した事は言ってないと思うんだけどな」

鷹月「ううん。何だかね…ここに入ってからは皆、とにかく落ちこぼれないように頑張ろうとしていると思う」

鷹月「でも…織斑くんみたいな考え方も、やっぱりあっていいと思う。
   だってそれが、年頃の女の子の当たり前の過ごし方だもの」

一夏「あはははは。千冬姉が聞いたら多分怒られるな」

鷹月「そうだね。うふふふっ」

―――――――――
―――――
―――

鷹月「はぁー…楽しかったね」

一夏「そうだなー。観覧車なんて久しぶりに乗ったけど、何だか落ち着けて良かったよ」

鷹月「うん、そうだね―――って、あれ?」

一夏「?」

鷹月(よ、よくよく考えれば…今の今まで、密室の個室で…織斑くんと…ふふふふふふふ2人きり!?)

鷹月(あ、あぅぅぅぅぅぅ…/// い、意識しだしたら恥ずかしくなってきた~///)カァァ

一夏(あ、あれ…? どうしよう、また具合でも悪くなったのかな? 顔が赤くなってきているぞ…?) 

820 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:15:16 ID:UZ5lYknk
~アヴェニュー~

一夏「そろそろ時間が迫っているな…。最後に1つ乗って、プール行こうか」

鷹月「あ、うん…(うぅ…まだ顔が熱いわ…)」

一夏「だ、大丈夫か? まだ、少し休むか?」

鷹月「う、ううん! 気にしないで!」ブンブン

一夏「そっか―――ん?」

鷹月「どうかした?」

一夏「あれは…」


『ゲーッゲッゲッゲッゲ!! この小僧の命が惜しければ、いけ好かないあの野郎を呼ぶこったな!!』


鷹月「あ、何かのヒーローショーみたいね。懐かしいなぁ…」

一夏「……」

鷹月「え…も、もしかして織斑くん…結構、興味あるの…な、なーんて…」

一夏「…かもしれない」

鷹月「え」 

821 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:19:24 ID:UZ5lYknk
一夏「…ごめん、ちょっと見たいんだけど、ダメか?」

鷹月「べ、別にいいけど…(うわぉ…意外な趣味ね…男の子って、そういうもんなのかしら…)」



お姉さん「きゃー! 皆、大変よー! 良い子が悪い怪人に攫われちゃった~!」

子供「うわ~ん! 助けて~!」

怪人「ひーっひっひっひっひ!! 泣いても喚いても無駄よぉ! お前には、あいつを呼び出す餌になってもらうぜぇ!!」

お姉さん「何て悪い怪人なのかしら! でも、大丈夫! 皆のヒーローが、きっと助けてくれるからね!」

お姉さん「さぁ皆! 声を揃えて、元気呼ぼうね! せーっの!」

鷹月「おぉ…ベタな展開だけど、あの怪人もセットも凝ってるわねぇ…」


ヒーロー「とうッッ!!」シュタッ


お姉さん「待ってました! 我らがヒーローの登場です!」

ヒーロー「無垢な子供を脅かす悪党め! この正義の鉄拳、受けてみろ!!」 

823 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:30:59 ID:UZ5lYknk
鷹月「す、すごいわ…ムーンサルトで登場なんて…流石はアクション俳優ね」

一夏「……」

鷹月(うわぉ…織斑くん、めっちゃ真剣に見てるわ…)

一夏「……」

一夏(簪も…こういうのが好きなんだよな)

鷹月「おぉ…いきなりシャイニングウィザード…容赦ないわねあのヒーロー…」

一夏(悪い奴らを、怖い奴らを懲らしめる悪の軍団に悠然と立ち向かうヒーロー…。
   それを、多分あいつは、いつか自分もなれるって思って…憧れていたんだよな)

鷹月「え…何で4の字固め? 最近のヒーローって寝技もありなの?」

一夏(…そう言えばゴーレムⅢ襲撃のとき、俺は簪に言ったな。『完全無欠なヒーローはいない』って)

一夏(俺たちは、ただの人間だ。ただ逃げないで、立ち向かえる人間だって)

鷹月「あぁ、あ、あの技は…! 相撲の禁断の禁じ手、鯖十字!? まさかこんなところで見れるなんて!?」

一夏(そう…俺はただの人間だ。簪も、楯無さんも、ただのISを使えるだけの人間だ)

鷹月「そして決め技は……」

一夏(でも…)

鷹月「……あ、コブラツイストだ。意外に普通なのね…」 

824 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 00:32:48 ID:As5QulNs
この誤字は大きいwww 

825 :ちょっとブレークタイム:2012/05/11(金) 00:39:12 ID:UZ5lYknk
~プールへの道中~

鷹月「それにしてもヒーローショー、中々面白かったわ。正直、子供だましと思ってたんだけど」

一夏「……」

鷹月「…織斑くん?」

一夏「あ、あぁごめん。ちょっと考え事してた」

鷹月「そ、そうなんだ。でもちょっと意外だったわ。織斑くん、こういうのが好きだったなんて」

一夏「え…? いや、俺は、そんな…」

鷹月「隠さなくてもいいじゃない。あんな真剣に見てたんだもの。誰だって分かるわよ」

一夏「……」

一夏(別にそこまで好きでもないんだけど…気が付いたら、足が向いていたんだよな)

一夏(もしこの場に簪がいたら…きっと、目を輝かせて見に行っていただろうし)

一夏(簪がどんな気持ちでヒーローを見ていたのか、知りたかっただけなんだ)

一夏「……」 

826 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 01:31:55 ID:UZ5lYknk
鷹月「男の子の好みってよく分からないけどさ。やっぱり皆、あーいうのが好きなの?」

一夏「まぁ…誰だって、一度くらいは憧れるな」

鷹月「そうなんだ。小学校の時、クラスの男子もさ。
   ヒーロー番組の翌日にはそのごっこ遊びしてたのを思い出したの」

一夏「あははは。そういや俺も似たようなことをしてた気がする」

鷹月「でも私、思うんだよね。男の子も女の子も、憧れる本質は同じだって」

一夏「え? どういうことだ?」

鷹月「男の子が一度はヒーローに憧れるようにね。女の子も、一度くらいはお姫様に憧れるの。
   いつか自分を、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるって」

一夏「あはははは。ベッタベタだな」

鷹月「笑うなんて失礼ね。女の子の永遠の夢なのよ?」

一夏「あ、あぁごめん。でも、何が同じなんだ?」

鷹月「えっとさ。男の子も…きっと、王子様に憧れるんだと思うの」

一夏「は?」 

827 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 01:47:10 ID:UZ5lYknk
鷹月「ほら、ファンタジーでもよくあるじゃない。竜に囚われたお姫様を助け出して、結婚する王子や騎士のお話」

一夏「そう言えば確かに聞くな。でも、ヒーローと同じなのか?
   確かにドラゴンを倒しに行くくだりは同じかもしれないけど」

鷹月「ヒーローだって、危なくなったヒロインを助けたりするじゃない?」

一夏「そうだけどさ。でも、男がヒーローに憧れるのは格好いいからだと思うぜ。
   悪い怪人たちを、バッタバッタと倒していく姿にさ。俺たちも、あんな風になりたいと思うんだ」

鷹月「違うわ。憧れる本質は、もっと別の方にある」

一夏「え?」

鷹月「ただ力を振るいたいだけなら、男の子は悪の首領とか暴力団に憧れるようになるはず。
   でもそれでもヒーローが愛されているのは…助けて、愛される人がいるからだと思う」

一夏「―――!!」

鷹月「ヒーロー物語も騎士の物語りも、カタルシスはドラゴンを倒すことにあるかもしれない。
   でも物語はそれで終わるんじゃなくて、ちゃんとお姫様と結ばれるハッピーエンドを残してる」

鷹月「いろんな人から感謝されて、色々な人に愛される人。そのために、ヒーローは正義を貫いている。
   だから皆格好良くって、誰もが憧れるんだと思うの」

鷹月「だから男の子も、皆を救うヒーローになりたいと同時に、お姫様を救い出す王子様になりたい。
   きっと、そう願っているんだと私は思うんだ」

一夏「……」 

828 :ひとまず今日はここまで。:2012/05/11(金) 01:57:51 ID:UZ5lYknk
鷹月「…って、柄にもなく熱く語っちゃったわね。何だか恥ずかしいわ」

一夏「…ありがとう、鷹月さん」

鷹月「ん?」

一夏「俺、さ。やっぱりヒーローが好きだったんだな」

鷹月「え…あ、あぁ、うん…(知ってるけど…?)」

一夏「ありがとう。鷹月さんのおかげで、色々と気付けた気がするよ」

鷹月「へっ? あぁ、いや…どう、いたしまして?」

一夏(そうか…そういう、ことだったんだ) 

842 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 21:53:37 ID:bG2qQ2Mk
~ホテル前~

一夏「ふぅ。ようやく着いたな」

鷹月「近くにホテルがあって助かったわね。小さいけど綺麗で良かったわ」

一夏「ご、ごめんな…遊園地とプールで散在しちまったから、手持ちがそんななくて…」

鷹月「い、いいのよ。気にしないで(夕飯がファーストフードだったのは正直どうかと思うけど…)」

鷹月(…そういえば、温泉旅行のときは織斑くんって会長の妹さんと同室だったのよね)

鷹月(…まさか、まさかねぇ。いやいやいやそんな展開あるわけが)

一夏「じゃあ、まずはチェックインしなきゃな」

鷹月「そ、そうだね」

一夏「時間帯としてはギリギリだけど、まぁ多分2部屋くらいは取れるだろ」

鷹月(あ、うん…別に期待はしてませんでしたよホント)

―――――――――
―――――
――― 

843 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:00:24 ID:bG2qQ2Mk
~フロント~

ホテルマン「学生2名様ですね。現在の料金はこちらになっております」

鷹月「う…や、やっぱり結構値が張るわね。でもギリギリ足りて良かったわ」

一夏「……」

鷹月「どうしかした、織斑くん?」

一夏「…鷹月さん」

鷹月「ん?」

一夏「申し訳ないんだけど…貸してくれない?」

鷹月「え、えぇぇぇ!? まさか、手持ちがそんなにないの!?」

一夏「ご、ごめん…まさかこんなに高いだなんて思わなくて…」

鷹月「ちょ、ちょっと待ってて。うわ、そんなにないんだ…。でも私もギリギリしかないし…。
   銀行も閉まってるし近くにATMもないし…」

一夏「じゃあホテルの人には悪いけど…やめるか?」

ホテルマン「お客様。この辺りの宿泊施設は、当ホテルぐらいしかありませんよ?
      最寄の旅館などは、歩いて2時間かかります」

一夏鷹月「「」」 

844 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:07:37 ID:bG2qQ2Mk
~個室(ダブルベッド)~

一夏「…結局こうなっちまったか」

鷹月(恨みたい…浅はかにフラグを立ててしまった自分を呪いたい…)

一夏「な、なんかゴメンな。俺が無計画なばかりに相部屋になっちまって」

鷹月「あ、あぁうん…仕方ないわよね」

一夏「しかし鷹月さんまで、とは…」

鷹月「え?」

一夏「いや、さ。この間温泉行った時、簪と同室だっただろ?
   箒も、最初の寮生活の時は同室だったからさ」

一夏「まさか鷹月さんとも、同じ部屋で暮らすとは思わなかったなぁ、って」

鷹月「く、暮らすって…///」

一夏「あ、あぁごめんごめん! 変に含みのある言い方になっちまったな! ごめん!」

一夏「と、とりあえずベッドが近いから少し離すよ。鷹月さんはゆっくりそっちで寝てくれ」ズル…ズル

鷹月「あ、うん…(含みのある言い方された後にこういうのされると…複雑な気持ちになるわ)」 

845 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:13:07 ID:bG2qQ2Mk
鷹月「と、とにかく寝ましょうか。私もだいぶ疲れちゃったし」

一夏「そうだな。俺は平気だけど、鷹月さんはシャワーとか浴びなくていいのか?」

鷹月「そ、そうね…じゃあ、借りようかしら」

一夏「ああ。ゆっくり温まってきてくれ」

鷹月「…織斑くん?」

一夏「ん?」

鷹月「の…覗かない…でね?」

一夏「えぇぇ!? し、しないよ!」

鷹月「あ、うん…念のため」

一夏「ま、まったく…箒といい簪といい、楯無さんといい…俺の事を何だと思ってるんだ」

鷹月「あはは…じゃあちょっとシャワー借りるわ」

一夏「お、おう…」

―――――――――
―――――
――― 

846 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:18:32 ID:bG2qQ2Mk
鷹月(…本当に何事もなく終わってしまった。ホッとしてる自分とガッカリしてる自分が同時にいる…)

一夏(うッ…な、何だか湯上りの女の子って…3割増しくらいで艶っぽく見えるよな…)

鷹月(実はプールのときも気合入れた水着だったのに…。乗りも微妙だったし…。
   水色じゃなかったかしら…?)

鷹月「わ、私は髪を乾かしてから寝るから。織斑くんは先に寝てていいよ」

一夏「そ、そうか?」

鷹月「うん。ちょっとうるさいけど、勘弁してね」カチッ

ブォォォ

一夏「…なぁ鷹月さん」

鷹月「なに?」ブィィィィ

一夏「話があるんだけど」

鷹月「ふぇ!?」カチッ ブボボボボボボボボボ

鷹月「あ、あちちちちちちちちちちちちち!?」

一夏「お、おいおい大丈夫か?」

鷹月「ご、ごめんごめん…(は、話ってまさか…え、まさか…!?)」 

847 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:26:20 ID:bG2qQ2Mk
鷹月「驚かせてごめんなさい。で、は、話って…何かな?」モジモジ

一夏「…俺さ。気になる女の子がいるんだ」

鷹月「そ、そうなんだ…///」

一夏「この間温泉に一緒に行ったり、色々あったけど…何だかんだで楽しかった」

鷹月(この話の切り口…そ、それに温泉に一緒に行った女の子って…)

鷹月(え、えぇぇぇぇぇ!? まさか、本当に!? ちょちょちょちょっと! いくら何でも急すぎるわ!)アタフタ

一夏「何か前からさ。他の皆とは違って、見ていて危なっかしいというか…
   一緒に居て、傍で支えてやらないといけない奴だなぁって思えて」

鷹月「う、うん…そう、なんだ…」ドキドキ

一夏「今では変わったけど…自分で自分の限界を決めてるっていうか、殻に篭りたがるような奴だったからな。
   だから、俺が何とかして手を引いてやりたいって思えたんだ」

鷹月「へ、へぇ…」 

848 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:34:05 ID:bG2qQ2Mk
鷹月(た、確かに私は専用機とか持ってないし、どうせ自分なんかとか思っていたけど…。
   お、織斑くん…そこまで心配してくれていたなんて…///)

一夏「でも、あいつは実は凄い奴なんだよな。そんな自分を変えるために、一生懸命になれる奴なんだよ」

一夏「だって1からISを作ろうとしようなんてさ。普通思わないだろ?
   なのにあいつは…ひた向きに頑張っていたんだ」

鷹月「そ、そうなんだぁ…1からISをねぇ…」

鷹月「………」

鷹月「……」

鷹月「…」

鷹月「あれ?」

一夏「俺もさ。メチャクチャ凄い姉がいるんだけど、あそこまで努力しようだなんて思わなかったからな。
   だからあそこまで努力しようとする奴を見てさ。ちょっと凄いなぁ、って思った」

鷹月「…あのさ」

一夏「ん?」

鷹月「もしかしてその子って…更識簪さん?」

一夏「あはは。ばれちまったか」

鷹月「」 

850 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:41:04 ID:bG2qQ2Mk
鷹月「そ、そうなんだ…気になる子の話ってのいうのは…更識簪さんのことだったんだ…」

一夏「いきなりでごめんな。こんなこと話せるの、鷹月さんがいいなぁって思ったから」

鷹月(そういう時は『相談があるんだ』って言ってよ!!)

鷹月「(ま、まぁいいわ…)で、何? 続けてよ」

一夏「…実はさ」

鷹月「ん?」

一夏「あー…これ、言っていいのかな?」

鷹月「何で?」

一夏「いや、撮られてるから」

鷹月「もう消灯時間は過ぎてるわ。流石に生徒が寝る時間までは放映されてないと思うわ」

一夏「そ、そっか。実はさ」

鷹月「うん」

一夏「その…今日、簪に告白された」

鷹月「あー…」 

851 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:44:50 ID:bG2qQ2Mk
一夏「…なんで驚かないんだ?」

鷹月「いや、だって…ねぇ?」

一夏「いや、『ねぇ』って言われても…」

鷹月(だっていずれはそうなるって分かりきってたし…まぁ最初が簪さんだったのは意外だけど)

鷹月「それで告白の返事も決まらないまま、どうすれば良いか分からないから、今日のパートナーを私にしたわけね」

一夏「うん。理解が早くて助かるよ」

鷹月「そ、そうなんだ…」ハァ…

一夏「でも、俺自身があいつをどう思っているかよく分からなかったからな。
   遊んでいる最中も、簪の顔がちらついててどこか浮ついた感じになっちまうし」

鷹月「……」

一夏「…鷹月さん?」

鷹月「織斑くんってさ」

一夏「ん?」

鷹月「甲斐性ないよね」

一夏「え」 

852 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:50:39 ID:bG2qQ2Mk
鷹月「はぁ…」

一夏「な、何でため息なんか吐くんだよ」

鷹月「だってまぁ…2人きりで遊んでいる最中に他の女の子に現を抜かしていただなんて言われちゃ、吐きたくもなるわ」

一夏「え? そ、そうなのか?」

鷹月「…まぁ最初からあんまり望みが薄いって事は分かっていたけどね」ボソッ

一夏「ん?」

鷹月「何でもないわ。で、どうすれば良いか、まだ悩んでいるの?」

一夏「…いや」

鷹月「え?」

一夏「もう、決めたからな」

鷹月「え…」

一夏「俺があいつにとって…どんな存在になりたいかは決めたから」

鷹月「……」 

853 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 22:57:15 ID:bG2qQ2Mk
一夏「鷹月さんのおかげだ」

鷹月「え?」

一夏「ほら。さっきの、男の子は王子様にも憧れるって話」

鷹月「あー。あれ?」

一夏「ああ。あれを聞いたらさ…何だか胸のつっかえとか、モヤモヤしていたもんが全部吹っ飛んだ気がしたんだ」

一夏「何だか…すごく、気が楽になったんだよ。だから、お礼を言いたかった。それだけだ」

鷹月「…そっか」

一夏「本当にありがとうな、鷹月さん」

鷹月「私はただ、持論を言ったに過ぎないわよ。大した事はしてないわ」

一夏「それでもいい。決められたのは、鷹月さんのおかげだ」

鷹月「あははは。ありがと」 

854 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 23:03:10 ID:bG2qQ2Mk
一夏「話長くなっちまってゴメンな。髪、乾かしてる最中なのに」

鷹月「いいわよ。もう大分乾いたから」

一夏「そっか。じゃあ、俺寝るわ」

鷹月「うん。お休み」カチッ

ブォォォォ…

鷹月(…頑張ってね織斑くん。陰ながらだけど、応援するわ)

鷹月(それと箒は…そっか。これは見てないんだっけ。でも…悲しませるだろうなぁ…)

鷹月(…本当に罪作りな男ね、織斑くんは)

鷹月(箒。きっと辛いかもしれないけど…でも、貴女ならきっと大丈夫よ)

鷹月(愚痴も嗚咽も聴くし、私の胸ならいくらでも貸してあげるから)

鷹月(だから箒…頑張ろうね)

ブォォォォ…カチッ

―――――――――
―――――
――― 

855 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 23:08:15 ID:bG2qQ2Mk
~翌日、生徒会室~

ガララッ

一夏「ただいま戻りましたー…って、あれ?」

簪「あ…お、おかえり…一夏」

一夏「おぉ簪…って、その顔どうした? 目の下にすごいクマができてるぞ?」

簪「あ、う…こ、これは、そのぉ…」

一夏「?」

簪(だだだだだ、だってぇ…一夏と、きききき、キス、して…告白まで、したその日に…眠れるわけ、ないよぉ…)


ゴスッ


一夏「いてっ」

楯無「はいはい一夏くん。お姉さんに挨拶を忘れるなんてちょっと寂しいなー」

一夏「す、すいません…ただいまです、楯無さん」

楯無「うん、おかえりなさい! そしてミッション・コンプリートおめでとー!」パンパカパーン

一夏「うぉ…は、はははは…どうも」 

856 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 23:14:53 ID:bG2qQ2Mk
楯無「…さてさて一夏くん。ここでお知らせがあります」

一夏「え? 何ですか?」

楯無「このイベントは…今日で終わりです」

一夏「えぇ!? 何で急にまた!?」

楯無「織斑先生のお達しでね。あの後、職員会議があったらしくてさ。
   本当は即刻中止になりそうだったんだけど、何とか今日一杯だけ時間を作ってくれたらしいの」

一夏「そ、そうなんですか…千冬姉が…でも、何でそこまで…?」

楯無(…このイベントは、一夏くんにとっても大事なものだからね。本当に色々な人から愛されるなぁ、一夏くんは)

楯無「まぁまぁそういうわけなので。最終日のミッション、張り切って行こうか」

一夏「は、はい!」 

857 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/11(金) 23:19:56 ID:bG2qQ2Mk
楯無「…ねぇ」

一夏「はい?」

楯無「あれは…決まったの?」

一夏「……」

簪「……」

一夏「…はい」

簪「…ッ!」

楯無「…そっか」

一夏「まだ言いたいことはまとまってないけど…考えは、決めました」

楯無「そっか。じゃあ、今日も君が引きなさい」スッ

一夏「…分かりました。じゃあ…いきます」

一夏(内容によっては、これが最後のミッションか…色々と大変だったけど…)

一夏(でも…やっぱり、楽しかったな)

ゴソゴソ

一夏「ええと…次のミッションは…『>>859』です」 

860 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/11(金) 23:22:04 ID:bG2qQ2Mk

現時点好感度指数(参考)
鈴    ■■■□□□□□
セシリア ■■□□□□□□
千冬   ■■■□□□□□
楯無   ■■■■■□□□ 
簪    ■■■■■■■■←リーチ!
シャル  ■■■□□□□□ 
箒    ■■■□□□□□
鷹月   ■■□□□□□□ 

871 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/13(日) 20:38:09 ID:BaWnADis
『おりむーとかんちゃんが私にケーキを作ってプレゼントする~ by本音 』


楯無「……」

一夏「の、のほほんさん…まぁらしいっちゃらしいけどさ…」

簪「あ、うぅ…///」

一夏(か、簪が緊張してる…)

一夏(む…無理もないか…昨日、あんなことを言った手前でいきなりコレじゃぁな…)

楯無「…さてさて! 無事に次のミッションも決まったね!
   じゃあ審査員を呼んで来るからちょっと待っててね!」

―――――――――
―――――
――― 

本音「呼ばれました~」フリフリ

虚「す、すいませんお嬢様…何だかうちの妹が変なミッションを入れてしまったみたいで…」

楯無「いいのいーの! 私としては本音ちゃんも皆も、このイベントを通じて楽しんでくれればオールオッケーだから!」

本音「わ~い! 楽しみだな~! 私、かんちゃんのケーキ大好きだもん~!」ピョコピョコ

虚「もう本音ったら…はしたないわね」 


872 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 20:45:37 ID:BaWnADis
楯無「はいはーい! では審査員も揃ったことだしルール説明を行いまーす!」

楯無「ミッションは至極単純! 
   一夏くんと簪ちゃんが共同で作ったケーキを、私と虚ちゃんと本音ちゃんの3人で試食します!」

楯無「そして3人全員の舌を唸らせ、見事『美味しい』と言わせればミッション・コンプリートです!」

一夏「うぉぅ…全会一致で認められなきゃダメか…。楯無さんも味見するし、これは難儀だな」

楯無「場所は家庭科室ね! 材料は一通り揃っているはずだから!
   それじゃ…レーッツ・クッキーング!」

一夏「了解しました。じゃあ移動するか、簪」

簪「あ、うん…」

―――――――――
―――――
――― 

873 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 20:54:41 ID:BaWnADis
~家庭科室~

一夏「さて…バターに砂糖、薄力粉にペーキングパウダー、バニラエッセンスに牛乳と旬の果実。
   本当に必要なものは一通り揃ってるな」

簪「…うん」

一夏「うーん…しかし弱ったなぁ。ケーキなんて作ったことないぞ」

簪「え…そう、なの?」

一夏「俺は主に和食専門だしな。デザートなんてコーヒーゼリーくらいしか作ったことない」

簪「そ、そう、なんだ…」

一夏「簪はどうだ? ケーキとか作れそうか?」

簪「い、一応…」

一夏「お、そうなんだ。どんな?」

簪「カ、カップケーキ…抹茶の」

一夏「カップケーキ?」

簪「それくらいしか…作れないから」 

875 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:01:56 ID:BaWnADis
一夏「そっか。じゃあ丁度いいし、それを作ろうぜ」

簪「え…? い、いいの?」

一夏「2人で慣れないもんを作るよりは、簪の慣れたもんを作る方が安心するよ。
   それに、のほほんさんも簪の作ったケーキは美味いって言ってたしな」

簪「で、でも…」

一夏「ん?」

簪「…自信、ない」

一夏「……」

ポンッ

簪「ふぇ!?」

一夏「簪、大丈夫だ。お前を信じろ」

簪「え…」

一夏「お前はお前が思っているより、ずっと凄い奴だよ。それは俺もそう思うし、楯無さんだってそう思ってる」

一夏「だから簪。もっ自信を持て。何より、お前のケーキを楽しみにしてくれてるのほほんさんに悪いだろ」

簪「いち、か…」 

876 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:05:02 ID:BaWnADis
一夏「まぁ自信ないようなら俺だって手伝うよ。味の調整くらいはできるからな」

簪「わ、分かった…ごめん…」

一夏「…そういう時は謝るんじゃなくて、礼を言うもんだ」

簪「…うん」

一夏「よしっ。じゃあ作るか」

簪「…一夏」

一夏「ん?」

簪「ありがとう…」ニコッ

一夏「お、おう…どう、いたしまして…///」

―――――――――
―――――
――― 

877 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:08:55 ID:BaWnADis
一夏「ええと。じゃあまずは何をすればいいんだ?」

簪「まずは常温で温めておいたバターがあるから…一夏は、それをボウルに入れて混ぜて」

一夏「混ぜる?」

簪「ペースト状になるまで、よくかき混ぜるの。結構、力要るから」

一夏「おっけー」シャコシャコ

簪「私は卵を溶いたり、薄力粉と抹茶とベーキングパウダーを予め混ぜておくから」カシャカシャ

一夏「うぉぉぉぉ…これ、意外と疲れるな…」ジャコジャコ

簪「大変だけど、しっかり混ぜて。すごく大事な作業だから」

一夏「分かった」シャッシャ

簪「うわぁ…やっぱり男の子がやると早い…もう白くなってる」

一夏「そ、そうか? 最初の方は大変だったけど、溶けてきたら結構楽になったぜ」

簪「これくらいなら、もういいかな。砂糖を入れるね」

一夏「あ、うん」

簪「一夏はかき混ぜ続けて。砂糖は、3回に分けて入れるから」

一夏「そ、そうか。悪い」シャコシャコ 

878 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:12:05 ID:BaWnADis
簪「じゃあ入れるね」

パッパッ

一夏「それは…粉砂糖か?」

簪「うん。これだと、味が馴染みやすいの。篩(フルイ)を使えば、均等に味付けも出来るし」

一夏「あれ? でも、粉砂糖なんかあったっけ? グラニュー糖ならあったけど」

簪「粉砂糖は簡単に作れるよ。普通の砂糖をすり鉢で潰すだけ」

一夏「そうなのか。準備いいな、簪」

簪「な、慣れてる、から…///」 

879 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:16:26 ID:BaWnADis
簪「こんなものかな。あとはまた、味が全体に馴染むまでかき混ぜて」

一夏「おう」ワシャワシャ

簪「溶き卵も入れちゃうね。これも3回に分けて入れる」

一夏「分かった」

簪「まずは卵黄から」

一夏「あれ、卵黄から? 白身はどうした?」

簪「こっち」コト

一夏「ん? 泡だってるな?」

簪「卵を溶くとき、白身を分けて泡だてておけば、すごくふっくらと焼きあがるの」

一夏「そうなんだ。じゃあ、そっちも入れてくれ」

簪「うん。少しずつ入れるね」

一夏「砂糖もそうだけど、こういうのって一気にいれないのか?」

簪「ダメ。生地が均等にならないから。ケーキの生地はすごく繊細なの。
  ちょっとした匙加減のミスが、生かすか殺すかを決める」

一夏「そ、そうなのか…」 

880 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:22:35 ID:BaWnADis
一夏「こんなもんかな」シャコシャコ

簪「そうだね。じゃあ、今度は薄力粉とか混ぜた奴を篩で入れていくよ。
  一夏はゴムべらで、ざくざくと切るように混ぜて」シャコシャコ

一夏「切るように?」

簪「生地に空気を混ぜるの。より、ふっくらと焼ける」シャコシャコ

一夏「へぇー…なるほど」

簪「時々、外側から内側へ巻き込むように混ぜるのもいい」

一夏「え、えーと…こうか?」クイッ

簪「違う。こう―――」

ピタッ

一夏「ッ///」

簪「ご、ごめん…///」ババッ

一夏「あ、いや…」

簪「……」

一夏「か、代わるか?」

簪「あ、うん…」 

881 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:27:40 ID:BaWnADis
簪「え、ええと…じゃあこれくらいかな。あとは牛乳を入れて、もう一回混ぜる」

一夏「ま、混ぜてばっかりだな…」

簪「もう少しだから頑張って」トプトプ

一夏「あいよ」シャッシャッシャ

簪「あ、それくらいでいい。このままボウルにラップをかけて、冷蔵庫で30分くらい寝かせる」

一夏「分かった」ピッ

一夏「じゃあ冷蔵庫にしまうな。よっと…」

パタン

一夏「ふぅ。ひとまずは一息ついたな」

簪「そうだね」

一夏「ええと…じゃあ、暇になったのか」

簪「何もしなくてもいいけど、どうせならトッピングの材料も作ろうと思う。
  チョコレートに生クリームに小豆、色々合うから」

一夏「分かった。俺も手伝うよ」

簪「うん」 

882 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:33:07 ID:BaWnADis
簪「じゃあ…一夏は、生クリームを作ってて」

一夏「了解。ええと、この液状の生クリームをかき混ぜるんだよな?」

簪「うん。ひたすら、かき混ぜて」コトッ

一夏「お、おぅ…(何だか作業的になってきたぞ…)」シャコシャコ

簪「それも結構大変だから…ごめんね」

一夏「き、気にするな。こういうのも男手が必要だからな!」シャカシャカ

簪「私は、小豆を茹でる」グツグツ

一夏「お、おう(な、なんだこれ…ちっともクリーム状にならないぞ…)」ジャカジャカ

簪「い、一夏…そんなに力を入れないで…」

一夏「そ、そんなこと言ってもな…結構力入れてるんだけど、全然上手くいかなくてさ…」

簪「ただ揺らすだけじゃだめ。空気を入れる感じでかき混ぜないと。貸して」サッ

一夏「お?」

簪「こんな感じ」シャッシャッシャッ

一夏「おぉー…器用だな」

簪「そ、それほどでも…」 

883 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:40:11 ID:BaWnADis
簪「ほら。ちょっと堅くなった」トローン

一夏「なるほど。縦方向にも回転させながら混ぜるといいのか」

簪「そう。ボウルの中の空気を、巻き込みながら溶くイメージ」

一夏「ありがとう。じゃ、やってみるよ」シャッシャッシャッ

簪「うん」

―――――――――
―――――
―――

一夏「はぁ…はぁ…はぁ…つ、疲れた…」

簪「お疲れ様。こっちも、準備できたよ」

一夏「か、菓子作りって色々と重労働なんだな…。
   ゼリーなんて混ぜて型に流し込むくらいだから、知らなかったよ」

簪「大変だったね。じゃあ、これらもラップにかけて、冷蔵庫で冷やしておこうか」

一夏「分かった」

―――――――――
―――――
――― 

884 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:43:19 ID:BaWnADis
一夏「よしっ。しまい終わったぞ」

簪「うん、ありがとう一夏」

一夏「ええと…生地を寝かしつけてどれくらいだ?」

簪「まだ10分くらいだね」

一夏「他にやることは?」

簪「…特にないかな」

一夏「そっか。じゃあ、のんびり待とうぜ。お茶でも淹れるよ」

簪「う、うん…ありがと」

―――――――――
―――――
――― 

885 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:47:48 ID:BaWnADis
一夏「ほいよ、粗茶ですが」コトッ

簪「あ、ありがと…」

一夏「ケーキ待ち遠しいな。あれだけ頑張ったんだから、絶対美味いぜ」

簪「そ、そうだね…私も、美味しくできてると思う」

一夏「ああ。簪もそう思うか?」

簪「う、うん…だって…」

一夏「ん?」

簪「い、一夏と一緒に…作ったものだから」

一夏「え…///」

簪「…///」

一夏「そ、そうだよな! 何てたって俺と簪の初めての共同作業だからな!
   う、美味くないわけがないぜ!」

簪「きょ、きょうどう…さぎょう…はじめての…///」プシュゥゥゥ…

一夏(な、何言ってんだ俺は…///)ドキドキ 

886 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:53:06 ID:BaWnADis
簪「…ね、ねぇ一夏」

一夏「な、何だよ簪…?」

簪「あ、あのね、その…き、昨日の、こと、なんだけど…///」

一夏「あ…お、おう…///」ドキッ

簪「その、えっと、あの…」モジモジ

一夏「うッ…(顔をすごく赤くしてモジモジしてる…)」

簪「え、ええと、ね…! その、あぅ…」カァァァ…

一夏「か、簪…無理、しなてくても―――」

簪「い、いや!」

一夏「え…?」

簪「だ、だっ、て…わわ、私…」

一夏「うッ…」

簪「こ、告白、したから…一夏に」

一夏「あぅ…///」

簪「///」プシュゥゥゥ… 

887 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 21:58:04 ID:BaWnADis
簪「だ、だから、その…!」

一夏「え…」

簪「へ、返事…ききたい」

一夏「えぇッ!?」

簪「い、一夏の返事…きき、たい…!」ドキドキ

一夏「い、今じゃなきゃ…ダメか…?」

簪「だ、ダメ…! 今じゃなきゃ、ダメ!」

一夏「えッ…」

簪「い、一夏は…」


簪「私のこと……好き?」


一夏「いッ!?」ドクン!

簪「///」ジュゥゥゥゥゥ… 

888 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 22:01:37 ID:BaWnADis
一夏「え、ええと…その、何ていうか…」

簪「……」

一夏「へ、返事と言われても…」

簪「…一夏は」

一夏「ん、ん?」

簪「やっぱり…私のこと、嫌いなの…?」

一夏「ち、違う! そういう意味じゃない!」

簪「じゃあ…」

一夏「だ、だから! 告白なんてされたことないから、何て言えばいいか困ってるだけだ!」

簪「…なら、言って」

一夏「え?」

簪「私のこと…どう、思ってるか」

一夏「うッ…そ、それは、だな…ええと…」ドキドキ

簪「……」バクバク 

889 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 22:07:00 ID:BaWnADis
一夏「ええと…こ、告白してくれた時、正直言ってすごく驚いたけど…」

簪「……」

一夏「その…お、お前が俺のこと、そういう風に思ってくれて…何ていうか、その…」

簪「……」

一夏「あ、あぁもう…言いたいことがまとまらねぇな…。と、とにかく!
   あの後…すごく考えたんだ、俺…」

簪「……」

一夏「鷹月さんとかに相談してさ…。お前が俺にとって、どんな奴なのか」

一夏「俺自身がお前にとって、どうありたいのか…そういうのを、必死に答えを探した」

ドンドンドン

一夏「それでその…俺、自分なりの答えを見つけた気がした。俺の気持ち…分かった気がするんだ」

簪「…ッ!」ドキッ

一夏「だ、だから俺は、その…お、お前にとって―――」


『いちかあああああああああああああああああああああああああああああ!!!』ドンドンドンドンドン!!


一夏「ん?」 

890 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 22:09:00 ID:BaWnADis
一夏「な、なんだ? 家庭科室の外から?」


箒『おい一夏! ここを開けろ!』

セシリア『どういうことですの!?』


一夏「いぃッ!? も、もしかしてお前らか!? 何でここにいるんだよ!?」


鈴『そんなの決まってるじゃない!!』

シャル『放送で、会長の妹が一夏に告白したって聴いて…居ても立ってもいられなくて!』

ラウラ『そのような事実があったかどうか、ちゃんと確かめさせてもらうぞ! ここを開けろ、嫁!!』ドンドン


一夏「そ、それはちょっと…勘弁して、もらいたいというか…ははっ…」


箒『しらばっくれるなら…この場で実力行使をするまでだ!!』


一夏「そ、そんな! みみ、皆、頼むから落ち着いてくれ!!」 

891 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 22:14:46 ID:BaWnADis
一夏「ああもう! とにかく俺は今はミッション中で忙しい! お願いだから帰ってくれ!!」


セシリア『お断りですわ! 一夏さんは、私たちに返答の義務があります!』

鈴『セシリアどいて! こんな扉、甲龍で一発で粉々に…』キィィィィ…


一夏「うわ、ばか! こんなところでISを展開させるな!!」

簪「……」

一夏「か、簪! 何かちょっとヤバくなってきた! お前は逃げて」


ドッゴォォォォォォォォ!!


一夏「え…と、扉の外から…何だか衝撃音が…?」


千冬『まったくこのバカどもは…こんなところでISの使用を許可した覚えはないぞ』

楯無『君たちぃー必死になるのも分かるけど、いくら何でもこれはだめだよー。
   昔の人の言葉にもあったでしょ? 人の恋路の邪魔する奴は、風穴開けて死んじまえってね♪』


一夏「ち、千冬姉に楯無さん!?」 

892 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 22:23:02 ID:BaWnADis
楯無『はいはーい☆ こんにちは、一夏くん♪
   今、ミッションの妨害に入ろうとした不届き者たちは、私たちで抹殺しておいたから安心してね!』

千冬『人聞きの悪い言い方をするなバカ者。少し気絶させておいただけだ』


一夏(元世界最強と現学園最強の最凶コンビ…これは相手にしたくない…)


楯無『もぉー…織斑先生のいけずぅー。まぁいいけどねー!
   そんなわけですので、妨害阻止は達成できたしお邪魔虫は退散するよー♪
   引き続きミッションに励んでねー! んじゃ、バイビー☆』


一夏「ふ、ふぅ…何とか…助かった、のか?」

一夏「はぁ…生きた心地がしない…昨日はさんざん殺されかけたからなぁ…」

簪「……」

一夏「…騒がせて悪かったな簪。大丈夫か―――」

ドサッ

一夏「え…か、簪!? どうした、しっかりしろ!」

―――――――――
―――――
――― 

894 :お風呂~:2012/05/13(日) 22:29:05 ID:BaWnADis
~保健室~

簪「……」クゥー…クゥー…

楯無「綺麗な顔してるだろ。信じられるか? 眠ってるんだぜ、それ」

一夏「無駄に含みのある言い方しないでください。倒れた時、本当にビックリしたんですから」

楯無「あっはは、ごめんごめん。まぁしょうがないよ。昨日から全然寝付けなかったようだしさ」

楯無「そんなコンディションでいきなり朝一番にミッションだもん。
   負担、かけちゃったみたいね。反省、反省」

一夏「楯無さんが気にすることじゃないですよ」

楯無「まぁそうかもしれないけどさ。やっぱり可愛い妹だから心配ぐらいさせなさいな」

一夏「…そうですね」

楯無「ひとまずミッションは中断だね。しばらく休ませようか」

一夏「…はい」

楯無「じゃあここで話しても、簪ちゃんとしてはうるさいだろうから場所を移ろう?」

一夏「え…あ、はい。分かりました」

―――――――――
―――――
――― 

895 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:03:32 ID:BaWnADis
~屋上~

ヒュゥゥゥ…

楯無「ふぅーここからの景色って結構好きー♪」

一夏「そうですね。俺も気にいっています」

楯無「そっか。何だか嬉しいな」

一夏「そうですか?」

楯無「うん。同じ価値観に共感してもらえるのって、何だか嬉しくない?」

一夏「まぁ…それはそうかもしれませんね」



楯無「…一夏くんさ、覚えてる? 私と、初めて会った時のこと」

一夏「それは、まぁ…あの後大変でしたし」

楯無「どうして?」

一夏「どうしてって…千冬姉に怒られましたから。遅刻して」

楯無「あっはは。そういえば…あの時は呼び止めちゃってごめんね」

一夏「あはは…」 

896 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:08:27 ID:BaWnADis
楯無「でもそういうのじゃなくてさー。もっといい思い出とないのー?
   こう、さ…見ててすっげー美人な人がいるなー、とか」

一夏「え、ええと…それは、まぁ…綺麗な人だなって言うか、ミステリアスな人だなーって思いましたね」

楯無「ミステリアスねぇ。まぁ褒め言葉と受け取っておくね」

一夏「自分で言っておいて何ですけど…褒めてたんですかね?」

楯無「そうだよー。女のほとんどは秘密でできているの。
   女から秘密を取ったら、あとはつまんないもんしか残らないわ」

一夏「そ、そうですか」

楯無「…じゃあさ。簪ちゃんに初めて会ったときはどうだった?」

一夏「簪は、まぁ…楯無さんに会ったあとですから、姉とよく似てるなーって印象と」

一夏「あと…すごく険悪だったんでビックリしました」

楯無「懐かしいね。『私には、貴方を殴る権利がある』って言われたんだっけ?」

一夏「ははは…そう言えばそんなことも言われましたね」 

897 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:18:52 ID:BaWnADis
楯無「…ねぇ一夏くん」

一夏「はい?」

楯無「ちょっと訊いていい?」

一夏「何ですか?」

楯無「ぶっちゃけ、さ。簪ちゃんのこと、好き?」

一夏「えぇッ!?」

楯無「どうなの?」

一夏「いいいいいいいいいやいやいや! 何で楯無さんがそんなこと訊くんですか!?」

楯無「好奇心」

一夏「ちょ、ちょっと…いや、勘弁してくださいよ…///」

楯無「……」

一夏「そ、そりゃぁ…姉として心配する気持ちも分かりますけど、こ、これは俺と簪の問題だし―――」

楯無「ごめん。やっぱなし」

一夏「え?」

楯無「……」 

898 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:25:13 ID:BaWnADis
楯無「それにしてもさ。一夏くん、簪ちゃんの告白きいてすごくビックリしてたね」

一夏「そ、それはまぁ…いきなりああ言われて驚かない奴なんていませんよ」

楯無「…はぁ」

一夏「な、何でそんなガッカリしてんですか…」

楯無「だって本当に気付いてなかったって聴いてさー…。簪ちゃん、前から随分頑張ってたんだよ?」

一夏「え?」

楯無「ほら、覚えてる? 最初の簪ちゃんとのミッションのときさ。織斑先生に、何て言ったと思う?」

一夏「え、ええと確か…私を俺の嫁にしてくださいって…」

一夏「あっ…」

楯無「本当に何で今更なのかなー。君の鈍感さには呆れを通り越して好奇心すら沸いてくるよ。
   頭を掻っ捌いて脳みそを豆腐と取り替えても大差ないんじゃないの、ってくらい」

一夏「うぅ……面目ない」

楯無「あーあ。簪ちゃんも難儀な男に唆されちゃったなぁー」

一夏「そ、唆したって…」 

899 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:31:17 ID:BaWnADis
楯無「自覚ないって言うの?」

一夏「俺は…特に何もしてませんよ」

楯無「やーれやれ。あんだけ思わせぶりなことを言ったりしといてその言い草かい」

一夏「えぇー…」

楯無「本当にうちの妹にも困ったものだ。こんな女心も分からない、鈍感さんのどこがいいんだか」

楯無「別に頭もいいって訳じゃないし、ISの操縦だってまだまだ荒いし、行動だって無計画で無責任だし」

楯無「そのくせ自分のことよりも他人のことを優先しちゃう救いようのないお人よしでさ」

一夏「え、えぇー…」

楯無「…でもさ」

一夏「ん?」

楯無「私ね。今なら簪ちゃんの気持ち、少し分かる気がする」

一夏「えっ…?」 

900 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:39:32 ID:BaWnADis
楯無「一夏くんってさー。何ていうかすごく裏表のない、まっすぐな人なんだなーって思ったの」

楯無「嘘とかつけるタイプじゃないし、自分の決めた信念を絶対に曲げないから」

楯無「…まぁ、女子を誑かすのも素でやっちゃうっていうんだから、よっぽど性質が悪いんだけどね」

一夏「俺を褒めたいんですか、それとも貶したいんですか…」

楯無「でもさ。だからこそ、一夏くんのやることなすことが、下心のない本心から来るものだって分かる」

楯無「誰かが困っていたら助けようとするのも、危なくなったら本気で守ろうとするのも。
   それが見返りとか打算とか、そういうのを一切合財なしでやってるんだって」

楯無「一夏くんは…私たちに本気でぶつかってきてくれた」

一夏「……」

楯無「だから、かなぁ。皆、いつの間にか心を許しちゃうんだよね。一夏くんには」

楯無「本心から行動してるって分かってるから、自然と警戒を解いちゃって。
   一夏くんと接していくうちに、不思議と自分たちも何だか素直になっちゃってさ」

楯無「それでいつの間にか…一夏くんは入ってちゃうんだよ。皆の心の中に」

一夏「……」

楯無「簪ちゃんもね。一夏くんと会うまでは自分の殻に篭りっぱなしの困ったちゃんだったけど…。
   でも、一夏くんが簪ちゃんの心の中に入ってくれて…それをブチ壊してくれた」

楯無「きっとあの時の私は…一夏くんのそういうところ、無意識に分かってた。だから簪ちゃんを任せられたんだと思う」 

901 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:49:51 ID:BaWnADis
一夏「…買いかぶりすぎですよ」

楯無「あっはは。本当に鈍感さんだなぁ。これさえなければねぇ…」

一夏「え、えぇー…」

楯無「…でも、そうだね。それも一夏くんのいい所。自分のおかげだとかそんなひけらかすような真似をしないのも」

楯無「むしろその後、皆の手を引いて、立ち上がらせようとしてくれる。
   そういうことが出来る人なんだよね、君は」

楯無「そんなところもあるから一夏くんの周りには…自然と人が集まるんだね」

一夏「……」

楯無「うん、やっぱりすごいね一夏くんは」

一夏「…俺は、別に自分が大した奴だなんて思えません。楯無さんの方が…ずっと凄いと思います」

楯無「何で? 最強だから?」

一夏「それもありますけど…何ていうか楯無さんはすごく、皆のことを考えてくれてんだなーって思えたんです」

一夏「文化祭の時も、このイベントも…まぁ俺をダシに使っている感じはしますけど…。
   でも、結局は生徒全員が楽しめるように考えてくれてるって分かります」

一夏「ISの訓練も…見ず知らずの俺や箒に指導をつけてくれたり…。何より、簪のことを誰よりも大切に思ってる。
   何だかんだで、お人好しって意味では楯無さんも相当ですよ」

楯無「あはは…言うようになったね、一夏くん」 

902 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/13(日) 23:56:41 ID:BaWnADis
楯無「…そうだね。まぁ私だってそれなりに知恵を絞ったり、色々と努力とかはしてきたつもり」

一夏「…楯無さんだって、『努力』って言葉で自分の才能を自慢しないところも、凄いところですよ」

楯無「んーでも、努力してきたことは本当だよ?」

一夏「それはまぁ、そうですけど…」

楯無「私だって君が言うほど、自分が大した人間とか思ってないよ。
   ただ自分に出来ることを、自分なりに工夫して、自分なりに高めていったに過ぎない」

楯無「学園最強っていう称号もさ。言ってしまえばただの旗印だし」

一夏「え?」

楯無「そう思わない? だって、努力すれば皆こうなれるんだよ?
   才能だとかそんなもんなくたってさ。やりようによっては誰だって最強になれるって」

楯無「その証明が、私だもの。それを皆が見てくれればきっと、皆はもっと頑張ってくれる。
   私の後を目指して…走ってきてくれるって」

楯無「私は…そう思ってるから」

一夏「……」 

903 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:05:20 ID:jcPUBSXE
一夏「やっぱり楯無さんは…お人善しですね」

楯無「あっはは。そうかな」

一夏「ええ。とても優しい人です」

楯無「てへへっ。もっと褒めてくれていいよ」

一夏「そうやってふざけて誤魔化すのも…ようは、照れ隠しなんじゃないですか?」

楯無「なッ…!?」

一夏「あはは。ほら、やっぱり」

楯無「か、勘のいい一夏くん、だと…」

一夏「いや、何でそこまで意外そうにするんですか…失礼でしょ」 

904 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:10:52 ID:jcPUBSXE
楯無「も、もぉー全く…まさか君にそんなことを言われるとは思わなかったわ」

一夏「あはは、すいません。でも、何だか不思議ですね」

楯無「ん?」

一夏「何ていうか…お人善しってところも…根っこのところでは、誰かのことを本気で考えているってところも」

一夏「俺と楯無さんで似ているなんて…何だか不思議な気持ちです」

楯無「ッッ!」

一夏「って、はは…。何言ってんですかね、俺って」

楯無「…うん、そうだね。私も、そう思う」

一夏「え?」

楯無「一夏くんと私は…似ているところもあるのかもしれない」

楯無「やっていることは違うかもしれないけど…でも、本質は一緒。
   誰かのために…本当に、一生懸命になれるってところとかさ」

楯無「だから私は…君に会えて嬉しかった。
   ちょっとだけだけど、同じ価値観を持った人と巡りあえるのは…やっぱり嬉しいことだから」

一夏「……」 

905 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:16:20 ID:jcPUBSXE
楯無「それで、さ…一夏くんならきっと、私のことを追い越してくれるんだと思う」

一夏「え……」

楯無「ISの操縦とかそう。本当に私なんかよりずっと早くコツを掴んでさ。
   ここ最近の君の成長は…本当に惚れ惚れするよ」

一夏「め、珍しいですね…楯無さんがそこまで褒めるなんて」

楯無「こんな時だからね。素直に言っておかなきゃいけないと思ってさ」

一夏「?」

楯無「きっと一夏くんは…私が思っているよりも早く、私よりも全然強くなると思う」

楯無「それで…私も、誰も想像つかないような方法で…誰も彼も助けられる、そんな夢物語も実現してくれる」

楯無「私は君に…そんなことを夢見てる」

一夏「で、デカ過ぎますよ…そんな期待持たれたって、困りますよ…」

楯無「あはは、でも聴いてよ。お願いだから」

一夏(え…な、何だこの…真っ直ぐな瞳は…) 

906 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:24:19 ID:jcPUBSXE
楯無「初めてだったんだ。本当に私と対等に渡り合えると思った人。
   そして、私を追い越せるかもしれないと思わせた人は」

楯無「なのに一夏くんは、それだけの力を持っていながら…誰かの、皆のために使おうとしてた」

楯無「時には自分の命を顧みずに…必死に、誰かを守ろうとしてくれた。見ず知らずであるはずの、私の大好きな妹も」

一夏「え、ええと…」

楯無「だから、かなぁ…。君を無理やりにでも私の傍に置いておきたかったよ。
   これから君はどうなっていくのか、一番近いところで君を見てみたかった」

楯無「無理やり引き込んで、いっぱいからかってたりもして、君は本当に困ったような顔をしていたけど…
   でも、最後は笑ってくれてた。今まで…傍に居て、離れないでいてくれた」

一夏「た、楯無、さん…?」

楯無「そして君は…本当に救ってくれた。簪ちゃんを。私たち姉妹の絆を…取り戻させてくれた」

楯無「君はいつも誰かを助けて…傍に居て、支えて、戦ってくれた。それで私たちは…本当に救われたよ」

一夏「た、楯無さん…言ってることが、よく―――



楯無「だから私は……そんな君が、好きになった」



一夏「―――」 

907 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:31:26 ID:jcPUBSXE
一夏「え…」

楯無「この子のことをずっと見てみたい。この人と、ずっと一緒に歩んでいきたい」

楯無「一緒に強くなって、色んな人を助けて、お互いに守れる存在になりたい」

楯無「そう思わせてくれたのが…一夏くんだった。
   いつの間にか一夏くんが…私の中で、こんなにも大きくなっていた」

一夏「あ、あの…ええと」

楯無「…あっはは。うん、何だか恥ずかしいね。でも不思議。すごく…心が、軽くなったよ」

一夏「た、たて、なし、さん…?」 

908 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:34:02 ID:jcPUBSXE
楯無「んー?」

一夏「い、いま、俺の、こと…え…?」

楯無「…はぁー。このテンプレ鈍感難聴主人公キャラが」

一夏「え…?」

楯無「こんなこと、女の子に何度も言わせる気?」

一夏「い、いや、あの、でも、ええと…」

楯無「でも出血大サービスね。耳かっぽじってよーく聴きなさい」

一夏「え…」



楯無「私はね。一夏くんが…織斑一夏くんが、好き。大好き」



一夏「―――!!」バクン!!

楯無「えっへへ/// 参ったか!」 

910 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:43:34 ID:jcPUBSXE
一夏「あ、あの、ええと…!」アタフタ

楯無「こらこら。何そこまでテンぱってんのよ。告白までした私がバカみたいじゃない」

一夏「い、いや、だって! い、いいいいきなり、過ぎますよ!!」

楯無「あっはは! 本当に一夏くんてば可愛いなー!」

楯無「…まぁ、そんなところも好きだけどね☆」

一夏「う、ぐッ…!?」

楯無「てへっ///」

一夏「い、一応訊きますけど…」

楯無「ん?」

一夏「な、何かの冗談なんてことは…」

楯無「……」ジャキッ

一夏「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!? す、すいません許してください!
   お願いだから殺意100割の眼差しで無音無動作でIS装備を向けないでください!!」 

912 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 00:51:23 ID:jcPUBSXE
楯無「まったくつくづく君って奴は…好きさ余って憎さ100倍になるところだったよ」

一夏「す、すいません…」

楯無「…で、どうするの一夏くん?」

一夏「え…?」

楯無「これが、私の気持ち。偽りも遠慮も全部なくした、私の気持ちだよ」

一夏「あ、う…」

楯無「…簪ちゃんの気持ちもよく知ってる。でも、これだけは譲る気持ちも負ける気持ちもない」

楯無「もう、決めたから。自分に嘘なんかつかないって。
   これ以上妹に嫌われるのも、妥協して一夏くんを諦めることも絶対に嫌だ」

一夏「…?」

楯無「…勿論決めるのは一夏くん。一夏くんがどう思っていたって私は構わない。
   たとえ簪ちゃんでも私たち以外を選んでも、もう言った以上は後悔なんかしない」

楯無「私は一夏くんが好き。だから、貴方の選択を一番に尊重したいから」

一夏「……」

楯無「…今すぐここで答えろなんか言わないよ」

楯無「でもちゃんと…私たちの気持ちと向き合って欲しい。そうしないと…私は君を許さないと思う」 

913 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:00:41 ID:jcPUBSXE
一夏「…楯無さん」

楯無「なんだい?」

一夏「不意打ち過ぎますよ…」

楯無「あはは。でも、私らしいといえばらしいと思わない?」

一夏「いや、こんなの…マジで心臓に悪すぎですから」

楯無「てへへっ♪」

一夏「…正直言って、本当は時間をかけて返事すべきなんでしょうけど」

一夏「でも、1つ決めたことがあるんです」

楯無「…何かなそれは」

一夏「…貴女なら多分、分かっているんじゃないですか?」

楯無「…あっはは。そうかもしれないね」

一夏「……」

楯無「…簪ちゃんのことだね?」

一夏「…はい」 

914 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:05:21 ID:jcPUBSXE
一夏「鷹月さんと一緒に遊んでいた時…すごく考えました」

一夏「あいつがヒーローを好きになったこととか…あいつが今も昔も、何を考えていたのか」

一夏「あいつは…簪はきっと、楯無さんに憧れてて…それを知って、貴女が羨ましくなった」

楯無「…ッ」

一夏「俺はきっと…あいつに憧れている貴女に憧れている。だから…貴女のようになりたいと思いました」

一夏「こんなにまであいつに信頼されるように…ずっと貴女のように、俺もなりたい」

一夏「いつの間にか…そう、願っている自分に気付きました」

楯無「……」

一夏「だから楯無さんは俺の目標だし、いつまでも尊敬できる先輩です」

一夏「俺だって貴女には何度も助けられて、感謝だってしきれないくらいだけど…でも、でもそれは…」

一夏「…ごめん、なさい。何だか上手く言えません」

楯無「…そっか」

一夏「すいません…」

楯無「いいよ。私が言わなくても、君はちゃんと向き合っていた。それが分かったことだけでも、嬉しいよ」

一夏「……」 

915 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:11:44 ID:jcPUBSXE
楯無「オッケー分かった。みなまで言うな」

一夏「え…」

楯無「君の気持ちは分かったよ。ちゃんと答えてくれて、ありがとね」

一夏「で、でも俺…まだ、貴女にちゃんと返事を―――

楯無「君と一緒にしないでくれる?
   私は君みたいに1から10まで言ってあげないと理解できないような鈍感じゃありません」

一夏「うッ…」

楯無「…ちゃんと気持ちと向き合ってくれて嬉しいって言ったでしょ? だから、それでいいのよ」

一夏「……」

楯無「…はぁ、やれやれ」ツカツカ


バシーン!!


一夏「いってぇ!?」

楯無「ほら、何ボサッとしてるの?」

一夏「え?」

楯無「こんな所でボヤボヤしてないで、さっさと行きなさい。お姫様が待ってるよ?」 

916 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:16:02 ID:jcPUBSXE
一夏「で、でも…」

楯無「早くしなさい。眠り姫は、王子様のキスで目覚めるのが常套なんだからさ」

一夏「……」

楯無「ほらっ。いつまでも夢見る乙女を待たせないの。行きなさい」

一夏「…楯無さん」

楯無「なに?」

一夏「俺の気持ちに本当に気付いているって言うのなら…」

楯無「……」

一夏「その…何ていうか、ごめんなさい」

楯無「……」

ゲシッ

一夏「いってぇ!?」

楯無「バカにするのも大概にしなさい」

一夏「え?」

楯無「…恋する乙女は、超最強なのよ」 

917 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:19:03 ID:jcPUBSXE
一夏「……」

楯無「ほら、忠告は3度までよ。行きなさい」

一夏「…楯無さん」

楯無「んー?」

一夏「ありがとう…ございます」

楯無「…いいわよ」

一夏「……」

楯無「その代わり、と言っちゃなんだけど」

一夏「…?」

楯無「…あの子を、よろしくね」

一夏「…はい!」


タッタッタ…


楯無「…行っちゃったか」

楯無「頑張ってね、一夏くん…」 

918 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:23:19 ID:jcPUBSXE
~生徒会室~

ウィーン

楯無「ただいまー」

虚「おかえりなさいお嬢様」

楯無「あれ? 本音ちゃんは?」

虚「さっき出て行きました。『かんちゃんのお見舞いに行ってくるー!』って」

楯無「…そっかぁ。つくづく幸せ者だね、私の妹も」

虚「そうですね。ところでお嬢様はどちらに行ってたんですか?」

楯無「んー。ちょっと負け戦に、かな?」

虚「は…?」

楯無「いやー…やっぱ分かっていたとは言え辛いわぁ…。
   こりゃ予想以上のダメージだよー。ちょっとやそっとじゃ立ち直れそうにないや」

ポスッ

楯無「そんなわけだから、よろしく」

虚「いや何がよろしくですか。当たり前に私の胸に飛び込まないでください」 

920 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:30:32 ID:jcPUBSXE
楯無「だって虚ちゃんの身体ってば極上なんだもんー。
   温もりも柔らかさも申し分ないし、どんな天蓋ベッドよりも快眠できるよ」

虚「言っときますけどちっとも嬉しくありませんからねその賛辞」

楯無「ぬほほ~ぬくい~やわい~ふかふかでぬくぬくする~よいではないかよいではないか~」モフモフ

虚「きゃぁッ/// や、やめてください! 普通にセクハラですよ!?」

楯無「いーじゃん別にさー。こっちだって疲れているのよー?」

虚「と、とにかくやめてください! 誰かに見られたら、変な誤解が!」

楯無「あー大丈夫大丈夫。さっき、鍵かけておいたからね」

虚「え?」

楯無「ここにはしばらく…誰も入ってこれないから」


ギュッ


虚「え…?」

楯無「だからもうちょっと…このままで、いさせて…?」

虚「……」 

923 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:38:16 ID:jcPUBSXE
虚「…何があったんですか?」

楯無「言ったでしょ。負け戦だったって」

虚「それはそんなに…辛い、ものだったんですか?」

楯無「…まぁね」

虚「…そうですか」

楯無「何ていうかさ…情けない話だけど…すごく、後悔しかないんだ」

虚「え…?」

楯無「私がもっと早くから…気持ちに気付いていれば…。意固地も張らずに、下手に遠慮なんかしなければ、さ…」

楯無「もっと自分に…素直になっていれば…こんな思いにならなくて、済んだかも、しれないって…」

虚「……」 

925 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:41:20 ID:jcPUBSXE
楯無「でも、でも、さ…そんなの…選べないよね。選べるわけ、ないよぉ…」

楯無「だってそうしたら…簪ちゃんを悲しませるかもしれないって…そう思うと、訳が分からなくて…」

虚「…大丈夫ですよ。あの人は誰よりも…貴女を尊敬してます」

楯無「…うん、そうだね。簪ちゃんならきっと…そうしてくれていた」

楯無「それでね…その気持ちも、もっと早く気付いていれば…。
   こう、なってなかったかも、しれないって思うと……ひっぐ…」

楯無「あっはは…失恋って、こんなに苦しいんだぁ…ぐす…」

虚「……」 

926 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:44:46 ID:jcPUBSXE
楯無「あはは…ごめん、ね…こんな姿、誰にも見せたく、ないから…」

虚「…貴女が望むなら、私は付き合いますよ」

楯無「うん…ありがと、虚ちゃん」

虚「でも…」

楯無「ん…?」

虚「泣くことは…全然、格好悪くないです」

楯無「え…?」

虚「だって貴女は…最強である前に、私たちの主人である前に

虚「ただの普通な…女の子なんですから」

楯無「…!」

虚「だから貴女は…泣いていいんです」

楯無「…そっか。そうだよね」

虚「…勿論、無理にとは言いませんが」

楯無「あっはは。でも涙が出ちゃうよ。女の子だもん」

虚「…はい」 

927 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/14(月) 01:48:51 ID:jcPUBSXE
楯無「だからもう少しこのままで…。ごめんね…シャツ、汚しちゃって…」

虚「…いいですよ。私の身体くらい、いくらでも貸します」

楯無「あはは…あり…がど…うぅ…」

虚「……」

楯無「いぢかぐんも、ひどいなぁ…はじめで、だっだのに、さぁ…ひっぐ…」

楯無「ぜっだいに…うぅ…ゆる、さないがら…」

楯無「かんざしぢゃんを…えっぐ…じあわせに、じないど…ゆ゛るざないがらぁ…」

虚「……」


楯無「う、うぅ、うぅぅぅ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…

―――――――――
―――――
――― 

941 : ◆Xj0T19PFxU:2012/05/18(金) 20:11:19 ID:n5.420I2
~保健室~

ガララッ

本音「あ~! おりむら~だ~!」フリフリ

一夏「おぉのほほんさん。来てたのか」

本音「うん~! 見て見て~! かんちゃん、元気になったの~!」

簪「あ…い、一夏…」

一夏「簪、起きてたのか。良かったよ」

簪「ごめん…私、途中で…」

一夏「気にするなよ。寝不足なお前に無理をさせた俺のせいでもあるんだし」

本音「かんちゃんごめんねぇ…私があんなミッション入れたばっかりにぃ…」ショボーン

簪「ち、違うの…! 私の体調管理不足のせいだから…! 謝らないで…!」アセアセ

一夏「まぁ何にせよ、すっかり良くなってるみたいで安心したよ」

簪「あ、うん…///」 

942 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:15:15 ID:n5.420I2
一夏「取りあえず簪はもうすぐ復帰できるから、のほほんさんは戻って用意しててくれないか?」

本音「わかった~! じゃあおりむ~あとはよろしく~!」トテトテ

ガララッピシャッ

一夏「…もう、すっかり良いのか?」

簪「う、うん…心配かけて、ごめん」

一夏「気にするなって。大事がないなら、それでいい」

簪「…うん。じゃあ、戻ろうか?」

一夏「あ、待ってくれ。そのまま、聞いてくれないか?」

簪「え?」

一夏「…少し、話がしたいんだ」

簪「えっ…?」

一夏「…いいかな?」

簪「い、いいよ…///」ドキドキ

一「そっか。良かった」

簪「……」バクバク 

943 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:19:28 ID:n5.420I2
一夏「なぁ簪。覚えているか? 俺と、初めて会った時の事」

簪「…うん」

一夏「あんときは何度話しかけても素っ気無いし、すごく嫌われててビックリしたよ」

簪「うッ…あ、あまり…思い出させないで…」

一夏「あはは、ごめんごめん。別に意地悪してるわけじゃないんだ」

一夏「…でも不思議だ。今はこうして、ちゃんとお前といれることが出来ているんだからな」

簪「それは…い、一夏とお姉ちゃんが…頑張って、くれたから」

一夏「そのことなんだけどさ、簪。何で俺に心を許してくれるようになったんだ?」

簪「そ、それは…」

一夏「……」

簪「一夏は…助けてくれたから。私を」

簪「ずっと閉じこもっていた私を、引っ張り出してくれた。殻を、壊してくれた。
  それで一夏は…私に、居場所をくれた。お姉ちゃんという姉妹のあり方も、友達も」


簪「だから私は…そんな一夏が好きになった」


一夏「―――!!」 

944 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:22:29 ID:n5.420I2
簪「…どうか、した?」

一夏「い、いや、別に…」

一夏(何でこんなに…似るんだろうな…姉妹って)

簪「…?」

一夏「…話を少し変えるけどさ。何で簪は、ヒーローが好きなんだ?」

簪「え、ええと…格好いいから、かな?」

一夏「悪い奴らをやっつけるところとかか?」

簪「う、うん…。私も、あんな風になりたかった、から…」

一夏「…楯無さんのように?」

簪「…うん」

一夏「ずっと、楯無みたいになりたかったんだよな?」

簪「うん…あれだけ強くて、綺麗な女性になれたら…どれだけ素敵だろうって思ってた」

簪「…でも最初の方はそう思っても、だんだん劣等感の方が強くなっていったの。
  姉妹なのに、どうしてこんなにも違うんだろうって。私の、何がいけないんだろうって…」

一夏「……」

簪「だから私は…いつの間にか、お姉ちゃんを直視することが…出来なくなった…」 

945 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:27:24 ID:n5.420I2
一夏「…つまり簪はさ」

簪「?」

一夏「お前はきっと…ヒーローじゃなくて、ヒロインになりたかったんじゃないかな?」

簪「え…?」

一夏「……」

簪「な、何…? どういう、こと?」

一夏「これは俺の個人的な考えだけどな。お前が強くなりたかったのは、認めてもらいたかったからだろ?」

一夏「楯無さんのように自分もなれるんだって、皆に証明したかったんだろ?」

簪「…そうだけど、それだとよく分からない。私が、ヒロインになりたかった理由」

一夏「ヒーローに助けられるヒロインってのは、見方によっては認められたってことだと思うんだよ。
   『自分は助けるに足る人間であった』と、認められた結果、ヒーローに助けられる」

一夏「だからヒーローに助けられた時、誰もがヒーローに『ありがとう』って言うんだ」

簪「……」

簪「…そうかもしれない。私は…誰かに認めてもらいたかった」

簪「私だって立派に強くなれるって…皆から、お姉ちゃんから、認めてもらいたかったんだと思う」

簪「そうやって私の劣等感を打ち壊してくれる…助けてくれる、誰かを待っていた。そういう、ことかもしれないね」 

946 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:34:12 ID:n5.420I2
一夏「…そっか」

簪「…うん」

一夏「お前も…俺と同じだったんだな」

簪「え?」

一夏「千冬姉に言われたんだ。お前は何のためにISを纏っているんだ?』って」

一夏「その時俺は、皆を守りたいからだって言ったんだ。そしたら、甘いって言われてさ」

簪「……」

一夏「漠然と誰かを守りたいって気持ちはあったんだけどな。
   誰を、何のために戦っているのかって言われたら…俺は答えられなかった」

一夏「それで、最近になって思ったんだ。俺は特別な誰かを守りたいんじゃなくて…
   きっと、誰も彼も助けて、いい気になりたかったんじゃないかって」

一夏「子供の頃に夢見たヒーローみたいにさ。格好よく、誰かを助けてみたい。
   俺はそんな餓鬼臭い夢を捨てきれない、ただの子供だったんじゃないかって…」

一夏「……」

一夏「俺だって同じだよ。誰かに感謝されたくて、認めてもらいたくて力をつけたかった…ただの偽善者だ」

簪「……」 

947 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:37:50 ID:n5.420I2
一夏「…でも、俺は前に言ったよな。『完全無欠のヒーローなんかいない。俺たちは人間だ。
   泣きもするし、笑いもするし、負けるときだってある』」

一夏「『けど、諦めない。逃げ出さずに戦える人間だ』って」

簪「うん…私、今でも一夏のその言葉、ハッキリと覚えてる」

一夏「あぁ。だけどそれを思い出したら、ますます分からなくなった」

簪「え…?」

一夏「俺たちはどんなに頑張っても、いくら憧れても、完璧なヒーローにはなれない。
   ヒーローを気取ることは出来ても…俺たちはただの人間なんだから」

一夏「だったら俺は…本当は、何になりたかったんだろうな、って」

簪「あっ…」

一夏「…でもな。そのモヤモヤを壊してくれたのは、簪だった」

簪「え…?」

一夏「ほら、旅館で一緒に寝泊りした時にさ。言ってくれただろ?
   『誰かを守る理由は、自己満足でも構わない』って」

簪「う、うん…」

一夏「俺が何でISを纏いたかった理由を知って、すごく悲しくなってさ…。
   でも、簪のこの言葉を思い出したとき…すごく、心が軽くなったんだ」 

948 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:41:25 ID:n5.420I2
一夏「誰かを助けた時、そいつは誰かを助けたことで嬉しくなる。
   助けられた方も、自分を助けてもらったことで嬉しくなる」

一夏「そしてお互いがそういう気持ちを持ってるんだって知った時…。
   何だか不思議と、また嬉しさが増していく。そういう考え、すごく素敵だと思った」

簪「…///」

一夏「だからさ。俺、このままでいいんだって言われた気がした。
   たとえ偽善でも、自己満足でも、それで誰もが幸せになれるっていうのなら、それでいいんだと思った」

一夏「俺のあり方っていうか…俺の答えみたいなものを、簪が指し示してくれた。そんな、気がするんだよ」

簪「……」

一夏「だからさ、簪。俺、やっぱり皆を守っていきたいと思う。
   偽善と言われても、それがどうしたって鼻で笑って、皆を助けていきたいって思う」

一夏「だって皆を守りたい気持ちに、嘘はないんだから。だから俺は、戦えるんだ」

簪「一夏…」 

949 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:50:04 ID:n5.420I2
一夏「だからその事を教えてくれた簪には…すごく感謝してる」

簪「…私は別に特別なことは言ってないよ。一夏が、立派だからだと思う」

一夏「そう言ってくれてありがとな。それでさ、もう1つ決めたんだ」

簪「えっ…?」

一夏「これも千冬姉に言われたことなんだけどな。
   『こいつだけは、命を賭けても惜しくない、そんな大切な人を決めろ』って」

一夏「そういう人ってどんな気持ちで決めたらいいか、分からなかったんだけど…
   でも、今になって分かった気がする」

簪「えっ…?」

一夏「そういう人はさ。いつまでも一番近くで、守ってやりたい奴だと思う」

一夏「見ていると何だか不安で、思わず手を差し出したくなって…でも、それだけじゃなくて」

一夏「俺の事、ちゃんと分かってくれてさ。その人も、俺のことを支えてくれる人がいい。
   たとえ俺が1人になっても、離れないでいてくれる人がいいと思う」

簪「いち、か…?」 

950 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:52:47 ID:n5.420I2
一夏「…なぁ簪。あの時、こうも言ったよな。『俺が嬉しいと、お前も嬉しい』って」

簪「う、うん…」

一夏「俺もさ…お前が嬉しいと、すごく嬉しくなる」

簪「…///」ドキッ

一夏「だから俺は、これからもお前と嬉しさや幸せを共有したい。
   そしてお互いに高めあって、磨きあって、一緒に強くなっていきたい」

簪「あ…あぁ…」



一夏「だから俺は―――そんな簪が、好きになった」



簪「―――」

一夏「一番支えてやりたくて、傍で助けてやりたいと最初は思ったけど…」

一夏「でも自然と…俺に色々なことを気付かせてくれたから。
   こんな気持ちにも…気付かせてくれたからな」

一夏「だから俺は簪が……更識簪が、好きだ」 

951 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 20:59:32 ID:n5.420I2
簪「え…?」

一夏「だから俺は…お前と一緒にもっと強くなりたい。
   一番好きな簪を守りながら、一番大切な簪を支えながら」

簪「あ…」

一夏「え、ええとだな…つ、つまり、その…あ、あの時の返事は、こ、こんな、俺でよければ―――


ポタ…ポタ…


一夏「え…?」

簪「う、うぁ…うぁぁぁぁぁ…」ボロボロ

一夏「お、おいおい…泣くことないだろ…」

簪「だ、だっでぇ…ご、ごんなのぉ…ひっぐ…」

一夏「……」

簪「うそ、じゃない…? いちか、わたしが…?」

一夏「…ああ。俺も、お前が好きだ。簪」

簪「あ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」 

952 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:02:37 ID:n5.420I2
一夏「……」


ポスッ


簪「あ…///」

一夏「取りあえず、落ち着いてくれ」

簪「う、うん…」ギュゥゥ

一夏「平気か?」

簪「う、うん…もう、大丈夫、だから」

一夏「…ごめんな、泣かして」

簪「…いいの」

簪「だってこれは…嬉し泣きだから」ニコッ

一夏「…そっか」フッ

簪「嬉しい?」

一夏「ああ。すっげぇ嬉しい」

簪「ふふっ…私も。すっごすごく、嬉しい」 

953 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:06:44 ID:n5.420I2
一夏「…こんな俺だけどさ。傍にいてくれるか?」

簪「うん…」

一夏「…ありがとう簪。そう言ってくれると、すごく心強い」

簪「うん…私も…一夏が傍で守ってくれるってだけで…すごく、力が沸いてくるの」

一夏「ああ。俺も、簪がいるってだけで、死ぬ気で戦える」

簪「…死んじゃダメ」

一夏「あはは、そうだな。お前を一番悲しませるようなこと、絶対にしないよ」

簪「うん…あり、がと…一夏…」ポロポロ

一夏「…また泣いてるぞ?」

簪「い、今は…泣かせて?」

一夏「…分かった」

ギュッ

簪「あぅ…///」

一夏「こ、ここでよければ…いくらでも泣いてくれ///」

簪「あ、うん…///」 

954 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:09:16 ID:n5.420I2
簪「…泣き虫で、ごめんね?」

一夏「いいよ。むしろ、もっと守りたくなる」

簪「ふふっ、ありがと。でも…」

一夏「ん?」

簪「…一夏に、守られるばかりじゃダメだから。私も、一夏を守れるくらい、強くなるから」

簪「だから今だけはこんな私を…弱い私を、許して?」

一夏「…ああ。もちろんだ」


ギュゥ…


一夏「…好きだ、簪」

簪「うん…私も、一夏が好き…大、好き…」

―――――――――
―――――
――― 

955 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:14:53 ID:n5.420I2
~しばらくして、生徒会室~

ガララッ

楯無「お?」

一夏「ただいま戻りましたー」

簪「た、ただいま…」

楯無「おっかえりなさーい☆ 簪ちゃん、もう大丈夫?」

簪「うん、平気…。心配かけて、ごめん…」

楯無「いいってことよ! むしろ寝不足よりは、一夏くんに寝込みを襲われんじゃないかって方が心配だったから!」

一夏「ちょ…あんだけ嗾(ケシカ)けておいてその言い方はないでしょ…」

楯無「てへっ♪」

簪「あ、う…///」

楯無(…2人とも、分かりやすいなぁ。それだけ表情に出されたら一目瞭然だよ)

楯無(…おめでとう、簪ちゃん。一夏くん)

楯無(これからはもっとちゃんと、2人の事を応援するからね?) 

956 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:17:19 ID:n5.420I2
楯無「でわでわー! ようやく主役が舞い戻ったところで! お待ちかねの試食ターイムです!!」

本音「わ~い!」パチパチ ヤンヤヤンヤ

一夏(いつの間にこんなセット用意したんだ…)

簪「あ、うぅ…お手柔らかに、お願いします…」

一夏「…簪。大丈夫だって。俺たちが頑張って作ったんだから」ギュッ

簪「あ、うぅ…そ、そうだね…///」ギュゥ

楯無(…あーあ見せ付けてくれちゃってまぁ)

楯無「はいはーい! そんなわけで本日のスイーツの登場です! アシスタントさん、お願いします!」

虚「な、何で私がこんな役回りを…///」キュルキュル

本音「うわ~! お姉ちゃん、可愛い~!」ピョンピョン

簪(メ、メイド服姿にワゴン台…どんだけ本格的なの…)

一夏(弾に見せたら卒倒しそうだな…今の虚さんの姿…)

本音「おぉぉぉ~! すごく美味しそうだよ~! ありがとうかんちゃん、おりむ~!」パタパタ

楯無「ふむふむ…プレーンタイプに甘栗、黒豆、小豆、生クリームや旬のフルーツをトッピングした
   様々な抹茶カップケーキ…。こりゃちょっとしたバイキングだね」 

957 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:20:13 ID:n5.420I2
楯無「ではでは! いよいよ運命の…ジャッジメントタイムに入りましょうか!」

本音「は~い! じゃあまずは私から~!」

パクッ

一夏「……」ゴクリ

本音「ん~♥ 美味しい~!! やっぱりかんちゃんのケーキは最高ぉ~!」ホワワーン

一夏「ほっ…」

虚「本音は文句なしに合格みたいですね。次は私が」

パクッ

簪「……」ゴクリ

虚「まぁ美味しい! 甘すぎずしつこすぎない絶妙な甘さと、抹茶の苦味がすごく合います!」

虚「トッピングがかかったものも美味しいです!
  バリエーションも豊富で色々な味が楽しめるので嬉しくなりますね」

虚「これは…非の付け所などありません。もちろん合格です」

簪「ど、どうも…」ペコリ 

958 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:23:18 ID:n5.420I2
楯無「さてさて…ではいよいよ私の番です。いただきます」

パクッ

簪「……」ドキドキ

一夏「……」ハラハラ

楯無「……」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うわー! かんざしちゃん、なにつくってるのー!?」

「お、おねえちゃん…まだみちゃだめ…」

「おかーさーん! かんざしちゃんが、すごいのつくってるー!」

「あ…ちょ、ちょっと、おねえちゃん…」

「あらあら何作ってるのー? これは…カップケーキ? 美味しそうね」

「で、でも…しっぱい、しちゃった…」

「えー? こんなにおいしいそうなのにー?」

「どれどれ。1つ頂くわね」

「あ、だめぇ!」 

959 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:25:45 ID:n5.420I2
「うッ…こ、これは…何、入れたの…?」

「そ、それはぁ…おさとうと、しおをまちがえちゃって…」

「そ、そうなの…」

「それに…やきすぎてこげちゃったし、なかはやけてなくて、どろどろしてる…」

「し、失敗は誰にだってあるわよ。気にしちゃだめ」

「かたちだって…すごく、ぶさいくだし…」

「そ、それは、まぁ…アハハ…」

「だから…だめって…いったのに…ひっぐ…」

「あ、あー…ほら、泣き止みなさい簪。そんなことくらいで泣いてはダメよ?」

「だっでぇ…ぎっど、おねえぢゃんなら、おいしぐ、づぐれだのにぃ…ひっぐ…」

「…?」 

960 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:27:34 ID:n5.420I2
「そんなことないわよ。―――だって、最初から何もかも上手くできたわけじゃないんだから」

「でもぉ…わだしは、いっぱい、れんしゅうしても、ぜんぜん、だめで…えっぐ…」

「かんざしちゃん? どーしたの?」

「だから、だめっで、いっだのにぃ…うぇぇぇぇぇぇん…」

「…!」


パクッ


「あ、おねえちゃん! だから―――」

「おいしい!!」

「え…?」

「これ、すっごくおいしいよかんざしちゃん!!」

「おねえ、ちゃん…?」

「ほら、おかーさんもたべて! とってもおいしいから!」 

961 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:29:07 ID:n5.420I2
「う、うそ…それ、すごく、しっぱいして…」

「うそじゃないんもん! ほんとうにおいしいんだもん!」

「…そうね。とっても美味しかったわ」

「お、おかあさんまで、そんな…」

「あのね簪。確かに出来栄えは悪いかもしれないけど…でも、私たちのために焼いてくれたカップケーキでしょ?」

「そ、そんなこと、ないもん」

「あらあら。その大人数のお皿は誰の分なの? 1人でそこまで食べる気?」

「…ッ///」

「…おいしいってのは、ただ味が良ければいいってわけじゃないわ。
 誰かのために作ってくれたのなら、それだけで幸せでお腹一杯になれるのよ」

「うん! そうだね! かんざしちゃんのケーキたべれて、わたし、すっごくうれしい!」

「おねえちゃん…おかあさん…」

「かんざしちゃんのけーきはせかいいちだよ! さすがはわたしのいもうとだね!」

「ありがとう簪。また作ってね」

「う、うん…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

962 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:31:00 ID:n5.420I2
楯無「……」

簪「……」

一夏「あ、あの…楯無さん? そろそろコメントが欲しいんですけど…」

ツーッ

一夏「!?」

簪「!?」

楯無「えへへ…やっぱり…いつ食べても…簪ちゃんのケーキは…美味しいなぁ」

簪「え…?」

楯無「そういえば、あの時食べたのもこんな味だったなぁ…変に、塩気が混じっててさぁ…」

簪「…!」

楯無「…うん、でも。やっぱり、美味しい。幸せの味がする。
   本当に美味しい…もう、世界一美味しいよ」

簪「お姉、ちゃん…」


楯無「ありがとう簪ちゃん! すっごく美味しい! 流石は私の妹だね!」


簪「―――!!」 

963 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:33:26 ID:n5.420I2
虚「ということは…」

楯無「というわけで…文句なしに合格!!
   そして一夏くん、ミッション・コンプリートおめでとー!!」パンパカパーン

本音「やった~! おめでと~!」パチパチ

一夏「ほッ…よ、良かったぁ…」

簪(お姉ちゃん…)

楯無「ん?」

簪(…あり、がと)ニコッ

楯無(…気にしないの)ニコッ

一夏(ん…? また視線で会話してるのか…?)

楯無「さぁーてさて!! 次のミッションに移る前に…ここで重大発表です!」

一夏「え?」

簪「?」

楯無「えー…全校生徒の皆さーん。それと教員や用務員、その他IS学園の方、聞こえますかー?」

一夏「な、なんだ…? 学園に向けての重大発表?」

簪(…嫌な予感しかしないのは何でだろう) 

964 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:35:42 ID:n5.420I2
楯無「えー…実は我が生徒会の期待のニューホープの一夏くんですが」

一夏「え、俺?」

楯無「なんと…なんと、この度!!」

一夏「?」




楯無「私の妹、更識簪ちゃんと………晴れてカップルになりましたぁー!!」




一夏「」<ブ―――――――――――――――ッ!!

簪「」<ブ―――――――――――――――ッ!!

虚「」

本音「えぇ~!? そ、そうなの~!? こ、これは大ニュースだぁ~!!」アタフタ 

965 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:39:51 ID:n5.420I2
楯無「というわけで学園関係者の皆さん、その他紳士淑女の皆様方!
   新しい恋人たちの門出に、盛大な拍手を!!」パチパチパチ

一夏「ちょちょちょちょちょちょ!? 何で当人差し置いて勝手に盛り上げてんですか!?」

簪「おおおおおおおおおおおおお姉ちゃん!?」

楯無「おほほほほ♪ 何とも初々しいカップルだこと…☆
   そんな君たちには、輝かしい青春の1ページのハイライトをお届けしちゃいまーす!」ピッ


『…好きだ、簪』

『うん…私も、一夏が好き…大、好き…』


一夏「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!??」

簪「あ、あ、あぅ、あぅ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」ボボボボボボ

本音「う、うわぁ~!? かんちゃんの顔まっかっか~!
   顔から火が出るって諺は本当にあったんだ~!?」ピョコピョコ

虚(お嬢様…) 

966 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:43:06 ID:n5.420I2
一夏「あああああああああああんた、何てことしてくれたんですか!?」

楯無「いやだってー。可愛い妹の門出なのに盛大に祝わない姉がこの世にいると思う?」

一夏「あんたの辞書に遠慮の文字はないんですか!?」

楯無「生徒会長は、引かぬ、媚びぬ、省みぬ!!」バサッ<扇子『聖帝』

一夏「豪快に開き直りおった!?」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


一夏「な、何だはこれは…全校生徒職員で拍手するとこんな音がするのか…?」

簪「いや、これは…地鳴り…」 

967 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:44:29 ID:n5.420I2
一夏「じ、地鳴り!?」

簪「う、うん…きっと、箒たちがこっちに向かってくる音だと思う…」

一夏「何でまた!?」

楯無「んっふっふっふー。どうやらピンチのようだねぇ」

一夏「どどど、どうしてくれるんですか!? 完璧に楯無さんの所為じゃないですか!!」

楯無「慌てない慌てない。実はこんなこともあろうかと、既に次なるミッションは引いていたのです」ピッ

一夏「ここここ、こんな状態でミッションなんて出来るわけ―――」

楯無「最後まで聞きなさいって。その気になるミッションの内容ですが…」

一夏「な、何なんですか?」


楯無「ずばり!! 『簪ちゃんと一緒に皆から逃げ切る!!』」バーン


一夏「はぁ!?」

簪「え…?」

虚「えぇー…」

本音「うわ~! 愛の逃避行だ~!」ピョンピョン 

968 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:46:57 ID:n5.420I2
楯無「ルールは至極単純! 簪ちゃんと一緒に皆に捕まらずに逃げきること! 今日1日!!」

一夏「い、いいいいいいいやいやいや! 何で簪まで巻き込むんですか!?」

楯無「なーに言ってるの」

一夏「はいぃ!?」

楯無「これくらいのことで守れないようで、妹の事を任せられるわけないでしょ?」

一夏「あ…」

楯無「ね?」

一夏「いや『ね?』じゃないですよ! また流されそうになりましたけど!
   結局はあんた、かき回したいだけ――」


『いちかああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


一夏「ひぃッ!?」

楯無「ほーれほれ。ブー垂れてる暇なんかないわよー」

一夏「あぁもう!! こうなったら絶対に逃げ切ってやる!! 行くぞ簪!!」ギュッ

簪「う、うん!」ギュゥ 


969 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/18(金) 21:49:02 ID:n5.420I2
一夏「安心しろ簪!! 絶対に守ってやる!!」

簪「うん! 私も、一夏を守る!」

楯無(…簪ちゃん。貴女は、もう大丈夫。私がいなくても…大丈夫だから)

楯無(だから…その手は、絶対に放さないでね。ずっとずっと、握り締めていなきゃダメだよ?)

楯無(これは…『本当のミッション』の練習みたいなもの。最後の、私からの贈り物だから)

楯無(イベントは今日で終わりだけど…こっちのミッションは、永久執行だからね?)スッ…


『簪ちゃんとずっと幸せに暮らす』


ドッゴォォォ!!

一夏「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!? あ、ああああいつら、扉をぶち壊しやがった!?」

楯無「あらあら血気盛んだ事。さて! 本日そしてこのイベントの最終ミッションの幕開けだァー!!」

一夏「最後の最後でコレかよチクショー!!」

楯無「それでは…」


楯無「ミッション・スタート!!」

~MISSION COMPLETE!!~